サイト内検索|page:4

検索結果 合計:2145件 表示位置:61 - 80

61.

未治療・再発肺MAC症、吸入アミカシン上乗せの有用性は?(ARISE)

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とするものが肺MAC症である。肺MAC症に対し、国際的なガイドラインではマクロライド系抗菌薬、エタンブトール、リファンピシンによる3剤併用療法が推奨されている1)。また、本邦の指針である『成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改訂―』でも、空洞がなく重度の気管支拡張所見がない場合は、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)、エタンブトール、リファンピシンの併用が標準治療とされている2)。ただし、この3剤併用療法には忍容性や治療成功率に課題も存在する。 そのような背景から、肺MAC症に対する新規治療薬としてアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS、商品名:アリケイス)が承認されているが、適応は「多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者」に限定されている。そこで、米国・National Jewish HealthのCharles L. Daley氏らは、未治療または再発の非空洞性肺MAC症患者を対象に、アジスロマイシン+エタンブトールへALISを上乗せする治療の有用性を検討する国際共同第III相試験「ARISE試験」を実施した。その結果、ALIS併用群は対照群と比較して、6ヵ月時点および治療終了1ヵ月後の7ヵ月時点における排菌陰性化率が数値的に高く、より早期に排菌陰性化を達成することが示唆された。本研究結果は、Annals of the American Thoracic Society誌オンライン版2026年1月23日号で報告された。試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験対象:未治療または再発の非空洞性肺MAC症の成人患者99例試験群(ALIS群):アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+ALIS(590mg/日)を6ヵ月 48例対照群:アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+吸入プラセボを6ヵ月 51例評価項目:[主要評価項目]患者報告アウトカム(PRO)ツールの妥当性検証[副次評価項目]排菌陰性化率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は69歳で、女性の割合は77.8%、白人の割合は80.8%であった。・6ヵ月時点の排菌陰性化率(5ヵ月・6ヵ月時点の連続で陰性)は、ALIS群80.6%、対照群63.9%であった(群間差16.7%、95%信頼区間[CI]:-1.4~34.9、p=0.0712)。・治療終了1ヵ月後の7ヵ月時点における排菌陰性化率(6ヵ月・7ヵ月時点の連続で陰性)は、ALIS群78.8%、対照群47.1%であり、ALIS群が高かった(群間差31.7%、95%CI:12.9~50.5、p=0.0010)。・排菌陰性化達成までの期間中央値は、ALIS群1.0ヵ月に対し、対照群では2.0ヵ月であった。・排菌陰性化を達成した患者のうち、7ヵ月時点までに再発が確認された割合は、ALIS群12.8%(5例)に対し、対照群では50.0%(20例)と対照群が高かった。・PRO評価(QOL-B RDスコア)において、ALIS群では7ヵ月時点まで継続的な改善傾向がみられた一方、対照群では3ヵ月以降に改善が頭打ちとなり、その後低下した。・安全性について、有害事象はALIS群91.7%、対照群80.4%に発現した。ALIS群で多くみられた有害事象は、発声障害(41.7%)、下痢(27.1%)、咳嗽(27.1%)などであり、新たな安全性シグナルは認められなかった。 本研究結果について、著者らは「本試験は6ヵ月間という短期間の検討であり、ガイドライン推奨の治療期間を反映していないものの、早期介入における吸入アミカシンの有用性を示す重要なデータである」と述べている。現在、同様の集団を対象とした12ヵ月間の長期投与による検証試験「ENCORE試験」が進行中である。

62.

HR+/HER2+進行乳がん、導入療法後の維持療法にパルボシクリブ追加でPFS延長(PATINA)/NEJM

 ホルモン受容体陽性、HER2陽性の進行乳がんの1次治療では、標準的な導入療法で病勢の進行を認めなかった患者の維持療法において、標準療法単独と比較して標準療法+パルボシクリブ(サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬)は、無増悪生存期間(PFS)が有意に1年超長く、奏効率や奏効例の奏効期間も良好だが、Grade3/4の有害事象の頻度が2倍超であることが、米国・Harvard Medical SchoolのOtto Metzger氏らが実施した「PATINA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2026年1月29日号に掲載された。8ヵ国の無作為化第III相試験 PATINA試験は、8ヵ国123施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年6月~2021年7月に参加者を登録した(Pfizerなどの助成を受けた)。 年齢18歳以上のホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)受容体陽性、HER2陽性の進行乳がんで、1次治療における導入療法として化学療法(タキサン系薬剤)+HER2標的療法(トラスツズマブ+ペルツズマブまたはトラスツズマブ単剤)の投与を4~8サイクル受け、病勢の進行を認めなかった患者(完全奏効、部分奏効、安定)を対象とした。 被験者を、導入療法の最終投与日から12週以内に、維持療法としてHER2標的療法(トラスツズマブ+ペルツズマブまたはトラスツズマブ単剤)+内分泌療法(アロマターゼ阻害薬またはフルベストラント)の投与を開始する群(標準療法群)、または標準療法に加えパルボシクリブの投与を開始する群(パルボシクリブ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、担当医評価によるPFS。副次評価項目は、奏効率、臨床的ベネフィット、安全性および全生存期間などであった。PFS中央値は44.3ヵ月vs.29.1ヵ月 518例(年齢中央値53.4歳、男性3例[0.6%]、白人401例[77.4%]、閉経後女性320例[61.8%])を登録し、パルボシクリブ群に261例、標準療法群に257例を割り付けた。無作為化前の導入療法のサイクル数中央値は6であり、導入療法終了時に70.1%が完全奏効・部分奏効、29.3%が安定であった。維持療法では、94.0%が2剤併用抗HER2療法、90.7%がアロマターゼ阻害薬の投与を受けた。 追跡期間中央値53.5ヵ月の時点におけるPFSは、標準療法群が29.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:23.3~38.6)であったのに対し、パルボシクリブ群は44.3ヵ月(32.4~56.8)と有意に延長した(ハザード比:0.75、95%CI:0.59~0.96、両側非層別log-rank検定のp=0.02)。 また、12、24、48ヵ月時のPFS率は、パルボシクリブ群がそれぞれ84.9%、65.2%、46.5%、標準療法群は73.2%、55.3%、38.3%だった。 確定された奏効率(導入療法による完全奏効例を除外し、少なくとも2回の連続した評価で完全奏効または部分奏効が持続していた患者の割合)は、パルボシクリブ群が32.9%(95%CI:26.9~39.4)、標準療法群は24.8%(19.3~30.0)であった。 確定された奏効期間中央値は、パルボシクリブ群が44.9ヵ月(95%CI:27.1~51.6)、標準療法群は30.8ヵ月(26.0~評価不能)だった。Grade3の有害事象が79.7%、Grade4は10.0% Grade3の有害事象は、パルボシクリブ群で79.7%と、標準療法群の30.6%の2倍超の頻度で発現し、主に好中球減少(55.9%vs.2.0%)と白血球減少(15.7%vs.0.8%)であった。Grade4の有害事象は、それぞれ10.0%および3.6%に見られた。 Grade5の有害事象(試験薬以外の原因による致死的イベント)は、パルボシクリブ群で3.8%、標準療法群で4.4%に認めたが、担当医判定による試験薬関連の死亡の報告はなかった。重篤な有害事象は、それぞれ28.7%および21.8%で発現した。 また、パルボシクリブ群では、57.7%で減量を要し(27.7%が1回、30.0%が2回の減量)、18%で投与中止の原因となった有害事象が見られた。 著者は、「本試験では、導入療法中に病勢が進行した患者を除外したため、病変の生物学的特性がより良好な患者を試験集団に集積した可能性がある」「44ヵ月を超える無増悪生存期間の達成は臨床的に意義のある進展を示すもの」「早期死亡はまれで、6ヵ月全生存率は両群とも99%を超えており、これは導入療法を完了して維持療法の段階に移行した患者の良好なアウトカムを反映するものである」としている。

63.

乳がん後の心筋梗塞と脳卒中リスク

 乳がんと診断された女性におけるその後の心筋梗塞と脳卒中のリスクを分析したところ、心筋梗塞は20%、脳卒中は58%のリスク増加が示唆された。イタリア・トリノ大学のFulvio Ricceri氏らが、イタリア北西部の130万人の女性を対象とした大規模集団研究で分析した結果を、Breast Cancer Research and Treatment誌2026年1月29日号で報告した。 乳がんの生存期間は検診の普及と治療法の進歩により延長したが、同時に他疾患のリスクも増加している。原因としては、遺伝的要因、共通のリスク因子、治療による副作用などが挙げられる。そこで本研究では、治療の潜在的な副作用を考慮しつつ、乳がん患者における心筋梗塞と脳卒中のリスクを分析した。対象集団は、国勢調査データと複数の医療行政データベースをリンクさせた行政コホート研究であるピエモンテ縦断研究(PLS)の30~75歳の女性で、ベースライン時点で心筋梗塞または脳卒中の既往があった女性は除外した。原因別比例ハザードモデルを用いた競合リスク分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・30~75歳の134万2,333人のうち1万9,203人が乳がんと診断され、そのうち206人(1.1%)が心筋梗塞、203人(1.1%)が脳卒中を発症した。・乳がん患者では心筋梗塞(ハザード比[HR]:1.20、95%信頼区間[CI]:1.05~1.38)および脳卒中(HR:1.58、95%CI:1.38~1.82)のリスク増加が認められた。・心筋梗塞については化学療法が主要な危険因子であったが、脳卒中については治療法による違いは認められなかった。

64.

PD-L1陽性の未治療TN乳がん、SG併用でPFS延長/NEJM

 未治療のPD-L1陽性局所進行トリプルネガティブ乳がん患者の治療において、化学療法+ペムブロリズマブと比較してサシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブは、有意に長い無増悪生存期間(PFS)をもたらし、奏効期間が長い傾向を認め、有害事象による投与中止率が低いことが、米国・Harvard Medical SchoolのSara M. Tolaney氏らASCENT-04/KEYNOTE-D19 Clinical Trial Investigatorsが実施した「ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験」で示された。SGは、抗Trop-2モノクローナル抗体とトポイソメラーゼI阻害薬であるSN-38を結合させた抗体薬物複合体。ASCENT試験の知見に基づき、2レジメン以上の全身療法を受けた転移を有するトリプルネガティブ乳がんの治療薬として日本を含む複数の国で承認されている。NEJM誌2026年1月22日号掲載の報告。28ヵ国の無作為化第III相試験 ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験は、日本を含む28ヵ国186施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(Gilead Sciencesの助成を受けた)。 2022年10月~2024年8月の期間に参加者を登録した。進行病変に対する前治療を受けておらず、PD-L1陽性の切除不能な局所進行・転移を有するトリプルネガティブ乳がんの成人患者を対象とした。 被験者を、SG(21日を1サイクルとして、1、8日目に静脈内投与)+ペムブロリズマブ(同1日目に静脈内投与)を受ける群、または担当医が選択した化学療法+ペムブロリズマブ(同1日目に静脈内投与)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法は、パクリタキセルまたはアルブミン懸濁型パクリタキセル(28日を1サイクルとして、1、8、15日目に静脈内投与)、あるいはゲムシタビン+カルボプラチン(21日を1サイクルとして、1、8日目に静脈内投与)のうち1つを選択した。 主要評価項目はPFSとし、盲検下に独立中央審査委員会が評価した。担当医判定でも同様の結果 443例を登録し、SG群に221例(年齢中央値54歳)、化学療法群に222例(同55歳)を割り付けた。全例が女性であった。全体の追跡期間中央値は14.0ヵ月(範囲:0.1~28.6)だった。 PFS中央値は、化学療法群が7.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.3~9.3)であったのに対し、SG群は11.2ヵ月(95%CI:9.3~16.7)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.51~0.84、両側p<0.001)。担当医判定によるPFS中央値も同様の結果であった(11.3ヵ月vs.8.3ヵ月、HR:0.67、95%CI:0.52~0.87)。 全生存期間に関するデータは未成熟で、両群とも中央値には未到達だった。 客観的奏効率(完全奏効+部分奏効)は、SG群が60%(95%CI:53~66)、化学療法群は53%(95%CI:46~60)であった。また、奏効例の奏効期間中央値はそれぞれ16.5ヵ月(95%CI:12.7~19.5)および9.2ヵ月(95%CI:7.6~11.3)であり、SG群で長い傾向を認めた。有害事象による投与中止、12%vs.31% Grade3以上の有害事象は、SG群で71%、化学療法群で70%に発現し、頻度の高いものとして好中球減少(43%vs.45%)、下痢(10%vs.2%)、貧血(7%vs.16%)がみられた。有害事象による投与中止の発生率は、SG群で低かった(12%vs.31%)。死亡の原因となった有害事象の発生率は、両群とも3%であった。 著者は、「PFSの有益性に加え、奏効期間が長く、投与中止の可能性が低いことは、転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者のほぼ半数が初回治療ライン以降の治療を受けない現状を踏まえると、SG+ペムブロリズマブが、早期治療ラインにおいて、この治療困難な患者集団のアウトカムの改善に進展をもたらすものであることを示している」「この抗体薬物複合体と免疫療法薬の併用療法の安全性プロファイルは、各薬剤の既知のプロファイルと一致しており、新たな安全性の懸念は認めなかった」としている。

65.

HER2+早期乳がん、術前化学療法によるcCRの予測因子を同定

 初期薬物療法後に臨床的完全奏効(cCR)が得られたHER2陽性早期乳がんにおける非切除療法の有用性を検証することを目的としたJCOG1806試験において、探索的解析としてcCR率と予測因子を検討した。その結果、HER2陽性早期乳がんの57.6%で初期薬物療法後にcCRが得られ、予測因子としてER陰性、IHCスコア3+、高い組織学的グレードが同定された。広島大学の重松 英朗氏らが、International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年1月22日号で報告した。 本試験は単群検証的試験で、HER2陽性はIHCスコア3+またはISH増幅あり、cCRは触診、造影MRI、超音波検査で検出可能な病変が認められない状態と定義した。多変量ロジスティック回帰分析を用いてcCRの予測因子を同定した。 主な結果は以下のとおり。・cCR率は57.6%(196例/340例、95%信頼区間[CI]:52.2~63.0)であった。・ER陽性度が高い腫瘍(10%以上)は、ER陰性腫瘍と比較してcCR率が有意に低かった(オッズ比[OR]:0.41、95%CI:0.20~0.81)。・IHCスコア3+の乳がんは、IHCスコア1+/2+よりもcCR率が高かった(OR:2.19、95%CI:1.01~4.74)。・組織学的グレード1の乳がんと比較して、グレード2(OR:2.92、95%CI:1.07~7.93)およびグレード3(OR:4.90、95%CI:1.76~13.7)でcCRのオッズが高かった。・非cCRで手術を受けた患者において22.2%がypT0と診断された。

66.

サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025)レポート

レポーター紹介60年に1回の丙午の年を迎えた。2025年は乳がん診療において激動の1年であった。米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で薬物療法の標準治療を変えるエビデンスが、サブタイプ、周術期/転移再発のセッティングを問わず多数発表された。乳がんを専門に診療・研究をしている立場でも、広範なエビデンスのキャッチアップはかなり大変な年であった。ASCO、ESMOでここまで多くのエビデンスが発表されてしまうと、San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)では薬物療法の話題は枯れてしまって、局所療法の話題が中心となるのではないかと思っていた。ところが。蓋を開けてびっくり、今回のSABCSでは新しい標準治療のエビデンスが多数発表された。以下に、厳選した5演題の結果を解説する。なお、SABCS2024からBest of SABCSのサイトで各演題の解説が見られるようになっている。登録が必要であるが無料なので、詳細を知りたい方はアクセスしてみてはいかがだろうか。なお、今回から日本のエキスパートによる日本語の解説も聞けるようである(私は未聴講)。INDEX1.lidERA試験(HR+/HER2-早期乳がん)2.EMBER-3試験(HR+/HER2-転移乳がん)3.ASCENT-07試験(HR+/HER2-転移乳がん)4.HER2CLIMB-05試験(HER2+転移乳がん)5.LORETTA試験(DCIS)1.lidERA試験(HR+/HER2-早期乳がん)lidERA試験はホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がん周術期において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)の有効性を示した初めての試験である。転移乳がんにおいてはelacestrantやイムルネストラントがESR1変異を有するHR+HER2-乳がんにおける有効性を示した。lidERA試験では高リスクStageIを含むStageIIIまでのHR+HER2-早期乳がんを対象として、術後内分泌療法としてgiredestrantと標準的内分泌療法(ET)を比較する試験である。N0は腫瘍径が1cmを超えるかつG3/Ki-67≧20%、ゲノムプロファイリング検査で高リスク、あるいはT4を対象とした。周術期化学療法は許容された。閉経前患者は卵巣機能抑制を併用(タモキシフェン以外)した。12週以内のET±CDK4/6阻害薬は許容された。主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であった。giredestrant群には2,084例、標準治療群には2,086例が割り付けられ、約40%が閉経前であった。StageIIが約50%、StageIIIが約40%、リンパ節転移はN1が約45%、N2以上が30%強と、比較的リスクが高いと考えられる患者が含まれた。それを反映して、約80%の患者で化学療法歴があった。内服期間は5年以上とされた。32ヵ月の観察期間中央値において、iDFSイベントはgiredestrant群で6.7%、標準治療群で9.4%で発生し、ハザード比(HR):0.70(95%信頼区間[CI]:0.57~0.87、p=0.00141)とgiredestrant群で有意に少なかった。休薬はgiredestrant群で多かったが、中止は両群ともに少数であった。有害事象は関節痛、ホットフラッシュなどが主であり両群間の差はほぼみられなかったが、関節痛、高血圧のGrade3以上はgiredestrant群でやや多い傾向がみられた。本試験をもって、高リスクHR+HER2-早期乳がんの術後治療に経口SERDの選択肢が現れた。一方で、本試験では現在高リスク患者に対する標準治療であるアベマシクリブ、ribociclibなどのCDK4/6阻害薬は併用されていない。また、日本においてはS-1も選択肢になりうる。2.75年時点でのiDFS絶対差2.8%は、monarchE試験における2年時点での3.5%とほぼ同等である(Johnston SRD, et al.J Clin Oncol. 2020;38:3987-3998.)。現時点ではET+CDK4/6阻害薬に対するオプションであるが、今後周術期治療における経口SERD+CDK4/6阻害薬のエビデンスの創出が求められる。2.EMBER-3試験(HR+/HER2-転移乳がん)イムルネストラントは第III相試験での有効性が初めて検証された経口SERDであり、EMBER-3試験の最初の結果が2024年のSABCSで発表された。今回はそのアップデートの結果が発表された。EMBER-3試験ではCDK4/6阻害薬併用を含む術後ET/終了後12ヵ月以内の再発、もしくは転移乳がん(MBC)に対する内分泌療法で病勢進行したHR+HER2-MBCを対象として、イムルネストラント(A)、標準ET(フルベストラントもしくはエキセメスタン)(B)、イムルネストラント+アベマシクリブ(C)、にランダム化された。主要評価項目は、ESR1変異を有する患者におけるA vs.B、全患者におけるA vs.B、全患者におけるC vs.Aを主治医判断における無増悪生存期間(PFS)で評価した。今回のSABCSではそのアップデートされた結果が発表された。まずひとつ目の主要評価項目であるESR1変異を有する患者におけるイムルネストラント単剤と標準ETを比較したPFS中央値は、5.5ヵ月vs.3.8ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.47~0.82、p=0.0007)と、イムルネストラント群における統計学的有意な改善が維持されていた。全生存期間(OS)の中間解析は50%のイベント発生割合で中央値が34.5ヵ月vs.23.1ヵ月(HR:0.60、95%CI:0.43~0.86、p=0.0043)とイムルネストラント群で良好な傾向を認めた。中間解析のため、この時点で定められた有意水準は満たしておらず、統計学的な有意差はまだ認められていない。探索的な評価項目である化学療法導入までの期間は15.6ヵ月vs.10.2ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.48~0.92)と、イムルネストラント群で長い傾向を認めた。 全患者におけるイムルネストラント+アベマシクリブとイムルネストラント単剤の比較では、PFS中央値10.9ヵ月vs.5.5ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)とアベマシクリブ併用群で有意に良好な結果であった。その有効性はCDK4/6阻害薬治療歴のある患者群でも同様であり、またESR1変異の有無、PI3キナーゼ経路の変異の有無によらずアベマシクリブ併用群で良好であった。OS中央値は33%のイベント発生割合でアベマシクリブ併用群は未到達、イムルネストラント群は34.4ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.2622)と若干併用群で良さそうな傾向は認めたものの、有意差は認められなかった。EMBER-3試験の結果を踏まえて、本邦でもイムルネストラントはET中に進行したESR1変異を有する患者に対する標準治療となった。HR+HER2-MBCに対する内分泌療法は経口SERDを含め多くのエビデンスが存在し、またongoingの試験が多数実施されている。オプションが増えることは患者にとって良いことではあるが、それぞれの薬剤に異なるコンパニオン診断が設定されていること、薬剤が上乗せされることによる医学的、また経済的な毒性が増すことなど、実臨床では悩むことが多くなる。エビデンスを整理しそれぞれの患者にとっての最適な、有効かつ無駄のない治療戦略を立てていくことが、臨床医に求められている。3.ASCENT-07試験(HR+/HER2-転移乳がん)サシツズマブ・ゴビテカン(SG)はHR+HER2-ならびにトリプルネガティブ(TN)MBCの3次治療以降でPFSならびにOSを有意に改善した、TROP-2をターゲットとした抗体薬物複合体(ADC)である(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.)。ASCENT-07試験はHR+HER2-MBCの化学療法の1次治療において、SGを主治医選択化学療法(TPC)と比較した第III相試験である。ASCENT-07試験では転移/切除不能病変に対する化学療法歴のないHR+HER2-MBCのうち、2ライン以上のET歴がある、もしくは1次治療としてのET±CDK4/6阻害薬治療中6ヵ月以内に増悪、あるいはET+CDK4/6阻害薬の術後治療開始後24ヵ月以内に再発した患者を対象として、SGとTPC(カペシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)を比較した。主要評価項目は盲検化されたPFSとされた。690例の患者が登録され、SG群に456例、TPC群に234例が割り付けられた。年齢の中央値は57~58歳、白人が約半数と、アジア人が40%含まれた。PS 0は60%であった。2ラインのETを受けた患者が約60%、1ラインのETを受けた患者が27%であった。約90%がCDK4/6阻害薬の投与を受けた。周術期にCDK4/6阻害薬を受けた患者は5%未満であり、アンスラサイクリン、ならびにタキサンを受けた患者が約半数であった。主要評価項目のPFS中央値は8.3ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.69~1.05、p=0.130)と両群間の差を認めなかった。副次評価項目の主治医評価のPFSは8.4ヵ月vs.6.4ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.64~0.93、p=0.008)とSG群で有意に良好であったが、これはバイアスの可能性がある。副次評価項目のOSは27%のイベント発生割合で中央値は両群ともに未到達(HR:0.72、95%CI:0.54~0.97、p=0.029)とSG群で良好な傾向がみられた。TPC群の61%が後治療としてADCによる治療を受けていた。SGの安全性についてはこれまでの報告と変わらず、最も高頻度に起きる有害事象は好中球減少症であった。本試験はHR+HER2-MBCの化学療法の1次治療としてのSGの有効性を検証した試験であったが、主要評価項目のPFSにおける優越性は示せなかった。2次治療以降ではPFS、OSともに化学療法に対する優越性が示されているにもかかわらず、本試験で示されなかった理由は現時点では不明である。もう少しイベントが発生した段階でのOSについては慎重に評価する必要があるだろう。4.HER2CLIMB-05試験(HER2+転移乳がん)HER2CLIMB-05試験はHER2+MBCの1次治療におけるtucatinib(まもなく本邦でも承認が期待されている)の上乗せ効果を検証した第III相プラセボ対照二重盲検化試験である。tucatinibはHER2を対象とした新たなチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)で、HER2+MBCの3次治療(Murthy RK, et al. N Engl J Med. 2020;382:597-609.)や2次治療(Hurvitz SA, et al. Ann Oncol. 2025 Nov 17. [Epub ahead of print] )における有効性が示されている。本試験ではHER2+MBCに化学療法の1次治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)およびタキサンの併用療法(THP)を受け、4~8サイクルまでのTHP中に病勢進行しなかった患者を対象として、HPにtucatinib 300mg BIDもしくはプラセボを維持療法として投与した。主要評価項目は主治医判断によるPFS、副次評価項目はOSや盲検化PFS、中枢神経(CNS)-PFSなどとされた。326例がtucatinib群、328例がプラセボ群に割り付けられ、HR+患者では内分泌療法の併用が許容された。PSは0が60%強、HRは陽性が50%程度、脳転移の既往が約12%に認められた。De novo StageIVが約70%であり、再発例は30%にとどまった。主要評価項目の主治医判断によるPFSは中央値が24.9ヵ月vs.16.3ヵ月(HR:0.641、95%CI:0.514~0.799、p<0.0001)とtucatinib群で有意に良好であった。サブグループ解析はいずれもtucatinib群で良好な傾向がみられた。HRステータスごとの解析ではHR-でより差が強まる傾向を認めた。OSはいずれも未到達(HR:0.539、95%CI:0.303~0.957、p=0.0320)とtucatinib群で良好な傾向がみられた。CNS-PFS(脳転移の増悪もしくは死亡をイベントと定義)については全体集団では差がみられなかったものの、登録時に脳転移を有していた患者ではtucatinib群で良好な傾向がみられた。これは過去の試験結果とも共通している。有害事象も既報と大きな違いはないが、tucatinib群で下痢が73%、肝機能障害が30%弱と毒性が強い傾向にあった。とくに、Grade3以上のALT上昇は13.5%に認められており、tucatinib投与の際には注意が必要である。プラセボ対照とはいえ両群間の毒性が明確に異なるため、いわゆるfunctional unblindingが起きて主要評価項目に影響を及ぼした可能性は否定できない。本試験をもって、HER2+MBCに対するTHPによる導入療法の後のHP+tucatinib療法が標準治療の候補となった。一方で、HER2+MBCの1次治療としてはDB-09試験(Tolaney SM, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 29. [Epub ahead of print])の結果からT-DXd+ペルツズマブも今後有力な候補になってくる。HER2+MBCの1次治療はPFSの延長に伴い、治療期間が以前と比べて大幅に延長している。これらの薬剤の使い分けに当たっては、有効性は当然のことながら有害事象の程度、頻度、重篤度も十分に加味して選択する必要がある。5.LORETTA試験(DCIS)最後に日本からのオーラルの演題を紹介する。LORETTA試験は低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)を対象として、非切除かつタモキシフェン(TAM)による治療の有効性を検証した単群検証的試験である。日本臨床試験グループ(JCOG)で実施され、研究事務局は新潟県立がんセンターの神林 智津子先生、発表したのは前JCOG乳がんグループ代表である名古屋市立大学岩田 広治先生である。JCOG1505 LORETTA試験では、浸潤がんを伴わない低リスクDCISと診断された40歳以上の女性を対象として、手術を行わずにTAM 20mg/日を5年間投与する試験である。DCISはコメド壊死を伴わず、核グレードが1~2、ER+かつHER2-であることが低リスクと定義された。3~6ヵ月ごとに評価を実施し、浸潤がんが疑われる、もしくは腫瘍径の増大があれば針生検を実施し、浸潤がんもしくはグレード3 DCISの診断となれば手術が行われた。評価項目は5年累積同側乳房内浸潤がん(IPIC)発生割合であった。IPICは2.5%を期待値、7%を閾値と設定された。これはすなわち、全登録患者におけるIPICが14%以下であれば仮説が検証されることになる予定であった。344例が登録され、337例が適格とされた。登録患者のうち、核グレード1が70%、ER+は100%、PgR+は97%であった。MRIによる腫瘍径は78%で2cm未満であった。中間解析における主要評価項目の評価で18例のIPIC発生があり、本試験は早期中止となった。IPICは腫瘍径が2cm以上の患者で多い傾向が認められた。副次評価項目の5年OSは98.8%、5年対側乳房無病生存率は97.5%と予後は非常に良好であった。6年同側乳房内浸潤がん無発生生存率は89.7%、6年無手術生存率は76.4%であった。2024年に同様の試験であるCOMET試験(Hwang ES, et al. JAMA. 2025;333:972-980.)で、低グレードDCISに対する非切除療法の安全性が示されている。COMET試験ではガイドライン遵守群の同側浸潤がん5.9%に対してアクティブモニタリング群では4.2%であり、アクティブモニタリングの非劣性が示された。LORETTA試験では主要評価項目は達成できなかったものの、同側浸潤がんの発生は当初の予想より著しく多いわけではなく、また予後は非常に良好であることが示された。非切除を希望する一部の患者にとっては、非切除療法がオプションになりうることを示したとも言えるだろう。

67.

EGFR陽性MET増幅進行NSCLC、savolitinib+オシメルチニブがPFS改善/Lancet

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)治療後に進行したEGFR変異陽性かつMET増幅を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、savolitinib+オシメルチニブ併用療法はプラチナ製剤ベースの標準併用化学療法と比較して、良好な忍容性プロファイルを維持しながら無増悪生存期間(PFS)を延長したことが示された。中国・上海交通大学のShun Lu氏らSACHI Study Groupが、第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「SACHI試験」の中間解析の結果を報告した。著者は「本レジメンは、バイオマーカーで選択された本集団における経口治療の選択肢となりうることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。階層的方法を用い最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団でPFSを評価 SACHI試験は中国国内の68病院で実施された。適格対象は、局所進行または転移のあるEGFR変異陽性非扁平上皮NSCLCで、EGFR-TKI無効後にMET増幅が認められた成人患者。研究グループは対象者を、1日1回経口投与のsavolitinib+オシメルチニブ群または静脈投与による化学療法(ペメトレキセド+シスプラチン/カルボプラチン)群に1対1の割合で無作為に割り付けた(両群とも21日サイクル)。双方向ウェブ応答システムを用いて混合ブロックサイズ法を使用した中央無作為化法により割り付け、脳転移の有無、第3世代EGFR-TKIによる治療歴の有無、およびEGFR変異サブタイプに基づく層別化も行った。 主要評価項目は、治験担当医師の評価によるPFS(RECIST v1.1に基づく)。階層的方法を用い、最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団で評価し、有効性が認められた場合にITT集団で評価した。 安全性解析は、試験薬を少なくとも1回投与された全患者を対象に行った。 中間解析のデータカットオフ日は、2024年8月30日であった。savolitinib+オシメルチニブ群のPFSが有意に延長、ITT集団でも 2021年10月15日~2024年8月30日に211例が登録され、savolitinib+オシメルチニブ群(106例)または化学療法群(105例)に無作為化された。137/211例(65%)が第3世代EGFR-TKI未治療(savolitinib+オシメルチニブ群69例、化学療法群68例)であった。savolitinib+オシメルチニブ群の年齢中央値は59.4歳(四分位範囲:54.3~65.8)、女性62例(58%)、男性44例(42%)であり、化学療法群はそれぞれ61.9歳(56.3~69.1)、55例(52%)、50例(48%)であった。全被験者がアジア人。 第3世代EGFR-TKI未治療集団における評価で、PFS中央値は、savolitinib+オシメルチニブ群が化学療法群に対して有意に延長した(9.8ヵ月[95%信頼区間[CI]:6.9~12.5]vs.5.4ヵ月[4.2~6.0]、ハザード比[HR]:0.34[95%CI:0.21~0.56]、p<0.0001)。 ITT集団においてもPFSが有意に延長した(8.2ヵ月[95%CI:6.9~11.2]vs.4.5ヵ月[3.0~5.4]、HR:0.34[95%CI:0.23~0.49]、p<0.0001)。 Grade3以上の治療中に発現した有害事象は両群で同程度であり、savolitinib+オシメルチニブ群60/106例(57%)、化学療法群55/96例(57%)であった。

68.

zanidatamab、HER2陽性胃がん1次治療の新たな選択肢となるか(HERIZON-GEA-01)

 BeOne(旧:BeiGene)は2026年1月6日にプレスリリースを出し、同社が開発する抗HER2二重特異性抗体zanidatamabとPD-1阻害薬チスレリズマブに化学療法を加えた併用療法が、HER2陽性胃がんの1次治療として有用な結果を示したと発表した。HER2陽性胃がん1次治療は長くトラスツズマブ+化学療法が標準治療だったが、新たな選択肢となる可能性がある。日本も参加するこのHERIZON-GEA-01試験の中間解析結果は、2026年1月8~10日に開催された米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2026)でも報告されている。・試験デザイン:国際共同非盲検第III相試験・対象:未治療の進行・転移、HER2陽性胃/胃食道腺がん:914例・試験群:zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ:302例     zanidatamab+化学療法:304例・対照群:トラスツズマブ+化学療法(トラスツズマブ群):308例・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は26ヵ月だった。・PFS中央値は、トラスツズマブ群8.1ヵ月に対し、zanidatamab+化学療法群は12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.65、p<0.0001)、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群は12.4ヵ月(HR:0.63、p<0.0001)だった。・OS中央値は、トラスツズマブ群19.2ヵ月に対し、zanidatamab+化学療法群24.4ヵ月(中間解析では統計的有意差なし)、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群26.4ヵ月(HR:0.72、p=0.0043)だった。・PFSおよびOSの有益性はPD-L1発現レベルに関係なく、一貫して認められた。なお、登録患者のおよそ3分の1がPD-L1<1%であった。・ORRはzanidatamab+化学療法群が69.6%、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群が70.7%、DOR中央値はzanidatamab+化学療法群が14.32ヵ月、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群が20.7ヵ月だった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAEs)はトラスツズマブ群の59.6%、zanidatamab+化学療法群の59.0%、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群の71.8%で発生した。主な有害事象は下痢、低カリウム血症、貧血などだった。 同社はリリース内のコメントで「HERIZON-GEA-01試験の結果は有望であり、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群のOS中央値は2年を超え、転移HER2陽性胃がんの治療における大きな進歩を示した。HER2陽性胃がんに対する免疫チェックポイント阻害薬のこれまでの研究とは異なり、チスレリズマブの追加は、PD-L1が1%未満の場合でも有意な活性を示し、このサブグループに対する潜在的な新たな治療選択肢を示唆するとともに、PD-L1が1%以上の患者の選択肢を広げるものだ」とした。

69.

高齢がん患者、補助的医療従事者の介入で急性期医療利用が減少/JAMA

 レイヘルスワーカー(補助的医療従事者)主導による症状評価の介入は、急性期医療の利用を減少させるために広く実現可能なアプローチとなりうることが、米国・スタンフォード大学のManali I. Patel氏らがカリフォルニア州とアリゾナ州の地域がん外来クリニック43施設で実施した無作為化臨床試験の結果で示された。高齢者において、がん症状に対する治療は十分にされていないことが多い。一方で、効果的な早期発見および介入も限定的なままであった。JAMA誌オンライン版2025年12月30日号掲載の報告。75歳以上のがん患者、レイヘルスワーカー介入vs.通常ケアで急性期医療の利用を比較 本検討は、固形がんまたは血液がんの新規診断または画像検査や生検により確認された新規再発・進行がんを有する75歳以上のメディケアアドバンテージ受給者を対象に行われた。 保険請求データを用い、参加施設において2週間以内にがん治療を受ける予定の患者を特定して、電子カルテで適格性をスクリーニングし電話で同意を得た後、症状評価+通常ケア群(症状評価群)と通常ケア群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間追跡調査を行った。研究者、臨床医、統計解析担当者は割り付けに関して盲検化された。 症状評価群では、通常ケアに加えて、レイヘルスワーカーがエドモントン症状評価システムを用いて電話による症状評価を、転移のあるがん・化学療法中・症状スコアが4以上の患者については週1回、それ以外は月1回行い、症状評価で症状スコアが4以上または2点以上悪化した場合は、同日中にadvanced practice practitioner(APP、registered nurse practitioner[登録ナースプラクティショナー:NP]またはフィジシャンアシスタント:PAのいずれか)に照会し、必要な介入が行われた。 主要アウトカムは、試験登録後12ヵ月以内の救急外来受診および入院とした。副次アウトカムは、総医療費、ホスピスの利用、12ヵ月以内に死亡した患者における死亡前30日間の救急外来受診および入院、ホスピスの利用、急性期病院での死亡とした。介入により、救急外来受診、入院、総医療費が減少 2020年11月~2023年10月に416例が登録された(データ解析は2024年12月12日~2025年2月15日)。年齢中央値は82歳(範囲:75~99)、男性219例(52.6%)、Stage4が171例(41.1%)、再発が27例(6.4%)であった。リスク調整因子の平均スコアは2.70(SD 1.77)であった。 症状評価群は対照群と比較し、救急外来受診のオッズが53%低く(救急外来受診回数1回以上:61例[30.5%]vs.103例[47.7%]、補正後オッズ比[OR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.32~0.71)、入院のオッズは68%低く(入院回数1回以上:37例[18.5%]vs.86例[39.8%]、OR:0.32、95%CI:0.20~0.51)、患者1人当たりの平均総医療費が1万2,000ドル低かった(p=0.01)。 12ヵ月の追跡期間中に142例(各群71例)が死亡した。症状評価群では、死亡前30日以内の救急外来受診のオッズが68%低く(OR:0.32、95%CI:0.12~0.88)、急性期病院での死亡オッズは75%低下した(OR:0.25、95%CI:0.08~0.77)。

70.

高リスク早期TN乳がん、術後EC+PTXにCBDCA追加で3年DFS・OS改善/BMJ

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する術後補助療法として、エピルビシン+シクロホスファミド(EC療法)後の週1回パクリタキセル(PTX)投与にカルボプラチン(CBDCA)を追加することで、新たな安全性の懸念なく早期再発リスクが低下し、生存アウトカムが有意に改善したことが示された。中国・復旦大学上海がんセンターのYin Liu氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CITRINE試験」の結果を報告した。高リスクの早期TNBCの予後は不良であり、術後補助療法の強化戦略の最適化が依然として必要とされていたが、TNBCに対する術後補助療法としてのアントラサイクリン/タキサン系化学療法へのカルボプラチン追加の有益性については、意見が分かれていた。BMJ誌2025年12月23日号掲載の報告。中国の復旦大学上海がんセンターで実施 研究グループは、新たに診断された切除可能な片側浸潤性TNBCで、手術後の切除断端陰性、病理学的に局所リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性でありKi-67が50%以上の18~70歳の女性患者を、カルボプラチン群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 カルボプラチン群は、エピルビシン+シクロホスファミドを2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルとカルボプラチンを1サイクル28日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。対照群は、エピルビシン+シクロホスファミドを3週または2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルを1サイクル21日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。 主要評価項目はITT集団における無病生存期間(DFS)、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)および安全性であった。3年DFS、RFS、DDFSおよびOSが改善 2020年3月~2022年3月に808例が登録され無作為化された(カルボプラチン群404例、対照群404例)。このうち、カルボプラチン群の1例が治療開始前に同意を撤回した。 データカットオフ日(2025年3月10日)時点で、追跡期間中央値44.7ヵ月において推定3年DFS率は、カルボプラチン群92.3%、対照群85.8%であった(補正前ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.43~0.95、p=0.03)。しかし、比例ハザード仮説の検証では仮説が成立しないことが判明し(p=0.02)、区分ハザードモデルによる解析の結果、HRが時間経過とともに変化することが示された(0~12ヵ月のHR:0.31[95%CI:0.13~0.73]、12~36ヵ月のHR:0.65[95%CI:0.39~1.09]、36ヵ月以降のHR:1.98[95%CI:0.69~5.69])。 副次エンドポイントについては、カルボプラチン群は対照群と比較し、3年RFS率(93.8%vs.88.3%、HR:0.59[95%CI:0.37~0.93]、p=0.02)、3年DDFS率(94.8%vs.89.8%、0.61[0.37~0.98]、p=0.04)、および3年OS率(98.0%vs.94.0%、0.41[0.20~0.83]、p=0.01)の改善が認められた。 Grade3/4の治療関連有害事象の発現割合は、カルボプラチン群で66.7%(269/403例)、対照群で55.0%(222/404例)であった。治療に関連した死亡は認められなかった。

71.

PD-L1陰性転移トリプルネガティブ乳がん1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカン(解説:下村昭彦氏)

オリジナルニュース免疫療法の対象とならない進行TN乳がんの1次治療、SGがPFS延長(ASCENT-03)/ESMO2025 PD-L1陰性転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療としては、長らくタキサンを中心とした化学療法が実施されてきた。2次治療以降ではTROP2 ADCやHER2低発現に対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が用いられるようになり、TNBCの治療は大きく変化している。これらADCの1次治療における有効性が期待されてきた。 ASCENT-03試験はPD-1/PD-L1阻害薬の対象とならない転移TNBCを対象として、サシツズマブ ゴビテカン(SG)と化学療法を比較した第III相試験である(Cortes J, et al. N Engl J Med. 2025;393:1912-1925.)。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)中央値において9.7ヵ月vs.6.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間:0.50~0.77、p<0.0001)と統計学的有意にSG群で良好であった。一方、全生存期間(OS)中央値は21.5ヵ月vs.20.2ヵ月(HR:0.98)とSGの優越性は示されなかった。そもそもTNBCのOS中央値は15ヵ月程度であり(Deluche E, et al. Eur J Cancer. 2020;129:60-70.)対照群のOSそのものも、かつてよりかなり良くなっている。これは、2次治療以降でOSを延長することが示された複数の薬剤(SGやT-DXd)が使用可能になったためであると考えられる(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.、Modi S, et al. N Engl J Med. 2022;387:9-20.)。 一方で、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で同時に発表された同様にPD-L1陰性TNBC1次治療としてのダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)がPFSならびにOSの延長を有意に示したことから、その結果の不一致について検討が必要である。後治療としてADCが使えることは両試験とも同じであることを考えると、OSの結果の違いには何らかの薬剤としての違いがある可能性がある。ホルモン受容体陽性乳がんの2次治療では、TROPiCS-02試験でSGがOSの延長を示し、Dato-DXdはTROPION Breast-01試験でOSの延長を示せなかったことから、サブタイプによってその結果が逆転している(Bardia A, et al. J Clin Oncol. 2025;43:285-296.、Rugo HS, et al. Lancet. 2023;402:1423-1433.)。単純にOSの結果が安定するほどの薬効がない可能性もあるが、PFSは確実に延長していることから、今後は後治療の影響やバイオマーカーなどの探索が必要である。

72.

第300回 新調したての精子で体外受精が成功しやすくなる

新調したての精子で体外受精が成功しやすくなる射精してから間もない新調したての精子を使った体外受精(IVF)がどうやら妊娠の成功を増やすようです1,2)。体外受精では、精子を採取する2~7日前に前もって射精しておくことがたいてい男性に指示されます。できるだけ健康な精子が体外受精で受精するようにするためです。精巣で精子がより長く留まるとさまざまな内なる毒素、とくには活性酸素種(ROS)や、汚染物質などの外襲に見舞われる期間も長くなります。それが原因で精子はDNAを傷めて役目を果たせないようになるかもしれません。実際、精巣での滞在期間がより短い精子ほど質が良いのは本当のようです。2年ほど前のメタ解析では、前の射精から4日間以内の不妊男性の精液の質の改善がみられています3)。3年ほど前の別のメタ解析では前の射精後すぐの4時間以内の精子はDNA損傷が少なく、よく動くという結果が得られています4)。さらには、射精控えの期間が短いほどどうやら妊娠しやすくなることが、卵子に精子を直に注入する体外受精(intracytoplasmic sperm injection:ICSI)の1,691回の取り組みを調べた試験で示されています5)。しかし、精子が卵子に泳いで行く昔ながらの体外受精(conventional in vitro fertilization:c-IVF)で射精控えを短くすることに同様の取り柄があるかどうかはよくわかっておらず、c-IVFに最適な射精控えの期間も定まっていません。そこで中国の吉林大学第一病院(First Hospital of Jilin University)のYueying Zhu氏らは、同病院でc-IVFに臨むパートナー500組を募って、射精控え期間を短くすることに取り柄があるかどうかを無作為化試験で調べました。それらの男性はc-IVFの精子回収が先立つ2日以内の射精後の群(射精控え短期群)と標準の2~7日後の群(標準群)に1対1の割合で割り振られました。最終的に射精控え短期群の226組と標準群の227組が試験を完了しました。幸いにして射精控え短期群の妊娠継続(12週間以上の胎児の心臓の活動)達成率は標準群より有意に高く、それぞれ46%と36%でした(p=0.030)。射精から精子回収までの期間が短いことは精子不足でのICSI移行を増やすかもしれないとの懸念は当たらず、精子不足でのICSI移行率は両群で似たり寄ったりでした(それぞれ3%と2%)。今回報告された結果は試験の全容の一部にすぎません。被験者の経過の記録は進行中で、肝要の転帰である生児出生率を含むほかの評価項目が後に報告されます1)。盛りだくさんとはいえ今回の試験は1つの病院で実施されたものであり、多施設でより多くの被験者を募る試験でより短期の射精控えの効果を調べることが今後必要と著者は言っています。まだまだ調べることは多そうですが、より直前に射精しておくことが好調な精子を得る良い手段であることを今回の結果はひとまず示したようです2)。体外受精をしないパートナーの妊娠もそういう新調したての精子で改善するかどうかも今後の試験で判明しそうです。乗り物酔いの薬を米国承認身近な困りごとの薬を米国がここ40年で初めて承認しました6)。承認されたのは乗り物酔いの嘔吐を防ぐ飲み薬です。米国の製薬会社Vanda Pharmaceuticalsが開発しました。商品名はNereusです。Nereusは吐きそうな動き(motion)がある出来事(event)の1時間ほど前に1回きり経口服用します7)。その成分tradipitantは化学療法の悪心嘔吐の予防に使われる薬と同様にニューロキニン遮断作用を担います。米国の沿岸で被験者に船に乗ってもらった2つの第III相試験(Motion SyrosとMotion Serifos)でNereusの効果が裏付けられています。それらの試験で同剤投与群の嘔吐の発生率はプラセボ群の半分足らずで済みました8,9)。向こう数ヵ月のうちにNereusを米国で発売するとVanda社は同剤承認を知らせる先月末30日のニュースに記しています6)。参考1)Trigger-Day Ejaculation Improves Conventional in vitro fertilization Outcomes: A Prospective Randomized Controlled Trial. The Lancet on SSRN. 2025 Dec 2.2)IVF success may depend on how long men abstain from ejaculation / NewScientist3)Du C, et al. Andrology. 2024;12:1224-1235.4)Barbagallo F, et al. J Clin Med. 2022;11:7303.5)Gupta S, et al. J Hum Reprod Sci. 2021;14:273-280.6)Vanda Pharmaceuticals Announces FDA Approval of NEREUSTM(tradipitant)for the Prevention of Vomiting Induced by Motion7)NEREUS PRESCRIBING INFORMATION8)Polymeropoulos VM. et al. Front Neurol. 2025;16:1550670. 9)Vanda Pharmaceuticals Reports Positive Results from a Second Phase III Study of Tradipitant in Motion Sickness / PRNewswire

73.

がん免疫療法、投与時刻が効果に影響

 がん免疫療法の効果は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与する時刻によって異なる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。進展型小細胞肺がん(extensive-stage small-cell lung cancer;ES-SCLC)患者を対象にしたこの研究では、15時より前にICIの点滴を受けた患者では、15時以降に点滴を受けた患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に長かったことが示されたという。中南大学(中国)湘雅医学院付属腫瘍病院のYongchang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に12月8日掲載された。 Zhang氏は、「点滴を行う時刻の調整は、生存期間を延ばすための安価な方法となる可能性がある。追加費用も不要で、さまざまな医療現場で容易に実施できる簡単な介入だ」と述べている。 この研究では、2019年5月から2023年10月までの間にES-SCLCと診断され、化学療法に抗PD-L1抗体(アテゾリズマブまたはデュルバルマブ)を併用する一次治療を受けた397人を対象に、ICIの投与時刻が効果に影響するのかどうかが検討された。ICIの投与時刻は、各患者の最初の4サイクルのICI投与時刻の中央値とした。 解析の結果、ICIの効果を最大限に高める最適な投与時刻のカットオフは15時であることが示された。15時より前にICI投与を受けた患者では、15時以降に投与を受けた患者と比べて、PFSとOSが有意に長かった。多変量解析では、15時より前の早い投与時刻はPFSとOSのいずれにおいても独立した予後因子であることが確認され、病勢が進行するリスクは約52%(調整ハザード比0.483)、死亡リスクは約63%(同0.373)低下すると推定された。 Zhang氏は、「この研究結果は即時的な臨床的意義があり、現在のES-SCLC治療のプロトコルに変革をもたらす可能性を秘めている」と述べている。 研究グループは、ICIの投与時刻による効果の差は、体内時計(概日リズム)が免疫反応を含むさまざまな生体機能に影響するためだと考えている。それでも、概日リズムががん治療に及ぼす影響を理解し、患者の概日リズムを治療に最大限に活かす方法を確立するには、さらなる研究が必要だと指摘している。 研究グループは、「今回の知見は、生体リズムとICIによる治療の重要な相互作用を示しており、治療戦略の最適化に向けた新しい可能性を開くものだ」と結論付けている。(HealthDay News 2025年12月9日)

74.

化学療法中のワクチン接種【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第6回

化学療法中のがん患者は、化学療法の影響や原疾患により免疫力が低下しているため、感染症に罹患しやすく重症化しやすい傾向があります。国内のガイドラインやASCOガイドラインおいても、がん患者の治療やケアにおいて適切なワクチン接種がもたらす良い影響が述べられています。今回は固形がん化学療法中の患者を想定した、5つの主なワクチンの特徴や効果、推奨される接種時期についてお話しします。1)インフルエンザワクチン背景がん患者がインフルエンザに罹患した場合、死亡のリスクが高いことが複数の研究から報告されています。とくに肺がんや血液腫瘍患者はより重症化するリスクが高いことが知られています。インフルエンザワクチンは、A型(H3N2・H1N1)とB型の3株を含む混合ワクチンであり、世界的流行株とWHO推奨株に基づき毎年選定されるため、毎年の接種が推奨されます。健康な人における有効性は70~90%程度とされていますが、流行株との一致度により変動します。予防効果と安全性複数の研究から、血清学的な反応は健康な人と比較して劣る可能性はあるものの、予防医学的な意義は明らかであることがメタアナリシスにより示されています。近年、高用量インフルエンザワクチン(商品名:エフルエルダ筋注)が承認され、米国では65歳以上のがん患者に高用量ワクチン接種が推奨されています。化学療法中のインフルエンザワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。注意点リツキシマブやオファツムマブ、オビヌツズマブなどの治療後は、少なくとも半年間はワクチン効果が期待できない可能性があります。また、免疫抑制薬を服用中の患者でも効果が低い場合があります。接種時期インフルエンザワクチンは10~12月までの接種が推奨されています。化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種するのが理想ですが、治療中に流行期を迎える場合は接種時期を調整する必要があります。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。2)肺炎球菌ワクチン背景日本の成人市中肺炎では、肺炎球菌が最も頻度の高い起炎菌です。65歳以上や糖尿病・心不全などの基礎疾患を有する場合には、重症感染症を起こしうるため、肺炎球菌ワクチン接種が推奨されています。国内データでは、侵襲性肺炎球菌感染症の死亡率は約19%と高く、患者の約7割は65歳以上です。また、固形がん患者や脾摘患者が肺炎球菌感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが高いことが報告されています。予防効果と安全性肺炎球菌ワクチンによる抗体価の上昇は、化学療法中であっても健康な人と同等であると報告されています。化学療法中の肺炎球菌ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。ワクチンの特徴ポリサッカライドワクチン(ニューモバックス[PPSV23]:定期接種)と結合型ワクチン(キャップバックス[PCV21]、プレベナー20[PCV20]、バクニュバンス[PCV15])の2種類があります。免疫力をつける力(免疫原性)はPCV21/20/15のほうがPPSV23より高いです。日本ワクチン学会・日本感染症学会・日本呼吸器学会では、がん患者へのPCV20の1回接種もしくはPCV15とPPSV23の連続接種を推奨しています。画像を拡大する接種時期肺炎球菌感染症は1年を通して発生するため、季節を問わず接種が可能です。化学療法開始前(少なくとも2週間前)に接種、もしくは化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。3)帯状疱疹ワクチン背景水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)初感染は水痘として発症し、感染後に後根神経節に不活性状態で長期間潜伏します。その後、加齢・疲労・病気などで免疫が弱まるとウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。症状は片側に帯状に広がる発疹と刺すような痛みが典型的で、約10%の症例で帯状疱疹後神経痛が発生し、QOLを低下させる原因になります。免疫不全のない患者と比較して、固形がん患者は約5倍、血液がん患者は約10倍帯状疱疹の頻度が高いことが報告されています。画像を拡大する安全性化学療法中の帯状疱疹ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。生ワクチンは、免疫低下患者(がん薬物療法中やステロイド使用中)には接種不可です。接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。4)新型コロナ(COVID-19)ワクチン背景がん患者はCOVID-19に罹患すると重症化しやすいため、ワクチン接種の利益は大きいです。そのため、基本的には接種を検討すべきとされています。ただし、がんの種類や治療内容、免疫状態により、効果や副反応が異なる可能性があります。治療のタイミングにより接種時期を調整したほうがよい場合もあります。副反応が治療の有害事象と区別しにくい場合があるため注意が必要となります。総じて、患者ごとの状況に応じて主治医と相談して判断することが重要と考えられます。予防効果と安全性ワクチンを接種したがん患者約3万例を対象とした観察研究が報告されており、がん患者であってもCOVID-19ワクチンを2回接種することで感染リスクが低下することが示されています。一方でワクチンの感染リスク低下効果は58%(非がん患者:90%以上)であり、がん患者ではワクチンの効果が減弱する可能性が示唆されています。とくにワクチン接種前6ヵ月以内に化学療法を受けた場合はワクチンの効果が低いことが報告されています。定期的な追加接種が推奨され、感染時は早期の受診と抗ウイルス薬治療が重要となります。接種時期基本的に最新の推奨スケジュールに従った接種が推奨され、明確な最適時期はまだ不明ですが化学療法の開始前に接種して、化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期を避けて接種することが望ましいです。抗CD20抗体(リツキシマブやオビヌツズマブなど)治療後半年以内はワクチンの効果が乏しいことが示されています。注意事項ワクチン接種により、接種側の腋窩・鎖骨上窩・頸部リンパ節の腫大が報告されており、PETでも集積を認めることがあり、転移との鑑別が必要になる場合があります。画像検査の際にはワクチン接種歴と部位の情報を得ておくことが望ましいです。5)RSウイルスワクチン背景高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患、がんなど)、免疫機能が低下している人は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高く、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります。また、RSウイルス感染症は、喘息、COPD、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあり、日本では約6万3,000例の入院と約4,500例の院内死亡が推定されています。米国での大規模データ研究では、がん患者がRSウイルス感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが2倍以上高いことが報告されています。画像を拡大する接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。1)Kamboj M, et al. JCO Oncol Pract. 2024;20:889-892. 2)日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会. 新型コロナウイルス感染症とがん診療について(医療従事者向け)Q&A:2021.3)国立がん研究センター:がん情報サービス4)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版:2022.5)アレックスビー筋注用添付文書6)アブリスボ筋注用添付文書講師紹介

75.

HR+/HER2-転移乳がん内分泌療法後の1次治療、SGはPFS延長せず(ASCENT-07)/SABCS2025

 局所進行切除不能または転移のあるホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がん患者における内分泌療法(ET)後の1次治療として、サシツズマブ ゴビテカン(SG)は医師選択の化学療法と比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長を示さなかった。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのKomal Jhaveri氏が、日本も参加している第III相ASCENT-07試験の主要解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。・試験デザイン:第III相非盲検無作為化試験・対象:局所進行切除不能または転移のあるHR+/HER2-乳がん患者(進行がんに対する化学療法歴がなく、以下のうち1つ以上に該当:2ライン以上のET±標的療法後に進行/1次治療としてのET±CDK4/6阻害薬開始後<6ヵ月に進行/術後ET+CDK4/6阻害薬開始後<24ヵ月に再発し追加のETの対象外)・試験群:SG(21日サイクルの1日目と8日目に10mg/kg点滴静注) 456例・対照群:医師選択治療(カペシタビンもしくはパクリタキセルもしくはnab-パクリタキセル) 234例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)、QOL[その他の副次評価項目]治験責任医師評価によるPFS、ORR、安全性など・観察期間中央値:15.4ヵ月(データカットオフ:2025年9月15日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスが取れており、年齢中央値はSG群57歳vs.対照群58歳、HER2発現状態はIHC 0が42%vs.43%、転移の診断から無作為化までの期間中央値は23.9ヵ月vs.26.2ヵ月、内臓転移ありが89%vs.88%、肝転移ありが70%vs.67%であった。・前治療歴については、治療ライン中央値はともに2ライン、ET+CDK4/6阻害薬治療歴ありがSG群91%vs.対照群92%、CDK4/6阻害薬による治療期間≦12ヵ月が43%vs.42%であった。・BICRによるPFS中央値は両群で8.3ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.69~1.05、p=0.130)で、SG群における統計学的に有意な改善は認められなかった。・BICRによるPFSのサブグループ解析の結果は、全体集団とおおむね一致していたが、HER2 IHC 0の患者ではSG群で数値的に良好な傾向を示した。・治験責任医師評価によるPFS中央値はSG群8.4ヵ月vs.対照群6.4ヵ月(層別HR:0.78、95%CI:0.64~0.93、名目上のp=0.008)であり、SG群で数値的な改善傾向を示した。・OSデータは未成熟であり(maturity:27%)、OS中央値は両群ともに未到達であったが、SG群で良好な傾向が示された(HR:0.72、95%CI:0.54~0.97、名目上のp=0.029)。・試験治療中止後の次治療は、ADCがSG群32%vs.対照群61%、化学療法が84%vs.66%などであった。・BICRによるORRはSG群37%(CR:1%)vs.対照群33%(CR:0%)、奏効期間中央値は12.1ヵ月vs.9.3ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はSG群72%vs.対照群48%で発現し、TEAEによる治療中止は3%vs.7%であった。SG群の安全性プロファイルはこれまでの報告と一致しており、多く発現したGrade3以上のTEAEは、好中球減少症(56%)、白血球減少症(14%)、貧血(10%)などであった。 Jhaveri氏は、TROPiCS-02試験に基づき、SGはHR+/HER2-転移乳がんに対する内分泌療法および化学療法後の標準治療として引き続き位置付けられるとした(本邦では2025年12月25日現在未承認)。なお、ASCENT-07試験は進行中で、OSが継続して評価される予定。

76.

再発・難治性濾胞性リンパ腫、R2療法+エプコリタマブでORR・PFS改善/Lancet

 再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者において、レナリドミド+リツキシマブの2剤併用療法(R2)と比較して、エプコリタマブ+R2の3剤併用療法は、奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)に関して優越性が認められた。エプコリタマブ+R2はR2と比較してGrade3以上の有害事象の発現割合が高かったが、有害事象は管理可能で、個々の既知の安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのLorenzo Falchi氏らが、30ヵ国189施設で実施した国際共同無作為化非盲検第III相試験「EPCORE FL-1試験」の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、エプコリタマブ+R2を濾胞性リンパ腫の2次治療以降における新たな標準治療と位置付けるものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月7日号掲載報告。R2へのエプコリタマブ上乗せの有効性と安全性を検証 研究グループは、18歳以上、ECOG PSスコア0~2で、抗CD20抗体と化学療法を併用した1レジメン以上の治療歴のあるステージII~IV(以前の分類ではGrade1~3A)の再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者を、エプコリタマブ+R2群またはR2のみ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 28日間を1サイクルとして、エプコリタマブはサイクル1~3では週1回、サイクル4~12では4週間ごとに、2~3ステップ漸増により最長12サイクル皮下投与した。レナリドミドは20mg 1日1回を最長12サイクル経口投与し、リツキシマブはサイクル1では週1回、サイクル2~5では4週ごとに375mg/m2を最長5サイクル静脈内投与した。 主要評価項目は、独立判定委員会によるLugano基準に基づくORRおよびPFSであった。 統計解析はORR→PFSの順に階層的検定を行い、有意水準はORRが片側0.005、PFSは片側0.0023とした。 2025年5月24日のデータカットオフ日までに2回の中間解析が実施され、本報告はPFSイベントの78%が発生した後に実施された第2回中間解析に基づくものであった。エプコリタマブ+R2群でORRは95%、PFSは中央値未到達 2022年9月20日~2025年1月10日に、スクリーニングを受けた668例のうち488例が無作為化された(エプコリタマブ+R2群243例、R2群245例)。 本試験は主要評価項目を達成し、エプコリタマブ+R2群のR2群に対する優越性が検証された。 追跡期間中央値14.8ヵ月(四分位範囲:11.4~19.0)において、ORRはエプコリタマブ+R2群95%(95%信頼区間[CI]:92~97)、R2群79%(74~84)(群間差:16%、95%CI:10~22、p<0.0001)であった。 また、PFS中央値は、エプコリタマブ+R2群では未到達、R2群では11.7ヵ月(95%CI:11.1~15.1)であり、エプコリタマブ+R2群で有意に延長した(ハザード比:0.21、95%CI:0.14~0.31、p<0.0001)。16ヵ月PFS率は、エプコリタマブ+R2群で良好であった(85.5%vs.40.2%)。 Grade3以上の有害事象の発現率は、エプコリタマブ+R2群90%(219/243例)、R2群68%(161/238例)であった。エプコリタマブ+R2群におけるサイトカイン放出症候群は軽度(Grade1:28例[21%]、Grade2:7例[5%])かつ管理可能であり、全例で回復した。

78.

第295回 「効果が乏しい医療」に新たに「腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン」追加、近い将来査定の対象に

「神経障害性疼痛ではない腰痛には効かない」と国が判定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、茨城県桜川市で有機農業を営む大学の先輩宅へ農作業の支援に行ってきました。筑波大学近くの公園で落ち葉を拾い集め、軽トラックに乗せて農園まで運び、腐葉土にする準備を行いました。落ち葉を竹製の手箕(てみ)で拾い集めるという単純な作業です。しかし、落ち葉を拾う時の中腰の姿勢はつらく、目一杯落ち葉を詰めたネットの袋は15~20kgほどの重さになります。中高年にとってこうした冬の屋外での農作業は、腰痛悪化やぎっくり腰再発などと隣合わせで、それなりのリスクを伴うものです。とは言え、参加者全員なんとか無事に20袋ばかりの落ち葉を拾い集めることができ、ご褒美に茨城・大洗沖で採れたアンコウの鍋をご馳走してもらいました。さて今回はプレガバリンの話題を取り上げます。厚生労働省は11月27日に開いた社会保障審議会医療保険部会で、「効果が乏しい医療」に神経障害性疼痛ではない「非神経障害性腰痛症」に対するプレガバリン(商品名:リリカなど)の処方を追加する案を出し、同部会は了承しました。また、医療費の適正化に向け、「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」を今後も探して評価を検討していく方針も示されました。とくに整形外科で多用されており、私もかつて「四十肩」の治療で、NSAIDsに追加する形で処方されたこともあるプレガバリンですが、「神経障害性疼痛ではない腰痛には効かない」と国が判定を下したわけで、現場の診療に少なからぬ影響が出そうです。「十分な効果があるというエビデンスがない医療といったものを保険対象から外すという見直しも図っていくべき」と医療保険部会「効果が乏しい医療」とは、2023年に策定された2024~29年度の第4期医療費適正化計画の中で「新たな目標の設定」として盛り込まれた「医療資源の効果的・効率的な活用」で挙げられた「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」のことを指します。同計画策定時、「効果が乏しい医療」としては「急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方」が挙げられていました。その後、医療保険部会では「無価値医療、すなわち効果があるというエビデンスが十分ない医療や、低価値医療、これは仮に効果があるというエビデンスがあったとしても、その効果が小さく、つまり十分な効果があるというエビデンスがない医療といったものを保険対象から外すという見直しも図っていくべき」といった意見が出され、さらなる探索・検討が行われてきました。その結果、今回、「腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン」が新たに追加されることになったわけです。今後、効果が乏しい医薬品として都道府県が患者や医師への周知を行うことになります。2028年度診療報酬改定での取り扱いについて中医協で審議予定医療保険部会に出された厚労省の資料には、「プレガバリン(商品名 リリカ錠)の効果・効能は神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛。薬理作用はカルシウムチャネルα2δ遮断薬。神経障害性疼痛では有効なケースもあるが、非神経障害性腰痛では効果が限定的。めまい・眠気などの副作用が比較的多い薬と一般的に言われている。先行研究では、腰痛に対するプレガバリン処方が効果が乏しい医療として指摘されている」とその理由が書かれています。この決定がすぐさま「保険診療での査定」につながるわけではありませんが、今後、関係学会と調整後、次々期、2028年度診療報酬改定での取り扱いについて中央社会保険医療協議会で審議が行われ、審議結果に即した診療報酬上の対応が決定されることになります。将来的には神経障害性疼痛ではない腰痛症には処方できなくなると考えられます。なお、医療費適正化計画基本方針は次のように変更されます(下線部追記)。第1 都道府県医療費適正化計画の作成に当たって指針となるべき基本的な事項一 全般的な事項(略)二 計画の内容に関する基本的事項1 (略)2  医療の効率的な提供の推進に関する目標に関する事項(1)~(2)(略)(3)急性気道感染症及び急性下痢症の患者に対する抗菌薬の処方、神経障害性疼痛を除く腰痛症の患者に対するプレガバリンの処方といった効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療や白内障手術及び化学療法の外来での実施状況などの医療資源の投入量に地域差がある医療については、個別の診療行為としては医師の判断に基づき必要な場合があることに留意しつつ、地域ごとに関係者が地域の実情を把握するとともに、医療資源の効果的かつ効率的な活用に向けて必要な取組について検討し、実施していくことが重要である。(略)プレガバリンの年間薬剤費は約60億円との推計、その半分の30億円が削減目標日経メディカルなどの報道によれば、プレガバリンの年間薬剤費は約60億円と推計されており、その半分の30億円が削減目標になる見込みだそうです。第4期医療費適正化計画(2024~29年度)では、急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方の適正化で約270億円、入院で行う白内障手術や化学療法の適正化で約106億円の削減を見込んでおり、プレガバリンの削減分はそれに加わる形となります。プレガバリンは、日本ではごく軽症の痛みに対しても多く処方されている薬です。神経障害性疼痛の薬となっていますが、そんなことお構いなく、整形外科などで漫然と投与されている印象です。私自身、近所の整形外科で「四十肩」に処方されたときは驚きました。「効くのかな」と思い数日飲んでみたのですが、顕著なふらつきが出て、怖くなって止めました。その後、「四十肩」は3ヵ月余りで自然と治りました。国は「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」を今後も探し出し、医療費適正化計画にも盛り込んでいく計画とのことですが、プレガバリンは、その副作用から転倒骨折や交通事故の危険性も高く、もっと早くに”適正化”が行われてしかるべきだった気がします。「効果が乏しい医療」のさらなる探索と検討に期待したいと思います。参考1)第4期医療費適正化計画における医療資源の効果的・効率的な活用について/厚生労働省

79.

cT1-2N0乳がんにおけるSLNB省略、5年RRFSで非劣性(BOOG2013-08)/SABCS2025

 乳房温存療法(乳房温存手術および全乳房照射)を受けるcT1-2N0乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検(SLNB)の省略を検討したBOOG2013-08試験で、SLNB非施行群が5年領域無再発生存(RRFS)率においてSLNB施行群に非劣性を示した。オランダ・Maastricht University Medical CenterのMarjolein L. Smidt氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 BOOG2013-08試験は、2015~22年にオランダの25施設で実施された多施設共同非劣性無作為化第III相試験である。・対象:乳房温存療法で治療予定のcT1-2N0の片側浸潤性乳がんの女性・試験群(非施行群):SLNB非施行・対照群(施行群):SLNB施行・評価項目:[主要評価項目]5年RRFS率(絶対差の両側95%信頼区間[CI]が5%未満の場合に非劣性と定義)[副次評価項目]局所再発率、対側乳がん発生率、遠隔転移・死亡、5年遠隔無再発生存期間(DDFS)率など 主な結果は以下のとおり。・計1,733例が登録され1,572例がPPS解析の対象となった(施行群:748例、非施行群:824例)。平均年齢は施行群61.6歳、非施行群61.4歳で、89%が50歳以上であった。82%がcT1で、82.8%が腫瘍グレード1/2であった。乳がんのサブタイプはHR+/HER2-が最も多かった。施行群におけるセンチネルリンパ節転移陰性は86.3%で、微小転移が6.0%、肉眼的転移が7.7%に検出された。術後療法については、なしが52%、化学療法が約12%、分子標的療法が4~5%、内分泌療法は約44%であった。・5年RRFS率は、施行群96.6%(95%CI:95.2~98.0)、非施行群94.2%(同:92.4~96.0)で、絶対差2.35%(同:0.06~4.72)で5%の非劣性マージンを超えず、ITT解析も同様であった。・5年領域再発(RR)率は、施行群0.6%(95%CI:0.0~1.1)、非施行群1.1%(同:0.4~2.0)であり、絶対差は0.5%(同:-0.3~1.7)であった。・5年DDFS率は、施行群96.0%(95%CI:94.4~97.6)、非施行群92.9%(同:90.9~94.9)であり、絶対差は3.3%であった。 Smidt氏は「本試験の対象患者のほとんどが50歳以上、HR+/HER2-、腫瘍グレード1/2のcT1乳がんであり、今回の結果はこの集団においてはSLNB省略が安全に考慮されうることを示唆している」とまとめ、さらに「この集団においては内分泌療法がSLNB省略の必要条件ではないようだ」と追加した。

80.

ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、OS中間解析時点の最新データ(EMBER-3)/SABCS2025

 エストロゲン受容体陽性HER2陰性(ER+/HER2-)の進行乳がんを対象とした経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)imlunestrantの第III相EMBER-3試験において、事前に規定された全生存期間(OS)中間解析時点(追跡期間中央値:28.5ヵ月)での各評価項目の最新データを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 本試験の1次解析(追跡期間中央値:15.7ヵ月)では、ESR1変異を有する患者においてimlunestrant群が標準内分泌療法群に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に改善し、またESR1変異の有無にかかわらず全患者において、imlunestrant+アベマシクリブ群がimlunestrant群に比べPFSを有意に改善したことが報告されている。・対象:アロマターゼ阻害薬±CDK4/6阻害薬による治療歴のあるER+/HER2-進行乳がん患者874例・試験群(imlunestrant群):imlunestrant単剤(1日1回400mg)331例・試験群(imlunestrant+アベマシクリブ群):imlunestrant(1日1回400mg)+アベマシクリブ(1日2回150mg)330例・対照群(標準内分泌療法群):治験責任医師がエキセメスタン/フルベストラントから選択 213例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS(ESR1変異を有する患者および全患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群、全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群)[重要な副次評価項目]OS、盲検独立中央判定によるPFS、奏効率、安全性など[探索的評価項目]化学療法開始までの期間(TTC)、無化学療法生存期間、PFS2 主な結果は以下のとおり。・OS中間解析2の時点(データカットオフ:2025年8月18日)で、追跡期間中央値は28.5ヵ月、治療継続率はimlunestrant群10%、標準内分泌療法群5%、imlunestrant+アベマシクリブ群18%であった。<ESR1変異を有する患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群>・PFS中央値はimlunestrant群が5.5ヵ月、標準内分泌療法群が3.8ヵ月で、PFSベネフィットが維持されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.47~0.82)。・OS中央値はimlunestrant群が34.5ヵ月、標準内分泌療法群が23.1ヵ月で、11.4ヵ月改善したが、事前に規定された有意性の境界に達しなかった(HR:0.60、95%CI:0.43~0.86、p=0.0043)。・TTC中央値はimlunestrant群が15.6ヵ月、標準内分泌療法群が10.2ヵ月であった(HR:0.66、95%CI:0.48~0.92)。・imlunestrantは良好な安全性プロファイルを維持し、経口SERD特有の毒性はなかった。<全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群>・PFS中央値はimlunestrant+アベマシクリブ群が10.9ヵ月、imlunestrant群が5.5ヵ月でPFSベネフィットが維持されていた(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74)。サブグループ解析では、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者においてもimlunestrant+アベマシクリブ群のPFSベネフィットが維持されていた(HR:0.53、95%CI:0.40~0.69)。また、ESR1変異やPI3K経路の変異の有無にかかわらず、imlunestrant+アベマシクリブ群のPFSベネフィットが維持され、ESR1とPI3K経路ともに変異のある患者においても維持されていた。・OS中央値は、imlunestrant+アベマシクリブ群が未達、imlunestrant群が34.4ヵ月であった(HR:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.2622)。生存曲線は24ヵ月以降に離れた。・imlunestrantとアベマシクリブの既知の安全性プロファイルを維持していた。 Jhaveri氏は、「imlunestrantは、単剤療法またはアベマシクリブとの併用療法として、内分泌療法歴のあるER+/HER2-進行乳がん患者に対して、化学療法を含まない経口剤のみの治療選択肢を提供する」と結論した。

検索結果 合計:2145件 表示位置:61 - 80