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1.

コーヒーが早食いによるメタボリックシンドロームを予防?

 早食いは肥満につながるとされ、健康のためにゆっくり食べることが推奨される。そんな中、新たに日本人を対象として行われた研究によると、1日1杯のコーヒーを飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームを予防できる可能性があるという。これは京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らによる研究結果であり、「Healthcare」に3月7日掲載された。 メタボリックシンドロームは死亡やさまざまな疾患のリスクを上昇させる。食事のスピードとメタボリックシンドロームの関連が報告されているが、一度身に付いた習慣を変えるのは簡単なことではない。著者らは今回、カフェインやポリフェノール(クロロゲン酸)を含み、さまざまな健康効果が報告されているコーヒーに着目して、コーヒー摂取量、食事のスピード、メタボリックシンドロームの関連について調べた。 この研究は、「日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)」の京都における追跡調査(2013~2017年)に参加した3,881人(平均年齢57.5±9.9歳、女性2,498人、男性1,383人)を対象に行われた。「ろ過またはインスタントのコーヒー」と「缶、ペットボトル、パック入りのコーヒー」に分けて、コーヒー摂取量、食事のスピード(遅食い、普通、早食い)のほか、生活習慣や既往歴などが質問票により調査された。 対象者のうち、15.3%(595人)がメタボリックシンドロームに該当した。また、早食いに該当した人は女性の33.8%(845人)、男性の39.8%(550人)だった。 年齢や性別、運動・喫煙・飲酒、既往歴による影響を調整して、まずはコーヒー摂取量とメタボリックシンドロームとの関連が検討された。その結果、ろ過またはインスタントのコーヒーでは、摂取量が1日1杯以上の人は1日1杯未満の人と比較して、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低く(オッズ比0.695、95%信頼区間0.570~0.847)、男女別に見ても同様だった。一方、缶・ペットボトル・パック入りのコーヒーでは、女性に関して反対の結果が得られ、1日1杯以上の女性はメタボリックシンドロームのオッズが有意に高かった(同2.056、1.110~3.811)。食事のスピードとの関連については、早食いの人は遅食いの人と比べてメタボリックシンドロームのオッズが有意に高く(同1.689、1.227~2.324)、男女とも同様の結果だった。 次に、ろ過またはインスタントのコーヒー摂取量と食事のスピードを組み合わせて、メタボリックシンドロームとの関連が分析された。コーヒー摂取量が1日1杯未満で早食いの人と比べた結果、1日1杯未満で遅食いの人ではメタボリックシンドロームのオッズが有意に低かった(同0.502、0.296~0.851)。一方、コーヒーを1日1杯以上飲む人では、遅食い(同0.448、0.289~0.693)、普通(同0.482、0.353~0.658)、早食い(同0.684、0.499~0.936)のいずれの場合でも、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低いことが明らかとなった。 今回の研究について著者らは、コーヒーの詳細(カフェインレスかどうか、砂糖やミルクの有無など)や、飲むタイミングなどは評価していないことを説明。その上で、結論として「ろ過またはインスタントのコーヒーを1日1杯以上飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームの予防に役立つ可能性が示唆された」と述べている。

2.

妊娠は女性の老化を早める?

 妊娠は女性の体を明らかに変化させるだけでなく、老化を早める可能性もあることが、新たな研究で示唆された。妊娠経験のある女性は、妊娠経験のない女性よりも生物学的な年齢が高いことが遺伝子分析によって明らかになった。このような生物学的年齢の加速は、妊娠回数が多い女性ほど進んでいたという。米コロンビア大学エイジング・センターのCalen Ryan氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に4月8日掲載された。 Ryan氏は、「われわれの研究結果は、妊娠が生物学的老化を早めること、また、その影響は若くて多産な女性において顕著であることを示唆している」と同大学のニュースリリースの中で述べている。同氏はまた、「この研究は、同じ女性を長期にわたって追跡し、それぞれの女性の妊娠回数の変化を生物学的年齢の変化に結び付けた初めてのものである」とも語っている。 先行研究では、女性の妊孕性の高さは高齢期の健康と長寿に悪影響を及ぼし得ることが報告されている。しかし、妊娠が加齢による衰えが現れ始める前の段階の健康に影響を及ぼすのかについては明らかになっていない。そこでRyan氏らは今回、Cebu Longitudinal Health and Nutrition Survey(セブ縦断的健康栄養調査)参加者1,735人(20〜22歳、女性825人、男性910人)の試験開始時(2005年)と追跡時(2009〜2014年)の調査データを用いて、妊娠回数と生物学的年齢の関連を検討した。生物学的年齢は、参加者から採取された血液サンプルを用いて調べたDNAメチル化の情報を基に、Horvathクロックなどの6種類のエピジェネティック時計を用いて推定した。 社会的・経済的地位、喫煙、遺伝などの老化を加速させる要因を考慮して解析した結果、いずれのエピジェネティック時計を用いた場合でも、1回以上の妊娠歴がある女性では、妊娠歴がない女性に比べて生物学的年齢の高いことが明らかになった。また、妊娠回数の多い女性の生物学的年齢の方が、妊娠歴がないか妊娠回数の少ない女性よりも高いことも示された。一方、男性では、パートナーの妊娠回数による生物学的年齢の加速は認められなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、「この結果は、妊娠や授乳に特有の何かが生物学的な老化を加速させる可能性のあることを示唆している」との見方を示している。Ryan氏は、若年齢での妊娠は、発育途上にある女性の体に大きな負担をかけると指摘する。同氏は、「試験開始時に報告された妊娠の多くは、女性がまだ成長途上にある思春期後期に起こったものだった。その年代での妊娠は、成長期の母親にとって大きな負担になることが予想される。とりわけ、医療や資源、その他の支援へのアクセスが限られている場合には、その傾向が顕著だ」と話す。 Ryan氏は、「今後の研究では、なぜ妊娠が老化を加速させるのか、そしてそれが高齢期の女性の健康に影響を与えるのかについて、より詳しく調べる必要がある」と話している。

3.

アクティブなワークステーションが仕事のパフォーマンスを改善

 トレッドミルやステッパー、スタンディングデスクを取り入れたアクティブなワークステーション(仕事場)は、仕事のパフォーマンスを低下させることなく従業員の座位時間を減らし、認知能力を向上させる成功戦略である可能性が、新たな研究で示唆された。論文の上席著者である米メイヨー・クリニックの予防循環器医であるFrancisco Lopez-Jimenez氏は、「われわれの研究結果は、長時間のデスクワークで行ってきたオフィスでの仕事に動きを取り入れることは可能であることを示唆している。アクティブなワークステーションは、仕事中に体を動かすだけで従業員の認知能力や健康全般を改善させ得る新たな方法となる可能性がある」と話している。この研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に4月4日掲載された。 この研究では、ボランティアの研究参加者44人(平均年齢35±11歳、女性63.6%)を対象に、4日間連続で4つの異なるワークステーションで構成されたオフィス環境で仕事をしてもらい、そのパフォーマンスの評価を行った。試験参加者は、初日は一般的なデスクで座って仕事を行い、その後の3日間は、スタンディングデスクで立ったまま仕事をする、トレッドミルで歩きながら仕事をする、ステッパーを使いながら仕事をする、のいずれかを、1日ずつランダムな順序で行った。仕事のパフォーマンスは、11種類の認知機能評価バッテリーを用いた神経認知機能(推論、短期記憶、集中力)と微細運動能力(タイピングの速度とその精度)の観点から評価を行った。 その結果、座ったままで仕事をした場合と比べて、立ったまま、あるいはトレッドミルやステッパーを使いながら仕事をした場合では、神経認知機能が改善するか変化しないかのいずれかであることが明らかになった。特に、推論を評価する尺度の一つであるDouble Trouble Testのスコアは、2日目から4日目にかけて改善し続けていた。また、立ったまま、あるいはトレッドミルやステッパーを使いながら仕事をした場合には、タイピングのスピードは多少落ちていたが、タイピングの正確さには影響がないことも示された。 Lopez-Jimenez氏は、「心血管の健康という観点から言えば、座りっぱなしで過ごすことは、新たな喫煙ともいえるリスク因子だ。しかし、オフィスワーカーの中には8時間労働の大部分をコンピューターのスクリーンとキーボードの前に座って過ごす人がいる」とメイヨー・クリニックのニュースリリースの中で語っている。 その上でLopez-Jimenez氏は、「これらの知見は、生産性と頭脳的なシャープさを維持しながら仕事を行うための方法が他にもたくさんあることを示唆するものだ。肥満、心血管疾患、糖尿病などの予防と治療のための処方箋に、アクティブなワークステーションの追加を検討する価値は十分にあるだろう」との見方を示している。

4.

世界中でがんによる死亡者数は増加傾向

 世界的な高齢化が拍車をかけ、がんの患者数は増加の一途をたどり、2050年までに3500万人に達するだろうとの予測が、米国がん協会(ACS)が「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に4月4日発表した「Global Cancer Statistics 2022」の中で示された。この報告書によると、2022年には世界で推定2000万人が新たにがんの診断を受け、970万人ががんにより死亡したという。報告書の共著者である、ACSがんサーベイランス上級主任科学者であるHyuna Sung氏は、「2050年までに予測されるこのがん患者数の増加は、現在の罹患率が変わらないと仮定した場合、人口の高齢化と増加のみに起因するものだ」と説明している。 Sung氏は、「不健康なライフスタイルの選択もまた、新たながん患者の発生に関与し続けるだろう。注目すべきは、不健康な食事、運動不足、多量のアルコール摂取、喫煙などのがんの主要なリスク因子を有する人が世界中で増加していることだ。大規模な介入を施さない限り、将来のがんによる負担を増大させる可能性が高い」とACSのニュースリリースの中で述べている。 2022年において世界中で最も診断数が多かったがんは肺がんの約250万人(全がん症例の12.4%)であり、次いで、女性での乳がん(11.6%)、大腸がん(9.6%)、前立腺がん(7.3%)、胃がん(4.9%)の順だった。肺がんは、がんによる死亡の原因としても最も多く、2022年には180万人(がんによる死亡者の18.7%)が肺がんにより死亡していた。肺がんの次には、大腸がん(9.3%)、肝臓がん(7.8%)、女性での乳がん(6.9%)、胃がん(6.8%)による死亡者が多かった。新規罹患者数と死亡者数が最も多かったがんは、男性では肺がん、女性では乳がんだった。 女性では、2022年には毎日約1,800人が子宮頸がんに罹患し、約1,000人が同がんにより死亡していた。研究グループは、子宮頸がんは予防可能ながんであり、事実上、全ての子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)によって引き起こされているにもかかわらず、世界でのHPVワクチンの接種率はわずか15%だと指摘している。接種率には中央・南アジアでの1%からオーストラリア・ニュージーランドでの86%までの幅がある。同様に、世界での子宮頸がんの検診受診率も36%と低い。子宮頸がんは、サハラ以南のアフリカとラテンアメリカの37カ国の女性のがんによる死因の第1位であり、エスワティニ、ザンビア、マラウイ、ジンバブエ、タンザニアでの罹患率(10万人当たり65〜96人)は米国の罹患率(10万人当たり6人)の10倍から16倍であるという。 さらに報告書では、低所得国においては早期発見・早期治療サービスが不十分なため、がんの罹患者数が少ないにもかかわらず、がんによる死亡率は高いことが指摘されている。例えば、エチオピアでは、乳がんの罹患率は米国と比べて60%も低い(10万人当たり40人対60人)一方で、乳がんによる死亡率は米国の2倍(10万人当たり24人対12人)である。 報告書の上席著者で、ACSのサーベイランスと健康の公平性に関する科学分野でバイスプレジデントを務めるAhmedin Jemal氏は、「世界のがんによる死亡の半分以上は予防可能だ。がん予防は最も費用対効果が高く、持続可能ながん対策である。例えば、禁煙だけで、がんによる死亡者の4人に1人、つまり年間約260万人の死亡を防ぐことができる」と話している。 一方、ACSの最高経営責任者(CEO)であるKaren Knudsen氏は、「世界のがん負担を理解することは、全ての人ががんを予防し、がんが発見され、がん治療を受け、生存する機会を確保するために極めて重要である」と述べている。

5.

緑内障は「幸福と感じていない」ことと関連、特に男性で顕著

 国内7県の地域住民を対象とした研究で、自己申告による緑内障の既往歴がある人は、主観的に「幸福と感じていない」割合が高いという結果が示された。この緑内障で幸福と感じていない割合が高い傾向は、特に40~59歳の男性で顕著だったという。これは慶應義塾大学医学部眼科学教室と国立がん研究センターなどとの共同研究による結果であり、「BMJ Open Ophthalmology」に2月19日掲載された。 これまでの研究で、ドライアイや老眼と幸福度の低さとの関連が報告されている。緑内障は、眼圧(目の硬さ)が高い状態が続くことなどにより視神経が障害され、徐々に視野の障害が広がる病気だ。緑内障患者は、テレビの視聴や読書などの楽しみが減少し、転倒リスクが高まるなど、日常生活に悪影響を及ぼし、視覚関連QOLが大きく損なわれる可能性がある。 そこで著者らは、2011~2016年に開始された次世代多目的コホート研究「JPHC-NEXT」のデータを用いて、自己申告による緑内障の既往歴と幸福度との関連を解析した。対象は、国内7県(岩手、秋田、長野、茨城、高知、愛媛、長崎)の計16市町村の地域住民(40〜74歳)のうち、がん、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、糖尿病、うつ病の既往歴のある人などを除外した、計9万2,397人。質問紙により緑内障の既往歴(医師の診断)を調べた。全体的に幸せな状態かどうかの質問に関する4つの選択肢(幸せでない、どちらとも言えない、幸せ、大変幸せ)のうち、「幸せでない」または「どちらとも言えない」と回答した人を「幸福と感じていない」とした。 その結果、緑内障の既往歴のある人は1,733人(1.9%)であり、男性が635人(1.6%)、女性が1,098人(2.1%)だった。緑内障の既往歴がある人は、緑内障の既往歴がない人と比べて年齢が有意に高かった(平均63.0±8.3対57.5±9.6歳)。 年齢のほか、地域、教育レベル、世帯収入、喫煙、飲酒量、身体活動の差を調整した上で、男性における「幸福と感じていない」のオッズを解析した結果、緑内障の既往歴がある人の方が、緑内障の既往歴がない人よりも有意に高かった(オッズ比1.26、95%信頼区間1.05~1.51)。女性でも、「幸福と感じていない」割合と緑内障の既往歴が関連する傾向にあったが、関連は有意ではなかった(同1.05、0.90~1.23)。 さらに、年齢層を分けて解析すると、「幸福と感じていない」割合と緑内障の既往歴との関連が最も強かったのは40〜59歳の男性であることが明らかとなった(同1.40、1.04~1.88)。一方、60〜74歳の男性(同1.20、0.96~1.51)、40〜59歳の女性(同1.21、0.92~1.59)、60〜74歳の女性(同0.99、0.83~1.20)では、有意な関連は認められなかった。 以上から著者らは、「特に男性において、緑内障の既往歴は幸福と感じていない割合と関連する」と結論。性別や年齢層で差があったことの背景として、社会的に求められる役割や雇用状況、視野の障害による仕事への支障などの可能性を挙げている。また、緑内障は日本の中途失明の原因として最も多い病気だが、「診断と治療を早い段階で行えば、進行速度を遅らせ、機能障害を最小限に抑えることができる」と述べている。

6.

習慣的な運動が不眠症症状を抑制

 習慣的な運動と睡眠の関係を10年間にわたって追跡した結果が報告された。運動習慣のある人は入眠困難などの不眠症の症状が少なく、睡眠時間も適切であることが多いという。レイキャビク大学(アイスランド)のErla Bjornsdottir氏、Elin Helga Thorarinsdottir氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に3月26日掲載された。研究者らは、「われわれの研究結果は、最適な睡眠時間を確保し、不眠症の症状を軽減するには、習慣的な運動が重要であることを強く示している」と語っている。 この研究は、欧州9カ国、21医療機関で行われた欧州共同体呼吸器健康調査(ECRHS)参加者のうち、2011~2013年の第3回追跡調査のデータのある39~67歳の成人4,339人(男性48.1%)が解析対象とされた。ベースライン時および10年間の追跡の調査で明らかになった運動習慣に基づき、全体を後述の4群に分類して、不眠症の症状や睡眠時間、日中の眠気との関連を検討した。運動習慣は、週に2日以上、計1時間以上の運動をしていると回答した場合に「活動的」と定義。その上で、10年間常に活動的だった群(24.9%)、途中から非活動的になった群(20.3%)、途中から活動的になった群(17.9%)、常に非活動的だった群(36.9%)の4群に分類した。 年齢、性別、BMI、喫煙習慣などを調整後に、10年間常に非活動的だった群を基準として比較すると、常に活動的だった群は不眠症の症状が少なく、睡眠時間が適切な人が多いことが明らかになった。 例えば不眠症の症状については、入眠困難がオッズ比(OR)0.58(95%信頼区間0.42~0.77)、中途覚醒がOR0.80(同0.66~0.97)だった。早朝覚醒〔OR0.80(0.63~1.03)〕、および日中の眠気〔OR0.87(0.69~1.10)〕については有意差がなかった。一方、10年間の途中から非活動的になった群、または途中から活動的になった群は、常に非活動的だった群と、不眠症の症状および日中の眠気ともに有意差がなかった。 睡眠時間については、短時間睡眠(6時間以下)、通常の睡眠時間(6~9時間)、長時間睡眠(9時間以上)の3群に分けて検討すると、10年間常に活動的だった群は通常の睡眠時間であることが有意に多く〔OR1.55(1.29~1.87)〕、短時間睡眠〔OR0.71(0.58~0.85)〕や長時間睡眠〔OR0.48(0.28~0.80)〕は有意に少なかった。 運動習慣のほかには、BMI高値は入眠困難や中途覚醒と正の関連が認められ、喫煙習慣は日中の眠気と正の関連、入眠困難とは負の関連が認められた。 研究者らは、「われわれの研究結果は、習慣的な運動と良質な睡眠との関連を報告したこれまでの研究の結果と一致している。生活に運動を取り入れている人は、適度な疲労のため夜間に質の良い睡眠を得られるだけでなく、健康的なライフスタイルを実践していることが多いようだ」と述べている。

7.

妊娠中のナッツ摂取が子どもの「仲間関係の問題」を予防?

 約1,200組の母子を対象としたコホート研究の結果から、妊娠中にナッツを摂取すると、生まれた子どもの「仲間関係の問題」を予防できる可能性が示唆された。これは愛媛大学大学院医学系研究科疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博氏らによる研究結果であり、「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に3月7日掲載された。 著者らの研究グループはこれまでに、妊娠中のさまざまな栄養素の摂取が、生まれた子どもの感情・行動の問題と関連することを報告している。食品に着目すると、栄養密度が高いことで知られるナッツは、不飽和脂肪酸、タンパク質、食物繊維、ビタミンやミネラルといった栄養素を豊富に含んでいる。そこで今回の研究では、妊娠中のナッツの摂取と5歳児の行動的問題との関連を調べた。 研究対象は「九州・沖縄母子保健研究」の参加者で、2007年4月~2008年3月に妊娠し(年齢中央値32.0歳)、生まれた子どもが5歳の時の追跡調査に参加した母子1,199組。妊婦の栄養データは、妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて入手した。子どもの行動的問題は、5歳時の調査で、母親に「子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire;SDQ)」に回答してもらい、評価した。 その結果、1,199人の子ども(生後59~71カ月)のうち、SDQの下位尺度である「情緒の問題」は12.9%、「行為の問題」は19.4%、「多動の問題」は13.1%、「仲間関係の問題」は8.6%、「向社会的な行動の低さ」は29.2%に認められた。また、ナッツを摂取していた妊婦は618人、摂取量の中央値は0.8g/日(四分位範囲0.4~1.3g/日)であり、ナッツの種類としてはピーナッツの割合が36.2%、他のナッツが27.3%、ピーナッツと他のナッツの両方が36.4%だった。 次に、対象者の背景の差(妊娠年齢、妊娠週数、居住地、子どもの数、両親の教育歴、世帯収入、妊娠中の食事内容・抑うつ症状・飲酒量・喫煙、子どもの出生体重・性別、生後1年間の受動喫煙、母乳摂取期間)を調整し、妊娠中のナッツの摂取と子どもの行動的問題の関連を解析した。その結果、妊娠中のナッツの摂取は子どもの「仲間関係の問題」のリスク低下と有意に関連していることが明らかとなった(ナッツ非摂取と比較したオッズ比0.64、95%信頼区間0.42~0.97)。 この「仲間関係の問題」は、SDQのアンケート項目「一人でいるのが好きで、一人で遊ぶことが多い」「いじめの対象にされたりからかわれたりする」「他の子どもたちより、大人といる方がうまくいくようだ」など、5つの項目から評価されたもの。一方で、子どもの行動的問題のうち「情緒の問題」「行為の問題」「多動の問題」「向社会的な行動の低さ」に関しては、妊娠中のナッツ摂取との有意な関連は認められなかった。 以上から著者らは、「妊娠中の母親のナッツ摂取は、子どもの5歳時点における仲間関係の問題のリスク低下と関連している可能性がある」と結論付けている。また、この予防的関連の背景にあるメカニズムについては、さらなる研究が必要としている。

8.

PD-L1高発現NSCLCに対するネシツムマブ+ペムブロリズマブの可能性(K-TAIL-202)/AACR2024

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は進行非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療となっている。KEYNOTE-024試験でみられるように、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブはPD-L1発現≧50%の進行NSCLCにおいてPFS(無増悪生存期間)とOS(全生存期間)を有意に延長している1,2)。しかし、PD-L1陽性であってもICIが奏効しない症例は依然として存在する。 EGFRの発現はPD-L1のグリコシル化を介しPD-L1の発現を安定化させ、PD-1とPD-L1の結合を強化することが報告されており3)、抗EGFR抗体ネシツムマブと抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法は新しい治療コンセプトとして期待されている。K-TAIL-202試験はPD-L1高発現NSCLCの初回治療として、ネシツムマブとペムブロリズマブの併用を評価した第II相試験。昭和大学の堀池 篤氏が米国がん研究協会年次総会(AACR2024)で結果を発表した。・対象:未治療のPD-L1発現≧50%の進行NSCLC(EGFR、ALK変異なし)・介入:ネシツムマブ+ペムブロリズマブ 3週ごと2年間または35サイクル(n=50)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS、OSORR期待値の設定はKEYNOTE-024試験のORR44.8%1)を10ポイント上回る54.8%とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.2ヵ月であった。・患者の年齢中央値は72歳、男性が76%、現・過去喫煙者が88%、腺がんが60%であった。・ORRは76.0%で、病勢コントロール率は86.0%(CR2%、PR74%、SD10%)であった。・58%の患者が50%以上の標的病変縮小を示した。・PFS中央値は15.7ヵ月、OS中央値は未到達であった。・ネシツムマブによる試験治療下における有害事象(TEAE)発現は全Gradeで98%、Grade≧3は40%で、頻度の高いTEAEは、ざ瘡様皮疹、低マグネシウム血症などであった。・治療中止に至ったTEAEは26%、死亡に至ったTEAEは2%(1例)に発現した。・Grade3の間質性肺疾患が10%(5例)で発現したが、ステロイド治療により改善した。 今回のK-TAIL-202試験結果から、PD-L1高発現進行NSCLC初回治療におけるネシツムマブとペムブロリズマブ併用の可能性が示唆される。

9.

認知症の修正可能な3大リスク因子

 認知症のリスク因子の中で修正可能なものとしては、糖尿病、大気汚染、飲酒という三つの因子の影響が特に大きいとする研究結果が報告された。英オックスフォード大学のGwenaelle Douaud氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に3月27日掲載された。 Douaud氏らは脳画像データを用いて行った以前の研究で、アルツハイマー病やパーキンソン病、および加齢変化などに対して特に脆弱な神経ネットワークを特定している。このネットワークは、脳のほかの部分よりも遅れて思春期に発達し始め、高齢期になると変性が加速するという。今回の研究では、この脆弱な神経ネットワークの変性に関与している因子の特定を試みた。 研究には、英国で行われている一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者のうち、脳画像データやさまざまなライフスタイル関連データがそろっている3万9,676人(平均年齢64±7歳)のデータを利用。認知症リスクに影響を及ぼし得る161の因子と、脆弱な神経ネットワークの変性との関連を検討した。161の因子のうち、遺伝的因子などの修正不能のもの以外は、食事、飲酒、喫煙、身体活動、睡眠、教育、社交性、大気汚染、体重、血圧、糖尿病、コレステロール、聴覚、炎症、抑うつという15種類に分類した。 年齢と性別の影響を調整後の解析により、脆弱な神経ネットワークの変性への影響が強い修正可能な因子として、医師により診断されている糖尿病(r=-0.054、P=1.13E-24)、2005年時点の居住環境の二酸化窒素濃度(r=-0.049、P=5.39E-20)、アルコール摂取頻度(r=-0.045、P=3.81E-17)という三つの因子が特定された。また、遺伝的背景は多かれ少なかれ、脆弱な神経ネットワークの変性に影響を与えていることも分かった。 Douaud氏は、「われわれは既に特定の脳領域が加齢変化の初期に変性することをつかんでいたが、今回の研究により、その領域は糖尿病と交通関連の大気汚染、および飲酒に対しても脆弱であることが示された。また、その領域の変性は心血管死、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病のリスクにも関連があるようだ」と述べている。 論文共著者の1人である米テキサス大学リオグランデバレー校のAnderson Winkler氏は、「今回の研究は、脳の『弱点』とも言える脆弱な神経ネットワークに生じる変性のリスク因子について、その寄与の程度を定量的かつ網羅的に評価し得たことに意義がある」としている。

10.

短時間睡眠は糖尿病ハイリスク

 睡眠時間が6時間未満の人は、たとえ健康的な食習慣であったとしても、2型糖尿病の発症リスクが高いことを示すデータが報告された。ウプサラ大学(スウェーデン)のChristian Benedict氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に3月5日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「われわれの研究は、睡眠不足による2型糖尿病発症リスクの増大を健康的な食習慣によって抑制可能かという視点で行った、初めての研究だ」としている。 この研究には、英国の一般住民対象の大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。24万7,867人(平均年齢55.9±8.1歳、女性52.3%、BMI26.6±3.7、HbA1c5.4±2.5%)の睡眠時間および食習慣と2型糖尿病発症リスクとの関連を検討した。睡眠時間については7~8時間の群(全体の75.5%)、6時間の群(19.8%)、5時間の群(3.9%)、3~4時間の群(0.8%)という4群に分類。食習慣については、赤肉、加工肉、果物、野菜、魚の摂取量に基づき、0点(最も非健康的)から5点(最も健康的)の範囲にスコア化した。 中央値12.5年(四分位範囲11.8~13.2)の追跡期間中に、3.2%が2型糖尿病と診断されていた。2型糖尿病発症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、血圧、教育歴、社会経済的状況など)を調整後、睡眠時間が7~8時間の群に比べて、5時間〔ハザード比(HR)1.16(95%信頼区間1.05~1.28)〕や3~4時間〔HR1.41(同1.19~1.68)〕の群では2型糖尿病発症リスクが有意に高いことが確認された(6時間の群は非有意)。また、食事スコアが高い群は2型糖尿病発症リスクが低かった〔0点と比較し4点はHR0.82、5点はHR0.75(1~3点は非有意)〕。 次に、食習慣の影響を検討するために、食事スコアが0~3点の群(54.0%)と4~5点の群(46.0%)に二分した上で解析。すると、食事スコアの高低にかかわらず、短時間睡眠の人は2型糖尿病発症リスクが有意に高いことが明らかになった。具体的には、睡眠時間が5時間の場合、食事スコアが低く非健康的な食習慣の群ではHR1.16(1.02~1.31)、スコアが高く健康的な食習慣の群ではHR1.17(1.00~1.37)であり、睡眠時間が3~4時間の場合は同順にHR1.39(1.11~1.73)、HR1.46(1.10~1.93)だった。 この結果についてBenedict氏は、「本研究は因果関係を証明可能なデザインで行われておらず、睡眠時間が少ないことが糖尿病発症リスクを高めると断定することはできない。睡眠時間が短い人が糖尿病のことを心配してパニックになる必要はない」と述べている。同氏によると、最適な睡眠時間は人によって大きく異なり、かつ2型糖尿病発症リスクは遺伝的な背景の影響が少なくないとのことだ。その上で、「われわれの研究結果は、睡眠が健康に対して重要な役割を果たしている事実を、改めて示したものと理解すべきだ」と付け加えている。

11.

食事からのメラトニン摂取、肝がんのリスク低下と関連

 食事からのメラトニン摂取と肝がん罹患との関連を評価する研究が、3万人以上の日本人を対象に行われた。その結果、メラトニンの摂取量が多いほど肝がんのリスクが低下することが明らかとなった。岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学分野の和田恵子氏らによる研究結果であり、「Cancer Science」に2月14日掲載された。 メラトニンは、概日リズムを調整し、睡眠を促す内因性ホルモンである。主に脳の松果体で生成されるが、体内組織に広く分布し、抗酸化、抗炎症、免疫調節などにも関与している。メラトニンは肝臓でも合成・代謝され、細胞保護や発がん予防などの作用があることも示されている。 一方、メラトニンは体外からも摂取される。医療上の用途は主に睡眠の調節に限られるが、肝がんなどの他疾患への臨床応用も期待されている。また、食品中にも含まれることが知られており、含有量が比較的多い食品として、野菜、植物の種子、卵が挙げられる。医薬品やサプリメントと比べると、食品中のメラトニン含有量はかなり少ないが、メラトニンが豊富な食品の摂取により血中メラトニン濃度が上昇することが報告されている。著者らは過去の研究で食事からのメラトニン摂取量が多いほど死亡リスクが低下することを示したが、メラトニン摂取量とがん罹患の関連についてはこれまでに研究されていない。 そこで著者らは、岐阜県高山市の住民対象コホート研究「高山スタディ」のデータを用いて、食事からのメラトニン摂取量と肝がん罹患との関連を検討した。研究対象は、1992年9月時点で35歳以上だった人のうち、がんの既往歴がある人を除いた3万824人(男性1万4,240人、女性1万6,584人)。食事に関する情報を食物摂取頻度調査票(FFQ)から入手し、食品中のメラトニン含有量の測定には液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を用いた。 その結果、対象者のメラトニンの主な摂取源は、野菜(49%)、穀類(34%)、卵(5%)、コーヒー(4%)だった。エネルギー調整済みのメラトニン摂取量の三分位で3群に分けて比較したところ、メラトニン摂取量の多い群は、女性が多い、糖尿病の既往歴がある、睡眠時間が短い、喫煙歴がない、コーヒーを1日1杯以上飲むなどの傾向が見られた。メラトニン摂取量の少ない群はアルコール摂取量が多かった。 平均13.6年の追跡期間中、189人が肝がんを罹患し、その内訳はメラトニン摂取量の多い群が49人、中間の群が50人、少ない群が90人だった。COX比例ハザードモデルを用いて、患者背景の差(性別、年齢、BMI、教育年数、糖尿病歴、身体活動、喫煙状況、アルコール摂取量、総エネルギー摂取量、コーヒー摂取量、閉経の有無、睡眠時間)を調整して解析した結果、メラトニンの摂取量が少ない群と比べて、中間の群と多い群では、肝がんのリスクが有意に低下する傾向が認められた(ハザード比はそれぞれ0.64と0.65、傾向性P=0.023)。性別による交互作用は見られなかった(交互作用P=0.54)。一方、メラトニンの前駆体であるトリプトファンの摂取量は、肝がんのリスクとは関連していなかった。 以上の結果について著者らは、さらなる研究で確認される必要があるものの、結論として「食事からのメラトニンの摂取により、肝がんのリスクが低下する可能性が示唆された」と述べている。

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喫煙と乳がんリスク~日本の9研究のプール解析

 喫煙と乳がんリスクは生物学的には相関することが妥当であるにもかかわらず、疫学研究では一貫していない。今回、岐阜大学の和田 恵子氏らが9つの前向き研究のプール解析を実施した結果、現喫煙者は50歳になる前に乳がんを発症するリスクが高く、とくに30歳になる前から喫煙するとリスクが高いことが示唆された。副流煙による受動喫煙との関連はみられなかったという。International Journal of Epidemiology誌2024年6月号に掲載。 本研究は、国立がん研究センターがん対策研究所の「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」の1つで、1984~94年に開始し8~22年間追跡した9つの前向きコホート研究(計16万6,611人)のプール解析である。喫煙および副流煙に関する情報はベースライン時の自記式質問票から入手した。個々の研究において現在または過去の能動喫煙および受動喫煙の状況別の乳がんの相対リスクを、潜在的交絡因子の調整後にCox回帰を用いて算出し、ランダム効果メタ解析を用いてハザード比(HR)を要約した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点で閉経前だった6万441人中897人、閉経後だった10万6,170人中1,168人が追跡期間中に乳がんを発症した。・現喫煙者は喫煙未経験者より50歳になる前に乳がんを発症するリスクが高かった。・30歳より前に喫煙を開始した喫煙経験者と初産前に開始した喫煙経験者は、50歳以前に乳がんを発症するリスクが高かった。・成人期または小児期の副流煙曝露と乳がんとの関連はみられなかった。 本研究の結果、喫煙は閉経前の乳がんリスクを上げる可能性があり、人生の早期からの喫煙はとくに有害である可能性が示唆された。副流煙の影響については「さらなる調査が必要」とした。

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「魚と酒」は「肉中心」より高血圧になりやすい!?~日本人男性

 食事パターンと高血圧発症の関連を検討した日本人男性における前向きコホート研究で、「魚介類とアルコール」より「肉類中心」や「乳製品/野菜中心」のほうが高血圧リスクが低かったことを、東北大学/中国・Heze UniversityのLongfei Li氏らが報告した。本研究では食事パターンの特定に、食物摂取頻度・食事行動・調理方法を考慮した「教師なし機械学習法」を用いている。European Journal of Nutrition誌オンライン版2024年2月25日号に掲載。 本研究は、2008年8月~2010年8月に仙台卸商研究に登録された仙台卸商センターに勤務する日本人男性のうち447人の最終データセットを解析に使用した。UMAP(一様多様体近似と投影)による次元の削減とK平均法によるクラスタリングを用いて、食事パターンを導出した。さらに、多変量ロジスティック回帰を用いて、食事パターンと高血圧発症率の関連を評価した。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、自己申告による高血圧歴、高血圧治療薬の使用のいずれかに当てはまる場合とした。 主な結果は以下のとおり。・食事パターンは「低タンパク質・低食物繊維・高糖類」「乳製品/野菜中心」「肉類中心」「魚介類とアルコール」の4パターンが特定された。・年齢・BMI・喫煙・学歴・身体活動・脂質異常症・糖尿病などの潜在的交絡因子を調整後、基準とした「魚介類とアルコール」と比較して、「乳製品/野菜中心」(オッズ比[OR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.19~0.80、p=0.013)と「肉類中心」(OR:0.37、95%CI:0.16~0.86、p=0.022)で高血圧リスクが低かった。・年齢を一致させたグループ解析でも同様の結果だった。 著者らは「本研究の方法は、食物摂取頻度・食事行動・調理方法を考慮した複雑な食事パターンに対する知見を提供できることから、従来の統計学的方法や主成分分析法(PCA)では見過ごされがちな隠れたパターンを明らかにするのに有用」としている。

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PREVENT計算式で心血管疾患リスクを推定可能に

 「心血管疾患(CVD)イベントのリスク予測(Predicting Risk of CVD EVENTs;PREVENT)」方程式は、心不全を含むCVDのリスクを正確に推定できることが、「Circulation」に11月10日掲載のmethods paperおよび付随する科学的声明により報告された。この結果は、米国心臓協会の年次学術集会(AHA 2023、11月11~13日、米フィラデルフィア)でも同時発表された。 CVDの絶対リスクを評価する多変量リスク予測方程式の使用は、複数の一次予防ガイドラインにおいて現在推奨されているが、課題も多く存在する。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSadiya S. Khan氏らは、心血管・腎臓・代謝の3つの軸に関連する予測因子や、健康の社会的決定因子も考慮した新たな方程式が必要と考え、CVDの既往のない30~79歳の米国成人を対象としたPREVENT方程式を開発した。 主要アウトカムはCVD〔アテローム動脈硬化性CVD(ASCVD)および心不全(HF)〕で、予測因子は従来のリスク因子である喫煙、収縮期血圧、コレステロール、降圧薬・スタチン使用、糖尿病に加え、推算糸球体濾過量(eGFR)を用いた。モデルの導出は、コホート25件から得た個人レベルの対象者データ328万1,919人を対象とし、外部検証は、追加コホート21件の対象者333万85人を対象とした。モデルの開発では、年齢を尺度として使用し、非CVD死亡を競合リスクとして考慮した上で、男女別に予測因子とCVDとの関連を推定した。モデルの予測能はC統計量で評価し、較正は十分位数による観察リスクと予測リスクの傾きとして算出した。 対象者全体の平均年齢は53歳、女性56%で、平均4.8年間の追跡期間中に21万1,515件のCVD発症が確認された。外部検証の結果、PREVENTモデルはCVDリスク予測において、C統計量の中央値が女性で0.794、男性で0.757を達成した。較正曲線は女性で1.03、男性で0.94だった。ASCVDとHFを個別に予測するモデルにおいても、予測能と較正は同程度だった。選択可能な予測因子として、尿中アルブミン・クレアチニン比、HbA1c、社会的剥奪指数を追加したところ、モデルのCVD予測能はわずかながら有意に向上した(C統計量の差は女性で0.004、男性で0.005)。 Khan氏らは科学的声明の中で、PREVENT方程式の臨床的意義を説明している。この方程式を使用すれば、10年間および30年間におけるCVD(ASCVDとHF の複合)リスクを推定可能になることが重要という。方程式は男女別であり、予測因子としてeGFRを含み、人種を含んでいないことも特徴である。 Khan氏らは「PREVENT方程式は、CVDのリスク予測に心血管・腎臓・代謝に関わる健康因子と社会的因子を含めるための重要な第一歩である」と結論付けている。 なお、複数人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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健康問題による生産性低下の要因に男女差

 従業員が何らかの健康問題や症状を抱えて出勤し、出勤時の生産性が低下している状態を「プレゼンティーイズム(presenteeism)」という。今回、プレゼンティーイズムと睡眠、喫煙や飲酒との関係が新たに調査され、男女間で異なる結果が得られた。飲酒ついては、女性では正の関連、男性では負の関連が見られたという。鳥取大学医学部環境予防医学分野の研究グループによる研究であり、「Journal of Occupational Health」に12月14日掲載された。 病気などで欠勤することを「アブセンティーイズム(absenteeism)」といい、健康経営の課題となっている。しかし、それと比べて、健康問題を抱えながら出勤する「プレゼンティーイズム」の方が、従業員の生産性の低下(健康関連コスト)は大きいことが報告されている。その重要性が増していることから著者らは、プレゼンティーイズムと主観的な睡眠の質、喫煙、飲酒との関連について、男女差に着目して横断研究を行った。 鳥取県の1つの地方自治体の職員に対する2015年の質問紙調査のうち、713人(男性57.8%)のデータが用いられた。対象者は、生産性の測定ツール(WHO-HPQ)による質問「あなたの過去4週間の全体的なパフォーマンスをどのように評価しますか?」に、10段階で回答。それを100点満点(0点が最低、100点が最高のパフォーマンス)に換算し、40点以下をプレゼンティーイズム(自己評価による絶対的プレゼンティーイズム)と定義した。 主観的な睡眠の質に関しては、過去30日間の全体的な睡眠の質を尋ねる質問への回答を基に、「良い」と「悪い」に分類。また、飲酒および喫煙に関する質問への回答に基づき、対象者の状況を「非飲酒」「元飲酒」「時々飲酒」「現在飲酒(毎日)」および「非喫煙」「元喫煙」「時々喫煙」「現在喫煙(毎日)」にそれぞれ分類した。 その結果、プレゼンティーイズムに該当した人は174人(24.4%)であり、そのうち男性は102人(24.8%)、女性は72人(23.9%)で、有意な男女差はなかった。年齢層ごとの割合は、30歳未満が33.0%(32人)、30~39歳が29.7%(44人)、40~49歳が21.7%(51人)、50歳以上が20.2%(47人)だった。 また、対象者の状況については、睡眠の質が悪い人は314人(44.0%)で、男性が190人(46.1%)、女性が124人(41.2%)。現在飲酒者は182人(25.5%)で、男性が145人(35.2%)、女性が37人(12.3%)。現在喫煙者は、男性が117人(28.4%)、女性は4人(1.3%)のみだった。 ロジスティック回帰分析の結果、プレゼンティーイズムと睡眠の質が悪いこととの正の関連が、全体(オッズ比1.70、95%信頼区間1.18~2.44)と男性(同1.85、1.12~3.05)で認められた。女性では現在飲酒(同3.49、1.36~8.92)との正の関連が見られた。反対に、負の関連を示した要因は、全体では50歳以上(同0.50、0.27~0.93)、男性では現在飲酒(同0.43、0.20~0.92)、女性では40~49歳(同0.24、0.09~0.66)だった。 以上の結果から、プレゼンティーイズムと睡眠の質との関連は、特に男性で顕著だった。また飲酒は、女性ではプレゼンティーイズムと正の関連、男性では負の関連を示す可能性が示唆された。著者らは、因果関係は示されていないとした上で、「プレゼンティーイズムと関連する要因は男女で異なり、従業員の生産性向上に向けて取り組む際は、男女差を考慮する必要がある」と結論付けている。

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緑豊かな住環境は骨粗鬆症リスクを下げる

 樹木など植物が茂った場所の近くに住んでいると、骨が丈夫になる可能性のあることが、平均12年間の追跡データに基づく新たな研究で示唆された。中南大学(中国)のZhengxiao Ouyang氏らによるこの研究では、衛星画像で緑地が確認された場所の近くに住んでいる人では、それ以外の場所に住んでいる人に比べて骨密度が高い傾向があることが示されたのだ。研究グループは、「住宅地の植生が骨密度の上昇や骨粗鬆症リスクの低下に関連していることを示す初のエビデンスが得られた」と述べている。詳細は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月5日掲載された。 この研究には、UKバイオバンクのデータベースから収集された39万1,298人の英国人(平均年齢56.2歳、女性53.0%)の生活習慣と健康状態に関する追跡データが用いられた。UKバイオバンクには、各参加者の骨密度と骨粗鬆症の遺伝リスクに関するデータのほか、食事や喫煙習慣、収入、運動量などのさまざまなデータが記録されている。 Ouyang氏らは、衛星画像に基づき各参加者の居住地域の「緑化度」の指標となる正規化植生指数(Normalized Difference Vegetation Index;NDVI)を算出した。また、別のデータを用いて各地域の大気汚染レベルも調べた。 平均11.77年(中央値12.07年)に及ぶ追跡期間中に9,307人が骨粗鬆症を発症していた。解析の結果、居住地から300mの範囲のNDVIの四分位範囲(IQR)が増加するごとに、居住者の推定骨密度が増加し、骨粗鬆症の有病率が6%、発症リスクが5%低下することが示された。また、居住地域の緑化度が高まるほど骨粗鬆症リスクが低下する可能性が示唆された。 さらに、緑地と骨粗鬆症リスクの関連の媒介因子は、NO2(窒素酸化物)とPM2.5(微小粒子状物質)であることも示された。大気汚染にさらされると、酸化ストレスや炎症、ホルモンバランスの乱れが引き起こされ、これらが骨粗鬆症リスクを高め得ることが複数の研究で示唆されている。こうしたことから研究グループは、最も緑化度の高い地域に住む人では、木や植物が大気中の汚染物質を除去する天然のフィルターとして機能するため、大気汚染によるリスクも低くなるのではないかとの見方を示している。 Ouyang氏らは、「この研究により、骨粗鬆症の発症を予防する上で緑地が有用である可能性についての貴重な知見が得られた。効果的な予防戦略の開発において都市の緑化が重要であることを明示する結果だ」と述べ、大気汚染の軽減が骨に対する緑地の有益性の鍵を握っている可能性があるとの考えを示している。

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4月9日 子宮頸がんを予防する日【今日は何の日?】

【4月9日 子宮頸がんを予防する日】〔由来〕「し(4)きゅう(9)」(子宮)の語呂合わせから、「子宮頸がん」予防の啓発活動を行っている「子宮頸がんを考える市民の会」(東京)が制定。この日を中心に「子宮頸がん」についてのセミナーなどを開催している。関連コンテンツHPVワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】日本のワクチン史を変えた煉獄さん【Dr.倉原の“俺の本棚”】子宮頸がんも喫煙で増える?!【患者説明用スライド】高リスク局所進行子宮頸がん、ペムブロリズマブ追加でPFS改善/Lancet低リスク子宮頸がん、単純子宮全摘が標準治療に非劣性/NEJM

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CKDへの適応が追加されたエンパグリフロジンへの期待/ベーリンガーインゲルハイム・リリー

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)に、2024年2月、慢性腎臓病(CKD)の適応が追加された。この適応追加に関連して日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、3月29日に都内でプレスセミナーを共同開催した。セミナーでは、CKDの概要、エンパグリフロジンのCKDに対するEMPA-KIDNEY試験の結果などについて講演が行われた。CKDの早期発見、早期介入で透析を回避 はじめに「慢性腎臓病のアンメットニーズと最新治療」をテーマに岡田 浩一氏(埼玉医科大学医学部腎臓内科 教授)が講演を行った。 腎炎、糖尿病、高血圧、加齢など腎疾患の原因はさまざまあるが、終末期では末期腎不全となり透析へと進展する。この腎臓疾患の原因となる病気の発症から終末期までを含めてCKDとするが、CKDの診療には次の定義がある。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか(とくに蛋白尿)(2)GFR<60mL/分/1.73m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続した場合にCKDと診断 また、重症度分類として18区分でヒートマップ化したものがあり、個々の患者の病態に応じ早期に治療介入することが必要だという。 最近の研究では、心血管死へのCKDの影響も解明されつつあり、厚生労働省の調査班の研究では、喫煙、糖尿病、高血圧、CKDが心血管死の主要因子とされ、とくにCKDの頻度は高血圧44.3%に次いで高く20.4%、人口寄与危険割合も高血圧26.5%に次いで10.4%と2番目に高いリスクであると説明した。また、わが国のCKD患者は、2005年時に推定1,328万人から2015年には推定1,480万人に増加しており、そのうち2022年時点で透析患者は約35万人、年間で約1.63兆円の医療費が推計されている。この対策に厚生労働省は、腎疾患対策検討会などを設置し、「2028年までに新規透析導入患者数を3万5千人以下に減少させる(10年で10%以上減少)」などの目標を示し、さまざまな調査と対策を打ち出している。 CKDの治療では、減塩や蛋白質制限などの食事療法、禁煙などの生活習慣改善のほか、RA系阻害薬を中心とした降圧療法、スタチンを用いた脂質異常症の治療など個々の患者の病態に合わせた多彩な治療が行われている。先述の対策委員会の中間報告では、診療ガイドラインの推奨6項目以上を達成すると予後が良好となりCKDの進展抑制が可能との報告もあり、「個別治療を1つでも多く達成することが重要」と岡田氏は指摘する。また、CKD患者への集学的治療は、患者のeGFRの低下を有意に遅らせる可能性があり、初期段階を含めて原疾患に関係なく有効である可能性があると示唆され、とくにステージ3〜5の患者には集学的治療が推奨されるという研究結果も説明した1)。 今後の課題として、わが国の新規透析導入患者は、2020年をピークに減少傾向にあるが、高齢男性では依然として増加傾向にあること、主な透析導入の原因として、第1位に糖尿病、第2位に高血圧・加齢、第3位に慢性腎炎が報告されている(日本透析医学会「わが国の慢性透療法の現況」[2022年12月31日現在])ことに触れ、第3位の慢性腎炎の疾患の1つである腎硬化症に焦点を当て解説を行った。腎硬化症は、蛋白尿を伴わず、進行も遅いためになかなか治療対象として認知されておらず、また、現在は根治療法がなく、診療エビデンスも少ないと今後解決すべきアンメットニーズであると説明した。 岡田氏は最後に「CKDは早期発見と介入が何よりも重要であり、eGFR>30である間に、かかりつけ医から専門医への紹介を推進することが大切」と語り講演を終えた。糖尿病の有無にかかわらずCKD患者の心血管死リスクを低下させる 次に「慢性腎臓病に対する新しい治療選択肢としてジャディアンスが登場した意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、エンパグリフロジンのCKDへの適応追加の意義や臨床試験の内容について説明を行った。 糖尿病などの代謝性疾患、心血管疾患、CKDは相互に関連し、どこか1つのサイクルが壊れただけでも負のスパイラルとなり、身体にさまざまな障害を引き起こすことが知られている。 2014年に糖尿病治療薬として承認されたSGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、当初から心臓、腎臓への保護作用の可能性が期待され、2021年には慢性腎不全に追加承認が、本年にはCKDへ追加承認がされた。その追加承認のベースとなった臨床試験がEMPA-KIDNEY試験である。 EMPA-KIDNEY試験は、8ヵ国で行われた第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、目的は「CKD患者にエンパグリフロジンが腎疾患の進行または心血管死のリスクを減少させるかを検討すること」、対象範囲は糖尿病ではない患者、低蛋白尿を呈する患者を含む、腎疾患進行リスクを有する幅広いCKD患者である。 EMPA-KIDNEY試験の概要は以下の通り。〔試験デザインとアウトカムなど〕・腎疾患進行リスクのあるCKD患者6,609例(うち9%が日本人)を、エンパグリフロジン10mg/日+標準治療(3,304例)とプラセボ+標準治療(3,305例)に割り付けた。・主要評価項目:心血管死または腎疾患の進行・副次評価項目:心不全による初回入院または心血管死までの期間など・患者背景は糖尿病患者と非糖尿病患者が半々だった。・eGFR<30mL/分/1.73m2の低下例も組み入れたほか、微量アルブミン尿患者も組み入れた。〔主な結果〕・主要評価項目では2.5年の追跡期間で腎臓病進行または心血管死の初回発現について、エンパグリフロジン群で432例(13.1%)、プラセボ群で558例(16.9%)だった(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.64~0.82、p<0.001)ことから初回発現までの期間が有意に抑制された2)。・ベースラインから最終フォローアップ来院までの全期間のeGFRスロープ(年間変化率)は、プラセボ群の-2.92に対してエンパグリフロジン群が-2.16で、その差は0.75だった。・2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期のeGFRスロープは、プラセボ群の-2.75に対してエンパグリフロジン群が-1.37で、その差は1.37だった。・安全性については、有害事象発現率はエンパグリフロジン群で43.9%、プラセボ群で46.1%であり、エンパグリフロジン群では骨折、急性腎障害、高カリウム血症などが報告されたが重篤なものはなかった。 門脇氏は、本試験の特徴について、「蛋白尿が正常な患者を初めて組み入れたCKDを対象としたSGLT2阻害薬の臨床試験であること」、「幅広いeGFR値のCKD患者に対し、糖尿病罹患の有無にかかわらず、腎疾患の進行または心血管死の発現リスクの有意な低下を示したこと」、「有害事象発現率がプラセボよりも低かった」とまとめ、レクチャーを終えた。 今後、微量アルブミン尿患者などを含め、幅広く使用される可能性があり、CKDへの有効な治療手段となることが期待されている。

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シスプラチン投与後の重篤AKI、簡易リスクスコアを開発/BMJ

 シスプラチン静脈内投与後の重篤な急性腎障害(CP-AKI)を予測する、新たなリスクスコアが開発された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShruti Gupta氏らによる検討で、投与患者から容易に取得できる9つの共変量を用いた簡易リスクスコアが、従来モデルと比べて、死亡と強く関連する重篤なCP-AKIのリスクを高精度に予測可能であることが検証できたという。BMJ誌2024年3月27日号掲載の報告。CP-AKI定義は14日以内の血清クレアチニン値2倍以上、腎代替療法の実施 研究グループは、全米6ヵ所の主要ながんセンターを通じて、2006~22年に初回シスプラチン静脈内投与を受けた18歳以上の成人患者を対象に、重篤なCP-AKI発症に関する予測モデルの開発とその評価を行った。 主要アウトカムはCP-AKIで、初回シスプラチン静脈内投与から14日以内に血清クレアチニン値が2倍以上に増加、または腎代替療法の実施と定義した。CP-AKIの独立予測因子については、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて特定し、それを基に予測モデルを開発コホートにより作成、外部検証コホートで精度を確認した。 主要モデルでは、連続変数は制限付き3次スプラインを用いて検証した。主要モデルのオッズ比をリスクポイントに変換し、簡易リスクモデルを作成。最終的に多変量Coxモデルを用いて、CP-AKI重症度と90日生存率の関連を調べた。モデルのC統計量は0.75、従来より高い識別能 合計2万4,717例の成人被験者が対象に含まれた。開発コホートは1万1,766例(年齢中央値59歳、四分位範囲[IQR]:50~67)、検証コホートは1万2,951例(60歳、50~67)だった。CP-AKI発症率は、開発コホート5.2%(608例)、検証コホート3.3%(421例)だった。 開発コホートから得られたCP-AKIの独立予測因子は、年齢、高血圧、糖尿病、血清クレアチニン値、ヘモグロビン値、白血球数、血小板数、血清アルブミン値、血清マグネシウム値、シスプラチン投与量だった。 9つの共変量(年齢、高血圧、糖尿病、現在/元喫煙者、ヘモグロビン値、白血球数、血清アルブミン値、血清マグネシウム値、シスプラチン投与量)からなる簡易リスクスコアは、開発コホートと検証コホートの両者で、CP-AKIリスクを予測することが示された。最低リスクカテゴリーの患者と比べた最高リスクカテゴリーの患者のCP-AKI発症オッズは、開発コホートで24.00倍(95%信頼区間[CI]:13.49~42.78)、検証コホートで17.87倍(10.56~29.60)だった。 主要モデルのC統計量は0.75であり、これまでに発表されたモデルの0.60~0.68に比べ高く、CP-AKI発症の識別が優れていた(それぞれの比較でDeLong P<0.001)。また、CP-AKI重症度が高いほど90日生存率が低い傾向が一貫して認められた(ステージ3のCP-AKI vs.CP-AKIなしの補正後ハザード比:4.63、95%CI:3.56~6.02)。

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「自閉傾向」が高い妊婦ほど、早産などのリスク上昇

 日本全国における8万7,687人の妊婦を対象とする大規模な研究が行われ、自己申告による「自閉傾向」が高いほど、早産や在胎不当過小(small for gestational age;SGA)などのリスクが高いことが明らかとなった。特に、極早産のリスク上昇が顕著だったという。国立国際医療研究センターグローバルヘルス政策研究センターの細澤麻里子氏らによる研究結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に1月23日掲載された。 「自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD)」は一定のスペクトラム(幅)を持つ神経発達障害であり、ASDの診断に至らなくても、一般の集団において「自閉傾向」のある人は連続的に分布しているとされる。ASDは社会的コミュニケーションの障害、限定された行動の繰り返しなどを特徴とするが、自閉傾向の高い人もASDと診断された人と同様に、社会的・心理的な困難を伴うことが報告されている。また過去の研究では、ASDと妊娠・出産の転帰不良との関連についても示されている。 そこで著者らは、一般の集団における妊婦の自閉傾向と出産の転帰との関連を検討するため、2011年1月~2014年3月に「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した人を対象とするコホート研究を行った。自閉傾向は、妊娠中期・後期に自己申告による「自閉症スペクトラム指数日本語版」(AQ-J-10)で評価した。AQ-J-10は得点が高いほど自閉傾向が高く、7点以上は「臨床域」として、より詳細な評価が必要であることを示す。出産の転帰は、早産およびSGAを診療録より収集した。 8万7,687人(平均年齢31.2±5.0歳)のデータを解析した結果、AQ-J-10の平均点は2.8±1.7であり、AQ-J-10が7点以上の臨床域に該当する人は2,350人(2.7%)だった。ASDと診断を受けていた人は、わずかに18人(0.02%)のみだった。 また、自閉傾向が高い人ほど、早産(妊娠37週未満)、中等度・後期早産(32~36週)、極早産(32週未満)、SGAのリスクが高まることが明らかとなった。具体的には、対象者の背景(出産時の年齢、教育レベル、初産か経産か、妊娠中の喫煙、妊娠前のBMI、既往歴、出生児の性別)や妊娠合併症(妊娠高血圧症、妊娠糖尿病)による影響を調整して解析すると、AQ-J-10の点数が1標準偏差高くなるごとに、早産のリスクは1.06(95%信頼区間1.03~1.09)、中・後期早産は同1.05(1.01~1.08)、極早産は同1.16(1.06~1.26)、SGAは同1.04(1.01~1.06)を示した。さらに、AQ-J-10が7点未満の人と比較すると、7点以上の臨床域の女性における早産のリスクが16%、中・後期早産のリスクが12%、極早産のリスクが49%、SGAのリスクが11%、それぞれ高くなった。 以上から著者らは、「ASDの診断の有無によらず、一般の集団における妊婦の自閉傾向が高いことは、出産の転帰不良、特に極早産のリスク上昇と関連していた」と結論。この背景として、妊娠中の心理的ストレスの影響や食事などの生活習慣の影響、支援やケアへのアクセスの影響などを指摘する。その上で、自閉傾向が高い妊婦、特に自閉傾向が臨床域の得点を示す妊婦に対して、「妊娠中から適切な支援を提供することが必要だ」と述べている。

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