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3~17歳へのコロナワクチン、オミクロン優勢期の効果は?/BMJ

 アルゼンチンで、3~17歳の小児・青少年に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(mRNA-1273[モデルナ製]、BNT162b2[ファイザー製]、BBIBP-CorV[Sinopharm製])2回接種の有効性について調べたところ、死亡に対する予防効果は、優勢となっている変異株の種類にかかわらず、小児・青少年ともに高値を維持していたことが明らかにされた。ワクチン接種後の短期間におけるSARS-CoV-2感染予防効果については、オミクロン変異株が優勢であった間は低かったこと、また時間の経過とともに同効果は急激に低下することも明らかにされた。アルゼンチン・保健省のJuan Manuel Castelli氏らが、約14万人のケースとそのマッチング対照を解析した、診断陰性例コントロール試験の結果で、BMJ誌2022年11月30日号で発表された。アルゼンチンで84万例超を対象に診断陰性例コントロール試験 研究グループは、アルゼンチンの国内サーベイランス・システムのデータベースと、ワクチンレジストリを基に、診断陰性例コントロール試験を行い、小児(3~11歳)・青少年(12~17歳)へのCOVID-19ワクチン2回接種の、SARS-CoV-2感染やCOVID-19関連死に対する有効性を推定し評価した。 対象は、2回のCOVID-19ワクチンのプライマリ接種対象者で、SARS-CoV-2感染歴がなく、2021年9月~2022年4月にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査または迅速抗原検査を受けた3~17歳、84万4,460例。マッチング対照の照合を行い、23万1,181例のケースのうち13万9,321例(60.3%)について解析を行った。 主要アウトカムは、SARS-CoV-2感染とCOVID-19関連死だった。条件付きロジスティック回帰分析で、ワクチン2回接種者の非接種者に対するオッズ比(OR)を推算した。ワクチン有効率は、(1-OR)×100%で算出した。小児の対SARS-CoV-2感染有効率、デルタ株優勢期間は61%、オミクロン株では16% デルタ変異株優勢期間のSARS-CoV-2感染に対するCOVID-19ワクチン2回接種の有効率は、小児が61.2%(95%信頼区間[CI]:56.4~65.5)、青少年が66.8%(63.9~69.5)だった。オミクロン変異株優勢期間は、それぞれ15.9%(13.2~18.6)、26.0(23.2~28.8)だった。 ワクチン有効性は、接種後、日数経過とともに低下し、とくにオミクロン変異株優勢期間の低下は急激で、小児では、接種後15~30日で37.6%(95%CI:34.2~40.8)であったが、60日以降では2.0%(1.8~5.6)へと低下し、青少年ではそれぞれ55.8%(52.4~59.0)から12.4%(8.6~16.1%)への低下が認められた。 一方で、オミクロン変異株優勢期間の、SARS-CoV-2感染関連死に対するワクチン有効率は、小児が66.9%(95%CI:6.4~89.8)、青少年が97.6%(81.0~99.7)だった。

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自宅コロナ死、4割は同居家族あり/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第109回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月7日に開催された。その中で「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が報告された。 調査期間中776名の自宅で死亡した者の解析から、死亡者の79%が70代以上であり、基礎疾患がある者が69%、親族などと同居が42%いた。また、ワクチン接種歴も不明が34%で一番多いものの、「3回接種」も28%と多かった。 政府では、「Withコロナに向けた政策の考え方」に則り、今後必要な医療資機材の提供、国民への正確な知識の普及に努めるとしている。 以下に概要を示す。70代以上の高齢者で、基礎疾患がある人は死亡が多い【調査概要】期間: 2022年7月1日~8月31日地域:全国都道府県条件:新型コロナウイルス感染症患者(死後陽性確認者も含む)で自宅にて死亡した者を本年10月に都道府県を通じ、その年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査(ただし自宅療養中に症状が悪化し、医療機関に入院した後に死亡した事例は除く)。【結果概要】 合計776名(男性460名、女性316名)(死亡時の年齢構成) 80代以上が58%、70代以上が21%、60代以上が9%(基礎疾患の有無) 「あり」が69%、「なし」が19%、「不明」が12%(ワクチンの接種歴) 「不明」が34%、「3回」が28%、「未接種」が20%(単身・同居などの状況) 「不明」が48%、「同居」が42%、「単身」が10% その他の事項は次のとおり。・死亡直前の診断時の症状の程度について、軽症・無症状が41.4%、中等症が13.1%、重症が7.1%、不明または死亡後診断が38.4%・生前に陽性が判明した者は70.1%、死後に陽性が判明した者は29.9%・発生届の届出日が死亡日よりも前であった事例が50.6%、発生届の届出日が死亡日と同日であった事例が31.2%、発生届の届出日が死亡日以降であった事例が17.9%、不明が0.3%・自宅療養の希望ありが22.8%、希望なしが10.3%、不明者および死後陽性が判明した者が66.9%発熱がなく、毎日訪問介護を受けていても死亡のケースも【具体的な死亡事例について】・救急搬送の搬入時の検査で陽性が判明したケース。・家族や親族などに自宅で倒れているところを発見されたケース。・陽性が判明したが、本人や家族の意思により自宅療養を希望したケース。・高齢であることや末期がんであることにより自宅での看取りを希望したケース。・自宅療養中に急速に重症化して死亡したケース。・同居家族から感染し、自宅での死亡につながったケース。・コロナ以外の要因で死亡し、死後に陽性が判明したケース。・入院や宿泊療養、治療を希望しないケース。・浴槽で意識がなくなっているところを同居家族に発見されたケース。・入院調整や宿泊療養の対象となるも、直後に死亡したケース。・主治医からの健康観察や訪問看護を受けていたものの、死亡したケース。・自宅訪問するも応答なく、警察に協力依頼を行ったケース。・症状があったが検査や受診を受けずに、死後に陽性が判明したケース。・家族は入院を希望していたが、自宅療養となり、死亡したケース。・発熱がなく、毎日訪問介護を受けていたが、死亡したケース。【自治体での取組事例】・体調の変化・悪化の早期把握のため、自宅療養開始時の説明、ホームページ、SMSなどで電話相談窓口への連絡を自宅療養者に対して周知。・療養者支援センターを開設。若年層にはSMSを利用して調査を実施し、保健所が電話で調査すべき対象者を重症化リスクが高い方に絞ることで連絡遅滞を防ぐ改善を行った。・陽性者からの要請があった場合、感染防護対策を行ったうえで、直ちに現場に向かう体制を施行。【今後の対応】 「Withコロナに向けた政策の考え方」の考え方に則り、入院治療が必要な患者への対応の強化、発熱外来や電話診療・オンライン診療の体制強化、治療薬の円滑な供給、健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保などの対策を進めるとともに、国民への情報提供と重症化リスクなどに応じた外来受診・療養への協力の呼びかけなどに取り組んでいく。

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オミクロン株のlong COVIDリスク、デルタ株より低い

 新型コロナウイルス感染症のオミクロン株は以前に流行したデルタ株と比較して急性期の症状が軽症であることが報告されているが、コロナ罹患後の後遺症、いわゆるlong COVIDのリスクも低いことが、ノルウェー・公衆衛生研究所のKarin Magnusson氏らの調査で示された。本研究の結果はNature Communications誌2022年11月30日号で報告された。 研究者らは、ノルウェーにおける18~70歳の全国民を対象に、医療データベースを使った前向きコホート研究を行った。オミクロンとデルタ株の流行が最も重複した期間(2020年12月8日~2021年12月31日)を対象に、オミクロン株の感染者の罹患後症状を、デルタ株感染者・非感染者と比較した。さらに、検査陽性後14~126日までの追跡期間を、急性期(14~29日)、亜急性期(30~89日)、慢性期(90日以上)に分け、罹患後症状の有病率の推定値も示した。 主な結果は以下のとおり。・全国民369万6,005人のうち、17万3,317人が期間中に1回以上のPCR検査を受け、うち5万7,727人が陽性と判定された。うち2万3,767人がデルタ株の感染者(デルタ群)、1万3,365人がオミクロン株の感染者(オミクロン群)だった。オミクロン群は、デルタ群に比べ、若年で高学歴、合併症が少なく、ワクチン接種の頻度も高い傾向があった。・オミクロン群およびデルタ群の両方で、PCR検査の陰性者と比較して、罹患後症状のリスクが20~30%増加し、息切れの発症リスクが30~80%増加した・全期間(14〜126日)における具体的な訴えを直接比較したところ、オミクロン群とデルタ群の差は認められなかったが、オミクロン群はデルタ群に比べ、検査後90日以上経過した時点でいずれかの症状を持つリスクが低く(1万人あたり43人[95%CI:14〜72]減)、筋骨格系の痛みのリスクも低かった(1万人あたり23人[95%CI:2〜43]減)。・ワクチン接種者(14~210日前に1、2、3回接種)では、オミクロン群(9,368人)はデルタ群(1万4,160人)と比較して90日以上の罹患後症状有病率が1万人あたり36人(95%CI:1~70)減ることが示された。

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第127回 新型コロナウイルスの2類見直しについて討議開始/感染症対策分科会

<先週の動き>1.新型コロナウイルスの2類見直しについて討議開始/感染症対策分科会2.75歳以上の医療保険料、年間5,300円の負担増へ/厚労省3.がん患者数、コロナ前の水準に、進行がん患者増を懸念/国立がん研究センター4.医療機関にセキュリティ対策研修用ポータルサイト開設/厚労省5.かかりつけ医機能について、年内に結論へ/全世代型社会保障構築会議6.改正精神保健福祉法と改正難病法が成立/参院1.新型コロナウイルスの2類見直しについて討議開始/感染症対策分科会政府は新型コロナウイルス感染症対策分科会を12月9日に開き、今年の年末年始の感染対策について考えをまとめ、公表した。この中で、オミクロン株対応ワクチンの早期接種を求めるとともに、医療逼迫防止のために、重症化リスクが低い人については咽頭痛や発熱などの自覚症状が出た場合は、自宅での抗原定性検査キットを使うことも検討を求めた。また、定期的に換気することも求めた。さらに、新型コロナの2類感染症の見直しについても、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への引き下げについても議論されたが、致死率などがインフルエンザに近づいているという意見もある一方で、死亡数が多いといった意見も出され、最新のデータに基づいた評価をもとに、改めて議論することとなった。(参考)年末年始の感染対策についての考え方(新型コロナウイルス感染症対策分科会)新型コロナの感染症法上の扱い 改めて議論へ 政府分科会(NHK)ワクチン年内接種呼び掛け コロナ分科会 年末年始の医療逼迫回避(時事通信)2.75歳以上の医療保険料、年間5,300円の負担増へ/厚労省厚生労働省は12月9日に開催された社会保障審議会医療保険部会において、年末までに医療保険の見直し案による試算を公表した。これによると、出産育児一時金を47万円に増額した場合、75歳以上が加入している後期高齢者医療制度の保険料が年間5,300円増加する見込みとなっている。政府は、出産一時金については50万円に引き上げる方針のため、健康保険料はこの試算より増額が見込まれている。なお、実際に保険料が増えるのは、75歳以上のうち年金収入が153万円以上の所得がある人で、全体の約4割に止まるとみられる。高齢者医療をすべての世代で公平に支え合う仕組みのため、政府はさらに改革を進めていく方針。(参考)第160回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)24年度医療保険料 75歳以上、年5300円増 政府試算(毎日新聞)後期高齢者の年間保険料 2年後 約5400円の負担増 厚労省が試算(NHK)75歳以上、平均年5300円負担増 医療保険見直し案、厚労省が試算公表(朝日新聞)3.がん患者数、コロナ前の水準に、進行がん患者増を懸念/国立がん研究センター国立がん研究センターは12月9日に、2021年1月1日から12月31日の1年間にがんと診断または治療された患者の院内がん登録データをまとめ、速報値として報告書としてウェブサイトで公表した。院内がん登録データの提出があった拠点病院453施設と小児拠点6施設のうち、過去4年間にわたってデータ提出のあった計455施設を対象にデータをまとめたところ、2021年の院内がん登録数は、2018年と2019年の2ヵ年平均登録数と比較して101.1%とほぼ同程度であることが明らかとなり、新型コロナウイルスの影響で減った2020年と比べると2021年は感染拡大前の水準であったことがわかった。一方、2021年の登録症例は、2018年と2019年の平均登録数と比較したところ、多くのがん種で早期がんでの登録の割合が減少しており、今後も継続的に分析を行う必要があるとしている。(参考)院内がん登録2021年全国集計速報値 公表 2021年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況(国立がん研究センター)国立がん研究センター「がん情報サービス がん統計」報告書ページ(同)国がん 21年院内がん登録全国集計結果を公表 コロナ禍で減少の新規患者数が同程度に(ミクスオンライン)昨年がん診断・治療、コロナ前並みの81万件…想定より少なく「進行がんで見つかる恐れ」(読売新聞)4.医療機関にセキュリティ対策研修用ポータルサイト開設/厚労省厚生労働省は、医療機関へのランサムウェアによるサイバー攻撃が増加しているのを受け、12月8日に、医療機関向けに「医療機関向けセキュリティ教育支援ポータルサイト」を開設した。医療機関の経営者に対して最近のサイバー攻撃事例を紹介するほか、システム管理者に向けてはインシデント対応やシステム設定などを伝える。また、一般の医療従事者には情報セキュリティの基本や注意点などを説明する。さらにトラブル発生時の相談・初動対応依頼窓口も設置されている。(参考)医療機関向けセキュリティ教育支援ポータルサイト(厚労省)医療機関向けサイバーセキュリティ対策研修を開始します(同)医療機関にセキュリティ知識を ソフトウェア協会が講習事業スタート(ITmedia)医療機関にサイバー研修 厚生労働省がポータルサイト(日経新聞)5.かかりつけ医機能について、年内に結論へ/全世代型社会保障構築会議政府は、12月7日に全世代型社会保障構築会議を開催し、報告書の取りまとめに向け、論点整理を巡って議論を行った。当日、論点となったのは医療・介護制度改革のほか、誰もが安心して希望通りに働くことができる社会保障制度の構築、子育て支援。医療・介護保険制度の改革では、今後の高齢者人口のさらなる増加を見据え、「かかりつけ医機能」制度の整備は不可欠とし、具体的なかかりつけ医の機能として「日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握し、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行うこと」とし、「休日・夜間の対応、他の医療機関への紹介・逆紹介、在宅医療、介護施設との連携」も必要ではないかとされた。今後は、年内に議論をまとめ、来年の通常国会での関連法改正を目指す方向とみられる。(参考)全世代型社会保障の構築に向けた各分野における改革の方向性(全世代型社会保障構築会議)「かかりつけ医機能」年内結論 全世代型会議「足元の課題」(CB news)かかりつけ医機能の方向性決定は年内か 政府の全世代型社会保障構築会議が報告書の素案を提示(日経ヘルスケア)6.改正精神保健福祉法と改正難病法が成立/参院12月10日、会期末の参院本会議で精神保健福祉法、難病法の改正案も含めた「障害者総合支援法等改正案」が成立した。難病法の改正案には、これまで難病の申請を行った日からされていた医療費助成を「重症と診断された日」にさかのぼって受けられることにするほか、障害福祉サービス利用時に使える「登録者証」の発行が盛り込まれた。このほか、難病患者や小児慢性特定疾病患者らのデータベースの整備により、製薬企業が難病患者のデータベースのデータを利活用できるようにして、新薬の開発を促進することを目指す。また、精神科病院の管理者に対し、病院の職員への研修や患者の相談体制の整備など、患者虐待防止策義務付けた改正精神保健福祉法も同日成立した。(参考)障害者総合支援法等改正案の概要(厚労省)「改正難病法」成立 患者からは一日も早く治療薬開発求める声(NHK)精神科病院の患者虐待防止策義務づけ 改正精神保健福祉法成立(同)1人暮らし促進 障害者支援、改正法成立(毎日新聞)

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黄色ブ菌、大腸菌などの感染症関連死は依然多い/Lancet

 2019年の世界の感染症関連死は推定1,370万人で、うち黄色ブドウ球菌、大腸菌など33の細菌属・種が原因の死亡は770万人だった。また、同細菌による年齢標準化死亡率はサハラ以南アフリカのスーパーリージョンで最も高かった。米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏ら、薬剤耐性の世界疾病負担(Global Burden of Antimicrobial Resistance)に関する研究グループ「GBD 2019 Antimicrobial Resistance Collaborators」が解析結果を報告した。先行研究により、薬剤耐性感染症と敗血症関連の死亡数が推定され、感染症が依然として世界の主要な死因を占めることが明らかになっている。公衆衛生上の最大の脅威を特定するためには、一般的な細菌(抗菌薬への耐性あり/なしの両者を含む)の世界的負荷を理解することが求められている中、本検討は、33の細菌属・種による11の重大感染症と関連する死亡について世界的な推算値を求めた初となる研究で、Lancet誌オンライン版2022年11月18日号で発表された。204の国と地域の33の細菌属・種による死亡数を推定 研究グループは、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2019のメソッドと、薬剤耐性の世界疾病負担2019で記述されている特定条件を満たした部分集合データを用いて、2019年に発生した33の細菌属・種による11の感染症に関連する死亡数を推算した。本検討には、1万1,361調査地域年にわたる3億4,300万人の記録と分離株が包含された。 各病原体に関連した死亡数を3段階モデル(感染による死亡、感染症に起因する死亡のうち特定の感染症による死亡割合、感染症に起因する死亡のうち特定の病原体による死亡割合)を用いて推定した。推定値は、2019年における204の国と地域、全年齢、男女について算出。標準的なGBDメソッドに従って、対象の各数量の事後分布から1,000の2.5パーセンタイルと97.5パーセンタイルを抽出し、33の細菌属・種に関連する死亡と感染の最終推定値について95%不確実性区間(UI)を算出した。33細菌属・種の関連死、世界全死亡の約14% 2019年の感染症関連死は推定1,370万人(95%UI:1,090万~1,710万)で、そのうち33の細菌属・種(抗菌薬への耐性あり/なしの両者を含む)による11の感染症関連死は、770万人(570万~1,020万)だった。 2019年の33細菌属・種の関連死は、世界全死亡の13.6%(95%UI:10.2~18.1)を占め、敗血症関連の全死亡の56.2%(52.1~60.1)を占めると推定された。なかでも黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎球菌、肺炎桿菌、緑膿菌の5種の病原菌が、調査対象とした細菌による死因の54.9%(52.9~56.9)を占めた。 死因となった感染症や病原菌は、地域や年齢により異なった。また、調査対象細菌による年齢標準化死亡率は、サハラ以南アフリカのスーパーリージョンで最も高く230人/10万人(95%UI:185~285)だった一方、高所得のスーパーリージョンで最も低く52.2人/10万人(37.4~71.5)だった。 黄色ブドウ球菌は、135ヵ国において細菌による死亡の最大の原因で、また、世界的にみて15歳超で最も多く死亡と関連していた。5歳未満の小児では、肺炎球菌が細菌による死亡の最大の原因だった。 2019年に、600万人以上が3種の細菌感染症で死亡しており、200万人超が死亡した感染症は下気道感染症(400万人)と血流感染症(291万人)の2種で、100万人超の死亡は腹膜・腹腔内感染症(128万人)によるものだった。 著者は、「今回調査した33細菌属・種は、世界的な健康ロスの実質的な原因であるが、感染症や地域によって分布にかなりのばらつきがあった。GBDレベル3の根本的な死因と比較すると、これら細菌関連死は2019年の世界で2番目に多い死因に分類される」と述べ、国際保健コミュニティで緊急に介入を優先すべき事項とみなすべきで、対応戦略として、感染予防、抗菌薬の最適使用、微生物学的分析能力の改善、ワクチン開発・改良、利用可能なワクチンのより広範な使用などを提言している。

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医師が選ぶ「2022年の漢字」TOP5を発表!【CareNet.com会員アンケート】

12月12日は漢字の日。毎年この日に、京都の清水寺で発表される「今年の漢字」(主催:日本漢字能力検定協会)。本家より一足先に、CareNet.com医師会員1,029名に選んでいただいた「2022年の漢字」TOP5を発表します。1年を振り返ってみて、皆さんはどの漢字をイメージしましたか?第1位「戦」第1位には、104票の圧倒的な得票数で「戦」が選ばれました。2022年2月24日にロシアがウクライナへ軍事侵攻し、全世界が戦争の終結を願っているものの、冬を迎えた今も戦禍は続いています。長引くコロナとの戦いに加え、戦争による影響もあり、世界経済も不安定になった1年でした。「戦」を選んだ理由(コメント抜粋)ウクライナの戦争が長引いて庶民は物価高騰との戦いであるから。(50代 眼科/島根)ロシアによるウクライナ侵攻が最大のニュースだった。(40代 循環器内科/東京)ウクライナのように、突如侵略戦争の犠牲になる可能性について考えた。(30代 精神科/埼玉)ウクライナ侵略に正当性はない。(50代 小児科/神奈川)ウクライナにおける惨状を目の当たりにして。(50代 その他/群馬)ワンオペ育児に奔走、コロナと戦い世界的に戦争もあったから。(20代 麻酔科/北海道)第2位「乱」第2位には、「乱」がランクイン。過去にも何度か登場していて昨年は5位でしたが、混乱の世の中は変わらず、再浮上する結果となりました。第1位と同様に、ウクライナでの戦争や、オミクロン株に悩まされたコロナ禍、国内外の経済の混乱などが理由に挙げられました。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)円安に拍車がかかったり、ミサイルが幾度も飛んできたり、乱れに乱れた1年だったと思うから。(40代 循環器内科/青森)相変わらず社会全体が混乱のさなかにあると感じました。(40代 外科/岡山)ウクライナに対するプーチンの乱暴。(50代 形成外科/北海道)戦争、コロナ、資源高、円安など混乱が続いているから。(40代 精神科/広島)ロシアによるウクライナ侵攻、為替の乱高下などが印象に残っているため。(20代 臨床研修医/香川)コロナ禍やウクライナ情勢、経済的な混乱を目の当たりしたから。(40代 腎臓内科/福岡)■第3位「安」第3位は「安」。全35票のうち27票で理由に挙げられたのが「円安」。一時は32年前の水準と並ぶ1ドル150円台を記録しました。また、7月の参院選で起きた安倍元総理の銃撃事件を挙げた方も見られ、複合的な理由から「安」が上位に入る結果となりました。 「安」を選んだ理由(コメント抜粋)数十年ぶりの円安ドル高、物価上昇など印象に残ったため。(50代 泌尿器科/鹿児島)安倍元総理の事件のインパクトの大きさと安全安心な世界になってほしい気持ちを込めて。(20代 内科/東京)円安が進んでいよいよ日本の国家としての危機が強まったから。(30代 内科/東京)安倍元首相の銃撃事件、急激な円安、安全保障問題など関連することが多いと感じた。(30代 内科/福岡)第4位「禍」昨年はトップだった「禍」ですが、ここにきて第4位に転落。コロナ禍は依然として続いていますが、今年は治療薬や2価ワクチンの登場などもあり、対抗する手段が増えたことで、収束の兆しが見えてきました。 「禍」を選んだ理由(コメント抜粋)医療逼迫にて行政にも振り回される1年となった。(50代 救急科/愛知)コロナが終わらない。(50代 内科/兵庫)コロナ禍は未だ終息せず、ウクライナの戦禍もあったから。(40代 麻酔科/愛知)第5位「耐」第5位は「耐」。オミクロン株の流行の波が何度もやってきた2022年、医療者には引き続き忍耐が強いられました。全国旅行支援のキャンペーンも開始されるなど、日本も解禁ムードに向かっています。来年こそは、これまで我慢していたことをできる日常が戻ってくるといいですね。 「耐」を選んだ理由(コメント抜粋)月並みだけど、コロナ禍で外出(旅行、飲み会など)を我慢してきた。忍耐のみ。(70代以上 膠原病・リウマチ科/神奈川)まだ旅行や宿泊へ行けずに耐えているから。全面解除になったら、ぜひ政府に医療者限定特別旅行期間をもうけてもらわないと、割に合わない。(50代 精神科/石川)値上げや円安で我慢が強いられる年だから。(40代 眼科/大阪)アンケート概要アンケート名『2022年を総まとめ&来年へ!今年の漢字と来年こそ行きたい旅行先をお聞かせください』実施日   2022年11月3日~10日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,029件

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女性のサル痘感染、性自認や性行為で臨床症状が異なる/Lancet

 2022年5月~11月に、世界で7万8,000人以上のヒトサル痘ウイルス感染が報告されたが、主に男性と性行為を持つ男性で発生している。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のJohn P. Thornhill氏らは、今回、15ヵ国のシスジェンダーおよびトランスジェンダー女性と、出生時に女性性を割り当てられたノンバイナリーにおけるサル痘感染の疫学的および臨床的な特性を記述し、リスク因子の特定と理解の向上を目的とする症例集積研究を行った。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月17日号に掲載された。136人のデータを解析、性行為による感染が多い 本研究では、サル痘ウイルス感染の診断件数が多い地域の研究者と連絡を取り、サル痘ウイルス感染が確定された女性およびノンバイナリーのデータを提供するよう依頼した。 参加施設は、匿名化された構造的症例報告スプレッドシートに感染した女性およびノンバイナリーの関心変数のデータを記述したほか、可能性のある曝露、人口統計学的因子、職業、早期の症状、HIVの感染状況、併存する性感染症などを中心に、疑われる感染経路についても尋ねられた。 2022年5月11日~10月4日までに15ヵ国(欧州、北米・南米、アフリカ、イスラエル)でサル痘ウイルスに感染した136人のデータが寄せられた。トランス女性が62人(46%)、シス女性が69人(51%)、ノンバイナリーが5人(4%)であった。ノンバイナリーは数が少ないため、シス女性と合わせて解析が行われた(シス女性/ノンバイナリー74人)。全体の年齢中央値は34歳(四分位範囲[IQR]:28~40、範囲:19~84)だった。 136人中121人(89%)が、男性との性行為を報告した。37人(27%)はHIV感染者で、トランス女性(62人中31人[50%])がシス女性/ノンバイナリー(74人中6人[8%])よりも高率であった。 性行為による感染が疑われたのは、トランス女性が55人(89%、残りは感染経路不明)、シス女性/ノンバイナリーは45人(61%)であった。性行為以外の感染経路は、シス女性/ノンバイナリーでのみ報告され、性行為以外の密接な接触が7人(9%)、家庭が7人(9%)、職場(医療従事者)が4人(5%)だった。診断前誤診が23%、肛門性器の小水疱膿疱性発疹が多い サル痘ウイルス感染の診断の前の誤診が136例中31人(23%)で認められ、トランス女性(62人中6人[10%])よりも、シス女性/ノンバイナリー(74人中25人[34%])で高率であった。 データが得られた集団における症状は、発疹が134人中124人(93%)に認められ、121人中105人(87%)は小水疱膿疱性と記述されていた。また、少なくとも1つの肛門性器病変が129人中95人(74%)にみられた。 病変数中央値は10個(IQR:5~24、範囲:1~200)であった。粘膜病変(膣、肛門、中咽頭、眼球)は119人中65人(55%)で発現した。膣および肛門の性行為は、これらの部位での病変の発生と関連していた。 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で検査した14の膣スワブ検体のすべてで、サル痘ウイルスDNAが検出された。 17人(13%)が入院した。入院理由は、病変部の細菌性重複感染が2人、肛門直腸の重度疼痛の管理が3人、嚥下痛が3人などであった。33人(24%)がテコビリマット(tecovirimat)による治療を受け、6人(4%)は曝露後にワクチン接種を受けた。死亡の報告はなかった。 著者は、「女性における診断の遅れや誤診を避けるために、特別な注意を払う必要がある」と指摘し、「トランス女性およびシス女性/ノンバイナリーでは、病変部位は性行為の種類とほぼ一致していた。臨床医は、性自認や性行為によって臨床症状が異なることに留意する必要がある」としている。

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ソトロビマブ、高リスクCOVID-19で優れた重症化予防効果/BMJ

 オミクロンBA.1およびBA.2変異株が優勢な時期のイングランドでは、重症化のリスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の日常診療において、中和モノクローナル抗体ソトロビマブは抗ウイルス薬モルヌピラビルと比較して、28日以内の重症化の予防効果が優れ、60日の時点でも結果はほぼ同様であったことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBang Zheng氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年11月16日号で報告された。イングランドのEHRデータを用いたコホート研究 研究グループは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、COVID-19による重症転帰のリスクが高い患者において、重症化の予防効果をソトロビマブとモルヌピラビルで比較する目的でコホート研究を行った(UK Research and Innovation[UKRI]などの助成を受けた)。 本研究は、OpenSAFELY-TPPプラットフォーム(国民保健サービス[NHS]の電子健康記録[EHR]の解析のための、安全で透明性の高いオープンソースのソフトウエアプラットフォーム)を用いた実臨床コホート研究であり、イングランドの総合診療(GP)施設に登録している2,400万人から、患者レベルのEHRデータが取得された。 2021年12月16日以降に、ソトロビマブまたはモルヌピラビルによる治療を受けた、COVID-19による重症化リスクが高い成人COVID-19患者が対象となった。主要アウトカムは、治療開始から28日以内のCOVID-19による入院およびCOVID-19による死亡であった。さまざまな解析法で、矛盾のないほぼ同様の結果 2021年12月16日~2022年2月10日の期間に、3,331例がソトロビマブ、2,689例がモルヌピラビルによる治療を受けた。全体(6,020例)の平均年齢は52.3(SD 16.0)歳、58.8%が女性、88.7%が白人で、87.6%はCOVID-19ワクチンを3回以上接種していた。 治療開始から28日以内に、87例(1.4%)がSARS-CoV-2感染により入院または死亡した(ソトロビマブ群32例、モルヌピラビル群55例)。 居住地域で層別化したCox比例ハザードモデルでは、人口統計学的因子、高リスクコホート分類、ワクチン接種状況、暦年、BMI、その他の併存疾患で補正すると、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群に比べ、COVID-19による入院または死亡のリスクが大幅に低かった(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.33~0.88、p=0.01)。 傾向スコアで重み付けしたCoxモデル(HR:0.50、95%CI:0.31~0.81、p=0.005)および完全ワクチン接種者に限定した解析(HR:0.53、95%CI:0.31~0.90、p=0.02)でも、これと矛盾のない結果が得られた。また、他の因子の有無による層別解析でも、実質的な効果の修正は検出されなかった(交互作用検定のp値はすべて>0.10)。さらに、この結果は、イングランドでオミクロンBA.2が優勢だった2022年2月16日~5月1日の期間に治療を受けた患者の探索的解析でもほぼ同様であった。 治療開始から60日以内(95例[1.58%]がCOVID-19で入院または死亡、ソトロビマブ群34例、モルヌピラビル群61例)の層別Cox回帰分析でも、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群よりもCOVID-19による入院・死亡の予防効果が優れた(4つのモデルのHRの範囲は0.46~0.51、すべてp<0.05)。 著者は、「これらの結果は、入院を要さないCOVID-19患者の治療において、モルヌピラビルよりもソトロビマブを優先する現行ガイドラインを支持するものである」としている。

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第137回 新型コロナ「5類」引き下げ、今やる3つのデメリット

「またこの議論が出てきたか」と感じている。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の『感染症法上の5類扱い問題』である。加藤 勝信厚生労働大臣は11月30日、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに対して、感染症法上の分類の見直し検討を念頭に現在のウイルスの病原性・感染性などに関するリスク評価を示すよう求めたという。釈迦に説法になってしまうが、改めて新型コロナの感染症法上の分類について触れておくと、現在は「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、外出自粛要請や入院勧告が可能で、医療費が全額公費負担なため、法的には感染症法上の2類とほぼ同等となっている。また、これとは別に新型コロナワクチンに関しては予防接種法の臨時接種扱いで、現時点でのワクチン接種は全額公費負担だ。もっとも陽性者報告などは簡略化されたことや、軽症の陽性者が大半を占めるようになり、自主的な自宅隔離や増加した発熱外来での対応止まりも増えたことなども相まって、現状は限りなく5類に近い扱いとも言える。さて個人的にはこの件についてどんな見解かと言うと、「見直し議論は大いにやって良いと思うが、実際の分類変更は多角的かつ慎重に検討すべき」という立場だ。なぜこのように敢えて言及するかと言えば、最近の新型コロナ5類化議論は世論や一部の政治家の主張に押され気味なことに加え、現在の岸田 文雄政権の支持率がかなり低くなっているため、ポピュリズムとも言える安易な判断をしかねない懸念があるからだ。この議論で最も慎重に検討すべきなのは今後の変異株登場の恐れと現在の重症化率についてである。2020年初以来、丸3年のコロナ禍の中で新型コロナでは武漢株→アルファ株→デルタ株→オミクロン株と流行株が入れ替わった。現在のオミクロン株の流行はほぼ丸1年が経過し、国内では最長流行期間を維持している変異株であるのは確かだ。もっともこの間もオミクロン株内の亜系統で流行株が入れ替わっている。これほど流行株が不安定な中で、単純にオミクロン株の特性を基準に法的位置づけを考えるべきかは検討の余地がある。そもそも今回の新型コロナでは、ウイルスの生存原理としての「感染力が強くなれば、重症化率は低下するだろう」というロジックが、武漢株からデルタ株変遷時には“幻想”にすぎなかったことが明らかになった。今の時点でオミクロン株感染者の重症化率が低下しているからと言って、今後もこの状況が続くと考えるのはやや拙速の感がある。感染力の強さゆえに新規感染者が増加し、その過程で強毒の変異株が出現する可能性も十分に考慮に入れなければならない。また、そもそもこの議論では、5類化を支持する一般人を中心に「感染者の数で考えるべきではなく、重症化率で考えるべき」との主張が多い。この手の主張をする人たちの中での最近の流行りは、財務省が各種データからまとめた各感染拡大期の重症化率データの引用である。確かにこのデータを見れば、第6波以降の重症化率や致死率は大幅に低下し、第7波では季節性インフルエンザと同等以下になっているように見える。しかし、この数字は極めて数多くの交絡因子を含んでいる。そもそも第5波と第6波以降での最大の違いはワクチン接種の有無である。第5波時もすでにワクチン接種は進行していたが、重症化率が最も深刻だったと言われる2021年8月は月末時点で全国民の1回目接種率がようやく50%超という状況に留まっていた。現在のオミクロン株の重症化率は2回目までが80%超、3回目までが70%弱の接種率を達成している中でのもの。真の重症化率はワクチン効果でマスクされている可能性がある。5類化議論、もっと言えば季節性インフルエンザとの比較をするならば、ワクチン接種回数や最終接種完了からの経過時間などの層別解析でワクチン接種状況に応じたデータを基に検討しなければ判断を誤る可能性もある。同時に財務省とりまとめの重症化率を基に5類化議論をするならば、それより一足先に始まった新型コロナワクチン接種の無償化終了の是非議論との兼ね合いをどうするかも欠かせない。少なくとも高齢者や基礎疾患保有者では、いまだ油断のならない感染症であることは明白である。5類化するならば、こうした人に対して季節性インフルエンザワクチンのような公費接種(費用の一部に公費負担がある場合)を提供するか否かは明確にしなければならない。というか、それなくして5類化はあまりにも暴論と言える。また一方で、5類化を主張する一般人の多くは、判で押したように「5類にすればどこの医療機関でも診てもらえるようになり、医療逼迫は防げる」というフレーズを口にする。しかし、これは“幻想”に過ぎない。すでに全国で新型コロナ対応を行う発熱外来を有する医療機関は4万軒超に達しているが、これだけ感染力の強い新型コロナでは、院内の導線確保がままならないなどの理由でどうあがいても対応できない医療機関はある。結局、5類化したところで今より発熱外来の対応施設が激増するとはとても考えにくい。そんな中、全国でどのような診療体制を構築するかという議論を棚上げにはできない。同時に整備しなければならないのが、この感染症の特徴ともいえる後遺症対応である。現在はごく一部の後遺症外来対応の医療機関を崖っぷちに立たせたかのような診療体制が続いている。地域ごとの後遺症診療体制の確立は急務だ。さらに検討しなければならないのが治療費の公費負担の在り方である。現在の新型コロナ治療薬は新規の抗体医薬や抗ウイルス薬など製薬企業にとって高額な開発費を要するものばかりで、すべての治療薬が5類という“ありふれた”感染症にしては高薬価である。そのアンバランスさはまるで田んぼのあぜ道をポルシェが疾走するかのごとき状況である。すでに薬価収載されたものでも、自己負担となれば患者は万単位の支払いを迫られることになり、「だったら要らない」という患者も出現するだろう。これら多くの変数を考慮した議論が必要で、およそ1~2ヵ月で結論を出せるものだとは思えない。というか、そもそも感染症法上の1~5類という硬直化した分類の枠内で考えるのもなかなか困難と言ってもいいかもしれない。にもかかわらず、政治の側から5類化議論が比較的安易に飛び出しているように私の目には映る。しかも、日本版CDC創設を根回しなしに突然進めた岸田政権である。正直、この先の行方は気が抜けないと個人的には思っている。

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コロナワクチン追加接種後も重篤なCOVID-19となる患者の特徴(解説:寺田教彦氏)

 2022年11月末、新型コロナウイルス患者は増加傾向となり、「第8波」への対応が問題となっている。「第1波や第2波」の頃と比較すると、新型コロナワクチンの普及や、重症化リスクの高いCOVID-19患者への抗ウイルス薬処方が可能になるなど治療の選択肢が増えており、これらの適切な活用が求められている。 本論文の執筆者であるUtkarsh Agrawal氏は、過去に新型コロナワクチン初回接種完了後も重症化する患者(COVID-19関連入院またはCOVID-19関連死)についてスコットランドで検討しており、高齢(80歳以上)、5つ以上の併存疾患、過去4週間以内の入院歴、新型コロナウイルスに接触するリスクの高い職業、行動(10回以上の検査歴)、介護施設入居者、社会的弱者、男性、前喫煙者でリスクが高いことを報告していた(Agrawal U, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:1439-1449.)。 当時と今回の論文で異なる点は、流行株がアルファ株からオミクロン株に変化した点と、新型コロナワクチンの接種回数が以前の研究では2回接種者を対象としていたが、本研究ではワクチン2回接種後に追加接種をした患者を対象としている点である。 「第8波」を迎える本邦の環境としても、流行株はオミクロン株と考えられ、ワクチンの接種も3回目以降の追加接種済みの患者が増えていることから、この論文を参考にしやすい状況と考えられる。 本論文の概要は「ブースター接種後もコロナ重症化リスクが高い人は?/Lancet」にまとめられており、ブースター接種後も高リスク患者の特徴は、高齢者(aRR:3.60[95%信頼区間[CI]:3.45~3.75])、5つ以上の併存疾患(aRR:9.51[95%CI:9.07~9.97])、免疫抑制状態(aRR:5.80[95%CI:5.53~6.09])、慢性腎臓病(aRR:3.71[95%CI:2.90~4.74])等である。※aRR:人口統計学的、臨床的因子と重症COVID-19との関連についてワクチン接種後の時間で調整した率比 本研究の結果を参考にできる臨床場面の1つは、執筆者の指摘どおり、抗コロナ薬の処方の判断がある。以前オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化予防に関する報告がされていた(オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰(解説:寺田 教彦 氏)-1570)。本研究で特定された、ブースター接種後もCOVID-19重症化リスクの高い患者層に対して、ニルマトレルビル等の抗ウイルス薬の処方をすることでCOVID-19重症化リスクが低下するか否かのエビデンスは今後の報告を待つ必要はあるが、現時点でのエビデンスとしては、これらの患者に対して抗ウイルス薬の処方を検討することは妥当だろう。 また、筆者は、重症化リスクの高い人々には、2回目接種以降のブースター接種を優先的に行うことも提案している。新型コロナウイルスワクチンのブースター接種により重症化率等の低下は認められており、本邦においてもブースター接種が未実施の場合は適切なタイミングでの接種が望ましいだろう。 ただし、ワクチンのブースター接種の実施に関しては、メリット(感染予防効果、重症化予防効果、集団免疫効果など)とデメリット(費用、副反応など)は継続して考えていく必要がある。本論文のように、新型コロナウイルスワクチン接種後もCOVID-19が重症化するリスクの高い患者層を特定するとともに、健康成人や重症化リスクの高い患者層それぞれに対して、ワクチンを追加接種する適切なタイミングを考察するための研究も望まれる。

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4回目接種後、医療者での抗体価推移と有効性の持続期間/NEJM

 4回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体価は2・3回目接種後と比較して違いはあるのか。そしてコロナワクチンによって上がった抗体価はどのくらいの期間、持続するのか。イスラエル・Sheba Medical CenterのMichal Canetti氏らは、同国の医療従事者における4回目接種後6ヵ月間の液性免疫応答とワクチン有効性を評価。2回目および3回目接種後と比較した。NEJM誌オンライン版2022年11月9日号のCORRESPONDENCEに掲載の報告より。コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を2回目および3回目と比較 SARS-CoV-2検査および血清学的フォローアップ検査によって感染歴がないことが確認され、4ヵ月以上前に3回目接種を受けていたコロナワクチン4回目接種者が対象。4回目接種後の液性免疫応答(IgGおよび中和抗体の測定によって評価)を、2回目および3回目の投与後と比較した。 コロナワクチンの有効性は、以下の期間(4回目の接種後7~35日、36~102日、または103~181日)ごとに4回目接種を受けた参加者の感染率を、3回接種者の感染率と比較することによって評価された。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、年齢、性別、および職業により調整し、経時的な感染率の違いを説明するための時間スケールとして暦時間が使用された。死亡や追跡不可となった参加者はいなかった。 コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を調べた主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2感染歴のない参加者のうち、6,113人(年齢中央値48[37~59]歳)が液性免疫応答の分析に含まれ、1万1,176人(年齢中央値49[36~65]歳)がコロナワクチン有効性の分析に含まれた。・抗体反応はコロナワクチン接種後約4週間でピークに達し、13週間までに4回目接種前に見られたレベルまで低下し、その後安定していた。・コロナワクチン4回目接種後6ヵ月の追跡期間を通じて、週ごとに調整されたIgGおよび中和抗体レベルは、3回目接種後と同等であり、2回目接種後に観察されたレベルと比較すると著しく高かった。・コロナワクチン3回接種者と比較して、4回接種者ではSARS-CoV-2感染に対する保護効果が強化された。全体のワクチン有効性は41%(95%信頼区間[CI]:35~47)だった。・ワクチンの有効性は接種後の時間とともに低下し、接種後最初の5週間では52%(95%CI:45~58)だったのに対し、15~26週間では-2%(95%CI:-27~17)に低下した。 著者らは今回の結果について、「コロナワクチン3回目接種が2回目接種と比較して、免疫応答の改善と持続をもたらしたのに比較すると4回目接種の追加の免疫学的利点ははるかに小さく、ワクチン接種後13週までに完全に弱まった。この結果は、4回目接種を受けた患者のコロナワクチン有効性の低下と相関しており、接種後15~26週においては3回目接種後と比較した実質的な追加効果は見られなかった」とした。そのうえで、「これらの結果は、インフルエンザワクチンと同様に、4回目の接種および将来の追加接種を、流行の波に合わせて、または季節的に利用できるように賢明なタイミングで行う必要があることを示唆している」とまとめている。

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COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーの臨床的特徴-ワクチン接種の有無で比較-(解説:小金丸博氏)

 COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーやフロントラインワーカーの臨床的・ウイルス学的特徴をワクチン接種の有無で比較した前向きコホート研究の結果がJAMA誌2022年10月18日号に報告された。エッセンシャルワーカーとフロントラインワーカーは、他者と3フィート(約91cm)以内の距離で接触する仕事を週に20時間以上行うものと定義され、具体的には医療従事者のほか、教育、農業、食品加工、輸送、固形廃棄物収集、公共事業、行政サービス、保育などの分野が含まれた。この研究は、米国において、症状の有無に関係なく毎週行うサーベイランス検査でSARS-CoV-2感染症と特定された労働者を対象とし、変異株の種類やワクチン接種状況別に臨床症状やウイルスRNA量の評価を行った。 本試験ではCOVID-19感染者1,199例が解析に組み込まれた。デルタ変異株に感染した288例の解析によると、感染前に2回または3回のmRNAワクチンを接種したことが、症状の軽減や有症状期間の短縮と関連していた。オミクロン変異株に感染した743例の解析でも、感染前に3回のmRNAワクチンを接種したことが、同様の関連性を示した。また、どちらの変異株に感染した患者でも、感染前に2回のmRNAワクチンを接種したことが平均ウイルスRNA 量の減少と有意に関連していた。 本試験で評価された被験者の年齢中央値は41歳と若く、1つ以上の慢性疾患を有する割合は27.4%であった。肥満の割合などはわからないものの、被験者の多くは重症化リスク因子を有しておらず、本試験のみでは重症化リスク因子を有する集団でのワクチン効果を評価することは難しい。 COVID-19患者に濃厚に接触する可能性の高い職種であっても、ワクチンを接種することによって症状の緩和や有症状期間の短縮を期待できることが示された。本研究では感染予防効果は検証されていないものの、エッセンシャルワーカーの休職期間の短縮は社会的なメリットが大きいと考えられるため、引き続きワクチン接種の対象とするのが望ましいと考える。 無症候者の割合はデルタ変異株で3.9%だったの対し、オミクロン変異株では20.2%と高率だった。症状の程度、罹病期間、潜伏期間、感染性、治療薬やワクチンの有効性などが変異株によって変化することがCOVID-19の特徴のひとつであり、今後も変異株の動向を注視する必要がある。

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B型肝炎(HB)ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第15回

今回は、ワクチンで予防できる疾患(VPD:vaccine preventable disease)の1つであるB型肝炎を取り上げる。B型肝炎はがんの原因となりうるウイルス性疾患の1つで、わが国では2006年に定期接種に導入された。ワクチンで予防できる疾患B型肝炎ウイルス(HBV)は肝臓に感染し、一過性の感染もしくは持続性の感染を起こす。B型肝炎に感染すると20~30%が急性肝炎を発症し、そのうち1%前後が劇症化して昏睡・死亡に至ることがある。ウイルスを排除できず持続感染に至ると、慢性肝炎を発症し、さらに肝硬変、肝細胞がんを生じることがある。この持続感染の多くは出産時や乳幼児期に成立するため、ワクチンによる出生早期からの予防が望まれる1)。感染は血液や体液を介して成立する。母親がHBV保有者である場合、妊娠中あるいは出産中に、胎児もしくは新生児が母親の血液を介して感染することがある(垂直感染)。また、近年では性感染の割合も増加しており、2006~2015年に報告された急性B型肝炎のうち70%は性的接触による感染であった2)。さらに父子感染、保育園での集団感染といった汗、涙などによる感染が疑われる例も報告されている。そのほか医療従事者や清掃業者などが針刺し事故などの血液曝露で感染することがある1)(水平感染)。急性B型肝炎は感染症法において5類感染症に位置付けられており、診断から7日以内の届け出が義務付けられている1,3)。WHO(世界保健機関)による2019年の報告によると全世界の2億9,600万人がHBV持続感染者(キャリア)で、肝硬変や肝細胞がんにより年間82万人が亡くなっている4)。ワクチンの概要と接種スケジュール(表)表 B型肝炎ワクチンの概要画像を拡大する(おとなとこどものワクチンサイトより引用)開発、普及の歴史B型肝炎ワクチンは、1985年に母子感染予防事業として導入された。この事業では全妊婦で感染を確認し、HBs抗原陽性妊婦から出生した乳児に公費でワクチンおよび免疫グロブリン投与を行った。これにより94~97%と高率に母子感染が予防できるようになった5)。さらにWHOおよびUNICEF(国際連合児童基金)は、1992年にB型肝炎制圧のため、全世界の全新生児を対象にB型肝炎ワクチンの接種を行うように推奨した。これを受けて2016年10月には定期接種(A類疾病)となり、わが国においてもB型肝炎ワクチンはユニバーサルワクチンとなった1,3)。1)効果B型肝炎ウイルスの感染を予防する。2)対象定期接種(1)1歳に至るまでの年齢にある者(2)長期療養などで定期接種期間中に受けることができなかった者(治療後2年間)3)保険適応(1)HBs抗原陽性(B型肝炎ウイルスキャリア)の母親から出生した児(2)血液曝露後:事故発生からなるべく早く経静脈的免疫グロブリン療法(IVIG)と共に1回目を接種する(保険適応は7日以内)。業務上の曝露でHBs抗原が陽性なら労災保険が適応される。4)任意接種上記以外のすべての場合5)副反応ワクチン接種による一般的な副反応のみで、特異的な副反応は報告されていない。複数回の接種により、副反応の発現率が上昇することはない。6)注意点B型肝炎ワクチンによりアナフィラキシーを起こしたことがある場合は禁忌である。日常診療で役立つ接種ポイント1)どのような人に勧めるか?血液・体液に曝露する可能性のあるすべての人、つまり基本的にはすべての人に推奨される。特に医療・介護従事者、清掃業者、血液透析患者、コンタクトスポーツ(ラグビー、レスリングなど)をする人には必須である。そのほかHIV陽性者などの免疫不全者、HBs抗原陽性者のパートナーにも強く推奨される。また、海外留学の要件になることも多く、留学を考える人にとっても必須ワクチンの1つである。2)3回接種の途中で、異なる種類のワクチンを使っても良いか?問題はない。現在国内には、遺伝子型A由来のワクチン(商品名:ヘプタバックス-II[MSD社])と遺伝子型C由来のワクチン(同:ビームゲン[KMバイオロジクス社])の2種類が流通している。いずれも異なる遺伝子型に対しても有効であり、互換性がある。3)3回目接種が遅れた場合はどうすればよいか?気付いた時点で速やかに3回目を接種する。4)3回接種後の抗体確認は必要か?定期接種では不要である。ただし母子感染予防対象者、医療従事者などのハイリスク者では、3回目接種から1~2ヵ月後の抗体検査が推奨される。HBs抗体値が10mIU/mL未満の場合は1回の追加接種を行い、環境感染学会が推奨する図のアルゴリズムで対応する。被接種者の約10%が、1シリーズ(3回)接種後も抗体反応ができない(non responder)もしくは悪い(low responder)とされている。なお、若いほど抗体獲得率が高い7)ため、なるべく早期の接種が推奨される。図 ワクチン接種歴はあるが抗体の上昇が不明の場合の評価画像を拡大する(環境感染学会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020.より転載)今度の課題、展望従来のワクチンで十分な感染予防効果が期待できないワクチンエスケープ株が報告されており、新しいワクチンの開発が進んでいる。HBVは3種類のエンベロープ蛋白(small-S、middle-S、large-S蛋白)を持つ。従来のワクチンはsmall-S蛋白を抗原としているが、現在開発されているのはmiddle-S蛋白からなる“Pre-S2含有”ワクチンと、large-Sとsmall-S蛋白を併用するワクチンで、より多くのHBV株に対する効果が期待される1,8)。B型肝炎ワクチンはユニバーサルワクチンである。職種を問わず全世代で推奨されるワクチンの1つであり、2016年4月以前に生まれた人の多くはワクチン接種歴がなく免疫を持たないため、1度は接種を検討すると良いだろう。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト1)B型肝炎、海外渡航者のためのワクチンガイドライン/ガイダンス2019. 日本渡航医学会; 2019.p.85-86.2)国立感染症研究所. IASR.2016;37:438.3)日本ワクチン産業協会. 予防接種に関するQ&A集. 2021.(2022年9月アクセス)4)Hepatitis B. WHO.5)白木和夫. IASR. 2000;21:74-75.6)環境感染学会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020.(2022年11月アクセス)7)厚生労働省. B型肝炎ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版).(2022年9月アクセス)8)Washizaki A, et al. Nature Communications. 2022;13:5207.講師紹介

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コロナ感染、繰り返すほど重症化・後遺症リスク増

 新型コロナウイルスへの複数回の感染により、死亡と後遺症リスクは2倍超、入院リスクは3倍超になることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによるコホート研究で明らかになった。新型コロナウイルスの感染による死亡や後遺症のリスクは知られているが、1回感染後の再感染によってそれらのリスクが高くなるかどうかは不明であった。Nature Medicine誌2022年11月10日掲載の報告。コロナ2回目以上の複数回感染群では後遺症発現のHRが2.10 調査は、2020年3月1日~2022年4月6日の米国退役軍人省の医療データベースを利用し、コロナ1回目感染者44万3,588例、コロナ2回目以上の複数回感染者4万947例(コロナ2回目感染者3万7,997例[92.8%]、コロナ3回目感染者2,572例[6.3%]、コロナ4回以上感染者378例[0.9%])、対照群として1回も感染していない未感染者533万4,729例を抽出し、死亡率、入院率、後遺症発現率を解析した。 コロナ複数回感染による死亡や後遺症のリスクを解析した主な結果は以下のとおり。・コロナ1回目感染群と比較して、コロナ2回目以上の複数回感染群では、全死因死亡のハザード比(HR)は2.17(95%信頼区間[CI]:1.93~2.45)、入院のHRは3.32(95%CI:3.13~3.51)であった。・同じく1つ以上の後遺症発現のHRは2.10(95%CI:2.04~2.16)で、腎障害(HR:3.55、95%CI:3.18~3.97)、肺障害(3.54、3.29~3.82)、血液凝固異常(3.10、2.77~3.47)、心血管障害(3.02、2.80~3.26)、消化器障害(2.48、2.35~2.62)、倦怠感(2.33、2.14~2.53)、精神的な不調(2.14、2.04~2.24)糖尿病(1.70、1.41~2.05)、筋骨格系障害(1.64、1.49~1.80)、神経学的障害(1.60、1.51~1.69)であった。これらは主に急性期に認められたが、コロナ再感染から6ヵ月後でも認められた。・これらのリスクは、新型コロナウイルスワクチンの接種状況に関係なく認められた。・コロナ感染回数が増えるほど後遺症リスクは上昇した。未感染群と比較して、コロナ1回目感染群のHRは1.37(95%CI:1.36~1.38)、コロナ2回目感染群のHRは2.07(95%CI:2.03~2.11)、コロナ3回目以上感染群のHRは2.35(95%CI:2.12~2.62)であった。 これらの結果より、同氏らは「新型コロナウイルスへの複数回感染は、初回の感染よりも死亡、入院、後遺症リスクが高まることが明らかになった。すでに1回感染した人は、コロナ2回目の感染を予防することでさらなる健康問題を防ぐことができる」とまとめた。

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第125回 新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省2.子育て支援充実に、時短勤務者へ新たな給付制度を検討へ/内閣府3.コロナ感染拡大で少子化さらに進行、出生数80万人以下に/厚労省4.かかりつけ医機能について医療機関が情報開示へ/全世代型社会保障構築会議5.初の国産、新型コロナワクチンの承認申請へ/塩野義6.認知症の新薬普及に向けた体制整備を関連6学会が提言1.新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省11月27日に民放番組に出演した加藤勝信厚労大臣は、厚生労働省において、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけの見直しに向け、本格的な検討に入っていることを認めた。現在、臨時国会で審議されている感染症法改正案には、新型コロナウイルス感染症の類型の見直しを「速やかに検討する」と附則が加えられており、来月上旬の成立を待って、厚生労働省は成立後の速やかな検討を開始するとしている。(参考)新型コロナ「5類」引き下げ、本格検討へ 特例措置見直しも 厚労省(毎日新聞)新型コロナ「5類」への引き下げ 加藤厚労相「規定に則って早期に検討(FNN)2.子育て支援充実に、時短勤務者へ新たな給付制度を検討へ/内閣府すべての世代で支え合う社会保障の制度の実現を目指すため、内閣府は第9回全世代型社会保障構築会議を11月24日に開催した。子育て支援のために、育児中に時短勤務を選んだときに新たな給付を行う仕組みや、育児休業を取った後の職場復帰を容易にするため、休業期間中でも保育所の枠を確保できるシステムを構築する方向性をまとめるように求めた。今後は、論点の整理として年内に報告書を取りまとめ、来年度の「骨太の方針」などに盛り込む方針となっている。一方、具体的な財源についてはこれからの検討となる見込み。(参考)第9回全世代型社会保障構築会議(内閣府)全世代型社会保障実現へ 育児で時短勤務に給付の仕組み創設へ(NHK)少子化は急ピッチで進むのに…停滞する子ども関連予算の財源議論(毎日新聞)3.コロナ感染拡大で少子化さらに進行、出生数80万人以下に/厚労省厚生労働省は、令和4年9月までの人口動態統計の速報値を発表した。これによると、今年9月までに国内で新たに生まれた子供の数は外国人も含めて速報値で59万9,636人と、前年度の同期間の63万569人と比較して3万933人少なかった。このペースのままであれば、わが国の出生数は80万人を切ることになる。その一方、死亡者数は今年9月までに12万7,040人と去年の9月までの11万5,706人より1.1万人多く、人口減少も加速していることが明らかとなっている。出産する可能性の高い15~49歳の女性は1990年より減少しており、晩婚化に加え、新型コロナウイルス感染症により、婚姻数の減少などが背景にあるとみられる。(参考)9月までの出生数59万9千人余 年間80万人下回る過去最少ペース(NHK)出生数、コロナで悲観シナリオに迫る(日経ビジネス)人口動態統計速報(令和4年9月分)4.かかりつけ医機能について医療機関が情報開示へ/全世代型社会保障構築会議11月24日に開催された全世代型社会保障構築会議で、「かかりつけ医機能」の制度について、年末までにまとめる報告書に盛り込む論点整理が行われた。今後、この報告書の内容を盛り込んだ関連する法律の改正案を来年の通常国会に提出する見込み。かかりつけ医機能が発揮される制度整備のため、早急な実現に向けて、以下の項目の整理を求めた。かかりつけ医機能の定義は、現行の「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」をベースに検討。日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握し、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行うこと。休日・夜間の対応、他の医療機関への紹介・逆紹介、在宅医療、介護施設との連携や複数の医療機関が緊密に連携して実施することを求める。かかりつけ医機能の活用は、医療機関、患者それぞれの手上げ方式とし、医療機関は自らが有するかかりつけ医機能について、住民に情報提供を行うとともに、自治体がその機能を把握できるようにする仕組み。高齢者については幅広い診療・相談に加え、在宅医療、介護との連携に対するニーズが高いことを踏まえ、これらの機能をあわせもつ医療機関を自治体が把握できるようにする。地域全体で必要な医療が提供できる体制が構築できるよう、地域の関係者が、その地域のかかりつけ医機能に対する改善点を協議する仕組みの導入。(参考)全世代型社会保障構築会議の論点整理(全世代型社会保障構築会議)かかりつけ医の役割を法律明記へ 厚労省 コロナで「曖昧」指摘(毎日新聞)「かかりつけ医」を法律で定義、医療機関が満たす項目を情報公開へ…厚労省が方針(読売新聞)「かかりつけ医機能」地域ごとに改善点協議 全世代型構築会議が論点整理(CB news)5.初の国産、新型コロナワクチンの承認申請へ/塩野義塩野義製薬株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチンを11月24日に「成人における初回免疫(1回目、2回目接種)および追加免疫(3回目接種)によるCOVID-19の予防」を適応として、日本国内における製造販売承認申請を行った。今回のワクチンは、現在、使われているmRNAワクチンとは異なり、遺伝子組換えタンパクワクチンであり、国内の製薬企業による初の国産ワクチンの開発であり、早期の承認を目指す。政府はこれまで、国内のワクチン開発の支援を行うため、ワクチン生産体制等緊急整備事業を通して早期供給を促す支援をしてきており、同社にも476億円を交付しており、その成果が実った。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の国内における製造販売承認申請について(塩野義)開発状況について(厚労省)塩野義製薬 新型コロナワクチンの国内製造販売承認申請 国産で初(ミクスオンライン)塩野義製薬 新型コロナワクチンの承認申請 国内開発で初(NHK)6.認知症の新薬普及に向けた体制整備を、関連6学会が提言日本老年精神医学会、日本認知症学会など認知症に関連する6学会は、エーザイ社の新薬「レカネマブ」などの認知症の新薬開発が進む中、こうした新薬が実用化された場合に、患者の早期診断の手段が限られることや治療費が高額になるため、普及に向けて医療整備体制が必要とする提言を共同で発表した。現時点では、早期診断に用いられるPET(陽電子放射断層撮影)検査は保険適用外であり、今後、新薬の承認とともに早期の診断体制の確立と、費用対策効果について検討を求めている。(参考)アルツハイマー新薬、実用化へ「高額医療費巡る議論を」…認知症関連6学会が提言(読売新聞)認知症新薬の実用化に備え、医療体制整備を 関連6学会が提言(毎日新聞)

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COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、ファイザー)は、経口投与の利便性と、入院または死亡に対する高い有効性のため、多くのハイリスク患者にとって好ましい治療薬とされている。しかし、本剤は併用禁忌の薬剤が多数あるため、使用できる患者は限られる。フランス・Assistance Publique-Hopitaux de ParisのNicolas Hoertel氏らの研究グループは、重症化リスクの高いCOVID-19患者において、ニルマトレルビル/リトナビルが禁忌である割合について調査した。本結果は、JAMA Network Open誌2022年11月15日号のリサーチレターに掲載された。 本剤の禁忌については、リトナビルはチトクロームP450 3A(CYP3A)酵素を阻害し、CYP3Aの薬物代謝に高度に依存する薬剤の濃度を上昇させることで、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。また、強力なCYP3A誘導薬との併用により、ニルマトレルビルの濃度が著しく低下し、抗ウイルス効果が失われる可能性がある。重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も本剤の禁忌とされた。これらの医学的禁忌は、重症化リスクが高いCOVID-19患者に広くみられる可能性がある。 本研究では、2020年1月24日~2021年11月30日の期間で、パリ大学の36の大規模病院におけるCOVID-19入院患者6万2,525例において、米国食品医薬品局(FDA)がニルマトレルビル/リトナビルを禁忌とした条件に当てはまる患者の割合が調査された。被験者は、性別、年齢(65歳以下vs.66歳以上)、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10)の主章に基づく併存疾患ごとに層別化された。本研究は、STROBEレポートガイドラインに準拠して実施された。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値52.8歳(四分位範囲[IQR]:33.8~70.5)、女性3万1,561例(50.5%)、男性3万964例(49.5%)、入院後28日以内に死亡した患者4,861例。・COVID-19入院患者6万2,525例のうち、9,136例(14.6%)がニルマトレルビル/リトナビルの医学的禁忌を有していた。・禁忌を有していた患者の割合は、男性18.0%(5,568例/3万964例)、女性11.3%(3,577例/3万1,561例)で、男性のほうが女性よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、66歳以上26.9%(5,398例/2万64例)、65歳以下8.8%(3,738例/4万2,461例)で、高齢者のほうが若年者よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、併存疾患のある患者のほとんどの疾患で37.0%以上、併存疾患のない患者で3.9%(1,475/3万7,748例)となり、併存疾患のある患者のほうが、ない患者よりも高かった。・死亡した4,861例のうち、2,463例(50.7%)が禁忌を有していた。・死亡した患者で禁忌を有していた者の割合は、男性、女性、高齢者、若年者ではそれぞれ50%前後であったが、併存疾患のある者ではほとんどの疾患で60~70%台で、腎尿路生殖器系の疾患では91.5%であった。・禁忌を有していた患者で最も多かった条件は、重度の腎機能障害(3,958例、6.33%)と、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤の使用(3,233例、5.15%)であった。 本研究の限界として、本剤が禁忌でない患者でも、症状発現から5日以上経過した場合や、供給量が限られる場合があるため、一部の患者に使用できない可能性があることや、ワクチン接種、人種・民族、体重に関する情報は得られていないことなどが挙げられている。著者は「本結果は、ニルマトレルビル/リトナビル以外の新型コロナ治療薬の供給を予測することや、治療の選択肢の研究を継続することの必要性を裏付けている」としている。

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第136回 ゾコーバがついに緊急承認、本承認までに残された命題とは

こちらでも何度も取り上げていた塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)がついに11月22日、緊急承認された。今回審議が行われた第5回薬事分科会・第13回医薬品第二部会合同会議も公開で行われたが、緊急承認に対して否定的意見が多数派だった前回に比べれば、かなり大人しいものになった。今回の再審議に当たって新たに塩野義製薬から提出されたデータは同薬の第II/III相試験の第III相パートの速報値だが、その内容については過去の本連載で触れたので割愛したい。審議内で一つ明らかになったのは第III相パートの主要評価項目、有効性の検証対象の用量、有効性の主要な解析対象集団が試験中に変更されていたことだ。もともと、エンシトレルビルでの主要評価項目は新型コロナ関連12症状の改善だったが、前回の合同会議で示された第IIb相パートの結果やオミクロン株の特性に合わせて、最終的な主要評価項目はオミクロン株に特徴的な5症状に変更されたという。これについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)側は、新型コロナは流行株の変化で患者の臨床像なども変化することから、主要評価項目の適切さを試験開始前に設定するのは相当の困難これら変更が試験の盲検キーオープン前だったとの見解で許容している。少なくとも第IIb相のサブ解析結果の教訓を生かした形だ。そして、今回の審議でまず“噛みついた”のは前回審議で参考人の利益相反(COI)状況などを激しく責め立てた山梨大学学長の島田 眞路氏だった(参考:第118回)。その要点は以下の2点だ。緊急承認の条件には「代替手段がない」とあるが、すでに経口薬は2種類ある日本人集団だけ(治験は日本、韓国、ベトナムで実施)での解析では症状改善までの期間短縮はわずか6時間程度でとても有効とは言い切れないこれに対して事務方からの回答は以下のようなものだ。国産で安定供給ができ、適応が重症化リスクを問わないので代替手段がないに該当する日本人部分集団で群間差が小さい傾向が認められたことについて、評価・考察を行うための情報には限りがあり、今後改めて評価する必要がある島田氏の日本人集団に関する指摘に関しては、そもそも臨床試験自体が3ヵ国全体の参加者で無作為化されていることを考えれば、日本人集団のみのサブ解析結果は参考値程度に過ぎず、申し訳ないが揚げ足取りの感は否めない。もっとも島田氏がこの事務局説明に対して「(重症化)リスクのない人に使えるから良いんじゃないかって、リスクのない人はちょっと風邪症状があるなら、風邪薬でも飲んどきゃ良いんですよ」と反論したことは大筋で間違いではない。ただし、過去の新型コロナ患者の中には、表向きは基礎疾患がないにもかかわらず死亡した例があることも考えると、さすがに私個人はここまでは断言しにくい。一方、参加した委員から比較的質問・指摘が集中したのがウイルス量低下の意義に関するものだ。議決権はない国立病院機構名古屋医療センターの横幕 能行氏は「(今回の資料では)感染あるいは発症から72時間以内に投与しないと、機序も含めた解釈ではウイルス活性を絶ち切る、もしくはそれに近い効果を得ることはできない。そして72時間以降の投与ではウイルス量の低下もしくは感染性の低下については基本的にはまったく効果がないと読める。感染伝播の阻止、早期の職場復帰などを考えると、ウイルス量もしくは感染性の低下に関する効果のこの点を十分に認識していただいた上で市中に出す必要があるかと思う」と指摘した。これに関して事務方からは「ウイルス量低下の部分は、確かに数値の低下が認められているものの、これがどの程度の臨床的意義を持つかについてはなかなか評価が難しい」というすっきりしない反応だった。現段階でのデータではPMDAも何とも言えないのも実情だろう。最終的には島田氏以外の賛成多数により緊急承認が認められたが、臨床現場での意義はやはり依然として微妙だ。過去にも繰り返し書いているが、エンシトレルビルは、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)と同じCYP3A阻害作用を有する3CLプロテアーゼ阻害薬であるため、併用禁忌薬は36種類とかなり多い。中には降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬といった中高年に処方割合の多い薬剤も多く、この年齢層で投与対象は少ないとみられる。そもそもこの層はモルヌピラビルやニルマトレルビル/リトナビルとも競合するため、これまでの使用実績が多いこれら薬剤のほうが選択肢として優先されるはずだ。となると若年者だが、催奇形性の問題から妊孕性のある女性では使いにくいことはこれまでも繰り返し述べてきたとおりだ。今回の緊急承認を受けて日本感染症学会が公表した「COVID-19に対する薬物治療の考え方第 15版」では、妊孕性のある女性へのエンシトレルビルの投与に当たっては▽問診で直前の月経終了日以降に性交渉を行っていないことを確認する▽投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認することが望ましい、と注意喚起がされている。しかし、現実の臨床現場でこれが可能だろうか? 女性医師が女性患者に尋ねる場合でも、かなり高いハードルと言える。となると、ごく一部の若年男性が対象となるが、これまで国も都道府県も重症化リスクのない若年者へはむしろ受診を控えるよう呼びかけている。もしこうした若年男性がエンシトレルビルの処方を受けたいあまり発熱外来に殺到するならば、感染拡大期には逆に医療逼迫を加速させてしまい本末転倒である。では前述のような見かけ上では重症化リスクがないにもかかわらず突然死亡に至ってしまうような危険性がある症例を選び出して処方できるかと言えば、そうした危険性のある症例自体が現時点ではまだ十分に医学的プロファイリングができていない。そもそも、エンシトレルビルの第III相パートの結果で明らかになったのはオミクロン株特有の臨床症状の改善であって、重症化予防は今のところ未知数だ。となると、後は重症化リスクのない軽症・中等症の中で臨床症状が重めな「軽症の中の重症」のようなやや頭の中がこんがらがりそうな症例を選ばなければならない。強いて言うならば、たとえば酸素飽和度の基準で軽症と中等症を行ったり来たりするような不安定な症例だろうか? ただ、今までもこうした症例で抗ウイルス薬なしで対処できた例も少なくないだろう。そして国の一括買い上げのため価格は不明だが、抗ウイルス薬が安価なはずはなく、多くの臨床医が投与基準でかなり悩むことになるだろう。ならば専門医ほどいっそ端から使わないという選択肢、非専門医は悩んだ末にかなり幅広く処方するという二極分化が起こりうる可能性もある。この薬がこうも悩ましい状況を生み出してしまうのは、前回の合同会議の審議でも話題の中心だった「臨床症状改善効果の微妙さ」という点にかなり起因する。今回の第III相パートの結果では、オミクロン株に特徴的な5症状総合での改善ではプラセボ対照でようやく有意差は認められたものの、有意水準をどうにかクリアしたレベル(p=0.04)だ。ちなみに、もともとの主要評価項目だった12症状総合では今回も有意差は認められなかった。さらに言うと、緊急承認後に塩野義製薬が開催した記者会見後のぶら下がり質疑の中で同社の執行役員・医薬開発本部長の上原 健城氏は、今回の試験では解熱鎮痛薬の服用は除外基準に入っておらず、第III相パートでは両群とも被験者の2~3割はエンシトレルビルと解熱鎮痛薬の併用だったことを明らかにしている。もちろんリアルワールドを考えれば、解熱鎮痛薬を服用していない患者のみを集めるのは難しいだろう。「(解熱鎮痛薬服用が症状判定の)ノイズになってしまってはいけないので、服用直後数時間はデータを取らないようにした」(上原氏)とのこと。ただし、解熱鎮痛薬の抗炎症効果を考えれば、今回の主要評価項目に含まれていたオミクロン株に特徴的な症状のうち、「喉の痛み」の改善などには影響を及ぼす可能性はある。そうなるとエンシトレルビルの「真水」の薬効は、ますます微妙だと言わざるを得ない。もちろん今回の第III相パートはそもそも9割以上の被験者がワクチン接種済みで、さらに2~3割が解熱鎮痛薬の服用があった中でも有意差を認めたのだから、それらがない前提ならばもっと効果を発揮できた可能性もあるのでは? という推定も成り立つが、そう事は簡単な話ではない。緊急承認という枠組みで今後の追加データ次第では1年後に本承認となるか否かという大きな命題が残っていることもあるが、「統計学的有意差を認めたから、少なくとも現時点での緊急承認はこれで一件落着」と素直には言い難いと私個人は思っている。

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コロナワクチン接種率の違いで死亡率に大きな差/JAMA

 2021年から2022 年にかけて、全世界で新型コロナワクチン接種が普及した一方、デルタ株とオミクロン株が流行した。米国・Brown School of Public HealthのAlyssa Bilinski氏らは、この期間におけるOECD加盟国中20ヵ国のワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査し報告した。米国については、ワクチン接種率上位10州と下位10州についても調査したところ、下位10州の新型コロナウイルス感染症死亡率は上位10州のほぼ倍だった。JAMA誌オンライン版2022年11月18日号のリサーチレターに掲載。ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査 本研究では、ワクチン接種率は2022年1月時点で2回以上接種した人の割合とし、死亡率は2021年6月27日~2022年3月26日の死亡データを比較した。米国のデータはCDCから、その他の国のデータについては、新型コロナウイルス感染症死亡率はWHO、全死亡率はOECD データベース、ワクチン接種率はOur World in Dataからそれぞれ入手した。 ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査した主な結果は以下のとおり。・主な国におけるワクチン接種率と、デルタ株流行期/オミクロン株流行期/全期間の人口10万人当たり新型コロナウイルス感染症死亡者数は以下のとおり。 日本      :80%、3人/7.4人/10.4人 韓国      :82%、6.1人/18.2人/24.3人 ニュージーランド:75%、0.5人/3.3人/3.7人 オーストラリア :76%、4.9人/14.2人/19.2人 イタリア    :76%、15.2人/39人/54.2人 フランス    :74%、14.6人/27.6人/42.2人 ドイツ     :71%、29.6人/22.7人/52.3人 英国      :71%、30.1人/28.9人/59人 米国全体    :63%、60.9人/50.6人/111.6人 米国(接種率上位10州):73%、28.1人/46.6人/74.7人 米国(接種率下位10州):52%、86.6人/59.4人/146人・米国全体およびワクチン接種率下位10州の超過全死亡率は新型コロナウイルス感染症死亡率より高く、全期間における他の国より高かった。・この期間にもし米国の新型コロナウイルス感染症死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合、12万2,304人の死亡を回避でき、米国の超過全死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合は26万6,700人の死亡を回避できたと推計された。 2021~22年初め、米国の新型コロナウイルス感染症死亡率および超過全死亡率は他国より有意に高かったが、この差はワクチン接種率上位10州では小さくなった。著者らは「残りの差は、他国での高いワクチン接種率、高齢者をターゲットとしたワクチン接種、医療・社会インフラの違いによって説明しうるだろう」と考察している。

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塩野義のコロナ治療薬ゾコーバを緊急承認/厚生労働省

 厚生労働省は11月22日、塩野義製薬と北海道大学の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(商品名:ゾコーバ錠125mg)を、医薬品医療機器等法第14条の2の2に基づき緊急承認した。緊急承認制度は2022年5月に新たに創設された制度で、薬剤の安全性の「確認」は前提とする一方で、有効性が「推定」できれば承認することができる。今回、本制度が初めて適用となった。同日開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会と医薬品第二部会の合同会議で、塩野義製薬が提出した第III相試験(第II/III相試験Phase 3 Part)の速報データに基づき緊急承認された。 第III相試験(第II/III相試験Phase 3 Part)では、軽症および中等症のSARS-CoV-2感染者を対象とし、オミクロン株流行期に重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無を問わず、日本、韓国、ベトナムで計1,821例が登録された。COVID-19発症から無作為割付までの時間が72時間未満の集団において、5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])が回復するまでの時間を主要評価項目とした。2022年9月末に主要目的の達成を示す結果が得られた。 主な結果は以下のとおり。・5症状が回復するまでの時間の中央値は、本剤群が167.9時間(約7日)、プラセボ群が 192.2時間(約8日)であり、本剤の投与により24.3時間(約1日)の短縮が示された。・治療開始から3日後(Day 4)のウイルスRNA量のベースラインからの変化量は、プラセボ群に対して本剤群で約30倍の差(1.47 log10[copies/mL])があり、本剤群はプラセボ群と比較して統計学的に有意な減少を示した(両側p<0.0001)。 本剤の用法・容量は、通常、12歳以上の小児および成人にはエンシトレルビルとして1日目は375mgを、2~5日目は125mgを1日1回経口投与する。SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始する。なお、重症度の高い患者に対する有効性は検討されていない。 添付文書に記載された本剤の禁忌は以下のとおり。2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.2 次の薬剤を投与中の患者:ピモジド、キニジン硫酸塩水和物、ベプリジル塩酸塩水和物、チカグレロル、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、シンバスタチン、トリアゾラム、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、ベネトクラクス〔再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〕、イブルチニブ、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、アゼルニジピン、アゼルニジピン・オルメサルタン メドキソミル、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸塩、リファブチン、フィネレノン、リバーロキサバン、リオシグアト、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品2.3 腎機能または肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者2.4 妊婦または妊娠している可能性のある女性 本剤は、緊急承認時において有効性および安全性に係る情報は限られており、引き続き情報を収集中。緊急承認の期限は1年とされ、正式承認を得るには再審議が必要となる。

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コロナワクチンで帯状疱疹リスクは上がるのか~大規模調査

 新型コロナワクチン接種後に帯状疱疹が発症した症例が報告されているが、ワクチンによって帯状疱疹リスクが増加するのかどうかは不明である。今回、新型コロナワクチン接種が帯状疱疹リスク増加と関係するかどうかについて、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のIdara Akpandak氏らが検討した。その結果、新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹の発生率比が0.91であり、本研究では新型コロナワクチン接種と帯状疱疹リスクの増加とは関係していないことが示唆された。JAMA Network Open誌2022年11月16日号に掲載。コロナワクチンと帯状疱疹とは関係しなかった 本コホート研究では、自己対照リスク期間分析を用いて、新型コロナワクチン接種後30日目または2回目接種日までのリスク期間と、新型コロナワクチン最終接種日から60~90日のコントロール期間(リスク期間とコントロール期間の間に30日間を確保)における帯状疱疹の発症リスクを比較した。また、新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹リスクを、パンデミック以前(2018年1月1日~2019年12月31日)もしくはパンデミック初期(2020年3月1日~11月30日)にインフルエンザワクチンを接種した2つのコホートにおけるインフルエンザワクチン接種後の帯状疱疹リスクと比較した。データは米国の医療請求データベース(Optum Labs Data Warehouse)から入手。2020年12月11日~2021年6月30日に、ファイザー製ワクチン(BNT162b2)、モデルナ製ワクチン(mRNA-1273)、ヤンセン製ワクチン(Ad26.COV2.S)のいずれかを接種した203万9,854人のデータを分析した。 新型コロナワクチン接種と帯状疱疹リスクの増加との関係を検討した主な結果は以下のとおり。・新型コロナワクチンを接種した203万9,854人の平均年齢(SD)は43.2(16.3)歳で、女性が50.6%、白人が65.9%であった。このうち、帯状疱疹と診断された1,451人が自己対照リスク期間分析の対象で、平均年齢(SD)は51.6(12.6)歳、女性が58.2%だった。・自己対照リスク期間分析において、新型コロナワクチン接種は帯状疱疹のリスク上昇と関係しなかった(発生率比[IRR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.82~1.01、p=0.08)。・ファイザー製ワクチン接種では帯状疱疹リスクが低下し(IRR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.02)、モデルナ製ワクチン接種は帯状疱疹リスクとの関連は認められなかった(IRR:0.96、95%CI:0.81~1.15、p=0.67)。・新型コロナワクチン接種は、パンデミック以前のインフルエンザワクチン接種と比べて帯状疱疹リスクが低かった。 - 1回目接種のハザード比(HR):0.78、95%CI:0.70~0.86、p<0.001 - 2回目接種のHR:0.79、95%CI:0.71~0.88、p<0.001また、パンデミック初期のインフルエンザ接種とは有意差が認められなかった。 - 1回目接種のHR:0.89、95%CI:0.80~1.00、p=0.05 - 2回目接種のHR:0.91、95%CI:0.81~1.02、p=0.09

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