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妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は出産時合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症は妊婦で重症化しやすいことが知られており、罹患によって母体死亡や帝王切開となるリスクが上昇することがすでに報告されている。一方、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が母体・胎児・出産にもたらす影響については大規模な研究報告がこれまでなかった。本研究はカナダ・オンタリオ州で行われた9万7,590人を対象とし、妊娠中にワクチン接種を行った群、産後にワクチン接種を行った群、ワクチン接種を行った記録のない群で出産時合併症の有無を比較した報告である。 結果として、産後大出血、絨毛膜羊膜炎(子宮内感染と考えてよい)、帝王切開、緊急帝王切開、NICU入院、新生児仮死いずれもワクチン接種群とその他の群の間で差は認められなかった。また、ワクチンを受けた回数、1回目に受けたワクチンの種類、ワクチン接種を受けた時期で層別化したいずれの解析でもやはり各群で合併症に差は認められなかった。 妊娠・出産合併症は頻度が低いことからワクチンの影響を見るためには大規模集団を対象とした研究が必要であり、本研究の結果は妊娠中のワクチン接種の安全性を示唆するものとして十分なものといえるだろう。もちろん、妊娠初期に接種した群が少ない、出産時合併症の診断は臨床的に行われ、しばしば過小評価されることがある点、未測定の交絡要因など研究としての限界はあるが、各種感度分析が行われており研究手法としても信頼のおけるものである。同時期に発表された北欧からの研究と併せ、妊娠中の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種についての安全性が強く支持されたといえるだろう。

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妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は妊娠中合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症に妊娠中感染することで早産や妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症のリスクが上昇することが報告されている。一方、妊娠中のワクチン接種には根強い抵抗があり、臨床現場でもその安全性について質問される機会も多い。これまでも妊娠中ワクチン接種と妊娠合併症の関係を調査した論文は多かったが、病院ベースや高リスク群を対象としたものが多かった。そこで本研究ではノルウェー、スウェーデンのある期間中における全妊娠を対象としている。 早産(37週未満、32週未満)、死産、SGA(週数に比して低体重)、新生児仮死、NICU入院のリスクについて解析が行われ、いずれの項目についてもワクチン接種群、非接種群で発生率に差は認めなかった。むしろ、ノルウェーにおけるNICU入院はワクチン接種群でわずかに減少した。 本研究の大きな価値は2021年1月〜2022年1月の全ての妊娠を対象としたことである。これにより低リスク〜高リスク全ての妊娠が含まれ、選択バイアスが軽減された。また、国のデータベースを用いているため、幅広い交絡要因を検討することが可能である点も強みとして挙げられる。一方、分娩時合併症について報告したカナダの研究と同様、妊娠初期にワクチン接種を受けた群が少ないことが研究の限界として挙げられる。また早産やNICU入院など新型コロナウイルス感染が直接的に影響する合併症のリスクは、国ごとのコロナ対策により大きく左右される可能性があるため、日本でも同様の結果になるかどうかは不明であるが、少なくとも合併症が増す方向になる可能性は今回の結果から考えて低いことが予想される。前述したカナダからの研究とも合わせ、妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種の安全性が強く支持されたといえるだろう。

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α1-アンチトリプシン欠乏症〔AATD:α1-antitrypsin deficiency〕

※なお、タイトル「α1-アンチトリプシン欠乏症」の「α1」は「α1」が正しい表記となる。(web上では、一部の異体字などは正確に示すことができないためご理解ください)1 疾患概要■ 定義α1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)は、血液中のα1-アンチトリプシン(AAT)の欠乏により肺疾患や肝疾患を生じる常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性疾患である1)。肺では若年性に肺気腫を生じ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症する。気管支拡張症を合併する例もある。肝臓では、新生児期に黄疸や肝機能障害を認める場合があり、成人期には肝硬変・肝不全に移行し、肝細胞がんを発症することがある。欧米では、COPDの1~2%はAATDによるとされる。頻度は少ないが、皮下脂肪織炎や肉芽腫性血管炎を合併することがある。AATDは難病法に基づいて疾病番号231番の指定難病となり、重症度に応じて医療費助成対象疾患となった。■ 疫学ほぼ世界中で報告されているが、ヨーロッパや北米では比較的多い疾患で、約1,600~5,000人出生あたり1人とされている1)。わが国では極めてまれであり、呼吸不全に関する調査研究班と日本呼吸器学会による全国疫学調査では14名(重症9人、軽症5人)の発端者が集積され、有病率は24家系(95%信頼区間:22-27)と推計された2)。■ 病因AATDは、第14染色体長腕(14q32.1)にあるSERPINA1遺伝子の異常により生じる単一遺伝子疾患である。AATは394個のアミノ酸からなる分子量約52kDaの糖タンパク質で、血清蛋白分画のα1-グロブリン分画の約9割を占める(図1)。セリンプロテアーゼインヒビタ-として機能し、生体内で最も重要な標的は好中球エラスターゼである。主に肝臓で産生されて流血中に放出されるが、他に好中球、単球、マクロファージ、肺や腸管の上皮細胞からも産生される。図1 α1-アンチトリプシン欠乏症(Siiyamaホモ接合例)患者の血清蛋白電気泳動画像を拡大する健常者(A)と比べ、AATD(B)ではα1-グロブリン分画が欠損している(矢印)。SERPINA1遺伝子は共優性co-dominantに発現して遺伝様式に寄与する。150種類以上の変異型(バリアント)が報告されており、(a)質的・量的に正常なAATを産生する正常型バリアント、(b)流血中にAATがまったく検出されないnull型バリアント、(c)減少するdeficient型バリアント、あるいは (d)機能が変化してしまうdysfunctional型バリアントなどに分類される。正常型バリアント以外の病的バリアントを両方の対立遺伝子として受け継いでいる個体はAATDを発症するが、片方が正常型バリアントである場合には血清AAT濃度の低下は軽度で、通常は肺疾患や肝疾患の発症リスクとはならず保因者と呼ばれる。AATは、遺伝子変異によるアミノ酸置換により蛋白全体の荷電状態が変化し、等電点電気泳動における泳動位置、すなわち、AATの“表現型”が変化する。泳動位置の違いから、陽極pH4に近い位置からアルファベットの若い“B”、陰極pH5に近いものを“Z”と命名される。中央部は90%以上の遺伝子頻度を占める“M”となる。新規に同定されたSERPINA1バリアントの表現型には、表現型アルファベットに下付の小文字で同定された地名が付される。AATDの原因となるバリアントの多くはdeficient型バリアントであり、欧米ではZ型(Glu342Lys)とS型(Glu264Val)が最も多いのに対し、わが国ではSiiyama型(Ser53Phe)が85%と高頻度に検出される。わが国では遺伝学的に明らかにされたZ型の報告はない。deficient型バリアントでは変異AAT分子の折りたたみ構造が変化し、肝細胞の小胞体内で重合体polymerを形成して蓄積し流血中へ分泌できなくなるため、血清中濃度が低下する。さらに、好中球エラスターゼ阻害活性自体も低下している。 dysfunctional型バリアントは血液中のAAT蛋白量は正常であるが好中球エラスターゼ阻害活性が低下したタイプで、F型(Arg223Cys)が知られている。■ 病態生理1)好中球エラスターゼ阻害活性の低下~喪失によりもたらされる影響血清AAT濃度は通常20~50μMであり、気道被覆液中に拡散し好中球エラスターゼに代表されるセリンプロテアーゼによる組織破壊に対し防御的に働いている。しかし、11μM以下(<50mg/dL)になるとプロテアーゼによる組織破壊を十分防げず肺気腫が進行する(プロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡)。Z型では、血清AAT濃度は約2~10μMと著明に低下している。喫煙は、AAT正常者でもCOPD発症の最大の危険因子であるが、AATDでは喫煙感受性が非常に高く、より若年で肺気腫が進行しCOPDを発症する。一方、MZなど正常型とdeficient型のヘテロ接合型は、その中間の血清AAT濃度(>11μM)を呈するため、COPDを発症するリスクはないとされてきたが、最近の研究ではCOPD発症リスクがあるとする成果も報告されている。2)小胞体内や細胞外での変異AAT重合体の蓄積変異AATは小胞体内で重合体を形成して貯留し、小胞体ストレスとなり細胞を障害する。これが肝障害の主たる要因である。変異AAT重合体は、流血中、肺の気道被覆液中、肺組織などの組織間液中などの細胞外でも検出される。細胞外の変異AAT重合体は炎症を誘起する作用があり、好中球や単球に対する走化性因子や活性化因子として作用し、肺での炎症のみならず、脂肪織炎や血管炎の発症に関与すると考えられている。■ 臨床症状労作時息切れ、咳や痰などの呼吸器症状はもっともよくみられる初発症状であるが、本症に特異的な症状はない。肺疾患の有病率は主に患者の喫煙歴に依存し、喫煙歴のあるAATD患者では70%以上がスパイロメトリーでCOPDの基準を満たすが、非喫煙者では約20~30%程度である。AATDの肺気腫は汎細葉性肺気腫であり、細葉中心性肺気腫の病理像を示すAAT正常者とは異なる。胸部単純X線所見では、AAT正常者のCOPDと異なり下肺野優位に肺気腫を示唆する透過性亢進を認める(図2)。胸部CTでは汎細葉性肺気腫を示唆する広範な低吸収領域を認め、気管支拡張を伴う例もある(図3)。図2 α1-アンチトリプシン欠乏症(Siiyamaホモ接合例)の胸部X線所見画像を拡大する肺野全体の透過性亢進、血管影の減少を認めるが、両側下肺野に著しい。図3 α1-アンチトリプシン欠乏症(Siiyamaホモ接合例)の胸部高分解能CT画像画像を拡大する(A)AAT正常のCOPD症例。細葉中心性肺気腫を示唆する低吸収領域を認める。(B)Siiyamaホモ接合例。汎細葉性肺気腫を示唆する広範な低吸収領域を認める。(C)Siiyamaホモ接合例。汎細葉性肺気腫を示唆する広範な低吸収領域とともに気管支拡張像を認める。■ 経過と予後非喫煙AATD患者ではCOPDの発症は少なく、喫煙AATD患者より生存期間も長い。例えば、非喫煙AATDでCOPDを発症した症例の死亡年齢の中央値は65歳であるのに対し、喫煙AATDでCOPDを発症した症例は40歳と報告されている。さらに、PI*ZZ(Z型バリアントのホモ接合)のAATDの非喫者で無症状の場合は、ほぼ正常の寿命が期待できる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ どのような状況でAATDを疑い、血清AAT濃度を測定するか?AATDを疑って血清AAT濃度(ネフェロメトリー法)を測定する事が何よりも重要である 3,4)。従来から、一般的COPDとはやや異なる臨床像(若年者、非喫煙者、喫煙歴があったとしても軽度、COPDの家族歴など)を示すCOPD患者などでは血清AAT濃度を測定するべき3)とされてきた(表 ATR/ERSステートメント)。しかし、有病率の高いヨーロッパや北米でさえ、今だにAATDのunderdiagnosis状況が持続しており、2016年の成人AATD患者の管理・治療ガイドライン4)やGOLD 2022レポートでは、「すべてのCOPD患者には、年齢、人種を問わず、AATDの診断テストを行うべきである」と述べている(表)。表 どのようなときにAATDを疑い、診断のための検査を考慮するべきか?画像を拡大する■ 診断基準AATDは、血清AAT濃度<90mg/dL(ネフェロメトリー法)と定義され、AAT欠乏の程度は、軽症(血清AAT濃度50~90mg/dL)あるいは重症(<50mg/dL)の2つに分類される5)。AATは急性相反応蛋白質であるため感染症などの炎症性疾患では増加すること、一方、肝硬変、ネフローゼ症候群、タンパク漏出性胃腸症などの他の原因でも減少しうるので、診断に際してはこれらの病態を除外する必要がある。指定難病では、重症度2以上が医療費助成の対象となる。重症度の評価方法については難病情報センターを参照されたい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 予防を含めた全般的考え方肺疾患の予防には、喫煙しない、受動喫煙も含めて有害粒子の吸入曝露を避けること、が大切である。AATD患者では、定期的にスパイロメトリーあるいは胸部CTを行い、肺疾患の発症あるいは進行をモニタリングする。COPDを発症している場合には、COPDの治療と管理のガイドラインに準じて治療を行う。呼吸不全に至った症例では肺移植の適応となる。肝疾患発症の危険因子についてはよくわかっていないが、肥満は肝疾患のリスクを高め、男性は女性よりリスクが高い。AATD患者では肝炎ウイルス(HAV、HBV)のワクチン接種、アルコールを摂取しすぎない、健康的な食事を心がけることが推奨されている。AATD患者では、年1回程度の採血による肝機能のモニタリング、腹部超音波検査による肝がんのスクリーニングを適宜行う。■ AAT補充療法(augmentation therapy)病因・病態に則した治療としてAAT補充療法がある。ヒトのプール血漿から精製されたAAT製剤を週1回点滴静注(60mg/kg)する治療であり、CT画像における気腫病変の進行を遅らせる効果、死亡率を低下させる効果が報告されている。わが国では4名の重症AAT患者が参加した治験が実施され6)。欧米人で示されている安全性と薬物動態、すなわち、AAT(60mg/kg)を週1回点滴静注することにより、肺胞破壊に対し防御的な血清AAT濃度>11μM(>50mg/dL)を維持できることが示された。その結果、ヒトα1-プロテイナーゼインヒビター(商品名:リンスパッド)点滴静注用1,000mg(凍結乾燥製剤)(海外商品名:Prolastin-C)として2021年7月に上市された。ヒトα1-プロテイナーゼインヒビターは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気流閉塞を伴う肺気腫などの肺疾患を呈し、かつ、重症AATDと診断された患者[血清AAT濃度<50mg/dL(ネフェロメトリー法で測定)]に投与する。ヒトα1-プロテイナーゼインヒビター1,000mgを添付溶解液20mLで溶解し、ヒトAATとして60mg/kgを週1回、患者の様子を観察しながら約0.08mL/kg/分を超えない速度で点滴静注する。最後に、ルート内のAATすべてが患者に投与されるよう生理食塩液25mLに換えて同じ速度で点滴して終了する。体重60kgの成人では、全体で約20分以上を要する。AAT補充療法を開始するタイミングについて明確な基準はない。週1回の点滴静注を非常に長期にわたって継続する必要があるが、数十年以上にわたって投与し続けると想定した場合、長期投与における有害事象のリスクに関する情報は乏しい。成人AATDの治療と管理のガイドラインでは、FEV1<65%predの症例では、患者の意向を確認した上でAAT補充療法を検討するとされている3,4)。肝障害に対する特異的治療はなく、栄養指導、門脈圧亢進症の管理などの支持療法が主体である。門脈圧亢進症がある場合には、出血のリスクがあるためNSAIDsの投与は避ける。重症の肝不全では肝移植が適応となる。4 今後の展望患者細胞からiPS細胞を樹立し、肝細胞に分化させた後にゲノム編集で病的バリアントを正常バリアントに換えて患者に移植する研究、siRNAによる肝細胞でのSERPINA1発現のサイレンシング、異常AATのポリマー形成を阻害する薬剤などの試みがある。近年、AATDの正確な実態把握と治療効果の追跡を継続的に行い、長期的な管理戦略を構築することを目的に、欧州では多国間にわたる臨床研究協力の取り組みが始まっている。わが国においては、呼吸器財団、日本呼吸器学会、厚生労働省難治性疾患政策研究事業、難病プラットホームの4者の支援を受け、本症を含めた希少肺疾患を対象としたレジストリ(登録制度)が開設されている。希少肺疾患登録制度5 主たる診療科主たる診療科は呼吸器内科となる。肝疾患については消化器内科、脂肪織炎や肉芽腫性血管炎では皮膚科および関連する診療科と連携する必要がある。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター α1-アンチトリプシン欠乏症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Alpha-1 Foundation 米国の患者団体ホームぺージ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)希少肺疾患登録制度(医療従事者向けのレジストリ情報サイト)1)Greene CM, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16051. 2)Seyama K, et al. Respir Investig. 2016;54:201-206. 3)American Thoracic Society;European Respiratory Society. Am J Respir Crit Care Med. 2003;168:818-900. 4)Sandhaus RA, et al. Chronic Obstr Pulm Dis. 2016;3:668-682.5)佐藤晋ほか、難治性呼吸器疾患・肺高血圧に関する調査研究班.α1-アンチトリプシン欠乏症診療の手引き2021 第2版. 2021.6)Seyama K, et al. Respir Investig. 2019;57:89-96. 公開履歴初回2022年5月12日

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オミクロン株BA.2などについて更新、COVID-19診療の手引き7.2版/厚労省

 5月9日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.2版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。診療の手引き7.2版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・オミクロン株のBA.2系統について更新・懸念される変異株の表を更新・COVID-19死亡者数の図を更新・国内発生状況でオミクロン株のBA.2系統への置き換わりについて更新・海外発生状況で世界の流行株(主にオミクロン株)と今後の公衆衛生措置などを更新【2 臨床像】・罹患後症状について定義付け、症状一覧の図を更新 (「後遺症」という用語を削除)【3 症例定義・診断・届出】・改訂点なし【4 重症度分類とマネジメント・重症度別マネジメントのまとめの図の治療薬の脚注を更新【5 薬物療法】・ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注液500mg)について2022年4月18日の添付文書改訂による、本剤のオミクロン株(B.1.1.529/BA.2系統)への有効性(効果減弱の可能性)について更新・ニルマトレルビル/リトナビルに関する記載について併用薬留意の文言を追加・S-217622に関する記載について開発対象と参考情報を更新【6 院内感染対策】・妊婦および新生児への対応について、帝王切開の分娩方法や感染妊婦の出生児接触の対応について更新

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ファイザー製COVID-19ワクチンのオミクロン株に対する4回目接種の有効性(解説:小金丸博氏)

 ファイザー製COVID-19ワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)の4回目接種の有効性を検討したイスラエルの研究がNEJM誌オンライン版2022年4月5日号に報告された。本研究は新型コロナウイルスのオミクロン変異株が流行していた2022年1月~3月にかけて行われた試験であり、オミクロン変異株に対する予防効果を評価したものとなっている。イスラエルでは60歳以上の方、ハイリスク患者、医療従事者に対して4回目接種が認可されており、3回目の接種から4ヵ月以上の間隔を空けて接種する。本試験では60歳以上の方を対象として、ワクチンの感染予防効果、重症化予防効果が評価された。 補正前のSARS-CoV-2感染率は、4回接種群が10万人日当たり177だったのに対して、3回接種群では361であり、疑似ポアソン回帰分析の結果、感染率は3回接種群のほうが2.0倍高かった。4回目の追加接種を行うことで一定の感染予防効果を示したが、ワクチン接種後4週間をピークに効果の減弱を認め、ワクチンの感染予防効果は経時的に低下することが示された。 補正前の重症COVID-19発生率は、4回接種群が10万人日当たり1.5だったのに対して、3回接種群では3.9であり、疑似ポアソン回帰分析の結果、重症COVID-19発生率は3回接種群のほうが3.5倍高かった。重症化予防効果に関しては、少なくとも4回目接種後6週間は減弱を認めなかった。ワクチンのブースター接種による重症化予防効果がいつまで維持されるのか、今後の研究結果を待ちたい。 本研究は世界に先駆けてCOVID-19ワクチンの4回目接種を行っているイスラエルの大規模な解析結果であり、4回目接種の議論が行われている本邦でも大変参考になるデータである。現時点では、高齢者(とくに重症化リスク因子となる基礎疾患を有する者)は重症化予防を目的にブースター接種を行うのが妥当と考えるが、4回目接種の対象者(年齢、基礎疾患など)や3回目接種との間隔については各国で意見が分かれており、議論の余地があると考える。 COVID-19ワクチンに関する今後の課題として、新たな変異株に対する有効性の評価や、ブースター接種スケジュールの確立などが挙げられる。本研究はファイザー製ワクチンの試験結果であるが、異なるCOVID-19ワクチンとの組み合わせでの有効性は興味ある点である。予防効果を維持するためにはワクチンのブースター接種は必須と考えられるため、ワクチン接種スケジュールの確立のために、さらなる知見の集積が必要である。

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新型コロナ自宅死亡例は高齢者が多い/アドバイザリーボード

 4月27日に開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が公開された。 本報告では、令和4年1月1日~3月31日までの間に自宅で死亡された5態様(例:自宅療養中に死亡、入院調整中などに死亡、死亡後に陽性確認など)の新型コロナウイルス感染症患者について、都道府県を通じ、年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査、集計したもの。【死亡者の概要】対象者:計555人(男性352人、女性203人)1)死亡時の年齢構成:80代(55%)、70代(24%)、60代(10%)2)基礎疾患の有無:あり(64%)、なし(25%)、不明(11%)3)ワクチン接種歴:2回(39%)、不明(38%)、未接種(16%)4)単身・同居などの状況:家族などと同居(46%)、不明(40%)、単身(14%)5)死亡直前の診断時の症状の程度については、軽症・無症状が43.4%、中等症が7.0%、重症が2.2%、不明または死亡後の診断が47.4%6)生前に陽性が判明して自宅療養中に死亡した者は65.8%、死後に陽性が判明した者は34.2%7)発生届の届出日が死亡日よりも前であった事例が36.2%、発生届の届出日が死亡日と同日であった事例が39.8%、発生届の届出日が死亡日以降であった事例が24.0%8)自宅療養の希望ありが20.4%、希望なしが11.5%、不明者および死後に陽性が判明した者が68.1%【具体的な死亡事例について(抜粋)】・陽性が判明したが、本人や家族の意思により自宅療養を希望するケースがあった。・救急搬送の搬入時の検査で陽性が判明するケースがあった。・高齢であることや末期がんであることにより自宅での看取りを希望するケースがあった。・入院調整や宿泊療養の対象となるも、直後に死亡するケースがあった。・本人の意思により医療機関での受診や検査を希望しないケースがあった。 政府は、今後の対応として、保健・医療体制を強化しながら、オミクロン株の特徴を踏まえ、自宅療養者が確実に医療を受けることができる環境整備が重要であり、自宅療養者に対応する医療機関や発熱外来の拡充、重症化リスクのある患者を対象とした経口治療薬や中和抗体薬の迅速な投与体制の確保などの対応を実施していくことで、地域における医療体制の充実に取り組むとしている。【参考:各都道府県の自宅療養への取組事例(抜粋)】(健康観察の重点化)・陽性判明後、当日届出があった患者の携帯電話あてにショートメッセージで夜間などの緊急時連絡先などを知らせるようにした。また、固定電話のみの患者への連絡を優先するようにした。・保健所から電話連絡を取る対象を、重症化リスクの高い対象に重点化するため限定した。1月下旬からは40歳未満で基礎疾患などのない、ワクチン2回接種済みの方以外、2月上旬からは50歳未満で基礎疾患等の無い方以外の方に注力。(外注による休日対応)・自宅療養者と2日間連絡が取れなかった場合、平日のみ消防局職員の協力により自宅を訪問していたが、土日についても、別事業で委託している業者に訪問の協力を依頼することとし、毎日訪問できる体制に改めた。(看取りの対応)・コロナに感染する前から基礎疾患のため終末期で、家族が自宅での看取りを希望した場合には、在宅医、訪問介護と連携し、自宅看取りの対応を行った。

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コロナワクチン接種率10%上がるごとに死亡率8%・発生率7%減/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種率が高いほど、集団レベルのCOVID-19による死亡率および発生率は低いことが、米国疾病予防管理センター(CDC)のAmitabh Bipin Suthar氏らによる観察研究の結果、示された。2022年4月11日現在、米国ではCOVID-19発症が約8,026万例、COVID-19関連死が98万3,237例報告されており、国内の死者数が1918年のスペイン風邪を上回る近年史上最悪のパンデミックとなった。COVID-19のワクチン接種が個人レベルの発症および重症化予防に有効であることは認められているが、ワクチン接種の拡大が公衆衛生に与える影響はまだほとんど明らかにされていなかった。BMJ誌2022年4月27日号掲載の報告。米国48州2,558郡のデータを解析 研究グループは、米国における集団レベルのCOVID-19による死亡率および発生率に対するワクチン接種拡大の影響を評価する目的で、2020年12月14日~2021年12月18日に報告された米国の郡レベルの症例サーベイランスデータおよびワクチン接種データを解析した。米国48州2,558郡のデータを解析対象とした。 主要評価項目は各郡の週ごとのCOVID-19死亡率(死亡数/人口10万人/郡週)、副次評価項目はCOVID-19発生率(症例数/人口10万人/郡週)である。ワクチン接種率別の比較には発生率比を用い、郡のワクチン接種率(18歳以上の成人がCOVID-19ワクチンを1回以上接種と定義)が10%改善した場合の影響を推定した。 また、新型コロナウイルスのアルファ株およびデルタ株が優勢な時期におけるワクチン接種率の影響を、接種率が「非常に低い」(0~9%)、「低い」(10~39%)、「中程度」(40~69%)および「高い」(70%以上)に分け比較検討した。ワクチン接種率が10%上昇するごとに、死亡率が8%、発生率が7%低下 合計13万2,791郡週において、COVID-19発症が3,064万3,878例、COVID-19関連死が43万9,682例観察された。ワクチン接種率が10%上昇するごとに、死亡率が8%(95%信頼区間:8~9)、発生率が7%(6~8)低下することが認められた。 アルファ株が優勢な時期では、7万189郡週においてCOVID-19発症が1,549万3,299例、COVID-19関連死が26万3,873例観察された。 また、デルタ株が優勢な時期では、6万2,602郡週においてCOVID-19発症が1,515万579例、COVID-19関連死が17万5,809例観察された。いずれの時期も、ワクチン接種率の高さが、死亡率および発生率の低下と関連していた。

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第99回 長年続く産科「一人医長」、医療事故で新生児死亡/輪島病院

<先週の動き>1.長年続く産科「一人医長」、医療事故で新生児死亡/輪島病院2.原因不明の小児急性肝炎「可能性例」、国内で計7例に/厚労省3.コロナ関連死の推計を初公表、直接死の最大3倍/WHO4.新型コロナワクチン、2.4兆円もの調達費を問題視5.健康保険組合の赤字額2,770億円、今後急速な財政悪化か/健保連6.クレベリンのウイルス除去効果は科学的根拠なし/大幸薬品1.長年続く産科「一人医長」、医療事故で新生児死亡/輪島病院石川県能登北部にある市立輪島病院が、昨年6月に同院産婦人科で新生児が死亡したことを記者会見で明らかにし、院長と市長が謝罪した。輪島市側は全面的に責任を認め、同日に開かれた市議会臨時会で遺族に損害賠償金5,825万円を支払う議案を可決した。病院側によると、入院した妊婦を早産と誤って判断して陣痛促進剤の投与を続けたが、実際は常位胎盤早期剥離を起こしていた。さらに母体および胎児の状態悪化に対して、帝王切開ではなく吸引分娩で対応したところ、新生児は重症新生児仮死状態で生まれた。即時、救命処置と金沢市内の病院へ緊急搬送を行ったが、翌日の早朝、搬送先の病院で亡くなった。なお、母親の容態は回復している。院内の医療事故調査委員会は、妊婦への説明が不十分なまま主治医が時間休を取得し病院を離れたこと、助産師らとの情報共有がされなかったことを主たる要因と結論付けている。再発防止策として、緊急時の体制整備と医療従事者同士の情報共有の徹底を挙げた。現在、輪島、珠洲、穴水、能登の四市町(奥能登)には、分娩に対応できる産科医がこの1人しかいない。院長は会見で「医師に負担がかかっているのは事実」と説明。地域医療の維持についても考えていかねばならないだろう。(参考)輪島市長、院長が謝罪 輪島病院誤診 遺族に賠償5825万円(北国新聞)【石川】医療事故で新生児死亡 市立輪島病院 5825万円を賠償(中日新聞)市立輪島病院における医療事故について(市立輪島病院)2.原因不明の小児急性肝炎「可能性例」、国内で計7例に/厚労省厚生労働省は、英国やアメリカなどで報告が相次いでいる原因不明の小児急性肝炎の疑い例について、国内で新たに16歳以下の入院症例4件が報告されたと発表した。累計での報告数は7例となり、このうち新型コロナウイルスとアデノウイルスのPCR検査でそれぞれ1件ずつ陽性が報告されたが、現時点で確定例はない。こうした症例について、先月から自治体等に対し注意喚起および情報提供依頼を出し、GW前には感染症サーベランスおよび積極的疫学調査についての事務連絡を発出して情報収集に当たっている。なお、アメリカでは昨年10月から109人の患者報告があり、うち5人が死亡。世界保健機関(WHO)は、各国に該当する症例の報告を求めている。(参考)“原因不明” 子どもの急性肝炎 国内で新たに4人が同様の症状(NHK)米CDC、原因不明の小児肝炎を調査 5人死亡(CNN)小児の原因不明の急性肝炎について(厚労省)3.コロナ関連死の推計を初公表、直接死の最大3倍/WHOWHOは、2020年1月~2021年12月の2年間で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した死者数を約1,490万人とする推計結果を初めて公表した。少なくとも1,330万人、最大で1,660万人が亡くなったとされる。これに対し、各国がWHOに報告したCOVID-19が直接の死因となる人数の総計は同期間で542万人(22年も含めると624万人)であり、間接死も含めると最大3倍となる。なお、超過死亡の84%は東南アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸に集中しており、このうち約68%は世界全体でわずか10ヵ国に集中していた。死亡例は高齢者で多く、また女性よりも男性に多かった(男性57%、女性43%)。(参考)コロナ関連死、20~21年は最大1660万人 WHOが初推計(AFPBB News)新型コロナ死者1490万人 WHOが推計発表、米大学集計の3倍(朝日新聞)14.9 million excess deaths associated with the COVID-19 pandemic in2020 and 2021(WHO)4.新型コロナワクチン、2.4兆円もの調達費を問題視新型コロナウイルス感染対策として、政府がワクチン調達のために2兆4,000億円もの巨額な予算を使ったことについて批判の声が上がっている。先月の財政制度等審議会でも、国内で想定された接種回数を上回る8億8,200万回分のワクチンを購入したことについて指摘されており、岸田総理は「必要な費用だった」と答弁している。ワクチン購入以外にも感染対策として巨額な費用が投じられており、メディアも含め、国民が関心を寄せている。政府はもっと開示を行っていくべきと考える。(参考)不透明なコロナ支出 ワクチンや病床確保に16兆円、さらに膨らむ恐れ(毎日新聞)コロナワクチン調達費2.4兆円 不透明さの背景に「秘密保持契約」(同)岸田首相 ワクチン2兆4000億円かけ購入 “必要な費用だった”(NHK)5.健康保険組合の赤字額2,770億円、今後急速な財政悪化か/健保連大企業の社員らが加入する健康保険組合の赤字が問題となっている。健康保険組合連合会(健保連)が発表した2022年度予算の早期集計結果の概要によると、今年度の収支は2,770億円の赤字と、昨年度の5,028億円の赤字に比べて改善したものの、赤字組合の割合はいまだ7割を占める。健保連によると、収支改善は新型コロナウイルスによる高齢者の受診控えによって、一時的に高齢者の医療費を補うための拠出金が減少したためとし、次年度以降、高齢者拠出金が急増することは必至であり、今後急速な財政悪化が予想される。国民皆医療制度の持続可能性を左右する問題であり、保険料引き上げ以外にも政府が医療費抑制のために対策を打ってくるだろう。(参考)健保組合7割赤字 全体赤字額2770億円 来年度以降急激な悪化か(NHK)大企業の健保、22年度は赤字幅縮小へ コロナで医療費減(日経新聞)令和 4 年度 健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について(健保連)6.クレベリンのウイルス除去効果は科学的根拠なし/大幸薬品大幸薬品は、主力製品「クレベリン」の広告内容について、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づいた措置命令に従って、広告内容とパッケージを変更することを明らかにした。同社はこれまで同製品について「空間のウイルス除去・除菌・消臭に使用できる」などと広告に表示していたが、その効果を疑問視する声が寄せられていた。消費者庁は広告内容について、実際の効果よりも著しく優良あるかのよう表示したことは景品表示法に違反するとした。なお、製品の販売は続けられる方針だ。(参考)大幸薬品 「クレベリン」の広告表示 景品表示法違反を認める(NHK)クレベリンの浮遊ウイルス除去効果は「根拠ない」…大幸薬品「深くおわび」「返品は受け付けず」(読売新聞)弊社商品の表示に関するお知らせ(大幸薬品)

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新規抗体カクテル療法のAZD7442、コロナ発症予防にも有効/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防において、AZD7442はプラセボと比較して、有害事象の頻度は同程度でほとんどが軽度~中等度であり、症候性COVID-19の発生割合は有意に低いことが、米国・コロラド大学のMyron J. Levin氏らが実施した「PROVENT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年4月20日号に掲載された。AZD7442は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者のB細胞から分離された抗体由来の2つの完全ヒト型SARS-CoV-2中和モノクローナル抗体(tixagevimab、cilgavimab)の併用薬である。欧米5ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、COVID-19の予防におけるAZD7442の安全性と有効性の評価を目的とする進行中の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2020年11月~2021年3月の期間に、5ヵ国(ベルギー、フランス、スペイン、英国、米国)の87施設で参加者の登録が行われた(英国AstraZenecaと米国政府の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上で、COVID-19ワクチン接種への反応が不十分であるリスクが高い(年齢60歳以上、肥満、免疫不全状態、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎不全、慢性肝疾患など)、またはSARS-CoV-2への曝露リスクが高い地域や環境にある(医療従事者、食肉加工などの工場労働者、軍関係者、寮生活の学生など)、あるいはこれら双方に該当し、スクリーニング時に血清を用いた臨床現場即時検査でSARS-CoV-2陰性の集団であった。 被験者は、1日目にAZD7442 300mgの単回投与(tixagevimabとcilgavimabを別個に連続して筋肉投与)を受ける群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 安全性の主要エンドポイントはAZD7442投与後の有害事象の発生であり、有効性の主要エンドポイントはAZD7442投与後の症候性COVID-19(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法で確定されたSARS-CoV-2感染)とされ、183日間の経過観察が行われた。症状発現までの期間も長い 計5,197例(平均[±SD]年齢53.5±15.0歳、60歳以上43.4%、女性46.1%)が登録され、AZD7442群に3,460例、プラセボ群に1,737例が割り付けられた。ベースラインで、73.3%がCOVID-19ワクチン接種への反応が不十分であるリスクが高く、52.5%がSARS-CoV-2への曝露リスクが高いと判定され、77.5%は重症COVID-19への進展リスクが高い併存疾患を有していた。主解析は、参加者の30%が、自分が割り付けられた治療群を認識した時点で行われた。 少なくとも1件の有害事象を報告した参加者の割合は、AZD7442群が35.3%(1,221/3,461例)、プラセボ群は34.2%(593/1,736例)で、重症度はほとんどが軽度~中等度であった。とくに注目すべき有害事象のうち最も頻度が高かったのは、注射部位反応(AZD7442群2.4%、プラセボ群2.1%)であった。また、重篤な有害事象の発生率は両群で同程度だった(1.4%、1.3%)。 8例(両群4例ずつ)が死亡した。プラセボ群の2例はCOVID-19による死亡とCOVID-19関連の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)による死亡だった。違法薬物の過剰摂取による死亡が両群に2例ずつ含まれ、AZD7442群では心筋梗塞と腎不全による死亡が1例ずつみられた。 一方、症候性COVID-19の発生割合は、AZD7442群が0.2%(8/3,441例)と、プラセボ群の1.0%(17/1,731例)に比べ有意に低かった(相対リスク減少率:76.7%、95%信頼区間[CI]:46.0~90.0、p<0.001)。長期の追跡(中央値で6ヵ月)における相対リスク減少率は82.8%(95%CI:65.8~91.4)であった。 severe/critical(肺炎または低酸素血症がみられ、WHO Clinical Progression Scaleのスコアが5点以上)のCOVID-19は、AZD7442群では認められず、プラセボ群では5例にみられた。 AZD7442の有効性は、すべてのサブグループで一貫して認められた。また、症状発現までの期間は、AZD7442群がプラセボ群よりも長かった(ハザード比:0.17、95%CI:0.08~0.33)。 著者は、「これらのデータは、COVID-19の免疫予防薬としてのAZD7442の使用を支持するものである」とまとめ、「本試験の臨床および薬物動態の評価は少なくとも12ヵ月間継続される見込みである。また、緊急使用許可(EUA)の下で、免疫不全状態の集団における免疫予防薬としての本薬の有効性を評価する試験も進行中である」としている。

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第107回 医療者の成功事例求む!ワクチン接種をやる気に導く方法

わが家は18歳の娘も含め家族全員が2月中に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の3回目のワクチン接種を終えているが、2ヵ月ぶりに娘にワクチンを接種することになった。何かというと日本脳炎のワクチンである。私の娘の場合、2005年の日本脳炎ワクチン接種後に認められた「因果関係が否定できない急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の確認による接種勧奨中止」が本人の定期接種時期に当たったため、接種機会を逃していたのである。というか、接種勧奨再開時に本来通知が来ていたはずだが、私も妻もまったくに近いくらい記憶がない。私自身はちょうど勧奨再開時期に多忙を極めていたため、その点は妻に任せきりだったことも影響している。ちょうど昨年、ヒトパピロ―マウイルス(HPV)ワクチンの接種勧奨再開方針が決まった際に、改めて母子手帳を確認したところ、ワクチン接種のページに妙な空白を見つけ、未接種が発覚したというお粗末な顛末である。もっとも私が気付いた時期は、企業の製造工程不備により日本脳炎ワクチンの供給量が不安定な状態が続いていた。そんな最中にキャッチアップ対象に過ぎない娘の接種を医療機関にお願いすることもできない。昨年末に製造体制が復活したのは知っていたが供給が安定するのには時間がかかるだろうと思い、これまではずっとスタンバイ状態にしていた。最近になって流通もかなり改善しているだろうと思い、区役所に連絡を取って、支所に出向き予診票を発行してもらった次第だ。しかし、娘は大の注射嫌いで新型コロナワクチンの接種時でさえ、腕をまくって接種を待つ間、「あああ、あああ」と声を上げながらしかめっ面をし、看護師の皆さんが飛んできてなだめたほどの困ったちゃんである。とは言え、好き嫌いとは別に新型コロナに関しては、高校の大切な思い出作りの修学旅行の中止という状況まで経験しているので、本人もその必要性は認識していた。しかし、普段は病名としてすら馴染みのない日本脳炎のワクチンを改めて接種するとなるとそうもいかない。しかもすでに民法改正で成人となった18歳という年齢を考えると、幼少期のように親の一存で何も説明せずに済むとは思えない。そこで娘には率直に状況を説明した。まずは感染者のうち100~1,000人に1人が発症し、日本でも今も年間10例以内の発症者がいると話すと、「年10例? そんなんだったら必要ないじゃん」との第一声。これは予想された反応だったので、未だ首都圏周辺ですら養豚場のブタの抗体陽性率は高く、発症した場合は20~40%の人が命を落とすこと、さらに無事救命できたとしても半数前後に後遺症が出ると説明し、本人をなだめた。結局、接種当日にクリニックへ到着すると、すでに眉間にしわが寄っている。本人から「コロナのワクチンと比べて痛い?」との問い。いやー、これは答えにくい。本音を言えば、筋肉注射の新型コロナワクチンと皮下注射の日本脳炎ワクチンを比べれば、皮下注射のほうが痛みはあるに決まっている。私はそれに直接答えずに「まあ、チクっとするくらいだよ」と返した。接種を待つ間、もう18歳にもなったというのに父親の私の手を握っている。ようやく呼ばれて、私も同席して針が刺された瞬間の娘の顔は般若の形相。私は内心「あー、やっぱり痛いんだな」と思うしかない。終わって待合室に戻ってきてからは、「今までで一番痛かったよ」と半べそである。私は「まあその時々によっても差があったりするからね」と誤魔化しておいた。なんせ1週間後には2回目の接種を控えているので。ちなみに、その娘が思いもかけずワクチン接種後にニコニコしていたことがある。それは新型コロナの3回目接種の時である。この時、娘の接種が終わるまで私はクリニックの外で待っていたのだが、本人が「今日は何ともなかったわ」と言いながら、接種時の様子を頼みもしないのに話してくれた。本人によると接種をしたのは女医さんで、予診票を目を見開いて凝視しながら「あら、もしかして医療従事者?」と言われたとか。非医療従事者で娘の年齢だと、2月時点は2回接種完了から半年が経過していない例がほとんどだが、わが家の場合は自称「ワクチンマニア」の私が駆けずり回って、キャンセル待ちで緊急に受けられるところを探して登録したため、娘は同年代と比べて格段に接種時期が早い。実際、当時娘のクラスでは誰一人まだワクチンを接種しておらず、娘自身は「ズルしたかのように誤解されるのは嫌だ」ということでワクチン接種完了を担任教師にも友達にも隠していたほどだ。この女医さんが驚いたのも無理はなかろうと思う。本人も「違います」と答えたが、女医さんからは「でも、きちんとその年齢でワクチン接種に来ることはとても良いことですよ」とお褒めにあずかったらしい。筋肉注射という痛みが少ない方式だったことに加え、この褒められ効果が本人の心理に影響を与えたことは確かだったようだ。まあ、もっともこうしたことは接種というところまで辿り着いたから言えることで、問題は接種をためらう層へのアプローチである。その意味で私自身は今の状況をある種の懸念を持って眺めている。新型コロナワクチンに関しては、医学的知見を踏まえて2回接種が3回接種になり、今後は一部対象者に4回目の接種が行われようとしている。まだ未解明のことも少なくない新型コロナウイルスに対してはやむを得ないことではあるが、一般人の理解、以前も触れたが臨機応変な政策変更という状況に慣れていない日本人では、こうしたアジャイルさは必ずしも素直に受け止めてもらえるわけではない。そのことは3回目接種率の上昇の鈍さにも表れていると思う。これが新型コロナワクチンという限定的なものではなく、ワクチン全体への不安や疑念に広がってしまうと非常に厄介である。私が懸念するのはこの点だ。そしてもしこの危惧が現実になった際には、日本脳炎ワクチンのように対象の感染症自体の報告数が少ないものでは余計に「不必要論」が浸透してしまいやすいように思える。もちろん前述のように首都圏ですら養豚場の豚の抗体陽性率の高いという疫学的データから見れば、定期接種という形でややdo接種されているからこそ年間10例未満で収まっているのだと理解はできるはず。だが、一般向けの情報発信を常に行っているものとしては、そう簡単とは思えない。念のため、日本脳炎ワクチンについてTwitterなどで検索してみると、比較的接種に肯定的な親御さんは多いようだ。しかし、4月に岐阜県で日本脳炎ワクチン希望の5歳児への新型コロナワクチンの誤接種を巡って新型コロナワクチン否定派の人たちがあれやこれやと騒いでいるツイートも目にする。SNS上ではこうしたちょっとした事件が思いもかけないほど負の影響を拡大再生産することはよくあることだ。そうした中で日本脳炎ワクチンの供給量が改善してきた今、一般向けの啓発記事を書こうかとも思っているが、こうした「空気のようなワクチン」についてどのように情報発信すべきかとやや悩み始めている。その意味では接種を躊躇する方に対する医療従事者の成功事例があれば知りたいところだが、あちこち情報を検索していてもなかなかこれというものが見つからないというジレンマに陥っている(もし「こんな事例がありました」というのがあれば、ぜひ教えていただきたいとも思っている)。

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ワクチン接種後の解熱鎮痛剤使用は抗体獲得に影響しない/日本感染症学会

 第96回日本感染症学会総会・学術講演会(会長:前崎 繁文氏[埼玉医科大学 感染症科・感染制御科])が、4月22日~23日の期日でオンライン開催された。 本稿では、同学術講演会の口演より、谷 直樹氏(九州大学大学院)の「BNT162b2 mRNAワクチン接種後の副反応と解熱鎮痛剤内服が抗体反応に与える影響の検討」の概要をレポートする。 新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応は一般的なワクチンの接種後と比較して出現頻度が高いことが知られており、ワクチン接種後の症状軽減のため解熱鎮痛剤が使用されることも多い。そのような背景を踏まえ、ファイザー製ワクチン(BNT162b2)接種後の副反応の程度と誘導された抗体の関係性を調査すること、解熱鎮痛剤の使用が抗体反応に与える影響を調査することを目的として本研究が実施された。 解析対象は、BNT162b2を2回接種かつ2回目接種から14日以上経過した福岡市民病院職員のうち、感染・感染疑い歴のある者、ワクチン接種24時間以内に解熱鎮痛剤を内服した者を除く335人(うち235人から副反応情報を取得)とした。2回接種後に採血を行いSARS-CoV-2特異的スパイク蛋白IgG(S-IgG)抗体価を測定し、ワクチン接種後の副反応(発熱、倦怠感、頭痛、注射部位の痛みや腫れなど計13項目)に関する質問、および副反応に対して使用した解熱鎮痛剤について調査を行った。 口演で報告された主な結果は以下のとおり。・解熱鎮痛剤は全体の約45%で使用されており、発熱を認めた集団の80%以上が使用していた。・単変量解析において、局所の副反応は抗体価と相関を示さなかった。全身性副反応のうち1回目接種後の皮疹、2回目接種後の発熱、倦怠感、頭痛、悪寒の有無が抗体価と有意な関連を示した。・単変量解析で有意になった項目を用いて多変量解析を行った結果、2回目接種後の発熱の程度(β=0.301、p<0.0001)、女性(β=0.196、p=0.0014)、年齢(β=-0.119、p=0.0495)と抗体価の相関が認められた。・2回目接種後に体温が38度以上に上昇した集団は37度未満の集団より約1.8倍抗体価が高く、性別、年齢別のいずれの解析においても、2回目接種後の発熱が強いほど抗体価がより高くなる傾向が見られた。・解熱鎮痛剤を使用しても抗体価の低下は認められず、発熱の程度による違いも認められなかった。

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第110回 天然痘を撲滅したワクチンの効果に皮膚共生細菌がどうやら貢献

生身のワクシニアウイルスを皮内にちくちくと刺し入れるワクチン接種の甲斐あって天然痘は世界から実質的に姿を消し、世界保健機関(WHO)は1980年にその根絶を宣言しました。その宣言から数十年が経つ今になってようやくワクチン皮内投与後の免疫反応の後ろ盾と思しき仕組みがマウス実験で示唆されました1,2)。その仕組みとはワクチン接種部位への皮膚共生細菌の集合です。英国ケンブリッジ大学等の研究チームは無菌マウスや非無菌マウスにワクシニアウイルスを接種し、その免疫反応を調べました。また、非無菌マウスに細菌駆除薬・抗生物質を投与したときのワクチンへの影響も検討しました。接種から6日後にどのマウスにもワクチン接種皮膚領域に人への接種と同様に傷跡(lesion)が生じました。しかし、ワクチンが効いていることの証拠とこれまでみなされてきたその傷跡の大きさは一様ではなく、抗生物質非投与マウスの傷跡は他のマウスより大きめでした。今回のマウス実験によるとこれまで理由が不明だったその傷跡はワクチン接種部位に寄り付く細菌の大幅な増加に端を発するようです。細菌が寄り付く接種部位には細菌感染の特徴である好中球動員が認められました。研究リーダーのGeoffrey Smith氏によるとそれら好中球や他の細胞が傷跡の形成を促すのであり、つまり傷跡はワクシニアウイルスによるのではなく細菌を原因とします3)。ワクチン接種部位への免疫細胞の動員は抗生物質投与マウスでは乏しく、傷跡がより大きいことと好中球や特定のT細胞がより多く集っていることが関連しました。また、ワクチン接種後しばらくすると白血球の幾つかは減少に転じましたが、抗生物質非投与マウスの好中球は例外で、むしろ増え続けました。皮膚共生細菌は感染阻止抗体の生成にも貢献しているようです。ワクチンは抗生物質投与や菌保有の有無にかかわらずマウスの感染も防ぎましたが、無菌ではないマウスへのワクチン接種後の感染阻止抗体活性は無菌マウスへの接種を3倍上回りました。それらの結果によると、ワクチン接種部位に寄り付く細菌がワクチン接種に伴う免疫反応の拠り所の一つとなっているのでしょう。ただしまだ断言はできません。というのも実験で使われた無菌マウスは微生物と無縁ゆえ免疫系が未熟かもしれず、得られた結果は微生物欠如ではなく免疫の未熟さに起因するとも言えなくもないからです。今では使われなくなった天然痘ワクチンのような皮内投与ワクチンは世界の多くでもはや出番が減っていて意義が薄れています。皮内投与ワクチンは非常に有効ですがとても痛く、筋注ワクチンの方が好まれるからです。そういう意義はさておき皮膚細菌のいっそうの協力は皮内投与ワクチンをさらに有効にする手立てになりそうです。細菌を後ろ盾とする免疫反応強化で皮内ワクチンの効果を高めうると今回の研究を率いたSmith氏は考えています3)。参考1)Shmeleva EV, et al. PLoS Pathog. 2022 Apr 21;18:e1009854.2)Skin bacteria may boost immune response of mice infected with smallpox vaccine / Eurekalert3)Smallpox Vaccine Recruits Skin Bacteria to Fight Disease / TheScientist

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14%の医師がコロナ前より年収増と回答、理由は?/1,000人アンケート

 ケアネットでは、3月10日(木)に会員医師1,000人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で新型コロナ禍前と比較した年収の変化について尋ねたところ、増えた(かなり増えた+やや増えた)と回答したのは14%、ほぼ変わらないと回答したのが66%、減った(かなり減った+やや減った)と回答したのは20%だった。年収2千万円を境に「増えた」と回答した医師が増加 新型コロナ禍前と比較した年収の変化を年収別にみると、年収2千万円未満では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」と答えたのは10%だったのに対し、年収2千万円以上では25%と多い傾向がみられた。 年齢別にみると、35歳以下では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」と回答したのが25%だったのに対し66歳以上では6%と、年齢が上がるごとにその割合が低下する傾向がみられた。逆に「減った(かなり減った+やや減った)」という回答は35歳以下では11%だったの対し66歳以上では32%と、年齢が上がるごとに増加した。開業医では「増えた」医師も「減った」医師も多い傾向 開業医と勤務医でそれぞれ傾向をみると、開業医では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」が17%、「ほぼ変わらない」が52%、「減った(かなり減った+やや減った)」が32%だったのに対し、勤務医では「増えた」が13%、「ほぼ変わらない」が70%、「減った」が17%だった。 診療科別にみると、精神科や神経内科、呼吸器内科では「増えた(かなり増えた+やや増えた)」と回答した医師が20%以上となり、他科と比較して多い傾向がみられた。年収が増えた理由、影響大なのはワクチンバイト? 自由記述で年収が変化した(あるいは変わらない)理由を尋ねたところ、「かなり増えた」と回答した医師では、「コロナ補助金で(60代、内科開業医)」という声のほか、「ワクチンバイトをしまくったから(30代、眼科開業医)」とワクチンバイトを理由に挙げる人が多かった。 「やや増えた」と回答した医師では、「コロナに関係なく需要が増えている(30代、精神科開業医)」といった声のほか、「コロナ病棟をみていることの手当(40代、呼吸器内科勤務医)」等手当やワクチンバイトを挙げる人が多かった。 全体の60%以上を占めた「ほぼ変わらない」と回答した医師では、「コロナ感染対応が多いが、そのリスクに見合うだけのトータルでの増収はない(危険手当での増分≒外勤減分)(30代、小児科勤務医)」、「感染流行で患者が減少しても、その後感染が収まれば患者が増えるから(40代、麻酔科勤務医)」等プラスマイナスがあり、結果的に「変わらない」という声が多く聞かれた。 「かなり減った」「やや減った」と回答した医師が挙げた理由としては、「手術減、患者減でインセンティブが減った(40代、消化器外科勤務医)」、「患者数の激減(60代、小児科開業医)」など、患者数の減少が響いているという声が多くみられた。 上記のほか、男女別、病床数別、勤務先別等の回答について、以下のページで詳細結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2022【第5回】コロナ禍前との年収の比較

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国内初の遺伝子組み換えコロナワクチン「ヌバキソビッド筋注」【下平博士のDIノート】第97回

国内初の遺伝子組み換えコロナワクチン「ヌバキソビッド筋注」今回は、「組み換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(商品名:ヌバキソビッド筋注、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤は、わが国で4番目の新型コロナウイルスワクチンとして承認された国内製造ワクチンです。これまでさまざまな理由により先行3剤の新型コロナワクチン接種が受けられなかった人や3回目接種の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の予防の適応で、2022年4月19日に承認されました。接種対象は18歳以上です。なお、本剤の発症予防効果の持続期間は確立していません。<用法・用量>初回免疫1回0.5mLを2回、通常3週間の間隔をおいて筋肉内に接種します。本剤は2回接種により効果が確認されていることから、原則ほかのSARS-CoV-2に対するワクチンと混同することなく2回接種します。追加免疫1回0.5mLを筋肉内に接種します。通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができます。<安全性>臨床試験で報告された主な副反応は、圧痛75.3%、疼痛62.2%、疲労52.9%、筋肉痛51.0%、頭痛49.9%、倦怠感41.0%、関節痛23.9%、悪心・嘔吐14.5%などでした。また、重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.このワクチンを接種することで新型コロナウイルスに対する免疫ができ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは本剤の接種を受けることができません。1回目に副反応が現れた場合は、2回目の接種前に医師などに伝えてください。3.本剤の接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保ってください。接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。4.合計2回を3週間の間隔で筋肉内に接種します。1回目の接種から3週間を超えた場合は、できる限り速やかに本剤の2回目の接種を受けてください。5.初回免疫の2回目接種から少なくとも6ヵ月を経過した人は3回目の接種を受けることができます。6.本剤の接種直後または接種後に、心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神が現れることがあります。接種後一定時間は接種施設で待機し、帰宅後もすぐに医師と連絡を取れるようにしておいてください。<Shimo's eyes>わが国で4番目の新型コロナワクチンが登場しました。これまで承認されているワクチンはmRNAワクチンであるコミナティ筋注/同5~11歳用、スパイクバックス筋注と、アデノウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア筋注でしたが、本剤は、初の組み換えスパイクタンパクを抗原とした新型コロナワクチンです。遺伝子組み換えワクチンはすでにB型肝炎ワクチンなどで実用化されており、一般的に安全性が高く副作用が少ないといわれています。今回、国内臨床試験のデータなどをもとに有効性と安全性が確認され、特例承認ではなく通常承認の枠組みが適用されました。本剤は米国・ノババックスが開発し、わが国では武田薬品工業が技術移管を受けて製造販売と流通を担っています。本剤には、免疫の活性化を促進するサポニン由来のアジュバントMatrix-Mが添加されており、組み換えスパイクタンパクと組み合わせることで、SARS-CoV-2に対して中和抗体を作るなどB細胞の賦活化およびキラーT細胞などの細胞性免疫の賦活化が誘導されると考えられています。初回免疫について、米国とメキシコで実施された3万人規模の第III相試験では90.4%、英国で1万5,000人規模の第III相試験では89.7%の発症予防効果が確認されました。国内の日本人に対する臨床試験でも、海外におけるデータと大きく異ならない結果が得られました。副反応としては疼痛、倦怠感などが確認されましたが、ほとんどが軽度~中等度で、既存の新型コロナウイルスワクチンと比べても特別な懸念はないとされています。流通に関しては、凍結を避けた2~8℃での保存であり、通常のワクチンと同様に輸送・保管することが可能です。なお、有効期間は9ヵ月とされ、本剤の1バイアルには10回接種分の用量が充填されています。2022年4月27日、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、本剤を予防接種法に基づく特例臨時接種で使用するワクチンとして、1~3回目接種での使用を想定し、1~2回目接種に用いたワクチンの種類にかかわらず3回目接種への使用が可能となりました。接種開始時期については5月末目途とされています。参考1)PMDA 添付文書 ヌバキソビッド筋注

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「ロナプリーブ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第81回

第81回 「ロナプリーブ」の名称の由来は?販売名ロナプリーブ®注射液セット 300ロナプリーブ®注射液セット 1332一般名(和名[命名法])カシリビマブ(遺伝子組換え)(JAN)イムデビマブ(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制用法及び用量通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組換え)及びイムデビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注又は単回皮下注射する。警告内容とその理由<SARS-CoV-2による感染症の発症抑制>SARS-CoV-2による感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者※本内容は2022年5月2日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2022年1月改訂(第3版)医薬品インタビューフォーム「ロナプリーブ®注射液セット 300/ロナプリーブ®注射液セット 1332」2)PLUS CHUGAI:製品・安全性

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ワクチン接種者、オミクロンへの中和能が低下してもT細胞免疫は維持

 感染力の高いオミクロン株の出現や、新型コロナの既感染者またはワクチン接種者の中和能の低下がみられることから、新たな変異株への免疫防御力を推定するために細胞性免疫の研究が重要である。イタリア・サンタルチア財団Istituto di Ricovero e Cura a Carattere ScientificoのLorenzo De Marco氏らが、新型コロナに対して感染またはワクチンによる免疫を持つ人を対象にオミクロン株に対するT細胞応答性を調べた結果、スパイクタンパク質の変異にもかかわらず、オミクロン株が免疫系の細胞成分によって認識されることがわかった。すなわち、重症化予防効果は持続する可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2022年4月22日号に掲載。 本研究は、2021年12月20~21日に、Istituto di Ricovero e Cura a Carattere Scientificoで、ボランティアの医療従事者と科学者を対象に実施されたコホート研究である。採取直後の血液サンプルからリンパ球を分離し、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する応答を調べた。主要アウトカムとして、オミクロンBA.1株のスパイクタンパク質の変異領域に対するT細胞応答性、ペプチドライブラリーを用いた刺激によるスパイクタンパク質に対するT細胞免疫を調べた。 主な結果は以下のとおり。・新型コロナワクチン接種者もしくは新型コロナ既感染者の計61人が登録され、平均年齢41.62歳(範囲:21~62歳)、女性は38人(62%)だった。・オミクロン株の変異領域をカバーするペプチドに応答するCD4陽性T細胞頻度の中央値は0.039%(範囲:0~2.356%)で、武漢株の同じ領域に特異的なCD4陽性T細胞の0.109%(同:0~2.376%)と比べ64%減少した。・CD8陽性T細胞では、中央値0.02%(範囲:0~0.689%)の細胞で変異スパイク領域を認識し、同等の非変異領域に0.039%(同:0~3.57%)の細胞で応答したのに対し49%減少した。・しかしながら、完全長のタンパク質のペプチドライブラリーに対する全体的な応答性は、ほぼ維持されていた(推定87%)。・ワクチン接種歴や感染歴の異なるグループ間で、免疫認識の減少に有意な差はみられなかった。

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第106回 お薦めしません!医療素人とのTwitter応酬合戦、その全貌がコレ

先日、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するドラッグ・リポジショニングで注目された抗インフルエンザ薬ファビピラビルの「内情」について書いたが、その直後、私がTwitterであるツイートをしたことがきっかけで自ら「素人」と言ってはばからない人と応酬となった。Twitterをやっている人は分かると思うが、何も知らない、あるいはやや狂信的とも言っていい人とやり取りをするのは疲れるもの。私も大概は無視するのだが、あまりに誤った情報だと何かは返したくなる。その結果が今回の事態だが、医療知識のない人とやり取りをするというのは、こういうものなのだという参考事例として今回紹介したい。さて、きっかけとなった私のツイートは、本連載第104回でも触れた塩野義製薬が開発中の新型コロナの3CLプロテアーゼ阻害薬の催奇形性に関するもの。この薬に期待を寄せる人は未だ十分に有効性を示せていないイベルメクチンとファビピラビルに期待を寄せる人たちと一部と重なる。しかし、以前も触れたように動物実験でイベルメクチンは最高推奨用量の0.2倍、アビガンは臨床曝露量同程度以下で催奇形性が認められている。そうしたことをこの人たちは知らないのだろうか? という疑問を投げかけるツイートだった。ツイートした当初はほとんど反応はなかったが、それから1週間後にある人からリプライ(返信)が付いた。匿名アカウントで年齢・性別も分からないので、この人をAさんとしておこう。端的に言えばファビピラビル推しの人である。リプライの大意は「ファビピラビルの投与期間中避妊すれば問題ないし、やはり新型コロナの適応を持つバリシチニブだって催奇形性はある。またファビピラビルは米軍、台湾、日本では備蓄もされているし、海外では承認製造されている」。まあ、よくありがちな反応である。ちなみにバリシチニブに催奇形性があることは承知しているし、Aさんが言う米軍、台湾、日本での備蓄は抗インフルエンザ薬での適応であり、情報を混同している。そこでバリシチニブは催奇形性があるとはいえ、ラットで臨床用量の2.3倍、ウサギで6.3倍と、ファビピラビルはそれと比べてかなり低用量で認められ、この点で安全性は低いこと、新型コロナに対するファビピラビルはカナダ、クウェートでの二重盲検試験で有効性は確認されていないと指摘する引用ツイートを送った。過去の経験上、こうした1回目の反応後に相手が沈黙して終わりなのだが、返信があった。曰く「ファビピラビルの製造国は増えてますよ」という。この話はごく一部の国のジェネリック企業が臨床研究用などで製造していることなのだが、事細かに説明するのも面倒だったので「そうした国はいずれも日米欧3極と比べて医薬品の承認審査の厳格さを欠く国々。代表例がタイで、タイは保健省の一存で重症患者にアビガンを用いようとしているものの、エビデンスはなく、日本が真似すべきではない」という趣旨で引用リツイートをした。なお、私はAさんとのやり取りをほぼ引用リツイートで行っている。これはTwitterの性格上、単純なリプライ(返信)にすると、当事者以外のフォロワーなどに可視化されにくいからである。しかし、また返信があった。「海外では、主要国でもアビガン暫定承認と治験、備蓄が進められてます。アメリカでも製造されています」(ツイート内にカナダなどいくつかの事例のツイートを引用)引用ツイートのうち、カナダの出典を辿って思わず笑ってしまった。これはカナダで新型コロナの効能を謳ったファビピラビルの違反広告事例を紹介しているもの。どんな薬がどんな違反広告をしたかが表になっているのだが、「保存などが簡便で、新型コロナへの効果が期待されている」と謳った違反広告内容の紹介をカナダが公式にファビピラビルを評価したと勘違いしているらしい。私は大声を上げて爆笑してしまった。さらに引用ではイギリス、ドイツなども挙げているのだが、前者は単純に医師主導治験の話。後者は新型コロナの治療薬に関して「承認済み」「承認審査中」「臨床研究中」の区分で列挙し、ファビピラビルは単に臨床研究が行われている分類。ところが、Aさんは現地当局が承認審査プロセスに入っていると誤読している。いやはや、何とも言えない反応である。なので私はそうした内容やAさんが製造国が増えていると言っているものは、ファビピラビルの特許失効を受け、第三世界の一部ジェネリック企業が抗インフルエンザ薬としてや臨床研究用に供給するため細々と製造しているだけで、新型コロナ治療薬としての承認国は増加しておらず、承認に足るだけの十分なデータは未だ存在しない旨を返信した。これでやり取りも終わるだろうと思った。というのもこうしたやや長めのやり取りは過去にも経験があるが、それも3~4往復で終わることがほとんど。しかしAさんはめげずに「日本でアビガンは、利権で抑えられたと思いますよ」と、あるツイートを引用しながら返信を寄せてきた。でました、利権という名の陰謀論。ちなみにAさんが引用してきたツイートは、ワクチン否定派の中ではそれなりに有名な在米日本人のツイートで、先日、本連載でも触れたノババックスの組み換えタンパクワクチンの承認について「みんなアメリカでは承認されていないのは知っているかな?」という内容。アメリカで未承認は事実だが、それはアメリカでの申請が日本から2ヵ月遅れの今年2月であるからと考えれば説明がつく。また、すでに欧州連合(EU)では承認済みだ。この辺で止めておこうとも思ったのだが、引用先のツイートが申請時期のことやEUでの承認に触れずに、さも日本だけが暴走しているとの誤解を意図的に誘発しているかのような悪質さを感じたので、あえてAさん宛にその旨を返した。するとさらに返信(またかよ)。「未接種以外の治験してますか?」という。要は日本国内でノババックス製ワクチンを3回目のブースター接種に使おうとする動きがあることへの疑念らしい。もっともここで明確にファビピラビルから「ゴールポスト」が動いてきた。というか、ずっと「ゴールポスト」ずらしが続いてきているとも言えるが。確かにmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンを接種済みの人へのブースター接種に関する企業治験データはない。しかし、イギリスからはすでにファイザー製ワクチンやアストラゼネカ製ワクチンの接種者に対するブースター接種の臨床研究が報告されており、数字だけを見ると同一種のブースター接種よりも抗体価はやや低いものの、明らかにブースター効果は見て取れる。というか、ノババックス製ワクチンに一定の有効性と安全性が認められているならば、原理的に考えてもブースターとしての使用がそれほど大きな問題になるとは思われない。イギリスの臨床研究内容をツイートの140字という文字数制限内で説明するのは無理なので、後者の原理的には問題なしの話で引用リツイートを返した。ややうんざりしていたので、ついでに「そろそろつぎはぎであれこれ指摘するの止めたほうが良いですよ。どれも根拠薄弱なものばかりです」と付け加えた。本当はもっと過激な言葉が出そうだったのだが、最近、ある真面目な医師の実名アカウントが過激な物言いでアカウント凍結にあったのを目にしていたので極力丁寧な言い回しに止めた。しかし、返信は止まない(笑)。またもや別のツイートを引用しながら、新型コロナへのファビピラビル投与事例のメタアナリシスで有意な効果が認められた、との返信である。しかし、その中身は観察研究もどきやかなり設定の違うRCTを無理やりプールしているもの。溜息しか出ない。ということで指摘のメタアナリシスは「なんちゃってメタアナリシス」だとの指摘で返した。また、返信が返ってきた。曰く「二重盲検しか認めないんですね」と。加えてAさんはファイザー製ワクチンの治験で、一部の治験受託機関の管理が甘く、盲検が被験者にばれていた可能性がある事案が明らかになったことを付記してきた。これはBMJ誌でも紹介された話だ。この事案は記事を読んだ人もいるだろうが、問題となった受託機関が担当したのは4万例を超える同ワクチン被験者のうち1,000人程度で、かつ盲検がケースによって見れていた可能性があるに過ぎないというもの。このこと自体がワクチンの有効性や安全性に影響を与える可能性は低い。私は引用ツイートでさらに以下のような趣旨を返した。「二重盲検しか認めないのは原則として当然です。それが現時点で最も科学的に信頼度の高い試験方法です。それを否定するなら、抗インフルエンザ薬としてのアビガンも存在意義を失いますが、それで良いんですか? 二重盲検の結果として科学的に疑義が生じた場合は都度検討すれば良い話です」とにかく相手は止めない。もっとも徐々に返信までの時間は空いてきている。これも過去の経験からだが、こちらの返信に対する相手の反応までの時間が徐々に長くなるというのは、その間にネットサーフィンで反論材料を探し回っている時だ。しばらくして「レムデシビルは、二重盲検結果で承認されてましたか?」との返信。おいおい。レムデシビルの特例承認の根拠となったACCT-1試験は明確に二重盲検試験だ。その旨を指摘するついでに「これは添付文書にですら書いてある情報ですよ。ちゃんと調べてますか?」と追加して引用リツイートした。というか、調べていないことは明らかだろう。まあ、これでそろそろ止むだろうと思った私が甘かった。さらにAさんから返信。「WHOから、指摘ありましたよね」と。ああ、でました。それね。要は一時期、WHOが非常に粗い設定だった「SOLIDARITY試験」に基づき推奨しない見解を出した件だ。この見解は専門家からも批判され、当事者のギリアド社ですら公式に反論をリリースしたほど。後にデータが蓄積されたことでWHOも見解を修正している。私はさらに返信した。「また、きちんと調べずにモノを言うんですか? 承認後にWHOはよりレベルの低い『SOLIDARITY試験』に基づき推奨しない見解を出し、専門家からも批判されました。しかし、後のデータ蓄積などで、この見解は修正されています。あれこれ言う前に勉強すべきです」もうこれで何か返信があっても反応しないと一旦は決めた。しかし、このツイートにある方から「いいね」が付いた。相互フォローとなっていて面識もあるS先生からだ。医師の世界で知らない者はいないと言ってもいいパワフルな人だ。いや、ご多忙中なのに見ていたんだ。恥ずかしい。となると、もはや相手が黙るまで止めるわけにはいかない(笑)。そしてやはり返信があった。「そのようですね」とWHOの見解修正に関する別の人のツイートを引用。珍しくおとなしくなったと思いながらも、「ワクチンに関してどう思われますか?」と、どこかのTVが報じた国内での新型コロナワクチン接種後の死亡者数について触れた動画を引用してきた。次なる「ゴールポスト」変更の地雷付きだ。これにまともに付き合っていたら持たない。なんせ多くの方がご存じのようにアビガン問題と違って、ワクチン否定派の陰謀論は、まるで底なしのガラクタ箱のように、意味のない重箱の隅つつきの事案が次々と登場するだけだから。私もAさんのツイートにイライラしていたので、次のような趣旨で返した。「いい加減、ヒトに聞いたり、誰かのツイートを都合よく切り貼りするのではなく、自分で英語論文などの原典を調べたりすればいいんじゃないですか? どうやらこれまでのやり取りを見ていると英語論文などの原典に当たっていませんよね? 英語も十分に読めているようではない感じですが」腹立ちまぎれにこの辺で勉強したほうが良いですよ、と大学受験生向け英単語参考書のリンクでも貼ろうと思ったがさすがにやめておいた。するとまた返信。もういい加減にしてくれ!アメリカで裁判所の求めに応じてファイザー社が新型コロナワクチンに関する一部の文書を公開した一件を送ってきた。私もこの情報はすでにちらちら眺めていたが、はっきり言って目新しい情報はほとんどない。一部のワクチン否定派がまさに重箱の隅を突いてフレームアップしているだけである。そして私がきちんと勉強せよと言ったことに対するネット民にありがちな反応、「素人ですが、何か?」と付け加えてあった。これに対して以下のような趣旨の引用ツイートをした。「素人だから誤った情報を流布することが倫理的に許されるわけではありません。公開アカウントで発信するなら物事の事実関係は確認すべきです。カナダのアビガン違反広告の件を公的にアビガンの効能を認めたかのように発信したことをはじめ誤った情報をツイートしてますよね」なぜかこの時は一連のやり取りの中で最も多い「いいね」が付く。また、S先生も。あー、やっぱりまだ止められないんだなと思ってしまった。しかし、これでAさんからの返信は打ち止め。ここでほぼ丸2日間の応酬が終わった。しかし、このことを通じて改めて思ったのは、何かを固く信じている人ほど、さまざまな情報をあれこれ都合よく引用するという現実。コロナ禍が続く限り、こうしたことも永久機関のように続くのかと思うとうんざりである。

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世界人口の40%超がコロナ感染、感染率の高い地域は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン変異株(B.1.1.529)の急増が始まるまでに世界に衝撃的な影響を及ぼし、2021年11月14日の時点ですでに38億人の感染または再感染を引き起こし、世界人口の43.9%が少なくとも1回の感染を経験しており、累積感染割合は地域によって大きな差が認められることが、米国・ワシントン大学のRyan M. Barber氏らCOVID-19 Cumulative Infection Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年4月8日号に掲載された。バイアスの影響を受けにくい新たな推定法 研究グループは、COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日までの期間における、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の1日の感染者数や累積感染者数、1回以上感染した集団の人口比率に関して、バイアスを最小限に抑えた頑健な推定値をもたらす新たな方法を提示する目的で、190の国と地域のデータを用いて統計解析を行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの助成を受けた)。 解析には、ジョンズ・ホプキンズ大学(米国、メリーランド州、ボルチモア市)と、各国の報告のあった症例、入院、死亡のデータベース、ならびに既報のレビューやSeroTracker、政府機関を介して特定された血清有病割合調査のデータが、主に使用された。 これらのデータについて、報告の遅れなどの既知のバイアスが修正され、SARS-CoV-2に起因する超過死亡率の統計モデルを用いて死亡の過少報告の原因が明らかにされ、血清有病割合調査のデータについて抗体感受性の低下やワクチン接種、SARS-CoV-2エスケープ変異株による再感染の補正が行われた。 次いで、感染-検出比(IDR)、感染-入院比(IHR)、感染-死亡比(IFR)の実証的データベースが構築され、各地域の完全な時系列の値を推定するために地域別および1日ごとのIDR、IHR、IFRを予測する統計モデルが開発され、既報の系統的レビューで正当化されている予測因子の検証が行われた。 次に、1日の感染者数の3つの推定値(症例数÷IDR、入院数÷IHR、死亡数÷IFR)を組み合わせることで、バイアスの影響を受けにくい、より確実な毎日の感染者数の推定値が算出された。さらに、この毎日の感染者数を用いて、累積感染者数と1回以上感染した患者の累積人口比率が推定され、累積感染者数と症例、入院、死亡の修正データを用いて、累積IDR、IHR、IFRの事後推定値が算出された。 最終的に、感染から他者への感染性獲得までの期間と、感染している期間を仮定して、1日の感染者数が、地域別および1日ごとのReffective(実効再生産数:新たな1人の感染者が、その後他者に感染させた感染者数)の当該期間の時系列に変換された。感染者数は南アジアで多く、高所得地域で少ない 2020年4月~2021年10月までに、世界の1日のSARS-CoV-2新規感染者数は300万~1,700万人の間で不規則に変動し、2021年4月中旬に最大となり、とくにインドで急増していた。また、COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日の期間に、SARS-CoV-2感染と再感染を合わせた総感染者数は推定で38億人(95%不確定区間[UI]:34億4,000万~40億8,000万)に達し、世界人口のうち33億9,000万人(43.9%[95%UI:39.9~46.9])がSARS-CoV-2に1回以上感染していた。 累積感染者数は、7つの広域圏のうち南アジアが13億4,000万人(95%UI:12億~14億9,000万)と最も多かったが、累積感染率はサハラ以南のアフリカが100人当たり79.3人で最も高かった。また、高所得地域(日本を含む世界の高所得国を合わせた地域)は感染者数(2億3,900万人、95%UI:2億2,600万~2億5,200万)が最も少なく、東南アジア/東アジア(日本は高所得国に分類され、ここには含まれない)/オセアニアを合わせた地域は感染率(100人当たり13.0人[95%UI:8.4~17.7])が最も低かった。 累積感染割合は国や地域によって大きなばらつきがみられ、70%を超えた国が40ヵ国、20%未満が39ヵ国であった。 日本は、感染者数が645万人(不確定区間:508万~802万)、感染率は100人当たり5.0人(不確定区間:4.0~6.3)、感染割合は5.0%(不確定区間:4.0~6.2)だった。 Reffectiveとtotal immunity(特定地域の特定期間の人口における推定値[週平均])には明確な関連はなく、total immunityが80%の場合でもReffectiveの急速な低下の徴候は観察されず、データ上では明らかな集団免疫の閾値は認められなかった。 著者は、「これらの情報は、ワクチン接種の優先順位の決定など目標を絞った感染予防介入を行う際に有用となる可能性がある。また、今回の統計解析法は、新たに得られたデータに基づいて推定値を迅速に更新し、広く伝達することができるため、時宜にかなったCOVID-19の調査や科学研究、施策への対応においてきわめて重要な役割を担いうるだろう」としている。

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新型コロナ第6波の年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率

新型コロナ第6波における年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率010歳未満240.02006810<重症化率>012%210歳未満00010代00020代00030代00000020代00030代0.030040代0.090.05040代0.090.01050代0.500.11050代0.170.02060代70代1~2回接種3回接種0.470.310.9580代90代以上1.942.150.9760代1.7270代3.836.269.7690代以上810%未接種1~2回接種3回接種0.630.220.311.140.6380代7.623.676<致死率>10代未接種42.001.790.976.633.155.959.33協力の得られた石川県・茨城県・広島県のデータを使用し、2022年1月1日~2月28日における新型コロナウイルス感染者11万9,109人を対象に年代別・ワクチン接種回数別に、3月31日時点の状況での重症化率と致死率を暫定版として算出厚生労働省:第80回(令和4年4月13日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード事務局提出資料「第6波における重症化率・致死率について(暫定版)」より作図Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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18歳未満のCOVID-19関連MIS-C、絶対リスクは?/BMJ

 デンマークの18歳未満の小児/青少年において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の有害疾患の絶対リスクは概して低いが、RT-PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染者の0.05%(32/7万666例)に小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が認められ、さらに感染者における急性期後の一般開業医受診割合がわずかに増加していることから、症状が持続している可能性があることを、南デンマーク大学のHelene Kildegaard氏らが報告した。これまで、小児/青少年のSARS-CoV-2感染による入院、集中治療室(ICU)入室、死亡および免疫介在性合併症の発生率は研究によって異なっていた。なお、本研究では18歳未満におけるBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の有効性についても検討され、デルタ株流行期において感染リスク低減に有効であることが示されている。BMJ誌2022年4月11日号掲載の報告。デンマークの18歳未満の約115万人について調査 研究グループは、デンマークの小児/青少年におけるSARS-CoV-2感染に続発する急性期および急性期後の有害疾患リスクを評価するとともに、BNT162b2ワクチンの有効性を評価する目的で、デンマークの患者、処方、健康保険およびワクチン接種に関する全国登録を用いたコホート研究を実施した。 対象は、2021年10月1日までにSARS-CoV-2のRT-PCR検査を受けたか、または同日以前にBNT162b2ワクチンの接種を受け、かつ同年10月31日以前に追跡調査を完了した18歳未満のすべての小児/青少年である。 評価項目は、入院(12時間以上)、ICU入室、MIS-C・心筋炎・神経免疫疾患などの重篤な合併症、および検査後6ヵ月までの薬物治療開始と医療機関受診のリスクとした。また、ワクチンの有効性について、ワクチン接種者ならびにマッチングした非接種者の、1回目接種20日後ならびに2回目接種60日後のリスク比を算出し、1-リスク比として評価した。 2021年10月1日時点で、デンマークにおける18歳未満の小児/青少年は115万1,849人であった。心筋炎や脳炎は認められず SARS-CoV-2のRT-PCR検査を受けた小児/青少年は99万1,682例で、このうち7万4,611例(7.5%)が陽性であった。感染判明後30日以内の入院の絶対リスクは0.49%(361/7万4,350例、95%信頼区間[CI]:0.44~0.54)、ICU入室の絶対リスクは0.01%(10/7万3,187例、0.01~0.03)であった。 また、感染判明後2ヵ月以内のMIS-Cの絶対リスクは0.05%(32/7万666例、95%CI:0.03~0.06)であったが、心筋炎や脳炎は認められず、ギランバレー症候群は5例未満であった。急性期後(感染後1~6ヵ月)においてSARS-CoV-2感染者は、調査期間中にSARS-CoV-2検査を受けた全小児/青少年から抽出した参照コホートと比較し、一般開業医の受診が1.08倍(95%CI:1.06~1.10)増加することが示された。 BNT162b2ワクチンの接種を受けた小児/青少年は全体で27万8,649例であった。デルタ株が優勢な時期において、ワクチン未接種者と比較し接種者のワクチン有効率は、1回目接種20日後(22万9,799例)で62%(95%CI:59~65)、2回目接種60日後(17万5,176例)で93%(92~94)であった。

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