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双極性うつ病に対するルラシドンの有用性~他の非定型抗精神病薬との比較

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性うつ病に対するルラシドン(LUR)の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビュー、変量効果モデル、日本での第III相試験のネットワークメタ解析を実施し、オランザピン(OLZ)やクエチアピン徐放製剤(QUE-XR)との比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年9月9日号の報告。 本研究には、双極性うつ病患者を対象とした日本での二重盲検ランダム化プラセボ対照第III相試験のデータを含めた。主要アウトカムは治療反応率、副次的アウトカムは寛解率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの改善、治療中止率、個々の有害事象発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・3件の研究(1,223例)を分析した。・LURとOLZの奏効率は、プラセボよりも優れていたが、QUE-XRは差が認められなかった。 ●LUR:リスク比(RR)=0.78、95%CI:0.66~0.92 ●OLZ:RR=0.84、95%CI:0.71~0.99 ●QUE-XR:RR=0.87、95%CI:0.73~1.03・寛解率は、LUR、OLZ、QUE-XRともに、プラセボよりも優れていた。 ●LUR:RR=0.90、95%CI:0.83~0.98 ●OLZ:RR=0.87、95%CI:0.77~0.99 ●QUE-XR:RR=0.84、95%CI:0.73~0.98・MADRS合計スコアも、各抗精神病薬ともに、プラセボよりも優れていた。・中止率は、各抗精神病薬とプラセボとの間に差は認められなかった。・それぞれの抗精神病薬において、プラセボと比較し、発生頻度の高かった有害事象は以下のとおりであった。 ●LUR:アカシジア、体重増加、プロラクチン上昇 ●OLZ:傾眠、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 ●QUE-XR:錐体外路症状、アカシジア、傾眠、口渇、便秘、7%以上の体重増加、体重増加、血中総コレステロール値上昇、血中LDLコレステロール値上昇、血中トリグリセライド値上昇 著者らは「双極性うつ病に対する第2世代抗精神病薬による治療の有効性は、3剤ともに同程度であるものの、安全性プロファイルに違いがあることが示唆された」としている。

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1日1回投与の長時間作用型COMT阻害薬「オンジェンティス錠25mg」【下平博士のDIノート】第59回

1日1回投与の長時間作用型COMT阻害薬「オンジェンティス錠25mg」今回は、末梢COMT阻害薬「オピカポン錠(商品名:オンジェンティス錠25mg、製造販売元:小野薬品工業)」を紹介します。本剤は、血漿中レボドパの脳内移行を効率化することで、パーキンソン病の日内変動を改善してOFF時間を短縮することが期待されています。<効能・効果>本剤は、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)改善の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。なお、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩による治療において、十分な効果の得られない患者に限り使用することができます。<用法・用量>通常、成人にはオピカポンとして25mgを1日1回、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩の投与前後および食事の前後1時間以上空けて経口投与します。<安全性>国内第II相試験の安全性評価対象428例中、215例(50.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、ジスキネジア74例(17.3%)、便秘24例(5.6%)、幻覚19例(4.4%)、起立性低血圧18例(4.2%)、体重減少16例(3.7%)、悪心15例(3.5%)、幻視12例(2.8%)、口渇、傾眠各9例(2.1%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、ジスキネジア(17.3%)、幻覚(4.4%)、幻視(2.8%)、幻聴(0.7%)、せん妄(0.5%)、傾眠(2.1%)、前兆のない突発的睡眠(1.2%)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、レボドパを分解する酵素の働きを抑えることで、脳内で不足しているドパミンを増やし、レボドパ製剤の効果が低下するOFF時間を短くします。2.食事やレボドパ製剤服用の前後1時間を避けて、毎日同じ時間帯に服用する必要があります。服用タイミングが難しい場合はご相談ください。3.体が勝手に動く、耐え難い眠気が突然現れる、ギャンブルや買い物、暴食などの衝動が抑えられない、実際にはないものがあるように感じる、便秘症状が強いなど、気になる症状がある場合はご連絡ください。4.眠気、立ちくらみ、めまいなどが現れることがあるので、自動車の運転、高所での作業など、危険を伴う作業は行わないでください。また、起立性低血圧などを引き起こす可能性があるので、転倒に伴うけがには十分に注意して生活してください。<Shimo's eyes>パーキンソン病の薬物療法では、病状の進行に伴ってレボドパ製剤の作用持続時間が短縮し、症状の日内変動(wearing-off現象)が発現することがあります。そのような場合には、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬などのドパミン附随薬の併用が検討されます。本剤は、エンタカポン(商品名:コムタンほか)に続く2番目のCOMT阻害薬です。エンタカポンは、レボドパ製剤と同時に1日数回服用する必要がありますが、本剤は長時間作用型であるため1日1回投与となっています。本剤は血液脳関門(BBB)を通過せず、末梢でのレボドパ分解を抑制して脳内へのレボドパ移行率を高める薬剤です。レボドパ・カルビドパ(同:ネオドパストン、メネシットほか)または、レボドパ・ベンセラジド塩酸塩(同:マドパー、イーシー・ドパールほか)と併用して用いることで効果を発揮します。副作用では、レボドパのドパミン作動性により引き起こされるジスキネジア、幻覚、悪心、嘔吐、起立性低血圧などに注意が必要です。相互作用については、本剤はカテコール基を持つ薬物全般の代謝を阻害するため、COMTにより代謝される薬剤(アドレナリン、ノルアドレナリン、dl-イソプレナリンなど)だけでなく、MAO-B阻害薬(セレギリンなど)、三環系・四環系抗うつ薬、ノルアドレナリン取込み阻害作用あるいは放出促進作用を有する薬剤(SNRI、NaSSAなど)との併用によっても、作用が増強して血圧上昇などを引き起こす恐れがあります。また、本剤は消化管内で鉄とキレートを形成する可能性があり、本剤と鉄剤それぞれの効果が減弱する恐れがあるため、鉄剤とは少なくとも2~3時間以上空けて服用する必要があります。本剤は、1日1回1錠の投与で良好なアドヒアランスが期待できますが、毎日一定の時間帯に服用する必要があり、最適な服用タイミングは患者さんの生活リズムによって変わります。できる限り少ない負担で続けられる時間帯を確認するなど、適切なフォローを心掛けましょう。参考1)PMDA 添付文書 オンジェンティス錠25mg

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第25回 新型コロナ治療薬の治験結果が続々、選択の軸となる意外な条件とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の話ばかりが続いて恐縮だが、この1週間で新型インフルエンザ治療薬のアビガン(一般名:ファビピラビル)、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体で抗リウマチ薬のアクテムラ(同:トシリズマブ)に関して、それぞれCOVID-19を対象とした企業治験(第III相試験)の結果が公表された。いずれも公表ベースではポジティブな結果である。主要評価項目を達成したアクテムラまず、9月18日にスイス・ロシュ社がアクテムラの第III相試験「EMPACTA」を公表した。試験の対象となったのは新型コロナウイルスへの感染が確認され、人工呼吸器管理を必要としない酸素飽和度(SpO2)94%未満の18歳以上の入院患者389例。試験デザインは無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験である。主要評価項目は28日目までの死亡または人工呼吸器の装着を必要とする患者の累積割合で、アクテムラ投与群が12.2%、プラセボ群が19.3%となった。ハザード比(HR)は0.56 (95%信頼区間[CI]:0.32~0.97、p=0.0348)となり、死亡・人工呼吸器装着に至るリスクはアクテムラ群で44%有意に低下した。ちなみに副次評価項目の一つである28日目までの死亡率は、アクテムラ群10.4%、プラセボ群8.6%(p= 0.5146)で有意差は認められず、そのほかの副次評価項目である28日目までの退院準備期間、臨床的改善に要した期間、臨床的悪化までの期間も有意差は認められていない。つまりアクテムラの投与では、少なくとも人工呼吸器の装着を避けられる可能性はあるということだ。なおアクテムラ投与群での有害事象は、便秘が5.6%、不安が5.2%、頭痛が3.2%などで従来のアクテムラ投与と比べて新たな有害事象は確認されていない。非重篤例で有意に症状改善したアビガンアビガンに関しても9月23日付で治験結果の一部が公表された。こちらの対象は非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者で、解析対象156例の無作為化単盲検プラセボ対照比較試験である。主要評価項目は発熱、SpO2、胸部画像といった症状の軽快かつウイルス陰性化までの期間で、公表された結果ではこの期間がアビガン投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日となり、調整後HRは1.593 (95%CI:1.024~2.479、p=0.0136) となり、アビガン投与群で有意に症状を改善する可能性が示された。安全性については新たな有害事象は確認されていないと述べるにとどまっている。一方、アビガンに関しては過去に本連載でも触れた藤田医科大学での無症候・軽症者のCOVID-19に対する臨床研究では、ウイルス消失率で有意な差は認めていない。今後の各社対応あれこれちなみにロシュ側は今回のEMPACTA試験の結果を受けて米・FDAなどの規制当局と結果を共有するとし、富士フイルムは10月中に国内で承認申請するとしている。アクテムラの場合は、既に欧米でCOVID-19による重症肺炎患者を対象に実施した第III相試験「COVACTA」で主要評価項目とした臨床状態の改善、死亡率のいずれもプラセボと比較して有意差が認められなかったと発表している。その一方で、現在、COVID-19による重症肺炎患者を対象に、日本国内では承認を受けている抗ウイルス薬のベクルリー(同:レムデシビル)との併用療法をプラセボ対照で比較する無作為化二重盲検の第III相試験「REMDACTA」など複数の治験が進行中である。この点は、過去のがん領域でのアバスチン(同:ベバシズマブ)で見せた、途中でネガティブな結果が出ようとも、さまざまながん種で単剤から併用療法まで数多くの治験を行ってきたロシュらしい周到さがにじみ出ている。ここで今回の企業治験で示された結果を持って、アクテムラとアビガンが承認された場合を仮定して国内でどのような状況になるかを考えてみたい。その場合、使える治療薬は既存のベクルリー、ステロイド薬のデキサメタゾンに加えて4種類となる。少なくとも死亡率低下が認められているのはデキサメタゾンのみであることや、残る3種類では死亡率低下効果が示せていない点を考えると、重症肺炎例で選択肢となるのはデキサメタゾンのみとなる。また、3種類に関しては治験の対象患者群などから考えると、いずれも公表されている「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第3版」での重症度分類にある「中等症I呼吸不全なし」(93%<SpO2<96%)に適応となることが予想される。ただ、率直に言えば、3種類の治験結果は「どんぐりの背比べ」と言っても過言ではないだろう。では、臨床での使い分けはどのようになるだろうか?この場合、選択肢の軸となりうるものが個人的には2つ思い浮かぶ。1つは供給量である。3種類の中でもっとも供給量に不安があるのは、今回のCOVID-19パンデミックで初めて世に出たベクルリーである。これに加え製薬会社の地理的条件や製造労力を考えると、供給量はベクルリー<アクテムラ<アビガンとなる。もう1つは安全性である。製造が比較的容易とは言え、アビガンによる催奇形性や尿酸値上昇の副作用が指摘されている以上、妊娠・挙児を希望する若年の男女、高齢者を中心とする尿酸値が高めの患者には使いにくい。アクテムラはこれまでの症例蓄積などから肝炎ウイルスキャリアや心血管疾患のある人、ベクルリーは腎機能低下例には不向きである。こうしてみると、臨床現場としては使い分けがやや悩ましいのではないだろうか、と勝手に想像している。

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COVID-19関連肺炎へのアクテムラ、第III相試験で主要評価項目達成/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は9月18日、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体アクテムラ(一般名:トシリズマブ)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連肺炎における有効性を評価する第III相EMPACTA試験で主要評価項目を達成したことを発表した。 EMPACTA試験は、新型コロナウイス(SARS-CoV-2)感染が確認され、SpO2<94%で、非侵襲的または侵襲的な機械的換気を必要としない、18歳以上の入院患者が対象。米国、南アフリカ、ケニア、ブラジル、メキシコ、ペルーから389例が登録された。 主要評価項目は、28日目までに死亡または機械的換気が必要となった患者の累積比率。副次評価項目は、28日目までの死亡率、退院または退院準備までの期間、臨床的成功期間(死亡、機械的換気、ICU入室、脱落のいずれか早く起こった事象までの期間)とされた。 今回発表された結果は以下の通り。・アクテムラと標準治療を受けた患者は、プラセボと標準治療を受けた患者と比較して、機械的換気または死亡に至るリスクが44%低下した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.32~0.97、ログランク検定p=0.0348)。・28日目までに人工呼吸または死亡に至った患者の累積比率は、アクテムラ群で12.2%、プラセボ群で19.3%であった。・28日目までの退院または退院準備までの期間に有意差はなかった(中央値:アクテムラ6日 vs.プラセボ7.5日、HR:1.16、95%CI:0.90~1.48、ログランク検定p=0.2456)。・28日目までの臨床状態の改善までの期間に有意差はなかった(中央値:6日vs.7日、HR:1.15、95%CI:0.90~1.47、ログランク検定p=0.2597)。・28日目までの臨床的成功期間は、プラセボ群と比較してアクテムラ群で長かった(中央値:推定不可(NE)vs. NE、HR:0.55、95%CI:0.33~0.92、ログランク検定p=0.0217)。 ただし、他の主要な副次的評価項目が満たされていないため、この差は統計的に有意であるとはみなされない。・28日目までの死亡率に統計的有意差はみられなかった(10.4% vs. 8.6%、差:2.0%[95%CI:-5.2%~7.8%]、p=0.5146)。・28日目までの感染症発生率は10% vs. 11%、深刻な感染症発生率は5.0% vs. 6.3%であった。 アクテムラ群で多くみられた有害事象は、便秘(5.6%)、不安(5.2%)、頭痛(3.2%)であった。EMPACTA試験では、アクテムラの新しい安全性信号は確認されていない。 EMPACTA試験の結果は、今後査読付きジャーナルに掲載される予定。

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「患者フォロー義務化」のメリット示す調査結果が公表【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第54回

2020年9月1日に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の改正法が施行され、服薬期間中の患者さんの状態を確認する「患者フォローアップ」が義務化されました。個人的には、一連の改正の中で、患者さんに一番影響が大きい項目だと思っています。実際にこの「患者フォローアップ」はどれほど効果があるのでしょうか。成果を収集検証した調査結果が公表されましたので紹介します。日本保険薬局協会は9月10日の定例会見で、改正医薬品医療機器法によって義務化された患者への「服用期間中フォローアップ」について、成果を収集検証した調査結果を公表した。それによると、会員企業20社282薬局から集めた525事例では、51%にあたる268事例で「処方内容に変更」があり、さらに85事例で「薬剤の中止」に結びついたと報告した。首藤正一会長は「これほど、大きな成果が出るとは思わなかった」と指摘し、薬剤中止を含めた「用法用量の減量」や「残薬調整」などの129事例によって、1ヵ月換算の医療費削減効果が109万円になることを強調した。(2020年9月11日付 RISFAX)調査は2020年7月14日~8月31日に行われ、20社282薬局から報告された525事例が検証されています。その結果、フォローアップ後に処方医への情報提供や連携につながった事例は384件(73%)で、処方変更や経過改善などの成果につながった事例は497件(95%)と報告されています。95%が成果につながったというのは驚くべき割合ですね。その成果につながった497事例のうち、処方内容の変更がみられたのが268件(51%)、服薬状況や副作用の確認など処方変更以外の成果につながったのが342件(65%)、服薬状況や体調、副作用で改善がみられたのが434件(83%)でした。処方内容の変更があった268事例のうち、薬剤の中止は85件、他剤への変更は65件、減量が37件で、医療費の削減効果は処方換算で1ヵ月109万円だったとあります。一方、処方追加が40件、増量が11件で、患者さんの症状をよく聞き取って必要な薬剤や投与量を判断して提案していることがわかります。処方変更となった医薬品は「血圧降下薬」がもっとも多く24件で、続いて「下痢・浣腸剤」が22件、神経障害性疼痛の治療薬など「中枢神経系用薬」が20件でした。抗がん剤も11件報告されています。処方変更以外の成果につながった342件の内訳は、「服薬状況の確認」が152件、「副作用の確認」が128件、「体調変化の確認」が76件、「副作用の発見」が46件、「服薬に関する再指導」が31件でした。また、フォローアップをきっかけに、かかりつけ薬剤師の新規契約に至ったケースも19件あったとのことです。これらの成果は、積極的なフォローアップの取り組みを後押しするものになるのではないでしょうか。フォローアップは特別な取り組みではない義務化に先立ち、2020年7月に日本薬剤師会より「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」が出されています。フォローアップのやり方については、まだ模索中という方も多いと思いますので、ぜひ一読されることをお勧めします。日々の服薬指導の振り返りやブラッシュアップにも、この手引きは活用できると思います。これらの取り組みを患者さん本人にお伝えし、何かフォローしてほしいことはないか、不安なことはないかと積極的に尋ねてもいいかもしれません。今回の薬機法改正は、「これまで進めてきた医薬分業の成果と課題を踏まえ、患者の多くが医薬分業のメリットを実感できるような取り組みを進める」ということが課題とされています。日本保険薬局協会の調査結果をみると、患者フォローアップによって本来の薬局の役割が果たせていることに加えて、患者さんや医療費にまで貢献できたという結果が出ています。薬局全体で取り組むモチベーションになるのではないでしょうか。「薬局でお薬をもらってよかった」「お薬で不安なことは薬剤師に相談しよう」と、1人でも多くの患者さんが医薬分業のメリットを感じられるようになることを願います。

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長期に消化性潰瘍の再発を予防するアスピリン+PPI配合薬「キャブピリン配合錠」【下平博士のDIノート】第58回

長期に消化性潰瘍の再発を予防するアスピリン+PPI配合薬「キャブピリン配合錠」今回は、「アスピリン/ボノプラザンフマル酸塩配合錠(商品名:キャブピリン配合錠、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤は、アスピリンとプロトンポンプ阻害薬(PPI)を配合することで、胃・十二指腸潰瘍の再発低減と服薬負担の軽減によるアドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作[TIA]、脳梗塞)、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年5月22日より発売されています。なお、本剤の使用は、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の既往がある患者に限られます。<用法・用量>通常、成人には1日1回1錠(アスピリン/ボノプラザンとして100mg/10mg)を経口投与します。<安全性>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象431例中73例(16.9%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、便秘8例(1.9%)、高血圧、下痢、末梢性浮腫各3例(0.7%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、再生不良性貧血、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、剥脱性皮膚炎、ショック、アナフィラキシー、脳出血などの頭蓋内出血、肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血など、喘息発作、肝機能障害、黄疸、消化性潰瘍、小腸・大腸潰瘍(いずれも頻度不明)が発現する恐れがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、血小板の働きを抑えて血液が固まるのを防ぐことで、血栓や塞栓の再形成を予防します。長期服用によって胃潰瘍・十二指腸潰瘍が再発しないよう、胃酸を抑える薬も併せて配合されています。2.解熱鎮痛薬や風邪薬で喘息を起こしたことのある方、出産予定日12週以内の妊婦は使用できません。3.割ったり砕いたりせず、噛まずにそのまま服用してください。4.手術や抜歯など出血が伴う処置を行う場合は、医師に必ず本剤の服用を伝えてください。<Shimo's eyes>本剤は、低用量アスピリンとPPIの配合剤であり、アスピリン/ランソプラゾール配合錠(商品名:タケルダ)に次ぐ2剤目の薬剤です。虚血性心疾患、脳血管疾患による血栓・塞栓形成抑制には、アスピリンなどの抗血小板薬投与が有効であり、国内外の診療ガイドラインで推奨されています。しかし、アスピリンの長期投与によって消化性潰瘍が発症・再発することから、低用量アスピリン療法時には原則としてPPIが併用されます。この際に併用できるPPIとしては、ランソプラゾール(同:タケプロン)、ラベプラゾール(同:パリエット)、エソメプラゾール(同:ネキシウム)、ボノプラザン(同:タケキャブ)があります。PPI併用の低用量アスピリン投与による消化性潰瘍発生に対する予防効果については、国内第III相試験(OCT-302試験)の副次評価項目として調べられています。胃潰瘍または十二指腸潰瘍の既往のある患者にアスピリン100mgを投与した後の胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発率は、投与12、24、52、76、104週後において、ランソプラゾール15mg併用群ではそれぞれ0.9%、2.8%、2.8%、3.3%、3.3%であったのに対し、ボノプラザン10mg併用群ではいずれも0.5%であり、ボノプラザン併用群で有意に低下していました(p=0.039)。本剤は、アスピリンを含む腸溶性の内核錠を、ボノプラザンを含む外層が包み込んだ構造となっているため、噛まずにそのまま服用する必要があります。本剤の適応には、「胃潰瘍または十二指腸潰瘍の既往がある患者に限る」という制限がありますが、現在消化性潰瘍を治療中の患者さんには禁忌となっているので注意が必要です。参考1)PMDA 添付文書 キャブピリン配合錠

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第17回 治療編(1)薬物療法・その4【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第17回 治療編(1)薬物療法・その4前回侵害受容性疼痛に対し、わが国で非麻薬系オピオイドとして使用されているトラマドール製剤とブプレノルフィン貼付薬について解説しました。今回は、さらに痛みの程度が強い患者さんに使用する麻薬系オピオイドのコデイン、モルヒネ、フェンタニルについて説明したいと思います。(1)コデイン<作用機序>コデインは、投与量の5~15%が肝臓で代謝されることで、CYP2D6により産出されるモルヒネとなり、鎮痛効果が得られます。産出されたモルヒネがオピオイド受容体と結合することで、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>モルヒネと同様に考えて使用します。コデインリン酸塩散には1%、10%、原末があります。また、コデインリン酸塩錠には5mg、20mgがあります。通常は、1回20mg錠を1日3回投与します。ただし、モルヒネ換算には幅があり、鎮痛作用を目的にする場合には、鎮咳目的の場合と異ってかなりの量が必要になります。1%散として使用する場合には、1回2g、1日3回6gの投与になりますので、漢方薬並みの用量となります。通常は麻薬扱いですが、 内容量が少ない1%散、5mg錠は、投与量と関係なく非麻薬扱いになります。副作用として、嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、ふらつき、傾眠、意識消失などがあります。(2)モルヒネ<作用機序>オピオイドの基本薬です。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>次の項に示した合成麻薬フェンタニルの基本薬物になります。錠剤は10mgですが、いきなり10mg錠剤ではなく、末として3mg、5mg、8mgと段階的に体が慣れてくるたびに増量していきます。もちろん、途中で疼痛が緩和されれば、その投与量で維持していきます。また、1日の投与量が15mgに達すれば、フェンタニル貼付剤の適応(文末の表を参照)になります。(3)フェンタニル貼付剤<作用機序>モルヒネと同様、強オピオイドに分類されます。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>フェンタニル貼付剤には、3日用の「デュロテップMTパッチ」、1日用の「フェントスパッチ」「ワンデュロパッチ」が適応されます。モルヒネ経口剤で30mgが「フェントスパッチ1mg」「デュロテップMTパッチ2.1mg」「ワンデュロパッチ0.84mg」に相当します。貼付剤なので、貼付する部位を毎回ずらしていきます。また、温度が高くなると、吸収が増えるので、入浴などの際には気を付けなければなりません。そのために、入浴が好きな患者さんでは、1日用のパッチを入浴前にいったん外し、入浴後に再度貼付される方もいます。なお、本剤の投与に際してはeラーニングの受講が必要です。モルヒネおよびフェンタニルは、医療用麻薬に分類される強オピオイドであり、乱用、依存、退薬症候、長期処方に伴う鎮痛耐性、鎮痛過敏、腸機能、性腺機能障害などに注意が必要です。貼付剤では掻痒、発赤などの皮膚症状が見られることがありますので、貼付部位をローテーションすることが重要です。以上、痛み治療の第3段階における薬物について、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。難治性疼痛患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。次回は神経ブロックについて解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S156-S157

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「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」6年ぶりの改訂

 『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版』が7月22日に発刊された。今回の改訂は2014年版が発刊されてから6年ぶりで、ヒドロモルフォン(商品名:ナルサスほか)、トラマドール塩酸塩の徐放性製剤(商品名:ワントラム)などの新規薬物の発売や新たなエビデンスの公表、ガイドライン(GL)の作成方法の変更などがきっかけとなった。本書の冒頭では日本緩和医療学会理事長の木澤 義之氏が、「分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害薬をはじめとするがん薬物療法が目覚ましい発展を遂げていることなどを踏まえて改訂した」と述べている。 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の主な改訂点については、8月9日~10日にWeb開催された「緩和・支持・心のケア 合同学術大会」での教育講演「『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)』の概要」でも発表され、馬渡 弘典氏(横浜南共済病院 緩和支持療法科)が解説した。がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインとして必要な情報に絞る まず、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの改訂版は作成方法の変更により計325ページから185ページへと大幅にボリュームダウン。大幅に絞られた臨床疑問は65項目から28項目に絞られ、Appendixには委員会で討論したが根拠が乏しく解説文に記載しなかったこと、現場の臨床疑問・現在までの研究と今後の検討課題が記載された。以前まで取り上げられていた「麻薬に関する法的・制度的知識」「がん疼痛マネジメントを改善するための組織的な取り組み」「薬物療法以外の痛み治療法(放射線療法、神経ブロック、骨セメント)」はがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの枠組みでは扱いづらくなったとのことで2020年版では割愛されたが、「大切な事項なので書籍などで確認を」と述べた。2020年版では突出痛の定義が近年の考えを加味して変更された 馬渡氏はがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版を作成する際に生じたエビデンスと推奨のギャップについて解説した上で、疼痛強度に応じた鎮痛薬の使用方法を説明した。まず、中等~高度のがん疼痛についてはCQ3~7*を示し、「中等~高度の疼痛がある患者に対して、強オピオイド間の優劣については今回のシステマティックレビューでは認められなかったため、本ガイドラインではどの薬剤を選択しても良いと結論付けられている」と説明。CQ6(がん疼痛のある患者に対して、フェンタニルの投与は推奨されるか?)については、今年6月末にフェンタニルの貼付剤(商品名:フェントステープ)がオピオイド鎮痛剤未使用のがん疼痛患者へ適応となったことにも触れた。また、それ以前に決定稿になったことを断ったうえで、フェンタニルによる初回投与は、『投与後に傾眠、呼吸抑制の重篤な有害作用の有無を継続して観察出来るとき』の条件付き推奨となったことを述べた。さらに、「添付文書にも 増量時の注意事項が書かれているので、注意して経過観察してほしい」と述べた。*CQ3~7は、「がん疼痛のある患者に対して、各薬剤(モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニル、タペンタドール)の投与は推奨されるか?」について記載。 次に、2018年のWHOのガイドライン改訂で、3段階ラダーの表現が本文から付録に相当するANNEXに移ったが、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版でも中等度のがん疼痛では「強い推奨が弱オピオイドから強オピオイドに変更された」点について説明。CQ8(がん疼痛のある患者に対して、コデインの投与は推奨されるか?)やCQ9(がん疼痛のある患者に対して、トラマドールの投与は推奨されるか?)、CQ23(がん疼痛のある患者に対して、初回投与のオピオイドは、強オピオイドと弱オピオイドのどちらが推奨されるか?)の内容に反映されている。 突出痛については、「突出痛の定義は国際的に決まったものはないが、『持続痛の有無や程度、鎮痛薬治療の有無にかかわらず発生する一過性の痛みの増強』から『定期的に投与されている鎮痛薬で持続痛が良好にコントロールされている場合に生じる、短時間で悪化し自然消失する一過性の痛み』へと、近年の考えを加味して変更された」と解説した。また、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインにおける突出痛に投与するオピオイドの薬剤の用語の統一についても触れ、総称区分を以下のように示した。●速放性製剤:経口モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドンなど●経粘膜性フェンタニル:フェンタニル口腔粘膜吸収製剤●レスキュー薬:突出痛に投与するオピオイドの経口薬、注射剤、坐剤すべてがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点 このほか、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点として、腎機能低下時の投与や便秘時について解説。CQ17(オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、下剤、その他の便秘治療薬の投与は推奨されるか?)やCQ22(がん疼痛のある、高度の腎機能障害患者に対して、特定のオピオイドの投与は推奨されるか?)を示し、「高度の腎機能障害患者にフェンタニルやブプレノルフィンの“注射剤”を推奨していること。コデイン、モルヒネを投与する場合は短期間で少量から投与すること。軽度から中等度の腎障害では減量すればどのオピオイドも投与可能。ただし、ブプレノルフィンは高度の腎機能障害がある時や、ほかの強オピオイドが投与できない時に限定する」と述べた。<今回からがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインに追加された主な新規薬剤>・ヒドロモルフォン(商品名:ナルサス、ナルラピド、ナルペイン)・オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(同:オキシコンチンTR錠)[オキシコンチン錠の販売中止に伴う]・トラマドール塩酸塩(同:トラマールOD錠、ワントラム)とアセトアミノフェン配合剤(同:トラムセット)[カプセル剤の販売中止に伴う]・ミロガバリン(同:タリージェ)・ナルデメジン(同:スインプロイク)とその他の便秘治療薬(ポリエチレングリコール製剤、リナクロチド[同:リンゼス]、エロピキシバット[同:グーフィス])<がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインから削除された主な薬剤>・モルヒネ製剤の一部(同:カディアン、ピーガード)・エプタゾシン(同:セダペイン)、ジヒドロコデインリン酸塩(同:リン酸ジヒドロコデイン)、ペチジン塩酸塩(同:ペチジン塩酸塩「タケダ」) 今後の予定として、同氏は2020年版のガイドライン作成過程で用いた各種のテンプレートを掲載した詳細資料を作成し、『本ガイドライン作成の経過やより詳細な内容を知りたい読者がインターネット上で閲覧できるようにする』『CQ、ステートメントを英文化し、国際紙に掲載する』などを掲げた。また日本緩和医療学会より一般市民向けに2017年に出版されている「患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド 増補版」も改訂が必要とされれば速やかに改訂を行うこととすると述べ、「教科書などとうまく使い分けて役立ててもらえれば」と締めくくった。

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1日1回で空腹時血糖と食後血糖の両方を改善する「ソリクア配合注ソロスター」【下平博士のDIノート】第57回

1日1回で空腹時血糖と食後血糖の両方を改善する「ソリクア配合注ソロスター」今回は、持効型溶解インスリンアナログ製剤/GLP-1受容体作動薬「インスリン グラルギン/リキシセナチド配合製剤(商品名:ソリクア配合注ソロスター、製造販売元:サノフィ)」を紹介します。本剤は、1日1回の投与で空腹時血糖と食後血糖を同時に改善することで、より良い血糖コントロールを得ることが期待されています。<効能・効果>本剤は、インスリン療法が適応となる2型糖尿病の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月8日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、5~20ドーズ(インスリン グラルギン/リキシセナチドとして5~20単位/5~20μg)を1日1回朝食前に皮下注射します。1日1回5~10ドーズから開始し、患者の状態に応じて増減できますが、1日20ドーズを超えることはできません。<安全性>日本人2型糖尿病患者を対象に実施された国内第III相試験では、主な副作用として、悪心(5%以上)、腹部不快感、下痢、嘔吐、消化不良、便秘、胃腸炎、食欲不振、めまい、振戦、注射部位反応(内出血、紅斑、浮腫、そう痒など)、疲労(いずれも1~5%未満)、腹部膨満、腹痛、多汗症、傾眠、倦怠感、空腹感(いずれも1%未満)が認められています(承認時)。なお、重大な副作用として、低血糖、急性膵炎、ショック、アナフィラキシーが発現する恐れがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬には、空腹時血糖を調節する成分と、食後血糖を調節する成分の2種類が配合されていて、1日1回の注射で血糖コントロールを改善します。2.めまいやふらつき、動悸、冷や汗などの低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転など危険を伴う作業を行う際は注意してください。これらの症状が認められた場合は、ただちに糖質を含む食品を摂取してください。3.嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛が現れた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けてください。4.未使用の薬剤は冷蔵庫内に保管してください。凍結すると使用できなくなるので、直接冷気に触れないように注意してください。なお、旅行などに出掛ける場合、短期間であれば室温に置いても差し支えありません。5.使用開始後は冷蔵庫に入れず、キャップをしっかり閉めて涼しいところに保管してください。直射日光の当たるところや自動車内などの高温になる恐れのあるところには置かないでください。6.使用開始後31日を超えたものは使用しないでください。<Shimo's eyes>本剤は、持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の配合皮下注射製剤で、インスリン デグルデク/リラグルチド(商品名:ゾルトファイ配合注フレックスタッチ)に次ぐ国内2剤目の薬剤です。インスリン グラルギン(同:ランタス)とリキシセナチド(同:リキスミア)が日本独自の配合比である1単位:1μgで配合されていて、デバイスにはプレフィルドペン型注入器「ソロスター」が採用されています。主に空腹時の血糖コントロールを改善する持効型インスリン製剤も、主に食後の血糖コントロールを改善するGLP-1受容体作動薬も国内外で広く使われていますが、持効型インスリン製剤は低血糖および体重増加に注意が必要で、GLP-1受容体作動薬は胃腸障害に注意が必要です。本剤は、国内第III相試験で、空腹時血糖と食後血糖のいずれも改善し、インスリン グラルギン単剤と比較して、低血糖と体重増加のリスクを増やさずに統計学的に有意なHbA1cの低下を示しました。また、安全性に関しても、各配合成分の既知の安全性プロファイルと同等であることが確認され、リキシセナチドと比較して、胃腸障害の副作用リスクを低減しました。持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬を組み合わせた治療法は「BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 Therapy)」と呼ばれています。本剤を用いることで、経口糖尿病薬が効果不十分で新しく注射薬を導入する場合や、ほかの注射薬から切り替える場合などに、1日1回の投与でBPTが可能となります。なお、DPP-4阻害薬はGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有するため、本剤と併用する場合は疑義照会が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ソリクア配合注ソロスター

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PPI服用や便秘がフレイルに影響

 フレイルと腹部症状の関連性はこれまで評価されていなかったー。今回、順天堂東京江東高齢者医療センターの浅岡 大介氏らは病院ベースの後ろ向き横断研究を実施し、フレイルの危険因子として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用、サルコペニア、低亜鉛血症、FSSG質問表(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)でのスコアの高さ、および便秘スコア(CSS:Constipation Scoring System)の高さが影響していることを明らかにした。Internal Medicine誌2020年6月15日号掲載の報告。 同氏らは、2017~19年までの期間、順天堂東京江東高齢者医療センターの消化器科で、65歳以上の外来通院患者313例をフレイル群と非フレイル群に分け、フレイルの危険因子を調査した。患者プロファイルとして、骨粗しょう症、サルコペニア、フレイル、栄養状態、上部消化管内視鏡検査の所見、および腹部症状の質問結果(FSSG、CSS)を診療記録から入手した。 おもな結果は以下のとおり。・対象者は、男性134例(42.8%)、女性179例(57.2%)、平均年齢±SDは75.7±6.0歳で、平均BMI±SDは22.8±3.6kg/m2だった。・そのうち71例(22.7%)でフレイルを認めた。・一変量解析では、高齢(p<0.001)、女性(p=0.010)、ヘリコバクターピロリ菌の除菌成功(p=0.049)、PPIの使用(p<0.001)、下剤の使用(p=0.008)、サルコペニア(p<0.001)、骨粗しょう症(p<0.001)、低亜鉛血症(p=0.002)、低アルブミン血症(p<0.001)、リンパ球数の低下(p=0.004)、CONUT(controlling nutritional status)スコアの高さ(p<0.001)、FSSGスコアの高さ(p=0.001)、CSSスコアの高さ(p<0.001)がフレイルと有意に関連していた。・また、多変量解析の結果でもフレイルと有意に関連していた。高齢[オッズ比(OR):1.16、95%信頼区間[CI]:1.08~1.24、p<0.001]、PPI使用(OR:2.42、95%CI:1.18~4.98、p=0.016)、サルコペニア(OR:7.35、95%CI:3.30~16.40、p<0.001)、低亜鉛血症(OR:0.96、95%CI:0.92~0.99、p=0.027)、高FSSGスコア(OR:1.08、95%CI:1.01~1.16、p=0.021)、高CSSスコア(OR:1.13、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)。

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不安感増悪の原因がデュロキセチンかプロピベリンか見極めて変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第24回

 複数の薬剤を服薬している患者さんでは、有害事象の原因薬剤の特定が困難なことが多くあります。しかし、症状や時期を聴取し原因を推論することで、必要な薬剤が削除されたり、不要な薬剤が追加されたりすることが回避できることがあります。今回は、有害事象を早期に察知して、影響の少ない薬剤に変更したケースを紹介します。患者情報90歳、男性(在宅)基礎疾患:高血圧症、過活動膀胱訪問診療の間隔:1週間に1回服薬管理:お薬カレンダーで管理し、訪問スタッフが声掛け処方内容1.アムロジピン5mg 1錠 分1 朝食後2.テプレノンカプセル50mg 1カプセル 分1 朝食後3.酸化マグネシウム錠250mg 1錠 分1 朝食後4.プロピベリン塩酸塩錠10mg 2錠 分1 朝食後5.デュロキセチン塩酸塩カプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後6.ピコスルファートナトリウム錠2.5mg 1錠 便秘時7.経腸成分栄養剤(2−2)液 250mL 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは5年前に奥様が亡くなってから独居で生活されていて、家族との交流はほとんどありません。日常的に不安感が強く、うつ病の診断でデュロキセチンが開始されると同時に、薬剤師の訪問介入が開始となりました。その際、服薬アドヒアランスは不良で、ほとんど薬に手を付けていない状況でした。認知機能は改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で 25点と正常であったものの、薬剤と服薬回数の多さを負担に感じていたようです。そこで、当初は朝と夕に服用する薬剤が処方されていましたが、服薬を確実に行うことを優先して朝1回の服用に用法をまとめることを提案し、今回から上記の処方となりました。薬剤はカレンダーに1週間分をセットし、毎日の訪問スタッフ(訪問介護員、訪問看護師、訪問薬剤師、ケアマネジャー)が協力して声掛けを行うことで服薬アドヒアランスが安定しました。しかし、1週間後に口渇と不安感が増強したため、医師より新規開始薬のデュロキセチンが影響している可能性はないかという電話相談がありました。ここで、私が考えたアセスメントについてまとめると下記のようになります。服薬アドヒアランスが良好になったことによる有害事象アドヒアランスが安定することで初めて薬剤の本来の治療効果が生じることは多くありますが、今回は効果よりも有害事象が現れたのではないかと考えました。口渇および不安感増強で評価すべきポイントは、(1)新規開始薬のデュロキセチンによる影響、(2)プロピベリンの抗コリン作用による影響の2点です。デュロキセチンなどのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬は、投与開始2週間以内や増量後に賦活症候群1)2)が生じやすいことが知られています。この患者さんはアドヒアランスが安定したことで同じような状態になり、不安や焦燥感が増悪したとも考えられました。しかし、賦活症候群の診断基準は曖昧であり、ほかの代表的な症状である不眠や攻撃性、易刺激性、アカシジアなどはなく、口渇が同時期に出ていることから可能性は低いと考えました。むしろ、口渇こそが患者さんに苦痛を与えており、これが不安につながっていると考えるのが自然だと感じました。そこで、アドヒアランスが改善したことで、プロピベリンの抗コリン作用の影響が強く出てしまっているのではないかと考えました。現在の排尿障害について患者さんに確認すると、昼間の頻尿はなく、夜間の尿意で起きることは1〜2回/日であり、それほど苦痛には感じていないとのことでした(過活動膀胱スコア[OABSS]3)は3点と軽症)。それよりも、「とにかく喉が渇いてしょうがない、口の中が気持ち悪い、変な病気になったんじゃないかと不安」と聴取し、プロピベリンがきっかけとなっていることがうかがえました。また、抗コリン薬は長期的には認知機能低下や便秘、嚥下機能低下、転倒4)などの懸念があり、変更が望ましいと考えました。処方提案と経過医師に電話で折り返し、患者さんとの上記のやりとりを含めて報告し、今回の不安感増大はプロピベリンによる口渇が原因となっている可能性を伝え、過活動膀胱治療薬をミラベグロン錠25mg 1錠へ変更することを提案しました。提案根拠としては、ミラベグロンは膀胱のβ3受容体刺激作用から蓄尿期のノルアドレナリンによる膀胱弛緩作用を増強することで膀胱容量を増大させるという蓄尿作用を示しますが、抗コリン作用がないからです。その結果、医師よりプロピベリンを中止し、ミラベグロンを開始するよう指示がありました。また、患者さんが服用錠数の多さを負担に感じていましたが、胃炎や胃潰瘍などの明白な病歴や症状を聴取できなかったため、テプレノンの必要性を医師に確認したところ、飲み切り終了の指示もありました。その後、ミラベグロンへの変更から7日目には口渇は消失し、不安や焦燥感も軽減していました。また排尿障害もOABSSは3点と変動はなく、代替薬への変更が奏効しました。1)浦部晶夫ほか編集. 今日の治療薬2020. 南江堂;2020.2)サインバルタカプセル20mg/30mg インタビューフォーム3)日本老年医学会ほか編集. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015;2015.4)日本排尿機能学会 過活動膀胱診療ガイドライン作成委員会編集. 過活動膀胱診療ガイドライン第2版;2015.

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第16回 治療編(1)薬物療法・その3【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第16回 治療編(1)薬物療法・その3前回は、神経障害性疼痛への緩和適応を有する薬物について説明しました。今回は、侵害受容性疼痛に対して使用されているオピオイドについて説明しましょう。オピオイドには、麻薬指定を受けていない薬物と、麻薬指定薬とがあります。麻薬は、国の指定によって「麻薬」になります。したがって、同じ薬でも麻薬としての扱いは国によって異なります。オピオイドを使用している患者さんが外国に旅行される場合、訪問国の麻薬事情を調べておく必要があります。ここでは、わが国における非麻薬系のオピオイドとして、トラマドール製剤とブプレノルフィン貼付薬について解説します。(1)トラマドール<作用機序>オピオイド受容体への作用と、下行性抑制系の賦活効果を示すノルアドレナリン・セロトニンの再取り込みの阻害作用によって、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>通常の鎮痛薬では効果が得られない非がん性慢性疼痛の患者さんでは、1日2回投与が基準です。25mg錠と50mg錠がありますが、基本的には25mg×2で開始します。高齢者には、就寝前投与25mg1錠から開始し、患者さんが薬物に慣れたら朝夕の25mg×2に増量します。通常、とくに副作用や疼痛緩和効果が見られなければ、25mg×4、50mg×4と順次増量していきます。最大投与量は、400mg(50mg×8/日)です。副作用としては、嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、ふらつき、傾眠、意識消失などがあります。肝機能障害にも注意が必要です。(2)トラマドール塩酸塩徐放錠(商品名:ワントラム)<作用機序>トラマドール製剤なので、本質的に上記と同様です。<投与上の注意>トラマドールの必要投与量が25mg×4になるようであれば、ワントラム1錠(トラマド-ル100mg含有)が便利です。これはトラマドールの徐放剤であり、トラマドール25mgが1日4回の経時的投与されているのと同様の血中濃度を維持でき、しかも1日1回の投与ですので、患者さんにとってもコンプライアンスの維持が容易になります。(3)トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤錠(商品名:トラムセット)<作用機序>上記トラマドールの作用機序に、アセトアミノフェンの作用機序が加わります。すなわち、中枢性プロスタノイドの抑制、内因性下行性抑制系セロトニン系の活性化、内因性オピオイドの増加などの鎮痛機序がアシストされることが推定され、トラマドール単独に比較して、より疼痛緩和効果が期待できます。<投与上の注意>トラマドール37.5mgとアセトアミノフェン325mgとの配合薬です。非がん性慢性疼痛では、1回1錠、必要に応じて1日4回投与します。基本的には、投与間隔を4時間は空けるようにします。最大投与量は1回2錠、1日8錠までとなっています。投与を中止する際には、トラマドール製剤なので、いずれも漸次減量していきます。アセトアミノフェンを別に投与する場合には、必ず、トラムセットに含まれているアセトアミノフェンの含有量を計算し、4,000mg/日を超えないように注意してください。アセトアミノフェンの副作用に肝機能障害がありますので、長期投与する場合は、いずれにしても肝機能をモニタリングすることが重要です。(4)ブプレノルフィン(商品名:ノルスパン テープ)<作用機序>オピオイド受容体への作用は部分的作動性ではありますが、親和性は強く、強力な鎮痛作用を示します。皮膚から吸収される1週間貼付の徐放剤です。同じ貼付部位での1週間貼付剤なので、皮膚への影響により掻痒を訴え、剥がすと発赤が認められる場合があります。そのために、1週間ごとに貼付部位をローテーションしていきます。<投与上の注意>投与に際しては、e-ラーニングの習得が必要です。保険適応症例は、腰痛症と変形性関節症のみです。また、現在のところ2週間分の処方しかできないので、患者さんの受診は最長2週間ごとになります。最大投与量は20mg/週(20μg/時)です。5、10、20mgの貼付薬があり、痛みの強度により、投与量を決めていきます。そのため、基本的には5mg貼付薬から開始し、1~2週間ごとに投与量の増減を行い、適切な貼付量を決めていきます。貼付開始後および増量後には、3日程度の観察期間が必要です。副作用としては、トラマドールと同様に嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、頭痛、ふらつき、傾眠、意識消失など、通常のオピオイドに見られる症状があります。1週間という長期間貼付なので、掻痒、発赤などの皮膚症状が見られることがあり、貼付部位をローテーションすることが重要です。以上、痛み治療の第2段階における薬物を取り上げ、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。痛みの患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。次回はさらに痛みの程度が強くなった場合に使用する強力な麻薬性オピオイドについて解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S156-S1572)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S1553)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S154

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カリウムイオンを補足する非ポリマー型高K血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」【下平博士のDIノート】第53回

カリウムを便中に出す非ポリマーの高カリウム血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」今回は、高カリウム血症改善薬「ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(商品名:ロケルマ懸濁用散分包5g/10g、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、体内に吸収されない非ポリマーの無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させることにより、血清カリウム値を低下させます。<効能・効果>本剤は高カリウム血症の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年5月20日より発売されています。なお、本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用できません。<用法・用量>通常、成人には開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間(血清カリウム値や患者の状態に応じて最長3日間まで)経口投与します。以後の維持量は1日1回5gですが、血清カリウム値や患者の状態に応じて1日1回15gを超えない範囲で適宜増減できます。なお、増量を行う場合は5gずつとし、1週間以上の間隔を空けます。血液透析施行中の場合は、初回から1回5gを水で懸濁して、非透析日に1日1回経口投与します。なお、最大透析間隔後の透析前の血清カリウム値や患者の状態に応じて、1日1回15gを超えない範囲で適宜増減します。<安全性>本剤承認の根拠となった主要な第III相試験(非透析患者を対象としたHARMONIZE Global試験、J-LTS試験および慢性血液透析患者を対象としたDIALIZE試験)において確認された主な副作用は、浮腫、体液貯留、全身性浮腫、末梢性浮腫、末梢腫脹、便秘(いずれも10%未満)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、低カリウム血症(11.5%)、うっ血性心不全(0.5%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.このお薬は、消化管内で吸収される前のカリウムを吸着し、便とともに排泄することで、血液中のカリウム値を低下させます。2.分包された薬剤を容器にすべて出してから、約45mL(大さじ3杯)の水と合わせて服用します。この薬は水に溶けないため、よくかき混ぜて、沈殿する前に飲んでください。飲んだ後に容器に薬が残っていたら、水を追加して再度かき混ぜてすべて服用してください。3.飲み忘れた場合は、1回飛ばして、次に飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。4.いつもと違う手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉のこわばり、呼吸のしにくさ、めまい、動悸などがある場合は、薬が効き過ぎている可能性があるため、すぐにご連絡ください。<Shimo's eyes>通常、カリウムは腎臓から排泄されて血中のカリウム値は一定の範囲に保たれますが、慢性腎臓病患者や透析患者では、腎機能の低下によりカリウム排泄が低下するため、高カリウム血症を発症しやすくなります。高カリウム血症に用いる既存のカリウム吸着薬としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム製剤(商品名:ケイキサレート)およびポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤(同:カリメート、アーガメイトゼリーなど)があり、いずれもポリマーで構成された陽イオン交換樹脂製剤です。既存薬には独特の味と舌触りがあり、投与量が多いことも相まって、患者さんが継続服用するのが困難な場合があります。飲みにくさを改善するために、ゼリー製剤やフレーバーが開発されているだけでなく、複数の医療機関から飲みやすさの工夫に関する研究結果も報告されています。また、ポリマー性吸着薬は水分によって膨張するため、便秘や腹痛、腹部膨満感などの懸念があります。本剤は国内初となる非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させます。無味無臭の白色粉末で、開始時は10gを1日3回経口投与であるものの、3日目からは通常5gを1日1回となり、服用量・回数共に比較的少ないため、アドヒアランスの向上が期待できます。本剤の相互作用については、胃内pHの上昇によって、アゾール系抗真菌薬、チロシンキナーゼ阻害薬などの溶解性低下が起きることがあるので、注意が必要です。生活指導としては、腎臓への負担を少しでも減らすために、カリウムを多く含む食品の過剰摂取に注意することや、茹でたり水にさらしたりするなどの調理方法の工夫を伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ロケルマ懸濁用散分包5g/ロケルマ懸濁用散分包10g

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アドヒアランス不良でアセトアミノフェン分3から変更提案した薬剤は?【うまくいく!処方提案プラクティス】第23回

 今回は、アセトアミノフェンの複数回投与が開始になったものの、アドヒアランス不良のため疼痛コントロールが困難であった症例です。良好な疼痛コントロールとアドヒアランスを得るために提案した代替薬とその根拠を紹介します。患者情報93歳、男性(在宅)基礎疾患:うっ血性心不全、右被殻出血(左麻痺あり)、前立腺肥大症、高尿酸血症訪問診療の間隔:2週間に1回服薬管理:お薬カレンダーで管理し、ヘルパーによる毎日の訪問介護時に服薬処方内容1.タムスロシン塩酸塩錠0.2mg 1錠 分1 夕食後2.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 夕食後3.トリクロルメチアジド錠1mg 1錠 分1 夕食後4.フェブキソスタット錠10mg 1錠 分1 夕食後5.センノシド錠12mg 2錠 分1 夕食後6.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 2錠 分1 夕食後7.アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 朝昼夕食後8.ピコスルファート内用液0.75% 便秘時 就寝前7〜8滴本症例のポイントこの患者さんは、脳出血後の左麻痺によって手先の不自由さがあり、ほぼベッド上で生活していました。そのため、服薬回数をすべて1日1回で統一して一包化し、毎日夕方の訪問介護の時間に服薬していました。ところが先日、トイレへ移動する際に転倒して受傷し、睡眠時や排泄時の疼痛のため、アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 毎食後が開始となりました。朝・昼のアセトアミノフェンは、ヘルパーさんが夕方の訪問介護時にベッド近くに置いておいて、患者さんご自身で服薬することになりました。しかし、2回分を重複して服用したり服薬を忘れてしまったりと服薬アドヒアランスが維持できず、疼痛が管理できないという問題がありました。同じタイミングでケアマネジャーから、薬をなんとか1回にまとめられないものかと相談があり、アセトアミノフェンの変更提案を検討することにしました。1日1回の服用に適したNSAIDsを検討1日複数回服用することで重複投薬のリスクがあり、飲み忘れによって疼痛コントロールも不十分であるため、ほかの定期薬に合わせて服用できる鎮痛薬を検討しました。ここで候補に挙がったのは長時間作用型NSAIDsのメロキシカムです。長時間作用型という性質上、1日1回で疼痛コントロールできることに加え、服薬回数の負担も軽減できることから当該患者さんの処方薬として妥当だと考えました。半減期が長いため、高齢者や腎・肝機能が低下している場合は注意が必要ですが、この患者さんは心不全の状態が安定していて、直近の検査結果からも腎機能は年齢相応(Scr:0.78mg/dL、eGFR:57.8mL/min/1.73m2)で大きな悪化もないことから薬物有害事象の懸念は少ないと考えました。処方提案と経過医師に上記内容をトレーシングレポートで相談したところ、疼痛コントロールもしっかり行う必要があるが、誤薬のリスクを下げるためにも変更しようと了承いただきました。提案当日に変更対応となり、アセトアミノフェン錠の回収とメロキシカム錠10mgを夕食後投与としてカレンダーにセットしました。そして、患者さんとヘルパーさんへ鎮痛薬の変更があることを説明し、今後は朝・昼の薬はなくなることをお伝えしました。患者さんも複数回の服薬や飲み忘れ、重複投薬のことを気にしていたので、今回の変更を受けて安心していました。その後、患者さんは疼痛コントロールも良好で、疼痛による苦痛も有害事象もなく生活を続けています。

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FDA、小細胞肺がんにlurbinectedinを承認

 FDAは、2020年6月15日、プラチナベース化学療法中/後に進行した転移のある小細胞肺がん(SCLC)の成人の治療について、lurbinectedin(Jazz PharmaceuticalsおよびPharmaMar)を迅速承認した。 この承認は、プラチナベース化学療法後に進行したSCLCの成人105例を対象とした、非盲検多施設単一群試験の単剤治療データに基づいている。この研究では、lurbinectedinの研究者評価の全奏効率は35%、奏効期間中央値は5.3ヵ月であった。lurbinectedinの頻度の高い(≧20%)治療関連有害事象は、白血球減少症、リンパ球減少症、疲労、貧血、好中球減少症、クレアチニン増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、グルコース増加、血小板減少症、悪心、食欲低下、筋骨格痛、アルブミン減少、便秘 、呼吸困難、ナトリウムの減少、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、嘔吐、咳、マグネシウムの減少、下痢であった。

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「アリナミンF」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第4回

第4回 「アリナミンF」の名称の由来は?販売名5mgアリナミン®F糖衣錠25mgアリナミン®F糖衣錠50mgアリナミン®F糖衣錠※注射剤は内服薬のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください。一般名(和名)5mgアリナミンF糖衣錠フルスルチアミン(JAN)25mg・50mgアリナミンF糖衣錠フルスルチアミン塩酸塩(JAN)効能又は効果○ビタミンB1欠乏症の予防及び治療○ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、甲状腺 機能亢進症、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働等)○ウェルニッケ脳症○脚気衝心○下記疾患のうちビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合神経痛筋肉痛、関節痛末梢神経炎、末梢神経麻痺心筋代謝障害便秘等の胃腸運動機能障害術後腸管麻痺ビタミン B1欠乏症の予防及び治療、ビタミン B1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、ウェルニッケ脳症、脚気衝心以外の効能・効果に対して、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない。用法及び用量5mgアリナミンF糖衣錠通常、成人には1日量1〜6錠(フルスルチアミンとして5〜30mg)を1回1〜2錠ずつ、 1日1〜3回に分けて食後直ちに経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。25mgアリナミンF糖衣錠通常、成人には1日量1〜4錠(フルスルチアミンとして25〜100mg)を1日1〜3回に分けて食後直ちに経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。50mgアリナミンF糖衣錠通常、成人には1日量1〜2錠(フルスルチアミンとして50〜100mg)を1日1〜2回に分けて食後直ちに経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由該当しない※本内容は2020年6月17日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2016年10月改訂(改訂第3版)医薬品インタビューフォーム「5mgアリナミン®F糖衣錠、25mg・50mgアリナミン®F糖衣錠」2)武田テバ薬品:製品情報一覧

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Dr.林の笑劇的救急問答15

第5回 腹痛の原因は!病態生理で考える第6回 その腹痛!筋骨格・皮膚・神経も考えよう第7回 腹痛なのに!全身性疾患・慢性疾患って反則?第8回 腹痛は遠方より来る? Season15のテーマは腹痛。腹部救急は難しく、診断に時間がかかります。救急を受診した腹痛患者のうちおよそ1~2割が診断不能で、さらに、そのうち2割が悪化すると言われています。重大な腹痛を見逃さないために、いろいろな原因を想起できるようになりましょう。下巻では内臓痛と体性痛、皮膚・筋骨格由来、全身性や慢性の疾患、腹部以外の疾患などを取り上げ、解説します。そう、痛みがあるところに原因があるとは限らないのが腹痛診断の難しいところです。ピットフォール満載の爆笑症例ドラマと、Dr.林のわかりやすい講義で、これまで「胃腸炎」や「便秘」とゴミ箱診断してきた腹痛に、複数の鑑別疾患を挙げることができるようになるでしょう。第5回 腹痛の原因は!病態生理で考える急性の腹痛は解剖学的に、そして病態生理から考えることが大切です。体性痛の場合は、“膜”が関連しているため、持続痛ですが、内臓痛の場合は、間欠痛や持続痛もあり、局在がはっきりしないことも多く、注意が必要です。痛みはどこを通っているのか、なぜ、その部位が痛むのか、また、その理由は何かをわかりやすく解説します。Dr.林の患者のウソを見抜く診察テクニックもご紹介します。第6回 その腹痛!筋骨格・皮膚・神経も考えよう今回のテーマは神経・筋・皮膚由来の腹痛についてです。腹痛とはいってもすべてが腹部臓器からの痛みばかりではありません。筋骨格由来や神経由来、皮膚由来の痛みもあります。その際は、適切な病歴聴取と身体診察で診断できます。そのノウハウをDr.林が詳しく解説します。第7回 腹痛なのに!全身性疾患・慢性疾患って反則?腹痛は必ずしも、解剖学的なアプローチだけで診断できるわけではありません。全身性疾患の1症状として腹痛が出る場合があります。たとえば、DKAやIgA血管炎、高Ca血症、電解質異常などなど。原因のわからない腹痛を診たら、そのような疾患を鑑別にあげられるようになりましょう。また、慢性の腹痛には、解剖学的なアプローチはもちろんのこと、機能的なアプローチも必要です。いずれの場合も、病歴と身体所見をしっかりと行うことが重要です。第8回 腹痛は遠方より来る?腹痛編の最終回です。腹痛は、必ずしも痛みがあるところに原因があるとは限らないのが非常に難しいところです。たとえば、心筋梗塞や虫垂炎で胃痛を訴えるように、肺炎や膿胸、精巣捻転などでも腹痛を訴えることがあります。なぜそうなるのかわかっていれば、それらの疾患を鑑別に挙げることができるようになります。さあ、これで腹痛の患者が来ても、胃腸炎や便秘というゴミ箱診断をせず、腹痛のさまざまな原因を想起し、診療につなげていきましょう!

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ロケルマ:45年ぶりに誕生した高カリウム血症改善薬

2020年5月20日、高カリウム血症改善薬ロケルマ懸濁用散分包5gおよび10g(一般名:ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)(以下、ロケルマ)がアストラゼネカ株式会社より発売された。ロケルマは、同疾患改善薬としては45年ぶりの新有効成分含有薬となる。アンメットニーズが高い高カリウム血症高カリウム血症は、CKD例や心不全例に高頻度に合併し、日本の300床超の病院にて治療中の患者では、全例、CKD例、心不全例、RA系抑制薬服用例のうち、6.8、22.8、13.4、14.2%に合併していると報告されている1)。そして、血清カリウムが異常高値になると致死性不整脈や心停止を引き起こしうる臨床上重大な疾患である。しかし、現在の主な治療法(食事制限、原因薬剤の減量・休止、利尿薬、陽イオン交換樹脂)では、効果発現までの時間や忍容性の問題から期待した効果が得られないこともある。ロケルマは速やかな血清カリウム値の低下を実現ロケルマは、非ポリマー無機陽イオン交換化合物の経口剤である。消化管内でカリウムイオンを選択的に捕捉し、初回投与開始後1時間から血清カリウム値の低下を示し、水分による膨潤をしないという特徴を有している。透析例および非透析例への試験結果から効果発現、持続性、安全性に期待ロケルマは、2つの国内試験(第II/III相試験、長期投与試験)および2つの国際共同試験(HARMONIZE Global試験、DIALIZE試験)の結果に基づき承認された。HARMONIZE Global試験は、高カリウム血症患者267例(うち日本人68例)を対象に、ロケルマ10gを48時間投与し、正常カリウム値に達した患者に同剤10g、同剤5gまたはプラセボのいずれかを1日1回28日間投与した試験である。補正期において、投与24および48時間後に正常カリウム値に達した患者の割合は、それぞれ63.3%および89.1%であった。主要評価項目である22日間の血清カリウム値の最小二乗幾何平均は、同剤10g群、5g群およびプラセボ群それぞれ4.4、4.8、5.3mmol/Lであり、プラセボ群と比較していずれも有意に低値となった(いずれもp<0.001)。DIALIZE試験は、血液透析患者196例(うち日本人56例)を対象に、最大透析間隔(血液透析日以外の2日間)後の血液透析前のカリウム値を4.0~5.0mmol/Lに維持するよう、ロケルマを4週間、適宜増減投与し、その後用量を変更せずさらに4週間投与した。ロケルマ群はプラセボ群と比較して奏効例(後半4週間における最大透析間隔後の4回中3回で透析前血清カリウム値が4.0~5.0mmol/Lで、レスキュー治療を受けなかった患者の割合)が有意に高かった(41.2% vs1.0%、p<0.001)。副作用としては、両試験ともに浮腫、便秘、低カリウム血症が認められている。高カリウム血症治療の指針策定を期待させる新薬高カリウム血症に45年ぶりに新有効成分含有薬が登場し、CKD例や心不全例の高カリウム血症の是正による不整脈や突然死の抑制はもちろん、ARB/ACEIの減量や厳しい食事制限の負担軽減が可能となるケースも考えられ、今後、高カリウム血症治療が変貌することは想像に難くない。一方、45年間新有効成分含有薬が出なかったということは、それだけ治療に大きな進歩がなかったことの裏返しでもある。はたして、高カリウム血症は治療開始カリウム値、目標値の明確な指針が示されておらず、医師個人個人の判断によって治療が行われている。学会から新たに高カリウム血症の治療指針が示されるかもしれない。そのような期待を抱かせる新薬が誕生した。1)Kashihara N, et al. Kidney Int Rep. 2019;4:1248-1260.

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COVID-19重症患者、レムデシビル投与5日vs.10日/NEJM

 人工呼吸器を必要としていない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者において、レムデシビル投与期間は5日間と10日間とで有意差は認められなかった。米国・ワシントン大学のJason D. Goldman氏らが、COVID-19重症患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験の結果を報告した。レムデシビルは、in vitroで強力な抗ウイルス活性を示し、COVID-19の動物モデルで有効性が示されたRNAポリメラーゼ阻害薬であるが、レムデシビルを用いた治療の効果のある最短投与期間を明らかにすることが、喫緊の医療ニーズであった。NEJM誌オンライン版2020年5月27日号掲載の報告。レムデシビルの投与期間5日と10日で有効性を比較 研究グループは、米国、イタリア、スペイン、ドイツ、香港、シンガポール、韓国および台湾の55施設にて本臨床試験を実施した。2020年3月6日~26日の期間に、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認され、酸素非投与/投与下で酸素飽和度94%以下、画像で肺炎所見を認めた入院患者を登録。レムデシビル5日間静脈内投与(5日)群または10日間静脈内投与(10日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日目にレムデシビル200mg、その後は1日1回100mgを投与した。 主要評価項目は、投与開始14日時点における臨床状態(7段階評価 1:死亡、2:侵襲的機械換気またはECMO、3:非侵襲的機械換気または高流量酸素療法、4:低流量酸素療法、5:酸素投与は不要だが治療を継続、6:入院しているが酸素投与や治療は不要、7:退院)、副次評価項目は、レムデシビル最終投与後最長30日までの有害事象であった。レムデシビル投与期間の違いによる有効性に有意差なし 計402例が無作為化され、このうち397例でレムデシビル投与による治療が開始された(5日群200例、10日群197例)。治療期間中央値は、5日群が5日(四分位範囲:5~5)、10日群が9日(四分位範囲:5~10)であった。ベースラインの患者背景は、5日群に比べ10日群で段階評価が2(2% vs.5%)および3(24% vs.30%)の患者が多く、結果的に臨床状態が有意に悪かった(p=0.02)。 14日時点における臨床状態がベースラインから2段階以上改善していた患者の割合は、5日群64%、10日群54%であった。ベースラインの臨床状態を補正後、14日時点における各臨床状態の分布は5日群と10日群で類似していた(p=0.14、層別ウィルコクソン順位和検定)。 レムデシビル投与期間の違いによる有害事象の発現率は、全Gradeが5日群で70%(141/200例)、10日群で74%(145/197例)、Grade3以上がそれぞれ30%および43%で、重篤な有害事象はそれぞれ21%および35%、投与中止に至った有害事象は4%および10%に認められた。 主な有害事象は、悪心(10% vs.9%)、急性呼吸不全(6% vs.11%)、ALT増加(6% vs.8%)、便秘(6% vs.7%)などであった。

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高齢者特有のリスクを考慮した抗ヒスタミン薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第20回

 今回は、抗ヒスタミン薬の追加提案について紹介します。高齢者で抗ヒスタミン薬を選択する際には、鎮静やせん妄などのリスクを十分に考慮する必要があります。経過をフォローすることで、漫然投与も防ぎましょう。患者情報75歳、男性(施設入居)基礎疾患:高血圧症、便秘症訪問診療の間隔:2週間に1回処方内容1.オルメサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後2.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後3.センノシド錠12mg 1錠 分1 夕食後4.d-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mg 3錠 分3 朝昼夕食後(今回追加)5.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g 1日2回 全身に塗布(今回追加)6.ジフルプレドナート軟膏 10g 1日2回 体幹部位に塗布(今回追加)本症例のポイントこの患者さんは、全身の乾燥と体幹部に強い痒みを伴う湿疹があり、夜間も痒くて眠れないので飲み薬も出してほしい、という訴えを訪問診療の同行時に聴取しました。そこで医師より、しっかりとした作用が必要なのでd-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mgを1日3回でどうかという相談がありました。ここでの処方薬のポイントは3点あります。1.高齢者における第1世代抗ヒスタミン薬のリスク第1世代の抗ヒスタミン薬は、中枢神経を抑制して鎮静作用が強く生じることがあります。この患者さんが眠れないと訴えたことから、鎮静作用を期待している可能性もありますが、抗コリン作用などに伴う口渇や便秘、認知機能低下、せん妄があり、高齢者ではリスクが大きいと懸念されます。2.第2世代抗ヒスタミン薬の代謝と排泄経路、鎮静作用代替薬として、よりH1受容体に選択的に作用する第2世代抗ヒスタミン薬を検討しました。多くの薬剤が発売されていますが、高齢者では肝・腎機能などの低下を考慮して、安全に使用できる薬剤が望ましいです。また、鎮静の強さも各薬剤で違いがありますので、鎮静作用が比較的弱いフェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチンが適切と考えました。3.併用薬との相互作用相互作用の面では、現在服用中の酸化マグネシウムとフェキソフェナジンは併用注意です。酸化マグネシウムがフェキソフェナジンの作用を減弱させるため候補から外れました。服用回数の少なさも薬剤選択の大きなポイントですが、ロラタジンもエピナスチンも1日1回ですので、今回は腎臓への負担の少ないエピナスチンが妥当と考え、医師に提案しました。処方提案と経過医師には、冒頭の処方内容では、鎮静が強く生じて転倒するリスクがあり、口渇や便秘、認知機能低下、せん妄リスクもあることを伝えました。代替薬として、エピナスチン錠20mg(後発品)を提示し、服用薬との薬物相互作用もなく、腎機能への影響も少なく、服用回数も1回で済むことを紹介しました。医師からは、高齢者での第1世代抗ヒスタミン薬のリスクを軽視するわけにはいかないと返答があり、提案のとおりに変更されました。患者さんはエピナスチン錠を服用開始した翌日の夜には掻痒感が改善し、よく眠れたと聴取することができました。2週間後には皮疹もきれいに治っていたことから、エピナスチン錠を中止し、保湿剤によるスキンケアのみを継続することを医師に提案しました。この提案も採用され、保湿剤のみとなりましたが現在も経過は良好です。抗ヒスタミン薬は漫然と飲み続けているケースも多く見受けられますが、継続的にフォローして、治療終了を判断することも重要と考えます。画像を拡大する※2020年5月時点の薬価※肝・腎:肝機能低下、腎機能低下でそれぞれ血中濃度上昇の可能性あり1)各薬剤のインタビューフォーム2)「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院.3)谷内一彦ほか. 日耳鼻. 2009;112:99-103.

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