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アルツハイマー型認知症のセントラルドグマ(解説:岡村 毅 氏)-699

 アミロイドが蓄積した無症候高齢者では、将来の認知機能低下が起きやすいことが報告された。将来MMSE得点は低下し、CDRのSum of Boxesは上昇し、ロジカルメモリも低下し、MCIへの進展も多く、FDG-PETでの代謝異常が進行し、海馬は萎縮し、脳室が拡大する。神経学の、そして人類の歴史において重要な論文である。 少し知識のある人は、そんなことは当たり前だろうと思うかもしれない。教科書を見るとアルツハイマー型認知症とは、脳にアミロイドやタウがたまり、神経細胞が破壊され、もの忘れをはじめとする認知機能の低下が起こる病気だと書いてある。もう少し詳しい教科書を見ると、アミロイドがたまり、タウが現れ、軽微な脳萎縮が出てきてから、ようやく認知機能低下が始まり、最後に生活に支障が生じるという「アミロイド・カスケード仮説」が説明されている。これこそがアルツハイマー型認知症のセントラルドグマである。 このセントラルドグマはどうやってできたのだろうか。亡くなった方の脳の研究において、後頭葉や側頭葉内側面から出現したアミロイドプラークが病気の進行とともに広がってゆくさまがBraakによってすでに示されている。生きている人についてはわからないが、このことが傍証だったわけである。またアミロイドが脳内でたまることで髄液に出てくるアミロイドβ42が減少したり、その後タウが髄液中で増えたりといった変化も傍証と言えよう。あくまで仮説だったのだ。 生体内でアミロイドの可視化ができるようになり、米国では2005年から2010年にかけてADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)研究が行われた。セントラルドグマが検証されたのである。臨床家、画像研究者、病理学者、遺伝研究者、統計学者、そして心理学者が多施設で一体となり難しい観察研究を遂行しきった、その結果が本論文である。米国の底力を感じるのは私だけではあるまい。 こうしたカスケードがわかれば、アミロイドを生成しないようにすればアルツハイマー型認知症は早くも根治できると考えるのが自然であろう。しかし、開発は失敗に次ぐ失敗である。アミロイドじゃない、タウが重要だという向きもあるが、しょせん下流の現象である。もっと厳密に、もっと早期から、介入しなければならないのだ。2011年のNational Institute on Aging-Alzheimer’s Association(NIAAA)による新たな診断基準のすごい所は、preclinical期のADを細かく病期分類しようとしていることである。科学者たちは、より早期へと時をさかのぼっているのである。 ある著名な神経学者は「病気になってからアミロイドを除去するのでは、牛が逃げて行ってしまってから、牛小屋のドアを閉めるようなものだ」と述べている。何とも米国的な例えだが、いつかわれわれは、牛が出て行く前に牛小屋に鍵をかけることが可能になるのであろうか?

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2040年、英国の認知症者数は120万人/BMJ

 英国の将来的な認知症者は、どれぐらいになるのか。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSara Ahmadi-Abhari氏らが、2002年以降の発症傾向を基にしたモデル研究で推算し、2040年には2016年現在よりも57%増しの120万人になるとの予測を発表した。最大では190万人に達する可能性もあるという。これまでに英国アルツハイマー病協会が、「年齢特異的認知症有病率が一定のままならば、2050年に英国の認知症者数は170万人超になるだろう」と予測をしている。一方で、英国、オランダおよび米国の研究で、認知症の発症率が減少傾向にあることが示され、研究グループは、動的モデリングアプローチにて将来の認知症の有病率を予測する検討を行った。BMJ誌2017年7月5日号掲載の報告。認知症発症率の経年傾向を推算し、Markovモデルを作成して有病率を予測 研究グループは、イングランドおよびウェールズの一般成人集団から参加者を募り、2002~13年の間に6回にわたってEnglish Longitudinal Study of Ageing(ELSA)研究を行った。初回ELSA(2002~03年)は1998~2001年の英国健康サーベイの参加者から募集し、男女計1万2,099例が参加した(参加率67%)。その中には50歳以上1万1,392例、同居カップル707組が含まれていた。対象集団の代表性を維持するために、その後、第3回(2006~07年、50~55歳)、第4回(2008~09年、50~74歳)、第6回(2012~13年、50~55歳)に健康で元気な参加者をそれぞれ募集。全解析には第1~6回研究参加者計1万7,906例が組み込まれた。 縦断的およびtime-to-eventデータをELSAデータと組み合わせ、追跡不能となった参加者によるバイアスを修正して、認知症発症率の経年傾向を推算した。また、Markov確率モデルIMPACT-BAM(IMPACT-Better Ageing Model)を作成し、将来の認知症有病率を予測した。IMPACT-BAMは、35歳以上集団の、心血管疾患、認知および機能障害、認知症のそれぞれの状態による死亡までの移行をモデル化したもので、認知症有病率を予測すると同時に、平均余命延長、死亡率や心血管疾患の発生率の変化によりもたらされる影響を受けて増大する集団を示すことが可能であった。発症率の低下がない場合は2040年に190万人以上 ELSAにおいて、2010年の50歳以上の認知症発症率は、男性が14.3/1,000人年、女性が17.0/1,000人年であった。認知症発症率は、2002~13年に各年相対率で2.7%(95%信頼区間[CI]:2.4~2.9)ずつ減少していた。 IMPACT-BAM用いた分析で、2016年のイングランドおよびウェールズにおける認知症者数は、約76万7,000人(95%不確定性区間[uncertainty interval:UI]:73万5,000~79万7,000)であった。認知症者数は、発症率および年齢特異的有病率の減少にもかかわらず、2020年には87万2,000人、2030年には109万2,000人、2040年には120万5,000人になると示された。 発症率の低下がない場合の感度解析では、将来の認知症者数はより大規模になり、2040年の認知症者は190万人以上になると予想された。

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SNSの2時間/日以上の使用でうつ病リスク増加:名大

 若者の携帯電話使用と思春期の不眠症やうつ病との関連について、名古屋大学の田村 晴香氏らが調査を行った。International journal of environmental research and public health誌2017年6月29日号の報告。SNSの過剰な使用はうつ病の可能性を高める 日本の高校生295例(15~19歳)を対象に、横断調査を行った。不眠症およびうつ病の評価には、それぞれアテネ不眠尺度(AIS)、うつ病自己評価尺度(CES-D)を用いた。 若者の携帯電話使用と思春期の不眠症やうつ病との関連について調査した主な結果は以下のとおり。・携帯電話の所有率は98.6%、2時間/日以上使用していた割合は58.6%、5時間/日以上使用していた割合は10.5%であった。・5時間/日以上の使用は、より短い睡眠時間と不眠症に関連していたが(OR:3.89、95%CI:1.21~12.49)、うつ病とは関連していなかった。・SNS(OR:3.63、95%CI:1.20~10.98)およびオンラインチャット(OR:3.14、95%CI:1.42~6.95)の2時間/日以上の使用は、それぞれうつ病リスクが高かった。 著者らは「携帯電話の過剰な使用は、不健康な睡眠習慣や不眠症につながる可能性がある。さらに、SNSやオンラインチャットを利用するための過剰な使用は、インターネット検索、ゲーム、動画閲覧のための使用よりも、うつ病の可能性を高める」としている。■関連記事お酒はうつ病リスク増加にも関連大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか?不眠症になりやすい食事の傾向

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抗精神病薬の長期投与、就労への影響は

 統合失調症患者の就労機能促進に対する抗精神病薬の長期有効性を評価するため、米国・イリノイ大学のMartin Harrow氏らは、初期精神疾患患者139例の縦断的マルチフォローアップ研究を行った。Psychiatry research誌オンライン版2017年6月22日号の報告。 統合失調症患者70例および精神病性気分障害コントロール患者69例を対象に、20年にわたり6回の追跡調査を行った。抗精神病薬を継続的に処方された統合失調症患者の就労機能への影響を、抗精神病薬を処方されていない統合失調症患者と比較した。被験者間の差異は、統計学的コントロールを用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・急性期入院時における統合失調症患者に対する抗精神病薬処方は、多くの患者にとって精神症状の軽減または消失に寄与するが、4年から20年後のフォローアップ期間中、抗精神病薬を処方されていない患者は、有意に良好な就労機能を有していた。・継続的に抗精神病薬を処方された患者は、就労パフォーマンスが低率であり、経時的な改善は認められなかった。・複数の他の要素も就労機能の妨げとなっていた。 著者らは「抗精神病薬を長期間処方されていない患者の中に、比較的良好な機能を有している患者がいることが示唆された。複数の他の要素は、退院後の就労パフォーマンスの低さと関連していた。縦断的データによると、統合失調症に対する抗精神病薬の長期治療に関して疑問を呈する」としている。■関連記事安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか統合失調症患者の性格で予後を予測維持期統合失調症治療、抗精神病薬の中止は可能か

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抗うつ薬の皮膚疾患に関連する抗炎症作用

 モノアミン作動性抗うつ薬の臨床的に関連する抗炎症作用についてのエビデンスが増加している。ノルウェー・オスロ大学のShirin Eskeland氏らは、慢性蕁麻疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、他の湿疹、円形脱毛症の5つの一般的な炎症性皮膚疾患と関連した抗うつ薬の使用および有効性について、PubMedおよびOvidデータベースをシステマティックに検索した。Acta dermato-venereologica誌オンライン版2017年5月17日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・1984年1月~2016年6月に報告された臨床試験または症例報告28件より、皮膚疾患患者1,252例が抽出された。・これらの患者において、抗うつ薬治療に関連した皮膚症状の明確な軽減が報告されていた。・新規抗うつ薬の研究は通常オープンラベルであった一方、第1世代抗うつ薬でのいくつかは無作為化比較試験であった。 著者らは「全体的にポジティブな結果は、抗うつ薬使用が、併存する精神疾患を治療するだけでなく、皮膚疾患に対する根拠を示している可能性がある。SSRIやミルタザピンおよびbupropionを含む新規抗うつ薬に関するさらなる研究が必要とされる」としている。■関連記事たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能抗炎症薬の抗うつ効果を検証皮膚がんとの関連研究で判明!アルツハイマー病に特異的な神経保護作用

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職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのか

 「職場ストレイン」は、職場での高い仕事の要求度と低いコントロールの組み合わせで表される。その職場ストレインにより特徴付けられる、心理社会学的に好ましくない職場環境は、従業員の抑うつ症状リスクの上昇と関連しているが、臨床的にうつ病と診断されたエビデンスは少ない。デンマーク・National Research Centre for the Working EnvironmentのI. E. H. Madsen氏らは、職場ストレインと臨床的なうつ病のリスク因子との関連を検討した。Psychological medicine誌2017年6月号の報告。 PubMed、PsycNETよりシステマティックに文献を検索し、公表されているコホート研究を特定した。また、IPD-Work(Individual-Participant-Data Meta-analysis in Working Populations)コンソーシアムより、未公表の個々レベルのデータを用いた14のコホート研究を抽出した。関連のサマリ推定値は、ランダム効果モデルを用いて算出した。個々レベルのデータ分析は、事前に公表された研究プロトコルに基づいて行った。 主な結果は以下のとおり。・公表済みの6つのコホート研究より、合計2万7,461例の対象と臨床的なうつ病患者914例が抽出された。・未公表のデータセットより、12万221例の対象と病院で治療されたファーストエピソードの臨床的なうつ病患者982例が抽出された。・公表(RR:1.77、95%CI:1.47~2.13)および未公表(RR:1.27、95%CI:1.04~1.55)のデータセット両方において、職場ストレインが臨床的なうつ病のリスク上昇と関連していた。・個々の対象の分析では、社会人口学的サブグループおよびベースライン時の身体疾患を有する対象を除外した後、同様の関連が認められた。・ベースライン時に抑うつ症状を有していた場合には、この関連に変化は認められなかったが、連続的な抑うつ症状スコアで調整すると減弱した。 著者らは「職場ストレインは、従業員の臨床的なうつ病を引き起こす可能性がある。職場ストレインがうつ病の修正可能なリスク因子であるかについて、将来の介入研究で検証する必要がある」としている。■関連記事たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大職業性ストレス対策、自身の気質認識がポイント:大阪市立大

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統合失調症に対するメマンチン補助療法に関するメタ解析

 NMDA受容体機能不全は、統合失調症の病態生理に関与する。中国・The Affiliated Brain Hospital of Guangzhou Medical UniversityのW. Zheng氏らは、統合失調症治療における非競合的NMDA受容体アンタゴニストであるメマンチンの有効性、安全性を調査するため、ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を行った。Psychological medicine誌オンライン版2017年5月22日号の報告。 標準化平均差(SMD)、加重平均差(WMD)、リスク比(RR)、95%信頼区間(CI)を算出し、分析した。 主な結果は以下のとおり。・11.5±2.6週間の8つのRCT(452例)より、メマンチン群(20mg/日)229例、プラセボ群223例が抽出された。・メマンチン群は、プラセボ群と比較し、PANSSおよびBPRSの陰性症状尺度の測定において優れていたが(SMD:-0.63、95%CI:-1.10~-0.16、p=0.009、I2=77%)、総スコアおよび陽性症状尺度、総合精神病理尺度(SMD:-0.46~-0.08、95%CI:-0.93~0.22、p=0.06~0.60、I2=0~74%)またはCGI-S(WMD:0.04、95%CI:-0.24~0.32、p=0.78)では認められなかった。・陰性症状は、1つのかけ離れたRCTを除外したのちでも有意なままであった(SMD:-0.41、95%CI:-0.72~-0.11、p=0.008、I2=47%)。・メマンチン群は、プラセボ群と比較し、MMSEを用いた認知機能の有意な改善と関連していた(WMD:3.09、95%CI:1.77~4.42、p<0.00001、I2=22%)。・両群間の中止率(RR:1.34、95%CI:0.76~2.37、p=0.31、I2=0%)と有害事象に有意な差は認められなかった。 著者らは「メマンチン補助療法は、統合失調症の陰性症状および認知機能を改善させるために有効かつ安全な治療であると考えられる。これらの結果を確認するためにも、より大きなサンプルサイズによる質の高いRCTが必要である」としている。■関連記事統合失調症へのメマンチン追加療法のメタ解析:藤田保健衛生大慢性期統合失調症、陰性症状に有効な補助療法統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか

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認知症の家族による終末期ケア、初期段階でやっておくべきこと

 認知症は、機能低下や認知機能低下を特徴とする進行性の神経変性疾患である。英国において、認知症者への終末期ケアの質は良くないといわれている。認知症者へのケアに関して、たとえば合併症のマネジメントのために、終末期においていくつかの困難な決断が生じることがある。英国・ロンドン大学のKethakie Lamahewa氏らは、認知症者の終末期における医師や家族の介護者による意思決定の困難さについて検討を行った。Health expectations誌オンライン版2017年6月22日号の報告。 本検討は、フォーカスグループ、半構造化インタビュー、主題分析法を用い、定性的方法で実施した。2015年英国認知症ボランタリーグループより認知症者の終末期ケアの経験を有する家族の介護者4人、現在認知症者の終末期ケアを行っている家族の介護者6人を対象とした。認知症の終末期ケアにおける幅広い専門知識と経験を有する医療従事者24人をサンプルとして抽出した。 主な結果は以下のとおり。・4つの主要テーマが以下のように特定された。 ◆ダイナミックなシステムで一貫したケアを提供することへの課題 ◆意思決定者間の不確実性 ◆意思決定者間の内面的、外面的な葛藤 ◆終末期への準備不足・認知症者や意思決定者自身の役割に対するコミュニケーション不足、不確実性や葛藤などの重大な困難は、終末期における意思決定を特徴づけることができる。 著者らは「本研究は、認知症者の終末期において、意思決定が改善される可能性があることを示唆している。認知症の初期段階において、より多くの会話によるアプローチを進めることで、終末期に対する準備と家族介護者の期待を高めることができる」としている。■関連記事認知症予防の新たな標的、グルコースピークアルツハイマー介護負担、日本と台湾での比較:熊本大学認知症になりやすい職業は

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統合失調症患者のワーキングメモリ改善のために

 口頭による指示に従う能力は、日々の機能において重要であるが、統合失調症患者ではほとんど研究されていない。最近の研究によると、行動ベースのプロセスは、主にワーキングメモリに依存する指示に従う能力を促進する可能性が示唆されている。中国・Castle Peak HospitalのSimon S. Y. Lui氏らは、統合失調症患者が指示に従うことで行動ベースの利点を得るかを検証した。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2017年5月22日号の報告。 臨床的に安定した統合失調症患者48例と背景およびIQの一致した対照群48例を対象に、さまざまなエンコードとリコール条件を伴う口頭による指示のスパン課題を実施した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、口頭による指示に従う能力が全体的に損なわれていたが、これはワーキングメモリの障害に起因する可能性が示唆された。・さらに重要な点として、統合失調症患者は、エンコードと修正ステージの両方において、対照群と同程度の行動ベースの利点を示した。・具体的には、対照群と統合失調症患者の両方において、行動を追加的に行うことで記憶能力が改善され、エンコードステージで単に口頭による指示を聞いていたほうと比較し、行動を実行した対象者で観察された。・修正ステージでは、口頭による指示の繰り返しと比較して、身体的な演習で指示を思い出すと記憶が改善された。 著者らは「本研究は、統合失調症患者における指示に従う能力の障害に関する初めての経験的なエビデンスである。エンコードおよび修正ステージで行動ベースのプロセスを行うことは、指示の記憶を容易にし、ワーキングメモリに利点を示すことが、統合失調症患者においても証明された。これらの知見は、統合失調症患者のための臨床的介入および認知機能の改善に有用な情報である」としている。■関連記事統合失調症の認知機能に関連する独立因子:産業医大安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか統合失調症の社会参加に影響する症状は何か

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お酒はうつ病リスク増加にも関連

 うつ病の発症率に対するリスクファクターの変化による影響を調査した研究はほとんどない。カナダ・マギル大学のXiangfei Meng氏らは、大規模縦断的集団ベース研究におけるうつ病の心理社会的リスクファクターおよびうつ病発症に対するリスクファクター改善による影響を定量化するため検討を行った。BMJ open誌2017年6月10日号の報告。 Montreal Longitudinal Catchment Area studyからのデータを使用した(2,433例)。相対リスク(RR)の推定には、多変量ポアソン回帰を用いた。うつ病発症に対するリスクファクター改善による潜在的な影響を推定するため、人口寄与割合(Population attributable fraction)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病の累積発症率は、2年間のフォローアップで4.8%、4年間のフォローアップで6.6%であった。・うつ病発症リスクの上昇と関連していたのは、より若い年齢、女性、未亡人、別居または離婚、白人、貧困、時々の飲酒、精神保健問題の家族歴、教育の不足、失業率の高い地域および白人以外の率が高い地域での居住、より文化的なコミュニティセンターやコミュニティ組織であった。・2年間のフォローアップ時、時々の飲酒(対禁酒)に起因する可能性があったうつ病発症は5.1%のみであったが、4年間のフォローアップ時には倍増した。・集団における飲酒率を10%低下させると、半分は発症を予防できる可能性があることが示唆された。 著者らは「個人および社会の両方で改善可能なリスクファクターは、公的うつ病予防プログラムのターゲットとなる可能性がある。これらのプログラムは、男女異なるリスクファクターが特定されているため、性別固有のものでなければならない。個人レベルでの予防に関しては、うつ病の約5~10%が関連する時々の飲酒のより良い管理に焦点を当てることができる。近隣の特性もまた、公的予防プログラムの対象となる可能性があるが、非常に困難かもしれない。これらは、さまざまな予防努力のコスト効果分析により正当化されている」としている。■関連記事たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能うつ病の再発を予測する3つの残存症状:慶應義塾大うつ病、男女間で異なる特徴とは

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うつ病に対するtDCS療法 vs.薬物療法/NEJM

 うつ病治療として、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct-current stimulation:tDCS)療法の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)に対する非劣性は示されず、有害事象はより多かったことが、ブラジル・サンパウロ大学のAndre R. Brunoni氏らによる単施設の二重盲検無作為化非劣性試験の結果、報告された。大うつ病障害治療としての電気刺激療法は、2009年に経頭蓋磁気刺激(TMS)が米国FDAに承認され、さまざまな試験で異なる結果が報告されている。TMSは、けいれんリスクは小さいがコスト高であり、より安価で安全な手法としてtDCSが開発されたが、これまでに同法と薬物療法を直接比較する試験は行われていなかった。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。tDCS療法 vs.エスシタロプラム vs.プラセボで直接比較 研究グループは、サンパウロ大学関連施設にて2013年10月~2016年7月に、単極性うつ病の成人患者を集めて試験を行った。被験者を3群に3対3対2の割合で無作為に割り付けて、それぞれtDCS療法+プラセボ経口薬(tDCS群)、シャムtDCS療法+エスシタロプラム(エスシタロプラム群)、シャムtDCS療法+プラセボ経口薬(プラセボ群)を投与した。 tDCS療法は、前頭葉前部に2mAの直流電気刺激を1日30分(1セッション)、計22セッション行うというもので、最初の15セッションは週末を除く平日に連続実施し、その後7セッションは週に1回のペースで行った。エスシタロプラムは、10mg/日を3週間投与し、その後は20mg/日の用量で投与した。 主要評価項目は、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HDRS-17)スコア(範囲0~52:高スコアほどうつ病がより重度であることを示す)の変化とした。測定はベースライン、3週、6週、8週、10週時点で行った。 tDCSのエスシタロプラムに対する非劣性は、スコア低下の差に関する信頼区間(CI)の下限値で判定。同値が、プラセボ群とエスシタロプラム群の差の50%以上の値で示されることとした。tDCSのエスシタロプラムに対する非劣性は示されず 計245例が無作為に割り付けられた(tDCS群94例、エスシタロプラム群91例、プラセボ群60例)。 intention-to-treat解析において、ベースラインから低下したスコアの平均(±SD)点は、tDCS群9.0±7.1点、エスシタロプラム群11.3±6.5点、プラセボ群5.8±7.9点であった。 スコア低下のプラセボ群とエスシタロプラム群の差は-5.5点であった。tDCS群とエスシタロプラム群の差は-2.3点(95%CI:-4.3~-0.4、p=0.69)であり、CI下限値(-4.3)が事前規定の非劣性マージン(-5.5点の50%値:-2.75)よりも低く、tDCSのエスシタロプラムに対する非劣性は示されなかった。 なお、tDCS群とエスシタロプラム群の対プラセボ群の差は、それぞれ3.2点(95%CI:0.7~5.5、p=0.01)、5.5点(同:3.1~7.8、p<0.001)で、いずれもプラセボ群に対する優越性は示された。 有害事象は、皮膚の発赤、耳鳴り、神経過敏の発現率がtDCS群で他の2群よりも高かった。また、tDCS群でのみ躁病の新規発症が2例報告された。エスシタロプラム群では眠気と便秘が他の2群よりも多く認められた。

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小児ADHDの合併症有病率と治療成績

 ADHDの合併症は広く研究されているが、いくつもの問題点が解決していない。イタリア・IRCCS-Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario NegriのLaura Reale氏らは、新規に診断された未治療の小児の臨床サンプル(ADHDの有無にかかわらず)における併存精神疾患を調査し、合併症のタイプに基づいて治療有効性を比較するため、多施設共同研究を行った。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2017年5月19日号の報告。 2011~16年にADHDセンター18施設より登録されたADHDレジストリデータベースを用い、特定した患者の医療記録を分析した。 主な結果は以下のとおり。・ADHDの診断基準を満たした患者は2,861例中1,919例(67%)であった。そのうちADHD単独の患者は650例(34%)、併存精神疾患を有する患者は1,269例(66%)であった(学習障害:56%、睡眠障害:23%、反抗挑発症[ODD]:20%、不安障害:12%)。・複合型で重度の障害(CGI-S:5以上)を有するADHD患者は、併存疾患を呈しやすかった。・724例中382例(53%)は、治療1年後改善が認められた。・合併症を伴うADHDは、併用療法またはメチルフェニデート単独で治療することにより、より大きな改善を示した。・具体的には、併用療法は、学習障害を伴うADHD(ES:0.66)およびODDを伴うADHD(ES:0.98)に対し有意な優位性を示し、睡眠障害または不安障害を伴うADHDでは優位性が低かった。・トレーニング介入のみでは、ADHDおよび学習障害に対し中程度の有効性しか得られなかった(ES:0.50)。 著者らは「本研究は、イタリアにおけるADHDと併存精神疾患との関連を検討した最初の研究であり、複数の臨床現場において、ADHDが複雑な疾患であることが確認された。適正かつ均一なADHDの管理を幅広く行うためには、診断や治療、サービス制度が非常に重要である」としている。■関連記事自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのかADHDに対する集中治療プログラムの効果:久留米大

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統合失調症患者の雇用獲得に必要なこと

 一般と比較すると、統合失調症患者の失業率は、全年齢層において高くなっている。これまでの研究では、統合失調症患者の失業や作業不良に対し、神経認知機能に焦点が当てられてきた。しかし、最近のいくつかの研究では、雇用困難を理解するうえで、認知機能障害と同等以上に臨床症状が重要であることが示唆されている。米国・David Geffen School of MedicineのKatiah Llerena氏らは、統合失調症患者の就職や仕事の成果を妨げる陰性症状への理解を深めることは、雇用を向上させる治療法の開発に不可欠であるとし、検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2017年6月7日号の報告。 対象は、雇用支援サービスを受けている統合失調症または統合失調感情障害患者112例。就労の有無に基づき、経験的および表現的な陰性症状が異なるかを判断した。さらに、労働者のサブセットにおいて、経験的「動機づけ」の陰性症状と労働成果との関連を調査した。神経認知機能は、MATRICS コンセンサス認知機能評価バッテリーを用いて評価し、臨床症状は、陰性症状評価尺度およびBPRSを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・表現的でない、経験的な陰性症状は、就職、就業時間、賃金と関連していた。・これらの結果は、年齢で調整した後に減弱し、有意な差は認められなかった。 著者らは「これらの結果は、雇用支援サービスを受けている統合失調症患者の雇用結果をより理解するうえで、経験的な陰性症状が重要であることを示唆している。他者との関わり、環境的、プログラム的要因との重要性を解くためには、さらなる研究が必要である」としている。■関連記事統合失調症へのメマンチン追加療法のメタ解析:藤田保健衛生大精神科再入院を減少させるには、雇用獲得がポイント抗精神病薬の副作用、医師にどれだけ伝えられているか:藤田保健衛生大

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妊婦へのリチウム使用、幼児への影響は

 妊娠初期のリチウム曝露は、幼児のEbstein奇形や全体的な先天性心疾患のリスク増加と関連している可能性があるが、そのデータは相反し、限定的である。米国・ハーバード大学医学大学院のElisabetta Patorno氏らは、メディケイドのデータより、2000~10年に出産した女性における132万5,563件の妊娠に関するコホート研究を行った。NEJM誌2017年6月8日号の報告。 妊娠第1三半期においてリチウムに曝露された幼児の心臓奇形リスクを、曝露されていない幼児と比較した。2次分析では、他の一般的に使用される気分安定薬であるラモトリギン曝露との比較を行った。リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)は、精神医学的状態、薬物療法、他の潜在的な交絡因子に関してコントロールし、推定した。 主な結果は以下のとおり。・心臓奇形が認められた幼児は、リチウムに曝露された663例中16例(2.41%)、曝露されていない132万2,955例中1万5,251例(1.15%)、ラモトリギンに曝露された1,945例中27例(1.39%)であった。・リチウムに曝露された幼児における曝露されていない幼児と比較した心臓奇形に関する調整RRは、1.65(95%CI:1.02~2.68)であった。・リチウムの用量別にみると、600mg/日以下のRRは1.11(95%CI:0.46~2.64)、601~900mg/日のRRは1.60(95%CI:0.67~3.80)、900mg/日超のRRは3.22(95%CI:1.47~7.02)であった。・右室流出路障害の有病率は、リチウムに曝露された幼児では0.60%であったのに対し、曝露されていない幼児では0.18%であった(調整RR:2.66、95%CI:1.00~7.06)。・ラモトリギンに曝露された幼児を対照として用いた場合、その結果は類似していた。 著者らは「妊娠初期における母親のリチウム使用は、幼児のEbstein奇形を含む心臓奇形リスクの増加と関連していた。この効果値は、以前に考えられていたよりも小さかった」としている。■関連記事妊娠中の抗うつ薬使用、自閉スペクトラム症への影響は妊娠中のSSRI使用、妊婦や胎児への影響は双極性障害、リチウムは最良の選択か

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双極性障害患者の自殺、治療パターンを分析

 カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのAyal Schaffer氏らは、双極性障害(BD)患者の服薬自殺の特性を他の自殺者と比較し、評価を行った。International journal of bipolar disorders誌2017年12月号の報告。 1998~2012年までのカナダ・トロントにおける、全自殺死亡者3,319例から検死データを抽出した。人口統計、既往歴、直近のストレス要因、自殺の詳細部分について、5つのサブグループで分析した。自殺のサブグループは、BDの服薬自殺、BDの他の方法による自殺、非BDの服薬自殺、非BDの他の方法による自殺、単極性うつ病の服薬自殺とした。BDと非BDの服薬自殺の間ならびにBDと単極性うつ病の服薬自殺の間において、致死的および当時の物質使用に対する毒物学的結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・BD自殺死亡者における服薬自殺は、性別(女性)、過去の自殺企図、薬物乱用の併存と、有意に関連していた。・BDおよび非BDの服薬自殺両群において、オピオイドが最も共通した致死的薬物であった。・BDおよび非BDの服薬自殺両群において、ベンゾジアゼピンおよび抗うつ薬が死亡時に最も共通していた薬剤であり、BD群の23%では、気分安定薬または抗精神病薬なしで抗うつ薬が用いられていた。・BD群において、気分安定薬を用いていた患者は31%のみであり、カルバマゼピンが最も用いられていた。・抗うつ薬、気分安定薬、抗精神病薬を用いていなかった患者は、BD群の15.5%であった。・BDの服薬自殺群は、単極性うつ病の服薬自殺群と比較し、前の週に精神科またはERを受診していた割合が高かった。■関連記事双極性障害の診断遅延は避けられないのか双極性障害、リチウムは最良の選択か双極性障害に対する抗けいれん薬の使用は、自殺リスク要因か

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認知症予防の新たな標的、グルコースピーク

 平均血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)は、認知症および認知障害のリスクと関連している。しかし、この関連における血糖変動やグルコース変動の役割は不明である。米国・ジョンズホプキンス大学公衆衛生学大学院のAndreea M. Rawlings氏らは、1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)レベルの測定により、中年期におけるグルコースピークと認知症および20年の認知機能低下リスクとの関連を調査した。Diabetes care誌7月号の報告。 コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究の約1万3,000例を対象に調査を行った。認知症は、動向調査、神経心理学的テスト、対象者またはその代理人との電話、認知症による死亡より確認した。認知機能は、3回の神経心理学的テストを20年間にわたり3回実施し、zスコアで示した。Coxモデル、線形混合効果モデルを使用した。1,5-AGレベルの10μg/mLで二分し、HbA1cの臨床的カテゴリ内で調査した。 主な結果は以下のとおり。・21年間の中央期間において、認知症は1,105例で発症した。・糖尿病患者では、1,5-AGの5μg/mL減少ごとに、推定認知症リスクが16%増加した(ハザード比:1.16、p=0.032)。・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)未満の対象者の認知機能低下については、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、20年間で0.19のzスコア上昇を示した(p=0.162)。・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)以上の対象者の中で、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、0.38のzスコア上昇を示した(p<0.001)。・糖尿病のない患者では、有意な関連が認められなかった。 著者らは「糖尿病患者では、グルコースピークが認知機能低下や認知症の危険因子となることが示唆された。平均血糖に加え、グルコースピークを標的とすることは、予防のための重要な手段となりうる」としている。■関連記事1日1時間のウオーキングで認知症リスク低下:東北大認知症予防に柑橘類は効果的か:東北大認知症の糖尿病合併、どのような影響があるか

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昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 1

今回のキーワードモラルハザード愛着形成承認欲求信頼関係モラル脳生殖戦略精子競争社会構造みなさんは、誰かの不倫が気になりますか?最近、芸能人や政治家たちへの報道によって、不倫はますます注目されています。なぜ不倫をするのでしょうか?逆に、なぜ不倫をしないのでしょうか?そもそもなぜ不倫は「ある」のでしょうか? だとしたら不倫はして良いのでしょうか?けっきょく、どうすれば良いでしょうか?これらの疑問に答えるため、今回は2014年のドラマ「昼顔」を取り上げます。このドラマの続編は2017年夏に映画として公開されています。不倫とは?主人公の紗和は、夫と平凡に暮らす結婚5年目の主婦。夫とはセックスレスで子どもはいません。一方、最近、紗和の近所に引っ越してきた利佳子は、裕福な夫と2人の娘と何不自由なく暮らしながら、遊び感覚で不倫を楽しむ人妻です。紗和は、利佳子に仕向けられたこともあって、たまたま知り合った近所の高校教師の裕一朗と惹かれ合いながら、やがて本気の恋愛に発展していきます。裕一朗も結婚2年目で子どもはおらず、いわゆる「ダブル不倫」の関係です。紗和、利佳子、裕一朗のように、不倫とは、婚姻関係にあるパートナー以外の人とセックスをすることです。ちなみに、浮気とは、婚姻関係だけでなく恋人関係にあるパートナー以外の人とセックスをすることであり、より広い意味合いになります。また、紗和と裕一朗のように恋愛の要素が強い場合は「婚外恋愛」と呼ばれ、利佳子のようにセックスの要素が強い場合は「婚外セックス」と呼ばれることはありますが、セックスをしているという点では、同じく不倫です。なぜ不倫をするの?なぜ不倫をするのでしょうか? 彼らを通して、その危険因子を環境因子と個体因子に分けて、整理してみましょう。(1)不倫の環境因子不倫の環境因子として、夫婦の片方または両方が離れていることが考えられます。その距離を3つに分けてみましょう。1)物理的に離れている紗和の夫は、残業や出張を理由に、平日の夜や休日に紗和といっしょにいる時間をあまりつくろうとはしていません。裕一朗の妻は、大学の准教授になるほど仕事熱心で、家事は裕一朗に任せて、裕一朗との時間は二の次になっています。また、紗和がパートの仕事をしているのに対して、利佳子は完全な専業主婦で、平日午後3時から5時の間の時間を持て余しており、自由に使えるお金がある程度あります。不倫の環境因子の1つ目は、夫婦の物理的な距離です。言い換えれば、夫婦でいっしょにいる時間をつくるのが難しくなっていたり、怠っている状況です。夫の単身赴任、妻の妊娠中の里帰りなどもそうです。2)心理的に離れている紗和の夫は、紗和よりもペットのハムスターのことばかり気に掛けています。裕一朗の妻は、子作りのタイミングなど自分の考えや気持ちを一方的に伝えるだけで、裕一朗の考えや気持ちを聞こうとはしていません。また、利佳子が紗和に言ったのが「3年も経てば、夫は妻を冷蔵庫同然にしかみなくなる。ドアを開けたらいつでも食べ物が入っていると思っている。壊れたら不便だけど、メンテナンスもしたことがない」というあきらめのセリフです。利佳子と彼女の夫の間にあるのは、信頼関係ではなく、力関係であることが分かります。不倫の環境因子の2つ目は、夫婦の心理的な距離です。言い換えれば、夫婦がお互いを大事にするのを怠っている状況です。結婚という制度は、簡単には離れられないという安心感が得られる一方、それに甘んじて、結婚生活での相手の不満への歩み寄りを怠ってしまうという倫理的な危うさがあります(モラルハザード)。一方的な経済支援をする利佳子の夫はとても傲慢になり、家事を独占する利佳子はとても堕落しています。3)性的に離れている紗和の夫は、子どもがいないにもかかわらず、紗和が望んでいないにもかかわらず、紗和を「ママ」と呼び、自分を「パパ」と呼ばせています。また、紗和は姑から急かされたこともあり、子作りをしようと夫を誘いますが、夫は避けています。夫は、「家族になったんだよ」「愛情がないわけではない」ということを強調して、セックスをしない理由付けをしています。毎晩、夫が紗和と手をつないで寝る儀式からほのめかされるのは、紗和は夫の母親代わりの「ママ」として見られていても、もはや女性としては見られていないようです。不倫の環境因子の3つ目は、夫婦の性的な距離です。言い換えれば、体の温もりや喜びを通して夫婦がお互いを大事にする行為を怠っている状況です。セックスは、単にお互いの性欲を満たすだけでなく、愛情や信頼関係を確かめるための重要なコミュニケーションです。(2)不倫の個体因子不倫の個体因子として、夫婦の片方または両方に満たされないものがあることが考えられます。その不足を3つに分けてみましょう。1)性欲が満たされない利佳子は、出会い系サイトを利用して、不特定多数の男性とセックスを繰り返しています。夫は利佳子に「おれの言うとおりにしてたら間違いない」「おまえはおれの稼ぎで生きている」と言うなど傲慢であり、たとえセックスをしたとしても、利佳子が満たされるセックスにはならなさそうです。不倫の個体因子の1つ目は、性処理の不足です。言い換えれば、夫婦の性欲に極端な差があることです。例えば、夫婦の力関係などによって、夫のセックスが一方的で妻の性欲が満たされない状況です。または、妻がセックスに淡泊で、夫の性欲が満たされない状況です。特に男性は性欲が満たされない場合、風俗店を利用する風俗不倫が多いです。なお、性欲が強すぎる極端な状態で、社会生活に差し障りがある場合は、セックス依存症と呼ばれます。2)愛情欲求が満たされない紗和の夫が紗和と夫婦の距離を縮めようとしないのは、そもそも彼の生い立ちに原因があることがほのめかされています。彼の父親もまたかつて不倫をしていて、彼は、母親が嫉妬で嘆き悲しみ、あきらめているのを見てきたのでした。彼には、夫婦としてお互いを大事にするというモデルがそもそもないのです。どうして良いかわからず、結果的に、夫婦関係を深めることを避けてきたのです(愛着回避)。また、彼は、積極的な女性部下に押されて、紗和と同じく不倫に近い関係に至っています。その女性部下は、「既婚者専門」と言い、言い寄っていくのです。なぜ彼女は「既婚者専門」なのでしょうか? ストーリーの中では明かされていませんが、最初から不倫を望む人の根っこの心理には、他人への不信感と自尊心の低さがあります。つまり、本当は選ばれたいけれど、選ばれないという結果が怖くて(見捨てられ不安)、それを避けるため、最初から選ばれないことを前提にした関係を望んでしまうのです。けれども、やはり選ばれたいという欲求が強くなってしまえば、結果的に相手にのめり込んでしまい、不安定になります(愛着不安定)。不倫の個体因子の2つ目は、安定した愛着形成の不足です。言い換えれば、特別に相手を選び、特別に自分が選ばれることによって、相手を大事にすると同時に自分が大事にされるという信頼関係を深めることがうまくできず、愛情欲求が満たされない状況です。さらに、最近の研究では、愛着形成のしやすさは、生育環境だけでなく、遺伝的傾向もあることが分かってきています(バソプレシン受容体)。性欲と同じように、愛着形成にも個人差があると言えるでしょう。なお、愛着回避型と愛着不安定型が極端な状態で、社会生活に差し障りがある場合は、それぞれ回避型パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害(情緒不安定性パーソナリティ障害)と呼ばれます。3)承認欲求が満たされない利佳子は、「夫が自分を愛していないことを知ってるの」「私のことを見てくれる人がいなきゃ生きてる意味ない」と言っています。彼女は、好き勝手で奔放に見えますが、自分が夫から生身の女性として扱われていないことに寂しさや空しさを感じています。不倫の個体因子の3つ目は、承認の不足です。言い換えれば、夫が女性としての妻に無関心となり、妻は自分の女性としての価値が認められていない、承認欲求が満たされていない状況です。不倫をすることで、その欲求を満たそうとしたり、紛らわそうとしています。なお、この承認欲求が強すぎる極端な状態で、社会生活に差し障りがある場合は、自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれます。なぜ不倫をしないの?紗和も裕一朗も、不倫の関係になっていることに葛藤し、強い罪悪感にさいなまれています。利佳子も、夫に対しては必死に不倫を隠し通そうとしています。彼らのように、なぜ不倫をしないようにしようとするのでしょうか? そして、不倫をしてしまったら、なぜ隠すのでしょうか?これまでは、なぜ不倫をするのかという問いへの答えが分かってきました。それでは、逆に、なぜ不倫をしないのでしょうか? そして、なぜ不倫をする人をよく思わないのでしょうか? まとめると、なぜ私たちは一夫一妻制を好むのでしょうか? その答えを、進化生物学的に考えてみましょう。私たちヒトは、近縁の種であるチンパンジーやゴリラとの共通の祖先から数百万年以上前に分かれて、進化しました。チンパンジーは不特定のオスと不特定のメスが生殖を行う乱婚型(多夫多妻型)に、ゴリラは特定の1頭のオスと特定の複数のメスが生殖を行うハーレム型(一夫多妻型)になりました。その違いの起源は生活環境です。チンパンジーはエサが豊富で密集していたのでオスとメスが出会いやすいのに対して、ゴリラはエサが少なく散在していたので出会いにくいことが考えられています。そして、ヒトは、特定のオス(男性)と特定のメス(女性)が生殖(セックス)を行う一夫一妻型になりました。その起源は性別分業です。ヒトは、二足歩行をするようになったことで、手が自由になり、食料を余分に運ぶことができるようになりました。そして、男性が食料を調達し、女性がその見返りにセックスを受け入れ、その男性との子どもを育てるという性別で役割を分業するようになりました。これが家族の始まりです。やがて、家族が血縁によっていくつも集まって100人から150人の大家族の村(生活共同体)をつくるようになりました。これが、社会の始まりです。ここから、家族や社会をつくったヒトの心(脳)の進化の歴史を踏まえて、なぜ不倫をしないのかの問いへの答えを、3つに整理してみましょう。1)夫婦の信頼関係を壊す紗和の不倫騒動で、夫は、けっきょく「何で一番そばにいる人の気持ちが分からないんだろうな」とつぶやき、離婚を決意します。夫は紗和を信頼できなくなっていたのでした。不倫をしない理由の1つ目は、夫婦の信頼関係を壊すからです。言い換えれば、夫婦関係を維持するためには、夫婦がお互いとだけセックスするとお互いに信じている必要があるからです。そうしなければ、例えば夫が不倫して別の女性に食料を渡した分、妻の食料の取り分が減り、妻の生存が危うくなります。一方、妻が不倫して別の男性からのセックスを受け入れた分、夫の子どもができる可能性が減り、夫の生殖が危うくなります。2)子どもとの信頼関係を壊す利佳子が家を出て行ったあと、代わりに家政婦さんが子どもたちのお世話をしています。訪ねてきた紗和に長女は「不倫した人がつくったご飯よりも家政婦さんのご飯の方が100倍おいしい」と叫んでいます。裕一朗の教え子は、ある事件を起こしたきっかけとして「おれ、(不倫の末にいなくなった)母親のことがあるから、大人が薄汚く見えるんだよね」「(捨てられると)生まれちゃった方はいい迷惑なんだよ」と言っています。彼の自尊心は傷付いていました。不倫をしない2つ目の理由は、子どもとの信頼関係を壊すからです。言い換えれば、子育てに責任を持つためには、父親と母親がはっきりしている必要があるからです。そうしなければ、父親が不倫して別の女性に食料を渡した分、子どもの取り分が減り、子どもの生存が危うくなります。また、母親が不倫して別の男性からのセックスを受け入れた分、父親がはっきりしなくなり、食料が確保できる可能性が減り、子どもの生存が危うくなります。結果的に、紗和の夫や夫の同僚女性のように、その子どもが成長して大人になった時に親と同じように他人と安定した信頼関係を築きにくくなる危うさもあります。3)社会との信頼関係を壊す裕一朗の上司である校長は「(不倫は)相手の家族に迷惑がかかる」と心配しています。不倫を知った裕一朗の妻が紗和のパート先に不倫の事実をバラしたことで、紗和は職場に居づらくなり、退職を迫られます。不倫をしない3つ目の理由は、社会との信頼関係を壊すからです。言い換えれば、村の秩序を維持するためには、男性と女性がお互いにセックスする相手を特定している必要があるからです。また、そうするように私たちの心(脳)は進化してきました(モラル脳)。例えば、結婚式という儀式によって、村人たちの前で、夫婦は「永遠の愛」を誓います。自分ではなくても、村の誰かが不倫をしているということを知ったら、とても気になり、好ましくは思いません。そうしなければ、不倫をされた妻の生存が危うくなったり、不倫をされた夫の生殖が危うくなることで、安定した社会の維持が危うくなります。ただし、例外があります。それは、身内やとても親しい友人が不倫をしている場合です。この時、私たちは、逆に、味方になり応援をすることもあります。そのわけは、身内であれば、自分たちの血縁(遺伝子)がより生き残るように動機付けられるからです。また、親しい友人であれば、不倫への懲罰欲(モラル脳)よりも、友情の心理(これもモラル脳の1つ)が上回るからであると言えるでしょう。次のページへ >>

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昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 2

なぜ不倫は「ある」の?これまで、なぜ不倫をしないのかという問いへの答えが分かってきました。それは、単に夫婦の信頼関係を壊すだけでなく、子どもとの信頼関係も壊し、社会との信頼関係も壊すからです。それなのに、そもそもなぜ不倫は「ある」のでしょうか? そもそもなぜヒトの生殖は完全な一夫一妻型ではないのでしょうか?その答えは、進化心理学的に考えれば、原始の時代、隠れて不倫をする種の方が、真面目に不倫をしない種よりも、遺伝子をより多く残せるからです。自分の不倫をいかに隠して、相手の不倫をいかに暴くかという目的のために、男性と女性はお互いの気持ちを必死に探り、推し量ったでしょう(メタ認知)。その子孫が、現在の私たちです。矛盾しているようにも思えますが、一夫一妻による生殖と同じくらい、実は不倫による生殖も普遍的であるということです。そして、このような生殖行動は、男性同士が協力して狩りをしたり女性同士が仲良くして子育てをする生存行動と同じくらい、ヒトの心(脳)の進化に大きな影響を与えたでしょう。さらに、自分の遺伝子をなるべく残すための生殖戦略は、男性と女性でそれぞれ違います。その違いとは、男性(精子)はなるべく多くの女性(卵子)を求める一方、女性(卵子)はなるべく優れた男性(精子)を求めることです。なぜなら、精子は小さくコストがかからないのでたくさんつくれるのに対して、卵子は大きくコストがかかるので限られているからです。それでは、この「一夫一妻型+不倫」という生殖戦略の根拠を、男性と女性のそれぞれの体の特徴(形質)や行動特性などから明らかにしてみましょう。(1)男性の生殖戦略1)長くて太くてキノコ状になったペニスでセックスに時間をかける1つ目の根拠は、ヒトの男性は長くて太くてキノコ状になったペニスでセックスに時間をかけることです。これは、メスの膣の中にすでに出された別のオスの精子を掻き出すためです。より確実に掻き出すには、掻き出しの形が長く、太く、キノコ状で、掻き出しに時間をかける必要があります。一方、ハーレム型のゴリラや乱婚型のチンパンジーは、ヒトよりもペニスは短く細く棒状で、交尾に時間をかけません。そのわけは、ゴリラの交尾は相手が完全に特定されているので、そもそも掻き出す必要がないからです。逆に、チンパンジーの交尾は相手が不特定多数で1日に何十回もあるため、掻き出す意味がなくなってしまうからです。つまり、ヒトの精子の寿命が数日であることを考え合わせると、掻き出しが効果的であるためには、1日以上数日以内に1回程度の不倫をしていることが推定できます。もしもヒトが不倫をしないのであれば、ヒトは、ゴリラと同じくらい小さく棒状のペニスを持ち、ゴリラと同じくらいセックスの時間が短いはずです。つまり、ヒトのペニスの形やセックス行動が進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。2)体と睾丸がやや大きい2つ目の根拠は、ゴリラやチンパンジーと比べてヒトの男性の体は女性よりもやや大きく、睾丸もやや大きいことです。ハーレム型のゴリラは、ヒトよりもオスメスの体格差がかなり大きく、睾丸は小さいです。一方、乱婚型のチンパンジーは、ヒトよりも体格差は小さく、睾丸はかなり大きいです。つまり、ゴリラの生殖戦略は体格の大きさであるのに対して(個体競争)、チンパンジーは精子の多さであるということです(精子競争)。そして、ヒトは、ゴリラとチンパンジーの中間であることから、ヒトの生殖が、ゴリラほど相手を特定しているわけではなく、チンパンジーほど相手を特定していないわけでもないということが分かります。もしもヒトが不倫をしないのであれば、つまり完全な一夫一妻であるなら、睾丸の大きさはゴリラと同じくらい小さいはずです。逆に、ヒトが不倫をしすぎているなら、つまり乱婚であるなら、睾丸の大きさはチンパンジーと同じくらい大きいはずです。つまり、ヒトの男性の体格や睾丸の大きさがほどほどに進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。3)久々であるほどより激しく求めてより多く射精する3つ目の根拠は、ヒトの男性は、いつも会うよりも久々に会う女性にほど、よりセックスに時間をかけて、より多く射精することです。そうすることで、自分が不在であった時間に射精された他の男性の精子を、膣からより多く掻き出し、さらに精子の数で上回ります。また、精子には種類があることが分かっています。多くは、他の男性の精子の侵入を邪魔します(ブロッカー精子)。中には、他の男性の精子を尻尾で絡み合わせて動けなくします(キラー精子)。残りのほんの少しが、卵子に向かって膣から子宮を突き進みます(エッグゲッター)。まさに、膣の中では精子たちが1つの卵子にたどり着くための戦争をしていると言えます(精子競争)。さらに、射精した後の精子は膣の中で少し固まってとどまります。これは、より受精がされやすくなる役割があるのと同時に、その後に別の男性の精子を入れにくくしようとする蓋の役割もあることが考えられています(交尾栓)。もしもヒトが不倫をしないのであれば、久々だからと言ってより多くの精子を出す必要はないはずですし、キラー精子やブロッカー精子も存在しないはずです。つまり、ヒトの男性の精子の特徴や精子の数の調整ができるように進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。(2)女性の生殖戦略1)排卵期で男性の好みが変わる1つ目の根拠は、ヒトの女性は、通常は中性的な男性を好むのに、排卵期ではより男性的な男性を好むことです。より男性的な男性とは、テストステロン(男性ホルモン)が多い男性です。ちょうど利佳子が熱を入れた産業画家のように、見た目としては、鋭い目つきで表情は険しく、ひげ面でがっしりとして、野性味が溢れた風貌をしています。中身としては、好戦的で、合理的思考に秀でて、集中力が高く、勝負師として何かすごいことをやり遂げそうな自信に満ちた風格があります。そして、何より精力絶倫であることです。これは、原始の時代に狩猟能力の高い男性のスペックです。一方、中性的な男性とは、テストステロン(男性ホルモン)が少ない男性です。ちょうど紗和の夫のように、優しい眼差しで表情は穏やかで、清潔でしなやかとして、洗練された容貌をしています。中身としては、協調的で、共感性が高く、子どもの面倒見が良い品格があります。決して精力絶倫ではありません。これは、原始の時代に育児能力の高い男性のスペックです。つまり、この好みの変化によって、中性的なマイホームパパとの安定した生活を送って生存の確率を高めつつ、より男性的な不倫相手の子どもを生んで、優秀で多様な遺伝子を残して生殖の確率を高めることができます。もしもヒトが不倫をしないのであれば、排卵期で好みが変わる必要はないはずです。つまり、ヒトの女性の好みが排卵期で変わるように進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。2)30歳代から性欲が高まる2つ目の根拠は、ヒトの女性は、10歳代から20歳代は性欲が抑えられているのに、30歳代から40歳代にかけて性欲が高まることです。そうすることで、若い時には性欲に惑わされずに、より優秀な夫を慎重に選ぶことができます。そして、子どもを2、3人生んだあとの30歳以降、夫の性欲(テストステロン)が徐々に落ちていくのと反比例して妻の性欲(テストステロン)が高まることで、「活きの良い(テストステロンが多い)」若い不倫相手との子どもを生んで、優秀で多様な遺伝子を残して生殖の確率を高めます。なお、夫との子どもがすでに2人以上生まれている場合、夫にとって自分の遺伝子が50%×2人=100%以上残せたことになるので、夫は不倫に寛容になるという考え方があります。また、そもそも子どもがいればいるほど、離婚せずに不倫相手の子どもを引き取る傾向があります。なぜなら、離婚して妻と不倫相手の子どもを追い出して、残された子どもを夫だけで育てることは困難だからです。利佳子は、不倫がばれて一度は家を追い出されますが、夫は2人の娘のために、利佳子に戻るように後に懇願します。この状況を女性は見越しているわけではないですが、結果的に妻の生存の確率も生殖の確率も下げにくくなります。ただし、遺伝子の違う不倫相手の子どもへの夫の虐待のリスクはとても高まるという別の問題はあります。ちなみに、相手の不倫に寛容になる条件として、男性側は子どもが多いことであるのに対して、女性側は年齢が上がることです。裕一朗の妻のように、若さという生殖資源をすでに使ってしまっている状況では、別の男性と今後に再婚するのは難しく、彼女は簡単には裕一朗を手放さないでしょう。もしもヒトが不倫をしないのであれば、女性が30歳以降で性欲が高まる必要はないはずです。つまり、ヒトの女性の性欲が30歳以降に高まるように進化したのは、不倫をしていたためであると考えられます。3)卵管が長い3つ目の根拠は、ヒトの女性の卵管が長いことです。卵管とは、精子と卵子が出会う場所です。卵子は、排卵期に卵巣から出されて、奥側の一方の卵管に入ります。一方、精子は、膣から子宮を通ったあと、手前側のもう一方の卵管に入ります。通常は、そのすぐ先(卵管峡部)で通行止めになりますが、排卵期の時だけこの「関所」が開き、精子は、その先の長い卵管を泳ぎ続け、卵子にたどり着きます。この卵管の「関所」によって、排卵期までの数日間で、夫を含む複数の男性とセックスをしても、その精子たちがいっしょに「関所」の前で待つことになり、卵子までのスタートラインを同じにすることができます。そして、長い「コース」を最も速く進んだ精子が卵子を勝ち取ることができます。つまり、より優れた精子(遺伝子)を得るために、女性生殖器では、よりフェアな条件のもと、精子競争を行わせています。まさに、長い卵管は、優れた精子を選りすぐるための「競技場」であると言えます。もしもヒトが不倫をしないのであれば、卵管が長くなる必要がないという考え方があります(生殖管淘汰)。実際に、メスが複数のオスと交尾する動物では、卵管が長い傾向にあるという報告があります。つまり、ヒトの卵管が長くなるように進化したのは、不倫をしていいたためであるという可能性が考えられます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 3

不倫はして良いの?これまで、なぜ不倫は「ある」のかという問いへの答えが分かってきました。それでは、不倫はして良いのでしょうか? バレなければ良いのでしょうか?その答えは、不倫は、価値観や生き方の違いであるため否定はしないですが、そのリスクやダメージを考えると推奨もしない、つまり、しない方が良いということです。ここで誤解がないようにしたいのは、一夫一妻の心理と同じように不倫の心理も進化の産物だからといって、不倫が肯定されるわけでは全くないです。例えば、私たちが甘いものをつい口にしてしまうのは原始の時代に生存のために進化した嗜好です。だからと言って、飽食の現代に甘いものを食べ過ぎて糖尿病になることを私たちは決して良しとはしないでしょう。同じように、原始の時代と違い、現代の社会構造が大きく違うため、不倫は適応的とはならないということです。その社会構造の違いを主に3つあげてみましょう。1)少子化1つ目は、少子化です。合計特殊出生率は、戦後しばらくまで4後半であったのが、2016年には1前半にまで下がり続けています。つまり、かつては子どもが4、5人いるのが当たり前だったのに、現代は1、2人でしかも一人っ子の方が多いという状況です。先ほどにも触れましたが、子どもが数人いる状況で不倫をして1人くらい婚外子がいても、許される傾向にありますが、子どもが少ない状況で不倫をすると、許されない傾向にあり、離婚のリスクが高まります。実際に、2人の子どもがいる利佳子の夫は離婚を回避しましたが、子どもがいない紗和の夫はけっきょく離婚を選択しています。よって、現代は、少子化によって、不倫による離婚リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。2)情報化2つ目は、情報化です。1990年代以降の情報革命により、お互いの行動が、良くも悪くも、透明化されるようになりました。かつては不倫してバレそうになってもうやむやで済んでいたのに、現代はSNSをチェックしたり、携帯電話の履歴を確認したり、GPSを駆使すれば、証拠が揃い、ほとんどバレてしまいます。実際に、利佳子の夫は、GPSを使って利佳子の不倫の現場を押さえています。さらに、子どもができた場合は、DNA鑑定により、夫の子なのか不倫相手の子なのかはっきりさせることもできます。よって、現代は、情報化によって、不倫の露見リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。3)パトロール化3つ目は、パトロール化です。不倫は、少子化や情報化によりバレやすく許されにくい状況から、個人だけでなく、社会の厳しい目にさらされるようになりました。有名人の不倫や隠し子(婚外子)にしても、かつては噂や週刊誌の報道があっても個人の問題として緩く扱われていたのに、現代は詳細な証拠がネット上に上がり、個々人のツイッターなどで意見が発信されることで社会の問題として議論され、厳しく取り締まられ、パトロールされるようになりました。実際に、紗和の不倫を知ったパート先の同僚たちは、紗和に冷たい態度を取ります。ちなみに、この世間のパトロール化は、不倫に限らず、いじめ、体罰、パワハラ、DV、虐待など様々なモラルの問題にも広がっています。よって、現代は、パトロール化によって、不倫への排斥リスクがますます上がるため、不倫は適応的とはならないことが分かります。不倫をしないためにどうすれば良いの?先ほどの不倫はして良いのかという問いへの答えは、しない方が良いでした。さらに強調したいのは、原始の社会から環境が大きく変わってしまった現代の文明社会において、甘いものへの嗜好を知ることで糖尿病にならないようにするのと同じように、不倫の心理をよく知ることで不倫に陥らないようにすることができるのではないかということです。利佳子は、まだ不倫をしていない紗和との初対面の時、何となく万引きしてしまった紗和を見抜いて、「ご主人と温かい家庭を築いてらっしゃる?」と皮肉を言い、紗和の満たされない気持ちを言い当てています。つまり、不倫をするには、先ほど整理した不倫の危険因子が潜んでいる可能性があるということです。逆に言えば、不倫の危険因子をよく知り、その対策を練ることで、予防することができるのではないかということです。ここから、不倫をしないためにどうすれば良いかの問いへの答えを、3つにまとめてみましょう。1)ルールの共有1つ目は、ルールを夫婦で共有することです。利佳子は、夫が一方的に決めたルールに完全服従をしていたため、不満がたまっていました。紗和は、夫と表面的なかかわりしか持たず、満たされていません。このように結婚生活での相手への不満を、感情的にネガティブに押さえ込むのではなく、改善点としてポジティブに理性的に言い合い、夫婦のルール作りをすることです。また、家事や育児などで協力や連携をあえてすることです。これは、お互いの仕事にほとんど干渉しない完全分業制ではなく、仕事を時間で分担するシフト制にすることでもあります。もちろん、分担の比率は、共稼ぎであれば半々であったり、夫が正社員で妻がパートの場合は3対7になるなど夫婦の働き方の状況によっても様々でしょう。ポイントは、0対10にしないようにすることです。そうすることで、お互いのやっていることを評価し合うことができます。さらに、ルールを達成したことによるご褒美やルールに反したことによるペナルティを事前に相談して決めることです。ご褒美としては、趣味、スポーツ、旅行などいっしょに楽しむ時間を設けるのも良いでしょう。ペナルティとしては、肩もみなどの奉仕も良いでしょう。そうすることで、物理的であれ心理的であれ、その夫婦の距離を縮めることができます。2)セックスの共有2つ目は、セックスを夫婦で共有することです。セックスが一方的であったり、紗和の夫のようにセックスレスのままであるのではなく、どんなセックスを望むか夫婦でオープンにしていることです。その前段階として、普段からスキンシップやキスなどの愛情表現をまめにしていることも重要です。そして、お互いがセックスで満足するため、そのバリエーションやシチュエーションを変えるのも良いでしょう。場合によっては、妻の排卵期で、夫はより野性味を演出する必要があるかもしれません。そうすることで、夫婦の性的な距離を縮め、お互いの性処理の不足を満たすことができます。3)心の共有3つ目は、心を夫婦で共有することです。利佳子が「3年で冷蔵庫扱い」と表していたように、「愛は4年で終わる」と唱える学者もいます。これは、子どもが4歳になり身体的自立ができる年数であり、進化心理学的には、愛が4年続きさえすれば生殖の適応度を保てたのでしょう。しかし、現代の夫婦関係は、原始の時代のように性欲という「愛」だけでつながっているわけではありません。お互いがお互いを特別な相手として大事にし合い必要とし合う連帯意識でもつながっています。そのわけは、社会が高度に複雑化した現代だからこそ、子どもが心理的自立をする10代まで引き続き子育てを協力してできるように、家族機能を維持する必要があるからです。例えば、それは、いっしょに苦労をして、その苦労をねぎらい、相手の幸せを願うことです。つまり、夫婦関係は、愛情だけでなく「情」でもつながっているということです。そして、大事なことは、夫婦関係とは、性欲による単純なものではなく、「情」が愛情を強化し維持するという複合的なものであるということを理解することです。そうすることで、夫婦の愛情欲求と承認欲求を満たすことができます。「倫(みち)」とは?不倫に陥った紗和、利佳子、裕一朗のそれぞれの夫婦が、もしも先ほどのルールの共有、性の共有、心の共有を行っていたら?おそらく不倫に陥ることはなく、このドラマは成り立たないことになってしまうでしょう。彼らから私たちが学ぶことは、夫婦のより良い信頼関係を築くことです。さらには、親子の、家族の、地域の、そして社会のより良い信頼関係を築くことでもあります。そのためには、相手のことだけでなく、相手の家族、友人、ご近所、職場などより多くの見えない人たちにも思いを馳せることです。その大切さを理解した時、私たちは、決して「不倫」ではなく、より良い「倫(みち)」を、相手といっしょに突き進んでいくことができるのではないでしょうか?<< 前のページへ1)亀山早苗:人はなぜ不倫をするのか、SB新書、20162)ジャレド・ダイアモンド:人間の性はなぜ奇妙に進化したのか、草思社文庫、20133)榎本知郎:性器の進化論、化学同人、2010

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双極性障害の入院、5~7月はとくに注意

 イタリア・トリノ大学のAndrea Aguglia氏らは、双極性障害患者における光周期の影響について検討を行った。Revista brasileira de psiquiatria誌オンライン版2017年6月12日号の報告。 イタリアの入院患者に焦点を当て、双極性障害患者を24ヵ月間にわたり追跡調査した。2013年9月~2015年8月までにイタリア・トリノ(オルバッサーノ)のSan Luigi Gonzaga Hospitalの精神科に入院したすべての患者より抽出した。患者背景および臨床データを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は730例であった。・双極性障害患者の入院率に季節的なパターンは認められなかったが、最大日光曝露であった5、6、7月は有意に高かった。・躁病エピソードを有する患者は、うつ病エピソードを有する患者と比較し、春および光周期(の昼の長さ)が長い時に入院が多かった。 著者らは「光周期は、双極性障害の重要な要素であり、環境因子としてだけでなく治療中に考慮すべき臨床パラメータである」としている。■関連記事双極性障害、再入院リスクの低い治療はどれか双極性障害の診断遅延は避けられないのか出生地が双極性障害発症時期に影響

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