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ハンチントン病〔HD:Huntington’s disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義舞踏病は中世ヨーロッパにおいて知られ、19世紀前半いくつかの遺伝性の舞踏病についての報告があるが、1872年のGeorge Huntingtonの報告を基に、疾病単位として確立され、ハンチントン舞踏病といわれるようになった。舞踏病は疾患の一面を示しているにすぎないので、現在は「ハンチントン病」という。ハンチンチン遺伝子(HTT)のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝形式を取る、遺伝性の中枢神経変性疾患で、舞踏運動などの運動障害、認知機能障害、精神障害を呈し、進行性である。■ 疫学日本、東アジアでは比較的まれであるが、北ヨーロッパ(広義)やその地域からの移民では頻度が高い。わが国における有病率は人口10万人対0.6人程度、ヨーロッパ、北米およびオーストラリアからの報告のメタ解析では、人口10万人対5.7人と推計されている。■ 遺伝・病因常染色体優性遺伝を呈し、ほとんどの患者は変異アレルと正常アレルとのヘテロ接合体であるが、きわめてまれに変異アレルのホモ接合体(または複合へテロ接合体)例もある。両者は臨床的(表現型)には差はない。孤発例については、家族歴が不明のためか他疾患と考えられ、新生突然変異はほとんどないと考えられていたが、従来考えられていたよりは新生突然変異は少なくない。病因となるハンチンチン遺伝子(HTT)エクソン1のCAGリピートは、不安定で伸長しやすく、患者ではCAGリピートの繰り返し回数は36回以上である。ただし、36回から39回は不完全浸透で、発症するとは限らない。40回以上では、年齢依存的に発症率が異なるが、最終的には80歳代までにはほぼ100%発症する(完全浸透)。CAGリピートに関連して、2つの特徴が挙げられる。第1にCAGリピートの繰り返し回数が多いほど、発症年齢は若く、CAGリピートと発症年齢との間には負の相関が認められる。第2に親から子に遺伝する際に、繰り返し回数は多くなりやすく、とくに男親から遺伝する場合にその傾向は顕著である。小児発症例の男親が、後から発症することがある。すなわち、世代を経るごとに発症年齢が若年化し、重症化する遺伝学的表現促進現象が認められる。■ 病態・病理他のポリグルタミン病と共通する、異常伸長したポリグルタミン鎖を持つハンチンチンタンパク質による獲得毒性による機序と、ハンチンチンタンパク質の生理的な機能・局在などに関連した異常によるのが、大局的な分子病態と考えられる。ハンチンチンの生理的機能は十分には解明されていないが、ノックアウトマウスではホモ個体は致死的である。分子病態の全体像は完全には明らかにはされていないが、これまで、(1) 転写調節の異常、(2) アンチセンスRNAの関与、(3) タンパク質凝集、(4) ユビキチン-プロテアソーム系の異常、(5) オートファジーの異常、(6) アポトーシスの異常、(7) 軸索輸送の異常、(8) 成長因子の異常、(9) 繊毛形成障害、(10) ミトコンドリア機能障害、(11) 酸化ストレス、(12) 興奮性毒性など、さまざまな異常、病態への関与が報告されている。これらですべてかどうかは必ずしも明らかではないが、報告の多くはそれぞれ病態の一面を反映しているものと推察される。病理学的には、神経細胞の変性脱落を生じるが、その変化は線条体に顕著で、中型有棘神経細胞の脱落が特徴的である。進行に伴い、線条体は萎縮する。病理変化は、尾側から吻側へ、背側から腹側へ、内側から外側へ進行する。病理学的変化は、大脳皮質にも及び大脳全体が萎縮する。ポリグルタミン鎖を含む凝集体が核内封入体として認められる。■ 症状発症は小児期~80歳代まで幅広く、平均は40歳代で、30~60歳代に発症することが多い。20歳以下の発症は若年型といわれる。症状としては、運動症状、精神症状、認知症に大別される。運動症状は、舞踏運動が特徴的である。非典型的な不随意運動を認めることもある。また、小児などでは、筋強剛(固縮)などのパーキンソン症状を呈する(Westphal型)。精神症状としては、うつ、自殺企図を認め、また統合失調症との鑑別を要することもある。認知症としては、皮質下認知症を呈する。■ 予後緩徐進行性の経過で、臥床状態となり15~30年で合併症にて死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断のポイント診断に当たっては、家族歴が重要であり、確定診断されている家族歴のある場合には、診断は比較的容易である。ただし、家族歴がないからといって診断は除外できない。臨床症状、一般的検査で、特異的なものはない。■ 画像診断画像診断においては、CTおよびMRIで、尾状核ないし線条体の萎縮、脳室の拡大が疾患の進行に伴って認められ、進行例では、大脳皮質の萎縮も認める。尾状核の萎縮は水平断より冠状断(前額断)画像がみやすい。発症前ないし発症極初期においては、形態画像の異常は捉えにくいが、SPECTやPETによる機能画像検査において、尾状核の機能低下が捉えられる。■ 遺伝子診断遺伝子診断は、ハンチンチン遺伝子(HTT)のCAGリピートの異常伸長の有無による。遺伝子診断にて、確定診断および除外診断が可能である。■ 鑑別診断遺伝性、非遺伝性の舞踏運動などの不随意運動を呈する疾患、精神科疾患などが鑑別疾患として挙げられる。■ 臨床評価スケールUHDRS (Unified Huntington’s Disease Rating Scale)BOSH (The Behavior Observation Scale Huntington)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法発症予防、進行抑制などの根本的治療法は実現していない。症状に対する対症療法が主である。運動症状、舞踏運動に対して、テトラペナジン(商品名: コレアジン)が有効で、保険収載されている。精神症状に対しては、当該症状に対する抗精神病薬(向精神薬)、抗うつ薬などが用いられる。認知症に対する有効な治療薬は知られていない。■ 介護、支援制度など1)指定難病「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」の対象で、医療費助成対象疾病である。2)介護保険「介護保険法」の被保険者の対象は65歳以上で、第2号被保険者に該当する疾患には含まれない。認知症がある場合は、初老期における認知症として40~64歳でも対象となる。3)身体障害「身体障害者福祉法」に基づいて、運動障害の程度に応じて、肢体不自由による身体障害者手帳の交付の対象となる。4)精神障害者精神障害を来している場合には、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」による精神障害保健福祉手帳の交付の対象となりうる。■ 遺伝カウンセリング遺伝性疾患であり、婚姻、妊娠、発症前診断、出生前診断など、さまざまな臨床遺伝医学的課題、血縁者・家族に関連した問題がある。専門的には、臨床遺伝専門医などに紹介することが勧められる。4 今後の展望1993年に、原因遺伝子とその突然変異が報告され、以降、根本的に有効な治療法を目指したさまざまなレベルの研究が欧米を中心に行われている。臨床治験の行われた薬物もあるが、現在までのところ、発症の予防ないし遅延や進行の抑制を可能とする治療法は実現していない。研究の進展によって、これらが現実となることが望まれる。5 主たる診療科主たる診療科:神経内科(および小児神経科)精神症状の顕著な場合:精神科発症前診断や遺伝カウンセリングなど:遺伝診療科や遺伝子診療部門6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ハンチントン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) Huntington disease (英語)(医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews Huntington chorea/ハンチントン病原文(英語)日本語版 (医療従事者向けのまとまった情報)The Centre for Molecular Medicine and Therapeutics ハンチントン病の有病率(英語)(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)(患者とその家族向けの情報)1)Huntington G. Medical and Surgical Report. 1872;26:317-321.2)The Huntington’s Disease Collaborative Research Group. Cell. 1993;72:971-983.3)William J. Weiner MD, Eduardo Tolosa MD, editor. Handbook of Clinical Neurology Volume 100. Hyperkinetic Movement Disorders.Elsevier(NE);2011.4)Bates G, Tabrizi S, & Jones L, editor. Huntington’s disease.4th ed. Oxford University Press(UK);2014.5)金澤一郎. ハンチントン病を追って 臨床から遺伝子治療まで. 科学技術振興機構;2006.6)後藤 順. 神経症候群(第2版)II.日本臨牀; 2014. p.163-168.7)Pringsheim T, et al. Mov Disord. 2012;27:1083-1091.8)Huntington Study Group. Mov Disord. 1996;11:136-142.9)Timman R, et al. Cogn Behav Neurol. 2005;18:215-222.公開履歴初回2017年02月07日

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双極性障害の過去のエピソードや治療反応を評価する簡便なスケール

 臨床医が、双極性障害患者の疾患経過および治療反応を評価するために、アナログスケールを使用する方法について、米国・カンザス大学のSheldon H Preskorn氏が報告した。Journal of psychiatric practice誌2017年1月号の報告。 主な報告は以下のとおり。・このアナログスケールは、患者が経験した最も悪いうつ病、軽躁/躁病エピソードを患者ごとに調整できるため、YMRS(Young Mania Rating Scale)のような標準化された評価尺度を補完することが可能である。・また、患者が初発後に完全寛解(スコア0)を達成したかどうかを含め、過去の治療に対する個々の患者のエピソードがどのように反応したかを、臨床医が追跡可能となる。・次いで、急性または慢性の活動性エピソードにおける患者が、身体的および/または精神療法のいずれかの新規治療に対しどのように反応したかを評価可能であり、それは過去の治療に対する反応と比較することも可能である。・今後、このスケールは、患者の疾患経過を評価するために使用可能である。たとえば、完全寛解を伴うエピソード、より重度なエピソードや残存症状の増加を伴う慢性期など。・このスケールを使用することにより、エピソードがどのように発現し消失するか、悪化に影響する各因子(たとえば、対人関係、炎症プロセス、薬物使用)、疾患による悪化があるかどうかなど、患者自身が自分の疾患についてより良い理解を促すことができる。・したがって、この簡便なスケールは、病歴の収集、異なる治療介入の有用性のモニタリング、患者教育を含む多くの目的を達成できると考えられる。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害、治療反応は予測できるか 双極性障害、再入院リスクの低い治療はどれか

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認知症ドライバーの運転停止を促すためには

 認知症ドライバーの数は、今後十数年にわたって増加すると予測される。認知症は事故の高リスクと関連しているため、疾患の進行に伴い運転停止が必然となるが、認知症を抱える多くの人々は運転を停止することに抵抗を感じる。カナダ・サニーブルック研究所のNicolette Baines氏らは、認知症ドライバーの運転停止の普及率と発生率に性差があるかどうか、認知症の有無による性差パターンを比較するため、メタ解析を行った。The journals of gerontology誌オンライン版2016年12月26日号の報告。 運転停止における性差の観察研究を2015年7月にMEDLINE、PsycINFO、Scopus、CINAHLより検索した。メタ解析は、ランダム効果モデルを用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・認知症の有無にかかわらず、高齢者の運転停止における性差研究データは20件であった。・運転停止は、男性よりも女性において有意に高かった(OR:2.11、95%CI:1.50~2.98)。認知症でない女性においても同様なパターンが認められた(OR:2.74、95%CI:1.85~4.06)。 著者らは「本検討において、認知症の男女では、運転停止のパターンが異なることが示唆された。これは、運転停止の前後において、認知症ドライバーをサポートするためにデザインされた性別特有のアプローチに影響を与えるであろう」としている。関連医療ニュース 認知症ドライバーの運転能力、どう判断すべきか 認知症ドライバーの通報規定、どう考えますか 米国の認知症有病率が低下、その要因は

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統合失調症に対する短期治療、アリピプラゾール vs.リスペリドン

 統合失調症に対するアリピプラゾールとリスペリドンの短期治療効果および副作用プロファイルについて、インド・カヌール・メディカル大学のP B Sajeev Kumar氏らが、比較検討を行った。Current neuropharmacology誌オンライン版2017年1月12日号の報告。 本研究は、統合失調症に対するアリピプラゾールとリスペリドンによる8~12週間の治療を比較した非無作為化自然主義的盲検化プロスペクティブ研究。対象は、すでにアリピプラゾール(10~30mg/日)またはリスペリドン(3~8mg/日)で治療中の患者。MINI(Mini International Neuropsychiatric Interview:精神疾患簡易構造化面接法)Plus、PANSS、AIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale:異常不随意運動評価尺度)、SAS(Simpson Angus Scale)、UKU(Udvalg for Klinske Undersogelser)スケール、CGI-Sを、試験開始時に収集した。1日目およびフォローアップ時に、身体測定(身長、体重、BMIなど)、血圧、脈拍数を調べた。8~12週間後に、MINI Plusを除く検査を再度実施した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール群およびリスペリドン群の両方で、陽性症状、陰性症状の有意な改善が示された。しかし、両群間に統計学的有意差はなかった。・患者によるCGI改善スケールスコアの平均改善度は、アリピプラゾール群で有意な傾向が示された。・UKUスケールにより評価される一般的な(患者の5%以上で認められる)有害事象は、アリピプラゾール群よりもリスペリドン群で高頻度に認められた。・薬物誘発性錐体外路症状は、リスペリドン群でより多かった。・アリピプラゾール群は、体重増加に対する治療がより少なかった。 著者らは「アリピプラゾールは、統合失調症に対する8週間の短期治療において、リスペリドンと同等の有効性を示し、より良好な忍容性が認められた。また、患者満足度および副作用プロファイルも良好であった」としている。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs.リスペリドン 2つの抗精神病薬持効性注射剤、その違いを分析 アリピプラゾール vs.その他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

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アルツハイマー病、他のコリンエステラーゼ阻害薬への切り替え効果はどの程度:岡山大

 アルツハイマー病に対し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)から他のChEIへの切り替えによる治療効果はあるのかを、岡山大学の太田 康之氏らが評価した。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版2017年1月6日号の報告。 ChEIの切り替えを行ったアルツハイマー病患者171例をレトロスペクティブに登録した。認知症の主要な3要素(認知、感情、ADL活動)について、切り替え6ヵ月前、切り替え時(ベースライン)、切り替え3、6ヵ月後に評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・切り替え6ヵ月後の3種のChEIの用量は、切り替え前と比較し、有意に低かった。・ドネペジルからガランタミンへ切り替えた場合、3ヵ月後に感情鈍麻の改善が認められたが、リバスチグミンでは認められなかった。また、切り替え後はADLに悪影響を及ぼした。・ガランタミンからリバスチグミンへ切り替えた場合、3ヵ月後に認知スコアの改善が認められたが、ドネペジルでは認められなかった。・これらの切り替えは、ADLを除く阿部式BPSDスコア(Abe's Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia scores)を改善した。・リバスチグミンからドネペジルへ切り替えた場合、6ヵ月後の阿部式BPSDスコアは悪化したが、認知機能およびADLは維持された。 著者らは「切り替え後のChEIは、用量が比較的少ないにもかかわらず、ドネペジルまたはリバスチグミンからの切り替えで6ヵ月以上、認知機能が維持された。ガランタミンからリバスチグミンへ切り替えた場合には、3ヵ月後のミニメンタルステート検査、阿部式BPSDスコアは改善したが、ADLスコアは改善しなかった」としている。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?

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パニック障害 + うつ病、副作用と治療経過の関係は

 抗うつ薬の副作用は治療の有効性に影響を及ぼす。しかし、副作用が発現する患者や患者の副作用を予測することは困難である。米国・イリノイ大学シカゴ校のStewart A Shankman氏らは、パニック障害合併の有無による、うつ病患者の副作用発現状況を調査した。また、副作用により治療経過を予測可能かも検討した。これらの影響の特異性を調査するため、分析では不安障害、社交不安障害、全般性不安障害(GAD)を調査した。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年1月3日号の報告。 大規模な慢性期うつ病患者のサンプルを対象に、2002~06年に12週間、事前に計画されたアルゴリズムに従って抗うつ薬を投与した。うつ症状(ハミルトンうつ病評価尺度)と副作用を2週間ごとに評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時のパニック障害の生涯診断は、胃腸(OR:1.6、95%CI:1.0~2.6)、心臓(OR:1.8、95%CI:1.1~3.1)、神経系(OR:2.6、95%CI:1.6~4.2)、尿生殖器の副作用(OR:3.0、95%CI:1.7~5.3)への治療と関連している可能性が高かった。・副作用の頻度、強さ、罹病期間の増加は、パニック障害を合併した患者において、抑うつ症状の増加とより強い関連が認められた。・社交不安障害、GADは、これらの影響と関連が認められなかった。関連医療ニュース パニック症に対し第2世代抗精神病薬は有用か 双極性障害と全般性不安障害は高頻度に合併 パニック障害 + 境界性パーソナリティ障害、自殺への影響は?

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ベンゾジアゼピンと認知症リスク~メタ解析

 ベンゾジアゼピン(BZP)は、先進国のとくに高齢の患者に対し広く用いられている。しかし、BZPは記憶および認知機能に影響を及ぼし、認知症リスクを高める可能性があることが知られている。台湾・台北医学大学のMd Mohaimenul Islam氏らは、BZPと認知症リスクとの関連を評価した観察研究をレビューした。Neuroepidemiology誌オンライン版2016年12月24日号の報告。 認知症アウトカムに対するBZP使用リスクを評価するため、観察研究のシステマティックレビュー、メタ解析を行った。検討には、BZP使用患者と対照群における認知症アウトカムを比較したすべての対象観察研究を含んだ。ランダム効果モデルを用いて、プールされたORを算出した。システマティックレビューには10件(3,696例)が含まれ、そのうち8件はランダム効果メタ解析、感度分析に含めた。 主な結果は以下のとおり。・BZP使用患者における認知症オッズは、BZP未使用患者と比較し、78%高かった(OR:1.78、95%CI:1.33~2.38)。・サブグループ分析では、アジアの研究において高い相関が認められ(OR:2.40、95%CI:1.66~3.47)、北米(OR:1.49、95%CI:1.34~1.65)および欧州(OR:1.43、95%CI:1.16~1.75)の研究において中等度の相関が認められた。・糖尿病、高血圧、心疾患、スタチン系薬剤は、認知症リスク上昇と関連していたが、BMIは負の相関が認められた。・主要な分析および大部分の感度分析において、研究間に統計学的および臨床的に有意な異質性が認められた。 著者らは「本検討により、BZP使用と認知症リスクには有意な関連が示唆された。しかし、観察研究では、観察された疫学的関連性が因果関係であるのか、未測定の交絡因子の結果であるのかを明らかにすることができなかった。この関連を明らかにするためにも、より多くの研究が必要である」としている。関連医療ニュース 認知症予防にベンゾジアゼピン使用制限は必要か ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は 不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する

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統合失調症患者、悲しい曲を悲しいと認識しているのか:都立松沢病院

 これまでの研究では、統合失調症患者の音楽能力は損なわれていると報告されている。東京都立松沢病院の阿部 大樹氏らは、悲しみをマイナーコードに関連付ける患者の能力を評価するための簡便な音楽ベースの試験法を開発し、さらに音楽的障害と精神症状との相関関係の特性を明らかにした。Schizophrenia research誌オンライン版2016年12月23日号の報告。 対象は、統合失調症患者29例と年齢、性別、音楽的背景にマッチした対照群29例。対象者には、最初にCメジャー進行コード、次にCマイナー進行コードと2つの音楽刺激を与えた。対象者は、どの刺激が悲しみと関連しているかを回答した。精神症状重症度は、PANSSを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・マイナーコードが悲しみと関連していた割合は、統合失調症患者で37.9%(95%CI:19.1~56.7)、対照群で97.9%(95%CI:89.5~103.6)であった。・治療抵抗性統合失調症と診断された4例は、マイナーコードと悲しみが関連しなかった。・マイナーコードを悲しいと認識しない患者は、すべてのPANSSサブスケールにおいて有意に高いスコアを示していた。 著者らは「簡便なテストで、統合失調症患者の音楽誘発感情を評価することができ、音楽誘発感情と精神症状との潜在的な関連も示されるであろう」としている。関連医療ニュース 統合失調症、男と女で妄想内容は異なる 音楽療法にうつ症状改善は期待できるか 音楽療法が不眠症に有用

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認知症リスクが高い飲酒量、低い飲酒量

 軽~中等度の飲酒は認知症を予防できるが、過度の飲酒はむしろリスクを増加させる可能性があると考えられている。しかし、これらの知見については研究方法がさまざまであることや標準的定義がないことから、解釈には慎重を要する。今回、中国海洋大学のWei Xu氏らが前向き試験のメタ解析で、アルコール摂取量と認知症リスクとの量-反応関係を検討したところ、1日当たりのアルコール摂取量が12.5g*以下であればリスク低下と関連し、6gで最もリスクが低く、38g以上ではリスクが高まる可能性を報告した。European journal of epidemiology誌オンライン版2017年1月17日号に掲載。*アルコール12.5gの目安:ビール(5%)約310mL、日本酒(15%)約100mL、ワイン(14%)約110mL 本研究では、電子データベースの系統的検索によって、参加者7万3,330人とすべての認知症(All-Cause Dementia、以下ACD)4,586症例を含む11研究、参加者5万2,715人とアルツハイマー型認知症1,267症例を含む5研究、参加者4万9,535人と血管性認知症542例を含む4研究を特定した。リスクの推定はランダム効果モデルを用いて統合した。 主な結果は以下のとおり。・アルコール摂取量とACDリスクとの間に非線形の関係を認めた(pnonlinearity<0.05)。・認知症リスク低下に関連するアルコール摂取量は最大12.5g/日までで、約6g/日でリスクが最も低くなった(RR≒0.9)。・アルコール摂取量が23杯/週もしくは38g/日を上回ると、ACDリスクは上昇(約10%)するようであった。・認知症に関するアルコールの影響は60歳未満でより大きい可能性があることが、サブグループ分析で示された。

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原因不明の失神と最新のICMデバイス

 日本メドトロニック株式会社から低侵襲の植え込み型心臓モニタReveal LINQ(リビール リンク)が2016年9月発売された。この機器は、体積比で従来品から87%小型化しており、皮下挿入型長時間心電計(以下、ICM)ともいわれる。原因が特定できない失神と潜在性脳梗塞の診断に適応を持ち、胸部皮下に挿入することで最長3年間の持続的な心電図モニタリングが可能である。また、データの自動的送信機能により遠隔からでも医師がイベントを確認できる。Reveal LINQの発売にあたり開催されたメディアセミナーにて「失神診療への貢献が期待される皮下挿入型心電計」と題し、産業医科大学 不整脈先端治療学 安部治彦氏が講演した。ICMを失神患者の診断に使用する頻度は米国に比べきわめて少ない 失神で医療機関を受診する患者は年間で80万人と多い。これは、医療機関入院患者の1~3%、救急外来受診者の3~5%を占める。失神の原因は多様だが、原因疾患により予後は大きく異なる。なかでも、心臓突然死の原因となるなど、生命予後が非常に悪い心原性失神は失神全体の15%を占める。この心原性失神の危険因子として、基礎心疾患と共に不整脈は重要な所見である。 失神の治療は原因疾患によって異なる。とはいえ、失神は瞬間に起こる症状であり、画像所見など形としての異常が残らないため、発作の瞬間を捉える必要がある。そのため、さまざまな検査をしても原因疾患の特定に至らないことが多いのが現状である。本邦では、失神患者の診断にホルター心電図、心エコーを行う頻度が多いが、これで原因がわかることはまずない、と安部氏は言う。心臓突然死が多い米国では、この2つの検査で陰性でも、さまざまな検査と行う。なかでも、体外式長時間心電計と共に、ICMの本邦医療機関での使用頻度は米国に比べきわめて少ない。 ICMは心原性失神の原因を特定するために有用なのであろうか?安部氏は、講演の中で、産業医科大学における原因不明の失神患者に対するICMの診断有用性の評価試験の途中経過を紹介した。86例の原因不明の失神患者のうち、ICMで確定診断に至ったのは61例(71%)にのぼった。また、確定診断に至った患者のうち心原性失神は42例(64%)であった。そのなかには、長年にわたり診断がつかない再発性の失神患者も存在する。 本邦医療機関でのICMの普及遅れの背景として、失神の診断についての知識不足という医療者側の問題と共に、ICMの抵抗感による患者の拒否という要因も否めない。当デバイスは、従来に比べ1割強に小型化され、さらに挿入方法の工夫により侵襲も低くなっていることもあり、患者の抵抗感が少なくなるのではないか、と安部氏は言う。 ICMは失神の原因診断率が高い検査であり、いつ発生するかわからない失神の原因把握に有用性が高いといえる。失神は突然死の原因となるだけでなく、就労や自動車運転の制限など社会的な影響も大きい。ICMの新デバイスがこれらの問題解決の一翼を担うことを期待したい。

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摂食障害の重症度把握と診断ツールを検証

 夜間摂食症候群(night eating syndrome:NES)は、一般的に重症度尺度である夜間摂食アンケート(Night Eating Questionnaire:NEQ)を用いて評価するが、これはすべての診断基準を評価するものではない。また、夜間栄養診断アンケート(Night Eating Diagnostic Questionnaire:NEDQ)は、すべての診断基準を評価することができるが、完全に検証されたわけではない。米国・ワグナー大学のLaurence J Nolan氏らは、NEQおよびNEDQの妥当性を検証した。Appetite誌オンライン版2016年12月23日号の報告。 対象は、学生254人、一般集団468人。NEQ、NEDQ、ピッツバーグ睡眠質問票、ツァンうつ病自己評価尺度(Zung Self-report Depression Scale:SDS)、Yale Food Addiction Scale(YFAS)を用いて評価を行った。またNESの他の研究と同様に、NEDQスコアの上昇は、うつ病の増加、睡眠の質の低下、食品依存(food addiction)、BMIと関連するかも検討した。 主な結果は以下のとおり。・NEQおよびNEDQのスコアは有意に正の相関を示し、有効性が実証された。・NESの診断においてNEQとNEDQの結果は一致していた。NEDQによって診断された患者の56%がNEQの閾値スコアを満たしていた。・ NEQの閾値スコアを満たした33例中5例だけがNEDQ診断基準を満たしていなかった。・高NEDQは、高SDS、YFASスコア、睡眠の質の低下と関連していた。・NEDQによるFull-syndrome NESは、一般集団ではBMIが高かったが、学生では認められなかった。・他のすべてのアンケートのスコアは、一般集団のほうが高かった。・NEQとNEDQの診断の相違は、アンケートの構成の違いによるものであり、診断のために設計されたNEDQに起因する可能性がある。 著者らは「NEQは、NESの重症度を診断するため便利であるのに対し、NEDQは臨床的に有用な診断ツールである」としている。関連医療ニュース 女子学生の摂食障害への有効な対処法 神経性過食症と境界性パーソナリティ障害との関連 拒食に抗精神病薬、その是非は

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各種抗精神病薬のEPS発現を副作用データベースから分析

 定型抗精神病薬は、錐体外路症状(EPS)などの有害事象が多く発現する。一方、非定型抗精神病薬による有害事象発生頻度は低い。そのため、統合失調症治療には非定型抗精神病薬が広く使用されている。しかし、定型、非定型抗精神病薬のEPS発現頻度には、差が認められないとの報告もある。日本大学の小瀬 英司氏らは、日本の医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、定型、非定型抗精神病薬治療におけるEPS発現プロファイルの評価を行った。Yakugaku zasshi誌2017年号の報告。定型、非定型抗精神病薬の報告オッズ比に違いがほとんどなかった JADERデータベースのEPS報告を分析し、EPSに関連する抗精神病薬の報告オッズ比(ROR)を算出した。データベースのtime-to-event dataには、ワイブル分布を用いた。 主な結果は以下のとおり。・定型、非定型抗精神病薬のRORに、違いがほとんどなかった。・EPSの発現時期に関連する有意な差は認められなかった。・しかし、各薬剤を比較すると、パリペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、アリピプラゾールは、早期にEPSが発現していた。・一方、リスペリドン、クロザピン、オランザピン、クエチアピンは、早期だけでなく長期使用後もEPSが発現していた。

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歩くのが遅いと認知症リスク大

 歩行速度は、将来の認知症を予測する良い因子である。東京都健康長寿医療センター研究所の谷口 優氏らは、日本人高齢者の歩行性能軌道パターンを特定し、歩行性能が認知症と関連しているかを検討した。Journal of the American Medical Directors Association誌2017年2月号の報告。 2002~14年の日本における集団ベースフォローアップ観察プロスペクティブ研究として実施された。65~90歳の認知症でない高齢者1,686人(平均年齢:71.2歳[SD:5.6]、女性比:56.3%)を対象に、2002年6月~2014年7月まで毎年、老人保健調査を行った。追跡調査数の平均は3.9、総観察数は6,509件であった。歩行性能は、通常および最大速度での歩行速度と歩幅を測定することにより評価した。日本の公的介護保険制度のデータベースを調査したところ、2014年12月までに196人(11.6%)が認知症を発症していた。 主な結果は以下のとおり。・通常と最大速度での歩行速度と歩幅より高・中・低の3つの軌道パターンを特定した。これら歩行パターンは、男女間で同様に減少した。・重要な交絡因子で調整したのち、通常ベースの歩行速度と歩幅の低パターン群における認知症発症率は、それぞれ3.46(95%CI:1.88~6.40)、2.12(95%CI:1.29~3.49)倍であった。・最高速度ベースの歩行速度と歩幅の低パターン群における認知症発症率は、それぞれ2.05(95%CI:1.02~4.14)、2.80(95%CI:1.48~5.28)倍であった。 著者らは「歩行速度および歩幅の3つの主要パターンは、ベースラインのレベルにかかわらず、年齢関連変動を示す傾向があった。歩行速度および歩幅の低パターン高齢者は、認知症リスクが高いため、歩行能力改善のための介入が重要である」としている。関連医療ニュース 米国の認知症有病率が低下、その要因は 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン 認知症者はどの程度活動性が落ちているか

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クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1

今回のキーワード試し行為子育てタイプ社会的コミュニケーション障害回避性パーソナリティ障害社会的遊び進化心理学メラビアンの法則しんちゃんはなぜお尻を出すの?ユーモアのセンスみなさんは、「人を楽しませたい」または「子どもにコミュ力をつけたい」と思うことはありますか? その方がきっと人間関係がうまく行きそうだと思いますよね。今回は、ユーモアのセンスをテーマに、国民的人気アニメ番組の「クレヨンしんちゃん」を取り上げます。主人公は、野原家長男のしんちゃん。5歳児でありながら、しんちゃんのペースに母みさえや父ひろしを初め、周りが巻き込まれ、翻弄されます。このアニメは、2012年まで日本PTA協議会主催の「小中学生と親のテレビ番組に関する意識調査」の「子どもに見せたくない番組」アンケート(2013年に廃止)では毎年上位にランクインしていました。しかし、最近は育児書として良い意味で再注目されています。さらには、ユーモアのヒントもたくさん詰まっており、コミュニケーション能力を高めるモデルとしても参考になります。それでは、「クレヨンしんちゃん」を通して、コミュニケーション能力を高める親モデル、ユーモアを初めとする遊びの起源、明日から使えるユーモアのエッセンスについていっしょに考えていきましょう。なぜしんちゃんはお尻を出すの?-コミュニケーション能力を高めるしんちゃんは、人前でよく「お尻ぶりぶり」と言いながらお尻を出してふざけます。母みさえと父ひろしを呼び捨てにすることもあります。特にみさえには「お便秘みさえ」「バキュームかーちゃんみさえ号~」「ケツでか~」「ぶよぶよお腹~」などと言い、からかいます。このように、ふざけたり人をからかったりするのは下品で不真面目だという理由で、PTAの親たちは有害番組だと思ったのでしょう。確かに大人から見ればそうです。ただ、子どもにとっては、どうでしょうか? そもそもしんちゃんはなぜお尻を出すのでしょうか?それは、しんちゃんが、コミュニケーション能力を高めようとしているからです。言い換えれば、しんちゃんはお尻を出すとどうなるか相手と状況を見極めて試しています。それが結果的に、下品で不真面目なように見えてしまっているだけです。なぜなら、よくよく見ると、しんちゃんは、知らない人しかいない状況や好きな女性の前では、むしろ過剰な良い子を演じることで笑いを誘います。しんちゃんは、お尻を出すことは下品で良くないと重々分かっているのです。しんちゃんがお尻を出すのは、圧倒的にみさえがそばにいる時です。そして、みさえのリアクションを確認して、楽しんでいます。つまり、しんちゃんは、母親が嫌がることをわざとやっているのです。心理学的に言えば、愛着理論の試し行為に当たります。「構ってほしい」「それでも構ってもらえる」という信頼関係の確認です。このようなふざけ、からかい、いたずらなどは、信頼関係を深めるためのより高度な「挨拶」であると言えます。つまり、コミュニケーション能力とは、ふざける能力、遊び心でもあります。相手にふざけた後にその出方を見て、心の間合いを探っています。そして、いろいろな心の間合いがあることに気付きます。こうして相手や状況によって、その間合いを予測できるようになっていきます。ちょうど色々な動きを通して運動能力を高めるのと同じように、ふざけることも含めて色々なやり取りを通してコミュニケーション能力を高めています。また、ちょうど運動と同じように、コミュニケーションもすればするほど心地良いと感じるようになるでしょう。みなさんの中に、尻出しに対してもっと厳しくした方が良いという意見はありますでしょうか? 確かに、誰に対してもやっている場合は知的障害や自閉症スペクトラム障害の可能性を考え、対策が必要でしょう。また、女の子であれば、男の子に対してほど世の中の寛容さがないので、禁止するべきでしょう。一方、しんちゃんのように男の子でわざとやっている場合は、とても厳しくする必要はないです。ところで、しんちゃんは小学生になっても、お尻を出すでしょうか? その答えは、ノーです。しんちゃんの発達段階の幼児期はトイレットトレーニングの時期です。この時期は「お尻」「うんち」など排泄に関する下ネタをとても意識し、過剰に反応し、大好きになります。ところが、小学生の学童期に入ると、すでにトイレットトレーニングの課題は卒業しています。幅広い学習の機会が増え、表面的で具体的な発想から、より内面的で抽象的な発想をするようになります。よって、ふざけるにしても、見た目よりも中身に目が向き、より高度になっていきます。これが、ユーモアのセンスに発展していきます。逆に言えば、尻出しなどの単純なふざけによって、ユーモアのセンスの土台を作っているとも言えます。しんちゃんがお尻を出したらどうする?-コミュニケーション能力を高める親モデルしんちゃんのように、子どもがお尻を出すなどふざけたり、からかったりしたら、どうしましょうか? 子どものコミュニケーション能力を育むためには、実は親のコミュニケーション能力が問われてきます。その親モデルとして3つの要素があげられます。母みさえを初めとする周りのリアクションから考えてみましょう。(1)分かりやすいリアクション-社会性を育むまず、みさえは「こらっ、しんのすけ!」とムキになって怒ります。また、みさえのお決まりの「グリグリ」のお仕置きが登場することもあります。どこかコミカルです。そのわけは、気持ちをストレートに伝えて、リアクションがパターン化され分かりやすいからです。お仕置きについては、感情に任せた体罰ではなく、儀式化されたものです。コミュニケーションは、心の「プロレス」です。みさえはこの「プロレス技」を通して、実はやりとりを楽しんでいるようにも見えます。こうして、やって良いことと悪いことのルールが協調されることで、世の中で生きていくためのスキル、つまり社会性が子どもに育まれていきます。やがて、その成功体験の積み重ねによって、「自分ならできる」という自信が育まれます。(2)いつもは温かくて楽しい-共感性を育むみさえはしんちゃんによく爆発していますが、安心感があります。そのわけは、すぐに普段通りの温かくて楽しいお母さんに戻っていて、メリハリがあるからです。一方、しんちゃんがお風呂上がりに、いっしょにいた父ちゃんに下半身裸で「父ちゃん、ほら、ぞうさん」と言うと、父ちゃんは「ほ~らマンモス~」と悪ノリしています。その2人のやりとりを見たみさえは恥ずかしげに「おバカ親子」とツッコミを入れています。こうして、「たとえふざけても怒られるのはその時だけ」「怒られつつも楽しい」という共感性や安心感が子どもに育まれていきます。やがて、その信頼関係が強まることで、「どんな時も自分は大丈夫(大切にされている)」という自尊心が育まれます。(3)スキがある-積極性を育むみさえは、しんちゃんがこたつのテーブルを倒して滑り台にして遊んでいるのを叱ります。しかし、その後に、つい出来心で自分も滑って楽しんでしまいます。その様子をしんちゃんとひろしに冷たい目で見られ、「ハッ」と赤面します。このように、みさえはお間抜けキャラでスキがあります。おっちょこちょいで失敗もよくしています。怠け癖もあります。言い換えれば、みさえは決して完璧な母親(パーフェクトマザー)ではないです。とても人間味溢れる、ほど良いお母さんです(グッドイナッフマザー)。そして、ツッコミ甲斐があります。これは、自信につながります。また、お間抜けという失敗のモデルを見せているので、しんちゃんには「うまく行かなくても大丈夫」というメッセージが伝わります。これは、自尊心につながります。こうして、自信と自尊心を土台として、スキなどの何かおかしな点に気付いていく観察力やそれを指摘する行動力を伸ばすことで、積極性や創造性が子どもに育まれていきます。逆に言えば、子どもの積極性を高めるには、あえてスキをつくる、不真面目を演じる、つまり親のコミュニケーション能力として「ボケる」ことも重要になってきます。野原家、風間家、桜田家の子育てタイプの違いは?-グラフ1しんちゃんの通う幼稚園の仲良しのお友達でカザマくんとネネちゃんがいます。ここから、しんちゃんの野原家、カザマくんの風間家、ネネちゃんの桜田家のそれぞれの子育てタイプを整理して、コミュニケーション能力に影響を与える要素を探ってみましょう。なぜなら、コミュニケーション能力は、家庭内での親との人間関係を基礎として、家庭外での幼稚園・保育園の先生や友達、近所の人たちとの人間関係に応用されていくからです。子育て(家族機能)を国家になぞらえて、さきほどに紹介したルールの学習である社会性を縦軸の厳しさ(父性)、共感性を横軸の優しさ(母性)として、模式的にグラフ化してみましょう。子育ては、4つのタイプに分けられます。これは、カリフォルニア大学バークレー校の研究者ダイアナ・バウムリンド氏の子育てモデルを参考にしています。(1)しんちゃんの野原家-民主国家型まず、しんちゃんの野原家は、厳しさと優しさのバランスがとれています。自分の主張をしつつ、相手の主張も配慮して、お互いの折り合いを見つけるという意味で、民主国家型です。この心理は、社会性、共感性、積極性の全てがあります。自信と自尊心の両方が安定しているため、「おらならできるし、できない時もおらは大丈夫」という発想になります。この子育てタイプのプラス面は、ユーモアを初めとするコミュニケーション能力が育まれます。一方、マイナス面としては、厳しさと優しさのバランスを意識する労力を初めとして親もコミュニケーション能力を高める努力が必要になります。(2)カザマくんの風間家-独裁国家型次に、カザマくんの風間家は、優しさよりも厳しさに偏っています。将来エリートになるために、すでに幼稚園児にして塾通いをして、家でも勉強ばかりです。カザマくん自身もエリート然として振る舞っています。しかし、ママの顔色をうかがい、実はかなりのマザコンです。風間家の子育ては、有無を言わさず決められたことをやらされるいう意味で、独裁国家型です。この心理は、社会性が高すぎて、共感性が足りなくなり、結果的に積極性が不安定になります。自信は安定していますが自尊心が安定していないため、「ボクならできるけど、それでもボクはだめだ」という発想になります。一見、エリートになるために、小さい時から努力させることは良いことのように思えます。この子育てタイプのプラス面は、実際にエリートになる可能性があることです。さらに、子どもの能力が高ければ、親の「独裁」を乗り越えて、「革命」を起こし、世の中を動かす大物になるでしょう。一方、マイナス面としては、2つの危うさがあります。a. ユーモアがよく分からない1つは、ユーモアがよく分からないことです。小学生までは親の言いつけを守って、必死にがんばるでしょう。優等生で良い子です。しかし、中学生になったらどうなるでしょうか?中学生以降の思春期は、自分で自分の行動を決めるアイデンティティ(自我)の確立の時期です。この時、友達は、小学生のように周りから配慮されてできるわけでないです。友達は自分からつくる必要があります。この時に求められる能力は、相手の気持ちを察すること、相手との上手な間合いを取ること、そして、相手を楽しませることです(共感性)。つまり、どれだけ勉強をやってきたかの学力ではなく、どれだけおふざけをやってきたかのコミュニケーション能力が重要になってきます。逆に言えば、勉強ができても、ユーモアがよく分からなければ友達をつくるのに苦労します。そして、遊び心が足りない生真面目で退屈な大人になってしまい、人間関係で苦労するでしょう。その状況が深刻な場合は、社会的コミュニケーション障害と呼ばれます。この心理は、真面目になるという社会性はありますが、あえて不真面目をいっしょに楽しむという共感性が足りないです。b. 受け身になるもう1つは、受け身になることです。本来、中学生以降の思春期は、自分で自分の行動を決め、失敗も含めてその結果を受け入れる時期です。それは、自分で選んだ道だと納得し、これからも自分はどうしたいかという自分の生き方を見つけることです(積極性)。しかし、もともと親の「独裁」によって、自分で決めるという自由が極端に抑えられていれば、いざ自分で自分の行動を決めようにも、どうして良いか分からなくなります。決められたレールに乗ってきたので、レールがないと動けない、進めないのです。また、小学校まではうまく行かなくても親が決めたことなので自分のせいにはならなかったのに、自分で決めてしまうと自分のせいになってしまいます。つまり、失敗の責任を負うことに慣れていないのです。よって、すぐに正解を求めようとしたり、マニュアルを重視するようになります。このような完璧への執着は、裏を返せば失敗への恐怖、「失敗恐怖症」です。大人になって、仕事をする時も指示待ち人間になるでしょう。また、恋愛においても臆病になるでしょう。その状況が極端な場合は、回避性パーソナリティ障害と呼ばれます。この心理は、言われたらやるという社会性はありますが、自分からやるという積極性が足りないです。また、失敗の責任を負うことに慣れていないので、実際にうまく行かないことが起きたときは、「親のせいだ」「社会のせいだ」「病気のせいだ」という発想に陥りやすくなります。「自分のせいでもある」という自分の責任として真っ正面から向き合うこと(直面化)に耐えられず、誰かのせい、何かのせいにしようとする責任転嫁の心理が働きやすくなります(認知的不協和)。(3)ネネちゃんの桜田家-ユートピア型最後に、ネネちゃんの桜田家は、厳しさよりも自由さ(優しさ)に偏っています。ネネちゃんは、ウサギのぬいぐるみを懐に忍ばせ、嫌なことがあるとそれを殴ってストレスを発散させています。そして、実は、ママも同じことをしていて、ネネちゃんはママのまねをしています。女の子がぬいぐるみを殴るという行為を母親が黙認しています。むしろ逆に、母親がその悪いお手本を示しています。それをたしなめる父親はいません。また、より健康的なストレス発散の対処法(コーピングスキル)の提案もありません。このように、桜田家の子育ては、自由気ままにすることが許される甘やかしという意味で、ユートピア型です。この心理は、社会性が足りず、共感性が高いので、結果的に積極性が不安定になります。自信は安定していないですが自尊心が安定しているため、「私はできないけど、それでも私は大丈夫」という発想になります。この子育てタイプのプラス面は、自由で独創的な発想を育むことです。しんちゃんたちが巻き込まれるネネちゃんの「リアルおままごと」は、結末が必ず離婚か実家に帰る設定になっており、独特でリアリティがあります。一方、マイナス面は、自由さの裏返しで、出しゃばりで身勝手になってしまうことです。ネネちゃんは、しんちゃんから「他人の心は読めるのに、場の空気は読めない」と言われています。残念ながら、大人の世界にユートピアは存在しません。よって、大人になっても、その状況が極端な場合は、自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれます。この心理は、自由にする積極性はありますが、相手の自由も尊重するという社会性が足りないです。また、大人になっても衝動性のコントロールが困難な場合は、アルコール、ギャンブル、人間関係の巻き込まれ(共依存)などの嗜癖性障害のリスクが高まります。例えば、アルコール依存症の人の典型的なセリフとして、「(断酒はできないけど)自分はまだ大丈夫」という否認の心理です。この心理は、甘えるという共感性はありますが、甘えすぎないという社会性が足りないです。(4)該当なし-無法地帯型おまけとして、当てはまるしんちゃんのお友達はいませんが、厳しさも優しさもない家庭だと、どうなるでしょうか? 親が多忙であったり、子育てに無関心であったりして、子どもに衣食住の必要最低限のものは与えますが、それ以外は関わらない状況です。これは、ネグレクト(育児放棄)に当たり、もはや国家の形をなしていないという意味で、無法地帯型です。この心理は、社会性と共感性が足りず、積極性も不安定になります。自信も自尊心も安定していないため、「自分はできないし、できる時も自分はだめだ(どうもこうもならない)」という発想になります。この子育てのプラス面は、特にないです。一方、マイナス面としては、知的発達や愛着の問題から、非行(素行障害)に走りやすくなりなす。大人なれば、反社会性パーソナリティ障害のリスクが高まります。次のページへ >>

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クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 2

なぜ遊びは「ある」の?―進化心理学しんちゃんがするようなふざけ、からかい、いたずらなどは、社会的遊びと言えます。これまで、「なぜ遊びをするのか?」について考えてきました。その1つの答えは、コミュニケーション能力を高めるためでした。それでは、そもそもなぜ遊びは「ある」のでしょうか? その答えを、進化心理学的に考えてみましょう。実は、私たち人間だけでなく、犬やねずみなど多くの哺乳類も社会的遊びをしています。例えば、ネズミ同士が上になったり下になったりする戦いごっこ(プレイ・ファイティング)、犬が頭を下げてお尻を上げて尻尾を振る挨拶遊び(プレイ・バウ)などです。そして、哺乳類の中で私たちヒトは、さらに高度なコミュニケーションの心理を進化させました。それが、社会脳です。これは、先ほど説明した社会性、共感性、積極性を主に含んでいます。太古の昔から、そうする種、そうしたいと思う種が生き残り、子孫を残しました。その子孫が現在の私たちです。逆に、そうではない種は、子孫を残さないわけですから、理屈の上ではこの世にほぼ存在しないと言えます。つまり、「なぜ遊びは『ある』の?」という問への答えは、進化心理学的に言えば、生きるためそして子孫を残すため、つまり生存と生殖に必要だからです。だからこそ、運動と同じように、コミュニケーションもすればするほど心地良いと感じ、その能力が高まっていくのです。社会的遊び、習い事、娯楽の違いは? ―表4現代の文明社会では、社会的遊びに取って代わって、習い事や娯楽に占める割合が増えてきています。この3つの違いを比較して、その本質を探り、私たちに必要なものは何か考えてみましょう。(1)社会的遊びしんちゃんが母みさえとのやりとりを楽しんでいるように、社会的遊びの特徴は、新奇希求性です。これは、新しいことや変わったことを求める心理です。そうすること自体に楽しさを見いだし、夢中になります(内発的動機付け)。逆に言えば、目的はなく、偶発性に富んだ生身の体験で、シリアスではないので余裕があります。うまく行くことが前提ではないので、冒険をして、失敗を繰り返すことができます。プラス面は、チャレンジ精神のエネルギー源になり(積極性)、コミュニケーションのルールを自分で学び(社会性)、応用するようになることです(創造性)。一方、マイナス面は、この心理を育むには時間と親や周りの配慮が必要になることです。(2)習い事カザマくんが塾で勉強をけなげにがんばっているように、習い事の特徴は、緊張感です。特定の能力を習得するために、必死になります(外発的動機付け)。はっきりとした目的があり、その目的を達成するという必然性に縛られた仮想的な体験で、シリアスで余裕があまりないです。うまく行くことが前提なので、冒険はできず、失敗は恐怖になりえます。もちろん子どもの能力がもともと高い場合、その緊張感に勝って楽しさを見いだすでしょう。しかし、子どもの能力が高くない場合は、習い事が増えれば増えるほど、難易度が高くなればなるほど、そして子どもの能力が低ければ低いほど、こなすことに追われたり、失敗による恐怖体験を繰り返すので、そうすること自体に楽しさを見いだしにくくなります。また、親が監視してプレッシャーを与えると、緊張感はますます高まります。習い事のプラス面は、習得した特定の能力を社会生活に生かしたり、生活を豊かにすることができます。例えば、勉強したことが学歴や資格となれば、職業的に役立ちます。また、スポーツや楽器演奏はそれ自体が楽しみとなります。一方、マイナス面は、主に3つあります。1つ目は、子どもの能力が低い場合、結果的に、習得しようとする能力が身に付かないばかりか別の能力が中途半端になる危うさです。顔や体格、身体能力と同じように、知的能力や言語能力についても、親の能力が子どもに一定の割合で遺伝することが分かっています。よって、例えば、親がもともと外国語を話さなかったり、母語の語彙力が多くない場合、子どもをバイリンガルにしようと早期の英語教育をしても、言語の許容能力の限界から、母語の習得も外国語の習得も中途半端になり、どちらも平均的な語彙力が身に付かない危うさがあります。また、フラッシュカードなど記憶力を高めるトレーニングばかりしても、実生活で生かされる場面が限られていれば、能力の維持が難しいという現実があります。そればかりか、知的能力のバランスが記憶力重視(システム化)に傾いてしまうので、共感性などのコミュニケーション能力の発達が中途半端になる危うさもあります。これは、先ほど説明した、ユーモアがよく分からないという心理につながっていきます。2つ目は、習い事は、社会的遊びと違って、目的や手段などの枠組みがあらかじめ決まっているため、積極性や創造性が高まりにくいことです。さらに、その時間が費やされた分、積極性や創造性を育む社会的遊びの時間が削られていくことです。例えば、幼児期の早期英才教育やお受験で週7回の習い事があったり、思春期に親が部活や恋愛を禁止する状況です。ものごとの知識としては知っているけど、生々しい体験としては分からなくなります。分かったつもりになってしまい、頭でっかちです。これは、先ほど説明した受け身の心理につながっていきます。大人になっても、とりあえずやってみようという冒険心が足りなくなります。そのため、コミュニケーション能力を高めようとしても、マニュアル本やオウム返しのなどのトレーニングに頼ってばかりになってしまいます。本や習い事で得たせっかくの知識を生かして、とりあえず職場で雑談したり合コンに行くなど実際の生身の体験を積み重ねることにためらいがちになります。また、コミュニケーションの手段としても、ライン、メール、スカイプなど情報が限られていて、いつでも相手をシャットアウトできる枠組みのあるツールや関係性に頼りがちになります。実際に会ってざっくばらんに話すことが苦手になってしまいます。3つ目は、無理強いすると、体を壊すのと同じように、緊張感や心の余裕のなさの心理的ストレスから心を壊す危うさもあります。心理実験で、もともと解決できない問題を解かされ続けた学生は、その後に簡単な問題を与えられても、無力感を持ち、学力が下がったという結果があります(学習性無力感)。このように、人は、達成しきれないことが繰り返されると、長期的にやる気をなくしてしまいます。これは、昨今の社会問題であるひきこもりにつながる心理です。よって、習い事における親の役目の大事なことは、親は単なる監督ではなく、いっしょにやって楽しむチームメイトにもなることです。例えば、あえてすぐに正解を教えず、いっしょに「なんでだろう?」と考えて、わくわくすることです。さらには、親がわざと間違えるくらいの構えが良いでしょう。また、親が本人に同じ目線でかかわり、限界を見極め、無理強いをさせないことです。例えば、習い事の更新の期間を設け、本人に続けたいか決めさせることです。また、本人が辞めたいと言っている時は、そのわけを話し合い、親が「あともう1か月続けてみるのは?」などの提案をしたとしても、最終的には本人の意思を尊重することです。そして、「どっちにしてもあなたは大丈夫」と保証して、自尊心を保つことです。本来、習い事は、社会的遊びの延長でした。学校(school)や学者(scholar)などの語源は、ギリシア語の「スコレー(scholē)」」です。これは、暇、余暇という意味で、その心の余裕から、思索や問答などの自発的で主体的な活動を指しています。ここから、ギリシア哲学が発展しました。しかし、現代の「スコレー」は、高度に構造化され、競争原理が働き、心の余裕があまりないようになってしまっています。(3)娯楽ネネちゃんが時々ウサギのぬいぐるみを殴っているように、娯楽の特徴は、ストレスを発散させる嗜癖性(しへきせい)です。嗜癖とは、すっきりするためについやってしまう心理です。英語では、アディクション(addiction)、中毒に当たります。娯楽も、社会的遊びと同じように、そうすること自体に楽しさや快感があります。しかも、自分気ままに一方的にできるので、全くシリアスではなく、心にとても余裕があります。ただし、その分、相手の気持ちを察したりして苦労することが求められないので、より良いコミュニケーションのための積極性や創造性は高まりません。また、成功体験を積み重ねているわけではないので、失敗への恐怖が克服されるわけでもないです。娯楽のプラス面は、ストレス発散です。一方、マイナス面は、2つあります。1つ目は、ストレス発散の裏返しで、嗜癖性、つまり刺激が強すぎて病みつきになり、のめり込む危うさがあることです。例えば、アルコールやタバコなどの嗜好品が分かりやすいです。さらに、より一般的には、テレビ、映画、テレビゲーム、インターネット、スマホです。これらは、映像、音声、情報の刺激がとても強い代表格です。進化心理学的に考えれば、原始の時代、このような情報や体験の入手には、調べたり人に聞いたり実際に行ったりして時間と労力がとてもかかるものでした。これらのコストをかけても生存や生殖に有利になるからこそ、脳が心地良いと感じるように進化したのでした。しかし、現代の文明社会では、あまりにも手軽に情報を入手でき、しかも疑似体験までできてしまいます。そうなると、脳は、ますますその刺激を求めるようになるわけです。特に幼少期の脳の発達は、外界からの影響を受けやすいので、刺激が強いとその分、のめり込みやすさ(嗜癖性)が強まりやすいです。よって、テレビを初めとする情報機器について、特に乳幼児には厳しく制限をすることが望ましいです。実際に、アメリカ小児科学会(AAP)は、2歳までの子どものテレビ視聴は奨励していないとの見解を示しています。これは、アメリカでディズニーが販売した赤ちゃん向け知育DVDの「ベイビーアインシュタイン」を見た赤ちゃんは、見ていない赤ちゃんよりも、語彙力が少ないという研究結果が出てしまい、返金騒動に発展したことを受けています。さらに、もともと行動の自由気ままさや人間関係での身勝手さが相まってしまうと、アルコールやドラッグなどの依存症になりやすい大人になります(クロスアディクション)。これは、先ほど説明した、出しゃばりで身勝手な心理につながっていきます。2つ目は、娯楽に時間が費やされた分、社会的遊びの時間が削られ、社会性や創造性が高まりにくくなることです。これは、先ほど説明した出しゃばり身勝手の心理につながっていきます。一見、オンラインソーシャルゲームやロールプレイングゲームは、協力したり想像して選択するルールがあるため、コミュニケーション能力を高めるのではないかと思われます。しかし、実際は、あくまでゲームです。ゲームは売れるために作られています。より多く売れるように、利用者に都合が良い刺激が過剰に仕組まれています。逆に、現実世界の厳しさを学べるような利用者に都合の悪い刺激のあるゲームは、楽しくないので、売れません。よって、娯楽における親の役目の大事なことは、娯楽に対する子どものセルフコントロールを支えることです。例えば、テレビやインターネットは2時間までのご褒美として、どの番組を見るかはチケット制にして選ばせることです。そして、「あなたならできる」と刺激して、セルフコントロールする自信を引き出すことです。本来、娯楽も、社会的遊びの延長でした。娯楽(recreation)の語源は、「再び(re)+創造(creation)」です。これは、気晴らし、元気回復という意味で、もともと創造性があることを示唆しています。それは、お祭りのように年に数回と限られていたからです。しかし、現代は、刺激の強いものが身の回りにあふれ、昔と比べると、毎日がお祭りです。つまり、現代の「再び創造(レクリエーション)」は、いつも「創造」の状態で、創造力が麻痺してしまっており、逆に創造性が失われてしまっています。これからの教育とは? ―詰め込み教育、ゆとり教育、そしてアクティブラーニングへこれまで考えてきた社会的遊び、習い事、娯楽の本質は、ちょうどそれぞれの時代の学校の3つの教育方針にも当てはまります。時代の流れの順に、それぞれの特徴を考えてみましょう。(1)詰め込み教育まずは、習い事が当てはまる詰め込み教育です。これは、まさにひたすら知識を詰め込む教育です。18世紀後半の産業革命以降、特に日本だと19世紀後半の文明開化以降、世の中に求められたのは、一定の知識、忍耐力、正確さ、そして従順さなどの画一的な労働力でした。そのために必要だったのが、画一的な教育です。それが、詰め込み教育だったのです。この教育は、戦後から60年代の高度成長期を支える大きな役割を果たしました。しかし、90年代以降、バブル崩壊による年功序列制度と終身雇用制度の破綻によって、行き詰まっています。そのわけは、もはや苦労して勉強してもあまり報われなくなったからでした。(2)ゆとり教育次に、娯楽が当てはまるゆとり教育です。これは、ゆったりとした時間を確保する教育です。詰め込み教育によって、競争意識が過剰に働くようになりました。そして、落ちこぼれや非行が問題化しました。その反省として、90年代以降、横並び意識を重視した教育方針のもと、学習時間を減らし、自由時間を増やしたのでした。しかし、ゆとり教育の問題点は、その自由時間の使い方です。子どもは、社会的遊びをしないで、当時に普及したテレビゲームや漫画などの娯楽を楽しんでいるだけだったのです。(3)アクティブラーニング最後に、社会的遊びが当てはまるアクティブラーニングです。これは、積極的に学ぶ動機付けをする教育です。詰め込み教育による受け身の心理や、ゆとり教育による自由気ままさや横並びの心理から、不登校やいじめの問題が深刻化していきました。その反省として、2014年から、積極性を重視した教育方針が打ち出されたのです。これは、授業スタイルが、従来の一方的な一斉指示による教師中心から、双方向のグループワークによる生徒中心にシフトしています。従来は、授業で内容を理解して、復習として宿題をするスタイルでした。一方、アクティブラーニングでは、予習で大まかな内容をあらかじめ理解して、授業で他の生徒たちと協力して問題に取り組み、復習を兼ねた振り返りを最後にします。よって、宿題はないです(反転授業)。そのため、アクティブラーニングでは、あえて説明を減らし、目標を示して質問を増やします。自由な発想を引き出すため、生徒がしゃべること、立ち歩くことが勧められます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 3

しんちゃんから学ぶユーモアのコツここから、すでにユーモアの「エリート」のしんちゃんから学ぶユーモアのコツを3つに整理してみましょう。どれも明日からすぐに使える基本モデルです(表2)。(1)わざと大げさしんちゃんが父ひろしといっしょに竹馬をつくるシーン。父が「まず竹を切る。そこをしっかり押さえてくれ」と言うと、「オラ切りたい。オラ切りたい」「オラに切らせないと親子の縁切るぞ」と騒ぎます。また、しんちゃんがお茶の葉を入れようとして、筒ごとひっくり返してしまいます。険しい表情の母みさえに、しんちゃんは「お茶ちゃが飛び降り自殺した・・・」と神妙な顔をします。1つ目は、このようにわざと大げさにする、誇張です。これには、さらに3つの要素があります。a. 見た目1つ目は、表情と身振りなどの見た目です(非言語的コミュニケーション)。相手と接する時に、表情を豊かにして、手を広げるなど身振り手振りを大きくすると、エネルギッシュで存在感が増します。イメージとしては、オーバーリアクションなアメリカ人で、落ち着きがないくらいを心がけると良いでしょう。b. 口調2つ目は、声の大きさや速さなど口調です(準言語的コミュニケーション)。声は大きく、早さに緩急付けると、エネルギッシュで存在感が増します。例えば、以下のように促音(小さい「っ」)や擬音、さらにはその合わせワザを意識して使うことです。促音・にほん→にっぽん ・とても→とっても ・めちゃ→めっちゃ擬音+促音・ドキドキ→ドッキドキ ・ボコボコ→ボッコボコ ・サクサク→サックサクまた、「よっ!ニッポンイチ!」「待ってましたっ!」などの掛け声、いわゆるガヤは、中身はほとんどないですが、口調によっては、場の空気を盛り上げるために、重要な役割があります。c. 発言内容3つ目は、発言内容そのものです(言語的コミュニケーション)。極端に言いすぎてしまうことで、おかしさが生まれると同時に、エネルギッシュで存在感が増します。例えば、以下のように、あえて大げさに言っていることが分かりやすいことです。暑い→雪男が来たら即死よ会議がうまくまとまった時→やっぱ私は宇宙一のリーダーだわ繰り返しのミスを指摘する→もう何回言わせる?これで3億回目よ!失敗が続く→一緒にお祓いに行こうか?しどろもどろ→朝からお酒飲んでない?以上の3つの要素の中で、1番重要なのは3つ目の言葉の内容そのものと思われがちです。しかし、実際は、見た目55%、口調38%、発言そのもの7%の順に重要なのです。これは、メラビアンの法則と呼ばれています(表1)。つまり、相手を楽しませるには、まず雰囲気作りが大事だということです。つまり、大げさな見た目と口調でウォーミングアップをしておいて、大げさなことを言う雰囲気をつくることです。ちなみに、メラビアンの法則の根拠を進化心理学的に考えることができます。それは、私たちの祖先が言葉を使う言語的コミュニケーションを始めたのは、喉の構造が進化したごく最近の20万年前です。一方、表情、身振り手振り、態度などの非言語的コミュニケーションは、すでに社会脳が進化した300万年前からです。つまり、非言語的コミュニケーションの方が圧倒的に、進化の歴史が長く、それだけ影響力が大きいと言えます。(2)わざとぼかす母みさえが風邪気味の時、しんちゃんは「母ちゃん、顔が悪いぞ」と真剣に心配します。すると、「『顔色が』でしょ!!」「ツッコませないでよ。熱があるんだから」とリアクションします。また、休日、寝ている父ひろしに、遊んでほしいしんちゃんが「父ちゃん」「ひらめ・くつでしょ」と尋ねます。すると父が「まあな」と言いつつ「たい・くつだろ」とツッコミます。2つ目は、このようにわざとぼかす、ほのめかしです。これは、ストレートに言うと角が立つ言葉をあえてぼかして伝え、相手に察するよう仕向けることです。みなさんの中には、そんなにすぐに発想できないとみなさんは思うでしょうか? まずは、ほのめかしの言い回しのストックをたくさんため込みましょう。それを状況に応じてアレンジするのです。これは、ほのめかしの引き出しとも言えます。これには、さらに3つの要素があります。a. 遠回し1つ目は、遠回しです。例えば、以下のように、状況を違った側面から指摘することです。(仕事中に寝てしまっている人に対して)寝ないで!→お疲れでいらっしゃいますね。(会議中におしゃべりしている人たちに)静かに!→何か良い意見がありそうですか?(会議中にノートに落書きをしている人に)落書きしないで!→絵、うまいですね。b. 特徴例え2つ目は、特徴例えです。これは、比較的に簡単です。普段から心の中で、相手のニックネームを付けるように心がけましょう。以下の例を参考にしてください。明るい→満開の桜みたい香水が強い→大人の雰囲気が溢れ出ているさわやか→洗い立てのふかふかのタオル頼りになる→お腹が痛い時の正露丸記憶力が良い→この病棟のスーパーコンピューターc. 状況例え3つ目は、状況例えです。これは、特徴例えの応用になります。以下の例を参考にしてみましょう。出してくれたお茶がおいしい→もしかして・・・そこに千利休、いる?遅い→雨の日の宅配ピザみたいに待ち遠しいな正座して足がしびれる→生まれたての子羊ね歯に詰まったネギ→歯茎からネギ生えてます。そろそろ収穫の時期かあ鼻毛→ゴキブリの足出てません?飼ってました?怒りで我を忘れた→一瞬、信長が乗り移ったわ(3)わざとはっきりさきほどのしんちゃんがお茶の葉をこぼしたシーンの後に、母みさえが「そうか~ママにお茶を入れてくれようとしたのか・・・ありがとう」とフォローします。すると、しんちゃんは「そうだぞ、えっへん」と偉そうにします。そしてみさえは「いばるなフフ」と微笑みます。また、しんちゃんが好意を寄せるななこちゃんから「しんちゃん、お手伝いしてえらーい」と褒められると、しんちゃんは「いえ、当然のことですから」と好青年ぶります。そして、みさえから「こーゆーことか」とツッコミが入るのです。3つ目は、このようにわざとはっきり、同感、共感です。これは、当たり前で分かりやすい気持ちを共有する言葉かけをすることで緊張を和らげることです。これには、さらに3つの要素があります。a. 本音1つ目は、本音です。周り(相手)との緊張感を俯瞰してストレートに言い当ててほっとさせることです。これには、皮肉や嫌味にならないように注意する必要があります。会議でみんなが沈黙する→換気扇の音ってけっこう良い音ね上司にゴマをすった時→私、好かれたいんです飲み会の座敷で靴を脱いだ時に靴下に穴が空いているのを自覚→はっ!靴下に穴が空いてる!恥ずかしい~b. ナンセンス2つ目は、ナンセンスです。これは、その言葉通り、無意味さのことで、ダジャレ、オヤジギャグ、一発ギャグを指します。これらは、一見、ただの幼稚な言葉遊びのように思われ、多くの人、特に女性からは敬遠されるかもしれません。しかし、ここで大事なことは、これらは単にウケを狙っていないということです。その目的は、相手にガクッと拍子抜けさせる脱力です。そして、そこから場の空気を和ませる共感につなげる意図があるのです。この発想に立てば、ナンセンスも決してくだらないものと決め付けることはできないでしょう。さらには、おもしろくないと思われても、自分から笑うという誘い笑いも効果的です。強いハートで身を削ってオヤジギャクを連発する姿に、周りはいずれ心を打たれるでしょう。特に流行り言葉は効果的です。逆に、あえて死語を使うのも効果的です。「コピーはA4で良いですか?」という質問に→ええよん。会議前の自己紹介で→○○さんだゾ!朝の挨拶に→おはヨーグルトc. お約束3つ目はお約束です。これは、決まり切った言い回しのやり取りをすることです。一種のじゃれ合いです。これも特に流行り言葉は効果的です。明日も来てくれるかな→いいとも~もう待たなくて良いですか?→ちょっと待って、ちょっと待って、おにいさん!大丈夫ですかね?→安心してください。準備してますよ。未来の賢さとは?20世紀の人間の賢さは、記憶力や情報処理能力が大きな割合を占めていました。しかし、21世紀の現在は、記憶をそんなにしなくても、手軽にスマホで検索して、知識を得ることができるようになりました。また、すでに単純作業は機械化されていますし、さらに、より複雑な情報処理が必要な作業も、近い将来に人口知能がやるでしょう。つまり、これからの時代に求められるのは、記憶や情報処理などの知識のコレクションではないです。すでにコレクションされた知識をどう使いこなすかというマネージメントです。例えば、それは、積極性、創造性、そしてコミュニケーション能力を生かして、遊び心を持って、生き生きとして周りを楽しませることです。その大切さを理解した時、私たちは、クレヨンしんちゃんから、より多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか?<< 前のページへ1)クレヨンしんちゃん大全、20112)徳田克己:育児の教科書「クレヨンしんちゃん」、福村出版、20113)汐見稔幸:子育てにとても大切な27のヒント、クレヨンしんちゃん親子学、双葉社、20064)トレーシー・カチロー:最高の子育てベスト55、ダイヤモンド社、20165)雨宮俊彦:笑いとユーモアの心理学、ミネルヴァ出版、2016

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ADHD治療薬は将来のうつ病発症に影響するか

 注意欠如・多動症(ADHD)は、うつ病を含む精神疾患を高率に合併するといわれている。しかし、ADHD治療薬がうつ病リスクの増減と関連するかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ADHD治療薬の投与とうつ病との関連を検討した。Biological psychiatry誌2016年12月15日号の報告。 対象は、1960~98年にスウェーデンで生まれ、ADHDの診断を受けた患者3万8,752例。ADHD治療薬の処方、うつ病および他の精神疾患の診断、集団ベースのレジスタから得た人口統計学的要因に関するデータを入手した。ADHD治療薬の投与とうつ病との関連は、Cox比例ハザード回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・人口統計学的および臨床的交絡因子で調整後、ADHD治療薬の投与は、うつ病の長期リスク(3年後)低下との関連が認められた(HR:0.58、95%CI:0.51~0.67)。・ADHD治療薬の投与期間が長いほど、うつ病リスクは低かった。・また、ADHD治療薬の投与は、うつ病合併率の低下と関連しており、未投与患者と比較し、うつ病発症率が20%低下していた(HR:0.80、95%CI:0.70~0.92)。 著者らは「ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病リスクを増加させないことが示唆された。むしろ、ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病合併率の低下と関連していた」としている。関連医療ニュース ADHD発症や重症度にビタミン摂取が関連 成人ADHD、世界の調査結果発表 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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統合失調症患者の再入院、ベンゾジアゼピンの影響を検証:東医大

 ベンゾジアゼピン(BZP)の高用量投与は、統合失調症患者の認知機能およびQOLに悪影響を及ぼすことが報告されている。しかし、統合失調症の臨床経過におけるBZPの効果は明らかになっていない。東京医科大学の瀧田 千歌氏らは、BZPと統合失調症患者の再入院との関連についてレトロスペクティブ研究を行った。Neuropsychiatric disease and treatment誌2016年12月15日号の報告。 対象は、2009年1月~2012年2月に東京医科大学病院から退院した統合失調症患者のうち、退院後2年以上治療を継続した108例。臨床的特徴、BZPおよび抗精神病薬などの処方量、退院時の機能の全体的評価(Global Assessment of Functioning:GAF)スコアを調査した。主要アウトカムは、何らかの理由による中止とした。 主な結果は以下のとおり。・2年間の研究期間中に44例(40.7%)が再入院した。・Cox比例ハザードモデルによる多変量解析では、教育歴の低さ(HR:2.43、p=0.032)、統合失調症発症年齢の低さ(HR:2.10、p=0.021)、ジアゼパム換算投与量の高さ(HR:6.53、p=0.011)が、退院後の再入院期間と有意に関連していた。 著者らは「統合失調症患者に対する退院時のBZP高用量投与は、再入院までの期間を短縮する可能性がある」としている。関連医療ニュース 不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する 統合失調症の再入院、剤形の違いで差はあるのか 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには

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肝性脳症に抗菌薬?新たな治療戦略

 40~50万程度いると推定される肝硬変患者、その合併症の1つである肝性脳症の治療に進歩がみられている。あすか製薬主催のプレスセミナー「知られざる肝性脳症の病態と最新治療」にて2017年1月18日、大阪市立大学 肝胆膵病態内科学 河田則文氏が新たな肝性脳症治療についての講演を行った。 肝性脳症の初期症状として、人格や行動の微妙な変化、判断力低下、睡眠パターンの乱れ、認知症、うつ病などの精神症状が現れる。初期では患者に自覚症状がないこともあり、家族もほとんど気付かない。その後、羽ばたき振戦、見当識障害、肝性口臭などの特徴的な症状が出て徐々に悪化し、最終的に昏睡に陥り寝たきり状態となる。 肝性脳症は、血中のアンモニアが高くなることで引き起こされると考えられている。アンモニアは食物を腸内細菌が代謝する過程で産生される。肝硬変になると、肝臓機能が低下しアンモニア解毒能が下がる、門脈―大循環シャントのためアンモニアが直接体循環内に入る、などが誘因となり高アンモニア血症から脳症を惹起すると考えられている。 肝性脳症の治療では、腸管内pHの低下や排便促進などによりアンモニア産生・吸収を抑制する合成二糖類、筋肉でのアミノ酸代謝を促進する分岐鎖アミノ酸製剤(以下、BCAA)、尿素回路を活性化させるカルニチン製剤などが用いられていた。そこに、腸内細菌に対し抗菌作用を示す難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名:リフキシマ)が登場した。リファキシミンは、BCAAや合成二糖類など既存の治療法で十分な効果が認められなかった場合に、治療効果を向上させるために用いられる。 リファキシミンは、腸内細菌叢におけるアンモニア酸性菌として報告されている菌群に対し抗菌活性を示すと共に、そのほとんどが体で吸収されず、消化管細菌叢に移行するという特徴を有する。二重盲検試験の結果、リファキシミン群の血中アンモニアレベルはプラセボ群に比べ有意に低下し(p=0.008)、肝性脳症の点数であるPSEインデックスもプラセボに比べ、有意に低下することが明らかとなった(p=0.0103)。また、肝性脳症による入院までの期間も、プラセボに比べ有意に延長した(p=0.01)。さらに、肝硬変患者の生存率も、プラセボに比べ有意に延長した(p=0.012)。 肝硬変が完治できない現在、肝性脳症も完治することはできない。しかし、難吸収性抗菌薬という新たな選択肢が加わった今、非代償性あっても代償性に近い時期であれば、高アンモニア血症の改善やアルブミン改善など治療を組み合わせることで代償性に戻る患者もいるという。症状が軽微な初期の段階から、肝臓専門医と他診療科医が連携し、肝性脳症の早期発見が進むことを期待したい。

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ストレスによる心血管疾患発症のメカニズムとは/Lancet

 扁桃体の活性化が心血管疾患の発症と関連し、活性化の増大は心血管疾患イベントの予測因子となる可能性があることが、米国・マサチューセッツ総合病院のAhmed Tawakol氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年1月11日号に掲載された。慢性的なストレスは心血管疾患の増加と関連し、その寄与リスクは他の主要な心血管リスク因子に匹敵するとされるが、ストレスが心血管イベントに転換するメカニズムはよくわかっていない。認知や情緒のような複雑な機能に関与する脳のネットワークが活性化すると、恐怖やストレスと典型的に関連するホルモン、自律神経系、行動の変容が引き起こされるが、扁桃体はこのネットワークの主要な構成要素と考えられている。2つの相補的な研究で関連を評価 研究グループは、扁桃体の活性化と心血管疾患イベントの関連を評価するために、2つの相補的な検討(縦断的研究と横断的研究)を行った。 2005年1月1日~2008年12月31日に、マサチューセッツ総合病院で18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)-PET/CT検査を受けた、心血管疾患や活動性のがん病変のない30歳以上の集団を対象に、縦断的な検討を行った。この研究では、安静時の扁桃体代謝活性、骨髄活性、動脈硬化性の炎症、心血管疾患イベントの関連を評価した。 また、別の横断的な研究では、知覚されたストレス、扁桃体活性、動脈の炎症、C反応性蛋白の関連を解析した。 画像解析および心血管イベントの判定は、相互に盲検化された研究者が行った。Coxモデル、log-rank検定、媒介分析(扁桃体の活性化が、メディエータ[骨髄活性、動脈炎]を介して心血管疾患の発症に影響を及ぼすかを解析)を使用して、扁桃体の活性化と心血管疾患イベントの関連を評価した。ストレスが心血管疾患の予防治療の対象となる可能性も 縦断的研究には293例(年齢中央値55歳[IQR:45.0~65.5]、男性42%)が含まれ、このうちフォローアップ期間中央値3.7年の間に22例(39件のイベント)が心血管疾患を発症した。 扁桃体の活性化は、骨髄活性の増大(r=0.47、p<0.0001)、動脈の炎症(r=0.49、p<0.0001)、心血管疾患イベントのリスク(標準化ハザード比[HR]:1.59、95%信頼区[CI]:1.27~1.98、p<0.0001)と関連し、多変量で補正した後も有意な関連が維持されていた。 また、扁桃体の活性化は、ベースラインの前臨床的なアテローム性動脈硬化のエビデンスや冠動脈硬化リスク因子の高負荷の有無、がんの既往歴の有無にかかわらず、心血管疾患との関連が認められた。さらに、安静時扁桃体活性が高い集団は、活性が低い集団よりも心血管イベントが早期に発症する可能性が示唆された。 扁桃体の活性化と心血管疾患イベントの関連には、骨髄活性の増大や動脈の炎症が介在する可能性も示唆された。すなわち、扁桃体の活性化が増大すると骨髄活性が増大し、これが動脈の炎症を促進して心血管イベントを導く経路の存在が考えられた。 一方、心理測定分析を受けた13例の横断的研究では、扁桃体の活性化は動脈の炎症と有意な関連を示した(r=0.70、p=0.0083)。また、知覚されたストレスは、扁桃体の活性化(r=0.56、p=0.0485)、動脈の炎症(r=0.59、p=0.0345)、C反応性蛋白(r=0.83、p=0.0210)との関連が認められた。さらに、知覚されたストレスと動脈炎の関連の大部分に、扁桃体の活性化が介在することが示された(p<0.05)。 著者は、「これらの知見は、情緒的ストレッサーが心血管疾患を誘導するメカニズムの考察に、新たな見識をもたらすもの」とし、「今後、慢性的なストレスは、心血管疾患の重要なリスク因子としてルーチンに検査され、治療の対象となる可能性がある」と指摘している。

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