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小児・思春期の双極性障害に対する非定型抗精神病薬vs気分安定薬

 米国・ヒューストン薬科大学のHua Chen氏らは、小児および思春期の双極性障害患者に対する非定型抗精神病薬と気分安定薬の有効性と安全性を比較検討する、後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、非定型抗精神病薬は気分安定薬に比べ、治療中止や治療増強が少なく、より効果的で安全な治療選択肢となりうることが判明したと報告した。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2014年1月24日号の掲載報告。 小児および思春期の双極性障害患者における非定型抗精神病薬(SGA)と従来薬である気分安定薬(MS)の、有効性と安全性の検討は、2003~2007年の5年間の、地域特性の異なる4州の医療請求書を基に後ろ向きコホート研究にて実施された。双極性障害に対してSGAまたはMSによる新たな治療を開始した6~18歳の小児および思春期患者を対象とし、12ヵ月間追跡して小児双極性障害(PBD)における2つの治療群の有効性と安全性を比較した。主要評価項目は、精神科病院への入院、あらゆる原因による治療中止および治療増強とした。未観察の交絡に起因する選択バイアスの可能性を、医師の処方傾向およびコホート登録時の年齢などの変数を用いて操作変数法で検討した。また、感度分析にて、PBD診断の不確実性に対する頑健性を検討した。 主な結果は以下のとおり。・小児および思春期の双極性障害は、7,423例が特定された。そのうち66.60%がSGA、33.40%がMSにより治療を開始していた。・MS群とSGA群で、精神科病院への入院リスクは同程度であった(HR:1.172、95%信頼区間[CI]:0.827~1.660)。・SGA群はMS群に比べ、治療中止(HR:0.634、95%CI:0.419~0.961)および治療増強(同:0.223、0.103~0.484)が少ない傾向にあった。・以上より、PBDにおいては、MS単独療法に比べてSGA単独療法のほうがより効果的で安全な治療選択肢になりうると考えられた。関連医療ニュース 小児双極I型障害に対するアリピプラゾールの効果は? うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は 双極性障害の診断、DSM-IV-TRでは不十分

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認知症患者への精神療法、必要性はどの程度か

 英国・ロンドン大学のVasiliki Orgeta氏らは、認知症に対する標準的ケアに精神療法を追加することで、併存することの多い不安や抑うつに有効であるか否かを明らかにするため、システマティックレビューを行った。その結果、抑うつおよび医師評価による不安は精神療法により軽減すること、その一方で自己評価あるいは介護者評価による不安の軽減には有効性を認めなかったことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年1月22日号の掲載報告。 認知症および軽度認知障害(MCI)を有する者は不安や抑うつを非常によく経験するため、精神的な介入が有用な治療とされてきた。また最近の研究で、認知症およびMCIではwell-beingの改善を目的とした精神療法の機会が限られていることが示唆されている。したがって、アウトカム改善および将来的な実臨床での推奨という観点から、精神療法の有効性に関するエビデンスを把握するためのシステマティックレビューは有用だと考えられる。このような背景からOrgeta氏らは、認知症またはMCIにおける不安および抑うつの軽減を目的とした精神療法の有効性を評価するため、レビューを行った。 Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group Specialized Registerおよび公開・未公開データの情報も検索し、認知症またはMCIに対する標準的ケアまたはプラセボ(計画的でない突発的な対応:コントロール群)と、それらに精神療法を追加した場合を比較検討する無作為化対照試験(RCT)をレビューの対象として選択した。試験の選択、データの抽出、試験のバイアス評価は、2名のレビュワーが独立して行った。公表されている記事から情報が得られない場合は、著者をたどってさらに調査した。 主な結果は以下のとおり。・RCT 6件の認知症被験者439例についてレビューを行った。MCIはいずれの試験にも含まれていなかった。試験実施国は数ヵ国にわたり、認知症患者は地域在住または施設に入所中であった。・試験のバイアスが低かったのは1件のみで、残りの5件については、無作為化、盲検化、結果の報告に関する偏りなどのためバイアスリスクは不明または高かった。・認知行動療法(CBT)、対人関係療法およびカウンセリングの方法は、試験によりさまざまであった。・特別な精神療法を含め、数種類の介入を行っていた試験が2件あった。精神療法を追加した比較群では、標準的ケアに加えて注意-制御教育プログラム、診断のフィードバックや診断サービスなど、標準的ケアに比べやや多くのサービスが提供された。・メタ解析により、うつ(6試験、439例、平均標準差[SMD]:-0.22、95%信頼区間[CI]:-0.41~-0.03、エビデンスの質中等度)および医師評価による不安(2試験、65例、平均差[MD]:-4.57、95%CI:-7.81~-1.32、エビデンスの質は低)において、精神療法のポジティブな効果が示された。・一方、自己評価による不安(2試験、SMD:0.05、95%CI:-0.44~0.54)、介護者評価による不安(1試験、MD:-2.40、95%CI:-4.96~0.16)においては、精神療法のポジティブな効果は示されなかった。・患者QOL、日常生活動作(ADL)、神経精神症状、認知機能、介護者評価による抑うつ症状などの副次評価項目については、ベネフィットとハームのバランスがとれていた。ただし、試験の大半はこれらアウトカムの評価を行っていなかった。・有害事象の報告はなかった。・認知症の標準的ケアに精神療法を追加することで、うつ症状の軽減、医師評価による不安の軽減につながるというエビデンスが認められ、精神療法は患者のwell-beingを改善しうると考えられた。最も効果的な治療法の検討、ならびにMCIへの精神療法の有効性を評価するには、さらに質の高い研究が求められる。関連医療ニュース 認知症高齢者5人に1人が抗コリン薬を使用 認知症患者の約2割にせん妄が発現 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学

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抗精神病薬で気をつけるべき横紋筋融解症

 横紋筋融解症に対する抗精神病薬の影響は、まだ十分に理解されているわけではない。そのメカニズムとして、セロトニンやドパミン作動性遮断との関連が示唆されている。米国・クレイトン大学のKathleen Packard氏らは、抗精神病薬の使用と横紋筋融解症との関連を調べた。Journal of pharmacy practice誌オンライン版2013年1月15日号の報告。 対象は、横紋筋融解症を有する入院患者(2009年1月から2011年10月)673例。人口統計学的情報、検査、病歴、併用薬などのデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち71例(10.5%)は抗精神病薬を使用していた。抗精神病薬使用率は一般的な米国人(1.3%)と比較し著しく高かった(p<0.0001)。・横紋筋融解症の原因は、38%の症例で記載されていなかった。そして、10%の症例では、原因として抗精神病薬の使用が疑われた。・抗精神病薬のタイプとその他の患者の特異的パラメータとの間に有意な相関は認められなかった。・2種類以上の抗精神病薬が使用されていた患者は17例(25%)であった。・最も使用されていた抗精神病薬はクエチアピン(米国で最も一般的に処方されている抗精神病薬)であった。・抗精神病薬の使用は横紋筋融解症のリスクファクターであり、複数の薬剤を服用している患者においては、より一般的であると考えられる。・今後、どの抗精神病薬の横紋筋融解症リスクが高いのか、どの受容体が関与しているのかを明らかにする研究が望まれる。関連医療ニュース 月1回の持効性抗精神病薬、安全に使用できるのか 抗精神病薬治療は予後にどのような影響を及ぼすのか 統合失調症患者への抗精神病薬追加投与、うまくいくポイントは

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エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part1

レストレスレッグス症候群におけるドパミンアゴニストの使い方のコツは?本邦でレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)治療薬として承認されているドパミンアゴニストには、プラミペキソール(商品名:ビ・シフロール)とロチゴチン(同:ニュープロパッチ)がある。プラミペキソールが錠剤(内服)で、ロチゴチンが経皮吸収剤(貼付)と投与方法が異なる点が使い分けの大きなポイントとなる。どちらの薬剤も、RLSならびにRLSに高頻度に伴う周期性四肢運動の両者に有効性が高い点は共通であるが、夜間の症状を主体とする場合には、プラミペキソールを夜に1回内服することで十分効果が得られる。日中症状を有する場合は、プラミペキソールを日中にも追加して服用する、あるいは血中濃度が一日を通じて一定となる貼付剤(ロチゴチン)が良い適応となる。副作用の観点からは、消化器症状は共通してみられる。ただし、ロチゴチンでは、初回の貼付時に消化器症状が出現しても、血中濃度が安定すると以後は消化器症状がみられなくなる場合もある。貼付剤に特有の問題としては、貼付部位の適応部位反応があり、貼付部位を毎日変える、適度な保湿をするなどの対策が必要である。両薬剤は代謝・排泄経路が異なっており、プラミペキソールが腎排泄性の薬剤であるのに対し、ロチゴチンは肝臓で代謝される。腎不全患者ではRLSは高頻度にみられ、日中症状もしばしば伴うが、肝臓で代謝されるロチゴチンは、腎不全患者においても血中濃度が健常者とほぼ同様に推移することから、安全に使用できると考えられる。レストレスレッグス症候群の原因として、鉄不足以外にどういったものがありますか?レストレスレッグス症候群(RLS)は、特発性と二次性に大別される。RLSはあらゆる年齢層でみられるが、中年期以降のRLSでは二次性RLSの可能性が高まる。二次性RLSの原因疾患としては、鉄欠乏性貧血、胃切除後のほかに、慢性腎不全、妊娠、神経疾患(パーキンソン病、末梢神経障害、脊髄疾患等)、リウマチ性疾患などがあげられる。薬剤性RLSの原因としては、ドパミンに拮抗する薬剤(抗精神病薬、メトクロプラミド)、抗うつ薬(選択的セロトニン再取込み阻害薬)などがあり、アルコール、カフェイン、ニコチンもRLSの増悪因子である。慢性腎不全、とくに透析患者においてはRLSは高頻度で、国内外の報告では約2~4割にRLSがみられ、周期性四肢運動障害の合併も多い。妊娠中のRLSは、妊娠後期に増悪する傾向があり、出産前後に消失もしくは改善することが多い。妊娠を繰り返すごとに症状が増悪するケースもある。神経疾患に伴うRLSでは、下肢の異常感覚が神経疾患に伴うものか、神経疾患による二次性RLSによるものかの判断が時に困難であり、両者が併存する場合もある。こうした症例では、RLS治療薬の効果が必ずしも十分得られない。不眠症は薬物療法で改善する症例が少ないように感じるのですが、いかがでしょうか?プライマリ・ケアにおける不眠症治療は、(非)ベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする薬物療法に偏りがちであるが、不眠の背景にある睡眠習慣や睡眠衛生の問題、不眠を呈する睡眠障害が見過ごされているケースも多い。不眠≠不眠症であり、不眠の背景要因の把握がまず不可欠といえる。たとえば、不眠があり夜眠れないからと日中に2時間以上も昼寝をしていれば、日中の長時間の昼寝が夜の入眠を妨げ、不眠の解消を阻害してしまう。高齢者では夜間の睡眠時間は減少する傾向となるが、9時間以上も寝床で過ごすことで、夜中に何度も目が覚める、熟眠感が得られないといった訴えにつながっている場合もあり、睡眠習慣の見直しが先決である。また、睡眠時無呼吸症候群では夜間の覚醒や熟眠障害を生じうるが、本人は多くの場合いびきや無呼吸を自覚しておらず、原因をそのままに睡眠薬を処方されても不眠は解消しない。薬物治療で改善がみられない多くの症例では、このような背景が見過ごされており、うつ病等の精神疾患による不眠の可能性も含めて、睡眠障害、睡眠衛生の問題にも留意する必要がある。不眠症治療薬についても、現状では薬剤の使い分けが必ずしも十分なされていない。たとえば、体内時計の乱れが不眠の背景にある場合には、睡眠・覚醒リズムの調整を図りつつ、体内時計機構に作用する薬剤を選択することが有用である。脳の覚醒システムであるオレキシンをターゲットとした新たな不眠症治療薬も現在承認申請中であり、治療の選択肢も増えつつある。高血圧や糖尿病などでは薬剤のタイプによる使い分けが一般的に行われており、不眠症治療においても病状に応じた薬剤の選択が行われるようになることが期待される。外来で睡眠時無呼吸症候群を疑うチェックポイントなどありますか?睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome : SAS)は、睡眠中の無呼吸・低呼吸といった呼吸イベントにより、睡眠の質的低下、低酸素状態を生じる疾患である。心疾患および循環疾患リスクを高めることが知られており、生活習慣病のマネジメントのうえでも注目すべき疾患といえる。しかし、患者の多くはいびきや無呼吸を症状として自覚しておらず、多くは周囲がこれらの症状に気づくことで受診につながっている。SASが注目されるようになったきっかけの一つは、新幹線運転手の居眠り事故である。これにより、SASと眠気の関連がクローズアップされたが、眠気を自覚していないSAS患者も少なくないことから、眠気の有無は必ずしもSASを疑う(あるいは否定する)ポイントとはなりえない。SASを疑ううえでは、いびきや無呼吸に気づいている可能性が高いベッドパートナーへの問診は非常に有用である。本人のみが受診している場合には、周囲からそのような指摘があるかどうかを尋ねるとよい。いびきによる覚醒、窒息感を伴う覚醒を本人が自覚している場合もある。無呼吸を指摘されたことがなくても、習慣的な大きないびきの指摘があれば、SASを疑い精査することが望ましい。本人が自覚しうるその他の症状としては、夜間頻回の(トイレ)覚醒、熟眠感の欠如、起床困難、起床時の頭痛、日中の眠気、集中力の低下などがあげられる。いびきの指摘に加えてこうした自覚症状を伴っていれば、SASを疑うポイントとなりうる。理学的所見も重要である。SASのリスクとして肥満はよく知られているが、扁桃腺肥大、顎顔面形態(小顎や下顎後退)も必ず確認する。とくにアジア人において非肥満のSASも多いことに留意する。逆に、不眠や夜間の異常行動といった何らかの睡眠の訴えがある場合には、その背景にSASが存在する可能性を常に考慮する必要があるともいえる。必ずしも自覚症状が明らかではない患者も多いこと、終夜パルスオキシメトリ等のスクリーニング検査が比較的安価に施行できることを考慮すれば、SASが多少なりとも疑わしい場合には積極的にスクリーニングすることが望ましい。※エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part2はこちら

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知的障害者の約半数が向精神薬多剤併用

 知的障害者の多くは、精神疾患の診断がなされていなくても、攻撃的行動のマネジメント目的で向精神薬の投与を受けていることが知られている。しかし、これまでその投与経過については、とくに一般的な精神病薬だけでなく抗精神病薬が投与されているにもかかわらず、前向きに検討した報告がなかった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドン/チャリングクロス病院のS. Deb氏らは、攻撃的行動がみられる成人知的障害者への向精神薬投与の特徴と経過について、6ヵ月間にわたる初となるクリニックベースの前向き研究を行った。その結果、向精神薬だけでなく、抗精神病薬(通常量または高用量)との多剤併用療法が半数近くで行われていることなどを明らかにした。Journal of Intellectual Disability Research誌オンライン版2014年1月22日号の掲載報告。知的障害患者への抗精神病薬処方で攻撃的行動の重症度が有意に減少 研究グループは、地域のクリニックをベースに、100例の成人知的障害者で攻撃的行動がみられるサンプルを抽出し、6ヵ月間にわたり前向きに向精神薬の使用について追跡し、人口統計学的・精神医学的および攻撃的行動変数で比較した。 攻撃的行動がみられる成人知的障害者への向精神薬投与の特徴と経過について前向き研究を行った主な結果は以下のとおり。・向精神薬は、ベースライン時89%、追跡6ヵ月時点で90%の攻撃的行動がみられる成人知的障害患者に投与されていた。・最も投与の割合が高かった抗精神病薬はリスペリドンであった。続いてクロルプロマジン、ハロペリドール、オランザピン、ズクロペンチキソール(国内未承認)、クエチアピンであった。・その他一般的に用いられていた薬物の種類は、抗うつ薬のSSRI[シタロプラム(国内未承認)、パロキセチン、フルオキセチン(国内未承認)など]であり、続いて気分安定薬(カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムなど)であった。一方で、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム処方例の多くは、てんかん治療のために用いられていた。・攻撃的行動がみられる成人知的障害患者の多く(45%)が、ベースライン時に複数の種類の向精神薬を受けていた。同割合は、追跡6ヵ月時点ではわずかに減少し41%であった。・とくに抗精神病薬が処方されていた割合はベースライン時75%、追跡6ヵ月時点73%と同程度であった。多剤併用療法についてもそれぞれの時点で、10%、9%と同程度であった。・クロルプロマジン換算300mg/日以上の抗精神病薬を投与されていた患者は、ベースライン時に23%、追跡6ヵ月時点で20%であった。・一方で、攻撃的行動の重症度については、ベースライン時から追跡6ヵ月時点の間に全体的に有意に減少していた。・抗精神病薬の高用量処方は、より重度の攻撃的行動、物体への身体的攻撃、自傷行為、年齢が高いことと明らかな関連がみられた。しかしその他の人口統計学的変数、身体的健康状態または精神科診断との間には、有意な関連はみられなかった。・ベースライン時と追跡6ヵ月時点の間の、平均攻撃性重症度スコアの変化と抗精神病薬1日量の変化とには有意な相関性は何も認められなかった。・これらの結果を踏まえて著者は、「攻撃的行動がみられる成人知的障害者では、向精神薬の使用が一般的であることが示された。また一般的な精神病薬または高用量の抗精神病薬による向精神薬の多剤併用療法も一般的であることが示唆された。場合によっては、精神科医が変わることで、抗精神病薬が重複投与されている可能性もあった」と指摘している。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬との併用、相互作用に関するレビュー 抗精神病薬多剤併用による代謝関連への影響は? ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?!

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てんかん治療の改善は健康教育から始まる

 てんかん治療の格差は貧困国において最も大きい。ケニア・KEMRI(Kenyan Medical Research Institute)のFredrick Ibinda氏らは、健康教育プログラムにより治療アドヒアランスが改善するのか、無作為化試験にて評価を行った。農村地帯への1日の介入で行われた検討の結果、健康教育がてんかんに関する知識を向上することが示された。しかし1日だけの教育では、アドヒアランスの改善には結びつかなかったことも判明し、著者は「継続的な教育がアドヒアランスを改善する可能性があり、さらなる研究が必要である」と述べている。Epilepsia誌オンライン版2014年1月21日号の掲載報告。 ケニアの農村地帯への1日健康教育プログラム(キリフィてんかん教育プログラム)の有効性について検討した無作為化試験は、738例のてんかん患者を介入群と非介入(対照)群に割り付けて行われた。主要アウトカムは、抗てんかん薬(AED)のアドヒアランス状況で、血中薬物濃度(標準的な血液アッセイで測定、検査技師は割り付けをマスキング)にて評価した。副次アウトカムは、てんかん発作の頻度とKilifi Epilepsy Beliefs and Attitudes Scores(KEBAS)(訓練された介入スタッフにより行われた質問アンケートで評価)であった。データは、ベースライン時と介入群への教育介入後1年時点に集め分析した。また事後解析として、修正ポアソン回帰分析にて、アドヒアランス改善(AEDのベースライン時の非至適血中濃度からの変化で評価)、発作の減少、KEBASの改善に関連した因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時と介入後1年時点の両時点で評価が行われたのは581例であった。・試験終了時点で血液サンプルが入手できたのは、介入群105例、対照群86例であった。解析は、最もよく服用されていたAED(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン)について行われた。・結果、AED血中濃度ベースのアドヒアランスについて、介入群と対照群で有意差はみられなかった(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:0.74~2.90、p=0.28)。自己報告でみた場合も同様であった(同:1.00、0.71~1.40、p=1.00)。・一方で、介入群のほうが対照群よりも、てんかんの原因についての伝承、民間療法、ネガティブなステレオタイプに対する固定観念を持っている人が有意に少なかった。・発作の頻度については、差がなかった。・ベースライン時とフォローアップ時のデータを比較した結果、アドヒアランス(血中濃度で評価)は介入群(36%から81%、p<0.001)、対照群(38%から74%、p<0.001)ともに有意に増大した。・発作頻度が減少した(直近3ヵ月で3回以下)患者数は、介入群は62%から80%(p=0.002)、対照群67%から75%(p=0.04)と増大した。・治療アドヒアランスの改善(両群を統合して検討)は、てんかんリスクについてのポジティブな信条への変化(リスク比[RR]:2.00、95%CI:1.03~3.95)、および非伝統的宗教的信条への変化(同:2.01、1.01~3.99)と明らかな関連がみられた。・発作頻度の減少は、アドヒアランスの改善と関連していた(RR:1.72、95%CI:1.19~2.47)。・KEBASのポジティブな変化は、高次教育を受けたことと関連していた(非教育との比較でのRR:1.09、95%CI:1.05~1.14)。・以上のように、健康教育はてんかんについての知識を改善するが、1回だけではアドヒアランスは改善しないことが示された。しかしながら、将来的な検討で継続的教育はアドヒアランスを改善する可能性がある。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン部分アゴニスト、新たなてんかん治療薬として期待 日本の高齢者てんかん新規発症、半数以上が原因不明:産業医大 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

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うつ病患者とかかりつけ医、認識のギャップが浮き彫りに

 米国・コロラド大学のRobert D Keeley氏らは、うつ病診療におけるプライマリ・ケア医と患者の認識について質的研究を行った。その結果、患者がうつ病であることを受け入れ、治療を求めることについて感じているスティグマを、医師は過小評価する傾向にあること、また患者は十分に時間をかけて医師とディスカッションすることを望んでいるのに対して、医師は長時間のディスカッションが患者にとって不利益をもたらすと考えているなど、医師と患者の認識の相違が浮き彫りになったことを報告した。BMC Family Practice誌オンライン版2014年1月15日号の掲載報告。 米国では、プライマリ・ケアにおける診療を“Patient-Centered Medical Homes(PCMH)”、すなわち患者中心型医療に変えるための努力が、プライマリ・ケアでの診療改善の焦点となっている。しかし、PCMHをめぐる技術革新や通信インフラの発展にもかかわらず、患者の認識を踏まえた前向きな診療に対する理解と促進が十分に進んでいないのが現状である。そこでKeeley氏らは、プライマリ・ケアでのうつ病診療に際し、患者の体験、期待、嗜好などについて、医師と患者の認識の差を検討した。地方および都会の小~中規模のプライマリ・ケア4施設が参加し、うつ病性障害患者30例を抱えるプライマリ・ケア医6名にインタビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・満足のいくうつ病ケアには、以下の3つの過程があることが示唆された。(1)砕けてしまったものをつなぐ。(2)個々の患者のうつ病に対する理解を探る。(3)現在のうつ状態と将来のエピソードを防止するための、独自の治療空間をつくる。・患者がうつ病を受容し、治療を求めることをスティグマであるとみていることについて、医師は過小評価する傾向にあった。・患者は、自分の思いに共感を示し、耳を傾けてくれる医師を好むが、一方で医師は、長々と患者と話すことで“パンドラの箱”を開けてしまうことや、診察時間が長くなってしまうことを懸念していた。・うつ病により身体に現れた症状が、患者自身のうつ病の苦悩の理解を妨げるという点に関しては、医師も患者も同意見であった。・医師らは、ガイドラインに基づくうつ病のためのアプローチ以外のいくつかの治療手段を支持するとした。また、患者らが述べている多面的なサポートについても表面的には理解を示した。・プライマリ・ケアのプロセスとアウトカムの改善にあたっては、患者の体験、期待および嗜好を理解し、評価する能力の向上が要求されることが示唆された。・今後の研究で、うつ病ケアにおけるスティグマ、ならびに受診時にうつ病に関するディスカッションに費やす時間について、医師と患者の認識の相違にまつわる検討が進められる必要がある。・うつ病などの慢性疾患のケアとアウトカムの改善にあたっては、プライマリ・ケア医が患者独自の“治療空間”を理解し、サポートすることが求められる。関連医療ニュース うつ病や不安症の患者は慢性疾患リスクが高い 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学

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Mother(後編)【家族機能】

みなさんは、職場で「私はほめられて伸びる子なの」や「おれは叱られて伸びた」と言う意見を耳にしたことはありませんか?人を伸ばす、人を育てるには、結局、「ほめること」が良いのか、「叱ること」が良いのか?どっちなんでしょうか?答えは、どっちもです。さらに「見守ること」も大切です。大事なのはその3つのバランスです。今回も、前々回、前回に引き続き、2010年に放映されたドラマ「Mother」を取り上げます。そして、家族機能を通して、ほめること、叱ること、見守ることのバランスについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。あらすじ主人公の奈緒は、30歳代半ばまで恋人も作らず、北海道の大学でひたすら渡り鳥の研究に励んでいました。そんな折に、研究室が閉鎖され、仕方なく一時的に地域の小学校に勤めます。そこで1年生の担任教師を任され、怜南に出会うのです。そして、怜南が虐待されていることを知ります。最初は見て見ぬふりの奈緒でしたが、怜南が虐待されて死にそうになっているところを助けたことで、全てをなげうって怜南を守ることを決意し、怜南を「誘拐」します。そして、継美と名付け、逃避行をするのです。実のところ、奈緒をそこまで駆り立てたのは、奈緒自身がもともと「捨てられた子」だったからでした。その後に、奈緒は、奈緒の実母(葉菜)に出会い、助けられることによって、少しずつ閉ざしていた心を開いていきます。そして、奈緒、継美(怜南)、葉菜の3人で生きていくという家族の形が描かれます。「子どもの目を見る」母性と「世間の目を見る」父性―表1最初、奈緒は、継美(怜南)とともに、奈緒の育ての親(藤子)の実家に身を寄せます。しかし、やがて、藤子やその娘たちは、継美(怜南)の「誘拐」の事実に気付いてしまいます。奈緒は、迷惑を掛けたくないという思いから、継美を連れて、その実家を出ていきます。その後、藤子は、他の娘たちを守るために奈緒の戸籍を抜くかどうか葛藤します。そんな中、妊娠中の芽衣(藤子の実の子、奈緒の義妹)から「世間の目を見るのが母親じゃないじゃん」「子どもの目を見るのが母親じゃん」とたしなめられるのです。「子どもの目を見る」、子どもの幸せをまず考えるのは、母親の役割です。子どもは愛されているという欲求(愛情欲求)が満たされることで、愛着を育みます。こうして、乳児期の1歳半、2歳までは、心の拠りどころ(安全基地)としての母性による見守り(保護)により、精神的に安定する力の土台を作ることができます(レジリエンス)。つまり、安全感です。この土台は、その後の父性によるしつけを乗り越える原動力となります。それでは、「世間の目を見る」のは誰の役割でしょうか?それは父性の役割です。「世間の目を見る」とは、社会のルールを重んじることです。2、3歳以降は、父親、兄弟、親戚、同年代の子どもとのかかわりや遊びを通して、子どもは、期待に応えたいという欲求(承認欲求)を満たそうとします。この時、しつけ(社会性)としての父性による見張り(監視)、つまりほめられることと叱られることで、人間関係のルールや我慢などを身に付け、生き方のモデルを学びます。そして、母性と離れる不安(分離不安)が和らぎ、自立の道を歩もうとします。また同時に、誇り、罪悪感、羨ましさ、憐れみなどの様々な社会的感情を育んでいきます。母性は、期待に応えるという条件がなくても愛してくれる絶対的なものです(無条件の愛情)。それとは対照的に、父性は期待に応えられて初めて、ほめて愛してくれます。しかし、期待に応えられなければ叱る、つまり恐怖を与えます。つまり、父性は、期待に応えるという条件が付いて愛してくれる相対的なものであるということです(条件付きの愛情)。表1 母性と父性の役割母性父性年齢0歳~2、3歳~特徴見守ること心の拠りどころ(安全基地)絶対的(無条件の愛情)見張ること(ほめることと叱ること)しつけ(社会性)相対的(条件付きの愛情)プラス面子どもの愛情欲求を満たす父性によるしつけにくじけないように、精神的に安定する力の土台を育む子どもの賞賛欲求を満たす母性から引き離し、自立を促す生き方のモデルを示すマイナス面社会性が乏しい心の拠りどころが乏しい父性の心理の源は?―人間の進化の産物それでは、なぜ父性はこのような心理になるのでしょうか?そもそもなぜ父性はあるのでしょうか?前回は母性の心理の源を探りました。今回は、父性の心理の源を掘り下げていきたいと思います。700万年の人間の心の進化の歴史を振り返ると、原始の時代からいつの時代でもどこの場所でも、ほとんどの民族の子どもには母親と父親が1人ずつ変わらず存在し続けました。進化論的には、存在し続けるものには必ず意味があります。その意味とは、父性は、霊長類、特に私たち人間が手に入れた進化の産物の心理だからです。700万年前から1万年前までの原始の時代、つまり農耕牧畜がまだ発見されていない時代、人々は、食糧を貯めることができませんでした。そこで、男性(父親)は日々食糧を確保し、女性(母親)は日々子育てをするというふうに、性別で役割を分担して共同生活を行いました。そして、この生活スタイルをとった種がより生き残りました。その後、進化の過程で人間の脳が大きくなり、それに伴い、子どもの成長には時間がかかるようになりました。そんな中、子育てに積極的に参加する養育者としての父性が進化したのです。その進化には、3つの要素があります。1つ目は、子どものメリットです。子育てに積極的な男性(父親)は、女性(母親)といっしょになってその子どもを猛獣や飢餓から守ります。そして、その子どもの生存確率をより高めます。その子どもの父親の父性的な遺伝子はその子にも受け継がれていきます。2つ目は、女性(母親)のメリットです。子育てに積極的な男性(父親)は、女性(母親)を助けることにより女性(母親)から生殖のパートナーとしてより選ばれるようになります。3つ目は、男性(父親)のメリットです。子育てに積極的な男性(父親)は、早くに子どもを離乳させ女性(母親)から引き離すことになるため、早くに女性の発情が再開され、再び生殖が可能になるのです。3つの要素とも、結果的に、子孫を残しやすくなるということです。そして、この父性の心理がより働く遺伝子が現在の私たち、特に男性に受け継がれています。母性が「そうしたいからしている」という欲求であるのと同じように、父性もまた、遺伝子によって突き動かされていると言えます。家族機能―安定した家族の形葉菜(奈緒の実の母)と奈緒は、新しい戸籍を手に入れるため、継美(怜南)を連れて伊豆に行きます。そこで継美は、砂浜で砂の家を作ります。そして、「継美とお母さんとおばあちゃん、家族3人で暮らすの」「3人でね、『スミレ理髪店』するの」「お母さんは髪の毛洗う係でしょ」「おばあちゃんは髪の毛切る係でしょ」「継美はね、髪の毛乾かす係とお菓子上げる係」「家族のお店だね」と言います。継美は、まぶしく暖かい海辺に飛んでいる海鳥に向かって「鳥さ~ん!ここだよ~ここにいるよ~」と叫びます。かつて北海道の暗く寒い海岸で飛んでいる渡り鳥に向かって「怜南(継美)も連れてって~!」と叫んだ時とは対照的です。継美の心の中には、心の拠りどころ(安全基地)や安心感がはっきりと芽生えています。と同時に、夢を描くためのモデルや役割もはっきりと見いだされています。このように、子どもにとっての安定した家族の形は、本来、母性と父性が両方バランスよく発揮されることで成り立ちます(家族機能)。母性と父性のアンバランス―取り込みと突き放し逆に、バランスが保たれていないとどうなるでしょうか?実は、母性と父性のプラス面は度が過ぎると、マイナス面になります(表1)。母性が強すぎると、相対的に父性が足りなくなり、母子はべったりと一体化します。そして、見守りが先回りに転じて、子どもを母親の思い通りのペットや人形にしてしまいます。自由を許してくれるはずの母性がもはや自由を許してくれなくなるという逆説的な状態になります。すると、子どもは取り込まれた感覚になります。守ってくれるはずの安全基地が、逆に身動きのとれない監獄になってしまうのです。このように、母性は強すぎると歪んでしまうことが分かります。この状況は、特に母性の一極集中が起きやすい一人っ子や末っ子に見られます。また、この心の間合い(心理的距離)の取りにくさは、母親とだけでなく、やがて友人や恋人との間にも起こってしまいます。このようにして、自立ができづらくなり、社会性が育まれません。昨今、社会問題となっている引きこもりを引き起こす大きな要因となっています。一方、父性が強すぎると、相対的に母性が足りなくなり、心の拠りどころが希薄になります。例えば、子どもが父親や先生に叱られた時、母親もいっしょになって叱る場合です。子どもに味方はいません。子どもは突き放された感覚になり、安全感や安心感はありません。子どもの時は何とか「良い子」で乗り切ろうとしますが、やがて思春期を迎えると、欲求不満になりやすく、精神的に不安定になります。このメカニズムは前々号や前号でご紹介しました。このように、過剰な母性は取り込みが起こり、過剰な父性は突き放しが起こります。どちらにせよ、子育てのための家族の働きがとても弱まっていることになります(機能不全家族)。子どもは、何があっても愛されるという心の拠りどころ(安全基地)を土台にして、期待に応えたらもっと愛されるという社会性を高めていきます。つまり、無条件の愛情(母性)による鉄壁の守りがあるからこそ、条件付きの愛情(父性)への勇敢な攻めができるのです。そして、「こうなりたい」「こうあるべきだ」という自分なりのモデルができあがるのです。また、芯があってブレないので、自己評価も適切に行えるのです。母性と父性は、お互いの長所を保ち、欠点を補い合うものなのです。足りない母性を補う存在は?継美(怜南)の新しい家族には、父性を発揮すべき父親がいません。では、どうしてこの家族はうまくいっているのでしょうか?奈緒と継美と葉菜(奈緒の実の母)が3人で暮らす中、食事の場面で、奈緒が継美に「おかず取る時はご飯置いて」とマナーの注意をします。継美が威勢よく「はい」と返事をすると、葉菜は「フフ」とほほ笑みます。また、奈緒は1人でいる時、警察が嗅ぎ回っていることを察知し、継美といっしょにいる葉菜に電話します。継美が奈緒に「あのね、さっきね」と話たがっているのに、奈緒は「ごめん、急いでるの。(葉菜に)代わって!」「後で!」と急き立てます。その後に継美が葉菜に「お母さん、何か怒ってた?」と不安そうにすると、葉菜は「ううん。怒ってなかったわよ」「お母さん帰ってきたら教えてあげよう」と優しくフォローします。実は、奈緒は、継美の母親になって母性を発揮しつつ、父親がいないので、父性の役割も果たす必要がありました。そもそも父性は条件付きの愛情です。そのため、奈緒が父性を発揮すると、どうしても無条件の愛情である母性が危うくなります。この時に絶妙な助けとなっているのが、祖母である葉菜です。これが、継美の新しい家族がうまくいっている答えです。葉菜によって、継美へ注がれる母性が補われて、安定しているのです。母性を補う存在は必ずしも母親でなくてもいいのです。祖母、父親、祖父、そして叔母や叔父も母性を注ぐことができるのです。このことから、必ずしも生物学的な女性が100%の母性を発揮し、男性が100%の父性を発揮する必要はないということです。より良い子育ての視点に立てば、大事なのは、母性的な養育者と父性的な養育者がそれぞれ1人ずつ、つまり養育者は合わせて2人いることです。性別が逆転していても、世代が違っていてもよいのです。例えば、働いている母親が70%の父性と30%の母性を発揮しているなら、専業主夫の父親または祖母は70%の母性と30%の父性を発揮してバランスを取れば良いわけです。おばあちゃん子―「家族力」最近の研究仮説で、祖母による母親への支援は、「祖母効果」「おばあちゃん仮説」と呼ばれています。そもそもほとんどの動物は、繁殖が終わる年齢と寿命はだいたい一致しています。つまり、繁殖力がなくなった時が寿命の尽きる時です。しかし、私たち人間は違います。閉経を終えて繁殖力がなくなった女性が長生きすることには進化論的な意味があるということです。その意味とは、繁殖を終えてまだ体力のある祖母が、子育てをする次世代の自分の娘(母親)を助けることで、娘の繁殖力を高め、孫の生存率を高めることです(包括適応度)。いわゆる「おばあちゃん子」の存在も、「祖母効果」の延長線上にあるものと考えられます。現代の母親は働いていることが多く、精神的な支えとして、注ぎ足りない母性を「おばあちゃん」が補っているというわけです。そもそも原始の時代から、子育ては、兄弟や親戚を含んだ大家族、もっと言えば地域全体で協力して行っていました(アロマザリング)。本来、子育ては母親1人で行うものではなかったのです。大事なことは、子どもへの母性や父性がいざ足りなくなった時のために、家族機能には余力(予備能力)が必要だということです。言うなれば、「家族力」です。これは、ちょうど体力に似ています。例えば、体の運動や病気によって日々の活動以上の体力が必要になる時のために、普段から心臓、肺、肝臓、腎臓など様々な臓器には、予備の能力が残されています。一人親の難しさと危うさそれでは家族機能に余力のない状況について考えてみましょう。代表的なのは、昨今増えつつある母子家庭(一人親)です。もっと広げて言えば、父親はいたとしても、仕事に没頭するなどして子育てに参加しない、つまり父親不在の核家族です。一人親、つまり母親だけだと、母親は母性と父性を一人二役でやる必要があります。しつけの面ではどうしても父性が強まってしまい、母性が足りなくなります。とても器用にやってバランスを取らなければなりません。これが一人親の難しさであり危うさです。奈緒も、葉菜(奈緒の実の母)がいなければ、継美の子育てにおいてこの状況に陥っていたかもしれません。見守ること、ほめること、そして叱ることのバランス子育てには、母性も父性もほどほどが良く、大事なのはそのバランスであるということが分かりました。さらに、母性により見守ることとは別に、父性により見張ること、つまりほめることと叱ることもほどほどが良く、大事なのはそのバランスであると言えます。そのメカニズムを詳しく見てみましょう。(1)二面性―表2見守ること、ほめること、そして叱ることとは、具体的にどういうことなのでしょうか?その特徴と二面性について考えてみましょう。見守るとは、子ども(相手)の行動を温かくも注意深く見て、いざ危険になった時に助けて守るなどフォローすることです。例えば、子どもが父親や教師にほめられた時も叱られた時も、母親など誰かがその気持ちをそばで共感することです。すると、子どもは、自分にはどんな時も味方がいると安心します。見守られている子どもの脳内では、オキシトシンという神経伝達物質が放たれ、安全感や安心感が得られ、自己評価はプラスに保たれます。自己評価とは、自分自身への評価や価値であり、自分を大切にする心理です。ただし、見守られること自体には、直接的な学習効果はありません。学習とは、例えば、1人でトイレを済ます、隣の家のおじさんに挨拶をする、困っている人を助けるなど期待されたことを行うことです。ほめるとは、期待されたことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を肯定することです。ほめられた子どもの脳内では、ドパミンという神経伝達物質が放たれ、楽しく心地良くなり、達成感が得られ、自己評価は上がります。すると、その子どもは、次も同じことをやろうと学習します。これが、ほめることによる学習効果です。ただし、この学習効果はある一定量しかなく、従って自己評価もある一定量しか上がりません。よって、学習効果や自己評価を高めるために、ほめることは、なるべくこまめに繰り返し行う必要があります(繰り返し効果)。叱るとは、期待されなかったことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を否定することです。叱られた子どもの脳内では、ノルアドレナリンという神経伝達物質が放たれ、緊張や恐怖を感じ、自己評価は下がります。これは、哺乳類の敵の学習に通じるものです。敵に襲われた時、恐怖という否定的な感情によって、敵を記憶するのです。それと同じように、子どもも、「敵に近付くこと」、つまり同じことはもうやらないように学習します。これが、叱ることの学習効果です。この学習効果は、1回だけでもとても高いのですが(即時効果)、同時に自己評価を大きく下げてしまう難点があります。よって、叱るのは、絶対にやってはいけないこと、つまり禁止のルールの学習に限定し、最小限にする必要があります。禁止のルールとは、例えば、人を傷付けてはいけない、人の物を盗ってはいけないなどです。表2 見守ること、ほめること、そして叱ることの比較母性により見守ること(保護)父性により見張ること(監視)ほめること叱ること特徴子ども(相手)の行動を温かくも注意深く見て、いざ危険になった時に助けて守る安全感期待されたことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を肯定する楽しさ、心地良さ、達成感期待されなかったことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を否定する緊張、恐怖神経伝達物質オキシトシンドパミンノルアドレナリン学習効果直接的になし比較的低いとても高い自己評価プラスに保つ少し上げる大きく下げる注意点一定して絶え間なく注ぐ必要がある繰り返す必要がある限定する必要がある(2)アンバランスの危うさ―グラフ1次に、見守ること、ほめること、そして叱ることのアンバランスの危うさについて考えてみましょう。見守り(母性)が行き過ぎだったり足りなかったりした場合に起きる問題は、すでに「母性と父性のアンバランス」の段落で触れました。よって、見守ることは、多くも少なくもなく、一定して絶え間なく必要であるということです。ほめることが行き過ぎて叱ることが足りない場合、つまりほめてばかりで叱らない親はどうでしょうか?いわゆる甘やかし、溺愛です。子どもは、自己評価が高くなりすぎて、自惚れが起きやすくなります(自己愛パーソナリティ)。また、禁止のルールの学習が進まず、やりたい放題で奔放な行動パターンを取りやすくなります。イメージとしては、いわゆる「ドラ息子」です。逆に、叱ることが行き過ぎてほめることが足りない場合、つまり叱ってばかりでほめない親はどうでしょうか?厳格な家庭環境ということになります。子どもは、自分の行動にいつも怯えてしまい、安心感をなくします。また、自己評価を大きく低めてしまいます。この問題も、すでに「母性と父性のアンバランス」の段落で触れました。さらに、時として、厳しいしつけや体罰は虐待に発展して、心の傷(トラウマ)も残してしまいます(PTSD)。最後に、見守ることもほめることも叱ることも足りない場合、つまり見守りもほめも叱りもしない親はどうでしょうか?放ったらかし、つまり放任です。子どもは、安心感や達成感を持てず、禁止のルールも分からないまま、とても野性的になります。欲望と恐怖だけに支配され、ただ生きるために生き続けているだけで、社会生活を送るのが、極めて難しくなります。(3)ほめることと叱ることの割合―グラフ2ここで、ほめることと叱ることの具体的なバランス、つまり割合について考えてみましょう。それぞれの特徴を踏まえて、自己評価をほどほどなプラスにすることに重きを置くと、ほめることは、叱ることよりも量、質ともにある程度多くする必要があります。そして、その前提として、もちろん絶え間ない見守り(母性)による自己評価の安定も重要です。例えば、5回ほめることによる自己評価のアップが1回叱ることによる自己評価のダウンと同じになるモデルを考えてみましょう。グラフのように、繰り返しほめることで学習効果は徐々に進み、自己評価も徐々に上げっていきます。ところが、1回叱られると学習効果は大きく進むのですが、同時に自己評価は大きく下がります。そして、続けて叱られるとさらに学習効果が進みますが、自己評価が大きくマイナスになってしまいます。それは叱ることはとても威力があるからです。つまり、5回以上ほめて初めて1回叱ることができます。または、1回叱ったら、5回以上ほめる必要があります。なぜなら、叱り続けたら、自己評価がどんどん下がっていき、精神的に不安定になってしまうからです。日頃から、見守られてほめられているからこそ、叱られても、そのストレスに耐えられるのです。別の言い方をすれば、ほめる「貯金」をたくさんしてこそ、叱る「借金」ができるのです。これが、ほめることと叱ることのバランスです。そして、これが、冒頭の問いかけの答えでもあります。「人育て」における見守ること、ほめること、そして叱ることのバランスこれまで、子育てにおいてのほめること、叱ること、そして見守ることのバランスについて考えてきました。それでは、「人育て」、つまり人材育成においてはどうでしょうか?昨今、特にプロフェッショナルな集団では、たとえ上司と部下、先輩と後輩、年配と若手の関係があっても、フラット(対等)な関係が好まれる傾向にあります(フラット化)。しかし、まだプロになり切れていない新人の教育にあたっては、3つのバランスは大いに重要です。見守ることが行き過ぎると、先回りをしてしまい、新人が指示待ち人間になってしまいます。自発性や積極性が育まれず、横並び意識が強まり、成長はしません。逆に、見守ることが足りないと、安全感(セーフティネット)がなく、競争原理や人間関係のストレスなどに耐えられません。よって、見守ることは、子育てと同じく、多くも少なくもなく一定して絶え間なく必要であるということです。ほめることが行き過ぎて叱ることが足りないと、新人は自惚れて仕事を舐めてかかります。やがて、現状に甘んじてしまい、成長はしません。また、禁止の学習がなされないので、同じ間違いを繰り返しやすくなります。逆に、叱ることが行き過ぎてほめることが足りないと、新人は仕事の出来不出来にいつも怯えてしまいます。そして、自発性が萎縮してしまいます。欲求不満の状態に陥り、離職率を高めます。集団での母性と父性―リーダーとサブリーダーの役割のバランスそれでは、職場という組織(集団)において、見守りによる母性を発揮するのは誰が良いでしょうか?また、ほめ叱りによる父性を発揮するのは誰が良いでしょうか?答えは、リーダーが母性、サブリーダーが父性を発揮することです。これは、1つの安定モデルです。実際に、リーダーは温かく見守り人望があり、サブリーダーは口うるさく有能であるというスタイルで機能している集団はよく見かけます。また、サブリーダーの時は口うるさかったのに、リーダーになったら穏やかになったという人も見かけます。新しいサブリーダーがしっかりしていて父性を強めてくれれば、リーダーは母性を強めることができて、集団の機能として安定するわけです。逆に、リーダーが父性的、サブリーダーが母性的である場合もありえます。ただし、この場合は、リーダーが孤立する可能性が高まり、集団としてのまとまりが弱くなるリスクがあります。とても危ういのは、リーダーとサブリーダーのキャラがかぶり、2人が揃って父性的で、メンバーたちを叱ってばかりいるという集団です。コミュニケーションにおける母性と父性普段からのコミュニケーションにおいても、私たちは相手によって一人二役で母性と父性を使い分けたり、組み合わせたりしています。かつては「がんばれ!負けるな!」という父性的な言い回しを世の中でよく耳にしました。最近では「がんばって。でも無理しないでね」という言い方をよく耳にします。これは、「がんばるのはいいけど、無理しなくても、人生は大丈夫なもんだからね」という母性的な保証のニュアンスが込められていることが分かります。今の世の中は、母性的なコミュニケーションに傾いてきているようです。今回、ドラマ「マザー」を通して家族機能を解き明かしながら、子育てのあり方から「人育て」のあり方を探ってきました。これらを見通す視点を持つことで、私たちは日々のコミュニケーションのあり方を見つめ直し、見守ること、ほめること、そして叱ることのそれぞれのバランス感覚を身に付けることができるのではないでしょうか?1)山極寿一:家族進化論、東京大学出版会、20122)北村英哉・大坪康介:進化と感情から解き明かす社会心理学、有斐閣アルマ、20123)澤口俊之:「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育、講談社+α新書、2011

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睡眠障害に関するアンケート

対象ケアネット会員の内科、精神科・心療内科医師方法インターネット調査実施期間2013年12月19日回収200名(内科医師100名、精神科・心療内科医師100名)Q.「睡眠薬の適切な使用と休薬のための診療ガイドライン」(厚生労働省・日本睡眠学会)をご存じですか?また、どのように扱われていますか?Q.レストレスレッグス症候群をご存じですか?また、どのように対応していますか?2013年12月ケアネット調べ

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統合失調症患者は処理速度が著しく低下、日本人でも明らかに:大阪大学

 統合失調症患者は文化的要因が影響する神経心理学的検査において、統合失調症でない患者と比較してパフォーマンスが劣ることが報告されている。大阪大学の藤野 陽生氏らは、ウェクスラー成人知能検査(WAIS-III)日本語版を用いて、統合失調症患者のパフォーマンスを検討した。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2013年1月22日号の報告。 日本人統合失調症患者157例と健常者264例を対象に、WAIS-IIIでのパフォーマンスを評価した。WAIS-IIIから得られた、すべての知能指数スコアと4群指数(言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度)により比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は健常者と比較し、すべての知能指数スコアと4群指数が損なわれていた。・とくに処理速度は、健常者よりも約2SD低かった。・13のサブテストのなかで、理解(z = -1.70、d = 1.55)、符号(z =-1.84、d = 1.88)、記号探し(z-1.85、d = 1.77)は健常者と比較し著しく損なわれていた。・日本人統合失調症患者におけるWAIS-IIIによって評価された障害のタイプや程度は、これまで英語圏で報告されたものと同様であった。また、機能的転帰に関連するいくつかの神経心理学的分野の障害は、統合失調症の普遍的な特徴であると考えられる。関連医療ニュース 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学 統合失調症の実行機能障害に関与する遺伝子を発見:獨協医大 統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

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うつ病や不安症の患者は慢性疾患リスクが高い

 これまでの先行研究において、抑うつや不安が慢性疾患発症と関連することが報告されていた。米国・ウェストバージニア大学のRituparna Bhattacharya氏らは、うつ病や不安症が、関節炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、心疾患、高血圧および骨粗鬆症などの慢性疾患に及ぼす影響を検討した。その結果、うつ病、不安症患者は、これらの症状がない人に比べて、慢性疾患のリスクが高いことが明らかになった。今回の結果を踏まえて、著者は「うつ病や不安症の存在は、人口動態および生活習慣リスク調整後も慢性疾患の独立したリスクであることが判明した」と述べている。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年1月16日号の掲載報告。 研究グループは、うつ病や不安症に関連する慢性疾患の過剰リスクについて後ろ向き横断研究を行った。2007~2009年のMedical Expenditure Panel Surveyに登録された22~64歳の成人患者を対象とした。被験者を、うつ病または不安症に関する自己報告に基づき、1)うつ病単独、2)不安症単独、3)うつ病と不安症を併発、4)うつ病も不安症もなし、の4群に分類し、関節炎、喘息、COPD、糖尿病、心疾患、高血圧および骨粗鬆症の有無を従属変数として、うつ病や不安症に関連する慢性疾患の過剰リスクを算出した。検討に際してComplementary log-log 回帰モデルを用い、人口動態(性別、年齢、人種/民族)および生活習慣(肥満、身体活動欠如、喫煙)リスク因子で補正した多変量フレームワークを用いた。多重比較にはBonferroniの補正を行い、p≦0.007を統計学的有意差ありとした。 主な結果は以下のとおり。・全症例のうち、うつ病単独は7%、不安症単独は5.2%、うつ病と不安症の併発は2.5%であった。・うつ病も不安症もない人と比べて、うつ病と不安症を併発している患者、うつ病単独の患者、不安症単独の患者のいずれにおいても、すべての慢性疾患のリスクが高いことが多変量解析により示された。・うつ病と不安症を併発している患者の調整済みリスク比(ARR)は、骨粗鬆症に対する2.47(95%CI:1.47~4.15、p=0.0007)から、糖尿病に対する1.64(同:1.33~2.04、p<0.0001)にわたった。・また、うつ病単独の患者も、骨粗鬆症を除くすべての慢性疾患と有意な相関を示した。・不安症単独の患者では、関節炎、COPD、心疾患および高血圧のリスクが高かった。関連医療ニュース 食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか 少し歩くだけでもうつ病は予防できる ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか

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抗アミロイド療法は発症後では遅すぎる?/NEJM

 抗アミロイドβ(Aβ)モノクローナル抗体バピヌズマブは、アルツハイマー病(AD)関連のバイオマーカーを改善するが、臨床アウトカムの改善はもたらさないことが、米国・バトラー病院のStephen Salloway氏らの検討で示された。バピヌズマブは、軽度~中等度AD患者を対象とした第II相試験において、プラセボに比べてPET画像上のアミロイドを減少させ、脳脊髄液(CSF)中のリン酸化タウを低下させたことから、標的への到達および神経変性の減弱効果が示唆されていた。NEJM誌2014年1月23日号掲載の報告。APOEε4対立遺伝子の有無別の2つのプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、軽度~中等度AD患者に対するバピヌズマブの有用性の評価を目的とする2つの二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。1つはアポリポ蛋白E(APOE)ε4対立遺伝子のキャリアを対象に、米国の170施設の参加の下で2007年12月~2012年4月に行われ、もう1つはAPOEε4対立遺伝子非キャリアを対象に、米国、カナダ、ドイツ、オーストリアの218施設が参加して2007年12月~2012年6月に進められた。 対象は、年齢50~88歳、ADの診断基準を満たし、MRI上でAD所見を認め、軽度~中等度認知機能低下がみられ、虚血の徴候が低い患者とした。キャリアの試験ではバピヌズマブ0.5mg/kg(13週ごと6回=78週、静脈内投与)またはプラセボを投与する群に、非キャリアの試験ではバピヌズマブ 0.5mg/kg、1.0mg/kgまたはプラセボを投与する群に、患者を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、アルツハイマー病評価スケールの認知機能評価11項目(ADAS-cog11、0~70点、点数が高いほど認知機能が良好)および認知症機能障害尺度(DAD、0~100点、点数が高いほど身体機能障害は低い)のスコアの変化とした。副次評価項目は、Pittsburgh compound Bを用いたPET画像上のアミロイド所見(PIB-PET)およびCSF中のリン酸化タウ濃度とした。抗アミロイド療法は発症後では遅すぎる? キャリア1,090例(バピヌズマブ群:658例、プラセボ群:432例)および非キャリア1,114例(0.5mg群:314例、1.0mg群307例、プラセボ群493例)が有効性解析の対象となった。 主要評価項目は有意な群間差を認めなかった。APOEε4対立遺伝子キャリア試験ではベースラインから78週までのADAS-cog11スコアおよびDADスコアの差(バピヌズマブ群-プラセボ群)は、それぞれ-0.2(p=0.80)および-1.2(p=0.34)であり、非キャリア試験ではバピヌズマブ0.5mg/kg群がそれぞれ-0.3(p=0.64)、2.8(p=0.07)、1.0mg/kg群は0.4(p=0.62)、0.9(p=0.55)であった。 安全性に関する重要所見として、バピヌズマブ群でアミロイド関連画像異常としての浮腫がみられ、用量およびAPOEε4対立遺伝子の数が多くなるに従って頻度が高くなった。非キャリア試験で当初設定されていた2.0mg/kg群は、これが原因で早期中止となった。 キャリアではPIB-PETおよびCSF中のリン酸化タウ濃度が、バピヌズマブ群で有意に改善した(それぞれp=0.004、p=0.005)が、非キャリアでは1.0mg群のリン酸化タウを除き有意な改善は認めなかった(0.5mg群:p=0.19、p=0.98、1.0mg群:p=0.47、p=0.009)。 著者は、「バピヌズマブは、APOEε4対立遺伝子キャリアではバイオマーカーを改善させたが、臨床アウトカムの改善はもたらさなかった」とまとめ、「アミロイドの蓄積は症状発現のかなり以前に始まっており、抗アミロイド療法は認知症が発症してから開始したのでは遅すぎて、臨床経過には影響を及ぼさない可能性がある」と指摘している。

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新規抗アミロイドβ抗体薬、アルツハイマー病への効果示せず/NEJM

 新たに開発された抗アミロイドβ(Aβ)抗体ソラネズマブは、軽度~中等度アルツハイマー病(AD)患者の認知機能および機能的運動能力を改善しないことが、米国・ベイラー医科大学のRachelle S Doody氏らが行ったEXPEDITION 1およびEXPEDITION 2試験で示された。ソラネズマブはネズミ抗体のヒト化アナログ製剤で、Aβの中枢神経(CNS)から末梢循環への流出を促進することから、ADに有効な可能性が示唆されていた。NEJM誌2014年1月23日号掲載の報告。認知機能、身体機能の改善効果を2つの無作為化試験で評価 EXPEDITION 1およびEXPEDITION 2試験は、軽度~中等度AD患者に対するソラネズマブの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。年齢55歳以上、うつ状態を認めず、軽度の認知機能障害がみられる患者を対象とした。ソラネズマブ(400mg、静脈内投与)は、4週ごとに18ヵ月投与し、コリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンの併用は許容された。 主要評価項目は、アルツハイマー病評価スケールの認知機能評価11項目(ADAS-cog11、0~70点、点数が高いほど認知機能が良好)およびアルツハイマー病共同研究日常生活動作評価(ADCS-ADL、0~78点、点数が低いほど身体機能が低い)の、ベースライン時から80週までのスコアの変化とした。 EXPEDITION 1試験の解析が終了後、EXPEDITION 2試験の主要評価項目として軽度AD患者におけるADAS認知機能評価14項目(ADAS-cog14、0~90点)の再解析を行った。発症前~軽度患者に限定してさらなる検討を EXPEDITION 1試験には1,012例(ソラネズマブ群506例、プラセボ群506例)、EXPEDITION 2試験には1,040例(521例、519例)が登録された。治療完遂率は、それぞれ73.1%、73.1%、77.9%、77.1%で、主な治療中止理由は有害事象であった。 両試験共に、主要評価項目の有意な改善効果は得られなかった。EXPEDITION 1試験におけるADAS-cog11スコアの変化の差(ソラネズマブ群-プラセボ群)は、-0.8点(95%信頼区間[CI]:-2.1~0.5、p=0.24)、ADCS-ADLスコアの差は-0.4点(同:-2.3~1.4、p=0.64)であり、EXPEDITION 2試験ではそれぞれ-1.3点(95%CI:-2.5~0.3、p=0.06)、1.6点(同:-0.2~3.3、p=0.08)であった。 ADAS-cog14スコアの群間差は、軽度AD患者が-1.7点(95%CI:-3.5~0.1、p=0.06)であり、ソラネズマブ群で良好な傾向がみられたが、中等度AD患者は-1.5点(95%CI:-4.1~1.1、p=0.26)だった。 両試験の安全性データの統合解析では、アミロイド関連画像異常として浮腫がソラネズマブ群の0.9%、プラセボ群の0.4%(p=0.27)にみられ、出血がそれぞれ4.9%、5.6%(p=0.49)に認められた。 著者は、「ソラネズマブは軽度~中等度AD患者の認知機能および機能的運動能力を改善しなかった」とし、「抗アミロイド戦略の有用性を見極めるために、軽度AD患者やバイオマーカー検査で脳のアミロイド蓄積が確認されている無症状の患者を対象に、本薬剤のさらなる検討を進める必要がある」と指摘している。

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早漏症にSSRI、NO濃度との関連を確認

 トルコ・Sisli Etfal研究教育病院のS. L. Kirecci氏らは、精漿中の一酸化窒素(NO)レベルと、早漏症に対するSSRIの有効性との関連について検討を行った。その結果、早漏症は精漿中NO濃度高値と関連しており、SSRI投与により精漿中NO濃度が減少し、さらに膣内挿入から射精までの時間が延長することを報告し、SSRIが早漏症に有効な可能性を示唆した。Andrologia誌オンライン版2013年12月20日号の掲載報告。 本研究の目的は、精漿中のNOレベルと、早漏症に対するSSRIの有効性との関連を明らかにすることであった。原発性早漏症(膣内挿入から射精までの時間[IELT]<1分)の男性16例(32.18±3.32歳)および健常男性11例(コントロール群)が登録された。健常男性はグループ1に、早漏症患者はグループ2と3の2群に無作為に割り付けられた。グループ2にはパロキセチン20mg/日、グループ3にはセルトラリン50mg/日がそれぞれ4週間投与された。ベースライン時および治療後の所見を3群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・早漏症患者におけるベースライン時の平均精漿中NO濃度は、健常男性と比較して有意に高かった(32.24±5.61μmL-1対19.71±3.50μmL-1)(p<0.001)。・IIEFスコア、IELTスコアとNO濃度との関連において、パロキセチンおよびセルトラリン群の間で有意な差は認められなかった。・最初の1ヵ月の最終日において、パロキセチンおよびセルトラリン群における平均IELTスコアは、ベースライン値と比較して有意に改善していた(p<0.001)。・パロキセチンおよびセルトラリンによる治療後、NO濃度はベースラインと比較し減少していた。・以上より、早漏症は精漿中NO濃度高値と有意に関連していることが示唆された。SSRI投与後の精漿中NO濃度の減少は、射精を遅らせる可能性がある。これらの結果を確認するため、また病態生理におけるNOの役割、早漏症治療について明らかにするためにさらなる研究が必要である。関連医療ニュース 早漏治療にはSSRI、トラマドールが有効?! 閉経期ホットフラッシュにSSRIが有効 片頭痛の予防に抗てんかん薬、どの程度有用か

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