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中国製不活化ワクチン、3~17歳に良好な安全性と免疫応答

 新型コロナワクチンの成人に対する接種が世界的に広がっているが、小児に対する有用性を検証することを目的とした臨床試験も進んでいる。中国において3~17歳の小児および青年を対象とした研究の結果が発表された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版6月28日号掲載の報告。 中国・河北省にある疾病対策センターで、3~17歳の健康な小児および青年を対象に、中国Sinovac Biotech社の不活化ワクチン「CoronaVac」(WHO緊急使用リストおよび33ヵ国で承認済み)の二重盲検無作為化比較第I/II相試験を行った。 参加者はSARS-CoV-2への曝露または感染歴のある人は除外され、ワクチン群と対照群(ミョウバンのみ)に割り付けたうえで、2回接種(0日目と28日目)を受けた。 第I相試験は、72例を対象に、各年齢層(3~5歳、6~11歳、12~17歳)を低用量段階(ブロック1)から高用量段階(ブロック2)へ順に割り付けた。ブロック1は低用量ワクチン群(1.5μ)または対照群(ミョウバンのみ)、ブロック2は高用量ワクチン群(3.0μg)または対照群に3:1で無作為に割り付けた。 第II相試験は、480例を対象に、3ブロックに分け、ブロックごとに低用量ワクチン群(1.5μg)、高用量ワクチン群(3.0μ)、対照群に2:2:1で無作為に割り付けた。 安全性の主要評価項目は、少なくとも1回の接種を受けた全参加者における28日以内の有害反応であった。免疫原性の主要評価項目は、2回目接種から28日後のSARS-CoV-2に対する抗体陽転率だった 主な結果は以下のとおり。・2020年10月31日~12月2日に72例が第I相、2020年12月12日~30日に480例が第II相に登録され、計550例がワクチンまたはミョウバンのみを少なくとも1回接種された(第I相71例、第II相479例)。・第I相と第II相を合わせた安全性プロファイルでは、接種後28日以内に何らかの副反応が発生したのは、1.5μg群56/219(26%)、3.0μg群63/217(29%)、対照群27/114(24%)であり、有意差はなかった(p=0.55)。・副反応の多くは軽度および中等度であった。最も高い頻度で報告されたのは注射部位の痛み(73/550[13%])で、1.5μg群36/219(16%)、3.0μg群35/217(16%)、対照群2/114(2%)に発生した。・2021年6月12日現在、対照群で肺炎の重篤な有害事象が1件報告されているが、ワクチン接種とは無関係と考えられている。・第I相試験では、2回目接種後に抗体陽転が1.5μg群27/27(100%)、3.0μg群26/26人(100%)に認められた。第II相試験では、1.5μg群180/186(96.8%)、3.0μg群180/180(100%)に認められた。対照群では検出可能な抗体反応はなかった。 研究者らは、この研究は不活化ワクチンを3~17歳の小児および青年を対象に試験を実施した初めての報告であり、CoronaVacは3~17歳の小児および青年において忍容性が高く安全であり、体液性免疫応答を誘導した。3.0μg投与で誘導された中和抗体価は1.5μg投与よりも高い免疫応答を示し、今回の結果は小児および青年を対象とした今後の研究において3.0μgの投与量と2回の免疫スケジュールの使用を支持するものである、としている。

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ファイザー/モデルナワクチンに心筋炎・心膜炎の注意喚起/使用上の注意改訂

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン(一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARSCoV-2))であるコミナティ筋注(ファイザー)とCOVID-19ワクチンモデルナ筋注(武田薬品工業)について、使用上の注意の「重要な基本的注意」の項に心筋炎および心膜炎に関する注意喚起を追記するよう、7月7日付けで改訂指示が発出された。 今回の改訂指示は、国内ではこれらのワクチンとの因果関係が否定できない心筋炎および心膜炎の副反応疑い報告はないものの、以下の状況を考慮し、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断されたことによる。・海外において、因果関係は不明であるが、これらのワクチンの接種後に心筋炎および心膜炎が報告されていること・海外において、心筋炎および心膜炎の注意喚起がなされていること・国内においても、因果関係は不明であるが、症例集積が認められること・心筋炎、心膜炎が疑われる症状が認められた場合には医師の診察を受ける旨をあらかじめ被接種者に指導することが、早期発見および重症化への対処の上で重要であると考えること・接種対象者の拡大に伴うAYA世代への接種数増加が予想されること なお、国内で集積された症例は、心筋炎関連はコミナティ筋注で12例(うち死亡2例)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注で1 例(死亡例なし)、心膜炎関連はコミナティ筋注で3例(死亡例なし)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注では報告されていない。いずれも、因果関係が否定できない症例は報告されていない。 両ワクチンの添付文書における改訂(新設)は以下のとおり。8. 重要な基本的注意本剤との因果関係は不明であるが、本剤接種後に、心筋炎、心膜炎が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。15. その他の注意15.1 臨床使用に基づく情報海外において、因果関係は不明であるが、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に心筋炎、心膜炎が報告されている。報告された症例の多くは若年男性であり、特に2回目接種後数日以内に発現している。また、大多数の症例で、入院による安静臥床により症状が改善している。

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COVID-19ワクチンの血栓性合併症にIgGは有効なのか?(解説:後藤信哉氏)

 COVID-19 pandemicは持続している。ワクチンは切り札と理解されているが、ウイルスベクターのワクチンでは血栓イベントの合併がまれとはいえ発症する。血栓性合併症に対して抗凝固療法とIgGbの併用が推奨されている。カナダではウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19を、ワクチンによる血栓症が少ないとされた55歳以上に使用した。それでも63~72歳の症例に血栓イベントが発症した。血栓イベントは2例が下肢動脈血栓症、1例が脳静脈洞血栓症であった。3例ともヘパリンと血小板第4因子に対する抗体(いわゆるHIT抗体)を認めた。IgG投与によりHIT抗体は減少した。 本研究は3例の経験にすぎない。しかし、世界のCOVID-19 pandemic抑制に期待されるワクチンでもまれに重篤な血栓イベントを起こすこと、血栓イベントに対してまったく対応法がないわけではないことを示している。ワクチンによる血栓症ではいわゆるHIT抗体が高いとされていた。HITであれば、血栓症に対してヘパリンを使うわけにはいかない。アルガトロバンなどの他の抗凝固薬に転換された。しかし、抗凝固薬転換のみでは血小板数は活性化しなかった。HITではHIT抗体による血小板活性化がFcRg受容体刺激を介して起こる。そこで大量のIgGを添加すれば病態を改善できる可能性がある。本研究の対象は3例であり、臨床イベントを標的とした研究ではないが、3例の血小板数、HIT抗体量などを丁寧に計測してIgG療法の有効性を示唆した。 筆者はワクチン反対論者ではない。積極的ワクチン接種がCOVID-19 pandemic克服への唯一の希望と思っている。ワクチンによる合併症はまれである。しかし、0(ゼロ)ではない。ワクチンには血栓イベントなど致死的な合併症のリスクはあるが、臨床医は確立された治療がなくても類似病態を参考にベストを尽くす。すべての合併症が治るとは言わない。しかし、合併症が起こったら、その実態を社会で共有し、対応策をみんなで考えることが大事である。 本論文は、まれだが致死的合併症に対してでも医師がベストを尽くして対応している、カナダ社会の健全性を示す論文として評価できる。

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第65回 コロナワクチン巡る突然の供給減で垣間見えた国の不信行為

新型コロナウイルスのワクチン接種を巡っては、各地の自治体で新規予約を停止する動きが相次いでいる。新規感染者が高止まりしている大阪府の医療機関でも、“寝耳に水”のような状況でワクチン供給量削減の連絡が来た。住民にワクチン接種を行ってきた医療機関は、情報不足と方針転換に戸惑いながら時間と人員を割いてきただけに、大阪府保険医協会は国に対する疑念を示すとともに、国民に対する説明責任を求めている。6月28日、大阪府医師会から「緊急連絡」という書面が大阪市内の新型コロナワクチン個別接種を取り扱う医療機関に届いた。その内容は、「先週、各医療機関から発注があったワクチンに関しては、発注量から1割減をした上で(大阪市医師会から)各医療機関に供給予定」というものであった。さらに6月30日付の「続報」では、「7月5日週の供給量について、おおむね1~3割を減じた数を配送」と通知された。6月29日には、吹田市でも「8月1日以降は当面最大送量を10本/週に減らしての対応」を依頼する旨の書面が、市医師会から市内医療機関に送られていた。医師らからは「国に梯子を外された」と恨み節大阪府保険医協会には、「8月いっぱい予約が詰まっている。急に減らされて困っている」「保健所に問い合わせたらキャンセルの連絡をして欲しいと言われたが、簡単なことでない」「国から梯子を外された感じ」などと怒りや不安の声が寄せられている。また、予約がキャンセルになった人たちが「やっと接種券が来たのに……」とがっかりする姿に心が痛むという声も寄せられているという。この間、河野 太郎・新型コロナワクチン接種推進担当大臣は、連日にわたりワクチン接種を進める“宣伝”を行っていた。東京五輪・パラリンピックの開催を前提に、高齢者接種の7月末完了を掲げ、つい最近では幅広い年齢層への接種開始を大きくアピールしていた。さらに、ワクチン接種回数が多い医療機関に対しては、接種費用を上積みしてまで接種促進に発破を掛け続けていたのだから、先述の医療機関の落胆や不満はもっともだ。ワクチン接種進める一方で、不足を把握していた疑念大阪府保険医協会は、7月1日に発表した声明の中で、「多くの自治体が現役世代に接種券を送付し、職域接種が開始される6月21日以前に、国は“ワクチンが足らない”状況を把握していた可能性がある」と指摘する。具体例の1つとして、以下のような点を挙げる。それは、6 月19日に開催された全国知事会の「9都道府県の緊急事態宣言の解除等を受けた緊急提言」に、「ファイザー社ワクチンの配分が7月以降急減する実情にあり、ワクチン接種を加速する流れに水を差すのではないかと懸念される」との文言があるのだ。全国知事会は国の情報を基にワクチンの供給削減について言及したはずだ。同協会は「国はなぜ早く対策をとらず、“ワクチン接種に突き進め”と号令をかけ続けたのか。ワクチン接種ができると期待していた国民に対して説明責任を果たすべきだ」と批判。そして、「実態を把握せず、医療現場や全国の市町村に丸投げし、不手際に対してその責任を現場に負わせる。こうした政府の姿勢に厳しく抗議するとともに、いのちを守ることより、五輪開催に突進する姿に恐怖すら感じる」と糾弾した。ワクチン接種を待ち望んでいる住民を落胆させたり、地域で頑張っている医師の心を折ったりするようなことはあってはならない。

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COVID-19診療手引きを更新、デルタ株や後遺症などを追記/厚労省

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」について、最新の知見を踏まえて更新した「第5.1版」を作成し、6月5日付で都道府県などに周知した。最新版では、懸念される変異株の概要を更新し、インドで最初に検出された「デルタ株」について、推定される感染性や重篤度、ワクチンへの影響などが詳しく記載された。また、症状の遷延(いわゆる後遺症)について、日本国内の複数の調査(厚生労働科学特別研究事業)の中間集計報告が追記されている。 診療の手引き・第5.1版の主な改訂ポイントは以下のとおり。【病原体・疫学】・変異株について更新、懸念される変異株(VOC)の呼称にギリシャ文字を使用・主要なVOCの概要を更新、B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)について追加・国内発生状況を更新 →2021年6月29日までのデータを追記【臨床像】・重症化マーカーTARCについて追加・症状の遷延(いわゆる後遺症)について厚生労働科学特別研究事業の中間集計報告を追加【症例定義・診断・届出】・病原体診断について更新【重症度分類とマネジメント】・ECMO、血液浄化療法について更新・ワクチン接種後に生じる血小板減少症を伴う血栓症(TTS)について追加(参考)・患者急増の際の入院優先度判断の考え方について追加(参考)【薬物療法】・有効性を認めなかった薬剤にカモスタットを追加・ファビピラビルを妊娠する可能性のある婦人に投与する場合の注意喚起を更新・ナファモスタット吸入薬の開発中止について記載・企業治験中のAT-527、GSK3196165IV、GSK4182136、REGN-COV2を追加【院内感染対策】・環境整備について更新【退院基準・解除基準】・期間計算のイメージ図を更新

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第65回 三重大事件で製薬会社、医療機器メーカーの社員に有罪判決、大学は“どこ吹く風”と後任教授公募へ

小野薬品、日本光電の社員に執行猶予付き有罪判決こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。私が住む町でも、64歳以下の住民にワクチン接種券がやっと届きはじめました。早速予約を試みましたが、7月は既に満員でした。そんな中、各紙報道によると、自治体によっては新規の接種予約を停止するところが出てきているようです。自治体の接種で使用しているファイザー製ワクチンの国からの供給量が、自治体の希望量に追いついていないためです。また、6月30日に菅 義偉首相は、企業・大学などからの申請受付を一時停止していた職域接種について、新規の受付を事実上中止する方針を表明しました。受付を再開すれば、職域接種に用いるモデルナ社製ワクチンが不足すると判断したため、とのことです。「1日100万回!」「7月末までに高齢者接種終了!」と菅首相が大号令をかけ、自治体や企業などにも相当無理をさせた上でのこの状況。政府がワクチン供給の見通しを誤ったことに加え、全国の在庫状況をきちんと把握できていないことが混乱に拍車をかけています。一方、海外では、変異株の増加などを背景に、ブースター効果を期待した3回目の接種を進めている国もあります。感染の再拡大とワクチン接種の遅れで、オリンピックはいよいよ無観客開催が現実になりそうな気配です。さて、今回は再び三重大病院臨床麻酔部の事件を取り上げたいと思います。事件発覚から約10ヵ月が経って、とうとう小野薬品工業(大阪市)の社員、日本光電工業(東京都新宿区)の元社員に有罪判決が下りました。三重大の事件については、この連載でも「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」「第36回 元准教授逮捕の三重大・臨床麻酔部不正請求事件 法律上の罪より重い麻酔科崩壊の罪」「第40回 三重大元教授逮捕で感じた医師の『プロフェッショナル・オートノミー』の脆弱さ」「第45回 製薬企業からの奨学寄付金が賄賂に、三重大元教授再逮捕の衝撃」と何度も取り上げ、元臨床麻酔部教授はじめ、麻酔科医たちのあきれた所業を伝えてきました。社員たちの有罪判決は、元臨床麻酔部教授のお金への執着に翻弄された結果と言えます。彼らは皆、働き盛りの30~40代です。医師にかしずく製薬会社や医療機器メーカーの営業職の就職人気は、今後ガタ落ちするかもしれません。「奨学寄附金」200万円を「賄賂」と認定津地裁は6月29日、三重大病院の臨床麻酔部の54歳の元教授に薬剤を多数発注してもらう見返りに現金200万円を提供したとして、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人に懲役8ヵ月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。社員は三重大を担当する中部営業部長(48歳)と三重営業所の担当MR(44歳)です。検察は営業部長に懲役1年、担当MRに懲役10ヵ月を求刑していましたが、2人とも同罪となりました。判決では、2018年3月に三重大名義の口座に振り込んだ「奨学寄附金」200万円を、「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を多数受注できるようにするための「賄賂」だと認定しました。裁判官は「医師から働きかけがあったとはいえ、利益を優先して奨学寄付の趣旨を歪める形で見返りを期待して現金を供与する犯行に及んだことは、あまりにも軽率」とした上で、「賄賂は比較的多額で公務の適正や社会の信頼を害した結果は重い」と述べました。公判で弁護側は、奨学寄付金200万円の提供は、元教授の主導で行われたとし、「大学と製薬会社の力関係や、大学の奨学寄付金の根本的なひずみが生んだ事件で、すべてを2人の責任にはできない」と反論し、罰金刑か執行猶予付きの判決を求めていました。社員2人が執行猶予付きの有罪判決を受けたことについて、小野薬品は「このような事態を招いてしまったことを厳粛かつ重大に受け止めるとともに深くお詫び申し上げます。今後、できる限り速やかに再発防止策の詳細、および奨学寄付の在り方を決定し、早期の信頼回復に努めます」という主旨のコメントを発表しました。会社を懲戒解雇された日本光電元社員この判決の前日、6月28日の津地裁では、同じく三重大病院の医療機器納入をめぐる汚職事件で、贈賄罪に問われた医療機器メーカー・日本光電の元社員3人の判決もありました。この判決では、元中部支店医療圏営業部長(48歳)に懲役1年、執行猶予3年、元三重営業所長(41歳)と元三重営業所員(37歳)の2人に懲役10ヵ月、執行猶予3年を言い渡しています。3人は2019年8月、自社の生体情報モニター納入で便宜を図ってもらう見返りに、臨床麻酔部の元教授が代表理事を務める団体の口座に現金200万円を振り込んだとのことです。この事件では、元教授が「寄付金を入れないと臨床麻酔部には出入りさせない」などと話し、高額な寄付を求めていたことも明らかになっています。裁判長(小野薬品の事件と同じ裁判長です)は、仲介業者への値引き販売を利用して賄賂の資金を捻出した手口を「手が込んでいて悪質」、「自社の利益を優先した犯行は非難を免れない」と非難しました。3人が罪を認めていることや、会社を懲戒解雇され、社会的制裁を受けていることから、執行猶予付き判決が相当と判断したとのことです。第三者供賄、詐欺罪を問われる元教授の判決は?ランジオロール塩酸塩の不正請求の発覚に端を発したこの事件、張本人である三重大病院臨床麻酔部元教授は、1月6日、愛知、三重の両県警に第三者供賄の疑い(日本光電の生体情報モニター導入の件)で逮捕され、1月27日には、小野薬品のオノアクトに関する詐欺罪の疑いで再逮捕されています。なお、発端となった不正請求事件(実際には使わなかったランジオロール塩酸塩を患者に投与したように電子カルテを改ざんし、診療報酬をだまし取った)で、詐欺などの罪に問われた臨床麻酔部元准教(48歳)については、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年とした津地裁判決が5月7日に確定しています。本丸である元教授が第三者供賄、詐欺罪について問われる公判はこれからです。これまでに6人の有罪が確定し、彼らの人生も大きく狂わせたことを考えると、6人よりも重い罪になることも考えられます。三重大は麻酔科の主任教授を公募中ところで、以上の公判が進む中、三重大は6月10日付で臨床医学系講座(麻酔科学分野)教授の公募を開始していました。この公募のお知らせには、臨床医学系講座(麻酔集中治療学分野)の教授の定年退職で、教授を公募するとしています。ただ、今回の事件含め、過去いろいろと問題の多かった臨床麻酔科学のポストは見直す方向のようです。お知らせでは、「三重大学では、麻酔科学分野として、麻酔集中治療学分野と臨床麻酔科学分野があり、後者は、医学部附属病院において全身麻酔を中心に従事する『臨床麻酔部』を組織しています。この臨床麻酔科学分野を麻酔集中治療学分野に統合し、臨床医学系講座(麻酔科学分野)として後任の教授を選考することになりました」と書かれています。さらに、「当該教授には教育研究分野としての『麻酔科学分野』、関連する診療科等としての 『臨床麻酔部』と『麻酔科』を一元的に統括していただき、医学部附属病院における麻酔科長を兼務し、麻酔科専門研修プログラム統括責任者を務めていただきます」となっています。つまり、臨床麻酔部は廃止、麻酔集中治療学の教授に主任教授として全権を与え、研究・教育から病院の麻酔、研修プログラムまで全体を管理してもらう、ということのようです。「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」でも書いたように、15年近くに渡って問題を起こし続けてきたいわくつきの三重大麻酔科に、外部からわざわざ手を挙げてやって来る麻酔科医が果たしているでしょうか。元教授は、医局の運営や若手麻酔科医のリクルート等のためにお金が必要だった、という報道もありました。国立大学医学部の教授は、もはや決して”美味しい”地位、役職ではありません。とは言え、地域の基幹病院でもある三重大病院でとしては、麻酔科をなんとかしなければなりません。事件や事故で再び世間を騒がせ、地域の医療に迷惑をかけないためにも、選考にあたっては、提出論文含め、これまでの論文に不正がなく、麻酔も上手で、人柄よく、お金にきれいな人物が選ばれることを願っています。もっとも、そんな奇特な人物がいればの話ですが…。

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第67回 がん患者にmRNAワクチン有効/米国のCOVID-19死亡例の接種状況/ワクチン開発に役立つ発見

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの効果を裏付ける2つの報告と次世代のCOVID-19ワクチン開発で参考になりそうな研究成果を紹介します。がん患者の94%がCOVID-19のmRNAワクチンに応答Pfizer/BioNTech社やModerna社のmRNAワクチン・BNT162b2やmRNA-1273が投与されたがん患者のほとんどが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体を幸いにも発現しました1)。2回目の接種を済ませたがん患者123人中116人(94%)にSARS-CoV-2への抗体が認められました。ただし、先立つ6ヵ月間に抗CD20抗体リツキシマブ治療経験がある4人にはSARS-CoV-2への抗体が認められませんでした。また、骨髄腫やホジキンリンパ腫などの血液がん患者の抗体発現率は77%であり、固形がん患者の98%に比べて低めでした。血液がん患者は抗体活性も低めでした。今後の課題として、そのような不安要素がある患者へのがん治療後の3回目の接種の検討などが必要です2)。米国では今やワクチン接種済みのCOVID-19死亡例は1%に満たないAP通信社が米国疾病予防管理センター(CDC)の5月のデータを独自に調べた結果によると同国のCOVID-19死亡のほぼすべてはワクチン接種が済んでいない人でした3)。5月のおよそ11万のCOVID-19入院患者にワクチン接種が済んだ人はほとんどおらず僅か約1.1%の1,200人足らずでした。また、5月にCOVID-19で死亡した1万8,000人超にもワクチン接種が済んでいる人はほとんどおらず1%にも満たない(およそ0.8%)約150人のみでした。好中球の投網でCOVID-19を一網打尽?Pfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種でも発現4)しうることが知られるIgA抗体は粘膜表面に豊富でウイルス病原体の防御で重要な役割を担います。IgA抗体はウイルスに直接取り付いて細胞感染を阻止することに加え、免疫細胞表面にあるFc受容体と協力して抗菌活性を促しうることが知られています。Fc受容体を介したIgA抗体のウイルス感染への作用はこれまでよく分かっていませんでしたが、PNAS誌に掲載された新たな研究の結果5)、IgA抗体-ウイルス複合体は好中球のFc受容体に結びついてクモの巣状の仕掛け・NET(好中球細胞外トラップ)を投網の如く好中球に分泌させると分かりました。好中球が破裂(NETosis)して放たれるNETはウイルスを捉えて不活性化することも確認され、その抗ウイルス機能が裏付けられました。他の免疫活性がそうであるようにNETは有益である一方で行き過ぎると害をもたらします。IgA抗体が感染前に豊富に備わっていればNETは感染防御を担うでしょう。しかし感染でIgA抗体がたくさん作られてしまうとNETは炎症を引き起こしてむしろ病状を悪化させてしまう恐れがあります6)。SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスなどに対抗するIgA抗体をあらかじめ備えておくための次世代のワクチン開発に今回の成果は参考になるでしょう。参考1)Addeo A, et al.Cancer Cell. 2021 Jun 18:S1535-6108,00330-5.2)94% of patients with cancer respond well to COVID-19 vaccines / Eurekalert3)Nearly all COVID deaths in US are now among unvaccinated / AP4)Turner JS, et al.Nature. 2021 Jun 28. [Epub ahead of print]5)Stacey HD, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jul 6;118.6)Researchers discover unique 'spider web' mechanism that traps, kills viruses / Eurekalert

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新型コロナ家庭内感染におけるワクチンの効果/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種は、家庭内感染を減少させるのだろうか。英国の全国データを分析した結果、検査陽性となる21日以上前にワクチンを接種していた感染者では未接種の感染者に比べ、家庭内感染のオッズ比が0.52~0.54と低かった。また、14日以上前に接種していた場合に家庭内感染の予防効果が認められた。英国・Public Health EnglandのRoss J. Harris氏らが、NEJM誌オンライン版2021年6月23日号のCORRESPONDENCEに報告した。 本調査では、Household Transmission Evaluation Dataset(HOSTED)のデータを用いた。HOSTEDは、英国において検査で確認されたすべてのCovid-19症例に関する情報があり、住所が同じ人々のデータがリンクされている。これらのデータを、英国でのすべてのCovid-19ワクチン接種に関する個人レベルのデータにリンクさせた。 SARS-CoV-2検査陽性となる21日以上前にアストラゼネカ製ワクチン(ChAdOx1nCoV-19)またはファイザー製ワクチン(BNT162b2)を少なくとも1回受けたSARS-CoV-2感染者からワクチン未接種の家庭内接触者への2次感染(発端患者の検査陽性後2〜14日に検査陽性と定義)のリスクについて、ワクチン未接種の感染者からワクチン未接種の家庭内接触者への2次感染リスクと比較した。Covid-19の発端患者の年齢と性別、家庭内の接触、地域、発端感染の暦週、剥奪指標(社会経済および他の因子の複合スコア)、世帯の種類や規模を調整し、ロジスティック回帰モデルを実施した。 主な結果は以下のとおり。・2021年1月4日~2月28日における、ワクチン未接種だった発端患者の家庭内接触者は96万765人のうち、9万6,898人(10.1%)が家庭内で2次感染した。・ワクチン未接種だった発端患者の家庭内を基準とした、検査陽性の21日以上前にワクチン接種を受けた発端患者の家庭内での2次感染の調整オッズ比(95%信頼区間)は、接種ワクチンがアストラゼネカ製の場合で0.52(0.43~0.62)、ファイザー製ワクチンの場合で0.54(0.47~0.62)だった。・今回のデータセットにおいて、ワクチン接種を受けた発端患者の93%が、接種が1回のみだった。・発端患者のワクチン接種時期による家庭内接触者間の感染リスクの評価では、ワクチン接種が検査陽性の14日以上前だった場合に感染予防効果が示された。

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第61回 医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志

<先週の動き>1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志感染症専門医・忽那 賢志氏がYahoo!ニュースに寄稿した内容が話題となっている。わが国においての新型コロナワクチン接種は、あくまでも希望制として進められているが、「医療従事者であってもワクチンを接種しない権利は守られるべきか、医療従事者は原則としてワクチンを接種すべきか」は、簡単に答えが出せない問題である。忽那氏は、国内におけるワクチン接種をしなかった医療従事者を含む医療機関でのクラスター発生事例を紹介し、「個人の『接種しない権利』は守られるべき」としながらも、「しかし医療従事者の場合は、ワクチン接種をしないことが直接患者さんへの被害につながることがあり、一般の方とは少し分けて考えるべきなのではないかと思います」と意見を綴った。同氏は、自身のTwitterアカウントで「こういう意見もあるよという程度のものですので議論のきっかけになれば幸いです」とコメントしている。(参考)医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか(Yahoo!ニュース)忽那賢志氏 Twitter(@kutsunasatoshi)2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?河野規制改革担当相は、各自治体への新型コロナウイルスワクチン供給が、7月下旬以降、希望している量の3分の1程度になるとの見通しを明らかにした。これは、6月末までに1億回分が供給されたファイザー製ワクチンの供給量が今後減少するため。ワクチンの供給不足を理由に、新規予約を停止する自治体もあり、その影響で予約患者のキャンセル手続きに入った医療機関も出ている。当初伸び悩んでいたワクチン接種件数だが、「オリンピック開催の7月までに65歳以上の接種を完了させる」という目標達成のため、1日100万件接種の実施を推進してきた。各自治体は、国からの供給量が減少する中、接種計画の見直しを迫られる。(参考)ブレーキかかるワクチン接種 募る不満「政府も手探り」(朝日新聞)ワクチン供給に不安が94% 都道府県庁市区、共同通信調査(共同通信)ワクチン供給 “減少の見通し” 自治体の接種に影響も(NHK)3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省25日、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」と「規制改革実施計画」が閣議決定された。規制改革実施計画には、「デジタル時代に向けた規制の見直し」としてオンライン診療・服薬指導の特例措置の恒久化が含まれており、今秋までに対象となる症状などを定める見込み。なお、オンライン診療での初診はかかりつけ医を原則としているが、カルテで患者状態が把握できる場合や、事前に基礎疾患などを確認して、オンライン診療が可能と医師と患者が判断した場合は、初診からのオンライン診療を認める方針。(参考)初診からオンライン診療 恒久化へ秋にも指針改定 厚労省(NHK)オンライン初診、秋にも対象症状を線引き 厚労省(日経新聞)資料 令和3年「規制改革実施計画」(内閣府)4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革厚労省は、1日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で、医療機関における医師労働時間短縮計画の作成ガイドライン案を修正し、2023年度末までは努力目標とすることを発表した。今年2月に成立した改正医療法により、2024年4月から診療に従事する勤務医に対して時間外労働の上限規制が適用される。このため、2021年からすべての医療機関に対して、医師の労働時間の調査を行い、各都道府県に設けられた医療機関勤務環境評価センターへの報告が求められる。また、現状で時間外労働が960時間を超える医師がいる病院で、2024年以降も特例のB・C水準の取得を希望する場合は、医師労働時間短縮の作成と医療機関勤務環境評価センターによる評価の受審が必須となる。(参考)23年度末までの医師時短計画は努力義務に 厚労省、作成ガイドライン案修正(CBnewsマネジメント)医師の労働時間把握へ、全病院に調査 21年度、厚労省(同)医師時短計画作成は努力義務だが「B水準等指定の前提」な点に変化なし、急ぎの作成・提出を―医師働き方改革推進検討会(1)(GemMed)第12回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(厚労省)5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省財務省は29日に、国の事業に無駄がないか調べる予算執行調査について公表した。これまで、後発医薬品については、保険薬局を対象に「後発医薬品調剤体制加算」を設けて使用促進を図っており、2023年度末までに後発品の使用割合を、すべての都道府県で80%以上とする目標を設定している。現状では、保険薬局の7割超が加算を取得し、減算制度の適用はわずか0.3%。残りの薬局が目標を達成すると200億円の抑制効果がある一方、加算は年1,200億円に上るため、費用対効果が極めて薄いと財務省は主張している。来年の予算編成に向け、厚労省に見直しを求める。(参考)後発薬の診療報酬加算、廃止求める 財務省が調査(日経新聞)後発医薬品調剤体制加算、廃止を含めた見直し要請 財務省・調査「費用対効果も見合っていない」(CBnewsマネジメント)資料 令和3年度 予算執行調査の調査結果の概要(6月公表分)(財務省)6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄沖縄県は30日に、重点医療機関である沖縄県立中部病院において新型コロナウイルスのクラスターが発生したことを発表した。クラスターは5月24日~6月17日にかけて発生。7月1日時点で患者36人(うち死亡は17人)と職員15人の計51人の感染が報告された。このうち、ワクチン接種を希望しなかった看護師12人が感染したことが明らかになった。同院では6月17日を最後に新たな感染者は確認されていない。(参考)ワクチン非接種の看護師12人が感染 沖縄の県立病院(産経新聞)沖縄県立中部病院でクラスター 患者ら50人感染(毎日新聞)

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AZ製ワクチン接種後の血栓症の診療の手引き・第2版/日本脳卒中学会・日本血栓止血学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まり、全国で一般市民に対しても接種が急速に進んでいる。その一方で、2021年3月以降、アストラゼネカ社アデノウイルスベクターワクチン(商品名:バキスゼブリア)接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症を来すことが報道され、4月に欧州医薬品庁(EMA)は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態とした。また、ドイツとノルウェー、イギリスなどからもバキスゼブリア接種後に生じた血栓症のケースシリーズが相次いで報告され、ワクチン接種後の副反応として血小板減少を伴う血栓症が問題となった。この血栓症は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似した病態と捉えられ、VITTやVIPITという名称が用いられた(本手引きでは血小板減少症を伴う血栓症[TTS]を用いる)が、本症の医学的に適切な名称についてはいまだ議論があるところである。 海外では、国際血栓止血学会、米国血液学会などからTTSに関する診断や治療の手引きが公開されており、WHOからも暫定ガイドラインが発表された。海外と医療事情が異なるわが国には、これまで本疾患に対する診療の手引きは存在しなかったため、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会は、COVID-19ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめ、日常診療で遭遇した場合の対応方法を提言するために2021年6月に「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版」(2021年6月)を作成、公開した。まれだが発症すると致死的なTTS TTSの特徴は1)ワクチン接種後4~28日に発症する、2)血栓症(脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に生じる)、3)血小板減少(中等度〜重度)、4)凝固線溶系マーカー異常(D-ダイマー著増など)、5)抗血小板第4因子抗体(ELISA法)が陽性となる、が挙げられる。TTSの頻度は1万人~10万人に1人以下と極めて低いが、これまでに報告されたTTSの症例は、出血や著明な脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症が多く、致死率も高い。また、脳静脈血栓症以外の血栓症も報告されているので、極めてまれな副反応であるが、臨床医はTTSによる血栓症を熟知しておく必要がある。目次はじめに1 TTSの診断と治療の手引きサマリー 1)診断から治療までのフローチャート 2)候補となる治療法2 TTSの概要 1)TTSとは 2)ワクチン接種後TTSの発症時期と血栓症の発症部位3 TTSとHITとの関連4 TTSの診断 1)TTSを疑う臨床所見  2)検査 3)診断手順 4)鑑別すべき疾患と見分けるポイント5 TTSの治療 1)免疫グロブリン静注療法 2)ヘパリン類 3)ヘパリン以外の抗凝固薬 4)ステロイド 5)抗血小板薬 6)血小板輸血 7)新鮮凍結血漿 8)血漿交換 9)慢性期の治療おわりに 付1)血栓症の診断 付2)脳静脈血栓症の治療 血栓溶解療法(局所および全身投与)/血栓回収療法/開頭減圧術/抗痙攣薬 付3)COVID-19ワクチンとは 文献 同手引きでは「おわりに」で「TTSは新しい概念の病態であり、確定診断のための抗体検査(ELISA法)の導入、治療の候補薬の保険収載、さらにはワクチンとの因果関係の解明など、多くの課題が残されている。今後、新たな知見が加わる度に、本手引きは改訂していく予定」と今後の方針を記している。

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第64回 オリンピック入国者のコロナ“ザル検疫”、関係者が語る意外な事実と驚愕の見通し

東京オリンピックが今月末から開催される。続々と各国選手団や関係者が入国する中、6月19日、事前合宿のために来日したアフリカのウガンダ選手団9人のうち1人が成田空港検疫で新型コロナのPCR検査で陽性となったことはすでに報じられているとおりだ。該当の選手は検疫による隔離が行われたが、驚くべきことに残り8人はそのままバスで事前合宿地の大阪府泉佐野市に移動。その中からさらに1人の陽性が判明し、泉佐野市職員までもが濃厚接触者に認定されるに至った。ちなみに最初に空港検疫で陽性が判明した選手は、国の療養解除基準を満たしたことから、7月1日未明、泉佐野市の宿舎に到着したと発表されている。濃厚接触の疑いがある選手に移動を許してしまう「ザル検疫」にはかなり驚きだが、実は濃厚接触の判断は自治体(ウガンダ選手団の場合はホストタウンの泉佐野市)が行うとの方針に基づくもの。ただ、残りの選手の移動を許し、移動地で新たな陽性者が発生したことには批判が多く、今後は空港段階で濃厚接触者の特定を行う方針を検討しているという。やや口汚い言い方かもしれないが、この検討そのものが何とも間の抜けたレベルにしか思えない。もっとも空港検疫に限界があることも事実だ。たとえば今回のウガンダ選手団の場合、全員がアストラゼネカ社製ワクチンの2回接種を済ませ、出国96時間以内に2回のPCR検査を受けて陰性だったとの証明書を持参していたという。ここではまず科学的な限界がある。ワクチンで十分な抗体価を獲得できるのは接種完了から1~2週間後で、その効果も100%ではないこと。また、感染から4日後までは感染者の半数以上がPCR検査で偽陰性になってしまう。さらに空港検疫でスクリーニングに使われている抗原検査は、PCR検査と比べれば感度は落ちる。今回のケースはたまたま抗原検査で結果が出なかった選手に念押しのPCR検査を行った結果、陽性になったという結果論から言えば「不幸中の幸い」のようなケースだ。一方、実務上も限界がある。来日する外国人が提示するワクチンの接種証明書やPCR検査の陰性証明書に実施医療機関が記載されていても、空港検疫の窓口ではその医療機関が実在するのか否かを確認している余裕はない。それ以上にそれらの証明書の真贋を判断しきれないのが現実だ。約1ヵ月前、偶然にも検疫業務関係者と話す機会があった。その時この関係者が語っていたのは「陰性証明書を有していても入国時の抗原検査で陽性になるケースは一定程度あり、とくに航空機の場合、この陽性率は到着便の離陸国によって明らかに違う」ということだった。端的に言えば、法制度の運用が先進国ほど厳格ではない国からの到着便の搭乗客が提示する陰性証明書には、偽造が疑われるものが紛れ込んでいる可能性が高いということだ。しかし、この関係者が最も懸念していたことはほかにもあった。たとえば空港検疫で陽性が判明した入国者は、検疫所が用意した宿泊施設で経過観察が行われる。こうした宿泊施設は各入国ポイント近くに存在する。成田空港ならばその周辺すなわち千葉県内である。そしてこの経過観察中に重症化すれば千葉県内の新型コロナ病床に収容される。この現実が意味することは次のようなことだ。10万人程度が来日すると言われる今回のオリンピックでは、主な入国ポイントは成田空港、羽田空港になると思われるが、この水際で感染者を捕捉できたとしても、そこから発生する重症者は東京都、千葉県の新型コロナ病床に入院し、結果的に地域の病床ひっ迫に影響しかねないのである。そして場合によっては地域住民から発生するであろう新型コロナ重症者と病床を取り合ってしまうことさえ想定できるというのだ。ここでやや荒っぽい試算をしてみる。オリンピック関係の想定入国者は10万人と言われる。このうち1%から陽性者が見つかったとしよう。その数は1,000人。感染者のおおむね2割が重症化するのでその数は200人。そしてこちらのデータからは、新型コロナの重症者対応病床は千葉県が101床、東京都が1,207床となっている。2019年出入国管理統計によれば、同年に日本に入国した外国人は3,118万7,179人、うち成田空港からが897万8,773人、羽田空港からが 428万8,078人である。1年間に日本に入国する外国人は成田空港からが29%、羽田空港からが14%を占める。つまり前述の重症者試算にこの割合を加味すると、成田空港からのオリンピック関係入国者からは58人、羽田空港から28人の重症者が出ることになる。試算した成田空港での発生重症者が千葉県の新型コロナ重症者対応病床に入院することになれば、なんとその50%以上を占有することになる。東京都は幸い2%強で済む。ちなみに2019年出入国管理統計での成田空港、羽田空港の入国者がわりに少ないと思った人も多いだろう。これ以外で入国者が多いのは関西国際空港の837万8,039人で、割合にして27%。前述の試算と同様の計算を行えば、このルートで発生する重症者は54人。大阪府の重症者対応病床数は841床で、その7%弱に当たる。もっとも今回のオリンピックはあくまで開催地が東京であることを考えれば、過去の出入国管理統計データで示されるよりも成田空港、羽田空港からの関係者入国割合は多くなるはずだ。しかも、いま首都圏では東京都を中心に感染の再拡大傾向が見え始めている。6月30日時点の新規感染者の前週比は東京都が1.20倍、千葉県が1.09倍。そしてこの傾向が続けば東京オリンピックの開会式の頃に緊急事態宣言発出となる可能性がある。ここにオリンピック関連入国者から見つかる陽性者、そこから引き続く重症者が前述のように発生したらどうなるだろうか?何とも嫌な時期にオリンピックを開催するのだと、正直溜息しか出てこない今日この頃である。

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臓器移植患者、ワクチン3回接種で抗体価が大幅上昇/NEJM

 固形臓器移植を受けた患者は、新型コロナワクチンを2回接種しても免疫応答が弱いことが報告されている1,2)。そして、移植患者はワクチン2回接種後であっても感染後の重症化リスクが高いことが報告されている3)。これらを受け、フランス公衆衛生庁は、免疫抑制状態の患者に3回目の接種を行うことを推奨している4)。NEJM誌オンライン版2021年6月23日号「CORRESPONDENCE」では、3回接種した臓器移植患者の抗体価が報告された。 臓器移植を受けた101例が、mRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)を3回接種した(平均年齢±SD:58±2歳、男性69%)。移植臓器の内訳は、腎臓78例、肝臓12例、肺または心臓8例、膵臓3例だった。最初の2回の接種は1ヵ月間隔、3回目の接種は2回目から61±1日後に行われた。移植からワクチン接種開始までの期間は97±8ヵ月だった。免疫抑制は、糖質コルチコイド(87%)、カルシニューリン阻害薬(79%)、ミコフェノール酸(63%)、mTOR阻害薬(30%)、belatacept(12%)の使用によるものだった。 主な結果は以下のとおり。・抗SARS-CoV-2抗体血清有病率は、初回接種前0%(95%信頼区間[CI]:0~4、0/101)、2回目接種前4%(1~10、4/101)、3回目接種前40%(31~51、40/99)、3回目接種から4週間後68%(58~77、67/99)だった。・3回目接種前に血清陰性だった59例のうち26例(44%)が3回目接種から4週間後に陽性となった(平均信号対カットオフ比±SD:690±293)。・3回目接種前に血清陽性だった40例全員が4週間後にも血清陽性であり、抗体価は3回目接種前の36±12から、3回目接種1ヵ月後には2,676±350に上昇した(p<0.001)。 抗体反応を示さなかった患者は年齢が高く、免疫抑制度が高く、推定糸球体濾過量が低かった。3回接種後にCOVID-19を発症した例はなかった。また、3回目接種後に重篤な有害事象は報告されず、急性拒絶反応のエピソードも発生しなかった。 研究者らは、臓器移植患者にBNT162b2ワクチンの3回接種を行うことで、ワクチンの免疫原性が大幅に改善され、全例に発症が報告されなかった、とまとめている。

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関節リウマチ診療ガイドライン改訂、新導入の治療アルゴリズムとは

 2014年に初版が発刊された関節リウマチ診療ガイドライン。その後、新たな生物学的製剤やJAK阻害薬などが発売され、治療方法も大きく変遷を遂げている。今回、6年ぶりに改訂された本ガイドライン(GL)のポイントや活用法について、編集を担った針谷 正祥氏(東京女子医科大学医学部内科学講座膠原病リウマチ内科学分野)にインタビューした。日本独自の薬物治療、非薬物治療・外科的治療アルゴリズムを掲載 本GLは4つの章で構成されている。主軸となる第3章には治療方針と題し治療目標や治療アルゴリズム、55のクリニカルクエスチョン(CQ)と推奨が掲載。第4章では高額医療費による長期治療を余儀なくされる疾患ならではの医療経済的な側面について触れられている。 関節リウマチ(RA)の薬物治療はこの20年で大きく様変わりし、80年代のピラミッド方式、90年代の逆ピラミッド方式を経て、本編にて新たな治療アルゴリズム「T2T(Treat to Target)の治療概念である“6ヵ月以内に治療目標にある『臨床的寛解もしくは低疾患活動性』が達成できない場合には、次のフェーズに進む”を原則にし、フェーズIからフェーズIIIまで順に治療を進める」が確立された。 薬物治療アルゴリズムの概略は以下のとおり。<薬物治療アルゴリズム>(対象者:RAと診断された患者)◯フェーズI(CQ:1~4、26~28、34を参照)メトトレキサート(MTX)の使用を検討、年齢や合併症などを考慮し使用量を決定。MTXの使用が不可の場合はMTX以外の従来型抗リウマチ薬(csDMARD)を使用。また、MTX単剤で効果不十分の場合は他のcsDMARDを追加・併用を検討する。◯フェーズII(CQ:8~13、18、19、35を参照)フェーズIで治療目標非達成の場合。MTX併用・非併用いずれでの場合も生物学的製剤(bDMARD)またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の使用を検討する。ただし、長期安全性や医療経済の観点からbDMARDを優先する。また、MTX非併用の場合はbDMARD(非TNF阻害薬>TNF阻害薬)またはJAK阻害薬の単剤療法も考慮できる。◯フェーズIII(CQ:14を参照)フェーズIIでbDMARDまたはJAK阻害薬の使用で効果不十分だった場合、ほかのbDMARDまたはJAK阻害薬への変更を検討する。TNF阻害薬が効果不十分の場合は非TNF阻害薬への切り替えを優先するが、その他の薬剤については、変更薬のエビデンスが不足しているため、future questionとしている。 このほか、各フェーズにて治療目標達成、関節破壊進行抑制、身体機能維持が得られれば薬物の減量を考慮する仕組みになっている。過去にピラミッドの下部層だったNSAIDや副腎皮質ステロイド、そして新しい治療薬である抗RANKL抗体は補助的治療の位置付けになっているが、「このアルゴリズムは単にエビデンスだけではなく、リウマチ専門医の意見、患者代表の価値観・意向、医療経済面などを考慮して作成した推奨を基に出来上がったものである」と同氏は特徴を示した。新参者のJAK阻害薬、高齢者でとくに注意したいのは感染症 今回の改訂で治療のスタンダードとして新たに仲間入りしたJAK阻害薬。ただし、高齢者では一般的に有害事象の頻度が高いことも問題視されており、導入の際には個々の背景の考慮が必要である。同氏は、「RA患者の60%は65歳以上が占める。もはやこの疾患では高齢者がマジョリティ」と話し、「その上で注意すべきは、肝・腎機能の低下による薬物血中濃度の上昇だ。処方可能な5つのJAK阻害薬はそれぞれ肝代謝、腎排泄が異なるので、しっかり理解した上で処方しなければならない」と強調した。また、高齢者の場合は感染症リスクにも注意が必要で、なかでも帯状疱疹は頻度が高く、日本人RA患者の発症率は4~6倍とも報告されている。「JAK阻害薬へ切り替える際にはリコンビナントワクチンである帯状疱疹ワクチンの接種も同時に検討する必要がある。これ以外にも肺炎、尿路感染症、足裏の皮下膿瘍、蜂窩織炎などが報告されている」と具体的な感染症を列挙し、注意を促した。非薬物療法や外科的治療―患者は積極的?手術前後の休薬は? RAはQOLにも支障を与える疾患であることから、薬物治療だけで解決しない場合には外科的治療などの検討が必要になる。そこで、同氏らは“世界初”の試みとして、非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムも作成した。これについては「RAは治療の4本柱(薬物療法、手術療法、リハビリテーション、患者教育・ケア)を集学的に使うことが推奨されてきた。今もその状況は変わっていない」と述べた。 非薬物治療・外科的治療アルゴリズムの概略は以下のとおり。< 非薬物治療・外科的治療アルゴリズム>◯フェーズI慎重な身体機能評価(画像診断による関節破壊の評価など)を行ったうえで、包括的な保存的治療(装具療法、生活指導を含むリハビリテーション治療、短期的ステロイド関節内注射)を決定・実行する。◯フェーズII保存的治療を十分に行っても無効ないし不十分な場合に実施。とくに機能障害や変形が重度の場合、または薬物治療抵抗性の少数の関節炎が残存する場合は、関節機能再建手術(人工関節置換術、関節[温存]形成術、関節固定術など)を検討する。場合によっては手術不適応とし、可能な限りの保存的治療を検討。 患者の手術に対する意識については「罹病期間が短い患者さんのほうが手術をためらう傾向はあるが、患者同士の情報交換や『日本リウマチ友の会』などの患者コミュニティを活用して情報入手することで、われわれ医療者の意見にも納得されている。また、手術によって関節機能やQOLが改善するメリットを想像できるので、手術を躊躇する人は少ない」とも話した。 このほか、CQ37では「整形外科手術の周術期にMTXの休薬は必要か?」と記載があるが、他科の大手術に関する記述はない。これについては、「エビデンス不足により盛り込むことができなかった。個人的見解としては、大腸がんや肺がんなどの大手術の場合は1週間の休薬を行っている。一方、腹腔鏡のような侵襲が少ない手術では休薬しない場合もある。全身麻酔か否か、手術時間、合併症の有無などを踏まえ、ケース・バイ・ケースで対応してもらうのが望ましい」とコメントした。患者も手に取りやすいガイドライン 近年、ガイドラインは患者意見も取り入れた作成を求められるが、本GLは非常に患者に寄り添ったものになっている。たとえば、巻頭のクイックリファレンスには“患者さんとそのご家族の方も利用できます”と説明書きがあったり、第4章『多様な患者背景に対応するために』では、患者会が主導で行った患者アンケート調査結果(本診療ガイドライン作成のための患者の価値観の評価~患者アンケート調査~)が掲載されていたりする。患者アンケートの結果は医師による一方的な治療方針決定を食い止め、患者やその家族と医師が共に治療方針を決定していく上でも参考になるばかりか、患者会に参加できない全国の患者へのアドバイスとしての効力も大きいのではないだろうか。このようなガイドラインがこれからも増えることを願うばかりである。今後の課題、RA患者のコロナワクチン副反応データは? 最後に食事療法や医学的に問題になっているフレイル・サルコペニアの影響について、同氏は「RA患者には身体負荷や生命予後への影響を考慮し、肥満、骨粗鬆症、心血管疾患の3つの予防を掲げて日常生活指導を行っているが、この点に関する具体的な食事療法についてはデータが乏しい。また、フレイル・サルコペニアに関しては高齢RA患者の研究データが3年後に揃う予定なので、今後のガイドラインへ反映させたい」と次回へバトンをつないだ。 なお、日本リウマチ学会ではリウマチ患者に対する新型コロナワクチン接種の影響を調査しており、副反応で一般的に報告されている症状(発熱、全身倦怠感、局所反応[腫れ・痛み・痒み]など)に加えて、関節リウマチ症状の悪化有無などのデータを収集している。現段階で公表時期は未定だが、データ収集・解析が完了次第、速やかに公表される予定だ。

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妊娠中のインフルワクチン接種と出生児の健康アウトカム/JAMA

 妊娠中の母親のインフルエンザワクチン接種は、生まれた子供の健康アウトカムに悪影響を及ぼすことはない。カナダ・ダルハウジー大学のAzar Mehrabadi氏らが、追跡期間平均3.6年間の後ろ向きコホート研究の結果を報告した。妊娠中に季節性インフルエンザワクチンを接種することで妊婦や新生児のインフルエンザ疾患を減らすことができるが、妊娠中のワクチン接種と小児期の有害な健康アウトカムとの関連については、報告が限られていた。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。最長5.5歳、平均3.6歳までの健康アウトカムと母親のワクチン接種との関連を解析 研究グループは、出生登録および出生登録とリンクしている健康管理データを用い、2010年10月1日~2014年3月31日の間にカナダのノバスコシア州で生まれたすべての出生児を対象に、母親の妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種、ならびに出生児の免疫関連疾患(喘息、感染症など)、非免疫関連疾患(腫瘍、感覚障害など)、および非特異的事象(緊急または入院医療の利用など)について、2016年3月31日まで追跡調査を行った(最短2年、最長5.5年、平均[±SD]3.6±1.1年)。 母親のワクチン接種の有無と出生児の健康アウトカムについて、母親の病歴およびその他の交絡因子を調整し、逆確率重み付け(IPTW)法を用いてハザード比(HR)と発生率比(IRR)、ならびにその95%信頼区間(CI)を算出した。喘息、感染症、腫瘍、感覚障害などいずれも有意な関連なし 解析対象の出生児は、2万8,255例(女児49%、妊娠37週以上の出生児92%)であった。このうち、1万227例(36.2%)が、季節性インフルエンザワクチンの接種を妊娠中に受けた母親から生まれた。 追跡期間平均3.6年間において、母親のインフルエンザワクチン接種は小児喘息、腫瘍および感覚障害と有意な関連はないことが認められた。母親の接種ありと接種なしにおける出生児1,000人年当たりの発生率は、小児喘息が3.0 vs.2.5(群間差:0.53[95%CI:-0.15~1.21]、補正後HR:1.22[95%CI:0.94~1.59])、腫瘍が0.32 vs.0.26(0.06[-0.16~0.28]、1.26[0.57~2.78])、感覚障害が0.80 vs.0.97(-0.17[-0.54~0.21]、0.82[0.49~1.37])であった。 また、母親のインフルエンザワクチン接種は、小児期早期の感染症(発生率184.6 vs.179.1、群間差:5.44[95%CI:0.01~10.9]、補正後IRR:1.07[95%CI:0.99~1.15])や、緊急または入院医療の利用(511.7 vs.477.8、33.9[24.9~42.9]、1.05[0.99~1.16])とも有意な関連は認められなかった。

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新型コロナワクチン後、乳房インプラント施行例でみられた免疫反応

 COVID-19ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、まれに痛みや腫脹などの反応が報告されている。皮膚充填剤のような異物は、免疫系が刺激されることで何らかの反応を引き起こす可能性があるという。ドイツ・Marienhospital StuttgartのLaurenzWeitgasser氏らは、COVID-19ワクチン接種後1~3日の間に乳房インプラント施行歴のある4例で注目すべき反応がみられたとし、その臨床的特徴や経過をThe Breast誌オンライン版2021年6月18日号に報告した。ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入部位に腫脹 これまでに、モデルナ製ワクチンの1回目および/または2回目の投与直後に、美容目的でのヒアルロン酸注入の経験がある症例で、軟部組織の腫脹や顔面浮腫が報告されている1)。これらはモデルナ製ワクチンの第III相試験中に観察された。ワクチン接種後1~2日の間に報告され、ヒアルロン酸注入の時期はワクチン接種の2週間前から2年前までの範囲であった。また、過去にはインフルエンザワクチン接種後にも、同様の反応が報告されている2)。乳房インプラントや人工関節などについても、さまざまな種類のワクチン接種後に炎症反応を起こす可能性があるという。 ワクチン接種後にヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、注目すべき反応がみられた4例についての詳細は以下のとおり。[症例1(76歳)]手術歴:美容的豊胸手術(64ヵ月前)症状:痛み、腫脹(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製ワクチン、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後2日で解消[症例2(52歳)]手術歴:美容的豊胸手術(17ヵ月前)症状:痛み、発赤(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(抗菌薬・NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後まもなく解消[症例3(52歳)]手術歴:インプラントベースの再建のためのエキスパンダー挿入(9ヵ月前~、最後の挿入は4週間前)症状:痛み(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:Johnson & Johnson製、接種3日後治療経過:保存的治療(オピオイド・メタミゾール経口投与)→数日中に解消[症例4(53歳)]手術歴:インプラントベースの再建(2ヵ月前)症状:痛み、炎症、血清腫(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:AstraZeneca製、初回接種1日後治療経過:外科的治療(インプラント除去と自家乳房再建、抗生物質静脈投与)→術後の経過は順調、数日後に退院 著者らは、世界中で数百万回の新型コロナワクチン接種が行われた後、インプラント施行歴のあるごく少数で観察されたものであり、大きな懸念はないだろうとしたうえで、ワクチン接種後のインプラントに関連する免疫反応を注意深く観察するよう患者に助言する必要があるのではないかと指摘。同時に、インプラントに対するワクチン接種後の反応は治療により管理可能で、COVID-19感染に伴うリスクがこれらの非常にまれにしか観察されない反応によってもたらされるリスクをはるかに上回っていると伝えるべきだと結んでいる。

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まれだが致死的な血栓症への対応・事前説明はきわめて難しい(AZワクチン)(解説:後藤信哉氏)-1407

 新型コロナウイルス対策としてワクチンの普及は切り札になれると期待している。ワクチンに限らず、すべての医療介入にはメリットとデメリットがある。新型コロナウイルスワクチンの場合には、ワクチン接種によりウイルス感染の広がりを阻止できるとの社会的期待がある。しかし、個別症例にはデメリットもある。本研究は医療従事者における13万例の接種に合併した5例の血栓症の報告である。 対象となった医療従事者は32~54歳で特段の疾病の既往はなかった。いずれの症例も接種後7~10日にイベントが起こっている。アナフィラキシーは接種現場で起こる。対応の準備もできる。接種後7~10日に頭痛、背部痛、腹痛などにて救急搬送されている。いずれの症例も静脈血栓が確認されている。血栓の形成部位は脳静脈洞など普通遭遇しない部位である。本研究では臨床イベントのみでなく血液検査を詳細に施行している。いずれの症例もHIT抗体と呼ばれる血小板第4因子・ポリアニオンの高い抗体価を呈した。著者は、これらの症例をワクチンによる免疫性の血小板減少・血栓症としての自発的な(ヘパリンを使用していないとの意味)ヘパリン惹起血小板減少・血栓症(HITT:heparin-induced thrombocytopenia・thrombosis)としている。HITは時に致死的な病態である。ワクチンにまったくの健常者に、ワクチン接種の1~2週に発症する。 本邦では、ワクチン接種は本人の希望によるとされている。重篤な合併症が元気な人に突然起こるという情報は医療関係者のみならず広く一般に広報されるのがよいと筆者は考える。確率は低いが致死的な合併症への対応、事前説明はきわめて難しい。

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今、改めて見直したい院内の換気対策【コロナ時代の認知症診療】第4回

質問されることの多い、ワクチン2回完了後のマスク着用65歳以上の高齢者対象の新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり進行しつつある。私の関与する患者さんとその家族でも2回目が終わったと安堵の報告をしてくださる人が増えてきた。政府の言う「この7月下旬には終了」の目標は実現しなくても、それにさほど遅れることなく終わりそうな気配になってきた。こうした過渡期にある現在、「2回のワクチン接種を済ませた患者さん、医療関係者は院内でマスクを外してもよいか?」という質問への回答が求められるようになってきた。すでにこの3月には、わが国の厚労省などが感染症対策においてよく参考にするとされる、米国疾病予防管理センター(CDC)による米国国民向けの文書が出されていた1)。堅実な臨床研究の結果2)に基づくものだそうだが、米国らしい大胆に割り切った内容であることに驚いた。ざっと次のような内容である。もしあなたが十分に予防接種されているのなら、パンデミック前の活動に戻れます。十分に予防接種されているのなら、行政等が定めた例外的な場所以外では、マスクをつけたり、フィジカルディスタンス(日本でいうソーシャルディスタンス)をとったりせずに従来の活動をしてもかまいません。けれども予防接種がまだなら、ワクチンを見つけなさい。さてここでいう「十分に予防接種されている」とは、ファイザー社やモデルナ社のような2回接種タイプのワクチンなら、2回目接種の2週間後である。またジョンソンアンドジョンソン社のような1回接種型のワクチンなら、接種の2週間後と上述のCDCのページでは解説されている。理論としてはこのとおりだと納得できる。実際、テレビのニュースなどを見ていると、米国ではマスクをしている人が少数派になってきている様子が見える。けれどもこの方針がこのまま日本で使えるか? となると、これは難しそうだ。実際、次のような反対の声もある。たとえワクチン接種されていてもまだ他人にウイルスを感染させる可能性がある。また抗体ができるには接種後、時間を要する。さらに免疫系が弱い人でもマスクによって防御効果が期待できる。加えて変異種に対してワクチンの有効性が低下する可能性がある、といった批判である3)。※なお、本稿執筆後の6月16日、新型コロナウイルス感染症対策分科会が発表した「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」では、ワクチン接種後も国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、マスク着用を求めている。少なくとも自分のクリニックにおいてどうするかは、問題になる。今考えているのは、条件付きマスク解放である。当院のスタッフは、事務職員を含め全員がすでに2回の接種を終えている。患者さんで2回の接種を終えている人で、それを証明するものがあれば、診察時の限定的な場においては、患者さんも私たちもマスクをしないでよしとしようかと考えている。もっとも未接種の付き添いがいらっしゃる場合は別にする必要がある。忘れてはならない換気、基本を振り返る一方で忘れてはならないのが換気である。感染症対策では風の流れを作り出して、ウイルスを含む空気が効率よくこの場から外へ流れ出す工夫する工夫が求められる。対策の基本は、一定の方向に着実に風の流れを作ることだ。これを実現するにはいくつかの段階がある。仮に10坪(33平方メートル)以上の比較的広い区間を想定する。まずは、ここと思しき窓やドアを2ヵ所(たとえばAとB)開けてみて、風の方向を見る。この際に、私たちは写真に示すようなスズランテープを用いている。2ヵ所のテープが空中に漂う様子(写真)から、仮にAからBへと向かっているとわかれば、この流れを強化する仕掛けを作る。画像を拡大するその基本は換気扇と扇風機の併用である。そもそもサーキュレーターと扇風機は用途が異なる。サーキュレーターは、小さい羽根で直線的で強い風を出し、遠くまで風が届くように設計されているので、室内の空気を循環させられる。つまり部屋の中の空気をかき混ぜるだけではなく、部屋の空気と外の空気を入れ替えもできる。と言うのは、サーキュレーターは、後ろの空気を吸い込み、その空気を前へ放出するからだ。この場合、サーキュレーターを窓Aに置き、外気を室内に吸い込むように部屋の内側に向ける。一方で扇風機は本来、大きい羽根により広範囲に風を送り出せる。そこで扇風機は窓Bの位置に外に向けて置く。この併用により循環効率が上がる(図)4,5)。画像を拡大するなお狭い部屋(たとえば10平方メートル以下)で、入り口と1つの窓だけしかない環境もある。この場合、風が外から強く吹き込むときが問題になる。基本はサーキュレーターを窓の外に向けることだが、戸外へ送風できない場合には、外からの風を人のいない方向にどうやって流すかの工夫が求められる。終わりにご注意を1つ。部屋中の窓を皆開ければ換気効率が良くなると思われがちだが、それは違う。部屋の中に空気が渦巻いてしまう。参考文献・参考情報1)CDC 「When You've Been Fully Vaccinated | CDC2)Thompson MG,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Apr 2;70:495-500.3)Here’s Why Vaccinated People Still Need to Wear a Mask/NY times4)ダイキン工業株式会社「上手な換気の方法~住宅編~」5)厚生労働省「「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」

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第66回 ModernaやPfizerのCOVID-19ワクチン説明書に心筋炎/心膜炎の警告をFDAが追加

米国疾病予防管理センター(CDC)会議での検討結果を受け、心筋炎や心膜炎(心臓を包む組織の炎症)がどうやら生じやすくなるとの警告(Warning)をModernaとPfizerの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチンそれぞれの説明書(Fact Sheet)1,2)に米国FDAが追加しました3)。心筋炎や心膜炎はそれらワクチンの2回目の接種後にとくに生じやすいらしく、ほとんどの場合接種から数日以内に発症するようです。CDC検討会議の資料4)によるとmRNAワクチン2回目接種者100万人当たり約13人(12.6人)の割合で心筋炎/心膜炎が発生しています。接種を受ける人やその保護者向けの説明書(Fact Sheets for Recipients and Caregiver)も変更され、胸痛、息切れ、心臓の動悸(心拍の亢進、動揺、高ぶり)が接種後に生じたらすぐに診てもらう必要があるとの指示が付け加えられています。心筋炎や心膜炎の症状はほとんどの場合短期で解消するようですが、長期の転帰はまだ不明です。FDAとCDCは報告を検討し、より多くの情報を集め、数ヵ月の長期転帰を追跡する予定です。心筋炎や心膜炎がワクチンの説明書の警告に加えられたとはいえ、米国のワクチン接種支持に変わりはありません。ワクチン後の心筋炎や心膜炎は非常に稀であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で生じることのほうがずっと多いことが知られています。それに、COVID-19の心臓への害は重症化する恐れがあります。米国保健行政代表や家庭・小児科・産婦人科・心臓・内科・看護・公衆衛生・地域医療・感染症の専門家たちは恩恵が害を遥かに上回るワクチンを許容可能な12歳以上の誰もが接種することを強く望んでいます5,6)。また、COVID-19ワクチンに伴う心筋炎様病態で入院した19~39歳の患者7例をCirculation誌に最近報告した著者らも接種の価値は害を引き続きだいぶ上回ると結論しています7)。それらのうち6例はModernaかPfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種後、1例はJohnson & Johnson社のアデノウイルス仕様のCOVID-19ワクチン接種後のものでした。今月初めにPediatrics誌に報告された別の7例8)と同様に経過は概ね良好であり、治療にはβ遮断薬や抗炎症薬などが使われ、全員が症状解消の上で入院から2~4日以内に退院できました7,9)。参考1)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE PFIZER-BIONTECH COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) 2)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE MODERNA COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) 3)Coronavirus (COVID-19) Update: June 25, 2021 / FDA4)Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) June 23, 2021 / CDC5)Statement Following CDC ACIP Meeting from Nation’s Leading Doctors, Nurses and Public Health Leaders on Benefits of Vaccination / AAP 6)Health officials, AAP urge COVID-19 vaccination despite rare myocarditis cases / AAP7)Rosner CM, et al. Circulation. 2021 Jun 16. [Epub ahead of print] 8)Marshall M,et al,. Pediatrics. 2021 Jun 4:e2021052478.9)Symptoms resolved in 7 patients with myocarditis-like illness after COVID-19 vaccination.AMERICAN HEART ASSOCIATION / EurekAlert

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妊婦、子供は?各学会のワクチン接種に対する声明まとめ

 新型コロナワクチンの接種が進む中、疾患等を理由として接種に対して不安を持つ人を対象に、各学会が声明を出している。主だったものを下記にまとめた。■日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」対象:全般要旨:ワクチンの開発状況、作用機序、有効性、安全性等の基本情報■日本小児科学会「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」対象:子供(12歳以上)要旨:まずは子どもの周囲への成人の接種を進める。そのうえで、12歳以上の子供へのワクチン接種は本人と養育者が十分に理解したうえで進めることが望ましく、個別接種を推奨する。■日本産科婦人科学会「―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて―」対象:妊婦要旨:妊娠初期を含めワクチンは妊婦・胎児双方を守る。希望する妊婦はワクチンを接種できる。持病のある妊婦はとくに接種を検討すべきである。■日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)Q & A」対象:女性全般要旨:ワクチン接種で不妊になったり、流産したりといった情報に科学的根拠は全くない。生理中や経口避妊薬服用中でもワクチン接種に対する問題はない(7/26情報追加)。■日本血液学会「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について」対象:血液疾患患者要旨:基本的にワクチン接種は推奨されるものの、治療の状況に応じてワクチン接種の効果が減じる可能性があるため、主治医と適切なタイミングを相談する。■日本神経学会「COVID-19 ワクチンに関する日本神経学会の見解」対象:神経疾患患者要旨:現時点では神経疾患(脳卒中、認知症、神経難病)を対象としたエビデンスはないが、海外のデータから副反応は一過性のものに限られ、アナフィラキシー以外には重篤な健康被害はみられていないことから、リスクは小さいものと考えられる。■日本骨髄腫学会「骨髄腫患者に対する新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン接種について」対象:骨髄腫患者要旨:骨髄腫患者は重篤化と死亡のリスクが高いと推測され、ワクチン接種による罹患率と重篤化防止が期待できるが、接種タイミングは患者ごとの免疫不全状態をみながらの判断となる。■日本リウマチ学会「COVID-19ワクチンについて」対象:リウマチ性疾患患者要旨:ステロイドをプレドニゾロン換算で5mg/日以上または免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤のいずれかを使用中の患者は他の人たちよりも優先して接種したほうがよい。通常のワクチン接種の場合、免疫抑制剤やステロイドを中止・減量することはない。■日本麻酔科学会「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について(5月18日修正版)」対象:手術予定患者要旨:待機手術もワクチン接種後すぐに行うことができるが、数日間(最大1週間)空けることで、術後の発熱などの症状が副反応か手術によるものかが区別できる。■日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療について Q&A-患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版-」対象:がん患者要旨:がん患者における重症化の可能性を考慮すると、ワクチン接種はベネフィットがリスクを上回ると思われ、接種が推奨される。

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第60回 ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省

<先週の動き>1.ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省2.大学病院の経営状況、過去最大1兆円以上の落ち込み3.若年層への違法薬物対策で、大麻の使用も罰則化へ/厚労省4.10月の本格稼働に間に合う?マイナンバーカード保険証の準備状況5.日本全国の医療機関や専門医の検索サイトを新設/厚労省6.「即日インプラント」「全身脱毛し放題」もNG、規制強化へ/厚労省1.ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省厚生労働省は、22日に事務連絡「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その2)」を発出し、新型コロナワクチンの接種開始から6月16日までに報告された「接種間違い」は139件(10万回当たり0.596件)であり、そのうち健康被害につながる恐れのある「重大な間違い」は70件(同0.300件)だったことを公表した。なお、現時点で健康被害は確認されていない。最も多かったミスは、「接種間隔の間違い」が31件、次いで注射器の再使用など「血液感染を起こしうる間違い」が23件、「不必要な接種(生理食塩水のみ)」と「接種量の間違い」がそれぞれ13件。厚労省が掲げる対策として、「リキャップを行わない」「接種後は速やかに使用後の注射器を確実に廃棄する」「一連の作業を中断させない」など、再発防止の徹底を呼び掛けた。厚労省は、全国の自治体に対し、ワクチンの接種ミスがあった場合、速やかに報告するよう求めている。(参考)ワクチン接種ミス139件 厚労省、再発防止を呼びかけ(朝日新聞)ワクチン接種ミス「139件」、厚労省が集計…最多は「接種間隔の間違い」(読売新聞)ワクチン接種ミス 139件確認 使用済み注射器使用など 厚労省(NHK)2.大学病院の経営状況、過去最大1兆円以上の落ち込み全国医学部長病院長会議が23日に発表した大学病院の経営状況調査の結果によると、2020年度は、新型コロナウイルス感染症患者の対応により、対前年度比4%減の1,204億円強の医業赤字となり、医業利益率はマイナス8.3%と前年度に比べて3.93ポイント悪化したことが明らかになった。また、手術件数も前年と比較して累計約13万件減少となっている。今年の3月以降、改善しつつある指標もあるが、前年度の反動と考えられ、依然として厳しい経営環境にあり、同会議は一層の財政支援を強く要望している。(参考)2020年度に大学病院経営は1204億円強の医業赤字、3月に外来指標が改善するが「前年の反動」である点に留意―医学部長病院長会議(GemMed)新型コロナウイルス感染症に関する大学病院の経営状況調査(3月度)全国医学部長病院長会議 プレスリリース20213.若年層への違法薬物対策で、大麻の使用も罰則化へ/厚労省厚労省は、21日に「大麻等の薬物対策のあり方検討会とりまとめ~今後の大麻等の薬物対策のあり方に関する基本的な方向について~」を公表した。世界と比較し、日本の違法薬物使用の生涯経験率は著しく低い水準に留まっている一方で、2020年には大麻事犯の検挙人員が7年連続で増加し過去最高を更新、30歳未満の検挙者も7年連続で増加するなど、若年層での大麻乱用が拡大している状況だ。使用に対する罰則が規定されていないことが、「大麻を使用してもよい」というメッセージと受け止められかねないため、ほかの薬物と同様、大麻の使用に対しても罰則を科すことが必要という意見が多かった。今後、法制化について国会で審議される見込み。(参考)大麻使用罪に賛成多数 厚労省検討会が報告書(福祉新聞)「大麻等の薬物対策のあり方検討会」とりまとめを公表します(厚労省)資料 「大麻等の薬物対策のあり方検討会」について(同)4.10月の本格稼働に間に合う?マイナンバーカード保険証の準備状況25日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、健康保険証の代わりにマイナンバーカードが使える医療機関や薬局の数が、6月21日時点で732施設と明らかになった。今年3月から本格稼働する予定が、保険団体側のミスなどにより10月に延期になっている。受付に必要なカードリーダーの補助金には、全国の医療機関、薬局合計約13万施設(57%)が申し込みを行っているが、マイナンバーカードの健康保険証利用登録状況は、20日時点で440.3万件(10.4%)と、まだ本格的な稼働まで時間がかかりそうだ。(参考)オンライン資格確認等システムについて(厚労省)マイナ保険証732施設どまり、10月運用へ準備急ぐ(日経新聞)オンライン資格確認、試行運用に732施設参加 21日時点、来週には800施設超(CBnewsマネジメント)5.日本全国の医療機関や専門医の検索サイトを新設/厚労省24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、厚労省は全医療機関の治療内容や専門医の有無などを全国横断的に検索できる「医療情報サイト」を新設することを明らかにした。これまで、各都道府県が医療機関等に対して、患者が医療機関等の選択をするために必要な情報(医療機能情報)の報告を義務付け、自治体ごとに運用していたが、都道府県をまたいで検索・比較ができないなどの課題があった。新システムは外国語対応のほか、医療機関の業務負担軽減のために、手術などの実施件数はNDBオープンデータを利用して事前入力を行う方針であり、運用開始は2024年度を目指す。(参考)医療機能情報提供制度に関する全国統一的な検索サイトの構築に向けた進捗状況について(厚労省)「治療どこで」全国18万病院を一括検索、厚労省が情報サイト新設へ(読売新聞)6.「即日インプラント」「全身脱毛し放題」もNG、規制強化へ/厚労省厚労省は、24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で、ウェブサイト広告で規制している美容医療関係の事例について、具体的な解説を公表した。「即日インプラント治療1日で終了」「医療脱毛満足度99%」「全身脱毛3年し放題」などの表示、ビフォーアフター写真は虚偽や誇大広告とされ規制される。医療機関やウェブサイト制作事業者、地方自治体などに対し、医療に関する広告規制の理解を深めるのが目的とされる。なお、虚偽広告は自治体が中止命令や是正命令に従わなかった場合、6ヵ月以下の懲役か30万円以下の罰金となる。(参考)第17回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会 資料(厚労省)医療広告禁止などの事例解説書を公開へ 厚労省(CBnewsマネジメント)「脱毛3年し放題」は誇大 ネット広告、厚労省が解説書(朝日新聞)

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