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VATS後の肺合併症の長期的影響

 肺がんは、中国におけるがん死亡の主要な原因であるが、同国における肺葉切除術後の肺合併症(pulmonary complicaions、以下PC)の発生率は15~37%にのぼる。さらに、PCが肺がん患者の長期生存に及ぼす影響の研究は少ない。中国Peking University Hospitalでは、術後NSCLC患者のPC発症、重症肺合併症(major pulmonary complicaions、以下MPC)の長期的影響などの特定を試みた。Journal of Thoracic Disease誌2017年12月号の掲載。 Peking University People’s Hospitalで2007年1月~2015年12月に胸腔鏡補助下手術(video-assisted thoracic surgery、VATS)を受けたNSCLC患者コホートのPCを後ろ向きに分析した。・対象患者:術前StageI~IIのNSCLC 828例(年齢18歳以上、ECOG PS0~1、術前補助化学療法施行患者・放射線療法患者などは除外)・評価項目: Kaplan-Meier法を用いたPCの長期予後への影響の解析。多変量ロジスティック回帰分析を用いたMPCの危険因子の解析。 主な結果は以下のとおり。・828例中139例(16.8%)でPCを発症、そのうち66例(8%)がMPC(air leakの遷延、胸腔穿刺を要する胸水貯留、重症肺炎など)であった。・PC発症患者は非発症者に比べ、ドレナージ期間および入院期間が長く(ドレナージ期間:9日対5日、p<0.001、入院期間:12日対6日、p<0.001)、周術期死亡率高かった(4.3%対0.4%、p=0.001)。・MPC発症患者の無病生存期間(DFS)は非発症者に比べて短く、3年DFS率は68.2%対 78.7%、5年DFS率は44.7%対 70.3%であった(p=0.001)。・MPC発症患者の全生存期間(OS)は非発症者に比べて短く、3年OS率は81.8%対88.6%、5年OS率は66.6%対80.9%であった(p=0.023)。・MPCは肺がん患者の独立した予後因子であった。・MPCの独立危険因子は年齢(HR:1.05、p=0.007)、男性(HR:3.33、p=0.001)、およびASA(アメリカ麻酔学会)グレード(ASA2[HR:4.29、p=0.001]、ASA3[HR:6.84、p=0.002])であった。■参考Shaodong Wang, et a;. J Thorac Dis. 2017 Dec.

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アテゾリズマブ、既治療の尿路上皮がんでOS延長せず/Lancet

 PD-L1高発現のプラチナ製剤抵抗性の局所進行/転移性尿路上皮がん患者において、化学療法と比較し、PD-L1阻害薬アテゾリズマブによる全生存期間(OS)の有意な延長は認められなかった。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らが、多施設共同無作為化非盲検第III相試験「IMvigor211試験」の結果を報告した。プラチナ製剤併用化学療法後に増悪した、局所進行/転移性尿路上皮がんに対する治療の選択肢はほとんどないが、近年、免疫チェックポイント阻害薬の登場により転移性尿路上皮がんの治療は変化してきていた。Lancet誌オンライン版2017年12月18日号掲載の報告。アテゾリズマブ vs.vinflunine/パクリタキセル/ドセタキセルのいずれかで、OSを比較 IMvigor211試験は、主に欧州、北米、アジア太平洋地域の大学病院および地域腫瘍専門病院217施設が参加して実施された。 対象は、プラチナ製剤併用化学療法後に増悪した18歳以上の局所進行/転移性尿路上皮がん患者で、音声自動応答/web登録システム(IXRS)を介し置換ブロック法(ブロックサイズ4)を用いて、3週ごとにアテゾリズマブ(1,200mg静注投与)または化学療法(医師の選択による、vinflunine 320mg/m2静注、パクリタキセル175mg/m2静注、ドセタキセル75mg/m2静注のいずれか)を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、PD-L1発現状態(腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現が1%未満[IC0]または1%以上5%未満[IC1]vs.5%以上[IC2/3])、化学療法の種類(vinflunine vs.タキサン系)、肝転移(あり vs.なし)、予後因子の数(0 vs.1~3)で層別化した。患者と試験担当医は、割り付けは認識していた。また、PD-L1発現状態については、患者と試験担当医およびスポンサーは盲検化された。 主要エンドポイントはOSで、事前に規定した母集団について順を追って検証した(IC2/3→IC1/2/3→intention-to-treat集団)。アテゾリズマブと化学療法でOSに有意差なし 2015年1月13日~2016年2月15日に、198施設からの患者931例が無作為化された(アテゾリズマブ群467例、化学療法群464例)。 PD-L1発現5%以上(IC2/3)の患者234例におけるOS中央値は、アテゾリズマブ群11.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.6~15.5、116例)、化学療法群10.6ヵ月(95%CI:8.4~12.2、118例)で、有意差は認められなかった(層別化ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.63~1.21、p=0.41)。 同IC2/3集団における客観的奏効率(ORR)も、アテゾリズマブ群23%(26/113例)、化学療法群22%(25/116例)と同等であった。奏効期間中央値は、アテゾリズマブ群15.9ヵ月(95%CI:10.4~推定不可)、化学療法群8.3ヵ月(95%CI:5.6~13.2)で、アテゾリズマブ群が数値的には長かった(HR:0.57、95%CI:0.26~1.26)。 intention-to-treat集団において、Grade3~4の治療関連有害事象の発現頻度は、アテゾリズマブ群(91/459例、20%)が化学療法群(189/443例、43%)より少なく、治療中止に至った有害事象も少なかった(34例[7%]vs.78例[18%])。アテゾリズマブの安全性プロファイルは化学療法と比較して良好であり、intention-to-treat集団での予備解析の結果は同様の対象集団で実施された第II相試験と一致しており、忍容性が良好で効果の持続が示唆された。■「アテゾリズマブ」関連記事アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM

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ニボルマブ1回240mgの固定用量を国内申請

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良暁)とブリストル・マイヤーズ スクイブ社は2017年12月22日、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、単剤投与の用法・用量に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。 今回の申請は、すでに承認取得している効能・効果「根治切除不能な悪性黒色腫」、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」、「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」、「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」、「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」および「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」において、1回3 mg/kgを2週間間隔で点滴静注する用法・用量から、1回240 mgを2週間間隔で点滴静注する用法・用量への変更を目的としたもの。 その他ニボルマブに関して、悪性黒色腫術後補助療法の適応拡大、切除不能な進行又は転移性の悪性胸膜中皮腫に対する効能・効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を,同日申請している。

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サン・アントニオ2017レポート-2

レポーター紹介HER2陽性早期乳がんにおけるtrastuzumab短期投与の意義 –SOLD試験SOLD試験はHER2陽性乳がんに対して、trastuzumab9週間と1年を比較する試験である。DTX+trastuzumab3回→FEC3回をベースとして、その後のtrastuzumab14回の有無で治療効果を比較した。当初は優越性試験としてデザインされ、516のイベントに到達するために3,000例が必要とされた(5年DFS84%対80%、4%の差)。しかし5年DFSの仮定が低すぎると判断され、途中で研究計画が変更となり、非劣性試験として非劣性マージン1.3、2,168例の症例数が設定された。結果としてDFSではHR1.39であり、非劣性は証明されなかった(90.5%対88.0%)。OSはHR1.36(95.9%対94.7%)、DDFSはHR1.24(94.2%対93.2%)であった。サブ解析ではDTX投与量が100mg/m2で9週間の方が良好な傾向があった(80mg/m2では1年がよい)が、それ以外はいずれも1年の方が一定して良好な傾向であった。ただこの解析からDTX100では9週間でよいといってはいけない。単にサブ解析の結果にすぎない。全体としては一定の傾向(1年のほうで良好)であると考えるべきである。心毒性はやはり9週間の群で少なかった(うっ血性心不全1.9%対3.3%)。これらのことより依然としてtrastuzumabの治療期間は1年が標準であるということになる。この結果は、ASCO2017で紹介したShort-HER試験とまったく同様の状況になっているので、今回議論は省略するが、単に統計学的に同等であるという仮説をメットしなかったということである。ASCO2017の報告で述べたように、そもそも予後良好群では、trastuzumab1年は9週間と比較して予後を改善しないだろう。術後trastuzumabの使用期間に関するメタ分析の結果も別に報告されていた。解析されたRCTはShort-Her、PERSEPHONE(心毒性のみ)、HORG、PHAREの4研究である。長期間使用の方がOS、DFSともにベターとなっているが、心イベントも多くなっている。また、ER陽性あるいはリンパ節転移陽性では有意差はない。やはり予後良好群では、HERの長期使用が予後を明らかに改善することはなく、心イベントを増加させることが示されている。センチネルリンパ節の微小転移は腋窩郭清を省略できる−IBCSG 23-01IBCSG 23-01はセンチネルリンパ節生検で微小転移(2mm以下)があったものに対して郭清と非郭清を比較した試験であり、今回10年のデータが報告された。90%がBp(97%でRTあり)、10%がBt(5%でRTであり)であった。DFSも乳がん関連のイベントもまったく差がなく、腋窩再発もごくわずかであった。もちろんOSにも差はない。微小転移に対してはBt、Bpともに郭清は予後改善をもたらさず、腋窩微小転移に対する非郭清は現行どおりである。HER2陽性乳がんにおけるDCH、TCH、FECDHの効果は同等カナダの病院からのリアルワールド(レトロスペクティブ)データである。N0に対してはDCH(DTX/CPA/HER)4サイクルまたはTCH(DTX/CBDCA/HER)6サイクル、N+に対してはTCHまたはFECDH6サイクルが行われている。DCH(104例)とTCH(60例):中央観察期間58.1ヵ月、TCH(314例)とFECDH(145例):63.1ヵ月で、ともにDFS/OSに差はなく、いずれも非常に予後良好であった。HER2陽性乳がんにDCH4サイクルはN0に、TCH6サイクルはN+にリーズナブルなオプションである。palbociclibを受けた乳がん患者に対する投与遅延と減量のPFSに及ぼす影響MD Andersonからの報告である。PALOMA-3の安全性分析で、好中球減少による減量や遅延はPFSに影響しないという結果が出ている(Verma S, et al. The Oncologist. 2016;21:1165-1175.)。MDAにおいて、毒性によるpalbociclibの遅延/減量とPFSへの影響をレトロスペクティブに解析した。334例のうち109例で減量、153例で治療の遅延があった。発熱性好中球減少症は2.3%と極めて低かった。減量や遅延を行った患者は、そうでない患者群よりいずれも有意にPFSが長かった。このことから、palbociclibの毒性による減量/遅延は予後を悪化させないということがわかり、臨床的に重要なデータである。転移性ER陽性閉経後乳がんでさまざまな治療を受けた後のpalbociclibの有効性CDK4/6阻害剤の有効性は再発のファーストラインで示されているが、さまざまな治療を受けた後の意義については知られていない。ベルギーから報告された本研究は、少なくとも4ライン以上の治療を受け、その後少なくとも1回以上のpalbociclibを使用した患者82名をレトロスペクティブに解析したものである。palbociclibの中央使用期間は5.6ヵ月で、中央PFSは3.17ヵ月であった。Clinical benefit rateは41.5%、9ヵ月以上のSDは20.7%で、43.9%では治療の遅延や減量が行われていた。このように多くの治療を受けた後でもpalbociclibは十分な治療効果と安全性をもって使う価値がありそうであり、私たちのこれからの診療に大いに役立つ情報である。病期1、低リスク、ホルモン感受性乳がんにおける照射の有効性本研究は7つのRCT(NSABP B-21、B-20、B-1、CAL.GB9343、TAILORx、GBSG V)からのプール解析である。適格基準は40~74歳、ERまたはPR陽性、HER2陰性、病期1、乳房温存術施行、化学療法なし、オンコタイプDXリスク≦18であり、RTありと無しで、生存率を比較した。全体としてRT省略は局所再発のイベントを増加させた。ODX<11または低悪性度ではRTを省略しても再発率は変わらず、RTを省略も十分考慮してよさそうである。BRCA1/2変異保有者におけるTAM使用と対側乳がんのリスク複数国にわたる大規模なレジストリーからのデータである。3,743例(BRCA1:2,343例、BRCA2:1,400例)の変異保有者のうち、908例の対側乳がんが発見された。多変量解析には両側卵巣切除の有無が含まれた。対側乳がん、対側リスク低減手術、死亡、最終経過観察日で打ち切りとなった。結果として、初回乳がんがER陽性の場合、とくにBRCA2においてTAMの使用が対側乳がんの発症を減少させた。一方ER陰性では、TAMは乳がんの発症を予防していなかった。このことから、初回乳がんのHRの状態によってTAM使用を考えるのがリーズナブルで、HR陰性に対して対側乳がんの予防のためにTAMを用いることはあまり有効性をもたらさないであろう。BRCA1、BRCA2、ATM、CHEK2、PALB2変異保有者における乳がんの分子学的解析BRCA1/2における乳がんの体細胞変異については理解が進んでいる。しかし同じく遺伝性乳がんの原因遺伝子であるATM、CHEK2、PALB2についてはよく知られていない。そこで、BRCA1:9名、BRCA2:8名、ATM:5名、CHEK2:7名、PALB2:6名、TP53:2名、散発性乳がん:8名について、体細胞のコピー数、遺伝子変異解析を行った。DNA相同組換え修復能不全に関連する遺伝子のコピー数は、BRCA1、ATM、CHEK2、PALB2間できわめて類似していた。変異解析とコピー数のプロファイリングは、全てのBRCA1がTNBCで、すべてのCHEK2がER+であったにも関わらず最も類似していた。BRCA1変異では他の変異と比べ、遺伝子発現の違いが著明であった。TNBCにおける最も共通の変異はTP53であった。10%以上の遺伝子変異は、TP53、SDS、SNX31、IGFH、SLC3A2、METTL5、C180rf56、BRCA1、MAP3K1、ESCP2、FRAS1、ERBB2、PALB2、LCE10、BCL2L14であった。遺伝性乳がんにおける体細胞変異解析は散発性乳がんとは異なる治療を考えるうえでの重要な知見となり、今後さらに理解が進むことを期待する。

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EGFR変異肺がん治療シークエンスのリアルワールド研究開始/ベーリンガーインゲルハイム

 ベーリンガーインゲルハイムは2017年12月12日、EGFR変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたシークエンス治療の影響を評価するリアルワールド研究「GioTag」を開始したと発表。 アファチニブを1次治療、その後オシメルチニブを2次治療としてEGFR-TKIを投与された患者約190例のデータを解析し、治療期間の合計を判断する。 同研究はレトロスペクティブ解析。T790M遺伝子変異陽性患者を対象にした11ヵ国65の研究実施施設のリアルワールドデータを分析し、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの1次治療としてのアファチニブに続いてオシメルチニブを使用する治療期間を判断する。また、オシメルチニブによる治療後の遺伝子変異に関して入手可能なデータの収集も行う。 1次治療と2次治療にEGFR-TKIを使用するシークエンス治療に関する情報は限られており、本試験はこの患者集団に使用されるEGFR-TKIとその後の化学療法の影響に関する見識を示すことになる。GioTag研究の結果は2018年に発表される予定。■参考Boehringer Ingelheimプレスリリース

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サン・アントニオ2017レポート-1

レポーター紹介2017年SABCSは、12月5〜9日の5日間で開催された。新しい会場になってから2年目であり、以前の会場の一部は既に取り壊されていた。テキサスは初日から雨で寒い日が続いた。中日の夜には雪も降ったが、逆に翌日には晴天となった。天候の変化が著しく、それだけでも体調をくずす方がいそうである。今回は臨床的な話題としてはいろいろあったが、直ちに臨床を変えるような話題はほとんどなかったように思う。しかし愛知県がんセンターの岩田広治先生がPIとなって進行中の臨床試験NEOSの第1報があり、重要な知見を提供してくれた。術前内分泌療法に反応したHR+閉経後乳がんにおける術後化学療法の意義 −NEOS日本からの大規模な臨床試験(NEOS)の結果が岩田広治先生より報告された(第一報)。HR+閉経後乳がんに対して術前にANAを6ヵ月行い、PD(43例)には術後化学療法を、CR(16例)/PR(421例)/SD(400例)には術後化学療法施行群と非施行群を無作為化割付した。今回は両群を合わせた術前治療効果別の5年DFSが示され、CRで100%、PRで95%、SDで92%と予後良好であったのに対して、PDでは化学療法施行にも関わらず89%と低かった。PR/SDでは化学療法施行の有無別のDFSを知りたいところだが、その結果が出るのはまだ先になりそうである。しかし化学療法を施行しなくても、CR/PR/SDではかなり予後のよいことが予想される。さらに別報もあり、NEOSにおいて、針生検標本におけるオンコタイプDX(ODX)のリスクスコア(RS)と術前ANAの効果との関係が明らかとなった(n=294)。RS<18(低リスク)ではCR/PR54%、SD45%、PD1%であったのに対して、RS18~30(中間リスク)では42%、55%、4%であり、RS>31(高リスク)になると22%、61%、17%となりCR/PR率が著明に低下した。逆に高リスクとなるのはCR/PRの2%、SDの22%、PDの46%であり、AIの術前効果がODX検査適応選択や化学療法そのものの適応選択に大きな指標になることが示された。閉経後乳がんにおける術前内分泌療法は術後の化学療法を考えるうえで今後より重要なオプションとなろう。EBCTCGメタアナリシス−dose-dense化学療法の意義最初の話題は、EBCTCGのメタアナリシスで、術後補助化学療法において投与間隔の短縮が再発と乳がん死亡率を減少させる、というものである。Dose intensityの試験としては、2週対3週が12試験、逐次(3週)対同時(3週)が6試験、逐次(2週)対同時(3週)が6試験、が選択されていた。2週対3週では、2週の方がより再発と乳がん死亡率を減らしていた。逐次(3週)対同時(3週)、逐次(2週)対同時(3週)ともに逐次の方が再発と乳がん死亡率を減らしていた。これらはERの有無に関わらなかった。これらのことから、dose denseがよいと結論している。まだ論文化されていないため、どの臨床試験が選択されたのか不明である。この結果をもとに2週のdose denseを標準と考えるのは早計である。SABCS2014のレポートでまとめたが、FEC(600/60/600) 6サイクルを2週毎と3週毎で比較しても生存率にまったく差がない(Venturini M,et al. J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1724-1733.)ことが示されており、Paclitaxelも今では標準でない3週投与が、2週投与に対して比較されている。そもそも毎週投与が現在の標準であり、よりdose denseでG-CSFも使う必要がないことから、標準はあくまでAC(3週)-PTX(毎週)であろう。2週投与のdose-denseのメリットは投与期間の短縮のみであり、高額なG-CSFの使用が必須であったり、遅発性のニューモシスチス肺炎も含めた有害事象も増えることから、2週投与のdose-denseはあくまでオプションの1つに過ぎない。HER2-lowにおいてtrastuzumabは予後を改善しない−NSABP B-47NSABP B-47は、AC→wPTX 対 TCx6 +/-trastuzumabの比較試験であるが、HER2-lowにおけるtrastuzumabの意義について検討された。結果はtrastuzumabの有無で生存率にまったく差がなかったのであるが、面白かったのは本題でない背景で紹介された部分であった。NSABP B-31試験では、各施設でHER2陽性だが中央判定で陰性とされたサブセットにおいて、trastuzumab使用群の方がDFSが良好であったことである。N9831試験でも同様の傾向であった。HER2判定に関しては各施設の評価も大切にした方がよいということであり、HER2の状況がIHCで3+またはFISH陽性のいずれかなら、積極的にHER2標的剤は使用すべきということを示している。IHCとFISHの両者を測定していると時々いずれか陽性ということがあり、どちらか一方だけの検索では、HER標的剤の恩恵にあずかる方が一定数見逃されてしまうリスクがあろう。CDK4/6阻害剤ribociclibはPFSを改善する−MONALEESA-7MONALEESA-7はHR+HER2-閉経前乳がんにおけるribociclibの有用性を検証した第III相試験である。治療効果は本邦でようやく承認されたpalbociclibとほぼ同等であろうと思われる。TAMまたはAI+LHRHaにribociclibをon/offしたものであり、PFSでは有意にribociclib群で良好であった。TAM、AIとも効果は同等であった。血液毒性は好中球減少、貧血、血小板減少ともにribociclib群で多かった。非血液毒性はQT延長が6.9%(vs.1.2%)と多く、G3の倦怠感と下痢もribociclib群でわずかに多かった以外はほぼ同等であった。QOLは(EORTC QLQ-30)ribociclib群の方が有意に良好であった。3つのAI剤がそうであったように、今後複数のCDK4/6阻害剤の使い分けが問題になりそうである。化学療法中のLHRHaは卵巣機能保護に有効である−メタ解析化学療法における卵巣機能障害の問題は、近年妊孕性の面からとくに注目されている話題の1つである。化学療法中のLHRHaの卵巣保護効果について、今回は5つの臨床試験のプール解析(メタ解析)が報告された。主要評価項目は卵巣機能不全、副評価項目は無月経である。卵巣機能不全はLHRHa使用群と未使用群で14.1%対30.9%であり、明らかにLHRHa使用群で良好であった。2年での無月経率もそれぞれ18.2%対30.0%と同様であった。さらに妊娠率も10.3%対5.5%であったことより、LHRHaによる妊孕性温存の効果は明らかであると考えられる。LHRHa使用の有無での予後もみているが、ER+/-に関わらず、DFS、OSともにまったく差がなかった。したがって、化学療法を受ける予定で妊孕性温存を希望する方に対しては、LHRHaによる卵巣保護を十分に考慮するという立場は変わらない。TAM+OFSとEXE+OFSで予後は同等である−TEXT+SOFT結合試験TEXT+SOFT結合試験のデータがアップデートされた。閉経前HR+乳がんにおいて、TAM+OFSとEXE+OFSを比較したものである。初回はASCO2014で報告されたが、結果はその時と大きく変わっていない。8年のDFSはEXE+OFSで有意に良好であった(86.8% vs.82.8%、p=0.0006)。しかしOSではまったく差がなく、EXEの方が有害事象のために治療を中止する患者が多かった。このことからEXE+OFSはかなりのハイリスクに限られるべきであろう。絶対死亡数が少ないため、さらに経過観察される予定である。TAM+OFSはTAMと比較しわずかに予後を改善する−SOFT試験SOFT試験におけるTAM+OFSとTAMを比較したデータもアップデートされた。初回中間解析の結果はSABCS2014で報告した。やはり8年のDFSはTAM+OFSで有意に良好であった。8年のOSもHR0.67(0.48~0.92)とわずかにTAM+OFSが上回っていた。化学療法の有無でみてみると無し群ではまったく差がないが、有り群ではHR0.59(0.42~0.84)でTAM+OFSが良好であった。絶対差は4.3%と小さく、TAM+OFSの適応はやはり以前と変わらない。すなわち40歳未満あるいは40代前半で化学療法を行うようなハイリスクに対して、OFSの上乗せを提案するというスタンスでよいであろう。40代後半では、化学療法によりほぼ閉経状態となり、TAM単独でも問題ないだろう。鍼はAI関連関節症状に有効であるAI剤による関節痛は厄介な副作用であり、多くの閉経後乳がん患者が生活上の影響を受けている。鍼はAIによる関節痛を軽減する方法としての1つとして期待されており、本試験は真の鍼、偽の鍼(効果をおよぼさない部位)、何もしないグループの3群を比較したRCTである。6週間後の最も強い痛みの改善度は明らかに真の鍼群で高かった。6週間から24週での効果は一定していて、やはり真の鍼>偽の鍼>無しであった。他のQOL評価でも真の鍼で良好であった。有害事象としては真の鍼であざの割合が多かった(47%、いずれもGrade1)。非薬剤性のオプションとしてAI関連関節症状に鍼を積極的に活用する価値がありそうであるが、十分なトレーニングを受けた医療者が鍼を行う必要はあろう。

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エリブリン・ペムブロリズマブ併用、トリプルネガティブ乳がんで良好な結果/サンアントニオ乳がんシンポジウム

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、自社のエリブリン(商品名:ハラヴェン)と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)との併用療法による転移性トリプルネガティブ乳がんを対象とした臨床第Ib/II相試験(ENHANCE1/ Study 218)のアップデート解析について、第40回サンアントニオ乳がんシンポジウムのスポットライトセッションで発表された旨を公表した。 ENHANCE1試験は、化学療法未治療あるいは前治療歴の2レジメン以下の転移性トリプルネガティブ乳がん患者を対象に、エリブリンとペムブロリズマブ併用の有効性と安全性を評価する、多施設共同単群非盲検第Ib/II相試験。主要評価項目として第Ib相パートにおいては安全性と忍容性を、第II相パートにおいては奏効率(ORR)を評価する。 本発表では、2017年5月31日時点の試験登録107例中106例の患者に対するアップデート解析について報告した。21日1サイクルとした、エリブリンおよびペムブロリズマブの併用療法において、ORRは26.4%(CR3例およびPR25例)であった(95%CI:18.3~35.9)。化学療法による前治療歴の有無、PD-L1発現によるORRの違いは認められなかった。副次評価項目の無増悪生存期間は4.2ヵ月(95%CI:4.1~5.6)、全生存期間は17.7ヵ月(95%CI:13.7~評価不能)と、良好な結果が示唆された。また、CRおよびPR患者28例における奏効期間は8.3ヵ月であった。 本試験において高頻度で確認された有害事象(上位5項目)は、疲労、末梢神経障害、悪心、脱毛、便秘であった。■参考ENHANCE1/ Study 218(Clinical Trials.gov)

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atezolizumab併用療法、進行肺がん1次治療の第III相試験でPFSに有意差(IMpower150)/ESMO Immuno Oncology 2017

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)±ベバシズマブへのatezolizumab併用の有効性と安全性を評価した第Ⅲ相試験IMpower150の結果が、スイス・ジュネーブで開催されたESMO Immuno Oncology Congress 2017で、ドイツ・Lung Clinic GrosshansdorfのM. Reck氏より発表された。 IMpower150試験には、全体で1202例が登録され、A~Cの3群のうちいずれかに無作為に割り付けられた。A群:化学療法+atezolizumab、B群:化学療法+atezolizumab+ベバシズマブ、C群:化学療法+ベバシズマブ。主要評価項目は、EGFR または ALK遺伝子変異陰性の ITT(intention-to-treat)解析集団、ならびにエフェクターT細胞の関連遺伝子発現(Teff)患者を含む集団における無増悪生存期間(PFS)、ITT解析集団における全生存期間(OS)である。今回発表されたのはB群とC群の比較結果の一部で、データカットオフは2017年9月15日、追跡期間最少値は9.5ヵ月であった。 ITT解析集団にはB群356例、C群336例が登録され、Teff集団にはB群155例、C群129例が登録された。ITT解析集団およびTeff集団におけるPFS中央値は、8.3ヵ月vs. 6.8ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.52~0.74、p<0.0001)および11.3ヵ月vs. 6.8ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.38~0.68、p<0.0001)であった。PD-L1陰性患者におけるHRは0.77(95%CI:0.61~0.99)であり、PD-L1の発現状態にかかわらず、atezolizumab併用群でPFSの延長が認められた。なお、B群とC群の安全性プロファイルは同等で、重篤な治療関連有害事象の発現は25%vs. 19%であった。 スイス・Centre Hospitalier Universitaire Vaudois (CHUV)のS.Peters氏は本結果に対し、「PD-L1またはエフェクターT細胞の関連遺伝子の発現状態によらず、免疫療法と化学療法の組み合わせが有効であったことは非常に重要。来年には、進行NSCLC患者への一次治療として、化学療法と免疫療法の併用、または2種類の免疫療法の組み合わせによる治療の有効性を評価したいくつかの他の試験結果が発表される予定で、どの戦略が最善であるかを判断していくことになるだろう」と述べている。■参考ESMO Immuno Oncology 2017プレスリリースIMpower150試験(Clinical Trials.gov)■関連記事atezolizumab+ベバシズマブ+化学療法、進行肺がん1次治療のPFS改善(IMpower150)/ロシュatezolizumabによる長期生存NSCLC患者の特徴:OAK/WCLC非小細胞肺がんへのatezolizumab、OAK試験の日本人解析/日本肺癌学会2017抗PD-L1抗体atezolizumab、非小細胞肺がんのOSを延長/Lancet抗PD-L1抗体atezolizumab、肺がんに承認:FDA

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日本初の抗PD-L1抗体アベルマブ発売。適応はメルケル細胞がん

 メルクセローノ株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:アレキサンダー・デ・モラルト)とファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:梅田一郎)は2017年11月27日、両社が共同開発を行っている抗PD-L1抗体アベルマブ(商品名:バベンチオ)を発売した。 効能・効果は、「根治切除不能なメルケル細胞癌」。メルケル細胞がん(MCC)は悪性度の高い皮膚がんの一種で、日本での患者数は100人に満たないと推定されるが、治療選択肢が限られているうえに、非常に進行が早く、予後不良である。 アベルマブはMCCに対し日本で承認された唯一の治療薬であり、日本初のヒト型抗PD-L1抗体薬でもある。2016年12月に、MCCに対して希少疾病用医薬品の指定を厚生労働省から受けている。同指定およびこの度の承認取得は、日本も参加した転移性MCC患者を対象とした多施設共同第Ⅱ相試験JAVELIN Merkel 200の結果に基づいている。 同薬剤は、米国食品医薬品局が2017年3月に、転移性MCCに対する初の治療薬として、5月には進行性尿路上皮がんに対する治療薬として承認している。また、9月には、スイス医薬品局が化学療法後に進行した転移性MCCに対する治療薬として、欧州委員会が成人の転移性MCCに対する治療薬として承認している。■参考ファイザー株式会社プレスリリースJAVELIN Merkel 20試験(Clinical Trials.gov)■関連記事日本初の抗PD-L1抗体アベルマブ、他の抗体との違いも抗PD-L1抗体アベルマブ、メルケル細胞がんに国内承認

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atezolizumab+ベバシズマブ+化学療法、進行肺がん1次治療のPFS改善(IMpower150)/ロシュ

 スイス・ロシュ社は2017年11月20日、進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、抗PD-L1抗体atezolizumabの第Ⅲ相試験IMpower150の結果を発表した。試験の結果、atezolizumabとベバシズマブおよび化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)の併用は、ベバシズマブと化学療法の併用と比較して、複合主要評価項目の1つ無増悪生存期間を有意に改善したと発表した。具体的な数値は発表されていない。 また、同じく主要評価項目である全生存期間(OS)について、初期解析では未達成であるが、期待が持てるものだとしている。OS解析の結果は2018年前半に予定されているとのこと。 atezolizumabとベバシズマブおよび化学療法併用の安全性は、各薬剤の既知の安全性プロファイルと一致していた。IMpower150試験の結果は、2017年12月7日からスイスのジュネーブで開催されるESMO Immuno Oncology Congress 2017で発表される。■参考ESMO Immuno Oncology Congress 2017IMpower150試験(Clinical Trials.gov)■関連記事atezolizumabによる長期生存NSCLC患者の特徴:OAK/WCLC非小細胞肺がんへのatezolizumab、OAK試験の日本人解析/日本肺癌学会2017抗PD-L1抗体atezolizumab、非小細胞肺がんのOSを延長/Lancet抗PD-L1抗体atezolizumab、肺がんに承認:FDA

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EGFR変異陽性肺がん、今後の治療シークエンスは?

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するEGFR-TKIの選択肢が増えてきている。これらの薬剤をどう使用すれば、患者さんにとって最大限のベネフィットが得られるのだろうか。2017年10月30日に開催されたアストラゼネカ株式会社主催のメディアセミナーで、関 順彦氏(帝京大学医学部附属病院腫瘍内科 教授)が、開発中の薬剤を含め、各薬剤の無増悪生存期間(PFS)や毒性から、今後の治療シークエンスについて展望した。 現在、EGFR変異陽性進行NSCLCの1次治療として承認されているのは、EGFR-TKIのゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブの3剤で、これらのPFS中央値はどれも約10~11ヵ月である。これらの薬剤が耐性となった患者の約50%はT790M陽性であり、オシメルチニブが有効である。2次治療でのオシメルチニブの効果を検討したAURA3試験(第III相)において、PFS中央値が10.1ヵ月(対照群のプラチナ製剤+ペメトレキセドは4.4ヵ月)であったことから、1次治療と2次治療を合わせたPFS中央値が約20ヵ月まで延長すると、関氏は説明した。 一方、オシメルチニブの1次治療(未承認)でのPFS中央値は、オシメルチニブと標準治療(ゲフィチニブもしくはエルロチニブ)を比較したFLAURA試験(第III相試験)で18.9ヵ月(標準治療は10.2ヵ月)と9月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された。また、10月の日本肺癌学会で発表された日本人サブセットにおけるPFS中央値も、19.1ヵ月と全体とほぼ同様の結果であった(標準治療は13.8ヵ月)。 そのほか1次治療として開発されている薬剤では、第2世代EGFR-TKIのdacomitinib のPFS中央値が14.7ヵ月(第III相試験)、エルロチニブとベバシズマブの併用が16.0ヵ月(第II相試験)と報告されている。これらによる1次治療後、T790M陽性の患者に2次治療としてオシメルチニブを使用すると、1次治療と2次治療を合わせたPFS中央値はそれぞれ約25ヵ月と約26ヵ月となり、オシメルチニブによる1次治療のPFS中央値より長い。しかしながら、関氏は、1次治療としてdacomitinibやエルロチニブとベバシズマブの併用を用いた場合、2次治療では約半数にあたるT790M陰性の患者は化学療法を使用せざるを得ないことを指摘した。さらに、オシメルチニブがこれらより忍容性が高いことを強調し、1次治療では「オシメルチニブがまずは標準治療になるべき」とし、「そこからオプションを考えていく治療になるだろう」と述べた。 また、オシメルチニブを1次治療で使用すると分子標的薬のシークエンスができないのではないかとの考えには、オシメルチニブを1次治療の基軸とした開発が進んでいることを紹介し、「近未来的には、オシメルチニブの後に化学療法しか使えないという状況にはならないだろう」と予測した。■関連記事HR0.46、オシメルチニブが1次治療で標準治療を上回る(FLAURA)/ESMO2017オシメルチニブ、FLAURA試験の日本人サブグループ解析/日本肺癌学会2017オシメルチニブ、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療でブレークスルー・セラピーに指定

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第41回

第41回:終末期を支える5つの薬剤監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 終末期を過ごす形態は、大きく分けて4種類あると思います。入院医療では、一般病棟か緩和ケア病棟か。在宅医療では、自宅か施設か。緩和ケア病棟やDPC病棟は包括医療費なので、呼吸困難に対するオプソ内服や口腔内分泌に対するアトロピン点眼薬など、日本では保険外使用になっている下記に述べるような医薬品が比較的使いやすい環境です。一方、在宅の看取りに関しては、ケア提供者の経験や熱意が大きく影響します。家族にとっては初めての体験ばかりなので、現状に対する不安よりも、見えない今後に対する不安が大きいことが多いです。こうした点で、実際に身内を自宅で看取ったことのある家族は、大きな力になります。これからの時代は、政策的に施設看取りが求められている印象です。非DPC病棟や在宅医療でも、終末期医療に対する薬が「保険外使用だから」と使いにくい状況が改善されることを望みます。 以下、Am Fam Physician.3月15日号1)より終末期に関わる症状は、急性症状を治療するよりも予防するほうが容易であることが多いため、症状を予防する対策を立てるべきである。嚥下機能が低下してきたら、薬剤は舌下や皮下、直腸坐薬に切り替える。薬は少量から開始し、目的の効果が出るまで増量すべきである。適切な症状コントロールにより、終末期を安静にかつ尊厳を持って、快適に過ごすことができる。疼痛は、最期の1ヵ月頃に50%程度の人に現れる。身体的な痛みだけでなく、精神的、社会的、スピリチュアル面も考慮に入れるべきである。オピオイドは終末期の呼吸困難感や痛みを緩和に用いられる(Evidence rating B:オピオイドを呼吸困難に使用すべき)。せん妄は治療しうる病態により起こることもあり、その病態を特定して治療可能なら治療すべきである。せん妄に対しては、ハロペリドールやリスペリドンが効果的である(Evidence rating C)。嘔気・嘔吐に対しては、原因に即した薬物治療が行われるべきである。予期できる嘔気に対してはベンゾジアゼピンが効果的で、とくにオンダンセトロンは化学療法や放射線治療に伴う嘔気に対し効果的であり、消化管通過障害による嘔気にはデキサメサゾンやハロペリドールを使用すべき(Evidence rating B)であるが、オクトレオチド酢酸塩の効果は限定的である。便秘は痛みや吐き気、不安感、せん妄を引き起こすので、便秘の予防は終末期ケアのとても大切な部分であり、緩下剤を大腸刺激性下剤と併用して使うのが望ましい。熱を下げることは、患者の要望とケアの目標に基づいて行うべきである。口腔内の唾液分泌があると、呼吸する時に呼吸音が大きくなることがあり、死期喘鳴といわれる終末期によくみられる症状である。このことを事前に伝えておくと、家族や介護者の不安は軽減する。また、抗コリン薬は口腔内の分泌を緩やかにするといわれているが、質の高い研究はない。アトロピン点眼薬は、口腔気道分泌液を抑えることができる(Evidence rating C)。終末期を支える代表的な5つの薬剤を以下に挙げる。焦燥感や嘔気を抑えるハロペリドールの舌下熱を下げるアセトアミノフェンの坐薬不安を抑えるロラゼパムの舌下痛みや呼吸困難を抑えるモルヒネの舌下口腔内分泌を抑えるアトロピン点眼薬の舌下※Evidence rating B=inconsistent or limited quality patient-oriented evidence、Evidence rating C=consensus, disease-oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series.※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Albert RH. “End-of-Life Care: Managing Common Symptoms” Am Fam Physician. 2017 Mar 15;95:356-361.

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日本の肺がん患者さんを一人でも多く助けたい 第9回【肺がんインタビュー】

第9回 日本の肺がん患者さんを一人でも多く助けたい近年の肺がん治療の分野で大きな変化をもたらしてている企業の1つであるアストラゼネカ。肺がんにおける世界の開発状況も含め、アストラゼネカ・グローバル医薬品開発担当エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフメディカルオフィサー Sean Bohen氏に単独インタビューした。FLAURA試験の結果について、欧米の臨床医の反響はどのようなものですか?アストラゼネカ・グローバル医薬品開発担当エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフメディカルオフィサー Sean Bohen氏臨床医および治験担当医は、FLAURA試験によって示された、主要評価項目であるPFSの50%リスク減という結果を説得力あるものと受け取ったようです。興味深いことに、副次的評価項目のOSは、イベント到達率は現時点まだ25%にもかかわらず、生存曲線は2群間で既にはっきりと離れています。ESMOでの発表からあまり時間が経っていないにもかかわらず、米国NCCNのガイドラインでは、FLAURA試験結果を基に、最近、オシメルチニブをEGFR変異肺がんの1次治療に組み入れました。エビデンスレベルの分類はカテゴリー2Aと、高く評価されています。FLAURA試験OSデータ発表の予定は?OSデータの取得はイベントの蓄積状況によりますので、今のところ時期は定かではありませんが、2019年中に発表できることを期待しています。FLAURAは1次治療の試験ですので、PD後の治療がOSデータに大きなインパクトを与えます。後治療への適格患者さんは非常に多くおり、幸いにもオシメルチニブ群の患者さんは長期生存する方が多くみられます。一方で、この有効性がOSに到達するまでの期間を長くしています。オシメルチニブは1次治療で有望な結果が出ました。しかし、一方でオシメルチニブが耐性になると現在は手段がありません。オシメルチニブの耐性対策として他剤併用などの試験は行っていますか?画像を拡大するsavolitinib関連のトライアルが発表された第18回世界肺癌学会当社のパイプラインにはsavolitinibというMET阻害薬があります。MET増幅はEGFR阻害薬の耐性に特徴的なメカニズムですので、オシメルチニブとsavolitinibの併用は科学的に合理性があります。今回の世界肺癌学会では、オシメルチニブとこのsavolitnibuをEGFR変異陽性でMET増幅を有する患者さんを対象にした第I相b試験のTATTON trialの結果が発表され、期待できる有効性が示されました。また、savolitinibとの併用は、同様の患者さんを対象にゲフィチニブでも行われています。EGFR-TKIとMET-TKIの併用がオシメルチニブによる獲得耐性を治療できるのか、あるいはこの2剤の併用が、耐性獲得そのものを抑制できるのか、この試験には2つの問いがあります。まだ答えは出ていませんが、発展的なテーマだといえます。そのほかのオシメルチニブの試験について教えていただけますか?手術可能なEGFR変異NSCLC患者さんの術後補助療法として、ADAURA試験が進行中です。Stage IIIでは、術後補助療法を行っても多くの患者さんが再発してしまうという問題がありますが、腫瘍を切除したEGFR変異の患者さんにオシメルチニブを加えることで、再発を防ぐ、あるいは遅らせることができるかを検討しています。そうすることができれば、患者さんの貴重な時間をより延長できます。また、このセッティングでは治療が長期にわたる患者さんもおられます。そういった患者さんはQOLの維持が非常に重要な課題となってきますので、忍容性の高い薬剤を用いることが重要です。つまり、オシメルチニブの特性を生かせる分野だと思います。貴社の抗PD-L1抗体durvalumabのPACIFIC試験の結果が大きな反響を呼んでいます。この試験の対象となった手術不能なStage IIIのNSCLCでの問題はどのようなものでしょうか?画像を拡大するPACIFIC試験が発表されたESMO2017切除不能Stage III NSCLCにおける標準療法は化学放射線同時併用療法(CCRT)です。しかし、この治療法の成績は芳しくなく、治癒または長期生存が得られる患者さんは15%程度です。CCRTについては、強化放射線療法、化学療法の強化、放射線と化学療法の逐次投与など、幾多の研究がなされたものの、生存率向上につながる成果は得られず、過去約20年間にわたり、ほとんど進展はありませんでした。このため、CCRTの終了後の標準療法(SOC)は経過観察に留まっています。観察だけなのであれば、患者さんの再発までの期間をできるかぎり延長する治療を提供することができないか、との考えから実施したのがPACIFIC試験です。CCRT後のSOCである経過観察に対し、durvalumabによる維持療法が生命予後を改善するか、。というテーマに対し、試験結果はご存じのとおりで、durvalumab群は、進行と死亡のリスクを有意に減らしました。OSデータはまだ未到達ですが、良好な傾向が見られており、今後も試験を継続していきます。PACIFIC試験からは多くの学びがありました。durvalumabの安全性についても評価を行い、高い忍容性と毒性の低さを確認することができました。治療が長期におよぶセッティングにおいては、これらの要素は重要です。今回の試験で確認できたdurvalumabの安全性プロファイルは、durvalumabがより幅広い状況下で使用される可能性を示しています。durvalumabは今後どのような試験が行われる予定ですか? 他薬剤との併用などを含め教えていただけますか?非小細胞肺がんではMYSTIC試験があります。この試験はStage IVの1次治療で、durvalumabまたはdurvalumab+抗CTLA-4抗体tremelimumabと標準化学療法であるプラチナダブレットの治療成績を比較したものです。本年(2017年)、主要評価項目の1つであるPFSの結果を発表しました。エンドポイントを達成することはできませんでしたが、免疫チェックポイント阻害薬ではより重要視されるOSを別の主要評価項目として試験を継続中であり、来年の上半期には結果を発表できる予定です。また、Stage IVの1次治療では、durvalumab単独またはdurvalumab+tremelimumabと標準化学療法の併用と、標準化学療法単独を比較したPOSEIDON試験も進行中です。さらに、中国を中心にStage IVのPD-L1発現患者の1次治療としてdurvalumab単独と標準化学療法を比較したPEARL試験が進行中です。一方、腫瘍を切除した患者さんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果も検討しています。durvalumabの術後補助療法の有効性についてNational Cancer Institute of Canadaが主体となって研究を行っています。この試験はdurvalumabまたはdurvalumab±tremelimumab術後アジュバントと化学療法によるアジュバントの比較をみるもので、現在患者登録中です。小細胞肺がんでは、進展型の1次治療でdurvalmab単独またはdurvalmab+tremelimumabと標準化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)の併用と標準化学療法単独を比較したCASPIAN試験が進行中です。肺がん治療薬の開発計画について教えていただけますか?AstraZenecaにとってオンコロジーは戦略的に非常に重要な疾病領域であり、とくに、肺がん領域は、durvalumab、tremelimumab、前述のsavolitinibをはじめ多くのパイプラインが控えています。また、重要な開発基盤の1つにがん細胞のDNA損傷修復不全をもたらすPARP阻害薬があり、まだ早期開発段階ながら、今後、肺がんにおいても臨床化の機会があるかも知れません。抗PD-1、PD-L1薬で多くの患者さんを助けられるようになりましたが、まだ十分とは言えません。免疫腫瘍の分野でも、免疫システムをより有効に活用する抗CD-73抗体、TLR7、アデノシンをターゲットとした小化合物などの多くのパイプラインがあります。貴社にとって日本市場の重要性は?日本は、アストラゼネカが持続的な成長を維持していくうえで、非常に重要な国です。当社にはオンコロジーをはじめ、5つの成長基盤があり、その1つを日本としています。日本は、5つの成長基盤に掲げられている唯一の国です。日本の重要性はビジネス観点からも多くあげられますが、サイエンスの観点からも示すことができます。たとえば、オシメルチニブの対象となるEGFR変異NSCLCは、欧米よりも日本をはじめとするアジアではるかに多く患者さんがおり、当社が果たす貢献が大きい地域といえます。以前は、患者さんのリクルートがネックとなり、日本がグローバル試験に参加できないことがありました。しかし、最近のFLAURAやPACIFICでは、日本も主要国の1つとしてグローバル試験に組み込まれるようデザインされており、以前のようにローカルで別の試験を行う必要はなくなりました。実際、日本はオシメルチニブのグローバル第I相・第II相試験から参加し、その結果、日本は米国での承認からわずか4ヵ月の差で承認を取得しました(米国2015年11月、日本2016年3月)。また、オシメルチニブは、第I相試験から承認まで4年未満と非常に短期間での開発を実現しましたが、その過程において、日本から多くの患者さんがリクルートされ、開発を後押ししました。当社のゴールはグローバルと日本の申請を同時に行うことですが、そのゴールに限りなく近付いています。当社は、新たな治療を待ち望む日本の患者さんを待たせてはいけないと思っています。そして、より多くの患者さんを助けることができるよう、1日も早い申請を目指して開発を進めていきます。参考MYSTIC試験(Clinical Trials.gov)TATTON試験(Clinical Trials.gov)ADAURA試験(Clinical Trials.gov)POSEIDON試験(Clinical Trials.gov)CASPIAN試験(Clinical Trials.gov)Canadian Cancer Trials Group IFCT1401試験(Clinical Trials.gov)

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化学療法制吐薬としてのオランザピンの本邦第II相試験/IJCO

 近年、がん化学療法に対する制吐薬としてのオランザピンの研究結果が報告されている。本邦においても、高度催吐性化学療法に対する、オランザピンの多施設無作為化二重盲検第II相用量設定試験が行われ、国立がん研究センター中央病院の矢内 貴子氏らがInternational Journal of Clinical Oncology誌に結果を報告した。 対象は、固形がんでシスプラチン50mg/m2以上の高度催吐性化学療法を受けている患者。登録患者は、無作為に標準的制吐療法(アプレピタント、パロノセトロン、デキサメタゾン)+オランザピン5mg/日、または標準的制吐療法+オランザピン10mg/日(両群ともオランザピンは1日目~4日目投与)に、無作為に割り付けられた。主要評価項目は遅発性嘔吐(シスプラチン投与後20~12時間)に対する完全奏効(嘔気なしか救済治療なし)率。 主な結果は以下のとおり。・153例の患者が5mg(n=77)と10mg(n=76)に無作為に割り付けられた。・遅発相における完全奏効率は、オランザピン10mg群では77.6%(80%CI:70.3~83.8、p=0.01)、5mg群では85.7%(80%CI:79.2~90.7、p<0.01)であった。・頻度の高い有害事象は眠気で、10mg群では53.3%、5mg群では45.5%の発現率であった。 オランザピン10mg、5mg群とも遅発性嘔吐に対して有意な改善を示したが、完全奏効率と眠気の少なさからオランザピン5mgが第III相以降の推奨用量となった。■関連記事高度催吐性化療の制吐薬としてオランザピン/NEJM

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nab-パクリタキセル+durvalumab、肺がん2次治療以降の効果/WCLC2017

 化学療法の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)への追加は、奏効率の改善など効果を強化するとの報告がある。nab-パクリタキセル(nab-P)+カルボプラチンとICIの組み合わせは毒性を増すことなく非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する有効性を早期臨床試験において示した。第18回世界肺癌学会(WCLC)では、米国・Washington University School of MedicineのRamaswamy Govindan氏がnab-P+durvalumabの2~3次治療としての有効性と安全性を報告した。 abound.2L+試験はnab-Pの第II相オープンラベル多施設試験である。今回の発表はnab-Pとdurvalumabを併用した単アームの解析。患者はタキサン治療歴なし、プラチナベース化学療法歴1回(ICI使用は許容)のNSCLC79例。対象はnab-P(100mg/m2、1日目8日目、21日サイクル)とdurvalumab(1,125mg/日、15日目、21日サイクル)の投与を受けた。 患者の平均年齢は63歳、男性68.4%、白人97.5%、扁平上皮がん29.1%、非扁平上皮がん69.6%、現・前喫煙者89.9%、前ICI治療は11.4%であった。 nab-P+durvalumab群のPFSは4.5ヵ月(3.4~5.8)、OSは未到達であった。ICI治療歴のサブグループ解析をみると、ICI前治療なし患者のPFSは4.4ヵ月(3.0~5.7)、ICI前治療ありの患者では6.9ヵ月(1.4~NE)と、ICI前治療あり群で良好であった。組織型別にみると、非扁平上皮がんのPFSは4.2ヵ月(2.7~5.7)、扁平上皮がんのPFSは5.9ヵ月(3.0~7.8)であった。奏効率(ORR)は全体では26.6%、非扁平上皮がんでは23.6%、非扁平上皮がん34.8%であった。 nab-P+durvalumabでよくみられる治療関連有害事象は、末梢神経障害24.4%、呼吸困難20.5%、好中球減少16.7%(発熱性好中球減少症は発症なし)、貧血28.2%であった。

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アレクチニブ耐性の日本人進行NSCLCへのセリチニブの有効性は(ASCEND-9)/日本肺癌学会

 ALK遺伝子転座陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する一次治療として、アレクチニブが本邦で推奨されているが、多くの患者で耐性獲得とともに、再び進行する。第58回日本肺癌学会学術集会で、国立がん研究センター中央病院の堀之内 秀仁氏が、アレクチニブ治療歴のあるALK陽性NSCLC患者における第2世代ALK-TKIセリチニブの第II相非盲検単群試験、ASCEND-9の結果について発表した。 対象は、アレクチニブ治療歴(±クリゾチニブおよび/または1レジメンの化学療法歴)があり、全身状態が良好(WHO PS 0~1)なALK陽性の局所進行・転移性NSCLC患者で、日本国内の9施設から20例が組み入れられた。28日間を1サイクルとして、セリチニブ(750mg/日)が、増悪または許容できない有害事象が発現するまで投与された。主要評価項目は、RECIST v1.1による奏効率(ORR)で、副次評価項目は、疾患制御率(DCR)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などであった。 患者背景については、被験者の多くがStageIV (19例) で、StageIIIBが1例であった。12例で脳転移がみられた。前治療歴については、4例がクリゾチニブによる治療を受けており、14例が2レジメン以上の治療を受けていた。また、アレクチニブで完全奏効(CR)が得られていたのが3例、部分奏効(PR)が得られていたのが14例であった。 試験の結果、5例の患者で奏功が確認され(CRが1例、PRが4例)、ORRは25%(95%信頼区間[CI]:8.7~49.1)であった。DCRは70%(95%CI:45.7~88.1)、DORおよびTTRの中央値はそれぞれ6.3ヵ月(95%CI:3.5~9.2)、1.8ヵ月(1.8~2.0)。PFS中央値は、3.7ヵ月(95%CI:1.9~5.3)だった。 有害事象(AE)については、すべての患者でGrade1以上のAEが発現した。重篤な有害事象(SAE)は10例(50%)で発現した。AE発現のために投薬を中止したのが3例(15%;貧血、急性腎障害、および胸水)で、投薬中断が必要となったのは18例(90%;ALT増加、下痢、血中クレアチニン上昇など)であった。多くみられたAEは下痢(17 例[85%])、悪心(16例 [80%])および嘔吐(13 例[65%])であった。■参考NCT 02450903(Clinical Trials.gov)■関連記事セリチニブ、ALK陽性肺がん1次治療に国内適応拡大ALK阻害剤のコンパニオン診断薬発売/ロシュ・ダイアグノスティックス

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日本初の抗PD-L1抗体アベルマブ、他の抗体との違いも

 抗PD-L1抗体として日本で初めて、アベルマブ(商品名:バベンチオ)が9月27日に承認された。アベルマブは、今回承認されたメルケル細胞がん(MCC)以外に、胃がん、非小細胞肺がん、頭頸部がん、腎細胞がん、尿路上皮がん、リンパ腫、固形がんに対して、国内で臨床試験を実施している。11月6日、共同開発を進めるメルクセローノ株式会社とファイザー株式会社によるプレスセミナーが開催され、西川 博嘉氏(国立がん研究センター研究所腫瘍免疫研究分野/先端医療開発センター免疫トランスレーショナルリサーチ分野 分野長)と山﨑 直也氏(国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科 科長)が講演した。アベルマブは他の抗PD-L1抗体にはないプラスαがある可能性 抗PD-L1抗体と抗PD-1抗体の抗腫瘍効果は、T細胞活性化を調節する免疫チェックポイント経路の1つであるPD-L1/PD-1経路の阻害による。がん細胞は免疫から逃れるために、PD-L1を発現しT細胞のPD-1に結合することによって、T細胞活性化を抑制する。そこで、抗PD-L1抗体はがん細胞のPD-L1に、抗PD-1抗体はT細胞のPD-1に結合することによって、PD-L1 とPD-1の結合を阻害してT細胞を活性化し、抗腫瘍効果を発揮する。 抗PD-1抗体としては、すでにニボルマブとペムブロリズマブが承認されているが、抗PD-L1抗体ではアベルマブが国内で初めて承認された。現在、アベルマブ以外の抗PD-L1抗体はatezolizumab、durvalumabが開発されているが、西川氏によると、アベルマブは他の2剤とは異なるという。すなわち、アベルマブはヒト化IgG1抗PD-L1モノクローナル抗体(他の2剤はIgG4)であり、がん細胞のPD-L1に結合したアベルマブに、NK細胞やマクロファージのFc受容体が結合することによってがん細胞を直接攻撃するADCC(抗体依存性細胞傷害)活性があることがマウスで認められているという。西川氏は「このようなプラスαの作用があることがヒトではいいのかどうか、今後の臨床データ次第ではあるが注目すべき点だ」と述べた。アベルマブは標準治療がなかったMCCに対する初めての治療薬 今回承認されたMCCは、米国では2006年の新規患者が約1,600人で、10年で2倍に増加している。わが国の年間新規患者は100人前後と推定され、山﨑氏によると「国立がん研究センターにおける今年の新規患者は月に1人くらい」だという。 MCCは悪性度の高い皮膚がんの1つで、遠隔転移症例では1~2年以内に死亡する。進行期における標準治療は確立されておらず、従来の化学療法(プラチナ製剤±エトポシド)による1次治療の奏効率は55%である。しかし、いったん小さくなってもすぐに無効となるため、奏効期間(DOR)中央値は約3ヵ月で非常に短かったと山﨑氏は説明した。一方、アベルマブによる臨床試験成績は、転移MCCに対する1次治療のコホートの中間解析時の奏効率が62.5%、2次治療以降のコホートでは、奏効率31.8%、6ヵ月奏効持続率93%、12ヵ月奏効持続率74%と、効果が持続することを強調した。 山﨑氏はアベルマブを「進行が速く予後不良ながんでありながら承認薬剤がなかったMCCに初めて標準治療薬が承認され、その効果も高い」と評価し、さらに今後、術後再発予防として使用できる可能性についても期待を示した。

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がん治療の末梢神経障害、皮膚障害に指針/日本がんサポーティブケア学会

 Supportive care。日本では支持療法と訳されることが多い。しかし、本来のSupportive careは、心身の異常、症状の把握、がん治療に伴う副作用の予防、診断治療、それらのシステムの確立といった広い意味であり、支持療法より、むしろ支持医療が日本語における適切な表現である。2017年10月に行われた「第2回日本がんサポーティブケア学会学術集会」のプレスカンファレンスにおいて、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)理事長 田村和夫氏はそう述べた。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』発刊 JASCC神経障害部門部会長である東札幌病院 血液腫瘍科 平山泰生氏が『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』発刊について紹介した。 がん薬物療法の進化によるがんの治療成績向上と共に、抗がん剤による副作用も対処可能なものが増えてきている。しかし、本邦における4,000例以上のがん患者の追跡調査では、化学療法終了後1ヵ月以内の神経障害の発生頻度は7割、6ヵ月以降でも3割であった。神経障害はいまだに患者を苦しめているのが現状である。 この神経障害に対する有効な薬物は明らかではない。JASCCが行った調査では、がん専門医の神経障害に対する処方は、抗けいれん薬(97%)、ビタミンB12(78%)、漢方薬(61%)、その他抗うつ薬、消炎鎮痛薬、麻薬など、さまざまな薬剤を用いており、薬剤の有効性かわからない中、医療現場の混乱を示唆する結果となった。 一方、米国では2004年にASCOによる「化学療法による末梢神経障害の予防と治療ガイドライン」が発行されている。しかし、ビタミンB12、消炎鎮痛薬などの記載がないなど日本の状況とは合致していない。そのため、本邦の現状を反映した臨床指針が望まれていた。 Mindsの作成法に準じて作られた『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』では、この分野のエビデンスが少ないため、ガイドラインとは銘打たず"手引き"としている。同書には薬物の有効性に関するクリニカルクエスチョンも掲載されており、ビタミンB12、漢方、消炎鎮痛薬、麻薬など、日本でしか使われていないような薬剤についても記載がある。「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」出版を目指す JASCC皮膚障害部門部会長である国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科の山崎直也氏が「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」の出版について紹介した。 がん治療の外来への移行、抗がん剤開始時期の早期化、生存期間の延び、長期間にわたり社会と触れ合いながら治療を受けるがん患者が増えている。一方で、分子標的薬をはじめ、皮膚有害事象を発現する薬剤も増えている。このような社会で生きるがん患者にとって、アピアランスケアは非常に重要な問題である。 皮膚障害の治療に対するエビデンスは少なく、世界中が医療者の経験値で対応しているのが現状である。そのような中、昨年(2016年)がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班により「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」が作成された。さらに、目で見てすぐわかる多職種の医療者に伝わるようなものをという考えから、JASCC皮膚障害部門を中心に「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」を作成している。 その中では、最近の分子標的薬の皮膚障害を中心に取り上げているが、治療進歩の速さを鑑み、免疫チェックポイント阻害薬についても収載。総論、発現薬剤といった基本的事項に加え、重要な重症度評価およびそれに対する診断・治療のポイントを、症状ごとに症例写真付きで具体的に説明している。年内には発売できる見込みだという。

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NSCLC1次治療におけるdurvalumab±tremelimumabと化学療法の併用/WCLC2017

 NSCLCにおいて、PD-1阻害薬の単独療法は化学療法と比べ、結果を改善した。また、免疫チェックポイント阻害剤とプラチナベースの化学療法の併用についても、前臨床および早期臨床データで相乗的な効果を示すことが確認され、この治療戦略もまた結果を改善する可能性があることを示唆している。 このCanadian Cancer Trials Groupによる試験では、治療歴のない転移性非小細胞肺がん患者に対する、抗PD-L1抗体durvalumab単独あるいはdurvalumab+抗CTLA-4抗体tremelimumabと化学療法の併用療法を評価している。試験の主要目的は、化学療法と併用したdurvalumab±tremelimumabの第II相推奨用量を確立することであった。副次目的には、安全性、忍容性、durvalumab±tremelimumab+化学療法の抗腫瘍活性など。 durvalumabとtremelimumab用量レベル(DL)は0~4に分類された(DL0:durvalumab15mg/kg 3週ごと、DL1:durvalumab 15mg/kg 3週ごと+tremelimumab 1mg/kg×1回、DL2a:durvalumab 15mg/kg 3週ごと+tremelimumab 1mg/kg×3回 6週ごと、DL3:durvalumab 1,125mg 3週ごと+tremelimumab 56mg×2回 3週ごと、DL4:durvalumab 1,500mg 3週ごと+tremelimumab 75mg×1回)。化学療法は非扁平上皮がんではペメトレキセド+シスプラチン/カルボプラチンにペメトレキセドの維持療法、扁平上皮がんではゲムシタビン+シスプラチン/カルボプラチンであった。 現在までに45例(平均年齢62歳、男性44%、前例ECOG PS1以下)が、ペメトレキセド+プラチナコホートで346サイクル、ゲムシタビン+プラチナコホートで55サイクル治療を受けた。 全体的にこれら治療レジメンの忍容性は高く、ほとんどの有害事象はGrade2以下であり、化学療法由来のものであった。用量と有害事象の相関は認められなかったが、tremelimumabの追加で免疫療法関連有害事象(irAE)が増加した。 中間解析において、ペメトレキセド+プラチナコホートの奏効率(ORR)は57.1%(39.4~73.7)、ゲムシタビン+プラチナコホートのORRは37.5%(8.5~75.5)であった。

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【GET!ザ・トレンド】HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)

女優アンジェリーナ・ジョリーさんの報道などで社会的認知度が高まりましたが、HBOCとはどのようなものか教えていただけますか?HBOCは、Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer Syndrome、遺伝性乳がん卵巣がん症候群です。HBOCはBRCA1、BRCA2遺伝子の変異が原因で発症します。このBRCA1/2遺伝子は、もともと損傷した遺伝子の修復機能を持っていますが、一部に変異を起こし機能不全になることで、逆にがんが発症しやすくなります。BRCA1/2遺伝子変異陽性者の生涯乳がん発症頻度は41~90%、卵巣がんの発症率は8~62%で、一般人に比べ、乳がんでは6~12倍、卵巣がんでは8~60倍です。BRCA1/2の変異は、乳がん全体の5~10%、卵巣がん全体の10%にみられます。若年発症が多く、再発を繰り返している患者さんが多いという特徴もあります。また、BRCA1/2遺伝子変異は、乳がん、卵巣がん以外にも前立腺がん、膵臓がんの発症にも影響しています。日本でも海外と同程度の患者さんがいるのでしょうか?2013年に行われた日本乳癌学会の班研究「HBOC患者および未発症BRCA変異陽性者への対策に関する研究」の結果では、遺伝学的検査を受けた日本人の乳がん患者さん260例の30%に、BRCA1/2の病的変異を認めています。遺伝学的検査を受けた患者さんの割合を考えると、欧米と同程度の患者がいると推測されます。5~10%というと少なく聞こえますが、日本の乳がん罹患数は年間約9万例(国立がん研究センターによる2017年のがん統計予測では8万9,100例)ですので、推定4,500~9,000例となります。さらに、今まで乳がんの診断を受けた患者さんや、これら陽性患者さんの背景にいる家系員も考えると、HBOC患者さんは潜在例も含め相当な数であると考えられます。HBOCでは、通常の患者さんとは医療の方針が変わるのでしょうか?BRCA1/2の病的変異が認められる場合、年1回のマンモグラフィー+MRI検査、化学予防、リスク低減外科療法(予防的乳房切除、卵管卵巣摘出術)といった、通常のがんとは異なる選択肢を考える必要があります。治療法についても、HBOC患者さんの場合は、一般的な乳がん卵巣がんとは異なってきます。たとえば、BRCA1変異の乳がんでは、通常の乳がんと異なり、70~80%がトリプルネガティブ乳がん(TNBC)です。BRCA2変異例では、一般的な乳がんと同様70~80%がHR陽性ですが、増殖能が高いルミナールBが多くを占めます(化学療法の対象)。このように特性を理解した治療選択が必要となります。また、BRCA1/2変異例に効果の高いPARP阻害薬も登場しています。さらに最近では、BRCA1変異例がタキサン耐性、プラチナ感受性であるなど、BRCA1と2の違いも明らかになりつつあります。さらに、手術についても考慮が必要です。BRCA1/2陽性乳がんの場合、手術後の同側乳がん、対側乳がんともに非遺伝性症例に比べ発症率が高いため、手術方針も変わってくる可能性があるためです。HBOCの診療を行うにあたり、どのようなことが障害となっているのでしょうか?遺伝子変異が疑われる方には、遺伝子カウンセリングを行い、インフォームド・コンセントの上で、遺伝学的検査、検診と進めていくことになりますが、実際には遺伝子カウンセリング、遺伝学的検査は公的保険の対象ではありません。検診についても同様です。若年性発症の場合は、Dense Breast(高濃度乳房)のためマンモグラフィーでは発見しづらく、MRIが有用とされていますが、日本では検診目的のMRIに公的補助はありません。その後の予防切除も保険適応ではありません。卵巣がんについては、卵管卵巣の予防的切除によるリスク低減手術が唯一死亡率を減らす手段ですが、自費診療となってしまいます。欧米では考え方が違っており、早期検診や予防切除といった積極的介入でHBOC患者の生命予後が改善されることから、1人のHBOC患者も逃さないよう、BRCA1/2変異者は25歳からの定期検診を推奨するなど、幅広いスクリーニングを行っています。公的補助をどう求めていくのか、これが日本での大きな課題といえます。HBOC診療向上のための現在および今後の活動について教えていただけますか?HBOC研究の向上を図るために、研究団体として「NPO法人 日本HBOCコンソーシアム」を設立し、日本のHBOCの実態解明、HBOCの効果的医療システムの提供を目的に、HBOC患者登録データべースの構築、教育セミナーの開催を行っています。また、関連3学会(日本乳癌学会、日本産科婦人科学会、日本人類遺伝学会)共同のガイドラインを作成しています(10月発刊)。さらに、この関連3学会共同で、「一般社団法人 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構」を2016年に設立しました。この機構では、診療体制の施設認定要件(婦人科腫瘍専門医・乳腺専門医・臨床遺伝専門医の在籍、予防的手術設備など)を定め、HBOCを総合的、あるいは連携して診られる体制作りを行っています。HBOC管理加算などの保険適応や、現在、医療機関内で十分な身分保障のない遺伝子カウンセラーの国家資格化も目指しています。HBOCは、一般人の10倍ものがん発症率があるため、予防とはいえ、さまざまな介入をすることで、長期的な医療費削減になる可能性もあります。将来的には、日本の保険診療データを利用した発症仮説を立て、医療経済評価を行えればと考えています。※現在HBOCの遺伝学的検査、カウンセリングを行っている施設は日本HBOCコンソーシアムのホームページで公開されている。1)NPO法人 日本HBOCコンソーシアム2)一般社団法人 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構

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