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高所得国の死産予防で優先すべきリスク因子が明らかに

高所得国の死産予防では、効果的な介入を優先すべき修正可能なリスク因子として妊婦の過体重/肥満、高齢出産、妊娠時の喫煙などが重要なことが、オーストラリアMater Medical Research InstituteのVicki Flenady氏らの調査で明らかにされた。高所得国では、1940年代以降、死産数が著明に減少したが、最近20年間はほとんど改善されていないことが示されている。死産のリスク因子の研究は増加しているものの、予防において優先すべき因子の同定には困難な問題も残るという。Lancet誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月14日号)掲載の報告。5つの高所得国のデータを解析研究グループは、高所得国の死産の予防において、有効な介入を優先的に進めるべき項目を同定するために系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。データベースを検索して、死産のリスク因子を検討した地域住民ベースの試験を選出した。ライフスタイルへの介入や医学的介入による改善の可能性を基準に、報告頻度の高い因子を同定した。高所得国の中でも死産数が多く、解析に要するデータをすべて備えた5ヵ国のデータを用いて、修正可能なリスク因子に起因する死産の数を算定し、人口寄与リスク(PAR)を算出した。効果的な介入法を認識してその実践を促進することが重要6,963試験中、13の高所得国から報告された96の地域住民ベースの試験(アメリカ29件、スウェーデン16件、カナダ9件、オーストラリア12件、イギリス9件、デンマーク6件、ベルギー5件、ノルウェー3件、イタリア2件、ドイツ2件、スコットランド1件、ニュージーランド1件、スペイン1件)が選出された。そのうち76試験がコホート試験(前向き試験6件、後ろ向き試験70件)、20試験が症例対照試験であった。文献のレビューにより、死産の修正可能なリスク因子として、妊婦の体重、喫煙、年齢、初産、胎内発育遅延、胎盤早期剥離、糖尿病、高血圧が示された。死産の修正可能リスク因子の最上位は妊婦の過体重/肥満(BMI>25kg/m2)であり、5ヵ国(オーストラリア、カナダ、アメリカ、イギリス、オランダ)のPARは7.7~17.6%、高所得国全体の妊娠期間≧22週の予防可能な年間死産数は8,064件であった。次いで、出産年齢≧35歳の高齢出産(5ヵ国のPAR:7.5~11.1%、全体の年間死産数:4,226件)、妊娠時の喫煙(同:3.9~7.1、2,852件)の順であった。5ヵ国の高所得国の中でも、先住民など恵まれない状況に置かれた集団では、死産した妊婦における喫煙のPARは約20%と高い値であった。また、5ヵ国の死産のPARの約15%を初産婦が占めた。胎内発育遅延のPARは23%、胎盤早期剥離のPARも15%と高値を示し、死産において胎盤の病理が重要な役割を担っていることが浮き彫りとなった。糖尿病と高血圧も死産の重要な原因であった。著者は、「高所得国における死産の予防では、過体重、肥満、出産年齢、喫煙などの修正可能なリスク因子に対する効果的な介入法を認識し、その実践を促進することが優先事項である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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米国ヘビースモーカー、1965年から2007年の間に大幅減少

米国(カリフォルニア州を除く)でタバコを1日に20本以上喫煙する重度喫煙者の割合は、1965年当時の約23%から2007年には約7%へと大幅に減少していることが調査の結果、明らかにされた。カリフォルニア州ではさらに大幅な減少(約23%から3%)がみられた。背景には喫煙を始める人の減少と禁煙する人の増加があるようだという。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校Moores UCSDがんセンターのJohn P. Pierce氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2011年3月16日号で発表された。重度喫煙者の喫煙者に占める割合も減少研究グループは、1965~1994年のNational Health Interview Surveysと、1992~2007年のCurrent Population Survey Tobacco Supplementsの2つの調査結果で得られた、カリフォルニア州以外の米国内166万2,353人と、カリフォルニア州の13万9,176人の回答を基に分析を行った。その結果、1965年に1日20本以上喫煙する重度喫煙者は、米国カリフォルニア以外の地域では22.9%(95%信頼区間:22.1~23.6)だったのに対し、2007年には7.2%(同:6.4~8.0)に減少した。カリフォルニア州の同割合については、1965年の23.2%(同:19.6~26.8)から、2007年の2.6%(同:0.0~5.6)へとより減少幅は大きかった(p<0.001)。また、同期間の重度喫煙者の、喫煙者全体に占める割合は、カリフォルニア州を除く全米で56%から40%へと減少した。近年の出生コホートで、中程度~重度喫煙者の割合は減少1920~1929年の出生コホートでは、1日10本以上を喫煙する中程度~重度喫煙者の割合は、1965年時点で、カリフォルニア州以外の地域の割合で40.5%、カリフォルニア州で39.2%だった。同割合はその後の出生コホートでは減少した。1970~79年出生コホートでは高くなったが、カリフォルニア州以外の地域が18.3%、カリフォルニア州では9.7%だった。全コホートでみると、高齢者での中程度~重度喫煙者の割合の大幅な減少が認められた。特にカリフォルニア州でその割合は大きかった。また1970~79年出生コホートの35歳での同率は、カリフォルニア州以外の地域で13.5%、カリフォルニア州で4.6%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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肥満を加味しても、心血管疾患リスク予測能は向上しない:約22万人の解析

欧米、日本などの先進国では、心血管疾患の従来のリスク因子である収縮期血圧、糖尿病の既往歴、脂質値の情報がある場合に、さらに体格指数(BMI)や腹部肥満(ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比)のデータを加えても、リスクの予測能はさほど改善されないことが、イギリス・ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科に運営センターを置くEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)の検討で明らかとなった。現行の各種ガイドラインは、心血管疾患リスクの評価における肥満の測定は不要とするものから、付加的な検査項目とするものや正規のリスク因子として測定を勧告するものまでさまざまだ。これら肥満の指標について長期的な再現性を評価した信頼性の高い調査がないことが、その一因となっているという。Lancet誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月11日号)掲載の報告。58のコホート試験の個々の患者データを解析研究グループは、BMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比と心血管疾患の初発リスクの関連性の評価を目的にプロスペクティブな解析を行った。58のコホート試験の個々の患者データを用いて、ベースラインの各因子が1 SD増加した場合(BMI:4.56kg/m2、ウエスト周囲長:12.6cm、ウエスト/ヒップ比:0.083)のハザード比(HR)を算出し、特異的な予測能の指標としてリスク識別能と再分類能の評価を行った。再現性の評価には、肥満の指標の測定値を用いて回帰希釈比(regression dilution ratio)を算出した。むしろ肥満コントロールの重要性を強調する知見17ヵ国22万1,934人[ヨーロッパ:12万9,326人(58%)、北米:7万3,707人(33%)、オーストラリア:9,204人(4%)、日本:9,697人(4%)]のデータが収集された。ベースラインの平均年齢は58歳(SD 9)、12万4,189人(56%)が女性であった。187万人・年当たり1万4,297人が心血管疾患を発症した。内訳は、冠動脈心疾患8,290人(非致死性心筋梗塞4,982人、冠動脈心疾患死3,308人)、虚血性脳卒中2,906人(非致死性2,763人、致死性143人)、出血性脳卒中596人、分類不能な脳卒中2,070人、その他の脳血管疾患435人であった。肥満の測定は6万3,821人で行われた。BMI 20kg/m2以上の人では、年齢、性別、喫煙状況で調整後の、心血管疾患のBMI 1 SD増加に対するHRは1.23(95%信頼区間:1.17~1.29)であり、ウエスト周囲長1 SD増加に対するHRは1.27(同:1.20~1.33)、ウエスト・ヒップ比1 SD増加に対するHRは1.25(同:1.19~1.31)であった。さらにベースラインの収縮期血圧、糖尿病の既往歴、総コレステロール、HDLコレステロールで調整後の、心血管疾患のBMI 1SD増加に対するHRは1.07(95%信頼区間:1.03~1.11)、ウエスト周囲長1 SD増加に対するHRは1.10(同:1.05~1.14)、ウエスト/ヒップ比1 SD増加に対するHRは1.12(同:1.08~1.15)であり、いずれも年齢、性別、喫煙状況のみで調整した場合よりも低下した。従来のリスク因子から成る心血管疾患リスクの予測モデルにBMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比の情報を加えても、リスク識別能は大幅には改善されず[C-indexの変化:BMI -0.0001(p=0.430)、ウエスト周囲長 -0.0001(p=0.816)、ウエスト/ヒップ比 0.0008(p=0.027)]、予測される10年リスクのカテゴリーへの再分類能もさほどの改善は得られなかった[net reclassification improvement:BMI -0.19%(p=0.461)、ウエスト周囲長 -0.05%(p=0.867)、ウエスト/ヒップ比 -0.05%(p=0.880)]。再現性は、ウエスト周囲長(回帰希釈比:0.86、95%信頼区間:0.83~0.89)やウエスト/ヒップ比(同:0.63、0.57~0.70)よりもBMI(同:0.95、0.93~0.97)で良好であった。ERFCの研究グループは、「先進国では、心血管疾患の従来のリスク因子である収縮期血圧、糖尿病の既往歴、脂質値に、新たにBMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比の情報を加えても、リスクの予測能はさほど改善されない」と結論したうえで、「これらの知見は心血管疾患における肥満の重要性を減弱させるものではない。過度の肥満は中等度のリスク因子の主要な決定因子であるため、むしろ心血管疾患の予防における肥満のコントロールの重要性を強調するものだ」と注意を促している。(菅野守:医学ライター)

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中等症~最重症COPD患者の増悪予防に有効なのは?

中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の増悪予防には、LABA(長時間作用性β2刺激薬)のサルメテロール(商品名:セレベント)よりも、長時間作用性抗コリン薬のチオトロピウム(商品名:スピリーバ)のほうが有効であることが、7,300例超を対象とした1年間の無作為化二重盲検ダブルダミー並行群間比較試験の結果示された。COPD治療ガイドラインでは、同患者の症状軽減と増悪リスク低下に対して長時間作用性の吸入気管支拡張薬が推奨されているが、LABAもしくは長時間作用性抗コリン薬のいずれが推奨されるかは明らかではない。ドイツ・Giessen and Marburg大学病院Claus Vogelmeier氏ら「POET-COPD」研究グループは、長時間作用性抗コリン薬がLABAよりも優れているのかどうかを検討するため、25ヵ国725施設共同で本試験を行った。NEJM誌2011年3月24日号掲載より。チオトロピウム群とサルメテロール群に無作為化、初回増悪発生までの期間を主要エンドポイントに試験は、中等症~最重症COPD(40歳以上、喫煙10箱・年以上、GOLD II~IVなど)で前年に増悪の既往がある患者を対象とし、無作為に、チオトロピウム18μg・1日1回投与群もしくはサルメテロール50μg・1日2回投与群に割り付け、中等度~重度の増悪発作に対する治療効果を比較した。主要エンドポイントは、初回増悪発生までの期間とした。被験者は2008年1月から2009年4月の間、計7,376例(チオトロピウム群3,707例、サルメテロール群3,669例)が登録された。基線での両群被験者の特徴は均衡しており、おおよそ75%が男性、平均年齢63歳、現喫煙者48%、COPD歴8年などだった。チオトロピウム群のほうが42日間遅く、17%のリスク低下結果、初回増悪発生までの期間は、チオトロピウム群187日、サルメテロール群145日で、チオトロピウム群の方が42日間遅く、17%のリスク低下が認められた(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.77~0.90、P<0.001)。またチオトロピウム群のほうが、初回重度増悪の初回発生までの期間も延長(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.61~0.85、P<0.001)、中等度または重度増悪の年間発生回数の減少(0.64対0.72、発生率比:0.89、95%信頼区間:0.83~0.96、P=0.002)、重度増悪の年間発生回数の減少(0.09対0.13、発生率比:0.73、95%信頼区間:0.66~0.82、P<0.001)も認められた。なお重篤な有害事象、治療中止となった有害事象の発現率は、総じて両群で同程度だった。死亡例は、チオトロピウム群64例(1.7%)、サルメテロール群78例(2.1%)だった。(武藤まき:医療ライター)

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価値交換としての原発(なぜ医者の僕が原発の話をするか)

神戸大学感染症内科の岩田健太郎先生より、今回の原発事故について書かれた「価値交換としての原発(なぜ医者の僕が原発の話をするか)」を、先生のご厚意により転載させていただきました。僕は、感染症を専門にする内科医で原発の専門性はカケラほどもない。で、僕が原発についてなぜ語るのかをこれから説明する。池田信夫氏の説明は明快で傾聴に値する。たしかに、日本における原発の実被害は人命でいうとゼロ東海村事故(核燃料加工施設)を入れても2名である。自動車事故で死亡するのが年間5千人弱である。これは年々減少しているから、過去はもっと沢山の人が「毎年」交通事故で命を失ってきた。タバコに関連した死者数は年間10万人以上である。原発に比べると圧倒的に死亡に寄与している。今後、福島原発の事故が原因で亡くなる方は出てくる可能性がある(チェルノブイリの先例を考えると)。しかし、毎年出しているタバコ関連の死者に至ることは絶対にないはずだ。今後どんな天災がやってきて原発をゆさぶったとしても、毎年タバコがもたらしている被害には未来永劫、届くことはない(はず)。1兆ワット時のエネルギーあたりの死者数は石炭で161人、石油で36人、天然ガスで4人、原発で0.04人である。エネルギーあたりの人命という観点からも原発は死者が少ない。池田清彦先生が主張するように、ぼくも温暖化対策の価値にはとても懐疑的だが、かといって石炭に依存したエネルギーではもっとたくさんの死者がでてしまうので、その点では賛成できない。池田氏のようにデータをきちんと吟味する姿勢はとても大切だ。感傷的でデータを吟味しない(あるいは歪曲する)原発反対論は、説得力がない。しかし、(このようなデータをきちんと吟味した上で)それでも僕は今後日本で原発を推進するというわけにはいかないと思う。池田氏の議論の前提は「人の死はすべて等価である」という前提である。しかし、人の死は等価ではない、と僕は思う。人は必ず死ぬ。ロングタームでは人の死亡率は100%である。だれも死からは逃れられない。もし人の死が「等価」であるならば、誰もはいつかは1回死ぬのだから(そして1回以上は死なないのだから)、みな健康のことなど考えずに自由気ままに生きれば良いではないか(そういう人もいますね)。自動車事故で毎年何千人も人が死ぬのに人間が自動車を使うのを止めないのは、人間が自動車事故による死亡をある程度許容しているからだ。少なくとも、自動車との接触をゼロにすべく一切外出しないという人か、自動車にぶつかっても絶対に死なないと「勘違いしている」人以外は、半ば無意識下に許容している。少なくとも、ほとんどの自宅の隣に原発ができることよりもはるかに、我々は隣で自動車が走っていることを許容している。それは自動車があることとその事故による死亡の価値交換の結果である。原発は、その恩恵と安全性にかかわらず、うまく価値交換が出来ていない。すくなくとも311以降はそうである。我々は(たとえその可能性がどんなに小さくても)放射線、放射性物質の影響で死に至ることを欲していない。これは単純に価値観、好き嫌いの問題である。医療において、「人が死なない」ことを目標にしても人の死は100%訪れるのだから意味がない。医療の意味は、人が望まない死亡や苦痛を被らないようにサービスを提供する「価値交換」であるとぼくは「感染症は実在しない」という本に書いた。このコンセプトは今回の問題の理解にもっとも合致していると思う。喫煙がこれだけ健康被害を起しているのに喫煙が「禁止」されないのは、国内産業を保護するためでも税収のためでもないと僕は思う(少なくともそれだけではないと思う)。多くの国民はたばこが健康に良くないことを理解している。理解の程度はともかく、「体に悪くない」と本気で思っている人は少数派である。それでも多くの人は、タバコによる健康被害とタバコから受ける恩恵を天秤にかけて、そのリスクを許容しているのである。禁煙活動に熱心な医療者がその熱意にもかかわらず(いや、その熱意ゆえに)空回りしてしまうのは、医療の本質が「価値交換」にあることを理解せず、彼らが共有していない、自分の価値観を押し売りしようとしてしまうからくる不全感からなのである。僕たち医療者も案外、健康に悪いことを「許容」していることに自覚的でなければならない。寝不足、過労、ストレス、栄養過多、車の運転、飲酒、セックスなどなどなど。これらを許容しているのは僕らの恣意性と価値観(好み)以外に根拠はない。自分たちが原理的に体に良くないことをすべて排除していないのに、他者に原理的にそうあることを強要するのは、エゴである。僕は、医療者は、あくまでも医療は価値の交換作業であることに自覚的であり、謙虚であるべきだと思う。こんなことを書くと僕は「喫煙推進派である」とかいって責められる(かげで書き込みされる)ことがあるが、そういうことを言いたいのではない。もし日本の社会がタバコによる健康被害を価値として(好みとして)許容しなくなったならば、そのときに日本における喫煙者は激減するだろう。それはかつて許容されていたが今は許容されないリスク、、、例えばシートベルトなしの運転とか、お酒の一気飲みとか、飲酒運転とか、問診表なしの予防接種とか、、、の様な形でもたらされるだろう。禁煙活動とは、自らの価値観を押し付けるのではなく、他者の価値観が自主的に変換されていくことを促す活動であるべきだろう。かつては社会が許容したお酒の一気飲みや飲酒運転が許容されなくなったように。そんなわけで、原発もあくまでも価値の交換作業である。原発反対派の価値観は共有される人とされない人がいる。原発推進派も同様だ。そのバランスが原発の今後を決めると僕は思う。原発反対派も推進派も、究極的には自分たちの価値観を基準にしてものごとを主張しているのだと認識すべきだ。そして、自分の価値観を押し付けるのではなく、他者の価値観に耳を傾けるべきである。なぜならば、原発の未来は日本の価値観の総意が決めるのであり、総意は「聴く」こと以外からは得られないからである。おそらくは、今の価値観(好み)から考えると、原発を日本で推進していくことを「好む」人は少なかろう。かといって電気がない状態を好む人も少ないと思う(他のエネルギーに代えることが必ずしも解決策ではなさそうなのは、先に述べた通り)。その先にあるのは、、、、ここからは発電の専門家の領域なので、僕は沈黙します。 《関連書籍》 感染症は実在しない―構造構成的感染症学 《その他の岩田健太郎氏の関連書籍》リスコミWORKSHOP! ― 新型インフルエンザ・パンデミックを振り返る第3回新型インフルエンザ・リスクコミュニケーション・ワークショップから

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心血管疾患ガイドラインの多くが、リスク因子のモニタリングに十分に言及せず

心血管疾患のガイドラインの中には、主要なリスク因子である脂質値、高血圧、喫煙に関するセクションを欠くものが多く、記述があっても十分でない場合が高率に及ぶことが、イギリス・オックスフォード大学プライマリ・ケア科のIvan Moschetti氏らによる調査で示された。心血管疾患の3つのリスク因子のモニタリングは、患者の予後、臨床的な判断、医療コストに大きな影響を及ぼす可能性がある。臨床ガイドラインの目的は、診断、患者管理、治療法の決定過程を標準化するために、最良のエビデンスに基づいてケアの質を全体的に向上させることだが、心血管疾患管理のガイドラインのほとんどがモニタリングを十分には取り扱っておらず、モニタリングの勧告について系統的になされた検討はないという。BMJ誌2011年3月19日号(オンライン版2011年3月14日号)掲載の報告。リスク因子のモニタリングの記述を系統的にレビュー研究グループは、心血管疾患の予防や治療に関するガイドラインで勧告されているモニタリングの記述の妥当性を評価するために系統的なレビューを行った。Medline、Trip database、National Guideline Clearinghouseなどのデータベースを検索し、2002年1月~2010年2月の間に新規に、あるいは改訂版が公表されたガイドラインのうち、心血管疾患の主要リスク因子である脂質値、高血圧、喫煙に関する記述を含むものを抽出した。主要評価項目は、ガイドラインにおけるリスク因子のモニタリングの取り扱い頻度とした。また、モニタリング勧告の完全性を評価するために、モニタリングすべき項目やその時期、異常値を示す場合の対処法、さらにエビデンスレベルが明記されているか否かについて検討した。エビデンスがない場合はその旨を明記し、必要な研究を示すべき選択基準を満たした117のガイドラインのうち、脂質値に関するセクションを設けていたのは84(72%)だった。そのうち44(53%)にはモニタリングすべき項目に関する情報や具体的な勧告の記述がなく、43(51%)はいつモニタリングすべきかの情報を記述しておらず、54(64%)は正常値でない場合に実施すべき対処法に関する指針を記載していなかった。高血圧に関するセクションを設定していたガイドラインは79(68%)、喫煙については65(56%)にすぎず、それぞれ50(63%)、35(54%)のガイドラインにはモニタリングすべき項目の記述がなかった。エビデンスのレベルを明記したガイドラインは少なく、ほとんどの勧告がレベルの低いエビデンスに基づいていた。著者は、「心血管疾患のガイドラインの多くにはモニタリングすべき項目や、異常値が検出された場合の指針の記述がなかった」とし、「特定のモニタリングを支持するエビデンスがない場合は、その旨をガイドラインに明記すべきであり、この欠落を埋めるために必要とされる新たな研究について記述すべき」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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50歳以上の乳がんリスク、喫煙者で有意に増大、間接喫煙者でも増大示唆

閉経後女性における喫煙と侵襲性乳がんリスクとの関連について、直接喫煙者では有意なリスク増大が認められ、間接喫煙者でも増大が示唆されることが、米国・ウエスト・バージニア大学Mary Babb RandolphがんセンターのJuhua Luo氏らによる前向きコホート試験「Women's Health Initiative Observational Study」の結果、明らかにされた。BMJ誌2011年3月5日号(オンライン版2011年3月1日号)掲載より。乳がんリスク、非喫煙者と比べ元喫煙者1.09倍、現喫煙者1.16倍試験には、米国内40ヵ所のクリニックセンターから、1993~1998年の間に50~79歳の女性7万9,990例の被験者が登録した。主要評価項目は、自己報告による能動的または受動的喫煙状況、病理学的に診断された侵襲性乳がんとした。平均10.3年の追跡期間で、侵襲性乳がんと診断されたのは3,520例だった。非喫煙者と比べ、乳がんリスクは、元喫煙者は9%高く(ハザード比:1.09、95%信頼区間:1.02~1.17)、現喫煙者は16%高かった(同:1.16、1.00~1.34)。子どもの時から間接喫煙に曝露された最大曝露群、非間接喫煙群の1.32倍喫煙本数が多く、喫煙歴も長い能動的喫煙者、また喫煙開始年齢が10代であった人における乳がんリスクが有意に高かった。乳がんリスクが最も高かったのは、50歳以上の喫煙者で、生涯非喫煙者と比べ1.35倍(同:1.35、1.03~1.77)、生涯非喫煙者で非間接喫煙者と比べると1.45倍(同:1.45、1.06~1.98)だった。禁煙後も20年間、乳がんリスクは増大した。非喫煙者では、潜在的交絡因子補正後、間接喫煙曝露が最も多かった人(子どもの時に10年以上、成人後家庭内で20年以上、成人後職場で10年以上)の乳がんリスクは、間接喫煙曝露がなかった人に比べて32%超過(ハザード比:1.32、95%信頼区間:1.04~1.67)が認められた。しかし、その他の低曝露群との有意な関連は認められなかった。間接喫煙の累積に対するレスポンスも不明であった。

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糖尿病は独立リスク因子として血管疾患以外にも、がん、感染症などの早期死亡に関連する

糖尿病や高血糖が、がんやその他非血管系の疾患による死亡リスクと、どの程度関連しているのか明らかではなく、たとえば米国糖尿病学会、米国がん学会の共同コンセンサス・ステートメントでも不明であるとしている。英国ケンブリッジ大学のSeshasai SR氏らThe Emerging Risk Factors Collaboration(ERFC)は、糖尿病、空腹時血糖値と特異的死亡との関連について信頼たり得る評価を提供することを目的とした研究グループで、成人における糖尿病の寿命に対する影響を前向きに調査した結果を報告した。NEJM誌2011年3月3日号掲載より。糖尿病者の全死因死亡リスクは、非糖尿病者と比べ1.8倍ERFCが解析したのは、97件の前向き研究に参加した82万900例の被験者(平均年齢55±9歳、女性48%、ヨーロッパで登録58%、北米で登録36%)のうち、12万3,205例の死亡例(死亡までの期間中央値13.6年)に関するデータで、ベースラインの糖尿病の状態、空腹時血糖値に従い、死因別死亡のリスク(ハザード比)を算出した。結果、年齢、性、喫煙状況とBMIで補正後、糖尿病を有さない人(非糖尿病者)と比較した糖尿病を有する人(糖尿病者)のハザード比は、全死因死亡が1.80(95%信頼区間:1.71~1.90)、がんによる死亡1.25(同:1.19~1.31)、血管系の疾患による死亡2.32(同:2.11~2.56)、その他の原因による死亡1.73(同: 1.62~1.85)であった。50歳の糖尿病者、非糖尿病者より平均6年短命糖尿病者は非糖尿病者と比較して、肝臓、膵臓、卵巣、大腸、肺、膀胱、乳房のがんによる死亡と中程度の関連がみられた。また、がん、血管系疾患以外の、腎疾患、肝疾患、肺炎、その他感染症による死亡や、精神疾患、肝臓以外の消化器疾患、外因、意図的な自傷行為、神経系障害、さらに慢性閉塞性肺疾患による死亡とも関連していた。ハザード比は、血糖値による補正後は大幅に低下したが、収縮期血圧、脂質レベル、炎症マーカー、腎機能マーカーの値による補正では低下しなかった。一方、空腹時血糖値については、同値が100mg/dL(5.6mmol/L)を上回る場合は死亡との関連がみられたが、70~100mg/dL(3.9~5.6mmol/L)では死亡との関連はみられなかった。また、50歳の糖尿病者は非糖尿病者より平均6年早く死亡していた。その差の約40%は非血管系の疾患に起因していることも明らかになった。これらから研究グループは、「糖尿病は、いくつかの主要な危険因子とは独立して、血管疾患に加えて、いくつかのがん、感染症、外因、意図的な自傷行為、変性疾患による相当な早期死亡と関連する」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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増税でもやっぱりタバコはやめられない?!

楽天リサーチ株式会社は24日、たばこ税増税に関する継続調査の結果を発表した。2010年10月にたばこ税増税が実施され、たばこの価格は大幅な値上げとなった。増税から3ヵ月が経過したが、喫煙者に変化はみられるのかどうか、同社では、2010年9月末時点での喫煙者に対し、増税後1ヵ月ごとに喫煙状況を調査した。たばこ税増税後の喫煙状況を比較してみたところ、9月末時点での喫煙者については3ヵ月後も大きな変化はみられなかった。9月末時点では喫煙していたが「増税をきっかけに禁煙を検討」した人のうち、実際に禁煙している人は約13%で推移している。しかしながら、9月末時点ですでに「増税をきっかけに喫煙を中止した」人については、3ヵ月後には18.9%の人が喫煙をしており、16.3ポイントも増加した。また、9月末の時点で増税をきっかけに「たばこをやめる」との意向があった人でも、喫煙率は徐々に上昇しているという。各調査時点での喫煙者に対し、たばこ税増税前後で比較して喫煙本数が減ったかどうかを聞いたところ、9月末時点から継続して喫煙している人では、一貫して約40%が本数を減らしていることがわかった。やめるつもりはないが増税は負担であり、節約しながら喫煙を継続している様子がうかがえる。一方、増税を機に禁煙を検討、もしくはその意向があった人については、喫煙本数が「減った」と回答した人は徐々に増加の傾向にある。禁煙しようと試みたものの禁煙できず、本数を減らして喫煙を復活していることが考えられるとのこと。各調査時点での喫煙者に今後の喫煙意向を聞いたところ、増税後3ヵ月間でたばこを「やめる」ことをあきらめている傾向にあるようだという。特に、9月末時点ですでに禁煙していた人、禁煙を検討していた人ではいずれも16.3ポイントも減少している。ただし、9月末時点での喫煙者全体をみてみると、各調査時点で「今後やめる」「やめた」を選択した人は、増税後3ヵ月間で「今まで通りの本数を吸う」と、元に戻っているのに対し、9月末時点で「たばこを吸うのをやめる」と回答した禁煙意向者は、禁煙を継続できなかった後ろめたさからか、喫煙しつつも、今まで通りの本数は吸わずに「吸う本数を減らす」ことに転換していることがうかがえるという。詳細はこちらへhttp://research.rakuten.co.jp/report/20110124/

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βアミロイド42/40濃度が低いと、認知機能低下が促進

血漿中のβアミロイド42/40濃度が低い人は、高い人に比べ、認知機能の低下が促進することが明らかにされた。その傾向は、認知的予備力の低い人ほど強いことも示された。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神科部門のKristine Yaffe氏らが、地域在住の高齢者997人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。βアミロイド42/40濃度と認知症発症との関連は知られているが、否定的な報告もあり、また認知症ではない高齢者における検討はほとんどされていなかった。βアミロイドβアミロイド42、42/40濃度と3MSスコアとの関連を検討Yaffe氏らは、1997~1998年に地域在住の高齢者997人について試験を開始し、2006~2007年まで10年間前向きに追跡した。被験者はメンフィス、テネシー、ピッツバーク(ペンシルベニア州)に住む70~79歳の黒人および白人の高齢者で「Health ABC Study」の登録者だった。試験開始時点の被験者の平均年齢は74.0歳、うち女性は550人(55.2%)だった。試験開始後、初回の追跡調査時点(中央値:53.4週後)で採血し保存していたサンプルを用い、血漿中のβアミロイド42とβアミロイド42/40を測定した。試験開始後1年、3年、5年、8年、10年の時点で、改定ミニメンタルステート検査(3MS)を行い認知能力の低下について分析した。βアミロイド42/40濃度の最低三分位範囲で、3MSスコア低下幅が有意に増大結果、βアミロイド42/40濃度が最も高い三分位範囲の群では、9年間の3MSスコアの低下幅は-3.60ポイント(95%信頼区間:-2.27~-4.73)だったのに対し、同濃度の最も低い三分位範囲の群では、同低下幅は-6.59ポイント(同:-5.21~-7.67)、中間の三分位範囲の群では-6.16ポイント(同:-4.92~-7.32)と、有意な関連が認められた(p<0.001)。この関連は、年齢や人種、教育程度、糖尿病、喫煙、アポリポ蛋白Ee4の有無で補正し、認知症の認められた72人を除いた後も、変わらなかった。しかし関連は、高校卒業者、6年制卒以上の教養がある、アポリポ蛋白Ee4対立遺伝子がない、といった認知的予備力の高い群では弱まった。たとえば、高校を卒業していない人の同スコア低下幅は、βアミロイド42/40の最も高い三分位範囲群が-4.45ポイントに対し、最も低い三分位範囲群は-8.94ポイントだったが、一方で高校卒業以上の学歴のある人の同スコア低下幅は、βアミロイド42/40の最も高い三分位範囲群が-2.88ポイントに対し、最も低い三分位範囲群は-4.60ポイントで格差はより小さかった(相互作用p=0.004)。教養の有無(p=0.005)、アポリポ蛋白Ee4対立遺伝子の有無(p=0.02)でも同様の関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデル

新たに開発されたQRISKの心血管疾患に関する生涯リスクスコア(http://www.qrisk.org/lifetime/)は、従来のQRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定を可能にすることが、イギリス・Nottingham大学プライマリ・ケア科のJulia Hippisley-Cox氏らの検討で示された。QRISK2などのリスク予測アルゴリズムは、通常、心血管疾患の10年絶対リスク≧20%の場合に高リスク例と判定しているが、この20%という閾値では、若年者のうち10年絶対リスクは低いものの相対的に高リスクな例を見逃す懸念がある。生涯リスクによる予測は、特に若年例についてより多くの情報をもたらし、マネジメントの決定やライフスタイルの改善に役立つ可能性があるという。BMJ誌2011年1月8日号(オンライン版2010年12月9日号)掲載の報告。ルーチンのプライマリ・ケア・データを用いた前向きコホート試験研究グループは、心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデルを開発し、その妥当性を検証、評価するためのプロスペクティブなコホート試験を実施した。解析には、イングランドとウェールズの一般医(GP)563名からルーチンに登録されたQResearchデータベースのプライマリ・ケア・データを用いた。対象は、1994年1月1日~2010年4月30日までに登録された30~84歳の患者で、心血管疾患の既往歴がなく、スタチンの処方歴がない例とした(導出コホート:234万3,759例、検証コホート:126万7,159例 )。生涯リスクの推算に用いた因子は、喫煙状況、人種、収縮期血圧、総コレステロール/HDLコレステロール比、BMI、冠動脈心疾患の家族歴(60歳未満で発症した一親等内の親族の有無)、Townsend貧困スコア、治療中の高血圧、関節リウマチ、慢性腎疾患、2型糖尿病、心房細動であった。生涯リスクに基づく介入が有益か否かは、さらなる検討を要する検証コホート126万7,159例のデータセットの解析では、生涯リスクが50パーセンタイルの場合の心血管疾患の生涯リスクは31%であり、75パーセンタイルの場合は39%、90パーセンタイルでは50%、95パーセンタイルでは57%であった。検証コホートにおいて生涯リスクモデルあるいは10年リスクモデルのいずれかでリスクが最上位の10%に相当すると判定された例のうち、双方のモデルのどちらもが高リスクと判定した例は14.5%(1万8,385例)にすぎなかった。10年リスクモデルで高リスクと判定された例に比べ、生涯リスクモデルで高リスクと判定された患者は、より若く、少数民族に属する例が多く、冠動脈心疾患の家族歴を有する傾向が強かった。著者は、「新たなQRISKの生涯リスクスコアを用いれば、QRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定が可能になる」と結論する一方で、「より若い年代でのライフスタイルへの介入は有益な可能性があるが、65歳未満ではその恩恵は小さく、薬物による介入には薬物そのもののリスクが伴う。今後、生涯リスクスコアに基づく介入の費用効果や、このアプローチが許容可能か否かにつき、詳細な検討を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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低用量アスピリンの常用、がん死リスクを長期に抑制

低用量アスピリンの毎日服用により、食道がん、膵がん、肺がん、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんなどの主要ながんによる死亡が有意に抑制されることが、イギリス・オックスフォード大学脳卒中予防研究部門のPeter M Rothwell氏らが実施した血管イベント予防に関する無作為化試験のメタ解析で示された。すでに、アスピリンを5年以上毎日服用すると結腸・直腸がんのリスクが低減することが無作為化試験などで示されている。加えて、アスピリンは他臓器のがん、特に消化管のがんのリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスがあるが、ヒトでは確証されていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年12月7日号)掲載の報告。アスピリン治療が平均4年以上の無作為化試験が対象研究グループは、血管イベントの予防効果に関してアスピリンと対照を比較した無作為化試験の、試験期間中および試験後のがん死について調査を行った。平均治療期間が4年以上にわたるアスピリン常用(毎日服用)例とアスピリン非服用例を比較した無作為化試験の個々の患者データを用い、予定治療期間との関連において消化器がんまたは非消化器がんによる死亡のリスクに及ぼすアスピリンの効果を評価した。イギリスの3つの大規模試験では、死亡診断書およびがんレジストリーから、個々の患者の試験終了後の長期フォローアップ・データが得られ、これを用いて20年がん死リスクの評価を行った。日本のJPAD試験を含む8試験、約2万5,500例の解析で、がん死リスクが21%低下適格基準を満たした8つの試験(BDAT、UK-TIA、ETDRS、SAPAT、TPT、JPAD、POPADAD、AAA試験に参加した2万5,570例、がん死674例)では、アスピリン群でがん死が有意に低下していた[オッズ比:0.79(95%信頼区間:0.68~0.92)、p=0.003]。SAPAT試験を除く7試験(2万3,535例、がん死657例)から得られた個々の患者データの解析では、明確なアスピリンのベネフィットはフォローアップ期間が5年を経過した後に認められた[全がんのハザード比:0.66(95%信頼区間:0.50~0.87)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.46(95%信頼区間:0.27~0.77)、p=0.003]。20年間にがんで死亡するリスク(3試験の1万2,659例、死亡1,634例)はアスピリン群が対照群に比べて有意に低く[全固形がんのハザード比:0.80(95%信頼区間:0.72~0.88)、p<0.0001、消化器がんのハザード比:0.65(同:0.54~0.78)、p<0.0001]、ベネフィットは治療期間が長くなるに従って増大した[治療期間≧7.5年における全固形がんのハザード比:0.69(95%信頼区間:0.54~0.88)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.41(同:0.26~0.66)、p=0.0001]。死亡リスクの抑制効果が現れるまでの治療期間は、食道がん、膵がん、脳腫瘍、肺がんが約5年であったが、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんではさらに長期間を要した。肺がんと食道がんではベネフィットは腺がんに限られ、全体の20年がん死リスクの抑制効果は腺がんで最も大きかった[ハザード比:0.66(95%信頼区間:0.56~0.77)、p<0.0001]。ベネフィットはアスピリンの用量(75mg超)、性別、喫煙状況とは関連しなかったが、無作為割り付け時の年齢が高いほど改善され、20年がん死の絶対リスクの低下率は55歳未満が1.41%、55~64歳が4.53%、65歳以上は7.08%に達しており、全体では3.49%であった。著者は、「低用量アスピリンの毎日服用により、試験期間中および終了後において、いくつかの主要ながんによる死亡が抑制された。ベネフィットは治療期間が長くなるほど増大し、個々の試験を通じて一貫していた」と結論し、「これらの知見は、アスピリンの使用ガイドラインや、発がんおよび薬剤に対するがんの感受性のメカニズムの解明において重要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高齢者の余命予測に歩行速度が有効

 歩行速度が高齢者の余命予測に有効であるとの研究結果が示された。歩行速度と生存率に有意な相関が認められたという。米国ピッツバーグ大学老年医学部門のStephanie Studenski氏らが、高齢者約3万5,000人について行った研究で明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月5日号で発表した。高齢者の歩行速度と生存率について追跡・解析を行った 同研究グループは、65歳以上の高齢者を対象に1986~2000年に行われた9コホート試験について、歩行速度と生存率について追跡・解析を行った。被験者は地域で暮らす合計3万4,485人で、追跡期間は6~21年だった。 被験者の平均年齢は73.5歳(SD 5.9)、うち59.6%が女性、79.8%が白人で、平均歩行速度は0.92m/秒だった。 追跡期間中に死亡したのは、1万7,528人であった。5年生存率は84.8%(95%信頼区間:79.6~88.8)、10年生存率は59.7%(同:46.5~70.6)だった。高齢者の余命予測、歩行速度の正確性はほかの予測法と同等だった 高齢者の歩行速度と生存率との関連についてみたところ、すべての試験で歩行速度が増加するにつれて生存率が有意に上昇しており、0.1m/秒増加による年齢補正後余命ハザード比は試験により0.83~0.94(p<0.001)であった。試験全体の統合ハザード比は、0.88(同:0.87~0.90、p<0.001)だった。 75歳時点での10年予測生存率は、歩行速度によって男性は19%~87%、女性は35~91%を示した。 年齢、性別と歩行速度による余命予測は、年齢、性別と歩行補助具使用、自己申告による身体機能を基にした余命予測や、年齢、性別、慢性疾患、喫煙歴、血圧、BMI、入院歴を基にした余命予測のいずれと比較しても予測の正確性は同等だった。

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動脈硬化は心臓・頭以外にも起きるが、認知度は低い

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは12月27日、同社が行った「動脈硬化に関する意識」調査結果を発表した。この調査は2010年12月上旬、国内に居住する40~70歳代の男女800名に対してインターネット上で行われたもの。動脈硬化の危険因子有無について聞いたところ、「高血圧」が30.4%と最も多く、続いて「肥満」(24.1%)「脂質異常症」(18.1%)「喫煙習慣がある」(15.6%)「糖尿病」(11.8%)「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こした」(5.4%)の順となり、一つでも持っている人は64.5%にのぼった。この結果は、3人に2人が動脈硬化の危険因子を持っているということを示している。性別年代別で見た場合には、60代以上の男性においては8割が動脈硬化の危険因子を持っていることもわかった。動脈硬化が起きる部位として知っているものについて聞いたところ、「心臓」(86.9%)「頭」(77.6%)という回答が多かったのに対し、「足」(32.1%)「首」(29.8%)「腹部」(17.1%)「腎臓」(8.9%)は昨年の調査結果同様、わずか約3割程度にとどまった。また、動脈硬化が起きる部位によっては5年後の生存率ががんより低いことを知っていると回答した人は15.1%で、動脈硬化の危険因子を持つ人においても、認知度はわずか16.7%であった。同社は、「全身に起きる動脈硬化は、部位によっては症状が出にくい場合もあり、発見や遅れによりQOL(Quality Of Life)の低下や生命予後を悪化させるケースがあります」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2010/1227/index.html

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18~30歳から20年間、身体活動を活発に維持した人は、体重・ウエストが増えにくい

18~30歳の青年期から20年間にわたり身体活動を活発に維持した人は、体重・ウエスト周囲の増加が、そうでない人に比べ有意に抑制されていることが明らかになった。この傾向は特に、女性で顕著だったという。米国ノースウェスタン大学Feinberg校予防医学部門のArlene L. Hankinson氏らが、約3,500人について20年間追跡した「Coronary Artery Risk Development in Young Adults」(CARDIA)試験の結果から報告したもので、JAMA誌2010年12月15日号で発表した。これまでに、体重増リスクの最も高い時期についての身体活動と長期体重増予防との関連を調べた研究はほとんどないという。身体活動レベルが高い人の体重増加量は低い人に比べ、男性2.6kg、女性は6.1kg少ないHankinson氏らは、1985~86年に18~30歳であった3,554人について調査を開始し、その後2年、5年、7年、10年、15年と20年まで追跡した。身体活動レベルについては、調査時点の前年の活動について調べスコア化し、体重増とウエスト周囲増との関連について分析した。その結果、人種、調査開始時点のBMI、年齢、教育レベル、喫煙の有無、アルコール摂取、エネルギー摂取量について補正を行った後、身体活動レベルが高い三分位範囲の男性は、低い三分位範囲の男性に比べ、体重増加量は2.6kg少なかった。BMI単位の年間増加幅は、活動レベルが高い三分位範囲は0.15 BMI単位/年(95%信頼区間:0.11~0.18)だったのに対し、低い三分位範囲は0.20 BMI単位/年(同:0.17~0.23)だった。女性については、活動レベルが高い三分位範囲の体重増加量は、低い三分位範囲に比べ6.1kgも少なかった。またBMI単位の増加幅も、活動レベルが高い三分位範囲は0.17 BMI単位/年(95%信頼区間:0.12~0.21)だったのに対し、低い三分位範囲は0.30 BMI単位/年(同:0.25~0.34)だった。ウエスト周囲増加量は、男性3.1cm、女性3.8cm少ないまた、ウエスト周囲についても、男性では活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、増加量が3.1cm少なかった。年間増加量では、高い三分位範囲が0.52cm/年(95%信頼区間:0.43~0.61)に対し、低い三分位範囲は同0.67cm/年(同:0.60~0.75)だった。女性についても、活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、ウエスト周囲増加量が3.8cm少なかった。年間増加量では、高い三分位範囲が0.49cm/年(95%信頼区間:0.39~0.58)に対し、低い三分位範囲が同0.67cm/年(同:0.60~0.75)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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無煙タバコをやめたい人にも、禁煙補助薬バレニクリンは有効

 無煙タバコの常飲が多くの国で増加しているという。特に北欧ではその地位が確立しており、スウェーデンでは常飲者が逆転(19% vs. 11%)、ノルウェーでは16~35歳の32%が毎日無煙タバコを喫煙しているという。背景には、無煙タバコは有煙タバコより有害ではないと広く信じられていることがあり、そのことが禁煙補助薬の有効性の試験で無煙タバコに関する報告をみかけないことに反映されているとして、スウェーデンFagerstrom Consulting ABのKarl Fagerstrom氏らは、無煙タバコをやめたい人を対象に禁煙補助薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)の有効性と安全性について検討を行った。スウェーデンではタバコをやめたい人の約30%が無煙タバコ常飲者だという。BMJ誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月6日号)掲載より。無煙タバコ常飲者で禁煙希望者を対象、投与12週間+14週間の禁煙率を評価 試験は、ノルウェー7つ、スウェーデン9つの医療施設(大半はプライマリ・ケア診療所)で行われた二重盲検プラセボ対照パラレル群の多施設共同無作為化試験。 参加者は新聞で公募され、18歳以上男女で、無煙タバコを1日8回以上常飲し、スクリーニング前1年以内では3ヵ月以上禁煙していた期間がなく、完全に禁煙をしたいと思っている人を被験者とした。3ヵ月以内に、有煙タバコを除く他のニコチン含有製品を常飲していた人、禁煙治療を受けていた人、その他先行する疾患治療、精神疾患治療を受けていた人は除外された。 被験者は無作為に、バレニクリン1日2回1mg(最初の1週間は滴定)投与群もしくはプラセボ投与群に割り付けられ、12週間治療され、その後14週間追跡調査された。 主要エンドポイントは、治療最終4週間(9~12週)の禁煙率で、コチニン濃度で確認した。副次エンドポイントは、9~26週間の持続性の禁煙率であった。安全性と忍容性の評価も行われた。 無作為化後に1回以上の試験薬投与を受けた被験者は431例(バレニクリン群213例、プラセボ群218例)だった。被験者の実態的人口統計学的背景、ベースラインでの無煙タバコ消費に関するデータは両群で同等だった。たとえば、男性被験者の割合はバレニクリン群89%(189例)、プラセボ群90%(196例)、平均年齢は両群とも43.9歳、無煙タバコ常飲は両群とも1日約15回、寝起き30分以内に常飲する人は両群とも約80%など。治療9~12週のバレニクリン群禁煙率の相対リスク1.60、優位性はその後も持続 結果、治療最終4週間(9~12週)の禁煙率は、バレニクリン群の方が有意に高かった。禁煙率はバレニクリン群59%(125例)に対しプラセボ群39%(85例)で両群差20ポイント、相対リスク1.60(95%信頼区間:1.32~1.87、P<0.001)、治療必要数(NNT)は5例だった。 このバレニクリン群の優位性は治療後の追跡調査期間14週の間も持続した。9~26週間の禁煙率は、バレニクリン群45%(95例)に対しプラセボ群34%(73例)で両群差11ポイント、相対リスク1.42(95%信頼区間:1.08~1.79、P=0.012)、NNTは9例だった。 プラセボ群との比較でバレニクリン群で最も共通してみられた有害事象は、嘔気(35%対6%)、疲労感(10%対7%)、頭痛(10%対9%)、睡眠障害(10%対7%)であった。治療中断に至った有害事象の発生(9%対4%)、また重篤な有害事象の発生(1%対1%)は両群ともにわずかであった。 結果を受けてFagerstrom氏は、「バレニクリンは、無煙タバコをやめたい人の安全な助けとなる」と結論。また最後に「本試験では、プラセボ群の禁煙率が高かったが、それは禁煙に後ろ向きの人が少なかったためだ」とも述べている。

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地域ベースのCOPD予防・マネジメント介入で肺機能低下を抑制:中国

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙や空気汚染など複数の因子が重なって起きる慢性進行性の疾患であり、一つの因子への介入では十分な効果が得られない。これまで、早期ステージでの地域ベースの介入にはほとんど関心が示されていなかったが、中国・広州医科大学のYumin Zhou氏らグループが、COPDの早期予防とマネジメントを目的に、地域ベースの統合的介入がもたらす効果を評価するクラスター無作為化比較試験を行った。BMJ誌2010年12月4日号(オンライン版2010年12月1日号)掲載より。872例を統合的介入群と通常ケア群に割り付け追跡試験は、2地域8つの保健単位1,062例のうち試験適格・除外基準を満たした40~89歳の872例(COPD患者101例、非COPD患者771例)を、統合的介入プログラム群(介入群)または通常ケアプログラム群(対照群)に割り付け行われた。介入群には、体系的な保健教育、個別の集中的介入と治療、リハビリテーションが行われた。主要評価項目は、気管支拡張薬投与前の努力呼気1秒量(FEV1)の年低下率とした。FEV1の年低下率が介入群の方が有意に低い結果、FEV1の年低下率は、介入群の方が対照群よりも有意に低かった。補正後のFEV1の年低下率の差は19mL/年(95%信頼区間:3~36、P

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死亡率が最も低いのはBMI値20~25未満:白人成人146万人の解析

これまで、BMI値30.0以上の肥満と定義される人では、心血管疾患や脳卒中、その他特異的がんによる死亡率が増大することが立証されていたが、全死因死亡率との関連については明らかにされていなかった。そこで米国立がん研究所 疫学・遺伝学部門のAmy Berrington de Gonzalez氏ら研究グループは、19の前向き試験に参加した白人成人146万人のデータを集め解析した。NEJM誌2010年12月2日号掲載より。白人成人146万人のデータを解析解析対象となった19の試験は、米国立がん研究所Cohort Consortiumに登録された前向き試験で、1970年以後を基線とし、追跡期間5年以上、各試験の被験者死亡に1,000例以上の非ヒスパニック系白人を含むものだった。基線での、身長、体重、喫煙データがあり、既往歴(メラノーマ以外のがん、心疾患)、飲酒、教育レベル、婚姻状況、身体活動に関する情報があった。解析された被験者は、19~84歳(中央値58歳)の白人成人146万人分のデータで、年齢、参加していた研究、身体活動、飲酒、教育、婚姻状況で補正後、Cox回帰分析を用いて、BMI値と全死因死亡率との関連についてのハザード比と95%信頼区間を推定した。BMI値と全死因死亡率はJ字型曲線の関連被験者の基線におけるBMI中央値は、26.2だった。追跡期間中央値10年(5~28年)の間に、16万87例が死亡していた。非喫煙者の健常者についてみたところ、BMI値と全死因死亡率とにはJ字型曲線の関連が認められた。BMI値22.5~24.9階層群を基準とした、女性の、BMI値とのハザード比(95%信頼区間)は以下であった。 ・15.0~18.4階層群 1.47(1.33~1.62)・18.5~19.9階層群 1.14(1.07~1.22)・20.0~22.4階層群 1.00(0.96~1.04)・25.0~29.9階層群 1.13(1.09~1.17)・30.0~34.9階層群 1.44(1.38~1.50)・35.0~39.9階層群 1.88(1.77~2.00)・40.0~49.9階層群 2.51(2.30~2.73)男性のハザード比も女性と同等だった。また20.0未満のハザード比は、追跡期間が長期となるにつれ小さくなっていた。Gonzalez氏は、「白人成人では、過体重と肥満、そしておそらく低体重も、全死因死亡率の上昇と関連する。概して全死因死亡率は、BMI値20.0~24.9階層群で最も低い」と結論している。なお、米国では成人の3分の2が、その他先進諸国では半数以上が、過体重もしくは肥満であるという。(武藤まき:医療ライター)

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プライマリ・ケアで、高血圧の検出率が高い地域は冠動脈疾患死亡率が低い

プライマリ・ケアで高血圧の検出率が高い地域では、冠動脈疾患(CHD)死亡率が低いことが、英国Leicester大学保健科学部門のLouis S. Levene氏らの調査で明らかになった。英国内各地域でプライマリ・ケアを担う152ヵ所のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)を対象に住民ベースの調査を行い明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表された。英国では2000年に、「2010年までに75歳未満のCHD死亡率を5分の2に引き下げる」との目標を立て、すでに実現したのだが、PCT間のCHD死亡率に格差があるという。調査は、格差の要因を見つけることを目的に行われた。CHD死と、各トラストの集団特性、医療サービス特性との関連を分析研究グループは、英国内152のPCT(2008年時点の登録患者数:5,430万人)について、2006~2008年のCHDの年齢調整死亡率と、各PCTの集団特性(貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合)や提供する医療サービス特性(プライマリ・ケアサービス提供量、高血圧検出率、P4Pデータ)との関連について、階層的回帰分析を行った。CHDの年齢調整死亡率は、ヨーロッパ基準人口10万当たり2006年が97.9人(95%信頼区間:94.9~100.9)、2007年が93.5人(同:90.4~96.5)、2008年が88.4人(同:85.7~91.1)だった。年間の減少率は、10万人当たり約5人だった。貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合と正の相関、高血圧検出率と負の相関調査期間3年間を通じて、集団特性のうち、貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合の4項目が、CHD死亡率と正の相関が認められた。一方で、医療サービス特性のうち、高血圧検出率が、同死亡率と負の相関が認められた(各年の補正後決定係数は、2006年がr2=0.66、2007年がr2=0.68、2008年がr2=0.67)。なお、人口10万人当たりのプライマリ・ケア医数やスタッフの労働時間など、その他の医療サービス特性とCHD死亡率には、有意な相関は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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大腸がん予防には5つの推奨生活習慣を遵守すること

運動、腹囲、喫煙、飲酒、食生活という5つの生活習慣に関する推奨勧告を遵守すると、大腸がんリスクを相当に減らせる可能性があることが、デンマークがん協会がん疫学研究所のHelene Kirkegaard氏らにより報告された。デンマークの中高年約5万5千人を対象とした前向きコホート試験の結果によるもので、約10年間で大腸がんになった678人のうち、5つの生活習慣を遵守すれば予防できたと思われた人は23%を占めていたという。BMJ誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月26日号)掲載より。50~64歳のデンマーク人男女5万5,487人を追跡調査試験は、推奨値の評価が簡易な5つの生活習慣指標達成と大腸がん発生との関連、およびそれらの生活習慣を遵守しないことが大腸がん発生に及ぼす影響の度合いについて調査をすることを目的に行われた。対象は、デンマークのコペンハーゲンおよびオーフスの住民で、1993~1997年時点で50~64歳、がん診断歴のなかった男女5万5,487人だった。主要評価項目は、生活習慣指標5つのうちの達成数と大腸がんリスクとの関連とした。生活習慣指標は、運動(前年の週当たりの平均身体活動時間で余暇〈スポーツ、サイクリング、ウォーキング〉と職業の身体活動度を聴取)、腹囲(基線で専門家が測定)、喫煙(有無を聴取)、飲酒(1週間の酒量)、食生活(1日の果物、野菜、赤身加工肉、食物繊維、エネルギーの摂取量)で、Cox回帰モデルを用いて評価が行われた。5つ遵守していたら23%が大腸がんを予防できた可能性追跡期間中央値9.9年の間に、大腸がんとの診断を受けた人は、男女合わせて678人だった。潜在的交絡因子で補正後、5つの指標のうち獲得指標数が1つ増えるごとに、大腸がんリスクが低下する相関が認められた(発生率比:0.89、95%信頼区間:0.82~0.96)。大腸がんになった人の中で、遵守できる指標を1つ増やすことができ1~4つの指標を遵守していたら大腸がんにならなかった可能性がある人は、13%(同:4~22)だった。5つすべてを遵守していたら、23%(同:9~37)が大腸がんを予防できた可能性があった。なお結果の傾向は結腸、直腸と部位別にみても同等だったが、統計学的に結腸が有意だった。試験結果を受けKirkegaard氏らは、「簡易な生活習慣指標が、公衆衛生では有用となる」とまとめている。

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