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第6回 市販の抗原検査キット陽性をどう扱う?

ついに抗原検査キットがネット解禁へ以前からドラッグストアで購入できた抗原検査キットは、ご存じのように抗原定性検査を指します。「体外診断用」と記載されたものが、厚労省が承認しているキット(図)で、未承認のキットは「研究用」と記載されています。参考文献・参考サイト厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(検査キット)の承認情報厚生労働省 医療用抗原検査キットの取扱薬局リスト(令和4年8月9日18:00時点)画像を拡大する図. 薬事承認を受けた抗原検査キット(筆者作成)厚労省が承認した抗原検査キットを無料配布し始めている自治体もあります。それでもなお、品薄の状況であることから、政府はついにネットでの販売を解禁する方向へ舵を切るようです。抗原検査キット陽性でCOVID-19と確定してもよいか?承認された「体外診断用」の抗原検査キットを用いた場合、COVID-19と自己診断して療養することが可能です。ネットで登録できるシステムを各自治体が立ち上げています。ただ、ネット通販などで手に入る「研究用」の抗原検査キットを用いて診断しても、登録できない仕組みになっています。抗原検査キットでCOVID-19と自己診断する場合、虚偽の報告があると、とくにお金にかかわる部分でトラブルになるかもしれません。それゆえ、あまり手続きを簡略化し過ぎると、それはそれでまずい。そのため、一部の自治体は、かなり厳格に判定しています。たとえば以下のような条件です。有症状検査結果がわかる画像を添付本体に油性マジック等で氏名と検査日を記入(検査キット本体に直接記入)薬事承認された医療用抗原検査キットを利用されていること医師のオンライン面談後、登録とはいえ、医師のオンライン面談と登録がもはや難しい自治体もあり、自己登録システムでスピーディーに承認している自治体もあります。問題は、自己登録に不備がある場合、それをいちいち「検査に不備があります」と指摘して差し戻す作業自体が、結局行政の仕事量を増やすことにつながりかねないということです。東京都では、Googleフォームを通した申請になるため、ある程度ネットに慣れた人でないと登録は難しいかもしれません。また、1日3,000件までの申請しか受理していないため、これが今後の主たる手続きになるわけではなさそうです。このスキームには、陽性を装うことで何か詐欺に悪用できるような「コスパ」がそこまでないと思うので、甘めに判定してもそんなに金銭トラブルは多くないと予想されますが…果たして。ちなみに、市販の抗原検査キット陽性ということで発熱外来を受診した場合、それが未承認の「研究用」のキットであれば、医療機関でPCR検査や抗原定量検査を再度実施すべきと個人的に考えます。

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コロナPCR検査等の誤判定、日本での要因は?

 新型コロナウイルス感染症の診断において、PCRをはじめとする核酸検査には高い信頼性が求められており、厚生労働省では、その測定性能や施設の能力の違いの実態把握と改善を目的として、2年にわたり「新型コロナウイルス感染症のPCR検査等にかかる精度管理調査業務」委託事業を行っている。今回、令和3年度調査結果について報告書がまとめられ、日本臨床検査薬協会(臨薬協)と日本分析機器工業会(分析工)がメディア勉強会を開催。同調査を実施、報告をとりまとめた宮地 勇人氏(新渡戸文化短期大学 副学長)が講演した。<外部精度管理調査の概要>実施期間:2021年11月7~25日参加施設(1,191施設):病院74.1%、衛生検査所14.7%、診療所3.8%、保健所3.1%、地方衛生研究所2.0%、検疫所1.6%など(自費検査の実施は、診療所 [93.3%]および臨時衛生検査所[80%]で多く、陰性証明書の発行を行っている施設は診療所[88.9%]で多い傾向がみられた。測定原理はリアルタイム PCR 法 が73.9%と最も多く、その他LAMP法、SmartAmp法などさまざまな等温核酸増幅法が用いられていた。プール法の実施施設は6.4%だった)。評価方法:陰性を含む濃度の異なる6試料について正答率を評価し、施設カテゴリーや測定法(機器・試薬およびその組み合わせで10施設以上で実施されていた21パターン)ごとに解析、誤判定要因の特定を行った。PCR等の偽陰性は医療機関で多い傾向、要因として挙がったのは 全体として、試料別にみた正答率は93.0~99.4%と総じて良好だったが、98施設(延べ139検体)で誤判定(偽陽性・偽陰性)があり、主に医療機関(病院・診療所)であった。試料別正答率を施設カテゴリー別にみると、地方衛生研究所や検疫所(100%)、保健所(96.7~100%)で高かったのに対し、病院(91.9~99.7%)や診療所(83.3~100%)で低かった。とくに診療所では、PCR検査等の偽陰性結果が比較的多くみられた。 偽陰性結果について詳細をみると、測定機器に依存する傾向がみられ、SmartGene(19施設)、TRCReady(26施設)、ミュータスワコーg1(19施設)使用施設に多く認められた(計64施設)。その他の要因を検討するため、上記測定機器を使用していた64施設を除く34施設で特性をみると、測定者に臨床検査技師や認定微生物検査技師等の認定資格なしの施設の割合が高く、導入時の性能評価未実施の施設の割合が高かった。 さらに34施設に対して誤判定要因についてヒアリング調査を行ったところ、「検出限界の未確認・再現性不良の可能性」といった試薬・機器に依存するものが22施設と最も多かった一方、測定前後の作業手順等に関わる下記5点も要因となっていることが明らかになった。・試料の取り違い(5施設15件)・陽性/陰性の判定指標の不適切さの可能性(3施設4件)・キャリーオーバー汚染(2施設2件)・測定試薬の管理の不適切さの可能性(1施設2件)・判定結果の転記ミスの可能性(1施設1件) 上記のうちとくに試料の取り違いについて、宮地氏は「1つの取り違いで必ず複数の誤判定が生じてしまう。今回の調査のように、事前に準備をしている状況でも起きているということは、大量検体が舞い込むような状況下ではさらに誤判定リスクが増していると懸念される」と指摘した。 そのほか今回の調査では、輸送培地に含まれる塩酸グアニジンが偽陰性リスクにつながりうることが示された。検査の拡大により、輸送培地として塩酸グアニジン溶液を含有して感染リスクを最小化した製品(SARS-CoV-2不活化試薬、PCRメディアSG、輸送用スワブキットなど)が使用されるようになっており、塩酸グアニジンが残存しているとPCR反応阻害による偽陰性リスクがあるため、使用している核酸抽出法がその影響を除外することを確認する必要がある。コロナ誤判定にスワブの種類は日本では影響なし スワブの素材により、ウイルス回収量が異なるということが世界的に指摘されている。今回の調査では、ウイルス回収量が最も高く臨床的感度が高いと報告されているナイロン製をはじめ、ポリアミド製、ポリウレタン製、ポリエステル製などの多様な素材の綿球が使用されていたが、明らかな差は認められなかった。宮地氏はこの結果から、「日本で一般的に使われているものは広く支障なく使えることが明らかになった。サプライ停滞時には、代替製品を使うことが可能」とした。 プール法の精度については、54施設を対象に3試料(5プール)の外部精度管理調査が実施された。正答率は94.4~100%と総じて良好で、誤判定があった施設は3施設であった。プールの個別試料の正答率は96.1~100%と総じて良好で、誤判定があった施設は3施設であった。計6施設で誤判定があり、その施設カテゴリーとしては病院等が多く、要因としては、・測定性能の確保(検出限界、再現性)・作業手順(検体の取り違い)・測定システム(ダイレクトPCRの使用)のほか、上述の6試料についての外部精度管理調査での誤判定ありの施設と、プール法での誤判定ありの施設に重複がみられた。 厚労省では、令和2年度調査の結果を踏まえて「新型コロナウイルス感染症のPCR検査等における精度管理マニュアル」を公開しているが、今回の調査で同マニュアルを利用していると答えた施設は39.2%と低く、とくに病院(32.6%)、診療所(28.9%)で低かった。マニュアルは今回の調査結果も反映して改訂されており、誤判定要因とその対策についてもまとめられている。

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イルミナ、包括的がんゲノムプロファイリングテストを申請

 イルミナは、2022年5月10日、厚生労働省にTruSight Oncology Comprehensiveパネルシステムの製造販売承認申請を行った。 同パネルシステムは、固形悪性腫瘍患者のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプルから抽出した核酸を検体として、NextSeq 550Dxシステムを用いたターゲットシーケンスにより517遺伝子の変異を検出する包括的がんゲノムプロファイリング検査キット。 DNAからは塩基変異、多塩基変異、挿入、欠失および遺伝子増幅を、RNAからは遺伝子融合およびスプライスバリアントを検出する。コンパニオン診断薬(CDx)についても、順次追加される予定。  同ゲノムプロファイリング検査は2022年3月の欧州での最初の発売に続き、日本で製造販売承認申請を行った。

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第97回 「ブースター効果は5ヵ月」報道前に、メーカー幹部らが保有株を大量売却

新型コロナワクチンのブースター接種による重症化予防効果は、5ヵ月後に約30%に低下するという米疾病予防管理センター(CDC)の研究結果が報じられる間近に、米モデルナの経営陣が保有株を売却していたことがわかった。各国でブースター接種が進められる中、5ヵ月後に実質的な効果が失われるという研究結果もさることながら、公表される直前での保有株売却は、経営陣への不信感を招きかねない。米『ニューヨーク・タイムズ』の2月11日の報道によると、CDCが公表した研究結果は「新型コロナウイルス感染症ワクチンは、ブースター接種によって重症化を予防する効果は87%に達するが、5ヵ月後には31%に低下する」というものだった。ワクチン関連株価の下落にCDC研究結果が拍車をかける米メルクの新型コロナ経口治療薬モルヌピラビルが各国で承認されたり、世界で感染のピークアウトが指摘されたりした影響で、新型コロナワクチン需要を巡る減速観測が強まり、ワクチン関連株価は下落傾向にある。そのような状況下、CDCの研究結果がさらに株価下落に追い打ちをかけた。モデルナの株価は、2月14日だけで13%下落し、過去10ヵ月間の最安値(140ドル)を割り込んだ。デルタ株流行の最中にあった昨年8月の最高値から70%以上も株価を下げることになった。また、米ファイザーも同日、日本も特例承認した経口治療薬パクスロビド(パキロビッドパック)が期待されているにもかかわらず、株価が2%下落した。モデルナCEOら経営幹部が報道前に保有株を売り抜ける株価下落の原因は、ほかにもある。2月11日に開示された報告書で、モデルナの最高経営責任者(CEO)のステファン・バンセル氏(49歳)を含む4人の幹部が、前週に自社株を売却していたことが発覚したのだ。米国のCEOの報酬は超高額で有名だ。報酬として自社株やストック・オプション(自社株購入権)が提供され、固定報酬よりも短期~長期インセンティブの割合が圧倒的に大きい。とはいえ、CDCの研究結果公表の間近に保有株を売却したタイミングは、株式市場に不信感をもたらした。売却額が最も多いバンセル氏は、1株当たり約155ドルで約1万9,000株を売却し、税引き前で約300万ドル(3億4,500万円)を得たほか、これまでのコロナ・パンデミック期間に計200万株近くを売却したという。バンセル氏はフランス出身で、米イーライリリー・アンド・カンパニーのベルギー責任者や、フランスの体外診断薬メーカー・ビオメリューCEOを経て、2011年にモデルナCEOに就任、同社株式の9%を保有した。ちなみに、ファイザーCEOのアルバート・ブーラ氏(60歳)も2020年11月、コロナワクチンへの期待から株価が上昇する中、保有株13万株を売却して560万ドル(約5億9,000万円)を手にした。米国の経営者はビジネスライクだとはいえ、世界では累積感染者数が4億人を超え、累積死亡者数が600万人に上る状況下、自社製品のマイナス評価を前提に、保有株を売り抜けて巨額の私的利益を確保する経営陣の姿勢は、到底納得できるものではない。4次接種を見通したワクチン接種政策が必要ところで、コロナワクチン開発企業の株価が下がる傾向は、コロナ禍の終息を示唆しているのかもしれない。また、日本政府の専門家からは「感染拡大は2月上旬にピークアウトした」という指摘もある。しかし油断は禁物だ。感染後の後遺症や、基礎疾患を持つ人や高齢者の重症化・死亡リスクを考えると、やはりワクチン接種による感染予防の重要さに変わりはない。ワクチン開発企業トップのマネーゲームの動向にかかわらず、ブースター接種が遅れている日本では、その推進が急務だ。ワクチンの有効期間や新たな変異株の発生可能性などを踏まえれば、4回目接種を見通したワクチン施策をも考えなくてはいけないかもしれない。日本の政治家には、どうか目先のことに追われず、大局的な視点で政策を考えてほしい。国や国民の危機管理を担うことは、ビジネスとは違うのだ。

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ソトラシブのコンパニオン診断薬が承認/キアゲン

 キアゲンは、2022年1月27日、非小細胞肺がん(NSCLC)患者に向けたKRAS G12C阻害や薬ソトラシブ(製品名:ルマケラス)に対するコンパニオン診断薬therascreen KRAS変異検出キット RGQ 「キアゲン」の製造販売承認を取得したと発表。  KRAS変異は日本人肺がん患者の10%程度、欧米人では25%程度に見られると言われている。本(2022)年1月には、アムジェン社のソトラシブ(製品名:ルマケラス)が、NSCLCの KRAS変異のなかで最も頻度の高いKRAS G12C変異を有するNSCLCに承認された。 therascreen KRAS変異検出キットRGQ 「キアゲン」は、迅速性と定量性に優れたリアルタイムPCR技術を用いたもの。2021年12月に製造販売承認を受け、2022 年春の保険適用を予定している。

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肺がんマルチ遺伝子PCRパネルAmoyDx発売/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、複数の抗悪性腫瘍剤のコンパニオン診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」の日本国内での販売を2022年1月11日に開始する。  同製品は、非小細胞肺がん(NSCLC)の5種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET)をカバーする、リアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。 EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異、MET exon14スキッピング変異を1回の測定で同時に検出し、10種の抗がん剤の適応判定の補助が可能。保険点数は10,000点(5項目)。 リアルタイムPCR法を用いたマルチプレックスのコンパニオン診断薬が承認・保険適用されたのは本邦初であり、その感度の高さや短いターンアラウンドタイム、手軽さなどにより、早期治療戦略の立案やNSCLC患者への治療機会拡大に貢献することが期待されている。 製品概要・製品名:AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル(製品番号:A246)・承認番号:30300EZX00059000・使用目的:がん組織から抽出したDNA中の遺伝子変異(EGFR遺伝子変異及びBRAF遺伝子変異)及びRNA中の融合遺伝子(ALK融合遺伝子及びROS1融合遺伝子)の検出NSCLC患者への、以下の抗悪性腫瘍剤の適応を判定するための補助に用いる ・EGFR遺伝子変異 ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩、アファチニブマレイン酸塩、オシメルチニブメシル酸塩 ・ALK融合遺伝子 クリゾチニブ、アレクチニブ塩酸塩、ブリグチニブ ・ROS1融合遺伝子 クリゾチニブ ・BRAF V600E変異 ダブラフェニブメシル酸塩とトラメチニブジメチルスルホキシド付加物の併用投与 ・MET遺伝子 exon14スキッピング変異テポチニブ塩酸塩・検査原理:PCR法(リアルタイムPCR法およびRT-PCR法)・検体材料:腫瘍細胞の存在が確認されたFFPE組織、新鮮凍結組織・保険点数:10,000点(準用保険点数: D004-2 悪性腫瘍組織検査 1 悪性腫瘍遺伝子検査 イ 2項目4,000点と ロ 3項目6,000点を合算した10,000点)・包装 1キット(12テスト)・製造販売業者 株式会社理研ジェネシス・製造元 Amoy Diagnostics Co., LTD(中国)

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第89回 がんが大変だ!線虫がん検査に疑念報道、垣間見えた“がんリスク検査”の闇(後編)

大々的に持ち上げて報道してきたマスコミにも衝撃こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。暮も押し迫ってまいりました。週末は大掃除の合間を縫って、東京・新宿の紀伊国屋ホールに演劇を観に行ってきました。演出家、横内 謙介氏が主催する劇団扉座の創立40周年記念公演、「ホテルカリフォルニア」です。最近、テレビでもよく見るようになった六角 精児氏が所属する劇団で、演目はカリフォルニアとはほぼ無関係、横内氏や六角氏らが卒業した神奈川県立厚木高校を舞台とした、1970年代後半の高校生を描いた青春群像劇です。60歳前後となった劇団員が真面目に高校生を演じるのがバカバカしく、笑えました。個人的には、劇中劇として一瞬演じられた、つかこうへい氏の代表作「熱海殺人事件」の場面がオリジナルかと見紛うほどの完コピぶりに感心しました。横内氏のつか氏への深いリスペクトが伝わってきました。さて、先週に続き今週もがんの検査について書いてみたいと思います。前回書いたように、日本のがん検診は今、深刻な状況に置かれています。そんな中、週刊文春12月16日号が、「15種類のがんを判定できる」と全国展開中のHIROTSUバイオサイエンスの線虫がん検査キット「N-NOSE (エヌノーズ)」が、「『精度86%』は問題だらけ」と報道、医療界のみならず、大々的に持ち上げて報道してきたマスコミにも衝撃を与えています(同社のCMに出ている、ニュースキャスター・東山 紀之氏も驚いたことでしょう)。線虫ががん患者の尿に含まれるにおいに反応することを活用「N-NOSE」は九州大学助教だった広津 崇亮氏が設立したHIROTSUバイオサイエンスが2020年1月に実用化したがんのリスク判定の検査です。がんの「診断」ではなく「リスク判定」と言っている点が、この検査の一つの肝とも言えます。「N-NOSE」は、すぐれた嗅覚を有する線虫(Caenorhabditis elegans)が、がん患者の尿に含まれるにおいに反応することを活用、わずかな量の尿で15種類のがんのリスクを判定する、というものです。これまでに約10万人が検査を受けているとのことです。健康保険適用外で、料金は検体の回収拠点を利用した場合で1万2,500円(税込)です。事業スタート当初は同社と契約した医療機関で検査受付を行っていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に、利用者に直接検査キットを送り、検体を運送業者に回収してもらうか拠点に持ち込むシステムが中心となっています。最近の報道では、今年10月、九州各地にこの持ち込み拠点を増設したそうです。また、同社は11月に記者会見を開き、膵がんの疑いがあるかどうかを調べる手法を開発したと発表しています。カウンターを使って手作業で線虫の数をカウント週刊文春の報道では、線虫がん検査で「がんではない」と判定された女性で乳がんが見つかったケースなど、同検査で陰性でもがんと診断される患者が何人もいた事実を紹介、その上で検査方法や、同社が公表している感度(がんのある者を陽性と正しく判定する割合)、特異度(がんのない者を陰性と正しく判定する割合)の信憑性に疑問を投げかけています。検査方法について同誌は、「寒天を敷いたシャーレの左側に薄めた尿を置き、真ん中に線虫を50匹程度置く。するとがん患者の尿には線虫がよってくとされる。(中略)検査員がカウンターを使って手作業で線虫の数をカウント。左右に分かれた線虫の数を比べ、がんか否かの判定をする」と書いています。私も知らなかったのですが、「手作業」とは驚きです(最近、オートメーション化が始まったそうです)。同社のホームページや同社を紹介するさまざまなメディア報道では、線虫の集団ががん患者の尿に集まっている写真がよく使われていますが、週刊文春は「『こんなにはっきりと分かれるのをみたことがない』、こう断言するのは、H社(同社)の社員だ」と書いています。「20人分のがん患者の尿を送付したものの、3人分しかがん患者と特定できず」さらに同誌は、ある医療機関から提供された尿検体の実験で「線虫が50匹の場合、左右に分かれた線虫の差は、300回以上行われた検査の中で、1回を除き10匹以下」であった事実や、ブラインド(がんかどうか結果がわからない状態)で検査した場合、「感度は90%だったが、(中略)特異度はわずか10%だ」とも指摘、「ある検査員が健常者の尿をブラインドで検査した場合は陽性と出たが、非ブラインドで同じ尿を検査すると健康であるという判定もされている」という元社員の声も紹介しています。極めつけは、「陽性率もコントロールしている。今年1月に作成された『判定ルール』を見てみると、<陽性率15%以内>との記載がある」として、倉敷市の病院が20人分のがん患者の尿を送付したものの、3人分、15%しかがん患者と特定できなかったと伝えている点です。17人のがんが見過ごされていたことになります。それが事実とするなら、がんの診断ではなくリスク判定とは言え、医療に使う以前の問題と言えそうです。線虫がん検査に3つの疑問ということで、「N-NOSE」という線虫がん検査について、医学的な側面から疑問点を少し整理してみました。1)検査と言えるレベルのものなのか?臨床検査には、「分析学的妥当性」「臨床的妥当性」「臨床的有用性」という3つの評価基準があります。分析学的妥当性とは、検査法が確立しており、再現性の高い結果が得られることを言います。「N-NOSE」の場合、週刊文春報道を読む限り、分析学的妥当性があるとは思えません。そもそも、線虫が尿の中の何の成分に反応してがんを嗅ぎ分けているのか、HIROTSUバイオサイエンスは公表していません。ひょっとしたら、彼らもわかっていないのかもしれません。これでは第三者が再現することができず、分析学的妥当性を評価できません。臨床的妥当性とは、検査結果の意味付けがしっかりとなされているかどうかです。「N-NOSE」で言えば、「線虫が何匹集まった場合に、がんである可能性は何%〜何%である」という評価法が確立していて、その検査をやる意義があるということです。しかし、そもそも分析的妥当性も曖昧なのに、臨床的妥当性を求めるのは酷と言えるかもしれません。2)臨床的に役に立つものなのか?最後の臨床的有用性は、その検査の結果によって「今後の疾患の見通しについて情報が得られる」「適切な予防法や治療法に結び付けることができる」など、臨床上のメリットがあることを指します。「N-NOSE」について言えば、特異度が非常に低い値を示すことは、がんの検査として偽陽性を多く出し過ぎる危険性があります。週刊文春の報道では「見落とし」の数も相当あるようです。また、被験者としては、15種類のがんのうち「何かのがんがありそうだ」と言われても、そこから通常のがん検診に行けばいいのか、内視鏡検査やCT検査を受ければいいのか戸惑うばかりではないでしょうか。現状では臨床的有用性についても大きな疑問符が付きます。そもそも、分析学的妥当性、臨床的妥当性、臨床的有用性を証明するデータを、きちんとしたプロトコールによって行った臨床試験等で出し、それが評価されれば、保険診療において使用が認められますし、海外でも用いられるかもしれません。しかし、こうした「がん(病気)のリスクを判定する」と喧伝する検査の多く(類似のものに「アミノインデックス」や「テロメアテスト」などがあります)は、お金と時間が膨大にかかる臨床試験を敢えて避け、日本だけの一般向け検査でお茶を濁しているようで、気になります。3)がんリスク判定は「判定」できているのか?臨床的有用性の話と関連しますが、「がんのリスク判定」とは一体何なのでしょう。検査会社は、医師が行う「診断」を業として行うことはできないので、リスク判定という曖昧な表現になっていると思われますが、これも無責任です。同社のホームページには、「N-NOSEは、これまでの臨床研究をもとに検査時のがんのリスクを評価するもので、がんを診断する検査ではありません。そのため、検査で『がんのリスクが検出されなかった方』でもがんに罹患していないとは言い切れませんし、 検査で『がんのリスクが高いと判定された方』でも、必ずしもがんに罹患していることを示すものではありません」と長々とエクスキューズが書かれています。また、ある人の実際の「N-NOSE」の結果を見せてもらったことがあるのですが、留意事項として、「体調がすぐれないとき」「疲労が激しいとき」「長期の睡眠不足や徹夜明けのとき」「アルコール摂取時やアルコールの影響が残っているとき」など、8つの項目の時に「正確な評価を行うことができない可能性がある」と書かれていました。これでは、いったいいつ検査をすれば、正確な評価をしてもらえるのかわかりません。とくに私を含め中高年はだいたい体調がすぐれず、疲れているのでほぼ判定は不可能ではないかと思ってしまいます。このようにエクスキューズの連発となってしまうのは、先に述べた分析学的妥当性が曖昧で、検査の再現性が低いからだと考えられます。もう一つ気になったのは、人の体調で検査結果がこれだけ変動するというのだから、線虫の“体調”によっても変動するのではないか、という点です。線虫の1匹1匹の診断能力の質の担保は、しっかりと行われているのでしょうか。ちなみに同社が根拠とする臨床研究ですが、ホームページにはそれらしき関連論文が海外文献も含めて列挙されています。しかし、ダブルブラインドにより、がんの有無を明確に見分けた、というような決定的とも言える成果を発表した論文はないようです。線虫が尿の中の何の成分に反応し、がんを判別するかについての論文もありません。健常者をまどわせ、がん患者のがんを見落とす危険性代表取締役の広津氏は週刊文春の取材に対し、「この検査を作ったのは五大がん検査を受ける人を増やしたかったからです」と話しています。五大がん検査とは、国が推奨する5つのがん検診のことです。しかし、がん検診を受けるきっかけを与えるにしては、無用の心配を被験者にさせたり、見落としによって手遅れになったりと、リスクが多過ぎます。また、検査を受けた人がアコギな医療機関に食いものにされる危険性もあります。提携医療機関の中には、「N-NOSE」陽性の人に対し、自費でのPET-CT検査を勧めるところもあると聞きます。「N-NOSE」はあくまでリスク判定であるため、そこで陽性の判定が出ても、すぐに保険診療とはなりません。一度、自費検査を挟み、病気が見つかってはじめて保険診療となるわけです。「N-NOSE」は手軽なように見えて、医療機関において保険診療を受けるまで、2度手間、3度手間となってしまいます。そう考えると、健常者を惑わせるだけの検査では、と思えてきます。「N-NOSE」は、医療機器でもなく診断薬でもありません。医師が診断のために使う検査でもなく、保険診療にも使われていません。つまり、薬機法や医師法、健康保険法など、厚生労働省所管の法律外にある検査法なのです。宗教団体などが売る、“ありがたい壺”のように、何か大きな問題が起こるまで行政が口を挟むことはないかもしれません。自費でわざわざがんのリスク検査を受けて、「リスクが低い」という結果からがんを見落とす人が出ないことを願います。そして何よりも、がん検診の受診者が増えるよう、国や自治体はもっと知恵を絞ってほしいですし、日本医師会の言うところの“かかりつけ医”は自分の患者にがん検診を勧めるアクションを起こしてほしいと思います。

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コロナ検査キットの調剤室外での陳列や広告が可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第80回

薬局で新型コロナウイルス感染症に対する医療用の抗原定性検査キット(以下、検査キット)を販売できるようになって2ヵ月半がたちました。いざ販売しようと思うと、選定や陳列で迷った方も多いのではないかと思います。厚生労働省から11月19日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原定性検査キットの取扱いに関する留意事項について」が出され、追加の留意事項が示されました。検査キットを販売する際の注意事項が明確になりましたので、気になった点をピックアップしてみます。1. 陳列などについて入手希望者が容易に認識できるよう、調剤室以外での陳列や空箱の陳列は差し支えない。販売に当たっては、薬剤師による説明、使用に当たっての留意事項を理解していることの確認などが必要である。2. 広告などについて「医療用検査キットを取り扱っている」旨を薬局内・薬局の店頭・隣接店舗へ掲示、薬局のホームページやチラシなどへ掲載することも差し支えない。入手希望者がその製品が医療用検査キットであることをより容易に認識できるよう、名称・製造販売者名・販売価格・医療用検査キットと空箱の写真を使用することは差し支えないが、受診が不要であるなどの不適切な表示やその他の事項に関する広告を行ってはいけない。入手希望者が研究用検査キットと医療用検査キットとを混同することがないよう、また、研究用検査キットについて診断目的と誤認することがないように特段留意する必要がある。3. その他薬局が、他の薬局の求めに応じて医療用検査キットを分割して当該薬局に販売(授与)することも差し支えない。医療用検査キットは体外診断用医薬品であることから、これまで薬局での陳列が認められていませんでした。また、広告は医薬品等適正広告基準にのっとる必要があり、研究用検査キットに比べて表示や販売方法が限定されていました。今回の事務連絡により、医療用検査キットの陳列・広告が緩和されることになります。空箱を陳列しているだけでも調剤を待つ患者さんの興味を引くことができるのではないかと思います。事務連絡には、販売可能な医療用検査キットのリスト(11月17日時点)や、消費者庁と厚生労働省の連名で作成されたポスターも入っていますので、ぜひ一読をおすすめします。ポスターには、研究用検査キットと医療用検査キットの違いや購入希望者は薬剤師に相談することなど、一般の方々への注意事項が記載されていて、そのまま薬局へ掲示ができるものです。最後に検査後の説明について。医療用検査キットの販売の目的は新型コロナウイルス感染症の拡大防止です。陽性や症状のある場合はすぐに医療機関を受診してもらい、陰性の場合であっても偽陰性の可能性を考慮して外出時の感染対策を続けてもらうなどの指導もしっかり行ってください。参考1)事務連絡「新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原定性検査キットの取扱いに関する留意事項について」|厚生労働省(mhlw.go.jp)

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コロナ抗原定性検査の種類・活用方法を患者さんに聞かれたら/臨薬協など

 「ワクチン・検査パッケージ」ではPCR検査や抗原定量検査が推奨されているが、抗原定性検査の利用も可能とされ、9月からは薬局での販売も解禁されている。しかし、抗原定性検査は鼻腔ぬぐい液の採取が必要で使用に難しさがある点や、精度と活用方法を理解したうえでの使用が求められる点、未承認のキットも販売されている点など、課題も多い。日本臨床検査薬協会(臨薬協)は11月、抗原定性検査キットの適正な使用を促進し感染制御に資することを目的として、臨床検査振興協議会による一般消費者向けの啓発資料「医療用(体外診断用医薬品)抗原定性検査キットとは?」のウェブサイト掲載を受けて、ホームページ上で抗原定性検査キットの種類を「新型コロナウイルス感染症の医療用抗原簡易キット一覧」で公開している。抗原定性検査の結果=診断ではないことを理解してもらう必要 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部では、制度開始にあたり公開した「ワクチン・検査パッケージ制度要綱」の中で、無症状者に対する抗原定性検査は、確定診断としての使用は推奨されないが、無症状者の感染者のうちウイルス量が多いものを発見することにより、事前に PCR 検査等を受検することができない場合にも対応する観点から、場の感染リスクを下げうるとの考え方に基づき、利用可能としている。 また、抗原定性検査の実施方法について詳細・留意点をまとめた「ワクチン・検査パッケージ制度における抗原定性検査の実施要綱」では、飲食店やイベント主催者等が抗原定性検査を実施する際は、担当者の研修受講や陽性者が出た場合の紹介先としての医療機関との連携を求めているほか、結果は、あくまでもワクチン・検査パッケージ制度においてのみ用いられるものであり、受検者が新型コロナ感染者の患者であるかどうかの診断には用いることができないと明記されている。抗原定性検査キットの購入から廃棄までの留意点をQ&Aで説明 臨床検査振興協議会による一般消費者向けの啓発資料「医療用(体外診断用医薬品)抗原定性検査キットとは?」では、キットの購入から検査実施とその後の対応、さらに使用済キットの廃棄までのプロセスにおいて留意すべき点を、イラストを用いながら解説している。設けられている8つのQは以下の通り:Q1医療用の抗原定性検査キットが薬局で買えるようになったと聞いたけど、抗原定性検査キットって何ですか?Q2抗原定性検査ってPCR 検査と何が違うの?Q3薬局には、「研究用」と書いてある検査キットも売っているけど「医療用」とは何が違うの?Q4薬局で普通に買えるの?Q5「医療用」の検査キットを買ってきました。でも、テレビで見たものと違うみたい…大丈夫なのかな?Q6なんだかインフルエンザの時の検査みたいですね。鼻の奥をぐりぐりされて痛かった記憶があるけど、自分で出来るか不安です。Q7結果が出たけど、どうしたらよいの?Q8検査キットは普通に捨ててよいの?抗原定性検査キットで製造販売承認を取得している製品を一覧化 「新型コロナウイルス感染症の医療用抗原簡易キット一覧」では、2021年11月17日時点で製造販売承認を取得している抗原定性検査キット16製品について一覧化して示している。それぞれの抗原定性検査キットで少しずつ使い方が異なっていることから、うちいくつかの製品については、各社のキットの使用上の注意点に関する動画等が閲覧できるサイトへのリンクが貼られている。

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ロルラチニブがALK陽性肺がんの1次治療に追加承認/ファイザー

 ファイザーは、2021年11月25日、第3世代ALK-TKIロルラチニブ(製品名:ローブレナ)が「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」(以下、ALK陽性肺がん)の治療薬として、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請の承認を取得したと発表。ロルラチニブは米国でも同様の適応症で2021年3月に承認を取得 今回のロルラチニブの承認は、未治療のALK陽性肺がんを対象とした第III相試験CROWN試験の結果に基づくもの。 この承認取得により、ロルラチニブは、ALK陽性肺がんの2次治療以降だけでなく、1次治療薬としても使用することが可能となる。 米国においてもロルラチニブは同様の適応症で2021年3月に承認を取得している。ロルラチニブは、2018年9月に世界に先駆けて日本で「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症で承認を取得し、同年11月に発売した。  また、非小細胞肺がん治療におけるロルラチニブのコンパニオン診断薬として「ベンタナ OptiView ALK(D5F3)」が、2021年11月15日に一部変更を承認取得している。

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中和抗体薬の発症抑制での投与時の注意など、コロナ薬物治療の考え方10版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、11月4日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第10版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回9版以降の新しい知見などの追加のほか、中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブに関しての追記が行われた。確認しておきたいカシリビマブ/イムデビマブの適用要件 主な改訂点は下記の通りである。抗ウイルス薬 レムデシビル 入手方法につき2021年10月18日より一般流通が開始されたこと。中和抗体薬 カシリビマブ/イムデビマブ【海外での臨床報告の追加】96時間以内に感染者と家庭内接触のあった被験者1,505例を対象としたランダム化比較試験で、カシリビマブ/イムデビマブの単回皮下投与により、発症に至った被験者の割合は、本剤群11/753例、プラセボ群59/752例であり、プラセボと比較し、発症のリスクが81.4%有意に減少。【発症抑制での投与時の注意点を追加】1)SARS-CoV-2による感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては下記のすべてに該当する者とされている。(1)SARS-CoV-2による感染症患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者、または無症状のSARS-CoV-2病原体保有者(2)原則として、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する者(3)SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者 このうち、(1)の「濃厚接触者」(例:同居家族、共同生活者に加え、高齢者施設や医療機関勤務者など)および(3)の「SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者」(例:ハイリスク患者のうち、免疫抑制状態[悪性腫瘍治療中、骨髄または臓器移植後、原発性免疫不全症候群など]にある患者など)は、中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。 なお、SARS-CoV-2の既感染やワクチン接種等により自己の抗体を有すると考えられる患者では中和抗体薬の必要性、有効性が低くなる可能性があると考えられるが、現時点ではその臨床的意義は必ずしも明らかではなく、国内で使用可能な抗体検査薬は承認されていないため、今後の知見が待たれる。 本稿の詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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ペムブロリズマブ、MSI-H大腸がんとTN乳がんに適応拡大/MSD

 MSDは2021年8月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん(大腸がん)およびPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。治癒切除不能な進行・再発MSI-H大腸がんに対する適応拡大について 今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第III相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.80)。安全性については、安全性解析対象例153例中、ペムブロリズマブ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)であった。PD-L1陽性のHR陰性/HER2陰性の手術不能または再発乳がんに対する適応拡大について 今回の承認は、転移・再発乳がんに対する化学療法歴のない転移・再発または局所進行性のトリプルネガティブ乳がん患者847例(日本人87例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-355試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ+化学療法(ゲムシタビンおよびカルボプラチン、パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)併用群はプラセボ+化学療法併用群に対して、PD-L1陽性(CPS≧10)患者323例(日本人28例を含む)において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)。安全性については、PD-L1陽性(CPS≧10)患者における安全性解析対象例219例中、ペムブロリズマブ併用群の主な副作用(20%以上)は、貧血(48.9%)、悪心(41.1%)、好中球減少症(39.7%)、脱毛症(34.7%)、疲労(29.2%)、好中球数減少(23.7%)、下痢(21.9%)、ALT増加(21.5%)および嘔吐(20.1%)であった。 なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されている。

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AmoyDx 肺癌マルチ遺伝子PCRパネル、METexon14スキッピング肺がんのコンパニオン診断にも承認/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、2021年8月12日、体外診断用医薬品「AmoyDx 肺癌マルチ遺伝子PCR パネル」に関し、MET遺伝子エクソン14 スキッピング変異陽性に適応する薬剤の判定補助の承認を取得したと発表。 これにより、メルクバイオファーマのテポチニブ(製品名:テプミトコ)の適応判定の補助に本品の使用が可能となる。 今回の承認により、同製品はNSCLCの5種のドライバー遺伝子に対応する本邦初のコンパニオン診断薬となった。 製品の上市に際しては、1パッケージとする統合承認を経て、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E 変異、MET遺伝子エクソン14 スキッピング変異を1回の測定で同時に検出可能となり、10種の抗悪性腫瘍薬の適応判定の補助が可能となる。 同キットは、リアルタイムPCR法を用いることで、感度の高さや短いターンアラウンドタイム、手軽さなどにより、早期治療戦略の立案やNSCLC患者への治療機会拡大に貢献することが期待されている。

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NSCLCの4種のドライバー変異を判定するリアルタイムPCRが国内承認/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、2021年6月25日、複数の抗悪性腫瘍薬のコンパニオン診断薬として「AmoyDx 肺癌マルチ遺伝子 PCR パネル」の国内製造販売承認を取得したと発表。  同製品は、非小細胞肺がんの4種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF)を網羅するリアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。 EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異を1回の測定で同時に検出し、9種の抗悪性腫瘍薬の適応判定の補助が可能。 リアルタイムPCR法を用いた複数遺伝子を網羅するコンパニオン診断薬が承認されたのは本邦初であり、その感度の高さや短いターンアラウンドタイム(TAT)、手軽さなどにより、早期治療戦略の立案やNSCLC患者への治療機会拡大に貢献することが期待されている。製品概要・ 製品名:AmoyDx 肺癌マルチ遺伝子 PCR パネル(製品番号:A246)・承認番号:30300EZX00059000・使用目的:がん組織から抽出したDNA中の遺伝子変異(EGFR遺伝子変異及びBRAF遺伝子変異)及びRNA中の融合遺伝子(ALK融合遺伝子及びROS1融合遺伝子)の検出NSCLC患者への、以下の抗悪性腫瘍剤の適応を判定するための補助に用いる ・EGFR 遺伝子変異 ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩、アファチニブマレイン酸塩、 オシメルチニブメシル酸塩 ・ALK 融合遺伝子 クリゾチニブ、アレクチニブ塩酸塩、ブリグチニブ ・ROS1 融合遺伝子 クリゾチニブ ・BRAF V600E 変異 ダブラフェニブメシル酸塩とトラメチニブジメチルスルホキシド付加物の併用投与・検査原理 PCR 法(リアルタイム PCR 法および RT-PCR法)・検体材料 腫瘍細胞の存在が確認されたFFPE組織、新鮮凍結組織・包装 1キット(12テスト)・製造販売業者 株式会社理研ジェネシス・製造元 Amoy Diagnostics Co., LTD(中国)

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ペミガチニブ、FGFR2変異胆道がんに期待/インサイト

 インサイト・バイオサイエンンシズ・ジャパンは2021年7月15日、「胆道がんにおけるがんゲノム診断に基づく分子標的治療薬がもたらす新しい未来」と題したWebメディアセミナーを開催。日本胆道学会理事長の東北大学大学院 消化器外科学分野教授 海野倫明氏らが、胆道がん治療と本年発売されたFGFR2阻害薬ペミガチニブ(製品名:ペマジール)について紹介した。予後不良な胆道がん。なかでも深刻な肝内胆管がん 胆道がんには3つの病型があるが、いずれも予後不良である。なかでも肝内胆管がんは、黄疸などの症状が現れにくく、初回診断時すでに進行した病期であることが多い。そのため、生存期間中央値13.5ヵ月と3病態のなかで、もっとも予後不良である。肝内胆管がんの罹患数は(肝臓がんの一部として集計される)、肝臓がんの6%とされる。推奨薬剤がない切除不能例の2次治療 切除不能胆道がんの薬物治療、1次治療の推奨はゲムシタビンとシスプラチンの併用またはS-1とシスプラチンの併用である。しかし、2次治療のガイドライン推奨薬剤はなく、新たな治療選択肢が望まれていた。FGFR2遺伝子変異と肝内胆管がん標的治療 そのような中、遺伝子解析により、FGFR2遺伝子融合/再構成が肝内胆管がんにもっとも多い遺伝子変異であることが明らかになり、また、FGFR2をターゲットした分子標的薬ペミガチニブが胆道がんを適応として承認された。 ペミガチニブの有効性は、既治療のFGFR2変異陽性胆道がんの第II相試験FIGHT-202で検討されている。試験の結果、FGFR2遺伝子融合/再構成患者(コホートA)に対する全奏効率35.5%と主要評価項目を達成し、病勢制御率も82%と良好な成績を示した。初期標準治療の終了後には、がん遺伝子パネル検査でFGFR2変異を確認し、ペミガチニブが選択可能か検討して欲しいと海野氏は述べる。 なお、ペミガチニブのコンパニオン診断薬としてはFoundation One CDxが、本年(2021年)2月に承認されている。

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タゼメトスタット、EZH2変異陽性の濾胞性リンパ腫に国内承認/エーザイ

 エーザイは、2021年6月23日、EZH2阻害薬タゼメトスタット(製品名:タズベリク)について、再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)の効能効果で日本における製造販売承認を取得したと発表。 本承認は、同社が国内で実施した多施設共同非盲検単群臨床第II相試験(206試験)およびEpizyme社が海外で実施した臨床試験の結果などに基づいたもの。EZH2阻害薬タゼメトスタットの奏効率は76.5% 206試験では、前治療後に再発・増悪したEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(FL)患者などが登録された。同試験でのFL17例の独立判定によるEZH2阻害薬タゼメトスタットの奏効率(ORR)は76.5%。事前に設定した閾値ORRを統計学的に有意に上回り、主要評価項目を達成した。また、発現率25%以上の有害事象は、味覚異常(52.9%)、上咽頭炎(35.3%)、リンパ球減少症(29.4%)および血中クレアチンホスホキナーゼ増加(29.4%)であった。 FLは非ホジキンリンパ腫の10~20%を占め、一般的に進展が緩徐で、化学療法の感受性は良好である。しかし、再発を繰り返すため、治癒が困難な疾患であることから、新たな治療戦略が求められている。FLの中で、EZH2遺伝子変異を有する症例は7~27%で、日本では約600~2,400例と推定される。 EZH2阻害薬タゼメトスタットのコンパニオン診断薬としてロシュ・ダイアグノスティックスの「コバス EZH2 変異検出キット」が承認されている。また、投与全患者を対象とした特定使用成績調査(全例調査)が行われる。

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ALK阻害薬ブリグチニブのコンパニオン診断薬としてベンタナ OptiView ALK(D5F3)承認/ロシュ・ダイアグノスティックス

 ロシュ・ダイアグノスティックスは、ALK陽性非小細胞肺がん患者の診断補助に用いるALK融合タンパクキット「ベンタナ OptiView ALK(D5F3)」の一部変更承認を6月21日に取得。武田薬品のALK阻害薬ブリグチニブに対するコンパニオン診断薬として承認された。 ベンタナOptiView ALK(D5F3)は、がん組織、細胞中に発現するALK融合タンパクを検出する体外診断用医薬品であり、ALK阻害薬クリゾチニブ、セリチニブ、およびアレクチニブのコンパニオン診断薬として製造販売承認されている。 今回ブリグチニブに対して承認されたことで、未治療のALK陽性肺がんに対して国内で承認されているすべてのALK阻害薬のコンパニオン診断薬となった。

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第63回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(後編)

厚生労働省は年内にも承認の可否を判断こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。沖縄県を除く9都道県でやっと緊急事態宣言が解除されました。もっとも、店舗での酒類提供については若干緩められるものの、まだまだ厳しい制限が続きます。東京都の場合、「まん延防止等重点措置」に移行する21日以降は、1組2人以下や滞在90分以内などを条件に認められます。東京23区では午前11時~午後7時が提供可能時間ということです。居酒屋などの開店時間が早まり、「午後4時から飲み」が流行りそうですが、早晩、緊急事態宣言に逆戻りしそうな気もします…。さて、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手の、MLBオールスターゲームのホームランダービー出場が決定しました。オールスター戦前日、7月12日(現地時間)に行われるホームランダービーは賞金100万ドル、MLBのホームランバッターたちが真剣勝負で出場するイベントです。ただ、とてもハードな戦いで、かつてはこのダービーに出場して後半戦に調子を崩した選手もいるほどです。ケガだけには気をつけてほしいと思います。ところでこのホームランダービー、2年前は野球解説者の山下 大輔氏がレフトで解説中にホームランボールをキャッチし話題になりました。興味がある方はYouTubeで観てみてください。前回に引き続き、今回もアデュカヌマブについて、日本での承認の可能性と臨床現場への影響について考えてみたいと思います。前回も触れましたが、このアデュカヌマブ、日本国内でも2020年12月にバイオジェン・ジャパンが承認申請しています。申請した適応症は「アルツハイマー病」で、米国と同じです。厚生労働省は年内にも承認の可否を判断するとも報じられています。新聞やテレビの報道では、「早晩日本でも」という論調が多かった印象ですが、そうは簡単にはいかないと思われます。症状軽減に「効くか効かないかまだわからない」前回書いたように、アミロイドβの減少を根拠としたアデュカヌマブの「迅速承認」に対しては多くの疑義があり、かつ市販後の検証的試験(期限は2030年2月でまだ9年近くもあります)が求められています。第III相試験自体、認知機能低下抑制の効果に関するデータが統計的にもギリギリで、市販後の検証的試験において有用性を示すには対象患者のさらなる絞り込みが必要だろう、との専門家の指摘もあります。つまり、アミロイドβの減少効果はありそうだが、本丸である認知症の症状軽減については「効くか効かないかまだわからない」薬剤なのです。そんな薬剤を厚労省は果たして承認する(できる)のでしょうか。「条件付き早期承認」の対象は「重篤」な疾患日本にも米国の「迅速承認」と同じように「条件付き早期承認」の仕組みが医薬品医療機器等法で定められています。もっともこの条件付き承認には「患者数が少ないなどの理由で臨床第III相試験などの検証的臨床試験を行うことが難しい医薬品」で「適応疾患が重篤である」などの要件があります。「重篤」の意味としては、「生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患)」に加え、「病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾患」も入っています。ただ、アルツハイマー病は国内の患者数が数百万人規模と多く、疾患が「重篤」に当てはまるかどうかも微妙で、この仕組みを適用するかどうかはPMDAなど規制当局の判断次第です。適応をどうするかも大きな問題仮に承認されたとしても、課題は多く残されます。薬価(米国では年間約600万円)の設定もそうですが、それと関連して適応をどうするか、というのも大きな問題です。アデュカヌマブの臨床試験は軽度認知障害(MCI)と軽度認知症を対象に行われ、米国で承認された適応は「アルツハイマー病」です。「アルツハイマー型認知症」ではなく、アルツハイマー病となったということは、アルツハイマー病の診断基準(NINCDS-ADRDAの診断基準など/認知症の症状とアミロイドβなどのバイオマーカーの蓄積)をクリアすれば、症状がごく軽微の段階から重度まで広く治療の対象になり得る、ということです。仮に日本でも適応症が「アルツハイマー病」となった場合、いったいどの段階から薬剤の使用が認められるでしょうか。ちなみに日本の保険診療上、MCIは疾患ではなく、現状使用できる薬剤はありません(MCIはドネペジルも保険で使えません)。そうなると、MCIは除外して、アルツハイマー病ときちんと診断された人すべてに投与できるようにするのか、アルツハイマー病の中で適応範囲を(効くとされる軽症に)狭めるのか、気になるところです。おそらく、仮に承認されるにしても保険財政が逼迫している現状では、アルツハイマーと診断されたすべての人がアデュカヌマブを使用できるようにはしないでしょう。となると、脳内のアミロイドβの蓄積を測定してその値によって適応を決めるのが妥当な手法となりそうです。しかし、それでも実際には結構高いハードルがあります。現状、脳内のアミロイドβの蓄積の評価にはPET検査か髄液検査が必要とされていますが、高価であったり、あるいは侵襲性が高かったりするこれらの検査を「効くか効かないかまだわからない」薬剤を使用するために課すのでしょうか。そもそも数百万人規模にPET検査をしていては、それだけで保険財政が持ちません。ところで、シスメックスが血漿中のアミロイドβを測定する血液検査について、2021年度中の承認取得を目指しているとの報道もありました。シスメックスはエーザイと認知症領域に関する診断薬創出に向けた非独占的包括契約を結んでいます。ひょっとしたら、この新しい血液検査(PET検査よりも安価)とセットで、アデュカヌマブの承認が行われる可能性も考えられます。診断面ばかりに目が行き患者対応やケアは後回しの医師たちもう一つ危惧されるのは、現場の認知症診療やケアへの影響です。そもそも、日本の医師たちの多くは昔から認知症をきちんと診療しようとはしませんでした。1980年代、まだ老人性痴呆症と呼ばれていた頃、認知症は精神科領域の疾患であり、一般的な臨床医の関心外のことでした。その後、精神科病院への入院から、老人保健施設、グループホームなどの施設への入所が受け入れの中心となっていっても、最前線の現場では医師の介入はほとんど行われていませんでした。2004年、認知症と呼び名が変わり、患者対応やケアの仕方次第では問題行動が激減し、家族によるケアがスムーズになるケースが少なくないことがわかってきました。しかし、医師たちの多くはそうしたノウハウを学ぼうともせず、結果、家族に伝授することなく、漫然と認知症薬を投与、最終的にはグループホームなどを紹介し、お茶を濁してきました。アルツハイマー病の病態解明や薬剤開発が思うように進まなかったとはいえ、目の前の患者にできることをやってこなかった点は明らかに医師の怠慢と言えます。アデュカヌマブが承認されたとしても、医師たちは「どういう患者に使えるか」「アミロイドβの蓄積はどうか」といった診断面ばかりに目が行き、患者対応やケアはこれまで以上に後回しにされる危険性があります。「患者を診ず病気しか診ない」どころか、「患者を診ず検査値しか見ない」というわけです。6月9日、オンラインで行われたエーザイのメディア・投資家向け説明会で内藤 晴夫CEO(最高経営者)は認知症治療薬開発に対する思いを語りました。その中で、アルツハイマー病薬の価値について、「アルツハイマー病にかかる費用の特徴は、医療本体に関わるものより、介護による負担が大きい。これには、家族が介護をすることで就労の機会が減少することも含まれるし、介護には長期療養施設への入所なども含まれる。これらを複合的に評価することで、価値の全体像が見えてくる」と語ったそうです。アデュカヌマブは本当にそうした価値を創造できる薬剤なのでしょうか。逆に患者対応やケアをないがしろにする医師が増加し、グループホームなど認知症施設の需要がむしろ高まる可能性もあるのではと思いますが、どうでしょう。そう考えると、「承認はするが薬価基準を定めない」という究極の選択肢もあるかもしれません。薬価基準を定めないとは、つまり保険適用しない、ということです。現状、ED治療剤、男性型脱毛症治療剤など自由診療で用いられる薬剤がそれに当たります。そもそも認知症は疾患ではなく、脳の老化に過ぎないという立場に立てば、そうした対応もありかもしれません。ただ、日本の製薬メーカーも開発に当たった“世界初”の認知症治療薬に対して、日本政府がそうした“仕打ち”をするかどうか…。日本での承認の行方が気になります。

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アトピー検査キットをコロナ重症化判定に適応追加/塩野義

 塩野義製薬は6月7日、アトピー性皮膚炎の重症度を診断する検査キット「HISCL TARC試薬」について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者の重症化予測の補助を使用目的とする適応追加の承認を同日付で取得したと発表した。COVID-19の発症初期から重症化リスクを判別することで、リスクに応じた最適な措置につなげ、医療体制の逼迫や医療崩壊を回避する一助となることが期待される。現在、保険適用を申請中。 「HISCL TARC試薬」は、2014年にシスメックスと共同開発したTARC1)を測定する検査キットで、すでにアトピー性皮膚炎の重症度評価の補助を目的とした体外診断用医薬品として使用されている。国立国際医療研究センターによる臨床研究では、COVID-19重症化患者においては、発症初期から血清中のTARC値が低いことが確認されており、1回の測定で患者の重症化を早期に予測できる分子マーカーとしてTARCの有用性が示されているという。 1) 71 個のアミノ酸で構成されるタンパク質で、Th2細胞を炎症部位に遊走させるケモカイン群の1 つ。 COVID-19の重症化予測マーカーとしては、2021年2月に保険適用を受けたシスメックス社の「HISCL IFN-λ3試薬」があり、主に入院患者に対して重症化の兆候を早期に把握することを目的に使用されている。塩野義製薬は、今回の適応追加承認により、COVID-19発症初期から重症化リスクを判別することで、リスクの高い患者を入院管理、リスクの低い患者を宿泊療養や自宅療養とするなど個別に最適な措置につなげていくことが期待されるとコメントしている。

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FDA、ソトラシブをKRAS G12C陽性肺がんに迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2021年5月28日、RAS GTPaseファミリー阻害薬であるソトラシブを、KRAS G12C変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者に迅速承認した。 また、QIAGEN therascreen KRAS RGQ PCR キット(組織)および Guardant360CDx(血漿)をソトラシブのコンパニオン診断薬として承認した。 今回の承認は上記患者を対象とした、多施設非盲検単群臨床試験CodeBreaK100の結果に基づいたもの。有効性は124例の患者で評価された。患者は疾患進行あるいは許容できない毒性の発現まで、ソトラシブ960mg/日の投与を連日受けた。 主要有効性評価項目は、盲検化独立中央委員会評価の客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DoR)であった。結果は、ORRは36%、DoR中央値は10ヵ月であった。一般的な副作用(20%以上)は、下痢、筋骨格痛、吐き気、疲労、肝毒性、咳であった。一般的な検査値異常(25%以上)は、リンパ球減少、ヘモグロビン減少、AST上昇、ALT上昇、カルシウム減少、アルカリホスファターゼ上昇、尿タンパク、ナトリウム減少であった。

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