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HER2陽性進行胃食道腺がん、zanidatamab+チスレリズマブはPD-L1発現にかかわらず有効(HERIZON-GEA-01)/ASCO2026

 今年1月に行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2026)で発表されたHERIZON-GEA-01試験では、HER2陽性局所進行または転移のある胃食道腺がん1次治療において、化学療法に二重HER2標的抗体zanidatamabと抗PD-1抗体チスレリズマブを追加することで、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の改善が示された。5月29日~6月2日に行われた米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)では、韓国・延世がんセンターのSun Young Rha氏が、本試験におけるPD-L1サブグループの解析結果を報告した。・試験デザイン:国際共同非盲検第III相試験・対象:未治療のHER2陽性進行・転移胃食道腺がん患者・試験群:zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法(CAPOXまたはFP)       zanidatamab+化学療法・対照群:トラスツズマブ+化学療法(トラスツズマブ群)・評価項目:[主要評価項目]PFSおよびOS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など PD-L1発現の評価指標にはTAPスコアおよびCPSが用いられた。 既報の主要解析では、追跡期間中央値26ヵ月時点で、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群はトラスツズマブ群と比較してPFSを有意に延長し(HR:0.63)、OSについても有意な改善が認められた(HR:0.72)。 主な結果は以下のとおり。・PD-L1発現レベル(TAPおよびCPS)別のPFS中央値は以下のとおりで、PD-L1の発現状況にかかわらず一貫して改善が認められた。・TAP<1%:zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群18.5ヵ月vs.トラスツズマブ群7.9ヵ月(HR:0.47)・TAP≧1%:同11.3ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.65)・CPS<1:同18.5ヵ月vs.8.1ヵ月(HR:0.48)・CPS≧1:同12.3ヵ月vs.8.2ヵ月(HR:0.62)・zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群において、TAP<1%およびTAP≧1%における18ヵ月PFS率はそれぞれ50.3%および42.6%、24ヵ月OS率は63.7%および53.5%であった。 ・一方、トラスツズマブ+化学療法群ではPD-L1陽性例のほうが陰性例よりOSが良好であった。研究グループはその要因として後治療の違いを挙げており、トラスツズマブ群では免疫チェックポイント阻害薬が15%、HER2標的治療が29%に施行されたのに対し、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群ではそれぞれ2%、13%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、トラスツズマブ群で59.6%、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群で71.8%に認められた。主な有害事象として下痢が認められたがGrade3以上の発現率は低く、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 Rha氏らは、「zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法は、TAPおよびCPSで評価したPD-L1陽性例・陰性例の双方において、臨床的に意義のあるPFSおよびOSの改善を示した」と結論付けた。HER2陽性進行胃食道腺がんに対する本レジメンの有効性はPD-L1発現に依存せず認められ、新たな1次治療標準となる可能性が示された。

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HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブ追加、PFSの改善みられず(JCOG1919E/AMBITION)/ASCO2026

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんは免疫学的に「cold」な腫瘍とされ、免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有用性は限定的と位置付けられる。一方、VEGFを介した血管新生は免疫抑制的な腫瘍微小環境を促進するため、VEGF阻害により免疫抑制状態を解除し、免疫療法への応答を増強できると考えられる。こうした背景のもと、パクリタキセルおよびベバシズマブへのアテゾリズマブの上乗せ効果を検証する第III相JCOG1919E(AMBITION)試験が国内24施設で実施された。その主要解析結果を、愛知県がんセンターの原 文堅氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)で報告した。・対象:切除不能な局所進行・再発またはStageIVのHR+/HER2-乳がん患者(≧20歳、ECOG PS 0~2、内分泌療法抵抗性または生命を脅かす内臓転移あり[有症状の転移があり早急な腫瘍縮小により症状緩和が必要な状態]、進行がんに対する化学療法歴なし)・試験群(アテゾリズマブ追加群):28日サイクルでパクリタキセル(90mg/m2、1・8・15日目)+ベバシズマブ(10mg/kg、1・15日目)+アテゾリズマブ(840mg、1・15日目)投与 141例・対照群:28日サイクルでパクリタキセル+ベバシズマブ投与 140例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性・データカットオフ:2025年9月15日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はアテゾリズマブ追加群56.0歳vs.対照群57.0歳、PD-L1陽性(IC 1-3)は15.6%vs.16.4%、de novo症例が31.9%vs.34.3%、肝転移が67.4%vs.68.6%、CDK4/6阻害薬併用の内分泌療法歴ありが64.5%vs.62.1%、周術期の化学療法歴ありが42.6%vs.52.1%であった。・主要評価項目である治験責任医師評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群12.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.3~15.2)、対照群が11.2ヵ月(95%CI:9.6~13.5)で、統計学的な有意差は認められなかった(層別ハザード比[HR]:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)。・PD-L1発現状況別にみた治験責任医師評価によるPFS中央値は、IC 0ではアテゾリズマブ追加群13.6ヵ月vs.対照群11.3ヵ月(層別HR:0.826、95%CI:0.619~1.101)、IC 1-3では9.7ヵ月vs.8.4ヵ月(層別HR:1.018、95%CI:0.537~1.931)。・BICR評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群16.7ヵ月vs.対照群13.8ヵ月であった(層別HR:0.919、95%CI:0.678~1.246、p=0.294)。・治験責任医師評価によるPFS中央値のサブグループ解析の結果、de novo症例、転移がんへのCDK4/6阻害薬歴なし、周術期化学療法歴なしの患者において、アテゾリズマブ追加群で良好な傾向がみられた。・OS中央値は、アテゾリズマブ追加群が39.1ヵ月、対照群が31.2ヵ月で、アテゾリズマブ追加群で数値上の改善傾向がみられたものの、統計学的な有意差は示されなかった(層別HR:0.804、95%CI:0.584~1.108、p=0.091)。12ヵ月OS率は85.8%vs.84.8%、24ヵ月OS率は71.6%vs.58.5%、36ヵ月OS率は51.2%vs.41.5%であった。・治験責任医師評価によるORRはアテゾリズマブ追加群73.0%vs.対照群71.9%、DOR中央値は12.0ヵ月vs.9.5ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はアテゾリズマブ追加群84.9%vs.対照群78.6%で発現した。アテゾリズマブ追加群では、皮疹(36.0%)、副腎機能不全(11.5%)、甲状腺機能低下症(10.8%)などの免疫関連有害事象が多くみられたが、多くは管理可能であり、既知の安全性プロファイルと一致していた。 原氏は今回の結果について、「HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブの追加はPFSの統計学的に有意な改善を示さなかった。OSでの数値上の改善傾向はみられたものの、アテゾリズマブのルーチンな追加を支持する結果ではない」と結論付けている。なお、バイオマーカー探索のためのトランスレーショナル研究が予定されている。

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第316回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(前編)

INDEXビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告事故が起こりやすい治療時期ビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告今年3月上旬、埼玉県立小児医療センターが明らかにした急性リンパ性白血病(ALL)で治療中の患者5例が、髄腔内注射(以下、髄注)の後に重篤な神経症状を発症し、うち1例はこれが原因とみられる状態で死亡に至った事案は記憶に新しい。この件では5例中3例の髄液から髄注には禁忌の抗がん剤ビンクリスチン(商品名:オンコビン)が検出されたことが判明し、重篤な神経症状発症事例の可能性が濃厚と指摘されている。ちなみに、ビンクリスチンは微小管重合阻害薬(ビンカアルカロイド系)であり、紡錘体を形成しているチューブリンに結合して微小管の形成を阻害し、細胞分裂を停止させる作用を持つ。また、ビンクリスチンは胆汁排泄される肝代謝型で、主な代謝酵素は CYP3A4 とCYP3A5 である。ただし、CYP3A5の発現レベルには大きな個人差があり、その度合いによって副作用の出現頻度は異なる。一般的な副作用は末梢神経症状であり、薬剤が末梢神経に到達すると、軸索輸送(タンパク質・小胞の輸送)に必須な軸索内の微小管が障害される。このため、もし髄注でビンクリスチンが脊髄・脳に接触すれば、同部位には代謝機構は存在しないため、直接高濃度で曝露することになり、末梢神経毒性とは比較にならないほど重篤な神経症状が生じる。具体的には軸索の順行性・逆行性輸送が破綻し、神経細胞の変性・壊死が急速に進行する。実際の症状としては、激しい疼痛、下肢麻痺、上行性麻痺、呼吸筋麻痺、意識障害などを発症し、最悪は死に至る。救命のためには早期に大量の脳脊髄液洗浄を行う必要があるが、誤って髄注してしまった場合の救命例は少数といわれている。2006年に米国・ノースウェスタン大学のグループが行った文献レビュー1)では、当時確認されたミスによるビンクリスチンの髄注事例32例中27例(84.3%)が死亡したとされている。なお、オーストラリアの研究者が2019年に発表した論文2)によれば、過去の論文検索や事故報告書などの集計から、これまで全世界で確認されているビンクリスチンの誤った髄注事例は少なくとも135例あるものの、これは氷山の一角とみられている。この件について同センターが医療法の医療事故調査制度に基づいて設置した外部有識者による医療事故調査委員会は、5月27日に第3回の会合を開き、「ビンクリスチン混入の原因特定は困難」との結論に達した。一方で再発防止策については、3回の会合で委員から提示された意見を踏まえ、過失、故意のいずれの可能性でも対応し得る対策がまとめられたとし、これを反映させた報告書の微修正などは委員長に一任された。報告書は同センターに提出され、調査対象となっている5例の家族に内容を説明後、個人情報などに配慮しつつ可能な範囲で公表する予定だ。事故が起こりやすい治療時期しかし、何ともすっきりしない結末である。この事件を改めて振り返り論考してみたい。まず、今回の事案で髄液からビンクリスチンが検出されたのは、髄注時期別にみると、2025年1月に投与された10歳未満の男児、2025年3月と10月にそれぞれ10代男性の3例である。3例とも注射後数日以内に下肢痛や麻痺などの神経症状を発症。2025年10月に髄注を受けた患者は2026年2月に死亡し、残る2例も意識不明や全身麻痺などの重篤な状態となった。実は同センター側では3例目の神経症状発症事例を経験した直後の11月、院内外の委員で構成される調査対策委員会を発足させ、対外的な公表の約1週間前の3月5日まで同委員会が計6回開催されていた。この3例の髄液中のビンクリスチン検出は、同委員会の開催過程で、がん性髄膜炎の評価などほかの神経症状を検索するために採取した髄液を使用した髄液タンデム質量分析の結果、判明したものである。さて、ここで改めて小児でのALLの標準的治療について触れておかねばならないだろう。ALLではおおむねプレフェーズ(導入前治療)→寛解導入療法→強化(地固め)療法→再寛解導入療法→維持療法という流れとなる。プレフェーズは、腫瘍崩壊症候群の防止とステロイドへの反応性の評価を目的として行われるもので、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンが通常5~7日程度投与される。今回、焦点となっているのは、寛解導入療法の段階である。この寛解導入療法(約4週間)では、ビンクリスチン、プレドニゾロンまたはデキサメタゾン、L-アスパラギナーゼの3剤(高リスク群ではダウノルビシンなどを加えた4剤)併用療法とメトトレキサートの髄注が行われる。ちなみにこのうちプレドニゾロンは内服、そのほかは基本的に静脈注射である(ただしL-アスパラギナーゼは筋注の場合もあり)。ALLではがん細胞が中枢神経に潜伏しやすく、血液脳関門の存在ゆえにこうした潜伏したがん細胞を制圧するには全身化学療法では不十分であり、メトトレキサート、シタラビン、ヒドロコルチゾンの3剤併用による髄注(トリプルIT)が寛解導入療法の時期から行われる。ただし、ビンクリスチンは一般的に寛解導入療法後の強化療法で使われるケースは少ないものの、再寛解導入療法以降に再び定期的に投与されるようになる。今回の事案については、どの治療段階で起きたかは明らかにされていない。ただ、過失で起きた前提で考えるならば、それが起きやすい環境があるのは寛解導入療法時となる。そして同センターではこの事案が公表された今年3月11日から約1週間後の3月17日にこの3例以外にも髄注を受けた2例のALL患者で神経症状が疑われることを公表している。前出の3例とは異なり、この2例の患者プロファイルは明らかにされていない。前出の3例は早い患者で髄注翌日、遅い患者でも4日以内に症状が出現、急速に進行・重症化した。それに対し、この2例は発症まで約2週間を要し、症状は下肢麻痺などで命に別状はないことなどから、前述の調査対策委員会では「最初の3例と同じ病態であることには否定的」との見解だ。ALLでは、ビンクリスチン静注とトリプルIT髄注を同日に行うことによる取り違えに起因した事故が過去に世界的にも報告されている。このため昨今ではあえて投与日を変えて行うことが一般的と言われる。患者や施設の事情によっては、同日に行われることもあるという。もちろん過去の事故のことは多くの施設で念頭にあることは想像に難くなく、その場合は同日内でも相当時間を空けて行うなど、通常は相当厳重な注意が払われる。今回は小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた。次回、「なぜ起きたのか?」 故意・過失の双方から今回の事件を独自視点でひもといてみたい。参考1)Basetty P, et al. blood. 2006;108:3327.2)Gilbar P, et al. J Oncol Pharm Pract. 2020;26:263-266.3)日本小児血液・がん学会編. 小児白血病・リンパ腫 診療ガイドライン 2016 年版. 金原出版株式会社. 2016.4)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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未治療MCLへのイブルチニブを含む1次治療±ASCT、長期解析結果(TRIANGLE)/Lancet

 18~65歳の未治療マントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、標準的な免疫化学療法へイブルチニブを追加した治療に、自家造血幹細胞移植(ASCT)を追加する意義を検討した「TRIANGLE試験」の長期追跡評価(55ヵ月)の結果が、ドイツ・LMU University HospitalのMartin Dreyling氏らEuropean Mantle Cell Lymphoma Networkによって報告された。イブルチニブ追加療法群は治療成功生存期間(Failure Free Survival:FFS)のみならず全生存期間(OS)の改善との関連も示された。一方で、イブルチニブ追加療法+ASCT群ではASCT追加のベネフィットは示されず、毒性の増加が認められた。TRIANGLE試験の最初の評価報告(追跡期間中央値31ヵ月)では、標準的な1次免疫化学療法へのイブルチニブ追加はFFSを改善することが示されていたが、さらにASCTを追加すべきかどうかについては議論の余地が残っていた(ジャーナル四天王「未治療MCL、免疫化学療法+イブルチニブ±ASCT(TRIANGLE)/Lancet」)。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。ASCT+免疫化学療法群、ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群、免疫化学療法+イブルチニブ群に無作為化 TRIANGLE試験は、MCLの治療経験がありASCTが実施可能または実施可能施設と連携する欧州13ヵ国およびイスラエルの165施設(2次または3次医療センター)で実施された第III相の3群無作為化非盲検優越性試験。18~65歳、未治療の病期II~IV期でASCTの適応がある患者を、1対1対1の割合で対照群のA群(ASCT+免疫化学療法群)、試験群のA+I群(ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群)またはI群(免疫化学療法+イブルチニブ群)の3群に無作為に割り付け追跡評価した。無作為化は、コンピュータ生成乱数を用いて行われ、研究グループおよびMCL国際予後指数(Mantle Cell Lymphoma International Prognostic Index:MIPI)リスク分類で層別化された。 A群の治療は、R-CHOP(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1日目にシクロホスファミド750mg/m2、1日目にドキソルビシン50mg/m2、1日目にビンクリスチン1.4mg/m2[最大2mgまで]、1~5日目にprednisone 100mg経口投与)と、R-DHAPまたはR-DHAOx(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1~4日目にデキサメタゾン40mg静脈内または経口投与、2日目に高用量シタラビン2×2g/m2を12時間ごと3時間かけて静脈内投与、これらに加えて1日目に24時間かけてシスプラチン100mg/m2を静脈内投与[R-DHAP]または1日目にオキサリプラチン130mg/m2を静脈内投与[R-DHAOx])を21日間ごと交互に6サイクル行われ、その後にASCTを行った。 A+I群では、経口イブルチニブ(1日560mg)がR-CHOPサイクルの1~19日目(導入療法)に追加され、またASCT後に2年間投与された(維持療法)。 I群では、A+I群同様にイブルチニブが投与された(導入療法と維持療法)が、ASCTは行われなかった。 すべての治療群で国際ガイドラインに従い、リツキシマブ維持療法が許容された。 主要アウトカムはFFSで、3つのペアワイズ片側log-rank検定により統計学的にモニタリングされた。主要解析は、すべての無作為化された患者(プロトコール逸脱の有無は不問)を包含したITTにて行われた。安全性は無作為化され、いずれかの治療フェーズを開始した患者を対象に評価した。4年FFS率、イブルチニブ追加療法へのASCT上乗せ効果は示されず 2016年7月29日~2020年12月28日に870例が無作為化された(A群288例、A+I群292例、I群290例)。無作為化された患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:52~61)、男性が662例(76%)であり、病期IV期の患者が757/869例(87%)、MIPI低リスク504/870例(58%)、中程度236/870例(27%)であった。 追跡期間中央値54.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:54.4~56.0)後、A+I群のI群に対する優越性は示されなかった。4年FFS率はそれぞれ82%(95%CI:78~87)、81%(76~86)であった(ハザード比[HR]:0.86、片側98.33%CI:0.00~1.27、片側p=0.21)。 一方、A群の4年FFS率は70%(95%CI:65~76)であり、A+I群のA群に対する優越性が認められた(HR:0.63、片側98.33%CI:0.00~0.89、片側p=0.0026)。また、初回評価時同様、A群のI群に対する優越性は認められなかった(HR:1.45、片側98.33%CI:0.00~2.02、片側p=0.99)。 4年OS率は、A+I群88%(95%CI:84~92)vs.A群81%(76~85)(HR:0.59、95%CI:0.38~0.92、p=0.0036)、I群90%(87~94)vs.A群81%(76~85)(HR:0.57、95%CI:0.36~0.90、p=0.0019)であり、両イブルチニブ追加療法群ともに、非追加群と有意な差が認められた。イブルチニブを含む導入・維持療法を新たな標準治療とすべき 維持療法または追跡期間中、最も多くみられたGrade3~5の有害事象は血液およびリンパ系障害で、A+I群で127/234例(54%)報告されたのに対して、I群では74/269例(28%)であり、またA群では56/240例(23%)であった。感染症の発現は、A+I群で80/234例(34%)報告されたのに対して、I群では71/269例(26%)、A群では37/240例(15%)であった。 維持療法または追跡期間中、最も多くみられた死亡に至った有害事象は感染症で、A+I群で4/234例(2%)、I群で5/269例(2%)報告された。 これらの結果を踏まえて著者は、「より若いMCL患者に対して、イブルチニブ+R-CHOP+R-DHAP(またはR-DHAOx)による導入療法後、2年間のイブルチニブ維持療法を新たな標準治療として検討すべきである」と述べている。

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未治療尿路上皮がんへのEV+ペムブロリズマブ、3.5年の長期解析結果(EV-302/KEYNOTE-A39)/ASCO2026

 EV-302/KEYNOTE-A39試験の結果に基づき、エンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブ併用療法は、未治療の局所進行または転移を有する尿路上皮がんに対する標準治療となっている。英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で、3.5年時点における同試験のフォローアップ解析結果を発表した。・対象:未治療の局所進行/転移を有する尿路上皮がん患者(GFR≧30mL/分、ECOG PS≦2)・試験群:EV(1.25mg/kg、3週ごと1・8日目に静脈内投与)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと1日目に静脈内投与) 442例・対照群:ゲムシタビン+シスプラチン(シスプラチン不適格例ではゲムシタビン+カルボプラチン) 444例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など・層別因子:シスプラチン適格性、PD-L1発現状況、肝転移の有無 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値42.8ヵ月(データカットオフ:2025年10月6日)時点におけるOS中央値は、試験群33.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.6~39.8ヵ月)vs.対照群15.9ヵ月(95%CI:13.6~18.3ヵ月)と試験群におけるOSベネフィットが維持されていた(層別ハザード比:0.53、95%CI:0.45~0.63)。・試験群で試験治療後の後治療(全身療法)を受けた割合は39.1%、最も多かったのはプラチナベース化学療法で30.5%を占めた(カルボプラチンベース:16.5%、シスプラチンベース:13.8%)。プラチナベース化学療法開始からのOS中央値は10.9ヵ月、ORRは20.7%であった。・対照群で試験治療後の後治療(全身療法)を受けた割合は68.5%、最も多かったのはPD-(L)1阻害薬で59.7%を占めた(アベルマブ維持療法が30.4%)。・ORRも引き続き試験群で良好であり(試験群67.5%vs.対照群44.2%)、完全奏効(CR)は30.4%vs.14.5%と約2倍の差がみられた。・試験群でCRを達成した133例のうち、45例(試験群全体の10.3%)は初回治療でCRを達成し、88例(同20.1%)は初回治療で部分寛解(PR)達成後、CRに移行した。・試験群におけるCR達成例のベースライン特性をみると、とくに初回治療でのCR達成例は内臓転移が35.6%と少なく(試験群全体:71.9%)、リンパ節転移のみの症例が51.1%と多い傾向がみられた(同:23.3%)。・CR達成例の3.5年OS率は、全体では82.4%、PRからCRへの移行例では83.6%と同等であった。・EVの治療期間中央値は7.1ヵ月で、60.0%が投与中断、43.0%が減量を実施していた。ペムブロリズマブの治療期間中央値は8.5ヵ月であった。・治療期間の延長に伴う、新たな安全性シグナルは認められなかった。累積増加率が最も高かったのは末梢性感覚ニューロパチーで、2年超EV治療を受けた症例の約90%で認められたが、Grade3以上は依然としてまれであった。 Powles氏は、「追跡期間中央値3.5年経過時点において、EV+ペムブロリズマブ併用療法は化学療法と比較して引き続き優れた有効性を示しており、新たな安全性のシグナルは認められなかった」としたうえで、「CR達成例の3分の2はPRから移行しており、アウトカムを最大化するために治療期間が重要であることが示唆された」とまとめている。

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大腸がん術後患者の運動プログラム、費用対効果検証でも有益(CHALLENGE)/ASCO2026

 2025年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)で発表されたCHALLENGE試験は、大腸がん術後患者に対する構造化運動プログラムが生存期間を延長することを示し、NEJM誌に同時掲載されるなど大きな注目を集めた。 CHALLENGE試験では、StageIIIまたは高リスクStageIIの大腸腺がんで切除術を受け、術後補助化学療法を完了した患者を対象に、標準的な経過観察と健康教育資料の提供のみを受ける群、健康教育資料+3年間の構造化運動プログラム(structured exercise program:SEP)を受ける運動群に1対1の割合で割り付けた。主要評価項目である無病生存期間(DFS)は運動群で有意に改善(ハザード比[HR]:0.72)し、全生存期間(OS)も有意に改善(HR:0.63)した。この結果を受け、SEPはNCCNおよびESMOガイドラインに採用された。 今年の米国臨床腫瘍学会(2026 ASCO Annual Meeting)では、本試験の費用対効果解析の結果が報告された。Odette Cancer Centre (カナダ・トロント)のKelvin K. Chan氏による発表において、3年間のSEPは、生存期間を延長するだけでなく医療費削減にもつながり、高い費用対効果を示すことが報告された。今回の解析結果はJournal of Clinical Oncology誌に同時掲載された。 今回の費用対効果解析は、試験開始前から計画されていた副次解析であり、試験参加者全員 (n=889) から前向きに収集されたデータを使用して実施された。カナダの公的医療保険制度の視点から、運動プログラムと対照群を比較し、増分費用、質調整生存年(QALY)、増分費用効用比(ICER)を算出した。主な費用にはSEPの実施費用、再発または新規原発がんの管理費用、薬剤費、入院費が含まれた。不確実性はブートストラップ解析(1,000サンプル)によって評価した。 主な結果は以下のとおり。・3年間のSEP導入に伴う費用は、患者1人当たり2,917カナダドル(約33.5万円、1カナダドル=115円換算)であった。しかし、再発や新規がんに対する治療費および薬剤費の減少によって相殺され、SEP群の総医療費は3万1,957ドル(約367万円)で、対照群よりも1,589ドル(約18万円)低かった。さらにSEP群は生命年(LY)が0.05年、QALYが0.10増加した。すなわちSEPは費用を削減しながら治療効果を高める「dominant strategy(優越戦略)」と評価された。・ブートストラップ解析では、SEPは53%の反復で「費用を削減しながら効果を高める」優越戦略と判定された。また、1QALY当たり5万ドルを費用対効果の閾値とした場合、80%で費用対効果が認められた。・10年間の長期シナリオ解析では、SEP群のコスト削減額は3,938ドル(約45万円)に拡大した。・労働生産性損失を加味した社会的視点からの解析でも、増分費用効用比(ICUR)は1QALY当たり4,405ドル(約51万円)ときわめて良好な値を示した。 発表後のディスカッションにおいて、Alan P. Venook氏(米国・カリフォルニア大学)は、本試験の臨床的意義を強調した。同氏は、CHALLENGE試験が大きな反響を呼んだ背景には、薬剤ではなく運動介入によって生存利益を示した点にあるとし、SEPによる8年OS改善率7.1%は、FOLFOXによる術後補助化学療法を確立したMOSAIC試験における長期OS改善率8.1%に匹敵すると指摘した。また、「患者は診察室で必ず『自分にできることはあるか』と尋ねる。運動はその問いに対するエビデンスに基づいた回答である」とも述べた。 今回の費用対効果解析により、CHALLENGE試験が示した生存利益に加え、運動介入が医療システムにとっても合理的な投資であることが裏付けられた。多くの新規抗がん薬が高額な医療費を伴うなか、SEPは生存延長と医療費削減を同時に実現し得る介入となる。今後は日本においても、運動療法をどのように日常診療へ実装するか、また保険償還の枠組みをどう整備するかが課題となりそうだ。

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免疫療法の適応とならない転移TN乳がん1次治療のSG、PFS2と後治療までの期間(ASCENT-03)/ASCO2026

 ASCENT-03試験において、PD-(L)1阻害薬の適応とならない転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)が化学療法より無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている。今回、PFS2と後治療までの期間を解析した結果、クロスオーバー率が高いにもかかわらずPFS2がSGで長く、最初と2番目の後治療までの期間がどちらもSG群で長かったことがわかった。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:PD-(L)1阻害薬投与対象外で未治療の局所進行切除不能/転移TNBC患者・試験群:SG(21日サイクルの1、8日目に10mg/kg点滴静注)279例・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)279例、病勢進行後クロスオーバーおよび任意の2次治療可・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間、BICRによる奏効率・奏効期間、安全性、QOL[探索的評価項目]PFS2、最初の後治療までの期間(TFST)、2番目の後治療までの期間(TSST)など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2025年4月2日)時点で追跡期間中央値は13.2ヵ月であり、SG群では27%、化学療法群では14%が試験治療を継続していた。・PFS2中央値はSG群が18.2ヵ月と化学療法群の14.0ヵ月より長かった(層別HR:0.70、95%CI:0.55~0.90)。・SG群で1次治療を中止した204例のうち2次治療を受けたのは126例で、プラチナ製剤(34%)、タキサン(25%)、アントラサイクリン(11%)、トラスツズマブ デルクステカン(10%)が多かった。化学療法群で1次治療を中止した240例のうち2次治療を受けたのは179例で、主にSG(79%)であった。・TFST中央値はSG群11.2ヵ月、化学療法群7.9ヵ月であり、層別HRは0.61(95%CI:0.50~0.75)、TSST中央値はSG群17.3ヵ月、化学療法群16.6ヵ月であり、層別HRは0.82(95%CI:0.64~1.05)であった。 Tolaney氏は、「これらの結果は、PD-(L)1阻害薬の適応とならない転移TNBC患者の1次治療としてSGの投与をさらに支持するものである」と結んだ。

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atypical EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブのOS中央値41ヵ月(CHRYSALIS-2)/ASCO2026

 非小細胞肺がん(NSCLC)におけるEGFR遺伝子変異の多くは、exon19欠失またはL858R変異などであるが、G719X、S768I、L861Qなどのatypical変異も一定割合で認められる。atypical EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLCでは、既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の効果が限定的であり、治療選択肢の拡充が求められている。そこで、atypical変異を有するNSCLC患者を対象に、アミバンタマブとラゼルチニブの併用療法を評価するCHRYSALIS-2試験コホートCにおいて、長期追跡が行われた。その結果、1次治療としてアミバンタマブ+ラゼルチニブによる治療を受けたatypical EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLC患者において、全生存期間(OS)中央値は41.0ヵ月であった。Joel W. Neal氏(米国・スタンフォードがん研究所)が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で報告した。 CHRYSALIS-2試験コホートCの対象患者は、未治療または2ライン以下の治療歴(第3世代EGFR-TKIによる治療歴のある患者は除外)を有するatypical EGFR遺伝子変異(exon20挿入変異、exon19欠失変異、exon21 L858R変異は除外)陽性NSCLC患者であった。対象患者にアミバンタマブ(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+ラゼルチニブ(240mg、1日1回)を投与し、有効性・安全性を検討した。主要評価項目は治験担当医師評価に基づく奏効率、副次評価項目は奏効期間、無増悪生存期間、OS、安全性などとした。今回は、未治療患者49例におけるOS、後治療、試験治療の継続状況、安全性の長期追跡結果が報告された。  主な結果は以下のとおり。・未治療の49例の年齢中央値は60歳、女性は45%、アジア人は57%であった。主なEGFR遺伝子変異はexon18 G719X(55%)、exon20 S768X(27%)、exon21 L861X(24%)であり、compound変異は35%に認められた。・データカットオフ時点(2025年10月31日)の追跡期間中央値は31.3ヵ月で、49例中10例(20%)が1次治療を継続していた。内訳は、アミバンタマブ+ラゼルチニブの両剤継続(7例)、アミバンタマブのみ継続(2例)、ラゼルチニブのみ継続(1例)であった。・OS中央値は41.0ヵ月で、36ヵ月OS率は55%であった。・1次治療の治療期間中央値は13.3ヵ月(範囲:0.1ヵ月未満~53.2ヵ月)であり、未治療患者の39%が2年を超えて治療を継続した。・病勢進行により1次治療を中止した患者のうち、71%(20/28例)が後治療を受けた。後治療で最も多かったのはプラチナ製剤を含む化学療法ベースのレジメンであった(55%)。TKIは30%、その他の治療は15%であった。・今回の結果の比較として、Flatiron Health/Foundation Medicine Clinico-Genomic Databaseを用いたリアルワールドのatypical EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者69例との記述的比較も提示された。リアルワールド集団のOS中央値は15.2ヵ月であり、アミバンタマブ+ラゼルチニブの41.0ヵ月と比較して短かった。・安全性について、有害事象の多くがEGFR阻害、MET阻害に関連するもの、注入に伴う反応(IRR)であり、Grade 1または2が多かった。なお、本試験は皮下投与製剤の承認前、皮膚障害やIRRの予防レジメンの開発前に行われたため、これらの予防は行われていなかった。 本結果についてNeal氏は「未治療のatypical EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLC患者に対するアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法は、OS中央値が約3.5年という臨床的に意義のある結果を示した。患者背景、ベースライン時の遺伝子変異、疾患特性にかかわらず持続的な奏効が認められた。長期の追跡においても、安全性プロファイルはアミバンタマブ静注+ラゼルチニブの既報と同様であり、新たな安全性シグナルは認められなかった」とまとめた。

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BRAF V600E変異転移大腸がんに対するEC+FOLFIRI、PFS・OSを改善(BREAKWATER)/ASCO2026

 BRAF V600E変異陽性転移大腸がん(mCRC)は予後不良で知られ、従来の1次治療ではFOLFOX系またはFOLFIRI系±ベバシズマブが標準療法として用いられてきた。BREAKWATER試験では、BRAF阻害薬エンコラフェニブと抗EGFRモノクローナル抗体・セツキシマブの併用(EC)+mFOLFOX6が従来の標準療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)を有意に改善したことが報告されている。 一方、実臨床ではオキサリプラチン不適応例に対してFOLFOXに替えてFOLFIRIを併用するレジメンも用いられていることから、BREAKWATER試験では同レジメンとEC+FOLFIRIを比較する「コホート3」が設定された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)では米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのScott Kopetz氏がコホート3の結果を発表し、既報のORRに加え、PFSおよびOSにおいても有意な改善が示されたことを報告した。この内容はAnnals of Oncology誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のBRAF V600E変異mCRC患者147例、ECOG PS0~1・試験群:エンコラフェニブ+セツキシマブ+FOLFIRI(EC群:73例)・対照群:FOLFIRI±ベバシズマブ(対照群:74例)・評価項目:[主要評価項目]ORR(既報:64.4%対39.2%)[副次評価項目]PFS、OS、安全性など・データカットオフ:2026年1月6日 主な結果は以下のとおり。・PFSの追跡期間中央値はEC群18.0ヵ月、対照群14.4ヵ月であった。PFS中央値はEC群15.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:13.6~推定不能)、対照群8.3ヵ月(95%CI:6.9~9.8)であった。PFSのハザード比(HR)は0.44(95%CI:0.27~0.70、片側p=0.0002)であった。・OSの追跡期間中央値はEC群20.6ヵ月、対照群20.7ヵ月であった。OS中央値はEC群で未到達(95%CI:21.0~推定不能)、対照群で20.3ヵ月(95%CI:13.2~推定不能)であった。OSのHRは0.56(95%CI:0.34~0.94)であった。18ヵ月時点のOS率はEC群72.0%、対照群54.5%であった。・新たな安全性シグナルは認められなかった。Grade 3/4の治療時発現有害事象(TEAE)の発現率はEC群70%、対照群81%であった。重篤なTEAEはそれぞれ49%、44%であった。有害事象による化学療法中止率は14%と10%で、両群間に大きな差は認められなかった。 著者らは、「EC+FOLFIRIはORRおよびPFSを有意に改善し、OS延長も示した。安全性プロファイルは各薬剤で既知の範囲内であり、新たな安全性上の懸念は認められなかった」と結論付けた。今回の結果は、BRAF V600E変異陽性mCRCにおいて、既報のEC+mFOLFOX6に加え、EC+FOLFIRIという新たな1次治療の選択肢を提供するものであり、オキサリプラチン不適応例においてもBRAF阻害薬とEGFR阻害薬を組み合わせた治療戦略の有用性を支持する結果と考えられる。

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StageIAのHER2+乳がん、術後カペシタビン+トラスツズマブで5年iDFS率97.8%(IRIS-A)/ASCO2026

 StageIAのHER2陽性(HER2+)乳がんにおいて、カペシタビンとトラスツズマブによる術後療法により97.8%という優れた5年無浸潤疾患生存(iDFS)率が得られ、治療継続に影響を及ぼす有害事象は認められなかったことがIRIS-A試験で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのRuo-Xi Wang氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 IRIS試験シリーズは、早期HER2+乳がんにおける静脈内化学療法を行わない術後療法のde-escalationを検討する単群第II相試験として設計された4つの試験で、IRIS-A試験はカペシタビン6サイクルとトラスツズマブ1年間の併用を検討。・対象:StageIA(T1N0)のHER2+乳がん(HR陰性の場合はT≦2cm、HR陽性の場合は1cm<T≦2cm)・介入:カペシタビン(1,000mg/m2を1日2回、2週間、3週ごと)+トラスツズマブ(8mg/kg→6mg/kg、3週ごと)を6サイクル実施後、トラスツズマブ(6mg/kg、3週ごと)を11サイクル・主要評価項目:iDFS 主な結果は以下のとおり。・2020年5月~2021年5月に187例が登録され、追跡期間中央値は66ヵ月(範囲:60~72)であった。T1micが56.1%、T1aが24.1%、T1bが4.3%、T1cが15.5%で、87.2%がHR陰性であった。・iDFSイベントは4例に発生し、うち2例は局所もしくは領域再発、2例は対側乳がんであった。遠隔再発例や死亡例はなく、3例がDCIS(非浸潤性乳管がん)、5例が乳がん以外の原発がん(甲状腺がん、肺がん)を発症した。・5年iDFS率は97.8%(95%信頼区間:94.3~99.1)、5年無再発生存率は98.9%(同:95.7~99.7)であった。・5例(2.7%)にGrade3の有害事象が認められたが、Grade4/5は発現しなかった。最も頻度の高かった有害事象は手足症候群(46.5%)で、1例がGrade3だった。心臓関連の有害事象の発現は0.5%で、中止や中断に至った有害事象はなかった。 Wang氏は、本試験の限界として単群試験でありサンプルサイズが比較的小さいこと、T1micおよびT1aの患者割合が比較的高く治療が必要かどうかについては議論の余地があることを挙げつつ、「本試験は、腫瘍が小さくリンパ節転移のないHER2+乳がんにトラスツズマブと経口化学療法を併用した最初の臨床試験である。カペシタビン+トラスツズマブは標準治療に匹敵する有効性と毒性の軽減を併せ持つ選択肢となる」とまとめた。

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転移膵がんへの新規汎RAS阻害薬daraxonrasib、OS・PFSを2倍に(RASolute 302)/ASCO2026

 転移のある膵がんは有効な治療が限られ、きわめて予後が悪いことで知られるが、ここに有望な薬剤が登場した。新規経口RAS(ON)阻害薬daraxonrasibは、KRAS G12D/V/Rを含む複数のRASを阻害することが特徴で、膵管腺がんの90%以上でRAS経路異常が認められる。daraxonrasibの有用性を検討したRASolute 302試験の結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションで発表され、米国・ダナファーバーがん研究所のBrian M. Wolpin氏による発表後にはスタンディングオベーションが起こり、結果はNEJM誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載された。・試験デザイン:第III相多施設共同非盲検無作為化比較試験・対象:既治療の転移膵管腺がん(mPDAC)患者500例(92%がRAS G12変異陽性)、ECOG PS0~1・試験群:daraxonrasib 300mgを1日1回経口投与(daraxonrasib群:248例)・対照群:医師選択による標準化学療法化学療法群:252例)・評価項目:[主要評価項目]RAS G12変異集団における全生存期間(OS)・無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全体集団におけるOS・PFS、RAS G12および全体集団における奏効率(ORR)、安全性など・データカットオフ:2026年2月10日 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値8.5ヵ月時点のOS中央値は、RAS G12変異集団ではdaraxonrasib群13.2ヵ月対化学療法群6.6ヵ月、全体集団では13.2ヵ月対6.7ヵ月であった。ハザード比(HR)は両群とも0.40であった。・PFS中央値は、RAS G12変異集団では、daraxonrasib群7.3ヵ月対化学療法群3.5ヵ月、全体集団では7.2ヵ月対3.6ヵ月であった。HRはそれぞれ0.45および0.49であった。・治療開始後に発生した有害事象は、daraxonrasib群の全例と化学療法群の97.7%で報告された。Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発生率は43.6%vs. 57.5%だった。Grade 3以上のTRAEは、daraxonrasib群では発疹13.7%、口内炎12.0%、化学療法群では好中球減少18.2%、貧血16.4%であった。TRAEによる治療中止はdaraxonrasib群1.2%と化学療法群11.2%だった。・ORRはRAS G12変異集団では33.2%対11.8%、全体集団では31.6%対11.2%だった。 Wolpin氏は「既治療の転移膵がん患者において、daraxonrasibによる治療は、化学療法と比較してOSおよびPFSを有意に延長させた。この治療法は新たな標準療法になる可能性がある」とした。本試験には日本の施設も参加しており、本結果を受けて、daraxonrasibの承認申請に向けた動きが加速するとみられる。

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第321回 化学療法を省ける乳がん患者を遺伝子検査Prosignaで同定

化学療法をしなくて大丈夫な初期乳がん患者を、欧米で発売されている遺伝子発現解析検査Prosigna(PAM50)で選定しうることが示されました1,2)。ホルモン受容体陽性/HER2陰性の乳がんを切除し、担当医の見立てで術後化学療法が適切とされた40歳以上の男女4千例超(4,429例)が参加した第III相OPTIMA試験3)の結果です。被験者のほとんどは腋窩リンパ節転移(node-positive)を呈していましたが、腫瘍の大きさが30mm以上の患者は腋窩リンパ節転移が見当たらなくとも試験に参加することができました。被験者は定番の化学療法とそれに続く内分泌療法の組み合わせを実施する群(対照群)か、Prosignaの検査結果に基づいて化学療法をするかしないかを決める群(Prosigna利用群)にそれぞれおよそ半々に割り振られました。Prosignaは米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコのがん診断会社Veracyteの製品で、50の遺伝子発現を解析して10年間の再発しやすさ(Risk of Recurrence:ROR)を点数で表します4)。Prosigna利用群の2,214例はROR値が高値(60超)なら対照群の2,215例と同様に化学療法と内分泌療法の組み合わせに振り分けられ、ROR値が低値(60以下)なら化学療法は省いて内分泌療法のみとされました。化学療法を省略しうるROR値が低い患者の割合は68%で、中央値およそ4年間(3.9年間)の浸潤性乳がんか死亡の発生数はProsigna利用群と対照群でほぼ同数のそれぞれ139例と141例でした。その結果からProsigna利用群の浸潤性乳がんなしでの5年間生存(invasive breast cancer free survival:IBCFS)率は90.4%であり、対照群の91.5%に統計的に劣りませんでした。ROR値が低い患者の比較でもやはり非劣性が裏付けられ、5年間IBCFS率はより高く94~95%ほどでした。言うまでもなく化学療法は心身に多大な負担をもたらし、不妊、認知障害、早すぎる閉経を強いる恐れがあります。後を引く神経障害の恐れも大きく、10年ほど前の報告によると、術後化学療法(ドセタキセル)を受けた乳がん患者およそ千人の半数近い43%が長く続く末梢神経障害を被っていました5)。今回のOPTIMA試験の結果は大勢の乳がん患者の治療を劇的に変えうる可能性を秘めており、医師が患者それぞれに見合った治療を選べるようにするのを手助けするだろう、とVeracyte社の乳がん分野の医学責任者Kelly Marcom氏は言っています2)。 参考 1) First results from the OPTIMA phase III randomized non-inferiority trial of test-directed chemotherapy in patients with high clinical risk ER-positive HER2-negative early breast cancer / 2026 ASCO Annual Meeting 2) OPTIMA Trial Results to Be Presented at ASCO Provide New Evidence Supporting Prosigna-Guided Chemotherapy Decisions in Breast Cancer / BusinessWire 3) Optimal personalised treatment of early breast cancer using multiparameter analysis / ISRCTN 4) Prosigna brochure 5) Eckhoff L. et al. Eur J Cancer. 2015;51:292-300.

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広域抗菌薬が投与された肺炎患者の予後は?/感染症学会・化学療法学会

 市中肺炎(CAP)では、緑膿菌などを想定した広域抗菌薬が経験的に使用されることがある。実際に、本邦の研究において全CAP患者の27.4%に抗緑膿菌薬が投与されており、そのうち97.3%が潜在的に不必要な投与であったことが報告されている1)。また、β-ラクタム系薬が投与された耐性菌リスクの低いCAP患者において、β-ラクタム系薬の抗緑膿菌作用の有無別に臨床転帰を後ろ向きに検討した結果、抗緑膿菌作用のあるβ-ラクタム系薬を用いた群は、30日死亡率が有意に高かったことも報告されている2)。 そこで、市中発症肺炎(CAPおよび医療・介護関連肺炎[NHCAP])に対する広域抗菌薬投与の有益性を検討することを目的として、多施設共同後ろ向き観察研究が実施された。その結果、喀痰培養が提出された市中発症肺炎患者の30.9%に抗緑膿菌作用を有する広域抗菌薬が投与されており、広域抗菌薬を使用した群で入院死亡および入院肺炎死亡のオッズが有意に高かった。2026年5月22~24日に開催された第100回日本感染症学会総会・学術講演会/第74回日本化学療法学会総会 合同学会において、岩永 直樹氏(長崎大学病院 呼吸器内科)が本結果を報告した。 本研究は、2017~19年に長崎大学病院を含む関連7施設で実施された多施設共同後ろ向き観察研究である。解析対象は、CAPまたはNHCAPとして治療された市中発症肺炎患者1,907例中、喀痰培養検査が実施された1,542例とした。対象患者を広域抗菌薬群と狭域抗菌薬群に分類し、患者背景、死亡、入院期間、治療期間などを比較した。また、広域抗菌薬群におけるde-escalation実施の有無別にみたサブグループ解析も行った。なお、広域抗菌薬は「グラム陽性菌からグラム陰性菌(緑膿菌を含む)までカバーする抗菌薬」と定義した。 主な結果は以下のとおり。・喀痰培養が提出された1,542例のうち、広域抗菌薬が投与されたのは476例(30.9%)であった。・初期治療薬の割合は、広域抗菌薬群でタゾバクタム・ピペラシリン(68%)が最も多かった。次いでレボフロキサシン(16%)、カルバペネム系抗菌薬(10%)が使用されていた。狭域抗菌薬群では、スルバクタム・アンピシリン(63%)が最も多く、次いでセフトリアキソン(22%)が使用されていた。・広域抗菌薬が投与されやすい患者背景として、単変量解析では男性、NHCAP、PS不良、長期療養病床からの入院、ステロイドまたは免疫抑制薬の使用、90日以内の血管内治療歴、90日以内の入院歴、A-DROP高値が挙げられた。・同様に単変量解析において、併存疾患として間質性肺炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、血液がん、臓器移植歴などを有する患者で、広域抗菌薬が投与されやすい傾向がみられた。・多変量解析では、男性、長期療養病床からの入院、A-DROP 3点以上、間質性肺炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、血液がんが広域抗菌薬投与と有意に関連する因子として抽出された。・傾向スコアを用いた逆確率重み付け法による解析において、入院死亡のオッズが広域抗菌薬群で有意に高かった(調整オッズ比[aOR]:1.30、95%信頼区間[CI]:1.00~1.69、p=0.0473)。広域抗菌薬群は入院肺炎死亡のオッズも有意に高かった(同:1.65、1.11~2.03、p=0.0076)。・入院生存例のみを対象としたサブグループ解析では、入院期間および抗菌薬治療期間が広域抗菌薬群で有意に長かった(いずれもp<0.0001)。・広域抗菌薬群476例のうち、de-escalationが実施されたのは116例(24.4%)、実施されなかったのは360例(75.6%)であった。de-escalation実施の有無で患者背景を比較したところ、有意差のある項目はなかった。・de-escalationの有無で予後を比較すると、傾向スコアを用いた逆確率重み付け法による解析において、入院肺炎死亡のオッズがde-escalation実施群で有意に低かった(aOR:0.54、95%CI:0.33~0.89、p=0.0138)。 de-escalation実施群で入院肺炎死亡のオッズが有意に低下していたことについて、岩永氏は「de-escalationを実施した患者は、臨床経過が良いという主治医の判断のもとでde-escalationを実施していると考えられ、そのことが結果に反映されている可能性がある」と考察した。

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KEYNOTE-522試験の最終解析結果が発表/ASCO2026

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験の最終解析結果を、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 KEYNOTE-522試験は、21ヵ国183施設で実施された第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験。未治療の高リスク早期TNBC(T1c N1~2またはT2~4 N0~2、ECOG PS 0~1)患者が、術前にペムブロリズマブ(3週ごと)+パクリタキセル+カルボプラチンを4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン(またはエピルビシン)を4サイクル、術後にペムブロリズマブを最長9サイクル投与する群と、術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与する群に2対1に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR:ypT0/Tis ypN0)および無イベント生存期間(EFS)、重要な副次評価項目は全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・1,174例がペムブロリズマブ群(784例)またはプラセボ群(390例)に無作為に割り付けられた。データカットオフ(2025年10月14日)時点の追跡期間中央値は93.8(範囲:84.7~102.8)ヵ月であった。・7年EFS率は、ペムブロリズマブ群78.3%(95%信頼区間[CI]:75.3~81.1)、プラセボ群69.8%(95%CI:65.0~74.2)であり、ペムブロリズマブ上乗せによる臨床的に意義のある改善が認められた(ハザード比[HR]:0.68、95%CI:0.54~0.86)。・pCR別のEFS率は、pCR達成群ではペムブロリズマブ群90.4%およびプラセボ群85.9%と差が小さかった一方、pCR非達成群では57.6%および49.7%と差が大きかった。しかし、HRはそれぞれ0.68(95%CI:0.44~1.07)および0.78(95%CI:0.58~1.03)と類似していた。これは、pCR達成の有無にかかわらずペムブロリズマブの上乗せ効果が得られることを示すとともに、同じpCR達成であってもペムブロリズマブの併用によって達成したほうが化学療法単独で達成するよりもさらに予後が良好になることを示唆している。・7年OS率は、ペムブロリズマブ群85.1%(95%CI:82.5~87.5)、プラセボ群77.2%(95%CI:72.7~81.1)であり、ペムブロリズマブ上乗せによる臨床的に意義のある改善が認められた(HR:0.64、95%CI:0.49~0.85)。・pCR別のOS率は、pCR達成群ではペムブロリズマブ群94.5%およびプラセボ群91.1%(HR:0.64、95%CI:0.37~1.14)、pCR非達成群では69.0%および59.8%(HR:0.76、95%CI:0.55~1.03)であり、EFSと同様の傾向が認められた。・ペムブロリズマブ上乗せによるEFSおよびOSのベネフィットは、PD-L1発現、リンパ節転移の有無および腫瘍径を含む事前に規定されたサブグループでおおむね一貫していた。・7年遠隔無病生存率は、ペムブロリズマブ群82.9%、プラセボ群74.2%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.83)。・Grade3以上の治療関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群77.1%、プラセボ群73.3%であった(死亡は0.5%および0.3%)。全Gradeの免疫介在性有害事象の発現率はそれぞれ35.0%および13.1%であった。 これらの結果より、Cortes氏は「KEYNOTE-522試験の最終解析において、高リスク早期TNBC患者に対する術前ペムブロリズマブ+化学療法に続いて術後ペムブロリズマブを投与する治療法は、引き続きEFSとOSの改善をもたらすことを示した。この長期的な結果は、高リスク早期TNBC患者に対する本アプローチが、この患者群を治療するための標準治療であり続けることをさらに裏付けるものである」とまとめた。

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RET融合遺伝子陽性NSCLC、セルペルカチニブによるアジュバント療法でEFS改善(LIBRETTO-432)/ASCO2026

 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、選択的RET阻害薬セルペルカチニブは進行・転移例で有効性が示されている。一方で、早期・局所進行NSCLCに対するアジュバント療法としての有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、StageIB~IIIAのRET融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象に、アジュバント療法としてのセルペルカチニブの有用性を検証する国際共同第III相試験「LIBRETTO-432試験」が実施された。その結果、セルペルカチニブはプラセボと比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善することが示された。Jonathan W. Goldman氏(米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお、本研究結果はNEJM誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験・対象:StageIB~IIIAのRET融合遺伝子陽性NSCLC患者で、根治目的の局所治療(手術または放射線療法)後に再発・進行のない患者151例(補助化学療法は許容)・試験群(セルペルカチニブ群):セルペルカチニブ(体重50kg以上では160mg 1日2回、50kg未満では120mg 1日2回)を最長3年 75例・対照群(プラセボ群):プラセボを最長3年(再発・病勢進行時はクロスオーバーを許容) 76例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価によるEFS(StageII~IIIA)[副次評価項目]治験担当医師評価によるEFS(StageIB~IIIAの全体集団)、盲検下独立中央判定(BICR)によるEFS、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・主要解析集団は、StageII/IIIAの患者109例(セルペルカチニブ群54例、プラセボ群55例)であった。・主要解析集団の患者背景として、女性(セルペルカチニブ群63.0%、プラセボ群54.5%)、東アジア(それぞれ57.4%、56.4%)、非喫煙者(それぞれ68.5%、69.1%)が多かった。ほぼ全例が手術を受け(それぞれ100%、98.2%)、90%超がアジュバント療法として全身療法を受けていた(それぞれ92.6%、90.9%)。・主要解析集団における治験担当医師評価による2年EFS率は、セルペルカチニブ群91.5%、プラセボ群61.1%であり、セルペルカチニブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.172、95%信頼区間[CI]:0.058~0.509、p=0.0003)。・全体集団においても、治験担当医師評価によるEFSはセルペルカチニブ群で有意に改善した(2年EFS率:93.8%vs.69.6%、HR:0.165、95%CI:0.056~0.485、p=0.0002)。・主要解析集団の治験担当医師評価によるEFSに関するサブグループ解析では、症例数およびイベント数が少ないため解釈には注意が必要であるものの、ほとんどのサブグループで、セルペルカチニブ群で良好な傾向がみられた。・主要解析集団のプラセボ群のうち、16例(29.1%)がセルペルカチニブへクロスオーバーした。・OSデータは未成熟であった。データカットオフ時点で死亡は3例報告され、いずれもセルペルカチニブへクロスオーバーしたプラセボ群の患者であった。・全体集団における安全性について、Grade3以上の有害事象はセルペルカチニブ群66.7%、プラセボ群23.7%に認められた。治療中止に至った有害事象はそれぞれ17.3%、1.3%に認められた。中断・減量に至ったのはそれぞれ88.0%、46.1%であった。・セルペルカチニブ群でとくに多く認められた有害事象(セルペルカチニブ群の50%以上に発現)はALT上昇(セルペルカチニブ群62.7%、プラセボ群18.4%)、AST上昇(60.0%、15.8%)であった。セルペルカチニブのとくに注目すべき有害事象では、過敏症(6.7%、0%)、QT延長(9.3%、1.3%)が報告された。 本研究結果についてGoldman氏は、セルペルカチニブのベネフィットの持続性や、再発様式、中枢神経系の保護作用、クロスオーバーの影響を評価するためには、より長期の追跡が必要であることを指摘しつつ「早期RET融合遺伝子陽性NSCLCにおけるアジュバント療法として、セルペルカチニブは新たな標準治療の1つとなることを支持するものである」とまとめた。

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高リスクER+/HER2-早期乳がん、Prosignaで化学療法省略を判断できるか/ASCO2026

 エストロゲン受容体陽性/HER2陰性(ER+/HER2-)でリンパ節転移陽性例を中心とした早期乳がんに対し、Prosigna(PAM50)による再発リスク(Risk of Recurrence:ROR)スコアを用いることで化学療法の必要性を判断できるかどうかを検討した第III相OPTIMA試験の結果を、英国・NIHR University College London Hospitals Biomedical Research CentreのRobert C. Stein氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。本試験により、RORスコアが低い患者では化学療法を安全に省略できる可能性が示された。 化学療法の上乗せ効果を予測するために複数の多遺伝子アッセイが用いられているが、リンパ節転移陽性例や閉経前症例における最適な患者選択についてはなお議論がある。そこで研究グループは、Prosignaによる治療選択が、標準治療に対して5年時点における浸潤性乳がんのない生存期間(IBCFS)で非劣性を示すかどうかを検討した。 対象は、ER+(IHC>10%)/HER2-の早期乳がんで、腋窩リンパ節転移が0~9個(リンパ節転移陰性の場合は腫瘍径が30mm超)の40歳以上の女性および男性で、標準化学療法の後に内分泌療法を受ける群(C+ET群[内分泌療法後にProsignaも実施])と、Prosignaにより化学療法の要否を判断する群(Prosigna群)に1対1で無作為に割り付けられた。Prosigna群では、RORスコア60超(高リスク)の場合は標準化学療法の後に内分泌療法を実施し、RORスコア60以下(低リスク)の場合は化学療法を省略して内分泌療法のみを実施した。閉経前女性に対する内分泌療法には卵巣機能抑制が含まれた。 患者へのRORスコアは非開示とされ、化学療法が行われる理由(無作為化による割り付けかProsignaの結果に基づくものか)について、施設および患者は盲検化された。 主な結果は以下のとおり。・2017年1月~2025年12月に4,429例がランダム化された。非劣性解析は、事前に規定されたper-protocol集団で実施された(C+ET群の93.0%、Prosigna群の94.6%の患者が該当)。追跡期間中央値は4.0(IQR:2.0~6.0)年であった。・患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値56歳、閉経後62%、閉経前37%、男性1%であった。リンパ節転移状況は、pN0/pN1miが8%、pN1/pN1snが73%、pN2が19%であった。・RORスコア中央値は、C+ET群が50、Prosigna群が49であった。Prosigna群の67.8%がRORスコア60以下と判定され、化学療法を省略可能だった。C+ET群でRORスコア60以下だったのは66.0%であった。・乳がん再発は、C+ET群5.7%(低RORスコア群3.7%)およびProsigna群5.9%(同:4.2%)に生じ、低RORスコア集団では低かった。大半は遠隔転移であった。・全体における5年IBCFS率は、C+ET群91.8%(95%信頼区間[CI]:90.1~93.2)、Prosigna群90.3%(95%CI:88.5~91.8)であり、事前に設定された非劣性マージン3%に対して非劣性が示された(ハザード比[HR]:1.03[90%CI:0.85~1.25]、非劣性のp=0.006)。・低RORスコア集団における5年IBCFS率は、C+ET群の低RORスコア群94.8%(95%CI:93.1~96.1)、Prosigna群の低RORスコア群93.6%(95%CI:91.7~95.0)であり、事前に設定された非劣性マージン3.5%に対して非劣性が示された(HR:1.06[90%CI:0.80~1.40]、非劣性のp=0.003)。・全体における5年無遠隔再発率は、C+ET群94.1%(95%CI:92.7~95.3)、Prosigna群93.3%(95%CI:91.7~94.5)であった(HR:1.04[90%CI:0.83~1.30])。低RORスコア集団ではそれぞれ97.0%(95%CI:95.6~98.0)および96.0%(95%CI:94.5~97.1)であった(HR:1.17[90%CI:0.82~1.66])。・閉経状態、腫瘍径やリンパ節転移状態を含むサブグループ間でも同様の結果が得られた。 Stein氏は、「OPTIMA試験は、ER+/HER2-早期乳がんでRORスコアが60以下の患者では化学療法から得られるベネフィットがあったとしてもごくわずかであることを示した。結果は試験の全集団に適用されるが、卵巣機能抑制を受けた40歳以上の閉経前女性やリンパ節転移の多い患者、StageIIIAの患者において、Prosignaの結果に基づいた化学療法の決定を支援する可能性がある」とまとめた。

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市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

 肺炎球菌は市中肺炎(CAP)の主要な原因菌である。侵襲性肺炎球菌感染症のサーベイランスは、日本を含む多くの国で確立されているものの、肺炎球菌性CAPの血清型分布については、国内データが十分に蓄積されているとはいえない。そこで、日本の成人入院CAP患者を対象に、肺炎球菌性CAPの臨床的特徴、臨床転帰、肺炎球菌血清型の分布を明らかにすることを目的として、多施設共同前向き研究「PNEUMO Japan」が実施されている。本研究の中間解析の結果、肺炎球菌陽性と判定された患者は17.6%であり、CAP患者から検出された計76血清型のうち、89.5%は21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)に含まれる血清型であることが示された。2026年5月22~24日に開催された第100回日本感染症学会総会・学術講演会/第74回日本化学療法学会総会 合同学会において、柳原 克紀氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野)が結果を報告した。なお本結果は、2026年5月17~21日に開催された第14回国際肺炎・肺炎球菌感染症学会(International Society of Pneumonia and Pneumococcal Diseases:ISPPD-14)のアンコール演題として発表された。 本研究は、日本国内23施設で実施されている多施設共同前向き研究であり、登録は2025年2月に開始され、2026年まで継続予定である。対象は、18歳以上の入院を要するCAP患者とした。肺炎球菌の検出には、無菌・非無菌検体の培養検査、迅速尿中抗原検査(BinaxNOW)、および32血清型を検出可能な血清型特異的尿中抗原検出法(Serotype Specific Urinary Antigen Detection:SSUAD)を用いた。患者背景および臨床転帰の解析対象は、2025年8月22日までに登録されたCAP患者318例、血清型分布の解析対象は、2025年11月18日までに登録されたCAP患者536例の尿検体のうち、SSUADで陽性の66例、計76血清型であった。 主な結果は以下のとおり。・CAP患者318例の平均年齢は71.6歳、女性の割合は43.1%であった。培養検査または迅速尿中抗原検査で肺炎球菌陽性と判定された患者の割合は17.6%(56例)、非肺炎球菌性CAPは82.4%(262例)であった。・肺炎球菌性CAP群は、非肺炎球菌性CAP群より若年であった。平均年齢は肺炎球菌性CAP群68.6歳、非肺炎球菌性CAP群で72.2歳であり(p=0.042)、75歳以上の割合は、それぞれ39.3%、53.8%であった。・CAP患者の20.1%に肺炎球菌ワクチン接種歴があり、5年以内の接種は5.7%であった。接種歴不明の割合が35.5%と高かった。各群の肺炎球菌ワクチン接種歴ありの割合は、肺炎球菌性CAP群32.1%(18例)、非肺炎球菌性CAP群17.6%(46例)であり、5年以内の接種歴ありの割合は、それぞれ7.1%(4例)、5.3%(14例)であった。・全CAP患者318例における院内死亡は2.5%(8例)に認められた(いずれも非肺炎球菌性CAP群の患者)。・入院期間中央値は、肺炎球菌性CAP群が9日であったのに対し、非肺炎球菌性CAP群では12日と長かった(p=0.007)。・SSUADで陽性の66例から検出された76血清型のうち、頻度が高かった血清型は、3型(15.8%)、35B型(11.8%)、19A型(10.5%)、11A型(7.9%)、22F型(6.6%)、23B型(6.6%)であった。・肺炎球菌ワクチンの血清型カバー率は、PCV21が89.5%、PCV20が60.5%であった。PCV21に含まれるがPCV20には含まれない血清型は39.5%を占めた。 本結果の結語として「肺炎球菌性CAPは全CAPの17.6%を占めており、とくに高齢者や慢性疾患を持つ人々の間で、大きな疾病負荷となっていることが示された。PCV21は、本研究で特定された肺炎球菌血清型の89.5%をカバーしており、疾患予防に寄与する可能性が示唆された。これらの知見は、日本の成人の予防接種プログラムにおいて、現行および次世代の肺炎球菌ワクチンの継続的な使用と評価を支持するものである」とまとめた。

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HR+/HER2+早期乳がん、de-escalation術前療法でも良好な長期予後(WSG TP-II)/JCO

 HR+/HER2+の早期乳がんにおいて、術前療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブにパクリタキセルまたは内分泌療法(ET)を併用した第II相WSG TP-II試験の結果、ET併用群でも良好な長期生存アウトカムが得られたことが、ドイツ・Evangelisches Krankenhaus Bethesda KlinikのOleg Gluz氏らにより示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年5月18日号掲載の報告。 本試験は、手術可能なHR+/HER2+乳がん患者を対象に、トラスツズマブ+ペルツズマブの術前療法(12週間)に加え、パクリタキセル(週1回)またはETの併用が、病理学的完全奏効(pCR)や全生存期間(OS)などに及ぼす影響を評価した第II相多施設共同無作為化非盲検試験。なお、術後療法として全例に抗HER2療法が行われるとともに、術前療法でpCRが得られなかった患者では術後化学療法を必須とした(pCR達成例では術後化学療法は任意)。 主要評価項目はpCR、副次評価項目はOS、非浸潤性乳管がんを含む無イベント生存期間(EFS)、無浸潤疾患生存期間(iDFS)、健康関連QOLなどとした。これまでの主要評価項目の解析では、パクリタキセル併用群のpCR率はET併用群よりも優れていることが明らかになっている(56.4% vs.23.7%)。今回は、最終の5年OS解析結果などが報告された。 主な結果は以下のとおり。・207例が2つの試験群に1対1で無作為に割り付けられた。・5年OS率は、ET併用群100%(95%信頼区間[CI]:100.0~100.0)、パクリタキセル併用群97.9%(95%CI:95.0~100.0)であった。・5年EFS率は、ET併用群92.1%(95%CI:86.6~97.9)、パクリタキセル併用群94.8%(95%CI:90.5~99.3)であった。・5年iDFS率は、ET併用群97.7%(95%CI:94.5~100.0)、パクリタキセル併用群79.8%(95%CI:55.6~100.0)であった。 研究グループは「WSG TP-II試験では、HR+/HER2+の早期乳がんにおいて、忍容性が良好なde-escalationの術前療法を行い、そのpCR達成の有無に応じて術後化学療法を調整するアプローチの安全性および有効性が示唆された」とまとめた。

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胃がん診療、周術期を中心とした個別化治療の時代へ/AZ

 アストラゼネカは5月13日、「胃がん疾患啓発セミナー」を開催した。セミナーでは木下 敬弘氏( 国立がん研究センター東病院 胃外科科長)が「胃がん治療の現在地と今後の課題」と題した講演を行った。 ――日本における胃がんの疫学では、がん種別にみた罹患数では全体3位、死亡数では4位を占め、依然として主要ながん種である。世界的にも東アジアで発生頻度が高く、日本、中国、韓国が罹患の多い地域に含まれる。近年の治療の発達に伴い、胃がんの5年相対生存率は約65~67%まで伸びており、「不治の病」ではなくなりつつある。しかし、StageIVの5年相対生存率は6.6%にとどまり、早期発見・早期治療の重要性が裏付けられている。  胃がんの大きなリスク要因がヘリコバクター・ピロリ菌感染だが、ここ10年ほどでピロリ菌感染検査、除菌治療が普及し、感染率は急速に低下している。一方、除菌後も胃がんリスクは残り、定期的な内視鏡フォローが必要であることはさらに周知すべきだろう。また、ピロリ菌感染は胃酸分泌低下を引き起こす場合があるが、感染率低下に伴い、胃酸過多となり胃食道逆流症(GERD)を発症するケースがある。GERDがリスク因子の1つとされる食道胃接合部がんの罹患数も増加しており、こうした除菌普及に伴う新たな問題に対応することも必要だ。 日本の胃がん治療は、これまでD2郭清を伴う高精度手術と、術後補助化学療法を組み合わせた治療戦略が中心だった。切除できたように見えても、再発リスクを下げるためには薬物療法を組み合わせる必要があり、術後化学療法は目に見えない微小残存病変を制御するために役立つ。  一方で、画像上切除可能であっても、診断時点ですでに微小転移を伴っている症例も少なくない。とくにスキルス胃がんや高度リンパ節転移症例など、再発高リスク群では手術先行のみでは限界があるケースも多い。こうした場合は、術前に化学療法を行い、腫瘍縮小後に手術を行う術前化学療法が欧米を中心に発展してきた。術前化学療法は、腫瘍縮小によるR0切除率向上、微小転移の早期制御、さらには機能温存の可能性向上などが利点だ。さらに症例によっては術後にも化学療法を行い、周術期全体で再発を抑え込む方向へと、治療戦略は進化を続けている。 さらに、切除不能のStageIV症例に対しても、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の進歩によって、薬物療法後にコンバージョン手術へ到達する症例が増加している。一方で、実際に切除まで到達できるのは10~20%程度であり、依然として進行胃がん克服には課題が残る。ここでは新たな薬剤や治療戦略の開発に期待したい。 私が専門とする外科領域では、低侵襲化と機能温存の流れが加速している。国内では腹腔鏡手術やロボット支援手術が急速に普及し、精緻な郭清や再建が可能となり、機能温存との両立が進んでいる。ロボット手術にAI機能を搭載する技術も急速に発達し、手術ガイドなどが実臨床で使われるようになっている。日本の外科手術の手技レベルは非常に高く、日本人外科医の手術手技をAIに学習させ、術中ナビゲーションとして活用する研究も進んでいる。ただし、手術の低侵襲化が進んでも、胃全摘後には15~20%程度の体重減少がみられ、ダンピング症状や逆流症状など術後QOLへの影響は依然として大きい。根治性を担保しながらいかに術後生活を維持するかが重要となる。この方面では、私の施設では胃切除後の患者向けのメニューを開発して施設内レストランで提供するなど、多職種が協力してサポートにあたっている。 ほかのがんで進むゲノム検査やバイオマーカーを使った個別化医療は、胃がんにおいてもすでに日常診療になっており、今後は予防、早期発見とあわせ、患者ごとの腫瘍特性に応じた治療法、術式選択、薬剤選択がますます重要になってくる。

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ICIとの併用でOSが延長、肺がん治療の新戦略「TTフィールド」の可能性/ノボキュア

 ノボキュアは2026年4月にメディアラウンドテーブル「進行期肺がん治療の新潮流」を開催した。同イベントでは近畿大学医学部内科学腫瘍内科の林 秀敏氏と同社の代表取締役である小谷 秀仁氏が登壇。2026年3月に保険収載された非小細胞肺がん(NSCLC)の腫瘍治療電場(TTフィールド)「オプチューンルア」について、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)との併用効果などを解説した。TTフィールドの抗腫瘍効果 TTフィールドは、電場をがん治療に応用した新たな治療モダリティである。肺がんに対しては150kHzの交流電場を体内に形成することで、直接および間接作用で抗腫瘍効果を発揮する。 直接作用として明らかになっているのは有糸分裂阻害である。交流電場によって細胞分裂に必要な紡錘体形成が妨げられ、がん細胞がアポトーシスへと誘導される。交流電場によって免疫原性細胞死が誘導されて抗腫瘍免疫が惹起されることで間接作用として抗腫瘍活性が発揮される。この結果、がん免疫療法がより有効に機能する状態が整えられる。 腫瘍細胞と正常細胞では電場の最適周波数が異なること、急速に分裂する腫瘍細胞に対して選択的に作用する特性から、TTフィールドは正常細胞への影響が少ないとされる。肺がんにおけるTTフィールドへの期待 日本における肺がんの罹患数は全がん種の中で2位、死亡数は最多である。新薬の登場で改善しつつあるが、肺がんの生命予後はいまだに厳しい。とくに2次治療以降の有効な選択肢は少ない。 こうした背景のもと、プラチナベース化学療法で進行した再発・進行NSCLCを対象に、国際多施設共同無作為化試験LUNARが実施された。 同試験の結果、全体集団においてオプチューンルア+標準療法(治験責任医師選択のICIまたはドセタキセル)群の全生存期間(OS)中央値は13.2ヵ月、標準療法群は9.9ヵ月と、統計学的に有意な延長が示され、主要評価項目を達成した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.56〜0.98、p=0.035)。特筆すべきはICIとの併用サブグループである。対照群であるICI単独群のOS中央値10.8ヵ月に対し、オプチューンルア+ICI群では19.0ヵ月を示し、8.2ヵ月の延長が認められた1)。TTフィールドが腫瘍免疫を活性化することでICIの有効性をさらに高める可能性が示唆される結果となった。 オプチューンルアの対象となるドライバー遺伝子陰性NSCLCにおいても、ICIによる2次治療の効果は限られている。林氏は「ICIをいかに効きやすくするかは、われわれに課せられた重要な使命であり、TTフィールドはその1つの答えになり得る」と期待を語った。実臨床での活用とサポート体制 オプチューンルアによる治療は在宅で実施する。胸部の前後を挟み4枚のアレイを貼付するという単純なものである。 LUNAR試験における主な有害事象はアレイ貼付部位の皮膚炎(大半がGrade1〜2)であり、保湿やスキンケアなどのシンプルな対応が有効である。 臨床効果の発現は長時間貼付することで、より発揮され、18時間以上の使用が推奨されている。 ノボキュアでは医療者、患者のサポート体制を整えている。MDR(Medical Device Representative)が医療機関向けに情報提供・適正使用推進を担い、DSS(Device Support Specialist)は機器の取り扱いトレーニングなどを担う。在宅療法という特性上、24時間365日のコールセンターでサポートする。アレイには着用時間を記録する温度センサーが内蔵されており、患者の使用データをDSSが担当の医療者に毎月フィードバックする。 治験を行なった林氏は「治療を頑張りたいという患者さんが多い。患者さん自身が治療に関与できる点がモチベーションにもつながっているのではないか」と語った。 TTフィールド療法は従来の薬物治療とは一線を画す新たなモダリティとして、またICIの有効性を底上げする治療戦略として、再発・進行NSCLCにおける新たな潮流となることが期待される。

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