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2種のmRNAワクチン、ウイルス量や罹患期間への効果も/NEJM

 COVID-19に対して承認された2回接種のmRNAワクチン2種(BNT162b2[Pfizer-BioNTech]とmRNA-1273[Moderna])の、リアルワールドにおける生産年齢成人への接種の有効性を調べた結果が報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMark G. Thompson氏らが、医療現場の第一線従事者3,975例への接種について調べた前向きコホート試験の結果で、2回接種後14日以上経過した場合の有効率は91%、1回接種後14日以上経過した場合でも81%と、いずれも高い有効性が示されたという。承認されたmRNAワクチン2種のリアルワールドにおける有効性に関する情報は限定的であったが、試験の結果を踏まえて著者は、「リアルワールドの生産年齢成人において、承認済みワクチンは、SARS-CoV-2感染の予防において非常に有効で、またワクチンを接種したにもかかわらず感染症を呈した同成人の、ウイルスRNA負荷、発熱症状リスクおよび罹患期間を軽減した」と述べている。NEJM誌オンライン版6月30日号掲載の報告。 医療従事者、消防士、エッセンシャルワーカーなどを対象に試験 研究グループは2020年12月14日~2021年4月10日にかけて、医療従事者、消防士・警察官などのファーストレスポンダー、およびその他のエッセンシャルワーカーや第一線従事者3,975例を対象に試験を行った。被験者は、毎週、中鼻甲介スワブの採取により、定量的・定性的リアルタイムPCR検査を受けた。 ワクチン有効率は、100%×(1-ワクチン接種者の非接種者に対するSARS-CoV-2感染に関するハザード比)で算出。ワクチン接種の傾向や試験の実施場所、職業、地域のウイルス流行性などで補正を行った。感染者のウイルスRNA量もワクチン1回接種者で40%減 SARS-CoV-2が検出されたのは204例(全被験者の5%)で、そのうち完全ワクチン接種者(2回目接種から14日以上経過)は5例、不完全ワクチン接種者(1回目接種から14日以上経過、2回目接種から14日未満)が11例、非ワクチン接種者は156例だった。なお、1回目接種から14日未満だった32例については除外した。 補正後ワクチン有効率は、完全ワクチン接種者で91%(95%信頼区間[CI]:76~97)、不完全ワクチン接種者でも81%(64~90)だった。 SARS-CoV-2感染者において、平均ウイルスRNA量は、完全・不完全ワクチン接種者で非ワクチン接種者に比べ、40%少なかった(95%CI:16~57)。また、発熱症状リスクも58%低く(相対リスク:0.42、95%CI:0.18~0.98)、罹患期間も短く、病状が悪く寝ていた期間は平均2.3日(95%CI:0.8~3.7)短かった。

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日本のワクチン忌避者は11%、若年女性は高齢男性の3倍に

 2021年6月25日、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、日本初の新型コロナワクチン忌避に関する大規模オンライン調査の結果を発表した。 この調査は、NCNPトランスレーショナル・メディカルセンター大久保 亮氏、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター吉岡 貴史氏、大阪市立大学大学院公衆衛生学大藤 さとこ氏、聖路加国際病院松尾 貴公氏、大阪国際がん研究センター田淵 貴大氏らの合同研究チームが行ったもので、結果はVaccines誌2021年6月号に掲載された。 研究チームは、2021年2月8〜26日に日本全国の2万6,000人を対象にワクチン接種の意向に関するオンライン調査を実施した(有効回答数は2万3,142人)。 「新型コロナワクチン接種を接種したいか」という設問に対する「接種したい」「様子を見てから接種したい」「接種したくない」の3つの選択肢の中から、「接種したくない」を選択した回答者を「ワクチン忌避者」と定義づけた。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン忌避者の割合は11.3%だった。年齢・性別で層別化すると、若年(15~39歳)女性の15.6%から高齢(65~79歳)男性の4.8%まで、大きなばらつきがあった。・ワクチン忌避の理由として最も多かったのは、「副反応への懸念」(74%)だった。・日本のワクチン忌避者の割合は、海外での調査で明らかになったものとほぼ同等で、若年者の割合は高齢者の2倍以上だった。・若年・女性のほかにワクチン忌避者の割合が高くなる背景としては、一人暮らし、年間100万円未満の低所得、中学卒業および短大・専門学校卒業の教育歴、政府ないしコロナ政策への不信感、重度の気分の落ち込みがある、が挙がった。 研究チームは、今回ワクチン忌避者の割合が高くなる背景が判明しており、これらの層にワクチンの適切な情報を確実に届けられるよう、措置を講じる必要があるとしている。

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第62回 ファイザーがデルタ株ワクチン開発、8月にも治験開始か

<先週の動き>1.ファイザーがデルタ株ワクチン開発、8月にも治験開始か2.今年4月の診療報酬がコロナ前を上回り、回復のきざし3.新制度による専門医資格、今秋から広告可能に4.来年度の社会保障費、高齢化で自然増6,600億円見込み5.外来化学療法や日帰り手術など、高度医療の状況報告へ6.20年度の医薬品回収は前年までの2倍超、今後の影響は?1.ファイザーがデルタ株ワクチン開発、8月にも治験開始か新型コロナワクチンBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)を開発した米国・ファイザーとドイツ・BioNTechは、世界的に感染が広がる新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」に特化したワクチンの開発を進めていることを、8日付のプレスリリースで明らかにした。臨床試験は早ければ8月に開始予定という。また、デルタ株に対しては、従来型ワクチンの2回接種でもある程度の抗体ができるほか、3回目の追加接種によって、さらに抗体価を高めることが可能との見方も示した。3回目接種については、すでに治験で良好な結果が出ており、8月にも米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する見込み。一方、今回の発表について、FDAとCDCは共同声明を発表し、現在使われているワクチンについて「接種を完了した人はデルタ株を含めた変異ウイルスに対しても重症化や死亡から守られている。現時点で、接種を完了した人に追加の接種は必要ない」としている。追加の接種に関しては、今後の科学的な知見に基づいて必要性が判断される。(参考)米ファイザー、デルタ株ワクチン開発 8月治験開始(時事ドットコム)ファイザー 変異ウイルス対応の新ワクチン 8月にも臨床試験へ(NHK)2.今年4月の診療報酬がコロナ前を上回り、回復のきざし厚労省は、新型コロナウイルス感染症による医療機関の収入の変化を、7日に開催した中央社会保険医療協議会の総会において報告した。今年4月分の診療報酬は、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年同月比で、レセプト件数は-3.8%であるものの、総点数は+2.0%であった。受診患者数は増えない中も、さまざまな感染拡大防止策による診療報酬の加算によるものと考えられる。(参考)4月診療分総点数がコロナ前上回る、小児科診療所もプラス 厚労省、件数は依然戻らず(CBnewsマネジメント)資料 中央社会保険医療協議会 総会-コロナ・感染症対応(その1)(厚労省)3.新制度による専門医資格、今秋から広告可能に厚労省は8日、日本専門医機構による新専門医制度について、今秋からの認定開始に合わせて、基本領域19の専門医資格を広告可能とすることを「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で承認した。現行のルールでは、同機構の規模等が基準を満たしていないため、専門医の資格名を広告することができなかった。一方、より専門性の高いサブスペシャルティ領域の専門医については、機構内で認定の範囲が定まっていないため、今後議論を重ねていくこととなる。(参考)専門医資格、基本領域は今秋から広告可能 サブスぺ領域は保留に(CBnewsマネジメント)資料 専門医に関する広告について(厚労省)第18回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会(同)4.来年度の社会保障費、高齢化で自然増6,600億円見込み政府は、2022年度予算の概算要求基準で、高齢化に伴う社会保障費の自然増として6,600億円程度を見込んでいることが、6日に開催された経済諮問会議にて明らかとなった。2022年度の予算の全体像で示された社会保障改革は、将来の医療需要に沿った病床機能分化・地域連携の推進や、包括払いの在り方の検討、オンライン診療の適正かつ幅広い活用など診療報酬の見直しを求めている。今後は、全世代型社会保障に向けた実施状況の検証や、持続可能な社会保障の総合的な検討を行っていく。(参考)社会保障費自然増6600億円 高齢化進展でー22年度概算要求基準(時事ドットコム)各省庁からの予算要求、100兆円突破の見通し…団塊世代「後期高齢者」で社会保障膨らむ(読売新聞)令和3年第10回経済財政諮問会議(内閣府)5.外来化学療法や日帰り手術など、高度医療の状況報告へ厚労省は、7日に「外来機能報告等に関するワーキンググループ」を初開催し、今後、人口減少や高齢化などにより地域ごとに「担い手の減少」や「需要の質・量の変化」が進むことを含めて、地域において外来機能の明確化・連携を進めていくため、2022年度から病院に対して、外来化学療法や日帰り手術などの高度な「医療資源を重点的に活用する外来」の実施状況を報告させることを明らかにした。また、200床以上の一般病床がある病院には、紹介状なしで受診した外来患者から定額負担の徴収を義務付け、かかりつけ医との連携を進める方向で、今後、さらに検討を進めていく。(参考)外来医療、基幹病院を明確化 厚労省 22年度から(日経新聞)外来医療の拠点機関を位置付けへ、厚労省 一般200床以上なら定額負担徴収を義務化(CBnewsマネジメント)資料 外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書(厚労省)第1回外来機能報告等に関するワーキンググループ(同)6.20年度の医薬品回収は前年までの2倍超、今後の影響は?9日、厚労省は「医薬品・医療機器等の回収報告の状況について」を公表し、2020年度の医薬品の回収件数は341件で、前年までと比較して2倍以上に急増したことを明らかにした。同日に開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会での報告。過去10年間、医薬品回収は200件を上回ることがなかったが、今年度は後発医薬品メーカーの製造体制を巡る問題をきっかけに、他メーカーも余波を受け、今年度に入っても状況は改善していない。この影響はしばらく続くと思われる。(参考)資料 医薬品・医療機器等の回収報告の状況について(厚労省)令和3年度 第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会(同)

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2種類のコロナワクチン、副反応疑いの報告状況/厚労省

 厚生労働省は、7月7日に今までに報告された新型コロナワクチンの副反応疑い報告など、ワクチン接種後の副反応(副作用)に関する情報をまとめたレポートを「新型コロナワクチンの副反応疑い報告について」として公開した。 レポートは、ワクチンの接種後に生じうる副反応を疑う事例について、医療機関などに報告を求め、収集したものを同省の審議会に報告し、専門家による評価を行ったもの。副反応疑いについて対象期間:令和3年2月17日~6月27日副反応の頻度:・ファイザー社ワクチン(商品名:コミナティ筋注)は0.04%(3,921万8,786回接種中1万5,991例)・武田/モデルナ社ワクチン(同:COVID−19ワクチンモデルナ筋注)は0.02%(95万9,165回接種中191例) いずれのワクチンも、これまで通り安全性において重大な懸念は認められないと評価された。なお、ワクチンにより接種対象者の年齢や接種会場などの属性が大きく異なるため、両ワクチンの単純な比較は困難であり、注意が必要。死亡例について対象期間:令和3年6月27日までの集計・ファイザー社ワクチンは453例・武田/モデルナ社ワクチンは1例 追加で7月2日までに両ワクチンを合わせて102例の報告 死亡例の報告に関しては、現時点において引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない。アナフィラキシーについて・ファイザー社ワクチンは1,632件(100万回接種あたり42件)が報告され、うち289件(100万回接種あたり7件)が専門家によりアナフィラキシー(ブライトン分類1~3)と評価された。・武田/モデルナ社ワクチンは医療機関から14件(100万回接種あたり14.6件)が報告され、うち1件(100万回接種あたり1.0件)が専門家によりアナフィラキシー(同)と評価された。 アナフィラキシーの報告に関しても、現時点において引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない。その他の懸念事項 接種後の心筋炎・心膜炎に関し、ワクチンの添付文書に本症について追記の改訂内容が報告された。心筋炎関連事象について検討が行われ、現時点においてワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとされた。ワクチンの不正確な情報に惑わされないための注意 同省では【ご注意ください】を掲示し、下記のようにワクチン接種におけるデマや流言への注意喚起も行っている(以下に一部抜粋)。・国内外で、注意深く調査が行われていますが、ワクチン接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません。・海外の調査によれば、接種を受けた方に、流産は増えていません。・接種後の死亡と、接種を原因とする死亡はまったく意味が異なります。接種後の死亡にはワクチンとは無関係に発生するものを含むにもかかわらず、誤って、接種を原因とする死亡として、SNSやビラなどに記載されている例があります。

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Novavax製コロナワクチンの有効率89.7%、第III相試験/NEJM

 健康成人への遺伝子組み換えナノ粒子ワクチンNVX-CoV2373(米国Novavax製)の2回接種はプラセボと比較して、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染予防の有効率が89.7%と高率で、B.1.1.7変異株(α株)にも同程度の効果を有することが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のPaul T. Heath氏ら研究グループが実施した「2019nCoV-302試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年6月30日号に掲載された。英国33施設のプラセボ対照無作為化第III相試験 本研究は、SARS-CoV-2感染の予防におけるNVX-CoV2373の安全性と有効性の評価を目的とする評価者盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2020年9月28日~11月28日の期間に、英国の33施設で参加者の登録が行われた(米国Novavaxの助成による)。 対象は、年齢18~84歳の男性または非妊娠女性で、健康または安定期慢性疾患(多剤併用療法[HAART]を受けているHIV感染、心疾患、呼吸器疾患の患者を含む)の集団であった。 被験者は、21日間隔で2回、NVX-CoV2373ワクチン(遺伝子組み換えナノ粒子スパイク蛋白5μg+Matrix-Mアジュバント50μg)の筋肉内注射を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、ベースラインで血清学的に陰性の参加者において、2回目接種から7日以降に発症し、ウイルス学的に確定された軽症、中等症、重症のSARS-CoV-2感染とされた。 1万5,187例が無作為化の対象となり、1万4,039例(ワクチン群7,020例、プラセボ群7,019例)が有効性のper-protocol集団に含まれた。全体の年齢中央値は56歳(27.9%が65歳以上)、48.4%が女性であった。44.6%が、米国疾病管理予防センターの定義で重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスク因子とされる併存疾患を1つ以上有していた。65歳以上の有効率88.9%、B.1.1.7変異株86.3% 2回目の接種から7日以降に症状の発現が認められ、ウイルス学的に確定されたSARS-CoV-2感染者は、ワクチン群が10例(6.53/1,000人年)、プラセボ群は96例(63.43/1,000人年)であり、ワクチンの有効率は89.7%(95%信頼区間[CI]:80.2~94.6)であった。 ワクチン群のSARS-CoV-2感染者10人に入院および死亡者はなく、このブレークスルー例のうち8人がB.1.1.7変異株(α株)に感染していた。また、重症COVID-19感染症は5例報告され、いずれもプラセボ群であった(入院1例、救急診療部受診3例、自宅療養1例)。 65歳以上のワクチン有効率は88.9%(95%CI:12.8~98.6)であった。事後解析では、B.1.1.7変異株に対する有効率は86.3%(71.3~93.5)、B.1.1.7以外の変異株では96.4%(73.8~99.5)だった。 非自発的な報告による局所的有害事象(痛み、圧痛、紅斑、腫脹)の頻度は、初回(57.6% vs.17.9%)および2回目接種(79.6% vs.16.4%)ともワクチン群で高く、全身性有害事象(頭痛、疲労、悪心・嘔吐、倦怠感、筋肉痛、関節痛、体温上昇)も、初回(45.7% vs.36.3%)および2回目接種(64.0% vs.30.0%)のいずれもワクチン群で高かった。 自発的な報告による有害事象はワクチン群で多かった(25.3% vs.20.5%)が、重篤な有害事象(0.5% vs.0.5%)、接種中止の原因となった有害事象(0.3% vs.0.3%)、COVID-19でとくに注目すべき有害事象(0.1% vs.0.3%)の発現率はいずれも両群で同程度で、頻度は低かった。また、反応原性(reactogenicity)は全般に軽度で一過性であり、反応は高齢者で頻度が低く、より軽度で、2回目以降に多かった。 著者は、「NVX-CoV2373は標準的な冷蔵温度で保存でき、スパイク蛋白抗原の多くのエピトープへの反応を誘導する可能性がある。これらの特性は、新たな変異株に対する継続的なワクチン接種の必要性を考慮すると、このワクチンの世界に向けた効率的な導入において重要である」と指摘している。

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病棟マスターになれる医学書【Dr.倉原の“俺の本棚”】第44回

【第44回】病棟マスターになれる医学書指示簿、入院サマリー、手技や手術の記録、コンサルテーションの仕方、対応に困る患者の対処法、維持輸液の処方、カンファレンスの症例プレゼンテーションの喋り方、保険の自己負担、死亡診断書(死体検案書)の書き方、介護保険意見書の書き方、DPCの仕組み、各診断・治療の保険点数、文献検索の方法……研修医になってから、何度ググったかわかりませんよね。どこの医学書にも、こういうノウハウが全然書いてないんだもの。誰かわかりやすくまとめてくれないかな~と、医局の机に突っ伏しているそこのアナタ!『総合内科病棟マニュアル 病棟業務の基礎(赤本)』筒泉 貴彦, 山田 悠史, 小坂 鎮太郎/編. メディカルサイエンスインターナショナル. 2021年え……?そんな医学書あるんですか?はい、あるんです!それが、『総合内科病棟マニュアル』の赤本です。上記のような総論的なことだけでなく、病棟の患者さんや病棟の看護師さんから相談されることが多い、コモンな徴候から輸血・ステロイド・ワクチン・血糖管理まで、臓器横断的な項目がこの赤本にムギュっと凝縮されています。密度がすごいです、密度が。情熱の密度がすご過ぎて、ページをめくる手がヤケドしてしまいますわ、ホント!「赤血球輸血したらどのくらいヘモグロビンの改善が予想されますか?」「ステロイドの副作用を予防するエビデンスは?」こういうこともしっかり書かれています。これを読めば、病棟マスターになれる気がしますね。そして、7月に青本が出ます。青本は、疾病や病態の各論的なことが書かれています。このクオリティで続編が出るとか、どないなってんねんレベルです。赤本が縦斬り!青本が横斬り!で、難解な医学の世界を"サイコロステーキ先輩※"にしてやりましょう。※『鬼滅の刃』に登場する隊士。敗北・死亡フラグを立てて、あっという間に回収してあの世へ旅立つ弱さから、「お前さんをボッコボコにしてやんよ」と言いたいときに使う。『総合内科病棟マニュアル 病棟業務の基礎(赤本)』筒泉 貴彦, 山田 悠史, 小坂 鎮太郎/編出版社名メディカルサイエンスインターナショナル定価本体4,400円+税サイズB6変刊行年2021年

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第65回 潤沢なワクチン在庫は一体どこへ、実はわれわれのすぐそばに届いていた!?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン2回目の接種を数日前に完了した。さてその男性、52歳の接種後の状況だが、現時点で接種から2日経過したが、これまでのところ体温計で測定した体温は平熱の範囲。ただ、接種翌日の朝からなぜか足の裏が熱い感じがほぼ丸一日続いた。それと接種翌日の昼間、外を歩いて何とも言えない倦怠感に襲われた。初めは気のせいだと思っていたが、夕方にスポーツジムに行き、あまりの倦怠感で、普段と同じ時間をかけても計算上の消費カロリーにして6割程度の運動量しかこなせなかった。しかも、いつもと比べ、明らかに発汗量が多い。今は7時間の睡眠を経て、驚くほどすっきりしている。これが副反応だったのかもわからない。ただ、一つだけ分かったのは「若い人ほど発熱がある」というのが事実だとすれば、自分は若くはないということだろうか?さてそのワクチンだが、連日の報道によると「供給不足」が懸念されているという。ただ、私はこの報道についてはやや疑問に思っている。「ないものはない」ではなく、「あるけどない」とみているからだ。少なくともモデルナ製ワクチンについては、どうやら予定通りの供給になっていなかったということをワクチン担当の河野 太郎大臣が明らかにしている。しかし、ファイザー製もそうだろうか?まず、厚生労働省が発表しているファイザー製ワクチンの一般接種向けの供給状況のデータを見てみよう。7月の予定供給量は2,527万2,000回分で、前月の6月分が3,451万5,000回分だから確かに7月は6月の27%減。そして8月以降の見通しは、報道によると2週間おきに約1,170万回になる見込み。つまり8月の予定供給量は約2,340万回分。7月比で7%減となる。確かに数字上は減少している。ただ、すでに7月末までの供給量は回数にして約1億78万回分となる。ちなみに前述の河野大臣によるモデルナ製ワクチンの供給状況の数字と合わせれば、日本国内全体としては約1億1,400万回分が供給されていることになる。そして7月6日現在の一般接種の総接種数は4,143万4,655回。現時点では国内に約7,257万回分が残されていることになる。日本国内の計算上の接種対象者(12歳以上)は約1億1,500万人であり、ここには優先接種対象となった医療従事者が含まれている。首相官邸のホームページに掲載されているデータ上では、「医療従事者等」枠で2回の接種を終えた人は7月2日時点で約499万人。また、高齢者も含む一般接種で2回の接種を終えた人は7月6日時点で約1,251万人。ここからすると、残る高齢者を含む一般住民の接種対象者は9,750万人となる。現在一般接種で1回目を終え、2回目待ちが約1,300万人、同じく医療従事者枠で2回目待ちが約100万人、合計で2回目接種待ちが約1,400万人。この2回目接種待ちの人に優先的にワクチンが配布されると仮定すると、残る国内の接種対象者は約8,350万人に対して、ワクチンの国内在庫は約5,800万回分残されていることになる。もっとも残る国内接種対象者の試算はあくまでワクチンの適応上の年齢をカットオフ値にして算出したもので実際の接種希望者とは異なる。おそらく、このうちの2~3割は接種を希望しないと考えられる。そのように考えると、今後のワクチン供給速度の多少の減速を考慮しても、一部で騒ぐような「供給不足」とまでなるのかは正直疑問を感じている。この件について私は2週間ほど前からいくつかのメディアから取材を受けているが、問題の本質は、都市部を中心にまだ優先接種対象者のみの接種段階で留まっている自治体の一部医療機関で、ワクチン在庫が滞留しているからではないかとみている。今回のワクチン接種では自治体が高齢者に対する接種を細々と開始していた5月に菅 義偉首相が突如「1日100万回接種」の目標を公言。これを機に自治体が集団接種会場での接種枠を増加させ、防衛省が運営する大規模接種センター、職域接種などがスタートして接種機会の選択肢が大幅に増加した。この頃から私はワクチン接種を担当している都市部の中小医療機関で「接種の予約枠が埋まらない」という話をよく耳にした。前述のように接種機会が増えたことで、なるべく早く接種したい人ほど多少遠い場所でも予約が入りやすそうな接種会場を選ぶ傾向が強まり、結果として「灯台下暗し」で市中の中小医療機関で予約枠に空きが生まれてしまっていたのだ。こうした状況に、自治体が「(接種担当医療機関の)かかりつけ患者ならば、優先接種対象者でなくとも余った予約枠で接種しても良い」などの柔軟な対応をしていれば、問題はなかったのかもしれないが、多くの自治体側は高齢者や基礎疾患のある人という接種順位をきっちり横並びで守っている。地方自治体としてはやはり「出過ぎた真似」はできないということなのだろう。こうした状態は今でも結構あちこちで聞こえてくる。しかも今の仕組みでは自治体側が個々の接種医療機関の在庫を必ずしもリアルタイムで把握できないため、どこに滞留ワクチンがあるのかもわからない。この状況を「劇薬」で改善するならば、一つは接種券を広く配布して、優先接種順位を維持しつつも原則先着順で誰でもが受けられるようにすることだ。もっともこれを行えば、強烈な「副産物」が2つ発生する。1つは、ただでさえマンパワー不足で悩む地方自治体のワクチン関連業務のさらなるひっ迫である。悩ましい問題ではあるのだが、これまでのワクチン関連のイベントの動向をみると、新たな動きから1~2週間後にはピークアウトが起こる。実例は防衛省が運営する大規模接種センターでの予約状況などだ。正直、ここは地方自治体の職員の皆さんに「短期間だけ我慢して」とお願いするよりほかにない。もう1つは滞留在庫もはけた後の本格的なワクチンの供給不足である。これについての解決策は、現在公的接種では使用されていないアストラゼネカ製ワクチンを使うことだ。このワクチンは、接種した人でごくまれながらも重篤な血栓症の副反応が報告されたことから、日本では製造販売を承認しながら公的接種での使用を控えている。しかし、すでにデータで示されているが、この血栓症の発症確率は約25万分の1。それによる死者は血栓症発症者の5人に1人なので、このワクチンを接種することで死亡する確率は約125万分の1という低頻度である。本来ならば使用を控えるまでの頻度ではないし、若年者で発生しやすいことも分かっているので、対象者を絞り込んで接種することで頻度をより低く抑えることも不可能ではない。とはいえ政府側では、たとえ低頻度でも重篤な副反応が発生することが分かっているワクチンを使用して実際に副反応が報告された場合、今回の新型コロナのワクチン接種全体への信頼性低下につながる可能性があることを危惧し、公的接種での採用を控えたのだろう。だが、現在はまさに非常時。そろそろ政府も一歩踏み出した決断とそれに伴うリスクコミュニケーションを身に付けて欲しいのだが…。

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中国製不活化ワクチン、3~17歳に良好な安全性と免疫応答

 新型コロナワクチンの成人に対する接種が世界的に広がっているが、小児に対する有用性を検証することを目的とした臨床試験も進んでいる。中国において3~17歳の小児および青年を対象とした研究の結果が発表された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版6月28日号掲載の報告。 中国・河北省にある疾病対策センターで、3~17歳の健康な小児および青年を対象に、中国Sinovac Biotech社の不活化ワクチン「CoronaVac」(WHO緊急使用リストおよび33ヵ国で承認済み)の二重盲検無作為化比較第I/II相試験を行った。 参加者はSARS-CoV-2への曝露または感染歴のある人は除外され、ワクチン群と対照群(ミョウバンのみ)に割り付けたうえで、2回接種(0日目と28日目)を受けた。 第I相試験は、72例を対象に、各年齢層(3~5歳、6~11歳、12~17歳)を低用量段階(ブロック1)から高用量段階(ブロック2)へ順に割り付けた。ブロック1は低用量ワクチン群(1.5μ)または対照群(ミョウバンのみ)、ブロック2は高用量ワクチン群(3.0μg)または対照群に3:1で無作為に割り付けた。 第II相試験は、480例を対象に、3ブロックに分け、ブロックごとに低用量ワクチン群(1.5μg)、高用量ワクチン群(3.0μ)、対照群に2:2:1で無作為に割り付けた。 安全性の主要評価項目は、少なくとも1回の接種を受けた全参加者における28日以内の有害反応であった。免疫原性の主要評価項目は、2回目接種から28日後のSARS-CoV-2に対する抗体陽転率だった 主な結果は以下のとおり。・2020年10月31日~12月2日に72例が第I相、2020年12月12日~30日に480例が第II相に登録され、計550例がワクチンまたはミョウバンのみを少なくとも1回接種された(第I相71例、第II相479例)。・第I相と第II相を合わせた安全性プロファイルでは、接種後28日以内に何らかの副反応が発生したのは、1.5μg群56/219(26%)、3.0μg群63/217(29%)、対照群27/114(24%)であり、有意差はなかった(p=0.55)。・副反応の多くは軽度および中等度であった。最も高い頻度で報告されたのは注射部位の痛み(73/550[13%])で、1.5μg群36/219(16%)、3.0μg群35/217(16%)、対照群2/114(2%)に発生した。・2021年6月12日現在、対照群で肺炎の重篤な有害事象が1件報告されているが、ワクチン接種とは無関係と考えられている。・第I相試験では、2回目接種後に抗体陽転が1.5μg群27/27(100%)、3.0μg群26/26人(100%)に認められた。第II相試験では、1.5μg群180/186(96.8%)、3.0μg群180/180(100%)に認められた。対照群では検出可能な抗体反応はなかった。 研究者らは、この研究は不活化ワクチンを3~17歳の小児および青年を対象に試験を実施した初めての報告であり、CoronaVacは3~17歳の小児および青年において忍容性が高く安全であり、体液性免疫応答を誘導した。3.0μg投与で誘導された中和抗体価は1.5μg投与よりも高い免疫応答を示し、今回の結果は小児および青年を対象とした今後の研究において3.0μgの投与量と2回の免疫スケジュールの使用を支持するものである、としている。

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ファイザー/モデルナワクチンに心筋炎・心膜炎の注意喚起/使用上の注意改訂

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン(一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARSCoV-2))であるコミナティ筋注(ファイザー)とCOVID-19ワクチンモデルナ筋注(武田薬品工業)について、使用上の注意の「重要な基本的注意」の項に心筋炎および心膜炎に関する注意喚起を追記するよう、7月7日付けで改訂指示が発出された。 今回の改訂指示は、国内ではこれらのワクチンとの因果関係が否定できない心筋炎および心膜炎の副反応疑い報告はないものの、以下の状況を考慮し、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断されたことによる。・海外において、因果関係は不明であるが、これらのワクチンの接種後に心筋炎および心膜炎が報告されていること・海外において、心筋炎および心膜炎の注意喚起がなされていること・国内においても、因果関係は不明であるが、症例集積が認められること・心筋炎、心膜炎が疑われる症状が認められた場合には医師の診察を受ける旨をあらかじめ被接種者に指導することが、早期発見および重症化への対処の上で重要であると考えること・接種対象者の拡大に伴うAYA世代への接種数増加が予想されること なお、国内で集積された症例は、心筋炎関連はコミナティ筋注で12例(うち死亡2例)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注で1 例(死亡例なし)、心膜炎関連はコミナティ筋注で3例(死亡例なし)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注では報告されていない。いずれも、因果関係が否定できない症例は報告されていない。 両ワクチンの添付文書における改訂(新設)は以下のとおり。8. 重要な基本的注意本剤との因果関係は不明であるが、本剤接種後に、心筋炎、心膜炎が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。15. その他の注意15.1 臨床使用に基づく情報海外において、因果関係は不明であるが、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に心筋炎、心膜炎が報告されている。報告された症例の多くは若年男性であり、特に2回目接種後数日以内に発現している。また、大多数の症例で、入院による安静臥床により症状が改善している。

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COVID-19ワクチンの血栓性合併症にIgGは有効なのか?(解説:後藤信哉氏)

 COVID-19 pandemicは持続している。ワクチンは切り札と理解されているが、ウイルスベクターのワクチンでは血栓イベントの合併がまれとはいえ発症する。血栓性合併症に対して抗凝固療法とIgGbの併用が推奨されている。カナダではウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19を、ワクチンによる血栓症が少ないとされた55歳以上に使用した。それでも63~72歳の症例に血栓イベントが発症した。血栓イベントは2例が下肢動脈血栓症、1例が脳静脈洞血栓症であった。3例ともヘパリンと血小板第4因子に対する抗体(いわゆるHIT抗体)を認めた。IgG投与によりHIT抗体は減少した。 本研究は3例の経験にすぎない。しかし、世界のCOVID-19 pandemic抑制に期待されるワクチンでもまれに重篤な血栓イベントを起こすこと、血栓イベントに対してまったく対応法がないわけではないことを示している。ワクチンによる血栓症ではいわゆるHIT抗体が高いとされていた。HITであれば、血栓症に対してヘパリンを使うわけにはいかない。アルガトロバンなどの他の抗凝固薬に転換された。しかし、抗凝固薬転換のみでは血小板数は活性化しなかった。HITではHIT抗体による血小板活性化がFcRg受容体刺激を介して起こる。そこで大量のIgGを添加すれば病態を改善できる可能性がある。本研究の対象は3例であり、臨床イベントを標的とした研究ではないが、3例の血小板数、HIT抗体量などを丁寧に計測してIgG療法の有効性を示唆した。 筆者はワクチン反対論者ではない。積極的ワクチン接種がCOVID-19 pandemic克服への唯一の希望と思っている。ワクチンによる合併症はまれである。しかし、0(ゼロ)ではない。ワクチンには血栓イベントなど致死的な合併症のリスクはあるが、臨床医は確立された治療がなくても類似病態を参考にベストを尽くす。すべての合併症が治るとは言わない。しかし、合併症が起こったら、その実態を社会で共有し、対応策をみんなで考えることが大事である。 本論文は、まれだが致死的合併症に対してでも医師がベストを尽くして対応している、カナダ社会の健全性を示す論文として評価できる。

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第65回 コロナワクチン巡る突然の供給減で垣間見えた国の不信行為

新型コロナウイルスのワクチン接種を巡っては、各地の自治体で新規予約を停止する動きが相次いでいる。新規感染者が高止まりしている大阪府の医療機関でも、“寝耳に水”のような状況でワクチン供給量削減の連絡が来た。住民にワクチン接種を行ってきた医療機関は、情報不足と方針転換に戸惑いながら時間と人員を割いてきただけに、大阪府保険医協会は国に対する疑念を示すとともに、国民に対する説明責任を求めている。6月28日、大阪府医師会から「緊急連絡」という書面が大阪市内の新型コロナワクチン個別接種を取り扱う医療機関に届いた。その内容は、「先週、各医療機関から発注があったワクチンに関しては、発注量から1割減をした上で(大阪市医師会から)各医療機関に供給予定」というものであった。さらに6月30日付の「続報」では、「7月5日週の供給量について、おおむね1~3割を減じた数を配送」と通知された。6月29日には、吹田市でも「8月1日以降は当面最大送量を10本/週に減らしての対応」を依頼する旨の書面が、市医師会から市内医療機関に送られていた。医師らからは「国に梯子を外された」と恨み節大阪府保険医協会には、「8月いっぱい予約が詰まっている。急に減らされて困っている」「保健所に問い合わせたらキャンセルの連絡をして欲しいと言われたが、簡単なことでない」「国から梯子を外された感じ」などと怒りや不安の声が寄せられている。また、予約がキャンセルになった人たちが「やっと接種券が来たのに……」とがっかりする姿に心が痛むという声も寄せられているという。この間、河野 太郎・新型コロナワクチン接種推進担当大臣は、連日にわたりワクチン接種を進める“宣伝”を行っていた。東京五輪・パラリンピックの開催を前提に、高齢者接種の7月末完了を掲げ、つい最近では幅広い年齢層への接種開始を大きくアピールしていた。さらに、ワクチン接種回数が多い医療機関に対しては、接種費用を上積みしてまで接種促進に発破を掛け続けていたのだから、先述の医療機関の落胆や不満はもっともだ。ワクチン接種進める一方で、不足を把握していた疑念大阪府保険医協会は、7月1日に発表した声明の中で、「多くの自治体が現役世代に接種券を送付し、職域接種が開始される6月21日以前に、国は“ワクチンが足らない”状況を把握していた可能性がある」と指摘する。具体例の1つとして、以下のような点を挙げる。それは、6 月19日に開催された全国知事会の「9都道府県の緊急事態宣言の解除等を受けた緊急提言」に、「ファイザー社ワクチンの配分が7月以降急減する実情にあり、ワクチン接種を加速する流れに水を差すのではないかと懸念される」との文言があるのだ。全国知事会は国の情報を基にワクチンの供給削減について言及したはずだ。同協会は「国はなぜ早く対策をとらず、“ワクチン接種に突き進め”と号令をかけ続けたのか。ワクチン接種ができると期待していた国民に対して説明責任を果たすべきだ」と批判。そして、「実態を把握せず、医療現場や全国の市町村に丸投げし、不手際に対してその責任を現場に負わせる。こうした政府の姿勢に厳しく抗議するとともに、いのちを守ることより、五輪開催に突進する姿に恐怖すら感じる」と糾弾した。ワクチン接種を待ち望んでいる住民を落胆させたり、地域で頑張っている医師の心を折ったりするようなことはあってはならない。

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COVID-19診療手引きを更新、デルタ株や後遺症などを追記/厚労省

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」について、最新の知見を踏まえて更新した「第5.1版」を作成し、6月5日付で都道府県などに周知した。最新版では、懸念される変異株の概要を更新し、インドで最初に検出された「デルタ株」について、推定される感染性や重篤度、ワクチンへの影響などが詳しく記載された。また、症状の遷延(いわゆる後遺症)について、日本国内の複数の調査(厚生労働科学特別研究事業)の中間集計報告が追記されている。 診療の手引き・第5.1版の主な改訂ポイントは以下のとおり。【病原体・疫学】・変異株について更新、懸念される変異株(VOC)の呼称にギリシャ文字を使用・主要なVOCの概要を更新、B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)について追加・国内発生状況を更新 →2021年6月29日までのデータを追記【臨床像】・重症化マーカーTARCについて追加・症状の遷延(いわゆる後遺症)について厚生労働科学特別研究事業の中間集計報告を追加【症例定義・診断・届出】・病原体診断について更新【重症度分類とマネジメント】・ECMO、血液浄化療法について更新・ワクチン接種後に生じる血小板減少症を伴う血栓症(TTS)について追加(参考)・患者急増の際の入院優先度判断の考え方について追加(参考)【薬物療法】・有効性を認めなかった薬剤にカモスタットを追加・ファビピラビルを妊娠する可能性のある婦人に投与する場合の注意喚起を更新・ナファモスタット吸入薬の開発中止について記載・企業治験中のAT-527、GSK3196165IV、GSK4182136、REGN-COV2を追加【院内感染対策】・環境整備について更新【退院基準・解除基準】・期間計算のイメージ図を更新

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第65回 三重大事件で製薬会社、医療機器メーカーの社員に有罪判決、大学は“どこ吹く風”と後任教授公募へ

小野薬品、日本光電の社員に執行猶予付き有罪判決こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。私が住む町でも、64歳以下の住民にワクチン接種券がやっと届きはじめました。早速予約を試みましたが、7月は既に満員でした。そんな中、各紙報道によると、自治体によっては新規の接種予約を停止するところが出てきているようです。自治体の接種で使用しているファイザー製ワクチンの国からの供給量が、自治体の希望量に追いついていないためです。また、6月30日に菅 義偉首相は、企業・大学などからの申請受付を一時停止していた職域接種について、新規の受付を事実上中止する方針を表明しました。受付を再開すれば、職域接種に用いるモデルナ社製ワクチンが不足すると判断したため、とのことです。「1日100万回!」「7月末までに高齢者接種終了!」と菅首相が大号令をかけ、自治体や企業などにも相当無理をさせた上でのこの状況。政府がワクチン供給の見通しを誤ったことに加え、全国の在庫状況をきちんと把握できていないことが混乱に拍車をかけています。一方、海外では、変異株の増加などを背景に、ブースター効果を期待した3回目の接種を進めている国もあります。感染の再拡大とワクチン接種の遅れで、オリンピックはいよいよ無観客開催が現実になりそうな気配です。さて、今回は再び三重大病院臨床麻酔部の事件を取り上げたいと思います。事件発覚から約10ヵ月が経って、とうとう小野薬品工業(大阪市)の社員、日本光電工業(東京都新宿区)の元社員に有罪判決が下りました。三重大の事件については、この連載でも「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」「第36回 元准教授逮捕の三重大・臨床麻酔部不正請求事件 法律上の罪より重い麻酔科崩壊の罪」「第40回 三重大元教授逮捕で感じた医師の『プロフェッショナル・オートノミー』の脆弱さ」「第45回 製薬企業からの奨学寄付金が賄賂に、三重大元教授再逮捕の衝撃」と何度も取り上げ、元臨床麻酔部教授はじめ、麻酔科医たちのあきれた所業を伝えてきました。社員たちの有罪判決は、元臨床麻酔部教授のお金への執着に翻弄された結果と言えます。彼らは皆、働き盛りの30~40代です。医師にかしずく製薬会社や医療機器メーカーの営業職の就職人気は、今後ガタ落ちするかもしれません。「奨学寄附金」200万円を「賄賂」と認定津地裁は6月29日、三重大病院の臨床麻酔部の54歳の元教授に薬剤を多数発注してもらう見返りに現金200万円を提供したとして、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人に懲役8ヵ月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。社員は三重大を担当する中部営業部長(48歳)と三重営業所の担当MR(44歳)です。検察は営業部長に懲役1年、担当MRに懲役10ヵ月を求刑していましたが、2人とも同罪となりました。判決では、2018年3月に三重大名義の口座に振り込んだ「奨学寄附金」200万円を、「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を多数受注できるようにするための「賄賂」だと認定しました。裁判官は「医師から働きかけがあったとはいえ、利益を優先して奨学寄付の趣旨を歪める形で見返りを期待して現金を供与する犯行に及んだことは、あまりにも軽率」とした上で、「賄賂は比較的多額で公務の適正や社会の信頼を害した結果は重い」と述べました。公判で弁護側は、奨学寄付金200万円の提供は、元教授の主導で行われたとし、「大学と製薬会社の力関係や、大学の奨学寄付金の根本的なひずみが生んだ事件で、すべてを2人の責任にはできない」と反論し、罰金刑か執行猶予付きの判決を求めていました。社員2人が執行猶予付きの有罪判決を受けたことについて、小野薬品は「このような事態を招いてしまったことを厳粛かつ重大に受け止めるとともに深くお詫び申し上げます。今後、できる限り速やかに再発防止策の詳細、および奨学寄付の在り方を決定し、早期の信頼回復に努めます」という主旨のコメントを発表しました。会社を懲戒解雇された日本光電元社員この判決の前日、6月28日の津地裁では、同じく三重大病院の医療機器納入をめぐる汚職事件で、贈賄罪に問われた医療機器メーカー・日本光電の元社員3人の判決もありました。この判決では、元中部支店医療圏営業部長(48歳)に懲役1年、執行猶予3年、元三重営業所長(41歳)と元三重営業所員(37歳)の2人に懲役10ヵ月、執行猶予3年を言い渡しています。3人は2019年8月、自社の生体情報モニター納入で便宜を図ってもらう見返りに、臨床麻酔部の元教授が代表理事を務める団体の口座に現金200万円を振り込んだとのことです。この事件では、元教授が「寄付金を入れないと臨床麻酔部には出入りさせない」などと話し、高額な寄付を求めていたことも明らかになっています。裁判長(小野薬品の事件と同じ裁判長です)は、仲介業者への値引き販売を利用して賄賂の資金を捻出した手口を「手が込んでいて悪質」、「自社の利益を優先した犯行は非難を免れない」と非難しました。3人が罪を認めていることや、会社を懲戒解雇され、社会的制裁を受けていることから、執行猶予付き判決が相当と判断したとのことです。第三者供賄、詐欺罪を問われる元教授の判決は?ランジオロール塩酸塩の不正請求の発覚に端を発したこの事件、張本人である三重大病院臨床麻酔部元教授は、1月6日、愛知、三重の両県警に第三者供賄の疑い(日本光電の生体情報モニター導入の件)で逮捕され、1月27日には、小野薬品のオノアクトに関する詐欺罪の疑いで再逮捕されています。なお、発端となった不正請求事件(実際には使わなかったランジオロール塩酸塩を患者に投与したように電子カルテを改ざんし、診療報酬をだまし取った)で、詐欺などの罪に問われた臨床麻酔部元准教(48歳)については、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年とした津地裁判決が5月7日に確定しています。本丸である元教授が第三者供賄、詐欺罪について問われる公判はこれからです。これまでに6人の有罪が確定し、彼らの人生も大きく狂わせたことを考えると、6人よりも重い罪になることも考えられます。三重大は麻酔科の主任教授を公募中ところで、以上の公判が進む中、三重大は6月10日付で臨床医学系講座(麻酔科学分野)教授の公募を開始していました。この公募のお知らせには、臨床医学系講座(麻酔集中治療学分野)の教授の定年退職で、教授を公募するとしています。ただ、今回の事件含め、過去いろいろと問題の多かった臨床麻酔科学のポストは見直す方向のようです。お知らせでは、「三重大学では、麻酔科学分野として、麻酔集中治療学分野と臨床麻酔科学分野があり、後者は、医学部附属病院において全身麻酔を中心に従事する『臨床麻酔部』を組織しています。この臨床麻酔科学分野を麻酔集中治療学分野に統合し、臨床医学系講座(麻酔科学分野)として後任の教授を選考することになりました」と書かれています。さらに、「当該教授には教育研究分野としての『麻酔科学分野』、関連する診療科等としての 『臨床麻酔部』と『麻酔科』を一元的に統括していただき、医学部附属病院における麻酔科長を兼務し、麻酔科専門研修プログラム統括責任者を務めていただきます」となっています。つまり、臨床麻酔部は廃止、麻酔集中治療学の教授に主任教授として全権を与え、研究・教育から病院の麻酔、研修プログラムまで全体を管理してもらう、ということのようです。「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」でも書いたように、15年近くに渡って問題を起こし続けてきたいわくつきの三重大麻酔科に、外部からわざわざ手を挙げてやって来る麻酔科医が果たしているでしょうか。元教授は、医局の運営や若手麻酔科医のリクルート等のためにお金が必要だった、という報道もありました。国立大学医学部の教授は、もはや決して”美味しい”地位、役職ではありません。とは言え、地域の基幹病院でもある三重大病院でとしては、麻酔科をなんとかしなければなりません。事件や事故で再び世間を騒がせ、地域の医療に迷惑をかけないためにも、選考にあたっては、提出論文含め、これまでの論文に不正がなく、麻酔も上手で、人柄よく、お金にきれいな人物が選ばれることを願っています。もっとも、そんな奇特な人物がいればの話ですが…。

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第67回 がん患者にmRNAワクチン有効/米国のCOVID-19死亡例の接種状況/ワクチン開発に役立つ発見

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの効果を裏付ける2つの報告と次世代のCOVID-19ワクチン開発で参考になりそうな研究成果を紹介します。がん患者の94%がCOVID-19のmRNAワクチンに応答Pfizer/BioNTech社やModerna社のmRNAワクチン・BNT162b2やmRNA-1273が投与されたがん患者のほとんどが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体を幸いにも発現しました1)。2回目の接種を済ませたがん患者123人中116人(94%)にSARS-CoV-2への抗体が認められました。ただし、先立つ6ヵ月間に抗CD20抗体リツキシマブ治療経験がある4人にはSARS-CoV-2への抗体が認められませんでした。また、骨髄腫やホジキンリンパ腫などの血液がん患者の抗体発現率は77%であり、固形がん患者の98%に比べて低めでした。血液がん患者は抗体活性も低めでした。今後の課題として、そのような不安要素がある患者へのがん治療後の3回目の接種の検討などが必要です2)。米国では今やワクチン接種済みのCOVID-19死亡例は1%に満たないAP通信社が米国疾病予防管理センター(CDC)の5月のデータを独自に調べた結果によると同国のCOVID-19死亡のほぼすべてはワクチン接種が済んでいない人でした3)。5月のおよそ11万のCOVID-19入院患者にワクチン接種が済んだ人はほとんどおらず僅か約1.1%の1,200人足らずでした。また、5月にCOVID-19で死亡した1万8,000人超にもワクチン接種が済んでいる人はほとんどおらず1%にも満たない(およそ0.8%)約150人のみでした。好中球の投網でCOVID-19を一網打尽?Pfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種でも発現4)しうることが知られるIgA抗体は粘膜表面に豊富でウイルス病原体の防御で重要な役割を担います。IgA抗体はウイルスに直接取り付いて細胞感染を阻止することに加え、免疫細胞表面にあるFc受容体と協力して抗菌活性を促しうることが知られています。Fc受容体を介したIgA抗体のウイルス感染への作用はこれまでよく分かっていませんでしたが、PNAS誌に掲載された新たな研究の結果5)、IgA抗体-ウイルス複合体は好中球のFc受容体に結びついてクモの巣状の仕掛け・NET(好中球細胞外トラップ)を投網の如く好中球に分泌させると分かりました。好中球が破裂(NETosis)して放たれるNETはウイルスを捉えて不活性化することも確認され、その抗ウイルス機能が裏付けられました。他の免疫活性がそうであるようにNETは有益である一方で行き過ぎると害をもたらします。IgA抗体が感染前に豊富に備わっていればNETは感染防御を担うでしょう。しかし感染でIgA抗体がたくさん作られてしまうとNETは炎症を引き起こしてむしろ病状を悪化させてしまう恐れがあります6)。SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスなどに対抗するIgA抗体をあらかじめ備えておくための次世代のワクチン開発に今回の成果は参考になるでしょう。参考1)Addeo A, et al.Cancer Cell. 2021 Jun 18:S1535-6108,00330-5.2)94% of patients with cancer respond well to COVID-19 vaccines / Eurekalert3)Nearly all COVID deaths in US are now among unvaccinated / AP4)Turner JS, et al.Nature. 2021 Jun 28. [Epub ahead of print]5)Stacey HD, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jul 6;118.6)Researchers discover unique 'spider web' mechanism that traps, kills viruses / Eurekalert

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新型コロナ家庭内感染におけるワクチンの効果/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種は、家庭内感染を減少させるのだろうか。英国の全国データを分析した結果、検査陽性となる21日以上前にワクチンを接種していた感染者では未接種の感染者に比べ、家庭内感染のオッズ比が0.52~0.54と低かった。また、14日以上前に接種していた場合に家庭内感染の予防効果が認められた。英国・Public Health EnglandのRoss J. Harris氏らが、NEJM誌オンライン版2021年6月23日号のCORRESPONDENCEに報告した。 本調査では、Household Transmission Evaluation Dataset(HOSTED)のデータを用いた。HOSTEDは、英国において検査で確認されたすべてのCovid-19症例に関する情報があり、住所が同じ人々のデータがリンクされている。これらのデータを、英国でのすべてのCovid-19ワクチン接種に関する個人レベルのデータにリンクさせた。 SARS-CoV-2検査陽性となる21日以上前にアストラゼネカ製ワクチン(ChAdOx1nCoV-19)またはファイザー製ワクチン(BNT162b2)を少なくとも1回受けたSARS-CoV-2感染者からワクチン未接種の家庭内接触者への2次感染(発端患者の検査陽性後2〜14日に検査陽性と定義)のリスクについて、ワクチン未接種の感染者からワクチン未接種の家庭内接触者への2次感染リスクと比較した。Covid-19の発端患者の年齢と性別、家庭内の接触、地域、発端感染の暦週、剥奪指標(社会経済および他の因子の複合スコア)、世帯の種類や規模を調整し、ロジスティック回帰モデルを実施した。 主な結果は以下のとおり。・2021年1月4日~2月28日における、ワクチン未接種だった発端患者の家庭内接触者は96万765人のうち、9万6,898人(10.1%)が家庭内で2次感染した。・ワクチン未接種だった発端患者の家庭内を基準とした、検査陽性の21日以上前にワクチン接種を受けた発端患者の家庭内での2次感染の調整オッズ比(95%信頼区間)は、接種ワクチンがアストラゼネカ製の場合で0.52(0.43~0.62)、ファイザー製ワクチンの場合で0.54(0.47~0.62)だった。・今回のデータセットにおいて、ワクチン接種を受けた発端患者の93%が、接種が1回のみだった。・発端患者のワクチン接種時期による家庭内接触者間の感染リスクの評価では、ワクチン接種が検査陽性の14日以上前だった場合に感染予防効果が示された。

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第61回 医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志

<先週の動き>1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志感染症専門医・忽那 賢志氏がYahoo!ニュースに寄稿した内容が話題となっている。わが国においての新型コロナワクチン接種は、あくまでも希望制として進められているが、「医療従事者であってもワクチンを接種しない権利は守られるべきか、医療従事者は原則としてワクチンを接種すべきか」は、簡単に答えが出せない問題である。忽那氏は、国内におけるワクチン接種をしなかった医療従事者を含む医療機関でのクラスター発生事例を紹介し、「個人の『接種しない権利』は守られるべき」としながらも、「しかし医療従事者の場合は、ワクチン接種をしないことが直接患者さんへの被害につながることがあり、一般の方とは少し分けて考えるべきなのではないかと思います」と意見を綴った。同氏は、自身のTwitterアカウントで「こういう意見もあるよという程度のものですので議論のきっかけになれば幸いです」とコメントしている。(参考)医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか(Yahoo!ニュース)忽那賢志氏 Twitter(@kutsunasatoshi)2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?河野規制改革担当相は、各自治体への新型コロナウイルスワクチン供給が、7月下旬以降、希望している量の3分の1程度になるとの見通しを明らかにした。これは、6月末までに1億回分が供給されたファイザー製ワクチンの供給量が今後減少するため。ワクチンの供給不足を理由に、新規予約を停止する自治体もあり、その影響で予約患者のキャンセル手続きに入った医療機関も出ている。当初伸び悩んでいたワクチン接種件数だが、「オリンピック開催の7月までに65歳以上の接種を完了させる」という目標達成のため、1日100万件接種の実施を推進してきた。各自治体は、国からの供給量が減少する中、接種計画の見直しを迫られる。(参考)ブレーキかかるワクチン接種 募る不満「政府も手探り」(朝日新聞)ワクチン供給に不安が94% 都道府県庁市区、共同通信調査(共同通信)ワクチン供給 “減少の見通し” 自治体の接種に影響も(NHK)3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省25日、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」と「規制改革実施計画」が閣議決定された。規制改革実施計画には、「デジタル時代に向けた規制の見直し」としてオンライン診療・服薬指導の特例措置の恒久化が含まれており、今秋までに対象となる症状などを定める見込み。なお、オンライン診療での初診はかかりつけ医を原則としているが、カルテで患者状態が把握できる場合や、事前に基礎疾患などを確認して、オンライン診療が可能と医師と患者が判断した場合は、初診からのオンライン診療を認める方針。(参考)初診からオンライン診療 恒久化へ秋にも指針改定 厚労省(NHK)オンライン初診、秋にも対象症状を線引き 厚労省(日経新聞)資料 令和3年「規制改革実施計画」(内閣府)4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革厚労省は、1日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で、医療機関における医師労働時間短縮計画の作成ガイドライン案を修正し、2023年度末までは努力目標とすることを発表した。今年2月に成立した改正医療法により、2024年4月から診療に従事する勤務医に対して時間外労働の上限規制が適用される。このため、2021年からすべての医療機関に対して、医師の労働時間の調査を行い、各都道府県に設けられた医療機関勤務環境評価センターへの報告が求められる。また、現状で時間外労働が960時間を超える医師がいる病院で、2024年以降も特例のB・C水準の取得を希望する場合は、医師労働時間短縮の作成と医療機関勤務環境評価センターによる評価の受審が必須となる。(参考)23年度末までの医師時短計画は努力義務に 厚労省、作成ガイドライン案修正(CBnewsマネジメント)医師の労働時間把握へ、全病院に調査 21年度、厚労省(同)医師時短計画作成は努力義務だが「B水準等指定の前提」な点に変化なし、急ぎの作成・提出を―医師働き方改革推進検討会(1)(GemMed)第12回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(厚労省)5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省財務省は29日に、国の事業に無駄がないか調べる予算執行調査について公表した。これまで、後発医薬品については、保険薬局を対象に「後発医薬品調剤体制加算」を設けて使用促進を図っており、2023年度末までに後発品の使用割合を、すべての都道府県で80%以上とする目標を設定している。現状では、保険薬局の7割超が加算を取得し、減算制度の適用はわずか0.3%。残りの薬局が目標を達成すると200億円の抑制効果がある一方、加算は年1,200億円に上るため、費用対効果が極めて薄いと財務省は主張している。来年の予算編成に向け、厚労省に見直しを求める。(参考)後発薬の診療報酬加算、廃止求める 財務省が調査(日経新聞)後発医薬品調剤体制加算、廃止を含めた見直し要請 財務省・調査「費用対効果も見合っていない」(CBnewsマネジメント)資料 令和3年度 予算執行調査の調査結果の概要(6月公表分)(財務省)6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄沖縄県は30日に、重点医療機関である沖縄県立中部病院において新型コロナウイルスのクラスターが発生したことを発表した。クラスターは5月24日~6月17日にかけて発生。7月1日時点で患者36人(うち死亡は17人)と職員15人の計51人の感染が報告された。このうち、ワクチン接種を希望しなかった看護師12人が感染したことが明らかになった。同院では6月17日を最後に新たな感染者は確認されていない。(参考)ワクチン非接種の看護師12人が感染 沖縄の県立病院(産経新聞)沖縄県立中部病院でクラスター 患者ら50人感染(毎日新聞)

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AZ製ワクチン接種後の血栓症の診療の手引き・第2版/日本脳卒中学会・日本血栓止血学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まり、全国で一般市民に対しても接種が急速に進んでいる。その一方で、2021年3月以降、アストラゼネカ社アデノウイルスベクターワクチン(商品名:バキスゼブリア)接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症を来すことが報道され、4月に欧州医薬品庁(EMA)は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態とした。また、ドイツとノルウェー、イギリスなどからもバキスゼブリア接種後に生じた血栓症のケースシリーズが相次いで報告され、ワクチン接種後の副反応として血小板減少を伴う血栓症が問題となった。この血栓症は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似した病態と捉えられ、VITTやVIPITという名称が用いられた(本手引きでは血小板減少症を伴う血栓症[TTS]を用いる)が、本症の医学的に適切な名称についてはいまだ議論があるところである。 海外では、国際血栓止血学会、米国血液学会などからTTSに関する診断や治療の手引きが公開されており、WHOからも暫定ガイドラインが発表された。海外と医療事情が異なるわが国には、これまで本疾患に対する診療の手引きは存在しなかったため、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会は、COVID-19ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめ、日常診療で遭遇した場合の対応方法を提言するために2021年6月に「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版」(2021年6月)を作成、公開した。まれだが発症すると致死的なTTS TTSの特徴は1)ワクチン接種後4~28日に発症する、2)血栓症(脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に生じる)、3)血小板減少(中等度〜重度)、4)凝固線溶系マーカー異常(D-ダイマー著増など)、5)抗血小板第4因子抗体(ELISA法)が陽性となる、が挙げられる。TTSの頻度は1万人~10万人に1人以下と極めて低いが、これまでに報告されたTTSの症例は、出血や著明な脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症が多く、致死率も高い。また、脳静脈血栓症以外の血栓症も報告されているので、極めてまれな副反応であるが、臨床医はTTSによる血栓症を熟知しておく必要がある。目次はじめに1 TTSの診断と治療の手引きサマリー 1)診断から治療までのフローチャート 2)候補となる治療法2 TTSの概要 1)TTSとは 2)ワクチン接種後TTSの発症時期と血栓症の発症部位3 TTSとHITとの関連4 TTSの診断 1)TTSを疑う臨床所見  2)検査 3)診断手順 4)鑑別すべき疾患と見分けるポイント5 TTSの治療 1)免疫グロブリン静注療法 2)ヘパリン類 3)ヘパリン以外の抗凝固薬 4)ステロイド 5)抗血小板薬 6)血小板輸血 7)新鮮凍結血漿 8)血漿交換 9)慢性期の治療おわりに 付1)血栓症の診断 付2)脳静脈血栓症の治療 血栓溶解療法(局所および全身投与)/血栓回収療法/開頭減圧術/抗痙攣薬 付3)COVID-19ワクチンとは 文献 同手引きでは「おわりに」で「TTSは新しい概念の病態であり、確定診断のための抗体検査(ELISA法)の導入、治療の候補薬の保険収載、さらにはワクチンとの因果関係の解明など、多くの課題が残されている。今後、新たな知見が加わる度に、本手引きは改訂していく予定」と今後の方針を記している。

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第64回 オリンピック入国者のコロナ“ザル検疫”、関係者が語る意外な事実と驚愕の見通し

東京オリンピックが今月末から開催される。続々と各国選手団や関係者が入国する中、6月19日、事前合宿のために来日したアフリカのウガンダ選手団9人のうち1人が成田空港検疫で新型コロナのPCR検査で陽性となったことはすでに報じられているとおりだ。該当の選手は検疫による隔離が行われたが、驚くべきことに残り8人はそのままバスで事前合宿地の大阪府泉佐野市に移動。その中からさらに1人の陽性が判明し、泉佐野市職員までもが濃厚接触者に認定されるに至った。ちなみに最初に空港検疫で陽性が判明した選手は、国の療養解除基準を満たしたことから、7月1日未明、泉佐野市の宿舎に到着したと発表されている。濃厚接触の疑いがある選手に移動を許してしまう「ザル検疫」にはかなり驚きだが、実は濃厚接触の判断は自治体(ウガンダ選手団の場合はホストタウンの泉佐野市)が行うとの方針に基づくもの。ただ、残りの選手の移動を許し、移動地で新たな陽性者が発生したことには批判が多く、今後は空港段階で濃厚接触者の特定を行う方針を検討しているという。やや口汚い言い方かもしれないが、この検討そのものが何とも間の抜けたレベルにしか思えない。もっとも空港検疫に限界があることも事実だ。たとえば今回のウガンダ選手団の場合、全員がアストラゼネカ社製ワクチンの2回接種を済ませ、出国96時間以内に2回のPCR検査を受けて陰性だったとの証明書を持参していたという。ここではまず科学的な限界がある。ワクチンで十分な抗体価を獲得できるのは接種完了から1~2週間後で、その効果も100%ではないこと。また、感染から4日後までは感染者の半数以上がPCR検査で偽陰性になってしまう。さらに空港検疫でスクリーニングに使われている抗原検査は、PCR検査と比べれば感度は落ちる。今回のケースはたまたま抗原検査で結果が出なかった選手に念押しのPCR検査を行った結果、陽性になったという結果論から言えば「不幸中の幸い」のようなケースだ。一方、実務上も限界がある。来日する外国人が提示するワクチンの接種証明書やPCR検査の陰性証明書に実施医療機関が記載されていても、空港検疫の窓口ではその医療機関が実在するのか否かを確認している余裕はない。それ以上にそれらの証明書の真贋を判断しきれないのが現実だ。約1ヵ月前、偶然にも検疫業務関係者と話す機会があった。その時この関係者が語っていたのは「陰性証明書を有していても入国時の抗原検査で陽性になるケースは一定程度あり、とくに航空機の場合、この陽性率は到着便の離陸国によって明らかに違う」ということだった。端的に言えば、法制度の運用が先進国ほど厳格ではない国からの到着便の搭乗客が提示する陰性証明書には、偽造が疑われるものが紛れ込んでいる可能性が高いということだ。しかし、この関係者が最も懸念していたことはほかにもあった。たとえば空港検疫で陽性が判明した入国者は、検疫所が用意した宿泊施設で経過観察が行われる。こうした宿泊施設は各入国ポイント近くに存在する。成田空港ならばその周辺すなわち千葉県内である。そしてこの経過観察中に重症化すれば千葉県内の新型コロナ病床に収容される。この現実が意味することは次のようなことだ。10万人程度が来日すると言われる今回のオリンピックでは、主な入国ポイントは成田空港、羽田空港になると思われるが、この水際で感染者を捕捉できたとしても、そこから発生する重症者は東京都、千葉県の新型コロナ病床に入院し、結果的に地域の病床ひっ迫に影響しかねないのである。そして場合によっては地域住民から発生するであろう新型コロナ重症者と病床を取り合ってしまうことさえ想定できるというのだ。ここでやや荒っぽい試算をしてみる。オリンピック関係の想定入国者は10万人と言われる。このうち1%から陽性者が見つかったとしよう。その数は1,000人。感染者のおおむね2割が重症化するのでその数は200人。そしてこちらのデータからは、新型コロナの重症者対応病床は千葉県が101床、東京都が1,207床となっている。2019年出入国管理統計によれば、同年に日本に入国した外国人は3,118万7,179人、うち成田空港からが897万8,773人、羽田空港からが 428万8,078人である。1年間に日本に入国する外国人は成田空港からが29%、羽田空港からが14%を占める。つまり前述の重症者試算にこの割合を加味すると、成田空港からのオリンピック関係入国者からは58人、羽田空港から28人の重症者が出ることになる。試算した成田空港での発生重症者が千葉県の新型コロナ重症者対応病床に入院することになれば、なんとその50%以上を占有することになる。東京都は幸い2%強で済む。ちなみに2019年出入国管理統計での成田空港、羽田空港の入国者がわりに少ないと思った人も多いだろう。これ以外で入国者が多いのは関西国際空港の837万8,039人で、割合にして27%。前述の試算と同様の計算を行えば、このルートで発生する重症者は54人。大阪府の重症者対応病床数は841床で、その7%弱に当たる。もっとも今回のオリンピックはあくまで開催地が東京であることを考えれば、過去の出入国管理統計データで示されるよりも成田空港、羽田空港からの関係者入国割合は多くなるはずだ。しかも、いま首都圏では東京都を中心に感染の再拡大傾向が見え始めている。6月30日時点の新規感染者の前週比は東京都が1.20倍、千葉県が1.09倍。そしてこの傾向が続けば東京オリンピックの開会式の頃に緊急事態宣言発出となる可能性がある。ここにオリンピック関連入国者から見つかる陽性者、そこから引き続く重症者が前述のように発生したらどうなるだろうか?何とも嫌な時期にオリンピックを開催するのだと、正直溜息しか出てこない今日この頃である。

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臓器移植患者、ワクチン3回接種で抗体価が大幅上昇/NEJM

 固形臓器移植を受けた患者は、新型コロナワクチンを2回接種しても免疫応答が弱いことが報告されている1,2)。そして、移植患者はワクチン2回接種後であっても感染後の重症化リスクが高いことが報告されている3)。これらを受け、フランス公衆衛生庁は、免疫抑制状態の患者に3回目の接種を行うことを推奨している4)。NEJM誌オンライン版2021年6月23日号「CORRESPONDENCE」では、3回接種した臓器移植患者の抗体価が報告された。 臓器移植を受けた101例が、mRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)を3回接種した(平均年齢±SD:58±2歳、男性69%)。移植臓器の内訳は、腎臓78例、肝臓12例、肺または心臓8例、膵臓3例だった。最初の2回の接種は1ヵ月間隔、3回目の接種は2回目から61±1日後に行われた。移植からワクチン接種開始までの期間は97±8ヵ月だった。免疫抑制は、糖質コルチコイド(87%)、カルシニューリン阻害薬(79%)、ミコフェノール酸(63%)、mTOR阻害薬(30%)、belatacept(12%)の使用によるものだった。 主な結果は以下のとおり。・抗SARS-CoV-2抗体血清有病率は、初回接種前0%(95%信頼区間[CI]:0~4、0/101)、2回目接種前4%(1~10、4/101)、3回目接種前40%(31~51、40/99)、3回目接種から4週間後68%(58~77、67/99)だった。・3回目接種前に血清陰性だった59例のうち26例(44%)が3回目接種から4週間後に陽性となった(平均信号対カットオフ比±SD:690±293)。・3回目接種前に血清陽性だった40例全員が4週間後にも血清陽性であり、抗体価は3回目接種前の36±12から、3回目接種1ヵ月後には2,676±350に上昇した(p<0.001)。 抗体反応を示さなかった患者は年齢が高く、免疫抑制度が高く、推定糸球体濾過量が低かった。3回接種後にCOVID-19を発症した例はなかった。また、3回目接種後に重篤な有害事象は報告されず、急性拒絶反応のエピソードも発生しなかった。 研究者らは、臓器移植患者にBNT162b2ワクチンの3回接種を行うことで、ワクチンの免疫原性が大幅に改善され、全例に発症が報告されなかった、とまとめている。

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