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1.

化膿性汗腺炎への適応が追加されたビメキズマブ、その特徴は?/UCB

 ユーシービージャパンは、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)について、2024年11月26日に化膿性汗腺炎(HS)の適応追加に関するメディアセミナーを行った。同薬剤は、9月24日にHSに対する適応追加の承認を取得している。セミナーでは、藤田 英樹氏(日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野)がHSの病態とビメキズマブの概要について講演を行った。隠れているところにできる悩ましい疾患 HSは、痛みを伴う慢性的かつ再発性の炎症性皮膚免疫疾患だ。腋窩や臀部、鼠径部、肛門周囲、乳房下部などの間擦部に好発し1)、しばしば炎症性の結節が生じ、膿瘍形成に進行、さらに毛包が破裂して排膿を伴う瘻孔を形成して、その後瘢痕化することがある2)。HSは痛みや瘢痕により、患者のQOLを損ないやすい疾患といえる。 HSに適応がある生物学的製剤としては、2019年2月に適応追加されたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体のアダリムマブがある。アダリムマブのターゲットであるTNFαはさまざまな細胞から分泌されるが、ビメキズマブのターゲットであるIL-17A/IL-17Fは主にT細胞から分泌される。藤田氏は「既存の薬剤とターゲットが異なるビメキズマブが治療の選択肢に加わることは治療上良いこと」としたうえで、「使い分けは専門家でも非常に難しく、区別する検査や方法がないのが現状だ」と課題を述べた。 今回の承認は、中等症~重症の化膿性汗腺炎患者を対象に、ビメキズマブの有効性と安全性を評価した2つの第III相試験、BE HEARD I試験および日本も参加したBE HEARD II試験に基づいている。 BE HEARD II試験の主要評価項目である、HSに対する治療効果の評価指標HiSCR50の達成率(16週時点)は、プラセボ群の32.2%に対しビメキズマブ320mg Q4W群53.8%、同320mg Q2W群52.0%であり、ビメキズマブ群のいずれもプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善を示した(ビメキズマブ320mg Q4W群:p=0.004、同320mg Q2W群:p=0.003)。また、より厳格な指標であるHiSCR75の達成率(16週時点)においても、ビメキズマブ群はプラセボ群を上回る結果を示した。両試験における安全性のプロファイルは過去の乾癬などに対する臨床試験のデータと一致しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。疾患の認知度向上が課題 最後に、HS患者の奥村 幸代氏が登壇し、自身の経験について述べた。奥村氏はHSが発症してから診断を受けるまで年単位の時間がかかり、計10ヵ所以上の膿瘍摘出術を受けながら、いまだ症状が落ち着かない現状だという。疾患の情報が不足していることや患者会がなく患者間の情報共有が容易ではないこと、指定難病ではないことからの金銭的な負担を訴えた。今後については「HSの認知度が上がることで、医療へのアクセスが改善されることを期待している」と述べた。

2.

鼻腔ぬぐい液検査でCOVID-19の重症度を予測できる?

 鼻腔ぬぐい液を用いた検査が、新型コロナウイルスに感染した人のその後の重症度を医師が予測する助けとなる可能性のあることが、新たな研究で示された。この研究結果を報告した、米エモリー大学ヒト免疫センター(Lowance Center for Human Immunology)およびエモリー・ワクチンセンターのEliver Ghosn氏らによると、軽度または中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者の70%以上で特定の抗体が作られており、これらの抗体が、症状の軽減や優れた免疫応答、回復の速さに関連していることが明らかになったという。この研究の詳細は、「Science Translational Medicine」11月6日号に掲載された。 これらの抗体は身体を攻撃する自己抗体で、一般に関節リウマチや炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などの自己免疫疾患に関連しているという。論文の上席著者であるGhosn氏は、「自己抗体は一般に病的状態や予後不良と関連しており、より重篤な疾患であることを示す炎症の悪化原因となる」と説明している。COVID-19患者を対象とした先行研究では、血液中の自己抗体は、生命を脅かす状態の兆候であることが示されている。しかし、こうした研究は、実際の感染部位である鼻ではなく血液を調べたものであったとGhosn氏らは言う。 Ghosn氏らは、鼻腔内で局所的に生成される抗体をより正確に測定するために、FlowBEATと呼ばれる新しいバイオテクノロジーツールを開発した。FlowBEATは、標準的な鼻腔ぬぐい液を用いて数十種類のウイルス抗原や宿主抗原に対する全てのヒト抗体を高感度かつ効率的に同時測定できる。このツールを用いれば、鼻腔内の自己抗体も検出できるため、COVID-19の重症度を予測することも可能なのだという。 研究グループは、このツールを用いて、129人から収集した気道および血液サンプルを解析した。その結果、軽度から中等度のCOVID-19患者の70%以上で、感染後に鼻腔内のIFN-αに対するIgA1型自己抗体が誘導され、この抗体が新型コロナウイルスに対する免疫応答の強化、症状の軽減、回復の促進と関連していることが明らかになった。また、これらの自己抗体は、宿主のIFN-α産生のピーク後に生成され、回復とともに減少することが示され、IFN-αと抗IFN-α応答の間でバランスが調整されていることも示された。一方、血液中のIFN-αに対するIgG1型自己抗体は、症状悪化と強い全身炎症を伴う一部の患者で遅れて現れることが確認された。 これは、新型コロナウイルスに対する鼻腔内での免疫応答は、血液中の免疫応答とは異なっていることを示唆している。鼻腔内の自己抗体はウイルスに対して防御的に働くのに対して、血液中の自己抗体はCOVID-19を重症化させるのだ。Ghosn氏は、「われわれの研究結果の興味深い点は、鼻腔内の自己抗体の作用が、COVID-19では、通常とは逆だったことだ。鼻腔内の自己抗体は感染後すぐに現れ、患者の細胞によって産生される重要な炎症分子を標的としていた。また、おそらく過剰な炎症を防ぐために、これらの自己抗体は炎症分子を捉え、患者が回復すると消失した。このことは、身体がバランスを保つために、これらの自己抗体を利用していることを示唆している」とエモリー大学のニュースリリースの中で説明している。 論文の筆頭著者であるエモリー大学のBenjamin Babcock氏は、「現時点では、われわれは、感染が起こる前の感染リスクを調べるか、回復後に感染経過を分析するかのどちらかしかできない。もし、クリニックでリアルタイムに免疫応答をとらえることができたらどうなるかを想像してみてほしい。ジャスト・イン・タイムの検査によって、医師や患者は、より迅速でスマートな治療の決定に必要な情報をリアルタイムで得られるようになるかもしれない」と期待を示している。

3.

免疫療法を受けるがん患者は乾癬に注意

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けるがん患者は、ICI以外(化学療法または分子標的薬)による治療を受けているがん患者と比較して、乾癬のリスクが高いことが、台湾・国防医学院のSheng-Yin To氏らによる全国規模のコホート研究で示された。ICIによる免疫療法は画期的ながん治療として認知されているが、自己免疫疾患の発症などの免疫関連有害事象に関する懸念も存在する。著者は、「今回の結果は、最適ながん治療を確実に行えるように、臨床医と患者は免疫療法に伴う乾癬のリスク上昇を認識しておくべきことの重要性を強調するものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Taiwan National Health InsuranceのデータベースとTaiwan Cancer Registryのデータを用いた。ICIの有無による乾癬リスクはtarget trial emulationのデザインを用いて評価した。 対象は、2019年1月1日~2021年6月30日にStageIII/IVのがんで抗がん治療を受けた患者とし、ICIによる治療を受けた患者(ICI群)と化学療法または分子標的薬による治療を受けた患者(非ICI群)に分類した。2023年5月~2024年7月にデータ解析を行った。 主要アウトカムは、追跡期間中の乾癬の発症とした。逆確率重み付け法(IPTW)を用いて潜在的な交絡因子の影響を軽減し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルにより乾癬リスクのハザード比(HR)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、抗がん治療を受けた13万5,230例(平均年齢62.94歳[標準偏差:13.01]、女性45.1%)。・ICI群は3,188例、非ICI群は13万2,042例であった。・ICI群では、乾癬の発症率が1,000人年当たり5.76件であり、非ICI群の同1.44件と比べて高かった。・交絡因子の補正後においても、ICI群は乾癬の発症リスクが高かった(IPTW補正後HR:3.31、IPTW補正後部分分布HR:2.43)。・試験開始からの解析と治療中の解析のいずれにおいても、以上の結果は一貫していた。また、すべての追跡期間とすべての感度解析においても結果は一貫して強固なものであった。

4.

乾癬への生物学的製剤、真菌感染症のリスクは?

 生物学的製剤の投与を受けている乾癬患者における真菌感染症リスクはどれくらいあるのか。南 圭人氏(東京医科大学皮膚科)らの研究グループは、臨床現場において十分に理解されていないその現状を調べることを目的として、単施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、インターロイキン(IL)-17阻害薬で治療を受けた乾癬患者は、他の生物学的製剤による治療を受けた患者よりも真菌感染症、とくにカンジダ症を引き起こす可能性が高いことが示された。さらに、生物学的製剤による治療を開始した年齢、糖尿病も真菌感染症の独立したリスク因子であることが示された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年9月30日号掲載の報告。 研究グループは、生物学的製剤の投与を受けている乾癬患者における真菌感染症の罹患率とリスクを評価することを目的として、乾癬患者592例を後ろ向きに調査した。 主な結果は以下のとおり。・73/592例(12.3%)において真菌感染症が確認された。・IL-17阻害薬を使用した患者は、他の生物学的製剤を使用した患者よりも真菌感染症の発生率が高率であった。・真菌感染症のリスク因子は、生物学的製剤の種類(p=0.004)、生物学的製剤による治療開始時の年齢(オッズ比:1.04、95%信頼区間:1.02~1.06)、および糖尿病(同:2.40、1.20~4.79)であった。 著者らは、本研究には生物学的製剤による治療を受けなかった患者が対象に含まれていなかったこと、使用されていた生物学的製剤の種類が多くの患者で変更されていたことなどの限界を指摘している。

5.

乾癬の光線療法、自宅治療は外来治療に非劣性

 乾癬に対するナローバンドUVB療法について、自宅で行う同治療の有効性は外来治療との比較において非劣性であり、患者の負担は少ないことが示された。米国・ペンシルベニア大学のJoel M. Gelfand氏らが多施設共同無作為化非劣性試験「Light Treatment Effectiveness study:LITE試験」の結果を報告した。乾癬に対する外来治療でのナローバンドUVB療法は費用対効果が高いが、患者のアクセスに課題がある。一方、自宅治療は患者の負担は少ないが臨床データは限定的で、とくに肌の色が濃い患者のデータが不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年9月25日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬に対するナローバンドUVB療法について、自宅治療の外来治療に対する非劣性を検討することを目的として、米国内の大学および民間の皮膚科診療所42施設において、医師主導の非盲検並行群間比較プラグマティック試験を実施した。試験登録期間は2019年3月1日~2023年12月4日であり、2024年6月までフォローアップが行われた。 12歳以上の尋常性乾癬または滴状乾癬の患者を対象とし、ガイドモード付き線量測定機能を備えた家庭用ナローバンドUVB照射機で治療を受ける群(自宅治療群)または診療所でナローバンドUVB療法を受ける群(外来治療群)に1対1の割合で割り付けた。治療期間は12週間、治療終了後の観察期間は12週間とした。 主要有効性アウトカムは2つで、介入終了時のPGA(Physician Global Assessment)スコア0/1(皮膚症状の消失/ほぼ消失)と、観察期間終了時のDLQI(Dermatology Life Quality Index)スコア5以下(QOLへの影響なし/軽微)であった。 主な結果は以下のとおり。・783例が登録された(平均[SD]年齢48.0[15.5]歳、女性376例[48.0%]、自宅治療群393例、外来治療群390例)。・被験者のスキンフォトタイプ(SPT)は、I/IIが350例(44.7%)、III/IVが350例(44.7%)、V/VIが83例(10.6%)であった。また、全身治療を受けていたのは93例(11.9%)であった。ベースライン時の平均(SD)PGAスコアは2.7(0.8)、DLQIスコアは12.2(7.2)であった。・12週時に、PGAスコア0/1を達成した患者の割合は、自宅治療群32.8%(129例)、外来治療群25.6%(100例)、DLQIスコア5以下を達成した患者の割合は、それぞれ52.4%(206例)、33.6%(131例)であった。・自宅治療は外来治療に対し、全患者集団およびすべてのSPTにわたって、PGAとDLQIに関して非劣性を示した。・自宅治療群は外来治療群と比較して、治療アドヒアランスが良好であり(51.4%[202例]vs.15.9%[62例]、p<0.001)、患者の間接費用の負担も少なかったが、持続性紅斑エピソードは多かった(5.9%[治療7,957回中466回]vs.1.2%[3,934回中46回]、p<0.001)。・いずれの群でも有害事象による治療中止はなく、忍容性は良好であった。

6.

中等症~重症の尋常性乾癬、経口TYK2阻害薬zasocitinibが有望

 チロシンキナーゼ2(TYK2)に高い選択性を示すアロステリック阻害薬zasocitinib(TAK-279)は、尋常性乾癬の新たな経口治療薬として有望であることが示された。米国・カリフォルニア大学のApril W. Armstrong氏らが、海外第IIb相二重盲検無作為化比較試験の結果を報告した。本試験において、1日1回5mg以上のzasocitinibはプラセボと比較して、12週間にわたり良好な皮膚症状の改善が認められた。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月21日号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象としてzasocitinibの有効性、安全性および忍容性を評価することを目的に、2021年8月11日~2022年9月12日の期間に米国47施設とカナダ8施設で試験を実施した。 本試験は、12週間の治療期間と4週間のフォローアップ期間で構成された。適格基準は、18~70歳、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア12以上、Physician’s Global Assessmentスコア3以上、尋常性乾癬の皮疹面積が体表面積(BSA)の10%以上などであった。 被験者を1日1回zasocitinib 2mg、同5mg、同15mg、同30mgまたはプラセボを投与する群へ無作為に均等に割り付け、12週間投与した。 主要有効性エンドポイントは、12週時点におけるPASI 75(ベースラインから75%以上改善)達成率とした。副次有効性エンドポイントは、PASI 90(ベースラインから90%以上改善)達成率、PASI 100(PASIスコア0)達成率などとした。安全性エンドポイントは試験治療下における有害事象(TEAE)、重篤な有害事象(SAE)、臨床検査値などとした。 主な結果は以下のとおり。・287例が無作為化され、259例(平均年齢47[SD 13]歳、女性82例[32%])が少なくとも1回以上の試験薬の投与を受けた。・12週時点におけるPASI 75達成率は、zasocitinib 2mg群18%(9例)、同5mg群44%(23例)、同15mg群68%(36例)、同30mg群67%(35例)、プラセボ群6%(3例)であった。・PASI 90達成率は、zasocitinib 2mg群8%(4例)、同5mg群21%(11例)、同15mg群45%(24例)、同30mg群46%(24例)、プラセボ群0%であり、PASI 75と同様の用量反応性がみられた。・PASI 100達成率は、zasocitinib 2mg群2%(1例)、同5mg群10%(5例)、同15mg群15%(8例)、同30mg群33%(17例)、プラセボ群0%であり、用量が多いほど達成率が高かった。・TEAEはプラセボ群の44%(23例)に発現し、zasocitinibの4用量群では53%(15mg群の28例)~62%(2mg群の31例)に発現した。TEAEの発現率に用量反応性はなかった。SAEはzasocitinib 15mg群の1例のみに2件みられたが、治療薬との関連はないと判断された。臨床検査値に臨床的に意味のある経時的変化はみられなかった。

7.

尋常性乾癬へのグセルクマブ、投与間隔を16週ごとに延長可能か

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットに結合し、IL-23の活性を阻害するグセルクマブを用いた尋常性乾癬の維持療法について、16週ごと投与は8週ごと投与に対して非劣性であることが、ドイツ・フライブルク大学のKilian Eyerich氏らによる海外第IIIb相二重盲検無作為化比較試験「GUIDE試験」で示された。慢性の炎症性皮膚疾患である乾癬には、個別化治療およびde-escalation治療戦略に関するアンメットニーズが存在する。試験結果を踏まえて著者は、「今回の試験は、2回の連続した診察時(20週時および28週時)に皮膚症状が完全に消失した患者において、グセルクマブの投与間隔を延長しても疾患活動性をコントロール可能であるとのエビデンスを示した初の無作為化比較試験となった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年7月31日号掲載の報告。 GUIDE試験は中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象に、グセルクマブの早期介入と投与間隔の延長を評価する試験で、現在も進行中である。ドイツとフランスの80施設で行われており、「早期介入の影響」「投与間隔の延長」「治療中止後の有効性の維持」を評価する3パートで構成されている。 本論で報告されたのは投与間隔の延長を評価するパート2の結果で、最初の患者は2019年9月、最後の患者は2022年3月に受診した。 パート1(0週~28週)では、患者は0週時、4週時、12週時、20週時にグセルクマブ100mgの投与を受けた。このうち20週時と28週時にPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア0を達成した患者をスーパーレスポンダー(SRe)とし、パート2(28週~68週)では、これらSReを8週ごとまたは16週ごとのグセルクマブ100mg投与群に無作為化した。非SReは、非盲検下で8週ごとにグセルクマブの投与を継続した。 試験の主要目的は、SReにおける疾患コントロール(68週時点でPASI<3)達成率(主要エンドポイント)について、16週ごと投与群の8週ごと投与群に対する非劣性(マージン10%)を検証することであった。バイオマーカーに関するサブスタディでは、皮膚および血液における免疫学的効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・パート2では、822例がグセルクマブの投与を受けた(SRe 297例[36.1%]、非SRe 525例[63.9%])。・SRe(8週ごと投与群148例、16週ごと投与群149例)は、平均年齢39.4(SD 14.1)歳、女性95例(32.0%)、男性202例(68.0%)であった。・主要エンドポイントの疾患コントロール達成率は、16週ごと投与群91.9%(137/149例、90%信頼区間:87.3~95.3)、8週ごと投与群92.6%(137/148例、88.0~95.8)であり、グセルクマブ16週ごと投与の8週ごと投与に対する非劣性が示された(非劣性のp=0.001)。・臨床的有効性は免疫学的変化と一致していた。CD8陽性組織常在型メモリーT細胞数はベースラインから速やかに減少し、両群ともに低値を維持していた。同様に、血漿中のIL-17A、IL-17F、IL-22、βディフェンシン2値もベースラインから有意に低下し、68週時点まで両群ともに低値を維持した。・グセルクマブの忍容性は良好であり、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

8.

自己免疫疾患を有するがん患者、ICIによるirAEリスクは?

 自己免疫疾患を有するがん患者では、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与によって免疫関連有害事象(irAE)が発現する割合は高いものの、これらは軽度で管理可能であり、がんへの反応性には影響がなかったことを、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaria A. Lopez-Olivo氏らが明らかにした。European Journal of Cancer誌2024年8月号掲載の報告。 自己免疫疾患を有するがん患者は、ICIのランダム化比較試験から除外されていることが多い。そこで研究グループは、自己免疫疾患の既往があり、ICIを投与されたがん患者を含む観察試験と非対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、新規イベントや自己免疫疾患の再燃を含むirAEの発現率、irAEによる入院・死亡などを調査した。 研究グループは、5つの電子データベースを2023年11月まで検索した。研究の選択、データ収集、質の評価は2人の研究者によって独立して行われた。 主な結果は以下のとおり。・解析には、95件の研究から、がんおよび自己免疫疾患の既往を有する2万3,897例が組み込まれた。がん種で多かったのは肺がん(30.7%)、皮膚がん(15.7%)であった。・自己免疫疾患のある患者は、自己免疫疾患のない患者と比較して、irAEの発現率が高かった(相対リスク:1.3、95%信頼区間[CI]:1.0~1.6)。・すべてのirAEの統合発現率(自己免疫疾患の再燃または新規イベント)は61%(95%CI:54~68)で、自己免疫疾患の再燃は36%(95%CI:30~43)、新規のirAE発現は23%(95%CI:16~30)であった。・自己免疫疾患が再燃した患者の半数はGrade3未満であり、乾癬/乾癬性関節炎(39%)、炎症性腸疾患(37%)、関節リウマチ(36%)の患者で多かった。・irAEが発現した患者の32%は入院を必要とし、irAEの治療として72%にコルチコステロイドが用いられた。irAEによる死亡率は0.07%であった。・自己免疫疾患のある患者とない患者の間で、ICIに対するがんの反応性に統計的な有意差は認められなかった。 研究グループは「これらの結果から、ICIは自己免疫疾患を有するがん患者にも使用可能であることが示唆されるが、患者の3分の1以上が自己免疫疾患の再燃を経験したり、入院を必要としたりするため、注意深いモニタリングが必要である。これらの知見は、がん専門医がモニタリングと管理の戦略を改善し、ICI治療の利点を最大化しつつリスクを最小化するための重要な基盤となるものである」とまとめた。

9.

潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるリサンキズマブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、生物学的生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。わが国では、既存治療である5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等に対して効果不十分または不耐容となったUC患者には、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている(『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和5年度改訂版(令和6年3月31日)』厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度 総括・分担研究報告書)。しかしながら、中等度以上の活動性を有するUC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する治療薬が次々と開発されている。 今回、日本人を含む中等度から重度のUC患者を対象としたUCの寛解導入および寛解維持に対する新たなIL阻害薬であるリサンキズマブの有効性と安全性を検証した国際共同試験の結果が2024年7月22日号のJAMA誌に掲載された。なお、わが国の保険診療現場ではIL阻害薬としてIL-12とIL-23に共通するp40サブユニットを標的とするウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)とIL-23に特有のp19サブユニットを標的とするミリキズマブ(同:オンボー)が使用されている。 リサンキズマブ(同:スキリージ)はIL-23p19サブユニットを選択的に標的としてIL-23受容体を介したシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体であり、わが国でクローン病、尋常性乾癬乾癬性関節炎の治療薬として、すでに薬事承認および保険適用を有している。今回は、中等度以上のUCに対する寛解導入および寛解維持目的とした治療薬として2024年6月に薬事承認を取得している。なお、リサンキズマブはウステキヌマブと同じIL-12ファミリーに属する炎症性サイトカインを標的とするが、IL-23のp19サブユニットに対してのみ特異的に結合して大腸粘膜の炎症を抑えることから感染症や悪性腫瘍の発生リスクを軽減する可能性が期待されている。 今回も昨年承認されたミリキズマブと同様、国際共同治験の成績がトップジャーナルに掲載される前に薬事承認されていることは驚きであるが、今後は国際共同治験の結果がジャーナルに掲載される前に保険適用の承認を取得する薬剤が増加するものと思われる。 一方、難治性のUCに対する薬物療法に関する臨床現場からの要望としては、既存の薬物治療に抵抗性を示す患者を対象として、プラセボを対照とした臨床試験の結果から次々に市販されている生物学的製剤それぞれの役割と具体的な使用方法に関するガイドラインの改訂が必要と思われる。

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AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」【最新!DI情報】第20回

AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」今回は、アトピー性皮膚炎/尋常性乾癬治療薬「タピナロフクリーム(商品名:ブイタマークリーム1%、製造販売元:日本たばこ産業)を紹介します。本剤は、リガンド依存的な転写因子AhRの活性化を介して炎症性サイトカインを低下させ、抗酸化分子の発現を誘導して皮膚の炎症を抑制するとともに、皮膚バリア機能を改善させる新しい作用機序の薬剤です。<効能・効果>アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>●アトピー性皮膚炎通常、成人および12歳以上の小児には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始8週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。●尋常性乾癬通常、成人には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始12週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。<安全性>主な副作用に、適用部位毛包炎(17.0%)、頭痛、接触皮膚炎、適用部位ざ瘡(5%以上)があります。その他、毛包炎、ざ瘡、乾癬、アトピー性皮膚炎、適用部位刺激感、適用部位そう痒感、適用部位変色、適用部位多毛症、適用部位湿疹(1~5%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の症状緩和・進行抑制に効果がある非ステロイド性のクリーム薬です2.皮膚感染症を増悪させることがあるので、皮膚感染症があるときは必ず医師または薬剤師に申し出てください。3.この薬で症状の改善が認められないときは、使用を中止することがあります。4.アトピー性皮膚炎では、12歳未満の小児には使用できません。尋常性乾癬では、小児には使用できません。 <ここがポイント!>アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返す、強い痒みを伴う炎症性皮膚疾患です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がない状態への導入およびその維持です。薬物療法にはステロイド外用薬を中心に、タクロリムス外用薬やデルゴシチニブ外用薬などが使用されます。ステロイドでは特有の副作用、その他の外用薬では対象患者や塗布に関する制限などがあり、使用には注意が必要です。慢性の皮膚疾患である尋常性乾癬は、遺伝的、環境的および免疫学的要因などの複数の要因で発症します。治療にはステロイド外用薬が用いられますが、局所の副作用発現などに注意が必要です。本剤は、非ステロイド性の低分子の芳香族炭化水素受容体調節薬(therapeutic AhR modulating agent:TAMA)で、既存薬と異なる作用機序を有するアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の治療薬です。リガンド依存性転写因子であるAhRの活性化を介して炎症性サイトカインの産生を抑制し、またNrf2経路を活性化させて抗酸化分子の遺伝子発現を誘導してアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬における皮膚の炎症を抑えます。さらに、皮膚バリア機能関連タンパク質の発現を誘導して皮膚バリア機能を改善します。使用対象年齢は、アトピー性皮膚炎では成人および12歳以上の小児、尋常性乾癬では成人です。現在、小児のアトピー性皮膚炎に対する臨床試験を実施しており、今後の適応拡大が期待されます。アトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBB4-1試験)において、投与8週時のIGA反応率(IGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した患者の割合)は、本剤1%群が20.24%、基剤クリーム群が2.24%で、2群間の差は18.0%(95%信頼区間[CI]:10.0~25.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。また、尋常性乾癬患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBA4-1試験)において、投与12週時のPGA反応率(PGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した被験者の割合)は、本剤1%群が20.06%、基剤クリーム群が2.50%で、2群間の差(本剤1%群-基剤クリーム群)は18.1%(95%CI:8.3~27.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。

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アトピー性皮膚炎の症状を改善するレブリキズマブ発売/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎の治療薬である抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース)を2024年5月31日より販売を開始した(製造販売承認日は2024年1月18日、薬価収載日は2024年4月17日)。このレブリキズマブの販売に合わせて、都内で「アトピー性皮膚炎患者さんの抱えるアンメットニーズおよび新たな選択肢」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、皮膚科専門医によるアトピー性皮膚炎の現状と課題、患者さんの意識調査の結果、レブリキズマブの臨床試験について説明が行われた。アトピー性皮膚炎の患者さんは10人に1人の時代 「アトピー性皮膚炎患者さんのアンメットニーズについて」をテーマに中原 剛士氏(九州大学大学院 医学研究院 皮膚科学分野 教授)が、現在のアトピー性皮膚炎の診療状況や患者さんなどへのアンケート調査の結果を解説した。 日本アレルギー学会発行の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021』の定義では、「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とされ、アトピー素因は(1)家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)があること、または(2)IgE抗体を産生しやすい素因とされる。そして、最近の研究では免疫細胞が放出するサイトカインが痒みの情報伝達を担うことが解明され、サイトカインを抑止する治療薬の開発も行われている。 治療では、主流となるステロイドの外用薬のほか2008年に経口の免疫抑制剤、2018年には注射の生物学的製剤、2020年には経口・外用のJAK阻害薬、2022年には注射の生物学的製剤が承認され、今では全身療法の治療薬も開発され、発売されている。 疫学として10人に1人の患者さんが現在ではアトピー性皮膚炎と推定され、非常に身近な皮膚疾患となっている。症状の特徴として「強い痒みを伴う発疹」が1番の問題であり、この発疹が広がると患者さんは睡眠を妨げられる、皮膚をかくことで外見に赤みなどが目立つなどでQOLを著しく低下させる。これらの症状は、5歳くらいまでに患者さんの約80%に出現し、中でも乳児期の発症が多いとされている。 アトピー性皮膚炎の治療目標は、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」であり、「このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし軽度で、日常生活に支障を来すような急な悪化が起こらない状態を維持すること」とされ、病状が安定した状態であれば、長期寛解を目指すこともできる。 そのためには、炎症に対する外用療法が行われるが、その際には「適切な強さの外用薬を、適切な量、適切な期間に外用する」の3つの要素が重要となる。治療では、大きく2つの時間の流れがある。最初に外用薬をしっかり速やかに使う「寛解導入」と皮膚の炎症を抑え、スキンケアと同時に皮膚の湿疹がない状態を維持する「寛解維持」に分かれるが、「コントロール不良」「使える治療薬の制限」「外用薬の塗布不足」などの事由で寛解維持が難しい患者さんも多く、課題となっている。アトピー性皮膚炎の患者さんの半数以上は現状の治療に満足していない 次に「アトピー性皮膚炎患者さんと一般生活者に対する意識調査」の結果について触れ、アトピー性皮膚炎患者が日常生活で困っていることや治療への満足度の結果などを報告した。この調査は、2024年1月にWEBにてアトピー性皮膚炎患者436人と一般生活者309人の合計745人に行われたもの。 主な調査結果は以下のとおり。・患者の平均発症年齢は8.3歳で9歳以下が67%だった。・患者さんが主に困っていることは、「塗り薬の塗布に時間がかかること」(33.5%)、「保湿に時間がかかる」(30.5%)、「塗り薬がべたつき不快」(29.4%)の順で多かった。・患者さんがアトピー性皮膚炎で諦めたことは、「素材を選ばす服を着用」(74%)、「プールや海に行く」(65%)、「ピアスなどのアクセサリーの着用」(65%)の順で多かった。・アトピー性皮膚炎の治療のための通院を多忙ゆえに先送りした患者さんは71%に上り、治療に使う時間がないほうがよいと考える患者さんは94.3%だった。・治療の満足度については、「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは44%だった。・医師とのコミュニケーションの満足度では「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用している患者さんで73%、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用していない患者さんで54%と治療薬の違いにより回答割合が異なった。 最後に中原氏はアンケートの結果を踏まえ「アトピー性皮膚炎の患者さんは、きちんと通院し、医師と積極的に困りごとについてコミュニケーションをとることで、最適な治療の選択につなげてほしい」と語りレクチャーを終えた。4週間隔の投与で患者さんのQOLを改善する治療薬 「アトピー性皮膚炎治療の新たな選択肢イブグリースについて」をテーマに板倉 仁枝氏(日本イーライリリー 研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部/医師)が、レブリキズマブの特徴と臨床試験の概要を説明した。 レブリキズマブは、アトピー性皮膚炎の中心的メディエーターであるIL-13に高親和性で結合するヒト化抗ヒトIL-13モノクローナル抗体。IL-13受容体複合体(IL-4Rα/IL-13Rα1)の形成を阻害することで、それを介したIL-13シグナル伝達を特異的に阻害し、アトピー性皮膚炎の病態形成を抑制する。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対し、初回および2週後に500mg、4週以降は250mgを2週間隔で皮下投与するが、患者の状態に応じ4週以降は250mgを4週間隔で皮下投与することもできる。なお、薬価は、250mgオートインジェクター、250mgシリンジともに6万1,520円となっている。 レブリキズマブの第III相の臨床試験は大きく6つの試験で構成され、とくに“ADhere J(KGAL)試験”では、わが国のアトピー性皮膚炎患者の導入期・維持期で局所コルチコステロイド(TCS)との併用療法での効果が評価された。本試験では、30日のスクリーニング期間後に導入期としてレブリキズマブ250mg 2週間隔(Q2W)+TCS(n=123)、同250mg4週間隔(Q4W)+TCS(n=81)、プラセボQ2W+TCS(n=82)の3群に分け16週間観察した。その後、維持期としてレブリキズマブ250mgQ2W+TCS(n=32)、同250mgQ4W+TCS(n=33)、同250mgQ4W+TCS(n=38)、プラセボQ2W+TCS(n=11)に分け、52週間の効果を評価した。 その結果、16週時のベースラインからのDLQIスコア*4ポイント以上の改善達成率は、プラセボ+TCS群(n=63)が20.6%だったのに対し、レブリキズマブ250mgQ4W+TCS群(n=60)が53.3%、同250mgQ2W+TCS群(n=96)が68.8%と有意に改善していた。 また、16~68週時のDLQIスコア4ポイント以上の改善維持割合は、レブリキズマブ250mgQ4W/Q4W+TCS(n=18)で72.2%、同250mgQ2W/Q2W+TCS(n=18)で77.8%、同250mgQ2W/Q4W+TCS(n=18)で83.3%だった。 安全性について、導入および維持期を通じて重篤な有害事象は3.6%で報告され、主な有害事象としては上咽頭炎、結膜炎、頭痛、発熱などが認められた。 板倉氏は最後に「レブリキズマブは、導入期からの効果と長期に持続する効果を通してアトピー性皮膚炎の症状のみならず治療負担の軽減に貢献できる新たな治療選択肢となる」と展望を語った。*DLQIスコアとは、皮膚疾患が患者のQOL(Quality of Life)に与える影響について評価する指標。10項目の質問からなり、30点満点で評価し、5点以上の改善は、臨床的に意義がある改善とされている。アトピー性皮膚炎、乾癬、慢性蕁麻疹などで使用される。

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CAR-T療法、2次がん・T細胞リンパ腫のリスクは?/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法では、2次がん、とくにウイルスベクターの組み込みに関連するT細胞腫瘍のリスクが新たな懸念事項となっているが、米国・スタンフォード大学のMark P. Hamilton氏らは、同大学医療センターで2016年以降にCAR-T細胞療法を行った症例について解析し、2次がんはまれであることを明らかにした。「クローンの関連を明確にし、ウイルスベクターのモニタリングに関する枠組みが必要と考えられる」とまとめている。NEJM誌2024年6月13日号掲載の報告。791件中25件に2次がんが発生、血液がんの3年累積発生率は6.5% 研究グループは、2016年2月4日~2024年1月15日に、スタンフォード大学医療センターでCAR-T細胞療法を実施した724例(791件)について、2次がんの発生率を調査した。 追跡期間中央値15ヵ月において、解析した724例、計791件の細胞注入後に、非黒色腫皮膚がんを除く25件の2次がんが特定された。内訳は、血液がん14件(骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病に関連したがん13件、T細胞リンパ腫1件)、固形腫瘍11件(黒色腫4件、前立腺がん2件、乳管がん2件、子宮内膜腺がん1件、肺腺がん1件、転移を有する中皮腫1件)であった。 2次血液がんの累積発生率は3年時で6.5%であり、これは既報と同様、CAR-T細胞療法後の2次がん発生がまれであることを示唆するものであった。CAR-T細胞療法後のT細胞リンパ腫は、ベクターと関連なし CAR-T細胞療法後にT細胞リンパ腫を発症した1例について詳細に検討した。本症例は、原疾患がStageIVのエプスタイン・バーウイルス陽性(EBV+)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、アキシカブタゲン シロルユーセルによるCD19標的CAR-T細胞療法を行った後、54日目にEBV+T細胞リンパ腫が確認され、62日目に病死した。EBV+DLBCL発症の3年前に乾癬および好酸球性筋膜炎の既往があった。 患者より採取した血液検体ならびに腫瘍細胞を用い、CAPP-seqアッセイ、全エクソームシーケンス、定量的PCR、シングルセルRNAシーケンス解析、シングルセルDNAシーケンス解析、フローサイトメトリー解析、ClonoSEQアッセイを行った結果、各リンパ腫は、分子的に免疫表現型およびゲノムプロファイルが異なっていたが、いずれもEBV陽性で、DNMT3A変異およびTET2変異クローン性造血と関連しており、CAR-T細胞の作製に用いられたレトロウイルスベクターがT細胞リンパ腫に直接関与しているエビデンスは認められなかった。

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roflumilast外用薬、慢性尋常性乾癬の長期治療の有用性を確認

 慢性尋常性乾癬患者へのroflumilastクリーム0.3%(1日1回塗布)の長期投与を評価した試験において、忍容性は良好であり、64週までの有効性が確認された。米国・Henry Ford Medical CenterのLinda Stein Gold氏らが、海外第II相多施設共同非盲検シングルアーム長期投与試験の結果を報告した。PDE4阻害薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎など炎症性疾患に対する治療効果が示されており、roflumilastはPDE4の強力かつ選択的な阻害薬である。roflumilastクリーム0.3%は、すでに米国食品医薬品局(FDA)より尋常性乾癬に対する承認を受けており、長期投与の評価が行われていた。結果を踏まえて著者は、「顔や間擦部などでも忍容性は良好であり、長期治療に適した外用薬であることが示唆された」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年3月29日号掲載の報告。 試験は米国とカナダの30施設で行われ、2つの登録コホート(12週間の早期試験を完了した患者または新規に登録された未治療患者)で構成された。主な適格基準は、18歳以上、乾癬の臨床的診断を受けてから6ヵ月以上、顔・四肢・体幹・間擦部に皮疹がある、皮疹がBody Surface Area(BSA)の2~20%(新規登録患者は2~25%)などであった。 roflumilastクリーム0.3%は、すべての皮疹に塗布することとし、試験中に発現した新たな皮疹にも頭皮を除くすべてに塗布した。 安全性のエンドポイントは、治験薬投与下で発現した有害事象、重篤な有害事象などであった。有効性のエンドポイントは、Investigator Global Assessment(IGA)0(消失)または1(ほぼ消失)を達成した患者の割合、IGA 0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合、間擦部のIGA(I-IGA)0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合、およびPsoriasis Area Severity Index(PASI)75(ベースラインから75%改善)を達成した患者の割合などであった。 主な結果は以下のとおり。・332例の患者が登録され、244例(73.5%)が試験を完了した。・13例(3.9%)が有害事象により中止し、3例(0.9%)は無効中止となった。・治療関連有害事象は12例(3.6%)に発現したが、重篤な有害事象は報告されなかった。・被験者の97%以上は塗布部位反応として刺激感が認められなかった。・タキフィラキシーは観察されず、52週時においてIGA 0/1を達成した患者の割合は44.8%であった。IGA 0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合は36.4%であった。・新規に登録された未治療患者のうち、ベースライン時に間擦部の皮疹が認められた集団において、I-IGA 0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合は66.7%であった。・52週時においてPASI 75を達成した患者の割合は37.6%であった。

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尋常性乾癬の生物学的製剤、費用対効果の評価

 効率的フロンティア(efficiency frontier:EF)と呼ばれる費用対効果の評価方法を用いることで、尋常性乾癬の生物学的製剤の価格の大幅な引き下げと、臨床的な費用対効果の最適化が実現可能であることを、米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のAlexander C. Egilman氏らが示した。検討の結果を踏まえて著者は、「EFは政策立案者にとって従来の費用対効果分析手法に代わるアプローチとなるものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年2月21日号掲載の報告。 研究グループは、EFにより尋常性乾癬の生物学的製剤の薬価と臨床ベネフィットの適正化をどれほど図れるのかを評価した。また、米国における薬価の引き下げ幅について4ヵ国(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ)と比較することにより推定した。 EFを用いた医療経済評価では、上記5ヵ国における尋常性乾癬の生物学的製剤11剤とバイオシミラー2剤の薬価と臨床ベネフィットを比較。EFは各生物学的製剤の有効性(Psoriasis Area and Severity Index[PASI]90達成率で評価)と2023年1月時点の年間治療コストをベースに構築し、EFに基づく薬価と従来の費用対効果分析に基づく価格を比較した。従来の費用対効果分析に基づく薬価は、1質調整生存年(QALY)当たり15万ドルを基準とした。 主な結果は以下のとおり。・13剤の生物学的製剤におけるPASI 90達成率は、17.9%(エタネルセプト)~71.6%(リサンキズマブ)の範囲にわたっていた。・米国の年間治療コストは、1,664ドル(infliximab-dyyb[インフリキシマブのバイオシミラー])~7万9,277ドル(リサンキズマブ)の範囲にわたっていた。・年間治療コストの中央値(四分位範囲[IQR])は、米国が3万4,965ドル(2万493~4万8,942)であり、オーストラリア(9,179ドル[6,691~1万2,688])、カナダ(1万5,556ドル[1万3,017~1万6,112])、フランス(9,478ドル[6,637~1万1,678])、ドイツ(1万3,829ドル[1万3,231~1万5,837])よりも高かった。・米国のEFで臨床的な費用対効果が良好であったのは、infliximab-dyyb(PASI 90達成率:57.4%、年間コスト:1,664ドル)、イキセキズマブ(同:70.8%、3万3,004ドル)、リサンキズマブ(同:71.6%、7万9,277ドル)であった。・米国の乾癬の生物学的製剤の価格について、EFを用いて推算した価格(最適価格)と一致させるためには中央値71%(IQR:31~95)引き下げる必要があった。同様のアプローチを用いた場合の他の4ヵ国の引き下げ幅はより小さく、カナダ41%(同:6~57)、オーストラリア36%(同:0~65)、フランス19%(同:0~67)、ドイツ11%(同:8~26)であった。・リサンキズマブを除き、EFに基づく薬価は従来の費用対効果分析に基づく薬価よりも低かった。

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小児尋常性乾癬、アプレミラストの有用性を第III相試験で検証

 中等症~重症の6~17歳の尋常性乾癬患者において、アプレミラストはプラセボと比較して全般的な疾患活動性および皮膚症状を有意に改善したことが、海外第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SPROUT試験」の結果で示された。カナダ・アルバータ大学Stollery Children's HospitalのLoretta Fiorillo氏らが報告した。経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のアプレミラストは、成人の尋常性乾癬患者に対する使用が、わが国を含め国際的に承認されている。しかし、中等症~重症の小児尋常性乾癬患者に対して使用が承認されている全身性治療薬は限られている。アプレミラストについては、第II相試験の探索的解析で小児患者の皮膚症状を改善することが示され、さらなる検討が支持されていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年1月22日号掲載の報告。 SPROUT試験は、局所療法でコントロール不十分/不良の6~17歳の中等症~重症尋常性乾癬患者(Psoriasis Area and Severity Index[PASI]スコア12以上、皮疹が体表面積[BSA]10%以上、static Physician Global Assessment[sPGA]スコア3以上)を対象とした。対象患者にアプレミラストを16週間投与し、有効性と安全性を検証した。 対象患者を年齢(6~11歳、12~17歳)で層別化し、2対1の割合で無作為にアプレミラスト群またはプラセボ群に割り付けた。アプレミラスト群の患者には、体重に基づき20mgを1日2回(体重20kg以上50kg未満)または、30mgを1日2回(体重50kg以上)16週間投与した。その後、52週まで両群の患者にアプレミラストを投与した。 主要エンドポイントは、16週時のsPGA達成(ベースラインから2点以上低下かつスコア0[消失]または1[ほぼ消失])であった。主要な副次エンドポイントは、16週時のPASI-75達成(PASIスコアがベースラインから75%以上低下)であった。 主な結果は以下のとおり。・2018年12月~2021年12月に、計245例が無作為化された(アプレミラスト群163例[20mg群80例、30mg群83例]、プラセボ群82例)。平均年齢は12歳(6~11歳群41.2%、12~17歳群58.8%)、約50%が女子で、86.9%が白人であった。尋常性乾癬の平均罹病期間は4年、ベースラインの平均PASIスコアは19.8、sPGAスコアは3(中等症)が75.5%、4(重症)が24.5%であった。・16週時のsPGA達成率は、アプレミラスト群(33.1%)がプラセボ群(11.5%)より有意に高率であった(p<0.0001)。・同様にPASI-75達成率は、アプレミラスト群(45.4%)がプラセボ群(16.1%)より有意に高率であった(p<0.0001)。・sPGA達成率は、6~11歳群(49.6%)が12~17歳群(21.5%)よりも高率であり、20kg以上50kg未満群(47.4%)が50kg以上群(19.2%)よりも高率であった。PASI-75の結果についても同様であった。・安全性に関する新たなシグナルは観察されなかった。

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乾癬の患者報告アウトカム、PSSDスコアの有意な改善とは?

 カナダ・Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らは、乾癬患者を対象とした第III相試験で用いられた患者報告に基づくPsoriasis Symptoms and Signs Diary(PSSD)スコアの変化を、Patient Global Impression of Change(PGI-C)スコアおよびPatient Global Impression of Severity(PGI-S)スコアに照らし合わせ、患者にとって臨床的に意義のある有意な改善を示すPSSDスコアの変化量を検討した。解析の結果、PSSDスコアのベースラインからの改善が15ポイント以上の場合、PGI-Cスコアに意義のある変化が示された。乾癬の臨床試験では、PSSDスコアのベースラインからの変化が、患者報告アウトカムとして広く用いられているが、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値が、臨床試験の設定では確立されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。 研究グループは、Program to Evaluate the Efficacy and Safety of Deucravacitinib, a Selective TYK2 Inhibitor(POETYK), PSO-1(POETYK PSO-1)試験のデータを用いて、PSSDの臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を評価した。 POETYK PSO-1試験は、成人の中等症~重症の乾癬患者を対象に、選択的TYK2阻害薬デュークラバシチニブの有効性と安全性を評価した国際共同第III相多施設共同無作為化二重盲検試験。本試験は、2018年8月7日~2020年9月2日に行われた。対象患者には、デュークラバシチニブ6mg(1日1回)またはプラセボ、アプレミラスト30mg(1日2回)のいずれかを投与し、追跡調査した。 今回の解析では、PSSDを毎日報告していた成人患者を対象とし、ベースラインから16週時までのPSSDスコアの平均変化量を、PGI-CおよびPGI-Sの改善のカテゴリーに照らし合わせて、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を導出した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、666例が含まれた。平均年齢は46.1(標準偏差13.4)歳、男性が453例(68.0%)であった。・ベースラインでPGI-SとPSSDを報告していたのは601例であった。16週時点でPGI-SとPSSDを報告していたのは481例であり、PGI-CとPSSDを報告していたのは486例であった。・609例を対象とした解析により、以下の3つの閾値が特定された。・PSSDスコアのベースラインから16週までの変化が15ポイント以上の場合、PGI-Cの臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が25ポイント以上の場合、PGI-SおよびPGI-Cの両方が臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が30ポイント以上の場合、乾癬の症状が大きく改善(PGI-Cによる評価が非常に大きく改善/大きく改善)した患者が特定された。

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花粉症重症化を防いで経済損失をなくす/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 花粉飛散が気になる季節となった。今後10年を見据えた花粉症への取り組みについて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(理事長:村上 信五氏)は、都内で「花粉症重症化ゼロ作戦」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、花粉症重症化の身体的、経済的、社会的弊害と鼻アレルギー診療ガイドラインの改訂内容、花粉症重症化ゼロ作戦の概要などがレクチャーされた。アレルギー性鼻炎の経済的損失は年19万円 はじめに村上氏が挨拶し、花粉症は現在10人に4人が発症する国民病であること、低年齢での発症が増加していること、花粉症により経済的損失も多大であることなどを語り、同学会が取り組む「花粉症重症化ゼロ作戦」の概要を説明した。 続いて岡野 光博氏(国際医療福祉大学耳鼻咽喉科学 教授)が「花粉症重症化の意味するもの」をテーマに花粉症による社会・患者の損失について説明した。 2023年に政府は花粉症は国民病として関係閣僚会議を立ち上げ「発生源対策」「飛散対策」「発症等対策」の3本柱で対策を施行することを決定した。具体的には、診療ガイドラインの改訂や舌下免疫療法(SLIT)の推進、リフィル処方箋の活用推進などが予定されている。 花粉症の主な症状である鼻、眼、全身、のど症状について述べ、1日にくしゃみと鼻かみが各11回以上、鼻閉による口呼吸が1日のうちでかなりを占める場合は「重症」と評価し、花粉症が重症化するとQOLが著しく悪化すると説明した。QOLの評価指標であるEQ-5D-5Lを用いた値では、重症花粉症のQOLは糖尿病や骨折、乾癬よりも悪いことが報告された。一例としてアレルギー性鼻炎(AR)の研究ではあるが、重症化が患者の健康状態と労働生産性に重大な影響を与え、とくに労働生産性についてみると平均収入日額で1万5,048円、労働時間で年12.74時間、経済的損失で年19万1,783円と見込まれるとする報告を紹介した1)。 また、重症スギ花粉症患者では、抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬の標準治療を受けていても症状ピーク期には労働や勉強の能率が約35~60%低下するという報告もあり、社会に影響を与える事態を避けるためにも花粉症重症化には対策をするべきと説明を終えた。オマリズマブなどの作用機序の図など追加 大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)が、「鼻アレルギー診療ガイドラインの改訂点:最新の治療を教えます」をテーマに今年発行が予定されているガイドラインの内容を説明した。 本ガイドラインは、1993年に初版が発行され、不定期ではあるが最新の診療エビデンスを加え改訂され、最新版は改訂第10版となる。 今版では次の内容の改訂が主に予定されている。【第1章 定義・分類】・鼻炎を「感染性」「アレルギー性」「非アレルギー性」に分類・LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎を追加 【第2章 疫学】・スギ花粉症の有病率は38.8%・マスクが発症予防になる可能性の示唆【第3章 発症のメカニズム】・前段階として感作と鼻粘膜の過敏性亢進が重要・ARはタイプ2炎症【第4章 検査・診断法】・典型的な症状と鼻粘膜所見で臨床的にARと診断し早期治療開始・皮膚テストに際し各種薬剤の中止期間を提示【第5章 治療】・各治療薬の作用機序図、免疫療法の作用機序図、スギSLITの効果を追加 この中で大久保氏は、とくに治療について厚く触れ、治療目標として「症状がないか軽度、日常生活に支障がない」「症状が安定し、急性の増悪がない」「抗原誘発反応がないか軽度」の状態に患者をもっていくことが必要と語った。また、ARの治療アドヒアランスについて、患者の69%が不良であり、その一因として抗ヒスタミン薬の眠気などの作用を上げ、理想的な抗ヒスタミン薬の要件として「速効性、効果持続」「眠気など副作用が少ない」「安全で長期間投与」「1日1~2回」などを提示した。また、重症花粉症では、抗ヒトIgE抗体オマリズマブについて、症状ピーク時に有意に鼻症状のスコアを改善したことを紹介した2)。 そのほか、アレルゲン免疫療法について、症状を改善し、薬用量が減少しうること、全身的・包括的な臨床効果が期待できること、治療終了後にも効果が期待できることを示し、スギSLITについて、3年継続することで治療終了後2年間の効果持続があったことなどを説明した3)。しかし、SLITでは、即効性がなく、長期治療が必要であること、不安定喘息などには禁忌であること、アナフィラキシーの副反応など注意が必要と短所も示した。 最後に治療法の選択を示し、「主治医とよく相談し、自分に合った治療法を決めて欲しい」と述べ、レクチャーを終えた。花粉症重症化の知識を啓発してゼロにする 川島 佳代子氏(大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉・頭頸部外科 主任部長)が、「花粉症重症化ゼロ作戦2024:我々がこの春の花粉症で行うべきこと」をテーマに今年から始まる「花粉症重症化ゼロ作戦」について説明を行った。 先述のように花粉症では重症患者が多く、間接費用も含めると経済損失など多大な額に上るほか、患者個人にも就業や学業で大きな負担を強いるものとなっている。また、患者もありふれた疾患ゆえに自己流の対処を行っているケースが多く、重症であっても適切な治療がなされていないこともあり、こうしたことが社会的損失を起こす一因となっている。こうした背景から、学会として花粉症の正しい病態、治療について発信することが重要との認識に立ち、今回の取り組みが行われることになったと説明した。 花粉症重症化ゼロ作戦2024の診療の柱としては、・初期療法の重要性を周知・重症化したら併用療法や抗IgE抗体療法にスイッチ・根本治療としてアレルゲン免疫療法などを説明し、実践などが掲げられている。 今後、この取り組みのために特設サイトが開設され、「花粉症重症化とは」「重症化度チェック」「患者の声」などのコンテンツ公開が予定され、市民講座やポスター掲示、地元医師会との連携などを実施、2030年までには目標として「花粉症の重症化ゼロを目指す」と説明を終えた。

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開発中の外用PDE4阻害薬、アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬に有望

 軽症~中等症アトピー性皮膚炎または尋常性乾癬患者において、開発中の外用PDE4阻害薬PF-07038124は、忍容性が良好で有効性に優れることが示された。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のLawrence F. Eichenfield氏らが海外第IIa相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬は、外用治療薬についてアンメットニーズが存在する。外用PF-07038124は、オキサボロール骨格を有するPDE4阻害薬で、T細胞ベースアッセイにおいて免疫調節活性が確認されており、IL-4およびIL-13に対する阻害活性を有している。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。 試験は2020年12月21日~2021年8月18日に、4ヵ国の34施設で行われた(データ解析は2021年12月15日まで)。対象は、軽症~中等症アトピー性皮膚炎(病変が体表面積の5~20%)または尋常性乾癬(体表面積の5~15%)を有する18~70歳の患者とした。対象患者を1対1の割合で、PF-07038124(0.01%外用軟膏)群または溶媒群に無作為に割り付け、1日1回6週間塗布した。 主要エンドポイントは、アトピー性皮膚炎患者についてはEczema Area and Severity Index(EASI)総スコアのベースラインからの変化率、尋常性乾癬患者についてはPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアのベースラインからの変化で、いずれも6週時点で評価した。安全性は、治療中に発現した有害事象や塗布部位の反応などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体で104例が無作為化された(年齢[平均値±標準偏差]:43.0±15.4歳、女性:55例[52.9%]、アジア人:4例[3.8%]、黒人:13例[12.5%]、白人:87例[83.7%])。・内訳は、アトピー性皮膚炎患者70例、尋常性乾癬患者34例であった。・ベースラインの患者背景は、概してバランスが取れていた。・6週時点において、PF-07038124群は溶媒群と比較して、EASI総スコアのベースラインからの変化率(最小二乗平均値:-74.9% vs.-35.5%、群間差:-39.4%[90%信頼区間[CI]:-58.8~-20.1]、p<0.001)が有意に改善した。・同様に、PASIスコアのベースラインからの変化(-4.8 vs.0.1、群間差:-4.9[90%CI:-7.0~-2.8]、p<0.001)もPF-07038124群が有意に改善した。・治療中に有害事象が発現した患者数は、アトピー性皮膚炎患者の治療群間(PF-07038124群9例[25.0%]vs.溶媒群9例[26.5%])、尋常性乾癬患者の治療群間(3例[17.6%]vs.6例[35.3%])のいずれも同等であった。・PF-07038124の塗布部位反応は報告されなかった。

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乾癬への生物学的製剤、逆説的反応リスクは?

 生物学的製剤による治療を受けた乾癬患者が湿疹を発症する逆説的反応のリスクは、IL-23阻害薬を投与された患者で最も低かった。リスク上昇と関連する因子は、年齢上昇、女性、アトピー性皮膚炎の既往、花粉症の既往であった。全体的には逆説的反応の発生率は低かった。英国・マンチェスター大学のAli Al-Janabi氏らが前向きコホート試験の結果を報告した。生物学的製剤を用いた尋常性乾癬患者の一部で、アトピー性皮膚炎の表現型の1つである湿疹を発症することが報告されている。しかし、そのリスク因子は不明であった。今回の検討結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、今回得られた結果を再現する必要がある」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月6日号掲載の報告。 研究グループは、生物学的製剤のクラス別の逆説的反応のリスク、リスク上昇と関連する因子を検討する前向きコホート研究を行った。 対象患者は、英国およびアイルランドの皮膚科を受診し、生物学的製剤による治療を受けた18歳以上の成人の尋常性乾癬患者で、データはBritish Association of Dermatologists Biologics and Immunomodulators Registerから入手した。2007年9月~2022年12月に少なくとも1回以上のフォローアップ受診のある患者を適格とした。 逆説的反応による湿疹の発症、治療中断、最終フォローアップまたは死亡までの生物学的製剤への曝露期間を調査。生物学的製剤はTNF阻害薬(アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル、エタネルセプト、インフリキシマブ)、IL-17阻害薬(ビメキズマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブ、セクキヌマブ)、IL-12/23阻害薬(ウステキヌマブ)、IL-23阻害薬(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)を対象とした。逆説的反応の発生率、生物学的製剤のクラス別にみた逆説的反応のリスク、逆説的反応のリスク因子を、傾向スコア加重Cox比例ハザード回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・1万3,699例が2万4,997件の生物学的製剤による治療を受けた。・2万4,997件の解析対象の年齢中央値は46歳(四分位範囲:36~55)、男性が57%、総曝露期間は8万1,441患者年であった。・逆説的反応の発生は、273件(1%)であった。・10万人年当たりの補正後発生率は、IL-17阻害薬1.22、TNF阻害薬0.94、IL-12/23阻害薬0.80、IL-23阻害薬0.56であった。・TNF阻害薬との比較において、IL-23阻害薬は逆説的反応のリスクが低かった(ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.19~0.81)。一方、IL-17阻害薬(同:1.03、0.74~1.42)、IL-12/23阻害薬(同:0.87、0.66~1.16)では逆説的反応との関連はみられなかった。・年齢上昇(HR:1.02、95%CI:1.01~1.03)、アトピー性皮膚炎の既往(同:12.40、6.97~22.06)花粉症の既往(同:3.78、1.49~9.53)は、逆説的反応のリスクを上昇させた。男性はリスクが低かった(同:0.60、0.45~0.78)。

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経口薬【アトピー性皮膚炎の治療】

経口JAK阻害薬では、ウパダシチニブ、バリシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになり、重症の患者さんにも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)ウパダシチニブはJAK1を阻害する薬剤です。通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては7.5mgへの減量が可能です。アトピー性皮膚炎に限って倍量の30mgを処方することができます。ウパダシチニブの薬価7.5mg:2594.6円/錠15mg:5089.2円/錠30mg:7351.8円/錠バリシチニブ(商品名:オルミエント)バリシチニブはJAK1/JAK2を阻害する薬剤で、皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎と円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合限定)に適応があります。用量は4mgを1日1回経口投与する。状態に応じ適宜減量となっています。相互作用がありますので、プロベネシドを内服している患者さんは減量が望ましいとされています。バリシチニブの薬価2mg:2705.9円/錠4mg:5274.9円/錠アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)アブロシチニブはウパダシチニブと同じくJAK1を阻害する薬剤です。50mg、100mg、200mgの3剤形があり、通常用量の100mgから増やしたり減らしたりできます。状況に応じて柔軟な処方ができるのは利点です。適応はアトピー性皮膚炎のみになります。アブロシチニブの薬価50mg:2587.4円/錠100mg:5044円/錠200mg:7566.1円/錠〔アトピー性皮膚炎でのJAK阻害薬処方の注意点〕診療ガイドラインでは、次のように定められています。JAK阻害薬の内服は、「事前に十分な外用薬などの治療を行っていても難治であった方」が対象となります。今まで何もやっていない方であれば6ヵ月程度はガイドラインに沿った外用薬による治療を行い、それでも改善しない場合に使用します。投与の要否にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する必要があります。(1)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考に、アトピー性皮膚炎の確定診断がなされている。(2)抗炎症外用薬による治療では十分な効果が得られず、一定以上の疾患活動性を有する、または、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用もしくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難で、一定以上の疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者である。a)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6ヵ月以上行っている。b)以下のいずれにも該当する状態。IGAスコア3以上EASIスコア16以上、または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する(目安として頭頸部のEASIスコアが2.4以上)体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上同時に、投与できる施設も決められております。次に掲げる医師要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設です。ア)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。イ)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。また、日本皮膚科学会でも届出制度を作っています。乾癬の生物学的製剤のように承認制度は設けていませんが、薬剤の特性上、下記の要件を満たした上で届出した上で、使用することになっています。1)皮膚科専門医が常勤していること2)乾癬生物学的製剤安全対策講習会の受講履歴があること3)薬剤の導入および維持において近隣の施設に必要な検査をお願いできること

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