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洗剤誤飲【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第11回

異物誤飲は救急外来で遭遇する機会の多い疾患の1つです。高齢者の義歯が取れて飲み込んでしまった、コップに洗剤を入れていたことを忘れてそれを飲んでしまった…など。わが国の誤飲頻度の正確なデータはありませんでしたが、単施設での報告によると65歳以上の高齢者の頻度が多く、1位:薬剤の包装紙、2位:義歯、3位:魚骨でした1,2)。一方、消費者庁によると2020年度の65歳以上の高齢者の誤飲・誤食の事故情報は318件寄せられており、医薬品の包装シート、義歯・詰め物、洗剤や漂白剤が多いそうです3)。洗剤や漂白剤を誤飲してしまったときの対処法を記載した医学書やレビューは少ないため、実際に私も救急外来で「誤って洗剤を飲んでしまったが、かかりつけ医に相談したところ救急外来を受診するよう指示されたので来た」という話を聞くことがあります。私は年に数回「誤って洗剤を飲んでしまった」という電話相談もしくは診察をすることがありますが、私の経験では成人が洗剤や漂白剤を誤飲したとしても何か特別な処置が必要なケースは限られていて、ほとんどが何もすることなく終わっています。だからといって全部大丈夫というわけではないため、日本石鹸洗剤工業会の「誤飲・誤用の応急処置(公益財団法人 日本中毒情報センター監修)」を参考に、私の診療過程を症例をもとに紹介します。なお、今回は認知症のない成人で台所用洗剤に重点を置きます。<症例>70歳女性主訴誤って台所用洗剤を飲んだ。昼の12時ごろ台所のコップに入っていた水を飲んだところ変な味がした。娘に確認したところコップを洗剤につけて茶渋を取っていたとのこと。口腔内に違和感があるため受診。既往歴高血圧上記は救急外来にフラッとやって来た患者さんです。順を追って対処しましょう。(1)バイタルサイン、嘔吐の有無の確認こういった洗剤などの誤飲で問題になってくるのは、嘔吐して誤嚥してしまうことです。洗剤は当然飲むものではなく、強い味や香りのため飲めたものではありません。万が一飲んでしまった場合、その味や香りで嘔吐して誤嚥することがあります。そのため、まずは誤嚥性肺炎を生じていないか確認しましょう。この患者さんは、嘔吐もなく、SpO2は室内気で98%でした。(2)洗剤の種類の確認台所用洗剤の種類は大きく分けて合成洗剤、食器洗い機専用洗剤、台所用石けん、台所用漂白剤(塩素系)、台所用漂白剤(酸素系)、クレンザーとなります。いずれの中毒量(マウス)は液状だと5mL/kgとなっています。体重が50kgの人だと250mL程度になりますが、原液を10mL飲むのも困難であり、私は意識がはっきりしている人で大量の原液を誤飲した症例の経験はありません。しかし、洗剤の誤飲は少量であれば問題にならないのかというとそうでもありません。第9回の化学眼外傷のときに紹介したとおり、強い酸性orアルカリ性の物質の場合は強い粘膜障害が生じる懸念があります。それらを誤飲した場合は、腐食性食道炎が生じ食道穿孔などが生じるリスクがあり、内視鏡検査や入院治療が必要になり注意が必要です4,5)。本症例は、茶渋をとるために強アルカリ(pH11.0~12.0)の次亜塩素酸塩配合の台所用漂白剤(キッチンハイター)を入れていたそうです。(3)誤飲状況の詳細と症状を確認では、強アルカリの物質を誤飲してしまった場合、すべて消化器内科を受診して入院が必要なのでしょうか? そんなことはありません。腐食性食道炎を生じるには、それなりの量が必要です。何mL飲めば生じる可能性が上がるという根拠は見つかりませんでしたが、先述のとおり洗剤は通常飲めないようにできています。ハイターの臭いをかいだことがあればわかると思いますが、あの匂いのものを間違えてごくごく飲むのはかなり無理があります。私は味わったことがないですが、誤飲した人に聞いたところ「苦いけど苦いとも言えない味、刺激が強い」とのことでした。意識がある人が飲めるものではありません。実際に腐食性食道炎を生じている患者が強酸性or強アルカリ性の物質を摂取した理由は自殺が最も多く、私が和文文献を探していて唯一自殺以外であったのが「酩酊状態の誤飲」でした4-6)。また症状としては、粘膜障害が生じるため咽頭痛、嗄声、嘔吐、心窩部痛が2~3時間以内に急激に生じます。今回の症例の場合、水で薄めたハイターをコップに入れていて、患者は一口飲んで吐き出したので飲んだには飲んだがほんの少しだけでした。症状としては口に苦い感じがするとのことでした。飲んだ量も少なく、濃度も薄い、さらに症状もほとんどありません。1時間ほど外来で経過をみましたが何もないため経過観察としました。治療に関しては、今回のようなケースではとくにすることはありません。少量誤飲してすぐの状態であれば、口をゆすいだ後に水を飲んでもらうくらいです。昔から食器用洗剤を誤飲した場合は牛乳がよいと言われていますが、効果のほどは定かではありません。プロトンポンプ阻害薬やアルギン酸を粘膜保護を目的に投与している施設もありますが、今回のようなほぼ無症状の人に対して投与する明確な根拠はありません。少なくとも私は中性洗剤の場合であれば処方はせず、帰宅後に何らかの症状が出現すれば再診としています。今回のような粘膜障害を生じうる洗剤を飲んだ場合は症状に合わせて3日分処方することもありますが、もし電話相談で「ハイターを飲んでしまった。症状はない」という相談が来たときに、プロトンポンプ阻害薬とアルギン酸を処方するために受診させたりはしません。今回は、台所用洗剤の誤飲に重点を置いて紹介しました。まとめますと、「意識がはっきりしている人が洗剤を誤飲したとして、大量に誤飲した可能性は低いためさほど恐れることはない」ということです。特殊なものを除き、家庭にあるほとんどの洗剤は同じストラテジーで対処できます。ただし、強い症状(嚥下時痛、嗄声、心窩部痛など)があれば内視鏡や胃洗浄などを行いますので、高次医療機関に相談してください。教科書や論文のレビューが少ないテーマなので経験がない人は不安になるかもしれませんので参考になればと思います。1)岡 陽一郎ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2007;68:2449-58.2)山本 龍一ほか. 埼玉医科大学雑誌. 2010;37:11-14. 3)消費者庁:高齢者の誤飲・誤食事故に注意しましょう! 4)松村 英樹ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2015;76:714-719.5)De Lusong MAA, et al. World J Gastrointest Pharmacol Ther. 2017;8:90-98. 6)佐藤 雄亮ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2008;69:1658-1662.

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先天性難聴児、遺伝子治療で聴力回復/Lancet

 常染色体劣性難聴9(DFNB9)の小児の治療において、ヒトOTOF遺伝子導入アデノ随伴ウイルス血清型1型(AAV1-hOTOF)を用いた遺伝子治療は、安全かつ有効であり、新たな治療法となる可能性があることが、中国・復旦大学のJun Lv氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年1月24日号に掲載された。中国1施設の単群試験 本研究は、中国の1施設(復旦大学附属眼耳鼻喉科医院)で行われた単群試験であり、2022年10月~2023年6月に参加者のスクリーニングを行った(中国国家自然科学基金委員会などの助成を受けた)。 年齢1~18歳、重度~完全難聴で、OTOF遺伝子の2つのアレルの双方に変異を認め、人工内耳を埋め込んでいないか、片側のみに埋め込んでいる患児6例(男女3例ずつ、年齢1.0~6.2歳)を登録した。用量制限毒性とGrade4/5の有害事象は発現せず AAV1-hOTOFを、正円窓から蝸牛に注射(単回)した。6例のうち1例には9×1011ベクターゲノム(vg)、5例には1.5×1012vgを注射した。全例が26週間のフォローアップを完了した。 注射後6週の時点で用量制限毒性(主要エンドポイント)は発現せず、試験期間中にGrade4または5の有害事象は認めなかった。合計48件の有害事象が観察され、このうち46件(96%)はGrade1または2であり、2件(4%)はGrade3(1例で2件の好中球数の減少、いずれも自然消退)であった。6例中5例でABR閾値が改善 5例で聴力の回復を認め、0.5~4.0kHzにおける聴性脳幹反応(ABR)の平均閾値が40~57dB低下した。 9×1011vgのAAV1-hOTOFの投与を受けた患児(1例)では、平均ABR閾値はベースラインの95dB以上から、4週後には68dB、13週後には53dB、26週後には45dBにまで改善した。また、1.5×1012vgの投与を受けた患児(5例)のうち4例では、平均ABR閾値はベースラインの95dB以上から、48dB、38dB、40dB、55dBと変化し、26週には聴力の回復を認めた。 聴力が回復した患児では、音声知覚(speech perception)の改善がみられた。 著者は、「本研究は、DFNB9の治療における遺伝子治療の安全性と有効性に関するエビデンスを提供し、他の遺伝性難聴の新たな治療法としての遺伝子治療の基礎を築くものである」としている。

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超早産児の動脈管開存症、イブプロフェンによる早期治療は無益/NEJM

 超早産児の動脈管開存症(PDA)の治療において、早期のイブプロフェン投与はプラセボと比較し、最終月経後年齢36週時における死亡または中等度~重度気管支肺異形成症のリスクを低下させないことが示された。英国・ダラム大学のSamir Gupta氏らが、英国の新生児集中治療室(NICU)32施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。シクロオキシゲナーゼ阻害薬であるイブプロフェンは、早産児のPDA治療に使用できるが、大きなPDAへの選択的早期治療が、短期アウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌2024年1月25日号掲載の報告。大きなPDAを有する生後72時間以内の超早産児でイブプロフェンvs.プラセボ 研究グループは、在胎23週0日~28週6日で出生し、心エコー検査によりPDA(直径1.5mm以上、左右シャント)が確認された生後72時間以内の新生児を、イブプロフェン群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。イブプロフェン群には10mg/kgを負荷用量として投与した後、5mg/kgを24時間以上の間隔を空けて2回投与した。 主要アウトカムは、最終月経後年齢36週時の死亡または中等度~重度の気管支肺異形成症の複合、退院時までの副次アウトカムは主要アウトカムの個々のイベント、気管支肺異形成症の重症度などであった。 2015年7月~2020年12月に、計653例がイブプロフェン群(326例)とプラセボ群(327例)に無作為に割り付けられた。このうち、割り付けられた治療を受けたのは、それぞれ318例(97.5%)および315例(96.3%)であった。死亡または中等度~重度気管支肺異形成症の発生、69.2% vs.63.5% 主要アウトカムのイベントは、イブプロフェン群で318例中220例(69.2%)、プラセボ群で318例中202例(63.5%)に発生し、補正後リスク比は1.09(95%信頼区間[CI]:0.98~1.20、p=0.10)であった。 イブプロフェン群で323例中44例(13.6%)、プラセボ群で321例中33例(10.3%)が死亡した(補正後リスク比:1.32、95%CI:0.92~1.90)。 最終月経後年齢36週時までの生存児において、中等度~重度の気管支肺異形成症は、イブプロフェン群で274例中176例(64.2%)、プラセボ群で285例中169例(59.3%)に発生した(補正後リスク比:1.09、95%CI:0.96~1.23)。 イブプロフェンに関連する可能性があると評価された予測できない重篤な有害事象が2件発生し、このうち1件は予測できない重篤な副作用に分類された。

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ハイゼントラ、プレフィルドシリンジの剤形追加承認を取得/CSLベーリング

 CSLベーリングは1月22日付のプレスリリースで、人免疫グロブリン製剤「ハイゼントラ20%皮下注」について、新剤形としてプレフィルドシリンジ製剤に対する医薬品製造販売承認を取得したことを発表した。 ハイゼントラは、効能・効果として2013年9月に「無又は低ガンマグロブリン血症」が承認され、2019年3月には「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」が追加された。2023年12月時点で米国、欧州を含む67以上の国と地域で承認されている。 同社の代表取締役社長である吉田 いづみ氏は、「このたびのプレフィルドシリンジ製剤の承認により、本剤を使用される患者さんおよび医療従事者の利便性向上と投与時の負担軽減につながることが期待されます。当社は、血漿分画製剤と免疫グロブリン補充療法のグローバル・リーダーとして、希少・難治性疾患の患者さんのアンメットニーズを満たし、患者さんの人生をより豊かなものにできるよう、これからも全力で取り組む所存です」としている。

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第179回 コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省

<先週の動き>1.コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省2.診療報酬改定、医療従事者の処遇改善とともに入院基本料・初診料を引き上げへ/厚労省3.岸田首相、認知症施策推進本部で認知症対策の強化を指示/政府4.小児とAYA世代のがん患者の10年後の生存率が明らかに/国立がん研究センター5.新型コロナ後も続く少子化、2023年出生数が大幅減/厚労省6.労災認定された過労死自殺の遺族が病院に2億円超の賠償請求/兵庫1.コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省厚生労働省の発表によると、新型コロナウイルスの新規感染者数が9週連続で増加していることが明らかになった。1月15日~21日の間に約5,000の定点医療機関から報告された新規感染者数は計6万268人で、1定点当たり12.23人となり、前週の8.96人から約1.36倍に増加した。入院患者数も昨年末の約2倍に増加している。都道府県別では、福島県が最多で18.99人、茨城県が18.33人、愛知県が17.33人と続いている。東京都は8.33人、大阪府は7.96人、福岡県は10.40人。新規入院患者数は3,462人で、前週から600人増加したが、集中治療室(ICU)に入院している患者数は115人で、前週より21人減少。季節性インフルエンザの新規感染者数も増加しており、1定点当たり17.72人となっている。専門家は「新型コロナはすでに冬の流行期に入っており、『第10波』入り」を指摘している。参考1)「コロナ第10波に入った」の声…インフルと同時流行(読売新聞)2)全国のコロナ感染者数、9週連続で増加 入院患者は昨年末の2倍に(朝日新聞)3)新型コロナ インフルエンザ ともに患者数増加 感染対策徹底を(NHK)2.診療報酬改定、医療従事者の処遇改善とともに入院基本料・初診料を引き上げへ/厚労省厚生労働省は、1月26日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、来年度の診療報酬改定で入院基本料の引き上げを決定した。今回の改定の主な目的は、40歳未満の勤務医や事務職員の賃上げを実現すること。また、医療従事者の処遇改善や日常的な感染防止対策の原資として、初診料や再診料の引き上げも含んでいる。入院基本料の見直しでは、栄養管理体制の基準の明確化、患者意思決定支援の推進、身体的拘束の最小化などが求められている。今回の改定により、国費ベースで約800億円の財源が確保され、医療行為の対価に当たる本体部分が0.88%引き上げられる。そのうち、0.61%分の財源は看護職員や病院薬剤師、コメディカルの賃上げに充てられ、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップが行われる。また、40歳未満の勤務医や薬局に勤務する薬剤師、事務職員らの賃上げに0.28%分程度の財源が回される予定。急性期入院医療に関しては、急性期充実体制加算や総合入院体制加算の要件が厳格化され、急性期病棟のリハビリテーション、口腔管理、栄養管理の充実に向けた新加算が評価される。同時に、DPC(診断群分類)参加基準も厳格化され、基礎係数の見直しが行われる。参考1)個別改定項目(その1)について(厚労省)2)入院基本料引き上げへ、若手勤務医らの賃上げで 初・再診料もアップ 24年度診療報酬改定(CB news)3)急性期充実・総合入院体制加算の要件厳格化、急性期病棟のリハ・口腔・栄養管理を新加算で評価、DPC参加基準厳格化-中医協総会(1)(Gem Med)4)若手勤務医や事務員等の処遇改善は「入院料や初再診料アップ」で対応、「点数増が処遇改善につながったか」の検証は?-中医協総会(2)(同)3.岸田首相、認知症施策推進本部で認知症対策の強化を指示/政府2024年1月26日、政府は認知症対策に関する国の基本計画を策定するため、「認知症施策推進本部」の初会合を開催した。岸田 文雄首相は、認知症の当事者やその家族から意見を聞き、今秋に計画を策定することを目指している。岸田首相は、認知症になり得るすべての人々が尊重され、支え合いながら共生する活力ある社会の実現を強調した。この基本計画では、認知症の人々が尊厳と希望を持って暮らせるようにするための基本理念を定めている。政府は、認知症の人々と共生できる社会環境の整備、認知症の予防、治療薬の開発などについて議論し、関連施策をまとめる予定。また、岸田首相は、認知症と共に希望を持って生きる新しい認知症観の理解促進の重要性を指摘し、高齢者の生活課題への取り組みに生かすことを強調した。参考1)岸田首相 認知症対策強化へ “政府一丸で必要な取り組みを”(NHK)2)認知症基本計画、今秋策定へ 推進本部が初会合-政府(時事通信)3)認知症の人との共生、今秋めどに基本計画策定 施策推進本部が初会合(朝日新聞)4.小児とAYA世代のがん患者の10年後の生存率が明らかに/国立がん研究センター国立がん研究センターは、2011年にがんと診断された小児(0~14歳)とAYA世代(15~39歳)の患者の10年後の生存率を初めて集計し、公表した(この結果は全国341施設の約36万例のデータを基にしている)。小児がんの生存率は比較的高く、とくに白血病の10年生存率は86.2%、脳腫瘍は71.5%で、5年生存率と比べて大きな低下はみられなかった。AYA世代では、がんの種類によって生存率に差があり、乳がんの10年生存率は83.5%、脳・脊髄腫瘍は77.8%となった。子宮頸部・子宮がんの10年生存率は87.2%で、大きく低下していないことが確認された。全体のがん患者の10年生存率は実測で46%、がんの影響を直接的に計算した生存率は53.5%だった。研究者は、「小児がん患者の長期の予後が良いことを示すデータが乏しかったが、この研究で裏付けられた」と指摘している。また、「AYA世代のがん患者には、がんの種類や年齢に応じたきめ細かいケアが必要である」と強調している。参考1)院内がん登録2022年登録例集計 公表 2022年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況(国立研究開発法人 国立がん研究センター)2)がん診断の0~39歳 10年後の生存率を初集計 “実感”裏付け(毎日新聞)3)小児がん、10年生存70~90% 初の集計、大人より高い傾向(日経新聞)4)小児・「AYA世代」 がん患者 10年後の生存率 初公表(NHK)5.新型コロナ後も続く少子化、2023年出生数が大幅減/厚労省厚生労働省がまとめた人口動態統計速報によると、2023年1月~11月までの日本の出生数が69万6,886人に減少し、前年同期比で5.3%の減少を記録したことが明らかになった。これは2004年以降で初めて70万人を下回る数値であり、2023年通年の出生数は過去最少となる見通し。同期間の婚姻件数も前年比5.6%減の45万1,769組と減少し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による出会いの機会減少が一因とされる。しかし、COVID-19が感染症法上の5類に移行した後も婚姻件数の回復はみられない。一方で、死亡数は1.4%増の144万4,146人となり、自然増減はマイナス74万7,260人に達した。出生数の減少と高齢化の進行により、わが国の人口減少が進んでいる。政府は2024年度から3年間で少子化対策を強化し、出生減に歯止めをかける計画を立てている。これには児童手当や育児休業給付の拡充が含まれ、26年度までに年3.6兆円の予算が確保される予定。参考1)2023年の出生数、過去最少か 1~11月出生数69万6千人(産経新聞)2)23年1~11月までの出生数が70万人割れ(CB news)3)23年1~11月の出生数、69.6万人 前年同期比5.3%減(日経新聞)6.労災認定された過労死自殺の遺族が病院に2億円超の賠償請求/兵庫2024年1月27日、兵庫県神戸市の甲南医療センターに勤務していた26歳の医師、高島 晨伍さんが自殺した事件に関して、遺族が病院の院長らに対し、2億3,000万円余りの損害賠償を求める民事訴訟を起こすことが報道で明らかになった。高島さんは亡くなる直前まで100日間連続で勤務し、亡くなる直前の1ヵ月間の時間外労働は207時間余りだった。西宮労働基準監督署は「極度の長時間労働により精神障害を発症し自殺した」として、すでに労災認定をしている。遺族によると、高島さんの両親は運営法人「甲南会」と具 英成院長を相手取り、過重労働を知っていたにも関わらず是正措置をとらなかったため自殺したと主張している。また、この事件の発生前に他の若手医師も過酷な勤務状況を訴えていたが、病院幹部は「僕ら昔の世代の人間やから…意識が違う」と述べ、適切な対応がなされていなかったことも明らかになっている。参考1)100連勤・月200時間超の時間外労働で若手医師が自殺 病院の院長らに2億3,000万円余りの損害賠償求め来週にも提訴へ(MBS)

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10項目の要点確認で災害高血圧を防ぐ/日本高血圧学会

 日本高血圧学会(理事長:野出 孝一氏[佐賀大学医学部内科学講座 主任教授])は、今般の能登半島地震の発生を受け、避難所での災害関連死を予防する観点から「被災地における高血圧疾患予防」をテーマに、緊急メディアセミナーを開催した。 セミナーでは、10項目の「寒冷被災地における血圧管理と高血圧合併症予防の要点」を示し、震災の避難所で医療者も一般の人も確認できる高血圧予防指標の紹介と震災地での初動活動について報告が行われた。なお、10項目の要点は、同学会のホームページで公開され、ダウンロードして使用することができる。140mmHg超の血圧ではまわりの医療者へ相談を 苅尾 七臣氏(自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 教授)は、今回の10項目の要点の制作についてその背景を語った。 過去の大規模災害を振り返ると災害被災周辺地域では、災害高血圧が発生し、心血管疾患、脳卒中、大動脈解離などの循環器疾患が増加、命を落とす方も多かった。また、今回の能登半島地震のように冬季でしかも寒冷地域のようなところでは、血圧コントロールも難しく、さらなる循環器疾患の増加も懸念されている(とくに心血管死亡は血圧が10/20mmHg上昇するごとに2倍ずつ増えるとされ、90/140mmHgがリスクの目安となる)。 こうした事態から高血圧の特徴と循環器リスク低減のために要点が制作された。ただ、災害時の血圧管理に関する十分なエビデンスはなく、過去の災害から得られた知見などをもとにレトロスペクティブなエビデンスに基づき本要点は作成されているので、この点を注意していただき、診療での目安として現地で役立ていただきたいと期待を寄せた。【寒冷被災地における血圧管理と高血圧合併症予防の要点】(抜粋)※できているものにチェックし、1つでも多くのチェックが付くようにする。〔A 生活環境の整備〕1.寒さ対策:保温性の高い衣服を着用し、体を冷やさない。理想の室温は18℃以上2.睡眠:できるだけ横になる、6時間以上の睡眠を心掛ける〔B 生活習慣の維持〕3.生活リズム:できる限り起床・就寝時刻を決め、生活のリズムを作る4.運動:身体を動かす。1日に20分以上の歩行でも大丈夫5.食事:なるべく塩分の摂り過ぎに注意し、野菜、果物、乳製品などカリウムの多い食事を心がける(医師からカリウム制限を受けている腎臓病の方は指示通りに)6.体重の維持:体重計があれば測って、増減を確認7.感染症予防:できる限りマスク着用、手洗いが大切8.血栓の予防:こまめに水分を摂り、1時間に1回は足を動かす〔C 治療の継続〕9.薬の継続:普段飲んでいる薬は、いつも通り飲み続ける10.血圧管理:血圧を測定し140mmHg以上なら医師、看護師、保健師に相談(とくに160mmHg以上は、できるだけ早い時期に医師に相談) また、苅尾氏はさらに詳しく災害高血圧について説明。「災害地域に生じる高血圧(≥90/140mmHg)」と定義し、被災直後から発生、生活環境と生活習慣が回復・安定するまで持続し、とくに循環器疾患のリスクが高い早朝高血圧は寒冷の影響を受けやすいと詳しく解説した。 特徴として以下の項目がある。・災害後の血圧上昇は一過性で1ヵ月以降低下するが、高齢者、慢性腎臓病、肥満者などの患者では遷延すること・災害時の血圧140mmHg未満を目標とし、血圧レベルは2週間毎に再評価すること(なお、災害時は白衣効果が増大することから避難所などに自動血圧計の設置が望ましい)・患者の服薬状況が不明な場合、安全性と効果の高い長時間作用型カルシウム拮抗薬が適切であること そのほか、過去の震災などの知見から脳血管疾患の発症について、外部仮設トイレ、早朝(とくに午前5時~午前11時)、70歳以上の高齢者はリスクが高くなることを指摘し、これからの数ヵ月、循環器疾患リスクを可能な限り減らしてもらいたいと述べ、説明を終えた。 勝谷 友宏氏(勝谷医院 院長)は、同学会の実地医家部会ネットワークを活用した被災地支援について、血圧計と減塩食について、メーカーなどと協議を行い、現地に手配する準備を行っていることを報告した。 宮川 政昭氏(宮川内科小児科医院 院長)は、日本医師会と連携した被災地支援について説明した。医師会は対策本部を七尾市に置き、日本医師会災害医療チーム(JMAT)の支援を行っている。今回の震災は、過去の震災と違い、現場への派遣に困難を来たし、支援に遅れが生じている。そのため、今までは災害医療派遣チーム(DMAT)からJMATに引き継がれることが多かったが、現在は両チームが並列して活動している。JMATの派遣も約900名となり、今後も能登北部への支援に現地の医師と連携して診療支援を行っていくと展望を語った。

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新型コロナ、ワクチン接種不足で重症化リスク増/Lancet

 英国において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種が推奨回数に満たないワクチン接種不足者が、2022年6月時点の同国4地域別調査で32.8~49.8%に上り、ワクチン接種不足が重症COVID-19のリスク増加と関連していたことが、英国・エディンバラ大学のSteven Kerr氏らHDR UK COALESCE Consortiumが実施したコホート研究のメタ解析の結果で示された。ワクチン接種不足は完全接種と比較して、COVID-19による入院や死亡といった重症アウトカムのリスク増大と関連している可能性がある。研究グループは、ワクチン接種不足の要因を特定し、ワクチン接種不足者の重症COVID-19のリスクを調査する検討を行った。Lancet誌オンライン版2024年1月15日号掲載の報告。英国のほぼ全国民をカバーする医療データセットを用いて解析 研究グループは、イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズの4地域におけるTrusted Research Environment(TRE)の医療データセットを用いてコホート研究を行った。このデータデットには、ほぼ全国民をカバーする匿名化された電子健康記録のデータが含まれている。 5歳以上を対象に2022年6月1日時点のワクチン接種不足の補正後オッズ比を推定するとともに、同日~9月30日の4ヵ月間における重症COVID-19の発生について、ワクチン接種不足との関連を解析した。ワクチン接種は、英国の予防接種に関する共同委員会(Joint Committee on Vaccination and Immunisation:JCVI)による年齢層別の推奨接種回数を満たしている場合を完全接種、満たしていない場合を接種不足と定義した。 重症COVID-19とワクチン接種不足との関連は、4地域の各TREで解析を行った後、逆分散加重固定効果メタ解析を用いて統合した。完全接種なら、重症COVID-19の2割弱(7,180/4万393件)は回避できた可能性 2022年6月1日時点のワクチン接種不足者は、イングランドで5,896万7,360人中2,698万5,570人(45.8%)、北アイルランドで188万5,670人中93万8,420人(49.8%)、スコットランドで499万2,498人中170万9,786人(34.2%)、ウェールズで235万8,740人中77万3,850人(32.8%)であった。4地域全体の接種不足者は3,040万7,626人(44.4%)であった。 5~74歳の集団において、若年、社会経済的貧困度が高い、非白人、合併症の数が少ないといった人ほど、ワクチン接種不足の可能性が高かった。 重症COVID-19の発生は、全体で4万393件であった。このうちワクチン接種不足者での発生は1万4,156件であった。ワクチン接種不足は、すべての年齢群、すべての地域で、とくに75歳以上において重症COVID-19のリスク増大と関連していた。 2022年6月1日時点で、すべての人がワクチンを完全接種していたと仮定して分析したところ、追跡期間4ヵ月時点で、5~15歳210件(95%信頼区間[CI]:94~326)、16~74歳1,544件(1,399~1,689)、75歳以上5,426件(5,340~5,512)、合計7,180件の重症COVID-19を減少したと推定された。 75歳以上におけるCOVID-19重症化の補正後ハザード比は、推奨回数より1回少ない場合で2.70(95%CI:2.61~2.78)、2回少ない場合で3.13(2.93~3.34)、3回少ない場合で3.61(3.13~4.17)、4回少ない場合で3.08(2.89~3.29)であった。

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第195回 どうなる?医薬品供給、国内GE大手の相次ぐ海外撤退の行方

国内ジェネリック医薬品(GE)企業最大手・沢井製薬の持株会社・サワイグループホールディングス(サワイグループHD)の発表を見て、やっぱりその結末になったかと思った。こう書くと、沢井製薬九州工場での長期安定性試験での不正のことと思う人が多いかもしれない。しかし、私が抱いた感慨はそのことではない。1月17日にサワイグループHDの米国事業の持株会社サワイ・アメリカHDとその傘下の孫会社であるサワイ・アメリカLLC、2017年に買収した米・GE企業アップシャー・スミス・ラボラトリーズの保有株式を台湾のボラ・ファーマシューティカルズHDに売却すると発表したことに関してだ。早い話がアメリカGE市場からの全面撤退である。ちなみに沢井製薬の九州工場での不正については、昨年12月22日に厚生労働省から総括製造販売責任者(総責)の変更命令、大阪府・福岡県からは業務改善命令が下された。長きにわたり試験不正をやっていたのに、業務停止にならなかったことにすっきりしない人、逆に医薬品供給の観点からホッとした人、さまざまな反応があると思う。業務停止処分については、「医薬品医療機器等法に基づく業務停止命令等取扱規則」が存在し、10項目の判断基準が定められている。今回の件は組織的関与がないと判断されたこと、不正に基づく重大な健康被害が想定されないことなどが、業務停止処分に踏み込まなかった最大の理由だろう。さて、前述の米国事業の撤退は、アメリカ市場での競争激化により差別化のためには追加投資が避けられない状況にあるうえに、日本市場の需要拡大と不正事件対応も含めた品質問題の課題に立ち向かうために国内への経営資源の優先投資が避けられない事情を考慮した結果とのことである。簡単に言えば、アメリカでの市場競争に敗れたのである。しかし、これを単純に沢井の経営問題と考えるのは、個人的には適切ではないと考えている。かつて沢井と肩を並べた日本有数のGE企業であった日医工の前例があるからだ。日医工は2020年末から相次いだGE企業の一連の不祥事に名を連ね、2021年3月に32日間の業務停止処分を受けた。この影響と2017年に買収した米・GE子会社セージェント・ファーマシューティカルズの競争環境悪化による多額の損失が加わり、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)適用に追い込まれた。日医工、沢井の相次ぐアメリカ市場撤退は、結局、日本のGE企業がアメリカでは競争力がないという厳しい現実を示している。では、どんな競争力が欠けているのか? 端的に言うと価格競争力である。この点については過去の本連載で触れたような事情がある。GE企業の経営安定とそれに伴う品質と安定供給の確保を考えた場合、“海外でも競争力を持つGE企業の育成”という長期的な視点が個人的には不可欠と考えている。もっとも現下の情勢では国内の不安定な供給体制の改善が焦眉の問題である。実際、今も議論が続けられている厚労省医政局の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の第1回会合でも「海外展開については、まずは、国内の安定供給について業界で担保できるようになってからでよいのではないか」「海外展開について、必ずしも成功していない企業があるため、少し話が拡がり過ぎる印象。原価高騰の流れの中で人件費を抑えるという観点では避けて通れないため、原価の観点から検討するのがよいのではないか」との意見が出て、国内GE企業の海外展開に関する議論は後回しにされている。しかし、製薬企業のみならず多くの産業でDX進展などをベースに業界環境が急変し、「日本の安定供給を解決した後に…」というのは、やや悠長過ぎるのではないだろうか?

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医療者へのワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第6回

はじめここでは特定のワクチンではなく、医療機関で働く医療者に対して接種が推奨されるワクチンを一括して扱う。本稿の対象は、医療機関で働き患者と対面での接触がある職員(医師、看護師、各種技師、受付事務員など)に加え、医療現場で実習を行う医療系学生(医学生、看護学生など)である。以降は、まとめて「医療職員」と記載する。医療職員は、常にさまざまな病原体にさらされている。伝染性疾患の患者は、そうと知らずに治療を求めて病院を訪れるし、易感染性状態にある免疫弱者も同じ空間に密集しうる。これら両者に対応する医療職員も、また、常に病原微生物に曝露されている。したがって、医療職員が感染すると、自身が感染症患者になるだけでなく、無関係な来院者や入院患者へ2次感染を起こす原因にもなりうる。これを回避するためにワクチンがある(ワクチンで予防できる)感染症(VPD)については最大限に対策する必要がある。以上の観点から、対象となるのは以下のVPDとなる。1.空気感染もしくは飛沫感染するVPD2.接触感染または針刺しが原因となるVPD3.一部の医療従事者で必要となるVPD4.曝露後対応を要するVPDワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)1.空気感染もしくは飛沫感染するVPD1)麻疹、風疹、ムンプス、水痘(1)いずれも代表的なVPDで、飛沫やエアロゾルによる強烈な感染力がある。ムンプス以外は定期接種に指定されているが、海外からの持ち込みなどもあり根絶には程遠い状況にある。(2)近年は医学部などの卒前教育課程でワクチン接種が推奨される医療系学生も増えてきたが、記録の確認は確実に行っておく必要がある。医療資格を持たない事務系職員も忘れずに対応する必要がある。2)季節性インフルエンザ(1)インフルエンザウイルスによる流行性感冒。A型とB型があり、それぞれ流行の度に表面抗原も微妙に異なる。(2)わが国では晩秋から春にかけて流行することが多いが、沖縄を含む熱帯地方では年間を通じて循環している。海外との往来や温暖化により、流行時期は増えている。(3)感染既往やワクチン接種による免疫は発症を予防するほど十分でないため、ワクチンを接種しても罹患するなど個人レベルでは恩恵を実感しにくいが、集団としてはワクチン接種率が高いほど疾病負荷が減るため有益性がある。3)SARS-CoV-2(COVID-19)(1)2019年末から世界的パンデミックを起こしたコロナウイルス。2023年現在はオミクロン株派生型が主流で、軽症にとどまることが多いもののエアロゾル感染を起こすため強い感染力がある。4)百日咳(1)飛沫により感染する細菌感染症。成人が感染すると乾性咳が長く続き、新生児が感染すると致死的な経過を取ることがある。以上から、新生児と接触がある成人に免疫付与するコクーニング(cocooning)による新生児感染予防が推奨されている。2.接触感染または針刺しが原因となるVPD1)B型肝炎(1)ヒトのあらゆる体液(汗を除く)から感染するウイルス性疾患で、15年以上の経過で肝硬変や続発する肝がんの原因となる。(2)世界保健機関(WHO)が1992年からuniversal vaccinationキャンペーンを展開して感染抑制が進んだ地域も多い中、わが国は定期接種化が2016年と世界的には後発であり、高齢者の陽性キャリアはいまだ多い。3.一部の医療者のみ考慮の対象となるVPD1)破傷風(1)土中の芽胞菌である破傷風菌が損傷皮膚に感染して起こす疾患で、発症後の死亡率は30%と高い。肉眼で確認できない微細な損傷でも感染が成立する。(2)屋外で転倒する可能性を考えれば全住民に免疫付与が望まれるが、医療機関での業務として考えた場合、土壌に触れる業務がある職員(清掃職員、園芸療法に関わる者など)で接種完遂が求められる。2)髄膜炎菌(1)飛沫感染によって細菌性髄膜炎を起こす。集団生活や人の密集状態で、時に集団発生することが知られている。(2)救急外来や病理検査室のように、曝露を受ける可能性が高い部署では職員に対して接種を勧める。4.曝露後対応を要するVPD(曝露後緊急接種に用いる)1)MR、水痘(1)麻疹と水痘への曝露があった場合、すみやかに追加接種(72時間以内だが早いほど良い)することで、免疫がなくても高い発症阻止効果が期待できる。(2)風疹とムンプスでは曝露後接種の有効性は示されていないが、曝露の時点でワクチン接種歴が明らかでなければ将来利益も考慮して接種を推奨する。2)HBV(B型肝炎ウイルス)(1)接種未完了者がHBV陽性体液に曝露された場合、免疫グロブリンに加えてHBVワクチン1シリーズ(3回)接種を開始することで感染を予防できる可能性がある。3)破傷風(1)屋外での外傷により発症リスクが懸念される場合、追加接種を行う。医療職員が未接種である可能性は低いが、その場合は免疫グロブリン投与も必要となる。ワクチンの概要(効果、副反応、生または不活化、定期または任意・接種方法)1)MR、ムンプス、水痘(1)上記いずれも生ワクチンであり、MRと水痘は現在国の定期接種となっているが、1回接種だった時代もあり、接種回数が不足している可能性がある。2)季節性インフルエンザ(1)4価の不活化ワクチン(A型2価+B型2価)が最も一般的。成人はシーズン前に1回接種。(2)上記の通り、個々人の発症や重症化を予防する効果は高くないが、集団発生の確率を減らすことで疾病負荷を軽減するために接種が推奨される。3)SARS-CoV-2(COVID-19)(1)パンデミック対策として各種ワクチンが緊急開発・供給された中、初めて実臨床使用されたmRNAワクチンが、現時点までもっとも安全かつ有効なワクチンである。(2)2023年現在、野生株とオミクロン株の2価ワクチンが流通している。(3)伝統的なワクチンに比べて発熱や疼痛などが強い傾向はあるものの、重篤な副反応はとくに多いとはいえず、安全性は他のワクチンと大差はない。4)百日咳、破傷風(1)3種または4種混合として定期接種化されている不活化ワクチン。(2)免疫能を維持するために10年ごとの追加接種が望ましいとされているが、追加分は定期接種に設定されていないため、可能なら医療機関で職員の接種時期を把握しておき、接種を知らせたい。接種のスケジュールや接種時の工夫いずれのワクチンについても、接種歴を確実に記録し、必要な追加接種が遅れずに実施できるように努める。1)MR、ムンプス、水痘(1)「生後1年以降に2回の接種」が完遂の条件。間隔が長くても問題ない。(2)上記を満たさない・記録が確認できない場合は、不足分を接種する。(3)2回接種が必要な場合、1ヵ月以上時間を空ける。(4)混合ワクチンにより3回以上の接種となる成分があっても問題ない。(5)接種前後での抗体検査は必要ない。2)百日咳、破傷風(1)小児期の基礎免疫が完遂している場合、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(商品名:トリビック)を1回接種する。(2)小児期の基礎免疫が不明なら、基礎免疫として0、1、2ヵ月で3回接種する。(3)破傷風の単独ワクチンを接種していても、百日咳の免疫付与が必要ならトリビックを接種して良い。3)季節性インフルエンザ(1)一般的な4価の不活化ワクチンは、流行前に1回接種する。(2)添付文書上は皮下注とされているが、効果や副作用の観点からは筋注が望ましいため、実臨床では「深い皮下注」を心がけると良い。4)SARS-CoV-2(COVID-19)(1)院内感染対策の一環として、医療職員は都度すみやかに接種を行うことが望ましい。日常診療で役立つ接種ポイント(例:ワクチンの説明方法や接種時の工夫など)業務上の必要性から職員へ接種を勧める観点から、以下の点に留意したい。職種により事前の説明を調整する接種費用は医療機関が負担する接種記録は人事記録として保管する妊娠や治療などが接種不可の理由になることから、ワクチン接種情報はプライバシー保護の対象として対応する。たとえば、「集団一斉接種をしない」、「接種対象者名簿を公開しない」など。年次健康診断や新人オリエンテーションと一緒に接種するなど、業務への影響を最小限に抑える工夫をする曝露後接種の取り扱いは、あらかじめ院内感染予防マニュアルに手順を明記しておく。そうすることで、発生報告からワクチン接種まで迅速に処理され接種時期を逃さない。参考となるサイト環境感染学会医療者のためのワクチンガイドライン 第2版/第3版こどもとおとなのワクチンサイト講師紹介

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小児双極性障害患者の診断ミスに関するシステマティックレビュー

 双極性障害は、複雑な症状を呈する精神疾患の1つである。カナダ・Brock UniversityのTabeer Afzal氏らは、DSM-IVおよびDSM-V基準を用いた小児双極性障害の診断ミスに関するエビデンスを要約し、未治療の双極性障害患者の生命アウトカムに及ぼす影響を検討した。さらに、小児双極性障害の診断精度向上につながる可能性のある推奨事項の概要および要約も試みた。Research on Child and Adolescent Psychopathology誌オンライン版2023年12月18日号の報告。 2023年3月21日までに公表された文献を、Scholars Portal Journal、PsychINFO、MEDLINEデータベースより検索した。レビュー対象基準に従い、18歳未満の小児サンプルを用い、1995~2022年に出版された文献に限定した。除外基準は、自己申告による診断を伴うサンプルを含む文献とした。 主な結果は以下のとおり。・本レビューには、15件の文献を含めた。・研究結果は、ナラティブサマリーを用いて合成した。・小児双極性障害は、注意欠如多動症(ADHD)、統合失調症、うつ病と診断されることが最も多かった。・診断ミスは、不適切な治療計画や適切な治療の遅れにつながる可能性があり、社会的、職業的、経済的な課題により、小児双極性障害患者のQOLに悪影響を及ぼす可能性が示唆された。

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止まらない咳、でもどの検査にも異常がない!?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第16回

止まらない咳、でもどの検査にも異常がない!?講師獨協医科大学医学部 小児科学 助教 高柳 文貴 氏獨協医科大学医学部 小児科学 教授 吉原 重美 氏【今回の症例】14歳女子。長引く咳嗽を主訴に受診した。咳嗽は昼間に多く、夜間の睡眠中は咳嗽を認めない。胸部、副鼻腔レントゲン検査は異常なし。血液検査ではWBC、CRP、IgEの上昇は認めない。FeNO測定は10ppb。スパイログラム(呼吸機能検査)で肺活量、一秒率の低下は認めなかった。今までに、吸入ステロイド薬(ICS)の定期吸入、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬の定期内服などを行ったが効果はなし。同居の祖母との折り合いが悪いとの訴えあり。

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コロナワクチンとインフルワクチンで異なる、接種を躊躇する理由とは?

 米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のGillian K. SteelFisher氏らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症ワクチンとインフルエンザワクチンに対して、人々の有効性や安全性の捉え方、接種の意向、躊躇する理由などについて調査した。その結果、有効性については両ワクチンとも40%の人が非常に効果的だと考える一方で、インフルワクチンのほうがコロナワクチンに比べて安全性への信頼度が高く、同様に接種の意向も高いことが示された。JAMA Network Open誌2023年12月21日号Research Letterでの報告。 本調査は2023年7月7~16日に、米国の18歳以上の成人の確率に基づくサンプルを対象にアンケート調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・調査に招待された3,232人のうち、1,430人(44%)がアンケートに回答した。・ほぼ同数の割合が、ワクチン接種が重篤な症状や入院を防ぐのに非常に効果的であると回答した。コロナワクチン42% vs.インフルワクチン40%。・ワクチンの安全性については、コロナワクチンと比べてインフルワクチンは非常に安全だと思っている割合が高かった。コロナワクチン41% vs.インフルワクチン55%。・今シーズンにワクチンを接種する可能性が非常に高いと答えた割合も、コロナワクチンと比べてインフルワクチンのほうが多かった。コロナワクチン36% vs.インフルワクチン49%。・50歳以上(659人)に限っても、全年代と同様の傾向がみられた。・ワクチン接種を躊躇する人において、コロナワクチンとインフルワクチンで懸念する理由が異なっていた。・コロナワクチンを懸念する理由として最も多い順に、より多くの研究をしてほしい(60%)、ワクチンの安全性への懸念がある(51%)、政府機関によるワクチンの推進を信頼していない(45%)、ワクチンが予防に非常に有効だと思わない(40%)、ワクチンよりも感染して自然免疫を得たい(38%)、ワクチンの製薬企業を信頼していない(38%)が挙げられた。・インフルワクチンを懸念する理由として最も多い順に、ワクチンよりも感染して自然免疫を得たい(37%)、人々があまりにも多くのワクチンを接種することを期待されていると感じる(30%)、政府機関によるワクチンの推進を信頼していない(27%)、ワクチンが予防に非常に有効だと思わない(27%)、感染しても重症になると考えていない(27%)、ワクチンの安全性への懸念がある(25%)が挙げられた。 人々がインフルワクチンよりも新型コロナワクチンの接種に、より消極的であることが示された。著者は本結果を踏まえて、医療者がワクチンに関する情報提供などの患者とのコミュニケーションにおいて、同時接種が提案される際はより人気のあるインフルワクチンを先に始めたり、両ワクチンの安全性と有効性について一貫したメッセージを提供したりすることを勧めている。今シーズン以降のワクチンの普及を促進するためには、医療者やコミュニケーターが公衆の意見の微妙な違いに対応することが不可欠だとしている。

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冬の食中毒で多いノロウイルス

冬季に多い食中毒(ノロウイルス感染症)■冬季の食中毒の原因と症状ノロウイルスが原因となることが多く、おもにウイルスに感染した人の調理による食材からの食品汚染で経口感染、拡大します。また、ウイルスを蓄積したカキなどの二枚貝(非加熱で喫食)も原因となります。【潜伏期間】感染後、24~48時間で発症【主な症状】吐気、嘔吐、下痢、腹痛、軽い発熱。通常1~2日程度継続。(感染しても無症状、程度が軽い場合もあります)【ウイルスの拡大】ウイルスは感染してから1週間程度ふん便中に排泄され続けます。これは無症状の人でも同様です。治療:ノロウイルス感染症の治療は対症療法しかありません!予防:ノロウイルス感染症の予防では、「手洗い」「よく加熱」「次亜塩素酸ナトリウム溶液での消毒(アルコール消毒が効きません)」が3本柱になります。東京都健康安全研究センターホームページより引用(2024年1月12日閲覧)https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/12/07/07.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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鎮咳薬不足、増えた手間や処方優先患者は?/医師1,000人アンケート

 後発医薬品メーカーの不祥事などで医薬品供給不安が続いているなか、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの流行が鎮咳薬不足に追い打ちをかけている。昨年9月には厚生労働省が異例とも言える「鎮咳薬(咳止め)・去痰薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」1)の通知を出し、処方医にも協力を仰いだことは記憶に新しい。あれから3ヵ月が経ち、医師の業務負担や処方動向に変化はあったのだろうか。今回、処方控えを余儀なくされていることで生じる業務負担や処方を優先する患者の選び方などを可視化すべく、『鎮咳薬の供給不足における処方状況』について、会員医師1,000人(20床未満:700人、20床以上:300人)にアンケート調査を行った。最も入手困難な薬剤、昨夏から変わらず まず、鎮咳薬/鎮咳・去痰薬の在庫逼迫状況の理解について、勤務先の病床数を問わず全体の95%の医師が現況を認識していた。なお、処方逼迫について知らないと答えた割合が高かったのは200床以上の施設に勤務する医師(8%)であった。 次に入手困難な医薬品について、昨年8~9月に日本医師会がアンケート調査を行っており、それによると、院内処方において入手困難な医薬品名2,096品目の上位抜粋30品目のうち9品目が鎮咳薬/鎮咳・去痰薬であった2)。これを踏まえ、本アンケートでは鎮咳薬/鎮咳・去痰薬に絞り、実際に処方制限している医薬品について質問した。その結果、最も処方制限している医薬品には、やはりデキストロメトルファン(商品名:メジコン)が挙がり、続いて、チペピジンヒベンズ酸塩(同:アスベリン)、ジメモルファンリン酸塩(同:アストミンほか)などが挙げられた。この結果は1~19床を除く施設で同様の結果であった。処方が優先される患者、ガイドラインの推奨とマッチ? 鎮咳薬/鎮咳・去痰薬の処方が必要な患者について、2019年に改訂・発刊された『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2019』によると、“可能な限り見極めた原因疾患や病態に応じた特異的治療(末梢に作用する鎮咳薬や喀痰調整薬など)が大切”とし、中枢性鎮咳薬(麻薬性:コデインリン酸塩水和物ほか、非麻薬性:デキストロメトルファン、チペピジンヒベンズ酸塩ほか)の処方にはいくつか問題点があることを注意喚起しながらも、“患者の消耗やQOL低下をもたらす病的な咳の制御は重要であり、進行肺がんなど基礎疾患の有効な治療がない状況では非特異的治療は必要であるが3)、少なくとも外来レベルでは初診時からの中枢性鎮咳薬の使用は明らかな上気道炎~感染後咳嗽や、胸痛・肋骨骨折・咳失神などの合併症を伴う乾性咳嗽例に留めることが望ましい”と記している。よって、「高齢者」「疾患リスクの高い患者」への適切な処方が望まれるものの、不足している中枢性鎮咳薬を処方する患者の見極めが非常に重要だ。以下には、参考までにガイドラインのステートメントを示す。<ガイドラインでの咳嗽治療薬におけるステートメント>◆FAQ*1:咳嗽治療薬の分類と基本事項は 咳嗽治療薬は中枢性鎮咳薬(麻薬性・非麻薬性)と末梢性鎮咳薬に分類される。疾患特異的な治療薬はすべて末梢性に作用する。可能な限り原因疾患を見極め、原因に応じた特異的治療を行うことが大切である。中枢性鎮咳薬の使用はできる限り控える。*frequently asked question◆FAQ2:咳嗽治療の現状は さまざまなエビデンスが年々増加しているものの、咳が主要評価項目でなかったり評価方法に問題がある研究が多い。多種多様の治療薬選択における標準化はいまだ十分ではなく、臨床現場での有用性を念頭に本ガイドラインの改訂に至った。 では、処方の実際はどうか。本アンケート結果によると、20床未満の場合、2023年7月以前では「咳が3週間以上続く患者」「高齢者」「咳があるすべての患者」「処方を希望する患者」「喘息などを有する高リスク患者」の順で処方が多く、希望患者への処方が高リスク患者へのそれよりも上回っていた。しかし、12月時点では、「喘息などを有する高リスク患者」「咳が3週間以上続く患者」「高齢者」「処方を希望する患者」「咳があるすべての患者」と処方を優先する順番が変わり、希望患者への処方を制限する動きがみられた。一方、20床以上においては2023年7月以前では「高齢者」「咳が3週間以上続く患者」「処方を希望する患者」の順で多かったが、12月時点では、「咳が3週間以上続く患者」「高齢者」「喘息などを有する高リスク患者」の順で処方患者が多かった。このことからも、高齢者よりも咳が3週間以上続く患者(遷延性咳嗽~慢性咳嗽)に処方される傾向にあることが明らかになった。鎮咳薬不足による手間、1位は疑義照会対応 供給不足による業務負担や処方変化については、疑義照会件数の増加(20床未満:48%、20床以上:54%)、長期処方の制限(同:43%、同:40%)、患者説明・クレーム対応の増加(同29%、同17%)の順で医師の手間が増えたことが明らかになり、実践していることとして「患者に処方できない旨を説明」が最多、次いで「長期処方を控える」「処方すべき患者の優先順位を設けた」などの対応を行っていることがわかった。また、アンケートには「無駄な薬を出さなくて済むので、処方箋が一枚で収まるようになった(60代、内科)」など、このような状況を好機に捉える声もいくつか寄せられた。アンケートの詳細は以下にて公開中『鎮咳薬の供給不足における処方状況』<アンケート概要>目的:製造販売業者からの限定出荷が生じているなか、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ等の感染症拡大に伴い、鎮咳薬などの在庫不足がさらに懸念されることから、医師の認識について調査した。対象:ケアネット会員医師 1,000人(20床未満:700人、20床以上:300人)調査日:2023年12月15日方法:インターネット

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無羊水症への羊水注入、新生児の予後を改善するか/JAMA

 胎児の両側性腎無形成に起因する妊娠初期の無羊水症は、新生児に致死的な肺低形成を引き起こすが、連続的な羊水注入により羊水を回復させることで、胎児の肺の発達を促し、生存が可能になると示唆されている。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のJena L. Miller氏らは、連続的な羊水注入は新生児の致死的肺低形成を軽減するが、早産の増加と関連し、退院までの生存率は低いことを示した。研究の詳細は、JAMA誌2023年12月5日号で報告された。米国9施設の非無作為化臨床試験 本研究は、米国の9施設が参加した非盲検前向き非無作為化臨床試験であり、2018年12月~2022年7月に行われた(米国・ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健・人間発達研究所[NICHD]の助成を受けた)。 孤立性両側性腎無形成による無羊水症が確認され、他の先天性異常のない21組の母体・胎児を対象とした。妊娠26週までに、超音波ガイド下で経皮的に、等張液を用いた羊水注入を開始した。注入の頻度は、妊娠期間に応じて正常な羊水レベルを維持するよう個別に設定した。 主要アウトカムは、新生児の生後14日以上の生存と、透析導入の複合とした。主要アウトカムは生児出産17例中14例で達成 介入の有効性が示されたものの、主要アウトカムの領域を超える新生児の合併症と死亡が懸念されたため、18組の母体・胎児の中間解析に基づき、本試験は早期中止となった。 生児出産は17例(94%)で、分娩時の妊娠期間中央値は32週4日間(四分位範囲[IQR]:32~34週)と全般に早産であった。全参加者が37週までに出産していた。 生後14日以上の生存と透析導入は、17例の新生児のうち14例(82%)で達成された(95%信頼区間[CI]:44~99)。 主要アウトカムの生後14日以上の生存と関連する因子として、(1)羊水注入の回数(中央値)が多い(生存例14回vs.非生存例5回、p=0.01)、(2)初回羊水注入から早産期前期破水(PPROM)までの期間(中央値)が長い(66.0日vs.13.0日、p=0.04)、(3)妊娠期間が32週より長い(14例[100%]vs.1例[25%]、p=0.005)、(4)出生時体重が重い(2,010g vs.1,350g、p=0.03)が挙げられた。生存退院は6例(35%)のみ 生後24週(中央値、範囲:13~32週)の時点で長期の腹膜透析を受けており、自宅へと生存退院した新生児は、17例中6例(35%)のみだった。 その後、2例が死亡した。1例は2歳時に透析関連の感染性合併症による死亡、1例は生後4ヵ月時に自宅で心停止後の死亡であった。3例(50%)が脳卒中を発症し、2例は長期生存している。 著者は、「退院までの生存率の低さは、肺機能とは別に、付加的な死亡負担が存在することを強調するものである」と指摘し、「生存している新生児のアウトカムの特性を完全に明らかにし、合併症と死亡の負担を評価するためには、さらなる長期データが求められる」としている。

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睡眠呼吸障害の小児、扁桃摘出術は有効か/JAMA

 いびきと軽度の睡眠時無呼吸を有する睡眠呼吸障害(SDB)の小児の治療において、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術は監視的待機(watchful waiting)と比較して、12ヵ月の時点での実行機能(executive function)および注意力(attention)を改善しないが、行動、症状、生活の質(QOL)、血圧などを有意に改善することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSusan Redline氏らが実施した「PATS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年12月5日号に掲載された。米国7施設の単盲検無作為化臨床試験 PATS試験は、米国の7つの睡眠センターで実施された単盲検無作為化臨床試験であり、2016年6月~2021年2月に参加者を登録した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]協力協定の助成を受けた)。 年齢3~12.9歳、習慣性のいびきがみられ、閉塞性の無呼吸低呼吸指数(AHI)が3点未満のSDB患児458例(平均年齢6.1歳、女児230例[50%])を登録し、早期にアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術を施行する群(手術群)に231例、監視的待機を行う群に227例を無作為に割り付けた。 2つの主要アウトカムとして、実行機能を評価するための、保護者報告によるBehavior Rating Inventory of Executive Function(BRIEF)のGlobal Executive Composite(GEC)Tスコアと、コンピュータベースの注意検査であるGo/No-go(GNG)テストのd-prime信号検出スコアの、ベースラインから12ヵ月時までの変化量を評価した。BRIEF GEC Tスコア、GNG d-primeスコアの変化量に差はない ベースラインで169例(36.9%)が過体重または肥満で、108例(23.6%)に喘息の既往があり、282例(61.6%)で扁桃腺が口腔咽頭幅の50%以上を占めており、331例(72.3%)でAHIが1点未満(中央値0.5点[四分位範囲[IQR]:0.2~1.1])であった。 12ヵ月の時点でのベースラインからのBRIEF GEC Tスコアの変化量は、手術群が-3.1点、監視的待機群は-1.9点であり、実行機能については両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(群間差:-0.96点、95%信頼区間[CI]:-2.66~0.74、p=0.27)。 また、GNG d-primeスコアの12ヵ月時までの変化量は、手術群が0.2点、監視的待機群は0.1点と、注意力にも両群間に統計学的に有意な差はなかった(群間差:0.05点、95%CI:-0.18~0.27、p=0.68)。有害事象の頻度は同程度 一方、行動上の問題(CBCL総問題スコア:-3.09点[97%CI:-4.90~-1.28]、p<0.001)、眠気(mESSスコア:-1.18点[-2.15~-0.21]、p=0.01)、SDB症状(PSQ-SRBDスコア:-0.16点[-0.20~-0.12]、p<0.001)、疾患特異的QOL(OSA-18スコア:-9.75点[-12.84~-6.65]、p<0.001)、全般的QOL(PedsQL総スコア:4.76点[1.44~8.09]、p=0.005)のベースラインから12ヵ月時までの変化量は、いずれも監視的待機群に比べ手術群で有意に改善した。 手術群は監視的待機群と比較して、12ヵ月後の収縮期および拡張期血圧のパーセンタイル値の低下が大きかった(変化量の群間差:収縮期血圧:-9.02[97%CI:-15.49~-2.54]、p=0.006、拡張期血圧:-6.52[-11.59~-1.45]、p=0.01)。また、AHIが睡眠中1時間当たり3イベント以上へ進行した患児の割合は、監視的待機群が13.2%であったのに対し、手術群は1.3%と有意に少なかった(群間差:-11.2%[97%CI:-17.5~-4.9、p<0.001)。 6例(2.7%)が、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術に関連した重篤な有害事象を経験した。試験との関連を問わない有害事象が1件以上発生した患者は、手術群が175例、監視的待機群は172例であった。 著者は、「これらの知見は、睡眠ポリグラフ検査でAHIが低くても習慣性のいびきを呈する小児における、手術の有益性を排除するものではない。今後、どの小児がアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術の恩恵を受ける可能性が高いかを特定するための、取り扱いが簡便なスクリーニング法を開発する研究が必要である」としている。

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高齢者RSV感染における予防ワクチンの意義(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 原著論文 Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccine in Older Adults./NEJM―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2023年夏以降、急性呼吸器感染症として新型コロナに加え、季節性インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV:respiratory syncytial virus)の3種類のウイルス感染に注意すべき新時代に突入した。興味深い事実として、新型コロナが世界に播種した2020年度にはインフルエンザ、RSVの感染は低く抑えられていたが、2021年度以降、両ウイルス感染は2019年以前のレベルに戻りつつある。この場合、インフルエンザは11月~1月、RSVは7月~8月に感染ピークを呈した。 本邦にあっては、RSVは主として幼児/小児の感染症として位置付けられており、ウイルス感染症の有意な危険因子である高齢者に対する配慮が不十分であった。本論評では、高齢者RSV感染に適用される新たな遺伝子組み換えProtein-based vaccine(RSVPreF3 OA、商品名:アレックスビー筋注用、グラクソ・スミスクライン)とGene-based vaccine(mRNA-1345、Moderna)に関する治験結果を基に、高齢者RSV感染症の全体像について考察する。RSVの分子生物学 RSVは1956年に同定されたParamyxovirus科のPneumovirus属に分類されるウイルスである。エンベロープを有する直径150~300nmのフィラメント状の球形を示す一本鎖(-)RNAウイルスで、10種の遺伝子をコードする15,000個の塩基からなる。RSVにあって宿主細胞との接着、侵入を司るのがウイルス表面に発現する1,345個のアミノ酸配列を有するF蛋白(膜融合前F蛋白)である(コロナウイルスのS蛋白に相当)。RSVは表面抗原であるG蛋白の違いによってA型とB型の2種類の亜型に分類されるが、両者の膜融合前F蛋白には明確な差を認めない。RSVの自然宿主はヒトを中心とする哺乳動物である。高齢者RSV感染の疫学 すべての新生児において母親と同程度のRSV抗体(母体からの移行抗体)が認められるが、その値は徐々に低下し、生後7ヵ月目以降のRSV抗体は生後に起こった新規自然感染に由来する(生後2年までに、ほぼ100%が新規感染)。それ以降、生涯を通して再感染を繰り返す。RSV感染の最大の脅威は生後3ヵ月以内の乳児、未熟児、先天性心疾患を有する小児であることは間違いないが、近年、成人、とくに、高齢者におけるRSV感染の重要性が指摘されている。 欧米の検討では、看護施設に入所中の高齢者のうち年間で5~10%がRSVに罹患、うち10~20%が肺炎を合併、2~5%が死亡すると報告されている。さらに、65歳以上の高齢者にあってA型インフルエンザによる死亡が毎年3.7万人であるのに対し、RSVによる死亡は毎年1万人(インフルエンザの約30%)に達すると報告されている。18歳以上の成人を対象とした検討では、基礎疾患として喘息、COPD、糖尿病、冠動脈疾患、うっ血性心不全を有する人のRSV感染による入院比率は、基礎疾患を有さない人に比べ有意に高いことが示されている。高齢に加え、上記の基礎疾患は新型コロナ、季節性インフルエンザ感染の増悪因子としても作用するので、ウイルス性呼吸器感染症の普遍的危険因子として念頭に置く必要がある。インフルエンザ感染との比較において、RSV感染のほうが入院した症例の肺炎合併頻度、基礎疾患として存在する喘息、COPDの増悪頻度が高いことが示されている。 本邦においては、RSV感染が小児科定点からの報告のみであり、本邦独自の成人データは集積されていない。2024年以降、3種のウイルスによる急性呼吸器感染症の本邦における重要性を確立するためには、RSV感染症に関する情報収集は成人を含めた広範囲な対象に広げる必要があり、早期の法的整備を望むものである。先進国のデータからの外挿値ではあるが、本邦の60歳以上の高齢者におけるRSV感染による入院者数は毎年6.3万人、死亡者数は4.5千人と推定されている(Savic M, et al. Influenza Other Respir Viruses. 2023;17:e13031.)。RSVワクチン開発の軌跡 RSVに対するワクチン製造は1960年代に開始され、当初は不活化されたRSVを生体に導入する不活化ワクチンが中心であった。しかしながら、不活化ワクチンを用いた臨床治験の結果は悲惨なものであった。失敗の原因は、不活化ワクチンの導入によってウイルス殺傷能力の低い不適切IgG抗体が産生され抗体依存性感染増強(ADE:Antibody dependent enhancement of infection)が発生したためである。それ以降の検討で、RSVが宿主細胞に侵入する際に本質的な働きをする膜融合前F蛋白の重要性が明らかにされ、それを標的として20世紀後半から現在に通じるモノクローナル抗体薬(mAb)、ワクチンの製造が開始された。まず初めに、膜融合前F蛋白に対する遺伝子組み換えmAbであるパリビズマブ(商品名:シナジス、アストラゼネカ)が実用化され、種々のハイリスクを有する新生児、乳児、幼児のRSV感染に伴う下気道感染の重症化阻止治療薬として使用されている(本邦承認:2002年1月)。現在、パリビズマブの半減期を延長させたニルセビマブの開発が進行中である。 新型コロナ発生に伴い、高度の蛋白・遺伝子工学手法を駆使した数多くのワクチンが作成されたことは記憶に新しい。新型コロナに対するワクチンは2種類に大別され、1つ目はGene-based vaccineであり、標的S蛋白をコードするmRNAをヒトに直接導入するもの(ファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックスなど)、2つ目はProtein-based vaccineあるいはSubunit vaccineと定義されるもので、S蛋白に関する遺伝子情報をヒト以外の細胞に導入しS蛋白を生成、それをヒトに接種するものであった(ノババックス[武田]のヌバキソビッドなど)。2017年以降、以上と質的に同様のワクチンが、RSVの膜融合前F蛋白を標的として作成され始めた。高齢者に対する治験結果が報告されているProtein-based vaccineとしては、アレックスビー筋注用(GSK)とアブリスボ筋注用(ファイザー)がある。アレックスビー筋注用は2023年9月に、60歳以上の高齢者に対するRSV予防ワクチンとして本邦で製造承認された(米国での承認は2023年5月)。2023年12月、GSKはアレックスビー筋注用の適用を50歳以上の成人に拡大する申請を厚労省に提出した。 米国においては、アブリスボ筋注用も60歳以上の高齢者に使用可能である(2023年8月承認)。しかしながら、アブリスボ筋注用の特記事項は、本ワクチンを妊娠24~36週の妊婦に1回接種し、母体で作られた抗体を胎児に移行させるという斬新な方法が提示されたことである(米国での承認:2023年8月)。この方法によって新生児のRSV感染に由来する重症下気道感染を予防できるようになった(生後3ヵ月以内のRSV感染による重症化予防率:81.8%、生後6ヵ月以内の重症化予防率:69.4%)。本邦にあっては、アブリスボ筋注用は母体/新生児用として認可されているが(2023年11月)、高齢者用としては認可されていないことに注意する必要がある。 RSV膜融合前F蛋白を標的とした高齢者用のGene-based vaccineとしてmRNA-1345(Moderna)の開発が進められている。2023年現在、本ワクチンは、米国、スイス、オーストラリアなどにおいて製造承認の申請が始まっているが、本邦においても2024年度内に製造申請がなされるものと予測される。高齢者におけるRSVワクチンの予防効果 Papiらは60歳以上の高齢者2万4,966例を対象としたアレックスビー筋注用に関する国際共同プラセボ対照第III相試験の結果を報告した(Papi A, et al. N Engl J Med. 2023;388:595-608.)。中央値が6.7ヵ月の追跡期間においてRSVの下気道感染全体に対する有効率(予防効果)は82.6%であった。RSV感染の重症化因子(COPD、喘息、慢性心不全、糖尿病、慢性心血管疾患、慢性腎臓病、慢性肝疾患)を有する対象での下気道感染症に対する有効率は94.6%であった。これらの結果は、アレックスビー筋注用が高齢者のRSV感染全体に対して臨床的に意義ある予防効果を発揮することを示す。RSV-A型に対する下気道感染に対する有効率は84.6%、RSV-B型に対する有効率は80.9%と両亜型間でほぼ同等の有効率を示した。 Wilsonらは60歳以上の高齢者3万5,541例を対象としたmRNA-1345に関する国際共同無作為化二重盲検第III相試験の結果を発表した(Wilson E, et al. N Engl J Med. 2023;389:2233-2244.)。追跡期間の中央値は3.7ヵ月でRSV関連下気道感染に対する予防有効率は83.7%であった。基礎疾患の有無、RSV亜型による予防有効率に明確な差を認めなかった。以上より、Gene-based vaccineであるmRNA-1345のRSV感染抑制効果はProtein-based vaccineアレックスビー筋注用と同等であり、2024年度内に本邦を含め世界各国で承認されるものと期待される。 高齢者に対するRSVワクチンにあって今後の課題の1つがワクチンの年間接種回数である。しかしながら、RSVにあっては年1回の流行ピークが同定されているので、その時期に合わせた年1回のワクチン接種で十分だと論者らは考えている。RSVに関するもうひとつの課題は抗ウイルス薬の確立で早期の開発が望まれる。

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1

今回のキーワード社会的な自我(アイデンティティ)味方になる(自尊心)寄り添いワード大人扱いする(自信)お小遣い歩合制家庭のルールづくり夢を語り合う(自我)ユートピア型前回は、不登校の根っこの心理を掘り下げました。それは、自我の弱さでした。そして、不登校が増えている一番の原因を解き明かしました。それは、社会構造の変化でした。それでは、これらを踏まえて、自分の子供が学校に行けなくなったらどうすればいいのでしょうか?今回も、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、再び発達心理学の視点から、不登校への効果的な親の対応(ペアレントトレーニング)をご紹介します。好きなことをさせるだけじゃだめなの?主人公のこころは、不登校になってから、家でテレビを見るか横になっているだけでした。近くに住む萌ちゃんが毎回学校からの届け物を郵便ポストに入れていましたが、その時もこころは窓からこっそり見ているだけで、かかわりを持とうとしません。自分の子供が不登校になった時、親として無理やり学校に行かせることは本人を追い詰めるだけなので、確かに望ましくないです。かと言って、こころのようにただ家にいて、本人の好きにさせるだけでいいのでしょうか? 教育関係者の中には、そうするよう提唱する人もいます。はたして、どうなんでしょうか?このやり方は、前回説明した自我を育むという点においては、明らかに望ましくないです。確かに、家で好きなことをしているだけでは、単に今ここでどうしたいかという「個人的な自我」(自己愛)は育まれます。しかし、ただ家にいるだけでは、勉強(認知能力の学習)はなかなかする気になれず、クラスメートや先生とのかかわり(社会的コミュニケーション)の刺激もありません。すると、これから社会でどうなりたいか、つまり大人になってどう生きていきたいかという「社会的な自我」(アイデンティティ)はやはり育まれなくなります。これが理由です。もっと言えば、先進国で日本ほど不登校に寛容な国はありません。たとえば、米国で子供が不登校になると、ネグレクトとして親に罰金が課され、子供には心理カウンセリングが義務づけられます。そして、米国や欧州の多くの国々では、代わりに少なくともホームスクーリング(家庭学習)が義務づけられています。なお、ドイツにいたってはホームスクーリングさえ認められず、転校するなどして通学することが義務づけられています。世界的に見れば、それくらい子供に教育を受けさせることは親や国家の義務とされています。日本は、家族主義が根強いため、不登校への対応は主に家庭に任せ、国は法的な介入をしないというスタンスを取り続けています。しかし、さすがにこれだけ不登校が増え続けるなか、不登校の黙認は、日本国憲法に定められた三大義務の1つである「教育を受けさせる義務」を親も国家も果たしていないことになります。もはや、好きなことをさせるだけでは「教育ネグレクト」と言わざるを得ません。じゃあ親はどうしたらいいの?好きなことをさせるだけでは望ましくない理由は、「社会的な自我」(アイデンティティ)が育まれなくなるからであることがわかりました。これを踏まえて、それでは、親はどうしたらいいのでしょうか? こころと母親のやり取りから不登校を解決するために必要な親の対応を、ペアレントトレーニングとして、順番に大きく3つ挙げてみましょう。なお、ペアレントトレーニングとは、もともとADHD(注意欠如多動症)などの発達障害の子供への親の対応スキルを練習することですが、不登校にも広げることができます。(1)味方になる―自尊心こころの母親は、フリースクールの先生の助言もあって、こころにあまり口出しをせず、根気強く見守るようになります。普段から他愛のない雑談を心がけるようになります。こころがいじめを打ち明けた時は、「本当に気付いてあげられなくてごめん」と言い、やさしく抱きしめます。1つ目は、味方になることです。ここで、その方法を具体的に3つ挙げてみましょう。a.雑談1つ目は、雑談です。これは、ただ親が「宿題やった?」「どこ行ってたの?」などと見張るようセリフはNGです。雑談の内容は、親がただ知りたいことではなく、あくまで子供が話したいことに寄せるのがコツです。たとえば、一緒にテレビを見ながら「このお笑い芸人おもしろいね」「この俳優、私の最近の推しメンだわ」などと楽しく話すことです。雑談の目的は、情報ではなく情動、つまりまず信頼関係を築くことです。b.良いところ探し2つ目は、良いところ探しです。これは、まさに子供の良さや強みをどんどん指摘していくことです。ここで、良いところが見つからないと困っている人はいますでしょうか? そんなことはありません。たとえどんなネガティブなことでもポジティブに返すことができます。心理学では、リフレーミング(認知再構築)と呼ばれています。具体例は表1をご覧ください。良いところ探しの目的は、良さが本当にあるかどうかではなく、良さがあると思ってくれる味方がいることを子供に伝えることです。なお、これは、褒めるスキルにも通じます。詳細については関連記事1をご覧ください。c.寄り添いワード最後にして一番大事なのは、3つ目の寄り添いワードです。これは、欧米圏のようにことあるごとに「アイラブユー」と言い添えることです。ただし、日本人はストレートな表現に馴れていないです。いきなり言ってしまうと気持ち悪がられるおそれがありますので、言い換える必要があります。たとえば、普段から会話の中で「きみは大事だよ」「一緒にいて幸せだよ」と言うことです。また、いじめを打ち明けた時などは、子供の気持ちを受け止めることです。説教したり審判するのは逆効果です。助言については、「アドバイスほしい?」と確認するくらい慎重になる必要があります。具体例は、表2をご覧ください。なお、これは、うつ病など弱っている人へのかかわり方にも共通しています。この詳細については関連記事2をご覧ください。このようにして味方になることで、「自分は大丈夫」(OK)という安心感を育み、自尊心(自己肯定感)を高めることができます。これが、土台としてまず必要になります。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 2

(2)大人扱いする―自信こころの母親は、こころが城に通っている間に家にいないことに気付き心配して指摘します。しかし、こころから「監視されるの好きじゃない」と言い返されると、その後は、それ以上言わず、本人に任せるようになります。2つ目は、大人扱いすることです。ここで、その方法を具体的に4つ挙げてみましょう。a.プライバシー尊重1つ目は、プライバシーの尊重です。たとえば、部屋の掃除という口実で、勝手に持ち物を確認したり、日記を見たりしないことです。携帯電話を持たせている場合、勝手に見ないことです。ここで、「心配だから確認したい」と思う人はいますでしょうか? これは、子供扱いです。本人が「大人になりたい」という自我を削ぐことになります。そして、信頼関係も損ねてしまいます。もしも、皆さんが大人扱いする感覚がよくわからない場合は、ホームステイ中の外国人の若者だったらどう接するかと想像したらいいでしょう。もはや文化が違うわけです。相手の文化を尊重して、こっちの文化を押し付けることはできないです。親切に接して、決して勝手に携帯電話をのぞき見しないでしょう。それくらいの距離感が必要であるということです。b.大人トーク2つ目は、大人のトークです。たとえば、親が話しかけても子供が無愛想な時、「その態度は何なの?」と叱る(攻撃)のではなく、それ以上何も言わないという黙認(非主張)でもなく、フラットな大人の関係を意識して、ほどほどに伝えることです。具体例は表3をご覧ください。なお、これは、心理学ではアサーションと呼ばれています。この詳細については、関連記事3をご覧ください。c.お小遣い歩合制こころは、他のメンバーへのお誕生日プレゼントを自分の財布から支払っていました。こころはお小遣いをもらっているようです。実は、お小遣いは、子供を心理的に自立させるためにも効果的なツールであると言われています1)。一方で、不登校の相談を受ける時、お小遣いについて確認すると、多くの親がお小遣いをあげていない、つまり必要に応じて親の判断でお金を渡していることが判明しています。そうではなくて、このお小遣いに仕組みをつくる必要があります。3つ目は、お小遣い歩合制です。具体例は図1をご覧ください。ポイントは、親の判断や気分でお小遣いをあげないこと、つまりお小遣いのルール化です。まず、あらかじめベースのお小遣いを設定します。そして、たとえばフリースクールに行けたら1日プラス〇円と設定するのです。これは、大人の給料(報酬制)と同じです。心理学的には、トークンエコノミー(行動療法)と呼ばれています。これを本人がある程度納得する形で提案し、一緒に署名します(契約制)。定期的に見直して、項目や金額設定を変更する話し合いも行います(交渉制)。こうすることで、「何もしなくてもお金がもらえる」「なくなったらねだればいいや」という子供っぽい発想がなくなります。そして、「がんばったら自由に使えるお金が増える」「計画的にお金を使おう」という発想が生まれます。そうなるためにも、安易にお金を渡さないことも必要です。d.家庭のルールづくりこころの家には、ゲーム機がありませんでした。原作では、こころが不登校になってから父親が一方的にゲーム機を取り上げてしまったと説明されていました。確かに、ゲーム機やスマホを最初から家に置かないようにするのも1つのやり方です。ただし、ただ一方的に取り上げるだけでは子供扱いです。それでは、ゲームやスマホの時間制限をお小遣い歩合制の項目に入れるのはどうでしょうか? 残念ながら、機能しないでしょう。なぜなら、子供はその分を損してもやり続けるからです。それくらい、ゲームやスマホは依存性が強いのです。夜遅くまでゲームに熱中していれば、朝起きられないのは当たり前です。こんな時、親が本人を無理やり叩き起こして学校まで送迎するのはどうでしょうか? これも明らかに子供扱いです。「親が起こして連れてってくれるからいいや」とますます子供っぽい発想になります。そこで、最後にして最重要なのが、家庭のルールづくりです。具体例は図2をご覧ください。このポイントは、 まずペナルティの設定です。そして、ある程度納得してもらうために、ゲーム依存症のリスクがどれほどのものか根拠(データ)を示すとともに、家族の目標、つまりビジョンを示すことです。また、「家族で助け合う」というビジョンを入れておくと、先ほどのお小遣い歩合制によって「お金がもらえないなら家事は手伝わない」という発想を予防することもできます。さらに、なるべく家族全員に署名してもらいます。つまり、立会人の存在です。ルールが機能するためには、ペナルティの設定と同時に、それをチェックする周りの目が必要になります。これは、ルールを課される子供だけでなく、ルールを課す親にも向けられているという点で、とてもフェアで妥当なものになるでしょう。家庭のルールづくりの一番の目的は、ゲームやスマホなどの家庭内の娯楽の制限です。娯楽という点では、テレビも含まれます。こころは、城に招かれる前、1日中テレビを見ていました。家庭は、確かに安心できる場所であることが必要ですが、楽しい場所である必要はありません。むしろ、「家にいてとても楽しい」と思っている子供がそれよりも娯楽が少ない学校やフリースクールに行くわけがないことは容易に想像できます。「家にいると退屈だ」と子供に思わせることが必要になります。その方が、そんな家を早く出て自立したいと思うでしょう。「それじゃかわいそうだ」と思う人はいますでしょうか? この発想も子供扱いです。私たち親は、自立できる人を育てる責任があります。それが最優先されます。その責任がある以上、不登校の子供に家庭内の娯楽の制限をすることはやはり必須になります。ちょうど、糖尿病の子供にお菓子やジュースなどの嗜好品を制限するのとまったく同じです。そうしないのは、やはり「教育ネグレクト」と言わざるをえません。つまり、大人扱いをするとは、本人がどんな行動を選択するかの自由を与えると同時に、その行動への責任を教え、責任を取る練習をさせることであることがわかります。よく言われるように、自由と責任はセットです。この責任とは、最終的には自分の人生を自分で生きる責任です。逆に言えば、成人したら、経済的な援助は基本的にできない、病気になるなど困ったときに一時的に限ることをあらかじめ伝える必要があります。また、「ゲームをやらせろ」と暴れる場合は、もはや対応の限界です。暴行や器物破損として警察に通報を必要があることを本人に冷静に伝える必要もあります。つまり、家庭のルールは社会のルールにつながっています。なお、このような限界設定は、やはりその前に味方になるという信頼関係を十分に築いていることが大前提です。この信頼関係がなければ、そもそも家庭のルールを守ろうとする気が子供に起こらないでしょう。このようにして、もともとの自尊心を土台として、さらに大人扱いすることで、「自分はできる」(can)という有能感を育み、自信(自己効力感)を高めることができます。これが、中核として必要になります。(3)夢を語り合う―自我こころの両親は、二人とも仕事をしていました。しかし、夕食などで、とくに仕事については話題にしていませんでした。実は、話してほしい話題があります。3つ目は、夢を語り合うことです。ここで、その方法を具体的に3つ挙げてみましょう。a.背中語り1つ目は、背中を見せる、つまり背中語りをすることです。まず、親が、仕事をはじめボランティアなども含めた社会参加をどうしていて、どうなりたいのかという「夢」(ビジョン)をさりげなく語っていることです。これは「味方になる」の方法の1つである雑談の延長です。たまに愚痴は言いつつも、やはりがんばっていることを夫婦で語り合っていることです。いつか行ってみたい場所、いつか会ってみたい人たちなども語るのも良いでしょう。逆に言えば、親が仕事の愚痴を吐いてばっかりでつまらなさそうにしているだけでは、子供は大人になって仕事をがんばりたいとは思わなくなるでしょう。これは、心理学的にはモデリングと呼ばれています。思春期の子供は親の言うことは聞かなくなりますが、親のまねは知らず知らずにしてしまうということです。b.タイムマシン2つ目は、タイムマシンに乗せるです。これは、タイムマシンに乗って未来の自分を見にいったら、どんな自分が見れるか想像しもらうことです。何歳でどんな場所にいて、どんな格好や表情をしているか、誰とどんな話をしているか、細かく聞き出すことです。さらに、それを子供に書き出してもらって、その紙を張り出すことを提案します。絵が得意なら、絵にして飾るのも良いでしょう。夢(未来)を語るとは、自分の人生に責任を感じていくプロセスでもあります。すると、じゃあ今どうすればいいのかがおのずと沸き起こってきます。それは、夢(目的)を叶えるために少なくとも学校に行くことは必要だと気付くことです。こうして、自分で決めて行動することで、自分の行動に責任を持つようになります。それが自分の生き方に納得するという自我同一性(アイデンティティ)につながっていきます。この働きかけは、心理学的にはタイムマシンクエスチョン(ブリーフセラピー)と呼ばれています。ポイントは、未来の自分の視点に立たせ、考えさせることです。ちなみに、視点は、未来の自分だけでなく、理想の自分、尊敬する人(ロールモデル)に置き換えることもできます。具体例は、表4をご覧ください。この考えさせるかかわりの詳細については、関連記事4をご覧ください。c.意味づけ3つ目は、意味づけることです。これは、うまく行かないことや嫌なことがあっても、それを「これは夢(目的)を叶えるために必要なんだ」と意味づけることです。夢を具体的に描けていれば、これが可能になります。「試練」「次にうまくやるためのリハーサル」などと伝えることもできます。これは、「味方になる」でご紹介したポジティブ返しでもあります。実際の研究では、人はストレスがあることによって、自ら成長していくこともわかっています。心理学的には、ストレス関連成長(SRG)と呼ばれています。つまり、うまく行かないことや嫌なことは、成長するためにはむしろある程度必要であるという考え方です。これは、悔しさという心理の機能です。この点で、親が失敗させないように先回りして指示したり、嫌な思いをさせないように人間関係を制限するのは、逆効果であるということです。この詳細については、学校環境の影響度として、関連記事5をご覧ください。なお、夢を語ったり意味づけしてもらうためには、「味方になる」の方法の1つである良いところ探しから、本人が自分の強み(リソース)を自覚していることが大前提です。そして、「大人扱いする」の方法の1つである家庭のルールづくりから、本人が自分の人生を自分で生きる責任を自覚していることも大前提です。この強みや責任の自覚がなければ、いくら夢を聞いても、「わからない」「思いつかない」としか答えなかったり、「つまんない大人になってる」としか言わないでしょう。このように、先ほどの有能感を中核として、夢を語り合うことで、「やりたい」(want)、「なりたい」(want to be)という自分の人生への責任感を育み、個人的そして社会的な自我(アイデンティティ)を確立することができます。これが、仕上げとして必要になります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 3

これからの家族のあり方とは?不登校へのペアレントトレーニングとして、味方になる、大人扱いをする、夢を語り合うことで、自尊心、自信、自我を順に育んで、学校に行くことは必要であると自覚させることであることがわかりました。つまり、学校は、行きたいか行きたくないかという好き嫌いの問題ではなく、行く必要があるという必要性の問題であると自分で思えるかどうかであるということです。言われてみれば、当たり前のことのように思えますが、この発想を促す自我がもともと弱かったり、育まれていなかったために、あっさり不登校になっていたのです。以上を踏まえて、これからの家族のあり方とはどういうものが望ましいでしょうか? ここから、家族を国家のタイプに例え、大きく4つに分けて、その答えを導いてみましょう。(1)独裁国家型1つ目は、独裁国家型です。これは、北朝鮮、ロシア、中国のように、逆らうとひどい目に遭う国です。これは、封建社会の価値観に通じます。家族に置き換えれば、前回すでに紹介した1980年代以前の日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になっているわけではなく、無理やり大人扱いして、一方的に責任を押し付ける特徴があります。結局、自尊心は育まれず、自信はありますが、自我は弱いです。そのため、「とにかくやらなきゃ」(should)という発想になりがちです。このタイプは、現代の価値観では時代遅れとなっており、家族のあり方としてはもちろん危ういです。(2)ユートピア型2つ目は、ユートピア型です。これは、中東のオイルマネーで豊かな国です。そこには、その名の通り、王子と呼ばれる働かない人が多くいます。家族に置き換えれば、ちょうどこころのように、1980年代以降の不登校を招きやすい日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなっていますが、大人扱いが不十分で、無責任にさせてしまう特徴があります。自尊心はある程度育まれるものの、自信がなく、結局自我は弱いままです。そのため、「誰かやって」(please)という発想になりがちです。このタイプは、不登校だけでなく、アルコール、ギャンブル、ひきこもりなど嗜癖の問題を招くリスクが最もある点で、やはり家族のあり方として危ういでしょう。(3)民主国家型3つ目は、民主国家型です。これは、欧米圏のように、積極的な話し合いと多数決によって成り立っている国です。家族に置き換えれば、おそらく萌ちゃんの家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になり、大人扱いして、夢(より良い未来)を語り合う特徴です。自尊心も自信も育まれて、必然的に自我は強くなります。そのため、「やりたい」(want)、「なりたい」(want to be)という発想になります。このタイプこそが、不登校を防ぐ点でも、これからの家族のあり方として、望ましいわけです。(4)無法地帯型4つ目は、無法地帯型です。これは、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエルのような戦争状態の国です。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなれず、大人扱いどころではなく、いつ「殺される」(虐待される)かわからないという特徴があります。もちろん、自尊心も自信も育まれず、自我も芽生えないです。先のことは何もわからないため、「やらない」(no way)という発想に陥ります。このタイプは、もはや家族のていをなしていない点でも、家族のあり方として、決して望ましくないでしょう。ちなみに、日本は国としては民主国家の形になってはいるのですが、家族としてはまだ家族主義が根強いことから、ユートピア型になってしまっている家族が多いのが現状です。だから、不登校が多いのです。逆に言えば、家族も個人主義化して家族主義から抜け出して民主国家型になれば、不登校は海外と同じように目立たなくなることが予測できます。なお、この家族の国家タイプの詳細については、関連記事6をご覧ください。いじめにとらわれると不登校が解決しづらくなるこころが母親にいじめの件を打ち明けたことから、母親が担任の先生に迫るシーンがありました。親心として、いじめ加害者を断罪したいと思う気持ちはよくわかります。「その子のせいで不登校になった」「その子がいなければ不登校にはならなかった」というロジックです。しかし、前回説明したとおり、いじめは不登校のきっかけ(誘因)にすぎず、たとえいじめがなかったとしても、不登校の根本的な原因である自我の弱さは変わりません。城に来た他の6人と同じように、別のきっかけでこころは遅かれ早かれ不登校になる可能性が考えられます。不登校にならなかったとしたら、ただそれは誘発されずに運が良かっただけです。つまり、いじめを掘り下げても、不登校は解決しないです。むしろ、いじめられることは、子供の心理からしてみれば、恥です。学年が変わるタイミングで加害者たちを別のクラスにするなどの対策は必要ですが、親がいじめにとらわれて騒ぎ続けると、子供が前に進めなくなります。そもそもいじめの認定は、いじめられたと主張する本人の主観による要素が大きいです。これは、ちょっとでも何かされたり(いじりや陰口だけでも)、逆にちょっとでも相手にされない(無視)だけでも「いじめ」であると本人が認識する場合も含まれることを意味します。そのため、犯罪レベルを除くと、もはや不登校に「いじめ」があるかどうかを明確に区別することには限界があります。また、進化心理学的に考えれば、いじめは人類が心の進化の過程で社会を維持するために獲得した負の機能(社会脳)です。私たちが集団をつくる限り、いじめの心理をなくすことは難しいのが現実です。いじめを減らす取り組みはもちろん必要ですが、仮にいじめを完全になくすことができたからといって、自我の弱さは変わらないため、不登校が劇的に改善することはないでしょう。逆に、先ほどのストレス関連成長(SRG)の観点から、大人の社会でもいじめはあるのに、学校で小さな「いじめ」(対人ストレス)までも厳しく取り締まって「無菌状態」(ストレスフリー)をつくってしまったら、大人になった時に「免疫力」(ストレス耐性)が高まらず、結局小さな「いじめ」ですぐに参ってしまうでしょう(ストレス脆弱性)。たとえば、こころが自我の弱いまま大人になったら、今度は「新型うつ」(職場不適応)になる可能性が考えられます。なお、「新型うつ」の詳細については、関連記事7をご覧ください。つまり、不登校といじめ(犯罪レベルを除く)を積極的に結びつけることには大きな意味はなく、むしろいじめにとらわれてしまうと、不登校が解決しづらくなってしまうおそれがあります。なお、いじめの心理と対策の詳細については、関連記事8をご覧ください。ちなみに、こころの母親から「学校に行けないのはこころちゃんのせいじゃないって」というセリフがありました。あとからいじめ被害が判明したため、結果的には、自分を責めてしまいそうなこころに味方になるメッセージを伝えるという効果がありました。一方で、子供にはこれからどうするかについて責任を感じなくて良いという裏メッセージとして伝わる可能性もあり、実は危ういセリフであることもわかります。まさに、これはユートピア型ならではの声かけです。よって、安易に使わない方が良いでしょう。厳密に言うと、学校に行けなくなったことへの責任は確かにないですが、これからどうするかにはやはり責任があります。これは、アルコール依存症と同じで、なってしまったことへの責任は本人にないですが、治す責任は本人にあるということです。ちなみに、ひきこもりの人の多くが口を揃えて言うセリフがあります。それは「こうなったのは親のせいだ」です。このような責任逃れの心理(モラルハザード)に陥らないようにするためにも、やはり、「誰のせい」「誰のせいじゃない」などと学校に行けなくなった原因を掘り下げることは避けて、その他の寄り添いワード(1ページ目)を使いつつ、これからどうしたらいいかという解決にフォーカスすることが有効です。1)「子供におこづかいをあげよう!」P66:西村隆男、主婦の友社、2020<< 前のページへ■関連記事ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】ツレがうつになりまして。【うつ病】逃げるは恥だが役に立つ【アサーション】ドラえもん【子供のメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 1クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1こうして私は追いつめられた【新型うつ病】告白【いじめ(同調)】Part 1

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