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乳がん患者、治療開始の遅れが生存に及ぼす影響

 早期乳がん患者では、乳がんと診断されてから術前化学療法開始までが61日以上となると、死亡リスクの増加と関連することが示唆された。これまでに、手術や術後化学療法開始の遅れが生存に影響することが報告されてきたが、術前化学療法を必要とする患者は一般的に高リスクの腫瘍を有するため、より影響が大きい可能性が考えられた。ブラジル・Hospital Beneficencia PortuguesaのDebora de Melo Gagliato氏らは、米国・MDアンダーソンがんセンターで術前化学療法を受けた早期乳がん患者のデータを解析した。Oncologist誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告より。 研究者らは、1995年1月~2015年12月にMDアンダーソンがんセンターで術前化学療法を受けた原発性浸潤性乳がん患者(Stage I~III)を特定。乳がんと診断されてから術前化学療法までの時間(日数)に従って、3つのサブグループに分類した:0~30日、31~60日、および≧61日。主要評価項目は全生存期間(OS)、記述統計とCox比例ハザードモデルが用いられた。 主な結果は以下のとおり。・5,137例の患者が登録された。追跡期間中央値は6.5年。・5年OSの推定値は、診断から術前化学療法までの時間ごとに、0~30日:87%、31~60日:85%、≧61日:83%であった(p=0.006)。・多変量解析では、0~30日と比較して61日以上となると死亡リスクが増加した(31~60日:ハザード比[HR]=1.05、95%信頼区間[CI]=0.92~1.19、≧61日:HR = 1.28、95%CI=1.06~1.54)。・層別解析では、術前化学療法開始の遅れと死亡リスク増加との関連は、Stage I、II(31~60日:HR=1.22、95%CI=1.02~1.47、≧61日:HR =1.41、95%CI=1.07~1.86)およびHER2陽性(≧61日:HR=1.86、95%CI:1.21~2.86)の患者で有意に認められた。

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扁平上皮肺がん、1次治療としてのアテゾリズマブ+化学療法は?(IMpower131)/JTO

 進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)への1次治療として、アテゾリズマブ+プラチナ併用化学療法は、化学療法単独と比較して、無増悪生存(PFS)期間は有意に改善した。しかし、全生存(OS)期間の有意な延長は得られなかった。米国・ロッキーマウンテンがんセンターのRobert Jotte氏らが、第III相無作為化試験「IMpower131試験」の有効性と安全性の結果を報告した。細胞傷害性抗がん剤には免疫調節作用があり、抗PD-L1抗体アテゾリズマブの作用が化学療法との併用で強化される可能性が示唆され、これまで転移のある非扁平上皮NSCLC患者を対象とした1次治療に関する試験(IMpower130試験、IMpower150試験)でPFS、OSの有意な改善が示されていた。それらの結果を踏まえて欧米では、転移のある非扁平上皮NSCLC患者に対するアテゾリズマブ+プラチナ併用化学療法が承認されていた。Journal of Thoracic Oncology誌オンライン版2020年4月7日号掲載の報告。 研究グループは、化学療法未治療の転移のある扁平上皮NSCLC患者1,021例を、アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(A+CP)群(338例)、アテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(A+CnP)群(343例)、またはカルボプラチン+nab-パクリタキセル(CnP)群(340例)に、1対1対1の割合で無作為に割り付け、21日を1サイクルとして4または6サイクル投与した。その後、A+CP群またはA+CnP群は、進行またはクリニカルベネフィットがなくなるまで、アテゾリズマブ維持療法を行った。 主要評価項目は2つで、ITT集団における治験責任医師評価によるPFSおよびOS。副次評価項目は、PD-L1発現別サブグループのPFSおよびOS、そして安全性であった。 すでにA+CnP群およびCnP群を比較した、PFS主解析(クリニカルカットオフ日2018年1月22日)およびOS最終解析(同2018年10月3日)は、それぞれ報告されている。 主な結果は以下のとおり。・ITT集団におけるPFS中央値は、A+CnP群6.3ヵ月、CnP群5.6ヵ月と、A+CnP群で有意に改善することが示された(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.60~0.85、p=0.0001)。・OS中央値は、A+CnP群14.2ヵ月、CnP群13.5ヵ月で、統計学的有意差は認められなかった(HR:0.88、95%CI:0.73~1.05、p=0.16)。・PD-L1高発現のサブグループのOSは、CnP群に比べ、A+CnP群で良好であった(HR:0.48、95%CI:0.29~0.81)。・Grade3~4の治療関連有害事象、および重篤な有害事象の発現率は、A+CnP群でそれぞれ68.0%および47.9%、CnP群で57.5%および28.7%であった。

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化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法、肺がん1次治療でOS改善(CheckMate-9LA)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2020年5月13日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法に化学療法2サイクルを追加した併用療法が、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療薬として、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある生存ベネフィットを示した第III相CheckMate-9LA試験の結果を公表。化学療法と比較して、良好な全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)および奏効率(ORR)を示した。 CheckMate-9LAは、PD-L1発現レベルおよび腫瘍の組織型にかかわらず、進行NSCLC患者の1次治療薬として、ニボルマブ(360mg 3週ごと)とイピリムマブ(1mg/kg 6週ごと)の併用療法に化学療法(2サイクル)を追加した併用療法を、化学療法(最大4サイクル後に、適格であればペメトレキセドによる維持療法を任意で施行)と比較した多施設共同無作為化非盲検第III相試験。主要評価項目であるOSの中間解析では、最短8.1ヵ月の追跡調査において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法に化学療法2サイクルを追加した併用療法が、化学療法と比較して、死亡リスクを31%低減した(HR:0.69、96.71%CI:0.55~0.87、p=0.0006)。さらに、最短12.7ヵ月の追跡調査においても、引き続きOSの改善を示した(OS中央値:併用療法15.6ヵ月、化学療法10.9ヵ月[HR 0.66、95% CI:0.55~0.80])。PD-L1発現および腫瘍の組織型を含むサブグループでも、すべての有効性評価項目において、臨床的なベネフィットが示された。併用療法の安全性プロファイルは、これまでに認められているものと一貫していた。 これらの結果は、5月29日~31日にオンラインで開催される2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会において、口頭発表される予定。

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COVID-19と乳がん診療ガイドライン―欧米学会発表まとめ(吉村吾郎氏)

新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療の優先順位をどう考えるべきか。欧米関連学会が発表したガイドラインを市立岸和田市民病院 乳腺外科部長 吉村 吾郎氏が解説する。新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療について、欧州臨床腫瘍学会 European Society for Medical Oncology Cancer (ESMO) 1) と米国乳がん関連学会2)がガイドラインを作成している。いずれのガイドラインも COVID-19 リスクの最小化と診療利益の最大化を目的とする、乳がん患者の優先順位付けを推奨している。その内容に大差はなく、診療内容別に高優先度/中優先度/低優先度に分類し、米国ガイドラインは中および低優先度をさらに3段階に細分している。本邦の臨床事情に合わせて若干改変した両ガイドラインの概略を以下に記載する。【外来診療】○高優先度感染や血腫などで病状が不安定な術後患者発熱性好中球減少症や難治性疼痛など腫瘍学的緊急事態浸潤性乳がんの新規診断○中優先度非浸潤性乳がんの新規診断化学療法や放射線療法中の患者病状が安定している術後患者○低優先度良性疾患の定期診察経口アジュバント剤投与中、あるいは治療を受けていない乳がん患者の定期診察生存確認を目的とする乳がん患者の定期診察【診断】○高優先度重症乳房膿瘍や深刻な術後合併症評価目的の診断しこりやその他乳がんが疑われる自覚症状を有する症例に対する診断臨床的に明らかな局所再発で、根治切除が可能な病変に対する診断○中優先度マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ4または5病変の診断転移再発が疑われ、生検が必要とされる乳がん患者への診断○低優先度マンモグラフィ検診BRCAキャリアなど高リスク例に対する検診マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ3病変の診断無症状の初期乳がん患者に対するフォローアップ診断【手術療法】○高優先度緊急で切開ドレナージを要する乳房膿瘍および乳房血腫自家組織乳房再建の全層虚血術前化学療法を終了した、あるいは術前化学療法中に病状が進行した乳がん患者トリプルネガティブ乳がん、あるいはHER2陽性乳がん患者で、術前化学療法を選択しない場合○中優先度ホルモンレセプター陽性/HER2陰性/低グレード/低増殖性のがんで、術前ホルモン療法の適応となる乳がん患者臨床診断と針生検結果が不一致で、浸潤性乳がんの可能性が高い病変に対する外科生検○低優先度良性病変に対する外科切除広範囲高グレード非浸潤性乳管がんを除く、非浸潤性乳がん臨床診断と針生検結果が不一致で、良性の可能性が高い病変に対する外科生検二次乳房再建手術乳がん高リスク例に対するリスク軽減手術【放射線療法】○高優先度出血や疼痛を伴う手術適応のない局所領域病変に対する緩和照射急性脊髄圧迫、症候性脳転移、その他の腫瘍学的緊急事態症例に対する緩和照射高リスク乳がん症例に対する術後照射 (炎症性乳がん/リンパ節転移陽性/トリプルネガティブ乳がん/HER2陽性乳がん/術前化学療法後に残存病変あり/40歳未満)○中優先度65歳未満でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の中間リスク乳がんに対する術後照射○低優先度非浸潤性乳がんに対する術後照射65歳以上でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の低リスク乳がんに対する術後照射【初期乳がんに対する薬物療法】○高優先度トリプルネガティブ乳がんに対する術前および術後化学療法HER2 陽性乳がん患者に対する抗 HER2 療法併用の術前および術後化学療法炎症性乳がん患者に対する術前化学療法すでに開始された術前/術後化学療法高リスクのホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性乳がんに対する術前および術後ホルモン療法±化学療法術前ホルモン療法○具体的推奨事項化学療法と放射線療法の適応となるホルモンレセプター陽性症例において、放射線療法の先行は許容されるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で臨床ステージI-II乳がんでは、6~12ヶ月間の術前ホルモン療法がオプションとなるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で化学療法の適応となる乳がん症例では、術前化学療法がオプションとなる通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される。好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきである低リスク、あるいは心大血管疾患やその他の合併症を有する HER2 陽性乳がん症例では、術後の抗 HER2 療法の期間を6ヵ月に短縮することはオプションとなるLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談するアロマターゼ阻害剤を投与されている症例では、骨量検査を中止する (ベースラインおよびフォローアップとも)可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する【進行再発乳がんに対する薬物療法】○高優先度高カルシウム血症、耐えられない痛み、有症状の胸水貯留、脳転移など、腫瘍学的緊急事態症例に対する薬物療法重篤内蔵転移に対する薬物療法予後を改善する可能性の高い一次治療ラインでの化学療法、内分泌療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬○中優先度予後を改善する可能性のある二次、三次以降の治療ラインでの薬物療法○低優先度緊急性の低い高Ca血症や疼痛コントロール目的での骨修飾薬 (ゾレドロン酸、デノスマブ)○具体的推奨事項化学療法が推奨される場合、通院回数を減らす目的での経口薬治療は許容される通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される発熱性好中球減少症リスクの低いレジメンを選択することは許容される化学療法による好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきであるトラスツズマブとペルツズマブの投与間隔を延長することは許容される (例:4週毎投与)腫瘍量の少ない HER2 陽性転移性乳がんでトラスツズマブやペルツズマブによる治療が2年間以上にわたり行われている症例では、病状経過を3〜6ヵ月ごとにモニターしながら抗 HER2 療法の中止を考慮する耐容性を最適化し、有害事象を最小化するため、標的治療剤を減量投与することは許容される転移再発乳がん一次治療としての標的治療剤 (CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、PIK3CA 阻害剤) とホルモン療法の併用を、ホルモン療法単独とすることは許容されるCDK4/6阻害剤による好中球減少症と COVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止する免疫チェックポイント阻害剤とCOVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止するLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談する多職種キャンサーボードでの議論と患者の希望を踏まえて、晩期治療ラインにおける休薬、最善支持療法、投与間隔の拡大、低容量維持療法は許容される骨転移患者に対する骨修飾薬は、通院回数を最小限にして投与されるべきである病状が安定している転移性乳がん症例では、ステージング目的の定期診察や画像検査の間隔を空ける抗 HER2療法中の心機能モニター検査は、臨床的に安定していれば遅らせることが許容される可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する1.ESMO magagement and treastment adapeted recommentaions in the COVID-19 ERA: Breast cancer. 2.Recommendations for prioritization, treatment, and triage of breast cancer patients during the COVID‐19 pandemic. the COVID‐19 pandemic breast cancer consortium.

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膵がん患者の悪液質、1次化学療法開始後3ヵ月で3割、1年で6割強に

 悪液質は患者の身体的健康と生活の質に影響を及ぼし、さらにがん治療、とくに殺細胞性抗がん剤に対する患者の忍容性にも影響する。国立がん研究センター東病院の光永 修一氏らは、進行膵管腺がん(PDAC)患者を対象に悪液質について後ろ向きに調査し、1次化学療法開始後早期に悪液質が発現したものの、生命予後因子ではなかったことを明らかにした。ただし、1次化学療法開始後に悪液質が認められた患者では、認められなかった患者に比べ一部の有害事象の発現頻度が高い傾向にあったという。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2020年2月26日号掲載の報告。がん治療開始後の悪液質の発現は全生存期間とは関連しない 研究グループは、2008年6月6日~2017年3月31日にPDACと診断され1次化学療法を受けた患者を対象に、後ろ向きに解析した。 悪液質は、>5%の体重減少、またはBMI<20の患者では>2%の体重減少と定義し、1次化学療法開始前6ヵ月までに認められたものをベースライン悪液質、治療開始後の悪液質をフォローアップ悪液質とした。 進行膵管腺がん患者を対象に悪液質について調査した主な結果は以下のとおり。・解析対象は150例(年齢中央値65歳、BMI中央値21.7)であった。・ベースライン悪液質は、50%の患者に認められた。・フォローアップ悪液質は、1次化学療法開始後12週以内に32%で発現し、治療開始後1年の時点では64%に達した。・フォローアップ悪液質の発現は、全生存期間とは関連しなかった。・フォローアップ悪液質なしの患者に比べフォローアップ悪液質ありの患者では、食欲不振、疲労、悪心および下痢が高頻度に認められた。

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パクリタキセル+ベバシズマブは非小細胞肺がん2次治療以降の選択肢となるか/Eur J Cancer

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(nsNSCLC)ではプラチナ製剤ベースの化学療法が不応の場合、ドセタキセルが標準治療となっているものの、選択肢は多くない。パクリタキセル+ベバシズマブも有効な選択肢となるのか。nsNSCLCの2次または3次治療において、パクリタキセル+ベバシズマブとドセタキセルを比較した、フランス・リール大学のAlexis B. Cortot氏らの第III相多施設非盲検無作為化試験「IFCT-1103 ULTIMATE試験」の結果が報告された。European Journal of Cancer誌オンライン版2020年4月8日号掲載の報告。 試験は、進行nsNSCLCで、経口プラチナ製剤ベースの化学療法を含む1次または2次治療を受けた患者を対象に行われた。 被験者を、パクリタキセル90mg/m2(Day1、8、15)+ベバシズマブ10mg/kg(Day1、15)の28日ごと投与群、またはドセタキセル75mg/m2の21日ごと投与群に無作為に割り付けた。病勢進行後のクロスオーバーは許容された。主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)であった。 主な結果は以下のとおり。・166例が、パクリタキセル+ベバシズマブ群(111例)またはドセタキセル群(55例)に無作為に割り付けられた。・PFS中央値は、パクリタキセル+ベバシズマブ群5.4ヵ月、ドセタキセル群3.9ヵ月と、パクリタキセル+ベバシズマブ群で有意に延長した(補正後ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.44~0.86、p=0.005)。・全奏効率はパクリタキセル+ベバシズマブ群22.5%、ドセタキセル群5.5%であった(p=0.006)。・全生存(OS)期間中央値は、同等であった(補正後HR:1.17、p=0.50)。・クロスオーバーは、ドセタキセル群では55例中21例(38.2%)で認められた。・Grade3/4の有害事象は、パクリタキセル+ベバシズマブ群45.9%、ドセタキセル群54.5%で報告された(p=NS)。

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DS-8201をHER2陽性胃がんに国内申請/第一三共

 第一三共株式会社は、2020年5月7日、トラスツズマブ デルクステカン(開発コード:DS-8201、商品名:エンハーツ)について、HER2陽性の胃がんに係る効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請を国内において行った。 この申請は、トラスツズマブを含む2つ以上の前治療を受けたHER2陽性の進行・再発胃がん患者または胃食道接合部腺がん患者を対象とした第2相臨床試験(DESTINY-Gastric01)および日米共同第I相臨床試験の結果に基づくもの。 同剤は、厚生労働省よりがん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する治療として、先駆け審査指定を受けている。

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CLL1次治療、acalabrutinibの第III相試験成績/Lancet

 未治療の症候性慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、acalabrutinib±オビヌツズマブは、標準治療であるオビヌツズマブ+chlorambucilによる化学免疫療法と比較して、無増悪生存(PFS)を有意に改善し、安全性プロファイルも良好であることが、米国・Willamette Valley Cancer Institute/US OncologyのJeff P. Sharman氏らの検討「ELEVATE TN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年4月18日号に掲載された。acalabrutinibは、選択的な共有結合性ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬。未治療CLL患者を対象とした第I/II相試験では、単剤またはオビヌツズマブとの併用で、高い有効性(全奏効割合95~97%)とともに、持続性の寛解、良好な長期忍容性、低い治療中止率が報告されている。オビヌツズマブは抗CD20モノクローナル抗体、chlorambucilは化学療法薬(アルキル化薬)である。3群を比較する国際的な無作為化第III相試験 本研究は、18ヵ国142施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2015年9月14日~2017年2月8日に患者登録が行われた(Acerta Pharmaの助成による)。 対象は、年齢65歳以上、およびクレアチニンクリアランス30~69mL/分(Cockcroft-Gault式)またはCumulative Illness Rating Scale for Geriatrics(CIRS-G)スコア>6点の18~<65歳の未治療CLLで、全身状態(ECOG PS)≦2の患者であった。重度の心血管疾患を有する患者は除外された。 被験者は、acalabrutinib(経口投与)+オビヌツズマブ(静脈内投与)(併用群)、acalabrutinib単剤(単剤群)、オビヌツズマブ+chlorambucil(経口投与)(標準治療群)の3群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、28日を1サイクルとする治療が行われた。 主要エンドポイントは、独立の判定委員会(IRC)の評価によるPFSとした。標準治療群の増悪例は、acalabrutinibへのクロスオーバーが可能とされた。増悪/死亡リスクが併用群で90%、単剤群は80%低減 適格基準を満たした535例が登録され、併用群に179例、単剤群に179例、標準治療群に177例が割り付けられた。ベースラインの年齢中央値は70歳(IQR:66~75)で、448例(84%)が65歳以上であった。CLL国際予後指標(CLL-IPI)スコアで、高リスクが368例(69%)、超高リスクが66例(12%)含まれた。また、標準治療群の55例(31%)が追加治療を要し、このうち45例(82%)でacalabrutinib単剤へのクロスオーバーが行われた。 フォローアップ期間中央値28.3ヵ月(IQR:25.6~33.1)の時点におけるPFS期間中央値は、併用群は未到達(95%信頼区間[CI]:評価不能~評価不能)であり、標準治療群の22.6ヵ月(95%CI:20.2~27.6)に比べ有意に延長し、増悪または死亡のリスクが90%低下した(ハザード比[HR]:0.10、95%CI:0.06~0.17、p<0.0001)。また、単剤群もPFS期間中央値には未到達(34.2~評価不能)で、標準治療群の22.6ヵ月(95%CI:20.2~27.6)に比し有意に延長し、増悪または死亡のリスクが80%低下した(HR:0.20、95%CI:0.13~0.30、p<0.0001)。 24ヵ月PFS率は、併用群が93%、単剤群が87%、標準治療群は47%であった。また、全奏効率(完全奏効+骨髄機能の回復を伴わない完全奏効+結節性病変の部分奏効+部分奏効の割合)は、併用群が94%と、標準治療群の79%に比べ有意に優れ(p<0.0001)、単剤群は85%であり、標準治療群との間に有意な差はなかった(p=0.08)。 全生存(OS)期間中央値には、3群とも未到達であった。併用群と標準治療群のHRは0.47(95%CI:0.21~1.06、p=0.06)、単剤群と標準治療群のHRは0.60(0.28~1.27、p=0.16)であった。 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、3群とも好中球減少であった(併用群29.8%、単剤群9.5%、標準治療群41.4%)。全Gradeの輸注反応の頻度は、併用群が13.5%と、標準治療群の39.6%よりも低かった。Grade3以上の感染症は併用群で頻度が高かった(併用群20.8%、単剤群14.0%、標準治療群8.3%)。また、全死因死亡は、併用群が8例(4%)、単剤群が12例(7%)、標準治療群は15例(9%)だった。 著者は、「これらのデータは、未治療の症候性CLL患者の新たな治療選択肢として、acalabrutinib単独またはacalabrutinib+オビヌツズマブの使用を支持し、化学療法薬を含まない選択肢をもたらすものである」としている。

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COVID-19流行下で不安募らせるがん患者、医師は受け身から能動へ?

 がん患者の自分が感染したら致命的なのではないか、治療を延期しても大丈夫なのか、この発熱は副作用かそれとも感染か―。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、がん患者の不安は大きくなってしまっている。エビデンスが十分とはいえない中、また医師自身にも感染リスクがある中で、治療においてどのような判断をし、コミュニケーションを図っていけばよいのか。4月21日、「新型コロナ感染症の拡大を受け、がん患者・家族が知りたいこと」(主催:一般社団法人CancerX)と題したオンラインセッションが開催され、腫瘍科や感染症科など各科の専門医らが、患者および患者家族からの質問に答える形で議論を行った。がんの既往があると重症化リスクが高いのか?と聞かれたら 大須賀 覚氏(アラバマ大学バーミンハム校脳神経外科)は、現状のデータだけでは十分とは言えないとしたうえで、「すべてのがん患者さんが同じように重症化リスクが高いとはかぎらない」と説明。英国・NHSによるClinical guideから、とくに脆弱とされる状況を挙げた:• 化学療法を現在受けている• 肺がんで、放射線治療を受けている• 血液または骨髄のがん(白血病、リンパ腫、骨髄腫)に罹患している• がんに対する免疫療法または他の継続的な抗体治療を受けている• その他、免疫系に影響するタンパク質キナーゼ阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的療法を受けている• 6ヵ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた人、または現在、免疫抑制剤の投与を受けている• 60歳以上の高齢• がん以外の持病がある(心・血管系疾患、糖尿病、高血圧、呼吸器疾患など) 市中に感染が蔓延している状況下では、病院へ行く頻度が高い人はやはり感染リスクが高くなるとして、治療によるベネフィットを考慮したうえで、受診の機会をどうコントロールしていくかが重要になると話した。感染のリスクと治療のベネフィットを、どう考えるか 大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院国際感染症センター)は今後の流行の状況について、「いま来ている波が落ち着いたとしても、また次の波に警戒しなければならない」とし、ある程度長い期間、寄せては返しを繰り返すのではないかと話した。先がみえない状況の中で、治療延期の判断、延期期間をどう考えていけばよいのか。 勝俣 範之氏(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)は、「がん治療の延期・中止は非常に慎重に行うべき」として、病状が安定していて、半年に一度などのフォローアップの患者さんで、たとえば1ヵ月後に延期する、といったところから始めていると話した。 大須賀氏は、医療資源が確保できず安全な治療自体が行えない場合、いま治療を実施することによって感染リスクが高まると判断される場合は延期・治療法の変更が検討されるとし、治療自体の緊急性や効果といった個別の状況のほか、地域での感染状況などから総合的に判断されるというのが現状の世界での基本的見解だろうと話した。 そして、もし治療の延期や変更を決めた場合には、「なぜ延期/変更されたのかを患者さんが理解しないといけないし、医師は理解できるように説明できないといけない」と上野 直人氏(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍内科)。会場の参加医師からは、貴重な受診機会を効率的なものにするために、平時以上に、患者さんに事前に質問事項をメモして来院するよう伝えるべきではという声も聞かれた。続く緊張と感染への不安で食事がとれなくなっている患者も 秋山 正子氏(認定NPO法人マギーズ東京)は、感染を心配しすぎて過敏になり、食事や水分をまともにとれていないような状況もある、と指摘。電話相談などを受けていると、家にずっと閉じこもる状況下で緊張状態になり、身体をうまく休めることができなくなっている人もいるという。 天野 慎介氏(一般社団法人 全国がん患者連合会)は、「まず自分がストレスを感じていることを認めて受け入れる」ことが重要と話した。そのうえで、日本心理学会によるアウトブレイク下での精神的ストレスを軽減させるための考え方(もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために)について、その一部を紹介した:• 信頼できる情報を獲得する• 日々のルーティンを作り,それを守る• 他者とのヴァーチャルなつながりをもつ• 健康的なライフスタイルを維持するつながらない代表電話、医師ができる積極的アプローチとは がん治療中に発熱した場合、それが化学療法による副作用なのか、あるいは感染の疑いがあるのか、患者自身が判断するのは不可能で、味覚障害や下痢なども、鑑別が難しい。佐々木 治一郎氏(北里大学病院 集学的がん診療センター)は、「がん治療中の患者さんに関しては、発熱などの何らかの症状があった場合、保健所ではなく、まず主治医に連絡してもらうようにしている」と話した。 しかし現在、多くの病院で代表電話は非常につながりにくい状況になっている。会場からは、各病院でもがん相談支援センターの直通電話は比較的かかりやすいといった情報が提供された。佐々木氏は、「自粛して1人あるいは家族だけと自宅にいる患者さんに、何らかの支援を提供できるよう動いていくときなのではないか」とし、医師は普段は受け身で相談を受けているが、今はこちらから電話をするなど、積極的なアプローチが必要なのではないかと話した。正しい情報にアクセスし、適切なサポートにたどり着いてもらうために 「10秒息を止められれば大丈夫」「水を飲めば予防できる」など、驚くようなデマが拡散し、そして思った以上に患者さんたちはそういった情報に翻弄されてしまっていると勝俣氏。信頼できる情報にアクセスできるように、医療者がサポートしていく必要性を呼び掛けた。また秋山氏は、「直接ではなくても、電話やネットなどのツールを活用し、誰かとつながって話すことで、かなり不安が軽減する」とし、電話相談の窓口などを活用してほしいと話した。本セッション中に登壇者や参加者から提供された情報源や相談窓口について、下記に紹介する。■新型コロナウイルスに関する情報臨床腫瘍学会「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」チームオンコロジー「新型コロナウイルス(COVID-19)関連リンク集」日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT)「新型コロナウイルス情報リンク集」大須賀 覚先生のnote■相談窓口などマギーズ東京「メールやお電話などのご案内」日本臨床心理士会「新型コロナこころの健康相談電話のご案内」厚生労働省「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」

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二ボルマブとイピリムマブの併用が悪性胸膜中皮腫の生存期間を延長(CheckMate-743)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2020年4月21日、未治療の悪性胸膜中皮腫(MPM)を対象とした第III相 CheckMate-743試験において、ニボルマブ(一般名:オプジーボ)とイピリムマブ(一般名:ヤーボイ)の併用療法が、主要評価項目である全生存期間(OS)を延長したことを発表した。 独立データモニタリング委員会であらかじめ計画されていた中間解析で、二ボルマブとイピリムマブの併用療法が、化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較して、統計学的に有意に、臨床的に意義のあるOSの改善を示した。  本試験で認められた二ボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、同併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。

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ペムブロリズマブ単剤は高齢患者にも有用かKEYNOTE-010、024、042統合解析【肺がんインタビュー】 第45回

第45回 ペムブロリズマブ単剤は高齢患者にも有用かKEYNOTE-010、024、042統合解析肺がん患者の多くは高齢者である。近年登場した免疫治療薬は、肺がん治療においても幅広く適用され始め、高齢肺がんにおいても、その有用性が期待される。しかし、臨床試験での高齢者のデータは少ない。そのような中、高齢者への有効性と安全性を評価した、ペムブロリズマブ単剤の大規模RCTの統合解析がLung Cancer誌で発表された。筆頭著者である野崎 要氏にこの試験から得られる新たな知見について聞いた。肺がん最大の高齢者データセット―この試験を実施した背景を教えていただけますか。ご存じのとおり、肺がん患者さんの多くは高齢者です。高齢者の定義は日本肺癌学会ガイドラインでは75歳となっています。免疫チェックポイント阻害薬が登場し、その使用機会も著しく増加していますが、免疫チェックポイント阻害薬のピボタル試験では65歳を境にした解析が多く、75歳以上のデータは数少ないのが現状です。そこで、ペムブロリズマブ単剤の3つのピボタル試験の統合解析から75歳以上の患者のデータを抽出し、75歳以上の高齢患者におけるペムブロリズマブ単剤の効果と安全性を評価しました。―3つのピボタル試験について教えていただけますか。KEYNOTE-010、024、042試験の3つです。これらはすべて企業(MSD)主導のグローバル試験です。KEYNOTE-010試験は2016年のLancet誌に結果が発表された既治療のPD-L1発現(1%以上)非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブ単剤の試験です。KEYNOTE-024試験は、1次治療のPD-L1高発現(50%以上)NSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用化学療法の比較試験で、2016年、New England Journal of Medicine誌に結果が発表されました。私は、前勤務地でこの試験に施設の試験責任医師として参加しています。KEYNOTE-042試験は、同じく1次治療ですが、PD-L1発現(1%以上)NSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用化学療法の比較試験で、2019年のLancet誌に結果が発表されています。画像を拡大する―試験デザインについて教えていただけますか。今回の研究では、前出のペムブロリズマブの3つのピボタル試験で、下記の4つの統合解析を行い、1次治療であるKEYNOTE-024、KEYNOTE-042試験については、下記の2つの統合解析を行いました。画像を拡大する高齢者へのペムブロリズマブ単剤治療、有効性、安全性とも若年者と同様―この研究の主な結果を教えていただけますか。3試験全体でみた75歳以上のペムブロリズマブ単剤の全生存期間(OS)は、化学療法に比べ有意に良好でした。PD-L1≧1%でのOSは、ペムブロリズマブ単剤15.7ヵ月に対し、化学療法は11.7ヵ月(HR:0.76)、PD-L1≧50%でのOSは19.2ヵ月vs.11.9ヵ月です(HR:0.40)。また、1次治療であるKEYNOTE-024と042における75歳以上のOSは、PD-L1≧50%で23.1ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.41)と、こちらもペムブロリズマブ単剤群は化学療法に比べ良好でした。―高齢患者の有害事象の発現についてはいかがでしたか。75歳以上における治療関連有害事象(TRAE)は、化学療法に比べ、ペムブロリズマブ単剤で少なく、全Gradeで68.5% vs.94.3%、Grade3以上では24.2% vs.61.0%でした。75歳以上と75歳未満を比べても同様でした。TRAE発現は75歳以上68.5%に対し75歳未満65.2%、免疫関連有害事象(irAE)発現は24.8% vs.25.0%と同等でした。―この研究は、264例という75歳以上では最大規模の試験となりますが、この結果を高齢者肺がんの実臨床にどう応用できるとお考えですか。当研究は、事後解析ですので、いくつかの限界(limitation)があります。組織型(ペムブロリズマブに扁平上皮がんが多い)、喫煙状況(ペムブロリズマブに喫煙者が多い)といった患者背景に偏りがあります。また、1次治療として行われた2試験(KEYNOTE-024と042)に参加できたのは、プラチナ併用療法に忍容性がある方で、実地臨床における高齢患者さんとはやや異なる可能性があります。また、PD-L1 1~49%のデータは示されていません。とはいえ、前向き試験によって抽出された臨床データで、ペムブロリズマブ単剤の有効性、有害事象も高齢者とそれ以外で大きく変わらないことが示されたことは重要だと思います。とくに、PD-L1高発現に対するペムブロリズマブの治療効果(OSカーブ)は75歳以上と75歳未満で変わらないように見えます。このようなことから、少なくともPD-L1高発現の全身状態の良い高齢者には積極的にペムブロリズマブを使用することを勧めて良い、ということはいえると思います。参考原著:Nosaki K, et al. Lung Cancer.2019;135:188-195.KEYNOTE-010: Herbst RS, et al. Lancet. 2016;387:1540-1550.KEYNOTE-024: Reck M, et al. N Engl J Med. 2016 ;375:1823-1833.KEYNOTE-042: Mok TSK, et al. Lancet. 2019;393:1819-1830.

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化学療法+ICI、初の長期フォローアップデータ【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第13回

第13回 化学療法+ICI、初の長期フォローアップデータ1)Gadgeel S, Rodriguez-Abreu D, Speranza G, et al. Updated Analysis From KEYNOTE-189: Pembrolizumab or Placebo Plus Pemetrexed and Platinum for Previously Untreated Metastatic Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer. J Clin Oncol. 2020 Mar 9. [Epub ahead of print]NSCLCの標準治療を大きく変えることになったKEYNOTE-189試験(化学療法+免疫チェックポイント阻害剤[ICI]vs.化学療法の第III相試験)。ICIを用いた多くの試験同様、アップデート解析が今回報告された。長期生存・長期無再発はどのような集団で得られているのか、PD-L1検査の意義は…簡潔に紹介する。アップデートの内容フォローアップ期間の中央値は当初報告(Gandhi L, et al. NEJM. 2018;378:2078-2092.)における10.5ヵ月から、今回23.1ヵ月となった。PFS、OSのアップデートに加え、PFS2の解析が追加されている。なおPFS2の定義は「ランダム化から、(1)主治医判断による2次治療の病勢進行(PD)まで、もしくは(2)2次治療をPD以外で終了した場合は3次治療開始まで、あるいは(3)これら以外の死亡まで」とされている。IMpower試験(アテゾリズマブ)で話題となった、肝・脳転移の有無に関するサブセット解析が追加された。なおKN189試験では全体の16~18%の症例が肝・脳転移を有している。結果以下、Pembro群vs.Placebo群:初回報告→アップデートの順に紹介する(単独の結果記載はアップデートデータのみ)。MST:未到達vs.11.3ヵ月(HR 0.49)→22.0ヵ月vs.10.7ヵ月(HR 0.56)2年生存率:45.5% vs.29.9%PD-L1別のHR(≧50%/1~49%/<1%):0.42/0.55/0.59→0.59/0.62/0.52mPFS:8.8ヵ月vs.4.9ヵ月(HR 0.52)→9.0ヵ月vs.4.9ヵ月(HR 0.48)2年PFS率:20.5% vs.1.5%PD-L1別のHR(≧50%/1~49%/<1%):0.36/0.55/0.75→0.36/0.51/0.64PFS2:17.0ヵ月vs.9.0ヵ月(HR 0.49)PD-L1別のHR(≧50%/1~49%/<1%):0.47/0.59/0.46肝転移・脳転移の有無は予後不良因子ではあるが、ペムブロリズマブ追加の効果予測因子ではなかった。追加期間において、新規の免疫関連有害事象の発生は少なかった。解説本研究の強み・興味深い点化学療法+ICIにおける初めての長期フォローアップデータ。PD-L1の有無によらず、同程度のHRが示された。一方で、長期無再発の観点でPFSを見てみると、PD-L1 50%をカットオフとして差が顕著になっている。PD-L1≧50%で曲線がプラトーになりつつある一方で、1~49%、<1%ではほぼ全例が増悪を呈している。まとめると、3剤併用はPD-L1の有無によらず選択可能、ただしその後の戦略は大きく異なる。PD-L1≧50%では3人に1人が2年間以上無増悪を期待できる。PD-L1 50%未満では、10ヵ月前後で増悪する可能性が高く、次治療を考慮する。肝転移・脳転移の有無は治療選択には大きく影響しない。総じて、日常臨床に影響するようなデータはなし。その他のポイントコントロールアームの治療成績(MST 10.7ヵ月)が本邦の一般的な印象に比してかなり悪いので、HRの解釈には少し注意が必要かもしれない。PD-L1 50%未満に対して今後はどのような治療戦略が期待されるのか? 化学療法+ICIにさらなる薬剤追加はなかなか難しいと思われる(ベバシズマブは症例を選べば可能だが…)。2019年にはKRAS変異とPD-L1発現・化学療法+ペムブロリズマブの有効性を検討したサブ解析が話題を呼んだ(Gadgeel S, et al. ESMO-IO 2019.)。バイオマーカーについて、今後追加の報告があるのか、にも注目したい。

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がん患者の脳卒中リスクに化学療法は影響するか

 化学療法はがん関連脳卒中の原因となる可能性があるが、脳卒中リスクを高めるかどうかは不明である。今回、大阪大学の北野 貴也氏らが脳卒中リスクへの化学療法の影響を調べたところ、化学療法を受けたがん患者の脳卒中リスク上昇はがんの進行が原因と考えられ、化学療法と脳卒中リスク増加は関連していないことが示唆された。Thrombosis and Haemostasis誌2020年4月号に掲載。 著者らは、2007~15年にスクリーニングされた病院ベースのがんレジストリ(大阪大学病院でがんの治療を受けた全患者の臨床データを含む)における2万7,932例のうち、データが揃っている1万9,006例の診療記録を調査した。検証済みのアルゴリズムを使用し、がんの診断から2年以内の脳卒中イベントを同定した。最初の治療計画における化学療法の有無により患者を分け、カプランマイヤー法と層別Cox回帰モデルを用いて化学療法と脳卒中との関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・1万9,006例のうち化学療法群は5,887例(31%)であった。・脳卒中は化学療法群44例(0.75%)および非化学療法群51例(0.39%)で発生した。・カプランマイヤー曲線では、化学療法群が非化学療法群よりも脳卒中リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.23~2.75)が、がんの病期を調整するとこの差は有意ではなくなった(HR:1.20、95%CI:0.76~1.91)。・層別Cox回帰モデルでも、がんの病期を調整すると化学療法と脳卒中に関連がみられなかった(HR:1.26、95%CI:0.78~2.03)。

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早期乳がん患者の認知障害、化学内分泌療法vs.内分泌療法/JCO

 がん治療に伴う認知機能障害(CRCI)は補助化学療法中によくみられ、持続する場合がある。米国・Wake Forest School of MedicineのLynne I Wagner氏らは、TAILORx試験(早期乳がん患者の補助療法として化学内分泌療法または内分泌療法単独に無作為に割り付け)において認知障害を前向きに評価したところ、3ヵ月と6ヵ月では化学内分泌療法のほうがCRCIが有意に多かったが、時間とともに差が縮小し12ヵ月以降では有意差は見られなかった。この結果から著者らは「化学内分泌療法は内分泌療法単独に比べて早期に認知障害を引き起こしたが持続的ではなく、補助化学療法によって再発リスク低減が示されている患者や医師に安心をもたらす」としている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年4月9日号に掲載。 本研究では、TAILORx試験に登録された患者のうち、21遺伝子再発スコアが11〜25の患者を化学内分泌療法群または内分泌療法単独群に無作為に割り付けた。認知機能障害は37項目Functional Assessment of Cancer Therapy-Cognitive Function(FACT-Cog)質問票を使用し、552例においてベースライン、3、6、12、24、36ヵ月に評価した。主要評価項目である20項目Perceived Cognitive Impairment(PCI)スケールはFACT-Cogに含まれる。臨床的に意味のある変化は経験的に定義し、ベースラインのPCIスコア、治療、その他の因子に基づくPCIスコアを線形回帰によりモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・FACT-Cog PCIスコアは、両群におけるベースラインと比較して3、6、12、24、36ヵ月で有意に低く、認知障害が大きかった。・PCIスコアの変化は、内分泌療法単独群に比べて化学内分泌療法群において3ヵ月(事前に指定された主要評価項目)、6ヵ月で大きかったが、12、24、36ヵ月ではそうではなかった。・更年期のステータスと治療の相互作用は有意ではなかった。

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NSCLC1次治療におけるデュルバルマブ+tremelimumabの成績(MYSTIC)/JAMA Oncol

 未治療の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)において、デュルバルマブおよびデュルバルマブ・tremelimumab併用と化学療法を比較した無作為化非盲検第III相MYSTIC試験の結果がJAMA Oncology誌2020年4月9日オンライン版に発表された。・対象:未治療の転移を有するNSCLC患者(EGFR、ALK変異含まず)1,118例・試験群1:デュルバルマブ(20mg/kg 4週ごとPDまで)・試験群2:デュルバルマブ(20mg/kg 4週ごとPDまで)+tremelimumab(1mg/kg 4週ごと、最大4回),・対照群:化学療法(プラチナ・ダブレット4~6サイクル)・評価項目: [主要評価項目]PD-L1陽性(TPS≧25%)患者の全生存期間(OS)(デュルバルマブ対化学療法、デュルバルマブ+tremelimumab対化学療法)、同患者の無増悪生存期間(PFS)(デュルバルマブ+tremelimumab対化学療法) [探索的研究]血中腫瘍遺伝子変異量(bTMB)による評価 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、各群に無作為に1:1:1で割り付けられた。・TPS≧25%の患者(488例)のOS中央値は、デュルバルマブ群16.3ヵ月に対し、化学療法群は12.9ヵ月であった(HR:0.76、97.54%CI:0.56~1.02、p=0.04[有意差なし])。・デュルバルマブ+tremelimumab群のOS中央値は11.9ヵ月であった(対化学療法群HR:0.85、98.77%CI:0.61~1.17、p=0.20)。・PFS中央値は、デュルバルマブ+tremelimumab群3.9ヵ月に対し、化学療法群5.4ヵ月であった(HR:1.05、99.5%CI:0.72~1.53、p=0.71)。・bTMB 20/Mb以上の患者のOSは、デュルバルマブ+tremelimumab群21.9ヵ月に対し、化学療法10.0ヵ月と、デュルバルマブ+tremelimumab群で改善が示された(HR:0.49、95%CI:0.32~0.74)。・Grade3以上の治療関連有害事象の発現は、デュルバルマブ群14.9%、デュルバルマブ+tremelimumab群22.9%、化学療法群33.8%であった。

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上部尿路がんに対する術後抗がん化学療法の有効性:POUT trial第III相試験(解説:宮嶋哲氏)-1216

 上部尿路がんは予後不良であるものの、術後補助化学療法の有効性は確認されていない。本研究では腎盂尿管がんで腎尿管全摘除術を施行された患者(261例)を対象に、経過観察群とシスプラチン主体の抗がん化学療法投与群(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン)の2群にランダム化してその有効性を前向きに比較検討したものである。 2012年から2017年までに登録された261症例のうち、132例が化学療法群、129例が経過観察群に割り付けられ、観察期間中央値は30.3ヵ月であった。術後化学療法はDFS(HR:0.45、p=0.0001)ならびにMFS(HR:0.48、p=0.0007)を有意に改善した。3年無事象生存率(event-free survival)は化学療法群で71%、経過観察群で46%であった。一方、Grade3以上の有害事象は、化学療法群で44%、経過観察群で4%に認めたが、治療関連死は認めなかった。 以上から、腎盂尿管がんに対する腎尿管全摘除術施行後のシスプラチン主体補助化学療法の有効性がようやく示されたといえる。ただし、対象となったコホートにはリンパ節陽性例が20%以上含まれていたことから、リンパ節陰性例だけ抽出した症例に関する結果に疑問が残る。さらには、リンパ節郭清の意義についても検討課題である。 腎盂尿管がんの術後は単腎となり腎機能は術前に比べ半減するため、投与可能なシスプラチンの量も減少する。したがって、術前抗がん化学療法の有効性に関する検討も必要である。さらには、免疫チェックポイント阻害薬の登場により、シスプラチン主体抗がん化学療法の立ち位置も今後は変化していくものと予測される。

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EGFR変異陽性肺がんに、EGFR-TKI+VEGF阻害薬「NEJ026試験」【肺がんインタビュー】 第44回

第44回 EGFR変異陽性肺がんに、EGFR-TKI+VEGF阻害薬「NEJ026試験」EGFR変異陽性非小細胞肺がんの1次治療において、エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法を評価した第III相試験「NEJ026試験」の中間解析が発表された。EGFR-TKI併用療法のメリットなどこの試験で明らかになった知見も含め、試験統括医師である岩手医科大学の前門戸 任氏に聞いた。EGFR陽性NSCLCの1次治療の期間をさらに延ばす―試験実施の背景について教えていただけますか。EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)におけるEGFR-TKIの単剤治療は、多くの試験が行われてきました。われわれ北東日本研究機構グループ(North East Japan Study Group、NEJ)が行ったゲフィチニブ単剤と化学療法を比較した第III相NEJ002試験では、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者さんに限定し、ゲフィチニブ単剤の無増悪生存期間(PFS)中央値10.8ヵ月という、先例のない結果をもたらしました。ただ、それでも1年弱でEGFR-TKIの耐性が出てしまうことになります。現在は、この1次治療の期間をさらに延ばすことが重要です。その中の1つの選択肢としてEGFR-TKIとVEGF阻害薬の併用があります。NEJ026試験に先立ち、第1世代EGFR-TKIエルロチニブとVEGF阻害薬ベバシズマブの併用療法を評価した第II相JO25567試験では、エルロチニブ+ベバシズマブ併用群で16.0ヵ月という良好なPFSを達成しました。しかし、第II相試験では日常診療を変えるにはパワー不足です。そこで、NEJグループで第III相試験NEJ026を実施させていただくこととなりました。このNEJ026試験は、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCを対象に、エルロチニブ+ベバシズマブ併用とエルロチニブ単剤を無作為に比較した第III相試験です。登録症例は228例で、2017年9月21日カットオフの中間解析の結果が、2019年4月、Lancet Oncology誌に発表されました。―今回は中間解析ということですが、今後も試験は継続されるのでしょうか。中間解析はかなり厳しい設定になっていましたが、当試験は十分な効果が出て、基準をクリアすることができました。そして、独立データモニター委員会(IDMC)の許諾のもと、患者さんの不利益を最小限にするために、患者さんに試験結果を伝え、試験を継続しました。その結果、生存期間や後治療の解析、リキッドバイオプシーの解析など副次的なプロジェクトについても、質の高いデータを得られることになりました。―NEJ026試験では、エルロチニブ+ベバシズマブのPFS中央値は16.9ヵ月で、エルロチニブ単独の13.3ヵ月に比べ有意に改善しています。この結果をどう評価されますか。同じ組み合わせ(エルロチニブ+ベバシズマブvs.エルロチニブ)で行われた第II相のJO25567試験でもPFSを有意に改善していますが(16.0ヵ月vs.9.7ヵ月)、今回の結果で、しっかり検証されたと思います。これは非常に大きいことです。もう1点、JO25567試験では脳転移例は除外されていましたが、NEJ026試験では脳転移例も含まれています。ご存じのとおり、脳転移例の転帰はとても不良です。その脳転移を含めてもなお、16.9ヵ月のPFSを達成したということは非常に意味のあることだと思います。―併用による有害事象増加の懸念も出てくると思いますが、いかがでしょうか。EGFR-TKIの有害事象である、皮疹、下痢などについては、今回の試験においてもあまり変わりませんが、ベバシズマブ特有の有害事象である、蛋白尿、高血圧などはエルロチニブ単剤群に比べると増加しています。ただ、ベバシズマブは以前から化学療法と共に使ってきた経験もあり、管理可能な副作用だと考えています。胸水貯留例、L858R例などでより期待されるNEJ026レジメン―CareNet.com会員のアンケートでは、NEJ026レジメンについて、とくに胸水例に使いたいという意見が多くみられますが、その点はいかがですか。過去の試験でも、胸水貯留例に対するベバシズマブの効果については一定の評価があります。この試験でも、胸水貯留例をサブグループで解析していますが、併用群で明らかにPFSが良好でした(HR:0.63、95%CI:0.34~1.02)。これには、ベバシズマブなどVEGF阻害薬の作用機序が影響していると考えられます。VEGF阻害薬といえば血管増殖阻害作用が頭に浮かびますが、血管正常化作用もあります。腫瘍血管は漏れやすい血管になっています。VEGF阻害薬の血管正常化作用で、本来の機能を持った血管を作ってくれる。胸膜播種・浸潤した胸膜血管に対するこの働きが、胸水貯留に良いのかもしれません。もう1つ、腫瘍血管では、間質の圧力が強くなり、抗がん剤が届かないのです。血管正常化作用により、抗がん剤を腫瘍により多く到達させることも考えられます。このように、作用機序からも胸水に良いのは納得できます。―そのほかにNEJ026レジメンが適しているケースはありますか。もう1つ考えるべき点としては、exon21のL858R変異例です。以前からEGFR-TKI単剤はexon19del変異に比べ、L858R変異では効果が弱いといわれていました。EGFR-TKIとVEGF阻害薬の併用は、JO25567においてもL858R変異への有効性が報告されていました。今回のNEJ026試験でも、L858R変異症例に対するPFSは17.4ヵ月vs.13.7ヵ月(HR:0.69)と、併用群でより良好なPFSが示されています。これはexon19del変異への成績(mPFS:16.6ヵ月vs.12.4ヵ月、HR:0.57)と同等の結果です。このように、日常臨床では、胸水症例やL858R症例にはNEJ026レジメンを選択するという手段も有効だと思います。世界と戦える日本の肺がん研究―最後に読者の先生方にメッセージをお願いします。今回の試験では、EU、中国に先んじて日本発で発表することができました。日本の臨床試験は従来から質の高さには定評がありますが、オールジャパンで1つの試験に向かって進むことで非常に早く症例集積できることが、今回の試験で経験できました。世界と戦っていける自信となりました。NEJは以前からEGFR陽性肺がんに対する試験に取り組んでいますが、今後も皆さんの協力で、EGFR関連の試験で世界と戦っていければと考えます。NEJ026試験:Saito H, et al. Lancet Oncol. 2019;20:625-635.JO25567試験:Seto T, et al. Lancet Oncol. 2014;15:1236-1244.NEJ002試験:Maemondo M, et al. N Engl J Med. 2010;362:2380-2388.

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肺がん1次治療、二ボルマブ・イピリムマブ併用への化学療法の限定追加療法、米国および EU で申請/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年4月8日、米国食品医薬品局(FDA)が、ファーストライン治療薬として、化学療法のサイクルを限定して追加した二ボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法の生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理したと発表。 また、欧州医薬品庁(EMA)は、同適応に関して、化学療法を限定して追加した二ボルマブとイピリムマブの併用療法の承認申請を受理した。本申請の受理により、提出が完了し、EMAの中央審査が開始される。これは、日本において、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブが共同で行った、化学療法を限定して追加した二ボルマブとイピリムマブの併用療法の国内製造販売承認事項一部変更承認申請の提出に関する3月26日の発表に続くものである。 本申請は、第III相CheckMate-9LA試験の結果に基づいている。 CheckMate-9LA試験は、PD-L1発現レベルおよび腫瘍組織型にかかわらず、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者のファーストライン治療薬として、二ボルマブ360mg(3週間間隔)とイピリムマブ1mg/kg(6週間間隔)に化学療法(2サイクル)を追加した併用療法を、化学療法(最大4サイクル後に、適格であればペメトレキセドによる維持療法を任意で施行)と比較した多施設共同無作為化非盲検第III相臨床試験。2019年10月、中間解析で、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成したことを発表していた。

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第3回 慶應義塾大学病院の集団感染でわかった「行動変容」の難しさ

40人でパーティ、18人が陽性こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件について、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、東京の街は大変なことになってきました。緊急事態宣言の後、東京都は飲食店に対し、営業は午後8時まで、お酒の提供は午後7時までにしてくれ、と要請しました。多くの飲食店は売上減を少しでもカバーしようと、テイクアウトメニューやお弁当の提供を始めています。私がよく行く焼肉屋も急遽、お弁当を開始していましたが、店主は「焼け石に水だよ」と暗い顔でした。安倍首相は、接客を伴う飲食店の利用や企業への出勤者削減などのさまざまな行動の自粛要請を7都府県だけでなく、全国に広げる考えです。オフィス街に人がいないので、お弁当のニーズもそれほど期待できそうにありません…。今週気になったのは、慶應義塾大学病院の集団感染のニュースです。4月6日、同病院は「院内で研修医の新型コロナウイルスの集団感染が発生し、18人が陽性と確認された」と発表しました。それによれば、3月31日に初期研修を修了した研修医1人の感染が確認されたため、接触の可能性が高い研修医99人を2週間の自宅待機とし、PCR検査を実施したところ、6日までに18人の感染が判明した、とのことです。世間が問題視したのは研修医たちの行動です。3月26日、研修医たちは約40人で初期研修修了の打ち上げパーティを開いていたのです。26日といえば、東京都の小池百合子知事が、夜間の外出を控えるよう要請した翌日。同院でも、医師らに会食をしないよう周知し、研修修了後の懇親会もしないよう注意喚起をしていた矢先の出来事でした。慶應義塾大学病院は「研修医のとった行動は患者を守るべき医療者として許されない行為であり、医師としての自覚が欠如していたと言わざるを得ない」と6日に謝罪文を出しています。なお、同病院は4月14日現在、初診・救急は原則停止。再診も化学療法・免疫療法を含め、治療計画上必要な診療以外は基本停止しています。「自粛要請」だけで乗り切れるのか……さて、このニュース、「医師として情けない!」という批判が全国で上がったのですが、4月9日発売の週刊文春は、より詳細にパーティの様子や感染の経緯を報道しています。そこでは、多数の院内感染が発生した台東区の永寿総合病院に出入りしていた研修医の指導医が感染源ではないか、と推測されています。その指導医に付いていた研修医1人がまず感染。この研修医はパーティを欠席しましたが、それ以前にほかの研修医にうつしたとみられ、うつされた研修医が参加したことで一気に広がった、とみられています。パーティは午後9時過ぎからなんと、朝方まで続いたとのことです。同病院では、研修医と濃厚接触した100人ほどの医師も2週間の自宅待機となり、同病院の診療機能や関連病院の人事にも多大な影響を及ぼしているようです。同様のニュースは、京都からも届いています。4月7日、京都大学医学部附属病院で医師、研修医、事務職員ら95人が病院側の自粛要請にもかかわらず、会食を行ったり国内旅行をしたりしていた事実が判明したのです。病院は関係者全員に2週間の自宅待機を命じています。学生が羽目を外すのはよくあることですが、よりによって偏差値最高レベルの慶應義塾大学医学部で最新医学をみっちり学んだ若者が、この時期に「3密」の飲み会を長時間にわたって開いていたという事実は、重いものがあります。ちなみに、慶應義塾大学医学部は厚生労働省の鈴木康裕医務技官の出身校です。新型コロナ対策を指揮する医系技官トップの母校で起こった不祥事、というわけです。首相以下、政府対策本部の専門家会議の医師も口を酸っぱくして強調する「行動変容」。実際にそれを国民に促すのがいかに難しいか、それをこの事件は教えてくれました。「夜8時で飲み屋は終了」を「夜8時までは飲めるから5時から飲もう」と“前向き”に考える人は少なくないのでは。医学部で感染症の怖さをみっちり学んだはずの若者ですらこの体たらくなのですから…。今後、さまざまな「自粛要請」だけで果たして難局を乗り切れるのか。またまた心がざわついている今日この頃です。

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第3回 COVID-19対策、全国の病院の医療提供状況を公開

<先週の動き>1.COVID-19対策、全国の病院の医療提供状況を公開2.COVID-19軽症患者の病院以外での療養が開始3.BCGの接種ミスによる健康被害発生4.国内の病院で相次ぐ新型コロナウイルスの院内感染事例5.医療と介護の連結解析データ、10月から第三者提供される見通し1.COVID-19対策、全国の病院の医療提供状況を公開新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4月8日、政府が全国の入院病床を有する病院(20床以上)の医療体制を毎日把握するシステムをβ版として公開した。全国各地の医療機関が、外来・入院・救急・透析・化学療法での受け入れ制限などを行っているか否かが開示され、地図上で確認できる。5月からは本格稼働を開始予定で、今後さらに、空床情報、人工呼吸器の稼働数、PCR検査の判定の状況、医師・看護師と事務職員の数など、届け出をもとに、各医療機関の緊急患者の受け入れや入院の余裕があるかを把握できるようになる見込み。(参考)新型コロナウイルス感染症対策関係:全国医療機関の医療提供体制の状況を公開しました(β版)(政府CIOポータル)政府、8000病院一元把握 医療崩壊防止へ自治体に情報(日本経済新聞)2.COVID-19軽症患者の病院以外での療養が開始新型コロナウイルス感染者の増加に伴い、4月に入って救急医療現場での医療崩壊が危惧されており、東京、神奈川、大阪、愛知など全国の10都県で、新型コロナウイルス入院患者のうち、軽症・無症状の患者向けに施設を確保している。東京都では4月7日から患者受け入れが開始され、大阪府でも13日からホテルなどの宿泊施設への受け入れが開始される見通し。軽症者や無症状の人の療養のために、看護師2人が24時間常駐し、日中は医師が待機して、患者の健康管理を行う。今回の対策は、医療機関における重症患者の治療を優先し、軽症者についてはホテルなど療養先を振り分けて、医療崩壊を防ぐ狙いで行われる。(参考)軽症者受け入れ4600室止まり 10都県 感染爆発の備えに懸念(日本経済新聞)3.BCGの接種ミスによる健康被害発生BCGの接種実施国では新型コロナウイルス関連肺炎の発生件数が少ないという報道により、BCGがCOVID-19に有効だとする説が浮上し、日本でも接種を求める動きが増えている。しかし先日、わが国の医療機関において、成人に対してBCGの予防接種を皮下注射で行ない、発熱や蕁麻疹、血尿といった健康被害が生じている。BCGは管針法による経皮接種が絶対であり、通常のワクチンと同様に皮下注射を行なってはならない。BCGワクチンの添付文書には、「本剤は、経皮接種用の濃厚なワクチンであり、もし皮内等に注射すると強い局所反応を呈するので、絶対に注射してはならない」との記載があり、当然これに従って接種を行うべきである。ちなみにメーカーによると、3月末には通常の3倍出荷され、新型コロナウイルス関連報道により、これまでとは異なった出荷動向だという。なお、BCGの新型コロナウイルスへの効果は検証中であり、現時点では定期予防接種の対象外患者に対して接種した場合、健康被害が発生したとしても、PMDAによる医薬品副作用被害救済制度の給付対象とならないので注意が必要だ。(参考)乾燥BCGワクチン(経皮用・1人用)添付文書(PMDA)新型コロナ予防しようと…BCGワクチン接種ミス 成人に“絶対禁止”の皮下注射(毎日新聞)最近の BCG ワクチンと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する報道に関連して ~乳児へのBCGワクチンの優先接種のお願い~(日本小児科学会)4.国内の病院で相次ぐ新型コロナウイルスの院内感染事例4月に入ってから、大学病院を含む急性期病院だけでなく、介護施設を含め、複数の医療機関において、院内感染事例の報告が相次いでいる。多くは患者を介しての感染と考えられるが、送別会などの開催により、医療従事者間でのクラスター発生報告もあり、残念でならない。介護施設などから救急搬送を受け入れる病院側としては、警戒態勢をとっていても完全に防ぐのは困難なので、対応するスタッフを媒介する院内での感染を水際で対策していくしかない。当然だが、院内感染が発生した場合は、外来・救急の受け入れ中止、予定手術の延期など、地域医療や患者への影響が甚大だ。すでに多くの医療機関や介護施設では面会禁止などの対処をとっており、医療従事者はこれまで以上に感染防止策を徹底すべきだ。海外では、介護施設で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、適切な対応をしなかった場合、入所者の3分の1が死亡したという報告(NEJM)もあり、注意が必要である。(参考)新型コロナ 医療者153人感染 「院内」複数で 10都道府県集計(毎日新聞)コロナ院内感染疑い、全体の1割 検査徹底で封じ込めを(日経新聞)McMichael TM, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 27. [Epub ahead of print]5.医療と介護の連結解析データ、10月から第三者提供される見通し厚生労働省では、介護保険法の改正、医療医保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」(以下、「改正法」と表記)が、第198回通常国会において成立し、10月1日の施行に向けて、データベースの供の準備に入った。改正介護保険法にも、匿名データの第三者提供について規定を設けており、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)と介護保険総合データベース(介護DB)の連結解析データの提供開始のために、必要な事項(提供対象者の範囲、データ利用者側の講ずべき安全管理措置義務、利用料など)の規定整備が進む。従来は、大学教員や行政関係者など、一部の研究目的でしかデータが得られなかったが、今後、医療・介護連結データを利用して、医療・介護サービスの質の向上やアウトカムの検証などが可能になると考えられる。また、2022年4月にはDPCデータベースについても、NDB・介護DBと連結することが目標となっており、今後、このデータベースから医薬品の研究開発、疫学研究、医療経済研究などが進むことが予見される。(参考)要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供に関する有識者会議(第8回)資料(厚労省)「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」の施行に向けた検討について(報告)(厚労省 老健局老人保健課)「要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供に関するガイドライン」改正について(同)

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