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COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、ファイザー)は、経口投与の利便性と、入院または死亡に対する高い有効性のため、多くのハイリスク患者にとって好ましい治療薬とされている。しかし、本剤は併用禁忌の薬剤が多数あるため、使用できる患者は限られる。フランス・Assistance Publique-Hopitaux de ParisのNicolas Hoertel氏らの研究グループは、重症化リスクの高いCOVID-19患者において、ニルマトレルビル/リトナビルが禁忌である割合について調査した。本結果は、JAMA Network Open誌2022年11月15日号のリサーチレターに掲載された。 本剤の禁忌については、リトナビルはチトクロームP450 3A(CYP3A)酵素を阻害し、CYP3Aの薬物代謝に高度に依存する薬剤の濃度を上昇させることで、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。また、強力なCYP3A誘導薬との併用により、ニルマトレルビルの濃度が著しく低下し、抗ウイルス効果が失われる可能性がある。重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も本剤の禁忌とされた。これらの医学的禁忌は、重症化リスクが高いCOVID-19患者に広くみられる可能性がある。 本研究では、2020年1月24日~2021年11月30日の期間で、パリ大学の36の大規模病院におけるCOVID-19入院患者6万2,525例において、米国食品医薬品局(FDA)がニルマトレルビル/リトナビルを禁忌とした条件に当てはまる患者の割合が調査された。被験者は、性別、年齢(65歳以下vs.66歳以上)、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10)の主章に基づく併存疾患ごとに層別化された。本研究は、STROBEレポートガイドラインに準拠して実施された。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値52.8歳(四分位範囲[IQR]:33.8~70.5)、女性3万1,561例(50.5%)、男性3万964例(49.5%)、入院後28日以内に死亡した患者4,861例。・COVID-19入院患者6万2,525例のうち、9,136例(14.6%)がニルマトレルビル/リトナビルの医学的禁忌を有していた。・禁忌を有していた患者の割合は、男性18.0%(5,568例/3万964例)、女性11.3%(3,577例/3万1,561例)で、男性のほうが女性よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、66歳以上26.9%(5,398例/2万64例)、65歳以下8.8%(3,738例/4万2,461例)で、高齢者のほうが若年者よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、併存疾患のある患者のほとんどの疾患で37.0%以上、併存疾患のない患者で3.9%(1,475/3万7,748例)となり、併存疾患のある患者のほうが、ない患者よりも高かった。・死亡した4,861例のうち、2,463例(50.7%)が禁忌を有していた。・死亡した患者で禁忌を有していた者の割合は、男性、女性、高齢者、若年者ではそれぞれ50%前後であったが、併存疾患のある者ではほとんどの疾患で60~70%台で、腎尿路生殖器系の疾患では91.5%であった。・禁忌を有していた患者で最も多かった条件は、重度の腎機能障害(3,958例、6.33%)と、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤の使用(3,233例、5.15%)であった。 本研究の限界として、本剤が禁忌でない患者でも、症状発現から5日以上経過した場合や、供給量が限られる場合があるため、一部の患者に使用できない可能性があることや、ワクチン接種、人種・民族、体重に関する情報は得られていないことなどが挙げられている。著者は「本結果は、ニルマトレルビル/リトナビル以外の新型コロナ治療薬の供給を予測することや、治療の選択肢の研究を継続することの必要性を裏付けている」としている。

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第136回 ゾコーバがついに緊急承認、本承認までに残された命題とは

こちらでも何度も取り上げていた塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)がついに11月22日、緊急承認された。今回審議が行われた第5回薬事分科会・第13回医薬品第二部会合同会議も公開で行われたが、緊急承認に対して否定的意見が多数派だった前回に比べれば、かなり大人しいものになった。今回の再審議に当たって新たに塩野義製薬から提出されたデータは同薬の第II/III相試験の第III相パートの速報値だが、その内容については過去の本連載で触れたので割愛したい。審議内で一つ明らかになったのは第III相パートの主要評価項目、有効性の検証対象の用量、有効性の主要な解析対象集団が試験中に変更されていたことだ。もともと、エンシトレルビルでの主要評価項目は新型コロナ関連12症状の改善だったが、前回の合同会議で示された第IIb相パートの結果やオミクロン株の特性に合わせて、最終的な主要評価項目はオミクロン株に特徴的な5症状に変更されたという。これについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)側は、新型コロナは流行株の変化で患者の臨床像なども変化することから、主要評価項目の適切さを試験開始前に設定するのは相当の困難これら変更が試験の盲検キーオープン前だったとの見解で許容している。少なくとも第IIb相のサブ解析結果の教訓を生かした形だ。そして、今回の審議でまず“噛みついた”のは前回審議で参考人の利益相反(COI)状況などを激しく責め立てた山梨大学学長の島田 眞路氏だった(参考:第118回)。その要点は以下の2点だ。緊急承認の条件には「代替手段がない」とあるが、すでに経口薬は2種類ある日本人集団だけ(治験は日本、韓国、ベトナムで実施)での解析では症状改善までの期間短縮はわずか6時間程度でとても有効とは言い切れないこれに対して事務方からの回答は以下のようなものだ。国産で安定供給ができ、適応が重症化リスクを問わないので代替手段がないに該当する日本人部分集団で群間差が小さい傾向が認められたことについて、評価・考察を行うための情報には限りがあり、今後改めて評価する必要がある島田氏の日本人集団に関する指摘に関しては、そもそも臨床試験自体が3ヵ国全体の参加者で無作為化されていることを考えれば、日本人集団のみのサブ解析結果は参考値程度に過ぎず、申し訳ないが揚げ足取りの感は否めない。もっとも島田氏がこの事務局説明に対して「(重症化)リスクのない人に使えるから良いんじゃないかって、リスクのない人はちょっと風邪症状があるなら、風邪薬でも飲んどきゃ良いんですよ」と反論したことは大筋で間違いではない。ただし、過去の新型コロナ患者の中には、表向きは基礎疾患がないにもかかわらず死亡した例があることも考えると、さすがに私個人はここまでは断言しにくい。一方、参加した委員から比較的質問・指摘が集中したのがウイルス量低下の意義に関するものだ。議決権はない国立病院機構名古屋医療センターの横幕 能行氏は「(今回の資料では)感染あるいは発症から72時間以内に投与しないと、機序も含めた解釈ではウイルス活性を絶ち切る、もしくはそれに近い効果を得ることはできない。そして72時間以降の投与ではウイルス量の低下もしくは感染性の低下については基本的にはまったく効果がないと読める。感染伝播の阻止、早期の職場復帰などを考えると、ウイルス量もしくは感染性の低下に関する効果のこの点を十分に認識していただいた上で市中に出す必要があるかと思う」と指摘した。これに関して事務方からは「ウイルス量低下の部分は、確かに数値の低下が認められているものの、これがどの程度の臨床的意義を持つかについてはなかなか評価が難しい」というすっきりしない反応だった。現段階でのデータではPMDAも何とも言えないのも実情だろう。最終的には島田氏以外の賛成多数により緊急承認が認められたが、臨床現場での意義はやはり依然として微妙だ。過去にも繰り返し書いているが、エンシトレルビルは、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)と同じCYP3A阻害作用を有する3CLプロテアーゼ阻害薬であるため、併用禁忌薬は36種類とかなり多い。中には降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬といった中高年に処方割合の多い薬剤も多く、この年齢層で投与対象は少ないとみられる。そもそもこの層はモルヌピラビルやニルマトレルビル/リトナビルとも競合するため、これまでの使用実績が多いこれら薬剤のほうが選択肢として優先されるはずだ。となると若年者だが、催奇形性の問題から妊孕性のある女性では使いにくいことはこれまでも繰り返し述べてきたとおりだ。今回の緊急承認を受けて日本感染症学会が公表した「COVID-19に対する薬物治療の考え方第 15版」では、妊孕性のある女性へのエンシトレルビルの投与に当たっては▽問診で直前の月経終了日以降に性交渉を行っていないことを確認する▽投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認することが望ましい、と注意喚起がされている。しかし、現実の臨床現場でこれが可能だろうか? 女性医師が女性患者に尋ねる場合でも、かなり高いハードルと言える。となると、ごく一部の若年男性が対象となるが、これまで国も都道府県も重症化リスクのない若年者へはむしろ受診を控えるよう呼びかけている。もしこうした若年男性がエンシトレルビルの処方を受けたいあまり発熱外来に殺到するならば、感染拡大期には逆に医療逼迫を加速させてしまい本末転倒である。では前述のような見かけ上では重症化リスクがないにもかかわらず突然死亡に至ってしまうような危険性がある症例を選び出して処方できるかと言えば、そうした危険性のある症例自体が現時点ではまだ十分に医学的プロファイリングができていない。そもそも、エンシトレルビルの第III相パートの結果で明らかになったのはオミクロン株特有の臨床症状の改善であって、重症化予防は今のところ未知数だ。となると、後は重症化リスクのない軽症・中等症の中で臨床症状が重めな「軽症の中の重症」のようなやや頭の中がこんがらがりそうな症例を選ばなければならない。強いて言うならば、たとえば酸素飽和度の基準で軽症と中等症を行ったり来たりするような不安定な症例だろうか? ただ、今までもこうした症例で抗ウイルス薬なしで対処できた例も少なくないだろう。そして国の一括買い上げのため価格は不明だが、抗ウイルス薬が安価なはずはなく、多くの臨床医が投与基準でかなり悩むことになるだろう。ならば専門医ほどいっそ端から使わないという選択肢、非専門医は悩んだ末にかなり幅広く処方するという二極分化が起こりうる可能性もある。この薬がこうも悩ましい状況を生み出してしまうのは、前回の合同会議の審議でも話題の中心だった「臨床症状改善効果の微妙さ」という点にかなり起因する。今回の第III相パートの結果では、オミクロン株に特徴的な5症状総合での改善ではプラセボ対照でようやく有意差は認められたものの、有意水準をどうにかクリアしたレベル(p=0.04)だ。ちなみに、もともとの主要評価項目だった12症状総合では今回も有意差は認められなかった。さらに言うと、緊急承認後に塩野義製薬が開催した記者会見後のぶら下がり質疑の中で同社の執行役員・医薬開発本部長の上原 健城氏は、今回の試験では解熱鎮痛薬の服用は除外基準に入っておらず、第III相パートでは両群とも被験者の2~3割はエンシトレルビルと解熱鎮痛薬の併用だったことを明らかにしている。もちろんリアルワールドを考えれば、解熱鎮痛薬を服用していない患者のみを集めるのは難しいだろう。「(解熱鎮痛薬服用が症状判定の)ノイズになってしまってはいけないので、服用直後数時間はデータを取らないようにした」(上原氏)とのこと。ただし、解熱鎮痛薬の抗炎症効果を考えれば、今回の主要評価項目に含まれていたオミクロン株に特徴的な症状のうち、「喉の痛み」の改善などには影響を及ぼす可能性はある。そうなるとエンシトレルビルの「真水」の薬効は、ますます微妙だと言わざるを得ない。もちろん今回の第III相パートはそもそも9割以上の被験者がワクチン接種済みで、さらに2~3割が解熱鎮痛薬の服用があった中でも有意差を認めたのだから、それらがない前提ならばもっと効果を発揮できた可能性もあるのでは? という推定も成り立つが、そう事は簡単な話ではない。緊急承認という枠組みで今後の追加データ次第では1年後に本承認となるか否かという大きな命題が残っていることもあるが、「統計学的有意差を認めたから、少なくとも現時点での緊急承認はこれで一件落着」と素直には言い難いと私個人は思っている。

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コロナワクチン接種率の違いで死亡率に大きな差/JAMA

 2021年から2022 年にかけて、全世界で新型コロナワクチン接種が普及した一方、デルタ株とオミクロン株が流行した。米国・Brown School of Public HealthのAlyssa Bilinski氏らは、この期間におけるOECD加盟国中20ヵ国のワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査し報告した。米国については、ワクチン接種率上位10州と下位10州についても調査したところ、下位10州の新型コロナウイルス感染症死亡率は上位10州のほぼ倍だった。JAMA誌オンライン版2022年11月18日号のリサーチレターに掲載。ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査 本研究では、ワクチン接種率は2022年1月時点で2回以上接種した人の割合とし、死亡率は2021年6月27日~2022年3月26日の死亡データを比較した。米国のデータはCDCから、その他の国のデータについては、新型コロナウイルス感染症死亡率はWHO、全死亡率はOECD データベース、ワクチン接種率はOur World in Dataからそれぞれ入手した。 ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査した主な結果は以下のとおり。・主な国におけるワクチン接種率と、デルタ株流行期/オミクロン株流行期/全期間の人口10万人当たり新型コロナウイルス感染症死亡者数は以下のとおり。 日本      :80%、3人/7.4人/10.4人 韓国      :82%、6.1人/18.2人/24.3人 ニュージーランド:75%、0.5人/3.3人/3.7人 オーストラリア :76%、4.9人/14.2人/19.2人 イタリア    :76%、15.2人/39人/54.2人 フランス    :74%、14.6人/27.6人/42.2人 ドイツ     :71%、29.6人/22.7人/52.3人 英国      :71%、30.1人/28.9人/59人 米国全体    :63%、60.9人/50.6人/111.6人 米国(接種率上位10州):73%、28.1人/46.6人/74.7人 米国(接種率下位10州):52%、86.6人/59.4人/146人・米国全体およびワクチン接種率下位10州の超過全死亡率は新型コロナウイルス感染症死亡率より高く、全期間における他の国より高かった。・この期間にもし米国の新型コロナウイルス感染症死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合、12万2,304人の死亡を回避でき、米国の超過全死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合は26万6,700人の死亡を回避できたと推計された。 2021~22年初め、米国の新型コロナウイルス感染症死亡率および超過全死亡率は他国より有意に高かったが、この差はワクチン接種率上位10州では小さくなった。著者らは「残りの差は、他国での高いワクチン接種率、高齢者をターゲットとしたワクチン接種、医療・社会インフラの違いによって説明しうるだろう」と考察している。

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塩野義のコロナ治療薬ゾコーバを緊急承認/厚生労働省

 厚生労働省は11月22日、塩野義製薬と北海道大学の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(商品名:ゾコーバ錠125mg)を、医薬品医療機器等法第14条の2の2に基づき緊急承認した。緊急承認制度は2022年5月に新たに創設された制度で、薬剤の安全性の「確認」は前提とする一方で、有効性が「推定」できれば承認することができる。今回、本制度が初めて適用となった。同日開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会と医薬品第二部会の合同会議で、塩野義製薬が提出した第III相試験(第II/III相試験Phase 3 Part)の速報データに基づき緊急承認された。 第III相試験(第II/III相試験Phase 3 Part)では、軽症および中等症のSARS-CoV-2感染者を対象とし、オミクロン株流行期に重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無を問わず、日本、韓国、ベトナムで計1,821例が登録された。COVID-19発症から無作為割付までの時間が72時間未満の集団において、5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])が回復するまでの時間を主要評価項目とした。2022年9月末に主要目的の達成を示す結果が得られた。 主な結果は以下のとおり。・5症状が回復するまでの時間の中央値は、本剤群が167.9時間(約7日)、プラセボ群が 192.2時間(約8日)であり、本剤の投与により24.3時間(約1日)の短縮が示された。・治療開始から3日後(Day 4)のウイルスRNA量のベースラインからの変化量は、プラセボ群に対して本剤群で約30倍の差(1.47 log10[copies/mL])があり、本剤群はプラセボ群と比較して統計学的に有意な減少を示した(両側p<0.0001)。 本剤の用法・容量は、通常、12歳以上の小児および成人にはエンシトレルビルとして1日目は375mgを、2~5日目は125mgを1日1回経口投与する。SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始する。なお、重症度の高い患者に対する有効性は検討されていない。 添付文書に記載された本剤の禁忌は以下のとおり。2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.2 次の薬剤を投与中の患者:ピモジド、キニジン硫酸塩水和物、ベプリジル塩酸塩水和物、チカグレロル、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、シンバスタチン、トリアゾラム、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、ベネトクラクス〔再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〕、イブルチニブ、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、アゼルニジピン、アゼルニジピン・オルメサルタン メドキソミル、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸塩、リファブチン、フィネレノン、リバーロキサバン、リオシグアト、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品2.3 腎機能または肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者2.4 妊婦または妊娠している可能性のある女性 本剤は、緊急承認時において有効性および安全性に係る情報は限られており、引き続き情報を収集中。緊急承認の期限は1年とされ、正式承認を得るには再審議が必要となる。

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コロナワクチンで帯状疱疹リスクは上がるのか~大規模調査

 新型コロナワクチン接種後に帯状疱疹が発症した症例が報告されているが、ワクチンによって帯状疱疹リスクが増加するのかどうかは不明である。今回、新型コロナワクチン接種が帯状疱疹リスク増加と関係するかどうかについて、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のIdara Akpandak氏らが検討した。その結果、新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹の発生率比が0.91であり、本研究では新型コロナワクチン接種と帯状疱疹リスクの増加とは関係していないことが示唆された。JAMA Network Open誌2022年11月16日号に掲載。コロナワクチンと帯状疱疹とは関係しなかった 本コホート研究では、自己対照リスク期間分析を用いて、新型コロナワクチン接種後30日目または2回目接種日までのリスク期間と、新型コロナワクチン最終接種日から60~90日のコントロール期間(リスク期間とコントロール期間の間に30日間を確保)における帯状疱疹の発症リスクを比較した。また、新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹リスクを、パンデミック以前(2018年1月1日~2019年12月31日)もしくはパンデミック初期(2020年3月1日~11月30日)にインフルエンザワクチンを接種した2つのコホートにおけるインフルエンザワクチン接種後の帯状疱疹リスクと比較した。データは米国の医療請求データベース(Optum Labs Data Warehouse)から入手。2020年12月11日~2021年6月30日に、ファイザー製ワクチン(BNT162b2)、モデルナ製ワクチン(mRNA-1273)、ヤンセン製ワクチン(Ad26.COV2.S)のいずれかを接種した203万9,854人のデータを分析した。 新型コロナワクチン接種と帯状疱疹リスクの増加との関係を検討した主な結果は以下のとおり。・新型コロナワクチンを接種した203万9,854人の平均年齢(SD)は43.2(16.3)歳で、女性が50.6%、白人が65.9%であった。このうち、帯状疱疹と診断された1,451人が自己対照リスク期間分析の対象で、平均年齢(SD)は51.6(12.6)歳、女性が58.2%だった。・自己対照リスク期間分析において、新型コロナワクチン接種は帯状疱疹のリスク上昇と関係しなかった(発生率比[IRR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.82~1.01、p=0.08)。・ファイザー製ワクチン接種では帯状疱疹リスクが低下し(IRR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.02)、モデルナ製ワクチン接種は帯状疱疹リスクとの関連は認められなかった(IRR:0.96、95%CI:0.81~1.15、p=0.67)。・新型コロナワクチン接種は、パンデミック以前のインフルエンザワクチン接種と比べて帯状疱疹リスクが低かった。 - 1回目接種のハザード比(HR):0.78、95%CI:0.70~0.86、p<0.001 - 2回目接種のHR:0.79、95%CI:0.71~0.88、p<0.001また、パンデミック初期のインフルエンザ接種とは有意差が認められなかった。 - 1回目接種のHR:0.89、95%CI:0.80~1.00、p=0.05 - 2回目接種のHR:0.91、95%CI:0.81~1.02、p=0.09

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第139回 世界の男性の精子が半減/T細胞強化コロナワクチンの試験開始

世界の総人口80億人到達1)とは裏腹に、その始まりの半分の出どころ、精子が心配なことに減り続けているようです2,3)。しかも悪いことにその傾向は21世紀に入ってどうやら加速すらしています。イスラエルのヘブライ大学公衆衛生学教授Hagai Levine氏が率いる研究チームが6年前の2017年に発表したメタ解析では北米、欧州、オーストラリアでの精子の紛れもない減少が確認されました4,5)。その3年後の2020年春にLevine氏等は2014年以降に出版された試験の同定に着手し、男性1万4,233人からの精液検体を扱った38試験報告を見出しました。新たに見つかったそれらの試験と2017年のメタ解析で扱った試験は合わせて233件あり、1973~2018年の46年間に6万人近い5万7,168人の男性から採取された精液検体の検討結果を含みます。世界6大陸53ヵ国からのそれらの結果を改めてメタ解析した結果、北米、欧州、オーストラリアでの精子が減り続けていることに加えて、南/中央アメリカ、アジア、アフリカでも精子が減っていることが確認されました。世界の男性の精子減少は驚くばかりで、1973年には1mL当たり1億個を超えていたのが2018年にはその半分未満の1mL当たり4,900万個に減っていました。しかもその減少は20世紀に入って拍車がかかっているらしく、1mL当たりの精子数の年間低下率は1972年過ぎ(post-1972)からは1.16%だったのが2000年以降は2.64%へとおよそ倍増しています。日本の男性の精子もどうやら同様かもしれません。4都市(川崎、大阪、金沢、長崎)の大学構内にポスターを出して被験者を募った1999~2003年の試験の結果、中央値およそ21歳の大学生被験者1,559人の精子数の平均は1mL当たり5,900万個でした6)。今回のメタ解析報告での世界の2000年頃の精子数は(同報告のFigure 2 によると)1mL当たり平均7,000万個ほどであり、日本の大学生被験者はそれに比べると少なめです。また、パートナーが妊娠した男性、すなわち不妊ではなく受精能力がある日本人男性のみ募った試験7)での792人の1mL当たりの精子数平均は1億を超えており(1億0500万個/mL)、大学生被験者を上回っていました。それに、大学生被験者の実に3人に1人(32%)は1mL当たりの精子数が4,000万個に届いておらず、よって受精能力が低いと示唆され、パートナーの妊娠はより困難かもしれません。もっというと大学生被験者のおよそ10人に1人(9%)の1mL当たりの精子数は世界保健機関(WHO)の基準下限1,500万個8)未満でした。最初のメタ解析発表の翌年2018年、Levine氏を筆頭とする医師や科学者等一堂は精子減少を公衆衛生の一大事として認識し、人類の存続のために男性の生殖機能を重視することを求める声明を発表しています9)。各国は男性の生殖機能の衰えの原因を調べることに資源や人手を割き、その調子を把握して害されないようにする最適な環境を整えることをその声明は求めています。Levine氏に言わせれば事態は急を要します。今回発表されたメタ解析結果は男性の精子に危機が迫っていることを知らせるいわば炭鉱のカナリア(canary in a coal mine)であり、このままでは人類の存亡にかかわります。人間を含むすべての生き物にとってより健康的な環境を整えることに世界は取り組み、生殖機能を害する振る舞いや要因を減らさねばなりません3)。Pfizer/BioNTech社の“T細胞”強化コロナワクチンの試験開始新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へのT細胞反応強化を目指すPfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b4の第I相試験(NCT05541861)が始まりました10,11)。SARS-CoV-2感染症(COVID-19)予防 mRNAワクチンを少なくとも3回接種した健康なおよそ180人を募り、オミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチン併用でのBNT162b4の3用量(5、10、15 μg)の免疫原性や安全性などがオミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチンと比べてどうかが検討されます。BNT162b4はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質以外のタンパク質を作るT細胞抗原mRNAが成分であり、T細胞免疫をいっそう強化してより隈なく行き届くようにし、COVID-19予防をより持続させることを目指します。重症化や入院を少なくとも1年は予防する長持ちな抗体やT細胞免疫を引き出すCOVID-19ワクチンを世に出すことを目指していると今年中頃の決算の会見でPfizerの最高科学責任者Mikael Dolsten氏は述べています12)。今回臨床試験段階に進んだBNT162b4はそういう長持ちで手広い免疫反応を引き出す取り組みの一翼を担っています。参考1)11月15日「80億人の日」/ 国連人口基金2)Levine H, et al. Hum Reprod Update. 2022 Nov 15:dmac035 [Epub ahead of print].3)Follow-up study shows significant decline in sperm Ccounts globally, including Latin America, Asia and Africa / Eurekalert4)Levine H, et al. Hum Reprod Update. 2017;23:646-659.5)Comprehensive study shows a significant ongoing decline in sperm counts of Western men / Eurekalert6)Iwamoto T, et al.BMJ Open 2013;3:e002222.7)Iwamoto T, et al.BMJ Open. 2013;3:e002223.8)WHO laboratory manual for the Examination and processing of human semen / WHO9)Levine H, Basic Clin Androl. 2018;28:13.10)Pfizer and BioNTech Advance Next-Generation COVID-19 Vaccine Strategy with Study Start of Candidate Aimed at Enhancing Breadth of T cell Responses and Duration of Protection / GlobeNewswire11)Safety and Effects of an Investigational COVID-19 Vaccine as a Booster in Healthy People(ClinicalTrials.gov)12)Pfizer (PFE) Q2 2022 Earnings Call Transcript / Fool.com

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第135回 もはや “ワクチンガチャ”、追加接種はBA.1かBA.4/BA.5の明示必要なし

徐々に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の第8波の足音が忍び寄っている。現在に至ってもその感染対策の基本は、手洗い、マスク、三密回避、ワクチンであることは不変だ。しかし、新型コロナパンデミックからもう丸3年が経過しようとしている中で、いくつかの変化はある。まず、流行の主流ウイルス株がBA.4/BA.5と5世代目になり、多くの国民が2回はワクチンを接種していることもあってか、見かけ上の重症化率は低下している。一方で当初から使われてきたワクチンの効果が以前よりも低下し、新たな2価ワクチンが登場したものの、国民の側も頻回なワクチン接種にややうんざりしている。実際、首相官邸のホームページで公表されているワクチン接種実績も2価ワクチンに関しては、11月14日時点で10.4%と低調である。これについては、(1)第7波時の感染者の接種待機、(2)4回目接種からの接種待機、(3)BA.4/BA.5対応の接種待ち、という要素もあるだろうが、それにしても接種率の低さは否めない。そうした中でやや気になるのが現在のワクチン接種体制である。日本では9月12日にオミクロン株BA.1対応2価ワクチン(以下、BA.1対応ワクチン)を承認したが、米国食品医薬品局(FDA)はそれより一足早く8月31日にオミクロン株BA.4/BA.5対応2価ワクチン(以下、BA.4/BA.5対応ワクチン)の緊急使用許可を下した。そして日本では10月5日にファイザー製、10月31日にモデルナ製のBA.4/BA.5対応ワクチンをそれぞれ承認した。前者については私が見る限り、すでにほとんどの自治体に行き渡っていると見られ、後者については厚生労働省(以下、厚労省)の発表によると11月28日から各自治体への配送が始まるという。さてここで問題。2杯のラーメンがあり、うち一杯はチャーシューが3枚、もう一杯はチャーシューが5枚、ただし料金は同一。あなたはどちらを選びますか? チャーシューの好き嫌いやカロリーを気にする人を除けば、多くは5枚のほうを選ぶのではないだろうか?なぜこのような話をしたのかというと、現在、市中に流通しているファイザー製2価ワクチンはBA.1対応ワクチンとBA.4/BA.5対応ワクチンが混在している。そして現在の流行の主流はBA.4/BA.5である。最低限の知識があり、新型コロナワクチンの接種を希望する人がどちらを選びたがるかは自明ではないだろうか?もちろんBA.1対応ワクチンでもBA.4/BA.5に一定の効果はあるのは確かだ。しかし、限定的とはいえ、公表されているデータを見れば、ファイザー製ワクチンのBA.4/BA.5に対する中和抗体価は、明らかにBA.4/BA.5対応ワクチンのほうが高い。にもかかわらず「どちらでも良いから接種してください」は国民感情の観点からは無理があり過ぎると思うのだ。百歩譲って、感染拡大が急速に進行し、供給量がBA.1対応ワクチンのほうが潤沢な一方、BA.4/BA.5対応ワクチンがかなり心もとない状況ならば、私も「どちらでも良い」とは言うだろう。しかし、現在はBA.4/BA.5主流の第8波に入り始めている中、少なくともファイザー製ワクチンに関しては、大都市圏では予約システムで問題なくBA.4/BA.5対応ワクチンが選択でき、一部の地方自治体ではBA.4/BA.5対応ワクチンに切り替えて一本化する方針を打ち出している事例もある。それでもなお「どちらでも良い」で国民の納得が得られるとは到底思えない。これに対して厚労省は何と言っているのか? 10月20日付事務連絡「オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの接種体制確保について(その6)」から気になった以下の2点を原文のまま抜粋する。「BA.4-5対応型ワクチンの使用開始後においても、有効期限内のBA.1対応型ワクチンを廃棄してBA.4-5対応型ワクチンに切り替えるといった対応は行わず、BA.1対応型ワクチンを含め、接種可能なワクチンを使用して、速やかにオミクロン株対応ワクチン接種を進めること」「なお、予約枠の提供に際しては、使用するワクチンがBA.1対応型ワクチンであるかBA.4-5対応型ワクチンであるかを明示する必要はない」貴重な血税を投入して確保したワクチンであることを考えれば、BA.1対応ワクチンをなるべく使い切って無駄を防ぎたいのは、別に官僚でなくともわかる。こうした国の方針を忖度したのかどうかはわからないが、大阪府知事の吉村 洋文氏や千葉県知事の熊谷 俊人氏のように自身のBA.1対応ワクチンの接種を公開してアピールする御仁もいる(吉村氏のほうは記事内でBA.1対応ワクチンであることを本人が公言しているわけではないが、記事中にあるように府の接種センターがモデルナ製を使用している以上、現下ではBA.1対応であることは明白)。さらに言えば、事務連絡の後段は、さすがに言い過ぎではないだろうか? 前述のラーメン話に例えれば、目隠しした客にチャーシューが3枚になるか、5枚になるかは運次第と言っているようなもの。ラーメンなら多少の遊び心でそれも良いかもしれないが、ことは公衆衛生に関わることであり、国民にとっては自分個人の健康にかかわることである。こんなところで“無作為化”の必要はないはずだ。もっとも多くの自治体では事務連絡は事実上見て見ぬ振りをして、どのワクチンを使用するかは明示している。しかし、中には国に忖度したのか巧みな戦略を導入している自治体もある。これを知ったのは、時々本連載に登場させている(本人たちは知らない 笑)私の両親を通じてである。先日、母親からLINEが来た。敢えてそのやり取りを一部伏字にしながら抜粋する。母5回目のコロナ接種(オミクロン対応)二人共終了。私BA.5用?母BA.1モデルナ。私なんでよ。BA.5待てばよかったのに。それ在庫処分セールみたいなものだよ。事前に相談してほしかった。母お父さん(注:すでに軽度認知障害あり)を連れて行く事で頭一杯で、気が回らない!!事前に教えてくれる事(注:新たなワクチン接種などがある時は母から尋ねられなくとも自発的に私から情報提供せよという意味)を今後考えてくれると、ありがたい。私わかったよ。だから事前に相談して。効果がないわけじゃないけど、BA.5に対してはどうしてもBA.1用では効果が劣るので感染対策を入念にしてください。母いや、情報はそちらからお願いします。年寄りは××(注:現在受験生のわが娘)の事で忙しいと思ってかなり遠慮しています。私いつ打つかもわからないのに事前に情報出せないでしょ。自治体によって接種スケジュールも違うし、そもそも△△町(注:わが故郷)がBA.1用をまだ使っているなんて思いもしなかったよ。ここでドタバタの親子のやり取りは終わりのはずだった。ところが日付が変わった深夜に再び母親からLINEが到着した。午前3時過ぎだ。通常なら母親は完全に寝入っている時間だ。母反省している。必死の思いで受けたのに残念で眠れない。私どうしたのよ急に。まあ、無効なわけじゃないのであまり気にしないで。ちょっと私も言い方がきつかった。まさか△△町がまだBA.1用を使っていると思わなかったのよ。ほとんどの自治体で切り替えているからさ。幸いだったのはモデルナだったこと。母わかった。私モデルナのほうが抗体がより高く上がる。ファイザーよりね。中途半端に医療知識がある息子の心ない言動だと、多くの医療従事者からはお叱りを受けるかもしれない。しかし、基礎疾患がある80代半ば過ぎの老老介護の両親を遠く離れた故郷に残している自分としては、少しでも感染・発症リスクは避けたいと願うのだ。さて「巧みな戦略」と言ったのは、わが故郷の自治体のことである。母親から話を聞いた後、自治体のホームページをのぞいて溜息が出た。なんとわが故郷の自治体は、11月と12月に個別接種医療機関で使用するワクチンを週ごとにBA.1対応ワクチンとBA.4/BA.5対応ワクチンに交互に切替をしていたのだ。国からすれば模範的な対応と言えるかもしれない。そして両親は“BA.1対応ワクチン在庫一掃処分セール(嵐のように批判されようとも、敢えてこの言葉を使う)”の週にたまたま当たっていたのである。ここでちょっと原点に戻りたい。そもそもこのようなドタバタが存在するのはワクチンの承認審査過程に起因する。前述のように日本では米・FDAがBA.4/BA.5対応ワクチンの緊急使用許可後にBA.1対応ワクチンを承認するというタイムラグがあった。これについては、米・FDAが早くも6月段階で追加接種用ワクチンの申請に当たっては、BA.4/BA.5対応ワクチンを推奨したからである。この推奨がなかった日本とヨーロッパでは、ファイザー、モデルナともにBA.1対応ワクチンを承認申請し、そのまま承認された。当初、この日本の対応を私はかなり批判的に捉えていたが、今はその見解を撤回している。ご存じのようにFDAのBA.4/BA.5対応ワクチンの承認は、ほぼ前例のない動物実験データのみでの承認だったことを日本でのBA.1対応ワクチン承認後に知ったからである(言い訳をすると当時はかなり多忙を極め、FDAの緊急使用許可の中身までは吟味できていなかった)。少なくとも日本の承認審査制度の細かさ(保守性?)を考えれば、たとえ製造方法や原料の同等性はあったとしても、申請時にヒトの中和抗体価データのみしかないBA.1対応ワクチンの承認もなく、一足飛びに動物実験データのみでBA.4/BA.5対応ワクチンを承認することを素直に肯定はできなかっただろう。これは私個人の見解(感情)もそうだ。さらに言えば、感情的には「もにょる」ものの、「まあ製法や原料は同じだしな」となんとか納得させている部分はある。ただし、BA.4/BA.5対応ワクチンのヒトでの中和抗体価データが明らかになりつつある今は、この「もにょる」感情も薄れつつある。さて、そのうえで私はもう思い切って新型コロナワクチンの公的接種はBA.4/BA.5対応ワクチンに一本化しても良いのではないかと思っている。岸田 文雄首相自らが国民にいくらワクチン接種を呼びかけようとも、周回遅れワクチンを接種したいと思う人は多くないはずである。もちろんこのことはBA.1対応ワクチンにかかった税金を事実上ドブに捨てることになる可能性は大である。強いて取れる戦略があるとするならば、一本化後もBA.1対応ワクチンを有効期限内は保持して、BA.4/BA.5対応ワクチンの供給不安と感染拡大が重なった時に利用するという形である。徐々に市中の様相はかつての日常に戻りつつあるとはいえ、今も準緊急事態であることは多くの国民が認識しているはずである。そして今回のワクチンの費用負担は強大な国が負っている。いくら血税とはいえ、いまBA.1対応ワクチンが無駄になったとしても国民が直接損害を被ることはない。ならば公衆衛生という観点からは大胆な「損切り」も必要なのではないだろうか?

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モデルナBA.4/5対応2価ワクチン、第II/III相試験で主要評価項目達成

 Moderna(米国)は11月14日付のプレスリリースで、オミクロン株対応2価ワクチン候補mRNA-1273.222について、オミクロン株(BA.4/5)に対してmRNA-1273のブースター用量と比較して優れた抗体反応が得られたことを発表した。 同社が実施した第II/III相試験では、ワクチン接種歴のある19~89歳の511名を対象とし、前回のワクチン接種から約9.5ヵ月後にmRNA-1273.222を、約4.5ヵ月後にmRNA-1273をそれぞれ接種した。 mRNA-1273.222とmRNA-1273のオミクロン株BA.4/5幾何平均抗体価(GMT)は、ブースター接種前のSARS-CoV-2感染者と非感染者でそれぞれ5.11(95%信頼区間[CI]:4.10~6.36)と 6.29(95%CI:5.27~7.51)であった。すべての参加者において、オミクロン株BA.4/5 に対するGMTは4,289(95%CI:3,789.0~4,855.9)で、ブースター接種前から15.1倍(95%CI:13.3~17.1)上昇した。感染歴のない被験者では、GMTは2,325(95%CI:1,321.2~2,812.7)であり26.4倍(95%CI:22.0~31.9)の増加、感染歴のある被験者では、GMTは6,965(95%CI:6,043.7~8,025.4)でありブースター接種前から9.8倍(95%CI:8.4~11.4)上昇した。なお、65歳以上の被験者と18~65歳未満の被験者の間で、一貫した結果が認められた。 今回の結果は、同社のBA.1対応2価ワクチンであるmRNA-1273.214が、mRNA-1273のブースター用量と比較して複数のオミクロン変異株に対する中和抗体価に優れることを確認したNEJM誌に発表されたデータに基づく。mRNA-1273.214においては、50μgブースター用量が、mRNA-1273のブースター用量と比較してオミクロンBA.1およびオミクロンBA.4/5に対して優れた中和抗体反応を引き起こし、その優位性は少なくとも3ヵ月間継続した。 mRNA-1273.222およびmRNA-1273.214の副作用の発現頻度は、2回目または3回目のワクチン接種の場合と同様かそれ以下であった。また、どちらも約1ヵ月、約3ヵ月の追跡調査後、新たな安全性の懸念は確認されなかった。これらの安全性および免疫原性データは、査読付きの論文として提出され、世界中の規制当局と共有される予定だとしている。

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職場へのお土産の予算は?/医師1,000人アンケート

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し始めた頃、出張や旅行は自主的に制限され、また学術集会もオンラインで開催されるなど、外出への機会は失われ、お土産を買ったり、もらったりということは減少した。しかし、最近では、コロナワクチンの普及や治療薬の登場により、COVID-19以前の生活に戻りつつある。 出張や学術集会が再開されて気になるのは、残してきた家族や医局の同僚などへの「お土産」である。実際、医師がどの範囲の集団に、どの程度の予算でお土産を購入しているのか、今回会員医師1,000人にアンケート調査を行った。 アンケートは、10月13日にCareNet.comのWEBアンケートにて全年代、全診療科に対して実施した。職場へのお土産の予算、最も多いのは「2,000~3,000円」 質問1で「お土産を買うか」(単回答)を尋ねたところ「必ず買う」が439人(43.9%)と一番多く、「ときどき買う」なども含めると全体で895人(89.5%)の会員医師がお土産を購入していた。 質問2で「職場用のお土産の全体予算」(単回答)を尋ねたところ「2,000~3,000円」が325人(32.5%)、「3,000~4,000円」が157人(15.7%)、「1,000~2,000円」が154人(15.4%)の順で多かった。 質問3で「お土産を買う範囲」(複数回答)を尋ねたところ、「家族」が763人、「職場の上司・同僚・部下」が686人、「自分」が302人の順で多かった。 質問4で「よく買うお土産」(複数回答)を尋ねたところ、「地元のお菓子」が814人、「地方限定販売のお菓子」が283人、「地元特産の食品」が221人の順で多かった。 質問5で「もらったとき最もうれしいお土産」(単回答)を尋ねたところ、「地元のお菓子」が557人(55.7%)、「地元特産の食品」が151人(15.1%)、「地元のお酒」が117人(11.7%)の順で多かった。以上からおおむね欲しいものと提供されたものが合致していたが、「地元特産の食品」や「地元のお酒」などを所望する声が多かった。人気のお菓子は「博多通りもん」 具体的にもらってうれしかったお土産では「博多通りもん」、「ご当地のお酒」、「萩の月」の順番で多く、有名な銘菓や現地でないと入手できないもの、運搬にかさばるため簡単に入手できないものに人気があった。 また、寄せられたコメントでは、「医局にお土産が置いてあると和みます(20代・麻酔科)」、「地域限定の食品(保存ができるもの)が一番ありがたい(30代・糖尿病・代謝・内分泌内科)」、「有名なお菓子がうれしいです。マイナーなものだと結局おいしくないものが多い(30代・眼科)」、「子供が鉄道好きなので、それを踏まえたローカルなグッズをもらったこと(30代・耳鼻咽喉科)」など人間関係を円滑にする事例のコメントが寄せられていた。

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ファイザーBA.4/5対応2価ワクチンの第II/III相試験、1ヵ月後データ

 米国・Pfizerは11月4日付のプレスリリースで、同社のオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、追加接種から1ヵ月後の第II/III相試験データを発表した。30μgの追加接種により、同社の起源株に対する1価ワクチンよりも強固な中和免疫反応が得られたことが確認され、安全性および忍容性プロファイルは両ワクチン間で同様だった。 今回の第II/III相試験では、同社のBA.4/5対応2価ワクチンの4回目の追加接種(30μg)について、接種前と接種から1ヵ月後の血清を採取して評価した。SARS-CoV-2感染の既往がある人とない人を均等に層別化し、18~55歳(n=38)および55歳以上(n=36)のサブセットを設定した。また、同社の起源株に対応した1価ワクチン30μgを4回目接種として投与された55歳以上(n=40)を対照群として、同様に均等な層別化をしながら無作為に抽出した。2価ワクチンを接種した被験者は、前回の追加接種が約10〜11ヵ月前であったのに対し、1価ワクチンを接種した被験者は、前回の追加接種が約7ヵ月前であったが、この差にもかかわらず、4回目接種前の抗体価は両者でほぼ同様だった。 主な結果は以下のとおり。・BA.4/5対応2価ワクチン接種者全体では、BA.4/5に対する中和抗体価が接種前と比較して大幅に上昇した。・18~55歳では、BA.4/5に対する幾何平均抗体価(GMT)は606で、接種前から9.5倍(95%信頼区間[CI]:6.7~13.6)上昇した。・55歳以上の高齢者では、BA.4/5に対するGMTは896で、接種前から13.2倍(95%CI:8.0~21.6)上昇した。・55歳以上で、1価ワクチンを追加接種した被験者は、接種から1カ月後のBA.4/5に対する中和抗体反応が低く、GMTは236であり、接種前から2.9倍(95%CI:2.1~3.9)上昇した。・55歳以上のBA.4/5に対する中和抗体価は、2価ワクチンのほうが1価ワクチンよりも約4倍高くなった。・SARS-CoV-2感染歴のある人とない人で2価ワクチンの追加接種を行った場合、18~55歳と55歳以上の両群で、BA.4/5に対する中和抗体価の有意な上昇が認められた。感染歴のない人のほうで、より大きな増加が確認された。・2価ワクチンの安全性プロファイルは良好であり、1価ワクチンと一貫している。 同社は本結果について、SARS-CoV-2感染既往の有無にかかわらず、すべての集団に対して2価ワクチンが有効である可能性を強調するものだとしている。同社は本ワクチンの免疫原性のモニターを継続するとし、2022年9月には、生後6ヵ月~11歳の小児を対象に、BA.4/5対応2価ワクチンの異なる用量および投与レジメンで、安全性、忍容性および免疫原性を評価するための第I/III/III相試験を開始している。

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第123回 全国の出産費用を公表へ、妊婦の選択を支援/社会保障審議会

<先週の動き>1.全国の出産費用を公表へ、妊婦の選択を支援/社会保障審議会2.コロナワクチン接種で女性死亡、アナフィラキシーか? 県医師会が調査へ/愛知3.かかりつけ医は手上げ制へ、全世代型社会保障構築会議4.腎臓内科医が一斉退職へ、教授選考がきっかけか/島根大5.接触確認アプリ「COCOA」17日から機能停止へ/デジタル庁6.医薬品の迅速・安定供給の実現に向け財政措置を/中医協1.全国の出産費用を公表へ、妊婦の選択を支援/社会保障審議会11月11日に厚生労働省が開催した社会保障審議会において、全国の分娩医療機関での出産にかかる費用を公表することが了承された。正常分娩は、自由診療であり、価格が自由となっているため、ホームページで施設ごとに一覧できるようにし、妊婦が医療機関を選びやすくする。厚生労働省は、医療機関ごとに平均在院日数、分娩費の平均額など公表する。また、分娩費を支援する出産育児一時金の財源について、75歳以上の後期高齢者が新たに7%負担する仕組みを提案し、次回の保険料改定に合わせて2024年4月から導入する方針となった。(参考)病院ごとの出産費用を公表へ 妊婦の経済的負担軽減狙う 厚労省(毎日新聞)出産費や室料差額など公表へ、医療機関ごとに 社保審・部会が了承(CB news)75歳以上、7%分負担=出産育児一時金の財源に-厚労省(時事通信)高齢者にも「出産育児一時金」への応分負担求める! 「全国医療機関の出産費用・室料差額」を公表し妊婦の選択支援?社保審・医療保険部会(Gem Med)2.コロナワクチン接種で女性死亡、アナフィラキシーか? 県医師会が調査へ/愛知愛知県愛西市で11月5日に2価の新型コロナワクチンの接種直後に容体が急変し、死亡した事件をめぐって、愛知県医師会の医療安全対策委員会で、アナフィラキシーの有無を含め、対応について調査に乗り出すことになった。厚生労働省の第88回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会などでも検討を行っているが、遺族からは発生当初の初期対応をめぐって疑問の声が上がっている。(参考)「アナフィラキシーか」愛知県医師会が調査へ ワクチン接種後に死亡(朝日新聞)コロナワクチン接種で女性死亡 愛知県医師会が対応検証(日経新聞)ワクチン接種直後に容体急変 女性死亡 愛知県医師会が検証へ(NHK)新型コロナワクチン(コミナティRTU筋注[2価:起源株/オミクロン株BA.4-5])接種後に死亡として報告された事例の一覧[令和4年10月5日以降の報告分](厚労省)3.かかりつけ医は手上げ制へ、全世代型社会保障構築会議11月11日に開催された全世代型社会保障構築会議において、いわゆる「かかりつけ医機能」や勤労者皆保険制度について議論を行った。この中で、かかりつけ医制度について、事前の登録を義務化せずに、患者や医療機関側にそれぞれ判断を委ねる「手上げ方式」を提案した。政府は年内のとりまとめを目指しており、議論をさらに深めていく方針。一方、健康保険組合連合会(健保連)は11月8日、人口減少とさらなる高齢化により保険財政と医療資源が限界をむかえ、医療の最適化は必須であるとし、かかりつけ医師を認定する仕組みや任意の登録制度の創設を提言しており、今後、さらに議題を進め、医療の質の向上や医療機関との役割分担を明確にする狙い。(参考)第8回 全世代型社会保障構築会議(厚労省)「かかりつけ医」患者1人に複数で対応 政府有識者会議が方向性示す(朝日新聞)「かかりつけ医機能」手上げ方式検討へ 患者が選択、全世代型社会保障構築会議(CB news)かかりつけ医「登録制を」 健保連提言 実績ある医師認定(日経新聞)「かかりつけ医」の制度・環境の整備について[議論の整理](健保連)4.腎臓内科医が一斉退職へ、教授選考がきっかけか/島根大島根大学の医学部附属病院で、腎臓内科所属の医師7人が年度末までに退職する意向であることが文春オンラインで報道された。島根大学の腎臓内科の教授選は、2回の公募を行い、合計3回実施されたが、結果として落選した診療教授が退任することに合わせて、所属する腎臓専門医6人のうち2人が退職し、残りの医師も退職を検討していると報道されている。今後の島根県の腎臓医療や地域医療に影響が出る可能性があるため、関心を呼んでいる。(参考)島根大で腎臓内科医が一斉退職へ 島根の腎臓医療が崩壊危機(文春オンライン)5.接触確認アプリ「COCOA」17日から機能停止へ/デジタル庁デジタル庁は、新型コロナウイルスの陽性者との接触確認アプリの「COCOA」のサーバを11月17日から徐々に機能停止を行なっていくと発表した。これは今年9月末から全数届出が見直されたのに伴い、陽性登録が可能な人が限られるため、機能停止が決まった。今後、ユーザー全員に、11月17日より機能停止版(バージョン3.0.0)の配信を開始する。利用中のユーザーは、COCOAのアップデートを行った後に、機能停止の手続きをすることになる。(参考)接触確認アプリ「COCOA」17日から停止 “利用者は機能削除を”(NHK)COCOA、終了へのアップデートを17日に開始。必ず更新し、停止手続き後に削除を(PC Watch)コロナ接触確認アプリCOCOAの機能を停止 - 厚労省が発表、感染対策へのITツール活用で調査も(CB news)6.医薬品の迅速・安定供給の実現に向け財政措置を/中医協厚生労働省は11月9日に中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会を開き、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」での検討状況について報告を受けた。後発品のメーカーによる製造工程の問題をきっかけに生じた、医薬品の欠品問題により、医薬品の安定供給が困難となっており、さらに物価高騰や為替変動の影響もあり、早期の解決に向けて短期的に財政措置の検討が必要であると報告した。また、医薬品市場の将来予測では、先進10ヵ国中、わが国だけがマイナスまたは横ばいの成長であり、薬剤費の総額を伸ばして、革新的な医薬品の開発に対する投資を促すためにも、経済成長率以上の伸びは確保するべきではないかといった意見も出ている。今後、23年度改定にこれらの内容を盛り込むよう求める意見を含め検討を重ね、来年4月を目途にとりまとめを行う予定。(参考)中医協薬価専門部会 医薬品の安定供給は「短期的」な財政措置検討へ23年度改定の論点に(ミクスオンライン)令和5年度薬価改定について(有識者検討会における議論の状況について)(厚労省)第5回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(同)

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生後6ヵ月からCOVID-19ワクチン接種推奨を提言/日本小児科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第8波が到来しつつある今、第7波で起こった小児へのCOVID-19感染の増加、重症化や今冬のインフルエンザの同時流行を憂慮し、日本小児科学会(会長:岡明[埼玉県立小児医療センター])の予防接種・感染症対策委員会は、同学会のホームページで「生後6ヵ月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を発表した。 これは先に示した「5~17歳の小児におけるワクチンの有益性」も考慮したうえで、メリット(発症予防)がデメリット(副反応など)を上回ると判断し、生後6ヵ月以上5歳未満の小児でも推奨したもの。 なお、厚生労働省では乳幼児(生後6ヵ月~4歳)の接種は「努力義務」としている。生後6ヵ月以上5歳未満の小児でも接種の方がメリットある 同学会ではワクチン推奨の考え方の要旨として以下4点にまとめている。1)小児患者数の急増に伴い、以前は少数であった重症例と死亡例が増加している。2)成人と比較して小児の呼吸不全例は比較的まれだが、オミクロン株流行以降は小児に特有な疾患であるクループ症候群、熱性けいれんを合併する児が増加し、また、脳症、心筋炎などの重症例も報告されている。3)生後6ヵ月以上5歳未満の小児におけるワクチンの有効性は、オミクロン株BA.2流行期における発症予防効果について生後6ヵ月~23ヵ月児で75.8%、24ヵ月児で71.8%と報告されている。流行株によっては有効性が低下する可能性はあるが、これまでの他の年齢におけるワクチンの有効性の知見からは、重症化予防効果は発症予防効果を上回ることが期待される。4)生後6ヵ月以上5歳未満の小児におけるワクチンの安全性については、治験で観察された有害事象はプラセボ群と同等で、その後の米国における調査でも重篤な有害事象はまれと報告されている。なお、接種後数日以内に胸痛、息切れ(呼吸困難)、動悸、浮腫などの心筋炎・心膜炎を疑う症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診し、新型コロナワクチンを受けたことを伝えるよう指導すること。

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BA.4/5対応2価ワクチン後、年齢別の副反応発生状況/CDC

 12歳以上における、ファイザー社およびモデルナ社の2価ワクチンによるブースター接種後の安全性データを、米国疾病予防管理センター(CDC)のAnne M. Hause氏らがMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)11月4日号に報告した。 米国食品医薬品局(FDA)は2022年8月31日に、12歳以上へのBNT162b2(ファイザー)および18歳以上へのmRNA-1273(モデルナ)COVID-19ワクチンの2価製剤を承認。これらのワクチンにはSARS-CoV-2のオリジナル株およびBA.4/BA.5のスパイクタンパク質をコード化したmRNAが含まれる。10月23日までの間に、約2,260万回の2価ブースターワクチンが投与されている。今回、同期間中の2価ワクチン接種者における、v-safe(スマートフォンを用いたアクティブサーベイランスシステム。接種後1週間の局所および全身反応と健康への影響が報告される)およびVAERS(CDCとFDAが管理する、ワクチン接種後の有害事象をモニタリングするパッシブサーベイランスシステム)に報告された事象および健康影響評価のレビューが行われた。 v-safeにおける主な結果は以下のとおり。・期間中に計21万1,959人の12歳以上のv-safe登録者が、年齢に応じた2価ワクチン投与を受けた。・12~17歳が1,464人(0.7%)、18~49歳が6万8,592人(32.4%)、50~64歳が5万9,209人(27.9%)、65歳以上が8万2,694人(39.0%)だった。・4回目接種者(9万6,241人;45.4%)または5回目接種者(10万6,423人;50.2%)が多くを占めた。・12万2,953人(58.0%)がファイザー社、8万9,065人(42.0%)がモデルナ社の2価ワクチン投与を受けていた。・登録者の1/3以上(8万4,450人;39.8%)が、少なくとも1つの他のワクチンの同時接種を受けたと報告した。8万3,005人(98.3%)がインフルエンザワクチンを接種していた。・投与後1週間での局所反応の報告頻度は、全体で60.8%、12~17歳で68.7%、18~49歳で72.9%、50~64歳で62.0%、65歳以上で49.7%だった。・投与後1週間での全身反応の報告頻度は、全体で54.8%、12~17歳で59.8%、18~49歳で67.9%、50~64歳で55.2%、65歳以上で43.5%だった。・多く報告された副反応は、注射部位の痛み(45.0~70.5%)、倦怠感(30.0~53.1%)、頭痛(19.7~42.8%)、筋肉痛(20.3~41.3%)、発熱(10.2~26.3%)だった。 VAERSにおける主な結果は以下のとおり。・期間中に2価ワクチン投与を受けた12歳以上から、5,542件(ファイザー社:2,928件、モデルナ社:2,615件)の有害事象に関する報告を受けた。・報告者の年齢中央値は60(12~101)歳で、64.2%が女性。939件(16.9%)の報告で、少なくとも1つの他のワクチンが同時接種されており、うち最も多かったのはインフルエンザワクチンだった(90.7%)。・ワクチン接種の過誤に関連する事象(製品の誤投与や用量間違いなど)が1,913件(34.5%)報告され、うち225件(11.8%)で健康上の有害事象が発生していた。・全体の95.5%(ファイザー社:2,762件[94.3%]、モデルナ社:2,530件[96.8%])が非重篤に分類された。※VAERSレポートでは、入院、入院期間の延長、致命的な疾患、後遺症、先天性異常、または死亡のいずれかが報告された場合、重篤と分類。・重篤と分類された報告は251件(4.5%)。ファイザー社:166件(5.7%)、モデルナ社:85件(3.3%)だった。うち5件は心筋炎、4件は心膜炎、20件はCOVID-19で、心筋炎を報告した人の年齢は12~78歳、心膜炎は46~78歳だった。・死亡は36件報告され、年齢中央値は71(46~98)歳。本レポート作成時点で十分な情報が得られたのは4件で、死因には心停止、認知症、転移前立腺がん、および心筋梗塞が含まれていた。CDCでは引き続き残りの死亡者の医療情報を収集している。 著者らは、本結果がBA.1対応の2価ブースターワクチンの承認前臨床試験の安全性データおよび1価ブースター投与後に報告された安全性データとおおむね一致しており、COVID-19による健康への影響より頻度は低く、深刻度も低いとしている。

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高齢化率世界一の日本のコロナ禍超過死亡率が低いのは?/東京慈恵医大

 新型コロナウイルス感染症流行前の60歳平均余命が、コロナ禍超過死亡率と強く相関していたことを、東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島 充佳氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2022年10月19日掲載の報告。 新型コロナウイルス感染症は高齢者において死亡リスクがとくに高いため、世界一の高齢者大国である日本ではコロナの流行によって死亡率が高くなることが予想されていたが、実際には死亡率の増加が最も少ない国の1つである。本研究は、なぜ日本が超過死亡率を最も低く抑えることができたかを明らかにするため、コロナ流行以前(2016年など)における健康、幸福度、人口、経済などの50項目の指標と、コロナ流行中(2020年1月~2021年12月)の死亡率の変動との相関を調査した。 研究グループは、超過死亡率の判明している160ヵ国を人口の60歳以上が占める割合で4グループに分け、高齢者率が最も高い40ヵ国について、コロナ流行前の各国公表データとの関係を調査した。 主な結果は以下のとおり。・高齢者率が最も高いグループには欧米諸国、旧ソビエト連邦、東欧諸国、日本、韓国などの40ヵ国が含まれていた。総じて超過死亡率は高かったが、グループ内での開きがあり、超過死亡率がマイナスであった国は、ニュージーランド、オーストラリア、日本、ノルウェーの順であった。ロシアを含む旧ソビエト連邦や東欧諸国の超過死亡率は200を超えるなど桁違いに高かった。・50項目の指標で最も相関の強かった因子は「60歳の平均余命」で、相関係数は-0.91であった。・2番目は「2021年末までのワクチン2回接種率」で、相関係数は-0.82であった。・3番目は「国民1人当たりのGDP」で、相関係数は-0.78であった。国民1人当たりのGDPが大きい国では超過死亡率が低く、この傾向はスペイン風邪のときにも認められた。・上位3因子について多変量解析を行った結果、「60歳の平均余命」だけが有意で、他の「2021年末までのワクチン2回接種率」と「国民1人当たりのGDP」の有意性は失われた。よって、後者2因子は「60歳の平均余命」と超過死亡率との関係に対して交絡因子になっていると考えられる。・「30~70歳の心筋梗塞などの心血管疾患、脳卒中、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患で死亡する人口あたりの割合」は相関係数が0.90と極めて強い相関を示した。・「5歳未満の乳幼児死亡率」との強い相関は示されなかった。 同氏らは、「本調査の結果は、高齢時の長い平均余命が、質の高い医療システムとパンデミックを含む医療脅威からの回復力に関連していることを示唆している」とまとめた。

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5~17歳の年齢別、オミクロン株へのワクチン有効性と持続性/NEJM

 カタールにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のBNT162b2(ファイザー製)ワクチンの小児・青少年への実社会における有効性を検証したところ、小児へのワクチン接種によるオミクロン変異株への保護効果は中程度で、2回目接種後は急速に低下し3ヵ月で保護効果がほぼ認められなくなっていた。青少年については、おそらく投与した抗原量が多いことから、小児よりも強力で持続性のある保護効果が認められたという。カタール・コーネル大学のHiam Chemaitelly氏らが、3つのコホートについて後ろ向き標的コホート試験を行い明らかにした。BNT162b2ワクチンは、小児(5~11歳)と青少年(12~17歳)では、投与される抗原量が異なる。NEJM誌オンライン版2022年11月2日号掲載の報告。オミクロン株流行後の5~11歳、流行前後の12~17歳のデータを解析 研究グループは、カタールの小児・青少年について、SARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチンの有効性をリアルワールドで評価した。 ワクチン接種済みの全国集団と未接種の全国集団を比較するため、3つのマッチング後ろ向き標的コホート試験を実施。1つは、B.1.1.529(オミクロン)変異株優勢後の5~11歳の小児から得たデータを評価した試験で、残る2つは、オミクロン変異株出現前と出現後の12~17歳の青少年から得たデータを評価した試験だった。 BNT162b2ワクチン接種とSARS-CoV-2感染の関連性を、Cox比例ハザード回帰モデルで推定し評価した。有効性は小児で低年齢ほど低下、オミクロン株出現前の青少年では高率 小児において、BNT162b2ワクチン(10μg)プライマリシリーズ接種の、オミクロン変異株感染に対する有効性は、25.7%(95%信頼区間[CI]:10.0~38.6)だった。有効性は、2回目接種直後が最も高く49.6%(28.5~64.5)だったが、その後は急速に低下し、3ヵ月後にはほとんど保護効果は認められなくなっていた。年齢別では、5~7歳の同有効性は46.3%(21.5~63.3)で、8~11歳は16.6%(-4.2~33.2)だった。 青少年では、同ワクチン(30μg)プライマリシリーズ接種の、オミクロン変異株感染に対する有効性は、30.6%(95%CI:26.9~34.1)だった。有効性は2回目接種後、時間経過と共に低減していた。年齢別有効性は、12~14歳が35.6%(31.2~39.6)、15~17歳が20.9%(13.8~27.4)だった。 オミクロン変異株出現前では、青少年への30μgプライマリシリーズ接種のSARS-CoV-2感染に対する有効性は、87.6%(95%CI:84.0~90.4)で、2回目接種後の有効性の低下は相対的に緩徐だった。

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コロナ陽性になること「怖い」が7割/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広まり、3年が経とうとしている。この間、COVID-19陽性者も身近にいたりとすでに珍しいことではなくなった。そこでCOVID-19感染者の特徴およびワクチン接種回数との因果関係、また、COVID-19に関連する疑問解明を目的として、株式会社アイスタットは、全国で最も感染者数が多い東京都を対象にコロナウイルス陽性に関する調査を行った。 アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の東京都在住の有職者の会員20~59歳の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2022年10月18日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~59歳/東京都/有職者)アンケートの概要・コロナ感染者は、「20・30代」「女性」「ワクチン接種回数が0~2回」で最も多い。・感染経路は、「わからない」「家族・知人・友人・恋人の濃厚接触者」が同率1位。・感染者の重症度レベルは、「軽症」が50.8%で最多、次に「自覚症状なし」の22.2%。・陽性で困ったことは、「身体的負担の増加」「行動制限の増加」が41.3%で同率1位。・コロナウイルス陽性になることについて、現在も7割近くが「怖い」と思っている。・コロナウイルスワクチン接種が「3回以上」の人は、約6割にとどまる。・ワクチン接種4回・5回目以降を「必ず接種する」は31%、「接種しない」は25.3%。・PCR検査・抗体検査を受けたことがある人は5割近く。・37.5℃以上の熱を出し、保健所や病医院に連絡をせず完治させた人は1割。・今シーズン(2022年)、インフルエンザ予防接種を受ける人は2割。東京の若い世代ほどワクチンを接種していない 質問1で「PCR検査・抗体検査の結果で『陽性』になった経験」(単回答)を聞いたところ、「あり」が21%、「なし」が79%で、コロナウイルスに感染した人は2割を占めた。また、「あり」を回答した人の属性をみると、「20・30代」「女性」「既婚」「コロナワクチン接種回数が0~2回」で最も多かった。 質問2で(コロナ陽性と回答した63名を対象)「感染経路」(複数回答)を聞いたところ、「感染経路はわからない」と「家族・知人・友人・恋人の濃厚接触者」がともに28.6%、「職場の濃厚接触者」と「身近に陽性者がいた」が14.3%の順で多かった。 質問3で(コロナ陽性と回答した63名を対象)「重症度レベル」(単回答)を聞いたところ、「軽症」が50.8%、「自覚症状なし」が22.2%、「中等症」が11.1%の順で多かった。また、コロナワクチンの接種回数別では、「自覚症状なし」を回答した人は、接種が「3回以上」の人ほど多く、「重篤」と回答した人は「0~2回」の人が多かった。 質問4で(コロナ陽性と回答した63名を対象)「陽性で困ったこと」(複数回答)を聞いたところ、「身体的負担の増加」と「行動制限の増加」がともに41.3%、「精神的負担の増加」が23.8%、経済的負担の増加が22.2%と多かった。「陽性者」では、経済的な面よりも行動制限されることが大きな負担になることが判明した。 質問5で「今後、コロナウイルス陽性になることについてどう思うか」(単回答)を聞いたところ、「怖い」が69%、「怖くない」が31%で、「怖い」と思っている人が7割近くいた。ちなみに「怖い」の推移を過去の本調査で比較してみると、第1波のときは7割から9割近くまで上昇したが、徐々に減少し、現在の7割弱まで下がった。また、「怖い」と回答した人の属性をみると「50代」「女性」「コロナ感染(陽性)経験なし」「ワクチン接種3回以上」で最も多かった。 質問6で「現在のコロナウイルスワクチン接種回数」(単回答)を聞いたところ、「3回」が47.7%、「受けたことがない」が21.7%、「4回」が15.7%と多かった。3回の接種を基準に接種率を分類してみると、「3回以上」は63.3%、「0~2回」は36.7%で、「3回以上」は半数を超えてはいるものの約6割にとどまった。また、年代別では、ワクチンを「受けたことがない」「1回」「2回」と回答した人は「20・30代」で最も多く、若い世代の接種が十分に進んでいない状況が浮き彫りとなった。 質問7で「今後、コロナウイルスワクチン接種4、5回目と誰でも接種可能となった場合、接種するか」(単回答)を聞いたところ、「感染者数や周囲の状況により接種する」が43.7%、「感染者数に関わらず、必ず接種する」が31.0%、「接種はしない」が25.3%の順で多かった。属性別にみると、「感染者数に関わらず、必ず接種する」を回答した人は、「50代」「女性」「既婚」「コロナ感染(陽性)経験なし」「ワクチン接種3回以上」で最も多く、一方で「接種はしない」を回答した人は、「20・30代」「女性」「未婚」「コロナ感染(陽性)経験あり」「ワクチン接種0~2回」で最も多かった。 質問8で「PCR検査・抗体検査などを受けたことがある場合、その理由」(複数回答)を聞いたところ、「発熱したため」が15.7%、「濃厚接触者だったため」が10.7%、「体調が悪かったので」が8.3%と続き、「一度も受けたことがない」が最多で51.7%だった。 質問9「コロナ禍で3年近く経つ中で、この期間37.5℃以上の熱を出し、保健所や病医院に連絡せず(診療を受けず)市販薬や安静で完治させたことはあるか」(単回答)を聞いたところ、「3年間、発熱はない」が57.7%、「まったくない」が28.0%、「ある」が14.3%の順で多かった。 質問10で「現在、自宅に常備している市販薬」(複数回答)を聞いたところ、「バファリン、EVE(イブ)、ノーシンAc」が35.3%、「風邪薬」が33.0%、「ロキソニン」が31.7%の順で多かった。一時期、ドラッグストアなどの店頭から姿を消した「アセトアミノフェン系の解熱剤」は14.7%で第6位だった。 質問11で「今シーズン、インフルエンザの予防接種を受ける予定があるか」(単回答)を聞いたところ、「受けない」が56.7%、「受ける」が23.3%、「悩み中」が20.0%だった。「受ける」を回答した人の属性をみると、「50代」「男性」「既婚」「ワクチン接種3回以上」が最も多かった。その一方で、「受けない」を回答した人の属性は、「40代」「男性」「未婚」「ワクチン接種0~2回」で最も多かった。

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第137回 コロナワクチン買い占めが130万人の命を奪った/あの飲み物でコロナ予防?

COVID-19ワクチン買い占めが130万人の命を奪った去年2021年の終わりまでに世界のおよそ2人に1人(約50%)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)ワクチンの一通り(2回)の接種を済ませました。しかしその普及率は一様ではなく、高所得国では75%近くに達しているのに対して低所得国ではわずか2%足らずです。富裕国は去年末時点でCOVID-19ワクチンを余分に貯め込み、比較的重症化し難い幼い小児への接種に取り掛かっています。かたや貧しい国はというとCOVID-19で死ぬリスクが高い人への接種も十分に行き届いていないありさまです。COVID-19ワクチン普及の世界的な格差は不必要な死をおそらくもたらしたとすでに周知されています。そのような不必要な死がどれほど生じたかを推定することは将来の不可避な疫病流行への備えの準備に役立つはずです。そこで英国ワーウィック大学の数理疫学専門家Sam Moore氏等は世界154ヵ国の死亡やワクチン普及のデータを使い、金ではなく需要に応じてCOVID-19ワクチンが隈なく世界の人々の手に渡っていたらSARS-CoV-2感染やその重症度はどうだったかを予想しました。その結果、COVID-19ワクチンが世界で完全に公平に分配されていたとしたら2021年にSARS-CoV-2感染は約3億例少なく、130万人はCOVID-19で死なずに済んだと推定されました1-4)。さらには変異株を封じる効果も期待できるようです。SARS-CoV-2オミクロン株BA.5が流行したかと思えば早くも次はBA.5から分家したBQ.1やその近縁種BQ.1.1の感染が世界的な広がりを見せており、米国では先週5日までの一週間のCOVID-19診断数のおよそ35%を占めるまでに増えています5)。その前の週のBQ.1とBQ.1.1感染の割合はおよそ23%でした。欧州でも増えており、まもなく感染の大半を占めるようになり、向こう数週間か数ヵ月の感染例増加を後押しするとみられています6)。COVID-19ワクチンをより公平に共有すれば、SARS-CoV-2感染がいっそう減少し、そのような次から次へのSARS-CoV-2変異株台頭を遅らせうることも今回の研究で示唆されました4)。金払いではなく需要に応じてワクチンを分配することで皆が恩恵を受けうるのであり1)、各国の政策決定者は今回の研究の推定結果を頼りに次の流行にもっと優れた手立てを講じることができそうです4)。コーヒーでCOVID-19予防?COVID-19ワクチンを世界に公平に広めるには各国の協力などのひと手間が今後必要ですが、すでに世界に広まるある飲み物がもしかしたらCOVID-19予防効果を担うかもしれません。その飲み物とは、それを朝飲まないことには一日が始まらないという方も多いであろうコーヒーです。その成分・5-caffeoyl quinic acid(慣用名はクロロゲン酸)がコーヒー1杯分ほどに含まれる量の濃度でSARS-CoV-2のスパイクタンパク質と細胞のACE2受容体の結合を確実に阻止し、細胞感染を防ぐことがドイツのヤーコプス大学の化学者Nikolai Kuhnert氏等の生化学実験で示されました7)。実験ではコーヒー1杯を200mLと仮定しました8)。その量のコーヒーにはクロロゲン酸がおよそ100mg含まれます。コーヒーに実際のところCOVID-19予防効果があるのかないのかの判断は化学者である自分にはできないが、疫学試験でその答えが判明するだろうとKuhnert氏は言っています8)。同氏等は社会学などの他の分野の研究者に相談する予定です。参考1)Moore S, et al. Nat Med. 2022 Oct 27. [Epub ahead of print]2)Quantifying the effect of inequitable global vaccine coverage on the COVID-19 pandemic / Nature3)Daily briefing: Vaccine hoarding might have cost 1.3 million lives / Nature 4)COVID vaccine hoarding might have cost more than a million lives / Nature 5)COVID variants BQ.1/BQ.1.1 make up 35% of U.S. cases / Reuters6)Cases of BQ.1, BQ.1.1 COVID variants double in U.S. as Europe warns of rise / Reuters7)Schmidt D, et al. Food Funct. 2022;13:8038-8046.8)Research at Jacobs University: Coffee could offer protection from catching COVID-19 / Eurekalert

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コロナワクチンの血栓症リスク、種類別比較を定量化/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンのうち、アデノウイルスベースのワクチンであるChAdOx1-S(アストラゼネカ製)はmRNAベースワクチンのBNT162b2(ファイザー製)と比較して、初回接種から28日以内の血小板減少症のリスクが30%以上高く、アデノウイルスベースのワクチンAd26.COV2.S(ヤンセン製)はBNT162b2に比べ、血小板減少症を伴う血栓症候群(TTS)の中でも静脈血栓塞栓症のリスクが高い傾向にあることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らが行った欧米6ヵ国のデータセットの解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月26日号で報告された。欧州5ヵ国と米国のネットワークコホート研究 研究グループは、COVID-19に対するアデノウイルスベースのワクチンとmRNAベースのワクチンとで、TTSまたは血栓塞栓イベントのリスクの定量的な比較を目的に、国際的なネットワークコホート研究を実施した(欧州医薬品庁[EMA]の助成を受けた)。 解析には、欧州の5ヵ国(フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、英国)の各1つのデータセットと、米国の2つのデータセットが使用された。 対象は、2020年12月から2021年の半ばまでの期間に、2つのアデノウイルスベースのCOVID-19ワクチン(ChAdOx1-S、Ad26.COV2.S)または2つのmRNAベースのCOVID-19ワクチン(BNT162b2、mRNA-1273[モデルナ製])のいずれかの接種を少なくとも1回受け、初回接種時に年齢18歳以上の集団であった。 主要アウトカムは、ワクチン接種から28日以内のTTS(深部静脈血栓症、血栓塞栓症など)または静脈・動脈血栓塞栓イベント(深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳静脈洞血栓症、心筋梗塞など)とされた。 傾向スコアマッチング後に罹患率比が推算され、陰性コントロールのアウトカムを用いて較正が行われた。変量効果によるメタ解析で、データベースごとの推算値が統合された。今後の予防接種キャンペーンの際に考慮すべき ドイツと英国のデータの解析では、血小板減少症は、ChAdOx1-Sの初回接種を受けた集団で862件、BNT162b2の初回接種を受けた集団で520件発生した。 ドイツと英国のデータのメタ解析では、ChAdOx1-S初回接種はBNT162b2初回接種と比較して、28日後の血小板減少症のリスクが高く、較正後の統合罹患率比は1.33(95%信頼区間[CI]:1.18~1.50)であり、較正後罹患率の差は1,000人年当たり1.18(95%CI:0.57~1.8)、絶対リスク差は10万人当たり8.21(95%CI:3.59~12.82)であった。 TSSはきわめてまれであった。米国とスペインのデータのメタ解析では、Ad26.COV2.SはBNT162b2に比べ、TTSのうち静脈血栓塞栓症のリスクが高い傾向が認められ、較正後の統合罹患率比は2.26(95%CI:0.93~5.52)であった。不確実性はより高いものの、TTSの深部静脈血栓症にも同様の傾向がみられた(較正後統合罹患率比:1.83、95%CI:0.62~5.38)。 著者は、「罹患数はきわめて少ないが、アデノウイルスベースのワクチン接種後に観察された血小板減少症のリスクは、今後、予防接種キャンペーンやワクチン開発を計画する際に考慮すべきと考えられる」としている。

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既感染によるBA.4/5感染予防効果、半年で5割低下/NEJM

 現在、COVID-19感染の主流となっているオミクロン株BA.4およびBA.5について、既感染による再感染予防効果は時間経過と共に急速に減退する可能性がある。カタール・ドーハのWeill Cornell MedicineのHeba N. Altarawneh氏らによる検討がNEJM誌2022年10月27日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 研究者らは、SARS-CoV-2の検査結果、臨床経過、ワクチン接種、人口統計学的データ、カタールの医療施設で実施されたPCRおよび迅速抗原検査の全結果のデータを、全国SARS-CoV-2データベースから抽出した。感染リスクの違いをコントロールするため、性別、年齢、国籍、併存疾患数、検査した週、検査方法、検査理由によって、試験群と対照群をマッチングさせた。さらに、過去の感染について、オミクロン株による感染の波の開始(2021年12月19日)より前(前感染)とそれ以後(後感染)に分類した。 2022年5月7日~7月28日のPCR検査におけるS遺伝子標的不全(SGTF)の判定を用いて、BA.4/5への再感染に対する既感染の有効性を推定した。6月8日~7月28日の間に診断されたSARS-CoV-2感染は、この期間に支配的な亜種であったため、すべてBA.4/5感染であると仮定して有効性を推定した。・前感染では、有症状のBA.4/5再感染に対する有効性は35.5%(95%信頼区間[CI]:12.1~52.7)、症状の有無にかかわらない感染に対する有効性は27.7%(95%CI:19.3~35.2)であった。・後感染では、有症状のBA.4/5再感染に対する有効性は76.2%(95%CI:66.4~83.1)、症状の有無にかかわらない感染に対する有効性は78.0%(95%CI:75.0~80.7)であった。 診断された感染症がすべてBA.4/5であると仮定した既感染の有効性に関する解析でも、主解析と同様の結果が得られた。また、既感染からの間隔によって層別化した有効性の解析でも、時間の経過とともに予防効果が低下することが示された。 研究者らは、「BA.4/5再感染に対する既感染の有効性は、前感染ではわずかだったが、BA.1/2含む後感染では高かった。これは、時間の経過とともに免疫防御力が低下し、BA.4/5の免疫回避力が高くなることが原因だ」とした。

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認知症患者のインフルエンザワクチン接種の抗体反応に対する光曝露の影響

 認知症受け入れ施設の照明条件を改善すると、患者の睡眠、概日リズム、健康状態の改善がみられる。スイス・Ecole Polytechnique Federale de LausanneのMirjam Munch氏らは、日中に明るい光を浴びると、認知症患者のインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答がサポートされる可能性について報告を行った。この結果は、毎日より多くの光を浴びることで、認知症患者の免疫応答が上昇することを示唆しており、今後の研究において、定期的な光曝露がヒトの免疫系に対し直接的または安定した概日睡眠覚醒リズムを介して良い影響を及ぼすかが明らかになることが期待される。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年9月20日号の報告。 施設に入所している認知症患者80例を対象に、光曝露と休息および活動サイクルとの関係を評価するためアクティビティトラッカー活動量計を8週間使用した。毎年のインフルエンザワクチン接種前と接種4週間後に採血した血液サンプルを用いて、患者の免疫反応を分析した。3つのインフルエンザウイルス株(H3N2、H1N1、IB)に対する抗体濃度は、赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition)アッセイで定量化した。 主な結果は以下のとおり。・個々の光曝露プロファイル(日光を浴びるを含む)を定量化し、照度392.6ルクスを中央値として低光曝露群と高光曝露群に分類した。・両群間で、認知機能障害の重症度、年齢、性別に違いは認められなかった。・高光曝露群は、低光曝露群と比較し、ワクチン接種前の濃度が同等であったにもかかわらず、H3N2ワクチンに対する抗体価が有意に増加し、概日活動の振幅が有意に大きかった(日中の活動量が多く、夜間の活動量が少ない)。・全対象者の75%以上で、3つのインフルエンザウイルス株に対する十分な血清保護応答が確認された。

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