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<先週の動き>1.医師不足地域での勤務経験を管理者要件に、対象医療機関を拡大/厚労省2.電子処方箋とマイナ保険証の普及に遅れ、医療DXに課題/厚労省3.産婦人科・産科の減少が続く中、美容外科が急増/厚労省4.SNS誹謗中傷対策強化で相談窓口を来年から開設/日本医師会5.病院が深刻な赤字に、補助金減と収入減で経営難/病院団体6.医薬品の供給不安、問題の解消は半年先か?/日薬連1.医師不足地域での勤務経験を管理者要件に、対象医療機関を拡大/厚労省11月20日に厚生労働省は、「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開催し、医師不足地域での開業や勤務を促すための経済的支援策と、医師過剰地域での開業規制などを検討する案を有識者検討会に提示した。医師不足地域では、開業や勤務に対する経済的支援を強化するほか、医師派遣を行う医療機関への支援も検討される。その一方で、医師過剰地域では、都道府県が必要な医療機能を要請し、応じない場合は勧告や公表を行うことができるようにする案が示された。医師不足地域での勤務経験を管理者要件とする医療機関を拡大する案も提示され、地域医療支援病院だけでなく、公立病院や公的医療機関も対象とする方針。日本病院会は、強制的な配置ではなく、医師の意欲や情熱を高める対策を重視するよう提言している。今後、医師の地域偏在是正に向け、厚労省は規制強化と経済的支援を組み合わせた総合的な対策パッケージを年内に策定する。参考1)第12回新たな地域医療構想等に関する検討会 医師偏在是正対策について(厚労省)2)医師不足地域で診療所開業支援など 医師の偏在に対策案 厚労省(NHK)3)医師過剰地域の診療所、開業に要件 厚労省案(日経新聞)4)医師少数地域での勤務要件、対象拡大を提案 厚労省、勤務期間は「1年以上」に延長(Gem Med)2.電子処方箋とマイナ保険証の普及に遅れ、医療DXに課題/厚労省厚生労働省は、11月19日に電子処方箋を導入した施設が全国で18.9%に止まっており、政府が推進する医療DXの進捗に遅れが生じていることを明らかにした。調剤薬局では導入率は5割を超えているものの、病院や診療所では導入が遅れている。電子処方箋は、薬の処方箋を電子化し、医療機関や薬局間で共有するシステム。政府は、医療情報の共有による重複投薬の防止や医療の質向上などを期待して導入を進めているが、システム改修の費用や時間などが課題となっている。福岡 資麿厚生労働大臣は、記者会見で「システム改修費の負担や周囲の施設への普及状況を様子見する医療機関が多いことが要因だ」と説明し、普及拡大に努める姿勢を示した。一方、マイナ保険証の利用率も低迷している。11月21日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会で、今年10月の利用率は15.67%と、前月から増加したものの、目標には到達していない。12月2日には現行の健康保険証の新規発行が停止され、マイナ保険証が基本となるが、混乱を避けるために政府は、現行の健康保険証も1年間は使用できる措置を設けている。政府は、これまで電子処方箋の導入とマイナ保険証の利用を進めてきた。来年度からは介護保険証もマイナンバーカードに一体化されるなど、今後も普及を促進していく方針だが、医療・介護事業者への支援や国民への丁寧な説明など、さらなる取り組みが必要とみられる。参考1)第186回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)2)マイナ保険証の利用率 10月なのに15.67% 病院27.96%、医科診療所12.91%(CB news)3)マイナ保険証を活用 電子処方箋導入の医療機関などは18.9%(NHK)3.産婦人科・産科の減少が続く中、美容外科が急増/厚労省11月22日に厚生労働省は、2023年の医療施設(静態・動態)調査・病院報告を公表した。これによると美容外科を標榜する診療所が2,016施設となり、3年間で43.6%増加したことが明らかになった。その一方で、産婦人科・産科を有する一般病院は前年比17施設減の1,254施設、小児科を有する一般病院は29施設減の2,456施設となり、それぞれ30年以上減少が続いている。近年は少子化による需要低下に加え、出産数そのものが大幅に減少していることが背景にある。今年1~9月の出生数は前年比5.2%減の54万人で、通年で70万人を割る見通し。日本医師会総合政策研究機構(日医総研)のレポートによると、美容外科医の増加が顕著で、2020年には診療所の35歳未満の医師の15.2%が美容外科で勤務していることが明らかになった。こうした状況について、山形大学大学院の村上 正泰教授は、医局の影響力低下や給与の低さ、長時間労働などが、若手医師の美容外科流出の要因になっていると指摘している。政府は、医師の働き方改革や待遇改善、キャリア支援などを進めることで、若手医師が保険診療の現場で働き続けられる環境を整備する必要がある。参考1)令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況2)産婦人科・産科が33年連続で最少更新 小児科のある一般病院も30年連続減 厚労省調査(産経新聞)3)診療所の美容外科が急増、3年間で4割増 厚労省調査、小児科は減少(朝日新聞4)美容外科3年で4割増 厚労省調査、伸び率首位 医師偏在助長の指摘も(日経新聞)5)1~9月出生数54万人 通年で70万人割れ公算大(東京新聞)4.SNS誹謗中傷対策強化で相談窓口を来年から開設/日本医師会日本医師会は、2025年1月から医療機関や医療従事者を対象とした「SNS等における誹謗中傷相談窓口」の運用を開始する。この窓口は、SNSや口コミサイト上での誹謗中傷や悪意ある書き込みに対処するための支援を目的としており、背景には医療機関に対する誹謗中傷が深刻化している状況がある。総務省は11月21日、SNS事業者に対し、誹謗中傷への対応を義務付ける改正プロバイダ責任制限法の施行に向け、月平均利用者数が1,000万人超のSNSを対象とする方針を示した。これにより、X(旧Twitter)やFacebook、Instagramなどが規制対象になるとみられる。改正法は2025年5月までに施行される予定で、SNS事業者には投稿削除の申し出に対し、迅速な判断と結果通知が義務付けられる。10月に日医が実施したアンケートでは、回答者の77%が誹謗中傷を経験し、そのうち削除を求めた投稿の8割が削除されていないことが判明。また、「相談したい」と答えた医療従事者は82%に達した。この結果を受け、相談窓口では電話とWebでの相談を受け付け、対応策を提示するほか、必要に応じて弁護士の紹介も行う。さらに、口コミサイトやSNSにおける「ペイシェントハラスメント」への関心が高まり、法的アドバイスを求める声も多い。相談窓口の開設により、医療現場の負担軽減と情報共有の場の構築が期待されている。日医の取り組みは、医療従事者と患者間の信頼関係を守る一助となるだけでなく、医療機関の社会的信用を保つ重要なステップとなる。今後の運用状況に注目が集まっている。参考1)SNS等における誹謗中傷相談窓口開設について(日本医師会)2)口コミサイトの誹謗中傷、日医が相談窓口開設へ 25年1月ごろ運用開始 法的アドバイスも(CB news)3)中傷対応義務、利用者1,000万人超のSNS対象 Xなど念頭(日経)5.病院が深刻な赤字に、補助金減と収入減で経営難/病院団体日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が合同で行った病院経営調査によると、2023年度の病院経営は、新型コロナウイルス関連の補助金減少や収入減の影響を受け、深刻な赤字に転落したことが明らかになった。調査対象となった967病院の2023年度の経常利益率は、100床当たりマイナス1.3%で、前年度のプラス4.9%から赤字に転落した。これは、新型コロナ関連の補助金などが大幅に減少したことに加え、本業の医療収入も減少したことが主な要因。2024年6月単月のデータでは、国の病院、自治体の病院、医療法人など、5つの開設主体のすべてで赤字を計上した。とくに、自治体病院の赤字幅が大きく、100床当たりマイナス9.2%に達した。病床区分別にみると、一般病院の赤字幅が最も大きく、100床当たりマイナス5.8%だった。療養・ケアミックス病院と精神科病院は黒字を維持したものの、前年同月からは悪化している。3団体では、2024年度の病院経営はさらに厳しさを増すと予想しており、病院経営の大きな転換点を迎えたと指摘している。また、医療機関の人材不足や人件費の高騰、医療材料費の高騰なども経営悪化に拍車をかけている。病院経営の悪化は、医療の質低下や医療提供体制の縮小に繋がりかねないと懸念されている。政府は、病院経営の安定化に向けた抜本的な対策を早急に講じる必要がある。参考1)2024年度 病院経営定期調査 概要版-最終報告(集計結果)-(病院3団体)2)病院の経常収支、5つの開設主体全て赤字に 6月単月、3団体の病院経営定期調査で(CB news)3)967病院の経常利益率マイナス1.3%に 23年度 3団体調査「24年度はさらに厳しさ増す」(同)6.医薬品の供給不安、問題の解消は半年先か?/日薬連近年、国内においてジェネリック医薬品を中心に医療用医薬品の供給不安が続き、とくに咳止め薬や解熱鎮痛剤の不足が深刻化し、小児科や薬局で患者対応に苦慮する現場が広がっている。中でもジェネリック(後発薬)医薬品を中心に薬局や医療機関で不足が深刻化している。日本製薬団体連合会が行った今年9月の調査では、医療用医薬品の18.5%に当たる3,103品目が出荷調整の対象となり、その6割以上がジェネリック医薬品だった。咳止め薬や解熱鎮痛剤、抗生物質の不足は、小児科や薬局ではとりわけ深刻で、代替薬への対応や粉薬が足りない場合に錠剤をすり潰す処方も行われている。冬季には、インフルエンザなど感染症の流行による患者の増加が予想され、薬不足が患者や医療現場にさらなる負担をかける懸念が高まっている。薬不足の背景には、複数のジェネリックメーカーによる品質不正がある。2020年以降、小林化工や日医工、業界最大手の沢井製薬で重大な不正が発覚した。これらの企業では、試験結果の捏造などの不正行為を防ぐ体制が機能しなかった。わが国のジェネリック市場は約1.4兆円で190社が参入しており、1社当たりの平均売上高はわずか70億円強と小規模。少量多品目生産による非効率な状態の中、シェア獲得のためにメーカーは価格競争を激化させ、さらに薬価の引き下げもあり、コスト競争がメーカーの収益を圧迫しているため、後発品の製造から撤退するメーカーも相次いでいる。安定供給のためには、医薬品の品質管理強化や生産体制の改革が急務とされているが、ジェネリック医薬品の生産効率を高めるための仕組み作りが求められている。今後の見通しとしては大手製薬会社による増産で、半年後に改善が見込まれている。薬不足は、患者や医療従事者に深刻な影響を与えており、政府と業界が一体となって安定供給に向けた取り組みを加速する必要がある。参考1)「医薬品供給状況にかかる調査(2024年10月)」 について(日薬連)2)医薬品 依然約2割が供給に支障 せき止め薬や解熱鎮痛剤も(NHK)3)薬不足はいつ終わる?ジェネリック再編#1(ダイヤモンドオンライン)4)第一三共・エーザイ・田辺三菱製薬…国内製薬大手が、処方薬の8割を占めるジェネリック市場から軒並み撤退した理由(同)