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第77回【特集・第6波を防げ!】相マスクが濃厚接触者の感染を予防/有観客試合で感染は広まらず

大学でのマスク着用が濃厚接触者の感染を予防デルタ変異株をまだ見ず、ワクチン接種がこれからという今年1~5月の米国の大学で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者との濃厚接触者を一律に隔離するのではなくマスク着用の状況に応じてそうするかしないかを決める取り組みが検証され、マスクをお互いに着用することでどうやら感染の連鎖がほぼ完全に断ち切れていました1,2)。米国のセントルイス大学では感染者と濃厚接触(24時間に2人が約2m以内で15分以上接触)しても感染者と濃厚接触者のどちらもマスクを着用していればそれら濃厚接触者の隔離は不要という対応が今年1月から実行され、その対応の成果を判定すべく同大学の学生およそ1万2,000人のその後5ヵ月間の感染状況が調べられました。その5ヵ月間に265人が感染し、それら感染者の申告で濃厚接触者378人が同定されました。感染者と濃厚接触者がどちらもマスクをしていた場合(相マスク)の濃厚接触者は毎日健診を受けて症状があればすぐに申告するよう指示され、ワクチン非接種で非相マスクの濃厚接触者のみ隔離されました。相マスクでの濃厚接触者は26人で、そのうち感染に陥ったのは僅か2人(7.7%)のみでした。一方、残りの多数(352人)の非相マスク濃厚接触者は3人に1人(32.4%)が感染に至っており、相マスク濃厚接触者の感染率はそうでない場合の5分の1ほどで済んでいました。相マスクにもかかわらず感染した濃厚接触者2人は感染判明後すぐに隔離され、それら2人から別の人への感染は9人との濃厚接触があってそれら濃厚接触者を隔離しなかったにもかかわらず一切認められませんでした。ワクチンはごく少数にしか接種されていませんでしたがその効果も伺え、接種済みの濃厚接触者18人は全員感染を免れました。一方、ワクチン接種一部完了(Partially vaccinated)の濃厚接触者24人は5人(20.8%)、ワクチン非接種の濃厚接触者336人は111人(33%)が感染に至っています。ワクチン接種が普及した現在において、直接会う授業がある大学はワクチン接種がまだ済んでいない濃厚接触者を隔離と検査観察のどちらに振り分けるかの判断材料にマスク着用状況を含めうると著者は言っています1)。アメフト有観客試合の開催地でCOVID-19増加はみられずマスク着用を含む感染対策が一箇所に大勢が集うイベントからの感染の広がりを防ぎうることが米国のアメリカンフットボール(アメフト)の有観客試合のデータ解析試験で示されました3,4)。試験では去年2020年8月末(29日)からその年末(12月28日)までに観客有りのアメフトの試合が実施された郡とそれらと同様の日程で観客なしの試合が開催された郡が検討されました。その結果、有観客試合が実施された郡での住民10万人当たりの1日のSARS-CoV-2感染数の一貫した増加は認められず、少なめな観客数でのアメフトの試合の開催はその開催地のCOVID-19増加を生じやすくはしないと示唆されました。マスク着用、少なめな観客数、野外開催がどうやらCOVID-19の広がりを防いだようであり、観客同士の距離を十分に保てば有観客試合は安全に実行できそうです。今はワクチンが出回っていますが、それだけに頼ることはできません。そもそも全員がワクチン接種済みとは限りませんし、ワクチンで感染を100%防げるわけではありません。より伝播しやすいデルタ株のような変異株の心配もあり、アメフトの試合のような大規模な集いでのCOVID-19伝播はマスクを着用しなければ依然として発生する恐れがあります。ワクチン接種が可能になったとはいえ今後もしばらくは行動の制限が続きそうですが、アメフトの試合ではマスク着用の観客を十分に離した席に招じ入れてよさそうだと試験の著者は結論しています4)。参考1)Rebmann T,et al.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Sep 10;70:1245-1248.2)CDC Report Finds Masks Curb Spread of COVID-19 on Campus / Inside Higher Ed3)No indication of COVID-19 spread from pro football events with limited attendance / Eurekalert4)Toumi A, et al. JAMA Netw Open. 2021 Aug 2;4:e2119621.

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統合失調症患者におけるCOVID-19罹患率と死亡リスクへの影響

 精神疾患患者は、身体的健康アウトカムが不良であることが知られており、とくに統合失調症スペクトラム障害患者では、大きな問題となっている。最近の研究において、統合失調症患者では、とくにCOVID-19による影響が大きいともいわれている。ギリシャ・テッサリー大学のSokratis E. Karaoulanis氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者におけるCOVID-19のアウトカム不良リスクに関して、システマティックレビューを行った。Psychiatriki誌オンライン版2021年8月5日号の報告。 統合失調症スペクトラム障害患者におけるCOVID-19の罹患および/または死亡率を調査したすべての研究を特定するため、PRISMAガイドラインに従ってPubMed、PsycINFO、Scopusのデータベースを用いて、システマティックレビューを実施した。スクリーニングプロセス実施後、選択基準を満たした研究は7件であった。これらの研究結果は、オッズ比または調整済みオッズ比を用いて報告されていた。 主な結果は以下のとおり。・全体的な結果として、統合失調症患者では中程度ではあるが、より高い感染率に対する統計学的に有意な影響およびより高い死亡率に対する強力な統計学的に有意な影響が認められた。・統合失調症患者は、一般集団と比較し、COVID-19への罹患リスクが高く、死亡率が有意に高いことが示唆された。・しかし、集中治療室の利用頻度など他のアウトカムについては、矛盾した結果が認められた。 著者らは「統合失調症患者は、COVID-19への罹患リスクが高く、死亡率が上昇する可能性があるものの、集中治療室の利用頻度はそれほど高くないことが示唆された。統合失調症患者に対するCOVID-19ワクチン接種プログラムの優先順位の見直しや迅速な集中治療室の利用などヘルスケアへのアクセスを改善する必要がある」としている。

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コロナワクチンは高齢者の死亡をどの程度防いだか/厚労省アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として定期的に厚生労働省で開催されている「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の第51回(9月8日開催)において、「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン等の効果の推定」が報告された。 資料では、65歳以上の高齢者についてワクチンをしなかった場合の推定から実数を比べ、ワクチンの効果を示したもの。COVID-19ワクチンで8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性 65歳以上の高齢者の9割近くが2回のワクチン接種を終えた環境下で、ワクチンの効果として、高齢者を中心に感染者数、死亡者数の増加抑制が期待されている。今回、HER-SYSデータを用いてワクチン接種などがなかった場合の推定モデルを作成し、COVID-19陽性者数、死亡者数が、同推定モデルと比較してどの程度抑制されたかを試算した。[試算方法] 2021年1月1日~8月31日までのHER-SYSデータを使用して試算した。(1)4月~8月までの感染陽性者数と年齢区分別の月毎の増加率を算出(2)1月~7月までの高齢者の新型コロナウイルス感染陽性者、死亡者数、致死率を検討(3)(1)で算出した増加率、(2)で算出した致死率を利用し、感染陽性者数と死亡者数の抑制を試算(なおHER-SYSにおける死亡数の入力率は66%程度と試算される点にも留意が必要)【COVID-19感染抑制の推定】 7月と8月で、推定10万人以上の高齢者の感染を抑制した可能性がある。7月:推定モデル感染者数2万7,052、実数5,953、推定との差2万1,0998月:推定モデル感染者数11万778、実数2万4,110、推定との差8万6,668【COVID-19感染死亡数抑制の推定】 7月と8月で、推定8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性がある。7月:推定死者数1,768、死亡者実数145、推定との差1,6238月:推定死者数7,544、死亡者実数725、推定との差6,819 なお、参考資料として「2021年1月~7月の新型コロナウイルス感染陽性者の致死率」も示され、2021年1月と7月を比較すると、1月の致死率が90歳以上で15.56%だったものが、7月では同数値が5.64%まで低下していることが示されている。

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第70回【特集・第6波を防げ!】制限緩和に医療者は?/GSK製コロナ薬が月内にも特別承認へ

オリンピック開催前より、大都市圏を中心とした21都道府県で緊急事態宣言が発令されているが、19都道府県において今月30日まで延長となった。政府はこれと並行して、宣言解除に向けて、合理的かつ効果的で国民が納得できる感染対策を目指す議論を重ねている。3日、尾身 茂分科会長が示した「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」では、ウィズコロナ時代の行動制限解除は、コロナ関連医療と一般医療の2つの側面から負荷を考え、各地域の自治体や専門家の意向も考慮が必要と指摘されている。アメリカやイギリスのように、大幅な行動制限緩和を行った国では、「デルタ株」の感染拡大やワクチン未接種者の存在により、再びコロナ患者の急増で病床が逼迫したという報道もあり、わが国においては、第6波を見据え、救急医療の逼迫を防ぐセーフティーネットをしっかり備えた上で、制限緩和へと踏み出すことになる。今後希望者のほとんどにワクチンが行き渡る11月頃までに、ワクチン接種歴およびPCR等の検査結果を軸に、他者に二次感染させるリスクが低いことを示す「ワクチン・検査パッケージ」の運用が開始される見込みだ。これを実現するために、今月発足したデジタル庁が主導して、10月からマイナンバーカードを健康保険証として利用するだけでなく、ワクチン接種証明のスマートフォン搭載なども目指す。今、従来では考えられなかったようなスピードでさまざまな物事が進んでいる。しかし、われわれ医療従事者はこれからも、コロナ対応に多くのリソースを割くことになるだろう。十分な体制が整うまでもうしばらくは、目の前でできることを確実にやり遂げていくしかない。(参考)ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?(新型コロナウイルス感染症対策分科会)緊急事態措置解除の考え方(同)今後のデジタル改革の進め方について(内閣府デジタル庁)<先週の動き>1.GSK製の軽~中等症コロナ治療薬が月内にも特別承認へ2.制限緩和にワクチン・検査パッケージ導入へ、全国知事会が懸念3.総裁選に向け各候補者がアピール、厚労省分割案は河野氏4.看護必要度やリハビリ目的での急性期入院の見直しを/中医協1.GSK製の軽~中等症コロナ治療薬が月内にも特別承認へグラクソ・スミスクラインは、6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として、単回投与のモノクローナル抗体ソトロビマブ(sotrovimab)の製造販売承認申請をしたと発表。ソトロビマブは点滴静注薬であり、投与対象は「酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いと考えられる患者」とされる。今回の承認申請については、先行する中外製薬の抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ)と同様の医薬品医療機器等法第14条の3に基づく適用を希望している。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬としてモノクローナル抗体ソトロビマブの製造販売承認を申請(GSK)GSK 新型コロナ治療薬・ソトロビマブを承認申請(ミクスonline)コロナ新治療薬、月内にも承認へ 厚労省 英グラクソ製 軽・中等症向けの点滴薬「ソトロビマブ」(日経新聞)2.制限緩和にワクチン・検査パッケージ導入へ、全国知事会が懸念西村 康稔経済財政・再生相は、12日にNHKの番組に出演し、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限を、ワクチン接種などを条件に緩和する方針について議論の結果を示した。ワクチン接種が一定レベルを超えた時点で、他者に二次感染させるリスクが低いことを示す「ワクチン・検査パッケージ」の導入を進める方針を明らかにした。一方、全国知事会は緊急事態宣言の延長を受け、11日にオンライン会議を開催し、政府への緊急提言をまとめた。行動制限緩和については国民を楽観させる恐れがあると懸念を表し、宣言解除の指標等の見直しや、行動制限を緩和する地域・時期については、地域の感染状況や実情に応じた対応を求めている。また、出口戦略として、「ワクチン・検査パッケージ」を適切に運用するには、まず行動制限を緩和するために必要なワクチン接種率の目安を示す必要があると指摘した。(参考)西村担当相、制限緩和へ「国民的議論」 新型コロナ(時事ドットコム)制限緩和、「楽観」懸念 適用地域・時期の精査を―全国知事会(同)新型コロナ 行動制限緩和へ、接種率提示要請 全国知事会(毎日新聞)3.総裁選に向け各候補者がアピール、厚労省分割案は河野氏今月17日に告示、29日に投開票となる自民党総裁選に向け、出馬を表明した河野 太郎規制改革相、岸田 文雄前政調会長、高市 早苗前総務相ら各候補は、先週から報道番組などに出演して、具体的な政策について国民にアピールを行っている。岸田氏は12日、YouTubeのライブ配信で、自身に対する質問や意見に回答し、ウイグル問題を通して中国に対する強硬姿勢をアピールしている。また、河野氏は総裁選への出馬後、業務が広範にわたる厚労大臣の国会対応を通して、厚労省の分割案を提案している。高市氏は、海上保安庁法改正の必要性を強調。首相就任後の靖国神社参拝についても意欲を示している。(参考)河野氏、厚労省分割「一つの考え方」 高市氏は海保法改正に意欲(時事通)河野氏「厚労省、厚生省と労働省を分けることも」 大臣の負担軽減で(朝日新聞)岸田氏、ウイグル問題で中国非難決議「成立させるべき」(同)4.看護必要度やリハビリ目的での急性期入院の見直しを/中医協8日に開催された「入院医療等の調査・評価分科会」は、来年度の診療報酬改定に向けた検討結果として中間取りまとめを公表した。これは次の中医協の診療報酬基本問題小委員会に報告され、さらに検討される見込み。急性期入院医療の評価指標について、従来から用いられている「重症度、医療・看護必要度」の見直しと、別に新しい指標の検討を行うことになった。また、救急医療管理加算の審査基準が都道府県ごとで違うことを問題視する意見が出され、全国で統一する方向で検討することとなった。さらに、DPC対象病院に係る検討の進め方についても検討され、医療資源投入量や在院日数が平均から外れた病院も、ヒアリングの結果から「リハビリ目的」での入院など、必ずしも急性期の病態とは言えない患者がDPC対象病棟に入院している事例が明らかとなった。(参考)入院医療等の調査・評価分科会におけるこれまでの検討状況について検討結果(中間とりまとめ)(案)(厚労省)看護必要度見直し、急性期入院の新評価指標、救急医療管理加算の基準定量化など2022改定で検討せよ―入院医療分科会(Gem Med)救急管理加算、審査基準の統一化求める意見 中医協・入院医療分科会(CBnewsマネジメント)

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ブレークスルー感染におけるリスク因子は?

 COVID-19ワクチンの2回接種を終了していても、その後感染するいわゆる「ブレークスルー感染」におけるリスク因子を調査した研究結果がThe Lancet Infectious diseases誌オンライン版9月1日号に掲載された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichela Antonelli氏らは、ワクチン接種後の感染におけるリスク因子を調査するために、英国のCOVID追跡アプリの利用者である成人から得られた自己申告データを用いた大規模なケースコントロール研究を行った。 2020年12月8日~2021年7月4日の間にCOVID-19ワクチンの1回目または2回目の接種を受け、接種前の検査で陰性だった者を対象として、以下の群に分けた。・1回目接種後14日以上経過し、COVID-19検査が陽性(症例群1)・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陽性(症例群2)・1回目接種後14日以上経過し、2回目の接種前の検査が陰性(対照群1)・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陰性(対照群2) 対照群1・2をワクチン接種後の検査日、医療従事者か、性別で症例群1・2に1対1でマッチさせた。疾患プロファイル分析では、症例群1・2の中から、陽性判定後、少なくとも14日間連続してアプリを使用した参加者(症例群3・4)をサブセレクトした。陽性を報告したワクチン未接種者で、検査後連続14日以上アプリを使用した参加者を対照群3・4とし、それぞれ症例群3・4と陽性検査日、医療従事者かどうか、BMI、年齢によって1:1でマッチさせた。単変量ロジスティック回帰モデルを用いて、危険因子とワクチン接種後の感染との関連、および個々の症状、全体の罹患期間、疾患の重症度とワクチン接種の有無との関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・期間内に124万9例が1回目のワクチン接種を報告し、そのうち6,030例(0.5%)がその後に陽性反応を示した(症例群1)。また、97万1,504例が2回目のワクチン接種を報告し、そのうち2,370例(0.2%)が陽性反応を示した(症例群2)。・1回目接種のワクチンの種類の内訳はファイザー製:44万2,752例、アストラゼネカ製:75万137例、モデルナ製:1万7,958例だった。・危険因子分析では、フレイルは高齢者(60歳以上)における1回目接種後の感染と関連し(オッズ比[OR]1.93、95%CI:1.50~2.48、p

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血小板減少症/血栓症リスク、コロナワクチン接種後vs. 感染後/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca製)の初回接種後には血小板減少症や静脈血栓塞栓症、まれな動脈血栓症のリスクが上昇し、BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)初回接種後には動脈血栓塞栓症や虚血性脳卒中のリスクの増加が認められるが、これらのイベントのリスクは、ワクチン接種後と比較して同一集団における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後のほうがはるかに高く、長期に及ぶことが、英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らの調査で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2021年8月26日号で報告された。イングランドの自己対照ケースシリーズ研究 本研究は、イングランドにおけるCOVID-19ワクチンと血液学的/血管系イベントとの関連の評価を目的とする自己対照ケースシリーズ研究であり、2020年12月1日~2021年4月24日の期間に実施された(英国研究技術革新機構[UKRI]の助成による)。 研究グループは、期間中にイングランドでワクチン接種を受けた個々の接種者レベルのデータを入手した。接種者の電子健康記録が、国家統計局(ONS)の死亡データ、SARS-CoV-2検査データ、英国の国民保健サービス(NHS)の入院データと関連付けられた。 2,912万1,633人がワクチンの初回接種を受け(ChAdOx1 nCoV-19ワクチン:1,960万8,008人[平均年齢55.5歳、女性50.1%]、BNT162b2 mRNAワクチン:951万3,625人[61.5歳、57.2%])、175万8,095人(51.7歳、56.7%)がSARS-CoV-2検査陽性であった。初回ワクチン接種を受け、アウトカムのデータが得られた16歳以上の集団が解析に含まれた。mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は接種者数がきわめて少なかったため除外された。 主要アウトカムは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種、BNT162b2 mRNAワクチン接種、SARS-CoV-2検査陽性という3つの曝露から28日以内における、血小板減少症、静脈血栓塞栓症、動脈血栓塞栓症に伴う入院または死亡とされた。主要アウトカムの構成要素である脳静脈洞血栓症(CVST)、虚血性脳卒中、心筋梗塞、その他のまれな動脈塞栓症の評価も行われた。CVSTのみ2つのワクチンともリスク増加 血小板減少症のリスク上昇は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日の罹患率比[IRR]:1.33[95%信頼区間[CI]:1.19~1.47])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日14.04[12.08~16.31]、8~14日5.27[4.34~6.40]、15~21日1.91[1.44~2.54]、22~28日1.50[1.10~2.05])に認められた。 また、静脈血栓塞栓症のリスク増加は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:1.10[95%CI:1.02~1.18])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日13.78[12.66~14.99]、8~14日13.86[12.76~15.05]、15~21日7.88[7.18~8.64]、22~28日3.38[3.00~3.81])に、動脈血栓塞栓症のリスク増加は、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.06[1.01~1.10])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日6.55[6.12~7.02]、8~14日4.52[4.19~4.88]、15~21日2.02[1.82~2.24]、22~28日1.26[1.11~1.43])にみられた。 さらに、CVSTのリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:4.01[95%CI:2.08~7.71])と、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日3.58[1.39~9.27])、およびSARS-CoV-2検査陽性後(1~7日12.90[1.86~89.64]、8~14日13.43[1.99~90.59])に上昇し、虚血性脳卒中のリスクは、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.12[1.04~1.20])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日3.94[3.46~4.47]、8~14日3.25[2.83~3.72]、15~21日2.00[1.70~2.35]、22~28日1.26[1.04~1.53])に増加した。 一方、心筋梗塞のリスクは、2つのワクチンとの関連はなかったが、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日のIRR:7.95[95%CI:7.32~8.63]、8~14日4.94[4.50~5.43]、15~21日1.95[1.71~2.22])に上昇し、まれな動脈塞栓症のリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日1.21[1.02~1.43])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日5.35[3.90~7.32]、8~14日5.61[4.13~7.61]、15~21日2.97[2.03~4.36]、22~28日2.66[1.79~3.94])に増加した。 著者は、「2つのワクチンの初回接種後にCVSTのリスクが上昇しており、これは潜在的な前兆の可能性があるが、数が少ないためさらなる確認が必要である。重要な点は、ワクチン接種後のこれらのアウトカムのリスクは、同一集団のSARS-CoV-2感染後に比べはるかに低いことである」と指摘している。

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第74回 ワクチン1回目でアナフィラキシー、日本で「交差接種」はなぜ考慮されない?

先進国内では遅れを取ったと言われる日本の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種。9月8日時点の対象人口での接種率は1回目接種完了が60.9%、2回目接種完了が49.0%となり、現在、2回目接種完了者が人口の約53%であるアメリカの背を捉えつつある。そうした中で5月に承認されながら副反応に対する警戒感から公的接種での使用が控えられていたアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン「バキスゼブリア筋注」が8月から40歳以上に限定して公的接種に組み入れられたことは、ここ最近の接種率向上に一役買っているとみられる。ご存じのようにバキスゼブリアについては約10~25万回に1回の頻度で血小板減少症を伴う血栓症が確認され、発症者の5~6人に1人が死亡している。また、50歳未満の若年者の発生頻度は、50歳以上の2倍ほど高い。もっともこの頻度はワクチンの副反応としてはかなり低いもので、私個人は当初公的接種から外したことはナイーブすぎた判断と考えている。さてこのワクチンに関して東京都でちょっとした騒動が勃発している。「都の大規模ワクチン会場、独断で「交差接種」 健康状態に問題なし」(朝日新聞)もう既にほとんどの方がご存じかとは思うが、3月にファイザー製ワクチンの優先接種を受け、アナフィラキシーを起こした医療従事者がかかりつけ医に相談し、2回目接種にバキスゼブリアを選択するようアドバイスを受け、都の接種会場でこのことを申し出た後、そのまま交差接種を受けたという案件である。予診担当の医師も接種担当の看護師も交差接種であることをわかったうえで接種を実施。これに対し都側で不適切だったと申し開きをしたという内容だ。正直、なんともすっきりしない話である。確かに制度上は適切とは言えない。ただ、アナフィラキシーという本人の不可抗力によりワクチン接種完了が叶わなかったこの方は、今のデルタ株流行という環境下で医療従事者として働くことに相当不安を抱いていたはずだ。だからこそ、かかりつけ医に相談してまで、この接種会場に赴いたのだろうと推察する。そう考えるとこの方はもちろんかかりつけ医も現場で判断した予診担当の医師も接種を行った看護師も私は責めることができない。いったいこうした人はどれくらいいるのだろうか?mRNAワクチンの接種によりアナフィラキシーを起こしたと厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で判定を受けているケースは、8月8日までにファイザー製が405件、モデルナ製が9件ある。もちろん接種のすそ野が広がってくる今後、こうした人は増えてくるだろう。その人たちをこのまま放置して良いのだろうか?ちなみにいわゆる1回目と2回目の接種を違うワクチンで行う交差接種に関しては、最近Lancet誌にオックスフォード大学のグループによる単盲検試験の結果が報告されている。この試験は28日間隔でファイザーワクチン2回接種、アストラゼネカワクチン2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目の接種を行った4群で新型コロナウイルスの抗スパイクタンパクIgGの幾何平均濃度を比較したもの。結論から言えば幾何平均濃度は高い順からファイザー2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目、アストラゼネカ2回接種となった。まだプリミティブな結果ではあるものの、この結果からは今回の接種そのものが医学的に問題あるものではないこともほぼ明らかだ。そもそも体内に入ったmRNAの分解されやすさや2回接種完了者での抗体価減少の研究報告なども併せてみれば、この方のようなケースは初回のmRNAワクチンの影響もほぼウォッシュアウトされているかもしれない。その意味ではやや乱暴な言い方かもしれないがバキスゼブリアを2回接種しても良いのではないかとすら思えてくる。いずれにせよ本人に接種の意思がありながら、mRNAワクチンでのアナフィラキシーゆえに接種完了が叶わなかった人たちに、本人の同意取得を前提に補償的措置として臨床研究を兼ねてウイルスベクターワクチンの再接種を検討すべきではないかと考えている。

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アレルギー高リスク者、コロナワクチンによるアレルギー発症率は?

 新型コロナワクチンを接種したいもののアレルギー持ちだと、どうしても躊躇してしまう。とくに副反応が強く出やすい2回目となればなおさらである。今回、イスラエル・Sheba Medical CenterのRonen Shavit氏らは、アレルギーに対し高いリスクを有する患者について、ファイザー製の新型コロナワクチン(BNT162b2)のアレルギー反応/アナフィラキシーの影響について調査を行った。その結果、アレルギー性疾患の病歴を持つほとんどの患者は、医療施設で実装できるさまざまなアルゴリズムを使用すれば安全に接種できることが示唆された。JAMA Network Open誌2021年8月31日号のOriginal Investigationとして掲載。 研究者らは2020年12月27日~2021年2月22日の期間、シェバ医療センターのCOVID-19ワクチンセンターに申請されたアレルギー患者8,102例を対象に前向きコホート研究として、詳細なアンケートを含むアルゴリズムを使用したリスク評価を実施。アレルギーに対し高いリスクを有する患者を「アレルギー性が高い」とし、医学的管理下で接種が行われた。 主な結果は以下のとおり。・アレルギー性が高い患者と定義付けされたのは429例で、そのうち304例(70.9%)は女性、平均年齢±SDは52±16歳だった。・BNT162b2ワクチンの初回投与後、420例(97.9%)に即時型アレルギー反応はなく、6例(1.4%)には軽度のアレルギー反応が、3例(0.7%)にはアナフィラキシーが出現した。・調査期間中、アレルギー性が高い患者218例(50.8%)が2回目のBNT162b2ワクチン接種を受けたところ、214例(98.2%)にはアレルギー反応がなく、4例(1.8%)で軽度のアレルギー反応がみられた。・ほかの即時型および遅延型アレルギーの発現状況について、アレルギー性が高い患者群を一般集団と比較しても同等だった(遅延性のかゆみや発疹の発症は除外)。

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ワクチンを打つのが不安」と言われたら…【非専門医のための緩和ケアTips】第11回

第11回 「ワクチンを打つのが不安」と言われたら…COVID-19のパンデミックで大変な思いをされている医療者の方が多いと思います。今回はパンデミック下における緩和ケアについての話題を紹介します。今日の質問かかりつけの患者さんから、「私はワクチンを打ってもいいですか?」と質問されることが多いです。話を聞くと「副反応などの話を聞くので怖い」と感じているようです。どのようにアドバイスするとよいのでしょう?これは、多くの方がすでに経験している状況ではないでしょうか。「新しいワクチンの効果と安全性をどのように考えるか」という視点だけでなく、マスコミの報道の在り方やリスクコミュニケーションなど、さまざまな論点が複雑に絡み合った難しい問題です。一挙に解決する魔法のような策はないのですが、ここでも、緩和ケアのスキルが役立ちます。まず、患者さんやご家族は「ワクチンを受けるかどうか」について、どういった媒体の情報を得て決めたのでしょうか。厚生労働省のような公的機関や新聞やテレビのニュースの情報が十分届いているかというと、少し疑問です。米国の調査1)では、調査対象となった患者と家族の約80%がワクチン接種に関する相談先に「医師や看護師などの医療専門職」と回答しました。これは米国疾病予防管理センター(CDC)の60%や家族や友人の58%よりもはるかに高い数字です。いかがでしょう。こうした結果を見ると、私たち医療者の責任は重大です。このCenter to Advance Palliative Careのサイトには、医療者がワクチン接種に不安を感じる患者と対話するときのポイントも紹介されています。1)Start with Open-Ended Questions開かれた質問から対話を始める2)Acknowledge Patient Concerns without Judging判断をせずに、患者の気掛かりを認める3)Avoid Criticizing the Patient’s Information Sources患者の情報源を批判しない4)Show Awareness of Your Status as a Messenger必要なワクチンを必要な人に提供するという、自分の立場を明確にする5)Link Vaccine Acceptance to the Patient’s Hopes and Goals患者の希望や目標と、ワクチン接種の受け入れを関連付ける私の意訳を含んでいるので、少しニュアンスが異なるかもしれません。興味を持った方は、原文を読んでみてください。ちなみに、この原文には次のような力強い言葉が書いてあります。「緩和ケア医は多くの場合、すでに患者から信頼されている」さまざまな診療を通じて構築してきた、医師と患者の関係を基盤として、ワクチンに対する不安について「対話」をすることが重要なのです。ともすれば、患者さんの情報源を批判する態度を取ったり、医療者としての意見を一方的に伝えたりしがちではないでしょうか。「患者さんの真意を聞き、不安な気持ちを受け止める」という緩和ケアのアプローチは、ワクチン接種にも活用できるのです。今回のTips今回のTips緩和ケアにおける意思決定の支援法は、ワクチン接種にも活かせる!1)Center to Advance Palliative Care(capc). How to Address Vaccine Hesitancy for Patients Living with Serious Illness(2021年3月11日)

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第74回 尾身茂氏のインスタ開始や行動制限緩和策、医療界隈は冷ややか「おいおい尾身さん」

政府の新型コロナ対策分科会会長の尾身 茂氏(72歳)がInstagramアカウントを開設した。初投稿では、「#ねえねえ尾身さん」がプリントされたTシャツを着て笑顔の写真で登場。「若者の意見を吸い上げて政治に活かす」のだという。尾身氏は後日、ワクチンの2回目接種者や検査の陰性者を対象に行動制限の緩和を進める「ワクチン・検査パッケージ」案を提言した。いずれも若者にはおおむね好評だが、この時期の緩和案公表の背景に、政府与党から総選挙対策のための好材料の提案を要望されたのでは、と見る向きもある。また、自らが理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の5つの公的病院で、183床ある新型コロナウイルス患者用の病床が30~50%も使われていないことが報道された。医療界からは「おいおい尾身さん」と批判の声が上がっている。インスタ開設で「若者の意見を政府に届ける」インスタで尾身氏は「コロナ対策は『科学だけでは決めきれないこと』がたくさんあります。たとえばコロナとの戦いが長期戦になる中で『どんな社会で生きていきたいか?』ということなどです。一緒に話し合って皆さんの声を政府に届けたいです」と述べ、若者に期待を持たせた。また、マスクをした尾身氏の似顔絵イラストをアイコンに使用。「ねえねえ尾身さん」という親しみやすいキャッチをTシャツにプリント。「インスタ一生懸命勉強しています」「楽しみにしています」というコメントも載せ、10〜20代の女性からは「可愛い」と好評だ。ツイッターでトレンド入りするなど話題を呼び、“イメージ戦略”の出足はすこぶる順調のようだ。そんな尾身氏が提言したのが「ワクチン・検査パッケージ」案である。ワクチンの2回目接種者、PCR検査などの陰性者は感染リスクが低いとみなし、行動制限の緩和を進めるというものだ。例えば、大人数での会食や宴会、県境を越える出張や旅行、大規模なイベントの参加、大学での対面授業・部活動などが可能。ただ、時短要請の続く飲食店や大規模商業施設に対してワクチン・検査パッケージを適用するかは要検討だという。実施する場合、緊急事態宣言が解除されていることが前提で、接種希望者にワクチンが行き渡る11月頃を想定している。提言を踏まえ、政府が改めてロードマップを公表する予定だ。行動制限緩和案、総選挙前提言の疑念実施に当たって尾身氏は、想定されるワクチン接種率について3つのシナリオを想定している。▽シナリオA(理想的な接種率)は、60代以上の90%、40~50代の80%、20~30代の75%▽シナリオB(努力により到達し得る接種率)は、60代以上の85%、40~50代の70%、20~30代の60%▽シナリオC(避けたい接種率)は、60代以上の80%、40~50代の60%、20~30代の45%、というものだ。Aの条件が満たされれば、行動制限を40%程度下げることによって、マスクをすることなどを前提に元の生活に戻れるというが、「これはハードルが高い」と都内の病院に勤める感染症専門医は言う。首都圏では新規感染者数は減少傾向にあるものの、自宅療養者数や重症者数は高止まり、医療は逼迫しており、政府は緊急事態宣言を延長する方針だ。これまでの経験から、宣言解除後のリバウンドは容易に予想され、2回接種してもブレークスルー感染する人が増えている状況でもある。「緊急事態宣言が守れない人がいる中、緩和案を言うことで誤解が生じ、さらにたがが緩んでしまうことが心配だ」と前述の医師は述べる。この時期に緩和案が出たことに対し、政界の事情通は「政府が総選挙を前に選挙対策のための好材料を出してくれと、尾身氏に要望した可能性がある」と推測する。感染症対策が選挙対策に利用されることは許されない。理事長務めるJCHO病院でコロナ病床未利用問題一方で、尾身氏が理事長を務める(JCHO)傘下の都内の5つの公的病院で、183床ある新型コロナウイルス患者用の病床が30~50%も使われていないことが、オンラインメディア「AERAdot.」(朝日新聞出版)で報じられた。自宅療養者が増え、医療が逼迫する中で、コロナ患者の受け入れに消極的なJCHOの姿勢に対し、医師などからは批判の声があがっている。厚労省関係者も「尾身氏は『もう少し強い対策を打たないと、病床のひっ迫が大変なことになる』などと声高に主張しているが、JCHO傘下病院でコロナ専用ベッドを用意しておきながら、患者をあまり受け入れていない。尾身氏の言動不一致が理解できない」と指摘する。JCHOは全国に57病院あり、稼働病床数は約1万4千床。そのうち6.1%にあたる870床をコロナ専用の病床にしたという。AERAdot.によると、2020年12月から3月だけでもJCHO全57病院で132億円もの新型コロナ関連の補助金が支払われたという。「コロナ病床を空けたままでも補助金だけ連日、チャリチャリと入ってくる。“濡れ手で粟”状態でコロナ予算を食い物にしている。受け入れが難しいのであれば、補助金を返還すべきでは」(厚労省関係者)。厚労省OBの尾身氏には、後輩の指摘に耳を傾けてほしいものだが、“変幻自在の政治家”などと呼ばれるようになった人物に、筋を通すことを求めるのは無理な要求か。

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AZ製ワクチン、2回目の遅延接種は3回接種と同等の高抗体価/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)の2回接種は、1回目との接種間隔が44~45週と長い遅延接種のほうが、8~12週や15~25週の短い場合に比べ、接種後28日のIgG抗体価が高いことが示された。また、同ワクチン3回接種では、遅延2回接種後と同レベルの高い抗体価が得られること、およびT細胞反応を促進することが認められた。英国・オックスフォード大学のAmy Flaxman氏らが、進行中の2つのChAdOx1 nCoV-19無作為化試験について行った下位試験の結果で、Lancet誌オンライン版2021年9月1日号で発表した。COVID-19ワクチンをめぐっては、供給不足から1回目と2回目の接種間隔が長くなることに対して、一部の国から免疫低下の懸念が示されている。研究グループは、ChAdOx1 nCoV-19の単回投与後の免疫原性の持続性、2回目接種までの期間が延長した場合(44~45週)の免疫、2回目投与から28~38週後にブースター接種を行った3回接種の反応を評価した。18~55歳に、1~2回目接種間隔、3回目接種の反応原性・免疫原性を調査 下位試験は、英国で行われている新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19の第I/II相単盲検無作為化対照試験(COV001)の被験者で、同ワクチン(1回当たり5×1010ウイルス粒子量)の1~2回接種を受けた18~55歳のボランティアを対象とした。2回目遅延接種(初回接種の44~45週後)、または3回目接種(2回接種の28~38週後)を受けた被験者について、反応原性と免疫原性を調べた。 対照として、同I/II相試験(COV001)またはII/III相試験(COV002)で、ChAdOx1 nCoV-19の1~2回接種(1回当たり5×1010ウイルス粒子量)を受けた被験者のデータを比較した。接種後28日抗体価、接種間隔8~12週923EU、44~45週3,738EU 2021年3月11日~21日に、90例が同ワクチン3回目ブースター接種の下位試験に登録された。うち80例について反応原性を、75例について抗体価を、15例についてT細胞反応を調べた。 また、同ワクチン2回接種者321例のうち、1回目接種との間隔8~12週が83%、15~25週が7%、44~45週が9%で、全員について反応原性を調べた。免疫原性については261例について調べ、2回目接種までの間隔の内訳は、8~12週が44%、15~25週が44%、44~45週が11%だった。 ワクチン単回接種の480例については、接種後44~45週までの免疫原性を調べた。1回接種後の約320日に測定した抗体価は、ベースラインに比べ高いレベルを維持していた(ELISA単位(EUs)によるGMTは66.00 EUs[95%信頼区間[CI]:47.83~91.08]vs.1.75 EUs[1.60~1.93])。 1回接種後44~45週で2回目接種を受けたのは32例で、うち30例が免疫原性と反応原性の解析に包含された。2回目接種28日後の抗体価は、1~2回の接種間隔が長い群が、短い群に比べ高かった(総IgG抗体価中央値:接種間隔8~12週が923 EUs[IQR:525~1,764]、15~25週が1,860 EUs[917~4,934]、44~45週が3,738 EUs[1,824~6,625])。 3回接種群について(評価対象はサンプル入手できた73例[81%])は、接種完了28日後の抗体価(総IgG中央値)は3,746 EUs(IQR:2,047~6,420)と、2回接種群の同1,792 EUs(899~4,634)に比べ有意に高値だった(Wilcoxon符号順位検定のp=0.0043)。またT細胞反応についても、3回接種直前から直後にかけて、反応性中央値は200 SFU/100万PBMC(IQR:127~389)から399 SFU/100万PBMC(314~662)に増加した(Wilcoxon符号順位検定のp=0.012)。 反応原性は、遅延2回接種群と3回接種群で、いずれも初回接種後に比べ低かった。

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Novavax社コロナワクチンの供給契約、追加接種への使用も視野に/厚労省

 厚生労働省は9月7日、米国・Novavax社から技術移管を受け、武田薬品工業が国内の生産および流通を行う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関し、日本における薬事承認などを前提に、早ければ2022年初頭から、おおむね1年間で1億5,000万回分の供給を受けることについて、武田薬品工業と契約を締結したと発表した。 武田薬品工業は、Novavax社との提携の一環として、国内自社工場においてCOVID-19ワクチン候補「TAK-019」(海外における開発コード:NVX-CoV2373)の生産能力の整備を進めており、22年初頭の供給開始を目指している。同社は国内臨床試験を実施し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への製造販売承認申請を行い、厚労省の承認取得後、国内供給を開始する予定。 「TAK-019」は、Novavax社の遺伝子組換えたんぱく質ナノ粒子技術により開発されたワクチンであり、これはこれまでにもB型肝炎ワクチンなどで用いられている従来型の種類。 武田薬品工業およびNovavax社では、追加接種への使用も視野にワクチンの開発を行っており、変異株への対応も含まれている。今回の契約締結により、開発が成功すれば当該ワクチンの供給を受けることも可能となる。

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第76回 イスラエルから2報:COVID-19患者の嗅覚回復後ににおいの異常が増加/3回目接種有効

新型コロナウイルス感染(COVID-19)の始まりから嗅覚喪失や味覚喪失があったイスラエルの1,468人を追跡したところ嗅覚はおよそ回復していましたが、これまでとにおいが違う・不快・薬品のようだという愁訴に代表される嗅覚錯誤(parosmia)は逆に増えており、始まりには約10%にしか認められなかったのに約半年(中央値200日)後にはおよそ半数(47%)に認められるようになっていました1,2)。周りの誰もそうし得ないのに焦げたにおいがする(Sometimes I can smell burning but no one else around me can)などの嗅覚の幻覚(phantosmia:幻嗅)も増えており、始まりには嗅覚錯誤と同様に約10%にしか認められなかったのが約半年後には4人に1人(25%)が呈していました。また、半年後に嗅覚はおおむね回復していたとはいえ女性の6割と男性の約半数(48%)の嗅覚水準はCOVID-19前の80%未満にとどまっていました。味覚はたいてい嗅覚より早く回復し、嗅覚が回復して味覚喪失は続いているということはほとんどありませんでした。先立つ幾つかの試験で嗅覚喪失を呈するCOVID-19は軽症で済むらしいと示唆されています。しかし今回の結果によると嗅覚喪失は楽観視できるものではなさそうであり、長引く嗅覚不調は症状が多いことと関連しました。嗅覚喪失はどうやらCOVID-19後遺症の主な目印のようです。少なく見積もっても世界の1,500万人ほどがCOVID-19後の長引く嗅覚不調を被っており、嗅覚錯誤は数百万人にも達しそうです。嗅覚錯誤はどうやら主なCOVID-19後遺症の1つであり、その研究や新たな治療法の開発が必要です。においの異常は身体や精神、はては食生活にも影響するものであり、COVID-19が肉体や精神に及ぼす二次的影響の手当てを世界のどの地域も準備する必要があるでしょう2)。3回目接種がイスラエルで効果ありイスラエル全土でのCOVID-19ワクチン3回目接種が成果を上げているようです3)。同国の保健省(Israel Ministry of Health)のデータを調べたところ、60歳以上高齢者へのPfizerのCOVID-19ワクチンBNT162b2の3回目接種から2週間以上のSARS-CoV-2感染リスクが11分の1以下に下がりました4)。重病リスクも10分の1以下になりました。免疫の低下とデルタ変異株のせいで6ヵ月超前に接種したワクチンの効果が半減し、3回目接種で感染リスクが今回の解析とほぼ同じく10分の1に低下したと仮定するなら、3回目を接種した人の感染の確率は非接種の人の僅か5%です4)。その計算に基づくと今回の解析での3回目接種の予防効果は2回目接種後すぐに匹敵する95%ほどに回復していたようです。先月8月29日にイスラエルは3回目接種の対象を2回目接種から5ヵ月が過ぎた全員に拡大する方針を示しています3,5)。3回目接種の予防効果がどれぐらい続くかは不明であり、これから調べていく必要があります3)。参考1)Loss of smell may be followed by smell distortions / Reuters2)Increasing incidence of parosmia and phantosmia in patients recovering from COVID-19 smell loss. medRxiv. August 31, 20213)Israel’s COVID-19 boosters are preventing infections, new studies suggest / Science4)BNT162b2 vaccine booster dose protection: A nationwide study from Israel / gov.il(August 31, 2021)5)The Vaccination Policy and the New Green Pass that will Take Effect Soon / Israel Ministry of Health

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妊婦のケアを厚く追記した改訂COVID-19診療の手引き/厚生労働省

 8月31日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版」を公開した。 今回の改訂では、主に以下の5点が追記・修正された。【2 臨床像の「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率などについて一部追記】 最新(2021年8月時点)の陽性患児の特徴などが追加された。【4 重症度分類とマネジメントの「5.妊産婦の管理」の項を追加】 追加項目では、自宅療養中の妊婦の訪問時の確認事項、妊婦への指導事項のほか、妊婦搬送の判断の注意点、産科的管理以外のバイタルの留意事項、COVID-19患者の妊婦から産まれた新生児への検査が追加された。【同「自宅療養者に対して行う診療プロトコール」「経口ステロイド薬投与における留意点」などについて追記】 自宅療養・宿泊療養を行っている患者で酸素投与の適応となる場合の経口ステロイド薬投与における留意点」として、ステロイド投与を行う際の病状評価および治療適応の判断では、原則として自宅に赴いた往診医や宿泊施設内における担当医師などによる対面診療のもと、処方することを推奨(処方例:デキサメタゾン 6mg 分1 10日間または症状軽快まで)している。また、緊急時対応のために事前処方や内服の目安(例:咳嗽などの呼吸器症状があり、SpO2 93%以下)などが記されている。その際、電話、オンラインなどで医師が指示したり、フォローアップすることが望ましいと詳しい項目が記載されている。【5 薬物療法の各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブなど)に一部追記】 レムデシビルの保険適用(2021年8月4日)や「腎機能障害のある患者への投与」が追加され、重度の腎機能障害がある患者には投与は推奨されないが、治療の有益性が上回ると判断される場合のみに投与とされた。また、「バリシチニブ」について、入院患者1,525人を対象とした二重盲検試験(COV-BARRIER)の結果、主要評価項目の人工呼吸管理/死亡に至った割合に差は認められなかったが、治療開始28日以内の死亡はバリシチニブ群で有意に低かった試験結果が追加された。【6の院内感染対策の「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」などについて一部追記】 「表6-1 感染防止策」の確定例の感染防止策を実施する期間が大きく改訂され、発症者と人工呼吸器など要した患者に場合分けされ記載された。 「1.個人防護具」では、エアロゾルが発生しやすい状況として、歯科口腔処置、非侵襲的換気、ネーザルハイフロー、生理食塩水を用いた喀痰誘発、下気道検体採取、吸引を伴う上部消化管内視鏡などが追加された。 「5.患者寝具類の洗濯」では、患者が使用したリネン類の洗濯について、具体的かつ詳細な洗濯法が追加された。 「8.職員の健康管理」では、参考として「医療従事者が濃厚接触者となった場合の外出自粛の考え方」が新たに追加された。 なお、本手引きは5月以降、毎月追加改訂がなされているので、下記のリンクなどより確認をいただきたい。

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小児マラリア、ワクチン+化学予防で入院・死亡を大幅抑制/NEJM

 合併症のない臨床的に軽症の小児マラリアの予防治療において、季節性のRTS,S/AS01Eワクチン接種は化学予防に対し非劣性であり、RTS,S/AS01Eワクチンと化学予防の併用はワクチン単独および化学予防単独と比較して、軽症マラリア、重症マラリアによる入院、マラリアによる死亡を大幅に抑制することが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のDaniel Chandramohan氏らが西アフリカで行った臨床試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月25日号で報告された。ブルキナファソとマリの無作為化対照比較試験 研究グループは、西アフリカのブルキナファソとマリの小児を対象に、RTS,S/AS01Eを用いた季節性ワクチン接種の季節性化学予防に対する非劣性と、RTS,S/AS01Eワクチンと化学予防の併用は、このうち一方による単独療法と比較して優越性を有するかを検証する目的で、二重盲検無作為化対照比較試験を実施した(英国・Joint Global Health Trialsと米国・PATH Malaria Vaccine Initiativeの助成を受けた)。 2017年4月1日の時点で、生後5~17ヵ月の小児がいる試験地域内の全世帯が対象となった。6,861例の小児が登録され、このうち2,287例がsulfadoxine/pyrimethamine+amodiaquine(年4回投与)とRTS,S/AS01Eワクチンのプラセボの接種を受ける群(化学予防単独群)、2,288例がRTS,S/AS01Eワクチン接種と化学予防薬のプラセボの投与を受ける群(ワクチン単独群)、2,286例が化学予防+RTS,S/AS01Eワクチン接種を受ける群(併用群)に無作為に割り付けられた。RTS,S/AS01Eワクチンは、5回(2017年4月、5月、6月、2018年6月、2019年6月)接種された。 5,920例(化学予防単独群1,965例、ワクチン単独群1,988例、併用群1,967例)が、割り付けられた介入の初回投与を受け、3年間のフォローアップが行われた。2020年3月31日の時点で、それぞれ1,716例(87.3%)、1,734例(87.2%)、1,740例(88.5%)がフォローアップを終了した。接種後の熱性痙攣は回復、髄膜炎の発現はなかった 合併症のない臨床的マラリア(体温37.5℃以上または直近48時間以内の発熱の既往、かつ熱帯熱マラリア原虫[Plasmodium falciparum]による原虫血症[≧5,000/mm3])は、1,000人年当たり化学予防単独群で305イベント、ワクチン単独群で278イベント、併用群で113イベント認められた。 ワクチン単独群の、化学予防単独群との比較における予防効果のハザード比は0.92(95%信頼区間[CI]:0.84~1.01)であり、事前に規定された非劣性マージン(1.20)を満たしたため、3年間を通じたワクチン接種の化学予防に対する非劣性が確認された。 一方、併用群では、化学予防単独群との比較における臨床的なマラリアの予防効果は62.8%(95%CI:58.4~66.8)であり、世界保健機関(WHO)の定義による重症マラリアに伴う入院の予防効果は70.5%(41.9~85.0)、マラリアによる死亡の予防効果は72.9%(2.9~92.4)であった。 また、併用群では、ワクチン単独群との比較における臨床的なマラリアの予防効果は59.6%(95%CI:54.7~64.0)、WHO定義の重症マラリアによる入院の予防効果は70.6%(42.3~85.0)、マラリアによる死亡の予防効果は75.3%(12.5~93.0)だった。 ワクチン接種後に熱性痙攣が5例(ワクチン単独群3例、併用群2例、初回接種[プライミング]後3例、追加接種[ブースター]後2例)で発現したが、いずれも回復し、後遺症は認められなかった。8例(化学予防単独群4例、ワクチン単独群3例、併用群1例)で臨床的に髄膜炎が疑われたが、いずれも確定されなかった。また、RTS,S/AS01Eワクチン接種者で、入院や死亡が男児よりも女児で多いとの証拠は得られなかった。 著者は、「アフリカの季節性マラリアがみられる広範な地域では、マラリアのコントロールが現在も不十分であるため、季節性の化学予防と季節性のRTS,S/AS01Eワクチン接種の併用は有望な予防法となる。サヘル地域やサブサヘル地域のマラリアの負担が大きい地方では、今後、これらの併用の最適な方法を検討する必要があるだろう」としている。

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第69回 最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省

<先週の動き>1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.3版」を新たに発出した。これまでの知見に加えて、「妊産婦の管理」の項を追加し、無症状・軽症で自宅療養・宿泊療養中の妊婦の診療・看護する医療者は、「呼吸状態、心拍数や呼吸数とその変化などの急速な症状の進行を疑う症状」「産科的異常を示唆する症状」の確認が必要とされた。また、自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点なども追加されている。<主な改訂部分>20-21ページ:「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率等について一部追記42ページ:「5.妊産婦の管理」の項を追加44ページ:自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点等について追記48-59ページ:各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブ等)に一部追記60-67ページ:「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」等について一部追記(参考)コロナ診療の手引きに「妊産婦の管理」の項を追加 厚労省が第5.3版を事務連絡(CBnewsマネジメント)2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都東京都は2日に開かれた東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議において、都内の医療機関に対するCOVID-19患者の受け入れ病床確保要請の結果、1日の時点で150床増の6,117床となったことを報告した。このうち重症者向け病床は465床で、73床増加している。今回、改正感染症法に基づいて東京都と厚労省が共同してさらなる協力要請が行われたが、目標の7,000床に向けて、要請を受けた医療機関側の人員不足など厳しい現状が浮かんだ。重症患者のさらなる増加に備えた重症病床の確保や、回復期支援病床の増床により、転院支援などを推進することで都内病床の活用促進などを求めている。3日に開催された経済諮問会議では、民間議員から、臨時の医療施設の設置や宿泊療養施設における医療提供体制の強化などがただちに取り組むべき課題とされたほか、約70万人の潜在看護師の活用など、対応への参画を促すことも提案された。(参考)感染症法第16条の2に基づく協力要請(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議)東京の確保病床6117床に 国と都が初要請、目安の7000床には届かず(東京新聞)3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府内閣府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が3日に開催され、11月を目途にワクチンが行き渡った後について、「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」と題した提言が尾身 茂会長から示された。これによると、ワクチンの効果と限界や、諸外国の知見を踏まえ、国内ですべての希望者がワクチン接種を終えたとしても、集団免疫の獲得は困難という見解だ。努力によって到達し得るワクチン接種率が60代以上は85%、40~50代は70%、20~30代は60%になったとしても、引き続き、人々の生活や社会経済活動の制限が一定程度は必要であるとし、“ワクチン・検査パッケージ”として、接種証明書やPCR検査・抗原定量検査の陰性証明書を活用し、経済社会活動の制限を緩和する仕組みを提案した。さらに今後の感染状況も含め、議論していくことを求めた。また、同日に開かれた経済財政諮問会議でも、民間議員からは感染拡大・重症化の防止と経済社会活動を両立する「新しい国民生活の姿」の実現に向けて、ロードマップを早急にとりまとめるべきだと提言があった。(参考)ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?(新型コロナウイルス感染症対策分科会)ワクチン・検査パッケージを提言 分科会、旅行や入院面会で活用(東京新聞)ワクチン・検査活用で制限緩和=旅行、大規模イベント容認―分科会提言・新型コロナ(時事ドットコム)4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医日本医師会は、1日に18項目からなる「2022年度医療に関する税制要望項目」を発表し、本要望を8月25日に厚労省に提出したことを報告した。消費税負担の大きな医療機関は、「軽減税率による課税取引に改める」ことを含めた見直しを、診療所など小規模な医療機関はこれまで通り非課税として、診療報酬での補填の継続を求めた。このほか、医師少数区域等に所在する医療機関の固定資産税・不動産取得税の税制措置の創設なども要望に入れられた。(参考)令和4年度医療に関する税制要望について(日医online)日本医師会の税制改正要望 消費税負担の大きな医療機関「軽減税率による課税取引」に見直し検討を(ミクスonline)5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は3日に2019年度の「社会保障費用統計」を公表した。これによると、2019年度の社会保障給付費総額は123兆9,241億円で、対前年度増加額は2兆5,254億円と、伸び率は2.1%増となった。1人当たりの社会保障給付費は98万2,200円となる。社会保障給付費を部門別に見ると、「医療」は40兆7,226億円(32.9%)、「年金」は55兆4,520億円(44.7%)、「福祉その他」は27兆7,494億円で同22.4%となった。高齢化の進行で、右肩上がりの状況が続いており、今後負担の分担をめぐって議論になると思われる。(参考)令和元(2019)年度「社会保障費用統計」の概況取りまとめを公表します~社会保障給付費、過去最高を更新~(国立社会保障・人口問題研究所)年金 医療 介護などの社会保障給付費 123兆円余りで過去最高(NHK)6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医日本医師会は1日に、日本医師会が実施した「医師における宿直許可の取組に関する調査」の結果を報告した。医師の働き方改革で2024年4月より医師の時間外労働の上限規制が適用されるところ見据え、2019年7月以降に医師の宿直許可について申請・相談を行った医療機関の事例を収集した調査が行われた。2021年4〜5月にかけて、全国8,221病院と6,418有床診療所を対象とした本結果によると、約6割弱の医療機関が労働基準監督署の宿直許可を得たと回答した。また、許可を得られたあるいは許可を得らえる見込みと回答した医療機関では医師一人当たりの宿直頻度が「週1回以下」の医療機関が93.3%だった。一方、不許可となった医療機関では、医師一人当たりの宿直頻度が週1回を超えているなど、宿直許可基準が厳しく適用されているとの見解を示した。日本医師会では、産婦人科領域において、全国の分娩件数の約半数が大学病院などから宿日直医師の派遣を受けて産科診療所が取り扱っているため、大学病院等からの医師の派遣が制限されてしまえば、産科診療所での分娩が成り立たなくなるとして、危機感を示した。(参考)医師における宿直許可の取組に関する調査結果について(日医online)

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COVID-19ワクチン接種率向上にリマインダーが有効

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むにつれ、ワクチンの効果や安全性に疑問を持ち接種を避けるいわゆる「ワクチン忌避者」の存在が各国で問題となっている。忌避者を接種につなげるために効果的なコミュニケーション戦略についての研究結果が、Nature誌オンライン版2021年8月2日号に掲載された。 UCLA アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントで行動経済学を専門とするHengchen Dai氏らによる本研究では、メールによるリマインダーとその内容がワクチン接種率向上にどの程度寄与するのかを調査した。 研究者らは、2021年1月29日からUCLAの医療システムから抽出したワクチン接種対象者に対象に、接種予約の案内メール送付から1日後(n=9万3,354例)および8日後(n=6万7,092例)にリマインダーを配信した。解析は5月25日に終了した。主要評価項目はリマインダー受信後6日以内の初回接種の予約、副次評価項目は受信後4週間以内の初回接種だった。 登録者は、リマインダーを受け取る群(受信群)と受け取らない群(不受信群)に、4:1の比率で無作為に割り付けられた。受信群にはリマインダーの内容によって行動が変わるかを調査するために、さらに2つの要素を追加した。1つめは「心理的所有感を誘発するメッセージ(UCLA Health:(参加者の名前)さん、COVID-19ワクチンがUCLA Healthで入手できるようになりました。uclahealth.org/scheduleで予防接種の予約をして、今すぐ接種を受けてください)」、もう1つは「ワクチンの有効性に関する2分間の動画メッセージ」で2要素の組み合わせによって4群に無作為に割り付けられた(基本リマインダーのみ:1万8,629、所有感メッセージ:1万8,592、有効性メッセージ:1万8,757、所有感+有効性メッセージ:1万8,627)。1回目のリマインダーから7日以内に予約・接種した人等を除いた6万7,092例を対象に2回目のリマインダーを送付した。全群において年齢、性別、人種のバランスがとれていることを確認した。 主な結果は以下のとおり。・1回目のリマインダーによって、受信群の不受信群と比較した予約率は6.07%、接種率は3.57%上昇した。2回目のリマインダーによって、各1.65、1.06%上昇した。・1回目のリマインダーでは予約・接種共に所有感メッセージが有効だった。一方で、有効性に関するメッセージには効果が見られなかった。・受信群と不受信群の初回接種率の差は8週間後でも続いていた。 研究者らは「全タイプのリマインダーが接種率を上昇させることがわかり、特に心理的所有感を誘発するメッセージが有効なことがわかった。2回目のリマインダーの効果は1回目に比べて落ちたが、対象にワクチン接種に懐疑的な人の割合が増えているだろうことを考慮すると、一定の効果を発揮した。また、リマインダーを受け取ることの効果が長期に持続したという事実は、この間に対象者が多くの情報に触れていたであろうことを考慮すると驚きに値する」とし、「行動科学的な洞察を使うことで、ワクチン接種を低コストで増加、スピードアップすることができる」としている。

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新型コロナワクチン、6~7月の有効率は95%/感染研

 国立感染症研究所は8月31日、ワクチンを接種して14日以上経過した者は未接種者と比較し感染のオッズが有意に低かったことから、さまざまな変異株が流行する状況においても国内承認ワクチンは有効であることを示唆した。また、ワクチンの接種回数、(短期的には)接種からの期間の長さによって有効率が高くなる傾向も明らかにした。ワクチン有効率を症例対照研究での調整オッズ比から推定 現在、ファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンの有効性は90%以上、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンも有効性は70%程度と報告されているが、変異株出現により有効性の低下が指摘されている。そこで、国立感染症研究所は、5つの医療機関の発熱外来など新型コロナウイルス検査を受けた患者を対象として、症例対照研究(test-negative design)を行った。 今回の報告は2021年6月9日~7月31日の暫定結果で、対象者はPCR検査陽性者が症例群、陰性者が対照群に分類された。検査前には基本属性、新型コロナワクチン接種歴などを含むアンケートが実施された。また、発症から14日以内、いずれか1症状のある者(37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害)に限定して解析が行われた。 ワクチン接種歴については、「未接種」「1回接種のみ」「2回接種」の3つに区分。さらに、接種後の期間を考慮するため「未接種」「1回接種後13日目まで」「1回接種後14日から2回接種後13日目まで(partially vaccinated)」「2回接種後14日以降(fully vaccinated)」の4つのカテゴリーに区分した。ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比と95%信頼区間(CI)を算出。また、ワクチン有効率は多変量解析から得られた調整オッズ比を使用し、(1-オッズ比)×100%で推定した。多変量解析における調整変数としては、先行研究を参照し、年齢、性別、基礎疾患の有無、医療機関、カレンダー週、濃厚接触歴の有無、過去1ヵ月の新型コロナウイルス検査の有無をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率、ワクチン2回接種14日以降では95%・都内5医療機関の発熱外来などを受診した成人1,525 例が調査に同意。そのうち除外基準に該当する者を除く1,130例(うち陽性者416例[36.8%])を解析した。・年齢中央値は33歳(範囲:20~83)、男性は546例(48.3%)、女性は584例(51.7%)で、267例(23.6%)が何らかの基礎疾患を有していた。・ワクチン接種歴について、未接種者は914例(83.4%)、1回接種者は141例(12.9%)、2回接種者は41例(3.7%)だった。・調整オッズ比は1回接種者では0.52(95%CI:0.34~0.79)、2回接種者では0.09(同:0.03~0.30)だった。・接種からの期間別の調整オッズ比は、「1回接種13日目まで」が0.83(同:0.51~1.37)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」が0.24(同:0.12~0.47) 「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では、0.05(同:0.00~0.28)だった。・今回の解析ではワクチン接種歴不明例・接種日不明例を対象から除外したが、未接種として解析に含めた場合も調整オッズ比は同様だった。・ワクチン有効率は「1回接種13日目まで」は17% (同:-37~49%)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」では76%(同:53~88%)、「2回接種(接種からの期間を問わない)」では91%(同:70~97%)、「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では95%(同:72~100%)だった。 なお、研究者らは留意すべき点として、「ワクチンの有効性は、流行状況、各変異株の割合、感染対策の緩和、ワクチン接種からの期間(免疫減衰の可能性)などの要素が影響している可能性があり、総合的に、経時的に判断すべき。一方で、本報告では1回接種13日目までは有効性が認められず、これは先行研究と一致する結果であった」とし、「本調査はあくまでも迅速な情報提供を目的としている暫定的な解析であり、今後もより詳細な解析を適宜行い、変異株や感染対策の緩和の影響、免疫減衰の可能性などをみていくために、経時的に評価していくことが重要。調査期間においては、アルファ株からデルタ株の置き換わり期であり、デルタ株が大部分を占めるようになった際の有効性についても今後検討していく必要がある」としている。

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シノバック製ワクチン、ガンマ株蔓延下のブラジルで有効性検証/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のγ変異株(ブラジル型)が広くまん延している状況下で、70歳以上の集団における不活化全粒子ワクチンCoronaVac(中国Sinovac Biotech製)の2回接種者は非接種者と比較した場合、2回目接種から14日以降における症候性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症に対するワクチン有効率は47%であり、COVID-19関連の入院に対する有効率は56%、死亡に対する有効率は61%との研究結果が、スペイン・ISGlobalのOtavio T. Ranzani氏らによって報告された。研究の詳細は、BMJ誌2021年8月20日号に掲載された。サンパウロ州で、診断陰性例コントロール試験 研究グループは、γ変異株まん延下のブラジル・サンパウロ州(地方自治体数645、人口4,600万人、70歳以上人口323万人)の高齢者を対象に、CoronaVacワクチン接種の有効性を評価する目的で、診断陰性例コントロール試験(negative case-control study)を行った(外部からの研究助成は受けていない)。 対象は、サンパウロ州の居住者で、COVID-19の症状がみられる70歳以上の集団であった。2021年1月17日~4月29日の期間に、4万4,055人が逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)によるSARS-CoV-2の検査を受け、2万6,433人が陽性(症候性COVID-19)、1万7,622人はCOVID-19の症状がみられるものの陰性(コントロール)であった。 年齢、性別、自己申告の人種、居住する地方自治体、COVID-19様疾患の既往、RT-PCR検査日(±3日)に関して、症例(陽性者)1人に対しコントロール(陰性者)を最大で5人までマッチさせた(症例1万3,283人、コントロール4万2,236人)。 マッチング集団のCoronaVacワクチン接種者と非接種者で、症候性COVID-19(RT-PCR検査で確定)と、これに伴う入院および死亡の比較が行われた。年齢層が高いほど有効率が低下 CoronaVacワクチン非接種者との比較における、2回接種者の症候性COVID-19に対する調整後のワクチン有効率(発症予防効果)は、2回目の接種から0~13日が24.7%(95%信頼区間[CI]:14.7~33.4、p<0.001)、14日以降は46.8%(38.7~53.8、p<0.001)であった。 また、COVID-19関連入院に対するワクチン有効率は、2回目の接種から0~13日が39.1%(95%CI:28.0~48.5、p<0.001)、14日以降は55.5%(46.5~62.9、p<0.001)であり、死亡に対するワクチン有効率はそれぞれ48.9%(34.4~60.1、p<0.001)および61.2%(48.9~70.5、p<0.001)であった。 2回目接種から14日以降のワクチン有効率は、最も若い年齢層(70~74歳)で優れており、年齢層が高くなるに従って低下した。すなわち、症候性COVID-19のワクチン有効率は70~74歳が59.0%(43.7~70.2)、75~79歳が56.2%(43.0~66.3)、80歳以上は32.7%(17.0~45.5)であり、入院のワクチン有効率はそれぞれ77.6%(62.5~86.7)、66.6%(51.8~76.9)、38.9%(21.4~52.5)、死亡のワクチン有効率は83.9%(59.2~93.7)、78.0%(58.8~88.3)、44.0%(20.3~60.6)だった。 著者は、「COVID-19の流行に対応した集団予防接種キャンペーンの一環としてCoronaVacを使用する場合は、ワクチンの供給を優先し、2回接種完了者数を最大限に増やす必要がある」としている。

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第73回  HPVワクチン普及と勧奨早期再開は地方医師会の腕の見せ所?

一歩前進なのか、それともまだ停滞なのか? 定期接種のワクチンに組み入れられながら、2013年6月以降、実に8年以上も「積極的な接種勧奨の差し控え」が続いているヒトパピロ―マウイルス(HPV)ワクチン。8月31日の閣議後の記者会見で田村 憲久厚労相は厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で積極的な接種勧奨の再開に向けて議論をする準備を進めていくとの方針を明らかにした。すでにこのワクチンの存在意義を揺るがす、とりわけ安全性面に関する新たなエビデンスが登場するとは考えにくい。その意味で個人的には積極的接種勧奨の再開はもう政治決断でも良いのではないかと思うが、中止の際は専門家の意見を聴取したうえでの判断だったことを考えれば、再度分科会に諮るというのは役所の手続き上外せないのだろう。これを受けた各紙の報道は以下のようなものだ。読売新聞だけは会見の日の早朝に関係各所からの取材で裏を取ったとみられる記事を出した翌日、田村厚労相が再開を表明した旨のごく一行程度の短信を発信している。「子宮頸がんワクチン接種 『積極勧奨』の再開、議論」(朝日新聞)「子宮頸がんワクチン『積極勧奨』検討 田村厚労相」(産経新聞)「子宮頸がんワクチンの積極勧奨検討 厚労相が正式表明」(日本経済新聞)「子宮頸がんワクチン、積極的な接種呼びかけ再開に議論準備」(毎日新聞)「子宮頸がんワクチンの『接種勧奨』再開を検討へ…近く厚労相表明」(読売新聞)各記事を読めばわかる通り、どこも淡々と記事化している。もし「副反応が…」と言いたければ、メディアの習性として必ずこの後に論評的な記事が掲載されるのだが、そういったものは今のところ1本もない。少なくとも上記の大手紙は積極的な接種勧奨の再開に向けてほぼ足並みが揃ったと言っていい。一方で私個人はここ最近の各地方ブロック紙、地方紙の報じ方も気になった。首都圏や関西圏を除けば、まだまだ地方紙の影響力は小さくないからだ。そこでこの再開報道が出る直前の1年間(2020年8月28日~2021年8月29日)に地方紙がどう報じてきたか、新聞記事データベースで「子宮頸がん AND ワクチン」のキーワードで検索してみた。対象となったのは地方紙44紙。検索の結果、出てきた記事は136件だった。もっとも地方紙の場合、自社のマンパワーでカバーできない記事は、共同通信や時事通信といった通信社の記事をそのまま掲載することも少なくない。そこでそうした配信記事をまずはカウントしてみた。まず通信社記事として最も多く掲載されていたのは、昨年10月に大阪大学の研究グループがHPVワクチンの接種勧奨差し控えによる子宮頸がん罹患者や死亡者の推計を発表したことに関する記事が16件。このほかは、世界保健機関(WHO)が昨年11月に子宮頸がんの撲滅に向け、HPVワクチン接種率を2030年までに15歳以下の女子の90%にまで高めることを盛り込んだ新たな目標を発表したとの記事が13件、昨年10月に厚労省が都道府県に対し、HPVワクチンの定期接種対象者に情報伝達するように通知したことを受けて接種者が増加しているとの現状を報じた記事が12件、9価のHPVワクチン発売の記事が10件、接種勧奨の中止によりHPVワクチンの定期接種の機会を逃した人を救済する独自のキャッチアップ制度を青森県平川市がスタートさせたという記事が5件など。このほかにも、採用した新聞社が5社未満の通信社記事もいくつかあり、136件の記事のうち約半数強は通信社による記事だった。各地方紙が独自に配信した残る約半数の記事をざっと眺めまわすと、主要な記事としてはおおむね2つのカテゴリーがあることが分かった。まず一つは前述の昨年10月の厚労省の通達を受けて、各都道府県の市区町村による接種対象者向けの情報発信の現状とそれに伴う接種者の増加を報じたもの、もう一つは各地の医師会や医師個人がHPVワクチン接種率向上に向けて行っている取組みや呼びかけを紹介したものだ。前者はある種、国の動きに応じた一時的なニュースともいえるが、後者は情報を発信する医師会や医師個人、それを報じる記者個人の努力に依存した結果とも言える。後者のような記事は、検索対象とした44紙で平均すると1年間に2~3紙当たり1記事程度に過ぎないが、接種勧奨中止の影響で国や地方自治体からの情報発信が限られる中、一般向けの情報としては発信当事者が思っている以上に実は受け手にとって重要な情報源となっている可能性は少なくない。国はこれまでHPVワクチンの積極的な接種勧奨再開に当たって「国民の理解を得ることが重要」との主張を繰り返してきたが、その「国民の理解」をどのような指標で測るのかは明確にしてこなかった。もっとも単純な政党支持率などと違って、医療のような医療従事者と医療受益者との情報の非対称性が著しい領域では、個別政策に対する国民の支持を定量的指標で測るというのは非常に困難ではある。その意味でもし「国民の理解」を間接的に定量化できる指標があるとするならば、それは「現情勢下でのHPVワクチンの接種率向上」ぐらいだろう。昨年10月の通達に基づく地方自治体からの接種対象者への情報発信は、前述のように記事化されるほど接種率向上に役に立ったと言える。ただ、その際に使われたリーフレットには、HPVワクチンに関する情報を詳細に紹介しながらも「現時点で国は積極的な接種勧奨をしていない」とのただし書きが付くなんとも分かりにくい物になっている。その意味では接種勧奨再開に動きそうな今だからこそ、その動きを確実化あるいは加速化させるために、首都圏のような大都市部よりも互いに顔が見えやすい地方の医師会や医師個人、地方メディア同士による連携したHPVワクチンに関する情報発信が重要な局面になっていると改めて思っている。

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