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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例経過

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症自転車で転倒して腰部を打撲した直後から、腰部の持続痛と体動時の激痛を自覚し臥床して過ごしていた。近医整形外科を受診したところ腰椎レントゲン検査によって第4腰椎圧迫骨折と診断され、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を処方された。しかし疼痛、とくに体動時痛が非常に強いことから1%リン酸コデイン40mgを処方されたものの、疼痛に変化がなかった。そこで、転倒のエピソードから2週間目に塩酸モルヒネ散20mgを導入された。吐き気と便秘に対しては適切に制吐剤や緩下剤が使用されたため、オピオイド鎮痛薬による副作用はなかった。効果不十分のためモルヒネは30→50→60mgまで約2週間かけて漸増され、転倒から約1ヵ月後には持続痛と体動時痛のいずれも著明に改善し、日中も臥床して過ごしていた状態から体動時痛が増強しない程度に家事を行えるまでにADLは改善した。残存している痛みに対してモルヒネが漸増され、20~30mgずつ増量されると1~2週間程度は疼痛が緩和するが再び増悪することを繰り返すようになった。さらに、主治医から疼痛が増強しないように安静にするように指導されたことと、患者本人が体動時痛を過度に恐れることから、再び日中もほぼ臥床して過ごすようになりADLは低下していった。また、疼痛が増強した際の頓用薬には当初NSAIDsが処方されていたが、疼痛の増強の訴えに応じてモルヒネを頓用するように指導されていた。転倒から6ヵ月目にはモルヒネの服薬量は200mgになっていたが日中も臥床していることが多くなり家事のほとんどは夫が担当し、痛み以外に緩下剤に抵抗性の便秘や口渇、不眠も出現していた。モルヒネの頓用をしても鎮痛効果を実感していなかったが1日に数回はモルヒネの頓用を続けていた。転倒から約9ヵ月後、オピオイド鎮痛薬に抵抗性の難治性腰痛として当科を紹介され夫とともに受診した。当院受診時に下肢痛はなかったが、転倒当初の腰部に限局した疼痛ではなく腰背部全体の疼痛を訴え、痛みの増減は体動とは無関係であった。疼痛部位の感覚低下はなかった。また、両下肢の筋力低下は認められなかった。痛みの訴え以外には、不眠(入眠困難感と中途覚醒)を強く述べたが、夫から日中はしばしば傾眠傾向であることや夜間はいびきをかいて寝ていることが聴取された。患者本人は気分の落ち込みが強いが食欲はあり、夫が作った食事を食べておりADLの低下・不活動状態と相まって体重は増加していた。腰部MRIでは第4腰椎椎体に圧迫骨折所見があるが、新鮮な炎症所見や偽関節はなかった。現在の腰背部痛は、腰椎圧迫骨折に伴う侵害受容性疼痛ではなく、痛みの原因として妥当な器質的な障害を伴わない非特異的腰痛と診断した。オピオイド鎮痛薬の鎮痛効果を実感していないにもかかわらず、定期内服に加えて頓用を繰り返しており、オピオイド鎮痛薬の不適切使用(aberrant drug taking behavior)状態と評価した。モルヒネの頓用を禁止するとともに、1日量200mgから30mgずつ1週間毎に漸減し、夫にもモルヒネを中心とした鎮痛薬についての知識を教育しそれらの管理を患者と一緒に行うように指導した。加えて、痛みを理由とした行動制限を解除すること(具体的には、日中の臥床時間を減らすこと、積極的に家事に参加するようにすること)を指導し、ADLの改善とともに行動目標(散歩、ショッピング、家事全般)を段階的に増加させていった。当院初診から4ヵ月程度で腰痛は軽度残存しているが許容範囲内であり、不眠は解消した。モルヒネは漸減・中止でき、ADLおよびQOLは転倒前の状態に回復した。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(81)〕 パーキンソン病にはより積極的な運動療法介入を

パーキンソン病は運動障害のほかにも、うつや無為、不眠、便秘などの非運動症状など、多様な症状を示す神経変性疾患で、薬物治療によっても進行を食い止めることができないのが現状である。  最近、運動療法が身体機能、筋力、平衡機能、歩行のスピードなどを改善することが指摘されている。著者らはParkFit programを開発し、32の施設より586人の活発な運動がみられないHoehn-Yahr 分類3以下の患者を対象に、2年間の追跡研究を行った。ParkFit programとは、月ごとにコーチがより活発なライフスタイルを個別指導し外来でフィードバックを行うものである。586人のパーキンソン病患者を、ParkFit群と一般的な機能訓練を行う群に二分して追跡した。  1次エンドポイントは、LASA physical activity questionnaire (LAPAQ) である。LAPAQは、患者が屋外での歩行、サイクリング、ガーデニング、家事、スポーツなどの活動を、1週間に何時間行ったかを記録させ追跡期間中の平均をみるもので、高いスコアほど身体活動をよく行ったことになる。  2次エンドポイントは、6分間の歩行テストによる身体の健康状態、QOLに関する質問による回答、患者による記録と加速度計による身体活動の評価である。 結果は、1次エンドポイントについては、ParkFit群と一般的な機能訓練との間で差はなかった。しかし、2次エンドポイントについては、ParkFit群で身体の身体活動性と健康状態が有意に改善した。ただし、QOLに関しては差がなかった。  LAPAQは広汎な日常活動を評価できるスケールで、著者らは以前、パーキンソン病は健常者に比べLAPAQスコアが29%低下していることを示した。今回の結果が示すところは、パーキンソン病の活動性を改善させるには、ParkFit program以上に強力な介入が必要であるということである。しかし、ParkFitで身体活動性と健康状態が有意に改善した点は評価できる。

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痛みと大脳メカニズムをさぐる

神経障害性疼痛の大脳レベルのメカニズム神経障害性疼痛のメカニズムについては、末梢神経の一次ニューロンあるいは脊髄レベルでの研究が非常に進んだのですが、その一方で大脳レベルでのメカニズムも明らかにされてきています。脳の一次体性感覚野と一次運動野には、体部位再現地図(somatotopy)があり、身体各部位からの感覚入力や身体各部位への運動指令の出力を担う脳領域が決まっています。神経障害に伴って末梢神経からの入力がなくなると、その地図が描き換わることがわかっています。具体的には、腕を切断された後に起こる幻肢痛の患者さんの体部位再現地図を調べてみると、手の領域がなくなってしまい、その代わり手の領域の隣にある顔の領域が拡大しています。脊髄損傷の患者さんの場合では、足の領域や腰の領域がなくなる代わりに顔や手の領域が拡大しています。神経障害性疼痛を発生している患者さんは体部位再現地図の描き換えが明確に現れますが、神経障害があっても痛みのない方は描き換えが非常に少ないことがわかっており、体部位再現地図の描き換えが、痛みの発症に関わっていると考えられています。リハビリテーションなどにより神経の入力を増やす治療を行うと、体部位再現地図は再び描き直されて、それとともに痛みが軽減してくることもわかっています。体部位再現地図の描き換えは、末梢からの感覚入力がなくなった神経系のために脳の神経細胞のスペースを使うのは無駄である、その代わり感覚入力のある神経系に利用してもらおう、という生体の代償的な反応と考えられます。なぜ、脳の地図が描き換わると痛みが起こるのかは今のところわかっていません。描き換わるときに、エラーとして痛みの信号を発生してしまうのだと考えられます。 画像を拡大する新しいリハビリテーションの可能性神経リハビリテーションにはさまざまなものがありますが、従来から行われている理学療法や作業療法以外に、私たちの施設では鏡を使った治療を行っています。対象となるのは、脊髄損傷や腕の切断あるいは腕神経叢引き抜き損傷といった運動麻痺を伴う神経障害性疼痛の患者さんです。身体の中央に鏡を立て掛けて健常な手あるいは足を動かすと、あたかも鏡の中で患肢が動いているようなイメージを作ることができます。この鏡を使ったイメージトレーニングにより、脳内の地図が新たに描き換えられることが示されています。われわれはこの治療法で痛みや患肢の運動麻痺が軽減した患者さんをたくさん経験しています。画像を拡大するさらに、より有効な治療法として、リハビリテーション支援ロボットスーツを開発しています。健肢の運動を、人工筋肉によって麻痺している患肢に模倣させる装置です。鏡の治療では視覚的な入力だけですが、リハビリテーション支援ロボットスーツでは実際に患肢が運動をします。したがって、視覚的な情報だけではなくて、筋肉の伸び縮みや関節の屈伸といった体性感覚情報も脳にフィードバックされるので、より強力に運動のイメージを脳内につくることができると期待しています。これから患者さんの協力を得て、臨床応用を進めたいと計画しています。痛みの破局的思考痛みと一次体性感覚野、運動野の関連性は明らかになってきたものの、実際の患者さんでは心理的要因が強く影響します。痛みの事を何度も考えてしまう、痛みを必要以上に大きな存在と考えてしまう、自分が感じている痛みは救い(治療法)がないと考えてしまう、などの性格的な傾向を持つ方がいます。こういった考え方を痛みの破局的思考と呼んでいますが、このような患者さんでは、心の問題が痛みの認識を歪め、不眠や不安、痛みに対する恐怖、抑うつ症状を引き起こし、その結果、行動制限が生じ、ひいては身体機能障害をもたらすという悪循環が起こります。近年では、このような心の問題による痛み悪化のメカニズムに、脳の扁桃体、島皮質、前頭前野という理性・感情・気分を司る領域が関連しているという事も明らかになっています。画像を拡大する脊髄刺激療法の有用性最後に脊髄刺激療法のお話をさせていただきます。神経障害性疼痛で薬物療法抵抗性であったり、あるいは高齢の患者さん等で副作用が忍容できない症例では、脊髄刺激療法を施行します。脊椎硬膜外腔に電気のリードを入れて脊髄を刺激することによって、疼痛を感じている範囲に電気的な刺激を与えて痛みを緩和させる治療法です。鎮痛効果のメカニズムとしては、痛み情報を伝える神経伝達物質の分泌を抑える、抑制性の神経伝達物質の分泌を促進する、脊髄レベルで神経細胞の興奮を抑える、といった作用が報告されています。障害されている神経レベルよりも上位の脊髄領域を電気刺激することで鎮痛効果が得られる患者さんがたくさんいますので、大脳レベルでも効果を発揮しているのではないかとわれわれは考えています。まず電気リードだけを硬膜外腔に挿入して治療効果の確認をし、効果が得られれば皮下に電気の発生装置であるジェネレーターを植え込みます。患者さんは自宅でも痛みが強くなったときにスイッチを入れることで痛みを緩和できます。合併症は、非常にまれですが感染が起こる可能性があります。薬物療法と違って眠気や便秘などの副作用は起こりません。最近は治療機器が進歩して小型化され、10年くらい電池寿命があるジェネレーターも使用できるようになり、より有用性が高くなっています。このように、研究の進歩により痛みのメカニズムが解明されると共に日々新たな治療法が開発されています。

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神経障害性疼痛の実態をさぐる

神経障害性疼痛が見逃されているたとえば熱いものを触ったり、刃物で切れば痛みを感じる。そういう通常の痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。末梢神経の終末にある侵害受容器が刺激されたときに感じる痛みです。侵害受容性疼痛の中には炎症に伴って起こる炎症性疼痛も含まれますが、これらを合わせて生体を守るための生理的な疼痛と呼んでいます。一方、「神経障害性疼痛」は、末梢神経から脊髄、さらに大脳に至るまでの神経系に何かの障害が起こったときに、エラーとして生じる痛みです。生体を守る意義はなく、病的な疼痛と考えられています。このように、神経障害性疼痛と炎症性疼痛は区別して考える事になっています。ただし、臨床的には炎症が遷延し持続的に痛みのシグナルが入力されるような状態では、神経系はエラーとしての過敏性を獲得するため、炎症性疼痛が続いた結果起こる痛みと神経障害性疼痛は明確に区別できないと考えられています。多くの神経障害性疼痛は痛みの重症度が高く、患者さんのQOLは著しく低下します。神経障害性疼痛は、まだまだ医療者に浸透していない痛みの概念です。神経障害性疼痛であることが疑われないで治療されているケースも多くみられ、神経障害性疼痛には特別なスクリーニングが必要だと考えます。神経障害性疼痛のスクリーニング痛みと一口にいっても、ナイフで刺された時の痛みと、炎や熱に手をかざした時の痛みは、おのずと性質が違ってきます。神経障害性疼痛の患者さんの多くは、「ヒリヒリと焼けるような痛み」「電気ショックのような痛み」「痺れたような痛み」「ピリピリする痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」といった特徴的な性質の痛みを訴えます。一方、炎症性疼痛の患者さんでは、ズキズキする、ズキンズキンするといった、明らかに痛みの性質が異なった訴えをします。痛みの性質の違いは、痛みの発生メカニズムの違いを表していると考えられています。患者さんの自覚的な訴えから痛みの種類を鑑別するために、痛みの問診票が各国で開発されています。私たちはドイツでつくられた「PainDETECT」の日本語版を許可を得て開発し、その妥当性の検証試験を行っています。痛みの性質、重症度、場所、範囲、時間的変化を1つの質問用紙に記入する形のもので、臨床で使いやすい問診票になっています。侵害受容性疼痛なのか神経障害性疼痛なのか、あるいは両方が混合している疼痛なのかを分類することができます。画像を拡大する痛みの具体性を評価する痛みのスクリーニングにおいて、痛みの性質と共に痛みの具体性を評価することが重要です。たとえば捻挫をした患者さんにどこが痛いか聞くと、「足首のここが痛い、足首を伸ばすと痛い」と明確な答えが得られます。これは痛みの具体性が高いといえます。一方、器質的な異常を伴わない非特異的腰痛や、外傷後の頸部症候群(むち打ち症)では、「腰のあたりが全体的に痛い」とか、「何となく首の周りが痛い」といった部位を特定しにくい漠然とした痛みを訴えることがあります。そのような場合は痛みの具体性が低いと評価します。痛みの具体性が高いときには身体的な問題、器質的な異常があり、痛みの具体性が低い場合は器質的な異常がない(少ない)と判断し、心因性疼痛の要素の有無を考えます。器質的異常の有無は薬物療法の適応を考える際に重要なポイントになりますので、痛みの性質と共に具体性を聞くことは非常に有用です。神経障害性疼痛が合併しやすい疾患神経障害性疼痛が多く見られる疾患は、糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、脊柱管狭窄症です。たとえば帯状疱疹では、神経にウイルスが棲んでいて神経の炎症や障害が起きます。日本での大規模な調査研究で、これまで神経障害性疼痛ではないと考えられていた腰痛や膝関節症を含む多くの慢性疼痛患者さんの中にも、神経障害性疼痛が含まれていることがわかってきました。首から背中、腰の痛みを訴える患者さんの実に約8割が、神経障害性疼痛だろうと推察される報告もあります。手術後の痛みは意外に調べられていない領域です。傷が治れば痛くないと医療者が思っているので、患者さんが痛みを訴えにくい環境があるようです。開胸手術後は6~8割、乳腺の術後には5~6割、鼠径ヘルニアの術後では3~4割の患者さんが傷が治った後にも痛みを持っていることがわかっています。もちろん手術後に遷延する痛みの病態のすべてが神経障害性疼痛ではありません。術後遷延痛には、神経障害性疼痛とも炎症性疼痛ともいえない独特のメカニズムがありそうだ、ということが分子生物学的な病態研究によってわかってきています。薬物療法による神経障害性疼痛の治療神経障害性疼痛の治療は、侵害受容性疼痛とは治療戦略がまったく異なります。基本的に消炎鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛の第一選択薬はCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリン(商品名:リリカ)と三環系抗うつ薬です。第二選択薬としては、抗うつ薬セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のうちの一つであるデュロキセチン(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン(商品名:メキシチールほか)です。第三選択薬は、麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。まず初めにプレガバリンか三環系抗うつ薬を用います。効果が不十分であれば、いずれかに切り替えるか併用する。プレガバリンは添付文書では、朝と夕方に内服することになっていますが、私たちは就寝前の服用を勧めています。神経障害性疼痛の患者さんは痛みが強く不眠を訴える方が多いのですが、プレガバリンによる眠気の作用を逆に利用した服用方法です。プレガバリンの眠気は鎮静によって生じるものではなく、生理的な睡眠作用であることがわかっています。そのためか、患者さんもぐっすり眠れたという満足感を持つことが多いようです。そして第一選択薬で効果が不十分な場合は、第二選択薬への切り替え、あるいは第二選択薬との併用を行います。ただし三環系抗うつ薬とデュロキセチンの併用では、副作用として興奮・せん妄等のセロトニン症候群を起こす危険性があるので、三環系抗うつ薬とデュロキセチンは基本的に併用はしません。第二選択薬が無効な場合は、第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)を使います。非がん性の慢性疼痛に対して使えるオピオイド鎮痛薬は、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット)とフェンタニル貼付剤(商品名:デュロテップMTパッチ)が主なものです。ブプレノルフィン貼付剤(商品名:ノルスパンテープ)は変形性関節症、腰痛症のみが保険適応となっています。オピオイドは最も高い鎮痛効果を期待できますが、長期間使った場合に便秘や吐き気、日中の眠気などの副作用が問題になります。オピオイド鎮痛薬に対して精神依存を起こす患者さんもまれにですがいます。そのため、第一選択薬、第二選択薬が無効な場合にのみ使うことが推奨されています。オピオイド鎮痛薬使用における注意点非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使い方は、がん性疼痛とは異なります。がん性疼痛の場合は、上限を設けずに患者さんごとに投与量を設定し、痛みが続いている間は使い続けます。痛みが発作的に強まったときには頓用薬も用います。一方、非がん性の疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、経口のモルヒネ製剤換算で120mgを上限に設定することが推奨されています。オピオイド鎮痛薬の使用期間は極力最少期間にとどめ、痛みが強くなったときの頓用は推奨されていません。これらのオピオイド鎮痛薬の使用に制限を設けている理由は、すべて精神依存の発症リスクを抑えるためです。がん性疼痛と非がん性疼痛では、オピオイド鎮痛薬の使い方の原則が違うことをご理解いただきたいと思います。オピオイド鎮痛薬の精神依存は、器質的な痛みの患者さんでは基本的に発症しないことがわかっています。器質的ではない疼痛、すなわち痛みの具体性の低い患者さんでは精神依存を起こす可能性が高まるので、オピオイド鎮痛薬を積極的に使用すべきではないと考えています。うつ病や不安障害といった精神障害を合併している患者さんも、オピオイド鎮痛薬による精神依存を発症しやすいことがわかっています。最も強い鎮痛効果を求めるときは、われわれはオピオイド鎮痛薬とプレガバリンを併用しています。プレガバリンには抗不安作用があり、それがオピオイド鎮痛薬による吐き気の発生に対する予期不安を抑制し、制吐効果が期待できます。オピオイド鎮痛薬と三環系抗うつ薬の併用も強い鎮痛効果が期待できますが、吐き気、眠気、抗コリン作用による口渇などを相乗的に増強してしまうため推奨していません。

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話せばわかる?通報する?“モンスターペイシェント”

“困った患者さん”を通り越して“モンスターペイシェント”なんて言葉さえ見られる昨今。法外な要求、目を剥くような行動、ついには暴力の果てに負傷、うつ状態に追い込まれる医師・スタッフも…。皆さんどうやって対処していますか?モンスター化させないコツは?医師1,000人から聞いた“モンスターペイシェント事情“、必見です!コメントはこちら今すぐできる対策はこちら結果概要7割近くの医師が“モンスターペイシェント”の対応経験あり、うち1割は『月に1度以上』全体で7割近くの医師がそうした患者・家族に対応した経験があり、勤務施設別では診療所の57.4%に比較して一般病院では70.7%という結果となった。頻度を尋ねたところ、うち7割強が『半年に1度』以下であったが、一方で『月に1度』以上との回答が1割、中には『週に2~3度以上』という医師も。治療費不払い、脅迫、暴力…「犯罪では?」「病院内では不当に軽く扱われることがある」内容として『スタッフの対応へのクレーム』が60.5%、『自分を優先した診察ほか待ち時間に関する要求・暴言』が47.1%、次いで『不要/過剰な投薬の要求』が37.6%と続く。『治療費の不払い』も3割に上り、「無銭飲食と同様に罪に問うべきだ」といったコメントも寄せられた。暴力を受けた経験があるとの回答は16.2%、脅迫に関しては27.6%に上った。また「個室での診察中に監禁された」といった声も。全体の16.2%が『警察OBを雇用』、担当者を定めない施設では医師個人に負担がそうした患者への最終的な対応として、3人に1人が『以後の診察を拒否した』と回答。次いで『転院させた』『担当医を交代した』と続く。警察への連絡に関しては『出動を要請した』16.4%、『相談した』11.5%となった。一方『特に対応をとったことがない』との回答は22.5%。「キャリアの浅い頃は、怖さのあまりに従ってしまったことがあった」といった声も。その他、施設内で通常取られている対策としては『担当者を決めている』が最も多く約3割に上った。次いで『対応マニュアル』『事例の共有』と続く。『警察OBを雇用している』の回答は16.2%であり、その存在は非常に有効との声が多かった。担当者を定めず医師・スタッフ個人の対応に任せている施設においては「対応に疲れ果てうつ病になった」「退職した」といった経験談が寄せられ、個人ではなく施設としての対応が必要だとのコメントも複数見られた。設問詳細医療従事者や医療機関に対して、自己中心的で理不尽な要求、果ては暴言・暴力を繰り返す患者や、その保護者・家族等を指し、「モンスターペイシェント」といった言葉が使われることがあります。そこで先生にお尋ねします。Q1.患者・家族から暴言・暴力、その他“通常の域を超えている、診察に著しく影響を及ぼすレベル”の行動・要求・クレームを受けたことがありますか。あるない(Q1で「ある」と回答した方のみ)Q2.その内容について当てはまるものを全てお答え下さい。(複数回答可)診察をしないで投薬のみ要求する不要な投薬・過剰な投薬を要求する自分を優先した診察ほか、待ち時間に関する要求・暴言を吐く「空いている」などの理由で、時間外・夜間診療を繰り返すスタッフの対応が気に食わない、とクレームをつける治療法・薬剤を指定するなど、自分の見立てを強硬に主張する事実と異なることを吹聴して回る検査・診察・食事・内服等を拒否する治療費・入院費を払わない入院を強要する退院を拒否する土下座ほか度を越した謝罪を要求する「訴える」「刺す」「暴力団関係者を連れてくる」「マスコミに流す」などと脅迫するご自身・スタッフに暴力を振るうその他(Q1で「ある」と回答した方のみ)Q3.上記のような患者・家族への対応に関しご経験があるものをお答え下さい。(複数回答可)他の医師と担当を交代した転院させた以後の診察を拒否した弁護士・司法書士等に相談した警察に相談した警察に通報した、出動を要請した患者の対応に参って体調を崩した退職したその他特に対応をとったことがない(Q1で「ある」と回答した方のみ)Q4.上記のような患者・家族に遭遇する頻度について最も近いものをお答え下さい。週に2~3度以上週に1度半月に1度月に1度2~3ヶ月に1度半年に1度1年に1度それ以下Q5.院内で設けられている対応策について当てはまるものをお答え下さい。(複数回答可)対応マニュアルがある対策システムがある防犯・対策セミナーを実施している院内で事例を共有している対応担当者を決めている担当部署を設置している警察OBを雇用している弁護士・司法書士に相談する体制をとっている「警察官立寄所」のステッカー・看板を掲げているICレコーダー・カメラ等を設置しているその他    (               )特に対応策をとっていないQ6.コメントをお願いします(具体的なエピソードや解決方法、対策ノウハウ、院内の体制などなんでも結構です)2013年2月12日(火)~13日(水)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「混雑時に自分だけ早く診ろ、と要求して来るケースが多い。」(40代,呼吸器科,一般病院)「女性医師というだけで高飛車な態度をとる患者さんがおられます。自分で対応しようとしても困難な場合もあり、その時は患者さんが興奮して手がつかなくなる前に他の職員に助けを求めます。」(40代,その他,大学病院)「一般なら暴行罪や脅迫罪なのに、病院内だと不当に軽く扱われることがある。」(40代,内科,一般病院)「警察OB,弁護士の関与は有効だと思います。患者の度を超えたクレームは警察OBの立ち合いで、殆ど問題化しません(患者の言いがかりの場合)。」(50代,外科,大学病院)「モンスターペイシェントの対応に心身ともに疲れはて、うつ病になってしまい半年間入院しました。」(40代,内科,一般病院)「今後医師は、モンスターペイシェントに対する対応を必須講座として受講すべきだと思う。」(70代以上,内科,一般病院)「セクハラの要素もあるが、循環器内科であるにもかかわらず局所を出して『腫れているので触ってくれ』となんども強要する。毎週土曜日に遠方からやってくる。事務長に泌尿器科に行くよう指示してもらったが、今度は看護師に座薬、浣腸を強要するので、こわもての男性薬局長にきてもらい浣腸してもらったら、二度と来なくなった。」(40代,循環器科,診療所・クリニック)「厄介なのは身内が次々と来て同じ説明を求める家族です。 最後は長男を代表者と決めて1回だけにしました。」(50代,循環器科,診療所・クリニック)「医療安全対策室で対応してもらうようになっています。」(70代以上,外科,一般病院)「本当にモンスターだらけで、善意が消えていくのが分かります」(30代,内科,一般病院)「特に自分が被害をこうむったことはないが、対象事例が起こった場合は全館放送で起こったことを知らせ、対処することとなっている。」(40代,整形外科,一般病院)「まず十分に言いたい事を相手がもう疲れたというまで黙って傾聴する。時々『そうですか…』と言いつつメモしたりし、『今までのことは一応録音してますが一緒に聞き直して間違いないか確認していきましょうか』と伝えると大体お帰りになられる。」(40代,内科,診療所・クリニック)「とにかくすぐ医師会の顧問弁護士に相談して、初期対応のアドバイスをもらう。」(50代,内科,診療所・クリニック)「モンスターペイシェントに対してほとんどの病院は弱腰である。もっと毅然とした対応をすべきである。治療費不払いなどは無銭飲食と変わらないので即警察に通報すべきだ。」(40代,整形外科,一般病院)「30年医師をしているが、自分にはモンスターペイシェントの経験はない。丁寧に対応すれば問題となるような事態は起きないと思う。」(50代,内科,診療所・クリニック)「モンスターなどという曖昧な表現ではなく、 暴行、脅迫、業務妨害、食い逃げならぬ不払い、 詐欺等々、積極的に警察と連携し、刑事及び民事で罪に問うべきであり、 医療機関間で情報共有し、診療不可として出入り禁止にすべき」(40代,内科,一般病院)「精神科の病院とクリニックなので,モンスターなのか精神障害かの区別は難しい」(60代,精神・神経科,一般病院)「危険が予測される場合には、眼鏡やポケットの中身などを外すようにしています。」(30代,精神・神経科,一般病院)「小児科なのでモンスターペアレントが多いです」(40代,小児科,一般病院)「俺の言うとおりの薬だけを出せと強要する。血圧を測ろうとすると断固拒否する。」(60代,内科,診療所・クリニック)「公立病院に勤務しておりますが、モンスターペイシェントを警察に届けた例を見たことがありません。どの程度で届出をしたほうがいいのか。その際の罪の重さはどの程度なのか。」(50代,内科,一般病院)「変な権利意識が強くなってきて、増えているような印象 病院をホテルとかのサービス業と勘違いしている人も増えている」(40代,循環器科,一般病院)「逃げ場のない個室で診察しているときに、監禁されたことあり。 逃げられるドアのある部屋で診察するようにしている」(40代,内科,診療所・クリニック)「脅迫を受けましたが謝ることはしませんでした」(50代,内科,診療所・クリニック)「マニュアルは最低必要.300床以上では専門部署の設置が望ましい」(60代,外科,大学病院)「対策ガイドラインが策定されると、判断基準が定まり、対応がしやすくなる。 厚生労働省など公式な機関からの公示を期待したい。」(30代,内科,診療所・クリニック)「ターゲットにされている医師・看護師などをできるだけ担当から外し、事務系のもので対処するようにしている。場合により、警察OBの方に前面に出ていただくようにしている。記録を取らしていただくように宣告する・・・などです。」(60代,外科,一般病院)「クレームを言わせないような暖かな雰囲気のクリニックにしています。幸い今のところありません。」(50代,代謝・内分泌科,診療所・クリニック)「いくら患者さん御本人と良好にコミュニケーションを取れていても、事態を把握していない第三者のクレームが入ることもあり、閉口しました。」(50代,内科,一般病院)「患者の自分本位な要求に応じなかったら、激昂して殴られたことがある。精神科の診療であるし(情動障害を主とする適応障害)軽いかすり傷を負った程度なので不問にした。度量が大きいと映ったのか、以後関係改善し特別扱いを求めなくなったが、後日他科の医師にも暴力を振るってしまい診療科間の問題にまで発展した。初回から暴行事件として刑事告訴すべきだったと反省している。」(40代,精神・神経科,診療所・クリニック)「正直、モンスターペイシェントに対する院内での明確な対応マニュアルはない。他院では警察OBを雇用するなど、毅然とした対応を行っているところも多いと聞くが、当院ではひたすら事務の人が謝るなど、こちらが下手に出て患者と対話をしている。個人的には、明らかなモンスターに対しては謝る必要はなく病院を出て行ってもらうなど、強い態度を示してほしいと考えている。」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「受付の対応時の言葉の前後を組み合わせて、勝手に自分の中で解釈し、こちらが言ってもいないようなことを言ったとのクレーム。夜間に自宅側のインターホンを執拗に鳴らし、出ないとなるとポストに苦情の手紙を投函。何日までに自宅まで謝罪に来いとの期限付きで一方的に求めてきた。」(40代,内科,診療所・クリニック)「中絶手術に付き添ってきた男性が『なんでこんなに高い料金なんだ』と怒鳴りつけてきて火災報知器を鳴らし、消防署への対応、火災報知器の修繕は自前で対応した。男性は右翼関係者だったらしく、破門されていて荒れていた状態だと分かり、まもなく自殺した連絡が入り、それで事案が終了した。」(50代,産婦人科,診療所・クリニック)「義務を果たさず、権利ばかりを主張する世の中になってしまった為と、諦めています。個人の対応には限度がありますので、とにかく、病院全体で対応することに尽きます。 」(60代,内科,一般病院)「『診療でなく話だけだ」と言って保険証提示を拒否し、順番も無視して割り込んで、症状を言って、診断名の可能性だけ聞くと無料で帰っていくことを繰り返す人がいました。保険証の提示をしつこく求めると『俺は話だけで来たので診察を受けにきたのではない!』と言い張りました。『それも診察です!』と強く言ってからは来院していません。」(40代,内科,診療所・クリニック)「これまではラッキーなことにモンスターと言うほどの患者には当たっていませんが、それでも対応に苦慮する様な方はいらっしゃいますね。」(50代,外科,一般病院)「医師になって25年間で初めてのものすごいモンスター患者さんに遭遇したが、土下座して謝れなどの脅しに屈しなかったら、矛先が保健所など違う相手に向いた。有名なクレーマー患者だったと後で知ったが、前医への悪口が尋常ではなかったので、前医に問い合わせをしてから診療に応じればよかったかなと思う。」(50代,内科,診療所・クリニック)「理不尽な要求をする患者の診察は、ICレコーダーで録音している」(30代,内科,診療所・クリニック)「患者や家族の理不尽な要求に腹立たしい思いを何度もしているが、よりよい病院にしていくための改善や対策のヒントが隠れている場合もある。大変ではあるが、理不尽な要求をするようになったその背景を探ることで勉強になることもあった。」(60代,精神・神経科,一般病院)「生活保護の患者が、『薬が足りない』『無くした』と再三取りにくる。自費でというと『殺す気か』と怒鳴り散らす。 」(30代,内科,一般病院)「会計踏み倒しなど、日常にある。」(40代,内科,診療所・クリニック)「地域医師会と所轄署とで定期的に講習会を開いている」(50代,泌尿器科,診療所・クリニック)「自己負担分の踏み倒しが多々ある。更に市町村の福祉医療制度を悪用し、病院に掛かって自己負担分を稼ごうとする輩もいる。自己負担分を払わないので福祉医療の請求書を出さなかったら、後日『自己負担金の還付が無い』と文句の電話が来て唖然とした。 大学生の踏み倒しも増えている。この場合は実家に連絡すると大体片付く。どうしても払わず、実家の祖母に振り込ませたこともある。」(50代,内科,診療所・クリニック)「特に医療関係者の家族が、クレームをつけて『保健所や医師会に訴える』などと脅してくる。」(40代,整形外科,一般病院)「けいれん重積を治療後、てんかんの診断名が気に入らない。点滴を入れたせいで、指の動きに問題が出たとクレーム。頭痛を治せと暴れる。ソセゴンを打てと脅す。ぜんそく発作が夜出た場合、点滴後、(タクシーではなく)バスで帰れるように、真夜中すぎまで待って救急車を呼ぶ。順番が遅い、とスタッフを怒鳴る。MRIで異常がないとわかった後、支払いをせず逃走。救急で入院した患者の具合を早く良くしろと家族に詰め寄られるなどなど、書ききれないほどのエピソードがあり、疲れて退職しました。もう、二度と救急対応はやりたくありません。」(50代,神経内科,診療所・クリニック)「酔っ払いが最悪です。処置をしようとすると『痛い』だのと騒ぎ暴れたり物を投げる。帰りのタクシー代がないから救急車を呼べと騒ぐ。『今は金がない』と帰って医療費を払わない。酔っ払いを診ない病院が増えてこっちに回ってくることが多くなったが、断れるものなら断りたい。」(40代,脳神経外科,一般病院)「ブラックリストがあり、時間外受診の問い合わせがあった際には、必ずそれに目を通すようにしています。」(30代,精神・神経科,一般病院)「投薬強要には毅然と拒否するように心がけていますが、キャリアの浅いときは、怖くて従ってしまったこともありました。薬物中毒疑いの暴力団風の患者が夜間の救急外来に現れ殴られそうになったことがありますが、警察に連絡したら逃げていき事なきを得ました。診察費、入院費を払わない患者家族にも何回か遭遇しましたが、事務方と相談し対処、退院させたり、大変な思いをしたこともあります。」(50代,内科,一般病院)「クレームが発生する主な原因は、医療機関側にもあると思われます。 当院では自己防衛のため、定期的に接遇の院内勉強会を実施しています。これだけでクレームは防げる訳ではありませんが、最小限に止める事は出来ると思います。事実、当院は開業7年目ですが、殆ど大きなトラブルは経験しておりません。 上記のことから、患者応対のスキルアップが一番のクレーム対策になると考えます。」(40代,内科,診療所・クリニック)「窓口金を一切払わない。順番待ちが長い、自分の方が先に来ていたなど大声で騒ぐ。 受診後、看護師の態度が悪いと電話でクレームをうける。」(50代,循環器科,診療所・クリニック)「見つければすぐにつまみだし、暴れれば警察を呼び、顧問弁護士を通して法的に厳正に対処する。また院内の男性スタッフに柔道や極真空手の有段者がいるので、暴れる者への対応を躊躇しないことにしています。」(40代,皮膚科,診療所・クリニック)「最近暴力マニュアルを作成し、院内にて異常が起った場合コードブルーにて院内スタッフを直ちに招集するシステムを構築した。」(40代,循環器科,一般病院)「受付デスクにセコムの非常ボタンを設置している。」(50代,外科,診療所・クリニック)「問題のある患者が発生した場合には、担当部署(医療安全室)に連絡し、警察OBの方にお越し頂いて対応しています。その他問題発生時には医療安全室に相談する体制となっています。」(50代,内科,大学病院)「精神科専門で30年も臨床をやっていれば、この手のエピソードに遭遇しない訳がありません。重篤な精神疾患に罹患している患者自身よりも、むしろ家族がモンスターであることの方が対応に苦慮します。」(50代,精神・神経科,一般病院)「警察OB雇用の話はありますが、大病院以外は費用が高すぎるとの理由で、非採用。」(60代,整形外科,一般病院)「入院費を踏み倒した患者家族には、何度も説明を求められ職員の疲弊とトータルの時間喪失は非常に大きかった。この患者はブラックリストに載せておいたので夜間救急要請時は受けることなく更なるトラブルを回避できた。」(50代,外科,一般病院)「年に一度程度なので、運が悪かったとあきらめが半分。違法なことに関しては毅然とした対応を心がけている。」(40代,眼科,診療所・クリニック)今すぐできる対策をCheck!一般医療機関における暴言・暴力の予防と対策医療従事者に向けられる理不尽な暴言・暴力。その場しのぎの場当たり的な対応、していませんか?一貫した取り組みをしていかないと、スタッフの心身を損ねてしまうだけでなく一般の患者さんも逃げてしまいます。土下座など過度な謝罪を要求する母親、暴言がエスカレートする男性患者…暴言・暴力の実例を通して、予防・対策のあり方や進め方についてわかりやすく解説。

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術後のAcute Pain Serviceを利用できない患者には経口オピオイド療法を

 術後痛など急性痛に対応するAcute Pain Service(APS)を受けない、すなわち局所麻酔法や患者自己管理鎮痛法を受けることができない患者は、激しい術後疼痛に苦しむ。こうした患者に対しては経口オピオイド療法が有効であり、治療アルゴリズムは外科病棟で実行可能であることがドイツ・ミュンスター大学病院のE.M. Pogatzki-Zahn氏らによる前向き観察研究で示された。Der Schmerz誌オンライン版2013年1月17日号の掲載報告。 耳鼻咽喉科、外傷外科および一般外科で手術を受ける患者を対象に、徐放性(CR)オキシコドン、速放性(IR)ヒドロモルフォンを含む経口オピオイド、および非オピオイド性鎮痛薬からなる経口療法を実施した。 手術当日術前および手術後12時間毎に最高4日間、CRオキシコドンを投与した。疼痛スケール(0~10)が安静時3または体動時5を上回り患者の希望があった場合、IRヒドロモルフォンで治療した。 手術当日および手術後4日間の計5日間アンケートを用いて評価した。また、同様の調査を手術後6ヵ月および12ヵ月に行った。 主な結果は以下のとおり。・計275例が登録された(耳鼻咽喉科163例、外傷外科82例、一般外科30例)。・疼痛スケール中央値は、安静時3以下および体動時5以下であった。・外傷外科手術を受けた患者は、耳鼻咽喉科手術および一般外科手術を受けた患者と比較してより多くのCRオキシコドンを必要とした(p<0.001)。・一般外科および外傷外科手術を受けた患者は、耳鼻咽喉科手術を受けた患者より便秘の頻度が高かった。・嘔吐は手術の種類に関係なく、手術当日20~30%からその後は10%以下まで減少した。・重篤な有害事象は観察されなかった。・手術前のうつ病スコアが高かった患者はそうでない患者に比べ、手術直後により大きな痛みを報告した。・手術後6ヵ月および12ヵ月に持続性の術後痛を訴えた患者は、それぞれ11例(15.7%)および7例(14.9%)であった。これらの患者は、手術後1日目の急性痛が大きかった。

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ワクワク ! 臨床英会話

1.受付対応2.初めての問診 3.家族の病気 4.生活習慣  5.出産歴 6.女性特有の問題 7.アレルギー 8.薬 9.予防接種 10.風邪  11.頭痛12.呼吸困難13.腹痛  14.糖尿病 15.便秘 16.腰痛  17.関節痛 18.骨折 もしも英語しか話せない患者さんが来院したらドキドキしませんか?この教材は、ドキドキを“ワクワク”に変えてもらおうと企画されました。特に外来で使える英語を重視して、ネイティブが自然に理解出来る表現を多数紹介しています。そして、プログラムの一番の特長はパペットたちと一緒に「練習」するコーナー。楽しみながら、何度も練習できるので、いつの間にか自然な表現が身についてしまいます。もちろん、伊藤彰洋先生の「日本人が間違えやすい医学英語」のワンポイント解説も見逃せません。すぐに使える臨床英会話を楽しくマスターしましょう !収録タイトル1. 受付対応 Reception ~笑顔が大切、受付対応~2. 初めての問診 History Taking ~初めての問診~3. 家族の病気 Family History ~ご家族の病気も教えてください~4. 生活習慣 Social History ~もっと知りたいあなたの生活習慣~5. 出産歴 OB History ~出産経験はありますか?~6. 女性特有の問題 GYN History ~女性の悩み、知っていますか?~7. アレルギー Allergies ~アレルギーはありますか?~8. 薬 Medication ~どんなお薬を使ってますか?~9. 予防接種 Immunization ~予防接種は受けましたか?~10 .風邪 Cold ~よくある風邪だと思うんですが・・・~11. 頭痛 Headache ~頭痛って、意外と心配です~12. 呼吸困難 Difficulty Breathing ~息が苦しくて、苦しくて~13. 腹痛 Abdominal Pain ~お腹が痛いんです~14. 糖尿病 Diabetes Mellitus ~糖尿病が気になるこの頃~15. 便秘 Constipation ~便秘の予防にイイことは?~16. 腰痛 Back Pain ~腰が痛くて、痛くて~17. 関節痛 Joint Pain ~関節痛で仕事もできず…~18. 骨折 Fracture ~骨が折れた!~

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明解!Dr.浅岡の楽しく漢方

乾燥肌には辛い季節そろそろ更年期かしら・・・鼻水が止まらない 乾燥肌には辛い季節「便秘が解消したらニキビも良くなった」「せっかく調子の良かったアトピー性皮膚炎が、不規則な生活で悪化してしまった」などは、よくあること。肌は内臓の鏡といわれるように、からだ全体の不調や気候が原因で皮膚症状が悪化する患者さんは多いものです。皮膚症状はとても治療の難しい分野であり、漢方の処方においても様々な処方が用意されています。木枯らしが吹いて空気が乾燥する季節。冬になって増えるのは皮膚の乾燥によるトラブル。お年寄りの掻痒症やアトピー性皮膚炎の悩みを、漢方ではどのように解決するのでしょう?そろそろ更年期かしら・・・のぼせ、イライラ、鬱傾向、月経不順、めまい…。中年女性にとってとても辛い更年期障害は、西洋医学的には「ホルモンの異常」としてとらえられています。「不定愁訴」といわれるこれらの症状はその名のとおり発現や症状が不定であり、治療がなかなか難しいところではないでしょうか。しかしこれまで学習してきた「東洋医学のものさし」、具体的には「気逆」「気鬱」などの「気」の異常、或いは「血」の異常、「水」の異常、といった「気・血・水」の概念を使って分析してみると、これらの症状はとてもわかりやすいのです。診断がつけば各々の症状に効く生薬から処方を選択することができます。鼻水が止まらない春の国民病とも言われるアレルギー性鼻炎、花粉症。漢方では小青竜湯がとても有名です。もしかすると「小青竜湯は花粉症の薬」と思われている先生方も多いかもしれません。ところが、それは間違いです。漢方は疾患名に対して薬を選択するのではなく「患者さんの状態」と「構成生薬の作用」で処方を選択することはこれまでの回でも出てきました。それでは、小青竜湯が効かない患者さんに対して一体どうすれば良い?ということになってしまいます。“この薬が花粉症にも用いられるの!?”と感じる意外で、目からウロコが落ちるような処方があるかもしれません。

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明解!Dr.浅岡の楽しく漢方

冷え症や生理痛に悩んでいるの東洋医学の概念「気・血・水」。今回はこの中の「血」にスポットをあてます。「血」の異常、東洋医学では『お血』と『血虚』の2種に大別されます。お血とは血の巡りが悪くて、その結果様々な症状を引き起こすこと。血虚とは貧血、ではなくて血によって運ばれる栄養分が体のすみずみにまで配られないことによって現れる症状のこと。女性にとってとても辛い冷え症や生理痛・・・この症状でお悩みの方は少なくないはず。東洋医学では、こんな症状の治療にこの「血」の概念をあてはめて考えます。お腹が痛い ―お腹と心の深い関係―今回のテーマは腹部疾患。なかでも西洋医学的には解決が難しい『過敏性腸症候群』を中心に解説します。「断腸の思い」「ガッツ(腸)がある奴」の例えの通り、古来よりお腹と精神との関りは明白。ということは「お腹の調子が悪い=気持ちに問題がある」と考えられませんか?こんな時、漢方治療はとても効果的。下痢に下痢止め、便秘下剤、ではなくて東洋医学的に患者さんの「状態」を踏まえて診断します。お腹が痛い患者さんに対し、気持ちや心の問題をよく考えることはとても大事なこと。“気”の概念を中心に、考えてみましょう。足腰に力が入らない東洋医学の概念の中で「五臓」という言葉があったのを覚えていますか?「心・肺・肝・脾・腎」でもこれは解剖学的な臓器のことではありませんでしたね。今回はその中から「腎」に効く処方をご紹介。腎臓疾患ではありませんのでお間違いなく!では一体何か? → 「腎」とは、生物が生まれつき持っている精気、つまりenergyのこと。「腎」の力が失われると、足腰に力が入らなくなったり、夜中におしっこが近くなったりする。こんな患者さんに優れた効果を発揮する漢方処方をお教えします。

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Step By Step!初期診療アプローチ 【消化器シリーズ】

第21回「嘔気・嘔吐」第22回「下痢」第23回「便秘」第24回「吐血・メレナ・下血」 第21回「嘔気・嘔吐」非常に日常的で小児から高齢者まで年齢層も様々な消化器疾患は、幅広い知識と対応が求められますので、しっかり学習しましょう。 今回のテーマは「嘔気・嘔吐」。誰もが自己体験、臨床経験しているでしょう。しかし、ありふれた症候なので、診断も治療も難しくない…と思い込んでいないでしょうか。また嘔気・嘔吐=消化器疾患と単純に考えたり、治療は制吐剤と決めつけてはいないでしょうか。それでは思わぬ落とし穴にはまる事があります。先ずは嘔気・嘔吐を起こす脳のメカニズムを押さえ、嘔気・嘔吐のなかに隠れた怖い疾患やアプローチ法、身体所見や検査のポイントなどを習得してください。第22回「下痢」下痢は、日常診療でも救急外来でも非常によくみる症状です。その多くは感染性胃腸炎で、通常は下痢の原因となる感染起因菌の排出などで自然に治癒しますが、高齢者や小児の場合は命取りになる事もあるので要注意です。また、食中毒などの場合には医師がなすべき義務も発生しますから、感染性胃腸炎の鑑別診断や急性下痢へのアプローチ法、食中毒時の対処法についてしっかり学習しましょう。 「下痢に抗菌薬を投与するか否か」「抗菌薬を投与すべき、すべきでない下痢の見分け方」「投与する場合はどんな抗菌薬を使用すべきか」「抗菌薬使用の際の注意点」「止瀉薬の投与方法」など、問診や身体診察のポイントを含めて詳しく解説します。第23回「便秘便秘は、老若男女を問わず例え基礎疾患がなく健康な人でも起こるものです。実際に入院加療中や長期臥床で過ごす高齢者、小児の急性腹症、若い女性の腹痛のほとんどが便秘症といっても過言ではありません。しかし中にはイレウスや尿管結石と鑑別が難しいほどの激しい腹痛をきたしたり、働き盛りの中高年男性で急増している大腸癌の症状として現れることもあります。だからこそ便秘の正しい知識を身につけて診断・治療することはとても大切です。 「便秘を正しく治療できれば世の中が良くなる」と提言する講師の田中先生。問診や身体診察のポイント、画像検査を行う際の注意点、そして診断のポイントと治療の進め方などをしっかり学習していきます。便秘をスッキリ、世の中を良くしてゆきましょう!第24回「吐血・メレナ・下血」「吐血・メレナ・下血」は、これまでに学んだ嘔気・嘔吐や便秘、下痢などの消化器症候と比して決してマイナーな症候ではありません。にも関わらず、意外と学習する機会がないかもしれませんので、この機会にぜひしっかり習得してください。 吐血や下血は、ほとんどの場合において上部、もしくは下部消化管からの出血が原因ですから鑑別疾患はかなり限られており、さほど難しくはありません。ただし貧血やショックなどをきたす場合があるため、血圧などのバイタル・サインに気を配る必要があります。検査や治療で何をすべきか、各々へのアプローチ法などについて詳しく解説します。

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聖路加GENERAL 【内分泌疾患】

第1回「脳卒中から自殺未遂まで」第2回「消化性潰瘍、高血圧、便秘から見つかった内分泌疾患」第3回「あなたのせいではありません」 第1回「脳卒中から自殺未遂まで」内分泌疾患は発見が難しいと言われています。それは、ホルモンを産生する場所に症状が現れるとは限らないからです。他の疾患と間違って診断をされて、発見が遅れることもしばしばあります。まずは、次の症例の状況からどのように内分泌疾患を見つけ出せるかを考えてみてください。・朝、床に倒れているところを家族に発見された女性は、右足に麻痺もあり、脳梗塞疑いで入院した。・呼吸苦と下肢の浮腫で内科を受診した女性は、心不全疑いでラシックス静注し、帰宅した。・周囲とのトラブルが多く、自殺未遂まで起こした女性は、動悸、胸痛で検査を受けたが、問題なく、経過観察になった。ここでまず重要なのは問診です。内分泌疾患の症状は、なかなか患者自身が訴えることがありませんから、積極的に訊くことが診断の第一歩です。問診の際、どのような症状から疑うのか、どのような手順で診断するのか、どのような治療をすればよいのかを、症例をもとに具体的に解説します。第2回「消化性潰瘍、高血圧、便秘から見つかった内分泌疾患」「ある女性患者は、10年前からさまざまな症状に悩まされ、入退院を繰り返していた。大腿骨頚部骨折をきっかけに骨粗鬆症の検査を受けたところ、副甲状腺機能亢進症と診断。結局、10年間に発症した消化性潰瘍や膵炎は、副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症が原因だったことがわかった」副甲状腺の異常を見つけるためには、カルシウムを測るのが最も簡単な方法です。ところが、一般の健康診断の項目にカルシウムが入っていることは少ないようです。アメリカでは、カルシウムを標準的に測るようにしてから、副甲状腺機能亢進症が7倍も多く見つかったというデータがあります。副甲状腺異常を発見・治療するための勘所を解説します。第3回「あなたのせいではありません」第3回は甲状腺機能低下症について解説します。第1回の甲状腺機能亢進症と同様に、重要なのは問診です。「禁煙したら太ってキーボードが打てなくなった男性」、「言葉がはっきりしなくなったアルコール性肝障害患者」、「両手にしびれが出てきた欝患者」など、今回はさらにバラエティに富んだ症例が出ますが、このような状況から、内分泌疾患をどのように見つけ出せばよいでしょうか。特に、最近急増しているうつなどの精神疾患の中にも内分泌疾患が隠れている場合があります。どのような症状から疑うのか、そして診断の手順、治療法について症例をもとに具体的に解説します。

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エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A

CareNet.comでは11月の糖尿病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より糖尿病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、糖尿病の専門医である3人の先生にご回答いただきました。本宮哲也(もとみや・てつや)氏(もとみや内科クリニック 院長)http://www.motomiya-clinic.jp/専門医が行っている、DPP-4阻害薬と他剤との併用例を教えてください。また、DPP-4阻害薬間での効果の差異や使い分けの基準などがあれば同じくお願いします。1)シタグリプチンは、SU薬、BG薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、インスリン注射、2)アログリプチンとアナグリプチンは SU薬、BG薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、3)ビルダグリプチンおよびリナグリプチンはSU薬、4)テネリグリプチンはSU薬とチアゾリジン薬との併用が可能で症例に応じて薬剤を選択します(2012年11月時点での適応に基づく)。また、Aroda氏ら1)が行った効果の差異検討では、DDP-4阻害薬の最大維持用量の投与によるHbA1c改善率は、ビルダグリプチン -1.06%、アログリプチン -0.69%、シタグリプチン -0.67% という結果でしたが、分析内容が不十分とされ、再検討待ちです。使い分けについては、シタグリプチンは現時点では腎不全には使用できず、アログリプチンは腎不全の程度に応じて用量の調節が必要です。アナグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチンは腎不全には慎重投与ですが、用量の制限はありません。1)Aroda.VR et al:Clin Ther.2012;34:1247-1258膵臓疾患のある方へのDPP-4阻害薬の投与時の注意点について、教えてください。膵疾患のある方へのDDP-4阻害薬の投与は、急性膵炎と慢性膵炎を区別して考える必要があります。FDA(アメリカ食品医薬品局)は、2006年10月16日から2009年2月9日におけるDDP-4阻害薬の市販後調査で88例(出血性や壊死性の膵炎2例を含む)に急性膵炎が発症した報告を受け、急性膵炎への投与は禁忌とし、使用中に膵炎の発現が疑われた場合は使用を中止するよう推奨しています。しかし、膵炎の既往がある患者さんへのDDP-4阻害薬の使用については、検討や研究はされていないとしています(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部発行 医薬品安全性情報Vol.7 No.23)。また、飲酒家で慢性膵炎で血糖が上昇してきた患者さんへDDP-4阻害薬を使用した場合に、慢性膵炎が悪化したデータや報告は、今のところないようですが、このような患者さんへの投与は慎重に行い、どうしても投与しなければならない時には、膵炎に関する適切なモニタリングが必要と考えます。経口薬治療はどこまで続けるべきなのでしょうか?また、最大何剤まで増やして治療された経験がありますか?第1に、2型糖尿病では腎症の程度により禁忌となる経口糖尿病薬があり、基本的に透析患者、ならびにCcr30mL/分 以下では一部のDDP-4 阻害薬やα-グルコシダーゼ阻害薬を除き、経口糖尿病薬は原則禁忌となります。第2に、複数の経口糖尿病薬を併用しても血糖コントロールが改善せず、内因性インスリン分泌の低下が著明になった場合には、インスリン注射療法へ変更することになります。2012年の ADA/EASD が発表した推奨される2型糖尿病の血糖降下療法によればメトホルミンで治療を開始し、血糖コントロールの改善度、副作用、体重などを3ヵ月毎に慎重に観察しながら、2剤、3剤と経口糖尿病薬を併用し、目標が達成できない場合にインスリン注射療法の導入を勧めています。私は、DDP-4阻害薬をベースに少量のSU薬やメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬の追加で3剤まで増やしても良好な血糖コントロールにならない場合、インスリン自己注射が可能で、承諾の得られた患者さんにはインスリン療法を導入しております。梅澤慎一(うめざわ・しんいち)氏(医療法人 うめざわクリニック 院長)http://www5d.biglobe.ne.jp/~umecli/index.htmHbA1c7%前後の軽症例への第1選択薬は、どのような選択肢が考えられるでしょうか?HbA1c7%(NGSP値)前後の軽症例の第1選択薬とは、HbA1c値を0.5%程度(良の中央値)下げられる、できるだけ安価で副作用の少ない薬剤を意味するものと解釈します。したがって注射製剤は今回除くこととします。インタビューフォームに記載されていたほとんどの経口血糖降下薬のHbA1c低下効果は、その治験対象の治療前HbA1c値が高いため(8.0% 前後)、軽症例に投与しても添付文書のようには低下しません。万人に単剤でしっかり0.5%下げられる能力が期待できると私が考える薬は、速効型インスリン分泌促進薬のレパグリニド〔商品名:シュアポスト〕(1.5mg/日)、DPP-4阻害薬のビルダグリプチン〔商品名:エクア〕(100mg/日)、テネリグリプチン〔商品名:テネリア〕(20mg/日)、シタグリプチン〔商品名:グラクティブ〕(100mg/日)、〔商品名:ジャヌビア〕(100mg/日)、 アログリプチン〔商品名:ネシーナ〕(25mg/日)、リナグリプチン〔商品名:トラゼンタ〕(5mg/日)、SU薬のグリメピリド〔商品名:アマリール〕(0.5~1.0mg/日)などが該当します。いずれも初回の規定投与量を遵守し、忍容性を見極めての増量が基本です。臓器合併症がない人に限っては、ピオグリタゾンとメトホルミンなどのBG薬が期待できますが、どちらも効果は個人差が強いといえます。病識のない患者さんへの教育・指導のコツやポイントを教えてください。最も重症な病識欠如は通院中断者であることは間違いないでしょう。定期的に中断者リストを作成して、再診を促すハガキを出すことができれば理想的です。診療所など地域に根差した施設では、家族の受診の付き添いで来院する際や風邪などで再初診する機会にさりげなく「最近、糖尿病の方はどうかな?」と声掛けをすることで通院再開に成功するケースもあると思います。内服・注射アドヒアランスの低下などは処方薬の選択、投与法の工夫など医師の役割部分が大きく、認知症などによる飲み忘れ対策では家族の教育(看護師)、一包化調剤の利用(薬剤師)などの多職種との連携が必要になるでしょう。食事運動療法、節酒・禁煙ができないなどの病識の欠如は、個人的な事情もあるので、万人に有効な処方箋はありません。私は“その人が今できることを探して、具体的な方法を提示し、できたら少しでも賛美し、結果にむすびついたら一緒に喜ぶ”、“合併症がでたら大変という脅しはしない”の2項目を念頭に、辛抱強く向かい合うようにしております。BOT導入に際し、スタッフへの教育をどう進めるべきか教えてください。まずはBOTの概念をスタッフに理解してもらうことが大事です。BOTで使用するインスリングラルギン(商品名:ランタス)やインスリンデテミル(商品名:レベミル)などの持効型インスリンの本来の使用目的は、インスリン強化療法の基礎分泌(basal)部分を担うことにありました。そのため持効型インスリンは、速効または超速効型インスリン食前3回投与と組み合わせた使用が一般的です。その後、経口血糖降下剤で効果不十分な2型糖尿病に少量の持効型インスリンを追加する(basal + oral therapy)ことにより、内因性インスリン分泌が回復し、血糖コントロールが改善する事例報告が多く認められ、新たな治療法の概念となっていったものです。 BOTはすでに今行われている治療法を変更しないで、1日1回のインスリン注射を加えることで実行できるため、患者も医療者側も治療法の変更という大きな心理的不安を緩和することができるのです。注射時刻は各薬剤の添付文書に基づきますが、毎日一定の時間に投与すればよく、SU薬を併用しているケースでは1回抜けたくらいで急性代謝失調に陥ることはないという安心感が維持できます。田中啓司(たなか・けいじ)氏(田中内科クリニック)http://www.tanakanaika-clinic.com/BG薬はどのような患者に使うべきでしょうか?また、副作用のマネジメント(乳酸アシドーシスへの対応等)についても教えてください。BG薬は、肝臓で乳酸からの糖新生の抑制、脂肪や筋肉への糖の吸収促進、腸管での糖の吸収抑制、食欲低下作用などが報告されています。適応患者としては、肥満の2型糖尿病で、ある程度コントロールのよい例をよりよくする目的のほか、SU薬やインスリンを多量に使ってもコントロール不良例での改善、さらにそれら薬剤を減量させる目的などで投与することが多いです。乳酸アシドーシスの重大な副作用症状は、「意識障害、嘔吐、倦怠感、過呼吸、腹痛など」です。日本糖尿病学会の「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」は、乳酸アシドーシスに至った例は、各剤の添付文書において禁忌や慎重投与となっている事項に違反した例がほとんどであると報告しています。「腎機能障害患者(透析患者を含む)、過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水などの例、心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、高齢者」とのことです。乳酸アシドーシスへの対応というよりは、投与してよい例か否かを慎重に検討して、乳酸アシドーシスを起こさないことが重要と考えられます。75歳以上の高齢者のHbA1c管理目標値は、他の年代の方と同様でよいでしょうか?また、食事指導は実施すべきでしょうか?日本糖尿病学会では、高齢者の血糖管理目標値を空腹時血糖140mg/dL、HbA1c 7.4%以下(NGSP値)としています。しかし一方で、患者の状態を詳細に把握して個別的な対応を行うことも重要と呼びかけています。高齢者糖尿病は多様性があることを理解して、高齢者でも、非常に元気な例もあれば、予後の限られた例もある。もちろん肥満例では足腰に負担がかかり、ADL低下に至る可能性もあるので食事療法は必要です。しかし、食が細くなっている高齢者もいますので、本人や家族からの聴き取り調査が必要です。また、高齢者糖尿病例は代謝の低下に伴い、突然低血糖になる例もあります。一方で、風邪をひいて急に高血糖になる例もあります。大血管障害は別として、血糖にこだわり細小血管障害を心配するよりも、低血糖や高血糖性昏睡などの直接命に関わる急性合併症を回避することが大切で、全身を診る医療が最も重要と考えます。最近、話題の「糖質制限食」(メリット/デメリットなど)について教えてください。〔メリット〕減量効果:3度の食事の糖質(主食:ごはん、パンなど)を減らすことにより、摂取カロリーが減ります。例えばごはん、大盛り300g → 並200gに変更することにより100g(160Kcal) × 3回 × 30日 = 14,400Kcalとなり、1ヵ月で約2kgの減量につながります。食後血糖改善効果:糖質は、タンパク質や脂肪に比べて吸収が速く、食後の血糖値が高くなります。ひいては血糖コントロール改善効果があります。〔デメリット〕間食が多くなる:ごはん、パンなどは腹もちがよく、極端に減らすことにより次の食事までの間に空腹感が出て、その結果、間食をしてしまう患者さんが多く、肥満や血糖コントロールの乱れにつながります。心血管・内臓負担:当然のことながら、肉や魚の量が増えてしまいます。そのため、タンパク質や脂肪の摂取過剰になります。タンパク質を多く摂ると腎臓に負担がかかり(腎不全では禁忌)、脂肪を多く摂るとコレステロールが高くなり動脈硬化性疾患である心臓病や脳卒中になりやすい可能性があります。

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エキスパートに聞く!「高血圧」Q&A

CareNet.comでは9月の高血圧特集企画を行う中で、会員の先生より「高血圧」に関する質問を募集しました。その中から、特に多くいただいた質問に対し、下澤達雄先生にご回答いただきます。家庭血圧を用いる際の留意点について教えてください。昨年8月に発表された英国の高血圧ガイドラインでは、24時間血圧あるいは家庭血圧を高血圧の確定診断ならびに降圧治療の効果判定に用いることが強く推奨されました。わが国でも家庭血圧測定の指針が高血圧学会より出されており、実臨床でも多くの先生がお使いになっていることが、今回たくさんのご質問をいただいたことからも推察されます。そこで、家庭血圧を用いる際の留意点をいくつか挙げたいと思います。1.信頼性機械そのものの信頼性は診察室で同時に用手法と比較することで確認することができますが、血圧手帳を用いた自己申告による血圧値は必ずしも信頼できません。高知県で行われた調査では実測値と自己申告値には開きがあり、患者は低めに申告することが報告されています。よって、家庭血圧が低い場合でも臓器障害がある場合にはとくに診察室血圧を参考にした降圧治療が必要となります。あるいはメモリー機能をもった家庭血圧計を用い、実測値を医療側が把握できるようにする工夫が必要です。2.家庭血圧の測定方法血圧は複数回測れば必ず異なった値を示します。一般的には数回測ると徐々に低い値となります。高血圧学会の家庭血圧の指針では1日1回でよいと書かれていますが、これはまず患者に家庭血圧を測定させるために簡便な最低限の方法が記載されていると理解しています。すでに家庭血圧を日常的に測定できる患者においては複数回測定し、一番高い値と一番低い値、あるいは平均値を記載してもらうのがいいかと思います。測定時間は服薬直前が望ましいですが、日常生活にあわせてほぼ同じタイミングで測定できる時間を指導しています。3.夜間血圧を反映するか?何がわかるのか?残念ながら夜間血圧は夜間に測定する必要があり、家庭血圧では知ることができません。正しく測定でき、正直に申告された家庭血圧で白衣性高血圧、仮面高血圧がわかることはもちろんですが、曜日による血圧変動(週末ストレスがない場合に血圧が下がる)や睡眠状態との関連を知ることもできます。4.診察室血圧との乖離前述のように白衣性高血圧、仮面高血圧と診断されますが、臓器障害がある場合は高いほうの血圧を目安に治療を行うべきです。血圧変動について教えてください。外来診察毎の血圧変動が大きいと脳血管イベントが多くなることが報告されました。以来、糖尿病の際の血糖の変動が臓器障害と関連づけられています。動物実験でも交感神経を切除して血圧変動を大きくすると、レニン・アンジオテンシン系が亢進して臓器障害が進行することが報告されています。ヒトにおいては長期にわたる一拍ごとの血圧変動をみることは困難であり確立したエビデンスはありませんが、血圧変動は少なくする方が望ましいでしょう。血圧変動が大きい原因として自律神経障害、褐色細胞腫のような器質的な異常のほかに服薬アドヒアランス不良、精神的ストレス、不眠(睡眠時無呼吸)といった要因もあり、医師のみならず看護師、薬剤師などからの患者の病歴、生活歴聴取が必要となります。服薬は管理されているにもかかわらず認知症患者ではとくに血圧変動が大きいことが問題になりますが、多くの場合は多発性脳梗塞を合併している例です。転倒のリスクがなければ認知症の進行、脳梗塞の再発予防を考えて血圧は低い値にコントロールしたいところです。実際には服薬数を増やせないなどの制限があり、合剤を積極的に使ってのコントロールとなります。食塩感受性について教えてください。塩分摂取により血圧が上昇する食塩感受性患者は、上昇しない非感受性患者にくらべ血圧値が同等でも心血管イベントが多いことから、食塩感受性の診断についての質問を多くいただきました。しかし、食塩感受性を診断するには現在のところ入院にて食塩負荷、減塩食を食べさせ、その間の血圧を測定することのほかには確実な方法はないのが現状です。実臨床においては早朝第二尿のナトリウムとクレアチニンを測定することで食塩摂取量を知ることができる(「日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告」日本高血圧学会より入手可能)ので塩分摂取量が多い患者について経時的に観察したり減塩指導の動機付けとして用いることもできます。あるいはサイアザイド系利尿薬に対する血圧反応性も食塩感受性を知る一つの方法です。効果的な減塩指導について教えてください。日本の食文化はみそ、塩、しょうゆの上に成り立っているので、減塩指導はともすれば日本の食文化を否定することにもなりかねません。しかし、現在の一般的食生活を見てみると加工食品がふんだんに使われており、この点を改善指導することで減塩は可能となります。たとえばソーセージ100gに塩は約2g、プロセスチーズでは約3g含まれており、こういった加工食品を減らすことを指導できるでしょう。また、加齢に伴い味覚は低下するため減塩が難しくなります。そこはワサビ、生姜、茗荷、唐辛子、胡椒といったスパイスをうまく使うように指導します。そして、食卓に出された食材に塩、しょうゆを追加でかけないよう、食卓には塩、しょうゆを置かないなどの細かな指導が必要となります。男性患者の場合、食事を実際に作る配偶者への指導も重要で、医師だけでなく看護師、栄養士、薬剤師、検査技師、保健婦など患者に関わるすべての医療従事者の協力体制が有効です。塩分過剰摂取は血圧上昇のみならず血圧が上昇しない場合でも酸化ストレスを増加させ耐糖能異常につながることが動物実験では示されており、摂取量を6g/日程度まで下げることは高血圧の有無にかかわらず有用であると思われます。降圧薬の減量、中止方法について教えてください。血圧のコントロールが良好で、臓器障害がないような場合、また尿中ナトリウムも低めの場合は降圧薬を中止できることもあります。その場合、4~5月位に中止し、夏の暑い間を経過観察し、10~11月から冬の寒い間に血圧が再上昇しないことを確認します。その後も家庭血圧で血圧を経過観察し、年に一回の臓器障害の進展のチェックを行います。多剤併用しており血圧が良好なコントロールの場合、薬剤の減量が可能です。長期にβ遮断薬を使っている場合は心筋虚血のリスクがあるのでβ遮断薬は漸減します。便秘、浮腫、歯肉腫脹、起立性低血圧がある場合はカルシウム拮抗薬の副作用の可能性もあるためカルシウム拮抗薬から減量します。昨今の酷暑ではとくに高齢者や腎機能低下例においては、レニン・アンジオテンシン系抑制剤や利尿薬の減量が必要となる例があります。早朝高血圧の対処方法について教えてください。家庭血圧を測定あるいは24時間血圧にて早朝高血圧が明らかになった場合、最近の研究では夜間高血圧ほどのリスクはないとの報告もありますが、降圧薬の服用時間を調整することでコントロール可能となることがあります。レニン・アンジオテンシン系阻害薬は夕方服用に適した薬剤といえます。ただし、夜間の過度の降圧に注意して少量より開始するのが好ましいでしょう。α遮断薬も有効とする報告もありますが、α遮断薬自体の臓器保護効果が疑問視されており、α遮断薬を追加投与するよりは現在服用しているレニン・アンジオテンシン系阻害薬の服用時間をずらすことが適切と考えます。難治性高血圧の対処方法について教えてください。異なる三系統の降圧薬を十分量を内服しても血圧のコントロールがつかない場合、難治性高血圧と呼ばれます。このような例では服薬アドヒアランス、二次性高血圧の再評価、睡眠時無呼吸の評価をまず行います。服薬アドヒアランスが不良の場合は合剤を用いること、服薬の必要性を再教育すること、服薬想起の道具(ピルボックスなど)が有効といわれており、医師だけでなく薬剤師、看護師、保健婦の協力が必要となります。すでに薬剤を服用している場合、ホルモン検査は薬剤の影響を受けるので評価が難しくなります。実臨床では副腎のCTを先行させてもいいと思います。あるいは十分量の抗アルドステロン薬(スピロノラクトンで75~100mg)を投与し治療的診断を行うことも有用です。腎血管性高血圧についてはMR angiographyが有用でしょう。以上のような精査で問題がない場合、中枢性の降圧薬(レセルピン)を少量朝1回追加することが有用である例を経験しています。あるいはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬をかんきつ類と一緒に服用させる、あるいはヘルベッサーと併用しジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度を高めることも有用でしょう。白衣性高血圧の対処方法について教えてください。イギリスのガイドラインでは診察室血圧と24時間血圧、あるいは家庭血圧を用いて高血圧の診断を行い、臓器障害がない場合は白衣性高血圧は薬物介入をせずに年に1回の経過観察をするとしています。24時間血圧を用いて病院来院時のみ高血圧でその他の日常生活の中では全くの正常血圧であり、アルブミン尿も含め臓器障害が認められず、糖尿病などのリスク因子がない場合は薬物介入は必要ないと考えます。しかし、経過観察は必要で、患者には日常生活の中で突然の来客などストレスがかかると血圧が上がっている可能性を話し、徐々に臓器障害が出てくる可能性を説明する必要があるでしょう。白衣性高血圧で患者が薬物介入を希望する場合、抗不安薬も有効です。また、臓器障害がある場合はJSH2009に則って合併する臓器障害に応じて薬物を選択します。その際、心拍数が上昇するといった副作用のない薬物をまず選択します。拡張期血圧の対処方法について教えてください。収縮期血圧が大動脈のコンプライアンスと心拍出量で規定されるのに対し、拡張期血圧は全身の末梢血管抵抗と心拍出量で規定されます。よって高齢者で大血管の硬化が明らかになると収縮期血圧が上昇し脈圧が増大します。心臓の仕事量は収縮期血圧と心拍数の積に比例するため、収縮期血圧が高くなると心筋酸素消費量が増え、心虚血と心不全のリスクが増えます。一方冠動脈は拡張期に灌流されるので、拡張期血圧を下げすぎると、冠血流が低下する危険があります。実際、大規模臨床試験をみても拡張期血圧と心血管イベントにはJカーブに近い現象が認められます。拡張期のみ高い例は若年者に多く認められますが、治療の第一歩は減塩にあります。また個人的経験ですが、10年ほど前にARBが発売された当初、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬にくらべ拡張期血圧がよく下がる印象がありましたが、統計的処理はされていません。また当時は利尿薬の使用頻度が低かったというバイアスもあります。現状では拡張期血圧のみを下げるための有効な治療法は生活習慣の改善のほかには確立されていないといえます。合剤の有用性について教えてください。いかなる服薬介入治療もその効果は服薬アドヒアランスに依存することは明白です。それゆえ、われわれは服薬アドヒアランスをよくする努力は惜しむべきではありません。アドヒアランスに関わる因子は複数ありますが、処方する立場として最も簡便にできることは服薬数を減らすことであり、その点において合剤はきわめて有効といえます。現在降圧薬に限らずぜんそく薬、糖尿病薬、高脂血症薬の合剤が日本でも使用可能ですが、海外の現状をみるとまだまだ立ち遅れています。私は実臨床の中で合剤の併用も行いARBの最大容量を合剤として処方し、3種の薬剤を2錠ですませ、患者の経済的負担も軽減するよう努力しています。

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「痛み」の診療に関する緊急アンケート その4 ~非がん性痛に対するオピオイド使用実態【整形外科編】~

対象ケアネット会員の整形外科医師208名方法インターネット調査実施期間2012年8月16日~8月23日Q1.非がん性の痛みに対し、オピオイドを使用することはありますか?Q2. Q1 で「B.使用しない」とお答えになった先生にお伺いします。非がん性の痛みに対し、オピオイドを使わない理由を教えてください。(いくつでも)Q3.今後、非がん性の痛みに対し、オピオイドの使用を継続、または新たに使い始めるにあたって、必要な情報がありましたら、教えてください。(自由記入)【必要な情報(一部抜粋)】保険でけずられないか?/便秘、吐き気に対する予防薬投与の保険適応について、はっきりした返答がほしい。慢性疼痛症例にオピオイドを使用した場合に、離脱できるのか?/処方をやめるに際しての患者のうまい誘導の仕方。/依存症とやめ方に不安あり、既往先行品との違いを説明ほしい/休薬の具体例副作用への対応/副作用の防止方法を具体的に教えてください。/副作用情報/副作用の発生率/副作用軽減のための対策使い方/適応/どのような患者に処方したらよいのかが分からない。/どの程度の疼痛に対してオピオイドが適応になるのか 術後鎮痛についてガイドラインみたいなオピオイド使用のマニュアルがあれば知りたいです。信頼できるメーカーからの説明がほしい他のクスリが効かない場合【ご意見(一部抜粋)】長期に使用するのに問題がある副作用がなくなればテレビ新聞などでよくでてくればみなもなれて使えるようになる。年数が必要オピオイドの適応症例があれば、使用する予定である

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インタビュー:ときわ病院 精神神経科・内科 宮澤 仁朗氏 ~剤形から考える抗精神病薬の服薬アドヒアランス~

統合失調症治療では、患者が積極的に治療に参加することで服薬アドヒアランスの向上を促し、再燃・再発の抑制が期待できるといわれている。治療参加の方法の1つとして、患者自身による薬剤や剤形の選択があげられる。現在、抗精神病薬は各製品ごとに様々な剤形が販売されているが、2012年5月、非定型抗精神病薬のアリピプラゾール(製品名:エビリファイ)の新たな剤形として口腔内崩壊錠(以下、OD錠)が発売された。薬物治療の選択肢がさらに増えた現状を踏まえ、患者の剤形選択の現状や、今後の剤形開発に対する期待などについて、ときわ病院 精神科 宮澤仁朗氏にお話を伺った。宮澤氏はこれまでに、数々の抗精神病薬の治験に携わり、新しい剤形の開発時のアドバイザーとして活躍するなど、積極的に新薬に関する考察を述べられている。■剤形選択に関する現状と課題――実際の臨床現場において患者さんは剤形選択に関してどのような認識をお持ちなのでしょうか。宮澤 2009年に統合失調症の患者さんを対象に実施された、剤形に関するアンケートの調査結果(n=135)1)によると、56%の方が服用している薬剤の剤形について医師から説明を受けていない、と考えていることが示されています。また、一方で、自分で服用する薬剤の剤形を選択したいと回答した患者さんは72%にも上ることもわかっています。理想と現実にギャップがありますね。医師は、実際には説明を行っていたとしても、患者さんがそれを認識していない可能性も考えられ、コミュニケーションにはさらに注意を払う必要があるでしょう。しかし、一方で、現状では、精神科医師の不足や診療報酬等の関係から、1人の患者さんにかけられる時間は限られており、我々医師の努力に加えて、制度面の整備も必要ではないかと思います。■各剤形をどのように使い分けるのか?~宮澤氏の場合~――自分で剤形を選択したいと考える患者さんが多いようですが、それぞれの剤形の特徴について教えてください。宮澤 急性期と維持期に分けて考える必要があります。急性期では、病識がなく、興奮が見られるなど激しい症状を呈する患者さんも多いため、いかに確実に薬剤が体内に取り込まれるか、という視点が重要となります。そのため、OD錠や液剤などに対する医療者、看護者のニーズがとても高いです。一方、維持期においては、薬剤の有効性、安全性を考慮しつつ、患者さんがきちんと服用できる薬剤が求められます。そのため、患者さんの好みやライフスタイルに合わせてできる限り患者さんご自身に選択していただくことが重要となってきます。――具体的には?宮澤 たとえば、通常の錠剤は、ある程度病識があり、水と一緒に服用することで「服薬している」という実感がほしいと訴える患者さんなどに処方することが多いです。液剤は錠剤・散剤などを飲みにくいと感じ、個別包装の簡便さを好む患者さんに適していると感じています。ところが、中には被毒妄想が生じる方もいるので、その点は注意が必要かもしれません。持続性の注射剤は、決して服薬アドヒアランスは悪くないけれどたまに服用し忘れるような方に対し勧め、患者さん自ら選択されることも少なくありません。しかし、もっとも患者さんのニーズが高いと感じるのは、OD錠です。OD錠には様々なタイプがありますが、1日1回の内服で水を必要とせず、口に含んだ瞬間、瞬時に溶けるタイプのものが好まれています。このタイプのOD錠は服用の簡便さからアドヒアランスの向上も期待できます。今後、主流となっていくと思います。■OD錠はどのような患者に有用か?――非定型抗精神病薬のOD錠には2種類ありますが。宮澤 ある程度、硬度が保たれているタイプと口に含むと瞬時に溶けるタイプがあります。前者は薬局等の自動分包機にもかけられ、多少の湿度で溶けることはありません。一方、後者は、手掌、手指に汗をよくかく方などには向かないかもしれません。しかし、スーパー救急(精神科救急)などの現場では、口に入れるとスッと溶けてしかも甘みがあるこのタイプの薬剤はとても重要です。5月に発売されたアリピプラゾールのOD錠(製品名:エビリファイOD錠)はこのタイプです。――OD錠は、実際、どのような患者さんに適しているのでしょうか。宮澤 先ほど説明しました救急・急性期病棟に入院となった患者さんのほかにも、外来通院されている患者さんにも適しています。水が必要ないことから外出先での服用が容易になります。嚥下が困難な高齢者や女性の患者さんにも勧められると思います。また、抗精神病薬単剤で治療している方も他の剤形からの変更のメリットが大きいのではないかと思います。たとえば、アリピプラゾールは、1日1回の服用で急性期、維持期いずれにおいても有効性が認められており、私が診ている統合失調症の維持期の患者さんでは、比較的、胃腸薬や便秘薬など他の薬剤を併用せずに単剤で治療している方も多いため、OD錠への変更により受ける恩恵が大きいと考えられます。逆に併用薬が多い患者さんではあまりメリットは感じられないかもしれません。――今後も、新しい剤形が追加されていくようですが、どのようなことを期待されますか。宮澤 今回のように、急性期、維持期いずれにおいても有用性が認められている薬剤のOD錠化は、患者さん、医療者双方の選択肢の幅が広がったことを意味し、大変意義深いと考えます。また、今後も、非定型抗精神病薬で新たな剤形が追加されることにより、患者さん、医療者の細かい二-ズに沿った薬剤選択が可能になっていくと思います。昨今の課題である服薬アドヒアランスの向上をめざして、我々医師は、患者さんの飲み心地に、より配慮した治療戦略が求められていくのではないでしょうか。(聞き手=ケアネット) 1)統合失調症患者さんを対象に実施したインターネット調査2009年 医療法人 ときわ病院ホームページhttp://www4.ocn.ne.jp/~tokiwahp/

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プライマリ・ケアで有用な卵巣がん患者早期発見のアルゴリズム開発

 プライマリ・ケアでの卵巣がん患者を見出すアルゴリズムが、英国・ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らによって開発された。同アルゴリズムを用いることで、リスクが最も高い人を早期に発見し、検査受診に結びつける可能性が認められたという。BMJ誌2012年1月28日号(オンライン版2012年1月4日号)掲載報告より。2年間の30~84歳女性の卵巣がん発症・診断を予測可能か、特定のリスク因子で検証 Hippisley-Cox氏らのアルゴリズムは、年齢、卵巣がんの家族歴、卵巣がん以外のがんの既往、BMI値、喫煙、飲酒、社会的階層、食欲不振、体重減少、腹痛、腹部膨満、直腸出血、閉経後出血、頻尿、下痢、便秘、疲労、貧血の有無や状態をリスク因子とするものであった。 アルゴリズムについて、開発のために、大規模プライマリ・ケアデータベースのQResearchに登録する英国およびウェールズの開業医375人からのデータを、および検証のために189人からのデータを得て構成したコホート集団について検討した。 被験者は、2000年1月1日~2010年9月30日の間に登録されていた30~84歳の女性で、基線では卵巣がんと診断されておらず、また食欲不振、体重減少、腹痛、腹部膨満、直腸出血、閉経後出血もなかった。対象者について、2年間での卵巣がん発症・診断を主要評価項目として、Cox比例ハザードモデルを用いて検討した。予測能に優れる年腹部膨満、家族歴、腹痛、閉経後出血など独立予測リスク因子を特定 203万人・年のデータからなる開発コホート群での卵巣がん発症は976例であった。それらに対する独立予測因子は、年齢、卵巣がんの家族歴(リスクが9.8倍高い)、貧血(同2.3倍)、腹痛(同7倍)、腹部膨満(同23倍)、直腸出血(同2倍)、閉経後出血(同6.6倍)、食欲不振(同5.2倍)、体重減少(同2倍)であった。 検証解析の結果、リスク予測因子を用いることによる卵巣がんへの適時診断への変動値(R2統計値、高値ほど価値が高い)は57.6%だった。ROC統計値は0.84、D統計値は2.38だった。 最も高い予測リスクを有する女性の10%が、2年間の全卵巣がん患者の63%を占めていた。 以上を踏まえてHippisley-Cox氏は、「開発したアルゴリズムは、卵巣がんの最大リスク群を早期に検査受診へと誘導できる可能性を持っている。さらなる研究で、最適なアルゴリズム実施の時期、費用対効果、実施による健康アウトカムへの影響などを検討する必要がある」と結論している。

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選択的ニューロキニン1受容体拮抗型制吐剤 ホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド)

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、2011年12月9日に発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。注射剤により確実に投与可能今回、発売されたプロイメンドは、アプレピタントのプロドラッグ体であり、静脈内投与後、速やかにアプレピタントに代謝される注射剤である。そのため、経口剤の服用が困難な患者さんにも投与可能であり、飲み忘れを懸念することなく確実に投与できる。本剤1回点滴静注投与によって、急性・遅発性ともに、アプレピタント3日間投与と同等の効果が得られることが海外第Ⅲ相二重盲検比較試験において示されている。国内では、グラニセトロン(iv)+デキサメタゾンリン酸エステル(iv)の2剤併用群(標準治療群)と、この2剤にプロイメンドを追加した3剤併用群(プロイメンド群)を比較した第Ⅲ相二重盲検比較試験において、全期間における有効率がプロイメンド群64.2%と、標準治療群47.3%に比べて有意に(p<0.05)高い有効率が得られた。なお、本試験では26.4%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、便秘(9.2%)、ALT(GPT)上昇(6.9%)、しゃっくり(5.7%)、注入部位疼痛・滴下投与部位痛(5.2%)などであった(承認時)。また、重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、穿孔性十二指腸潰瘍、アナフィラキシー反応が報告されている(アプレピタントでの報告を含む)。ガイドラインにおける推奨2010年5月発行の制吐薬適正使用ガイドラインでは、高度催吐リスクの抗がん剤・レジメン、中等度催吐リスクの抗がん剤・レジメンのうちカルボプラチン、イホスファミド、イリノテカン、メトトレキサートなどを使用する際には、アプレピタント+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が推奨されている。すでに米国など世界30ヵ国以上でプロイメンドが発売されており、ASCOガイドライン(2011年改訂版)やNCCNガイドライン(2011年3月改訂版)には、プロイメンド+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が追記されている。わが国の制吐薬適正使用ガイドラインにおいても、次回改訂時に追記されることが予想される。がん化学療法におけるQOL改善と治療継続に期待プロイメンドの登場により、アプレピタントが服用困難ながん患者さんへの投与が可能となった。また、患者さんの服薬コンプライアンスによらず、確実に投与できることも大きなメリットと言えよう。医療者側においても、点滴ラインから一連の投与を行うレジメンに組み込みやすいと思われる。がん化学療法においては、薬剤・レジメンの催吐リスク、性別、年齢、前治療などを考慮した適切な制吐剤により悪心・嘔吐を予防することが、がん治療の継続につながる。プロイメンドが、より多くのがん患者さんにおけるQOLの改善、がん化学療法の継続に貢献することが期待される。

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linaclotideが慢性便秘症状を有意に改善:2つの無作為化試験の結果より

 米国で新規開発された便秘型過敏性腸症候群および慢性便秘の経口治療薬である、C型グアニリル酸シクラーゼ受容体作動薬のlinaclotideについて、有効性と安全性を検討した2つの無作為化試験の結果が報告された。米国・ベス・イスラエル医療センターのAnthony J. Lembo氏らが、約1,300人の慢性便秘患者について行ったもので、NEJM誌2011年8月11日号で発表した。linaclotide 145μg/日と290μg/日を12週間投与 研究グループは、慢性便秘患者1,276人について、12週間にわたり、2つの多施設協同無作為化プラセボ対照二重盲検試験(試験303と試験01)を行った。研究グループは被験者を無作為に3群に分け、linaclotide 145μg/日、linaclotide 290μg/日、プラセボを、それぞれ1日1回、12週にわたり投与した。 主要有効性エンドポイントは、週3回以上の自発的な排便(CSBM)と、12週のうち9週以上で試験開始時点よりも自発的排便回数が週1回以上増加したことが認められた、の2つとした。有害事象についてもモニタリングされた。主要有効性エンドポイント達成、linaclotide群16~21%に対しプラセボ群は6%以下 その結果、主要有効性エンドポイントに達したのは、試験303と試験01それぞれで、linaclotide 145μg群については21.2%と16.0%、linaclotide 290μg群は19.4%と21.3%だった。これに対しプラセボ群は3.3%と6.0%であり有意に低率だった(linaclotide群とプラセボ群の全比較についてP<0.01)。 1週間の排便回数、腹部不快感、鼓脹などを評価した副次エンドポイントについては、いずれのlinaclotide群とも、その割合はプラセボ群より有意に高率だった。 なお、有害事象については下痢を除き全試験群で同程度であった。両linaclotide群で下痢による試験中止は4.2%だった。 研究グループは、「これら2つの大規模な第III相試験において、linaclotideは慢性便秘患者の腸・腹部症状を改善し、重度の便秘を有意に軽減した。さらなる試験により、linaclotideの潜在的な長期リスクおよびベネフィットを評価する必要がある」と結論している。

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プライマリ・ケアにおける肥満に有効な薬物療法のエビデンス:CONQUER試験

診察室ベースのライフスタイル介入にphentermine+トピラマート療法を併用するアプローチは、プライマリ・ケア医が施行し得る肥満に有用な治療法となる可能性があることが、アメリカ・デューク大学医療センターのKishore M Gadde氏らの検討で示された。肥満は寿命を短縮し、心血管疾患やがんなどによる死亡率を上昇させるとともに、2型糖尿病の約90%が過体重に起因し、肥満者における高血圧の頻度は正常体重者の5~6倍に達するとされる。中枢性ノルエピネフリン放出薬であるphentermineはアメリカでは抗肥満薬として広く用いられ、抗てんかん薬トピラマートは単剤で2型糖尿病や高血圧を有する肥満者に対する体重減少効果が確認されているが、用量依存性に神経精神関連の有害事象がみられるという。Lancet誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月11日号)掲載の報告。2つの用量とプラセボを比較する第III相試験CONQUER試験の研究グループは、2つ以上のリスク因子を有する過体重あるいは肥満者を対象に、体重減少や代謝リスクの低減を目的とした食事療法やライフスタイル変容の補助療法としてのphentermine+トピラマート療法の有効性と安全性を評価するプラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。2007年11月1日~2009年6月30日までにアメリカの93施設から、18~70歳の過体重あるいは肥満者(BMI 27~45kg/m2)で、高血圧、脂質異常、糖尿病/糖尿病前症、腹部肥満のうち2つ以上の併存症がみられる者が登録された。これらの患者が、プラセボ群、phentermine 7.5mg+トピラマート 46.0mgを1日1回経口投与する群(低用量群)、あるいはphentermine 15.0mg+トピラマート92.0mgを1日1回経口投与する群(高用量群)に、2:1:2の割合で無作為化に割り付けられ、56週の治療が行われた。主治医、患者、試験資金の出資者には治療割り付け情報はマスクされた。主要評価項目は、体重の変化率および5%以上の体重減少の達成者率とし、intention-to-treat解析を行った。体重減少:1.4 vs. 8.1 vs. 10.2kg、5%体重減少率:21 vs. 62 vs. 70%2007年11月1日~2009年6月30日までに2,487例が登録され、プラセボ群に994例、低用量群に498例、高用量群には995例が割り付けられた。解析の対象となったのは、それぞれ979例、488例、981例であった。治療56週の時点で、ベースラインからの体重の変化は、プラセボ群が-1.4kg(最小2乗平均:-1.2%、95%信頼区間:-1.8~-0.7)、低用量群が-8.1kg(同:-7.8、-8.5~-7.1、p<0.0001)、高用量群は-10.2kg(同:-9.8%、-10.4~-9.3、p<0.0001)であり、プラセボ群に比べ実薬群で有意な体重減少効果が認められた。5%以上の体重減少が得られた患者の割合は、プラセボ群が21%(204/994例)、低用量群が62%(303/498例)(オッズ比:6.3、95%信頼区間:4.9~8.0、p<0.0001)、高用量群は70%(687/995例)(同:9.0、7.3~11.1、p<0.0001)であり、プラセボ群に比し実薬群で有意に高かった。10%以上の体重減少は、それぞれ7%(72/994例)、37%(182/498例)(同:7.6、5.6~10.2、p<0.0001)、48%(467/995例)(同:11.7、8.9~15.4、p<0.0001)と、実薬群で有意に優れた。高頻度にみられた有害事象は、口渇(ドライマウス)[プラセボ群2%(24/994例)、低用量群13%(67/498例)、高用量群21%(207/995例)]、知覚異常[同:2%(20/994例)、14%(68/498例)、21%(204/995例)]、便秘[同:6%(59/994例)、15%(75/498例)、17%(173/995例)]、不眠[5%(47/994例)、6%(29/498例)、10%(102/995例)]、眩暈[3%(31/994例)、7%(36/498例)、10%(99/995例)]、味覚障害[1%(11/994例)、7%(37/498例)、10%(103/995例)]であった。うつ病関連の有害事象がそれぞれ4%(38/994例)、4%(19/498例)、7%(73/995例)に、不安関連有害事象は3%(28/994例)、5%(24/498例)、8%(77/995例)に認められた。著者は、「診察室ベースのライフスタイル介入にphentermine+トピラマート療法を併用するアプローチは、プライマリ・ケア医が施行し得る肥満に有用な治療法となる可能性がある」と結論し、本試験の利点として、1)51%が3つ以上の体重関連の併存症を有し、多くが複数の治療法を受けている患者集団で体重減少の効果を確認できたこと、2)軽度のうつ症状がみられ、多くが広範な抗うつ薬の使用で安定を維持している患者や、大うつ病発作の既往歴(1回のみ)のある患者も含まれること、3)自殺傾向のある患者もその企図がない場合は除外しなかったことを挙げている。(菅野守:医学ライター)

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教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座の教授で、前院長。医局のモットーは総合力と専門性を両方備えた医師育成。一人でも多くを救うこと。加えて先端医療の開発をモットーにしている。最近では、血管機能検査CAVIの開発に参画し、国内から海外にも発信。肥満症治療については脂肪細胞、脂質代謝の基礎研究から心理学まで動員して新しい治療システムを構築中。動脈硬化の分野で新しい治療体制の扉を開く動脈硬化は、地味な分野ですが、ご存知のとおり、脳梗塞、心不全、さらには腎不全をもたらし大きく個人のQOLを低下させ、また社会的損失も大きい疾患です。これに対し、病変動脈、静脈の直接的治療を循環器グループが担う一方、「動脈」が水道管でなく、生きた機能を持った臓器とし見、それに細胞生物学と代謝学を応用して治療・予防法を打ち立てるというのが夢でした。実は、癌は最近の治療学の進歩は著しいのを目の当たりあたりにしますが、30年前には不治の印象が強く、生命現象そのものの解明が必要で、とても自分の能力では歯が立たないと思い避けたのも事実です。動脈硬化なら多少とも代謝学的側面から治療できるのではないかと思ったりもしました。これまで、副院長6年、院長3年と病院の経営面にも携わりましたが、医療現場は人間が担うものであり、かつ科学性を保って運営されるべきもので、根本原則は、病気を見ることと変わらないと思いました。みんなして誠意を尽くし、精一杯がんばれば、経営のほうが、なんだかんだといっても人の作った制度の運用ですから、患者さんがいる限り、道は開けると思います。しかし、対疾病への取り組みは、神が創った摂理と破綻への挑戦ですから、数段難しいと思います。でも、全身全霊、日々、改革、改良に向けやり続けるのが、医師の誠意だと思います。それには、効率よくみんなが取り組めるセンター方式が必要と、糖尿病・内分泌・代謝センターを9年前に立ち上げました。場所、人の問題で、思い立って3年ほどかかりましたが、皆さんの協力でできました。そのころから、病棟と外来が一体となった継続看護治療システムも導入され、看護師も病棟での看護結果が外来でどのように効果が出ているのか確認しあい、フィードバックをかけるシステムが導入、大きかったのは、患者さん全員に、「ヘルスケアファイル」という手書きのファイルをお渡しし、代謝要因の変化と日常生活管理がどのように結びつくかをグラフで表すシステムを導入したことです。患者と医師のみでなく、家族にも分り、医療スタッフも採血者、受付、看護師、栄養士も一目瞭然に個々の病態が把握でき、互いにコミュニケーションが取れやすくなったのがよかったです。若い研修医にとっても数年の治療経過を見れば、病態がわかり最大の教科書にもなっています。診療体制を分りやすく、すっきり整えることは、生活習慣病と呼ばれる一連の疾患にとても有用と思います。若い医師も情熱を持った人たちが幸運にも集まり、地に足をつけ、真に役立つ研究を進めてくれたのも、推進力になってくれました。動脈硬化発生機序の解明とCAVIの開発研究学会のマニュアル、ガイドラインは大切ですが、大学病院の使命はその先を見つめることにあります。その眼は、字づらで覚えたことではなく、自然との対話、すなわち研究の基盤なくして開かれないと思います。ささやかながら病理、細胞培養実験から、動脈硬化とコレステロールの関係は直接ではなく、コレステロール自身が酸化され、オキシステロールになると強力な組織障害性をもち、慢性炎症が引きおこすとしました。これに基づき、強力な抗酸化作用を持つ脂質低下剤プロブコール投与による糖尿病性腎症の抑制効果を見いだしました。結局、末期腎硬化症は動脈硬化と同じような機序で起こると考えたからです。また、動脈硬化の臨床研究には、簡便で経時的に測定できる指標が必要ですが、これまで必ずしも十分なものがなかったわけです。これに対して、血管弾性を直接反映するCAVIという検査法の開発に携わったところ、これまで見えなかった部分がどんどん見えるようになりました。これは、内科の循環器、代謝チーム、それに生理機能検査部が一体となり、精力的に仕事をしてきた結果です。循環動態を把握するうえで、血管抵抗を反映することがわかり、これは血圧計に匹敵する意味を持つわけで、まだまだその妥当性をさまざまな角度から検証する必要がありましたが、循環器、代謝領域の疾患や、薬物治療成績が英文論文となり、世界に向けて発信し始めたところです。今後、日常診療の中から、動脈硬化治療が見出される可能性もあり、楽しみです。肥満・メタボリックシンドロームへの低糖質食、フォーミュラー食の応用を中心に、チーム医療体制を確立動脈硬化診療は診断に加え、予防と治療が究極目標ですが、動脈硬化の主な原因として肥満の意味は大きく、糖尿病、高血圧、脂質異常を伴い、所謂メタボリックシンドロームを引き起こします。すでに当院では15年前から肥満への取り組みをチームで始めており、治療として低糖質食、その極みとして安全で効果のあるフォーミュラー食を実施しています。今、欧米では低糖質がよいとの論文が出始めましたが、当院では、入院時にも低糖質食を用いています。またフォーミュラー食は必須アミノ酸を含むたんぱく質とビタミン、ミネラルをパウダーにしたものを水で溶かして、飲んでもらうものです。それによる減量効果特に、内臓脂肪の減少度が高く、それに伴い代謝改善度も一般通常食より効果があり、そのメカニズムは、動物実験でも検証中です。脂肪細胞自身のインスリン感受性関連分子の発現が上がっていることが確認されました。研究面では脂肪細胞から分泌されるサイトカイン、分子、酵素、さらに脂肪細胞分化に加えて、「人」の行動様式にも興味を持ち、毎月、オベシテイカンファランスを開き、内科医、栄養士、看護師は無論のこと、精神科医、臨床心理士も加わり、症例への総合的アプローチを試みています。肥満が解消できない理由に、ハイラムダー型と呼ばれるパーソナリテイを持つ人が肥満患者さんに多いことも見出されました。また、入院中に、何らかの振り返りができ、周囲との関係も客観化できるようになると、長期予後がよいことも見出しており、メンタルサポートは必須と思われます。このような成功例に遭遇すると、チーム全体が活気づくのも不思議です。これから、これらチームのバックアップで肥満外科治療も始まります。患者さんデータを集約したヘルスケアファイルで真の地域連携の夢を糖尿病を中心とした生活習慣病は、結局、本人の自己努力に大きく依存します。人は決して命令で動くものでなく、自分で納得、わかって初めて真の治療が始まります。その際、さまざまな情報を錯綜させないために、1冊のノートをつくり、なるべくグラフ化、マンガで示す方式で、病態理解をはかっています。これをヘルスケアファイルと呼んでいます。きちんとしたデータの推移をみて、各種職域の人が適切なアドバイスができます。また、もっと重要なことは、患者本人が自分の経過を一覧すると、そこから、自分の特性が分かるというものです。医療者自身にも勉強になり、多職種の方々がのぞきこむことによって、患者さん個々の蓄積データに基づき、最適なアドバイスができるというメリットがあります。これは、病院内の代謝科、循環器、神経内科などにとどまらず、眼科とも共通に使えますが、さらに、これで院外の施設とも、真に患者さん中心の医療ができます。できれば、全国国民全員が持つべきで、これで、医療費削減、効率化、医学教育もでき、これを如何に全国的に広めてゆくか楽しみ考えているところです。若い医師へのメッセージ:自分の医学を打ちたてる現在、各種疾患は、学会がガイドラインなどを決め、医療の標準化が進み、それはそれで、一定のレベルにまであげることでは意味があるでしょう。現場に立てば、ほとんどがそれを基礎に幾つかのバリアンスがあり、物足りないはずです。確かに一杯本もあり、インターネットでも知識はふんだんに得られます。でも、結局医師は、自分の医学を自分で打ち立てるのが原則でしょう。決して独断に走れというのではなく、ささやかでも、自分のデータをまとめ、自分として言えるファイルを作ることです。それは、先輩の先生から呟きとしておそわりました、教えてくれるのを待っていたって本当のところは教えられないし、頭を下げても教えてもらえることは少なく、自分で、縦軸、横軸を引き、そこにプロットさせ因果関係を探れといわれましたが、その通りです。ささやかでも、自分の経験症例をまとめておき、そこから何が発信できるか日夜思考錯誤してください。それが、許される余裕と良き指導者がいるところで、研修はすべきでしょうし、後期研修もそんな環境で自己研鑽することが大切でしょう。専門分野の選考は、社会的にニーズが高いところに向かうべきで、無論雰囲気も大切ですが、はやり、楽というよりは、皆が困っているところに入り込こむ勇気が大切でしょう。そこで、頑張れば、面白く楽しく医師生活をやって行けるでしょう。今後も、佐倉病院でなければ、できないことに向けて頑張ってまいります。お待ちしています。質問と回答を公開中!

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