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睡眠不足の看護師は感染症に罹患しやすい

 夜間勤務(以下、夜勤)の影響で睡眠不足を感じている看護師は、風邪やその他の感染症への罹患リスクの高いことが新たな研究で明らかになった。研究グループは、「シフト勤務が睡眠の質に与える影響が看護師の免疫系に打撃を与え、感染症にかかりやすくさせている可能性がある」と述べている。Haukeland大学病院(ノルウェー)睡眠障害コンピテンスセンターのSiri Waage氏らによるこの研究結果は、「Chronobiology International」に3月9日掲載された。 この研究は、ノルウェーの看護師1,335人(女性90.4%、平均年齢41.9歳)を対象に、睡眠時間、睡眠負債、およびシフト勤務の特徴と自己報告による感染症の罹患頻度との関連を検討したもの。これらの看護師は、過去3カ月間における睡眠時間、睡眠負債、シフト勤務、および感染症(風邪、肺炎/気管支炎、副鼻腔炎、消化器感染症、泌尿器感染症)の罹患頻度について報告していた。 その結果、睡眠負債(1〜120分、または2時間超)が多いほど感染症の罹患リスクは上昇することが明らかになった。睡眠負債がない人と比べた睡眠負債がある人での感染症罹患の調整オッズ比は、睡眠負債が1〜120分、2時間超の順に、風邪で1.33(95%信頼区間1.00〜1.78)と2.32(同1.30〜4.13)、肺炎/気管支炎で2.29(同1.07~4.90)と3.88(同1.44~10.47)、副鼻腔炎で2.08(同1.22~3.54)と2.58(同1.19~5.59)、消化器感染症で1.45(同1.00~2.11)と2.45(同1.39~4.31)であった。 また、夜勤の有無や頻度(0回の場合と比べて1〜20回の場合)は、風邪のリスク増加と関連していた。風邪の調整オッズ比は、夜勤がない場合と比べてある場合では1.28(95%信頼区間1.00〜1.64)、夜勤が0回の場合と比べて1〜20回の場合では1.49(同1.08〜2.06)であった。一方、睡眠時間やクイックリターン(休息間隔が11時間未満)と感染症罹患との間に関連は認められなかった。 Waage氏は、「睡眠負債や、夜勤を含む不規則なシフトパターンは、看護師の免疫力を弱めるだけでなく、質の高い患者ケアを提供する能力にも影響を及ぼす可能性がある」と「Chronobiology International」の発行元であるTaylor & Francis社のニュースリリースの中で指摘している。 研究グループは、病院や医療システムは看護師が十分な睡眠を取れるようにすることで、患者により良いケアを提供できる可能性があると述べている。論文の共著者であるHaukeland大学病院のStale Pallesen氏は、「夜勤の連続勤務を制限し、シフト間に十分な回復時間を確保するなど、シフトパターンを最適化することで、看護師は恩恵を受けることができる」とニュースリリースで話している。同氏はさらに、「免疫系が正常に機能するには睡眠が重要であることに対する医療従事者の認識を高めるとともに、定期的な健康診断とワクチン接種を奨励することも役立つ可能性がある」と付言している。

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お酒をやめるとLDL-Cが上昇?~日本人6万人のデータ

 飲酒による健康への悪影響が広く報告されているが、飲酒を始めたときや禁酒したときにコレステロール値がどう変化するかはわかっていない。今回、聖路加国際病院の鈴木 隆宏氏らが日本人約6万人のコホート研究で評価した結果、飲酒者が禁酒するとLDLコレステロール(LDL-C)値が上昇し、HDL-コレステロール(HDL-C)値が低下することが明らかになった。逆に、非飲酒者が飲酒を開始したときはLDL-C値の低下とHDL-C値の上昇がみられた。これらの変化はどちらも飲酒量が多いほど顕著だったという。JAMA Network Open誌2025年3月12日号に掲載。 このコホート研究は、2012年10月~2022年10月に東京の予防医学センターで毎年健康診断を受けている人(脂質低下薬投与中の人は除外)を対象とした。連続した2回の健康診断の間に、飲酒を開始した人と非飲酒を継続した人、および禁酒した人と同量の飲酒を継続した人のLDL-C値とHDL-C値の変化を比較した。なお、飲酒量は純エタノール10gを1杯とした。 主な結果は以下のとおり。・5万7,691人(平均年齢:46.8歳、女性:53.0%)の32万8,676回の受診を分析した。・禁酒を評価するコホート(2万5,144人、平均年齢:48.9歳、女性:49.1%、4万9,898回の受診)において、事前の平均(SD)LDL-C値とHDL-C値はそれぞれ114.7(28.4)mg/dLと65.5(16.4)mg/dLであった。・禁酒によるLDL-C値の変化は、禁酒前の飲酒量が1.5杯/日未満では1.10mg/dL(95%信頼区間:0.76~1.45)、1.5~3.0杯/日では3.71mg/dL(同:2.71~4.71)、3.0杯/日以上では6.53mg/dL(同:5.14~7.91)であった。禁酒によるHDL-C値の変化は、1.5杯/日未満では-1.25mg/dL(同:-1.41~-1.09)、1.5~3.0杯/日では-3.35mg/dL(同:-4.41~-2.29)、3.0杯/日以上では-5.65mg/dL(同:-6.28~-5.01)であった。・飲酒の開始を評価するコホート(2万9,042人、10万7,880回の受診)では、LDL-C値が低下、HDL-C値が上昇し、禁酒とは逆の用量反応関係が認められた。 このコホート研究では、飲酒の開始は緩やかなコレステロール改善と関連していたが、禁酒は好ましくない変化と関連していた。著者らは「禁酒後は、個人・集団の両方のレベルで心血管疾患リスク管理を最適化するために脂質プロファイルの変化を注意深く監視する必要がある」としている。

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第258回 献血は誰かを救うのみならず自身の健康も増進しうる

献血は誰かを救うのみならず自身の健康も増進しうる足しげく献血することはたくさんの誰かのためになるだけでなく、自身の血液も健康にするようです。私が足を運ぶ姫路の献血センターには、輸血を受けた患者さんやその近しい人からの手紙が掲示されています。よっぽど困難な状況にあるかあったであろう人たちからのそのような言葉の数々に触れると、血液検査目当てのおよそ健康診断のつもりの輸血もいくらかは役に立っていると感じることができて、なんだか前向きな気持ちになれます。献血する人は多かれ少なかれ似たような思いを経験されているかもしれません。血液学で最高峰のBlood誌に先週掲載された新たな観察試験結果1)によると、献血を頻繁にすることは自身にいくばくかの心の滋養になりうることのみならず、健康な血液細胞をより生み出せるようにする効果もあるようで、もしかすると血液がんを生じにくくする効果さえ担うかもしれません。英国のフランシスクリック研究所のチームは、ドイツの赤十字献血センターおよびドイツのがん研究所と協力し、生涯の献血回数が100回を超える頻回献血(frequent donor、以下「FD」)男性217人と献血回数がわずかな(10回未満)男性212人の血液検体を調べました。年齢はそろえられ、どちらもおよそ60歳代です。老化に伴って骨髄の造血幹細胞(HSC)に変異が蓄積することに伴い、遺伝配列が他とわずかに異なる血液細胞の一団が幅を利かせるようになるクローン性造血が生じるようになります。FD男性と非FD男性のクローン性造血の発生率に有意差はありませんでした。一方、クローン性造血との関連が知られるDNMT3A遺伝子の変化にはっきりとした差がありました。その差の意味を調べるべく、FD男性に多いDNMT3A遺伝子変化(FD変異)を導入したHSCがそうでないHSCとの共存の中でどう振る舞うかが検討されました。失血に応じて作られる造血ホルモンのエリスロポエチン(EPO)を与えることで献血に似せた環境にして培養したところ、FD変異細胞はそうでない細胞に比べてより早く増えました。その現象はEPOがあるときに限られ、EPOがないときの増える速さは似たりよったりでした。献血するたびに体内でEPOが突発することで、頻繁な献血者に多いDNMT3A変異細胞が増えるのに好都合になるようだ、と著者の1人Hector Huerga Encabo氏は言っています。研究はさらに続き、FD変異の取り柄が示唆されました。FD変異細胞と白血病を生じ易くする変異を有する細胞を一緒にしたところ、やはりEPOがある環境でFD変異細胞はより増え、赤血球をより生み出しました。すなわちFD変異はがん細胞の増殖を抑制する作用を担うかもしれません。今回の結果によると、献血はHSCの調子やその補充能力を向上するように仕向け、誰かの命を救うのみならず自身の血液系もより好調にするようです2)。とはいえ、検証がまだまだ必要です。たとえば、白血病を生じ易くする変異の発生を減らすと今回の結果をもって結論することは当然できず、異なる人種、女性、他の年齢層を含むより大人数でさらに検討しなければなりません2,3)。参考1)Karpova D, et al. Blood. 2025 Mar 11. [Epub ahead of print] 2)Giving blood frequently may make your blood cells healthier / NewScientist 3)Beneficial genetic changes observed in regular blood donors / Eurekalert

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日本人は35歳を過ぎると男女ともにBMIが増加傾向に/慶大

 年を重ね中高年になると、私たちの体型はどのように変化していくのであろう。この疑問に慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの植村 直紀氏らの研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の2015~20年度の加入者データから身長と体重、BMIの推移を解析した。その結果、男女ともにすべての年齢層でBMIが増加していたことが明らかになった。この結果は、International Journal of Obesity誌オンライン版2024年12月18日号に掲載された。 主な結果は以下のとおり。 研究グループは、2015~20年の協会けんぽの年次健康診断のデータを用い、35~69歳(1950~80年代生)の男性477万7,891人と女性337万8,003人を、性別と5年ごとの年齢区分に基づいて14のサブグループに層別化した。そして、線形混合効果モデルを用い、6時点(2015~20年)を独立変数とし、各アウトカムの値を推定した。・平均BMI変化はすべてのサブグループでプラスであり、BMIの増加傾向を示した(男性:0.02~0.14/年、女性:0.05~0.16/年)。・若いサブグループでは、変化は比較的大きく、体重の推移はBMIの推移を反映していた。・一方、高齢のサブグループでは体重の平均変化はマイナスだった(男性:-0.06kg/年、女性:-0.01kg/年)。・身長の減少はサブグループ全体で年齢とともに増加した(男性:-0.14~-0.03cm/年、女性:-0.18~-0.01cm/年)。 これらの結果から研究グループは、「日本人成人の全年齢群においてBMIは、男女とも年齢とともに増加する傾向があった。BMIの増加は、若年から中年にかけての体重増加に影響されているようであったが、高齢者では身長の減少がBMIの増加に影響していた」と結論付けている。

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50代の半数がフレイルに相当!早めの対策が重要/ツムラ

 2月1日は「フレイルの日」。ツムラはこの日に先立つ1月30日に「50歳からのフレイルアクション」プロジェクトの発足を発表し、フレイル対策の重要性を啓発するメディア発表会を開催した。セミナーでは東京都健康長寿医療センターの秋下 雅弘氏がフレイルの基本概念と対策の重要性について講演し、ツムラのコーポレート・コミュニケーション室長・北村 誠氏がプロジェクト概要を説明、そしてタレントの山口 もえ氏を交えてトークディスカッションを行った。秋下氏の講演「中年世代から大切なフレイル対策-ライフコースアプローチの観点から」の概要を紹介する。 平均寿命が延伸するとともに、日常生活に制限なく生活できる年齢である「健康寿命」や身体的・精神的・社会的に良好な状態を示す「ウェルビーイング」の重要性が高まっている。これを阻害する要因の1つである「フレイル」とは、歳とともに体力・気力が低下した、いわば健康と要介護の間の状態を指す。 フレイルの症状には、筋力が低下して転びやすくなるといった「身体的な問題」、もの忘れや気分の落ち込みが続くといった「心理・認知的な問題」、社会交流の減少や経済的な困窮といった「社会的な問題」という3つの要素がある。これらは別々に存在しているわけではなく、知恵の輪のように複雑に絡まり合っている。「加齢によるもの」と説明すると不可逆的なものと捉えられることが多いが、適切な対策を講じることで健康な状態に戻ることが可能という点が重要だ。 今回、ツムラは40~69歳の男女を対象に、厚生労働省が作成した「基本チェックリスト」に基づいてアンケート調査を行った1)。結果としては、50代の回答者の半数以上がフレイル相当で、前段階のプレフレイル相当を合わせると該当者は約9割に上った。このチェックリストは高齢者を対象としたもので、該当者がそのままフレイルというわけではないが、対策をせずにそのまま年齢を重ねれば確実にフレイルとなる可能性が高い予備軍だ。実際、フレイル/プレフレイル該当者のうち、約9割が「対策を行っていない」と回答した。50代は働き盛りで「自分はまだまだ大丈夫」という意識があるうえ、ポストコロナでのリモート生活の影響で運動量が減っているという要因もありそうだ。 フレイル対策はシンプルだ。栄養、運動、社会参加が3つの基本となる。栄養は朝昼夜の食事をバランス良く食べ、とくにタンパク質とビタミンDを意識的に摂取し、口腔衛生を保つこと。運動はウォーキングのような有酸素運動と筋トレのようなレジスタンス運動を併用して継続すること。社会参加は休日の外出や趣味や習い事などで人とのつながりを持つことが重要だ。患者説明用スライド「フレイルの定義と対策」※ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会  秋下 雅弘氏講演資料より 50代は筋力、筋肉量は減少してくるものの、通常はまだ生活に影響するほどではない。また、職場の健康診断もメタボリックシンドロームなどの生活習慣病による心血管病の予防と、がんの早期発見に重点が置かれ、フレイルなど高齢期の問題まで行き届いているとは言えない。しかし、50代という変化の大きな時期に何も対策を講じないでいると、60~70代でさらに筋肉は減少し、少しの動作や生活にも影響が出るようになり、また気分的にも行動変化に結び付けるのが難しい、まさに取り返しのつかない状況に陥るリスクがある。ライフコースアプローチの観点からも50代であればまだ十分に加齢変化を止め、あるいは回復までも期待できる。「まだ間に合う」という意味で、ぜひ50代からフレイル対策をはじめてほしい。 秋下氏は医師へのメッセージとしては、「体調不良を訴える中高年の診察時には、フレイルを気に留め、上記の栄養、運動、社会参加についてのアドバイスをしてほしい。また疲れやすさや気持ちの落ち込みといったよくある訴えの裏に、がんなどの疾患が潜んでいることもある。よくある主訴の背後にあるものを見逃さず、必要に応じて専門医につないでほしい」とした。フレイルのチェック方法患者説明用スライド「フレイルのチェックリスト」※ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会  秋下 雅弘氏講演資料より1)基本チェックリスト/厚生労働省7項目25の質問からなるチェックリストで、介護支援事業者が高齢者を対象に生活機能評価を行うために作成されたもの。2)J-CHS基準のチェックリスト国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが、J-CHS基準を一部改訂したもの。3)5項目のフレイルチェックJ-CHS基準をもとに秋下氏が監修し、よりわかりやすい表現にしたフレイルチェックリスト。5項目のうち1つでも該当するとフレイルの可能性がある。4)ペットボトルチェック筋力低下を測る1つの目安が握力とされており、男性は28kg以下、女性は18kg以下だとフレイルの可能性があると言われている。女性の握力目安と同じ程度とされているのがペットボトルのふたを開ける動作で、身近にチェックできる方法の1つ。一般的な「側腹つまみ」で開けられなかったら要注意。

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産業医に求められる3つのビジネススキル【実践!産業医のしごと】

はじめに産業医を選任するうえで、企業は産業医にどのようなことを期待しているのでしょうか。過重労働面談やメンタルヘルス対応、職場巡視などの専門性が産業医の基盤であることは当然ですが、これだけでは企業の期待に応えられていない可能性があります。先日、いくつかの産業医の人材紹介会社と話をする機会がありましたが、共通していたのは「産業医の交代に関する案件」が年々増加していることです。その背景には、産業医に対して、医療以外のビジネススキルへの期待があるといいます。そこで本稿では、産業医に求められる3つのビジネススキルについて解説します。1. ビジネスコミュニケーション医療の場面では、医師は指示者となることが多いですが、産業医は企業内でさまざまな立場の人々と関わります。その中で求められるのは、特別なテクニックではなく、ビジネスパーソンとしてのコミュニケーション力です。基本的には、医学用語を避けた平易な言葉での説明を心掛け、対等な立場での会話を意識します。また、以下のように相手によってアプローチの工夫を検討しましょう。経営層とのコミュニケーション経営層に対しては、データや数値を用いた簡潔な説明が求められます。医学的に正しいことを提案しても、感情で訴えるだけでは受け入れられる確率は下がります。必ず根拠となるデータや費用対効果を明確に示すことが重要です。人事部門とのコミュニケーション人事部門に対しては、具体的な施策と実行可能な計画の提示が重要です。定期的な情報共有を通じて施策の進捗状況や課題を共有し、必要に応じて計画を調整していきます。従業員とのコミュニケーション従業員に対しては、丁寧な傾聴と相談しやすい雰囲気づくりをすることで、健康相談の敷居を下げることができます。独立的かつ中立的な関わり方を意識しましょう。2. 時間管理の徹底時間管理は、企業との信頼関係を築くうえで基礎となるスキルです。企業からよく聞く不満の1つが、産業医の時間管理に関するものです。勤務時間の突然の変更やメールの返信の遅さは、信頼関係を損なう大きな要因となります。スケジュール管理の重要性産業医活動を円滑に進めるためには、年間スケジュールを企業と事前に共有し、計画的に業務を進めることが重要です。遅刻などがないように出務するようにしましょう。また、やむを得ない事情で予定を変更する場合も、速やかな連絡と代替案の提示が必要です。迅速なレスポンス対応メールなどのコミュニケーションツールへの返信は、基本的に24時間以内を心掛けましょう。とくにメンタルヘルス不調者への対応など、緊急に相談したい案件については、時間を融通するなどの柔軟な対応が求められます。3. 課題解決思考の提案産業医には、健康管理における課題を特定し、実現可能な解決策を提案する力が求められます。この際には、企業の経営資源(予算、人員、時間)を考慮した現実的なアプローチが重要です。課題の把握と分析企業のニーズを正確に理解することから始めましょう。健康診断や休職者の分析や職場環境調査の実施、産業保健スタッフや人事部門からの情報収集を通じて、課題を客観的に把握します。データに基づく分析は、経営層への提案時にも説得力を持ちます。実効性のある解決策の提案解決策には、短期的な対応と中長期的な視点の両方が必要です。たとえば休職者を減らしたいとして、3年程度の長期の目標を立て、その後に1年単位の施策を計画します。その際には予算、人員、時間などを検討しながら、既存リソースを活用し、1年ごとに効果を確認しながら施策を展開していくことが重要です。ビジネススキルの確認リストまとめ産業医の活動には、医学的専門性に加えて、ビジネススキルが不可欠です。ビジネススキルといってもハードルが高いものではなく、産業医を長く経験すれば自然と身に付いていくものだと思います。私の産業医経験から感じることは、企業は私たちを「従業員の健康に関する課題を共に解決してくれるパートナーになりうるか」を見ているということです。これらのスキルは、信頼を得て、頼られる産業医になるために必要不可欠な要素といえるでしょう。

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家族に糖尿病患者がいるといない家族と比べ20倍の発症リスク/新潟大

 2型糖尿病の発症に家族歴が関係していることが知られているが、その発症や有病リスクはどのくらいになるのだろうか。この疑問に新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野の池田 和泉氏らの研究グループは、健康診断データ約4万例を解析し、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率および発症率を解析した。その結果、糖尿病有病リスクは、家族に糖尿病がまったくいない人の約20倍という結果が示された。この結果は、Mayo Clinic Proceedings誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。家族歴は糖尿病、脂質異常症、高血圧の発症に関連 研究グループは、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の既往の家族歴(両親、兄弟姉妹、祖父母)と、同一集団におけるそれらの有病率および発症率との関連を検討するために1997年1月1日~2007年12月31日までに健康診断を受診した4万1,361例のデータを解析し、同一コホートにおけるロジスティック回帰分析およびCox回帰分析の結果を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析の結果、3疾患とも家族に既往者がいるほど有病率が増加し、とくに2型糖尿病は、罹患した親族の数が3人以上である場合のオッズ比(OR)が12.00(95%信頼区間[CI]:7.82~18.41)だった。・家族歴がない場合と比較し、3世代にわたる家族歴で既往がある場合のORは20.43(95%CI:11.0~37.8)だった。・家族歴を「両親、兄弟姉妹、祖父母」から「両親と兄弟姉妹」または「両親のみ」に再定義しても、各疾患のORに有意な変化はなかった。・家族歴で既往がありBMIが30以上の人では、家族歴がなくBMIが18.5~24.9の人と比較して、高血圧の有病率が19倍高かった。・縦断的研究において、家族歴は2型糖尿病(ハザード比[HR]:2.40、95%CI:1.93~2.98)、高血圧(HR:1.43、95%CI:1.26~1.62)、脂質異常症(HR:1.41、95%CI:1.08~1.83)の発症に強く影響した。 研究グループでは、以上の結果から「これらの疾患の家族歴の聴取は、高リスク群の同定に有用だった。また、2型糖尿病については、家族歴の既往の影響が最も強く、罹患家族の重複によってリスクが顕著に上昇した。家族歴が早期発見と予防に役立つことを示唆している」と述べている。

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医師による身体活動量の評価は慢性疾患の予防につながる

 医師が患者の身体活動量について尋ねることは、慢性疾患の予防に役立つ可能性があるようだ。米アイオワ大学ヘルスケア医療センターの患者を対象にした調査結果から、中強度から高強度の身体活動を週に150分以上というガイドラインの推奨を満たしていた人では、高血圧や心疾患、糖尿病など19種類の慢性疾患の発症リスクが有意に低いことが示された。論文の上席著者である、アイオワ大学健康・人間生理学分野のLucas Carr氏らによるこの研究結果は、「Preventing Chronic Disease」1月号に掲載された。 この研究でCarr氏らは、2017年11月1日から2022年12月1日の間にアイオワ大学ヘルスケア医療センターで健康診断を受けた患者を対象に、Exercise Vital Sign(EVS)質問票を用いた身体活動量のスクリーニングを受けた患者と受けていない患者の健康状態を比較した。また、スクリーニングで測定された身体活動量の違いに基づく健康状態の比較も行った。 EVS質問票は、「中強度から高強度の身体活動(早歩きなど)を週に平均何日程度行っていますか」と「中強度から高強度の身体活動を平均何分間行っていますか」の2つの質問で構成されている。Carr氏は、「この2つの質問には、通常は30秒もあれば回答できるので、患者の診察の妨げになることはない。それにもかかわらず、患者の全体的な健康状態について多くの情報を得ることができる」と述べている。 Carr氏らはまず、EVSの有効なデータがそろった患者7,261人と、スクリーニングを受けていない患者3万3,445人の比較を行った。その結果、身体活動量のスクリーニングを受けた患者は、受けていない患者に比べて、肥満(15%対18%)、うつ病(17%対19%)、高血圧(22%対28%)、合併症のない糖尿病(5.9%対8.5%)、合併症を伴う糖尿病(4.4%対7.3%)、貧血(4.6%対6.1%)、甲状腺機能低下症(9.3%対10.0%)、うっ血性心不全(1.1%対1.9%)、および中等度の腎不全(1.8%対2.5%)の発症率が有意に低いことが明らかになった。 次に、身体活動量のスクリーニングを受けた7,261人の患者を身体活動量に基づき、十分な身体活動量(4,382人、60%)、不十分な身体活動量(2,607人、36%)、身体活動を全く行わない(272人、4%)の3群に分けて健康状態を比較した。その結果、十分な身体活動量の群は、不十分な身体活動量の群や身体活動を全く行わない群に比べて、肥満、うつ病、合併症のない/合併症を伴う高血圧・糖尿病、弁膜症、うっ血性心不全など、身体活動不足に関連する19種類の併存疾患のリスクが低いことが示された。 こうした結果に基づき研究グループは、医師に対し、患者に身体活動量について質問し、活動量を増やす必要がある患者には活動量を増やすように促すことを推奨している。Carr氏は、「現在の医療環境では、患者の身体活動量を増やすために医師が支援を行っても、それに対する報酬を得ることは難しい。身体活動量の不足を報告している患者に対しては、身体活動の処方や地域の健康専門家などの支援サービスと簡単につながるための選択肢が必要だ」と述べている。 Carr氏は、「この研究は、たとえ短時間であっても、患者と身体活動習慣について話すことの大切さを強調している」との見方を示す。なお、2024年12月に「Journal of Physical Activity and Health」に発表した関連研究でCarr氏らは、医師が患者への身体活動のカウンセリングを行った場合、保険会社が医師に95%近くの確率で払い戻しを行っていることを明らかにしている。同氏は、「われわれの研究結果は、推奨されている身体活動に関する請求コードを医療従事者が申請すると、高確率で払い戻しが行われていることを示唆している。この結果は、身体活動量の評価とカウンセリングサービスを提供する取り組みの推進を支持するものだ」と結論付けている。

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85歳以上の日本人、高血圧は死亡リスクに影響する?しない?

 日本人高齢者の大規模コホート研究において、高血圧は65~74歳および75~84歳では全死亡リスクおよび心血管系死亡リスクを上昇させたが、85歳以上では上昇させなかったことを岡山大学/就実大学の赤木 晋介氏らが報告した。Geriatrics Gerontology International誌オンライン版2024年12月12日号に掲載。 本コホート研究は、2006年4月~2008年3月にベーシックな健康診断を受診した岡山市の65歳以上の5万4,760人を登録した。参加者は血圧によりC1からC6までの6つのカテゴリーに分けた(C1:SBP<120、DBP<80、C2:120≦SBP<130、80≦DBP<85、C3:130≦SBP<140、85≦DBP<90、C4:140≦SBP<160、90≦DBP<100、C5:160≦SBP<180、100≦DBP<110、C6:180≦SBP、110≦DBP)。血圧と全死亡および心血管疾患死亡との関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いて、C3を基準に各カテゴリーの全死亡のHRと95%信頼区間(CI)を計算した。心血管疾患死亡については、他の死亡を競合リスクと見なすFine and Grayモデルを使用し、部分分布HRと95%CIを推定した。さらに年齢層(65~74歳、75~84歳、85歳以上)ごとに解析した。 主な結果は以下のとおり。・全死亡の完全調整済みHRは、C5で1.11(95%CI:1.04~1.19)、C6で1.23(同:1.09~1.38)であった。・心血管死亡の完全調整済み部分分布HRは、C4で1.11(95%CI:1.01~1.21)、C5で1.19(同:1.05~1.34)、C6で1.36(同:1.09~1.70)であった。・年齢層別では、C4、C5、C6 の 全死亡の完全調整済みHRは、65~74 歳では1.14、1.26、1.75、75~84 歳では1.06、1.16、1.19、85 歳以上では 0.95、0.99、1.22であった。・高齢になるほど低血圧のリスクが増加し、C1のHRは85歳以上で1.28(95%CI:1.16~1.41)であった。

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心房細動の早期発見、早期介入で重症化を防ぐ/日本心臓財団

 日本心臓財団メディアワークショップは、都内で「心房細動の診療」をテーマにメディアワークショップを開催した。 心房細動(AF)は心臓内の心房が異常な動きをし、不整脈を引き起こす疾患である。AFでは、自覚症状を伴わないことが多く、気付かずに長期間放置すると心房内に生じた血栓が血流にのり、脳血管障害や心不全などを発症させる恐れがある。早期発見が重要であり、治療ではカテーテルアブレーションや薬物による治療が行われる。そして、早期発見では、日常の検脈や健康診断が重要となるが、近年では、テクノロジーの発達とデジタルデバイスの普及により、これまで見つかりにくかった無症候性や発作性タイプのAFの早期発見が可能になってきている。 セミナーでは、AFの病態やリスク、早期発見のための静岡市清水区でのAI診断の取り組みなどが解説された。AFの患者は100人に1人の時代 最初に「心房細動管理の最新トレンド」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院 医学研究科 循環器内科学分野 教授)が、最近のガイドラインからみたAFの病態や治療、カテーテルアブレーションについて解説した。 AFは、高齢の男性に多く、その有病率は増え続けている。患者数は100万人と推定され、100人に1人がAFと考えられる。2018年からは法律に基づき、「国民の健康寿命の延伸等を図るため」に脳卒中とならび国を挙げて対策を要する疾患となっている。 そして、AFを発症すると脳梗塞発症リスクが5倍、心不全で5倍、認知症で2倍という報告もあり、健康寿命、生命予後に大きく影響する。 現在、わが国にはAFに関係するガイドラインが4つある。『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』(編集:日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン/後述の3ガイドラインも同様)では、病態生理として「肥満」「高血圧」「糖尿病」「睡眠呼吸障害」などが伝導障害となり、電気的リモデリングを促進させ、AFのトリガーになることが示されている。 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』では、4つの段階に分けてAFと生活習慣管理・包括管理を示している。第1段階では「急性期の管理」、第2段階では「増悪因子の管理」、第3段階では「脳梗塞の予防」、第4段階では「症状の改善」が記載されている。とくに第4段階の症状の改善について、リズムコントロール(洞調律維持)およびレートコントロール(適切な心拍数調節)が症状改善に行われるが、「動悸などの症状が強い」「AFの持続で心不全の発症・増悪が危惧される」「AF発症関連の併存疾患が比較的少ない」などの患者ではリズムコントロールが望ましいとガイドラインでは記されている。 次に症状の発見について触れ“Fukuoka Stroke Registry”から「急性虚血性脳卒中を発症した心房細動患者における、脳卒中発症前の心房細動の診断状況、抗凝固療法の実施状況」について、脳卒中発症前にAFの診断がなかった人が45.9%に上ることを紹介するとともに1)、AF患者において無症候性の割合について37.7%の報告もある2)と紹介し、AFの発見が難しいことを説明した。では、発見が難しいAFをどのように見つけるか? 日常生活で簡単にできる方法として身体診察の「検脈」の方法を紹介するとともに、『2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン』に触れ、ガイドラインの中に記載されているAFのスクリーニングと治療に用いられる各デバイスの特徴について説明を行った。最近では、ウェアラブルの測定機器が進歩しているが、その精度はまだ未知数であり、エビデンスも確立されていないために長時間心電図モニターや携帯心電図などの心電図記録によるデバイスで診断することになっている。進歩するAFの治療 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』からAFの治療では、カテーテルアブレーションと抗凝固治療が行われる。 カテーテルアブレーションは、20221年のデータでわが国では約11万件施行されている。とくに心不全を合併したAFでは、カテーテルアブレーションは、全死亡・心不全入院を有意に減少させる報告があるので、予後を改善できる可能性が高い3)。 また、近年ではLVEF(左室駆出率)の低下した心不全(HFrEF)にも治療の適応が拡大されているほか、新しいカテーテル治療法として熱を伴わず特殊な電気ショックを利用して細胞のアポトーシスを誘導するパルスフィールドアブレーション(PFA)も登場し、安全に外科的治療が施行できるようになってきているという。 抗凝固療法に関しては、『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』で直接経口抗凝固薬(DOAC)4薬剤の用法・用量設定基準が明記され、すべてのDOACがCHADS2スコア1点以上で使用が推奨されている。また、腎機能障害、認知症、フレイルなどの高リスク高齢者についても積極的なDOACの使用を記していると説明し、レクチャーを終えた。AI診断で未診断のAFを発見 「『隠れ心房細動』を早期発見するための、AIとリモートテクノロジーを用いた取り組み-静岡市清水区における地域医療プロジェクトについて-」をテーマに笹野 哲郎氏(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学分野 教授)が、静岡市清水区で行われている心電図のAI診断とデバイスによるリモートモニタリングによるAFの早期発見の取り組みについて説明した。  静岡市清水地区の高齢化率は約32%とわが国の平均よりやや進んだ高齢化率を示し、すでにAFと診断された人が2,036人、隠れAFの人が2,000人とほぼ同数であることから、この地区が選定されたという。この取り組みでは、地元の市立清水病院と清水医師会が共同事業者となり現地で健診などを実施、連携する東京科学大学がデータのAI解析を行い、解析結果をフィードバックするものである。 同地区で行われているAFの早期発見メソッドとしては、「12誘導心電図のAI診断」、「デバイスによるリモートモニタリング」が行われている。AFは、肺静脈からのトリガー興奮の後、左心房内で異常興奮が持続することで起るが、発作時でなくとも心房リモデリングの評価はできるとして、AIの深層学習により発作性AFの推定をさせている。 そして、AIによるAF発見は実現可能な段階にあり、2022年1月から開始されたプロジェクトでは、2023年7月までに検診を受けた362例のうち11例(3.04%)に未診断のAFを発見したという。 また、デバイスによるリモートモニタリングについて、スマートウォチやスマートリングなどの精度は向上途上であり、やはり現在医療機器で使用されているモニタリング機器での検査が行われる。 今後、早期発見のために装着されるウェアラブル機器による生体モニタリングなどについては、利用者が中途で止めてしまわないようにモニタリングの重要性を教育すること、一切操作不要でモニタリングできるシステムの開発と導入が望まれると展望を語り、講演を終えた4)。

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ダイナペニック肥満は心血管疾患のリスク因子―久山町24年間の縦断解析

 肥満でありながら筋力が低下した状態を指す「ダイナペニック肥満」が、心血管疾患(CVD)発症の独立したリスク因子であることが、久山町研究から明らかになった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の瀬戸山優氏、本田貴紀氏、二宮利治氏らの研究によるもので、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に論文が10月8日掲載された。 筋肉量の多寡にかかわらず筋力が低下した状態を「ダイナペニア」といい、筋肉量と筋力がともに低下した状態である「サルコペニア」と並び、死亡リスク上昇を含む予後不良のハイリスク状態とされている。さらに、その状態に肥満が加わったサルコペニア肥満やダイナペニック肥満では、CVDのリスクも高まる可能性が示されている。しかしダイナペニック肥満に関してはCVDとの関連の知見がまだ少なく、海外からの報告がわずかにあるのみであり、かつ結果に一貫性がない。これを背景として本研究グループは、1961年に国内疫学研究の嚆矢として福岡県糟屋郡久山町でスタートし、現在も住民の約7割が参加している「久山町研究」のデータを用いた検討を行った。 解析対象は、1988~2012年に毎年健康診断を受けていて、ベースライン時にCVD既往のなかった40~79歳の日本人2,490人(平均年齢57.7±10.6歳、男性42.5%)。握力が年齢・性別の第1三分位群(握力が弱い方から3分の1)に該当し、かつ肥満(BMI25以上)に該当する場合を「ダイナペニック肥満」と定義すると、全体の5.4%がこれに該当した。 中央値24年(四分位範囲15~24)の追跡で482人にCVDイベント(脳卒中324件、冠動脈性心疾患〔CHD〕209件)が発生した。交絡因子(年齢、性別、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心電図異常など)を調整後に、握力の最高三分位群かつ普通体重(BMI18.5~24.9)の群(全体の23.9%)を基準として、ほかの群のCVDリスクを比較した。 その結果、ダイナペニック肥満群でのみ、CVD(ハザード比〔HR〕1.49〔95%信頼区間1.03~2.17〕)および脳卒中(HR1.65〔同1.06~2.57〕)の有意なリスク上昇が認められた。肥満でも握力低下のない群(第2~3三分位群)のCVDリスクは基準群と有意差がなく、また、やせ(BMI18.5未満)や普通体重の場合は握力にかかわらずCVDリスクに有意差がなかった。なお、CHDについてはダイナペニック肥満群のリスクも、基準群と有意差がなかった(HR1.19〔0.65~2.20〕)。 65歳未満/以上で層別化した解析では、65歳未満でダイナペニック肥満によるCVDリスクがより高いことが示された(HR1.66〔1.04~2.65〕)。一方、65歳以上では有意な関連を認めなかった(HR1.18〔0.61~2.27〕)。 続いて行った媒介分析からは、ダイナペニック肥満とCVDリスク上昇との関連の14.6%を炎症(高感度C反応性蛋白〔hs-CRP〕)、9.7%をインスリン抵抗性(HOMA-IR)で説明可能であり、特に65歳未満ではhs-CRPが13.8%、HOMA-IRが12.2%を説明していて、インスリン抵抗性の関与が強いことが示唆された。 著者らは、「握力とBMIで定義したダイナペニック肥満は、日本の地域住民におけるCVD発症のリスク因子であることが明らかになった。この関連性は、65歳未満でより顕著であり、炎症とインスリン抵抗性の上昇がこの関連性を部分的に媒介している」と総括。また、「われわれの研究結果は、CVD予防における中年期の筋力の低下抑止と、適切な体重管理の重要性を示唆するものと言える」と付け加えている。

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心房細動発症、尿酸上昇と体重増加が相互に作用~日本人での研究

 尿酸と肥満が関与する心房細動の新規発症機序から、心房細動発症に尿酸増加と体重増加が相互に作用している可能性がある。今回、京都府立医科大学の宗像 潤氏らが、「20歳以降に体重10kg以上増加」という体重変化の尺度を用いて調査したところ、ベースラインで尿酸値が正常範囲内であっても、その後の尿酸値の増加と体重増加が心房細動の新規発症に相互作用を及ぼすことがわかった。BMJ Open誌2024年11月27日号に掲載。 本研究は後ろ向きコホート研究で、2013年4月2日~2022年4月30日に毎年健康診断を受けた従業員コホートのうち、心房細動を発症していない30歳以上の日本人1,644人を後ろ向きに解析した。血清尿酸と体重の経時的変化が心房細動新規発症に及ぼす影響について、ランドマーク生存解析を用いて評価した。体重増加は標準化自記式質問票における「20歳以降に体重10kg以上増加」と定義し、心房細動は心電図で心房細動が認められた場合または問診で心房細動が認められた場合とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3.91年の間に69例が心房細動を新規発症した(発症割合:1.12/1,000人年)。・ベースラインの血清尿酸値は体重増加あり群で5.76(±1.37)mg/dL、体重増加なし群で4.87(±1.31)mg/dLであり、いずれも正常範囲内であった。・交互作用項を含む多変量ランドマーク生存分析では、心房細動の新規発症は、年齢、性別、ベースラインの収縮期血圧、ベースラインの尿酸値、尿酸値変化と体重増加の交互作用項と有意に関連していた。・体重増加と尿酸値変化との交互作用項によると、尿酸値1mg/dL増ごとのハザード比は、体重増加あり群で1.96(95%信頼区間[CI]:1.38〜2.77)、体重増加なし群で0.95(95%CI:0.61〜1.48)であった。

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COVID-19罹患で自己免疫・炎症性疾患の長期リスクが上昇

 COVID-19罹患は、さまざまな自己免疫疾患および自己炎症性疾患の長期リスクの上昇と関連していることが、韓国・延世大学校のYeon-Woo Heo氏らによる同国住民を対象とした後ろ向き研究において示された。これまでCOVID-19罹患と自己免疫疾患および自己炎症性疾患との関連を調べた研究はわずかで、これらのほとんどは観察期間が短いものであった。著者は「COVID-19罹患後のリスクを軽減するために、人口統計学的特性、重症度、ワクチン接種状況を考慮しながら、長期的なモニタリングと管理が重要であることが示された」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Korea Disease Control and Prevention Agency-COVID-19-National Health Insurance Service(K-COV-N)コホートを対象に、COVID-19罹患後の長期における自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクを調べた。対象は、2020年10月8日~2022年12月31日にCOVID-19罹患が確認された住民(COVID-19罹患群)、2018年に一般健康診断を受けた住民(対照群)とした。 主要アウトカムは、COVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患の発症率とリスクとした。逆確率重み付け法を用いて、人口統計学的特性、一般的な健康データ、社会経済的状況、併存疾患などの共変量を調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・観察期間180日超のCOVID-19罹患者314万5,388例、対照376万7,039例の計691万2,427例(男性53.6%、平均年齢53.39[SD 20.13]歳)が解析に含まれた。・COVID-19罹患群でリスクが高かった疾患(調整ハザード比、95%信頼区間)は以下のとおりであった。 円形脱毛症(1.11、1.07~1.15) 全頭脱毛症(1.24、1.09~1.42) 尋常性白斑(1.11、1.04~1.19) ベーチェット病(1.45、1.20~1.74) クローン病(1.35、1.14~1.60) 潰瘍性大腸炎(1.15、1.04~1.28) 関節リウマチ(1.09、1.06~1.12) 全身性エリテマトーデス(1.14、1.01~1.28) シェーグレン症候群(1.13、1.03~1.25) 強直性脊椎炎(1.11、1.02~1.20) 水疱性類天疱瘡(1.62、1.07~2.45)・人口統計学的特性(男性/女性、40歳未満/以上)別のサブグループ解析では、COVID-19罹患による自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクは、性別や年齢によって異なることが示された。・とくに、ICU入室を要する重症COVID-19罹患、デルタ株優勢期の感染、ワクチン未接種はCOVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクが高かった。

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自覚症状に乏しい糖尿病性腎症に早く気付いて/バイエル

 バイエルは、11月14日の「糖尿病の日」に合わせ、糖尿病と合併症に関する啓発イベントを開催した。イベントでは、糖尿病専門医による糖尿病に関するプレスセミナーとお笑いコンビ「ガンバレルーヤ」をゲストに迎えての市民向けの疾患啓発が行われた。糖尿病の合併症の腎臓病では透析導入になりやすい 「糖尿病と合併症ってどんな病気? 患者さん中心の医療について考える」をテーマに坊内 良太郎氏(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター/糖尿病内分泌代謝科)が、糖尿病の病態、診療、合併症を抑えるポイントを解説した。 わが国の糖尿病と疑われる人の数は約2,000万人にのぼり、国民の5~6人に1人は糖尿病の危険があるとされる国民病となっている。 糖尿病は「インスリンの作用不足により起こる血糖値が高い状態が続く疾患」であり、診断では空腹時血糖値が126mg/dL以上、食後血糖値、ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上あれば糖尿病が強く疑われ、再度の検査で確定診断となる。また、健康診断などでよく話題になるHbA1cも6.5%以上は糖尿病が強く疑われる指標となる。 糖尿病にはI型、II型、妊娠、そのほか(薬剤性、肝臓疾患など)の4種類があり、その症状として「のどの渇き、水分の多飲」「日中・夜間の頻尿」「疲れやすい」「体重減少」などがある。そして、これらの症状は自覚症状に乏しく放置しがちであり、医療機関を受診しないことで合併症のリスクが高まる。 糖尿病合併症では、脳卒中、心筋梗塞、壊疽(神経障害)などの大血管障害と網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害がある。また、併存症として肺炎などの感染症、肝臓・膵臓などの悪性腫瘍、歯周病なども糖尿病患者では起こりやすく、重症化しやすい。 とくに糖尿病性腎症は、慢性腎臓病(CKD)の代表的な疾患であり、病期がかなり進行するまで自覚症状に乏しいために、診断がされたときには腎不全で透析導入になるケースが多い。実際、日本透析医学会の調査では、糖尿病性腎症は透析導入の約4割を占めていると報告されている。糖尿病合併症の抑制には血糖、血圧、脂質の厳格な管理が求められる 現在、日本糖尿病学会では、診療ガイドラインなどで糖尿病治療の目標として、「健康な人と変わらない寿命と生活の質(QOL)の達成」を示している。糖尿病の根治が難しい以上、合併症を抑えることが重要となる。 糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法だが、これでも効果が不十分な場合に薬物療法が追加される。いずれも患者の自主的な取り組みなしには成功しない治療である。また、HbA1cを7%未満に抑えれば網膜症や腎症の悪化リスクを抑えことができるという研究報告1)のほか、血圧を130/80mmHg未満に抑えたり、LDLコレステロールを適切に管理したりすれば合併症のリスク低減が期待できるため、ガイドラインなどで推奨されている。そのほか、わが国のJ-DOIT3の研究結果から血糖、血圧、脂質の厳格な管理が糖尿病の合併症予防につながり、とくに脳血管合併症や腎症に効果があるとされている2)。 最後に坊内氏は、糖尿病やCKDの治療において大切なこととして、「医師やメディカルスタッフとのコミュニケーションが重要である。共同意思決定(SDM)として治療のゴールを決めるために、患者さんが価値観や好みをきちんと医師などに伝えることで、患者さん個々に合った治療法の提案をすることができる」と語り、講演を終えた。 この後開催された疾患啓発イベント「体験型ボードゲームで学ぶ糖尿病と合併症 ~腎臓の声に耳を傾けよう~ in 丸の内」のオープニングイベントでは、先の講演者の坊内氏が糖尿病の3大合併症として、網膜症、腎症、神経障害を挙げたうえで、糖尿病性腎症はかなり進行するまで自覚症状に乏しいことに言及。「定期的な検査、とくに尿検査を行い、このイベントのタイトルにもなっている『腎臓の声』にしっかり耳を傾けよう」と呼びかけ、ゲストのガンバレルーヤの2人は「自覚症状が出にくいからときちんと病院に行って定期的に検査を受けることが大事なんですね」と早期発見の大切さに納得していた。また、会場では、特大サイズのボードゲームが人気で、多くの参加者が糖尿病とその合併症について学んでいた。

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酒で赤くなる人は睡眠満足度が低い?

 飲酒後に顔や首が赤くなる症状はアジアンフラッシュとして知られ、東アジア人の約36%がアジアンフラッシュの特徴を持っている。アジアンフラッシュに関連する遺伝的因子は睡眠時間と逆相関することが報告されているが、アジアンフラッシュと睡眠満足度との関連を報告した研究はない。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らがインターネット調査による横断研究で検討したところ、アルコール曝露に対する身体的反応の遺伝的特徴が睡眠の質にも影響を及ぼす可能性が示唆された。Medical Science誌2024年11月8日号に掲載。 本研究は、インターネット調査会社に登録している大阪府在住の一般モニターのうち20~64歳の日本人3,823人(男性1,907人、女性1,916人)を対象とし、2023年11月27~30日にインターネット調査を実施した。睡眠の満足度については、「満足」「少し不満」「かなり不満」「非常に不満またはまったく眠れなかった」のうち「満足」と回答した参加者を満足のいく睡眠をとっているとみなした。アジアンフラッシュについては、「飲酒し始めた年齢で、少量のアルコール摂取(ビールコップ1杯程度)ですぐに顔が赤くなりましたか?」という質問に「はい」と回答した参加者をアジアンフラッシュを経験していると分類した。飲酒したことのない参加者と過去に飲酒していた参加者を非飲酒者と定義した。 主な結果は以下のとおり。・アジアンフラッシュと睡眠満足度の間に有意な逆相関が認められた。潜在的交絡因子を補正した睡眠満足度のオッズ比(OR)は0.81(95%信頼区間[CI]:0.69~0.96)であった。・飲酒者と非飲酒者で基本的に同様の関連が認められた。補正後のORは、非飲酒者で0.81(95%CI:0.65~0.997)、飲酒者で0.80(同:0.61~1.05)であった。 著者らは、この結果が与える新たな臨床的意味合いとして「日常診療や毎年の健康診断に簡単に導入できる質問票が、睡眠不足の危険因子を特定するために役立つ可能性がある。また、飲酒しない人でもアジアンフラッシュは睡眠時間だけでなく睡眠満足度に関しても睡眠障害のリスクであることが明らかになった」としている。

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加齢性難聴予防に「聴こえ8030運動」を推進/耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 加齢性難聴は、日常のQOLを低下させるだけでなく、近年の研究から認知症のリスクとなることも知られている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、都内で日本医学会連合TEAM事業の一環として「多領域の専門家が挑む加齢性難聴とその社会的課題」をテーマに、セミナーを開催した。本事業では「加齢性難聴の啓発に基づく健康寿命延伸事業」に取り組んでおり、主催した日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では「聴こえ8030運動」を推進している。当日は、加齢性難聴対策の概要や認知症との関係、学会の取り組みなどが講演された。聴こえが悪いと感じたら耳鼻科で聴力検査を 「加齢性難聴対策を介した共生社会の実現への取り組み」をテーマに和佐野 浩一郎氏(東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 准教授)が、現在の難聴対策の現状と問題点などについて講演を行った。 わが国は世界一の高齢化社会であり、加齢性難聴の放置は認知症の最大のリスクとなることが知られている1)。2024年の研究報告でも「難聴治療は老年期の認知症の予防に寄与する」という報告も出されている2)。こうした研究結果を踏まえ、日本医学会連合では2023年度よりさまざまな学会と連携し、難聴・聴覚補償機器に関する啓発活動を実施し、難聴への取り組みを行っている。 年代別の聴力レベルの変化について、高齢になればなるほど言葉の聞き取り力は有意に低下し、80代では半数が中等度の難聴となる3)。こうした加齢性難聴対策として「予防、受診、介入」を柱とした「聴こえ8030運動」が始められた。 難聴の原因には、加齢を筆頭に感染症、環境、薬剤など多彩な要因があり、最近では若年者の聴力は悪化傾向にあるという。こうした原因を啓発し、防止することが難聴予防につながると語る。また、わが国の耳鼻科への受診について、「聞こえに不自由を感じている人の受診率」が4割程度と先進国の中でもかなり低い割合であり、若年・中年期の難聴は健康診断などで発見されにくく、後期高齢者保健事業でも聴力検査が採り入れられていない課題があると指摘する。 おわりに和佐野氏は、「今後は適切な聴覚管理での早期介入のためにも、聞こえにくさを感じたら気軽に耳鼻科で聴力検査を受診できるよう、検査のハードルを下げる啓発活動を行っていきたい」と抱負を述べた。宮城県における加齢性難聴対策の取り組み 「言語聴覚士による加齢性難聴対策」をテーマに佐藤 剛史氏(東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学/日本言語聴覚士協会)が、言語聴覚士(ST)の立場から高齢者や行政の支援者などへの難聴啓発事業について説明した。 佐藤氏の所属する東北大学と宮城県、仙台市では三者が連携し「高齢者の難聴および誤嚥性肺炎の理解と対応に関する普及啓発モデル事業」を行っている。 本事業は、高齢者の通いの場を中心とした啓発事業であること、行政・大学・地域が役割分担をして運営すること、啓発事業の対象は高齢者だけでなく地域の支援センターの福祉担当者や保健師、職員なども参加すること、自身の「聞こえ」状態が体感できる参加型講習であることを特徴としている。 市町村の職員など支援者向けの研修会は2022年から開催され、過去3回で248人が参加し、研修では耳の解剖や聴力の仕組みなどの講演会が行われている。また、高齢者向けの啓発活動では、加齢性難聴の病態と治療、体験プログラムが行われている。2022~23年の実施状況として、全41会場で合計1,395人が受講した。受講した高齢者へのアンケートでは、965人(平均年齢76歳)から回答を得た。対象者の聞こえの状態では、約7割弱の人が聞こえの不自由さを感じており、補聴器の装着は約2割に止まっていた。受講後に耳鼻科受診について聞いたところ約5割の受講者が「受診をしたい」と回答した。 佐藤氏は、今後の課題としては、「受診につながる長期のフォローアップや『通いの場』に参加できない人への啓発、『聞こえチェック方法』の検討などが必要であり、STの役割としては住民・行政などへの啓発活動や地域作り、高齢者への地域での難聴への支援、健診活動や補聴器装用の専門支援などが考えられる」と提言を行った。加齢性難聴への補聴器装用は認知症予防に寄与 「加齢性難聴と認知症」をテーマに下畑 享良氏(岐阜大学脳神経内科学 教授/日本神経学会 理事)が、難聴と認知症の関連について講演した。 わが国の認知症高齢者は2040年に約580万人(約15%)と推定されている。認知症では、アルツハイマー型認知症が1番多く、同症はアミロイドβが脳に沈着することで発症する。近年の研究では、この沈着に影響する因子に関し「高血圧」「喫煙」「睡眠」など多数の因子が関連していることが指摘されている。そして、先述の研究でも2)難聴が最大の修正可能因子であり、認知症の発症ないし遅延ができる可能性がある。 南デンマーク・57万例を対象とした約9年間の研究では、難聴があって補聴器をしていない人の認知症発症のハザード比は1.20であった一方で、補聴器を装用している人のハザード比は1.06だった結果から補聴器は認知症発症リスクを減少させる可能性があると指摘する4)。 アメリカからも同様の研究報告があり、認知症予防に難聴の人では、補聴器の装用が有効である可能性が示唆されることから、「認知症予防のために今後啓発していく必要がある」とその重要性を下畑氏は語った。加齢性難聴の社会的認知に「聴こえ8030運動」の取り組み 「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が取り組む『聴こえ8030運動』」をテーマに羽藤 直人氏(愛媛大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 理事)が「聴こえの8030運動」について説明した。 この運動は、80歳で30dB(聞こえの閾値)の聴力を保つ国民啓発運動であり、全年代に加齢性難聴の周知、聴力検査などの耳鼻科への受診啓発、補聴器装用率の向上を目指すものである。加齢性難聴者数は1,437万人と推定され、60歳以上の3人に1人、70歳以上の約半数が該当するとされている。その一方で耳鼻科受診率は低く、加齢性難聴が疾病であるという認識が不足しているとされる。また、先進国と比較して補聴器装用率もわが国は約1/3、人工内耳普及率も約1/2と低い数字に止まっている。 そこで、日本歯科医師会推進の「8020運動(80歳で20本以上の歯の維持を目標)」にならい、良い聞こえで高齢者の健康寿命をサポートする目的で「聴こえ8030運動」を実施した経緯を説明した。運動の目標数字として、80歳で30dBの聞こえを維持している割合が現状30%から20年後には50%への伸長を謳っている。 加齢性難聴対策としては、「大音量で音楽などを聴かない」、「騒音の場所を避ける」、「騒音下の仕事では耳栓」、「静かな場所で耳を休ませる」などがあり、聞こえが悪くなったら補聴器の装用などが勧められる。 おわりに羽藤氏は、「こうした情報を手軽に入手できるように専用のウェブサイトを開設した。加齢性難聴という疾患の周知から聴力検査での耳鼻科受診、そして難聴カウンセリング、補聴器の適合診断を経て、適切な補聴器、人工内耳の普及へとつなげていくことで、認知症の抑制につなげていきたい」と展望を述べた。 講演後に「聴こえ8030運動が拓く加齢性難聴の未来」をテーマに、内田 育恵氏(愛知医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 特任教授)の進行で総合討論が行われた。総合討論では、残置聴力と補聴器の相性や聴こえ8030運動での医師以外の医療従事者の役割と連携、補聴器装用とSTの役割、非専門医への啓発、耳鼻科への診断はいつ行うかなどを話題に活発な議論が行われた。

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事例010 外来・在宅ベースアップ評価料(I)の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説初診の患者に対して「O100 外来・在宅ベースアップ評価料(I)」(以下「同評価料(I)」を算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)が適用されて査定になりました。「同評価料(I)1初診時」は、「主として医療に従事する職員の処遇改善を進める医療機関が、施設基準を満たしていると届出ている場合、初診を行った場合に算定ができる」と記載されています。健康診断後の精査にかかる初診であっても、初診を行った場合にあたると考えられるので算定は可能としていました。査定理由を調べるために、診療報酬点数表を読み返してみました。同評価料(I)1の留意事項(2)に、「A000初診料(中略)を算定した日に限り、1日につき1回算定できる」とあります。今回の事例は健診後の精査受診です。初診料の算定は認められません。初診料の算定が伴う同評価料(I)は算定できないことがわかります。「初診」と「初診料」の言葉の違いが明確に示された査定でした。同評価料(1)2再診時や、同評価料(1)3訪問診療時にも同様の留意事項が示されています。再診即時入院の場合は同評価料(1)2再診時が算定可能と通知が発出されています。同日に異なった診療科で関連の無い傷病を診察したときに認められる「A000 注5 2つ目初診料(複初)」の場合の通知はみつかりませんでした。これらの解釈を院内周知して査定対策としています。

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最近、疲れやすいんです…【漢方カンファレンス】第11回

最近、疲れやすいんです…以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】50代男性主訴易疲労感、腰痛既往気管支喘息病歴1年前から易疲労感を自覚するようになった。仕事はできているが、疲れがなかなか抜けず休日はゴロゴロしている。また腰痛が悪化したこともあり趣味のゴルフがしばらくできていない。これまで健康診断や人間ドックで異常を指摘されたことはない。妻に漢方治療を勧められて受診した。現症身長174cm、体重64kg(BMI 22kg/m2)。体温36.2℃、血圧120/56mmHg、脈拍56回/分 整、呼吸数16回/分。身体所見に特記すべき異常はない。経過初診時「???」3包 分3を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後調子は変わらない。2ヵ月後なんとなく調子がよい。夜間尿の回数が減った。3ヵ月後久しぶりにゴルフができた。6ヵ月後腰痛が軽減している。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?最近、寒がりになりました。下肢が冷えます。下肢はどこが冷えますか?とくに膝から下が冷えます。入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?入浴時間は長いです。冷房は好きです。飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?よくのどは渇きます。冷たい物をよく飲みます。1日およそ1.0L程度です。<ほかの随伴症状を確認>食欲はありますか?胃は弱くないですか?食欲はあります。胃は丈夫です。倦怠感はありますか?昼食後に眠くなりませんか?横になりたいほどきついですか?朝は調子が悪いですか?疲れやすいですが、いつも横になりたいほどではありません。昼食後に眠くなることはありません。朝は比較的調子がよいです。尿は1日に何回出ますか?夜間尿はありますか?便秘・下痢はありませんか?汗はよくかきますか?尿は1日7~8回で、夜間尿2~3回です。便秘・下痢はありません。汗はよくかきます。よく眠れますか?よく眠れますが、尿のために起きることが最近増えました。腰痛について教えてください。夜間安静時に痛みはありますか?入浴で温まると楽になりますか?動かすとベルトのあたりが痛みます。夜間に痛むことはありません。温まると痛みは軽減します。下肢はむくみますか?靴下の痕はつきませんか?はっきりむくむことはありませんが、夕方には靴下の痕がついています。ほかに気になるところはありませんか?最近、老眼が進んだ気がします。【診察】顔色は普通。脈診ではやや沈、強弱中間脈。また、舌は暗赤色、乾燥した白苔が中等量、舌下静脈の怒張あり、腹診では腹力は中等度、心窩部に抵抗あり。下腹部の腹力の低下あり。四肢末端に明らかな冷えはない。カンファレンス今回は50代前半男性の易疲労感、腰痛が主訴の症例ですね。寒がりになった、下肢、とくに膝下が冷える、入浴時間は長い、などから陰証が示唆されます。しかし触診では冷えを認めない、冷房が好き、横になりたいほどの倦怠感はないということからと強い冷えはないようです。そうだね。少なくとも少陰病でみられるような全身の冷え、倦怠感はないね。ただし、寒がりや下肢の冷えのほか、腰痛が入浴で温まると改善するということは、冷えの関与が考えられるね。入浴で痛みが軽減するかどうかも有用な情報になるのですね。少陰病ほど強い冷えはないとすると太陰病ですね。冷えの程度が軽いことから太陰病が考えやすいですね。虚実はどうでしょう?脈は強弱中間、腹力は中等度であることから虚実間と考えられます。そうですね。では漢方診療のポイント(3)の気血水の異常を考えましょう。疲れやすいというものの、食欲があって、昼食後の眠気はないということで気虚ということではなさそうです。朝調子が悪いという気欝の特徴もありません。血の異常(瘀血)では、舌暗赤色、舌下静脈の怒張でしょうか。倦怠感の漢方医学的鑑別が上手になりましたね。あとは、浮腫はないけれども下肢に靴下の痕がつくということを軽度の水毒(第9回「今回のポイント」の項参照)と考えてもよいでしょう。排尿異常も水毒とみなしますので、夜間頻尿も水毒と考えます。本症例では、易疲労感に加えて、瘀血や水毒の異常があるということですね。そのほかには、夜間頻尿、腰痛、老眼と現代医学的には複数の科に渡る症状が並んでいます。これらはすべて加齢に伴ってよく出現するものだと思うのですが…。漢方では加齢に伴って出現する症状をまとめて、加齢とともに腎の機能が衰えてくる「腎虚」(本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)と考えて治療をするよ。そうすると本症例の夜間頻尿、下肢の冷え、腰痛、老眼などが一連の症状として考えることができますね。また、本症例の腹部の診察で、上腹部と比べて、下腹部の抵抗が弱いことを小腹不仁(しょうふくふじん)とよびます(写真)。これは腎虚を示唆する腹部の所見です。それでは本症例をまとめましょう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、下肢(とくに膝下)が冷える、長湯できる、冷房が好き、冷水を好む、横になりたいほどの倦怠感はない脈:やや沈→陰証(太陰病)(2)虚実はどうか脈:強弱中間、腹力:中等度→虚実間(3)気血水の異常を考える疲れやすい→気虚?舌暗赤色、舌下静脈の怒張→瘀血下肢浮腫、夜間頻尿→水毒浮腫、夜間頻尿、腰痛、老眼→腎虚(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む下肢の冷え、小腹不仁解答・解説【解答】以上から本症例は、腎虚に対して用いる八味地黄丸(はちみじおうがん)を用いて治療しました。【解説】腎虚に対する治療薬が八味地黄丸です。もとの古典を参考に八味丸という名前で丸剤として製造するメーカーもあります。主に下半身の症状が多く、冷えはとくに膝下が冷えることが特徴です。腰痛、下肢痛、下肢のしびれなどのほか、排尿異常(とくに夜間頻尿)、下肢浮腫などが代表的な症状で、視力障害、聴力障害、精力減退なども含まれます。もちろん加齢に伴う症状ですから内服によりすべての症状が改善するとはいえませんが、じっくりと内服することで症状が軽減していくことはよく経験します。構成生薬では、地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)が体を栄養・滋潤する作用があるとされ、そのほか利水作用のある沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、駆瘀血作用のある牡丹皮(ぼたんぴ)に加え、体を温める附子(ぶし)などが含まれます。八味地黄丸は太陰病の虚証に適応となる漢方薬ですが、虚証の程度は軽く、虚実間からやや実証まで、幅広く適応になります。そのためひどく虚弱で胃が弱い人ではしばしば胃もたれすることがあるので注意が必要です。そのため食前ではなくあえて食後に内服する、あるいは減量して用いる場合もあります。八味地黄丸に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)が加わったものが牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)で浮腫が強い、しびれが強いなどの場合に用います。また、腎虚はあるものの冷えが目立たない症例では桂皮(けいひ)と附子を除いた六味丸(ろくみがん)という漢方薬もあります。八味地黄丸が適応となるのは、高齢者でも倦怠感や腰痛などのひどい症状があって困っている状態や施設で寝たきりの高齢者よりも、元気に外来通院してくる人というイメージです。また、内服して短期間に効果を実感できることは少なく、数ヵ月間じっくりと内服して、少しずつ症状が改善していくことが多いため、注意深く効果判定する必要があります。そのため効果判定として、夜間尿は回数として客観的に評価できるのでお勧めです。今回のポイント「腎虚」の解説生命活動を営む根源的エネルギーである気は「先天の気」と「後天の気」に分けられます。生まれた後は、呼吸や消化によって後天の気を取り入れることができます。一方、先天の気は、生まれながらの生命力というべきもので、「腎は先天の気を主(つかさど)る」といわれ、漢方医学的な腎に宿ります。腎は成長、発育、生殖能などと関連し、腎の働きは年齢とともに弱くなります。腎の機能が衰えてくることを腎虚といい、加齢に伴って出現する排尿異常、下半身の冷えや痛み、聴力障害、視覚障害、精力減退などをまとめて腎虚による症状と考えることができます。

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医師の飲酒状況、ALT30超は何割?年齢が上がるほど量も頻度も増える?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省は2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」1)を発表し、国民に向けて、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を推進している。こうした状況を踏まえ、日頃から患者さんへ適切な飲酒について指導を行うことも多い医師が、自身は飲酒とどのように向き合っているかについて、CareNet.com会員医師1,025人を対象に『医師の飲酒状況に関するアンケート』で聞いた。年代別の傾向をみるため、20~60代以上の各年代を約200人ずつ調査した。本ガイドラインの認知度や、自身の飲酒量や頻度、飲酒に関する医師ならではのエピソードが寄せられた。「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の認知度 Q1では、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の認知度について4段階で聞いた。全体では、認知度が高い順に「内容を詳細に知っている」が7%、「概要は知っている」が27%、「発表されたことは知っているが内容は知らない」が23%、「発表されたことを知らない」が43%であり、約60%が本ガイドラインについて認知していた。各年代別でもおおむね同様の傾向だった。診療科別でみると、認知度が高かったのは、外科、糖尿病・代謝・内分泌内科、消化器科、精神科、循環器内科/心臓血管外科、内科、腎臓内科の順だった。ALT値が30U/L超の医師は16% Q2では、医師自身の直近の健康診断で、肝機能を示すALT値について、基準値の30U/L以下か、30U/L超かを聞いた。日本肝臓学会の「奈良宣言」により、ALT値が30U/Lを超えていたら、かかりつけ医を受診する指標とされている2)。「ALT値30U/L超」は167人で、全体の16%を占めていた。年代別の結果として、30U/L超の人の割合が多い順に、50代で22%、60代以上で21%、40代で17%、30代で14%、20代で7%となり、年齢が上がるにつれて30U/L超の人の割合が多くなる傾向にあった。年齢が上がるにつれて、1回の飲酒量が増加 Q3では、1回の飲酒量について、単位数(1単位:純アルコール20g相当)を聞いた。お酒の1単位の目安は、ビール(5度)500mL、日本酒(15度)180mL、焼酎(25度)110mL、ウイスキー(43度)60mL、ワイン(14度)180mL、缶チューハイ(5度)500mL3)。 年代別では、「飲まない」と答えたのが、多い順に50代で32%、40代で30%、30代で26%、60代で22%、20代で15%だった。各年代で最も多く占めたのは、20代、30代、60代では「1単位未満」で、それぞれ36%、36%、32%であった。40代と50代では「1~2単位」が多くを占め、それぞれ32%と26%だった。 ALT値が30U/L超の人の場合では、「飲まない」と答えたのが、多い順に30代で33%、50代で23%、40代で22%、60代で9%、20代で0%だった。また、1回に「5単位以上」飲む人の割合は、30 U/L以下と30 U/L超を合わせた全体では5%だったが、30U/L超の人のみの場合では2倍以上の12%となり、顕著な差がみられた。30U/L超の人では、年齢が上がるにつれて、1回の飲酒量が増加する傾向がみられた。年齢が上がるにつれて、飲酒頻度が増加 Q4では、現在の飲酒頻度を7段階(毎日、週に5・6回、週に3・4回、週に1・2回、月に1~3回、年に数回、飲まない)で聞いた。全体で最も割合が多かったのは「飲まない」で22%であり、次いで「月に1~3回」で16%であった。ALT値が30U/L超の人の場合では、最も割合が多かったのは「週に3・4回」で19%、次いで「飲まない」と「毎日」が同率で16%だった。 全体の年代別では、20代で最も割合が多かったのは「月に1~3回」で37%、次いで「週に1・2回」が20%、30代では「飲まない」が21%、「年に数回」が19%、40代では「飲まない」が25%、「週に5・6回」と「週に3・4回」が同率で15%、50代では「飲まない」が29%、「週に1・2回」が15%、60代以上では「毎日」が24%、「飲まない」が21%であった。とくに60代以上の頻度の高さが顕著だった。 ALT値30U/L超の人の年代別では、20代で最も割合が多かったのは「週に1・2回」と「月に1~3回」で同率の36%、30代では「週に3・4回」と「飲まない」が同率の23%、40代では「週に3・4回」が25%、50代では「毎日」と「飲まない」が同率で23%、60代では「毎日」が28%、次いで「週に1・2回」が21%であった。20代と60代以上では「飲まなない」の割合の低さがみられ、30代と50代では「飲まない」が23%となり節制する人の割合が比較的多く、50代と60代以上で「毎日」の人の割合が20~30%となり、飲酒頻度が上がっている状況がみられた。 ALT値30U/L超の人においてQ3とQ4の結果を総合的にみると、20代は飲まない人の割合が低いものの、飲酒量と飲酒頻度は比較的高くない。また、30代は量と頻度を共に節制している人の割合が高い。60代以上と50代で、量と頻度が共に高い傾向がみられた。30~40代は飲酒の制限に積極的 Q5では、現状の飲酒を制限しようと思うかを聞いた。全体では、「制限したい」は21%に対し、「制限しない」は49%で2倍以上の差が付いた。ALT値30U/L超の人では、「制限したい」は28%に対し、「制限しない」は53%であった。ALT値30U/L超の人で「制限したい」が高かったのは、40代で42%、次いで20代で36%だった。また、30代はすでに飲酒していない人が37%で、年代別で最も多かった。 Q6では、Q5で「飲酒を制限したい」と答えた217人のうち、どのような方法で飲酒を制限するかを4つの選択肢から当てはまるものすべてを選んでもらった。人気が高い順に、「飲酒の量を減らす」が56%、「飲酒の頻度を減らす」が55%、「ノンアルコール飲料に代える」が36%、「低アルコール飲料に代える」が27%となり、量と頻度を減らすことを重視する人が多かった。自身が経験した飲酒のトラブルなど Q7では、自由回答として、飲酒に関するご意見や、自身が経験した飲酒のトラブルなどを聞いた。多くみられるトラブルとして、「記憶をなくした」が最多で15件寄せられ、「二日酔いで翌日に支障が出た」「屋外で寝た」「転倒してけがした」「嘔吐した」「暴れた」「救急搬送された」「アルコール依存症の治療をした」などが年齢にかかわらず複数みられた。自身の飲酒習慣について、「なかなかやめられない」「飲み過ぎてしまう」といった意見も複数あった。そのほか、医師ならではの飲酒に関するエピソードや社会的な側面からの意見も寄せられた。【医師ならではのエピソード】・研修医の時に指導医と潰れた(30代、その他)・医師でアルコール依存になる人が多いため、飲まなくなりました(30代、皮膚科)・アルコール依存症の患者さんをみているととても飲む気にはなれない(30代、麻酔科)・正月の救急外来は地獄(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・科の飲み会の際に病院で緊急事態が発生すると、下戸の人間がいると非常に重宝されます(40代、循環器内科)・飲酒をすると呼び出しに対応できない(60代、内科)・雨の中、帰宅途中、転倒し意識がなくなり、自分の病院に搬送され大騒ぎでした(60代、脳神経外科)・勤務医時代は飲まないと仲間が働いてくれなかったが、開業して、健康に悪いものはもちろんやめた(70代以上、内科)【社会的な側面や他人への影響】・喫煙があれだけ批判されるなら飲酒も同じぐらい批判されるべきと考える(20代、臨床研修医)・日本では以前は飲酒を強要されることがあったが、米国留学中は飲酒を強要されることはなく、とても快適な時間だった(40代、病理診断科)・日本人は酔っぱらうことが多く、見苦しいし、隙もできる。グローバルスタンダードではありえない(50代、泌尿器科)・テレビCMでアルコール飲料が放映されていることに違和感がある(60代、神経内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。医師の飲酒状況/医師1,000人アンケート

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学校健診の留意点「検診項目追加は事前に打ち合わせを」/日医

 日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、9月25日の定例記者会見で、文部科学大臣へ「学校保健の更なる充実のための提言と要望」を提出し、文部科学省と日本医師会の共同で「学校健康診断実施上の留意点」を作成したことを報告した。文部科学大臣への提言・要望 「学校保健の更なる充実のための提言と要望」では、将来を担う子供たちの健康を増進する学校保健の重要性を踏まえ、下記の3点について検討を要望した。1.学校健康診断のあり方に関する検討-現在実施されている健診項目は社会的状況に見合ったものとなっているか2.健康教育の推進-学習指導要領と解説の整理、管理職を含む関係教員の研修機会の充実、学校医などの外部講師の活用に係る予算の確保3.教師の働き方改革推進と教育の質向上-学校現場の教職員の処遇や定数の大幅な改善、教員養成系大学の教職員や国・地方自治体において教育行政に携わる公務員など教育に関わる人員の抜本的拡充、必要なインフラ整備 文部科学大臣からは、「学校健康診断については、時代に合わせた見直しは必要。関係省庁と連携しながら対応していくとともに、実施する側の負担軽減も図っていく必要がある」と言及があったという。学校健康診断の留意点 2024年6月に小学校で行われた健康診断において、医師が本人や保護者の同意を得ずに児童の下半身を視診していたことが大きく報道された。学校と学校医との間で共通理解が十分ではなく、学校から児童・生徒および保護者への事前の説明が不足していたことなどから、児童・生徒のプライバシーや心情への配慮が欠けていた状況を踏まえ、日本医師会と文部科学省の共同で「学校健康診断実施上の留意点」のリーフレットを作成した。 リーフレットでは、学校健康診断の目的や役割、留意すべき事項を改めて示すとともに、学校医に対して下記5点の徹底を求めている。1. 学校健康診断を行うに当たっては、その意義・目的を理解するとともに、学校の意向を十分考慮したものとすること2. 診察方法や児童・生徒などのプライバシー・心情への配慮について事前に学校と確認すること3. かかりつけ医の診療と学校医の健康診断の違いを理解すること(学校健康診断では、学校医は普段診ていない子供を学校の中でスクリーニングする)4. 法令に定めのない検査の項目を追加する場合には、その実施の目的、検査方法などについて事前に学校と十分打合せを行うこと5. 健康診断結果に基づき学校が行う事後措置について医療面から指導すること 渡辺氏は「リーフレットによって、2025年度の学校健康診断の実施に向けて学校医と学校の共通理解が深まり、より円滑に健康診断が行われることを強く期待する。リーフレット配布をきっかけに出てくる学校健康診断に対するさまざまな意見を関係者で共有し、児童・生徒の健康のために学校検診をより良いものとしたい」とまとめた。

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