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GLP-1RAが飲酒量を減らす?

 血糖降下薬であり近年では減量目的でも使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、飲酒量を減らすことを示唆する新たな論文が報告された。特に肥満者において、この作用が高い可能性があるという。英ノッティンガム大学のMohsan Subhani氏らによるシステマティックレビューの結果であり、詳細は「eClinicalMedicine」に11月14日掲載された。なお、本研究で言及されているエキセナチド等、GLP-1RAの禁酒・節酒目的での使用は日本を含めて承認されていない。一方で同薬が作用するGLP-1受容体は脳内にも分布しており、同薬が飲酒量を抑制するという前臨床試験のデータがある。 この研究では、Ovid Medline、EMBASE、PsycINFOなどのデータベースを用いて、2024年3月末までに報告された研究結果を検索、同年8月7日に新たに追加された報告の有無を確認した。主要評価項目は、GLP-1RAの使用と飲酒量の関連の評価であり、副次的に、GLP-1RAと飲酒関連イベントや機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータなどとの関連を評価した。 解析対象研究として、6件の報告が特定された。このうち2件はランダム化比較試験(RCT)、3件は後ろ向き観察研究、1件はケースシリーズ(複数の症例報告)であり、3件は欧州、2件は米国、1件はインドで行われていた。研究参加者数は合計8万8,190人で、このうち3万8,740人(43.9%)にGLP-1RAが投与されていた。ただし、エビデンスレベルが高いと評価されるRCTとして実施されていた研究の参加者は286人だった。平均年齢は49.6±10.5歳で、男性が56.9%だった。 RCTとして実施されていた研究では、GLP-1RAのエキセナチドによる24週間の治療後30日間での飲酒量は、プラセボと差がなかった(大量飲酒の日数の群間差がP=0.37)。ただし、サブグループ解析では、肥満者(BMI30超)では肯定的な影響が認められ、fMRIで脳内の報酬中枢の反応に差が認められた。また、RCTの二次解析では、GLP-1RAのデュラグルチド群はプラセボ群と比較して、飲酒量が減少する可能性が有意に高かった(相対効果量0.71〔95%信頼区間0.52~0.97〕、P=0.04)。 観察研究では、DPP-4阻害薬が処方されていた患者や無治療の患者に比べて、GLP-1RAによる治療が行われていた患者では飲酒量が有意に少なく、飲酒関連イベントの発生も少なかった。 Subhani氏は、「GLP-1RAが将来的には過度の飲酒を抑制するための潜在的な治療選択肢となり、結果的に飲酒関連の死亡者数の減少につながる可能性があるのではないか」と述べている。なお、論文には、「GLP-1RAは一部の人の飲酒量を減らす可能性があることが示唆された。ただし、研究の結果に一貫性がなく、飲酒量を抑える目的でのGLP-1RAの有効性と安全性を確立するため、さらなる研究が求められる」と付記されている。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションが医療負担に及ぼす影響

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションは、一般的な症状であるが、これに伴う医療負担はよくわかっていない。米国・Inovalon InsightsのChristie Teigland氏らは、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者とアジテーションのない患者におけるベースライン特性、医療資源の利用、コストの評価を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2024年10月29日号の報告。 対象は、2009〜16年のメディケア有料請求データベースよりアルツハイマー病および認知症で30日以上の間隔で2件以上の請求があり、診断6ヵ月前および12ヵ月後に医療/薬局保険に継続加入していたメディケア受給者。重度の精神疾患患者は除外した。アジテーションの有無により2つの患者コホートを定義し、記述的探索分析により患者の特徴、医療資源の利用、コストの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー型認知症患者268万4,704例中76万9,141例が包括基準を満たした。・そのうち、アジテーションを有する患者は28万1,042例(36.5%)であった。・アジテーションの有無に関わらず、アルツハイマー型認知症患者の平均年齢は83歳。・両群共に女性の割合が高かったが、アジテーションを有する患者群では、男性の割合がわずかに高かった(30.3% vs.28.2%)。・アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者は、アジテーションのない患者と比較し、社会経済的地位が低い(メディケイド二重受給資格:45.0% vs.41.7%)、障害がある(10.5% vs.9.4%)傾向が高かった。・全体的に、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者は、アジテーションのない患者よりも医療費が高額であり(患者1人当たりの年間医療費の平均:3万2,322ドル vs.3万121ドル)、入院および急性期ケア後の医療費に、最も大きな差が認められた。 著者らは「アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者は、経済的な負担が大きく、関連する健康アウトカム改善のためにも、新たな治療オプションの必要性が浮き彫りとなった」と結論付けている。

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英国の一般医を対象にした身体症状に対する介入の効果―統計学的な有意差と臨床的な有意差とのギャップをどう考えるか(解説:名郷直樹氏)

 18〜69歳で、Patient Health Questionnaire-15(PHQ-15)スコア(30点満点で症状が重いほど点数が高い)が10~20の範囲、持続的な身体症状があり、過去36ヵ月間に少なくとも2回専門医に紹介されている患者を対象に、症状に対する4回にわたる認識、説明、行動、学習に要約できる介入の効果を、52週間後の自己申告によるPHQ-15スコアで評価したランダム化比較試験である。 介入の性格上マスキングは不可能であるが、アウトカム評価と統計解析については割り付けがマスキングされているPROBE(Prospective Randomized Open Blinded Endpoint)研究である。ただPROBEであっても、アウトカムが症状であることからするとバイアスを避け難い面があり、効果を過大評価しやすいという限界がある。 また、介入群と対照群の差が2点以上を統計学的有意とするサンプルサイズで検討されているが、この研究が開始された以後に臨床的に意味のあるスコアの差を2.3以上とするという論文が発表され、統計学的な有意差が示されたとしても、臨床的には問題のあるサンプルサイズである。 結果は、介入群のPHQ-15スコアが12.2、対照群が14.1、その差は-1.82、95%信頼区間は-2.67~-0.97と統計学的には有意な差を報告している。しかし、この1.82の差はサンプルサイズ計算に用いられた2の差に達しておらず、臨床的に有意と判定される-2.3とは0.5近い差がある。95%信頼区間の下限で見れば、約1点の差しかないかもしれず、この介入が臨床的に有効とは言い難い結果である。しかしながらこの論文の結論は、“Our symptom-clinic intervention, which focused on explaining persistent symptoms to participants in order to support self-management, led to sustained improvement in multiple and persistent physical symptoms”とあり、統計学的な差と臨床的な差の問題を取り上げていないのは大きな問題だろう。 さらに、この研究が日本においてどういう意味があるかと考えると、重大疾患がなく、原因不明の身体症状が持続する患者は、一般医をかかりつけ医として登録している英国と違い、フリーアクセスであるが故に多くの医療機関を渡り歩き、この論文を適用するような状況そのものがないというのが現状ではないだろうか。こうした患者がドクターショッピングをしないで済むよう、この論文に示された高度な介入を検討する以前に、家庭医、一般医の制度の導入をまず検討すべきだろう。

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認知症以前のMCIが狙われる、新手の「準詐欺」とは?【外来で役立つ!認知症Topics】第24回

特殊詐欺の増加とその背景3、4年前に弁護士との飲み会があり、オレオレ詐欺など特殊詐欺の動向に話が及んだ。このとき1人の弁護士がこう語った。「NHKによる注意勧告など広く知れ渡るようになり、手口も周知されてきた。そうそう新手もないだろうから特殊詐欺は減っていくだろう。その分、荒っぽい強盗が増えるんじゃないか」。今日振り返ると、「闇バイト」に代表される後者については、まさにそのとおりになった。ところが、前者の特殊詐欺については大外れになってしまった。というのは、図に示すように、法務省および警察庁の発表によれば、特殊詐欺の認知件数は2004年(平成16年)をピークに減少していたが、2011年(平成23年)から増加傾向に転じ1)、2023年(令和5年)には過去15年間で最多となったからだ2)。そして2023年度の被害額は400億円台となった。図. 特殊詐欺 認知状況・被害総額の推移(参考2より)画像を拡大する手口別では「架空料金請求型」が大幅に増加した。中でも目立つのが、それらの4割を占めた「サポート詐欺」3)だ。ウイルスに感染したと虚偽の警告をパソコンに表示させ、復旧を名目に金銭を要求するものだという。警察庁はサポート詐欺が増えた背景として、犯人側にとっての効率の良さを指摘する。偽の警告にだまされて復旧を求める被害者側から電話がかかってくるため、オレオレ詐欺のように不特定多数に電話をかける必要がないからだという。こうした背景があるからこそと考えるのだが、最近「認知機能障害のある高齢者における消費者トラブルに関する医療福祉関係者向けアンケート」4)を消費者庁が実施している。私も実際にやってみたが、これは認知症と軽度認知障害(MCI)の当事者が被害者となるこの種のトラブルの実態を調査するものだとわかった。特殊詐欺は認知症以前の人が狙われやすい特殊詐欺といわれるこの手の経済的犯罪の源流はオレオレ詐欺だろう。そして預貯金詐欺、還付金詐欺、架空料金請求、国際ロマンス詐欺などがある。当院には、「オレオレ詐欺にやられたうちのお袋は認知症ではないか?」といった類の受診が年間に10例くらいあるだろうか? ところが経験的に、どうも認知症者は被害者にならないようだ。被害者の多くは認知的に正常、もしくはときにMCIの人だ。筆者はこの結果にずっとなるほどと納得してきた。というのは、特殊詐欺に引っかかるにはかなりの理解力も行動力も必要だ。認知症レベルになるとそれはない。逆に認知症の人は、訪問販売やTVショッピングのように手続きが簡単なものの契約をすることが多い。新手の「準詐欺」、被害の実態は?最近驚いたのが、筆者が担当する患者さんが経験され、NHKのニュースでも見た「準詐欺」の報道だ。いくらか難しい法律用語が含まれるが、この準詐欺罪とは、「刑法に規定された犯罪。18歳未満の児童の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させる。欺罔(きもう:だまし)行為が行われておらず、詐欺罪の規定で捕捉しきれないが、相手方の意思に瑕疵(かし:欠陥)の有る状態を利用する点で詐欺罪に類似することから、詐欺罪に準ずる犯罪類型として処罰する」とある。準詐欺に遭った患者さんが経験したのは、築43年のおんぼろマンションの風呂場だけを800万円で購入する取引を承諾して押印し、契約が成立した事件である。購入動機、捺印の状況など中核に関する本人の記憶は曖昧であった。「投機心をそそられた、投資になると思った、儲かるから、銀行金利が安いから」というもっともらしい発言の反面、「マンションを買う気はなかった、判子を貸してくれと言われたから、押すだけだからと言われたから、貸してあげた。私はなにも買わない、ただ判子を押せと言われたのでそのとおりにした」と矛盾したことも述べた。これとは別に、訪問時にお土産をもらったこと、相手側が自分を持ち上げて気持ちが良くなったという意味の発言が筆者の印象に残った。ちなみにこの方の改定長谷川式は24点、またMMSEは21点でありMCIの診断をしている。「準詐欺罪」の成立には、被害者が「物事を判断する能力が著しく低下した状態」だったことを立証する必要がある。MCIのように認知症と診断されていない場合には、立件のハードルは高い。「詐欺罪」についても、マンションの価格が相場より高額だっただけでは罪に問うのは難しく、契約した人がどんな誘われ方をしたのかを覚えていないケースも多いため、立件にはハードルがある。また、認知症の診断がない人の場合には、業者側が「1人で生活できているし、会話もできたので判断能力に問題ないと思った。納得して契約してもらった」などと言い逃れする可能性も指摘されている。高齢者の心を論じるとき、その基本は孤独や寂しさにある。「巧言令色鮮し仁」は高齢者には通じないと書いた作家がある。こうした経済犯罪につながる契約が成立する背景には、孤独や寂しさを巧みに衝いてくる巧言令色があるのかもしれない。参考1)法務省. 令和5年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/3 その他の刑法犯2)警察庁. 特殊詐欺認知・検挙状況等(令和5年・確定値)について3)警察庁. サポート詐欺対策4)消費者庁. 認知機能障害のある高齢者における消費者トラブルに関する医療福祉関係者向けアンケート

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統合失調症患者における21の併存疾患を分析

 統合失調症とさまざまな健康アウトカムとの関連性を評価した包括的なアンブレラレビューは、これまでになかった。韓国・慶熙大学校のHyeri Lee氏らは、統合失調症に関連する併存疾患の健康アウトカムに関する既存のメタ解析をシステマティックにレビューし、エビデンスレベルの検証を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2024年10月18日号の報告。 統合失調症患者における併存疾患の健康アウトカムを調査した観察研究のメタ解析のアンブレラレビューを実施した。2023年9月5日までに公表された対象研究を、PubMed/MEDLINE、EMBASE、ClinicalKey、Google Scholarより検索した。PRISMAガイドラインに従い、AMSTAR2を用いて、データ抽出および品質評価を行った。エビデンスの信頼性は、エビデンスの質により評価および分類した。リスク因子と保護因子の分析には、等価オッズ比(eRR)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本アンブレラレビューには、19ヵ国、6,600万人超の参加者を対象とし、21の併存疾患の健康アウトカムを評価した88件の原著論文を含む9件のメタ解析を分析に含めた。・統合失調症患者は、以下の健康アウトカムとの有意な関連が認められた。【喘息】eRR:1.71、95%信頼区間[CI]:1.05〜2.78、エビデンスのクラスおよび質(CE):有意でない【慢性閉塞性肺疾患】eRR:1.73、95%CI:1.25〜2.37、CE:弱い【肺炎】eRR:2.63、95%CI:1.11〜6.23、CE:弱い【女性患者の乳がん】eRR:1.31、95%CI:1.04〜1.65、CE:弱い【心血管疾患】eRR:1.53、95%CI:1.12〜2.11、CE:弱い【脳卒中】eRR:1.71、95%CI:1.30〜2.25、CE:弱い【うっ血性心不全】eRR:1.81、95%CI:1.21〜2.69、CE:弱い【性機能障害】eRR:2.30、95%CI:1.75〜3.04、CE:弱い【骨折】eRR:1.63、95%CI:1.10〜2.40、CE:弱い【認知症】eRR:2.29、95%CI:1.19〜4.39、CE:弱い【乾癬】eRR:1.83、95%CI:1.18〜2.83、CE:弱い 著者らは「統合失調症患者は、呼吸器、心血管、性機能、神経、皮膚に関する健康アウトカムに対する広範な影響が認められており、統合的な治療アプローチの必要性が明らかとなった。主に、有意ではなく、エビデンスレベルが弱いことを考えると、本知見を強化するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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第80回 κ(カッパ)係数による一致度の評価とは?【統計のそこが知りたい!】

第80回 κ(カッパ)係数による一致度の評価とは?実際の臨床業務ではしばしば起こる事象として、病理診断や画像診断では診断医によって診断が異なる可能性があります。たとえば、IgA腎症の予後を推定するための組織学的分類は、本症の末期腎不全への進展の危険因子と考えられる腎生検組織所見を基に、わが国では、「IgA腎症診療指針 第2版」(日本腎臓学会)において、IgA腎症患者の予後は、メサンギウム細胞増殖と基質増加、糸球体の硬化、半月体の形成、ボウマン嚢との癒着、尿細管・間質病変、血管病変の程度から、以下の4群に分類されています(注:本指針は改訂され第3版が刊行されている)。1:予後良好群(透析療法に至る可能性がほとんどないもの)2:予後比較的良好群(透析療法に至る可能性が低いもの)3:予後比較的不良群(5年以上・20年以内に透析療法に移行する可能性があるもの)4:予後不良群(5年以内に透析療法に移行する可能性があるもの)同じ腎病理組織像をみても、医師Aは「比較的予後不良群」と診断し、医師Bは「比較的予後良好群」と診断するかもしれません。「比較的予後不良」と診断されれば、「5年以上・20年以内に透析に移行する可能性がある」ということですが、「比較的予後良好群」と診断された場合、「透析に至る可能性がかなり低い」ということになり、患者さんが受ける印象は大きく異なりますし、当然ながら治療方針も異なってくる可能性があります。理想的な病理組織分類、画像診断分類とは、正確に予後を予測する分類であることは当然ですが、誰が何度診断しても同じ診断が得られる分類であるべきです。カテゴリー変数(名義変数、順序変数)として表現される診断の一致度(reproducibility)を評価するために、よく利用される統計学的手法が「κ係数(kappa statistic)」です。■κ係数とはある現象を2人の観察者が観察した場合、この結果がどの程度一致しているかを表す統計量を「κ統計量」や「一致率」と言います。0~1までの値をとり、値が大きいほど一致度が高いといえます。一般に、κ係数は、以下のように判定されます。0.8を超える高い一致度0.6〜0.8かなりの一致度0.4〜0.6中等度の一致度0.4以下低い一致度κ係数≧0.6であれば、観察者間の一致度(reproducibility)が十分高いと判断されます。■κ係数の計算方法実際にκ係数を計算してみましょう。ここに40例の患者について、医師Aと医師Bの病理診断データがあるとします。両者のグレード分類は表1のようになりました。表1 医師AとBのグレード分類両者の一致度を調べるために、表2のようにクロス集計を行います。表2 医師AとBのクロス集計次に判別的中率を算出します。次に一致度をκ係数で調べます。判別的中率は「偶然による一致率」を勘案していない点で、「見かけ上の一致率(observed degree of agreement)」と言われています。κ係数は、判別的中率から見かけ上の一致率を除去したもので、偶然の一致率は次のように算出できます。表3に縦計をT1、T2、T3、T4、横計をY1、Y2、Y3、Y4、全度数をnとします。表2 医師AとBのクロス集計表3 偶然の一致率の集計縦計は、表2の縦計の数値(青枠内)を全体n=40で割った値が入ります(表3(1))。横計には、表2の横計の数値(緑枠)を全体n=40で割った値が入ります(表3(2))。(3)、(4)、(3)×(4)は、表2の数値を代入した算出した結果を示しています。κ係数を以下のように求めてみると、κ係数は高い値を示し、検定によるp値は0.000で、2人の病理医の一致度(reproducibility)は十分高いと評価されます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第38回 変動係数とは?「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション13 カイ2乗検定

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自殺念慮を伴ううつ病は治療抵抗性へつながるのか

 治療抵抗性うつ病は、自殺行動と関連している。自殺リスクは、治療抵抗性うつ病の予測因子であるため、自殺念慮を有するうつ病患者は、将来治療抵抗性うつ病を発症する可能性が高まる。そのため、現在自殺念慮を有するうつ病患者では、治療抵抗性うつ病のリスク因子の早期特定が非常に重要となる。フランス・モンペリエ大学のBenedicte Nobile氏らは、現在自殺念慮を有するうつ病患者におけるうつ病の非寛解率および治療抵抗性うつ病のリスク因子の特定を試みた。また、ベースライン時の自殺念慮が、ベースライン時のうつ病重症度や6週間後のうつ病寛解率に及ぼす影響を評価した。Psychiatry Research誌2024年12月号の報告。 対象は、2つのフランス大規模プロスペクティブ自然主義的コホート研究(LUEUR研究、GENESE研究)より抽出した、うつ病成人外来患者(DSM-IV基準)。抗うつ薬の開始または切り替えから6週間、フォローアップを行った。現在自殺念慮を有する患者とそうでない患者の間で、社会人口統計学的および臨床的特徴、早期症状改善に違いがあるかを比較するため、ロジスティック回帰モデル(単変量、多変量)を用いた。抗うつ薬の開始または切り替えを行った患者は、それぞれ分析した。治療抵抗性うつ病の定義は、抗うつ薬変更後6週間でうつ病が寛解しなかった場合とした。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の切り替えを行った患者における非寛解の主な予測因子は、2週間目の不安症状の早期改善不良であった。・抗うつ薬治療開始患者におけるベースライン時の自殺念慮は、ベースライン時のうつ病重症度およびうつ病寛解率との関連が認められた。・ベースライン時のうつ病重症度だけでは、うつ病寛解率を説明することはできなかった。 著者らは「現在自殺念慮を有するうつ病患者では、不安症状および自殺念慮をターゲットとした特定の薬理学的および非薬理学的治療を行い、その効果を短期的に評価することで、うつ病寛解率を向上させる可能性が示唆された」としている。

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 1

今回のキーワード宗教体験幻聴被害妄想知覚の異常思考の異常宗教妄想皆さんは、「神のお告げが聞こえる」「私たちは罰を受けている」と説かれるとどう思いますか? これらのいわゆる預言や神罰の境地、つまり宗教体験は、古くから世界各地で共通してみられます。一方で、率直なところ、周りで誰も話していないのに声が聞こえる幻聴や、周りから何かされているのではないかと思い込む被害妄想と何が違うのでしょうか?この答えを探るために、今回は、映画「ミスト」とドラマ「ザ・ミスト」を合わせて取り上げます。この2つの作品は、原作が同じで、展開もかなり似ていますが、登場人物の設定が違い、ドラマの方がより複雑な人間関係になっています。ただ、この2つの作品に共通して一際存在感を発揮していくキャラクターがいます。映画では「カーモディさん」、ドラマでは「ナタリー」です。今回は、この2人に焦点を当て、精神医学の視点から、宗教体験と幻覚妄想は表裏一体であるわけを説明し、統合失調症という心の病の二面性について一緒に考えてみましょう。なお、今回は、このシネマセラピーの記事における映画「ミスト」の後編になります。前編「宗教の起源」と中編「マインドコントロールのメカニズム」については、以下の記事をご覧ください。宗教体験が幻覚妄想と表裏一体であるわけは?あるのどかな田舎町に突然立ち込めた濃い霧(ミスト)。その中に入ってしまった町の人たちは、次々と大けがをして死んでいきます。何とかその霧から逃れた人たちは、大きな建物の中に避難しますが、そこに閉じ込められてしまいます。彼らは、わけがわからず恐怖に震え、途方に暮れるだけだったのでした。そんななか、映画ではカーモディさん、ドラマではナタリーが、信仰心によって存在感を発揮していきます。まず、この2人の言動から、宗教体験が幻覚妄想である理由を大きく2つ挙げて、精神医学的に説明しましょう。(1)神のお告げが聞こえる―幻聴映画版のカーモディさんは、異常事態の当初、トイレの中で涙を流しながら神と対話していました。彼女は、「どうか私にこの人たちを助けさせてください」「あなたの言葉を説かせてください」「光で導かせてください」「悪人ばかりではないはずです」「あなたの赦しによって何人かは救うことができるはずです」「天国の門をくぐれるはずです」「1人でも救えたら、私の人生に意義が見いだせます」「私の役割を果たせるのです」「そしてあなたのおそばに行ける」「あなたのご意志を全うできるのです」と語ります。ドラマ版のナタリーは、アリやクモを神格化して、会話しているようなシーンが描かれていました。1つ目の宗教体験は、神のお告げが聞こえ、神と対話することです。これらは、宗教的には預言と見なされますが、精神医学的にはそれぞれ命令幻聴、対話性幻聴が当てはまります。なぜなら、周りで誰も話していないのに声が聞こえてくるという知覚の異常としては、このような宗教体験も幻聴もやはり区別できないからです。(2)私たちは罰を受けている―被害妄想映画版のカーモディさんはやがて、周りの人たちに「真実が見えない?」「私たちは罰を受けている」「神のご意思に背くことをしているから」「禁じられた神の古き掟を破っているから」「月面を歩いたり、原子を分裂させたり、幹細胞の研究や中絶!」「生命の神秘を破壊する」「神だけに許された世界への冒涜よ!」「神の審判が下ったのよ」「地獄の魔物が解き放たれた」「燃える星が天から落ちてきた」などと熱心に説き続けます。ちなみに、この神罰の一連のセリフは、9.11テロの直後にキリスト教原理主義の高名な総帥が言った言葉のパロディです。ドラマ版のナタリーは、以前に森林警備隊員から聞いた話を語り出します。「クマの母親が3頭の子グマを生んだの。でも、その母クマはそのうちの2頭を殺したの。彼はショックを受けたわ。そして、すぐに残りの1頭を保護したの。でも、あとからわかったのは、母グマはその2頭が感染症にかかっていたのを知っていたからなの。残りの1頭の命を守るためだったの」「この霧の目的はそれと同じ」「人間も自然の一部よ」と確信して言っていました。2つ目の宗教体験は、私たちは罰を受けていて、それはもともと人間は罪深いからと思い込むことです。これらは、宗教的には神罰や原罪と見なされますが、精神医学的にはそれぞれ被害妄想と罪業妄想が当てはまります。なぜなら、合理的な根拠なく思い込んでしまう思考の異常としては、このような宗教体験も妄想もやはり区別できないからです。なお、「罰を受ける」根拠を「人間の存在が罪(原罪)だから」としている点では、後付けの関係妄想とも言えます。つまり、すでに問題が起きているという状況(被害)が先であることから、被害妄想がこの宗教体験の本質であると言えます。次のページへ >>

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 2

じゃあなんで宗教体験は統合失調症と見なされないの?宗教体験と幻覚妄想は、知覚や思考の異常という精神医学的な視点では区別できないことがわかりました。そして、幻覚妄想を主症状とする精神障害は統合失調症ですが、実際の研究でも、宗教体験とこの統合失調症は、同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています1)。それでは、なぜ宗教体験は統合失調症と見なされないのでしょうか?その理由は、宗教体験は、宗教という文化として世界中で古くから受け入れられてきたからです。つまり、正常か異常か、健康か病気かは、社会で受け入れられるかどうか、常に多数決で決まっていることがわかります。なお、この健康の概念の詳細については、関連記事1をご覧ください。以上より、同じ知覚や思考の異常でも、社会的に受け入れられている場合は宗教体験、受け入れられていない場合は統合失調症になるわけです。この点で、たとえ宗教体験であっても、それでトラブルを起こし、社会的に受け入れられなくなれば、宗教妄想を呈した統合失調症と診断します。逆に言えば、宗教体験は、統合失調症と同じ心理現象(幻覚妄想)のプラス面を見ているだけと言い換えられます。これが、統合失調症の二面性です。つまり、統合失調症は、宗教に関連した何らかの存在理由があることが想定できます。それは一体、何なのでしょうか?(次回へ続く)1)「宗教の起源」p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、2023<< 前のページへ■関連記事ドキュメンタリー「WHOLE」(後編)【自分の足を切り落とすことが健全!?(健康の定義)】

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統合失調症患者が考える抗精神病薬減量の動機と経験

 統合失調症患者の多くは、時間の経過とともに、抗精神病薬の減量または中止を望んでいる。デンマークでは、政府の資金で専門外来クリニックが設立され、抗精神病薬の減量指導が行われてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Nostdal氏らは、クリニック通院患者における抗精神病薬減量の動機および過去の経験に関するデータを収集し、報告を行った。Psychiatric Services誌2024年11月1日号の報告。 対象患者は、抗精神病薬の中止または減量についての動機に関する自由記述式調査に回答した。過去の投薬中止経験、症状、動機、副作用レベルに関する情報も併せて収集した。 主な結果は以下のとおり。・88例中76例(86%)が調査に回答した。・抗精神病薬を中止した主な動機は、副作用(71%)、抗精神病薬服用の必要性に関する不安(29%)であった。・その他の要因には、長期的な影響への懸念、診断への同意、効果不十分の経験、服薬によるスティグマを感じるなどが挙げられた。・抗精神病薬中止に関する過去の経験は42例から報告され、そのうち23例は再発経験を報告した。・ほとんどの患者は、減量(75例中73例、97%)または中止(75例中62例、83%)を実現可能だと考えていた。 著者らは「専門家の指導による抗精神病薬の減量の動機付け要因は、中止を選択した患者を対象とした過去の研究結果と一致していた。抗精神病薬中止による再発を経験した患者においても、そのほとんどが減量または中止が実現可能であると考えていた。最適な治療連携を行ううえで、患者の動機と信念を理解することは最も重要である。指示に従い減量を行うことで、抗精神病薬の突然の中止や根拠のない中止を減らすことが可能である」と結論付けている。

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CKDの早期からうつ病リスクが上昇する

 腎機能低下とうつ病リスクとの関連を解析した結果が報告された。推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2を下回る比較的軽度な慢性腎臓病(CKD)患者でも、うつ病リスクの有意な上昇が認められるという。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏、候聡志氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Clinical Investigation」に9月27日掲載された。 末期のCKD患者はうつ病を併発しやすいことが知られており、近年ではサイコネフロロジー(精神腎臓学)と呼ばれる専門領域が確立されつつある。しかし、腎機能がどの程度まで低下するとうつ病リスクが高くなるのかは分かっていない。金子氏らは、医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた後ろ向き観察研究により、この点の検討を行った。 2014年4月~2022年11月にデータベースに登録された患者から、うつ病や腎代替療法の既往者、データ欠落者を除外した151万8,885人を解析対象とした。対象者の年齢は中央値65歳(四分位範囲53~70)、男性が46.3%で、eGFRは中央値72.2mL/分/1.73m2(同62.9~82.2)であり、5.4%が尿タンパク陽性だった。 1,218±693日の追跡で4万5,878人(全体の3.0%、男性の2.6%、女性の3.3%)にうつ病の診断が記録されていた。ベースライン時のeGFR別に1,000人年当たりのうつ病罹患率を見ると、90mL/分/1.73m2以上の群は95.6、60~89の群は87.4、45~59の群は102.1、30~44の群は146.5、15~29の群は178.6、15未満の群は170.8だった。 交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症)を調整後に、eGFR60~89の群を基準として比較すると、他の群は全てうつ病リスクが有意に高いことが示された。ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。eGFR90以上の群は1.14(1.11~1.17)、45~59の群は1.11(1.08~1.14)、30~44の群は1.51(1.43~1.59)、15~29の群は1.77(1.57~1.99)、15未満の群は1.77(1.26~2.50)。また、尿タンパクの有無での比較では、陰性群を基準として陽性群は1.19(1.15~1.24)だった。 3次スプライン曲線での解析により、eGFRが65mL/分/1.73m2を下回るあたりからうつ病リスクが有意に上昇し始め、eGFRが低いほどうつ病リスクがより高くなるという関連が認められた。 これらの結果に基づき著者らは、「大規模なリアルワールドデータを用いた解析の結果、CKDの病期の進行とうつ病リスク上昇という関連性が明らかになった。また、早期のCKDであってもうつ病リスクが高いことが示された。これらは、CKDの臨床において患者の腎機能レベルにかかわりなく、メンタルヘルスの評価を日常的なケアに組み込む必要のあることを意味している」と総括。また、「今回の研究結果は、サイコネフロロジー(精神腎臓学)という新たな医学領域の前進に寄与すると考えられる」と付け加えている。 なお、eGFRが90以上の群でもうつ病リスクが高いという結果については、「本研究のみではこの理由を特定することは困難だが、CKD早期に見られる過剰濾過との関連が検出された可能性がある」と考察されている。

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うつ病に対する認知行動療法、クレアチン補助療法が有用

 前臨床および臨床研究によると、手頃な価格で入手可能な栄養補助食品クレアチン一水和物は、従来の抗うつ薬治療において有用な補助療法となりうる可能性がある。英国・グラスゴー・カレドニアン大学のNima Norbu Sherpa氏らは、うつ病に対する認知行動療法(CBT)に加え、クレアチンまたはプラセボを8週間投与した場合の有効性を比較するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照パイロット試験を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2025年1月号の報告。 うつ病患者100例を対象に、クレアチン+CBT群50例またはプラセボ+CBT群50例にランダムに割り付けた。主要な有効性アウトカムは、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコアの変化とし、混合モデル反復測定共分散分析を用いて評価した。許容性(すべての原因による治療中止)、忍容性(有害事象による治療中止)、安全性(有害事象が認められた患者数)の評価には、ロジスティック回帰を用いた。年齢、性別、ベースライン時のうつ病スコアにより調整したエフェクトサイズを算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者100例の平均PHQ-9スコアは17.6±6.3、女性は50例、平均年齢は30.4±7.4歳。・治療8週間後、PHQ-9スコアは両群ともに低下していたが、クレアチン+CBT群のほうが有意な低下が認められた(平均差:−5.12)。・すべての原因および有害事象による治療中止、有害事象が認められた患者の割合は、両群間で同等であった。 著者らは「本試験では、クレアチンは、うつ病患者に対するCBTの補助療法として有効かつ安全であることが示唆された」とし、「今後、より長期かつ大規模な臨床試験が必要とされる」としている。

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日本人双極症と関連する遺伝子をゲノム解析で同定

 双極症は、躁/軽躁状態と抑うつ状態の間での気分変動を特徴とする精神疾患である。双極症には、シナプス遺伝子のエクソン領域と重複するまれな病原性遺伝子コピー数変異(CNV)と関連している。しかし、双極症に関連するシナプス遺伝子のCNVを包括的に調査した研究は、これまでになかった。名古屋大学の中杤 昌弘氏らは、エクソン領域に限定せず、日本人集団におけるシナプス遺伝子と重複するまれなCNVと双極症との関連を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年10月15日号の報告。 双極症患者1,839例、対照群2,760例を対象に、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)を用いて、CNVを検出した。シナプス遺伝子と重複するまれなCNVを特定するため、シナプス遺伝子オントロジー(SynGO)データベースを用いた。遺伝子ベース解析を用いて、双極症患者と対照群における頻度を比較した。双極症に関連するシナプス遺伝子セット解析を行った。有意水準は、偽陽性率(false discovery rate:FRD)を10%に設定した。 主な結果は以下のとおり。・RNF216遺伝子と双極症との有意な関連が認められた(オッズ比:4.51、95%信頼区間:1.66〜14.89、FRD<10%)。・RNF216遺伝子に対応する双極症関連CNVは、7p22.1微小重複症候群において原因と考えられている領域(minimal critical region)と一部重複していた。・さらに、遺伝子セット解析を行い、シナプス後膜の不可欠な構成要素にかかわる遺伝子群が双極症と関連することも発見した。・GRM5遺伝子のイントロン領域と重複するCNVは、双極症患者と対照群との間で有意な関連が認められた(p<0.05)。 著者らは「本検討により、RNF216遺伝子およびシナプス後膜関連遺伝子のCNVと双極症リスクとの関連が示唆された」とし「ゲノム解析の結果を活用することで、双極症の病態解明や個別化医療の実現に寄与することが期待される。将来、早期のリスク評価と予防的介入により、患者のQOL向上につながる可能性がある」と結論付けている。

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第243回 ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連

ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連勃起不全(ED)薬としてよく知られるタダラフィルやシルデナフィル使用と死亡、心血管疾患、認知症の減少との関連がテキサス大学医学部(UTMB)のチームの研究で示されました1,2)。タダラフィルとシルデナフィルはどちらもPDE5阻害薬であり、血流改善・血圧低下・内皮機能向上・抗炎症作用により心血管の調子をよくすると考えられています。それら成分は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療にも使われ、タダラフィルは前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の治療薬としても発売されています。UTMBのDietrich Jehle氏らの今回の研究は世界中の2億7,500万例超の臨床情報を集めるTriNetXに収載の米国男性5千万例の記録を出発点としています。それら5千万例から、ED診断後のタダラフィルかシルデナフィル処方、または下部尿路症状診断後のタダラフィル処方があった40歳以上の男性が同定されました。3年間の経過を比較したところ、タダラフィルかシルデナフィルが処方されたED患者は、非処方患者に比べて死亡、心血管疾患、認知症の発生率が低いことが示されました。具体的には50万例強の解析で以下のような結果が得られており、血中でより長く活性を保つタダラフィルがシルデナフィルに比べて一枚上手でした。全死亡率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは24%低下心臓発作発生率タダラフィルは27%低下、シルデナフィルは17%低下脳卒中発生率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは22%低下静脈血栓塞栓症(VTE)発生率タダラフィルは21%低下、シルデナフィルは20%低下認知症発生率タダラフィルは32%低下、シルデナフィルは25%低下下部尿路症状患者のタダラフィル使用は一層有益でした。40歳以上の下部尿路症状患者100万例超のうち、タダラフィル使用群の死亡、心臓発作、脳卒中、VTE、認知症の発生率はそれぞれ56%、37%、35%、32%、55%低くて済んでいました。やはり米国のED男性を調べた別の観察試験3,4)でもPDE5阻害薬やタダラフィルと死亡や心血管疾患の減少の関連が示されています。今春2月にClinical Cardiology誌に結果が掲載されたその1つ3)ではEDと診断されてタダラフィルが処方された男性8千例強(8,156例)とPDE5阻害薬非処方の2万例強(2万1,012例)が比較され、タダラフィル使用群の心血管転帰(心血管死、心筋梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症、心不全、脳卒中)の発生率がPDE5阻害薬非使用群に比べて19%低いことが示されました。また、タダラフィル使用患者の死亡率は44%低くて済んでいました。タダラフィルと心血管転帰の発生率低下の関連は用量依存的らしく、同剤の使用量が上位4分の1の患者は心血管転帰の発生率が最小でした。有望ですがあくまでもレトロスペクティブ試験の結果であり、次の課題として男性と女性の両方でのプラセボ対照無作為化試験が必要だと著者は言っています3)。参考1)Jehle DVK, et al. Am J Med. 2024 Nov 10. [Epub ahead of print]2)Study finds erectile dysfunction medications associated with significant reductions in deaths, cardiovascular disease, dementia / The University of Texas Medical Branch 3)Kloner RA, et al. Clin Cardiol. 2024;47:e24234.4)Kloner RA, et al. J Sex Med. 2023;1:38-48.

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飽和脂肪酸摂取量がアルツハイマー病リスクと関連

 食事中の脂肪摂取とアルツハイマー病との関連は、観察研究において議論の余地のある関係が示されており、その因果関係も不明である。中国・北京大学のYunqing Zhu氏らは、総脂肪、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取がアルツハイマー病リスクに及ぼす影響を評価し、その因果関係を調査した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年10月11日号の報告。 UKバイオバンクとFinnGenコンソーシアムから得られたゲノムワイド関連研究(GWAS)の要約統計を用いて、2サンプルメンデルランダム化分析を実施した。UKバイオバンクの各種脂肪摂取の研究には、5万1,413例が含まれた。FinnGenコンソーシアムの遅発性アルツハイマー病(4,282例、対照群:30万7,112例)、すべてのアルツハイマー病(6,281例、対照群:30万9,154例)のデータを分析に含めた。さらに、炭水化物とタンパク質の摂取量とは無関係の影響を推定するため、多変量メンデルランダム化(MVMR)分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・総脂肪、飽和脂肪酸の摂取量の標準偏差当たりの遺伝的に予測される増加率は、遅発性アルツハイマー病で、それぞれ44%(オッズ比[OR]:1.44[95%信頼区間[CI]:1.03〜2.02])、38%(OR:1.38[95%CI:1.002〜1.90])高いこととの関連が認められた(p=0.049)。・MVMR分析でも、この関連性は有意なままであった(総脂肪のOR:3.31[95%CI:1.74〜6.29]、飽和脂肪酸のOR:2.04[95%CI:1.16〜3.59])。・MVMR分析では、総脂肪および飽和脂肪酸の摂取は、すべてのアルツハイマー病リスク上昇との関連が認められた(総脂肪のOR:2.09[95%CI:1.22〜3.57]、飽和脂肪酸のOR:1.60[95%CI:1.01〜2.52])。・多価不飽和脂肪酸の摂取量は、遅発性アルツハイマー病およびすべてのアルツハイマー病との関連が認められなかった。 著者らは「食事中の総脂肪摂取、とくに飽和脂肪酸の摂取は、アルツハイマー病リスクに寄与し、その影響は他の栄養素とは無関係であることが示唆された。食事中の飽和脂肪酸摂取量を減らすことは、アルツハイマー病の予防戦略およびマネジメントに役立つであろう」と結論付けている。

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日中の眠気と熱意の低下は認知症の前段階と関連

 日中に眠気があり、活動への熱意を奮い起こすことが困難な高齢者は、そうした症状のない高齢者に比べて、認知症の前段階の一形態である運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome;MCR)になるリスクが3倍以上高いことが、新たな研究で明らかになった。MCRは主観的認知機能の低下と歩行速度の低下が併存した状態を指す。米アルバート・アインシュタイン医科大学のVictoire Leroy氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月6日掲載された。 今回の研究でLeroy氏らは、認知症のない65歳以上の高齢者445人(平均年齢75.9歳、女性56.9%)を対象に、悪い睡眠の質とMCRとの関連を調査した。MCRは、標準化された質問票を通じて報告された認知機能の低下と、電子トレッドミルで記録された歩行速度の低下が同時に認められる場合と定義し、試験開始時と年に1回の追跡調査時に評価された。睡眠の質はピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で評価し、5点以下の「良い睡眠の質」と5点超の「悪い睡眠の質」に分類した。 試験開始時にMCRが認められなかった対象者は403人だったが、そのうちの36人が、中央値2.9年の追跡期間中にMCRに該当すると判定された。解析の結果、睡眠の質が悪い人は、睡眠の質が良い人と比べてMCRリスクが2.7倍高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕2.7、95%信頼区間〔CI〕1.2〜5.2)。しかし、抑うつ症状を考慮すると、この関連は統計学的に有意ではなくなった(調整HR 1.6、95%CI 0.7〜3.4)。完全調整モデルを用いた解析では、PSQIを構成する7つの要素のうち、日中の機能障害(過度の眠気と熱意の低下)だけが、MCRリスクと有意な関連を示した(調整HR 3.3、同1.5〜7.4)。一方、試験開始時にすでにMCRが認められた人では、MCRと悪い睡眠の質との間に有意な関連は認められなかった(オッズ比1.1、95%CI 0.5〜2.3)。 研究グループは、この研究では睡眠障害とMCRとの関連が示されただけで、因果関係が証明されたわけではないと指摘している。また、Leroy氏は、「さらなる研究により、睡眠障害と認知機能低下との関係、およびその関係にMCRが果たしている役割を調べる必要がある。さらに、睡眠障害をMCRおよび認知機能低下に結び付けるメカニズムを説明するための研究も必要だ」と述べている。 その一方で研究グループは、「それでも本研究結果は、良質な睡眠により老後の脳の健康が守られる可能性が高いことを示している」との見方を示す。Leroy氏は、「われわれの研究結果は、睡眠障害のスクリーニングの必要性を強調するものだ。睡眠に問題がある人は、その治療を受けることで、老後の認知機能低下を予防できる可能性がある」と話している。

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成人ADHD患者における自殺リスク評価、発生率や関連因子は

 注意欠如多動症(ADHD)と自殺傾向との関連性は、近年ますます研究対象としての関心が高まっている。自殺傾向の評価は、一般的にカテゴリ別に評価されており、検証済みの方法が使用されていないため、不均一あるいは矛盾する結果につながっている。自殺念慮や自殺企図の発生率は大きく異なり、関連するリスク因子も明らかになっていない。イタリア・トリノ大学のGabriele Di Salvo氏らは、次元アプローチおよび国際的に認められた検証済みの方法を用いて、ADHDにおける自殺傾向を調査した。Annals of General Psychiatry誌2024年11月1日号の報告。 成人ADHD患者74例における自殺念慮、重度の自殺念慮、自殺行動、非自殺的自傷行動の発生率を評価するため、本研究を実施した。また、自殺傾向リスクの増加と関連する社会人口統計学的および臨床的特徴の検討も行った。自殺傾向の評価には、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)を用いた。自殺念慮、重度の自殺念慮、自殺行動、非自殺的自傷行動の予測因子を調査するため、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・自殺念慮、重度の自殺念慮の生涯発生率は、それぞれ59.5%、16.2%であった。・生涯にわたる自殺行動は9.5%、非自殺的自傷行動は10.8%で認められた。・生涯にわたる自殺念慮は、成人期の不注意症状の重症度、自尊心低下、社会的機能障害と関連していた。・生涯にわたる重度の自殺念慮は、小児期の不注意症状の重症度、注意衝動性、入院回数と関連し、身体活動は保護的に作用していることが示唆された。・生涯にわたる自殺行動および非自殺的自傷行動の発生率は、社会人口統計学的または臨床的特徴との有意な関連が認められなかった。 著者らは「成人ADHD患者は、自殺リスクを有していると考えるべきであり、予防的介入を行うためにも、高リスク患者を特定することが重要である。ADHDと自殺念慮との関連性は、精神疾患の併存ではなく、ADHDの中核症状である不注意症状が影響を及ぼしている可能性が示唆された」と結論付けている。

858.

双極症I型に対するアリピプラゾール月1回投与〜52週間ランダム化試験の事後分析

 人種間における双極症の診断・治療の不均衡を改善するためには、その要因に関する認識を高める必要がある。その1つは、早期治療介入である。双極症と診断された患者を早期に治療することで、気分エピソード再発までの期間を延長し、機能障害や病勢進行に伴うその他のアウトカム不良を軽減する可能性がある。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのKarimah S. Bell Lynum氏らは、早期段階の双極症I型患者における長時間作用型注射剤アリピプラゾール月1回400mg(AOM400)の有効性および安全性を調査するため、52週間ランダム化試験の事後分析を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2024年10月27日号の報告。 双極症I型患者に対するAOM400とプラセボを比較した52週間の多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化中止試験のデータを分析した。ベースライン時の年齢(18〜32歳:70例)または罹病期間(0.13〜4.6年:67例)が最低四分位に該当した患者を早期段階の双極症I型に分類した。主要エンドポイントは、ランダム化から気分エピソード再発までの期間とした。その他のエンドポイントには、気分エピソードの再発を有する患者の割合、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)の合計スコアのベースラインからの変化を含めた。 主な結果は以下のとおり。・AOM400による維持療法は、若年患者または罹病期間の短い患者において、プラセボと比較し、すべての気分エピソードの再発までの期間を有意に延長させた。【年齢最低四分位:18〜32歳】ハザード比(HR):2.46、95%信頼区間(CI):1.09〜5.55、p=0.0251【罹病期間最低四分位:0.13〜4.6年】HR:3.21、95%CI:1.35〜7.65、p=0.005・AOM400による気分エピソードの再発抑制は、主にYMRS合計スコア15以上または臨床的悪化の割合の低さに起因する可能性が示唆された。・年齢または罹病期間が早期段階の双極症I型患者におけるMADRS合計スコアのベースラインからの変化は、AOM400がプラセボと比較し、うつ病を悪化させなかったことを示唆している。・AOM400の安全性プロファイルは、以前の研究と一致していた。・AOM400単独療法で安定していた患者が元の研究には含まれているため、AOM400に治療反応を示した患者集団が多かった可能性があることには、注意が必要である。 著者らは「AOM400は、早期段階の双極症I型において、プラセボと比較し、すべての気分エピソードの再発までの期間を有意に延長することが確認された。これらの結果は、AOM400による維持療法の早期開始を裏付けるものである」と結論付けている。

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砂糖の摂取量とうつ病や不安症リスクとの関連〜メタ解析

 世界中で砂糖の消費量が急激に増加しており、併せてうつ病や不安症などの精神疾患の有病率も増加の一途をたどっている。これまでの研究では、さまざまな食事の要因がメンタルヘルスに及ぼす影響について調査されてきたが、砂糖の摂取量がうつ病や不安症リスクに及ぼす具体的な影響については、不明なままである。中国・成都中医薬大学のJiaHui Xiong氏らは、砂糖の摂取量とうつ病や不安症リスクとの関連を包括的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Nutrition誌2024年10月16日号の報告。 食事中の砂糖の総摂取量とうつ病、不安症リスクとの関連を調査した研究をPubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、China National Knowledge Network (CNKI)、WangFangより、システマティックに検索した。選択基準を満たした研究は、システマティックレビューに含め、品質評価したのち、データ抽出を行った。メタ解析には、Stata 18.0 ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・40研究、121万2,107例をメタ解析に含めた。・砂糖の摂取量は、うつ病リスクを21%増加(オッズ比[OR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.14〜1.27)させることが示唆されたが、不安症リスクとの全体的な関連性には、統計学的に有意な結果が得られなかった(OR:1.11、95%CI:0.93〜1.28)。・異質性が高いにも関わらず(I2=99.7%)、結果は統計学的に有意であった(p<0.000)。・サブグループ解析では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの関連は、さまざまな研究デザイン(横断研究、コホート研究、ケースコントロール研究)、サンプルサイズ(5,000例未満、5,000〜1万例、1万例超)にわたり、一貫していた。・女性は、男性よりもうつ病リスクが高かった(OR:1.19、95%CI:1.04〜1.35)。・さまざまな測定法の中でも、食物摂取頻度調査(FFQ)は、最も有意な効果を示した(OR:1.32、95%CI:1.08〜1.67、I2=99.7%、p<0.000)。・測定ツールのサブグループ解析では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの間に有意な相関が、こころとからだの質問票(PHQ-9)、うつ病自己評価尺度(CES-D)で示唆された。【PHQ-9】OR:1.29、95%CI:1.17〜1.42、I2=86.5%、p<0.000【CES-D】OR:1.28、95%CI:1.14〜1.44、I2=71.3%、p<0.000・高品質の横断研究およびコホート研究では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの間に有意な関連が認められ、ほとんどの結果はロバストであった。・砂糖の摂取と不安症リスクの全体的な分析では、有意な影響がみられなかったが、とくにサンプルサイズが5,000例未満の研究(OR:1.14、95%CI:0.89〜1.46)および食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた研究(OR:1.31、95%CI:0.90〜1.89)といった一部のサブグループにおいて有意に近づいていた。 著者らは「食事中の砂糖の総摂取量は、一般集団におけるうつ病リスク増加と有意に関連していたが、不安症リスクとの関連は有意ではなかった。これらの関連性についての信頼性を確保するためには、さらに質の高い研究が求められる。本研究により、食事中の砂糖摂取量がメンタルヘルスに及ぼす影響、サブグループ分析によって潜在的な高リスク群に対するうつ病や不安症の予防に関する新たな知見が得られた」と結論付けている。

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「聴こえ8030運動」を加齢性難聴予防に推進/耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 加齢性難聴は、日常のQOLを低下させるだけでなく、近年の研究から認知症のリスクとなることも知られている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、都内で日本医学会連合TEAM事業の一環として「多領域の専門家が挑む加齢性難聴とその社会的課題」をテーマに、セミナーを開催した。本事業では「加齢性難聴の啓発に基づく健康寿命延伸事業」に取り組んでおり、主催した日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では「聴こえ8030運動」を推進している。当日は、加齢性難聴対策の概要や認知症との関係、学会の取り組みなどが講演された。「聴こえ8030運動」は「予防、受診、介入」が柱 「加齢性難聴対策を介した共生社会の実現への取り組み」をテーマに和佐野 浩一郎氏(東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 准教授)が、現在の難聴対策の現状と問題点などについて講演を行った。 わが国は世界一の高齢化社会であり、加齢性難聴の放置は認知症の最大のリスクとなることが知られている1)。2024年の研究報告でも「難聴治療は老年期の認知症の予防に寄与する」という報告も出されている2)。こうした研究結果を踏まえ、日本医学会連合では2023年度よりさまざまな学会と連携し、難聴・聴覚補償機器に関する啓発活動を実施し、難聴への取り組みを行っている。 年代別の聴力レベルの変化について、高齢になればなるほど言葉の聞き取り力は有意に低下し、80代では半数が中等度の難聴となる3)。こうした加齢性難聴対策として「予防、受診、介入」を柱とした「聴こえ8030運動」が始められた。 難聴の原因には、加齢を筆頭に感染症、環境、薬剤など多彩な要因があり、最近では若年者の聴力は悪化傾向にあるという。こうした原因を啓発し、防止することが難聴予防につながると語る。また、わが国の耳鼻科への受診について、「聞こえに不自由を感じている人の受診率」が4割程度と先進国の中でもかなり低い割合であり、若年・中年期の難聴は健康診断などで発見されにくく、後期高齢者保健事業でも聴力検査が採り入れられていない課題があると指摘する。 おわりに和佐野氏は、「今後は適切な聴覚管理での早期介入のためにも、聞こえにくさを感じたら気軽に耳鼻科で聴力検査を受診できるよう、検査のハードルを下げる啓発活動を行っていきたい」と抱負を述べた。宮城県における加齢性難聴対策の取り組み 「言語聴覚士による加齢性難聴対策」をテーマに佐藤 剛史氏(東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学/日本言語聴覚士協会)が、言語聴覚士(ST)の立場から高齢者や行政の支援者などへの難聴啓発事業について説明した。 佐藤氏の所属する東北大学と宮城県、仙台市では三者が連携し「高齢者の難聴および誤嚥性肺炎の理解と対応に関する普及啓発モデル事業」を行っている。 本事業は、高齢者の通いの場を中心とした啓発事業であること、行政・大学・地域が役割分担をして運営すること、啓発事業の対象は高齢者だけでなく地域の支援センターの福祉担当者や保健師、職員なども参加すること、自身の「聞こえ」状態が体感できる参加型講習であることを特徴としている。 市町村の職員など支援者向けの研修会は2022年から開催され、過去3回で248人が参加し、研修では耳の解剖や聴力の仕組みなどの講演会が行われている。また、高齢者向けの啓発活動では、加齢性難聴の病態と治療、体験プログラムが行われている。2022~23年の実施状況として、全41会場で合計1,395人が受講した。受講した高齢者へのアンケートでは、965人(平均年齢76歳)から回答を得た。対象者の聞こえの状態では、約7割弱の人が聞こえの不自由さを感じており、補聴器の装着は約2割に止まっていた。受講後に耳鼻科受診について聞いたところ約5割の受講者が「受診をしたい」と回答した。 佐藤氏は、今後の課題としては、「受診につながる長期のフォローアップや『通いの場』に参加できない人への啓発、『聞こえチェック方法』の検討などが必要であり、STの役割としては住民・行政などへの啓発活動や地域作り、高齢者への地域での難聴への支援、健診活動や補聴器装用の専門支援などが考えられる」と提言を行った。加齢性難聴への補聴器装用は認知症予防に寄与 「加齢性難聴と認知症」をテーマに下畑 享良氏(岐阜大学脳神経内科学 教授/日本神経学会 理事)が、難聴と認知症の関連について講演した。 わが国の認知症高齢者は2040年に約580万人(約15%)と推定されている。認知症では、アルツハイマー型認知症が1番多く、同症はアミロイドβが脳に沈着することで発症する。近年の研究では、この沈着に影響する因子に関し「高血圧」「喫煙」「睡眠」など多数の因子が関連していることが指摘されている。そして、先述の研究でも2)難聴が最大の修正可能因子であり、認知症の発症ないし遅延ができる可能性がある。 南デンマーク・57万例を対象とした約9年間の研究では、難聴があって補聴器をしていない人の認知症発症のハザード比は1.20であった一方で、補聴器を装用している人のハザード比は1.06だった結果から補聴器は認知症発症リスクを減少させる可能性があると指摘する4)。 アメリカからも同様の研究報告があり、認知症予防に難聴の人では、補聴器の装用が有効である可能性が示唆されることから、「認知症予防のために今後啓発していく必要がある」とその重要性を下畑氏は語った。「聴こえ8030運動」は80歳で30dBの聴力を保つ国民啓発運動 「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が取り組む『聴こえ8030運動』」をテーマに羽藤 直人氏(愛媛大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 理事)が「聴こえ8030運動」について説明した。 聴こえ8030運動は、80歳で30dB(聞こえの閾値)の聴力を保つ国民啓発運動であり、全年代に加齢性難聴の周知、聴力検査などの耳鼻科への受診啓発、補聴器装用率の向上を目指すものである。加齢性難聴者数は1,437万人と推定され、60歳以上の3人に1人、70歳以上の約半数が該当するとされている。その一方で耳鼻科受診率は低く、加齢性難聴が疾病であるという認識が不足しているとされる。また、先進国と比較して補聴器装用率もわが国は約1/3、人工内耳普及率も約1/2と低い数字に止まっている。 そこで、日本歯科医師会推進の「8020運動(80歳で20本以上の歯の維持を目標)」にならい、良い聞こえで高齢者の健康寿命をサポートする目的で「聴こえ8030運動」を実施した経緯を説明した。運動の目標数字として、80歳で30dBの聞こえを維持している割合が現状30%から20年後には50%への伸長を謳っている。 加齢性難聴対策としては、「大音量で音楽などを聴かない」、「騒音の場所を避ける」、「騒音下の仕事では耳栓」、「静かな場所で耳を休ませる」などがあり、聞こえが悪くなったら補聴器の装用などが勧められる。 おわりに羽藤氏は、「こうした情報を手軽に入手できるように聴こえ8030運動専用のウェブサイトを開設した。加齢性難聴という疾患の周知から聴力検査での耳鼻科受診、そして難聴カウンセリング、補聴器の適合診断を経て、適切な補聴器、人工内耳の普及へとつなげていくことで、認知症の抑制につなげていきたい」と展望を述べた。 講演後に「聴こえ8030運動が拓く加齢性難聴の未来」をテーマに、内田 育恵氏(愛知医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 特任教授)の進行で総合討論が行われた。総合討論では、残置聴力と補聴器の相性や聴こえ8030運動での医師以外の医療従事者の役割と連携、補聴器装用とSTの役割、非専門医への啓発、耳鼻科への診断はいつ行うかなどを話題に活発な議論が行われた。

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