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【GET!ザ・トレンド】チーム医療で心臓も家族も診る、ジストロフィン異常症の最前線(後編)

前編では、大規模コホートからみえた各臓器症状の「乖離」や、微小変異における重症化リスクのリアルをお伝えした。後編となる今回は、「なぜ特定の筋肉が選択的に障害されるのか」という分子メカニズムの深層に、われわれのベッカー型筋ジストロフィー(BMD)モデルマウス研究から得られた最新の知見を交えて迫りたい。さらに、血清CK値に代わる注目の次世代バイオマーカー「尿中タイチン」の可能性、そしてわれわれ医療コミュニティが今こそ認識を改めるべき、患者を支える家族を含めた「包括的な診療アプローチ」の重要性について解説する。3. 分子病態へのアプローチ:なぜ特定の筋肉が選択的に萎縮するのか?日常診療でBMDを診ていると、「なぜ全身の筋肉が一様ではなく、大腿四頭筋など特定の筋肉から選択的に萎縮・障害されるのか(=骨格筋内における障害の選択性)」という大きな疑問が浮かぶ。われわれの研究グループは、この臨床の問いに対し、異なるエクソン領域を欠失させた3種のBMDモデルマウス(exon 45-47欠失、exon 45-48欠失、exon 45-49欠失)を樹立し、その分子メカニズムの一端を解き明かした4)。幼少期から老年期まで時間を追ってこれら3種のマウスを解析した結果、いずれも「イン・フレーム欠失」でありながら、欠失部位の違いによって病態の重症度に「d45-49>d45-47>d45-48」という序列(進行速度の差)があることが実証された。このマウスで観察された進行速度の序列は、実際のヒトの臨床における「exon 45-49欠失(早期進行型)」、「exon 45-47欠失(時に重症化)」、「exon 45-48欠失(比較的軽症)」という表現型の傾向(重症度グラデーション)に矛盾しない。このグラデーションを生み出す背景には、筋組織の破綻へと至る、以下の一連の病態機序が存在すると考えられる。まず、遺伝子欠失によるジストロフィン結合部のミスマッチ(不安定化)の度合いに応じて、筋形質膜に存在する、血管拡張酵素である神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の発現が低下する。この発現低下が、結果として筋線維の周囲を取り囲む毛細血管の減少(Capillary change)を招き、筋肉に慢性的な局所血流障害をもたらす。骨格筋傷害は、運動時の機械的ストレスのみならず、この血流障害も重なって引き起こされる。その複合的な病態機序を下図にまとめた。画像を拡大するこの虚血ストレスは重症度の高いd45-49やd45-47のモデルにおいてきわめて顕著であり、主要な好気的代謝を行う「タイプIIa筋線維(速筋)」の選択的な減少・減衰(Decay)と変性・萎縮を誘発していたのである。すなわち本研究は、遺伝子の欠失パターンの違いが毛細血管の維持・減少に関与し、重症度を決定づける要因の1つであることを科学的に裏付けた形だ。そして、この骨格筋の解析から得られた「毛細血管の減少と局所血流障害」という病態グラデーションは、骨格筋症状とは独立して心筋症が重症化していく臨床像を説明する重要なエビデンスにもなる。以前のインタビュー(『【GET!ザ・トレンド】 循環器内科医が救う、筋ジストロフィー患者の予後』)でも指摘したとおり、BMDは「原因不明の心筋症として治療される中で、ジストロフィン異常症という背景が見落とされやすい」という課題がある。24時間休むことなく拍動し、全身で最も高密度の毛細血管網(血流供給)を必要とする心筋は、この毛細血管の減少に伴う慢性的な虚血ストレスに対して、骨格筋よりも脆弱である。そのため、運動制限などによって見た目の骨格筋症状が「軽症」に保たれていても、血流障害が生じている心臓は耐えきれずに重症化すると考えられる。この知見は、未来のBMD治療において、従来の「筋細胞そのものの保護」だけでなく、遺伝子型に応じた「血管や局所血流をターゲットにした包括的なアプローチ(血管標的療法)」を組み合わせる多角的な戦略が、有効な一手になる可能性を示唆している(下図)。現在、根本的な治療法がないBMD患者に対し、こうした多角的なアプローチが次なる展開につながることを期待している。画像を拡大する4. 診断と評価のアップデート:CKに代わる「尿中タイチン」という次世代バイオマーカー骨格筋の保護薬の開発が進む中で、日常診療において病勢をどう評価するかという問題もアップデートが必要だ。長年使われてきた血清CK値は、患者の運動量によって激しく変動し、筋容量が減少した進行期にはむしろ低下してしまうため、筋疾患における正確な病勢の指標になりにくいという欠点があった。ここで臨床現場への導入が期待されるのが、筋構造タンパク質タイチンの代謝産物である。近年、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)において「尿中タイチン(タイチンN末端断片)」が高感度なバイオマーカーとして注目されているが、これがBMD患者123例の大規模コホートにおいても、臨床重症度を反映することが日本の共同研究チームによって示された5)。タイチンは心筋や骨格筋の収縮を支える巨大タンパク質であり、その崩壊に伴って尿中に排泄される断片量は、いわば筋崩壊の活動性(病勢)をリアルタイムに反映する指標となる。本研究により、尿中タイチン値は、BMD患者の歩行能力の維持状態や筋力低下、ならびに心筋傷害マーカーである高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)や心不全マーカーの数値と有意に相関し、迅速な対応が求められる心筋のダメージ総量を反映していることが明らかとなった。「採尿」という非侵襲的な検査で、心筋症の進行リスクや骨格筋の変性度をタイムリーに追えるメリットは、患者の負担を減らし、BMDの疾患マネジメントのあり方を大きく変える可能性を秘めている。ただし、日常診療へ組み込むためには、まだいくつかの課題が残されている。最大のハードルは、検査として一般に利用可能となるための「保険適用」だ。現状、尿中タイチンの測定は一部の高度専門医療・研究機関での研究や自費診療の枠組みを中心に行われており、ルーティン検査としてオーダーできるようになるには、もう一段階の制度的・技術的なブレイクスルーが必要とされている。5. 家族を診る:女性ジストロフィン変異保有者(患者の母親・姉妹)に潜む心筋症リスク新薬開発への期待が高まる裏で、われわれ医療コミュニティは「患者を支える家族」の健康リスクにも目を向ける必要がある。当センターを含む共同研究チームが行ったクロスセクショナル研究は、DMD/BMD患者の主介護者36人(平均55.7歳、その83.3%に当たる30人が母親)を対象に、介護負担度(Zarit介護負担尺度:ZBI)と身体症状を調査した6)。調査の結果、主介護者全体の平均ZBI合計スコアは20.9点であった。主介護者のうちキャリア(変異保有)確定は52.8%(19人)、未確定は38.9%(14人)だが、両者の負担感には明確な差がみられた。ZBIで「中程度の介護負担」の基準となる25点以上の割合は、未確定の介護者に比べ、キャリア確定者において有意に高かったのである(p=0.04)。以前のインタビュー(『【GET!ザ・トレンド】 循環器内科医が救う、筋ジストロフィー患者の予後』)でも触れたとおり、母親らは「わが子に遺伝させてしまった」という深い心理的葛藤に加え、患者が学習障害や発達障害などを伴うケースでは、そこから生じる社会的困難も一人で抱え込みがちだ。これら精神的・社会的負担に加え、今回の研究では、遺伝学的な確定状況にかかわらず、彼女たち自身の35人中19人がすでに何らかの骨格筋または心臓の症状を有し、25人中21人で血清CK値の上昇が確認された。つまり、彼女たち自身も「ジストロフィノパチーの身体的リスクの当事者」であるという看過できない現実が示されている。そのようなリスクを抱えながらも、自身の健康管理のために定期的な健康診断を受けているのは半数(50.0%)にとどまり、残る半数は健診の機会を持てていない。また、健診を受けている半数についても、一般的な健診メニューだけでは潜在する心筋症リスクの完全な把握や、健診項目に含まれないCK値の評価は難しく、確実なリスク管理には循環器内科などでの専門的なフォローアップが不可欠となる。主介護者である母親は、患者であるわが子の付き添いで通院していることが多いが、主治医(小児科や脳神経内科)の視線は患者本人に集中し、隣に座る母親のリスクは見落とされがちだ。われわれはこの認識を改め、家族に対しても適切な遺伝カウンセリングや循環器内科への受診を主体的に促す「家族をも視野に入れた包括的な診療アプローチ」を実践していく必要がある。DMD/BMDの診療は、女性変異保有者の心機能チェックまでをシームレスにつなぐ多職種連携を構築して初めて、真の実効性を持つと考える。結語:明日からの診療に活かしたいポイント前編の冒頭に記載のある、グローバル製薬企業における筋ジストロフィー事業買収に象徴されるように、この領域への関心は確実に高まっている。だからこそ、現場の医師には「BMDはDMDに比べて軽症」という言葉に惑わされない先見的かつ包括的なアプローチが求められる。循環器内科との他科連携:遺伝子型から予測される骨格筋や呼吸機能の予後にかかわらず、全例において循環器内科との緊密な連携による定期的な心機能評価を徹底し、必要に応じた早期の心保護薬による介入を進める。中枢神経症状への早期対応と専門機関への橋渡し:骨格筋症状が軽微であっても、発達遅滞や学習障害などの高次脳機能障害に注意を払い、小児科、脳神経内科、精神科、療育などの専門医療機関へ早期につなぐゲートキーパーとしての役割も担う必要がある。遺伝学的評価における微小変異の確認:代表的なエクソン欠失がない症例であっても、C末端側の微小変異を見逃さない遺伝学的評価の重要性を認識し、正確なリスク評価につなげていく。家族(母親・姉妹)への目配りと多職種による包括ケア:目の前の患者本人だけでなく、それを支える母親などの女性変異保有者の潜在的な心筋症・骨格筋リスクに注視する。認定遺伝カウンセラーやソーシャルワーカーらとも協働し、家族に対しても自ら循環器内科などへの受診勧奨や適切な遺伝カウンセリングを行う「チーム医療」を実践する。新たな治療の選択肢が現実味を帯びてくる今だからこそ、集積されたエビデンスをいち早く日常臨床に還元する姿勢が、われわれすべての医師に求められている。(聞き手:ケアネット 三浦 愛子)<<前編に戻る 参考 1) Servierプレスリリース(2026年6月1日公開) 2) Nakamura A, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2023;10:2360-2372. 3) Nakamura A, et al. Neurol Genet. 2025;11:e200215. 4) Miyazaki D, et al. eLife. 2025;13:RP100665. 5) Awano H, et al. Clin Chim Acta. 2025;566:120053. 6) Ishizaki M, et al. Intern Med. 2024;63:365-372.

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【GET!ザ・トレンド】チーム医療で心臓も家族も診る、ジストロフィン異常症の最前線(前編)

2026年6月1日、仏セルヴィエ(Servier)が米エッジワイズ・セラピューティクス(Edgewise Therapeutics Inc.)の筋ジストロフィー事業を最大26.5億ドル(約4,100億円)で買収することを発表した1)。この買収の目玉は、現在ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)を対象に臨床試験が進行中の経口速筋ミオシン阻害薬「sevasemten」である。これまで根本的な治療薬が乏しかったBMD領域において、大型の事業買収が行われたという事実は、この疾患のアンメット・メディカル・ニーズへの注目度が高まっていることを示している。臨床現場においてBMDは、DMD(Duchenne muscular dystrophy)遺伝子のコドンの読み枠(リーディングフレーム)が維持されるイン・フレーム欠失が多く、完全欠損のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に比べて進行が緩徐な「軽症型」と説明されることが多い。しかし、実際に現場でBMD患者を診る医師は、「軽症」の一言では決して片付けられない臨床像の多様さに直面していた。治療薬開発のタイムラインが現実味を帯びてきた今だからこそ、BMDに関わる、またはその可能性のあるすべての医師に、「軽症だから」という固定観念にとらわれない包括的なアプローチが求められている。ここで、BMDの病態解明にモデルマウス研究や自然歴調査などを通じて長年尽力してきた、独立行政法人国立病院機構まつもと医療センターの中村 昭則氏に、近年発表された5つの重要な研究報告を踏まえ、これまでの臨床常識を最新のエビデンスに基づいてアップデートする解説をいただいた。1. 自然歴の再定義:大規模コホートからみえた骨格筋・呼吸・心機能・中枢神経症状の「乖離」今回のテーマを紐解くうえで不可欠なエビデンスとなるのが、日本の22の医療施設が参加し、私も携わった、イン・フレーム欠失を持つ225例のBMD患者を対象とした大規模な全国マルチセンター共同研究である2)。冒頭に記載があるとおり、BMDが「軽症型」と説明される背景には、同原因遺伝子の完全欠損型であるDMDと比較して遺伝子の読み枠が維持されているという特徴がある。この両疾患の分子遺伝学的な違いを下図に整理した。画像を拡大するこの共同研究のデータ解析から、これまで一括りに「軽症」と語られがちであったBMDのリアルな自然歴が浮き彫りとなった。患者の平均年齢は31.5歳(1~81歳)であり、初発症状は骨格筋症状が60.0%を占めたが、無症候性高CK血症の存在から発見される例も32.4%に上っている。注目すべきは進行のタイムラインである。歩行障害は53.8%の患者で認められ、車椅子導入の平均年齢は36.5歳であった。また、生命予後に直結する人工呼吸器の導入率も6.7%(平均年齢36.6歳)という結果であった。一見すると、これらの数字(平均年齢30代半ばでの車椅子や人工呼吸器導入)は、BMDが「緩徐に進行する軽症型」であるという従来のイメージと相反するように思えるかもしれない。しかしここで重要なのは、このデータが示す臨床像の「幅の広さ(多様性)」である。本研究の対象年齢が1~81歳ときわめて広範囲に及んでいることが示すとおり、軽微な骨格筋症状のまま高齢に至る例がある一方で、30代という若さで車椅子や呼吸器管理が必要となる例も確実に存在する。つまり、「BMD」という疾患名で一括りにできないほど、患者ごとにまったく異なる経過をたどるリアルな自然歴が、この大規模データによって浮き彫りになったといえる。また、心症状に関しては、患者の30%以上で心電図異常がみられ、15.1%に心不全症状がみられた。中枢神経症状においては、てんかん発作の合併率が8.0%、知的障害や発達障害の合併率が16.9%であった。ここで臨床医が最も注意すべきは、臓器間で進行度が並行しない「臨床症状の乖離」である。たとえば、本研究においてDMD遺伝子の「exon 45-47欠失」や「exon 45-55欠失」の患者は人工呼吸器の導入を必要としておらず、呼吸器症状においては比較的緩徐な経過をたどる傾向がみられた。一方、「exon 45-49欠失」の患者では、重度の骨格筋および呼吸筋の機能障害がみられた。しかしながら、心機能においては、こうしたエクソンの欠失パターンによらず患者間できわめて大きなばらつきが確認された。つまり、「骨格筋症状が軽い」からといって、心臓の病態も連動して軽いとは限らない。中枢神経症状についても、中枢神経に発現しているジストロフィン・アイソフォームに影響する後半のエクソンの欠失との関連が示唆されているものの、骨格筋の重症度とは相関せず、症状や重症度は一様ではなかった。以前のインタビュー(『【GET!ザ・トレンド】 循環器内科医が救う、筋ジストロフィー患者の予後』)でも言及したが、「骨格筋が軽症にみえること自体が、致命的な心不全リスクを覆い隠す最大のピットフォール」である。今回の全国規模のデータは、私が日頃から臨床現場で抱いていたこの危機感が、数字として実証された形となった。「骨格筋症状が軽いから、心臓も大丈夫だろう」という予測はBMDには通用しない。すべてのBMD患者に対し、エクソンの欠失パターンを念頭に置きつつも、各臓器やシステム(骨格筋、呼吸器、心筋、中枢神経系)を独立して定期評価する重要性が、この大規模データから明らかになったといえる。2. 「イン・フレーム欠失」以外の盲点:微小変異・重複変異の重症化リスクBMDといえば「イン・フレーム欠失」が定説だが、実際には全体の数%~十数%に微小変異(Microvariants:ミスセンス、ナンセンス、スプライス部位変異など)や重複変異(Duplication)が存在する。私も含めた日本の筋疾患専門医療機関のチームが報告した研究は、この「非欠失型BMD」49例(微小変異33例、重複変異16例)の臨床像を明らかにしている3)。解析の結果、とくに微小変異を持つBMD患者の多くで、心電図異常の合併率が非常に高いことが判明した。変異タイプ別の心電図異常の合併率を比較すると、イン・フレーム欠失(59.5%)や重複変異(31.3%)に対して、微小変異では90.9%に達していたのである。さらに、「変異の種類(ミスセンスかナンセンスか)」よりも、「ジストロフィンのどのドメインに変異があるか」が予後を左右することが明らかになった。具体的には、ロッド(Rod)ドメインの変異に比べ、システインリッチ(Cysteine-rich)/C末端(C-terminal)ドメインに変異を持つ症例では、骨格筋機能の低下(車椅子導入など)および呼吸機能障害が有意に重篤であった。また、発達障害や知的障害などの中枢神経系症状の合併率については、これら変異ドメインの間で有意な差はみられず、変異部位にかかわらず一定の割合で生じる点にも注意を払う必要がある。さらに本研究では、通常のDNA検査(MLPA法など)をすり抜ける、ジストロフィン変異の最大7%に存在するとされる「ディープイントロン変異」の存在とその病態の複雑さも示された。驚くべきことに、同じディープイントロン変異(c.265-463A>G)を持ちながらも、ある症例はBMDと診断される一方で、その同胞(きょうだい)は14歳で歩行不能となりDMDと診断されていたのである。この「まったく同じ変異でありながら臨床像が分かれる」という事実は、ジストロフィン異常症が遺伝子の一次配列(DNA)だけで一律に規定できないことを示唆している。日常診療において、遺伝子検査の結果が「エクソン欠失なし」であっても、次世代シークエンサーなどで微小変異が検出され、それがC末端側に位置している場合は、「BMDだから進行は緩徐だろう」と判断せず、ときにはDMDに近い厳重なフォローアップが必要となることを、われわれ臨床医は肝に銘じておかねばならない。>>後編に続く 1) Servierプレスリリース(2026年6月1日公開) 2) Nakamura A, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2023;10:2360-2372. 3) Nakamura A, et al. Neurol Genet. 2025;11:e200215.

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD:Duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 定義デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、機能的ジストロフィンの欠損により、進行性の筋力低下および筋萎縮を来すX染色体潜性遺伝疾患である。小児期に発症する筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、重症型に位置付けられる。■ 疫学男児出生約3,500~5,000人に1人の割合で発症する。人種による発症頻度の明らかな差はない。女性保因者も骨格筋症状や心筋症を呈することがあり、定期的な評価が推奨される。■ 病因X染色体短腕(Xp21.2)に位置し、筋細胞膜直下に存在する細胞骨格タンパク質であるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異(欠失、重複、微小変異など)が原因である。ジストロフィンは細胞骨格と細胞外基質を連結し、筋収縮時の機械的ストレスから細胞膜を保護する役割を担う。機能的ジストロフィンが欠損することで筋細胞膜の安定性が失われ、筋線維の壊死と再生が繰り返され、最終的に筋組織が脂肪組織や結合組織に置換される。■ 症状乳幼児期から運動発達の遅れ(定頸や歩行開始の遅延など)として認識されることが多い。幼児期には転びやすい、走れない、階段昇降が困難といった症状が顕在化する。床から立ち上がる際に、自身の膝や大腿に手をついて立ち上がる登攀性起立(ガワーズ徴候)や、腓腹筋の仮性肥大が高頻度に見られる。また、認知機能や発達特性(知的障害、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症など)を合併することがある。筋力低下は体幹および近位筋から始まり、次第に遠位筋へと進行する。従来は10歳前後で歩行を喪失することが多かったが、現在ではステロイド療法などにより歩行可能期間は延長している。歩行喪失後は車椅子の使用が必要となる。病状の進行に伴い、脊柱変形(側弯症)、呼吸筋力低下による呼吸機能障害、および拡張型心筋症に類似した心筋障害を合併する。嚥下機能障害や消化管の蠕動運動低下も生じうる。さらに、長期経過では骨粗鬆症や骨折、肥満なども重要な合併症となる。■ 分類ジストロフィン遺伝子変異に起因する疾患群は「ジストロフィノパチー」と総称される。DMDはジストロフィンがほぼ完全に欠損する重症型である。その一方で、遺伝子変異があるものの、異常なジストロフィンタンパク質が一部産生され、臨床症状がより軽度で歩行機能が長期に維持されるタイプを「ベッカー型筋ジストロフィー」(BMD)と分類する。■ 予後かつては20歳前後で呼吸不全や心不全により死亡することが多かった。しかし、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)などの呼吸管理の進歩、心筋保護薬の早期導入、ステロイド治療の普及、さらに多職種による集学的ケアの確立により、歩行可能期間および生命予後は大きく改善しており、40~50代以上まで生存する患者も増えている。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)初めに診断のフローチャートを示す(図)。図 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断フローチャート画像を拡大する血液検査では、筋崩壊を反映してクレアチンキナーゼ(CK)値が著明に上昇する(数千~数万IU/L)。とくに発症初期や無症状の乳幼児期においても異常高値を示すため、スクリーニングとしてきわめて有用である。偶発的な肝酵素(AST、ALT)の上昇を契機に発見されることも多く、肝疾患との鑑別においてCK値の確認が必須である。確定診断には遺伝子検査が行われる。まず、MLPA法などによりDMD遺伝子の欠失・重複変異を検索する。これで変異が同定されない場合は、次世代シークエンサー(NGS)などを用いて点変異や微小欠失・挿入などの塩基配列解析を行う。遺伝子診断で確定できない特殊例では筋生検を考慮する。鑑別診断としては、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎などが挙げられる。診断確定後は遺伝カウンセリングを行い、保因者診断や家族への遺伝学的情報提供についても検討する。3 治療現在、疾患を完全に治癒させる根治療法は確立していないが、病状の進行遅延を目的とした薬物療法と、合併症に対する対症療法・集学的ケアが行われる。薬物療法の基本はステロイド薬(プレドニゾロンなど)の投与である。これにより筋力低下の進行を遅らせ、歩行可能期間の延長、呼吸・心機能の低下抑制、側弯の進行防止などの効果が得られる。また、近年、特定の遺伝子変異を対象としたエクソンスキップ療法が実用化されている。これはアンチセンス核酸を用いてmRNAの成熟過程で特定のエクソンを読み飛ばし、機能は不完全ながらも一部機能するジストロフィンタンパク質を産生させる治療である。国内ではエクソン53スキッピング薬であるビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)が承認されている。対症療法として、関節可動域(ROM)維持、装具療法、立位保持、呼吸リハビリテーションを継続的に実施することが重要である。呼吸機能障害に対しては、早期からの呼吸機能評価とNPPVの導入、機械的咳介助が行われる。心筋障害に対しては、ACE阻害薬の早期からの投与が推奨されている。病状の進行や変化に応じて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノンなど)の併用などが検討される。4 今後の展望(治験中、研究中の診断法や治療薬剤など)今後の有望な治療法の1つが遺伝子治療である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、全身投与により骨格筋および心筋へのマイクロジストロフィン遺伝子の導入を図る治療法(デランジストロゲン モキセパルボベク、商品名:エレビジス点滴静注)は、国内でも2026年2月に承認された。本来のジストロフィン遺伝子は巨大でありAAVベクターに全長を搭載できないため、マイクロジストロフィンは筋細胞膜の安定化に不可欠な最重要機能ドメイン(領域)のみを残し、全長の約3分の1に小型化した人工遺伝子である。導入後の長期的な有効性評価に加え、安全性課題として急性肝障害、血小板減少、心筋障害、および重篤な免疫性筋炎への注意とモニタリングが今後の重要な課題となっている。また、筋肉の成長を阻害するミオスタチンを標的とした抗体薬や、炎症・線維化を抑える新たな低分子化合物などの臨床試験が進行しており、病態や進行段階に応じた治療の選択肢がさらに広がることが期待される。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)小児神経科、脳神経内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、循環器内科、呼吸器内科、臨床遺伝科など※本疾患は進行に伴い全身性の合併症や認知・発達特性を伴うため、スクリーニングで疑われた段階、あるいは確定診断後は、神経筋疾患を専門とする医療機関において、リハビリテーション、循環器、呼吸器、整形外科、栄養、心理、遺伝カウンセリングなど多職種連携による集学的治療が可能な体制へ紹介することが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報NMDポータルサイト(神経筋疾患ポータルサイト):デュシェンヌ型筋ジストロフィー(国内の神経筋疾患に関する情報を集約した総合サイト。最新の診療ガイドラインやケア、研究動向に関するリソースが網羅的に提供されている)難病情報センター 筋ジストロフィー(指定難病113)(医療費助成の対象疾患であり、公的制度の概要や申請手続きに関する基礎情報が得られる)Remudy(神経筋疾患患者登録システム)(国立精神・神経医療研究センター[NCNP]が運営する患者レジストリ。疫学データと市販後調査を区別して収集・管理しており、適切な情報提供や臨床試験の強力な基盤として機能している)MDクリニカルステーション(筋ジストロフィーの臨床研究班による、医療従事者および患者・家族向けの診療ガイドラインやケアマニュアル等の情報提供サイト)患者会情報一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)(患者や家族への支援、情報提供、交流活動を行う代表的な患者会組織) 1) 日本神経学会ほか監修. デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014. 南江堂:2014. 2) Komaki H, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2020;7:2393-2408. 3) Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2023;388:2368-2371. 4) Nakamura H, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:60. 5) 難病情報センター. 筋ジストロフィー(指定難病113). 公開履歴初回2026年7月24日

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬への期待/中外

 中外製薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する国内初の再生医療等製品として、デランジストロゲン モキセパルボベク(商品名:エレビジス点滴静注)を2026年2月20日に発売した。この発売によせて、本剤の概要や治療における臨床的位置付けなどについて、発売後の適正使用推進体制の説明と合わせてメディアセミナーを開催した。 DMDは、筋肉に関わるタンパク質のジストロフィン産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する希少遺伝性疾患。幼少期に発症し、徐々に筋力が低下していくことで日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期からの適切な治療介入が求められる。未治療だと呼吸不全などを起こし、生命予後に影響する。 デランジストロゲン モキセパルボベクは、短縮型ジストロフィンの発現を介してDMDの原因に働きかけるようデザインされた薬剤である。2025年5月13日に条件及び期限付承認を取得し、2026年2月20日に薬価収載・販売された。筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐ治療薬 はじめに同社からデランジストロゲン モキセパルボベクの製品説明が行われた。本薬剤の構造は、機能的な短縮型ジストロフィンであるデランジストロゲン モキセパルボベク マイクロジストロフィン(以下「マイクロジストロフィン」)をコードする遺伝子を含む非複製型の遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり、骨格筋および心筋での発現を最適化するα-ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーター/エンハンサーにより制御する。 本薬剤の作用機序としては、搭載されたマイクロジストロフィン遺伝子が骨格筋および心筋で発現すると考えられる。また、マイクロジストロフィンが筋細胞で発現することで、筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐと考えられている。本薬剤はすでに薬価収載・販売されているものの、条件及び期限付承認であり、第III相試験が現在行われている。生命予後が40歳に届くのが難しい希少疾病 「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の疾患と治療、遺伝子治療の診療体制、適正使用と臨床的位置づけについて」をテーマに小牧 宏文氏(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター センター長)が疾患概要について、講演を行った。 DMDは、ジストロフィンの欠損などにより筋肉が壊れやすく、かつ不可逆的な変性により、筋肉の再生ができない疾患。2~4歳ごろに症状が現れ始め、自然歴では5歳ごろをピークに運動能力が低下、ガワーズ徴候などがみられ、10歳前後に歩行能喪失となり車椅子が必要になる。未治療では呼吸器筋や心筋に影響があり、生命予後は10代とされる。現在でも、患者の生命予後はいまだ30歳前後を超える程度であり、根本治療が求められている。ただ、近年では、専門の医療施設で30代後半まで生命予後が延長しており、最近は大学生も多くなったほか、就労している患者もいる。 治療は、プロアクティブかつ包括的な多職種連携の診療が集学的治療(ベース治療)として確立され、患者の社会参加や就労・就学の実現に向けて治療が行われている。具体的には、呼吸管理として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適切な導入と定期的モニタリング、呼吸リハビリテーションがなされ、身体機能管理として関節可動域訓練、姿勢管理、拘縮などの予防が行われている。薬物療法としてはステロイド投与による歩行可能期間の延長、全身管理としてACE阻害薬などを用いた心機能ケア、栄養指導、嚥下機能評価などが行われている。 とくに薬物治療について、2026年6月現在でステロイド、ビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)、そして、デランジストロゲン モキセパルボベクを用いることができる。デランジストロゲン モキセパルボベクのような遺伝子治療が求められる医学的背景として、病状管理の継続を前提としつつ、「根本原因(ジストロフィン欠損)へと直接アプローチする次世代治療の導入が臨床現場における長年の課題であった」と小牧氏は説明した。投与前、投与後でも適切なフォローが必要なデランジストロゲン モキセパルボベク デランジストロゲン モキセパルボベクによる治療の流れとしては、投与前のスクリーニングにおいて、抗AAVrh74抗体が陰性であることの確認に加え、禁忌となる特定の遺伝子変異(エクソン8および/または9の欠失)の除外が行われる。さらに、免疫抑制および有害事象予防を目的に、本薬剤の投与前よりプレドニゾロンの投与が開始される。投与後は免疫介在性筋炎などのモニタリングのために、投与後3ヵ月は継続的な血液検査が行われる。投与後は免疫抑制作用があるので基本は自宅療養となる。 本薬剤の承認のために国際共同第III相臨床試験EMBARK試験パート1が行われた。遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児125例を対象に、安全性と有効性を評価した国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験。主要評価項目はノース・スター歩行能力評価(NSAA)総スコアのベースラインから52週までの変化量、主な運動機能に関連する副次評価項目は、床からの立ち上がり時間(TTR)、10m歩行/走行(10MWR)を評価した。 その結果、高いほど良好を示すNSAAによる総スコアについて、52週時点でデランジストロゲン モキセパルボベク群は2.57ポイントの向上だったのに対し、プラセボ群は1.92ポイントの向上だった(群間差:0.65、p=0.24)。また、副次評価項目であるTTR時間のベースラインから52週までの変化量では、デランジストロゲン モキセパルボベク群が-0.27秒、プラセボ群が0.37秒、群間差は-0.64秒だった(p=0.0025[名目上のp値])。 本剤では厳格な適格性確認とモニタリングが求められる継続的な管理が必要とされる。とくに投与後約90日間は肝酵素、心筋逸脱酵素、血小板などを週1回程度測定し、異常検知時はBRIDGE-NMD(神経筋疾患遺伝子治療安全性最適化ネットワーク)と即時連携がされる。その理由として、米国で非歩行患者への投与で急性肝不全が発生し、その後死亡した症例の報告があったためとされる。 わが国では、安全対策の強化として全国の患者、全国の医師と日本小児神経学会などに所属する医師をつなぎ、専門的な助言や情報提供・相談、患者への適正な治療の提供ができる体制を「Eコンサルテーション」として構築している。 今後は、レジストリを活用した長期的なエビデンス構築とともに、免疫介在性反応、海外の重篤な有害事象を集め、施設要件と適応の厳格化、BRIDGE-NMDによる全例事前評価、投与後の集中モニタリングなどを通じて、安全性リスクに対して構造的に対応する。 最後に小牧氏は、「固有のリスクを客観的に評価し、個人の経験則ではなく、国レベルの構造的なインフラによって安全性を管理する体制が稼働している。非常に今回良かった点としては、産官学連携がうまくいっていることであり、今後もしっかり安全性を重視しながら、この体制を維持していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。

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薬剤性過敏症症候群〔DIHS:drug-induced hypersensitivity syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は、発熱と多臓器障害を伴う重症型薬疹の1つである。抗けいれん薬など特定の薬剤を内服開始後、遅発性に発症し、原因薬剤を中止しても症状の再燃や遷延化がみられることが特徴である。多くの場合、発症後3週間前後でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に代表されるヘルペスウイルスの再活性化を伴うことから、薬剤アレルギーとヘルペスウイルス感染症が複合して生じる新たな病態として認識されている(図1)。DIHSのもう1つの特徴として、回復期に1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を発症することが知られている。なお、欧米を中心にDRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)という疾患概念が用いられるが、DRESSの診断基準にはヘルペスウイルスの再活性化については言及されておらず、DIHSよりも広い範囲の薬疹が含まれる。図1 DIHSの病態の仮説■ 疫学2021年の全国調査によれば、年間受療患者数は人口100万人当たり2.82人と推計されている。男女比は1:1で、発症年齢は40~60代(中央値58歳)が最多である。原因薬剤は比較的限定的であり、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミドなどの抗てんかん薬のほか、アロプリノール、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、メキシレチンなどが代表的である。DIHSの致死率は約10%程度と高く、死因の多くはサイトメガロウイルス(CMV)肺炎やニューモシスチス肺炎などの感染症である。■ 病因本症は、原因薬剤を通常2~6週間(平均1ヵ月)内服した後に発症する。病態は、T細胞を主体とする薬物アレルギー反応とヘルペスウイルスの再活性化が中心である。急性期にはTARC/CCL17の著明な上昇や好酸球増多に象徴されるTh2反応の亢進がみられる。また、急性期には制御性T細胞(Treg)の増加がみられるが、経過中にその機能やバランスが崩れることが、ウイルス再活性化や後遺症としての自己免疫疾患発症に関与すると考えられている。さらに、急性期には末梢血のCD4陽性T細胞表面にHHV-6の受容体であるCD134/OX40の発現が亢進しており、これがウイルスの効率的な感染拡大を許容する一因である可能性が示唆されている。■ 症状初期症状として発熱、頸部リンパ節腫脹、顔面や躯幹の紅斑が生じる。皮疹は播種状紅斑丘疹型や多形紅斑型で始まり、急速に拡大してしばしば紅皮症状態に移行する(図2)。特徴的な顔貌として、顔面の浮腫を伴う紅斑、眼周囲の蒼白、鼻孔・口周囲に鱗屑・痂皮を伴う丘疹や小膿疱がみられる(図3)。肝機能障害や腎機能障害などの内臓病変や、異型リンパ球の出現、好酸球増多、白血球増多などの血液学的異常を伴う。図2 DIHSにおける紅皮症状態画像を拡大する図3 DIHSに特徴的な顔貌■ 予後原因薬剤を中止しても皮疹や臓器障害が遷延し、経過中に再燃を繰り返す。発症3~5週間前後にCMVの再活性化が生じ、肺炎、腸炎、消化管出血、肝障害などの致死的な合併症を引き起こすことがある。また、DIHSの症状が軽快した数ヵ月から数年後に、橋本病、劇症1型糖尿病、円形脱毛症、白斑などの自己免疫疾患を発症することがあり、長期的な経過観察が必要である。2 診断診断は、厚生労働省研究班による診断基準(2005年)(表)に基づいて行う。表 薬剤性過敏症症候群(DIHS)診断基準(2005)■ 概念高熱と臓器障害を伴う薬疹で、薬剤中止後も遷延化する。多くの場合、発症2~3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。■ 主要所見1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑、多くの場合紅皮症に移行する。2. 原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3. 38℃以上の発熱4. 肝機能障害5. 血液学的異常:a、b、cのうち1つ以上a. 白血球増多(11,000/mm3以上)b. 異型リンパ球の出現(5%以上)c. 好酸球増多(1,500/mm3以上)6. リンパ節腫脹7. HHV-6の再活性化典型DIHS1~7すべて非典型DIHS1~5すべて、ただし4に関しては、その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。■ 参考所見1. 原因医薬品は、抗けいれん薬、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、ミノサイクリン、メキシレチンであることが多く、発症までの内服期間は2~6週間が多い。2. 皮疹は、初期には紅斑丘疹型、多形紅斑型で、後に紅皮症に移行することがある。顔面の浮腫、口囲の紅色丘疹、膿疱、小水疱、鱗屑は特徴的である。粘膜には発赤、点状紫斑、軽度のびらんがみられることがある。3. 臨床症状の再燃がしばしばみられる。4. HHV-6の再活性化は、(1)ペア血清でHHV-6 IgG抗体価が4倍(2管)以上の上昇、(2)血清(血漿)中のHHV-6 DNAの検出、(3)末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6 DNAの増加のいずれかにより判断する。ペア血清は発症後14日以内と28日以降(21日以降で可能な場合も多い)の2点で確認するのが確実である。5. HHV-6以外に、サイトメガロウイルス、HHV-7、EBウイルスの再活性化も認められる。6. 多臓器障害として、腎障害、糖尿病、脳炎、肺炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる。■ 早期診断の補助検査診断基準項目に「中止後2週間以上の症状の遷延」や「発症2~3週間後のHHV-6再活性化」が含まれるため、発症早期の確定診断は困難である。早期にDIHSを疑う指標として、急性期の血清TARC値の測定が有用であり(4,000pg/mL以上で疑う)、2023年に「DIHS/DRESSの診断の補助」としての保険適用が追加された。■ 鑑別診断と原因薬剤の特定通常の薬疹や、麻しん・風しんなどのウイルス性発疹症との鑑別を要する。DIHSを疑う臨床的ポイントとして、原因薬剤が比較的限られていることから、詳細な薬剤内服歴(2~6週間の服用歴)の聴取が不可欠である。また、原因薬剤中止後も皮疹や臓器障害が遷延・悪化することも、他の薬疹との重要な鑑別点となる。特有の顔貌(図3)や、皮疹が急速に紅皮症化する経過(図2)も診断の有力な手掛かりとなる。HHV-6の再活性化は、一般に末梢血液中のHHV-6 DNAの定量(リアルタイムPCR法)によって判断するが、現時点では保険適用外の検査である。被疑薬の特定には、薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストが有用である。ただし、DLSTは発症早期には偽陰性となりやすく、発症後5週目以降の回復期に実施する必要がある。なお、重症化リスクを考慮し、薬剤の再投与試験(誘発試験)は行わない。3 治療■ 治療の実際DIHSを疑った場合は、第一に被疑薬を中止し、原則として入院加療とする。病初期に起こる全身症状と臓器障害の寛解を目指し、副腎皮質ステロイドの全身投与が治療の基本となる。中等~高用量(プレドニゾロン換算0.5~1mg/kg/日)で開始し、症状が十分に改善するまで(通常7~14日間)維持する。その後は、症状をみながら1~2週間ごとに5~10mg/日ずつ緩徐に漸減する。急激なステロイドの減量は、免疫再構築症候群を招きCMV感染症を顕在化させるリスクがあるため避けるべきである。臓器病変を伴わない軽症例に対しては、ステロイド全身投与を行わず、局所ステロイド外用や補液などの支持療法(supportive therapy)で経過観察することもある。ステロイドパルス療法は、CMVの再活性化や自己免疫疾患の発症に関与するとの否定的見解が主流であり、重篤な臓器障害への進展など特殊な状況に限り検討される。■ CMV感染症への対応発症3~5週前後にCMVが再活性化し、ステロイドの減量を契機として突然、肺炎や消化管出血などの致死的合併症を発症することがある。経過中は常にCMVのモニタリングを行い、顕性感染症を認めた場合には、抗ウイルス薬(ガンシクロビル)の投与による積極的な介入を行う。■ 多剤感作への配慮DIHSの経過中は多剤感作を引き起こしやすいため、解熱や感染予防目的での非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗菌薬の新たな投与は可能な限り避けるべきである。4 今後の展望DIHSの病態については、HHV-6やCMV再活性化の病態への関与について多くの知見が得られてきたものの、依然として未解明な点が残されている。とくに、最適なステロイド減量プロトコールの確立は急務であり、大規模な症例レジストリに基づくエビデンスの蓄積と治療指針の更新が期待される。また、回復期に発症する自己免疫疾患などの遅発性合併症は、患者の長期予後を左右する重要な課題である。今後は、これらの合併症を予測するバイオマーカーの同定や、その発症を制御する新たな介入法の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科(重篤な臓器障害を伴うため、十分な検査と全身管理を行える施設への早期のコンサルテーションが重要である)。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン 2023(日本皮膚科学会/重症多形滲出性紅斑に関する厚労省調査研究班)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2026年5月12日

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一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーCメンバー6(TRPC6)の阻害は筋ジストロフィーのみならず巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の治療にも有効(解説:浦信行氏)

 FSGSは糸球体の一部に硬化が見られる疾患でネフローゼ症候群を示す。難治性であり、腎生存率は10年では85.3%、20年では33.5%となり、3人に1人が末期腎不全となって腎臓を失う。日本における患者数は約7,000人と推定されているが、現在FSGSに対する特異的な治療法はない。しかし、最近病態の一部が明らかにされ、TRPC6が注目されている。 これの経口阻害薬であるBI 764198の第II相試験の結果が報告され、約40%の症例で尿蛋白が25%以上の減少を示した。その詳細は本年2月5日配信のCareNet.comに紹介されているので参照されたい。FSGSの病態の一部はTRPC6が上昇してポドサイトの細胞内Caが上昇し、ポドサイトが糸球体基底膜から脱落してポドサイトの減少を招き、糸球体の瘢痕化と尿蛋白漏出を招く。この病態に対応するものがTRPC6阻害薬で、詳細は省くがデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬としても注目されている。マウスを用いた腎の基礎研究においてTRPC6阻害は炎症細胞、内皮細胞、線維芽細胞の転写プログラムを変化させることが機序の一部と考えられている。この試験では忍容性は良好で、有害事象の頻度はプラセボ群と差はなかったとのことである。しかし、実薬投与46例中ECGでのQT延長と水晶体混濁が各々1例あったことがやや気になる。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬発売/中外

 中外製薬は、2026年2月20日にデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療を目的とした再生医療等製品のデランジストロゲン モキセパルボベク(商品名:エレビジス点滴静注)を発売した。投与対象は、DMDのうち、エクソン8および/またはエクソン9の一部または全体の欠失変異を有さず、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な患者となっている。また、本製品は2025年5月13日に条件および期限付承認に該当する製造販売承認を取得している。 DMDは、小児の早期から急速に進行する、希少な遺伝性の筋疾患であり、全世界で男児の約5,000人に1例程度で発症するといわれ、女児での発症は非常にまれな疾患である。DMDでは、筋肉にかかわるタンパク質であるジストロフィンの産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する。ジストロフィンは、筋線維を強化し、筋収縮時の損傷から保護するタンパク質複合体の重要な成分であり、DMD遺伝子の変異により、DMDでは機能性ジストロフィンを体内で産生できなくなり、筋細胞は損傷に対する感受性が高まり、筋組織の瘢痕化や脂肪化が徐々に進行する。 主な症状としては、歩行能力、上肢機能、肺機能、心機能が失われ、致死的な転帰をたどる。DMDの患者はフルタイムでの介護が必要となる。また、学業や仕事や家庭生活を行うことが困難となり、抑うつや身体的な痛みを患うこともある。 今回発売されたデランジストロゲン モキセパルボベクは、1回の投与で疾患の進行に伴う不可逆的な筋障害が生じる前にDMDの原因となるジストロフィンの欠損を補うよう設計された治療法となる。<製品概要>一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク販売名:エレビジス点滴静注禁忌・禁止(一部を抜粋):ジストロフィン遺伝子のエクソン8及び/又はエクソン9の一部又は全体が欠失している患者効能、効果又は性能:デュシェンヌ型筋ジストロフィーただし、以下のいずれも満たす場合に限る・抗AAVrh74抗体が陰性の患者・歩行可能な患者・3歳以上8歳未満の患者用法及び用量又は使用方法:通常、体重10kg以上70kg未満の患者には1.33×1,014ベクターゲノム(vg)/kgを、体重70kg以上の患者には9.31×1,015vgを、60分から120分かけて静脈内に単回投与する。本品の再投与はしないこと(体重別の投与量の表は省略)。承認日:2025年5月13日薬価基準収載日:2026年2月20日発売開始日:2026年2月20日薬価:1患者当たり3億497万2,042円製造販売元:中外製薬株式会社

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肝指向性DGAT2アンチセンスオリゴヌクレオチド阻害薬ION224のMASHに対する治療効果:第II相試験の結果(解説:相澤良夫氏)

 この第II相試験では、肝臓の脂肪新生を亢進し、脂肪毒性の発現と代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の進展に関わる重要な代謝酵素で中性脂肪合成の律速酵素であるdiacylglycerol O-acyltransferase 2(DGAT2)を選択的に阻害する肝指向性アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤ION224が、脂質異常症を惹起することなくMASHに対し有効かつ安全性、忍容性の高い核酸医薬製剤であることが示された。また、このMASH改善効果は体重減少とは関連せず、体重減少効果によりMASH治療効果が期待されるGLP-1などの薬物との併用効果も期待された。 近年、次世代の医薬品として注目されている核酸医薬の開発が進み、すでにアンチセンス製剤以外にもsiRNA、アダプタマー、CpGオリゴなどが実用化されている。これらの核酸医薬は抗体医薬品に比べて比較的安価で製造できること、短期間で効率よく製薬化できること、疾患に関連する特定の遺伝子のみを選択的に制御できることなどの利点がある反面、体内で分解されにくい化学修飾や標的臓器へのドラッグデリバリーの工夫が必要なこと、長期にわたる治療での安全性に懸念があるなどの問題点も知られている。 わが国で認可されている核酸医薬品は、現状ではデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対して本邦で開発されたアンチセンス製剤であるビルトラルセンなど希少かつ重篤な進行性疾患に限られているが、がんの根治を目指した核酸医薬品の開発も行われている。 ION224はドラッグデリバリーの観点ではアシアログリコプロテインレセプターを介して肝細胞に選択的に取り込まれるように設計され、月に1回の皮下注射でよいなど煩雑性の面からも利点がある。また、1年間の試験では安全性に問題なく今後の第III相試験の結果が期待され、将来はわが国への導入も考慮されるべき製剤と思われる。 ただし、わが国での核酸医薬の収載薬価は一般経口薬に比べてかなり高価であり、罹病者が多く進行が比較的緩徐なMASHにION224を保険適用薬として一律に使用することは費用対効果面から考えても非現実的と思われる。ION224が本邦に導入される場合には、他の薬剤の効果が不十分な症例への併用薬として、あるいは肥満との関連が乏しいMASH症例など、本製剤の特徴を生かした病態に限定する必要があるものと推察される。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高用量rAAV9遺伝子療法後の死亡/NEJM

 米国・イェール大学のAngela Lek氏らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の27歳の男性患者において、dSaCas9(Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化した“死んだ[dead]”黄色ブドウ球菌Cas9)-VP64融合を含有する組み換えアデノ随伴ウイルス血清型9(rAAV9)による治療を行った。投与後、患者は軽度の心機能障害と心嚢液貯留を発症し、遺伝子導入治療後6日目に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と心停止を来し、その2日後に死亡した。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号で「短報」として報告された。5歳時に診断、18歳で自立歩行能力を失う 患者は5歳時にDMDと診断され、21年間にわたりdeflazacort 1.1mg/kg/日の投与を受けてきた。18歳時に自立歩行能力を失った。腕の機能が進行性に低下し、心肺機能障害が徐々に増強した。 2022年10月4日、患者はCRISPR-transactivator治療薬(CK8e.dSaCas9.VP64.U6.sgRNA)を含有するrAAV9ベクターの投与を受けた。その時点で、除脂肪筋肉量の割合が45%と低く、拘束性換気障害および軽度の左室収縮機能障害を伴う重度の全身性筋力低下を呈していた。その後、左室駆出率(LVEF)は維持されていたが、肺機能は経時的に低下した。治療を行わなければDMDの筋症状の悪化が予測され、代替療法がないことから、遺伝子治療の候補と判断した。自然免疫反応がARDSを引き起こした 導入遺伝子は、custom CRISPR-transactivator療法として皮質型ジストロフィンをアップレギュレートするように設計された。使用したrAAV9の用量は、体重1kg当たり1×1014ベクターゲノムと、高用量であった。予防的免疫療法として、リツキシマブ、グルココルチコイド、シロリムスの投与を行った。 ベクター投与後1日目に、患者は心室性期外収縮を発症し、引き続き血小板数が減少傾向を示し、BNPとN末端proBNPの値が上昇した。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の上昇は、DMD患者に見られるように、クレアチンキナーゼ値の増加と比例した。γ-グルタミルトランスフェラーゼ値は正常だった。 3~4日目には、呼吸性アシドーシスを伴う無症候性高炭酸ガス血症が発現した。5日目には、心機能が悪化し、LVEFは45~50%に低下した。トロポニンI値が上昇し、心エコー図検査でタンポナーデの生理的特徴を示す心嚢液貯留が認められたため、患者は心筋心膜炎と推定された。6日目には、急性呼吸困難を呈し、胸部X線所見でARDSと左室収縮機能不全(LVEF:45~50%)を認めた。 この間、緩和的な治療として、グルココルチコイドの増量、エクリズマブ(抗C5モノクローナル抗体)、トシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体)、anakinra(IL-1受容体拮抗薬)の投与を行った。 患者は6日目に心肺停止となり、体外式膜型人工肺による治療を受けたが、2日後の遺伝子治療から8日目に、多臓器不全と重篤な低酸素性虚血性神経障害により死亡した。死後の検査では、重度のびまん性肺胞障害が認められた。肝臓における導入遺伝子の発現はわずかであり、臓器におけるAAV9抗体やエフェクターT細胞反応性は認めなかった。 著者は、「これらの所見は、高用量のrAAV9遺伝子治療を受けた進行性DMD患者において、自然免疫反応がARDSを引き起こしたことを示している」としている。この研究は、米国・Cure Rare Diseaseの助成を受けて行われた。

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第169回 4億6千万円の筋ジストロフィー遺伝子治療を米国が承認

4億6千万円の筋ジストロフィー遺伝子治療を米国が承認静注投与1回きりでその値段約4億6千万円(320万ドル)1)の筋ジストロフィー遺伝子治療を米国食品医薬品局(FDA)が承認しました2,3)。米国のバイオテクノロジー企業Sarepta Therapeutics社が開発し、4~5歳の歩けるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)小児に使うことが承認されました。商品名はELEVIDYS(delandistrogene moxeparvovec-rokl)です。DMDは筋肉が痩せ衰えていく難病で、筋肉細胞が正常でいられるようにするのを助ける蛋白質ジストロフィン(dystrophin)を失わせる遺伝子変異を原因とします。歩行や走ることが困難になる、よく転ぶようになる、疲労、学習障害/困難、心筋の支障による心臓の不調、肺機能を担う呼吸筋の衰えによる呼吸困難などの症状がジストロフィンの欠損のせいで生じます。DMDと関連する筋肉の衰えはたいてい3~6歳で見受けられるようになり、重症度や予後は一様ではありませんが、20~30歳代の若さで心臓や呼吸器の不全で命を落とすことが少なくありません。承認されたELEVIDYSはジストロフィンのいくつかの部分を寄せ集めた小振りなジストロフィン(shortened form of dystrophin)を作る遺伝子を筋肉細胞に届けてジストロフィン機能の不足を補います。ELEVIDYSが作る小振りなジストロフィンはその商品名を冠してElevidys micro-dystrophinと呼ばれます。4億円を優に超える値段であるからにELEVIDYSはDMD小児の気の持ちよう、身のこなし、移動の自由などをよほど改善することが確認済みなのかといえばそうではなく、患者を生きやすくしうるそのような臨床的有用性(clinical benefit)はまだ立証されていません。ではFDAは何をよりどころにしたかというとElevidys micro-dystrophin発現の様子です。4~5歳のDMD小児の骨格筋でのElevidys micro-dystrophin発現上昇が無作為化試験結果で裏付けられており、その年齢のDMD小児のElevidys micro-dystrophin発現上昇は臨床的有用性とどうやら結びつくとFDAは判断してELEVIDYSを取り急ぎ承認しました。承認申請に含まれる唯一の二重盲検無作為化試験の被験者全般の結果では運動機能の検査NSAA総点数の変化は残念ながらプラセボと有意差がつきませんでした。NSAAは立位、歩行、椅子や床から立ち上がること、片足立ち、段差の上り下り、仰向けから座った状態に移ること、跳躍、走ることなどの17項目を検査します。しかし4~5歳の被験者に限るとNSAA改善はプラセボをより上回っており、Elevidys micro-dystrophinの発現が多いこととNSAAの改善の関連を支持する結果が得られています4)。とはいえその結果はあらかじめ計画されていたわけではない後付(Post hoc)解析に基づくものです。よってせいぜいが仮説を生み出す試みに過ぎず解釈には注意を要するとの慎重な立場をFDAのスタッフは示しました。ところが、FDAの新薬承認審査部門を仕切るPeter Marks氏にとってその結果はもはや説得力十分(compelling)なものでした。4~5歳のDMD小児のElevidys micro-dystrophin発現上昇と予後がどうやら関連しうることがそのサブグループ解析で支持されており、総合的に見てELEVIDYSの取り急ぎの承認は妥当であると同氏は結論づけました5)。ELEVIDYSの予後改善効果を立証するための試験をFDAはSarepta社に課しており、EMBARKという名称のその試験6)はすでに進行中です。被験者組み入れはすでに目標数に達しており、結果は今年中に判明します。EMBARK試験の主要転帰は投与後1年(52週後)時点のNSAA総点数の変化です。NSAAは点数が大きいほど良好なことを意味し、最低は0点で最高は34点です。0点は17の検討項目のどれもできない最悪な状態、34点はどれも難なくこなせる最良の状態です。FDAはEMBARK試験の結果が判明したら急いで検討し、必要とあらば用途の変更や承認の取り消しなどの手段が講じられます。もしEMBARK試験が目標を達成したらELEVIDYSを年齢制限なく使えるようにするつもりだとFDAはSarepta社に先立って通知しており、来年早くにその用途拡大を実現させたいとSarepta社のかじ取り役のDoug Ingram氏は言っています7)。参考1)US FDA approves Sarepta's gene therapy for rare muscular dystrophy in some kids / Reuters2)FDA Approves First Gene Therapy for Treatment of Certain Patients with Duchenne Muscular Dystrophy / PRNewswire3)Sarepta Therapeutics Announces FDA Approval of ELEVIDYS, the First Gene Therapy to Treat Duchenne Muscular Dystrophy / BUSINESS WIRE4)FDA Briefing Document / FDA5)CENTER DIRECTOR DECISIONAL MEMO / FDA6)EMBARK試験(Clinical Trials.gov)7)Spotlight On: Elevidys eking past FDA for DMD is d?j? vu all over again for Sarepta / FirstWord

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カムラティ・エンゲルマン病〔CED:Camurati-Engelmann Disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義カムラティ・エンゲルマン病は、進行性骨幹異形成症(progressive diaphyseal dysplasia)とも記載される常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる骨系統疾患である。本症は、1920年Cockayneによって初めて記載され、1922年Camuratiにより遺伝性であることが示唆された。1929年Engelmannにより、筋力低下と著明な骨幹異形成症を示す一例が報告され、本症の名前の由来となっている。現在では、過剰な膜内骨化による骨皮質の肥厚と長管骨骨幹部の紡錘形肥大、近位筋の筋力低下、四肢痛を特徴とする疾患としてカムラティ・エンゲルマン病(Camurati-Engelmann病:CED)の表記が広く用いられている。現在までに150例を超える症例報告がある。家系内解析では、表現型に大きな幅があることが知られている。■ 疫学筆者らが、2014年に行ったアンケート調査(国内医療機関[計2,531施設]に送付し、1,470施設から回答を得ることができた)では、16症例が報告された。このうち、13症例が新規だと考えられた。アンケートから推定された新規患者は30症例程度であり、既知の患者と合わせて60名程度のCED患者がいると考えられる。このアンケートでの患者の定義は、発症年齢は大半が幼児期であるが、その症状は幼児期と青年成人期で異なり、幼児期は、筋力低下、易疲労性を主徴とし、青年成人期は、骨幹の疼痛、めまい、難聴を主徴とするものを対象にし、2診断の項目で示すX線画像所見もしくは検査所見を持つものとしている。■ 病因筆者らは、このCEDの3世代にわたる大家系(21名)を見出し、その臨床表現型についての検討を行った。罹患者、非罹患者をX線学的に同定し、家系内連鎖解析を行った。これにより、疾患遺伝子が19番染色体長腕に位置するTGFB1遺伝子であることを突き止めた。しかしながら、この遺伝子にみられる変化は、TGFB1の構造遺伝子部分ではなく、関連蛋白(Latency associated protein:LAP)に存在する。当初の解析では、LAPドメインを不安定化する変異がTGFB1の遊離を促進することで成熟型TGFB1を増加させるものであると考えられていた。その後のシグナルペプチドでの変異やヒンジ以外の部分の変異での解析から、必ずしも成熟型TGFB1の増加必須なのではなく、情報伝達系として亢進する変異であれば、カムラティ・エンゲルマン病の表現型をとることが明らかになっている。■ 症状3主徴は、四肢の骨痛、筋力低下、易疲労感である。これらの3主徴の出現時期には、年齢依存性があることに注意が必要である。1)幼児期この時期の症状は、筋肉痛、筋力低下、歩行異常であり、骨痛を訴えることは少ない。2)思春期思春期前後から、運動後の骨痛や骨の自発痛が始まる。痛みの出現部位は、病変部である長幹骨の骨幹であることが多い。3主徴が整うのは思春期以後であることが多い。3主徴が整うころの体型としては、手足が長く筋肉の付きの悪い痩せ型であることが多く「マルファン様」と記載されることが多い。性別を問わず、思春期が遅れることも比較的よくみられる症状である。妊孕性に異常はみられない。3)成人期成人期以後は、上記の症状に加えて、頭蓋底の骨肥厚、骨硬化による症状が加わっていく。これには、神経孔の狭窄による神経麻痺などがあり、骨肥厚、骨硬化の進行により生じると考えられている。同様の病態生理から顔面神経マヒ、頭痛、うっ血乳頭、めまい、耳鳴、感音性難聴などの症状が生じうる。理由は不明であるが、女性患者の場合、妊娠によって四肢の疼痛が劇的に改善することが知られている。■ 予後妊孕性に問題はなく、生命予後が悪いという報告もない。しかしながら、頑固な耳鳴や日常生活に支障を来すほどの骨の自発痛は、患者を不安に陥れ精神的な不安定さを生じ、予期しない不幸な転帰をむかえることがあるので精神状態のフォローが重要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)疾患の診断には、上記の症状に加えて、X線画像所見が依然として最も価値があると考えられる。2014年の全国調査では、頭蓋骨側面、四肢長管骨X線画像所見もしくは骨シンチグラム画像所見で診断基準を設定して集計した。1)X線画像所見長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性の骨硬化像(*X線画像所見における頭蓋底の骨硬化像の有無は問わない)2)検査所見骨シンチグラムでの長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性とりこみ3)判定上記2項目のうち1項目を満たすもの図1 典型例頭蓋底の硬化像、頭蓋骨のびまん性の肥厚、長幹骨骨幹を中心とした硬化像。画像を拡大する図2 軽症例頭蓋底の硬化性変化はほとんどみられない。右尺骨近位部大腿骨遠位部の骨硬化、下腿の骨変化。画像を拡大する図3 典型例での99mTc-HMDP骨シンチグラフィー頭蓋底と長幹骨骨幹に左右対称的な取り込みを認める。画像を拡大する図1に典型例、図2に軽症例、図3には骨シンチグラフィーの所見を示す。X線画像所見では、軽症例で内骨膜中心の膜性骨化を示し、骨全体の変形は少ない。重症になるにつれ頭蓋底の骨硬化が進行し、外骨膜性の骨化が加わり骨の変形を来すのが観察できる。古典的には、赤沈の亢進、ALPの上昇の記載があるが、鑑別に用いることが可能なほどの診断的な意味はないと思われる。筆者らが経験した大家系においても、ALP、骨ALP、オステオカルシン、尿中デオキシピリジノリンなど汎用性の高い骨関連マーカーは、病気の存在、病勢と一致しない。また、この疾患の原因遺伝子であるTGFB1の血中濃度も病勢を反映するものではない。現在では、保険診療外ではあるがTGFB1遺伝子解析が可能となっており、機能亢進型の変異を検出することができれば診断を確定できるものと考えられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現在までの報告からは、ステロイドの有効性を指摘するものが多い。プレドニンとして平均0.6mg/kg/日から開始し漸減する方法が一般的である。筆者らは、初期の投与期間を限定して、低容量で長期間服用する方法をとっている。しかしながら、投与方法については、一定の見解が得られていない。疼痛に対する効果はみられるものの、一過性であり周期的に繰り返し投与が必要である。最近、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のステロイド治療で使用されるDeflazacortでの治療経験が報告されるようになっており、経過が注目される1999年ビスフォスファネート製剤の有効性が報告されたが、筆者らの症例では効果はなく、2005年には第1世代、第2世代ビスフォスファネート製剤の否定的な追試が発表された。最近、第3世代のビスフォスファネートであるゾレドロンでの治療経験の報告がみられるようになっており経過を注視する必要がある。また、原因遺伝子がTGFB1の機能亢進にあることから、マルファン症候群と同じくロサルタンの応用が報告されるようになった。低血圧を惹起しない小児領域での実用的な量は、0.6~1.4mg/kg/日とされている。これまでの報告では、病態が完成していない思春期前の小児での成績がよく、成人後では改善が認められないとするものが多い。4 今後の展望現在、本疾患は、小児慢性特定疾病ではあるものの、指定難病には指定されていない。また、治療については、新規開発薬剤の適応拡大などが必要である。そのためにも難病政策として小児慢性特定疾病指定と指定難病指定の一元化が望まれるところである。5 主たる診療科整形外科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター カムラティ・エンゲルマン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2022年4月12日

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第49回 米国FDAの大忙しの週末~ネアンデルタール人から授かったCOVID-19防御

米国FDAはこの週末大忙しだったに違いなく、25日木曜日にはPfizer/BioNTechの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)予防ワクチン接種施設を増やしうる保管方法を許可し、25日と翌日26日には稀な病気2つの新薬と運動選手の脳を守る首輪を承認し、27日土曜日には大方の予想通りJohnson & Johnson(J&J)のCOVID-19ワクチンを取り急ぎ許可しました。25日に報告された興味深い研究成果、ネアンデルタール人から授かったと思しきCOVID-19防御因子の発見も併せて紹介します。COVID-19ワクチンをいっそう推進溶解前の冷凍状態のPfizerワクチンの保管温度はこれまで超低温の零下80~60℃とされてきましたが、より一般的な冷凍庫の温度である零下25~15℃で最大2週間保管することが許可されました1,2)。また、零下25~15℃での保管後に一回のみ零下80~60℃に戻すことが可能です。超低温冷凍庫をわざわざ購入する負担が減ってワクチンを扱える場所が増えるだろうとFDAの審査部門(Center for Biologics Evaluation and Research)長Peter Marks氏は言っています1)。Pfizerワクチンと違って受け取り後に冷凍不要のJ&JのCOVID-19ワクチンは26日金曜日の諮問委員会での満場一致の賛成の翌日27日土曜日に18歳以上の成人への使用が早々と取り急ぎ認可されました3)。J&Jのワクチンバイアルの針刺し前の保管温度は2~8℃であり、冷凍してはならず、最大12時間は9~25℃で保管可能です4)。J&Jは接種1回のそのワクチン2,000万人超への投与分を今月末までに出荷できる見込みです5)。また、今年前半には米国人口の約3分の1相当の1億人への投与分が出荷される予定です。稀な病気の新薬FDAは25日に稀な病気・デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬Amondys 45(casimersen)、翌日26日には世界での診断数150人未満の超稀な病気・モリブデン補因子欠損症(MoCD)A型の治療薬Nulibry(fosdenopterin)を承認しました。Amondys 45は筋肉細胞に必要なタンパク質ジストロフィンをエクソン45スキッピングという作用機序を介して増やします。その作用が通用する変異を有するDMD患者への同剤使用が承認されました6)。DMD患者のおよそ8%がその変異を有します。MoCD A型は男児3,600人あたりおよそ1人に生じるDMDよりさらに稀で、世界で確認されている患者数は150人未満です。Nulibry(fosdenopterin)はFDAが承認した初のMoCD A型治療薬となりました7)。10万人あたり0.24~0.29人の発生率と推定されるMoCD A型患者は遺伝子変異のせいでcPMP(環状ピラノプテリン一リン酸)という分子が作れません7,8)。Nulibry はcPMPを供給することで尿中の神経毒Sスルホシステインを減らします。Nulibryの生存改善効果が13人への投与で示されています。それらの患者の84%は3年間生存し、非投与群18人のその割合は55%でした。MoCD A型の患者数は診断数より多いらしく、米国と欧州(EU)で毎年22~26人が診断されないままと推定されています9)。運動選手の脳を守る”首輪”運動選手の頭部の衝撃から脳を守る首輪Q-Collarは26日に米国FDAに承認されました10)。頭部が衝撃を受けると頭蓋内で脳が揺れて神経が捻れたり切れたりして脳が傷みます。首にはめたQ-Collarは頸静脈を圧迫することで頭蓋内の血液量を増やして脳をより固定させ、衝撃を受けてもグラグラと揺れないようにします。米国の13歳以上のフットボールチーム員284人が参加した試験などでQ-Collarの効果や安全性が示されています。その試験でQ-Collarを使用した139人の脳のMRI写真を調べたところおよそ8割(77%)107人の神経信号伝達領域(白質)は無事でした。一方、非使用群145人では逆にほとんどの73%(106/145人)に有意な変化が認められ、Q-Collarの脳保護効果が示唆されました。Q-Collar使用に伴う有意な有害事象は認められませんでした。ネアンデルタール人から授かったらしいCOVID-19防御COVID-19患者最大1万4,134人と対照群最大128万人を調べたところ、RNAウイルスに対する自然免疫の一部を担うオリゴアデニル酸シンセターゼ(OAS)の一つ・OAS1の血中量が多いこととCOVID-19になり難いことやたとえCOVID-19になっても入院、人工呼吸器使用、死に至り難いことが示されました11,12)。さらに504人の経過を調べたところ血漿OAS1量が多いことは後にCOVID-19になり難いことやCOVID-19による入院や重病に至り難いことと関連しました。OAS1はいくつかの種類(アイソフォーム)があります。興味深いことに、数万年前にネアンデルタール人と交わったときに受け継いだp46というアイソフォームがどうやらCOVID-19防御作用を担うと示唆されました。幸いなことにOAS1を増やす前臨床段階の化合物13)が存在するのでそれらを最適化してCOVID-19への効果を臨床試験で調べうると著者は言っています。参考1)Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Allows More Flexible Storage, Transportation Conditions for Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine / PRNewswire2)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE PFIZER-BIONTECH COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) / FDA3)FDA Issues Emergency Use Authorization for Third COVID-19 Vaccine / PRNewswire4)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE JANSSEN COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) / FDA5)Johnson & Johnson COVID-19 Vaccine Authorized by U.S. FDA For Emergency Use / PRNewswire6)FDA Approves Targeted Treatment for Rare Duchenne Muscular Dystrophy Mutation / PRNewswire7)FDA Approves First Treatment for Molybdenum Cofactor Deficiency Type A / PRNewswire8)Nulibry PRESCRIBING INFORMATION9)BridgeBio Pharma and Affiliate Origin Biosciences Announce FDA Approval of NULIBRYTM (fosdenopterin), the First and Only Approved Therapy to Reduce the Risk of Mortality in Patients with MoCD Type A / GLOBE NEWSWIRE10)FDA Authorizes Marketing of Novel Device to Help Protect Athletes' Brains During Head Impacts / PRNewswire11)Zhou S,et al.Nat Med. 2021 Feb 25. [Epub ahead of print]12)Discovery: Neanderthal-derived protein may reduce the severity of COVID-19 / EurekAlert13)Wood ER, et al. J Biol Chem. 2015 Aug 7;290:19681-96.

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医療者と患者とメーカーの結束が創薬へ

 2月27日、ファイザー株式会社は、「世界希少・難治性疾患の日」に合わせ、「希少・難治性疾患を取り巻く現状と課題 筋ジストロフィー治療の展望・患者さんの体験談を交えて」をテーマにプレスセミナーを開催した。セミナーでは、筋ジストロフィーの概要や希少疾病患者の声が届けられた。希少疾病の解決に必要なエンパワーメント はじめに「筋ジストロフィーの現実と未来」をテーマに小牧 宏文氏(国立精神・神経医療研究センター 病院臨床研究推進部長)が、筋ジストロフィーの中でも予後が悪い、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに焦点をあて講演を行った。 神経筋疾患の多くは進行性で、遺伝子変異に由来し、脊髄前角、末梢神経、神経筋接合部、骨格筋などに影響を及ぼし、さまざまな運動機能を奪う疾患である。最近では、脊柱固定術など対症療法の進歩、人工呼吸器など医療機器の向上もあり、平均死亡年齢は17歳(1976年)から30歳以上(2006年)に伸びている。また、主な死因でみても1980年代では呼吸不全、心不全の順位だったものが、現在では心不全が1位となるなど変化をみせているという。 筋ジストロフィーは、骨格筋だけでなく、呼吸筋、心筋、平滑筋、咀嚼、骨格などに関係する全身性疾患であり、診断から治療、そして予後のフォローまで包括的な診療体制が必要となる。そのため小児科にとどまらず、脳神経内科、整形外科、リハビリテーション科など多領域にわたる連携が必要であり、自然歴を踏まえた定期検査、そして患者のケアを積み重ねていくプロアクティブケア(先回りの医療)が必要と語る。 同時に、治療薬の開発も大切で、そのためには各診療科が連携し、患者の早期発見、臨床研究の実施と個々の患者から得られる臨床データや患者の声を蓄積・シェアし、治療研究に関わることで、その結果を分かちあう仕組み作りが大切だと提案する。そして、この医薬品開発について、期限が限られた大きな目標と捉え、集団で取り組むプロジェクトと説明。成果を出すためにも医療者、患者、企業、公的機関がエンパワーメントを持って取り組むことが期待されると展望を語り、講演を終えた。患者の声を社会に届ける仲立ちに つぎに遠位型ミオパチーという希少疾病患者として織田 友理子氏(NPO法人PADM[遠位型ミオパチー患者会] 代表)が車椅子で登壇し、「超希少疾病とともに歩んだ10年」と題し講演が行われた。講演では、本症の確定診断がついた後、患者の要望などを社会に届けるべく患者会を発足させたこと、治療薬創薬に製薬メーカーへ患者の声を届けるためにNPOを立ち上げるとともに、Webサイト「車椅子ウォーカー」を開設し、同じ境遇の患者がより外へ気軽に出られるように情報提供を行っていることなどを語った。最後に同氏は「自分が今できることは患者として話すことである。患者が個々に持っている、それぞれの幸せが実現できるように、今後も“RDD JAPAN 2019”のような場で病気のこと、患者のことが社会に伝えられるように活動を続けていきたい」と抱負を語った。■参考RDD JAPAN 2019NPO法人PADM車椅子ウォーカー■関連記事希少疾病・難治性疾患特集デュシェンヌ型筋ジストロフィー

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筋ジストロフィーへのステロイド治療、10年の追跡調査/Lancet

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者において、グルココルチコイドの長期治療は、余命において臨床的に重大な運動能の喪失リスクや上肢疾患進行リスクを抑制するとともに、死亡リスクも抑制することが、米国・カリフォルニア大学デービス校のCraig M. McDonald氏らによる前向きコホート試験の結果、示された。グルココルチコイド治療は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの標準治療として推奨されている。しかし、長期治療の有益性を評価した試験は数件しかなかった。Lancet誌オンライン版2017年11月22日号掲載の報告。筋ジストロフィー440例を10年間フォローアップ 試験は9ヵ国20施設で、2~28歳のデュシェンヌ型筋ジストロフィー男性患者を登録して行われた。登録は、2006~09年と2012~16年の2期間に行われ、440例の患者が10年間のフォローアップを受けた。 研究グループは、グルココルチコイド治療を受けなかった患者、または累積治療期間が1ヵ月未満の患者と1年以上の患者にグループ分けを行い、9つの疾患に関連した臨床的に重大な運動能と上肢の進行に関して比較した。具体的に、Kaplan-Meier法を用いて解析を行い、仰臥位からの立ち上がりに5秒以上を要する、同10秒以上を要する、仰臥位から立ち上がることができない、4段の昇段能、歩行能、頭上への完全挙手能、hand-to-mouth機能、手機能について比較した。また、死亡リスクも比較した。筋ジストロフィーへのグルココルチコイド1年以上治療群は進行が有意に緩徐、死亡リスクも低下 1年以上の筋ジストロフィーへのグルココルチコイド治療群は、1ヵ月未満治療群または未治療群と比べて、すべての疾患進行までの期間が有意に延長した(log-rank検定のp<0.0001)。1年以上治療群は1ヵ月未満治療群と比べて、運動能喪失時の年齢が中央値で2.1~4.4歳高く、上肢機能喪失時の年齢も中央値で2.8~8.0歳高かった。 筋ジストロフィーへの治療薬別にみると、deflazacort群が、prednisoneまたはプレドニゾロン群と比べて、仰臥位からの立ち上がり・歩行能・hand-to-mouth機能の喪失時の年齢中央値が、2.1~2.7歳高かった(log-rank検定のp<0.012)。 10年のフォローアップ中の死亡は45例であった。このうち39例(87%)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーが死因で、グルココルチコイドの使用期間が判明していた。死亡とグルココルチコイド使用との関連をみると、28例が1年以上のグルココルチコイド治療患者(28/311例、9%)、11例は治療歴のない患者(11/58例、19%)で、両群間のオッズ比は0.47(95%信頼区間:0.22~1.00、p=0.0501)であった。

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第12回 糖尿病合併症対策のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第12回】糖尿病合併症対策のキホン―眼科、腎機能、神経障害などの非専門領域の検査は、どのくらいの頻度でどこまで行うべきでしょうか。また専門医を紹介すべきタイミングと連携のコツを教えてください。 糖尿病網膜症の発症・進展抑制、早期治療のために、眼科医との連携は重要です。初診時に、眼科に行ったことがあるかを確認し、行ったことがなければ、眼科医に紹介します。1度眼科を受診すると、眼科医のほうでその後の定期検診を指示してくれますが、こちらでも、定期的に眼科を受診するように指導します。とくに問題がなければ半年に1回、網膜症がある場合は、重症度に応じた受診間隔でよいでしょう。「糖尿病治療ガイド2016-2017」(日本糖尿病学会編・著)では、眼科医への定期的診察の目安として、病期ごとに「正常(網膜症なし):1回/6~12ヵ月」「単純網膜症:1回/3~6ヵ月」「増殖前網膜症:1回/1~2ヵ月」「増殖網膜症:1回/2週間~1ヵ月」としています1)。 糖尿病腎症は、慢性透析療法の原疾患の第1位で2)、透析療法を受けている糖尿病患者さんの生命予後は非糖尿病の透析患者さんよりも不良で、心血管疾患や感染症リスクも高く重症化しやすいため3)、腎症についても、早期発見、進展抑制が求められます。腎症は、糸球体濾過量(GFR、推算糸球体濾過量:eGFRで代用)と尿中アルブミン排泄量あるいは尿蛋白排泄量によって評価できます。eGFRは、血清クレアチニン(Cr)を用いて「eGFR(mL/分/1.73m2)=194×Cr-1.094×年齢(歳)-0.287(女性の場合は、この値に×0.739)」で換算できるので、受診時に一般的な腎機能検査として、尿蛋白排泄量およびCr、BUNの検査は必ず行います。また、尿中アルブミン量を3~6ヵ月に一度測定し、アルブミン/クレアチニン比(ACR:Albumin Creatinine Ratio)を算出することで、尿蛋白が出現する前に腎臓の変化を発見することができます。網膜症のない場合、正常アルブミン尿であっても、eGFR<60mL/分/1.73m2の場合は、他の腎臓病との鑑別のために、また遅くとも尿中アルブミン排泄量が300mg/gクレアチニンを超えたら、専門医に紹介し、以降、定期的に腎臓専門医を受診してもらうようにします。 一般的には、糖尿病の三大合併症は神経障害→網膜症→腎症の順に進行し、神経障害は最も早く現れます。神経障害は、血糖コントロールの悪化とともに起こることが多いですが、糖尿病と診断される前、境界型の段階から存在するため、しばしば糖尿病診断の糸口になることもあります。神経障害の症状は非常に多岐にわたるため、糖尿病以外の原因による神経障害との鑑別が重要になります。足の末梢神経障害について、症状が著しく左右非対称であったり、筋萎縮や運動神経障害が強い場合は、神経内科に紹介します。 外来で注意したい糖尿病の合併症の1つに、指や爪の白癬症(水虫)や変形、胼胝(べんち、たこ)、足潰瘍・足壊疽などの「足病変」があります。神経障害および血流障害、易感染性が足潰瘍・足壊疽の主な原因になりますが、それ以外に、網膜症による視力低下で、身の回りを清潔にすることがおろそかになる、足にできた傷に気付かない、足に合わない靴を履いているなどが間接的な原因になり、足病変を悪化させることがあります。足潰瘍はひどくなると足壊疽になり、切断に至ることもあるため、まず予防をきちんとすること、できてしまった場合は、できるだけ早期に診断し対処します。予防のためには、患者さんに、毎日足を観察して異常があれば連絡するように伝えます。また、医療従事者側でも、診察の際に足を診察し、早期診断に努めるようにします。―糖尿病性神経障害の基本的な診断法と治療法について教えてください。 神経障害には、広範囲に左右対称性にみられる「多発神経障害(広汎性左右対称性神経障害)」と「単神経障害」があり、多くみられるのは多発神経障害です。 両足の感覚障害(両足のしびれや疼痛、また、足の裏に薄紙が貼りついたような感覚や砂利の上を歩いているような感覚になる知覚異常など)や穿刺痛、電撃痛、灼熱痛といった自発痛(ジンジン、ビリビリ、チリチリなど)、触覚・温痛覚の低下・欠如といった自覚症状、両側アキレス腱反射、両足の振動覚および触覚のうち、複数の異常があれば、多発神経障害の可能性があります。自覚症状については、かなりひどくならないと患者さんから訴えてくることはないため、注意が必要です。 多発神経障害の予防・治療のために、まずは良好な血糖コントロールを維持することが重要です。ただし、長期間の血糖不良例では、急激な血糖低下により、神経障害が悪化する可能性があります(治療後神経障害)。神経障害の自覚症状を改善する薬剤として、アルドース還元酵素阻害薬「エパルレスタット(商品名:キネダック)」があり、神経機能の悪化の抑制が報告されています4)。また、自発痛に対しては、Ca2+チャネルのα2δリガンド「プレガバリン(商品名:リリカ)」やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)「デュロキセチン(商品名:サインバルタ)」、抗不整脈薬「メキシレチン(商品名:メキシチール)」、抗けいれん薬「カルバマゼピン(商品名:テグレトール)」、三環系抗うつ薬などが単独、もしくは併用で使用できます。―高齢者ではどこまで合併症対策をすべきでしょうか? 高齢であっても、高血糖は糖尿病合併症の危険因子になるため、非高齢者同様、合併症の発症・進展を見据えた血糖コントロールは重要です。 しかし、高齢者の合併症は、非高齢者とは異なる特徴があります。高齢者でとくに問題になるのは認知機能の低下で、高齢患者さんでは、高血糖による認知症の発症リスクが高くなることが報告されています5,6)。また、高齢者では、高血糖によるうつ症状の発症・再発が多くなることも報告されています7)。そのほか、歯周病が増悪しやすいこと、急性合併症のうち、糖尿病ケトアシドーシスは若年者が多いのに対し、高齢者では高血糖高浸透圧症候群が多いなど1)、高齢者と非高齢者では留意すべき合併症が異なることを念頭に置く必要があります。 また、高齢者の合併症対策を考えるうえで、最も大切なのは血糖コントロールの考え方です。高齢者では、身体機能や認知機能、生理機能の低下や多くの併発症の可能性があり、個人差が非常に大きいことから、非高齢者とは異なる観点で、個別化した血糖コントロール目標および治療を検討することが求められます。高齢糖尿病は、若・壮年に発症し高齢化した患者さんと、高齢になって発症した患者さんで分けて考えます。とくに、高齢発症の糖尿病患者さんでは、生活スタイルや家族構成、身体的・精神的機能を考慮した治療戦略、さらには合併症対策を立てたほうがよいでしょう。また、高齢者では、年齢によっては余命を考慮し、できるだけQOLを損なうことなく、望ましい治療を選択することも重要です。 高齢者については、「糖尿病治療ガイド2016-2017」で初めて「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が掲げられました(詳細は、第1回 食事療法・運動療法のキホン-高齢者にも、厳密な食事管理・運動を行ってもらうべきでしょうか。をご参照ください)1)。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2016-2017. 文光堂;2016.2)一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会. 図説 わが国の慢性透析療法の現況. 2015年12月31日現在.3)羽田 勝計、門脇 孝、荒木 栄一編. 糖尿病最新の治療2016-2018. 南江堂;2016.4)Hotta N, et al. Diabet Med. 2012;29:1529-1533.5)Yaffe K, et al. Arch Neurol. 2012;69:1170-1175.6)Crane PK, et al. N Engl J Med. 2013;369:540-548.7)Maraldi C, et al. Arch Intern Med. 2007;167:1137-1144.

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atalurenはデュシェンヌ型筋ジスに有用か?/Lancet

 ジストロフィン遺伝子にナンセンス変異を認めるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)患者(7~16歳男児)に対する、ataluren治療の有効性と安全性を評価する第III相の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果が発表された。主要エンドポイントとした6分間歩行(6MWD)のベースラインからの変化について、intention-to-treat(ITT)集団および事前規定サブグループのうちベースラインの6MWDが300m未満群または400m以上群においては、ataluren群とプラセボ群で有意差は示されなかったが、同300m以上400m未満群ではataluren群の有意な改善が記録されたという。米国・カリフォルニア大学デービス校のCraig M. McDonald氏らによる検討で、結果はLancet誌オンライン版2017年7月17日号で発表された。atalurenの有効性と安全性をナンセンス変異を有する男児で評価 DMDは、重篤な進行性の稀少神経筋疾患であり、X連鎖性の遺伝性疾患である。疾患の基礎を成すのはジストロフィン蛋白の欠如で、その産生を回復するための変異遺伝子に特異的な治療法の開発が進められている。atalurenは、ナンセンス変異のリードスルーを促進することでジストロフィン遺伝子機能をフルレンジさせる作用を有し、これまでの第IIa、IIb臨床試験でその薬効について有望視される所見が示されていた。2014年には欧州医薬品庁が、5歳以上のDMD患者の治療薬として条件付き承認をしている。 研究グループは、約10~15%のDMD患者にみられるナンセンス変異を有する男児を対象に、外来設定でのatalurenの有効性と安全性を評価した。試験は北米、欧州、アジア太平洋地域、中南米から18ヵ国54施設が参加して行われた。 被験者は、ナンセンス変異を有する7~16歳、ベースライン6MWDが150m以上、身長が年齢予測標準値の80%以下であるDMD男児。1対1の割合で無作為にatalurenを1日3回(40mg/kg/日)経口投与する群もしくは適合プラセボ群に割り付け追跡評価を行った。割り付けについては、患者、保護・介護者、施設関係者、製剤製造元社員ほかすべての試験関係者に対して、データベースをロックするまでマスキングがされていた。 主要エンドポイントは、ベースラインから48週までの6MWDの変化で、intention to treatで評価した。また、主要エンドポイントについて、事前規定のサブグループについても解析を行い、その結果が疾患進行の1年予測率と関連するかについても評価した。ataluren群は300m以上400m未満群でのみ有意な改善 2013年3月26日~2014年8月26日に、230例がataluren投与群(115例)またはプラセボ群(115例)に無作為に割り付けられた。intention-to-treat集団は228例であった。 ベースライン~48週の6MWDの変化の最小二乗平均値は、ataluren群-47.7m(SE:9.3)、プラセボ群-60.7m(SE:9.3)であった(差:13.0m[SE:10.4]、95%信頼区間[CI]-7.4~33.4、p=0.213)。 事前規定のサブグループについて、同変化値のataluren群とプラセボ群の差は、ベースライン6MWDが300m未満群では-7.7m(SE:24.1、95%CI:-54.9~39.5、p=0.749)、ベースライン6MWDが300m以上400m未満群では42.9m(同15.9、11.8~74.0、p=0.007)、ベースライン6MWDが400m以上群では-9.5m(17.2、-43.2~24.2、p=0.580)であった。 atalurenの忍容性は概して良好で、治療で発現した有害事象の大半は軽度~中等度のものであった。重篤な有害事象は8例(各群4例、3%)で報告されたが、プラセボ群での報告1例(おそらく治療に関連があると考えられる肝機能の異常)を除き、治療とは無関係と考えられるものであった。 なお、atalurenによる有意な改善が認められたサブグループ群のベースライン6MWD値(300m以上400m未満)は、1年間の予測される疾患進行がより低いこととの関連が認められ、著者は、「この所見は、今後の6MWDをエンドポイントとしたDMD試験のデザインに影響を及ぼすものと考えられる」と述べている。

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ICD移植患者の心室頻拍、アブレーションが転帰良好/NEJM

 植込み型除細動器(ICD)の移植を受けた心筋梗塞後生存患者で、抗不整脈薬投与にもかかわらず心室頻拍(VT)を呈する患者について、抗不整脈薬の漸増よりもアブレーションを行ったほうが、アウトカムは有意に優れることが、カナダ・ダルハウジー大学のJohn L. Sapp氏らが行った多施設共同無作為化試験VANISHの結果、示された。同患者における抗不整脈薬治療抵抗性VTの頻度は高いことが知られる。しかし、その効果的なアプローチは明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年5月5日号掲載の報告。22施設で無作為化試験、アミオダロンを漸増 VANISH試験は、カナダ、ヨーロッパ、米国、オーストラリアの3次機能医療センター22施設で、虚血性心筋症を呈しICD移植を受けた患者で、抗不整脈投与もVTを呈する患者を集めて行われた。 被験者を無作為に、カテーテルアブレーションを施行(アブレーション群)、またはベースライン抗不整脈薬用量投与の継続もしくは漸増を行う群(漸増療法群)に割り付け追跡評価を行った。漸増療法群では、既投与薬がある場合、アミオダロンを開始。また、アミオダロンの用量は、同投与が300mg/日未満だった場合、または300mg/日以上でメキシレチンが併用されていた場合、増量した。 主要アウトカムは、死亡・24時間以内で3回以上のVTエピソード(VT storm)の記録・30日間の治療後の至適ICDショック治療の複合であった。複合アウトカム発生はアブレーション群で有意に低率 2009年7月~2014年11月に259例の患者が登録され、132例がアブレーション群に、127例が漸増療法群に無作為に割り付けられた。 追跡期間27.9±17.1ヵ月の間の主要アウトカム発生率は、アブレーション群が59.1%、漸増療法群が68.5%であった(アブレーション群のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.53~0.98、p=0.04)。 なお群間で、死亡率に有意差はみられなかった(27.6% vs.27.3%、HR:0.96、95%CI:0.60~1.53、p=0.86)。 有害事象について、アブレーション群で心穿孔が3例、重大出血3例が認められた。漸増療法では、肺傷害による死亡が2例、肝機能障害が1例認められた。

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重症薬疹

薬剤性とウイルス性の発疹症の鑑別法について教えてください。これは難しい質問です。薬剤によって出来る発疹とウイルスによって出来る発疹はメカニズムが似ています。薬剤もウイルスもMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を介してT細胞に抗原認識されるという点では同じであり、実際の鑑別も簡単ではありません。ただ、ウイルスには流行がありますし、麻疹や風疹などウイルスでは抗体価が上がります。鑑別では、これらの情報を有効活用すべきだと思います。重症薬疹の、ごく初期の場合の見分け方を教えてください。初期段階での重症化予測については盛んに研究を行っているものの、まだ結論にはたどり着かない状態です。“軽く見える薬疹が2日後に非常に重症になる”といった症例を臨床の場でも経験することがあります。実際、初期であればあるほど見分けは難しく、大きな問題です。しいてコツをあげれば、思い込みを捨てて経過を良く観察する事でしょう。経過を良く見ていると、問題の発疹の原因や悪化要因となっている病気の本態やその赴く方向・勢いが顕になり、おかしいと点に気づくようになります。そこが非常に大事な点だと思います。重症化する薬疹の診断基準や早期診断の項目で、とくに重要な項目はありますか?粘膜疹と高熱の発現は重要です。とくに熱については、高熱がなければウイルス関与の薬疹ではない事が多いといえます。いずれにせよ、この2項目が出た場合は、注意しなければいけないと思います。また一般検査では、白血球増多と白血球減少のどちらも要注意で、血液像で核左方移動を伴う好中球増多がるのなのか、異形リンパ球の出現とその増加があるのか、また特殊検査になりますがTh2の活性化を示唆する血清TARC値の上昇が見られるのかも、薬疹の病型・重症度・病勢を推定・判定する上で重要です。マイコプラズマ感染症に続発する皮疹と薬疹を鑑別する方法はありますか?この2つはきわめて似ています。しかしながら、マイコプラズマに続発する場合は、気道が障害される傾向がありますし、胸部所見からの情報も得られます。また子供よりも大人の方が鑑別難しい症例が多いといえます。これも一番のコツは経過をじっと観察し、通常の定型的薬疹と違うことに気づくことだと思います。同じ薬剤でも薬疹の臨床型には個人差があるが、その要因を知りたい。難しい質問ですが、その患者さんの持っている免疫応答性とそれに影響を及ぼす遺伝的・非遺伝的な各種要因に関係した患者さんの持っている特性などが影響するのでしょう。SJSからTENへの移行とありますが、病理組織学的に両者は別疾患と聞いたことがあります。疾患連続性について御教授ください。これにはいろいろな意見があります。SJSは、通常SJSの発疹の拡大と病勢の伸展・進行によりTENに移行します。しかし、TENの場合、SJSを経ないで現れるものもあります。そのため、現時点ではSJSからTENに移行するものは一群として考えているといってよいと思います。免疫グロブリンは、軽症でも粘膜疹があれば早期投与した方が良いのでしょうか?免疫グロブリンを用いるのは、通常の治療で治らない場合と明らかにウイルス感染があるなど免疫グロブリンの明らかな適応がある場合などに限ります。このような症例を除いては、早期に使わないのが原則だと考えます。また、高価であり保険の問題もありますので、当然ながら安易な処方は避けるべきでしょう。AGEPにおける、ステロイド投与適応の指標は?AGEPには原因薬を中止して治る例とそうでない例があります。ステロイド適応は原因薬をやめて治らない場合ですね。なお、AGEPの場合は、TENやSJSとは異なり比較的低用量のステロイドでも治る症例があることに留意すべきものと思われます。初期に判断が難しい際には、全身ステロイドは控えるべきですか?判断が困難な場合は、第一の選択肢は、まず専門医に紹介するべきでしょう。中途半端な治療の後、悪化してわれわれの施設に来られる患者さんも少なくありません。こういった医療が最も良くないといえるでしょう。そういう意味で、病気に寄り添い、責任を持ってとことん病気を見切ることが重要です。その経過中に無理だと判断したら専門の医師に紹介した方が良いといえます。重症薬疹の原因薬剤として意外なもの(あまり認識されていないもの)はありますか?抗痙攣薬、消炎鎮痛解熱薬(NSAIDs)、抗菌薬、痛風治療薬などが原因薬としてよく取り上げられますが、どんな薬剤でも起こり得ると思った方が良いと思います。被疑薬の特定が困難である場合、治療のために全て薬剤を中止することが多いですが、どのように因果関係を証明したらよいでしょうか?とくに多剤内服中の方について病気の程度によりますが、軽くて余裕があれば、怪しい薬剤から抜いていって、良くなったらその薬剤が原因である可能性が高いわけです。一方、薬疹の進行が激しく一刻の猶予もない場合は、すべて中止したほうが良いと考えます。そして、その症状が治るか収まるかして、ステロイドなどの治療薬を中止できるか、ある程度まで減量できた時に、推定される原因薬剤を用いて、患者さんの末梢血に由来するリンパ球の刺激培養(in vitroリンパ球刺激試験)を実施し、出来れば、in vivoのパッチテストも行い、原因薬を診断・推定することは今後の予防という視点からも重要です。

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乾癬治療のターニングポイント

肉体的、精神的、社会的に大きな苦痛を強いる乾癬(Psoriasis)乾癬Psoriasisの歴史は古く、古代ギリシャの書物にも登場します。その後、19世紀初頭に英国のRobert Willanにより独立疾患として臨床的特徴が紹介されました。乾癬はよく目立つ紅斑、浸潤、鱗屑といったきわめて特徴的な皮膚症状を呈します。死に至る疾患ではないものの、進行すると全身に症状が拡大したり、関節炎を合併して重篤な状態に発展することがあります。患者さんにとっては肉体的のみならず精神的、社会的にも大きな苦痛やハンディキャップを強いられる疾患です。発症には遺伝的素因に加えさまざまな後天的、環境的因子が関与すると考えられています。典型的な乾癬皮疹画像を拡大する重症例(乾癬性紅皮症)画像を拡大する乾癬による関節炎と爪の変化画像を拡大する乾癬の病変部では表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖亢進が生じています。そのため、乾癬病変でのケラチノサイトのターンオーバーは3~4日と、正常組織の4週間に比べ著しく短縮しています。その結果ケラチノサイトの角層への成熟・分化が不十分となり、臨床的特徴の一つである銀白色の厚い鱗屑を形成します。また、紅斑は病巣部に浸潤してくるリンパ球が産生するサイトカインにより起こる炎症の結果です。乾癬は病態論の進展に伴って治療法が著しく変化、進展した疾患の一つです。免疫抑制剤シクロスポリンの治療効果が明らかになる以前は、乾癬の発症機序はケラチノサイトの異常(増殖亢進、分化不全)にあると考えられていました。そのためケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的とした治療法が開発されてきました。ケラチノサイト増殖抑制を狙った光線療法の登場1931年にゲッケルマン療法が発表されています。これはコールタール軟膏を塗布して太陽灯(水銀灯紫外線)を照射するという治療法です。日光浴が乾癬を改善することは昔から知られており、機序は不明ながらコールタールの何等かの成分が紫外線の作用を増強し、ケラチノサイトの過剰増殖を減少させることで効果を発揮すると考えられます。炎症を抑制する作用もあると思われます。欧米では今日でも使用される療法ですが、我が国ではほとんど実施されていません。1970年代には別の光線療法であるPUVA療法が発表されました。PUVAとはソラレンPsoralenのPと長波長紫外線UVAを組み合わせた治療名です。ソラレンは光増感物質で長波長紫外線(UVA)を照射されると、励起状態となって反応性が高まり、細胞内DNAの二重螺旋の間に結合して細胞分裂を抑制することが知られています。やはりケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的として始められた治療ですが、炎症(紅斑)を抑制する効果も知られています。紫外線療法は21世紀に入っても進化し、より簡便な方法として中波長紫外線UVBの単独照射法、さらにはUVBに含まれる非常に狭い波長閾の紫外線ナローバンドUVBが照射されるようになりました。日常の診療で効果を発揮しています。ケラチノサイト増殖抑制を狙った薬物療法の登場膿疱化:ステロイドによる副作用その間に薬物療法も進化していきます。1950年代に入り、ステロイド外用療法が登場しました。当初の製剤は抗炎症効果がそれほど強くはなかったものの、従来の外用薬と比べれば確かな効果があり、当時としては大きな朗報でした。それ以降、より強い作用を有する外用ステロイド製剤が次々に開発され、今日まで乾癬外用療法の基本となっています。以前は内服ステロイドを用いることもあったのですが、全身性副作用に加えて、膿胞性乾癬を引き起こすなどの問題もあり、用いられなくなりました。1959年に抗腫瘍薬・免疫抑制薬であるメトトレキサートを乾癬の治療に用いる試みが報告されています。これも当初はケラチノサイトに対する増殖抑制効果を期待したものでしたが、後から考えればリンパ球に対する免疫抑制効果をも併せ持った(むしろこちらが主体?)治療法といえます。日本ではリウマチによく使用されますが、乾癬に対する適応はありません。欧米では乾癬にも使用されています。1975年には、ビタミンA誘導体であるレチノイドの治療成績が報告されました。ビタミンAは上皮組織に作用するビタミンで、ケラチノサイトの増殖および分化をコントロールすることで、効果を発揮すると考えられます。乾癬以外にも多くの角化異常症に使われています。 本邦でも1985年にレチノイドの一種エトレチナートが承認され、現在も乾癬治療薬の選択肢の一つとなっていますが、胎児催奇形性の問題から慎重な投与が求められる薬剤です。1990年代にはビタミンD3外用療法が治療法の一つとして加わりました。そのきっかけは、骨粗鬆症の患者さんにビタミンD3製剤を投与したところ、その患者さんが罹患していた乾癬の皮疹がきれいになったことでした。その少し前にビタミンD3の全く新しい作用(細胞の増殖抑制、分化誘導作用)が明らかにされており、乾癬表皮ケラチノサイトの増殖亢進、分化不全を是正することで効果を発揮することが想定されました。そこで研究が開始され、偶然の臨床的観察から始まった治療法が、新たな乾癬治療外用薬として実を結びました。今日ステロイドと並んで外用療法の主役を担っています。私はこの臨床研究に直接関係しましたが、医学の進歩における偶然の契機の重要性を強く感じた体験となりました。ビタミンD3外用の効果塗布前画像を拡大する塗布4週後 > 印画像を拡大する新たな薬物療法の流れ…自己免疫年代は少し戻りますが、別の治療の流れが起こってきます。1979年に免疫抑制薬シクロスポリン療法の難治性乾癬に対する有効性が報告されました。これは臓器移植を受けた乾癬の患者さんで効果が確認されたことがきっかけとなり、研究が始まったものです。シクロスポリンはTリンパ球の作用を阻害しますから、乾癬の病態におけるTリンパ球の重要性が認識され、免疫異常説が一挙に花開いたといえます。シクロスポリンは本邦でも1992年に乾癬に対する使用が認可され、次に紹介する生物学的製剤の登場まで、難治性症例に対する最も確かな治療法として用いられて来ました。乾癬の病態解明はその後も進展し、現在は自己免疫・炎症説が主流となっています。それには真皮樹状細胞、Th1細胞、Th17細胞が重要で、樹状細胞が産生するIL-12がTh1細胞を、IL-23がTh17細胞を刺激し、IFN-γ、TNF-α、IL-17、IL-22などを産生させます。樹状細胞自身もTNF-αを産生します。これらが複雑なネットワークを形成して反応し合い、炎症を持続させるとともに表皮ケラチノサイトを活性化し、乾癬に特徴的な皮膚症状を示すのです。2010年代に入ると、分子細胞工学的手技を応用した生物学的製剤が登場してきました。インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブなどです。インフリキシマブ、アダリムマブはTNF-α、ウステキヌマブはIL-12、IL-23といった前述の炎症ネットワークで重要な役割を演じるサイトカインを阻害することで治療効果を発揮します。難治重症例に対する効果は劇的で、乾癬治療の歴史に新たなページを開いたと言えるでしょう。ほかにも多くの生物学的製剤が続々と開発途上にあり、乾癬の治療は今後大きく変わって行くかも知れません。現在の乾癬治療以上、乾癬治療の変遷について述べましたが、現在の治療は、軽症例ではステロイド外用剤とビタミンD3外用剤の単独または併用です。併用の場合にはsequential therapyなど、効果を最大限に発揮させる工夫がなされます。痒みの強い例では抗アレルギー薬の内服を併用します。効果が不十分な例では症例に応じてこれらに紫外線療法やエトレチナートを上乗せします。重症・難治例ではシクロスポリンや生物学的製剤を用います。重症・難治性の評価には皮疹の広がりや強さ、QOLの低下をBSA(Body Surface Area)、PASI(Psoriasis Area Severity Index)、PDI(Psoriasis Disability Index)などで数値化して判断します。おおむねこれらが10以上の例が適応とされます。ただし、関節炎を合併する例では関節症状の進行を予防する意味で、皮疹の程度は軽くても生物学的製剤の使用が勧められます。本邦において使用される製剤種 類一般名製品名剤 形ビタミンD3タカルシトールボンアルファボンアルファハイ外用ビタミンD3カルシポトリオールドボネックス外用ビタミンD3マキサカルシトールオキサロール外用レチノイドエトレチナートチガソン内服免疫抑制剤シクロスポリンネオーラルサンディミュン内服生物学的製剤インフリキシマブレミケード点滴静注生物学的製剤アダリムマブヒュミラ皮下注生物学的製剤ウステキヌマブステラーラ皮下注※ ステロイド外用剤は種類が多いので省略。乾癬にはストロング以上の製剤が必要である。これらの薬剤を使いこなすコツは、副作用をいかに防止するかでしょう。ステロイド外用剤は強いほど効果も確かですが、長期使用による皮膚副作用が避けられません。それを押さえるためにはビタミンD3外用薬との併用が大切で、ステロイドの使用量をできるだけ減らすよう努力します。軽症例の外用薬によるコントロールでは生活指導も大切です。シクロスポリンや生物学的製剤の使用に際しては皮膚がん予防の観点から、紫外線療法との併用は避けるべきです。また感染症とくに結核の合併には注意が必要です。乾癬治療に関わる先生方へ私が皮膚科を始めた昭和40年には弱いステロイド、ゲッケルマン療法、メトトレキサート以外の治療法はまだ存在していませんでした。今日の治療リストを眺めると乾癬研究の進歩の跡は歴然で、まさに夢のようです。とはいえ治療はまだ対症的で副作用の心配も残っており、完全からはほど遠いと言わなければなりません。今後も研究がさらに進歩し、より良い治療法が生み出される事を願っております。

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