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糖尿病患者の認知症リスク、活動的・社会的な生活で減らせるか

 糖尿病関連認知症に対する健康的な生活習慣の効果はまだわかっていない。今回、活動的な生活習慣と豊かな社会的ネットワークが糖尿病患者の認知症リスクの増加を防げるかどうか、スウェーデン・ストックホルム大学のAnna Marseglia氏らが検討した。その結果、活動的で社会的な生活習慣が、認知症リスクにおける糖尿病の有害作用を打ち消す可能性があることが示唆された。Diabetes Care誌オンライン版2018年12月6日号に掲載。 本研究は、Swedish National Study on Aging and Care in Kungsholmen(n=2,650)の認知症ではない高齢者の10年間の追跡調査。糖尿病は、病歴、薬剤使用、医療記録により、もしくはHbA1c 6.5%以上、HbA1c 5.7~6.5%(前糖尿病)で確定した。認知症は標準的な基準に従って専門医が診断した。「活動的な生活習慣」は、中程度~高レベルの余暇活動、もしくは社会的つながりとサポートが中程度~豊富な社会的ネットワークと定義された。認知症リスクのハザード比(HR)は、Cox回帰モデルから算出した。 主な結果は以下のとおり。・追跡調査中に246人に認知症が発症した。・前糖尿病(n=921)を除く糖尿病患者(n=243)は、糖尿病ではない参加者よりも認知症リスクが高かった(調整HR:2.0、95%信頼区間[CI]:1.4~2.9)。・糖尿病で余暇活動レベルが低い人(HR:4.2、95%CI:2.2~8.2)もしくは社会的ネットワークが乏しい人(HR:3.4、95%CI:1.9~6.1)は、余暇活動が中程度~高レベルもしくは社会的ネットワークが中程度~豊富な糖尿病でない参加者に比べて、認知症リスクが高かった。・糖尿病の参加者では、活動的な生活習慣(余暇活動レベルが高い、もしくは社会的ネットワークが豊富)が少ないリスク上昇と関連していた(HR:1.9、95%CI:1.1~3.4)。

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統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤切り替え~ドイツにおけるコスト比較

 ドイツ・Institute of Empirical Health EconomicsのChristoph Potempa氏らは、統合失調症治療において経口抗精神病薬からアリピプラゾール持効性注射剤へ切り替えることによるコスト推進要因を調査し、ドイツのヘルスケア環境における予算影響分析(BIA)を行った。Health Economics Review誌2018年11月23日号の報告。 単一レトロスペクティブ非介入前後比較研究として実施された。統合失調症患者132例を対象に、経口抗精神病薬治療およびアリピプラゾール持効性注射剤治療における精神科入院率と関連費用の比較を行った。両治療期間におけるヘルスケア関連費用を比較するため、BIAを用いた。結果のロバスト性を評価するため、単変量感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール持効性注射剤への切り替えは、経口抗精神病薬治療と比較し、6ヵ月の治療期間における精神科入院率を有意に減少させた(14% vs.55.1%、p<0.001)。・患者は、18.2%が就労者で、29.2%が就労不能であった。・患者1人当たりの統合失調症エピソード数は、アリピプラゾール持効性注射剤治療群は0.41エピソードであり、経口抗精神病薬治療群の2.58エピソードと比較し、有意に少なかった(p<0.001)。・アリピプラゾール持効性注射剤治療群は、経口抗精神病薬治療群と比較し、患者1人当たりの平均入院回数(0.16回 vs.0.63回、p<0.001)および入院日数(5.56日 vs.27.39日、p<0.001)を有意に減少させた。・さらに、診療所および精神科救急における平均滞在時間に、有意な減少が認められた(7.29日 vs.46.13日、p<0.01)。・1年間の観察期間中における統合失調症患者1人当たりのコストは、経口抗精神病薬治療群で9935.38ユーロ(直接費用:9498.36ユーロ)、アリピプラゾール持効性注射剤治療群で4557.56ユーロ(直接費用:4449.83ユーロ)であった。・ドイツのヘルスケアシステムの観点からみると、総コストは、経口抗精神病薬治療で65億1,760万6,265.43ユーロ、アリピプラゾール持効性注射剤治療で29億8,975万6,603.05ユーロであった。・この結果は、感度分析においてもロバスト性が示され、アリピプラゾール持効性注射剤治療は費用対効果の高い治療戦略であることが示唆された。 著者らは「本結果は、統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤治療は、ドイツの法定健康保険におけるコスト削減のための大きな可能性を秘めていることを示唆している」としている。■関連記事統合失調症、双極性障害に対する持効性注射剤使用と関連コスト統合失調症の再発、コスト増加はどの程度世界で最も高齢化している日本における認知症の推定コスト

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知的活動、加齢による認知機能低下を予防せず/BMJ

 認知機能は行使することによって維持または強化が可能で、後年の認知機能低下も相殺する、ということを表す“use it or lose it”の考え方がある。しかし、英国・NHS GrampianのRoger T. Staff氏らが、498例を対象に15年追跡した前向き観察試験の結果、知的活動(intellectual engagement)は、加齢による認知機能低下への移行とは関連がないことが明らかにされた。一方で、後年の認知能力の向上とはわずかに関連が認められ、なかでも問題解決型の活動が、後年の認知能力の向上と最も関連していたという。BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)掲載の報告より。認知能力を15年間、繰り返し測定 研究グループは、スコットランド北東部で自立した生活を送る1936年生まれの中高齢者498例を対象に、縦断前向き観察試験を行った。被験者は、1947年にスコットランド・メンタルヘルス調査(Scottish Mental Health Survey)を受けていた。 知的活動と、後年の認知能力と認知機能低下への移行との関連を検証した。典型的な知的活動について、質問票により評価。情報処理速度と言葉の記憶力の認知力測定値は、繰り返し15年間測定し、各認知テストについて1,200超の縦断的標本値群を得た。知的活動、幼少期の能力と教育にそれぞれ関連 知的活動は、後年の認知能力向上にわずかに関連が認められた。24ポイントスケールで、1ポイント上昇につき標準認知能力スコアは情報処理速度で0.97ポイント、記憶力では0.71ポイントの上昇が認められた(両者のp<0.05)。 とくに問題解決型の活動が、認知能力の向上に最も関連があった。1ポイント上昇につき、標準認知能力スコアの情報処理速度は0.43ポイント、記憶力は0.36ポイントの上昇が認められた(両者のp<0.05)。 一方、知的活動は、加齢による認知機能低下との関連は認められなかった。また、知的活動は、幼少期の能力(Pearson's相関係数0.35)、教育(同0.22)とそれぞれ関連が認められた(いずれもp<0.01)。

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抗うつ薬使用と道路交通事故による死亡との関連

 抗うつ薬は、最も一般的に使用されている精神疾患治療薬の1つである。しかし、抗うつ薬治療において、薬剤のクラス間または各物質に関連する交通事故リスクへの影響については、ほとんど知られていない。韓国・ソウル大学校病院のBo Ram Yang氏らは、道路交通事故における抗うつ薬使用と死亡リスクとの関連について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2018年11月24日号の報告。 2010年1月~2014年12月までの健康保険データベースにリンクした韓国国道交通機関データベース(Korean national road traffic authority database)を用いて、ケース・クロスオーバーデザインによる検討を行った。調査対象は、交通事故で死亡し、事故の1年以内に抗うつ薬を処方されていた韓国人ドライバー。ハザード期間およびマッチさせた4つの対照期間における抗うつ薬の処方状況について、他の薬剤の使用で調整した後、条件付きロジスティック回帰分析を用いて比較を行った。処方箋の数より、抗うつ薬の処方動向を調査した。使用傾向が増加している薬剤およびケース・クロスオーバーオッズ比(OR)が有意に高い薬剤には、ケース・ケース・タイム・コントロールデザインを適用した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬を使用していたドライバー1,250例において、30日ハザード期間中にリスクの増加が認められた(調整OR:1.30、95%CI:1.03~1.63)。・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)には有意なリスクが認められたが、三環系抗うつ薬では認められなかった。・しかし、すべての抗うつ薬、SSRI、SNRI、エスシタロプラム、デュロキセチンの関連性は、使用傾向を調整した後、有意ではなくなった。・パロキセチンとミルナシプランはリスク増加と関連が認められたが、それらの使用率に明らかな増加はみられず、ミルナシプランの結果には適応による交絡が影響を及ぼした可能性がある。 著者らは「抗うつ薬の処方や使用の傾向を考慮すると、パロキセチンの使用は、致死的な交通事故リスクを増加させる」としている。■関連記事自動車事故リスク、うつ病や抗うつ薬ではどうかゾルピデム処方と自動車事故リスク車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は

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脳卒中後の機能回復にfluoxetineは有効か/Lancet

 急性脳卒中患者へのfluoxetineの6ヵ月毎日投与により、うつ病の発症は低下するものの骨折が増加し、機能的アウトカムの改善は得られない可能性が、英国・エディンバラ大学のMartin Dennis氏らが行ったFOCUS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年12月5日号に掲載された。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)fluoxetineによる脳卒中後の機能的アウトカムの改善効果を示唆する小規模なプラセボ対照試験の結果が報告されており、コクランレビューでは、SSRIは脳卒中後の機能障害を抑制する可能性が示唆されている。しかし、これらのデータだけでは、治療ガイドラインの改訂には十分でなく、便益と有害反応が相殺される懸念も軽減されないという。6ヵ月後の身体機能をプラセボと比較 本研究は、英国の103施設が参加したプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2012年9月~2017年3月の期間に患者登録が行われた(英国脳卒中協会と国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的に急性脳卒中と診断され、発症後2~15日の期間に無作為割り付けが行われ、割り付け時に神経脱落症状がみられた患者であった。 被験者は、fluoxetine 20mgまたはプラセボを毎日経口投与する群に割り付けられ、6ヵ月の治療が行われた。主要評価項目は、修正Rankinスケール(mRS、0[無症状]~6[死亡])で評価された6ヵ月時の身体機能とした。 3,127例が登録され、fluoxetine群に1,564例(平均年齢71.2[SD 12.4]歳、女性38%)、プラセボ群には1,563例(71.5[12.1]歳、39%)が割り付けられた。うつ病、気分障害も12ヵ月後には有意差が消失 6ヵ月時のmRS分類の分布は両群でほぼ同等であった(0:fluoxetine群7%、プラセボ群8%、1:19%、20%、2:10%、10%、3:33%、33%、4:8%、8%、5:14%、13%、6:8%、8%)。最小化変数で補正した共通オッズ比(OR)は0.951(95%信頼区間[CI]:0.839~1.079、p=0.439)だった。 Stroke Impact Scale(SIS)の9項目(筋力、手の機能、移動、日常生活動作、記憶、コミュニケーション、感情、参加、回復)は、いずれも両群間に差はみられなかった。また、疲労(SF36の「活力」で評価、p=0.6726)および健康関連QOL(EQ5D-5Lで評価、p=0.5866)にも差はなかった。気分障害(Mental Health Inventory[MHI-5]で評価)は、6ヵ月時にはfluoxetine群で良好であった(p=0.0100)が、12ヵ月時には差はなくなった。 6ヵ月時に新たにうつ病と診断された患者の割合は、fluoxetine群が13.43%(210例)と、プラセボ群の17.21%(269例)に比べ有意に低かった(p=0.0033)が、12ヵ月時には群間差は消失した。一方、6ヵ月時の骨折の発生率は、fluoxetine群が2.88%(45例)と、プラセボ群の1.47%(23例)に比し有意に高かった(p=0.0070)。生存を含め、12ヵ月時の他の副次評価項目にも両群間に有意な差は認めなかった。 著者は、「これらの結果は、脳卒中後のうつ病の予防や機能回復の促進を目的としたfluoxetineのルーチンの使用を支持しない」としている。

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第2世代抗精神病薬と代謝変化に対する腸内微生物の役割

 第2世代抗精神病薬(SGA)の中で、代謝機能不全を誘発する薬剤がいくつか知られている。このような副作用の発現には、さまざまな要因が影響している。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのKarolina Skonieczna-Zydecka氏らは、SGAがディスバイオーシス(バランス失調)を引き起こすかの調査、腸内細菌叢の変化が体重や代謝に及ぼす影響の評価、動物やヒトを対象とした研究におけるSGA治療誘発性代謝異常のメカニズムについての検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年11月20日号の報告。 2018年7月3日までにSGAで治療された患者の微生物および体重変化について報告した研究を、データベース(PubMed、Medline、Embase、ClinicalTrials.gov、PsychInfo)よりシステマティックに文献検索した。 主な結果は以下のとおり。・マウス(8試験)およびラット(3試験)において報告された研究、7文献が抽出された。・オランザピンが5試験、リスペリドンが6試験に使用されていた。・ヒトにおいて報告された研究の3文献(4試験)のみが、リスペリドンおよび混合SGAの使用基準に適合していた。・バクテロイデス門と比較し、フィルミクテス門の増加が微生物の変化に直接的(げっ歯類5試験、ヒト4試験)または間接的(げっ歯類4試験)に影響を及ぼすことが確認された。これは、げっ歯類(8試験)およびヒト(4試験)における体重増加と同様であった。・オランザピンでは、げっ歯類における肥満、脂質生成、血漿遊離脂肪酸、酢酸塩レベルの上昇といった代謝変化(3試験)および炎症(2試験)の両方を誘発することが確認された。一方、リスペリドンでは、げっ歯類における安静時代謝率の抑制(5試験)、ヒトにおける空腹時血糖、TG、LDL、hs-CRP、antioxidant SOD、HOMA-IRの上昇が認められた(1試験)。・げっ歯類の研究において、体重に対するディスバイオーシスの性別依存的な影響が認められた(1試験)。 著者らは「抗精神病薬治療に関連する腸内微生物の変化は、体重増加や代謝異常に潜在的な影響を及ぼす。炎症や安静時代謝率の抑制は、代謝異常の発生に重要な役割を果たすと考えられる」としている。■関連記事オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析抗精神病薬の代謝への影響に関するランダム化比較試験

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神様からひと言【なぜクレームするの?どう応じれば良いの?(断るスキル)】

今回のキーワードクレームの心理クレーム対応断るスキル親身受け身捨て身みなさんは、クレームにどう応じて良いか困ったことはありませんか? 病院、学校、役所などの公的機関の現場では特に、「自分だけ待たさないで」と過剰に公平扱いを求めたり、逆に「そこを何とかお願いできませんか?」と気軽に特別扱いを求める患者、保護者、利用者の方が目立つようです。彼らには、どんな思いがあるのでしょうか? どう応じるのが正解でしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「神様からひと言」を取り上げます。この映画を通して、クレームの心理とその対応を整理して、断るスキルをいっしょに考えてみましょう。なぜクレームするの?―クレームの心理主人公の佐倉は、中堅食品会社に転職して早々にお客様相談室に異動させられます。そこで次々とかかってくるクレーム電話に奮闘します。その中の3つのケースを通して、まず、クレームの心理を3つに整理しましょう。(1)謝ってほしいだけ1ケース目は、「お宅のラーメン買ったんだけど、焼き豚が入ってない」「写真にはちゃんと入っているのに」とのクレームです。佐倉は、「パッケージの写真はあくまで調理例です」「通常はみなさん、分かって購入されてますけど」ととっさに答えてしまいます。すると、客は「通常?」「つまりおれは通常じゃないってことか?」「バカって言いたいの?」と怒り出したのでした。1つ目は、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」という理解や謝罪を求める心理です。そこには、確かに勘違いをしてしまったのは自分だけど、そもそも客に勘違いをさせる会社も悪いという思いがあります。特に、すぐにひどい目に遭ったと思い込みやすい人(妄想性パーソナリティ)や、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)に多いです。(2)話がしたいだけ2ケース目は、「新しいラーメンの味がおかしい」「これね、絶対に変」「私の舌がおかしいってこと?」「私はまだボケてなんかいませんよ」「あなたご自分で食べてみた、このラーメン?」「あなたお名前は?」との高齢の女性らしき人からのクレームです。2つ目は、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」という暇つぶしやお節介をしたがる心理です。そこには、「正論を言いたい」「お説教をしたい」「世直しをしたい」という思いもあります。よって、その特徴は、「態度が悪い」「説明が分かりにくい」などにも及び、内容が抽象的であることです。特に、最近目立つのは、高齢者のクレームです。クレームを付けること自体が目的化してしまい、解決することが目的にはなっていないことがあります。そして、しつこくて時間がかかります。その理由として、彼らが、定年退職の後や、子どもが成人して家を出た後に、ほかにすることがなく、話し相手がいなくて、エネルギーや時間を持て余していることが考えられます。(3)得したいだけ3ケース目は、「おまえんとこのらっきょうに虫が入ってやがったんだよ」「どうすんだ!え!」「責任とれ!」との怒気を帯びたクレームです。そして、訪問謝罪の上、謝罪金を要求してきます。3つ目は、「得したい」「コントロールしたい」という優遇やうさ晴らしを求める心理です。この特徴は、金品の要求から、役所で「特例として認めてください」との特別扱い、さらには病院で「あの研修医をクビにしてください」、学校で「いじめ加害者にもっとペナルティを課してください」との無理難題まであります。2つ目の「話がしたいだけ」の心理とは対照的に、言葉尻を捉えて圧をかけてくるなど目的のために手段を選ばず、短期戦を望む傾向があります。どう応じれば良いの?―クレーム対応佐倉は、毎回クレームに戸惑いながらも、先輩の篠崎からその対応を教わっていきます。その極意を3つのステップに整理してみましょう。(1)寄り添うー親身1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームに対して、篠崎は佐倉から引き継いで、すぐさま「誠に申し訳ございません」「鋭いご高察、感服致しました」「私もどうかと思っておりました」「単身赴任?」「私も妻と別居中」「一人暮らしは骨身に染みております」「お互い、逆境にめげずにがんばりましょう」と丁寧に答えます。1つ目のステップは、相手の気持ちに寄り添う、つまり親身になることです。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 謝る1つ目は、まず謝ることです。ただし、平謝りするのではないです。それをやってしまうと、完全に責任をとることを認めることになります。そうではなくて、「お手間」「ご不便」「ご不快」に限定して謝ることです。そうすると、責任を問われても、「お手間をとらせたことについては申し訳ない気持ちでいっぱいです」「ご要望の点についてはこれから詳しくお聞きします」と返せます。それでも、「責任とれ!」「誠意を見せろ!」と言い続ける相手は、悪質であることが分かります。つまり、まずこちらが先に謝って相手の出方をうかがうことで、悪質かどうかが分かります。そして、今後のこちらの出方の参考になります。b. 共感する2つ目は、共感することです。例えば、「ごもっとも」「お察しします」「なるほど」「そうだったのですね」「おつらいですね」「ご心配になりますよね」などの気持ちを汲んだ言葉かけをすることです。脳科学的な男女差で言うと、女性の方がより共感的な傾向があるので、相手が女性の場合は、よりこの共感に重きを置き、話をよく聞いて時間をかけると良いでしょう。c. 理解を示す3つ目は、理解を示すことです。例えば、「○○というご負担(ご心配)があったのですね」と具体的にどういうダメージが物理的にも心理的にもあったのかに触れて、相手のことを良く理解していることを伝えることです。脳科学的な男女差で言うと、男性の方がより理屈っぽい傾向にあるので、相手が男性の場合は理解を示すことにより重きを置くと良いでしょう。d. 謝って済む問題にするこのように、謝る、共感する、理解を示すという3つのポイントを押さえた親身のステップをまず踏むと、「ひと言、言いたいだけ」「謝ってほしいだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。つまり、謝って済む問題に持ち込むことです。逆にこれを最初にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には謝って済む問題ではなくなります。書面の対応を求められるなど、腹いせや嫌がらせに発展するリスクが高まります。また、親身のステップで言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、謝ったことにはならないからです。e. 病院へのクレームで応用するとこの対応を病院でよくあるクレームに応用してみましょう。それは、予約制の外来で患者を待たせた場合です。従来は、患者から「いつまで待たせるの?」と言われたら、医療関係者は「順番でお呼びしていますから」「緊急の患者様が優先になりますから」といきなり一般論を言って、素っ気なく答えていました。そうではなく、患者から言ってこなくても、まずこちらから挨拶代わりに「お待たせしてすいません」と適宜伝えることです。そして、10分以上待たせると「○分以上お待たせして」を添え、「具合が悪くなりませんでしたか?」と聞くとより好ましいでしょう。30分以上待たせた場合は、声を潜めて、泣きそうな顔をして、申し訳なさを示すのも好ましいです(レッドフェイス効果)。この対応は、診察する医師がするとより良いです。すると、患者は、「しょうがないですよね」「先生も大変ですよね」と理解を示してくれます。f. 親身のステップの時間は?ただし、クレーム対応の場合の親身の時間は、最初の15~30分以内とします。なぜなら、ほとんどのクレームは、15分~30分以内でだいたいのことが把握できて親身に対応できるからです。ポイントは、この時間内で事態を収拾できるかどうかです。1~2時間以上だらだらとやらないことです。よって、15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「すいません。今ここではこれ以上の対応が難しいです」「このアンケート用紙にご要望をお書きください」「とても込み入ったお話に思われますので」「大事なお話なので」「のちに文書でお返事するか、もう一度お話を伺う日程の調整を行います」「どちらが良いですか?」と言い、切り上げます。そして、以下のようなアンケート用紙に記入してもらい、次のステップに進みます。アンケートは、提案書というタイトルで、内容と解決案を具体的に書くようにします。要望書とはしないです。要望ではなく、あくまで提案という認識を持ってもらうためです。また、書いてもらうことで、相手に客観視を促す狙いもあります。ちなみに、電話対応の場合も基本的に窓口対応と同じです。15~30分過ぎても相手が納得しない場合は、「誠に申し訳ございません。電話ではこちらからうまくご説明するのが難しいようです」「アンケート用紙をファックスか郵送でお送りします」と伝えて、後日の文書のお返事か、話し合いの日程調整を行います。(2)動じないー受け身2ケース目の新商品のラーメンの味がおかしいとのクレームに対して、実直な佐倉は素直に「実は(ラーメンは)まだ(食べていない)です」「申し訳ございません」「(名前は)佐倉です」と答えます。そして、親身になって話を聞き続けます。その対応を受けて、高齢の女性は、「正直な方ね」「久しぶりに誠実そうな方と話せて、何だかほっとした」と感心するのでした。2つ目のステップは、揺さぶられても動じない、つまり受け身です。親身になると、クレームがエスカレートするリスクに触れました。だから、ここでは、それでも柔道の受け身のように動じない。あたふたしないことです。あたふたすると、「頼りない」「弱そう」とつけ込まれます。ただし、多くのケースでは、親身のステップを最初に経ていると、相手が友好的になり受け身がしやすくなります。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 時間をかける1つ目は、時間をかけることです。例えば、「何とかなりませんか?」と食い下がっている場合、一般論を盾に「規則です」「期限は守ってください」とすぐに突っぱねないことです。つまり、まだ一般論は封印します。代わりに、「うーん、どうでしょうかねえ」「難しいかもしれないですねえ」と、のらりくらりと否定的であることを匂わせ、相手の出方をうかがいます。それでも食い下がってくるなら、「私一人では判断が難しいご相談です」「今ここでお答えすることができないご相談です」「持ち帰って、全体の会議で検討します」と伝えて一旦終了とします。そして、次の面談でやんわりだめだったと伝えます。そうすると、「時間と人数をかけた」「それでも難しかった」というメッセージが伝わり、より相手に受け入れやすくなります。もちろん、実際に「全体の会議で検討する」必要はないです。会議をしたというメッセージが相手に伝われば十分です。b. 受け流す2つ目は、受け流すことです。例えば、「今ここで決めていただくことができないのですか?」「先生じゃ頼りないです」と挑発的に迫られた場合、「だめなものはだめです」と言って、熱くならないことです。むしろ、「困りました」「情けないです」「苦しいです」と受け流します。たとえ「時間通りに患者を診れないんですか?」「それでも医者ですか?」と怒鳴られたとしても、熱くならず、「はい…面目ない…」としんみり答えます。1ケース目の焼き豚が入っていないと勘違いするクレームで、佐倉は「おい、責任者出せよ」と迫られ、すぐに篠崎に代わるシーンがあります。あとで篠崎は、「責任者と代われと言われて、そう簡単に代わらない」「あくまでも自分が責任者だという態度で対応する」「ただし自分で責任をとるって絶対に言っちゃいかん」「責任を持って伝えます」「ここ最重要ポイント」と佐倉に指導します。責任者をすぐに出さない理由は、もちろん動じないことを示すためです。そして、そもそも責任者は当事者ではないので、状況がよく分からず、逆に混乱を招くリスクもあるからです。c. 受け止める3つ目は、受け止めることです。例えば、「研修医の態度が悪い」「説明が分かりにくい」と抽象的な正論を振りかざす場合、「そんなことはないです」と反論しないことです。逆に、「おっしゃる通りです」「ご指摘は大変に勉強になりました。ありがとうございます」と受け止めます。「その研修医にはしっかり言い聞かせ、今後に生かすよう、十分に指導して参ります」とも言えます。抽象的なことを話し合っても、結論は出ないです。話し合いに乗るのは、具体的な要望に限定します。具体性のないクレームは、実は適当にあしらうことができるのです。もちろん、その研修医に確認をとって態度に問題がなければ、「しっかりと言い聞かせる」必要はないです。厳重注意したというメッセージが患者に伝われば十分です。d. 話を聞くだけで済む問題にするこのように、時間をかける、受け流す、受け止めるという3つのポイントを押さえた受け身のステップをまず踏むと、「話がしたいだけ」「良かれと思って言ってるだけ」と思っている人は、納得して引き下がります。つまり、話を聞くだけで済む問題に持ち込むことです。逆にこれを十分にしていないと、こじれてしまい、事が大きくなり、後々には話を聞くだけで済む問題ではなくなります。たびたび押しかけてきたり、具体的な対応策などを書面で求められるなど執拗なクレームに発展するリスクが高まります。また、受け身のステップでも言ってはいけないことは、一般論です。一般論は相手を突き放し、話を聞いたことにはならなくなるからです。e. 病院へのクレームに応用するとこの対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身のステップを経ても、納得されない場合です。「予約システムがそもそもおかしい」「医者の数を増やすべきだ」「急患も順番を待つべきだ」とその患者から言われたら、どうしましょう?従来は、つい「予算的に無理です」「人道的にだめです」といきなり一般論で反論していたでしょう。そうではなく、「『医者を増やす』『急患も順番を待つ』という貴重なご意見をありがとうございます」「今後に上層部に進言してみたいと思います」と伝えることです。患者は、自分の意見が上層部まで取り上げられると思い、まんざらでもないと思うでしょう。f. 受け身のステップの時間は?ただし、受け身の時間は、1時間以内で3回までを目安とします。ポイントは、延々と話し合いをしない、つまりある一定期間には終わらせることです。よって、一定期間を過ぎても、相手が納得しない場合は、最終ステップに進みます。(3)突き放すー捨て身らっきょうの瓶に虫が入ってたという3つ目のクレームに対して、佐倉は、お客様相談室の室長から「訪問謝罪の場合は、手みやげのほかに一律2万円お渡しする決まりです」と言われ、「それってたかってくれって言ってるようなもんじゃないですか!?」とびっくりして言います。実際に、佐倉と篠崎は、訪問謝罪に伺った時、客から「きっちり詫び入れるまで、帰さねえから覚悟しとけよ」と恫喝されます。確かに、営利のビジネスの現場なら、客の過剰なクレームでも、返品交換、クーポン券、サービス券、優待券、航空機のシートのアップグレード、そして和解金を渡すなどできる限りの特別扱いして、顧客満足度を上げるのも1つのやり方でしょう。逆に、特別扱いをしてもしなくても、客が納得しないなら、取引中止や出入禁止にするなどして、それ以上相手にしないのも1つのやり方でしょう。しかし、医療、学校、役所などの公的機関は違います。なぜなら、公的機関は、公平性と公共性があるからです。公平性の観点から、優遇するなど特別扱いはできないです。また、公共性の観点から、広く開かれて誰でも利用できることが前提で、相手にしないわけにはいかないです。では、どうしましょうか?3つ目のステップは、先ほどまで築いてきた関係は損なわれるとしても突き放す、つまり捨て身です。ようやくこのタイミングで、要望に応えることが難しいと伝えます。これには、さらにa~cの3つのポイントがあります。a. 限界を示す1つ目は、限界を示すことです。例えば、役所で「特例として認めてください」、病院で「あの研修医をクビにしてください」と無理難題を吹っかけてくる場合、「私どもにもできることとできないことがあります」「役所(または病院)の方針として」「社会通念上」「役所(または病院)の最終決定として」「総合的な判断によって」「対応が難しいです」「お気持ちはごもっともですが」「こちらとしても残念ですが」「私たちも決まりに従わなければなりません」「何とぞご理解いただけますようよろしくお願いします」などと伝えます。なお、限界を示すメッセージのポイントは3つあります。1つ目は、組織として公正・公平の原則に則った社会規範に従っており、相手も自分もルールを守るという意味では、同じ立場にあることです。つまり、ここでようやく、これまで封印していた一般論を解禁できます。2つ目は、組織として十分に検討した結果であることです。つまり、決定の根拠には組織のほかのメンバーの賛同があるということです。3つ目は、組織としての最終決定であることです。つまり、話し合いは終わりであるということです。b. 取り合わない2つ目は、取り合わないことです。例えば、「この事実をSNSで拡散させますよ」と悪評をほのめかしたり、「人権委員会に訴えます」「警察に通報します」と脅し文句で迫ってくる場合、「それは残念です」「ご納得いただけないのはとても残念です」「ただ、私どもがとやかく言える立場ではありませんので、致し方ないです」などと伝えます。逆に、事を荒立てたくない余りに、「それだけは止めてください」と言うと、どうなるでしょうか? 言うことを聞くと言う流れになってしまいます。すでに、こちらとしては、社会通念上のベストを尽くしたわけですので、怯えることはないです。ここは「暖簾に腕押し」「糠に釘」の、のらりくらりのスタンスで行きましょう。c. お引き取り願う3つ目はお引き取り願うことです。例えば、「分かりましたというまで、帰りません」と居座る場合、「お引き取りください」「これ以上は業務の支障になり、困ります」と伝えます。たとえ「私のことより、業務が大事なんですか?」と言い返されたとしてもです。それでも居座る場合、「これ以上のお話ですと、しかるべき対応をとらざるを得ないと考えております。ただ、本意ではございませんので、何とぞご理解をいただけると助かります」などと警察への通報をほのめかして警告します。こう言われて帰らない人は普通じゃないです。もし帰らないなら、本当に警察へ通報するべきです。ちなみに、3回言っても、従わない場合は、刑法の不退去罪が成立します。よって、居座りに付き合う必要は全くないです。なお、居座りを事前に回避する策としては、話し合いの終了の時間を、先ほどの提案書で事前に決めて、記載しておくことです。ただし、トラブルの因果関係や責任関係の理屈がよく分からない人(知的障害または認知症)の場合、「どなたかほかのご家族といっしょに再度お越しいただけますでしょうか?」と伝え、話の分かる人を介することもできます。それが難しい場合、もちろん警察保護という流れになります。また、ケースとしてはまれですが、「あなたバカなんですか?」「土下座してください」「死んだら!」と暴言を吐いたり、大人数で押しかけてくるなど恫喝をしてくる場合、「とても怖いです」と伝えます。そして、できるだけ多くのスタッフを集めて、立ち会ってもらいます。暴力のリスクもあるため、数で圧倒して、安全を確保する必要があります。ちなみに、暴言を繰り返す場合は刑法の脅迫罪、土下座の強要は強要罪が成立します。逆に、何とかその場を収めようとして、「まあまあまあ」となだめたり、言われるままに土下座をすると、どうなるでしょうか? 言うことを聞くという流れになります。絶対に、恫喝の手に乗らない冷静さも必要です。なお、暴言や大人数での押しかけによる恫喝を事前に回避する策として、2つあります。1つは、複数体制です。3人が理想です。1人目は直接の対応、2人目は記録係、3人目は控えで、いざという時に人を呼ぶ係です。もう1つは、相手の参加人数の制限を、先ほどの提案書で事前に決めておくことです。例えば、「部屋の大きさの都合上、参加人数は3人までです」と記載します。最後に、いきなり怒鳴り込んできた場合はどうしましょうか? まず、人を呼び、速やかに場所を変えることです。決してその場で話を始めない、つまり一人で丸腰で臨むことは避けます。これは、恫喝への対応と同じ理屈です。そして、やるべきことは、同僚たちで本人を取り囲んで、面会室や応接室までの移動の数分間に、歩きながら「お忙しい中わざわざすいませんねえ」「こんなお天気が悪い日に良くない日にわざわざ」などと無関係な雑談をすることです。このように、興奮してる人には本題をそらして親身のステップをまず滑り込ませます。こうして、場所と話題を変える場面転換によって、クールダウンを図ります。そうするのは、一時的に興奮してしまっただけの場合もあるからです。ただし、それでも興奮が治まらない場合や最初から酔っ払っている場合、「今日のところはお引き取りください」「日を改めましょう。次回にこのアンケートに記入の上、ご持参ください」と伝えます。時間を変える場面転換もします。それでも、帰らない場合は、先ほどの警察へ通報の流れになります。なお、大声を上げる、机を叩く、ドアを蹴る場合は、刑法の威力業務妨害罪が成立します。ちなみに、電話対応の場合も窓口対応と基本的に同じです。「これ以上の対応が難しいので、一旦電話は切らせていただきます。それでは失礼致します」と伝えて電話を切ります。なお、電話対応のメリットは、録音機能を付けることができる点です。「サービス向上のため」という理由付けをして、多くの企業では採用されています。録音されているという状況は客観性を生むので、こちら側も言葉を慎重に選び、お互いが冷静に話し合いをすることができるでしょう。何より、「言った、言わない」の水掛け論はなくなります。録音アナウンスの存在を知らせるだけで、クレーム電話が減ったとの報告もあります。d. 手詰まり感に持ち込むこのように、限界を示す、取り合わない、お引き取り願うという3つのポイントを押さえた捨て身のステップを最後に踏むと、「得したい」「コントロールしたい」と思っている人も、完全に納得に至らないにしても、「どうしようもない」とあきらめて引き下がります。つまり、手詰まり感に持ち込むことです。これが、落としどころです。また、親身と受け身のステップで言ってはいけないとした一般論は、捨て身のステップでは、十分に言うべきことに変わります。e. 病院へのクレームに応用するとこの対応を、先ほどの予約制の病院の外来で待たせた患者のクレームに応用してみましょう。先ほどの親身と受け身のステップを経ても、納得されない場合です。「待たされて具合が悪くなった。慰謝料払ってください」とその患者からしつこく言われたら、どうしましょう? 先ほどの限界を示す決まり文句を言いましょう。ちなみに、慰謝料や迷惑料の要求をする場合は、刑法の恐喝罪が成立します。f. 捨て身のステップの時間はただし、捨て身の時間は、1時間以内で最後で1回のみとします。ポイントは、最終的な結果を伝えるだけですので、もはや話し合いの余地はないことです。断るスキルとは?ところで、みなさんの中には、最初から毅然とした態度で接していないと、クレームがエスカレートしてしまうという懸念を持たれている方はいませんか? 確かに、毅然とした態度は、国際空港の税関なら良いでしょう。取り締まるだけのところだからです。しかし、病院、学校、役所は、取り締まるだけのところではないです。サービスを始めコミュニケーションを続けるところでもあります。進化心理学的に言えば、人間が、ほかの動物と決定的に違うことは、相手のクレームを受け入れたり断ったりしながら、協力関係を築くこと、つまり社会脳を進化させたことです。その社会脳によって、高度な社会を築き、文明を発展させました。そして、昨今のコミュニケーションに重きを置かれる社会では、クレーム対応に、コミュニケーション能力の集大成が求められるとも言えるでしょう。もっと言えば、クレーム対応をはじめとする断るスキルで重要なことは、まずこちらが相手の気持ちに寄り添いつつ、揺さぶられても動じない、時として最終的にはその協力関係は損なわれるとしても突き放すという押し引きのバランス感覚であると言えるでしょう。まさにこれが、親身、受け身、捨て身のステップです。「神様からひと言」とは?重役会議のシーンでは、毎回「お客様の声は神様のひと言」との社訓を一斉に唱えています。ラストシーンの重役会議では、佐倉は、名店とされるラーメン店の味をそのままカップ麺にしようとする安易な会社の方針に疑問を持っていました。そんな佐倉は、重役たちに「本店に行って参りました」「(出されたラーメンが)恐ろしくまずい」「今のは、私の率直な感想です」「純粋に金を払った客としての正直な気持ち」「いわば『神様からのひと言』です」と言い放ちます。「神様からひと言」とは、まさに「神様」の視点で自分自身を俯瞰して見ることとも言えるでしょう。その時に導かれる「ひと言」をよく理解した時、私たちは、より良いクレーム対応、そしてより良いコミュニケーションができるのではないでしょうか?1)神様からひと言:萩原浩、光文社文庫、20052)クレーム対応「完全撃退」マニュアル:援川聡、ダイヤモンド社、20183)小心者でもサラリとかわせる「断る」心理テクニック:内藤誼人、ゴマブックス、2006

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認知症やパーキンソン病における幻視のマネジメント

 幻視は、認知症やパーキンソン病において発現する共通の症状であり、大幅な認知機能低下や機能低下と関連しているといわれているが、その最適なマネジメント戦略はよくわかっていない。英国・Papworth Hospital NHS Foundation TrustのPeter Swann氏らは、認知症やパーキンソン病における幻視の頻度や発現機序を再調査し、それらのマネジメントについてエビデンスベースで検討を行った。International Psychogeriatrics誌オンライン版2018年11月6日号の報告。 1980年1月~2017年7月までにPubMedに掲載された研究を対象とし、システマティックレビューを行った。検索キーワードは、「幻視(visual hallucinations)」「レビュー(review)」「認知症またはパーキンソン病(dementia OR parkinson*)」とした。 主な結果は以下のとおり。・645件の研究の関連性についてスクリーニングし、最終的に89件の研究を抽出した。内訳は、メタ解析11件、ランダム化比較試験34件、その他の試験6件、関連レビュー多数であった。・他の精神症状と区別し、幻視を評価していた研究は、6件のみであった。・非定型抗精神病薬に関する研究は頻繁に行われていたが、パーキンソン病認知症におけるクロザピンを除き、その結果は不明瞭であった。・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が、幻視の治療に役立つ可能性があるとのエビデンスが、いくつか報告されていた。・全体として、ほとんどの治療に対するエフェクトサイズは小さく、長期フォローアップ研究はほとんど認められなかった。・治療においては、注意深くリスクを評価し、頻繁に見直しを行う必要がある。また、多くの患者は、治療することなく改善が認められた。・精神症状のグループ分けに一般的に使用される評価尺度を用いた幻視に関する研究データが不十分であった。 著者らは「幻視に関する特定の評価尺度や分析可能な他の評価尺度が欠如しており、現在の有効性や短期フォローアップによる小規模な研究に限定されていることから、将来における本分野の研究は重要である」としている。■関連記事認知症発症と関連する5つの精神症状認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か境界性パーソナリティ障害でみられる幻覚の正体は

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第3回 痛みの伝導系と抑制系【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第3回 痛みの伝導系と抑制系今回は、痛み刺激がどのようにして痛みとして認識されるかを中心にお話ししたいと思います。痛みの伝導系臨床的に神経末端の痛み受容器に一定量(閾値)以上の痛み刺激が加わることによって、痛みインパルスが発生します。そのインパルスは、侵害刺激伝達神経線維(AδとC線維)を経由して脊髄後角から脊髄内に入力します。そして、脊髄を横断して反対側に交叉後、脊髄白質の前・外側索を上行します。この伝導路の中でより外側あるいはより背側に存在する束は、Aδ線維を含む1次ニューロンが受け取ったインパルスが上行する伝導路とされており、主路は直接視床に終止します。白質前・外側索のより内側あるいは腹側にある束はC線維を含む1次ニューロンが受け取ったインパルスが上行する伝導路とされています。主路はやはり視床に終止します。双方の伝導路とも視床核で次のニューロンとシナプス結合します。この経路は脊髄視床路と呼ばれており、前者は発生学的に新しい「新脊髄視床路」、後者は古い「古脊髄視床路」です。したがって、前者はAδ線維に由来する鋭い、刺すような速い痛みの発現に関連深いとされており、判別性の感覚伝導をつかさどるものと考えられております。後者はC線維に由来する鈍い、うずく感じの遅い痛みの発現に関与するといわれており、原始性の感覚伝導をつかさどるものと考えられております。このC線維由来のインパルスは情動をつかさどる大脳辺縁系を経由して、大脳皮質に到達します(図1)。このために表にあるような情動因子によって痛みは変調されます。このことは、鎮痛薬の開発試験ではプラシーボ効果が高く、およそ30%以上にも及ぶことからも推察されます。たとえば、偽薬でもよく効く鎮痛薬と思って服用すると、それなりの鎮痛効果がみられますし、心地よい音楽を聴けば痛みは和らぎます。これは、痛みから逃避したいとする人類の防御機構かもしれません。後述の図2にAδとC線維のインパルス伝導の状況を示しております。図1 痛み刺激インパルスの上行系痛みの抑制系1)門調節説痛み刺激は人体に好ましくない感覚なので、それに対する防御機構が備わっています。その1つが、脊髄レベルにみられるゲートコントロール説に由来する機構です(図2)。Aδ線維、C線維に由来する痛みインパルスが脊髄の2次ニューロンに伝達されますが、触・圧覚インパルスを伝導するAβ線維も同様に伝達されます。脊髄には介在ニューロンが存在しており、シナプス前抑制作用を有します。Aδ線維、C線維からの側枝は抑制性伝達物質を、Aβ線維からは興奮性伝達物質をそれぞれ分泌します。このことは、痛い部位を擦ったり、圧迫すればシナプス前抑制が強まり、痛みが楽になってくることからも理解できます。図2 痛みの抑制系門調節説2)下行性痛覚抑制機構痛み刺激インパルスが上行する過程において、中脳水道やその周囲灰白質に側枝を出しております。痛み刺激インパルスが当該部位に入力することによって、大縫線核などから下行性感覚抑制系が活性化され、脊髄レベルで、痛み刺激インパルスの上行を抑制する機構が存在しております(図3)。この機構にはノルアドレナリン作動性、セロトニン作動性が考えられており、関連する核からそれぞれ作動しております。図3 下行性痛覚抑制機構このように痛み刺激インパルスは変調されることで、痛みを感じないように、また痛みの強度を下げるように、自己防御機構が活発に働いております。痛みの治療も、この感覚抑制系機構を活発化させることを考慮しながら進めていくものと考えます。次回は「痛みの測定法」についてお話しします。1)花岡一雄ほか. わかりやすい 神経系の話“痛みの伝導系”を探る 第2版. メディカルトリビューン;1988.2)十時忠秀ほか 編集. ペインクリニック療法の実際―痛みを持つ患者への集学的アプローチ. 南江堂;1996.p.3-14.

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自閉スペクトラム症における非感情性精神病性障害や双極性障害のリスク

 自閉スペクトラム症(ASD)を有する患者では、非感情性精神病性障害(NAPD)および双極性障害(BD)のリスクが高いといわれている。しかし、ASDとNAPDまたはBDの併発を検討したこれまでの研究では、診断バイアスや選択バイアスは考慮されていなかった。オランダ・マーストリヒト大学のR. Schalbroeck氏らは、オランダの精神医学的症例レジストリからの縦断データを用いて、ASD患者のNAPDまたはBDリスクを評価し、これまでのオランダ人集団における研究結果との比較を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2018年11月21日号の報告。 ASD患者1万7,234例を対象に、16~35歳までフォローアップ調査を行った。NAPDまたはBDリスクは、カプランマイヤー法を用いて算出した。バイアスを減少させるために、16歳までにASDと診断された患者8,337例の分析を含めた個別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ASD患者のうち、35歳までにNAPDと診断された患者は23.50%(95%信頼区間[CI]:21.87~25.22)、BDと診断された患者は3.79%(95%CI:3.06~4.69)であった。・一般集団における診断率は、NAPDで0.91%(95%CI:0.63~1.28)、BDで0.13%(0.08~0.20)であった。・リスク推定値は、おおむね低値だったが、一般集団と比べると高値だった。16歳までにASDと診断された患者に限定すると、25歳までに1.87%(95%CI:1.33~2.61)がNAPDと診断され、0.57%(95%CI:0.21~1.53)がBDと診断された。・一般集団における上記の診断率は、NAPDで0.63%(95%CI:0.44~0.86)、BDで0.08%(95%CI:0.05~0.12)であった。 著者らは「ASD患者のNAPDまたはBD発症リスクは高かった。この結果には、診断バイアスや選択バイアスは影響していないと考えられる」としている。■関連記事日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果は自閉スペクトラム症におけるうつ病や自殺念慮のリスクと保護因子自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較

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治療抵抗性統合失調症患者に対する集中的ECTのパイロット研究

 薬物治療が奏効しない治療抵抗性統合失調症(TRS)患者に対し、電気けいれん療法(ECT)の追加療法がしばしば行われる。イラン・Kermanshah University of Medical SciencesのOmran Davarinejad氏らは、TRS患者に対する8日間毎日の集中的ECTが、短期的(治療終了4週間後)および中期的(治療終了12週間後)に精神症状をどの程度改善できるかについて、検討を行った。Neuropsychobiology誌オンライン版2018年11月21日号の報告。 対象は、DSM-5の基準に基づくTRS患者14例。ECTは、8日間連続して毎日実施された。ベースライン時、治療終了時、治療終了4週間後、治療終了12週間後において、トレーニングを受けた精神科医が、疾患重症度(陽性症状、陰性症状、精神病理)および認知機能の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・精神症状(陽性症状、陰性症状、精神病理)は、ベースライン時から治療終了時および治療終了4週間後まで改善した。・治療終了12週間後には、精神症状が再び増加した。・認知機能は、ベースライン時から治療終了時および治療終了4週間後まで減少した。・しかし、治療終了12週間後には、認知機能は、ベースライン時のレベルまで戻っていた。 著者らは「TRS患者に対する集中的ECTは、短期的および中期的に精神症状を改善させた。治療終了4週間後から12週間後にかけての精神症状増加は、ECT追加セッションのベネフィットを示唆している」としている。■関連記事治療抵抗性統合失調症、ECT併用は有益か治療抵抗性統合失調症に対する電気けいれん療法とクロザピンとの併用統合失調症へのECT、アジア諸国での実態調査

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治療抵抗性うつ病に対する増強療法~メタ解析

 うつ病は、最も高い障害負荷を有する疾患の1つである。治療抵抗性うつ病(TRD)は、その負荷の重要な因子であるが、そのための最良の治療アプローチ、とくに実践可能な増強療法の有効性については、あまり知られていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのRebecca Strawbridge氏らは、TRDに対する心理学的および薬理学的な増強療法のエビデンスについて、システマティックレビュー、メタ解析を行った。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2018年11月20日号の報告。 2種類以上のうつ薬治療に対し効果不十分なうつ病患者をTRDと定義した。治験において、1種類以上の増強療法に無作為化された患者を対象とした。事前事後解析では、治療有効性を評価し、比較介入群と独立したエフェクトサイズ(ES)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・28試験が抽出された。内訳は、心理学的増強療法3件、薬理学的増強療法25件であった。・事前事後解析では、N-メチル-D-アスパラギン酸を標的とする薬剤が、最も高いESを示した(ES:1.48、95%CI:1.25~1.71)。・3試験以上行われていた薬剤は、アリピプラゾール(4試験、ES:1.33、95%CI:1.23~1.44)、リチウム(3試験、ES:1.00、95%CI:0.81~1.20)のみであった。・全体として、薬理学的増強療法(ES:1.19、95%CI:1.80~1.30)および心理学的増強療法(ES:1.43、95%CI:0.50~2.36)は、プラセボ群(ES:0.78、95%CI:0.66~0.91)および心理学的コントロール群(ES:0.94、95%CI:0.36~1.52)よりもESが大きかった。 著者らは「実臨床で広く使用されているにもかかわらず、TRDに対する増強療法のエビデンスは、あまり多くない。事前事後解析は、直接比較の欠如により制限を受けるものの、治療方法全体にわたる有望な根拠を見いだすことができる」としている。■関連記事リアルワールドデータにおける治療抵抗性うつ病治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかSSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較

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日本人高齢者における幼少期の社会経済的状況と認知症の主観的症状との関係

 西洋諸国において、小児期の社会経済的な困難と認知症や認知機能低下との関連を示唆するエビデンスが増加している。しかし、非西洋諸国において、この関連性に関する研究は行われていない。東京大学の村山 洋史氏らは、地域社会に暮らす日本人高齢者における小児期の社会経済的な状態(SES)と認知症の主観的な症状との関連を調査し、この関連性が年齢や性別により変動するかを検討した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2018年10月20日号の報告。 東京都足立区の65歳以上のすべての住民13万2,005人を対象とした断面調査よりデータを抽出した。自己評価による認知症チェックシートを用いて主観的な症状を評価し、臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating:CDR)と比較し、検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・7万5,358件のアンケートデータを分析した。・潜在的な共変量で調整した後、小児期の低SESは、認知症の主観的な症状と関連している可能性が高かった。・小児期のSESと認知症の主観的な症状との関連は、年齢で有意な相互関係が認められたが、性別では認められなかった。・年齢層別分析では、小児期の低SESと認知症の主観的な症状との関連性は、65~74歳群よりも75歳以上群でより強く、この関連に対する年齢変化の影響を示唆している。 著者らは「小児期の低SESは、高齢期の認知症状に長期的な影響を及ぼし、この影響は、年齢により異なることが示唆された。この差異は、日本における社会的および歴史的(第2次世界大戦、戦後の混乱、その後の高い経済成長)な影響であると考えられる」としている。■関連記事小児期のストレスと将来の認知症発症との関連どのくらい前から認知症発症は予測可能かうつ病の治療転帰を予測するには、臨床的要因 < 社会経済的要因

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日本人生活保護受給者における精神病床入院の地域差に関する研究

 日本の生活保護受給者数は約200万人、年間医療扶助費は約1.8兆円に達しており、医療扶助費のうち15%は、精神疾患による入院医療費となっている。そして、さまざまな地域で精神科病床に長期間入院している患者に対する退院促進の取り組みが行われている。しかし、都道府県ごとに、どの程度の生活保護受給者が精神科病床に入院しているか、といった基礎的な統計資料は、これまで不十分であった。東京都医学総合研究所の奥村 泰之氏らは、厚生労働省による医療扶助実態調査を活用して分析を行った。Journal of Epidemiology誌オンライン版2018年9月22日号の報告。 2014年5月、2015年5月、2016年5月の厚生労働省による医療扶助実態調査を活用して分析を行った。対象は、2016年6月審査分の生活保護受給者のレセプトより、2016年5月に精神病床に入院していた4万6,559例とした。年齢、性別で標準化された精神科病床の入院患者数は、都道府県ごとに、直接標準化法および間接標準化法を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・人口10万人当たりの精神科病床入院中の生活保護受給者数は36.6例であった。・都道府県別では、人口10万人当たりの精神科病床入院中の生活保護受給者数が最も多い長崎県(83.3例)と最も少ない長野県(12.0例)との間に約7倍の差が認められた。・重回帰モデル分析では、人口10万人当たりの精神科病床数が多い地域は、精神科病床入院中の生活保護受給者数が多い傾向が認められた(R2=28%)。・また、人口1,000人当たりの生活保護受給者数が多い地域は、精神病床入院中の生活保護受給者数が多い傾向が認められた(R2=23%)。・感度分析では、別の調査年およびサブグループからのデータにおいても、同様の所見が示唆された。 著者らは「地域移行の施策が導入されてきた後、精神科病床へ長期入院となる都道府県ごとの生活保護受給者数には、最大で約8倍の差が認められた。都道府県の差を説明する主な要因は、人口当たりの精神科病床数と生活保護受給者数であることが明らかになった。政策立案者は、地域差が生じる合理性を評価し、その差を小さくする施策を検討することが求められる」としている。■関連記事日本における精神科病床への新規入院患者の在院日数に関する研究統合失調症と双極性障害における退院後早期の精神科受診と再入院リスクに関する研究せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか

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学校全体への介入、いじめの抑制に有効/Lancet

 生徒間のいじめや攻撃行動、暴力は、最も重大な公衆衛生上の精神面の問題の1つとされる。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のChris Bonell氏らは、“Learning Together”と呼ばれる学校全体への介入により、いじめに対しては小さいものの有意な効果が得られたが、攻撃行動の改善は有意ではなかったとの研究結果を示し、Lancet誌オンライン版2018年11月22日号で報告した。Learning Togetherは、単なる教室ベースの介入ではなく、学校全体の方針やシステムの修正を目指す全校的な介入法である。修復的実践(restorative practice)を活用し、社会情動的スキル(social and emotional skills)を身に付けることで、生徒に学校環境の修正を図るよう促すという。3年後のいじめと攻撃行動を評価するクラスター無作為化試験 研究グループは、南東イングランドの中等学校において、3年間のLearning Togetherによる介入の経済および作業評価を目的に、クラスター無作為化試験「INCLUSIVE試験」を実施した(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 Learning Togetherは、修復的実践におけるスタッフの育成、学校活動グループの招集と活動の促進、生徒の社会情動的スキルに関する教育課程から成る。2014~17年に40の中等学校が登録され、Learning Togetherを行う群(20校)または標準教育を行う対照群(20校)に無作為に割り付けられた。ベースラインの生徒の年齢は11~12歳、フォローアップ終了時は14~15歳だった。 主要アウトカムは、36ヵ月時の自己申告によるいじめ被害および攻撃行動の経験であった。いじめはGatehouse Bullying Scale(GBS:他の生徒からのからかい、うわさ、仲間外れ、身体的脅威、実際の暴力などがあり、対面およびインターネットを介する場合が含まれる)、攻撃行動はEdinburgh Study of Youth Transitions and Crime(ESYTC)school misbehaviour subscaleを用いて評価した。費用は1人当たり58ポンド増加 40校で7,121例の生徒が登録され、ベースラインのデータは6,667例(93.6%、介入群:3,320例、対照群:3,347例)から、36ヵ月時のデータは7,154例中5,960例(83.3%)で得られた。 36ヵ月時の平均GBSいじめスコアは、介入群が0.29(SE 0.02)、対照群は0.34(SE 0.02)であり、補正平均差に有意差が認められ、介入群で良好であった(補正平均差:-0.03、95%信頼区間[CI]:-0.06~-0.001、p=0.0441、補正効果量:-0.08)。 36ヵ月時の平均ESYTCスコアは、介入群が4.04(SE 0.21)、対照群は4.33(SE 0.20)であり、両群間に有意な差はみられなかった(補正平均差:-0.13、95%CI:-0.43~0.18、p=0.4199、補正効果量:-0.03)。 24ヵ月時の平均GBSいじめスコア(p=0.1581)および平均ESYTCスコア(p=0.7206)には有意差はなかった。 費用については、介入群の生徒は対照群に比べ1人当たり58ポンド負担が大きかった。重篤な有害事象は、介入群が8件(自殺2件、自傷の可能性のある行為4件、刺殺事件2件)、対照群は7件(強姦の可能性のある行為6件、身体障害/長期の病気1件)発生した。 著者は、「学校全体の環境を修正することで生徒の健康を促進する介入は、小児および若者と密接に関連したリスクや、健康アウトカムへの取り組みとして最も実行性が高く、効果的な方法の1つとなる可能性がある」とまとめ、「このような介入に修復的実践を含めることで、若者のいじめや、攻撃性の高い集団の攻撃行動が低減される可能性がある」と指摘している。

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経口アリピプラゾール前処置後の統合失調症患者における持効性注射剤の有効性

 実臨床におけるアリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射剤:AOM)を使用した統合失調症治療の有効性について、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らが評価を行った。BMC Psychiatry誌2018年11月14日号の報告。 本研究は、多施設プロスペクティブ非介入研究として実施された。対象は、6ヵ月間のAOM治療をモニタリングされた統合失調症患者242例(年齢:43.1±15.1歳、男性の割合:55.0%)。評価項目は、精神病理学的尺度(簡易精神症状評価尺度:BPRS)、疾病重症度尺度(臨床全般印象度-重症度:CGI-S、臨床全般印象度-改善度:CGI-I)とした。また、治療関連有害事象(TRAE)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均BPRS合計スコアは54.1±15.6であった。平均CGI-Sスコアは4.8±0.8であり、「顕著な精神疾患(markedly ill)」が最も高頻度に認められた(41.7%)。・経口アリピプラゾールによる前処置の平均期間は、9.7ヵ月(標準偏差[SD]:22.3)であり、平均5.9ヵ月で87.9%が臨床医より「臨床的に安定している」と判断された。・6ヵ月後の全体的なBPRSスコアの差は、-13.8(SD:16.0、95%信頼区間:-15.9~-11.7、p<0.001)であった。・高CGI-Sスコア患者が有意に減少し(p<0.001)、低CGI-Sスコア患者が有意に増加した(p<0.001)。・35歳以下の若年患者において、BPRSスコアはとくに良好な改善が認められ、CGI-Sスコアは有意な低下が認められた。・TRAEはまれであり、錐体外路症状(2.9%)および体重増加(0.4%)の発生率は低かった。 著者らは「AOM治療は、長期にわたる経口アリピプラゾールにより精神症状が改善し、臨床的に安定していると判断された外来統合失調症患者に対し、さらなる有効性が示唆された。AOMの治療効果は、これまでの無作為化比較試験での結果と同様に、実臨床においても実証される」としている。■関連記事うつ病に対するアリピプラゾール増強療法の実臨床における有効性と安全性ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの体重変化への影響アリピプラゾール維持治療の52週RCT結果

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ADHD、同学年では早生まれの児童で診断率が高い/NEJM

 米国において、注意欠如・多動症(ADHD)の診断率と治療率は、幼稚園入園基準日を9月1日とする州では、基準日に近い同年の8月生まれの児童が、前年の9月生まれよりも高いことを、米国・ハーバード大学医学大学院のTimothy J. Layton氏らが、2007~09年に生まれた小児約40万人の調査で明らかにした。米国の大半の州では公立学校への入学基準を時期で区切っており、同学年でも誕生日が基準日に近い児童では、ほぼ1年の年齢差がある。そのため、同一学年のコホートにおいて、より年齢が低い(いわゆる早生まれ)児童は、より年齢が高い(遅生まれ)児童と比べて、年齢の違いによる行動がADHDと診断される可能性があると考えられていた。著者は、「今回の結果は、学年または学校クラス内の行動状況が、ADHDの診断に影響するという仮説と一致する」とまとめている。NEJM誌2018年11月29日号掲載の報告。同学年(9月入学)の9月生まれと8月生まれのADHD診断率と治療率を調査 研究グループは、大規模保険請求データベースの2007~15年のデータを用い、9月1日時点で5歳になっている児童は幼稚園に入園しなければならない州とそれ以外の州で、同じ学年の9月生まれ(遅生まれ)と8月生まれ(早生まれ)の児童のADHD診断率を比較した。ADHDの診断は、ICD第9版の診断コードに基づくものとした。また、同様に9月生まれと8月生まれの児童のADHD治療率を比較するために、処方記録も使用した。 解析対象は、2007~09年に米国全州で生まれた40万7,846人で、2015年12月まで追跡調査した。診断児の絶対差、入園基準日あり州21.5/1万例、なし州8.9/1万例 9月1日を基準日とする州では、保険請求で確認したADHDの診断率は、8月生まれの児童で85.1/1万例(309/3万6,319例、95%信頼区間[CI]:75.6~94.2)、9月生まれで63.6/1万例(225/3万5,353例、95%CI:55.4~71.9)であり、絶対差は21.5/1万例(95%CI:8.8~34.0)であった。一方、9月1日を基準日としない州では、絶対差は8.9/1万例(95%CI:-14.9~20.8)であった。 また、ADHDの治療率は、8月生まれの児童で52.9/1万例(192/3万6,319例、95%CI:45.4~60.3)、9月生まれで40.4/1万例(143/3万5,353例、95%CI:33.8~47.1)で、両者の絶対差は12.5/1万例(95%CI:2.43~22.4)であった。これらの差は、他の月における前月との比較では観察されず、基準日を9月1日としていない州でも観察されなかった。 また、9月1日を基準日とする州において、8月生まれと9月生まれの児童で、喘息、糖尿病、肥満の割合に有意差は確認されなかった。 なお、著者は、ADHD診断の適正や治療に関連した転帰は評価できず、メディケイド加入児童や保険未加入の児童は除外されていることなどを研究の限界として挙げている。

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日本の校長と教頭におけるうつ病と職業性ストレス

 教育は、最もストレスの多い職業の1つである。過去10年間で、年間約5,000人の日本人の公立学校教師が、精神疾患を発症している。学校の校長や教頭も職業上のストレスに直面していると考えられるが、これらの職業性ストレスについては、ほとんど検討されていなかった。大阪市立大学の新田 朋子氏らは、日本の校長および教頭における職業性ストレス、役割の問題、抑うつ症状との関係について検討を行った。Occupational Medicine誌オンライン版2018年11月14日号の報告。 校長262人、教頭268人を対象に、2013年の横断研究のデータを用いて検討を行った。抑うつ症状の評価には、うつ性自己評価尺度(SDS)日本語版を用い、職業性ストレスと社会的支援の評価には、職業性ストレス調査票(GJSQ)を用いた。SDSスコア49点以上をうつ病と定義した。抑うつ症状と認知された職業性ストレスとの関係は、変数増減法多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・校長の36人(14%)、教頭の81人(30%)がうつ病と評価された。・校長において、量的作業負荷(オッズ比[OR]:6.62、95%CI:2.63~16.70)、役割のあいまいさ(OR:4.94、95%CI:1.57~15.53)が抑うつ症状スコアの上昇と関連していた。・教頭において、管理者からの社会的支援(OR:4.14、95%CI:1.97~8.68)、役割のあいまいさ(OR:9.71、95%CI:4.08~23.14)が抑うつ症状スコアの上昇と関連していた。 著者らは「日本の校長や教頭のメンタルヘルスを改善するためには、両者の職務を明確にし、校長の量的作業負荷の軽減、教頭に対する管理者からのサポートの増加が重要である」としている。■関連記事日本人教師における仕事のストレスと危険なアルコール消費の性差に関する横断研究職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのかストレスやうつ病に対する朝食の質の重要性

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世界で最も高齢化している日本における認知症の推定コスト

 認知症は世界的に重要な問題となっており、そのコストは、2015年で8,180億USドルと推定されている。そして、世界で最も高齢化の進む日本において、この問題は重要である。しかし、日本における認知症の社会的コストは、あまりよくわかっていない。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、社会的視点から認知症のコストを算出するため、検討を行った。PLOS ONE誌2018年11月12日号の報告。 有病率に基づくアプローチを用いて社会的視点からコストの推定を行った。コストを推定するためのパラメータの主なデータソースは、全国データベース、医療の利用には全国の代表的な個人レベルのデータベース、介護給付費等実態調査、長期の公的な介護の利用には個人レベルの2次データに基づく全国調査、非公式の介護の費用には同介護時間の調査結果であった。得られたパラメータより認知症コストを推定するために、確率論的モデリングを用いて分析を行った。また、将来のコスト予測も行った。 主な結果は以下のとおり。・2014年の日本における認知症の社会的コストは、14兆5,000億円(標準誤差[SE]:660億円)と推定された。・この内訳は、医療費1兆9,100億円(SE:49億1,000万円)、介護費6兆4,400億円(SE:632億円)、非公式の介護の費用6兆1,600億円(SE:125億円)であった。・認知症患者1人当たりの費用は、595万円(SE:2万7,000円)であった。・総費用は、2060年に24兆3,000億円に達し、2014年の1.6倍になると推定された。 著者らは「日本における認知症の社会的コストは非常に高く、この影響を緩和するための介入が必要とされる」としている。■関連記事日本における認知症の総合的なコスト~公式統計に基づく経時分析認知症による生涯コストはどのくらい?なぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのか

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多剤併用のリスク回避は患者教育が大事

 高齢者では6種類以上の薬を常用していることも珍しくなく、近年多剤併用(ポリファーマシー)の問題がクローズアップされている。そんななか、MSD株式会社は、「シニア世代における服薬・不眠症治療に関する実態調査」を行い、今回その結果を公表した。 今回の調査の目的は、多剤併用のリスクにつき、(服薬している)高齢者本人だけではなく、その配偶者も意識しているかどうかのほか、服薬に関する状況やリスク認識、不眠症治療薬に対する意識についても調査した。シニア世代(55歳以上)を配偶者に持つ男女3万20名に調査。多剤併用の目安とされる「6種類以上」服用は8.0% はじめに「(配偶者が)医師から処方された治療薬を服用しているかどうか」の問いには、54.4%が「はい」と回答、また、「(配偶者が)1日に何種類の治療薬を服用しているか」の問いには、「3種類以上」が40.2%(3~5種類/6~10種類/11種類以上の合計)」と4割にのぼり、「3~5種類」が32.2%と最も多く、多剤併用の目安とされる「6種類以上(6~10種類/11種類以上の合計)」を服用している回答者は8.0%だった。 「あなたが主体となって配偶者の服薬の管理をしているか」の問いでは、回答者が女性の場合6.5%、回答者が男性の場合2.6%(196人)と、男女間で差が見られた。 また、「配偶者に不眠症状(夜なかなか寝付けない/夜中に何度も起きるなど)が見られるケースがあるか」の問いでは、「ある」が37.7%にもかかわらず、配偶者が不眠症治療薬を服用している割合は6.9%だった。多剤併用と不眠症のリスク 不眠症治療薬を服用している55歳以上の配偶者を持つ人412名を対象とした2次調査では、「『多剤併用』という言葉やリスクについて知っているか」という問いに「知らなかったと答えた人は67.7%だった。また、多剤併用に関して、言葉もしくはリスクについて知っていた回答者のなかで、「医師に相談したことがある人」は15.1%だった。 配偶者の多剤併用について、とくに不安や心配を「感じない」または「感じていなかった」人は77.4%と約8割いた一方で、医師から処方された治療薬に関して「病気やケガを治すためとはいえ、治療薬はできる限り最小限にしたい」と考える人は69.4%だった。不眠症治療薬の服用の実態 2次調査による回答で配偶者の不眠症治療薬の服用期間で、1年以上の長期服用割合は88.6%とかなりの数の患者が長期にわたり服用している現実が明らかになった。 不眠症治療薬に抱くイメージでは、「薬を飲み始めたらなかなかやめられない」(47.3%)、「薬を飲まないと、不安でますます眠れなくなる」(41.0%)、「服用期間が長くなると、効き目が悪くなる」(37.6%)などだった。また、不眠症治療薬を服用している配偶者に「足元のふらつき」が見られる割合は17.0%と、約5人に1人が経験している結果だった。 「(配偶者には)できれば不眠症治療薬に頼らずに眠ってほしい」と思っている人が88.6%いる一方で、88.3%が「きちんと眠るためには不眠症治療薬を服用することも仕方ない」とも考えていることが判明した。 不眠症治療薬の服用をやめることを夫婦で話したことがある人は51.5%にのぼるが、配偶者が服用をやめることを医師に相談したことがある人は28.9%だった。正しく薬を使うという考え方を持つことが重要 今回の多剤併用のリスク意識についての調査結果を踏まえ秋下 雅弘氏(東京大学医学部附属病院 老年病科 教授)は、「多くの人に対して『薬の適正使用』という考えを啓発する必要性を改めて感じる。『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(日本老年医学会)』では、控えたい薬の中でよく使われるものとして不眠症治療薬も含まれているが、『薬を使わなくても良い』という訳ではなく、生活の質を向上させるために『正しく薬を使う』という考え方を持つことが重要。自分や家族に気になる様子がある場合、自己判断による服用の中断は避け、かかりつけのお医者さんに相談することが重要」とコメントを寄せている。 また、池上 あずさ氏(くわみず病院 院長)は、「不眠症治療では、不眠に悩む本人だけでなく、治療に寄り添う医療従事者、一緒に生活する家族の理解と協力が欠かせないが、薬の服用をやめることを医師に相談した人が3割弱となっていることから、悩まれながらも打ち明けることができていない姿が想像された。不眠症治療のゴールである『薬に頼らずと眠れる』ためにも、適切な治療を開始することが重要。正しい知識をより多くの人が持つためにも今回のような啓発活動は大切で、医療従事者からも、患者さんに伝えていきたい」とコメントを寄せた。●調査概要 対象:55歳以上の配偶者を持つ男女 3万20名 対象地域:全国 方法:インターネット調査 期間:2018年9月4日~12日

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