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コロナ呼吸不全で気管挿管率が低い治療は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による低酸素血症性呼吸不全を発症した成人患者に対し、覚醒下腹臥位療法は通常ケアと比べて、気管挿管の発生リスクを低減するが、死亡率や人工呼吸器離脱期間(VFD)などのアウトカムには、ほとんど影響が認められないことが明らかにされた。カナダ・アルバータ大学のJason Weatherald氏らによる、システマティック・レビューとメタ解析で示された。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。2022年3月時点でMedline、Embase、CENTRALをレビュー 研究グループは、創刊から2022年3月4日までのMedline、Embase、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)をデータソースとして、COVID-19関連の低酸素血症性呼吸不全の成人患者を対象に、覚醒下腹臥位療法と通常ケアを比較した無作為化試験について、システマティック・レビューと頻度論的・ベイズメタ解析を行った。 2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出し、バイアス・リスクを評価。ランダム効果モデルを用いて主要アウトカム(気管挿管)と副次アウトカム(死亡率、VFD、ICU・病院入院期間など)を評価した。気管挿管と死亡率はベイズメタ解析で評価。アウトカムのエビデンスの信頼性はGRADEで評価した。死亡率、VFD、ICU入室日数などは両群で同等 17試験、被験者総数2,931例が適格基準を満たした。12試験はバイアス・リスクが低く、3試験には懸念があり、2試験はバイアス・リスクが高かった。 補正前気管挿管発生率は、覚醒下腹臥位療法群24.2%と、通常ケア群29.8%に比べてリスクが低かった(相対リスク[RR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.73~0.94、信頼性:高)。同リスクの低下は、患者1,000人当たりで気管挿管の実施が55回減少(95%CI:19~87)することに相当した。 一方で副次アウトカムについては、死亡率(RR:0.90、95%CI:0.76~1.07、信頼性:高)、VFD(平均群間差:0.97日、95%CI:-0.5~3.4、信頼性:低)、ICU入室期間(-2.1日、-4.5~0.4、低)、入院期間(-0.09日、-0.69~0.51、中)とも有意な影響が認められなかった。 覚醒下腹臥位療法に関連した有害事象はまれであった。 ベイズメタ解析の結果、気管挿管については、覚醒下腹臥位療法は有効である確率が高いことが示された(無情報事前分布での平均RR:0.83、95%信用区間[CrI]:0.70~0.97、RR<0.95の事後確率96%)。一方で死亡に関する同確率は低かった(0.90、0.73~1.13、68%)。

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映画「ラン」(前編)【なんで子どもを病気にさせたがるの?(代理ミュンヒハウゼン症候群)】Part 3

なんで子供の病気のねつ造までするの?子供を病気にさせたがる心理は、同情欲求、承認欲求、そして育児欲求によるものであることが分かりました。同情や承認によって構ってもらいたいという対人希求だけでなく、育児によって構いたいという対人希求もあることがわかります。映画の後半では、ダイアンから逃げようとするクロエと娘を逃がすまいとするダイアンの心理戦が繰り広げられます。なんとダイアンは、クロエを地下室に閉じ込め、寝たきりにするための毒薬を作り始めるのです。それにしても、ダイアンはなぜそこまでするのでしょうか? ここから、代理ミュンヒハウゼン症候群の要因を主に2つ挙げてみましょう。(1)罪悪感がないクロエは郵便配達員のトムに助けを求めますが、それに勘付いたダイアンは、トムが油断したすきに彼を注射で気絶(毒殺?)させます。その後、追い詰められたクロエは自殺を図り、病院に運ばれますが、病院ではクロエに担当の看護師が付いているため、ダイアンはクロエに近付けません。しかし、他の患者の急変でその看護師が持ち場を離れた直後に、ダイアンがクロエの目の前に現れるのです。あまりにもタイミングが良く、ダイアンが他の患者を急変させた可能性を考えてしまいます。ダイアンは、クロエの人工呼吸器の抜管を自分だけで手際よくしている様子から、ある程度の医療行為をクロエの看病を通して学んだことも推測できます。このようにダイアンがここまで抵抗なく人に危害を加えることができる原因のヒントが、ダイアンの背中にありました。そこには、大きな傷痕があり、彼女自身が虐待されていたことがほのめかされています。1つ目の要因は、虐待などによる生育環境によって罪悪感が育まれていないことです。もちろん、もともとの遺伝要因よって罪悪感が育まれにくい場合(いわゆるサイコパス)もあります。前回のミュンヒハウゼン症候群の記事(関連記事1)でも紹介しましたが、そもそも私たち人間は、相手に危害を加えるなどの反社会的な行動をすると罪悪感を抱くように心(社会的感情)が進化しました。これは、社会脳と呼ばれています。この詳細は、関連記事3をご覧ください。(2)心の距離感がないダイアンは、クロエの小さい頃を映したホームビデオを繰り返し見て、涙まで流して懐かしんでいました。このことから、ダイアンは決してクロエを憎んでいるわけではありません。ダイアンは、クロエの大学合格通知を隠し持っていたことから、むしろクロエと離れたくないと思っていることがわかります。2つ目の要因は、心の距離感(バウンダリー)がないことです。これは、言い換えれば、子供との一体感が強く、子供は自分の一部、自分の分身と捉えてしまうことです。すると、子供に危害を加えるという他害行為は、「自傷行為」にすり替わります。自分を傷付けているわけなので誰にも迷惑をかけていないという発想になり、ますます罪悪感は希薄になります。実際に、代理ミュンヒハウゼン症候群になるのは、ダイアンがそうであるように、女性が85~95%であり、男性よりも女性が圧倒的に多いことが分かっています1-3)。この点からも、妊娠・出産・授乳という女性ならではの生物学的な密着の必要性が心の距離感に影響を及ぼしていることが考えられます。1)特集「うそと脳」P1576:臨床精神医学、アークメディア、2009年11月号2)うその心理学P77:こころの科学、日本評論社、20113)親の手で病気にされる子供たちP156:南部さおり、学芸みらい社、2021・シックンド 病気にされ続けたジュリー:ジュリー・グレゴリー、竹書房文庫、2004<< 前のページへ■関連記事映画「二つの真実、三つの嘘」(前編)【なんで病気になりたがるの? 実はよくある訳は?(同情中毒)】Part 1ザ・サークル【「いいね!」を欲しがりすぎると?(承認中毒)】Part 1万引き家族(前編)【親が万引きするなら子供もするの?(犯罪心理)】Part 1

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ICUせん妄患者へのハロペリドール、生存や退院増につながらず/NEJM

 せん妄を有する集中治療室(ICU)入室患者において、ハロペリドールによる治療はプラセボと比較して、生存日数の有意な延長および90日時点の有意な退院数増大のいずれにも結び付かないことが示された。デンマーク・Zealand University HospitalのNina C. Andersen-Ranberg氏らが多施設共同盲検化プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。ハロペリドールはICU入室患者のせん妄治療にしばしば用いられるが、その効果に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。プラセボ対照無作為化試験で生存日数および90日時点の退院数を評価 研究グループは、急性症状でICUに入室したせん妄を有する18歳以上の成人患者を対象に、ハロペリドール治療がプラセボ治療と比較して、生存日数および退院数を増大するかどうかを検討した。試験は2018年6月14日~2022年4月9日に、デンマーク、フィンランド、英国、イタリア、スペインのICUで行われた。 被験者を無作為に、ハロペリドール群(2.5mgを1日3回静脈内投与[必要に応じて1日最大20mgまで投与可能])またはプラセボ群に割り付け、せん妄が続く限り、および再発での必要に応じてICUで投与した。 主要アウトカムは、無作為化後の生存日数および90日時点の退院数であった。90日時点の生存および退院の平均日数は両群で同等 合計1,000例が無作為化を受け(ハロペリドール群510例、プラセボ群490例)、987例(98.7%)が最終解析に包含された(501例、486例)。そのうち主要アウトカムデータを入手できたのは963例(96.3%)。 最終解析に包含された両群のベースライン特性は類似しており、年齢中央値70歳、71歳、女性35.3%、33.1%、無作為化時点の人工呼吸器装着患者63.9%、62.8%、昇圧薬/強心薬投与患者54.3%、49.2%、また、COVID-19患者が7.4%、10.7%おり、90日死亡予測(SMS-ICUスコア)は34.7±15.4、34.6±15.4であった。 90日時点の生存および退院の平均日数は、ハロペリドール群35.8日(95%信頼区間[CI]:32.9~38.6)、プラセボ群32.9日(29.9~35.8)であった。補正後平均群間差は2.9日(95%CI:-1.2~7.0)で有意差はなかった(p=0.22)。 90日時点の死亡率は、ハロペリドール群36.3%(182/501例)、プラセボ群43.3%(210/486例)であった(補正後絶対群間差:-6.9ポイント、95%CI:-13.0~-0.6)。 重篤副作用の発現は、ハロペリドール群11例、プラセボ群9例であった。

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SpO2目標値の高低で、人工呼吸器の非使用期間に差はあるか/NEJM

 侵襲的人工呼吸管理を受けている重篤な成人患者では、酸素飽和度(SpO2)の目標値を3段階(低[90%]、中[94%]、高[98%])に分けた場合に、これら3群間で28日後までの人工呼吸器非使用日数に差はなく、院内死亡の割合も同程度であることが、米国・ヴァンダービルト大学のMatthew W. Semler氏らが実施した「PILOT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年10月24日号に掲載された。単一施設のクラスター無作為化クロスオーバー試験 PILOT試験は、侵襲的人工呼吸管理下の患者における、異なるSpO2目標値が臨床アウトカムに及ぼす影響の比較を目的に、ヴァンダービルト大学医療センター(米国、ナッシュビル市)の救急診療部(ED)と集中治療室(ICU)で実施された実践的な非盲検クラスター無作為化クロスオーバー試験であり、2018年7月~2021年8月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 対象は、ICUに入室またはEDを受診しICU入室が予定されている成人(年齢18歳以上)患者であり、侵襲的人工呼吸管理を最初に受けた時点で試験に登録された。 被験者は、SpO2(パルスオキシメトリで測定)の目標値が低(90%、目標範囲:88~92%)、中(94%、92~96%)、高(98%、96~100%)の3つの群に無作為に割り付けられ、無作為に作成された順序で2ヵ月ごとに3つの群に切り換えられた。 主要アウトカムは、28日以内の生存および人工呼吸器非使用日数とされた。副次アウトカムは28日目までの死亡であった。安全性アウトカムの頻度も3群で同程度 2,541例が主解析に含まれた。低目標値群が808例(年齢中央値57歳、女性44.7%)、中目標値群が859例(59歳、44.8%)、高目標値群は874例(59歳、46.8%)であった。SpO2中央値は、それぞれ94%、95%、97%で、SpO2が99%または100%の患者の割合は、12.3%、14.7%、32.7%、85%未満の患者の割合は、0.8%、0.6%、0.9%だった。 28日目までの人工呼吸器非使用日数中央値は、低目標値群が20日(四分位範囲[IQR]:0~25)、中目標値群が21日(0~25)、高目標値群は21日(0~26)であり、3つの群で有意な差は認められなかった(p=0.81)。 また、28日目までの院内死亡は、低目標値群が808例中281例(34.8%)、中目標値群が859例中292例(34.0%)、高目標値群は874例中290例(33.2%)であった。 安全性のアウトカムについては、心停止、不整脈、心筋梗塞、脳卒中、気胸の発生は3つの群で同程度であった。有害事象は、低目標値群で1件(徐脈)みられた。 著者は、「これらの知見の臨床的意義は、ICUで人工呼吸管理を受けている患者では、SpO2目標値を90%にまで低く設定して酸素補給を制限しても、死亡を防げず、人工呼吸器からの解放を早められないということである」と指摘している。

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コロナ治療薬モルヌピラビル、早期投与で回復までの期間短縮に期待/MSD

 MSDは10月19日、一般流通を9月16日に開始した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)について、承認後の最新情報として特定使用成績調査の中間報告などをメディアセミナーにて発表した。調査の結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかったことや、外来患者に使用した際の転帰として死亡はなく、人工呼吸器の使用も低く抑えることができたとして、本剤の有効性が提示された。 同社代表取締役社長のKyle Tattle氏によると、本剤は国内にて2021年12月24日に特例承認を取得し、これまでに60万人以上に使用されたという。本剤は、承認当初は供給量が限られていたため、厚生労働省が所有したうえで、重症化リスクのある患者に、決められた流通網を通して医療機関や薬局に配分が行われていたが、供給量が増加したことで、2022年8月18日に薬価基準収載となり、9月16日には一般流通を開始した。 白沢 博満氏(同社代表取締役上級副社長兼グローバル研究開発本部長)は、リアルワールドデータを中心に、承認後の最新情報について解説した。2021年12月24日~2022年6月23日に、同剤の販売開始から6ヵ月間行った市販直後調査では、約20万1,710例に本剤が使用され、症例から安全性情報を収集した結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかった。また、調査予定症例数を3,000例として、より詳細な安全性と有効性を評価する特定使用成績調査(2021年12月27日~2024年12月末日予定)において、2022年6月15日までの中間解析結果も公開された。 主な結果は以下のとおり。・安全性解析対象となった1,061例は、年齢中央値68歳、投与開始時点で外来患者696例(65.60%)、入院患者317例(29.88%)、その他(介護保健施設など)4.52%。本剤投与開始前のCOVID-19重症度では、軽症が931例(87.75%)、中等症Iは104例(9.80%)、中等症IIは23例(2.17%)であった。・主な重症化リスク因子は、65歳以上の高齢者が603例(56.83%)で最も多く、次いで高血圧が459例(43.26%)、喫煙が262例(24.69%)であった。・新型コロナワクチンの接種歴がある人は883例(83.22%)で、2回接種は668例(62.96%)であった。・安全性集計の結果、副作用が発現したのは72例(6.79%)であり、4例以上発現した副作用として、下痢(26例)、発疹(6例)、浮動性めまい(5例)、軟便(4例)が報告された。重篤な副作用の発現は4例で、発疹、肝機能異常、COVID-19増悪、間質性肺炎増悪であった。・有効性解析対象となった1,021例は、外来患者658例(うち最終アウトカム不明29例)、入院患者315例、その他(介護保健施設など)48例。・外来患者における本剤投与開始日から29日までの入院(隔離入院・検査入院などの投与前から予定していた入院を除く)は17例(2.70%)、死亡は0例であった。・入院患者における本剤投与開始日から29日までの死亡は2/254例(0.79%)、酸素投与開始あり13/247例(5.26%)、酸素投与または機械的人工換気(ECMO含む)開始あり13/247例(5.26%)であった。複合エンドポイントでは発現率は5.49%であった。 本結果に加え、白沢氏はモルヌピラビルについて海外で実施された臨床試験についても言及した。査読前論文ではあるが、英国・オックスフォード大学で実施されたPANORMIC試験の結果によると、約2万6,000例(平均年齢56.6歳、ワクチン接種済約99%)において、最初の完全回復までの期間(中央値)が、モヌルピラビル群は9日間、非モヌルピラビル群が15日となり、本剤投与によって6日間短縮されたことが認められた。 続いて登壇した相良 博典氏(昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授)は、COVID-19の治療の現状と経口治療薬への期待について講演した。昭和大学病院における新型コロナ治療薬の使用状況について、モルヌピラビルは、軽症患者75例に対して重症化予防のために使用された結果、人工呼吸器の使用症例が0%となり、本剤は効果のある薬剤として位置付けていると述べた。また、新型コロナ感染による後遺症についても、今後はより早期に治療介入することで後遺症の症状も抑えられる可能性があるという。本剤の一般流通開始への期待として、発症早期(5日以内など)に使用できるようになるため重症化防止を促進することや、入院リスクの高い高齢者へ早期に使用することで、負担する医療費や、入院による合併症、ADLの低下といった入院に伴うリスクを低減できることを挙げた。若年者でもサイトカインストームで重症肺炎の死亡率が高くなるため、抗インフルエンザウイルス薬のように軽症者から早期に使える薬剤としても期待できると述べた。

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かかりつけ医も知っておきたい、コロナ罹患後症状診療の手引き第2版/厚労省

 厚生労働省は、2022年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1.1版)」を改訂し、第2版を10月14日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。 主な改訂箇所としては、・第1章の「3.罹患後症状の特徴」について国内外の最新知見を追加・第3~11章の「2.科学的知見」について国内外の最新知見を追加・代表的な症状やキーワードの索引、参考文献全般の見直しなどが行われた。 同手引きの編集委員会では、「はじめに」で「現在、罹患後症状に悩む患者さんの診療や相談にあたる、かかりつけ医などやその他医療従事者、行政機関の方々に、本書を活用いただき、罹患後症状に悩む患者さんの症状の改善に役立ててほしい」と抱負を述べている。1年後に多い残存症状は、疲労感・倦怠感、呼吸困難、筋力低下/集中力低下 主な改訂内容を抜粋して以下に示す。【1章 罹患後症状】「3 罹患後症状の特徴」について、タイトルを「罹患後症状の頻度、持続時間」から変更し、(罹患者における研究)で国内外の知見を追加。・海外の知見 18報告(計8,591例)の系統的レビューによると、倦怠感(28%)、息切れ(18%)、関節痛(26%)、抑うつ(23%)、不安(22%)、記憶障害(19%)、集中力低下(18%)、不眠(12%)が12ヵ月時点で多くみられた罹患後症状であった。中国、デンマークなどからの研究報告を記載。・国内の知見 COVID-19と診断され入院歴のある患者1,066例の追跡調査について、急性期(診断後~退院まで)、診断後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月で検討されている。男性679例(63.7%)、女性387例(36.3%)。 診断12ヵ月後でも罹患者全体の30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められたものの、いずれの症状に関しても経時的に有症状者の頻度が低下する傾向を認めた(12ヵ月後に5%以上残存していた症状は、疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下/集中力低下(8%)など。 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は、酸素需要のなかった患者と比べ3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 入院中に気管内挿管、人工呼吸器管理を要した患者は、挿管が不要であった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 罹患後症状に関する男女別の検討では、診断後3ヵ月時点で男性に43.5%、女性に51.2%、診断後6ヵ月時点で男性に38.0%、女性に44.8%、診断後12ヵ月時点で男性に32.1%、女性に34.5%と、いずれの時点でも罹患後症状を1つでも有する割合は女性に多かった。(非罹患者と比較した研究) COVID-19非罹患者との比較をした2つの大規模コホート研究の報告。英国の後ろ向きマッチングコホート研究。合計62の症状が12週間後のSARS-CoV-2感染と有意に関連していて、修正ハザード比で大きい順に嗅覚障害(6.49)、脱毛(3.99)、くしゃみ(2.77)、射精障害(2.63)、性欲低下(2.36)のほか、オランダの大規模マッチングコホート研究を記載。(罹患後症状とCOVID-19ワクチン接種に関する研究)(A)COVID-19ワクチン接種がCOVID-19感染時の罹患後症状のリスクを減らすかどうか(B)すでに罹患後症状を認める被験者にCOVID-19ワクチン接種を行うことでどのような影響が出るのか、の2点に分け論じられている。(A)低レベルのエビデンス(ケースコントロール研究、コホート研究のみでの結果)では、SARS-CoV-2感染前のCOVID-19ワクチン接種が、その後の罹患後症状のリスクを減少させる可能性が示唆されている。(B)罹患後症状がすでにある人へのCOVID-19ワクチン接種の影響については、症状の変化を示すデータと示さないデータがあり、一定した見解が得られていない。「5 今後の課題」 オミクロン株症例では4.5%が罹患後症状を経験し、デルタ株流行時の症例では10.8%が罹患後症状を経験したと報告されており、オミクロン株流行時の症例では罹患後症状の頻度は低下していることが示唆されている。揃いつつある各診療領域の知見 以下に各章の「2.科学的知見」の改訂点を抜粋して示す。【3章 呼吸器症状へのアプローチ】 罹患後症状として、呼吸困難は20〜30%に認め、呼吸器系では最も頻度の高い症状であった。年齢、性別、罹患時期などをマッチさせた未感染の対照群と比較しても、呼吸困難は胸痛や全身倦怠感などとともに、両者を区別しうる中核的な症状だった。【4章 循環器症状へのアプローチ】 イタリアからの研究報告では、わずか13%しか症状の完全回復を認めておらず、全身倦怠感が53%、呼吸困難が43.4%、胸痛が21.7%。このほか、イギリス、ドイツの報告を記載。【5章 嗅覚・味覚症状へのアプローチ】 フランス公衆衛生局の報告によると、BA.1系統流行期と比較し、BA.5系統流行期では再び嗅覚・味覚障害の発生頻度が増加し、嗅覚障害、味覚障害がそれぞれ8%、9%から17%に倍増した。【6章 神経症状へのアプローチ】 中国武漢の研究では、発症から6ヵ月経過しても、63%に疲労感・倦怠感や筋力低下を認めた。また、発症から6週間以上持続する神経症状を有していた自宅療養者では、疲労感・倦怠感(85%)、brain fog(81%)、頭痛(68%)、しびれ感や感覚障害(60%)、味覚障害(59%)、嗅覚障害(55%)、筋痛(55%)を認めたと報告されている。【7章 精神症状へのアプローチ】 罹患後症状が長期間(約1年以上)にわたり持続することにより、二次的に不安障害やうつ病を発症するリスクが高まるという報告も出始めている。【8章 “痛み”へのアプローチ】 下記の2つの図を追加。 「図8-1 COVID-19罹患後疼痛(筋痛、関節痛、胸痛)の経時的変化」 「図8-2 COVID-19罹患後疼痛の発生部位」 COVID-19罹患後に身体の痛みを有していたものは75%で、そのうち罹患前に痛みがなかったにも関わらず新規発症したケースは約50%と報告されている。罹患後、新規発症した痛みの部位は、広範性(20.8%)、頸部(14.3%)、頭痛、腰部、肩周辺(各11.7%)などが報告され、全身に及ぶ広範性の痛みが最も多い。 【9章 皮膚症状へのアプローチ】「参考 COVID-19と帯状疱疹[HZ]の関連について」を追加。ブラジルでは2017〜19年のCOVID-19流行前の同じ間隔と比較して、COVID-19流行時(2020年3〜8月)のHZ患者数は35.4%増加した。一方、宮崎での帯状疱疹大規模疫学研究では、2020年のCOVID-19の拡大はHZ発症率に影響を与えなかったと報告。    【10章 小児へのアプローチ】 研究結果をまとめると、(1)小児でも罹患後症状を有する確率は対照群と比べるとやや高く、特に複数の症状を有する場合が多い、(2)年少児は年長児と比べて少ない、(3)症状の内訳は、嗅覚障害を除くと対照群との間に大きな違いはない、(4)対照群においてもメンタルヘルスに関わる症状を含め、多くの訴えが認められる、(5)症例群と対照群との間に罹患後症状の有病率の有意差を認めない、(6)小児においてもまれに成人にみられるような循環器系・呼吸器系などの重篤な病態を起こす可能性があるといえる。【11章 罹患後症状に対するリハビリテーション】 2022年9月にWHOより公表された"COVID-19の臨床管理のためのガイドライン"の最新版(第5版)では、罹患後症状に対するリハビリテーションの項が新たに追加され、関連する疾患におけるエビデンスやエキスパートオピニオンに基づいて、呼吸障害や疲労感・倦怠感をはじめとするさまざまな症状別に推奨されるリハビリテーションアプローチが紹介されている。 なお、本手引きは2022年9月の情報を基に作成されており、最新の情報については、厚生労働省などのホームページなどから情報を得るように注意を喚起している。

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経口コロナ薬2剤、オミクロン下での有効性/Lancet

 香港では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株亜系統BA.2.2が流行している時期に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者へのモルヌピラビルまたはニルマトレルビル+リトナビルの早期投与が、死亡および入院中の疾患進行のリスクを低下したことが、さらにニルマトレルビル+リトナビルは入院リスクも低下したことが、中国・香港大学のCarlos K. H. Wong氏らによる後ろ向き症例対照研究で明らかとなった。SARS-CoV-2オミクロン株に対する経口抗ウイルス薬のリアルワールドでの有効性については、ほとんど示されていなかった。Lancet誌2022年10月8日号掲載の報告。高リスクCOVID-19外来患者を対象に、経口抗ウイルス薬2種の有効性を調査 研究グループは、香港病院管理局(Hong Kong Hospital Authority)のデータを用い、香港でオミクロン株亜系統BA.2.2が主流であった2022年2月26日~6月26日の期間に、SARS-CoV-2感染が確認された18歳以上のCOVID-19非入院患者を特定した。解析対象は、重症化リスク(糖尿病、BMI≧30、60歳以上、免疫抑制状態、基礎疾患あり、ワクチン未接種)を有する軽症患者で、発症後5日以内に外来でモルヌピラビル(800mg 1日2回5日間)またはニルマトレルビル+リトナビル(ニルマトレルビル300mg[推定糸球体濾過量30~59mL/分/1.73m2の場合は150mg]+リトナビル100mg 1日2回5日間)の投与が開始された患者であった。老人ホーム入居者、ニルマトレルビル+リトナビルの投与禁忌に該当する患者は、除外された。 対照群は、入院前にSARS-CoV-2感染が確認され、観察期間中に外来で経口抗ウイルス薬の投与を受けなかった患者のうち、年齢、性別、SARS-CoV-2感染診断日、チャールソン併存疾患指数、ワクチン接種回数に関して傾向スコアがマッチする患者を、1対10の割合で選択した。 主要評価項目は、全死因死亡、COVID-19関連入院、入院中の疾患進行(院内死亡、侵襲的人工呼吸、集中治療室[ICU]入室)。経口抗ウイルス薬投与群と各対照群との比較は、Cox回帰モデルを用いてハザード比(HR)を推定し評価した。いずれも全死因死亡、入院後の疾患進行リスクを低下 COVID-19非入院患者107万4,856例のうち、地域の医療機関で2種類の新規経口抗ウイルス薬のいずれかが開始された患者は1万1,847例(モルヌピラビル群5,383例、ニルマトレルビル+リトナビル群6,464例)で、このうち適格基準を満たし傾向スコアをマッチさせた解析対象集団は、モルヌピラビル群4,983例と対照群4万9,234例、ならびにニルマトレルビル+リトナビル群5,542例と対照群5万4,672例であった。 追跡期間中央値はモルヌピラビル群103日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群99日であり、モルヌピラビル群はニルマトレルビル+リトナビル群より高齢者が多く(>60歳:4,418例[88.7%]vs.4,758例[85.9%])、ワクチン完全接種率が低い(800例[16.1%]vs.1,850例[33.4%])傾向があった。 モルヌピラビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.61~0.95)および入院中の疾患進行(0.57、0.43~0.76)のリスクが低下したが、COVID-19関連入院のリスクは両群で同等であった(0.98、0.89~1.06)。 一方、ニルマトレルビル+リトナビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.34、95%CI:0.22~0.52)、COVID-19関連入院(0.76、0.67~0.86)、および入院中の疾患進行(0.57、0.38~0.87)のリスクが低下した。 高齢患者においては、経口抗ウイルス薬の早期投与に関連した死亡/入院のリスク低下が一貫して確認された。

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日本でのコロナ死亡例の分析結果/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第98回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、9月7日に開催された。その中で大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター/COVIREGI解析チーム)らのチームが、「COVID-19レジストリに基づく死亡症例の分析」を報告した。 レジストリ研究は、わが国におけるCOVID-19患者の臨床像および疫学的動向を明らかにすることを目的に、2020年1月から行われている。COVID-19と診断され、医療機関において入院管理されている症例を対象に(8月22日時点で登録症例数は7万920症例)、COVID-19の臨床像・経過・予後、重症化危険因子の探索、薬剤投与症例の経過と安全性について解析、検討が行われている。軽症例での死亡率が徐々に上昇【各波の死亡症例】 各波の死亡症例を比較すると、第6波と第7波は中等症および軽症からの死亡が増加していた。登録数で1番死亡例が多かった第3波と比較すると次のようになる〔( )の死亡率は編集部で算出した〕。・第3波 総死亡:1,218、重症死亡数:235(19.3%)、中等症死亡数:957(78.6%)、軽症:26(2.13%)・第6波 総死亡:300、重症死亡数:40(13.3%)、中等症死亡数:250(83.3%)、軽症:10(3.3%)・第7波 総死亡:19、重症死亡数:1(5.2%)、中等症死亡数:17(89.0%)、軽症:1(5.2%)【中等症での死亡症例】 中等症のうち、第4波以降ネーザルハイフローの利用が進んだが、第6波以降酸素のみ使用で死亡する症例が増えている。第5波で約50%、第6波で約65%、第7波で約80%と上昇。【中等症のリスク因子】 第1波~第7波まで共通して、基礎疾患ありの患者の方が死亡していた。第1波 224人中209人が基礎疾患あり(93.3%)第2波 208人中200人が基礎疾患あり(96.2%)第3波 924人中868人が基礎疾患あり(93.9%)第4波 254人中235人が基礎疾患あり(92.5%)第5波 118人中103人が基礎疾患あり(87.3%)第6波 233人中223人が基礎疾患あり(95.7%)第7波 17人中16人が基礎疾患あり(94.1%)【第5波と第6・7波の比較】・入院中のCOVID-19治療目的での薬物投与の登録割合 (第5波)ワクチン接種あり(ステロイド、抗凝固薬、レムデシビル順で多い)ワクチン接種なし(サリルマブ、モルヌピラビル、ナファモスタット、カモスタットの順で多い)(第6・7波) ワクチン接種あり(ステロイド、レムデシビル、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、カモスタット、サリルマブが同順で多い)・入院中の呼吸補助の登録割合 (第5波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)(第6・7波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)【第6波と第7波の比較】・入院中のCOVID-19治療目的での薬物投与の登録割合 (第6波)ワクチン接種あり(レムデシビル、ステロイド、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、カモスタット、サリルマブが同順で多い)(第7波)ワクチン接種あり(レムデシビル、ステロイド、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、トシリズマブ、ナファモスタット、カモスタット、サリルマブ、カシリビマブ/イムデビマブが同順で多い)・入院中の呼吸補助の登録割合 (第6波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)(第7波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)【まとめ】・第5波と第6-7波の死亡例比較では、第6-7波の方が人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイド処方が下っていた。また、ともに90%の事例では酸素を必要としていた。・第6波と第7波の死亡例比較では、第7波の方が、さらに人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイドの処方率が下がっていた。・ワクチン3回、4回接種者の割合が増加していることから、重篤なCOVID-19肺炎による呼吸不全の方が占める比率が下がっていると推測される。※なお、本報告のレジストリ登録患者は入院患者かつわが国全体の患者の一部であり、すべてのCOVID-19患者が登録されているわけではないこと、また報告では統計学的な検討は実施していないことに注意が必要。

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院外心停止昏睡への酸素補給療法、制限的vs.非制限的/NEJM

 院外心停止蘇生後昏睡の成人生存者に対する酸素補給療法について、動脈血酸素分圧(Pao2)の目標値を制限した場合と制限しない場合の死亡や重度障害、昏睡の発生率は、同等であることが示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のHenrik Schmidt氏らが、789例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、院外心停止昏睡の生存者における人工呼吸器の適切な酸素目標値は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。90日時点の全死因死亡・重度障害を有する退院・昏睡の複合アウトカムを比較 試験は院外心停止昏睡の成人生存者を対象に、2×2要因デザイン法を用いて行われた。 研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方は、Pao2目標値を9~10kPa(68~75mmHg)に設定(制限的酸素値目標群)、もう一方は13~14kPa(98~105mmHg)に設定した(非制限的酸素値目標群)。また、血圧についても2種の目標値のいずれかに割り付けられ、その結果については別に報告した。無作為化は、入院後可能な限りすみやかに、通常はICUで行われた。酸素介入は無作為化後ただちに開始され、抜管まで続けられた。 主要アウトカムは、無作為化後90日以内の全死因死亡、重度障害を伴う退院、昏睡(脳機能カテゴリー[CPC]:3~4、カテゴリー範囲は1~5で高値ほど障害が重度であることを示す)の複合だった。 副次アウトカムは、48時間時点のニューロン特異的エノラーゼ値、90日時点の全死因死亡、モントリオール認知機能検査(Montreal Cognitive Assessment[MoCA])スコア(スコア範囲は0~30で高スコアほど認知機能は良好なことを示す)、修正Rankinスケールスコア(スコア範囲は0~6で高スコアほど障害が重度であることを示す)およびCPCだった。主要アウトカム発生は両群ともに32~34% 2017年3月~2021年12月に、デンマークの2つの3次心停止センターで無作為化を受け解析に包含された被験者は789例だった。 主要アウトカムの発生は、制限的酸素値目標群394例中126例(32.0%)、非制限的酸素値目標群395例中134例(33.9%)だった(補正後ハザード比[aHR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.75~1.21、p=0.69)。 90日時点で、死亡は制限的酸素値目標群113例(28.7%)、非制限的酸素値目標群123例(31.1%)だった。CPC値中央値は両群ともに1、修正Rankinスケールスコア中央値はそれぞれ2と1、MoCAスコア中央値は両群ともに27だった。48時間時点のニューロン特異的エノラーゼ値中央値は、それぞれ17μg/Lと18μg/Lだった。有害事象の発生率も、両群で同等だった。

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新型コロナの重症度と予後を予測するバイオマーカーを発見/横浜市大、神奈川県立がんセンター

 血清ヘムオキシゲナーゼ-1(Heme oxygenase-1:HO-1)濃度が、COVID-19の重症度と生命予後予測の指標となることを、横浜市立大学大学院医学研究科の原 悠氏らと神奈川県立がんセンターの築地 淳氏らの研究グループが発見した。PLOS ONE誌オンライン版2022年8月24日掲載の報告。 HO-1は、M2マクロファージによって産生されるストレス誘導タンパク質で、可溶性CD163(sCD163)を産生する。sCD163は、COVID-19の生命予後の予測性能において有用性が期待されている。研究グループは、血清HO-1がCOVID-19患者の重症度と生命予後予測の両方を評価するバイオマーカーになりうると考え、M2マクロファージマーカーとされる血清HO-1とsCD163の有用性を検証した。 解析対象は、入院治療を必要としたCOVID-19患者64例(軽症11例、中等症38例、重症15例)であった。入院時に血清HO-1とsCD163の血清濃度を測定し、臨床パラメーターおよび治療経過との関連性を解析した。 主な結果は以下のとおり。・血清HO-1は重症度が上がるほど高値を示し(軽症:11.0ng/mL[7.3~33.4]、中等症:24.3ng/mL[13.5~35.1]、重症59.6ng/mL[41.1~100])、血清LDH(R=0.422)、CRP(R=0.463)、高分解能CTにおけるground glass opacity(すりガラス陰影)+consolidation(浸潤影)score(R=0.625)と相関した。・重症度(血清HO-1:0.857、sCD163:0.733)、ICU入室(同:0.816、同:0.743)、人工呼吸器装着(同:0.827、同:0.696)における予測性能(AUC)は、血清HO-1がsCD163を上回った。 研究グループは、M2マクロファージの活性を反映する血清HO-1濃度は、COVID-19患者の重症度を評価し、予後を予測するための有用な血清バイオマーカーとなることを示唆するとともに、M2マクロファージを制御することは、COVID-19の予防的な治療標的になる可能性があるとまとめた。

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第125回 学会提言がTwitterで大炎上、医療崩壊にすり替えた国産コロナ薬への便宜では?

土曜日の朝、何気なくTwitterを開いたらトレンドキーワードに「感染症学会」の文字。何かと思って検索して元情報を辿ったところ、行き着いたのが日本感染症学会と日本化学療法学会が合同で加藤 勝信厚生労働大臣に提出した「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」だった。提言は4つだが、そのすべてをひっくるめてざっくりまとめると、「現在の第7波に対応するには早期診断・早期治療体制の確立がカギを握る。そのためには重症化リスクの有無に関係なく使える抗ウイルス薬が必要であり、その可能性がある国産抗ウイルス薬の一刻も早い承認あるいは既存の抗ウイルス薬の適応拡大が必要」というものだ。どうやら発表された9月2日に厚生労働省内にある記者クラブで記者会見をしたらしいが、フリーランスの私は当然それを知る由もない。この点がフリーランスのディスアドバンテージである。国産抗ウイルス薬とは、塩野義製薬が緊急承認制度を使って申請した3CLプロテアーゼ阻害薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)のことだ。同薬の緊急承認審議の中身についてはすでに本連載で触れた通り。連載では文字数の関係上、ある程度議論をリードした発言を抜粋はしているが、本格議論の前に医薬品医療機器総合機構(PMDA)側から緊急承認に否定的な審査報告書の内容が説明されている。その意味で、連載に取り上げた議論内容は少なくとも感情論ではなく科学的検討を受けてのもので、結果として継続審議となった。両学会の提言はそうした科学的議論を棚上げしろと言っているに等しい。もっとも両学会の提言は一定のロジックは付けている。それについて私なりの見方を今回は記しておきたいと思う。まず、4つの提言のうち1番目を要約すると「入院患者の減少や重症化の予防につながる早期診断・早期治療の体制確立を」ということだが、これについてはまったく異論はない。提言の2番目(新規抗ウイルス薬の必要性)は一見すると確かにその通りとも言える。念のため全文を引用したい。「現在使用可能な内服薬は適応に制限があり、60歳未満の方のほとんどは診断されても解熱薬などの対症療法薬の処方しか受けられません。辛い症状、後遺症に苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。また、自宅療養中に同居家族に高率に感染が広がることが医療逼迫の大きな原因になっています。こうした状況を打開するためにも、ハイリスク患者以外の軽症者にも投与できる抗ウイルス薬の臨床現場への導入が必要です」私はこの段階でやや引っかかってしまう。確かに現時点で高齢者や明らかな重症化リスクのある人以外は解熱鎮痛薬を軸とする対症療法しか手段がない。しかも、現在の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の重症度判定は、酸素飽和度の数値で決められているため、この数字が異常値でない限りは40℃近い発熱で患者がのたうち回っていても重症度上は軽症となり、解熱鎮痛薬処方で自然軽快まで持ちこたえるしかない。それを見つめる医療従事者は隔靴掻痒の感はあり、何とかしてあげたいという思いに駆られるだろう。それそのものは理解できる。しかし、私たちはこの「思い」が裏目に出たケースを経験している。いわゆる風邪に対する抗菌薬乱用による耐性菌の増加、眠れないと訴える高齢者へのペンゾジアゼピン系抗不安薬の乱用による依存症。いずれも根本は医療従事者の“患者の苦痛を何とかしたい”という「思い」(あるいは「善意」)がもたらした負の遺産である。結果として、提言の2番目は言外に「何ともできないのは辛いから、まずは効果はほどほどでも何とかできるようにさせてくれ」と主張しているように私は思えてしまう。ちなみに各提言では、「説明と要望」と称してより詳細な主張が付記されているが、2番目の提言で該当部分を読むと、その主張は科学的にはやや怪しくなる。該当部分を抜粋する。「感染者に対する早い段階での抗ウイルス薬の投与は、重症化を未然に防ぎ、感染者の速やかな回復を助けるだけではなく、二次感染を減らす意味でも大切です」これは一般の人が読めば、「そうそう。そうだよね」となるかもしれない。しかし、私が科学的に怪しいと指摘したのは太字にした部分である。その理由は2つある。第1の理由は、まず今回の新型コロナは感染者の発症直前から二次感染を引き起こす。発症者が抗ウイルス薬を服用しても二次感染防止は原理的に不可能と言わざるを得ない。服用薬に一定の抗ウイルス効果が認められるならば、感染者・発症者が排出するウイルス量は減ると考えられるので、理論上は二次感染を減らせるかもしれないが、それが服用薬の持つリスクとそのもののコストに見合った減少効果となるかは、はなはだ疑問である。第2の理由は、提言が緊急承認を求めているエンシトレルビルの作用機序に帰する。エンシトレルビルは新型コロナウイルスの3CLプロテアーゼを阻害し、すでに細胞に侵入したウイルスの増殖を抑制することを意図した薬剤である。ヒトの体内に侵入したウイルスが細胞に入り込む、すなわち感染・発症成立を阻止するものではない。たとえばオミクロン株ではほぼ無効として、現在はほぼ使用されなくなった通称・抗体カクテル療法のカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質と結合し、細胞そのものへの侵入を阻止する。もちろんこれとて完全な感染予防効果ではなく、厳密に言えば発症予防効果ではあるが、原理的には3CLプロテアーゼ阻害薬よりは二次感染発生の減少に資すると言える。現にオミクロン株登場前とはいえ、カシリビマブ/イムデビマブは、臨床試験で家庭内・同居者内での発症予防効果が認められ、適応も拡大されている。これに対してエンシトレルビルと同じ3CLプロテアーゼ阻害薬で、国内でも承認されているニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)では、家庭内感染リスク低下を評価するべく行った第II/III相試験「EPIC-PEP」でプラセボ群と比較して有意差は認められていない。これらから「二次感染を減らす意味でも大切です」という提言内容には大いに疑問である。そして提言の3番目(抗ウイルス効果の意義)では次のように記述している。「新しい抗ウイルス薬の臨床試験において、抗ウイルス効果は主要評価項目の一つです。新型コロナウイルスの変異株の出現に伴い、臨床所見が大きく変化している今、抗ウイルス効果を重視する必要があります」今回の話題の焦点でもあるエンシトレルビルの緊急承認審議に提出された同薬の第II/III相試験の軽症/中等症患者を対象とした第IIb相パートの結果では、主要評価項目の鼻咽頭ぬぐい検体を用いて採取したウイルス力価のベースラインからの変化量と12症状合計スコア(治験薬投与開始から120時間までの単位時間当たり)の変化量は、前者で有意差が認められたものの、後者では有意差が認められなかった。この結果が緊急承認の保留(継続審議)に繋がっている。提言の言いたいことは、ウイルス力価の減少、つまり抗ウイルス効果が認められたと考えられるのだから、むしろそれを重視すべきではないかということなのだろう。実際、3番目の提言の説明と要望の項目では、デルタ株が主流だった第5波の際の感染者の重症化(人工呼吸器管理を必要とする人)率が0.5%超だったのに対し、オミクロン株が主流の第6波以後では0.1%未満であるため、重症化阻止効果を臨床試験で示すことは容易ではないと指摘している。それは指摘の通りだが、エンシトレルビルの第IIb相パートはそもそも重症化予防効果を検討したものではない。あくまで臨床症状改善状況を検討したものである。しかも、この説明と要望の部分では「ウイルス量が早く減少することは、臨床症状の改善を早めます」とまるで自家撞着とも言える記述がある。ところがそのウイルス量の減少が臨床症状の改善を早めるという結果が出なかったのがエンシトレルビルの第IIb相パートの結果である。両学会は何を主張したいのだろう。一方で今回のエンシトレルビルの件では、時に「抗ウイルス薬に抗炎症効果(臨床症状改善)まで求めるのは酷ではないか」との指摘がある。しかし、ウイルス感染症では、感染の結果として炎症反応が起こるのは自明のこと。ウイルスの増殖が抑制できるならば、当然炎症反応にはブレーキがかからねばならない。それを臨床試験結果として示せない薬を服用することは誰の得なのだろうか?前述のように作用機序からも二次感染リスクの減少効果が心もとない以上、この薬を臨床現場に投入する意味は、極端な話、それを販売する製薬企業の売上高増加と解熱鎮痛薬よりは根本治療に近い薬を処方することで医師の心理的負荷が軽減されることだけではないか、と言うのは言い過ぎだろうか?さらにそもそも論を言ってしまえば、現在エンシトレルビルで示されている抗ウイルス効果も現時点では「可能性がある」レベルに留まっている。というのも前述の第IIb相パートは検査陽性で発症が確認されてから5日以内にエンシトレルビルの投与を開始している。この投与基準そのものは妥当である。そのうえで、対プラセボでウイルス力価とRNA量の減少がともに有意差が認められたのは投与開始4日目、つまり発症から最大で9日目のもの。そもそも新型コロナでは自然経過でも体内のウイルス量は発症から5日程度でピークを迎え、その時点を境に減少するのが一般的である。この点を考慮すると、第IIb相パートの試験で示された抗ウイルス効果に関する有意差が本当にエンシトレルビルの効果のみで説明できるかは精査の余地を残している。ちなみに緊急承認に関する公開審議では委員の1人から、この点を念頭にエンシトレルビル投与を受けた被験者の投与開始時点別の結果などが分かるかどうかの指摘があったが、事務局サイドは不明だと回答している。さらに指摘するならば同試験は低用量群と高用量群の2つの群が設定されているが、試験結果を見る限りでは高用量群での抗ウイルス効果が低用量群を明らかに上回っているとは言い切れず、用量依存的効果も微妙なところである。総合すれば、エンシトレルビルの抗ウイルス効果と言われるものも、現時点では暫定的なものと言わざるを得ないのだ。また、3番目の提言の説明と要望の項目では「オミクロン株に感染した際の症状としては呼吸器症状(鼻閉・咽頭痛・咳)、発熱、全身倦怠感が主体でこれ以外の症状は少なくなっています」とさらりと触れている。これは主要評価項目の12症状合計スコアで有意差が認められなかった点について、塩野義製薬がサブ解析でこうした呼吸器症状のみに限定した場合にプラセボに対してエンシトレルビルでは有意差が認められたと主張したことを、やんわりアシストしているように受け取れる。これとて緊急承認の際の公開審議に参加した委員の1人である島田 眞路氏(山梨大学学長)から「呼吸器症状だけ後からピックアップして有意差が少しあったという。要するにエンドポイントを後からいじるのはご法度ですよ。はっきり言って」とかなり厳しく指摘された点である。そしてこうしたサブ解析で有意差が出た項目を主要評価項目にして臨床研究を行った結果、最終的に有意差は認められなかったケースは実際にあることだ。いずれにせよ私個人の意見に過ぎないが、今回の提言は科学的に見てかなり破綻していると言わざるを得ない。そしてなにより今回の提言の当事者である日本感染症学会理事長の四柳 宏氏(東京大学医科学研究所附属病院長・先端医療研究センター感染症分野教授)は、エンシトレルビルの治験調整医師であり、明確に塩野義製薬と利益相反がある。記者会見ではこの点について四柳氏自身が「あくまでも学会の立場で提言をまとめた」と発言したと伝わっているが、世間はそう単純には受け止めないものだ。それでも提言のロジックが堅牢ならばまだしも、それには程遠い。まあ、そんなこんなで土曜日は何度かこの件についてTwitterで放言したが、それを見た知人からわざわざ電話で「あの感染症学会の喧々諤々、分かりやすく説明してくれ」と電話がかかってきた。「時間かかるから夜にでも」と話したら、これから町内会の清掃があって、その後深夜まで出かけるとのこと。私はとっさに次のように答えておいた。「あれは例えて言うと…町内会員らで清掃中の道路に町内会長が○○○したようなもの」これを聞いた知人は「うーん、分かるような、分からないような。また電話するわ」と言って会話は終了した。その後、彼からは再度問い合わせはない。ちなみに○○○は品がないので敢えて伏字にさせてもらっている。ご興味がある方はTwitterで検索して見てください。お勧めはしません(笑)。

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エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。全体の考え方について【2 使用にあたっての手続き】・チキサゲビマブ/シルガビマブとバリシチニブを追加【3 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」の注釈を改訂。・「2 主な重症化リスク因子」で65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、COPDなどの慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上)、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期など内容を改訂。・「3」で「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は推奨しない」と改訂。・「表1 軽症~中等症I」で治療薬の使用を優先させるべきリスク集団を追加。・「4 抗ウイルス薬等の選択」で知見より「高齢者、複数の重症化リスク因子がある患者、ワクチンの未接種者などでは症状が進行しやすいことを踏まえ、患者ごとの評価において、中等症への急速な病状の進行など、非典型的な臨床経過の症例や免疫抑制状態などの重症化リスクが特に高い症例などでは、併用投与または逐次投与の適応を考慮する」と表現を改訂。個々の治療薬について【抗ウイルス薬】・レムデシビル(商品名:ベクルリー)の「投与時の注意点」で「7)2022年1月21日の中央社会保険医療協議会(中医協)において、保険医の指示の下で看護師による在宅・療養施設等の患者へのレムデシビル投与が可能となった」を追加。・モルヌピラビル(同:ラゲブリオ)の「入手方法」で「2022年8月18日に薬価収載されたことから、今後、一般流通の開始およびそれに伴う国購入品と一般流通品の切替えが行われる見込みである」を追加。・ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック )の「国内外での臨床報告」で「10万9,254例の後方視コホート研究(65歳以上の高齢者ではニルマトレルビルの治療介入により入院の有意なリスク減少を認めた(HR:0.27、95%CI:0.15~0.49)。一方で40~64歳では、有意なリスク減少を認めなかった (HR:0.74、95%CI:0.35~1.58)を追加。また、投与時の注意点に「5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は薬剤開発のための臨床試験で除外されているが、市販後の評価では、高齢者での重症化予防などの有効性が示唆されている」を追加。そのほか、投与時の腎機能の評価の詳細についても追加。・ファビピラビルの項目は削除。【中和抗体薬】・「チキサゲビマブ/シルガビマブ(同:エバシェルド)」を新しく追加。〔国内外での臨床報告〕重症化リスク因子の有無を問わない、軽症~中等症IのCOVID-19外来患者822人を対象としたランダム化比較試験では、発症から7日以内のチキサゲビマブ/シルガビマブの単回筋肉内投与により、プラセボと比較して、COVID-19の重症化または全死亡が50.5%(4.4%対8.9%、p=0.010)有意に減少したなどを記載。〔投与方法〕・発症後通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射。・曝露前の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射する。なお、SARS-CoV-2変異株の流行状況などに応じて、それぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできる。〔投与時の注意点〕オミクロン株(BA.4系統及びBA.5系統) については、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することなど。〔発症後での投与時の注意点〕1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)COVID-19の症状が発現してから速やかに投与すること。4)重症化リスク因子については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」などにおいて例示されている重症化リスク因子が想定。〔発症抑制での投与時の注意点〕1)COVID-19の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者ではない者に投与すること。COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者における有効性は示されていない。3)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては、COVID-19に対するワクチン接種が推奨されない者または免疫機能低下などによりCOVID-19に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者とされているが、原発性免疫不全症、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者など免疫抑制状態にある者が中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。4)3)の投与対象者については、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた発症抑制を行うことが望ましいと考えらえる。〔入手方法〕本剤は、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、発症抑制としての投与について、対象となる免疫抑制状態にある者が希望した場合には、医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。・カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)とソトロビマブ(同:ゼビュディ)の「投与時の注意点」として「1)オミクロン株(B1.1.529系統/BA.2系統、BA.4系統およびBA.5系統) では本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討する」を追記。【免疫調整薬・免疫抑制薬】・シクレソニド(国内未承認薬)の項目を削除。【その他】・その他の抗体治療薬(回復者血漿、高度免疫グロブリン製剤)の項目を削除。・附表1と2の「重症化リスクを有する軽症~中等症IのCOVID-19患者への治療薬の特徴」の内容を更新。・参考文献を52本に整理。 なお、本手引きの詳細は、同学会のサイトなどで入手の上、確認いただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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オミクロン流行期、小児コロナ入院患者の症状に変化/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が全国的に猛威をふるっている。一般報道では第7波の特徴として小児の陽性感染が多いことが指摘され、全国の小児科はいつにも増して診療を待つ患者であふれているという。小児がCOVID-19に感染した場合、症状が軽微とあると従来言われてきたが、実際入院した患者ではどのような特徴があるだろう。 国立成育医療研究センター感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、オミクロン株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株流行期と比較検討し、その結果を公表した。 この研究は、国立国際医療研究センター運営の国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」利用し、今回初めてわが国の小児COVID-19患者の特徴を、オミクロン株流行期とそれ以前とで比較した大規模な研究となる。 本研究は、デルタ株流行期(2021年8月~2021年12月)、オミクロン株流行期(2022年1月~3月)に、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例847人(デルタ株流行期:458人、オミクロン株流行期:389人)を対象に実施したもの。その結果、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多かったことが判明した。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期には少なかったこともわかった。 また、新型コロナウイルスワクチンの接種歴の有無が入力されていた790名に着目してみると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した「より重症と考えられる患者」43名は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていなかったことからワクチン接種が子ども達を重症化から守る方向に働いている可能性があることも示唆された。オミクロン株流行期では発熱やけいれんが多い【背景・目的】わが国におけるオミクロン株流行期の小児COVID-19の臨床的特徴についての情報の解明【研究概要・結果】研究対象:2021年8月~2021年12月(デルタ株流行期)と2022年1月~3月(オミクロン株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、ワクチン接種歴、予後などのデータを集計・分析【研究結果概要】・研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株流行期458人、オミクロン株流行期389人。・入院患者の年齢の中央値はデルタ株流行期が8歳、オミクロン株流行期が6歳。オミクロン株流行期の方が若年化している傾向にあった。・オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多くあった。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期に少なかった。・酸素投与を要した患者はオミクロン株流行期に多かったが、人工呼吸管理や集中治療室入院を要した患者の数、割合には大きな変化はなかった。・新型コロナワクチン2回接種を終えていた患者は、研究対象847人のうち50人(5.9%)だった(接種の有無不明は57人)。この50人は、いずれも軽症だった。・ワクチン接種歴の有無が判明していた790人の中で、酸素投与、集中治療室入院、人工呼吸管理のいずれかを要したより重症と考えられる患者43人のうち、新型コロナワクチン2回接種を受けていた患者はいなかった。ワクチンが重症化から子ども達を守る これらの研究結果を踏まえ庄司氏らは、「発熱やけいれんが増えていたことは、小児COVID-19の診断を考える上で重要な情報と考えられる。また、小児新型コロナワクチン接種者自体が少ない時期の研究なので限界はあるが、ワクチン接種が子ども達をCOVID-19の重症化から守る方向に働いている可能性を示唆している結果であったことは重要な結果と考える。小児COVID-19の特徴はそのときに流行している変異株により変化しうるので、引き続き情報の収集、解析を続けていくことが重要」と今後の展望を述べている。※なお、本研究は、オミクロン株(BA.5)流行前に実施されているためその影響は検討できていないこと、また、それぞれの株が国内の主流であった時期の患者を比較した研究であることなど注意を喚起している。

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第113回 新型コロナの全数把握見直し、定点サーベイランスに移行も検討/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナの全数把握見直し、定点サーベイランスに移行も検討/厚労省2.大学病院医師、時間外労働1,860時間超過が多いのは産婦人科/厚労省3.感染症法改正で、感染症に初期対応する病院に減収の補償へ/厚労省4.抗原定性検査キットは医療機関へ優先供給を/日本医師会5.大学病院のICU医師が一斉退職/東京女子医科大学6.マイナンバー保険証、導入補助金期限に注意/厚労省1.新型コロナの全数把握見直し、定点サーベイランスに移行も検討/厚労省新型コロナウイルス感染者の全数把握について、医療機関側の負担が大きいとする意見が出されているのに対して、特定の医療機関からの報告によって感染状況を監視する「定点把握」を導入することを検討し出したことを厚生労働省は明らかにした。新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの座長でもある国立感染症研究所の脇田隆字所長は、18日の記者会見で定点サーベイランスについて厚生労働省や感染症研究所が検討を行っていることを明言した。また、8月19日の衆院厚労委員会の閉会中審査で、加藤厚労大臣は全数把握の見直しについて、時期は明言しなかったが早急に結論を出すと答弁した。(参考)コロナ「定点把握」厚労省が検討 特定医療機関のみ 全数把握見直し(毎日新聞)コロナ感染者の全数把握見直し「早急に」厚労相(日経新聞)新型コロナの全数把握見直し 厚労相「速やかに対応」 8月中に(毎日新聞)2.大学病院医師、時間外労働1,860時間超過が多いのは産婦人科/厚労省厚生労働省は、8月17日に社会保障審議会医療部会を開催し、今年3月から4月に行った「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」の結果を公表した。この中で、大学病院の本院および防衛医科大学校病院のうち、副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間は、82病院中20病院(24%)において把握できているとの結果だった。また、時間外・休日労働時間数が年通算1,860時間相当超の医師数が多い診療科は上から順に外科、内科、産婦人科であり、その割合が多い診療科は産婦人科7.0%、脳神経外科5.8%、外科5.1%の順番だった。2024(令和6)年4月の医師の時間外労働規制の強化を踏まえ、医師労働時間短縮計画の策定を本格化させることが必要としている。(参考)医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査 調査結果(厚労省)1,860時間超の医師割合、最も高いのは産婦人科 厚労省が大学病院の調査結果を医療部会に報告(CB news)大学病院勤務医、「時間外1,860時間超」は2.4%(日経メディカル)2024年からスタートする「医師の働き方改革」とは?(DIME)3.感染症法改正で、感染症に初期対応する病院に減収の補償へ/厚労省厚生労働省は8月19日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、感染症法改正について提案した。新型コロナウイルス感染症の拡大を反映して、感染症対策を強化することとし、通常医療を制限して感染病床を確保する必要が生じたときに、早期の受け入れなど初期対応を行った医療機関の減収分を補償することとした。これにより、あらかじめ自治体と協定を結んだ公立、公的病院などがスムーズに患者受け入れが行えるようにする。(参考)感染症法の改正について(厚労省)感染症「協定締結医療機関」の減収補償へ 流行初期対応などで、厚労省(CB news)病院減収分を埋め合わせ 感染症の初期対応時 厚労省が制度案(日経新聞)新興感染症「初期」対応する中核病院などに対し、公費や保険料で「減収補填」を行ってはどうか-社保審・医療保険部会(1)(Gem Med)4.抗原定性検査キットは医療機関へ優先供給を/日本医師会日本医師会の松本吉郎会長は8月19日、加藤勝信厚労大臣と面談し、6項目からなる「今後の感染拡大を踏まえた今後の対応に関する要望書」を手渡した。この中で、OTC化をすすめるとしている新型コロナウイルス感染症の抗原定性検査キットにつき、医療機関に優先的に供給するように依頼した。このほか、HER-SYSについては、医療機関の負担軽減のため入力項目削減に加え、重症化リスクが高い患者を捕捉する機能を維持しながら、さらに作業効率化につなげるように改善を求めた。(参考)抗原定性検査キット、医療機関へ優先供給を 日医会長が厚労相に要望書手渡す(CB news)日本医師会 松本会長 加藤厚労相と会談 新型コロナ対策で要望(NHK)今般の感染拡大を踏まえた今後の対応に関する要望書提出について(日医on-line)5.大学病院のICU医師が一斉退職/東京女子医科大学東京女子医科大学病院のICUに勤務する集中治療科の医師9名が一斉に退職したことを文芸春秋社はオンラインで報じた。学校法人 東京女子医科大学は2014年2月に耳鼻咽喉科において、術後に人工呼吸中の小児に禁忌のプロポフォールを大量投与したために死亡した事故をきっかけに、特定機能病院を2015年に取り消されていた。その後、小児集中治療部門の経営強化が行われたが、今年の2月に小児集中治療室(小児ICU)の医師の離職が報道されたばかり。今回のICUの医師の一斉退職については、詳細は不明だが、今後、注目を浴びることになりそうだ。(参考)東京女子医科大学病院のICU医師9人が一斉退職「ICU崩壊状態」で移植手術は中止か(文春オンライン)東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治(同)女子医大が小児治療「最後の砦」解体へ 再発防止誓ったのに、わずか半年で撤退方針(東洋経済オンライン)6.マイナンバー保険証、導入補助金期限に注意/厚労省厚生労働省は、現在、データヘルスの集中改革プランを進めているが、全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大のためにマイナンバーを利用を推進しており、これにより電子処方箋のシステム構築や、マイナポータルからの特定健診結果の閲覧も進めている。医療機関に対しては、電子カルテ情報共有のために、来年の4月からオンライン資格確認などシステム導入を原則義務化するとしている。オンライン資格確認などシステム導入が遅れてしまうと、医療機関などでは保険指定が取り消されることになりかねないため、中医協でも診療側医院からは救済措置を求める意見が出されたが、支払側委員からは「やむを得ない事情があるとは言えず、救済措置の対象にすべきでない」と反論が出されるなど、診療機関側は遅滞なく対応することが求められている。(参考)オンライン資格確認等システム導入の経費補助を充実、医療機関などは「早期の申し込み、システム改修」に努めよ-厚労省(Gem Med)電子処方箋モデル事業、4地域で10月末開始 厚労省、日本海総合病院・国保旭中央病院など(CB news)電子処方箋の仕組みの構築について(厚労省)

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第7回 どこまで進むか小児新型コロナワクチン

小児COVID-19の問題点「子供にとって、COVID-19はただの風邪」という意見もよく耳にします。実際にほとんどが風邪症状で終わっていますが、感染者がとても多い年齢層であることから、ワクチン未接種が感染拡大に影響していることはほぼ間違いないとされています。最近、日本の小児COVID-19に関する研究が2つ報告されています。1つ目は、デルタ株優勢期(2021年8月1日~12月31日)とオミクロン株優勢期(2022年1月1日~3月31日)の疫学的・臨床的特徴を比較検討したものです1)。国立国際医療研究センターが運営している国内最大の新型コロナウイルス感染症のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を用いて、国立成育医療研究センターの医師らが解析したものです。これによると、オミクロン株優勢期では、2~12歳で発熱やけいれんが多く観察されることが示されています。また、ワクチン接種歴の有無が判明していた790例に絞ると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した43例は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていないことがわかりました。オミクロン株の113例とオミクロン株前の106例の小児を比較した、もう1つの国立成育医療研究センターの研究では、0~4歳の患者において、咽頭痛と嗄声はオミクロン株のほうが多く(それぞれ11.1% vs.0.0%、11.1% vs.1.5%)、嗄声があったすべての小児でクループ症候群という診断が下りました。また、5~11歳の小児において、嘔吐はオミクロン株のほうが多いことが示されました(47.2% vs.21.7%)2)。オミクロン株になって軽症化しているのは、ワクチンを接種した成人だけであって、小児領域では基本的に症状が強めに出るようです。重症例がおおむねワクチン未接種者で構成されているというのは、驚くべき結果でした。小児の新型コロナワクチン接種率現在、5歳以上の小児には新型コロナワクチン接種が認められていますが、ほかの年齢層と比べると、その接種率は非常に低い状況です(表)。実際私の子供の周りでも、接種していないという小学生は結構多いです。それぞれの考え方がありますので、接種率が低い現状について親を責めようという気持ちはありません。表. 8月15日公表時点でのワクチン接種率(首相官邸サイトより)日本小児科学会の推奨さて、小児におけるCOVID-19の重症化予防のエビデンスが蓄積されてきました。オミクロン株流行下では、確かに感染予防効果はこれまでの株と比べて劣るものの、接種によって、小児多系統炎症性症候群の発症を約90%防げることがわかっています3)。そのため、受けないデメリットのほうが大きいと判断され、5~17歳の小児へのワクチン接種は「意義がある」という表現から、「推奨します」という表現に変更されました4)。子供のワクチン接種率は、親の意向が如実に反映されてしまいます。「とりあえず様子見」という親が多いので、日本小児科学会の推奨によって接種率が向上するのか注目です。参考文献・参考サイト1)Shoji K, et al. Clinical characteristics of COVID-19 in hospitalized children during the Omicron variant predominant period. Journal of Infection and Chemotherapy. DOI: 10.1016/j.jiac.2022.08.0042)Iijima H, et al. Clinical characteristics of pediatric patients with COVID-19 between Omicron era vs. pre-Omicron era. Journal of Infection and Chemotherapy. DOI: 10.1016/j.jiac.2022.07.0163)Zambrano LD, et al. Effectiveness of BNT162b2 (Pfizer-BioNTech) mRNA Vaccination Against Multisystem Inflammatory Syndrome in Children Among Persons Aged 12-18 Years - United States, July-December 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(2):52-8.4)日本小児科学会 5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方

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トラネキサム酸、高用量で心臓手術関連の輸血を低減/JAMA

 人工心肺を用いた心臓手術を受けた患者では、トラネキサム酸の高用量投与は低用量と比較して、同種赤血球輸血を受けた患者の割合が統計学的に有意に少なく、安全性の主要複合エンドポイント(30日時の死亡、発作、腎機能障害、血栓イベント)の発生は非劣性であることが、中国国立医学科学院・北京協和医学院のJia Shi氏らが実施した「OPTIMAL試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年7月26日号に掲載された。中国4施設の無作為化試験 OPTIMAL試験は、人工心肺を用いた心臓手術を受けた患者ではトラネキサム酸の高用量は低用量に比べ、有効性が高く安全性は非劣性との仮説の検証を目的とする二重盲検無作為化試験であり、2018年12月~2021年4月の期間に、中国の4施設で参加者の登録が行われた(中国国家重点研究開発計画の助成による)。 対象は、年齢18~70歳、人工心肺を用いた待機的心臓手術を受ける予定で、本試験への参加についてインフォームド・コンセントを受ける意思と能力を持つ患者であった。患者はいつでも試験参加への同意を撤回できるとされた。 被験者は、高用量トラネキサム酸または低用量トラネキサム酸の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。高用量群では、麻酔導入後、トラネキサム酸30mg/kgがボーラス静注され、術中は維持量16mg/kg/時がポンプ充填量2mg/kgで投与された。低用量群は、トラネキサム酸10mg/kgがボーラス静注され、術中は維持量2mg/kg/時がポンプ充填量1mg/kgで投与された。 有効性の主要エンドポイントは、手術開始後に同種赤血球輸血を受けた患者の割合(優越性仮説)とされ、安全性の主要エンドポイントは、術後30日の時点での全死因死亡、臨床的発作(全般強直間代発作、焦点発作)、腎機能障害(KDIGO基準のステージ2または3)、血栓イベント(心筋梗塞、虚血性脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)の複合であった(非劣性仮説、非劣性マージン5%)。副次エンドポイントには、安全性の主要エンドポイントの各構成要素など15項目が含まれた。輸血:21.8% vs.26.0%、安全性:17.6% vs.16.8% 3,079例(平均年齢52.8歳、女性38.1%)が無作為化の対象となり、このうち3,031例(98.4%)が試験を完了した。高用量群に1,525例、低用量群に1,506例が割り付けられた。追跡期間中に48例(高用量群23例、低用量群25例)が脱落し、安全性の主要複合エンドポイントの評価から除外された。 手術開始から退院までに、少なくとも1回の同種赤血球輸血を受けた患者は、高用量群が1,525例中333例(21.8%)であり、低用量群の1,506例中391例(26.0%)に比べ、有意に割合が低かった(群間リスク差[RD]:-4.1%、片側97.55%信頼区間[CI]:-∞~-1.1、リスク比:0.84、片側97.55%CI:-∞~0.96、p=0.004)。 また、安全性の主要複合エンドポイントが発現した患者は、高用量群が265例(17.6%)、低用量群は249例(16.8%)と、高用量群の低用量群に対する非劣性が確認された(群間RD:0.8%、片側97.55%CI:-∞~3.9、非劣性検定のp=0.003)。 同種赤血球輸血量中央値は、高用量群が0.0mL(四分位範囲[IQR]:0.0~0.0)、低用量群は0.0mL(0.0~300.0)と、高用量群で有意に少なかった(群間差中央値:0.0mL、95%CI:0.0~0.0mL、p=0.01)。一方、新鮮凍結血漿や血小板、クリオプレシピテートの輸注量には両群間に差はなかった。 術後の胸部ドレナージによる総排液量、出血による再手術、人工呼吸器の使用期間、集中治療室(ICU)入室期間、術後入院期間にも、両群間で差は認められなかった。また、心筋梗塞の30日リスクや、腎機能障害、虚血性脳卒中、肺塞栓症、深部静脈血栓症、死亡の発生率にも有意な差はみられなかった。 発作は、高用量群が15例(1.0%)、低用量群は6例(0.4%)で発現したが、トラネキサム酸の用量が増加しても発作が有意に多くなることはなかった(群間RD:0.6%、95%CI:-0.0~1.2、相対リスク:2.47、95%CI:0.96~6.35、p=0.05)。 著者は、「トラネキサム酸の高用量と低用量のどちらを用いるかは、開心心臓手術と非開心心臓手術における手術関連の出血リスクによって決まる可能性がある」としている。

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奥が深い“NO benefit”(解説:今中和人氏)

 本邦では保険収載されるほど、一酸化窒素(NO)療法は広く普及している。NOは水溶性が低く、急速に失活する生理活性物質であるため、基本コンセプトは経気道的投与と気道付近にほぼ限局した血管拡張で、もっぱら肺血圧低下と換気血流比不均衡是正に伴う呼吸・循環状態の改善を目的に使用される。本論文は開心術中、人工肺にNOを送気するトライアルで、前述の基本コンセプトと大幅に異なるが、実は2013年には小児で、2019年には成人で、この方法の有用性を示した先行研究がJTCVS誌に掲載されている。ただ、いずれも前向き無作為化試験といっても単施設で患者数がかなり少なく、共通する便益は半日後や翌日の一過性のバイオマーカー値のみだったが、他に2016年に1本、小児で臨床的な有効性を報告した200例規模の論文も存在する。 本論文では、オセアニアとオランダの6施設における2歳以下の小児開心術症例を、人工心肺中の人工肺に20ppmのNOを投与する679例と、投与しない685例に無作為化し、主に臨床的便益を中心に28日成績を比較した。無作為化時点で6週未満児がともに33%台で、単心室系疾患が11%台、再手術が8%台であった。主要アウトカムは28日間のうち人工呼吸器を使用しなかった日数(なぜ素直に人工呼吸器使用日数としなかったかは不明)とし、副次アウトカムは48時間以内の心不全(低心拍出症候群+補助循環)と28日死亡の複合、ICU期間、入院期間、直後と24時間後の血清トロポニン値とした。 結果は、人工呼吸器非使用日数は26.6日と26.4日、心不全+死亡が22.5%と20.9%、ICU滞在はともに3.0日、入院は9.0日と9.1日、トロポニン値も同程度と、主要・副次アウトカムともまったく差がなかった。なお術後、11.8%と13.4%の患児にNOが投与(中央値45時間)されており、16.5%と17.4%で透析を行っている。NOと関係がありうる有害事象も11.1%と10.5%で差がなかった。 基本コンセプトに基づけば、難溶性のNOそのものが投与場所とまったく離れた臓器に作用するとは考えにくいし、全身投与という観点からはNO担体である硝酸薬の心筋保護効果も予後改善効果もおおむね否定的なので、差が出なかった今回の結果は当然にも思える。他方、複数の先行研究で示された有用性は主にNOによる虚血再灌流障害の軽減で、それらの論文では抗炎症作用、アポトーシス、組織修復能など、NOの効能が実験論文を中心に引用してとうとうと述べられているものの、1論文を除き、臨床経過はほぼ差がなかった。 結論として、このNO投与方法は、安全性が担保されている濃度では開心術の早期予後をあまり改善しないと考えてよさそうだが、関連論文を読むほどに、NO benefitの奥の深さと自分の知識・理解の足りなさに身が縮む。

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先天性心疾患、術後の人工心肺装置を介したNO吸入療法は有効か/JAMA

 先天性心疾患に対する心肺バイパス術を受けた2歳未満の小児において、人工心肺装置を介してのNO(一酸化窒素)吸入療法は、人工呼吸器使用日数に有意な影響を与えなかった。オーストラリア・クイーンズランド大学のLuregn J. Schlapbach氏らが、多施設共同無作為化二重盲検比較試験「Nitric Oxide During Cardiopulmonary Bypass to Improve Recovery in Infants With Congenital Heart Defects trial:NITRIC試験」の結果を報告した。心臓手術を受ける小児において、人工心肺装置を介した一酸化窒素吸入療法は、術後の低心拍出量症候群を軽減し、回復の改善や呼吸補助期間の短縮につながる可能性があるが、人工呼吸器離脱期間(人工換気を使用しない生存日数)を改善するかどうかについては不明であった。JAMA誌2022年7月5日号掲載の報告。人工心肺を介した一酸化窒素20ppm投与と標準治療を比較 研究グループは、オーストラリア、ニュージーランド、オランダの小児心臓外科センター6施設において、2017年7月~2021年4月の期間に先天性心疾患手術を受けた2歳未満児1,371例を対象として無作為化試験を行った。最終追跡調査日は2021年5月24日。 適格患児は、人工心肺装置を介して一酸化窒素20ppmを投与する一酸化窒素群(679例)、または一酸化窒素を含まない人工心肺装置による標準治療群(685例)に、無作為に割り付けられた。 主要評価項目は人工心肺開始後28日目までの人工呼吸器離脱日数、副次評価項目は低心拍出量症候群・体外式生命維持装置の使用・死亡の複合、集中治療室(ICU)在室期間、入院期間、術後トロポニン値であった。人工呼吸器離脱期間に両群で有意差なし 無作為化された1,371例(平均[±SD]生後21.2±23.5週、女児587例[42.8%])のうち、1,364例(99.5%)が試験を完遂した。 人工心肺開始後28日目までの人工呼吸器離脱日数の中央値は、一酸化窒素群26.6日(IQR:24.4~27.4)、標準治療群26.4日(24.0~27.2)で、両群に有意差は認められなかった(絶対群間差:-0.01日、95%信頼区間[CI]:-0.25~0.22、p=0.92)。 一酸化窒素群で22.5%、標準治療群で20.9%が、48時間以内に低心拍出量症候群を発症し、48時間以内に体外式生命維持装置を必要としたか、28日目までに死亡した(補正後オッズ比:1.12、95%CI:0.85~1.47)。その他の副次評価項目は、両群間に有意差はなかった。 著者は、研究の限界として、技術的な理由により人工心肺装置の技術者(灌流技師)は盲検化されていないこと、一酸化窒素の投与量が固定用量であったこと、ニトロソチオール値は計測されていなかったこと、両群の中に非盲検の一酸化窒素吸入療法を受けた患者がいたことなどを挙げ、そのうえで「今回の結果は、心臓手術中に人工心肺装置を介した一酸化窒素の投与を支持するものではない」とまとめている。

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妊娠中のコロナワクチン2回接種、生後6ヵ月未満児の入院を半減/NEJM

 妊娠中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチンを2回接種することにより、生後6ヵ月未満の乳児におけるCOVID-19による入院および重症化のリスクが低減することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのNatasha B. Halasa氏らが実施した検査陰性デザインによる症例対照研究の結果、示された。生後6ヵ月未満児はCOVID-19の合併症のリスクが高いが、ワクチン接種の対象とはならない。妊娠中の母親がCOVID-19ワクチンを接種することで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体が経胎盤移行し、乳児にCOVID-19に対する防御を与える可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2022年6月22日号掲載の報告。COVID-19で入院した乳児とCOVID-19以外で入院した乳児を比較 研究グループは、Overcoming COVID-19ネットワークに登録されている米国22州30の小児病院において、2021年7月1日~2022年3月8日の期間に、SARS-CoV-2のPCR検査陽性または抗原検査陽性でCOVID-19により入院した生後6ヵ月未満の乳児(症例群)、ならびに症例群とマッチさせた(入院日が症例児の入院日の前後4週以内)SARS-CoV-2陰性でCOVID-19以外により入院した乳児(対照群)を特定し、母親のワクチン接種の有効性を解析した。 母親のワクチン接種は、妊娠中にBNT162b2(ファイザー製)またはmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンを2回接種していることとした(妊娠前に1回目を接種し妊娠中に2回目を接種した母親は解析対象に含む)。 試験期間全体、B.1.617.2(デルタ)変異株の流行期(2021年7月1日~12月18日)およびB.1.1.259(オミクロン)変異株の流行期(2021年12月19日~2022年3月8日)に分け、乳児のCOVID-19による入院に対する母親のワクチン接種の有効性について、母親のワクチン接種のオッズ比を症例群と対照群とで比較することにより推定した。妊娠中のワクチン2回接種完了、乳児のCOVID-19入院に対する有効率は試験期間全体で52% 解析対象は、症例群537例(デルタ期181例、オミクロン期356例)、対照群512例(両群とも月齢中央値は2ヵ月)。妊娠中にワクチン2回接種を完了した母親から生まれた乳児は、症例群で16%(87/537例)、対照群で29%(147/512例)であった。 症例群では、113例(21%)がICUで治療を受け、そのうち64例(12%)は人工呼吸器装着または血管作動薬の投与を受けた。2例がCOVID-19により死亡したが、2例とも母親は妊娠中にワクチン接種を受けていなかった。 乳児のCOVID-19による入院に対する母親のワクチン接種の有効性は、試験期間全体で52%(95%信頼区間[CI]:33~65)、デルタ期で80%(95%CI:60~90)、オミクロン期で38%(95%CI:8~58)であった。母親のワクチン接種が妊娠20週以降に行われた場合の有効性は69%(95%CI:50~80)、妊娠初期(20週以前)の場合は38%(95%CI:3~60)であった。

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ICUでのビタミンC投与は敗血症に有効か/NEJM

 敗血症では、ビタミンC投与による抗酸化作用が酸化ストレスによる組織障害を軽減すると考えられているが、集中治療室(ICU)で昇圧薬治療を受けている敗血症の成人患者への、ビタミンC静脈内投与を評価した先行研究の結果は、相反するものだという。カナダ・シャーブルック大学のFrancois Lamontagne氏らは今回「LOVIT試験」において、ICUでの敗血症患者へのビタミンC投与はプラセボと比較して、28日の時点での死亡または持続的な臓器障害のリスクが有意に高いという、予想外の結果を確認した。研究の詳細は、NEJM誌2022年6月23日号で報告された。3ヵ国35のICUで、プラセボ対照無作為化第III相試験 LOVIT試験は、ICUで昇圧薬治療を受けている敗血症の成人患者への高用量ビタミンC投与の有効性の評価を目的とする多施設共同プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2018年11月~2021年7月の期間に、3ヵ国(カナダ、フランス、ニュージーランド)の35ヵ所のICUで参加者の登録が行われた(カナダ・Lotte and John Hecht記念財団の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、ICU入室から24時間以内で、主診断として感染症が証明または疑われ、昇圧薬の投与を受けている患者であった。被験者は、最長96時間にわたり6時間ごとに1回30~60分でビタミンC(50mg/kg)またはプラセボの静脈内投与を受ける群(すなわち200mg/kg/日、最大16回)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、28日の時点における死亡または持続的な臓器障害(昇圧薬、侵襲的人工呼吸器、腎代替療法の使用と定義)の複合とされた。主要アウトカム:44.5% vs.38.5% 863例が主解析の対象となり、ビタミンC群が429例(平均[±SD]年齢65.0±14.0歳、女性35.2%)、プラセボ群は434例(同意前に無作為化され、同意前に死亡した1例を除く433例で、65.2±13.8歳、40.0%)であった。全体の96.7%の患者が、予定された用量の90%以上の投与を受け、入室期間中央値は6日(IQR:3~12)、入院期間中央値は16日(IQR:8~32)だった。ICU入室中に併用された介入や生命維持療法の使用状況や期間は両群で同程度であった。 試験開始から28日の時点での複合アウトカム(死亡または持続的な臓器障害)の発現は、ビタミンC群が429例中191例(44.5%)で認められ、プラセボ群の434例中167例(38.5%)と比較して、リスクが有意に高かった(リスク比:1.21、95%信頼区間[CI]:1.04~1.40、p=0.01)。 複合アウトカムの個々の構成要素については、28日時点の死亡はビタミンC群が429例中152例(35.4%)、プラセボ群は434例中137例(31.6%)で発生し(リスク比:1.17、95%CI:0.98~1.40)、持続的な臓器障害はそれぞれ429例中39例(9.1%)および434例中30例(6.9%)でみられた(リスク比:1.30、95%CI:0.83~2.05)。 また、臓器障害スコア、バイオマーカー(組織低酸素症、炎症、血管内皮細胞傷害)、6ヵ月生存率、健康関連の生活の質(6ヵ月時のEQ-5D-5Lスコア)、ステージ3の急性腎障害、低血糖の発現に関しては、両群でほぼ同様であった。 事前に規定された安全性のアウトカムに、重大な群間差はなかった。有害事象は、ビタミンC群で4件、プラセボ群で1件みられた。ビタミンC群では、重篤なアナフィラキシーと重症低血糖が1例ずつ発現した。 著者は、「これらは予想外の知見であり、7日目までに測定された5つのバイオマーカーの評価を含む2次解析では、有害性について推定されるメカニズムは確認されなかった」としている。

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