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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNCSLS1次治療、2年フォローアップ(CheckMate 9LA)/ASCO2021

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法の無作為化第III相CheckMate9LA試験の2年間のフォローアップデータが米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表された。結果、同併用による生存ベネフィットが引き続き観察されている。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は最低 24.4ヵ月であった。・NIVO+IPI+Chemo群は40%、Chemo群では47%が全身療法の後治療を受けていた。・OS中央値はNIVO+IPI+Chemo群の15.8ヵ月に対して、Chemo群11.0ヵ月と、NIVO+IPI+Chemo群で良好なOSを維持した (ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.61~0.86)、2年OS率はそれぞれ、38%と26%であった。・PFS中央値はNIVO+IPI+Chemo群6.7ヵ月に対し、Chemo群では 5.3ヵ月であった (HR:0.67、95%CI:0.56~0.79)。2年PFS率はそれぞれ、20%と8%であった。・ORRは、NIVO+IPI+Chemo群38.0%、Chemo群では25.4%であった。・奏効期間(DoR)中央値はNIVO+IPI+Chemo群13.0ヵ月、Chemo群5.6ヵ月、2年DoR率はそれぞれ、34%と12%であった。・PD-L1発現別にみると、PD-L<1%のOS HRは0.67、PFS HRは0.68、≧1%のOS HRは0.70、PFS HRは0.67、≧50%のOS HRは0.67、PFS HRは0.59と、いずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・有効性はまた、組織形を問わずNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)発現率は、NIVO+IPI+Chemo群92%、Chemo群88%。Grade3/4のTRAE発現率はそれぞれ、48%と38%であった。新たな安全性シグナルは確認されていない。・Post Hoc解析の結果、TRAEによって治療中止となったNIVO+IPI+Chemo群のNIVO+IPI+Chemo群の2年OS率は54%(全集団の2年OS率は38%)と、治療中止による生存への悪影響はみられなかった。 発表者のドイツ・Martin Reck氏は、この2年間のフォローアップ結果は、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法が、進行NSCLCに対する有効な1次治療であることを支持するものだと述べた。

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HR+/HER2-進行乳がんへのribociclib+フルベストラント、OSの最新データ(MONALEESA-3)/ASCO2021

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後進行乳がんに対するribociclib+フルベストラント併用療法の全生存期間(OS)におけるベネフィットが、観察期間中央値56.3ヵ月時点でも維持されたことが、第III相MONALEESA-3試験の最新の解析で示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDennis J. Slamon氏が発表した。OSベネフィットは1次治療、2次治療の両方で認められ、さらに化学療法開始までの期間が大幅に延長することも示された。 第III相MONALEESA-3試験では、HR+/HER2-閉経後進行乳がんの1次治療または2次治療において、ribociclib+フルベストラント併用がフルベストラント単独と比べてOSを有意に改善したことがすでに報告されている(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.57~0.92、p=0.00455)。本試験は、盲検解除後にプラセボ群の治療継続患者はribociclib群にクロスオーバーすることが許可されているが、今回、観察期間中央値56.3ヵ月時点におけるOSの探索的解析の結果が報告された。・対象:未治療または1ラインの内分泌療法を受けた、HR+/HER2-の閉経後女性または男性の進行乳がん患者 726例、以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け・試験群:ribociclib+フルベストラント(ribociclib群)484例・対照群:プラセボ+フルベストラント(プラセボ群)242例・評価項目:OS、化学療法開始までの期間、化学療法なしの生存期間、無作為化から2次治療での増悪/死亡までの期間(PFS2)、 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2020年10月30日)の観察期間中央値は56.3ヵ月(最低52.7ヵ月)で、ribociclib群で68例(14.0%)、プラセボ群で21例(8.7%)が治療を受けていた。・4年を超える観察期間の延長後も、ribociclib群のプラセボ群に対するOSベネフィットが継続した(中央値:53.7ヵ月vs.41.5ヵ月、HR:0.726、95%CI:0.588~0.897)。・1次治療におけるOS中央値は、ribociclib群が未到達、プラセボ群が51.8ヵ月で、HRが0.640(95%CI:0.464~0.883)と、前回の報告(Slamon DJ, et al. N Engl J Med. 2020;382:514-524.)でのOSベネフィット(HR:0.70、95%CI:0.48~1.02)より大きかった。・2次治療におけるOS中央値も、ribociclib群(39.7ヵ月)がプラセボ群(33.7ヵ月)に比べ延長していた(HR:0.780、95%CI:0.587~1.037)。・サブグループ解析においても、肝臓または肺に転移した症例や転移部位が3つ以上、内分泌療法抵抗性(1次内分泌療法での6ヵ月以内の増悪、もしくは術前/術後補助療法での2年以内の再発)などを含む、ほとんどのサブグループでOSベネフィットが示された。・内分泌療法抵抗性患者におけるOS中央値は、ribociclib群35.6ヵ月、プラセボ群31.7ヵ月、HRは0.815(95%CI:0.451~1.473)、内分泌療法感受性患者におけるOS中央値は、ribociclib群49.0ヵ月、プラセボ群41.8ヵ月、HRは0.731(95%CI:0.557~0.959)だった。・化学療法開始までの期間の中央値は、ribociclib群48.1ヵ月、プラセボ群28.8ヵ月と20ヵ月近く延長した(HR:0.704、95%CI:0.566~0.876)。・化学療法なしの生存期間の中央値も、ribociclib群32.3ヵ月、プラセボ群22.4ヵ月と約10ヵ月延長した(HR:0.688、95%CI:0.570~0.830)。・PFS2の中央値も、ribociclib群37.4ヵ月、プラセボ群28.1ヵ月と延長がみられた(HR:0.693、95%CI:0.570~0.844)。・本試験における治療中止患者のうち、ribociclib群では81.9%、プラセボ群では86.4%が次のラインに進み、それぞれ14.0%、30.0%がいずれかのラインでCDK4/6阻害薬の治療を受けた。

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FGFR阻害薬ペミガチニブが胆道がん治療薬として発売/インサイト

 インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパンは、2021年6月1日、選択的FGFR阻害薬ペミガチニブ(製品名:ペマジール)の販売を開始したと発表した。ペミガチニブは経口のFGFR阻害薬 ペミガチニブは経口のFGFRのチロシンキナーゼ阻害薬であり、がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がんの治療薬として、2021年3月23日に国内製造販売承認を取得している。 製品概要・販売名: ペマジール錠4.5mg・一般名: ペミガチニブ・効能・効果: がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌・用法・用量: 通常、成人には、ペミガチニブとして1日1回13.5mgを14日間経口投与した後、 7日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態によ り適宜減量する。・製造販売元: インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社

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パロノセトロン、小児への用法・用量追加承認/大鵬

 大鵬薬品工業とヘルシン・ヘルスケアは、5-HT3受容体拮抗型制吐薬パロノセトロン(製品名:アロキシ)について、2021年5月27日、厚生労働省より小児に対する用法・用量の追加承認を取得した。  今回の追加承認は、主に、生後28日以上18歳以下の小児患者を対象に国内で実施した第III相試験の結果に基づいたもの。主要評価項目である1コースにおける高度又は中等度催吐性抗がん剤投与開始0~120時間後の嘔吐完全抑制(嘔吐性事象なし、制吐処置なし)率は58.6%。95%信頼区間は44.9~71.4%で、事前に設定した95%信頼区間の下限閾値30%を上回ったことから、本剤の小児患者における臨床的有用性が検証された。本剤の安全性について新たに大きな問題となるものはみられなかった。  同剤は、2004年1月から大鵬薬品工業が国内での臨床開発・販売権を取得し、2010年1月に「アロキシ静注 0.75mg」、2012年8月に「アロキシ点滴静注バッグ 0.75mg」の製造販売承認を取得、販売している。同剤は、成人患者に対するがん化学療法剤投与後の悪心、嘔吐の予防に係る効能・効果では80以上の国・地域で、小児患者に対するがん化学療法剤投与後の悪心、嘔吐の予防に係る効能・効果では60以上の国・地域で承認されている。 ・用法及び用量(下線部が今回承認内容) 通常、パロノセトロンとして0.75mgを1日1回静注又は点滴静注する。ただし、18歳以下の患者には、通常、パロノセトロンとして20μg/kgを1日1回静注又は点滴静注することとし、投与量の上限は1.5mgとする。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に適応拡大/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2021年5月27日、ニボルマブ(商品名:オプジーボとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法について、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)であらかじめ計画されていた中間解析の結果に基づいたもの。 同解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、主要評価項目である全生存期間の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 悪性胸膜中皮腫に対する標準治療としては、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が行われているが、今回の承認により、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が悪性胸膜中皮腫患者にとって新たな治療選択肢になるものと期待されている。

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HER2+乳がんの術前薬物療法、アントラサイクリンの有無別の生存率/TRAIN-2試験2次解析

 Stage II/IIIのHER2陽性乳がんの術前薬物療法において、アンスラサイクリンを含む化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブと、アンスラサイクリンを含まない化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブを比較したTRAIN-2試験では、すでに病理学的完全奏効率に差がない(67% vs. 68%)ことが示されている。今回、オランダ・the Netherlands Cancer InstituteのAnna van der Voort氏らのフォローアップ解析により、3年無イベント生存率(EFS)および3年全生存率(OS)も差がないことが示された。また、アントラサイクリンの使用は、発熱性好中球減少症、心毒性、2次がん発症リスクの増加と関連していた。JAMA Oncology誌オンライン版2021年5月20日号に掲載。 TRAIN-2試験は非盲検無作為化第III相試験で、2013年12月9日~2016年1月14日にオランダの37病院で登録されたStage II/IIIのHER2陽性乳がん438例が対象。参加者は、年齢、Stage、リンパ節転移状況、エストロゲン受容体の有無で層別化され、FEC 3サイクル後パクリタキセル+カルボプラチン6サイクル(アントラサイクリン群)とパクリタキセル+カルボプラチン9サイクル(非アントラサイクリン群)に1:1で無作為に割り付けられた(両群ともトラスツズマブとペルツズマブを3週ごとに投与)。 主な結果は以下のとおり。・計438例が各群219例ずつに割り付けられ、年齢中央値はアントラサイクリン群が49歳(四分位範囲:43~55歳)、非アントラサイクリン群が48歳(同:43~56歳)だった。観察期間中央値は48.8ヵ月(四分位範囲:44.1〜55.2ヵ月)。・EFSイベントは、アントラサイクリン群で23(10.5%)、非アントラサイクリン群で21(9.6%)発生した(ハザード比:0.90、95%CI:0.50~1.63)。・3年EFSはアントラサイクリン群92.7%(95%CI:89.3~96.2%)、非アントラサイクリン群93.6%(同:90.4~96.9%)、3年OSはアントラサイクリン群97.7%(同:95.7~99.7%)、非アントラサイクリン群98.2%(同:96.4~100%)だった。・ホルモン受容体やリンパ節転移状況にかかわらず、EFSおよびOSの結果に差はなかった。・左室駆出率がベースラインから10%以上低下し50%未満になった患者の割合は、アントラサイクリン群が7.7%(220例中17例)で、非アントラサイクリン群の3.2%(218例中7例)より高かった(p=0.04)。・アントラサイクリン群の2例で急性白血病を発症した。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用の肺がん1次治療、ASCO2021で発表される2演題(CheckMate-9LA/227)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年5月19日、2021年米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2021)にて発表されるニボルマブ(商品名:オプジーボ)およびイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の2つの試験結果を発表した。 1つ目は、未治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)において化学療法2サイクルを追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法と4サイクルの化学療法を比較した第III相CheckMate-9LA試験の2年間追跡調査結果。CheckMate -9LA試験の2年全生存(OS)率は、同併用療法群で38%、化学療法群は26%あった。追加の追跡調査における同試験の主要評価項目であるOS中央値は、免疫療法薬の2剤併用療法群で15.8ヵ月、化学療法群では11.0ヵ月であった(HR:0.72、95%CI:0.61~0.86)。同併用療法の新たな安全性シグナルや治療に関連する死亡は認められなかった。 そのほかの結果は以下のとおり。・2年PFSにおいて、同併用療法はリスクを33%低減した(HR:0.67;95% CI:0.56 - 0.79)。・ORRは併用療法群38% vs.化学療法群25%であった。・DORは併用療法群13.0ヵ月、化学療法では5.6ヵ月であった。これらのデータは、ASCO2021にて、6月4日、午後1時~4時(米国東部夏時間)、口頭発表される(抄録番号#9000)。 2つ目は、未治療の進行NSCLCにおいてニボルマブを含むレジメンと化学療法を比較した第III相CheckMate -227試験Part1の4年(49.4ヵ月)の追跡調査結果。CheckMate -227試験Part1におけるPD-L1 1%以上の4年OS率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群29%、化学療法群は18%であった(HR:0.76、95%CI:0.65~0.90)。ニボルマブ・イピリムマブ併用療法の新たな安全性シグナルは認められなかった。 そのほかの結果は以下のとおり。・PD-L1 1%未満の探索的解析における4年OS率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群24%に対し、化学療法群10%であった(HR:0.64、95%CI:0.51~0.81)。・PD-L1高発現(50%以上)の4年OS率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群37%、ニボルマブ単剤群では26%であった。 完全なデータは、ASCO2021にて、同日午前9時(米国東部夏時間)にポスター・ディスカッション・セッションで発表される(抄録番号#9016)。

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デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法の肺がん1次治療、全生存期間を延長(POSEIDON試験)/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2021年5月7日、POSEIDON試験における全生存期間(OS)の延長について発表した。POSEIDON試験は、Stage IVの非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)とプラチナ製剤を含む化学療法との併用療法、またはデュルバルマブ、抗CTLA-4抗体tremelimumabとプラチナ製剤を含む化学療法の併用療法を化学療法の単独療法と比較する第III相試験。POSEIDON試験の最終解析からOSの延長を示したことが明らかに POSEIDON試験の最終解析から、化学療法の単独療法と比較して、デュルバルマブ、tremelimumabおよび化学療法の併用療法が、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるOSの延長を示したことが明らかとなった。それぞれの併用療法群は許容可能な安全性プロファイルを示し、安全性に関わる新たな懸念は特定されなかった。また、tremelimumabを加えた併用療法は、デュルバルマブと化学療法による併用療法とおおむね同様の安全性プロファイルを示し、tremelimumabを追加したことによる治療中止の増加はなかった。 POSEIDON試験の詳細データは今後の学会で発表される予定。

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ペムブロリズマブ、高リスク早期TN乳がんでEFSを有意に改善/MSD

 MSDは、2021年5月13日、高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法の術前併用療法と、それに続くペムブロリズマブの術後単独療法を評価する第III相試験KEYNOTE-522において、主要評価項目の1つである無イベント生存期間(EFS)を達成したと公表した。TNBCに対する術前・術後補助療法としてEFSを統計学的有意に改善したのは、抗PD-1抗体として初。なお、同試験のもう1つの主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)の達成は、2019年の欧州臨床腫瘍会議(ESMO)においてすでに公表・NEJM誌に掲載されている。 KEYNOTE-522は、高リスクの早期TNBC患者を対象とし、ペムブロリズマブと化学療法の併用による術前補助療法と、それに続くペムブロリズマブ単独の術後補助療法を、術前化学療法とそれに続くプラセボによる術後補助療法と比較する、無作為化二重盲検第III相試験。主要評価項目はpCRとEFSで、副次評価項目は根治的手術時におけるpCR率(主要評価項目のpCRとは異なる定義[乳房とリンパ節に、侵襲性、非侵襲性の残存腫瘍がないこと]で評価)、全生存期間、PD-L1発現患者(CPS≧1)のEFS、安全性および患者報告アウトカムとされている。1,174例がペムブロリズマブ群とプラセボ群のいずれかに2:1の割合で無作為に割り付けられた。 今回、独立データ監視委員会(DMC)による中間解析により、ペムブロリズマブと化学療法の術前併用療法とそれに続くペムブロリズマブ単独の術後補助療法では、術前化学療法のみの場合と比較して統計学的に有意で臨床的に意味のあるEFSの改善が認められた。ペムブロリズマブの安全性プロファイルはこれまでに報告されている試験で認められているものと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されていない。 同社は、pCRのデータおよびEFSの早期中間結果に基づいて提出した、高リスク早期TNBC患者に対するペムブロリズマブの生物製剤追加承認申請(sBLA)について、2021年3月にFDAから審査完了通知(CRL)を受理したことをすでに発表している。この通知は、FDAの抗がん剤諮問委員会の会合で、KEYNOTE-522試験のデータがさらに明らかになるまで承認の判断を待つことが全会一致で了承されたことを受けたものとなっている。

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がん患者、新型コロナワクチン接種後の抗体価が低い/Ann Oncol

 がん治療を受けている固形腫瘍患者はCOVID-19ワクチン接種後の抗体価が低く、2回以降の接種が健常者以上に重要になる、という報告が相次いでいる。 Annals Oncology誌2021年4月28号オンライン版に「LETTER TO THE EDITOR」として掲載されたフランスの研究では、固形腫瘍患者194例と 健常者の対照群31例にファイザーの新型コロナワクチン「BNT162b2」 を接種。初回接種時、2回目接種時(3~4週後)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)に抗体値を測定し、陽性判定を行った。 主な結果は以下のとおり。・2021年1月18日~3月15日までに194例中122例(64.4%)が少なくとも2回の判定を受けた。年齢中央値は69.5歳(44~90歳)、男性64例(52.5%)、女性58例(47.5%)だった。・122例中105例(86.0%)は化学療法±分子標的薬療法を受けていた。・2回目接種時(3、4週後)は58例(47.5%、95%信頼区間:38.4~56.8)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)は分析可能な40例(95.2%、83.8~99.4)が抗体陽性だった。・対照群は、2回目接種時(3、4週後)は13例(100.0%、75.3~100.0)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)は24例(100.0%、85.7~99.4)が抗体陽性であり、固形腫瘍患者は健常者と比べ陽性率が有意に低かった。またいずれの時点でも抗体価中央値は固形腫瘍患者で有意に低かった。・化学療法を受けた患者は、受けていない患者や分子標的薬療法のみの患者と比べ、2回目接種時(3、4週後)に抗体陽性となった患者が少なかった(42.9%vs. 76.5%、p=0.016)。 研究者らは、がん患者は免疫不全状態であることが多く、ワクチン単回の接種では反応が弱い、または反応しない割合が高いことを考慮して、初回接種後少なくとも6~8週間は引き続き厳格な感染予防措置をとること、化学療法を受けている患者はとくに2回目接種のスケジュールを厳守すること、3回目以降の接種の有効性を検討する必要があることを示唆している。

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FDA、非小細胞肺がんにamivantamab-vmjwを迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2021年5月21日、プラチナベース化学療法で疾患進行した局所進行または転移を有するEGFR exon 20変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、EGFとMET受容体の二重特異性抗体amivantamab-vmjwを迅速承認。さらに、同剤のコンパニオン診断としてGuardant360 CDx(Guardant Health)を承認した。 今回の承認は、EGFR exon 20挿入変異を伴う局所進行または転移のあるNSCLCを対象とした多施設非無作為化非盲検マルチコホート臨床試験CHRYSALISに基づくもの。患者は、amivantamab-vmjwを週1回4週間投与された後、疾患の進行または許容できない毒性が生じるまで2週間ごとに投与された。 主要有効性評価項目は、盲検化独立中央レビュー(BICR)と評価による全奏効率(ORR)と奏効期間(DoR)。有効性が81例で評価され、ORRは40%、DoR中央値は11.1ヵ月であった。 一般的な副作用(20%以上)は、発疹、インフュージョンリアクション、爪囲炎、筋骨格痛、呼吸困難、悪心、倦怠感、浮腫、口内炎、咳、便秘、および嘔吐であった。 amivantamab-vmjwの推奨用量は体重80kg未満の患者では1,050mg、80kg以上では1,400mg。週1回4週間投与した後、2週間ごとに疾患進行または許容できない毒性の発現まで投与する。 この適応はORRとDoRの結果に基づき迅速承認される。適応の継続は確認試験による臨床的利益の検証を条件とする可能性がある。

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低・中リスクのHER2+早期乳がん、術後トラスツズマブは9週投与も検討可か/ESMO BREAST 2021

 低および中リスクのHER2陽性早期乳がん患者において、術後トラスツズマブの投与期間を9週間に短縮した場合の、良好な長期結果が示された。1年間の投与が標準であることには変わりないものの、トラスツズマブへのアクセスが制限される状況やLVEF低下などで投与継続が難しい場合には、より短期間の投与が選択肢となる可能性がある。イタリア・パドヴァ大学のPierfranco Conte氏が、short-HER試験の長期解析結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。 short-HER試験は、HER2 陽性早期乳がん患者をトラスツマブと化学療法による術後補助療法1年投与群と9週間投与群に無作為に割り付けて比較した非劣性試験。非劣性マージンは無病生存期間(DFS)のハザード比(HR)<1.29と設定された。主要解析では、DFSのHRは1.13(90%信頼区間[CI]:0.89~1.42)であったため、非劣性は示されなかった1)。しかし、Grade2以上の心血管有害事象は9週間投与群で有意に少なかった(HR:0.32、95%CI:0.21~0.50、p<0.0001)。 今回、主要評価項目の1つである全生存期間(OS)ならびに、3つのリスクカテゴリーごとのDFSのアップデートデータが発表された。[3つのリスクカテゴリー]低リスク:pT<2cm および pN0中間リスク: pT<2cmおよびpN1-3またはpT>2cmおよびpN0-3高リスク: pN4+ 主な結果は以下のとおり。・1年投与群に627例、9週投与群に626例が割り付けられた。・追跡期間中央値8.7年で、DFSイベントの発生は237件。1年投与群116件 vs. 9週投与群121件であった(HR:1.09、90%CI:0.88~1.35)。・OSイベントの発生は109件。1年投与群51件 vs. 9週投与群58件であった(HR:1.18、90%CI:0.86~1.62)。・リスクカテゴリーごとの5年DFS率は、低リスクカテゴリー(37.5%)で1年投与群91% vs. 9週投与群91%(HR:0.91、90%CI:0.60~1.38)、中間リスクカテゴリー(47.1%)で88% vs. 89%(HR 0.88、90%CI:0.63~1.21)、高リスクカテゴリー(15.4%)で82% vs. 64%(HR 2.06、90%CI:1.36~3.13)であった。・リスクカテゴリーごとの5年OS率は、低リスクカテゴリーで1年投与群97% vs. 9週投与群99%(HR:0.57、90%CI:0.27~1.13)、中間リスクカテゴリーで96% vs.95%(HR: 1.14、90%CI:0.68~1.89)、高リスクカテゴリーで95% vs. 91%(HR:1.09、90%CI:0.75~1.359)であった。

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無症状の原発巣は切除?大腸がんの世界的CQに結論:JCOG1007(iPACS)試験【消化器がんインタビュー】第11回

転移巣切除不能の大腸がん、無症状の原発巣は切除すべきか。この長年にわたる国内外の臨床疑問に初めて結論を出したJCOG1007(iPACS)試験の結果が発表された。研究代表者である国立がん研究センター中央病院 大腸外科 金光 幸秀氏に聞いた。―試験実施の背景について教えていただけますか。画像を拡大する私が外科医になったころ、Stage IVの大腸がんで転移巣切除不能も含め治癒的切除ができない場合は、原発巣切除(primary tumor resection、以下 PTR)を行うのが自明のことでした。その理由は、原発巣を取ることで腸閉塞などのがんの合併症(これは化学療法中にも起こりえますが)を予防できること、そして何よりも抗がん剤の効果が低かったということでした。抗がん剤の効果が低いという先入観は、何十年もの間、医師の中にありました。しかし、2000年代になり、抗がん剤の効果が非常に高くなり、すべての症例で原発巣を切除すべきか、その意義を改めて検証すべきだという機運が外科医の中で大きくなってきました。そのような背景の中、2年ほどの検討期間を経て、2010年に試験実施が承認され、今回その結果が発表されました。―試験対象は、大腸がんの中でも限定された患者さんということですね。はい。誤解される方がおられますが、大腸がん全体というわけではありません。転移巣は切除不能だが原発巣は切除可能かつ原発巣由来の症状がない方です。たとえば、肝転移で数多くの転移があって手術で取りきれないような方で、大腸がんの症状がない患者さんです。大腸がんの中でもかなり限られた集団といえます。1割おられないかもしれません。―試験デザインについて教えていただけますか。この試験は、最初に原発巣切除を行い次に化学療法を行う治療法が、化学療法単独に対して優越性を示すかを検証する第III相の非盲検無作為化試験です。JCOG1007(iPACS)試験概要対象:切除不能のStage IVで原発巣に起因する症状はないが3つ以下の切除不能の転移(肝臓、肺、遠隔リンパ節、腹膜)がある大腸がん患者(適格対象20~74歳)試験治療群:PTR(primary tumor resection)+化学療法群(化学療法は手術後8~56日の間に実施)対照群:化学療法単独化学療法は、mFOLFOX6+ベバシズマブまたはCapeOX+ベバシズマブ(治験担当医が試験登録前に決定)評価項目:[主要評価項目]ITT集団の全生存(OS)、[副次評価項目]PFS、安全性、R0手術実施割合、姑息手術実施割合主な結果2012年6月~2019年9月に、国内38の施設から165例の患者が登録され、化学療法単独群(84例)、PTR+化学療法群(81例)に無作為に割り付けられた。最も頻度の高い切除不能の転移は肝臓(73%)であった。追跡期間中央値22.0ヵ月におけるOS中央値は、PTR+化学療法群25.9ヵ月、化学療法単独群26.7ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.76~1.59、片側p=0.69)。PTR+化学療法群では術後死亡が3例報告された。同試験は、事前に設定した試験中止基準(「PTR+化学療法群が化学療法単独群の生存期間を 下回る[HR>1.0]」など)により、データ安全モニタリング委員会から早期終了を推奨された。―化学療法単剤が対照群なのですね。米国NCCNのガイドラインでも抗がん剤単独が推奨されていますし、日本でも抗がん剤治療を先に行ったほうが良いのではないかという機運が高まったこともあり、抗がん剤を標準治療と考え、化学療法単独群をコントロールとしました。試験群は切除を行ってから化学療法を実施する(PTR+化学療法)群です。―試験結果はどのようなものでしたか?画像を拡大する全生存期間は両群ともほぼ同等(約2年)の結果でした。試験治療群は事前に設定した優越性基準(化学療法単独群24ヵ月に対し、PTR+化学療法群32ヵ月)に至らなかったため、化学療法単独群が標準療法という結果となりました。―治療によって転移巣の手術が可能になる、つまり、コンバージョン手術の確率についてはいかがでしたか。原発巣を切除してから抗がん剤を投与すると、転移巣の縮小や転移数が減りコンバージョン手術の確率が上がる、という仮説がかねてからありました。しかし、今回の試験でコンバージョン手術が可能となった割合は、化学療法単独群で5%、PTR+化学療法群では3%で、両群間に差は認められませんでした。画像を拡大するまた、薬物療法によるコンバージョン手術の確率の増加についても海外での良好な研究報告がありましたが、前向き研究で検証すると、実際はこの程度の数値であるということが明らかになりました。―この結果はどのように臨床に活用できるでしょうか。NCCNのガイドラインなどでも、この患者集団には抗がん剤単独が推奨されていますが、実際には世界的にも7割で原発巣が切除されています。実臨床では、切除するかしないか、迷いながら治療方針が決定されているのが現状です。この試験結果から、「症状がなければ原発巣は取らずに抗がん剤治療で開始していく」ことの優越性が示されました。これは、数十年にわたる臨床疑問に、明確な指針を示した大きな結果だと考えています。また、世界的に議論の残るテーマであったこともあり、海外からもお礼のメッセージをいただくこともあります。―視聴者へのメッセージ臨床試験は結果を出すまでに時間がかかります。試験に関わる研究者や患者さんの労力も大変なものです。しかし、試験で出た1つの結果から新たなスタンダードが生まれます。臨床試験は臨床疑問に解答を出すために、これからも作られ実施されていくでしょう。該当する患者さんがいれば、ご紹介いただければと思います。参考1)Kanemitsu Y, et al. Primary Tumor Resection Plus Chemotherapy Versus Chemotherapy Alone for Colorectal Cancer Patients With Asymptomatic, Synchronous Unresectable Metastases (JCOG1007;iPACS): A Randomized Clinical Trial. J Clin Oncol. 2021;39:1098-1107.2)JCOG1007; iPACS試験(UMIN)3)国立がん研究センター プレスリリース「ステージ4大腸がんの新たな標準治療を検証」

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FDA、HER2陽性胃がんペンブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法の1次治療迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2021年5月5日、局所進行または転移を有する切除不能HER2陽性胃・胃食道接合部(GEJ)腺がん患者の1次治療に、トラスツズマブ、化学療法(フルオロピリミジン+プラチナ)およびペンブロリズマブの併用を迅速承認した。 この承認は、上記患者の多施設無作為二重盲検プラセボ対照KEYNOTE-811試験の中間解析に基づいたもの。  この試験での主要有効性評価項目である、盲検化独立したレビュー委員会評価の全奏効率は、ペンブロリズマブ群74%、プラセボ群52%と、統計的に有意な差を示した(片側p<0.0001)。奏効期間中央値は、ペムブロリズマブ群10.6ヵ月、プラセボ群9.5か月であった。

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高齢の早期乳がん患者への化学療法の効果は?

 高リスクの早期乳がんでは化学療法によりアウトカムが改善されるが、高齢者にはほとんど投与されない。今回、英国・The Royal Marsden Hospital NHS Foundation TrustのAlistair Ring氏らは、高齢の高リスク早期乳がん患者の化学療法による効果を検討したところ、転移を有する再発のリスクは化学療法で低下したが、生存期間延長が示されたのはエストロゲン受容体(ER)陰性乳がんのみであった。また、QOLへの影響は大きかったが一時的だった。British Journal of Cancer誌オンライン版2021年5月10日号に掲載。 本研究は、70歳以上の手術可能な原発性浸潤性乳がん(T1-3および一部のT4b、N0-1、M0)患者を対象とした多施設前向き観察研究で、化学療法(±トラスツズマブ)の使用と生存期間・QOLについて調査した。ベースライン時の年齢・健康状態(fit/vulnerable/frail)・病期の相違について傾向スコアマッチングで調整した。 主な結果は以下のとおり。・英国の56センターで2013~18年に3,416例が登録され、手術を受けた2,811例のうち1,520例(54%)が高リスクの早期乳がんで、2,059例(73%)で健康状態がfitだった。・高リスクの早期乳がんでfitだった1,100例中306例(27.8%)が化学療法を受けた。・年齢・病期・健康状態をマッチさせていない高リスク例(1,498例、調整後ハザード比[HR]:0.36、95%CI:0.19~0.68)およびマッチさせた高リスク例(541例、調整後HR:0.43、95%CI:0.20~0.92)において、化学療法により転移を有する再発のリスクが減少した。しかし、どちらも全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)の改善はみられなかった。・ER陰性乳がん患者では、化学療法により生存率が改善した(OSのHR:0.20、95%CI:0.08~0.49、BCSSのHR:0.12、95%CI:0.03~0.44)。・QOLに一時的な負の影響がみられた。

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アントラサイクリン心筋症 見つかる時代から見つける時代へ【見落とさない!がんの心毒性】第2回

連載の第1回では、循環器医ががん医療に参画し始めた背景について向井先生が解説しました。第2回ではアントラサイクリン心筋症・心不全にも新たなアプローチが求められていることについて、大倉が解説します。重篤な心不全で見つかる時代から、そうなる前に見つける時代になったことを感じていただければ幸いです。アントラサイクリンによる心不全は3回予防できるドキソルビシンが1975年にわが国で使われ始めて、もうすぐ半世紀が経とうとしています。よく効くので、今尚がん医療の現場で広く使われています。心毒性があるため心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌です。とはいえ心臓病でもアントラサイクリンを使わざるを得ない状況は患者の高齢化とともに増加傾向にあります。献身的ながん医療の成果が10年生存率の改善(58.3%)という形で表れています。一方、一部のアントラサイクリン使用患者では、心毒性により化学療法を中断したり、QOL(生活の質)が損なわれたりしています。心不全で亡くなることもあります。循環器医は“アントラサイクリンによる心不全は早期発見で3回予防できる”と考えています。(1)心機能の低下予防 (2)心不全の発症予防 (3)慢性心不全の増悪予防の3回です(図)。実際のところ、がん医療の現場でこの考え方はあまり共有されていません。そのため1回も予防されずに重症化した心不全がん患者を診ることもあります。(図)心不全の進展ステージとアントラサイクリン心筋症の予防機会画像を拡大する2021年3月、“脳卒中と循環器病対策基本法”の行動計画の核心である脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画が公表されました1)。心不全は重要3疾患の1つに掲げられ、悪性腫瘍に合併する心不全の管理も重点項目として指定されました。“心不全は予防と早期発見”という考えが国民に向けて発信されることで、がん医療にも徐々に馴染んでゆくものと思われます。発生率と危険因子アントラサイクリンによる心機能障害は用量依存性に発生します。ドキソルビシン換算で累積投与量が 400 mg/m2で3~5%、550 mg/m2で7~26%、700 mg/m2で18~48%に起こります2)。累積投与量以外にも、65歳以上の高齢者、小児、胸部・縦隔への放射線照射、トラスツズマブなど心毒性を有する他の薬剤の使用、基礎心疾患の既往や合併、心血管リスク(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)の合併などで、起こりやすくなるため注意が必要です。この段階で併存心疾患や心血管リスクを治療し心機能低下を予防します3)(図:1回目の予防)。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)により、拡張型心筋症の原因となる遺伝子変異の一つで、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子の切断型変異(Titin-truncating variants)があると、アントラサイクリンの心毒性に対して脆弱になることが報告されました4)。5ヵ年計画にはファーマコゲノミクス(PGx)の推進が盛り込まれており、抗がん薬の心毒性に関与する遺伝子を5年間に2個同定しようとしています。Onco-cardiologyの分野でもゲノム医療が始まろうとしています1)。心毒性の機序アントラサイクリンは一部の患者に不可逆的な心筋障害を起こします。失われた心筋細胞が復活することはありません。ミトコンドリアの鉄の蓄積と活性酸素の過剰な産生を惹起し、ミトコンドリアや細胞内小器官が障害されます。DNAの修復に欠かせないトポイソメラーゼIIβを阻害し、DNA二重鎖切断とアポトーシスを誘導します。心筋細胞の恒常性に欠かせない周囲の血管内皮細胞も障害され、後々の心筋細胞の適応性や生存性の低下に繋がります。心筋の線維芽細胞や前駆細胞も複雑に関与しています4)5)。経過・治療古典的には心毒性は急性、慢性早期、慢性晩期に分類されていました(表1)。(表1)アントラサイクリンによる心毒性の古典的な臨床分類画像を拡大する現在では、詳細な経過観察により、心筋細胞レベルの障害が最初に起きて、それが潜在進行性の心機能低下を惹起し、代償機転が破綻して心不全に至るという連続性が確認されています。心不全を起こす患者では、アントラサイクリン投与後に、血清トロポニンが一過性に上昇し、左室駆出率(LVEF)が低下します。心保護薬で治療すると、ほとんどの患者でLVEFは不完全ながら回復傾向を示しますが、一部の患者はLVEFが悪化して、心不全を発症します。Cardinaleらによれば、アントラサイクリン投与後に9%の患者に心毒性(LVEF50%未満への低下)が認められました。心毒性の98%は化学療法終了後1年以内(中央値3.5ヵ月)に現れました。エナラプリルとカルベジロールで治療をすると82%に回復傾向を認めました6)。無症候性心機能低下(図:ステージB)のうちに発見し、心保護薬で予防をすることで悪化を食い止め、心不全(図:ステージC)を予防できます(図:2回目の予防)。そのため、ここでの介入が最も効果的と考えられています。しかし、この予防機会を失えば、心不全を発症します。こうなると、非可逆的な心筋障害であるため、治療に難渋し、ステージDへの進行を防げない可能性があります。潜在患者の早期発見に有用な検査定期的に全員に心エコーをすれば早期発見は可能ですが、医療資源は限られているため、ハイリスク群を優先することが欧米の腫瘍学会でコンセンサスを得ています(表2)。(表2)最新ガイドラインに見るアントラサイクリン使用に関連した強い推奨[A、B]画像を拡大するリスクの層別化には、アントラサイクリン治療後のトロポニン測定に期待が寄せられています。上昇しない患者はその後の心不全が起きにくいことが分かっており、心エコーの頻度を減らすことができます7)。一方、上昇し、その後も上昇が持続する患者では、心不全が起きやすいため、心保護薬を開始したり、心エコーの頻度を増やしたりします。わが国の保険制度ではそのようなトロポニンの使われ方は認められておりません。採血のタイミングやカットオフ値の標準化については今なお研究段階です。アントラサイクリン治療を終えて数ヵ月以上経過している患者の心不全の早期発見は、危険因子による層別化や、BNPやNT-proBNPによる補助診断に頼ることになります。フラミンガムの一般住民を対象にした疫学調査によると、BNP はLVEF40%以下の心機能低下に対する感度は良好でしたが、LVEF50%前後に対してはよくありませんでした8)。ステージBの中でもCに近い患者の検出には使えそうです。BNP検査によるアントラサイクリン心筋症の早期発見については、小児やAYA世代のがんサバイバーでの有用性については否定的な報告があります9)。それでも特性を理解すれば、たいへん便利な検査ですので、BNP検査については正書や学会ホームページをご覧ください10)11)。心エコーでは、無症候性心機能低下(ステージB)の中で、更に早い段階の異常を捉えようとしています。スペックルトラッキング法を用いたGlobal longitudinal strain (GLS)は、薬剤性心筋障害をLVEFよりも早期に感度良く検出できるようです。欧米の腫瘍学会ガイドラインでも測定を推奨していますが、人間の感覚を超えた領域なので慣れるのに時間がかかりそうです12)。心機能低下はがん治療終了後1年以内に始まるので、半年後と1年後の心エコーを推奨していますが、異常を見落としたり、その後に異常が明らかになることもあるため、その後のフォローも欠かせないでしょう。フォローの内容や間隔については、危険因子が多いほど綿密にします。なぜ重症化してから見つかるのか?「患者や医師が、息切れ、むくみ、疲れ易さを、がんのせいと勘違いする」「医師や薬剤師が累積使用量の上限を超えなければ心不全は起きないだろうと油断もしくは勘違いする」「がん治療が済んで患者がフォローアップされなくなる」「フォローされてもクリニックの先生方と心不全への懸念が共有されない」などが原因で、発見が遅れ重症化の引き金になると考えられます。慢性晩期のアントラサイクリン心筋症には、認識不足や連携の脆弱さといった医療システムの問題が少なからず関係しています。心不全全般に言えることですが、脳卒中や心筋梗塞や糖尿病と比べ、心不全についての認知度が低いことは、かなり前から指摘されており世界共通の課題でした13)。アントラサイクリンで治療した患者に、心不全のセルフチェックを促すには、心不全についての知識の普及が肝要です。心不全発症に早めに気づいて治療することで重症化が予防できます(図:3回目の予防)。今、試されるチーム力最新のESMOガイドライン2020では“がんサバイバーから目を離すな”とうたっています。アントラサイクリンで治療した乳がん患者で薬剤性心筋障害を起こすのは、3~6%程度ですが、軽んずることなく解決への道を開けば、将来の患者の利益になります。院内ではがん診療科と多職種の連携が解決への糸口となり14)、晩期障害の早期発見にはクリニックの先生方の協力が不可欠です。地域医療への知識の普及には、大学や医師会の役割りが大きいです。システムの問題が心不全に関与しているのならば、システムを修正すれば良いのです。心不全についての知識は一般の方には伝わりにくいことが世界共通の課題ですが、“脳卒中と循環器病対策基本法”の下、行政による後押しで国民への啓蒙が始まろうとしています。高齢化に伴い、がん患者の心臓病が増加しています15)。がんと心不全の古くからの関係は新しい時代を迎えました。1)日本脳卒中学会・日本循環器学会編. 脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画 ストップCVD(脳心血管病)健康長寿を達成するために. 20212)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p10-11.(赤澤 宏 心機能障害/心不全 アントラサイクリン系薬剤)4)Garcia-Pavia P, et al. Circulation. 2019;140:31-41.5)Kadowaki H, et al. Circ J. 2020;84:1446-1453.6)Cardinale D, et al. Circulation. 2015;131:1981-1988.7)Cardinale D, et al. 2004;109:2749-2754.8)Vasan RS, et al. JAMA. 2002; 288:1252-1259.9)Michel L, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:423-433.10)猪又孝元ほか The Manual心不全のセット検査. メジカルビュー社;2019.11)日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について12)日本心エコー図学会編.抗がん剤治療関連心筋障害の診療における心エコー図検査の手引13)Okura Y, et al. J Clin Epidemiol. 2004;57:1096-1103.14)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p.176-178.(大倉 裕二、吉野 真樹 腫瘍循環器診療における連携のコツと工夫 多職種連携)15)Okura Y, et al. Int J Clin Oncol. 2019;24:983-994.講師紹介

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肺がん根治手術患者の心理と術後補助化学療法実施に関する因子/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、過去10年以内に肺がんの根治手術を受けたStage II~IIIの肺がん患者(以下、患者)131名を対象に、手術前後に抱く不安や心情を理解するとともに、患者が術後補助化学療法の実施を検討する際に何を重視し、影響を受けるかを把握することを目的に、WEBアンケート調査を実施した。 調査結果から、患者の治療選択における情報入手先として医師が80%を占めており、術後補助化学療法実施の意思決定は、患者が医師からの説明をどのように受け止めたかに大きく左右されることが明らかとなった。また、患者は根治手術を受けたとしても再発の可能性があることを理解しており、手術前後から術後補助化学療法実施時にいたるいずれの過程においても、再発の可能性に不安を感じていた。患者の70%が術後補助化学療法に対して、たとえ再発時期を遅らせるだけになったとしても、「再発を避けるためにやれることはやっておきたい」という考えを持っていることも明らかとなり、再発までの期間の延長が、治癒への期待や個人的な人生のイベント達成、再発後の新たな治療法への期待などにつながっていることが考えられた。同調査を監修した広島大学 腫瘍外科の岡田守人氏は、患者の多くは、生存を長くすることに加えて、無再発期間を重要視していることがわかった。患者の希望を理解したうえで、医師を中心とした多職種連携チームで患者さんをサポートすることがとても重要であると述べている。調査概要・調査期間:2020年10月9日~11月19日・調査対象:肺がんの根治手術を10年以内に受けたStage II~IIIの患者:合計131例・調査方法:Webアンケート調査主な調査結果<医師とのコミュニケーションと患者の意思決定>・根治手術を受けた肺がん患者が、がんと診断された後に治療選択を判断する際の情報入手先は、医師からの説明が80%であった。・医師からの説明は、手術前後、術後補助療法実施時のいずれにおいても、その時点での病状や治療などの短期的な項目に関する割合が70%以上と高く、生活への影響、再発の可能性といったやや長期的な項目の割合は前述の項目と比べると少し低かった。一方、患者は短期的とやや長期的のいずれの項目も詳しく説明を聞きたいと考えていた。<患者の手術前後の心理>・患者は、手術前後、術後補助化学療法実施中いずれも、再発の可能性(83.1%、77.2%、71.9%)と今後の生活(63.4%、60.4%、60%)に不安を感じていた。術後補助化学療法実施時においては、77.3%が副作用に対する不安を感じていた。<術後補助化学療法に対する患者の考え>・「術後補助化学療法によって、再発の割合を下げることができなくても再発の時期を年単位で遅らせる可能性がある」とした場合、「術後補助化学療法を受ける」に共感した患者は70%、「術後補助化学療法を受けない」に共感した患者は30%であった。・「術後補助化学療法を受ける」に対する共感部分は、“やれることはやっておきたい”が100%、“再発による生活・気持ちへの影響”が94%であった。また、“抗がん剤の副作用”は93%が許容していた。・「術後補助化学療法を受けない」に対する共感部分は、“抗がん剤の副作用による生活・気持ちへの影響”が83%、“手術だけで治る可能性/術後補助化学療法によらず再発する可能性”が90%、“抗がん剤は再発してからでよい”が80%であった。

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新型コロナで肺がん新規患者の受診減少、8,000人以上が診療機会喪失か/日本肺癌学会

 COVID-19の感染拡大により、がん検診およびがん診療の制限は、重大な懸念事項となってきた。日本肺癌学会では、COVID-19が肺がん診療におよぼした影響を見るために、第2波が収まりつつあ った2020年10月末、原発性肺がんと診断され初回治療を受けた患者数を2019年1~10月と2020年1~10月で比較検討した。アンケート対象は、日本肺癌学会の評議員が所属する施設およびがん拠点病院である。 主な結果は以下のとおり。・2020年1~10月の肺がん新規患者数は、前年同月と比べ6.6%減少していた(2019年1万9,878例、2020年1万8,562例)。・治療方法別の影響をみると、手術実施症例の減少は6.0%、薬物療法症例の減少は8.6%と双方とも減少していたが、例外的に免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用のみ増加(10.5%)していた。・新型コロナ治療が多い施設ほど、肺がん新規患者が減少していた(新型コロナ治療患者数0~5名の施設:-4.6%、6~50例の施設:-4.2%、51~100例施設:-8.3%、101例以上の施設:-8.6%)。・施設形態別にみると、減少は公立病院が最も顕著で14.3%。大学病院6.3%、がん専門病院6.6%、国立病院7.8%であった。・月別にみると、非常事態宣言が出された2020年4月以降、前年同月を下回っていた。 原発性肺がんの年間罹患数は約13万人。6.6%の減少から推定すると、約8,600人の新規患者が診療機会を逸したと考察される。

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新規抗体薬物複合体SG、転移TN乳がんに有効/NEJM

 転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、新規の抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecan(SG)は化学療法単剤と比較して、無増悪生存(PFS)期間および全生存(OS)期間を有意に延長した。ただし、骨髄抑制と下痢の発現頻度は、SGのほうが高かった。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAditya Bardia氏らが、7ヵ国88施設で実施した無作為化評価者盲検第III相試験「ASCENT試験」の結果を報告した。SGは、乳がんの多くに発現しているヒト栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)を標的とするsacituzumabを、イリノテカンの活性代謝物SN-38(トポイソメラーゼI阻害薬)と独自の加水分解性リンカーを介して結合させた抗Trop-2 ADCで、これまで第I/II相試験で転移のある上皮がんにおける有効性、安全性が評価され、第III相試験実施を後押しする結果が得られていた。NEJM誌2021年4月22日号掲載の報告。転移を有するTN乳がん患者で脳転移はない468例、SGと化学療法単剤を比較 研究グループは、2ライン以上の化学療法歴がある再発/難治性の転移を有するTN乳がん患者を、SG群(10mg/kgを21日サイクルのday1、8に点滴投与)、または化学療法群(主治医選択によりエリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビンのいずれか単剤を投与)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、脳転移のない患者におけるPFS(盲検化中央判定)で、副次評価項目は、OS、PFS(治験責任医師判定)、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。 2017年11月~2019年9月に529例を登録。このうち、脳転移のない患者は468例(SG群235例、化学療法単剤群233例)で、年齢中央値は54歳、全例にタキサン使用歴があった。PFSはSG群5.6ヵ月、化学療法単剤群1.7ヵ月、OSはそれぞれ12.1ヵ月、6.7ヵ月 PFS期間中央値は、SG群5.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.3~6.3、イベント166件)、化学療法単剤群1.7ヵ月(1.5~2.6、150件)であった(病勢増悪または死亡のハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.32~0.52、p<0.001)。 OS期間中央値は、SG群12.1ヵ月(95%CI:10.7~14.0)、化学療法単剤群6.7ヵ月(5.8~7.7)であった(死亡のHR:0.48、95%CI:0.38~0.59、p<0.001)。ORRは、SG群35%、化学療法単剤群5%であった。 Grade3以上の主な治療関連有害事象は、好中球減少症(SG群51%、化学療法単剤群33%)、白血球減少症(10%、5%)、下痢(10%、1%未満)、貧血(8%、5%)、発熱性好中球減少症(6%、2%)であった。有害事象による死亡は各群3例報告されたが、SG投与に関連した死亡は認められなかった。

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NSCLC1次治療、ペムブロリズマブ単剤の5年追跡結果(KEYNOTE-024)/JCO

 未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)単剤と化学療法を比較した第III相KEYNOTE-024試験の5年追跡結果が発表された。・対象:転移を有する未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLC患者(305例)・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(154例)・対照群:治験担当医が選択したプラチナベース化学療法 4~6サイクル(151例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OSなど 主な結果は以下のとおり。・無作為化からデータカットオフ(2020年6月1日)までの期間中央値は59.9ヵ月であった。・化学療法群からペムブロリズマブ群へのクロスオーバーは66.0%であった。・OS中央値はペムブロリズマブ群26.3ヵ月、化学療法群は13.4ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.48~0.81)。・5年OS率は、ペンブロリズマブ群で31.9%、化学療法群で16.3%であった。・長期治療曝露による毒性の増加は示されなかった。

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