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男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。35~70歳の約15万6,000例で、各種リスク因子と主要心血管イベントの関連を解析 研究グループは、現在進行中のPURE研究における、高所得国(11%)および低・中所得国(89%)を含む21ヵ国のデータを用いて解析した。 解析対象は、2005年1日5日~2021年9月13日に登録され、ベースラインで35~70歳の心血管疾患既往がなく、少なくとも1回の追跡調査(3年時)を受けた参加者15万5,724例であった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)とした。代謝リスク因子(収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト対ヒップ率、非HDLコレステロール)、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール/HDLコレステロール比、ApoA1、ApoB、ApoB/ApoA1比)、行動的リスク因子(喫煙、飲酒、身体活動、食事[PURE食事スコア])および心理社会的リスク因子(うつ症状、教育)と主要心血管イベントとの関連を男女別に解析し、ハザード比(HR)ならびに人口寄与割合(PAF)を算出した。脂質マーカーとうつ症状は、女性より男性で心血管リスク上昇 解析対象15万5,724例の内訳は、女性9万934例(58.4%)、男性6万4,790例(41.6%)、ベースラインの平均(±SD)年齢はそれぞれ49.8±9.7歳、男性50.8±9.8歳で、追跡期間中央値は10.1年(四分位範囲[IQR]:8.5~12.0)であった。 データカットオフ(2021年9月13日)時点で、主要心血管イベントは女性で4,280件(年齢調整罹患率は1,000人年当たり5.0件[95%信頼区間[CI]:4.9~5.2])、男性で4,911件(8.2件[8.0~8.4])発生した。男性と比較して、女性はとくに若年で心血管リスクプロファイルがより良好であった。 代謝リスク因子と主要心血管イベントとの関連は、非HDLコレステロールを除き、女性と男性で同様であった。非HDLコレステロール高値のHRは、女性で1.11(95%CI:1.01~1.21)、男性で1.28(1.19~1.39)であった。また、他の脂質マーカーも女性よりも男性のほうが一貫してHR値が高かった。 うつ症状と主要心血管イベントとの関連を示すHRは、女性で1.09(95%CI:0.98~1.21)、男性で1.42(1.25~1.60)であった。一方、PUREスコア(スコア範囲:0~8)が4以下の食事の摂取は、男性(HR:1.07[95%CI:0.99~1.15])よりも女性(1.17[1.08~1.26])で主要心血管イベントと関連していた。 主要心血管イベントに対する行動的および心理社会的リスク因子(合計)のPAFは、女性(8.4%)よりも男性(15.7%)で大きく、これは主に現在喫煙のPAFが男性で大きいためであった(女性1.3%[95%CI:0.5~2.1]、男性10.7%[95%CI:8.8~12.6])。

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心血管疾患2次予防、ポリピルvs.通常ケア/NEJM

 心筋梗塞後6ヵ月以内の、アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療は通常ケアと比べて、主要有害心血管イベント(MACE)リスクの有意な低下に結び付いたことが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares(CNIC)のJose M. Castellano氏らによる第III相無作為化試験「SECURE試験」で示された。転帰を改善する主要な薬剤(アスピリン、ACE阻害薬およびスタチン)を含むポリピルは、心筋梗塞後の2次予防(心血管死や合併症の予防)のための、簡易な手法として提案されている。結果を踏まえて著者は、「ポリピルは、治療を簡素化し入手可能性を改善するもので、治療のアクセシビリティとアドヒアランスを改善するために広く適用可能な戦略であり、結果として心血管疾患の再発および死亡リスクを低下するものである」とまとめている。NEJM誌2022年9月15日号掲載の報告。アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療について検討 SECURE試験は、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、ポーランド、チェコ、ハンガリーの113施設で行われ、直近6ヵ月以内に心筋梗塞を有した75歳以上(リスク因子を1つ以上有する65歳以上)の患者を、ポリピルベースの治療戦略群または通常ケア群に無作為に割り付け追跡評価した。 ポリピル治療は、アスピリン(100mg)、ramipril(2.5mg、5mgまたは10mg)、アトルバスタチン(20mgまたは40mg)で構成された。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中、血行再建術施行の複合。主な副次エンドポイントは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中の複合であった。追跡期間中央値36ヵ月のMACE発生ハザード比は0.76で有意差 2016年8月~2019年12月に、計4,003例がスクリーニングを受け、適格患者と認められた2,499例が無作為化を受けた。指標となる心筋梗塞から無作為化までの期間中央値は8日(IQR:3~37)であった。ポリピル群21例、通常ケア群12例のフォローアップデータが得られず、intention-to-treat(ITT)集団は2,466例(ポリピル群1,237例、通常ケア群1,229例)で構成された。平均年齢は76.0±6.6歳、女性の割合は31.0%、77.9%が高血圧症を、57.4%が糖尿病を有し、51.3%に喫煙歴があった。平均収縮期血圧は129.1±17.7mmHg、平均LDLコレステロール値は89.2±37.2mg/dLであった。 追跡期間中央値36ヵ月時点で、主要アウトカムのイベント発生は、ポリピル群118/1,237例(9.5%)、通常ケア群156/1,229例(12.7%)が報告された(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.60~0.96、p=0.02)。 主な副次アウトカムの発生は、ポリピル群101例(8.2%)、通常ケア群144例(11.7%)が報告された(HR:0.70、95%CI:0.54~0.90、p=0.005)。 これらの結果は、事前規定のサブグループで一貫していた。 患者の自己報告による服薬アドヒアランスは、通常ケア群よりもポリピル群で高かった。有害事象の発現頻度は両群で同程度であった。

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低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。. 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。 本研究では、週3日以上朝食を食べていない者を「朝食抜き」と定義。そのほか、対象者には喫煙、アルコール多飲、運動不足、睡眠不足、間食の有無、深夜/夕食時の生活行動、既往歴(高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・高尿酸血症・冠動脈疾患)についてアンケートを行った。また、朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連性はBMI(kg/m2)を3つのサブグループ(男性:

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エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。全体の考え方について【2 使用にあたっての手続き】・チキサゲビマブ/シルガビマブとバリシチニブを追加【3 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」の注釈を改訂。・「2 主な重症化リスク因子」で65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、COPDなどの慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上)、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期など内容を改訂。・「3」で「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は推奨しない」と改訂。・「表1 軽症~中等症I」で治療薬の使用を優先させるべきリスク集団を追加。・「4 抗ウイルス薬等の選択」で知見より「高齢者、複数の重症化リスク因子がある患者、ワクチンの未接種者などでは症状が進行しやすいことを踏まえ、患者ごとの評価において、中等症への急速な病状の進行など、非典型的な臨床経過の症例や免疫抑制状態などの重症化リスクが特に高い症例などでは、併用投与または逐次投与の適応を考慮する」と表現を改訂。個々の治療薬について【抗ウイルス薬】・レムデシビル(商品名:ベクルリー)の「投与時の注意点」で「7)2022年1月21日の中央社会保険医療協議会(中医協)において、保険医の指示の下で看護師による在宅・療養施設等の患者へのレムデシビル投与が可能となった」を追加。・モルヌピラビル(同:ラゲブリオ)の「入手方法」で「2022年8月18日に薬価収載されたことから、今後、一般流通の開始およびそれに伴う国購入品と一般流通品の切替えが行われる見込みである」を追加。・ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック )の「国内外での臨床報告」で「10万9,254例の後方視コホート研究(65歳以上の高齢者ではニルマトレルビルの治療介入により入院の有意なリスク減少を認めた(HR:0.27、95%CI:0.15~0.49)。一方で40~64歳では、有意なリスク減少を認めなかった (HR:0.74、95%CI:0.35~1.58)を追加。また、投与時の注意点に「5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は薬剤開発のための臨床試験で除外されているが、市販後の評価では、高齢者での重症化予防などの有効性が示唆されている」を追加。そのほか、投与時の腎機能の評価の詳細についても追加。・ファビピラビルの項目は削除。【中和抗体薬】・「チキサゲビマブ/シルガビマブ(同:エバシェルド)」を新しく追加。〔国内外での臨床報告〕重症化リスク因子の有無を問わない、軽症~中等症IのCOVID-19外来患者822人を対象としたランダム化比較試験では、発症から7日以内のチキサゲビマブ/シルガビマブの単回筋肉内投与により、プラセボと比較して、COVID-19の重症化または全死亡が50.5%(4.4%対8.9%、p=0.010)有意に減少したなどを記載。〔投与方法〕・発症後通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射。・曝露前の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射する。なお、SARS-CoV-2変異株の流行状況などに応じて、それぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできる。〔投与時の注意点〕オミクロン株(BA.4系統及びBA.5系統) については、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することなど。〔発症後での投与時の注意点〕1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)COVID-19の症状が発現してから速やかに投与すること。4)重症化リスク因子については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」などにおいて例示されている重症化リスク因子が想定。〔発症抑制での投与時の注意点〕1)COVID-19の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者ではない者に投与すること。COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者における有効性は示されていない。3)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては、COVID-19に対するワクチン接種が推奨されない者または免疫機能低下などによりCOVID-19に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者とされているが、原発性免疫不全症、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者など免疫抑制状態にある者が中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。4)3)の投与対象者については、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた発症抑制を行うことが望ましいと考えらえる。〔入手方法〕本剤は、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、発症抑制としての投与について、対象となる免疫抑制状態にある者が希望した場合には、医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。・カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)とソトロビマブ(同:ゼビュディ)の「投与時の注意点」として「1)オミクロン株(B1.1.529系統/BA.2系統、BA.4系統およびBA.5系統) では本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討する」を追記。【免疫調整薬・免疫抑制薬】・シクレソニド(国内未承認薬)の項目を削除。【その他】・その他の抗体治療薬(回復者血漿、高度免疫グロブリン製剤)の項目を削除。・附表1と2の「重症化リスクを有する軽症~中等症IのCOVID-19患者への治療薬の特徴」の内容を更新。・参考文献を52本に整理。 なお、本手引きの詳細は、同学会のサイトなどで入手の上、確認いただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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がん負担の世界最大のリスク因子は喫煙/Lancet

 2019年の世界におけるがん負担に寄与した最大のリスク因子は喫煙であり、また、2010年から2019年にかけて最も増大したのは代謝関連のリスク因子(高BMI、空腹時高血糖)であることが、米国・ワシントン大学のChristopher J. L. Murray氏ら世界疾病負荷研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2019 Cancer Risk Factors Collaboratorsの解析で明らかとなった。Lancet誌2022年8月20日号掲載の報告。GBD 2019を用いリスク因子に起因するがん負担について解析 研究グループは、GBD 2019の比較リスク評価フレームワークを用い、行動、環境・職業および代謝に関連したリスク因子に起因するがん負担について、2019年のがん死亡および障害調整生存年(DALY)を推定するとともに、これらの2010年から2019年までの変化を検討した。 比較リスク評価フレームワークには、23のがん種と世界がん研究基金の基準を用いて特定した34のリスク因子から成る82のがんリスクと転帰の組み合わせが含まれている。リスク因子起因がん死亡数は10年で約20%増加、主なリスク因子は喫煙、飲酒、高BMI 2019年の推定されたすべてのリスク因子に起因する世界のがん死亡数は、男女合わせて445万人(95%不確定区間[UI]:401万~494万)で、全がん死亡の44.4%(95%UI:41.3~48.4)を占めた。男女別では、男性288万人(95%UI:260万~318万)、女性158万人(95%UI:136万~184万)であり、それぞれ男性の全がん死亡の50.6%(95%UI:47.8~54.1)、女性の全がん死亡の36.3%(95%UI:32.5~41.3)であった。 また、推定されたすべてのリスク因子に起因する世界のがんDALYは、男女合わせて1億500万(95%UI:9,500万~1億1,600万)で、全がんDALYの42.0%(95%UI:39.1~45.6)を占めた。 2019年のリスク因子に起因するがん死亡とがんDALYに関して、世界全体でこれらに寄与する主なリスク因子は、男女合わせると、喫煙、飲酒、高BMIの順であった。リスク因子によるがん負担は、地域および社会人口統計学的指標(SDI)によって異なり、低SDI地域では2019年のリスク因子によるがんDALYの3大リスクは喫煙、危険な性行為、飲酒の順であったが、高SDI地域では世界のリスク因子の上位3つと同じであった。 2010~19年に、リスク因子に起因する世界のがん死亡数は20.4%(95%UI:12.6~28.4)、DALYは16.8%(95%UI:8.8~25.0)増加した。これらの増加率が最も高かったリスク因子は、代謝関連リスク(高BMI、空腹時血糖高値)であり、これらに起因する死亡数は34.7%(95%UI:27.9~42.8)、DALYは33.3%(95%UI:25.8~42.0)増加した。 著者は、「世界的にがん負担が増加していることを踏まえると、今回の解析結果は、世界、地域および国レベルでがん負担を減らす努力目標となる重要で修正可能なリスク因子を、政策立案者や研究者が特定するのに役立つと考えられる」とまとめている。

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脳卒中、55歳未満の発症増大/JAMA

 脳卒中罹患者が、55歳未満で有意に増大している一方、55歳以上では減少している。英国・オックスフォード大学のLinxin Li氏らが、イングランド・オックスフォードシャー州の住民について2002~10年vs.2010~18年の脳卒中罹患率を比較した検討の結果を報告した。他の主要血管イベントには同様の違いはみられず、著者は「脳卒中について示されたこの差の原因を明らかにする、さらなる検討が必要である」と述べている。先行研究で55歳未満の脳卒中罹患率が上昇していることが報告されていたが、多くが対象を限定した試験で、住民ベースのより多くの試験によるエビデンスが求められていた。JAMA誌2022年8月9日号掲載の報告。英国住民9万4,567人の罹患率、2002~10年vs.2010~18年を比較 研究グループは、若年者vs.高齢者の脳卒中およびその他の主要血管イベント罹患率の、経時的変化を明らかにする前向き住民ベース試験を、2002年4月~2018年3月にイングランド・オックスフォードシャー州の平均流域住民9万4,567人を対象に行った。 暦時間、発症前の血管リスク因子、職業を調べ、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、その他の主要血管イベント(心筋梗塞、心臓突然死、末梢血管イベント)の罹患率の変化を、年齢、性別、精密検査による診断、病因、重症度で層別化し評価した。IRRは55歳未満1.67、55歳以上0.85 合計2,429例(平均年齢73.6[SD 14.4]歳、女性51.3%)の脳卒中が確認された。 2002~10年から2010~18年に、脳卒中罹患率は、55歳未満の被験者では有意に上昇していた(罹患率比[IRR]:1.67、95%信頼区間[CI]:1.31~2.14)一方、55歳以上の被験者では有意に低下していた(IRR:0.85、95%CI:0.78~0.92、群間差のp<0.001)。 55歳未満群の罹患率の有意な上昇は、年齢、脳卒中重症度、病理学的サブタイプ、調査の変更とは関係していなかった。同様の発生の傾向はTIAについても認められたが(IRR:1.87、95%CI:1.36~2.57)、心筋梗塞やその他の主要血管イベントでは認められなかった(IRR:0.73、95%CI:0.58~0.93)。 55歳未満群のTIAおよび脳卒中の罹患には、糖尿病(リスク比[RR]:3.47、95%CI:2.54~4.74)、高血圧症(2.52、2.04~3.12)、現在喫煙(2.38、1.92~2.94)、肥満(1.36、1.07~1.72)と有意に関連していた。2002~10年から2010~18年にかけての罹患率の有意な上昇は、これらリスク因子のない被験者にも認められた。 上昇が最も大きかったのは、専門職/管理職(IRR:2.52、95%CI:1.75~3.62)であり、最も小さかったのは、部分的に熟練を要する/熟練を要しない職種(1.17、0.79~1.74)であった。 既知の血管リスク因子を有していない55歳未満群のTIAおよび脳卒中罹患率は、時間の経過とともに顕著に上昇していた(45例[30.4%]vs.115例[42.4%]、絶対群間差:12.0%、95%CI:2.6~21.5)。とくに、潜在性イベント(cryptogenic events)を有する患者で有意に増大していた(10例[18.5%]vs.63例[49.2%]、絶対群間差:30.7%、95%CI:17.2~44.2、p<0.001、異質性のp=0.002)。

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COPDの疾病負担、世界的には低下傾向に/BMJ

 近年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)による世界的な疾病負担は減少傾向にあるものの、この疾患はとくに社会人口統計学的指標(0[開発が最も遅れている]~1[開発が最も進んでいる])が低い国々ではいまだに主要な公衆衛生上の課題であることが、イラン・タブリーズ医科大学のSaeid Safiri氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年7月27日号で報告された。GBD 2019のCOPDデータを用いた系統的解析 研究グループは、1990~2019年におけるCOPDの世界、地域別、国別の疾病負担および寄与リスク因子を、年齢、性別、社会人口統計学的指標に基づいて検討する目的で、系統的な解析を行った(イラン・Shahid Beheshti University of Medical Sciencesの助成を受けた)。 解析には、「2019年度世界疾病負担研究(GBD 2019)」のCOPDのデータが用いられた。GBDは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成で進められている研究で、GBD 2019では、1990~2019年における世界の204の国と領域における369種の疾患と負傷、および87件のリスク因子について評価が行われている。COPDについてはGOLDの定義が使用された。 主要アウトカムは、COPDの有病者、COPDによる死亡、COPDによる障害調整生存年(DALY)と、寄与リスク因子とされ、その数と10万人当たりの発生割合が、95%不確実性区間(UI)とともに算出された。禁煙、大気の質の改善、職業的曝露の低減が重要 2019年における世界のCOPDの有病者数は2億1,230万人で、年齢標準化点有病率は10万人当たり2,638.2人(95%不確実性区間[UI]:2,492.2~2,796.1)であり、1990年から8.7%低下した。また、同年のCOPDによる死亡者数は328万600人で、年齢標準化死亡率は10万人当たり42.5人(95%UI:37.6~46.3)であり、1990年以降41.7%減少した。同年のDALYは7,443万2,400年で、年齢標準化DALYの割合は10万人当たり926.1年(95%UI:848.8~997.7)であり、1990年に比べ39.8%低くなった。 2019年に、COPDの年齢標準化点有病率が最も高かった国はデンマーク(4,299.5人/10万人)で、次いでミャンマー(3,963.7人/10万人)、ベルギー(3,927.7人/10万人)の順であった。また、調査期間中に年齢標準化点有病率が最も増加した国はエジプト(62.0%)で、ジョージア(54.9%)、ニカラグア(51.6%)がこれに続いた。 2019年に、COPDによる10万人当たりの年齢標準化死亡率が最も高かったのはネパール(182.5人)で、最も低かったのは日本(7.4人)だった。10万人当たりの年齢標準化DALYもネパール(3,318.4年)で最も高く、バルバドス(177.7年)が最も低かった。 一方、男性では、世界のCOPDによるDALYの割合は85~89歳まで上昇が続き、その後は加齢とともに低下したのに対し、女性は最も高い年齢層(95歳以上)まで上昇が続いた。この割合は、全年齢層で男性のほうが高かった。 地域別の解析では、社会人口統計学的指標とCOPDの年齢標準化DALYの割合には、1990~2019年にかけて全体的に逆V字型の関係が認められた。すなわち、年齢標準化DALYの割合は、社会人口統計学的指標の上昇に伴い指数関数的に増加したが、同指標が約0.4に達した後、減少に転じた。 COPDによるDALYの割合の増加に最も寄与している因子は喫煙(46.0%)であり、次いで環境中の粒子状物質による汚染(20.7%)、職業的な粒子状物質、ガス、煙/蒸気への曝露(15.6%)の寄与が大きかった。 著者は、「COPDの疾病負担をさらに減少させるために、予防プログラムでは、禁煙、大気の質の改善、職業的曝露の低減に焦点を当てるべきと考えられる」としている。

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コロナ禍で医療資源確保のために国民へのお願い/4学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の流行拡大が深刻な様相を呈している。発熱外来には連日長蛇の受診者がならび診療予約の電話が鳴りやまない。また、救急搬送は大都市圏で稼働率9割を超え、受け入れ先医療機関の不足や長い待機時間などが大きな問題となっている。 こうした事態を鑑み、日本感染症学会(理事長:四柳 宏)、日本救急医学会(代表理事:坂本 哲也)、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)、日本臨床救急医学会(代表理事:溝端 康光)の4学会は連名で「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」を8月2日に急遽発表した。 声明では、COVID-19に罹患したと思われる際の個々人の行動について、軽症で重篤化リスクのない人については、自宅療養を勧めるとともに、救急車を利用する際の指針について示している。COVID-19かなと思ったら?【声明の4つのポイント】1)症状が軽い*場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合、新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません。医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中心になり、こうした薬は薬局などで購入できます。限りある医療資源を有効活用するためにも、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。 *症状が軽いとは「飲んだり食べたりできる、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い」2)症状が重い**場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合、65歳以上の方や65歳未満でも基礎疾患がある方、妊娠中、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。高熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようでしたら、かかりつけ医や近隣の医療機関へ必ず相談、受診(オンライン診療を含む)してください。 **症状が重いとは「水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしてもおさまらない」3)救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがあります。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわないでください。4)救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」をご活用ください。 判断に迷う場合には、普段からの体調を把握しているかかりつけ医への相談、各種相談窓口(行政などが設置している発熱相談窓口や♯7119などの救急安心センター・救急相談センター、♯8000)などの活用をしてください。7項目で診療集中の弊害を説明 上記の診療を受ける、救急車を利用する前のポイントを踏まえ、解説として7項目のCOVID-19のとくにオミクロン株に関する疾患情報やリスクの高い場合の対応を記している。以下に抜粋して示す。【オミクロン株にかかったときの自然経過】・オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現するが、そのほとんどが2~4日で軽くなること。・COVID-19の検査を受けることは大切だが、検査を受けることができなくてもあわてないで療養(自宅での静養)することが大切。・重症化する人の割合は数千人に1人程度と推定(厚生労働省資料より)。【COVID-19を疑う症状が出た場合】・COVID-19の症状(発熱・のどの痛み・鼻水・咳・全身のだるさなど)が出た場合は、まず仕事や学校を休んで外出を避け、自宅療養を始める。【症状が軽く65歳未満で基礎疾患がない場合、妊娠中でない場合】・症状が軽く(飲んだり食べたりできて、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い)、基礎疾患がない場合や妊娠がない場合は、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診をする必要はない。・COVID-19専用の特別な治療は行わない。つらい発熱や痛みを和らげる薬(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬)が治療の中心で、このような薬は薬局など(ドラッグストアやインターネット販売も含む)で購入できる。・限りある医療資源を有効活用するためにも、検査を目的とした医療機関の受診は避ける。・市販の医療用抗原検査キットを使い、症状が出た翌日以降に自分で検査することもできるが、症状が出た当日に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているのに陰性になる可能性が高いため、翌日以降の検査をお勧めする。【症状が重い、発熱が4日以上、65歳以上、基礎疾患がある場合、妊娠中の場合】・症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしても治まらない)場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続いている場合は、医療機関への受診(オンライン診療を含む)が必要。・たとえ症状が軽くても、65歳以上の方、基礎疾患がある方や妊娠中の方、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があるので、早めにかかりつけ医に相談。・熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようだったら、かかりつけ医や近隣の医療機関に必ず相談、受診(オンライン診療を含む)。・次の主な重症化のリスク因子がある方は受診が必要。〔主な重症化のリスク因子〕65歳以上の高齢者/悪性腫瘍(がん)/慢性呼吸器疾患(COPDなど)/慢性腎臓病/糖尿病/高血圧/脂質異常症/心臓や血管の病気/脳梗塞や脳出血など脳血管の病気/高度肥満(BMIが30以上)/喫煙(ヘビースモーカーの場合)/固形臓器移植後の免疫不全/妊娠後期/免疫抑制・調整薬の使用/HIV感染症(参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第8.0版を改変)【医療機関への受診について】・医療機関に受診が必要な場合は、通常診療中の時間帯(平日の日中など)に、かかりつけ医や近所の医療機関に電話相談してから受診。【救急車の利用の目安について】・COVID-19により救急車を呼ぶ必要がある症状としては、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがある。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわない。 以上、国民向けの内容であるが、外来診療などの際に患者さんにお伝えすることで、現在の診療への集中化の緩和につながればと期待する。

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「味覚が変です」今、こんな患者に遭遇したらどうする?【Dr.山中の攻める!問診3step】第16回

第16回 「味覚が変です」今、こんな患者に遭遇したらどうする?―Key Point―食事は人生最大の楽しみの一つである。味覚障害があると食欲が低下する複雑な風味を味わうには味覚と嗅覚が正常でなければならない味覚は年齢、食事、喫煙、薬剤によって影響を受ける症例:83歳 男性主訴)味覚障害現病歴)3ヵ月前から倦怠感と手足のしびれを自覚している。2ヵ月前から徐々に食べ物の味がわかりにくくなり、食欲が低下してきた。最近2週間は体動時の息切れを感じている。既往歴)10年前に胃がんのため胃全摘術、高血圧症内服薬)アムロジピン身体所見)意識清明、体温 36.8℃、血圧 132/68mmHg、脈拍 96回/分、呼吸回数 18回/分、SpO2 95%(室内気)眼瞼結膜:軽度の蒼白あり、舌:発赤あり、舌乳頭萎縮あり胸部:収縮期雑音(Levine 3/6)を心尖部で聴取する、腹部:正中に手術痕あり下肢:両側に軽度の浮腫と末梢優位の感覚障害あり経過)血液検査でWBC 3300/μL、Hb 8.3g/dL、MCV 110fL、血小板 15万/μL、Cr 0.7mg/dL、血糖 102mg/dL、CRP 0.25mg/dLであった10年前の胃全摘術の既往、下肢末梢優位の感覚障害、ハンター舌炎を示唆する舌所見、汎血球減少からビタミンB12欠乏を疑った1)血清ビタミンB12は75pg/mL(基準値:180~914)であったビタミンB12欠乏症による味覚障害と診断し、ビタミンB12の補充を行うと味覚障害は徐々に改善した◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!COVID-19感染症の流行初期には、味覚障害と嗅覚障害がよくみられた味覚障害の多くは嗅覚障害が原因である薬剤は味覚障害を起こすことが多い【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】味覚のメカニズムを理解する2)舌表面には約8,000個の味蕾(みらい)と呼ばれる味覚受容器官があり、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味を感じる甘味は舌の先端、塩味は舌前方の側面、酸味は舌後方の側面、苦味は舌後方で感じる嚥下時に後鼻腔にある嗅覚レセプターが刺激され、味覚と一緒に複雑な風味を感じる症状を訴える多くの患者は味覚ではなく嗅覚が障害されている<参考文献・資料>1)Stabler SP, et al. N Engl J Med. 2013;368:149-160.2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 21th edition. 2022. p232-238.3)UpToDate:Taste and olfactory disorders in adults: anatomy and etiology

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アルコール依存症リスクに対する喫煙の影響

 喫煙と飲酒には強い相関があるといわれている。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのClaire Garnett氏らは、イングランドにおける飲酒者の喫煙率および喫煙の特性について、アルコール依存症リスクの有無による比較を行った。その結果、アルコール消費量増加と喫煙率上昇との関連が認められたことから、著者らは、アルコール依存症リスクを有する喫煙者では、英国国民保健サービス長期計画(NHS Long Term Plan)の一環として喫煙率を低下させることが重要であると報告した。The Lancet Regional Health. Europe誌2022年6月9日号の報告。 イングランドの成人(weighted n:14万4,583人)を対象に毎月実施された断面調査のデータ(2014~21年)を用いて、分析を行った。喫煙および禁煙チャレンジの特徴は、調査年で調整した後、アルコール依存症(飲酒者のアルコール依存症リスクの有無別)で回帰した。 主な結果は以下のとおり。・過去1年間の喫煙率は、アルコール依存症リスクを有する飲酒者で63.3%(95%CI:59.7~66.8)、アルコール依存症リスクのない飲酒者で18.7%(95%CI:18.4~18.9)、非飲酒者で19.2%(95%CI:18.8~19.7)であった。・過去1年間の喫煙者のうち、アルコール依存症リスクを有する飲酒者は、1日当たりの喫煙本数が多く(vs.リスクのない飲酒者、B=3.0、95%CI:2.3~3.8)、起床後最初の喫煙が5分以内である可能性が高かった(vs. 60分未満内、OR=2.81、95%CI:2.25~3.51)。

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動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版、主な改訂点5つ/日本動脈硬化学会

 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版が5年ぶりに改訂、7月4日に発刊された。本ガイドライン委員長の岡村 智教氏(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学 教授)が5日に開催されたプレスセミナーにおいて動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の変更点を紹介した(主催:日本動脈硬化学会)。 今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の改訂でキーワードとなるのが、「トリグリセライド」「アテローム血栓性脳梗塞」「糖尿病」である。これを踏まえて2017年版からの変更点がまとめられている動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の序章(p.11)に目を通すと、改訂点が一目瞭然である。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版のPDFは動脈硬化学会のホームページより誰でもダウンロードできる。<動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の主な改訂点>1)随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値を設定した。2)脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアが採用された。3)糖尿病がある場合のLDLコレステロール(LDL-C)の管理目標値について、末梢動脈疾患、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合は100mg/dL未満とし、これらを伴わない場合は従前どおり120mg/dL未満とした。4)二次予防の対象として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓症脳梗塞も追加し、LDL-Cの目標値は100mg/dL未満とした。さらに二次予防の中で、「急性冠症候群」「家族性高コレステロール血症」「糖尿病」「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併」の場合は、LDL-Cの管理目標値は70mg/dL未満とした。5)近年の研究成果や臨床現場からの要望を踏まえて、新たに下記の項目を掲載した。 (1)脂質異常症の検査 (2)潜在性動脈硬化(頸動脈超音波検査の内膜中膜複合体や脈波伝播速度、CAVI:Cardio Ankle Vascular Indexなどの現状での意義付) (3)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH) (4)生活習慣の改善に飲酒の項を追加 (5)健康行動倫理に基づく保健指導 (6)慢性腎臓病(CKD)のリスク管理 (7)続発性脂質異常症動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂に至った主な理由 1)について、「TGは食事の摂取後は値が上昇するなど変動が大きい。また空腹時でも非空腹時でも値が高いと将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡を予測することが国内の疫学調査で示されている。国内の疫学研究の結果およびESC/EASガイドラインとの整合性も考慮して、空腹時採血:150mg/dL以上または随時採血:175mg/dL以上を高TG血症と診断する」とコメントした(参照:BQ5)。 2)については、吹田スコアに代わり今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では久山町研究のスコアを採用している。その理由として、同氏は「吹田スコアの場合、研究アウトカムが心筋梗塞を含む冠動脈疾患発症で脳卒中が含まれていなかった。久山町研究のスコアは、虚血性心疾患と、脳梗塞の中でとくにLDL-Cとの関連が強いアテローム血栓性脳梗塞の発症にフォーカスされていた点が大きい」と説明(参照:BQ16)。 3)については、ESC/EASガイドラインでの目標値、国内のEMPATHY試験やJ-DOIT3試験の報告を踏まえ、心血管イベントリスクを有する糖尿病患者の一次予防において、十分な根拠が整っている(参照:FQ24)。 4)については、国内でのアテローム血栓性脳梗塞が増加傾向であり、再発予防が重要になるためである。また二次予防の場合、糖尿病の合併がプラーク退縮の阻害要因となることなどから「これまで厳格なコントロールは合併症などがあるハイリスクの糖尿病のみが対象だったが、今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より糖尿病全般においてLDL-C 70mg/dL未満となった」と解説した。 5)の(7)続発性脂質異常症は新たに追加され(第6章)、他疾患などが原因で起こる続発性なものへの注意喚起として「続発性(二次性)脂質異常症に対しては、原疾患の治療を十分に行う」とし、甲状腺機能低下症など、続発性脂質異常症の鑑別を行わずに、安易にスタチンなどによる脂質異常症の治療を開始すると横紋筋融解症などの重大な有害事象につながることもあるので注意が必要、と記載されている。<続発性脂質異常症の原因>1.甲状腺機能低下症 2.ネフローゼ症候群 3慢性腎臓病(CKD)4.原発性胆汁性胆嚢炎(PBC) 5.閉塞性黄疸 6.糖尿病 7.肥満8.クッシング症候群 9.褐色細胞腫 10.薬剤 11.アルコール多飲 12.喫煙――― このほか同氏は、「LDL-Cのコントロールにおいて飽和脂肪酸の割合を減らすことが重要(参照:FQ3)」「薬物開始後のフォローアップのエビデンスレベルはコンセンサスレベルだが、患者さんの状態を丁寧に見ていくことは重要(参照:BQ21)」などの点を補足した。 2007年版よりタイトルを“診療”から“予防”に変更したように、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版は動脈硬化性疾患の予防に焦点を当てて作成されている。同氏は「すぐに薬物治療を実行するのではなく、高リスク病態や他疾患の有無を見極めることが重要。治療開始基準と診断基準は異なるので、あくまでスクリーニング基準であることは忘れないでほしい」と締めくくった。

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ASCO2022 レポート 血液腫瘍

レポーター紹介今年のASCO 2022の年次総会も、COVID-19の影響で、昨年のASCO 2021に引き続き、ハイブリッド開催となりました。その恩恵を受けて、昨年と同様に、米国・シカゴまで行かずに、通常の病院業務をしながら、業務の合間に、時差も気にせず、オンデマンドで注目演題を聴講したり、発表スライドを閲覧したりすることができました。それらの演題の中から、今年も10の演題を選んで、発表内容をレポートしたいと思います。以下に、悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連5演題、多発性骨髄腫関連3演題、白血病関連2演題を紹介します。悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連First-line brentuximab vedotin plus chemotherapy to improve overall survival in patients with stage III/IV classical Hodgkin lymphoma: An updated analysis of ECHELON-1.  (Abstract #7503)ECHELON-1試験は、初発の進行期ホジキンリンパ腫患者を対象に、これまでの標準治療のABVD療法と、ブレンツキシマブベドチンとブレオマイシンを入れ替えたA-AVD療法を比較した第III相比較試験で、これまでの発表にて、A-AVD療法がABVD療法と比較し、PFSの延長効果が示されていた。今回の発表では、追跡期間の中央値が73ヵ月(約6年)の時点で、A-AVD療法の、OSについての優位性も示された(6年時点のOS:[A-AVD療法:93.9%、ABVD療法:89.4%]) (HR:0.590、95%信頼区間[CI]:0.396~0.879、p=0.009)。サブグループ解析では、IPSが4~7の患者、Stage IVの患者、節外病変が2以上の患者など、予後不良と思われる患者において、有意にA-AVD療法がABVD療法よりもOSを延長した。2次がんの発症率も、23例と32例で、A-AVD療法で少なかった。ホジキンリンパ腫については、これまで、ABVD療法に対し、OSでの優位性を示した治療法はなかったが、A-AVD療法が初めてABVD療法にOSで優ったことが示された歴史的試験結果となった。Glofitamab in patients with relapsed/refractory (R/R) diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) and >2 prior therapies: Pivotal phase II expansion results. (Abstract #7500)R/R DLBCL患者に対し、近年、CD19-CAR-T細胞治療やポラツズマブベドチン(ADC)などの新薬が登場し、治療成績は良くなったが、それらの治療にても再発・難治となる場合もあり、さらなる新薬の開発が望まれている。本発表では、CD20とCD3(2対1の比率)に対する二重抗体薬のglofitamabの第II相試験(21日サイクルにて、最大12サイクルまでの固定期間治療であり、サイクル1のDay1には、CRS軽減のため、オビヌツズマブを投与し、Day8に2.5mg、Day15に10mgを投与、サイクル2以降はDay1に30mgを投与する)の結果が報告された。154例の2ライン以上の前治療歴(リツキシマブの治療歴を含む)のあるR/R DLBCL患者が対象となった(59.7%が3ライン以上、33.1%がCAR-T治療を受けていた)。主要評価項目のCR率は39.4%であり、副次評価項目のORRは51.6%であった。また、CAR-T治療歴のある、なしでのCR率は、それぞれ35%と42%であった。CR維持率は12ヵ月時点で77.6%であった。CRSは63%に認めたが、うち59%はG1~2であり、ほとんどがサイクル2までに認められた。glofitamabは、CAR-T既治療例を含むR/R DLBCLに対する新たな治療薬として期待できる。Influence of racial and ethnic identity on overall survival in patients with chronic lymphocytic lymphoma. (Abstract #7508)CLLは、西欧諸国では頻度の多い疾患であるが、アフリカやアジアでは少なく、発症率や予後に、人種差が影響するかどうかは、明らかではなかった。本発表では、National Cancer Databaseに2004~18年に登録されたアメリカのCLL患者を解析している。9万7,804例のうち、8万8,680例(90.7%)が白人、7,391例(7.6%)が黒人、2,478例(2.6%)がヒスパニック、613例(0.6%)がアジア人であった。今回は、この中で、白人と黒人を比較している。黒人の方が、診断時の年齢が66歳(vs.70歳)と若く、合併症を有する割合も27.9%(vs.21.3%)と多かった。さらに、次の項目(女性患者、非保険加入者、低所得者)の割合が黒人で多かった。また、CLLの治療を、診断時すぐに開始された割合も35.9%(vs.23.6%)と多く、OSは短い(中央値:7.00年vs.9.14年)ことがわかった。CLLの病態に人種差がどのように影響しているかは不明だが、経済力の差などが、診断時期や治療法の選択にも影響している可能性もあり、それがOSの差に反映していると思われる。GEMSTONE-201: Preplanned primary analysis of a multicenter, single-arm, phase 2 study of sugemalimab (suge) in patients (pts) with relapsed or refractory extranodal natural killer/T cell lymphoma (R/R ENKTL). (Abstract #7501)R/R ENKTLの予後はきわめて不良である(OS中央値は7ヵ月未満、1年OSは20%未満)。本試験では、R/R ENKTLに対する抗PDL1抗体薬(sugemalimab)の第II相試験(GEMSTONE-201試験)の最初の解析結果が報告された(追跡期間の中央値が13.4ヵ月時点)。対象となった患者は、80例(年齢中央値:48歳、男性:64%、前治療が2ライン以上:49%、前治療に抵抗性:46%)であり、Suge 1,200mgを3週に1回投与し、最長24ヵ月投与した。主要評価項目のORRは、46.2%であった。また、副次評価項目のCR率は、37.2%であり、12ヵ月時点のDORは、86%であった。探索的評価項目の全生存率は、12ヵ月時点で68.6%であった。G3以上の有害事象は39%(治療薬関連は16%、そのうち重篤な有害事象は6.3%)でみられ、最も高頻度にみられたirAEは、甲状腺機能低下症が16%にみられた。R/R ENKTLに対する抗PDL1抗体薬は、その有効性と安全性のバランスから期待できる治療薬と考える。Primary results from the double-blind, placebo-controlled, phase III SHINE study of ibrutinib in combination with bendamustine-rituximab (BR) and R maintenance as a first-line treatment for older patients with mantle cell lymphoma (MCL). Abstract #LBA7502初発の自家移植非適応の高齢MCL患者(65歳以上)に対するBRX6サイクル+R維持療法(2ヵ月ごと2年間)と、その治療に最初からイブルチニブ560mg(or プラセボ)を上乗せし、イブルチニブ(or プラセボ)は、PDあるいは毒性中止となるまで継続する治療を比較した第III相比較試験のSHINE試験の結果がLate break abstractとして報告され、同日のNEJM誌にPublishされた。イブルチニブ群259例とプラセボ群260例が治療を受けた。主要評価項目のPFSの中央値は、80.6と52.9ヵ月であり、HR:0.75(0.59~0.96)と有意にイブルチニブを併用した治療で約2年のPFSの延長がみられた。ハイリスク症例(BlastoidタイプあるいはTP53変異あり)でも、イブルチニブ群でPFSが良い傾向にあったが、症例数が少なく、有意差は認めなかった。TTNTもHR:0.48(0.34~0.66)でイブルチニブ群で延長がみられた。イブルチニブ群では、G3/4の有害事象として、出血(3.5%)、心房細動(3.9%)、高血圧(8.5%)、関節痛(1.2%)を認めた。ただし、OSについては、HR:1.07(0.81~1.40)で差を認めていない。SHINE試験で、初めて、初発の高齢MCL患者に対するイブルチニブの有用性(併用効果)が示され、今後、標準治療の変更が見込まれる結果となった。多発性骨髄腫関連Major risk factors associated with severe COVID-19 outcomes in patients with multiple myeloma: Report from the National COVID-19 Cohort Collaborative (N3C). (Abstract #8008)NCATS’ National COVID Cohort Collaborative (N3C)のデータベースを用い、MM患者におけるCOVID-19の重症化のリスクを解析している。本データベースには、2万6,064例のMM患者が登録(うちCOVID-19 陽性は8,588例)されていた。多変量解析によって、肺疾患、腎疾患の既往は重症化のリスクであったが、糖尿病、高血圧は有意なリスクとはならなかった。喫煙は、むしろリスクが低い傾向があった。造血幹細胞移植、COVID-19ワクチン接種は有意に重症化リスクを下げた。一方、IMiDs、PI、デキサメサゾン治療は死亡リスクを上昇させたが、ダラツムマブ治療はリスクとはならなかった。1.93%のMM患者がCOVID-19感染10日以内に、4.47%のMM患者が30日以内に死亡した。本発表は、世界での最大級のデータベースを解析したものであり、COVID-19流行下のMM診療に役立つと思われる。Teclistamab, a B-cell maturation antigen (BCMA) x CD3 bispecific antibody, in patients with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM): Updated efficacy and safety results from MajesTEC-1. (Abstract #8007)BCMAとCD3に対する二重抗体薬 teclistamabの第I/II相MajesTEC-1試験の最新のデータが発表された。対象となった患者165例(第I相:40例、第II相:125例)は、前治療のライン数が5(2~14)で74%が4ライン以上であった。また、78%がトリプルクラス抵抗性、30%がペンタドラッグ抵抗性であり、90%が最後の治療に抵抗性の状態であった。Tecは、1.5mg/kgを週1回、皮下注で投与する方法が推奨用量であった。有効性の評価では、ORRは63%で、VGPR以上は58.8%、CR以上は39.4%であった。DORの中央値は18.4ヵ月、12ヵ月時点のDORは68.5%であり、CR以上が得られた患者では80.1%であった。PFSの中央値は11.3ヵ月、OSの中央値は18.3ヵ月であった。有害事象については、CRSは、72.1%でみられたが、G3は1例(0.6%)でG4/5はなかった。CRS発現は2日目(1~6)にみられ、2日間(1~9)続いた。治療関連死は5例(COVID-19 2例、肺炎1例、肝不全1例、PML1例)、AEによる減量は1例だけであった(21サイクル目)。BCMAを標的とするCAR-T療法よりは効果が落ちるものの、Off the shelfの薬剤であり、大いに期待される。Daratumumab carfilzomib lenalidomide and dexamethasone as induction therapy in high-risk, transplant-eligible patients with newly diagnosed myeloma: Results of the phase 2 study IFM 2018-04. (Abstract #8002)フランスのグループ(IFM)で実施されたHigh riskの染色体異常(CA)(t[4;14]、 del[17p]、 t[14;16]のいずれか)を有する移植適応のある初発MM患者を対象としたDara-KRD(6サイクル)+Auto(MEL200)+Dara-KRD(4サイクル)+2回目Auto(MEL200)+Dara-Len維持療法(2年)の第II相試験(IFN 2018-04試験)の寛解導入Dara-KRD治療の結果が報告された。50例の患者がエントリーされた。Del(17p)が20例、t(4;14)が26例、t(14;16)が10例、Gain(1q)は25例、前記の2以上のCAを有しているのは34例であった。46例が6サイクル完遂でき、2例はAE(COVID-19感染と腫瘍崩壊症候群)で中止、2例はPD中止となった。6例が2回Auto分のPBSCHに失敗したため、Dara-KRD(3サイクル)後にPBSCHを実施したところ、全例、PBSCHに成功した。ORRは96%、VGPR以上は91%、MRD測定(NGS)を行った37例中、MRD陰性であったのは、62%であった。今後、この治療法は続きがあるが、寛解導入部分の有効性、安全性は評価できると考える。白血病関連Overall survival by IDH2 mutant allele (R140 or R172) in patients with late-stage mutant-IDH2 relapsed or refractory acute myeloid leukemia treated with enasidenib or conventional care regimens in the phase 3 IDHENTIFY trial. (Abstract #7005)AMLにおいて、8~19%の症例で、IDH2遺伝子変異がみられ、IDH2遺伝子変異には、R140Q変異(75%)とR172K変異(25%)がある。変異IDH2阻害剤のenasidenibは、IDH2遺伝子変異を有する高齢R/R AML患者に対し、通常の治療(AZA、CA少量、BSC)と比較しOSの延長は認められなかった(IDHENTIFY試験)。今回の解析では、R140変異とR172変異に分けて解析している。R140と比較し、R172では併存する変異遺伝子の数が、少なかった。また、R140ではSRSF2、FLT3、NPM1、RUNX1遺伝子の変異を伴うのが多かったが、R172では、DNMT3A、TP53の変異が多かった。このことが影響したためか、R140では、OSに差を認めなかったが、R172においては、有意に、enasidenibが、通常治療よりもOSを延長した(14.6ヵ月 vs.7.8ヵ月)。遺伝子変異に基づいた治療法の選択は今後、ますます重要になると思われ、興味深い発表と考える。Efficacy and safety results from ASCEMBL, a phase 3 study of asciminib versus bosutinib (BOS) in patients (pts) with chronic myeloid leukemia in chronic phase (CML-CP) after >2 prior tyrosine kinase inhibitors (TKIs): Week 96 update.  (Abstract #7004)2ライン以上のTKIによる前治療歴があり、それらのTKI治療に抵抗性・不耐容のCML患者に対し、従来のTKIが結合するATP結合サイトとは異なるミリストイルポケットを標的とするasciminibとボスチニブを比較した第III相試験のASCEMBL試験のフォローアップデータが発表された。最初の解析時点から16.5ヵ月経過した2.3年時点での結果である。157例がasciminib、76例がボスチニブに割り付けられ、84例(53.5%)と15例(19.7%)が治療継続しており、治療効果不十分のため中止となった症例は、38例(24.2%)と27例(35.5%)であった。96週時点のMMR率(副次評価項目)は、37.6%と15.8%であり、有意にasciminibが優れていた(主要評価項目の24週時点のMMR率は25.5%と13.2%であった)。内服期間の中央値も23.7ヵ月と7.0ヵ月で、asciminibが長かった。asciminibでボスチニブよりも多くみられたAEは、血小板減少であり、ボスチニブでみられる下痢、嘔気・嘔吐、皮疹、肝障害は、明らかに少なかった。今回の結果から、asciminibは、既存のTKIに抵抗性・不耐容のCML患者の長く継続できる新たな治療薬として、再認識され、現在、日本でも保険適用で使用可能となった。おわりに以上、ASCO 2022で発表された血液腫瘍領域の演題の中から10演題を紹介しました。昨年のASCO 2021でも10演題を紹介いたしましたが、今年も昨年と同様に、どの演題も今後の治療を変えていくような結果であるように思いました。来年以降も現地開催に加えてWEB開催を継続してもらえるならば、ASCO 2023にオンライン参加をしたいと考えています。(でも、もう少し参加費を安くしてほしい、特に、円安の今日この頃(笑))

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多発性骨髄腫患者におけるCOVID-19重症化のリスク因子の検討/ASCO2022

 米国立衛生研究所(NIH)のNational COVID Cohort Collaborative(N3C)データベースを用いた解析により、肺疾患および腎疾患の既往、がん治療などが多発性骨髄腫患者のCOVID-19重症化リスクを高めることが示された。米国・Auburn大学のAmit Kumar Mitra氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 高齢者に発症頻度が高い形質細胞腫瘍である多発性骨髄腫は、しばしば免疫不全を呈することから、COVID-19の重症化リスクを高める可能性がある。同研究では、NIHのNational Center for Advancing Translational Sciences(NCATS)が主導する全国一元公開データベースであるN3Cのデータセットを使用し、多発性骨髄腫患者のCOVID-19の重要化や死亡に関連するリスク因子について解析を行った。・対象:N3Cデータセットに登録された多発性骨髄腫患者26,064例の中で、COVID-19陽性が確認された8,588例・方法:多変量解析により多発性骨髄腫患者のCOVID-19重症化および死亡のリスク因子を検討・評価項目:COVID-19重症化、死亡に関するリスク因子 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢(中央値)は65.9歳、46.8%が女性であり、喫煙歴は25.0%にみられ、腎疾患、肺疾患、糖尿病の既往歴はそれぞれ26.7%、19.8%、27.0%であった。・対象患者の55.8%は入院または救急搬送を要し、12.2%は入院中に急性腎障害を発症、3.2%は人工呼吸器を装着した。また、COVID-19の重症度については、17.8%が軽症(うち3.7%が救急搬送)、18.3%が中等度、0.9%が重症であり、6.7%がCOVID-19により死亡した。・ロジスティック回帰分析からは、肺疾患や腎疾患の既往、多発性骨髄腫のStage(中等度~重度)などがCOVID-19の重症化リスクを高め、ワクチン接種が重症化リスクを低下させていた。また、糖尿病の既往や多発性骨髄腫のStage(中等度~重度)などが死亡リスクを高め、ワクチン接種は死亡リスクも減少させていた。なお、喫煙歴はいずれのリスクとも相関していなかった。・多発性骨髄腫の治療との関連については、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、デキサメタゾンがCOVID-19の重症化リスクを高め、プロテアソーム阻害薬は死亡のリスクも高めていた。一方で、骨髄移植はCOVID-19の重症化および死亡のリスクを低下させていた。

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筋肉量減少に、睡眠の満足感・夕食時刻・朝食の有無が関連/日本抗加齢医学会

 加齢とともに減少する筋肉量がどのような生活習慣と関連するのか、東海大学の増田 由美氏らが比較的健康な成人男子を調査し解析した結果、睡眠の満足感との有意な関連が示された。睡眠時間との関連は有意ではなかったという。さらに、60歳未満では20時までの夕食摂取、60歳以上では毎日の朝食摂取が筋肉量の維持に効果的であることが示唆された。第22回日本抗加齢医学会総会(6月17~19日)で発表した。筋肉量は睡眠障害の自覚レベルと飲酒に有意に関連 本研究の対象は、2014年4月1日~2020年6月30日に東海大学医学部付属東京病院で抗加齢ドックを受診した成人男性160名のうち、睡眠時無呼吸症、脳血管障害、肝機能障害の治療中の5名を除いた155名。In-bodyによる筋肉量、BMI、HDLコレステロール、LDLコレステロール、アディポネクチンを検査し、自記式質問票による睡眠時間(6時間未満/6時間以上)、睡眠障害の自覚レベル、喫煙習慣・飲酒習慣・運動習慣・朝食の有無、夕食開始時刻(18時以前/18~20時/20時以降)、入眠剤の服用の有無について、筋肉量との関係を相関分析および重回帰分析で検討した。さらに、60歳未満76名と60歳以上79名の2群に分け、各群において睡眠、朝食摂取、夕食時刻と筋肉量との関係を調べた。 筋肉量が睡眠などの生活習慣とどのように関連するのか調査し解析した主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、入眠剤の服用、喫煙習慣を調整した場合、睡眠障害の自覚レベル(睡眠の満足感)、飲酒が筋肉量と有意に関連していた。・60歳未満では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また夕食開始時刻が遅いほど、筋肉量が有意に減少した。・60歳以上では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また朝食を毎日摂取していない場合に筋肉量が有意に減少した。 増田氏は、本研究の結果から良質な睡眠による筋肉疲労の回復を示唆する可能性、睡眠の満足感が睡眠リズムの障害を反映している可能性を考察している。睡眠リズムの障害があると成長ホルモンの分泌低下や、グリア細胞の機能低下があることが報告されているという。なお本研究の限界として、横断研究であり、対象者数が少なく、運動強度を設定していないことなどを挙げている。

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HER2陰性乳がん術後再発の2例、心機能回復困難なのはどっち?【見落とさない!がんの心毒性】第12回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》類似した患者特性と同種のがん薬物治療を受けたにも関わらず、極めて異なる心不全治療経過をたどったHER2陰性乳がん術後再発の2症例症例1年齢・性別50代・女性既往歴心疾患、糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。5年間のホルモン療法完遂後。術後9年目に多発他臓器転移、リンパ節に再発。再発乳がんに対してCEF (シクロフォスファミド[Cyclophosphamide]+エピルビシン[Epirubicin]+フルオロウラシル[Fluorouracil])を約半年間かけて計8クール実施(エピルビシン総積算量 800mg/m2)。積算アントラサイクリン量から心毒性を懸念しCEFを終了した。CEF終了時の左室駆出率 (LVEF)70%台と左室機能低下は認めず。パクリタキセル(PAC)+ベバシズマブ治療に移行した約1年半後にLVEFが低下した心不全 (HFrEF) を発症。急性期は肺うっ血を呈し、LVEF 20%台まで左室機能は低下しており各種検査からがん治療関連性心機能障害 (CTRCD)と診断した。HFrEF発症後は急性心不全治療および心保護治療を開始。その後の経過は良好で比較的速やかな経過をたどり、心不全治療開始後約1年の時点でLVEF 60%台とほぼ正常に回復を示した (症例1経過図)。心不全発症後最高BNP値:485 pg/mL、心不全発症後最高トロポニンI(TnI)値:20 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例1経過図画像を拡大する症例2年齢・性別50代・女性既往歴糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。術後ホルモン療法治療中にリンパ節および他臓器転移での再発を確認。PAC+ベバシズマブ治療を導入。治療後1年4ヵ月でPD判定、CEF治療へ移行した。CEF移行時のLVEFは 70%台と左室機能は維持されていた。CEF治療移行後の約半年後にHFrEF発症 (エピルビシン[EPI]600 mg/m2).HFrEF診断時、LVEF 20%台と左室機能は高度に低下し、BNP 664と上昇。速やかに利尿剤、心保護治療の導入と拡充を開始したがBNPは更に増悪傾向を示し、経過中は一時的にピモベンダン併用も余儀なくされた。その後、BNPおよびトロポニンは徐々に回復傾向を示したが、長期間に渡りLVEFの回復は極めて緩慢で、LVEF 20%前後が長期に渡り遷延し心不全治療導入後の約2年経過後もLVEF 42%程度の回復にとどまった(症例2経過図)。心不全発症後最高BNP値:1014 pg/mL、心不全発症後最高TnI値:96 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例2経過図画像を拡大する2症例の対比表画像を拡大する【問題】類似した患者特性を有し類似した薬物治療を受けた2症例にも関わらず、心不全治療後の心機能回復が極めて異なる転帰をたどった。その理由について、筆者が最も疑っている2つの理由はなにか?講師紹介

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NSCLC1次治療でのLAG-3タンパク+ペムブロリズマブの効果(TACTI-002)/ASCO2022

 LAG-3タンパクeftilagimod alpha(efti)とペムブロリズマブとの併用は、PD-L1の発現状態にかかわらず非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療に有効である可能性が示された。スペイン・Vall d’Hebron Institute of OncologyのEnriqueta Felip氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 eftiは、MHCクラスII分子のサブセットに結合して抗原提示細胞(APC)の活性化とCD8T細胞の活性化を仲介する可溶性LAG-3タンパクで、抗PD-1抗体薬とは異なる免疫チェックポイント阻害薬として注目されている。eftiの併用によるAPCの刺激とT細胞の活性化は、抗PD-1抗体薬の単独療法よりも強い抗腫瘍効果をもたらす可能性がある。そこで、NSCLC患者を対象にeftiとペムブロリズマブとの併用効果について評価する第II相試験(TACTI-002)が現在進行している。今回は、同試験におけるPD-L1の発現状態を問わないコホート集団の結果から、両薬剤の併用効果について評価した。・対象:PD-L1 の発現状態を問わない進行 NSCLC患者(114例)・方法:efti 30mg 2週ごと+ペムブロリズマブ200mg 3週ごと8サイクル→両剤を3週ごと9サイクル→ペムブロリズマブ3週ごと16サイクル・評価項目: [主要評価項目]iRECISTに基づく奏効率(ORR) [副次評価項目]RECIST v1.1に基づくORR、病勢コントロール率(DCR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は67歳、男性74%、95%喫煙歴あり、PD-L1陽性率(TPS)1%未満は32.5%、1~49%が35.1%、70%超が27.2%であった。・iRECISTに基づくORRは38.6%であった。すべてのPD-L1サブグループで効果がみられ、TPS 50%以上のORRは52.6%であった。・RECIST v1.1に基づくORRは37.7%で、DCRは71.9%であった。・11例(9.6%)の患者が有害事象のために治療を中止していた。

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小児期の心血管リスク因子、中年期の心血管イベントと関連/NEJM

 心血管リスク因子であるBMI、収縮期血圧、総コレステロール値、トリグリセライド値および若年期喫煙は、とくに幼少期からの組み合わせで、成人期の心血管イベントおよび60歳前の心血管死と関連することが、米国・ミネソタ大学のDavid R. Jacobs Jr氏らによるInternational Childhood Cardiovascular Cohort(i3C)コンソーシアムの前向きコホート研究の結果、示された。小児期の心血管リスク因子は潜在的な成人期の心血管疾患を予測するが、臨床イベントとの関連は明らかになっていなかった。NEJM誌2022年5月19日号掲載の報告。3~19歳の約4万人を平均35年追跡、5つのリスク因子と心血管イベントの関連を解析 研究グループは、1970年代から1990年代にかけてi3Cコンソーシアムの7つの前向きコホートに登録された3~19歳の参加者4万2,324人を対象に、平均35年追跡し、小児期に最もよく評価される5つのリスク因子(BMI、収縮期血圧、総コレステロール値、トリグリセライド値、若年期喫煙)が成人期の心血管イベントに関連しているかを評価した。追跡調査は2015~19年に行われた。 リスク因子は、i3Cコンソーシアム内で正規化された年齢・性特異的zスコア、および5つのリスクzスコアの非加重平均として計算した複合リスクzスコアを用いて解析し、代数的に同等な成人の複合リスクzスコア(心血管イベント発生前)は小児期のリスク因子と同様に解析した。評価項目は、致死的心血管イベント、致死的または非致死的心血管イベントで、多重代入後に比例ハザード回帰分析を行った。 参加者4万2,324人のうち、所在が確認された生存者、原因が確認された死亡者、または死亡登録がなく生存していると推定された者の計3万8,589人が解析対象となった。登録時の背景は、男性49.7%、黒人15.0%、平均(±SD)年齢11.8±3.1歳であった。5つの複合リスクzスコア1単位増加当たり2.71倍 3万8,589人中319人(0.8%)に致死的心血管イベントが発生した。イベント発生時の年齢は47.0±8.0歳であった。成人期の致死的心血管イベントのハザード比は、各リスク因子zスコアに関しては総コレステロール値zスコアの1単位増加当たり1.30(95%信頼区間[CI]:1.14~1.47)から、若年期喫煙(ありvs.なし)の1.61(95%CI:1.21~2.13)の範囲であり、複合リスクzスコアに関しては1単位増加当たり2.71(95%CI:2.23~3.29)であった。 致死的または非致死的心血管イベントの解析対象は2万656人で、このうち779人(3.8%)にイベントが発生した。イベント発生時の年齢は47.1±7.4歳であった。致死的または非致死的心血管イベントのハザード比および95%CIは、致死的心血管イベントのハザード比および95%CIと類似していた。 成人期(心血管イベント発生前)のリスク因子に関するデータを有する1万3,401人(成人期調査時の年齢31.0±5.6歳)のサブグループでは、115人に致死的心血管イベントが発生し、補正後ハザード比は小児期の複合リスクzスコアに関して1単位増加当たり3.54(95%CI:2.57~4.87)、複合リスクzスコアの小児期から成人期の変化量の1単位増加当たり2.88(95%CI:2.06~4.05)であった。 同サブグループで致死的または非致死的心血管イベントは524人に発生し、補正後ハザード比はそれぞれ3.21(95%CI:2.69~3.85)および2.58(2.15~3.09)であり、致死的心血管イベントと結果は同様であった。

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リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第14回

第14回 リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!―Key Point―後頸部リンパ節腫脹では全身の感染症、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を想起するEBウイルスによる伝染性単核球症では、眼瞼浮腫、頸部リンパ節腫脹、咽頭炎、肝機能障害、肝脾腫、倦怠感、頭痛が特徴である1)。Kissing diseaseと呼ばれるように唾液からの感染が原因となる。10~20代に多い症例:21歳 男性主訴)発熱、頸部腫瘤現病歴)5日前から37℃前半の発熱と咽頭痛あり。2日前から両側眼瞼の腫脹と両側頸部に腫瘤を触知することに気がついた。昨日から咽頭痛が悪化し、38℃台の発熱になったため、心配になり来院した。既往歴)なし薬剤歴)なし生活歴)飲酒:ビール500mL/毎日喫煙:10本/日(20歳~)職業:建設業身体所見)体温38.7℃、血圧142/78mmHg、心拍数98回/分、呼吸回数20回/分、意識:清明眼瞼:両側に浮腫あり口蓋扁桃:発赤腫大し白苔を認める頸部:両側の胸鎖乳突筋後方に径1~2cmのリンパ節を数個触知する。リンパ節は軟で圧痛あり腹部:平坦、軟、右肋骨弓下に肝臓を2cm、左肋骨弓下に脾臓を3cm触知する経過)血液検査:末梢血中の異型リンパ球増加あり。ASTとALTの上昇あり伝染性単核球症を考えEBウイルス抗体価を測定し、抗VCA-IgM抗体の上昇と抗VCA-IgG抗体および抗EBNA抗体の陰性を認めた新しいガールフレンドとの交際をしつこく聞いたがまったくないという。1ヵ月前に同僚たちと日本酒の回し飲みをしたとのことであった。無症状であるEBウイルス既感染者の90%は唾液にウイルスを排泄していると言われる1)NSAIDsの定期内服で症状は軽快した。脾臓破裂の可能性があるので、激しく体が接触するスポーツを1ヵ月間は避けるように指導した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!伝染性単核球症はEBウイルスにより起こるアンピシリンの服用により皮疹が出現するサイトメガロウイルスによる伝染性単核球様症状では咽頭痛や頸部リンパ節腫脹を認めないことが多い。性的に活発な年代に多いHIVやトキソプラズマの急性感染、薬剤でも同様の症状が起こる菊池病は若年女性に好発し、頸部リンパ節腫脹、発熱、皮疹、体重減少、関節痛、肝脾腫、無菌性髄膜炎など多彩な臨床像を示す。SLEへ移行することがある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】症状を確認する急性発症か慢性発症かどの部位のリンパ節が腫れているか発熱、体重減少(体重の5%以上の減少)、盗汗(下着を変える必要があるほどの夜間の発汗)を伴っているか【STEP2-2】診察で詳細に確認するすべての表在リンパ節を触診する。2ヵ所以上の離れたリンパ節が腫れる全身性? 局所性?腫大したリンパ節の大きさと数を記載する圧痛があれば炎症性、圧痛がなければ悪性腫瘍の可能性が高まる炎症性では柔らかく、悪性リンパ腫では消しゴムの硬さ、癌では石のような硬さであることが多い可動性なら炎症性か悪性リンパ腫、可動性がなければ癌を示唆する肝腫大と脾腫の有無を触診で確認する直径3cm以上、硬い、可動性なし、鎖骨上窩リンパ節腫大、体重減少があれば重大な疾患の可能性がある2)【STEP3】鑑別診断を想起する3)胸鎖乳突筋の後方にある後頸部リンパ節腫脹があれば、全身の感染症(EBウイルス、サイトメガロウイルス、風疹ウイルス、HIV、結核)、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を考える鎖骨上窩リンパ節腫大があれば、第一に悪性腫瘍を疑う。左鎖骨上窩リンパ節は消化器がんの転移部位として有名である(Virchow転移)腋窩リンパ節はネコひっかき病、乳がんで腫れる鼠径リンパ節は下肢からの感染、性感染症で腫れることが多い全身性リンパ節腫脹あれば、ウイルス感染症、結核、膠原病、成人Still病、悪性リンパ腫を疑う<参考文献・資料>1)Harrison’s Principles of Internal Medicine 20th edition. 2018. p1358-1365.2)McGee Evidence-Based Physical Diagnosis 5th edition. 2022. p221-231.3)石井義洋. 卒後10年目 総合内科医の診断術. 2015. p361-370.

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外陰部高度扁平上皮内病変でイミキモド外用は手術との比較で非劣性/Lancet

 外陰部の高度扁平上皮内病変(vHSIL)の治療において、外用免疫調節薬イミキモドによる局所療法は、有効性に関して外科手術に対し非劣性で、安全性も良好であり、本症の1次治療となる可能性があることが、オーストリア・グラーツ医科大学のGerda Trutnovsky氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年4月25日号で報告された。オーストリア6施設の無作為化非劣性第III相試験 本研究は、外陰部上皮内新生物(VIN)の治療における、イミキモドの手術に対する非劣性の検証を目的とする無作為化第III相試験であり、2013年6月~2020年1月の期間に、オーストリアの6つの病院で参加者の登録が行われた(オーストリア科学基金とオーストリア婦人科腫瘍グループの助成を受けた)。 対象は、年齢18~90歳の女性で、組織学的にvHSILと確定され、肉眼的に単巣性または多巣性病変を有する患者であった。主な除外基準は、(1)臨床的に浸潤性病変が疑われる、(2)外陰がんまたは外陰部の重度の炎症性皮膚症の既往がある、(3)過去3ヵ月以内にvHSILに対する積極的な治療を受けている場合であり、免疫不全状態、妊娠中、授乳中の女性も除外された。 被験者は、イミキモド(5%クリーム)の投与または手術(切除術またはアブレーション)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。イミキモドは、緩やかな増量計画に基づき、4~6ヵ月間にわたり最大で週3回、患者自身により塗布された。ベースライン、6ヵ月、12ヵ月の時点で、外陰部鏡検査、外陰部生検、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査、患者報告アウトカムの評価が行われた。 主要エンドポイントは、局所イミキモド治療または1回の外科的介入から6ヵ月の時点での臨床的完全奏効(CCR)であった。CCRは、外陰部病変の臨床的証拠がないこと(原発病変の完全消失)と定義された。解析はper protocol集団で行われ、非劣性マージンは20%とされた。intention-to-treat解析でも非劣性の強い傾向が 110例が登録され、このうち109例がintention-to-treat集団(単巣性vHSIL例78%、多巣性vHSIL例22%)で、イミキモド群56例(平均[±SD]年齢53.0[15.7]歳、閉経後61%)、手術群53例(50.2[14.4]歳、43%)であった。per protocol解析には98例(46例、52例)が含まれた。 6ヵ月時のper protocol解析によるCCRは、イミキモド群が80%(37/46例)、手術群は79%(41/52例)で達成され、イミキモド群の手術群に対する非劣性が示された(非劣性解析のp=0.0056)。閉経状態や喫煙習慣の有無と臨床効果には関連がなかった。 CCRのintention-to-treat解析では、イミキモド群の非劣性の強い傾向が認められた(CCR割合:イミキモド群72%[39/54例]vs.手術群79%[42/53例]、非劣性解析のp=0.065)。 また、浸潤性病変は、手術群(2回目の手術を受けた患者を含む)で5例に認められたのに対し、イミキモド群ではみられなかった。 6ヵ月時の全体のHPVクリアランス率は44%で、両群間に差はなかった。手術群では最初の1ヵ月間に外陰部痛が、イミキモド群では2ヵ月間に外陰部の掻痒の頻度が高かった。また、イミキモド群は、びらんや紅斑のほか、疲労、頭痛、筋肉/関節の痛みの頻度が手術群よりも高かったが、多くが軽度~中等度だった。鎮痛薬の使用は手術群で多かった。治療満足度は両群間に差はなかった。 著者は、「この試験は免疫組織化学的解析と長期追跡調査が継続されており、今後、イミキモドによる局所治療が最も有益な患者を特定するのに役立つと考えられる」としている。

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