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クロストリジウム感染症の再発予防の糞便移植、経口カプセルでも/JAMA

 再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症(RCDI)に対する糞便微生物移植(FMT)の経口カプセルによる実施は、大腸内視鏡で行うFMTに対して再発予防効果は非劣性であることが示された。また、経口カプセルFMTは大腸内視鏡FMTに比べて、患者の不快感も少なかった。カナダ・アルバータ大学のDina Kao氏らが、116例の患者を対象に行った非盲検無作為化非劣性試験で明らかにしたもので、JAMA誌2017年11月28日号で発表した。これまでFMTについて、送達ルートの違いにより臨床的効果が異なるのかは不明であった。各FMT実施12週間後のRCDI予防効果を比較 研究グループは、2014年10月~2016年9月にかけて、カナダ・アルバータ州の3つの大学病院で、RCDI患者116例を対象に試験を開始し、経口カプセルFMTの大腸内視鏡FMTに対する非劣性を検証した。非劣性マージンは15%とした。 主要アウトカムは、FMT実施12週間後のRCDI非発生患者の割合だった。副次アウトカムは、(1)重度および軽度有害事象の発生率、(2)健康関連QOL(生活の質)36項目調査票(SF-36)スコア(0[QOLが最悪]~100[QOLが最良])、(3)患者評価に基づく不快感(10段階評価で1[まったく不快ではない]~10[きわめて不快])と満足感(1[最良]~10[最悪])だった。RCDI予防率は両群ともに約96% 被験者116例(カプセル群57例、大腸内視鏡群59例)は、平均年齢58[SD 19]歳、女性が68%を占めた。試験を完了したのは105例(91%)だった。 per-protocol解析の結果、1回のFMT実施で12週後にRCDIを予防できたのは、カプセル群51/53例、大腸内視鏡群50/52例で、両群ともに達成率は96.2%で、カプセル群の大腸内視鏡群に対する非劣性が示された(群間差:0%、片側95%信頼区間[CI]:-6.1~無限大、p<0.001)。 軽度有害事象の発生率は、大腸内視鏡群12.5%に対しカプセル群は5.4%だった。また、不快感に関する患者評価で「まったく不快ではない」と回答した人の割合は、大腸内視鏡群44%に対しカプセル群は66%と有意に高率だった(群間差:22%、95%CI:3~40、p=0.01)。 著者は、「経口カプセルFMTは、RCDI治療の効果的なアプローチ法と思われる」とまとめている。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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郵送による受診推奨が大腸がんスクリーニングの完遂率を向上する(解説:上村直実氏)-749

 本研究は、米国において大腸がん検診の完遂率を高める方法を比較検討したものである。50~64歳の検診未受診者を、検便キット郵送群(便潜血検査キットと返送用封筒を郵送し、2週以内に返送がなければスタッフが電話する方法)、郵送型大腸内視鏡検査群(大腸内視鏡検査の予約電話番号を記載した案内状を郵送し、2週以内に電話がなければスタッフが直接電話する方法)、および通常ケア群(外来受診時に推奨された検査を受ける方法)の3群に無作為に割り付け、3年間追跡した結果、検診の完遂率は、通常ケア群(10.7%)、検便キット郵送群(28.0%)、郵送型内視鏡検査群(38.4%)の順に高率であり、病変の発見率も同様であった。すなわち、内視鏡検査の案内状の郵送が検診の完遂率や病変の発見に寄与する結果であった。 欧米では、1回の内視鏡検査で大腸がんの死亡率が大幅に減少すること1)がすでに報告されており、便潜血検査を用いた検診や内視鏡検診による内視鏡検査の機会を増やすことが重要との認識が一般常識である。わが国でも大腸がんによる死亡者数が初めて5万人を超えて、肺がんに次いで2番目となっており、住民検診ないしは職場検診の受診率および完遂率の向上が重要な課題となっている。わが国の大腸がん検診は1次検診に便潜血反応を用いて、潜血陽性者に対する精密検査として大腸内視鏡検査を行う方式であるが、精検受診率の低さが大きな課題であり、やはり今回報告されたような具体的な検診の完遂率向上策を模索する活動が必要であろう。一方、検診のみでなく便の潜血反応を簡便に調べることができる方策として便潜血キットのOTC化も模索されている。 消化器専門医のみでなく、一般医家や住民・患者自身が、「大腸がんは早期発見により完治する病気であること」、「10年に1度の大腸内視鏡検査で、大腸がんで死亡するリスクが大幅に低下すること」をよく知ることが大腸がん死亡者を減少させるために重要である。

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大腸がんスクリーニング、受診勧奨の郵送で完遂率が3~4倍/JAMA

 大腸がん(CRC)スクリーニングの完遂率を高めるために、免疫学的便潜血検査(FIT)または大腸内視鏡検査の完遂を郵便で働きかけるアウトリーチ活動を行った結果、通常ケアと比較して3年間で完遂率が有意に高くなり、検査別ではFITよりも内視鏡の完遂率のほうが有意に高率となった。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのAmit G. Singal氏らが、3年にわたるプラグマティックな無作為化臨床試験の結果を報告した。CRCスクリーニングの受診を1回増やすには、内視鏡完遂を働きかけるよりもFIT完遂を働きかけるほうが効果的とされる。しかし長期的な効果には繰り返しの検査受診と、異常が見つかった際の適時のフォローアップが必要ではないかとして、本検討が行われた。JAMA誌2017年9月5日号掲載の報告。約6,000例を対象に、アウトリーチ活動による大腸がんスクリーニング完遂率を評価 研究グループは、2013年3月~2016年7月にParkland Health and Hospital system(ダラスの公立病院地域医療ネットワーク)のプライマリケアを受診し、最新のCRCスクリーニングを受けていない50~64歳の患者5,999例を、郵送型FIT群(1回分のFIT検査キットと返送用封筒などを郵送、2週以内に返送がなければスタッフが電話:2,400例)、郵送型大腸内視鏡検査群(大腸内視鏡検査の予約電話番号を記載した案内状を郵送、2週以内に電話がなければスタッフが電話、検査費用は所得に応じて0~50ドルを患者が負担:2,400例)、および通常ケア群(外来受診時に推奨されたスクリーニングを受ける:1,199例)のいずれかに無作為に割り付け、3年間追跡した。アウトリーチ活動には、FIT群の異常なし例には年1回の定期的な検査を促す、FIT群の異常あり例または大腸内視鏡群の患者には診断およびスクリーニングのための大腸内視鏡検査の完遂を促す活動も含まれた。 主要評価項目は、スクリーニングの完遂(大腸内視鏡検査、年1回のFIT、およびFITで異常ありの場合の診断的大腸内視鏡検査の遵守)、CRCが検出された場合の治療評価、副次評価項目は、腺腫または進行がんの検出、出血や穿孔などのスクリーニング関連有害事象などである。3年間で完遂率が有意に上昇、またFITよりも内視鏡の完遂率が高率に 全5,999例(年齢中央値56歳、女性61.9%)において、スクリーニング完遂率は通常ケア群10.7%に対し、大腸内視鏡検査群38.4%(通常ケア群との群間差:27.7%、95%信頼区間[CI]:25.1~30.4%)、FIT群28.0%(同:17.3%、95%CI:14.8~19.8%)で、両アウトリーチ群の完遂率が通常ケア群より有意に高く(両群ともp<0.001)、また大腸内視鏡検査群のほうがFIT群より有意に高かった(群間差:10.4%、95%CI:7.8~13.1%、p<0.001)。 腺腫/進行がんの検出率も、通常ケア群より両アウトリーチ群で高く、大腸内視鏡検査群のほうがFIT群よりも有意に高かった。通常ケア群と比較した腺腫検出率の群間差は、大腸内視鏡検査群が10.3%(95%CI:9.5~12.1、p<0.001)、FIT群1.3%(同:-0.1~2.8、p=0.08)であり、大腸内視鏡検査群とFIT群の差は9.0%(同:7.3~10.7、p<0.001)であった。 スクリーニング関連有害事象は、いずれの群においても確認されなかった。 なお、著者は研究の限界として、参加者が対象機関以外でスクリーニングを受けた可能性があることなどを挙げている。

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便潜血陽性、大腸内視鏡検査はいつまでにすべきか/JAMA

 免疫学的便潜血検査(FIT)陽性患者に対するフォローアップ大腸内視鏡検査の実施時期を明らかにする検討が、米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニアの研究部門のDouglas A. Corley氏らにより行われた。その結果、8~30日に実施群と比べて10ヵ月以降実施群は、大腸がんリスクが有意に高く、診断時に進行大腸がん(Stage III、IV)であるケースが有意に多いことが示された。FITは大腸がんスクリーニングで用いられる一般的な検査法で、陽性の場合は大腸内視鏡検査のフォローアップを受けることが必要とされている。しかしフォローアップ実施までの期間にはばらつきがあり、そのことが腫瘍の進行と結び付いている可能性が示唆されていた。JAMA誌2017年4月25日号掲載の報告。50~75歳の7万124例の実施時期と大腸がんリスクとの関連を評価 研究グループは、FIT陽性後の大腸内視鏡検査までの期間(日数)を評価し、同期間と大腸がんリスクとの関連、および診断時のステージ進行との関連を評価した。 カイザーパーマネンテ北カリフォルニアおよび南カリフォルニアの加入者を対象に後ろ向きコホート試験を実施(2010年1月1日~2014年12月31日)。被験者は、大腸がんスクリーニング適格、FIT陽性でフォローアップ大腸内視鏡検査を受けた患者50~75歳の7万124例であった。 主要評価項目は、全大腸がんリスク、および進行大腸がん(Stage IIIおよびIVと定義)リスクで、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を、患者の人口動態学的特性とベースライン時のリスク因子で補正を行い算出して評価した。大腸がんリスク、10~12ヵ月後実施群1.48倍、12ヵ月後以降実施群2.25倍 対象被験者7万124例は、年齢中央値61歳(IQR:55~67)、男性が52.7%であった。このうち、全大腸がんを有したケースは2,191例、進行大腸がんは601例で認められた。 全大腸がんリスクについて、フォローアップ大腸内視鏡検査を8~30日の間に実施した群(2万7,176例)と比較して、2ヵ月後実施群(2万4,644例)、3ヵ月後実施群(8,666例)、4~6ヵ月後実施群(5,251例)、7~9ヵ月後実施群(1,335例)はいずれも有意な差は認められなかった。1,000患者当たりの症例数は、8~30日群30例に対し、2ヵ月後群28例、3ヵ月後群31例、4~6ヵ月後群31例、7~9ヵ月後群43例であった。 また、進行大腸がんリスクについても有意差はみられなかった。1,000患者当たりの症例数は、8~30日群8例に対し、2ヵ月後群7例、3ヵ月後群7例、4~6ヵ月後群9例、7~9ヵ月後群13例であった。 しかし、10~12ヵ月後実施群(748例)は、全大腸がんリスク(1,000患者当たりの症例数49例)、進行大腸がんリスク(同19例)ともに有意に高かった。全大腸がんリスクのORは1.48(95%CI:1.05~2.08)、進行大腸がんリスクのORは1.97(95%CI:1.14~3.42)であった。また、12ヵ月超実施群(747例)では、さらなるリスクの上昇が認められた。全大腸がんリスクは1,000患者当たり症例数が76例、ORは2.25(95%CI:1.89~2.68)であり、進行大腸がんは同31例、ORは3.22(95%CI:2.44~4.25)であった。 なお、結果について著者は、「さらなる研究を重ね、今回示された関連は因果関係があるのかを調べることが必要である」と述べている。

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クローン病に新たな治療アプローチ、IL-23阻害薬/Lancet

 インターロイキン-23(IL-23)のp19サブユニットを標的とするヒト型モノクローナル抗体製剤risankizumabは、活動期クローン病の臨床的寛解導入において、プラセボよりも高い効果を発揮することが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のBrian G Feagan氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年4月12日号に掲載された。クローン病の発症には、遺伝学的、生物学的にIL-23経路の関与が認められる。予備的なデータでは、risankizumabは、IL-23経路が関与する慢性炎症性皮膚疾患である乾癬に有効なことが知られている。2つの用量とプラセボを比較する第II相試験 本研究は、北米、欧州、東南アジアの36施設が参加する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、2014年3月~2015年9月に患者登録が行われた(Boehringer Ingelheim社の助成による)。 対象は、年齢18~75歳、クローン病の診断後3ヵ月以上が経過し、スクリーニング時に中等症~重症クローン病と判定された患者であった(マスクされた中央判定で、回腸または結腸あるいは双方の粘膜潰瘍を伴い、クローン病活動指数[CDAI]スコアが220~450点、かつ大腸内視鏡検査でクローン病の内視鏡的活動性指標[CDEIS]スコアが7点以上[孤立性回腸炎の患者は≧4点])。 試験は、第1期(12週の二重盲検静脈内投与期)、第2期(12週のオープンラベル静脈内投与またはウォッシュアウト期)、第3期(26週の皮下投与期)の3つの治療期間に分けて行われ、今回は第1期の結果が報告された。被験者は、risankizumab 200mg、同600mg、プラセボを0、4、8週に投与する3つの群にランダムに割り付けられた。 主要評価項目は、ITT集団における12週時の臨床的寛解(CDAIスコア<150点)とした。安全性は、治験薬の投与を1回以上受けたすべての患者で評価した。 121例が登録され、risankizumab 200mg群に41例、同600mg群に41例、プラセボ群には39例が割り付けられた。高用量が有用な可能性 ベースラインの平均年齢は200mg群が39歳、600mg群が40歳、プラセボ群は36歳、女性がそれぞれ63%、61%、59%であった。CDAI中央値は、それぞれ311点、298点、295点、CDEIS中央値は12点、12点、11点だった。全体のクローン病の平均罹病期間は13(SD 9)年で、93%(113例)が1回以上の腫瘍壊死因子阻害薬(79%[96例]が治療不成功)の投与を受けていた。 12週時の臨床的寛解達成率は、200mg群が24.4%(10/41例)、600mg群が36.6%(15/41例)、プラセボ群は15.4%(6/39例)であった。2つの用量を合わせたrisankizumab群とプラセボ群の差は15.0%(95%信頼区間[CI]:0.1〜30.1)と、有意な差が認められた(p=0.0489)。200mg群とプラセボ群の差は9.0%(-8.3〜26.2、p=0.31)であり、有意差はみられなかったが、600mgとの差は20.9%(2.6〜39.2、p=0.0252)と有意であった。 12週時の臨床的奏効(CDAIスコア<150点またはCDAIスコアのベースラインから100点以上の低下)、内視鏡的奏効(CDEISスコアのベースラインから50%以上の低下)、完全寛解(臨床的寛解かつ内視鏡的寛解)は、いずれも200mg群とプラセボ群には差がなかったが、600mg群(それぞれp=0.0366、p=0.0106、p=0.0164)および200mg+600mg群(p=0.0273、p=0.0104、p=0.0107)はプラセボ群に比べ有意に優れた。内視鏡的寛解(CDEISスコア≦4点)は、200mg群(p=0.0357)、600mg群(p=0.0107)、200mg+600mg群(p=0.0015)が、いずれもプラセボ群よりも有意に良好だった。 12週時の有害事象は、79%(95例)に認められた(200mg群:32例、600mg群:31例、プラセボ群:32例)。重度有害事象は18例(それぞれ6例、3例、9例)、治療中止の原因となった有害事象は12例(5例、1例、6例)、重篤な有害事象は24例(9例、3例、12例)に発現した。最も頻度の高い有害事象は悪心、最も頻度の高い重篤な有害事象はクローン病の増悪であり、死亡例はなかった。 著者は、「これらの知見は、p19の阻害を介するIL-23の選択的遮断は、クローン病の治療アプローチとして実行可能であることを示唆する」と指摘している。

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ある日の救急外来【Dr. 中島の 新・徒然草】(164)

百六十四の段 ある日の救急外来年度末の土曜日のこと。夕方に救急外来をのぞくと、患者さんやその御家族でごったがえしていました。当院では、研修医2名が1・2次救急のファーストタッチを担当しています。日直から当直への交代時間はとうに過ぎたはずですが、研修医4名が、ショックバイタルの下血患者さんをはじめとした数名の救急患者さんに対応していました。中島「とにかくバイタルを何とかしろ!」研修医「はい」なんと言っても最重症は下血の患者さん。4人とも表情はテンパっていましたが、内視鏡オンコール医の「すぐ行くから腹部造影CTをやっといてくれ」を目標にして、何とか輸液と輸血でバイタルの立て直しを図っていました。そうこうしているうちにレジデントが応援に駆けつけ、ようやく血圧が100を超え始めました。このチャンスを逃さず、すかさず造影CTへ向かいます。残念ながらほかに用事があったので、私が見ることができたのはここまででした。翌朝、その後の経過を電子カルテで確認しました。造影CTでは、上行結腸から肝彎曲部の腸管内出血が疑われたようです。駆けつけた内視鏡オンコール医が大腸内視鏡で出血点を確認し、クリップ3つで止血に成功し、うまく救命することができました。この患者さんに人手を取られた結果、待たされたほかの患者さんから、いささか不平不満が出たようです。怒っている人ほど医学的には後回しになりがち、というのはよくある救急外来の景色。ただひたすらに頭を下げるのみです。年度末のこの時期、いつも研修管理委員会で問題になるのが、研修医の修了認定。内外の委員から「彼女の社会人としての資質はどうなのか?」「彼は患者さんやほかの職員に対する態度がなっていない」などと言われがちです。しかし、今回の救急室での対応を見るかぎり、合格点をあげてもいいのではないかと思いました。巣立っていく彼らの未来に幸多きことを祈ります。最後に1句出血の ショックを凌いで さあCT! 

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肉を多く食べる男性の大腸がんリスク1.3倍以上:高山スタディ

 肉を多く食べる男性は、そうでない人と比べて、大腸がんの発症リスクが有意に高いことが、岐阜大学の和田 恵子氏らによる研究で明らかになった。肉を多く食べ過ぎないことが、大腸がんの発症抑制につながるかもしれない。Cancer science誌オンライン版2017年3月3日号の報告。 日本人における肉の消費と大腸がんに関するエビデンスは、欧米人のそれと比較して限られている。そのため著者らは、日本において集団ベースの前向きコホート研究を実施し、食肉の消費と大腸がんリスクの関連について評価した。 対象は、1992年9月時点で35歳以上の男性1万3,957人、女性1万6,374人。食肉の消費は、食物摂取頻度調査票を用いて評価した。大腸がんの発症率は、地域集団ベースのがんレジストリおよび2つの主要病院で実施された大腸内視鏡検査における組織学的同定により調査した。 主な結果は以下のとおり。・1992年9月~2008年3月までに、男性429人、女性343人が大腸がんを発症した。・複数の交絡因子の調整後、男性の総食肉摂取量および赤肉摂取量の最高四分位群は、最低四分位群と比較して大腸がんの相対リスクが有意に上昇した。  総食肉(ハザード比:1.36、95%CI:1.03~1.79、p for trend=0.022)  赤肉(ハザード比:1.44、95%CI:1.10~1.89、p for trend=0.009)・男性の加工肉の摂取と結腸がんリスクとの間に正の関連性が認められた。・女性の大腸がんと食肉消費との間には有意な関連は認められなかった。

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JAK1阻害薬filgotinibで活動期クローン病の約半数が緩解/Lancet

 活動期クローン病の患者に対し、JAK1選択的阻害薬filgotinibはプラセボと比較し、臨床的緩解の達成が有意に増大したことが示された。10週後の同達成率は24ポイント増大した。安全性プロファイルも容認できるものだった。ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のSeverine Vermeire氏らが、174例の患者を対象に行った第II相無作為化プラセボ対照二重盲検試験「FITZROY」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年12月14日号で発表した。 filgotinibを200mg/日10日間投与、プラセボと臨床的緩解を比較 研究グループは2014年2月~2015年7月に欧州52ヵ所の医療機関を通じて、回腸、結腸、または回腸結腸のクローン病の診断を受けてから3ヵ月以上が経過しており、大腸内視鏡検査や組織学的検査で診断が確定していた、クローン病活動指数(CDAI)220~450の18~75歳の患者174例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3対1の割合で2群に分け、一方の群にはfilgotinib 200mg/日(130例)を、もう一方の群にはプラセボ(44例)を、それぞれ10週間投与した。 主要評価項目は、10週時点のCDAIスコアが150未満で定義された臨床的緩解だった。 10週経過後、filgotinibが奏効した被験者を、filgotinib 100mg/日、200mg/日、プラセボの群に分け、さらに10週間それぞれ投与し観察期間とした。固定効果のベースライン値と無作為化層別因子などを含むANCOVAモデルとロジスティック回帰モデルを用いて、filgotinib群とプラセボ群を比較した。filgotinib群の47%で臨床的緩解達成 ITT解析の結果、10週後に臨床的緩解が認められたのは、プラセボ群23%(44例中10例)だったのに対し、filgotinib群では47%(128例中60例)に上った(群間差:24%、95%信頼区間:9~39、p=0.0077)。 観察期間を含めた20週間対象のプール解析では、試験治療下での重篤な治療関連の有害事象発現の報告は、filgotinib群9%、プラセボ群4%だった。

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先端巨大症〔acromegaly〕

1 疾患概要■ 概念・定義手足の末端や顔貌の変化など特有な容姿から名付けられた疾患名であるが、成長ホルモン(GH)の過剰分泌により生じる。骨端線閉鎖以前では巨人症(gigantism)を、骨端線閉鎖以降では骨の末端の肥大を示す先端巨大症(acromegaly)を呈する。また、GH過剰状態が長期に持続すると、QOLは低下し、心・脳血管障害、悪性腫瘍、呼吸器疾患などを合併し、生命予後は不良となる。■ 疫学欧米の最近の報告によると、発生頻度(罹患率)は、年間3.5~6.5人/100万人、有病率は125~137人と報告されている。わが国の報告では、片上氏らの宮崎県での調査の結果、罹患率は5.3人/100万人、有病率85人と報告されている。本症に性差はみられず、40~60歳を好発年齢とし各年齢層に広く分布している。■ 病因先端巨大症の99%以上は、下垂体のGH産生腫瘍が原因であるが、ごくまれに気管支や膵、十二指腸などに発生する内分泌腫瘍から、異所性にGH放出ホルモンが過剰に産生される異所性GHRH産生腫瘍や、膵臓がんや悪性リンパ腫での異所性GH産生などが原因となる先端巨大症の報告例がある。■ 病態生理GH産生腫瘍もほかの下垂体腫瘍同様、モノクローナルな腫瘍で、体細胞レベルでの突然変異(somatic mutation)が腫瘍化の原因と考えられてきた。約半数の症例ではGHRH受容体と共役しているGタンパク質のαsubunitであるGsαの活性化変異(gsp変異)が認められる。その結果アデニル酸シクラーゼの活性化が持続し、細胞内のcAMPの増加が維持され、細胞増殖が促進する。一方、家族性にGH産生腺腫を合併する疾患にCarney complex、家族性GH腺腫(isolated familial somatotropinoma:IFS)、多発性内分泌腺腫症(MEN1および4)があるが、弧発性GH腺腫でもこれらの遺伝性疾患の原因遺伝子が検討されたが、不活化を伴う体細胞変異は認められていない。■ 臨床症状症状はGH過剰分泌に基づく症候が主体で、時に下垂体腫瘍が大きな場合には下垂体機能低下、視機能障害、頭痛など占拠性症候が同時に認められる。GHの過剰分泌により、肝臓でインスリン様成長因子-1(insulin-like growth factor 1: IGF-1)が過剰に産生され、これらGH、IGF-1の過剰分泌が長期に続くと、骨、軟部組織、内臓の肥大や変形が生じる。臨床症状としては顔貌の変化、手足の肥大はほぼ全例で認められ、耐糖能の低下、巨大舌、発汗過多も70%以上でみられる。また、先端巨大症では約25%(自験例で13%)の症例でプロラクチン(PRL)の同時産生を認めるため、月経異常(無月経、乳汁漏出)が主訴となることがある(図1、図2、表)。画像を拡大するA:先端巨大症の主な症状B:先端巨大症男性例の顔貌。骨の変形に伴う眉弓部・頬骨部の隆起、下顎の突出がみられ、鼻、口唇の肥大も認める特徴的な先端巨大症顔貌C:左は手指の腫大、皮膚の肥厚、多毛など典型的な先端巨大症の手(右は成人男性健常者)画像を拡大する画像を拡大する1)顔貌の変化眉弓部や頬骨部の隆起、下顎の突出、咬合不全、歯間の開大などが認められ、軟骨、軟部組織、皮膚も影響され、鼻、口唇も肥大し、いわゆる先端巨大症様顔貌を呈する(図1B)。2)骨、関節、結合組織手足の骨は伸び、手足の末端は肥大し、指は厚ぼったく太く丸みをおび、時に手指で小さな物をつまみ上げることが困難となる(図1C)。多角的にはX線検査における手指末節骨先端の花キャベツ様変化また結合組織も肥大によるheel pad(踵骨と足底の間の軟部組織)の肥厚が認められる。時に骨、結合組織の肥厚に伴い、手根管症候群や座骨神経痛、股関節、顎関節、膝関節の変形に伴う痛みも認められる。体型も椎骨の肥大変形により、胸部は後彎、腰部は前彎という独特な体型を呈する。これら骨に生じた変形は通常進行性で不可逆的である。3)皮膚肥厚し、色素沈着や発汗過多により、手掌、足底は常にべたつき、しばしば異臭を伴う。4)臓器肥大肝臓、腎臓、甲状腺などが肥大する。舌の肥大は巨大舌と呼ばれ、声帯の肥大などとともに特徴的な低い声となる(deepening of the voice)。5)循環器高率に高血圧を合併する。これは進行する動脈硬化と細胞外液量の増加が関与すると考えられている。心肥大も多く、最終的には拡張性の心不全を生じ、生命予後を左右する大きな一因となっている。6)呼吸器胸郭、肺の弾性が低下し、換気低下が進行すると慢性気管支炎、肺気腫など器質性変化が生じ、時に呼吸不全となる。また、近年本症は閉塞性の睡眠時無呼吸症候群の一因としても注目されている。7)代謝GHのインスリン拮抗作用が原因で耐糖能の低下、糖尿病が高頻度にみられる。8)占拠性症候下垂体腫瘍の70%以上は、腫瘍径1cm以上のmacroadenomaであるが、視野異常など視機能低下を合併する頻度はそれほど多くはない(自験例で5%)。同様に腫瘍の圧迫による続発性下垂体機能低下症もまれである。■ 予後放置した場合の生命予後は、一般人口と比較すると不良で、標準化死亡率は1.72倍高いと報告される一方、治療によりGH、IGF-1値が正常化すると、その後の生命予後は一般人と変わらなくなると報告されている。また、合併する高血圧、糖尿病、心疾患などの合併症のコントロールも生命予後の改善に寄与する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床所見とGH、IGF-1基礎値診断の基本はまず臨床的所見から先端巨大症を疑うことが重要である。しかし、通常患者が直接専門医を受診することは少なく、早期発見のためにも、合併疾患の治療科である整形外科、呼吸器科、一般内科医などへの本疾患の啓発が重要である。近年、新聞・雑誌や下垂体患者会などからの啓発活動の結果、患者自らがこの疾患を疑い、専門機関を受診するケースも増加している。本疾患が疑われる患者では、まずGH、IGF-1値を含めた下垂体ホルモン基礎値を測定し、GH過剰分泌の有無、他のホルモンの過剰あるいは低下の有無を検討する。重要なことは、GH基礎値は変動が大きく、単回の血中GH基礎値のみでのGH過剰状態の判定は不可能で、同時に必ずGHの総分泌量を反映するIGF-1値を測定することが重要である。臨床所見を認め、IGF-1値が年齢、性別の基準値より明らかに高値を示す場合には、通常先端巨大症と考えてよい(図2)。■ 経口ブドウ糖負荷試験など先端巨大症患者では、GHの抑制がないか、逆説的な増加を示し、0.4ng/mL未満には抑制されない。感度の高い検査で、本疾患が疑われる場合には必須の検査である。この検査は、先端巨大症の診断のみならず耐糖能の評価、治療後の耐糖能低下改善の予測などにも重要な検査である。以上で診断が確実となれば、他の前葉ホルモンの機能評価を兼ねたTRH、CRH、GnRH 3者負荷試験、薬物の効果を予測するドパミン作動薬(ブロモクリプチン)やオクトレオチド負荷試験を施行する。■ 画像検査次に重要なことは腫瘍の状況の把握で、このためには下垂体の精検MRIが最も重要である。通常1cm以下の微小腺腫が2~3割程度を占める。また、下垂体腫瘍が認められない場合には、異所性GHRH産生腫瘍なども考慮する必要がある(図2)。■ その他の検査合併症の評価のため、心機能、呼吸機能、動脈硬化の程度の評価、大腸がんの有無の評価なども重要な検査である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)先端巨大症を呈する下垂体腫瘍の治療の目的は、過剰に産生されているGHの早期の正常化と、腫瘍が大きく圧迫症候を伴っているときには、それらの改善にある。本疾患の治療の原則は、外科的切除が第1選択であるが、手術不能例や患者の同意が得られない特殊な場合、手術で治癒が不可能と考えられる一部の症例、外科的治療でも治癒が得られない場合には薬物療法、放射線療法などの補助療法を追加する。同時に合併症のコントロールも予後の改善からも重要である。先端巨大症の治療の流れを示すフローチャートを図3に示した。画像を拡大する■ 手術療法手術は通常経鼻的アプローチで行われ、これを「経蝶形骨洞手術」と呼び、手術用顕微鏡や内視鏡下に施行されるが、大きな腫瘍や浸潤性腫瘍では、患者の全身状態の改善による周術期のリスクの減少と腫瘍の縮小を目的として、術前短期(1~3回程度)のオクトレオチドLAR(商品名: サンドスタチンLAR)、ランレオチド(同:ソマチュリン)を使用する場合がある。現在のところ下垂体外科を専門とする施設での治癒率は、60~70%と報告されている(図4)。手術での治療成績不良な因子としては、腫瘍の大きさ、海綿静脈洞浸潤の有無などが挙げられる。画像を拡大する■ 薬物療法腫瘍からのGH分泌を抑制し、抗腫瘍効果のあるドパミン作動薬(ブロモクリプチン[商品名: パーロデル]やカベルゴリン[同:カバサール])、ソマトスタチンアナログ製剤が主に使用されている。それでも効果が不十分な場合には、GHの作用をブロックするペグビソマント(同:ソマバート)が使用される。ただし、ソマトスタチンアナログ製剤やペグビソマントは、有効率は高いものの、きわめて高価であること、ペグビソマントは毎日自己注射が必要なこと、カベルゴリンは保険適用ではないことが欠点である。また、これらの薬剤の効果をより高めるために、多剤薬物療法(combined therapy)も適時試みられている。■ 放射線照射海綿静脈洞内など外科切除困難な部位に腫瘍が残存し、薬物効果が不十分な場合などが適応となる。現在ではγナイフやサイバーナイフなどの定位放射線療法が主体で、従来の放射線療法に比較し、いずれも短時間でより選択的な照射が腫瘍へ可能であり、かつ治療効果発現までの時間も短く(通常1~2年)、正常下垂体、神経組織への障害も少ない。■ フォローアップ通常治療後、治癒基準を満たす症例が再発を呈することはきわめてまれであるが、半年~1年に1度GH、IGF-1検査のフォローが必要である。また、術前の症状の有無により、適時に大腸内視鏡、心エコーなどの定期的フォローも必要となるし、薬物療法施行例では、それぞれの副作用のチェック、さらに放射線療法が行われた症例ではGH、IGF-1はもちろん、下垂体機能低下症の長期にわたるフォローも重要となる。4 今後の展望本疾患の早期発見、早期治療のためには、関連診療科医師へのさらなる啓発活動が重要である。薬物治療法については、オクトレオチドLAR、ランレオチドなどの標準的なソマトスタチンアナログ製剤と比較して、より優れたGHおよびIGF-1の治療目標値への達成が期待されるSOM230(一般名: パシレオチド)が、2016年末にわが国で発売される予定である。また、ソマトスタチンアナログ製剤は、現在1ヵ月に1度の割合で病院での注射が必要となるが、アドヒアランスのより高い経口薬(oral octreotide)がすでに開発されており、近い将来広く臨床応用されることが期待される。5 主たる診療科下垂体疾患・腫瘍を取り扱う内分泌内科、脳神経外科、小児科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 先端巨大症、下垂体性巨人症(下垂体性成長ホルモン分泌亢進症)平成27年施行の指定難病。先端巨大症は、下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(告示番号77)に分類されている。本サイトは「厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究 先端巨大症および下垂体性巨人症の診断と治療の手引き」にリンクされている。アクロメガリー広報センター(ノバルティスファーマ株式会社)先端巨大症ねっと(帝人ファーマ株式会社)いずれも製薬メーカーが運営するサイトであるが、患者向け、医療者向けの両サイトがあり、先端巨大症についての知識や治療法がわかりやすく解説されている。患者会情報下垂体患者の会(下垂会)2005年に下垂体疾患の患者有志が集まり、自分達の病気の難病指定を目標に結成され、現在全国規模で医療講演会や患者会を定期的に開催・活動している。1)Katznelson L, et al. J Clin Endocrinol Metab.2014;99:3933-3951.2)特集 先端巨大症の診療最前線. ホルモンと臨床.2009.3)平田結喜緒 編. 下垂体疾患診療マニュアル 改訂第2版.診断と治療社;2016.4)千原和夫 監修. 改訂版 Acromegaly Handbook.メディカルレビュー社;2013.公開履歴初回2016年10月18日

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家族性大腸腺腫症〔FAP : familial adenomatous polyposis〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性大腸腺腫症(FAP)は、APC遺伝子の生殖細胞系列変異を原因として、大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体性優性遺伝性の一種のがん症候群である。■ 疫学FAPの発生頻度は、欧米では出生10,000~20,000人に1人と推定されている。日本においては17,400人に1人と推測されており、世界的にあまり差がない。■ 病因APC遺伝子の生殖細胞系列の変異が原因ではあるが、腺腫はAPC遺伝子の機能喪失、すなわちもう一方のAPC遺伝子の体細胞変異(結果的に両方の遺伝子の異常:細胞単位では劣性発現といえる)によって引き起こされる。APC遺伝子は、その機能としてはいわゆる腫瘍抑制遺伝子ともいえる。APC遺伝子の実際の機能あるいは大腸がんに至る遺伝子変異の詳細は不明である。■ 症状下痢、下血(排便時出血)、腹痛、貧血が主な症状である。このような症状が若年に起こるために、胃腸虚弱ないし痔核からの出血だろうと考えられて、大腸がんの危険性が見過ごされやすい。FAPあるいは大腸がんの家族歴があればより注意が必要である。■ 分類大腸腺腫数で分類するのが一般的である(表1)。大腸腺腫数の計測は困難であるが、おおよその数で分類されている。腺腫数はAPC遺伝子変異部位と関連するといわれる。傾向として腺腫数が多いほど発症年齢が若く、また大腸がんが発生しやすい。画像を拡大する100個未満の多発性ポリープを「oligo-polyposis」ということがある。また、大腸ポリポーシスにデスモイドあるいは外骨腫を合併する症例を「ガードナー症候群」ということがあるが、FAPの一部と考えられている。■ 予後大腸がんをはじめ、ほかの消化管がん、デスモイド腫瘍、そのほかのがんを早期に制御、治療できれば予後は良好である。主として大腸がんおよびほかの消化管がんのコントロールが重要である。ただしそれを生涯にわたって行わなければならない点で、患者の負担が大きく、その難しさがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)最も有力な検査は、病理組織学的検査を伴う大腸内視鏡検査(図1)である。注腸造影検査によって大腸内のポリープの分布の様子が観察される。大腸にびまん性のポリポーシスを認め、それが腺腫である場合はFAPである可能性が強い。画像を拡大する2)上部消化管検査は必須である。(1)胃内視鏡検査:胃底腺ポリポーシス、腺腫およびがんの鑑別をして対応する。(2)十二指腸内視鏡検査:スピゲルマンによるおおよその病期分類を行い対応する(表2)。画像を拡大する(3)小腸検査:大腸手術後状態で、(大腸がんより小腸がんが先に出ることは少ない)腹痛などがあれば小腸検査が望ましい。バリウム造影、カプセル内視鏡がスクリーニングとして行われる。3)随伴病変(その他のがんを含む)の検査(1)先天性網膜色素上皮肥大(図2):視力には影響ない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(2)潜在骨腫または外骨腫(図3):共に治療の必要はない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(3)デスモイド腫瘍(図4):過去にデスモイド既往がある場合、または家系内にデスモイド患者が出た場合は、よりデスモイド腫瘍が発生しやすいといわれている。画像を拡大する(4)甲状腺がん:若年女性に多い。乳頭がんであるが、そのなかに特徴的な組織像を示すことがある。治療成績は通常の乳頭がんと同様で良好である。触診ないしエコー検査を行う。(5)卵巣がん、子宮がん: 35歳以上では定期検査を勧めるべきである。■ 鑑別診断1)ポリープ数が少ない状態のFAP(attenuated FAP:AFAP)APC遺伝子変異はあるが、ポリープ数が100個に満たない(oligo-polyposisの状態)。2)MUTYH関連ポリポーシス(MAP)DNA酸化障害の修復に関わるMUTYH遺伝子変異の異常によって発生する大腸腺腫症。ポリープ数は少ない場合が多いが、まれに1,000個近くのこともある。常染色体劣性遺伝性である。3)ポリメラーゼ校正遺伝子関連ポリポーシス(PPAP)ポリープ数は多くて数個~数十個。形質発現はAFAP、MAPないしリンチ候群に類似すると思われるが、さらに症例の集積と検討が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPにおいては予後の項で述べたように、がん発生について生涯にわたり注意が必要である。各臓器の良性腫瘍の病期は発がんの危険性と相関するため、病期を維持ないし低減できればがん発生を抑えられる可能性がある。筆者はこれを「病期低減戦略(stage reduction strategy)」ないし「病期低減治療(stage reduction treatment)」と位置づけている。これはFAPのすべてに通ずる。■ 原則1)早期診断これにより病期を低いところでみつけることができる。2)病期低減治療大腸腺腫、十二指腸(乳頭部)腺腫、デスモイド腫瘍に当てはまるそれぞれ異なった病期に対して、それを維持ないし低減する方法が取られることになる。それは利益と損失を考慮して判断される。■ 大腸1)内視鏡治療今後の発展によって病期低減治療法の中心になる可能性がある。ポリープ数が比較的少ない状況で適応になる。また、5mm以下の小さいポリープは、早期にがん化するとは考えられず、必ずしも切除する必要はない。2)化学・薬物治療現在実用的ではない。3)手術治療次の3つの方法が一般的である。(1)大腸全摘・回腸瘻造設術:大腸に関しては最も根治的。生活の質も悪くはない。(2)結腸全摘・回腸直腸吻合術:病期低減治療である。直腸ポリープが少ない必要がある。直腸は最もがんが発生する危険性が高い。(3)大腸全摘・J型回腸嚢肛門管吻合術:上記2つの利点を取ったものである。ただし手術が複雑。良好な排便機能が得られるかどうか、不安定である。直腸がんの危険はかなり低減するが、肛門に近い直腸粘膜が残るため、理論上ゼロとはならない。時間と共にJ嚢内に腺腫が高率に発生することもわかっており、術後の内視鏡検査は引き続き必要である。■ 十二指腸、乳頭部腺腫経過観察、および病期が上がった場合に、それに応じて病期を下げる手段としては、(1)内視鏡的切除、(2)十二指腸切開局所切除、(3)膵温存十二指腸切除、(4)膵頭十二指腸切除などが選択される。■ デスモイド腫瘍悪性ではないが、浸潤性に発達しやすい線維腫症といえる状態で治療にやや難渋する。デスモイドの出やすい状況(診断の項を参照)であれば、内視鏡治療を優先して手術をなるべく遅くする。大腸切除術後の約8%に発生する。発生部位は腹腔内(後腹膜、腸間膜)および腹壁手術瘢痕部に発生する。死亡率は10%以下と考えられる。病期分類および治療の指針としてChurchによる分類がある(表3)。画像を拡大する4 今後の展望1)病期低減治療法として、内視鏡的ポリープ切除の効果について多施設研究が始まっている。まだ標準的治療法ではない。2)大腸癌研究会家族性大腸癌委員会において、いくつかの研究プロジェクトが計画施行されつつある。3)十二指腸腺腫:膵温存十二指腸切除術など、病期に応じた治療法が検討されつつある。5 主たる診療科消化器内科および消化器外科が主たる診療科となり、病態に応じて、婦人科、内分泌外科などに相談する。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国際消化管遺伝性腫瘍学会InSiGHT(医療従事者向けの英文サイト:ここからの情報は世界標準となる)大腸癌研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:日本の活動の現況がわかる)患者会情報ハーモニー・ライフ:関東の患者会(患者、患者家族向けの情報:ニュースレターほか、種々の情報が得られる)ハーモニー・ライン:関西の患者会(患者、患者家族向けの情報:疾患に関する冊子などが得られる)デスモイド基金(アメリカの患者支援組織、英文サイト)1)大腸癌研究会編. 遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版.金原出版;2012.2)大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版.大腸癌研究会;2014.3)岩間毅夫.日内会誌.2007;96:207-212.4)岩間毅夫.日本大腸肛門病会誌.2004;57:859-863.公開履歴初回2013年10月24日更新2016年02月23日

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カルシウムとビタミンDの摂取と大腸腺腫予防(解説:上村 直実 氏)-448

 数多くの疫学的検討の結果、ビタミンDやカルシウム(Ca)の摂取量ないしは血中濃度が高いほど大腸腺腫や大腸がんのリスクが低く、両者併用による大腸腫瘍予防効果の可能性も指摘されていた。しかし、今回、実際にビタミンDおよびCa投与を用いた介入試験の結果、両者いずれの投与によっても統計学的に有意な腫瘍抑制効果は認められなかった。 この研究は米国の11施設で施行されたもので、全大腸内視鏡検査によって遺残ポリープのないことが確認された大腸腺腫患者2,259例(平均57歳)を対象として、ビタミンD3錠剤(1,000IU/日)のみを服用する群、Ca錠剤(炭酸塩、1,200mg/日)のみを服用する群、両者併用群、いずれも服用しないプラセボ群に割り付ける方法で、ビタミンDおよびCaの大腸腺腫再発予防効果を二重盲検プラセボ対照無作為化試験で検証している。3年または5年後の大腸内視鏡によるフォローアップの結果、ビタミンD非摂取群に比べ摂取群の3~5年調整後腺腫再発リスク比は0.99(95%信頼区間[CI]:0.89~1.09)、Ca非摂取群に比べ摂取群では0.95(95%CI:0.85~1.06)、両栄養素の非摂取群に比べ併用群では0.93(95%CI:0.80~1.08)であり、いずれも有意な再発抑制効果を認めなかった。以上の結果から、中年以上になってビタミンDやCaを内服しても、大腸腺腫や大腸がんのリスクを軽減する効果が期待できないことが示唆された。 大規模な疫学研究により、腫瘍のリスクを軽減する可能性を有するものが多く報告されているが、対象の年齢や人種によっては介入試験の結果で有用性の期待が裏切られることがある。介入試験は、限られた対象設定の中での成績であることを考慮した対応が重要である。研究デザインによる相反する結果に関しても、十分に吟味して臨床現場で使いこなす能力が必要な時代となっている。

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大腸腺腫の再発予防にビタミンD、カルシウムは有効か/NEJM

 大腸腺腫の切除術後の再発予防に、ビタミンD3およびカルシウムの摂取は有効ではないことが、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のJohn A Baron氏らの検討で示された。疫学データや前臨床データでは、ビタミンDの摂取量や血中濃度が高いほど、またカルシウムの摂取量が多いほど大腸新生物のリスクが低いことが示唆されている。また、これらを併用すると、相乗的な化学予防効果が得られる可能性が指摘されていた。NEJM誌2015年10月15日号掲載の報告より。腺腫切除例を4群に分け、3~5年の再発リスクを評価 研究グループは、ビタミンDおよびカルシウムの栄養補助食品の摂取による大腸腺腫の再発予防効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した(米国国立がん研究所[NCI]の助成による)。 対象は、年齢45~75歳、登録前の120日以内に1つ以上の大腸腺腫の切除術を受け、全大腸内視鏡検査で残存ポリープを認めず、内視鏡治療医が推奨する3年または5年の大腸内視鏡によるフォローアップ検査に同意した患者であった。被験者は、部分的2×2ファクトリアルデザインを用いて以下の4つの群に無作為に割り付けられた。 (1)ビタミンD3錠剤(1,000IU/日)のみを服用する群、(2)カルシウム錠剤(炭酸塩、1,200mg/日)のみを服用する群、(3)2種の錠剤を併用する群、(4)いずれも服用しない群(プラセボ群)。女性患者は、カルシウム単剤またはビタミンD3+カルシウム併用の2群への無作為割り付けを選択することができた。 2004年7月~08年7月までに、米国の11施設に2,259例(4群割り付け:1,675例、2群割り付け[女性]:584例)が登録された。ベースラインの各群の平均年齢は56.7~58.7歳、4群割り付けの女性は14.5~15.9%で、ほとんどが非ヒスパニック系の人種であり、肥満者(BMI≧30)が35%以上含まれた。腺腫数が3個以上の患者が11%、1つ以上の進行腺腫を有する患者は18%であった。単剤、併用ともに効果なし、予想に反する結果 ビタミンDを服用した群の患者は、プラセボ群に比べ血清25-ヒドロキシビタミンD値が平均7.83±13.4ng/mL増加した。また、腺腫の評価が行われた2,059例のうち880例(43%)で腺腫の再発が認められた。 腺腫の再発に関するビタミンD群の非ビタミンD群に対する補正リスク比(aRR)は0.99(95%信頼区間[CI]:0.89~1.09)、カルシウム群の非カルシウム群に対するaRRは0.95(0.85~1.06)であり、併用群のカルシウム群に対するaRRは1.01(0.88~1.15)、併用群のプラセボ群に対するaRRは0.93(0.80~1.08)と、いずれも有意な差を認めなかった。 進行腺腫のaRRは、それぞれ0.99(95%CI:0.75~1.29)、1.02(0.76~1.38)、0.89(0.63~1.26)、0.99(0.63~1.56)であり、腺腫の結果と同様であった。 尿路結石のリスクは、カルシウム群が非カルシウム群よりもわずかに高く(2.4 vs.1.8%、p=0.40)、ビタミンD群は非ビタミンD群よりも低い傾向がみられた(1.7 vs.2.5%、p=0.18)が、いずれも有意差はなかった。 ベースラインの血清クレアチニンが正常で、フォローアップ期間中に異常高値を示した患者の割合は、カルシウム群が非カルシウム群に比べ高い傾向にあり、統計学的な差は境界値であった(7.0 vs.4.9%、p=0.06)。 また、カルシウム群は非カルシウム群に比し、心筋梗塞の発症率が有意に低かった(0.2 vs.1.1%、p=0.03)。一方、脳卒中、一過性脳虚血発作、すべてのがん、大腸がん、骨折の発症率については、ビタミンD群と非ビタミンD群、カルシウム群と非カルシウム群の間に差はみられなかった。 ベースラインの血清25-ヒドロキシビタミンD値や食事由来のカルシウム摂取量は、腺腫の再発リスクに関して、上述のビタミンDおよびカルシウムの摂取の知見とほぼ同様の傾向を認め、進行腺腫のリスクとも関連しなかった。 著者は、「これらの結果は予想に反するもの」とし、「ビタミンDについては、ある程度の化学予防効果を否定するものではないが、これまで指摘されていた顕著な効果は支持されない」としている。

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CA11-19、大腸がんマーカーに使用可能か

 大腸がんの診断補助に、CA11‐19が腫瘍マーカーとして有用である可能性を、米国テネシー州にあるGastrointestinal AssociatesのBergein F. Overholt氏らが明らかにした。Gastrointestinal endoscopy誌オンライン版2015年8月26日号の掲載報告。 大腸がんは、依然として米国におけるがん死亡原因の2位である。大腸がんを診断する際の補助として腫瘍関連抗原を使用した血液検査があるが、臨床的に有用であるためには、より高い感度と特異性が求められる。本研究は、大腸がん検出における血清学的腫瘍抗原としてのCA11-19の診断精度を、ELISAにより評価した。 血液検体は、治験審査委員会の承認を得た試験において、大腸内視鏡検査を受けた被験者522例から得られた。検体は盲検化され、ELISAを用いてCA11-19レベルが測定された。結果は、被験者の最終診断に基づいて、正常、過形成性ポリープ、良性消化器疾患、腺腫性ポリープ、大腸がんのカテゴリーごとに集計された。 主な結果は以下のとおり。・カットオフ値を通常用いられる6.4units/mLに設定した場合、CA11-19レベルは大腸がん患者131例中128例で上昇がみられ、感度は98%(95%信頼区間[CI]:93.1~99.5%)であった。・CA11-19レベルは、診断結果が正常であった被験者の87%(90/103)、良性消化器疾患の83%(185/223例)において正常であり、両者を合わせると、特異度は84%(95%CI:80.0~87.9%)であった。 CA11-19は、大腸がん診断において感度98%、特異度84%の血清学的腫瘍マーカーである。この高い感度は、大腸がん44例中43例(98%)を検出することを意味している。50歳以上の場合、陽性的中率3.6%、陰性的中率99.98%であった。著者らは、大腸がんの診断補助にCA11-19が有用かどうかをより明確にするために、さらなる前向き研究が必要であるとしている。

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マイクロシミュレーションモデルを用いた大腸腺腫検出率と大腸がん検診の解析(解説:上村 直実 氏)-389

 住民検診や企業検診および人間ドックにおいて、使用される検査自体の精度管理は非常に重要である。今回、地域における大腸内視鏡を用いた大腸がん検診では、腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が高いほど、生涯にわたる大腸がんの発症や大腸がん死亡のリスクが抑制されるとともに、費用対効果にも優れていることがオランダから報告された。 この研究では、大腸がん検診における内視鏡検査の質に対する評価指標とされるADRを、5群に分類して比較検討した結果、内視鏡術者によってはADRに3倍以上のばらつきがみられた。最もADRが低い内視鏡術者は、最もADRが高い術者に比べて、10年以内の大腸がんの発症リスクが約50%、大腸がん死亡のリスクが約60%上昇するとされている。しかし一方では、ADRが高すぎると低リスクの小さなポリープが多く発見され、追加の検査や治療が増加して、患者にとっての合併症のリスクやコスト高などの不利益が、ベネフィットを上回る可能性も示唆されている。 わが国の診療現場においても、大腸内視鏡検査の精度は施設間や術者間の格差が非常に大きいことは経験上明らかである。今後、このような内視鏡診療技術を用いた臨床研究を解析する場合、上記のバイアスの補正をどのように行うかも課題となる。一方、わが国では新たな専門医制度の認定方法が注目されているが、内視鏡や超音波検査などの診療技術に関して、臨床的に満足できる診療精度が担保される専門医ないしは技術認定医を育成するシステムが必要であるものと思われた。

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大腸内視鏡検診、がんの生涯リスクを抑制/JAMA

 大腸内視鏡による大腸がん検診では、腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が高いほど、大腸がんの発症や大腸がん死の生涯リスクが抑制され、費用は増大しないことが、オランダ・エラスムスMC大学医療センターのReinier GS Meester氏らの検討で示された。ADRは検診の質の指標とされるが、施術者によって3倍以上の大きなばらつきがみられ、最もADRが高い施術者に比べ最も低い施術者では、10年以内の大腸がんの発症リスクが約50%、がん死のリスクは約60%上昇するという。一方、ADRが高いと低リスクの小ポリープの検出が増加し、追加検査や合併症が増えるため、不利益が利益を上回る可能性が示唆されている。JAMA誌2015年6月16日号掲載の報告。非検診群と五分位群を比較 研究グループは、地域住民ベースのデータを用いて大腸内視鏡による大腸がん検診プログラムの利益や合併症、費用の評価を行った(米国国立がん研究所[NCI]の助成による)。 1998年1月1日~2010年12月31日の間に、136人の医師による大腸内視鏡検査を受けた5万7,588人について、マイクロシミュレーションモデルを用いた解析を行った。大腸内視鏡のADRを五分位群(Q1~5)に分け、非検診群と比較した。 五分位群の平均ADR値(範囲)は、第1五分位(Q1)群が15.32%(7.35~19.05)、第2五分位(Q2)群が21.27%(19.06~23.85)、第3五分位(Q3)群が25.61%(23.86~28.40)、第4五分位(Q4)群が30.89%(28.41~33.50)、第5五分位(Q5)群は38.66%(33.51~52.51)であった。 10万人年当たりの大腸がん発症率は、Q1群66.6件からQ4群39.0件へと低下したが、Q5群は49.7件であった。合併症が増加、ネットコストは減少 非検診群における大腸がん発症の生涯リスクは1,000人当たり34.2件(95%信頼区間[CI]:25.9~43.6)であり、大腸がん死リスクは13.4件(10.0~17.6)であった。 検診群では、Q1群の大腸がん発症率は1,000人当たり26.6件(95%CI:20.0~34.3)であったのに対し、Q5群は12.5件(9.3~16.5)で、大腸がん死亡率はQ1群の5.7件(4.2~7.7)に対しQ5群は2.3件(1.7~3.1)であり、いずれもADRが高いほどリスクが低かった。 Q1群と比較して、ADRが5%上昇するごとに、大腸がん生涯発症率が平均11.4%(95%CI:10.3~11.9)低下し、死亡率は平均12.8%(11.1~13.7)減少した。 合併症は、Q1群では大腸内視鏡検査2,777件当たり6.0件(95%CI:4.0~8.5)に認められたのに対し、Q5群では3,376件当たり8.9件(6.1~12.0)に増加した。 また、検診のネットコストは、Q1群の210万米ドル(95%CI:180~240万)から、Q5群では180万(130~230万)米ドルへと減少した。 著者は、「ADRの変動の原因解明や、ADRの上昇が患者アウトカムを改善するかを評価するには、さらなる検討を要する」としている。

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事例58 内視鏡でのプロポフォールの査定【斬らレセプト】

解説事例では、大腸内視鏡時に使用した全身麻酔導入薬のプロポフォールが、静脈麻酔手技料とともにA事由(医学的に適応と認められないもの)で査定となった。医師からは、「腸管内視鏡時のプロポフォール使用は、学会などでは鎮静と鎮痛が適度に得られて、内視鏡実施時の安全に寄与するとの報告が複数あるのに、なぜ査定となったのか」と問い合せがあった。プロポフォールの添付文書によると「全身麻酔の導入及び維持」と「集中治療における人工呼吸中の鎮静」の適応を持つ静脈投与麻酔薬とあった。医師から見せていただいた文献には、プロポフォールは体内からの消失が速やかなため、投与終了後の覚醒が早いなどの特長があり、世界では消化器内視鏡実施時の鎮静薬としても広く使われていることが記載されていた。しかし、添付文書にはこの適応が記載されていない。よって、内視鏡時の鎮静・鎮痛には適用がないとしてA査定となったものであろう。学会などでは一般的であって、良い成績を収めていても、添付文書に適応がない場合は査定対象となるのである。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第20回

第20回:大腸がんのスクリーニングとその後のフォロー監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 近年、わが国の大腸がん死亡率および罹患率は著しく増加しています。2013 年の人口動態統計によれば、女性の大腸がん死亡は全悪性新生物による死亡の中で最多であり、男性では肺がん、胃がんに次いで多く、過去 50 年間でおよそ 10倍となっています1)。 大腸がんは、早期であればほぼ100%近く治すことができますが、一般的には早期の段階では自覚症状はありません。したがって、無症状の時期に発見することが重要となります。今回の記事で大腸がんのスクリーニングとその後のフォローについて確認してみましょう。また日本では、これを参考にした大腸がんの検診ガイドライン2)も出されていますので、一度目を通してみるとよいかもしれません。 なお、日本の『大腸ESD・EMRガイドライン』では、径6mm以上の腺腫(一定の担がん率・SMがんも存在することから表面陥凹型腫瘍は径5mm以下でも)切除が勧められています。遠位大腸に存在する径5mm以下の典型的な過形成性ポリープは放置可能(エビデンスⅣb・推奨度B)3)など対応に違いがあります。 タイトル:大腸がんのスクリーニングおよびサーベイランスColorectal Cancer Screening and Surveillance以下、American Family Physician 2015年1月15日号4)より◆疫学~スクリーニング(USPSTF;米国予防サービスタスクフォースの推奨)大腸がんは男女ともに3番目に頻度の多いがんである。早期発見/治療により過去20年間で発生率と死亡率は減少している。平均的な大腸がんリスクのある人には、50歳でスクリーニングを開始すべきである。75歳以上へのルーチンスクリーニングは個別の判断を推奨している。(リスクとがん死亡を比較してスクリーニングの有用性が上回る場合、患者と医師で相談して決定する)【無症状、平均リスクの成人に対するスクリーニングの推奨】下記はどれも同等の推奨度。年に1回の高感度便潜血検査5年ごとの軟性S状結腸鏡検査と3年ごとの高感度便潜血検査10年ごとの大腸内視鏡検査【リスクを持つ成人の大腸内視鏡スクリーニング】60歳以上で大腸がんもしくは高度異型腺腫※と診断を受けた1親等の親族が1人いる場合→50歳で全大腸内視鏡検査スクリーニング開始、10年ごとに施行60歳未満で大腸がんもしくは高度異型腺腫と診断を受けた1親等の親族が1人いる場合→40歳もしくは親族が診断を受けた年齢より10年若いときに全大腸内視鏡検査スクリーニング開始、5年ごとに施行どの年齢でも大腸がんもしくは高度異型腺腫と診断を受けた1親等の親族が2人いる場合→40歳もしくは親族のうちより若年で診断を受けたその年齢より10年若いときに全大腸内視鏡検査スクリーニング開始、5年ごとに施行※高度異型腺腫=10mm以上の腺腫で絨毛要素を持ち、高度異型性であるものをいう。【大腸内視鏡検査フォローアップ期間】2012年に出されたU.S.Multi-Society Task Force on Colorectal Cancerからのサーベイランスガイドライン異常なし(ポリープなし、もしくは生検で異常なし ) →10年ごと過形成性ポリープ直腸もしくはS状結腸に10mm未満の過形成性ポリープ →10年ごと低リスクポリープ10mm未満の管状腺腫が1、2個 →5~10年ごと異型性のない10mm未満の小無茎性鋸歯状ポリープ →5年ごと高リスクポリープ →3年ごと3~10個の管状腺腫10mm以上の管状腺腫もしくは鋸歯状ポリープ絨毛もしくは高度異形成を持つ腺腫細胞学的異形成との固着性鋸歯状ポリープ古典的鋸歯状腺腫他の事情10個以上の腺腫 → 3年ごと鋸歯状ポリープ症候群 →1年ごと※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 国立がん研究センターがん対策情報センター. 人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2013年). http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html (参照 2015.5.25) 2) 平成16年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班. 有効性評価に基づくがん検診ガイドライン. 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター. http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/daicyougan.html (参照 2015.5.25) 3) 田中信治ほか. 日本消化器内視鏡学会誌. 2014;56:1598-1617. 4) Short MW, et al. Am Fam Physician. 2015;91:93-100.

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大腸腺腫切除後の長期的な大腸がん死亡率(解説:上村 直実 氏)-254

大腸がんによる死亡率を低下するために、便潜血を用いた検診や大腸内視鏡検査による早期発見が推奨されているが、大腸腺腫を内視鏡的に切除した後のサーベイランスも重要な課題となっている。 本研究は、ノルウェーのがんレジストリと死亡原因レジストリを用いて、1993年~2007年に内視鏡的大腸腺腫切除術を受けた患者4万826例を2011年まで追跡し、その大腸がん死亡率を一般住民と比較検討したものである。追跡期間(中央値7.7年:最長19.0年)の間に、1,273例(3.1%)が大腸がんと診断され、383例(0.9%)が大腸がんで死亡していた。 一般集団における大腸がん死亡率と比較すると、切除病変が低リスク腺腫群では標準化死亡比(SMR)の低下(0.75、95%CI:0.63~0.88)がみられた一方、高リスク腺腫群ではSMRの上昇(1.16、95%CI:1.02~1.31)が認められた。この結果から、高リスク腺腫切除群に対しては、より厳密なサーベイランスを推奨している。 欧米と日本の大腸内視鏡検査の精度が異なることは、よく知られた事実である。本研究では、がんレジストリの切除組織型を用いて腺腫切除群を設定しているが、初回内視鏡時に回盲部まで大腸全体が観察されての結果か不明である。 すなわち、切除病変の局在部位がS状結腸や直腸の遠位大腸が近位大腸の3倍以上という結果は、局在部位に大きな違いを認めないとする本邦の報告とは大きく異なっており、挿入が比較的困難である近位大腸の病変が診断されていない可能性が否定できない。 しかしながら、本邦の遡及的研究においても高リスク腺腫切除群は大腸がん発症リスクが高いことが報告されていることから、高リスク病変の内視鏡的切除術後のサーベイランスは、きわめて重要と思われる。著者らも考察しているように、世界中に認知されるガイドラインで最適なサーベイランス間隔を設定するためには、レベルの高いエビデンスが必要であり、わが国で進行中のRCT(Japan Polyp Study)の結果が期待される。

79.

大腸がん死亡率、切除腺腫のリスクで差/NEJM

 大腸腺腫切除後の大腸がん長期死亡率について、一般集団と比較して、切除した腺腫が低リスクであった患者では低下がみられた一方、高リスクであった患者は高かったことが明らかにされた。ノルウェー・オスロ大学のMagnus Lphiberg氏らが1,273例を中央値7.7年間追跡し報告した。腺腫切除後には大腸内視鏡によるサーベイランスが広く推奨されているが、同患者における大腸がん死亡についてはこれまでほとんど報告されていなかった。NEJM誌2014年8月28日号掲載の報告より。ノルウェー1993~2007年に腺腫切除を受けた患者を追跡評価 研究グループは、ノルウェーのがんレジストリと死亡発生レジストリのデータを集約し、1993~2007年に大腸腺腫切除を受けた患者の大腸がん死亡率を、2011年まで追跡し推算した。また一般集団との比較で発生率ベースの標準化死亡比(SMR)も算出し検討した。 ノルウェーのガイドラインでは、腺腫が高リスク(高悪性度異形成腺腫、絨毛腺腫、10mm以上の腺腫)の患者は10年後に、また腺腫が3個以上あった患者は5年後に大腸内視鏡検査を受けることが推奨されている。低リスク腺腫の患者についてはサーベイランスは推奨されていない。 本研究では、レジストリデータから正確なポリープサイズと数は入手できなかった。高リスク腺腫は、多発性腺腫、絨毛腺腫、高悪性度異形成腺腫と定義して検討が行われた。一般集団と比較し、高リスク腺腫切除患者は上昇、低リスク腺腫切除患者は低下 研究グループが特定した、大腸腺腫切除患者は4万826例であった。 これら患者のうち、追跡期間中央値7.7年(最長19.0年)の間に、1,273例の患者が大腸がんと診断されていた。 大腸がん死亡は、一般集団398例に対し、検討群では383例が観察され、SMRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.87~1.06)だった。 大腸がん死亡率は、高リスク腺腫切除患者群では上昇が(209例vs. 242例、SMR:1.16、95%CI:1.02~1.31)、一方、低リスク腺腫切除患者群では低下がみられた(189例vs. 141例、SMR:0.75、95%CI:0.63~0.88)。

80.

S状結腸鏡での大腸がん検診、発症・死亡を抑制/JAMA

 1回のS状結腸鏡検査、または+便潜血検査を行うスクリーニングは、大腸がんの発生および死亡を抑制したことが示された。ノルウェー・Sorlandet病院のOyvind Holme氏らが50~64歳の一般集団レベルを対象に、スクリーニングをしない集団と比べた無作為化試験の結果、報告した。JAMA誌2014年8月13日号掲載の報告より。ノルウェーで約10万例を対象に無作為化試験 無作為化試験は、ノルウェーのオスロ市とテレマルク県の住民から特定した50~64歳の10万210例を対象に行われた。スクリーニングを1999~2000年(55~64歳群)と2001年(50~54歳群)に行い、2011年12月31日まで追跡した。特定対象者のうち1,415例は、大腸がん、移住、死亡のため除外され、3例は集団レジストリにおいて追跡ができなかった。 スクリーニング群に割り付けられ、受診を促された被験者は、1対1の割合で、1回限りのS状結腸鏡検査を受ける群、または1回限りのS状結腸鏡検査+便潜血検査を受ける群に無作為化された。 スクリーニングで陽性であった被験者(がん、腺腫、10mm以上ポリープ、または便潜血陽性)には大腸内視鏡検査が行われた。対照群には何も介入が行われなかった。 主要評価項目は、大腸がんの発生率および死亡率であった。中央値10.9年後、発生率、死亡率ともにスクリーニング実施群が低値 解析には9万8,792例が組み込まれた。そのうち対照群は7万8,220例、スクリーニング群は2万572例(S状結腸鏡検査群1万283例、S状結腸鏡検査+便潜血検査群1万289例)であった。スクリーニングの受診アドヒアランスは63%だった。 中央値10.9年後、大腸がん死亡例は、スクリーニング群71例に対し対照群330例で、死亡率は10万人年当たり31.4例vs. 43.1例、絶対率差は11.7(95%信頼区間[CI]:3.0~20.4)、ハザード比(HR)0.73(95%CI:0.56~0.94)だった。 大腸がんと診断されたのは、スクリーニング群253例、対照群1,086例だった(10万人年当たり112.6例vs. 141.0例、絶対率差:28.4、95%CI:12.1~44.7、HR:0.80、95%CI:0.70~0.92)。 大腸がんの発生率は、50~54歳群(HR:0.68、95%CI:0.49~0.94)、55~64歳群(同:0.83、0.71~0.96)ともに低下が認められた。また、S状結腸鏡検査単回実施のみ群と、合わせて便潜血検査を行った群で差はみられなかった。

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