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よくある話【1】目に見えるリスクに対する過大評価:下大静脈フィルターの使い方(解説:香坂 俊 氏)-376

われわれはどうも昔から「見えてしまう」とそれを治療せずにはいられないようである。古いところでは乳がんに対する拡大郭清術、新しいところでは安定狭心症に対するステント治療などがそれに当たるだろうか。現在では、いずれの手技もごく限られたハイリスク症例だけに行われるようになっている(ハズである)。そこに、今回下大静脈フィルター(IVC Filter)が加わった、というのは言い過ぎだろうか?抗凝固に加えてFilterを入れることは、「一応、念のためにね」といったadjunctive(補助的)な位置付けで広く行われてきた。Filterを入れて悪いこともなさそうだし、最近は回収できるようにもなっている。だから「いっちょやっとくか」という発想はいかにも自然だ。ただ、以前よりFilterのルーチン使用には警鐘が鳴らされるようになってきている。確かに初代のPREPIC試験では、Filterに急性期PE(肺塞栓症)の予防効果がみられた(12日以内、対象はDVT[深部静脈血栓症]患者)1)。しかし、2年、8年と長期的にみていくとDVTの発症が増え(おそらくはFilterの目詰りが原因)、トータルでみるとFilterを入れても入れなくても予後に大きな影響がないことが示されている2)。そして、PREPIC試験の2代目の試験がデザインされた3)。今回は、短期的に回収可能なFilterを入れるか入れないかというところでランダム化されている(対象はハイリスクPE患者)。試験の結果をみてみると、Filterの留置に伴う合併症の発生率は低く(<2%)、しかも90%以上の症例できちんと3ヵ月以内に回収されている。しかし、それでもFilterの留置によるPEの再発予防効果はみられなかった(6ヵ月)。どうもPEやDVTといった静脈系の血栓性疾患に対する物理的な治療法は分が悪いようである。現段階でのDVTやPEに対するマネジメントの中心は抗凝固療法であり、たとえハイリスク症例であったとしてもルーチンのFilter使用は推奨されない。Filter使用の適応として現在でも残っているのは抗凝固禁忌例(例:最近手術や脳出血を経験した症例)であるが、その根拠は観察研究からの「結果的にPE再発の率が低かった」というところに留まり、いまだRCTは行われていない。ここがおそらく最後の砦であり、今後議論がクローズアップされていくものと思われる。

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ダビガトランの中和薬としてidarucizumabが有望/Lancet

 ヒト化モノクローナル抗体フラグメントidarucizumabは、用量依存的にダビガトラン(商品名:プラザキサ)の抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースすることが明らかになった。薬剤関連の有害事象についても、重篤なものは認められなかった。ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社のStephan Glund氏らが健康な男性47例について行った第I相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、示された。ダビガトランは心房細動後の脳卒中予防に、また静脈血栓塞栓症の治療および予防に関して、ワルファリンに代わる効果があることが示されている。Lancet誌オンライン版2015年6月15日号で発表した。idarucizumabを1g~7.5g投与、安全性、忍容性、有効性を検討 試験は、2013年2月23日~11月29日にかけてベルギーのSGS Life Sciences Clinical Research Servicesで、18~45歳の健康なボランティア男性47例を対象に行われた。被験者のBMIは18.5~29.9だった。 同グループは被験者全員に対し、ダビガトランエテキシラート220mg、1日2回を3日間、4日目には1回量を投与した。また被験者を無作為に分け、ダビガトラン最終投与2時間後に、idarucizumabを1g、2g、4gをいずれも5分静注投与、または5gと2.5gを1時間間隔で5分静注投与、またはプラセボ投与を、それぞれの群に行った。 主要評価項目は、薬剤関連有害事象だった。副次評価項目は、希釈トロンビン時間(dTT)、エカリン凝固時間(ECT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンビン時間のリバースなどで、2~12時間の効果曲線下面積(AUEC2-12)で評価した。用量依存的に、抗凝固作用は迅速かつ完全にリバース 結果、薬剤関連有害事象は7例報告されたが、注射部位紅斑や鼻出血など、全員が軽症だった。 idarucizumabは、投与量に応じて、ダビガトランによる抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースした。ダビガトラン投与4日目の同3日目に対するAUEC2-12の平均比率は、dTTはプラセボ群が1.01に対し、idarucizumab 1g群が0.26(74%抑制)、2g群 0.06(94%抑制)、4g群 0.02(98%抑制)、5g+2.5g群が0.01(99%抑制)だった。 重篤または重度の有害事象は報告されなかった。治療中断となった有害事象はなく、治療群間で有害事象発生の臨床的に重大な差はみられなかった。 なお本剤に関する臨床試験はさらに継続中である。

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多発性骨髄腫治療薬「レナリドミド」、ワルファリンとの相互作用は

 多発性骨髄腫の治療において、レナリドミドは2次治療に位置付けられており、その効果の大きさから重要な役割を担っている。現在、初発の多発性骨髄腫に対して適応追加の申請中であり、その重要性はますます大きくなっていく可能性がある。 レナリドミドは重大な副作用として静脈血栓症があるため、予防目的でワルファリンが併用されていることも多い。ワルファリンは薬物相互作用が多い薬剤として有名であるが、米国・セルジーン社・Daniel Weiss氏らの調査の結果、レナリドミドとの併用は、薬物相互作用の観点において問題ないことが示唆された。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2015年5月30日号にて掲載報告。 調査はプラセボ対照、無作為化二重盲検2期クロスオーバー試験にて行った。対象は18人の健康な男女で、レナリドミドを1日10mgまたはプラセボを9日間投与した。投与4日目に、両群に対して1日25mgのワルファリン単回経口投与を行った。採血を行い、両薬剤のINR・PT・AUC・Cmaxを測定した。 主な結果は以下のとおり。・レナリドミド、プラセボの両群間におけるAUCやCmaxの幾何平均値比は、ワルファリンの光学異性体(R体およびS体)について生物学的同等性の範囲内(80~125%)であった(90%信頼区間)。・ワルファリン投与後0時間~144時間のAUCINRとINRのピーク値は、レナリドミド群・プラセボ群ともに85~125%の範囲内であった(90%信頼区間)。・レナリドミドのAUCとCmaxはワルファリンの併用によって変化はなかった。

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高齢者では、NOACよりもワルファリンが適していることを証明した貴重なデータ(解説:桑島 巌 氏)-358

 NOAC(新規経口抗凝固薬)とワルファリンに関する出血性イベントのレトロスペクティブコホート研究が2つ、BMJ誌オンライン版2015年4月24日号に掲載された。ここでは、調査規模の大きい米国からのNeena S. Abraham氏らの論文についてコメントする。 実臨床で、NOACがワルファリンに比べて出血性イベントが多いか否かは重要な問題である。本論文では米国の民間保険とメディケア加入者のデータベースを基に、ダビガトラン、リバーロキサバンの新規服用者を対象に、消化管出血リスクについてワルファリン服用者と比較した。 その結果、傾向スコア適合モデルでの検討では、ダビガトラン、リバーロキサバンとも消化管出血リスクはワルファリンと有意差がなかった。しかし、両NOACの消化管出血リスクは、76歳以上では明らかに増加した。このことはまさに、出血リスクや腎機能障害を有することの多い高齢者では、INRをみながら微調整が可能なワルファリンのほうが、調整マーカーのないNOACよりも適していることを示した貴重なデータである。 わが国でも、NOACに関する登録追跡研究結果が発表になっているが、本当に医師主導型というのであれば、本研究のようにNOACすべてを統合して、出血性イベントに的を絞った日本人での実態調査を行うべきである。

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下大静脈フィルター併用、肺塞栓症の再発リスク低下せず/JAMA

 重症急性肺塞栓症入院患者において、抗凝固療法+回収可能型下大静脈フィルター留置を行っても、3ヵ月時点の症候性肺塞栓症の再発リスクは抗凝固療法単独と比べて減少しなかったことが示された。フランス・サンテティエンヌ大学中央病院のPatrick Mismetti氏らが無作為化試験の結果、報告した。回収可能型下大静脈フィルターは、急性静脈血栓塞栓症患者において抗凝固療法と併用して行われる頻度が高いが、そのリスク-ベネフィットについては不明であった。今回の結果について著者は、「抗凝固療法治療が可能な患者に対する同タイプフィルターの使用を支持しないという所見が示された」とまとめている。JAMA誌2015年4月28日号掲載の報告より。抗凝固療法+回収可能型下大静脈フィルター留置vs. 抗凝固療法単独 検討はPREPIC2と称され、非盲検だがエンドポイント盲検の無作為化試験にて、2006年8月~2013年1月にフォローアップ6ヵ月間を設定して行われた。  適格被験者は、急性の症候性肺塞栓症入院患者で下肢静脈血栓症を有しており、1以上の重症度判定基準を有していた。  被験者を、抗凝固療法+回収可能型下大静脈フィルター留置群(フィルター群)と、抗凝固療法単独群(対照群)に割り付け、外来でフォローアップした。なお初回入院の発生場所は、フランスにある17の医療センターだった。  全患者に6ヵ月以上のfull-doseの抗凝固療法が行われ、フィルター群に割り付けられた患者のフィルター回収は、留置後3ヵ月時とされた。  主要有効性アウトカムは、3ヵ月時点での症候性肺塞栓症の再発とし、副次アウトカムには、6ヵ月時点の肺塞栓症の再発、症候性深部静脈血栓症、重大出血、死亡で3ヵ月、6ヵ月時点で評価した。またフィルター関連合併症も評価に含まれた。3ヵ月時点、有意差はないがフィルター群の相対リスク2.00 フィルター群に200例が、対照群には199例が割り付けられた。 フィルター群のフィルター留置の成功例は193例。フィルター回収が予定どおり行われたのは、回収が試みられた164例中153例であった。  結果、3ヵ月時点での、肺塞栓症再発発生例はフィルター群6例(3.0%、すべて致死例)、対照群は3例(1.5%、2例が致死例)で、フィルター群の相対リスク(RR)は2.00(95%信頼区間[CI]:0.51~7.89、p=0.50)であった。6ヵ月時点の結果も同様であった(RR:1.75、95%CI:0.52~5.88、p=0.54)。  その他のアウトカムについても、2群間の差は観察されなかった。深部静脈血栓症の再発は3ヵ月時点のRRは1.00(p>0.99)、6ヵ月時点0.50(p>0.99)、重大出血は0.80(p=0.63)と0.87(p=0.69)、死亡は1.25(p=0.55)と1.40(p=0.29)であった。死亡の主原因は両群ともがんであった。  なお、フィルター塞栓症は3例で報告されている。

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新規抗凝固薬、高齢者では消化管出血リスク増大/BMJ

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)やリバーロキサバン(同:イグザレルト)は、ワルファリンに比べ、心房細動の有無にかかわらず、消化管出血リスクを増大しないことが示された。ただし76歳以上の高齢者の場合には、ダビガトランでは心房細動患者について、リバーロキサバンは心房細動の有無にかかわらず、ワルファリンに比べ消化管出血リスクを増大することが示されたという。米国・メイヨークリニックのNeena S. Abraham氏らが、9万例超を対象に行った後ろ向き傾向スコア適合コホート試験で明らかにした。新規経口抗凝固薬の消化管出血リスク増大のエビデンスの大半は、追跡期間や試験への包含基準により限定的なものであった。また観察研究では、相反する結果も示されていた。BMJ誌オンライン版2015年4月24日号掲載の報告より。約3年間の保険支払いデータを基に分析 研究グループは、米国の民間保険とメディケア加入者のデータベースを基に、2010年11月1日~2013年9月30日にかけて、ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンの新規服用者を対象に試験を行い、ダビガトランとリバーロキサバン服用者の消化管出血リスクを、ワルファリン服用の場合と比較した。 被験者総数は9万2,816例で、ダビガトラン服用者は8,578例、リバーロキサバンは1万6,253例、ワルファリンは6万7,985例だった。76歳以上心房細動患者、ダビガトランで2.5倍、リバーロキサバンで2.9倍 結果、心房細動患者でダビガトランに関連した消化管出血の発生率は、2.29/100患者年(95%信頼区間[CI]:1.88~2.79)に対し、ワルファリンでは2.87/100患者年(同:2.41~3.41)だった。非心房細動患者の同発生率はそれぞれ、4.10/100患者年(同:2.47~6.80)、3.71/100患者年(同:2.16~6.40)だった。リバーロキサバンに関連した消化管出血の発生率は、心房細動患者が2.84/100患者年(同:2.30~3.52)で、非心房細動患者が1.66/100患者年(同:1.23~2.24)だった。 傾向スコア適合モデルで分析の結果、心房細動患者における消化管出血リスクは、ダビガトランのワルファリンに対するハザード比は0.79(95%CI:0.61~1.03)、リバーロキサバンのワルファリンに対するハザード比は0.93(同:0.69~1.25)で同等だった。また、非心房細動患者についても、同ハザード比はそれぞれ、1.14(同:0.54~2.39)、0.89(同:0.60~1.32)で同等だった。 一方、消化管出血リスクは65歳以上で増加し、76歳以上では、心房細動患者でダビガトラン服用者は、ワルファリン服用者に比べ出血に関するハザード比が2.49(同:1.61~3.83)と有意に増大した。リバーロキサバンも、心房細動患者で同ハザード比は2.91(同:1.65~4.81)、非心房細動患者で4.58(同:2.40~8.72)と、いずれも増大した。

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新規抗凝固薬、消化管出血リスクは増大しない?/BMJ

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)やリバーロキサバン(同:イグザレルト)は、ワルファリンに比べ、消化管出血リスクを増大することはないと思われることが示された。米国・ジョンズホプキンス大学のHsien-Yen Chang氏らが、約4万6,000例のデータを分析した結果、統計的有意差を示すエビデンスは得られなかったという。ただしChang氏らは、「今回の試験結果で、ダビガトランの消化管出血リスクはワルファリンに比べて50%ほど高いということや、リバーロキサバンはワルファリンに比べ同リスクが2倍超高いということを排除はできない」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年4月24日号掲載の報告より。民間医療保険加入者データを後ろ向きに分析 Chang氏らは、米国の民間医療保険加入者の大規模データベースを基に、2010年10月1日~2012年3月31日までに、ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンのいずれかを服用した18歳以上の患者、4万6,163例を対象に、後ろ向きコホート試験を行い、消化管出血リスクを比較した。 被験者のうち、ワルファリン群は85.8%、ダビガトラン群は10.6%、リバーロキサバン群は3.6%だった。 また、ダビガトラン群は、リバーロキサバン群、ワルファリン群に比べ、年齢が高齢である傾向が認められた(平均年齢、それぞれ62.0歳、57.6歳、57.4歳)。ダビガトラン、リバーロキサバンの消化管出血リスク、補正後はワルファリンと同等 消化管出血の発生率は、ダビガトラン群が9.01/100人年で、リバーロキサバン群の3.41/100人年、ワルファリン群7.02/100人年に比べ高かった。 しかし、共変量補正後、ダビガトラン群の消化管出血リスクは、リバーロキサバン群、ワルファリン群と同等だった。ダビガトラン群のワルファリン群に対する補正後ハザード比は1.21(95%信頼区間:0.96~1.53)であり、また、リバーロキサバン群のワルファリン群に対するハザード比は0.98(同:0.36~2.69)だった。

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心房粗動の患者さんへの説明

心房粗動監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・洞結節由来の心房波が消え、複数あるいは単一の興奮波が心房の中を旋回しています。・心房粗動が起こると、1分間に250~350回心房が興奮します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節心房粗動では、心房が速い速度で細かく収縮するため、外から見るとけいれんしているような状態になります。①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?◆通常の心臓は興奮が伝わり規則正しく収縮しますが…トントントントン◆心房粗動では、心房細動よりは低いものの、速い速度で細かく収縮します。しかし、収縮の一部が心室一定に伝わるため、心室の収縮は規則的です。そのため、脈拍は1分間に150回、75回など一定になることが多いです。トントントントントントン脈拍は一定であることが多いです。無症状の方から、動悸、息切れなどの症状を訴える方までさまざまです。心房の収縮心室の収縮(脈)Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・心房粗動自体が直接命に関わることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こすことで間接的に悪影響を及ぼすため、治療が必要です。血栓が血管を閉塞脳梗塞心房細動や心房粗動では、心房がけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどみ、心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓から動脈に沿って、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍といわれています。この塞栓症を予防することが心房細動や心房粗動治療の最も重要な目的です。血液がよどむ→血栓ができる→血栓が全身に飛ぶ(運ばれる)→脳梗塞、心筋梗塞などの塞栓症Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動の治療は・抗不整脈薬はあまり効果がありませんが、カテーテルアブレーションは高い効果(根治確率90%以上)が認められます。そのため、治療はカテーテルアブレーションが主体となります。・心房粗動が長い間続いているなど脳梗塞を起こす危険がある場合は、血栓が起きないように抗血栓薬を飲みます。高周波通電カテーテルアブレーション電極アブレーションカテーテル高周波発生装置カテーテルアブレーション血管を通して心臓まで細い管(カテーテル)を入れ、不整脈の原因となっている場所を探して、その部位を低温やけどさせ、不整脈の原因を取り除くという治療です。心房粗動のほとんどは右心房が発生部位であることがわかっています。静脈からカテーテルを挿入すると、すぐに右心房に到達し、治療も短時間で終了します。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆カテーテルアブレーションで根治した場合、その後の治療や管理は不要です。◆長期的には心房細動を発生することもありますので、定期的な検査は受けたほうがよいでしょう。【根治しなかった場合は、下記に注意しましょう】◆高血圧、糖尿病、心臓の病気などがあると脳梗塞を起こしやすくなるので、しっかり管理してください。◆睡眠不足、ストレス、アルコールは不整脈を起こしやすくしますので注意してください。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.抗血栓薬による脳梗塞予防◆血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。◆ワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。◆薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診のたびに血液検査を行う必要があります。◆ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ダビガトランの服薬順守のカギは薬剤師?/JAMA

 67ヵ所の米国退役軍人病院を対象に、非弁膜症性心房細動患者のダビガトラン(商品名:プラザキサ)の服薬アドヒアランスを調べたところ、病院間でばらつきがあることが明らかにされた。適切な患者選択や薬剤師によるモニタリングを行っている施設では、アドヒアランスが高かったという。米国・エモリー大学のSupriya Shore氏らが報告した。同じ経口抗凝固薬でも、ワルファリンと異なりダビガトランは、ルーチンの検査と用量調整を必要としない。一方で、アドヒアランスが悪くてもそれを改善する適切なフォローアップ法は知られていなかった。JAMA誌2015年4月14日号掲載の報告より。被験者4,863例を対象に調査 Shore氏らは、2010~2012年に非弁膜症性心房細動でダビガトランの処方をした患者が20人以上いる67ヵ所の米国退役軍人健康管理施設を対象に、後ろ向き試験を行った。被験者総数は4,863例で、1施設当たりの患者数中央値は51例だった。質的調査には41施設、47人の薬剤師が参加した。 施設ごとのダビガトラン服薬アドヒアランスのばらつきと、薬剤師による患者教育との関連などについて分析を行った。 主要評価項目は、平均治療日数カバー比率(PDC)80%以上で定義した、ダビガトランの服薬アドヒアランスであった。適切な患者選択と薬剤師によるモニタリングで上昇 結果、患者のダビガトラン服薬アドヒアランスの中央値は、74%(四分位範囲:66~80)だった。多変量補正後の、施設によるアドヒアランスばらつきのオッズ比中央値は1.57だった。 施設の患者への対応について調べたところ、適切な患者選択を行っている施設は31ヵ所、薬剤師による患者指導は30ヵ所、薬剤師によるモニタリングは28ヵ所で行われていた。 アドヒアランスは、適切な患者選択の実施施設では75%に対し、非実施施設69%であった。また、患者教育実施施設では76%に対し非実施施設66%、モニタリング実施施設では77%、非実施施設65%と、いずれも各対応の実施施設のほうが高率だった。 適切な患者選択(相対リスク:1.14、95%信頼区間:1.05~1.25)と、薬剤師によるモニタリング(同:1.25、1.11~1.41)は、いずれもアドヒアランスと有意な関連が認められた。モニタリングは期間が長いほど、またアドヒアランスが低い患者について臨床医と共同でより積極的に行うほど、アドヒアランスの改善が大きかった。 なお薬剤師による患者指導については、アドヒアランスとの有意な関連は認められなかった。

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心房細動の患者さんへの説明

心房細動監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動とは?・洞結節由来の心房波が消え、複数あるいは単一の興奮波が心房の中を旋回しています。・肺静脈の開口部にある心筋細胞から生じる心房期外収縮が引き金になります。・心房細動が起こると、1分間に350回以上心房が興奮します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節心房細動では、心房が速い速度で細かく収縮するため、外から見るとけいれんしているような状態になります。①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動とは?◆通常の心臓は興奮が伝わり規則正しく収縮しますが…トントントントン◆心房細動では、心房が速い速度で細かく収縮しますが、収縮の一部は心室に伝わらないので、心室の収縮は不規則です。そのため、脈拍は1分間に50回前後のこともあれば、100回を超えるような方もいます。トントントントントン人によって脈の速さが大きく違うため、まったく無症状の方から、ひどい動悸、息切れ、脈が速くなる・でたらめになる、などの症状を訴える方までさまざまです。持続時間もまちまちで、発作的に数分から数時間起きる方(発作性心房細動)もいれば、慢性的に起きる方(慢性心房細動:1週間上持続するもの=持続性心房細動、1年以上持続しているもの=永続性心房細動)もいます。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房の収縮心室の収縮(脈)心房細動とは?・人口の1%と、比較的ありふれた不整脈ですが、加齢により増加し、80歳以上では5%の方がかかっています。・心房細動自体が直接命に関わることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こす原因となるため、脳梗塞へのなりやすさなどを考え治療を決めます。血栓が血管を閉塞脳梗塞心房細動や心房粗動では、心房がけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどみ、心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓から動脈に沿って、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍といわれています。この塞栓症を予防することが心房細動や心房粗動治療の最も重要な目的です。血液がよどむ→血栓ができる→血栓が全身に飛ぶ(運ばれる)→脳梗塞、心筋梗塞などの塞栓症Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動の治療は・脳梗塞を起こす危険がある場合は、血栓が起きないように抗血栓薬を飲みます。・心房細動を止める必要がある場合は、薬(抗不整脈薬など)を服用するか、カテーテルアブレーションを行います。高周波通電カテーテルアブレーション高周波発生装置電極カテーテルアブレーション血管を通して心臓まで細い管(カテーテル)を入れ、不整脈の原因となっている場所を探して、その部位を低温やけどさせ、不整脈の原因を取り除くという治療です。心房細動では左心房にある肺静脈の血管内やその周囲から発生する異常な電気信号をきっかけに起こるため、肺静脈を囲むようにしてアブレーションの治療を行い、肺静脈からの異常電気信号が、心臓全体に伝わらないようにします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆高血圧、糖尿病、心臓の病気などがあると脳梗塞を起こしやすくなるので、しっかり管理してください。◆睡眠不足、ストレス、アルコールは心房細動を起こしやすくしますので注意してください。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。◆脳梗塞の危険性が高い場合は、脳梗塞予防薬を毎日忘れないように服用します。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.抗血栓薬による脳梗塞予防◆血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。◆ワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。◆薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診のたびに血液検査を行う必要があります。◆ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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結果が矛盾する論文をどう解釈すべきか【Dr.桑島が動画で解説】

プレゼント応募はこちら抽選の申し込みをする応募受付期間を終了いたしました。抽選で100名様に『脳・心・腎血管疾患クリニカル・トライアル Annual Overview 2015』を進呈!応募期間: 2015年4月24日~2015年5月25日 正午まで当選の通知方法 : プレゼントの発送をもって、当選のお知らせとさせていただきますプレゼント発送予定日 : 2015年6月上旬ごろ予定  3月4月に最も読まれたCLEAR!ジャーナル四天王 TOP51位)「エドキサバンは日本の薬なのに…」1~遺伝子型と抗血栓療法下の出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)2位)DPP-4阻害薬の副作用としての心不全-アログリプチンは安全か…(解説:吉岡 成人 氏)3位)降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)4位)ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)5位)COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊 氏)J-CLEARのメンバーが評論した論文を紹介したコーナー「CLEAR!ジャーナル四天王」最新記事一覧はこちらをクリック前回の動画はこちら第1回 Dr.桑島の動画でわかる「エビデンスの正しい解釈法」MRの話はどこまで信じていいのか・・・と感じた経験ありませんか?「適切なエンドポイントか」「実験の実施主体はどこか」など見極めるポイントをわかりやすく解説

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心房細動においても多職種が介入する疾病管理の概念が重要(解説:小田倉 弘典 氏)-346

 多職種が介入する慢性心不全の疾病管理プログラムは、国内外のガイドラインにおいても推奨度が高く、Class Iに位置付けられている。疾病管理とは、具体的には多職種(医師・看護師・薬剤師・栄養士など)によるチーム医療、退院時指導、フォローアップ計画(病診連携)、ガイドラインに沿った薬物治療、十分な患者教育・カウンセリング、患者モニタリングによる心不全増悪の早期発見などが挙げられる1)。しかしながら、心房細動においてはいくつかの報告があるものの、レベルの高いエビデンスに乏しかった。 本論文は、オーストラリアの三次医療機関において施行された、心房細動に特異的な疾病管理の有効性を検討したものである。 対象は、オーストラリア3ヵ所の三次医療機関において、新規に慢性心房細動と診断された心不全のない非弁膜症性心房細動335例。無作為割り付けにより、退院後ルーチンのプライマリケアと外来診察によるフォローアップから成る標準管理群(167例)と、心房細動に特異的な管理を行った「SAFETY管理群」(168群)に振り分けた。SAFETY管理の内容は、退院後7~14日間、心臓専門看護師による家庭訪問とホルターモニタリング、訪問時の家庭環境、症状、薬剤処方計画の確認、プライマリケア医、救急病院の連携、必要に応じた運動プログラム、ソーシャルワーカーや地域薬剤師のサポートなどから成る。 最低12~24ヵ月ごとに臨床的評価を施行。主要評価項目は全死亡、予期せぬすべての入院、副次評価項目としてイベントフリー時間、生存および非入院期間の実期間と最大期間の比率が設定された。 結果は、以下のとおりであった。 1)平均追跡905日、2)死亡49例、予期せぬ入院987例(全入院5,530日)、3)死亡+予期せぬ入院:SAFETY管理群76%・平均イベントフリー時間183日 vs. 標準管理群82%・199日;ハザード比0.97、p=0.851、4)生存および非入院時間の最大値に占める実測値の理合:SAFTY管理群99.5% vs. 標準管理群99.2%;p=0.039。心房細動に特化した管理は、標準管理に比べ生存日数や非入院日数の延長に関連し、疾患特異的な管理は慢性心房細動患者の乏しい健康アウトカムの改善戦略として有望と結論付けられている。 それぞれのケアの内容が重要なのでもう少しみてみると、標準管理とは、不具合時の対処や心房細動管理のキーポイントを記載した退院時の教育的ブックレット(「心房細動と共に生きる」)配布や、退院時の医師のサマリーおよび各種トライアルの情報の提供などであった。一方SAFETY管理は、退院後のナースの家庭訪問、GARDENメソッドによる個々の包括的な環境やセルフケアの能力の把握、臨床状況やガイドラインに基づいての管理の記録などである。ナースはこれら包括的なレポートを医療チームに送り、適切な抗凝固薬を選択し、心機能低下の進行を遅らせ、臨床的安定を図るとされている。 心房細動治療の慢性管理の目標は、心原性脳塞栓と心不全の予防である。とくに前者では抗凝固薬服用のアドヒアランスの維持、出血などのトラブルシューティング、後者では心不全症状の早期発見、食事運動といった管理などが主眼と考えられる。こうした管理は、医師だけで完結できるものではない。慢性心不全の管理同様、多職種で多角的に介入することにより管理の精度が向上することは容易に予想される。そのことが無作為割付試験で明確化された点で意義のある研究といえる。 ただし、死亡・入院といったイベント数だけをみると、標準管理と比べ有意差はなく、非入院期間の延長が複合評価項目の改善に寄与していた。本論文では看護師チームの定期的訪問が最大の特徴だが、この訪問により、抗凝固薬の服薬アドヒアランスや出血時の対処能力などの高まりが予測される。一方、大きなイベントを回避するまでのパワーには、いまだに不足している可能性がある。 また、訪問看護によるコストに関しては考慮されていない。現時点では、日本では心不全のない軽症の心房細動患者に対する訪問看護は保険償還されない。 しかしながら、看護師主導の心房細動ケアが心血管イベントを減らすとする別の無作為化試験も報告されており2)、医師だけでなく、多職種が介入することにより包括的に心房細動の慢性期を管理するという考え方は、非ビタミンK阻害経口抗凝固薬が出揃った現在、新たな心房細動治療の概念として重要視されることは間違いないと思われる。

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新しい結論がないことが結論(解説:野間 重孝 氏)-343

 多くの循環器科医師たちが、薬物溶出ステント(DES)と抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)とその持続期間に関するコンセンサスとして考えていることは、以下のようなものではないかと思う。(1)適切なDAPTを行うことにより、DESにおける遅発性ステント血栓症をある程度確実に抑制することができる。(2)DAPTを長期にわたって行うことと一連の出血性合併症の発生は、いわばトレードオフの関係にある。(3)そこで、臨床医は各患者の年齢、病変形態、合併症、全身状態などを勘案し、(一応の指針はあるものの)DESの期間については各患者について適宜判断する必要がある。  本論文は、最近発表された10の論文を取り上げてメタアナリシスを行うことにより、上記の内容をほぼ追認した形になっている。ただし(2)については単純なトレードオフとはいえず、長期DAPT群では心臓死の減少分を非心臓死の増大分が上回るため、長期DAPT群では死亡率にわずかではあるが上昇がみられるという知見を付け加えた。 これまでもDAPTの継続期間に関する論文が数多く出版されているが、いまだに決定的な回答が得られるには至っていない。その理由としては次のようなものが挙げられると思う。1. 最大の原因はまず母集団が均等でないことである。使用されたステントの薬物、薬物放出プログラム、ステントデザインはさまざまであり、かつステント以外の要素(年齢、病変形態、使用薬剤、合併症など)も一様ではない。また、PCIに関する臨床研究はその性格上無作為二重盲検は不可能である。2. silentに発生しているものまで含めたステント血栓症の、真の発生頻度は不明であること。なぜなら、ステント血栓症は臨床的に何らかの合併症を起こして初めて認識されるものだからである。3. 治療の進歩により心筋梗塞、脳卒中の急性期の臨床成績は向上しているため、心血管事故がただちに死亡に結び付くことが少なくなった。同様のことが他の死亡原因についてもいえる。4. 対比される非心臓死についての分析がどうしても不十分になる。とくにメタアナリシスではほぼ無視されている。たとえば、この論文でもがん患者において長期DAPTの死亡率が高いことが挙げられているが、理由は不明である。 高齢者、抗凝固療法が必要な患者、他の重大な合併症を有する患者では、当然DAPTの期間は短いほうが望ましいため、いわゆる第2世代ステントが主流になって以来、さまざまな形でDAPT期間の短縮が図れないかと、研究が行われている。しかし、上記のコンセンサスをはっきり越える結論は得られていないのが実情である。実際私は、この分野で現在進行中のいくつかの研究についても、正直多くを期待していない。 私は、この問題にははっきりした結論が出ないまま、時代は次世代の治療法へと移行していくのではないかと予想している。少し乱暴な言い方に聞こえる向きもあるかと思うが、医学では疾病や治療法の枠組みが変わるときによく起こることなのである。そして、私たちはいつまでも同じ地点に立ち止まって、同じような議論を繰り返していてはいけないのである。 現在ざっと考えてみても、まず生体吸収型ポリマーの開発があり、これはすでに一部で実用化されている。さらに、ポリマーを溶着させる際に下塗りに使っているパリレンなどを使用せずに、ポリマーを溶着させる技術が考えられる。これはまだ実用化には至っていないが、技術的には可能な段階に来ている。生体吸収型ステントはすでに製品化されているが、現在のステントに取って代わるにはまだ少し時間がかかりそうである。さらに、術後にステントを使用しなくても再狭窄を来さないような新しいdebulking device開発の問題があるが、これはまだ端緒についていない。もちろん、今考えつきもしないような治療法が登場する可能性も十分にあるだろう。 本論文の内容は、ほとんどの循環器科医がコンセンサスとしている事柄を確認したに過ぎないため、一種のnegative studyのように思われるかもしれない。しかし、私はこの問題には、結局1つだけの正解はないことを示したことに意義があると考え、むしろ積極的に評価したい。最近、インターベンションの世界に一種の閉塞感のようなものが漂っているように感じるのは、私だけではないと思う。しかし、明日は必ずやってくる。そうしたとき振り返ってみて、本研究が1つの道標となっているならば、著者たちにとって、これこそが最高の喜びなのではないだろうか。

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天馬PEGASUSは空を駆けるか?心筋梗塞後長期の抗血小板療法の意味と価値:PEGASUS-TIMI 54試験(解説:後藤 信哉 氏)-340

 1980年代に循環器内科に進んだわれわれ世代の循環器内科医にとって、「心筋梗塞は死に至る病」であった。実際、再灌流療法も、抗血栓療法も標準化していない当時の心筋梗塞は院内死亡率も10%を超えていた。日本以上に冠動脈疾患の有病率の高い欧米では、「心筋梗塞」が日本の「がん」並みに恐ろしい病気と理解されたことは容易に想像できる。1970~80年代には心筋梗塞の原因が「冠動脈血栓」であるとの知識も普及していなかった。筆者ら、血栓症の専門家がAHA、ACCなどの欧米のmajorな学会では1990年代になってもマイノリティーであった。 循環器内科医一般に血栓症と抗血栓療法の知識が乏しかったため、心筋梗塞、ステント血栓症などの冠動脈イベントが「血栓症」とわかった後は、メーカーの強烈な宣伝に抗うすべもなく、抗血栓薬は循環器内科領域の標準治療として急速に普及した。多くの循環器内科医は、アスピリン、クロピドグレルの薬効メカニズムは理解していないが、使用の経験は蓄積されている状態にある。実際、アスピリンは抗血小板薬と言い切れない部分もある各種細胞のシクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害薬であるが、薬効メカニズムの詳細は筆者にもよくわからない。 クロピドグレルも臨床試験の結果に基づいて1997年に米国で承認された。「心筋梗塞が怖い」欧米人は、「冠動脈血栓予防」のためにクロピドグレルも大量使用した。クロピドグレルの薬効標的P2Y12がクローニングされたのは2001年である。われわれは、抗血小板薬は薬効メカニズムもわからないままに使用していたのだ。これが1990年代の医療の実態であった。P2Y12クローニング後、この標的に対する選択的阻害薬が開発された(日本のプラスグレルはクロピドグレルの類似薬として開発された)。その成功例がチカグレロルである。P2Y12 ADP受容体はADPに特異的な受容体であるが、構造上ADPはATPに近い。チカグレロルの構造もATPに近い。低分子の非可逆的受容体阻害薬である。 薬効もわからないクロピドグレルの急性冠症候群の試験が成功したので、薬効を理解したチカグレロルはクロピドグレルに対する優越性を示すPLATO試験に挑戦した。試験の内部には不均一性があり、日本と東アジアにて施行されたPHILO試験もPLATO試験と同様の傾向ではないので、PLATO試験の全体としての成功は「運の良さ」の寄与が大きい。それでもPLATO試験では死亡率低減効果を示したので、欧州では急性冠症候群に対する標準治療になろうとしている。 さて、チカグレロルが天馬の如く世界を駆けるか否かを規定するのは、急性冠症候群以外の慢性期の疾病適応を取得できるか否かにかかっている。クロピドグレルは、「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応をCAPRIE試験により取得した。国際共同試験に「脳血管疾患」を入れると、画像診断の普及していない諸国にて脳梗塞と脳出血の弁別ができず、脳出血の増加により試験が失敗するリスクがある。 PEGASUS試験を実施したTIMI groupは、クロピドグレルの類似薬プラスグレル、トロンビン受容体vorapaxarの開発試験のデータベースを保有しているので、「脳血管疾患」の危険性を十分に理解していた。クロピドグレルのように「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応が取れなくても、「心筋梗塞後慢性期の血栓イベント抑制」の適応を取得できれば、冠動脈疾患は急性期から慢性期までチカグレロルを天馬として羽ばたかせることができる。その意味でPEGASUS試験はきわめて重要であり、医師、企業関係者、投資家などの注目を集めた。 Gene Braunwald氏率いるTIMI groupは、「臨床の科学」にも妥協のない科学者グループである。PLATO試験ではチカグレロル群において出血が多い傾向を認めたことから、発症後1~3年の心筋梗塞では出血リスクが血栓リスク低減効果を超えることを危惧した。急性期に用いた90mg1日2回に加えて、60mg1日2回のチカグレロルのアームを作った。低用量のアームがあったことで、安全性重視のわが国の参加もPLATO試験よりは容易になった。実際、PLATO試験には本邦は参加しなかったが、PEGASUS試験には参加した。 「臨床の科学」の質を上げるためには、ランダム化した症例の追跡の徹底化を図る必要がある。実際、追加リスクがあるとはいっても、心筋梗塞後1~3年後の症例の心血管イベントリスクは、アスピリン単剤でも年率3%程度にすぎない(9.04%/3年)。60mg、90mgのチカグレロル服用により、年率2.6%程度(7.77%/3年:60mg、7.85%/3年:90mg)に低下したとはいっても、これだけの軽微な差異を統計学的に検出するためには、数例の追跡不能すら許されないのだ。心血管領域では、標準治療の進歩により「現在の標準治療」下における心血管イベントリスクが低い。1980年代に「怖い病気」であった心筋梗塞の「怖さ」は21世紀になって激減した。わずかな差異を科学的に占めるためには大量の症例を登録し、徹底的に追跡する必要がある。有効性を示したことでチカグレロルは天馬になるかもしれないが、関係者が尽くした努力は計りしれない。 抗血小板薬なので、出血リスクが増えることは予測の範囲である。「科学的に質の高い」試験であるため、出血イベントも精緻に計測した。われわれは、2次予防におけるアスピリン服用時の重篤な出血イベント発症率を、年率0.2~0.5%程度と理解して、患者からインフォームド・コンセントを取得していた。PEGASUS試験はわれわれの想定が現在も大きく違っていないことを裏付けた。アスピリン群の重篤な出血イベント発症率は1.06%/3年(年間0.3%程度)であった。60mg1日2回、90mg1日2回のチカグレロルを追加すると、重篤な出血イベント発症率は2.30%/3年、2.60%/3年と2倍以上に増加した。プラセボとの比較において、アスピリン服用者の頭蓋内出血が約1.6倍に増加していた過去の事実に比較すると、頭蓋内出血、致死性出血が増えていないことに関係者は胸をなでおろしたであろう。 アスピリン使用時には「この薬を飲むと1,000人のうち、2~5人くらいが重篤な出血を起こすけど、将来の心筋梗塞を25%減らせる。どうしようか?」との患者さんとのICのプロセスが、「アスピリンにチカグレロルを追加すると、1,000人のうち、5人に重篤な出血が起こるけど心筋梗塞や心血管死亡、脳卒中は15%くらい減る。どうしようか?」となる。重篤な出血に頭蓋内出血、致死的出血が含まれないことは朗報であるが、このような説明によって、どの程度の患者さんが長期のチカグレロルの服用を希望するかを予測することは難しい。ATPに似たチカグレロルでは徐脈、呼吸困難感などの自覚的、他覚的副作用の増加も実臨床では問題になる。認可承認後に爆発的に売り上げを伸ばしたクロピドグレルは、CAPRIE試験ではほんのわずかにアスピリンに勝る優越性を示したのみであった。筆者ら血小板研究の専門家は、クロピドグレルの爆発的売り上げを予測できなかった。抗血小板薬に比較すれば、はるかに重篤な出血イベントリスクの多い新規経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が予防介入において広く使用されているのも、ランダム化比較試験を主導した研究者としての筆者の予測を超えた。チカグレロルがクロピドグレル並みの天馬となれば、わずかの差異のランダム化比較試験の結果が世界の医療界に影響を与える「てこ」のメカニズムを理解したいものである。

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