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風邪の予防・症状改善に亜鉛は有用か?~コクランレビュー

 風邪症候群の予防や症状持続期間の短縮に関して、確立された方法はいまだ存在しない。しかし、この目的に亜鉛が用いられることがある。そこで、システマティック・レビューおよびメタ解析により、風邪症候群の予防や症状改善に関する亜鉛の効果が検討された。その結果、亜鉛には風邪症候群の予防効果はないことが示唆されたが、症状持続期間を短縮する可能性が示された。Maryland University of Integrative HealthのDaryl Nault氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2024年5月9日号で報告した。 研究チームは、風邪症候群や上気道感染の予防または症状改善に関する亜鉛の効果をプラセボと比較した無作為化比較試験を検索した。検索には、CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、LILACSを用い、2023年5月22日までに登録された試験を抽出した。また、Web of Science Core Collectionや臨床試験登録システムへ2023年6月14日までに登録された試験も検索した。エビデンスの確実性はGRADEを用いて評価した。また、有害事象についても調べた。 システマティック・レビューの結果、34試験(予防:15試験、治療:19試験)に参加した8,526例が対象となった。22試験が成人を対象としたもので、12試験が小児を対象としたものであった。 予防目的、治療目的での亜鉛の使用に関する主な結果は以下のとおり。【予防目的での使用】・風邪症候群の発症リスクは、プラセボと比較してほとんどまたはまったく低下しない可能性がある(リスク比[RR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.85~1.01、I2=20%、9試験[1,449例]、エビデンスの確実性:低い)。・風邪症候群を発症した場合、症状持続期間はプラセボと比較してほとんどまたはまったく短縮しない可能性がある(平均群間差:-0.63日、95%CI:-1.29~0.04、I2=77%、3試験[740例]、エビデンスの確実性:中程度)。・有害事象の発現リスクの違いは不明である(RR:1.11、95%CI:0.84~1.47、I2=0%、7試験[1,517例]、エビデンスの確実性:非常に低い)。・重篤な有害事象の発現リスクの違いも不明である(RR:1.67、95%CI:0.78~3.57、I2=0%、3試験[1,563例]、エビデンスの確実性:低い)。【治療目的での使用】・風邪症候群の症状持続期間は、プラセボと比較して短縮する可能性がある(平均群間差:-2.37日、95%CI:-4.21~-0.53、I2=97%、8試験[972例]、エビデンスの確実性:低い)。・非重篤な有害事象の発現リスクは、プラセボと比較して増加する可能性がある(RR:1.34、95%CI:1.15~1.55、I2=44%、16試験[2,084例]、エビデンスの確実性:中程度)。・重篤な有害事象に関する報告はなかった。 著者らは、本システマティック・レビューおよびメタ解析において、エビデンスの確実性が低いまたは非常に低い結果が多かったという限界を指摘しつつ、「亜鉛は風邪症候群の予防には、ほとんどまたはまったく効果がないことが示唆される。一方、治療に用いる場合は、非重篤な有害事象を増加させる可能性はあるが、風邪の罹病期間を短縮する可能性がある」とまとめた。

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第98回 激辛チップスでなぜ死亡したのか?

ココイチは何辛を食べます?キャロライナリーパー私はわりと辛いものが好きだと思って42年生きてきました。子供の頃から湖池屋のカラムーチョが大好きで、あれが「辛さの標準」だと信じて疑いませんでした。大学の頃、カレーのココイチで初めて「1辛」を食べたときのこと。私にとっては衝撃的な辛さだったのですが、一緒に来ていた友人が涼しい顔で「3辛」を食べていたのを見て唖然としました。井の中の蛙大海を知らず。ココイチの「2辛」は、「1辛」の約2倍、「3辛」は約4倍、「5辛」は約12倍、その先は上限20辛まで選択肢は広がっています。途中から辛さの指標が公開されていないので、何十倍も辛いのではと想像しますが、私が挑戦したらきっと入院する羽目になるでしょう。辛さの指標として有名なスコヴィル値で見てみると、10辛が約1,200スコヴィル値とのこと。ハラペーニョが最大で8,000スコヴィル値程度ですから、1万スコヴィル値はまさにガチでヤバイでしょう。ケタ違いのスコヴィル値さて、2023年9月、SNSで激辛チップスを食べる様子を投稿した10代の少年が、食べた直後に死亡するという悲劇がありました。使用されていたのはキャロライナリーパーとナーガヴァイパーという唐辛子です。キャロライナリーパーは、その形から大型の鎌を持った死神という意味で「リーパー」と名付けられています。ナーガヴァイパーは、キャロライナリーパーが登場する前にギネス世界記録だった唐辛子です。どちらも世界トップクラスの激辛唐辛子というわけです。これまで最も辛い唐辛子として長らく君臨していたキャロライナリーパーは、ここから交配して作られたスコヴィル値が約2倍のペッパーXにその座を奪われています。ペッパーXのスコヴィル値は、なんと318万です。スカウターが「ボンッ!」って破裂するやつです。唐辛死の原因唐辛子が原因で命を落とす「唐辛死」となってしまった少年。彼の死因は何だったのでしょうか。報告書によれば、彼は大量のカプサイシン摂取後に心停止に陥り、心臓が肥大していたとされています。急性に心肥大を起こすのは難しいことから、基礎疾患が影響し、心拍数の急激な上昇が関連しているのかもしれません。あるいは、アナフィラキシーや喘息の急性悪化により心停止に至った可能性も考えられます。唐辛子の摂取が心筋梗塞の原因となった症例1)や、キャロライナリーパーによって強烈な頭痛(可逆性脳血管攣縮症候群:RCVS)を起こした症例2)(下記参照)が報告されています。辛さに慣れていない人は無理せず、自分の限界を守ることが大切です。間違ってもペッパーXに挑戦しないようにしましょう。参考文献・参考サイト1)Sogut O, et al. Acute myocardial infarction and coronary vasospasm associated with the ingestion of cayenne pepper pills in a 25-year-old male. Int J Emerg Med. 2012 Jan 20;5:5.2)Boddhula SK, et al. An unusual cause of thunderclap headache after eating the hottest pepper in the world - "The Carolina Reaper" BMJ Case Rep. 2018 Apr 9;2018:bcr2017224085.

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「抗生物質ください!」にはどう対応すべき?【もったいない患者対応】第6回

「抗生物質ください!」にはどう対応すべき?登場人物<今回の症例>28歳男性。生来健康今日からの37℃台の発熱、咳嗽、喀痰、咽頭痛あり身体所見上、咽頭の軽度発赤を認める<診察の結果、経過観察で十分な急性上気道炎のようです>やっぱり風邪でしょうか?そうですね。風邪だと思います。そうですか。仕事が忙しくて、風邪をひいている場合じゃないんです。とにかく早く治したいので、抗生物質をください。抗生物質は風邪には効きませんよ?でも以前、抗生物質を飲んだら次の日にすっきり風邪が治ったことがあったんです。今日は抗生物質をもらいに来たんです。処方してください。…わかりました。では処方しましょうか。【POINT】若くて生来健康な患者さんの、受診当日からの上気道症状と微熱。上気道炎として、まずは対症療法のみで経過観察してもよさそうな症例です。患者さんから抗菌薬の処方を希望された唐廻先生は、それが不要であることを伝えますが、患者さんに強く迫られて根負けしてしまいました。このようなケース、どう対応すればよかったのでしょうか? デメリットをきちんと説明していますか?患者さんのなかには、何か目に見える形で治療してもらわないと満足できない、という方が一定数います。「治療の必要なし。経過観察可能」と判断されると、「医師は何もしてくれなかった」と思ってしまうのです。なかには、今回のケースのように「風邪には抗菌薬が効く」という間違った医学知識を自らの体験から信じている患者さんも多くいます。こういう方に、無治療経過観察が望ましいことはなかなか理解してもらえません。今回の唐廻先生のように、早々と患者さんの希望どおりに対応してしまうほうが医師にとっては楽です。しかし、医学的に不要な治療を患者さんの希望に合わせて行ってしまうと、患者さんに副作用リスクだけを与えることになります。また、必要のない治療を行うことにより、かえって病態が修飾されるので、精査が必要なまれな病気が隠れていたとき、その発見が遅れるリスクもあるでしょう。もちろん、不要な医療行為は医療経済的な観点からも望ましくありません。唐廻先生のように安易に処方せず、まずは治療が不要であることをきちんと説明することが大切です。一方で、十分な説明なしに処方を断ってしまうのも問題です。満足できなかった患者さんは、自分が望む治療を提供してくれるところを探し、結局別の病院を受診するかもしれないからです。これは、患者さんにとって有益とはいえません。では、治療が不要であることをどのように伝えればよいでしょうか?「なぜ処方できないのか」を明確に伝えようまず、医学的根拠を可能な限りわかりやすく伝えるよう努力すべきです。たとえば今回の抗菌薬に関する説明であれば、まず、風邪の原因はほとんどがウイルス感染である。抗菌薬は細菌をやっつける薬であって、ウイルスをやっつける薬ではないので、風邪には効果がないこと抗菌薬には吐き気や下痢、アレルギーのようなリスクがあり、効果が期待できないうえに副作用のリスクだけを負うのは割に合わないことを説明します。あくまでも個人的な意見“ではない”こともポイント次に、「治療は必要ない」という結論が「個人の主観的判断」によって得られたものではなく、ガイドライン上の記載や学会・公的機関の見解、過去の大規模な臨床試験のデータなど、客観的なエビデンスに基づくものであることを伝えるのがよいでしょう。風邪に抗菌薬を使用することは、メリットよりデメリットのほうが圧倒的に大きいため、厚生労働省が発行した「抗微生物薬適正使用の手引き」に「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されていることをかいつまんで説明する、という形がおすすめです。もっと簡単に説明したい場合は、「近年は○○をするのが一般的です」「〇〇されています」「多くの医師が○○しています」のように、自分の主観“以外”のところに拠り所があるというニュアンスを伝えると効果的です。かかりつけの患者さんなど、長年の付き合いで信頼関係ができている場合とは違って、患者さんが医師と初めて会うときは「目の前の医師を本当に信頼していいだろうか」と不安になるものです。そのため、客観的な知見を拠り所にしたほうが、患者さんは安心する可能性が高いはずです。こうした根拠をわかりやすく説明できるよう、準備しておきましょう。もちろん、風邪から肺炎に発展するなど、本当に抗菌薬が必要な病態に発展する可能性はあります。こうしたケースで、患者さんが「抗菌薬を使用しなかったことが原因ではないか」と疑うことのないよう、今後の見通しや再受診のタイミングを伝えておくことも大切です。点滴やうがい薬も誤解が多い風邪は誰もが何度もかかる病気なので、「こういう風に治したい」という強い希望をもつ患者さんは多いと感じます。たとえば、「風邪は点滴で治る」と思い込んでいる人もいますし、ヨード液(商品名:イソジンなど)のうがい薬が風邪予防につながると信じている人もいます。患者さんにこうした希望がある場合、完全に否定するのではなく、それぞれのデメリットや拠り所となるエビデンスを説明したうえで判断してもらいます。点滴であれば、デメリットとして末梢ルート確保に伴う感染リスクや神経障害などのリスク長時間病院に滞在することによる体調悪化のリスク補液に伴う循環器系への負担をきちんと説明する必要があります。ヨード液については、「ヨード液よりも水うがいのほうが風邪予防や症状の緩和につながる」といった客観的なエビデンス1)があることを説明するとよいでしょう。これでワンランクアップ!やっぱり風邪でしょうか?そうですね。風邪だと思います。そうですか。仕事が忙しくて、風邪をひいている場合じゃないんです。とにかく早く治したいので、抗生物質をください。風邪の原因はほとんどが細菌ではなくウイルスです。抗生物質は細菌をやっつける薬なので、ウイルスをやっつけることはできません※1。風邪に効果は期待できないうえに副作用のリスクもある※2ので、今回は使わないほうがいいと思います。風邪に抗生物質を希望する患者さんが多いので、厚労省からも「風邪に対して抗生物質を使わないことを推奨する」という通達が出ているんですよ※3。抗生物質なしで一旦経過をみませんか※4。もちろん症状が悪化したときは風邪とは異なる別の病気を併発している可能性もありますので、そのときは必ずもう一度受診してくださいね。※1:ここを誤解している患者さんは多い。※2:あくまで患者さんの不利益になることを強調する。※3:客観的な意見を伝えると納得してもらいやすい。※4:一度猶予をもらうのも手。参考1)Satomura K, et al. Am J Prev Med. 2005;29:302-303.

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第213回 新規開業の落とし穴(後編) ドクター・ショッピングのあげく、足専門の重装備クリニックで不正請求を体験して実感した開業のダークサイド

収益がなかなか出ないと不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところもこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLB、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ 有投手が、5月19日(現地時間)のアトランタ・ブレーブス戦で勝利、日米通算200勝(NPB93勝、MLB107勝)をあげました。7回無失点、奪三振9という好投でした。ダルビッシュ投手といえば、東北高校時代に出場した夏の甲子園では、マウンドで常にイライラしていた姿が印象に残っています。また、北海道日本ハムファイターズに入団直後は、未成年にもかかわらずパチスロ店での喫煙を写真週刊誌に撮られています。“ヤンチャ”なイメージでスタートしたダルビッシュ投手のプロのキャリアですが、20年を経た現在は、身体のケアやトレーニング、栄養管理などに真摯に取り組む“聖人”のイメージが定着しています。パドレスのマイク・シルト監督は200勝をかけた大一番の試合の前、「驚くべき伝説的な節目。自分をしっかりと管理し、準備を怠らない。若い時代からそうやってきたことが報われている。野球にすべてをささげている」と同投手をたたえたそうです。なお、勝利後のインタビューでダルビッシュ投手は、「NHKさん、生中継、大谷くんのやつを止めてまでやってくださっているので、今日はなんとか決めたいという気持ちはありました」と殊勝なことを言ってました。人は成長し、変わる、ということを野球の世界で体現しているダルビッシュ投手。防御率零点台を続けるシカゴ・カブスの今永 昇太投手とともに、今年のオールスターにもぜひ選ばれてほしいと思います。さて、前回は新規開業の最近のトレンドや、金融機関や開業コンサルタント側が新規開業に力を入れる背景、さらには医師側が騙されてしまうケースについて書きました。今回は、大型化・重装備化や、複数医師による開業のダークサイドについて書いてみたいと思います。大型化・重装備化は開業費がかかり、複数医師開業は医師の人件費が2倍、3倍となります。収入は増えますが、支出もその分当然増えます。患者数をこなしてもこなしても収益がなかなか出ないとなると、不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところも出てきます。地元の整形外科に愛想を尽かしドクター・ショッピング以下は私の個人的な体験です。昨年の秋、普通にランニングをしていて、突然左足の甲(中足骨)付近に激しい痛みが走りました。ちょっとした不具合ですぐに痛みも消えるだろうと思い、歩いて自宅に帰ったのですが、帰宅してからも歩くと痛く、しかも腫れてきました。これは骨折ではないかと考え、翌日、数年前、四十肩(肩関節周囲炎)のときに一度通った近所の整形外科を受診しました(「第35回 著名病院の整形外科医に巨額リベート、朝日スクープを他紙が追わない理由とは?」参照)。地元の高齢者がサロン代わりに電気治療に訪れているクラシカルなクリニックで、医師は院長だけです。X線を撮ってもらったのですが、院長は「折れてない。ただの炎症だから、ジクロフェナクと湿布を出しておくね」と、前回同様、今回もなんとも心もとない診療で終わりました。しかし、1週間たっても歩くと痛み、歩きすぎた夕方にはぱんぱんに腫れる状態は改善しませんでした。その後何回かこの整形外科を受診しても、ジクロフェナクと湿布の処方が続くだけです。自分で「中足骨疲労骨折」と見立て、ここの整形外科ではちゃんとした治療は受けられないと考えた私は“ドクター・ショッピング”をしてみることにしました。ネットで「足」専門のクリニックを検索、整形外科医、形成外科医が複数人勤務しており、骨折などの整形外科的疾患はもちろん、リウマチ、足の潰瘍など、総合的に足を診察しているという触れ込みのクリニックを見つけました。サイトを見る限り、きちんと診療してくれそうだったので、受診してみることにしました。ただの骨折疑いなのに治療用インソールを勧められ、初診なのに慢性疼痛疾患管理料も算定そのクリニックは、都心の一等地のビルのワンフロアで診療を行っていました。足専門の診察台、立ったまま足を撮影するX線装置、フットケア室、リハビリ室なども備わっていました。しかし、診察前、待合室で待っていると、ただの骨折疑いで受診しているのに、治療用インソール(足底装具)作成を勧めるパンフレットをいきなり渡されたのには「???」と思いました。また、ある女性の患者が窓口で「再診で来たのですが、私、リハビリもやるんですか?リハビリのことはまだ何も聞いていないのですが」と大声で話しているのも聞こえました。こちらも「???」です。診察前にX線装置で足を撮影、しばらく待ってから40代とおぼしき医師の診察を受けました。ここでも、「明確な骨折は確認できませんが、ちょっとこの部分がおかしいかも」と言われ、「念のためエコーも撮っておきましょう」と超音波検査をその場で受けることになりました。しかし、超音波でも明確な骨折は確認できず(X線で写らないのだからまあそうでしょう)、「とりあえず湿布だけ出しておきます。次回からリハビリもしますので、予約していってください。インソールも考えたほうがいいかもしれません」と言われ、診療は終了しました。X線にも写らない急性期の微小な骨折に過ぎないかもしれないのに、「リハビリ?インソール?」と頭が混乱、「ここは相当な悪徳クリニックかもしれない」と恐れを抱きつつ、再診もリハビリの予約もしないでクリニックを後にしました。ちなみに診療報酬明細書の合計は1,512点。超音波350点は話の流れで受けてしまった私にも非がありますが、初診でかかっただけなのに、なんと慢性疼痛疾患管理料130点も算定されていたのには驚いてしまいました。慢性疼痛疾患管理料は、「変形性膝関節症、筋筋膜性腰痛症等の疼痛を主病とし、疼痛による運動制限を改善する等の目的でマッサージ又は器具等による療法を行った場合に算定することができる」と定められています。骨折による疼痛は対象ではありません。しかも初診でかかっただけなのに慢性疼痛とは。「マッサージ又は器具等による療法」も、もちろん受けていません。これは明らかに不正請求です。保険診療ではリハビリ、自費診療ではインソール作成を患者に勧めるこのクリニック、足を総合的に診察するとうたっているわりに診療はおざなり、検査をたくさん行って、軽症でもリハビリ、インソール作成を患者に勧め、売上を伸ばそうという経営方針のようでした。治療用インソールのパンフレットには、「作成には保険診療で自己負担約5,000円、インソール作成代金で約5万円かかるが、インソール代は健康保険組合に申請することにより自己負担額を差し引いた額(3割自己負担なら7割)が療養費払いとして戻って来るので安価に作れる」と説明されていました。これだけ勧めるのだから、義肢装具会社となんらかのつながりがあるのかもしれません。クリニックのWebサイトを見ると、このクリニックの開業は最近ということではなく、既に10年近くの診療実績があり医療法人化もされていました。さらに、関東圏の医科大学の教授が顧問医師となっていました。私が診療に訪れた日に限ってのことかもしれませんが、外来患者は中高年の女性が多い印象でした。外反母趾やリウマチ足で受診しているのかもしれません。それにしても、強引なリハビリ導入、インソール作成勧奨、慢性疼痛でもないのに慢性疼痛疾患管理料の算定は明らかに異常です。医師やスタッフの多さや、最先端の医療機器導入、一等地でのビル診療の家賃などを理由に、経営者(理事長、もしくはパトロン企業)がそうした診療単価をとにかく上げる診療を無理強いしているのかもしれません。医師、そして医療提供をする側にも患者を食い物にする“悪”はいる私はもちろん良識ある国民なので、このクリニックの情報をGoogleマップの「口コミ」に投稿もしませんでしたし、関東信越厚生局にタレ込んだりもしませんでした。しかし、過剰な診療がこれ以上目立ってくると何らかの対応が取られる可能性もありそうです。私が1日、初診で受診しただけでこれですから……。前回(第212回 新規開業の落とし穴(前編) 診療所の大型化・重装備化、複数医師開業というトレンドの背後にあるもの)には、東 謙二氏の著書からの引用で、「医師をはじめ、医療従事者はほとんどが『性善説』の中で仕事をしているが、世の中には『性悪説』を基本に対処していかないとすぐに騙されてしまう世界もあるのである」と書きましたが、医師、そして医療提供をする側にも知識の少ない患者を食い物にする“悪”はいるということですね。ということで、開業費が高額で月々の返済が多額だったり、診療体制を過剰にするあまり人件費などのランニングコストがかかりすぎたりする場合、医療機関は“不正請求”というダークサイドに陥りがちです。金額の多寡はさておいて、私は患者を騙して、税金が投入されている診療報酬(インソールの療養費払いも)を不正請求するのはとくに罪が重いと思います。皆さんも重々気を付けてください。ところで、「中足骨疲労骨折」と自己診断していた私の左足ですが、これはもう整形外科に行っても仕方ないと考え、「第127回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(後編)」でも書いた、近所の零売薬局でロコアテープを購入、自力で治すことにしました。痛みがほとんど消え、歩行に支障がなくなるのに約2ヵ月、長距離歩いても患部が腫れなくなるのに約3ヵ月を要しました。どう考えても「骨折」でした。

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腕に貼る麻疹・風疹ワクチンは乳幼児に安全かつ有効

 予防接種の注射を嫌がる子どもに、痛みのないパッチを腕に貼るという新たなワクチンの接種方法を選択できるようになる日はそう遠くないかもしれない。マイクロニードルと呼ばれる微細な短針を並べたパッチ(microneedle patch;MNP)を腕に貼って経皮ワクチンを投与する方法(マイクロアレイパッチ技術)で麻疹・風疹ワクチン(measles and rubella vaccine;MRV)を単回接種したガンビアの乳幼児の90%以上が麻疹から保護され、全員が風疹から保護されたことが、第1/2相臨床試験で示された。英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の医学研究評議会ガンビアユニットで乳児免疫学の責任者を務めるEd Clarke氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に4月29日掲載された。 Clarke氏は、「マイクロアレイパッチ技術による麻疹・風疹ワクチン投与(MRV-MNP)はまだ開発の初期段階にあるが、今回の試験結果は非常に有望であり、多くの関心や期待を呼んでいる。本研究により、この方法で乳幼児にワクチンを安全かつ効果的に投与できることが初めて実証された」と語る。 この臨床試験では、18〜40歳の成人45人と、生後15〜18カ月の幼児と生後9〜10カ月の乳児120人ずつを対象に、MRV-MNPの安全性と有効性、忍容性が検討された。これらの3つのコホートは、MRV-MNPとプラセボの皮下注射を受ける群(MRV-MNP群)とプラセボのMNPとMRVの皮下注射(MRV皮下注群)を受ける群に、2対1(成人コホート)、または1対1(幼児・乳児コホート)の割合でランダムに割り付けられた。 その結果、ワクチン接種から14日後の時点で、MRV-MNP群に安全性の懸念は生じておらず、忍容性のあることが示された。MRV-MNPを受けた幼児の77%と乳児の65%に接種部位の硬化が認められたが、いずれも軽症で治療の必要はなかった。乳児コホートのうち、ベースライン時には抗体を保有していなかったが接種後42日時点で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対する抗体の出現(セロコンバージョン)が確認された対象者の割合は、MRV-MNP群でそれぞれ93%(52/56人)と100%(58/58人)、MRV皮下注群では90%(52/58人)と100%(59/59人)であった。接種後180日時点でも、MRV-MNP群では91%(52/57人)と100%(57/57人)の対象者で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対するセロコンバージョンを維持していた。 一方、幼児コホートで、ベースライン時には抗体を保有していなかったが、接種後42日時点で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対するセロコンバージョンが確認された割合は、MRV-MNP群で100%(5/5人)、MRV皮下注群で80%(4/5人)であった。風疹ウイルスに対しては、研究開始時から全ての対象児が抗体を保有していた。 こうした結果を受けてClarke氏は、「マイクロアレイパッチ技術によるワクチン接種としては麻疹ワクチンが最優先事項だが、この技術を用いて他のワクチンを投与することも今や現実的になった。今後の展開に期待してほしい」と話す。 研究グループは、マイクロアレイパッチ技術によるワクチン接種が貧困国でのワクチン接種を容易にする可能性について述べている。この形のワクチンなら、輸送が容易になるとともに冷蔵保存が不要になる可能性もあり、医療従事者による投与も必要ではなくなるからだ。論文の筆頭著者であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院の医学研究評議会ガンビアユニットのIkechukwu Adigweme氏は、「この接種方法が、恵まれない人々の間でのワクチン接種の公平性を高めるための重要な一歩になることをわれわれは願っている」と話す。 研究グループは、今回の試験で得られた結果を確認し、さらに多くのデータを提供するために、より大規模な臨床試験を計画中であることを明かしている。

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ワクチン接種、50年間で約1億5,400万人の死亡を回避/Lancet

 1974年以降、小児期の生存率は世界のあらゆる地域で大幅に向上しており、2024年までの50年間における乳幼児の生存率の改善には、拡大予防接種計画(Expanded Programme on Immunization:EPI)に基づくワクチン接種が唯一で最大の貢献をしたと推定されることが、スイス熱帯公衆衛生研究所のAndrew J. Shattock氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年5月2日号に掲載された。14種の病原菌へのワクチン接種50年の影響を定量化 研究グループは、EPI発足50周年を期に、14種の病原菌に関して、ワクチン接種による世界的な公衆衛生への影響の定量化を試みた(世界保健機関[WHO]の助成を受けた)。 モデル化した病原菌について、1974年以降に接種されたすべての定期および追加ワクチンの接種状況を考慮して、ワクチン接種がなかったと仮定した場合の死亡率と罹患率を年齢別のコホートごとに推定した。 次いで、これらのアウトカムのデータを用いて、この期間に世界的に低下した小児の死亡率に対するワクチン接種の寄与の程度を評価した。救われた生命の6割は麻疹ワクチンによる 1974年6月1日~2024年5月31日に、14種の病原菌を対象としたワクチン接種計画により、1億5,400万人の死亡を回避したと推定された。このうち1億4,600万人は5歳未満の小児で、1億100万人は1歳未満であった。 これは、ワクチン接種が90億年の生存年数と、102億年の完全な健康状態の年数(回避された障害調整生存年数[DALY])をもたらし、世界で年間2億年を超える健康な生存年数を得たことを意味する。 また、1人の死亡の回避ごとに、平均58年の生存年数と平均66年の完全な健康が得られ、102億年の完全な健康状態のうち8億年(7.8%)はポリオの回避によってもたらされた。全体として、この50年間で救われた1億5,400万人のうち9,370万人(60.8%)は麻疹ワクチンによるものであった。生存可能性の増加は、成人後期にも 世界の乳幼児死亡率の減少の40%はワクチン接種によるもので、西太平洋地域の21%からアフリカ地域の52%までの幅を認めた。この減少への相対的な寄与の程度は、EPIワクチンの原型であるBCG、3種混合(DTP)、麻疹、ポリオワクチンの適応範囲が集中的に拡大された1980年代にとくに高かった。 また、1974年以降にワクチン接種がなかったと仮定した場合と比較して、ワクチン接種を受けた場合は、2024年に10歳未満の小児が次の誕生日まで生存する確率は44%高く、25歳では35%、50歳では16%高かった。このように、ワクチン接種による生存の可能性の増加は成人後期まで観察された。 著者は、「ワクチン接種によって小児期の生存率が大幅に改善したことは、プライマリ・ヘルスケアにおける予防接種の重要性を強調するものである」と述べるとともに、「とくに麻疹ワクチンについては、未接種および接種が遅れている小児や、見逃されがちな地域にも、ワクチンの恩恵が確実に行きわたるようにすることが、将来救われる生命を最大化するためにきわめて重要である」としている。

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映画「チャーリーとチョコレート工場」【夢の国は「中毒」の国!?その「悪夢」とは?(嗜癖症)】Part 1

今回のキーワード嗜癖(アディクション)物質の嗜癖症行動の嗜癖症人間関係の嗜癖症嗜癖症スペクトラム子育て(家庭環境)の違いテーマパークお祭り皆さんはテーマパークが好きですか? とくに子供は大好きですよね。おいしいお菓子やすてきなグッズが至るところに並べられ、乗り物は選びたい放題。そして歌とダンスのパレードにキャストからのおもてなし。まさに夢の国。子供も大人も楽しめる、ザ・エンターテイメントです。そんなところにはずっといたい! でも、もし本当にずっといたら、どうなるでしょうか?今回は、嗜癖(しへき)をテーマに、映画「チャーリーとチョコレート工場」を取り上げます。この映画を通して、精神医学の視点から、嗜癖症について掘り下げます。そして、何ごともハマりすぎることはとくに子供に有害である理由を解説します。そこから、この映画の教訓を一緒に導いてみましょう。4人の子供たちはすでに何にハマってる?-3つの嗜癖チョコレート職人ウォンカが作ったチョコレートは世界中で大人気。しかし、彼のチョコレート工場の中は完全非公開であり、謎に満ちていました。そんなある日、彼は以下の告知を出します。「工場見学に5人の子供をご招待します。金色の招待チケットが、世界中で売られているどれかのチョコレートの包み紙の中にそれぞれ1枚ずつ、全部で5枚入っています。さらにそのうちの1人は想像を絶する特別な賞品がもらえます。」世界中がチケット争奪で大騒ぎとなる中、運良く引き当てた5人の子供が工場見学に揃ってやってきます。まず、そのうちの4人がすでにハマっていることを通して、嗜癖を大きく3つに分けてみましょう。なお、嗜癖(しへき)(アディクション)とは、嗜好の癖、つまり嗜んで好きになり癖(習慣)になる状態で、依存のより広い概念として現在心療内科・精神科で使われるようになっています。日常会話では「ハマる」「病みつき」「〇〇中毒」と言い換えられます。(1)チョコレートにハマる―物質の嗜癖1人目のオーガスタスは、大のチョコレート好きの食いしん坊。小学生にして、すでに体格は大人並みの肥満体形です。1つ目の嗜癖は、何かを体に摂取することにハマる、つまり物質の嗜癖です。これは、チョコレートなどの食べ物のほかに、アルコール、コーヒー、タバコ、ドラッグ(薬物)などが挙げられます。(2)買い物またはゲームにハマる―行動の嗜癖2人目のベルーカは、お金持ちで何でも自分のものにしたがる欲しがり屋さん。経営者である父親の財力によって、小学生にして手に入れられないものはありません。招待チケットも、父親のチョコレートの買い占めによって手に入れました。また、3人目のマイクは、激しい戦闘ゲームにハマる中学生のゲーマー。大勢のテレビリポーターの前でもゲームをやめずに「死ね!ぶっ殺す!」と叫び、知ったかぶりで反抗的でした。2つ目の嗜癖は、何かをすることにハマる、つまり行動の嗜癖です。これは、買い物(浪費癖)やゲームのほかに、ギャンブル、コレクション(収集癖)、抜毛癖、美容形成(醜形恐怖)、自傷行為(情緒不安定)、万引き(窃盗癖)、性癖、ポルノ(セックス)などが挙げられます。(3)ちやほやされることにハマる―人間関係の嗜癖4人目のバイオレットは、ガム噛みの世界ジュニアチャンピオン。部屋中にいくつものトロフィーが飾られています。テレビレポーターたちの前でも、世界記録挑戦中のためにガムを噛み続け、「私が一番」「私が特賞をもらう」と勝つことにこだわります。3つ目の嗜癖は、人と何かでかかわることにハマる、つまり人間関係の嗜癖です。これは、ちやほやされること(承認)のほかに、バッシング、虚言癖、世話好き(共依存)、甘え癖(依存)、支配すること(モラルハラスメント・DV)などが挙げられます。次のページへ >>

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映画「チャーリーとチョコレート工場」【夢の国は「中毒」の国!?その「悪夢」とは?(嗜癖症)】Part 2

4人の子供たちはなんで脱落したの?-3つの嗜癖症先ほどの4人とチャーリーを含む5人の子供たちとその親が工場見学をするさなか、1人ずつトラブルに巻き込まれ、いなくなっていきます。そのたびに、従業員の小人たちがどこからともなく大群で現れ、その子供の問題点を歌とダンスで揶揄します。それでは、4人が脱落したわけをそれぞれの歌の歌詞から解き明かし、嗜癖症の視点で3つに分けて説明しましょう。(1)チョコレートにハマってやめられない―物質の嗜癖症チョコレート工場の内部には、公園があり、木、川、滝、そして地面の草のすべてがチョコレートでできていました。ウォンカから「川のチョコは素手で触らないで」言われますが、食いしん坊のオーガスタスは感激のあまり、その言いつけ(制限)を聞き入れず、それをすくって飲もうとして誤って川に落っこちます。そして、泳げないため、そのままチョコレートのパイプに吸い上げられ、チョコレートの加工部屋に流されてしまったのでした。その時の歌詞は「食い意地張った嫌われ者」でした。1つ目は、何かを体に摂取することにハマってやめられない、つまり物質の嗜癖症です。これは、彼のようなむちゃ食い症(摂食障害)のほかに、食べ吐き(摂食障害)、アルコール依存症、カフェイン依存症、ニコチン依存症、薬物依存症などが挙げられます。(2)買い物またはゲームにハマってやめられない―行動の嗜癖症何でも欲しがるベルーカは、工場でくるみ割りをするリスたちを見て感激し、ペットとして欲しがります。しかし、ウォンカから売り物ではないと言われたため、力ずくで手に入れようと、リスを捕まえます。すると、リスたちから反撃され、くるみの殻の焼却炉に通じるダストシューターの穴に落とされてしまうのでした。その時の歌詞は「鼻つまみ者」でした。ゲーマーでメカに詳しいマイクは、チョコレートを瞬間移動させる転送機を見て、それが実は大発明であることをウォンカに説きます。しかし、ウォンカはチョコレートの転送しか興味を示さず、マイクはそれに腹を立て、無謀にもゲーム感覚で自分が転送機の中に入ります。しかし、設定がうまく行っておらず、転送されたマイクは小さくなってしまったのでした。その時の歌詞は「心は空っぽ」でした。2つ目は、何かをすることにハマってやめられない、つまり行動の嗜癖症です。映画では描かれていませんでしたが、ベルーカのような買い物依存症(オニオマニア)は、手に入れたら興味を失い、また新しい何かを手に入れようとします。手に入る瞬間の快感や万能感を味わいたいために繰り返します。もはや、買うために買っている状態です。行動の嗜癖症は、この買い物依存症やゲーム依存症のほかに、ギャンブル依存症、ため込み症、抜毛症、醜形恐怖症、情緒不安定性パーソナリティ障害、窃盗症(クレプトマニア)、性嗜好障害(パラフィリア)、セックス依存症(ニンフォマニア)などが挙げられます。(3)ちやほやされることにハマってやめられない―人間関係の嗜癖症いつも1番が大好きなバイオレットは、工場の研究室で世界初となる「フルコースディナーが味わえるガム」の試作品を見つけます。そして、ウォンカから「まだ未完成だし、いくつかの点で問題が…」と忠告されたのに、それを振り切って食べてしまいます。すると、試作品の副作用で彼女の体はブルーベリーのように青紫に変色して大きく膨れ上がり身動きが取れなくなってしまったのでした。その時の歌詞は「噛んでばっかり」でした。3つ目は、人と何かでかかわることにハマってやめられない、つまり人間関係の嗜癖症です。これは、彼女のような「承認中毒」のほかに、「正義中毒」(過剰バッシング)、ミュンヒハウゼン症候群(作為症)、共依存、ひきこもり、モラルハラスメント・DVなどが挙げられます。なお、嗜癖症とは、あることが好きになりやめられなくなり困ってしまう病態です。やめられる(コントロールできる)なら単純な嗜癖、できないなら嗜癖症と区別します。なお、世界保健機関(WHO)の診断基準(ICD-11)ではDisorders due to substance use or addictive behaviors、米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)ではAddictive Disorderとそれぞれ表記され、依存症を包括しています1,2)。また、表2のそれぞれの疾患は、厳密には別の疾患グループに分類されているもの(※と表示)や、エビデンス不足で疾患概念としてまだ確立していないもの(※※と表示)もありますが、この記事では嗜癖の要素を踏まえて「嗜癖症スペクトラム」としてまとめています。※の表示:厳密には別の疾患グループに分類されているもの※※の表示:エビデンス不足で疾患概念としてまだ確立していないもの<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「チャーリーとチョコレート工場」【夢の国は「中毒」の国!?その「悪夢」とは?(嗜癖症)】Part 3

チョコレート工場の教訓とは?最後に、脱落した4人の子供たちは、無事に(?)工場をあとにするわけですが、体の形などが変わってしまっており、彼らに付き添っていた親たちが大いに反省するというオチがつきます。映画を見ている子供にとっては、突飛でおもしろい反面、何ごともほどほどにしないと大変なことになるという恐怖を感じさせます。また、大人にとっては、ホラーファンタジーとして楽しみつつ、子育てにおいて嗜癖性が強いものほど、その制限(ルール)を教える必要があることを改めて気付かせてくれます。もっと言えば、人間のあらゆる精神活動が嗜癖症になりうるわけで、その人にとって癖になりやすいかどうか(遺伝)、どれだけその刺激に子供のころからさらされていたかどうか(家庭環境)の問題であると言えそうです。だからこそ、社会的にも、ドラッグ(薬物)は言うまでもなく、アルコール、タバコ、ギャンブル、ポルノは未成年に禁止されているわけです。そして、家庭でも、お菓子などの嗜好品、インターネットやゲーム、暴力や暴言などの素行にはルールを設ける必要があるわけです。実際の行動遺伝学の研究において、驚くべきことに性格への子育て(家庭環境)の違いの影響がないのに、嗜癖への影響はおおむねあることがわかっています。たとえば、アルコール、タバコ、ドラッグなどの物質の嗜癖は約15%~30%、窃盗やDVにつながる反社会的行動は約20%です。この詳細については、関連記事1をご覧ください。夢の国が「中毒」の国であるわけは?その「悪夢」って?チョコレート工場見学は、テーマパークの体をなしていました。その入口のゲートにチャーリーたちが入る最初のシーン。そこでは、セルロイドの人形たちが、カーニバルダンスをしてくるくる回って歓迎します。しかし、花火の演出で炎に包まれ焼けただれて溶けていきます。そこにウォンカが急に現れ、無邪気に「ちょっとやりすぎだよね」としゃべり始めるのです。不気味で不吉でショッキングであり、現実の世界のテーマパークが虚構であると皮肉っているようにも見えます。実際、私たちが大好きなテーマパークでは、売り物(物質の嗜癖)としてポップコーンやポテトチップスなどの病みつきになりやすいジャンクフードのラインナップが基本です。体験(行動の嗜癖)としては、テンポの良いテーマソングのBGMが大音量で繰り返し流れ続けるなか、スリルが味わえるジェットコースターやワクワクする冒険を疑似体験するなど、これまた刺激の強いアトラクションが人気です。おもてなし(人間関係の嗜癖)としては、訪れた人たちが似たようなキャラのコスチュームを身にまとい、パレード前にみんなで手拍子やダンスの練習の指導を受けて、一体感に酔いしれます。よくよく考えると、テーマパークの原型は、お祭りです。病みつきスナックやアルコールの屋台、射的などのゲームや宝くじの屋台、そして太鼓がリズムよく鳴り響くなか、お神輿や山車が練り歩きます。参加者は同じ法被(はっぴ)を着て一緒に祈ったり踊ったりもします。進化心理学的に考えれば、お祭りの起源は、私たち人類が農耕牧畜をするために定住するようになった約1万数千年前からでしょう。当時から、農作物の豊作を祈ったり祝ったりするため、年に何度かの非日常のイベントとして盛大に行われていたでしょう。ちなみに、現在に残る世界最古のお祭りは、5000年以上前に生まれたトルコのお祭り(Nevruz)です。お祭りがビジネスとしてパッケージ化され日常化したものが、テーマパークです。だからこそ、「中毒」(嗜癖)の刺激だらけなのです。これが、実は夢の国が「中毒」の国であるゆえんです。そして、テーマパークが低年齢の子供を無料にするのも、脳が脆弱なうちにその刺激に暴露させて嗜癖性を高め、ビジネスとして取り込み囲い込む狙いがあるのがわかります。もちろん、企業は営利を追求するという確固たる目的があるため、当然のことです。大事なことは、私たちが、そのからくりをよく理解し、ほどほどに楽しめるように賢くなっている必要があるということです。つまり、楽しすぎることには落とし穴があるということです。それはまさに、チョコレート工場内でのとんでもないトラブルと同じように、夢の国の「悪夢」でしょう。「チャーリーとチョコレート工場」から学ぶことは?5人のうち、チャーリーだけが脱落せずに、賞品をもらう権利を勝ち取ります。そのわけは、チャーリーの家は貧しくて、そもそもハマっているものがなかったからでした。唯一ハマっているとしたら、それは「家族」だったのです。彼は、家族思いで、家族で助け合うことを一番に考えます。これは子供の心理発達としてとても健康的であるという教訓も暗示しています。一方で、ウォンカがエキセントリックなわけが最後に明かされます。それは、チャーリーとは対照的に家族という「嗜癖」がなかったことでした。ちなみに、これは、原作3)とは違い、映画で追加されたエピソードです。子育ては、何かをしてあげることに目が向きがちですが、嗜癖の刺激が溢れている現代では、逆に何かをあえてしない(制限をかける)ことも必要になってきます。つまり、子育ては、足し算だけではなく引き算でもあるわけです。足すのは家族の時間であり、引くのは癖になりやすいものへの刺激です。私たちが嗜癖についてよりよく理解した時、これこそが「チャーリーとチョコレート工場」のメッセージに思えてくるのではないでしょうか?1)「ICD-11のチェックポイント」P272:精神医学2019年3月号、医学書院、20192)「DSM-5-TR精神疾患の診断・統計マニュアル」:米国精神医学会、医学書院、20233)「チョコレート工場の秘密」:ロアルド・ダール、評論社、2005<< 前のページへ■関連記事そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 3

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食物アレルギーに対するオマリズマブ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 食物アレルギーは食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象と定義されている。食物アレルギーに関わるアレルゲンは、食べ物以外のこともあり、その侵入経路もさまざまであることが知られている。免疫学的機序によりIgE依存性と、非IgE依存性に分けられるが、IgE依存性食物アレルギーの多くは即時型反応を呈することが多い。IgE依存性食物アレルギーはいくつかの病型に分けられており、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、即時型症状、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)に分類される(『食物アレルギー診療ガイドライン2021』)。 食物アレルギーによって皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器など、さまざまな臓器に症状が現れる。それらの症状は臓器ごとに重症度分類を用いて評価し、重症度に基づいた治療が推奨されている。IgE依存性食物アレルギーのうち、FDEIAは複数臓器・全身性にアレルギー症状が出現し、いわゆるアナフィラキシーショックを引き起こす可能性が比較的高いことが知られている。食物アレルギーの原因食物は鶏卵・牛乳・小麦とされていたが、最新の調査「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」の報告書では第3位にナッツ類が含まれる結果であった。一般的にナッツ類は種子が硬い殻で覆われたアーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツなどが含まれ、マメ科のピーナッツは含まれない。この報告書では食物アレルギーの85%に皮膚症状、36%に呼吸器症状、31%に消化器症状を認めたとし、ショック症状は11%であった。 食物アレルギーは特定の食べ物を摂取することによりアレルギー症状が誘発され、特異的IgE抗体などの免疫学的機序を介することが確認できれば診断される。とくにアレルゲンの摂取と誘発される症状の関連を細かく問診することが重要であり、採血による特異的IgE抗体や皮膚プリックテストだけで食物除去を安易に指導しないことと『食物アレルギー診療ガイドライン2021』上は指摘している。 今回紹介する「OUtMATCH試験」は、複数の食物アレルギーに対するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であるオマリズマブの有効性や安全性を見た報告である。複数の食物アレルギーを持つ1~55歳の180例を対象に、オマリズマブを16週投与してアレルゲンに対する反応閾値の改善効果が示された。本邦でオマリズマブは2024年4月現在、気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹の3つの適応疾患がある。いずれも既存治療によるコントロールが難しい難治例や重症例に限るとされている。オマリズマブは血中遊離IgEのCε3に結合し、マスト細胞などに発現する高親和性IgE受容体とIgEの結合を阻害することにより効果を発揮する生物学的製剤である。IgEとの結合を抑えることにより、一連のI型アレルギー反応を抑制し、気管支喘息では気道粘膜内のIgE陽性細胞や高親和性IgE受容体陽性細胞の減少、末梢血中の好塩基球に存在する高親和性IgE受容体の発現も低下するとされている。気管支喘息に対する効果は8つのプラセボ比較試験のメタアナリシスで、増悪頻度を43%減少させることが報告されている(Rodrigo GJ, et al. Chest. 2011;139:28-35.)。別の報告では、1秒量、QOL、症状スコアやステロイドの減量、入院頻度の減少なども示されている(Alhossan A, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2017;5:1362-1370.)。オマリズマブは長期使用例ほどQOL改善効果が得られ、5年以上の使用で経口ステロイドの減量や治療ステップダウンを達成できる症例が増えるとされている(Sposato B, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2017;44:38-45.)。 本研究でのオマリズマブは体重と被検者のIgE値によって投与量が決められている。ピーナッツタンパクを1回600mg以上の摂取でアレルギー症状がない症例がオマリズマブ群で67%、プラセボ群で7%であった。副次評価項目でもカシューナッツ、牛乳、卵で評価されたが、同様のオマリズマブ群でアレルギー反応が出ない症例が有意に増加した。このピーナッツタンパク600mgはピーナッツ約2.5個分に相当するが、これは誤ってナッツ類を1~2個摂取してもアレルギー反応に耐えうることを示唆している。もちろん本研究が報告された後も、オマリズマブが投与されたとはいえ、自身に害を及ぼすアレルゲンは避ける必要があり、自己注射用アドレナリンは手放せない。また筆者らも指摘しているが、本研究は白人が60%以上含まれており、すべての人種での検討ではない。今回の「OUtMATCH試験」の結果を受け、米国FDAでは2024年2月にIgEに関連する食物アレルギーに対するオマリズマブを承認した。実臨床で幅広く多様な年齢や人種に対してこのオマリズマブを活用し、その結果を検討することが肝要である。

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腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応【1分間で学べる感染症】第3回

画像を拡大するTake home message髄膜炎を疑った際には頭部CT検査の適応を速やかに判断し、髄液検査を遅らせないようにしよう。腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応は6つの項目「PUNISH」で覚えよう。細菌性髄膜炎の初期対応に関しては、研修医を含め、救急外来や内科外来で働くあらゆる医師にとって必須の項目です。それでは、どのような状況で頭部CT検査を検討すればよいのでしょうか。最も重要なこととしては、頭部CT検査の適応を迅速に判断し、髄液検査を遅らせないことです。ここでは、腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応として、6つの項目を「PUNISH」で覚えましょう。PPapilledema 乳頭浮腫UUnconsciousness/abnormal level of consciousness 意識レベル低下NNeurologic deficit (focal) 局所神経障害IImmunocompromised state HIVや免疫抑制剤、移植後などを中心とした免疫不全の患者SSeizure 1週間以内の新規けいれん発症HHistory of CNS disease 頭蓋内占拠性病変や脳卒中、感染などの中枢神経病変の既往がある場合頭蓋内圧が亢進している場合、腰椎穿刺により脳ヘルニアを引き起こす可能性があるため注意が必要です。しかし、頭部CTで異常所見がないからといって安心するのではなく、不規則な呼吸や乳頭浮腫などの脳幹徴候を認めた場合は腰椎穿刺を避けるようにしましょう。1)Hasbun R, et al. N Engl J Med. 2001;345:1727-1733.2)Gopal AK, et al. Arch Intern Med. 1999;159:2681-2685.3)Tunkel AR, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1267-1284.

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第212回 新規開業の落とし穴(前編) 診療所の大型化・重装備化、複数医師開業というトレンドの背後にあるもの

コロナ禍が過ぎて、各地で診療所の新規開業が活発化こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、愛知県で一人暮らしをしている父親の様子を見に行ってきました。先月、洗濯物の取り込み中に転倒し、顔面を強打、血だらけになってしまったと電話で話していたので心配しての帰省です。久しぶりに会ってみると、「おまえ、喋り方が下手になった。聞きづらいのでもっときちんと喋れ!」と話す92歳の父親は、自分の耳のせいだとはまったく考えていないようです。顔だけではなく頭も打ったのかな、と思ったのですが、土曜昼間にテレビで放送されていた、広島・中日戦での中日ドラゴンズの戦いぶりを観て、「中田 翔はもう少し打点がほしい」、「マルティネスは時々打たれるが、防御率ゼロは大したもんだ」と意外と的確な評価をしていたので、頭はまだ大丈夫そうだ、とひと安心した次第です。さて今回は、いつもの事件や医療行政の話題から少し離れて、新規開業の最近の動きについて書いてみたいと思います。というのも、医療業界で働く知人から「コロナ禍が過ぎて、各地で新規の開業が活発化しているようだ」と聞いたからです。実際、コロナ禍が過ぎて、新規開業は再び増え始めているようです。各地で活発化している病院の再編統合や、医師の働き方改革を背景に、病院での実際の働き方にやたら制約ができて、“バイト”も気軽にできなくなっていることも、勤務医生活に見切りを付けるきっかけになっているのかもしれません。2022年医療施設調査では、無床診療所は1,101施設増最近の大まかな開業動向は、厚生労働省が発表している「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」1)で確認できます。それによれば、2022年10月1日現在の一般診療所は10万5,182施設。うち無床診療所は 9万9,224 施設(一般診療所総数の94.3%)で、前年に比べて 1,101 施設増加しました。一方、有床診療所は5,958 施設(同5.7%)で、前年に比べ211 施設減少しました。この無床診療所1,101増という数字は、廃止・休止を差し引いた純増数です。同調査によれば新規開設は7,803施設でした。コロナ禍もあって前年2021年の9,503、2020年の8,250に比べると少ないですが、それでも年間8,000近い診療所の新規開業があり、その数は廃止・休止を上回っているのです。開業当初からMRIなど高額な医療機器を導入するところもこうした新規開業、最近の一つの傾向として言われているのは、「診療所の大型化・重装備化」、「複数医師による開業」です。以上の2点を背景に「開業費の増大」も指摘されています。昨年末、ある開業コンサルタントの話を聞く機会があったのですが、たとえば整形外科診療所では、開業当初からMRIなど高額な医療機器を導入するところが少なくないそうです。複数医師による開業は在宅専門診療所によくみられる傾向ですが、在宅医療ではない診療分野でも、最初から複数医師の共同開業や複数医師による診療体制を整えるところが増えているようです。国のかかりつけ医の議論の中で、かかりつけ医の体制は単独で構築するだけではなく、複数で一人の患者をフォローしていく体制も今後は望ましいと言及されたことも影響しているのかもしれません。一方、開業費は増大の一途です。大型化・重装備化で必然的に必要資金が増えることに加え、建築資材の高騰や、都市部での不動産マーケットの好況を背景に賃料が値上がりしていることなどもその要因です。戸建て開業では億単位の資金が必要になるケースは少なくないですし、大都市のテナント開業でも、そこそこの医療機器を揃えれば、億に近い資金が必要になってきます。そうした多額の開業資金を金融機関から借り入れる場合、相応の返済期間が必要になってきます。50代、60代になってからの新規開業は厳しく、勢い30代、40代という比較的若年での開業が増えていくことになります。開業の成否は二の次に、大規模・重装備、複数医師開業を提案するコンサルタントもただ、これから開業を考える医師が注意しなければならないのは、こうしたトレンドは、先程も書いたように金融機関や開業コンサルタント側の事情も多分に関係している、という点です。とくに地方では、企業や事業者数そのものが限られており、有望かつ融資金額が大きい案件はそんなにありません。というわけで、地方銀行や信用金庫にとって病院や診療所などの医療機関は願ってもない上顧客ということになります。融資金額を最大限に増やしたい金融機関や、コンサルタント料に加え診療所の管理業務を受託したい、関連企業で門前薬局を経営したい、と考える開業コンサルタントの中には、開業の成否は二の次に、大規模・重装備の診療所で、複数医師による病院並みの外来運営を企画・提案するところもあると聞きます。「医療機関が潰れたら、金融機関側も困るのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、債務を負うのは医師です。仮に経営が破綻し診療所を畳むことになったとしても、金融機関側は「僻地の診療所などで10年も働いてもらえば億のお金でも返済してもらえる」と考えます。さらに、複数医師開業で債務者が複数いれば、返済期間も短くなります。そういった意味でも金融機関にとって医師は願ってもない上顧客なのです。最初、患者として勤務医に近づく開業コンサルタントもそうした状況下、開業志望の医師の相談や悩みに親身になって対応してくれる金融機関やコンサルタントがいる一方で、医師を単なる“カモ”としか見ない悪いやつもいます。結果、経営に疎い医師が騙される、という事態も発生します。「第176回 虫垂がんを宣告されたある医師の決断(後編) 田舎の親の病医院を継ぎたくない勤務医にも参考になる『中小病院が生き残るための20箇条』」で紹介した『続“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営を超えて』(東謙二著、日経メディカル開発)の中には典型的なエピソードが紹介されています。同書の「中小病院が生き残るための20箇条」の章の20箇条目、「医師は世間知らず、開業で騙されないために」の項では、「熊本界隈でも新規開業したばかりの診療所の閉院が増えている」として、40代の公的病院勤務医の開業失敗話が紹介されています。最初、患者として勤務医が働く病院の外来にやってきた男が、親密になると「開業コンサルタントである」と打ち明けます。その後、地方銀行員と組んで言葉巧みかつ強引に勤務医を新規開業に導いていく展開は、モダンホラーさながらです。コンサルタントの“悪魔の囁き”、「先生なら開業すれば患者さんがたくさん集まるでしょうね」この本には、「先生なら開業すれば患者さんがたくさん集まるでしょうね」、「開業資金のことなら心配要りません」、「開業までのことはすべてお任せください」といったコンサルタントの“悪魔の囁き”の例もいくつか紹介されています。この勤務医は結局、「開業後、自腹を切りながら経営を続けたものの、結局は多額の借金を背負い閉院した」とのことです。なお、東氏は「医師をはじめ、医療従事者はほとんどが『性善説』の中で仕事をしているが、世の中には『性悪説』を基本に対処していかないとすぐに騙されてしまう世界もあるのである」と書くとともに、「だから開業するな、と言っているわけではない。自分の所有する土地があり、運転資金も十分にあるならば多くのリスクは回避できる。しかし、土地から購入して、全てが一から開業となれば、自分はかなりギャンブル性の高い勝負に出るのだと理解してほしい。もちろん全ての業者が悪徳ではないし、親身になってくれる経営コンサルタント会社や銀行もあるだろう」と結んでいます。収益が出ないと不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところも少し話が脱線してしまいました。診療所の大型化・重装備化、複数医師開業の話に戻りましょう。大型化・重装備化は開業費がかかり、複数医師開業は医師の人件費が倍になります。収入は増えますが、支出も当然増えます。患者数をこなしてもこなしても収益がなかなか出ないとなると、不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところも出てきます。私が昨年秋にかかった都内の整形外科はまさにそんな診療所でした(この項続く)。参考1)令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況/厚生労働省

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英語で「アレルギーはありますか」は?【1分★医療英語】第130回

第130回 英語で「アレルギーはありますか」は?《例文1》Are you allergic to any medication?(薬に対するアレルギーはありますか?)《例文2》What kind of reaction did you have?(どのような反応がありましたか?)《解説》医師でも看護師でも、患者さんにアレルギーを確認することが多いでしょう。聞き方はシンプルで、“Do you have any allergies?”というフレーズがよく使われますが、ポイントは発音です。日本語的に「アレルギー」と発音してしまうと、まず伝わりません。“allergy”は、カタカナにすると「アァレジー」というような発音になります。複数形では「アァレジーズ」です。最初の「ア」にアクセントがあることに注意しましょう。また、「○○にアレルギーがある」と言うときには、“allergic”という形容詞を使って、“be allergic to ○○”という表現を使うと便利です。ただし、形容詞になった際は「ア」ではなく「レ」にアクセントが来るのでその点も気を付けます。アレルギーがあると言われた場合には、“What kind of reaction did you have?”(どのような反応がありましたか?)や“When did that happen?”(それはいつ起こりましたか?)というような追加質問をして、詳細な情報を得ましょう。なお、日本で毎年春に問題になる花粉症は、英語で“pollen allergy”もしくは“hay fever”といいます。一緒に覚えておくと便利です。講師紹介

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第193回 医師の働き方改革、面接指導はA水準医師も対象に/厚労省

<先週の動き>1.医師の働き方改革、面接指導はA水準医師も対象に/厚労省2.特定健診・保健指導の実施率、過去最高の改善を記録/厚労省3.コロナ専門家への攻撃実態、半数が誹謗中傷などを経験4.正常分娩の保険適用を、2026年度までに検討を/こども家庭庁5.医療機器メーカーと医師の癒着、医師が再逮捕/東京労災病院6.奨学金返還とお礼奉公を巡り、看護学生と医療法人が民事訴訟に/大阪1.医師の働き方改革、面接指導はA水準医師も対象に/厚労省厚生労働省は、長時間働く医師に対する面接指導のポイントをまとめたリーフレットを初めて作成した。2024年4月から労働時間が長い医師に対する面接指導が義務化されたことに伴い、A水準の医師も面接指導の対象になると注意を喚起している。医師への面接指導は、月100時間以上の時間外労働(休日含む)が見込まれる医師に実施することとされており、時間外労働の上限が年960時間とされているA水準の医師でも対象となる。しかし、A水準の医師は、月の時間外労働が100時間未満のため、面接指導の対象にならないと考えている医療機関が見受けられる。そのため、厚労省は、A水準か特例水準かにかかわらず、長時間労働を行う医師は面接指導の対象となることを明記したリーフレットを作成し、8日に公開したもの。リーフレットでは、面接指導を適切に実施するためのチェックリストも盛り込まれている。このチェックリストには、「対象となる医師を把握しているか」「面接指導実施医師を確保しているか」「適切な時期に実施しているか」などの6項目が含まれている。さらに、適切なタイミングで面接指導を行うため、時間外労働が月80時間前後に達した場合に実施するルールを各自で設定するよう呼び掛けている。これにより、医師の長時間労働を未然に防ぎ、医師の健康を守ることを目指すとしている。参考1)長時間労働医師への面接指導を行う先生へ面接指導の進め方クイックガイド(厚労省)2)長時間労働医師への健康確保措置に関するマニュアル(改訂版)(同)3)医師への面接指導、「A水準も対象」チェックリストを初めて作成 厚労省(CB news)2.特定健診・保健指導の実施率、過去最高の改善を記録/厚労省厚生労働省は、2022年度の特定健康診査(特定健診)と特定保健指導の実施状況を公表した。2022年度の特定健診の対象者は約5,192万人、そのうち約3,017万人が受診し、実施率は58.1%で前年より1.6ポイント向上した。特定保健指導の対象者は、約512万人おり、そのうち約135万人が指導を終了し、実施率は26.5%で前年より1.9ポイント向上した。メタボリックシンドロームの該当者および予備群の減少率は、2008年度比で16.1%減少し、前年から2.3ポイント向上した。国は、2023年度までに特定健診の実施率を70%以上、特定保健指導の実施率を45%以上、メタボリックシンドローム該当者およびその予備群を2008年度比で25%以上減少させることを目標としている。参考1)2022年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況(厚労省)2)特定健診58.1%、保健指導26.5% 22年度実施率、厚労省(MEDIFAX)3.コロナ専門家への攻撃実態、半数が誹謗中傷などを経験新型コロナウイルス感染症の流行中、情報を発信していた専門家の半数が誹謗中傷などの被害を受けていたことが、早稲田大学の田中 幹人氏らの研究グループのアンケート調査で明らかになった。調査は2020年2月~2021年3月に行われ、国内の専門家121人にアンケートを送付、42人から回答を得たもの。そのうち21人(50%)が「情報発信後に攻撃を受けた」と回答、殺害予告や身体的・性的暴力に関する脅迫も含まれていた。とくに深刻な被害として、3人が殺害予告を受け、2人が身体的・性的暴力の脅迫を受けたと回答した。悪影響を受けた29人のうち8割は感情的、心理的な苦痛を経験している。 海外でも同様の調査が行われており、英国や米国、台湾などの専門家のうち15%が殺害予告を受け、22%が身体的・性的暴力の脅迫を受けていたことが判明している。田中氏は、「こうした脅迫行為が健全な社会の議論を妨げる」と指摘し、「科学的な議論を支援し、保護する仕組みの必要性」を強調する。また、感染症専門医である大阪大学の忽那 賢志氏も情報発信の際に多くの誹謗中傷を受け、裁判所に発信者情報の開示命令を申し立てるなど対策を講じている。忽那氏はエビデンスに基づく情報発信を心掛ける一方で、誹謗中傷に対しては反論せず、法的手段を用いて対応した。専門家が情報発信する際には、感情的な反発や誤解を避けるため、メリットとデメリットをバランスよく伝えることが重要となる。今後、科学的なリテラシーを社会全体で向上させることが必要であり、専門家の発言を組織的にサポートする体制が求められる。参考1)コロナ情報発信の国内専門家、半数が「攻撃受けた」 殺害予告も(毎日新聞)2)Xではあえて反論せず 忽那さんが振り返るコロナ情報発信(同)4.正常分娩の保険適用を、2026年度までに検討を/こども家庭庁こども家庭庁は「こども家庭審議会」の基本政策部会を5月9日に開き、「こどもまんなか実行計画」の審議会案を大筋でまとめた。この実行計画では、誕生前から幼児期にかけての継続的な保健・医療の確保を目指し、2026年度をめどに正常分娩の保険適用を検討すると明記した。実行計画では、2023年末に政府が閣議決定した「こども大綱」に基づき、子供や若者のライフステージごとに具体的な政策を整理したもの。さらに、周産期医療の集約化・重点化も盛り込まれている。2024年度からの第8次医療計画(2029年度まで)に沿って、医療機関の役割分担を進め、周産期母子医療センターを中心に新生児集中治療室(NICU)や母体胎児集中治療室(MFICU)の機能と専門医などの人材を集約化・重点化させることが計画されている。これにより、安全で安心な妊娠・出産環境を整備することを目指している。さらに、休日や夜間を含めて子供がいつでも医療サービスを受けられるように小児医療体制の充実が図られる。また、不妊症や不育症、出生前検査に関する正しい知識の普及や相談体制の強化も進められる予定。正式な実行計画は、閣僚らによる「こども政策推進会」が2024年6月頃に決定し、骨太方針に反映される見込み。「こども大綱」は5年後をめどに見直され、実行計画は毎年それぞれ見直される予定であり、こども家庭審議会が政策の実施状況を点検する。正常分娩への保険適用などの重点政策を中心に、2024年度~2028年度までの工程表も作成される。正常分娩への保険適用は、出産に伴う経済的な負担を軽減するための施策であり、政府は2026年度の導入を目指している一方で、医療機関が提供するサービスの多様化や費用の差異により、保険適用に対しては慎重な意見も存在する。参考1)こども家庭審議会 第12回基本政策部会(こども家庭庁)2)正常分娩「保険適用検討」明記、子ども政策計画案 周産期医療の集約・重点化も(CB news)5.医療機器メーカーと医師の癒着、医師が再逮捕/東京労災病院東京労災病院の医療機器納入に関する贈収賄事件で、同病院整形外科副部長が収賄容疑で再逮捕された。また、医療機器メーカー「HOYAテクノサージカル」社員も贈賄容疑で再逮捕された。被告医師は、2022年6~9月に同社の医療機器を多く使用する見返りに、現金20万円を受け取った疑いがある。この事件では、同様の手法で2022年1~4月に計50万円の賄賂を受け取っていたことが発覚しており、被告となった医師はすでに収賄罪で起訴されている。警視庁捜査2課によると、メーカー側から自社製品の使用個数に応じて1ポイントを1万円とする「ポイント」を被告の医師に付与し、被告はそのポイントを私的な飲食の領収書と引き換えて現金を受け取っていたとされる。さらに、被告医師は他の医師に対しても同社製品を使用するよう勧め、他の医師が使った分も自分のポイントとして偽っていたとみられている。医療機器業界では、競争が激化する中で、病院幹部に対する接待や贈答が行われることがあり、今回の事件もその一環とみられている。医療機器業公正取引協議会は、医療機関との取引に際して利益供与を禁じる規約を運用しているが、競争の激しさから規約違反が後を絶たない状況である。警視庁では、2022年1~9月の計約80万円の賄賂授受を立件し、3人の被告を起訴した。東京労災病院は、独立行政法人労働者健康安全機構が運営しており、その職員は「みなし公務員」として収賄罪が適用される立場にある。参考1)当院職員の再逮捕について(東京労災病院)2)自社製品使用の医師に1ポイント1万円の「ポイント」付与か 東京労災病院の汚職事件(産経新聞)3)東京労災病院の医師、別の収賄疑いで再逮捕 医療機器調達巡り(日経新聞)4)現場医師の権限、癒着生む 「大病院」汚職次々 業界の禁止規定も限界(毎日新聞)5)「聖域」で営業競争激化、しわ寄せは患者に 医療業界で汚職続く理由(朝日新聞)6.奨学金返還とお礼奉公を巡り、看護学生と医療法人が民事訴訟に/大阪看護学校卒業後に系列病院で一定期間働けば奨学金の返済が免除される制度について、その病院で勤務できない場合に返済義務があるかどうかが大阪地裁で争われている。訴訟の発端は、卒業生3人が系列病院の採用試験に不合格となり、奨学金の返済を求められたことにある。卒業生側は、不採用の理由が法人の都合によるものであり、返済義務を課すのは信義則に反すると主張している。問題となっているのは、看護学校を運営する社会医療法人が提供する奨学金制度で、卒業生はこの奨学金を受給し、卒業後に法人の病院で2年以上勤務すれば返済が免除されるというもの。しかし、2020年に不採用となった3人に対しては、法人が奨学金の返済を求め、その結果訴訟に至った。被告の法人側は、奨学金の貸与が採用を保証するものではないと主張し、不採用の理由として面接や心理テストでの基準未達を挙げている。一方、原告の卒業生側は奨学金の募集案内に不採用時の返済義務が明記されていない点、経済的事情を考慮した条件変更の説明がなかったことを問題視している。また、不採用の理由が新型コロナウイルス感染症の影響による採用人数の抑制など経営上の事情変更によるものである可能性も指摘している。このような奨学金制度は「お礼奉公」とも呼ばれ、看護師不足対策として普及しているが、雇用の流動化が進む中でトラブルも増加している。看護師養成制度に詳しい専門家は、病院側が奨学金制度の不利益な情報も丁寧に説明し、学生側もリスクを十分に検討する必要があると指摘する。参考1)トラブル相次ぐ看護学生の「お礼奉公」、系列病院が不採用なら奨学金返還義務?…訴訟に発展(読売新聞)2)お礼奉公契約は有効ですか(河原崎法律事務所)

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事例047 アンブロキソール塩酸塩の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説痰のからみを訴える扁桃炎の患者に対して、抗菌薬と去痰薬のアンブロキソール塩酸塩錠(以後「同錠」)を投与したところ、多くは病名不足を示すA事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。同錠の添付文書を参照したところ、効能・効果には、気管支炎もしくは肺炎由来の去痰に適用があると記載されていました。扁桃炎は、扁桃に炎症が起きる上気道疾患です。効能・効果には、上気道疾患に伴う去痰が記載されていません。現在はコンピュータによる審査が行われています。添付文書の効能・効果と病名が一致しないために、A事由が適用されたものと推測ができます。他のレセプトも調べてみました。同様の理由にてブロムヘキシン塩酸塩などが査定となっていました。医師にはこの結果を伝えて、同錠などを投与する場合には、気管支や肺の炎症に伴う去痰を目的に使用した理由が読み取れる病名を付けていただくようにお願いしました。

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手足口病の予防は手洗いで

夏、小児に流行する手足口病〔原因ウイルス〕・エンテロウイルスやコクサッキーウイルス(※アルコール消毒や熱に抵抗性が高いウイルス)〔流行期、おもな患者層、潜伏期間〕・夏季を中心に流行し、4歳くらいの幼児が主体(2歳以下が半数。成人もまれに感染)・約3~5日の潜伏期間の後に発症〔主症状〕・口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹出現(下図参照)。肘、膝、臀部などにも出現する場合もある。・発熱は約1/3にあるが、軽度でほぼ38℃以下。・通常は3~7日で消退し、水疱が痂皮を形成することはない。・まれに幼児に髄膜炎、小脳失調症などの中枢神経系合併症が生ずるので注意が必要。〔治療〕・特異的な治療法はない。 抗菌薬の投与は意味がない。・口腔内病変には柔らかめで薄味の食べ物を推奨。・発熱には通常解熱剤なしで経過観察が可能。・頭痛、嘔吐、高熱、2日以上続く発熱などの場合 には髄膜炎、脳炎などへの進展に注意。・ステロイドの多用が症状を悪化させる示唆あり。〔予防〕・有症状中の接触予防策および飛沫予防策が重要。 とくに手洗いの励行(排便後の手洗いを徹底)!図 手足口病における水疱性発疹国立感染症研究所ホームページより引用・作成(2024年4月25日閲覧)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-hfmd.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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後期早産期の出生前ステロイド、6歳以降の神経発達に影響なし/JAMA

 後期早産リスクを有する母親への出生前コルチコステロイド投与は、6歳以上の小児期の神経発達アウトカムに有害な影響を及ぼさない。米国・コロンビア大学のCynthia Gyamfi-Bannerman氏らが、2010~15年に国立小児保健発達研究所Maternal-Fetal Medicine Units(MFMU)ネットワークの17施設で実施された二重盲検プラセボ対照試験「Antenatal Late Preterm Steroids(ALPS)試験」に参加した母親から生まれた児に関する、前向き追跡試験の結果を報告した。ALPS試験は、妊娠34~36週における出生前のベタメタゾン投与が早産児の短期呼吸器合併症の発症率を有意に低下させることを明らかにし、米国における臨床実践を変えた。しかし、ベタメタゾン投与後に新生児低血糖症のリスクが増加することも認められており、長期的な神経発達アウトカムへの影響に関心が寄せられていた。JAMA誌オンライン版2024年4月24日号掲載の報告。後期早産期の出生前ステロイド投与を受けた母親から生まれた6歳以上の小児を調査 ALPS試験(以下、親試験)では、妊娠34週0日~36週5日で後期早産(36週6日までの出産)リスクの高い母親を、ベタメタゾン(12mg)群またはプラセボ群に割り付け筋肉内投与した(24時間経過後も出産しなかった場合は2回目を投与)。 本追跡試験では、2011~16年にMFMUネットワークの13施設のうち1施設に登録され、追跡試験に同意した母親から生まれた6歳以上の小児を適格として、2017年12月~2022年8月に登録し、前向きに調査した。 主要アウトカムは、Differential Ability Scales, 2nd Edition(DAS-II)の全般的概念化能力(General Conceptual Ability:GCA)スコアが85点未満(平均より1 SD低いことを示す)の子供の割合であった。副次アウトカムは、DAS-IIのクラスター(言語能力、非言語的推論能力、空間認識能力)スコア、粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System:GMFCS)のレベル2以上の割合、対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale:SRS)のtスコア65点超の割合、および子供の行動チェックリスト(Child Behavior Checklist:CBCL)のスコアとした。すべてのアウトカムで、ベタメタゾン群とプラセボ群で差はなし 親試験で無作為化された母親2,831例の出生児のうち、追跡試験に登録されたのは1,026例で、登録時の年齢中央値は7歳(四分位範囲[IQR]:6.6~7.6)であった。このうち、949例(ベタメタゾン群479例、プラセボ群470例)がDAS-IIの評価を完了した。母親の人種や年齢などの背景、新生児の特徴は、親試験で認められたように新生児低血糖症がベタメタゾン群で多かったことを除き、両群間で類似していた。 主要アウトカムのDAS-II GCAスコア85点未満の割合は、ベタメタゾン群17.1%(82/479例)、プラセボ群18.5%(87/470例)であり、差はなかった(補正後相対リスク:0.94、95%信頼区間[CI]:0.73~1.22)。また、いずれの副次アウトカムも差は認められなかった。 逆確率加重法を用いた事後感度分析、ならびに追跡不能となった小児も含めた感度分析においても、結果は同様であった。

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2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチンの全額公費による接種は2024年3月31日で終了した。令和6年度(2024年度)は、秋冬期に自治体による定期接種が開始される。定期接種の対象となるのは65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人で、対象者の自己負担額は最大で7,000円となっている。なお、定期接種の対象者以外の希望者は、任意接種として全額自費で接種することとなり、2024年3月15日時点の厚生労働省の資料によると、接種費用はワクチン代1万1,600円程度と手技料3,740円で合計1万5,300円程度の見込みとなっている1)。この状況を踏まえ、医師のこれまでのコロナワクチン接種状況と、今後の接種意向を把握するため、主に内科系の会員医師1,011人を対象に『2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート』を4月1日に実施した。 Q1では、コロナの診療に現在携わっているかについて聞いた。「診療している」が79%、「診療していない」が21%だった。年代別で「診療している」と答えた割合は、40代(86%)、60代(83%)、30代(81%)の順に多かった。診療科別では、血液内科(94%)、呼吸器内科(94%)、救急科(92%)、総合診療科(90%)、腎臓内科(88%)、神経内科(88%)、内科(85%)、小児科(83%)、消化器内科(81%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(80%)、臨床研修医(80%)の順に多かった。年齢が低い医師ほど、コロナに感染した割合が高い Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を聞いた。感染したことがある医師は全体の45%、感染したことがない/感染したかわからない医師は55%であった。感染したことがある医師は年齢が低いほど、感染した割合が高く、20代は60%、30代は55%、40代は51%、50代は44%、60代は35%、70代以上は24%だった。臨床数別では、病床数が多いほうが感染した医師の割合が高く、20床以上で感染したのは49%、0~19床では34%だった。また、コロナ診療状況別では、コロナを診療している医師では47%、診療していない医師では37%に感染歴があった。昨年は20~40代の接種率が50%弱 Q3では、2023年秋冬接種でのXBB.1.5対応ワクチンの接種状況を聞いた。全体では「接種した」が58%、「接種していない」が42%だった。年代別で「接種した」と答えた割合は、多い順に70代以上(77%)、60代(72%)、50代(61%)、20代(50%)となり、30代(45%)と40代(48%)は50%未満であった。コロナ診療状況別の接種率は、診療している医師は62%、診療していない医師は46%であった。前年の傾向を引き継ぎ、接種する人と接種しない人の二極化進む Q4では、2024年度にコロナワクチンを接種する予定かどうかを聞いた。全体では「接種する予定」が33%、「接種する予定はない」が41%、「わからない」が26%となった。年代別では、「接種する予定」と答えた割合が過半数となったのは70代以上(56%)のみで、ほかは多い順に60代(44%)、50代(31%)、40代(28%)、20代(28%)、30代(23%)であった。30代では「接種する予定はない」が54%となり過半数を占めた。2023年コロナワクチン接種状況別で、2023年に接種した人では「2024年度に接種する予定」が53%、「2024年度に接種する予定はない」が16%となった。対して、2023年に接種していない人では、「接種する予定」が6%、「接種する予定はない」が74%となり、今回のアンケートで最も顕著な差が認められ、医師のなかでもコロナワクチンを接種する人と接種しない人の二極化が進んでいることがわかった。 Q5では、自身が受ける2024年度のコロナワクチンの費用は、病院負担か自己負担のどちらになるか、これまでのインフルワクチンなどの対応を踏まえ推測を交えて聞いた。「おそらく全額病院負担」が22%、「おそらく一部自己負担」が22%、「おそらく全額自己負担」が23%、「わからない」が33%となり、全体的に均等な割合となった。2024年度にワクチンを接種する予定の人のうち「全額病院負担」35%、「一部自己負担」29%、「全額自己負担」16%だったのに対し、接種する予定はない人は「全額病院負担」12%、「一部自己負担」20%、「全額自己負担」30%であった。ワクチンの必要性や高額な治療薬について、患者にどう説明するか Q6の自由回答のコメントでは、新型コロナに関して現在困っていることや知りたい情報を聞いた。主な回答は以下のとおり。ワクチンについて・ワクチンで感染予防が成り立たないのは明白。ただし重症予防は十分成り立っていたと思うので、高齢者と持病多い人は無料で受けられるようにしてほしい(40代、循環器内科)・接種の必要性をよく質問されるが、正直な所、自分も勧めてよいのか迷っている(40代、小児科)・今後新たに使用可能となるワクチンの種類とその効果など(60代、内科)・公費負担が終了すると被接種者は減少すると思われるが、今後の流行予測は?(70代以上、内科)・医療従事者のワクチン接種費用について(50代、内科)治療薬について・抗ウイルス薬の値段が高い事の説明をどうするか(60代、内科)・コロナ治療薬の処方が減り、対症療法が増えると思う(70代以上、内科)・抗ウイルス薬の適応と思われる患者さんが、高額のため投薬拒否された時のことを考えると頭が痛い(50代、消化器内科)流行状況、院内対策などについて・現在の感染状況の情報発信が少なくなり、新型コロナ感染症に対する世間の認識が乏しくなり、感染増加を招いていること(40代、呼吸器内科)・感染対策の立場として、職場での接種をどうするか悩んでいる(40代、感染症内科)・発熱外来の体制に悩んでいる(30代、呼吸器内科)・後遺症に関する診断(40代、呼吸器内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート

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英語で「問題を先送りする」は?【1分★医療英語】第129回

第129回 英語で「問題を先送りする」は?《例文1》I tend to procrastinate until the last minute.(私はギリギリまで問題を先送りしてしまいがちです)《例文2》It is a waste of time.(それは時間の無駄です)《解説》医療の現場では難しい決断が迫られることが珍しくありません。時に、最善の選択肢がわかっていても、副作用や費用など、さまざまな理由でほかの選択肢を検討することがあります。“kick the can down the road”(問題を先送りする)は便利な慣用句で、患者さんを説得する場面などでたびたび使用されるのを耳にします。このフレーズの由来には諸説あります。「歩いている人が、自分がいずれ拾うべき缶を自分の前方に蹴り続けている状態」をイメージすると理解しやすいかと思います。類義語としては、“procrastinate”(先延ばしにする)が最もシンプルでしょう。さらに直接的な表現となりますが、場面によっては“waste of time”(時間を無駄にする)を使うこともできます。講師紹介

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健康な新生児/乳児も対象のRSウイルス感染症予防薬「ベイフォータス筋注50mg/100mgシリンジ」【最新!DI情報】第14回

健康な新生児/乳児も対象のRSウイルス感染症予防薬「ベイフォータス筋注50mg/100mgシリンジ」今回は、抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤「ニルセビマブ(遺伝子組換え)(商品名:ベイフォータス筋注50mg/100mgシリンジ、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、健康な新生児および乳児も投与対象とするRSウイルス感染症の予防薬であり、重症化リスクの有無に関わらず下気道疾患の発症を抑制・予防し、入院などを回避することが期待されています。<効能・効果>生後初回または2回目のRSウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制、ならびに生後初回のRSウイルス感染流行期の前述以外のすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防の適用で、2024年3月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>生後初回のRSウイルス感染流行期には、通常体重5kg未満の新生児および乳児は50mg、体重5kg以上の新生児および乳児は100mgを1回筋肉内注射します。生後2回目のRSウイルス感染流行期には、通常200mgを1回筋肉内注射します。<安全性>主な副作用として、発疹、注射部位反応および発熱(0.1~1%未満)が報告されています。他のIgG1モノクローナル抗体では、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症反応が報告されており、本剤の臨床試験においても過敏症に関連する有害事象(頻度不明)が報告されているので、注意が必要です。同様に、類薬では血小板減少が注意喚起されており、本剤の臨床試験でも血小板減少に関連する有害事象(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、RSウイルス感染症のリスクがある新生児、乳児および幼児における下気道疾患の発症を抑制します。2.RSウイルス感染症のリスクを有する患児では、生後初回または2回目のRSウイルス感染流行期に使用します。3.生後初回のRSウイルス感染流行期には、基礎疾患のないすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防にも使用されます。<ここがポイント!>RSウイルスは、日本を含め世界中に分布しているウイルスで、感染力が強く、季節的に流行します。生涯にわたって何度も感染と発症を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにはほぼすべての幼児が1度は感染するとされています。RSウイルスによる下気道感染の多くは、風邪様の軽い症状で自然軽快しますが、場合によっては細気管支炎や肺炎などへ進展し、生命を脅かす重篤な症状を引き起こす可能性があります。重症化のリスク因子には、早産児、慢性肺疾患、ダウン症候群、先天性心疾患(CHD)および免疫不全症などの基礎疾患があります。また、初回感染時は重症化しやすく、とくに生後6ヵ月以内に感染した場合はリスクが高くなります。RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制には、抗RSウイルス抗体であるパリビズマブがすでに承認されていますが、早産児やCHD、免疫不全などの基礎疾患を有する新生児、乳児および幼児に使用が限定されています。しかし、RSウイルス感染症による入院患者の大多数を占めているのは基礎疾患を有さない健康な小児であることから、幅広い乳幼児に使用できる医薬品の開発が望まれていました。本剤は、生後初回または2回目のRSウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児に使用できるほか、リスクの有無に関わらずすべての新生児、乳児および幼児に対し、生後初回のRSウイルス感染流行期の下気道疾患の予防に用いることができます。本剤は、遺伝子組換え抗ヒトRSウイルスFタンパク質モノクローナル抗体であり、ヒトIgG1に由来する長期間作用型の中和抗体です。血清中の消失半減期を延長しており、固定用量の単回投与によって少なくとも5ヵ月の発症抑制効果を得ることができます。国際共同第III相試験(MELODY試験)において、本剤の単回投与によって、正期産児および後期早産児における投与後150日(5ヵ月間)までの受診を要したRSウイルスによる下気道感染の相対リスクは、対照群と比べて74.5%減少しました(95%信頼区間[CI]:49.6~87.1、p<0.0001)。また、海外後期第II相試験では、早産児(在胎期間29週以上35週未満)における投与後150日(5ヵ月間)までの受診を要したRSウイルスによる下気道感染の相対リスクは、対照群と比べて70.1%減少し(95%CI:52.3~81.2、p<0.0001)、入院リスクは78.4%減少しました(95%CI:51.9~90.3、p=0.0002)。本剤は、2022年10月に欧州で「生後初回のRSウイルス流行シーズンを迎える新生児および乳幼児におけるRSウイルスによる下気道疾患の発症抑制」で承認されています。

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