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リスペリドンからルラシドンへの切り替え~6ヵ月間のオープンラベル試験

 統合失調症患者は、メタボリックシンドローム(MetS)発症リスクが高い。このことは、心血管疾患の有病率や死亡率の増加と関連している。統合失調症治療に一般的に使用される抗精神病薬は、MetS発症リスクを増加させる可能性が示唆されている。米国・ワシントン大学のGreg W. Mattingly氏らは、抗精神病薬ルラシドン(商品名:ラツーダ)の継続使用またはリスペリドン(商品名:リスパダールほか)からの切り替え使用におけるルラシドンの安全性について評価を行った。また、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)に基づいたルラシドンの長期的な効果についても評価を行った。BMC Psychiatry誌2020年5月5日号の報告。ルラシドン継続使用またはリスペリドンからの切り替え使用のアカシジア発生率 対象は、ルラシドンまたはリスペリドンによる12ヵ月間の二重盲検比較試験を終了した臨床的に安定した統合失調症患者223例。すべての対象患者は、ルラシドンによる6ヵ月間のオープンラベル試験へ移行した。安全性および忍容性のパラメータには、体重、プロラクチン、代謝関連を含めた。 ルラシドンの安全性について評価を行った主な結果は以下のとおり。・ルラシドンの忍容性は高く、パーキンソニズム(4.5%)およびアカシジア(3.1%)の発生率は低かった。・重篤と評価された有害事象の発生率は4.9%と低く、有害事象による治療中止率は、ルラシドン継続群で3.7%、切り替え群で6.9%であった。・各パラメータのベースライン時から6ヵ月後までの変化は以下のとおりであった。 ●平均体重:継続群-0.6kg、切り替え群-2.6kg ●総コレステロール中央値:継続群-4.0mg/dL、切り替え群+4.5mg/dL ●トリグリセライド:継続群-4.5mg/dL、切り替え群-5.5mg/dL ●グルコース:継続群0mg/dL、切り替え群-3.0mg/dL ●プロラクチン(男性):継続群+0.15ng/mL、切り替え群-11.2ng/mL ●プロラクチン(女性):継続群+1.3ng/mL、切り替え群-30.8ng/mL ●PANSS総スコア:継続群+1.0、切り替え群-1.0 著者らは「6ヵ月の延長試験において、ルラシドン治療は一般的に忍容性が高く、体重、代謝パラメータ、プロラクチンに対する影響は最小限であった。リスペリドンからルラシドンへ切り替えた患者では、過去12ヵ月間で増加した各パラメータ値が低下した」としている。

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高齢者へのアスピリンにうつ病予防効果なし

 うつ病は炎症の増加に関連しており、とくに高齢者においてはうつ発症前に炎症が生じる可能性がある。いくつかの前臨床データはアスピリンの潜在的な抗うつ効果を示唆しており、アスピリン治療を受けた人はうつ病の発生率が低いことを示唆する限定的な観察データもある。オーストラリア・The Institute for Mental and Physical Health and Clinical TranslationのMichael Berk氏らによる、低用量アスピリン(100mg)が健康な高齢者のうつ病リスクを低下させるかを見た研究の結果によると、リスク低下の効果は見られなかったという。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年6月3日号掲載の報告。 この二重盲検プラセボ対照ランダム化試験は、高齢者におけるアスピリンが認知症と障害のない健康寿命を延長するかどうかを調べたASPREE試験のサブ解析で、事前に指定された二次転帰はうつ病だった。オーストラリアにおける70歳以上の全人種/民族、米国における70歳以上の白人および65歳以上黒人/ヒスパニック系が含まれた。参加者は、アスピリン(100mg/日)群とプラセボに群に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は4.7年(四分位範囲:3.5~5.6)、主要評価項目は大うつ病性のプロキシでうつ病自己評価尺度スコア(CES-D-10)の8以上だった。 主な結果は以下のとおり。・1万9,114例が登録され、9,525例がアスピリン、9,589例がプラセボ群に割り付けられた。平均年齢はアスピリン群で75.2(SD4.0)歳、プラセボ群で75.1(4.5)歳であった。・女性が9,531(56.4%)で、参加者の人口統計とベースラインにおける臨床的特徴はグループ間で類似していた。・年間7万9,886回のCES-D-10測定が行われ、参加者1人あたり平均4.2回の測定が行われた。・年1回の通院においてCES-D-10スコア8以上となった患者の割合は、アスピリン群とプラセボ群で有意差はなかった。・CES-D-10スコア8以上の新たな発生率(/1,000人年)は、アスピリン群で70.4、プラセボ群で69.1〔ハザード比:1.02(95%信頼区間:0.96-1.08、p=0.54)〕でこちらも有意差はなかった。

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双極性障害患者における抗精神病薬誘発性体重増加とアドヒアランス

 双極スペクトラム障害の若年患者における第2世代抗精神病薬(SGA)の服薬アドヒアランスへの障壁に関して、医師、患者、患者家族の視点、およびSGA関連の体重増加の治療に対する考え方について、米国・シンシナティ大学のChristina C. Klein氏らが調査を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2020年5月19日号の報告。 18歳までに双極性障害と診断された225例およびその両親(128人)、これらの患者にSGAを処方した経験のある医師(54人)を対象に、SGA関連副作用、アドヒアランスへの障壁、体重マネジメント戦略の受け入れに関する調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・SGA関連副作用として体重増加を報告した割合は、患者45.6%、その両親38.9%、医師70.4%であった。・体重増加は、患者にとってアドヒアランスへの障壁の第1位(35.9%)であり、その両親にとって第4位(41.8%)であった。・患者(61.5%)は、その両親(20.1%)や医師(1.9%)よりも、SGA開始時に体重管理のための他剤併用を希望していた。・逆に、両親(54.9%)や医師(84.9%)は、10ポンド以上の体重増加を戻すことを目的とした次の薬剤を希望していたが、患者(61.1%)はあらゆる体重増加を元に戻すための他剤併用を希望していた。 著者らは「双極性障害の若年患者において、SGA関連の体重増加は、服薬アドヒアランスを低下させる可能性がある。多くの若年患者は、SGA治療開始時に体重増加に対する薬理学的介入を希望しているが、両親や医師はためらっていると考えられる」としている。

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職場における新型コロナ感染予防ガイドを改訂/日本産業衛生学会

 日本渡航医学会と日本産業衛生学会は2020年5月より両学会のサイト上で、産業医を中心とした産業保健従事者向けに「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」を公開している。6月3日には感染状況などの変化を踏まえ、改訂した第2版を公開した。 このガイドでは、産業保健職の役割や感染症流行時におけるリスクコミュニケーションなどの基本事項を押さえたうえで、国内の新型コロナウイルス感染症の流行状況を5つのフェーズに分け、各フェーズにおける主要な対応をまとめている。 続けて、職域における感染予防対策の基本として、個人の感染予防(手指衛生および咳エチケット)、従業員の感染管理(従業員の健康状態のモニタリング方法、相談および受診の目安)を詳細に紹介。従業員の中に「疑い者」が出た場合、職場復帰の目安として1) 発症後に少なくても 8 日が経過している、2) 薬剤を服用していない状態で、解熱後および症状消失後に少なくても3日が経過している、という両方の条件を満たすこと、と定義した。また、「医療機関には原則として『陰性証明書や治癒証明書』の発行を求めてはならない」という注意も示されている。 事業所内の消毒方法や消毒時の注意点、職域においてソーシャルディスタンシングを保つためのツールやヒント、従業員に濃厚接触者や感染者が発生した場合の対応方法や保健所との連携法、出張者や駐在員への対応法など、51ページにおよぶ内容は実践的で多岐に渡るテーマが網羅されている。在宅勤務の広がりに伴う従業員のメンタルヘルス対策についても言及している。 企業に向けてアドバイスを行う産業医・産業保健職はもちろんのこと、実際の対策にあたる企業の総務・労務担当者にとっても役立つ内容が多い。

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統合失調症発症に関連する小児期の緑地環境と遺伝的要因

 小児期における緑地環境との接点が、後の統合失調症発症リスクを低下させることは、これまでの研究で示唆されてきた。この関連に遺伝的要因は関係するのか、または2つのリスク因子が相加的に作用するのかは、よくわかっていない。デンマーク・オーフス大学のKristine Engemann氏らは、統合失調症発症に対する小児期の緑地環境と遺伝的要因との関連について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年5月16日号の報告。 ランドサット衛星画像からの正規化植生指数(NDVI)に基づく住居レベルの緑地との小児期の接点推移値と、デンマークのiPSYCHサンプルから得られた1万9,746の遺伝子型の多遺伝子リスクスコアに基づく遺伝的易罹病性推定値を組み合わせることにより、統合失調症発症のハザード比(HR)を調査した。デンマーク国内の健康、居住地、社会経済的地位(両親の社会経済的地位、精神疾患の家族歴)に関するデータを用いて、交絡因子で調整後のHRを推定した。 主な結果は以下のとおり。・調整HRは、NDVIの最低位と比較し最高位では統合失調症発症リスクが0.52倍(95%CI:0.40~0.66)に低下し、多遺伝子リスクスコアが最高位の小児では、統合失調症発症リスクが1.24倍(95%CI:1.18~1.30)であることを示した。・NDVIは、遺伝的易罹病性尺度の分散の1.45%(95%CI:1.07~1.90)で説明でき、統合失調症の多遺伝子リスクスコアは1.01%(95%CI:0.77~1.46)であった。・遺伝的および環境的要因を組み合わせた場合の多遺伝子リスクスコアは、2.40%(95%CI:1.99~3.07)であった。両要因の相互作用は示唆されなかった(p=0.29)。 著者らは「統合失調症発症リスクは、緑地環境との接点と遺伝的要因の相加的な関連が認められ、NDVIと統合失調症との間には、遺伝的および環境的な相互作用は認められなかった」としている。

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新型コロナ、医療者のメンタルヘルスをどう守る?/日本精神神経学会提言と会員アンケート

 日本精神神経学会は、新型コロナウイルス感染症に関連し、学会員を主な対象としたメンタルヘルス関連の提言を行っている。これまでに出された提言は以下の3つ。1)親子・学校・女性のメンタルヘルスのサポート役割を担う学会員向け2)働く人のメンタルヘルスケアや産業保健体制に関する提言3)「コロナ関連自殺」予防について 精神科・心療内科を専門とする学会員に向け、新型コロナウイルス感染症がメンタルヘルスにおよぼす影響や、診療にあたっての注意点をまとめている。産業医として企業に対して感染予防対策や新しい働き方に関連するアドバイスをする際に役立つ内容も多い。「メンタルヘルスの専門家として今知っておくべきこと」を中心にまとめられているが、提言には「医療者自身のメンタルヘルスをいかに保つか」という内容も多く含まれている。 2)の提言内では「特に医療や介護現場などではメンタルヘルス不調の発生が強く危惧される」とし、個人防護服(PPE)を着たままの診療による身体的疲労や緊張の継続による精神的疲労の双方が懸念され、さらに新型コロナの専門病棟ではこれら疲労に加え、対応人員不足やPPE不足などへの危惧が継続的に発生している、と指摘。「当初は責任感や緊張感から普通に勤務できているように見えていても、対応期間が長引くにしたがい心身の疲弊症状として、抑うつ症状などの精神症状や不眠や頭痛などの身体化症状が顕在化」する、と警告している。こうしたメンタルヘルス不調を念頭に置いた産業保健活動が求められるが、そうした体制の確立が難しい小規模事業者などに対しては、早期から行政が介入・支援することが必要だ、と訴えている。 3)の提言内でも「このたびの感染防止対応は、ほとんどの医療スタッフにとって通常経験したことのない、複雑に絡み合う複数のストレス要素を伴っています。心身の不調が起きるのが当然といえば当然です。(略)会員の皆様も、精神医学やメンタルヘルスに精通しているからといって例外ではないのだということを忘れないでください」と注意を促している。会員アンケートでもストレス傾向が明らかに 2020年5月中旬、ケアネットが医師会員1,000人を対象に行ったメンタルヘルスをテーマにしたアンケート(新型コロナは日常診療にどう影響?勤務医1,000人に聞いたストレス・悩みの理由)からも、医療者が大きなストレス下に置かれていることが明らかになった。「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」と答えた回答者は57.4%と6割近く、「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(57.4%)、「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(55.6%)といった回答も半数を超えた。 医療現場のストレスマネジメントに詳しい国際医療福祉大学大学院 心療内科学教授の中尾 睦宏氏は、この結果を踏まえ、専門家の立場からアドバイスを寄せた。「アンケートには『臨床心理士を配置した』『メンタル相談の専門窓口を設けた』といった回答が寄せられており、医療現場の素早い対応は評価できる。しかし、医療者には責任感が強く、弱音を吐くことが苦手な人も多い。オンラインのミーティングや勉強会などの正しい情報共有に加え、カジュアルなコミュニケーションや愚痴を吐き出しやすい環境づくりが長期的なメンタルヘルス対策につながるはず」と述べている。【会員医師アンケート】新型コロナは日常診療にどう影響?1,000人に聞いたストレス・悩み【アンケート結果を解説】今、医療者が知るべき・やるべきメンタル対策

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出産前後のうつ病を予防するための心理的介入~メタ解析

 出産前後のうつ病は、有病率が高く、深刻な影響を及ぼすため、その予防は重要である。これまでのシステマティックレビューおよびメタ解析では、周産期うつ病リスクを有する女性に対する心理学的介入の有効性が示唆されている。しかし、出産前の一般的な予防に焦点を当てた研究は、あまりなかった。東京大学の安間 尚徳氏らは、周産期うつ病に対する出産前の心理学的介入の影響(とくに一般的な予防に焦点を当て)を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年5月12日号の報告。 2019年1月28日までの公開されたランダム化比較試験を、4つの電子データベース(Cochrane Controlled Register of Trials[CENTRAL]、Embase、PubMed、PsycINFO)より検索した。まず、12人の研究者がタイトルとアブストラクトのスクリーニングを行い、独立した2人の研究者が、それぞれ全文レビューを行った。メタ解析については、Review Manager 5.3 for Windowsを用いてランダム効果モデルを実施した。サブグループ解析は、認知行動(CB)療法をベースとした介入に関する研究について実施した。 主な結果は以下のとおり。・最初に検索された研究は、1万3,026件であった。・重複を削除した後、9,919件がスクリーニングされ、最終的に18件が選択基準を満たした。・メタ解析では、出産前の心理学的介入は、出産前後のうつ病に対し有意な効果を示した(不均一性は中~高レベル)。 ●出産前のうつ病:SMD=0.28(95%CI:0.11~0.44)、不均一性I2=61%(p=0.01) ●出産後のうつ病:SMD=0.37(95%CI:0.08~0.66)、不均一性I2=84%(p<0.001)・サブグループ解析では、出産前のCB療法ベースの介入は、出産前のうつ病に対し有意な効果が認められたが(不均一性は高レベル)、出産後には認められなかった。 ●出産前のうつ病:SMD=0.53(95%CI:0.13~0.94)、不均一性I2=85%(p=0.001) ●出産後のうつ病:SMD=0.45(95%CI:-0.03~0.92)・本研究は、英語で発表された研究のみを対象としており、また出産前後のうつ病の評価にはさまざまな方法が用いられているため、研究全体の不均一性が高レベルであった。 著者らは「出産前の心理学的介入は、出産前後のうつ病に対し一般的な予防効果が期待できる。しかし、含まれた研究の方法論的な質があまり高くないため、決定的な結果とはいえない。今後、適切に設計された研究によるエビデンスが求められる」としている。

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降圧治療と認知症や認知機能障害の発症の関連―システマティックレビュー、メタ解析(解説:石川讓治氏)-1245

 中年期の高血圧が晩年期の認知症の発症と関連していることがいくつかの観察研究において報告されてきた。しかし、降圧治療と認知症や認知機能障害の発症の関連を評価した過去の研究においては、降圧治療が認知症の発症を減少させる傾向は認められたものの、有意差には至っていなかった。本論文では14の無作為介入試験の結果を用いてメタ解析を行い、平均年齢69歳、女性42.2%、ベースラインの血圧154/83.3mmHgの対象者において、降圧治療によって、平均49.2ヵ月間の追跡期間で7%の認知症もしくは認知機能障害の相対的リスク減少、および平均4.1年の追跡期間の間で7%の認知機能低下の相対的リスク減少があり、これらが有意差をもって認められたことを報告した。以前の無作為介入試験の結果は副次エンドポイントであったため有意差には至っていなかったが、メタ解析によって統計学的なパワーを増加させることで有意差を獲得したものと思われる。 SPRINT-MIND試験においても、積極的な降圧治療が通常治療よりも深部白質病変を減少させることが報告されており、降圧治療が脳血管性の認知機能障害を抑制することは予想できる。しかし、認知機能障害を生じる病態はさまざまであり、脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、前頭側頭葉型認知症、レビー小体型認知症などの病態が複雑に重なり合って臨床像をなしているため、完全に分けて考えることは困難である。降圧治療が、アルツハイマー型のアミロイドβやレビー小体型認知症におけるαシヌクレインといった代謝性物質にどのような影響を与えているのかは不明な点が多い。 本研究における無作為介入試験の参加者はインフォームドコンセントのための難解な同意文書を理解しサインできる、登録時には比較的認知機能が良好に保たれていた患者である。このような認知機能が良好に保たれた高血圧患者においては、降圧治療が将来の認知症や認知機能障害の発症を抑制するものと思われる。しかし、高齢者の日常臨床においては認知機能障害が進行するにつれて、栄養障害、サルコペニア、カヘキシア、併存疾患の存在などとともに体重減少や生活の質の低下が認められ、自然経過で血圧が低下してくる患者が認められる。そして、このような患者は介入試験からは除外されている。その一方で、観察研究における超高齢者においては、血圧が低く治療されていた対象者においてより死亡率が高く認知機能障害の進行が認められたことも報告されている。 これらの結果から、認知機能障害が起こる前には積極的に降圧治療を行って認知機能障害を予防し、残念ながら認知機能が低下してしまった段階では徐々に降圧治療を緩和していく必要があるものと思われる。しかし、この降圧治療のターニングポイントに関する明らかな指針は少ない。日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2019』においては自力で外来通院困難としか記載されておらず、降圧治療のターニングポイントとなる認知機能のレベルも明らかにはなっていない。今後の課題であると思われる。

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COVID-19、回復期におけるうつ病と免疫反応に相関性

 これまで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染して重度の急性呼吸器症候群となった患者のうち、退院後に自己申告のうつ病とされた患者は観察されていたが、回復期からこの自己申告のうつ病が発症しているのかは不明だった。中国・深センSamii医療センター(SSMC)のBo Yuan氏らは、オンラインアンケートを利用して回復期のCOVID-19患者のメンタルヘルス状態を調べたうえで、定期的な血液および生化学データを含む患者の臨床的特徴を遡及的に分析し、うつ病と免疫反応との相関性を見た。Brain, Behavior, and Immunity誌オンライン版5月25日号掲載の報告。 2020年2月21日~3月12日にSSMCに入院したCOVID-19患者226例中126例に対し、オンラインアンケートを行った。アンケートには心的外傷性ストレス障害(PTSD)自己評価スケール(PTSD-SS)、不安自己評価スケール、うつ病自己評価スケール(SDS)が用いられ、50のインデックススコアで臨床的重要度を判断した。 アンケートは3月2日~12日に行われ、回答から臨床的重要度が高いと判断された96例の回復期患者が対象となった。患者の年齢、性別、併存症、初期感染の重症度の潜在的影響、再発および初期疾患期間(入院平均日数)を含む疫学的特徴を調査し、血液を採取して白血球と炎症性因子の炎症性免疫応答を見た。その他のCOVID-19関連の医療データは電話インタビューと医療記録の確認から収集した。 主な結果は以下のとおり。・96例のうち、SDSスコアが50を超える自己申告うつ病群は42例だった(正常群:54例)。・自己申告うつ病の発生と性別、年齢、併存症、初期感染の重症度、および初期疾患期間には、有意な相関は見られなかった。・自己申告うつ病群は、正常群と比べて白血球数(6.7±1.5vs. 6.0±1.5、p=0.016)、好中球数(4.1±1.2vs. 3.3±0.9、p=0.000)が有意に多かった。・炎症の発現では、自己申告うつ病群は正常群よりもCRP値が高かった(0.2±0.3 vs. 0.1±0.1 mg/dl、p=0.035)一方で、IL-6値には有意差がなかった。 著者らは「自己申告うつ病はCOVID-19の回復初期から発生しており、退院後の短期追跡によってうつ病群は免疫応答が増加していることが示された」とした。さらに、「免疫応答と自己申告うつ病をつなぐメカニズム解明にはさらなる研究が必要だ」としつつも、「自己申告うつ病の患者には適切な心理的介入が必要であり、免疫機能の変化は長期フォローアップ中に重点を置くべきポイントだ」と述べている。

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治療抵抗性統合失調症に対するルラシドンの精神病理および認知機能への効果

 クロザピンに加え、薬理学的にクロザピンに類似した他の非定型抗精神病薬(たとえばオランザピン、リスペリドン、melperone)も、治療抵抗性統合失調症(TRS)に対する有効率は40%未満である。米国・ノースウェスタン大学のHerbert Y. Meltzer氏らは、TRS患者に対する非定型抗精神病薬ルラシドンの精神病理および認知機能への有用性を検討するため、6ヵ月間の試験期間中に2つの用量での比較を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2020年5/6月号の報告。 ルラシドン80mg/日による6週間のオープン試験(第I相試験)期間中に精神病理学的な改善が認められなかった患者をTRSと定義した。その後、TRS患者をルラシドン80mg/日または240mg/日に割り付け、24週間のランダム化二重盲検試験(第II相試験)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計およびサブスケールスコア、7つの認知機能領域のうち処理速度と実行機能の2つにおいて、用量依存的ではない有意な改善が認められた。・対象患者67例中28例(41.8%)において、PANSS合計スコアの20%以上の改善が認められた。・治療反応患者28例中19例(67.9%)において、第II相試験の6~24週目に最初のPANSS合計スコア20%以上の改善が認められた。この患者の中には、過去にクロザピンで治療不応であった患者が一部含まれていた。 著者らは「TRS患者に対するルラシドンの改善効果は、これまでに報告されたクロザピン、melperone、オランザピン、リスペリドンの効果と同等であった。ルラシドン80mg/日においてもTRS患者に有効であったが、より長い治療期間が必要とされる。今後、TRS患者に対するルラシドンとクロザピンの直接比較試験が待ち望まれる」としている。

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認知症患者におけるCOVID-19の影響

 認知症患者において、COVID-19による死亡リスクへの影響は不明である。イタリア・Istituto Clinico S.Anna HospitalのAngelo Bianchetti氏らは、COVID-19で入院した患者における認知症の有病率、臨床症状、その後のアウトカムについて評価を行った。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌オンライン版2020年5月15日号の報告。 北イタリア・ブレシア県にある急性期病院のCOVID-19病棟にCOVID-19肺炎で入院した627例を対象に、認知症の診断、COVID-19の発症様式、病院での症状やアウトカムなどの診療記録をレトロスペクティブに分析した。 主な結果は以下のとおり。・認知症患者は、82例(13.1%)であった。・認知症の有無別の死亡率は、非認知症患者で26.2%(545例中143例)、認知症患者で62.2%(82例中51例)であった(カイ二乗検定:p<0.001)。・ロジスティック回帰年齢モデルでは、認知症の診断は死亡率の高さと独立した関連が認められ、認知症患者のORは1.84(95%CI:1.09~3.13、p<0.05)であった。・認知症患者の中で最も頻繁に認められた症状は、せん妄(とくに活動性の低下タイプ)、機能状態の悪化であった。 著者らは「認知症は、COVID-19による死亡率上昇の重要なリスク因子であり、とくに認知症が進行した患者では注意が必要である。認知症患者のCOVID-19による臨床症状は非定型的であり、早期の症状把握や入院を困難にさせるため、せん妄や機能状態の悪化などの徴候に注意する必要がある」としている。

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日本における無理心中の特徴【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第164回

日本における無理心中の特徴pixabayより使用時折テレビで流れる無理心中のニュース。本当に追い詰められての選択肢だと思うのですが、幼い子供が親に殺されるニュースを見ると、いたたまれなくなります。そんな無理心中の症例をまとめた報告がありました。世の中にはスゴイ報告があるもんだ。ブルブル……。Satoh F, et al.Trend of homicide-suicide in Kanagawa Prefecture (Japan): Comparison with western countries. Med Sci Law. 2016 Oct;56(4):258-263. これは、神奈川県における76件の無理心中例、169例の死亡者を調べた珍しい研究です。無理心中の加害者と被害者の関係、犠牲者の数、年齢、性別、原因、亡くなった場所、動機などを調べました。まず、加害者と被害者の関係は、24件(31%)が夫婦、22件(29%)が親と18歳以上の子供、19件(25%)が親と17歳以下の子供、7件(9%)が家族、2件(3%)がカップル、2件(3%)がその他の関係でした。加害者は、39件が男性、40件が女性で、平均年齢は51.6歳でした。被害者は男性39人、女性51人で、平均年齢は35.4歳でした。驚くべきことに、この研究では加害者の約半数が女性でした。欧米では、こういった無理心中例や殺人における加害者のほとんどが男性ですので、日本独特の現象なのかもしれません。また、日本では親子間での無理心中が際立って多く、母親が幼い子供を殺した後に自分も自殺するパターンが多かったそうです。育児疲れでノイローゼになった母親が……というのが典型的でしょうか。もちろん、家庭内暴力が隠れているケースや、精神疾患が影響するケースもあるので1)、そういうサインを見逃さないよう注意が必要です。1)Flynn S, et al. Homicide-suicide and the role of mental disorder: a national consecutive case series. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2016 Jun;51(6):877-84.

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急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの有効性および安全性、忍容性を評価するため、ランダム化試験のシステマティックレビュー、ネットワークメタ解析を実施した。Psychopharmacology誌2020年5月号の報告。 2019年5月22日までの研究を、Scopus、MEDLINE、Cochrane Libraryより検索した。主要アウトカムは治療反応率とし、副次的アウトカムは中止率、有害事象発生率とした。リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・抽出された研究は14件(3,925例)であった。・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールの治療反応率は、両剤ともにプラセボよりも優れていた。【治療反応率】 ●アリピプラゾール:RR=0.84(95%CI:0.78~0.92) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.84(95%CI:0.77~0.92)・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールのすべての原因による中止率、有害事象発生率、効果不十分の割合は、両剤ともにプラセボよりも低かった。【すべての原因による中止率】 ●アリピプラゾール:RR=0.80(95%CI:0.71~0.89) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.83(95%CI:0.72~0.95)【有害事象発生率】 ●アリピプラゾール:RR=0.67(95%CI:0.47~0.97) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.64(95%CI:0.46~0.94)【効果不十分の割合】 ●アリピプラゾール:RR=0.56(95%CI:0.40~0.77) ●ブレクスピプラゾール:RR=0.68(95%CI:0.48~0.99)・ブレクスピプラゾールの有害事象としての統合失調症症状の発生率は、プラセボよりも低かった(RR:0.57、95%CI:0.37~0.85)。・アリピプラゾールおよびブレクスピプラゾールの体重増加の発生率は、両剤ともにプラセボよりも高かった。【体重増加の発生率】 ●アリピプラゾール:RR=2.12(95%CI:1.28~3.68) ●ブレクスピプラゾール:RR=2.14(95%CI:1.35~3.42)・傾眠、アカシジア、錐体外路症状、めまいなどの個々の有害事象の発生率は、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールとプラセボとの間に有意な差は認められなかった。・アリピプラゾールとブレクスピプラゾールのアウトカムに違いは認められなかった。 著者らは「急性期統合失調症に対するアリピプラゾールとブレクスピプラゾールの有効性および安全性の短期的な違いは認められなかった。両剤間に長期的なアウトカムの違いがあるかを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」としている。

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うつ病の発症、HHV-6が持つ遺伝子SITH-1が関与か:慈恵医大

 これまで、ヒト遺伝子の中にうつ病の原因となる有効な遺伝子は発見されていなかった。今回、東京慈恵会医科大学の近藤 一博氏らは、ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)に着目、ヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)が持つ、うつ病の原因となる遺伝子SITH-1を発見したことを発表した。SITH-1は脳のストレスを亢進させることでうつ病を発症させる作用があり、うつ病と診断されない程度の軽いうつ症状にも影響していたという。iScience誌オンライン版2020年5月21日号掲載の報告。SITH-1がうつ病になる前から作用していることが示唆された HHV-6Bは小児期に突発性発疹として感染し、ほぼ100%のヒトが潜伏感染している。HHV-6Bは脳神経に親和性の高いウイルスで、さまざまな脳神経疾患や精神疾患との関係が予想されている。研究チームはHHV-6Bが嗅球で潜伏感染する際に発現するSITH-1遺伝子を発見、疾患との関係を調べた。 SITH-1は、細胞内へカルシウムを流入させ、アポトーシスを誘導する。また、マウスの嗅球による実験では、SITH-1を発現させると嗅球が細胞死を起こし、さらにSITH-1を発現させたマウスは脳のストレスが亢進し、うつ状態になった。ヒトの場合、嗅球の組織をとることは危険であるため、SITH-1がカルシウムを流入させるときの特殊な構造を突き止め、これに対する抗体を測定することで嗅球でのSITH-1の発現を調べた。この活性型SITH-1に対する抗体を測定する方法を用い、健常人とうつ病患者におけるSITH-1発現を比較した。また、SITH-1が脳のストレスを亢進させることによってうつ病が起こりやすくなると考えられることから、SITH-1がうつ病になる前からヒトに影響を与えている可能性を検証するため、「健常人でまったくうつ症状のない人」と「うつ病というほどではないけれども軽いうつ症状がある人」の活性型SITH-1抗体価も比較した。 健常人とうつ病患者におけるSITH-1発現を比較した主な結果は以下のとおり。・うつ病患者は健常人に比べ、SITH-1特異的抗体の検出量が有意に高かった(p=1.78×10 -15)。・抗体陽性率はうつ病患者で79.8%、健常者で24.4%だった(オッズ比[OR]:12.2)。・「うつ病というほどではないけれども軽いうつ症状がある人」も「健常人でまったくうつ症状のない人」に比べて、SITH-1抗体価が有意に高かった。 著者らは、「SITH-1遺伝子はうつ病の発症に大きな影響を持つ遺伝子であり、うつ病の発症メカニズムの解明や治療法の開発に新たな展開をもたらすことが期待できる。さらにSITH-1がうつ病になる前から作用していることが示唆されたことから、SITH-1抗体検査によってうつ病の早期発見やうつ病のなりやすさの予測ができる可能性がある」としている。

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M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】Part 1

今回のキーワード笑う心理精神機能の異常非定型発達異変メタ認知緊張緩和皆さんは、お笑いが好きですか? 笑うと、すっきりしますよね。それにしても、お笑いって何でしょうか? なぜ笑ってしまうのでしょうか? そもそもなぜ笑いは「ある」のでしょうか? そして、笑いをどう生かしましょうか?実は、お笑いのボケは、その多くがメンタルヘルスで見られる症状に重なります。今回、そのパターンを、主にテレビ番組の「M-1グランプリ」でのネタを通して、精神医学的に分類し、ふだん馴染みにくいメンタルヘルスの症状をイメージアップしてみましょう。また、逆にまだネタになっていないメンタルヘルスの症状を探ってみましょう。さらに、笑う心理の要素を解き明かし、その起源を進化心理学的に掘り下げて、笑う意味を一緒に考えていきましょう。なお、お笑い芸人の表記は通称として、敬称は省略しています。 お笑いって何?お笑いネタのボケは、普通とは違うこと(異常)、まさに「おかしい」ことです。その「おかしさ」のパターンは、精神医学的に、大きく3つに分けられます。1.メンタル症状1つ目は、メンタル症状です(精神機能の異常)。これは、精神症候学的に、7つに分けられます。(1)言い間違い―記憶の異常・ナイツの「ヤホー漫才」(2008)ボケ:「ヤホーってサイトで調べてきたんですけど」ツッコミ:「ヤフーね。ヤフーって読むんだわ、あれ」ボケ:「ぼく、こうもん見えてもですね」ツッコミ:「『こう見えても』だろ。肛門見せちゃだめだよ」・サンドウィッチマン(2007)ボケ:(街頭アンケートで)「目のところに、こう、材木、入れますんで」ツッコミ:「モザイクね!」→語音の間違い(音韻性錯語)・ナイツ(2008)ボケ:「(宮崎駿は)世界でも3本の指が入る映画監督だと」ツッコミ:「指に!だよ」→「てにをは」の間違い(錯文法)・替え歌ひな祭り:「明かりをつけましょ爆弾に~♪お花をあげましょ毒の花~♪」→単語の間違い(意味性錯語)・ジャルジャル(2015)「なんぜやねん(なんでやねん)」「ちゃがうわ(違うわ)」「膝の峠越え」「子どもの小便百祟り」「雷坊主の添い寝節」などのありそうで聞いたことがない言い回しやことわざを使うボケ→新しく言葉を作る(語新作ジャルゴン) 「ゴトウ」「イントネーション」などの単語のアクセントを変える→アクセントの間違い(プロソディ障害)1つ目は、言い間違いです。これらのネタは、言葉が分からなくなる失語(言語障害)の症状としてまとめられ、認知症を代表とする記憶の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、聞き間違い(感覚失語)、記憶違い(記憶錯誤)、もの忘れの帳尻合わせで新しく話を作る(作話)などが挙げられます。(2)見間違い―知覚の異常・モノボケバナナを耳に当てて「もしもし」と言う→見間違い(物体失認)ズボンを上着として着る→やり間違い(着衣失行)・ガレッジセール「こいつ(相方)、めっちゃビビリ。夜中に一緒に信号待ちしてて、後ろから誰かに見られてるって。『誰だ!』って振り向いたら、選挙ポスターだった」→見間違い(錯視)2つ目は、見間違いです。これらのネタは、見ることをはじめとして、ものごとが分からなくなる失認や錯覚などの知覚障害としてまとめられます。さらに、失認は、ものや体の動かし方が分からなくなる失行(運動障害)に発展します。認知症、不安症、統合失調症などの知覚の異常に分離されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、見えないはずのものが見える(幻視)、幻聴の相手と会話する(対話性幻聴)、グロテスクな体感の異常(体感幻覚)などが挙げられます。(3)大げさ―意欲の異常・ヒロシ「俺より裕福なホームレスを知ってます 」「うちの子供もヒロシなのって言われても困ります」「触ってないのに手から草のにおいがします 」→自虐ネタ。自分はだめだと大げさに思い込んでいます(うつ状態)。・オリエンタルラジオの「武勇伝」ボケ:「カーナビの指示を全部無視♪」ツッコミ:「スゴい!お台場行くのに埼玉経由♪」ボケ「端から全裸で野球拳♪」ツッコミ:「スゴい!ただただ裸になりたいだけ♪」・クールポコフリ:「モテようとしてオートロックの部屋に住んでいる男がいたんですよ~」ボケ:「なあーにぃー?やっちまったなあ!!」ツッコミ:「男は黙って」ボケ:「南京錠!」→自賛ネタ。自分はすごいと大げさに思い込んでいます(躁状態)。しかし、実際は、武勇ならぬ無様(ぶざま)であったり、モテようとして逆にますますモテなくなるおかしさがあります。3つ目は、大げさです。これらのネタは、うつになったりハイテンションになっているのが特徴です。うつ病や双極性障害などの意欲の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、ひきこもり(無為自閉)が挙げられます。(4)思い込み―思考の異常・チュートリアルの「妄想ネタ」(2006)フリ:「自転車のチリンチリンを盗られてんねん」ボケ:「大丈夫か、おまえ?」「いったん(漫才やめて)帰るか?」「ご両親に言うたんか?」「座れ、座れ」「おまえ、チリンチリン盗られてショックな顔して漫才しとるんか?」「どんな芸人魂やねん!」「無理するな」「強がらんでもええから」(ただならぬ表情で)→話の内容は、大変な被害に遭ったと思い込み(被害妄想)、壮大なストーリーができあがっています(妄想構築)。・鳥居みゆきのカルト芸全身白の服を着て、険しい表情で、「はい!趣味は!立ち飲み!ウォッカ!ジンジャ(神社)!モ・ス・ク!」「ショートコント。ゴルフ。おい、キャディ、パターをくれ。そうそうこの北海道パターを体全体にまんべんなく塗って」「アイアーン、アイアーンって、このバンカー!」「それっ!ヒットエンドラ~ン、ヒットエンドラ~ン。バッティングセンターでバ・ン・ト」と踊り叫び続けます。→話の形式は、語音が似ている以外、ほとんど脈絡がないです(滅裂)。4つ目は、思い込みです。これらのネタは、考えが不合理であったり、まとまっていないのが特徴です。統合失調症を代表とする思考の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、無関係なことに関係があると思い込む勘ぐり(関係妄想)、すごい発明をしたと思い込む(発明妄想)、何となく不気味な気分になる(妄想気分)、回りくどい(迂遠)などが挙げられます。(5)気にしい―感情の異常・ブラックマヨネーズ(2005)吉田:「運命の人との最初のデートはどこに行く?」小杉:「ボウリングとかええんちゃう?」吉田:「でもなあ、ボウリングってなんか汚いイメージあるやろ」「靴とか使い回しやし、ボウリングの球とか誰が入れた穴か分からんやろ」→小杉の提案に対して、吉田が毎回、神経質に否定的な返答をします(全般不安)・プラスマイナス岩橋の「やってはいけないことをやってしまうクセ」・「笑ってはいけない」シリーズで、笑うと罰ゲームを受ける→やってはいけないと思うとついやってしまう(禁断的思考)5つ目は、気にしいです。これらのネタは、何かしらに気になっているのが特徴です。不安症や強迫症などの感情の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、「鬼電」(見捨てられ不安)、パニック発作、フラッシュバック、抜毛症、美容整形マニア(醜形恐怖)、ゴミ屋敷(ため込み症)などが挙げられます。(6)キャラ立ち―自我意識の異常・フットボールアワー(2003)ボケ役の岩尾が個性的な運転手になりたいと言い、「そんなに東京駅に行きたいのかい?」「どうだい?アクセルを踏まれている気分はどんなだい?」と、SMプレイの女王様の口調で接客を続ける。・ライセンス(2006)「大人向けドラえもん」の設定のもと、「(テストで0点だったなんて)オー、ジーザス!」「そんな時は先生にこう言ってやるのさ」とアメリカンコメディ風のドラえもんを演じる。→キャラになりきる・トム・ブラウン(2018)ボケ:「(サザエさんに出てくる)あの中島くんを5人集めて合体させて、最強の中島くん、ナカジマックスを作りたいんですよ~」→変身・土佐兄弟「もしも兄弟が入れ替わったら」との設定の上、おもちゃの取り合いで、兄と弟のそれぞれの行動パターンに、「泣かんかい!」「逃げんかい!」などと相手の知らない戦略のツッコミを入れる。→入れ替わり6つ目は、キャラ立ちです。これらのネタは、何かになり替わり、自分が自分でなくなるのが特徴です。解離症や統合失調症などの自我意識の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、幽体離脱(離人症)、記憶喪失(解離性健忘)、憑依(多重人格)、体が勝手に動く(作為体験)などが挙げられます。(7)シュール―意識の異常・POISON GIRL BAND(2004)ボケ:「中日の選手の帽子から出てくるのは、おっさんの頭だけなんだ」(中略)「で立浪の頭が出てきたら当たりね」ツッコミ:「当たり?当たりとかあんの?まあ2,000本ヒット打ってるから、立浪の頭が出てきたら当たりなのね」ボケ:「もう1回引いていいよ」ツッコミ:「もう1回引いていいの!?帽子を?」「まあ当たりだからね。もう1回引いて落合監督が出たら?」ボケ:「もう総取り。親の総取りだね」ツッコミ:「俺は親だったんだ」ボケ:「そう、12球団の」ツッコミ:「12球団の!?」「そういうゲームなの?選手たち、立ってんの?ここに?」ボケ:「そうそうそう」(背筋を伸ばすジェスチャー)→選手の帽子を取るというくじ引き、その景品が12球団という非現実的なゲームを当たり前のように話す・バカリズムの「都道府県」(教師の振る舞いで)「はい、先週は日本の都道府県について勉強しました。それでは、おさらいです」(都道府県の形のイラストを見せて)「ここはどこでしょうか? そうです。青森県です。総人口は…総面積は…本州の最北端に位置しており、リンゴの生産量が1位の県です。あと、持つとしたら」(下北半島を横からつかむイラストを見せて)「こうですね」「さあ、続いてはここはどこでしょうか? そうです。福井県です。…」と生真面目な表情で授業が淡々と進む。ツッコミなし。→都道府県の持ち方の解説という非現実的な授業をする7つ目は、シュールです。これらのネタは、ありえない設定や展開によって非現実的であるのが特徴です。せん妄などの意識の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、初めての場所なのに来たことがある(デジャブ)などのタイムスリップ、もう一人の自分が別の場所にいる(ドッペルゲンガー)、母親が替え玉で本物の母は別にいる(カプグラ症候群)、駅前にもう1つ同じ自宅がある(重複記憶錯誤)などのパラレルワールドが挙げられます。次のページへ >>

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M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】Part 2

2.個性2つ目は、個性です(非定型発達)。これは、大きく3つに分けられます。(1)天然ボケ―コミュニケーション特性・オードリーの「ズレ漫才」(2008)若林:「今日もね、漫才を楽しくやっていきたいなと思いますけれどもね」春日:「OLか」若林:「どのへんがOLか分からないんですけれどもね」春日:「うぃ」→一方的なコミュニケーション・フットボールアワーファミレスの店員役の岩尾が「お客様はお一人様でよろしかったですか?」とマニュアル的に聞くところを、客の後藤をしげしげと見つめて「お客様は独りぼっちでよろしかったですか?」「ファミリーレストランなのに一人でよろしかったですか?」と執拗に聞く。・アンタッチャブル合格発表で合格した山崎が不合格になった柴田を慰めるシーンで「おまえが落ちてなあ、俺が悲しんでねえとでも思ってんのかよ。おまえが落ちてつらいのはなあ…お前だけなんだよ」と自明を語っています。→正直すぎるコミュニケーション・パンクブーブ(2010)ボケ:「コンビニで犯罪に巻き込まれましてね」(中略)「俺が、本を立ち読みしてたら、若い兄ちゃんが万引きしてんのよ」(中略)「それでね、『おい、何やってんだっ!』て…いうタイミングを伺ってたんだ」ツッコミ:「あっ、言ってはないんだね」ボケ:「そしたら、兄ちゃんが『てめえ、さっきから何じろじろみてんだよ!』って…表情を浮かべてきたんだよ」ツッコミ:「あっ、表情ね。言ってはないんだね」(中略)「それで、俺どうしようかなと思ったんだけど『ここで俺がやらなきゃ誰がやるんだ』って…いう本を棚に戻して」ツッコミ」「えっ!本!?」ボケ:「で、兄ちゃんをにらみながら、ゆっくりと…その本屋を出て、その兄ちゃんがいるコンビニへと入って行ったわけよ」ツッコミ:「えっ!店、別!?」→相手の心の中への配慮が乏しいコミュニケーション・笑い飯(2003)生徒:「先日の博物館の感想ですが、誰とは言いませんが、A君とB君が触ってはいけない…」先生:「いやらしいな、おまえ」生徒:「J文式土器を…」先生:「縄文式土器や!そこまでイニシャルトークせんでええねん!」→間違った配慮のコミュニケーション・ラーメンズフリ:「布団の中(で寝てたん)だよ」ボケ:「布団の中…布団の中?」ツッコミ:「じゃなくて、敷き布団と掛け布団の間だよ」→字義通りの言葉の解釈・かまいたち(2019)ボケ:(映画の「となりのトトロ」について)「何回も繰り返されてる再放送の網も全部すり抜けて、生まれてから37年間1回も見てない。すごない!」ツッコミ:「見てないこと自慢ならへん。見てたほうがいいですからねえ、皆さん」(中略)ボケ:「俺の『トトロ見たことない』は、もう今からじゃ(みんなは)どうにもならない。「だって、(みんなは)見ちゃってるのよ」「みんなが俺の自慢に追いつける方法はないのよ」(中略)「(俺が)見てないってことは、これから見ることもできるし、見ないこともできる。私にだけ選ぶ権利が与えられている」ツッコミ:「宗教っぽいな」→屁理屈(こだわり) 1つ目は、天然ボケです。これらのネタは、コミュニケーションがうまく行かなくなるのが特徴です。自閉スペクトラム症のコミュニケーション特性に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、あえて難解な言葉をしゃべる(衒学的なコミュニケーション)が挙げられます。(2)不注意―ADHD特性・アンジャッシュの「すれ違いコント」渡部:メールのやり取りで、「お、企画ほめられた。嬉しいな」と言い、「こんど、かんそうきかしてください」と打ち込む。児島:「今度、乾燥機貸してください」と誤変換されたメールが届き、困惑。その後、児島は「いいたいことはなんですか?」と打ち込む。渡部:「良い太鼓とはなんですか?」と誤変換されたメールが行ってしまい、渡部は「はあーっ!」と叫ぶ。→うっかりミス(不注意)・江頭2:50→唐突な話し方。スタジオを動き回る(多動性)。客席にダイブする。衝動的に下半身を露出する(衝動性)2つ目は、不注意です。これらのネタは、不注意になっていたり、衝動的になっているのが特徴です。多動症(ADHD)の特性に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、うっかり忘れ(不注意)、汚部屋(多動性)、すぐに手が出る(衝動性)などが上げられます。(3)癖―その他の発達特性・インパルスリストラされた元駅員の男性がコンビニのバイトにやってくる。彼は、1万円札を受け取った時は、急に笛を吹いて左右の確認を始める。お弁当を温める時は、「えーこれより先、電子レンジを使いますので、扉に引き込まれないように(ご注意ください)」と余計な注意をする。→職業病によるこだわり(習癖)・タカアンドトシタカに「欧米かっ!」のツッコミを言わせるために、トシが欧米風(厳密にはアメリカ風)のボケを繰り返す→似たようなことを繰り返す、いわゆる「天丼」・パッション屋良「大きな栗の木の下で♪あーなーたーと…ウーン!ウーン!ウーン!」と目をむき、胸を突き出して、握り拳で胸を叩く。・小島よしお「でもそんなの関係ねえ!」・志村けん「アイーン!」・こだまひびき「チッチキチー!」→ナンセンス。一発芸、一発ギャグ、リズムネタ、裸芸などで、決まったフレーズや動きを繰り返す(常同運動)。なお、ナンセンスとシュールは、意味が分からない点においては同じです。しかし、ナンセンスは文字通り、意味のないことを唐突に言い出すだけで、その意味を考えさせることはないです。これに対して、シュールは、非現実なりに何か意味があると考えさせるという違いがあります。・ハムの諸見里居酒屋で「サワーください」と言おうとすると、「シャワーください」と言ってしまう。→滑舌が悪い「口癖」(語音の特性) ・アメトークの「運動神経悪い芸人」→「運動音痴」(協調運動の特性)・ミキの「モテないネタ」(2018)・トレンディエンジェルの「ハゲネタ」(2015)・顔芸、福笑い→容姿ネタ。見た目の「癖」として、ここに分類しました。3つ目は、癖です。これらのネタは、ついやってしまうのが特徴です。常同運動症、語音症、協調運動症などの、その他の発達特性にまとめて分類しました。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、ついハマってしまう(依存症)、意に反してつい言ってしまったりつい動いてしまう(チック症)、うまく話せない(流暢症、吃音症)などが上げられます。3.驚き3つ目は、驚きです(異変)。これは、大きく2つに分けられます。(1)緊張・摩邪(緑色に染めたモヒカンに女レスラー姿で)「世の中のチャラチャラした女ども!お前らに言いたいことがある。よく聞け! ひとつ! 仲のいい友達に対して『あんな男別れて正解だよ』って言う女! 別れて正解? ハア? お前に恋愛の正解不正解が分かんのか? そもそも正解って何だよ! そんなもんがあったらなあ、あたいも苦労してねえんだよ! コノヤロー!」と攻撃的にマイクを攻撃的に叩き付ける。その後に、両膝を揃え曲げてしおらくしマイクを拾う。→ずれ下がり(価値下落)・小梅太夫「チャンチャカチャンチャン(略)♪」「タクシーを止めようと右手を挙げたら、挙げた右手に雷が落ちました、チクショー!」→不運ネタ・鬼越トマホークの「ケンカ芸」→コンビの2人のケンカの仲裁に入った第三者に対して、「うるせーな!」とケンカの矛先を向け、その第三者に理不尽なツッコミを入れる。・ナンセンスの連発や強引なダジャレによる「スベリ芸」スベっていても、「サムい」「スベった」など自らツッコミを入れたり、本人が全力でしつこくやり続けることで笑いをとる。1つ目は、緊張です(ストレス)。これらのネタは、不幸、危機一髪、スベるなど、場が硬直するのが特徴です。本来、予定調和になるものがそうならない点で、いつもと違うという驚きから笑いになります。(2)一致・アンジャッシュの「取り違え」コントまったく面識のない2人が駅のホームでそれぞれ別の相手と携帯で話している状況。児島は友達に恋愛相談をしている中、隣りの渡部は電話で家庭教師としてことわざのクイズを出す。児島:「プレゼント攻撃で口説いたんだろ?何あげたの?」渡部:「馬の耳に?」児島:「イヤリング?」渡部:「違うでしょ!念仏でしょ」→一致しないはずが、偶然に一致してしまい、意味付けが変わる・ダジャレ例、「内容がないよ」→意図的ではなく、たまたまダジャレになってしまった場合は、その驚きやスベったことへの笑いが生まれる。・そっくりさん、モノマネ、歌マネ、パントマイム→模倣。意図的に偶然の一致を演出する2つ目は、一致です。これらのネタは、偶然にも必然にも一致するのが特徴です。本来一致しないものが一致する点で、いつもと違うという驚きから笑いになります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】Part 3

なぜ笑うの?お笑いとは、メンタル症状、個性、驚きという3つのおかしさ(異常)がネタになっていることが分かりました。ただし、おかしさ(異常)だけでは、必ずしも笑えません。それでは、なぜ笑うのでしょうか? ここから、笑う心理の要素を、大きく3つ上げて、お笑いと異常の違いを考えてみましょう。(1)本人が異常を自覚する―メタ認知1つ目は、お笑いをやっている本人たちが異常を自覚していることです(メタ認知)。逆に言えば、本人たちが異常を自覚できなければ、気の毒で笑えません。たとえば、メンタル症状でまさに苦しんでいる人、不幸に見舞われた人、冗談がスベって萎縮している人、本気でケンカしている人です。(2)周りが異常を受け入れる―受容2つ目は、周りの人が異常を受け入れていることです(受容)。逆に言えば、お笑いをやっている本人たちが異常を自覚していても、周りの人がその異常を受け入れていなければ、悪口になり笑えません。たとえば、容姿や癖、さらには身長差や年齢差などについて、多様性の時代の個性であると考える人が周りにいる状況です。この点で、かつて一世を風靡した「おバカ」キャラは、知的能力の差(知的障害)と重なるため、この記事での分類にあえて入れませんでした。(3)周りが異常と思える―自明性3つ目は、周りの人が異常だと思えることです(自明性)。逆に言えば、お笑いをやっている本人たちが異常だと思っていても、周りの人がそう思わなければ、差別になり笑えません。たとえば、性差、性自認、性的指向などのセクシャリティ、ニート(不就労)、未婚(非婚)などの生き方について、多様性の時代の個人の自由であると考える人が周りにいる状況です。この点で、「オネエ」キャラや「ゲイ」キャラなどのLGBTネタは、この記事での分類にあえて入れませんでした。なぜ笑いは「ある」の?これまで、なぜ笑うのかという疑問にお答えしました。それでは、そもそも、なぜ笑いは「ある」のでしょうか? ここから、笑う心理の起源を、3つの段階に分けて、進化心理学的に探ってみましょう。(1)歯出し―緊張緩和約6,500万年前に霊長類が誕生し、強い同種には敵対しないことを伝えるようになりました(緊張緩和)。そのひれ伏し行動の1つとして、口角を引き上げて高い鳴き声を出すようになりました。やがて、顔面の扁平化による立体視、顔面の毛の消失によって、聴覚よりも視覚によるコミュニケーションが中心になったため、鳴き声が省略されて、口角の引き上げ、つまり歯出し表情だけが残りました。約1,000万年前に、ゴリラと別れたヒト族(チンパンジーと人間)が誕生し、母親が子どもと抱き合って生活するスタイルから、少し離れて見つめ合う生活スタイルになりました。この時、歯出し表情が、心地良さの表情として使われるようになりました。これが、微笑の起源です。約700万年前に、人類が誕生し、頭部が大きくなった代償として、母親の産道を通過するために、未熟児で生まれるようになりました(生理的早産)。よって、赤ちゃんは、生まれてからしばらくは寝たままの状態になります。この時、赤ちゃんは、泣くだけでなく、微笑むことで、母親の関心を引くようになりました。これが、新生児微笑の起源と考えられます。1つ目の段階は、緊張緩和による歯出しです。これが、コミュニケーション能力を進化させました。実際に、お笑いの基本は、緊張と弛緩と言われています。(2)口開け―興奮約6,500万年前に霊長類が誕生し、じゃれ合い(プレイ・ファイティング)によって、体の動かし方や周りとのかかわり方を学習するようになりました。この時、「アハ、アハ、アハ」とあえぎ声を上げるようになりました(プレイ・パント)。これが、「アハハハハ」という笑い声の起源です。また、その声を出すために、口を開けるようになりました(プレイ・フェイス)。これが、笑い顔の起源です。2つ目の段階は、興奮による口開けです。これが、遊びの心理を進化させました。これは、くすぐり、イナイイナイバー、「高い高い」(持ち上げ)などの発達の遊びに通じます。実際に、お笑いの基本は、騒がしさや賑やかしと言われています。(3)つられ笑い―同調約700万年前に人類が誕生し、300万年前にアフリカの森からサバンナに出て、家族同士が血縁関係で助け合うことで村をつくりました。この時、周りに合わせようとするようになりました(同調)。こうして、霊長類にすでにみられる痛み、怖れ、怒りなどの不快な感情の共感だけでなく、楽しさや喜びなどの快の感情の共感もできるようになりました。3つ目の段階は、同調によるつられ笑いです。これが、絆づくり(愛着)の心理を進化させました。これは、もらい泣きやもらいあくびに通じます。実際に、この心理を利用したお笑いテクニックが、「誘い笑い」です。また、お笑いのゴールは、会場が爆笑の渦で「うねる」、つまり同調することであると言われています。笑いをどう生かす?M-1グランプリのネタを中心に、お笑いネタを精神医学的に分類しました。メンタル症状はお笑いネタの宝庫と言えます。メンタルヘルスを切り口にすると、さらに新しいお笑いネタを見いだすことができるでしょう。また、進化心理学的に言えば、私たちが笑う意味とは、緊張緩和によるコミュニケーションであり、興奮による気晴らし(遊び)であり、そして同調による絆づくりであると言えるでしょう。さらに、お笑いと異常の違いを踏まえると、私たちの人生でどんなにつらいこと(異常)も、そのつらさを客観視し、受け入れられたら、笑いに変えられるのではないでしょうか? そしてその先は、もはや、そのつらさをつらさ(異常)と思わなくなっているのではないでしょうか?<< 前のページへ■参考スライド【メンタル症状】2020年■関連記事クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1アンパンマン【その顔はおっぱい?】

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うつ病から双極性障害や統合失調症への移行~15年間のプロスペクティブ研究

 うつ病から双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害への移行について、その時間的パターンと予測因子を調査するため、フィンランド・ヘルシンキ大学のIlya Baryshnikov氏らは、レジスターベースのコホート研究を実施した。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年5月8日号の報告。うつ病から双極性障害や統合失調症への移行は初年度が最も高い 1996~2011年に精神科病棟へ初回入院したすべてのうつ病患者4万3,495例を15年間フォローアップした。診断転換の累積発生率および部分分布ハザード比(SHR)は、累積発生関数およびFine-Gray部分分布モデルを用いて定義した。 うつ病から双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害への診断転換を調査した主な結果は以下のとおり。・15年間の診断転換の累積発生率は以下のとおりであった。 ●全体:11.1%(95%CI:10.7~11.6) ●双極性障害:7.4%(95%CI:7.0~7.8) ●統合失調症:2.5%(95%CI:2.3~2.7) ●統合失調感情障害:1.3%(95%CI:1.1~1.4)・発生率が最も高かったのは、初年度であった。・精神病性うつ病は、軽度うつ病よりも診断転換リスクが高かった。 ●双極性障害:SHR=2.0(95%CI:1.5~2.7) ●統合失調症:SHR=5.3(95%CI:3.3~8.7) ●統合失調感情障害:SHR=10.6(95%CI:4.0~28.4)・女性、重症うつ病、パーソナリティ障害の合併は、双極性障害への診断転換の予測因子であった。・一方、若年および男性は、精神病性疾患への診断転換の予測因子であった。 著者らは「初回入院となったうつ病患者の約9人に1人は、15年の間に他の精神疾患へ診断転換が行われており、そのリスクは最初の1年以内で最も高くなる。精神病性うつ病患者は、とくに脆弱であることが示唆された。また、精神病性疾患への診断転換は、双極性障害よりも早く起こる可能性がある。男性では、精神病性疾患への転換リスクが高いのに対し、女性、再発うつ病エピソード、重度の全体的機能障害、パーソナリティ障害では、双極性障害への転換リスクが高まる」としている。

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COVID-19、アンケートから見えた医療者のメンタル状況と対策を識者が解説

COVID-19の拡大を受け、医療現場では長期に渡って対応を迫られる状況が続いている。20床以上の医療機関に勤務するケアネット会員医師に、経営・組織・心理面での影響、とくに個人と組織のメンタル面での影響についてアンケートで聞いた(アンケート結果についてはこちら)。アンケート結果を踏まえつつ、今後の医療者が取るべき対策について、国際医療福祉大学大学院教授の中尾 睦宏氏に聞いた(聞き手・構成:ケアネット 杉崎 真名)。今回のCOVID-19感染流行とこれまでの大規模災害時と比べ、医療者に求められている対応は何が大きく異なるでしょうか?一番は「医療機関・地域内で対応を完結させなければならない」点でしょう。これまでの大規模災害では、被災地以外や海外からの派遣・応援が望めましたが、今回は全国・地球規模の問題であり、人の移動にも制限があって各地域内で対応せざるを得ません。日常診療に加えてCOVID-19対応をしなくてはならず、病床数を含めてキャパオーバーになっても応援を頼めない、というプレッシャーは大きい。時間的なロードマップが描けない苦しさもあります。災害であれば発生後から復興に向けた計画を立てられますが、今回はいつ収束するかの見通しが立ちにくく、収まったとしても第2波、第3波が来るかもしれない。そうした緊張感に常にさらされています。アンケート回答者が勤務する20床以上の医療機関は、発熱外来などCOVID-19対応をしている総合病院が多いでしょうが、どうしても呼吸器・感染症・耳鼻咽喉科などに負荷が偏りがち。一方で外来患者が減った科もあるので、診療科の垣根を超えた院内連携が今まで以上に求められています。また、できる範囲での地域を超えた連携も必要です。それぞれの立場や利害が異なる場合が多いため、ここでは、行政や専門家団体などによる、ある程度強権的な舵取りも必要になってくるでしょう。アンケートにおける「医師の日常診療の影響」の回答結果をどう分析され、どのような課題が浮き彫りになったとお考えですか?中尾 睦宏氏。取材はオンラインで行った回答では「院内感染防止のための特別な対応が必要になった」(63.4%)が最も多く、それに伴って「感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(57.4%)や「衛生資材の確保が難しくなった」(53.9%)も高い回答率となっています。入室前に体温測定をしたり、診察室の患者-医師の距離を取ったり、診療が終わるたびに消毒したりなど、通常より手間暇がかかり、診療効率は落ちます。さらに今後はCOVID-19に関連したさまざまな疾患も増えてくることが予測されます。たとえば、4月以降にCOVID-19感染者が「たこつぼ型心筋症」を発症した、という症例報告がありました。収縮期の心臓の動きが局所的に悪くなる疾患ですが、強いストレスや激しい情動を契機に引き起こされることが多いとされ、大震災後に発症者数が増加しています。このように、今後はCOVID-19そのものだけでなく、その周囲の疾患も併せて診療することが求められます。「来院者が減り、経営面の不安が出るようになった」(37.3%)との回答も目立ちます。実際、定期昇給なしやボーナス減額を通告された勤務医もいるようです。ただでさえハイリスクの中で仕事をしている最中、「努力-報酬バランス」(仕事の遂行のために行われる努力に対して得られる報酬が少ないと感じられた場合により大きなストレス反応が発生するというモデル)が崩れ、きつい思いをしている勤務医も多いことでしょう。医師は責任感があり、我慢強い人が多いので、不安や恐怖心を公にしにくい面もあると思います。こうした「見通しが立たない状況が続くことに疲れやいらだちを感じる」(35.5%)点も問題で、中長期的な医療体制の大きなロードマップを国や専門団体が示し、現場の医師を少しでも安心させる配慮が求められます。定期的なアンケートやストレスチェックにより、随時こうした状況を捕捉することも重要でしょう。医師には、専門技能の習得や研鑽も欠かせませんが、「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(55.6%)という点は医学全体のレベル維持に支障を来しかねません。現在の医学教育や臨床体制は平時を基準としていますが、今後は現在のような非常時が続くことを想定した“プランB”も用意する必要があるでしょう。一方、「医療者に対する差別や偏見にさらされ、つらい思いをしている」(9.4%)や「COVID-19に関する情報が足りず、診療に不安を覚える」(12.6%)はそこまで高い割合にはなっていません。現状は落ち着いて情報を取捨選択し、周囲の支援を受け働き続けている医療者が大半だと思われます。世界を見渡したとき、医療者の働き方やメンタルケアへの取り組みで参考になる動きはありますか?今回のCOVID-19対応をしている医療従事者のメンタルヘルス問題を集計した論文がいくつか発表されています1)。現在は中国・武漢のものが中心で、その内容からは「うつ、不安、不眠、ストレスの自覚」などの有訴率が高まっており、心理的なサポート不足を感じる人が多いことが伺えます。アンケートの記述コメントでは、スタッフのメンタルサポートのために「臨床心理士を配置した」「専門の相談窓口をつくった」といった内容が寄せられており、こうした素早い動きは評価すべきでしょう。とはいえ、私自身も長年医療者のストレス問題をみてきましたが、医師は弱音を吐くことが苦手な人が多く、窓口を設置してもなかなか活用されない面があることも事実です。アンケートの回答には、オンラインミーティングや勉強会など、制約のなかでもコミュニケーションをとる工夫をしている声が多くありました。こうした日々の取り組みやちょっとした遊び心が、長期的なメンタルヘルス対策につながります。東日本大震災のとき、遺体回収などの過酷な任務に就いた自衛隊は、任務後に不安やつらさをメンバー同士で吐き出し合う時間を設け、「自分だけがつらいのではない」と確認するメンタルケアを行っていたそうです。こうした例を参考に、マネジメント層の方はメンバーが本音を言い合える場をつくることを意識するとよいでしょう。米国では医療従事者のメンタルヘルス面における情報提供も進んでおり、トラウマティック・ストレス研究センター (Center for the Study of Traumatic Stress)では 医療従事者向けのCOVID-19対応マニュアルを作成しており 、その日本語版も用意されています。日本赤十字社がまとめた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に 対応する職員のためのサポートガイド」の内容も非常に充実しています。国立精神・神経医療研究センターも医療者のためのケアの方法をまとめました。自分に合ったリラックス方法を見つけたり、自施設の取り組みを検討、確認したりするうえで参考になるでしょう。今後、長期に渡るであろうCOVID-19対応において、医療者が心身の健康を保つためのポイントは?各種論文や調査からは、各医師が全力で困難に立ち向かっている最中であることが伺えますが、長期戦になればその忍耐にも限界が来ます。自らの精神的健康を守るために、ストレス対応の基本を確認しておくとよいでしょう。「ストレスモデル」(図1)は仕事のストレス要因に個人的な要因、仕事以外の要因、緩衝要因が作用し合い、心理・身体・行動面のストレス反応を生み、その持続がメンタル疾患につながる、というモデルです。図1画像を拡大する国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)の職業性ストレスモデルを参考に編集部作成また、「高ストレス状態のモデル図」(図2)ではイライラ→身体不調→不安→うつが相関していることが確認できます。身体疾患のうしろにメンタル疾患が潜んでいることも多くあります。単に「最近疲れやすい」「調子が出ない」とやり過ごさず、適宜自分の状況を当てはめてみるようにしましょう。図2画像を拡大する中尾氏の資料より自分の思考のクセを知り、気持ちや行動をコントロールする「認知行動療法」の基本も誰もが知っておくべきです。今後は、AIやビッグデータを利用したメンタルケアのサービスが登場し、使いやすくなることに期待しています。組織面からは、今回導入が進んだ遠隔診療のさらなる充実と普及をはかり、不要な感染リスクを高めない工夫が求められるでしょう。同時に、長期的な課題になりますが、医療者教育に「危機管理学」や「組織論」を組み込むことも重要だと感じます。COVID-19は突如出現した厄災ではありますが、医師の偏在や医療者個人に無理を強いる働き方など、医療現場が長らく抱える問題をあらわにしました。医療に注目が集まる今、医療者はみずからと周囲の人の心身を守るため、必要なケアと発信をしていくべきでしょう。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新型コロナに関する日常診療への影響、ストレスや悩みを教えてください

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高齢者の血清尿酸値とうつ病との関係

 可溶性尿酸塩は、とくに中枢神経系における抗酸化作用として機能することが示唆されている。血清尿酸値が低いと神経変性疾患のアウトカム不良につながることを示唆するデータも存在するが、メンタルヘルスに対する影響は十分に評価されていない。韓国・中央大学校のWoo-Joong Kim氏らは、大規模サンプルを用いて、血清尿酸値とうつ病との関連について調査を行った。Arthritis Research & Therapy誌2020年5月6日号の報告。 対象者の社会人口統計学的特性、身体的および精神的健康状態に関する情報は、2016年の韓国国民健康栄養調査(KNHANES)のデータを用いた。うつ症状の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。年齢により、若年成人(19~39歳)、中年成人(40~59歳)、高齢者(60歳以上)に層別化し、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者は、5,332例。・男女別に血清尿酸値の分布を四分位に分類した。 ●Q1(男性:4.9mg/dL以下、女性:3.7mg/dL以下) ●Q2(男性:5.0~5.7mg/dL、女性:3.8~4.3mg/dL) ●Q3(男性:5.8~6.6mg/dL、女性:4.4~4.9mg/dL) ●Q4(男性:6.7mg/dL以上、女性:5.0mg/dL以上)・高齢者では、血清尿酸値の四分位とPHQ-9スコアとの間に有意な負の相関が認められた(男性:p for trend=0.020、女性:p for trend=0.048)。・調整後においても、血清尿酸値の低レベル(Q1、Q2)は、高レベル(Q3、Q4)と比較し、高齢者のうつ病の全体的な負担と有意な関連が認められた。 ●女性高齢者(OR:1.78、95%CI:1.21~2.61) ●男性高齢者(OR:3.35、95%CI:1.16~9.70) 著者らは「血清尿酸値が低いと、高齢者のうつ病リスクが高まることが示唆された。このことは、メンタルヘルスに臨床的な影響を及ぼす可能性がある」としている。

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