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トシリズマブ、重症COVID-19肺炎患者の生存率改善/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症肺炎で入院した患者の治療において、IL-6受容体モノクローナル抗体のトシリズマブ(商品名:アテムクラ)を投与することで臨床状態が改善し、28日以内の退院率が向上する、という結果が報告された。無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY」によるもので、Lancet誌2021年5月1日号に掲載された。ただし、別の研究においては、トシリズマブは臨床状態改善や死亡率低下に寄与しないとの結果も報告されており、今後の詳細な分析とさらなる試験結果が待たれる。 2020年4月23日~2021年1月24日の間に、RECOVERY試験に登録された2万1,550例のCOVID-19患者のうち、低酸素状態(空気中の酸素飽和度が92%未満、または要酸素療法)かつ全身性炎症(C反応性タンパク質[CRP]が75mg/L以上)が認められた成人患者4,116例を対象とし、トシリズマブ群と標準治療群に1対1で無作為に割り付けた。 ベースライン時点で、4,116例中562例(14%)が侵襲的人工呼吸器を装着し、1,686例(41%)が非侵襲的呼吸サポート(高流量経鼻酸素、CPAP、非侵襲的換気を含む)を受けており、1,868例(45%)が単純酸素吸入だけを受けていた。 CRPの中央値は143(IQR:107~204)mg/Lで、3,385例(82%)の患者が全身性コルチコステロイドを投与されていた。主要評価項目は28日後の全死亡率、 副次評価項目は退院日数、およびベースライン時点で侵襲的人工呼吸器未装着だった患者の人工呼吸器装着または死亡だった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は63.6(SD:13.6)歳であった。・無作為化後28日以内に死亡したのはトシリズマブ群2,022例中621例(31%)、標準治療群2,094例中729例(35%)だった。(発生率比:0.85、95%CI:0.76~0.94、p=0.0028)。・トシリズマブ群は、標準治療群に比べて28日以内の退院率が高かった(57%対50%、発生率比:1.22、95%CI:1.12~1.33、p<0.0001)。・ベースライン時点で侵襲的人工呼吸器未装着の患者において、トシリズマブ群では人工呼吸器装着または死亡という複合エンドポイントに到達する可能性が低かった(35%対42%、リスク比:0.84、95%CI:0.77~0.92、p<0.0001)。・全身性コルチコステロイド投与患者を含む、事前に規定されたすべてのサブグループで一貫した結果が得られた。

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新型コロナ感染症に対する回復期血漿療法は無効(解説:山口佳寿博氏)-1384

 2021年2月11日の本サイト論評で新型コロナ感染症に対する回復期血漿療法の意義・有効性を2021年1月までに発表された論文をもとに中間報告した。しかしながら、2月から3月にかけて回復期血漿療法に関する重要な論文が相次いで発表され、本療法に対する世界的評価が定まった感がある。それ故、本論評では、回復期血漿療法を再度とり上げ、本療法が新型コロナ感染症におけるウイルス増殖の抑制、感染後の重症化阻止に対して有用であるか否かを再度議論するものとする。 本論評でとり上げたJaniaudらの論文(Janiaud P,et al. JAMA. 2021 Mar 23;325:1185-1195.)は、回復期血漿療法に関するメタ解析の結果を報告したもので、2021年1月29日までに報告された10個のランダム化対照試験(RCT)を解析対象とし、観察研究は除外された。RCTは、インド、アルゼンチン、バ-レ-ン、中国、オランダ、スペイン、英国で施行されたものを含む。これらの対象論文には4個の査読終了後の正式論文に加えPress releaseを含む6個の非査読論文が含まれる。4個の正式論文における総対象者数は1,060例(回復期血漿群:595例、対照群:465例)であった。非査読論文にあって最大のものは英国のRECOVERY Trial(Randomized Evaluation of COVID-19 therapy)で総対象者数は11,558例(回復期血漿群:5,795例、対照群:5,763例)であり、他の5個の非査読論文の総対象者数は316例(回復期血漿群:155例、対照群:161例)であった。すなわち、Janiaudらのメタ解析の対象者の89%はRECOVERY Trialに登録された症例であり、その解析結果はRECOVERY Trialの結果によって決定されたものと考えなければならない。それ故、本論評では、2021年3月10日に非査読論文としてmedRxivに掲載されたRECOVERY Trialの結果について解説する(The RECOVERY Collaborative Group. medRxiv.)。 RECOVERY Trialは、英国177の医療施設で施行されている非盲検RCTであり、現在までに、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル/リトナビル、アジスロマイシン、トシリズマブに関する治験結果を報告している。RECOVERY Trialで使用された回復期血漿は、ELISA法によりS蛋白特異抗体が高くウイルスに対する中和抗体価が100倍以上の高力価のものであり、ランダム化から出来る限り早期に投与された(初回:137.5mL、2回目:初回より少なくとも12時間あけて翌日に137.5mLを投与)。対象者の8%で酸素投与なし、87%で酸素投与のみ、5%で侵襲的人工呼吸管理が導入されていた。すなわち、対象者の大部分はWHO分類による非重篤患者であった(WHO COVID-19 Clinical management (Ver.1.4) , 2021年1月25日)。Primary outcomeとして、ランダム化から28日目までの死亡率、Secondary outcomesとして、入院期間、ランダム化以降にECMOを含む侵襲的補助呼吸管理あるいは腎/腹膜透析が導入された症例の割合が評価された。興味深いPost-hoc analysisとして、従来株(D614G株)と英国変異株(B.1.1.7)に対する回復期血漿の効果が検討された。従来株感染者は、2020年12月1日までにランダム化された症例、英国株感染者は、それ以降にランダム化された症例と仮定された。 ランダム化から28日目における死亡率は、回復期血漿群、対照群で共に24%であり全く同一であった(Primary outcome)。従来株感染者と英国変異株感染者の死亡率も回復期血漿群と対照群で有意差を認めなかった(Post-hoc analysis)。すなわち、ウイルスの種類によらず回復期血漿療法は無効で新型コロナ感染症患者の死亡を抑制しなかった。Secondary outcomesの評価項目でも両群間で有意差を認めた指標は存在しなかった。以上の結果は、年齢、性、症状持続期間、対象患者のランダム化時のS蛋白に対するIgG抗体価、基礎治療としてのステロイド投与の有無、ランダム化時の呼吸管理の差異などの背景因子を補正しても変化せず、回復期血漿療法の臨床的有効性を全面的に否定するものであった。RECOVERY Trial以上の大規模試験を施行することは不可能、かつ、無意味であり、回復期血漿療法に関する最終結論として、本療法は無効と判断すべきである。 この大規模RECOVERY Trialの結果を受け、世界各国での回復期血漿療法に関する多くの治験は中止されつつある。RECOVERY TrialのPress releaseを受け、2021年2月4日、米国FDAは回復期血漿療法の適用を厳密化し、それを施行するにあたり以下の点を遵守することを臨床現場に要請した(New York Times, 2021年3月22日);(1) S蛋白に対する高力価の抗体を有する血漿のみを使用すること、(2) 主たる対象は免疫不全を有する感染者に限定すること、(3) 免疫不全を認めない感染者に対しては感染早期の投与のみに限定すること。本邦にあっては、回復期血漿療法は保険適用外治療として去年の早い段階で承認されているが、RECOVERY Trialを中心とした世界の趨勢を鑑み、その適用に関し早急に見直す必要がある。2021年4月2日、武田薬品工業は、新型コロナ感染症患者血漿から精製した高濃度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19 Plasma Alliance)の第III相ITAC試験(二重盲検化RCT)の結果をPress releaseで公表した(ミクスonline, 2021年4月5日)。ITAC試験は、世界10ヵ国、63施設が参加して施行されたものであり、発症12日以内の新型コロナ感染症患者600例が対象として登録された。治験計画として、抗ウイルス薬レムデシビルにCoVIg-19 Plasma Allianceを追加したレジメンが新型コロナ感染症の制御に有効であるかどうかが解析された。残念なことに、上記のレジメンの有効性は証明されず、ITAC試験の結果はRECOVERY Trialの結論を支持するものであった。 最後に、回復期血漿療法がまったく無意味な治療法であるかどうかについて考察してみたい。この考察のために、S蛋白に対するIgG monoclonal抗体であるCasirivimabとImdevimabの抗体カクテル(REGN-COV)に関する最新の第III相治験結果(REGN-2069 Trial)を紹介したい(Roche. Media & Investor Release, 2021年4月12日)。REGN-2069 Trialは、IgG monoclonal抗体カクテルREGN-COVの皮下投与が新型コロナ感染症患者との濃厚接触に起因する家族内感染リスクを81%、無症候性感染から有症候性感染への移行リスクを31%軽減させることを示した。回復期血漿療法はS蛋白を標的としたPolyclonal抗体治療と考えることができるので、家族内感染に関してREGN-COVカクテルと同様の効果を発揮する可能性がある。その意味で、新たな治験が必要ではあるが、回復期血漿療法を家族内感染に対する予防法の1つとして位置付けることが可能ではないかと論評者は考えている。しかしながら、REGN-COVカクテルは皮下投与で外来治療ができる簡便な方法であるのに対し、回復期血漿は入院で点滴投与が必要であり実際面で非常に制限が多く、REGN-COVカクテル療法を凌駕する方法ではないことを忘れてはならない。

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ケアネットDVD 2021年6月以降のお取り扱い商品につきまして【2024年3月14日 更新】

DVDインデックスページへ戻る日頃よりケアネットDVDをご愛顧いただきありがとうございます。このたび弊社では、ケアネットDVDの個人向けの販売方法を変更する運びとなりました。2021年6月以降につきましては、Amazon.co.jpにて販売させていただきます。なお、一部商品につきましてはDVD販売が終了となるものもございますので、詳細は下記をご参照ください。DVD販売が終了した商品も、臨床医学チャンネル『CareNeTV』にて引き続きオンデマンド配信(有料)を行っておりますので、こちらをぜひご利用ください。今後ともCareNeTV、ケアネットDVDをご愛顧のほどお願い申し上げます。本件に関する問い合わせは、お問い合わせフォーム までお願いいたします。※下記の一覧は、2024年3月14日時点のものです。※販売を継続するタイトル一覧にある商品でも、弊社の在庫がなくなりしだい販売終了となる場合がございます。何卒ご了承ください。販売を継続するタイトル  販売を終了するタイトル販売を継続するタイトルCND0002 平本式 皮膚科虎の巻<上巻>CND0003 平本式 皮膚科虎の巻<下巻>CND0008 Dr.東田の今さら聞けない病態生理<上巻>CND0009 Dr.東田の今さら聞けない病態生理<下巻>CND0010 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第1巻>CND0011 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第2巻>CND0012 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第3巻>CND0013 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第4巻>CND0014 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第5巻>CND0015 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第6巻>CND0019 チャレンジ!超音波走査<上巻>CND0020 チャレンジ!超音波走査<下巻>CND0028 マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<上巻>CND0030 マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<下巻>CND0033 骨太!Dr.仲田のダイナミック整形外科<下巻>CND0039 Dr.林の笑劇的救急問答 1 <上巻>CND0044 もう迷わない!好きになる心電図<下巻>CND0045 Dr.岩田の感染症アップグレード<第1巻>CND0046 Dr.岩田の感染症アップグレード<第2巻>CND0047 Dr.岩田の感染症アップグレード<第3巻>CND0048 Dr.岩田の感染症アップグレード<第4巻>CND0049 Dr.さわやまの心音道場<上巻>CND0052 Step By Step!初期診療アプローチ<第1巻>/疼痛(前編)CND0053 Step By Step!初期診療アプローチ<第2巻>/疼痛(後編)CND0054 Dr.古谷の実践!ザ・診察教室<上巻>CND0055 Dr.古谷の実践!ザ・診察教室<下巻>CND0056 Dr.林の笑劇的救急問答 2 <上巻>CND0057 Dr.林の笑劇的救急問答 2 <下巻>CND0058 Dr.林の笑劇的救急問答 3 <上巻>CND0059 Dr.林の笑劇的救急問答 3 <下巻>CND0060 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第1巻>CND0061 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第2巻>CND0063 mの字走査法で出来る!乳腺超音波手技大原則CND0064 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第1巻>CND0065 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第2巻>CND0066 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第3巻>CND0067 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第4巻>CND0068 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第5巻>CND0071 Step By Step!初期診療アプローチ<第3巻>/神経(前編)CND0072 Step By Step!初期診療アプローチ<第4巻>/神経(後編)CND0082 Dr.夏井の創傷治療大革命CND0088 Dr.岸本の関節ワザ大全<第1巻>CND0089 Dr.岸本の関節ワザ大全<第2巻>CND0090 Dr.岸本の関節ワザ大全<第3巻>CND0101 Dr.須藤のやりなおし輸液塾<上巻>CND0102 Dr.須藤のやりなおし輸液塾<下巻>CND0103 Step By Step!初期診療アプローチ<第5巻>/呼吸器CND0104 Step By Step!初期診療アプローチ<第6巻>/消化器CND0105 Dr.林の笑劇的救急問答 4 <上巻>CND0106 Dr.林の笑劇的救急問答 4 <下巻>CND0107 Dr.鈴木の眼底検査完全マスターCND0114 内科医のための精神科的対応“自由自在”<上巻>CND0115 内科医のための精神科的対応“自由自在”<下巻>CND0123 Step By Step!初期診療アプローチ<第7巻>/マイナー症候CND0129 Dr.林の笑劇的救急問答 5 <上巻>CND0130 Dr.林の笑劇的救急問答 5 <下巻>CND0134 出直し看護塾<第1巻>CND0135 出直し看護塾<第2巻>CND0140 Dr.坂根のなるほど!納得!ダイエット!CND0143 ワクワク ! 臨床英会話<上巻>CND0144 ワクワク ! 臨床英会話<下巻>CND0150 Dr.林の笑劇的救急問答 6 <上巻>CND0151 Dr.林の笑劇的救急問答 6 <下巻>CND0154 聖路加GENERAL 【心療内科】CND0155 聖路加GENERAL 【神経内科】CND0156 聖路加GENERAL 【がん検診】CND0157 聖路加GENERAL 【一般診療に役立つ腫瘍内科学】CND0158 聖路加GENERAL 【内分泌疾患】<上巻>CND0159 聖路加GENERAL 【内分泌疾患】<下巻>CND0161 人のハいで読める! 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骨形成不全症〔Osteogenesis imperfecta〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨形成不全症は先天的に骨が脆弱な疾患である。易骨折性や骨の変形といった症状が特徴的であり、そのほか青色強膜や歯牙形成不全、伝音性難聴、低身長などを認めることがある。遺伝性疾患であり、いずれも1型コラーゲンの異常による結合組織の症状である。骨形成不全症は、胎児期から骨の変形が著明で出生後に死亡する重症型と、出生後に易骨折性や低身長などで診断される軽症型の大きく2つに分かれるが、実際には症状は非常に多彩であり両者には連続性がある。■ 疫学有病率は最近の集団研究から約1万人に1人と言われている。ただし、最重症例の新生児早期死亡例から、歯牙の異常のみの軽症例、あるいは無症状の人まで多様に存在するので、真の発生頻度はわからないところがある。■ 病因結合組織の主要な成分である1型コラーゲン分子の異常によって発症する。90%以上が1型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1、 COL1A2)が原因であるが、近年それ以外の複数の遺伝異常が原因となっている骨形成不全症がみつかっている。■ 症状骨形成不全症は、症状やX線所見、自然歴などから4つの型に分類される(Sillence分類)。出生直後に死亡したり、重度の骨格変形を来す2型は、出生時にはすべての症状が明らかである。胎齢に比べて体重も身長も小さく、頭蓋骨は軟らかい。眼瞼強膜は濃い青色で、結合組織は非常に脆弱である。四肢は短く彎曲している。肋骨も多発骨折によりベル状に変形していて、呼吸不全を呈することが多い。これまでは罹患児の半数以上が出生当日に、80%が1週間以内に死亡し、1年を超えて生存する例は少ないと言われてきたが、近年の人工呼吸管理の進歩のより予後はすこしずつ改善している。2型の中で太い長管骨と細い肋骨を示す2B型は、症状のやや軽い3型と連続的なスペクトラムをもつ疾患である。2B~3型では、肋骨骨折の重症度によって生後数週間または数ヵ月で呼吸不全によって死亡となるが、この期間を生き残った児も骨の脆弱性と顕著な骨変形のため将来的にも車いすなどに頼らなければならない。徐々に骨変形が進むために成長は遅れ、成人身長が1m未満ということもめずらしくない。脳内出血といった合併症がない限り知的には正常である。1型および4型のほとんどは出生時に所見を認めず、成長にともなってさまざまな症状を呈するものである。青色強膜を認めるものを1型、認めないものを4型とするが、判定困難な例も多い。また、乳幼児期には明らかであっても、成長にともない軽減する例もあって、その有無の判定には慎重にならなければならない。1型および4型は正常な身長と易骨折性によって特徴付けられる。最初の骨折は出生後のおむつの交換で起ったり、あるいは乳児期に歩行転倒したときに起こるときもある。骨折は一般的に年に1〜数回の割合で起こり、思春期以降になると頻度が減少する。骨折は一般に変形なしで正常に治癒する。関節の過可動性を認め、変形性関節疾患を早期に発症することがある。難聴は小児期から発症し、成人の半数近くに認められる。中耳骨の骨折による拘縮および瘢痕化によって起こるとされ、基本的には伝音性難聴であるが、年齢とともに混合性難聴となっていく。■ 予後2型では一般に生命予後は良好ではなく、1歳までの間に多くがさまざまな原因で亡くなる。3型では重症度によるが、一部の患者(児)は成長して成人までいたるが、骨の短縮変形のために運動機能は不良である。また、重度の側弯症となると拘束性肺疾患による心不全が余命を短縮させる可能性がある。1型あるいは4型では平均寿命は正常と変わらない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)骨形成不全症の診断は骨X線所見が基本である。出生時から症状を呈する2型、3型では、長管骨、肋骨とも多数の骨折のため著しい変形を来しており、胸骨もベル型になっている。頭蓋冠の骨化はほとんど認めない。1型、4型では長管骨はovermodelingのために細く軽く彎曲している。頭蓋骨に特徴的なWormian boneを認めることがある。ただし、1型、4型の表現型は非常に幅広く、ほとんど症状がないこともめずらしくない。小児慢性特定疾患や指定難病の申請のための診断基準が定められている。表の項目の中で、除外項目を除いた上で、Aの症状が認められれば診断される。Bのうちのいくつかの症状を伴っていることが多く、Cのいずれかを認めることが診断の参考になる。診断に苦慮する症例では遺伝子診断を行う。表1 骨形成不全症の診断基準(指定難病)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)内科的治療と外科的治療に大きく分けられる。■ 内科的治療骨強度を増加させる治療としては骨吸収の抑制と骨形成の促進がある。骨吸収抑制作用をもつ代表的な薬剤としては、ビスホスホネート製剤であるパミドロン酸がある。骨折回数の減少、骨密度の増加、骨痛の改善などが認められている。また、椎体の圧迫骨折を減らし、側弯症の進行を遅くさせるが、発熱や低カルシウム血症などの副作用がある。現在、わが国で小児の骨形成不全症に対して保険適応があるのはパミドロン酸のみである。そのほかの治療薬としては、骨吸収抑制の作用がある抗RANKL抗体(denosumab)、骨形成促進作用があるテリパラチド(TPTD)、抗sclerostin抗体(romosozumab、 sestrusumab)などがあるが、ランダム化比較試験(RCT)によって効果が示されておらず、いまだ研究段階といえる。■ 外科的治療骨折したときの一般的な観血的骨整復術のほか、四肢変形に対する骨切り術、長管骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入などが行われる。長管骨の易骨折性・変形に対する手術治療は、繰り返す骨折、歩行や装具装着の妨げになる変形がある場合に適応となり、矯正骨切り・髄内釘治療が主に行われている。骨成熟までの期間が長い小児の場合には、伸張性の髄内釘を用いることで髄内釘を入れ替える間隔を長くすることができる4 今後の展望先に述べたように骨形成不全症の原因の90%は1型コラーゲン遺伝子(COL1A1、 COL1A2)の異常であるが、残り10%の原因として20種類を超える遺伝子が報告されているのが最近のトピックスである。1型コラーゲン遺伝子異常による骨形成不全症は常染色体優性であるが、10%のさまざまな遺伝子異常による場合は常染色体劣性の遺伝形式をとる。これらの遺伝子異常による骨形成不全症は、ほとんどが2B型の表現型をとることが知られている。産科的には同胞再発に注意する必要がある。骨形成不全症の病態解析や新薬の開発などは現在活発に行われており、今後の発展が期待される。5 主たる診療科産科、小児科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 骨形成不全症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 骨形成不全症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人骨形成不全症協会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)骨形成不全友の会(患者とその家族および支援者の会)1)市橋洋輔ほか.小児科臨床. 2020;73:660-663.2)大園恵一. 新薬と臨床. 2018;67:75-80.3)田中弘之ほか. 日本小児科学会雑誌. 2006;110:1468-1471.公開履歴初回2021年5月6日

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添付文書改訂:オルミエント錠に新型コロナ肺炎追加/イグザレルトがDOACで初の小児適応追加/オキシコンチンTR錠に慢性疼痛追加【下平博士のDIノート】第73回

オルミエント錠に新型コロナ肺炎の適応追加<対象薬剤>バリシチニブ錠(商品名:オルミエント錠2mg/4mg、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2021年4月<改訂項目>[追加]効能または効果SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)<Shimo's eyes>ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)の効能または効果に、新型コロナウイルスによる肺炎が追加されました。わが国では、レムデシビル、デキサメタゾンに続いて3剤目の新型コロナウイルス感染症治療薬となります。現在、新型コロナウイルス感染症に係る入院加療は全額公費負担となっており、本剤もその対象となります。投与対象は、入院下で酸素吸入、人工呼吸管理、体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が必要な中等症から重症の患者で、レムデシビルとの併用で最長14日間投与することができます。経口投与ができない患者には、同剤を粉砕・懸濁して、胃ろうや経鼻移管などの方法で投与します。使用にあたっては、RMP資材である、「適正使用ガイド SARS-CoV-2による肺炎」を参照してください。バリシチニブの主な排泄経路は腎臓のため、透析患者または末期腎不全の患者は禁忌です。また、リンパ球数が200/mm3未満の患者にも禁忌となっています。治療成績としては、1,033人の患者が登録された国際共同第III相試験で回復までの期間を比較した結果、バリシチニブ+レムデシビルの併用群(バリシチニブ群)は7日、レムデシビル単独群(対照群)は8日と有意差がありました。また、重症患者216人に絞って評価したところ、回復までの期間は、バリシチニブ群で10日、対照群は18日とより大きな差が見られました。なお、本剤は2020年12月にアトピー性皮膚炎の追加適応も得ています。参考日本イーライリリー プレスリリースイグザレルトがDOACで初の小児適応追加<対象薬剤>リバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包10mg/15mg、製造販売元:バイエル薬品)<改訂年月>2021年1月<改訂項目>[追加]効能または効果小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制<Shimo's eyes>抗凝固薬のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包)の効能または効果に、小児に対する「静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制」が追加され、小児適応を持つ唯一の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)となりました。また、新生児や乳幼児の服用にも適した剤型であるドライシロップ(同:イグザレルトドライシロップ小児用51.7mg/103.4mg)も承認されました。本剤は、エドキサバン(同:リクシアナ錠・OD錠)、アピキサバン(同:エリキュース錠)とともに経口活性化凝固第Xa因子阻害薬に分類されます。血液凝固系におけるXa因子の活性化部位を直接的に阻害することで、トロンビンの生成を阻害して抗凝固作用を発揮します。近年の疾患に関する認知や診断技術の向上により、静脈血栓塞栓症(VTE)と診断される小児患者数は増加しています。小児における従来のVTE治療では、ワルファリンのみが適応を持っていたため、採血による定期的な凝固系のモニタリングだけでなく、薬物相互作用や食事など多方面で配慮が必要でしたが、本剤の適応追加により、患児および介助者の負担を軽減できることが期待されています。参考バイエル薬品 プレスリリース同 イグザレルト.jp 小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制(小児VTE)オキシコンチンTR錠の適応に慢性疼痛<対象薬剤>オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠5mg/10mg/20mg/40mg、製造販売元:シオノギファーマ)<改訂年月>2020年10月<改訂項目>[追加]警告慢性疼痛に対しては、本剤は、慢性疼痛の診断、治療に精通した医師のみが処方・使用するとともに、本剤のリスクなどについても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いること。また、それら薬局においては、調剤前に当該医師・医療機関を確認したうえで調剤を行うこと。[追加]効能・効果非オピオイド鎮痛薬またはほかのオピオイド鎮痛薬で治療困難な中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛[追加]用法・用量慢性疼痛に用いる場合:通常、成人にはオキシコドン塩酸塩(無水物)として1日10~60mgを2回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。<Shimo's eyes>オピオイド鎮痛薬のオキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠)の効能・効果に、慢性疼痛が追加されました。本剤は容易に砕けない硬さと、水分を含むとゲル化するという乱用防止特性を有する徐放性製剤です。本剤は、依存や不適正使用につながる潜在的なリスクがあるため、今回の適応追加に際しては、医薬品リスク管理計画を策定して適切に実施するなどの承認条件が付され、医療機関・医師・薬剤師による厳重な管理が求められています。【オキシコンチンTR錠を慢性疼痛で使用する際の確認事項】<処方する医師>1.製造販売業者が提供するeラーニングを受講し、確認テストに合格し、確認書をダウンロードする。2.処方時に確認書の内容を患者に説明し、医師・患者ともに署名をして確認書を患者に交付する。3.確認書の控えを医療機関で保管する。<調剤する薬剤師>1.患者が持参した麻薬処方箋と確認書について、処方医名、施設名、交付日が一致していることを確認する。なお、患者が確認書を持参しておらず、がん疼痛か慢性疼痛か判断できない場合は、処方医に患者の適応を問い合わせる。2.確認書の患者確認事項を説明し、患者の理解を確認し、確認書にチェックを入れ、調剤する。近年、がん患者だけでなく、非がん患者の痛みに関する身体的症状と精神症状のケアが課題となっています。このような背景から、非がん性疼痛に適応を持つオピオイド鎮痛薬が増えてきました。すでに、トラマドール、コデインリン酸塩、ブプレノルフィン貼付薬、モルヒネ塩酸塩、フェンタニル貼付薬がありますが、今回、オキシコドン製剤として初めて本剤が慢性疼痛への適応を取得しました。参考PMDA「オキシコドン塩酸塩水和物徐放製剤の使用に当たっての留意事項について」同「確認書を用いた管理体制の全体図」シオノギ製薬「オキシコンチンTR錠で慢性疼痛の治療を受けられる患者さまへ」

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第55回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(前編)

奈良県、感染症法で50床確保へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウイークがやって来ます。私は、去年に断念した南会津の登山を計画していたのですが、再びの4都府県に対する緊急事態宣言で都道府県をまたぐ不要不急の移動の抑制が求められたことで、今年もどうやら行けそうにありません。「緊急事態宣言 3度目発令」を報じた4月24日付の日本経済新聞は朝刊一面で、論説委員が「1年間何をしていたのか」と国の医療提供体制の施策を厳しく批判していましたが、本当に1年間何をしていたのでしょう。今回の宣言発令でも、国の真剣さが感じられないのが気になります。「オリンピック止めます。だから…」くらいは言ってほしかった、と思う今日このごろです。前回(第54回 なぜ奈良県で?「県内全75病院に病床確保要請」をうがった見方をしてみれば…)で書いた奈良県の改正感染症法に基づく病床確保要請ですが、4月23日付の毎日新聞によれば、約15病院で計50数床確保できる見通しになった、とのことです。感染症法にも相応の効果があったということで、こうした要請は他の都道府県にも広がるかもしれません。さて、今回は厚労省が都道府県知事宛に発出していた通知について書いてみたいと思います。最近、複数の医療関係者と話していると、補助金がらみのややきな臭い話を聞くことがあります。曰く、「某大学病院はコロナの補助金で過去最高益になったらしい」「コロナ患者を受け入れていないのに、コロナで焼け太りしている病院がある」…。世の中、コロナ対応で医療現場は崩壊寸前という趣旨の報道が大半です。1年ほど前は、医療機関の患者が激減し、経営が大変だという報道もありました。しかし、ここに来て、あまり「経営が大変だ」という声が聞こえなくなってきたところに、この手の話です。現場は大変ですが、経営は良好なのでしょうか…。と首を傾げていたら、こんな厚労省通知に関する報道がありました。コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認へ4月20日付の産経新聞は、「コロナ患者受け入れへ聴取 医療機関の状況確認へ 厚労省が通知」という記事を掲載しました。それによれば、「厚生労働省が、正当な理由なく新型コロナウイルス感染症患者の入院を断っている医療機関に対し聴取を行い、受け入れを要請するよう求める通知を各都道府県に出したことが20日、分かった」とのことです。通知が発出されているのに「分かった」というのも変な話ですが、「感染拡大地域で病床が逼迫する中、すぐに受け入れが可能な『即応病床』を確保するのが狙い」と記事は書いています。なお、後追いする形で朝日新聞も4月23日付の朝刊で同内容の記事を掲載しています。今回取り上げられたのは、いったいどの通知だろうと調べてみました。コロナ関係の通知はそれこそ膨大にあるのと、通知したい内容とタイトルが微妙にズレているので、なかなか見つけ出すのが大変です。受け入れ困難と判断した場合は即応病床数見直しそんな中、多分、これだろうという通知が見つかりました。それは、2021年4月1日付けで、厚生労働省の医政局長 、健康局長、医薬・生活衛生局長連名で発せられた「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」です。内容的にはコロナ対策の支援事業の実施の概要を通知するものです。その中の病床確保料の補助対象について記述した部分がニュースになっていたのです。1日に発出され、20日に「分かった」と報道されたのは、記者たちは最初その意味が把握できなかったのかもしれません。「コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認対象」となる医療機関は、病床確保料の補助対象となる新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関です。具体的には、病棟単位で新型コロナ感染症患者、または、その疑いのある患者用の病床を確保している「重点医療機関」と、新型コロナ感染症の疑いのある患者専用の個室を持っている「協力医療機関」とのことです。通知では、各都道府県に対し、医療機関の稼働状況、病床や医療スタッフの状況、人工呼吸器などの医療機器の確保状況を一元的に把握する情報システム「G-MIS(ジーミス)」などを使って、患者の受け入れ状況を確認するよう求めています。その上でさらに、「適切に受入れを行っていない」「受入要請を正当な理由なく断っている」などの場合は、受け入れ体制について聴取し、受け入れるよう要請する。聴取の結果、受け入れるのが困難と判断した場合は、その医療機関の即応病床数(つまり、病床確保料の補助)を見直すと明記しています。厚労省によると、4月7日時点で全国に重点医療機関は1,058機関、協力医療機関は986機関あるとのことです。「手を挙げても受け入れない」病院の存在この通知の意味するところは明らかです。「コロナ病床確保します」と手を挙げて確保料をもらいながら、コロナ患者を受け入れていない病院が存在する、ということです。病床確保料の補助を見直す通知をわざわざ出すということは、そうした病院が相当数あるからでしょう。この連載でも、これまでに進まないコロナ患者受け入れ体制の原因として、コロナ受け入れに手を挙げない民間病院の消極性について書いてきましたが、「手を挙げても受け入れない」病院があるとは…。まさにコロナで“焼け太り”病院です。1床当たり最高1日43万6,000円現在、コロナ病床に対する診療報酬上の対応や国の補助は相当な金額となっています。病床に対する補助に限って言えば、病床が逼迫する都道府県において新型コロナの受入病床を割り当てられている医療機関に、重症者病床1床当たり1,500万円、その他の病床、および協力医療機関の疑い患者病床は1床当たり450万円を上限に補助が行われています。さらに、2020年12月25日~2021年2月28日に新たに割り当てられた確保病床については、緊急事態宣言が発令された都道府県では1床当たり450万円、それ以外の都道府県でも300万円が補助上限額に加算されています。つまり、最大で1床当たり1,950万円の補助を受けることができるのです。病床確保料はこれとは別に、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ態勢を確保するための確保病床および休止病床について補助されるものです。補助額の上限は、「重点医療機関」は1床当たり1日7万1,000円~43万6,000円、「協力医療機関」の疑い患者病床は5万2,000円~30万1,000円、「その他の医療機関」は1万6,000円~9万7,000円などとなっています。たとえば重点医療機関である一般病院でICU内の病床を1床確保すると、患者が入っているかどうかにかかわらず、1日30万1,000円が補助されます。「入院率」導入の意味そう考えてくると、感染状況を示す指標として4月16日から「入院率」が新たに加わったことにも納得が行きます。「入院率」とは、療養中の全感染者に対する入院者の割合です。これまで重視してきた「病床使用率」は各都道府県が確保した病床に占める入院患者の割合を示すものです。ただ、病床を(病院の都合等で)コロナに使用していないケースや、本来は入院の必要がない軽症者が入院しているケースなどを除外できず、病床の逼迫度を計るには不十分との指摘がありました。入院率という指標によって、国は病床数ではなく、無症状者も含む療養中の全感染者数に対する入院者数に着目することにしたわけです。数値が低くなるほど、入院できない人が増えている(病床が逼迫している)ことになります。入院率が25%以下だと最も深刻な「ステージ4」(感染爆発)、40%以下だと2番目に深刻な「ステージ3」(感染急増)に相当するとしています。ちなみに、4月23日更新のデータでは大阪府の入院率は12.0%、東京都は30.9%でした。「即応病床」として病床確保料をもらいながら、コロナ患者を避けてきた病院の存在は、税金の無駄遣いであるばかりでなく、病床逼迫度を推し量る上でも邪魔で困った存在だったわけです。今回の通知によって、そこにメスが入ることになったわけです。それにしても、ジャブジャブとも言われる医療機関に対するコロナ補助金を、国の財政を司る財務省はどう見ているのでしょう。次回は、それについて少し考えてみます(この項続く)。

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COVID-19の第3の治療薬、バリシチニブ承認/日本リリー・インサイト

 2021年4月23日、日本イーライリリー株式会社とインサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社は、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)がSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)に対する治療薬として、適応追加の承認を取得したと発表した。 現在、バリシチニブは関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている。今回の適応追加では、通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブ4mgを1日1回経口投与し、総投与期間は14日間まで。本剤は、酸素吸入、人工呼吸管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うことで承認された。 バリシチニブのSARS-CoV-2による肺炎に対する有効性および安全性は、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)主導による、SARS-CoV-2による肺炎の成人入院患者1,033例を対象とした国際共同第III相臨床試験「ACTT-2試験」で確認されている。「ACTT-2試験」は、レムデシビル併用下におけるプラセボ対照二重盲検比較試験で、レムデシビル単独療法と比較し、本剤投与群では、回復までの期間を短縮するという主要評価項目を達成した。また、投与開始から15日時点の患者の転帰を完全な回復から死亡までを8段階で評価するスケールを用いて比較した主要な副次的評価項目もそれぞれ達成した。バリシチニブの概要(下線部分が今回の追加箇所)商品名:オルミエント錠(4mg/2mg)一般名:バリシチニブ効能または効果:既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)/アトピー性皮膚炎 SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)用法および用量:<関節リウマチ、アトピー性皮膚炎>通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。<SARS-CoV-2による肺炎>通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、総投与期間は14日間までとする。薬価:オルミエント錠4mg 5,274.90円/2mg 2,705.90円(2021年4月時点)製造販売元:日本イーライリリー株式会社

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新型コロナ、第4波の大阪は「これまでとは別世界」~呼吸器科医・倉原優氏の緊急寄稿(2)

 「新型コロナウイルスの感染状況は第4波に入った」。変異株を含め、全国的に感染者が再び急増している現状について、識者らは相次いで明言した。なかでも、1日の新規感染者数が1,000人超を記録している大阪府はとりわけ深刻だ。渦中の医療現場は今、どうなっているのか。CareNet.com連載執筆者の倉原 優氏(近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)が緊急寄稿でその詳細を明らかにした。大阪府コロナ第4波の現状 以前、大阪府コロナ第3波についての現状をお伝えしましたが1)、あれからいったん落ち着いたものの、現在第4波が到来しています。大阪府は1日の新規感染者数が過去最大規模になっており、医療現場は災害級に混乱しています。第3波と異なるのは、(1)年齢層(2)重症度(3)速度です。(1)年齢層 大阪府フォローアップセンターから入院要請のあるCOVID-19患者さんの年齢が、15歳ほど下押しされています。当院に入院した第1波~3波までの平均年齢(±標準偏差)は68(±17)歳、第4波の平均年齢は53(±19)歳です。直近のデータで、感染者が40代未満である割合が5割弱と引き続き高く、若い世代を中心に感染が広がっていることがわかります。(2)重症度 この第4波、来院して最初に撮影した胸部画像検査で背筋がゾっとすることが多くなりました。糖尿病コントロールが不良で高度肥満があり、SpO2が90%未満の場合、ある程度の覚悟を持って診療に当たることができますが、そこまでの基礎疾患がなく、SpO2が92~93%程度であるにもかかわらず、「エッ!」と声を上げてしまうほど両肺のすべての葉に肺炎が見られるケースが増えています。このパンデミックで、自分より年下のARDSを経験するなんて思いもしませんでした。基本的に中等症IIがメインで、中等症Iならホっとするくらいです。(3)速度 大阪府は、保健所および入院フォローアップセンターが連携して入院病床の管理を行っており、どの病院に入院してもらうかはフォローアップセンターの少数精鋭部隊が担っています(図1)。 第3波の時点で重症病床を約230床確保していましたが、第4波に入る前はかなり病床数を減らしていました。第3波の後半で、すでに重症病床が約60床埋まっている状態がスタートだったため、第4波で軽症中等症病床が埋まるより先に重症病床がパンクしてしまいました。 そのため、緊急増床に踏み切った大阪府の施策は間に合わず、あっという間に第4波の確保病床を超えてしまい、軽症中等症病床で挿管・人工呼吸管理のCOVID-19患者さんを診療する状態になってしまいました。当院でもすでにそういった患者さんが発生しており、重症病床が増えない限り、これが常態化するかもしれません。 「N501Y変異株」の症例が増えているのは確かですが、この病床逼迫の最たる原因なのかはわかりません。緊急事態宣言が緩和され、卒業・入学シーズンで人出が増えた影響もあり、相加相乗的に作用した可能性はあります。ただ、大阪府新型コロナウイルス対策本部会議の公開資料によると、この病床逼迫速度は第3波の約3倍とされており2)、きわめて想定外の事態であったことは間違いありません。また、「N501Y変異株」陽性者の発症から重症化までの日数は従来株よりも約1日早いとされており(表)、これが先述の状況に拍車をかけたのかもしれません。第4波を乗り越えたとしても… 第4波のCOVID-19、第3波までと実はまったく別の疾患なのではないかというくらい、ARDSの頻度が高いです。大阪に続いて東京にも第4波が到来する可能性は十分にあります。 とはいえ、ゴールデンウイークに向けて徐々に減ってくることに期待したいものです。4月5日からの「まん延防止等重点措置」が始まって2週間後にあたる4月19日以降、新規陽性者数が減ってくれば第4波は落ち着くかもしれません(図2)。 しかしながら、第4波を乗り越えたとしても遅滞なくワクチン施策が進まなければ、また7月頃に第5波がやってくる可能性はあります。そうなれば、オリンピック開催時期と完全に被ってしまうことになるでしょう。多方面へのシビアな調整が必要になるため、オリンピックを中止あるいは延期するという選択肢はないのだと思いますが、ハンマー・アンド・ダンスで時間稼ぎをするにも現場の疲弊は限界を迎えつつあり、もはやワクチンに希望を託すしかなさそうです。【倉原 優氏プロフィール】2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て、08年より現職。CareNet.comでは、「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」「Dr.倉原の“俺の本棚”」連載掲載中。

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ワクチン接種完了率の高い高齢者、重症者が大幅減/CDC

 新型コロナワクチン接種を世界でいち早く進めたイスラエルにおいて、ワクチン2回接種の完了者が多い70歳以上で、人工呼吸器を必要とする重症者数がワクチン接種開始前と比べて大幅に減ったことがわかった。米国疾病対策センター(CDC)が発行するMorbidity and Mortality Weekly Report3月5日号掲載の報告。 イスラエルではファイザー社製ワクチンを使用し、60歳以上、医療従事者、基礎疾患を持つ人を優先して接種するキャンペーンを展開。2021年2月9日までに計360万6,858人が初回接種を受け、そのうち222万3,176人(62%)が2回目の接種を完了した。年代別に見た2回目接種完了率は70歳以上、60〜69歳、50〜59歳、50歳未満で、それぞれ84.3%、69.0%、50.2%、9.9%だった。 COVID-19の重症判定を人工呼吸器の使用とし、2回接種の完了率が最も高い70歳以上(84.3%)と最も低い50歳未満(9.9%)との間で、人工呼吸器を必要とした患者数を比較した。 主な結果は以下のとおり。・2020年10月2日~2021年2月9日に、人工呼吸器を必要とした1日当たり患者数の中央値は、50歳未満で15(範囲:6~63)、70歳以上で84(範囲:45~127)だった。 ・2020年10月8日~12月30日において、70歳以上と50歳未満の人工呼吸器装着患者の比率の平均は5.8:1だった(99%信頼区間[CI]:5.5~6.1、範囲:4.2~8.5)。・2021年1月の最終週に、70歳以上の1日当たり人工呼吸器装着患者数が減少しはじめたが、50歳未満は依然として増加していた。・2021年2月9日時点での人工呼吸器装着患者の7日間移動平均数において、70代以上は109例、50歳未満は57.7例、両者の比率は1.9:1となり、70歳以上の比率は10月~12月時点から67%減となった。 レポートは、この結果は新型コロナワクチンには、COVID-19重症化予防効果もあることを示すものだとしている。

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米国コロナ治療の今:重症コロナ患者へ実施する緩和医療とは【臨床留学通信 from NY】第18回

第18回:米国コロナ治療の今:重症コロナ患者へ実施する緩和医療とはコロナの最大の関心事は、いまワクチンにあると思います。日本でも医療従事者への接種が始まりましたが、こちらアメリカでは2月25日現時点で6,500万人ほどが1回目の接種をしているようです。しかしながら、米国の総患者数はおよそ人口の10%に相当する2,800万人。そして、ついに50万人の死亡が確認されています。ニューヨーク州は、2,000万人ほどの人口で一時期は1日の新規患者数が2万人にのぼる日もありましたが、現在は1万人以下に減っています。しかし、わたしが所属するMount Sinai Beth Israelでは、残念ながらまだコロナの患者さんの数が減っている気配を感じません。マンハッタン郊外にあたるクイーンズ地区やブルックリン地区にはMount Sinaiの関連病院があり、そこで収容できなかった患者さんがひっきりなしに転院搬送されてきます。日本では、大学病院と大学関連病院といっても経営母体が一緒であることはあまりないと思いますが、Mount Sinai Health SystemにはMount Sinai Hospitalという大学病院を中心に6つほどの病院を有しており、グループ間の転院搬送も専用の救急車でスムーズに行われます。病院としても利益をある程度求めなければならず、グループ間での転院搬送であれば問題はないという考えだと思います。電子カルテも統一されているため、受け入れる側も先方のカルテが閲覧できるため、二重の検査は不要で合理的です。そのようなシステムのため、レジデントがグループ内の病院で、2週間単位で研修を受けるということも可能です。さて、このところコロナ治療の最前線にいることが多かったのですが、緩和医療という日本ではあまり馴染みのない科のローテートをすることになりました。緩和というと、日本では主にがん患者さんに対する医療という意味が強いと思いますが、米国ではそれに限らず、集中治療をいくら施しても回復が難しい場合に、患者さんのcomfortを中心に行うことがあります。実は、そのようなケースが、コロナ患者さんで非常にたくさんおり、患者家族とのやりとりを経て、場合によってはpalliative extubationといって、人工呼吸器がないと生きていけない患者さんの気管内チューブを抜くことがあります。そのような、尊厳死と捉えられてもおかしくないような医療行為には賛否両論があると思いますが、国が違えば考えも違う、法律も違う(米国内でも、州ごとに仕組みが異なります)ということなんだと思います。Column3月21日(日)20時~(日本時間)zoomでウェブセミナーを行います。テーマは「米国循環器グループで行う戦略的メタアナリシス」です。ウェブセミナー「米国循環器グループで行う戦略的メタアナリシス」もしよければ覗いてみてください。

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COVID-19への回復期患者血漿による治療、アウトカム改善効果なし/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者に対する、回復期患者血漿による治療は、プラセボまたは標準的治療と比べて全死因死亡や入院期間、人工呼吸器の使用といった臨床アウトカムのあらゆる有益性と関連しない。スイス・バーゼル大学のPerrine Janiaud氏らが、これまでに発表された10試験についてメタ解析を行い明らかにした。エビデンスの確実性は、全死因死亡については低~中程度で、その他のアウトカムについては低いものだったという。JAMA誌オンライン版2021年2月26日号掲載の報告。ピアレビュー前・後のRCTを対象にメタ解析 研究グループは、ピアレビュー、出版前あるいはプレスリリースされた無作為化試験(RCT)で、回復期患者血漿による治療vs.プラセボまたは標準的治療の臨床アウトカムを評価する検討を行った。 PubMed、Cochrane COVID-19試験レジストリ、LOVE(Living Overview of Evidence)を2021年1月29日時点で検索し、システマティック・レビューを実施。COVID-19の疑いまたは確定診断を受けた患者を対象に、回復期患者血漿による治療とプラセボまたは標準的治療を比較したRCTを特定しメタ解析を行った。 主要解析はピアレビュー済みのRCTのみを対象に行い、2次解析は、出版前やプレスリリースを含む、公表されたあらゆる試験結果を対象に行った。 主要アウトカムは、全死因死亡、入院期間、臨床的改善、臨床的増悪、人工呼吸器の使用、重篤な有害事象だった。レビュー済み4試験とレビュー前6試験を対象に分析 解析には、ピアレビュー済みの4つのRCT(被験者総数1,060例)と、ピアレビュー前の6つのRCT(被験者総数1万722例)が含まれた。 ピアレビュー済み4 RCTの解析において、回復期患者血漿による治療の、全死因死亡に関する要約リスク比(RR)は0.93(95%信頼区間[CI]:0.63~1.38)、絶対リスク差は-1.21%(95%CI:-5.29~2.88)で、データの不正確性によりエビデンスの確実性は低かった。 ピアレビュー前の6 RCTを含めた10 RCTの解析において、全死因死亡に関する要約RRは1.02(95%CI:0.92~1.12)で、非公表データを包含したエビデンスの確実性は中程度だった。 また、ピアレビュー済み4 RCTにおいて、入院期間に関する要約ハザード比は1.17(95%CI:0.07~20.34)、人工呼吸器の使用の要約RRは0.76(0.20~2.87)であり(絶対リスク差-2.56%[95%CI:-13.16~8.05])、両アウトカムに関するデータの不正確性によりエビデンスの確実性は低かった。 臨床的改善、臨床的増悪、重篤な有害事象に関するデータは限定的で、有意差はなかった。

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第47回 「発症10日したらもう他人に感染させない」エビデンス明示で、回復患者受け入れは進むか?

全国医学部長病院長会議がコロナ重症症例診療で見解こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。春本番、プロ野球のキャンプも日米で本番を迎えています。春の沖縄キャンプ地巡りが大好きな知人がいて、ある時、スポーツニュースを観ていたらバックネット裏にスカウトのように陣取る姿が映り、驚いたことがあります。今年のキャンプは無観客なので、そういった楽しみや驚きもなく、寂しいものです。そんな中、景気のいい話もあります。2月25日、東北楽天ゴールデンイーグルスは田中将大投手に特化したファンクラブの申し込みを同日開始したところ、10人限定の年会費180万円のコースが14分で完売した、と発表しました。また、1,000人限定の1万8,000円のコースも4時間余りで完売したそうです。楽天ファンでもない私でも1万8,000円なら安い、と思いエントリーしようと考えたくらいです。ことほど左様に私を含めた誰もがスポーツ観戦など外に出かけたくうずうずしている今日このごろですが、首都圏以外の6府県の緊急事態宣言が28日で解除されました。各府県は飲食店への営業時間の短縮要請などを徐々に緩和するとのことですが、暖かさに誘われ、飲み会も増えていきそうです。英国型の変異株は実行再生産数を0.4〜0.7引き上げるとの報告もあります。第4波到来の可能性は割と高いのでは、と思いますが、皆さんいかがでしょう。少々状況が落ち着いてきた中、全国医学部長病院長会議は2月24日、「新型コロナウイルス重症症例診療を担う医療施設に関する見解」を、会長の湯澤 由紀夫氏(藤田医科大学病院 院長)と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関わる課題対応委員会委員長の瀬戸 泰之氏(東京大学医学部附属病院 院長)の連名で公表しました。前回、「第46回 第4波を見据えてか!? 厚労省が『大学病院に重症患者を受け入れさせよ』と都道府県に事務連絡」では、大学病院、中でも国立大学病院の動きが鈍い、と書きましたが、全国医学部長病院長会議が自ら、今後の大学病院の役割について対外的に見解を公表したのは大きな意味がある、と言えるでしょう。「今こそ重症症例の診療体制の整備に取り組むべき」見解では、「今後、また未曾有の感染症が襲ってくるときに備えるためにも、わが国の緊急時医療体制の構築を再考する絶好の機会ととらえている。このような重症症例診療を行いうる医療体制の構築に相応の時間を要するのは自明であり、平時よりの備えが肝要である」として、今こそ重症症例の診療体制の整備に取り組むべきだと訴えました。具体的には、コロナの重症者の治療は「高度かつ統制のとれたチームワークのもと治療を行なわなければならない」として、「重症症例の診療は大学病院、救命救急センターなど、従来より高度な集中治療を行ってきた医療施設が中心的に担うべき」としました。一方で、大学病院や救命救急センターなどでは、「新型コロナウイルス感染症の重症患者への診療」と共に「新型コロナウイルス感染症以外の高度医療」を提供しなければならならず、「通常診療の維持を前提とした新型コロナウィルス重症症例診療に必要な医療体制確保について、実態ニーズを踏まえたものとなるよう検討いただきたい」としています。その上で、「新型コロナウィルス重症治療は これまでにない総合的かつ統合的な加療であり、通常の重症肺炎診療とは異なるものでもあり、施行するにあたり相応の診療報酬が病院運営上必須である」と、報酬上の手当も国に求めました。端的に言えば、「コロナの重症者には通常診療と並行して取り組むが、相応のお手当はお願いします」ということのようです。「後方病床あるなら大学病院も頑張る」私自身がとくに重要だと思ったのは、後半の連携に関するくだりです。見解では、「円滑な重症症例病床運用のためには、重症症例を診る施設がその治療に集中するため、軽快ないしは改善した場合の後方病床確保も重要な課題となる」と指摘、「特に、重症から回復した高齢者が退院基準を満たしても、そのまま自宅退院できることはまれであり、後方病床に移送できなければ重症病床の活用に支障が生じる。医療状況が逼迫している折、そのような医療提供体制の役割分担を推進することは医療効率化のためにも極めて重要」と、回復した患者の受け入れる後方病床の整備を強く求めています。「後方病床を整備してくれるなら、大学病院も頑張るよ」とも読めるのですが、確かに回復した患者の引き受け手がなく、いつまでも大学病院に入院させていては、新規入院を受け入れることができないわけで、その体制をつくっておくことは重要です。ちなみに、見解では、後方病床の確保を“下り”の流れと表現しています。退院基準の見直し案と感染可能期間のエビデンス明示ちょうど第3波が収まり、比較的余裕が出てきた今こそ、それぞれの地域において後方病床の役割を果たす病院をきちんと決めておくべきです。ただ、地域のよっては、「コロナ回復患者引き受けます」と手を挙げる病院はまだまだ多くはないようです。“流れ”づくりの主役となるべきは、日本医師会、四病院団体協議会、全国自治体病院協議会によってつくられた「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」だと思うのですが、これについては前回書いたので今回は触れません。実は、先々週にも回復患者引き受けに関連した動きがありました。厚生労働省は2月18日の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(座長:脇田 隆字・国立感染症研究所所長)の第24回会合に対し、新型コロナウイルス感染症の退院基準の見直し案を提示、あわせて発症からの感染可能期間などのエビデンスも提示したのです。退院基準見直し案では、有症状者については人工呼吸器等による治療の有無別に分け、治療を行った場合には発症日から15日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した場合に退院可能とするが、「発症日から20日間経過するまでの間は、適切な管理を行う」などの条件を付けました。他方、人工呼吸器等治療を行わない場合(軽症・中等症)については現行通り(1.発症日から10日間経過し、かつ症状軽快72時間経過した場合に退院可能とする。2.症状軽快後24時間経過した後、24時間以上間隔をあけ 2回のPCR検査又は抗原定量検査で陰性を確認できれば、退院可能とする)としました。軽症・中等症は「現行通り」でも大丈夫な理由・エビデンスについては、「軽症・中等症において、感染性のあるウイルス粒子の分離報告は 10 日目以降では稀であり、これら の症例において、症状が消失してからも長期的にウイルス RNA が検出される例からの二次感染を認める報告は現時点では見つからなかった」とし、「退院後のPCR 再陽性例における感染性や、再陽性例からの二次感染を認める報告も現時点では見つからなかった」としています。医療機関だけでなく一般にもアピールすべきでは要するに、「発症日から10日したらもう他人に感染させない」「症状軽快後、PCR陽性が続く場合も他人に感染させない」というわけです。厚労省としては、この見直し案とエビデンスによって、一般病院や介護施設での回復患者の受け入れが進み、重症病床の回転が良くなることを期待しているわけですが、本当に地域でそうした“流れ”が普通に構築されることを期待したいと思います。ところで、なぜこの事実(エビデンス)を、医療機関だけでなく一般にももっと広く、強くアピールしないのでしょう。何かまた、「国民があらぬ誤解する」とでも国は考えているのでしょうか(新型コロナウイルス感染症は発症の数日前から感染力が高まることを、国は昨年の感染拡大当初、国民に知らせるのをためらっていた、と聞いています)。少々、謎です。このエビデンスがしっかり世の中に浸透すれば、それこそ報酬さえ手厚くすれば後方病院は回復患者受け入れに手を挙げるでしょうし、問題となっている職場における理不尽な感染者差別(復職後に陰性証明を要求されたり、在宅勤務を強制されたり人が出ているそうです)なども減ると思うのですが…。

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新型コロナ、医療者の転帰不良リスクはあるか?

 医療従事者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染リスクが高いが、感染後の転帰不良リスクはあるのか。北米の医療者127例を対象として後ろ向き観察コホート研究の結果が発表された。JAMA Network Open誌2021年1月28日号掲載の報告。 2020年4月15日~6月5日までに北米の36施設で確認された、1,992例のCOVID-19成人患者が対象に含まれた。データ解析は2020年9月10日~10月1日に行われ、患者のベースライン時の特性、併存疾患、症状、治療法および転帰に関するデータが収集された。 主要評価項目は人工呼吸器の利用または死亡の複合エンドポイントだった。 主な結果は以下のとおり。・解析されたのは1,790例で、内訳は医療従事者127例と非医療従事者1,663例だった。3:1の傾向スコアマッチングが行われ、122例の医療従事者と366例の非医療従事者がマッチングされた。・女性は医療従事者で71例(58.2%)、非医療従事者で214例(58.5%)、平均年齢(SD)は医療従事者で52(13)歳、非医療従事者で57(17)歳だった。・複合エンドポイントについて、両者の間に有意差はなかった(補正後オッズ比:0.60、95%信頼区間:0.34~1.04)。・医療従事者は集中治療室への入院を必要とする可能性が低く(0.56、0.34~0.92)、7日以上の入院を必要とする可能性も低かった(0.53、0.34~0.83)。・人工呼吸器の利用(0.66、0.37~1.17)、死亡(0.47、0.18~1.27)、昇圧薬の利用(0.68、0.37~1.24)についても、両者の間に有意差はなかった。

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第49回 米国FDAの大忙しの週末~ネアンデルタール人から授かったCOVID-19防御

米国FDAはこの週末大忙しだったに違いなく、25日木曜日にはPfizer/BioNTechの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)予防ワクチン接種施設を増やしうる保管方法を許可し、25日と翌日26日には稀な病気2つの新薬と運動選手の脳を守る首輪を承認し、27日土曜日には大方の予想通りJohnson & Johnson(J&J)のCOVID-19ワクチンを取り急ぎ許可しました。25日に報告された興味深い研究成果、ネアンデルタール人から授かったと思しきCOVID-19防御因子の発見も併せて紹介します。COVID-19ワクチンをいっそう推進溶解前の冷凍状態のPfizerワクチンの保管温度はこれまで超低温の零下80~60℃とされてきましたが、より一般的な冷凍庫の温度である零下25~15℃で最大2週間保管することが許可されました1,2)。また、零下25~15℃での保管後に一回のみ零下80~60℃に戻すことが可能です。超低温冷凍庫をわざわざ購入する負担が減ってワクチンを扱える場所が増えるだろうとFDAの審査部門(Center for Biologics Evaluation and Research)長Peter Marks氏は言っています1)。Pfizerワクチンと違って受け取り後に冷凍不要のJ&JのCOVID-19ワクチンは26日金曜日の諮問委員会での満場一致の賛成の翌日27日土曜日に18歳以上の成人への使用が早々と取り急ぎ認可されました3)。J&Jのワクチンバイアルの針刺し前の保管温度は2~8℃であり、冷凍してはならず、最大12時間は9~25℃で保管可能です4)。J&Jは接種1回のそのワクチン2,000万人超への投与分を今月末までに出荷できる見込みです5)。また、今年前半には米国人口の約3分の1相当の1億人への投与分が出荷される予定です。稀な病気の新薬FDAは25日に稀な病気・デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬Amondys 45(casimersen)、翌日26日には世界での診断数150人未満の超稀な病気・モリブデン補因子欠損症(MoCD)A型の治療薬Nulibry(fosdenopterin)を承認しました。Amondys 45は筋肉細胞に必要なタンパク質ジストロフィンをエクソン45スキッピングという作用機序を介して増やします。その作用が通用する変異を有するDMD患者への同剤使用が承認されました6)。DMD患者のおよそ8%がその変異を有します。MoCD A型は男児3,600人あたりおよそ1人に生じるDMDよりさらに稀で、世界で確認されている患者数は150人未満です。Nulibry(fosdenopterin)はFDAが承認した初のMoCD A型治療薬となりました7)。10万人あたり0.24~0.29人の発生率と推定されるMoCD A型患者は遺伝子変異のせいでcPMP(環状ピラノプテリン一リン酸)という分子が作れません7,8)。Nulibry はcPMPを供給することで尿中の神経毒Sスルホシステインを減らします。Nulibryの生存改善効果が13人への投与で示されています。それらの患者の84%は3年間生存し、非投与群18人のその割合は55%でした。MoCD A型の患者数は診断数より多いらしく、米国と欧州(EU)で毎年22~26人が診断されないままと推定されています9)。運動選手の脳を守る”首輪”運動選手の頭部の衝撃から脳を守る首輪Q-Collarは26日に米国FDAに承認されました10)。頭部が衝撃を受けると頭蓋内で脳が揺れて神経が捻れたり切れたりして脳が傷みます。首にはめたQ-Collarは頸静脈を圧迫することで頭蓋内の血液量を増やして脳をより固定させ、衝撃を受けてもグラグラと揺れないようにします。米国の13歳以上のフットボールチーム員284人が参加した試験などでQ-Collarの効果や安全性が示されています。その試験でQ-Collarを使用した139人の脳のMRI写真を調べたところおよそ8割(77%)107人の神経信号伝達領域(白質)は無事でした。一方、非使用群145人では逆にほとんどの73%(106/145人)に有意な変化が認められ、Q-Collarの脳保護効果が示唆されました。Q-Collar使用に伴う有意な有害事象は認められませんでした。ネアンデルタール人から授かったらしいCOVID-19防御COVID-19患者最大1万4,134人と対照群最大128万人を調べたところ、RNAウイルスに対する自然免疫の一部を担うオリゴアデニル酸シンセターゼ(OAS)の一つ・OAS1の血中量が多いこととCOVID-19になり難いことやたとえCOVID-19になっても入院、人工呼吸器使用、死に至り難いことが示されました11,12)。さらに504人の経過を調べたところ血漿OAS1量が多いことは後にCOVID-19になり難いことやCOVID-19による入院や重病に至り難いことと関連しました。OAS1はいくつかの種類(アイソフォーム)があります。興味深いことに、数万年前にネアンデルタール人と交わったときに受け継いだp46というアイソフォームがどうやらCOVID-19防御作用を担うと示唆されました。幸いなことにOAS1を増やす前臨床段階の化合物13)が存在するのでそれらを最適化してCOVID-19への効果を臨床試験で調べうると著者は言っています。参考1)Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Allows More Flexible Storage, Transportation Conditions for Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine / PRNewswire2)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE PFIZER-BIONTECH COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) / FDA3)FDA Issues Emergency Use Authorization for Third COVID-19 Vaccine / PRNewswire4)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE JANSSEN COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) / FDA5)Johnson & Johnson COVID-19 Vaccine Authorized by U.S. FDA For Emergency Use / PRNewswire6)FDA Approves Targeted Treatment for Rare Duchenne Muscular Dystrophy Mutation / PRNewswire7)FDA Approves First Treatment for Molybdenum Cofactor Deficiency Type A / PRNewswire8)Nulibry PRESCRIBING INFORMATION9)BridgeBio Pharma and Affiliate Origin Biosciences Announce FDA Approval of NULIBRYTM (fosdenopterin), the First and Only Approved Therapy to Reduce the Risk of Mortality in Patients with MoCD Type A / GLOBE NEWSWIRE10)FDA Authorizes Marketing of Novel Device to Help Protect Athletes' Brains During Head Impacts / PRNewswire11)Zhou S,et al.Nat Med. 2021 Feb 25. [Epub ahead of print]12)Discovery: Neanderthal-derived protein may reduce the severity of COVID-19 / EurekAlert13)Wood ER, et al. J Biol Chem. 2015 Aug 7;290:19681-96.

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COVID-19重症化防止に抗がん剤ベバシズマブが有効である可能性

 重症のCOVID-19患者に抗がん剤ベバシズマブを投与することで、死亡率が低下し、回復が早まる可能性があることが、イタリアと中国で行われた小規模な試験によって明らかになった。Nature Communication誌2月5日オンライン版掲載の報告。 シングルアームの本試験は、2020年2月15日~4月5日に中国とイタリアの2施設において26例の成人患者が登録され、28日間のフォローアップが行われた。COVD-19感染はPCR検査で判定され、重症度は呼吸数が30回/分以上、安静時の酸素飽和度が93%以上、動脈酸素分圧/吸入酸素濃度(PaO2/FiO2)が100mm~300mmHg、胸部画像のびまん性肺炎によって判断した。適格となった参加者には標準治療に加え、100mLの生理食塩水に溶解したベバシズマブ(500mg)を90分以内に単回投与し、投与後1日目と7日目のデータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の年齢中央値は62歳、20人(77%)が男性だった。症状発現から入院までの期間中央値は10日、入院からベバシズマブ投与までの期間中央値は7日だった。・ベバシズマブ投与群はPaO2/FiO2が著しく改善し、28日目までに24例(92%)が酸素吸入が不要となり、17例(65%)が退院した。悪化例や死亡例はなかった。・発熱のあった14例のうち、13例(93%)が投与から72時間以内に正常化した。・ベースライン時に人工呼吸器を装着していた6例すべてがフォローアップ期間内に装着を停止し、うち4例は退院した。 ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体であり、VEGFタンパク質を選択的に阻害することで血管形成を阻害し、がん細胞の成長に必要な栄養が供給されるのを妨げる。著者らは、「重症COVID-19患者の多くはVEGFレベルの上昇、肺水腫、肺組織の血管病変など、マーカーに関連する症状があるため、ベバシズマブが重症化防止に有効である可能性があるとの仮説を立てた」としつつ、有効性を実証するためには大規模なランダム化比較試験が必要としている。

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中等~重症COVID-19に高用量ビタミンD3単回投与は有益か?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、高用量のビタミンD3単回投与はプラセボと比較し、在院日数を有意に減少させることはないことが示された。ブラジル・サンパウロ大学医学部のIgor H. Murai氏らが、ブラジル・サンパウロの2施設で実施した無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。COVID-19に対するビタミンD3補給の有効性はこれまで不明であったが、結果を受けて著者は、「中等症~重症COVID-19患者の治療として高用量ビタミンD3の使用は支持されないことが示された」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年2月17日号掲載の報告。中等症~重症のCOVID-19入院患者でビタミンD3の有効性をプラセボと比較 研究グループは、2020年6月2日~8月27日の期間に中等症~重症COVID-19入院患者240例を登録し、ビタミンD3投与群(20万IU単回経口投与)(120例)またはプラセボ群(120例)に無作為に割り付け、2020年10月7日まで追跡した。 主要評価項目は在院日数(無作為化から退院までの期間と定義)、事前に設定した副次評価項目は在院死亡、集中治療室(ICU)への入室、人工呼吸器を必要とした患者の割合および人工呼吸器装着期間、血清25-ヒドロキシビタミンD値、総カルシウム濃度、クレアチニン、C反応性蛋白(CRP)などであった。両群で在院日数に有意差なし 無作為化された患者240例のうち、237例が主要解析に組み込まれた。解析対象患者の平均(±SD)年齢は56.2±14.4歳、女性が104例(43.9%)、ベースラインの平均(±SD)25-ヒドロキシビタミンD値は20.9±9.2ng/mLであった。 在院日数は中央値で、ビタミンD3群7.0日(四分位範囲[IQR]:4.0~10.0日)、プラセボ群7.0日(IQR:5.0~13.0日)で、両群間で差はなかった(log-rank検定p=0.59、退院の補正前ハザード比:1.07[95%信頼区間[CI]:0.82~1.39]、p=0.62)。 また、ビタミンD3群とプラセボ群との間で、在院死亡率(7.6% vs.5.1%、群間差:2.5%[95%CI:-4.1~9.2]、p=0.43)、ICU入室率(16.0% vs.21.2%、群間差:-5.2%[95%CI:-15.1~4.7]、p=0.30)、人工呼吸器装着率(7.6% vs.14.4%、群間差:-6.8%[95%CI:-15.1~1.2]、p=0.09)で有意差は確認されなかった。血清25-ヒドロキシビタミンD値は、ビタミンD3群においてプラセボ群より有意に増加した(44.4ng/mL vs.19.8ng/mL、群間差:24.1ng/mL[95%CI:19.5~28.7]、p<0.001)。 有害事象は確認されなかったが、介入と関連した嘔吐がみられた。

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第43回 麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?

<先週の動き>1.麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?2.発症から15日など、新型コロナ重症者の退院基準を新設/厚労省3.4月から非医療機関を対象に看護師の日雇い派遣が可能に4.高齢者へのワクチン接種開始、予定よりやや遅れる見込み5.コロナ禍での医師の働き方改革の進捗を報告/日医1.麻酔科元教授が逮捕された三重大、4年前の死亡事故も隠蔽か?三重大学医学部付属病院において、2017年に麻酔科医が4件の手術をかけ持ちする「並列麻酔」を行い、手術中に患者1人が死亡する医療事故が発生していたことが発覚した。並列麻酔は、医療事故のリスクが高まることなどを理由に、日本麻酔科学会が原則的に禁止している。同院の医療事故調査委員会は、並列麻酔が患者の死亡につながった遠因である可能性を言及し、今年に入ってから並列麻酔は一切行っていないとしているが、2020年までは20%前後の手術で並列麻酔が行われていたことを明らかにしている。三重大学では、臨床麻酔部の元教授らが、不正な診療報酬請求による詐欺の疑いで逮捕され、昨年から麻酔科医の退職が相次いでおり、人手の足りない手術を他病院で実施するなどで対応している。今後、再発防止策を立案するとともに、信用回復と人員確保が最優先となるだろう。(参考)【三重】三重大「並列麻酔」約1〜2割で(NHK)資格医学部附属病院における不正事案について(三重大学)2.発症から15日など、新型コロナ重症者の退院基準を新設/厚労省厚生労働省は、18日に開催された専門家会議で、新型コロナウイルスの重症者について、軽症者らとは別の退院基準を設けることを決定した。これは、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な重症者は、他人に感染させる期間が長いと考えられるため。これまでの退院基準は、重症度にかかわらず、発症後10日間が経過し、かつ症状が軽快しており、72時間以上経過した者についてはPCR検査を実施せずに退院が可能であったが、今後は重症者に限って、発症から15日が必要だとした。近く、都道府県に通知する見込み。政府は、退院基準を満たした高齢の入院患者を介護施設が受け入れた場合、1日当たり5,000円相当の介護報酬を最大30日間加算することを決めている。全国老人保健施設協会によると、都内では36施設が、新型コロナ退院患者の受け入れ態勢をすでに整えているという。(参考)コロナ重症者の退院基準 発症から15日に 厚労省(朝日新聞)コロナ 退院基準満たした高齢患者 受け入れ施設に介護報酬加算(NHK)3.4月から非医療機関を対象に看護師の日雇い派遣が可能に厚労省は、非医療機関(老人ホームや介護施設、保育所など社会福祉施設)において、看護師らが日雇いで働けるように政令改正を決めた。これは新型コロナ流行に伴い、介護施設や障害者施設での看護師ニーズが高まる中、現状では原則禁止されている看護師らの日雇い派遣についての規制を緩和し、今年の4月以降認める方向で検討している。介護施設では、看護師の人員確保などの課題に直面しており、規制緩和によって、子育てや介護のため常勤していない「潜在看護師」の短時間労働が可能となる。なお、新型コロナウイルスワクチン接種などについては、医療行為であり、医療機関への派遣についても今回の改正対象とはならない。表:保健師・助産師・看護師・准看護師と労働者派遣の法規制(2021年2月21日時点の改正見込み)画像を拡大する(参考)看護師の日雇い派遣4月以降容認へ 厚生労働省(NHK)看護師、介護施設に日雇い派遣可能に 4月から(日本経済新聞)4.高齢者へのワクチン接種開始、予定よりやや遅れる見込み21日にNHK報道番組に出演した河野 太郎規制改革担当相は、高齢者への新型コロナウイルスのワクチン接種開始について、4月はワクチンの輸入量が比較的限られるため、接種への実施が一部後ろ倒しになることを明らかにし、今週中には新たな接種計画をまとめると発表した。また同氏は、新型コロナウイルスワクチン接種について、当初は370万人程度と推計していた医療従事者が、100万人程度増えるとの見通しを明らかにしており、3月から開始される医療従事者の2回目の接種と並行して高齢者向けの接種が開始する見込みであることも併せて言及している。(参考)高齢者ら接種「週内に大枠」 企業にワクチン休暇要請も 河野氏(時事通信)ワクチン接種、遅れる可能性 河野氏言及、供給が限定的(朝日新聞)ワクチン医療従事者接種「100万人くらい増加」 河野氏 高齢者、4月開始は変更なし(日経新聞)5.コロナ禍での医師の働き方改革の進捗を報告/日医日本医師会は、17日に開催された定例記者会見で、医師の働き方改革の進捗について、松本 吉郎常任理事が報告した。医師の働き方改革については、昨年12月に厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」が中間取りまとめを行い、今年2月に医療法等の改正法案が閣議決定され、2024年度からの医師の働き方の新制度施行からの制度の開始に向けた準備が進んでいる。今回、現場からの質問や意見の多い、(1)医療機関がおこなうべきこと、(2)2024年度からの医師の働き方の新制度施行、(3)2024年度の新制度施行に向けて取り組むこと、(4)コロナ禍と医師の働き方、(5)宿日直の許可、(6)医師の副業・兼業の取り扱い、(7)大学病院における働き方、(8)医師の働き方制度理解といった8項目についてそれぞれ説明を行った。今後、さらに医師の働き方改革を進める上でのポイントが記されており、2024年度を前に大学病院をはじめ医療機関が取り組む課題は大きいと考えられる。(参考)医師の働き方改革の進捗状況について(日医)資料 医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ(厚労省)

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アジスロマイシン、COVID-19入院患者への効果は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、アジスロマイシンによる治療は生存期間および臨床転帰(侵襲的人工呼吸器装着または死亡)を改善しなかったことが、無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。アジスロマイシンは免疫調節作用を有していることから、COVID-19に対する治療として提案されてきたが、これまでの無作為化試験では、COVID-19の治療におけるマクロライド系抗菌薬の臨床的有益性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19入院患者に対するアジスロマイシンの使用は、明らかに抗菌薬の適応である患者に制限されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年2月2日号掲載の報告。通常治療単独群とアジスロマイシン併用群で28日死亡率などを比較 RECOVERY(Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy)試験は、英国の病院176施設で進行中の無作為化非盲検対照アダプティブプラットフォーム比較試験である。研究グループは、適格基準を満たし同意が得られたCOVID-19入院患者を、通常治療群または通常治療+アジスロマイシン(500mg 1日1回経口/静脈投与)群(以下、アジスロマイシン群)のいずれかに、ウェブシステムを用いて2対1の割合で無作為に割り付けた。投与は、10日間または退院まで(あるいはRECOVERY試験の他の治療群に割り付けられるまで)行われた。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無作為化から28日間の全死因死亡率であった。なお、患者と各病院の医療スタッフは治療の割り付けに関して盲検化されていないが、本試験に関わる他のすべての関係者は、臨床転帰に関するデータについて盲検化された。28日死亡率、生存退院までの期間、28日以内の生存退院率に有意差なし 2020年4月7日~11月27日に、RECOVERY試験の登録患者1万6,442例中、9,433例(57%)が適格基準を満たし、7,763例がアジスロマイシン群および通常治療群に無作為に割り付けられた(それぞれ2,582例および5,181例)。患者の平均(±SD)年齢は65.3±15.7歳で、約3分の1(2,944例、38%)が女性であった。 全体で無作為化から28日以内に、アジスロマイシン群で561例(22%)、通常治療群で1,162例(22%)が死亡した(率比:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.07、p=0.50)。生存退院までの期間中央値は、アジスロマイシン群10日(IQR:5~>28)、通常治療群11日(IQR:5~>28)で、28日以内の生存退院率はアジスロマイシン群69%(1,788/2,582例)、通常治療群68%(3,525/5,181例)で(率比:1.04、95%CI:0.98~1.10、p=0.19)、いずれも両群間で有意差は確認されなかった。 ベースラインで侵襲的人工呼吸管理を受けていない患者で、侵襲的人工呼吸管理または死亡に至った割合も有意差はなかった(リスク比:0.95、95%CI:0.87~1.03、p=0.24)。 なお、著者は、本無作為化試験は非盲検試験であり、ウイルス量や炎症の程度、非マクロライド系抗菌薬の使用などに関する情報、ならびに放射線学的または生理学的な転帰に関する情報が不明であることを研究の限界として挙げている。

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第44回 女子医大プロポフォール事件、阪大・国循論文不正事件に新展開

コロナ禍でも事件は動くこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、前回は旭川医大のドタバタについて書きましたが、もっと大きな“老害”舌禍事件がオリンピック・パラリンピック絡みで起きました。報道等によると、森 喜朗氏に引導を渡せる人がいないとのこと。一国民としてはやれやれ、としか言いようがないですね。さて、旭川医科大学で病院長解任が起きた同じ週に、昨年この連載で取り上げたいくつかの事件が新展開を迎えていましたので、今回はそのフォローをしておきたいと思います。女子医大プロポフォール事件、麻酔医2人在宅起訴2014年2月、東京女子医科大学病院に入院中の2歳の男児が術後に死亡した事件で、東京地検は1月26日、ICUで術後管理にあたった麻酔科医2人を業務上過失致死罪で在宅起訴しました。起訴されたのは同病院の中央集中治療部の副運営部長だった61歳の准教授と、同じく後期研修医だった39歳の医師です。起訴状によると2人は、2014年2月18~21日、首の腫瘍を取り除く手術を受け人工呼吸器をつけていた男児に対して鎮静剤プロポフォールを投与した際、心電図に異常がみられるなど容体に変化があったにもかかわらず投与を中止せず、男児を急性循環不全で死亡させた、とされています。この事件については、本連載の「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」で詳しく取り上げました。事故当時、プロポフォールはICUで人工呼吸器をつけた子供への投与は添付文書上「禁忌」でしたが、厚生労働省は「禁忌はあくまで原則」との見解を示しており、警視庁はプロポフォールの投与自体は過失とはせず、安全管理を怠ったことに焦点をあて、昨年10月21日に書類送検に踏み切りました。この時、起訴を求める「厳重処分」の意見も全員に付けられました。事件から7年、やっと公判へ書類送検されたのは麻酔科医6人でしたが、在宅起訴に至ったのは上記の2人で、残りの4人は関与の度合いなどを考慮した結果、起訴猶予となりました。事故が起こったのが2014年2月。遺族は同年5月に業務上過失致死罪に当たるとして被害届を提出、翌2015年2月には麻酔科医ら5人を傷害致死罪で刑事告訴しています。警視庁が書類送検したのは事件から6年以上経った2020年10月で、事件から実に7年を迎えようという2021年1月末に在宅起訴となったわけです。1月26日のNHKニュースは死亡した男児の母親のコメントを報じました。それは次のようなものです。「6人全員を起訴してほしかったという思いはありますが、このうちの2人が起訴されたことは大きな一歩であり、ようやく一筋の光が差してきたように感じます。裁判では、息子の容体を適切に管理しなかった理由を含めて当時何があったのか、真摯に、自分のことばで話してほしい」。これからやっと公判が始まります。東京女子医大病院は最近、コロナ対応で頑張る姿が報道されていますが、特定機能病院の再承認にはまだまだ時間がかかりそうです。大阪大・国循論文不正事件、臨床試験の根拠となった有名論文も不正認定次は大阪大学と国立循環器病研究センターの論文不正事件です。2020年8月に大阪大学医学部附属病院に以前所属し、国循で室長も務めていた医師が2013~16年に発表した肺がん治療などに関する論文5本に捏造や改ざんが認定された問題で、調査委員会は1月30日、別の論文2本にも捏造と改ざんの不正があったと発表しました。大阪大はこのうち1本を根拠に実施していた臨床研究の中止を決めました。この事件については、本連載の「第22回 大阪大論文不正事件の“ナゾ” NHKスペシャル「人体」でも取り上げられた臨床研究の行方は?」で詳しく書きました。2010年8月の段階では、捏造・改ざんがあったとされる5本の論文のうち、調査委員会が、社会的影響がとくに大きいと考えたのは、肺がんの手術の際に心不全の治療に用いられる「hANP(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)」 を使うと合併症が抑えられる、とした2013年の論文でした。この後の2015年、同医師はhANPを投与した患者群で肺がんの再発が有意に少ないことをプロスペクティブな検討で発見した論文を筆頭筆者として発表しました1)。一連の研究成果をもとに、がんの転移を防ぐ作用を期待して、大規模な臨床研究(「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP投与の多施設共同ランダム化第II相比較試験(JANP study)」)がスタートしました。この臨床研究は将来の実用化も目指して、保険診療が一部使える「先進医療」の制度を利用していました。全国10施設で実施され、患者335人が参加。うち160人にhANPが投与されました。既に参加者の募集もhANPの投与も終わり、観察期間中でした。有名論文でも捏造と改ざん今回新たに捏造と改ざんの不正があったと発表されたのは、この2015年の論文と、2017年にOncotarget誌に掲載された論文の計2本。調査委員会の調べでは、動物実験のデータが書き直されており、正しいデータで計算し直すと肺がんの転移や再発を防げる根拠にはならなかったとのことです。調査委員会は筆者の同医師が不正に関与したと指摘し、国立循環器病センターの名誉研究所長も不正には関与していないものの、著者としての責任があるとしました。前回も書きましたが、2015年の、hANPが肺がんの転移や再発が有意に少ないことを明らかにした論文は研究者に与えられるさまざまな賞を受賞しており、2017年にNHKで放送されたNHKスペシャル「人体」の中でも「世界初!心臓からの“メッセージ”で『がん転移予防』」として、JANP studyが始まったことも含め、大きく取り上げています。この論文不正は、2017年12月、大阪大と国循に、同医師が筆頭著者または責任著者として発表した21本の論文に「ねつ造や改ざんが認められる」とする申し立てが届いたことがきっかけで発覚しました。「先進医療」が認められたことで後戻りできず前回のこの連載では、2015年の有名論文は申し立てに入っていないことがナゾだと書きましたが、結局、この論文にも捏造・改ざんがあったわけです。また、30日の調査委員会の記者会見では、2015年の有名論文には2018年8月に大量の訂正が出されていたことも明らかにされました。2月4日付の朝日新聞によると、調査委員長の仲野 徹・阪大教授は「先進医療が関係なかったらあっさり(撤回を)決断できたかもしれない」と話したとのことです。2018年の大量訂正にもかかわらず論文を撤回できなかったのは、厳しい審査を経て臨床試験が先進医療制度を利用できるようになったことが影響した、というわけです。この流れから見えて来るのは、画期的な研究成果を基に、大規模臨床研究が計画され、しかもそれが「先進医療」という仕組みで実施されたことで、簡単には後戻りできなくなってしまった研究者や組織の姿です。hANP投与を受けた160人に重大な健康被害は確認されていないとのことですが、いずれにせよ、臨床研究に対する信頼が大きく損なわれたことは間違いありません。報道等によれば、大阪大学は今後、臨床研究に関わる研究で不正疑惑が出た場合、調査委員会等による確定前でも研究中止等の対応ができるようにする、とのことです。さてもう一つ、三重大病院臨床麻酔部事件でも新展開があったのですが、ちょっと長くなり過ぎたので回を改めたいと思います。参考1)Nojiri T et al, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2015 Mar 31;112;4086-91.

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パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療・その2【臨床留学通信 from NY】第17回

第17回:パンデミック再び、ICUで苦悩するコロナ治療・その2前回でも書きましたが、レジデントのローテーションで、12月上旬から中旬にコロナの第2波がニューヨークにやってきたタイミングでICU勤務をしました。そこでは、4月のパンデミック時と何も変わっていない、コロナという病気で重症化してしまうと本当に打つべき手がないということを実感しました。レムデシビルは軽症であれば効くのかもしれませんが、重症になってしまうとウイルスそのものより全身の炎症がメインであり、もはや効かない印象です1)。当院はECMOがないため、必要があれば他院への転院となりますが、100%酸素の人工呼吸器設定で酸素飽和度が80%辺りになると、残るは腹臥位に変えるかどうかくらいですが、医療従事者数人がかりでコロナ患者の体位を変えるのは本当に大変です。有効性ははっきりしないものの、どうしようもない低酸素の人に対し一酸化窒素を使うこともあります2)。RCTでは当初否定的でしたが、回復期血漿療法は継続して使用しており、最近になってNEJMに有効性を証明した論文が発表されました3、4)。トリシズマブに関しては、ネガティブスタディが出たこともあって第1波のころと異なりこの冬は下火となっていましたが5)、Mount Sinaiから人工呼吸器治療を受けていない患者であれば人工呼吸器もしくは死亡を回避する可能性が高いというデータが発表された6)ため、プラクティスが再び変わるかもしれません。サンクスギビング後の第2波は、2020年末にかけて一気に増えることはありませんでしたが、病院としてはクリスマス後や年始の増加に備え、いつでもICUを増やせる体制で臨みました。そんな訳で、レジデントとして最後のクリスマスと年末年始は、ICUで休みなしの勤務となりました。勤務は朝7時から夜7時半までをロングコール、朝7時から夕方4時前後までをショートコール、夜間7時から朝7時半~9時までをナイトフロートと呼び、それらをレジデント4人によるシフトで回し、計16人のICU患者をカバーしました。シフト制とはいえ、例えばロングコールをした後、24時間の休憩後にナイトフロートを3~4日連続勤務し、24時間弱の休憩を挟んで昼間のシフトに戻ったりするので、体力的にかなりつらく、ナイトフロート中は実質寝られません。卒後1年目のインターンが患者の約半分ずつを担当し、私はレジデントとして彼らを管理・監督をします。Physician AssistantたちもICU管理のために専門的に教育されてはいますが、慣れ・不慣れの程度が人によって異なるため、彼らを監督しなければいけないこともあります。日中はアテンディングと呼ばれる指導医の人が1人ずつ回診していくのですが、朝8時過ぎから昼の12時、場合によっては13~14時近くまで行ったうえ、患者1例ずつディスカッションをして治療方針を決めていきます。1症例ごとプレゼンテーションするのはインターンの役目ですが、それをうまくできるようにサポートする必要があります。どうしても重症な症例が多いので時間が掛かり、その合間にも容赦なくICU入院者が来るため、そこをいかにまとめるかがレジデントの仕事となります。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32827627/2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33347987/3)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2033700?query=featured_home4)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33232588/5)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa20288366)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2030340?query=featured_homeColumn画像を拡大する私はICU配属だったこともあり、医療従事者の中でも比較的早い1月7日に2回目のワクチンを接種しました。さらにわれわれの施設では、1月11日から高齢者や教職員、交通機関の職員に対してもワクチン接種を開始したのですが、供給不足となってしまって一時中止しています。一刻も早くパンデミックからの収束を願います。写真は、昨年末に撮影したロックフェラーセンターのクリスマスツリーです。今年は“密”を避けるため、遠目からの観賞となりました。

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