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モデルナアームが発現しやすい人は?/自衛隊中央病院

 モデルナ社の新型コロナワクチン(mRNA-1273ワクチン、商品名:スパイクバックス筋注)接種により一時期話題となった「モデルナアーム」。このモデルナアームの原因が遅発性大型局所反応(DLLR:delayed large local reaction)*と言われるも詳細は不明であった。しかし、今回、自衛隊中央病院皮膚科の東野 俊英氏らはDLLRがIV型アレルギーを原因として生じるアレルギー性接触皮膚炎に類似している可能性があること、女性は男性より5.3倍も発症しやすいことなどを突き止めた。このようにモデルナアームの原因や発症しやすい対象者が特定できれば、今後、この副反応を回避する対応ができそうだ。本研究はJAMA Dermatology誌オンライン版2022年6月1日号に掲載されたほか、自衛隊中央病院のホームページでも報告している。*ワクチン接種後、7日程度経過した後に接種部位周囲が赤くなったり、腫れたり、硬くなったりする副反応。痛みやかゆみ、灼熱感などを伴うこともある。モデルナアームの原因と言われるDLLR発生率は男性より女性で優位に高い 本研究は、モデルナ社ワクチンmRNA-1273(以下、ワクチン)接種後の性別と年齢およびDLLRの感受性との関連を調べるため、5人の経験豊富な皮膚科医が、2021年5月24日~11月30日に2回目接種のために新型コロナワクチン接種会場へ出向いた1,273例(4〜6週間前に初回投与接種)を対象にインタビューを実施し、ワクチン初回投与後にDLLRの症状を経験したかどうかを評価した。 モデルナアームの原因と言われるDLLRの感受性と性別や年齢との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・本横断研究の対象者5,893例のうち男性は3,318例(56.3%、年齢中央値55歳[IQR:38~68歳])、女性は2,575例(43.7%、年齢中央値50歳[IQR:34~67歳])だった。・インタビューによると、747例(12.7%)がワクチン初回投与後にDLLR症状を経験したが、症状は軽度であったため、ワクチン禁忌とはみなされなかった。・DLLRの発生率は、男性(5.1%[170例])よりも女性(22.4%[577例])で有意に高かった(OR:5.30、95%信頼区間[CI]:4.42~6.34)。・その発生率を年齢層別でみると、18〜29歳で9.0%(81例、参照値)、30〜39歳で14.3%(129例、OR:1.68、95%CI:1.25~2.26)、40〜49歳で15.8%(136例、 OR:1.89、95%CI:1.41~2.53)、50〜59歳で14.9%(104例、OR:1.76、95%CI:1.29~2.40)、60〜69歳で12.6%(182例、OR:1.45、95%CI:1.10~1.91)であり、30歳以上での発生率は30歳未満と比較して有意に高かった。一方で、70歳以上での発生率は10.5%(115例、OR:1.19、95%CI:0.88~1.56)と18~29歳の発生率と有意差が認められなかった。・年齢調整後の発症平均時間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に早かった(6.97 ±1.26日vs. 7.32±1.44日、β=0.345日、95%CI:0.105~0.586、p=0.005)。・一方で、発症時間と性別調整後の年齢との間に関連はなかった(β=0.003日、95%CI:-0.003〜0.009日、p=0.30)。・年齢調整後の症状の平均期間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に短かった(4.83±3.27日vs. 5.98±4.43日、β= 1.535日、95%CI:0.901〜2.169日、p

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2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」【下平博士のDIノート】第99回

2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」提供:ユーシービージャパン(2022年4月現在)今回は、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体製剤「ビメキズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター、製造販売元:ユーシービージャパン)」を紹介します。本剤は、乾癬の症状の原因となる炎症性サイトカインIL-17AとIL-17Fを選択的かつ直接的に阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年1月20日に承認され、同年4月20日から発売されています。なお、次のいずれかを満たす患者に投与されます。光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者。難治性の皮疹または膿疱を有する患者。<用法・用量>通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射します。なお、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射可能です。<安全性>臨床試験で報告された主な副作用は、口腔カンジダ症(13.2%)、鼻咽頭炎(5.1%)、毛包炎(1.7%)、上気道感染(1.5%)、中咽頭カンジダ症(1.2%)、咽頭炎・結膜炎(1.1%)などでした。また、重大な副作用として、重篤な感染症、好中球数減少(各0.5%)、炎症性腸疾患(0.1%未満)、重篤な過敏症反応(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の症状の原因となる炎症性物質の働きを抑えることで皮膚の炎症などの症状を改善します。2.薬の使用により感染症にかかりやすくなる場合があるので、発熱、寒気、体がだるいなどの症状が現れた場合には、医師にご連絡ください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.口腔内や舌の痛み、白い苔のようなものが付着する、味覚がおかしく感じるなどの症状が現れた場合には、医師にお申し出ください。5.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選びましょう。高温や長時間の入浴によりかゆみが増すことがあるので、温度はぬるめにして長い入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売され乾癬に適応を持つ生物学的製剤は、本剤と同様にIL-17Aの作用を阻害するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(同:トルツ)およびブロダルマブ(ルミセフ)、IL-23阻害薬のグセルクマブ(トレムフィア)、リサンキズマブ(スキリージ)、ウステキヌマブ(ステラーラ)、チルドラキズマブ(イルミア)、TNF阻害薬のアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)およびセルトリズマブ ペゴル(シムジア)などがあります。本剤の特徴は、IL-17Aに加えてIL-17Fにも結合することです。乾癬の病態において、IL-17AとIL-17Fはそれぞれ独立して炎症を増幅すると考えられているため、両方を直接阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待できます。また、16週以降の投与間隔は8週間隔、患者さんの状態に応じて16週以降も4週間隔を選択することができます。安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。投与に際しての安全上の留意点については、日本皮膚科学会「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2018年版)」「ビメキズマブ使用上の注意」等で参照できると思います。本剤には2種類の剤形(シリンジ、オートインジェクター)が存在しますが、2022年6月時点においては医療機関で投与が行われます。薬局では感染症や口腔カンジダ症の兆候がないか聞き取り、必要に応じて生活上のアドバイスを伝えるなど、治療中の患者さんをフォローしましょう。参考1)PMDA 添付文書 ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/ビンゼレックス皮下注160mgオートインジェクター2)UCB Japan 医療関係者向けサイト

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第115回 COVID-19入院患者の生存が関節リウマチ薬で改善

関節リウマチの治療でよく知られる免疫調節薬2つ・J&J社のTNF 阻害薬・インフリキシマブ(infliximab)やBristol Myers Squibb社のCTLA-4活性化薬・アバタセプト(abatacept)が米国国立衛生研究所(NIH)主催のプラセボ対照無作為化試験(ACTIV-1 IM試験)でどちらも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の死亡を減らしました1)。COVID-19患者の免疫系は炎症を誘発するタンパク質を悪くすると過剰に解き放ち、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、その他の死に至りうる合併症を招くことがあります。ACTIV-1 IM試験はそういう過度の免疫を抑制しうる薬剤で中等~重度COVID-19入院成人の回復が改善するかどうかや死亡を減らせるかどうかを調べることを目的として実施されました。NIHの舵取りのもとでCOVID-19治療/ワクチンの開発促進を目指す産官学の提携(ACTIV) の一環として2020年10月に始まった2)ACTIV-1 IM試験の被験者はいつもの治療に加えて免疫調節薬幾つかの1つまたはプラセボを投与する群に割り振られました。ほとんどの被験者にはいつもの治療としてステロイド・デキサメタゾンやギリアド社の抗ウイルス薬・レムデシビル(remdesivir)が投与されました。デキサメタゾンはおよそ85%、レムデシビルは約90%の被験者に投与されています。退院を指標とする回復までの期間が主要転帰(プライマリーエンドポイント)で、両剤ともその改善傾向をもたらしたものの残念ながらプラセボとの差は有意ではありませんでした。しかしながらより深刻で究極の転帰・死亡率の低下を両剤のどちらももたらしました。インフリキシマブ投与群518人の死亡率は10%、プラセボ群519人の死亡率は約15%(14.5%)であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群より率にして約41%(40.5%)少なくて済んでいました。アバタセプトも同様で、その投与群509人の死亡率は11%、プラセボ群513人の死亡率は15%であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群に比べて率にして約37%(37.4%)少なくて済んでいました。もう1つの試験薬cenicriviroc(セニクリビロック)は残念ながら無効で、同剤投与群への被験者組み入れは去年9月に打ち切りとなっています。cenicrivirocはAbbVie社の開発段階のCCR2/CCR5阻害薬です。インフリキシマブやアバタセプトと同様にCOVID-19入院患者の死亡を減らすことが試験で示されているEli Lilly社の免疫調節薬・バリシチニブ(baricitinib)は重度以上のCOVID-19患者に使用すべき治療選択肢の一つとすることが世界保健機関(WHO)のガイドラインですでに強く推奨されています3)。レムデシビルやデキサメタゾンなどのいつもの治療に加えて投与することで死亡率のかなりの低下が見込めるインフリキシマブやアバタセプトもCOVID-19入院患者の治療選択肢に仲間入りしうるとACTIV-1 IM試験のリーダーWilliam Powderly氏は言っています1)。参考1)Immune modulator drugs improved survival for people hospitalized with COVID-19 / NIH2)NIH Begins Large Clinical Trial to Test Immune Modulators for Treatment of COVID-19 / NIH3)Agarwal A,et al.. BMJ. 2020 Sep 4;370:m3379

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コロナワクチン3回接種者は感染しても他人にうつしにくい!?

 新型コロナウイルスのブレークスルー感染が新型コロナの蔓延に大きく寄与する可能性があるかどうかについてのデータは限られている。そこで、韓国・ウルサン大学のJiwon Jung氏らは新型コロナワクチンの3回接種を終えた完全接種者(ブレークスルー感染群)と1~2回接種の部分的接種/未接種者(非ブレークスルー感染群)の新型コロナの他人へ感染を広げる(2次感染)割合やウイルス排出動態に関するコホート研究を実施した。その結果、 初期のゲノムウイルス量はワクチン接種者とワクチン未接種者の間で類似していたが、完全接種者のブレークスルー感染群では、部分的接種者/ワクチン未接種者よりも生存可能なウイルスの排出期間が短く、2次感染率が低いことが示された。JAMA Network Open誌2022年5月2日号掲載の報告。ブレークスルー感染群のほうが2次感染率は有意に少ない 本研究は 2次感染率に関する試験とウイルス排出動態試を実施するために、2020年3月1日~2021年11月6日の期間に入院または3次医療機関への受診で新型コロナと診断された医療従事者、入院患者、および介護者の疫学データを分析した。そのために新型コロナウイルスのゲノムRNAをPCRで測定し、2021年7月20日~8月20日に韓国・ソウル市にある施設で分離されたデルタ変異株に感染した新型コロナ軽症例の唾液サンプルのウイルス培養を毎日行った。  コロナワクチンの3回接種を終えたブレークスルー感染群と部分的接種/未接種者の新型コロナの他人へ感染を広げる割合やウイルス排出動態に関する研究を実施した主な結果は以下のとおり。・新型コロナ感染者173例(年齢中央値[IQR]:47歳 [32~59歳]、女性:100例[58%])が2次感染率の試験に含まれた。彼らに感染歴はなく、50例(29%)がブレークスルー感染だった。 ・院内での2次感染率は、ブレークスルー感染群のほうが非ブレークスルー感染群よりも有意に少なかった(43例中3例[7%]vs. 110例中29例[26%]、p=0.008)。・ウイルス排出動態試験では、デルタ変異体に感染した45例(年齢中央値:37歳[IQR:25~49歳]、女性14例[31%])が含まれ、そのうち6例(13%)は完全接種、 39例(87%)は部分的接種/未接種だった。・初期ゲノムウイルス量は2群間で同等だったものの、細胞培養での生存ウイルスは完全接種者(症状発症後4日間)のものと比較して、部分的接種者(同8日間)とワクチン未接種者(同10日間)のもので著しく長い期間検出された。 研究者らは「本研究データは、新型コロナワクチンでもブレークスルー感染の可能性があるにせよワクチン接種はウイルス蔓延を制御するのに非常に有用であるという重要な証拠を提供する」としている。

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第103回 「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院

<先週の動き>1.「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院2.コロナ後遺症、1年後も1~3割に何らかの症状/アドバイザリーボード3.宿日直許可未申請の病院は6割以上、1割は申請も許可下りず4.DPC病院、参加数・病床数ともに増加、感染症対策の要件新設5.進まぬ病床再編、積み立て基金2,779億円の執行率は約4割6.医療・福祉従事者増加、女性の労働力率も総じて上昇/2020年国勢調査7.コロナ感染拡大で特定健診、受診率が初めて減少/厚労省1.「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院モデルナ製の新型コロナウイルスワクチン接種後に少し遅れて現れる腕の腫れや痛みについて、大規模調査により女性が男性よりも約5.3倍発症しやすいとわかった。また、30~60代では30歳未満の1~2倍発症しやすいという。自衛隊中央病院の東野 俊英皮膚科医長らの研究グループが2日発表した。論文はJAMAダーマトロジー誌オンライン版に掲載。同研究グループは2021年に開設された自衛隊東京大規模接種センターで、2回目の接種を受けた約5,900人を調査した。1回目の接種から6日目以降に、接種した部分に腫れや痛みなどがあったかを尋ねたところ、女性では約22%が、男性では約5%がモデルナアームを発症していた。接種を避ける必要があると思われる重い症状の報告はなかった。若い人のほうが発症しにくいという特徴はアレルギーの分類の一つ「IV型アレルギー」と似ており、発症メカニズムの解明や今後のワクチン開発につながる結果かもしれない。(参考)「モデルナアーム」の女性、男性の5倍 自衛隊調査(日経新聞)接種後に痛む「モデルナアーム」女性の発症率、男性の5.3倍と推計(毎日新聞)2.コロナ後遺症、1年後も1~3割に何らかの症状/アドバイザリーボード新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、診断から1年後も倦怠感や呼吸困難、睡眠障害など何らかの症状が残ることがわかった。厚労省の2つの研究班による調査結果が1日、「アドバイザリーボード」の会合で報告された。なお、オミクロン型の変異ウイルス流行以前の調査で、最近の傾向とは異なる可能性がある。日本呼吸器学会などの研究グループは、2020年9月~21年9月に入院した中等症以上のCOVID-19患者約1,000人を調査。患者の14%が退院から1年後も何らかの症状を訴えており、睡眠障害が10%、筋力低下が9%、息苦しさが6%に残っていた。慶応大学のグループは、20年1月~21年2月に入院した軽症以上のCOVID-19患者1,000人余りを調べた結果、診断から1年後に患者の3割超が症状を訴えた。疲労感が13%、呼吸困難が9%、筋力低下や集中力低下が8%だった。後遺症は41~64歳で多かった。後遺症については東京都も、都立・公社病院が受け付けた直近の電話相談の分析結果を公表している。オミクロン株流行期の1~4月に陽性となった2,039例の症状では、咳が最多の38.6%、倦怠感が34.0%であり、デルタ株以前(昨年3~10月の電話相談)の3,857例における咳22.2%、倦怠感26.0%から大きく増加した。このほか、栃木県などもコロナ後遺症の実態調査に着手したことを明らかにしている。(参考)コロナ後遺症、1年後も患者の1割超に 厚労省研究班(日経新聞)オミクロン、せき・倦怠感増 新型コロナ、都が後遺症分析―専門医「長期化の傾向」(時事通信)栃木県がコロナ後遺症の実態調査 1000人抽出、693医療機関も(下野新聞)3.宿日直許可未申請の病院は6割以上、1割は申請も許可下りず厚労省は、3日に社会保障審議会医療部会をオンラインで開催した。2024年4月から医師の時間外労働時間の上限規制が導入されるため、厚労省が病院を対象に施行に向けた準備状況(院内の医師の労働時間の把握体制や特例水準の指定取得の意向等)についての調査結果について議論した。年960時間を超える医師がいる529病院のうち宿日直許可を得ているのは、168病院(32%)で、残りの病院の244病院(44%)は宿日直許可を申請予定であり、ほかには申請したが許可が得られなかったと回答した医療機関が40病院あった。現時点で厚労省が時間外・休日労働時間を把握できている病院が4割程度のため、今回の調査では病院の準備状況等、総合的な評価は困難であるとされたが、今後、全国の医療機関に対して業務改善に向けた取り組みが求められる。(参考)宿日直許可、6割の病院が未申請 約1割が申請後に取得できず(CB news)医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査 調査結果(厚労省)資料 労働基準法の宿日直許可のポイント(同)4.DPC病院、参加数・病床数ともに増加、感染症対策の要件新設1日、厚労省は中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、2022年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況を公開した。前回の改定以降、DPC病院として新たに14病院が参加、5病院が退出し、2022年4月1日時点では1,764病院となった。また、DPC準備病院は新たに30病院が参加し、同時点では259病院。DPC算定病床総数は約48万床と前年度より約2,000床増加した。またDPC病院の医療提供体制への取り組みを評価する機能評価係数IIの見直しが行われ、6つの係数(保険診療、効率性、複雑性、カバー率、救急医療、地域医療)を基本的評価軸としている。今回の改定では新型コロナウイルス感染症対策に係る要件を新設するなど一部の見直しが行われ、各医療機関の診療実績に対して報酬に反映される方向となっている。(参考)DPC対象1,764病院に、「14増5減」4月時点(CB news)2022年度機能評価係数II内訳、自院と他院との比較が重要だが、「コロナ特例」の影響にも留意を—中医協(2)(Gem Med)資料 令和4年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況(厚労省)5.進まぬ病床再編、積み立て基金2,779億円の執行率は約4割政府が2日、「行政事業レビュー」に提出した資料で、病床再編基金の執行が4割にすぎないことが明らかになった。厚労省が地域医療構想の実現に向け、自主的な病床削減や病院統合による病床廃止を支援する目的で2014~20年度に積み立てた累計2,779億円の病床再編基金のうち、執行されたのは1,221億円(43.9%)だった。都道府県でもばらつきがあり、最も執行率が高い熊本県は83.4%、最低の愛知県は12.0%だった。厚労省は「地域関係者との協議に時間がかかり、新型コロナウイルス対応で協議が困難な事例もあった」としている。(参考)病床再編基金、執行率4割 行政事業レビューで公表(日経新聞)新たな病床機能の再編支援について(厚労省)行政事業レビュー(政府の行政改革)6.医療・福祉従事者増加、女性の労働力率も総じて上昇/2020年国勢調査総務省は、2020年に実施された国勢調査の結果、労働力率は男性が72.4%、女性が54.2%と、2015年に比べて共に上昇しており、女性の労働力率はすべての年齢階級で上昇していることを明らかにした。また「医療、福祉」に従事する者の割合は+1.0ポイントと最も上昇しており、産業別の割合では「製造業」(15.9%)、「卸売業、小売業」(15.8%)、「医療、福祉」(13.5%)の順だった。今後も医療・介護ニーズの増加に伴い、医療機関や福祉介護施設での就業者増加が見込まれる。また、出産や育児のため、30代を中心に働く女性が減る「M字カーブ現象」の解消が進んでいる。35~39歳で働く女性の比率は78.2%と、5年前に比べて5.2ポイント上昇していた。(参考)「医療、福祉」従事者の割合が上昇 総務省が国勢調査の就業状態集計結果概要を公表(CB news)30代女性「M字カーブ」解消進む 2020年労働力率上昇(日経新聞)資料 令和2年国勢調査 就業状態等基本集計 結果の要約(総務省)7.特定健診の受診率、制度開始以来初めての減少/厚労省厚労省は、2020年度の特定健康診査・特定保健指導の実施状況を公表した。その結果、特定健康診査の対象者約5,420万人のうち実施率は53.4%(受診者約2,890万人)と、2019年度と比較して2.2ポイント低下したことが明らかとなった。また、2020年度の特定保健指導の対象者は約522万人だったが、終了した者は22.7%(約119万人)と、2019年度と比較して0.5ポイント低下した。一方、メタボリックシンドロームの該当者および予備群は推計947万人で、前年度から28万人増えた。新型コロナウイルスの感染拡大などにより受診を控えた影響や、コロナ下の自粛生活で運動不足になった可能性がみられる。(参考)メタボ健診、初めて受診率が下がる コロナ禍影響で20年度は53%(朝日新聞)メタボ健診の受診率初低下、受診者100万人減…巣ごもりで「予備軍」は増加(読売新聞)資料 特定健診・特定保健指導の実施状況について(2020年度)(厚労省)

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第111回 患者に聞かれたら、何をもって新型コロナ収束と答える?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の全国での新規陽性者報告は、ゴールデン・ウイーク直後にごく一時的に増加局面に入ったものの、今週前半には2万人台前半まで減少してきた。この数字は今年1月7日に新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置(まん防)」が導入された直後の水準である。背景には2月中旬~3月中旬にかけて新型コロナワクチンの3回目接種が加速し、現在では全人口の約6割が3回接種を完了済みであること、まん防の発出から5月末までに延べ約677万人が感染したという幸と不幸の両面から「集団免疫」を確立した結果と見るのが妥当だろう。そして、最近では日本政府による外国人の入国制限緩和措置や諸外国での同様の措置により、国内外をまたぐ人流も増加しつつある。6月から観光ビザ発給を再開した東京都港区の韓国大使館領事部前には初日の開館前に1,000人を超える申請者が行列を作ったという。そんな最中、周囲からは「これで新型コロナのパンデミックは収束するのか?」とよく聞かれるようになった。正直、これは非常に答えにくい。医療従事者の皆さんは同じ質問にどう答えるのだろうか? 私自身は「今年いっぱいはまだ警戒する必要があるのではないか」と答えるようにしている。理由は極めて単純である。まず、現在の感染状況の鎮静化に一定の効果があっただろうとされるのが新型コロナワクチンの3回目接種である。すでに各種研究で報告されているように、オミクロン株に対するワクチン3回接種直後の発症予防の有効率は60~70%台。そしてこの効果は一部研究では約5ヵ月でほとんどなくなると言われている。さらに高齢者や基礎疾患保有者を対象に始まった4回目の追加接種の有効率は、発症予防で55%、重症化予防で62%との報告があり、当然ながらこの有効率も経時的に減衰していく。これらの報告から推察するに、3回目接種の実施件数のピークが今年3月であったから、その効果がほぼなくなるのは8月くらいだろう。また、4回目接種については、高齢者などの3回目接種のピークが2~3月、4回目接種の適応がそこから5ヵ月以上となるため、4回目接種件数のピークは7~8月ぐらいになるだろう。4回目接種後の抗体価の変化が、2回目や3回目と同様に半年程度で低下すると仮定した場合、そのタイミングは年末年始あたりとなる。このように考えると、今後の判断の山は今秋から年末にかけてだろう。この時点で医療ひっ迫や社会経済状況に大きな影響を与える感染動向にならなければひとまずは収束へ向けた大きな壁を一つ越えたと言える。もっとも最終的な感染の収束、すなわち社会に過度な負荷がなく新型コロナウイルスと共存できる状況と考えると、もう少し先になるだろう。それを決定付けるのは重症化リスクの有無にかかわらず使える汎用治療薬とより効果持続期間の長いワクチンの登場である。あとはこの間に厄介な新規変異株が登場しないことを願うのみである。

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コロナ感染率、ワクチン2回接種vs.感染後1回接種/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染歴がある人では、ワクチン接種の有無や感染前後での接種にかかわらず、再感染予防効果は最後の免疫獲得イベントからの経過時間が長くなるほど低下したが、この予防効果は、未感染でワクチンを2回接種し同じ時間が経過した場合での予防効果より高く、感染後のワクチン1回接種は再感染予防効果を増強することが、イスラエル・テクニオン-イスラエル工科大学のYair Goldberg氏らの研究で示された。SARS-CoV-2感染は、再感染に対する自然免疫を獲得することが知られる。最近の研究では、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)による免疫効果の減衰が示されたが、自然免疫ならびに感染後のワクチン接種で得られるハイブリッド免疫の減衰に関しては不明であった。NEJM誌オンライン版2022年5月25日号掲載の報告。570万人以上を対象に、最後の免疫獲得イベントからの経過時間に分けて感染率を比較 研究グループは、イスラエル保健省の全国データベースを用い、B.1.617.2(デルタ)変異株が優勢であった2021年8月1日~9月30日のデータを抽出し、2021年7月1日以前にSARS-CoV-2感染陽性となった16歳以上の人、または研究期間終了の7日前までにBNT162b2ワクチンを2回以上接種した人を対象として、研究期間中の感染について調査した。SARS-CoV-2感染から回復後にBNT162b2ワクチンを2回以上接種した人や、BNT162b2ワクチンを2回以上接種した後にSARS-CoV-2感染から回復した人は解析から除外した。 解析対象を免疫獲得イベント(感染またはワクチン接種)歴によって、(1)ワクチン未接種回復群、(2)2回接種群(未感染で、研究期間終了7日前までに2回目接種を完了)、(3)3回接種群(未感染で、研究期間終了12日前までに3回目接種を完了)、(4)回復後1回接種群(COVID-19から回復後、研究期間終了7日前までに1回目接種)、(5)1回接種後回復群(1回目接種後、研究期間の90日以上前に感染が確認された人)の5つのコホートに分け、さらに各コホートを最後の免疫獲得イベントからの経過時間によってサブコホートに分け、交絡因子を調整したポアソン回帰を用い最後の免疫獲得イベントからの時間の関数として感染率を比較した。 解析対象は、5つのコホート全体で572万4,810人であった。免疫獲得イベントから6~8ヵ月未満での感染率は、回復後1回接種群が最も低い SARS-CoV-2感染者数/10万人日(補正後率)は、3回接種群を除くすべてのコホートで経時的に増加した(3回接種群はサブコホートが1群のみ)。 すなわち、(1)ワクチン未接種回復群では、感染からの期間4~6ヵ月未満の10.5から、1年以上では30.2に増加し、(4)回復後1回接種群では、接種後0~2ヵ月未満の3.7(すべてのサブコホートで最も低値)から、接種後6~8ヵ月未満では11.6に増加した。 一方、(2)2回接種群では、この補正後率は接種後0~2ヵ月未満の21.1から、接種後6~8ヵ月未満では88.9まで増加した。

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4回目のコロナワクチン、感染予防の持続期間は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の4回接種は、3回接種と比較して新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染予防とCOVID-19重症化予防の両方の有効性が認められたが、感染予防効果は比較的早期に減弱することが示唆された。イスラエル・Maccabi Healthcare ServicesのSivan Gazit氏らが、後ろ向き診断陰性デザインによる症例対照研究の結果を報告した。BMJ誌2022年5月24日号掲載の報告。約9万7,500例の10週間のデータを解析、4回目接種者vs.マッチング3回接種者 研究グループは、イスラエルの健康保険組織Maccabi Healthcare Services(MHS、250万人が加入)のデータベースを用い、同国でオミクロン株が優勢であった2022年1月10日(初めて4回目接種が行われた日の7日後)から2022年3月13日までのデータを解析した。 解析対象は、SARS-CoV-2感染歴がなく2022年1月3日から4回目接種を受ける資格を有していた(すなわち、3回目接種から4ヵ月以上経過)60歳以上のMHS会員で、追跡期間中に少なくとも1回のPCR検査を受けた9万7,499例であった。COVID-19の既往歴を完全に把握できない可能性のある2020年3月以降にMHSに加入した人は除外された。 主要評価項目は、SARS-CoV-2感染(BNT162b2ワクチン4回目接種後7日以上経過した時点でのPCR検査陽性)、および重症COVID-19(COVID-19関連の入院または死亡)とした。 追跡期間中のPCR検査において、最初の陽性判定(または重症度分析ではCOVID-19に関連した最初の入院または死亡)で症例、陰性判定のみを対照とし、性別、年齢(70歳未満、70歳以上)、居住地、社会経済状態、最初に検査を受けた週、3回目接種月、生活環境(医療介護施設、介護付き住宅、個人宅)の7因子に基づき、1症例に対して最大5例の対照をマッチングさせた。条件付きロジスティック回帰モデルを用い、4回目未接種(3回接種)に対する4回接種の相対的なワクチンの有効率を、接種後の各週で(1-オッズ比)×100(%)として算出した。感染予防効果は3週目が65%でピーク、重症化予防効果は72%以上を維持 解析対象の9万7,499例のうち、追跡期間中に4回目接種を受けたのは2万7,876例、3回接種が6万9,623例であった。 4回目接種後最初の3週間は、3回接種と比較してSARS-CoV-2感染およびCOVID-19重症化の両方に対して有効性が認められたが、感染予防効果は時間とともに低下した。すなわち、SARS-CoV-2感染に対する4回接種の相対的な有効率は、接種後3週目(14~20日)に65.1%(95%信頼区間[CI]:63.0~67.1)でピークに達した後、以降は急速に低下し、接種後10週目(63~69日)には22.0%(95%CI:4.9~36.1)となった。 一方、重症COVID-19に対する4回接種の相対的な有効率は、追跡期間を通じて高率に維持された(接種後7~27日で77.5%、28~48日で72.8%、49~69日で86.5%)。ただし、重症化は比較的まれな事象で、追跡期間中のCOVID-19関連入院・死亡の発生は全体でもわずか572例(0.25%)であった。COVID-19による死亡は106例で、このうち77例は3回接種のみ、23例は3回接種後の最初の3週間に4回目接種を受けていた。

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オミクロン含む2価ワクチン、秋までに国内提供予定/モデルナ

 2022年5月27日、モデルナ・ジャパンはメディアセミナー「mRNAワクチンの革新と使命~最新エビデンスとパイプラインから~」を開催した。 セミナーでは、モデルナ チーフメディカル・オフィサー(CMO、最高医療責任者)ポール・バートン氏が、開発中の2価ワクチンや今後のmRNAワクチンの展望について説明した。(写真)モデルナ・ジャパン提供さらなる変異に備えて~COVID-19用2価ワクチンの役割~ SARS-CoV-2が急速に変化し新しい変異株が出現するなか、ワクチンの感染予防効果が経時的に減弱することを踏まえると、定期的なワクチン追加接種による効果の回復が望まれる。バートン氏は、モデルナの既存ワクチン・スパイクバックスの4回目接種による予防効果を示したうえで、より広い免疫を確保できる可能性があるワクチンとして、開発中の2価ワクチンを紹介した。 2価ワクチン候補の1つである、武漢株とβ株に対する有効成分を組み合わせた「mRNA-1273.211」は、第II/III相試験において追加接種用スパイクバックスと同等の安全性と免疫原性が確認された。さらに追加接種1ヵ月のデータにおいては、オミクロン株とデルタ株を含むすべての検討した変異株に対する優位性が示された。 また、第III相および第II/III相試験中の「mRNA-1273.214」は武漢株とオミクロン株に関する有効成分を組み合わせたワクチンであり、オミクロン株に対応でき従来よりも高いレベルで長い効果が期待できるとして、最有力に位置づけられている追加接種用2価ワクチン候補である。「mRNA-1273.214」については数週間以内にデータを公表のうえ、緊急承認制度などを活用し、今年秋までの国内提供を目指すという。潜在性ウイルスに対するmRNAワクチンの可能性 続いて、COVID-19ワクチン以外の開発中のワクチンとして、サイトメガロウイルス(CMV)やプロピオン酸血症(PA)といった潜在性ウイルスに対するワクチンの開発状況が説明された。中でもCMVは従来のワクチン開発技術では対応が難しいウイルスであったが、モデルナが開発するCMVワクチン候補mRNA-1647は6つのmRNAを組み合わせることで、第II相試験で免疫原性に関して良好な結果が得られ、現在第III相試験に進んでいる。mRNA技術のリーダーとして、情報提供や「日本発信型」の活動を このような独自のmRNAプラットフォームをもつ同社だが、まだ十分に普及していないmRNA技術のリーダーとして、適切なコミュニケーションも求められている。登壇者であるモデルナ・ジャパン 代表取締役社長の鈴木 蘭美氏は、mRNAのもつ機能や力をわかりやすく理解してもらえるような対談の機会や動画を用いた情報発信を検討していると述べた。また鈴木社長は今後の展望として、モデルナのmRNAプラットフォームを活用したパートナーシップにより、日本のさまざまな研究の成果を世界に広げる「日本発信型」の活動を行っていきたいと語った。同社はパンデミック時のスピーディーなワクチン提供を可能とすべく、日本での製造拠点設立の協議も進めているという。

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オミクロン株優勢下、小児~青少年でも追加接種が必要か/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株が優勢な時期に、年齢5~15歳の小児・青少年では、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の2回接種後の推定有効率は高くなく(約60%)、その後2ヵ月後までに急速な低下が認められたが、12~15歳では3回目の追加接種により上昇に転じたことが、米国・疾病予防管理センター(CDC)のKatherine E. Fleming-Dutra氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年5月13日号で報告された。米国の検査陰性デザインの症例対照研究 研究グループは、オミクロン変異株優勢期の小児および青少年における症候性SARS-CoV-2感染症とBNT162b2ワクチン接種との関連を評価し、当ワクチンの有効率を推定する目的で、検査陰性者を対照とする症例対照研究を行った(米国・CDCの助成を受けた)。 解析には、Increasing Community Access to Testing(ICATT)プラットホームのデータが用いられた。ICATTは米国保健福祉省(HHS)のプログラムで、ドライブスルー形式のSARS-CoV-2検査を全国的に展開する4つの商業的な薬局チェーンが参加しており、今回は、このうち1つのチェーンのデータについて解析が行われた。 対象は、2021年12月26日~2022年2月21日の期間に、SARS-CoV-2の核酸増幅検査(NAAT)を受けた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)様疾患を呈する小児(5~11歳)および青少年(12~15歳)であった。6,897ヵ所の検査所(ノースダコタ州を除く49州とワシントンDC、プエルトリコ)で行われた12万1,952件(5~11歳:7万4,208件、12~15歳:4万7,744件)の検査が解析に含まれた。 5~11歳では、SARS-CoV-2検査の2週間以上前にBNT162b2ワクチンの2回目接種を受けた集団と未接種の集団、12~15歳(追加接種が推奨された)では、検査の2週間以上前に2回または3回の接種を受けた集団と未接種の集団の比較が行われた。 主要アウトカムは症候性SARS-CoV-2感染症(COVID-19様疾患を呈し、NAATでSARS-CoV-2陽性の場合と定義)とされた。ワクチン接種と症候性SARS-CoV-2感染症の関連の補正後オッズ比(OR)を用いて、推定ワクチン有効率([1-OR]×100%)が算出された。5~11歳で追加接種が必要となる可能性も 年齢5~11歳の7万4,208件のSARS-CoV-2検査のうち、3万999件が陽性(症例)で、4万3,209件は陰性(対照)であった。また、12~15歳の4万7,744件の検査では、2万2,273件が陽性(症例)、2万5,471件は陰性(対照)だった。全体では、症例が5万3,272人(43.7%)、対照は6万8,680人(56.3%)であった。 全体で、検査を受けた集団の年齢中央値は10歳(IQR:7~13)、6万1,189人(50.2%)が女児で、7万5,758人(70.1%)は白人、2万9,034人(25.7%)はヒスパニック系/中南米系であった。5~11歳の7万4,208件の検査のうち、5万8,430件(78.7%)はワクチン未接種者のもので、1万5,778件(21.3%)は2回接種者であった。12~15歳の4万7,744件では、それぞれ2万4,767件(51.9%)および2万2,072件(46.2%)で、残りの905件(1.9%)は3回目の追加接種を受けていた。 2回目接種後2~4週の時点において、5~11歳では、補正後ORが0.40(95%信頼区間[CI]:0.35~0.45)で、推定有効率は60.1%(95%CI:54.7~64.8)であり、12~15歳では、補正ORが0.40(95%CI:0.29~0.56)、推定有効率は59.5%(95%CI:44.3~70.6)と、有効率は高い値ではなかった。 また、2回目接種後2ヵ月の時点では、5~11歳の補正後ORは0.71(95%CI:0.67~0.76)、推定有効率は28.9%(95%CI:24.5~33.1)で、12~15歳はそれぞれ0.83(95% CI:0.76~0.92)および16.6%(95%CI:8.1~24.3)であり、いずれの年齢層でも有効率は急速に低下していた。 2回目接種後1ヵ月までは、5~11歳と12~15歳で推定有効率に有意差はなかったが、2ヵ月後には5~11歳が12~15歳よりも推定有効率が高かった(0ヵ月後p=0.99、1ヵ月後p=0.40、2ヵ月後p=0.01、0~2ヵ月後p=0.06)。 12~15歳のうち追加接種を受けた集団では、3回目接種後2~6.5週の補正後ORは0.29(95%CI:0.24~0.35)、推定有効率は71.1%(95%CI:65.5~75.7)であり、推定有効率の上昇が認められた。 著者は、「これらの知見は、オミクロン変異株が優勢な時期に成人で観察されたパターンと類似する」とし、「成人におけるmRNAワクチン2回接種後や追加接種後の有効率の漸減パターンを考慮すると、12~15歳では追加接種による感染防御の期間の監視が重要であり、5~11歳でも、オミクロン変異株に対する感染防御効果を最適化するために、追加接種が必要となる可能性がある」と指摘している。

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ワクチンはlong COVIDに有効か/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)におけるlong COVID(罹患後症状、いわゆる後遺症)の発現は、COVID-19ワクチンの登場以降に減少し、2回目の接種後は少なくとも約2ヵ月にわたり持続的な改善が得られることが、英国・国家統計局のDaniel Ayoubkhani氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2022年5月18日号に掲載された。英国の地域住民ベースの観察研究 研究グループは、COVID-19ワクチン接種前に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した成人において、ワクチン接種とlong COVIDの症状の関連を評価する目的で、地域住民ベースの観察研究を実施した(特定の研究助成は受けていない)。 対象は、英国・国家統計局が行ったCOVID-19 Infection Survey(CIS)の参加者のうち、2021年2月3日の時点で年齢が18~69歳であり、SARS-CoV-2感染陽性と判定されたのち、アデノウイルスベクターワクチンまたはmRNAワクチンの接種を少なくとも1回受けた集団であった。 主要アウトカムは、2021年2月3日~9月5日の期間に、感染から12週以上が経過した時点におけるlong COVIDの症状の発現とされた。アウトカムの軌道解析では、各ワクチン接種前の受診時を0と設定して追跡が行われた。long COVID症状発現率は23.7% 2万8,356例(mRNAワクチン1万2,859例、アデノウイルスベクターワクチン1万5,497例)が登録された。平均(±SD)年齢は45.9(±13.6)歳で、1万5,760例(55.6%)が女性であり、2万5,141例(88.7%)が白人だった。 追跡期間中央値は、1回目接種(全参加者)から141日で、2回目接種(参加者の83.8%)からは67日であった。追跡期間中に、6,729例(23.7%)から、重症度を問わず少なくとも1回のlong COVIDの症状が報告された。 ワクチンの1回目接種により、long COVIDの症状発現のオッズが当初12.8%(95%信頼区間[CI]:-18.6~-6.6、p<0.001)減少し、その後、2回目接種までの週当たりの軌道には増減(0.3%/週、95%CI:-0.6~1.2、p=0.51)が認められた。 2回目接種では、long COVIDのオッズが当初8.8%(95%CI:-14.1~-3.1、p=0.003)減少し、その後は週当たり0.8%(95%CI:-1.2~-0.4、p<0.001)減少した。 一方、アデノウイルスベクターワクチン接種者とmRNAワクチン接種者で、接種後のlong COVIDの軌道に差はなかった。また、社会人口学的特性(年齢、性別、人種、5段階の地理的剥奪)、健康関連因子(自己報告による健康状態、急性期COVID-19による入院の有無)、SARS-CoV-2感染からワクチン接種までの期間の違いで、ワクチン接種とlong COVID症状発現に関連はみられなかった。 1回目接種後に発現率が数値上で最も低下したlong COVID症状は嗅覚障害(-12.5%、95%CI:-21.5~-2.5、p=0.02)で、次いで味覚障害(-9.2%、-19.8~2.7、p=0.13)、睡眠障害(-8.8%、-19.4~3.3、p=0.15)の順であった。2回目接種後は、疲労(-9.7%、-16.5~-2.4、p=0.01)、頭痛(-9.0%、-18.1~1.0、p=0.08)、睡眠障害(-9.0%、-18.2~1.2、p=0.08)の順で低下の幅が大きかった。 著者は、「この観察研究のエビデンスから因果関係を導き出すことはできないが、ワクチン接種はlong COVIDによる住民の健康負担の軽減に寄与する可能性がある。今後、より長期の追跡調査が必要である」としている。

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武田(ノババックス)ワクチンの副反応

武田(ノババックス)コロナワクチンの主な副反応初回接種(1、2回目)追加接種(3回目)(%)1001001001回目81.42回目80808063.362.760606050.032.743.354.651.046.945.940404029.321.3 20.729.317.3 10.0 10.7 8.728.617.3 15.313.3 11.3 2020202.72.74.711.310.313.317.33.3000<背景>国内第I/Ⅱ相試験(TAK-019-1501試験)の結果を基に作成。ワクチン接種群150例(新型コロナウイルス感染症ワクチン未接種の20歳以上の日本人健康成人)から報告された局所反応別割合の結果をグラフ化。<背景>海外第I/Ⅱ相試験(2019nCoV-101試験 第2相パート)の結果を基に作成。ワクチン接種群97例(本剤を3週間隔で2回接種した18~84歳の健康成人)から報告された局所反応別割合の結果をグラフ化。・本剤は組換えタンパクワクチンで、不活化ワクチンの一種です。・ワクチン未接種の方、1回目や2回目にほかのワクチンを接種した方でも接種可能です。また、mRNAワクチンにアレルギーがあった方でも受けられる場合があります。・上記グラフは発現頻度が10%以上の副反応を示し、「発熱」については追加接種(3回目)後に報告されました。いずれの副反応も大部分は接種後1~2日以内に発現し、持続期間の中央値は1.0~2.5日でした。出典:ヌバキソビッド筋注添付文書、厚生労働省_武田社の新型コロナワクチン(ノババックス)についてCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第102回 サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討

<先週の動き>1.サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討2.来年度から「マイナ保険証」義務化、健康保険証は原則廃止/厚労省3.後期高齢者の所得確認にもマイナ活用、プラットフォーム創設4.サイバー攻撃対策強化、職員向けセキュリティ研修が義務に/厚労省5.検査キット販売や看護師・薬剤師のタスクシェアなど、規制緩和を検討へ6.大麻取締法の改正について議論開始、医療ニーズへ対応/厚労省1.サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討欧米を中心に感染報告が相次いでいる感染症「サル痘」について、有効とされる天然痘ワクチンに注目が集まっており、すでに各国が確保に動き出している。後藤 茂之厚生労働相は27日の閣議後の記者会見で、わが国では以前からテロ対策を目的に天然痘ワクチンの生産・備蓄が行われており、政府がワクチンの活用方法について検討を進めていると述べた。世界保健機関(WHO)や国立感染症研究所などによると、サル痘は主にアフリカで流行する感染症で、発疹や発熱などの症状が出る。天然痘ワクチンには、サル痘の発症予防効果が約85%あるとされ、英国では感染が疑われる人への接種が進められている。現時点で国内での感染例はなく、後藤氏は「人から人への感染はまれとされている。国内外の発生動向を監視しつつ、必要な対応を講じる」と話した。(参考)サル痘とは?(ケアネット 患者説明用スライド)天然痘ワクチン「国内で備蓄」 サル痘にも有効―後藤厚労相(時事通信)サル痘に有効とされる天然痘ワクチン 日本も備蓄、活用方法を検討(毎日新聞)2.来年度から「マイナ保険証」義務化、健康保険証は原則廃止/厚労省厚生労働省は25日の社会保障審議会にて、健康保険証を原則廃止とし、2023年度からすべての医療機関・調剤薬局でマイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」の導入を義務付けることを決定した。政府によれば、オンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーの申し込みは約6割(約13万)の施設が済ませているが、運用を開始している施設は19%であり、マイナンバーカードによる資格確認の迅速な導入が求められている。2022年度上半期には導入の加速化が図られるよう集中的な取り組みを行い、未対応の施設は遅くとも9月頃までに顔認証付きカードリーダーの申し込みが必要とし、働きかけを行っていく。(参考)保険証「原則廃止」へ マイナンバーカードに一本化 政府検討(朝日新聞)マイナ保険証、病院に義務化 患者負担軽減も視野 厚労省検討(日経新聞)資料 オンライン資格確認等システムについて(厚労省)3.後期高齢者の所得確認にもマイナ活用、プラットフォーム創設政府が本年6月に取りまとめる経済財政運営方針「骨太の方針」に、75歳以上の後期高齢者の保険料の見直しについて、株式や配当などの金融所得も含めて勘案するため、マイナンバーカードを活用することが盛り込まれる。これによって、後期高齢者の医療費を支える現役世代の負担を軽減できる可能性がある。今後、金融資産がある高齢者の負担は増える見込みだ。このほか、「全国医療情報プラットフォーム」の創設を行い、電子カルテの診療情報やワクチン接種歴などを医療機関や自治体が共有し、患者が最適な治療を受けられるような情報基盤を作ることが決定した。災害時など、かかりつけ外の医療機関でも患者情報を確認し必要な治療の継続が可能になるほか、救急搬送された意識障害患者等の手術や薬剤情報等を確認することで、より適切で迅速な検査、診断、治療等の実施が可能となる。なお医療機関・薬局への情報共有は、個別に同意を得る仕組みを構築した後に運用を開始するとされ、2023年5月が目途。(参考)75歳以上保険料決定に「マイナンバー」活用も ”骨太の方針”原案判明(FNNプライムオンライン)医療情報、デジタル化で共有 プラットフォーム創設 骨太方針に明記(産経新聞)全国の医療機関で診療情報(レセプト・電子カルテ)を共有する仕組み、社保審・医療保険部会でも細部了承(Gem Med)4.サイバー攻撃対策強化、職員向けセキュリティ研修が義務に/厚労省近年、病院への大規模なサイバー攻撃がわが国でも増加していることを踏まえ、厚労省は27日に医療機関でのサイバーセキュリティ対策の方針を明らかにした。平時の医療機関での情報共有基盤として、医療版のISAC(Information Sharing and Analysis Center)を立ち上げてサイバーセキュリティのリスクマネジメントを強化支援する仕組みを確立するほか、脆弱性が指摘されている機器のアップデートや、医療従事者へのセキュリティ対策研修の充実を図る。診療録管理体制加算を算定する400床以上の医療機関には、年1回程度以上の職員向け情報セキュリティ研修の実施が求められる。(参考)医療機関へのサイバー攻撃対策、「ISAC」設立へ 200床未満の施設に「お助け隊」活用促進(CB news)病院に相次ぐサイバー攻撃 遅れる医療の防衛、日経調査 大規模3病院に侵入 3分の2でパスワード漏れも(日経新聞)医療分野のサイバーセキュリティ対策について(厚労省)5.検査キット販売や看護師・薬剤師のタスクシェアなど、規制緩和を検討へ岸田内閣の諮問機関である規制改革推進会議は、27日、政府に答申を提出した。5つの重点分野のうち、医療・介護・感染症対策として、オンライン診療の拡充により、自宅で受診・健康管理から薬剤・医薬品受け取りまでを可能とする方策や、薬剤師による調剤業務の一部外部委託を可能とする検討のほか、薬局での抗原定性検査キット販売の完全解禁などを求めている。また今後、介護需要増加に伴い人手不足が見込まれる介護施設での人員配置基準の緩和や、薬剤師による看護業務のタスクシェアのほか、機械学習を行うプログラム医療機器(SaMD)のアップデート時の審査の省略・簡略化についても検討を求めている。(参考)オンライン診療拡充、抗原キット薬局販売…規制改革推進会議が答申取りまとめ(読売新聞)国承認コロナ検査キット ネットでなぜ買えない? 政府見直し議論へ(朝日新聞)医療改革、スピード不可欠 規制改革会議が答申 看護、薬剤師が分担/介護人員を変更(日経新聞)6.大麻取締法の改正について議論開始、医療ニーズへ対応/厚労省厚労省は、大麻の規制について検討する委員会を25日新たに立ち上げた。2021年6月に出された「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の取りまとめを踏まえ、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法改正に向けて、議論を開始する。米国やG7諸国で承認されている大麻から製造された難治性のてんかん治療薬の事例等を参考に、医療ニーズへの対応や適切な利用を推進するとともに、大麻事犯の検挙人員が7年連続で増加していることを鑑みて大麻使用罪を創設するなど、不適切な大麻利用・乱用に対しても対応していく。(参考)大麻の「使用罪」導入の方向で議論 厚労省の新たな小委員会がスタート(BuzzFeed)第1回 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会 資料

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4回目接種・ノババックスなど追記、接種実施の手引き8版/厚生労働省

 厚生労働省は、5月25日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(8版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。主な改訂点〔第2章 接種類型等〕第2章3、第3章3(12)、第5章、第7章3・4回目接種について追記第2章4(2)ク・各ワクチンの接種機会の確保について更新第2章5・ワクチンの契約状況について更新・ワクチンの有効期限について事務連絡の日付を更新し、記載を一部追記第2章5・図3 新型コロナワクチンの各社情報を更新〔第3章 事前準備〕第3章3(12)、5(2)オ(イ)、第4章3(1)イ、第4章3(15)、第5章、第7章1(1)エ、2(3)・武田社ワクチン(ノババックス)について追記第3章6(2)、第4章3(15)、第5章2(5)・予診票などの様式について更新第3章8(4)・在留外国人への接種について一部追記〔第4章 接種の流れ〕第4章2(5)イ(エ)・職域接種の完了時に余剰が生じた武田/モデルナ社ワクチンの取扱いについて一部追記第4章2(5)ウ、(6)・武田社ワクチン(ノババックス)の移送、融通について追記第4章3(11)、第5章1(3)ア、3(4)イ(イ)・5~11歳用ファイザー社ワクチン、武田社ワクチン(ノババックス)およびインド血清研究所が製造する「コボバックス(COVOVAX)」について追記第4章3(13)・接種を受ける努力義務などの取扱いについて更新第4章4(1)イ、ウ(エ)・住民票所在地以外において接種を受ける者及び市町村への届出を省略することができる場合について、記載を簡略化第4章5、5(2)・4回目接種開始以降の費用請求時の編綴方法について追記〔第5章 追加接種(3回目接種、4回目接種)〕第5章1(3)ア、(4)、(5)・武田社ワクチン(ノババックス)の3回目接種について追記第5章1(4)、第7章2(1)、(2)・ファイザー社ワクチンおよび武田/モデルナ社ワクチンを用いた3回目接種の接種間隔について更新第5章3(4)イ(ウ)・接種券発行申請書(3回目接種用)の様式について更新 厚生労働省では、「本手引きは、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種について、現時点での情報などその具体的な事務取扱を提示するものである。今後の検討状況により随時追記していくものであり、内容を変更する可能性もある」と常に新しい情報を参考とするように示している。

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第110回 医師の一声が決め手!超高額9価HPVワクチン接種への補助金導入

厚生労働省は今年度から9年ぶりにヒトパピローマウイルス(HPV)子宮頸がんワクチンの積極的な接種勧奨を再開した。各自治体では定期接種の対象である現在小学6年生から高校1年生に相当する女子(2006年4月2日~2011年4月1日生まれ)とともに、接種勧奨中止という空白期間に対象年齢だった女性(1997年4月2日~2006年4月1日生まれ)向けの「キャッチアップ接種」も含めて、今後の接種勧奨の対応が必要になる。すでに各自治体のホームページにはこれらの情報が掲載されているが、実際の個別通知状況はまちまちだという。ちなみに私の娘はキャッチアップ接種の対象者だが、まだ個別通知は来ていない。実はすでにわが家の場合は「ワクチンマニア」の私が区の保健所に出向いて予診票を受け取りに行っている。ついでに言うと、わが家が居住する自治体はHPV以外の定期接種ワクチンは区の支所で予診票を受け取ることができるが、支所からは「子宮頸がんだけは扱いが別なんですよ」と言われ、わざわざ保健所まで出向いたという経緯がある。その際に保健所から、個別通知は6月に一斉送付すると聞いている。積極的接種勧奨が再開されたことは非常に喜ばしいことだが、長期間にわたって接種勧奨中止が続いていた影響で勧奨が再開されても対象者の親が尻込みをしてしまうケースもあると考えられる。当面、厚生労働省や各自治体はこうした「何となく怖い」と思っている人たちにどのように情報提供していくかが1つの課題になる。とりわけこの点は各自治体の工夫次第となる。一方でHPVワクチン接種に関しては国レベルでは2つの大きな課題が残されている。1つはすでに承認され、海外での接種では標準となっている9価HPVワクチンへの定期接種切替と、これまた海外では一般的になっている男性への接種拡大である。ここで書くのは釈迦に説法になってしまうが、現在日本でのHPV接種で使えるのは2価あるいは4価のワクチンである。実際の接種に使用されているのは、ほとんどが4価ではあるが、これでカバーできるハイリスクHPV型は約6~7割。これに対して9価は約9割。言うまでもなく9価を接種したほうが良いに決まっている。しかし、現在定期接種で採用されていない9価ワクチンを接種する場合、その費用は全額接種者の自費負担になる。しかもその価格は3回接種合計で10万円弱。これを個人で負担するのはかなり難儀だ。そしてこれは定期接種に採用しようとする国にとっても予算措置上頭の痛い問題になる。なんせ4価の定期接種の2倍の予算が必要になるからだ。この点は接種対象を男性に拡大することへの足かせにもなる。もっとも厚生科学審議会予防接種基本方針部会のワクチン評価に関する小委員会は3月4日に9価ワクチンを定期接種化する方針で一致しており、この点は時間が解決する段階に入っている。とはいえ今まさに接種を検討する側の心理からすれば、「早期に何とかならないのか?」と思うだろう。もちろん4価ワクチンの交叉免疫を考えれば、9価ワクチンと遜色のない効果は得られるだろうし、実際にそうした研究報告もある。とはいえ、同じ価格や労力を払うなら、より良いものを得たいというのがヒトの心理というもの。「一般消費財と医薬品・ワクチンを同等に扱うのは何事か」というご意見もあるだろうが、これまでの研究成果から見れば、その効果にほぼ疑いのないHPVワクチンならば、やはり9価ワクチンは早急に導入して欲しいと個人的にも思うところである。実際、自治体レベルではこうした一般生活者が当たり前に抱きそうな要望に応えているケースもごくわずかながらある。1つは静岡県富士市の事例である。同市では、(1)接種日時点で富士市に住民登録があること、(2)9価ワクチン以外のHPVワクチンの接種を1回も受けたことがないこと、(3)これまでに9価ワクチンの接種にかかる費用補助を受けたことがないこと、の3条件を満たした9価ワクチン接種希望者に対し、接種1回につき1万7,000円程度、1人最大3回まで補助をする方針を打ち出している。希望者は事前に同市健康政策課に申し出をしたうえで、医療機関で9価ワクチンを接種して接種費用全額を支払った後、補助交付申請で補助金が支払われる形式。やや煩雑ではあるが、9価ワクチン接種を選択肢として用意した点では画期的である。4月にこの一報に接した際に「この動きが全国に広がれば…」と思っていたが、今のところそうした動きは限定的だ。ところがそれを超える動きがつい最近登場した。秋田県のにかほ市である。同市はなんと現時点でHPVワクチンの接種対象者とキャッチアップ接種対象者に、9価ワクチン接種を希望する場合は全額補助をするという富士市以上の対応を打ち出したのだ。ちなみに、にかほ市は平成の大合併が行われた2005年10月に日本海に面する秋田県由利郡内の仁賀保町、金浦町、象潟町が合併してできた自治体である。馴染みのない人に簡単に説明すると、旧金浦町は日本人として初めて南極に上陸した白瀬 矗(のぶ)陸軍中尉の出身地であり、象潟町は江戸時代の俳人・松尾 芭蕉の紀行作品「おくのほそ道」に登場し、芭蕉が『象潟や 雨に西施(せいし)が ねぶの花』という句を詠んだ場所である。私はにかほ市の市民福祉部健康推進課母子保健支援班に電話をしてその経緯を聞いてみた。今回全額補助を決めた経緯は?【担当者】世間でHPVワクチンの接種勧奨が再開されるかもしれないという話題が浮上してきたのが、昨年9~10月頃ですが、ちょうど10月に私達の地域をカバーしている由利本荘医師会(にかほ市とそこに隣接する由利本荘市で活動する医師会員によって構成)からぜひキャッチアップ接種の対象者への助成をして欲しいという要望書が出されました。その要望書では9価ワクチンについても若干触れられていて、そこで私達も検討を始めました。そして市内の医師と私たち自治体の保健師などで構成している母子保健委員会で、医師側のご意見を伺いたいということで、私たちから全額補助を提案させていただきました。その結果、委員会の中心的存在になっている医師からも任意接種であっても可能ならば自治体で全額助成し、住民の皆さんに貢献できるようにしたら良いのではないかとのご意見をいただき、今回の決定に至りました。当然、議会で予算措置が必要になりますよね。そこはすんなり決まった感じですか?【担当者】そうですね。実はこれまでも当市では、一昨年から定期接種化されたロタウイルスワクチンの接種費用全額補助を2013年から始めていましたし、現在も任意接種のおたふく風邪ワクチンの接種費用も全額補助をしています。以前から経済的な問題よりも住民の方々の選択肢を増やせるようにしようという流れがありました。そうした従来からの経緯もあって市議会議員の皆さんも地元医師の意見を信頼していますし、小さな市であるため意見が浸透しやすい、理解が広まりやすい環境があると言えるかもしれません。市のホームページに掲載されている接種協力医療機関(15ヵ所)を見させていただきましたが、そのほとんどが隣接する由利本荘市(13ヵ所)の医療機関です。確かに医師会がにかほ市と由利本荘市を束ねる広域になってはいますが、自治体をまたぐ形で協力医療機関を確保するとなると、調整は難しくありませんでしたか?【担当者】従来から定期接種になっているワクチン接種を「由利本荘市のかかりつけの医療機関で受けます」という方もいたので、自治体をまたいで接種することがごく当たり前に行われています。逆に由利本荘市の方がにかほ市で接種しているケースもあるはずです。それほど距離的にも離れてるわけでもないので、とくに問題はありません。全額補助を発表されてから問い合わせはありましたか?【担当者】ありますね。ただ、接種協力医療機関との契約では4月1日から接種開始となっていましたが、全額助成の最終決定が年度末ギリギリだったこともあって、実際のHPVワクチンの定期接種対象者やキャッチアップ接種対象者に直接通知を出せたのは、4月後半でした。そのため4月末時点での実績はまだ少ない状況ですが、これから本格的に申し込みが増えてくるだろうと予想しています。ちなみに、にかほ市で今年度にHPVワクチン接種対象となるのは定期接種、キャッチアップ接種含め451人。市の予算では現時点でうち80人がこの全額助成を利用すると想定し、720万円の予算を計上。希望者が多い場合は、補正予算対応も検討するという。今回のにかほ市の全額助成が成立した背景にはいくつかの要因が考えられるだろう。私個人の雑感も含めて、ざっと挙げると以下のようになる。(1)小規模な自治体ゆえに対象者が多くなく、予算がそれほどかからない(2)行政側がもともとワクチン接種の推進に意欲的(3)地元医師会と自治体の日常的な意思疎通が良好(4)過去にも実績があるまた、にかほ市の場合、人口2万3,272人で65歳以上の高齢者割合は39.5%と典型的な高齢化社会の縮図のような自治体であり、そのためか市の広報を見ても子育て対策にかなり注力している。もっともこうした条件が当てはまる自治体はにかほ市だけではなく、全国各地に存在する。つまり同様のことができる潜在力を持つ自治体はほかにもあるはずである。また、今回の接種勧奨の再開に当たっては、勧奨中止期間に接種機会を逃し、定期接種の対象年齢を過ぎてから今年3月31日までにHPVワクチンの任意接種を自費で受けた人へも接種費用の償還払いを実施しており、一部自治体では全額ではないもののこのケースで9価ワクチン接種対象者も償還払いの対象としている。その意味では当面の9価ワクチン接種希望者に対しては、にかほ市型ではない富士市型での対応も十分選択肢として取れるのではないだろうか。本連載での第73回でも触れたが、HPVワクチンに関する自治体の動きには地域の医師会の働きかけは大きな影響を与える。今回のにかほ市の事例でもそれは明らかである。接種勧奨再開という好機だからこそ、各地域で活動している医師の皆さんの「もう一押し」がモノを言う局面とさえいえる。そこで思い出したのが中華人民共和国の建国にこぎつけた中国共産党の毛沢東の戦略「農村が都市を包囲する」だ(念のため言っておくと私は共産主義者ではない)。中国共産党は日中戦争期、日本軍との戦いで国内が一致団結するためにすでに内戦状態だった政敵の国民党と「国共合作」で協力関係を締結した。しかし、日本のポツダム宣言受諾で目的を達成した両党は、その後は再び血みどろの内戦へ突入する。しかし、中国共産党にとって当時の中国を代表する中華民国政府を握り、富裕層の支持を得ていた国民党との内戦は圧倒的に不利。実際、内戦再開当初は都市部から共産党勢力は駆逐され、党員数は激減する。そこで毛沢東が取った戦略が都市部から内陸部へ退き、農村部で支持を獲得しながら最終的に国民党に勝利する「農村が都市を包囲する」戦略だったのだ。実際、中国共産党は約5年で国民党に勝利する。従来からこの手法は政治だけでなく、さまざまな領域での戦略の見本になると私自身は考えている。その意味で今回の9価ワクチンの定期接種開始も「地方が中央を包囲する」形で早期に実現すればと密かに願っている。

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サル痘とは?

サル痘とは?患者さんからの質問に答える出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘とは? サル痘は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患である。 感染症法では4類感染症に位置付けられている。 主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われているが、現時点では不明である。稀に流行地外でも、流行地からの渡航者等に発生した事例がある。 症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2~4週間で自然に回復するが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もある。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘ウイルスの感染経路は? 動物からヒトへの感染経路は、感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触による感染が確認されている。 ヒトからヒトへの感染は稀であるが、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者の感染の報告があり、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられている。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘の流行地は? サル痘は1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて報告されて以降、アフリカ中央部から西部にかけて主に発生してきた。 日本国内では感染症発生動向調査において、集計の開始された2003年以降、輸入例を含めサル痘患者の報告はない。 2022年5月、海外渡航歴のないサル痘患者が英国より報告されまた、欧州、米国でも患者の報告が相次いでおり、調査が進められている。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘の症状・致命率は? サル痘の潜伏期間は5~21日(通常7~14日)とされる。 潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続き、その後発疹が出現する。 発疹は、典型的には顔面から始まり、体幹部へと広がる。 発症から2~4週間で治癒する。 致命率は0~11%と報告され、とくに小児において高い傾向にある。ただし、先進国では死亡例は報告されていない。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘の治療方法は? 対症療法が行われる。 一部の抗ウイルス薬について、in vitroおよび動物実験での活性が証明されており、サル痘の治療に利用できる可能性がある。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.家庭・市中での感染対策は? 発熱、皮疹がありサル痘が疑われる場合、マスク着用を行い、咳エチケットを守り、手指衛生を行う。 患者が使用したリネン類や衣類は、手袋などを着用して直接的な接触を避け、密閉できる袋に入れて洗濯などを行い、その後手洗いを行う。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.病院での感染対策は? 確定患者および疑い患者に対しては飛沫予防策、接触予防策を取る必要がある。 サル痘の主な感染経路は接触感染や飛沫感染であるが、水痘、麻疹等の空気感染を起こす感染症が鑑別診断に入ること、サル痘に関する知見は限定的であること、他の入院中の免疫不全者における重症化リスク等を考慮し、現時点では、医療機関内では空気予防策を実施することが推奨される。 診療行為に伴うエアロゾル感染の可能性が否定できないため、N95マスクなど空気予防策を取る事を検討する。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘のワクチンは? 天然痘のワクチンである痘そうワクチンがサル痘予防にも有効であるが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていない。 サル痘ウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防効果があり、曝露後4~14日で接種した場合は重症化予防効果があるとされている。出典:国立感染症研究所ホームページ(2022年5月20日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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公園の運動ではマスクは不要、電車内は必要/厚生労働省アドバイザリーボード

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、5月19日に第84回の会議を開催し、その中で和田 耕治氏(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学 教授)より「日常生活における屋外と、小児のマスク着用について」の資料が説明された。 不織布製マスクの着用は呼吸器感染症対策として、咳・くしゃみなどの症状のある人や会話の際に飛沫やエアロゾルの発散を低減させることを目的に推奨され、ある程度の飛沫やエアロゾルを吸い込むことを予防する効果もある。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、発症前あるいは無症状の人からの感染対策が重要であり、さらに感染力が高いことや感染した場合の影響が大きかったことから、症状の有無に関わらず公共の場や職場、電車内などでのマスク着用が呼びかけられている。 その後、ワクチン接種の進展や病原性がより低いオミクロン株が流行株の多くを占めるようになり、マスク着用対策を緩和すべきという社会的要請も高まってきたことに対し、今回検討を行ったものである。電車内はマスク着用で通勤・通学する必要【屋外でのマスク着用が必要ではない】・屋外で周囲の人と距離が十分に確保できる場合(例:公園での散歩やランニング、自転車などの移動など)・家族などの人たちだけで過ごす場合・屋外で周囲との距離が十分に確保できない場面でも、周囲で会話が少ないかほとんどない場合(例:徒歩での移動など)【屋外でのマスク着用が必要である】・多数の人が利用する公共交通機関での通勤・通学の場合・屋外であっても人混みや会話をするような場面がありえる場合・屋内への訪問があればマスクを持参し、屋内で着用・COVID-19で起り得る症状(鼻水、頭痛、喉の痛み、発熱、咳など)があり、日常生活の必要物品の買い物などやむを得ない外出をする場合、屋外でもマスク着用(ただし、まずは外出を控えることが重要)マスク着用、小児では適宜判断が必要が必要【小児のマスク着用の原則的な考え方】 保育所、認定こども園などでは、2歳以上の未就学児についても、発育状況などからマスクの着用が無理なく可能と判断される児童については、可能な範囲で一時的にマスク着用を奨める。【小児のマスク着用考慮の理由と留意点】 COVID-19への対応が長期化する中で、マスク着用により熱中症のリスクや 表情が見えにくくなることによる影響も懸念され、考慮する時期にある。 一方で、当面は感染例が続き得ることから、施設内で感染者が出ている、または体調不良者が複数いる場合などには、一時的にマスク着用をすることは考えられるが、長期化しないように留意する必要がある。【2歳以上の未就学児以外】・熱中症リスクが高い場合には、登下校時にマスクを外すよう指導。ただし、十分な距離を確保し、会話を控えること、公共交通機関を利用する場合はマスクを着用することなどについて指導が必要。・屋外の運動場やプールでの体育の授業や休憩時間における運動遊び(鬼ごっこなど密にならない外遊びなど)においてもマスクの着用は不要。その際、十分な身体的距離をとることや体調不良の者が参加しないように確認することは必要である。

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免疫抑制が強い患者ほど接種後の抗体価に差、モデルナ製vs.ファイザー製

 免疫抑制治療を受けている固形臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者において、モデルナ製の新型コロナワクチンがファイザー製ワクチンより強い液性免疫原性を誘導しやすく、この効果は免疫抑制が強いほど顕著だったことが、米国・Johns Hopkins University School of MedicineのJonathan Mitchell氏らの研究で示された。JAMA Network Open誌2022年5月16日号に掲載。 臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者などの免疫抑制患者は、新型コロナワクチンに対する免疫応答が低下している。したがって、ワクチンの免疫原性の差は、免疫正常者での差より臨床的に重要である。本コホート研究では、免疫抑制の強さの異なる患者群ごとにファイザー製およびモデルナ製ワクチン2回接種後の抗スパイク抗体価を比較した。 対象は、2020年12月16日~2021年7月6日にmRNAワクチンを2回接種している新型コロナウイルス検査陽性歴のないリウマチ性・筋骨格系疾患と固形臓器移植患者で、免疫抑制の強さによって以下に層別化した。・免疫抑制治療を受けていないリウマチ性・筋骨格系疾患患者・免疫抑制治療を受けているリウマチ性・筋骨格系疾患患者・ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されていない固形臓器移植患者・ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者 ワクチン2回目接種から15〜45日後に半定量的抗体検査を実施し、年齢・ワクチン接種後期間・免疫抑制薬の数で重み付けした修正ポアソン回帰を使用して、2つのワクチンでの応答率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・リウマチ性・筋骨格系疾患患者1,158例(うちファイザー製ワクチン接種647例)および固形臓器移植患者697例(同367例)について調査した。・免疫抑制治療を受けていないリウマチ性・筋骨格系疾患患者(220例)のうち、抗受容体結合ドメイン力価が250U/mL以上だった患者の割合は、ファイザー製ワクチン91.5%、モデルナ製ワクチン93.1%で同等だった(発生率比[IRR]:1.02、95%CI:0.94~1.10、p=0.69)。・しかし、他の群では、モデルナ製ワクチン接種者のほうがファイザー製ワクチン接種者よりも受容体結合ドメイン抗体価250U/mL以上だった患者の割合が高かった。- 免疫抑制治療を受けているリウマチ性・筋骨格系疾患患者(938例):79.2% vs.60.5%、IRR:1.30、95%CI:1.20~1.43、p<0.001- ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されていない固形臓器移植患者(260例):66.4% vs.44.7%、IRR:1.56、95%CI:1.24~1.96、p<0.001- ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者(437例):11.4% vs.4.3%、IRR:2.62、95%CI:1.28~5.37、p=0.01 本研究では、免疫抑制治療を受けていない患者では、モデルナ製およびファイザー製ワクチンに対する免疫応答は同等だったが、免疫抑制治療を受けている患者は、モデルナ製ワクチンのほうがファイザー製ワクチンより高かった。免疫原性の差は、免疫抑制が最も強い患者(ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者)で最も大きく、抗体価250U/mL以上の患者の割合は2.6倍の差があった。

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国内での新型コロナワクチンの有効性~多施設共同研究/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症の発症予防における新型コロナワクチンの有効性を、全国の医療機関において検査陰性デザインを用いた症例対照研究を行い(VERSUS study [Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2])1)、国内においても海外で報告されたものとほぼ同等の有効性が認められた。4月22~23日にオンラインで開催された第96回日本感染症学会総会・学術講演会で、長崎大学の前田 遥氏が発表した。なお、本発表に含まれるデルタ株流行期の結果については、Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2022年4月19日号2)にも掲載されている。 2021年7月1日から開始しているサーベイランス研究結果の一部として、本報告では2021年7月1日~9月30日(デルタ株流行期)と2022年1月1日~2月28日(オミクロン株流行期)の2期における研究結果を報告した。それぞれ全国13ヵ所の医療機関で新型コロナウイルス感染症を疑う症状で医療機関を受診した患者(16歳以上)を対象に、検査陰性デザインを用いた症例対照研究を用いてワクチンの発症予防における有効性を評価した。 主な結果は以下の通り。【デルタ株流行期】・解析対象は1,936例で、うち検査(核酸増幅法検査もしくは抗原定量検査)陽性396例(20.5%)、年齢中央値49歳、基礎疾患あり34.0%、ワクチン未接種42.0%、2回接種完了32.2%、陽性者における未接種73.2%、2回接種完了6.6%だった。・16~64歳において、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種完了による発症予防の有効性は88.7%(95%CI:78.8~93.9%)。2回接種完了から91日以上経過した群では、90日以内の群と比較して有効性の低下が見られた。・16~64歳において、2回接種完了後の有効性は、ファイザー製:86.7%(95%CI:73.5~93.3%)、モデルナ製:96.6%(95%CI:72.8~99.6%)となり、ファイザー製よりモデルナ製のほうが、有効性が高い結果となったが、有意差は認められなかった。・65歳以上に関しては、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種による有効性は90.3%(95%CI:73.6~96.4%)であり、若年者とほぼ同等の効果が見られた。【オミクロン株流行期】・解析対象は16~64歳の2,000例で、うち検査陽性758例(37.9%)、年齢中央値35歳、基礎疾患あり16.1%、ワクチン未接種13.4%、2回接種完了75.8%、3回接種完了6.8%だった。・16~64歳において、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種完了による発症予防の有効性は42.8%(95%CI:23.6~57.1%)となり、デルタ株流行期と比較して有効性の低下が認められた。・3回接種完了による発症予防の有効性は68.7%(95%CI:37.1~84.4%)。追加接種による有効性の上昇が認められた。 本研究により、デルタ株流行期では、ワクチン2回接種完了による高い有効性が確認された。一方、オミクロン株流行期では、デルタ株流行期と比較してワクチン2回接種完了の有効性の低下が見られた。3回接種完了の有効性は、人種や社会背景が異なる日本でも、英国・米国の報告と同等であった。 本研究については今後も継続し、随時結果がアップデートされる予定。なお、オミクロン株流行期に関して、本解析で集計できていない症例が多数あり、オミクロン株流行期の解析結果は今後変動する可能性があるという。

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米FDA、5~11歳への3回目ファイザー製ワクチンを承認

 米国・ファイザー社は5月17日付のプレスリリースで、米国食品医薬品局(FDA)が、5~11歳の小児に対して、同社製の新型コロナワクチンの3回目接種を緊急使用許可(EUA)したことを発表した。ファイザー製ワクチンの初回シリーズ2回接種完了から5ヵ月以上経過した小児に対して、ブースター接種として、1回目・2回目接種と同量の10µgを投与できる。米国で5~11歳への3回目接種が承認されるのは、ファイザー製ワクチンが初めてとなる。 2022年1月に、FDAは12~15歳に対して、成人と同量の3回目接種(30µg)を承認したが、今回承認となった5~11歳への3回目接種は、3分の1の容量の10µgとなる。3回目接種は、高い忍容性と、初回シリーズと同等の安全性が確認されている。 今回の緊急使用許可の年齢層の拡大は、5〜11歳の健康な子供140例を対象とした第II/III相臨床試験のデータに基づいている。 本試験では、初回シリーズ2回接種完了から約6ヵ月後にブースター接種し、うち30例の血清サブ解析データにおいて、オミクロン株に対する中和抗体価が、2回目接種後と比較して36倍に増加したことが確認され、コロナ既往歴の有無にかかわらず、強力な反応が示された。 加えて、ブースター接種後1ヵ月のSARS-CoV-2野生株に対する中和幾何平均抗体価(GMT)は、2回目接種後と比較して6倍(95%CI:5.0~7.6)に増加し、この年齢層における強い免疫反応が示された。 ファイザー社では、生後6ヵ月~4歳の乳幼児を対象に、3µgを3回接種するスケジュールで、安全性、忍容性、免疫原性を評価する第I/II/III相臨床試験を実施しており、初期データが数週間以内に発表される予定という。 現在、米国では、5~17歳に対してファイザー製ワクチンのみが承認されており、これまでに5~11歳の800万人以上の小児が2回接種を完了しているという。一方、日本では、5~11歳に対してファイザー製ワクチンのみ承認されており、5月19日時点の首相官邸HPにおける「総接種回数の内訳」の発表によると、5~11歳の2回接種完了者は90万5,650人、接種率12.2%となっている。

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