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581.

TAVR・SAVR後の無症候性弁尖血栓症、TIAリスクを増大/Lancet

 経カテーテル大動脈生体弁置換術(TAVR)や外科的大動脈生体弁置換術(SAVR)施行後の無症候性弁尖血栓症の発生率は約12%で、SAVRでは約4%に対し、TAVRでは約13%と高率であることが明らかになった。無症候性弁尖血栓症の予防や治療には、抗凝固薬が有効であること、さらに同血栓症は一過性脳虚血発作(TIA)の発症リスクを増大することも確認された。米国・シダーズ・サイナイ心臓研究所のTarun Chakravarty氏らが、TAVRとSAVRを受けた患者登録をした2つのレジストリから890例について行った観察研究で明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2017年3月19日号で発表した。CT画像の弁の動きなどから弁尖血栓症を特定 検討は、2014年12月22日~2017年1月18日にTAVRまたはSAVRを受けた患者を登録した「RESOLVE」レジストリと、2014年6月2日~2016年9月28日に同患者登録をした「SAVORY」を基に行われた。 被験者は、TAVRまたはSAVR施行後に、異なる間隔で専用四次元ボリュームレンダード画像プロトコルによるCT画像を撮影した。CT画像から、弁の動きが悪くなっており、その該当部に異常を示す濃い部分が認められた場合に、無症候性弁尖血栓症と判断した。分析は、CT画像、心エコー画像、神経学的イベントのすべてについて、盲検下で行われた。TIA発症率、弁尖血栓症あると4.18/100人年と約7倍に 被験者のうちCT画像検査を行ったのは931例(RESOLVEレジストリ657例[71%]、SAVORYレジストリ274例[29%])で、そのうち分析可能なものは890例(それぞれ626例[70%]、264例[30%])だった。 890例のうち弁尖血栓症が認められたのは106例(12%)で、施術別にみるとSAVR群は138例中5例(4%)だったのに対し、TAVR群は752例中101例(13%)と、TAVR群で有意に高率だった(p=0.001)。 無症候性弁尖血栓症の発生率は、2剤併用抗血小板薬の服用者では15%(208例中31例)だったのに対し、抗凝固薬の服用者では4%(224例中8例)と有意に低率だった(p<0.0001)。新規経口抗凝固薬(NOAC)服用者の同発生率は3%(107例中3例)で、ワルファリン服用者の4%(117例中5例)と同等だった(p=0.72)。 無症候性弁尖血栓症は、抗凝固薬(ワルファリンやNOAC)の投与により36例中36例(100%)で消失したのに対し、抗凝固薬を投与しなかった例では22例中20例(91%)で消失しなかった(p<0.0001)。 また、無症候性弁尖血栓症が認められなかった人の一過性脳虚血発作(TIA)の発症率は0.60/100人年だったのに対し、認められた人の同発症率は4.18/100人年と有意に高率だった(p=0.0005)。脳卒中またはTIAの発症率も、それぞれ2.36/100人年と7.85/100人年と、無症候性弁尖血栓症がある人で高率だった(p=0.001)。

582.

アブレーション周術期の抗凝固、ダビガトランが有用/NEJM

 心房細動(AF)へのカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法において、ダビガトランの継続投与はワルファリンに比べ大出血イベントの発生が少ないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス医学研究所のHugh Calkins氏らが行ったRE-CIRCUIT試験で示された。脳卒中や全身性塞栓症は発現しなかったという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月19日号に掲載された。ダビガトランなどの非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、ワルファリンよりも安全性が優れる可能性が示唆されているが、これを検証したデータはこれまでなかった。635例で大出血を評価する無作為化試験 本研究は、日本を含む11ヵ国104施設が参加する非盲検無作為化対照比較試験であり、2015年4月~2016年7月に患者登録が行われた(Boehringer Ingelheim社の助成による)。 カテーテルアブレーションが予定されている発作性および持続性の非弁膜症性AF患者が、2つの抗凝固薬に無作為に割り付けられた。このうち実際にアブレーションを受けた635例(ダビガトラン群:317例、ワルファリン群:318例)が解析の対象となった。 ダビガトランは150mgを1日2回投与し、ワルファリンは国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標値とした。アブレーションは4~8週間の継続的抗凝固療法後に施行され、アブレーション中および施行後8週間の継続的抗凝固療法が行われた。 主要評価項目は、アブレーション中および施行後8週間までの大出血の発生とし、副次評価項目には血栓塞栓症などの出血イベントが含まれた。大出血イベント:1.6 vs.6.9% ベースラインの平均年齢は、ダビガトラン群が59.1歳、ワルファリン群は59.3歳、男性がそれぞれ72.6%、77.0%を占めた。発作性AFが67.2%、68.9%であり、平均活性化全血凝固時間は330秒、342秒、平均CHA2DS2-VAScスコアは2.0、2.2であった。 アブレーション中および施行後8週間までの大出血イベントの発生率は、ダビガトラン群が1.6%(5例)と、ワルファリン群の6.9%(22例)に比べ有意に低かった(リスクの絶対差:-5.3%、95%信頼区間[CI]:-8.4~-2.2、p<0.001)。ダビガトラン群の相対的なリスク低下率は77.2%であった。Cox比例ハザード解析では、ハザード比(HR)は0.22(95%CI:0.08~0.59)だった。 ダビガトラン群は、大出血イベントのうち心膜タンポナーデ(1 vs.6件)および鼠径部血腫(0 vs.8件)が少なく、アブレーション中~施行後1週間の大出血(4 vs.17件)が少なかった。また、ダビガトラン群の大出血のうち、処置を要したのは心膜タンポナーデの4例(心膜ドレナージ)のみで、特異的中和薬イダルシズマブを要する患者はいなかった。 ダビガトラン群では脳卒中、全身性塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)は認めず、ワルファリン群ではTIAが1例にみられた。小出血イベントの頻度は両群でほぼ同等であった(ダビガトラン群:18.6%、ワルファリン群:17.0%)。また、大出血と血栓塞栓イベント(脳卒中、全身性塞栓症、TIA)の複合エンドポイントの発生率は、ダビガトラン群が低かった(1.6 vs.7.2%)。 重篤な有害事象は、ダビガトラン群の18.6%、ワルファリン群の22.2%にみられたが、致死的イベントは発現しなかった。重度有害事象はダビガトラン群で少なく(3.3 vs.6.2%)、投与中止の原因となった有害事象の頻度は両群とも低かった(5.6 vs.2.4%)。 著者は、「ダビガトランの大出血イベントの抑制作用は、より特異的な作用機序に関連する可能性があり、凝固因子産生の抑制作用よりも、直接的なトロンビン阻害作用によると考えられる」とし、「これらのアウトカムは、ダビガトランの有用性が示されたRE-LY試験の結果と一致する」と指摘している。

583.

ACS後のP2Y12阻害薬+低用量リバーロキサバンの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する低用量経口抗凝固薬リバーロキサバンとP2Y12阻害薬との併用、すなわちデュアル・パスウェイ抗血栓療法は、従来のアスピリンとP2Y12阻害薬との併用(抗血小板薬2剤併用療法:DAPT)と比較し、臨床的に重大な出血リスクに差はないことが示された。米国・デューク大学医学部のE Magnus Ohman氏らが、P2Y12阻害薬との併用薬はアスピリンより低用量リバーロキサバンが安全かを検証したGEMINI-ACS-1試験の結果を報告した。ACS後のDAPTに第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンを追加すると、死亡と虚血イベントは減少するが、出血が増加する恐れがあることが示唆されている。しかし、アスピリンの代わりに低用量リバーロキサバンをP2Y12阻害薬と併用する抗血栓療法の安全性は、ACS患者でこれまで評価されていなかった。Lancet誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。CABGに関連しない臨床的に重大な出血を評価 GEMINI-ACS-1試験は、多施設共同無作為化二重盲検比較第II相試験として、21ヵ国371施設で実施された。対象は、不安定狭心症、心電図上の虚血変化または血管造影で確認されたアテローム性責任病変のいずれかを伴う心臓バイオマーカー陽性の、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)またはST上昇型心筋梗塞(STEMI)の18歳以上の患者であった。 ACS発症による入院後10日以内に、置換ブロック法(ブロックサイズ4)を用いて、使用予定のP2Y12阻害薬で層別化し、アスピリン(100mg/日)群またはリバーロキサバン(2.5mg、2回/日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、二重盲検下で180日以上治療を行った。P2Y12阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)の選択については、無作為化はせず、研究者の好みや各国の利用状況(試験期間中、日本では未承認)に基づいて選択された。 主要評価項目は、390日目までの冠動脈バイパス術(CABG)に関連しない臨床的に重大な出血(TIMI出血基準の大出血、小出血、治療を要する出血)で、intention-to-treat解析で評価した。低用量リバーロキサバン群とアスピリン群で同等 2015年4月22日~2016年10月14日に、ACS患者3,037例が無作為化された(アスピリン群1,518例、リバーロキサバン群1,519例)。1,704例(56%)はチカグレロル、1,333例(44%)はクロピドグレルが用いられた。 治療期間中央値は291日(IQR:239~354)であった。TIMI出血基準のCABGに関連しない臨床的に重大な出血は、全体で154例(5%)、リバーロキサバン群とアスピリン群の頻度は80/1,519例(5%) vs.74/1,518例(5%)で、同程度であった(HR:1.09、95%信頼区間[CI]:0.80~1.50、p=0.5840)。 著者は研究の限界として、患者は無作為化前に安定したDAPTを受ける必要があったりACS発症から無作為化までに約5日の遅れが生じたこと、対象患者の多くが白人であったことなどを挙げながら、「この新しい抗血栓療法の有効性と安全性を検証するため、さらに大規模で十分な検出力のある治験が必要である」とまとめている。

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リバーロキサバン、VTE再発リスクを有意に低下/NEJM

 6~12ヵ月間の抗凝固薬投与を完了した静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、リバーロキサバンの治療用量(20mg)または予防用量(10mg)はいずれも、アスピリンと比較し、出血リスクを増加させることなく再発リスクを有意に低下させることが認められた。31ヵ国244施設で実施された無作為化二重盲検第III相試験「EINSTEIN CHOICE」の結果を、カナダ・マックマスター大学のJeffrey I Weitz氏らが報告した。抗凝固療法の長期継続はVTEの再発予防に有効であるが、出血リスクの増加が懸念されることから、6~12ヵ月以上の抗凝固療法には抵抗感も強い。長期治療時の出血リスクを減少するため、低用量の抗凝固薬あるいはアスピリンの使用が試みられているが、どれが効果的かはこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。リバーロキサバン2用量とアスピリンの有効性および安全性を比較 研究グループは、2014年3月~2016年3月に、ワルファリンまたは直接経口抗凝固薬(DOAC)による6~12ヵ月の治療を完了した18歳以上のVTE患者3,396例を、リバーロキサバン20mg、10mgまたはアスピリン100mgの各投与群(いずれも1日1回)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間投与した。 有効性の主要評価項目は、致死的または非致死的な症候性再発性VTE、安全性の主要評価項目は大出血(2g/dL以上のヘモグロビン低下、2単位以上の赤血球輸血または致死的)とした。解析にはCox比例ハザードモデルを使用し、診断(深部静脈血栓症/肺塞栓症)で層別化も行った。リバーロキサバンで症候性再発性VTEの相対リスクが約70%減少 3,365例がintention-to-treat解析に組み込まれた(治療期間中央値351日)。 致死的/非致死的症候性再発性VTEの発生は、リバーロキサバン20mg群が1,107例中17例(1.5%)、リバーロキサバン10mg群が1,127例中13例(1.2%)、一方、アスピリン群では1,131例中50例(4.4%)であった(リバーロキサバン20mg群 vs.アスピリン群のハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.20~0.59/リバーロキサバン10mg群 vs.アスピリン群のHR:0.26、95%CI:0.14~0.47、いずれもp<0.001)。 大出血の発生率は、リバーロキサバン20mg群0.5%、リバーロキサバン10mg群0.4%、アスピリン群0.3%、重大ではないが臨床的に問題となる出血はそれぞれ2.7%、2.0%および1.8%であった。有害事象の発生率は3群すべてにおいて同程度であった。 本研究では、治療用量での抗凝固薬長期投与を必要とする患者は除外されていた。また、試験期間が最大12ヵ月と短かった。著者は「より長期にわたる継続投与の有益性を検証するさらなる試験が必要である」とまとめている。

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リバーロキサバン、国内最大規模のリアルワールドエビデンス~日本循環器学会

 日本におけるリバーロキサバン(商品名:イグザレルト、バイエル薬品株式会社)の特定使用成績調査であるXAPASSの解析結果が、3月17~19日に金沢市で開催された第81回日本循環器学会学術集会にて発表された。本調査では脳卒中または全身性塞栓症の発症抑制を目的にリバーロキサバンを投与された非弁膜症性心房細動患者、1万例超が2012年4月から約2年間で登録された。 今回の発表では、脳卒中のリスクが高いとされる高齢者、腎機能低下例、脳梗塞既往例を含む9,896例における平均観察期間552日の主要結果が報告された。また、第III層臨床試験であるJ-ROCKET AF試験(639例)との比較や、75歳以上の高齢者、腎機能低下例(クレアチニンクリアランス30~49mL/分)、脳梗塞・一過性虚血発作(TIA)既往例といった高リスク層についての安全性と有効性も評価された。 患者背景としては、75歳以上の高齢者が48.7%(4,817例)であり、J-ROCKET AF試験の39.4%(252例)よりやや多かった。また、J-ROCKET AF試験では除外されていたクレアチニンクリアランスが30mL/分未満の患者も273例(2.8%)登録された。参加者の平均CHADS2スコアは2.2±1.3であり、J-ROCKET AF試験の3.3±0.9より低値で、J-ROCKET AF試験では登録されなかったCHADS2スコア0または1の患者が全体の約30%超含まれた。TIAの既往歴は35.2%(3,482例)でJ-ROCKET AF試験の63.8%(408例)を下回っており、登録前の抗血栓療法については、J-ROCKET AF試験では90%以上がワルファリンからの切り替えであったのに対し、今回は35.2%であった。 安全性イベントの発生率は、重大な出血事象が1.09%/年で、そのうち頭蓋内出血が0.49%/年であった。患者背景は異なるため単純比較はできないが、いずれもJ-ROCKET AF試験を下回る結果であった。75歳以上の高齢者では重大な出血事象1.46%/年、頭蓋内出血0.63%/年、腎機能低下例(クレアチニンクリアランス30~49mL/分)においては、重大な出血事象2.00%/年、頭蓋内出血0.81%/年であり、同様の傾向がみられた。 有効性イベントの発生率は、脳卒中・全身性塞栓症・心筋梗塞の複合が1.47%/年(225例)であり、J-ROCKET AF試験の同結果1.49%/年と一貫した結果となった。一方で、虚血性脳卒中(脳梗塞)は0.97%/年であり、J-ROCKET AF試験より今回の対象患者のCHADS2スコアが低かったにもかかわらず、J-ROCKET AF試験の同結果0.80%/年をやや上回る結果となった。TIA既往群における虚血性脳卒中の発生率2.01%/年(64/2,231例)は、J-ROCKET AF試験の同結果1.10%/年(6/407例)のおよそ倍の値であり、これが全体の虚血性脳卒中発生増加に寄与した可能性が考えられている。 また、今回のXAPASSにおいては、J-ROCKET AF試験では除外されていた脳梗塞急性期の患者が含まれていたことや、添付文書上の減量基準に合致しないにもかかわらず、クレアチニンクリアランスが50mL/分以上の患者の36%において低用量の10mgが使用されていたこと、実臨床における服薬アドヒアランスの低下などが結果に反映された可能性があることを発表者の小川 聡氏(国際医療福祉大学三田病院)は説明した。 腎機能別の投与量の分布をみると、クレアチニンクリアランス35mL/分未満の患者に対して高用量の15mgが投与されていたり、クレアチニンクリアランスが100mL/分以上であっても低用量が使用されている例があることが明らかになった。また、いずれの用量も幅広い腎機能の患者に対して使用されている実態が確認され、高用量と低用量の使用患者数が逆転する腎機能の境目が60mL/分付近になっており、添付文書上の基準である50mL/分とは異なっていた。今回の調査、クレアチニンクリアランス50mL/分以上の患者に低用量を処方する理由として、「出血リスクが高い」ことが最多で挙がっており、処方医らが安全性を重視していることがうかがえた。 用量および腎機能別にアウトカムを比較すると、クレアチニンクリアランス50mL/分以上の患者で低用量の10mgを投与されていた群では、同腎機能で高用量の15mgを投与されていた群と比べ、安全性イベントの重大な出血事象の発生率は同様であったものの、有効性イベントである脳卒中・全身性塞栓症・心筋梗塞の複合や虚血性脳卒中の発生率はより高い傾向がみられた。この傾向に関して、小川氏は患者背景が異なるため、直接比較することは難しく、より詳細な結果については今後サブ解析で明らかにしていきたいと述べた。

588.

日本人の心房細動患者に適した脳梗塞リスク評価~日本循環器学会

 日本人の非弁膜症性心房細動(AF)患者の心原性脳塞栓症リスク評価において、脳卒中の既往、高齢、高血圧、持続性心房細動、低BMIの5つの因子による層別化が、従来のCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアによる層別化よりリスク予測能が高いことが報告された。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の支援による、層別化指標の確立を目的とした共同研究であり、第81回日本循環器学会学術集会(3月17~19日、金沢市)のLate Breaking Cohort Studiesセッションで弘前大学の奥村 謙氏が発表した。 非弁膜症性AF患者における心原性脳塞栓症リスクの層別化は 従来、CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアが用いられており、わが国のガイドラインでも推奨されている。一方、伏見AFレジストリでは、CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアの危険因子がすべてリスクとはならないということや、体重50kg以下がリスクとなることが示されている。したがって、CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアを日本人にそのまま当てはめることは、必ずしも適切ではないということが示唆される。 本研究では、5つの大規模心房細動レジストリ(J-RHYTHM Registry、伏見AFレジストリ、心研データベース、慶應KiCS-AFレジストリ、北陸plus心房細動登録研究)のデータを統合した。非弁膜症性AF患者1万2,127例について、登録時の観察項目・リスク項目を単変量解析後、ステップワイズ法、Cox比例ハザード法を用いて多変量解析し、心原性脳塞栓症における独立した危険因子を検討した。また、各因子についてハザード比に基づいてスコアを付与し、その合計によるリスク評価が実際にCHADS2スコアより優れているかを検討した。 患者の平均年齢は70.1±11歳、平均CHADS2スコアは1.7±1.3であり、74%の患者に抗凝固療法が施行されていた。脳梗塞発症は2万267人年で226例(1.1%)に認められた。 各因子の脳梗塞発症について単変量解析を行ったところ、うっ血性心不全、高血圧、高齢、脳卒中の既往、持続性AF、高クレアチニン、低BMI、低ヘモグロビン、低ALTで有意であった。さらに多変量解析で、脳卒中の既往(ハザード比2.79、95%CI 2.05~3.80、p<0.001)、年齢(75~84歳:1.65、1.23~2.22、p=0.001、85歳以上:2.26、1.44~3.55、p<0.001)、高血圧(1.74、1.20~2.52、p=0.003)、持続性AF(1.65、1.23~2.23、p=0.001)、BMI 18.5未満(1.53、1.02~2.30、p=0.04)が脳梗塞の独立した危険因子ということがわかった。 各因子のスコアはハザード比に基づいて、脳卒中の既往を10点、75~84歳を5点、85歳以上を8点、高血圧を6点、持続性心房細動を5点、BMI 18.5未満を4点とした。スコアの合計を0~4点、5~12点、13~16点、17~33点で層別化し、カプランマイヤーによる脳梗塞累積発症率をみたところ、0~4点の群を対照として有意にリスクが上昇することが示され、C-statisticは0.669であった。抗凝固療法なしの群ではこの結果がより明らかで、C-statisticが0.691と、CHADS2スコアでの0.631、CHA2DS2-VAScスコアでの0.581より高く、リスク評価法として予測能が高まったと言える。 今回の結果から、日本人の非弁膜症性AF患者の心原性脳塞栓症リスク評価として、今回の5つの因子による評価法が従来のリスク評価法より有用と考えられる。しかし、今回のC-statisticの値はリスク評価法としてはまだそれほど高いわけではなく、客観的指標(BNPレベル、心エコーの値など)を追加することでさらに予測能が高まるのではないかと奥村氏らは推察している。

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脳卒中発症AF患者の8割強、適切な抗凝固療法を受けず/JAMA

 抗血栓療法は心房細動患者の脳卒中を予防するが、地域診療では十分に活用されていないことも多いという。米国・デューク大学医療センターのYing Xian氏らPROSPER試験の研究グループは、急性虚血性脳卒中を発症した心房細動患者約9万5,000例を調査し、脳卒中発症前に適切な経口抗凝固療法を受けていたのは16%に過ぎず、30%は抗血栓療法をまったく受けていない実態を明らかにした。JAMA誌2017年3月14日号掲載の報告。抗血栓療法の有無別の脳卒中重症度を後ろ向きに評価 PROSPER試験は、心房細動の既往歴のある急性虚血性脳卒中患者において、脳卒中の発症前にガイドラインが推奨する抗血栓療法を受けていない患者と、各種抗血栓療法を受けた患者の脳卒中の重症度および院内アウトカムの評価を行うレトロスペクティブな観察研究である(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]の助成による)。 対象は、2012年10月~2015年3月に、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)によるGet With the Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)プログラムに参加した心房細動の既往歴のある急性虚血性脳卒中患者9万4,474例(平均年齢:79.9[SD 11.0]歳、女性:57.0%)であった。 主要評価項目は、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点が高いほど重症度が重く、≧16点は中等度~重度を表す)による脳卒中の重症度および院内死亡率とした。高リスク例でさえ84%が適切な治療を受けていない 7万9,008例(83.6%)が脳卒中発症前に適切な抗凝固療法を受けておらず、脳卒中発症時に治療量(国際標準化比[INR]≧2)のワルファリンが投与されていたのは7,176例(7.6%)、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の投与を受けていたのは8,290例(8.8%)に過ぎなかった。 また、脳卒中発症時に1万2,751例(13.5%)が治療量に満たない(INR<2)ワルファリンの投与を受け、3万7,674例(39.9%)は抗血小板薬のみが投与されており、2万8,583例(30.3%)は抗血栓療法をまったく受けていなかった。 高リスク(脳卒中発症前のCHA2DS2-VASc≧2)の患者9万1,155例(96.5%)のうち、7万6,071例(83.5%)が脳卒中発症前に適切な抗凝固療法(治療量ワルファリンまたはNOAC)を受けていなかった。 中等度~重度脳卒中の未補正の発症率は、治療量ワルファリン(INR≧2)群が15.8%(95%信頼区間[CI]:14.8~16.7%)、NOAC群は17.5%(16.6~18.4%)であり、非投与群の27.1%(26.6~27.7%)、抗血小板薬単独群の24.8%(24.3~25.3%)、非治療量ワルファリン(INR<2)群の25.8%(25.0~26.6%)に比べて低かった(p<0.001)。 院内死亡の未補正発症率も、治療量ワルファリン群が6.4%(95%CI:5.8~7.0%)、NOAC群は6.3%(5.7~6.8%)と、非投与群の9.3%(8.9~9.6%)、抗血小板薬単独群の8.1%(7.8~8.3%)、非治療量ワルファリン群の8.8%(8.3~9.3%)に比し低かった(p<0.001)。 交絡因子で補正すると、非投与群に比べ、治療量ワルファリン群、NOAC群、抗血小板薬単独群は中等度~重度脳卒中のオッズが有意に低く(補正オッズ比:0.56[95%CI:0.51~0.60]、0.65[0.61~0.71]、0.88[0.84~0.92])、院内死亡率も有意に良好であった(同:0.75[0.67~0.85]、0.79[0.72~0.88]、0.83[0.78~0.88])。 著者は、「脳卒中発症前に何らかの経口抗凝固薬の投与を受けていたのは30%で、ワルファリン投与患者の64%は治療量に満たない用量(INR<2)であり、脳卒中発症前の血栓塞栓症リスクが高い患者でさえ、84%がガイドラインで推奨された抗凝固療法を受けていなかった」とまとめている。

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PCI後のDAPT期間決定に有用な新規出血リスクスコア/Lancet

 スイス・ベルン大学のFrancesco Costa氏らは、簡易な5項目(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)を用いる新しい出血リスクスコア「PRECISE-DAPTスコア」を開発し、検証の結果、このスコアが抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)中の院外での出血を予測する標準化ツールとなりうることを報告した。著者は、「包括的に臨床評価を行う状況において、このツールはDAPT期間を臨床的に決める支援をすることができるだろう」とまとめている。アスピリン+P2Y12阻害薬によるDAPTは、PCI後の虚血イベントを予防する一方で、出血リスクを高める。ガイドラインでは、治療期間を選択する前に出血リスクの高さを評価することを推奨しているが、そのための標準化ツールはこれまでなかった。Lancet誌2017年3月11日号掲載の報告。約1万5,000例のデータで新たな出血リスクスコアを開発し、検証 研究グループは、それぞれ独立したイベント評価が行われている多施設無作為化試験8件から、PCI後にDAPT(主にアスピリン+クロピドグレル、経口抗凝固薬の適応なし)を受けた患者合計1万4,963例の個人レベルのデータを用い、プール解析を行った。解析にはCox比例ハザードモデルを使用し、院外出血(TIMI出血基準の大出血/小出血)の予測因子を試験で層別化して特定し、数値的出血リスクスコアを開発した。 新しいスコアの予測性能は、予測因子を導き出した抽出コホートで評価し、PLATelet inhibition and patient Outcomes(PLATO)試験(8,595例)およびBernPCI registry(6,172例)におけるPCI施行患者群(検証コホート)で評価した。また、異なるDAPT期間に無作為化された患者(10,081例)において、新しいスコアの四分位数でベースラインの出血リスクを4つに分類し(高、中、低、最低リスク)、長期治療(12~24ヵ月)または短期治療(3~6ヵ月)の出血/虚血への影響を評価した。5項目から成るPRECISE-DAPTスコア、院外出血の予測性能あり 開発したPRECISE-DAPTスコア(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)は、院外でのTIMI大/小出血に関する予測性能を示すC統計値が、抽出コホートで0.73(95%信頼区間[CI]:0.61~0.85)、検証コホートのPLATO試験で0.70(95%CI:0.65~0.74)、BernPCI registryで0.66(95%CI:0.61~0.71)であった。 長期DAPTは、高リスク患者(スコア≧25)では出血を有意に増加させたが、低リスク患者では増加させなかった(相互作用のp=0.007)。一方、虚血イベントの予防に関して有意な有用性が認められたのは、低リスク患者群のみであった。 著者は、今回のモデルにはフレイル(高齢者の虚弱)など新しい出血予測因子が欠けている可能性を挙げ、スコアの予測性能を改善するためさらなる研究が必要だと述べている。

591.

FXa阻害剤の抗炎症作用:日本のNVAF患者

 非弁膜症性心房細動(NVAF)例に対する第Xa因子(FXa)阻害剤の投与は、血液凝固マーカーだけでなく、血管炎症マーカーであるペントラキシン3(PTX3)も改善させることが、横浜栄共済病院の加藤 大雅氏らによる研究で明らかになった。これらのマーカーの変化が将来の心血管イベントリスクの低下と関連するかどうかを評価するためには、さらに大規模な前向き研究が必要である。Heart and vessels誌オンライン版2017年3月10日号の報告。 FXa阻害剤は、凝固カスケードだけでなく、炎症誘導性応答においても重要な役割を果たす。しかし、FXa阻害剤の抗炎症作用に関する臨床試験はほとんど行われていない。 そのため著者らは、日本人のNVAF患者におけるFXa阻害剤の抗炎症作用および抗アテローム硬化作用を評価する目的で調査を行った。 対象は、2013年3月~2015年3月までにFXa阻害剤を用いて治療を行ったNVAF患者83例のうち、ワルファリンまたはダビガトランによる治療を行っていない患者55例(リバーロキサバン投与23例、アピキサバン投与32例)。ベースラインおよびFXa阻害剤による治療を6ヵ月間行った後のさまざまな炎症マーカーおよび凝固マーカーを測定した。主な結果は以下のとおり。・治療6ヵ月後、PTX3、フィブリン/フィブリノゲン分解産物(FDP)、D-ダイマーの血清濃度は有意に減少し、血中トロンボモジュリン(TM)濃度は有意に増加した。・各マーカーの変化は、リバーロキサバンとアピキサバンの両剤で同様の傾向を示した。・以上の結果から、FXa阻害剤は、NVAF例に対する抗凝固作用だけでなく、抗炎症作用も有することが示唆された。

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凝固因子の補充は止血効果がないのか?(解説:今中 和人氏)-653

 かねてより、出血多量例ではFFPによる凝固因子を含む血清タンパクのまんべんない補充ではなく、特定の凝固因子の補充によって止血を図るべきだ、との考えが提唱され、凝固カスケードの最終ステップに位置するフィブリノゲン濃縮製剤が、とくに期待されてきた。心臓血管外科領域では、5年ほど前からこれに関する論文が散見されるようになったが、実は有効性・安全性の結論は見事にばらばらである。本論文は、人工心肺を使用するシンプルではない開心術で、人工心肺離脱後にそこそこ(5分間で60~250mL)の出血がみられた症例に対するフィブリノゲン製剤の無作為化二重盲検試験で、対象設定は妥当でありプロトコルは現実の臨床シナリオとかけ離れておらず、出血量評価や薬剤投与量などは類似の先行研究に倣い、有意差に必要な症例数を事前に試算した堅実な試験のはずだったが、なんとプラセボ対照にもかかわらず、有意な出血量削減効果がなく、出血再開胸も減らず、他の有害事象がやや増える、という理論的にも意外な結果となった。仔細に検討すると、生死に直結しかねない「大量出血」という事象を扱う臨床試験の難しさと限界が見え隠れする。 まず、二重盲検であることもあり、止血状態に対する外科医側の判断で、術中にプロトロンビン複合体製剤(本邦未承認)も投与されたケースがフィブリノゲン群に8%(対照群3%)あり、術後ICUに至っては対照群で17%、さらに悪いことにstudy drugであるフィブリノゲン製剤も10%もの患者に投与(量は不詳)されてしまったため、とくに術後のドレーン出血量や翌日の血清フィブリノゲン値は、有意差以前にもはや何をみているのか不明になってしまっている。 また、出血がある程度収まるまでは臨床試験どころではなく、ヘパリン中和から出血量評価までのタイミングは外科医次第とならざるを得ない。本論文ではかなり止血してから出血量を評価したのか、フィブリノゲン投与から閉胸まで平均4分、プラセボ群でも8分台で閉胸に移っている。これでは出血量が50mL vs.70mLと差が出ないのも当然であろう。もしこの短時間が、血清フィブリノゲン値測定(当院では15分内外だが)や、それに基づく薬剤準備に時間を要したせいであるなら、その間に外科医は局所止血剤や電気メスなどで止血に尽力するので、やはり薬物治療以前の議論になってしまう。 なお、人工心肺中の血清フィブリノゲン値は、血液希釈のために30%は低く出るので、出血がかさんでの低値とは一線を画すべきだし、残血を戻すことである程度上昇する。さらに、著者らの実績から2,200mLの術中出血を想定し、実験や先行研究からフィブリノゲン製剤による40%の出血量削減を見込んで症例数を設定したのに、かなり止血ができて、以降の出血量の計測(評価を行うまでの出血量は不問)になったためであろう、わずか20mLと有意差など遠く及ばない結果になった。入念な試験デザインが無になってしまったのは、過失どころか担当医が誠実に患者の止血に取り組んだためと思われ、筆者にも克服の妙案はないが、優れた薬剤が正しい評価を得る臨床研究に期待したい。 なお、フィブリノゲン濃縮製剤の本邦の保険適応は、先天性フィブリノゲン欠乏症に限定されている。

593.

硬膜下血腫例の約半数が抗血栓薬服用、高齢化社会では今後ますます増えることが予想される(解説:桑島 巖 氏)-652

 硬膜下血腫は、しばしば認知症と誤診されたり、見逃した場合には死に至ることもある重要疾患である。本研究は、その硬膜下血腫の実に47.3%が抗血栓薬を服用していたという衝撃的な成績を示し、高齢化がいっそう進み、今後さらに急増していくことを示唆している点で重要な論文である。 この研究は、2000年から2015年にデンマークでの国民登録研究からのケースコントロール試験による成果である。抗血栓薬の使用頻度は、2000年には一般住民1,000人当たり31人程度にすぎなかったが、5年後の2015年には76.9人に急増している。硬膜下血腫が、それと軌を一にして増加したかを明確に示している。とくに、75歳以上での硬膜下血腫の頻度は2000年では10万人当たり年間55.1人であったのが、2015年では99.7人とほぼ倍増している。また発症例では、ワルファリン使用率が非発症例に比べて3.69倍高く、ワルファリン抗血栓薬との併用例はさらに高い。 本試験では、INRについての記載がなく、ワルファリンのコントロール状況との分析ができていないため、抗血栓薬併用例などで適切な用量設定ができていなかったことが一因として考えられる。しかし、2000~15年はまだ新規抗凝固薬(NOAC、DOAC)がそれほど普及していない時期にしてこの結果である。2015年以降、固定用量が処方される新規抗凝固薬が相次いで世の中に登場し、また冠動脈インターベンションの普及による2剤併用抗血小板療法(DAPT:dual antiplatelet therapy)の処方も増えている。さらに、人口の高齢化率も増えたことと相まって、今後、硬膜下血腫の頻度はいっそう増加の一途をたどることが予想される。 抗血栓薬と抗凝固薬併用症例では、抗凝固薬の用量を適正に調節することや血圧を厳格にコントロールすることが予防手段となろう。

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心房細動患者のCCrとイベントの関連、日本の実臨床では?

 心房細動(AF)患者における非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の投与量調節と禁忌患者の除外のために、クレアチニンクリアランス(CCr)が広く使用されているが、AF患者のCCrと有害な臨床転帰との関連をみたリアルワールドデータはほとんどない。今回、国立病院機構京都医療センターの阿部 充氏らは、日本のAF患者の大規模前向きコホートである「伏見心房細動患者登録研究」で、CCr 30mL/分未満の患者が脳卒中/全身塞栓症および大出血などのイベントと密接に関連していたことを報告した。The American Journal of Cardiology誌オンライン版2017年1月25日号に掲載。 本研究では、伏見心房細動患者登録研究における患者3,080例を、CCr 30mL/分未満、30~49mL/分、50mL/分以上の3群に分け、追跡期間中央値(1,076日)後に臨床的特徴と有害事象を評価した。 主な結果は以下のとおり。・事前に指定された因子の調整後、CCr 30mL/分未満の患者は50mL/分以上の患者と比べて、脳卒中/全身塞栓症(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.04~2.65、p=0.04)および大出血(HR:2.08、95%CI:1.23~3.39、p=0.008)のリスクが高かった。・CCr 30mL/分未満の患者は、全死因死亡、心不全による入院、心筋梗塞、全死因死亡および脳卒中/全身塞栓症の複合アウトカムのリスクも高かった。・CCr 30~49mL/分の患者では、脳卒中/全身塞栓症(HR:1.10、95%CI:0.76~1.58、p=0.6)や大出血(HR:0.98、95%CI:0.63~1.48、p=0.9)の超過リスクは認められなかった。

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抗血栓薬で硬膜下血腫リスク増大/JAMA

 抗血栓薬服用が硬膜下血腫リスクを増大することが、デンマーク・オーデンセ大学病院のDavid Gaist氏らによる、硬膜下血腫患者約1万例とその適合対照40万例を対象としたケースコントロール試験で明らかになった。なかでも、ビタミンK拮抗薬(VKA)の服用により、硬膜下血腫発症リスクは約3.7倍と大幅な増加が認められたという。また、2000~15年にかけて抗血栓薬服用率が2倍以上に増加し、一般集団における硬膜下血腫罹患率も約1.7倍に増加したことも明らかにされた。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。硬膜下血腫患者1万例と適合対照40万例を対象に試験 研究グループは、2000~15年に初発硬膜下血腫で入院し退院した20~89歳の患者1万10例(症例群)と、年齢、性別などを適合した40万380例(対照群)について、ケースコントロール試験を行い、抗血栓薬服用と硬膜下血腫発症との関連について検証した。 硬膜下血腫の発症と抗血栓薬の服用については、住民ベース地域データ(48万4,346例)とデンマーク全国データ(520万例)を基に特定した。条件付きロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(OR)を求めた。併存疾患、教育や収入レベルの補正を行った。 関連を調べた抗血栓薬服用は、低用量アスピリン、クロピドグレル、VKA、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)と、複数の抗血栓薬の併用だった。VKAと低用量アスピリン併用、硬膜下血腫発症リスクは約4倍に 症例群の平均年齢は69.2歳、そのうち女性は34.6%で、抗血栓薬の服用率は47.3%だった。 硬膜下血腫のリスクは抗血栓薬の服用者で高いことが認められた。低用量アスピリン(服用者は症例群26.7% vs.対照群22.4%)に関する補正後ORは1.24(95%信頼区間[CI]:1.15~1.33)、クロピドグレル(5.0% vs.2.2%)は1.87(同:1.57~2.24)、DOAC(1.0% vs.0.6%)は1.73(同:1.31~2.28)、VKA(14.3% vs.4.9%)は3.69(同:3.38~4.03)だった。 VKAと他の抗血栓薬併用者の硬膜下血腫発症リスクが最も高く、VKA+低用量アスピリン併用(3.6% vs.1.1%)では、補正後ORは4.00(95%信頼区間:3.40~4.70)だった。クロピドグレルとの併用(0.3% vs.0.04%)では7.93(同:4.49~14.02)だった。 また、抗血栓薬の服用率は2000年の31.0/1,000人から、2015年は76.9/1,000人へと倍増していた(傾向p<0.001)。それに伴い硬膜下血腫罹患率も、2000年の10.9/10万人年から2015年は19.0/10万人年へと増大が認められた(傾向p<0.001)。なかでも増大幅が最も大きかったのは75歳超の高齢者で、2000年は55.1/10万人年であったが、2015年は99.7/10万人年だった(傾向p<0.001)。

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心房細動への低用量NOAC、ワルファリンに勝るか?/BMJ

 心房細動の治療において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、臨床に導入されて以降、低用量での使用が増加しているが、低用量NOACの有効性と安全性をワルファリンと比較したエビデンスは少ない。デンマーク・オールボー大学のPeter Bronnum Nielsen氏らは、安全性の主要アウトカムである出血は、低用量ダビガトランがワルファリンに比べ有意に少ないとの研究結果を、BMJ誌2017年2月10日号で報告した。5万5,000例以上で3つの低用量NOACを評価 研究グループは、経口抗凝固薬の使用歴のない心房細動患者において、アピキサバン(2.5mg、1日2回)、ダビガトラン(110mg、1日2回)、リバーロキサバン(15mg、1日1回)の臨床的有効性と安全性をワルファリンと比較するコホート研究を行った(Obel Family Foundationなどの助成による)。 解析には、デンマークの3つの全国的なレジストリデータを用いた。対象は、2011年8月~2016年2月に経口抗凝固薬の初回投与が処方された非弁膜症性心房細動患者とし、標準用量のNOAC(アピキサバン5mg、ダビガトラン150mg、リバーロキサバン20mg)を処方された患者は除外した。 ベースラインの患者集団の差を調整するために、治療の逆確率重み付け法(inverse probability of treatment weighted:IPTW)を用いて、4つの治療薬の傾向スコアを算出した。有効性の主要アウトカムは虚血性脳卒中/全身性塞栓症、安全性の主要アウトカムは出血イベントとした。 心房細動患者5万5,644例が解析の対象となった。アピキサバン群が4,400例(7.9%)、ダビガトラン群が8,875例(15.9%)、リバーロキサバン群が3,476例(6.3%)、ワルファリン群は3万8,893例(69.9%)であった。平均フォローアップ期間は2.3年で、アピキサバン群は1年と最短だった。出血リスクが20%低下、有効性に差はない ベースラインの全体の平均年齢は73.9(SD 12.7)歳で、71.0(SD 12.6)歳(ワルファリン群)~83.9(SD 8.2)歳(アピキサバン群)の幅がみられた。腎臓病の有病率は、アピキサバン群(9.5%)、リバーロキサバン群(9.1%)が、ダビガトラン群(3.9%)、ワルファリン群(8.3%)よりも高かった。 全般に、アピキサバン群は心不全、血栓塞栓症の既往、糖尿病、血管疾患などの併存疾患が多かった。したがって、脳卒中リスクの指標であるCHA2DS2-VAScスコアが4.3と最も高く、次いでダビガトラン群が3.8、リバーロキサバン群が3.6で、ワルファリン群は3.0と最も低かった。 フォローアップ期間1年時の虚血性脳卒中/全身性塞栓症の重み付けイベント発生率は、アピキサバン群が4.78%と最も高く、ダビガトラン群は3.31%、リバーロキサバン群は3.53%、ワルファリン群は3.74%であった。ワルファリン群と比較した1年時のハザード比(HR)は、アピキサバン群が1.19(95%信頼区間[CI]:0.95~1.49)と高い傾向がみられ、ダビガトラン群は0.89(0.77~1.03)、リバーロキサバン群は0.89(0.69~1.16)であり、低い傾向が認められたが、いずれも有意な差はなかった。 出血の重み付け1年イベント発生率は、アピキサバン群が5.12%、リバーロキサバン群が5.58%、ワルファリン群が5.11%とほぼ同様であったが、ダビガトラン群は4.09%であり、最も低かった。ワルファリン群と比較した1年時のHRは、アピキサバン群が0.96(95%CI:0.73~1.27)、リバーロキサバン群は1.06(0.87~1.29)と有意な差はなかったが、ダビガトラン群は0.80(0.70~0.92)であり、有意に低かった。2.5年時の出血イベント発生率も、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ有意に良好だった(HR:0.84、95%CI:0.75~0.93)。 1年時の全死因死亡のリスクは、アピキサバン群の15.53%、リバーロキサバン群の15.81%に比べ、ダビガトラン群は10.50%、ワルファリン群は10.12%と低く、ワルファリン群と比較したHRはアピキサバン群が1.48(1.31~1.67)、リバーロキサバン群は1.52(1.36~1.70)と有意に高く、ダビガトラン群は1.04(0.96~1.13)であり、有意差はなかった。 著者は、「これらの結果は、われわれが以前に行った標準用量NOACの知見を拡張するものだが、最も異なる点は、標準用量では一致して全死因死亡がワルファリンよりも良好であったが、低用量では薬剤によって差がみられたことである」としている。

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NOAC登場で変わる世界の心房細動の脳卒中予防

 心房細動(AF)は世界中で最もよく遭遇する不整脈で、脳卒中のリスクが5倍に高まる危険性がある。抗凝固薬、とりわけビタミンK拮抗薬が長い間、心房細動患者の基礎であり、過去の臨床試験において、コントロール群やプラセボと比較して、虚血性脳卒中を64%、全死亡率を26%減少させることが明らかになっている。Gloria-AF(Global Registry on Long Term Oral Antithrombotic Treatment in Patients with AF)は、脳卒中のリスクがあり、新規に診断された非弁膜症性心房細動に対する前向きのグローバルレジストリである。オランダのHuisman氏らは、このレジストリを用いて、ダビガトラン登場前後における世界全体での抗凝固療法の種類と割合を比較、検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年2月号の掲載。86.1%がCHA2DS2-VAScスコア2以上のハイリスク患者、79.9%が抗凝固薬を使用 最初の非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)であるダビガトランが使用可能となり、フェーズ2の研究が開始された。本研究では、フェーズ2のベースラインにおける患者データを、NOAC以前(フェーズ1)に集められたデータと比較した。 フェーズ2では、1万5,641例の患者がレジストリに登録され(2011年11月~2014年12月)、このうち1万5,092例が研究基準を満たした。横断的分析には、研究基準を満たした患者の特徴を示し、それによりAFの特徴、医学的転帰、併存疾患、薬剤の情報が集められた。解析には記述統計学の手法が用いられた。 全体の45.5%は女性で、平均年齢中央値は71歳(四分位範囲:64~78歳)であった。患者の47.1%はヨーロッパ、以下、北米(22.5%)、アジア(20.3%)、ラテンアメリカ(6.0%)、中東/アフリカ(4.0%)であった。また、86.1%の患者が、CHA2DS2-VASc スコア2以上の脳梗塞ハイリスク患者であった。13.9%はCHA2DS2-VASc スコアが1で、脳梗塞のリスクは中等度と考えられた。 全体の79.9%が経口抗凝固薬を使用しており、47.6%はNOAC、32.3%がビタミンK拮抗薬(VKA)、12.1%が抗血小板薬を使用し、7.8%は抗凝固療法を受けていなかった。比較対象のフェーズ1(1,063例)における割合は、VKA32.8%、アセチルサリチル酸41.7%、無投薬20.2%であった。ヨーロッパ、北米では半数以上がNOAC、アジアでは27.7%にとどまる ヨーロッパでは、フェーズ2においてNOACがVKAよりも頻繁に使用されており(52.3% vs.37.8%)、6.0%の患者が抗血小板薬を内服し、3.8%が抗血栓療法を受けていなかった。  北米ではNOAC、VKA、抗血小板薬がそれぞれ、52.1%、26.2%、14.0%であり、7.5%は抗血栓療法を受けていなかった。 アジアでは、ヨーロッパや北米と比較するとNOACは27.7%で、それほど頻繁に使われておらず、VKA27.5%、抗血小板薬25.0%で、19.8%は抗血栓療法を受けていなかった。 GLORIA-AF試験で示された、新たに診断された非弁膜症性心房細動の患者のベースラインデータにおいて、NOACが実臨床で広く使用されており、ヨーロッパや北米ではVKAよりも頻繁に使用されていることが明らかになった。しかしながら、世界全体をみると、かなりの割合の患者が依然として十分な治療を受けておらず、その傾向はとくに北米とアジアで顕著であった。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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納豆は心血管系疾患の死亡リスクを減少?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第84回

納豆は心血管系疾患の死亡リスクを減少? FREEIMAGESより使用 うちの4歳の子供は納豆が結構好きで、ご飯にかけてモリモリ食べています。私も嫌いではないのですが、ご飯にかけてまで食べたいとは思いません。納豆に含まれる血栓溶解酵素であるナットウキナーゼは、世界で唯一の食品由来の血栓予防剤だ、と主張されている研究者もいますよね。今回紹介するのは、有名な高山スタディからの報告。 Nagata C, et al.Dietary soy and natto intake and cardiovascular disease mortality in Japanese adults: the Takayama study.Am J Clin Nutr. 2016 Dec 7. [Epub ahead of print]この研究は、大豆の摂取が心血管系疾患(CVD)のリスクを低下させるかどうか調べたものです。大豆製品として、日本古来の食材である納豆を選びました。研究の目的は、納豆、大豆タンパク、大豆イソフラボンの摂取が、日本の集団ベースコホート研究でCVDの死亡率減少と関連しているかどうかを調べることです。この高山スタディでは、1万3,355人の男性と1万5,724人の女性が選ばれました(いずれも35歳以上と規定)。1992年に登録した時点で、食物摂取に関するアンケートを実施しました。CVDによる死亡は、16年次を超えて発症がみられました。追跡期間中、1,678人の死亡がみられました。その内訳は、677人が脳卒中、308人が虚血性心疾患でした。最も納豆をたくさん食べた四分位の人は、最も低い四分位と比較して、CVDによる死亡リスクを減少させました(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.88、傾向のp=0.0004)。ただし、大豆タンパクや大豆イソフラボンのみを摂取しても、CVDに対する影響は観察されませんでした。脳卒中に対しては、納豆だけでなく大豆タンパクの摂取でも、有意に死亡リスクが減少しました(納豆のHR:0.68、95%CI:0.52~0.88、傾向のp=0.0004、大豆タンパクのHR:0.75、95%CI:0.57~0.99、傾向のp=0.03)。最も納豆を多く食べる四分位の群では、虚血性脳卒中の死亡リスクが有意に減少しました(HR:0.67、95%CI:0.47~0.95、傾向のp=0.03)。最近はいろいろな直接経口抗凝固薬(DOAC)を内服している患者さんが増えている一方、ワルファリンの内服患者さんが減りましたから、またそのうち納豆ブームでも来るのではないかと思っています。インデックスページへ戻る

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