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1.

双極症における片頭痛と関連する臨床的特徴

 双極症患者は、併存疾患を有していることが多く、片頭痛は最も一般的な併存疾患の1つであるといわれている。双極症における片頭痛の有病率に関する研究は増加しているが、関連する臨床的特徴、併存疾患、治療法は、いまだ十分に調査されておらず、一貫性も認められていない。フランス・ University of Clermont AuvergneのLudovic Samalin氏らは、成人双極症患者の大規模コホートを用いて、片頭痛に関連する臨床的特徴および併存疾患について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年6月15日号の報告。 対象は、FondaMental Advanced Centers of Expertiseに通院している双極症外来患者4,348例。社会人口統計学的および臨床的データは、標準化された手法を用いて収集した。片頭痛を含む医学的併存疾患の生涯診断は、自己報告、臨床医評価、病歴レビューに基づき行った。片頭痛と社会人口統計学的要因、臨床的特徴、併存疾患、薬剤との関連性を評価するため、多変量ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・双極症患者における片頭痛の有病率は20%であり、双極症II型で29.1%、双極症I型で19.9%であった。・多変量解析により、片頭痛と関連している因子として、以下が特定された。【若年】オッズ比(OR):0.98、95%信頼区間(CI):0.97〜0.99【女性】OR:2.15、95%CI:1.56〜2.95【睡眠障害】OR:1.06、95%CI:1.02〜1.11【小児期のトラウマ】OR:1.01、95%CI:1.00〜1.02【高血圧】OR:1.88、95%CI:1.13〜3.15【乾癬】OR:1.61、95%CI:1.01〜2.56【喘息】OR:1.65、95%CI:1.02〜2.67【第2世代抗精神病薬使用率の低さ】OR:0.65、95%CI:0.48〜0.87 著者らは「片頭痛は双極症で頻繁にみられる併存疾患であり、とくに若年、女性、睡眠障害やトラウマ歴を有する患者では、臨床的負担が増大する。双極症患者の片頭痛を軽減するためにも、気分の安定、睡眠マネジメント、トラウマサポートなど統合的な治療アプローチが必要とされることが明らかとなった」と結論付けている。

2.

第254回 肥満症治療薬の販売が絶好調!おかげで販売元は豊満に?

海外企業の多くは12月末が決算である。このため5月以降に佳境を迎える日本と違い、すでに主要企業の決算はほぼ出そろっている。医療に関係する企業で言うならば、やはり一番大きいのが製薬業界である。2023年実績で世界ランキング20位までの製薬企業のうち、日本企業ゆえにまだ決算が発表されていない武田薬品、大塚ホールディングスと非上場のためまだ発表されていない独・ベーリンガー・インゲルハイム以外の17社はすでに決算を発表済みだ。これら各社の決算結果では当然、各社の主要製品の売上高も公表されている。この各社発表の医療用医薬品の売上高をランキング化すると、改めて近年の傾向が見えてくる。そのトップ10を見ていきたい。なお、売上高はドル換算だが、各薬剤を円換算に表示すると、やや読みづらいと思うので、100億ドル=約1兆5,000億円を軸に各読者が概算で捉えていただければと思う。売上高トップ5、2024年で変わったことまず、2024年の売上高トップの医薬品は抗PD-1モノクローナル抗体のペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の294億8,200万ドルである。近年、免疫チェックポイント阻害薬ががん治療の主流を占める中で、2023年からこの薬が世界売上高トップにつけている。第2位が抗凝固薬のアピキサバン(同:エリキュース)の206億9,900万ドル(併売するブリストル・マイヤーズスクイブとファイザーの合算)。以下順に第3位がGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの注射薬(同:オゼンピック)の176億4,200万ドル、第4位が抗IL-4/13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ(同:デュピクセント)の139億4,700万ドル、第5位が抗HIV薬のビクテグラビルナトリウム・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドフマル酸塩の配合剤(同:ビクタルビ)の134億2,300万ドル。このトップ5は2023年とほぼ順位は同じなのだが1点だけ異なる点がある。2023年は第3位に抗TNFαモノクローナル抗体のアダリムマブ(同:ヒュミラ)がランクインしていた。同薬は免疫疾患に広く使われ、ペムブロリズマブが同年にトップになるまで、医療用医薬品売上高の王座だった。で、2024年にはどうなったのかというと、売上高89億9,300万ドルでトップ10圏外の第11位までランクダウンした。それもこれも2023年に特許が失効し、バイオ医薬品版ジェネリックのバイオシミラーが登場し始めたからである。ちなみに特許失効前の2022年の売上高は212億3,700万ドル。実に過去2年間で57.7%の減収である。製薬業界ではこの特許失効時期を境に該当製品の売上が急減することを「パテントクリフ」、日本語で直訳すると「特許の崖」と評するが、まさにその状況である。もっともこれでもアダリムマブはまだましなほうである。というのも、低分子の経口薬ならば、特許失効後半年程度で売上高の6割がジェネリック医薬品に置き換わるからである。ご存じのように低分子の経口薬と違い、培養が必要なバイオ医薬品では完全に同一条件で製造ができないため、バイオシミラーは先発のバイオ医薬品の同一成分ではなく同等・同質の成分。この結果、経口薬のジェネリック医薬品に比較的寛容な欧米の医師でも処方には慎重になりがちだ。6~10位にもある変化がさて第6位以降はどうだろう。第6位が抗IL-23p19モノクローナル抗体のリサンキズマブ(同:スキリージ)の117億1,800万ドル、第7位が抗CD38モノクローナル抗体のダラツムマブ(同:ダラザレックス)の116億7,000万ドル、第8位が持続性GIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチド(同:マンジャロ)の115億4,000万ドル、第9位が抗IL-12/23p40モノクローナル抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)の103億6,100万ドル、第10位が抗PD-1モノクローナル抗体のニボルマブ(同:オプジーボ)の93億400万ドル(ブリストル・マイヤーズスクイブ分のみの売上高)だった。第6~10位を2023年と比べると、トップ5と同じくある医薬品がトップ10外にランクダウンしている。それは一般人にとってはもはや喉元過ぎた熱さと言えるかもしれない、ファイザーの新型コロナウイルス感染症ワクチンのコミナティである。2023年には112億2,000万ドルの売上高だったが、2024年は53億5,300万ドルで52.3%の減収となった。もっとも新型コロナに限らず、感染症ワクチンはある種季節もの的な側面はあるため、取り立てて驚くような話でもない。一方、アダリムマブとコミナティのランクダウンに代わって2024年に新たにトップ10入りしたのが第6位のリサンキズマブと第8位のチルゼパチドである。前者はアダリムマブの製造販売元のアッヴィが戦略上、アダリムマブの後継品の1つに位置付けている医薬品である。現状、両薬で共通する適応症は乾癬と炎症性腸疾患だが、今後、新規患者では企業側自体がリサンキズマブに注力する可能性が高いため、アダリムマブの後退に代わって、より伸長していく可能性が高いだろう。そして第8位のチルゼパチドは前年比2.24倍という驚異的な売上伸長で初めてトップ10入りした。もともとは2型糖尿病治療薬として発売(同:マンジャロ)され、2025年4月11日に肥満症治療薬(同:ゼップバウンド)として発売が決定している。ちなみに第3位のセマグルチドも商品名としてのオゼンピックは2型糖尿病が適応だが、同一成分で肥満症を適応とするウゴービがある。ただ、以前の本連載でも触れたが、オゼンピック、マンジャロとも純粋に2型糖尿病治療薬として使われているとは言い難く、実際にはいわゆるダイエット目的の自由診療で相当程度使われ、今回の両製品の公式売上高もその分が相当含まれていると思われる。そして公式の肥満症治療薬としての2024年の製品売上高は、ウゴービが85億3,300万ドル、ゼップバウンドが49億2,600万ドルだった。それぞれ2023年比で1.86倍、24.6倍も売上高が伸長している。この調子だとウゴービ、ゼップバウンドともに2025年もかなりの売上伸長となりそうだ。ウゴービの場合は今回の集計では第12位で、2025年売上高はトップ10にGLP-1受容体作動薬関連が4製品もランクインする事態が現実味を帯びている。もちろんこれが適応症に沿って医学的に正しく使われているのならば何も問題はないが、そうではないことを否定できる人は誰もいないはずだ。もはや世界的に“なんだかなあ?”と言いたくなるような状況なのである。

3.

炎症性関節炎患者に対するメンタルヘルスケアには課題あり

 乾癬性関節炎や関節リウマチなどの炎症性関節炎患者は、うつ病や不安障害などの気分障害のリスクが大幅に高いにもかかわらず、こうしたメンタルヘルス上の懸念に対する医師の対応は十分ではないことが、新たな研究により明らかになった。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のMary De Vera氏らによるこの研究結果は、「Arthritis Research & Therapy」に1月21日掲載された。 この研究でDe Vera氏らは、ブリティッシュコロンビア州の行政保険データ(2000年1月2日〜2018年3月31日)を用いて、うつ病と不安障害のいずれかまたは両方を発症した炎症性関節炎(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ)患者に対する最小限の適切な薬物療法や心理療法の実施について評価した。最小限の適切な薬物療法は「84日分以上の抗うつ薬の処方」、最小限の適切な心理療法は「4回以上のカウンセリング/心理療法サービスの実施」と定義された。 うつ病を発症した炎症性関節炎患者6,951人(平均年齢54.8±18.3歳、女性65.5%)と不安障害を発症した炎症性関節炎患者3,701人(平均年齢52.9±16.8歳、女性74.3%)が特定された。炎症性関節炎のない患者を対照群とし、炎症性関節炎患者と年齢、性別、うつ病または不安障害の発症日(±5年)を基準に1対1の割合でマッチングさせた。 分析の結果、うつ病に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受けた患者の割合は、炎症性関節炎患者群で50.5%と19.6%、対照群で48.0%と19.7%であった。炎症性関節炎患者がうつ病に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受ける調整オッズ比(aOR)は、それぞれ1.09(95%信頼区間1.02〜1.17)と0.99(同0.90〜1.08)であり、薬物療法に関してのみ統計学的に有意であった。 一方、不安障害に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受けた患者の割合は、炎症性関節炎患者群で46.9%と20.2%、対照群で44.1%と19.0%であった。炎症性関節炎患者が不安障害に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受けるaORは、それぞれ1.10(95%信頼区間1.00〜1.21)と1.07(同0.94〜1.21)であり、薬物療法に関しては対照群に比べてやや高い傾向が認められたが、心理療法については対照群との間に有意な差は認められなかった。 De Vera氏は、「メンタルヘルスはあまり注目されないことが多く、メンタルヘルスの問題に対する治療が不十分であることが十分に立証されているため、これらの結果は必ずしも驚きではなかった。しかし、炎症性関節炎患者と炎症性関節炎を持たない患者との間に、うつ病と不安障害に対する最小限の適切な治療に関して有意な差がなかったことには、多少驚かされた。なぜなら、炎症性関節炎患者は医療機関を受診することも多いため、うつ病や不安障害に対する治療を受ける機会も多いはずだと考えていたからだ」と話す。その上で同氏は、「炎症性関節炎と精神疾患は複雑な関係にあり、特に、炎症は根本原因として重要な役割を果たしていることを考えると、このギャップは解決すべきだ」と述べている。

4.

アトピー、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者で多い併存疾患

 アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者において、アレルギー性またはアトピー性疾患(アレルギー性鼻炎、結膜炎、喘息を含む)、皮膚疾患、感染症が最も頻繁にみられる併存疾患であり、とくにアトピー性皮膚炎および乾癬患者では、静脈血栓塞栓症、リンパ腫、帯状疱疹、結核の発生率が高いことが明らかになった。福岡大学の今福 信一氏らは、日本のJMDCレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施、日本人皮膚疾患患者における併存疾患の有病率および発生率を評価した。The Journal of Dermatology誌オンライン版2025年2月7日号への報告より。 本研究では、2013年6月~2020年12月にJMDC請求データベースから収集されたデータが使用された。アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、または白斑と診断された患者は、年齢、性別、およびインデックス月(診断または治療の最初の記録があった月)によって、それらの疾患の診断による請求記録がない個人と1:1でマッチングされた。 主な結果は以下のとおり。・データには、アトピー性皮膚炎69万1,338例、乾癬5万1,988例、円形脱毛症4万3,692 例、白斑8,912例が含まれ、それぞれに対応するマッチング対照群が設定された。・それぞれの皮膚疾患患者において有病率の高かった併存疾患とマッチング対照群での有病率は、以下のとおりであった。アトピー性皮膚炎:アレルギー性鼻炎(47%vs.37%)、結膜炎(33%vs.23%)、喘息(27%vs.20%)、ウイルス感染症(22%vs.15%)、ざ瘡(11%vs.3%)乾癬:アレルギー性鼻炎(35%vs.28%)、結膜炎(21%vs.17%)、真菌感染症(17%vs.5%)、高血圧(16%vs.13%)、ウイルス感染症(16%vs.7%)円形脱毛症:アレルギー性鼻炎(40%vs.31%)、結膜炎(26%vs.19%)、ウイルス感染症(17%vs.8%)、喘息(14%vs.11%)、アトピー性皮膚炎(12%vs.3%)白斑:アレルギー性鼻炎(45%vs.36%)、結膜炎(30%vs.23%)、ウイルス感染症(21%vs.12%)、喘息(19%vs.16%)、アトピー性皮膚炎(16%vs.4%)・アトピー性皮膚炎コホートにおける併存疾患の発生率(10万人年当たり)は、マッチング対照群と比較して以下のとおりであった:静脈血栓塞栓症:51.4(95%信頼区間[CI]:48.3~54.7)vs.31.7(29.2~34.2)リンパ腫:13.8(12.2~15.6)vs.5.7(4.7~6.8)皮膚T細胞性リンパ腫:1.6(1.1~2.2)vs.0.1(0.0~0.4)帯状疱疹:740.9(728.8~753.1)vs.397.6(388.9~406.6)結核:8.4(7.1~9.7)vs.5.8(4.8~6.9)・乾癬コホートでのマッチング対照群との比較においても、同様の傾向が認められた。円形脱毛症および白斑のコホートでは、対照群と95%CIがほぼ重なっていた。

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いよいよ本丸!病態把握と鑑別にChatGPTを使う【誰でも使えるChatGPT】第2回

皆さん、こんにちは。近畿大学皮膚科の大塚です。前回は、Googleレビューの辛辣なコメントに、ChatGPTを用いて感情的にならずに対応するためのプロンプトをご紹介しました。クリニックに寄せられる不条理なクレームに対して、冷静かつ誠実な回答を自動的に生成することで、医療現場の負担を軽減する活用法を提案しましたが、いかがでしたでしょうか。さて、今回はシリーズ第2回として、より直接的な臨床場面での活用例をご紹介したいと思います。前回は「口コミ対応」に焦点を当てましたが、今回は日常の診療行為、つまり「病態把握と鑑別診断」を助けるためのプロンプトです。医療現場では、患者さんの主訴や随伴症状などを総合的に判断し、鑑別診断を考える作業が不可欠です。とりわけ皮膚科では、「似ているものの、まったく異なる疾患」が多く存在し、一般内科や他科領域に及ぶ症候を伴うことも少なくありません。こうしたとき、ChatGPTに相談することで、見落としがちな疾患や、一般的な鑑別疾患を素早くリストアップすることができます。もちろん、最終的な責任は医師である私たち自身にあり、AIが示す情報をうのみにしてはなりません。しかし、情報整理の一助として、あるいは診断プロセスを考える際の「ブレーンストーミング・パートナー」として、ChatGPTを使う手はあると思います。関連サイトChatGPT(臨床症状)から考えられる鑑別診断は?ここで、(臨床症状)の部分には、実際に手元にある患者さんの主訴や身体所見を具体的に入力します。たとえば、「顔面に境界明瞭な紅斑が出現し、そう痒と軽度の落屑を伴う」といった皮膚症状を入力することで、ChatGPTはその記述を基に鑑別診断リストを提案してくれます。20代女性、頬部に2週間続く境界明瞭な紅斑と軽度の落屑があり、そう痒感を訴えています。皮疹は環状を呈し、拡大傾向にあり、中心部はやや色素沈着が生じています。このような臨床所見から考えられる鑑別診断を、一般的な皮膚科疾患を中心に列挙し、それぞれの疾患について特徴的な所見や鑑別のポイントを簡潔に示してください。以下がChatGPTからの想定回答例です。この症例の臨床所見(頬部の境界明瞭な紅斑、軽度の落屑、そう痒感、環状の拡大傾向、中心部の色素沈着)から考えられる主な鑑別診断を以下に列挙し、それぞれの特徴的所見と鑑別ポイントを示します。白癬(体部白癬)環状紅斑、辺縁部の微細落屑が典型的。KOH検査で菌要素の確認が可能。乾癬境界明瞭な紅斑と落屑が特徴だが、環状配列はややまれ。肘・膝伸側や頭皮も要注意。紅斑性狼瘡(頬部紅斑)蝶形紅斑など特有の分布があり、日光過敏症や関節痛など全身所見を確認。類乾癬(pityriasis rosea)クリスマスツリー様配列や母斑を確認。軽度のそう痒が多い。多形滲出性紅斑病変がターゲット状を呈することある。他の全身症状や粘膜病変の有無もチェック。脂漏性皮膚炎頭皮や鼻唇溝など脂漏部位での落屑性紅斑が多いが、環状になることは少ない。こちらの頭の中になかった鑑別診断や、追加で確認すべき検査所見を思い出すきっかけになります。また、これに「鑑別を絞るために必要な追加情報」や「検査のオプション」などを尋ねるプロンプトを続けて入力することで、さらに洗練させることができます。今回のプロンプトは、クリニックや病院で日々行われる「鑑別診断の初期スクリーニング」をサポートするためのものです。ChatGPTを医師の「セカンドオピニオン的な存在」として活用することで、見落としを減らし、より効率的で的確な診療プロセスを追求する手掛かりとなるでしょう。次回からは、さらに一歩進んで、治療戦略やガイドラインに基づくマネジメントプランをChatGPTに助言させる活用法など、より専門的な使い方をご紹介していく予定です。お楽しみに。

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自己免疫性皮膚疾患は心臓病のリスク増加につながる

 一部の皮膚疾患患者は心臓病の早期スクリーニングを受ける必要があるかもしれない。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター皮膚科のHenry Chen氏らの最新の研究によると、免疫システムが自己を攻撃する自己免疫性皮膚疾患患者では動脈硬化を発症するリスクが対象群と比べて72%増加することが、明らかになった。同氏らによる研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月4日掲載された。 全身性エリテマトーデス(SLE)は全身に炎症を引き起こし、皮膚、関節、臓器に損傷を与える疾患である。米疾病対策センター(CDC)の報告によれば、米国にはSLE患者が約20万4,000人存在し、そのうちの少なくとも80%が皮膚症状を発症している。一方、皮膚のみに症状が現れることもあり、この病態は皮膚エリテマトーデス(CLE)と診断される。これまでに、SLEや乾癬のような自己免疫疾患の患者では、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが高まることが報告されている。しかし、CLE患者では、メタボリックシンドロームやがんのリスクが高まることは報告されてはいるものの、ASCVDのリスクについてはこれまで検証されてこなかった。 この研究では、IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseの2018年から2020年までの保険請求データが後ろ向きに解析された。具体的には、CLE患者群8,138人、SLE患者群2万4,675人、乾癬患者群19万2,577人を無病対照群8万1,380人と比較し、ASCVDの有病率および発症リスクを検証した。無病対照群はSLE、CLE、乾癬を発症していない人と定義し、年齢、性別、保険の種類などをCLE患者群とマッチングさせた。ASCVDは冠動脈疾患、心筋梗塞または脳血管障害の既往と定義。ASCVDの有病率と発症リスクの比較には、多変量ロジスティック回帰分析とCox比例ハザードモデルが用いられた。 多変量ロジスティック回帰分析によるASCVDの有病率は、無病対照群と比較してCLE患者群で72%(オッズ比1.72、95%信頼区間1.45~2.02)、SLE患者群で141%(同2.41、2.14~2.70)有意に高くなっていた(いずれもP<0.001)。 Cox比例ハザードモデルによるASCVDの発症リスクは、無病対照群と比較してSLE患者群(ハザード比2.23、95%信頼区間2.05~2.43)、CLE患者群(同1.32、1.13~1.55)で、有意な増加が認められた(いずれもP<0.001)。一方、乾癬患者群(同1.06、0.99~1.13)では統計学的有意性は認められなかった。 これらの結果を受けて研究グループは、「SLEやCLEはASCVDのリスク増加と関連しており、これらの患者の担当医には、適切なスクリーニング検査の実施と専門医への紹介が求められる可能性がある。また担当医は、心臓によい生活習慣(健康的な食事、適度な運動、喫煙の見直しなど)の重要性について患者にアドバイスを行う必要があるのではないか」と述べている。また、「これらの患者には、血圧とコレステロールの定期的なモニタリング、迅速な治療が必要になるかもしれない。喫煙を始めとしたASCVDのリスク因子についても今後の検証が必要である」と付言している。

7.

日本人乾癬患者へのデュークラバシチニブ、年齢やBMIごとの有効性

 TYK2阻害薬デュークラバシチニブの乾癬に対する有効性は確認され、本邦においても2022年に承認・発売されているが、年齢およびBMIによる層別解析を含む長期的な実臨床での有効性の検討は十分ではない。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らは、日本人乾癬患者におけるデュークラバシチニブの実臨床における52週時での有効性を、年齢およびBMIにより層別化して評価する前向き研究を実施。結果をThe Journal of Dermatology誌オンライン版1月28日号に報告した。 本研究は、2022年12月~2024年8月に実施された。中等症~重症の乾癬を有する15歳以上の日本人患者107例を対象とし、デュークラバシチニブ6mgを1日1回、52週間投与した。治療効果は、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)75、PASI 90、PASI 100の達成率およびその他の主要な臨床指標により評価。データは年齢(<65歳 vs.≧65歳)およびBMI(<25 vs.≧25)により層別化された。 主な結果は以下のとおり。・PASIスコアの平均値は、年齢およびBMIにより層別化されたいずれのグループにおいても、52週までに同様の減少がみられた。・52週時点でのPASI 75、PASI 90、PASI 100の達成率は、65歳未満の患者ではそれぞれ86.36%、65.22%、39.13%であった。65歳以上の患者ではそれぞれ86.36%、59.09%、13.64%であり、65歳以上の患者ではPASI 100の達成率がやや低い傾向がみられた。・52週時点でのPASI 75、PASI 90、PASI 100の達成率は、BMI<25の患者ではそれぞれ88.24%、82.86%、29.41%であった。BMI≧25の患者では81.82%、73.33%、18.18%であり、4週、16週、24週、40週時点においてもこれらの達成率がやや低い傾向がみられた。 著者らは、デュークラバシチニブが年齢およびBMIにより層別化された全患者群において、52週時の乾癬の臨床指標を改善したとまとめている。そのうえで本研究結果は、デュークラバシチニブが高齢の乾癬患者に対しても若年〜中高年患者と同様に有効である可能性を示唆した一方で、BMI≧25の患者では、BMI<25の患者と比較して効果がやや低い可能性を示唆したと考察している。

8.

乾癬性関節炎〔PsA:psoriatic arthritis〕

1 疾患概要■ 定義乾癬に関節炎(炎症性関節症)を伴ったもの。「関節症性乾癬」とも呼ばれる。乾癬は尋常性(局面型)乾癬が最も多いが、乾癬性紅皮症や汎発性膿疱性乾癬に関節炎が合併することもある。■ 疫学国内外でいくつもの疫学データがあり、乾癬患者の10%以下から多いものでは40%を超えるとする報告もある1)。日本乾癬学会の疫学データでは、乾癬患者の15.2%が2)、また、リウマチ科主導で行われた多施設共同のデータでは14.3%が乾癬性関節炎を有していた。 したがって、紹介患者を受け入れる基幹病院では、乾癬患者のおおよそ14~15%が乾癬性関節炎と推定される。東アジアにおける疫学をみると、乾癬患者における乾癬性関節炎の占める割合は、韓国は9~14.1% 、中国は5.3~7.1% と報告されている3)。働き盛りの青壮年期に多く、わが国では乾癬乾癬性関節炎ともに男性が多い。■ 病因関節リウマチが滑膜炎であるのに対し、乾癬性関節炎は付着部炎がprimaryな変化と考えられている。付着部は、筋肉や腱が骨に付着する部位で、微細な外的刺激が繰り返し加わることにより付着部に炎症が惹起される。乾癬性関節炎でも二次的な滑膜炎がみられることもある。■ 症状皮膚症状と関節症状があり、皮膚症状は落屑性紅斑(乾癬)で、好発部位は頭、肘、膝、臍などだが、頭の先から足のつま先までどこにみられても不思議ではない。関節症状は末梢関節が侵される頻度が高いが、大関節(頸椎、腰椎、仙腸関節など)が侵されることもまれではない。末梢関節が侵されると、罹患関節の腫脹や変形がみられることもある。また、乾癬性関節炎の中には、皮膚症状が目立たない(非常に軽度の)場合もある。そのほか、爪乾癬(爪の点状陥凹、肥厚、白濁など)がみられることが多く、爪の変化とその近傍の第一関節の痛みや腫れが一緒にみられることもある。皮膚症状(乾癬)が先行、または皮膚症状と関節症状がほぼ同時期に出現する場合が9割以上を占め、関節炎が先行する頻度は少ない4)。■ 分類関節症状により、以下の5群に分けられている (Moll&Wrightの分類)5)。(1)非対称性関節炎型(Oligo-arthritis type)(2)関節リウマチ類似の対称性関節炎型(Poly-arthritis type)(3)定型的関節炎型(DIP type)(4)ムチランス型(5)強直性脊椎炎型(Ankylosing spondylitis[AS]type)■ 予後乾癬においてはさまざまな併存症がみられる。乾癬性関節炎においても、肥満、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病が多い。さらに、動脈硬化症や心筋梗塞の心血管病変が予後に影響することが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)CASPAR(Classification criteria for psoriatic arthritis)の分類基準がある。炎症性関節症があるのが前提で、3点以上で乾癬性関節炎と診断するとあるが、そもそも患者は皮膚症状がないと皮膚科を受診しないので、乾癬があれば2点、爪乾癬がある(1点)かリウマトイド因子が陰性(1点)であれば、それだけで3点を超えてしまう。他の項目に、指趾炎と呼ばれる手や足の指の芋虫状の腫れ(1点)と、手足の単純X線所見で関節周囲の骨新生像(1点)があるが、どちらも早期にみられる所見ではない。乾癬性関節炎を診断するいくつかの特徴的な症状に、付着部炎や指趾炎があるが、これらがみられるときはすでに早期ではない。したがって早期診断はきわめて難しい。■ 鑑別診断高齢者は膝や腰を始め関節の痛みを訴えることが多い。変形性関節症や関節リウマチを始め、リウマチ性多発筋痛症、痛風、偽痛風など関節の痛みや変形を来すさまざまな疾患との鑑別を要する。とくに手指の変形性関節症を鑑別する必要がある。変形性関節症は、手指DIP関節の変形だけのものは容易だが、痛みを伴うinflammatory osteoarthritis、 erosive osteoarthritisは、乾癬性関節炎との鑑別が難しい。関節リウマチ患者は女性に多く、罹患関節数が少ないこと、DIP関節が罹患することはまれで、同一レベルの関節が侵されるのに対し(横方向)、乾癬性関節炎では同じ指の異なる関節が縦方向に侵され、“Ray distribution”と呼ばれる。血清リウマチ因子や抗CCP抗体は、乾癬性関節炎の1割程度でも陽性にみられる。関節滑膜の増殖は関節リウマチの方が強く、それを反映し両者の差異を検出しうる関節エコーが有用とされる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)乾癬性関節炎は、皮膚症状が優位な症例、関節症状が優位な症例、どちらも症状が顕著な症例などがある。したがって、皮膚、関節それぞれの重症度をまず評価する。GRAPPAのガイドラインでは、乾癬性関節炎の症状を、末梢関節炎、体軸性関節炎、付着部炎、指趾炎、乾癬、爪病変の6つのドメインに分け、それぞれの症状ごとに、外用薬、非ステロイド系消炎鎮痛薬、理学療法、ステロイド局注などでコントロール不十分な症例に対しての内服薬(synthetic DMARD)や注射薬(biologic DMARD)の治療法を提示している。内服薬は、通常の非ステロイド系消炎鎮痛薬に加え、メトトレキサートとアプレミラスト(商品名:オテズラ錠)が、乾癬性関節炎に使われる代表的な薬剤である。メトトレキサートは、骨髄抑制と肝障害が頻度の高い注意すべき副作用で、間質性肺炎やHBV再活性化なども頻度は少ないが注意しなくてはならない。アプレミラストは、消化器症状、頭痛の頻度の高い副作用ではあるが、重篤な症状は少ないので高齢者にも使いやすい。新規内服薬としてJAK阻害剤が登場したほか、乾癬性関節炎の関節変形の進行を抑制するには生物学的製剤が中心的に使用されている。生物学的製剤は、TNF、IL-17に対する抗体製剤が使われることが多いが、ほかにIL-23の標的薬もある。4 今後の展望乾癬の治療薬の進歩は目覚ましく、生物学的製剤やJAK阻害剤内服薬が、適応拡大も含めて今後も新規に参入してくると思われる。5 主たる診療科皮膚科、リウマチ内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報日本乾癬患者連合会(患者とその家族および支援者の会)1)山本俊幸. Visual Dermatology. 2017;16:690-693.2)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2017;44:e121.3)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2018;45:273-278.4)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2016;43:1193-1196.5)山本俊幸. 日皮会誌. 2022;132;19-25.公開履歴初回2025年1月8日

9.

乾癬治療のデュークラバシチニブ、長期投与の有用性

 中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬において、3年間のデュークラバシチニブによる継続治療は安全かつ有効であることを、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のApril W. Armstrong氏らが、3試験(POETYK PSO-1、PSO-2、長期継続試験)の結果のプール解析を行い報告した。デュークラバシチニブ治療は3年間にわたり一貫した安全性プロファイルを示し、有害事象(AE)および重篤な有害事象(SAE)の発現率は、時間の経過とともに低下または同程度であった。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬患者に対するデュークラバシチニブの長期安全性と有効性を、さらに支持するものであった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。 研究グループは、PSO-1、PSO-2試験(52週間の第III相無作為化二重盲検試験)、長期継続試験(PSO-1試験またはPSO-2試験を完了した被験者が対象)における、3年間(148週)のデュークラバシチニブの安全性と有効性を評価した。 対象は、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬患者で、PSO-1、PSO-2試験における52週の治療を完了後、事前に指定された長期継続試験に登録が可能であった患者とした。長期継続試験の登録は、2019年8月12日に開始。世界的なCOVID-19パンデミックのピーク時に行われた。安全性および有効性の評価は2022年6月15日まで行われ、これらのデータは2024年6月28日まで解析された。 PSO-1、PSO-2試験では、患者をプラセボ群、デュークラバシチニブ群(6mgを1日1回)、アプレミラスト群(30mgを1日2回)に1対2対1の割合で無作為に割り付け投与した。長期継続試験に登録された患者は、非盲検下でデュークラバシチニブ6mgを1日1回投与された。 安全性のアウトカムは、デュークラバシチニブを1回以上投与された患者を対象に評価した。 有効性のアウトカムは、PSO-1、PSO-2試験の1日目からデュークラバシチニブ治療を受け、長期継続試験に組み入れられた患者を対象に、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)75/90達成率、static Physician’s Global Assessment(sPGA)スコア0(消失)または1(ほぼ消失)達成率(sPGA 0/1達成率)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1,519例がデュークラバシチニブを1回以上投与され、513例が長期継続試験に組み入れられた。・100人年当たりの曝露期間で調整した有害事象の発現率(EAIR)は、最初の1年間と3年間で減少または同程度であった。AEのEAIRはそれぞれ229.2、144.8で、SAEのEAIRはそれぞれ5.7、5.5、中止に至ったAEのEAIRはそれぞれ4.4、2.4、死亡のEAIRはそれぞれ0.2、0.3であった。・多くみられたAE(100人年当たりのEAIR≧5)の最初の1年間、3年間の発現率は、上咽頭炎がそれぞれ26.1、11.4で、COVID-19がそれぞれ0.5、8.0、上気道感染がそれぞれ13.4、6.2であった。・注目すべきAE(帯状疱疹、主要心血管イベント、悪性腫瘍など)のEAIRは、いずれも低く、最初の1年間と3年間で減少または同程度であった。・臨床的寛解は、3年にわたって維持された。PASI 75、PASI 90、sPGA 0/1の1年時と3年時の達成率は以下のとおりであった。 PASI 75:72.6%、73.2% PASI 90:45.6%、48.1% sPGA 0/1:58.1%、54.1%

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超加工食品の大量摂取は活動性乾癬と関連

 超加工食品はさまざまな健康問題と関連付けられているが、新たな研究で、自己免疫性皮膚疾患である乾癬もそのリストに追加される可能性のあることが示唆された。アンリ・モンドール病院(フランス)の皮膚科医であるEmilie Sbidian氏らによるこの研究結果は、「JAMA Dermatology」に11月27日掲載された。Sbidian氏は、「この研究結果により、超加工食品の大量摂取と活動性乾癬の状態との間に関連性があることが明らかになった」と述べている。 超加工食品とは、飽和脂肪(飽和脂肪酸を多く含む脂肪のこと)、デンプン、添加糖など、主にホールフードから抽出された物質を主成分とする食品で、味や見た目を良くし、保存性を高めるために、着色料、乳化剤、香料、安定剤など、さまざまな添加物も含まれている。パッケージ入りの焼き菓子、砂糖入りシリアル、インスタント食品、温めるだけで食べられる製品、デリで売られているスライスした冷製の肉やチーズの盛り合わせなどが、代表的な超加工食品の例である。 超加工食品の大量摂取は、2型糖尿病、がん、心血管疾患、炎症性腸疾患など、さまざまな疾患と関連していることが、過去の研究で示されている。今回の研究でSbidian氏らは、2021年11月29日から2022年6月6日の間に収集されたNutri-Net-Santeコホート研究参加者(1万8,528人、年齢中央値62歳、女性74%)のデータを用いて、超加工食品の摂取と活動性乾癬との関連について検討した。対象者のうち、1,825人(10%)が乾癬に罹患しており、そのうちの803人(4%)が活動性乾癬と診断されていた。 年齢、性別、教育歴、喫煙状況、身体活動量、BMI、飲酒量、併存疾患、記録した食事データの件数を調整して解析した結果、超加工食品の摂取量が最も多い(第3三分位群)の人では摂取量が最も少ない群(第1三分位群)の人に比べて、活動性乾癬に罹患している可能性が36%有意に高いことが示された(調整済みオッズ比1.36、95%信頼区間1.14〜1.63)。 ただし、この研究では、超加工食品の摂取と活動性乾癬の関連性が示されたに過ぎず、因果関係は明らかになっていない。それでも、両者の関連は乾癬のさまざまなリスク因子を考慮した後でも有意であったことから、Sbidian氏らは、「超加工食品と乾癬の関連は、肥満を介した影響だけでは説明できない可能性があることを示唆する結果だ」と述べている。

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統合失調症患者における21の併存疾患を分析

 統合失調症とさまざまな健康アウトカムとの関連性を評価した包括的なアンブレラレビューは、これまでになかった。韓国・慶熙大学校のHyeri Lee氏らは、統合失調症に関連する併存疾患の健康アウトカムに関する既存のメタ解析をシステマティックにレビューし、エビデンスレベルの検証を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2024年10月18日号の報告。 統合失調症患者における併存疾患の健康アウトカムを調査した観察研究のメタ解析のアンブレラレビューを実施した。2023年9月5日までに公表された対象研究を、PubMed/MEDLINE、EMBASE、ClinicalKey、Google Scholarより検索した。PRISMAガイドラインに従い、AMSTAR2を用いて、データ抽出および品質評価を行った。エビデンスの信頼性は、エビデンスの質により評価および分類した。リスク因子と保護因子の分析には、等価オッズ比(eRR)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本アンブレラレビューには、19ヵ国、6,600万人超の参加者を対象とし、21の併存疾患の健康アウトカムを評価した88件の原著論文を含む9件のメタ解析を分析に含めた。・統合失調症患者は、以下の健康アウトカムとの有意な関連が認められた。【喘息】eRR:1.71、95%信頼区間[CI]:1.05〜2.78、エビデンスのクラスおよび質(CE):有意でない【慢性閉塞性肺疾患】eRR:1.73、95%CI:1.25〜2.37、CE:弱い【肺炎】eRR:2.63、95%CI:1.11〜6.23、CE:弱い【女性患者の乳がん】eRR:1.31、95%CI:1.04〜1.65、CE:弱い【心血管疾患】eRR:1.53、95%CI:1.12〜2.11、CE:弱い【脳卒中】eRR:1.71、95%CI:1.30〜2.25、CE:弱い【うっ血性心不全】eRR:1.81、95%CI:1.21〜2.69、CE:弱い【性機能障害】eRR:2.30、95%CI:1.75〜3.04、CE:弱い【骨折】eRR:1.63、95%CI:1.10〜2.40、CE:弱い【認知症】eRR:2.29、95%CI:1.19〜4.39、CE:弱い【乾癬】eRR:1.83、95%CI:1.18〜2.83、CE:弱い 著者らは「統合失調症患者は、呼吸器、心血管、性機能、神経、皮膚に関する健康アウトカムに対する広範な影響が認められており、統合的な治療アプローチの必要性が明らかとなった。主に、有意ではなく、エビデンスレベルが弱いことを考えると、本知見を強化するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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化膿性汗腺炎への適応が追加されたビメキズマブ、その特徴は?/UCB

 ユーシービージャパンは、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)について、2024年11月26日に化膿性汗腺炎(HS)の適応追加に関するメディアセミナーを行った。同薬剤は、9月24日にHSに対する適応追加の承認を取得している。セミナーでは、藤田 英樹氏(日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野)がHSの病態とビメキズマブの概要について講演を行った。隠れているところにできる悩ましい疾患 HSは、痛みを伴う慢性的かつ再発性の炎症性皮膚免疫疾患だ。腋窩や臀部、鼠径部、肛門周囲、乳房下部などの間擦部に好発し1)、しばしば炎症性の結節が生じ、膿瘍形成に進行、さらに毛包が破裂して排膿を伴う瘻孔を形成して、その後瘢痕化することがある2)。HSは痛みや瘢痕により、患者のQOLを損ないやすい疾患といえる。 HSに適応がある生物学的製剤としては、2019年2月に適応追加されたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体のアダリムマブがある。アダリムマブのターゲットであるTNFαはさまざまな細胞から分泌されるが、ビメキズマブのターゲットであるIL-17A/IL-17Fは主にT細胞から分泌される。藤田氏は「既存の薬剤とターゲットが異なるビメキズマブが治療の選択肢に加わることは治療上良いこと」としたうえで、「使い分けは専門家でも非常に難しく、区別する検査や方法がないのが現状だ」と課題を述べた。 今回の承認は、中等症~重症の化膿性汗腺炎患者を対象に、ビメキズマブの有効性と安全性を評価した2つの第III相試験、BE HEARD I試験および日本も参加したBE HEARD II試験に基づいている。 BE HEARD II試験の主要評価項目である、HSに対する治療効果の評価指標HiSCR50の達成率(16週時点)は、プラセボ群の32.2%に対しビメキズマブ320mg Q4W群53.8%、同320mg Q2W群52.0%であり、ビメキズマブ群のいずれもプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善を示した(ビメキズマブ320mg Q4W群:p=0.004、同320mg Q2W群:p=0.003)。また、より厳格な指標であるHiSCR75の達成率(16週時点)においても、ビメキズマブ群はプラセボ群を上回る結果を示した。両試験における安全性のプロファイルは過去の乾癬などに対する臨床試験のデータと一致しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。疾患の認知度向上が課題 最後に、HS患者の奥村 幸代氏が登壇し、自身の経験について述べた。奥村氏はHSが発症してから診断を受けるまで年単位の時間がかかり、計10ヵ所以上の膿瘍摘出術を受けながら、いまだ症状が落ち着かない現状だという。疾患の情報が不足していることや患者会がなく患者間の情報共有が容易ではないこと、指定難病ではないことからの金銭的な負担を訴えた。今後については「HSの認知度が上がることで、医療へのアクセスが改善されることを期待している」と述べた。

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鼻腔ぬぐい液検査でCOVID-19の重症度を予測できる?

 鼻腔ぬぐい液を用いた検査が、新型コロナウイルスに感染した人のその後の重症度を医師が予測する助けとなる可能性のあることが、新たな研究で示された。この研究結果を報告した、米エモリー大学ヒト免疫センター(Lowance Center for Human Immunology)およびエモリー・ワクチンセンターのEliver Ghosn氏らによると、軽度または中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者の70%以上で特定の抗体が作られており、これらの抗体が、症状の軽減や優れた免疫応答、回復の速さに関連していることが明らかになったという。この研究の詳細は、「Science Translational Medicine」11月6日号に掲載された。 これらの抗体は身体を攻撃する自己抗体で、一般に関節リウマチや炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などの自己免疫疾患に関連しているという。論文の上席著者であるGhosn氏は、「自己抗体は一般に病的状態や予後不良と関連しており、より重篤な疾患であることを示す炎症の悪化原因となる」と説明している。COVID-19患者を対象とした先行研究では、血液中の自己抗体は、生命を脅かす状態の兆候であることが示されている。しかし、こうした研究は、実際の感染部位である鼻ではなく血液を調べたものであったとGhosn氏らは言う。 Ghosn氏らは、鼻腔内で局所的に生成される抗体をより正確に測定するために、FlowBEATと呼ばれる新しいバイオテクノロジーツールを開発した。FlowBEATは、標準的な鼻腔ぬぐい液を用いて数十種類のウイルス抗原や宿主抗原に対する全てのヒト抗体を高感度かつ効率的に同時測定できる。このツールを用いれば、鼻腔内の自己抗体も検出できるため、COVID-19の重症度を予測することも可能なのだという。 研究グループは、このツールを用いて、129人から収集した気道および血液サンプルを解析した。その結果、軽度から中等度のCOVID-19患者の70%以上で、感染後に鼻腔内のIFN-αに対するIgA1型自己抗体が誘導され、この抗体が新型コロナウイルスに対する免疫応答の強化、症状の軽減、回復の促進と関連していることが明らかになった。また、これらの自己抗体は、宿主のIFN-α産生のピーク後に生成され、回復とともに減少することが示され、IFN-αと抗IFN-α応答の間でバランスが調整されていることも示された。一方、血液中のIFN-αに対するIgG1型自己抗体は、症状悪化と強い全身炎症を伴う一部の患者で遅れて現れることが確認された。 これは、新型コロナウイルスに対する鼻腔内での免疫応答は、血液中の免疫応答とは異なっていることを示唆している。鼻腔内の自己抗体はウイルスに対して防御的に働くのに対して、血液中の自己抗体はCOVID-19を重症化させるのだ。Ghosn氏は、「われわれの研究結果の興味深い点は、鼻腔内の自己抗体の作用が、COVID-19では、通常とは逆だったことだ。鼻腔内の自己抗体は感染後すぐに現れ、患者の細胞によって産生される重要な炎症分子を標的としていた。また、おそらく過剰な炎症を防ぐために、これらの自己抗体は炎症分子を捉え、患者が回復すると消失した。このことは、身体がバランスを保つために、これらの自己抗体を利用していることを示唆している」とエモリー大学のニュースリリースの中で説明している。 論文の筆頭著者であるエモリー大学のBenjamin Babcock氏は、「現時点では、われわれは、感染が起こる前の感染リスクを調べるか、回復後に感染経過を分析するかのどちらかしかできない。もし、クリニックでリアルタイムに免疫応答をとらえることができたらどうなるかを想像してみてほしい。ジャスト・イン・タイムの検査によって、医師や患者は、より迅速でスマートな治療の決定に必要な情報をリアルタイムで得られるようになるかもしれない」と期待を示している。

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免疫療法を受けるがん患者は乾癬に注意

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けるがん患者は、ICI以外(化学療法または分子標的薬)による治療を受けているがん患者と比較して、乾癬のリスクが高いことが、台湾・国防医学院のSheng-Yin To氏らによる全国規模のコホート研究で示された。ICIによる免疫療法は画期的ながん治療として認知されているが、自己免疫疾患の発症などの免疫関連有害事象に関する懸念も存在する。著者は、「今回の結果は、最適ながん治療を確実に行えるように、臨床医と患者は免疫療法に伴う乾癬のリスク上昇を認識しておくべきことの重要性を強調するものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Taiwan National Health InsuranceのデータベースとTaiwan Cancer Registryのデータを用いた。ICIの有無による乾癬リスクはtarget trial emulationのデザインを用いて評価した。 対象は、2019年1月1日~2021年6月30日にStageIII/IVのがんで抗がん治療を受けた患者とし、ICIによる治療を受けた患者(ICI群)と化学療法または分子標的薬による治療を受けた患者(非ICI群)に分類した。2023年5月~2024年7月にデータ解析を行った。 主要アウトカムは、追跡期間中の乾癬の発症とした。逆確率重み付け法(IPTW)を用いて潜在的な交絡因子の影響を軽減し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルにより乾癬リスクのハザード比(HR)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、抗がん治療を受けた13万5,230例(平均年齢62.94歳[標準偏差:13.01]、女性45.1%)。・ICI群は3,188例、非ICI群は13万2,042例であった。・ICI群では、乾癬の発症率が1,000人年当たり5.76件であり、非ICI群の同1.44件と比べて高かった。・交絡因子の補正後においても、ICI群は乾癬の発症リスクが高かった(IPTW補正後HR:3.31、IPTW補正後部分分布HR:2.43)。・試験開始からの解析と治療中の解析のいずれにおいても、以上の結果は一貫していた。また、すべての追跡期間とすべての感度解析においても結果は一貫して強固なものであった。

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乾癬への生物学的製剤、真菌感染症のリスクは?

 生物学的製剤の投与を受けている乾癬患者における真菌感染症リスクはどれくらいあるのか。南 圭人氏(東京医科大学皮膚科)らの研究グループは、臨床現場において十分に理解されていないその現状を調べることを目的として、単施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、インターロイキン(IL)-17阻害薬で治療を受けた乾癬患者は、他の生物学的製剤による治療を受けた患者よりも真菌感染症、とくにカンジダ症を引き起こす可能性が高いことが示された。さらに、生物学的製剤による治療を開始した年齢、糖尿病も真菌感染症の独立したリスク因子であることが示された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年9月30日号掲載の報告。 研究グループは、生物学的製剤の投与を受けている乾癬患者における真菌感染症の罹患率とリスクを評価することを目的として、乾癬患者592例を後ろ向きに調査した。 主な結果は以下のとおり。・73/592例(12.3%)において真菌感染症が確認された。・IL-17阻害薬を使用した患者は、他の生物学的製剤を使用した患者よりも真菌感染症の発生率が高率であった。・真菌感染症のリスク因子は、生物学的製剤の種類(p=0.004)、生物学的製剤による治療開始時の年齢(オッズ比:1.04、95%信頼区間:1.02~1.06)、および糖尿病(同:2.40、1.20~4.79)であった。 著者らは、本研究には生物学的製剤による治療を受けなかった患者が対象に含まれていなかったこと、使用されていた生物学的製剤の種類が多くの患者で変更されていたことなどの限界を指摘している。

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乾癬の光線療法、自宅治療は外来治療に非劣性

 乾癬に対するナローバンドUVB療法について、自宅で行う同治療の有効性は外来治療との比較において非劣性であり、患者の負担は少ないことが示された。米国・ペンシルベニア大学のJoel M. Gelfand氏らが多施設共同無作為化非劣性試験「Light Treatment Effectiveness study:LITE試験」の結果を報告した。乾癬に対する外来治療でのナローバンドUVB療法は費用対効果が高いが、患者のアクセスに課題がある。一方、自宅治療は患者の負担は少ないが臨床データは限定的で、とくに肌の色が濃い患者のデータが不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年9月25日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬に対するナローバンドUVB療法について、自宅治療の外来治療に対する非劣性を検討することを目的として、米国内の大学および民間の皮膚科診療所42施設において、医師主導の非盲検並行群間比較プラグマティック試験を実施した。試験登録期間は2019年3月1日~2023年12月4日であり、2024年6月までフォローアップが行われた。 12歳以上の尋常性乾癬または滴状乾癬の患者を対象とし、ガイドモード付き線量測定機能を備えた家庭用ナローバンドUVB照射機で治療を受ける群(自宅治療群)または診療所でナローバンドUVB療法を受ける群(外来治療群)に1対1の割合で割り付けた。治療期間は12週間、治療終了後の観察期間は12週間とした。 主要有効性アウトカムは2つで、介入終了時のPGA(Physician Global Assessment)スコア0/1(皮膚症状の消失/ほぼ消失)と、観察期間終了時のDLQI(Dermatology Life Quality Index)スコア5以下(QOLへの影響なし/軽微)であった。 主な結果は以下のとおり。・783例が登録された(平均[SD]年齢48.0[15.5]歳、女性376例[48.0%]、自宅治療群393例、外来治療群390例)。・被験者のスキンフォトタイプ(SPT)は、I/IIが350例(44.7%)、III/IVが350例(44.7%)、V/VIが83例(10.6%)であった。また、全身治療を受けていたのは93例(11.9%)であった。ベースライン時の平均(SD)PGAスコアは2.7(0.8)、DLQIスコアは12.2(7.2)であった。・12週時に、PGAスコア0/1を達成した患者の割合は、自宅治療群32.8%(129例)、外来治療群25.6%(100例)、DLQIスコア5以下を達成した患者の割合は、それぞれ52.4%(206例)、33.6%(131例)であった。・自宅治療は外来治療に対し、全患者集団およびすべてのSPTにわたって、PGAとDLQIに関して非劣性を示した。・自宅治療群は外来治療群と比較して、治療アドヒアランスが良好であり(51.4%[202例]vs.15.9%[62例]、p<0.001)、患者の間接費用の負担も少なかったが、持続性紅斑エピソードは多かった(5.9%[治療7,957回中466回]vs.1.2%[3,934回中46回]、p<0.001)。・いずれの群でも有害事象による治療中止はなく、忍容性は良好であった。

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中等症~重症の尋常性乾癬、経口TYK2阻害薬zasocitinibが有望

 チロシンキナーゼ2(TYK2)に高い選択性を示すアロステリック阻害薬zasocitinib(TAK-279)は、尋常性乾癬の新たな経口治療薬として有望であることが示された。米国・カリフォルニア大学のApril W. Armstrong氏らが、海外第IIb相二重盲検無作為化比較試験の結果を報告した。本試験において、1日1回5mg以上のzasocitinibはプラセボと比較して、12週間にわたり良好な皮膚症状の改善が認められた。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月21日号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象としてzasocitinibの有効性、安全性および忍容性を評価することを目的に、2021年8月11日~2022年9月12日の期間に米国47施設とカナダ8施設で試験を実施した。 本試験は、12週間の治療期間と4週間のフォローアップ期間で構成された。適格基準は、18~70歳、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア12以上、Physician’s Global Assessmentスコア3以上、尋常性乾癬の皮疹面積が体表面積(BSA)の10%以上などであった。 被験者を1日1回zasocitinib 2mg、同5mg、同15mg、同30mgまたはプラセボを投与する群へ無作為に均等に割り付け、12週間投与した。 主要有効性エンドポイントは、12週時点におけるPASI 75(ベースラインから75%以上改善)達成率とした。副次有効性エンドポイントは、PASI 90(ベースラインから90%以上改善)達成率、PASI 100(PASIスコア0)達成率などとした。安全性エンドポイントは試験治療下における有害事象(TEAE)、重篤な有害事象(SAE)、臨床検査値などとした。 主な結果は以下のとおり。・287例が無作為化され、259例(平均年齢47[SD 13]歳、女性82例[32%])が少なくとも1回以上の試験薬の投与を受けた。・12週時点におけるPASI 75達成率は、zasocitinib 2mg群18%(9例)、同5mg群44%(23例)、同15mg群68%(36例)、同30mg群67%(35例)、プラセボ群6%(3例)であった。・PASI 90達成率は、zasocitinib 2mg群8%(4例)、同5mg群21%(11例)、同15mg群45%(24例)、同30mg群46%(24例)、プラセボ群0%であり、PASI 75と同様の用量反応性がみられた。・PASI 100達成率は、zasocitinib 2mg群2%(1例)、同5mg群10%(5例)、同15mg群15%(8例)、同30mg群33%(17例)、プラセボ群0%であり、用量が多いほど達成率が高かった。・TEAEはプラセボ群の44%(23例)に発現し、zasocitinibの4用量群では53%(15mg群の28例)~62%(2mg群の31例)に発現した。TEAEの発現率に用量反応性はなかった。SAEはzasocitinib 15mg群の1例のみに2件みられたが、治療薬との関連はないと判断された。臨床検査値に臨床的に意味のある経時的変化はみられなかった。

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尋常性乾癬へのグセルクマブ、投与間隔を16週ごとに延長可能か

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットに結合し、IL-23の活性を阻害するグセルクマブを用いた尋常性乾癬の維持療法について、16週ごと投与は8週ごと投与に対して非劣性であることが、ドイツ・フライブルク大学のKilian Eyerich氏らによる海外第IIIb相二重盲検無作為化比較試験「GUIDE試験」で示された。慢性の炎症性皮膚疾患である乾癬には、個別化治療およびde-escalation治療戦略に関するアンメットニーズが存在する。試験結果を踏まえて著者は、「今回の試験は、2回の連続した診察時(20週時および28週時)に皮膚症状が完全に消失した患者において、グセルクマブの投与間隔を延長しても疾患活動性をコントロール可能であるとのエビデンスを示した初の無作為化比較試験となった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年7月31日号掲載の報告。 GUIDE試験は中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象に、グセルクマブの早期介入と投与間隔の延長を評価する試験で、現在も進行中である。ドイツとフランスの80施設で行われており、「早期介入の影響」「投与間隔の延長」「治療中止後の有効性の維持」を評価する3パートで構成されている。 本論で報告されたのは投与間隔の延長を評価するパート2の結果で、最初の患者は2019年9月、最後の患者は2022年3月に受診した。 パート1(0週~28週)では、患者は0週時、4週時、12週時、20週時にグセルクマブ100mgの投与を受けた。このうち20週時と28週時にPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア0を達成した患者をスーパーレスポンダー(SRe)とし、パート2(28週~68週)では、これらSReを8週ごとまたは16週ごとのグセルクマブ100mg投与群に無作為化した。非SReは、非盲検下で8週ごとにグセルクマブの投与を継続した。 試験の主要目的は、SReにおける疾患コントロール(68週時点でPASI<3)達成率(主要エンドポイント)について、16週ごと投与群の8週ごと投与群に対する非劣性(マージン10%)を検証することであった。バイオマーカーに関するサブスタディでは、皮膚および血液における免疫学的効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・パート2では、822例がグセルクマブの投与を受けた(SRe 297例[36.1%]、非SRe 525例[63.9%])。・SRe(8週ごと投与群148例、16週ごと投与群149例)は、平均年齢39.4(SD 14.1)歳、女性95例(32.0%)、男性202例(68.0%)であった。・主要エンドポイントの疾患コントロール達成率は、16週ごと投与群91.9%(137/149例、90%信頼区間:87.3~95.3)、8週ごと投与群92.6%(137/148例、88.0~95.8)であり、グセルクマブ16週ごと投与の8週ごと投与に対する非劣性が示された(非劣性のp=0.001)。・臨床的有効性は免疫学的変化と一致していた。CD8陽性組織常在型メモリーT細胞数はベースラインから速やかに減少し、両群ともに低値を維持していた。同様に、血漿中のIL-17A、IL-17F、IL-22、βディフェンシン2値もベースラインから有意に低下し、68週時点まで両群ともに低値を維持した。・グセルクマブの忍容性は良好であり、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

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自己免疫疾患を有するがん患者、ICIによるirAEリスクは?

 自己免疫疾患を有するがん患者では、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与によって免疫関連有害事象(irAE)が発現する割合は高いものの、これらは軽度で管理可能であり、がんへの反応性には影響がなかったことを、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaria A. Lopez-Olivo氏らが明らかにした。European Journal of Cancer誌2024年8月号掲載の報告。 自己免疫疾患を有するがん患者は、ICIのランダム化比較試験から除外されていることが多い。そこで研究グループは、自己免疫疾患の既往があり、ICIを投与されたがん患者を含む観察試験と非対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、新規イベントや自己免疫疾患の再燃を含むirAEの発現率、irAEによる入院・死亡などを調査した。 研究グループは、5つの電子データベースを2023年11月まで検索した。研究の選択、データ収集、質の評価は2人の研究者によって独立して行われた。 主な結果は以下のとおり。・解析には、95件の研究から、がんおよび自己免疫疾患の既往を有する2万3,897例が組み込まれた。がん種で多かったのは肺がん(30.7%)、皮膚がん(15.7%)であった。・自己免疫疾患のある患者は、自己免疫疾患のない患者と比較して、irAEの発現率が高かった(相対リスク:1.3、95%信頼区間[CI]:1.0~1.6)。・すべてのirAEの統合発現率(自己免疫疾患の再燃または新規イベント)は61%(95%CI:54~68)で、自己免疫疾患の再燃は36%(95%CI:30~43)、新規のirAE発現は23%(95%CI:16~30)であった。・自己免疫疾患が再燃した患者の半数はGrade3未満であり、乾癬/乾癬性関節炎(39%)、炎症性腸疾患(37%)、関節リウマチ(36%)の患者で多かった。・irAEが発現した患者の32%は入院を必要とし、irAEの治療として72%にコルチコステロイドが用いられた。irAEによる死亡率は0.07%であった。・自己免疫疾患のある患者とない患者の間で、ICIに対するがんの反応性に統計的な有意差は認められなかった。 研究グループは「これらの結果から、ICIは自己免疫疾患を有するがん患者にも使用可能であることが示唆されるが、患者の3分の1以上が自己免疫疾患の再燃を経験したり、入院を必要としたりするため、注意深いモニタリングが必要である。これらの知見は、がん専門医がモニタリングと管理の戦略を改善し、ICI治療の利点を最大化しつつリスクを最小化するための重要な基盤となるものである」とまとめた。

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるリサンキズマブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、生物学的生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。わが国では、既存治療である5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等に対して効果不十分または不耐容となったUC患者には、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている(『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和5年度改訂版(令和6年3月31日)』厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度 総括・分担研究報告書)。しかしながら、中等度以上の活動性を有するUC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する治療薬が次々と開発されている。 今回、日本人を含む中等度から重度のUC患者を対象としたUCの寛解導入および寛解維持に対する新たなIL阻害薬であるリサンキズマブの有効性と安全性を検証した国際共同試験の結果が2024年7月22日号のJAMA誌に掲載された。なお、わが国の保険診療現場ではIL阻害薬としてIL-12とIL-23に共通するp40サブユニットを標的とするウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)とIL-23に特有のp19サブユニットを標的とするミリキズマブ(同:オンボー)が使用されている。 リサンキズマブ(同:スキリージ)はIL-23p19サブユニットを選択的に標的としてIL-23受容体を介したシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体であり、わが国でクローン病、尋常性乾癬乾癬性関節炎の治療薬として、すでに薬事承認および保険適用を有している。今回は、中等度以上のUCに対する寛解導入および寛解維持目的とした治療薬として2024年6月に薬事承認を取得している。なお、リサンキズマブはウステキヌマブと同じIL-12ファミリーに属する炎症性サイトカインを標的とするが、IL-23のp19サブユニットに対してのみ特異的に結合して大腸粘膜の炎症を抑えることから感染症や悪性腫瘍の発生リスクを軽減する可能性が期待されている。 今回も昨年承認されたミリキズマブと同様、国際共同治験の成績がトップジャーナルに掲載される前に薬事承認されていることは驚きであるが、今後は国際共同治験の結果がジャーナルに掲載される前に保険適用の承認を取得する薬剤が増加するものと思われる。 一方、難治性のUCに対する薬物療法に関する臨床現場からの要望としては、既存の薬物治療に抵抗性を示す患者を対象として、プラセボを対照とした臨床試験の結果から次々に市販されている生物学的製剤それぞれの役割と具体的な使用方法に関するガイドラインの改訂が必要と思われる。

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