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不健康なプラントベース食では死亡、がん、CVDリスクが増大

 “健康的”なプラントベース食(植物由来の食品)の摂取が多いほど、死亡、がん、心血管疾患のリスクが低くなるが、“不健康”なプラントベース食ばかりではそれらのリスクがむしろ高くなることが、英国・クイーンズ大学ベルファストのAlysha S. Thompson氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2023年3月28日号掲載の報告。 プラントベース食は、卵、乳製品、魚、肉を少量のみ摂取またはまったく摂取しないことを特徴とする食事で、環境と健康の両方の理由から世界中で人気となっている。しかし、プラントベース食の質と死亡や慢性疾患のリスクに関する総合的な評価は不十分であった。そこで研究グループは、健康的なプラントベース食と不健康なプラントベース食が、英国成人の死亡や主要な慢性疾患(心血管疾患、がん、骨折など)と関連しているかどうかを調査した。 調査は、UKバイオバンクの参加者を前向きに収集して行われた。2006~10年に40~69歳の参加者を募集して2021年まで追跡し、データの解析は2021年11月~2022年10月に行われた。主要アウトカムは、健康的/不健康なプラントベース食の順守の程度による、死亡率(全死因死亡および疾患特異的死亡)および心血管疾患(全イベント、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)、がん(全がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん)、骨折(全部位、椎骨、股関節)の相対的危険度であった。 健康的なプラントベース食か不健康なプラントベース食かどうかは、1日最低2回の食事を、24時間の平均摂取量に基づいて17項目の食品群(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、植物性の代替食品、紅茶/コーヒー、フルーツジュース、精製穀物、ジャガイモ、砂糖入り飲料、お菓子/デザート、動物性脂肪、乳製品、卵、魚介類、肉、その他の動物性食品)のスコアで評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者12万6,394例(平均年齢56.1歳、女性55.9%、白人91.3%)を10.6~12.2年間追跡したところ、5,627例の死亡、6,890例の心血管疾患イベント、8,939例のがん、4,751例の骨折が発生した。・健康的なプラントベース食をより多く摂取していたのは、女性、低BMI、高齢、服薬/健康異常なし、低アルコール摂取、高学歴の人であった。・健康的なプラントベース食の順守率が最も高い四分位集団では、最も低い集団と比較して、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが低かった(死亡のハザード比[HR]:0.84[95%信頼区間:0.78~0.91]、がんのHR:0.93[0.88~0.99]、心血管疾患のHR:0.92[0.86~0.99])。・同様に、健康的なプラントベース食の順守率が最も高い集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスクも低かった(心筋梗塞のHR:0.86[0.78~0.95]、虚血性脳卒中のHR:0.84 [0.71~0.99])。・一方、不健康なプラントベース食を最も多く摂取していた集団では、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが高かった(死亡のHR:1.23[1.14~1.32]、がんのHR:1.10[1.03~1.17]、心血管疾患のHR:1.21[1.05~1.20])。・同様に、不健康なプラントベース食を最もよく摂取していた集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中リスクも高かった(心筋梗塞のHR:1.23[0.95~1.33]、虚血性脳卒中のHR:1.17[1.06~1.29])。・健康的または不健康なプラントベース食と、出血性脳卒中、個別のがん種、骨折(全部位、部位別)には有意差はみられなかった。・砂糖入り飲料、スナック/デザート、精製穀物、ジャガイモ、フルーツジュースの摂取量が少ない健康的な食事がリスクの低下と関連していた。・これらは、性別、喫煙状況、BMI、社会経済的地位、多遺伝子リスクスコア(PRS)と関連はみられなかった。 上記の結果より、研究グループは「健康的なプラントベース食の摂取が、心血管疾患、がん、および死亡のリスクの低下と関連していた。健康的なプラントベース食をより多く摂取し、動物性食品の摂取を減らすことで、慢性疾患の危険因子や遺伝子素因に関係なく健康に有益である可能性がある」とまとめた。

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日本の食事パターンと認知症リスク~NILS-LSAプロジェクト

 日本食の順守が健康に有益である可能性が示唆されている。しかし、認知症発症との関連は、あまりよくわかっていない。国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らは、地域在住の日本人高齢者における食事パターンと認知症発症との関連を、アポリポ蛋白E遺伝子型を考慮して検討した。その結果、日本食の順守は、地域在住の日本人高齢者における認知症発症リスクの低下と関連しており、認知症予防に対する日本食の有益性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年2月17日号の報告。 本研究データはNILS-LSA(国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)プロジェクトの一環として収集され、愛知県在住の認知症でない高齢者1,504人(65~82歳)を対象とした20年間のフォローアップコホート調査が実施された。これまでの研究に基づき、3日間の食事記録データにより日本食インデックス(9-component-weighted Japanese Diet Index:wJDI9)のスコア(範囲1~12)を算出し、日本食の順守の指標として用いた。認知症発症は、介護保険制度の認定証で確認し、フォローアップ開始後5年以内に認知症を発症した場合は除外した。wJDI9スコアの三分位(T1~T3)に従い、多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出し、認知症でない期間の差を推定するため、ラプラス回帰を用いて認知症発症年齢のパーセンタイル差(PD)および95%CIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間の中央値は11.4年(四分位範囲[IQR]:7.8~15.1)であった。・フォローアップ期間中に認知症発症が確認された高齢者は225例(15.0%)であった。・T3群は、認知症発症率が最も低く10.7%であった。・T1群とT3群の間の認知症発症年齢のPDは11番目(11th PD)と推定された。・wJDI9スコアが高いほど、認知症発症リスクが低く、認知症でない期間が長かった。・T1群に対するT3群の認知症発症年齢の多変量調整HRは0.58(95%CI:0.40~0.86)、11th PDは36.7ヵ月(95%CI:9.9~63.4)であった。・wJDI9スコアが1ポイント上昇するごとに、認知症発症リスクは5%低下し(p=0.033)、認知症でない期間が3.9ヵ月(95%CI:0.3~7.6)延長した(p=0.035)。・ベースライン時の性別または喫煙状況(現在の喫煙者/非喫煙者)で差は認められなかった。

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2歳までの下気道感染、成人期の呼吸器疾患死リスク約2倍/Lancet

 幼児期に下気道感染症に罹患すると、肺の発達が阻害され、成人後の肺機能の低下や慢性呼吸器疾患の発症リスクが高まるといわれている。そのため、幼児期の下気道感染症の罹患は、呼吸器疾患による成人早期の死亡を引き起こすのではないか、という仮説も存在する。しかし、生涯を通じたデータが存在しないことから、この仮説は検証されていなかった。そこで、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJames Peter Allinson氏らは、1946年の出生コホートを前向きに追跡した。その結果、2歳未満での下気道感染があると、26~73歳の間に呼吸器疾患によって死亡するリスクが、約2倍となることが示された。Lancet誌オンライン版2023年3月7日号の報告。 1946年3月にイングランド、ウェールズ、スコットランドで出生した5,362例を前向きに追跡した。26歳まで生存し、適格基準(2歳未満での下気道感染や、20~25歳時の喫煙歴に関するデータが得られているなど)を満たした3,589例について、2歳未満での下気道感染の有無別に、26歳時点をベースラインとして生存分析を実施した。また、研究対象コホート内の死亡とイングランド・ウェールズの死亡を比較し、試験期間中の超過死亡を推定した。 主な結果は以下のとおり。・26歳時点からの追跡期間は最大47.9年であった。・追跡の対象となった3,589例のうち、2019年末時点で生存が確認されたのは2,733例であった(死亡:674例、移住:182例)。・2歳未満での下気道感染のある群(913例)は、下気道感染のない群(2,676例)と比べて呼吸器疾患による死亡リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.93、95%信頼区間[CI]:1.10~3.37、p=0.021)。・2歳未満での下気道感染の回数別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、1回感染群(596例)が1.51(0.75~3.02、p=0.25)、2回感染群(162例)が2.53(0.97~6.56、p=0.057)、3回以上感染群(155例)が2.87(1.18~7.02、p=0.020)であった。・2歳未満での初回の下気道感染の年齢別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、1歳未満群(648例)が2.12(1.16~3.88、p=0.015)、1歳以上2歳未満群(256例)が1.52(0.59~3.94、p=0.39)であった。・2歳未満での初回の下気道感染時の治療別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、未治療または外来治療群(856例)が1.79(1.00~3.19、p=0.051)、入院治療群(52例)が4.35(1.31~14.5、p=0.017)であった。・2歳未満での下気道感染は、1972~2019年のイングランド・ウェールズの呼吸器疾患による死亡の20.4%(95%CI:3.8~29.8)に関連していると推定され、これはイングランド・ウェールズにおける17万9,188例(95%CI:3万3,806~26万1,519)の超過死亡に相当した。 著者らは、「2歳までに下気道感染のある人は、呼吸器疾患による成人期の早期死亡のリスクが約2倍であり、2歳未満での下気道感染は成人期の呼吸器疾患による死亡の5分の1に関連していることが示唆された。幼児期の下気道感染と慢性閉塞性肺疾患などの成人呼吸器疾患の発症や予後との間には、特異な関連があると考えられる。成人呼吸器疾患の発症や子供の健康格差の発生を避けるためには、生涯にわたる予防戦略が必要である」とまとめた。

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スタチン治療患者の将来リスク予測、CRP vs.LDL-C/Lancet

 スタチン療法を受ける患者において、高感度C反応性蛋白(CRP)で評価した炎症のほうがLDLコレステロール(LDL-C)値で評価したコレステロールよりも、将来の心血管イベントおよび死亡リスクの予測因子として強力であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M. Ridker氏らが行った、3つの無作為化試験の統合解析の結果、示された。著者は、「示されたデータは、スタチン療法以外の補助療法の選択を暗示するものであり、アテローム性疾患のリスク軽減のために、積極的な脂質低下療法と炎症抑制治療の併用が必要である可能性を示唆するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年3月6日号掲載の報告。3つの国際無作為化試験データを統合解析 研究グループは、炎症と高脂質血症はアテローム性動脈硬化の原因となるが、スタチン療法を受けていると将来の心血管イベントリスクに対する両因子の相対的な寄与が変化する可能性があり、補助的な心血管治療の選択について影響を与えるとして今回の検討を行った。スタチン治療を受ける患者の主要有害心血管イベント、心血管死、全死因死亡のリスクの決定因子として、高感度CRPとLDL-Cの相対的な重要性を評価した。 アテローム性疾患を有する/高リスクでスタチン療法を受ける患者が参加する、3つの国際的な無作為化試験「PROMINENT試験」「REDUCE-IT試験」「STRENGTH試験」のデータを統合解析した。 ベースラインの高感度CRP(残留炎症リスクのバイオマーカー)の上昇と同LDL-C(残留コレステロールリスクのバイオマーカー)の上昇の四分位値を、将来の主要有害心血管イベント、心血管死、全死因死亡の予測因子として評価。年齢、性別、BMI、喫煙状況、血圧、心血管疾患の既往、無作為化された割り付け治療群で補正した分析で、高感度CRPとLDL-Cの四分位数にわたって、心血管イベントと死亡のハザード比(HR)を算出した。炎症は将来リスクを有意に予測、コレステロールの予測は中立もしくは弱い 統合解析には患者3万1,245例が包含された(PROMINENT試験9,988例、REDUCE-IT試験8,179例、STRENGTH試験1万3,078例)。 ベースラインの高感度CRPとLDL-Cについて観察された範囲、および各バイオマーカーとその後の心血管イベント発生率との関係は、3つの試験でほぼ同一であった。 残留炎症リスクは、主要有害心血管イベントの発生(高感度CRPの四分位最高位vs.最小位の補正後HR:1.31、95%信頼区間[CI]:1.20~1.43、p<0.0001)、心血管死(2.68、2.22~3.23、p<0.0001)、全死因死亡(2.42、2.12~2.77、p<0.0001)のいずれとも有意に関連していた。 対照的に、残留コレステロールリスクの関連は、主要有害心血管イベントについては中立的なものであったが(LDL-Cの四分位最高位vs.最小位の補正後HR:1.07、95%CI:0.98~1.17、p=0.11)、心血管死(1.27、1.07~1.50、p=0.0086)と全死因死亡(1.16、1.03~1.32、p=0.025)については弱かった。

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老けやすいのはどんな人?老化の原因をランキング

 生物学的な老化の速度は、遺伝、環境、生活習慣などによって変化するといわれている。近年、DNAのメチル化に基づく生物学的老化の評価指標(GrimAge、PhenoAgeなど)が開発されているが、これらと老化の危険因子との関連の強さなどは明らかになっていない。そこで、上海交通大学のLijie Kong氏らは、メンデルランダム化解析を行い、修正可能な代謝関連因子(ウエスト周囲径、体脂肪率、CRP値など)、生活習慣(喫煙、アルコール摂取、昼寝など)、社会経済的因子(教育、収入)と生物学的老化の評価指標との関連を調べた。本調査結果は、The Journals of Gerontology:Series A誌オンライン版2023年3月4日号に掲載された。老けやすい人の特徴は「肥満・喫煙・低学歴」 本研究グループは、修正可能な因子と老化の速度との関連を調べるため、メンデルランダム化解析を行った。修正可能な19個の代謝関連因子(BMI、ウエスト周囲径、体脂肪率、小児期の肥満、2型糖尿病、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値、収縮期血圧、拡張期血圧、CRP値)、生活習慣(喫煙、アルコール摂取、コーヒー摂取、昼寝、睡眠時間、中・高強度の身体活動)、社会経済的因子(教育、収入)に関連する遺伝子変異について、欧州の最大100万人を対象としたゲノムワイド関連研究(GWAS)から抽出した。これらの遺伝子変異とGrimAgeおよびPhenoAgeとの関連は、欧州の28コホート、3万4,710人を対象に解析した。関連の大きさを調べるため、回帰係数(β)±標準誤差(SE)を求めた。なお、GrimAgeとPhenoAgeはいずれも生物学的老化の評価指標であるが、GrimAgeのほうが、死亡率との関連が強いことが知られている。 生物学的老化の評価指標であるGrimAge、PhenoAgeの変化に有意な関連のあった因子を以下に示す。【GrimAgeに基づく老化の加速・減速関連因子】〈老化を加速(β±SE[年])〉1位:喫煙、1.299±0.1072位:アルコール摂取増加、0.899±0.3613位:ウエスト周囲径増加、0.815±0.1844位:昼寝、0.805±0.3555位:体脂肪率増加、0.748±0.1206位:BMI上昇、0.592±0.0797位:CRP値上昇、0.345±0.0738位:中性脂肪値上昇、0.249±0.0919位:小児期の肥満、0.200±0.07510位:2型糖尿病、0.095±0.041<老化を減速(β±SE[年])>1位:教育年数が長い、-1.143±0.1212位:世帯収入が高い、-0.774±0.263【PhenoAgeに基づく老化の加速・減速関連因子】〈老化を加速(β±SE[年])〉1位:体脂肪率増加、0.850±0.2692位:ウエスト周囲径増加、0.711±0.1523位:BMI上昇、0.586±0.1024位:喫煙、0.519±0.1425位:CRP値上昇、0.349±0.0956位:小児期の肥満、0.229±0.0957位:2型糖尿病、0.125±0.051<老化を減速(β±SE[年])>1位:教育年数が長い、-0.718±0.151 著者らは、「本研究により、老化の危険因子と老化の速度に関する定量的なエビデンスが得られ、肥満に関する指標、喫煙、低学歴が老化へ大きな影響を及ぼすことが示された。この結果は、生物学的老化の速度を遅らせ、健康長寿を促進するために役立つだろう」とまとめた。

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日本人の認知症リスクに対する喫煙、肥満、高血圧、糖尿病の影響

 心血管リスク因子が認知症発症に及ぼす年齢や性別の影響は、十分に評価されていない。大阪大学の田中 麻理氏らは、喫煙、肥満、高血圧、糖尿病が認知症リスクに及ぼす影響を調査した。その結果、認知症を予防するためには、男性では喫煙、高血圧、女性では喫煙、高血圧、糖尿病の心血管リスク因子のマネジメントが必要となる可能性が示唆された。Environmental Health and Preventive Medicine誌2023年号の報告。 対象は、ベースライン時(2008~13年)に認知症を発症していない40~74歳の日本人2万5,029人(男性:1万134人、女性:1万4,895人)。ベースライン時の喫煙喫煙歴または現在の喫煙状況)、肥満(過体重:BMI 25kg/m2以上、肥満:BMI 30kg/m2以上)、高血圧(SBP140mmHg以上、DBP90mmHg以上または降圧薬使用)、糖尿病(空腹時血糖126mg/dL以上、非空腹時血糖200mg/dL以上、HbA1c[NGSP値]6.5%以上または血糖降下薬使用)の状況を評価した。認知機能障害は、介護保険総合データベースに基づき要介護1以上および認知症高齢者の日常生活自立度IIa以上と定義した。心血管リスク因子に応じた認知症予防のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、Cox比例回帰モデルを用いて推定し、集団寄与危険割合(PAF)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値9.1年の間に認知症を発症した人は、1,322例(男性:606例、女性:716例)であった。・現在の喫煙および高血圧は、男女ともに認知機能障害の高リスクと関連していたが、過体重または肥満は男女ともに認知機能障害のリスクと関連が認められなかった。・糖尿病は、女性のみで認知機能障害の高リスクと関連していた(p for sex interaction=0.04)。・有意なPAFは、男性では喫煙(13%)、高血圧(14%)、女性では喫煙(3%)、高血圧(12%)、糖尿病(5%)であった。・有意なリスク因子の合計PAFは、男性で28%、女性で20%であった。・年齢層別化による解析では、男性では中年期(40~64歳)の高血圧、女性では老年期(65~74歳)の糖尿病は、認知機能障害のリスク増加と関連していた。

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冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン、11年ぶりに改訂/日本循環器学会

 『2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン』が第87回日本循環器学会年次集会の開催に合わせ発刊され、委員会セッション(ガイドライン部会)において、藤吉 朗氏(和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 教授)が各章の改訂点や課題について発表した。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章構成 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会をはじめとする全11学会の協力のもと、これまでの『虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)』を引き継ぐ形で作成された。今回の改訂では、一次予防の特徴を踏まえ「冠動脈疾患とその危険因子(高血圧、脂質、糖尿病など)の診療に関わるすべての医療者をはじめ、産業分野や地域保健の担当者も使用することを想定して作成された。また、2019年以降に策定された各参加学会のガイドライン内容も冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインと整合性のある形で盛り込み、「一般的知識の記述は最小限に、具体的な推奨事項をコンパクトに提供することを目指した」と藤吉氏は解説した。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章で構成され、とくに第2章の高血圧や脂質異常などに関する内容、第3章の高齢者、女性、CKD(慢性腎臓病)などを中心に改訂している。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン全5章のなかで変更点をピックアップしたものを以下に示す。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第2章の改訂点<高血圧>・『高血圧治療ガイドライン2019』(日本高血圧学会)に準拠。・血圧の診断については、SBP/DBP(拡張期/収縮期血圧)130~139/80~89mmHg群から循環器疾患リスクが上昇してくるため、その名称を従来の「正常高値血圧」から「高値血圧」とした。また、診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合、家庭血圧による診断を優先する。・降圧目標について、75歳以上の高齢者は原則140/90mmHg未満とするが、高齢者でも厳格降圧(130/80mmHg未満)の適応となる併存疾患を有しており、かつ厳格降圧の忍容性ありと判断されれば過降圧に注意しながら130/80mmHg未満を目指すことが記されている。・降圧薬の脳心血管病抑制効果の大部分は、薬剤の特異性よりも降圧の度合いによって規定されている。その点を前提に、降圧薬治療の進め方に関する図を掲載した(p.22 図4)。<脂質異常>・脂質異常は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』(日本動脈硬化学会)に準拠し、危険因子の包括的評価(p.26 図5)にて、治療方針を決定する(p.23 表8)。・治療すべき脂質の優先順位を明確化した(1:LDL-C、2:non-HDL-C、3:TG/HDL-C)。<糖尿病・肥満>・糖尿病の診断早期から適切な血糖管理・治療が重要で、その理由は、糖尿病診断前のHbA1cが上昇していない耐糖能異常の段階から冠動脈疾患(CAD)リスクが上昇するため。・2型糖尿病の血糖降下薬の特徴が表で明記されている(p.31 表13)。・糖尿病患者においてCADの一次予防を目的としてアスピリンなどの抗血小板薬をルーチンで使用することを推奨しない、とした。これは近年のエビデンスを踏まえた判断であり、以前のガイドラインとは若干異なっている。<運動・身体活動>・運動強度・量を説明するため、身体活動の単位である「METs(メッツ)」や、主観的運動強度の指標である「Borg指数」に関する図表(p.42 表16、図6)を掲載し、日常診療での具体的指標を示した。<喫煙・環境要因、CAD発症時対処に関する患者教育・市民啓発、高尿酸血症とCAD>・禁煙に関する新たなエビデンスを記載し、新型タバコについても触れている。・寒冷や暑熱などの急激な温度変化がCAD誘発リスクを高めること、大気汚染からの防御などに触れている。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第3章の改訂点・本章はポリファーマシー、フレイル、認知症、エンドオブライフに注目して作成されている。<高齢者>・75歳までは活発な高齢者が増加傾向である。また年齢で一括りにすると個人差が大きいため、個別評価の方法について冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインに記載した。<女性>・CADリスクの危険因子は男性と同じだが、女性の喫煙者は男性喫煙者に比してその相対リスクが高くなる傾向がある。また、脂質異常症と更年期障害を同時に有する女性に対しては、禁忌・慎重投与に該当しないことを確認したうえでホルモン補充療法を考慮する、とした。<慢性腎臓病(CKD)>・高中性脂肪(高TG)血症を有するCKDに対する注意喚起として、フィブラート系薬剤は、高度腎機能障害を伴う場合には、ペマフィブラート(肝臓代謝)は慎重投与、それ以外のフィブラート系は禁忌であることが記載された。 このほか、冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインで推奨した危険因子の包括的管理に関連し、第2章では包括的管理や予測モデルについて、また第4章にはリスク予測からみた潜在性動脈硬化指標に関する記載を加えた。第5章「市民・患者への情報提供」では市民への急性心筋梗塞発症時の対応や、心肺蘇生法・AEDなどについて触れている。 最後に同氏は「将来的には患者プロファイルを入力することで、必要な情報がすぐに算出・表示できるようなアプリを多忙な臨床医のために作成していけたら」と今後の展望を述べた。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインの全文は日本循環器学会のホームページでPDFとして公開している。詳細はそちらを参照いただきたい。

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動脈硬化は睡眠が不規則な人ほど発症する可能性が高かった

 睡眠不足や不規則な睡眠というのは心血管疾患や2型糖尿病などの発症に関連しているが、アテローム性動脈硬化との関連性についてはあまり知られていない。そこで、米国・ヴァンダービルト大学のKelsie M. Full氏らは睡眠時間や就寝タイミングとアテローム性動脈硬化との関連性を調査し、45歳以上の場合に睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることを示唆した。Journal of the American Heart Association誌2023年2月21日号掲載の報告。動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査 本研究はコミュニティベースの多民族研究(MESA:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、睡眠時間や睡眠の規則性について、アクティグラフィ※(活動量測定検査)を7日間手首に装着した記録を評価し、無症候性のアテローム性動脈硬化との関連性を横断的に調査した。※腕時計型の加速度センサーで、腕や足首に装着することで活動/休止リズムサイクルを記録するもの。睡眠/覚醒アルゴリズムを記録できる。 本研究では、2010~13年に記録された2,032例(平均年齢±標準偏差[SD]:68.6±9.2歳[範囲:45~84歳]、女性:53.6%)のデータを用いた。評価項目に用いたマーカーは、冠動脈カルシウム、頸動脈プラークの有無、頸動脈内膜-中膜の厚さ、および足首-上腕指数であった。睡眠の規則性は睡眠時間と就寝タイミングで、個々の7日分のSDを定量化した。解析には相対リスク回帰モデルを使用し、有病率と95%信頼区間[CI]を計算した。なお、解析モデルは人口統計、心血管疾患の危険因子、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、睡眠時間、中途覚醒など、睡眠特性に合わせ客観的に評価・調整した。 動脈硬化と睡眠時間や睡眠の規則性との関連性を横断的に調査した主な結果は以下のとおり。・全体として、7日間を通してさまざまな睡眠を取った(たとえば、ある夜は睡眠時間が短く、ある夜は睡眠時間が長かった)参加者は、毎晩ほぼ同じ睡眠時間だった参加者よりも、アテローム性動脈硬化を発症する可能性が高かった。・参加者の約38%では睡眠時間が90分以上変化し、18%では120分以上も変化していた。・睡眠が不規則な人の特徴は、白人以外の人種では「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」傾向であった。・調整後、より規則的な睡眠時間(SD≦60分)の参加者と比較したところ、睡眠時間の不規則性が大きい(SD>120分)参加者は、冠動脈カルシウム負荷が高く(SD>300、有病率:1.33、95%[CI]:1.03~1.71) 、足首上腕指数が異常値であった(SD<0.9、有病率:1.75、95%[CI]:1.03~2.95)。・より規則的な就寝タイミングの参加者(SD≦30分)と比較したところ、就寝時間が不規則な参加者(SD>90分)は、冠動脈のカルシウム負荷が高い可能性が強かった (有病率:1.39、95%[CI]:1.07~1.82)。・関連性は、心血管疾患の危険因子、平均睡眠時間、閉塞性睡眠時無呼吸、中途覚醒を調整後も持続した。・睡眠の不規則性、とくに睡眠時間の長さのばらつきは、アテローム性動脈硬化のいくつかの無症候性マーカーと関連していた。

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肺がん減少の一方で乳がん・前立腺がんは増加/全米がん統計

 米国がん協会は、毎年米国における新たながんの罹患数と死亡数を推定して発表している。2023年の最新データがCA Cancer Journal for Clinicians誌2023年1/2月号に掲載された。発表されたデータによると、2023年に米国で新たにがんと診断される人は195万8,310人、がんによる死亡者は60万9,820人と予測されている。死亡者数が最も多いがん種は、男性は肺がん、前立腺がん、大腸がんの順で、女性は肺がん、乳がん、大腸がんの順であった。 がん罹患率は、がんリスクに関連する行動パターンと、がんスクリーニング検査の使用などの医療行為の変化の両方を反映する。たとえば、1990年代初頭の前立腺がんの罹患率(人口10万人当たり)の急増は、それ以前に検査を受けていなかった男性の間で前立腺特異抗原(PSA)検査が急速に広まった結果、無症候性前立腺がんの検出が急増したことを反映している。その後、高齢男性に対するPSA検査が推奨されなくなったことから罹患数は20年間減少を続けていたが、2014~19年には再度増加に転じ、2023年には9万9,000人の新規罹患者が予測されている。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種推進によって20代前半の女性の子宮頸がん発症率は2012年から2019年にかけて65%低下した。 全体としては、女性に比べて男性のほうが罹患率の傾向は良好だった。2015から2019年にかけての女性の肺がん罹患率の減少は男性の2分の1のペース(年1.1%対2.6%)であり、乳がんや子宮体がんの罹患率は増加を続けている。肝臓がんやメラノーマの罹患率は50歳以上の男性では安定、若年男性では減少した。結果として、性差は徐々に縮小し、がん全体の男女の罹患率比は1992年の1.59(95%信頼区間[CI]:1.57~1.61)から2019年には1.14(95%CI:1.14~1.15)まで低下した。ただし、この比率は年齢によって大きく異なり、20~49歳では女性が男性よりも約80%高い一方で、75歳以上では男性が約50%高かった。 2020年からはCOVID-19感染流行があったにもかかわらず、また他の主要な死因とは対照的に、がん死亡率は2000年代には年1.5%、2015~20年には年2%と減少を続け、1991~2020年までに33%減少し、推定380万人の死亡が回避された。この進歩は喫煙の減少、乳がん・大腸がん・前立腺がん検査の普及、そして治療の進歩を反映したもので、とくに白血病、メラノーマ、腎臓がんの死亡率が急速に減少(2016~20年には年約2%)したことや、肺がんの死亡率減少が加速したことに表れている。すべてのがんを合わせた5年相対生存率は、1970年代半ばに診断された49%から2012~18年に診断された68%に増加した。しかし、死亡率における人種格差が最も大きい乳がん、前立腺がん、子宮体がんの罹患率上昇により、今後の減少の進展は弱まる可能性があるという。

370.

ペグIFN-λ、高リスクCOVID-19の重症化を半減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種者を含むCOVID-19外来患者において、ペグインターフェロンラムダ(IFN-λ)単回皮下投与は、COVID-19進行による入院または救急外来受診の発生率をプラセボ投与よりも有意に減少させた。ブラジル・ミナスジェライスカトリック大学のGilmar Reis氏らTOGETHER試験グループが報告した。NEJM誌2023年2月9日号掲載の報告。ブラジルとカナダで、入院/救急外来受診の発生を比較 TOGETHER試験は、ブラジルとカナダで実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験である。研究グループは、ブラジルの12施設およびカナダの5施設において、SARS-CoV-2迅速抗原検査が陽性でCOVID-19の症状発現後7日以内の18歳以上の外来患者のうち、50歳以上、糖尿病、降圧療法を要する高血圧、心血管疾患、肺疾患、喫煙、BMI>30などのリスク因子のうち少なくとも1つを有する患者を、ペグIFN-λ(180μg/kgを単回皮下投与)群、プラセボ群(単回皮下投与または経口投与)または他の介入群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院(または三次病院への転院)または救急外来受診(救急外来での>6時間の経過観察と定義)の複合とした。主要評価のイベント発生率、ペグIFN-λ群2.7% vs.プラセボ群5.6%、有意に半減 2021年6月24日~2022年2月7日の期間に、計2,617例がペグIFN-λ群、プラセボ群および他の介入群に割り付けられ、ペグIFN-λ群のプロトコール逸脱2例を除外したペグIFN-λ群931例およびプラセボ群1,018例が今回のintention-to-treat集団に含まれた。患者の83%はワクチンを接種していた。 主要アウトカムのイベントは、ペグIFN-λ群で931例中25例(2.7%)に、プラセボ群で1,018例中57例(5.6%)に発生した。相対リスクは0.49(95%ベイズ信用区間[CrI]:0.30~0.76、プラセボに対する優越性の事後確率>99.9%)であり、プラセボ群と比較してペグIFN-λ群で、主要アウトカムのイベントが51%減少した。 副次アウトカムの解析結果も概して一貫していた。COVID-19による入院までの期間はプラセボ群と比較しペグIFN-λ群で短く(ハザード比[HR]:0.57、95%ベイズCrI:0.33~0.95)、COVID-19による入院または死亡までの期間もペグIFN-λ群で短い(0.59、0.35~0.97)など、ほとんどの項目でペグIFN-λの有効性が示された。また、主な変異株の間で、およびワクチン接種の有無で有効性に差はなかった。 ベースラインのウイルス量が多かった患者では、ペグIFN-λ群のほうがプラセボ群より、7日目までのウイルス量減少が大きかった。 有害事象の発現率は、全GradeでペグIFN-λ群15.1%、プラセボ群16.9%であり、両群で同程度であった。

371.

加熱式タバコ、コロナ感染・重症化リスクを上昇/大阪公立大ほか

 燃焼式タバコの使用は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク因子と考えられ、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第8.1版」でも「喫煙」が「重症化のリスク因子」の項目に記載されている。COVID-19流行下において、各国でタバコ使用行動の変化がみられているが、加熱式タバコの使用は、増加しているともいわれる。しかし、加熱式タバコと新型コロナウイルス感染症の関係については、これまでほとんど検討がなされていなかった。そこで、浅井 一久氏(大阪公立大学大学院医学研究科 呼吸器内科学)らの研究グループは、加熱式タバコの使用と新型コロナウイルス感染症の関係に着目し、調査を実施した。その結果、タバコ非使用者に比べ、加熱式タバコ使用者は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率が高く、全タバコ使用者の中でも加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者は、感染時の症状悪化リスクが最も高かった。本研究結果は、Scientific Reports誌2023年2月2日号に掲載された。加熱式タバコが新型コロナウイルス感染時の症状悪化に関連 インターネット調査会社に登録中の日本の一般住民から、日本の人口分布に沿って無作為に選定された16~81歳の参加者3万130人を対象として、2022年2月にオンライン調査を実施した(JASTIS 2022研究)。加熱式タバコを含むタバコの使用状況と、2020年と2021年の新型コロナウイルス感染および感染時の症状悪化(入院、酸素投与)の有無、感染および悪化と関連しうる項目を抽出し、その関係性について多変量ロジスティック回帰分析を用いて解析した。 加熱式タバコと新型コロナウイルス感染症の関係を調査した主な結果は以下のとおり。・対象者のうち、24.3%が現在タバコを使用し、使用者のうち21.2%が加熱式タバコを単独で、30.1%が燃焼式タバコとの併用で使用していた。・タバコ非使用者と比較した新型コロナウイルス感染のオッズ比は、加熱式タバコ単独使用者(調整オッズ比[aOR]:1.65、95%信頼区間[CI]:1.26~2.15、p<0.001)および加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者(aOR:4.66、95%CI:3.89~5.58、p<0.001)で有意に高かったが、過去喫煙者と燃焼式タバコ単独使用者では有意差が認められなかった。・新型コロナウイルス感染者で2020年と2021年の2年とも感染した20例を除いた1,097例の解析において、タバコ非使用者と比較した入院のオッズ比は、加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者のみで有意に高く(aOR:3.17、95%CI:2.11~4.77、p<0.001)、過去喫煙者、燃焼式タバコ単独使用者、加熱式タバコ単独使用者では有意差が認められなかった。・酸素投与に関して、タバコ非使用者と比較したオッズ比は、過去喫煙者(aOR:1.88、95%CI:1.11~3.19、p=0.019)、燃焼式タバコ単独使用者(aOR:3.17、95%CI:1.77~5.67、p<0.001)、加熱式タバコ単独使用者(aOR:1.90、95%CI:1.01~3.59、p=0.048)、加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者(aOR:4.15、95%CI:2.70~6.36、p<0.001)のいずれにおいても有意に高かった。 研究グループは、本研究結果について「燃焼式タバコの新型コロナウイルス感染時の症状悪化に関するリスクが再確認され、新たに加熱式タバコの使用(とくに燃焼式タバコとの併用)が新型コロナウイルス感染時の症状悪化に関連することが示唆された」とまとめ、加熱式タバコが拡大している日本の現状を踏まえ、新型コロナウイルス感染症流行下におけるタバコ使用行動の安全性を考えるきっかけとなるだろうと述べている。

372.

6つの“健康的な生活習慣”で高齢者の記憶力低下が遅延/BMJ

 健康的な生活習慣(喫煙をしない、飲酒をしない、健康的な食事、定期的な運動、活発な認知活動と社会的接触を組み合わせた)は、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型保有者においても、記憶力低下の進行を遅らせることを、中国・首都医科大学のJianping Jia氏らが地域住民を対象とした10年間の前向きコホート研究「China Cognition and Ageing Study(COAST)」の結果、報告した。健康的な生活習慣が認知機能に及ぼす影響に関する研究は増えているが、記憶力への影響に目を向けた研究は少なく、長期にわたる健康的な生活習慣と記憶力低下との関係を評価するには不十分なものであり、また遺伝的リスクとの相互作用は考慮されていなかった。著者は、「今回の研究は、記憶力の低下から高齢者を守るための重要な情報を提供するだろう」とまとめている。BMJ誌2023年1月25日号掲載の報告。10年間追跡、6つの健康的な生活習慣と記憶力低下の関連を検討 研究グループは、中国・北部、南部および西部の代表的な12省の計96地域(都市部48地域、農村部48地域)において、2009年5月8日より認知機能が正常でAPOE遺伝子型の検査を受けた60歳以上の個人を登録し、2019年12月26日まで追跡した。ベースラインおよび各追跡調査時(2012、2014、2016および2019年)に、記憶力(WHO/UCLA聴覚性言語学習検査[AVLT])、認知機能(ミニメンタルステート検査[MMSE])、生活習慣(健康行動質問票による)を評価した。 主要アウトカムは、健康的な生活習慣6項目の記憶力への影響で、生活習慣について好ましい(健康的な生活習慣の該当項目が4~6項目)、平均的(2~3項目)、好ましくない(0~1項目)に分類し、線形混合モデルを用いて解析した。 健康的な生活習慣とは、健康的な食事(12品目[果物、野菜、魚、肉、乳製品、塩、油、卵、穀類、豆類、ナッツ、茶]中7品目以上を毎日推奨された量を摂取)、定期的な運動(中強度150分/週以上、または強強度75分/週以上)、活発な社会的接触(週2回以上)、活発な認知活動(週2回以上)、喫煙なし(喫煙未経験または少なくとも3年前に禁煙)、飲酒なし(まったく飲まない、または時々飲む)とした。APOEε4遺伝子型有無にかかわらず、健康的な生活習慣で記憶力低下が遅延 5万6,894例がスクリーニングされ、ベースラインでAPOE遺伝子型検査を受けた認知機能が正常な2万9,072例が登録された(平均年齢72.23歳、女性48.54%、APOEε4保有者20.43%)。 10年の追跡期間において、全体集団では生活習慣が好ましくない群と比較して好ましい群で記憶力の低下が遅かった(0.028点/年、95%信頼区間[CI]:0.023~0.032、p<0.001)。 APOEε4を保有している集団では、好ましくない群と比較して、好ましい群(0.027点/年、95%CI:0.023~0.031)および平均的な群(同:0.014、0.010~0.019)で記憶力の低下が遅かった。APOEε4を保有していない集団でも同様の結果がみられ、好ましくない群と比較し、好ましい群(同:0.029、0.019~0.039)ならびに平均的な群(同:0.019、0.011~0.027)で記憶力の低下が遅かった。 APOEε4の保有状況と生活習慣は、記憶力低下に対する有意な相互作用を示さなかった(p=0.52)。

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乳がん患者のリアルワールドでのコロナワクチン効果/JCO

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの臨床試験には、積極的ながん治療を受けている乳がん患者が含まれていない。今回、イタリア・ジェノバ大学のMarco Tagliamento氏らが、リアルワールドの乳がん患者におけるワクチン接種の効果を調査したところ、乳がん患者においてもワクチン接種がCOVID-19罹患率および死亡率を改善することが示された。また、欧州におけるオミクロン株流行期の間、乳がん患者におけるCOVID-19重症度は低いままだった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月31日号に掲載。 本研究では、OnCovidレジストリ参加者を対象に、プレワクチン期(2020年2月27日~11月30日)、アルファ-デルタ期(2020年12月1日~2021年12月14日)、オミクロン期(2021年12月15日~2022年1月31日)における乳がん患者のCOVID-19の病態と死亡率を比較した。28日致死率(CFR28)およびCOVID-19重症度を、出身国、年齢、併存疾患の数、Stage、COVID-19診断後1ヵ月以内の抗がん剤治療で調整し、ワクチン未接種患者とワクチン接種(2回接種または追加接種)患者を比較した。 主な結果は以下のとおり。・2022年2月4日までに613例が登録された。・ホルモン受容体陽性が60.1%、HER2陽性が25.2%、トリプルネガティブが14.6%で、61%が限局/局所進行であった。年齢中央値は62歳(四分位範囲:51~74歳)、31.5%が2つ以上の併存症あり、69%が喫煙歴なしだった。診断時期は、63.9%がプレワクチン期、26.8%がアルファ-デルタ期、9.3%がオミクロン期だった。・CFR28の解析では、3つの流行期で死亡率は同等だった(順に13.9%、12.2%、5.3%、p=0.182)が、COVID-19重症度は3つの流行期にわたって有意な改善がみられた。アルファ-デルタ期およびオミクロン期のワクチン未接種患者は、プレワクチン期の患者(ワクチン未接種)とアウトカムが同等だった。・ワクチン接種による解析対象患者566例のうち、ワクチン接種患者は72例(12.7%)、未接種患者は494例(87.3%)だった。・ワクチン接種患者は未接種患者に比べて、CFR28(オッズ比[OR]:0.19、95%信頼区間[CI]:0.09~0.40)、入院(OR:0.28、95%CI:0.11~0.69)、COVID-19合併症(OR:0.16、95%CI:0.06~0.45)、COVID-19に対する治療の必要度(OR:0.24、95%CI:0.09~0.63)、酸素療法の必要度(OR:0.24、95%CI:0.09~0.67)において改善していた。

374.

心血管疾患リスク予測式は、がん生存者に有用か/Lancet

 がん患者は心血管疾患のリスクが高いという。ニュージーランド・オークランド大学のEssa Tawfiq氏らは、がん生存者を対象に、同国で開発された心血管疾患リスク予測式の性能の評価を行った。その結果、この予測式は、リスクの予測が臨床的に適切と考えられるがん生存者において、5年心血管疾患リスクを高い精度で予測した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年1月23日号で報告された。ニュージーランドの妥当性検証研究 研究グループは、がん生存者における心血管疾患リスクの予測式の性能を、プライマリケアで評価する目的で、妥当性の検証研究を行った(オークランド医学研究財団などの助成を受けた)。 「ニュージーランド心血管疾患リスク予測式」の開発に使用されたPREDICTコホート研究の参加者のうち、年齢が30~74歳で、心血管疾患リスクの初回評価日の2年以上前に浸潤がんの初回診断を受けた患者が解析に含まれた。 リスク予測式は、性別で分けられ、予測因子として年齢、民族、社会経済的剥奪指標、心血管疾患の家族歴、喫煙状況、心房細動と糖尿病の既往、収縮期血圧、総コレステロール/HDLコレステロール比、予防的薬物療法(降圧薬、脂質低下薬、抗血栓薬)が含まれた。 較正(calibration)では、男女別に、リスク予測式で推定された5年心血管疾患リスクの平均予測値と実測値とを十分位群別に比較し、さらにニュージーランドのガイドラインの3つの臨床的5年心血管疾患リスクグループ(<5%、5~15%未満、≧15%)に分けて比較することで評価した。判別(discrimination)は、HarrellのC統計量で評価した。がん生存者で妥当な臨床的手段 1万4,263例(男性6,133例[43.0%]、女性8,130例[57.0%])が解析に含まれた。リスク評価時の平均年齢は男性が61(SD 9)歳、女性は60(SD 8)歳で、追跡期間中央値はそれぞれ5.8年、5.7年だった。 追跡期間中に、男性は658例(10.7%)、女性は480例(5.9%)で心血管疾患イベントが発生し、それぞれ110例(1.8%)、90例(1.1%)が致死的な心血管疾患イベントであった。また、心血管疾患の粗発生率は、年間1,000人当たり男性が18.1例、女性は10.2例だった。 リスク予測値の十分位群(高いほど高リスク)における実測値との差は、男性ではほとんどが2%以内であったが、2つの群(第4十分位群:-2.49%、第9十分位群:-2.41%)では約2.5%の過小評価が認められた。同様に、女性では、リスクの予測値と実測値の差は多くが1%以内であったが、1つの群(第10十分位群:-3.19%)では約3.2%過小評価されていた。 臨床的なリスクグループで分類した解析では、心血管疾患リスクの実測値と比較して予測値は、低リスク群では男女とも2%以内で過小に予測していた(<5%群[男性:-1.11%、女性:-0.17%]、5~15%未満群[-1.15%、-1.62%])。これに対し、高リスク群(≧15%)の男性では2.2%(実測値17.22%、予測値19.42%)、女性では約3.3%(16.28%、19.60%)過大に予測していた。HarrellのC統計量は、男性が0.67(SE 0.01)、女性は0.73(0.01)だった。 著者は、「予測式にがん特異的な変量を追加したり、競合リスクを考慮したりすることで、予測値は改善する可能性がある。今回の結果は、この予測式がニュージーランドのがん生存者において妥当な臨床的手段であることを示唆する」としている。

375.

一般集団よりも2型DM患者でとくに死亡率が高いがん種は?

 2型糖尿病の高齢患者のがん死亡率を長期的に調査したところ、全死因死亡率の低下とは対照的にがん死亡率は上昇し、とくに大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がんのリスクが増加していたことを、英国・レスター大学のSuping Ling氏らが明らかにした。Diabetologia誌オンライン版2023年1月24日掲載の報告。 これまで、年齢や性別などの人口統計学的要因が2型糖尿病患者の心血管アウトカムに与える影響は広く研究されているが、がん死亡率への影響については不十分であった。そこで研究グループは、人口統計学的要因や肥満や喫煙などのリスク因子が2型糖尿病患者のがん死亡率に与える長期的な傾向を明らかにするため、約20年間のデータを用いて調査を行った。 対象は、1998年1月1日~2018年11月30日に2型糖尿病と新規で診断され、英国の診療データベース「Clinical Practice Research Datalink」に登録された35歳以上の13万7,804例であった(年齢中央値63.8歳、女性44.6%、白人83.0%、非喫煙者46.9%、正常体重者11.7%、BMI中央値30.6kg/m2)。年齢、性別、人種、貧困状態(複数の剥奪指標ランク)、BMI、喫煙の有無で調整し、全死因、全がん、がん部位別の死亡率を一般集団と比較した。 主な結果は以下のとおり。・2型糖尿病患者119万4,444人年(中央値8.4年[四分位範囲:5.0~12.2年])の追跡で、3万9,212例(28.5%)が死亡した。・全死因死亡率は、1998年~2018年にすべての年齢(55歳、65歳、75歳、85歳)で減少した。・全がん死亡率は55歳と65歳で減少したが、75歳と85歳で増加した。また、白人、現在/過去の喫煙者で増加したが、他の人種や非喫煙者では減少傾向にあった。・全がん死亡率の平均年間変化率(AAPC)は、55歳で-1.4%(95%信頼区間[CI]:-1.5%~-1.3%)、65歳で-0.2%(-0.3%~-0.1%)、75歳で+1.2%(+0.8%~+1.6%)、85歳で+1.6%(+1.5%~+1.7%)であった。また、AAPCが高かったのは、女性+1.5%(男性+0.5%)、最貧困層+1.5%(最富裕層+1.0%)、重度肥満者+5.8%(普通体重者+0.7%)であった。・一般集団と比較した2型糖尿病患者の標準化死亡比(SMR)は、全死因1.08(95%CI:1.07~1.09)、全がん1.18(1.16~1.20)、大腸がん2.40(2.26~2.54)、肝臓がん2.13(1.94~2.33)、膵臓がん2.12(1.99~2.25)、子宮内膜がん(女性のみ)2.08(1.76~2.44)、胆嚢がん1.36(0.99~1.83)、乳がん(女性のみ)1.09(1.01~1.18)、肺がん1.04(1.00~1.08)であった。 研究グループは、上記の結果から「2型糖尿病の高齢患者では、全死因死亡率の低下とは対照的にがん死亡率は上昇し、とくに大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がんが増加していた。高齢者、貧困層、喫煙者における個別のがん予防と早期発見のための戦略が必要である」とまとめた。

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13種のがん発生率と生活習慣・遺伝的因子の関係

 19万人以上のUKバイオバンクのデータを用いて、世界がん研究基金(WCRF)による生活習慣のアドバイスを遵守することが13種類のがんのリスクとどのような関係があるのか、また遺伝的リスクによってこれらの関連性が異なるのかを調査するため、前向きコホート研究が実施された。南オーストラリア大学のStephanie Byrne氏らによるInternational Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年1月18日号への報告。 2006~10年にかけて37~73歳の参加者の生活習慣を評価し、2015~19年までがんの発生率を追跡調査した。解析対象は、悪性腫瘍の既往がない19万5,822人。13のがん種(前立腺がん、大腸がん、閉経後乳がん、肺がん、悪性黒色腫、非ホジキンリンパ腫、腎臓がん、子宮がん、膵臓がん、膀胱がん、口腔・咽頭がん、卵巣がん、リンパ性白血病)とがん全体について多遺伝子リスクスコア(PRS)を計算し、WCRFの勧告からライフスタイル指数を計算。両者の加法的・乗法的交互作用が評価された。 ライフスタイル指数は体型(BMI、腹囲)、身体活動、全粒粉・果物・野菜摂取、赤肉・加工肉摂取、アルコール消費、喫煙状況について2018 WCRF/米国がん研究財団(AICR)のスコアリングシステムに基づき評価され、スコアが高いほど推奨事項への忠実度が高いとされる。 主な結果は以下のとおり。・192万6,987人年(追跡期間中央値:10.2年)で1万5,240件のがんが発生した。・交絡因子で調整後、ライフスタイル指数の高さはがん全体のリスク(1標準偏差増加当たりのハザード比:0.89、95%信頼区間:0.87~0.90)および、大腸がん(0.85、0.82~0.89)、閉経後乳がん(0.85、0.81~0.89)、肺がん(0.57、0.54~0.61)、腎臓がん(0.78、0.72~0.85)、子宮がん(0.82、0.74~0.89)、膵臓がん(0.79、0.72~0.87)、膀胱がん(0.72、0.65~0.79)、口腔・咽頭がん(0.78、0.71~0.86)のリスク低下と関連していた。・ライフスタイル指数と悪性黒色腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、リンパ性白血病との間に関連はみられず、前立腺がんリスクとの間には、逆方向の関連性がみられた(1.04、1.01~1.08)。・PRSが高いほどがん全体および口腔・咽頭がんと卵巣がんを除く評価したすべてのがん種のリスクが高い傾向がみられた。とくに膵臓がん(1.51、1.36~1.66)、リンパ性白血病(1.50、1.33~1.69)、悪性黒色腫(1.39、1.32~1.47)、大腸がん(1.36、1.31~1.42)、前立腺がん(1.36、1.32~1.40)で高かった。・大腸がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、膀胱がんのリスクにはライフスタイル指数とPRSの加法的相互作用がみられ、推奨されるライフスタイルは、遺伝的リスクの高い人ほど絶対リスクの変化と関連していた(すべてでp<0.0003)。 著者らは、WCRF推奨の生活習慣は、ほとんどのがんについて有益な関連性がみられたとし、さらにいくつかのがんでは遺伝的リスクの高い集団で保護的な関連が大きいと結論づけた。そのうえで、これらの知見は遺伝的にそれらのがんに罹患しやすい人々や、がん予防のための標的戦略にとって重要な意味を持つとまとめている。

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造血幹細胞移植後に心不全を発症した症例【見落とさない!がんの心毒性】第17回

《今回の症例》年齢・性別50代、男性主訴呼吸困難、血圧上昇、浮腫現病歴10年前、前医に急性骨髄性白血病(AML)と診断され寛解導入療法が施行された。地固め療法3コース、維持強化療法1コース(シタラビン+アントラサイクリン)により寛解状態となった。アントラサイクリンの総投与量はドキソルビシン換算で214mg/m2であった。その後、当センター血液内科において造血幹細胞移植(HSCT :hematopoietic stem cell transplantation)が施行された。移植前の心機能は心エコー上左室駆出率76%と正常範囲内であった。移植後の急性および慢性移植片対宿主病(GVHD :graft versus host disease)は出現せず寛解状態となり、血液内科外来ならびに近医で高血圧、軽度の腎機能低下についてフォローアップ中であった。造血幹細胞移植11年後、発熱、下痢、嘔吐が出現し浮腫ならびに腎機能悪化を認めたため精査加療目的で入院した。入院時には腎機能低下ならびに高血圧を呈しており、心陰影の拡大は認めないものの胸水貯留を認め循環器内科へ紹介された。飲酒歴(1合/日)、喫煙歴(-)――入院時現症血圧162/90mmHg、心拍数100/分。意識は清明、全身は浮腫状、眼瞼結膜に貧血所見を認めた。胸部聴診上、下肺野の呼吸音の減弱と軽度のラ音を認め心尖部に収縮期雑音を聴取した。腹部に異常は認めず、神経学的にも有意な所見は認めなかった。検査所見検尿…蛋白定性(2+)、潜血(3+)、生化学…AST 21U/L、ALT 17U/L、LDH 287U/L、CK 58U/L、BUN 58mg/dL、Cr 3.37mg /dL、 UA 17.1mg/dL、Na 136mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 100mEq/L、BS 106mg/dL、CRP 2.96mg/dL、BNP 905.8pg/mL。入院時の心電図所見…心拍数100/分、洞調律、ST-T変化、不整脈などの異常は認めず。胸部X線写真…CTR 44.7%、肺野のうっ血像、両側胸水を認めた。心エコー検査…左室壁運動は全周性に著明に低下し、左室駆出率34 %、左室拡張末期径/収縮末期径(LVDd/Ds)52mm/44mm、左房径(LAD)38mm、中隔厚/後壁厚 (IVST/PWT)8mm/9mm、僧帽弁閉鎖不全(MR)3度、三尖弁閉鎖不全(TR)3度 、三尖弁収縮期圧較差(TR-PG)71mmHg、肺動脈弁閉鎖不全2度。IVC 19mm(呼吸性変動低下)、echo free space (-)。【問題】本例の病状について下記の選択枝について、正しいものはどれか。当てはまるものすべてを選べ。a. アントラサイクリンの総投与量は比較的少ないことから、今回の心不全には関連性はない。b. 造血幹細胞移植後の合併症に対して投与される薬剤に加え、長期に投与された免疫抑制薬などの影響も疑われる。c. 晩期心毒性の発症には感染や生活習慣病(高血圧、糖尿病など)の増悪などが引き金になることがある。d. がんサバイバーの晩期合併症で生命予後に影響する疾患として、心血管毒性以外に二次発生がんが重要である。がん治療の進歩に伴い、今後急増するがんサバイバーにおいて出現する晩期合併症への対応が大きな問題となっています。がん治療がすでに終了(寛解)し病状が安定している慢性期から晩期にかけて、急性期がん治療を行なっている腫瘍医には対応は困難であり、数年から10年以上にわたる長期間のフォローアップを受け持つ医療リソースの不足が世界的に大きな問題となっています。そこで、がんと循環器にわたる学際領域に関する知識を有するプライマリケア医や外来かかりつけ薬剤師の養成、そしてがんサバイバーを対象とした人間ドック(がんサバイバードック)による疾病発症二次予防の開発など、新たな体制づくりが始まっています10)。※本症例は、文献11)を基に作成いたしました。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。1)Legha SS, et al. Ann Intern Med. 1982;96:133-139.2)Singal RK, et al. N Engl J Med. 1998;339:900-905.3)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.4)向井幹夫. 医学のあゆみ. 2020;273:483-488.5) Sakata-yanagimoto M et al, Bone Marrow Transplant. 2004;33:1043-1047. 6)Armenian SH, et al. Blood. 2012;120:4505-4512.7)Miller LW, et al. Am J Transplant. 2002;2:807-818.8)Suter TM, et al. Eur Heart J. 2013;34:1102-1111.9) Odani S, et al. Cancer Med. 2022;11:507-519.10)向井幹夫. AYA がんの医療と支援. 2022;2:16- 21.11)向井幹夫他ほか. Osaka Heart Club. 2019;43:6-10.講師紹介

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ワクチン未接種のコロナ感染、急性期の死亡リスク80倍超

 中国・香港大学のEric Yuk Fai Wan氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の心血管疾患(CVD)発症リスクや全死亡リスクに及ぼす短期的および長期的な影響を検討した。その結果、ワクチン未接種のCOVID-19感染は急性期(感染から21日後まで)のCVD発症リスク、全死亡リスクを大きく上昇させ、これらのリスクは最長18ヵ月間の追跡においても上昇していた。Cardiovascular Research誌2023年1月19日号に掲載の報告。 英国において2020年3月~11月にCOVID-19に感染した患者7,584例(感染群)を感染から最長18ヵ月後まで前向きに追跡した。年齢と性別をマッチングさせた同時期の非感染対照7万5,790人(同時期対照群)、2018年3月~11月の非感染対照7万5,774人(過去対照群)とCVD発症リスク、全死亡リスクなどを急性期と急性期後(感染から22日後以降)に分けて比較した。解析にあたり、傾向スコア分析の拡張版であるMarginal Mean Weighting through Stratification(MMWS)法を用いて、年齢、性別、喫煙習慣、糖尿病の既往、高血圧症の既往、民族などを調整した。なお、英国では2020年3月~11月において使用可能な新型コロナウイルスワクチンは存在しなかったため、本試験の対象者はワクチン未接種であった。 主な結果は以下のとおり。・急性期の主要なCVD(心不全、脳卒中、冠動脈心疾患)発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.3倍(ハザード比[HR]:4.3、95%信頼区間[CI]:2.6~6.9)、過去対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:3.0~8.1)であった。・急性期において、脳卒中、心房細動、深部静脈血栓症(DVT)のリスクも感染群が同時期対照群(それぞれ9.7倍、7.5倍、22.1倍)および過去対照群(それぞれ5.0倍、5.9倍、10.5倍)と比べて高かった。・急性期の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の81.1倍(HR:81.1、95%CI:58.5~112.4)、過去対照群の67.5倍(HR:67.5、95%CI:49.9~91.1)であった。・急性期後の主要なCVD発症リスクは、感染群が同時期対照群の1.4倍(HR:1.4、95%CI:1.2~1.8)、過去対照群の1.3倍(HR:1.3、95%CI:1.1~1.6)であった。・急性期後の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:4.3~5.8)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:3.9~5.2)であった。・感染群において、急性期には有意な上昇がみられなかった心膜炎発症リスクが急性期後では上昇していた。急性期後の心膜炎発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.6倍(HR:4.6、95%CI:2.7~7.7)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:2.7~7.7)であった)。 本論文の著者らは、今回の結果についてワクチン接種を受けたコホートにおける結果との比較が必要としながらも、「COVID-19患者はCVD発症リスクや全死亡リスクが上昇し、これらのリスクは回復から1年後まで上昇したままであったことから、COVID-19感染後および回復後におけるCVDの徴候や症状の継続的なモニタリングが有益であろう」とまとめている。

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KRAS G12C陽性肺がんの大規模な臨床ゲノムプロファイル:LC-SCRUM-Asia研究より/Lung Cancer

 ターゲット治療薬の開発で、肺がん領域でも注目されているKRAS G12C変異。2022年末、アジア人KRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のリアルワールド解析が発表された。 KRAS G12Cは、白色人種のNSCLCでは約14%に発現するとの報告があるが、アジア人ではどの程度なのか。また、同集団に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性が報告されているが、アジア人患者でも効果は示されるのか。さらに、G12C以外の臨床ゲノム特性はどのようなものか。国立がん研究センター東病院・名古屋大学の田宮 裕太郎氏らは、肺がんの大規模前向きゲノムスクリーニングプロジェクト(LC-SCRUM-Asia)のデータベースに基づき、KRAS G12C NSCLCの臨床ゲノム特性とICIの治療成績を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2015年3月〜2021年3月にLC-SCRUM-Asiaに登録されたNSCLC1万23例のうち、KRAS変異は14%(1,258例)に認められた。・KRAS変異の内訳は、G12Cが4.0%(376例)、G12Dが3.1%(289例)、G12Vは2.7%(251例)であった。・KRAS G12C陽性は、非G12C変異患者に比べ、男性および喫煙者の割合が高く(男性、喫煙者とも:p<0.001)、腫瘍変異負荷(TMB)が高い症例、PD-L1≧50%の症例が多かった(TMB:p<0.001、PD-L1:p=0.08)。・KRAS G12C陽性患者の全生存期間中央値は24.6ヵ月で、他の変異サブタイプとの差はなかった(G12V:18.2ヵ月、p=0.23、G12D:20.6ヵ月、p=0.65、その他のKRAS変異:18.3ヵ月、p=0.20)。・ICI治療による無増悪生存期間中央値は、KRAS G12Cでは3.4ヵ月で、G12V陽性の4.2ヵ月(p=0.90)と同様だったが、G12Dの2.0ヵ月(p=0.02)と、その他のKRAS変異の2.5ヵ月(p=0.02)に比べ、有意に長かった。 アジア人のNSCLCにおけるKRAS G12Cの頻度は、白人に比べて低かった。また、KRAS G12C NSCLCでは、高TMBやPD-L1高値など、免疫原性が亢進しており、ICIの感受性が高い可能性が示されている。■関連記事2022年の肺がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 肺がん編】【肺がんインタビュー】 第90回ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022KRAS G12C変異陽性NSCLCへのadagrasib、臨床的有効性示す/NEJMDr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」【肺がんインタビュー】 第71回

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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