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5~17歳の10人に1人がADHD/米国調査結果

 米国疾病予防管理センター(CDC)下の組織である国立衛生統計センター(NCHS)は、2024年3月に米国における注意欠如・多動症(ADHD)に関する調査結果を発表した。この報告書によると、2020~22年にADHDと診断された5~17歳の子供の割合(有病率)は11.3%だったという。 その他の主な結果は以下のとおり。・5~17歳では、男児(14.5%)のほうが女児(8.0%)より有病率が高く、この傾向は5~11歳と12~17歳の年齢別においても一貫していた。・5~11歳の有病率(8.6%)よりも、12~17歳の有病率(14.3%)のほうが高かった。・有病率は、すべての人種において、5~11歳よりも12~17歳のほうが高かった。・5~17歳の子供のうち、黒人の子供(10.8%)やヒスパニック系の子供(8.9%)よりも白人の子供(13.4%)のほうが有病率が高かった。・世帯収入が上がるにつれてADHDの有病率は減少する傾向があり、5~17歳の有病率は世帯収入が米国貧困水準の100%未満の場合は14.8%だったが、200%以上では10.1%となった。世帯収入の増加とともにADHDの有病率が減少するパターンは、いずれの年齢層の子供にもみられた。・5~17歳の子供では、ADHDの有病率が最も高かったのは公的保険に加入している子供(14.4%)で、最も低かったのは無保険の子供(6.3%)だった。

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若年者の砂糖入り飲料摂取、世界的な動向は?/BMJ

 世界185ヵ国の小児・思春期児(3~19歳)における砂糖入り飲料(sugar sweetened beverage、SSB)の摂取量は、1990~2018年の間に23%増加しており、このことと同年齢層における世界的な肥満症有病率の上昇が対応していることを、米国・タフツ大学のLaura Lara-Castor氏らがGlobal Dietary Databaseを用いた検討で明らかにした。また、世界の小児・思春期児のSSB摂取量は、年齢や親の教育レベル、都市居住か否かによりばらつきがみられたという。BMJ誌2024年8月7日号掲載の報告。1990~2018年の185ヵ国の小児と思春期児について分析 研究グループはGlobal Dietary Databaseを用いた連続横断分析で、世界の小児・思春期児におけるSSB摂取量と経時的な傾向を定量化した。1990~2018年の185ヵ国の3~19歳を、年齢、性別、親の教育レベル、および地方または都市居住によって地域レベルで層別化し分析した。世界の若者人口の10.4%が7サービング/週以上を摂取 2018年において、世界の平均SSB摂取量は3.6(95%不確定区間:3.3~4.0)サービング/週であり(標準化サービング=248g[8オンス])、地域別にみると、南アジアの1.3(1.0~1.9)サービング/週から中南米・カリブ海地域の9.1(8.3~10.1)まで大きくばらついていた。 SSB摂取量は、年少児よりは年長児で、地方居住者よりは都市居住者で、両親の教育レベルは低レベル群よりは高レベル群で高かった。 1990~2018年に、世界の平均SSB摂取量は0.68サービング/週(22.9%)増加していた。最も増加していたのはサハラ以南のアフリカ諸国で2.17サービング/週(106%)であった。 解析に含んだ185ヵ国のうち、56ヵ国(30.3%)の平均SSB摂取量は≧7サービング/週であった。これら摂取群には小児・思春期児2億3,800万人、世界の若者人口の10.4%が含まれる。 結果を踏まえて著者は、「本研究は、とくに中南米とカリブ海地域の都市および地方居住で、教育レベルを問わずSSB摂取量が多い若者へのSSB摂取量を減らすための政策や、サハラ以南のアフリカ諸国において拡大しているSSBの問題に役立つだろう」とまとめている。

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国内での小児の新型コロナ感染後の死亡、経過や主な死因は?

 2024年8月9日時点での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内での流行状況によると、とくに10歳未満の小児患者が多い傾向にある1)。日本でCOVID-19発症後に死亡した0~19歳の小児・青年患者の特徴を明らかにするために、国立感染症研究所のShingo Mitsushima氏らの多施設共同研究チームは、医療記録および死亡診断書から詳細な情報を収集し、聞き取り調査を行った。その結果、53例の情報が得られ、ワクチン接種対象者の88%が未接種であったことや、発症から死亡までの期間は77%が7日未満であったことなどが判明した。CDCのEmerging Infectious Diseases誌2024年8月号に掲載。 日本では、2022年にオミクロン株が初めて検出された後、小児COVID-19患者数が急増した。2021年12月までに0~19歳のSARS-CoV-2陽性患者数は24万例(0~9歳:8万4千例、10~19歳:15万6千例)だったが、2022年1~9月(オミクロン株流行期)には480万例(0~9歳:240万例、10~19歳:240万例)に増加し、死亡者数も増加した。 本研究では、厚生労働省、地方自治体、保健所、HER-SYS、学会、メディアから小児・青年死亡症例の情報を収集した。症例は、発症または死亡日が2022年1月1日~9月30日である0~19歳におけるSARS-CoV-2感染後に発生した死亡症例と定義した。死因について、中枢神経系異常、心臓異常、呼吸器異常、その他、不明に分類した。患者の発症から死亡までの日数の中央値と四分位範囲(IQR)を算出し、選択された変数の適合度を検定するために、x2検定またはFisherの正確確率検定を用いた。発症から初回診察、心肺停止、または死亡までの間隔を異なる死因間で比較するためにlog-rank検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19発症後に死亡した0~19歳の小児・青年患者62例が確認され、うち53例について詳細な調査を実施できた。46例(87%)は内的死因、7例(13%)は外的死因(新型コロナ感染後の溺水や窒息などの予期せぬ事故)であった。・内的死因患者46例のうち、1歳未満が7例、1~4歳が15例、5~11歳が18例、12~19歳が6例であった。19例に基礎疾患が認められた。・ コロナワクチン接種対象者(5歳以上)は24例で、そのうち21例(88%)がワクチンを接種していなかった。2回のワクチン接種済みの3例(12歳以上)のCOVID-19発症日は、最後のワクチン接種日から3ヵ月以上経過していた。・入院前は呼吸器症状よりも非呼吸器症状のほうが多く、疑われた死因は、多い順に、中枢神経系異常(急性脳症など)が16例(35%)、心臓異常(急性心筋炎など)が9例(20%)、呼吸器異常(急性肺炎など)が4例(9%)だった。小児の多系統炎症性症候群(MIS-C)は認められなかった。・基礎疾患のない患者(27例)では、最も多く疑われた死因は中枢神経系異常(11例)、次いで心臓異常(5例)だった。呼吸器異常は認められなかった。・入院前に救急外来で確認された死亡者数は19例、入院後の死亡者数は27例であった。患者の46%は院外心停止で死亡した。・中枢神経系異常を認めた16例では、発症から心肺停止までの中央値は2日(IQR:1.0~12.0)、発症から死亡までの中央値は3.5日(2.0~14.5)だった。5~11歳が最も多く(9例/56%)、1歳未満はいなかった。急性脳症の12例のうち、出血性ショック脳症症候群(HSES)が疑われたのは5例、急性劇症脳浮腫を伴う脳症が1例、分類不能脳症が 6例であった。・心臓異常を認めた9例では、発症から心肺停止までの中央値は4日(IQR:2.0~4.0)、発症から死亡までの中央値は4日(2.0~5.0)だった。 8例に臨床的急性心筋炎が検出された。 本研究の結果、小児・青年のCOVID-19発症後の死因として、中枢神経系異常、次いで心臓異常が多かったことが示された。徴候・症状への対処に加えて、臨床医は基礎疾患にかかわらず、COVID-19発症から少なくとも最初の7日間は小児・青年患者を注意深く観察すべきだ、と著者らはまとめている。

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クリーフストラ症候群〔KS:Kleefstra Syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義2009年にクリーフストラらが9番染色体長腕サブテロメア欠失を持つ複数の症例について、重度から中等度の知的障害、筋緊張低下、てんかんに加え、特徴的な顔貌など、共通する臨床症状があることを報告した。その論文の中で、共通欠失領域に位置していたEHMT1遺伝子が責任遺伝子である可能性を疑い、同様の症状を示しながら9番染色体長腕サブテロメア欠失がない患者を調べたところ、EHMT1遺伝子の病的なバリアントが認められたため、EHMT1の機能喪失が原因であることを明らかにした。これにより、EHMT1遺伝子を含む9番染色体長腕サブテロメア欠失と、EHMT1遺伝子の病的バリアントによって引き起こされる病態をクリーフストラ症候群と称するようになった。■ 疫学正確な疾患頻度は明らかでないが、厚生労働省・山本研究班による複数施設での定点観測では、1万人~1万5,000人に1人と推測され、わが国には推定数千人の患者が存在すると考えられている。■ 病因9番染色体長腕末端から約1-Mbに位置するEHMT1を含む9番染色体長腕の部分欠失による場合と、EHMT1の機能喪失変異による場合がある。染色体欠失による場合の多くはサブテロメア欠失であるが、その切断端は多様であり、欠失サイズもさまざまである。基本的に染色体欠失も遺伝子の機能喪失変異も突然変異によって生じるが、サブテロメア欠失の場合は、他の染色体サブテロメア領域との不均衡転座によっても生じる可能性があり、その場合は両親のどちらかが均衡転座保因者の可能性があるため、次の妊娠時に同じ染色体異常が繰り返されたり、反復流産の原因となることがある。■ 症状知的障害、筋緊張低下、小頭症、先天性心疾患(とくに円錐幹の欠陥)、てんかん(約30%)、および特徴的顔貌(癒合したアーチ型の眉、眼間解離、短鼻、開いた口、および突出した舌など)を示す。その他、先天性心疾患(全患者の50%)、腎泌尿器奇形(全患者の10~30%)、睡眠障害や常同行為などの行動異常、外性器異常、難聴などが認められることがある。■ 予後合併症によるが、一般的に生命予後が不良であるという報告はない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)染色体異常の場合、マイクロアレイ染色体検査などで9番染色体長腕サブテロメア領域のEHMT1遺伝子を含んだ欠失を確認することにより診断される(図)。遺伝子変異の場合、ターゲット解析、網羅的解析に関わらず、EHMT1の機能喪失変異を確認することにより診断される。図 9番染色体長腕サブテロメア欠失の確認画像を拡大するUCSC genome browserにより、3例のクリーフストラ症候群自験例の欠失範囲を表示した。全例欠失範囲内にEHMT1遺伝子(赤丸)を含む。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本的な治療法はない。てんかんに対しては、発作型に合わせた治療が必要である。神経発達症に由来する多動や行動障害に対しては、環境調整や必要に応じた薬物療法を要することがある。 4 今後の展望疾患概念が明らかになってきたばかりであり、疾患特性の理解や治療法の開発はこれからである。5 主たる診療科小児の場合は小児科遺伝学的検査の場合は遺伝診療科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報クリーフストラ症候群日本家族会(患者とその家族および支援者の会)1)Kleefstra T, et al. J Med Genet. 2009;46:598-606.2)Kleefstra T, et al. Am J Hum Genet. 2012;91:73-82.3)Yang Q, et al. Front Neurol. 2024;15:1340458.4)今泉太一、山本俊至. 脳と発達.2024;56:270-272.公開履歴初回2024年08月15日

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マイコプラズマ肺炎が8年ぶりの高水準、上位は大阪・埼玉・佐賀/感染研

 国立感染症研究所が8月13日付で報告した2024年第31週(7月29日~8月4日)のIDWR速報データによると、マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数が過去5年間の同時期の平均よりかなり多い。第27週(7月1~7日)以降5週連続で増加、2016年以来8年ぶりの高い水準となっている。 全国の定点当たり報告数は0.95人で、都道府県別にみると上位10都府県は以下のとおり。 大阪府 3.89人 埼玉県 2.67人 佐賀県 2.50人 愛知県 2.20人 沖縄県 2.00人 香川県 2.00人 兵庫県 1.86人 福井県 1.83人 東京都 1.48人 京都府 1.43人

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1型糖尿病の子どもたちは「糖尿病の苦痛」にさらされている

 1型糖尿病の子どもは、いくつかのメンタルヘルス上の問題を抱えることが多いとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学およびチェコ共和国国立精神保健研究所のTomas Formanek氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Mental Health」に7月17日掲載された。 報告された研究によると、1型糖尿病の子どもは糖尿病のない子どもに比べて、気分障害を発症する可能性が2倍以上高く、不安症に苦しむ可能性は50%高く、また摂食障害や睡眠障害などの行動上の問題が発生する可能性は4倍以上高いという。ただし、この研究結果は同時に、このようなメンタルヘルス疾患が、1型糖尿病という病態が原因で引き起こされるものではないことも示唆しており、「子どもたちが抱えるこのようなリスクは、むしろ慢性疾患を継続的に管理し続けることに伴う『糖尿病の苦痛』が原因のようだ」と、著者らは述べている。 1型糖尿病は、インスリンを生成している膵臓のβ細胞を免疫系が攻撃することで発症する。β細胞がダメージを受けると、インスリンを生成する能力が失われるため、生存のためにインスリン療法が必要となる。治療は生涯にわたり、日々、絶え間ない自己管理の負担に直面する。また、偏見や差別、自己効力感の低下、将来の合併症の不安、経済的な負担などによるストレスが生じやすく、これらを「糖尿病の苦痛(diabetes distress)」と呼ぶことがある。これまでにもこのような糖尿病の苦痛が、1型糖尿病の子どもたちのメンタルヘルス状態を悪化させたり、自己管理に悪影響を及ぼしたりする可能性が指摘されていた。 Formanek氏らの研究では、チェコ共和国の1型糖尿病の子どもたち4,500人以上の患者登録データが用いられた。データ解析の結果、1型糖尿病の子どもたちに見られるメンタルヘルス関連の問題は、この病気を発症後には常に食事の摂取量を判断したり、血糖値をチェックしたり、インスリンを注射したりしなければならないといった、生活に大きな変化を強いられることに起因するものである可能性が見いだされた。また、社交行事へ参加する機会が減ったり、ほかの子どもたちや教師、さらには家族からも孤立していると感じたりすることも少なくないという実態が明らかになった。 その影響もあって前述のように、1型糖尿病の子どもたちの間で、不安症や摂食障害、睡眠障害などが多く見られた。ただし、統合失調症などの精神疾患を発症するリスクは低く、同年代の子どもたちの約2分の1だった。 論文の上席著者であるケンブリッジ大学のBenjamin Perry氏は、「1型糖尿病患者は『糖尿病の苦痛』を経験しやすいことが知られている。その苦痛には、血糖値に対する極度のフラストレーションや孤立感なども含まれると考えられ、成人でも燃え尽き症候群や絶望感、あるいはコントロールの放棄につながる可能性がある。そのため、1型糖尿病の子どもたちが成人するまでの間に、メンタルヘルス上の問題が顕在化するリスクが高いとしても、不思議なことではない」と述べている。

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HPVワクチンの定期接種とキャッチアップ接種

HPVワクチン(子宮頸がん予防)の定期接種とキャッチアップ接種• 日本では2013年4⽉から、⼩学校6年⽣〜⾼校1年⽣を対象に、公費によるHPVワクチンの無料接種(定期接種)が実施されています• 上記のほか2025年3⽉まで、1997年4⽉2⽇〜2008年4⽉1⽇⽣まれの⽅を対象に、無料で接種できる「キャッチアップ接種」が実施されています• 現在定期接種の対象となっているHPVワクチンは3種類とも3回の接種完了までに6ヵ⽉かかるため、「キャッチアップ接種」の期限内にすべて終了させるためには、2024年9⽉末までに初回接種を行う必要があります<3種類のワクチンと接種タイミング(2025年3⽉までに終了させる場合)>2024年9⽉10⽉11⽉ ・・・・ 2025年3⽉3回目子宮頸がんの原因の50~70%を占めるHPV16/18型の感染を防ぐ3回目HPV16/18型に加え、尖圭コンジローマなどの原因となる6/11型の感染を防ぐ3回目さらに5つの型の感染を防ぎ、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐ2価ワクチン(サーバリックス)4価ワクチン(ガーダシル)1回目1回目2回目2回目9価ワクチン(シルガード9)1回目2回目出典:日本対がん協会「子宮頸がんの予防のために HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第225回 徳田虎雄氏死去、地域医療にもたらしたインパクトとその功績を考える(後編)

徳田虎雄氏が作り上げた徳洲会、僻地医療、救急医療を半世紀にわたって展開こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、愛知県の実家にお施餓鬼のために帰省しました。92歳になった父親が一人暮らしをしているのですが、1週間ほど前に「運転免許の返上を決めた」と電話で話していたにもかかわらず、会ってみると「来年の車検までは乗る」というのでまた親子喧嘩に。挙句の果てに、「車を乗るのを止めたら、電動自転車を買おうと思っている」と言い出す始末。「90歳は自転車で転んで大腿骨を骨折すると、死期がぐっと早まるぞ」と脅したのですが、田舎の超高齢者の交通手段問題が解決する日は遠そうです。さて、今回も徳田 虎雄氏が作り上げた徳洲会が半世紀にわたって展開してきた離島をはじめとする僻地医療や、救急をはじめとする地域医療における功績について、私自身の取材経験(少々偏りはありますが)も踏まえ、考えてみたいと思います。早くから北米型ERを導入、日本の救急医療に与えたインパクト「生命だけは平等だ」をスローガンに、40年近くにわたって「年中無休・24時間オープン」の医療を全国展開してきた徳洲会。その特徴の1つは早くから北米型ER(救急外来)を導入したことでしょう。1970〜80年代、まだ日本の救急医療は増加する交通事故の外傷に対応することが第一の目的とされ、外傷三次救急以外の、内科系や小児の二次救急は整備途上でした。そんな中、徳田氏は、全国に北米型ERのある病院を展開しました。そのあたりの事情を薬師寺 泰匡氏(薬師寺慈恵病院院長、元岸和田徳洲会病院救急科医長)が日経メディカルの連載「だから救急はおもしろいんよ」の2018年1月18日付の記事で書いています。氏は「徳洲会が立ち上がった頃は、夜間休日の救急医療体制が整っておらず、患者はどこに行っていいのか、救急車も呼んでいいのかどうかという状況だったことがうかがえます」と振り返り、「徳田虎雄は、実際に米国留学などでかの地の救急医療に触れた医師を独自に集め、救急医療を担保するとともに、各地で米国式の研修医教育を広めていきました。現在のスーパーローテート方式が始まるずっと前から、独自に各科ローテート研修を行っており、僕自身もそうした歴史の恩恵にあずかりました」と記しています。同記事などによれば、日本において一次・二次・三次救急の整備が始まったのが1977年、消防法の改正によって救急隊の搬送業務の対象が小児科・内科系疾患を含む救急患者一般にまで拡大したのは1987年のことです。徳洲会の最初の病院、徳田病院(現在の松原徳洲会病院)の開設が1973年ですから、徳洲会の全国各地の病院は、日本の救急医療の先駆けとして機能し、その基礎を形作ったと言えるかもしれません。都市部の大病院で研修医を集めて、へき地・離島に期限付きで送る救急医療に加え、へき地医療と地域医療でもその貢献は小さくありません。徳田氏の故郷である鹿児島県の離島に赤字覚悟で複数の病院を開設、初期研修医や後期研修医を「へき地・離島研修」という独自のプログラムのもと一定期間派遣し、その地域の医療を支えたのです。医療機器が充実した都市部の大病院で研修しようというシステムは、人口減少や医師の働き方改革などを背景に、地方での医師不足が急速に進む今の日本でも参考になりそうです。地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院徳洲会の病院は都市部の巨大病院ばかりではなく、地域の中小病院も数多くあります。1980年代後半~1990年代前半、そうした病院を取材すると、徳洲会の地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院(大阪府大東市)でプライマリケア・地域医療を学んだ医師が少なからずいたことを覚えています。たとえば1990年代前半、北海道静内町(現在の新ひだか町)の静仁会・静内病院(現在の医療法人徳洲会 日高徳洲会病院)には、野崎徳洲会病院OBの院長がいました。彼は、野崎徳洲会病院で学んだプライマリケアを実践しながら、徳洲会が買収した老人病院を、救急から在宅まで、包括医療を提供する病院に作り変えようと奮闘していました。今で言う地域包括ケアです。介護保険ができる10年も前に、医療と介護を一体化した診療を行っていたわけです。東日本大震災で際立った徳洲会の活躍救急医療だけではなく、地域医療、家庭医療に力を入れる方針は徳洲会の中で脈々と受け継がれていったようです。2011年の東日本大震災の時、被災した気仙沼市立本吉病院(現在は本吉医院)に、不在となった院長の代わりに赴任したのは、徳洲会系(現在は医療法人徳洲会)の庄内余目病院の家庭医養成プログラムを修了した医師でした。この医師も「町民全体の家庭医を目指したい」と、通常の外来診療を済ませた後に積極的に訪問診療を行っていた姿を覚えています。東日本大震災の被災地ではまた、災害直後から徳洲会の災害派遣チーム・TMATの姿をあちらこちらで見かけました。その支援の規模は、民間病院チェーンの中では最大だったと聞いています。日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったこと徳洲会は、その規模を生かすかたちで親族が経営するMS法人に莫大な利益を還流し、同時にまた、徳田氏や長男の選挙に大量の人員投入を行っていました。それは批判すべきことではありますが、徳洲会の救急医療や地域医療のノウハウが全国各地に広がっていったこと自体は評価されるべきことでしょう。強烈な個性とリーダーシップのあるオーナー理事長が率いる全国チェーンゆえに、いわゆる医療の”均てん化”が起こっていたわけです。同じ全国チェーンでも、地元大学医学部のジッツとしての役割が大きい日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったことです。「社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と現理事長徳洲会事件を契機として徳田家の支配から脱却した医療法人徳洲会は、「生命だけは平等だ」の理念はそのままに規模拡大を続けており、その経営は順調のようです。日経ヘルスケア2023年2月号掲載の記事、「創業50年を迎えた徳洲会の今(上)」で現理事長の東上 震一氏は「規模は一つの断面に過ぎないが、目標は100病院。1兆円の収益を上げて、社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と今後の抱負を語っています。しかし一方で、カテーテル治療後に複数の患者が死亡するなど医療過誤が相次いだ神戸徳洲会病院に神戸市が医療法に基づく改善命令を出すなど、その医療の“質”に疑問が投げかけられる事態も生じています。オーナー経営ではなくなった巨大チェーンを、勤務医出身のサラリーマン経営者が統治していくのは並大抵のことではないはずです(内規で医療法人徳洲会の理事長は3期までと決まっているそうです)。神戸徳洲会病院で起こっていることが、統治・経営の綻びから来ているものでなければいいのですが…。徳田家の支配から離れて、徳田氏の理念や経営方針はいつまで引き継がれていくのか、これからの50年間に救急医療におけるパイオニアワークのような徳洲会らしい新たな功績は生まれるのか――。今後の動きにも注目したいと思います。

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JN.1系統対応コロナワクチン、一変承認を取得/ファイザー・ビオンテック

 ファイザーおよびビオンテックは2024年8月8日付のプレスリリースにて、生後6ヵ月以上を対象とした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株JN.1系統対応の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、日本での製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。 両社は2024年6月10日、オミクロン株JN.1系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンについて厚生労働省に承認事項一部変更を申請しており、今回、以下の製剤が承認された。・コミナティ筋注シリンジ 12歳以上用(プレフィルドシリンジ製剤で希釈不要)・コミナティRTU筋注5~11歳用 1人用(バイアル製剤で希釈不要)・コミナティ筋注6ヵ月~4歳用 3人用(バイアル製剤で要希釈) 上記申請は、品質に係るデータに加え、本ワクチンが両社のオミクロン株XBB.1.5系統対応COVID-19ワクチンに比べ、JN.1およびKP.2、KP.3を含むその亜系統に対しても優れた免疫反応を示した非臨床データに基づいている。 2024年5月29日に開催された「第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」では、2024/2025シーズン向けの新型コロナウイルス感染症ワクチンの抗原組成について、JN.1系統が選択されている1)。 また、諸外国の動向として、英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は7月24日に、ファイザー・ビオンテックのJN.1対応ワクチンを承認している2)。一方米国では、2024年秋から使用する新型コロナワクチンについて、6月13日の米国食品医薬品局(FDA)の発表によると、可能であればJN.1系統のKP.2株を使用することをワクチン製造業者へ提案しているという3)。

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HPVワクチンのキャッチアップ接種推進に向けて/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催した。会見では、「2025(令和7)年度の予算要求要望」について、「医療DXの適切な推進、地域医療への予算確保、新興感染症などへの予算確保」ならびに事項要求として「物価高騰・賃金上昇への対応」を厚生労働省に要望したことが報告された。また、医師会が日本医学会との協力で発行している英文ジャーナル「JMA Journal」が「1.5」(クラリベイト社発表)のインパクトファクターを取得したことも報告された。そのほか、2024年9月末に期限が迫っている「HPVワクチンキャッチアップ接種推進に向けて」について医師会の取り組みが説明された。キャッチアップ接種について看護学生の9割は「知っている」と回答 HPVワクチンは、定期接種が小学校6年生~高校1年生相当の女子を対象に行われている。現在、接種勧奨が行われているが、平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女子の中に、 通常の定期接種の対象年齢のときに接種機会を逃した人もおり、HPVワクチンの接種の機会(キャッチアップ接種)が設けられている。 このキャッチアップ接種は、2025(令和7)年3月31日までとなっているが、3回の接種を完了するためには半年程度の期間が必要で、2024(令和6)年9月末までに初回接種をする必要があり、その期限が目前となっている。 こうした事態を受けて、釜萢 敏副会長(小泉小児科医院 院長)が、「HPVワクチンのキャッチアップ接種について」をテーマに、これまでの医師会の取り組みや接種対象の看護学生へのアンケート結果などを説明した。 医師会では、HPVワクチンの接種について、さまざまな啓発動画を制作・公開するとともに啓発資料を作成し、医師会員の医療機関などで活用してもらっている。そこで、最近公開された資料として福岡県立大学看護学部のワクチン対象年齢の学生25人に行ったアンケート調査結果について内容を説明した。 アンケート調査の概要は以下のとおり。・「HPVワクチンの接種の有無」を聞いたところ、「接種した」が48%、「予定している」が28%、「ない」が24%だった。・「キャッチアップ接種について知っているか」を聞いたところ、「よく知っている」が40%、「多少は知っている」が52%、「知らない」が8%だった。・「20代のがんの過半数が子宮頸がんであることを知っているか」を聞いたところ、「よく知っている」が56%、「多少は知っている」が40%、「知らない」が4%だった。  また、自由回答でワクチン接種のきっかけを聞いたところ、「無料接種だから」「母親の勧め」「がん予防のため」「医師の勧め」などの回答だった。一方、接種していない・悩んでいる対象者の未接種理由では、「親が不要と言っている」「副反応が怖い」「注射が苦手」などの回答だった。 「医師会では、ひとりでも多く子宮頸がんなどで亡くなる人をなくしたいという目的でこうした活動を行っているが、接種については本人が決めることであり、接種を考える際の判断材料にしてもらいたい。そして、期限までに多くの対象者に接種してもらいたい」と釜萢氏は思いを語った。 医師会では、今後も9月末の期限までにさまざまなメディアで啓発活動を行うとしている。

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自閉スペクトラム症のADHD症状に対する薬理学的介入〜メタ解析

 自閉スペクトラム症(ASD)患者における注意欠如多動症(ADHD)症状の治療に対する薬理学的介入の有効性に関するエビデンスを明らかにするため、ブラジル・Public Health School Visconde de SaboiaのPaulo Levi Bezerra Martins氏らは、安全性および有効性を考慮した研究のシステマティックレビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2024年7月14日号の報告。 ASDおよびADHDまたはADHD症状を伴うASDの治療に対する薬理学的介入の有効性および/または安全性プロファイルを評価したランダム化比較試験を、PubMed、Cochrane Library、Embaseのデータベースより検索した。主要アウトカムは、臨床尺度で測定したADHD症状とした。追加のアウトカムは、異常行動チェックリスト(ABC)で測定された他の症状、治療の満足度、ピア満足度とした。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューの包括基準を満たした22件のうち、8件をメタ解析に含めた。・メチルフェニデートと比較した、クロニジン、モダフィニル、bupropionによる治療に関する研究が、いくつか見つかった。・メタ解析では、メチルフェニデートは、多動、易怒性、不注意などの症状に対し、プラセボと比較し、有効であることが示唆された。しかし、定型的症状に対する影響は認められず、メチルフェニデート誘発性の副作用による脱落率が大きな影響を及ぼしていることが、データ定量分析より明らかとなった。・アトモキセチンは、プラセボと比較し、多動および不注意症状に対し有効であることが示唆されたが、定型的症状または易怒性には影響を及ぼさなかった。・さらに、研究からの脱落原因となった副作用に、アトモキセチンは影響を及ぼさないことが明らかとなった。 著者らは「メチルフェニデートは、多動、不注意、易怒性に有効であるが、安全性に懸念がある。一方、アトモキセチンは、多動および不注意に緩やかな有効性を示し、副作用プロファイルは比較的良好であった。グアンファシン、クロニジン、bupropion、モダフィニルなどの薬剤に関する情報は、限定的であった」としている。

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デュピルマブ、11歳以下の好酸球性食道炎に有効/NEJM

 小児(1~11歳)の好酸球性食道炎患者において、デュピルマブはプラセボと比較して有意に高率な組織学的寛解をもたらし、デュピルマブの高曝露レジメンがプラセボと比較して、重要な副次エンドポイントの測定値の改善に結びついたことが示された。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学Mirna Chehade氏らが第III相無作為化試験の結果を報告した。デュピルマブはIL-4/IL-13経路を阻害するヒトモノクローナル抗体であり、成人および思春期の好酸球性食道炎を含む、2型炎症で特徴付けられる5つの異なるアトピー性疾患で有効性が示されていた。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。16週時点の組織学的寛解を主要エンドポイントに第III相試験 第III相試験はパートA~パートCの3段階で行われ、本論ではパートAとパートBの結果が報告された。試験は米国26施設とカナダ1施設で行われた。 パートAは16週の無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズで、1~11歳のプロトンポンプ阻害薬(PPI)に不応の活動期好酸球性食道炎患者を、デュピルマブの高曝露レジメンまたは低曝露レジメン、および各レジメンの適合プラセボ群(2群)に、2対2対1対1の割合で割り付け投与した。パートBは36週の実薬投与フェーズで、パートAを完了した適格患者をパートBに組み入れ、パートAで割り付けられたレジメンに従いデュピルマブの投与を継続、パートAでプラセボに割り付けられた患者には、無作為化時の適合レジメンに従いデュピルマブを投与した。デュピルマブの各曝露レベルでは、4段階に設定した用量のいずれかをベースラインの体重に応じて投与した。盲検化を確実とするため、全患者にデュピルマブまたはプラセボを2週ごとに投与した。 主要エンドポイントは、16週時点の組織学的寛解(食道上皮内好酸球数の最大値が高倍率視野当たり6個以下)とした。重要な副次エンドポイントは(1)食道上皮内好酸球数の最大値が高倍率視野当たり15個未満、(2)食道上皮内好酸球数最大値のベースラインからの変化率、(3)eosinophilic esophagitis histology scoring system(EoE-HSS)のグレードスコアのベースラインからの絶対変化、(4)同ステージスコアの絶対変化、(5)2型炎症遺伝子シグネチャーのnormalized enrichment score(NES)のベースラインからの相対的変化、(6)eosinophilic esophagitis diagnostic panel(EDP)遺伝子シグネチャーのNESのベースラインからの相対的変化、(7)Eosinophilic Esophagitis Reference Score(EREFS)総スコアのベースラインからの絶対変化、(8)Pediatric Eosinophilic Esophagitis Sign/Symptom Questionnaire-Caregiver(PESQ-C)で1つ以上の好酸球性食道炎の症状を認める日数割合のベースラインからの変化の8つで、階層的に検定した。組織学的寛解率は高曝露レジメン群68%、低曝露レジメン群58%、プラセボ群3% パートAで無作為化された患者は102例であった(デュピルマブ高曝露レジメン群37例、同低曝露レジメン群31例、プラセボ群34例)。このうち、パートBでは37例(100%)が高曝露レジメンを、29例(94%)が低曝露レジメンを継続。プラセボ群はパートBでは、18例(53%)が高曝露レジメンを、14例(41%)が低曝露レジメンの投与を受けた。 パートAで、組織学的寛解は高曝露レジメン群25/37例(68%)、低曝露レジメン群18/31例(58%)、プラセボ群1/34例(3%)で認められた。高曝露レジメン群とプラセボ群の群間差は65%ポイント(95%信頼区間[CI]:48~81、p<0.001)、低曝露レジメン群とプラセボ群の群間差は55%ポイント(37~73、p<0.001)であった。 高曝露レジメン群はプラセボ群と比較して、組織学的測定値(食道上皮内好酸球数の最大値、EoE-HSSグレードおよびステージスコア)、内視鏡的測定値(EREFS総スコア)およびトランスクリプトーム測定値(2型炎症およびEDP遺伝子シグネチャー)が有意に改善した。 また、すべての患者におけるベースラインから52週まで(パートB終了時)の組織学的測定値、内視鏡的測定値、トランスクリプトーム測定値の改善は、パートAでのデュピルマブの投与を受けた患者のベースラインから16週までの改善と、おおむね同程度であった。 パートAでは、デュピルマブ投与(いずれかの用量)を受けた患者がプラセボ投与を受けた患者よりも、新型コロナウイルス感染症、注射部位疼痛、頭痛の発現が、少なくとも10%ポイント以上多かった。重篤な有害事象は、パートAではデュピルマブ投与を受けた患者3例、パートBでは全体で6例に発現した。

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8月7日 鼻の日【今日は何の日?】

【8月7日 鼻の日】〔由来〕「は(8)な(7)」の語呂合わせから、鼻の病気を減らすことを目的に、1961年に日本耳鼻咽喉科学会が制定。同会では、この日に全国各地で専門医の講演会や無料相談会などを行っている。関連コンテンツ耳鼻科の手技 耳道の診察と耳垢・異物のクリーニング【一般内科医が知っておきたい他科の基本処置】舌下免疫療法を長続きさせるコツは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】外傷の処置(5)鼻出血【一目でわかる診療ビフォーアフター】鼻血が出たときの症状チェック【患者説明用スライド】小児の急性副鼻腔炎、鼻汁の色で判断せず細菌検査を/JAMA

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寄り道編(6)マクロライドの苦みと飲み合わせ【臨床力に差がつく 医薬トリビア】第55回

※当コーナーは、宮川泰宏先生の著書「臨床力に差がつく 薬学トリビア」の内容を株式会社じほうより許諾をいただき、一部抜粋・改変して掲載しております。今回は、月刊薬事62巻6号「臨床ですぐに使える薬学トリビア」の内容と併せて一部抜粋・改変し、紹介します。寄り道編(6)マクロライドの苦みと飲み合わせQuestionアジスロマイシンの散剤をオレンジジュースやスポーツ飲料と一緒に内服すると苦くなるのはなぜ?

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忽那氏が振り返る新型コロナ、今後の対策は?/感染症学会・化学療法学会

 2024年8月2日の政府の発表によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の定点当たりの報告数は14.6人で、昨夏ピーク時(第9波)の20.5人に迫る勢いで12週連続増加し、とくに10歳未満の感染者数が最も多く、1医療機関当たり2.16人だった。週当たりの新規入院患者数は4,579人で、すでに第9波および第10波のピークを超えている1)。 大阪大学医学部感染制御学の忽那 賢志氏は、これまでのコロナ禍を振り返り、パンデミック時に対応できる医師が不足しているという課題や、患者数増加に伴う医師や看護師のバーンアウトのリスク増加など、今後のパンデミックへの対策について、6月27~29日に開催の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会にて発表した。日本ではオミクロン株以前の感染を抑制 忽那氏は、コロナ禍以前の新興感染症の対策について振り返った。コロナ禍以前から政府が想定していた新型インフルエンザ対策は、「不要不急の外出の自粛要請、施設の使用制限等の要請、各事業者における業務縮小等による接触機会の抑制等の感染対策、ワクチンや抗インフルエンザウイルス薬等を含めた医療対応を組み合わせて総合的に行う」というもので、コロナ禍でも基本的に同じ考え方の対策が講じられた。 欧米では、オミクロン株が出現した2021~22年に流行のピークを迎え、その後減少している。オミクロン株拡大前もしくはワクチン接種開始前に多くの死者が出た。一方、日本での流行の特徴として、第1波から第8波まで波を経るごとに感染者数と死亡者数が拡大し、とくにオミクロン株が拡大してからの感染者が増加していることが挙げられる。忽那氏は「オミクロン株拡大までは感染者数を少なく抑えることができ、それまでに初回ワクチン接種を進めることができた。結果として、オミクロン株拡大後は、感染者数は増えたものの、他国と比較して死亡者数を少なくすることができた」と分析した。新型コロナの社会的影響 しかし、他国よりも感染対策の緩和が遅れたことで、新型コロナによる社会的な影響も及んでいる可能性があることについて、忽那氏はいくつかの研究を挙げながら解説した。東京大学の千葉 安佐子氏らの日本における婚姻数の推移に関する研究では、2010~22年において、もともと右肩下がりだった婚姻数が、感染対策で他人との接触が制限されたことにより、2020年の婚姻数が急激に減少したことが示されている2)。また、超過自殺の調査では、新型コロナの影響で社会的に孤立する人の増加や経済的理由のために、想定されていた自殺者数よりも増加していることが示された3)。忽那氏は、「日本は医療の面では新型コロナによる直接的な被害者を抑制することができたが、このようなほかの面では課題が残っているのではないか。医療従事者としては、感染者と死亡者を減らすことが第一に重要だが、より広い視点から今回のパンデミックを振り返り、次に備えて検証していくべきだろう」と述べた。パンデミック時、感染症を診療する医師をどう確保するか コロナ禍では、医療逼迫や医療崩壊という言葉がたびたび繰り返された。政府が2023年に発表した第8次医療計画において、次に新興感染症が起こった時の各都道府県の対応について、医療機関との間に病床確保の協定を結ぶことなどが記載されている。ただし、医療従事者数の確保については欠落していると忽那氏は指摘した。OECDの加盟国における人口1,000人当たりの医師数の割合のデータによると、日本は38ヵ国中33位(2.5人)であり医師の数が少ない4)。また、1994~2020年の医療施設従事医師数の推移データでは、医師全体の数は1.47倍に増えているものの、各診療科別では、内科医は0.99倍でほぼ横ばいであり、新興感染症を実際に診療する内科、呼吸器科、集中治療、救急科といった診療科の医師は増えていない5)。 感染症専門医は2023年12月時点で1,764人であり、次の新興感染症を感染症専門医だけでカバーすることは難しい。また、岡山大学の調査によると、コロナパンデミックを経て、6.1%の医学生が「過去に感染症専門医に興味を持ったことがあるが、調査時点では興味がない」と回答し、3.7%の医学生が「コロナ禍を経て感染症専門医になりたいと思うようになった」、11.0%の医学生が「むしろ感染症専門医にはなりたくない」と回答したという結果となった6)。医療従事者のバーンアウト対策 日本の医師と看護師の燃え尽きに関する調査では、患者数が増えると医師と看護師の燃え尽きも増加することが示されている7)。米国のMedscapeによる2023年の調査では、診療科別で多い順に、救急科、内科、小児科、産婦人科、感染症内科となっており、コロナを診療する科においてとくに燃え尽きる医師の割合が高かった8)。そのため、パンデミック時の医師の燃え尽き症候群に対して、医療機関で対策を行うことも重要だ。忽那氏は、所属の医療機関において、コロナの前線にいる医師に対して精神科医がメンタルケアを定期的に実施していたことが効果的であったことを、自身の経験として挙げた。また、業務負荷がかかり過ぎるとバーンアウトを起こしやすくなるため、診療科の枠を越えて、シフトの調整や業務分散をして個人の負担を減らすなど、スタッフを守る取り組みが大事だという。 忽那氏は最後に、「感染症専門医だけで次のパンデミックをカバーすることはできないので、医師全体の感染症に対する知識の底上げのための啓発や、感染対策のプラクティスを臨床現場で蓄積していくことが必要だ。今後の新型コロナのシナリオとして、基本的には過去の感染者やワクチン接種者が増えているため、感染者や重症者は減っていくだろう。波は徐々に小さくなっていくことが予想される。一方、より重症度が高く、感染力の強い変異株が出現し、感染者が急激に増える場合も考えられる。課題を整理しつつ、次のパンデミックに備えていくことが重要だ」とまとめた。■参考1)内閣感染症危機管理統括庁:新型コロナウイルス感染症 感染動向などについて(2024年8月2日)2)千葉 安佐子ほか. コロナ禍における婚姻と出生. 東京大学BALANCING INFECTION PREVENTION AND ECONOMIC. 2022年12月2日.3)Batista Qほか. コロナ禍における超過自殺. 東京大学BALANCING INFECTION PREVENTION AND ECONOMIC. 2022年9月7日4)清水 麻生. 医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2021およびOECDレポートより-. 日本医師会総合政策研究機構. 2022年3月24日5)不破雷蔵. 増える糖尿病内科や精神科、減る外科や小児科…日本の医師数の変化をさぐる(2022年公開版)6)Hagiya H, et al. PLoS One. 2022;17:e0267587.7)Morioka S, et al. Front Psychiatry. 2022;13:781796.8)Medscape: 'I Cry but No One Cares': Physician Burnout & Depression Report 2023

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influenza(インフルエンザ)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第9回

言葉の由来“influenza”という言葉は、ラテン語の“influentia”(流れ込む)から派生したものだそうです。これは“influence”(影響)という英単語の語源でもあるようです。過去の記録によれば、当時の人々は、この病気が天体の影響によって引き起こされると考えていたようで、とくに占星術の影響が強かった中世では、星々の位置が地上の出来事に影響を与えると信じられていたそうです。このため、突然広がる流行性の病気は、天体からの影響だと解釈されていたわけです。興味深いことに、18世紀ごろまでは“influenza di freddo”(寒さの影響・流れ込み)という言い方もされており、寒気が体内に「流れ込む」ことで病気が発生するとも考えられていたようです。時代が変わり、19世紀後半に病原体としてのウイルスが発見されるまで、この「天体の影響」や「寒気の流れ込み」という概念が続いていました。現代の医学では、インフルエンザはウイルス感染症であることが明らかになっていますが、その名称には中世の人々の世界観が今も残っているようです。なお、“influenza”は日本語でも「インフルエンザ」ですが、日本では古くは「地域名+かぜ」あるいは「流行性感冒」と呼ばれており、ウイルスが分離され、命名されるまでは、この病気に対する特別な名前はなかったようです。併せて覚えよう! 周辺単語抗ウイルス治療antiviral therapy混合感染concomitant infection抗原シフトantigenic shiftワクチンvaccine飛沫感染予防droplet precautionこの病気、英語で説明できますか?Influenza, commonly known as "flu", is a highly contagious respiratory illness caused by influenza viruses. It can cause mild to severe illness and, at times, can lead to death. 参考1)Michael Quinion. “Influenza”. World Wide Words. 1998-01-03.(参照2024-07-23)2)“Tis the (Flu) Season: The History of ‘Influenza”. Merriam-Webster.(参照2024-07-23)講師紹介

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エフアネソクトコグ アルファ12歳未満重症血友病Aでもトライする価値あるかも(解説:長尾梓氏)

 以前こちらでも「血友病A治療は新時代へ」と紹介したエフアネソクトコグ アルファの12歳未満の臨床試験データが、NEJM誌に掲載された。日本ではすでに2023年に発売され、小児への使用制限もないため徐々に使用経験のある小児患者は増えているが、国際会議などでは小児は成人と比べて第VIII因子トラフが低いのではないか、効果が劣るのではないかと心配の声があった。 成人試験では50IU/kg週1回の定期投与で投与から約4日間は第VIII因子活性が>40%を上回り、7日目のトラフが15%(平均)であった。 本試験では同量の投与で投与から3日間は>40%を保つが、7日目のトラフは6歳未満6%、6~12歳未満は7%(どちらも平均)である。 ただ、結果として年間出血率は低く抑えられ、出血ゼロも65例88%で達成された。 ちなみに主要エンドポイントのインヒビター発現ゼロは対象が治療歴ありの患者のため、まぁそんなもんだろうなと思って眺める。 つまり、トラフは成人と比べるとやや低いが、これまでの薬剤と比較するととんでもなく高く、週2回、隔日、下手したら毎日家庭注射をしてFVIIIをできるだけ高くキープする努力をしてきた患者にとっては、週1回で同じような効果が出るかもしれないと思うと、非常に魅力的かつQOL向上に寄与する可能性がある。 ただ、年間出血率がいくら低かろうと、最近は「潜在性」の出血が起こり、それが関節の予後を悪くすることが知られているため、それを未然に防ぐことができないとまったく意味がない。ぜひ、素晴らしい薬だからといってただ処方するだけではなく、関節エコーで潜在性出血を早期に発見することを心掛けてほしい。

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妊娠・乳幼児期の大気汚染物質の複合曝露が小児喘息と関連

 妊娠期、子どもの乳幼児期における大気汚染物質への曝露と小児喘息の発症との関連が、日本全国のデータを用いて詳細に検討された。その結果、低濃度の大気汚染物質への複合曝露が、持続性小児喘息の発症と関連していることが明らかとなった。昭和大学医学部リウマチ・膠原病内科の城下彰宏氏らによる研究の成果であり、「Ecotoxicology and Environmental Safety」に6月20日掲載された。 小児喘息の発症は、環境的、社会経済的、遺伝的要因の影響を受ける。大気汚染は喘息の発症や悪化と関連するが、大気汚染物質は複雑な混合物である。比較的低濃度の大気汚染物質の複合曝露による影響については十分に研究されておらず、海外と日本では大気汚染の状況も異なり、エビデンスが不足している。 そこで著者らは、株式会社JMDCの保有するデータベースを用いて、2010年1月~2017年1月に出生した児とその母親のデータを抽出し、妊娠中、乳幼児、幼児期における大気汚染物質への曝露と4~5歳時点の喘息との関連を調べた。大気汚染については国立環境研究所のデータより、微小粒子状物質(PM2.5)、浮遊粒子状物質(SPM)、窒素酸化物(NOx)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、一酸化炭素(CO)、光化学オキシダント(Ox)、二酸化硫黄(SO2)、全炭化水素(THCs)、非メタン炭化水素(NMHCs)の各濃度を調べた。 その結果、大気汚染物質の分布は、PM2.5とSPMは九州地方と瀬戸内海地方に多く、NOとNO2は関東地方に多かった。また、SO2は瀬戸内海地方と鹿児島湾地方に多いことが分かった。 解析対象の母親(年齢中央値32.0歳)と子どものペアは5万2,526組(1,149市町村)であり、そのうち1万2,703人(24.2%)の子どもが4~5歳時点で喘息を有していた。 次に、weighted quantile sum(WQS)regressionモデル(各大気汚染物質ごとに重み付けを行い、複合曝露の影響をサマリースコアとして算出する方法)で解析したところ、妊娠期、乳児期、幼児期の大気汚染物質の複合曝露が10パーセントタイル上昇するごとに、それぞれ喘息発症のオッズが1.04倍(95%信頼区間1.02~1.05)、1.02倍(同1.01~1.03)、1.03倍(同1.01~1.04)となることが明らかとなった。 今回の研究の結論として著者らは、「比較的低濃度の大気汚染物質の複合曝露が、小児持続性喘息と関連している」と述べている。また、日本では交通関連の大気汚染は減少しているが、自動車以外からのPM2.5排出を削減することの重要性や、日本のエネルギー生産が化石燃料に依存していることなどの問題を指摘した上で、さらなる大気汚染濃度の改善が必要だとしている。

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妊娠初期のコロナ感染・ワクチン接種、児の先天異常と関連せず/BMJ

 妊娠第1三半期(13週+6日)における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種は、生児の先天異常のリスクに大きな影響を及ぼさないことが、ノルウェー・公衆衛生研究所のMaria C. Magnus氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年7月17日号で報告された。北欧3ヵ国のレジストリベース前向き研究 研究グループは、妊娠第1三半期における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種による主要な先天異常のリスクへの影響の評価を目的に、北欧の3ヵ国でレジストリベースの前向き研究を行った(ノルウェー研究会議[RCN]などの助成を受けた)。 2020年3月1日~2022年2月14日に妊娠したと推定され、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの全国的なレジストリに登録された単胎の生児34万3,066例を対象とした。 先天異常は、欧州先天異常サーベイランス(EUROCAT)の定義に基づいて分類した。妊娠第1三半期における新型コロナウイルス感染およびワクチン接種後のリスクを、母親の年齢、経産回数、教育歴、収入、出身国、喫煙状況、BMI値、慢性疾患、妊娠開始の推定日で補正したロジスティック回帰モデルで評価した。ウイルス変異株によるリスクの違いの解明が必要 1万7,704例(5.2%、516/1万人)の生児が先天異常と診断された。このうち737例(4.2%)では2つ以上の先天異常を認めた。 妊娠第1三半期の新型コロナウイルス感染に関連するリスクの評価では、補正後オッズ比(OR)は、眼球異常の0.84(95%信頼区間[CI]:0.51~1.40)から口腔顔面裂の1.12(0.68~1.84)の範囲であった。 同様に、妊娠第1三半期のCOVID-19ワクチン接種に関連するリスクのORは、神経系異常の0.84(95%CI:0.31~2.31)から腹壁破裂の1.69(0.76~3.78)の範囲だった。 また、先天異常の11のサブグループのうち10のORの推定値は1.04未満であり、顕著なリスク増加はみられなかった。 著者は、「今後、新型コロナウイルスの変異株による先天異常のリスクの違いを解明するための検討を進める必要がある」としている。

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大豆食品は子どもの知能を高める

 大豆食品由来のイソフラボンの摂取量が多い学齢期(7〜13歳)の子どもは、摂取量の少ない子どもよりも注意力と思考能力の高いことが、新たな研究で明らかになった。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のAjla Bristina氏らによるこの研究結果は、米国栄養学会(ASN)年次総会(NUTRITION 2024、6月29日〜7月2日、米シカゴ)で発表された。 大豆や大豆食品にはイソフラボンが豊富に含まれている。イソフラボンは、成人を対象にした研究では記憶力を向上させることが示されているが、子どもを対象にイソフラボンのベネフィットを検討した研究はあまり実施されていない。また、Bristina氏によると、子どもが日常的に大豆食品を摂取する習慣は米国にはあまりないという。 Bristina氏らは今回、7〜13歳の子ども128人を対象にした研究のデータを用いて、大豆イソフラボンの潜在的なベネフィットについて調べた。対象者の主要栄養素、微量栄養素、ビタミン類、イソフラボンなどの1日当たりの平均摂取量は、7日間にわたる食事摂取内容の記録を用いて算出された。また、学年で調整した筆記試験により対象者の全般的な知能を評価したほか、フランカー課題と呼ばれる課題をこなす間の脳波(EEG)検査により情報処理速度と注意力を測定した。 その結果、対象者の大豆食品からのイソフラボン摂取量は平均1.33mgと相対的に低いものの、その中で、摂取量の多かった子どもは少なかった子どもよりも、注意力に関する課題を行っている間の反応速度と情報処理速度が速いことが明らかになった。一方、イソフラボンの摂取と全般的な知能との間に有意な関連は認められなかった。 Bristina氏は、「われわれの研究は、大豆食品に含まれるイソフラボンが小児期の認知能力にとって重要であることを証明するものだ」と述べている。 Bristina氏は、「今回のような相関研究は第一歩に過ぎない。大豆食品の摂取が子どもの認知能力に及ぼす影響や、反応時間を早めるために必要なイソフラボンの正確な摂取量を明らかにするためには、介入的アプローチが必要だろう」と述べている。そのために研究グループは、大豆食品が思考能力、性ホルモン、代謝の健康、腸の健康に及ぼす影響を調べる臨床試験を開始したところだという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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