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乳がんでの免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発はかなり複雑/日本癌治療学会

 2020年の乳がん診療におけるトピックスの1つとして、トリプルネガティブ(TN)乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の第III相試験の結果が多く発表されたことが挙げられる。しかし、これらの結果にはまだまだ未知の要因が関係しており、その理解はかなり複雑である。福島県立医科大学の佐治 重衡氏は、乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の試験結果によるディスカッションポイントについて、第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)の会長企画シンポジウムにおける「乳癌診療の新たな構築 2020」で解説した。 乳がんでは腫瘍遺伝子変異量(TMB)が少ないとされ、免疫チェックポイント阻害薬への期待は高くはなかった。しかし、2019年にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに対するアテゾリズマブ+nabパクリタキセルが承認され、今後、ペムブロリズマブもKEYNOTE-355試験の結果を基にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに承認される可能性が高い。今回、佐治氏は、乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬治療でのディスカッションポイントとして、早期乳がんと進行/再発乳がんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なる点、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法によって異なる点を挙げ、それぞれ解説した。早期乳がんと進行/再発乳がんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なるのは? 早期(Stage II~III)TN乳がんの術前治療としての免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを検討した第III相試験であるIMpassion031試験がESMO2020で発表された。本試験では、術前治療としてnabパクリタキセルを12週投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミド8週投与する群とアテゾリズマブ追加群を比較した結果、術後の病理学的完全奏効(pCR)がアテゾリズマブ追加群で57.6%とプラセボ群(41.1%)より16.5%上乗せされたことが示された。また、この上乗せはPD-L1発現状況にかかわらずみられた。 ESMO2019で発表されたKEYNOTE-522試験においても、IMpassion031試験とは化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)は異なるが、早期TN乳がんの術前治療に免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブを追加することによりpCRの上乗せが示された。また、IMpassion031試験と同様に、PD-L1発現状況にかかわらず15%前後の上乗せが示された。どちらもリンパ節転移陽性例のほうが陰性例より上乗せ効果が高かった。 佐治氏は、この2つの試験結果から、なぜ早期乳がんではPD-L1陰性でも効果があるのか、また、なぜリンパ節転移陽性だとpCRの上乗せが顕著なのか、疑問を呈した。 まず前者について、佐治氏はESMO2020で発表されたNeoTRIP試験(早期TN乳がんに術前治療としてカルボプラチン+nabパクリタキセルにアテゾリズマブを追加)の結果を提示した。本試験では、術前治療前と途中のペア組織生検からPD-L1の発現変化を調べた結果、アテゾリズマブ併用群では、治療前にPD-L1陰性だった患者のうち64.3%が治療の途中で陽性となったのに対して、プラセボ群では17.7%しか陽性にならなかった。この結果から、佐治氏は、抗PD-L1抗体の併用により原発腫瘍のPD-L1の発現が誘導される可能性を言及した。リンパ節転移がある乳がんへの免疫チェックポイント阻害薬の効果の影響は? 後者については、治療する時点でリンパ節転移がある場合に免疫チェックポイント阻害薬の効果が顕著であるとするなら、リンパ節転移陽性の患者さんが乳房切除+リンパ節郭清といった手術後に免疫チェックポイント阻害薬を受けるときの効果はどうなるのか、という疑問が生じる。 これまで乳がんの術前治療と術後治療は効果が同じという前提で治療を行ってきているが、治療時にリンパ節転移があるほうが免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いという仮説が正しいのであれば、術前治療と術後治療において免疫チェックポイント阻害薬の利益には差があることになってしまう。佐治氏は「もしそうであれば、免疫チェックポイント阻害薬を使用する時代になったときに手術を含めた治療戦略そのものを変えなければいけない」と述べ、「今後、術後治療での免疫チェックポイント阻害薬の結果が出てきたとき、リンパ節転移の有無が本当に大事なのかどうかは重要なポイントとなる」と指摘した。免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法の違いで異なる結果 免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法については、これまで、何を選んでもある程度の上乗せを期待できると考えられてきた。しかし、ESMO2020で発表されたIMpassion131試験は、対象が同じ未治療のPD-L1陽性進行/再発TN乳がんであるにもかかわらず、IMpassion130試験と異なる結果であった。すなわち、アテゾリズマブにnabパクリタキセルを組み合わせたIMpassion130試験では、無増悪生存期間(PFS)の上乗せ効果があったのに対し、パクリタキセルを組み合わせたIMpassion131試験では上乗せ効果がなかった。 この理由として、パクリタキセルの場合はステロイドを投与するためという意見もあるが、KEYNOTE-355試験など、ステロイドを必要とする化学療法との組み合わせがある他の試験では効果がみられているため、よくわかっていないという。佐治氏は、「今後、サブセット解析や細かいデータを見直した結果が発表されたときに、化学療法のペアの問題がどれくらい重要なのかがわかるだろう」と述べた。 最後に佐治氏は、「進行/再発乳がんではPD-L1陽性例にしか効果がないのに、なぜ早期乳がんではPD-L1の発現によらず効果があるのか。また、早期乳がんにおいてリンパ節転移が治療効果に影響している結果をどう解釈すればよいのか。さらに、どの化学療法を組み合わせて開発していくのか。乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発は簡単ではなく、やるべきことが多いことがわかった」と課題を述べ、講演を締めくくった。

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がん診療病院でのCOVID-19クラスター、その教訓は/日本癌治療学会

 市中感染が広がる状況下では、感染者が院内に入り込む可能性や病院内感染発生のリスクが常にある。リスクをいかに減らし、万が一予期せぬ感染者が発覚した場合にどのような対応が必要か、がん診療をどのように維持していけばよいのか。第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で、「COVID-19蔓延期の癌治療―体験と教訓―」と題した会長企画シンポジウムが開かれ、がん診療を担う病院での今春からの経験、実施している対策が相互に共有された。本稿では、加藤 秀則氏(北海道がんセンター)、佐藤 悠城氏(神戸市立医療センター中央市民病院)による発表内容を中心に紹介する。北海道がんセンターでクラスターが発生した原因 北海道がんセンターでは、4月13日に消化器内科病棟で看護師1名と患者1名が発熱、翌日には同病棟勤務の看護師2名も発熱した。当時院内ではPCR検査が実施できなかったため、保健所を通じPCR検査を実施したところ、16日に4名で新型コロナウイルス陽性を確認。これを契機に、同病棟および隣接する泌尿器科(同フロア)の患者、勤務する看護師、医師らの間で集団感染が発生した。厚生労働省クラスター班による調査・指導等を経て、5月16日に看護師1名の感染が確認されたのを最後に、6月13日の終息宣言に至った。 北海道がんセンターの加藤氏は、クラスターが発生してしまった原因として下記を挙げている:・病院の収益を確保するため、病床稼働率を上げなければならず病棟は密な状態であった・がん患者はさまざまな病態で熱発していることも多く、最初からコロナ肺炎を疑わない症例も多い・がん患者はPSの悪いことも多く、看護師が密着せざるを得ない看護も多い・築40年程度経過した病院で全体にスペースも狭く、空調も悪く、陰圧室もない・PCR検査は市の保健所でしか実施できず、疑い症例を自由に、迅速に行える状況ではなかった 北海道がんセンターのクラスターの端緒となったと考えられる患者は感染発覚前に、消化器内科から泌尿器科の病室に移っており、その隣室患者および看護した看護師へと伝播していった。加藤氏は、「進行がんで看護必要度の高い患者さんが多く、主に看護師を通して伝播したと考えられる」と話した。感染者の中には清掃やリネン、放射線技師といった病棟横断的に業務を行う者も含まれており、院内感染防止の観点から注意が必要な部分と振り返った。 また、消化器内科病棟勤務で感染した看護師19名のうち、1回目のPCR検査で陽性となったのは13名。2回目が5名で、症状だけが続き4回目ではじめて陽性となった者も1名いたという。加藤氏は、PCR検査の感度、タイミングの問題も考えていかなければいけないと話した。北海道がんセンターでの感染対策の改善点 北海道がんセンターでは、外来・病棟それぞれにおいて、下記を中心とした感染対策の改善を行っている。[外来での改善点]・待合室の3密対策・入口を1ヵ所にしてサーモグラフィチェック・発熱者の隔離部屋を用意・採血室、外来化学療法室の増設・過密回避、外来診察室の医師と患者の間にスクリーンの設置・各受付にスクリーンの設置・CTなどの検査機器、X線照射装置、胃カメラ、ベッドなどは毎回消毒・電カル、キーボード、マウスのアルコールペーパーでの消毒など職員の衛生意識改善[病棟での改善点]・定期入院はすべて事前にPCRと肺CT検査を行い陰性者のみ入院・PCRは自院の装置、検査会社との契約により件数拡充・臨時入院は個室隔離し、PCR結果が出るまではPPE対応・病室は過密対策で稼働を50%にコントロール・看護師休憩室の増設・面会の全面禁止 また、復帰した医療者のメンタルケアの重要性を感じたと加藤氏。感染症から回復して復帰しても、精神的に回復するまでには時間を要したという。「プライバシー保護にも配慮が必要であるし、回復には時間がかかる。専門の心理療法士に依頼し、病院全体を挙げてのケアの必要性を感じた」と話した。神戸市立医療センター中央市民病院の院内感染の原因 神戸市立医療センター中央市民病院は、地域がん診療拠点病院であるとともに第一種感染症指定医療機関で、神戸市でCOVID-19が初発した3月上旬より、約200例のCOVID-19患者を受け入れている。うち、7例が院内感染によるもの。佐藤氏は、院内感染発生の原因として、1)COVID-19患者の在院日数の長さ、2)ゾーニングの問題、3)強い感染力を挙げて考察した。 1)については、酸素投与を要した患者における在院日数の中央値は31日、ICU在室日数の中央値は9日と長く、病床がひっ迫していた状況があった。2)10床の感染症病床(陰圧個室)を有し、専門看護師が感染者の看護に従事していたが、ナースステーションと休憩室は一般病床を担当する看護師と共通で、ここで医療従事者間での感染が起こったと推測される。3)同院での院内感染の伝播において重要な役割を果たしたと考えられる患者は、透析患者で当初感染が疑われておらず、せん妄があったことなどからナースステーションでの大声での発話などがあり、PCRでは高ウイルス量が検出されるなどの因子が重なって、複数の医療従事者の感染につながったことが推測される。多いCOVID-19疑似症、対策はあるのか 神戸市立医療センター中央市民病院では、ビニールシートによる職員の保護等ゾーニングの徹底や、全例PCRを実施する入院前検査のほか、COVID-19合同診療チームを立ち上げて対策にあたっている。重症例はICUで一括管理できるものの、軽症~中等症例はICUを出た後各科の持ち回りになるため、1人の医師が感染者と非感染者の診療を行うことに対するリスクを減らすため、このチームが立ち上げられた。全科から選抜、各科業務を完全に外れ、2週間勤務後1週間の自宅待機を経て復帰する。 2月はじめから院内感染により病院が機能停止した4月中旬までの約2ヵ月半で、救急外来と感染症外来を受診したCOVID-19疑似症患者は286例に及ぶ。そこで同院では、感染拡大期には感染疑い病棟を設置。PCR検査が陰性であっても、類似症状や胸部異常影がある患者についてはいったん同病棟に収容し、担当医も分ける形をとるようにした。感染対策解除基準のフローを作り、どうしても臨床的な疑いが解除できない患者においては何度でもPCR検査を行い、それまで感染症対応を解除しないという方法をとっている。「今後のがん診療では、COVID-19疑似症の対応は必須になるのではないかと考えている」と佐藤氏。胸部CTにおいて、一見器質化肺炎が疑われた患者でCOVID-19陽性であった例や、末梢側のすりガラス影がみられる患者で薬剤性肺障害であった例など、いくつか自験例を示して解説した。 自院の症例約100例でCOVID-19と薬剤性肺障害の背景因子を後ろ向きに比較した結果では、COVID-19症例では陰影のある肺葉数が多いという傾向はみられたものの、大きな臨床所見の差はみられなかった。呼吸器内科医としては、今後これらの鑑別をしっかり行っていかなければならないと話し、またCOVID-19後遺症として罹患後に間質陰影を呈した肺がん症例での治療再開の判断の難しさにも触れ、後遺症に関してもエビデンスの蓄積が待たれるとした。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に国内申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年10月27日、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法について、切除不能な進 行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。 今回の承認申請は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法をプラチナ製剤を含む標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)の中間解析の結果に基づいている。 本解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれ までに認められているものと一貫していた。

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未治療Ph陽性ALLへのダサチニブ+ブリナツモマブ、第II相試験結果/NEJM

 フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)成人患者の1次治療において、分子標的・免疫療法戦略に基づくダサチニブ+ブリナツモマブによる、化学療法薬を用いない寛解導入・地固め療法は、分子遺伝学的奏効の達成割合および生存率が良好で、Grade3以上の毒性は少ないことが、イタリア・Sapienza University of RomeのRobin Foa氏らGIMEMA共同研究グループが実施した「GIMEMA LAL2116 D-ALBA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月22日号に掲載された。Ph陽性ALL患者の予後は、ABL特異的チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場によって著明に改善し、全身化学療法併用の有無を問わず、ほとんどの患者で血液学的完全奏効が得られている。ダサチニブは複数のチロシンキナーゼを標的とするTKIであり、ブリナツモマブはB細胞のCD19とT細胞のCD3に二重特異性を有する遺伝子組み換えモノクローナル抗体である。ダサチニブ+ブリナツモマブの分子遺伝学的奏効を評価 研究グループは、新たにPh陽性ALLと診断された成人(年齢の上限はない)を対象に、ダサチニブ+ブリナツモマブの第II相単群試験を行った(Associazione Italiana per la Ricerca sul Cancroなどの助成による)。 被験者は、寛解導入療法としてダサチニブ(140mg、1日1回)の85日間の投与を受けた後、地固め療法としてブリナツモマブ(28μg/日)の投与を2サイクル受けた(最大5サイクルまで許容された)。ブリナツモマブの各サイクルの投与前にデキサメタゾン(20mg)が投与された。ダサチニブは、ブリナツモマブ投与中および投与後も継続投与された(T315I変異陽性例を除く)。 主要評価項目は、治療後の骨髄における持続的な分子遺伝学的奏効(分子遺伝学的完全奏効、微小残存病変の定量化が不能な奏効)とした。ダサチニブ+ブリナツモマブの分子遺伝学的奏効率は60% 2017年5月~2019年1月の期間に、63例(年齢中央値54歳[範囲24~82]、女性34例[54%])が登録された。このうち98%(62/63例)で完全寛解が得られた。 ダサチニブによる寛解導入療法の終了時(85日)に、患者の29%(17/59例)で分子遺伝学的奏効が達成された。この割合は、ブリナツモマブの2サイクル投与後に60%(33/55例)まで上昇し、投与サイクル数が増えるに従ってさらに上昇した(3サイクル:70%[28/40例]、4サイクル:81%[29/36例]、5サイクル:72%[21/29例])。 追跡期間中央値18ヵ月の時点で、全生存率は95%、無病生存率は88%であった。無病生存率は、IKZF1欠失に加え他の遺伝子異常(CDKN2AまたはCDKN2Bと、PAX5、あるいはこれら両方の異常[IKZF1plus])を有する患者で低かった。ダサチニブによる寛解導入療法中に微小残存病変が増加した6例でABL1の変異が検出され、これらの変異はすべてブリナツモマブにより消失した。再発は6件発生した。 全体で、28例に60件の有害事象が発現した。Grade3以上の有害事象は21件であり、サイトメガロウイルス再活性化/感染症(6例)、好中球減少(4例)、持続性発熱(2例)、胸水(1例)、肺高血圧症(1例)、神経学的障害(1例)が含まれた。24例が同種造血幹細胞移植を受け、1例(4%)が移植関連で死亡した。 著者は、「患者アウトカムは年齢を問わずきわめて良好で、移植関連死が少なかった。予想に反して、サイトメガロウイルス再活性化の頻度が高かったが、この現象はダサチニブ投与例の以前の研究で報告されている」としている。

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NSCLCに対するペムブロリズマブ・化学療法併用の最長追跡データ(KEYNOTE-021)/MSD

 Merck社は、2020年10月16日、進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者においてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を評価したKEYNOTE-021試験(コホートG)の長期追跡の結果、PD−L1の発現にかかわらず、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法による1次治は、化学療法単独と比較して、客観的奏効率の改善、無増悪生存期間の改善が認められたと発表。この試験結果は、北米肺癌学会議(NACLC)において報告された(Featured Poster #OFP01.02)。NSCLC患者の1次治療における抗PD-1/L1抗体と化学療法の併用療法を評価した最長のフォローアップデータとなる。 マルチコホート多施設共同非盲検第I/II相KEYNOTE-021試験のコホートGでは、進行非扁平上皮NSCLC患者の初回治療におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法(n=60)と化学療法のみ(n=63)を比較した。全生存期間(OS)中央値はペムブロリズマブと化学療法併用34.5ヵ月、化学療法のみ21.1ヵ月、3年生存率は化学療法のみ患者では37%だったのに対し、ペムブロリズマブと化学療法併用患者では50%であった(HR=0.71、95% CI:0.45~1.12)。このOSの改善は、70%(n=43/61)の患者が後に化学療法から抗PD-1/L1抗体治療にクロスオーバーしたにもかかわらず認められた。ORRはペムブロリズマブと化学療法の併用では58%、化学療法のみでは33%であった。PFS中央値は、ペムブロリズマブと化学療法併用24.5ヵ月、化学療法のみ9.9ヵ月であった(HR=0.54、95% CI:0.35~0.83)。奏効期間(DoR)中央値はペムブロリズマブと化学療法の併用では36.3ヵ月、化学療法のみでは22.8ヵ月であった。また、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法に関し、長期的なフォローアップにおいて新たな安全性シグナルは認められなかった。

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非G-CSF小分子plinabulinの好中球減少症予防効果/JAMA Oncol

 抗がん作用と好中球減少症予防作用を併せ持つ新しい非顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)小分子plinabulinについて、第II相試験の結果が明らかにされた。米国・スタンフォードがん研究所のDouglas W. Blayney氏らが、ドセタキセルの好中球減少症の予防効果を、非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に行った無作為化非盲検試験で、plinabulinはペグフィルグラスチムと同等の好中球減少症予防効果が得られたという。JAMA Oncology誌オンライン版2020年9月24日号掲載の報告。 試験は、米国、中国、ロシアおよびウクライナのがん治療センター19施設で行われた。試験期間は2017年4月~2018年3月で、2019年8月~2020年2月に解析を行った。 対象は、プラチナ併用化学療法後に進行したNSCLC患者55例で、plinabulin(5、10、20mg/m2)群、またはペグフィルグラスチム(6mg)群に無作為に割り付けられた。1サイクルを21日として、全例1日目にドセタキセル75mg/m2を投与し、plinabulinは1日目、ペグフィルグラスチムは2日目に投与し、4サイクル施行した。 主要評価項目は、化学療法第1サイクル中の重度好中球減少症発現日数であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象症例55例の患者背景は、平均年齢は61.3±10.2歳で、38例(69.1%)が男性であった。・plinabulin群では、用量依存的にあらゆるGradeの好中球減少症の発現率が減少した。・重度好中球減少症が発現した平均日数は、plinabulin 20mg/m2群が0.36±0.93日、ペグフィルグラスチム群が0.15±0.38日であり、両群に有意差は認められず(p=0.76)、安全性シグナルは検出されなかった。・第III相試験では、plinabulinの投与量を40mgの固定用量(20mg/m2に相当)とし、重度好中球減少症発現日数の非劣性を主要評価項目、骨痛の軽減、血小板減少の抑制ならびにQOLの維持を副次評価項目として、ペグフィルグラスチム6mgと比較検証する。

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ER+HER-早期乳がんの長期予後予測、治療前18F-FDG PET/CTのSUVmaxが有用/日本癌治療学会

 乳がんで最も頻度の高いER陽性HER陰性早期乳がんは、10年以上の長期にわたって再発を来すことが知られており、近年は遺伝子検査などによる予後予測が行われている。今回、東京女子医科大学の塚田 弘子氏らによる研究で、治療前18F-FDG PET/CT (以下、PET/CT)での原発巣SUVmax値(maximum standardized uptake values)およびリンパ節転移個数が長期無再発生存期間(RFS)の予測因子であり、原発巣SUVmax値は長期全生存期間(OS)の単独予測因子であることが示唆された。第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で報告された。SUVmax値が高値を示す腫瘍は増殖速度が高いため再発を来しやすい PET/CTは乳がん診療において2~5年程度の短期予後予測には有用との報告があるが、10年以上のRFSやOSとの相関は示されていない。本研究は、2007年1月~2010年5月に東京女子医科大学病院で治療が開始された原発性乳がんのうちcStage II以下かつER陽性HER陰性浸潤性乳管がん340例を対象とし、患者/腫瘍背景、治療前PET/CTのFDG集積がRFSおよびOSに与える影響をCox回帰比例ハザードモデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値121ヵ月(16~159ヵ月)、再発は32例(9.4%)、死亡は17例(5.0%)であった。・単変量解析から、RFS予測因子の候補としてBMI、原発巣SUVmax値、浸潤径、pStage、深達度、リンパ管侵襲、核異型度、リンパ節転移個数、術後化学療法の有無が挙がり、OSの予測因子の候補としてBMI、原発巣SUVmax値、pStage、脈管侵襲、核異型度、リンパ節転移個数が挙がった。・多変量解析の結果、RFSについては原発巣SUVmax値(ハザード比[HR]:1.47、95%CI:1.29~1.67、p<0.001)およびリンパ節転移個数(HR:1.30、95%CI:1.06~1.60、p=0.011)が独立した予測因子で、OSについては原発巣SUVmax値(HR:1.38、95%CI:1.18~1.61、p<0.001)が独立した予測因子となった。 塚田氏は、「PET/CTにおけるSUVmax値は腫瘍活動性や増殖能との相関が報告されており、高値を示す腫瘍は増殖速度が高いことから再発を来しやすく、OSにも影響を与えているものと考えられる」とし、さらに本研究の結果から「SUVmax値は5年以降の生存率にも強く関連する」と考察している。

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トリプルネガティブ乳がん術前治療における免疫チェックポイント阻害剤併用(解説:下村昭彦氏)-1305

 2020年9月19日から欧州臨床腫瘍学会(ESMO)がバーチャル開催され、多数の重要演題が発表された。IMpassion031試験もその1つであり、同日Lancet誌に論文掲載となっている。IMpassion031試験はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前化学療法としてアルブミン結合パクリタキセル(nab-PTX)とAC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)療法に、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブを上乗せすることにより病理学的完全奏効(pCR)率が向上するかどうかを検証したランダム化比較第III相試験である。アテゾリズマブ群で17%のpCR率改善を認め、アテゾリズマブのpCR率に対する効果が統計学的有意に示された。PD-L1陽性(1%以上)・陰性のいずれでもpCR率の改善傾向を認めたが、サブグループでは統計学的有意差は認めなかった。同様の試験として抗PD-1抗体であるペムブロリズマブを用いたKEYNOTE-522試験(CBDCA+PTX f/b AC療法へのペムブロリズマブの上乗せを検証)があり、こちらも全体集団でペムブロリズマブによるpCR率改善が示されており、その傾向はPD-L1ステータスにより変わらなかった。 一方、転移乳がんを対象とした試験では明暗を分けている。転移TNBC 1次治療を対象として、3つの試験の結果がすでに発表されている。IMpassion130試験はnab-PTXへのアテゾリズマブの上乗せを、無増悪生存期間(PFS)をエンドポイントとして検証した試験である。ITT集団で上乗せ効果があり、PD-L1陽性集団でより強く効果を認めたものの、PD-L1陰性集団ではまったく上乗せ効果が認められなかった。PD-L1陽性集団では全生存期間(OS)においても改善が期待される結果であった。一方、同じセッティングでPTXへの上乗せを検証したIMpassion131試験ではアテゾリズマブのPFSに対する上乗せ効果が認められず、むしろOSにおいてはアテゾリズマブ群で悪い傾向にあった(有意差なし)。この相反する結果に対しては、PTXでは前処置としてステロイドが毎回投与されること、nab-PTXとPTXではパクリタキセルとしての薬剤の量が異なること、実際に試験に参加した患者の背景が異なることなどが原因として議論されている。同様の対象でタキサン(PTX/nab-PTX)もしくはCBDCA+GEMへのペムブロリズマブの上乗せを検証したKEYNOTE-355試験ではPD-L1陽性集団において上乗せ効果が示され、タキサンでより良い傾向を示したことから、アテゾリズマブとペムブロリズマブの薬剤としての違いもディスカッションに挙げられている。 早期TNBCに戻って考えてみると、早期がんではPD-L1ステータス、薬剤の種類にかかわらず免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の上乗せ効果を認めている。早期乳がんと転移乳がんでバイオマーカーが異なる可能性も指摘されているが、大きな違いとしてはAC療法が行われているかどうか、ということである。AC療法によりがん細胞が破壊されることによりがん特異抗原やサイトカインが放出され、免疫のプライミングが惹起されることなどが原因として指摘されている。その傍証の1つが、NeoTRIP試験(nab-PTX+CBDCAへのアテゾリズマブの上乗せを、pCRをエンドポイントとしてみた試験、AC療法は術後に行われた)ではpCRの改善がほとんどみられなかったことである。併用化学療法の影響は大きいと考えるべきであろう。 さらに、免疫チェックポイント阻害剤を術前化学療法に併用した場合に問題となるのが、non-pCRの際の術後化学療法である。TNBCでnon-pCRだった場合には術後にカペシタビンの半年間の投与(国内未承認)が無病生存期間(DFS)ならびにOSを改善することが示されているが、ICIの試験では術後にICIを継続されている。non-pCRの場合にカペシタビンへ変更するのか、それともICI+カペシタビンの治療を行うのか、今後明らかにしていく必要がある。

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進行TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ+化療、日本人解析結果(KEYNOTE-355)/日本乳癌学会

 手術不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、化学療法とペムブロリズマブ併用の有効性を評価するKEYNOTE-355試験の全体集団における中間解析結果が2020年のASCOで発表され、PD-L1陽性(CPS≧10)患者でPFSの有意な改善が示されている。今回その日本人集団解析の結果を、国立病院機構大阪医療センターの八十島 宏行氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例(日本人87例)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例(61例)・対照群:プラセボ+化学療法 281例(26例)・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSとOS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性 日本人サブグループ解析の主な結果は以下のとおり。・2019年12月11日データカットオフ時点で、国内26施設から日本人87例が組み入れられ、ペムブロリズマブ群に61例、化学療法単独群に26例が無作為に割り付けられた。・使用された化学療法のレジメンはタキサン(23%)、ゲムシタビン/カルボプラチン(77%)、であった。・カットオフ値CPS≧10のPD-L1陽性患者における28例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群11.7ヵ月、ハザード比(HR)が0.52(95%CI:0.20~1.34)で、1年後無増悪生存率も44%とペムブロリズマブ群で有意な延長を認めた全体集団と大きな乖離のない結果であった。・カットオフ値CPS≧1のPD-L1陽性患者における66例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群7.6ヵ月、ハザード比(HR)が0.62(95%CI:0.35~1.09)であった。・ITT集団における87例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群7.7ヵ月、ハザード比(HR)が0.64(95%CI:0.38~1.07)と全体集団と大きな乖離は認めなかった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、ペムブロリズマブ併用群では85.2%、化学療法単独群では84.6%に発現。これは全体集団(68.1% vs. 66.9%)と比較すると高い傾向であったが、化学療法単独群でも同頻度で発現していることから、日本人集団では化学療法による影響が強くでているのではないかと推察された。・Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)は、ペムブロリズマブ併用群の4.9%に発現し、化学療法単独群では発現していなかった。有害事象・頻度ともに全体集団と同様であり、日本人特有のirAEは発現していない。 なお、米国・FDAでは現在審査中であり、本邦においても、2020年10月12日に承認申請が行われている。

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食道がん患者1次治療、ペムブロリズマブ+化学療法に期待(KEYNOTE-590)/ESMO2020

 国立がん研究センター中央病院の加藤 健氏は 、切除不能な局所進行・転移性食道がん・食道胃接合部がん患者に対する1次治療としてプラチナ化学療法と、化学療法とペムブロリズマブの併用療法を比較する無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-590試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。化学療法単独と比較してペムブロリズマブ併用が無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を統計学的に有意に改善したと報告した。・対象:未治療の転移を有する食道腺がん・扁平上皮がん、食道胃接合部Siewert Type1腺がん患者(PS 0~1)・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+5-FU)3週ごと最大35サイクル(ペムブロリズマブ併用療法群、373例)・対照群:化学療法(同上)(化学療法単独群、376例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・CPS≧10の食道扁平上皮がんのOS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が13.9ヵ月、化学療法群が8.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.57、95%CI:0.43~0.75、p<0.0001)。・食道扁平上皮がん全体のOS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が12.6ヵ月、化学療法群が9.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.72、95%CI:0.60~0.88、p=0.0006)。・CPS≧10のOS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が13.5ヵ月、化学療法群が9.4 ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。・全症例のOS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が12.4ヵ月、化学療法群が9.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.73、95%CI:0.62~0.86、p<0.0001)。・CPS≧10のPFS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が7.5ヵ月、化学療法群が5.5 ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.51、95%CI:0.41~0.65、p<0.0001)。・全症例のPFS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が6.3ヵ月、化学療法群が5.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.65、95%CI:0.55~0.76、p<0.0001)。・ORRはペムブロリズマブ併用療法群が45.0%、化学療法群が29.3%であった(p<0.0001)。・Grade3以上の治療関連有害事象(AE)発現率はペムブロリズマブ併用療法群が71.9%、化学療法群が67.6%、Grade3以上の免疫関連AE発現率はペムブロリズマブ併用療法群が7.0%、化学療法群が2.2%あった。 今回の結果を受けて加藤氏は「ペムブロリズマブと化学療法の併用療法は、切除不能な局所進行および転移を有する食道がん患者に対する1次治療での新たな標準治療とすべきである」と強調した。

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乳がん術前/術後化学療法時の頭皮冷却が毛髪回復を早める/日本乳癌学会

 乳がんの術前/術後化学療法時に脱毛抑制のためにPaxman Scalp Coolingシステムで頭皮冷却した後の毛髪回復状況を長期間、前向きに調査した結果から、化学療法時の頭皮冷却は脱毛を軽減するだけでなく、毛髪の回復を早め、さらに永久脱毛をほとんどなくす可能性が示唆された。国立病院機構四国がんセンターの大住 省三氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究の対象は、Paxman Scalp Coolingシステムによる術前/術後化学療法時の脱毛研究に参加し、頭皮冷却を1回以上受け、予定していた化学療法を完遂し、脱毛状況の評価が可能だった乳がん患者122例。最後の化学療法後1、4、7、10、13ヵ月時の頭髪状況について、客観的評価(5方向からの撮影写真を医師と看護師2名で評価)でのGrade(0:まったく脱毛なし、1:1~25%脱毛、2:26~50%脱毛、3:>50%脱毛)および主観的評価(患者にかつらまたは帽子の使用を質問)でのGrade(0:まったく使っていない、1:時々使用、2:ほとんど常に使用)で分類した。全例での評価のほか、頭皮冷却を全サイクルで完遂した患者79例(A群)と、途中で頭皮冷却を中止した43例(ほとんどは1サイクルで中止)(B群)の結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・122例での客観的評価における各時点でのGradeは10ヵ月時までは改善がみられたが、その後は改善がみられなかった。13ヵ月時に回復していない症例(永久脱毛と定義)は9例(7.8%)であった。・122例での主観的評価における各時点でのGradeは、客観的評価と異なり10ヵ月時と13ヵ月時の間でも改善がみられた。しかし、13ヵ月時でも19例(16.5%)はかつらあるいは帽子を使用していた。・A群とB群を客観的評価で比較すると、観察期間中、終始A群の脱毛の程度が有意に軽く、また回復も早かった。13ヵ月時に永久脱毛がみられた症例はA群で2例(2.6%)に対し、B群では7例(18.4%)と有意差が認められた。・主観的評価の比較でも、A群のほうが終始、かつらあるいは帽子を使用していた症例の割合が低く、頻度も低かった(4ヵ月時と7ヵ月時で有意差あり)。・1ヵ月時点で客観的評価がGrade3だった症例のみに限定しても、A群はB群より回復が速い傾向にあり(4ヵ月時と10ヵ月時で有意差あり)、化学療法中に脱毛が起こっても頭皮冷却を続ける意義は大きいと考えられる。一方、同じ症例(1ヵ月時点で客観的評価がGrade3)で主観的評価の経時的な結果を比較した場合、両群間で差はみられなかった。

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進行または転移のある尿路上皮がんに対するアベルマブ維持療法(解説:宮嶋哲氏)-1299

 アベルマブはヒトPD-L1に対する抗体であり、2017年にFDAはプラチナ製剤を含む化学療法施行中または施行後に病勢進行を認めた局所進行または転移のある尿路上皮がんの治療薬としてアベルマブの適応を承認している。わが国では、根治切除不能または転移のある腎細胞がんを適応症として分子標的薬であるアキシチニブと併用で適応が承認されている。 プラチナ製剤主体の抗がん化学療法は進行尿路上皮がんの標準的1次療法であるが、無増悪生存期間と全生存期間はがん細胞の化学療法耐性獲得によって、その効果は限定的である。本研究はJAVELIN Bladder 100試験の第III相試験で、切除不能な局所進行または転移のある尿路上皮がんを有し、1次化学療法(ゲムシタビンとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用を4~6サイクル)で病勢進行を認めなかった患者を、best supportive care(BSC)に加えてアベルマブによる維持療法を行う群と行わないBSCのみのコントロール群に無作為に割り付けたものである。主要評価項目は全生存率(OS)とし無作為化された全患者(集団全体)とPD-L1陽性腫瘍を有する患者群で評価を行い、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)と安全性である。 無作為化された全症例700例では、アベルマブ維持療法群はコントロール群と比較してOSは有意に延長した。1年OSはアベルマブ群で71.3%、対照群で58.4%であった(OS中央値21.4ヵ月vs.14.3ヵ月、HR:0.69、P=0.001)。PD-L1陽性群においてもアベルマブによりOSは有意に延長し、1年OSはアベルマブ群で79.1%、コントロール群で60.4%であった(HR:0.56、P<0.001)。PFS中央値は全体ではアベルマブ群3.7ヵ月、コントロール群2.0ヵ月であり(病勢進行または死亡のHR:0.62)、PD-L1陽性集団ではそれぞれ5.7ヵ月と2.1ヵ月であった(HR:0.56)。有害事象の発現率はアベルマブ群98.0%、コントロール群77.7%であり、Grade3以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%と25.2%であった。以上、1次化学療法で病勢進行を認めなかった尿路上皮がん患者において、アベルマブによる維持療法はBSCのみのコントロール群と比較してOSは有意に延長した。  アベルマブはわが国において尿路上皮がんで適応承認は受けていないが、今後プラチナ製剤を含む化学療法で病勢進行を認めた尿路上皮がんへの2次治療薬としての適応承認は近いと考えている。本薬剤は2020年6月に局所進行または転移を有する尿路上皮癌に対する1次療法の維持療法薬として、適応承認を米国FDAから獲得した。 我が国における今後の動向が注目される。

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PD-L1高発現NSCLC1次治療、抗PD-1抗体cemiplimab vs.化学療法(EMPOWER-Lung1)/ESMO2020

 トルコ・Baskent大学のAhmet Sezer氏は、未治療でPD-L1発現率が50%以上の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗PD-1抗体cemiplimabとプラチナダブレット化学療法を比較した無作為化非盲検第III相EMPOWER-Lung1試験の2回目の中間解析の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。cemiplimabは併用化学療法に比べ、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したと報告した。・対象:PD-L1≧50%で未治療のStage3B/C、4のNSCLC(扁平上皮・非扁平上皮含む、安定している既治療のCNS転移含む)・試験群:cemiplimab 350mg 3週ごとを病勢進行または108週間まで投与(cemiplimab群)・対照群:プラチナダブレット化学療法 4~6サイクル(併用化学療法群)・評価項目:[主要評価項目]OS、PFS[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、健康関連QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・PD-L1≧50%のITT解析対象はcemiplimab群283例、併用化学療法群280例であった。・併用化学療法群でPDとなった患者の73.9%がcemiplimabにクロスオーバーした。・OS中央値はcemiplimab群が22.1ヵ月、併用化学療法群が14.3ヵ月で、cemiplimab群で有意な延長を認めた(HR:0.68、95%CI:0.53~0.87、p=0.002)であった。・PD-L1≧50%のOS中央値は、cemiplimab群が未到達、併用化学療法群が14.2ヵ月で、cemiplimabで有意な延長を認めた(HR:0.57、95%CI:0.42~0.77、p=0.0002)。・PFS中央値は、cemiplimab群6.2ヵ月、併用化学療法群が5.6ヵ月で、cemiplimab群で有意な延長を認めた(HR:0.59、95%CI:0.49~0.72、p<0.0001)。・PD-L1≧50%のPFS中央値は、cemiplimab群8.2ヵ月、併用化学療法群が5.7ヵ月で、cemiplimab群で有意な延長を認めた(HR:0.54、95%CI:0.43~0.68、p<0.0001)。・ORRはcemiplimab群36.5%、併用化学療法群20.6%で、cemiplimab群で有意に高率であった(p<0.0001)。・PD-L1≧50%のORRはcemiplimab群39.2%、併用化学療法群20.4%で、cemiplimab群で有意に高率であった(p<0.0001)。・DoR中央値はcemiplimab群21.0ヵ月、併用化学療法群が6.0ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象発現率は、cemiplimab群が37.2%、併用化学療法群が48.5%であった。 今回の結果を受けてSezer氏は「私たちが得た結果はPD-L1≧50%の進行期NSCLCにおいて、cemiplimab単剤療法は新たな1次治療の選択肢になりうることを示している」と強調した。

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EGFR陽性肺がんに対するamivantamab+lazertinibの成績(CHRYSALIS)/ESMO2020

 韓国・延世がんセンターのByoung Chul Cho氏は進行期EGFR変異陽性NSCLCに対するEGFRとMETの二重特異性抗体amivantamab(開発コード:JNJ-61186372)と第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの併用療法の第I相CHRYSALIS試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。この併用療法は安全性が高く、EGFR-TKIオシメルチニブによる再発した患者にも有効であると報告した。amivantamabとlazertinib併用療法の未治療群でのORRは100% amivantamabはEGFRとMETを標的とする完全ヒト二重特異性抗体で、米FDAからEGFR陽性NSCLCのexon20挿入変異に対するブレークスルーセラピー指定を受けており、lazertinibは第1/2世代EGFR-TKIの獲得耐性であるT790Mへも有効であることが報告されている。CHRYSALIS試験は漸増コホートと拡大コホートの2つから構成されている。・対象:転移を有するEGFR変異陽性NSCLC(exon19delまたはL858R)・介入:[用量漸増コホート]amivantamab(700mg/1,050mgから1,050/1,400mgへ増量)+lazertinib 240mg/日 用量漸増パートの結果から、amivantamabの第II相推奨用量を1,050mg(80kg未満)および1,400mg(80kg以上)、lazertinibは240mgと決定。[拡大コホート]オシメルチニブ耐性・化学療法未治療群(45例)、未治療群(20例)に上記推奨用量を投与 amivantamabとlazertinibの併用療法を検証した主な結果は以下のとおり。・用量制限毒性はなかった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)発現率は11%。どちらかあるいは両剤の治療中止に至ったTRAEは6%であった。・オシメルチニブ耐性・化学療法未治療患者群での客観的奏効率(ORR)は36%、臨床有効率は60%であった。・未治療群でのORRは100%で、全員が部分奏効であった。・未治療群の奏効期間中央値は未達(NE)であった。 Cho氏は「amivantamabとlazertinib併用療法は安全性が高く、進行EGFR陽性NSCLCに対して効果的である」との見解を示した。また、現在オシメルチニブ・化学療法抵抗性のEGFR陽性NSCLCを対象とした第II相試験「CHRYSALIS-2試験」、EGFR陽性NSCLCに対する1次治療としてこのamivantamabとlazertinib併用療法とオシメルチニブ単独療法、lazertinib単独療法の3群比較を行う第III相試験「MARIPOSA試験」がスタートしたことを明らかにした。

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非転移性去勢抵抗性前立腺がんでダロルタミドは転移無再発期間を延長(解説:宮嶋哲氏)-1297

 ダロルタミドは独自の化学構造を持つアンドロゲン受容体阻害薬であり、非転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として承認されている。 本報告は、二重盲検プラセボ対照試験で1,509例をアンドロゲン除去療法を継続しながらダロルタミドを投与する群(955例)とプラセボ投与群(554例)に2:1の割合で無作為に割り付けるARAMIS試験の主要解析に注目している。第III相試験で計画されていた主要解析では転移無再発期間中央値がダロルタミド群で40.4ヵ月とプラセボ群(18.4ヵ月)よりも有意に延長していた。主要評価項目の結果が肯定的であることが判明した後、治療割り付けの盲検を解除し、プラセボ群からダロルタミドの非盲検投与へのクロスオーバーを許可している。最終解析は約240例が死亡した後に行うこととし、その時点で全生存期間とその他の副次評価項目を評価した。 追跡期間中央値は29.0ヵ月であり、データの盲検を解除した時点でプラセボの投与を継続していた170例全例がダロルタミド投与にクロスオーバーし、盲検解除前にプラセボを中止していた患者のうち137例がダロルタミド以外の延命治療を1種類以上受けていた。3年全生存率はダロルタミド群で83%、プラセボ群で77%であり、死亡リスクは、ダロルタミド群のほうがプラセボ群よりも有意に31%低かった(HR:0.69、p=0.003)。ダロルタミドは症候性の骨関連事象発現までの期間(HR:0.65、p<0.001)や細胞傷害性化学療法開始までの期間(HR:0.58、p<0.001)など、その他すべての副次評価項目で有意に良好な成績を示していた。投与開始後の有害事象発現率は両群で同程度であった。 非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者において、投与開始して3年の時点での生存率は、ダロルタミドの投与を受けた患者のほうがプラセボの投与を受けた患者よりも有意に高かったことと、副作用の発現頻度がプラセボと同等であったことは注目に値する。 現在、アンドロゲン受容体阻害薬としてわが国でも数種類使用されているが、副作用を含めた患者QOLの面を考慮すると、薬剤の選択は慎重にならざるを得ない。本薬剤の効果を考慮すると、mHSPCを対象とした試験結果が待たれるところである。

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胃、食道胃接合部、食道腺がん1次治療におけるニボルマブ+化学療法の成績(CheckMate-649試験)/ESMO2020

 ドイツ・Johannes-Gutenberg大学のMarkus Moehler氏は、HER2陰性の未治療の転移を有する胃、食道胃接合部、食道腺がん患者を対象としたニボルマブ・化学療法併用(NIVO+Chemo群)、ニボルマブ+イピリムマブ併用(NIVO+IPI群)と、化学療法(Chemo群)を比較した無作為化非盲検第III相CheckMate-649試験での、ニボルマブ併用群と化学療法群との比較結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress2020)で発表。Combined positive score(CPS)5以上のPD-L1陽性患者では、ニボルマブと化学療法併用が化学療法単独と比較して、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の統計学的に有意な延長を認めたと報告した。CheckMate-649試験でニボルマブと化学療法の併用療法が優越性を示す・対象:未治療のHER2陰性の進行あるいは転移を有する胃、食道胃接合部、食道腺がん患者(PS 0~1)・試験薬群:ニボルマブ+化学療法(XELOX 3週ごとまたはFOLFOX 2週ごと)(NIVO+Chemo群、789例)・対照群:上記の化学療法のいずれか(Chemo群、792例)・評価項目:[主要評価項目]CPS≧5患者のPFS、OS[副次評価項目]CPS≧1、CPS≧10、全患者のOS、PFS、全奏効率(ORR) CheckMate-649試験の主な結果は以下のとおり。・CheckMate-649試験の主要評価項目であるCPS≧5のOS中央値は、NIVO+Chemo群14.4ヵ月、Chemo群が11.1ヵ月で、NIVO+Chemo群で有意な延長を認めた(HR:0.71、98.4%CI:0.59~0.86、p<0.0001)。・CPS≧1以上のOS中央値は、NIVO+Chemo群が14.0ヵ月、Chemo群が11.3ヵ月で、NIVO+Chemo群で有意な延長を認めた(HR:0.77、99.3%CI:0.64~0.92、p=0.0001)。・全患者のOS中央値は、NIVO+Chemo群が13.8ヵ月、Chemo群が11.6ヵ月で、NIVO+Chemo群で有意な延長を認めた(HR:0.80、99.3%CI:0.68~0.94、p=0.0002)。・CPS≧5のPFS中央値は、NIVO+Chemo群が7.7ヵ月、Chemo群が6.0ヵ月で、NIVO+Chemo群で有意な延長を認めた(HR:0.68、98%CI:0.56~0.81、p<0.0001)。・CPS≧1のPFS中央値は、NIVO+Chemo群が7.5ヵ月、Chemo群が6.9ヵ月であった(HR:0.74、95%CI:0.65~0.85)。・全患者のPFS中央値は、NIVO+Chemo群が7.7ヵ月、Chemo群が6.9ヵ月であった(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87)。・CPS≧5以上のORRはNIVO+Chemo群が60%、Chemo群が45%であった(p

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PD-L1陽性NSCLC、アテゾリズマブへのベバシズマブ上乗せ効果は?(WJOG@Be)/ESMO2020

 抗PD-1/L1抗体の単剤治療は、高PD-L1発現非小細胞肺がん(NSCLC)における生命予後の改善を示す。一方、抗VEGF抗体ベバジズマブは、前臨床において抗PD-1/L1抗体の活性を強化することが報告されている。九州がんセンター 呼吸器腫瘍科の瀬戸 貴司氏は、未治療のPD-L1高発現NSCLCに対する抗PD-L1抗体アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法に関する非盲検単群第II相WJOG@Be試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。同併用療法が高い奏効率を示し、Grade4以上の有害事象はなかったと報告した。・対象:未治療のPD-L1高発現(TPS≧50)非扁平上皮NSCLC(PS 0〜1)40例・介入:アテゾリズマブ1,200mg+ベバシズマブ15mg/kg 3週ごと最大2年間、病勢進行あるいは忍容不能な副作用発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・ORR は64.1%であった。・PFS中央値は15.9ヵ月、12ヵ月PFS率は54.9%であった。・1年OS率は70.6%であった。・DoR中央値は10.4ヵ月、12ヵ月DoR率は48.2%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は38.5%であった。主なものは脳症、大腸炎、胆嚢炎、気管支出血であったが、Grade4以上のものはなかった。 今回の結果を受けて瀬戸氏は「アテゾリズマブとベバシズマブの併用はPD-L1高発現の非扁平上皮NSCLCに対する治療オプションとなりうる」と述べるとともに、「ICI単独治療、ICI+化学療法±ベバシズマブとの第III相試験を行うべき」との見解を示した。

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PARP阻害薬オラパリブは去勢抵抗性前立腺がん患者においてOSを延長(解説:宮嶋哲氏)-1296

 オラパリブはDNA修復に関与するポリADPリボースポリメラーゼを阻害するPARP阻害薬である。がん抑制遺伝子であるBRCA1やBRCA2に変異を有する悪性腫瘍は本剤に感受性が高く、わが国において2018年に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」を効能・効果として承認され、さらに同年「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」についても適応が承認された。 本研究は前治療として新規ホルモン薬による治療(エンザルタミド、アビラテロン)を行い、病勢進行を認めたmCRPC患者を対象とした、オラパリブの安全性と有効性を検討するPROfound trialの第III相ランダム化試験であり、今回の報告は副次評価項目であるOSに注目している。 コホートAはBRCA1、BRCA2、ATMの少なくとも1つの変異を持つmCRPC患者245人で、コホートBは事前に決めた12関連遺伝子変異のうち少なくとも1つを持つCRPC患者142人である。2つのコホートに対して、ランダム化してオラパリブ群とコントロール群(エンザルタミドまたはアビラテロン)に2対1でランダム化して割り付けられている。 コホートAにおけるOS中央値は、コントロール群14.7ヵ月に対してオラパリブ群の19.1ヵ月であった(HR:0.69、p=0.02)。コホートBにおけるOS中央値は、コントロール群11.5ヵ月に対してオラパリブ群の14.7ヵ月であった(HR:0.96)。コントロール群からオラパリブ投与にクロスオーバーした症例の検討では有意な効果を認めなかったことから、オラパリブの早期導入にメリットがあるものと考えられた。貧血、嘔気、疲労感といったオラパリブによる副作用も半数以上の患者に認められた。 わが国においては、いまだオラパリブはmCRPC患者に対する適応は承認されていない。mCRPCの12%にBRCA遺伝子変異があると報告されていることから、その適応承認が期待されている。ただし、BRCA遺伝子変異検出に向けて遺伝子診断の普及が必須と思われる。

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ESMO2020レポート 肝胆膵腫瘍

レポーター紹介はじめにESMO VIRTUAL CONGRESS 2020はASCO 2020 Virtualに引き続き、オンラインでの開催となった。開催会場を模したトップページ上から各会場へとアクセスでき、これまでの開催のように人々が集う様子には新型コロナウイルス感染症の収束への願いが現れていた。本稿では肝胆膵領域からいくつかの演題を紹介したい。巨大肝細胞がんに対するFOLFOXを用いたHAICの有効性が示されるHepatic arterial infusion chemotherapy (HAIC) with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX) versus transarterial chemoembolization (TACE) for unresectable hepatocellular carcinoma (HCC): A randomised phase III trial 【Presentation ID:981O】Intermediate stageの手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞がんに対して行われるTACEの有効性は、巨大な肝細胞がんに対しては病勢制御割合は50%未満、全生存期間は9~13ヵ月といまだ十分とは言えない。FOLFOXを用いたHAICの第II相試験での良好な抗腫瘍効果を受けて、巨大な切除不能肝細胞がん患者におけるFOLFOXを用いたHAICおよびTACEを比較する無作為化第III相試験の結果が報告された。最大径7cm以上で大血管への浸潤もしくは肝外転移のない切除不能肝細胞がんを有する、Child-Pugh分類A、ECOG PS0または1の患者が適格とされた。登録された患者はHAIC(オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、1日目にフルオロウラシルボーラス400mg/m2、およびフルオロウラシル注入2,400mg/m2を24時間、3週間ごとに繰り返し6サイクルまで投与)またはTACE(エピルビシン50mg、ロバプラチン50mg、リピオドールおよびポリビニルアルコール粒子)に1対1で割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効割合(ORR)および安全性が評価された。データカットオフは2020年4月でフォローアップは継続されている。HAIC群に159例、TACE群に156例が登録された。患者背景に大きな差はなく、HAIC群/TACE群のHBV陽性例が88.1/90.4%、AFP 400ng/mL以上は52.2/48.1%であった。最大腫瘍径の中央値はHAIC群9.9cm(範囲:7~21.3)、TACE群9.7cm(7~19.8)であり、腫瘍数が3個以下であった症例はHAIC群51.6%、TACE群47.7%であった。治療回数の中央値はHAIC群で4回(2~5)、TACE群で2回(1~3)であった。治療のクロスオーバーはTACE群で多く、HAIC群では後治療として切除が行われた症例が多かった(p=0.004)。RECIST ver.1.1によるHAIC群のORRは45.9%とTACE群の17.9%に比べ有意に高かった(p< 0.001)。Modified RECISTによる評価でも同様にHAIC群が有意に高い結果であった(48.4% vs.32.7%、p=0.004)。主要評価項目であるOS中央値はHAIC群23.1ヵ月(95%信頼区間:18.23~27.97)、TACE群16.07ヵ月(95%信頼区間:14.26~17.88)であり、HAIC群で有意な延長を認めた(HR=0.58、95%信頼区間:18.23~27.97、p<0.001)。PFS中央値は、HAIC群9.63ヵ月(95%信頼区間:7.4~11.86)、TACE群5.4ヵ月(95%信頼区間:3.82~6.98)であり、HAIC群で有意に延長した(HR=0.55、95%信頼区間:0.43~0.71、p<0.001)。Grade3以上の治療関連有害事象はHAIC群で19%、TACE群で30%とHAIC群で少なかった(p=0.03)。巨大な切除不能肝細胞がんを有する患者に対するFOLFOXを用いたHAICはTACEに比べて有効性および安全性ともに良好であった。これまで本邦では5-FUおよびシスプラチンを併用したHAICは外科的切除およびその他の局所治療の適応とならない肝細胞がんを対象としてソラフェニブへの上乗せ効果を第III相試験で示すことができなかったことなどを含めて、標準治療とされてこなかった。しかし、今回のような巨大肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告、および門脈腫瘍栓を有する肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告などが続いており、今後の開発に注目していきたい。転移を有する膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されるThe Canadian Cancer Trials Group PA.7 trial: Results of a randomized phase II study of gemcitabine (GEM) and nab-paclitaxel (Nab-P) vs. GEM, Nab-P, durvalumab (D) and tremelimumab (T) as first line therapy in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC)【Presentation ID:LBA65】ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用療法(GnP)は転移を有する膵がんに対する標準的な1次治療として確立されている。一方で、DNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を呈する場合を除き膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は限られたものとされるが、線維芽細胞を含めた腫瘍環境因子による免疫チェックポイント阻害薬の耐性はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用により克服されるとの報告がある。これらを受け、抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(D)および抗CTLA-4抗体であるtremelimumab(T)をGnP療法に上乗せする4剤併用療法は、11例のsafety run-inコホートでの安全性が確認されたうえで、その有効性がランダム化第II相試験で検討された。試験はカナダ全域より28施設が参加し行われた。全身状態の保たれた未治療の転移のある膵管腺がんを有する患者が適格とされ、GnP群(ゲムシタビン、nab-パクリタキセルそれぞれ1,000mg/m2、125mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与、28日を1サイクル)または4剤併用群(GnP療法に加えてD 1,500mgおよびT 75mgを1日目に投与)の2群に2対1の割合でランダム割り付けされた。ECOG PS、術後補助化学療法歴の有無により層別化が行われた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、ORRが設定された。OSの中央値をGnP群8.5ヵ月に対して4剤併用群13.1ヵ月(HR=0.65)、両側αエラー0.1、統計学的検出力0.8として150イベントが必要であると算出された。データカットオフは2020年3月15日とされた。4剤併用群に119例、GnP群に61例が割り付けられ、患者背景は両群に差はなかった。ECOG PS0/1は4剤併用群で22.7/77.3%、GnP群で23/77%、術後補助化学療法歴は4剤併用群で10.1%、GnP群で11.5%が有しており、アジア人が4剤併用群に8.4%、GnP群に9.8%含まれる集団であった。主要評価項目であるOSの中央値は4剤併用群9.8ヵ月(90%信頼区間:7.2~11.2)、GnP群8.8ヵ月(90%信頼区間:8.3~12.2)であり4剤併用群の優越性は示されなかった(層別HR=0.94、90%信頼区間:0.71~1.25、p=0.72)。PFSの中央値は4剤併用群5.5ヵ月(90%信頼区間:3.8~5.7)、GnP群5.4ヵ月(90%信頼区間:3.6~6.6)であった(層別HR=0.98、90%信頼区間:0.75~1.29、p=0.91)。ORRは4剤併用群30.3%、GnP群23.0%(オッズ比1.49、90%信頼区間:0.81~2.72、p=0.28)であり、PFS、ORRいずれも両群に有意な差はなかった。治療期間中のGrade3以上の有害事象は両群に差はなく4剤併用群で84%、GnP群で76%に認められ、倦怠感、血栓塞栓イベント、敗血症などが多かった。治療期間中のGrade3以上の検査値異常はおおむね同等であったが、リンパ球減少が4剤併用群で38%、GnP群で20%と4剤併用群で有意に高かった(p=0.02)。GnP療法へのデュルバルマブおよびtremelimumabの上乗せはOS、PFS、ORRいずれにおいても有意に改善することができなかった。現在cfDNAの網羅的遺伝子解析を用いて免疫学的観点からの有効性の探索が行われている。A multi-cohort phase II study of durvalumab plus tremelimumab for the treatment of patients (pts) with advanced neuroendocrine neoplasms (NENs) of gastroenteropancreatic or lung origin: The DUNE trial (GETNE 1601)【Presentation ID:1157O】TMB(tumor mutational burden)、PD-L1蛋白発現、およびリンパ球浸潤がいずれも低い、いわゆる「cold」な腫瘍である神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害の意義は限られたものである。しかしながら昨今、免疫チェックポイント阻害薬の併用がNENに対して良好な抗腫瘍効果を報告しており、今回抗PD-L1抗体であるデュルバルマブと抗CTLA-4抗体であるtremelimumabの併用療法がマルチコホート第II相試験で検討された。標準治療後に増悪した消化管、膵または肺を原発とする進行NENを有する患者が適格とされ、C1:ソマトスタチンアナログ(SSA)および分子標的薬または化学療法の治療歴を有する定型/非定型肺カルチノイド、C2:SSAおよび分子標的薬もしくは放射性核種療法の治療歴を有するGrade1/2消化管NEN、C3:化学療法、SSA、分子標的薬のうち2~4の治療歴を有するGrade1/2膵NENおよびC4:白金製剤を含む化学療法の治療歴を有するGrade3消化管および膵NENの4つのコホートに登録された。登録された患者はデュルバルマブ1,500mgおよびtremelimumab 75mgを4週ごとに4サイクルまで投与を受けた後、デュルバルマブ単剤療法を9サイクルまで継続して投与された。主要評価項目はC1からC3ではRECIST ver.1.1による9ヵ月時点の臨床的有効割合とされ、C4では9ヵ月時点の生存割合とされた。副次評価項目として安全性、PFS、OS、ORRおよび奏効期間(duration of response:DOR)が評価された。C1からC3では臨床的有効割合の閾値を30%、期待値を50%、C4では生存割合の閾値を13%、期待値を23%とし、片側αエラーを0.05、統計学的検出力を0.8として仮説検定に必要な症例数をそれぞれ28例および30例に設定された。C1/C2/C3/C4にそれぞれ27/31/32/33例が登録され、患者背景は以下のようであった。画像を拡大するC1からC3では主要評価項目である9ヵ月時点の臨床的有効割合はC1/C2/C3で7.4/32.3/25%であった。ORRはC1/C2/C3で0/0/6.9%(RECIST ver.1.1)および7.4/0/6.3%(irRECIST)であった。PFSはC1/C2/C3で5.3ヵ月(95%信頼区間:4.52~6.06)/8.0ヵ月(95%信頼区間:4.92~11.15)/8.1ヵ月(95%信頼区間:3.80~12.46)であった。C4では主要評価項目である9ヵ月時点の生存割合は36.1%(95%信頼区間:22.9~57)であった。ORRは7.2%(RECIST ver.1.1)および9.1%(irRECIST)であった。PFSは2.5ヵ月(95%信頼区間:21.5~2.75)であった。すべてのコホートにおける有害事象は倦怠感(43.1%)、下痢(31.7%)、掻痒(23.6%)などであった。進行消化管、膵および肺原発NETに対するデュルバルマブおよびtremelimumabの併用療法の抗腫瘍効果は十分なものではなかった。WHO grade3のNENに対する併用療法は事前に設定した統計学的設定を満たす結果であり、さらなる検討に資するものであった。これまで膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍はいずれもcold tumorとされ、免疫チェックポイント阻害薬の有効性は十分に示されていない。耐性克服のひとつの方向性として併用療法に大きな期待が寄せられていたが、今回の結果もまた厳しいものであった。免疫チェックポイント阻害薬の進行中のバイオマーカーの検討の結果が待たれるとともに、その他の薬剤との併用療法の開発などにも期待し、この領域における免疫療法の開発が継続していくことに期待したい。1次治療中にも転移を有する膵がん患者のQOLは損なわれているThe QOLIXANE trial - Real life QoL and efficacy data in 1st line pancreatic cancer from the prospective platform for outcome, quality of life, and translational research on pancreatic cancer (PARAGON) registry【Presentation ID:1525O】転移を有する膵がんは病勢が早く予後は不良である。GnP療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)はMPACT試験などの結果により転移を有する膵がんに対する1次治療として確立されているが、これを受ける患者のQOLに関する報告はいまだなかった。本研究は独95施設が参加する多施設共同前向き観察研究として行われ、GnP療法を受ける転移を有する膵がんが対象とされた。主要評価項目はITT集団における3ヵ月時点でのEORTC QLQ-C30のQoL/Global Health Status(GHS、全般的健康)が維持された患者の割合とされた。ベースラインと比較してスコアの変化が10ポイント未満であった場合に「QoL/GHS Scoreは維持された」と定義された。600人が登録され、患者背景は年齢の平均は68.7歳、男性/女性が58.2/41.8%、ECOG PS 0/1/2/3が32.0/48.7/12.3/1.5%、進行/再発は85.1/13.7%、膵頭部/体部/尾部は48.7/18.2/19.2%であった。GnP療法の投与サイクル数中央値(範囲)は4.0サイクル(0~12)で、45.7%で用量調整が行われており、後治療移行割合は48.5%であった。無増悪生存期間中央値は5.85ヵ月(95%信頼区間:5.23~6.25ヵ月)、全生存期間中央値は8.91ヵ月(95%信頼区間:7.89~10.19ヵ月)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は貧血3.9%、好中球減少症5.1%、白血球減少4.3%などで、22例(3.8%)の治療関連死亡が報告された。EORTC QLQ-C30はベースラインでは588例(98%)、3ヵ月時点、293例(48.8%)で評価が可能であった。主要評価項目である3ヵ月時点でQoL/GHS Scoreが維持された患者の割合は61%であった。QoL/GHS Scoreが維持された期間の中央値は4.68ヵ月(95%信頼区間:4.04~5.59ヵ月)であった。単変量解析ではその他のサブスケールと同様にベースラインのQoL/GHS Scoreは生存に有意に寄与した(HR=0.86、p<0.0001)。多変量解析ではEORTC QLQ-C30の各サブスケールのうち、機能スケールでは身体機能(HR=0.86、0.82~0.96、p=0.004)、症状スケールでは悪心・嘔吐(HR=1.06、1.01~1.13、p=0.33)がそれぞれ生存に有意に寄与するものであった。これまでゲムシタビン単剤療法、mFOLFIRINOX療法およびオラパリブなどの第III相試験におけるQOLに関する報告はされていたものの、GnP療法を受ける転移を有する膵がん患者のQOLの情報は不足していた。今回はリアルワールドデータとしてGnP療法を受ける患者のQOLに関する検討が報告された。実臨床でも実感することであるかもしれないが、GnP療法を継続できている患者においても病勢増悪より先にQOLが低下している。転移を有する膵がんに対して、本邦でも今年ナノリポソーム型イリノテカンが承認されるなど治療の選択肢は着実に広がっている。治療をつなぐためにも、このような検討がさらに進んでいくことに期待したい。おわりに今回紹介しきれなかったが、胆道がんにおけるmFOLFIRINOX療法の有効性の報告や、欧州らしく免疫チェックポイント阻害薬以外にも多くの神経内分泌腫瘍に関する演題が多く報告されていた。ASCOに引き続くオンライン開催であったが、世界の最新のエビデンスに日本にいながらにして触れることができるなどオンラインだからこそのメリットもある。新型コロナウイルス感染症の早い収束を願うとともに、がん克服に向けた努力がさらに加速することに期待したい。

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FDA、悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ/イピリムマブの1次治療を承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年10月3日、切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の成人患者の1次治療に、ニボルマブとイピリムマブの併用を承認した。適応症はニボルマブ360mg 3週間ごとイピリムマブ1mg/kg 6週間ごと投与。 今回の承認は、切除不能MPM患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用と、シスプラチンまたはカルボプラチンとペメトレキセドの標準併用化学療法を評価した無作為化非盲検試験第III相CheckMate743試験の中間解析の結果に基づくもの。 世界肺癌学会(WCLC2020)で発表された結果によると、ニボルマブ・イピリムマブの全生存期間(OS)の中央値18.1ヵ月に対し、化学療法は14.1ヵ月であった(HR:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.002)。 盲検化独立中央評価委員会(BICR)によるPFS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ6.8ヵ月に対し、化学療法で7.2ヵ月であった(HR、1.00; 95%CI、0.82-1.21)。2年PFSは、ニボルマブ・イピリムマブ16%に対し、化学療法7%であった。

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