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肺機能に有利なビタミンはどれ?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第277回

肺機能に有利なビタミンはどれ?ここで、問題です。肺機能に最も有利なビタミンは何でしょうか。「うーん、ビタミンCかビタミンBかなあ…」……違います!Chen YC, et al. Associations between vitamin A and K intake and lung function in the general US population: evidence from NHANES 2007-2012. Front Nutr . 2024 Sep 20;11:1417489.1つ目の研究は、ビタミンAとKの摂取と肺機能の関係を評価することを目的としたものです。この横断的研究は、20~79歳の成人を対象とし、2007~12年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを利用しました。肺機能は、1秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、そしてこれらの比である1秒率(FEV₁/FVC)を測定することで評価しました。ビタミンAとKの摂取と結果の関連性を判断するために回帰モデルが用いられました。1万34人の参加者(米国の成人1億4,296万5,892人)のデータが分析された。関連する交絡因子を調整した後、多変量解析により、ビタミンA摂取量の1µg/日の増加ごとに、FEV1が0.03mL増加(p=0.004)し、FVCが0.04mL増加すること(p<0.001)と関連していることが明らかになりました。さらに、ビタミンK摂取量の1µg/日の増加ごとに、FEV1の0.11mL増加と有意に関連していました(p=0.022)。1秒率や気道閉塞とは関連していませんでした。以上のことから、アメリカの比較的健康な集団では、ビタミンAまたはKの摂取量が多いと、スパイロメトリーで評価した肺機能の向上と独立して関連していることが示されました。Mongey R, et al. Effect of vitamin A on adult lung function: a triangulation of evidence approachThorax. 2025 Feb 12. [Epub ahead of print]2つ目の研究は、観察データと遺伝子データの両方から得たエビデンスから、成人の肺機能に対するビタミンAの影響を調査することを目的とした、UKバイオバンクの解析です。食事によるビタミンA摂取量(総ビタミンA、カロチン、レチノール)とFVC、1秒率との関連性を調査しました。次に、メンデルランダム化を使用してこれらの関連性の因果関係を評価し、ビタミンAに関連する39の遺伝子が成人の肺機能に与える影響と、ビタミンA摂取量との相互作用を調査しました。その結果、観察分析では、カロチン摂取量とFVCのみ(100µg/日増加ごとに13.3mL、p=2.9×10-9)の間に正の相関が見られ、喫煙者では相関が強いものの、レチノール摂取量とFVCまたは1秒率との相関は見られませんでした。メンデルランダム化でも同様に、血清βカロチンがFVCのみに有益な効果を示し、血清レチノールがFVCにも1秒率にも影響を与えないことが示されました。―――というわけで、上記2つの研究からは、ビタミンAのカロチンが最も肺にイイ!ということになりますね。

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高カロリーの朝食はCVD患者のうつ病リスクを低減する

 心血管疾患(CVD)を持つ成人は、朝食を高カロリーにすることでうつ病の発症リスクを低下させられる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ハルビン医科大学(中国)のHongquan Xie氏らによるこの研究結果は、「BMC Psychiatry」に1月31日掲載された。 研究グループによると、CVDを持つ人は一般集団と比べてうつ病を発症しやすいことに関するエビデンスは増えつつあるという。また、食事を摂取するタイミングは概日リズムに大きく影響し、概日リズムの乱れはうつ病の一因となる可能性も指摘されている。しかしながら、カロリーや主要栄養素の摂取タイミングとCVDを持つ人のうつ病発症との関連については明らかになっていない。 本研究では、2003年から2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者から抽出した、CVDを持つ米国の成人3,490人を対象に、食事由来のカロリーまたは主要栄養素の摂取とうつ病発症との関連が検討された。3,490人中554人がうつ病の診断を受けていた。対象者は、24時間思い出し法を通じて測定された3食の摂取カロリーと主要栄養素のレベルに応じて、レベルが最も低い群(Q1群)から最も高い群(Q5群)までの5群に分類された。 ロジスティック回帰分析により、年齢や性別、教育レベル、喫煙状況などの交絡因子を調整して解析した結果、朝食の摂取カロリーのQ5群(565.1kcal以上)ではQ1群(197.0kcal未満)と比較してうつ病のリスクが低く、オッズ比(OR)は0.71(95%信頼区間0.51〜0.91)と推定された。これに対し、昼食や夕食の摂取カロリーについてのQ1群とQ5群の比較では、うつ病リスクについて両群で有意な差は認められなかった。さらに、夕食や昼食での摂取カロリーの5%を朝食に移すことで、うつ病リスクが5%低下することも示された(昼食から朝食:OR 0.95、95%信頼区間0.93〜0.97、夕食から朝食:同0.95、0.93〜0.96)。一方、タンパク質や炭水化物などの主要栄養素の摂取とうつ病リスクとの間には、統計学的に有意な関連は認められなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、「本研究結果から言えることは、CVDを持つ人では、何を食べるかと同じくらい、いつ食べるかが重要だということだ。うつ病のリスクを低下させるには、食事によるカロリー摂取のタイミングを、体内時計のリズムに合わせて調整する必要がある」と述べている。

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日本人の頭内爆発音症候群の有病率は1.25%で不安・不眠等と関連―忍者睡眠研究

 目覚める直前に、頭の中で爆発音のような音が聞こえることのある頭内爆発音症候群(exploding head syndrome;EHS)の有病率が報告された。EHSが、不安や不眠、疲労感などに影響を及ぼす可能性も示された。滋賀医科大学精神医学講座の角谷寛氏らの研究によるもので、詳細は「Sleep」に1月10日掲載された。 EHSは、睡眠から覚醒に近づいている最中に、頭の中で大きな音が知覚されるという症状で、睡眠障害の一つとして位置付けられている。この症状は通常自然に消失するため良性疾患と考えられているが、EHSを経験した本人は不安を抱き、生活の質(QOL)にも影響が生じる可能性が指摘されている。しかし、EHSには不明点が多く残されており、有病率についても信頼性の高いデータは得られていない。角谷氏らは、日本人のEHS有病率の推定、およびEHSと不安や不眠等との関連について、「Night in Japan Home Sleep Monitoring Study;Ninja Sleep study(忍者睡眠研究)」のデータを用いて検討した。 忍者睡眠研究は、滋賀県甲賀市の市職員2,081人を対象とする睡眠に関する疫学調査で、今回の研究ではデータ欠落者、および、てんかんの既往のある人を除いた1,843人(平均年齢45.9±12.9歳、女性61.7%)を解析対象とした。EHSの有無は、「睡眠障害国際分類 第3版(ICSD-3)」に準拠して作成したアンケートにより判定した。具体的には、(A)覚醒から睡眠への移行時または夜間の覚醒時の、突然の大きな音または頭の中での爆発感覚、(B)その事象の後に覚醒して多くの場合は恐怖感を伴う、(C)激しい痛みは伴わない――という3項目の全てが該当する場合を「EHS」群、(A)のみが該当する場合を「爆発音のみ」群とした。 調査の結果、(A)が該当するのは46人(2.49%)であり、その半数(各23人、1.25%)ずつが、EHS群および爆発音のみ群に分類された。EHS群とその他の群(非EHS群〔爆発音のみ群も含む〕)を比較した場合、年齢、性別の分布、BMI、現喫煙・飲酒習慣、睡眠時間、睡眠薬の服用、睡眠時無呼吸の既往などに有意差はなかった。 続いて、EHSとメンタルヘルス状態やQOLとの関連を検討。するとEHS群は、抑うつや不安、不眠、疲労といった症状が有意に多く認められた。詳しく見ると、抑うつについてはPHQ-9という評価指標が10点以上の割合がEHS群50.0%、非EHS群16.4%、不安についてはGAD-7が10点以上の割合が同様に47.4%、12.7%、不眠はAISが10点以上の割合が33.3%、12.1%、疲労はCFSが22点以上の割合が47.8%、22.0%だった。また、QOLの評価指標のうち、メンタル面のQOLが良好(SF-8MCSが50点以上)な割合は、21.7%、42.2%でEHS群が有意に少なかった。身体面のQOLは有意差がなかった。 年齢、性別、BMI、および睡眠時間の影響を調整した解析でも、EHS群は非EHS群に比べて、抑うつ(オッズ比〔OR〕1.197〔95%信頼区間1.125~1.274〕)、不安(OR1.193〔同1.114~1.277〕)、不眠(OR1.241〔1.136~1.355〕)、疲労(OR1.112〔1.060~1.167〕)が多く認められた。なお、EHS群と爆発音のみ群を合わせて1群として、その他の群と比較した解析の結果も、ほぼ同様だった。 著者らは本研究を、「日本人のEHS有病率に関する初の研究」と位置付けている。一方、調査対象が1自治体の公務員のみであり一般化が制限されること、横断研究であるためEHSとメンタルヘルス状態との関連の因果関係は不明であることなどの限界があるとし、さらなる研究の必要性を指摘している。 なお、本研究で示されたEHSの有病率1.25%という数値は、海外での先行研究に比べてかなり低い値だという。この乖離の理由として、先行研究の多くは睡眠関連疾患の患者を対象としていたりオンライン調査であったりするため、EHS既往者が多く含まれている集団で調査されていた可能性が高いこと、および、本研究のようなICSD-3の定義に準拠した方法ではなく、EHSの有無を一つの質問のみにて判定していることによる精度差などが考えられるとのことだ。

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睡眠時無呼吸症候群の鑑別で見落としがちな症状とは?

 帝人ファーマは「家族となおそう睡眠時無呼吸」と題し、1月27日にメディア発表会を行った。今回、内村 直尚氏(久留米大学 学長)が「睡眠時無呼吸症候群とそのリスク」について、平井 啓氏(大阪大学大学院人間科学研究科/Cobe-Tech株式会社)が「睡眠医療のための行動経済学」について解説した。睡眠時無呼吸症候群の現状 まず、内村氏は睡眠障害について、国際分類第3版に基づく診断分類を示した。・不眠症 ・睡眠関連呼吸症候群 ・中枢性過眠症 ・概日リズム睡眠覚醒症候群 ・睡眠時随伴症群 ・睡眠時運動障害群 ・その他の睡眠障害 ・身体疾患及び神経疾患に関する睡眠障害 このなかの睡眠関連呼吸症候群に該当する睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、または睡眠1時間あたりに無呼吸および低呼吸が5回以上起こる状態を指す。国内の潜在患者数は940万人以上で、30~60代の約7人に1人が該当するというが、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)治療を受けている患者数は約73万人と、潜在患者の10%に満たないと言われている。 治療法の第一は生活習慣の是正(睡眠時の体位の工夫、禁煙、禁酒)や減量であるが、日中の眠気などの臨床症状が強い中~重症例に用いるCPAPをはじめ、無呼吸低呼吸指数(AHI)による重症度分類や併存疾患に応じたさまざまな方法がある。現在国内で保険適用となっているのは、OA(口腔内装置)療法(CPAP治療の適応とならない軽~中等症)、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(CPAP、OAいずれも使用できない症例)に加え、舌下神経電気刺激療法がある。医師が押さえておきたい患者像 続いて、SAS患者の主な特徴としては、喫煙者、寝酒の習慣化、肥満傾向、そして高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの既往歴を有することなどが挙げられるが、痩せている女性でも疾患リスクを有している点には注意が必要である。その理由について同氏は、「SASの発症は顔などの形態的特徴が強く関わっているため、頸が短い・太い、頸の周囲に脂肪が付いている、下顎が小さい、下顎が後方に引っ込んでいる、歯並びが悪い、舌や下の付け根が大きい患者では夜間の血中酸素濃度が低下しやすいため」と指摘。患者自身ができるセルフチェックについても触れ、「鏡の前で大きく口を開けて舌を下に出した時、口蓋垂が見えていない場合には、形態的に上気道が狭い可能性がある」と解説した。さらに同氏はSASによる疾患発症リスクについても言及し、「睡眠の障害はもちろん、血中酸素濃度の低下がさまざまな疾患リスクの引き金となる。たとえば、高血圧症の発症リスクは1.42~2.89 倍1)、脳卒中においては1.75~3.3倍2)にもなる。また、CPAPを装着することで、致死的心血管イベントの累積発生率3)がとくに重症OSA群で抑制される」と述べ、「起床時の頭痛、薬物治療を行っても改善されない夜間高血圧症例の場合にもSASの可能性4)があることから、そのような症状を有する患者には検査を勧めてほしい」ともコメントした。患者・家族と医療者がすれ違う理由と5つのバイアス 続いて平井氏が行動経済学の側面から解説した。同氏は患者と医療者では「見えている世界や景色が違う」とし、「慢性疾患は患者にとって、森の中を抜けていくような感覚だが、家族や医療者は俯瞰的に森全体を捉え、将来リスク、出口がどこにあるのかが見えている。患者は主観的な世界観を、家族や医療者は合理的な世界観を持っている」と説明した。また、行動経済学的に人の意思決定は常に合理的であるわけではなく、バイアスが生じることがあり、「通常、人間の考え方は損失回避的であり、それが自然な反応であることを医療者も理解が必要」ともコメントした。<5つのバイアス>・現在バイアス:将来の利益よりも、現在の利益を優先してしまう・利用可能性バイアス:意思決定において身近で目立つ情報を優先して用いてしまう・現状維持バイアス:自分の慣れた方法を変えることに大きな抵抗を感じる・正常性バイアス:自分は大丈夫だと思う・確証バイアス:自分にとって都合のよい情報を集める さらに、患者と医療者のすれ違い解消法として、フレーミング効果*やリバタリアン・パターナリズム**の活用を推奨し、今回のセミナーにゲスト出演した北斗 晶さんと佐々木 健介さん夫妻が、それぞれの睡眠時の状況を説明するために二人で一緒に病院を受診した点について、「コミットメントとナッジの視点から非常に有用である」と同氏は評価した。*同じ現象のポジティブな側面とネガティブな側面のどちらに焦点を当てるかで意思決定が変化すること。**「選択の自由」を尊重しつつも、望ましい行動を自然に選びやすくする環境や仕組みを提供する考え方。ナッジとは行動を始めやすくし、選択のしやすさや選択肢を提供すること。一方のコミットメントは行動を継続させ、実行を確実にする。 なお、帝人ファーマはいびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)に悩む方のためのポータルサイト「睡眠時無呼吸なおそう.com」5)を運営しており、これを利用することで、セルフチェックや専門の医療機関を検索することが可能である。■参考文献1)Peppard PE, et al. N Engl J Med. 2000;342:1378-1384.2)Good DC, et al. Stroke. 1996;27:252-259.3)Marin JM, et al. Lancet. 2005;365:1046-1053.4)日本循環器学会編:2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン5)帝人ファーマ:睡眠時無呼吸なおそう.com日本呼吸器学会:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020大竹文雄ほか. 医療現場の行動経済学. 2024. 東洋経済新報社

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妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチン 後編【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第8回

本稿では「妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチン」について取り上げる。これらのワクチンは、女性だけが関与するものではなく、その家族を含め、「彼女たちの周りにいる、すべての人たち」にとって重要なワクチンである。なぜなら、妊婦は生ワクチンを接種することができない。そのため、生ワクチンで予防ができる感染症に対する免疫がない場合は、その周りの人たちが免疫を持つことで、妊婦を守る必要があるからである。そして、「胎児」もまた、母体とその周りの人によって守られる存在である。つまり、妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチンは、胎児を守るワクチンでもある。VPDs(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで予防ができる病気)は、禁忌がない限り、すべての人にとって接種が望ましいが、今回はとくに妊娠可能年齢の女性と母体を守るという視点で、VPDおよびワクチンについて述べる。今回は、ワクチンで予防できる疾患、生ワクチンの概要の前編に引き続き、不活化ワクチンなどの概要、接種スケジュール、接種で役立つポイントなどを説明する。ワクチンの概要(効果・副反応・不活化・定期または任意・接種方法)妊婦に生ワクチンの接種は禁忌である。そのため妊娠可能年齢の女性には、事前に計画的なワクチン接種が必要となる。しかし、妊娠は予期せず突然やってくることもある。そのため、日常診療やライフステージの変わり目などの機会を利用して、予防接種が必要なVPDについての確認が重要となる。そこで、以下にインフルエンザ、百日咳、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、RSウイルス(生ワクチン以外)の生ワクチン以外のワクチンの概要を述べる。これら生ワクチン以外のワクチン(不活化ワクチン、mRNAワクチンなど)は妊娠中に接種することができる。ただし、添付文書上、妊娠中の接種は有益性投与(予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種が認められていること)と記載されているワクチンもあり注意が必要である。いずれも妊娠中に接種することで、病原体に対する中和抗体が母体の胎盤を通じて胎児へ移行し、出生児を守る効果がある。つまり、妊婦のワクチン接種が母体と出生児の双方へ有益ということになる。(1)インフルエンザ妊婦はインフルエンザの重症化リスク群である。妊婦がインフルエンザに罹患すると、非妊婦に比し入院率が高く、自然流産や早産だけでなく、低出生体重児や胎児死亡の割合が増加する。そのため、インフルエンザ流行期に妊娠中の場合は、妊娠週数に限らず不活化ワクチンによるワクチン接種を推奨する1)。また、妊婦のインフルエンザワクチン接種により、出生児のインフルエンザ罹患率を低減させる効果があることがわかっている。生後6ヵ月未満はインフルエンザワクチンの接種対象外であるが、妊婦がワクチン接種することで、胎盤経由の移行抗体による免疫効果が証明されている1,2)。接種の時期はいつでも問題ないため、インフルエンザ流行期の妊婦には妊娠週数に限らず接種を推奨する。妊娠初期はワクチン接種の有無によらず、自然流産などが起きやすい時期のため、心配な方は妊娠14週以降の接種を検討することも可能である。流行時期や妊娠週数との兼ね合いもあるため、接種時期についてはかかりつけ医と相談することを推奨する。なお、チメロサール含有ワクチンで過去には自閉症との関連性が話題となったが、問題がないことがわかっており、胎児への影響はない2)。そのほか2024年に承認された生ワクチン(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン:フルミスト点鼻薬)は妊婦には接種は禁忌である3)。また、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、飛沫または接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、授乳婦には不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する4)。(2)百日咳ワクチン百日咳は、成人では致死的となることはまれだが、乳児(とくに生後6ヵ月未満の早期乳児)が感染した場合、呼吸不全を来し、時に命にかかわることがある。一方、百日咳含有ワクチンは生後2ヵ月からしか接種できないため、この間の乳児の感染を予防するために、米国を代表とする諸外国では、妊娠後期の妊婦に対して百日咳含有ワクチン(海外では三種混合ワクチンのTdap[ティーダップ]が代表的)の接種を推奨している5,6)。百日咳ワクチンを接種しても、その効果は数年で低下することから、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2回目以降の妊娠でも、前回の接種時期にかかわらず妊娠する度に接種することを推奨している。百日咳は2018年から全数調査報告対象疾患となっている。百日咳感染者数は、コロナ禍前の2019年は約1万6千例ほどであったが、コロナ禍以降の2021~22年は、500~700例前後と減っていた。しかし、2023年は966例、2024年(第51週までの報告7))は3,869例と徐々に増加傾向を示している。また、感染者の約半数は、4回の百日咳含有ワクチンの接種歴があり、全感染者のうち6ヵ月~15歳未満の小児が62%を占めている8)。さらに、重症化リスクが高い6ヵ月未満の早期乳児患者(計20例)の感染源は、同胞が最も多く7例(35%)、次いで母親3例(15%)、父親2例(10%)であった9)。このように、百日咳は、小児の感染例が多く、かつ、ワクチン接種歴があっても感染する可能性があることから、感染源となりうる両親のみならず、その兄弟や同居の祖父母にも予防措置としてワクチン接種が検討される。わが国で、小児や成人に対して接種可能な百日咳含有ワクチンは、トリビック(沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン)である。本ワクチンは、添付文書上、有益性投与である(妊婦に対しては、予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種が認められている)10)が、上記の理由から、丁寧な説明と同意があれば、接種する意義はあるといえる。(3)RSウイルスワクチン2024年より使用可能となったRSウイルスワクチン(組み換えRSウイルスワクチン 商品名:アブリスボ筋注用)11)は、新生児を含む乳児におけるRSウイルス感染症予防を目的とした妊婦対象のワクチンである(同時期に承認販売開始となった高齢者対象のRSウイルスワクチン[同:アレックスビー筋注用]は、妊婦は対象外)。アブリスボを妊娠中に接種すると、母体からの移行抗体により、出生後の乳児のRSウイルスによる下気道感染を予防する。そのため接種時期は妊娠28~36週が最も効果が高いとされている12)(米国では妊娠32~36週)。また、本ワクチン接種後2週間以内に児が出生した場合は、抗体移行が不十分と考えられ、モノクローナル抗体製剤パリミズマブ(同:シナジス)とニルセビマブ(同:ベイフォータス)の接種の必要性を検討する必要があるため、妊婦へ接種した日時は母子手帳に明記することが大切である13)。乳児に対する重度RSウイルス関連下気道感染症の予防効果は、生後90日以内の乳児では81.8%、生後180日以内では69.4%の有効性が認められている14)。これまで、乳児のRSウイルス感染の予防には、重症化リスクの児が対象となるモノクローナル抗体製剤が利用されていたが、RSウイルス感染症による入院の約9割が、基礎疾患がない児という報告もあり15)、モノクローナル抗体製剤が対象外の児に対しても予防が可能となったという点において意義があるといえる。一方で、長期的な効果は不明であり、わが国で接種を受けた妊婦の安全性モニタリングが不可欠な点や、他のワクチンに比し高額であることから、十分な説明と同意の上での接種が重要である。(4)COVID-19ワクチンこれまでの国内外の多数の研究結果から、妊婦に対するCOVID-19ワクチン接種の安全性は問題ないことがわかっており16,17)、前述の3つの不活化ワクチンと同様に、妊婦に対する接種により胎盤を介した移行抗体により出生後の乳児が守られる。逆にCOVID-19に感染した乳児の多くは、ワクチン未接種の妊婦から産まれている17)。妊婦がCOVID-19に罹患した場合、先天性障害や新生児死亡のリスクが高いとする報告はないが、妊娠中後期の感染では早産リスクやNICU入室率が高い可能性が示唆されている17)。また、酸素需要を要する中等症~重症例の全例がワクチン未接種の妊婦であったというわが国の調査結果もある17)。妊婦のCOVID-19重症化に関連する因子として、妊娠後期、妊婦の年齢(35歳以上)、肥満(診断時点でのBMI30以上)、喫煙者、基礎疾患(高血圧、糖尿病、喘息など)のある者が挙げられており、これらのリスク因子を持つ場合は産科主治医との相談が望ましい。一方で、COVID-19ワクチンはパンデミックを脱したことや、インフルエンザウイルス感染症のように、定期的流行が見込まれることから、2024年度から第5類感染症に変更され、ワクチンも定期接種化された。よって、定期接種対象者である高齢者以外は、妊婦や、基礎疾患のある小児・成人に対しても1回1万5千円~2万円台の高額なワクチンとなった。接種意義に加え、妊婦の基礎疾患や背景情報などを踏まえた総合的・包括的な相談が望ましい。また、COVID-19ワクチンについては、いまだにフェイクニュースに惑わされることも多く、医療者が正確な情報源を提供することが肝要である。接種のスケジュール(小児/成人)妊婦と授乳婦に対するワクチン接種の可否について改めて復習する。ワクチン接種が禁忌となるのは、妊婦に対する生ワクチンのみ(例外あり)であり、それ以外のワクチン接種は、妊婦・授乳婦も含めて禁忌はない(表)。表 非妊婦/妊婦・授乳婦と不活化/生ワクチンの接種可否についてただし、ワクチンを含めた薬剤投与がなくても流産の自然発生率は約15%(母体の年齢上昇により発生率は増加)、先天異常は2~3%と推定されており、臨界期(主要臓器が形成される催奇形性の感受性が最も高い時期)である妊娠4~7週は催奇形性の高い時期である。たとえば、ワクチン接種が原因でなくても後から胎児や妊娠経過に問題があった場合、実際はそうでなくても、あのときのあのワクチンが原因だったかも、と疑われることがあり得る。原因かどうかの証明は非常に困難であるため、妊娠中の薬剤投与と同様に、医療従事者はそのワクチン接種の必要性や緊急性についてしっかり患者と話し、接種する時期や意義について理解してもらえるよう努力すべきである。※その他注意事項生ワクチンの接種後、1~2ヵ月の避妊を推奨する。その一方で、仮に生ワクチン接種後1~2ヵ月以内に妊娠が確認されても、胎児に健康問題が生じた事例はなく、中絶する必要はないことも併せて説明する。日常診療で役立つ接種ポイント1)妊娠可能年齢女性とその周囲の家族について妊孕性(妊娠する可能性)が高い年代は10~20代といわれているが、妊娠可能年齢とは、月経開始から閉経までの平均10代前半~50歳前後を指す。妊娠可能年齢の幅は非常に広いことを再認識することが大切である。また、妊婦や妊娠可能年齢の女性を守るためには、その周囲にいるパートナーや同居する家族のことも考慮する必要があり、その年齢層もまちまちである(同居する祖父母や親戚、兄弟など)。患者の家族構成や背景について、かかりつけ医として把握しておくことは、ワクチンプラクティスにおいて、非常に重要であることを強調したい。2)接種を推奨するタイミング筆者は下記のタイミングでルーチンワクチン(すべての人が免疫を持っておくと良いワクチン)について確認するようにしている。(1)何かしらのワクチン接種で受診時(とくに中高生のHPVワクチン、インフルエンザワクチンなど)(2)定期通院中の患者さんのヘルスメンテナンスとして(3)患者さんのライフステージが変わるタイミング(進学・就職/転職・結婚など)今後の課題・展望妊娠可能年齢の年代は受療行動が比較的低く、基礎疾患がない限りワクチン接種を推奨する機会が限られている。また、妊娠が成立すると、基礎疾患がない限り産科医のみのフォローとなるため、妊娠中に接種が推奨されるワクチンについての情報提供は産科医が頼りとなる。産科医や関連する医療従事者への啓発、学校などでの教育内容への組み込み、成人式などの節目のときに情報提供など、医療現場以外での啓発も重要であると考える。加えて、フェイクニュースやデマ情報が拡散されやすい世の中であり、妊婦や妊娠を考えている女性にとっても重大な誤解を招くリスクとなりうる。医療者が正しい情報源と情報を伝える重要性が高いため、信頼できる情報源の提示を心掛けたい。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)妊娠可能年齢の女性と妊婦のワクチン(こどもとおとなのワクチンサイト)妊娠に向けて知っておきたいワクチンのこと(日本産婦人科感染症学会)Pregnancy and Vaccination(CDC)参考文献・参考サイト1)Influenza in Pregnancy. Vol. 143, No.2, Nov 2023. ACOG2)産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023. 日本産婦人科学会/日本産婦人科医会. 2023:59-62.3)経鼻弱毒生インフルエンザワクチン フルミスト点鼻液 添付文書4)経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方. 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会(2024年9月2日)5)Tdap vaccine for pregnant women CDC 6)海外の妊婦への百日咳含有ワクチン接種に関する情報(IASR Vol.40 p14-15:2019年1月号)7)感染症発生動向調査(IDWR) 感染症週報 2024年第51週(12月16日~12月22日):通巻第26巻第51号8)2023年第1週から第52週(*)までに 感染症サーベイランスシステムに報告された 百日咳患者のまとめ 国立感染症研究所 実地疫学研究センター 同感染症疫学センター 同細菌第二部 9)全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学(更新情報)2023年疫学週第1週~52週 2025年1月9日10)トリビック添付文書11)医薬品医療機器総合機構. アブリスボ筋注用添付文書(2025年1月9日アクセス)12)Kampmann B, et al. N Engl J Med. 2023;388:1451-1464.13)日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン Q&A(第2版)(2024年9月2日改訂)14)Kobayashi Y, et al. Pediatr Int. 2022;64:e14957.15)妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について 国立感染症成育医療センター16)COVID-19 Vaccination for Women Who Are Pregnant or Breastfeeding(CDC)17)山口ら. 日本におけるCOVID-19妊婦の現状~妊婦レジストリの解析結果(2023年1月17日付報告)講師紹介

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日本の大学生の血圧、コロナ禍後に上昇

 日本の大学生における血圧の5年ごとの調査で、コロナ禍後の2023年に血圧が上昇していたことが、慶應義塾大学の安達 京華氏らの研究でわかった。一方、喫煙・飲酒習慣や睡眠不足、精神的ストレス、ファストフードやスナック菓子の摂取は減少、運動習慣は増加しており、血圧上昇の原因は特定されなかった。Hypertension Research誌2025年2月号に掲載。 高血圧は中高年だけでなく、若年者においても心血管疾患のリスクを高める。コロナ禍では世界中で血圧の上昇傾向が観察されたが、若年成人については十分な評価がなされていない。本研究では、コロナ禍の前後を含む2003~23年の20年間、5年ごとに大学生(10万6,691人)の血圧を調査した。  主な結果は以下のとおり。・2003~18年において血圧に目立った変化はなかったが、コロナ禍後に男女とも血圧の上昇がみられ、収縮期血圧は、男性が2018年の118.1(SD:14.2)mmHgから2023年の120.6(SD:12.5)mmHgに、女性が104.6(SD:11.8)mmHgから105.1(SD:11.7)mmHgに上昇した。・これらの傾向は、標準体重/低体重の学生、および1年生と2年生で顕著であった。・生活習慣を調査した結果、喫煙・飲酒習慣、睡眠不足、精神的ストレス、ファストフードやスナック菓子の摂取が減少し、運動習慣が増加していた。

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日本人PD-L1低発現の切除不能NSCLC、治験不適格患者へのICI+化学療法の有用性は?

 PD-L1低発現の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の有用性は臨床試験ですでに検証されている。しかし、実臨床では臨床試験への登録が不適格となる患者も多く存在する。そこで、研究グループはPD-L1低発現の切除不能NSCLC患者を臨床試験への登録の適否で分類し、ICI+化学療法の有用性を検討した。その結果、臨床試験への登録が不適格の集団は、適格の集団よりも全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が短かったものの、ICI+化学療法が化学療法単独よりも有用であることが示唆された。ただし、PS2以上、扁平上皮がんではICI+化学療法によるOSの改善はみられなかった。本研究結果は、畑 妙氏(京都府立医科大学大学院 呼吸器内科学)らにより、Lung Cancer誌2025年2月号で報告された。 本研究は、多施設共同後ろ向きコホート研究として、日本の19施設において実施された。対象患者は、PD-L1低発現(TPS 1~49%)のStageIIIB、IIIC、IV(TNM分類第8版)のNSCLC患者のうち、ICI+化学療法または化学療法単独による治療を行った728例とした。対象患者を第III相試験への登録基準への適否で分類し(適格集団/不適格集団)、OSやPFSなどを検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者728例のうち、適格集団は333例、不適格集団は395例であった。・対象患者の年齢中央値は70歳(範囲:36~89)、男性が79%、現/元喫煙者が89%、組織型は腺がんが58%、扁平上皮がんが32%であった。・OSは適格集団、不適格集団のいずれにおいてもICI+化学療法群が化学療法群と比べて有意に長かった。しかし、不適格集団のPS2以上、扁平上皮がんに限定した解析では、有意差はみられなかった。OS中央値は以下のとおり。<適格集団> ICI+化学療法群25.1ヵ月、化学療法群18.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.97、p=0.03)<不適格集団> ICI+化学療法群18.2ヵ月、化学療法群14.9ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.59~0.95、p=0.018)<PS2以上の不適格集団> ICI+化学療法群12.2ヵ月、化学療法群9.2ヵ月(p=0.21)<扁平上皮がんの不適格集団> ICI+化学療法群12.9ヵ月、化学療法群13.1ヵ月(p=0.27)・PFSは適格集団、不適格集団のいずれにおいてもICI+化学療法群が化学療法群と比べて有意に長かった。不適格集団のうち扁平上皮がんに限定した解析では、ICI+化学療法群が有意に長かったが、PS2以上に限定した解析では有意差はみられなかった。PFS中央値は以下のとおり。<適格集団> ICI+化学療法群9.3ヵ月、化学療法群6.1ヵ月(p<0.0001)<不適格集団> ICI+化学療法群7.0ヵ月、化学療法群5.1ヵ月(p<0.0001)<PS2以上の不適格集団> ICI+化学療法群5.7ヵ月、化学療法群4.0ヵ月(p=0.17)<扁平上皮がんの不適格集団> ICI+化学療法群6.1ヵ月、化学療法群5.0ヵ月(p=0.008) 本研究結果について、著者らは「PS2以上、扁平上皮がんを除き、臨床試験への登録が不適格の集団においてもICI+化学療法の有用性が示唆された」とまとめた。

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日本人の食事関連温室効果ガス排出量と死亡リスクにU字型の関連

 食習慣に伴う温室効果ガス排出量と死亡リスクとの関連が明らかになった。温室効果ガス排出量が多い食習慣の人だけでなく、排出量が少ない食習慣の人も死亡リスクが高い可能性があるという。早稲田大学スポーツ科学学術院の渡邉大輝氏、筑波大学医学医療系社会健康医学の村木功氏(研究時点の所属は大阪大学)らの研究によるもので、詳細は「Environmental Health Perspectives」に11月7日掲載された。 人類が生み出す温室効果ガスの21~37%は食事関連(食糧生産・流通・調理など)が占めるとされており、人々が地球の健康も考えた食事スタイルを選択することが重要となっている。これまでに欧米諸国からは、個人の食習慣に伴う温室効果ガス排出量(diet-related greenhouse gas emissions;dGHGE)が死亡リスクとJ字型またはU字型の関連があると報告されているが、アジア人でのデータはない。渡邉氏らは、1980年代後半にスタートした国内一般住民対象の多施設共同大規模コホート研究(JACC研究)のデータを用いて、日本人のdGHGEと死亡リスクとの関連を検討した。 JACC研究参加者のうち、食事調査のデータがあり、摂取エネルギー量が極端(500kcal/日未満または3,500kcal/日以上)でなく、研究参加時に心筋梗塞、脳卒中、がんの既往のなかった40~79歳の日本人5万8,031人を解析対象とした。この対象の主な特徴は、平均年齢が56.1±9.9歳、女性60.4%で、BMIは22.8±3.3であり、食事調査データから算出したdGHGE(CO2換算値)は、食品1kg、1日当たり1,522±133g-CO2eq/kg/日だった。dGHGEの19.4%は穀類、11.6%は魚類、10.5%は肉類で占めていた。 中央値19.3年(四分位範囲11.4~20.8)の追跡で、1万1,508人(19.8%)の死亡が記録されていた。dGHGEの五分位数で5群に分類し、交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、居住地域、教育歴、婚姻・就業状況、高血圧・糖尿病の既往、テレビ視聴時間、睡眠時間)を調整後に、第4五分位群を基準として死亡リスクを比較した。 その結果、全死亡(あらゆる原因による死亡)については、dGHGEが最も少ない第1五分位群(ハザード比〔HR〕1.11〔95%信頼区間1.05~1.18〕)、dGHGEが最も多い第5五分位群(HR1.09〔同1.03~1.17〕)において、有意なリスク上昇が認められた。また心血管死亡については、第1五分位群(HR1.23〔1.10~1.38〕)、第2五分位群(HR1.12〔1.00~1.25〕)、第5五分位群(HR1.22〔1.08~1.37〕)で、有意なリスク上昇が認められた。がん死亡や呼吸器疾患による死亡については、dGHGEとの関連が見られなかった。 次に、タンパク質源として1食分の赤肉を他のタンパク質食品に置き換えた場合のdGHGEと死亡リスクに与える影響を検討すると、dGHGEについては、卵(-367g-CO2eq/kg/日)や豆類(-347g-CO2eq/kg/日)をはじめ、魚類や鶏肉などに置き換えた場合にも有意に減少すると予測された。一方、死亡リスクについては、豆類に置き換えた場合にのみ、有意に低下すると考えられた(HR0.96〔0.93~0.99〕)。 これらの結果に基づき著者らは、「日本人のdGHGEと死亡リスクの間には、U字型の関連が認められる。この知見は、人々の健康と環境の改善を意図した持続可能な食糧政策の策定に役立つのではないか」と結論付けている。なお、論文の考察において、「dGHGEが高い場合の死亡リスク上昇には動物性食品の摂取量が多いこと、dGHGEが低い場合の死亡リスク上昇にはタンパク質の不足や栄養不良が関与していると考えられる」と述べられている。

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脳の健康維持のために患者と医師が問うべき12の質問とは?

 米国神経学会(AAN)の「脳の健康イニシアチブ(Brain Health Initiative)は、人生のあらゆる段階において脳の健康に影響を与える12の要因についてまとめた論文を、「Neurology」に2024年12月16日発表した。論文には、神経科医が患者の脳の健康を向上させるために活用できる、スクリーニング評価や予防的介入の実践的アプローチに関する内容も含まれている。 脳の健康に関わる12の要因、およびそれを評価するための質問は、以下の通りである。これらについて自分自身に問うとともに、医師とも話し合うとよいだろう。1. 睡眠:「睡眠により十分に体を休めることができていますか?」 日中の眠気、シフトワークの影響、夜間の痛み、不眠症、昼寝の習慣などについて医師と話し合おう。2. 感情、気分、メンタルヘルス:「自分の感情、気分、ストレスについて心配がありますか?」 医師は患者の抑うつや不安を評価するべきだが、患者が自分から相談できるよう準備しておくことも大切だ。3. 食品、食事、サプリメント:「十分な量の食品や健康的な食事の確保に心配がありますか?サプリメントやビタミンの摂取について聞きたいことはありますか?」4. 運動:「生活の中に運動を取り入れられていますか?」 身体活動に加え、動き、バランス、自立性を維持する方法について医師と相談しよう。5. 支えとなる社会的つながり:「親しい友人や家族と定期的に連絡を取り合っていますか?周りの人から十分なサポートを受けていますか?」6. 事故や外傷の回避:「運転時にシートベルトやヘルメットを着用していますか?子どもがいる人はチャイルドシートを使用していますか?」 職業上のリスクがある人は、それについて話し合うことも重要だ。7. 血圧:「自宅で高血圧に気付いたり、病院で高血圧を指摘されたりしたことはありますか?血圧の治療や家庭用血圧計について疑問がありますか?」 高血圧の二次的原因や薬と血圧の関係について医師に相談しよう。8. 遺伝的リスクと代謝的リスク:「血糖値やコレステロール値のコントロールに問題がありますか?神経疾患の家族歴がありますか?」 遺伝的リスクを調べて認識し、必要に応じて脂質や糖尿病の管理、健康的な体重の維持について質問すること。9. 医療のアフォーダビリティ(支払いのしやすさ)とアドヒアランス:「薬代が大きな負担になっていませんか?」 保険の支払いに関わり得る年齢の変化については医師が確認を取るはずだが、保険内容に変更がある場合は必ず医師に伝えること。10. 感染症:「ワクチンは最新のものを接種していますか?また、それらのワクチンについて十分な情報を持っていますか?」11. 悪影響のある曝露:「喫煙、1日に1~2杯以上の飲酒、市販薬の使用、井戸水の摂取、空気や水の汚染が知られている地域に居住、これらの中に該当するものはありますか?」 毎回の診察は、喫煙、飲酒、市販薬の使用に関する問題を評価する機会となる。12. 健康の社会的決定要因:「住居、交通手段、医療や医療保険へのアクセス、身体的または精神的な安全性について心配がありますか?」 この論文の筆頭著者である米ミシガン大学アナーバー校のLinda Selwa氏は、「科学的研究への資金提供や医療へのアクセス改善などに向けた神経科医の継続的な取り組みは、国家レベルで脳の健康を改善する。われわれの論文は、脳の健康を個人レベルで改善する方法が数多くあることを示している。新年に脳の健康改善を決意することは、素晴らしい第一歩だ」とAANのニュースリリースで述べている。

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認知症リスク因子のニューフェイス【外来で役立つ!認知症Topics】第26回

Lancetが報告した修正可能な14のリスク因子世界的な医学雑誌Lancetは、2017年から認知症のリスク因子について最先端のデータを発表してきた。第2報告は2020年、そして最新報告は2024年に発表された1)。これら3回の報告の内容は少しずつ変化してきた。なお、示された結果は、この作業部会が継続的に最新の報告などを吟味してその結果をまとめたものである。それだけに古典的なリスク因子、たとえば運動不足、教育不足、飲酒や喫煙といったもの以外に、いわばニューフェイスが現れてきた。そのようなものとして最も有名なのは2017年の発表2)でデビューした「中年期からの難聴」だろう。また、大気汚染、最新の報告では視力低下と低密度リポタンパク質(LDL;Low Density Lipoprotein)コレステロールの高値が加わった。そして2024年の報告にある14のリスク因子のすべてに対応できたら、認知症発症は45%抑制できるとされる。画像を拡大する本稿では、こうしたリスク因子がなぜ悪いのかに注目してみる。古典リスク因子として、まず若年期の教育不足。これは基本的な神経回路の成長が十分なされないということだろう。中年期のリスク因子については、頭部外傷と難聴以外は、脳血管に悪影響を及ぼすとまとめられるだろう。頭部外傷に関しては、ボクサー脳などさまざまなスポーツ外傷や交通事故による後年の害が知られてきた。外傷から10年以上も後に、認知症が発症してくるとされる。また老年期のうつ、社会的交流の乏しさについては、社会的な存在である人間がそれらしい活動を失うということかもしれない。運動不足については、神経細胞や脳血管の新生につながらないことが大きいのだろう。さらに糖尿病では、インスリンとアミロイドβの両方を分解するインスリン分解酵素が注目されてきた。大気汚染比較的新しいリスク因子の大気汚染については、PM2.5(PM;Particulate Matter)が注目されている。これは大気中を浮遊する径2.5ミクロン以下の微粒子であり、従来は呼吸器系や循環器系への悪影響が注目された。これは脳にも悪影響を及ぼすとされる。また近年では大気汚染は、地球の温暖化や緑地の減少などと相乗的な悪循環を形成するといわれる。中年期からの難聴さて2017年にいわば衝撃のデビューをした「中年期からの難聴」だが、この発表中の全リスク因子のうちで最も影響が大きいと報告された。2024年の報告でも影響力7%とやはり最強である。このような難聴がなぜリスク因子になるかについての考え方は、以下のようにまとめられている3)。(1)蝸牛とその上行経路(難聴)および海馬など側頭葉内側(認知症)のいずれもアルツハイマー病病理で侵される。(2)難聴による音刺激の欠乏が1次聴覚野と海馬の形態変化をもたらし認知予備能を減らすことで準備状態を作る。(3)本来記憶などの認知機能に費やすべき知的エネルギーを、難聴者は聴覚理解に回す必要がある。(4)聴覚的理解用のエネルギー増加がシナプスに悪影響する。より単純ながら、聴覚刺激が入らないことは、たとえば社会交流をしても脳に対する重要な刺激が届かないことになるという考えもある。高LDLコレステロール2024年には新たなリスク因子についても報告された1)。まず生化学的な知見として、中年期からの「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールの高値である。これは以前から脳動脈硬化の促進因子として有名であった。つまり動脈を詰まらせ、柔軟性を低下させる堆積物であるプラークの構築に寄与するため悪玉と呼ばれる。このLDLコレステロールが100以上、また「善玉コレステロール」といわれるHDL(High Density Lipoprotein)コレステロールのレベルが40以下の場合、アルツハイマー病(AD)発症の可能性が増加するとされる。AD発症のリスクを高めるだけでなく、「悪玉コレステロール」は脳の一般的な認知機能を損なうこともわかっている。またLDLコレステロール値が高いと、そうでない人に比べて記憶に障害がありがちで、脳動脈がアテローム性動脈硬化症を発症して脳卒中のリスクを高める。さらにLDLコレステロール値が高くなることで、脳内の血流が減少し、白質の密度が低下する状態につながる可能性もある。視力低下次に老年期の視力低下である。その原因では、白内障と糖尿病性網膜症が重視され、緑内障と加齢性黄斑変性症は関連しないとされる。英国では200万人が視力低下していると推定される。加齢とともに視力障害は多くなるだけに、視力障害を持つ人々のほぼ80%は65歳以上である。視力低下の程度と認知症のリスクは相関する。もっともこれは未矯正・未治療の視力喪失者には当てはまり、矯正・治療すればリスクは高まらない。たとえば、白内障の手術をした人は、しない人に比べて認知症になる可能性が30%低いとした報告もある。ところで、ヒトの情報の80%は目から入る、それに対して耳からは20%以下だといわれる。だから筆者には、視力喪失がリスク因子とされたのが遅いとも思われるのだが、聴覚と視覚が認知症という大脳の変化にもたらす影響は、それぞれが持つ情報量とは別なのかもしれない。参考1)Livingstone G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care. Lancet. 2017;390:2673-2734.3)Ray M, et al. Dementia and hearing loss: A narrative review. Maturitas. 2019;128:64-69.

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喫煙とCVDリスクとの関係は用量依存的

 喫煙と心血管疾患(CVD)リスクの関係は用量依存的であることを示した研究結果が、「JAMA Network Open」に11月1日掲載された。 中央大学光明病院(韓国)のJun Hwan Cho氏らは、韓国の国民健康保険データベースを用いて、禁煙後のCVDリスクと、累積喫煙量(パックイヤー〔PY〕)や禁煙後の経過年数(years since quitting;YSQ)との関連を検討した。対象は、2006年から2008年の間に自己報告による喫煙状況が記録された539万1,231人(男性39.9%、平均年齢45.8〔標準偏差14.7〕歳)で、15.8%は現喫煙者、1.9%は元喫煙者、82.2%は喫煙未経験者であった。元喫煙者と現喫煙者については、喫煙開始年齢、過去または現在の1日当たりの喫煙本数、および禁煙した年齢(元喫煙者のみ)に基づき、ベースライン時点のPYとYSQを計算した。対象者の喫煙状況は、2019年まで2年ごとに更新された。最終的に、PYの中央値は、元喫煙者で10.5(四分位範囲5.3〜20.0)PY、現喫煙者で14.0(同7.5〜20.0)PYであった。元喫煙者のYSQの中央値は4年(同2〜8)であった。主要評価項目は、CVD(心血管疾患による死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)の発症率およびそのハザード比とし、ポアソン回帰分析でCVD発症率を算出した。また、Cox比例ハザード回帰モデルにより、喫煙状況に基づく調整ハザード比(aHR)を推定した。 PYとCVDリスクとの関係は、現喫煙者および元喫煙者の双方で用量依存的であり、特に、元喫煙者では喫煙未経験者に比べて、8PYを境にCVDリスクが有意に上昇していた(aHR 1.16、95%信頼区間〔CI〕1.13〜1.19、P<0.001)。現喫煙者においては、10PYまでリスクが直線的に急増し、10〜20PYではリスクが維持され、20PYを超えると再び増加に転じていた。 YSQとCVDリスクとの関係は、YSQが長いほどCVDリスクは低下することが示された。特に元喫煙者では現喫煙者と比較して、YSQ5年以内にCVDリスクの有意な低下が認められた(aHR 0.96、95%CI 0.92〜0.99)。しかし、喫煙未経験者と比べると、元喫煙者ではYSQ 20年以上が経過しても、依然としてCVDリスクは高いままであった。喫煙量が少ない(8PY未満)元喫煙者では、CVDリスクは喫煙未経験者と同等であり(同1.02、0.97〜1.07、P=0.47)、YSQ20年以内にリスクが顕著に低下していた。一方、喫煙量の多い(8PY以上)元喫煙者では、長期間にわたって高いリスクが維持され、YSQが25年を経過するまでCVDリスクは高いままだった(同1.18、0.94〜1.43、P=0.81;有意差は消失)。 著者らは、「過去にヘビースモーカーであった人のCVDリスクは、現喫煙者と同等だと考えるべきであり、それに応じた管理計画を立てる必要がある」と述べている。 なお、一人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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タンパク質などの“酸性食品”が要介護リスクに影響か

 2050年までに介護を必要とする高齢者は現在の4倍にまで増加すると言われており、高齢者に対する介護の必要性を低減させる取り組みが喫緊の課題とされている。そのような状況を踏まえ、今回、国立長寿医療研究センターの木下 かほり氏らが酸性食品(タンパク質やリンを多く含むもの)がもたらすdisability(要介護状態)の発生率を調査した結果、食事性酸負荷が高い(=酸性食品の摂取量が高い)ほど、高齢女性では要介護状態の発生率が増加したことを明らかにした。代謝性アシドーシスが筋肉の異化を亢進させることは既知であり、酸性食品が高齢者の筋肉減少を助長させる可能性があったものの、要介護状態発生との関連性はこれまで不明であった。The Journal of Frailty & Aging誌2025年2月号掲載の報告。 研究者らは、ベースラインで要介護状態ではない愛知県東浦町に居住している75歳以上の1,704例を対象に縦断的研究を実施した。ベースライン時点での食事性酸負荷は、食事中の栄養素*の組み合わせによって定義される値の1つとされ、尿の酸性度を反映する潜在的腎臓酸負荷(Potential Renal Acid Load:PRAL)を使用して評価した**。また、参加者はPRALに基づき3グループに分類された(T1を基準としてT1~T3)。主要評価項目は、追跡期間1年間での新たな要介護状態の発生率で、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、年齢、BMI、生活歴、喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、エネルギー摂取量、アルコール摂取量を調整した後、多重ロジスティック回帰分析で算出された。なお、PRAL の影響は性別に特異的であると報告されているため、男女それぞれの分析が行われた。*酸性栄養素としてタンパク質・リンを、アルカリ性栄養素としてカリウム・カルシウム・マグネシウムをPRAL算出に用いる**この値が高いほど、より酸性に傾きやすい食事であることを示す 主な結果は以下のとおり。・対象者1,704例の年齢範囲は75~98歳で、女性は890例(52.2%)だった。・T1、T2、T3グループのPRAL(mEq/日)範囲は、男性では-64.51~0.21、0.27~11.34、11.41~61.00、女性ではそれぞれ-61.22~-3.84、-3.75~5.89、5.90~38.68であった。・体重1kg当たりのタンパク質摂取量は、男女共にT1からT3グループにかけて有意に増加し、動物性タンパク質比率もこれらのグループ間で有意に増加した。・対照的に、野菜と果物の摂取量は、T1からT3グループにかけて有意に減少した。・要介護状態は男性44例(5.7%)、女性71例(8.7%)に発生した。・T2およびT3の要介護状態のOR(95%CI)は、男性で0.79(0.35~1.76)および0.81(0.37~1.79)、女性で1.10(0.57~2.13)および1.96(1.06~3.61)であった。 木下氏らは「今後の研究でPRALの効果に関する性差を調査する必要があるが、要介護状態を予防するために高タンパク質の摂取を必要とする高齢者にとっては、タンパク質を豊富に含む食品に加えて、野菜や果物を多く含む食事が重要な食事戦略となる可能性がある」としている。

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ADHDと診断された人の寿命は短い?

 注意欠如・多動症(ADHD)の成人は、同年代のADHDではない人と比べて平均寿命が男性で平均6.8年、女性で8.6年短いと推定されることが、新たな研究で示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)加齢・臨床心理学分野のJoshua Stott氏らによるこの研究結果は、「The British Journal of Psychiatry」に1月23日掲載された。Stott氏は、「これは大きな数字であり、憂慮すべき状況だ」とNew York Times紙に語っている。 世界でのADHDの有病率は2.8%と推定されている。Stott氏は、ADHDの人は、衝動的な行動を取りがちで、時間や健康をうまく管理できない傾向が強く、それがよりリスクの高い選択につながっている可能性があると説明する。New York Times紙は、このような困難が、ADHDの人での事故率や慢性疾患の罹患率の高さに関連していると報じている。 これらのことは、過去の研究でも裏付けられている。2022年のメタアナリシスでは、ADHDの人は、事故や自殺などの「不自然死」で死亡する可能性が一般人口よりも3倍近く高いことが示されている。また、2019年の研究では、ADHDの関連因子である喫煙、飲酒、睡眠不足、低収入が寿命の短縮と関連することが指摘されている。しかし、これまで、死亡データを基にADHDの人の寿命がADHDではない人と比べてどの程度短縮し得るのかを調査した研究は実施されていなかった。 Stott氏らは今回、2000年から2019年にかけて英国の792カ所の一般診療所から収集されたプライマリケアのデータを用いて、ADHDの人の寿命がどの程度短縮するのかを調べた。対象は、ADHDの診断を有する18歳以上の成人3万39人(ADHD群)と、年齢、性別、診療所を一致させた対照群30万390人であった。 その結果、ADHD群では、一般的な身体的および精神的な健康状態に関する診断が、対照群よりも多いことが明らかになった。また、ADHD群の寿命は、対照群と比べて男性で6.78年(95%信頼区間4.50~9.11)、女性で8.64年(同6.55~10.91)短いことも示された。ただし、本研究ではADHD群での具体的な死因は特定されていない。 研究グループは、ADHDの人が短命である原因には、喫煙や不十分な治療などの修正可能な要因が関係している可能性が高いと推測し、そのような治療や支援におけるアンメットニーズを法的措置によって改善する必要があるとしている。その具体例として、ADHDの人に多く見られる身体的および精神的健康問題への認識を高める取り組みの推進や、精神的な支援へのアクセスや禁煙支援サービスを適切なタイミングで利用できる環境整備の重要性を説いている。 Stott氏は、「ADHDの人には多くの強みがあり、適切な支援と治療を受けることで成長を期待できる。しかし、実情は支援を欠いていることが多く、生活の中でストレスになるようなことや社会的排除を経験することも多い。こうしたことが、彼らの健康や自尊心に悪影響を与えている可能性がある」と話している。

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自己免疫性皮膚疾患は心臓病のリスク増加につながる

 一部の皮膚疾患患者は心臓病の早期スクリーニングを受ける必要があるかもしれない。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター皮膚科のHenry Chen氏らの最新の研究によると、免疫システムが自己を攻撃する自己免疫性皮膚疾患患者では動脈硬化を発症するリスクが対象群と比べて72%増加することが、明らかになった。同氏らによる研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月4日掲載された。 全身性エリテマトーデス(SLE)は全身に炎症を引き起こし、皮膚、関節、臓器に損傷を与える疾患である。米疾病対策センター(CDC)の報告によれば、米国にはSLE患者が約20万4,000人存在し、そのうちの少なくとも80%が皮膚症状を発症している。一方、皮膚のみに症状が現れることもあり、この病態は皮膚エリテマトーデス(CLE)と診断される。これまでに、SLEや乾癬のような自己免疫疾患の患者では、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが高まることが報告されている。しかし、CLE患者では、メタボリックシンドロームやがんのリスクが高まることは報告されてはいるものの、ASCVDのリスクについてはこれまで検証されてこなかった。 この研究では、IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseの2018年から2020年までの保険請求データが後ろ向きに解析された。具体的には、CLE患者群8,138人、SLE患者群2万4,675人、乾癬患者群19万2,577人を無病対照群8万1,380人と比較し、ASCVDの有病率および発症リスクを検証した。無病対照群はSLE、CLE、乾癬を発症していない人と定義し、年齢、性別、保険の種類などをCLE患者群とマッチングさせた。ASCVDは冠動脈疾患、心筋梗塞または脳血管障害の既往と定義。ASCVDの有病率と発症リスクの比較には、多変量ロジスティック回帰分析とCox比例ハザードモデルが用いられた。 多変量ロジスティック回帰分析によるASCVDの有病率は、無病対照群と比較してCLE患者群で72%(オッズ比1.72、95%信頼区間1.45~2.02)、SLE患者群で141%(同2.41、2.14~2.70)有意に高くなっていた(いずれもP<0.001)。 Cox比例ハザードモデルによるASCVDの発症リスクは、無病対照群と比較してSLE患者群(ハザード比2.23、95%信頼区間2.05~2.43)、CLE患者群(同1.32、1.13~1.55)で、有意な増加が認められた(いずれもP<0.001)。一方、乾癬患者群(同1.06、0.99~1.13)では統計学的有意性は認められなかった。 これらの結果を受けて研究グループは、「SLEやCLEはASCVDのリスク増加と関連しており、これらの患者の担当医には、適切なスクリーニング検査の実施と専門医への紹介が求められる可能性がある。また担当医は、心臓によい生活習慣(健康的な食事、適度な運動、喫煙の見直しなど)の重要性について患者にアドバイスを行う必要があるのではないか」と述べている。また、「これらの患者には、血圧とコレステロールの定期的なモニタリング、迅速な治療が必要になるかもしれない。喫煙を始めとしたASCVDのリスク因子についても今後の検証が必要である」と付言している。

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腰痛の軽減方法、最も効果的なのは生活習慣の是正かも

 腰痛を改善するには、従来の治療法を試すよりも不健康な生活習慣を見直す方が大きな改善効果を見込める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。腰痛持ちの患者のうち、生活習慣指導を受けた患者は標準的なケアを受けた患者に比べて、腰痛により日常生活が障害される程度が軽減し、生活の質(QOL)が向上したという。シドニー大学(オーストラリア)のChristopher Williams氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に1月10日掲載された。 Williams氏は、「腰痛を治すには、腰以外の部分にも焦点を当てる必要がある。われわれの体は機械ではなく、複雑な生態系(エコシステム)のようなもので、多くの要因が相互に影響し合うことで、どのように機能し感じるかが決まる。腰痛もそれと同じだ」と話す。 この研究では、活動制限を伴う慢性腰痛を持ち、1つ以上の生活習慣リスク(過体重、不適切な食生活、身体活動不足、喫煙)を有する346人(平均年齢50.2歳、女性55%)を対象に、研究グループが考案した健康的な生活習慣プログラム(Healthy Lifestyle Program;HeLP)の腰痛軽減効果が、ガイドラインに則った標準的なケアとの比較で検討された。HeLPは、ガイドラインに基づくケアに加え、健康的な生活習慣についての教育(冊子やウェブポータルへのアクセス)やサポート(理学療法士や栄養士とのセッション、電話での健康指導)などを提供する包括的なプログラムである。 試験参加者は、HeLPを受ける群(介入群、174人)と、ガイドラインに基づく理学療法ケアを受ける群(対照群、172人)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、介入開始から26週間後の腰痛による生活機能障害の程度とし、Roland-Morris Disability Questionnaire(RMDQ)を用いて評価した。RMDQスコアは0〜24点で算出され、高スコアほど障害が大きいことを意味する。また、副次評価項目は、体重、痛みの強度、QOL、喫煙状況とした。 ベースライン時のRMDQスコアは、介入群で14.7点、対照群で14.0点であった。しかし26週間後の評価では、介入群のスコアが対照群に比べて有意に改善し、両群のスコアの平均差は−1.3点(95%信頼区間〔CI〕−2.5〜−0.2、P=0.03)であった。HeLPの効果は、プログラムを忠実に守った参加者においてより顕著に現れた。また、介入群では対照群に比べて、体重減少が大きく(平均差−1.6kg、95%CI −3.2~−0.0、P=0.049)、QOL(SF Health Surveyの下位尺度である身体機能の評価スコア)の改善がより大きかった(同1.8点、0.1~3.4、P=0.04)。 こうした結果を受けてWilliams氏は、「腰痛がなかなか治らない人は、脊椎に何が起こっているかのみに焦点を当てるのではなく、さまざまな健康要因を考慮した総合的なケアを受けるべきだ」と述べ、「われわれはこのメッセージを積極的に広めるべきだ」と付言している。 研究グループは、この研究が腰痛に関する将来の診療ガイドラインに影響を与えることを期待していると述べている。また、Williams氏は、「腰痛を治療する臨床医は、患者の日常生活に対するサポートを日々の診療の中にどのように取り入れるかを考えるべきだ。その方法に『正しい』や『間違っている』はないが、最も大切にすべきことは、患者が、『自分の意見が尊重されている』、『意思決定に参加している』と感じることだ」と話している。

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よく笑う人にはオーラルフレイルが少ない

 笑う頻度が高い人にはオーラルフレイルが少ないことが明らかになった。福島県立医科大学医学部疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月5日掲載された。 近年、笑うことが心身の健康に良いことを示唆するエビデンスが徐々に増えていて、例えば笑う頻度の高い人は心疾患や生活習慣病が少ないことが報告されている。一方、オーラルフレイルは、心身のストレス耐性が低下した要介護予備群である「フレイル」のうち、特に口腔機能が低下した状態を指す。オーラルフレイルでは食べ物の咀嚼や嚥下が困難になることなどによって、身体的フレイルのリスク上昇を含む全身の健康に負の影響が生じる。舟久保氏らは、このオーラルフレイル(以下、OFと省略)にも笑う頻度が関連している可能性を想定し、福島県楢葉町の住民を対象とする横断研究を行った。 2020~2021年の住民健診に参加した年齢60~79歳の1,717人のうち、研究参加への同意を得られ、データ欠落のない916人(平均年齢68.4±5.0歳、男性46.2%)を解析対象とした。両年度とも参加していた人については2020年度のデータを使用した。OFの評価には、「硬い食べ物を食べるのが困難か?」など8項目の質問から成る精度検証済みの質問票(Oral Frailty Index-8;OFI-8)を使用。そのスコアに基づき、OFなしが40.3%、プレオーラルフレイル(OFの予備群〔POF〕)が18.2%、OFが41.5%と判定された。笑いの頻度については、「声を出して笑う頻度は?」という質問で評価。ほぼ毎日が40.8%、週に1~5回が43.3%、月に1~3回が11.1%、ほとんどないが4.9%だった。 笑う頻度が「週1回未満」の群を基準として、年齢と性別の影響を調整した解析(モデル1)の結果、笑う頻度がほぼ毎日の群にはOFが有意に少なく(オッズ比〔OR〕0.38〔95%信頼区間0.26~0.57〕)、頻度が週に1~5回の群もOFが少なかった(OR0.51〔同0.35~0.76〕)。調整因子に、喫煙・飲酒・運動習慣、身体的フレイル、高血圧・糖尿病の既往を追加した解析(モデル2)では、笑う頻度が週に1~5回の群についてはOFとの関連の有意性が消失したが(OR0.66〔0.43~1.02〕)、頻度がほぼ毎日の群では引き続きOFが有意に少ないという関連が認められた(OR0.54〔0.34~0.86〕)。 モデル2において、笑う頻度以外に、抑うつ症状がないこともOFに対する負の有意な関連因子だった(「抑うつ症状あり」を基準とするOR0.39〔0.25~0.61〕)。その一方、高齢(1歳高齢であるごとにOR1.08〔1.05~1.11〕)、女性(OR1.74〔1.14~2.65〕)、喫煙(現喫煙がOR2.63〔1.57~4.40〕、過去喫煙がOR1.75〔1.15~2.66〕)、飲酒(毎日がOR1.70〔1.15~2.51〕、機会飲酒は非有意)は、正の有意な関連因子として特定された。運動習慣や地域活動への参加は、モデル1では有意な負の関連が認められたが、モデル2では非有意となった。 著者らは、本研究が新型コロナウイルスパンデミック中に実施されたことが結果に影響を及ぼしている可能性を否定できないといった限界点を挙げた上で、「交絡因子を調整後、毎日笑うことと抑うつ症状がないことが、OFの少なさと関連していた。公衆衛生戦略として、社会的なコミュニケーションを拡大して人々が声を出して笑える頻度を増やし、抑うつのリスクを抑制することが、フレイル予防・改善を通じて健康寿命を延伸する可能性があるのではないか」と述べている。

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コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。 著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19はインフルエンザと比較して、男性に多く(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.23~1.74)、肥満度が高い人に多かった(平均差[MD]:1.43、95%CI:1.09~1.77)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、現在喫煙者の割合が低かった(OR:0.25、95%CI:0.18~0.33)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、入院期間(MD:3.20、95%CI:2.58~3.82)およびICU入院(MD:3.10、95%CI:1.44~4.76)が長く、人工呼吸を必要とする頻度が高く(OR:2.30、95%CI:1.77~3.00)、死亡率が高かった(OR:2.22、95%CI:1.93~2.55)。・インフルエンザ患者はCOVID-19患者より、上気道症状がより顕著で、併存疾患の割合が高かった。

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加齢黄斑変性は関節リウマチの発症リスクを高める

 加齢黄斑変性(AMD)患者は関節リウマチ(RA)の発症リスクが高いとする、成均館大学校(韓国)のJe Moon Yoon氏らの研究結果が「Scientific Reports」に9月9日掲載された。 AMDは、加齢、遺伝、喫煙、食生活などのほかに、慢性炎症がリスク因子の一つと考えられている。また近年の研究では、AMDとパーキンソン病やアルツハイマー病リスクとの間に関連があり、慢性炎症や酸化ストレスがその関連の潜在的なメカニズムと想定されている。一方、RAは滑膜の炎症を特徴とする全身性疾患であることから、RAもAMDのリスクと関連している可能性がある。以上を背景としてYoon氏らは、韓国の国民健康保険データを用いて、AMDとRAリスクとの関連を検討した。 2009年に健診を受け、RAと診断されていない50歳超の成人353万7,293人を2019年まで追跡し、多変量補正Cox回帰モデルを用いた解析を行った。RAの発症は、保険請求の診断コードと薬剤の処方で定義した。ベースライン時において、4万1,412人(1.17%)がAMDに罹患しており、このうちの3,014人(7.28%)は視覚障害を有していた。 平均9.9年の追跡期間中に4万3,772人(1.24%)がRAを発症していた。AMD群では4万1,412人中567人がRAを発症し、1,000人年当たりの罹患率は1.43であり、対照群は349万5,881人中4万3,205人がRAを発症し、罹患率は1.25であった。交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病、高血圧、脂質異常症、チャールソン併存疾患指数、収入など)を調整後、AMD群は対照群に比しRA発症リスクが有意に高いことが明らかになった(調整ハザード比〔aHR〕1.11〔95%信頼区間1.02~1.21〕)。 次に、AMD患者をベースライン時の視覚障害の有無で二分して検討。視覚障害を有していなかった群は、3万8,398人中535人がRAを発症し罹患率は1.46であり、前記の交絡因子を調整後に有意なリスク上昇が認められた(aHR1.13〔同1.03~1.21〕)。一方、ベースライン時に視覚障害を有していた群は、3,014人中32人がRAを発症し罹患率は1.14であって、aHR0.90(0.64~1.27)と、有意なリスク上昇は観察されなかった。 なお、年齢や性別、併存疾患の有無で層別化したサブグループ解析では、AMDとRA発症リスクとの関連に有意な交互作用のある因子は特定されなかった。 著者らは、「AMDはRA発症リスクの高さと関連していた。この関連のメカニズムの理解のため、さらなる研究が必要とされる」と総括している。また、視覚障害を有するAMD患者では有意なリスク上昇が認められなかった点について、「視覚障害がある場合にRAが過小診断されている可能性も考えられる」との考察を付け加えている。

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ストロングスタチンの対象患者【日常診療アップグレード】第22回

ストロングスタチンの対象患者問題52歳男性。高血圧のため通院中である。症状はない。他に特記すべき既往歴や家族歴はない。内服薬はロサルタンを服用している。喫煙なし。バイタルサインは正常で血圧は130/78mmHgである。それ以外の身体所見に異常を認めない。最近の検診結果はHDLコレステロール87mg/dL、LDLコレステロール122mg/dLであった。耐糖能の異常はない。男性と高血圧、2つのリスク因子があるので、ストロングスタチンでの治療を始めることとした。

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自分の飲酒量は仲間次第で変わる?

 飲酒量は仲間次第で変化するという研究結果が報告された。お酒をたくさん飲む人が身近にいる場合は自分が飲む量も多くなり、飲まない人がそばにいる場合は少なくなるという。 この研究は、アムステルダム大学(オランダ)のMaarten van den Ende氏らによるもので、結果の詳細は「Alcohol: Clinical and Experimental Research」に1月1日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「われわれの研究結果は、年齢にかかわりなく、周囲の人のつながりが個人の飲酒行動の形成に、極めて重要な役割を果たしていることを浮き彫りにしている」と話している。 個人の飲酒行動は社会的な環境と相互に複雑な作用を及ぼしていると考えられているが、この関連の詳細はこれまでのところ明らかにされていない。この研究では、第二次世界大戦後にスタートし現在も継続中の疫学調査である「フラミンガム研究」のデータが用いられた。フラミンガム研究で把握されている、飲酒や喫煙習慣、職業上の威信、家族や友人などとのつながり(社会的な環境)の情報が解析に使われた。 グラフィカル自己回帰(GVAR)パネルネットワークモデリングという統計学的手法により、自己申告に基づく飲酒・喫煙習慣、職業上の威信(Treimanスコア)、および、周囲の人とのつながりと飲酒行動の関連を解析。その結果、年齢にかかわらず、個人の飲酒行動は周囲の人の飲酒行動の影響を受ける傾向のあることが示された。また、個人とその周囲の人との間に「フィードバックループ」と呼ばれる関係が存在することも明らかになった。これを著者らは、「個人の飲酒行動は、周囲の社会的環境から影響を受け、かつ、周囲の社会的環境の形成に貢献している」と表現している。 このほかにも、飲み仲間が増えた人は、時間の経過とともに飲酒量が増えていく傾向が認められ、反対に飲酒をしない仲間が増えた人は、時間の経過とともに飲酒量が減る傾向が認められた。さらに、喫煙者の場合、通常よりも飲酒量が多い時には喫煙本数が増加する傾向があり、その逆の関連も認められた。 一方、本研究では、長期的に見た場合、職業上の威信や喫煙習慣と飲酒量との間には明確な関連性が見られなかった。結論として著者らは、「飲酒行動の変化に影響を及ぼす因子としては、喫煙習慣や社会経済的ステータスよりも、周囲の人とのつながりという社会的な環境の方がより強い影響力を持つ因子であることが示唆された」と総括している。

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