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太っていないNAFLD患者で心血管リスク高い

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は心血管疾患(CVD)発症のリスク因子として知られている。NAFLDの約20%は非肥満者に発症するが、過体重でないNAFLD患者とCVD発症リスクとの関連はまだ解明されていない。今回、京都府立医科大学の橋本 善隆氏らが、わが国のコホート研究の事後解析で調査したところ、過体重でないNAFLD患者でCVD発症リスクが高いことが示された。著者らは、さらなるCVDイベントを防ぐために、過体重でなくともNAFLDに注意を払うべきとしている。Medicine誌2017年5月号に掲載。 本研究は、日本人1,647人の前向きコホート研究の事後解析である。腹部超音波検査を用いてNAFLDを診断した。過体重はBMI≧23と定義し、参加者をNAFLDおよび過体重がどうかによって4つの表現型に分類した。これらの表現型におけるCVD発症のハザードリスクを、ベースライン時の年齢、性別、喫煙状況、運動、高血圧、高血糖、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロールについて調整後、Cox比例ハザードモデルにて算出した。 主な結果は以下のとおり。・CVD発症率は、NAFLDでも過体重でもない人で0.6%、NAFLDだが過体重ではない人で8.8%、NAFLDではないが過体重の人で1.8%、NAFLDかつ過体重の人で3.3%であった。・NAFLDでも過体重でもない人と比較したCVD発症の調整ハザード比は、NAFLDだが過体重ではない人で10.4(95%信頼区間:2.61~44.0、p=0.001)、NAFLDではないが過体重の人で1.96(同:0.54~7.88、p=0.31)、NAFLDかつ過体重の人で3.14(同:0.84~13.2、p=0.09)であった。

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カナグリフロジン、CVリスク低下の一方で切断リスクは上昇/NEJM

 心血管疾患リスクが高い2型糖尿病に対し、SGLT2阻害薬カナグリフロジンの投与は、心血管リスクを約14%低減するものの、一方で足指や中足骨などの切断術リスクはおよそ2倍に増大することが明らかになった。オーストラリア・George Institute for Global HealthのBruce Neal氏らが、30ヵ国、1万例超を対象に行った2つのプラセボ対照無作為化比較試験「CANVAS」「CANVAS-R」の結果を分析し明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2017年6月12日号で発表した。平均188週間追跡し、心血管アウトカムを比較 試験は、30ヵ国、667ヵ所の医療機関を通じ、年齢30歳以上で症候性アテローム心血管疾患歴がある、または年齢50歳以上で(1)糖尿病歴10年以上、(2)1種以上の降圧薬を服用しながらも収縮期血圧140mmHg超、(3)喫煙者、(4)微量アルブミン尿症または顕性アルブミン尿症、(5)HDLコレステロール値1mmol/L未満、これらの心血管リスク因子のうち2項目以上があてはまる、2型糖尿病の患者1万142例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に割り付け、カナグリフロジン(100~300mg/日)またはプラセボをそれぞれ投与し、平均188.2週間追跡した。主要アウトカムは、心血管疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のいずれかの複合だった。 被験者の平均年齢は63.3歳、女性は35.8%、平均糖尿病歴は13.5年だった。心血管イベントリスクは約14%減、一方で切断術リスクは2倍 主要アウトカムの発生率は、プラセボ群が31.5/1,000人年に対し、カナグリフロジン群は26.9/1,000人年と、約14%低率だった(ハザード比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.75~0.97、非劣性p<0.001、優越性p=0.02)。 仮説検定シーケンス法に基づく腎機能のアウトカムに関する評価は、統計的な有意差は示されなかった。具体的に、アルブミン尿症の進行について、カナグリフロジン群のプラセボ群に対するハザード比は0.73(95%CI:0.67~0.79)、また推定糸球体濾過量(GFR)の40%減少保持、腎機能代替療法の必要性、腎疾患による死亡のいずれかの複合エンドポイント発生に関する同ハザード比は0.60(同:0.47~0.77)だった。 一方で有害事象については、既知のカナグリフロジン有害事象のほか、切断術実施率がプラセボ群3.4/1,000人年だったのに対し、カナグリフロジン群は6.3/1,000人年と、およそ2倍に上った(ハザード比:1.97、95%CI:1.41~2.75)。主な切断部位は足指と中足骨だった。

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SSRI服用は白内障と関連するか

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の服用が白内障のリスク増加と関連しているとの報告があるが、本当だろうか。スイス・バーゼル大学のClaudia Becker氏らは、大規模なプライマリケアデータベースを用いたケースコントロール研究において、SSRIの使用は白内障のリスクとは関連していないことを示した。ただし、65歳未満の患者に関しては、長期のSSRI使用で白内障のリスクがわずかに増加しており、著者は「さらなる研究が必要である」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年5月29日号掲載の報告。 研究グループは、SSRIまたは他の抗うつ薬使用の白内障リスクについて評価する目的で、英国プライマリケアのデータベースであるClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いて解析した。 1995年~2015年の間に、初めて白内障と診断された40歳以上の患者20万6,931例、ならびにそれと同数の対照(年齢、性別、一般診療所、白内障が記録された日[インデックス日]、インデックス日以前のCPRDでの記録年数をマッチさせた白内障のない対照)を特定し、BMI、喫煙、高血圧、糖尿病、全身性ステロイド薬使用について補正した条件付きロジスティック回帰分析を行った。SSRIおよび他の抗うつ薬の処方の回数別に、白内障の相対リスク(オッズ比[OR]および95%信頼区間[CI])を推算した。 インデックス日を2年さかのぼり、過去に緑内障の診断がない症例と対照に限定した感度解析も行った。 主な結果は以下のとおり。・現在のSSRI長期使用(処方回数20回以上)は、白内障のリスク増加と関連していなかった(補正OR=0.99、95%CI:0.94~1.03)。・しかし、40~64歳においては、SSRI長期使用者は非使用者と比較して白内障のリスクがわずかに増加した(補正OR=1.24、95%CI:1.15~1.34)。

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ALK陽性肺がん1次治療におけるアレクチニブの成績発表:ALEX試験/ASCO2017

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の標準的1次治療は第1世代のALK‐TKIであり、優れた成績をあげている。しかし、時間経過とともにPDとなる患者も存在する。また、中枢神経系(CNS)転移は再発時に多く発現し、治療困難で、しばしば臨床上の問題となる。 アレクチニブは、強力な活性とCNSへの良好な移行性を有する次世代ALK-TKIであり、第1世代ALK‐TKIクリゾチニブ治療耐性症例において非常に優れた成績を示している。また、当患者集団の1次治療においては、アレクチニブ(300mg×2/日)とクリゾチニブを初めて直接比較した本邦のJ-ALEX試験で、アレクチニブ群が主要評価項目であるPFSを有意に改善している(HR:0.34、p<0.0001)。本年の米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、進行ALK陽性NSCLCの1次治療におけるアレクチニブとクリゾチニブを直接比較した、グローバル第III相試験ALEX試験の結果を、米国Massachusetts General HospitalのAlice Shaw氏が報告した。 この多施設オープンラベル無作為化第III相試験の対象患者は、無症候性のCNS転移症例を含む未治療の進行ALK陽性NSCLC。登録された患者は無作為に、アレクチニブ600mg×2/日またはクリゾチニブ250mg×2/日に1:1で割り付けられた。主要評価項目は治験担当医評価(INV)による無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、独立評価委員会(IRC)によるPFS、CNS無増悪期間(CNS TTP)、客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性などであった。 結果、2017年2月9日のデータカットオフ時に303例が登録された(アレクチニブ152例、クリゾチニブ151例)。追跡期間はアレクチニブ群18.6ヵ月、クリゾチニブ群17.6ヵ月であった。患者の半数以上(アレクチニブ群55%、クリゾチニブ群54%)は非アジア人で、約60%が非喫煙者、また約40%がベースライン時にCNS転移を有していた。 主要評価項目であるINVによるPFSは、アレクチニブ群で未達(17.7~NE)、クリゾチニブ群では11.1ヵ月(9.1~13.1)と、アレクチニブ群で有意に延長した(HR:0.47、95%CI:0.34~0.65、p<0.0001)。副次評価項目であるIRCによるPFSは、アレクチニブ群で25.7ヵ月(19.9~NE)、クリゾチニブ群は10.4ヵ月(7.7~14.6)で、こちらもアレクチニブ群に有意であった(HR:0.50、95%CI:0.36~0.70、p<0.0001)。 CNS転移例におけるPFSはアレクチニブ群では未達、クリゾチニブ群では7.4ヵ月であった(HR:0.40、95%CI:0.25~0.64)。CNS TTP(中央値は両群とも未達)は、競合リスクモデルを用いた生存時間解析において、アレクチニブ群で有意に延長した(cause specific HR:0.16、95%CI:0.10~0.28、p<0.0001)。 ORRは、アレクチニブ群83%(76~89)、クリゾチニブ群76%(68~82)で、アレクチニブ群が長かったが、統計学的に有意ではなかった(p=0.09)。OSは両群とも未達であった(HR:0.76、95%CI:0.48~1.20、p=0.24)。 Grade3~5の有害事象(AE)は、アレクチニブ群の41%、クリゾチニブ群の50%で発現した。致死的AEの発現率はアレクチニブ群で3%、クリゾチニブ群では5%であった。AEの発現項目は両群共新たなものはなかった。 Shaw氏は、このALEX試験の結果は、ALK陽性NSCLCの1次治療の新たな標準としてのアレクチニブの位置付けを確立した、と述べて本題を締めくくった。■参考ASCO2017 AbstractALEX試験(ClinicalTrials.gov)■関連記事ALK阻害薬による1次治療の直接比較J-ALEX試験の結果/Lancetアレクチニブ、ALK肺がん1次治療に海外でも良好な結果:ALEX 試験

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先天異常の原因、5人中4人は「未知」/BMJ

 米国・ユタ大学のMarcia L. Feldkamp氏らが実施したコホート研究の結果、主要な先天異常の5人に4人はその原因が不明であることが明らかとなった。著者は、「一次予防や治療の根拠となる基礎研究ならびにトランスレーショナル研究を早急に行う必要がある」と述べている。これまでは、病院ベースで既知の原因の有無別に先天異常の割合を評価した研究が2件あるだけだった。BMJ誌2017年5月30日号掲載の報告。先天異常児約5,500例について解析 研究グループは、主要な先天異常の原因と臨床像を評価する目的で、集団ベースの症例コホート研究を行った。 地域住民のサーベイランスシステムで確認されたユタ州在住女性が2005~09年に出産した児のすべての記録を臨床的に再調査し、生児出生および死産を合わせた計27万878例のうち、軽度の単独所見(筋性部心室中隔欠損症、遠位尿道下裂など)を除く主要な先天異常児5,504例(有病率2.03%)について分析した。 主要評価項目は、形態学(単独、多発、小奇形のみ)および病理発生(シーケンス、発生域欠損、パターン)別の、原因が既知(染色体、遺伝子、ヒト催奇形因子、双胎形成)または未知の先天異常の割合である。5人に4人は未知の原因 確実な原因は20.2%(1,114例)で確認された。このうち染色体または遺伝子異常が94.4%(1,052例)を占め、催奇形因子が4.1%(46例、ほとんどが糖尿病合併妊娠のコントロール不良)、双胎形成が1.4%(16例、結合双胎児または無心症)であった。 残りの79.8%(4,390例)は、原因が未知の先天異常として分類された。このうち88.2%(3,874例)は単独の先天異常であった。家族歴(同様に罹患した一等親血縁者)は4.8%で確認された。5,504例中5,067例(92.1%)は生児出生(単独および非単独先天異常)、4,147例(75.3%)は単独先天異常(原因が既知または未知)と分類された。 著者は、「喫煙や糖尿病のように既知の原因に関しては、個々の症例で原因を決定することが課題として残っている。一方、未知の原因に関しては、それを突き止めるために包括的な研究戦略が必要である」と述べている。

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CVDリスクを予測する最新QRISK3モデルを検証/BMJ

 心血管疾患(CVD)の10年リスクを予測するQRISK2に新規リスク因子を加えた新しいQRISK3リスク予測モデルが開発され、英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが検証結果を発表した。追加された臨床変数は、慢性腎臓病(CKD)、収縮期血圧(SBP)の変動性、片頭痛、ステロイド薬、全身性エリテマトーデス(SLE)、非定型抗精神病薬、重度の精神疾患および勃起障害で、これらを組み入れたQRISK3は、医師が心疾患や脳卒中のリスクを特定するのに役立つ可能性が示されたという。現在、英国のプライマリケアではQRISK2が広く活用されているが、QRISK2では完全には捉えられないリスク因子もあり、CVDリスクの過小評価につながる可能性が指摘されていた。BMJ誌2017年5月23日号掲載の報告。抽出コホート789万例、検証コホート267万例のデータから新モデルを作成・検証 研究グループは、英国のQResearchデータベースに参加している一般診療所1,309施設を、抽出コホート(981施設)と検証コホート(328施設)に無作為に割り付け、抽出コホートにおける25~84歳の患者789万例と、検証コホートの同267万例のデータを解析した。ベースラインでCVDがあり、スタチンが処方されている患者は除外された。 抽出コホートでは、Cox比例ハザードモデルを用い、男女別にリスク因子を検討し、10年リスク予測モデルを作成した。検討したリスク因子は、QRISK2ですでに含まれている因子(年齢、人種、貧困、SBP、BMI、総コレステロール/HDLコレステロール比、喫煙、冠動脈疾患の家族歴[60歳未満の1親等の親族]、1型糖尿病、2型糖尿病、治療中の高血圧、関節リウマチ、心房細動およびCKD[ステージ4、5])と、新規のリスク因子(CKD[ステージ3、4、5]、SBPの変動性[反復測定の標準偏差]、片頭痛、ステロイド薬、SLE、非定型抗精神病薬、重度の精神疾患およびHIV/AIDS、男性の勃起障害の診断または治療)であった。 検証コホートでは、男女別に、年齢、人種およびベースライン時の疾患の状態によるサブグループで適合度と予測能を評価した。評価項目は、一般診療、死亡および入院の3つのデータベースに記録されたCVD発症とした。最新QRISK3モデル、心血管疾患のリスク評価に有用 抽出コホートの5,080万観察人年において、36万3,565件のCVD発症例が特定された。 検討された新規リスク因子は、統計学的に有意なリスクの増大が示されなかったHIV/AIDSを除き、すべてモデルへの組み入れ基準を満たした。 新規リスク因子を追加したQRISK3モデルの測定能は良好で、また高い予測能を示した。QRISK3モデルのアルゴリズムにおいて、女性では、CVD診断までの時間のばらつきを示すR2値(高値ほどばらつきが大きいことを指す)は59.6%で、D統計量は2.48、C統計量は0.88であった(どちらも数値が高いほど予測能がよいことを表す)。また、男性ではそれぞれ、54.8%、2.26および0.86であった。全体としてQRISK3モデルのアルゴリズムの性能は、QRISK2と同等であった。

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尿pHで糖尿病発症を予測できるか~日本の大規模コホート

 これまでに2型糖尿病患者の低い尿pHとの関連が明らかになっているが、尿中pHと2型糖尿病の発症との関連は不明である。今回、京都府立医科大学の橋本 善隆氏らは、わが国における男性の大規模コホート研究で、低い尿pHが糖尿病の独立した予測因子となることを報告した。尿pHが簡単で実用的な糖尿病のマーカーである可能性が示唆された。Diabetes research and clinical practice誌オンライン版2017年5月9日号に掲載。 本研究は男性3,119人の5年間の観察研究である。参加者を尿pHで4群に分け、多変量ロジスティック回帰分析により、2型糖尿病発症の調整オッズ比(OR)および95%CIを算出した(年齢、BMI、喫煙、運動、飲酒、高血圧症、高トリグリセライド血症、LDLコレステロール値、空腹時血糖異常で調整)。 主な結果は以下のとおり。・追跡調査において113人が糖尿病と診断された。・糖尿病の発症率は、尿pHが最も低い群(尿pH=5.0)で6.9%(318人中22人)、2番目に低い群(尿pH=5.5)で3.4%(1,366人中46人)、3番目に低い群(尿pH=6.0)で3.5%(856人中30人)、最も高い群(尿pH≧6.5)で2.6%(579人中15人)であった。・尿中pHが最も低い群では、その他の群と比較して糖尿病発症リスクが高かった。2番目に低い群に対する多変量ORは1.91(95%CI:1.05~3.36、p=0.033)、3番目に低い群に対する多変量ORは1.99(95%CI:1.05~3.71、p=0.036)、最も高い群に対する多変量ORは2.69(95%CI:1.30~5.72、p=0.008)であった。

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乳がんリスクが高い職業

 職業別の乳がんリスクについて、スウェーデン・カロリンスカ研究所のCecilia Kullberg氏らが調査したところ、ホワイトカラーのほうがブルーカラーより高リスクで、専門職や管理職の女性でリスクが高いことがわかった。さらに、このリスク増加の要因として、生殖および生活習慣以外の因子の影響が大きいことが推測された。Occupational and environmental medicine誌オンライン版2017年4月29日号に掲載。 本研究は1991~96年に実施されたコホート研究で、スウェーデンのマルメ州の住民で1923~50年に生まれた女性1万4,119人が参加した。リスク因子に関する情報(年齢、出産歴、第1子出産年齢、授乳月数、ホルモン補充療法、身体活動、飲酒、喫煙、身長、BMIなど)および職歴についてアンケート調査した。侵襲性乳がんの診断は、スウェーデンがんレジストリで2013年12月31日まで確認した。 主な結果は以下のとおり。・計897人の女性が乳がんと診断された。・年齢調整後の解析で、ホワイトカラーはブルーカラーに比べて乳がんリスクが高く、専門職、管理職、簿記業務に従事する女性では、販売、運輸、生産、サービス業務に従事する女性よりも乳がんリスクが高かった。・乳がんリスクの差は、生殖および生活習慣に関連するリスク因子の調整後も、わずかに減少したのみであった。

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脳卒中リスク因子の年齢別パターン

 脳卒中の血管リスク因子について、ユトレヒト大学のAllard J. Hauer氏らが脳卒中サブタイプ別・年齢別に調査した結果、主な心血管リスク因子を有する割合の年齢別パターンがサブタイプにより異なることが示された。Journal of the American Heart Association誌2017年5月8日号に掲載。 本研究は、多施設共同の大学病院ベースでのコホート4,033例における研究である。大動脈アテローム性動脈硬化症または小血管疾患または心原性による虚血性脳卒中患者、自然発症脳出血患者、動脈瘤性くも膜下出血患者(計5サブタイプ)が有していた血管リスク因子(男性、非白人、肥満、高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙、家族歴)を調査し、55歳未満、55~65歳、65~75歳、75歳以上の4群で各リスク因子を有する患者の割合を計算した。また基準年齢群(虚血性脳卒中および脳出血では65~75歳、動脈瘤性くも膜下出血では55~65歳)と比較した平均差と95%CIを計算した。 主な結果は以下のとおり。・55歳未満の患者は、非白人が有意に多く(とくに自然発症脳出血および動脈瘤性くも膜下出血患者)、喫煙頻度が最も高かった(動脈瘤性くも膜下出血患者で最も顕著)。・55歳未満の大動脈アテローム性動脈硬化症または小血管疾患による虚血性脳卒中患者は、心原性の虚血性脳卒中患者よりも、高血圧症、高脂血症、糖尿病の頻度が高かった。・全体として、高血圧症、高脂血症、糖尿病の頻度は、すべての脳卒中サブタイプで年齢とともに増加したが、喫煙は年齢とともに減少した。・年齢にかかわらず、大動脈アテローム性動脈硬化症/小血管疾患による虚血性脳卒中患者で、修正可能なリスク因子の累積が最も顕著であった。

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うつ病は認知症のリスクファクター or 初期マーカー

 うつ病は、認知症のリスクファクターとして知られているが、この関係が原因であるかはわかっていない。オーストラリア・西オーストラリア大学のO. P. Almeida氏らは、うつ病に関連する認知症が抗うつ薬使用により減少するか、うつ病への曝露と認知症が発症した時間との関係性を調査した。Translational psychiatry誌2017年5月2日号の報告。 71~89歳の健常男性4,922例を対象に14年間の縦断的研究を行い、うつ病歴、現在のうつ病、うつ症状の重症度に関連する情報を収集した。抗うつ薬の使用、年齢、教育、喫煙、病歴(糖尿病、高血圧、冠状動脈性心疾患、脳卒中)についても収集した。フォローアップ期間中の認知症発症および死亡は、西オーストラリア州データ連携システムによって確認した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病であった男性は682例であった(過去:388例、現在:294例)。・8.9年間のフォローアップ期間中、認知症を発症したのは903例(18.3%)、認知症でなく死亡したのは1,884例(38.3%)であった。・過去および現在うつ病を有している男性の、認知症のサブハザード比(SHR)は、それぞれ1.3(95%CI:1.0~1.6)、1.5(95%CI:1.2~2.0)であった。・抗うつ薬の使用は、このリスクを減少させなかった。・認知症のSHRは、うつ症状のない男性と比較して、うつ症状の疑い例1.2(95%CI:1.0~1.4)、軽度~中等度うつ症状例1.7(95%CI:1.4~2.2)、重度うつ症状例2.1(95%CI:1.4~3.2)であった。・うつ病と認知症は、フォローアップ期間の最初の5年間のみで関連が認められた。 著者らは「うつ病歴のある高齢者は、認知症発症リスクが高い。しかし、うつ病は認知症の修正可能なリスクファクターというよりも、初期認知症のマーカーである可能性が高い」としている。関連医療ニュース 65歳未満での抗うつ薬使用、認知症増加と関連 抑うつ症状は認知症の予測因子となりうるのか たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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受動喫煙はうつぶせ寝より危険!?

受動喫煙はうつぶせ寝より危険!? 乳幼児突然死症候群(SIDS)は、1歳未満の健康な乳幼児が何の前触れもなく突然死に至る原因不明の疾患です。日本では 6,000~7,000人に1人の割合で発症しています。 その危険因子として指摘されているのが、乳幼児の「うつぶせ寝」です。 厚生労働省の調査※では、保護者の喫煙でSIDSが非喫煙者より4.67倍多く発症することがわかっています。一方「うつぶせ寝」によるSIDSリスクは3倍といわれており、保護者の喫煙のほうがリスクが高いということがわかります。※ http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/sids_kenkyu.pdfタバコでSIDSのリスクが上がります。子供のためにも喫煙はやめましょう!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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「たばこ煙害死なくそう」 受動喫煙防止法案の行方に一石

 2017年5月24日、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正に関して、「建物内禁煙」を目指す厚労省案を支持する医師や研究者、アスリートからなる有志が声明を発表し、厚生労働省で記者会見を行った。受動喫煙、最も効果的な対策は「建物内禁煙」 「飲食店の建物内禁煙」を掲げる厚労省案に対して、与党内から「飲食店の店頭に喫煙環境を提示すればよい」という緩和案が出されている。これを受けて、代表発起人の渋谷健司氏(東京大学大学院教授)は、受動喫煙による健康被害を確実になくす方法として厚生労働省案を支持するとの声明を発表した。受動喫煙による死亡者数は、毎年1万5,000人程度と言われており、交通事故死亡者4,000人をはるかに上回る。受動喫煙によって心筋梗塞や肺がん、脳卒中などのリスクが上昇することは国立がん研究センターの報告などからも明らかだ。 山口育子氏(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「厚労省案に盛り込まれている喫煙専用室の設置は、『建物内禁煙』の実現に向けた移行措置としてとしてやむを得ない。しかし移行期間は極力短縮し、建物内禁煙の実現に向けて前進してほしい」と述べている。 また、中室牧子氏(慶應義塾大学准教授)は、世界では科学的な根拠に基づいた政策立案が標準になっており、受動喫煙は科学的なデータから建物内禁煙が最も有効な手段だと考えられていることを説明した。また、飲食店に与える影響についても、「受動喫煙に関する社会科学的な研究において、飲食店を全面禁煙にしても売上は落ちないという報告が数多く出されている。仮に、例外を設けて喫煙が可能な店ができれば、間接的に喫煙できる店を補助することになりかねない」と指摘し、飲食店への影響を考慮しても、建物内禁煙が最も有効な手段だと強調した。声なき声を拾った国民的議論を SNSで拡散求める 今回の声明の賛同者は5月24日現在、220名。医療関係者だけでなく、NPO、患者団体、企業など幅広い分野から集まっている。これは会見前の3~4日間に主にインターネット上での呼びかけに反応した数字だ。短期間にこれだけの人数が集まった背景には、受動喫煙に関する国民的意識が高まっていること、また飲食店等での禁煙を望むものの声をあげられなかったサイレントマジョリティが数多くおり、潜在的な賛同者が多くいると感じていると渋谷氏は述べた。最後に法案可決まで時間がない中、「建物内禁煙」の実現に向けて、以下のアクションを呼びかけた。 (1)SNSやブログでの、ハッシュタグを付けた「建物内禁煙」実施を求める投稿   (#たばこ煙害死なくそう など) (2)科学的根拠や最新の動向についての情報に耳を傾け、周囲と話し合う ■参考 声明文 たばこ煙害死なくそう。受動喫煙のない国に。

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キレイな吸い殻にだまされるな!

キレイな吸い殻にだまされるな!使用前・後でほとんど変わらない新型タバコのカートリッジ使用前使用後 火を点ける従来のタバコと違って、もみ消す必要がないため、使用後のタバコ(吸い殻)はそのままゴミ箱などに捨てられます。 見た目に汚らしさが少なく、子供が抵抗なく口に入れてしまう例が報告されています。 添加物など未知な成分が多く、誤飲時の治療法が確立していません。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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世界および日本において喫煙対策は急務である(解説:有馬 久富 氏)-678

 Global Burden of Disease Study 2015から喫煙に関する成績がLancet誌に報告された。その結果は、世界において男性の25%、女性の5%が喫煙しており、年間640万人が喫煙のために死亡しているというショッキングなものであった。死因別にみると、心血管病死亡の41%、悪性新生物による死亡の28%、呼吸器疾患による死亡の21%が、喫煙によるものであった。つまり、喫煙者がいなくなることにより、心血管病死亡が約4割、悪性新生物による死亡が約3割、呼吸器疾患による死亡が約2割減少し、年間640万人の死亡が回避できると期待される。 生まれた年代ごとの検討では、喫煙を始める人が徐々に減り、早い段階から禁煙する人が増えてきていることがうかがえる。しかし、いまだに男性の約30%、女性の約5%が20歳までに喫煙を開始している。喫煙による健康被害を減らしていくためには、禁煙を推進するだけでなく、学校などにおける防煙教育を充実させて、たばこを吸い始めさせないようにする必要がある。 論文中には国別の成績もあり、日本人男性1,530万人・女性490万人が喫煙者であると報告されている。この数は、世界で7番目に多く、高所得国の中では米国に次いで2番目である。さらに、日本では年間16万人以上が喫煙のために死亡していると報告されている。防煙教育および禁煙を推進することにより、喫煙による健康被害および死亡を減らすことは急務である。また、非喫煙者の健康を守るために、国際水準を満たし、実効性のある受動喫煙対策法案の成立が望まれる。

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染色体不安定性、NSCLC再発・死亡リスクを増大/NEJM

 染色体不安定性(chromosome instability)を介して誘導される腫瘍内不均一性(intratumor heterogeneity)は、非小細胞肺がん(NSCLC)の再発や死亡のリスクを高めることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMariam Jamal-Hanjani氏らTRACERxコンソーシアムの検討で示された。この知見は、肺がんの予後予測因子としての染色体不安定性の可能性を支持するものだという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年4月26日号に掲載された。NSCLCの腫瘍内不均一性やゲノム進化(genome evolution)の詳細な探索については、小規模な後ろ向きコホート研究しか行われておらず、治療戦略の指針となる腫瘍内不均一性の臨床的重要性や、ドライバー・イベントのクローン性は不明とされている。100例の327の腫瘍領域をシーケンシング 本研究は、早期NSCLCにおける腫瘍内不均一性と臨床転帰の関連を調査し、ドライバー・イベントのクローン性およびゲノム進化の過程の解明を目的とする前向きコホート試験である(Cancer Research UKなどの助成による)。患者登録は2014年4月に開始され、最終的に842例の登録を目標としており、今回は100例の解析結果が報告された。 全身療法を受けていない早期NSCLC患者100例(Stage IA~IIIA)から切除された検体を用いて、多領域全エクソームシーケンシングを行った。腫瘍の進化の過程を明らかにし、クローン(すべてのがん細胞に発現)およびサブクローン(一部のがん細胞に発現)のイベントを調査し、腫瘍内不均一性と無再発生存の関連を評価するために、327の腫瘍領域のシーケンシングを行い解析した。 腫瘍内不均一性については、変異(mutation、一塩基置換/ジヌクレオチド塩基置換、小挿入・欠失)または体細胞性コピー数変化(somatic copy-number alteration、染色体セグメントの獲得または喪失を反映)の評価を行った。コピー数不均一性の増加で再発・死亡リスクが上昇 対象の内訳は、男性が62例、女性が38例で、喫煙者が40例、元喫煙者が48例、非喫煙者が12例であり、組織型は腺がんが61例、扁平上皮がんが32例、その他が7例であった。 変異、体細胞性コピー数変化の双方で、広範な腫瘍内不均一性が観察され、サブクローンとして同定された体細胞変異の中央値は30%(範囲:0.5~93)、サブクローンとして同定された体細胞性コピー数変化の中央値は48%(範囲:0.3~88)であった。これは、腫瘍の発育過程で、変異および染色体レベルでのゲノム不安定性が進行していることを示唆する。 EGFR、MET、BRAF、TP53遺伝子のドライバー変異は、ゲノム重複(genome duplication)の発現前も、ほぼ常にクローン性であり、発がんへの関与が示唆された。一方、進化の後期に発現する不均一性ドライバー変化が腫瘍の75%以上に認められ、この変化はPIK3CA遺伝子やNF1遺伝子のほか、クロマチン修飾やDNA損傷応答・修復に関与する遺伝子に一般的にみられた。 ゲノム倍化(genome doubling)および進行する動的染色体不安定性は、腫瘍内不均一性と関連し、結果としてCDK4、FOXA1、BCL11A遺伝子の増幅を含む体細胞性コピー数のドライバー変化の平行進化(parallel evolution)が認められた。 また、変異の割合の増加は再発および死亡のリスク上昇と関連しなかったが、コピー数不均一性が増加すると再発および死亡のリスクが有意に上昇し(ハザード比[HR]:4.9、p=4.4×10-4)、多変量解析を行っても有意な差が保持されていた(HR:3.70、p=0.01)。 著者は、「現在進められている単一の遺伝子変異を標的とする取り組みに加え、同時に多数の遺伝子のコピー数を変化させる可能性のある染色体不安定性をよりよく理解する必要があり、このプロセスを抑制する治療は、無再発生存の低下を促進する不均一性や、腫瘍の進化を防止する可能性がある」としている。

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新型タバコの先に卒煙はない!? 

禁煙への第一歩にはならない!?新型タバコの泥沼 流行の新型タバコ。使用するには4,000円~10,000円の初期投資(本体購入)が必要です。 中身のカートリッジの値段は、普通のタバコと同程度~やや高めです(420~460円程度)。つまり…タバコを吸い続ける限り、本体価格を回収することはできません!新型タバコは「やめるきっかけ」の第一歩にはならないのです!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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1日30本以上の喫煙で急性骨髄性白血病リスクが2倍超

 喫煙が白血病発症に関連したリスクとなることは従来の研究で報告されているが、その多くは欧米におけるものであり、日本人を対象とした大規模な研究はほとんど行われておらず、その関連性は不明であった。今回、愛知県がんセンター研究所遺伝子医療研究部の松尾 恵太郎氏らの研究により、男性で1日30本以上の喫煙者は、非喫煙者に比べ急性骨髄性白血病(AML)リスクが2.2倍となることが明らかになった。Journal of Epidemiology誌4月8日号に掲載。 本研究は、9万6,992例の日本人被験者(男性4万6,493例と女性5万499例、ベースライン時40~69歳)の大規模コホート。平均18.3年間のフォローアップ期間中、90例のAMLと19例の急性リンパ性白血病(ALL)、28例の慢性骨髄性白血病(CML)が確認された。潜在的交絡因子に対するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の調整のため、Cox回帰モデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、居住地域、性別、職業、肥満指数を調整のうえ検討した結果、喫煙とAML発症リスクとの間に有意な関連性や用量反応関係はみられなかった。・しかし、体格指数と職業による調整後の検討により1日30本以上のタバコを現在も吸っている男性では、非喫煙者に比べてAMLリスクが有意に高かった(HR:2.21、95%CI:1.01~4.83)。・1日30本未満の男性では、AMLのリスク上昇はみられなかった。・女性におけるAMLやCML、ALLについては、喫煙者および罹患者が少なく、関連は不明であった。

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新型タバコは有害物質9割減!?

新型タバコは有害物質9割減!?有害物質を減らしたことをアピールする新型タバコ。だからといって、病気のリスクが下がったり、寿命に与える影響が軽減されたりするとは限りません従来のタバコの有害物質量が「10」だとしたら…新型タバコは「1」程度?でも、有害物質が含まれる事実は変わらない有害物質「9割減」でも、生じる結果は変わらないのです!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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ダイエット飲料で脳卒中・認知症リスクが増加?

 ボストン大学のMatthew P Pase氏らが、Framingham Heart Study Offspringコホートにおいて、甘味飲料の摂取と脳卒中や認知症の発症リスクを調査したところ、ダイエットコーラなどの人工甘味料入り清涼飲料の摂取と脳卒中・認知症リスクとの関連が認められた。なお、砂糖入り飲料の摂取とは関連がみられなかった。Stroke誌オンライン版2017年4月20日号に掲載。 脳卒中の発症については45歳を超える2,888人(平均62歳[SD:9歳]、男性45%)と、認知症の発症については60歳を超える1,484人(平均69歳[SD:6歳]、男性46%)を調査した。コホート調査5(1991~95年)、6(1995~98年)、7(1998~2001年)において食事摂取頻度調査票を用いて飲料摂取量を数値化した。また、調査全体の平均化により、調査7での最近の摂取量と累積摂取量を数値化した。イベント発症のサーベイランスを調査7から10年間継続し、脳卒中97例(82例は虚血性脳卒中)、認知症81例(63例はアルツハイマー病)を認めた。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、教育、摂取カロリー、食事の質、身体活動、喫煙について調整後、人工甘味料入り清涼飲料の最近の摂取量や累積摂取量がより多いほど、虚血性脳卒中、アルツハイマー病および認知症全体のリスクが高かった。・人口甘味料入り飲料の累積摂取量について、0単位/週を対照とした場合、1単位/日以上におけるハザード比は、虚血性脳卒中で2.96(95%信頼区間:1.26~6.97)、アルツハイマー病で2.89(同:1.18~7.07)であった。 ※1単位は、1グラスまたは1瓶または1缶・砂糖入り飲料(加糖清涼飲料、フルーツジュース、コーラなど)は脳卒中、認知症と関連していなかった。

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増加するPM2.5とオゾンの疾病負荷への影響/Lancet

 世界の疾病負荷は、過去25年間で、とくに低~中所得国における人口の高齢化、非感染性疾患割合の変化、大気汚染の進行により、増加し続けている。今回、米国・健康影響研究所のAaron J Cohen氏らが行った最新の調査(Global Burden of Diseases,Injuries,and Risk Factors Study 2015[GBD 2015])では、PM2.5とオゾンによる環境大気汚染が世界的に進行しており、それに伴う疾病負荷の増大の実態が明らかとなった。Lancet誌オンライン版2017年4月10日号掲載の報告。PM2.5、オゾンと5つの死因の死亡リスクとの関連を解析 研究グループは、1990~2015年の世界、地域別・国別の環境大気汚染による死亡および疾病負荷の空間的、時間的な動向を調査した(Bill & Melinda Gates Foundationなどの助成による)。 衛星で測定した推定値と化学輸送モデル、地表レベルでの測定値、地理的データを統合し、世界の空気動力学的粒径<2.5μmの微小粒子状物質(PM2.5)と対流圏オゾンの人口加重平均濃度を推算した。 統合曝露反応関数(integrated exposure-response function:IER)を用いて、PM2.5濃度と5つの死因(虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、肺がん、下気道感染症)による死亡の相対リスクの関連を推計した。PM2.5が11.2%、オゾンは7.2%増加、COPD死の8%がオゾンに起因 IERによる解析では、5つの死因の相対リスクはいずれも、PM2.5濃度が高くなるに従って増加したが、低濃度のほうが高濃度に比べ変化が大きかった。虚血性心疾患と脳血管疾患は、年齢(25、50、80歳)が高いほど、高PM2.5濃度での相対リスクが低くなった。 世界全体のPM2.5の人口加重平均濃度は、1990年の39.7μg/m3から2015年には44.2μg/m3へと11.2%増加したが、2010~15年に急速に増加していた。人口の多い10ヵ国の解析では、日本はバングラデシュ、インド、パキスタン、中国に比べると、全般に低い値で安定的に推移していた。2015年に最もPM2.5濃度が高かったのはカタールで、次いでサウジアラビア、エジプトの順だった。 世界全体のオゾンの人口加重平均濃度は、1990年の56.8ppbから2015年には60.9ppbへと7.2%増加した。人口の多い10ヵ国では、中国、インド、パキスタン、バングラデシュ、ブラジルが14~25%増加し、これに比べると日本の増加は小さく、米国とインドネシアは低下した。 環境中のPM2.5は、2015年の死亡リスク因子の第5位(1~4位は、収縮期血圧、喫煙、空腹時血糖、総コレステロール)であり、障害調整生存年数(DALY)のリスク因子の第6位(1~5位は、収縮期血圧、喫煙、空腹時血糖、BMI、幼年期の栄養不良)であった。PM2.5への曝露は、2015年に420万人(95%不確実性区間[UI]:370万~480万)の死亡および1億310万年(9,080万~1億1,510万)のDALYの原因であった。環境中のPM2.5による死亡は、1990年の350万人(95%UI:300万~400万)から2015年の420万人(370万~480万)へと増加していた。 環境中のオゾンは、GBD 2015で評価の対象となった79のリスク因子のうち、死亡リスク因子の第34位、DALYの第42位であった。オゾンへの曝露は、25万4,000人(95%UI:9万7,000~42万2,000)の死亡およびCOPDに起因する410万年(160万~680万)のDALYをもたらした。また、2015年の世界のCOPDによる死亡の8.0%(95%UI:3.0~13.3)に、オゾンへの曝露が寄与しており、中国、インド、米国の死亡率が高かった。1990~2015年に、オゾンによるCOPD死亡率は多くの国で増加した。オゾン濃度とオゾンによるCOPD死の増加の結果として、オゾンによる死亡およびDALYも増加した。 著者は、「PM2.5濃度が大幅に減少しない限り、多くの汚染国の疾病負荷はわずかしか軽減しないが、曝露量を抑制することで大きな健康ベネフィットが得られる可能性がある」と指摘している。

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