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20歳以降に体重が10kg以上増えた人は、ベースライン時のBMIにかかわらず5年以内に脂肪肝を発症するリスクが約2倍に上昇し、体重変動を問う質問票は脂肪肝のリスクが高い人を即時に特定するための実用的かつ効果的なスクリーニング方法となり得る可能性があることを、京都医療センターの岩佐 真代氏らが明らかにした。Nutrients誌2025年8月6日号掲載の報告。 脂肪性肝疾患は、心血管疾患や代謝性疾患、慢性腎臓病のリスク増大と関連しており、予防と管理のための効果的な戦略の開発が求められている。脂肪肝に関連する質問票項目を特定することで、脂肪性肝疾患の高リスク者の早期発見につながる可能性があることから、研究グループは一般集団の健康診断データベースから収集した生活習慣情報を縦断的に分析し、脂肪肝リスクの高い個人を特定する質問票の有用性を検討した。 対象は、2011~15年にかけて、武田病院健診センターの健康診断受診者のうち、ベースライン時には脂肪肝は認められず、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肝疾患などの既往歴もない20歳以上の1万5,063人であった。ベースライン時のBMIに基づいて、BMI値22未満群、22〜25未満群、25以上群の3つのグループに分類した。食習慣と生活習慣に関する質問票項目は、厚生労働省が特定健康診査事業のために提供している標準質問票に基づいて作成され、(1)食習慣・行動、(2)喫煙・飲酒習慣、(3)運動習慣、(4)体重変動、(5)睡眠の23項目で構成されていた。Cox比例ハザードモデルを用いて、ベースライン時の質問票データと5年間の追跡期間における脂肪肝発症率との関連性について、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・1万5,063人のうち、女性は8,294人(55.1%)、平均年齢は47.1歳、平均BMIは21.4であった。・追跡期間中央値4.2年で、1,889例(12.5%)が脂肪肝を発症した。脂肪肝の発症率は、ベースライン時のBMI値が高いほど有意に高かった(傾向のp<0.001)。 -BMI値22未満群 551/9,270例(5.9%) -BMI値22〜25未満群 898/4,519例(19.9%) -BMI値25以上群 440/1,274例(34.5%)・年齢、性別、代謝性疾患および肝障害に関連する因子を調整した後、脂肪肝発症の最も強い危険因子は20歳以降の10kg以上の体重増加であり、とくにBMI値22未満群で顕著であった。 -全体集団 調整HR:2.11、95%CI:1.90~2.34、p<0.001 -BMI値22未満群 調整HR:2.33、95%CI:1.86~2.91、p<0.001 -BMI値22〜25未満群 調整HR:1.43、95%CI:1.25~1.63、p<0.001 -BMI値25以上群 調整HR:1.41、95%CI:1.12~1.77、p=0.003・すべてのBMI群に共通する脂肪肝リスクの低減に関連する質問票項目は特定されなかったが、22未満群では牛乳および乳製品の日常摂取(調整HR:0.75、p=0.001)、22〜25未満群では海藻およびきのこの日常摂取(調整HR:0.63、p=0.006)、25以上群では睡眠満足度(調整HR:0.80、p=0.039)がそれぞれ脂肪肝リスクの低減と最も強く関連していた。 これらの結果より、研究グループは「本研究は、脂肪肝発症のリスクを同定し、低減させるための質問票の潜在的な有用性を強調するものである。質問票に基づいて健診当日にリスクを伝え、生活習慣改善につなげる即日フィードバックのアプローチは、脂肪肝発症のリスクを低減させ、脂肪性肝疾患の予防に貢献する可能性がある」とまとめた。