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コロナ予防効果の長期観察、ワクチン歴・感染歴別に分析~1千万人コホート/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのプライマリシリーズ接種者は非接種者に比べて、またブースター接種ありはブースター接種なしに比べて、さらにSARS-CoV-2感染既往者は非既往者に比べ、いずれもSARS-CoV-2感染(オミクロン株を含む)や入院・死亡リスクが有意に低いことが、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDan-Yu Lin氏らが行った、1,000万人超を対象に行ったコホート試験で明らかにされた。なお、これらの関連性は、とくに感染に対する保護効果について、時間とともに減弱が認められたことも示されている。COVID-19ワクチンの接種状況およびSARS-CoV-2感染既往と、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19重症アウトカムリスクとの関連データは、予防戦略を導く可能性があり重視されている。JAMA誌オンライン版2022年9月26日号掲載の報告。ノースカロライナ州在住の1,060万人を対象に試験 研究グループは2020年3月2日~2022年6月3日に、米国ノースカロライナ州在住の1,060万人を対象にコホート試験を行った。 COVID-19ワクチンプライマリシリーズ接種、ブースター接種、SARS-CoV-2感染既往について調べ、SARS-CoV-2感染との関連を率比(RR)で評価し、またCOVID-19関連の入院・死亡との関連をハザード比(HR)で評価した。ブースター接種で1ヵ月後感染リスクは6~7割減、3ヵ月後は2~4割減に 被験者1,060万人の年齢中央値は39歳、女性51.3%、白人71.5%、ヒスパニック系9.9%だった。 2022年6月3日時点で、被験者の67%がワクチンを接種していた。被験者全体のSARS-CoV-2感染者数は277万1,364例、入院率は6.3%、死亡率は1.4%だった。 COVID-19ワクチンプライマリシリーズ接種者vs.非接種者の、初回接種10ヵ月後のSARS-CoV-2感染に関する補正後RRは、BNT162b2が0.53(95%信頼区間[CI]:0.52~0.53)、mRNA-1273が0.52(0.51~0.53)、Ad26.COV2.S(単回投与ワクチン)が0.51(0.50~0.53)だった。対COVID-19関連入院の補正後HRは、それぞれ0.29(0.24~0.35)、0.27(0.23~0.32)、0.35(0.29~0.42)だった。対COVID-19関連死亡の補正後HRは、それぞれ0.23(0.17~0.29)、0.15(0.11~0.20)、0.24(0.19~0.31)だった。 BNT162b2によるプライマリシリーズ接種に加え、2021年12月にBNT162b2によるブースター接種を受けた被験者は、非ブースター接種者に比べ、1ヵ月後のSARS-CoV-2感染に関する補正後RRは0.39(0.38~0.40)だった。また、mRNA-1273によるブースター接種を受けた被験者は同補正後RRが0.32(0.30~0.34)だった。3ヵ月後の補正後RRは、それぞれ0.84(0.82~0.86)と0.60(0.57~0.62)だった。 被験者全体で、オミクロン株感染既往者は非既往者に比べ、4ヵ月後のSARS-CoV-2再感染に対する補正後RRは0.23(0.22~0.24)と推定され、COVID-19関連の対入院の補正後HRは0.10(0.07~0.14)、対死亡の補正後HRは0.11(0.08~0.15)だった。

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第129回 大地震から丸山ワクチンまで、幅広いテーマを深く掘り下げた中井 久夫氏の作品

イベルメクチン臨床試験「主要な評価項目で統計学的有意差は認められず」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。久しぶりに好天となった週末は、少々足を伸ばして、新潟県と長野県の県境に位置する苗場山に行って来ました。土曜に赤湯温泉まで入り、翌日、赤倉山経由で苗場山に登り、和田小屋に下山する長めのコース。苗場山頂上部の池塘が点在する草紅葉の絶景を堪能できたのはよかったのですが、行動時間は11時間近くになってしまい、和田小屋下の駐車場に着く頃には真っ暗になっていました。今の時期、山の日没はとても早いです。皆さんも気をつけてください。ところで、一部医師から熱狂的な支持を受けていた抗寄生虫薬イベルメクチンについて、第III相臨床試験を行っていた興和が9月26日記者会見を開き、「主要な評価項目で統計的な有意差が認められなかった」とする結果を発表しました。この試験は2021年11月~2022年8月、日本とタイの軽症の新型コロナウイルス感染症患者1,030人を対象に、国際共同、多施設共同、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、並行群間比較試験で行われました。結果、より早く症状が治まることの有効性を見出すことができなかった、とのことです。なお、死亡例はないことなどから「安全性は確認された」としています。さらに9月30日には、イベルメクチンの開発者、大村 智博士が所属していた北里大学も2020年8月〜2021年10月まで実施した新型コロナウイルス感染症患者に対するイベルメクチンの多施設共同、プラセボ対象、無作為化二重盲検、医師主導治験の結果を公表、「プラセボ投与群との間に統計学的有意差を認めなかった」としています。イベルメクチンについては、新型コロナの感染拡大が始まったころから、一部の熱狂的な医師が「よく効く」「治った」とテレビ等、さまざまなメディアで喧伝、そうした流れに乗り、東京都医師会の尾崎 治夫会長も、「予防にも治療にも効果が出ているのだから、積極的に使うべき」と主張していました。そもそも、イベルメクチンについては、WHOも米国NIHも臨床試験に限定して使用するよう勧告してきました。2021年3月にはJAMA誌に、今年3月にはNEJM誌に、イベルメクチンが新型コロナウイルス感染症に効果がないことを結論付けた論文も発表されています。今回、興和と北里大学から改めて二重盲検で有効性が認められなかった、と発表されたことは、イベルメクチン信奉者に対する最後通牒になったと思われます。しかし、彼らから「科学的に嘘を言っていました」といった反省の声は聞こえてきません。何らかの弁明や反論をぜひ聞いてみたいところなのですが……。統合失調症の研究者としてだけでなく詩の翻訳やエッセイなどでも有名な中井氏さて、秋も深まって来ましたので、今回は“読書特集”として、ある著者の本を数冊紹介します。少々時間が経ってしまいましたが、今年8月に1人の高名な医師が亡くなりました。新聞でもその逝去は取り上げられ、全国紙の中には追悼記事を掲載するところもありました。その医師とは、『患者よ、がんと闘うな』の近藤 誠氏、ではなく、精神科医の中井 久夫氏です。神戸大学医学部精神神経科主任教授などを歴任した中井氏は、精神科の領域では統合失調症やPTSDの研究者として知られています。また、ラテン語や現代ギリシャ語、オランダ語も堪能で、詩の翻訳やエッセイなど文筆家としても有名でした。amazonで中井氏の著作を検索すると、膨大な数の著作があることに驚かされます。難解な著作も多い中、精神科に限らず、臨床医ならばぜひ読んでおきたい作品も少なくありません。災害医療に携わる医療人の必読書、『災害がほんとうに襲った時 阪神淡路大震災50日間の記録』精神科領域から少々外れたところでは、中井氏が1995年に起きた阪神・淡路大震災の時の記録を綴った『災害がほんとうに襲った時 阪神淡路大震災50日間の記録』(みすず書房、2011年)は災害医療に携わるすべての医療人の必読の書だと言えます。本書は、もともとは中井氏が神戸大学の精神神経科主任教授として経験した阪神淡路大震災の50日をまとめた『1995年1月・神戸より』(みすず書房、1995年)が原本です。東日本大震災直後の2011年4月、同書を読みたいという人が増えたことから、再編集して急遽刊行されました。『災害がほんとうに襲った時』には「東日本巨大災害のテレビをみつつ」と題した章が加えられており、16年前の大震災を経験した精神科医だからこそ書ける、さまざまな視点やアドバイスが盛り込まれています。東日本大震災ではその直後から、被災者の心のケアが重視されましたが、そうした動きには、阪神淡路大震災での中井氏らの活動やそこで得られた教訓が克明に記された本書の存在が大きく影響していたに違いありません。本書には、「孤独なうちに自分しかいないと判断してリーダーシップを発揮した人たちがいた。(中略)。いずれも早く世を去った」という一文があります。そして、PTSD含め、大災害での医療活動が現場の医療者に与えるダメージについても、中井氏自身の心身の状態の変化も含め、詳しく書かれています。その内容は、コロナ禍で疲弊した医療者に対するケアを考える上でも役立ちそうです。気軽に読める『臨床瑣談』、『臨床瑣談 続』中井氏の著作の中で気楽に読めるエッセイとしては、『臨床瑣談』(みすず書房、2008年)、『臨床瑣談 続』(みすず書房、2009年)がとくにお薦めです。月刊誌『みすず』に2007年から不定期連載してきたエッセイをまとめたもので、「『臨床瑣談』とは、臨床経験で味わったちょっとした物語」といった意味だそうです。目次の主な内容は、「院内感染に対する患者自衛策私案」「昏睡からのサルベージ作業」「がんを持つ友人知人への私的助言」(以上『臨床瑣談』)、「血液型性格学を問われて性格というものを考える」「煙草との別れ、酒との別れ」「インフルエンザ雑感」(以上『臨床瑣談 続』)と雑多で、中井氏の専門である精神科以外のテーマが多く、基本的に医師向けに書かれたものではありません。しかし、内容は十分に専門的で、臨床医が普通に読んでも参考になるトリビアが散りばめられています。丸山ワクチンを自ら試した中井氏この中でとくに面白く読めるのは、『臨床瑣談』に収められている「SSM 通称丸山ワクチンについての私見」です。当時、この回が『みすず』に掲載されると、全国紙の書評欄で取り上げられ、出版社への問い合わせが殺到、それが『臨床瑣談』の出版につながったのだそうです。「(丸山)先生を直接知る人が世を去りつつ今、少しくわしく、先生のことを記しておくのがよいだろう。私は丸山先生に直接お会いしてお話をうかがった最後の世代になりつつある。書き残しておく責任のようなものもある」として書かれたこのエッセイには、日本医科大の丸山 千里博士との面会の様子から、中井氏自身の使用経験、はては丸山ワクチンを使いたいという友人を日本医大に紹介する話まで、数々の興味深いエピソードが赤裸々に語られるとともに、丸山ワクチンに対する中井氏の私見が展開されています。「私は精神科医でありガン学会とはまあ無縁である」という中井氏は、総じて丸山ワクチンに好意的な立場を取りながら、その作用機序について、かつてウイルスの研究者だった頃の知見を生かして、論理的に考察していく経緯は読み応えがあります。イベルメクチンの信奉者たちも、「効くんだ」「承認しろ」とただただ騒ぐだけではなく、中井氏のように論理的な考察とともに、自分が「なぜ使うか」を冷静に訴えるべきだったと思いますが、どうでしょうか。ちなみに丸山ワクチンは今でも有償治験薬という特別な扱いが続いており、日本医科大学付属病院ワクチン療法研究施設を受診すれば、治療を受けることができます。余談ですが、日本経済新聞の今年7月の「私の履歴書」は、ソニー・ミュージックエンタテインメント元社長の丸山 茂雄氏でした。丸山博士の長男である茂雄氏も同連載の中で、がんに罹患した後、主治医に内緒で丸山ワクチンを投与したと書いていました。さまざまな治療法も組み合わせ、最終的にがんは消えたとのことですが、「もちろんいまも丸山ワクチンを打ち続けている」と締めくくっています。60年前に日本の医療を痛烈批判した『日本の医者』さて、中井氏の著作の中には、約半世紀の時を経て復刊されたものもあります。『日本の医者』(日本評論社、2010年)です。原本は、中井氏が東大伝染病研究所(現在の東大医科研)の研究員として働いている時に、ペンネームを使って共著で書いた『日本の医者』(三一書房、1963年)です。医学部講座制や全国の病院の系列化などを批判的に論じた内容で、3年後に今度は『病気と人間』(三一書房、1966年)という本を再び共著で出版、「医局制はそのうち崩壊する」との過激な予言が当時は話題になったそうです。2010年に復刊された『日本の医者』には、若き中井氏の原点ということで、三一書房から出版された『日本の医者』『病気と人間』に加え、「抵抗的医師とは何か」(岡山大学医学部自治会刊)という文章も収められています。60年前の日本の医学部、医師、医療機関の実態とその問題点を指摘した本書は、読んでみると半世紀以上たった今でもそんなに古びていないと感じます。技術はともかく、「日本の医者」の本質がほとんど進歩していないためかもしれません。事実、医局制度(教授の権限)はしぶとく生き残り続けています。今でも医局や大学教授に縛られ続ける、若い医者たちに読んでもらいたい1冊です。

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ブースター接種の入院予防効果、何日くらいで弱まる?/JAMA

 新型コロナのmRNAワクチン(以下、新型コロナワクチン)のブースター接種をすることで、どの程度の予防効果が補われ、それがどのくらい持続するかについてはあまり知られていない。そこで、シカゴ大学のJessica P. Ridgway氏らは初回ワクチン接種(2回接種)とブースター接種(3回目)でのコロナによる入院割合について評価した。その結果、ブースター接種が入院率の低下と関連したが、ブースター接種からの時間経過に伴い、その関連は弱まっていったことが明らかになった。2022年9月23日JAMA誌オンライン版のリサーチレターでの報告。 研究者らは過去の試験1)方法を基に、2021年10月1日~2022年7月26日に入院し新型コロナワクチンを2回または3回接種(ブースター接種)していた、米国西部6州のプロビデンスヘルスケアネットワークに登録されている成人データを用いて、ケースコントロール研究を実施した。本症例には、新型コロナと最終診断、症候性で新型コロナ核酸増幅検査 (NAAT)陽性、レムデシビル/デキサメタゾンによる治療を受けていた患者を組み入れた。なお、それぞれ4群を、同地域で3日以内に新型コロナ以外の理由で入院した症例かつ7日以内に新型コロナワクチンを2回接種した症例とマッチさせ、電子カルテからは人口統計、併存疾患、新型コロナワクチン接種情報などを収集した。 条件付きロジスティック回帰分析にて、新型コロナの入院に関連する因子を特定した。また、2回目およびブースター接種後の経過時間による入院のオッズを見るために、ブースター接種者と2回接種者での新型コロナによる入院のオッズを計算した。 主な結果は以下のとおり。・新型コロナで入院した3,062例 (平均年齢±SD:70.8±15.4歳)のうち男性は52.6%、ブースター接種済み者は34.7%だった。一方、対照群1万2,248例(平均年齢±SD:67.1±18.2歳)のうち46.7%が男性で、49.3%はブースター接種済みだった。・新型コロナによる入院のオッズが増加する要因として、70歳以上、男性、認知機能障害、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、免疫不全、肥満、リウマチ性疾患、移植、そしてBNT162b2(ファイザー製ワクチン)が関連した。 ・多変量解析の結果、ブースター接種は新型コロナによる入院オッズの低下と関連し、ブースター接種群:34.7% vs.対照群:49.3%だった(調整済みオッズ比[OR]:0.41[95%信頼区間[CI]:0.37~0.46])。・入院のオッズはブースター接種からの時間経過でも異なり、 50日未満では、調整済みOR:0.24(95%CI:0.18~0.30)、50~100日は同:0.24(95% CI:0.20~0.29)、101~150日は同:0.47(95%CI:0.38~0.58)、150日以上は同:0.72(95%CI:0.61~0.84)だった。 研究者らは「時間の経過とともにブースター接種の効果が弱まったものの、ワクチン接種を受けた者は全体的に入院リスクが低いままである」と記している。

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コロナ2価ワクチンの安全性と免疫原性、1価と比較~第II/III相試験/NEJM

 オミクロン株対応2価ワクチン「mRNA-1273.214」(モデルナ製)は、単価ワクチンmRNA-1273よりオミクロン株に対する中和抗体反応が優れており、安全性に関する懸念は認められなかったことを、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSpyros Chalkias氏らが、現在進行中の第II/III相試験の中間解析の結果、報告した。オミクロン株対応2価ワクチンmRNA-1273.214の追加接種の安全性および免疫原性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年9月16日号掲載の報告。3回接種済み成人約800例に、2価または単価ワクチンを追加接種 研究グループは、単価ワクチンmRNA-1273(起源株Wuhan-Hu-1のスパイクタンパク質をコードするmRNA)を2回接種(100μg)し、1回目の追加接種(50μg)を3ヵ月以上前に受けた成人を対象に、50μgの2価ワクチンmRNA-1273.214(mRNA-1273を25μg、オミクロン株B.1.1.529[BA.1]のスパイクタンパク質をコードするmRNAを25μg)を接種する群(パートG)と、50μgの単価ワクチンmRNA-1273を接種する群(パートF)に順次登録し、2回目の追加接種を行い、接種後28日時点のmRNA-1273.214の安全性、反応原性、免疫原性を評価した。 2022年2月18日~3月8日(パートF)および2022年3月8日~23日(パートG)の期間に819例が登録され、パートFで377例がmRNA-1273ワクチンの追加接種を、パートGで437例がmRNA-1273.214ワクチンの追加接種を受けた。1回目と2回目の追加接種の間隔の中央値は、mRNA-1273群134日、mRNA-1273.214群136日で類似していた。2価ワクチンは単価ワクチンと比較してオミクロン株に対する中和抗体価が上昇 SARS-CoV-2感染歴がない被験者において、オミクロン株BA.1系統に対する中和抗体価の幾何平均値は、mRNA-1273.214群2,372.4(95%信頼区間[CI]:2,070.6~2,718.2)、mRNA-1273群で1,473.5(同:1,270.8~1,708.4)であった。 また、オミクロン株BA.4/5系統に対する中和抗体価の幾何平均値は、mRNA-1273.214群で727.4(同:632.8~836.1)、mRNA-1273群で492.1(同:431.1~561.9)であり、mRNA-1273.214群はこれまでに流行した複数の変異株(アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株)に対しても結合抗体価が上昇した。 安全性および反応原性は、両ワクチンで類似していた。 ワクチンの有効性は評価されなかったが、探索的解析において、SARS-CoV-2感染がmRNA-1273.214群で11例、mRNA-1273群で9例に認められた。

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自己採取の抗原検査、口腔・鼻腔検体の併用で感度向上か/BMJ

 オランダ・ユトレヒト大学のEwoud Schuit氏らは、検体の自己採取による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)迅速抗原検査キット3種類の感度について調査し、鼻腔拭い液の自己採取による検査の感度は、3種類ともSARS-CoV-2オミクロン株の出現により低下し、1種類のみ統計学的に有意であったことを示した。また、感度は検査の理由(自主検査陽性後の確認検査者の割合)に大きく影響されたこと、2種類については鼻腔に加えて口腔咽頭からの拭い液採取を追加することで感度が改善されたことを示し、「自主検査の結果が陽性の場合、確認検査は必要なく速やかに自主隔離し、自主検査が陰性の場合は偽陰性の可能性が否定できないため、一般的な予防策を順守しなければならない」とまとめている。BMJ誌2022年9月14日号掲載の報告。有症状者を対象に検体自己採取による迅速抗原検査の診断精度を前向きに評価 研究グループは、オミクロン株流行期における、非監視下での鼻腔や口腔咽頭拭い液の自己採取による迅速抗原検査の診断精度を評価する目的で、前向き横断研究を行った。 対象は、2021年12月21日~2022年2月10日の期間に、検査のためオランダ公衆衛生サービスのCOVID-19検査施設3ヵ所を訪れたCOVID-19症状を有する16歳以上の6,497例であった。参加者に対し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法(参照テスト)のために施設スタッフが検体採取を行った後、自宅にて非監視下で鼻腔拭い液または口腔咽頭と鼻腔拭い液を自己採取する迅速抗原検査キット1つを渡し、3時間以内に自宅で検査を完了してもらった。 評価した検査は、Flowflex(ACON Laboratories製、鼻腔のみ、後述の第1期のみ)、MPBio(MP Biomedicals製、鼻腔のみと口腔咽頭+鼻腔)、およびClinitest(Siemens Healthineers製、鼻腔のみと口腔咽頭+鼻腔)で、オミクロン株出現期(2021年および2022年第1週)、オミクロン株が感染の>90%を占める第1期、>99%を占める第2期に分けて評価した。 主要評価項目は、RT-PCR法による検査を参照基準とした各検査の診断精度(感度、特異度、陽性・陰性的中率)、副次評価項目は検査の理由(自主検査陽性後の確認検査、症状、濃厚接触、その他の理由)、COVID-19ワクチン接種状況、SARS-CoV-2感染歴、性別、年齢(16~40歳、40歳以上)で層別化した診断精度とした。感度は、鼻腔拭い液採取で約70~79%、確認検査者では上昇、口腔咽頭拭い液採取の追加で改善 第1期では、Flowflex群45.0%(279例)、MPBio群29.1%(239例)、Clinitest群35.4%(257例)が自主検査陽性後の確認検査者であった。鼻腔拭い液自己採取の感度は全体で、Flowflex群79.0%(95%信頼区間[CI]:74.7~82.8)、MPBio群69.9%(65.1~74.4)、Clinitest群70.2%(65.6~74.5)であった。感度は、確認検査者(それぞれ93.6%、83.6%、85.7%)が、その他の理由による検査者(52.4%、51.5%、49.5%)より著しく高かった。また、感度は、オミクロン株の感染に占める割合が29%から95%以上になると、Flowflex群で87.0%から80.9%(χ2検定のp=0.16)、MPBio群で80.0%から73.0%(p=0.60)、Clinitest群で83.1%から70.3%(p=0.03)へ低下した. 第2期では、自主検査陽性後の確認検査者の割合がMPBio群53.0%(288例)、Clinitest群44.4%(290例)であった。口腔咽頭および鼻腔の両方から拭い液を自己採取した場合の感度は全体で、MPBio群83.0%(95%CI:78.8~86.7)、Clinitest群77.3%(72.9~81.2)であった。確認検査者における感度は、鼻腔拭い液自己採取と比較して口腔咽頭+鼻腔拭い液自己採取でわずかに高く(86.1% vs.87.4%)、その他の理由による検査者においては非常に高い(59.9% vs.69.3%)ことが示された。 著者は、「MPBioとClinitestのメーカーは、口腔咽頭拭い液と鼻腔拭い液の自己採取を併用する使用方法の拡大を検討することができ、他の迅速抗原検査キットのメーカーも上記と同様の評価を検討する必要がある」と指摘している。

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妊婦コロナ患者、中等症以上になる3つのリスク/成育医研・国際医研

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏と国立国際医療研究センター国際感染症センター・AMR臨床リファレンスセンターの都築 慎也氏らの研究チームは、デルタ株・オミクロン株流行期における妊婦の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院例の臨床的な特徴を分析した研究結果を発表した。 本研究は、国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもの。 この研究は、2021年8月~2022年3月までの間に登録された妊婦のCOVID-19入院患者310人(デルタ期:111人、オミクロン期:199人)を対象に実施された。その結果、オミクロン期の患者はデルタ期の患者に比べ、鼻汁と咽頭痛が多く、倦怠感、嗅覚・味覚障害が少ない傾向にあった。また、多変量解析で、軽症の入院患者と中等症-重症の入院患者の比較を行ったところ、中等症-重症に至った患者は「デルタ期の患者」「妊娠中期以降」「ワクチン2回接種未完了」の患者が多いことが判明した。COVID-19で入院した妊婦310人を解析【背景・目的】 これまでわが国の妊婦におけるデルタ株とオミクロン株流行期の妊婦COVID-19の臨床的特徴に関する情報は限られていた。 そこで、COVIREGI-JPを利用して、妊婦のCOVID-19入院患者における(1)デルタ株流行期とオミクロン株流行の臨床的特徴の違いを比較すること、(2)中等症-重症に至った患者の特徴を明らかにすること、の2点について検討を行った。【研究概要・結果】研究対象:2021年8月~2022年3月の間にCOVIREGI-JPに登録された妊婦COVID-19入院患者。研究方法:対象患者の患者背景、重症度、治療内容などのデータを集計・分析。デルタ株・オミクロン株流行期の臨床的特徴についての比較検討を行った。また、軽症と中等症-重症の患者背景を多変量解析で中等症から重症に関連する要因を探索した。【研究結果】・期間中に1万4,006人の患者情報が登録され、そのうち研究対象となった妊婦の入院患者は310人(無症状患者38人を除く)。そのうち、デルタ期の妊婦は111人、オミクロン期の妊婦は199人だった。・オミクロン期の患者は、デルタ期の患者に比べて鼻汁(26.1% vs.15.3%)、咽頭痛(52.8% vs.37.8%)が多く、倦怠感(29.6% vs.43.2%)、嗅覚障害(1.5% vs.18.9%)・味覚障害(2.5% vs.16.2%)が少ないという結果だった。・本研究の定義による中等症-重症患者と軽症患者の多変量解析では、デルタ株流行期、妊娠中期以降のオッズ比はそれぞれ2.25(95%信頼区間[CI]:1.08~4.90、p=0.035)、2.08(1.24~3.71、p=0.008)、とそれぞれ有意に中等症-重症と関連していることがわかった。一方、ワクチン2回接種完了はオッズ比0.34(95%CI:0.13~0.84、p=0.021)と、中等症-重症となることを防ぐ方向に関連していることが判明した。・同様の検討をオミクロン株流行期の患者に限って実施したところ、ワクチン接種についてはオッズ比0.40(95%CI:0.15~1.03、p=0.059)と有意差は認めなかった。 研究チームは、これらの結果を踏まえ、「今後の妊婦COVID-19の診断、治療、予防を考えていく上での重要な基礎データとなると考えられる。今回の検討でも明らかであったように、流行している変異株によりその臨床的特徴が変化していくため、今後も最新の情報を用いた解析を実施し、情報をアップデートしていくことが必要」と展望を述べている。※なお本研究は、オミクロン株BA.5の流行前の時期に実施され、その影響は検討できていない点、各患者の株は明確に証明されているわけではなく、それぞれの株が国内の主流であった時期の患者を比較した研究である点、すべてのCOVID-19患者が登録されているわけではない点、中等症-重症の定義は本研究で定めた定義である点など注意が必要としている。

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塩野義の経口コロナ治療薬、第II/III相Phase 3 partで主要評価項目を達成

 塩野義製薬は9月28日付のプレスリリースにて、同社が開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のensitrelvir(S-217622)について、第II/III相臨床試験Phase 3 partにおいて良好な結果を得たことを発表した。主な結果として、軽症/中等症患者において、重症化リスク因子の有無にかかわらず、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])が消失するまでの時間(発症前の状態に戻るまでの時間)を、プラセボに対して有意に短縮することなどが認められたという。 プレスリリースによると、今回のPhase 3 partの臨床試験では、本剤(低用量、高用量の2用量)を1日1回、5日間経口投与した際の臨床症状の改善効果を検証することを主な目的として、日本、韓国、ベトナムの1,821例の患者が、重症化リスク因子の有無、またワクチン接種の有無にかかわらず登録され、軽症/中等症患者を対象に実施された。本試験における主要評価項目は、発症から72時間未満の患者集団における、オミクロン株流行期に特徴的な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感 [疲労感])の消失までの時間が設定された。 主な結果は以下のとおり。・申請用量(低用量)の本剤投与により、対象患者集団においてCOVID-19の5症状が消失するまでの時間は、プラセボ群と比較して約24時間短縮され、統計学的に有意な症状改善効果が確認された(p=0.04)。症状消失までの時間の中央値は、本剤の申請用量投与群167.9時間vs.プラセボ群192.2時間。・同患者集団における投与4日目(3回投与後)のベースラインからのウイルスRNA変化量は、プラセボ群と比較して1.4 log10コピー/mL以上大きく(p<0.0001)、これまでに実施された臨床試験と同様に優れた抗ウイルス効果が示された。・いずれの用量においても、本剤の投与による重篤な副作用や死亡例の報告はなく、これまでの試験と同様の良好な忍容性と安全性が確認されている。・比較的高頻度に見られた副作用は、これまでの試験でも観察された高比重リポ蛋白の減少および血中トリグリセリドの上昇であった。 同社によると、本結果は、厚生労働省と独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)とすでに共有されており、今後の承認審査ならびに審議について、協議が開始されたという。

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鼻腔ぬぐい液を用いた新型コロナウイルス検査-自己採取と医療従事者採取の比較-(解説:小金丸博氏)

 4~14歳の小児において、鼻腔ぬぐい液を用いた新型コロナウイルスの検出率を自己採取と医療従事者採取で比較した横断研究がJAMA誌オンライン版2022年8月26日号に報告された。自己採取は簡単な説明資材(ビデオと印刷物)を見た後に行い、その次に医療従事者が2回目の検体を採取した。その結果、陽性一致率は97.8%(95%信頼区間[CI]:94.7~100.0)、陰性一致率は98.1%(同:95.6~100.0)と高率だった。陽性検体のCt値も検討されているが、両群間で同等の結果であった。検査結果が不一致となったのが4例あったが、陽性検体において比較的高いCt値を示しており、ウイルスの排出量が少ない場合に一致率が低下する可能性が示唆された。 自己検体採取に関しては、過去に性感染症や呼吸器系ウイルス感染症で検討されており、成人において高い一致率が示されてきた。本研究では、小児において自己採取の高い精度を示しており、学校等におけるマススクリーニングで活用できる可能性がある。医療従事者が検体採取を行う場合、自己採取と比較して時間と費用がかかり、加えて、医療従事者は常に患者からの感染リスクを伴う。これらの観点から自己採取のメリットは大きく、自己採取と医療従事者採取で検査結果の一致率が高いのであれば、今後さらに自己採取による検査が広がる可能性がある。 本研究のLimitationとして以下のようなことが挙げられる。第1に、本研究の参加者はすべて有症状者であり、無症状の小児において同等の結果が得られるかは不明である。自己採取のメリットのひとつは、学校などの集団環境でのスクリーニング検査で用いることであるが、多くの人が無症候性であることが想定される場面での使用には大きな懸念事項がある。第2に、本研究は 2021年7月~8月のデルタ変異株の流行期に行われたことであり、変異株の違いがテスト結果に与える影響は不明である。第3に、不快感を伴う研究への自発的な参加においては、とくに子供が関与している場合、より協力的な子供だけが登録され、テストに消極的な子供の親は参加を辞退する可能性があるため、選択バイアスにつながる可能性がある。 新型コロナウイルス感染症は、早期に診断することによって重症化の防止や感染拡大の抑制につながる。自己検体採取はさまざまな場面で早期診断のための重要なツールとなりうるため、今後、無症候者や変異株の違いが検査結果に与える影響が検証され、検査方法として確立することを期待したい。

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1・2回目ファイザーワクチンなら、3回目はモデルナで感染予防効果増/東大

 ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンによる1次接種(1回目および2回目接種)完了者が、3回目のブースター接種としてファイザー製ワクチンを接種するよりも、モデルナ製ワクチンを接種するほうがその後の新型コロナウイルス感染率が低いことを、東京大学大学院医学系研究科の大野 幸子氏らが発表した。これまで1次接種とブースター接種のワクチンの組み合わせによって効果が異なる可能性が示唆されていたが、実際の感染予防効果の差は明確ではなかった。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2022年9月18日号掲載の報告。 本研究は、山口県下関市のワクチン接種記録システム(VRS)と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)を用いて行われた。解析対象は、2021年11月22日までにファイザー製ワクチンによる1次接種を完了した16歳以上の15万4,925人で、2022年4月15日まで追跡を行った。年齢(16~44歳、45~64歳、65~84歳、≧85歳に分類)、性別、2回目接種からの日数を調整した年齢層別Cox回帰分析およびランダム効果メタ解析による推定ハザード比の統合を行った。 主な結果は以下のとおり。・ファイザー製ワクチンによるブースター接種群は6万2,586人(40.4%、年齢中央値:69歳)、モデルナ製ワクチンによるブースター接種群は5万1,490人(33.2%、同:71歳)、ブースター接種なし群は4万849人(26.4%、同:47歳)であった。・新型コロナウイルス感染の割合は、ファイザー製ワクチンによるブースター接種群が1.4%、モデルナ製ワクチンによるブースター接種群が0.7%、ブースター接種なし群が4.9%であった。・ファイザー製ワクチンによるブースター接種群を基準とした新型コロナウイルス感染の統合ハザード比は、モデルナ製ワクチンによるブースター接種群が0.62(95%信頼区間[CI]:0.50~0.74)、ブースター接種なし群が1.72(同:1.22~2.22)であった。・モデルナ製ワクチンによるブースター接種群の感染予防効果は、年齢カテゴリ間で同様の傾向であった。 同氏らは、「本研究では、ファイザー製ワクチンによる1次接種完了者において、モデルナ製ブースターワクチンを接種した群の方が新型コロナウイルス感染のリスクが低いことが示された。本研究結果は、今後のワクチン確保・流通の政策立案や個人の意思決定に寄与すると考えられる」とまとめた。

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第127回 未報道コメントに真意が!?WHOテドロス事務局長が発した「終わりが視野に…」

9月14日から15日にかけて、ちょっと驚くニュースが全世界に向けて発信された。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)との戦いについて「終わりが視野に入ってきた」と発言したというのだ。個人的な雑感を言えば、終わりが見えなくもないが、「もう一段先かな」と思っていただけに、この一報にはやや驚いた。ちなみに「もう一段先」とは、現在流行しているオミクロン株BA.5の次に流行をもたらすウイルス株が、このままオミクロン株の亜系統になるのか、それとは別の新たな変異株になるのか、そしてそれらの感染力や重症化率を見極められればということである。とりわけ現在のオミクロン株は約10ヵ月と、武漢株を除けば最も長く流行の主流を維持し続けている変異株。次なる流行の主流がこの亜系統となれば、私としてもテドロス事務局長とほぼ似た認識になるだろう。もっとも今回の新型コロナは世間の希望的観測を何度も裏切ってきているので油断はできないというのも本音。その意味でテドロス事務局長よりも“慎重派”の私はまだ「終わりが視野に入ってきた」とは言えないのである。とはいえ比較として適切ではないかもしれないが、通称“スペインかぜ”と呼ばれる1918~19年のインフルエンザ大流行以降のインフルエンザvs.人類の戦いと比べれば、新型コロナの事実上の制圧はこれより大幅に短縮されるのではないかと希望的観測は抱いている。ところでテドロス事務局長はより正確に何と言ったのか? WHOが発表しているブリーフィングの全文を読むと、実は報じられたようなシンプルなものではないことが分かる。実は「終わりが視野に入ってきた」と報じられたフレーズには、「私たちはまだそこに至っていないが(We are not there yet)」という枕詞がついていた。また、現在の新型コロナと人類との戦いをマラソンに例え「マラソンランナーはゴールラインが見えるまで立ち止まらない」として、「今は走るのを止めるには最悪の時期である(But now is the worst time to stop running)」と言い切っている。そのうえで各国が取り組まなければならないことを6つ提言している。(1)医療従事者や高齢者などを含むリスクにさらされやすい人では100%、人口全体では70%のワクチン接種率実現に向けた注力(2)新型コロナの陽性判定検査や遺伝子検査の体制維持し、それらをインフルエンザを含むその他呼吸器感染症のサーベイランス・検査体制へと統合(3)患者に対する正しいケアシステムの確立とそれをプライマリ・ケア体制への統合(4)感染者急増に備えた計画立案と必要な物資、機器、医療従事者の確保(5)医療施設での医療従事者と非コロナ感染者を保護するための感染予防・制御措置の維持(6)新型コロナ関連政策の変更時の明確なコミュニケーションいずれの提言も至極まっとうなものと言える。敢えてこの時期にこの発言をしたのは、約3年におよぶコロナ禍で各国では政府や一般大衆に「疲れ」が見え始めているからだろうと邪推する。さて、この6つの提言を日本に当てはめるとどうなるだろう。個人的な雑感だが、(4)(5)はほぼ実現できているのではないだろうか。(2)についてはまあ達成できていると言えるだろうが、昨今の全数把握の中止方針が今後どのような影響をもたらすかは、未知数だ。(1)についても日本はそこそこに良い線を行っている。9月16日現在の国内総人口に占める3回接種完了率は65.1%。基礎免疫の2回接種完了だけでみれば80.4%で、先進7ヵ国首脳会議(G7)参加国の中ではトップである。もっとも課題はある。すでに2回接種完了率は20代以降では80%超となっているが、5~11歳の小児では2回接種完了者はわずか18.6%に留まっている。比較的、自覚する副反応が多いワクチンであることもあって、親自身が接種しても子供への接種には躊躇してしまうというケースが少なくない。この点ではまだ行政や医療従事者からの情報提供がリーチできていない部分もあるだろう。また、2回目接種完了率と3回目接種完了率には10%以上の開きがある。まさに今週、オミクロン株BA.1対応ワクチンの接種が開始されたが、頻回なワクチン接種にうんざりしている層もいるため、どこまで接種率が上昇するかは、これまた不透明である。(3)も「プライマリ・ケア体制への統合」となると、まだ一般内科の医療機関ならどこでも受診できるという状況には至っていない。(6)については、日本の最大の問題とも言える。過去に何度も指摘しているが、岸田 文雄首相の新型コロナ関連のリスク対応、リスク・コミュニケーション能力はあまりにも欠陥だらけである。オミクロン株BA.1対応ワクチンの承認と接種の前倒しも、アメリカのFDAが最新のオミクロン株BA.5の緊急使用許可の後という間の悪さである。現状の厚生労働省の新型コロナワクチンQ&Aもまだオミクロン株対応ワクチンについての情報は薄く、政治だけが先走っている感は否めない。このように考えると、テドロス事務局長が言うごく正論過ぎる6つの提言を満たすのは実は容易ではないことがわかる。これは実際のところ日本だけの問題ではないはずだ。そして世界的な状況を俯瞰した場合、やはり大きなカギを握る(1)のワクチン接種は地域格差がある。「Our World in Data」によると、全世界の2回接種完了率は62.45%と、テドロス事務局長が掲げる70%(そもそも何を根拠に70%としているのかはわからないが)に近づいている。しかし、地域別で見るとEUが73.31%、アジアが72.07%、北米が64.55%、オセアニアが62.29%に対して、まさにテドロス事務局長の出身地域(本人はエチオピア出身)であるアフリカは22.56%である。今のオミクロン株がアフリカ南部で最初に確認されたことを考えれば、先進国で何回もワクチン接種を推進してもここから蟻の一穴のごとく崩される懸念は消えない。結局、考えれば考えるほど不透明感は増すばかり。逆に「終わりが視野に入る」とはとても思えなくなるという皮肉な様相だと感じている。

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第12回 「今年こそインフルエンザ流行」はオオカミ少年?

毎年「インフルエンザと新型コロナの同時流行が…」という懸念が出つつ、流行しないということが続いています。今度こそインフルエンザが流行するかもしれないと報道されていますが、オオカミ少年のようにあまり信用されていないのが現状です。「インフルエンザと新型コロナはウイルス干渉して共存しないため、コロナ禍ではインフルエンザは流行しない」という見解があり、実際に2シーズン連続でそのような動きとなっています。オーストラリアの流行オーストラリアは南半球にあるため、インフルエンザは夏に流行します。そのため、日本のインフルエンザの流行を予測するうえで、オーストラリアの流行状況を参考にすることが多いです。ほかの国のデータも参考になりますが、オーストラリアが圧倒的に開示されている情報が多く、こちらを基に予測されています。残念ながら、2022年に関しては、オーストラリアでインフルエンザと新型コロナの同時流行が起こっており、ウイルス干渉というロジックがあやふやであることが示されました。オーストラリアでは例年よりも2~3ヵ月早くインフルエンザの流行が起こっており(図)1)、日本でもしこのような事態になるとすれば、年末くらいから流行が始まるかもしれません。図. オーストラリアのインフルエンザ流行状況(参考資料1より)ワクチン同時接種は筋注+皮下注?新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が認められました。新型コロナワクチンは筋注で行いますが、インフルエンザワクチンは実はまだ添付文書的には皮下注が基本です。病院職員・看護学生へのインフルエンザワクチン接種を筋肉注射か皮下注射の希望選択としている施設での研究によると、申告を要する副反応は、筋肉注射8.2%、皮下注射11.3%と、筋肉注射のほうが少なかったという結果でした2)。別の研究においても、筋肉注射のほうが皮下注射よりも副反応が少なかったと報告されています3)。インフルエンザワクチンによる抗体価上昇は、皮下注射と筋肉注射で差がないこともわかっています4)。一方が筋注、もう一方が皮下注だと、インシデントのもとになりますので、可能であれば両腕に筋肉注射できるようにすべきと考えます。まぁ、そう簡単に同時接種が実現するとは思っていません。ウチの子供の3回目接種が近づいてきたのですが、新型コロナワクチンは自治体から予約、インフルエンザワクチンはかかりつけの小児科で予約、という状況です。参考文献・参考サイト1)Australian Influenza Surveillance Report No. 12 - 29 August to 11 September 20222)馬嶋健一郎ほか. 発症率・接種時疼痛・副反応の前向きコホート観察研究. 日本環境感染学会誌. 2021;36(1):44-52.3)Ikeno D, et al. Immunogenicity of an inactivated adjuvanted whole-virion influenza A (H5N1, NIBRG-14) vaccine administered by intramuscular or subcutaneous injection. Microbiol Immunol. 2010 Feb;54(2):81-8.4)Sanchez L, et al. Immunogenicity and safety of high-dose quadrivalent influenza vaccine in Japanese adults ≥65 years of age: a randomized controlled clinical trial. Hum Vaccin Immunother. 2020 Apr 2;16(4):858-866.

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8月末で人口の何%が感染?コロナの“いま”に関する11の知識(2022年9月版)/厚労省

 厚生労働省は、COVID-19の感染者数・病原性、感染性、検査・治療、変異株について、現在の状況とこれまでに得られた科学的知見をまとめた「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識」を更新した2022年9月版を公開した。主な更新内容は以下のとおり。Q 日本では、どれくらいの人が新型コロナウイルス感染症と診断されていますか。2022年9月1日0時時点で、1,891万7,782人が診断され、全人口の約15.0%に相当する。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人や死亡する人はどれくらいですか。オミクロン株が流行の主体である2022年3~4月に診断された人における重症化率は50代以下で0.03%、60代以上で1.50%、死亡率は50代以下で0.01%、60代以上で1.13%だった。Q 海外と比べて、日本で新型コロナウイルス感染症と診断された人の数は多いのですか。2022年9月3日時点での日本の人口当たりの報告されている感染者数および死亡者数は主要国を上回っている。(ただし、各国の感染者数・死亡者数の報告方法が異なることも影響しているなど、結果の解釈には留意が必要)Q 現在、日本で接種できる新型コロナワクチンはどのようなワクチンですか。接種はどの程度進んでいますか。初回(1、2回目)接種と追加接種における接種可能なワクチンの種類と対象者、ワクチンの効果と主な副反応、年齢階級別の接種実績(2022年9月7日公表時点)の一覧表を掲載。Q 新型コロナウイルスの変異について教えてください。現在はB.1.1.529系統(オミクロン株)の亜系統のBA.5系統の変異株が日本を含む世界各地で主流であることなどを記載。 上記のほか、以下の6項目についてまとめられている。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化しやすいのはどんな人ですか。Q 新型コロナウイルスに感染した人が、他の人に感染させる可能性がある期間はいつまでですか。Q 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、どれくらいの人が他の人に感染させていますか。Q 新型コロナウイルス感染症を拡げないためには、どのような場面に注意する必要がありますか。Q 新型コロナウイルス感染症を診断するための検査にはどのようなものがありますか。Q 新型コロナウイルス感染症はどのようにして治療するのですか。

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日本でのコロナ死亡例の分析結果/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第98回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、9月7日に開催された。その中で大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター/COVIREGI解析チーム)らのチームが、「COVID-19レジストリに基づく死亡症例の分析」を報告した。 レジストリ研究は、わが国におけるCOVID-19患者の臨床像および疫学的動向を明らかにすることを目的に、2020年1月から行われている。COVID-19と診断され、医療機関において入院管理されている症例を対象に(8月22日時点で登録症例数は7万920症例)、COVID-19の臨床像・経過・予後、重症化危険因子の探索、薬剤投与症例の経過と安全性について解析、検討が行われている。軽症例での死亡率が徐々に上昇【各波の死亡症例】 各波の死亡症例を比較すると、第6波と第7波は中等症および軽症からの死亡が増加していた。登録数で1番死亡例が多かった第3波と比較すると次のようになる〔( )の死亡率は編集部で算出した〕。・第3波 総死亡:1,218、重症死亡数:235(19.3%)、中等症死亡数:957(78.6%)、軽症:26(2.13%)・第6波 総死亡:300、重症死亡数:40(13.3%)、中等症死亡数:250(83.3%)、軽症:10(3.3%)・第7波 総死亡:19、重症死亡数:1(5.2%)、中等症死亡数:17(89.0%)、軽症:1(5.2%)【中等症での死亡症例】 中等症のうち、第4波以降ネーザルハイフローの利用が進んだが、第6波以降酸素のみ使用で死亡する症例が増えている。第5波で約50%、第6波で約65%、第7波で約80%と上昇。【中等症のリスク因子】 第1波~第7波まで共通して、基礎疾患ありの患者の方が死亡していた。第1波 224人中209人が基礎疾患あり(93.3%)第2波 208人中200人が基礎疾患あり(96.2%)第3波 924人中868人が基礎疾患あり(93.9%)第4波 254人中235人が基礎疾患あり(92.5%)第5波 118人中103人が基礎疾患あり(87.3%)第6波 233人中223人が基礎疾患あり(95.7%)第7波 17人中16人が基礎疾患あり(94.1%)【第5波と第6・7波の比較】・入院中のCOVID-19治療目的での薬物投与の登録割合 (第5波)ワクチン接種あり(ステロイド、抗凝固薬、レムデシビル順で多い)ワクチン接種なし(サリルマブ、モルヌピラビル、ナファモスタット、カモスタットの順で多い)(第6・7波) ワクチン接種あり(ステロイド、レムデシビル、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、カモスタット、サリルマブが同順で多い)・入院中の呼吸補助の登録割合 (第5波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)(第6・7波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)【第6波と第7波の比較】・入院中のCOVID-19治療目的での薬物投与の登録割合 (第6波)ワクチン接種あり(レムデシビル、ステロイド、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、カモスタット、サリルマブが同順で多い)(第7波)ワクチン接種あり(レムデシビル、ステロイド、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、トシリズマブ、ナファモスタット、カモスタット、サリルマブ、カシリビマブ/イムデビマブが同順で多い)・入院中の呼吸補助の登録割合 (第6波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)(第7波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)【まとめ】・第5波と第6-7波の死亡例比較では、第6-7波の方が人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイド処方が下っていた。また、ともに90%の事例では酸素を必要としていた。・第6波と第7波の死亡例比較では、第7波の方が、さらに人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイドの処方率が下がっていた。・ワクチン3回、4回接種者の割合が増加していることから、重篤なCOVID-19肺炎による呼吸不全の方が占める比率が下がっていると推測される。※なお、本報告のレジストリ登録患者は入院患者かつわが国全体の患者の一部であり、すべてのCOVID-19患者が登録されているわけではないこと、また報告では統計学的な検討は実施していないことに注意が必要。

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曝露前の発症抑制の適応を取得したコロナ抗体薬「エバシェルド筋注セット」【下平博士のDIノート】第106回

曝露前の発症抑制の適応を取得したコロナ抗体薬「エバシェルド筋注セット」今回は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)(商品名:エバシェルド筋注セット、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、SARS-CoV-2による感染症の治療に加え、曝露前の発症抑制にも使用することができる世界初の薬剤です。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症およびその発症抑制の適応で、2022年8月30日に特例承認されました。<用法・用量>SARS-CoV-2による感染症通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射します。SARS-CoV-2による感染症の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射します。SARS-CoV2変異株の流行状況などに応じて、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできます。なお、2剤は混和せずにそれぞれ筋肉内注射を行い、投与部位は左右の臀部とします。<安全性>主な副作用として、注射部位反応(発現頻度 1%以上)、発疹・蕁麻疹や注射に伴う反応(発現頻度 1%未満)が報告されています。なお、重大な副作用として、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症(頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.本剤は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療または発症抑制に用いられる薬です。2種類の中和抗体を投与することで、新型コロナウイルスに対する中和作用を示します。2.過去に薬剤などで重篤なアレルギー症状を起こしたことのある方は必ず事前に申し出てください。3.投与中または投与後に、発熱、悪寒、吐き気、不整脈、胸痛、脱力感、頭痛のほか、過敏症やアレルギーのような症状が現れた場合は、すぐに医療者または医療機関に連絡してください。<Shimo's eyes>エバシェルド筋注セットは、新型コロナウイルス感染症の「治療」と「発症抑制」の適応を取得した抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体です。ワクチンを除き、新型コロナウイルス曝露前の発症抑制に用いることのできる初めての医薬品です。既承認薬のカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)も発症抑制の適応を有していますが、カシリビマブ/イムデビマブの対象患者は濃厚接触者であり、本剤の対象は濃厚接触者ではない曝露前の人という違いがあります。治療目的での投与対象は、軽症~中等症I相当で、重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者です。しかし、供給量が限られていることや治療を目的とした薬は他にもあることから、当面の間は発症抑制を目的とした投与に限って薬剤が供給されます。発症抑制目的での投与対象は、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が推奨されない人や、免疫機能低下などによりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある人です。事務連絡では、日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版」(2022年8月30日)を踏まえて以下のようになっています。抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者B細胞枯渇療法(リツキシマブなど)を受けてから1年以内の患者ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を投与されている患者キメラ抗原受容体T細胞レシピエント慢性移植片対宿主病を患っている、または別の適応症のために免疫抑制薬を服用している造血細胞移植後のレシピエント積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者肺移植レシピエント固形臓器移植(肺移植以外)を受けてから1年以内の患者T細胞又はB細胞枯渇剤による急性拒絶反応で最近治療を受けた固形臓器移植レシピエントCD4Tリンパ球細胞数が50cells/μL未満の未治療のHIV患者発症抑制の効果については、海外第III相試験(PROVENT 試験)において、プラセボ群と比較して、RT-PCR検査で陽性が確認された患者の症状のリスク減少率は76.7%であり、統計学的に有意な差が認められました。また、1回投与後、少なくとも6ヵ月間は感染抑制効果が持続することが示されています。新型コロナウイルス感染症の予防の基本はワクチン接種ですが、ワクチンを接種することができない人や効果が不十分と考えられる人に対するワクチン以外の予防の選択肢として期待されます。また、筋注ということから、訪問診療において曝露前の患者への投与が簡便であることも利点の1つと考えられます。<流通・費用>本剤は一般流通を行わず、厚生労働省が所有した上で、流通委託先を通じて対象医療機関に配分・無償譲渡されます。発症抑制目的での投与に限って配分されるため、計画的な投与が可能であることから在庫配置は認められていません。患者負担については、本来は薬剤費を含めて全額自己負担となるところですが、本剤を必要とする対象者にとって過度な負担とならないように、投与時の自己負担分の徴収金額は3,100円以下となる方針です。

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オミクロン流行も学術集会の現地参加は問題ない?

 国内の学術集会が軒並みオンライン中心で実施されるなか、海外ではマスクなしで大勢の参加者が現地に赴いているというが、大丈夫なのだろうか。米国・Surgical Outcomes and Quality Improvement CenterのCasey M Silver氏らが、新型コロナウイルスのオミクロン株が急増中に開催された大規模な学会において、現地出席者とオンライン出席者の新型コロナウイルス感染症の陽性率を比較した。それによると、ほとんどの登録者は会議に直接出席するも、陽性率は低く、現地出席者とオンライン出席者の間で陽性率が同等であったことが示唆された。JAMA Network Open 2022年9月1日号掲載の報告。 本横断的調査研究には、米国最大の外科学会の1つであるAcademic Surgical Congress (ASC) の参加者が含まれた。ASCは2022年2月1~3日にフロリダ州オーランドで開催(現地またはオンライン参加)。その際の新型コロナ感染予防対策として、自己検査の奨励、ワクチン接種とマスク着用の義務化、屋外での飲食物の提供などが行われた。学会後7日間の新型コロナ検査と症状を評価する調査のために登録者を募集した。また、現地出席者とオンライン出席者の陽性率の違いはχ2検定を使用して評価された。 主な結果は以下のとおり。・1,617人の学会参加者のうち、681人(42.1%)が調査に回答した。内訳は187人が学生(27.4%)、234人が研修医(34.3%)、226人が医師(33.2%)だった。・回答者のうち、135人(19.8%) がオンライン、546人(80.2%) が現地参加だった。会議前の検査で陽性だった6人(4.4%)はオンライン参加となった。・すべての現地参加者はワクチン完全接種を受けており、500人(91.6%)がブースター接種も済ませていた。・会議から7日以内に10人の現地参加者(1.8%)と 2人のオンライン参加者(1.5%) から陽性と報告を受けたが、陽性率の差は統計学的に有意ではなかった(p=0.83)。・彼らに共通した検査理由は、「新型コロナに感染していないことを確認したかった」(86人[69.3%])だった。4人が症状について報告したが検査は行われなかった。・陽性者全員がブースター接種を済ませており、10人中7人は欠勤(平均日数±SD:4.8±2.7日)するも、入院した者はいなかった。 研究者らは「対面を再開している学術集会もあるが、新たな亜種が出現するたびに、コロナ曝露のリスクを評価し続けることが重要。ASCは、オミクロン株の急増がピークに達した直後に開催したが会議の主催者がリスクを考慮して安全対策を迅速に適応させた。本結果は、職業上、曝露リスクが高くワクチン接種率も高い医師に対し、コロナ対策が効果的だった」とするも、「新型コロナ陽性の出席者は旅行中にウイルス感染した可能性があるが、感染は依然として現地出席に関連していたことに注意することが重要」と記している。 なお、日本人医師が希望する学術集会の開催形式の在り方について、今年2月にケアネット会員医師(n=1,031)へ行ったアンケート調査によると、現地・オンラインのハイブリッド希望者は60%、オンラインは27%、現地は13%だった。

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5~11歳への3回目接種を追加、新型コロナ予防接種の手引き9版/厚労省

 厚生労働省は、9月6日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(9版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。今回の主な改訂点【第4章 3(13)(接種を受ける努力義務等の取扱い)】 接種を受ける努力義務などの取扱いについて更新(本文抜粋) 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種については、予防接種法附則第7条第2項の規定により同法第6条第1項の臨時接種とみなして実施するものであり、市町村長は対象者に対して接種勧奨をすることとされていること。 また、対象者については原則として接種を受ける努力義務の規定が適用されるが、第2期追加接種(4回目接種)に関しては60歳未満の者について、努力義務の規定の適用が除外されていること。【第5章 1(3)対象者、(4)、接種間隔、(5)ワクチンの種類】5歳以上11歳以下の者への3回目接種について追記(本文抜粋)(3)対象者ア 第1期追加接種(3回目接種) 第1期追加接種(3回目接種)については、初回接種(1、2回目接種)の完了から一定期間経過した者を対象に、1回行うこととする。現時点で3回目接種において使用するワクチンとしているものは、ファイザー社ワクチン(5~11歳用のものを含む)、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(商品名:ノババックス)であり、各ワクチンの対象年齢は、5~11歳用ファイザー社ワクチンについては5~11歳、12歳以上用ファイザー社ワクチンについては12歳以上、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(ノババックス)については18歳以上となっていることに留意すること。(4)接種間隔 3回目接種は、1、2回目接種の完了から、ファイザー社ワクチン(5~11歳用のものを含む)またはモデルナ社ワクチンについては5ヵ月以上、武田社ワクチン(ノババックス)については6ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。 また、4回目接種は、3回目接種の完了から5ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。(5)ワクチンの種類 3回目接種に用いる新型コロナワクチンは、1、2回目接種で使用したワクチンの種類にかかわらず、現時点ではファイザー社、モデルナ社および武田社(ノババックス)のものである。なお、5~11歳用ファイザー社ワクチンについては5~11歳、12歳以上用ファイザー社ワクチンについては12歳以上、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(ノババックス)については18歳以上の者に対する3回目接種に使用することに留意すること。【第5章 3(4)イ(ウ)(接種券の発行申請の方法)】 接種券発行申請書(4回目接種用)の様式(図参照)について更新【第7章 2(2)(5歳以上11歳以下の者への接種)】 5~11歳用ファイザー社ワクチンの3回目接種について追記(本文抜粋)ア 5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(ア)対象者 市町村長は、5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)を用いて、接種を受ける日に当該市町村に居住する5歳以上11歳以下の者に対して新型コロナウイルス感染症にかかわる第1期追加接種(3回目接種)を実施する。 なお、戸籍および住民票に記載のない5歳以上11歳以下の者のうち、当該市町村に居住していることが明らかなものおよびこれに準ずるものについても対象者に含まれる。(イ)接種方法 1.3ミリリットルの生理食塩液で希釈した5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)を1回筋肉内に注射するものとし、接種量は、0.2ミリリットルとすること。(ウ)接種間隔 初回接種の完了から5ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。 前後に他の予防接種(インフルエンザの予防接種を除く)を行う場合においては、原則として13日以上の間隔をおくこととし、他の予防接種(インフルエンザの予防接種を除く)を同時に同一の接種対象者に対して行わないこと。(エ)その他 対象者、接種方法および接種間隔以外の事項については、1(1)ア(イ)[予防接種要注意者]および(キ)[接種後の経過観察]ならびに1(2)ア(エ)[接種の用法]~(カ)[配送資材]の記載事項に従うこと。

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20歳未満のコロナ死亡例、基礎疾患やワクチン接種状況は?/国立感染症研究所

 国立感染症研究所は9月14日、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報)の結果を発表した。オミクロン株の感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し、重症例や死亡例発生も報告されている。厚生労働省および同研究所は、日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会とともに、急性期以降の死亡例も含めて、積極的疫学調査を実施した。その結果、基礎疾患の有無がほぼ同数であり、ワクチン接種対象年齢でも87%が未接種で、発症から死亡まで1週間未満が73%(中央値4日)を占めていることなどが明らかになった。 本結果は、2022年1月1日~8月31日に報告された小児等の死亡例に関する暫定的な報告となる。調査対象となったのは、急性期の死亡例、加えて、死因を新型コロナとは別原因とした症例で、発症からの日数は問わないとする急性期以降に死亡した症例の計41例。そのうち32例について8月31日までに実地調査を行うことができ、明らかな内因性死亡と考えられたのは29例であった。調査項目は、年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯等となっている。小児の死亡例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週28週目(7月11~17日)から増加していた。 実地調査で内因性死亡と考えられた29例の主な調査結果は以下のとおり。・年齢・年代の内訳は、0歳8例(28%)、1~4歳6例(21%)、5~11歳12例(41%)、12~19歳3例(10%)であった。・性別は、男性16例(55%)、女性13例(45%)であった。・基礎疾患は、あり14例(48%)、なし15例(52%)であった。基礎疾患の内訳は、中枢神経疾患7例(50%)、先天性心疾患2例(14%)、染色体異常2例(14%)などであった(重複あり)。・新型コロナワクチンは、29例のうち接種対象外年齢の者が14例(48%)、接種対象年齢の者が15例(52%)であった。接種対象年齢となる5歳以上の15例では、未接種が13例(87%)、2回接種が2例(13%)であった。接種を受けた2例はともに12歳以上であり、発症日は、最終接種日から最低3ヵ月を経過していた。・医療機関到着時の症状/所見は、発熱23例(79%)、悪心嘔吐15例(52%)、意識障害13例(45%)、咳嗽9例(31%)、経口摂取不良9例(31%)、痙攣8例(28%)、呼吸困難7例(24%)の順に多かった。・死亡に至る主な経緯は、循環器系の異常7例(24%:心筋炎、不整脈等)、中枢神経系の異常7例(24%:急性脳症等)、呼吸器系の異常3例(10%:肺炎、細菌性肺炎等)、その他6例(21%:多臓器不全等)、原因不明6例(21%)であった。・発症日は26例について得られ、発症から死亡までの日数が、中央値4日(範囲:0~74日)、内訳は0~2日が8例(31%)、3~6日が11例(42%)、7日以上が7例(27%)であった。・上記のほか、基礎疾患の有無別に詳細が報告されている。 著者は本結果について、小児の死亡例のうち基礎疾患の有無がほぼ同数であったことから、基礎疾患のない者においても症状の経過を注意深く観察することが必要であるとしている。発症から死亡まで1週間未満が73%を占めており、とくに発症後1週間の症状の経過観察が重要だとし、小児の場合、呼吸器症状以外では、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも注意を払う必要があると指摘している。本調査は今後も継続される予定。

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今年が最後のチャンス? インバウンドが戻る前に日本を楽しもう!【医師のためのお金の話】第60回

2020年に始まったコロナ禍前まで、日本はインバウンド景気で、国内は海外からの旅行者で溢れかえっていました。各地の観光地は活況を呈していたものの、どこに行っても外国人旅行者だらけの状況に少し不便さも感じたものです。しかし、コロナ禍によって、外国人の方を見掛けることは激減しました。日本人だけの静かな環境です。感染症対策で生活に制限はあるものの、インバウンドブーム前の「われらが」日本の復活です。そして、コロナ禍3年目の私たちは、ワクチンや治療薬といった武器を手に入れました。そろそろウイルスと共生できる状況になりつつあります。こうなると気になるのが、インバウンドの復活でしょう。円安も相まって、私たち日本人の購買力は劇的に低下しています。日本にやってくる外国人の多くは、国籍に関係なく、私たちよりもお金持ちである可能性が高いでしょう。彼らが戻ってくると、観光業界などが潤う一方で、一般人としては暮らしにくくなる面が出てくるのも避けられないでしょう。今するべきことを考えてみましょう。コロナ禍は終息直前2020年には手探りの状況だった新型コロナウイルス感染症ですが、ずいぶん特性がわかってきました。ワクチンや治療薬も十分。そしてウイルス自体も急激に変異して、感覚的にはインフルエンザに近づきつつあります。確かに新規感染者数は多いものの、高齢者などの一部を除くと社会全体の脅威とまではいえない状況になってきました。欧米を中心に、新型コロナウイルス感染症をインフルエンザ並みの扱いにする国も増加中です。「コロナがいつ終息するのか」は、多分に政治的決断にかかっている状況です。政府から公式にコロナ禍の終息宣言が出れば、観光業界や外食産業は息を吹き返すはずです。そして、その先にはインバウンド復活が控えています。年明けには中国人が動き出す?インバウンドの主役である中国人は、コロナ禍とは少し違う理由で出遅れています。その理由は、この秋に開催予定の中国共産党第20回党大会です。異例の3期目を狙う習近平国家主席は、ゼロコロナ政策で中国人の生活を封殺しています。すべては習氏の3期目当選を確実にするための施策ですが、党大会以後はこの抑圧から解放されることになります。そうなると、いやが応にも盛り上がるのは旅行でしょう。中国人のリベンジ消費が復活することは想像に難くありません。コロナ前から、訪日する中国人の数は半端ではありませんでした。それが復活し、お金持ちの彼らが国内になだれ込んでくると、相対的に貧しくなった私たち日本人はゆっくり旅行や外食を楽しむことが難しくなるでしょう。「鬼の居ぬ間」に古き良き日本を楽しもうコロナ禍の終息宣言と中国の党大会終了という2つのイベント到来時期が刻一刻と近づいてきます。少なくとも来年の春にはインバウンドが戻っている可能性が高そうです。ゆっくり国内を楽しめる時間は、どんどん少なくなっているのです。それでは、いつごろまでインバウンドの影響を受けずに国内旅行や外食ができるチャンスが続くのでしょうか。あくまでも私見ですが、今年の年末年始ぐらいまでは何とか持ちこたえるのではないかと考えています。1つ目の理由は、冬が到来する時期には、コロナ禍の終息宣言を出しにくいことです。2つ目の理由は、中国の党大会が11月ごろに開催されるのであれば、年末年始には間に合わない可能性が高いからです。私の予想が正しければ、ニセコなどでゆっくり楽しめるのは今年の年末年始が最後かもしれません。来年1月後半の春節には、大変な状況になっている可能性が高いでしょう。「鬼の居ぬ間に…」ではありませんが、今年の冬は少し奮発してゆっくり国内を旅するのがよいかもしれません。

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BA.1/2既感染者はBA.5の防御効果が高い?/NEJM

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の主流となったオミクロン株BA.5については、従来株の感染既往があっても免疫逃避して再感染しやすいと認識されていた。しかし、早期にBA.5が優勢になった国の1つであるポルトガルにおいて、従来株の感染既往がある人におけるBA.5感染リスクを調査したところ、BA.1/BA.2の感染既往がある人は、武漢株やほかの変異株の感染既往よりも、BA.5に対する高い防御効果を有しているということが判明した。本結果は、ポルトガル・Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo AntunesのJoao Malato氏らが、NEJM誌2022年9月8日号のCORRESPONDENCEで報告した。 本研究では、1,034万4,802人が登録されている全国コロナウイルスレジストリSINAVEのデータが用いられ、2022年7月4日時点の12歳以上の930万7,996人が対象となっている。このレジストリには、臨床症状を問わず、ポルトガル国内で報告されたすべての症例が記録されている。遺伝子検査により各変異株が90%以上を占める期間を特定し、優勢期として設定した。BA.1とBA.2は流行の移行が緩やかだったため優勢期が統合された。各優勢期に初めて新型コロナに感染した人を特定し、各変異株の感染既往群および未感染群のBA.5に対する感染リスクを算出した。ポルトガルでは2022年6月1日よりBA.5の優勢期となっている。なお、2022年以前に被験者の98%以上が新型コロナワクチンの初回シリーズを接種完了しているため、感染者はブレークスルー感染と見なされる。 武漢株もしくは各変異株の感染既往者におけるBA.5の防御効果は次のとおり。・武漢株:51.6%(95%信頼区間[CI]:50.6~52.6)・アルファ株:54.8%(95%CI:51.1~58.2)・デルタ株:61.3%(95%CI:60.3~62.2)・オミクロン株BA.1/BA.2:75.3%(95%CI:75.0~75.6) 本研究により、BA.1/BA.2感染既往者は、オミクロン株以前の変異株の感染既往者よりもBA.5に対して高い防御効果があることが示された。この結果に対して著者は、BA.1/BA.2感染既往者のBA.5感染が多いことから、BA.1/BA.2感染既往によるBA.5の防御効果は非常に低いと認識されていたが、そのような認識は、BA.1/BA.2感染既往者がほかの変異株の感染者よりも多いことによるもので、研究結果に裏付けられた認識ではないと述べている。高度にワクチン接種された集団では、従来株に未感染の人と比べて、感染既往、とくにBA.1/BA.2の感染既往がある人でBA.5に感染する人は少なかったことが明らかになった。

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ファイザーとモデルナのBA.1対応追加接種用2価ワクチンを承認/厚生労働省

 厚生労働省は9月12日、ファイザーおよびモデルナのオミクロン株BA.1に対応した新型コロナウイルス2価ワクチンを承認(特例承認医薬品における効能・効果、用法・用量の一部変更承認)したことを発表した。2価ワクチンの販売名は、ファイザーが「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」、モデルナが「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」となる。両ワクチンともに追加接種用で、ファイザー製は12歳以上、モデルナ製は18歳以上が対象となる。 両2価ワクチンの用法・用量は、ファイザー製は「追加免疫として、1回0.3mLを筋肉内に接種する」とし、モデルナ製は「追加免疫として、1回0.5mLを筋肉内に接種する」としている。現時点では、両剤ともに前回の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種することができるとされているが、同日に開かれた薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、接種間隔を短縮すべきとの指摘があったため、今後、海外の動向、有効性、安全性等の情報を踏まえ、短縮する方向で検討し、10月下旬までに結論を得ることとされた。 両2価ワクチンの有効性と安全性については以下のとおり。ファイザー製「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」・海外第III相試験によると、追加接種後1ヵ月時点でのオミクロン株BA.1に対する血清中和抗体価について、幾何平均抗体価(GMT)は、本剤接種群(178例)では711.0(両側95%信頼区間[CI]:588.3~859.2)、従来の1価ワクチン接種群(163例)では455.8(両側95%CI:365.9~567.6)となり、幾何平均比(GMR)は1.56(両側95%CI:1.17~2.08)であった。・接種後7日間に報告された主な副反応として、注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱があった。モデルナ製「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」・海外第II/III相試験によると、追加接種後28日時点でのオミクロン株に対する血清中和抗体価について、幾何最小二乗平均(GLSM)は、本剤接種群(334例)では2,479.890(両側95%CI:2,264.472~2,715.801)、従来の1価ワクチン接種群(260例)では1,421.243(両側95%CI:1,282.975~1,574.412)となり、幾何平均比(GMR)は1.745(両側97.5%CI:1.493~2.040)であった。・接種後7日間に報告された主な副反応として、注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛、悪寒があった。 両ワクチンともに忍容性はおおむね良好で、反応原性および安全性プロファイルは従来の1価ワクチンの追加接種と一致していたという。 なお、現在米国で緊急使用許可されている両社のBA.4/BA.5対応2価ワクチンについて、ファイザーは9月13日付のプレスリリースにて、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。また、モデルナも準備が整い次第申請を行う予定だとしている。※記事の一部を修正いたしました。(9月20日) 

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