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早期TN乳がん、ペムブロリズマブ+術前化学療法が有望/NEJM

 早期トリプルネガティブ乳がん患者に対し、ペムブロリズマブ+術前化学療法はプラセボ+術前化学療法に比べ、手術時の病理学的完全奏効率が約14%ポイント有意に高いことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らが行った第III相無作為化比較試験の結果、示された。追跡期間中央値15.5ヵ月後の病勢進行を認めた被験者の割合も、ペムブロリズマブ+術前化学療法を行った群で低かったという。先行試験で早期トリプルネガティブ乳がん患者における、ペムブロリズマブの有望な抗腫瘍活性と忍容可能な安全性プロファイルが示されていたが、術前化学療法へのペムブロリズマブ追加が、手術時の病理学的完全奏効(浸潤がんなし・リンパ節転移陰性と定義)を得られる患者割合を有意に増大するかについては不明であった。NEJM誌2020年2月27日号掲載の報告。4サイクルのペムブロリズマブ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチン投与 試験は、未治療のStageIIまたはIIIのトリプルネガティブ乳がん患者を2対1で無作為に2群に割り付けて行われた。一方の群には、術前補助療法として4サイクルのペムブロリズマブ(200mg)3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与(784例)。もう一方の群には、同サイクルのプラセボ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与した(390例)。その後、両群に、4サイクルのペムブロリズマブまたはプラセボの追加投与と、ドキソルビシン-シクロホスファミドまたはエピルビシン-シクロホスファミドの投与を行った。 根治手術後にも術後療法として、ペムブロリズマブまたはプラセボの3週間ごと投与を最大9サイクル行った。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における根治手術時における病理学的完全奏効と無イベント生存期間だった。病理学的完全奏効の推定治療差は約14%ポイント 初回中間解析では、無作為化された最初の患者602例のうち、根治手術時における病理学的完全奏効が認められたのは、ペムブロリズマブ群64.8%(95%信頼区間[CI]:59.9~69.5)、プラセボ群51.2%(44.1~58.3)だった(推定治療群間差:13.6%ポイント、95%CI:5.4~21.8、p<0.001)。 追跡期間中央値15.5ヵ月後(範囲:2.7~25.0)において、根治手術不能の病勢進行や局所/遠隔再発または2次原発がんの発生、全死因死亡のいずれかを認めたのは、ペムブロリズマブ群784例中58例(7.4%)、プラセボ群390例中46例(11.8%)であった(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.43~0.93)。 全治療段階において、Grade3以上の治療関連有害事象の発生は、ペムブロリズマブ群では78.0%、プラセボ群が73.0%であり、うち死亡例はそれぞれ3例(0.4%)と1例(0.3%)であった。

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ファンコニ貧血〔FA:Fanconi Anemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義ファンコニ貧血(Fanconi Anemia:FA)は、染色体の不安定性を背景に、(1)進行性汎血球減少、(2)骨髄異形性症候群や白血病への移行、(3)身体奇形、(4)固型がんの合併を特徴とする遺伝病である。わが国の年間発生数は5〜10例で、出生100万人あたり5人前後である。臨床像としては、1)汎血球減少、2)皮膚の色素沈着、3)身体奇形、4)低身長、5)性腺機能不全を伴うが、その表現型は多様で、汎血球減少のみで、その他の臨床症状がみられないことや、汎血球減少が先行することなく、骨髄異形性症候群や白血病あるいは固型がんを初発症状とすることもある。それゆえ、臨床像のみで本疾患を確定診断するのは困難である。小児や青年期に発症した再生不良性貧血患者に対しては、全例に染色体脆弱試験を行い、FAを除外する必要がある。また、若年者において、頭頸部や食道、婦人科領域での扁平上皮がんや肝がんの発生がみられた場合や、骨髄異形性症候群や白血病の治療経過中に過度の薬剤や放射線に対する毒性がみられた場合にも、本疾患を疑い染色体脆弱試験を行う必要がある。 ■ 病因、病態FAは遺伝的に多様な疾患であり、現在までに、22の責任遺伝子が同定されている。わが国ではFANCA変異が全体の60%を占め、FANCG変異の25%がそれに続き、その他の変異は数%以下にすぎない。FANCD1、FANCJ、FANCNはそれぞれ家族性乳がん遺伝子のBRCA2、BRIP1、PALB2と同一であり、ヘテロ接合体はFAを発症しないが、家族性乳がん発症のリスクを持つ。遺伝形式は、FANCB、FANCRを除いて、常染色体劣勢遺伝形式を示す。FA蛋白質は、他のDNA損傷応答蛋白質と相互作用し、DNA二重鎖架橋を修復し、ゲノムの安定化を図っている。しかし、DNA修復障害と骨髄不全発症との関係は解明されていない。■ 臨床症状、合併症、予後FAの臨床像は、多様で種々の合併奇形を伴うが、まったく身体奇形がみられない場合も25%ほど存在する。色黒の肌、カフェオーレ斑のような皮膚の色素沈着、低身長、上肢の母指低形成、多指症などが最もよくみられる合併奇形である。国際ファンコニ貧血登録の調査によると10歳までに80%、40歳までに90%の患者は、再生不良性貧血を発症する。悪性腫瘍の合併も年齢とともに増加し、30歳までに20%、40歳までに30%の患者が骨髄異形性症候群や白血病に罹患する。同様に、40歳までに30%の患者は、頭頸部や食道、婦人科領域の扁平上皮がんなどの固型がんを発症する。発症10年、15年後の生存率は、それぞれ、85%、63%であった。わが国の小児血液・がん学会の統計では、移植を受けなかった30例の診断後10年生存率は63%であった。造血幹細胞移植を受けた患者は、非移植群と比較して、発がんのリスクが有意に高く、移植前治療としての放射線の照射歴や慢性GVHDの発症がリスク因子であった。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)FAを疑った場合には、図のように末梢血リンパ球を用いてマイトマイシンC(MMC)やジエポキシブタン(DEB)などのDNA架橋剤を添加した染色体断裂試験を行う。わが国においては検査会社でも実施可能である。また、FANCD2産物に対する抗体を用い、ウェスタンブロット法でモノユビキチン化を確認する方法もスクリーニング法として優れており、国内では名古屋大学小児科で実施している。上記のスクリーニング法では、リンパ球でリバージョンを起こした細胞が増殖している(体細胞モザイク)ために偽陰性例や判定困難例が生ずる。このときには100個あたりの染色体断裂総数だけでなく、染色体断裂数ごとの細胞数のヒストグラムが有用である。この場合の診断には、皮膚線維芽細胞を用いた染色体脆弱試験が必要となる。図 ファンコニ貧血を疑った場合の診断スキーム画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAには、免疫抑制療法の効果は期待できないが、蛋白同化ホルモンは、約半数の患者において有効である。しかし、男性化や肝障害などの副作用があり、造血幹細胞移植の成績の悪化を招くという報告もある。わが国で使用可能な蛋白同化ホルモン製剤としては、酢酸メテノロン(商品名:プリモボラン)のみである。現時点では、FAの患者にとって、造血幹細胞移植のみが唯一治癒の期待できる治療法である。通常の移植前処置で使用される放射線照射や大量シクロホスファミドの投与では移植関連毒性が強いので、従来は少量のシクロホスファミドと局所放射線照射の併用が標準的な前治療法として用いられてきた。しかし、非血縁者間骨髄移植や臍帯血移植は、拒絶や急性移植片対宿主病(GVHD)の頻度が高く、十分な治療成績は得られていなかった。しかし、最近になって、フルダラビンを含む前治療法が開発され、その予後は著明に改善がみられている。 最近、わが国から報告されたFAに対するHLA一致同胞あるいは代替ドナーからの移植成績は、2年全生存率がそれぞれ100%、96%に達している。4 今後の展望フルダラビンを含む前治療による造血幹細胞移植の開発により、造血能の回復は得られるようになったが、扁平上皮がんを中心とした2次がんのリスクが増大している。すでに、海外では遺伝子治療が実施されており、今後の発展が期待されている。5 主たる診療科小児科、血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ファンコニ貧血(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金 特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2020年02月10日

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術前化療で乳房温存療法が適応になる割合は(BrighTNess)/JAMA Surgery

 StageII~III乳がんでは乳房温存療法を可能にするべく術前化学療法が実施されることが多い。今回、米国・Brigham and Women's HospitalのMehra Golshan氏らは、BrighTNess試験の2次解析からトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において術前化学療法により53.2%が乳房温存療法の適応になったことを報告した。また、北米では乳房温存治療適応患者でも乳房温存率が低く、生殖細胞系BRCA(gBRCA)変異のない患者での両側乳房切除率が高いことがわかった。JAMA Surgery誌オンライン版2020年1月8日号に掲載。 本研究は、多施設二重盲検無作為化第III相試験(BrighTNess)において事前に示されていた2次解析である。BrighTNess試験には、北米、欧州、アジアにおける15ヵ国145施設において、手術可能なStageII〜IIIのTN乳がんで術前化学療法開始前にgBRCA変異検査を受けた女性634例が登録された。登録患者をパクリタキセル+カルボプラチン+veliparib、パクリタキセル+カルボプラチン、パクリタキセル単独に無作為に割り付け、12週間投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミドを4サイクル投与した。乳房温存療法の適応については、術前化学療法の前後に外科医が臨床およびX線写真により評価した。データは2014年4月1日~2016年12月8日に収集し、2018年1月5日~2019年10月28日に2次解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・634例(年齢中央値:51歳、範囲:22〜78歳)のうち、604例で術前化学療法前後の評価が可能であった。・ベースラインで乳房温存療法が不適応と判断された141例のうち、75例(53.2%)が術前化学療法後に適応となった。・全体として、術前化学療法後、乳房温存療法の適応と判断された502例のうち、342例(68.1%)が実際に乳房温存療法を受けた。このうち、乳房温存療法が非適応から適応に変わった75例では42例(56.0%)が実際に温存治療を受けた。・欧州およびアジアの患者は、北米の患者より乳房温存療法実施率が高かった(オッズ比:2.66、95%CI:1.84~3.84)。・gBRCA変異陰性で乳房切除術を受けた患者の対側乳房予防切除実施率は、北米の患者が70.4%(81例中57例)と、欧州およびアジアの患者の20.0%(30例中6例)に比べて高かった(p<0.001)。

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B細胞NHLへのR-CHOP、4サイクルvs.6サイクル/Lancet

 60歳以下の低リスク中悪性度(アグレッシブ)B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療において、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone(R-CHOP)併用療法の4サイクル投与は6サイクル(標準治療)に対し、有効性が非劣性で、毒性作用は治療サイクルが少ない分、抑制されることが、ドイツ・ザールラント大学のViola Poeschel氏らGerman Lymphoma Allianceが行った「FLYER試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年12月21/28日合併号に掲載された。国際予後指標(IPI)の年齢調整リスク因子がなく、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者では、6サイクルのR-CHOP様レジメンの予後はきわめて良好と報告されている。一方、多くの患者にとって、このレジメンに含まれる6サイクルの細胞傷害性薬剤の併用療法(CHOP様)は過剰治療となっている可能性があるという。5ヵ国が参加した非劣性試験 本研究は、5ヵ国(デンマーク、イスラエル、イタリア、ノルウェー、ドイツ)の138施設が参加した多施設共同非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2005年12月2日~2016年10月7日の期間に患者登録が行われた(Deutsche Krebshilfeの助成による)。 対象は、年齢18~60歳で、StageI/II、血清乳酸脱水素酵素(LDH)濃度が正常、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するB細胞非ホジキンリンパ腫患者であった。 被験者は、R-CHOP 4サイクルに加えリツキシマブを単独で2回投与する群(4サイクル群)、またはR-CHOPを6サイクル投与する群(6サイクル群)に無作為に割り付けられた。1サイクルは21日であった。リツキシマブの用量は375mg/m2(体表面積)とした。精巣リンパ腫を除き、放射線治療は計画されなかった。 主要評価項目は、3年時の無増悪生存(PFS)率とし、intention-to-treat集団で解析が行われた。非劣性マージンは-5.5%とした。安全性の評価は、1回以上の投与を受けた患者を対象とした。3年PFS率:96% vs.94%、完全寛解率:91% vs.92% 592例が登録され、588例(4サイクル群293例[年齢中央値 49歳、女性 40%]、6サイクル群295例[47歳、39%])がintention-to-treat解析の対象となった。B症状が4サイクル群で多かった(9% vs.3%)。588例中499例(85%)がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であった。 追跡期間中央値66ヵ月(IQR:42~100)の時点における3年PFS率は、4サイクル群が96%(95%信頼区間[CI]:94~99)、6サイクル群は94%(91~97)であった。群間差は3%で、95%CIの下限値は0%であり、非劣性マージン(-5.5%)よりも高く、4サイクル群の6サイクル群に対する非劣性が確認された。 治療終了時に、4サイクル群267例(91%)、6サイクル群271例(92%)が完全寛解を達成し、それぞれ8例(3%)および11例(4%)が部分寛解で、6サイクル群の1例(<1%)が不変であった。治療中の増悪は両群3例(1%)ずつで認められた。 3年無イベント生存率は、4サイクル群が89%、6サイクル群も89%であり、3年全生存率はそれぞれ99%および98%だった。 また、事後解析では、5年PFS率は4サイクル群94%、6サイクル群94%、5年無イベント生存率はそれぞれ87%および88%、5年全生存率は97%および98%であった。 全体で40例が増悪または再発した。治療終了時の完全寛解/不確定完全寛解例での再発は、4サイクル群が11例(4%)、6サイクル群は13例(5%)であり、部分寛解例の再発はそれぞれ2例(25%)および2例(18%)だった。完全寛解/不確定完全寛解の再発例24例のうち、4例(17%)は登録から1年以内に、8例(33%)は2年以内に再発した。 4サイクル群(293例)では血液学的有害事象が294件、非血液学的有害事象が1,036件発現したのに比べ、6サイクル群(295例)ではそれぞれ426件および1,280件であり、4サイクル群で少ない傾向が認められた。重篤な有害事象は、4サイクル群48例、6サイクル群45例にみられた。感染症は、それぞれ116例(Grade3/4は22例)および156例(同23例)で発現した。6サイクル群で治療関連死が2例認められた。 著者は、「R-CHOP療法は、有効性を損なわずに、化学療法の施行数を減らすことができる」としている。

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男性胚細胞腫瘍の心血管疾患リスクは?/JCO

 男性の胚細胞腫瘍は、まれだが20~30代に比較的多く発生するという特徴がある。その男性胚細胞腫瘍(精巣腫瘍)について、ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン(BEP)併用療法が、治療開始後1年未満の心血管疾患(CVD)リスクを顕著に増加させ、10年後にもわずかだがリスク増加と関連することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJakob Lauritsen氏らによる検討で明らかにされた。また、放射線療法が糖尿病のリスク増加と関連していることも示されたという。なお、経過観察の患者では、CVDリスクは正常集団と同程度であった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。 研究グループは、デンマークの精巣腫瘍データベースを用いて、腫瘍治療後のCVDリスクを分析した。臨床データを収集するとともに、患者1例につきデンマークの正常集団から生年月日をマッチさせたリスク集団サンプリング(risk-set sampling)で対照10例を抽出し、治療とアウトカムとの関連性を、がん治療を時変共変量(time-varying covariate)として組み込んだCoxモデルでアウトカムごとに分析した。 心血管リスク因子、CVDおよび関連する死亡は、デンマークのレジストリで特定した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、胚細胞腫瘍の男性患者5,185例、対照男性5万1,850例で、追跡期間中央値は15.8年であった。・BEP併用療法(1,819例)は、高血圧症と高コレステロール血症のリスク増加と関連していた。・BEP併用療法開始後1年未満のCVDのハザード比(HR)は、心筋梗塞が6.3(95%信頼区間[CI]:2.9~13.9)、脳血管障害が6.0(2.6~14.1)、静脈血栓塞栓症が24.7(14.0~43.6)であった。・BEP併用療法開始後1年以降は、CVDリスクは正常レベルに低下したが、10年後の時点でも心筋梗塞(HR:1.4、95%CI:1.0~2.0)および心血管死(1.6、1.0~2.5)のリスク増加が認められた。・放射線療法(780例)は、長期追跡で糖尿病のリスクを増加させた(HR:1.4、95%CI:1.0~2.0)が、ほかのリスクは増加しなかった。・経過観察の患者(3,332例)では、心血管リスク因子、CVDおよび心血管死のデータは正常集団と同程度であった。

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閉経後ルミナールB乳がんへの術前療法、ribociclib+レトロゾール併用が有望(CORALLEEN)/SABCS2019

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後乳がんに対する術前療法として、ribociclibとレトロゾールの併用投与が、術前化学療法と同様の効果を示す可能性があるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、スペインInstituto Valenciano de OncologiaのJoaquin Gavila氏より発表された。この結果はLancet Oncology誌オンライン版2019年12月11日号に同時掲載された。 本試験(CORELLEEN試験)は、2017年7月~2018年12月にスペイン国内(21施設)で実施された、オープンラベル無作為化比較の第II相試験である。・対象:Stage I~IIIAのHR+/HER2-ルミナールBタイプの閉経後乳がん患者(ルミナールBタイプは遺伝子発現プロファイル検査法PAM50で判定)・試験群:ribociclib+レトロゾール群(R群) 52例・対照群:ドキソルビシン+シクロホスファミド後にパクリタキセル逐次投与群(CT群) 54例・評価項目:[主要評価項目]手術時にPAM50によりROR(Risk Of Recurrence)-lowと判定される割合[副次評価項目]組織学奏効率(pCR)、残存腫瘍量(RCB)とPEPI(Preoperative Endocrine Prognostic Index)スコア、PAM50によるサブタイプ変化、奏効率、QOL、安全性、バイオマーカー検索など 両群共に6ヵ月の投薬期間後に手術を施行。ROR-Lowの判定は、リンパ節転移陰性(n0)の場合、RORスコア40以下、リンパ節転移1~3個(n1-3)の場合、15以下とした。同様にn0でRORスコアが41~60、n1~3で16~40をIntermediateとした。 主な結果は以下のとおり。・遺伝子検査の解析対象はR群49例、CT群51例であった。・手術時のROR-lowの割合は、R群46.9%(95%信頼区間[CI]:32.5~61.7)、CT群:46.1%(95%CI:32.9~61.5)であった。・RORスコアの中央値は、R群18、CT群25であった。中央判定によるKi67の中央値は、R群3、CT群10であった。・pCR率はR群0%(95%CI:0~7.2)、CT群5.8%(95%CI:1.4~16.6)、PEPIスコア0はR群22.4%(95%CI:11.7~36.6)、CT群17.3%(95%CI:8.6~31.4)であった。・手術時におけるサブタイプ変化は、R群の87.8%、CT群の82.7%がルミナールAとなっており、ルミナールBはR群で8.2%、CT群で15.4%であった。・ベースラインと薬剤投与15日目のRORの変化を見たところ、R群の1例以外はすべて減少しており、CT群に比べ大きなRORの低下がみられた。・Grade3以上の有害事象(AE)の発現率は、R群で56.9%、CT群で69.2%、重篤なAEはR群で3.9%、CT群で15.4%であった。また、AEによる投与中止はR群で15.7%、CT群で19.2%であった。Gavila氏はSABCSのプレスリリースで、「ハイリスクのルミナールB乳がん患者に対するribociclibとレトロゾールの併用による術前内分泌療法は有害事象も少なく、術前化学療法と同等の臨床的効果があり、今後は術前化学療法にとって代わる可能性がある」と述べている。

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HER2-乳がん1次治療、S-1が標準治療に非劣性(SELECT BC-CONFIRM)/日本癌治療学会

 HER2陰性の進行・再発乳がん(mBC)に対する1次治療として、S-1が標準治療(アンスラサイクリンを含むレジメンあるいはタキサン)と比較して非劣性であることが示された。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、大阪市立大学の高島 勉氏が第III相SELECT BC試験およびSELECT BC-CONFIRM試験の統合解析結果を発表した。 はじめに実施されたSELECT BC試験は、化学療法歴のないHER2陰性mBC患者を対象とした、タキサンとS-1のランダム化比較試験。主要評価項目である全生存期間(OS)は、タキサン群の37.2ヵ月に対しS-1群35.0ヵ月と、S-1のタキサンに対する非劣性が証明された(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.27、non-inferiority test p=0.015)。またHRQoLの比較において、全般的健康(p=0.04)、身体機能(p<0.01)、認知機能(p=0.03)など、経済的困難、疼痛を除くすべての項目でS-1群が有意に優れていた。 SELECT BC-CONFIRM試験は、同様の患者を対象としたアンスラサイクリンとS-1のランダム化比較試験。本試験はSELECT BC試験との統合解析を前提として組まれている。そのうえで、OSについては、アンスラサイクリン群33.7ヵ月に対してS-1群30.1ヵ月(HR:1.09、95%CI:0.80~1.48、ハザード比の非劣性マージン1.333を超えない確率=90.27%)と報告されている。HRQoLについては、両群で有意な差はみられなかった。今回の発表では、新たに両試験の統合解析結果(主要評価項目:OS、副次評価項目:安全性、HRQoL、PFSなど)が報告された。 主な結果は以下のとおり。・SELECT BC試験:618例、SELECT BC-CONFIRM試験:230例の計848例が組み入れられ、それぞれS-1群と標準治療群に無作為に割り付けられた。辞退者などを除き、最終的な解析はS-1群419例、タキサン群286例、アンスラサイクリン群109例について行われた。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値がS-1群57.7歳/タキサン群57.6歳/アンスラサイクリン群59.9歳であった。各群3/4がホルモン受容体陽性、1/3が肝転移陽性の患者であった。周術期治療としては、ホルモン療法が約6割、タキサンが3割弱、経口FU剤が1割強で使われていた。無再発期間(DFI)は2~5年および5年以上の患者がそれぞれ約3割を占めていた。・追跡期間中央値32.7ヵ月において、OS中央値はタキサンとアンスラサイクリンの標準治療群36.3ヵ月 に対しS-1群32.7ヵ月(HR:1.06、95%CI:0.90~1.25)となり、あらかじめ設定された非劣性マージン(1.333)を下回り、S-1の標準治療に対する非劣性が証明された(non-inferiority test p=0.0062)。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、両群ともに11.2ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.95~1.27)。・HRQoLについては、S-1とアンスラサイクリンで両群間に差異はなかった(p=0.257)が、S-1とタキサンでは有意差が確認された(p=0.0039)。・有害事象による治療中止は、S-1群5.7%、標準治療群6.6%で発生した。・血液毒性としては、アンスラサイクリン群で貧血や好中球減少のGrade3以上が若干多い傾向がみられた。S-1群ではトランスアミラーゼ上昇やビリルビン上昇が多い傾向がみられたものの、ほとんどがGrade1/2であった。・非血液毒性としては、S-1群では脱毛が少ないことが特徴的であった。タキサン群では神経障害が多く、アンスラサイクリン群とS-1群では食欲不振、吐き気といった消化器毒性が多い傾向がみられた。 高島氏は、アンスラサイクリン群との比較においてHRQoLについて有意な差がみられなかったことについては、制吐剤の進歩などによりアンスラサイクリン投与中のQoLは比較的良好なのではないかと考察。しかし、同薬は心毒性による用量制限があり、奏効しても長期間使用ができない場合があることを指摘した。経口薬であることによる投与の簡便さと、脱毛や末梢神経障害、浮腫や心機能障害などの苦痛を伴う有害事象が少ないという点にS-1の利点があるとまとめている。

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局所進行NSCLCのCRT、10年でどこまでcure?(WJTOG0105)/ESMO2019

 WJTOG0105は、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)における、胸部放射線治療(TRT)の併用化学療法として、第3世代レジメン(イリノテカン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチン)と第2世代レジメン(マイトマイシンC+ビンデシン+シスプラチン)を比較した第III相試験である。この試験の結果、第3世代レジメンによる化学放射線療法(CRT)は切除不能Stage III NSCLCの標準治療の1つとして確立された。しかし、CRTによる累積毒性と長期生存はまだ明らかになっていない。国立がん研究センター東病院の善家 義孝氏は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、わが国のStage III NSCLCにおけるCRTの生存と毒性の10年間追跡調査の結果を報告した。・対象:切除不能Stage IIIA/B NSCLC(70歳未満、PS 0~1)・対照群[A群]シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)+TRT(60Gy)→シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)・試験群[B群]イリノテカン+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→カルボプラチン+イリノテカン(3週ごと2サイクル)[C群]パクリタキセル+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→パクリタキセル+カルボプラチン(3週ごと2サイクル)。・評価項目:5年および10年の全生存(OS)率、晩期毒性(CRT開始後90日以降に発生) 主な結果は以下のとおり。・2001年9月~2005年9月に440例が登録され、A群(n=146)、B群(n=147)、C群(n=147)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は140ヵ月であった。・OSはA群20.5ヵ月に対しB群19.8ヵ月(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.82~1.51)、C群22.0ヵ月(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30)であった。・5年OS率はA群20.8%、B群16.0%、C群18.3%、10年OS率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%であった。・5年無増悪生存(PFS)率はA群10.2%、B群10.8%、C群12.3%、10年PFS率はそれぞれ8.5%、5.9%、11.1%であった。・Grade3/4の晩期毒性はA群3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)、B群で3.4%(肺のみ)、C群4.1%(肺のみ)、Grade5は、C群で0.7%(肺のみ)であった。 C群のカルボプラチン+パクリタキセルは、A群と同程度の効果と毒性プロファイルを有していることが示された。10年OS率15%、PFS率11%という結果から、免疫療法を含めた新たな治療戦略が必要だとしている。 発表者の善家義貴氏との1問1答はこちら。この試験を行った背景について教えてください。 Stage IIIのCRTは従来5年生存をcureの指標としていましたが、がん患者さんの生存が延長した現在、cureは10年生存でみるべきだといえます。しかし、CRTを10年間観察した大規模研究はありませんでした。そこで、今回初めて、CRTが10年という長期のcureを実現しているのかを追跡評価しました。この結果をどう評価されますか。 今までCRT後の生存率は5年で20%と言われていましたが、その後はどのようになるのか明らかになっていませんでした。今回の試験で、10年で15%というデータが出たことは重要だと思います。 また現在、実臨床で使われているCRTの化学療法は、ほとんどがC群のカルボプラチン+パクリタキセルだと思います。当試験の結果からも、このレジメンが効果、安全性ともにスタンダードであると言えると思います。この試験で苦労されたことは? 10年間、患者さんの生存調査をすることは大変な作業でした。しかし、この難しい作業を研究者の先生方は快く協力していただけました。その背景には、この研究の結果をぜひ知りたいという強い興味が、肺がん診療医にあったのではないかと思います。 CRTはcureを目指す治療です。10年生存15%は満足な数字だとは言えません。今後は免疫療法などで、どこまで引き上げられるかが課題です。

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早期TN乳がんの術前化学療法にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/ESMO2019

 新規に診断された早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することにより、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に上昇したことがKEYNOTE-522試験で示された。また、術前/術後のペムブロリズマブ投与により無イベント生存率(EFS)が改善する傾向もみられた。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表した。 本試験は、早期TNBCに対してペムブロリズマブの術前化学療法との併用および術後補助療法での投与について検討した、初のプラセボ対照無作為化比較第III相試験である。・対象:新規に診断されたTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間(OS)、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・1,174例が2:1に無作為化され、ペンブロリズマブ群に784例、プラセボ群に390例が割り付けられた。・追跡期間中央値はペムブロリズマブ群15.3ヵ月、プラセボ群15.8ヵ月であった。・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群は64.8%とプラセボ群51.2%に対して有意な改善を示した(p=0.00055)。・副次評価項目のpCR(ypT0 ypN0)およびpCR(ypT0/Tis)も、ペムブロリズマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ59.9%vs.45.3%および68.6%vs.53.7%と同様であった。・PD-L1発現の有無別のペムブロリズマブ群とプラセボ群におけるpCR(ypT0/Tis ypN0)は、PD-L1陽性で68.9%vs.54.9%、PD-L1陰性で45.3%vs.30.3%であり、PD-L1発現にかかわらず、ペムブロリズマブの改善効果が認められた。・EFSの最初の中間解析でのイベント発生率は、ペムブロリズマブ群7.4%、プラセボ群11.8%で、ハザード比は0.63(95%信頼区間:0.43~0.93)であったが、事前に設定したp値の有意水準を達成しなかった。18ヵ月時のEFSはペムブロリズマブ群91.3%、プラセボ群85.3%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象の発現率は、術前療法期ではペムブロリズマブ群76.8%、プラセボ群72.2%、術後療法期では5.7%、1.9%であった。・Grade3以上の免疫介在性有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群14.1%、プラセボ群2.1%であった。

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腫瘍循環器病学の基礎研究の1つとなる論文(解説:野間重孝氏)-1113

 腫瘍循環器病学(Onco-cardiology)という領域には、まだあまりなじみのない方が多いのではないかと思う。この領域が本格的に稼働し始めたのは今世紀に入ってからで、実際、最初の専門外来がテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター内に開設されたのは2000年の出来事だった。わが国で同種の外来が大阪府立成人病センターにおいて初めて設置されるには、その後10年を待たなくてはならなかった。こうした事情を考えると、この領域について少し解説を加える必要があるのではないかと思う。 がん治療における心毒性の歴史は、アントラサイクリン心筋症に始まる。抗がん剤において急性期心毒性に加え、1年以上も経過してから出現する亜急性期心毒性が報告されたことが、同剤の心毒性についての関心を大きく高めた。1970年代の出来事である。その後の研究で、アントラサイクリンの投与容量がドキソルビシン換算400~450mg/m2以上で、高い頻度で心不全の発症が見られることがわかり、投与量を計画的に制限することでその発症を大幅に減少させることが可能になった。この一連の研究が、腫瘍循環器病学のいわば基礎になったことは言うまでもない。 その後がんの病態の解析が進み、今世紀には分子標的薬が出現する。HER2受容体を特異的に阻害する抗体であるトラスツズマブの出現は、今まで増殖性が強く難治性であったHER2陽性乳がんの予後を著明に改善し注目された。しかし、投与前には予想されていなかった心不全例が出現し、その原因としてHER2受容体が心筋細胞にも存在することが証明されたことは、大きな驚きをもって迎え入れられた。最近の最大の話題の1つに、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した免疫チェックポイント阻害薬があるが、この種の薬剤でも劇症心筋炎が報告され、対応が苦慮されている。つまり新しい抗がん剤が出現すると、さらに新しい作用に合わせた予想できない心毒性が出現する可能性が考えられるのである。 しかし一連の研究の流れが、薬剤の心毒性→薬剤性心筋症→心不全という方向だけだったなら研究は薬剤研究の範囲内にとどまり、腫瘍循環器病学という新しい分野が創出されるに至ったかどうかは疑わしいと思う。がんから回復した患者(がんサバイバー)にがん治療からかなり時期をずらして静脈血栓症が多発すること、そして何よりもがんサバイバーに冠動脈疾患の発生率が高いことが(数倍~10倍ともいわれる)、この領域の研究がぜひ必要と認知される決定的な理由になったのではないかと思う。これらの疾患は原因・病態が複雑でひとくくりにできる性格のものでないことは言うまでもないが、まだその細かな解析にまでは至っていないのが現状である。この領域は、まだ生まれたばかりなのである。 さて、本論文はそうした状況の中、代表的ながん20種について英国の権威あるデータベースであるUK Clinical Practice Research Datalinkを用い、がんサバイバー10万8,215例に対し、年齢・性別をマッチさせた52万3,541例の(つまり複数の)対象をおいて心血管疾患の発生を25年にわたって追跡した大規模疫学研究である。それぞれのがんについて心血管疾患の発生倍率を算出し、かつ信頼区間についても明示された。研究グループの地道な努力に敬意を表するものである。さらに、従来この種の疫学研究は比較的若年者を対象とすることが多かったが、本研究では高齢者も対象としており、かつ年齢が発生頻度と関係することを示したことも注目されるべき点だろう。なお著者らは今回の研究の限界として、投与された化学療法の種類や投与量、がんの再発、心血管疾患の家族歴、人種、食事、アルコール消費量などの情報に信頼できるデータを示すことができなかったことを挙げているが、評者にはこれは確かに限界と言えば限界には違いないが、この種の疫学調査では避けて通れない種類の限界であり、この研究の価値を下げるものではないと思われる。それぞれの患者がそれぞれ置かれた環境で至適治療を受けたという事実が問題で、その結果としてどうなったのかこそが問題だからである。 今後がん治療には、どんどん新しい分野が開拓されていくことが予想される。その際、最も問題になるのが心血管系合併症であることが、はっきりと示されたことは大変に重要なことだと考える。本論文は正確な実態を把握することを主目的とし、何か新しい知見を示すことを目的とはしていない。しかし、今後ますます重要性を増していくであろうこの分野における、記念碑的な論文の1つになるであろうと考えるものである。

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高齢者乳がん、カペシタビン術後療法の10年評価/JAMA Oncol

 カペシタビンの早期高齢乳がん術後補助化学療法における標準療法に対する非劣性を検討した「CALGB 49907試験」の長期10年の追跡結果が、米国・ノースカロライナ大学Lineberger Comprehensive Cancer CenterのHyman B. Muss氏らにより発表された。Journal of Clinical Oncology誌2019年9月10日号掲載の報告。 同試験の主要解析の結果は、追跡期間中央値2.4年後に報告されており、標準術後化学療法は、カペシタビンとの比較において有意に良好な無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)を示していた。今回、同グループは、追跡期間中央値11.4年後の結果をアップデート報告した。 CALGB 49907試験では、65歳以上の早期乳がん患者を、標準術後補助化学療法群(担当医がシクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル、もしくはシクロホスファミド+ドキソルビシンのいずれかを選択)またはカペシタビン群に無作為に割り付け追跡が行われた。ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いて試験サンプルサイズを確認し、カペシタビンの非劣性検定を行った。主要評価項目はRFSであった。 主な結果は以下のとおり。・試験は、初回サンプルサイズ評価後、被験者633例に達した時点で終了となった。・RFSは、標準化学療法群で有意に延長したままであった。・10年時点で、RFSは標準化学療法群56%、カペシタビン群は50%であった(HR:0.80、p=0.03)。・乳がん特異的生存率は、それぞれ88%、82%であった(HR:0.62、p=0.03)。・より長期の追跡で、標準化学療法はホルモン受容体陰性の患者では依然としてカペシタビン群に対して優れていたが(HR:0.66、p=0.02)、ホルモン受容体陽性患者では有意差は認められなかった(HR:0.89、p=0.43)。・集団全体の死亡率は43.9%で(乳がんによる死亡13.1%、乳がん以外による死亡16.4%、原因不明の死亡14.1%)、2次性非乳がんの発生は14.1%であった。

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第26回 化学療法時に用いられる各制吐薬の有用性をエビデンスから読み解く【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 がん化学療法では、疼痛管理や副作用の予防などさまざまな支持療法を行うため、それぞれのレジメンに特徴的な処方があります。代表的な副作用である悪心・嘔吐に関しては、日本癌治療学会による制吐薬適正使用ガイドラインや、ASCO、NCCN、MASCC/ESMOなどの各学会ガイドライン1)に制吐療法がまとめられていますので、概要を把握しておくと患者さんへの説明やレジメンの理解に有用です。悪心・嘔吐は大きく、化学療法から24時間以内に出現する急性悪心・嘔吐、25~120時間に出現する遅発性悪心・嘔吐、予防薬を使用しても出現する突出性悪心・嘔吐、化学療法を意識しただけでも出現する予期性悪心・嘔吐に分けられ、化学療法の催吐リスクに応じて制吐薬が決められます。今回は主な制吐薬である5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロン、NK1受容体拮抗薬のアプレピタント、MARTAのオランザピンのエビデンスを紹介します。パロノセトロンまずは、2010年に承認された第2世代5-HT3受容体拮抗薬であるパロノセトロンを紹介します。本剤は従来のグラニセトロンやオンダンセトロンとは異なる構造であり、5-HT3受容体への結合占有率、親和性、選択性が高く、半減期も約40時間と長いことから遅発性の悪心・嘔吐にも有効性が高いとされています。2018年版のNCCNガイドラインでは、パロノセトロンを指定しているレジメンもあります1)。パロノセトロンとグラニセトロンの比較試験では、CR(Coplete Response)率、すなわち悪心・嘔吐がなくレスキュー薬が不要な状態が、急性に関しては75.3% vs.73.3%と非劣性ですが、遅発性に関しては56.8% vs.44.5%(p<0.0001、NNT 9)とパロノセトロンの有効性が示されています2)。また、同薬剤によりデキサメタゾンの使用頻度を減らすことができる可能性も示唆されています3)。添付文書によると、便秘(16.5%)、頭痛(3.9%)のほか、QT延長や肝機能値上昇が比較的高頻度で報告されているため注意が必要ですが、悪心の頻度が多いと予期性の悪心・嘔吐を招きやすくなるため、体力維持や治療継続の点でも重要な薬剤です。院内の化学療法時に静注される薬剤ですので院外では見落とされることもありますが、アプレピタント+デキサメタゾンの処方があれば、5-HT3受容体拮抗薬の内容を確認するとよいでしょう。アプレピタント2009年に承認されたアプレピタントは、中枢性(脳内)の悪心・嘔吐の発現に関与するNK1受容体に選択的に結合することで、悪心・嘔吐を抑制します。一例として、NK1受容体拮抗薬を投与された計8,740例を含む17試験のメタアナリシスを紹介します4)。高度または中等度の催吐性化学療法に対して、それまで標準的だった制吐療法(5-HT3拮抗薬、副腎皮質ステロイド併用)に加えてNK1受容体拮抗薬を追加することで、CR率が全発現期において54%から72%(OR=0.51、95%信頼区間[CI]=0.46~0.57、p<0.001)に増加しています。急性/遅発性の両方で改善効果があり、なおかつ、この高い奏効率ですので、本剤が標準的に用いられるようになったのも納得です。一方で、因果関係は定かではありませんが、重度感染症が2%から6%に増えています(1,480例を含む3つのRCT:OR=3.10、95%CI=1.69~5.67、p<0.001)。また、CYP3A4の基質薬剤なので相互作用には注意です。オランザピンMARTAのオランザピンは、D2受容体拮抗作用および5-HT3受容体拮抗作用によって有意な制吐作用を示すと考えられており、2017年に制吐薬としての適応が追加されました。直近のASCOやNCCNのガイドラインの制吐レジメンにも記載があります1)。従来の5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用と、同レジメンにオランザピンまたはプラセボを上乗せして比較した第3相試験5)では、シスプラチンまたはシクロホスファミド、およびドキソルビシンで治療を受けている乳がんや肺がんなどの患者を中心に約400例が組み入れられました。併用の5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンが約75%で、次いでオンダンセトロンが24%でした。ベースの制吐薬3剤は、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬に加えて、デキサメタゾンが1日目に12mg、2~4日目は8mg経口投与でガイドラインのとおりです。エンドポイントである悪心なしの状態は0~10のビジュアルアナログスケールで0のスコアとして定義され、化学療法後0~24時間、25~120時間、0~120時間(全体)で分けて解析されました。いずれの時点においてもオランザピン併用群で悪心の発生率が低く、化学療法後24時間以内で悪心がなかった割合はオランザピン群74% vs.プラセボ群45%、25~120時間では42% vs.25%、0~120時間の5日間全体では37% vs.22%でした。嘔吐やレスキューの制吐薬を追加する頻度もオランザピン群で少なく、CR率もすべての時点で有意に改善しています。なお、忍容性は良好でした。論文内にあるグラフからは、2日目に過度の疲労感や鎮静傾向が現れていますが、服用を継続していても後日回復しています。うち5%は重度の鎮静作用でしたが、鎮静を理由として中止に至った患者はいませんでした。服用最終日およびその前日には眠気は軽快しています。以上、それぞれの試験から読み取れる制吐薬の効果や有害事象を紹介しました。特徴を把握して、患者さんへの説明にお役立ていただければ幸いです。1)Razvi Y, et al. Support Care Cancer. 2019;27:87-95.2)Saito M, et al. Lancet Oncol. 2009;10:115-124.3)Aapro M, et al. Ann Oncol. 2010;21:1083-1088.4)dos Santos LV, et al. J Natl Cancer Inst. 2012;104:1280-1292.5)Navari RM, et al. N Engl J Med. 2016;375:134-142.

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小児がん、アントラサイクリンの心筋症リスクは?/JAMA Oncol

 アントラサイクリンは、小児がんに対する有効な治療薬の1つであり、ほとんどの小児腫瘍治療グループは、アントラサイクリンの血液毒性と心毒性は同等と考えている。今回、オランダ・アムステルダム大学のElizabeth A. M. Feijen氏らは小児がんサバイバーの大規模コホートのデータを解析し、「ドキソルビシンと比較してダウノルビシンは心筋症リスクが低く、エピルビシンはほぼ同等である」ことを明らかにした。また、現在の造血器ベースでのミトキサントロンのドキソルビシン用量等量比は4 vs.1とされているが、同比では、ミトキサントロンの長期心筋症リスクを有意に過小評価していると考えられる所見も明らかになったという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年5月号掲載の報告。 研究グループは、ドキソルビシンと他のアントラサイクリン、またはアントラキノン系のミトキサントロンとの間の遅発性心筋症に関する最適用量等量を決定する検討を行った。 1970~99年にChildhood Cancer Survivor Studyで治療された2万367例、1963~2001年にオランダのChildhood Oncology Group LATER studyで診断された5,741例、および1962~2005年にSt Jude Lifetime studyで治療された2,315例から、5年以上生存した小児がんサバイバーを対象として併合解析を行った。 各薬剤(ドキソルビシンダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン)の、累積投与量と胸部放射線照射について医療記録から要約した。主要評価項目は、40歳までの心筋症であった。Cox比例ハザードモデルを用い、胸部放射線療法、がん診断時の年齢、性別およびアントラサイクリンまたはアントラキノンへの曝露を調整した心筋症リスクを評価。また、ドキソルビシンの心筋症に対する各薬剤の等量比を推定し、次いで加重平均によりすべての用量カテゴリーにわたる全体的な薬剤特異的等量比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・2万8,423例のサバイバー(女性46.4%、がん診断時年齢中央値6.1歳)のうち、9,330例がドキソルビシン、4,433例がダウノルビシン、342例がエピルビシン、241例がイダルビシン、265例がミトキサントロンを投与された。・がん診断後の追跡期間中央値20.0年で、心筋症399例が確認された。・ドキソルビシンと比較した等量比は、ダウノルビシン0.6(95%CI:0.4~1.0)、エピルビシン0.8(95%CI:0.5~2.8)、ミトキサントロン10.5(95%CI:6.2~19.1)、イダルビシンに関してはイベントがまれで推定できなかった。・線形用量反応関係に基づく比は、ダウノルビシン(0.5、95%CI:0.4~0.7)、エピルビシン(0.8、95%CI:0.3~1.4)で類似していた。

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乳がん化学療法、望ましいアントラサイクリンは?

 アントラサイクリン系抗がん剤の心毒性は古くから知られており、抗腫瘍効果との兼ね合いがよく話題に上る。中国・上海中医薬大学のZhujun Mao氏らは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の有用性はなお議論の的であり結論が得られていないとして、無作為化臨床試験のネットワークメタ解析を行った。その結果、心毒性と抗腫瘍効果を考慮すると乳がんの化学療法に適したアントラサイクリン系薬は、ドキソルビシンリポソームまたはエピルビシン+デクスラゾキサンであることが示されたという。Oncology Research and Treatment誌オンライン版2019年5月17日号掲載の報告。 研究グループは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を評価する目的でネットワークメタ解析を行った。PubMed、Embaseおよびコクラン・データベースを用い、2018年8月までに発表された論文を検索し、アントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を検討した無作為化臨床試験19件(乳がん患者計3,484例)を特定した。 ドキソルビシン、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ドキソルビシン+デクスラゾキサン(DD)およびエピルビシン+デクスラゾキサン(ED)の5つの治療戦略に関する研究を適格として解析した。 主な結果は以下のとおり。・直接比較のメタ解析では、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、DDおよびEDは、ドキソルビシンと比較して心保護作用が有意に優れており、オッズ比はそれぞれ1.64、3.75、2.88および3.66であった。・奏効率は、ドキソルビシンリポソームが最も高く、次いでドキソルビシン、エピルビシン、EDおよびDDの順であった。・ベネフィットとリスクのバランスが最も好ましいのはEDで、次いでドキソルビシンリポソーム、DD、エピルビシン、ドキソルビシンの順であった。

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CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

 CAR-T療法が、白血病や悪性リンパ腫に対する治療として実臨床で使用される日が近づいてきた。2019年3月、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法として国内で初めて、チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)が製造販売承認を取得した。これを受けて4月18日、都内でメディアセミナー(主催:ノバルティス ファーマ)が開催された。 セミナーでは、豊嶋 崇徳氏(北海道大学大学院医学研究院血液内科 教授)、平松 英文氏(京都大学医学部附属病院小児科 講師)が登壇。CAR-T療法(キムリア)の適応症である再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)について、それぞれ実臨床での展望を示した。CAR-T細胞の製造と、実際のCAR-T療法の流れとは CAR-T療法の実施には、まずはじめに患者の末梢血から白血球が採取される。これは成分献血装置を用いた白血球アフェレーシスによって1~2時間かけて、T細胞を含む白血球成分が採取される。凍結保存処理後、米国の製造施設に輸送される。 製造過程では、T細胞の遺伝子改変→細胞増殖→品質チェックというプロセスを経て、病院に製造されたCAR-T細胞(キムリア)が届けられる(最短で5~6週間程度)。患者には、体内のリンパ球を減らしてCAR-T細胞を増殖しやすくするために、リンパ球除去化学療法と呼ばれる前治療が施され(3~4日間)、その後、キムリアが点滴により輸注される(単回投与)。輸注後は通常1~2ヵ月の入院を経て、その後は外来で経過観察が行われる。CAR-T療法(キムリア)のDLBCLへの有効性を確認、ただし慎重な適応判断が必要 DLBCLは悪性リンパ腫の中で最も頻度が高く、約30~40%を占める。本邦における総患者数は約2万1,000人。あらゆる年齢で発症するが、とくに高齢になるにつれ増加する。ただし、小児では他のがんの発症が少ないため高い割合を示す。 標準治療としてR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)療法が確立されている。しかし、約50%の患者では無効か、再発する。これらの患者の次なる治療法は自家造血幹細胞移植だが、適応があるのはその半数以下で、さらに奏効した患者でも再発がありうる。 こうした再発・難治性DLBCL患者に対するこれまでの救援化学療法の生存期間中央値は、6.3ヵ月1)。対するCAR-T療法であるキムリアの生存期間中央値は、日本人を含む第II相JULIET試験の結果12ヵ月で、奏効率は52%(うち完全奏効:40%)であった2)。 豊嶋氏はこの結果について、「12ヵ月時点の生存率という観点でみると、25%→50%に改善したという結果。すべての患者さんにとって“夢の治療法”とはいえないだろう。奏効する場合は1回の治療で効果が得られ、QOLも高い可能性がある。しかし、状態や進行速度によって、そもそもこの治療に進める患者さんは限られる。さらに製造の待ち時間、製造不良のリスクもある」として、患者やその家族に過度の期待を持たせることに対しては強い懸念を示した。 臨床試験で多く発現したCAR-T療法(キムリア)の有害事象は、サイトカイン放出症候群(58%で発現、中等症以上は22%)、脳症(21%で発現、中等症以上は12%)など。低ガンマグロブリン血症に伴う免疫グロブリン補充療法は30%で実施された。有害事象による死亡事例はなかったが、「身体に対する治療負担の重さという観点でいえば、自家ではなく、同種造血幹細胞移植と近い。実臨床ではかなり慎重な有害事象のコントロールが必要になるだろう」と述べた。CAR-T療法(キムリア)はB-ALLでも奏効例では高い効果、しかし輸注に至らない例も 本邦におけるALLの総患者数は約5,000人。診断時の年齢中央値は15歳で、好発年齢は2~3歳。そして小児ALLの8割以上がB細胞性(B-ALL)と報告されている。1次治療は寛解導入療法・地固め療法・維持療法からなる多剤併用療法である。80~90%が2~3年にわたるこの強力な1次治療によって完全寛解に到達するが、小児患者の約20%で再発する。再発・難治患者の生存可能性は、小児で16~30%に留まる。 平松氏は、承認の根拠となった第II相ELIANA試験3)の日本人成績について詳細を紹介した。日本人患者は、8例(5~24歳、前治療歴3~7回)が登録された。うち、製品不適格(製造されたが、うまく増殖しなかった)1例、製造を待機するうちに原病が悪化した1例を除く6例に、実際にCAR-T療法のキムリアが投与された。 結果は、3例で完全寛解、1例で血球数回復が不十分な完全寛解が得られた。他2例では効果なしであった。同氏は、「寛解が得られた4例ではすべて微小残存病変も陰性。これは非常に高い効果」と話した。 一方で、6例中5例が重症サイトカイン放出症候群を発症。集中治療室での濃厚な治療が必要となった。「全例が治療に反応しコントロールできたが、院内連携を強化し、新たな有害事象の発現を関連部門の医師が迅速に共有する必要がある」とした。CAR-T療法(キムリア)はまず国内2~3施設で開始、ピーク時で年間250人の患者を想定 最後に登壇したノバルティスファーマ オンコロジージャパン プレジデントのブライアン グラッツデン氏は、発売後の見通しについて説明。CAR-T療法のキムリアによる治療を行う医療機関は、細胞採取の品質確保や副作用管理について同社がトレーニングを実施し、認定した施設に限定するとした。発売初期、国内では2~3施設を予定しており、ピーク時の患者数はCAR-T細胞の製造におけるキャパシティもあり年間250人を想定しているという。また、薬価はまだ決定されていないが、米国で導入された「成功報酬型」の支払い方式は日本では採用されない見通しであることも示された。

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「がんだけ診ていればよい時代」は終わった?日本腫瘍循環器学会開催

 2018年11月3~4日、都内にて第1回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催され、盛んな議論が行われた。「がんだけ診ていればよい時代」は終わった 日本腫瘍循環器学会理事長の小室 一成氏は、理事長講演で以下のように述べた。 がんと心血管疾患の関係は以前からみられる。近年、がん治療の進歩が生存率も向上をもたらした。そこに、がん患者の増加が加わり、がんと心血管疾患の合併は増加している。さらに、抗がん剤など、がん治療の副作用は、心血管系合併症のリスクを高め、生命予後にも影響することから、がん患者・サバイバーに対する心血管系合併症管理の重要性が増している。実際、乳がん患者の死因は、2010年に、がんそのものによる死亡を抜き、心血管疾患が第1位である。 がん治療において重要な心血管系合併症の1つは心機能障害である。心機能障害を起こす抗がん剤は数多い。アドリアマイシンによる心筋症は予後が悪いことで知られている。また、免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎も、発症率は少ないが、いったん発症すると重篤である。もう1つの大きな問題は、がん関連血栓症(cancer associated thrombosis:CAT)として注目されている、血栓塞栓症である。がん患者では血液凝固系が活性化されているが、そこに、抗がん剤による血栓症や内皮細胞傷害のリスクが加わり、がん患者はさらに血栓塞栓症になりやすくなる。また、血栓塞栓症を合併したがん患者の予後は不良である。血栓塞栓症は、がん外来化学療法患者の死亡の10%を占め、死因の第2位となっている。 そのような中、海外では、90年代から、学会の設立、ガイドラインの発行など、さまざまな取り組みが始まっている。わが国では昨年(2017年)10月に日本腫瘍循環器学会が設立された。同学会では、がん患者・サバイバーのために、腫瘍と循環器の専門医が一緒に活動し、疫学・レジストリ研究、基礎研究・臨床研究の推進、診療指針(ガイドライン)の策定、医療体制の整備、教育研修に取り組んでいく。求められる腫瘍および循環器専門医のチームワーク 日本腫瘍循環器学会副理事長で第1回学術集会の会長である畠 清彦氏は、会長講演で以下のように述べた。 がん対策基本法が制定されて、どの地域でも標準治療が受けられるようになり、全体に底上げされて、今までになかったようなサポート体制が出来上がった。一方で、がん患者はどんどん高齢化し、心血管系合併症も増加している。しかし、がん専門施設での循環器内科医不足など、腫瘍循環器の分野は十分とは言えない。多くの薬が登場する中、心臓血管障害の問題があっても、その対策は各施設に任されている状況である。 また、最近の分子標的治療薬をはじめとする抗がん剤は、短期間の観察で承認される。長期的にどのような副作用が出るか報告が必要となる。心血管系の副作用を正確に報告するためにも、循環器と腫瘍の専門家が協調する必要がある。今後、さらに腫瘍専門医と循環器専門医のチームワークが求められるであろう。

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乳児血管腫(いちご状血管腫)〔infantile hemangioma〕

1 疾患概要■ 概念・定義乳児血管腫(infantile hemangioma)は、ISSVA分類の脈管奇形(vascular anomaly)のうち血管性腫瘍(vascular tumors)に属し、胎盤絨毛膜の微小血管を構成する細胞と類似したglucose transporter-1(GLUT-1)陽性の毛細血管内皮細胞が増殖する良性の腫瘍である1,2)。出生時には存在しないあるいは小さな前駆病変のみ存在するが、生後2週間程度で病変が顕在化し、かつ自然退縮する特徴的な一連の自然歴を持つ。おおむね増殖期 (proliferating phase:~1.5歳まで)、退縮期(消退期)(involuting phase:~5歳ごろ)、消失期(involuted phase:5歳以降)と呼ばれるが、経過は個人差が大きい1,2)。わが国では従来ある名称の「いちご状血管腫」と基本的に同義であるが、ISSVA分類にのっとって乳児血管腫が一般化しつつある。なお、乳幼児肝巨大血管腫では、肝臓に大きな血管腫やたくさんの細かい血管腫ができると、血管腫の中で出血を止めるための血小板や蛋白が固まって消費されてしまうために、全身で出血しやすくなったり、肝臓が腫れて呼吸や血圧の維持が難しくなることがある。本症では、治療に反応せずに死亡する例もある。また、まったく症状を呈さない肝臓での小さな血管腫の頻度は高く、治療の必要はないものの、乳幼児期の症状が治療で軽快した後、成長に伴って、今度は肝障害などの症状が著明になり、肝移植を必要とすることがある。■ 疫学乳児期で最も頻度の高い腫瘍の1つで、女児、または早期産児、低出生体重児に多い。発生頻度には人種差が存在し、コーカソイドでの発症は2~12%、ネグロイド(米国)では1.4%、モンゴロイド(台湾)では0.2%、またわが国での発症は0.8~1.7%とされている。多くは孤発例で家族性の発生はきわめてまれであるが、発生部位は頭頸部60%、体幹25%、四肢15%と、頭頸部に多い。■ 病因乳児血管腫の病因はいまだ不明である。腫瘍細胞にはX染色体の不活性化パターンにおいてmonoclonalityが認められる。血管系の中胚葉系前駆細胞の分化異常あるいは分化遅延による発生学的異常、胎盤由来の細胞の塞栓、血管内皮細胞の増殖関連因子の遺伝子における生殖細胞変異(germline mutation)と体細胞突然変異(somatic mutation)の混合説など、多種多様な仮説があり、一定ではない。■ 臨床症状、経過、予後乳児血管腫は、前述のように他の腫瘍とは異なる特徴的な自然経過を示す。また、臨床像も多彩であり、欧米では表在型(superficial type)、深在型(deep type)および混合型(mixed type)といった臨床分類が一般的であるが、わが国では局面型、腫瘤型、皮下型とそれらの混合型という分類も頻用されている。superficial typeでは、赤く小さな凹凸を伴い“いちご”のような性状で、deep typeでは皮下に生じ皮表の変化は少ない。出生時には存在しないあるいは目立たないが、生後2週間程度で病変が明らかとなり、「増殖期」には病変が増大し、「退縮期(消退期)」では病変が徐々に縮小していき、「消失期」には消失する。これらは時間軸に沿って変容する一連の病態である。最終的には消失する症例が多いものの、乳児血管腫の中には急峻なカーブをもって増大するものがあり、発生部位により気道閉塞、視野障害、哺乳障害、難聴、排尿排便困難、そして、高拍出性心不全による哺乳困難や体重増加不良などを来す、危険を有するものには緊急対応を要する。また、大きな病変は潰瘍を形成し、出血したり、2次感染を来し敗血症の原因となることもある。その他には、シラノ(ド・ベルジュラック)の鼻型、約20%にみられる多発型、そして他臓器にも血管腫を認めるneonatal hemangiomatosisなど、多彩な病型も知られている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)臨床像などから診断がつくことが多いが、画像診断が必要な場合がある。造影剤を用いないMRIのT1強調画像と脂肪抑制画像(STIR法)の併用は有効で、増殖期の乳児血管腫は微細な顆粒が集簇したような形状の境界明瞭なT1-low、T2-high、STIR-highの病変として、脂肪織の信号に邪魔されずに描出される。superficial typeの乳児血管腫のダーモスコピー所見では、増殖期にはtiny lagoonが集簇した“いちご”様外観を呈するが、退縮期(消退期)になると本症の自然史を反映し、栄養血管と線維脂肪組織の増加を反映した黄白色調の拡がりとして観察されるようになる。病理診断では、増殖期・退縮期(消退期)・消失期のそれぞれに病理組織像は異なるが、いずれの時期でも免疫染色でグルコーストランスポーターの一種であるGLUT-1に陽性を示す。増殖期においてはCD31と前述のGLUT-1陽性の腫瘍細胞が明らかな血管構造に乏しい腫瘍細胞の集塊を形成し、その後内皮細胞と周皮細胞による大小さまざまな血管構造が出現する。退縮期(消退期)には次第に血管構造の数が減少し、消失期には結合組織と脂肪組織が混在するいわゆるfibrofatty residueが残存することがある。鑑別診断としては、血管性腫瘍のほか、deep typeについては粉瘤や毛母腫、脳瘤など嚢腫(cyst)、過誤腫(hamartoma)、腫瘍(tumor)、奇形(anomaly)の範疇に属する疾患でも、視診のみでは鑑別できない疾患があり、MRIや超音波検査など画像診断が有用になることがある。乳児血管腫との鑑別上、問題となる血管性腫瘍としては、まれな先天性の血管腫であるrapidly involuting congenital hemangiomas(RICH)は、出生時にすでに腫瘍が完成しており、その後、乳児血管腫と同様自然退縮傾向をみせる。一方、non-involuting congenital hemangiomas(NICH)は、同じく先天性に生じるが自然退縮傾向を有さない。partially involuting congenital hemangiomas(PICH)は退縮が部分的である。これら先天性血管腫ではGLUT-1は陰性である。また、房状血管腫(tufted angioma)とカポジ肉腫様血管内皮細胞腫(kaposiform hemangioendothelioma)は、両者ともカサバッハ・メリット現象を惹起しうる血管腫であるが、乳児血管腫がカサバッハ・メリット現象を来すことはない。房状血管腫は出生時から存在することも多く、また、痛みや多汗を伴うことがある。病理組織学的に、内腔に突出した大型で楕円形の血管内皮細胞が、真皮や皮下に大小の管腔を形成し、いわゆる“cannonball様”増殖が認められる。腫瘍細胞はGLUT-1陰性である(図1)。カポジ肉腫様血管内皮細胞腫は、異型性の乏しい紡錘形細胞の小葉構造が周囲に不規則に浸潤し、その中に裂隙様の血管腔や鬱血した毛細血管が認められ、GLUT-1陰性である。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)多くの病変は経過中に増大した後は退縮に向かうものの、機能障害や潰瘍、出血、2次感染、敗血症の危険性、また将来的にも整容的な問題を惹起する可能性がある。これらの可能性を有する病変に対しては、手術療法(全摘・減量手術)、ステロイド療法(外用・局所注射・全身投与)、レーザー、塞栓/硬化療法、イミキモド、液体窒素療法、さらにはインターフェロンα、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ビンクリスチン、becaplermin、シロリムス、放射線療法、持続圧迫療法などの有効例が報告されている。しかし、自然消退傾向があるために治療効果の判定が難しいなど、臨床試験などで効果が十分に実証された治療は少ない。病変の大きさ、部位、病型、病期、合併症の有無、整容面、年齢などにより治療方針を決定する。以下に代表的な治療法を述べる。■ プロプラノロール(商品名:ヘマンジオル シロップ)欧米ですでに使われてきたプロプラノロールが、わが国でも2016年に承認されたため、本邦でも機能障害の危険性や整容面で問題となる乳児血管腫に対しては第1選択薬として用いられている3,4)。局面型、腫瘤型、皮下型とそれらの混合型などすべてに効果が発揮でき、表面の凹凸が強い部位でも効果は高い(図2)。用法・容量は、プロプラノロールとして1日1~3mg/kgを2回に分け、空腹時を避けて経口投与する。投与は1日1mg/kgから開始し、2日以上の間隔を空けて1mg/kgずつ増量し、1日3mg/kgで維持するが、患者の状態に応じて適宜減量する。画像を拡大する副作用として血圧低下、徐脈、睡眠障害、低血糖、高カリウム血症、呼吸器症状などの発現に対し、十分な注意、対応が必要である5)。また、投与中止後や投与終了後に血管腫が再腫脹・再増大することもあるため、投与前から投与終了後も患児を慎重にフォローしていくことが必須となる。その作用機序はいまだ不明であるが、初期においてはNO産生抑制による血管収縮作用が、増殖期においてはVEGF、bFGF、MMP2/MMP9などのpro-angiogenic growth factorシグナルの発現調節による増殖の停止機序が推定されている。また、長期的な奏効機序としては血管内皮細胞のアポトーシスを誘導することが想定されており、さらなる研究が待たれる。同じβ遮断薬であるチモロールマレイン酸塩の外用剤についても有効性の報告が増加している。■ 副腎皮質ステロイド内服、静注、外用などの形で使用される。内服療法として通常初期量は2~3mg/kg/日のプレドニゾロンが用いられる。ランダム化比較試験やメタアナリシスで効果が示されているが、副作用として満月様顔貌、不眠などの精神症状、骨成長の遅延、感染症などに注意する必要がある。その他の薬物治療としてイミキモド、ビンクリスチン、インターフェロンαなどがあるが、わが国では本症で保険適用承認を受けていない。■ 外科的治療退縮期(消退期)以降に瘢痕や皮膚のたるみを残した場合、整容的に問題となる消退が遅い血管腫、小さく限局した眼周囲の血管腫、薬物療法の危険性が高い場合、そして、出血のコントロールができないなど緊急の場合は、手術が考慮される。術中出血の危険性を考慮し、増殖期の手術を可及的に避け退縮期(消退期)後半から消失期に手術を行った場合は、組織拡大効果により腫瘍切除後の組織欠損創の閉鎖が容易になる。■ パルス色素レーザー論文ごとのレーザーの性能や照射の強さの違いなどにより、その有効性、増大の予防効果や有益性について一定の結論は得られていない。ただ、レーザーの深達度には限界がありdeep typeに対しては効果が乏しいという点、退縮期(消退期)以降も毛細血管拡張が残った症例ではレーザー治療のメリットがあるものの、一時的な局所の炎症、腫脹、疼痛、出血・色素脱失および色素沈着、瘢痕、そして潰瘍化などには注意する必要がある。■ その他のレーザー炭酸ガスレーザーは炭酸ガスを媒質にしたガスレーザーで、水分の豊富な組織を加熱し、蒸散・炭化させるため出血が少ないなどの利点がある。小さな病変や、気道内病変に古くから用いられている。そのほか、Nd:YAGレーザーによる組織凝固なども行われることがある。■ 冷凍凝固療法液体窒素やドライアイスなどを用いる。手技は比較的容易であるが、疼痛、水疱形成、さらには瘢痕形成に注意が必要で熟練を要する。深在性の乳児血管腫に対してはレーザー治療よりも効果が優れているとの報告もある。■ 持続圧迫療法エビデンスは弱く、ガイドラインでも推奨の強さは弱い。■ 塞栓術ほかの治療に抵抗する症例で、巨大病変のため心負荷が大きい場合などに考慮される。■ 精神的サポート本症では、他人から好奇の目にさらされたり、虐待を疑われるなど本人や家族が不快な思いをする機会も多い。前もって自然経過、起こりうる合併症、治療の危険性と有益性などについて説明しつつ、精神的なサポートを行うことが血管腫の管理には不可欠である。4 今後の展望プロプラノロールの登場で、乳児血管腫治療は大きな転換点を迎えたといえる。有効性と副作用に関して、観察研究に基づくシステマティックレビューとメタアナリシスの結果、「腫瘍の縮小」に関してプロプラノロールはプラセボと比較し、有意に腫瘍の縮小効果を有し、ステロイドに比しても腫瘍の縮小傾向が示された。また、「合併症」に関しては、2つのRCTでステロイドと比し有意に有害事象が少ないことが判明し、『血管腫・血管奇形診療ガイドライン2017』ではエビデンスレベルをAと判定した。有害事象を回避するための対応は必要であるが、今後詳細な作用機序の解明と、既存の治療法との併用、混合についての詳細な検討により、さらに安全、有効な治療方法の主軸となりうると期待される。5 主たる診療科小児科、小児外科、形成外科、皮膚科、放射線科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)『血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017』(医療従事者向けのまとまった情報)日本血管腫血管奇形学会(医療従事者向けのまとまった情報)国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)(医療従事者向けのまとまった情報:英文ページのみ)ヘマンジオル シロップ 医療者用ページ(マルホ株式会社提供)(医療従事者向けのまとまった情報)乳児血管腫の治療 患者用ページ(マルホ株式会社提供)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報混合型脈管奇形の会(患者とその家族および支援者の会)血管腫・血管奇形の患者会(患者とその家族および支援者の会)血管奇形ネットワーク(患者とその家族および支援者の会)1)「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班作成『血管腫・血管奇形診療ガイドライン2017』2)国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)3)Leaute-Labreze C, et al. N Engl J Med. 2008;358:2649-2651.4)Leaute-Labreze C, et al. N Engl J Med. 2015;372:735-746.5)Drolet BA, et al. Pediatrics. 2013;131:128-140.公開履歴初回2018年10月23日

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濾胞性リンパ腫治療、新規抗体薬vsリツキシマブ/NEJM

 濾胞性リンパ腫の1次治療において、obinutuzumabをベースとする免疫化学療法と維持療法は、リツキシマブをベースとする同様の治療に比べ、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが、英国・キングス・カレッジ病院のRobert Marcus氏らが行ったGALLIUM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年10月5日号に掲載された。抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブと化学療法の併用は、新規に診断された濾胞性リンパ腫の転帰を改善し、導入療法後のリツキシマブによる維持療法は良好なPFSおよび全生存(OS)をもたらすが、最終的に多くの患者が再発する。obinutuzumabは糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体であり、補体依存性細胞傷害活性はリツキシマブよりも低いが、抗体依存性の細胞傷害活性や食作用活性が高く、直接的なB細胞の除去作用が強いことが示されている。濾胞性リンパ腫の治療法を無作為化試験で比較 GALLIUM試験は、未治療の進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫(濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫)の治療において、obinutuzumab+化学療法またはリツキシマブ+化学療法による導入療法を施行後に、それぞれ同じ抗体医薬による維持療法(最長2年)を行うアプローチの有効性と安全性を比較する、非盲検無作為化第III相試験である(F. Hoffmann-La Roche社の助成による)。今回は、濾胞性リンパ腫の解析結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上、前治療歴がなく、組織学的に診断が確定され、進行病変(Stage III/IVまたはbulk病変[最大径≧7cmの腫瘍]を伴うStage II)を有するCD20陽性の濾胞性リンパ腫(Grade 1~3a)で、全身状態(ECOG PS)が0~2の患者であった。 被験者は、導入療法として、obinutuzumab(1,000mg)を1サイクル目の第1、8、15日、2サイクル目以降は第1日に点滴静注する群、またはリツキシマブ(375mg/m2)を各サイクルの第1日に点滴静注する群に、1対1の割合でランダムに割り付けられ、6または8サイクルの治療が行われた。化学療法レジメンは、各施設がCHOP(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン)、CVP(シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン)、ベンダムスチンの中から1つを選び、個々の施設の患者はすべて同じレジメンの投与を受けた。 導入療法終了時に完全寛解(CR)または部分寛解(PR)を達成した患者は、導入療法と同じ抗体医薬による維持療法を2ヵ月ごとに2年間、または病勢進行か患者が同意を撤回するまで行われた。治療のクロスオーバーは許容されなかった。 主要評価項目は、担当医判定によるPFSであった。濾胞性リンパ腫の病勢進行/再発/死亡のリスクが34%低減 2011年7月6日~2014年2月4日に日本人患者を含む1,202例が登録され、obinutuzumab群に601例、リツキシマブ群にも601例が割り付けられた(ITT集団)。それぞれ557例、551例が導入療法を、361例、341例が維持療法を完遂し、カットオフ日に60例、54例が維持療法を継続していた。ベースラインのITT集団の年齢中央値は59歳、女性が53.2%を占めた。化学療法レジメンは、ベンダムスチンが57.1%、CHOPが33.1%、CVPは9.8%だった。 フォローアップ期間中央値34.5ヵ月(範囲:0~54.5)における計画された中間解析では、担当医判定による推定3年PFS率はobinutuzumab群が80.0%と、リツキシマブ群の73.3%に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.51~0.85、層別log-rank検定p=0.001)。独立評価委員会判定による推定3年PFS率は、それぞれ81.9%、77.9%であり、obinutuzumab群が有意に優れた(HR:0.71、95%CI:0.54~0.93、p=0.01) 推定3年OS率は、obinutuzumab群が94.0%、リツキシマブ群は92.1%であり、両群間に差を認めなかった(HR:0.75、95%CI:0.49~1.17、p=0.21)。また、導入療法終了時の寛解率(CR+PR)はそれぞれ88.5%、86.9%(p=0.33)、CR率は19.5%、23.8%(p=0.07)であり、いずれも有意差はなかった。事後解析では、女性でobinutuzumabのPFSが有意に良好であった(HR:0.49、95%CI:0.33~0.74)のに対し、男性では有意差を認めなかった(HR:0.82、95%CI:0.59~1.15)(性別と治療の交互作用:p=0.06)。 Grade 3~5の有害事象(74.6 vs.67.8%)および重篤な有害事象(46.1 vs.39.9%)の頻度はobinutuzumab群のほうが高かったが、死亡の原因となった有害事象の発現率は両群で同等であった(4.0 vs. 3.4%)。担当医判定による最も頻度の高い有害事象は注入関連イベントであり、obinutuzumab群の59.3%、リツキシマブ群の48.9%に発現した(p<0.001)。次いで、悪心(46.9 vs.46.6%)および好中球減少(48.6 vs.43.6%)の頻度が高かった。obinutuzumab群の35例(5.8%)、リツキシマブ群の46例(7.7%)が死亡した。 著者は、「最近のデータでは、比較的強度が高くない化学療法と併用しても、obinutuzumabはリツキシマブに比べ高い効果を有することが示唆されており、フレイルが高度なためベンダムスチンやCHOPの適応が困難な患者で有用となる可能性もある」と指摘している。

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ニボルマブ、導入療法後の転移性トリプルネガティブ乳がんで有望な効果(TONIC試験)/ESMO2017

 転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する、放射線照射または化学療法後のニボルマブによる治療の奏功率が、これまでのPD-1 / PD-L1阻害薬の単剤療法による奏効率と比較して有望なことが、スペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2017)で報告された。 2017年9月9日、オランダがん研究所(アムステルダム)のMarleen Kok氏は、TONIC試験から得られた知見について発表し、「転移性TNBC患者の任意抽出のコホートに対する以前の研究で、PD-1 / PD-L1阻害薬の単剤療法が持続性のある応答をもたらしうることは明らかになっていたが、奏功率は約5~10%と比較的低いものだった。本試験は、TNBCに対し放射線照射または化学療法にて腫瘍微小環境を調整後のニボルマブ治療が実行可能であることを示す最初の試験であり、抗PD-(L)1抗体に対してより感受性の高い状態に腫瘍微小環境を調整する戦略を明らかにすることは、臨床的に必要性の高い課題である」と述べた。 TONIC試験は、アダプティブデザインの第Ⅱ相無作為化非比較試験(Eudract number:2015-001969-49)。3ライン以下の緩和化学療法を受けた転移性TNBCの患者が、2週間、以下の5つの導入療法群に割り付けられた;(1)1つの転移巣に対し放射線量8Gyを3サイクル照射する群、(2)ドキソルビシン15mg/週を2サイクル投与する群、(3)シクロホスファミド50mg/日を経口投与する群、(4)シスプラチン40mg/m2を2サイクル投与する群、(5)導入療法を行わない群。2週間の導入療法後、iRECISTおよびRECIST v1.1評価に基づく進行が認められるまで、すべての患者が3mg / kgのニボルマブ治療を受けた。 治療群への組み入れは、生検検体(導入療法前および導入療法後)を有する評価可能な50例が登録するまで続けられ(段階1)、“pick the winner”のコンセプト(Simonの2段階デザイン)により、段階2で終了した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間の中央値10.8ヵ月(範囲1~15.7ヵ月)で、50例について評価可能となった。・患者の20%が前治療歴なし、52%が1ライン、28%が2 ライン以上の前治療を受けていた。・RECIST v1.1に基づくコホート全体に対するニボルマブの客観的奏功率(ORR)は22%、iRECISTでは24%であり、完全奏功(CR)1例(2%)、部分奏功(PR)11例(22%)であった。・さらに、1例(2%)で24週間以上持続した安定(SD)が達成され、その結果、26%の臨床的有用率(CBR = CR + PR + SD> 24週間)が得られた。・奏功した患者では、奏功期間の中央値は9ヵ月(95%信頼区間:5.5~NA)であった。・予備解析の結果、ドキソルビシンまたはシスプラチンによる導入療法後の奏功率が高い可能性が示唆された。・腫瘍生検で高値の白血球浸潤およびCD8 陽性T細胞を有する患者でより奏効率が高い可能性があることが、研究者らにより観察された。 ESMO 2017の発表でディスカッサントを務めたミラノ大学のGiuseppe Curigliano氏は、「本試験は併用療法について探る非常に革新的な試験で、放射線療法や化学療法による免疫系のプライミング(準備刺激)効果に関するデータや、Tumor infiltrating lymphocytes(TILs)の定量的・定性的評価に関するデータを提供している」と述べ、「本試験の限界は、導入療法への曝露前後での遺伝子変異量(mutational burden)やTILsについてのデータ、ER陽性やHER2陽性といった他の有用な患者群が含まれていないことである」と指摘した。■参考ESMO 2017プレスリリース

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多くのがん種で開発中、ペムブロリズマブの最新トピックス

 2017年7月4日、MSD株式会社はメディアラウンドテーブルを開催し、同社グローバル研究開発本部オンコロジーサイエンスユニット統括部長の嶋本 隆司氏が、ASCO2017の発表データを中心にキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の最新トピックスを解説するとともに、併用療法を含めた今後の開発戦略について語った。 本邦において、ペムブロリズマブは2016年に「根治切除不能な悪性黒色腫」および「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対する適応を取得。2015年に「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」に対して「先駆け審査指定品目」の指定を受けているほか、現在は「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」および「局所進行性または転移性の尿路上皮がん(優先審査対象)」が承認申請中、13がん種以上で後期臨床開発プログラムが進んでいる。米国でNSCLCは適応拡大、尿路上皮がんとMSI-H/dMMR固形がんで承認取得 ASCO2017では、ペムブロリズマブについて16のがん種に対する50以上のデータが発表された。肺がん領域は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2016)の続報が中心となった。初回治療でEGFRまたはALK変異がなく、かつPD-L1発現不問の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、化学療法との併用を評価したKEYNOTE-021試験(コホートG)では、統計学的な有意差は得られなかったものの、長期フォローアップで全生存期間(OS)の延長傾向が示された。米国ではすでにPD-L1発現を問わず、化学療法との併用でNSCLCの1次治療に適応が拡大され、現在、日本も参加して第III相試験(KEYNOTE-189試験)を実施中という。 米国で2017年5月に相次いで承認された、尿路上皮がん(1次治療、2次治療)、高度マイクロサテライト不安定(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損(dMMR)を示す進行固形がんに対する試験結果も発表された。がん種によらない、バイオマーカーに対する初の薬剤承認として注目されたMSI-H/dMMR固形がん患者に対する単剤療法を評価した試験としては、1レジメン以上の治療歴のある大腸がん以外の進行固形がん患者対象のKEYNOTE-158試験、2レジメン以上の治療歴のある進行大腸がん患者対象のKEYNOTE-164試験の結果が発表され、それぞれ全奏効率(ORR)が38%(29/77例)、28%(17/61例)、病勢コントロール率が58%(45/77例)、51%(31/61例)という結果が得られている。進行胃がん、トリプルネガティブ乳がんでも有望な結果 2ライン以上の治療歴のある進行胃がん患者(259例)を対象に単剤療法を評価したKEYNOTE-059試験(コホート1)では、42.4%の患者で何らかの腫瘍縮小効果がみられ、ORRは11.6%であった。この結果を基に、米国では優先審査の対象に指定され承認審査が進んでいる。嶋本氏は「ORRだけをみると目を見張るような結果ではないが、治療の選択肢がすでに非常に限られた対象であること、多くの患者で腫瘍縮小効果がみられたことが評価され、優先審査につながったと考えている」と話した。 また、トリプルネガティブ乳がん患者を対象に、術前化学療法との併用を評価したKEYNOTE-173試験では、病理学的完全奏効率(pCR)がコホートA(ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+ドキソルビシン/シクロホスファミド[AC])で50~60%、コホートB(ペムブロリズマブ+パクリタキセル+カルボプラチン→ペムブロリズマブ+AC)で80%という結果が得られた。「従来の術前化学療法のpCRは20~30%であることから、ペムブロリズマブの乳がんに対する効果を示す有望な予備データといえる」と嶋本氏。同じく術前化学療法との併用を評価したI-SPY2試験では、トリプルネガティブ乳がん患者において、ペムブロリズマブ群(ペムブロリズマブ+パクリタキセル→AC)の推定pCRがコントロール群(パクリタキセル→AC)の3倍となるという結果が得られている。この結果を受け、現在、日本も参加して第III相試験が進行中という。IDO阻害薬との併用、単剤よりも高い奏効率 IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)阻害薬epacadostatとの併用を評価したECHO-202試験の結果も発表されている。本試験は複数のがん種に対して行われているが、そのうちNSCLC、転移性または再発性の扁平上皮頭頸部がん(SCCHN)、進行性尿路上皮膀胱がん(UC)、進行性腎細胞がん(RCC)の結果が紹介された。NSCLCでORRが35%(14/40例)、SCCHNで34%(13/38例)、UCで35%(14/40例)、RCCで33%(10/30例)と、いずれもペムブロリズマブ単剤よりも高い奏効率が得られている。日本人を含む第III相試験が進行中または準備を進めている段階で、早期の承認取得を目指すという。安全性については、本試験の安全性解析対象集団である進行がん患者294例を対象としたプール解析の結果、Grade 3以上の有害事象は患者の18%に認められ、最も高頻度のものはリパーゼ上昇(無症候性)4%、次いで発疹3%であった。この結果について嶋本氏は、「単剤と比較して大きく毒性が増すものではないとみられる」と話した。 IDO阻害薬のほか、化学療法や分子標的治療薬、新規ワクチンなどとの併用療法について、現在300以上の臨床試験が進行中だという。嶋本氏は、「がん種ごと、さらには肺がんのように多様性のあるがん種では患者背景ごとにアプローチしていくことも視野に入れて、ペムブロリズマブを核に、それぞれ適切な併用薬を検証していく」と結んだ。■関連記事ペムブロリズマブ、尿路上皮がんの優先審査対象に指定:MSDNSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法の追跡結果/ASCO2017尿路上皮がんにペムブロリズマブを承認:FDAペムブロリズマブ、臓器横断的ながんの適応取得:FDA進行胃がん、ペムブロリズマブの治療効果は?KEYNOTE-059/ASCO2017早期乳がんにおける免疫療法の役割の可能性

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