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抗TNFα抗体製剤治療中のIBD患者、2回目の新型コロナワクチン接種後の免疫応答が低下

 抗TNFα抗体製剤は、炎症性腸疾患(IBD)などの免疫介在性炎症性疾患の治療に頻繁に用いられる生物学的製剤の1つだ。これまで抗TNFα抗体製剤は、肺炎球菌やインフルエンザワクチン接種後の免疫応答を減弱させ、重篤な呼吸器感染症リスクを増加させることが知られていた。しかし、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチンに対するデータは不足していた。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのSimeng Lin氏らは、インフリキシマブ(抗TNFα抗体製剤)またはベドリズマブ(腸管選択的抗α4β7インテグリン抗体製剤)で治療中のIBD患者において、2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体濃度やブレークスルー感染の頻度を比較した。Nature Communications誌2022年3月16日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者7,226例を連続して登録した。そのうち新型コロナウイルス感染歴のないインフリキシマブ治療中の2,279例とベドリズマブ治療中の1,031例を対象とした。被験者はファイザー製BNT162b2ワクチン、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれかを接種し、2回目のワクチン接種から14~70日後に抗体が測定された。 主な結果は以下のとおり。・2回目のBNT162b2ワクチン接種後、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて抗SARS-CoV-2スパイク(S)受容体結合ドメイン(RBD)抗体の幾何平均濃度(SD)が低く、半減期が短かった(566.7 U/mL[6.2]vs.4,555.3 U/mL[5.4]、p<0.0001、26.8日[95%CI:26.2~27.5]vs.47.6日[45.5~49.8]、p<0.0001)。・ChAdOx1 CoV-19ワクチンでも同様に、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて抗S RBD抗体の幾何平均濃度が低く、半減期が短かった(184.7 U/mL[5.0]vs.784.0 U/mL[3.5]、p<0.0001、35.9日[34.9~36.8]vs.58.0日[55.0~61.3]、p<0.0001)。・新型コロナウイルスのブレークスルー感染は、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて頻度が高かった(5.8%[201/3,441]vs.3.9%[66/1,682]、p=0.0039)。・ワクチン接種前に新型コロナウイルス感染歴がある患者では、治療薬にかかわらず、より高く持続した抗体レベルが認められた。 著者らは「抗TNFα抗体製剤で治療中の、リスクを有する患者においては、個々に適したワクチン接種スケジュールの検討が必要な可能性がある」と述べた。

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第105回 COVID-19後の長患いの予防や治療を見つける試験が進行中

ワクチン2回接種後14日以上経ってから新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)した約3,000人(3,090人)を調べたところ、感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の発現率はワクチン非接種感染者に比べて41%低いことが示されました1)。COVID-19後遺症、すなわちCOVID-19以外では説明がつかない4週間を超えて続く症状があったと答えた人の割合はワクチン接種済み群では9.5%、非接種群では14.6%でした。そのようなCOVID-19後の長患いを減らすワクチン以外の手段の検討も始まっています2)。Merck & Coの飲み薬molnupiravir(モルヌピラビル)がCOVID-19患者の入院を阻止したり回復を早めたりできるかどうかの検討を含む英国オックスフォード大学主催のPANORAMIC試験3)では治療後3ヵ月と6ヵ月の経過が調べられます。試験の主眼ではありませんがそれらのデータが集まれば同剤で後遺症が生じ難くなるかどうかを知ることができそうです。Pfizerの飲み薬paxlovid(パクスロビド)の試験2つでも被験者の6ヵ月間の追跡が含まれています。比較的軽症のCOVID-19患者にもっぱら使われるそれらの抗ウイルス薬の検討のみならずCOVID-19入院患者の治療の長期の効果も調べられています。世界保健機関(WHO)主催の国際試験SOLIDARITYのヘルシンキ大学担当部分がその一つで、COVID-19治療の先駆けremdesivir(レムデシビル)で治療されたCOVID-19入院患者の1年間の追跡結果がまもなく揃うと研究者は見込んでいます。SOLIDARITY試験の他の2つの治療の追跡もなされています。1つは免疫抑制を担う抗TNF薬infliximab(インフリキシマブ)、もう1つは血管の炎症を鎮めうるチロシンキナーゼ阻害剤imatinib(イマチニブ)です。退院したCOVID-19患者の長期経過を改善しうる治療を見つけることを目指す英国での大規模試験HEAL-COVID4)では心血管標的薬2つが検討されています。1つは抗凝固薬apixaban(アピキサバン)で、もう1つは血管の炎症を鎮めると考えられているコレステロール低下薬アトルバスタチン(atorvastatin)です。退院間近の患者に試験に参加するかどうかを尋ね、退院後1年間の再入院や死亡がそれら薬剤の使用で減らせるかどうかが調べられています。退院したCOVID-19患者の再入院は少なくなく、退院後半年足らずのうちに3人に1人近い29%は再入院する羽目に陥っており、およそ8人に1人(12%)は命を落としています4,5)。COVID-19患者が入院を終えた後の死亡の最も確からしい原因は心肺系への影響であろうとHEAL-COVID試験を率いるケンブリッジ大学の集中治療医Charlotte Summers氏は述べています。シカゴ大学の呼吸器医師Ayodeji Adegunsoye氏はCOVID-19で入院して酸素投与を必要とした患者の肺に感染後だいぶ経ってから瘢痕病変・線維化組織が増えうることを観察しており、そのような患者への免疫抑制剤sirolimus(シロリムス)の試験を始めています2)。線維化を促す細胞が肺に集まるのをシロリムスが防いでくれることを同氏は期待しています。参考1)Risk of Long Covid in people infected with SARS-CoV-2 after two doses of a COVID-19 vaccine: community-based, matched cohort study. medRxiv. February 24, 20222)Can drugs reduce the risk of long COVID? What scientists know so far / Nature3)PANORAMIC / UNIVERSITY OF OXFORD4)HEAL-COVID / HEAL-COVID5)Epidemiology of post-COVID syndrome following hospitalisation with coronavirus: a retrospective cohort study. medRxiv. January 15, 2021

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人口の何%が感染?コロナの“いま”に関する11の知識(2022年3月版)/厚労省

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2022年3月版)」を3月11日に公開した。これは、日本の新型コロナウイルス感染症の感染者数・重症化率・病原性、感染性、検査・治療、変異株について、現在の状況とこれまでに得られた科学的知見を11の知識としてとりまとめたもの。主な更新内容は以下のとおり。日本のコロナ感染率は2022年3月1日時点で全人口の約4.0%Q 日本では、どれくらいの人が新型コロナウイルス感染症と診断されていますか。2022年3月1日0時時点で499万4,387人が新型コロナウイルス感染症と診断され、全人口の約4.0%に相当する。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人や死亡する人はどれくらいですか。2021年7~10月に新型コロナウイルス感染症と診断された人における重症化率は0.98%(50代以下0.56%、60代以上5.0%)、死亡率は0.31%(50代以下0.08%、60代以上2.5%)だった。Q 新型コロナウイルス感染症はどのようにして治療するのですか。2022年3月1日時点で国内で承認されている治療薬一覧、重症度別の治療薬の一覧を掲載。Q 接種の始まった新型コロナワクチンはどのようなワクチンですか。接種はどの程度進んでいますか。初回(1、2回目)接種と追加(3回目)接種における接種可能なワクチンの種類と対象者、ワクチンの効果と主な副反応、年齢階級別の接種実績(2022年2月28日公表時点)の一覧表を掲載。Q 新型コロナウイルスの変異について教えてください。現在はB.1.1.529系統のオミクロン株が日本を含む世界各地で主流であることなどを記載。上記のほか、以下の6項目についてまとめられている。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化しやすいのはどんな人ですか。Q 海外と比べて、日本で新型コロナウイルス感染症と診断された人の数は多いのですか。Q 新型コロナウイルスに感染した人が、他の人に感染させる可能性がある期間はいつまでですか。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、どれくらいの人が他の人に感染させていますか。Q 新型コロナウイルス感染症を拡げないためには、どのような場面に注意する必要がありますか。Q 新型コロナウイルス感染症を診断するための検査にはどのようなものがありますか。※追記(2022年4月8日)本資料は4月8日に2022年4月版に更新された。4月版では、新型コロナウイルス感染症に診断されたのは2022年4月1日0時時点で653万8,890人(全人口の約5.2%に相当)となっている。

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COVID-19ワクチンの免疫性神経疾患リスクを検証/BMJ

 4種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種後には、免疫性神経疾患(Bell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎)の安全性シグナルは認められないが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したワクチン未接種者ではBell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群のリスクが増大していることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月16日号で報告された。英国とスペインの接種者800万人以上のコホート研究 研究グループは、COVID-19ワクチン、SARS-CoV-2感染症と免疫性神経疾患の関連の評価を目的に、人口ベースのコホート研究と自己対照ケースシリーズ研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 解析には、英国とスペインのプライマリケア診療記録のデータが用いられた。対象は、年齢18歳以上、ワクチン接種キャンペーンの開始日(英国2020年12月8日、スペイン2020年12月27日)から、データベースの利用終了日の1週間前(英国2021年5月9日、スペイン2021年6月30日)までの期間に、COVID-19ワクチンの初回接種を受け、少なくとも1回の接種を受けた集団であった。さらに、2020年9月1日以降に初めて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法でSARS-CoV-2陽性となったワクチン未接種者と一般人口も、解析に含まれた。 主要アウトカムは、Bell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎とされた。アウトカムは、初回ワクチン接種から21日とSARS-CoV-2検査陽性から90日までの発生率、および一般人口における2017~19年の自然発生率が推定された。間接的標準化罹患比を用いて観測値と予測値の比較が行われ、自己対照ケースシリーズでは補正後罹患率比が算出された。 ChAdOx1 nCoV-19(Oxford/AstraZeneca製)接種者437万6,535例、BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)接種者358万8,318例、mRNA-1273(Moderna製)接種者24万4,913例、Ad26.CoV.2(Janssen/Johnson & Johnson製)接種者12万731例と、SARS-CoV-2陽性ワクチン未接種者73万5,870例および一般人口1,433万80例が、解析の対象となった。横断性脊髄炎は解析不可能 ワクチンの初回接種を受けた参加者(年齢中央値の幅:英国56~64歳、スペイン51~62歳)は、一般人口(年齢中央値:英国48歳、スペイン47歳)よりも高齢で、英国のSARS-CoV-2感染者(年齢中央値:41歳)はワクチン接種者よりも若かった。また、ワクチン接種者は一般人口に比べ、併存疾患(自己免疫疾患、がん、糖尿病、肥満、心疾患、腎不全)の割合が高かった。 全体として、ワクチン接種後のBell麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群の発生率は、一般人口で予測された自然発生率と一致しており、免疫性神経疾患のリスクの増大は認められなかった。また、自己対照ケースシリーズ研究は、統計学的検出力が限定的であったためBell麻痺についてのみ行われ、どのワクチンでも安全性シグナルはみられなかった。 一方、SARS-CoV-2感染者では免疫性神経疾患の発生率が予想以上に高く、標準化罹患比は、英国ではBell麻痺が1.33(95%信頼区間[CI]:1.02~1.74)、脳脊髄炎が6.89(3.82~12.44)、ギラン・バレー症候群は3.53(1.83~6.77)であり、スペインでは、それぞれ1.70(1.39~2.08)、3.75(2.33~6.02)、5.92(3.68~9.53)であった。 横断性脊髄炎はまれで(すべてのワクチン接種コホートで5件未満)、解析は不可能だった。 著者は、「これらの知見と同様に、SARS-CoV-2感染後に免疫性神経疾患のリスクが増大したとの報告がいくつかあるが、今回の結果は、どの先行研究よりもリスクが大きかった」としている。

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第94回 研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁

<先週の動き>1.研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁2.大津市民病院の医師大量退職問題、渦中の理事長が辞職3.塩野義コロナ内服薬、承認を前に100万人分調達で合意/厚労省4.働き方改革に向け、全病院で意見交換会の実施を/厚労省5.がん患者5万例の終末期、「苦痛少なく」は半数以下/国がん6.元日本医学会会長の高久 史麿氏が死去、91歳1.研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁新潟市民病院の女性医師が2016年1月に過労自殺したことをめぐり、遺族が病院を運営する新潟市に損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、新潟地裁であった。裁判長は病院を運営する新潟市側に安全配慮義務違反があったとして、約1億626万円を遺族に支払う命令を下した。この裁判は、原告の遺族側が裁判所からの求めに応じて和解案を提示したが、被告の新潟市側が応じず、今回の判決となった。裁判長は「研修医の時間外労働は160時間を超えていた月もあった」として、長時間労働と研修医の自殺との間に因果関係があると認めた。(参考)研修医過労自殺、病院側に賠償命令 「労働時間の適切な把握怠る」(朝日新聞)市民病院の研修医自殺 新潟市に賠償命じる判決(NHK)新潟市に1億626万円賠償命令 市民病院の医師過労自殺訴訟(新潟日報)2.大津市民病院の医師大量退職問題、渦中の理事長が辞職今年3月以降、医師の大量退職が報道されている滋賀・大津市民病院の理事長が、大津市長に対して辞意を表明したことが明らかとなった。当病院では京都大から派遣されていた外科、消化器外科、乳腺外科の医師9人のほか、泌尿器科医・脳神経外科医もそれぞれ5人が4月以降に順次退職する意向を示しており、通院患者や市民からは不安の声が上がっている。辞意を表明した理事長による外科医への退職勧告はパワハラと申告され、内部検証では「パワハラは認められない」とされたが、外科医側は納得せず、2月に弁護士による第三者委員会が設置された。今月末までに結論が出される予定で、病院側は京都大学との信頼回復に努めたいとしている。外科・消化器外科・乳腺外科については、医師の退職に伴う影響を最小限にとどめるため、4月1日から新たに派遣される消化器外科医師4名と在籍中の医師による診療体制になることを公表した。(参考)医師の大量退職問題、市民病院理事長が市長に辞意 大津市民病院(読売新聞)パワハラ申告された理事長退任へ 医師大量退職意向の大津市民病院(産経新聞)4月以降の外科等の診療体制について(大津市民病院)3.塩野義コロナ内服薬、承認を前に100万人分調達で合意/厚労省後藤 茂之厚生労働大臣は25日、閣議後の記者会見において、塩野義製薬が開発した新型コロナに対する経口抗ウイルス薬について、承認後に100万人分を購入することについて、同社と基本合意したことを明らかにした。国内の製薬企業が開発した内服治療薬は初めて。同社は2月25日に条件付き承認制度の適用を希望する製造販売承認申請を行っている。また同日、厚労省は新型コロナワクチン4回目接種の準備について、5月から開始できるように自治体に向けて通知を発出した。4回目接種でも、従来と同様にファイザー製とモデルナ製を用いる見通し。接種対象者については、「重症化リスクが高い人などに対象を絞るべきではないか」という意見も出たが、現在のところ対象者は「3回目接種を受けたすべての住民」を想定して準備を進めるよう求めている。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の 国内供給に向けた厚生労働省との基本合意書の締結について(塩野義)厚労相“塩野義製薬のコロナ飲み薬 承認前提に100万人分購入”(NHK)ワクチン4回目 5月下旬めどに準備完了を 厚労省 自治体に通知(同)4.働き方改革に向け、全病院で意見交換会の実施を/厚労省厚労省は、23日に「第17回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開催した。働き方改革では、すべての勤務医を対象とした時間外労働の上限規制が2024年4月以降に適用されるため、すべての病院に対して医師だけでなく経営者やメディカルスタッフも交えた「働き方改革に向けた意見交換」の会合開催を求めた。また、医師の時間外労働を削減するため、ガイドラインを用いて医師の労働時間短縮計画を立てるなど、各病院に対して本格的に取り組むよう求めている。一方、日本病院会や全日本病院協会などを含む四病院団体協議会(四病協)は、2024年からの規制強化で産婦人科や救急医療に影響が出るとして、当直時間を時間外労働時間(残業時間)から外せる宿日直許可の基準緩和を求めている。今後、医療現場で働き方改革を見据えたさらなるタスクシフトなどが進んでいくだろう。(参考)「働き方改革に向けた病院内の意見交換会」、すべての病院で実施してほしい―医師働き方改革推進検討会(Gem Med)宿日直許可基準、医師について緩和してほしい―四病協(同)医師労働時間短縮計画作成ガイドライン(案)(厚労省)5.がん患者5万例の終末期、「苦痛少なく」は半数以下/国がんがん患者が死亡前に「体の苦痛が少なく過ごせた」と感じていた割合は42%に過ぎないことが、国立がん研究センターによる国内最大規模の実態調査で明らかとなった。調査では、2017~18年に亡くなったがん患者の遺族を地域別に無作為に選び、19~20年にアンケートを実施。5万4,167人の遺族から回答を得た。また、29%が亡くなる前1週間に強い痛みを感じていたとする結果も公表された。遺族視点での評価ではあるが、この結果から、がん終末期の患者の苦痛を十分に和らげることができていない状況について「改善の余地がある」と専門家は意見している。(参考)がん終末期「苦痛少なく」は4割にとどまる 国がんが遺族5万人調査(朝日新聞)がん終末期3割に強い痛み 遺族調査、緩和ケアに課題(共同通信)がん患者の人生の最終段階の療養生活の実態調査結果 5万人の遺族から見た全体像を公表(国がん)6.元日本医学会会長の高久 史麿氏が死去、91歳高久 史麿元日本医学会会長が24日に死去した。25日、高久氏が会長を務める地域医療振興協会が発表。同氏は東京大学の第三内科教授、医学部長を経て、1996〜2012年まで自治医科大学の学長を務め、名誉学長となったほか、国立国際医療研究センター名誉総長、東京大名誉教授でもあった。04年には日本医学会の第6代会長に就任し、血液学の専門を生かして骨髄バンクの設立に貢献したほか、医師研修制度の見直しのための検討会など多くの公務についた。1971年に論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞。94年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受章した。(参考)日本医学会 元会長 高久史麿さん死去 91歳(NHK)元日本医学会会長の高久史麿氏が死去 MRの資格制度化に尽力 直前まで認定制度改革の議論に携わる(ミクスonline)

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子供への新型コロナワクチンの説明用リーフ配布/新潟県医師会

 2022年1月より5~11歳への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの接種が承認され、接種が開始された。とくに第6波のオミクロン株は、ワクチン未接種の学童期の子供などを中心に感染拡大していることもあり、接種が急がれるところであるが、COVID-19は子供では重症化することは少なく、無症状で過ごすことも多いとされ、接種は成人ほど進んでいない。また、さまざまなワクチンの情報や考え方の流布で、接種について戸惑っている保護者や子供たちも多いという。 そこで、新潟県医師会は、新潟大学医学部小児科学教室からも協力を得て、子供に対してワクチンの接種についてどうしたらよいか、その考え方や対応の仕方について取りまとめ、5~11歳および12~15歳への新型コロナワクチン接種についての説明資料を作成し、医師会のホームページで公開した。よくあるCOVID-19やワクチンへの質問22問に回答 説明用のリーフレットは、「5~11歳の子供」と「12~15歳の子供」と2つに分けられ、それぞれ保護者向けの「子どもへのワクチンの説明リーフレット 簡略版/詳細版」と医療機関・保護者向けの「子どもへのワクチンQ&A」の3種類(全6種類)が公開されている。 リーフレットの簡略版では、ワクチン接種の回数、安全性、副反応の態様、有効性などがコンパクトに記載されている。また、Q&Aでは、よくある質問として「COVID-19感染症について」、「ワクチンについて」など22問の質問に作成時点のエビデンスを基に制作が行われている(データなどは2022年2月14日時点のもの)。 医師会では、「接種に際しては、かかりつけ医にも相談し、これらの資料についても、検討の際の参考として活用いただきたい」と期待を寄せている。

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オミクロン株へのブースター接種、効果はどのくらい持続する?

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、12歳以上のすべての人に対し、mRNAワクチン接種完了後5ヵ月以上経過してからのブースター接種を推奨しているが、オミクロン株に対するブースター接種の効果持続についてはあまりわかっていなかった。CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2月18日号には、Jill M. Ferdinands氏からによる8施設のデータを用いたケースコントロール研究の結果が掲載されている。ブースター接種を含む3回目接種後のワクチン効果は2回目接種後よりも高い デルタ株優位とオミクロン株優位の2つの期間に、2回目または3回目のワクチン接種を受けた18歳以上の米国成人について、COVID-19救急部/緊急治療(ED/UC)受診および入院に対するワクチン効果を検討した。ワクチン効果は、ワクチン接種患者と非接種患者のSARS-CoV-2検査陽性結果のオッズを比較し、暦週と地理的地域を条件とし、年齢、地域のウイルス循環、免疫不全の状態、追加の患者の合併症、その他の患者および施設の特徴を調整したロジスティック回帰モデルで推定した。 3回接種者には、一般接種の3回目、または2回目接種後のブースター接種(少用量のモデルナ製を含む)を受けた人が含まれた。2021年8月26日~2022年1月22日に米国10州にわたる24万1,204件のED/UC受診と9万3,408件の入院例を分析した。 ED/UC受診のうち、18万5,652件(77%)がデルタ優位期間、5万5,552件(23%)がオミクロン優位期間に発生した。ED/UC受診したCOVID-19様疾患患者のうち、ワクチン未接種者は46%、2回接種者は44%、ブースター接種を含む3回接種者は10%であった.ED/UC受診前の直近のワクチン接種からの間隔の中央値は、2回接種者では214日(IQR:164~259日)、3回接種者では49日(IQR:30~73)だった。 デルタ株優位期間では、COVID-19に関連するED/UC受診に対するワクチン効果は、2回目接種後よりもブースター接種を含む3回目接種後のほうが高かったが、接種後の時間が長くなるほど減少した。ブースター接種を含む3回目接種後のワクチン効果は2ヵ月時点では97%だったが、4ヵ月目までに89%に減少した(p<0.001)。 オミクロン株優位期間では、ブースター接種を含む3回目接種後のED/UC受診に対するワクチン効果は、2ヵ月時点では87%だったが、4ヵ月目までに66%、5ヵ月以上で31%に低下した(最後の推定値は3回目の接種後5ヵ月以上の接種者のデータが29例と少なかったため不正確)。接種後の期間が長くなるにつれ、ワクチン効果は有意に減少した(p<0.001)。入院に対するワクチン効果はブースター接種を含む3回目接種後2ヵ月時点では91%だったが、4ヵ月以上経った時点では78%に減少した。 2回目・3回目接種の両方で、評価したすべての時点において、オミクロン優位期間のほうがデルタ株優位期間よりもワクチン効果が低いことが示された。両期間ともブースター接種を含む3回目接種後のワクチン効果は2回目接種後よりも高かったが、接種後の期間が長くなるにつれ低下した。 著者らは「両期間において、ワクチン効果はED/UC受診に対する予防効果よりも入院に対する予防効果のほうが高かった。COVID-19に関連した入院やED/UC受診を防ぐためには、対象者は全員、推奨されるCOVID-19の予防接種を常に最新の状態にしておく必要がある」としている。

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長崎大学が実践する、医師のキャリア支援【今日から始める「医師の働き方改革」】第9回

第9回 長崎大学が実践する、医師のキャリア支援医師のキャリア形成には、何度も「選択」のタイミングが訪れます。長崎大学病院医療教育開発センター 医師育成キャリア支援室室長であり、消化器内科の医師である松島 加代子教授に、長崎大学が行う医師のキャリア支援について聞きました。―医師のキャリア形成において、重要なことは何でしょうか。「将来を長期的かつおおらかにとらえる視点」ですね。厚生労働省の調査によると男女共に9割以上の医師が専門医の取得を希望しています。専門医取得には専攻医として3年以上の専門研修プログラムを履修し、試験に合格する必要があり、長い道のりです。多くの場合、専門医取得と結婚、妊娠・出産・育児等のライフプランも一緒に考える必要がでてきます。とはいえ、計画はあくまで計画、予期せぬことがよく起こるのが人生です。計画通りにいかないことをも愉しみ、周囲の進度に影響されないおおらかさがあれば、個性を生かしたキャリアが積めると思います。―松島先生はどうキャリアを形成してきたのですか?「なるようになる」という考えで、柔軟にやってきました。大事にしてきたのは“チームとして”いい医療を患者さんに提供すること。チームで働く上では、タイミングごとに「サポートする側」「される側」が入れ替わります。自分の意思とチームメンバーの意思を組み合わせ、上手にチームをつくることが組織で働く醍醐味ではないでしょうか。―誰もが「サポートする側」であり「される側」という考え方なのですね。そうです。育児中でも他メンバーのサポート役になったり、年次が若くても外来診療を手伝ったり、昨今ですとワクチン接種の応援に入ったりなど、チームのなかで各々が貢献できることはたくさんあります。一方的に「サポートをする側」「される側」を固定せず、「お互い様」の気持ちで働く環境をつくれるといいな、と思います。今は医局に入らない先生も多いですが、カバーし合いながら働き、大学と施設間で最新の医療知識や技術を共有するといった、地域医療を大きな診療チームで支えるという医局体制の良さを大事にしたいとも感じます。医師だけでなく他の専門職とも連携して働く、ワークシェアの感覚も大事にして欲しいと思います。―チームの一員でもあり、とはいえ自分自身のキャリアを作っていくのは自分です。理想のキャリアを実現するためにどんなことが必要でしょうか。身近に相談できる人がいると心強いと思います。医師のキャリアはライフプランとも掛け合わせると非常に幅が広いです。研修医の時代はまだ、人間関係が構築できていないことも多いので、当院では必ず相談役としてメンターを配置しています。他の人と話すことでそれぞれがどのようにキャリアをつくってきたか、参考になる部分も多いと思います。相談できるような関係性や自己開示も重要です。 〈解説〉キャリアが100%計画通りになることは少ないでしょう。とはいえ、一度計画を作ってみると、何年後にどんな状態になっていたいか、イメージが膨らみます。ある程度キャリアプランが立てば、経験すべき症例が明確になり、勉強時間の確保を行うなど、実際の行動にも移しやすくなります。もう1枚の「キャリアライフプランシート」には自分の年齢、配偶者、子ども、親の年齢を記載し、希望するキャリアを記載することで計画を可視化するツールです。小学校入学など子どもの生活が変わるタイミングにおいて、自分や配偶者が何歳で、キャリアのどんな時期かを確認できます。見本画像を拡大する記入シート画像を拡大する見過ごされがちなのが親の年齢です。70歳を超えると介護が必要になる人が急増するので、親が70歳になるのが何年後なのかをみておくと良いでしょう。介護は育児と違って急に始まり、終わりも見えないため、元気なうちに親とコミュニケーションをとり、備えることが重要です。学費や引っ越しなど、まとまってお金が必要になる時期も予想できます。このシートは、配偶者や身近な関係性の方と共有し、さらに上司や職場で開示し合う環境づくりができるとよいと思います。会話で伝えるよりも具体的でイメージが伝わりやすく、キャリアに対して真剣に考えていることも伝わります。職場内も家庭もチームで乗り切る意識が重要です。

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BA.2への中和抗体価、追加接種やBA.1感染でどのくらい上がるか/NEJM

 オミクロン株亜種BA.1とBA.2は複数の共通した変異を持つが、それぞれ固有の変異も持つ。BA.1は免疫回避性を有することが報告されているが、BA.2がワクチン接種や感染による中和抗体の誘導を回避する能力を有するかどうかはわかってない。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのJingyou Yu氏らは、ワクチン接種者および既感染者におけるBA.2に対する中和抗体価を調査。NEJM誌オンライン版2022年3月16日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech社)の初回(1~2回目)および追加接種済で新型コロナウイルス感染歴のない24人と、ワクチン接種歴によらず感染歴のある8人を対象に、中国・武漢で分離されたWA1/2020株、およびオミクロン株亜種BA.1およびBA.2に対する中和抗体反応を評価した。 感染者においては、感染後の中央値14日時点での中和抗体価が評価され、その診断期間中99%以上の新規感染がオミクロン株亜種BA.1によるものだった。また、ワクチン未接種者は1人のみで、5人は追加接種も完了していた。 主な結果は以下のとおり。・BNT162b2ワクチンの最初の2回の投与後、WA1/2020、BA.1、およびBA.2に対する疑似ウイルス中和抗体価の中央値はそれぞれ658、29、および24で、WA1/2020に対する中和抗体価は、BA.1とBA.2に対する抗体価のそれぞれ23倍と27倍だった。・初回シリーズのワクチン接種から6ヵ月後、WA1/2020に対する中和抗体価の中央値は129に、BA.1とBA.2に対しては20未満に低下した。・BNT162b2ワクチンの3回目投与(追加接種)の2週間後、WA1/2020、BA.1、およびBA.2に対する中和抗体価の中央値はそれぞれ6,539、1,066、776に大幅に増加し、WA1/2020に対する中和抗体価は、BA.1とBA.2に対する抗体価のそれぞれそれぞれ6.1倍と8.4倍だった。またBA.1に対する中和抗体価は、BA.2に対する抗体価と比べ1.4倍高かった。・感染者のうち7人で、WA1/2020、BA.1、およびBA.2に対する中和抗体価が検出され、中央値はそれぞれ、4,046、3,249、2,448で、BA.1に対する中和抗体価はBA.2に対する抗体価の1.3倍高かった。・中和抗体価が検出されなかった1人はワクチン接種を受けておらず、SARS-CoV-2感染の診断から4日後に血清サンプルが採取されていた。 著者らは、「これらのデータはBA.2に対する中和抗体価がBA.1に対するものと類似しており、BA.2に対する中和抗体価の中央値がBA.1に対するものより1.3〜1.4倍低いことを示している。BA.1またはBA.2に対する一貫した中和抗体価の誘導には、BNT162b2ワクチンの3回目の投与が必要だった。BA.1に感染したと思われるワクチン接種者では、BA.2に対する強力な中和抗体価が発現した。このことは交差反応性の自然免疫応答を示唆している」とした。

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コロナワクチンの有効性、AZ製vs.ロシア製vs.中国製/Lancet

 アルゼンチンにおいて使用された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する3種類のワクチンは、いずれもSARS-CoV-2感染とCOVID-19による死亡を減少させ有効であることが認められた。アルゼンチン保健省のAnalia Rearte氏らが、60歳以上を対象とした診断陰性デザイン(test-negative design)による症例対照研究の結果を報告した。アルゼンチンでは、2021年1月よりrAd26-rAd5(Sputnik製)、ChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)およびBBIBP-CorV(Sinopharm製)を用いたCOVID-19ワクチン接種キャンペーンが開始されていた。Lancet誌オンライン版2022年3月15日号掲載の報告。2021年1月~9月に報告された60歳以上のCOVID-19疑い約128万例を解析 研究グループは、2021年1月31日~9月14日にNational Surveillance System(SNVS 2.0)に報告された60歳以上のCOVID-19疑い例を登録し、RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認された患者を症例、確認されなかった患者を対照として、3種類のCOVID-19ワクチン(rAd26-rAd5、ChAdOx1 nCoV-19、BBIBP-CorV)の有効性を評価する診断陰性デザインを用いた症例対照研究を行った。ワクチン未接種者は登録可能とし、ワクチン接種プログラム開始前に発症したCOVID-19疑い例は除外した。 SARS-CoV-2感染のオッズ比(OR)はロジスティック回帰モデルで評価し、RT-PCR検査でCOVID-19と確認された患者の死亡リスクは補正後の比例ハザード回帰モデルを用い、交絡因子(症状発現日の年齢、性別、居住地域、症状発現日の疫学週、COVID-19既往有無)を補正して評価した。また、感染および死亡の推定値を組み合わせ、COVID-19による死亡に対するワクチンの予防効果を間接的に評価した。さらに、ウイルスベクターワクチンの1回目接種の経時的な有効性も評価した。 解析対象は計128万2,928例で、そのうちrAd26-rAd5解析が68万7,167例(53.6%)、ChAdOx1 nCov-19解析が35万8,431例(27.6%)、BBIBP-CorV解析が23万7,330例(18.5%)であった。死亡への2回接種の有効率、ロシア製93.1%、AZ製93.7%、中国製85.0% 2回接種による感染予防効果は3種類のワクチンすべてで高く、補正後ORはrAd26-rAd5で0.36(95%信頼区間[CI]:0.35~0.37)、ChAdOx1 nCoV-19で0.32(0.31~0.33)、BBIBP-CorVで0.56(0.55~0.58)であった。 2回接種による死亡予防効果は、感染予防効果より高く、補正後ハザード比(HR)はrAd26-rAd5で0.19(95%CI:0.18~0.21)、ChAdOx1 nCoV-19で0.20(0.18~0.22)、BBIBP-CorVで0.27(0.25~0.29)であった。死亡に対する間接的なワクチン2回接種の有効率は、rAd26-rAd5で93.1%(95%CI:92.6~93.5)、ChAdOx1 nCoV-19で93.7%(93.2~94.3)、BBIBP-CorVで85.0%(84.0~86.0)であった。ウイルスベクターワクチンの1回目接種後の有効性は、経時的に安定していた。

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オミクロンvs.デルタ、ワクチン接種・感染歴・年齢別の入院・死亡リスク/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の重症アウトカムのリスクについて、デルタ変異株(B.1.617.2)よりもオミクロン変異株(B.1.1.529)で大幅に低く、オミクロン変異株ではより重症度の高いエンドポイント発生が大きく低下しており、年齢間のばらつきは顕著であることなどが、英国・ケンブリッジ大学のTommy Nyberg氏らによる検討で示された。オミクロン変異株は部分的なワクチンエスケープと、高い感染性が示されているが、早期の試験でデルタ変異株よりも重症化リスクは低いことが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2022年3月16日号掲載の報告。オミクロン変異株vs.デルタ変異株の通院、入院、死亡リスクを検証 研究グループは、デルタ変異株と比較したオミクロン変異株の重症度をよりよく特徴付けるために、通院受診、入院、死亡の相対リスクを評価する大規模全国コホート試験を行った。 2021年11月29日~2022年1月9日に、検査でCOVID-19と確認された英国住民の個人レベルデータを、ワクチン接種状況、通院受診、入院、死亡に関するルーチンデータベースと結び付け、感染確認後の14日以内の通院または入院リスク、もしくは28日以内の死亡の相対リスクを、比例ハザード回帰法を用いて推算し評価した。 解析は、試験日、10歳年齢群単位、民族、居住地域、ワクチン接種状況で層別化し、さらに、性別、複数の剥奪指数、以前の感染の有無、各年齢群で補正して行われた。副次解析では、変異株特異的およびワクチン特異的なワクチン効果、デルタ変異株と比較したオミクロン変異株固有の相対的重症度(ワクチン未接種例など)を推算した。オミクロン変異株の入院・死亡に、mRNAワクチンのブースターの有効性70%以上 デルタ変異株と比較したオミクロン変異株の、通院(入院不要と診断)の補正後ハザード比(HR)は0.56(95%信頼区間[CI]:0.54~0.58)で、入院は同0.41(0.39~0.43)、死亡は0.31(0.26~0.37)であった。 オミクロン変異株vs.デルタ変異株のHR推定値は、解析したすべてのエンドポイントで年齢によるばらつきが認められた。たとえば入院のHRは、10歳未満では1.10(95%CI:0.85~1.42)で、年齢が上がるに従って低下し60~69歳では0.25(0.21~0.30)だったが、それ以降の年齢群では増大し、80歳以上では0.47(0.40~0.56)であった。 両変異株について、以前の感染が、ワクチン接種群(HR:0.47[95%CI:0.32~0.68])とワクチン未接種群(0.18[0.06~0.57])の両症例において、死亡に対するある程度の保護効果をもたらしたことが認められた。一方で、以前の感染は、ワクチン接種によりもたらされる以上の入院に対する追加の保護効果をもたらしていなかった(ワクチン接種群のHR:0.96[0.88~1.04])。しかしながらワクチン未接種群では、以前の感染が中程度の保護効果をもたらしていた(HR:0.55[0.48~0.63])。 オミクロン変異株vs.デルタ変異株のHR推定値は、ワクチン未接種群症例での入院(0.30[95%CI:0.28~0.32])が、主要解析のすべての症例の対応するHR推定値よりも低かった。 mRNAワクチンによるブースター接種は、オミクロン症例の入院および死亡に対して非常に高い保護効果を示した(ブースター接種後8~11週間の入院のHR(vs.ワクチン未接種):0.22[95%CI:0.20~0.24])。ブースターは、1回目と2回目に使用されるワクチンによる影響はみられなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「観察されたリスクの根底には、ワクチン有効性の低下によって相殺された内因性重症度(ワクチン未接種者における)の大幅な低下がある。また、以前のSARS-CoV-2感染は、ワクチン未接種者の入院に対するある程度の保護効果と死亡に対する高い保護効果をもたらしたが、ワクチン接種者では死亡のエンドポイントについてのみ追加の保護効果をもたらしていた。mRNAワクチンのブースター接種は、新たに確認されたオミクロン変異株感染における入院および死亡について70%以上の有効性を維持することが示された」とまとめている。

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新型コロナワクチンからリスクとベネフィットを考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第46回

第46回 新型コロナワクチンからリスクとベネフィットを考える新型コロナとの闘いが続きます。3回目のワクチン接種の普及が鍵といわれています。小生もワクチン接種会場の問診係として何度か協力しております。接種に当たり皆に配布されるワクチンについての説明用紙に、「接種に当たっては、リスクとベネフィットをご理解いただき、納得したうえで接種してください」と記載してあることに気づき驚きました。リスクとベネフィットに基づいて、ワクチンを接種するかしないかを選択することは難しいことだと感じたからです。これは、医師や医療関係者にも難しいことで、一般市民の方々には本当に困難なことに思えます。私たちは日々の生活をしていく中でも、毎日多くのことを選択しています。晩御飯はなににするか? 肉か魚か? 肉は高価だが国産にするか外国産にするか? 休日にはどこに行こう? ディズニーランドか田舎の温泉宿か? 自分の車で行くか電車で行くか? などなど…です。選択の結果、良い結果になることもあれば悪い結果になることもあります。しかし、この程度の選択では生命を左右するほどの差異に至ることはないので気楽です。人生に大きく関わる選択もあります、この人と結婚して良いのか? もっと良い次の出会いがあるかもしれない。この課題では、選択が正しかったのか間違っていたのかの評価が困難であることと、いったん解消してリセットすることも可能な社会システムも準備されています。しかし、医療における選択は命に関わるだけに重大です。なによりも、いったん失われた命はリセットして回復させることはできません。ワクチンの接種によって得られる利益つまりベネフィットと、副反応などのリスクを比較し判断するのは、なぜ難しいのでしょうか。ワクチンは、感染症の抗菌薬や対症療法薬ではありません。すでに感染し発熱や呼吸困難に苦しむ患者の治療薬であれば、その薬剤の効果を評価することは比較的容易です。ワクチンは予防薬ですから、すでに疾患をもつ患者への治療薬のような目に見える効果がありません。ワクチンを接種して健康な生活を続ける人々は、「俺はワクチンを打たなくても感染もしなかったし元気でいた」と思うのです。責めるわけではありません。それが人間です。健康な人は、感染症予防や感染症拡大の抑制といったワクチンの役割に気づくことはありません。ワクチンのベネフィットは、ワクチンを接種した人としなかった人での、感染率や死亡率の差異などの疫学的に正確に収集したデータに拠らなければ判明しません。こういったデータに基づく地味な情報を粛々と報じて、わかりやすく解説する成熟した報道機関が期待される由縁です。一方で、ワクチンの副反応などのリスクは可視化が容易です。ワクチン接種後の、心筋炎や心膜炎などの個々の症例の情報はソーシャルメディアなどを通して拡散しがちです。これにより、ワクチン接種を躊躇したり、懸念を示したり、あるいは接種に強く反対したりする人々が増える可能性があります。実際に、ワクチン後の心筋炎はゼロではありません。その点について、日本循環器学会は声明を発表しています。一部を紹介します(2022年3月12日日本循環器学会ホームページ確認)。新型コロナウイルスワクチン接種後の急性心筋炎と急性心膜炎の発症率は、新型コロナウイルス感染後の急性心筋炎と急性心膜炎の発症率に比較して極めて低い。新型コロナウイルスワクチン接種後に発症する急性心筋炎と急性心膜炎の大半は軽症である。新型コロナウイルスワクチン接種による利益は、ワクチン接種後の急性心筋炎と心膜炎の危険性を大幅に上回る。さらにワクチン接種のリスクとベネフィットを複雑にするのが集団免疫という概念です。ワクチンは集団免疫として働きますので、ワクチンの接種率も重要です。例えば、自分勝手な独裁者は、ワクチンを接種しなくとも自分以外の全員にワクチンを強制的に接種させればワクチンの利益を享受することができます。ワクチンは、背景因子によって医学的に接種できない人が一定数いますので、可能な人は受けていただきたい理由です。ワクチンを接種しないという意思決定は個人的な選択のように見えますが、集団免疫のため他者への影響を伴うものであることを認識すべきです。ワクチン接種は幅広い社会における義務の一部という考えの背景です。今回は、新型コロナのワクチンをめぐってのリスクとベネフィットを考えてみました。話を変えます。とっても変な夢を見ました。オリンピックの開会式などで鳩が一斉に放たれ競技場から飛び去る状況はイメージできると思います。自分の見た夢を紹介します。世の中の人すべてがマスクをはずし捨て去ると、そのマスクがあたかも鳩が離散するかのようにヒラヒラと天高く消え去っていくシーンです。これは、きっと正夢に違いありません。コロナ収束を願っております。

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第104回 心筋炎経験者へのCOVID-19ワクチン接種は安全らしい

心筋炎を経た人への新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種はどうやら安全らしいことがフランスでの試験1)で示唆されました。世間一般での心筋炎の有病率は10万人当たり10~106人、全世界での年間の発現数は180万件と推定されています2,3)。心筋炎の主な原因はウイルス感染で、SARS-CoV-2感染(COVID-19)患者にも認められることがあり、とくに若い男性に多く生じるようです。米国の20歳未満の若者を調べた試験によるとCOVID-19と診断された12~17歳の男性の心筋炎の発現率は100万人当たり450人と推定されています4)。COVID-19ワクチン接種に伴う心筋炎も稀ながら報告されており、その発現率は10万人当たり2.1人ほどです1)。COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎もCOVID-19に伴う心筋炎と同様に若い男性により生じ易いようで、2021年5月までに米国FDAに報告されている有害事象記録によると2回目接種後の心筋炎の発現率は12~29歳の男性では100万人当たり40.6人、30歳以上の男性では100万人当たり2.4人となっています3)。それらの年齢層の女性での割合は100万人当たりそれぞれ4.2人と1人でした。そのようにCOVID-19やそのワクチン接種後の心筋炎の生じやすさの把握は進んでいる一方で心筋炎を経た人のCOVID-19ワクチン接種後に心筋炎がどれだけ再発しやすいかは分かっていません。そこでフランスのリヨンの病院のIyad Abou Saleh氏等はCOVID-19ワクチンを接種しても心筋炎は再発しやすくならないとの仮説を立て、同病院で先立つ5年間に急性心筋炎と診断された142人に電話をかけてその仮説を検証しました1)。それら142人からCOVID-19ワクチン接種の有無、接種したとすればそのワクチンの種類、接種回数、副反応があったかどうか等を尋ねた結果、接種済みの55人に心筋炎再発を含む深刻な有害事象は幸いにも認められませんでした。非接種16人の大半の12人(75%)は心筋炎再発を恐れて接種しないままであり、果たして心筋炎再発の心配がワクチン回避の主な理由となっていました。今回の結果は心筋炎の経験がある人のCOVID-19ワクチン接種を促すかもしれないとAbou Saleh氏は言っています。今回の結果を参考にするうえで注意することがあります。接種されていたのはほとんどがPfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2であり(ワクチン接種済みの55人中53人)、他のワクチンの参考にはならないかもしれません1)。参考1)COVID-19 vaccination is safe in patients with previous myocarditis / Eurekalert2)ACC issues clinical guidance on cardiovascular consequences of COVID-19 / Eurekalert3)2022 ACC Expert Consensus Decision Pathway on Cardiovascular Sequelae of COVID-19 in Adults. J Am Coll Cardiol. 2022 Mar 16.4)Risk of Myocarditis from COVID-19 Infection in People Under Age 20: A Population-Based Analysis. medRxiv. July 27, 2021.

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がん患者でのブレークスルー感染リスクと転帰/JCO

 米国で最大のCOVID-19症例と対照の全国コホートを運営するNational COVID Cohort Collaborative Consortiumが、ワクチン接種を受けたがん患者のブレークスルー感染リスクと転帰について調査した結果が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年3月14日号で報告された。がん患者、とくに血液腫瘍患者はブレークスルー感染と重篤な転帰のリスクが高かったが、ワクチン接種患者ではブレークスルー感染リスクが著明に低下することが示唆された。 本研究では、新型コロナウイルス感染の記録がなく、mRNAワクチンを1回もしくは2回接種し、2020年12月1日~2021年5月31日にブレークスルー感染した患者をNational COVID Cohort Collaborativeを用いて特定した。ブレークスルー感染リスクと転帰について、ロジスティック回帰を使用して分析した。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種集団においてブレークスルー感染を6,860例に認め、うち1,460例(21.3%)ががん患者だった。・固形腫瘍および血液腫瘍患者は、がん患者以外と比較して、ブレークスルー感染(オッズ比[OR]:1.12、95%CI:1.01〜1.23およびOR:4.64、95%CI:3.98〜5.38)および重篤な転帰(OR:1.33、95%CI:1.09〜1.62およびOR:1.45、95%CI:1.08〜1.95)のリスクが有意に高かった(年齢、性別、人種/民族、喫煙状況、ワクチンの種類、ワクチン接種日を調整)。・血液腫瘍患者は、固形腫瘍患者に比べてブレークスルー感染リスクが高かった(調整ORはリンパ腫の2.07からリンパ性白血病の7.25の間)。・ブレークスルー感染リスクはワクチン2回目接種後、すべてのがん患者で低かった(OR:0.04、95%CI:0.04〜0.05)。また、BNT162b2ワクチン(ファイザー製)よりmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)でリスクが低く(OR:0.66、95%CI:0.62〜0.70)、とくに多発性骨髄腫患者で低かった(OR:0.35、95%CI:0.15〜0.72)。・免疫抑制が強く、骨髄移植を伴う薬物療法は、ワクチン接種集団のブレークスルー感染リスクと強く関連していた。

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第100回 国民の1/4がダウンロードしたCOCOA、ついに勇退の時が来た!?

政府は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のオミクロン株蔓延に伴って現在も18都道府県に発出されている新型インフルエンザ等特別措置法に基づくまん延防止等重点措置(まん防)を21日付で解除する方針を決定した。これにより1月上旬から各地に発出されていたまん防は全面解除となる。もっとも首相官邸で会見した岸田 文雄首相は当面は「平時への移行期間」と定義し、今後の感染拡大に備えた医療体制の維持や検査キット、ワクチン、治療薬の確保も進めるとした。一方で、濃厚接触者の追跡に関しては医療機関、高齢者施設、家族内に限定するという大きな方針転換を発表した。濃厚接触者追跡については私自身もこの政府方針には基本的に賛成だが、それだったら「もう止めたら?」と思うものがある。新型コロナウイルス接触確認アプリ、通称COCOAのことだ。ご存じのように当初、濃厚接触者の炙り出しに使われたCOCOAだが、私自身インストールしていても今やほとんど気にしていない。厚生労働省のホームページによると、2022年3月11日時点でダウンロード件数は3,418万件、実際の陽性登録者は62万245件。ダウンロード数では国民の約4人に1人、陽性者では約10人に1人が利用していることになる。この登録の数字だけを見れば、「ないよりまし」とも言えるが、オミクロン株のような感染力が強い反面、重症化率が低い変異株の流行の際は、中途半端に警報が増加し、それが医療現場や行政などの業務を圧迫するという「害」のほうがクリアになってしまう。このCOCOAの仕組みは、陽性通知がくると「検査等の相談先を探す」というボタンが表示され、それを押すと都道府県の受診・相談センターの連絡先が表示される。COCOAの陽性通知者のみの専用窓口があるのではなく、COCOAで通知はするが、「あとは自治体でよきにはからえ」という、ある種の外部丸投げなのだ。この結果、今回のオミクロン株での陽性者激増ターンでは、都道府県のコールセンターも保健所も発熱外来もすでにパンク状態にある中で、COCOAで通知を受けた濃厚接触疑いの人の電話も殺到する。当然ながら電話はなかなかつながらず、通知を受けた人も苛立ち、最終的にその一部がようやく電話がつながった先で「何なんだ!」と怒りを爆発させる。たとえが悪いと言われるかもしれないが、電話がたまたまつながった先は「突然ロシアの侵略を受けたウクライナ」のごとく訳がわからない状態になってしまう。実はこの問題に拍車をかけたものがある。IT時代の「負」ともいえるのだが、個人で「COCOAログチェッカー」なるサイトを立ち上げてしまった人がいる。COCOAはスマートフォンのBluetoothを利用し、陽性登録者に1m以内で15分以上の接触があったユーザーに通知が届くことになっているのだが、実はBluetoothは周囲10~30mの接触を検知するため、その点をこのサイトは利用している。しかもCOCOAアプリ内には2週間分の接触検知ログが蓄積されているので、このチェッカーを使うと、自分から広範囲にいたかなり前の登録陽性者までも検知できてしまうのだ。私自身も何度も使ってみたが、1月下旬の段階でCOCOAではとくに通知が来ないにもかかわらず、Bluetooth範囲内では過去2週間に1件の「接触」があったと判定された。何度か調べてみた中では最高は7件。もっともパンデミック当初に登録し、今では何ともない過去の陽性者も検出できてしまうのだから、それほど意味のあるものではない。個人的には「まあ、そんなものね」と思ってとくに何かをするわけではないし、医療従事者ならばこれを使ってもほぼ似たような反応になるだろう。ところが世の中全体で考えればそうはおさまらない。内科クリニックを経営する知り合いの医師のところには、実際に「COCOAログチェッカーで『陽性』と出たんですが…」と連絡があったという。COCOAならまだしも非正規の仕組みで問い合わせをされても困るだろう。実際、その医師は「保健所に問い合わせてください」と回答したそうだ。保健所に迷惑がかかるのでけしからん対応と思う人もいるかもしれないが、個人的にはやむを得ないと考えている。今回の濃厚接触者の追跡範囲縮小については、さまざまな意見があるとは思うが、いずれにせよこの政策が実行される以上、COCOAというもはや無用の長物を放置したままにするのはいかがなものかと思ってしまうのだが…。

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オミクロン株へのワクチン有効性、3回接種で対従来株と同等/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンは、アルファ変異株、デルタ変異株、オミクロン変異株によるCOVID-19関連入院の予防に高い有効性を示したが、オミクロン変異株に対しては、デルタ変異株やアルファ変異株に対する2回接種で得られる効果と同じ効果を得るためには、3回接種が必要であることが、米国・ミシガン大学のAdam S. Lauring氏らによる症例対照試験で示された。また、COVID-19による入院患者では、オミクロン変異株のほうがデルタ変異株より重症度が低かったものの、依然として罹患率および死亡率は高いこと、3種すべての変異株についてワクチン接種済みの患者は未接種患者と比較し重症度が有意に低いことも明らかになったという。BMJ誌2022年3月9日号掲載の報告。COVID-19入院患者と非COVID-19入院患者を対象に症例対照試験 研究グループは米国の21病院において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性が確認された18歳以上のCOVID-19入院患者(症例)と、同時期の非COVID-19入院患者(対照)を登録し、前向き観察研究を実施した。解析対象は、2021年3月11日~2022年1月14日の間に登録されたCOVID-19患者5,728例、対照患者5,962例の計1万1,690例であった。 患者は、ウイルス全ゲノム解析、または入院時の流行株(2021年3月11日~7月3日:アルファ変異株、2021年7月4日~12月25日:デルタ変異株、2021年12月26日~2022年1月14日:オミクロン変異株)に基づき、SARS-CoV-2変異株群に層別化された。 主要評価項目は、COVID-19による入院の予防に関するmRNAワクチンの、変異株(アルファ変異株、デルタ変異株、オミクロン変異株)ごとの有効性で、診断陰性デザイン(test-negative design)を用いて算出した。また、COVID-19入院患者を対象に、世界保健機関(WHO)の臨床進行スケール(WHO-CPS)による疾患重症度について、比例オッズ回帰モデルを用いて変異株間で比較した。ワクチンの入院予防効果、オミクロン変異株では2回接種65%、3回接種86% COVID-19入院予防に関するmRNAワクチンの有効性は、アルファ変異株に対して2回接種では85%(95%信頼区間[CI]:82~88%)であった。デルタ変異株に対して2回接種では85%(83~87)、同3回接種では94%(92~95)であり、オミクロン変異株に対しては2回接種で65%(51~75)、同3回接種では86%(77~91)であった。 院内死亡率は、アルファ変異株7.6%(81/1,060例)、デルタ変異株12.2%(461/3,788例)、オミクロン変異株7.1%(40/565例)であった。 ワクチン未接種のCOVID-19入院患者において、WHO-CPSに基づく重症度は、デルタ変異株群がアルファ変異株群より高く(補正後オッズ比[aOR]:1.28、95%CI:1.11~1.46)、オミクロン変異株群はデルタ変異株群より低かった(0.61、0.49~0.77)。 ワクチン未接種患者と比較してワクチン接種患者は、アルファ変異株(aOR:0.33、95%CI:0.23~0.49)、デルタ変異株(0.44、0.37~0.51)、オミクロン変異株(0.61、0.44~0.85)のいずれの変異株においても重症度が低かった。

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ゼロ・リスクか?ウィズ・リスクか?それが問題だ(解説:甲斐久史氏)

 早いもので20年ほど前、外勤先の内科クリニックでの昼下がり。「今朝から、とくにどこというわけではないが、何となく全身がきつい」と20歳代後半の女性が来院した。熱も貧血もないのに脈拍が120前後。血圧はもともと低いそうだが収縮期血圧は80mmHg弱。心音・呼吸音に明らかな異常はないが、皮膚が何となくジトーッと冷たい気がする。聞いてみると先週、2〜3日間、風邪にかかったとのこと。心電図をとってみた。洞性頻脈。PQ延長(0.30秒くらいだったか?)。ドヨヨーンとした嫌な波形のwide QRS。どのように患者さんに説明し納得してもらったかは覚えていないが、ドクターヘリでK大学病院に搬送した。救急車では小一時間かかるためでもあったが、当時導入されたばかりのドクターヘリを使ってみたいというミーハー心に負けた一面も否定できない。夕方、帰学するとその足でCCUを覗いてみた。「大げさですよ。スカでしたよ!」レジデントたちからの叱責(?)覚悟しつつ…。が、何と!その患者はPCPSにつながれていたのである。約10分のフライト中は順調であったが、CCU搬入直後に完全房室ブロック。あっという間に心室補充収縮も消失。直ちにその場でPCPSを挿入できたため事なきを得たとのこと。CCUスタッフの的確な治療もあり、彼女は、2~3日後にはPCPSを離脱し、その後も順調に回復。完璧な正常心電図に復し、心機能障害を残すこともなく退院した。循環器内科医には身に覚えのある“心筋炎、あるある話”と言えよう。 本稿の執筆時(2022年3月中旬)、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染拡大第6波の感染者数のピークは越えたとはいえ、期待されていた急激な感染者数減少はなかなか見通せず、死亡者数や重症者数も高水準で推移している。そのような中で、依然としてワクチンが、発症・重症化予防、感染予防(オミクロン変異株には期待できないようであるが)の現実的な切り札的存在であることに変わりはない。しかしながら、種々の要因のため3回目のワクチン接種は伸び悩んでいる。その中で、ワクチンの副反応、とりわけ最近、コミナティ(BNT162b2、ファイザー社)・スパイクバックス(mRNA-1273、モデルナ社)の添付文書にも記載された心筋炎・心膜炎への危惧の影響も大きいようである。 米国疾病予防管理センターのOsterらによれば、米国のワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)に基づく解析の結果、2020年12月〜2021年8月にmRNAワクチンを接種された12歳以上の約2億例(約3億5,000万回接種)のうち、心筋炎が1,626例(BNT162b2 947例、mRNA-1273 382例)でみられたという。心筋炎患者の年齢中央値は21歳、男性に多く(82%)、2回目接種後が多く、症状発症までの期間は2日(中央値)であった。ワクチン接種後7日以内の心筋炎の報告は、12〜15歳男性でBNT162b2 70.7例/100万回、16〜17歳男性でBNT162b2 105.9例/100万回、18〜24歳男性でBNT162b2 52.7例/100万回、mRNA-1273 56.3例/100万回であった。これらは、一般の心筋炎の発症頻度とされる80〜100例/100万人に匹敵する。なお、30歳未満の症例のうち詳細な臨床情報が得られたものは826例でそのうち98%が入院した。その87%が退院までに症状が消失した。治療は主に非ステロイド系抗炎症薬投与(87%)であった。最近の厚生労働省資料によれば、わが国の心筋炎・心膜炎の発症頻度は、10代男性でBNT162b2 3.7例/100万回、mRNA-1273 28.8例/100万回、20代男性でBNT162b2 9.6例/100万回、mRNA-1273 25.7例/100万回である。VAERSの報告と比較すると低めではあるが、やはり10〜20代男性では心筋症発症リスクが認められる。ただ、VAERSや厚生労働省のデータは受動的な報告システムであるため、心筋炎の報告が不完全であり情報の質も一貫していない恐れがあり、報告数が過小評価なのか過剰評価なのかさえ判断が難しい。 まったく健康な若者にワクチン接種することで、一定の割合で心筋症のリスクを負わせることに、社会や当の若者たちが不安を覚えることはよくわかる。しかし、そのリスクは一般住民が日常的に曝されている普通のウイルスなどにより引き起こされる心筋炎・心膜炎のリスクを超えるものではない。少なくとも急激に重症心不全に陥るような劇症心筋炎はまずみられないようである。一方、新型コロナウイルス感染症に実際に感染した場合、心筋症・心筋炎発症リスクは、わが国(15〜39歳男性)では834例/100万回、海外(12〜17歳男性)では450例/100万回にのぼる。われわれ医師としては、ワクチン接種のメリットがデメリットよりはるかに大きいことを、正しく冷静に社会に訴えていくのが妥当であろう。リスクを強いるのであれば、ワクチン接種者に胸痛、動悸、強い倦怠感や息切れなど心筋炎・心膜炎症状を自覚したら迷わず受診することを周知するとともに、ワクチン接種後には積極的に心筋炎・心膜炎を考慮した診察・検査を行い早期発見、早期治療を提供することがわれわれの責務と心得るべきであろう。ただ、心筋炎は、心不全進展とは全く別途に、心室頻拍、心室粗動、伝導障害により突然死を来す。この発症頻度の推定困難なリスクまで考えると悩みは深まる。 2年以上続く新型コロナウイルス感染症パンデミックを前にして、日本は、依然、ゼロ・コロナか? ウィズ・コロナか? という命題の前に右往左往している。その根源には、そもそもゼロ・リスクの人生などあり得ないのに、ウィズ・リスクの現実には目を背け、「日々安心が何より」を是とする筆者のような正常性バイアスがあるのではないか? かと思うと一点、自分に都合の良い情報ばかりに頼る確証バイアスに陥るし・・・。日常からリスクを正面に見据えたリスク・リテラシーの醸成は、わが国にとって喫緊の課題かもしれない。

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オミクロン株へのブースター接種、入院・死亡への有効性は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチンのブースター接種は、症候性デルタ変異株感染には高い有効性を示したが、症候性オミクロン変異株感染への有効性は低いことが、カタール・Weill Cornell Medicine-QatarのLaith J. Abu-Raddad氏らが同国で行ったコホート試験で示された。ただしいずれの変異株においても、mRNAワクチンのブースター接種が、COVID-19関連の入院および死亡に対する高い保護効果をもたらすことが示されたという。NEJM誌オンライン版2022年3月9日号掲載の報告。オミクロン変異株大流行中にブースター接種者 vs.非ブースター接種者 研究グループは、2021年12月19日~2022年1月26日のオミクロン株が大流行していた期間中に、症候性SARS-CoV-2感染およびCOVID-19に関連した入院および死亡に対するワクチンブースター接種群と2回のプライマリ接種群を比較する、2つのマッチド後ろ向きコホート試験を実施した。 ブースター接種と感染の関連性を、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて算出・評価した。 対象集団には、「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を2回以上接種した223万9,193例(BNT162b2群129万9,010例、mRNA-1273群89万619例)が含まれた。BNT162b2群において、適格コホート群(ブースター群22万922例、非ブースター群114万168例)とマッチドコホート群(マッチドブースター群18万9,483例、マッチド非ブースター群18万9,483例)を比較、mRNA-1273群において適格コホート群(ブースター群6万7,176例、非ブースター群78万1,968例)とマッチドコホート群(マッチドブースター群6万6,191例、マッチド非ブースター群6万6,191例)を比較した。BNT162b2ブースター、オミクロン変異株の入院・死亡への有効性76.5% BNT162b2群において、追跡期間35日後の症候性オミクロン変異株感染の累積発生率は、ブースター群2.4%(95%信頼区間[CI]:2.3~2.5)、非ブースター群4.5%(4.3~4.6)だった。症候性オミクロン変異株感染に関する同ブースター接種の有効性は、プライマリ接種群との比較で49.4%(95%CI:47.1~51.6)だったが、COVID-19関連の入院・死亡に関する有効性は同76.5%(55.9~87.5)だった。 なお、デルタ変異株(またはB.1.617.2)の症候性感染に関するBNT162b2ブースター接種の有効性は、プライマリ接種群との比較で86.1%(95%CI:67.3~94.1)だった。 一方、mRNA-1273群においては、追跡期間35日後の症候性オミクロン変異株感染の累積発生率は、ブースター群1.0%(95%CI:0.9~1.2)、非ブースター群1.9%(1.8~2.1)だった。症候性オミクロン変異株感染に関する同ブースター接種の有効性は、プライマリ接種群との比較で47.3%(95%CI:40.7~53.3)だった。また、mRNA-1273群においては、COVID-19の重症例はほとんど認められなかった。

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第100回 私が見聞きした“アカン”医療機関(前編)時間外接種費用の上乗せ不正請求、処方箋の応需義務違反

100回記念、「身近で下世話な話題」集こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。心配していたMLBの労使交渉が3月10日(現地時間)、やっと合意しました。短縮が決まっていたレギュラーシーズンは従来どおり162試合で行われ、開幕も4月7日に決まりました。その後日本人選手の交渉も急進展、鈴木 誠也選手はサンディエゴ・パドレス、菊池 雄星投手はトロント・ブルージェイズと合意したとの報道もありました。と、ほっとしていたら、MLB好きの大学時代の友人から「エンゼルスの開幕戦のチケットがあるのだが、行きませんか?」とのお誘いが。「神宮に行きませんか」くらいの軽いノリの文面でしたが、球場はカリフォルニア州アナハイムです。彼は昨秋、コロナ禍の中、日本からシアトルまで大谷 翔平選手のホームランをわざわざ観に行った強者です。一瞬心が動きましたが、本連載含めいくつかの原稿の締め切りもあり、泣く泣く断念しました。さて、この連載も100回を迎えました。大きな事件や、医療政策などを取り上げて、偉そうな意見を述べてきたのですが、知人からは「もっと身近で下世話な話題も読みたい」と言われることも度々でした。今回も、旭川医科大学をクビではなく辞任となった吉田 晃敏・前学長の一件か、所得税法違反罪で検察側から懲役1年を求刑された田中 英寿・日本大学前理事長のことでも書こうと思っていたのですが、100回記念ということで少し趣向を変え、最近私や知人が体験した“アカン”医療機関について、書いてみたいと思います。内容としては10年前にフジテレビ系列で放映された、ダウンタウン司会の「爆笑 大日本アカン警察」をイメージしていただければと思います。【その1】ワクチン接種の時間外接種費用上乗せを不正請求ワクチンの3回目接種が各地で進んでいますが、知人がツイッターに投稿した写真を見て、衝撃を受けました。知人は土曜日に近くのかかりつけの診療所に3回目接種のために訪れたそうです。接種時間は11時過ぎだったのですが、医療機関に提出した問診票をふと覗いたところ、下の段にある医療機関記入欄の「時間外」の欄にはなぜかチェックが…。そして手書きの文字で12時過ぎの時間が。知人は「何か変だな」と感じ、その部分を携帯で撮影、ツイッターに上げたわけです。これはワクチンの時間外の接種費用上乗せを狙ったものと推察されます。ワクチン接種を通常の診療時間外に行う場合は2,070円→2,800円と730円上乗せされます。休日の場合は、2,070円→4,200円と2,130円上乗せされます。「時間外」の欄のチェックは、看護師によってごく当たり前のように行われていたそうです。1人730円でも、100人分なら7万3,000円になります。休日も混ぜるとなると、相当な金額になります。日本医師会の肝いりで進められた個別接種ワクチンの個別接種は「第72回 今さら「手紙」で協力求める日医・中川会長、“野戦病院”提言も動かない会員たちにお手上げ?」でも書いたように、日本医師会の肝いりで強引に進められました。しかし、診療所を含めることによって、ワクチンの配送や管理、接種登録が煩雑になることや集団接種への人員が割けないなど、さまざまな問題も発生。結果として接種推進の妨げの一因ともなりました。結局、個別接種は診療所医師がコロナ禍で存在感を示しつつ、手軽に臨時収入を稼ぐ手段となったわけですが、今でも診療所でのワクチン接種には、接種促進を理由に業務内容の割に手厚い報酬が用意されています。週100回以上、週150回以上を続ける場合にも上乗せ“特典”があります。にもかかわらず、こんなセコい不正請求もしているとは……。通常のレセプトの審査よりチェックが甘いと見ての時間外請求だとしたら悪質です。こうした医療機関は多くはないとは思いますが、これは“アカン”ですね。【その2】「薬がないから処方箋は受け取れない」と応需義務違反の薬局次は私の家族の体験です。1ヵ月ほど前に、家族が国立系のある病院を受診しました。年数回、定期的に通っている病院です。受診を終え、電車に乗って自宅に帰り、いつも利用している近所の個人経営の薬局に処方箋を持っていったのですが、そこの男性薬剤師から、「この処方箋は薬がないから受け取れない」と拒否されてしまったのです。処方箋は、バルプロ酸(デパケン)錠90日分でした。後発品メーカーの自主回収については、約1年前に「第53回 まだまだ続く日医工自主回収、ジェネリックが再び『ゾロ』と呼ばれる日」で書きましたが、その後、日本ジェネリック製薬協会および各社の自主的な製造過程の点検が行われ、多くの薬剤で未だに供給不足が続いています。バルプロ酸についても、1社の徐放顆粒が供給停止となり、その後すべての剤形で先発品、後発医薬品ともに、出荷調整が続いているようです。「正当な理由」に当たらず明らかに薬剤師法21条違反家族は「ないのなら、在庫がある薬局を教えて下さい。薬剤師会などで、薬の在庫の情報共有とかはしていないのですか」と聞いたのですが、男性薬剤師は「そんなことしていない。処方箋を発行した病院に問い合わせてみてくれ」と、最後まで処方箋の受け取りを拒否しました。「薬がないから処方箋を受け取れない」というのはいただけません。薬剤師には処方箋の応需義務があります。薬剤師法21条の「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない」に基づくものです。「正当な理由」については、薬局業務運営ガイドライン(厚生省薬務局長通知 平成5年4月30日 薬発第408号)に例が挙げられていますが、薬剤がなくて断っても「正当」とみなされるケースについては、「患者の症状等から早急に調剤薬を交付する必要があるが、医薬品の調達に時間を要する場合。但し、この場合は即時調剤可能な薬局を責任をもって紹介すること」と、他の薬局を紹介せよ、と明記されています。3月5日、日本薬剤師会は山本 信夫会長を次期会長に選びました。なんと5選目だそうです。会見では「医療の中で、薬剤師の担う責任の重さを実感させるとともに、処方医との連携体制をさらに強化しつつ、薬物治療に関する薬剤師・薬局業務の新たな可能性が示唆された」と語ったとのことですが、末端会員の薬局では今でもこんな応需義務違反が堂々と行われています。これは全く“アカン”ですね。ちなみに家族は、街の薬局を何軒か回って、やっと40日分だけ在庫がある薬局を見つけ、事なきを得ました。90日分が揃ったのは約1週間後でした。次回も、引き続き“アカン”医療機関を紹介します(この項続く)。

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4回目接種は必要か?その時期は?~免疫学の視点から[宮坂昌之氏インタビュー 前編]

感染者数・死者数ともに過去最多となったオミクロン株(BA.1)による第6波のピークは越えたとみられ、ワクチン3回目接種が進みつつある中、4回目接種についても政府が検討をはじめている。免疫学の視点からみた4回目接種の必要性や既感染者へのワクチン接種について、宮坂 昌之氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)に話を伺った。4回目接種は必要か?その時期は?~免疫学の視点から[宮坂昌之氏インタビュー 前編]―4回目接種の必要性やその時期について、現時点ではどのようにお考えですか?まず1つ言えることは、4回目がいつ必要になるかということは現時点でははっきりしていないものの、必要になったときに遅れずに対応できるように、国としては準備をしておかないといけないと思います。そのうえで、ワクチンの有効性は大きく年齢依存的・かつ個人差があり、とくに高齢者では2回接種しても抗体がしっかり作れない人というのが存在します。例えば下記は和歌山県での2回接種6ヵ月後のS抗体値を年齢別にみたものですが(高齢者施設での職員を含む100人の調査)、75歳を超えると2回接種後でも十分に抗体を作れない人の頻度が高くなっていることがわかります。抗体価は時間に応じてさらに減少していくので、3回目の追加接種が必要になってきます。画像を拡大する2回接種しても抗体価が上がらなかった人たちについても、多くは3回目の接種で大きく抗体価を上げることができます。しかし同時になかには2回接種しても3回接種しても反応しない人というのが一定数存在し、高齢者ほど多くなります。S抗体値はウイルスの初期防御に重要な役割を果たすので、これが低くても細胞性免疫やナチュラルキラー細胞などが働き、2回接種していれば重症化予防効果は期待できますが、ブレークスルー感染の大きな原因の1つとなっていると考えられます。またオミクロン株は免疫回避性があり中和抗体ができにくく、下記は査読前のデータですが、2回接種だけでは不十分なことがわかります。3回目の接種によって、BA.1だけでなく今後日本でも置き換わりが進む可能性のあるBA.2に対しても、中和抗体価を上げることができています。一方で、今後は3回目接種によって上がった抗体価も下がっていくと考えられ、いずれかのタイミングで4回目接種が必要となると考えますが、それがいつかに関しては、次に現れる変異株がどのような特徴を持つかによるでしょう。画像を拡大する免疫学の立場から言えることは、1回より2回、2回よりも3回免疫をつけたほうが免疫は長続きします。1回接種では2~3ヵ月、2回接種では4~6ヵ月で抗体価が下がり、3回接種では6~8ヵ月続いているという報告がありますが、それが1年続くかは分かりません。上記左図の追加接種2週間後のオミクロン株に対する中和抗体価のばらつきをみてもわかるように(100~1万ほどの幅)、個人差が大きいことにも注意が必要です。適切な接種時期を考えるうえで重要なもう一つの視点としては、接種間隔が短すぎてもよくない可能性です。下記は1回目と2回目の接種間隔を4週か16週かで比較したデータですが、16週としたほうがオミクロン株を含む種々の変異株に反応する良質な中和抗体が得られています。これは1回目接種後にリンパ球が十分に成熟する機会が与えられると、2回目に抗原が入ってきたときに十分に抗体を作る能力ができるのだと考えられます。画像を拡大する3回目の接種に関しても、2回目接種後2~3ヵ月などあまり早くに接種すると、抗体価は一時的に上がるものの、早く下がってしまうというデータがでてきています。イスラエルはこの状態に該当してしまっているのではないでしょうか。おそらく4回目接種についても同じことがいえる可能性が高く、感染性がより高いなどひどく恐い変異株が入ってきていない限り、半年ないし8ヵ月など、データをみながら十分な間隔を空けて慌てずに4回目接種を行っていけばよいと思います。ワクチン接種は接種者本人が得られる直接効果だけでなく、感染伝播に対しても大きな防御効果を発揮します。ワクチンを接種した人が感染しても、のどの中に抗体が存在するわけなので、そこにウイルスが増えたとしても、抗体にくるまれた形でくしゃみや咳によってウイルスが排出されます。中和抗体にくるまれたウイルスは、感染能力が下がります。PCRでは同じウイルス量が検出されますが、感染性のあるウイルス量はぐんと下がるのです。したがってやはり集団としての感染リスクを下げるには、3回目までの接種ももちろん重要ですし、時期を見極めながら4回目接種も行っていくことが必要となってくると考えています。―既感染者へのワクチン接種や、再感染リスクについてはどのように考えればよいでしょう?ウイルス感染によってできた免疫とワクチン接種によってできた免疫を比較すると、ワクチン接種では約9割の人に免疫を作ることができるのに対し、感染者の場合はウイルスによる感染の度合いや個人の免疫能力に左右されるので、次の感染時に確実に中和できる免疫ができているかというと、やはりワクチン接種のほうが確度が高いと言えます。先ほどの査読前データの右図をみると、BA.1感染者の血清には、中国での元の株(図中WA)・BA.2いずれも中和する抗体が確認されており、BA.1感染者はこの中和抗体がある間、BA.2にすぐには感染しにくいと考えられます。一方、英国からのデータをみると、デルタ以前の株への感染者の抗体はオミクロン株を認識しにくく、再感染する可能性が高いことが示唆されています。下図の通り、オミクロン株が流行するまでは再感染する人はそれほど多くなかったのに対し、オミクロン株流行下では急激に増加しています。今後出てくる変異株の特徴にもよりますが、既感染者もいずれかのタイミングでワクチン接種を受けておくほうが有利だと思います。画像を拡大する(インタビュー:2022年3月11日、聞き手・構成:ケアネット 遊佐 なつみ)

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