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子どもの検査値の判断に迷ったら

そっと開けばポイントがわかる「小児科」64巻13号(2023年12月臨時増刊号)複数の既往歴や不定愁訴をもつことが多い成人患者と異なり、子どもは症状がはっきりしていることが多い分、検査結果が予想と異なっていたり、想定に反して検査上の異常がなかったりした場合、どう判断すべきか迷う…そんな場面に役立つ1冊を目指しました。日常診療でおなじみの検査から少々専門的な検査まで、検査結果の解釈に迷いが生じたときにそっと見直していただきたい情報をコンパクトにまとめました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    子どもの検査値の判断に迷ったら定価8,800円(税込)判型B5判頁数394頁発行2023年12月編集「小児科」編集委員会電子版でご購入の場合はこちら

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フェニルケトン尿症、約30年ぶりの新薬

フェニルケトン尿症、約30年ぶりの新薬フェニルアラニン(Phe)は必須アミノ酸の1種であり、食事などから摂取したPheは主にPhe水酸化酵素(PAH)によりチロシンに変換される。しかし、フェニルケトン尿症(PKU)ではPheを分解するPAHの活性が先天的に低下することで、Pheの蓄積や血中Phe値の上昇が起こり、尿中にPheや代謝産物のフェニルピルビン酸が大量に排泄される。過剰なPheや代謝産物が正常の代謝を阻害することで、新生児や乳児期では脳構築障害による精神発達遅滞、成人においてもさまざまな精神症状や酸化ストレスの成因となるとされており、生涯を通じて治療が必要とされている。フェニルケトン尿症の治療における課題PKUの治療は基本的に生涯にわたる食事療法である。たんぱく質を制限することでPheの摂取を抑えるため、肉、魚、卵、豆類、乳製品などの高蛋白食品を食べることはほとんどできないとされている。野菜などの低蛋白食品に加えて、治療用ミルク(フェニルアラニン除去ミルク)で不足するその他のアミノ酸やカロリーを補うのだ。一生涯続く食事制限は食べる楽しみの低下や外食機会の喪失など、患者さんのQOL低下につながる可能性があるが、これまで解決策はなかった。パリンジックの登場で変わる患者さんの生き方このような状況の中、約30年ぶりにPKU治療薬としてペグバリアーゼ(製品名:パリンジック)が登場した。パリンジックはフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)を免疫原性の低減と消失半減期の延長を目的としてポリエチレングリコール化した製剤であり、PAHの酵素活性を代替し、Pheをアンモニアとケイ皮酸に代謝することで、血中Phe濃度を低下させる。使用する際は2.5mgから開始し、導入期に4週間、漸増期に5週間以上かけて20mgまで増量する。20mgで効果不十分な場合は最大60mgまで増量が可能。日本人を対象とした臨床試験では、投与開始後経時的に血中Phe濃度が低下していた。さらに、この血中Phe濃度の推移を各症例で検討したところ、観察期間中のある日を境に、大幅に血中Phe濃度が低下する例が数例観察されており、このタイミングでパリンジックが効果を発揮したと推測される。ただし、効果発揮にかかる時間は個人差があるため、まずは治療を中断しないことが重要である。効果発現後はたんぱく質制限の必要はなくなるため、食事制限のない生活を送ることが可能だ。生涯を通じた食事制限は食事の楽しみだけではなく、食事の伴うイベントなどの機会もPKU患者から奪うものとなっていた。パリンジックの登場により、単なる食事だけではない、さまざまな制約が解決されることに期待がかかる。

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尿が黄色くなるメカニズムが明らかに

 尿中の黄色色素としてウロビリンが同定されているが、この発見から125年以上の間、ウロビリンの産生に関与する酵素は不明とされていた。しかし、米国・メリーランド大学のBrantley Hall氏らの研究グループが腸内細菌叢由来のビリルビン還元酵素(BilR)を同定し、この分子がビリルビンをウロビリノーゲンに還元し、ウロビリノーゲンが自然に分解されることで尿中の黄色色素ウロビリンが産生されることを明らかにした。また、BilRは健康成人ではほぼ全員に存在していたが、新生児・乳児や炎症性腸疾患(IBD)患者で欠損が多く認められた。本研究結果は、Nature Microbiology誌2024年1月3日号で報告された。 研究グループは、ビリルビンをウロビリノーゲンへ還元する酵素を同定し、微生物によるビリルビンの還元と健康との関係を検討することを目的として本研究を実施した。腸内細菌のスクリーニングと比較ゲノム解析により、ビリルビンを還元する候補分子を探索した。また、黄疸を発症しやすい生後1年未満の新生児・乳児(4,296例)、血清ビリルビン濃度が変化していることの多いIBD患者(1,863例)、健康成人(1,801例)を対象としてメタゲノム解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ビリルビンをウロビリノーゲンに還元する酵素としてBilRが同定され、Firmicutes門に属する腸内細菌が多くコードしていた。・BilRが検出されない割合は、健康成人(1,801例)では0.1%であったが、生後1ヵ月未満の新生児(1,341例)は約70%(p<2.2×10-16)、クローン病患者(1,224例)および潰瘍性大腸炎患者(639例)はいずれも30%以上(いずれもp<2.2×10-16)であった。・1歳までに、ほとんどの乳児でBilRが検出された。 本研究結果について、著者らは「新生児では、ビリルビンを還元する微生物が腸内に存在しないか少ないために、新生児黄疸が発生・悪化するという仮説を支持するものであった。IBD患者では、ビリルビンを還元する微生物が存在する割合が低いことから、ビリルビン代謝の破綻と非抱合型胆汁酸の増加が組み合わさることで、ビリルビンカルシウム胆石の発生率が上昇している可能性があると考えられる」と考察している。ただし、「結論を出すにはさらなる研究が必要である」とも述べている。

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teplizumabの登場で1型糖尿病治療は新たなステージへ(解説:住谷哲氏)

 膵島関連自己抗体が陽性の1型糖尿病は正常耐糖能であるステージ1、耐糖能異常はあるが糖尿病を発症していないステージ2、そして糖尿病を発症してインスリン投与が必要となるステージ3に進行する1)。抗CD3抗体であるteplizumabはステージ2からステージ3への進行を抑制することから、8歳以上のステージ2の1型糖尿病患者への投与が2022年FDAで承認された。しかし、現実にはステージ2の1型糖尿病患者がすべて診断・管理されているわけではなく、臨床的に1型糖尿病を発症したステージ3の患者が多数を占めている。 teplizumabがステージ2と同様にステージ3の患者でも有効か否かについては、これまでに実施された複数の第I、II相臨床試験のメタ解析で、その有効性が示唆されていた2)。そこで実施されたのが第III相となる本試験PROTECT (Provention Bio’s Type 1 Diabetes Trial Evaluating C-Peptide with Teplizumab)である。 teplizumabは1コース12日間投与で26週後に2コース目が実施された。主要評価項目は、78週後に実施された食事負荷試験後のC-ペプチドAUCのベースラインからの変化量とされた。結果はプラセボ群に比較して、teplizumab投与群ではC-ペプチド値が有意に高値であった。副次評価項目であるインスリン投与量、HbA1cの変化量などには有意差を認めなかったが、主要評価項目が達成されたので本試験の結果はpositiveである。つまり、teplizumabは発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能を維持する可能性があると考えられる。 わが国の1型糖尿病の発症率は欧米に比べると低い。欧米では2015年に1型糖尿病発症の自然史(ステージング)の概念が導入されたが、わが国では、ほとんど認知されていないのではないだろうか。1型糖尿病は発症予防可能な疾患になりつつある。わが国での発症率から考えて、ステージ2からステージ3への進行を抑制する薬剤としてのteplizumabが承認されなくても大きな問題はないだろう。しかし、teplizumabが発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能保持薬として欧米で承認されれば、わが国でも早急に承認されることが期待される。

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重症小児の全身酸素化、SpO2目標低めがアウトカム良好/Lancet

 小児集中治療室(PICU)に緊急入室し侵襲的換気療法を受ける小児において、制限的目標酸素投与(conservative oxygenation target)は、非制限的目標酸素投与(liberal oxygenation target)と比較して、30日時点の臓器支持期間または死亡について、良好なアウトカムを得られる可能性が、わずかではあるが有意に高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMark J. Peters氏らが、2,040例の小児を対象に行った多施設共同非盲検並行群間比較無作為化試験「Oxy-PICU試験」の結果を報告した。重症小児患者における最適な目標酸素投与量は明らかになっていない。非制限的酸素投与は広く行われているが、小児患者では害を与えるとされていた。結果を踏まえて著者は、「制限的な酸素飽和度目標値(SpO2:88~92%)を広く取り入れることは、PICUに入室する重症小児患者のアウトカム改善およびコスト削減に役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。30日までの臓器支持期間または死亡を比較 研究グループは英国15ヵ所のPICUで試験を行い、制限的酸素療法が標準療法と比較して、臓器支持期間または死亡の発生を減少させるかどうかを評価した。 緊急入院し、侵襲的換気療法を受けている修正在胎期間38週超~16歳未満の小児を、ウェブベースシステムを用いて、制限的酸素投与群(目標SpO2値:88~92%)および非制限的酸素投与群(目標SpO2値:>94%)に1対1の割合で無作為に2群に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化後30日時点の臓器支持期間で、30日目またはそれ以前の死亡を最悪のアウトカム(臓器支持31日間と同等のスコア)とするランクベースのエンドポイントであり、それ以外の被験者(生存者)には、臓器支持を受けた暦日に応じ1~30のスコアで評価した。 主要な効果推定値は確率指数(PRI)で、0.5超は無作為に選ばれた患者について、制限的酸素投与のほうが、非制限的酸素投与に比べて優れている確率が50%超であることを示すものとした。 同意が得られたすべての被験者を対象にITT解析を行った。制限的酸素投与が良好なアウトカムを示す 2020年9月1日~2022年5月15日に、2,040例の小児が制限的酸素投与群または非制限的酸素投与群に無作為化された。そのうち1,872例(92%)から同意を得た。 制限的酸素投与群は939例(927例中528例[57%]が女子、399例[43%]が男子)、非制限的酸素投与群は933例(920例中511例[56%]が女子、409例[45%]が男子)だった。 最初の30日間の臓器支持期間または死亡の発生は、制限的酸素投与群で有意に低かった(PRI:0.53、95%信頼区間[CI]:0.50~0.55、ウィルコクソン順位和検定(Wilcoxon rank-sum test)のp=0.04、補正後オッズ比:0.84[95%CI:0.72~0.99])。 事前に規定した有害事象は、制限的酸素投与群939例中24例(3%)、非制限的酸素投与群933例中36例(4%)で報告された。

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事例039 ヘパリン類似物質油性クリームの査定【斬らレセプト シーズン3】

解説脂漏性皮膚炎の患者にヘパリン類似物質油性クリーム(以下「同油性クリーム」)を投与したところ、多くは病名不備を表すA事由(医学的に適応と認められないもの)が適用されて査定になりました。皮膚疾患でよく処方される「同油性クリーム」がA事由で査定になったことに違和感を抱いたため、添付文書を参照しました。ところが効能または効果に「脂漏性皮膚炎」がないことから、対象病名の不備としてA事由の適用となったことが推測されました。医師に尋ねたところ、「他剤塗布後の皮膚の保湿に有効であるために使用している」とのことでした。コンピュータ審査が請求レセプト件数の9割に届くようになった現在では、従来認められていた併用薬も、添付文書の適用範囲内での使用が求められて査定となる傾向になっています。医師には、「必要があって投与した」というコメントをいただき、再審査請求しましたが、結果は原審どおりでした。査定対策として、レセプトチェックシステムを改修しています。なお、一般名に「ヘパリン類似物質クリーム」と「ヘパリン類似物質油性クリーム」があります。ともに効能または効果は一緒です。「塗布する場所と目的によって使い分けること」とされている点にもご留意願います。

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どうする?食物アレルギーの「学校生活管理指導表」【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第15回

どうする?食物アレルギーの「学校生活管理指導表」講師さいたま市民医療センター 小児科 西本 創 氏【今回の症例】小学校入学を前に、保護者から「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」の記載を依頼された。乳児期に卵とじスープを食べて全身が赤くなったことがある。最近はハンバーグ、カステラなど、ある程度の鶏卵含有食品は食べているが、卵自体は食べていない。卵白特異的IgEはクラス3で、症状はもう何年もみられていない。鶏卵は嫌いで自宅では食べたがらないという。

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高校生のがん患者に必要な教育支援とは? 1月13日セミナー開催

 神奈川県立こども医療センターが、同センターの小児がん相談支援室主催にて、高校生のがん患者の教育支援に関するセミナーを開催する。 「長期治療が必要な高校生の教育保障を考える2023~好事例から考える、それぞれの支援者ができること~」と題した本セミナーでは、高校生の教育保障をテーマに、医師、神奈川県教育委員会、高等学校教諭、高等学校学校長がそれぞれの立場から、事例や具体的な取り組みなどについて説明する。 現場医師の立場として、同センター血液・腫瘍科の慶野 大氏から「治療と高校生の学習支援」について語られるほか、教育現場からは入院時等学習サポート制度について、「医療・学校・保護者・本人の合意形成の中から動き出した支援」の具体例が紹介される。 セミナーの概要と参加申し込み方法は下記のとおり。■日時:2024年1月13日(土)14:00~16:00■場所:神奈川県立こども医療センター 本館2階講堂およびWeb開催■参加申し込み方法:下記URLより受付フォームにアクセスし、必要事項を入力し送信(2024年1月10日まで)https://onl.tw/JAGEAwF

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テレワークでの育児ストレス、出社より高い

 新型コロナウイルス感染症の影響で定着した在宅勤務(テレワーク)。子供を持つ親がテレワークをした場合、健康状態や精神的健康状態はどう変化するのか。米国・シカゴのアン&ロバート H. ルリー小児病院のJohn James Parker氏らは、パンデミック中の2022年5~7月にイリノイ州シカゴの全77地区でパネル調査を行った。参加資格は、18歳以上で1人以上の子供を持つ親であることだった。本研究の結果はJAMA Network Open誌2023年11月3日号にResearch Letterとして掲載された。 主な結果は以下のとおり。・1,060例の回答者のうち、825例がその時点で雇用されていた。599例が女性、548例がテレワークを実施していた。・テレワークをしている親を人種で見ると、白人(244例)が黒人(99例)またはヒスパニック系(145例)よりも多かった。・テレワークをしている親は、現場で働く親と比較して、育児ストレスのオッズが増加した(調整オッズ比[aOR]:1.88、95%信頼区間[CI]:1.20~2.93)が、健康状態(aOR:1.23、95%CI:0.78~1.93)や精神的健康の改善(aOR:1.14、95%CI:0.64~2.04)には差がなかった。・テレワークをする父親は、現場で働く父親よりも育児ストレスが高いと報告した(aOR:2.33、95%CI:1.03~5.35)が、母親には関連はなかった(aOR:1.53、95%CI:0.93~2.49)。 研究者らは、COVID-19パンデミック時にテレワークを行った親は、現場で働いた親と比較して育児ストレスが高いと報告しており、親、とくに父親にその傾向が顕著だった。これは育児ストレスにテレワークによるストレスが加わったり、よりストレスの多い育児状況にある親がテレワークを優先的に選択したりした可能性を示唆している。テレワークを行う親を支援する戦略、たとえば勤務スケジュールの自律性を促進することや従業員支援プログラムなどは、親と子供にとって重要な健康上の意味を持つ可能性がある、とした。

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映画「かがみの孤城」(その1)【けっきょくなんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 1

今回のキーワードいじめ無気力・不安PTSD(心的外傷後ストレス障害)ストレス反応(適応障害)反抗期(思春期)同調自我同一性(アイデンティティ)自立(自我同一性の確立)2024年の現在、不登校の子供は過去最多の約30万人となりました。これは、中学校なら30数人のクラスに1人から2人はいる計算になります。彼らはなぜ学校に行けないのでしょうか? 逆になんで学校に行くのでしょうか?今回は、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、発達心理学の視点から不登校の根っこの心理を掘り下げます。そして、文化心理学の視点からとくに日本で不登校が増えている一番の原因を解き明かしてみましょう。なんで学校に行けないの?主人公は中学1年生のこころ。彼女は、入学してまもなくある女子グループからいじめを受けます。その子たちは、こころと仲良くなりそうな友達をこころから遠ざけたり、男子に「おれおまえみたいなブス、大嫌いだから」とこころに伝えるよう仕向けたり、こころがこもっている家の庭先まで入り込んでこころを大声で呼んだりするなど、とても悪質でした。そして、こころはその後に学校に行けなくなってしまいます。代わりにフリースクール(適応指導教室)に行こうにも、朝になると腹痛(ストレス反応)が起こります。母親から「行くの? 行かないの?」と急かされるなか、「行かないんじゃない。行けないのに」と心の中で叫びます。その心情は、子供の目線でリアルに描かれていました。両親とも仕事をしているため、こころは仕方なくひとり家で過ごします。そんなある日、自分の部屋に置いてある鏡に吸い込まれてしまい、その先の絶海の孤城に運ばれてしまいます。そこで、同じように運ばれた中学生6人に出会うのです。彼らが不登校になった原因は、いじり(からかい)や陰口レベルの友人関係(いじめレベルではない)であったり、複雑な家庭環境であったり、「天然」という本人の個性(発達特性)であるなど、さまざまで複合的でした。文科省の不登校の最新の調査によると1)、その原因として「無気力・不安」(52%)、「生活リズムの乱れ、あそび、非行」(11%)、「友人関係(いじめを除く)」(9%)、「親子関係」(7%)などが挙げられています。厳密には、半数を占める「無気力・不安」は、こころの体調不良と同じように表面的な原因にすぎず、その根本的な原因は不明のままです。そして、「いじめ」(0.3%)は意外にも上位ではありません。もちろん、学校側の調査が行き届いていなかったり、本人が恥ずかしさから言い出せなかった可能性があることから、「無気力・不安」の中に「いじめ」が潜在的に含まれているのではないかという指摘もあります。確かに、あとでいじめを打ち明けたこころの場合はそうなります。実はいじめはきっかけにすぎないしかし、よくよく考えると、こころの不登校の原因が単純にいじめであるならば、そのいじめ女子グループがいないフリースクールには通えるはずです。フリースクールにも行けないということは、転校したとしても、その学校にも行けないことが予測できます。それでは、いじめによるPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったことで、同年代の子たちが集まる場所全般に行けなくなる症状(回避症状)が出てきたと考えることはできるしょうか? そう考えるには、無理があります。こころの視点では「殺されそうな体験」として描かれてはいるのですが、客観的には庭先で大声で呼ばれただけです。実際に暴行されたりけがさせられるなどの死の恐怖を感じるレベル(トラウマ)とまでは言えず、やはりストレス反応(適応障害)のレベルです。また、とくにフラッシュバックや悪夢などの特徴的な症状も出ていません。ちなみに、他の6人もPTSDを発症するほどのトラウマ体験はありません。なお、6人のうちのアキは義父から性被害を受けそうになりました。この体験はトラウマレベルではありますが、それは不登校になったあとのエピソードでした。つまり、いじめがあったとしても、それは不登校のきっかけ(誘因)にすぎず、彼らが不登校になる根本的な原因が別にあったことが考えられます。それはいったい何でしょうか?逆に、子供が学校に行く理由から、その謎を解き明かしてみましょう。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その1)【けっきょくなんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 2

逆になんで学校に行くの?こころが不登校になったあと、いじめ女子グループのターゲットは、クラスメートの萌ちゃんに変わっていました。彼女は、こころと同じように悪質ないじめを受けますが、不登校にはなりませんでした。なぜ彼女は学校に行けるのでしょうか?大きく3つの可能性を挙げて、その中から萌ちゃんが学校に行く一番の理由(目的)を考えてみましょう。(1)親から行けと言われるから1つ目は、親(社会)から行けと言われるからです。これは、先ほどのこころの母親の「行くの? 行かないの?」と言うセリフに重なります。そしてこれは、こころをはじめ、多くの子供に当てはまります。もちろん、親としては「学校に行くのは勉強して立派な大人になるため」という思いがあります。教師としても、そう伝えるのが職務です。ただし、「立派な大人になる」のは子供が自分で望んでいるわけではないです。勉強好きの子供もごく一部です。すると、これは子供にとって「学校に行くために学校に行く」という状態になってしまいます。「学校に行け」「勉強しろ」と言われて、とりあえずそれに従っている状態です。発達心理学的には、小学生まではそれが可能です。しかし、中学生にもなると、反抗期(思春期)です。もはや親や教師の言うことを聞かなくなります。勉強が難しくなったり、大人になった将来のことを考えていなければ、なおさらです。しかも、親や教師が反抗させまいとすれば、子供はもっと反抗して逆効果です。そうなると、学校に行く目的がなくなってしまいます。以上より、親や教師(社会)から行けと言われること、つまり勉強することを学校に行く一番の理由(目的)にしてしまうと、不登校のリスクを高めてしまうことがわかります。これは、萌ちゃんには当てはまりません。なお、反抗の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)友達に会えるから2つ目は、友達に会えるからです。友達とは自分の味方であり、その友達が集まっている教室(学校)が居場所になります。学校に行く理由を、このようにぼんやりと考えている子供は、かなりいるでしょう。学校の代わりにフリースクールが居場所になると唱える教育関係者もいるでしょう。発達心理学的には、小学生までならそれで良いです。なぜなら、いろんな友達とかかわりたいと思う気持ち(同調)を高める時期だからです。しかし、中学生にもなると、思春期真っ盛りです。思春期は、同調の心理がさらに発達して、不特定多数から特定少数の友達(グループ)と一緒にいたいと思うようになる時期です。そのため、グループに入れないなど友達関係がうまくいかないと、学校に行く目的がなくなってしまいます。そして、こころのように「ぼっち」(ひとりぼっち)である状況をクラスメートから指摘されることは、味方がいない「だめな自分」が晒されていることを意味します。こうして、居場所がない感覚に陥り、学校に行くのがますますつらくなります。この点で、友達関係の葛藤を自覚できなかったり、恥ずかしくて認めたくないために言い出せなかった場合も、「無気力・不安」の方にカウントされている可能性が考えられます。以上より、友達に会えること、つまり学校が居場所であることを学校に行く一番の理由(目的)としてしまうと、不登校のリスクを高めてしまうことがわかります。これも、萌ちゃんには当てはまりません。そして、こころがフリースクールにも行けなかったのは、まさにこれが原因です。つまり、フリースクールにしても学校にしてもただ居場所であるだけでは限界があるということです。なお、同調の心理の詳細については、関連記事2のページの最後をご覧ください。(3)大人になるために必要だから3つ目は、大人になるために必要だからです。ここで、こころが久々に萌ちゃんに再会した時に、萌ちゃんが言ったセリフがヒントになります。それは、「ばかみたいだよね。たかが学校のことなのにね」「だってあの子たち(いじめ女子グループ)、恋愛とか目の前のことしか見えてないんだもん。成績も悪いし、ガキっぽいし。10年後も20年後もあのままだよ。きっとろくな人生送らないよ」「ああいう子たちってどこにでもいるし」というセリフでした。萌ちゃんは、親の仕事の都合で転校を繰り返していたこともあり、彼女ならではの冷静な判断力を持っています。そして、「目の前」ではなく「10年後、20年後の人生」という大人になった未来の視点を持っています。つまり、「今、相手にどう思われるか」ではなく、「これから自分はどうしたいか(どうなりたいか)」という発想です。たとえば、どんな仕事をしたいのか、どんな所に行きたいのか、どんな人に会いたいのか、どんな人と一緒にいたいのかなど、なりたいと思う大人の自分を具体的にイメージしていくことです。発達心理学的には、これは思春期の発達課題である自我同一性(アイデンティティ)です。この自我を育むために、学校に行って、勉強して、友達に会っているのです。この先に、大人になる、つまり自立(自我同一性の確立)があります。この自我があることによって、萌ちゃんはいじめられて周りから友達がいなくなっても、こころほど気にせず、不登校にならなかったのでした。以上より、萌ちゃんのように大人になりたいと思うこと、つまり自我を育むことを学校に行く一番の目的とすることで、不登校のリスクを低くできることがわかります。なお、自我をはじめとする発達課題の詳細については、関連記事3をご覧ください。不登校の根っこの心理とは?学校に行く一番の目的は、大人になる(自我を育む)ためであるということがわかりました。この自我が芽生えているかどうかが、同じいじめを受けながら、こころが不登校になって萌ちゃんが不登校にならなかった決定的な違いです。また、先ほどの文科省の調査の「無気力・不安」の正体とは、この自我がまだ芽生えていないために、ただ勉強する気が起こらない無気力感であったり、友達がいないこと(いないことを見られること)を気にしすぎる不安感であったりするのなどの心と体の反応(症状)であることがわかります。そして、不登校が長引けば、この自我を育むチャンスをますます逃してしまうことがわかります。つまり、不登校の根っこの心理とは、自我の弱さであると言えます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その1)【けっきょくなんで学校に行けないの?(不登校の心理)】Part 3

じゃあなんで不登校は増えているの?冒頭のシーンで、こころは夢想します。「たとえば夢見る時がある。転入生がやってくる。その子は何でもできるすてきな子。たくさんいるクラスメートのなかに私がいることに気付いて、お日様みたいなまぶしい微笑みを浮かべ、『こころちゃん、久しぶりって』ってまっすぐ近寄ってくる。みんな息を飲む。そんな奇跡が起きたらいいと」「(でも)そんな奇跡が起きないことは知っている」と。不登校になったこころの心情がリアルに描かれていました。と同時に、客観的に見れば、友達をつくろうと自分から踏み出せず、「奇跡」を当てにしようとしています。きっと、今まで自わから友達をつくる練習をしてこなかったことも想像できます。自分でどうしたいかを言い出せず、いじめに対してもノーと言えないという自我の弱さがあることがわかります。萌ちゃんとは対照的です。昨今、不登校が増えているということは、こころのような自我の弱い子供が増えているのでしょうか? 確かに、昔よりも今どきの子供は大人しくなったという印象はあるでしょう。ただ、それ以上に、今だけでなく昔も、子供だけでなく大人も、実は日本人で自我が弱い人はもともと多いです。文化心理学的に言えば、日本人は周りに気を遣って和を重んじる集団主義の国民性です。これは、もともと日本が島国で他国からの侵略が歴史的にほとんどなかったことや、江戸時代からの鎖国によって封建社会の価値観が強化されていったことと関係しているでしょう。封建社会では上下関係を重んじて親や目上の人に逆らわない、つまり自我が弱い方が適応的です。むしろ、自我が強いと、和を乱し、村八分に遭い、子孫を残せないリスクが出てきます。なお、この日本人の国民性の詳細については、関連記事4をご覧ください。ただし、この国民性は、裏を返せば「自己主張しない」「ノーと言えない」、つまり自分はどうしたいのかをなるべく抑えるわけで、実は世界的には奇妙なメンタリティになります。実際に、海外の学校では、人種差別レベルのあからさまないじめがはびこっているのに、日本のように不登校は目立っていないことからもわかります。この自我を抑える(自我の弱い)メンタリティが、社会構造の変化によって炙り出され、不登校をどんどん招いてしまっているのです。それでは、この社会構造の変化とはいったい何でしょうか? 不登校が増え始めた1980年代をヒントに、大きく3つ挙げてみましょう。(1)個人主義化1980年代に日本が経済大国になってから、生活に余裕ができて、個人に選択の自由が生まれ、個人の権利(人権)に目が向くようになりました。そして、必ずしも集団の中で周りに合わせたり、親や目上の人の言うことを聞く必要がなくなりました。1つ目は、個人主義化です。それまでは、学校に行かなければ、親や教師が暴力(体罰)、暴言(モラハラ)、嫌がらせを行うなどの虐待が懲戒権として当たり前のようにありました。そんななか、ほとんどの子供は逆らえません。そもそも学校に行かないなどと、自分だけ周りと違うことをすること自体が恐怖でした。よって、しょうがなく学校に行っていました。まさに、「学校に行くために学校に行く状態」が成り立っていた時代です。しかし、今やこのような親や教師による懲戒権は違法と認識されるようになりました。そして、周りと違うことは個性と受け止められるようになりました。つまり、もともと日本人は、自我ではなく身体的・精神的な恐怖によって学校に行っていたと言えます。その恐怖がなくなるという社会構造の変化によって不登校は増えていると言えるでしょう。ちなみに、個人主義化は、不登校だけでなく、非婚(結婚しないこと)が増えていることにも通じます。この詳細については、関連記事5をご覧ください。(2)経済安定化1980年代に日本が経済大国になってから、世の中は物質的には豊かになっていきました。2つ目は、経済安定化です。それまでは、学校に行っていなければ、就職できずに、最悪ホームレスになってしまう恐怖がありました。もちろん、成人した子供を養う余裕がある親も少なかったです。だからこそ、子供は文字どおり「死んでも」(たとえいじめがあっても)学校に行きました。しかし、今や子供が学校に行かずに成人して働かなくても、親はその子を養う余裕があります。そして、社会の枠組み(法律)としては個人主義化しましたが、家庭内ではまだ集団主義(家族主義)が残っており、子供は成人しても親に責任があるという考え方が根強いです。子供はその状況を見越しています(モラルハザード)。つまり、大人になっても子供は「子供」のままでいられる時代になったのです。たとえ、親に経済力がなくても、生活困窮に対しては、生活保護という社会保障制度を利用することができます。実際に、生活保護受給者は年々増え続けています。つまり、もともと日本人は、自我ではなく経済的な不安によって学校に行っていたと言えます。その不安がなくなるという社会構造の変化によって不登校は増えていると言えるでしょう。ちなみに、経済安定化は、不登校だけでなく、ひきこもりが増えていることにも通じます。この詳細については、関連記事6をご覧ください。(3)情報化1980年代に日本が経済大国になってまもなくの1990年代、インターネットが世界中に普及して情報革命が起きました。世の中は便利になり娯楽が増えました。3つ目は、情報化です。それまでは、学校に行かなければ、先生に会えず、知識や情報を得ることができませんでした。友達にも会えず、家にいてもやることがなくて寂しくて退屈でした。だからこそ、とりあえず学校に行っていました。しかし、今や苦労して学校に行かなくても、家にいてインターネットから世界中の最新情報をいくらでも手に入れることができます。教育動画で勉強することもできます。対話型の生成AIに教えてもらうこともできます。オンラインゲームで友達とつながることもできます。登校して物理的に教師や友達に会うという行動が必ずしも必要なくなってしまいました。つまり、もともと日本人は、自我ではなくつながりを求めて学校に行っていたと言えます。その不便さがなくなり受け身になれるという社会構造の変化によって不登校は増えていると言えるでしょう。ちなみに、情報化は、不登校だけでなく、ゲーム依存症が増えていることにも通じます。この詳細については、関連記事7をご覧ください。1)「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」P4:文部科学省、2023<< 前のページへ■関連記事ドラえもん【子どものメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 2東京タラレバ娘【ブリーフセラピーとは?】苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】サイレント・プア【ひきこもり】レディ・プレーヤー1【なぜゲームをやめられないの?どうなるの?(ゲーム依存症)】

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手袋の上からアルコール擦式消毒、手指衛生の効果は?

 世界保健機関(WHO)が推奨する5つのタイミング(患者に触れる前、清潔/無菌操作の前、体液に曝露された可能性のある場合、患者に触れた後、患者周辺の環境や物品に触れた後)で手袋の上からアルコール擦式消毒を行うことは、ゴールドスタンダードである手袋の交換と比較すると効果は劣ったが、試験参加者が通常行っている対応と比較すると大幅に汚染を減少させた。米国・メリーランド大学のKerri A. Thom氏らによるInfection Control & Hospital Epidemiology誌オンライン版2023年11月23日号の報告。手袋の上から手指消毒する群とゴールドスタンダード群と通常対応群を比較 著者らは、成人および小児の外科、中間治療、救急治療ユニットを有する4つの病院の医療従事者を対象に、混合研究法を用いた多施設共同無作為化比較試験を実施した。参加者は介入群(WHO推奨の5つの手指衛生タイミングで、手袋の上からアルコール消毒し、手をこする)、ゴールドスタンダード(GS)群(WHO推奨の5つの手指衛生タイミングで、手袋を外し、手指衛生を実施し、新しい手袋を着用する)、通常対応群(参加者が通常行っているとおりに手指衛生・手袋の交換を行う)の3群に無作為に割り付けられ、総コロニー数および病原性細菌の有無を評価。GS群と介入群および通常対応群と介入群が比較された。 手袋の上からアルコール消毒する手指衛生の効果を検証した主な結果は以下のとおり。・GS群と介入群を比較した結果、手袋をはめた状態の手に細菌が確認されたのはGS群では641回中432回(67.4%)、手袋の上から手指消毒する介入群では662回中548回(82.8%)であった(p<0.001)。・総コロニー数中央値はGS群では2CFU(四分位範囲[IQR]:0~5)、介入群では4CFU(IQR:1~15)であった(p<0.001)。・病原性細菌はGS群3.9%、介入群7.3%で同定された(p<0.01)。・患者のケア再開までに要する時間は、GS群では平均28.7秒、介入群では平均14秒であった(p<0.001)。・通常対応群と手袋の上から手指消毒する介入群を比較した結果、手袋をはめた状態の手に細菌が確認されたのは通常対応群では135回中133回(98.5%)、介入群では226回中173回(76.6%)であった(p<0.001)。・総コロニー数中央値は通常対応群では29CFU(IQR:10.5~105.5)、介入群では2CFU(IQR:1~14.75)であった(p<0.001)。・病原性細菌は通常対応群28.1%、介入群7.1%で同定された(p<0.001)。・通常対応群において、WHO推奨の5つの手指衛生タイミングは537回記録されたが、そのうち手指衛生あるいは手袋の交換の実施が確認されたのは26回(4.8%)だった。そのうち遵守率が高かったのは「体液に曝露された可能性のある場合」で、低かったのは「患者周辺の環境や物品に触れた後」および「患者に触れる前」であった。・テストされた331個の手袋のうち、6個(1.8%)に微細な穴があることが判明し、これらはすべて介入群で特定された。 著者らは、ゴールドスタンダード遵守の実現可能性の低さを考慮すると、WHOや疾病予防管理センター(CDC)は、1人の患者のケア中においては手袋の上からのアルコール擦式消毒を推奨することも検討すべきではないかとしている。

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外傷の処置(8)水いぼの治療【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q98

外傷の処置(8)水いぼの治療Q98初夏の徐々に暑さが厳しくなるころ、4歳女児を連れた両親が山奥の診療所に皮疹を主訴に来院した。女児の腹部から背部にかけて、光沢のある丘疹が散見され、そう痒感が強いと言う。かいていたら、どんどん広がってきたとのことだった。皮疹の形状、病歴からは水いぼ(伝染性軟属腫)のようだ。治療はどうしようか。

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非専門医も知っておきたいアトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療では、他の疾患と同様に出口戦略が重要です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。そこまで到達できないときでも、できる限り軽い状態を維持することを目指していきます。「塗っているときはいいけれど、塗らないとすぐに出てくる」のは良いとはいえません。治療方法の3本柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の検索と対策」です。本稿では、最近の薬物療法を中心に解説いたします。なお、本文中の薬価は2023年12月現在の薬価です。インデックス

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アトピー性皮膚炎の治療総論

アトピー性皮膚炎の治療戦略アトピー性皮膚炎の治療では「寛解」という目標が重要です。それは「症状がない、もしくは症状があっても軽微で、かつ日常生活に支障がない状態」つまり「寛解」を目指すことが大切です。寛解が達成できると、患者さんのQOL(生活の質)などは大きく改善されますので、その目標をしっかり医師と患者さんの二人三脚で達成していきたいものです。寛解維持に向けて多くの患者さんは、外用薬を塗ったら良くなるけど、やめたらすぐ再燃する、ということを外来で話されます。「寛解、再燃」のスパイラルに陥ってしまうと、「やはり良くならない」「治療しても意味がない」と思われてしまい、治療を中断してしまう患者さんがいます。よく知られているように「よくなった」と感じた時点でも、皮膚の奥ではまだ炎症がくすぶっていることが多いのです。患者さんが自己判断で外用薬塗布の頻度を減らしてしまうと、皮膚症状が再燃してしまいがちです。そうならないためにも、私は、アトピー性皮膚炎の中等症~重症の患者さんに対しては、プロアクティブ療法と同時にかゆみの物質を血液で検査する「TARC検査」(保険適応あり)を希望される方に施行しています。これはアトピー性皮膚炎の症状に応じて増減することが知られていますので、TARCが正常範囲内にあることが寛解に向けた1つの数字での「見える化」となるかもしれません。治療方法の3本柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の検索と対策」です。1)外用薬ステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストの外用薬を用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗るのが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを治療目標の1つにしています。2)経口薬抗ヒスタミン薬をかゆみ止めとして使うことが多いです。経口JAK阻害薬であるバリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになりました。多くの治療薬が登場して、重症な方にも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。3)注射薬(生物学的製剤)デュピルマブやネモリズマブ、トラロキヌマブなどが使用できます。これらの治療薬でかゆみや皮膚症状はかなりコントロールしやすくなりました。デュピルマブは、2021年のガイドラインで維持療法(寛解を維持するための治療)としても推奨されるようになりました。4)光線療法私はナローバンドUVB照射装置やエキシマランプを用いて光線療法を行っています。かゆみの強い部分にとくに効果を発揮してくれます。ステロイドなど外用薬の使用量を減らすことにも役立ちます。5)スキンケア皮膚のバリア機能および保湿因子を回復させることがスキンケアの大切な目的です。私は、スキンケアを重視しています。とくに出生直後から保湿外用剤によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げることも知られています1)。アトピー性皮膚炎の治療を実践していく上で、スキンケアはどの状態のアトピー性皮膚炎であっても大切です。1)Horimukai K. et al. J Allergy Clin Immunol. 2014;134:824-830.プロアクティブ療法とはアトピー性皮膚炎の治療では、炎症を抑える治療で寛解となった後、外観上ほとんど異常がないように見えても潜在的な炎症が皮膚の奥で残っている状態がしばらく続いています。ここで治療をいったん止めてしまう患者さんが多いのですが、この状態で治療を中止してしまうと、すぐに炎症が再燃してしまいます。プロアクティブ療法とは、皮膚炎が軽快した後もステロイド外用薬などの使用を中止せず、しばらくの間お薬を継続する方法です。それにより、皮膚炎やかゆみの改善状態を長期間維持することができ、再発・再燃の頻度や重症化が減ることが期待できます。プロアクティブとは「先を見越した」「予防的な」という意味で捉えられています。反対に、「かゆいときに塗る、かゆくなくなったら薬を止める」というのが「リアクティブ療法」です。軽症のアトピー性皮膚炎では、リアクティブ療法でも十分なこともあります。『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』においても、プロアクティブ療法は「湿疹病変の寛解維持に有用かつ比較的安全性の高い治療法である」と記載され、推奨度1、エビデンスレベルAと高く推奨されています。プロアクティブ療法のやり方第1段階として、一番大切なことは「寛解導入」すなわち皮膚をツルツルの状態にしてしまうことです。そこではステロイド外用薬を1日2回、きっちりFTUを守って塗っていくことが大切です。光線療法をやる、デュピルマブの注射やJAK阻害薬の内服も重要です。ゴールはかゆみが止まることではなく、寛解することですから、しっかりツルツルの状態を作るまで頑張っていきます。寛解導入のためにはバックグラウンドとして保湿外用薬やスキンケアの継続を行ってくことも大切です。1)プロアクティブ療法を行う上で大切なことプロアクティブ療法はかゆみのあったところ、皮膚が荒れていたところにもステロイド外用薬をはじめとしたお薬を塗ることが大切です。長い期間ステロイドを塗ることへの不安もあると思いますが、20週間実施しても目立った副作用はなかったことも示されています。今はステロイド以外の治療薬もたくさんありますから、副作用が気になった場合は治りにくいところに光線療法を足す、デルゴシチニブやジファミラストなどの薬剤にスイッチするなどの対応が可能になります。2)プロアクティブ療法は患者さんには面倒くさい皮膚症状が寛解していると、お薬を塗るのは面倒くさいと患者さんは思います。ただ、プロアクティブ療法の目的は寛解を維持することですから、皮膚が荒れていたところにも塗っていくことは、再発防止のためには大切です。なお、アトピー性皮膚炎ガイドラインにはこのようにも記載されています。「外来での外用療法が主体となるアトピー性皮膚炎では、患者やその家族は治療の主体である」たしかに、プロアクティブ療法は面倒くさいですし、早く「塗らなくてもいい状態」になりたいはずの患者さんが頑張って毎日塗ることには、とても根気がいるはずですので医療従事者が、その頑張りを少しでも後押しできたらと思います。〔プロアクティブ療法FAQ〕プロアクティブ療法のメリットは?ステロイドの使用量をなるべく少なくして寛解を維持すること。プロアクティブ療法をやっていても痒い場合の対処は?まだ寛解に至っていない状況です。まず寛解導入をやり直しましょう。プロアクティブ療法を行っているとき、保湿も行ったほうが良いか?毎日行ってください!プロアクティブ療法では、いつまでステロイドを使う必要があるか?実は明確な答えがないのです。寛解導入が成功したあと、ステロイドを徐々にタクロリムスやデルゴシチニブなどの抗炎症外用薬にシフトしていき、結果としてステロイドを卒業していく、つまり「卒ステ」というのが目標になると思います。ずっと落ち着いていたのに、急にかゆくなってきた場合の対処は?再び寛解導入を目指してステロイド外用薬をしっかり塗る、光線療法を行う、などの治療を行います。かゆくなくなっても乾燥している部位への対処は?皮膚炎が治りきっていないところも多い可能性があります。しっかり治ると皮膚がツルツルとした柔らかい質感になってきます。ステロイドを終わらせることができましたが、治療薬はいつまで塗ったら良いか?しっかり治った状態をどう維持するか、明確な答えはありません。タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストは長期に外用することに伴う副作用は知られていません。寛解がしっかり維持されていれば、少しずつお薬を塗る間隔をあけながら保湿のみに移行していくのをお勧めします。佐伯秀久ほか. 日皮会誌. 2021:131;2691-2777.

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アトピー性皮膚炎の診療で役立つTIPS

口唇の乾燥アトピー性皮膚炎の患者さんで「唇が乾燥する」という訴えは多いです。それは口唇炎の症状なのですが、リップなどを長い期間使っても治らない患者さんも多数います。なぜなら「唇が乾燥する」状態の患者さんは、唇をなめるクセがあることが多いからです。子供の患者さんに多いのですが、唇やその周りをずっとなめ回すことを繰り返していると、周囲が輪を描くように赤くなります。これを「舌なめずり皮膚炎」と言います。これが長期間続くと口の周囲に色素沈着を来すこともあります。口唇のシミ唇が長い期間荒れている方は、点々とシミができてきます。“labial melanotic macules”や「口唇メラノーシス」と言われたりします。アジア人に多いとされています1)。アトピー性皮膚炎の発症時期が早い患者さんに多い傾向があり、アトピー性皮膚炎があっても、IgEが高い患者さんに唇の色素沈着が多い傾向があります2)。口唇トラブルへの治療の仕方〔口唇炎の治療〕口唇炎に関してはステロイド外用剤を中心に治療していきます。ワセリンを中心とした保湿も有効です。乾燥した感覚がある間は改善するまでステロイド外用剤を使ってみてください。しっかり治った良い状態をワセリンや患者さんに合ったリップでキープすることも大切です。〔口唇のシミの治し方〕口唇の色素沈着にはQスイッチルビーレーザーを使用します。痛み止めのクリームを塗り、レーザーを患部に照射します。治療の所要時間は数分で、1回の治療で終了することが多いです。1)Aljasser MI, et al. J Dermatol. 2019;23:86-89.2)Kang IH, et al. Int J Dermatol. 2018;57:817-821.

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外用薬【アトピー性皮膚炎の治療】

外用薬ではステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストを用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗ることが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを、治療目標の1つにしていますが、ステロイドを完全に止めてしまうのではなく、継続して治療することで再燃を防ぐことに心がけています。デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)デルゴシチニブは、2020年6月24日から使用できる外用薬であり、プロトピック(タクロリムス)以来約20年ぶりの新発売です。ヤヌスキナーゼ阻害薬という、新しいメカニズムの外用薬で、発売から1年が経過し、小児用の0.25%製剤が発売されました。デルゴシチニブは、さまざまな種類のJAKを抑える働きがあります。その効果として、IL-4/13を代表とするサイトカインを抑えることや皮膚バリア機能を回復させることに役立つという基礎研究データがあります1)。デルゴシチニブの安全性について、副作用は比較的少なく、長期投与による皮膚萎縮、多毛などといったステロイドの弱点はまだありません。適用部位の刺激感はまれにありますが、使えなくなるほどのヒリヒリ感は経験しません。また、第III相臨床試験でも副作用発現頻度は、19.6%(69/352例)であり、主な副作用として適用部位毛包炎3.1%(11/352例)、適用部位ざ瘡2.8%(10/352例)、適用部位刺激感2.6%(9/352例)などが報告されています。デルゴシチニブの用法・用量通常、成人には、1日2回、適量を患部に塗布する。なお、1回当たりの塗布量は5gまで、体表面積の30%までとする。そのほか、生後6ヵ月以上のアトピー性皮膚炎の小児にも適応がとれ、小児には2021年6月21日に発売された0.25%製剤の使用が望ましいとされています。ただし、妊婦、授乳婦への使用は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」と注意も記載されています。デルゴシチニブの薬価0.25%:1g 139.70円0.5%:1g 144.9円〔ワンポイント〕効果の強さに関してはストロングクラス、すなわちベタメタゾンやタクロリムスと同等程度と位置付けられ、症状がかなり強く、急速に寛解導入したい場合には向いていないことがあります。一方、デルゴシチニブの副作用は比較的少なく、長期投与によるものがないため、プロアクティブ療法などでの使用に向いています。また、光線療法、シクロスポリン、デュピルマブとの併用が可能で、ステロイド外用薬の副作用があるときには、光線療法と併用することでステロイド外用薬の減薬に期待できます。1)Wataru Amano W, et al. J Allergy Clin Immunol. 2015;136:667-677.2)コレクチム軟膏 電子添文(2023年1月改訂(第6版))ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏)ジファミラストは、2022年6月1日に発売されたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の新しい外用薬です。PDE4阻害薬は、細胞の中の細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を回復させる薬で、cAMP濃度が回復することで免疫細胞の活性化が抑えられます。また、ジファミラストの第III相臨床試験結果について、投与開始後4週間でInvestigator’s Global Assessment(IGA)が0または1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者さんの割合は、38.46%とプラセボ(12.64%)に比べて有意に高く1)、小児では0.3%製剤で44.6%、1%製剤で47.1%といずれもプラセボ(18.1%)に比べて有意に高い効果を得ていました2)。病勢の指標であるeczema area andseverity index(EASI)が50%減少した指標であるEASI50は、4週間の投与で58.24%とプラセボ(25.82%)に比べ、有意に高くなりました。同様にEASI75は42.86%(プラセボ13.19%)、EASI90は24.73%(プラセボ5.49%)でした。4週後の平均EASI改善率は−49.1%(プラセボ−10.5%)でした1)。ジファミラストの安全性としては、色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、そう痒症、膿痂疹、ざ瘡、接触皮膚炎が記載されています3)が、明らかに多い副作用は認められませんでした1,2)。ジファミラストの用法・用量15歳以降は1%製剤を使用します。14歳以下は0.3%か1%製剤を使用します。通常、成人には1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。小児は0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。また、症状に応じて、1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布することができます3)。ジファミラストの薬価0.3%:1g 142.00円1%:1g 152.10円〔ワンポイント〕使用感について患者さんからの評価は良く、塗った際の刺激感を訴えられることはありませんでした。効果に関しても総じて好印象でした。1)Saeki H, et al. J Am Acad Dermatol. 2022;86:607-614.2)Saeki H, et al. Br J Dermatol. 2022;186:40-49.3)モイゼルト軟膏 電子添文(2023年6月改訂(第3版))

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経口薬【アトピー性皮膚炎の治療】

経口JAK阻害薬では、ウパダシチニブ、バリシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになり、重症の患者さんにも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)ウパダシチニブはJAK1を阻害する薬剤です。通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては7.5mgへの減量が可能です。アトピー性皮膚炎に限って倍量の30mgを処方することができます。ウパダシチニブの薬価7.5mg:2594.6円/錠15mg:5089.2円/錠30mg:7351.8円/錠バリシチニブ(商品名:オルミエント)バリシチニブはJAK1/JAK2を阻害する薬剤で、皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎と円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合限定)に適応があります。用量は4mgを1日1回経口投与する。状態に応じ適宜減量となっています。相互作用がありますので、プロベネシドを内服している患者さんは減量が望ましいとされています。バリシチニブの薬価2mg:2705.9円/錠4mg:5274.9円/錠アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)アブロシチニブはウパダシチニブと同じくJAK1を阻害する薬剤です。50mg、100mg、200mgの3剤形があり、通常用量の100mgから増やしたり減らしたりできます。状況に応じて柔軟な処方ができるのは利点です。適応はアトピー性皮膚炎のみになります。アブロシチニブの薬価50mg:2587.4円/錠100mg:5044円/錠200mg:7566.1円/錠〔アトピー性皮膚炎でのJAK阻害薬処方の注意点〕診療ガイドラインでは、次のように定められています。JAK阻害薬の内服は、「事前に十分な外用薬などの治療を行っていても難治であった方」が対象となります。今まで何もやっていない方であれば6ヵ月程度はガイドラインに沿った外用薬による治療を行い、それでも改善しない場合に使用します。投与の要否にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する必要があります。(1)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考に、アトピー性皮膚炎の確定診断がなされている。(2)抗炎症外用薬による治療では十分な効果が得られず、一定以上の疾患活動性を有する、または、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用もしくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難で、一定以上の疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者である。a)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6ヵ月以上行っている。b)以下のいずれにも該当する状態。IGAスコア3以上EASIスコア16以上、または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する(目安として頭頸部のEASIスコアが2.4以上)体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上同時に、投与できる施設も決められております。次に掲げる医師要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設です。ア)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。イ)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。また、日本皮膚科学会でも届出制度を作っています。乾癬の生物学的製剤のように承認制度は設けていませんが、薬剤の特性上、下記の要件を満たした上で届出した上で、使用することになっています。1)皮膚科専門医が常勤していること2)乾癬生物学的製剤安全対策講習会の受講履歴があること3)薬剤の導入および維持において近隣の施設に必要な検査をお願いできること

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注射薬【アトピー性皮膚炎の治療】

デュピルマブ(商品名:デュピクセント)デュピルマブは、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体の治療薬で、2018年から使用できるようになったアトピー性皮膚炎の治療薬です。2週間に1回注射をします。生物学的製剤であり、生体が作る抗体タンパクを人工的に作成しアトピーを悪化させる活性物質にピンポイントで作用させることを目的としています。デュピルマブの対象患者ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者。デュピルマブの注射の種類注射器型のシリンジと自己注射に向いているペンの2種類。デュピルマブの特徴アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに大きく関わる蛋白であるインターロイキン4(IL-4)、IL-13の働きを抑えます。具体的には、IL-4受容体α(IL-4Rα)をブロックする薬です。ブロックすることでアトピー性皮膚炎のかゆみ、皮膚炎症状が改善します。また、IL-4、13はフィラグリンという皮膚のバリア機能を保つための重要な蛋白を作りにくくさせることが知られており、これを抑制することで皮膚バリア機能の回復も期待できます。デュピルマブの用法・用量15歳以上の成人の初回投与は600mg(2本)です。以後、2週間おきに300mg(1本)ずつ注射します。初診時は問診と診察で適応があるかどうかの確認を行います。なお、初診時にデュピルマブの投与はできません。2023年9月25日より生後6ヵ月以上の小児に適応が追加されました。また、2023年12月18日より200mgシリンジが発売されました。小児では体重ごとに用法が変わります。具体的には5kg以上15kg 未満:1回 200mgを4週間隔、15kg以上30kg未満:1回 300mgを4週間隔、30kg以上60kg未満:初回に400mg、その後は1回 200mgを2週間隔、60kg以上:初回に600mg、その後は1回 300mgを2週間隔(成人と同様の用法、用量)で投与します。デュピルマブの薬価300mgシリンジ:5万8,593円300mgペン:5万8,775円200mg シリンジ:4万3,320円〔ワンポイント〕高額療養費制度の勧め:薬剤費が高額なため、高額療養費制度を利用されることを強くお勧めします。収入や年齢により適応となる場合やそうでない場合があります。自己注射をする場合、最大6本の注射薬を処方することができ、一部の方には高額療養費制度を用いて医療費の負担軽減が可能です。デュピクセント皮下注 電子添文(2023年9月改訂(第6版))ネモリズマブ(商品名:ミチーガ)ネモリズマブは、ヒト化抗ヒトIL-31受容体A(IL-31RA)モノクローナル抗体です。IL-31は、かゆみに重要な役割を果たすサイトカインで、主にTh2細胞から作られます。ネモリズマブは、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみを改善する新しい発想の治療薬です。IL-31とアトピー性皮膚炎、そしてかゆみIL-31は、Th2細胞から産生され、アトピー性皮膚炎の皮膚病変部では、過剰に産生されていることが知られています1)。また、血清中のIL-31の濃度はアトピー性皮膚炎患者では上昇しており、病勢と相関していることが知られています2)。IL-31は神経線維が成長することを促進し、かゆみを増強する働きもあります3)。IL-31の受容体は神経線維や表皮角化細胞に分布しています。また、IL-31はバリア低下にも働くことが知られています4)。そして、この受容体は、感覚情報の中継点として機能する脊髄後根神経節に多く発現しており、かゆみを脳に伝えることにも深く関わっています5)。つまり、IL-31はかゆみに関係する神経を刺激して脳にそのかゆみを伝え、そして神経の成長を助けてかゆみを起こしやすくする働きがあります。この受容体は、IL-31RAとオンコスタチンM受容体(OSMR)が合わさってできており、ネモリズマブはそのうちIL-31RAに結合して働きを抑えます。ネモリズマブの効果第III相臨床試験の結果6)より、かゆみに関しては、1週目より有意な差がみられています。速やかなかゆみの改善という点を期待したいところです。ネモリズマブの副作用電子添文7)によると、アトピー性皮膚炎(18.5%)、皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染など)(18.8%)が頻度の多い副作用です。ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症が3.4%に認められ、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹など)などの重篤な過敏症が0.3%報告されています。使用上の注意ネモリズマブはかゆみを治療する薬剤であり、かゆみが改善した場合も含め、投与中はアトピー性皮膚炎に対して外用薬をはじめとした必要な治療を継続することが必要です。ネモリズマブはIgGという種類の抗体製剤ですので、胎盤や乳汁に移行することがあります。そのため、妊娠中や授乳中の投与は禁忌ではありませんが、治療上の有益性が投与の危険性を上回ると判断された場合にのみ使用することになっています。ネモリズマブの適応13歳以上のアトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)となっています。ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤および抗ヒスタミン剤などの抗アレルギー剤による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者さんが対象です。ネモリズマブの用法・用量ネモリズマブとして60mgを4週に1回皮下注射で投与します。在宅自己注射も可能です。ネモリズマブの薬価60mgシリンジ:11万7,181円1)Guttman-Yassky E, et al: J. Allergy Clin. 2019;143:155-172.2)Ezzat M H M, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2011;25:334-339.3)Feld M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2016;138:500-508.4)Cornelissen C, et al. J Allergy Clin Immunol. 2012;129:426-433.5)Furue M, et.al. Allergy. 2018;73:29-36.6)Kabashima K, et al. N Engl J Med. 2020;383:141-150.7)ミチーガ皮下注 電子添文(2023年11月改訂(第3版))トラロキヌマブ(商品名:アドトラーザ)トラロキヌマブは、IL-13を選択的に阻害するヒト免疫グロブリンIgG4モノクローナル抗体であり、IL-13がその受容体に結合するのをブロックします。IL-13はアトピー性皮膚炎の病変ができ、慢性化していくのに重要な働きをしますので、IL-13をブロックするのは合理的と考えられます。2022年12月に製造販売承認を取得、2023年3月に薬価基準に収載されました。2023年9月26日、アドトラーザ皮下注150mgシリンジが発売されました。IL-13の働きアトピー性皮膚炎の病変が持続するために重要な働きをするのが、Th2細胞というリンパ球です。Th2細胞は、IL-13やIL-4を産生することで皮膚のバリア機能低下、抗菌ペプチドの産生低下、IL-31というかゆみに関連するサイトカインの産生などを起こしてアトピー性皮膚炎の特徴的な病変を作ります。IL-13はIL-4と似た働きをしていますが、アトピー性皮膚炎の病態が作られる上で、IL-4よりIL-13のほうがより中心的な働きをしていることが知られています。また、線維化に関しても重要な役割を果たすことが解明され、アトピー性皮膚炎の慢性病変では苔癬化という皮膚がゴワついた感じになる病変ができますが、それにもIL-13の働きが重要であることが判明しています。トラロキヌマブの効果ステロイド外用剤併用下で、16週間トラロキヌマブを投与することで皮膚炎の重症度指標であるEASIが75%減少した患者割合であるEASI75は56.0%でした。これに対し外用薬だけの患者は35.7%でした。トラロキヌマブの適応従来の治療(ステロイド外用剤など)で十分な効果が得られない15歳以上のアトピー性皮膚炎患者トラロキヌマブの用法・用量トラロキヌマブはシリンジ製剤で、初回4本、その後2週間隔で2本を皮下注射します。現段階では在宅自己注射はできません。トラロキヌマブの薬価150mgシリンジ:2万9,295円アドトラーザ皮下注 電子添文(2023年9月改訂(第2版))

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