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非小細胞肺がん、ニボルマブ+化学療法の術前補助療法(CheckMate816)/ASCO2021

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法において、ニボルマブ(NIVO)+化学療法化学療法を比較する無作為化化第3相試験CheckMate816の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表された。・対象:Stage IB~IIIAの切除可能なNSCLC(ECOGPS≦1)・試験薬群:ニボルマブ360mg+プラチナダブレット化学療法 3週ごと3サイクル→手術(n=179)・対照薬群:プラチナダブレット化学療法 3週ごと3サイクル→手術(n=179) 根治手術は治療から6週間以内に行われた・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立委員会評価の病理学的完全奏効(pCR)および無イベント生存率[探索的評価項目]手術実施状況、手術関連有害事象 主な結果は以下のとおり。・pCR達成率は、NIVO+化学療法群24.0%、化学療法群2.2%と、NIVO+化学療法群で有意に優れていた(オッズ比:13.94、99%信頼区間:3.49~55.75、p<0.0001)。(既報)・根治的手術率は、ニボルマブ+化学療法83%、化学療法群では75%であった。・肺葉切除術はNIVO+化学療法群の77%、化学療法群の61%で実施され、肺全摘はNIVO+化学療法の17%、化学療法群の25%で実施された。・R0切除はNIVO+化学療法群83%、化学療法群78%で達成され、原発巣の残存生存腫瘍率はニボルマブ+化学療法10%に対し、化学療法群では74%であった。・全Gradeの手術関連有害事象の発現はNIVO+化学療法群41%、化学療法群47%であり、Grade3/4はそれぞれ11%、15%で発現した。 CheckMate816において、NIVO+化学療法の術前補助療法は、pCRを有意に改善した。また、同治療は忍容性が高く、ニボルマブの追加により術後合併症が増えることもなかった。この結果は、ニボルマブ+化学療法のNSCLC術前補助療法の選択肢としての可能性を支持するものだと。発表者は結んでいる。

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ASCO2021 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介これまでは高齢がん患者を対象とした臨床試験が乏しいといわれてきたが、徐々に高齢者を対象とした第III相試験のデータが発表されつつある。ASCO2021では、高齢者進展型小細胞肺がんに対するカルボプラチン+エトポシド併用療法(CE療法)とカルボプラチン+イリノテカン併用療法(CI療法)のランダム化比較第II/III相試験(JCOG1201/TORG1528:#8571)、高齢者化学療法未施行IIIB/IV期扁平上皮肺がんに対するnab-パクリタキセル・カルボプラチン併用療法とドセタキセル単剤療法のランダム化第III相試験(#9031)、76歳以上の切除不能膵がんに対する非手術療法の前向き観察研究(#4123)など、高齢者を対象とした臨床研究の結果が複数、発表されている。これら治療開発に関する第III相試験の情報はさまざまな場所で得られると思われるため詳述はせず、ここでは老年腫瘍学に特徴的な研究を紹介する。高齢者の多様性を示すかのように、今回の発表内容も多様であった。高齢がん患者に対する高齢者総合的機能評価および介入に関するランダム化比較試験(THE 5C STUDY)高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)は、患者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し、脆弱な点が見つかれば、それに対するサポートを行う診療手法である。NCCNガイドライン1)をはじめ、高齢がん患者に対してCGAを実施することが推奨されている。これまで、がん領域では高齢者の機能の「評価」だけが注目されることが多かったが、最近では、「脆弱性に対するサポート」まで含めた診療の有用性を評価すべきという風潮になっている。昨年のASCOでは、「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が4つ発表され、その有用性が検証されつつある。今回、世界的にも注目されていた第5のランダム化比較試験、THE 5C STUDY2)がシンポジウムで発表された。画像を拡大する主な適格規準は、70歳以上、がん薬物治療が予定されている患者(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、PS:0~2など。標準診療群は「通常の診療」、試験診療群は「高齢者総合的機能評価および介入(CGAに加え、通常の腫瘍治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるフォローアップ)を行う診療」である。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(項目29および30)で評価した健康関連の生活の質(HR-QOL)であり、key secondary endpointは手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)。primary endpointについてはパターン混合モデルを使用した(0、3、6ヵ月目)。カナダの8つの病院から351例の参加者が登録され、治療開始翌日以降に介入が行われた(患者の要望に合わせた研究であるため)。HR-QOLスコアの変化は両群で差がなく(p=0.90)、またIADLも両群間で差はなかった(p=0.54)。筆者はlimitationとして、CGAを実施したタイミングが悪かったことを挙げている。本研究では、患者の利便性を考えて、「治療開始時」または「治療開始後」にCGAを実施していたが、一般的には、治療方針を決定する前にCGAを実施すれば、患者の脆弱性を考慮して適切な治療を選択できると考えられている。しかし、今回は治療開始時または治療開始後にCGAを実施された患者が多かったため、CGAの意義が乏しかった可能性があるという理屈である。その他、COVID-19により、十分な介入ができなかったこと、またHR-QOLが影響を受けた可能性があること、そもそも「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するためのアウトカムとしてEORTC QLQ-C30のGlobal health statusが適切でなかった可能性などをlimitationに挙げている。昨年のASCOで発表された研究では「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性が示されたが、残念ながら、本試験ではその有用性は検証できなかった。しかし、研究デザインに問題があること、またひと言で「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」といっても、その内容はさまざまであることなどから、本試験がnegative studyであるからといって、その有用性が否定されたわけではないだろう。個人的には、筆者がlimitationで挙げているとおり、治療開始「前」にCGAを実施できていれば、より適切な治療が選択され、その結果、介入もより効果的になって、本試験の結果も変わっていたのではないかと想像してしまう。高齢者総合的機能評価と局所進行頭頸部扁平上皮がんの治療方針単施設の後ろ向き研究ではあるが、THE 5C STUDYのlimitationと関係するため、ここで紹介する。要は、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することで、適切な治療を選択できる可能性があるという発表である3)。局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-HNSCC)を伴う高齢者を対象として、2016~18年の間に通常の診療を受けた集団(通常診療コホート)と、2018~20年の間にCGAを実施された集団(CGAコホート)を比較し、実際に受けた治療(標準治療、毒性を弱めた治療、緩和目的の治療、ベストサポーティブケア)、治療完遂割合、奏効割合などを評価した。通常診療コホート96例、CGAコホート81例の計197例の患者が対象となった。CGAコホートでは、通常診療コホートと比較して、標準治療を受ける患者が多かったが(36% vs.21%、p=0.048)、治療完遂割合(84% vs.86%、p=0.805)や奏効割合(73.9% vs.66.7%、p=0.082)に有意な差は認めなかった。これまでは、CGAを実施することで過剰な治療を防ぐことができるという、いわば脆弱な患者を守る方向で議論されることが多いと感じていた。しかし、本研究では、CGAを実施することで標準的な治療を受けることができた患者が増え、またベストサポーティブケアを受ける患者が少なくなるということが示されたことで、CGAにより、過小な治療を受けていた患者が適切な治療を受けられることが示唆されたといえる。つまり、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することは大事という話。Choosing Unwisely(賢くない選択):高齢者における骨髄異形成症候群の確定診断Choosing Wiselyとは科学的な裏付けのない診療を受けないように賢い選択をしましょうという国際的なキャンペーンだが、本研究ではChoosing Unwiselyとして、高齢者に対して骨髄異形成症候群(MDS)の正確な診断をすること、を挙げている4)。MDSに正確な診断(Complete Diagnostic Evaluation:CDE)をするためには、骨髄生検、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション、染色体分析が必要だが、この意義があるか否かを2011~14年のメディケアデータベースを用いて検討した。対象は、2011~14年の間に66歳以上でメディケアを受けている患者のうち、MDSの診断を受けており、1種類以上の骨髄細胞減少を有し、MDS診断前後16週間に輸血を受けていない集団(1万6,779例)。CDEが臨床的に正当化されない患者の要因の組み合わせを特定するために、機械学習の手法であるCART(Classification and Regression Tree)分析を行い、CDEの有無による生存率の比較を行うためにCox比例ハザード回帰分析を行った。結果、1種類の血球減少(例:貧血のみ)を有する集団のうち、66~79歳の57.7%(1,156例)、80歳以上の46.0%(860例)がCDEを受けていた。また、血球減少がない患者3,890例のうち、866例がCDEを受けていた。背景因子を調整後の解析では、CDEを受けたことによる生存率の向上は認められなかった(p=0.24)。筆者は、高齢者のMDSに対して不要なCDEを減らすことを提案している。COVID-19患者の全米データベースの「がんコホート」高齢者に限定した研究ではないが、知っておくべきデータだと思うので簡単に紹介する。米国国立衛生研究所(NIH)が運営している全米COVIDコホート共同研究(National COVID Cohort Collaborative:N3C)のデータベースのうち、がん患者のみのコホートが公表された5,6)。N3Cコホートから合計37万2,883例の成人がん患者が同定され、5万4,642例(14.7%)がCOVID-19陽性。入院中のCOVID-19陽性患者の平均在院日数は6日(SD 23.1日)で、COVID-19の初回入院中に死亡した患者は7.0%、侵襲的人工呼吸が必要な患者は4.5%、体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な患者は0.1%であった。生存割合は、10日目で86.4%、30日目で63.6%であった。65歳以上の高齢者(HR:6.1、95%CI:4.3~8.7)、併存症スコア2以上(HR:1.15、95%CI:1.1~1.2)などが全死因死亡のリスク増加と関連していた。18~29歳を基準とした場合、30~49歳のHRは1.09(0.67~1.76)、50~64歳では1.13(0.72~1.77)に対して、65歳以上ではHR:6.1と異常に高いことから、これまで以上に、高齢がん患者ではCOVID-19に注意を払う必要があると感じた。もちろん、併存症スコアが上昇するにつれ死亡割合が上昇していることから、暦年齢は併存症スコアに関連している可能性があり、暦年齢だけの問題ではない可能性はある。参考1)NCCN GUIDELINES FOR SPECIFIC POPULATIONS: Older Adult Oncology2)Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study.3)Impact of comprehensive geriatric assesment (CGA) in the treatment decision and outcome of older patients with locally advanced head and neck squamous cell carcinoma (LA-HNSCC).4)Choosing unwisely: Low-value care in older adults with a diagnosis of myelodysplastic syndrome.5)Outcomes of COVID-19 in cancer patients: Report from the National COVID Cohort Collaborative (N3C).6)Sharafeldin N, et al. J Clin Oncol. 2021:Jun 4. [Epub ahead of print]

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ASCO2021 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介食道がん本邦における進行・転移性食道扁平上皮がん1次治療の第1選択は、これまでフルオロウラシル+シスプラチン(FP療法)であった(『食道癌診療ガイドライン 2017年版』)。20年以上も標準治療が変わらなかったわけであるが、ESMO virtual congress 2020で進行・転移性食道がん(扁平上皮がんが7割強、腺がんが3割弱)のFP療法に対する抗PD-1抗体薬ペムブロリズマブ(PEM)の有効性を見たランダム化盲検第III相試験KEYNOTE-590がすでに報告されており、全体集団で全生存期間(OS)中央値が12.4ヵ月vs.9.8ヵ月(HR:0.73、p<0.0001)と有効性を検証した。2021年3月には米国で承認となっている(本邦でも2020年11月に一変申請済み)が、今回ニボルマブ(NIVO)についても第III相試験の結果が報告された。CheckMate 648CheckMate 648は、進行・転移性食道扁平上皮がんの1次治療において、通常の化学療法(FP療法)に対する、化学療法+NIVOの併用とイピリムマブ(IPI)+NIVOの有効性を見たランダム化第III相試験である。主要評価項目は腫瘍細胞のPD-L1≧1%の症例におけるOSと無増悪生存期間(PFS)であり、副次評価項目としてその他の有効性が評価された。結果を化学療法+NIVO群vs.化学療法群から見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値15.4ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.54、p<0.0001)、全ランダム化症例でOS中央値13.2ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0021)と、いずれも統計学的有意差をもって化学療法+NIVO群が優れていた。PFSにおいても主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値6.9ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:0.65、p=0.0023)、全ランダム化症例でPFS中央値5.8ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.81、p=0.0355)と、PD-L1≧1%の症例で統計学的有意差を認めたものの、全ランダム化症例では事前に設定した統計学的有意差を示すことができなかった。全奏効率(ORR)はPD-L1≧1%の症例で53% vs.20%、全ランダム化症例で47% vs.27%と、NIVOの併用によるメリットが認められた。次にIPI+NIVO群vs.化学療法群を見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値13.7ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.64、p=0.0010)、全ランダム化症例でOS中央値12.8ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.78、p=0.0110)と、いずれも生存曲線で最初は化学療法群が上を行っている傾向があったが、統計学的有意差をもってIPI+NIVO群が優れていた。PFSにおいては、主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値4.0ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:1.02、p=0.8958)、全ランダム化症例でPFS中央値2.9ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:1.26)と、統計学的有意差を認めなかった。ORRはPD-L1≧1%の症例で35% vs.20%、全ランダム化症例で28% vs.27%と、IPI+NIVO群が化学療法群より優れていたが、化学療法+NIVO群よりも劣る結果であった。毒性に関しては、これまで他がん種で行われた化学療法+NIVOやIPI+NIVOと大きな違いはなかった。本試験では化学療法+NIVO群、IPI+NIVO群いずれもOSで有意差を示しており、いずれも今後承認が期待される。一方、IPI+NIVO群は、もうひとつの主要評価項目であるPD-L1≧1%の症例におけるPFSで有効性を検証することができず、また生存曲線で最初は化学療法群の下を行くことを考えると、化学療法+NIVOのほうがより好んで使われることが予測される。KEYNOTE-590の結果と併せて、PEMとNIVO両者が承認された後は、化学療法+PEMまたは化学療法+NIVOが最も使われるレジメンになるであろう。CheckMate 577の追加解析切除可能進行食道・食道胃接合部がんに対して、術前化学放射線療法(CRT)後の手術は、海外では重要な標準治療の1つであり、ランダム化第III相試験であるCheckMate 577は、術後のNIVOの1年間投与が無病生存期間(DFS)を有意に改善(NIVO群vs.プラセボ群で中央値22.4ヵ月vs.11.0ヵ月、HR:0.69、p=0.0003)することをすでに報告している。今回、有効性、安全性、QOLの追加解析が報告された。DFSのサブグループ解析では、年齢、性別、人種、PS、術前ステージ、原発の部位、組織型、リンパ節転移、組織のPD-L1発現、いずれのグループにおいてもNIVOの上乗せ効果が認められ、NIVOによるQOLの低下も認めなかった。食道がんにおける本邦の標準治療は、術前化学療法の後の手術である。本試験は日本人症例の登録が行われているが、この結果を本邦の実臨床に適用していけるかは解釈が分かれるところである。本邦でNIVOが術後補助療法というかたちで承認されれば、本邦の実臨床に適用する臨床試験をぜひ行ってほしい。胃がんHER2陰性の切除不能進行胃がんにおいては、PEMがKEYNOTE-062で1次治療の有効性が検証できなかった一方で、NIVOは全世界で行われたCheckMate 649や東アジアで行われたATTRACTION-4で、有効性(ATTRACTION-4のOSはnegative)が検証できたことがESMO virtual congress 2020ですでに報告されている。CheckMate 649の追加解析CheckMate 649は、HER2陰性の切除不能胃がんの1次治療において化学療法+NIVOと化学療法を比較した(IPI+NIVO群は途中で登録中止)ランダム化第III相試験であり、主要評価項目であるPD-L1 CPS≧5症例のOSとPFS、副次評価項目であるCPS≧1、全ランダム化症例のOSとPFSにおいて、化学療法+NIVO群が化学療法群より優れていることが報告されている。今回、さらなる有効性の解析が報告された。1,581例のランダム化された症例で最低でも12.1ヵ月以上フォローアップされた段階で、NIVO+化学療法群は全ランダム化症例でOS中央値13.8ヵ月vs.11.6ヵ月(HR:0.80、p=0.0002)、PFS中央値7.7ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.77)と改善を認めた。ORRは58% vs.46%と化学療法+NIVO群で良好な結果であり、PD-L1 CPSはOS、PFSが良好な症例の選別に有効であることも示された。さらに、化学療法+NIVO群は臨床症状の悪化までの期間についても有意な改善を認めた(HR:0.77)。米国では化学療法+NIVOが2021年4月16日に、CPSにかかわらずすべての切除不能胃がんの1次治療として承認となっており、本邦でも2020年12月に一変申請がすでに提出されている。承認後は本邦でも切除不能胃がんの第1選択になっていくものと考える。KEYNOTE-811の奏効割合の報告KEYNOTE-811はHER2陽性の切除不能胃腺がんの1次治療において、化学療法+トラスツズマブ(Tmab)+PEMと化学療法+Tmab+プラセボを比較したランダム化第III相試験である。合計692例が登録予定で主要評価項目はOSとPFSであるが、最初の260例が8.5ヵ月以上フォローアップされたところで1回目の中間解析が行われた。有効性の評価対象は264例、安全性の評価対象は433例であった。ORRにおいて化学療法+Tmab+PEM群で74.4%、化学療法+Tmab+プラセボ群で51.9%とPEM併用によって22.7%(p=0.00006)も奏効例の増加が認められ、完全奏効例が11%も認められるなど深い奏効が得られていた。安全性において新たに懸念される事項は認められなかった。この結果をもって米国では化学療法+Tmab+PEMが2021年5月に迅速承認を得たが、本邦で同様の承認が得られるか不明である(本邦には同様の迅速承認制度はなく、また本邦において胃がんは希少疾患ではないため難しいと思われる)。今後OS、PFSなどの主要評価項目の有効性を確認し、正式な承認が得られていくものと考える。大腸がん高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)転移性大腸がんの1次治療において、PEM単剤と通常の化学療法を比較するランダム化第III相試験であるKEYNOTE-177試験では、すでに主要評価項目の1つであるPFSの有意な改善が報告されていて、米国、欧州で1次治療として承認を得ている(本邦では2020年9月に一変申請済み)。今回、最終解析としてもうひとつの主要評価項目であるOSの報告が行われた。KEYNOTE-177試験の生存データの最終解析PEM群200mg/3週間ごととmFOLFOX6/FOLFIRI±ベバシズマブ/セツキシマブ2週間ごと(化学療法群)を1対1に割り付け、化学療法群は病勢進行(PD)後、PEMのcrossoverがプロトコール治療として認められていた。OSはp値が0.0246を下回ったとき有意と判定されることとなっていた。最終解析ではPEM群と化学療法群でPFS中央値16.5ヵ月vs.8.2ヵ月(HR:0.59)であり、化学療法群のうち56例(36.4%)がPEMにcrossoverされ、さらに37例にプロトコール治療外でPD-1/PD-L1抗体が投与されたため、合計60.4%の症例がcrossoverとなった。OS中央値はPEM群と化学療法群で、到達せずvs.36.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0359)とPEM群で良好な結果であったが、事前に設定された統計学的な有意差は検証できなかった。以上より、MSI-H転移性大腸がんの1次治療においてPEMはPFSで統計学的に有意に優れており毒性は軽かった。化学療法群でcrossoverした症例が多く、また、想定していたOSイベント数に到達しない段階での解析であることもあり、統計学的有意差は検証できなかったが、OSにおいても明らかに優れた結果であった。本邦でも、承認後はMSI-H転移性大腸がんの1次治療における標準治療になるであろう。TRUSTY試験転移性大腸がんの3次治療以降の選択肢としてトリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ(BEV)の有効性がすでに複数の試験で報告されており、『NCCNガイドライン』にも記載されている。今回、本邦において、2次治療でFTD/TPI+BEVとFOLFIRIまたはS-1+イリノテカン(IRI)+BEVを比較する第II/III相臨床試験が実施された。1次治療においてオキサリプラチン/フルオロピリミジン+BEVまたは抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)を行った症例を対象とし、FTD/TPI+BEV(試験群)とFOLFIRIまたはS-1+IRI+BEV(対照群)に1対1に割り付けを行った。主要評価項目はOSで、非劣性マージンのハザード比を1.33に設定した。副次評価項目はPFS、ORR、病勢制御割合(DCR)などであった。目標症例数は524例であったが、397例を登録した時点の中間解析で中止が勧告され、登録終了となった。試験群と対照群で、OS中央値は14.8ヵ月vs.18.1ヵ月(HR:1.38、p=0.5920)であり非劣性を示すことはできず、むしろ試験群が劣っている傾向であった。PFS中央値は4.5ヵ月vs.6.0ヵ月(HR:1.45)、ORRは3.8% vs.7.1%、DCRは61.2% vs.71.7%であった。次治療の実施率は59.9% vs.52.3%であった。サブグループで見ると、OSにおいてS-1+IRI+BEV例で試験群vs.対照群が13.2ヵ月vs.未到達(HR:2.14)とS-1+IRI+BEVが良好である一方で、FOLFIRI例では16.4ヵ月vs.17.5ヵ月(HR:1.07)であり、レジメンによる大きな差を認めた。転移性大腸がん2次治療としてのFTD/TPI+BEVはフルオロピリミジン+IRI+BEVに対して非劣性を検証できず、今後も2次治療の標準治療はフルオロピリミジン+IRI+BEVである。S-1+IRI+BEV例で対照群が良好であった理由は結論が出ないが、RAS変異症例の割合、前治療の抗EGFR抗体薬の使用割合などに偏りがあり、それらが影響している可能性が考えられる。DESTINY-CRC01試験の最終解析HER2遺伝子増幅を認める大腸がんは、転移性大腸がんの2~3%に存在し、抗HER2療法が有効であることが報告されている。トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、すでにHER2陽性の乳がん・胃がんで標準治療となっているが、大腸がんにおいてもその有効性を見るDESTINY-CRC01が2020 ASCO virtualで報告されており、今回、最終解析の結果が報告された。HER2 IHC3+ or IHC2+/ISH+の症例においては、確定されたORRが45.3%、PFS中央値6.9ヵ月、OS中央値15.5ヵ月と優れた結果であり、前治療の抗HER2治療にかかわらず有効性を認めた。一方、HER2 IHC2+/ISH-、HER2 IHC1+の症例は奏効例が1例もおらず、有効性は認めなかった。毒性ではやはり間質性肺障害の頻度が9.3%と懸念される結果であった。現在、T-DXdの用量を5.4mg/kg Q3Wで6.4mg/kg Q3Wをランダム化比較する第II相試験であるDESTINY-CRC02が進行中である。終わりにこの1~2年の報告で、食道がん、胃がん、MSI-H大腸がんの1次治療で抗PD-1抗体の有効性が検証されたことにより、間もなくこれらの消化管がんの1次治療で抗PD-1抗体を第1選択で使う時代が来るだろう。NIVO、PEM、IPIの有効性の検証が一巡した現在、新たな治療標的に対する分子標的薬やADC製剤の開発や、ウイルス療法、光免疫療法など、まったく新しい発想の治療が消化管がんにおいて積極的に開発されることを期待したい。

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ASCO2021レポート 乳がん

レポーター紹介2021年6月4日から8日まで5日間にわたり、2021 ASCO Annual Meetingが昨年と同じく完全バーチャルで実施された。昨年はプレナリーセッションのQAのみがライブ配信され、他の演題は口演を含め開会と同時にオンデマンドで見ることができたが、今年は口演の録画+リアルタイムQAが実施された。参加された方は実感されていると思うが、米国の日中はほぼ日本の深夜〜明け方である。日本からリアルタイムで参加するのに骨が折れるのは言うまでもない。2021年のテーマは“Equity: Every Patient. Every Day. Everywhere.”であった。COVID-19は世界中の日常を変えてしまったが、図らずも人種や地域によって受けられる治療に差があることを明らかにしてしまった。がん領域においても公平な治療は非常に重要な概念である(公平でないからこそテーマとなっている、ともいえる)。さて、乳がん領域ではプレナリーで日常臨床を変える結果が発表され、Local/Regional/Adjuvantで重要な演題が多く発表された。その一方で、Metastaticでは目玉となる発表は少なかったように思う。乳がんの演題について、プレナリーセッションの1題、Local/Adjuvantから3演題、Metastaticから1演題を紹介する。生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性のHER2陰性再発高リスク早期乳がんに対する周術期化学療法後の術後オラパリブ療法の二重盲検化比較第III相試験(OlympiA試験, LBA1)生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性(gBRCAmt)のHER2陰性転移乳がんに対しては、OlympiAD試験でオラパリブの主治医選択治療(化学療法)に対する無増悪生存期間(PFS)における優越性が示され、現在実臨床でも使用されている(Robson M, et al. N Engl J Med. 2017;377:523-533.)。オラパリブはPARP阻害薬であり、gBRCAmtの乳がん患者では合成致死と呼ばれる機序でがん細胞の細胞死を誘導する。OlympiA試験ではgBRCAmtを持つHER2陰性再発高リスク乳がん(術前化学療法を受けた患者では、トリプルネガティブ乳がん[TNBC]でnon-pCR、HR+でnon-pCRかつCPS-EG≧3、術後化学療法を受けた患者では、TNBCでpT2以上またはpN1以上、HR+でN≧4個)を、オラパリブ300mg 2回/日 内服1年間とプラセボに割り付けた。1,836例が登録され、オラパリブ921例、プラセボ915例に割り付けられた。遺伝子変異はBRCA1が70%強であり、ホルモン受容体は陽性が20%弱であった。主要評価項目の無浸潤疾患生存(iDFS)において、3年で85.9% vs.77.1%(ハザード比[HR]:0.58、95%CI:0.41~0.82、p<0.0001)と10%近い差をつけてオラパリブ群で良好であった。副次評価項目の遠隔無病生存(DDFS)においても、3年で87.5% vs.80.4%(HR:0.57、95%CI:0.39~0.83、p<0.0001)であり、iDFSと同様の傾向であった(DDFSとOSの評価ではαが再利用されている)。3年全生存(OS)では92.0% vs.88.3%(HR:0.68、95%CI:0.44~1.05、p=0.024)(有意水準はp<0.01)と統計学的有意差こそ示されなかったものの、オラパリブ群で良好な傾向であった。患者がリスク低減手術を受けたかどうかにもよるが、オラパリブがHBOC関連の他がんの発症を抑えていることが、OSで良好な傾向を認めた理由かもしれない。毒性については悪心、倦怠感、貧血が主なものであり、Grade3の貧血には注意が必要なものの、これまでに示されている有害事象と同様で、いずれも管理可能なものである。PARP阻害薬を早期がんに使用する際の懸念点としてMDS/AMLならびに2次がんの発症があるが、発表時点ではオラパリブでそれぞれ0.2%、2.2%、プラセボで0.3%、3.5%であり、とくにオラパリブ群での増加は認めなかった。ただし、こちらについてはより長期のフォローを経たデータを見て再度検討が必要であろう。またEORTC QLQ-C30を用いたQOL評価が実施されており、オラパリブ群とプラセボ群でQOLのスコアの差は認められなかった。本試験は今年のASCOの発表の中で間違いなく日常臨床を変える結果の1つであった。承認されるとBRCA1/2の遺伝学的検査の頻度が今以上に増えることが予想される。患者本人に対するリスク低減手術はもちろん、治療適応の判断を目的とした検査の結果として、未発症保因者が増えてくると考えられる。未発症保因者に対するサーベイランスや化学予防、リスク低減手術の体制や保険の整備がより重要となってくるであろう。gBRCAmt HER2陰性乳がんを対象としたtalazoparib術前薬物療法のphase II試験(NEOTALA試験)HBOC関連の話題をもうひとつ取り上げる。talazoparibはgBRCAmt転移乳がんに対して有効性の示されているもうひとつのPARP阻害薬である(本邦未承認)。NEOTALA試験はgBRCAmt HER2陰性早期乳がんを対象として、talazoparib 1mg/日を24週間術前薬物として内服する単アームのphase II試験である。病理学的完全奏効(pCR)率を主要評価項目とし、pCRは浸潤がんの遺残がないものと定義された。当初112例を予定症例数としていたが、進捗が悪かったため60例に修正された。最終的に61例が解析対象となり、78.7%がBRCA1を、21.3%がBRCA2を有していた。talazoparibを80%以上内服し、手術を受けてpCRの評価が可能であった症例がevaluable populationとされ、48例(78.7%)が該当した。evaluable populationにおけるpCR率は45.8%であり、通常の術前化学療法に匹敵するpCRが得られた。90%以上が20週以上talazoparibを内服できていた。有害事象は倦怠感、悪心、脱毛、貧血、頭痛が主なものであるが、Grade3の貧血を39.3%で認めており注意が必要である。あくまでphase IIの結果が得られた段階であるが、今後はgBRCAmtにおいてはPARP阻害薬による術前薬物療法の開発が期待される。70遺伝子シグネチャで超ローリスクであった症例の予後(MINDACT試験)早期乳がんでは術後薬物療法の適応が問題となる。とくにホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんではホルモン療法感受性の高い集団と化学療法感受性の高い集団が存在し、化学療法の適応を検討する試験が多数行われている。早期乳がんにおいてmRNAを測定し遺伝子シグネチャによる予後予測ならびに治療効果予測が研究されている。MINDACT試験もその1つであり、臨床的なリスク層別と腫瘍の70遺伝子によるgenomic riskによる層別化を実施し、臨床的あるいはgenomicのどちらかでハイリスクとなった症例を術後化学療法あり・なしにランダム化し、化学療法の上乗せを検証する臨床試験である。この発表では70遺伝子シグネチャでハイリスク、ローリスク、超ローリスクと分類された症例の予後を比較した。8.7年の観察期間中央値で、8年生存率はハイリスクで89.2%、ローリスクで94.5%、超ローリスクで97.0%であった。超ローリスクとローリスクの比較ではHR 0.65(95%CI:0.45~0.94)と、ローリスクと比較しても超ローリスクは非常に良い予後を有していた。8年乳がん特異的生存は超ローリスクで99.6%(ローリスクでは98.2%)であり、きわめて良好であった。超ローリスクであった症例の特徴として、50歳以上、リンパ節転移陰性、腫瘍径2cm以下、グレード1 or 2、ホルモン受容体陽性HER2陰性のサブタイプなどが挙げられた。16%は一切の術後治療を受けていなかった。遺伝子シグネチャで超ローリスクであった場合に臨床的リスクがどのように影響するかについても検討され、遠隔転移については2.6%程度、乳がん特異的生存には差を認めなかった。超ローリスクで術後無治療の場合の8年無遠隔転移生存は97.8%、ホルモン療法のみでも97.4%であった。文字通り、超ローリスクは非常に良好な予後を持っており、再発のリスクはきわめて低いといえる。超ローリスクでは術後ホルモン療法すら不要である可能性があり、less toxicな治療開発(というよりも治療省略)が進む領域といえよう。術前化学療法でpCRが得られなかったトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術後プラチナ製剤とカペシタビンの比較第III相試験(EA1101試験)近年、術前化学療法の治療効果(pCRかnon-pCRか)によって術後治療を変更するレスポンスガイド治療が広く実施されるようになっている。HER2陰性乳がんではCREATE-X試験で、non-pCRの場合にカペシタビン1,250mg/m2 2週投与1週休薬6~8コースが、無治療と比較してDFS、OSを改善し、とくにTNBCにおいて良好な傾向であったことが示されており(Masuda N, et al. N Engl J Med. 2017;376:2147-2159.)、HER2陽性においてもnon-pCRの場合に術後治療をT-DM1に変更することが、DFS、OSを改善することが示されている(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)。本試験はTNBCで有望とされているプラチナ製剤のnon-pCRにおける有効性を検証した試験である。PAM50を用いたTNBCのサブタイピング(basalとnon-basal)も実施されている。プラチナ製剤(CBDCA AUC 6またはCDDP 75mg/m2)4サイクルと、カペシタビン1,000mg/m2 2週投与1週休薬(米国で通常使用されている用量)6サイクルに1:1に割り付けられた。当初は無治療群が設定されていたが、CREATE-Xの結果を受けて2群比較とされた。主要評価項目はiDFSで、プラチナ製剤のカペシタビンに対する非劣性が証明された場合に優越性を検証するハイブリッドデザインが(なぜか)採用された。5回目の中間解析でプラチナ製剤とカペシタビンのHRは1.09であり、非劣性が示されないと判断され、効果安全性委員会に中止が勧告され試験中止となった。中止時点で308例が登録され、78%がbasalタイプであった。主要評価項目の3年iDFSにおいて、プラチナ群の42%に対しカペシタビン群は49%(HR:1.06、95%CI:0.62~1.81)であり、プラチナ群のカペシタビン群に対する非劣性は示されなかった。basalとnon-basalの比較では3年iDFSは45.8% vs.55.5%(HR:1.71、95%CI:1.10~.67)であり、non-basal群で有意に良好であった。また、non-basal群では、よりカペシタビンで良好な傾向を認めた。無再発生存やOSは両群間での差を認めなかった。有害事象はプラチナ群で貧血や白血球減少が多く、カペシタビンで下痢や手足症候群が多かったが、Grade3以上の有害事象の頻度は低かった。プラチナ製剤はTNBCにおいてpCR率を改善するなど、有効性が期待される薬剤であっただけに、本試験の結果は残念であった。今後もnon-pCRのTNBCに対してはカペシタビンの術後薬物療法が標準である。一方この領域では術前化学療法に免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されるなど、さまざまな薬剤の開発が活発に進んでいる。non-pCRの術後薬物療法についてもアンメットニーズが増加している。ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するパルボシクリブ+フルベストラント療法のOSアップデート(PALOMA-3)ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんでは、ホルモン療法とCDK4/6阻害薬の併用が標準治療となっている。PALOMA-3試験は術後内分泌療法、あるいは転移乳がんに対する内分泌療法中に増悪を認めた症例を対象に、パルボシクリブ+フルベストラントの優越性を検証した二重盲検化比較第III相試験である。主要評価項目のPFSで優越性を示し、すでに本邦でも承認され日常臨床で使用されている。また、OSにおいては統計学的有意差を示せなかったものの、パルボシクリブ群で良好な傾向であった(Turner NC, et al. N Engl J Med. 2018;379:1926-1936.)。今回の発表はそのOSデータのアップデートである。44.8ヵ月の観察期間中央値で、全生存期間中央値(MST)は34.9ヵ月vs.28.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.64~1.03、p=0.0429)であり有意差を認めなかったが、観察期間中央値73.3ヵ月では34.8ヵ月vs.28.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.65~0.99、p=0.0221)であった。5年生存率はパルボシクリブ群で23.3%に対し、プラセボ群では16.8%であった。サブグループ解析では、前治療のホルモン療法に感受性がある、化学療法を受けたことがない、内臓転移がない、閉経後、無病期間24ヵ月以上などが挙げられた。これを基に、進行乳がんに対する化学療法のあり・なしでの追加解析が実施され、化学療法歴のない症例ではパルボシクリブ群でMST 39.3ヵ月に対しプラセボ群で29.7ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.55~0.92、p=0.008)とパルボシクリブ群で良好であったが、化学療法歴がある場合は24.6ヵ月vs. 24.3ヵ月と両群間の差を認めなかった。また、この発表ではctDNAを用いたESR1、PIK3CA、TP53の変異の有無による探索的な解析が実施された。ESR1、PIK3CA、TP53変異はそれ自体が予後因子であるが、パルボシクリブはこれらの遺伝子変異の有無にかかわらずOSを改善させる傾向を認めた。今回の結果はこれまでの報告と同様であり、パルボシクリブ+フルベストラント療法は、変わらずホルモン療法2次治療の標準治療の1つであり続けるであろう。

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日本人ALK陽性肺がん、アレクチニブ1次治療の最終OS(J-ALEX)/ASCO2021

 日本人のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療においてアレクチニブとクリゾチニブを比較する無作為化多施設オープンラベル第III相試験J-ALEXの全生存期間(OS)の最終データが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で報告された。・対象:未治療(化学療法歴は0~1回)のStage III3B~IV ALK陽性NSCLC・試験薬群:アレクチニブ300mg×2/日(ALC群、n=103)・対照群:クリゾチニブ250mg×2/日(CRZ群、n=104)・評価項目:[主要評価項目]独立評価機関(IRF)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、客観的奏効率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は両群とも68ヵ月を超えていた。・最終的なOS中央値は両群とも未達、OSHRは1.03(95%CI:0.67~1.58)であった。・5年生存率はALC群60.9%、CRZ群は64.1%で、既報のようなALC群の有意な改善は認められなかった。・後治療およびクロスオーバーの状況をみると、後治療を受けた患者はCRZ群は91.3%、ALC群では46.6%であった。また、CRZ群の後治療はアレクチニブが78.8%でもっとも多く、ALC群での最多は化学療法の17.5%であった。・治療切り替えまでの時間の中央値はCRZ群12.3ヵ月、ALC群は未達と、CRZ群はより早期に治療を切り替えてていた。 発表者はCRZ群のOSの結果は、アレクチニブへのクロスオーバーの多さが影響している可能性があるとしている。J-ALEX試験の最終OS解析の結果は、CRZ群と比較したALC群のOS延長は観察されなかったが、両群ともOS中央値は未達であった。

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TN乳がんの術前化学療法、デュルバルマブ併用でOS改善(GeparNUEVO)/ASCO2021

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するデュルバルマブ+化学療法の術前治療の予後に関する有望な結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、ドイツ・German Breast Group(GBG)のSibylle Loibl氏から報告された。 本試験(GeparNUEVO試験)は、ドイツの臨床試験グループ(GBGとAGO-B)により実施された多施設共同のプラセボ対照第II相無作為化比較試験である。すでに2019年に、その主要評価項目である病理学的奏効率(pCR率)については報告されており、今回はその生存期間に関する追加報告である。・対象:腫瘍径2cm以上の未治療のTNBC(閉経状況、リンパ節転移状況は問わず)・試験群:デュルバルマブ1,500mg 4週ごと+nab-パクリタキセル125mg/m2/週 12週→針生検→デュルバルマブ1,500mg 4週ごと+エピルビシン・シクロホスファミド(EC)2週ごと8週→手術(Durva群:88例)・対照群:上記投与スケジュールと同様にデュルバルマブのプラセボを投与(化学療法は実薬投与)(Pla群:86例)・評価項目:[主要評価項目]pCR率(完全に残存腫瘍のないypT0 ypN0での割合)[副次評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、安全性、バイオマーカー検索など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値49.5歳、N+が約30%、核異型度3が約80%、デュルバルマブやプラセボの単剤投与歴ありが67%あった。・追跡期間中央値43.7ヵ月時点での3年iDFS率は、Durva群85.6%、Pla群77.2%、ハザード比(HR)は0.48(95%信頼区間[CI]:0.24~0.97)、p=0.0398、3年OS率は、Durva群95.2%、Pla群83.5%、HRは0.24(95%CI:0.08~0.72)、p=0.0108と、Durva群で有意に良好であった。・各群においてpCRが得られた症例と、得られなかった症例のOSを3年OS率でみると、Pla群ではnon-pCR例78.8%、pCR例88.9%、Durva群ではnon-pCR例92.0%、pCR例100%と、いずれの群でもpCR獲得症例で予後が良好であった(HR:0.27、p=0.012)。・これはiDFSでもDDFSでも同様の結果であった。 演者のLoibl氏は「TNBCへの術前化学療法へのデュルバルマブの併用は、DFS、OS共に有意に延長することが判明した。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(CPI)によるpCR獲得例と長期予後との関連性や、CPIを用いた術後療法についてはさらなる検討が必要である」と述べた。

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Ph陽性ALLへのポナチニブ・ブリナツモマブ併用療法は有望/ASCO2021

 新規診断または再発/難治性のフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対し、BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブ+二重特異性T細胞誘導抗体ブリナツモマブ併用の有効性と安全性を評価した第II相単群試験の結果を、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNicholas J. Short氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。忍容性は良好で、ほとんどの患者で化学療法および自家造血幹細胞移植(AHSCT)を必要とせず、とくに初発患者に有望な治療であることを報告した。 初発Ph陽性ALLにおいて標準療法とされる化学療法+第1・第2世代TKIの5年全生存率(OS)は30~50%であり、T315I変異例では最大75%で再発を認める。一方で、ポナチニブおよびブリナツモマブは、それぞれ高い奏効が報告されており、ポナチニブ+ブリナツモマブ併用の評価が行われた。・対象:18歳以上、新規診断または再発/難治性のPh陽性ALL患者、リンパ性移行期または急性転化期の慢性骨髄性白血病(CML-LBC)患者、PS≦2、35例・介入:[導入期:5サイクル]ブリナツモマブ(標準用量、4週投与2週休薬)+ポナチニブ(1サイクル目 30mgx1/1、2サイクル目以降はCMR達成後15mgに減量)[維持期]ポナチニブ15mgを少なくとも5年間、予防的髄腔内化学療法(メトトレキサート/シタラビン)12回・評価項目:[主要評価項目]初発患者:CMR、再発/難治性患者:ORR(完全奏効/不完全奏効[CR/CRp])[副次評価項目]無イベント生存率(EFS)、OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・治療を受けた35例(年齢中央値59歳、66%でBCR-ABL1転写産物p190確認)の内訳は、初発患者20例(62歳、77%)、再発/難治性患者10例(36歳、90%)、CML-LBC患者5例(70歳、0%)であった。・CR/CRp率は、全患者96%、初発患者100%、再発/難治性患者89%、CML-LBC患者100%であった。・CMRは、全患者79%、初発患者86%、再発/難治性患者88%、CML-LBC患者40%であった。・観察期間中央値12ヵ月における1年EFS率は、全患者で76%、初発患者93%、再発/難治性患者61%、CML-LBC患者60%であった。2年EFS率は、それぞれ70%、93%、41%、60%であった。・1年OS率は、93%、93%、80%、100%、2年OS率は80%、93%、53%、100%であった。・忍容性は良好で、ほとんどの有害事象はGrade1/2であった。Grade3の治療関連有害事象は、ポナチニブ関連ではリパーゼ上昇が2例(6%)、ALT情報、脳虚血、高血圧、膵炎、深部静脈血栓症がそれぞれ1例(3%)であり、ブリナツモマブ関連では脳症1例(3%)であった。 Short氏は、「Ph陽性ALLに対するポナチニブ+ブリナツモマブ併用療法の安全性、有効性が示された。化学療法やAHSCTを必要としないレジメンとして有望である」とまとめた。

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オリゴ転移乳がん、サブタイプ別の予後良好因子(OLIGO-BC1サブセット解析)/ASCO2021

 日本、中国、韓国によるオリゴ転移乳がんに関する後ろ向きコホート研究(OLIGO-BC1)のサブセット解析として、乳がんサブタイプ別に各予後因子における全生存期間(OS)を検討した結果を、中国・Guangdong Provincial People's HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用およびECOG PS0が予後良好で、luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移が1個のみ、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していた。オリゴ転移乳がんの予後良好な因子を評価 本研究は、日本癌治療学会(JSCO)、中国臨床腫瘍学会(CSCO)、韓国臨床腫瘍学会(KSMO)によるFederation of Asian Clinical Oncology(FACO)が実施した国際的後ろ向きコホート研究で、ASCO2020では、局所および全身療法がオリゴ転移乳がん患者のOSを延長したこと、多変量解析からは、ある種の全身療法、若年、ECOG PS0、診断時Stage I、非トリプルネガティブタイプ、少ない転移個数、局所再発、長い無病生存期間においてOSが延長することを報告している。・対象:2005年1月~2012年12月に診断された、ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移乳がん(転移病変が少なく[5個以下、同一臓器に限らない]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患)で、全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)と局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法、経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)の併用、もしくは全身療法のみで治療された患者・評価項目:OS オリゴ転移乳がんをサブタイプ別に各予後因子におけるOSを検討した主な結果は以下のとおり。・オリゴ転移乳がん患者1,200例におけるオリゴ転移数は、578例(48%)で1個、289例(24%)で2個、154例(13%)で3個、102例(9%)で4個、77例(6%)で5個だった。・骨転移は301例(25%)、内臓転移は387例(32%)、局所再発は25例(2%)、多発性転移は404例(34%)で報告された。・luminalタイプは 526例(44%)、luminal-HER2タイプは189例(16%)、HER2タイプは154例(13%)、トリプルネガティブタイプは166例(14%)、その他は164例(13%)で報告された。・どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用、 ECOG PS0で生存ベネフィットが認められた。・luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移数1個、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していたが、トリプルネガティブタイプではこれら3因子による生存ベネフィットはなかった。・局所治療では、外科的切除と放射線療法の併用で生存ベネフィットがみられた。・リンパ節・肺・肝臓・骨転移において、転移数1個は2個以上に比べて5年OSが良好だった。 Wang氏は、「オリゴ転移乳がんは偶然にみつかるが、いくつかの症例は集学的治療で生存しうるようだ。予後良好な因子を評価し、局所療法を検討することは価値がある」と結論している。

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HER2阻害薬の心毒性、そのリスク因子や管理は? 【見落とさない!がんの心毒性】第3回

今回のおはなし連載の第2回は、大倉先生によるアントラサイクリン心筋症についての解説でした。今回のテーマはHER2阻害薬の心毒性です。なかでもトラスツズマブが有名ですが、それ以外にもHER2阻害薬はあるんですよ。今回はその心毒性が起こる機序や病態の特徴について、概要を説明します。HER2阻害薬では、日頃からの心血管リスク因子の適切な管理がとても大事になります。HER2ってそもそも何?HER2はヒト上皮成長因子受容体(EGFR:human epidermal growth factor receptor)に似た受容体型チロシンキナーゼで、ヒトEGFR関連物質2 (human EGFR-related protein 2)を略してHER2と命名されました。別名でErbB2とも表現され、こちらはヒト以外に齧歯類なども含めた対象となります。正常細胞においてHER2は細胞増殖や分化の調節に関わる重要なシグナル伝達分子として働いており、そのHER2遺伝子発現の増幅、遺伝子変異ががん化に関わります。HER2遺伝子は唾液腺がん、胃がん、乳がん、卵巣がんで発現が見られ、現在ではHER2陽性タイプの乳がん、胃がんに対してHER2阻害薬が臨床で使われています。一方、HER2は心臓や神経にも存在します。これらの臓器でもHER2は細胞分化や増殖に関わり、HER2阻害薬により心臓では心筋細胞障害が生じ心毒性を発症する事になります。心筋特異的にErbB2を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスでは、出生するものの拡張型心筋症様の病態を呈し、心筋細胞のアポトーシスが観察され、大動脈縮窄術による後負荷増大で容易に心不全に陥り、高率に死亡する事が報告されています。そして、このコンディショナルノックアウトマウス由来の心筋細胞はアントラサイクリンへの感受性が亢進していたことから、ErbB2が生体において病的ストレスからの心保護に必須な分子と考えられています1)。つまり、乳がん治療でのアントラサイクリンとトラスツズマブとの逐次治療において、アントラサイクリンによりダメージを受けた心筋細胞がトラスツズマブによりその修復が阻害されると言う仕組みが考えられています(図1)2)。(図1)アントラサイクリンおよびトラスツズマブの逐次療法における心筋障害のイメージ画像を拡大するHER2阻害薬の種類分子標的薬に属するHER2阻害薬は、HER2タンパクを持つがんに対して投与され、とくに乳がん治療でよく用いられていますが、胃がんなどでも使われています。中でも抗体薬のトラスツマブが有名ですが、それ以外にも抗体薬のペルツズマブ、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)かつ二標的キナーゼ阻害薬(EGFRおよびHER2)のラパチニブ、そしてトラスツズマブと殺細胞性抗がん剤との抗体薬物複合体(ADC)のトラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)やトラスツズマブ-デルクステカンも最近登場しています。T-DM1はトラスツズマブによるHER2シグナル伝達阻害作用だけでなく、化学療法薬であるエムタンシン(DM1)をがん細胞内部に直接送達させ、がん細胞を破壊する作用も併せ持ちます。これらADCである新規のHER2阻害薬は従来のものと比較して、心毒性の発生頻度が少ない事が報告されています3)。(表1)HER2陽性乳がんで使用できる分子標的薬画像を拡大するHER2阻害薬による心毒性の機序HER2阻害薬が心筋細胞上のHER2(ErbB2)受容体を選択的にブロックする事で、いわゆる“心筋細胞の栄養”とも言えるneureglin(NRG)のErbB4-ErbB2二量体を介した心筋細胞への結合を阻害します。その結果、心筋細胞の生存や保護に関わるシグナル伝達を阻害し細胞ダメージを来すと言われています。とくに、HER2受容体はアントラサイクリン投与後の心筋細胞に代償的にアップレギュレートして発現する事が報告されており、その発現はアントラサイクリン投与後の心筋細胞のダメージへの保護、生存に寄与すると言われています。それゆえ、とくにアントラサイクリン投与後の心筋細胞修復機構の障害が生じ、心筋傷害が助長されると言われています(図1、図2)4)。(図2)HER2阻害薬による心毒性の機序画像を拡大するHER2阻害薬関連心毒性のリスク因子は?HER2阻害薬関連心毒性のリスク因子を下の表に示しています(表2)5)。アントラサイクリンの併用または治療歴、心不全の既往、高血圧や虚血性心疾患の合併、胸部放射線治療の併用により心毒性発現のリスクが高まります。この表から、通常の心血管リスク因子がHER2阻害薬関連心毒性にも重大なリスク因子となる事が分かります。そのため、通常の心血管リスク管理が薬剤性心毒性管理においてものすごく重要です。(表2)HER2阻害薬のリスク因子HER2阻害薬による心毒性の特徴と病態管理HER2阻害薬による心不全の発生頻度について、初期の解析によるとアントラサイクリンやシクロホスファミドとトラスツズマブを同時投与すると27%と高率であると報告されました6)。そして、逐次療法では1~4.1%で心不全症状、4.4~18.6%で左室駆出率(LVEF)の低下を来すと言われています。報告によれば逐次療法でも8.7%でNYHAIII度からIV度の心不全が発症しており、およそ3ヵ月毎の定期的な心機能評価が推奨されます7)。HER2阻害薬による心毒性の特徴は、左室機能低下後のHER2阻害薬の休薬により約2~4ヵ月程度で左室機能の改善がみられる事が多く、LVEF回復後にはHER2阻害薬の再投与検討も可能と考えられています。ただし、ここで注意が必要です。トラスツズマブ投与後に心不全症状を認めた患者の71%で半年後も左室機能の回復が得られなかったと言う報告もあります8)。われわれ臨床家の間では、約20~30%の症例で心機能低下が遷延すると考えられています。HER2阻害薬の休薬で左室機能の回復が得られる可能性はあるものの、心毒性がみられた際にはACE阻害薬(エナラプリル)やβ遮断薬(アーチストなど)による心保護薬の投与を行うことが望ましいと考えます。しかし、心保護薬の長期的継続について、とくに心機能が回復した症例に対する長期的心保護治療継続の妥当性については明らかにはされていません。筆者の個人的な対策ではありますが、左室機能低下を来していた時のトロポニン上昇度や心エコーにおける低心機能の程度などの患者病態、そして心血管リスク因子の保有状況などを考慮し、患者に応じて長期的な心保護管理の継続を行っています。スクリーニングのタイミング最後に、ヨーロッパ臨床腫瘍学会(ESMO)から2020年に発表されたESMO consensus recommendationsを紹介します(図3)9)。がん治療前から心機能を確認し、高リスクであれば循環器医へ相談、がん治療開始後も3ヵ月毎に心機能をフォローし心配な所見があれば適宜循環器医に相談をすると良いと思います。がん治療中の心血管毒性の管理において、がん治療医と循環器医との良好な連携は欠かせません。(図3)CTRCD[がん治療関連心機能障害]の管理アルゴリズム―ESMO consensus recommendations 2020―画像を拡大する1)Crone SA, et al. Nat Med. 2002;8:459-465.2)Ewer MS, et al. Nat Rev Cardiol. 2015;12:547-558.3)Verma S, et al. New Engl J Med. 2012;367:1783-1791.4)Lenneman CG, et al. Circ Res. 2016;118:1008-1020.5)Lyon AR, et al. Eur J Heart fail. 2020;22:1945-1960.6)Nemeth BT, et al. Br J Pharmacol. 2017;174:3727-3748.7)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.8)Tan-Chiu E, et al. J Clin Oncol. 2005;23:7811-7819.9)Curigliano G, et al. Ann Oncol. 2020;31:171-190.講師紹介

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新規CDK4/6阻害薬dalpiciclib+フルベストラント、進行乳がんのPFS改善(DAWNA-1)/ASCO2021

 内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんに、新規CDK4/6阻害薬dalpiciclibとフルベストラントの併用が、フルベストラント単独に比べ無増悪生存期間を大幅に改善し、安全性プロファイルも管理可能であったことが、第III相DAWNA-1試験の中間解析で示された。中国・National Cancer Center/Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。dalpiciclib+フルベストラントはHR+/HER2-進行乳がん患者の新たな治療選択肢 dalpiciclibは新たなCDK4/6阻害薬で、単剤で、複数の治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がんに対し単剤で忍容性および予備的な抗腫瘍活性を示すことが報告されている。DAWNA-1試験は、内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんを対象に、dalpiciclibとフルベストラントとの併用についてフルベストラント単独と比較した無作為化二重盲検第III相試験である。今回は、PFSイベント(病勢進行/死亡)が162件(予測の71.4%)発生した時点(2020年11月15日)で、事前に計画されていた中間解析の結果を報告した(追跡期間中央値10.5ヵ月)。・対象:内分泌療法で再発/進行した、局所進行もしくは転移を有するHR+/HER2-乳がん患者(進行がんに対する1ラインの化学療法は許容) 361例、試験群と対照群に2:1の割合で無作為に割り付け・試験群:dalpiciclib(150mg1日1回、1~21日目に経口投与、4週間ごと)+フルベストラント(500mg、1サイクル目は1、15日目、その後は1日目に筋注、4週間ごと)241例・対照群:プラセボ+フルベストラント 120例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師の評価によるPFS(有意性の閾値は片側p=0.0080とした)[副次評価項目]独立評価委員会(IRC)評価によるPFS、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率、奏効期間、次の化学療法までの期間、安全性 内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんを対象にdalpiciclibとフルベストラントとの併用についてフルベストラント単独と比較した主な結果は以下のとおり。・治験責任医師の評価によるPFSは、dalpiciclib+フルベストラント群の中央値15.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.1~NR)で、プラセボ+フルベストラント群の7.2ヵ月(95%CI:5.6~9.2)より有意に延長した(ハザード比[HR]:0.42、95%CI:0.31~0.58、p<0.0001)。・IRCの評価によるPFSも、dalpiciclib+フルベストラント群の中央値13.6ヵ月(95%CI:11.3~NR)で、プラセボ+フルベストラント群の7.7ヵ月(95%CI:5.6~10.9)より有意に延長した(HR:0.45、95%CI:0.32~0.64、p<0.0001)。・ORRは、dalpiciclib+フルベストラント群が27.0%(95%CI:21.5~33.0)、プラセボ+フルベストラント群で20.0%(95%CI:13.3~28.3)であった(p=0.0727)。・次の化学療法までの期間のHRは0.47(95%CI:0.32~0.69、p<0.0001)で、dalpiciclibによるベネフィットはdalpiciclibによる治療の終了後もみられた。・曝露期間中央値は、dalpiciclib+フルベストラン群ではdalpiciclib 9.4ヵ月(四分位範囲:4.3~11.4)、フルベストラント9.9ヵ月(同:4.7~11.9)、プラセボ+フルベストラント群ではフルベストラント6.1ヵ月(同:3.7~11.0)だった。・重篤な有害事象の発現率は、dalpiciclib+フルベストラント群、プラセボ+フルベストラント群の順に5.8%、6.7%、有害事象による治療中止率は2.5%、3.3%だった。発現率3%以上のGrade3/4の有害事象は、好中球減少症(84.2%、0%)と白血球減少症(62.1%、0%)だった。 Xu氏は、「本試験の結果は、内分泌療法で再発または進行したHR+/HER2-進行乳がん患者の新たな治療選択肢として、dalpiciclib+フルベストラントを支持している」と結論した。

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筋層浸潤性膀胱がんに対するGC+ニボルマブの有用性評価/ASCO2021

 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)を対象に、シスプラチン+ゲムシタビン+ニボルマブ併用投与の有用性評価と、膀胱温存が可能な症例の予測に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Icahn School of Medicine at Mount SainaiのMatthew D. Galsky氏よりなされた。 本試験(HCRN GU16-257)は米国で行われた多施設共同第II相試験である。MIBCでは、プラチナベースの術前化学療法により30~40%の症例が病理学的完全奏効(pCR)を得られることと、そのpCR症例は予後良好であることが知られているが、そのpCRが明らかになるのは膀胱摘除後である。また過去のレトロスペクティブ研究によると、その10年生存率は膀胱全摘65%、部分切除73%、切除なし75%と大きな差はなく、部分切除例では53%、切除なし例では61%が、膀胱温存したままで10年生存を得ていたという報告がある。・対象:シスプラチン(CDDP)の投与適格のcT2-4a/N0/M0のMIBC・介入:CDDP+ゲムシタビン+ニボルマブ 4サイクル(GC+Nivo)臨床的完全奏効(cCR)症例はニボルマブの追加投与(4ヵ月)、その後局所再発をきたした時点で膀胱摘除術実施。Non-cCR症例は膀胱摘除術を実施・評価項目[主要評価項目]cCRの割合、治療ベネフィット予測因子としてのcCRの可能性評価(2年間の無転移生存、または膀胱摘除時にpCRが確認された場合を治療ベネフィットとした)[その他評価項目]初診時のTURBT検体におけるDNA損傷修復関連遺伝子(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)変異およびTMBとcCRの相関性 主な結果は以下のとおり。・2018年8月~2020年11月に76例が登録された。年齢中央値69歳、男性79%、臨床病期はcT2が57%、cT3が32%、cT4が12%であった。・4サイクルの薬物治療を完遂できたのは64例で、48%(31例)がcCRを達成した。・cCR達成31例中30例が膀胱温存。残りの1例とNon-cCR症例(33例)が膀胱摘除術を受けた。・cCR獲得後の膀胱温存症例では8例に局所再発が認められ、6例に膀胱摘除術が施行された。その際、50%は病理学的ステージがpT1N0以下であった。・Non-cCR症例で膀胱摘除術を受けた症例の36%がpT1N0以下で、32%がpN+であった。・有害事象プロファイルは、他のGC+Nivo試験での報告と同様であった。・TMB高値(≧10mut/Mb)と、ERCC2変異でcCRまたはpCRとの相関が認められた(いずれもp=0.02)。  最後に発表者は、MIBCに対するGC+Nivo療法は、cCRを達成できるレジメンであり、このcCRが膀胱を温存したままでの長期の無再発生存につながる可能性がある、と述べた。

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F1 CDx、MSI-Hightがんのコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は、2021年06月22日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、ニボルマブおよび、:ペムブロリズマブの高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有するがんに対するコンパニオン診断として厚生労厚生労働省より承認を取得したと発表。 今回の承認により、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルにて、ニボルマブの「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」、およびペムブロリズマブの「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対し各々の薬剤の適応判定補助として利用が可能となる。

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食道扁平上皮がん1次治療におけるNIVO+IPI、NIVO+ChemoのOS結果(CheckMate 648)/ASCO2021

 英国・Royal Marsden HospitalのIan Chau氏が、「CheckMate 648試験」の初となる解析結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表。進行食道扁平上皮がん(ESCC)の1次治療として、ニボルマブ(NIVO)+イピリムマブ(IPI)併用療法およびNIVO+化学療法(Chemo)の併用療法はいずれも、Chemo単独と比べて全生存期間(OS)を有意に延長することを報告した。 すでにニボルマブ単剤が化学療法と比べて全生存期間(OS)を有意に延長することは「ATTRACTION-3試験」で示されている。CheckMate 648試験は、進行ESCCにおけるNIVO併用療法の有効性と安全性を世界で最初に評価した第III相非盲検無作為化比較試験。・対象:切除不能の進行または転移を有するESCC、PS 0~1、970例・試験群:NIVO(240mg、2週ごと)+Chemo(フルオロウラシル+シスプラチン、4週ごと)(321例)、NIVO(3mg/kg、2週ごと)+IPI(1mg/kg、6週ごと)(325例)、・対照群:Chemo単独(324例)・評価項目:[主要評価項目]OSおよび無増悪生存(PFS)(腫瘍PD-L1≧1%患者)[副次評価項目]OSおよびPFS(全無作為化患者)、奏効率(ORR)(腫瘍PD-L1≧1%患者および全無作為化患者) 主な結果は以下のとおり。・PD-L1≧1%患者は、NIVO+Chemo群49%、NIVO+IPI群49%、Chemo群48%であった。・データカットオフ日(2021年1月18日、最短追跡期間12.9ヵ月)におけるOSは、Chemo群9.1ヵ月に対して、NIVO+Chemo群15.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、99.5%信頼区間[CI]:0.37~0.80、p<0.0001)、NIVO+IPI群13.7ヵ月(HR:0.64、p=0.0010)であり、Chemo群に対していずれの併用療法も有意に延長した。・主要評価項目のPFSは、Chemo群4.4ヵ月に対して、NIVO+Chemo群6.9ヵ月(HR:0.65、98.5%CI:0.46~0.92、p=0.0023)と有意な延長が認められたが、NIVO+IPI群は4.0ヵ月(HR:1.02、p=0.8958)と延長は認められなかった。・全無作為化患者におけるOSは、Chemo群10.7ヵ月に対して、NIVO+Chemo群13.2ヵ月(HR:0.74、99.1%CI:0.58~0.96、p=0.0021)、NIVO+IPI群12.8ヵ月(HR:0.78、p=0.0110)であった。・同様にPFSは、Chemo群5.6ヵ月に対して、NIVO+Chemo群5.8ヵ月(HR:0.81、98.5%CI:0.64~1.04、p=0.0355)、NIVO+IPI群は2.9ヵ月(HR:1.26)であった。・ORRは、PD-L1≧1%患者でNIVO+Chemo群53%、NIVO+IPI群35%、Chemo群20%であった。・奏効期間(DoR)中央値は、PD-L1≧1%患者でNIVO+Chemo群8.4ヵ月、NIVO+IPI群11.8ヵ月、Chemo群5.7ヵ月であった。・治療関連の有害事象は、NIVO+Chemo群5例(2%)、NIVO+IPI群5例(2%)、Chemo群4例(1%)であった。・安全性に関する新たな問題は認められなかった。 Chau氏は、「進行ESCC患者において、NIVO+Chemo併用療法およびNIVO+IPI併用療法はいずれも、1次治療の新たな標準治療となり得ることが示された」とまとめた。

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再発/難治性B-ALL、CAR-T細胞療法「KTE-X19」が有望/Lancet

 再発/難治性前駆B細胞急性リンパ性白血病(ALL)の患者に対する、自家抗CD19 CAR-T細胞療法「KTE-X19」の有効性と安全性を検討した第II相国際多施設共同非盲検単群試験「ZUMA-3試験」の結果を、米国・モーフィットがんセンターのBijal D. Shah氏らが報告した。完全寛解率または血液学的回復が不十分な完全寛解率は高率で、奏効した患者における全生存(OS)期間中央値は未到達であり、安全性プロファイルは管理可能であったという。新たな治療法や自家造血幹細胞移植(allo-SCT)の治療にもかかわらず、再発/難治性前駆B細胞ALL患者の転帰は依然として不良であり、より効果的な治療の開発が求められている。著者は、「今回の試験結果は、KTE-X19はそれらの患者に長期的な臨床的ベネフィットをもたらす可能性があることを示すものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。米国・カナダ・欧州25施設で行われたZUMA-3試験 ZUMA-3試験の被験者は、米国、カナダおよび欧州の25施設で登録され、18歳以上、ECOG 0/1、骨髄芽球5%超の再発/難治性前駆B細胞ALL患者が適格とされた。被験者は白血球除去療法および前処置化学療法を受けた後、KTE-X19の単回注入(1×106 CAR-T細胞/kg体重)を受けた。 主要評価項目は、中央評価による完全寛解(CR)率および血液学的回復が不十分な完全寛解(Cri)率であった。副次評価項目は、寛解期間(DOR)、無再発生存(RFS)期間、OS、微小残存病変(MRD)陰性率、allo-SCTを受けた患者の割合などであった。 有効性および安全性の解析は、治療を受けた患者集団を対象に行われた。主要評価項目達成は71%、奏効患者のOSは未到達 2018年10月1日~2019年10月9日の期間に、71例が登録され、白血球除去療法を受けた。KTE-X19の作製に成功したのは65例(92%)で、55例(77%)が投与を受けた。治療を受けた患者の年齢中央値は40歳(IQR:28~52)、追跡期間中央値は16.4ヵ月(13.8~19.6)であった。 CRまたは血液学的回復が不十分なCriを達成した患者は39例(71%、95%信頼区間[CI]:57~82、p<0.0001)であった。うちCR達成患者は31例(56%)であった。 DOR中央値は、12.8ヵ月(95%CI:8.7~評価不能[NE])であり、RFSは11.6ヵ月(2.7~15.5)、OS期間は18.2ヵ月(15.9~NE)であった。 奏効した患者において、OS中央値は未到達であり、38例(97%)がMRD陰性であった。KTE-X19投与後にallo-SCTを受けた患者は10例(18%)だった。 Grade3以上で最も頻度の高い有害事象は、貧血27例(49%)、発熱20例(36%)であった。Grade3以上の感染症を呈した患者は14例(25%)報告された。Grade5のKTE-X19関連事象は2例(脳ヘルニア、敗血性ショック)報告された。Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)は13例(24%)、Grade3以上の神経学的イベントは14例(25%)報告された。

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EGFR変異陽性NSCLCにエルロチニブ術前/術後療法のOS結果(CTONG1103)/ASCO2021

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前/術後療法としてのエルロチニブと化学療法の比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、中国・Guangdong Provincial People’s HospitalのYi-Long Wu氏から報告された。  本試験は中国国内で実施されたオープンラベル無作為化比較第II相試験であり、すでにエルロチニブによる無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が報告されている。今回は、その全生存期間(OS)の解析を含めた最終報告である。 ・対象:Stage IIIA-N2 EGFR変異陽性の未治療症例72例・試験群:術前にエルロチニブ150㎎/日を42日間投与し、術後に同量のエルロチニブを1年間投与(E群:37例)・対照群:術前にゲムシタビン(1250mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)を3週ごと2サイクル投与、術後に同量のゲムシタビン+シスプラチンを3週ごと2サイクル投与(GC群:35例)・評価項目:[主要評価項目]全奏効率(ORR)[副次評価項目]病理的完全奏効(pCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、3年・5年時OS率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値62.5ヵ月時点でのOS中央値はE群42.2ヵ月、GC群36.9ヵ月、ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.47~1.47)p=0.513であった。・3年OS率は、E群58.6%、GC群55.9%であり、5年時OS率は、それぞれ40.8%と27.6%であった。・アップデートされたPFSは、その中央値でE群21.5ヵ月、GC群11.4ヵ月、HR:0.36、95%CI:0.21~0.61)、p<0.001であった。・試験治療後の再発例には、両群ともそのほとんどに(87%~94%)TKI製剤が投与されており、その奏効率は、E群で53.3%、GC群で52.2%であった。(すべてPR)・Grade3/4の有害事象は、術前のE群では出現はなく、術後では皮膚障害、下痢、肝機能障害などが報告された。またGC群では、術前も術後も血液毒性の報告が主であった。  演者は「エルロチニブの術前/術後の投与はOS改善の可能性を示唆した。また、後治療としてのEGFR-TKI投与がE群だけでなくGC群の予後改善にも寄与しているものと考えられる。」と述べた。

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胃、食道腺がん1次治療のニボルマブ+化学療法、全無作為化患者集団の成績(CheckMate 649)/ASCO2021

 ニボルマブ+化学療法(NIVO+Chemo)による胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの1次治療については、第III相CheckMate-649試験の結果が昨年の欧州臨床腫瘍学会年次総会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表され、PD-L1 CPS≧5患者における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が統計学的に有意に延長することが報告された。この結果に基づき、1次治療として米国FDAの承認を取得した。今回の米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)では、ドイツ・Johannes-Gutenberg大学のMarkus Moehler氏が、全無作為化患者における有効性と安全性に関する解析結果を発表。OSの統計学的に有意な延長を認めたと報告した。CheckMate-649試験の全無作為化患者のOSとPFSを評価・対象:未治療のHER2陰性進行または転移を有する胃/胃食道接合部/食道腺がん、PS 0~1・試験群:NIVO+Chemo(NIVO 360mg+XELOX[3週ごと]、またはNIVO 240mg+FOLFOX[2週ごと])789例・対照群:上記の化学療法単独のいずれか(Chemo群)792例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1 CPS≧5患者のPFSとOS[副次評価項目]PD-L1 CPS≧1、≧10、ならびに全無作為化患者のOSとPFS、全奏効率(ORR)[探索的評価項目]安全性、QOL CheckMate-649試験の全無作為化患者における有効性と安全性に関する主な結果は以下のとおり。・CheckMate-649試験の全無作為化患者(データカットオフ日2020年5月27日、最短追跡期間12.1ヵ月)のOS中央値は、NIVO+Chemo群13.8ヵ月、Chemo群11.6ヵ月であり、NIVO+Chemo群で有意なOSの延長を認めた(HR:0.80、99.3%CI:0.68~0.94、p=0.0002)。・12ヵ月OS率は、NIVO+Chemo群55%、Chemo群48%であった。・CheckMate-649試験の全無作為化患者のPFS中央値は、NIVO+Chemo群7.7ヵ月、Chemo群6.9ヵ月であり、NIVO+Chemo群で臨床的に意義のあるPFSの延長を認めた(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87)。・12ヵ月PFS率は、NIVO+Chemo群33%、Chemo群23%であった。・事前に規定したすべてのサブグループの解析において、一貫してOSはNIVO+Chemo群が良好であった。・NIVO+Chemo群における免疫関連のGrade3/4治療関連有害事象(TRAE)は、すべての器官別で5%以下であり、非内分泌系の事象のほとんどは管理アルゴリズムにより回復した(回復までの期間中央値2~23週間)。・症状悪化までの期間中央値は、NIVO+Chemo群が未到達、Chemo群が21.0ヵ月であり、NIVO+Chemo群であった(HR:0.77、95%CI:0.63~0.95、p=0.0129)。 Moehler氏は、「データはHER2陰性の進行胃/胃食道接合部/食道腺がん患者の新たな標準1次治療として、NIVO+Chemoを支持するものであった」とまとめている。

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MSI-H大腸がん1次治療、ペムブロリズマブ単剤vs.化学療法の最終結果(KEYNOTE-177)/ASCO2021

 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の転移のある大腸がん(mCRC)の1次治療として、ペムブロリズマブ単剤治療と標準化学療法を比較した第III相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-177試験」の最終結果を、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。高いクロスオーバー率(60%)によりOSの統計学的有意差は示されなかったが、ペムブロリズマブ単剤治療の死亡低下を認める結果が得られたことを報告した。 本検討については第2回中間解析の結果として、ペムブロリズマブ単剤が化学療法として比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善することが報告されていた。最終解析は、事前に計画されていた第2回中間解析後12ヵ月時点で行われた。・対象:未治療のMSI-H/dMMRを有するStageIVの大腸がん患者、PS 0~1、307例・試験群:ペムブロリズマブ単剤200mg 3週ごと、最大35サイクル(Pembro群、153例)・対照群:mFOLFOX6療法あるいはFOLFIRI療法±ベバシズマブ/セツキシマブ 2週ごと(Chemo群、154例、病勢進行後クロスオーバー可)・評価項目:[主要評価項目]PFS、全生存期間(OS、有意性p=0.0246)[副次評価項目]奏効率(ORR)、PFS2、健康関連QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2021年2月19日)の追跡期間中央値は、Pembro群44.5ヵ月、Chemo群44.4ヵ月であった。・最終解析におけるPFSは、Pembro群16.5ヵ月、Chemo群8.2ヵ月であった(HR:0.59、95%CI:0.45~0.79)。・確定ORRは、Pembro群45.1%、Chemo群33.1%であった。CRはそれぞれ13.1%、3.9%であった。・有効性のITT解析のクロスオーバー率は60%であった。Chemo群の56例(36.4%)がPD後クロスオーバーし、さらに37例(24.0%)が治験外で抗PD-1/PD-L1治療を受けていた。・無作為化からPDまたは全死因死亡までの期間としたPFS2は、Pembro群54.0ヵ月Chemo群24.9ヵ月であった(HR:0.61、95%CI:0.44~0.83)。・OS中央値はPembro群未到達、Chemo群36.7ヵ月であった。HRは0.74(0.53~1.03、p=0.0359)であり、統計学的有意差は示されなかったが、Pembro群で死亡が低い傾向が認められた(OSイベントはPembro群62例vs. Chemo群78例)。・感度解析によるOSのHRは、rank-preserving structure failure time(RPSFT)モデルを用いた場合0.66(95%CI:0.42~1.04)、inverse probability of censoring weighting(IPCW)法では0.77(95%CI:0.44~1.38)であった。・治療関連有害事象(TRAE)は、Pembro群79.7%、Chemo群98.6%であり、Grade3以上のTRAEはそれぞれ21.6%、66.4%であった。 Andre氏は、「最終解析の結果は、ペムブロリズマブは、MSI-H/dMMR mCRC患者の1次治療の標準治療とすべきことが確認された」と述べた。

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AML初回治療、シタラビンのプロドラッグBST-236の有用性/ASCO2021

 初発急性骨髄性白血病(AML)はシタラビンによる強力寛解導入療法が標準治療となるが、毒性が強く高齢者や合併症のある患者は不適となる。不適患者にはベネトクラクスと脱メチル化薬(HMA)の併用療法が推奨されるが、臨床応用ははじまったばかりでリアルワールドのデータは乏しい。 こうした状況において開発中のaspacytarabine(BST-236)はシタラビンのプロドラッグで、シタラビンの曝露量を減少させ、全身毒性を軽減する。このaspacytarabineの有用性をみた多施設共同シングルアーム第II相試験の中間解析結果を、ノースウェスタン大学Jessica K. Altman氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:標準化学療法不適の初発AML患者・介入:aspacytarabine 4.5g/m2/日(シタラビン3g/m2/日に相当)を6日間静脈内投与、寛解導入療法1~2コースと地固め療法1~3コース・評価項目:[主要評価項目]完全寛解(CR)率[副次評価項目]最小残存病変(CRMRD)陰性、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・aspacytarabineの1~4コースを完了した46例が解析対象となった。年齢中央値75歳、ECOG PS 0~1が27例(59%)、2が19例(41%)だった。・26例(63%)がde novo AML、17例(37%)が二次性で、うち6例(13%)がHMAによる前治療を受けていた。・ベースライン時の骨髄芽球中央値は52%で、欧州白血病ネット(ELN)スコアが不利または中間の患者はそれぞれ54%と29%だった。・全CR率は39%、HMA±ベネトクラクス未治療群は45%、de novo AML群は52%、二次性群は18%だった。・完全寛解のうち、63%が最小残存病変(MRD)陰性だった。・20%以上の患者で発生した有害事象は、発熱性好中球減少症(57.4%)、低カリウム血症(44.7%)、末梢性浮腫(42.6%)などだった。Grade3以上の有害事象は、発熱性好中球減少症(48.9%)、血小板減少症(38.2%)、貧血(27.7%)などだった。 Altman氏はaspacytarabineの反復投与における安全性と忍容性が確認されたとしている。一方で本試験は奏効期間中央値12ヵ月、全生存期間中央値24ヵ月(フォローアップ終了時)にいずれも達しておらず、最終結果は今後の学会で発表される予定となっている。

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アテゾリズマブによるNSCLCアジュバントの成績は?(IMpower010)/ASCO2021

 完全切除された早期NSCLCにおける化学療法アジュバント後のアテゾリズマブを評価した無作為化第III相非盲検試験IMpower010中間解析の結果がASCO2021で発表された。アジュバントアテゾリズマブはBSCに比べ、良好な無病生存(DFS)を示した。・対象:Stage IB~IIIAで術後化学療法(プラチナ+ペメトレキセド/ドセタキセル/ゲムシタビン/ビノレルビン)、21日ごと最大4回サイクル)受けた完全切除NSCLC患者(ECOG PS 0~1)・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日 3週ごと16サイクル(Atezo群)・対照群:ベストサポーティブケア(BSC群)・評価項目[主要評価項目]治験責任医評価の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)[副次評価項目]Stage II~IIIAのPD-L1(TC)≥1%のDFS、Stage II~IIIA全患者の DFS、ITT集団(Stage IB-IIIA)のDFS、ITT集団のOS(階層的に検証)、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2021年1月21日)の追跡調査中央値は32.2ヵ月であった。・Stage II~IIIA PD-L1(TC)≧1%のDFS中央値はAtezo群未達、BSC群35.3ヵ月と、Atezo群で有意な改善を示した(HR:0.66、95%CI:0.50~0.88、p=0.0039)。・Stage II~IIIA全集団のDFS中央値はAtezo群42.3ヵ月、BSC群35.3ヵ月と、Atezo群で有意な改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.96、p=0.0205)。・IITT集団のDFS中央値は、Atezo群未達、BSC群37.2ヵ月であった(HR:0.88、95%CI:0.67~0.99、p=0.0395)。・全Gradeの有害事象(AE)は、Atezo群92.7%、BSC群70.7%で発現した。Grade3/4はそれぞれ21.8%と11.5%であった。投与中止につながるAtezo群のAEは18.2%で発現、Grade5の治療関連AEはAtezo群の0.8%で発現した。

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骨髄腫新薬、ダラツムマブ皮下注が患者負担を軽減/ヤンセンファーマ

 ヤンセンファーマは5月に多発性骨髄腫の治療薬としてヒト型抗CD38モノクローナル抗体「ダラツムマブ(以下、ダラツムマブ)」を配合した皮下投与製剤「ダラキューロ配合皮下注(以下、ダラキューロ)」を発売開始した。これに伴い6月3日にメディアセミナーを開催し、日本赤十字社医療センターの鈴木 憲史氏が、多発性骨髄腫の基礎知識と新薬が診療に与える影響について講演を行った。 多発性骨髄腫は血液がんの一種で、骨髄にある形式細胞ががん化する疾患。国内における新規罹患者数は7,000人/年程度で、人口10万人当たりでは5.4人となる。診断時の年齢中央値は66歳で罹患率・死亡率とも高齢になるほど増加する。 鈴木氏は「診療をはじめた40数年前、多発性骨髄腫は平均余命3年程度の厳しい疾患だった。それが画期的な新薬の登場で7年程度まで延びてきた」と紹介し、「高齢の患者さんが多く、薬剤は有効性だけでなくQOL維持も重要となる」とした。 ダラツムマブはCD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体で、CD38に結合することによりADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)、CDC活性(補体依存性細胞傷害活性)、ADCP活性(抗体依存性細胞貪食活性)などの免疫系活性を介して抗腫瘍効果を示す。移植非適応患者の1次治療として、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾンの併用療法(DRd)等のレジメンが国内外で推奨治療とされている。 ただ、これまでの点滴薬のダラツムマブの場合、初回7時間、2回目以降4時間程度の投薬時間が必要で、診察等を含めると1日がかりとなり、治療開始時は週1回の投与が必要で患者と医療者の負担が大きかった。ダラキューロの場合、15mlを3~5分かけて皮下注することとなり、診察を含めても半日かからない程度まで短縮できるという。 ダラキューロのダラツブマブに対する非劣性はCOLUMBA試験※により示され、年齢や体重によっても有効性に差は生じず、新規の有害事象も認められなかった。補液量で懸念があった心機能低下患者やフレイルな患者にも投与の可能性が広がる。ただし、副作用が発現するまでの時間はダラキューロのほうが時間がかかる(1.5時間vs.3.6時間)ため、鈴木氏は「初回は入院治療が必要になるだろう」とした。 また、COLUMBA試験参加施設の医療従事者を対象とした追加調査では、点滴から皮下注となったことで医療従事者の関与時間も大幅に減ったとの結果も出ており、鈴木氏は「皮下注への切り替えは患者負担を減らすだけでなく、外来化学療法室の回転を上げ、医療スタッフ業務の効率化につながる可能性も高い」とした。

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