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実臨床で安全性が高いDOACは?/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らは、プライマリケアにおいて、直接経口抗凝固薬(DOAC)と出血・虚血性脳卒中・静脈血栓塞栓症・全死因死亡リスクの関連を、ワルファリンと比較検証する前向きコホート研究を行い、概してアピキサバンが最も安全で大出血・頭蓋内出血・消化管出血のリスクが減少したのに対して、リバーロキサバンと低用量アピキサバンは全死因死亡リスクの上昇と関連していたことを明らかにした。これまで、無作為化比較試験でワルファリンに対するDOACの非劣性が示されていたが、実臨床での観察試験はほとんどが心房細動患者を対象としていた。BMJ誌2018年7月4日号掲載の報告。DOAC 3剤とワルファリンの出血リスクを英国プライマリケアベースで比較 研究グループは、QResearchおよびClinical Practice Research Datalink(CPRD)の2つのデータベースから、それぞれ2011年1月〜2016年10月および3月に、英国のプライマリケアにおいてワルファリン(13万2,231例)、ダビガトラン(7,744例)、リバーロキサバン(3万7,863例)、アピキサバン(1万8,223例)を新規に処方された患者(新規処方前12ヶ月以内に抗凝固薬を処方されたことのある患者は除外)を特定し、心房細動患者と非心房細動患者に分け分析した。 主要評価項目は、入院や死亡に至った大出血。副次評価項目は虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症および全死亡であった。DOACではアピキサバンが最も安全 心房細動患者(10万3,270例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(補正後ハザード比[aHR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.54~0.79)および頭蓋内出血(0.40、0.25~0.64)のリスク減少と関連していることが、また、ダビガトランは頭蓋内出血(0.45、0.26~0.77)のリスク減少と関連していることが認められた。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.19、95%CI:1.09~1.29)、および低用量アピキサバン内服患者(1.27、95%CI:1.12~1.45)で確認された。 非心房細動患者(9万2,791例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(aHR:0.60、95%CI:0.46~0.79)、全消化管出血(0.55、0.37~0.83)、上部消化管出血(0.55、0.36~0.83)のリスク減少と関連していた。また、リバーロキサバンは、頭蓋内出血のリスク減少と関連がみられた(0.54、0.35~0.82)。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.51、1.38~1.66)および低用量アピキサバン内服患者(1.34、1.13~1.58)において確認された。 なお著者は、英国のプライマリケアに限定されたものであり、アドヒアランスや処方の適応症に関する情報が不足していることなどを研究の限界として挙げている。

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気持ちはわかるがもったいない臨床試験!(解説:後藤信哉氏)-878

 世の中の活動には、税金を使うpublic sectorと個人の投資によるprivate sectorがある。特許が切れていない新薬、医療デバイスなどを用いた試験は、試験の結果により大儲けするスポンサーがあるのでprivate sectorである(日本のAMEDにはpublicとprivateの混同があると筆者は思う)。スポンサーは投資であるから、儲けにつながる結果を得たい。その気持ちはすごくわかる。ランダム化比較試験による仮説検証は、巨大なビジネスであるとともに大切な臨床科学でもある。本試験の仮説は臨床的にきわめて重要である。スポンサーの気持ちもわかるし、試験のルールもわかるけれども、本研究は仮説が魅力的であるだけに最後まで施行してほしかった。 自然発症の心筋梗塞などの血栓イベントは、世界的に減少している。しかし、入院して、心臓とは関係ない臓器の手術を受けた後にはイベントが増える。このメカニズムは現時点ではわからない。「抗血栓薬が非心臓手術後の心筋梗塞を減らす」との仮説は、この領域の研究を本気で始めるべきか否かの判断に影響を与える重要な仮説であった。本研究では、この仮説が正しそうな雰囲気を出したところで止めてしまった。 「血栓イベントを減らし出血イベントを増やさなかった」との宣伝情報ができた時点で止めたい気持ちはわかる。でも最後まで継続してほしかった。private sectorでは損になる投資をするアホはいない。損になりそうな空気が出たら止めるのが、経済的判断としては正しい。臨床試験において医師・研究者グループとスポンサーには多くの共通の利害があるが、本研究のような試験では共通の利害を最後まで継続することが困難なのであろう。医療の標準を決める臨床試験がprivate sectorであるとの欧米の理解よりも、AMEDを作った日本のpublic/private混在モデルのほうが、この研究などにはいいのかもしれない。

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CABG後もSAPTよりDAPTが優れている?(解説:上田恭敬氏)-879

 SVGを用いた待機的CABG症例を対象とし、術後の抗血小板療法をチカグレロル+アスピリン併用(DAPT)、チカグレロル単独、アスピリン単独の3群に無作為に割り付け、1年後のSVG開存を主要評価項目としたRCTの結果が報告された。SVGの開存はCTあるいはCAGによって評価された。 本試験では、中国の6施設において500症例が、チカグレロル+アスピリン併用(168症例)、チカグレロル単独(166症例)、アスピリン単独(166症例)の3群に割り付けられた。主要評価項目である1年時点でのSVG開存率は、チカグレロル+アスピリン併用群で88.7%とアスピリン単独群の76.5%より有意に高値であったが、チカグレロル単独群の82.8%はアスピリン単独群と統計的に差を認めなかった。 出血性イベントについては、軽度のものまで含めるとチカグレロル+アスピリン併用群で頻度が多いように思われたが、出血性イベントおよびMACE(composite of cardiovascular death, nonfatal myocardial infarction, or nonfatal stroke)を統計的に比較するには症例数が少な過ぎたと結論している。 以上より、本研究で示されたことは、「CABG後1年でのSVG開存率がアスピリン単独群よりもチカグレロル+アスピリン併用群で有意に高かった」ということで、MACEや出血性イベントの違いについては十分評価できなかったということになる。しかし、試験がオープンラベルで行われたこともlimitationとして指摘されており、エビデンスとして確立するためには、今回の結果をより大規模のRCTで検証する必要がある。PCI後の抗血栓療法において、DAPT vs.SAPTが活発に議論されているが、CABG後においても、今後同様の議論が展開されるべきであろう。そのためには、CABG症例を対象としたさまざまなRCTが実施される必要がある。

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臨床試験も「中国の時代!」(解説:後藤信哉氏)-874

 1990年代は日本の時代であった。経済は躍進し、医学研究も積極的であった。日本は長期の経済停滞の時代に入り医学者も内向きとなって論文数も減少した。筆者は国際雑誌CirculationのEditorをしているので、中国の臨床医学研究の量と質の改善に日々圧倒されている。かつて、日本が「世界の奇跡」とされ注目されたが、今は中国が「世界の中心」として注目されつつある。 本研究では静脈グラフトによる冠動脈バイパス術後の症例を対象としている。出発点となる1,256例の静脈グラフト後の症例を集めるだけでも日本では不可能に近い。本研究では急性期症例、抗凝固薬服用中などの除外基準をくぐり抜けた症例をアスピリン、チカグレロル、アスピリン・チカグレロル併用の3群にランダムに割り付けている。各群500例を集めた立派なランダム化比較試験である。Off pumpの手術も多い。中国のバイパス手術の技術も先進諸国に劣らない。 同時に出版されたEditorial Commentにも書かれているように、本研究のエンドポイントは心筋梗塞などではない。静脈グラフトの開存率が、アスピリン・チカグレロル併用群で高かった本研究の結果はチカグレロルの役割に関する仮説を提供した。ランダム化比較試験という方法論は確立されている。1千例の仮説産生試験に成功できる国であれば、今度は1万例に拡大した仮説検証試験も可能であろう。国民皆保険により医療の均質性が担保された日本には「ランダム化比較試験による仮説検証」はなじまなかった。遅れて経済大国となった中国にむしろ欧米にて確立された「ランダム化比較試験による仮説検証」がなじむかも知れない。医学の世界における中国の爆発的な発展に日本も置いていかれないようにしないといけないが、どうしたらいいのだろうか?

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バージャー病〔Buerger's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義動脈閉塞症の1つである。バージャー病(Buerger's disease)の呼称は、本疾患を閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans:TAO)として初めて記述したLeo Buerger(ドイツ語読みではビュルガー)氏に由来する。四肢末梢の主として下腿以遠や前腕以遠の動脈に、分節的に炎症性の血栓閉塞を生じ、しばしば肢端に潰瘍や壊死を来す。動脈のみならず、皮下静脈にも移動性かつ再発性の血栓性静脈炎(逍遥性静脈炎/遊走性静脈炎)を生じる。発病や経過には喫煙が深く関与する。■ 疫学20~40代の喫煙者に好発し、男性患者が大半である。動脈病変が生じる頻度は、下肢のほうが上肢よりも高い。元より希少疾患であるが、先進国ではさらに減少し、わが国でも1970年代から減少の一途をたどっている。一方で、中国、インド、トルコなどでは依然として比較的多くの発症がみられる。■ 病因病因は未解明だが、喫煙は発病の強力な誘因であり、病気の進行を助長する。感受性遺伝子や免疫機序の関連を指摘した報告もある。近年では、歯周病菌感染の関与が注目されている。■ 症状初診時の症状は、足趾や手指の冷感、感覚異常、疼痛、虚血性紅潮やチアノーゼ、レイノー現象が多く、すでに潰瘍や壊死を生じている患者も少なくない。間歇性跛行や労作時痛は、初期には足底筋や手部に生じるが、患者にはあまりはっきりと自覚されないことが多く、虚血による症状とも気付かれにくい。あるいは整形外科的な疾患と判断されがちである。虚血のせいで、爪周囲のささくれや靴擦れなどささいな傷が、治りにくく易感染性で、しばしば急速に潰瘍形成や壊死へと進行する。潰瘍や壊死部には、強い疼痛を伴うことが多い。逍遥性静脈炎は、動脈病変に先行することも、後から生じることもある。皮下に索状の有痛性硬結を生じる。■ 予後喫煙が影響する。病勢は禁煙によって寛解することが多く、逆に喫煙を続ければ進行性で、肢の大切断への危険が高まる1)。肢の大切断は、患者の運動機能を低下させ、生活を著しく阻害する。通常は四肢以外の臓器が侵されることはなく、生命予後は良好とされるが、患者を生涯観察したデータは少ない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)特異的な診断マーカーがないため、臨床診断、すなわち症状および臨床所見と動脈の画像所見に基づき、他疾患を除外して診断を行う。若齢発症、喫煙歴、逍遥性静脈炎の既往は、本疾患の診断を後押しする2)。■ 臨床所見前述のような慢性虚血の症状や、逍遥性静脈炎がみられる。身体診察では、患肢の末梢部での皮膚温低下や、動脈拍動の減弱・消失をみる。下肢の虚血を確認する検査には、足関節血圧や足関節上腕血圧比(ankle brachial index:ABI)の測定がある。ただし、本疾患では足関節以遠に病変を有することが多く、ABIだけでは評価が不十分なこともありうる。したがって、手足の指尖容積脈波、足趾血圧や足趾上腕血圧比(toe brachial index:TBI)、手指血圧も測定する。皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)や経皮酸素分圧(transcutaneous oxygen tension:tcPO2)などの微小循環検査も虚血の重症度評価に役立つ。レイノー現象の再現には、冷水負荷でのサーモグラフィー検査が有用である。■ 動脈の画像所見通常、下腿以遠や前腕以遠の動脈に病変がある。病変部には、動脈硬化性の壁不整(虫食い像、石灰化沈着など)がない。閉塞は途絶状や先細り状が多く、多発的分節的閉塞を呈する。また、しばしば二次血栓による閉塞の延長を伴う。慢性閉塞であるため側副血行路が発達し、コルクの栓抜き状(コイル状)や樹根状、ブリッジ状を呈する3)。ただし、これらは動脈硬化のない慢性動脈閉塞に共通の非特異的な所見であり、膠原病などでも類似の所見がみられる。膠原病では側副血行路の発達が乏しいとされるが、画像だけから両疾患を鑑別するのは難しい。■ 鑑別すべき疾患とくに閉塞性動脈硬化症との鑑別が重要である。病理組織学的には明らかに異なる疾患であるが、動脈の組織診を行うのは容易ではないため、画像検査で罹患部位に動脈硬化の所見がないことが、1つの重要な鑑別点である。患者が動脈硬化の危険因子を喫煙歴以外に有さないことも、鑑別診断の材料になる。しかし、近年は若年者でも脂質代謝、耐糖能、血圧の異常を有することが多い。加えて、動脈硬化は10代から始まるともいわれる。さらに、画像診断が進歩し、微細な初期変化を捉える可能性もあるため、診断にはより慎重な判断が求められる。全身性エリテマトーデスや強皮症などの膠原病との鑑別のためには、発熱や体重減少などの全身症状、他臓器の血管炎症状、免疫学的血液検査の所見などを評価する。外傷性動脈血栓症との鑑別には外傷歴が重要で、慢性外傷の可能性も念頭に、職業歴やスポーツ歴など患者の訴えに上がらないことも含め、多方面から病歴聴取を行う。とくに上肢で近位部に病変がある場合は、胸郭出口症候群による血栓症や塞栓症も疑う。下腿の虚血性疾患として、膝窩動脈捕捉症候群や膝窩動脈外膜嚢腫との鑑別には、膝窩部の触診と、動脈周囲の軟部組織を含めた画像検査を行う。動脈と静脈の両者を侵す疾患である血管ベーチェット病とは、口腔内アフタや陰部潰瘍など、他の皮膚症状や眼病変、動脈瘤の検索などを行い鑑別する。心房細動や心筋梗塞後の左室瘤に起因する血栓塞栓症との鑑別には、心エコー図検査が有用である。動脈瘤からの飛散血栓による塞栓症や、動脈壁の不整形粥腫に起因するコレステリン塞栓症などとも鑑別を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)バージャー病の治療目標は、救肢ならびに疼痛からの解放である。耐え難い疼痛は患者の精神をむしばむことがあり、若年での肢切断は生活と将来に多大なダメージを与える。治療における最重要かつ最難関の課題は、「禁煙」である。タバコは本疾患の誘発および増悪因子であるため、すべての患者で最初に行うのは禁煙を含めた保存的治療である。禁煙を厳守し続ければ、それだけで病状の寛解は期待できる。逆に、喫煙を続ければ、指趾や肢の切断に至る危険が高まる。保存的治療で重症虚血が軽快しない患者では、外科的治療を考慮する。いかなる治療も、有効性は禁煙を継続できるか否かによって左右されうる。■ 保存療法本疾患の炎症を抑える特効薬はない。禁煙を徹底し、受動喫煙も回避する。手足に傷や靴擦れをつくらないよう保護し、清潔を保つ。履物にも注意し、手足の皮膚に異常がないかを患者自身でも観察してもらう。本疾患の発症には歯周病菌の関与も示唆されており、口腔内の衛生も保つ。潰瘍や壊死、安静時痛がなく、ある程度の距離を歩行できる患者では、運動療法も間歇性跛行の歩行距離の延長に効果がある。血流改善を目的とした薬物治療では、プロスタグランジン製剤(アルプロスタジル注、リポPGE1、リマプラスト、ベラプロスト)が有効といわれる。ただし高いエビデンスは示されておらず、無効例も少なくない。経口投与で効果が不十分な場合は、経静脈投与やカテーテル留置による経動脈投与も考慮する。■ 外科的治療保存療法で安静時疼痛や潰瘍・壊死が改善しない場合は、血行再建術を考慮する。ただし、下肢では病変が下腿以下の細径動脈に多発し、良好なrun-offを期待できる開通先がないことが多い。下腿以下へのバイパス手術では、代用血管に自家静脈の使用が勧められるが、自家静脈が静脈炎で荒廃し、利用できない場合もある。近年では血管内治療について、再狭窄率が高く反復治療を要するものの、肢切断の回避率はバイパス術と劣らず、バイパス手術が不可能な患者に対しては選択可能との見解もある4)。血行再建術が不可能な患者では、上肢では胸部の、下肢では腰部の交感神経遮断術を考慮する。虚血が改善しない肢には、激しい疼痛を伴うことが多い。一般の鎮痛薬では疼痛制御が困難なことが多く、オピオイド系鎮痛薬がしばしば必要になる。フェンタニル貼付薬は、保険診療にて使用可能である。これらの治療で改善しない潰瘍や疼痛、広範囲な壊死や荷重部の壊死、制御できない感染を伴う場合などは、肢切断もやむを得ない。上肢では交感神経遮断で症状が落ち着くことが多く、血行再建術や大切断を要することは少ない。4 今後の展望血管内治療のデバイスや技術の進歩は、近年目覚ましい。バイオテクノロジーを駆使した、各種の血管新生療法(遺伝子治療、細胞移植療法など)5)や、抗血栓性に優れた人工血管の開発も著しい進展をみせており、本疾患の肢虚血でも治療の向上が期待される。また、病因の解明が進めば、本疾患の予防や根治的な治療にもつながりうる。5 主たる診療科血管外科、心臓血管外科、循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター バージャー病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金・難治性疾患等政策研究事業 難治性血管炎に関する調査研究(医療従事者向けの情報)患者会情報北海道バージャー病友の会(患者とその家族向けの情報)1)Shigematsu H, et al. Int Angiol. 1999;18:58-64.2)Shionoya S. Cardiovasc Surg. 1993;1:207-214.3)塩川優一 編集. 厚生省特定疾患系統的血管病変に関する調査研究班臨床分科会報告書.厚生省公衆衛生局難病対策課;1977.p.1-38.4)Ye K, et al. J Vasc Surg. 2017;66:1133-1142.5)Kondo K, et al. Circ J. 2018;82:1168-1178.公開履歴初回2018年06月12日

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これはいける!と思ったのに:ESUSの意外な失敗(解説:後藤信哉氏)-864

 薬剤として経口抗Xa薬が開発された当時、標的疾患としては「脳梗塞2次予防がよい」と各社にアドバイスした。冠動脈疾患、心房細動より、脳梗塞中の再発リスクが高く、新規の抗血栓薬が必要と思ったからである。脳梗塞の病態は複雑である。微小血管病と想定されるラクナ梗塞、抗血小板薬が有効なアテローム血栓性閉塞では、抗凝固薬は役立たないのではないかとの意見もあった。心房細動の脳卒中予防試験も、予防対象は「脳卒中・全身塞栓症」で心原性塞栓ではなかった。 心房細動の脳卒中予防試験が成功したので、「心房細動以外の脳塞栓予防」にも抗凝固薬が有効と考えてESUSという疾患概念が提案されたのであろう。「抗凝固薬より抗血小板薬」といわれていた急性冠症候群、ステント血栓症、心筋梗塞、末梢血管疾患では、2.5mg 1日2回の少量リバーロキサバンのイベント予防効果がランダム化比較試験により示された。比較対象をワルファリンより抗血栓効果・出血イベントリスクの少ないアスピリンとして、ESUSではリバーロキサバンの容量15mgの優越性を示すことができなかった。本試験はDSMBにより中止勧告されているとはいえ、当初予定の74%に相当する332例もの有効性1次エンドポイントが起きている。ESUS症例では年間5%近く血栓イベントが起こることが確認され、ESUS予防の重要性は再確認された。15mg/日のリバーロキサバンによる重篤な出血イベント発症リスクは、アスピリンの2倍を超える。ESUSという疾患概念をつくって、抗凝固薬の適応拡大を目指した戦略は失敗に終わった。各種NOACsの心房細動症例の試験も、「INR 2~3を標的とした出血しやすいワルファリン」との比較において「出血性梗塞を含む脳卒中」にて非劣性、優劣性を示したにすぎない。もっとも有効性を期待できると想定されたESUSでの試験の失敗は、心房細動における脳卒中予防試験の人工性(ワルファリンのPT-INRによる縛り、出血を含む脳卒中という有効性1次エンドポイントなど)について再度真剣に考える機会を提供している。容認できる出血イベントの範囲での脳卒中予防を考えるのであれば、COMPASSの2.5mg×2/日がベストなのかもしれない。 ランダム化比較試験は試験管の実験に近い。ランダム化比較試験に基づいた適応症どおりにのみ薬剤が実臨床でも使用されるようになれば、最適な患者集団を選定する「育薬」が不可能になる。患者集団に対する薬剤の有効性、安全性の事前予測の困難性があらためて確認された。

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ESUS後の脳卒中再発予防、リバーロキサバン vs.アスピリン/NEJM

 塞栓源不明の脳塞栓症(embolic stroke of undetermined source:ESUS)の初発後の、脳卒中の再発予防において、リバーロキサバンにはアスピリンを上回るベネフィットはないことが、カナダ・マックマスター大学のRobert G. Hart氏らが実施した「NAVIGATE ESUS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月16日号に掲載された。塞栓源不明の脳塞栓症は、虚血性脳卒中の20%を占め、高い再発率と関連する。抗凝固薬は、心房細動患者の脳塞栓症の予防に有効であることから、塞栓源不明の脳塞栓症後の脳卒中の再発予防において、抗血小板薬よりも高い効果が得られる可能性があるとの仮説が提唱されている。NAVIGATE ESUS試験は31ヵ国459施設に7,213例を登録 NAVIGATE ESUS試験は、日本を含む31ヵ国459施設が参加した国際的な無作為化第III相試験である(BayerとJanssen Research and Developmentの助成による)。 NAVIGATE ESUS試験の対象は、脳塞栓に起因すると推定されるが、動脈の狭窄やラクナ梗塞はなく、心内塞栓源が同定されない虚血性脳卒中の患者であった。被験者は、リバーロキサバン(15mg、1日1回)またはアスピリン(100mg、1日1回)を投与する群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、time-to-event解析における脳卒中(虚血性、出血性、未定義の脳卒中)の初回再発または全身性塞栓症の発症であった。安全性の主要アウトカムは、大出血の発生率とした。 2014年12月~2017年9月の期間に、7,213例が登録され、リバーロキサバン群に3,609例が、アスピリン群には3,604例が割り付けられた。 2017年10月5日の2回目の中間解析で、再発抑制に関してベネフィットが得られる可能性がほとんどなく、リバーロキサバン群は出血リスクが高いと判定され、データ・安全性監視委員会の勧告により、本試験は早期に終了した。年間再発率:5.1 vs.4.8%、年間大出血発生率:1.8 vs.0.7% ベースラインの全体の平均年齢は67歳、62%が男性であった。高血圧が77%、糖尿病が25%、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往は18%に認められた。また、卵円孔開存が7%(リバーロキサバン群:259例、アスピリン群:275例)にみられた。 NAVIGATE ESUS試験の早期終了まで、中央値で11ヵ月の追跡が行われた。有効性の主要アウトカムは、リバーロキサバン群172例(年間発生率:5.1%)、アスピリン群160例(4.8%)に認められ、ハザード比(HR)は1.07(95%信頼区間[CI]:0.87~1.33)と、両群間に有意な差はみられなかった(p=0.52)。 虚血性脳卒中の再発は、リバーロキサバン群158例(年間発生率:4.7%)、アスピリン群156例(4.7%)(HR:1.01、95%CI:0.81~1.26)であり、出血性脳卒中の再発はそれぞれ13例(0.4%)、2例(0.1%)(6.50、1.47~28.8)、全身性塞栓症は1例(<0.1%)、2例(0.1%)(0.50、0.05~5.51)であった。 事前に規定された探索的サブグループ解析では、東アジア人(中国、日本、韓国)および推定糸球体濾過量>80mL/分の患者は、アスピリン群のほうが、有効性の主要アウトカムの年間発生率が有意に低かったが、イベント数が少なく十分な検出力はなかった。 大出血は、リバーロキサバン群62例(年間発生率:1.8%)、アスピリン群23例(0.7%)に認められ、HRは2.72(1.68~4.39)と、リバーロキサバン群で有意に高頻度であった(p<0.001)。また、生命を脅かす出血/致死的出血(p=0.004)、臨床的に重要な非大出血(p=0.004)、症候性頭蓋内出血(p=0.003)は、いずれもリバーロキサバン群で有意に頻度が高かった。 現在、NAVIGATE ESUS試験と同様の患者を対象に、他の抗凝固薬とアスピリンを比較する無作為化試験が進行中だという。

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心房細動、サイナスになっても 脳梗塞リスク 高いまま/BMJ

 正常洞調律を取り戻し回復した状態(resolved)であると診断された心房細動(AF)患者について、非AF患者と比べると、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)のリスクは有意に高いままであることが、英国・バーミンガム大学のNicola J. Adderley氏らによる、同国の一般診療所(GP)で集められたデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。リスクの増大は、再発の記録がなかった患者でも認められたという。AFは明らかな回復後も再発の可能性があるが、そのような患者で脳卒中/TIAリスクの増大が認められるのかは明らかになっておらず、ガイドラインでも、同患者に関する治療は明示されていない。BMJ誌2018年5月9日号掲載の報告。英国GPデータベースを用いて分析 研究グループは、resolved AF患者の脳卒中/TIAの発生率、および全死因死亡率を調べるとともに、非resolved AFおよび非AF患者のアウトカムと比較した。 GPが関与したデータベース「The Health Improvement Network」の2000年1月1日~2016年5月15日のデータから、脳卒中/TIA既往のない18歳以上の成人患者で、resolved AF患者1万1,159例と、対照群としてAF患者1万5,059例、非AF患者2万2,266例を特定し分析した。 主要アウトカムは、脳卒中/TIAの発生で、副次アウトカムは、全死因死亡とした。抗凝固薬使用の継続を提言するようガイドラインを見直すべき resolved AF患者の補正後脳卒中/TIAの発生率比は、対AF患者が0.76(95%信頼区間[CI]:0.67~0.85、p<0.001)、対非AF患者は1.63(同:1.46~1.83、p<0.001)であった。 また、resolved AF患者の補正後死亡の発生率比は、対AF患者が0.60(同:0.56~0.65、p<0.001)、対非AF患者は1.13(同:1.06~1.21、p<0.001)であった。 さらに、再発のなかったresolved AF患者について、補正後の脳卒中/TIA発生率比は、対非AF患者で1.45(同:1.26~1.67、p<0.001)であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「resolved AF患者について、抗凝固薬の使用継続を提言するよう、ガイドラインを改訂すべきである」とまとめている。

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「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」通知へ:厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 5月7日の会合で、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」について大筋で了承した。本指針では65歳以上の高齢者、とくに平均的な服薬薬剤数が増加する75歳以上に重点をおいて、処方見直しの基本的な考え方や評価・減薬までの流れ、よく使われる薬剤の高齢者における留意点などをまとめている。 早ければ5月中旬を目途に、関連団体や都道府県宛に通知が発出される見通し。また、同検討会では引き続き、主に急性期での対応をまとめた本指針の追補として、外来・在宅などの療養環境別の特徴を踏まえた「高齢者の医薬品適正使用の指針(詳細編)」の作成を開始し、2018年度中のとりまとめを目指す。 本指針は多剤服用やポリファーマシーといった言葉の概念から、処方見直し時のポイントや進め方のフローチャート、減薬する際の注意点などをまとめた本文と、薬効群ごとの薬剤処方における留意点、慎重な投与を要する薬物リストなどの別表から構成される。別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、A~Lの12の薬効群ごと(下記参照)に薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。A.催眠鎮静薬・抗不安薬B.抗うつ薬(スルピリド含む)C.BPSD 治療薬D.高血圧治療薬E.糖尿病治療薬F.脂質異常症治療薬G.抗凝固薬H.消化性潰瘍治療薬 I.消炎鎮痛剤J.抗微生物薬(抗菌薬・抗ウイルス薬)K.緩下薬L.抗コリン系薬剤 なお、詳細編では認知症や骨粗鬆症、COPDなどについても取り上げることが検討されている。■参考厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」

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