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乳がん領域、Practice changeにつながる重要な発表【Oncology主要トピックス2022 乳がん編】【Oncologyインタビュー】第43回

今年も乳がん領域では今後の標準治療を変え得る重要な研究結果が報告された。大きく分類すると1)HER2低発現と新規薬物療法、2)CDK4/6阻害薬のOS結果、3)CDK4/6阻害薬耐性後の治療戦略となる。その他の話題も少し加えてまとめてみたい。1)HER2低発現に対する新規薬物療法:DESTINY-Breast04試験・TROPiCS-02試験DESTINY-Breast04試験トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はHER2 抗体薬物複合体(ADC)製剤であり、DESTINY-Breast01、02、03試験の結果から、HER2陽性で転移を有する乳がんの2次治療以降の標準治療である。ASCO2022のプレナリーセッションでHER2低発現に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告された。HER2低発現は今回新たに注目された新たな分類であり、IHC2+/ISH-またはIHC1+と定義され、全乳がんの約50%程度を占めると考えられる。T-DXdはBystander effectの結果、HER2低発現の腫瘍に対しても効果を示す。DESTINY-Breast04試験は1~2ラインの化学療法を受けたHER2低発現の転移を有する乳がん患者(N=557)を対象に、T-DXd群と治験医師選択治療(TPC)群(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択)が比較された。主要評価項目は、ホルモン受容体陽性(HR)陽性患者における盲検下独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)で、副次評価項目は全体集団におけるPFS、HR陽性患者および全体集団における全生存期間(OS)などだった。T-DXd群(N=373、HR陽性89%)、TPC群(N=184、HR陽性90%)で、脳転移は約5%であった。転移乳がんとして前治療化学療法レジメン中央値は1で、HR陽性乳がんでは内分泌療法は前治療で中央値2レジメン、CDK4/6阻害薬は約65%で使用されていた。主要評価項目であるHR陽性患者におけるPFS中央値は、T-DXd群10.1ヵ月、TPC群5.4ヵ月でT-DXd投与群で有意に延長していた。全体集団でもPFS中央値はT-DXd群、TPC群それぞれ9.9ヵ月vs. 5.1ヵ月でありT-DXd群で有意に延長していた。OSも同様にHR陽性(23.9ヵ月vs. 17.5ヵ月)、全体集団(23.4ヵ月vs. 16.8ヵ月)であり、T-DXd群で有意に延長していた。全体の約1割程度の患者であるがHR陰性集団(N=58:トリプルネガティブ乳がん)の解析も探索的解析として行われたがPFS(8.5ヵ月vs. 2.9ヵ月)、OS(18.2ヵ月vs. 8.3ヵ月)ともにT-DXd群で良好であった。奏効率に関してはHR陽性で52.6%vs. 16.3%、HR陰性で50.0%vs. 16.7%であった。またHER2発現(IHC1+vs IHC2+/ISH-)で奏効率に差はなかった。薬剤性肺障害(ILD)はT-DXd群の12.1%に認められたが、ほとんどがGrade2以下で10.0%、Grade5は0.8%(3/371)だった。これらの結果より新たな乳がんカテゴリーであるHER2低発現に対してT-DXdは標準治療となり、プレナリーセッション発表後は盛大なスタンディングオベーションが起こった。このようにADC製剤の登場により新たなサブタイプとしてHER2低発現が脚光を浴びることとなった。HER2低発現(とくにHER2 0と1+の境界について)の定義についても今後の検討課題である。TROPiCS-02試験Trop-2は腫瘍増殖に関連している分子で、乳がんではサブタイプによらず約80%に発現している。Sacituzumab Govitecan(SG)は抗Trop-2抗体にトポイソメラーゼI阻害剤をペイロードとしたTrop-2 ADCである。転移を有するトリプルネガティブ乳がんではASCENT試験の結果を受け米国ではすでに承認されている。転移を有するHR陽性乳がんを対象としてはTROPiCS-02試験が行われ、ASCO2022でPFS最終解析とESMO2022でOS第2回中間解析の結果が報告された。転移を有するHR陽性乳がん患者で内分泌療法、CDK4/6阻害薬、タキサン既治療、転移乳がんとして2~4ラインの化学療法を受けた543例を対象に、SG群(272人)とTPC群(271人:カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリンから選択)が比較された。主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFSでSG群が5.5ヵ月、TPC群が4.0ヵ月でありSG群で有意に延長した。OS第2回中間解析の結果、中央値はSG群14.4ヵ月vs. TPC群11.2ヵ月で統計学的に有意な延長がみられた。奏効率はSG群21%、TPC群が14%であった。SG群で多くみられた有害事象は好中球減少、貧血、白血球減少、下痢、嘔気、脱毛などであった。これらの結果からSGは前治療としてCDK4/6阻害薬を含む内分泌療法、少なくとも2レジメン以上の化学療法などを濃厚に受けたHR乳がんに対して臨床的に意味のある治療選択肢となり得ると思われる。対象としては上記のDESTINY Breast 04試験と重なる部分もあるが、TROPiCS-02試験の方がやや前治療が多く入っており、またHER2 0も含み一致はしていない。今後この標的分子の異なる両ADC製剤をどのように使い分け、どの順に使っていくのか、またその耐性機序についても解明が必要となる。画像を拡大する2)CDK4/6阻害薬のOS結果:PALOMA-2試験・MONARCH 3試験PALOMA-2試験PALOMA-2は、閉経後転移を有するHR陽性乳がんに対する1次治療としてCDK4/6阻害薬であるパルボシクリブとアロマターゼ阻害薬であるレトロゾール併用群(併用群:N=444)と、プラセボとレトロゾールの群(単独群N=222)にランダム化されたフェーズ第III相試験である。これまでにパルボシクリブ併用でPFSが有意に延長することが示されている。ASCO2022でPALOMA-2試験のOS結果が報告された。OS中央値は併用群53.9ヵ月 vs単独群51.2ヵ月、HR 0.956(95% CI:0.777~1.177)p=0.3378で有意差を認めなかった。OSサブグループ解析では、PS 1/2、無病生存期間(DFI)12ヵ月超、内分泌療法既治療、骨転移のみの患者で併用群が良好な傾向を示した。本邦未承認薬ribociclibのMONALEESA-2では、併用群のOSの有意な延長が既に示されており、PALOMA-2の結果とは大きく異なった。その違いについては1)CDK4/6阻害薬としての薬効の違い、2)後治療の影響、3)対象とする集団の違いなどが考えられる。1)についてはPFSに関してどのCDK4/6阻害薬もほぼ同様の結果が示されているが、生物学的活性、阻害作用を示す分子が異なるとの報告もある。2)の後治療が影響した可能性については増悪後のCDK4/6阻害薬の使用はMONALEESA-2では併用群で21.7%、単独群で34.4%とPALOMA-2より高かった。HR陽性乳がんでは増悪後の生存期間が長く、後治療がOS結果に影響を及ぼした可能性はあるが、今回のPALOMA-2の報告では詳細は不明で今後の報告を待つ必要がある。3)に関して、2つの試験は同じ1次治療の試験であるが、大きく異なっている。PALOMA-2では術後内分泌療法中または終了後1年以下での再発症例が22%含まれていたのに対し、MONALEESA-2では全員術後内分泌療法終了後1年超経過した症例が対象であった。この術後内分泌療法中または終了後1年以下の集団は内分泌療法感受性が低い集団であり、パルボシクリブは内分泌療法抵抗性に対しては効果が弱い可能性が示唆されているため、PALOMA-2でこの内分泌療法抵抗性の集団を一部含んだことにより、効果の差が薄まった可能性がある。今回の発表では、ほぼ同様の患者を対象とした第II相試験のPALOMA-1試験とPALOMA-2試験の統合解析でDFI 12ヵ月超でのOSサブグループ結果も示されたが、併用群64.0ヵ月、単独群44.6ヵ月であり、HR:0.736、 95%CI:0.780~1.120であり、MONALEESA-2のOSハザード比0.76に近似する値であった。しかしこれは統合解析のサブグループ解析であり、あくまで参考値の評価である。MONARCH 3試験本邦では別のCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブも承認されているが、この薬剤の1次治療試験であるMONARCH 3の第2回OS中間解析結果がESMO2022で報告された。まだ中間解析であり、残念ながら統計学的有意差は示されなかったが、OS中央値は併用群で67.1ヵ月、単独郡で54.4ヵ月(HR:0.754、95%CI:0.584~0.974)であった。この結果は前述のMONALEESA-2とほぼ同様であり、来年解析予定のOS最終解析が非常に楽しみな結果であった。MONARCH 3はMONALEESA-2と同じく、術後内分泌療法終了後1年超経過した患者が対象であった。以上より、これまでPFSでは差を認めなかったCDK4/6阻害薬であるが、異なるOSの結果が得られたことは今後の処方に少なからず影響することが予想される。薬剤選択の際には効果のみならず、有害事象(骨髄抑制、下痢など)、患者の価値観などの情報を共有し、ともに薬剤選択をする(Shared decision making: SDM)が重要となる。画像を拡大する3)CDK4/6阻害薬耐性後の治療戦略:AKT阻害薬、経口SERD、CDK4/6阻害薬継続CDK4/6阻害薬増悪後の治療に関してこれまでエビデンスはなく、「乳癌診療ガイドライン2022年版」のFRQ10aでは、「一次内分泌療法として、アロマターゼ阻害薬とサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法を行った場合、閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳がんの二次内分泌療法として何が推奨されるか?」に対して、二次内分泌療法として、・最適な治療法は確立しておらず、耐性機序を考慮した臨床試験が進行中である、との記載がある。主なものとしては1)CDK4/6阻害薬既治療例に対するPTEN/PI3K/AKT/mTOR経路、2)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のESR1変異、3)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のその他の機序、4)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のCDK4/6阻害薬の継続の治療開発が行われている。3)-1)CDK4/6阻害薬既治療例に対するPTEN/PI3K/AKT/mTOR経路阻害:AKT阻害薬capivasertib(CAPItello-291試験)今年のSABCSではこのうちAKT阻害薬capivasertibの第III相試験であるCAPItello-291試験の報告があった。閉経前/後のホルモン受容体陽性進行・再発乳がん患者を対象(AI投与中/後に再発・進行、転移再発に対する治療歴として2ライン以下の内分泌療法、1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容)として、試験治療群capivasertib+フルベストラント、対照群プラセボ+フルベストラントが比較された。主要評価項目は全体集団およびAKT経路に変異(≧1のPIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異)を有する患者におけるPFSであった。約69%でCDK4/6阻害薬が前治療として使用されていた。AKT経路に変異を有する患者は44%vs. 38%だった。全体集団におけるPFS中央値は、プラセボ群3.6ヵ月に対しcapivasertib群7.2ヵ月で有意に改善した。またAKT経路に変異を有する患者でもPFS中央値は、プラセボ群3.1ヵ月に対しcapivasertib群は7.3ヵ月で有意に改善した。capivasertibで多く報告されたGrade3以上以上の有害事象は、下痢(9.3% vs. 0.3%)、斑状丘疹(6.2%vs. 0%)、発疹(5.4%vs. 0.3%)、高血糖(2.3%vs. 0.3%)だった。治療中止につながる有害事象の発生は、13.0% vs. 2.3%であり、効果と有害事象のバランスは考慮しなければならないものの、CDK4/6阻害薬治療後の新たな治療選択肢として期待できる結果であった。3)-2) AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のESR1変異:経口SERD (SERENA-2試験・EMERALD試験)これまで選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)は臀部筋肉注射のフルベストラントが標準治療として使用されているが、ESR変異に対して抗腫瘍効果を発揮することが期待される経口SERDが複数開発されている。このうちcamizestrantとelacestrantの報告があった。経口SERDであるcamizestrantの第II相SERENA-2試験の結果がSABCS2022で報告された。HR陽性の閉経後進行乳がん患者(1ライン以上の内分泌療法後の再発または進行で内分泌療法・化学療法は1ライン以下)を対象に試験群:camizestrant75mg(C75)群74例、camizestrant150mg(C150)群73例と対照群:フルベストラント(F)群73例が比較された。術後内分泌療法歴ありが66.7%、転移再発乳がんに対して化学療法ありが19.2%、内分泌療法ありが68.8%、CDK4/6阻害薬による治療歴ありは49.6%だった。ESR1変異ありが36.7%だった。主要評価項目のPFS中央値は、F群3.7ヵ月に対しC75群7.2ヵ月、C150群7.7ヵ月で、camizestrantの両用量群で有意に改善した。camizestrantのGrade3以上の有害事象は、血圧上昇、倦怠感・貧血・関節痛・ALT上昇・四肢痛・低ナトリウム血症であった。現在、SERENA-4およびSERENA-6の2つの第III相試験が進行中となっている。上記治験はいずれも日本からも参加している。もう1つ、経口SERDとしてelacestrantの第III相EMERALD試験のUpdate結果もSABCS2022で報告された。EMERALD試験は、HR陽性でCDK4/6阻害薬治療後に進行した男性および女性の閉経後乳がん患者(1~2ラインの内分泌療法歴[うち1ラインはCDK4/6阻害薬との併用]と1ライン以下の化学療法歴有)を対象としてelacestrantとフルベストラントが比較された初めての第III相試験であり、これまで主要評価項目であるPFSはelacestrant群で有意な延長が報告されていた。今回のSABCS2022では前治療におけるCDK4/6阻害薬の治療期間別の治療成績が報告された。CDK4/6阻害薬の投与期間を6ヵ月未満、6~12ヵ月、12~18ヵ月、18ヵ月以上と細かく分けてもelacestrant群でPFSは延長することが示された。elacestrantの主な有害事象は悪心、倦怠感、嘔吐、食欲不振、関節痛である。ESR1変異は転移再発治療としてCDK4/6阻害薬+AIを治療中に起こってくる耐性機序の1つであるが、新たに開発された経口SERDはその解決策として非常に有望である。長期の治療成績については今後の続報を待つ必要がある。3)-3) AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のCDK4/6阻害薬の継続(MAINTAIN試験)今回初めて前向き試験であるMAINTAIN試験の結果が報告された。MAINTAIN試験はHR陽性転移乳がんに対してCDK4/6阻害薬と内分泌療法後に増悪した症例に対してフルベストラントまたはエキセメスタンとribociclibを併用投与する群(併用群)と、フルベストラントまたはエキセメスタンとプラセボを投与する群(プラセボ群)が比較された。初回CDK4/6阻害薬としてパルボシクリブが86%で使われておりribociclibは10%強であった。主要評価項目のPFS中央値は併用群5.29ヵ月、プラセボ群2.76ヵ月で、HR:0.57(95%CI:0.39~0.95)、p=0.006と有意に併用群のPFSが延長した。奏効率は併用群20%、プラセボ群11%、臨床的有用率は併用群43%、プラセボ群25%でどちらも併用群で良好な結果であった。ESR1変異有無別では非常に症例数の少ないサブグループ解析ではあるがESR1変異なしでは併用群が優れている傾向を示したが、ESR1変異ありでは両群間に差を認めなかった。本試験は小規模な第II相試験であり、標準治療をすぐに変えるものではないが、CDK4/6阻害薬増悪後の後治療として、併用するホルモン治療を変更することでCDK4/6阻害薬の効果を維持できる可能性が示唆された。妊娠希望のあるHR陽性乳がん患者の新たなエビデンスPOSITIVE試験若年乳がん患者にとって妊孕性温存は重要な問題であり、特にHR陽性においては長期に術後補助内分泌療法が必要なため、内分泌療法を一時中断した場合のアウトカムが待望されていた。今回、SABCSにて内分泌療法を2年間中断した場合の乳がん再発の観点から見た安全性について、前向き単群試験のPOSITIVE試験の結果が報告された。対象は術後補助内分泌療法を18~30ヵ月間受けたStage I~IIIのHR陽性乳がん患者で、妊娠を希望し内分泌療法を中断する42歳以下の閉経前女性。内分泌療法を、wash out期間(3ヵ月)を含み、妊娠企図、妊娠、出産、授乳で2年間中断し、再開後5~10年追跡された。主要評価項目は乳がん無発症期間(BCFI)、副次評価項目は妊娠および出生児のアウトカムなどであった。2014年12月~2019年12月に518例が登録され、登録時の年齢中央値は37歳、75%が出産歴がなく、94%がStage I/IIであった。内分泌療法はタモキシフェン単独が最も多く(42%)、次いでタモキシフェン+卵巣機能抑制(36%)で、62%が術前もしくは術後化学療法を受けていた。追跡期間中央値41ヵ月においてBCFIイベントが44例に発生し、3年間累積発生率は8.9%だった。これはSOFT/TEXT試験(Breast. 2020)の対照コホートで算出した9.2%と同様だった。妊娠アウトカムを評価した497例中368例(74%)が1回以上妊娠し、317例(64%)が1回以上出産し、365児が誕生した。その後の内分泌療法は、競合リスク分析によると76%が再開し、8%は再開前に再発/死亡し、15%は再開していなかった。この結果はHR陽性乳がんとしてはフォローアップがまだ短いものの、妊娠を希望する若い乳がん患者が安全に内分泌療法を中断し、出産可能であることを示した重要な結果である。

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2022年、がん専門医に読まれた記事は?Doctors’Picksランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」は、2022年を通して、がん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。1位は新型コロナに関する話題だったが、その他は肺がん分野の話題が多数ランク入りしたほか、がん横断的なトピックスである新たな免疫療法の開発に関する話題(4位)や、米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)でプレナリーセッションに登壇した国立がんセンター東病院 消化管内科長・吉野 孝之氏の演題(6位)も大きな注目を集めた。【1位】3回目接種を受けた医療従事者の新型コロナ感染率は?(1/11)/JAMA 2022年1月10日にJAMA誌に掲載された、イスラエルの医療従事者におけるSARS-CoV-2感染の発生率とBNT162b2ワクチンの3回目接種との関連についての研究。ブースター接種から約1ヵ月間におけるSARS-CoV-2感染のハザード比は、2回接種者と比較して0.07(95%CI:0.02~0.20)と有意に低下することが示された。【2位】PD-L1高発現の1次治療、ICIにChemoを上乗せしてもOSの延長なし?(3/24)/Annals of Oncology PD-L1高発現の非扁平上皮非小細胞肺がん(Nsq-NSCLC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に化学療法を上乗せする効果を見た試験。結果として上乗せ効果は認められなかったという。【3位】小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法+tiragolumabの成績/SKYSCRAPER-02(5/28)/ASCO ASCO2022で発表された、進展型小細胞肺がんの標準療法の1つであるアテゾリズマブ+カルボプラチン/エトポシドの併用療法に、抗TIGIT抗体tiragolumab追加併用の有効性を見たSKYSCRAPER-02試験。主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかったという。【4位】PD-1阻害薬を超える!?新たな免疫療法PD1-IL2v開発の基礎(10/4)/nature PD-1を発現しているT細胞特異的に、IL-2R(βとγ)アゴニスト作用を持つ新たな免疫療法として、PD1-IL2vという薬剤が開発されたという報告。PD-1治療抵抗性のメラノーマに対して、PD-1阻害薬と比較しても圧倒的な効果を発揮したという、その作用機序を解説。【5位】おーちゃん先生のASCO2022 肺癌領域・オーラルセッションの予習 9000番台(5/30)/Doctors'Picks ASCO2022で発表される数千の演題の中から注目すべきものをエキスパート医師が事前にピックアップして紹介する恒例企画。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)がオーラルセッションを全解説した。 6~10位は以下のとおり。【6位】国立がんセンター東病院・吉野 孝之氏がプレナリーセッション登壇(6/2)/ASCO【7位】進行NSCLC、PD-1/L1阻害薬PD後のペムブロリズマブ継続の意義(2/7)/Clinical Cancer Research【8位】転移のある大腸がん、原発巣部位とゲノム異常の解析結果(5/9)/Target Oncol【9位】EGFR陽性NSCLCに対するオシメルチニブ/アファチニブ交替療法の有効性(4/13)/Lung Cancer【10位】ctDNAの臨床応用に関するESMOの推奨事項(7/14)/ESMO

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二重抗体薬glofitamab、再発難治DLBCLの39%が完全寛解/NEJM

 CD20/CD3二重特異性モノクローナル抗体のglofitamabは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に有効性を示したものの、患者の半数以上にGrade3以上の有害事象が発現したことが、オーストラリア・メルボルン大学のMichael J. Dickinson氏らによる第II相試験で示された。DLBCLの標準的な1次治療はR-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone)であるが、同患者の35~40%は再発/難治性で、その予後は不良であった。NEJM誌2022年12月15日号掲載の報告。glofitamab12サイクル投与の有効性を検証 研究グループは、2ライン以上の治療歴のある18歳以上の再発/難治性DLBCL患者を登録し、サイトカイン放出症候群軽減のためオビヌツズマブ(1,000mg)による前治療後、glofitamabを1サイクルの8日目に2.5mg、15日目に10mg、2~12サイクルの1日目に30mgを投与した(1サイクル21日間)。 主要評価項目は独立評価委員会(IRC)判定による完全奏効。主な副次評価項目は奏効期間、全生存期間、安全性などとし、intention-to-treat解析を実施した。 2020年1月~2021年9月に計155例が登録され、このうち154例が少なくとも1回の治験薬(オビヌツズマブまたはglofitamab)投与を受けた。完全奏効率は39%、ただしGrade3以上の有害事象の発現率が62% 追跡期間中央値12.6ヵ月時点で、IRC判定による完全奏効率は39%(95%信頼区間[CI]:32~48)であった。キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の治療歴がある52例においても、完全奏効率は35%であり、結果は一貫していた。 完全奏効までの期間の中央値は42日(95%CI:42~44)で、完全奏効が得られた患者の78%は12ヵ月時点で完全奏効が継続していた。12ヵ月無増悪生存率は、37%(95%CI:28~46)であった。 glofitamabの投与中止に至った有害事象は、14例(9%)に認められた。最も発現率が高かった有害事象は、サイトカイン放出症候群(ASTCT基準)(63%)であった。Grade3以上の有害事象は62%に認められ、Grade5(死亡)は8例報告された。なお、死亡例はいずれもglofitamabと関連はないと判断された。Grade3以上の主な有害事象は好中球減少症(27%)であり、Grade3以上のサイトカイン放出症候群は4%、Grade3以上の神経学的イベントは3%であった。

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2022年の肺がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 肺がん編】【肺がんインタビュー】 第90回

1.ソトラシブの承認(CodeBreaK 100試験とCodeBreaK 200試験)KRAS遺伝子変異陽性は、EGFR遺伝子変異に次いで本邦では多い遺伝子変異である。このKRAS遺伝子変異のうち、KRAS G12C遺伝子変異陽性を対象としたソトラシブが2次療法以降での使用で日常臨床に導入された。ソトラシブの重要な試験としては、KRAS G12C遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(126例)を対象としたPhase II試験(CodeBreaK 100試験:Skoulidis F, et al. N Engl J Med. 2021;384:2371-2381.)において、奏効率37.1%、無増悪生存期間(PFS)中央値6.8ヵ月、全生存期間(OS)中央値12.5ヵ月であり、毒性も下痢・悪心・倦怠感・肝障害を認めるものの比較的軽度であった。また、ソトラシブとドセタキセルを比較したPhase III試験(CodeBreaK 200試験:Johnson ML, et al. ESMO 2022.)も報告され、PFS中央値はソトラシブ群が5.6ヵ月、ドセタキセル群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)であった。奏効率はソトラシブ群が28.1%、ドセタキセル群が13.2%でp<0.001とソトラシブ群が有意に高かった。また、OS中央値はソトラシブ群が10.6ヵ月、ドセタキセル群が11.3ヵ月でHRは1.01(95%CI:0.77~1.33)で有意差は認めなかった(クロスオーバー率26.4%)。2.術前化学療法:ニボルマブ・プラチナ併用療法(CheckMate-816試験)本年度のトピックは周術期治療が中心であったと思われるが、切除可能非小細胞肺がん(腫瘍径≧4cmまたはリンパ節転移陽性)に対するニボルマブ・プラチナ併用療法(3週間ごとに3サイクル)のネオアジュバント療法については、CheckMate-816試験(Forde PM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1973-1985.)が報告されている。この試験は、ニボルマブ・プラチナ併用療法とプラチナ併用療法の術前化学療法を比較するPhase III試験で行われ、中間解析におけるイベントフリー生存期間(EFS)中央値は、ニボルマブ・プラチナ併用療法群で31.6ヵ月、プラチナ併用療法群では20.8ヵ月で、ニボルマブ・プラチナ併用療法群で有意に改善した(HR:0.63、97.38%CI:0.43〜0.91、p=0.005)。また、病理学的complete response(pCR)はニボルマブ・プラチナ併用療法群の24%に対し、プラチナ併用療法群は2.2%であった(p<0.0001)。OSのHRは0.57(99.67%CI:0.3〜1.07)とニボルマブ・プラチナ併用療法群で良好だが統計学的有意差は示しておらず、長期フォローアップの結果が待たれるところである。3.術後化学療法:アテゾリズマブ(IMPower010試験)完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)の非小細胞肺がん患者を対象とし、プラチナ併用療法による術後化学療法終了後のアテゾリズマブ療法(3週間ごと、1年投与)が日常臨床に導入された。術後化学療法アテゾリズマブの重要な試験として、完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)の非小細胞肺がん患者を対象とし、アテゾリズマブを支持療法と比較したPhase III試験(IMPower010試験:Felip E, et al. Lancet. 2021;398:1344-1357.)が報告された。その結果、PD-L1陽性のII-IIIA期(882例)における無再発生存期間(DFS)中央値は、アテゾリズマブ群で未到達、支持療法群で35.3ヵ月であり、HRは0.66(95%CI:0.50~0.88)と統計学的に有意に改善した。なお、DFSのHRは、PD-L1 50%以上では0.43(95%CI:0.27~0.68)と良好であったのに対して、PD-L1 1-49%では0.87(95%CI:0.6~1.26)であり、PD-L1の発現で効果が異なる傾向が示された。さらに、先日のWCLC 2022(Felip E, et al. WCLC 2022.)では、フォローアップ期間延長の結果が示され、36ヵ月時点での生存率はそれぞれ82.1%と78.9%であった(HR:0.71、95%CI:0.49~1.03)。4.術後化学療法:オシメルチニブ(ADAURA試験)完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)に対するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象とし、3年間のオシメルチニブ療法(1日80mg[1錠])が日常臨床に導入された。術後化学療法オシメルチニブの重要な試験として、完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)に対するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象とし、オシメルチニブをプラセボと比較したPhase III試験(ADAURA試験:Wu YL, et al. N Engl J Med. 2020;383:1711-1723.)(682例)が報告され、EGFR遺伝子変異陽性のII-IIIA期における24ヵ月時点での無再発生存率は、オシメルチニブ群で90%、プラセボ群で44%、HRは0.17(99.06%CI:0.11~0.26)と統計学的に有意に大きく改善した。なお、EGFR遺伝子変異陽性のIB-IIIA期における24ヵ月時点での無再発生存率は、オシメルチニブ群で89%、プラセボ群で52%であり、HRは0.20(99.12%CI:0.14~0.30)で、統計学的に有意に改善した。さらに、先日のESMO 2022(Tsuboi M, et al. ESMO 2022.)では、フォローアップ期間延長の結果が示され、Stage II/IIIAのDFS中央値は、オシメルチニブ群65.8ヵ月、プラセボ群21.9ヵ月で、HRは0.23(95%CI:0.18〜0.30)であった。また、Stage IB-IIIAのDFS中央値はオシメルチニブ群65.8ヵ月、プラセボ群28.1ヵ月で、HRは0.27(95%CI:0.21〜0.34)であった。5.外科の切除 肺葉切除vs.肺区域切除2cm以内の小細胞はいがんにおける肺区域切除と肺葉切除を比較したPhase III試験(JCOG0802/WJOG4607L: Saji H, et al. Lancet 2022:399:1607-1617.)が報告された。登録患者は、無作為割り付けの後、肺葉切除術(554例)または肺区域切除術(552例)(肺区域切除術群では、22例が肺葉切除に変更)が施行されている。5年全生存率は肺区域切除術群で94.3%、肺葉切除術群で91.1%であり、HRは0.663(95%CI:0.474~0.927、非劣性p<0.0001、優位性p=0.0082)と肺区域切除術群が統計学的に有意に良好であった。また、5年無再発生存率は肺区域切除術群で88.0%、肺葉切除術群で87.9%であり、HRは0.998(95%CI:0.753~1.323、p=0.9889)であった。局所再発率は肺区域切除術群で10.5%、肺葉切除術群で5.4%(p=0.0018)であり、肺区域切除術群で高いものの、術後呼吸機能低下については肺区域切除術群のほうが肺葉切除術群より有意に軽いことが報告され、条件がそろった場合の縮小手術の有用性が証明された。6.HER2陽性非小細胞肺がんのトラスツズマブ デルクステカン(ADC)トラスツズマブ デルクステカンは、抗体にトラスツズマブ、薬物がデルクステカンで構成されている。HER2陽性非小細胞肺がんにおけるトラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性を確認したPhase II試験(DESTINY-Lung01試験:Li BT, et al. N Engl J Med. 2022;386:241-251.)が報告された。非小細胞肺がんでは初となる免疫薬物複合体(ADC)の有効性を示した報告である。91例の患者が参加しており、奏効率55%(95%CI:44~65)で、病勢コントロール率は92%(95%CI:85~97)であった。また、治療奏効期間は9.3ヵ月(95%CI:5.7~14.7)、PFS中央値は8.2ヵ月(95%CI:6.0~11.9)、OS中央値は17.8ヵ月(95%CI:13.8~22.1)であった。主な毒性は血液毒性であったが、死亡例も含む肺障害も報告されている。今後、日常臨床への導入が進むと思われるが、毒性にも注意を払う必要があるといえる。7.ICI+Chemo、ICI+ICIの5年生存の発表PD-L1 50%以上のペムブロリズマブの5年生存率が31.9%と報告(Reck M, et al. J Clin Oncol. 2021;39:2339-2349.)され、ドライバー遺伝子変異陰性非小細胞肺がんでも長期生存の期待が高まってきている中、今年はESMO 2022において、扁平上皮がんのPhase III試験であるKEYNOTE-407試験の5年生存率(Nivello S, et al. ESMO2022.)と非扁平上皮がんのPhase III試験であるKEYNOTE-189試験の5年生存率(Garassino MC, et al. ESMO2022.)が報告された。5年生存率は、PD-L1の発現に関わらない全体集団において、KEYNOTE-407試験ではペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群で18.4%、KEYNOTE-189試験ではペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群で19.4%であった。さらにPD-L1 50%以上、PD-L1 1-49%、PD-L1陰性におけるペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群の5年生存率は、KEYNOTE-407試験では、それぞれ23.3%、20.6%、10.7%であり、KEYNOTE-189試験では、それぞれ29.6%、19.8%、9.6%であった。プラチナ併用療法は短期の病勢増悪を防ぐという意味では重要であるが、長期生存への寄与という点では十分でないのかもしれない結果であった。また、同時期にニボルマブ+イピリムマブ療法の5年生存の結果も報告された(Brahmer JR, et al. J Clin Oncol. 2022 Oct 12. [Epub ahead of print])。同試験ではPD-L1陽性の5年生存率は24%であり、その中でもPD-L1 50%以上の5年生存率は32%、PD-L1 1-49%の5年生存率は16%であった。それに対して、PD-L1陰性の5年生存率は19%であった。長期生存の観点からは、ニボルマブ+イピリムマブ療法はPD-L1陰性では良好な生存率を示したのに対し、PD-L1陽性ではイピリムマブの上乗せ効果が限定的である可能性が示されており、イピリムマブの効果を予測するバイオマーカーの開発が待たれるところである。免疫チェックポイント阻害薬の日常臨床導入により、一般臨床においても、ドライバー遺伝子変異陰性非小細胞肺がんでも長期生存が期待できるようになりつつあることは、意義が大きいことである。

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EGFR陽性T790M陰性NSCLCに対するオシメルチニブの2次治療は有効(WJOG12819L/KISEKI)/日本肺癌学会

 第1/2世代EGFR-TKIで増悪したEGFR陽性T70M陰性非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、オシメルチニブの2次治療が有効性を示した。 第1/2世代EGFR-TKIのPD症例に対するオシメルチニブの2次治療は、T790M変異陽性例にのみ適用できる。反面、残りの半数のT709M陰性例は、オシメルチニブによる治療の恩恵を受けることができないのが現状である。 そのような中、第1/2世代EGFR-TKIおよびプラチナ化学療法耐性のEGFR陽性T70M陰性NSCLCに対するオシメルチニブ2次治療を評価するWJOG12819L/KISEKI試験が行われている。第63回日本肺癌学会学術集会では、奈良県立医科大学の武田真幸氏が、同試験の初回解析結果を発表した。なお、この試験は、わが国初の患者提案型医師主導試験である。 今回の解析は第1/2世代EGFR-TKIおよびプラチナ化学療法後PDとなった症例(T790M陰性)を対象にしたコホート2のみであった。同コホートの主要評価項目は中央判定委員会による奏効割合(RR)で、95%信頼区間(CI)の下限が9%を上回ることを基準とした。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目である中央判定のRRは29.1%、95%CIは17.6〜42.9と、予め設定した閾値を上回り、主要評価項目を達成した。・無増悪生存期間中央値は4.07ヵ月、全生存期間は13.73ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は32.7%に発現したが、すべて既知のもので管理可能であった。 発表者の武田氏は、「この試験で第1/2世代EGFR-TKIで増悪したEGFR陽性T70M陰性NSCLCに対するオシメルチニブの有効性が示された。ただし、試験のLimitationとして症例数が限定されているため、標準治療であるドセタキセル±ラムシルマブよりも有益か否かは検証できない」と述べている。

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既治療のNSCLCに対するアテゾリズマブ単剤のリアルワールドデータ(J-TAIL)/日本肺癌学会

 既治療の切除不能非小細胞肺がん(NSCLC)に対するアテゾリズマブの単剤療法は、実臨床においても開発治験と同様の臨床効果を示すことが明らかとなった。 既治療の切除不能NSCLCにおいて、ドセタキセルに対し優越性を示したOAK試験の結果に基づき、アテゾリズマブの単剤療法は2次治療以降の治療選択肢となっている。しかし、開発治験における日本人データは限定されており、日常臨床での再現性は明らかではない。 そこで、日本の実臨床における同レジメンの安全性と有効性を検討する前向き試験J-TAILが行われている。第63回日本肺癌学会学術集会では、松坂市民病院の畑地治氏がJ-TAIL試験の最終解析を発表した。 対象はわが国の169施設で登録され、2次治療以降にアテゾリズマブを投与された切除不能NSCLC患者1,000例超。主要評価項目は18ヵ月生存(OS)率、副次評価項目にはOS、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性などが設定された。AOK試験の適格患者(OAK-like)と非適格患者(OAK-unlike)に分けて解析している。 主な結果は以下のとおり。・全体で1,039例が登録され、安全性解析対象は1,002例、有効性解析対象(FAS)は1,000例であった。・登録患者にはPS2(10.7%)、PS3/4(1.4%)といった開発治験除外症例も含まれ、喫煙歴ありも75.6%含まれた。・主要評価項目である18ヵ月OS率は41.1%で、OAK試験の40.0%と同等の成績であった。・OS中央値はFAS全体で13.0ヵ月、OAK-like患者では17.7ヵ月、OAK-unlike患者では11.1ヵ月で、OAK-likeが最も良好であった。・PFS中央値はFAS全体で2.1%、OAK-like患者では2.6ヵ月、OAK-unlike患者では2.1ヵ月であった。・PD-L1発現と予後の関係をみると、OAK-like患者ではOS、PFSともPD-L1高発現で延長していたが、OAK-unlike患者ではPD-L1発現レベルとの関連は見られなかった。・ORRはFAS全体で8.8%、OAK-like患者では10.9%、OAK-unlike患者では7.5%で、OAK-likeが最も良好であった。・Grade3/4の有害事象(AE)は18.0%、Grade3/4の免疫関連AEは7.4%で報告されている。 アテゾリズマブ単剤によるNSCLCの2次治療は、実臨床でもOAK試験と遜色ない結果を示した。しかし、OAK-likeとOAK-unlike患者で予後は異なる傾向であった。また、OAK-unlikeにおいてはPD-L1発現と予後の間に関連は示されていない。

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食道癌診療ガイドライン2022改訂、日本発エビデンスで治療戦略が大きく変更

 2022年9月に「食道癌診療ガイドライン」が刊行された。2002年に「食道癌治療ガイドライン」が発刊されてから20年、前版から5年振りの改訂となる。 10月に行われた日本癌治療学会の北川 雄光氏(慶應義塾大学・食道癌治療ガイドライン検討委員会委員長)の講演「食道癌集学的治療のこれまで、これから」、浜本 康夫氏(慶應義塾大学・腫瘍センター)による教育講演「食道扁平上皮がんに対する薬物療法」を参考として、食道癌診療ガイドライン2022年版の主な変更点をまとめた。食道癌診療ガイドライン2022年版で大きく変更のあったCQ 食道がんは他の消化器がんと比べて薬物療法において使用できる薬剤の種類が限られており、近年まで切除可能症例については外科手術を基軸として、化学療法や放射線療法を用いた周術期治療が主に術前治療として行われてきた。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し、この3年ほどのあいだに大幅に治療戦略幅が広がってきた。そこには日本発のエビデンスも大きな役割を果たしている。今回の食道癌診療ガイドライン2022年版の改訂において、とくに大きく変更のあったクリニカルクエスチョン(CQ)は以下のとおり。CQ8:cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、術前化学療法、術前化学放射線療法のどちらを推奨するか?→ cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、DCF3剤併用術前療法を強く推奨する。 切除可能局所進行食道がんの術前療法としては、日本ではシスプラチン+5-FU(CF療法)が長らく標準療法であったが、欧米においては化学放射線療法が標準療法となっている。日本と海外では術式や組織型が異なるため、海外の臨床試験の結果をそのまま受け入れるのは難しいと考えられていた。一方、CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法が頭頸部がんなどで有望な効果を示しており、術前療法としてのCF vs. DCF vs. CF+放射線(RT)療法の3つを比較したJCOG1109(NExT)試験が計画され、今年初めに結果が報告された。 NExT試験の結果は、CF群の3年生存率62.6%に対してDCF群は72.1%と10%近く上回り、CF群とCF+RT群には統計学的な有意差は示されない、というものだった。徹底的な郭清を行う日本の外科手術においては術前の強い化学療法が有効性を示す、という治療戦略の正しさを世界に示す結果となった。DCF群では遠隔転移が少ない一方で、CF+RT群では他病死が多く、放射線治療による晩期障害が他病死につながっている可能性が指摘されている。CQ9:cStageII、III食道癌に術前補助療法+手術療法を行った場合、術後補助療法を推奨するか?→ 1)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学放射線療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、組織型や腫瘍細胞におけるPD-L1の発現によらず、術後ニボルマブ療法を行うことを強く推奨する。→ 2)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、術後ニボルマブ療法については、現時点で推奨を決定することができない。 1)は2020年に発表されたCheckMate-577試験の結果を受けたもの。術前化学放射線療法後に切除を行った食道がんまたは胃食道接合部がんに対するニボルマブの効果を見た試験であり、主要評価項目である無病生存期間(DCF)はニボルマブ群で22.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~34.0)、プラセボ群で11.0ヵ月(95%CI:8.3~14.3)と、ニボルマブ群の優越性が示された。ニボルマブの有効性は組織型にも拠らないという結果だった。 2)の術前化学療法+術後のニボルマブ投与の有用性は準拠するエビデンスがない状態で、日本の標準療法が術前DCF療法であることを考えると、ここは早急にエビデンスの確立が求められる部分だ。CQ15:切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として化学療法は何を推奨するか?→ 1)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ペムブロリズマブ+シスプラチン+5-FU療法を行うことを強く推奨する。→ 2)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ニボルマブ+シスプラチン+5-FU療法もしくはニボルマブ+イピリムマブ療法を行うことを強く推奨するが、患者の全身状態および、PD-L1発現状況(TPS)、忍容性等を考慮する。 近年、二次化学療法においてICIの有用性が示され、一次療法においても検討が行われている。1)はKEYNOTE-590試験の結果を受けたもので、749例を対象に初回治療としてのペムブロリズマブの有効性を見た試験おいて、扁平上皮がんかつCPS>10の患者集団における全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ群13.9ヵ月(95%CI:11.1~17.7)に対して、プラセボ群8.8ヵ月(95%CI:7.8~10.5)であり、ペムブロリズマブ併用群の優越性が示された。 2)はCheckMate-648試験の結果を受けたもので、登録患者970例はニボルマブ+化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群、化学療法単独群に1:1:1で割り付けられた。ニボルマブ+化学療法群の無増悪生存期間(PFS)中央値は、TPS≧1集団において6.9ヵ月(95%CI:5.7~8.3)であり、化学療法単独群の4.4ヵ月(95%CI:2.9~5.8)を有意に上回ったが、全ランダム化集団においては有意差を認めなかった。 食道がんも他のがん種と同様に、外科手術中心の時代から化学療法に加えて放射線療法やICIも組み合わせた集学的・個別化医療の時代に突入しており、今後はロボット支援手術によるさらなる低侵襲化や合併症の軽減によって長期予後を狙うことなどに焦点が当てられている。また、食道癌診療ガイドライン2022版の改訂にあわせ、『食道癌取扱い規約』も12版に改訂されている。『食道癌診療ガイドライン 2022年版 第5版』編集:日本食道学会定価:3,520円(税込)発行:2022年9月B5判・176頁・図数:19枚・カラー図数:13枚

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乳がん治療におけるタキサン3剤の末梢神経障害を比較

 乳がん治療におけるnab-パクリタキセルパクリタキセルドセタキセルによる化学療法誘発性末梢神経障害の患者報告を比較したコホート研究の結果を、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのHongnan Mo氏らが報告した。化学療法誘発性末梢神経障害はnab-パクリタキセル群よりパクリタキセル群およびドセタキセル群で有意に少なく、nab-パクリタキセルでは主に感覚神経障害である手足のしびれ、パクリタキセルおよびドセタキセルでは主に運動神経障害および自律神経障害が報告された。また、感覚神経障害よりも運動神経障害のほうが早く報告されていた。JAMA Network Open誌2022年11月2日号に掲載。 本研究は、2019~21年に中国全土の9つの医療センターで実施された前向きコホート研究である。対象は、nab-パクリタキセルパクリタキセルドセタキセルベースのレジメンで治療を受けた入院中の浸潤性乳がん女性1,234例で、overlap propensity score weightingによる重み付けで評価した。2021年12月~2022年5月のデータを解析し、主要評価項目は欧州がん研究治療機関(ERT)のQOL調査票(感覚神経、運動神経、自律神経スケールの20項目)を用いた患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害とした。解析には、ベースラインの患者、腫瘍、治療の特性で調整した重回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・1,234例の平均(SD)年齢は50.9(10.4)歳で、nab-パクリタキセルが295例(23.9%)、パクリタキセルが514例(41.7%)、ドセタキセルが425例(34.4%)だった。・主な症状は、nab-パクリタキセル群では感覚神経に関連する手足のしびれ(81.4%)が多く、パクリタキセル群およびドセタキセル群では運動神経障害(例として、脚力低下はパクリタキセル群47.2%、ドセタキセル群44.4%)、自律神経障害(例として、目のかすみはパクリタキセル群45.7%、ドセタキセル群43.6%)が報告された。・運動神経障害は、感覚神経障害より早い時期に報告され、症状発現までの中央値はnab-パクリタキセル群0.4週間(95%信頼区間[CI]:0.4~2.3)、パクリタキセル群2.7週間(同:1.7~3.4)、ドセタキセル群5.6週間(同:3.1~6.1)であった。・患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害のリスクは、nab-パクリタキセル群に比べてパクリタキセル群(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.41~0.87、p=0.008)とドセタキセル群(HR:0.65、95%CI:0.45~0.94、p=0.02)で低く、感覚的不快感も、nab-パクリタキセル群と比べて、パクリタキセル群(HR:0.44、95%CI:0.30~0.64、p<0.001)およびドセタキセル群(HR:0.52、95%CI:0.36~0.75、p<0.001)で低かった。しかし、運動神経障害や自律神経障害を報告するリスクは、nab-パクリタキセル群に比べ、パクリタキセル群、ドセタキセル群が低くはなかった。

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ESMO2022 レポート 消化器がん

レポーター紹介ESMO2022を見て考えたこと昨年、一昨年と参加できなかったESMOであるが、abstract締め切りとなる2022年5月ごろはコロナも一段落していて今年こそは参加できる、と非常に心待ちにしていた。今回筆者は投稿演題がポスターとしてacceptとなり参加する気満々でいたのだが、7月ごろからの第7波の影響をもろに受け、今年も参加できなかった。仕方なくSNSを介して学会の様子を味わいつつ、レポートを書くこととなってしまった。今年のESMOで筆者が注目したのは大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発である。MSS大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発:迷路はゴールから解け?連戦連敗を続けていたMSS大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬であるが、こうすればうまくいくかも? というヒントが提示された。C-800 studybontesilimabはFc部分を改良し、APCやNK細胞のFcγIIIとの結合能を向上させた新規の抗CTLA-4抗体であり第1世代抗CTLA-4抗体と比して、活性化樹状細胞の割合、T細胞のプライミング、増殖(拡大)、メモリー化、Tregを減少させる能力が向上し、さらに有害事象が減少する、とされている。C-800試験(NCT03860272)はさまざまながん種を対象とした抗PD-1抗体balstilimab(BAL、3mg/kg Q2W)と抗CTLA-4抗体botensilimab(BOT、1 or 2mg/kg Q6W)併用療法のfirst-in human phase I試験である。今回、MSS大腸がんコホートの結果が2022年6月29日から7月2日にかけてバルセロナで開催されたWorld Congress on Gastrointestinal Cancer(ESMO-GI)のLate breaking abstractとして発表された。標準治療に不応となったMSS大腸がん41例が登録された。前治療ラインの中央値は4(2~10)であり、14例(34%)が何らかの免疫療法を過去に投与されていた(!)。RAS変異は21例(51%)、BRAF変異は2例(5%)に認められた。部分奏効(partial response:PR)は10例に認められたが完全奏効(complete response:CR)は認めず、奏効率(overall response rate:ORR)は24%であった。病勢制御率(disease control rate:DCR)は73%であった。10例の奏効例のうち8例は報告時点で治療効果が持続しており、3例は1年以上持続していた。フォローアップ中央値が5.8ヵ月と短いがduration of response(DOR)の中央値は未到達であった。有害事象としてGrade4以上のものはなく、いずれも既知のものであった。注目を集めたのは以下の解析結果である。登録症例44例のうちactiveな肝転移を有さない症例が24例であった(肝転移となったことがない19例と切除ないし焼灼し現在肝転移がない5例)。この「肝転移がない」症例に限って解析を行うと、ORRが42%(10/24)、DCRが96%(23/24)という結果であった。何らかの免疫療法で加療された後の症例を34%含む集団ということを考えれば期待の持てる有効性と感じた。また肝転移という臨床的な要素での患者選択による治療開発の方向性を示唆する結果であった。RIN上記結果報告から2ヵ月後のESMOにおいて、レゴラフェニブ (REG)、イピリムマブ (IPI)、ニボルマブ(NIVO)併用療法(RIN)のphase I試験の結果が報告された。対象となったのはフッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、および左側RAS野生型およびBRAF変異症例においては抗EGFR抗体に不応となったMSS大腸がんである。Dose escalationパート(9例)にてレゴラフェニブ 80mg QD、ニボルマブ 240mg Q2W、ipilimumab 1mg Q6W(すなわちlow-dose IPI+NIVO)が決定され、Dose expansionパート(20例)に移行した。今回は両パートを合わせたMSS大腸がん29例の結果が報告された。前治療ラインの中央値は2(1~6)であり、免疫療法を過去に投与された症例は適格性から除外されている。RAS変異は9例(31%)、BRAF変異は3例(10.3%)に認められた。TMBの中央値は3(1~11)であった。懸念される安全性については以下の通りである。免疫チェックポイント阻害薬関連Grade3以上の毒性としては斑点状・丘面状発疹(37.9%)、AST/ALT上昇(17.2%)、リパーゼ・アミラーゼ上昇(10.3%)であり、REGが加わることにより毒性はやや増す印象を持った。有効性については上述のC-800試験の結果を受けたものと想定されるが、肝転移の有無も情報として加えられている。全体のORRは40.9%(9例)であったが、奏効はすべて肝転移なし症例であった。全体のDCRは65.5%であり、肝転移なし群で72.7%、肝転移あり群で42.9%であった。無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値は全体で4ヵ月、肝転移なし群で5.0ヵ月、肝転移あり群で2ヵ月であった。以上のようにここでも肝転移の有無によって治療効果が明瞭に分かれる結果であった。今後の展開肝転移を有する症例で免疫チェックポイント阻害薬ないし(殺細胞性抗がん剤を用いない)免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が効きづらいという現象は他がん種で複数報告されており、真実であるように思える。しかしこれを前向きに評価した研究は筆者の知る限りこれまでにない。肝転移の有無という非常にシンプルな臨床パラメータで症例を絞るという開発ができれば成功が見えてくるのではないかと感じた。複雑な迷路を解く簡単な方法は何かといえばゴールから解くことである。All comerでの勝利を目指さず、まず「勝てそう」な手堅い対象(たとえsmall populationであっても)から承認を得て、徐々に広げていくという戦略が必要と強く感じている。とはいえMSS大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬治療の開発はこれまで連敗続きであり、一筋縄ではいかないのは周知の事実である。結局はphase IIIの結果を見るまではわからないと思っている。MSI-H大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発:過ぎたるは及ばざるが如し?2022年ASCO最大の話題の1つがNEJM誌に同時掲載されたStage II/III dMMR直腸がんに対する抗PD-1抗体dostarlimab(500mg Q3W)の単剤療法の結果であろう(Cercek A, et al. ASCO2022, #LBA5. Cercek A, et al. NEJM 2022)。MSKCCの単施設で行われたphase II試験であるが、12例のcase seriesとして報告された。この試験では、前治療歴のないdMMR Stage II/III直腸がん患者に対し、dostarlimabを合計6ヵ月間投与した。臨床的完全奏効(cCR)が得られた場合、患者は非手術管理と経過観察を行いcCRが認められない場合は、化学放射線療法(放射線療法+カペシタビン同時併用療法)に続き、TMEを行うこととした。結果、全例がcCRが得られるという驚愕の結果であった。重要なことは、これらの症例には化学放射線療法および/または手術が行われなかったという点である。この結果はdMMR Stage II/III 直腸がんに対しては免疫チェックポイント阻害薬での治療が標準となることを強く予感させるものであった。NICHE-2この試験は先行したNICHE-1試験の発展版である。NICHE-1試験(NCT03026140)は、Stage I~III dMMRまたはpMMR結腸直腸がん患者に対する術前NIVO+IPI(といってもIPI 1mg/kg併用は初回サイクルのみ。2サイクル目はNIVO 3mg/kgで終了という短期投与であるが)の安全性と忍容性を主要評価項目として行われた。治療の忍容性は良好で、全症例で根治的切除術を受けた(主要評価項目を達成した)。NIVO+IPI投与群のうち、dMMRでは、20例全例で病理学的効果(patholigic response:PR)が認められ、19例のmajor pathological response (MPR、残存生存腫瘍10%以下)、12例の病理学的完全奏効が認められた(Chalabi M, et al. Nat Med. 2020:566-576.)。NICHE-2試験はcT3以上の腫瘍を有する切除可能 dMMR結腸がんに対する術前治療としてのニボルマブ(NIVO)+イピリムマブ(IPI)併用療法(治療は上記と同様)の安全性と忍容性、3年の無病生存期間(disease-free survival:DFS)を主要評価項目とした試験である。95%の症例で手術が予定通りに行われた場合に安全性と忍容性があり、有効な3年DFSとして93%以上と定義された。この設定により95症例が必要と算出された。120例がスクリーニングされ112例が加療され107例で有効性解析が行われた。Stage I/IIが13%、低リスクStage IIIが13%、高リスクStage III(T4a/4b、N2)が74%であった。右側原発が68%、横行結腸原発が17%と全体の大勢を占めた。一方リンチ症候群の割合は31%であった。Grade3以上の有害事象は4%であった。98%の症例で切除術を遅延なく受けることができ、安全性と忍容性について主要評価項目を達成した。一方、病理学的有効性に関してはmajor pathological response 95%、67%の症例でpCRが得られており「This is the waterfall plot」という、まさに滝が落ちるようなvisualで聴衆を圧倒した(らしい)。有意差はなかったもののリンチ症候群の方が孤発性よりpCR率が高い結果であった。3年DFSは今後発表予定である。今後の展開さてこの結果をどう考えるか、である。そもそもdMMR大腸がんはとくにStage IIでは手術単独で3年DFSが90%程度あり(Sargent DJ, et al. J Clin Oncol. 2010;28:3219-3226.)予後良好であることが知られている。dMMR結腸がんの特徴としてcStageとpStageの乖離があると筆者は考えている。dMMR腫瘍はimmunogenicな免疫環境を反映し、腫瘍内に著明なリンパ球浸潤を来す。そのため腫瘍径としてはT4が多く、また近傍のリンパ節では活発に免疫応答を生じるためradiologicalにはN(+)と判断される。しかしこうした症例を手術すると、累々と腫脹していたリンパ節は実は免疫応答の結果でありそこに腫瘍細胞は存在しない(N=0)ことがあり、cStage IIIが実はpStage II(high-risk)だった、ということをdMMR大腸がんでしばしば経験する。つまり今回の試験で定義されている高リスクStage IIIはdMMR腫瘍の典型であり実際にはStage IIなのではないかという懸念がある。ところが全例で術前にNIVO+IPIが入るため、見た目(clinical stage)と実際(pathological stage)の違いがわからなくなってしまっている。今回3年DFS 93%以上で有効と定義しているが、全体の集団が実はStage II dominantであった場合にこれが妥当といえるだろうか。実はdMMRはStage IIの15%、Stage IIIの10%程度に存在する決して珍しいとはいえない存在である。ランダム化試験での検証が望ましいが、結局上述のcStageとpStageの乖離が悩ましいところである。さらに、Stage II/IIIに対して抗PD-1抗体以上の免疫チェックポイント阻害薬が必要かどうかについても興味がある。上述のdostarlimab試験で100%のCRが得られた、という結果を見て「おや」と感じられた方もおられると思う。未治療の進行・再発MSI-H/dMMR結腸直腸がんを対象としたKEYNOTE-177試験ではpembrolizumab単剤の奏効率が43.8%であり病勢進行(progressive disease:PD)が29.4%も認められたことと大きく相違するからである。この違いは何に由来するのか。そもそもMSI-H/dMMRというimmunogenicな腫瘍がなぜ「進行がん」として存在するかであるが、チェックポイント分子の発現によって免疫環境から逃避できているから、かもしれない。Stage II/IIIで留まっているということは、腫瘍増殖と免疫機能が腫瘍とその近傍で拮抗している状態であり、おそらくPD-1が免疫逃避において大きな役割を果たしている。したがって抗PD-1抗体単剤で非常に高い効果が得られる、と理解できる。一方でそうした拮抗状態を乗り越えさらに腫瘍増悪を来している状態(進行・再発)では、さらなるチェックポイント分子の発現を獲得している可能性があり、それゆえ抗PD-1抗体単剤の治療効果はある程度で頭打ちであり、さらなるチェックポイント分子に対する加療(たとえば抗CTLA-4抗体の追加)が必要なのではないかと考えている。この仮説が正しいかどうかはNIVO monotherapy vs.NIVO+IPI vs.標準化学療法というデザインで現在ongoingのphase III試験(CheckMate-8HW、NCT04008030)の結果を待ちたい。さらにこの試験の結果により、どういう症例にIPIが必要かという使い分けができればと期待しているし、それによりNICHE-2デザインが本当に必要かはさらに明らかになると考えている。最後にコロナ第7波もようやく収束に向かい、徐々にリアルの学会・研究会が復活してきているが、やはりリアルの会の良さを感じている。単純に情報の交換だけではないsomethingが学会・研究会会場にはあると思うし(例えばwaterfall plotの件)、それが自身の活力となっていると感じる。というわけで、来年こそは参加したいESMO、である。皆さま、マドリードでお会いしましょう!

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ESMO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO2022は2022年9月9日~13日まで現地(フランス、パリ)とオンラインのハイブリッドで開催されました。胸部疾患に関して注目をされていた重要な演題について取り上げてみたいと思います。Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with resected EGFR-mutated (EGFRm) stage IB-IIIA non-small cell lung cancer (NSCLC): Updated results from ADAURA(LBA47)国立がんセンター東病院坪井先生のご発表でした。日本でも、2022年8月に本試験の結果に基づいてオシメルチニブ(タグリッソ)はII~III期のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適応を受けました。しかし、DFSに関して公表されたデータは2020年の論文(N Engl J Med 2020;383:1711-1723.)公表後初とのことで注目を集めました。イベントにおいて50%の成熟度に到達したことに伴う結果公表です。フォローアップ期間の中央値はオシメルチニブ群で44.2ヵ月(range 0~67、n=233)、プラセボ群で19.6ヵ月 (range 0~70、n=237)でした。主要評価項目であった、II期/IIIA期を対象としたDFS(Disease free survival, 無病生存期間)中央値はオシメルチニブ群65.8ヵ月(95%CI:54.4~算出不能) vs.プラセボ群21.9ヵ月(95%CI:16.6~27.5),(hazard ratio[HR]:0.23、95% CI:0.18~0.30)でした。DFS、OSのデータを見ると、フォローアップ期間が延びても術後補助化学療法としてのオシメルチニブの有用性はより手堅いデータになっていると感じます。「再発してからオシメルチニブ」では何故追いつかないのか?一つの仮説として、再発時にオシメルチニブ群では「遠隔」転移が少なく、その後の治療も組み立てやすかったのではないかと予想します。さらにイベントが集積されてからOSベネフィットについても議論されるでしょうが、再発予防としては十分に魅力的なデータと感じました。今後、より早期の症例におけるデータ創出などが予定されています。PD-L1 expression and outcomes of pembrolizumab and placebo in completely resected stage IB-IIIA NSCLC: Subgroup analysis of PEARLS/KEYNOTE-091(930MO)周術期のデータをもう一つ。WCLC2022でも取り上げられていましたが、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)を用いた術後補助化学療法の有用性を検討する試験です。PD-L1の発現ごとに詳細なデータが公表されました。既に承認を得ているアテゾリズマブ(テセントリク)ではIMpower010の中でPDL1発現によって治療効果が異なる傾向が示されていましたが、ペムブロリズマブは少し様子が異なるようです。以下の表を見てみましょう。すでに報告されている通り、KEYNOTE-091試験の全体の結果として、ペムブロリズマブはプラセボに比較して無病生存期間を有意に延長しています。主要評価項目の一つである(co-primary end point)TPS>0におけるDFSにおいてはプラセボと比較し統計学的には有用性が証明されませんでした。殺細胞性抗がん剤使用の有無など背景の違いに応じて、化学療法の今後、術後補助化学療法においてもPD-L1の発現をどの抗体で調べるのか、そしてその結果に応じてどう使い分けるのか議論がしばらく続きそうです。今のデータでは、PDL1高発現であれば○○、という使い分けではなく、ドライバーなしの症例では“化学療法使用にフィットするかどうか”が鍵になるような気がします。Sotorasib versus docetaxel for previously treated non-small cell lung cancer with KRAS G12C mutation: CodeBreaK 200 phase III study(LBA10)KRAS G12C阻害剤のソトラシブ(ルマケラス)は、治療歴のあるNSCLC患者に対するドセタキセル治療と比較して、12ヵ月時点での無増悪生存率を2倍にし、進行または死亡のリスクを34%低減しました。追跡期間の中央値は17.7ヵ月で、12ヵ月のPFS率は、ドセタキセル10.1%に対して、ソトラシブは24.8%でした。無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ソトラシブで 5.6ヵ月(95%CI:4.3~7.8)、ドセタキセルで4.5ヵ月(95%CI:3.0~5.7) でした (HR:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.002)。化学療法と比較して、KRAS G12C 阻害薬によるグレード3以上の治療関連有害作用(TRAE)はソトラシブ群で少ない傾向にありました(33.1% vs.40.4%)。クロスオーバーもあり、OSデータは参考ながらソトラシブ群10.6ヵ月(95%CI,:8.9~14.0)ドセタセル群11.3ヵ月(95% CI:9.0~14.9)(HR:1.01、95%CI:0.77~1.33、p=0.53)でした。日本でもKRAS G12C変異をもつ既治療NSCLに対して承認を得ています。今後ソトラシブの高い忍容性から単剤での使用だけでなく、さまざまな薬剤との併用試験が行われており、結果が待たれます。Mechanism of Action and an Actionable Inflammatory Axis for Air Pollution Induced Non-Small Cell Lung Cancer: Towards Molecular Cancer Prevention.(LBA1)薬剤開発ではなく、予防の話題がLBAで取り上げられておりました。本発表は、TRACERx(NCT01888601)、The PEACE(NCT03004755)、Biomarkers and Dysplastic Respiratory Epithelium (NCT00900419)の3つの研究を統合したもので、40万人以上の症例が解析の対象となりました。大気汚染と肺がんの発症にはいくつかのエビデンスがあると報告されていますが、非喫煙者における肺がんの発症と大気汚染の関連について分子生物学的な解析は十分ではありませんでした。まず研究者らは2.5μmの粒子状物質 (PM2.5 )への暴露が増加すると、肺がんの発症が増加することを突き止めました。次に、247例の肺組織のディープシークエンスを行うことにより、正常肺にもそれぞれ15%と53%の頻度でEGFRとKRASドライバーの突然変異を発見しました。しかし、これらの変異は加齢などに伴って存在するものであり、がん化への影響は少ないようでした。しかし、PM2.5への暴露を受けた細胞はその後がん化が促進され、その機序としてインターロイキン(IL)-1βの関与が予想されました。今回得られた知見は、非喫煙者において正常細胞のEGFR変異などを検知し、IL-1βなどを標的とする治療で予防が可能になるかもしれない、という期待を持たせてくれる内容ですが、まだまだ未知のことも多く、検討の余地があります。低線量CTを用いた早期発見の取り組みと並行し、大気汚染による非喫煙者のがんを予防、治療が出来る時代が来るのかもしれません。Durvalumab (D) ± tremelimumab (T) + chemotherapy (CT) in 1L metastatic (m) NSCLC: Overall survival (OS) update from POSEIDON after median follow-up (mFU) of approximately 4 years (y).(LBA59)POSEIDON試験からのOSの最新の探索的解析によると、1次治療におけるtremelimumabとデュルバルマブおよび化学療法の併用療法は、転移を伴うNSCLC患者にOS延長のベネフィットがあったことが報告されました。長期フォローアップ(中央値46.5ヵ月[範囲0.0~56.5])の結果に基づく報告です。3剤併用療法では、OS中央値が14.0ヵ月(95%CI:11.7~16.1)、化学療法単独では11.7カ月(95%CI:10.5~13.1)となり、死亡リスクを25%低減しました(HR:0.75、95%CI:0.63~0.88)。36ヵ月OS率は、それぞれ25%対13.6%でした。併存する変異状態別のOS は、トレメリムマブとデュルバルマブおよび化学療法による治療が継続的に有利でした。STK11変異を有する患者では、3剤併用により死亡リスクが 38% (HR:0.62、95% CI:0.34~1.12) 減少し、OSの中央値は15.0ヵ月(95%CI:8.2~23.8)でした。化学療法単独で10.7ヵ月(95%CI:6.0~14.9)。3年後のOS率は、それぞれ25.8%対4.5%でした。同様に、KEAP1変異を有する患者では、トリプレット療法により死亡リスクが57%減少し (HR:0.43、95%CI:0.16~1.25)、OS中央値が 13.7ヵ月(95% CI:7.2~26.5)、化学療法単独では8.7ヵ月(95%CI:5.1~評価不能)でした。最後に、KRAS変異を有する患者は、トレメリムマブ+デュルバルマブおよび化学療法により、死亡リスクが45% 減少し(HR:0.55、95%CI:0.36~0.85)、OS中央値は25.7ヵ月(95%CI:9.9~36.7)に対し、化学療法単独では10.4ヵ月(95%CI:7.5~13.6)でした。WCLCでも、3剤併用療法は特に遺伝子変異を有す症例においてベネフィットが大きい可能性を指摘されていました。checkmate9LAやCheckmate227など、抗PDL1抗体+化学療法に抗CTLA4抗体を上乗せすべき対象をどのように目の前で選択するのか?遺伝子検査の結果がその一つの答えになるように思います。問題は、現在の日本では1次治療の前に保険診療でこれらの遺伝子を測定出来ないことでしょう。エビデンスの積み重ねで、免疫チェックポイント阻害薬の使い分けにも遺伝子検査が有用、となる時期が遠くないと感じています。

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TN乳がんの免疫チェックポイント阻害薬によるOS延長(解説:下村昭彦氏)

 2022年7月21日のNew England Journal of Medicine誌にKEYNOTE(KN)-355試験の全生存期間(OS)についての結果が公表された。すでにCPS(combined positive score)が10以上のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回化学療法に対するペムブロリズマブの上乗せが、無増悪生存期間(PFS)を延長することは発表され、国内でも標準治療として実施されている(Cortes J, et al. Lancet. 2020;396:1817-1828.)。 KN-355試験ではCPS 10以上のグループにおけるOSが9.7ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.50~0.88)と統計学的有意にペムブロリズマブ群で良好であった。一方、ITT集団やCPS 1以上のグループではその差を検出できなかった。 KN-355試験では併用化学療法のパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンが選択可能であったが、併用化学療法ごとのサブグループ解析のハザード比はパクリタキセルで最も顕著(28.6 vs.8.5ヵ月、HR:0.34、95%CI:0.16~0.72)、ゲムシタビン+カルボプラチンではその差がはっきりとは示されていなかった(19.1 vs.16.2ヵ月、HR:0.88、95%CI:0.61~1.25)。薬剤ごとに差が見られる理由は明確ではないが、パクリタキセル+プラセボ群のOSが極端に悪いこと、ゲムシタビン+カルボプラチン群には無病期間(DFI)が12ヵ月未満の症例が多く入ったことが原因として考察される。 現在TNBCでは2種類の免疫チェックポイント阻害薬が使用されているが、OSの延長を統計学的に証明したのはKN-355試験が初である。もうひとつの免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとはPD-L1の評価方法が異なること、併用化学療法が異なること(アテゾリズマブはアルブミン結合パクリタキセルの併用のみ)であり、有効性の結果を考慮しながら、両方の方法でPD-L1を評価し、投与スケジュールなども加味して治療方針を決定していくことが重要であろう。

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デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法は長期フォローアップ後でも、NSCLC1次治療の予後改善を維持(POSEIDON)/ESMO2022

 転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としての、デュルバルマブとtremelimumabと化学療法の併用効果に関する長期フォローアップの結果が、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa Johnson氏から欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 これは、2021年に発表のあった第III相の国際共同オープンラベルのPOSEIDON試験の観察期間中央値4年を超えるフォローアップの結果である。・対象:未治療のEGFR/ALK野生型の転移のあるNSCLC症例・試験群: -DurTre群:デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法→デュルバルマブ+tremelimumab(338例) -Dur群:デュルバルマブ+化学療法→デュルバルマブ(338例)・対照群:化学療法(CT群:337例) 化学療法は、ゲムシタビン+シスプラチン、カルボプラチン+ペメトレキセド、nabパクリタキセル+カルボプラチンなど・評価項目[主要評価項目]Dur群対CT群における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]DurTre群対CT群におけるPFS、OSなど 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年3月)時点の観察期間中央値は46.5ヵ月であった。・OS中央値はDurTre群で14.0ヵ月、CT群で11.7ヵ月、ハザード比(HR)は0.75(95%信頼区間[CI]:0.63~0.88)、Dur群ではOS中央値13.3ヵ月、HRは0.84(95%CI:0.71~0.99)であった。3年OS率はDurTre群25.0%、Dur群20.7%、CT群13.6%であった。・病理組織型別では、非扁平上皮がんのOS中央値はDurTre群17.2ヵ月、CT群13.1ヵ月でHRは0.68(95%CI:0.55~0.85)であった。Dur群ではOS中央値14.8ヵ月、HRは0.80(95%CI:0.64~0.98)だった。・STK11変異は87例に認められ、DurTre群対CT群のOS HRは0.62(95%CI:0.34~1.12)で、Dur群のOS HRは1.06(95%CI:0.61~1.89)であった。3年時OS率はDurTre群25.8%、Tre群14.7%、CT群4.5%であった。・KRAS変異は182例で、DurTre群のOSのHRは0.55(95%CI:0.36~0.85)で、Dur群のOS HR:0.78(95%CI:0.52~1.16)であった。3年OS率は、DurTre群40.0%、Dur群26.1%、CT群15.8%であった。・KEAP1変異は29例で、DurTre群のOSのHRは0.43(95%CI:0.16~1.25)、Dur群ではHR:0.77(95%CI:0.31~2.15)だった。・長期のフォローアップにおいても新たなる安全性の懸念は報告されなかった。 最後に演者は「今回の追跡結果においてもOSの優位性は変わらず認められ、種々の遺伝子変異や病理組織型においても、デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法の有用性が確認され、今後このレジメンが、NSCLCの1次治療の選択肢となり得る」と述べた。

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KRASG12C阻害薬ソトラシブ、パニツムマブ併用でmCRC患者に有用性示す(CodeBreaK101)/ESMO2022

 CodeBreaK100試験によって、KRASG12変異のある固形がん患者に対するKRASG12C阻害薬ソトラシブの有用性が報告されている。CodeBreaK101試験は、KRASG12変異陽性で転移のある大腸がん(mCRC)患者を対象に、ソトラシブ単剤療法およびほかの抗がん療法と併用した場合の安全性、忍容性、薬物動態、および有効性を評価することを目的としている。大腸がんにおいてはKRASG12変異のある患者は全体の3%ほどとなっている。 9月に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)では、国立がんセンター東病院の久保木 恭利氏が、mCRC患者40例を対象にソトラシブと抗EGFR抗体薬パニツムマブの併用療法の有用性をみた第I相CodeBreaK101試験の初期データにおいて、有望な抗腫瘍効果が示されたとの結果を報告した。・対象:KRAS変異陽性のmCRC 患者40例(女性75%、年齢中央値57.5歳)。フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、血管新生阻害薬の前治療または後治療歴・試験群:ソトラシブ960mg/日を経口投与+パニツムマブ6mg/kgを2週間ごとに点滴静注・評価項目:[主要評価項目]安全性[副次評価項目]抗腫瘍活性(奏効率[ORR]、病勢コントロール率[DCR]、無増悪生存期間[PFS]、全生存期間[OS]など)、薬物動態(PK) 主な結果は以下のとおり。・2022年3月25日までに登録された40例が対象となった(女性75%、年齢中央値58歳)。・Gradeを問わない治療関連有害事象は37例(93%)に発現した。Grade3の有害事象は9例(22.5%)に発現し、中断や減薬に至った有害事象はソトラシブ6例(15%)、パニツムマブ10例(25%)だった。Grade4以上や治療中止に至った有害事象はなかった。・最も多い有害事象は痤瘡型皮膚炎で全体の50%に発現したが、大半がGrade2までだった。・安全性に関する所見は、ソトラシブおよびパニツムマブの既知のプロファイルと一致していた。・ORRは30%(95%CI:16.6~46.5)、DCRは93%(95%CI:79.6~98.4)であった。35例(88%)で腫瘍の縮小が確認された。ソトラシブの薬物動態は単剤療法で観察されたものと一致していた。 著者らは「今回のデータは、対象患者におけるソトラシブとパニツムマブの併用療法の安全性と忍容性をさらに証明するもので、ソトラシブ単剤療法よりも3倍高いORRを示し、この併用療法の今後の開発を支持するものである。今後、奏効期間、PFS、OSなどの長期追跡データも発表される予定であり、さらに併用療法と医師選択の化学療法を比較するCodeBreaK300試験も進行中だ」としている。

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ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022

 KRAS G12C変異陽性の既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、ソトラシブがドセタキセルよりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa L. Johnson氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 ソトラシブの有効性は単群試験のCodeBreaK100で示されていたが、今回発表されたのは、日本も参加した国際共同無作為化比較第III相試験CodeBreaK 200試験の主解析の結果である。・対象:免疫チェックポイント阻害薬と化学療法薬の治療歴を有するKRAS G12C変異陽性のNSCLC(過去の脳転移治療例は許容)・試験群:ソトラシブ960mgx1/日(Soto群:171例)・対照群:ドセタキセル75mg/m2を3週ごと(DTX群:174例)DTX群からSoto群へのクロスオーバー投与は許容・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・試験は2020年6月から開始されたが、2021年2月にプロトコール修正が行われ、登録症例数が650例から330例へと変更になり、DTX群のSoto群へのクロスオーバー投与も認められた。・DTX群からSoto群へのクロスオーバー率は26.4%で、DTX治療の後治療として別のKRAS阻害薬の投与を受けた割合は7.5%であった。・両群の年齢中央値は64.0歳、脳転移の既往有りが約34%、前治療歴は2ライン以上が55%であった。・データカットオフ時(2022年8月)のPFS中央値はSoto群が5.6ヵ月、DTX群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)、p=0.002と有意にSoto群が良好であった。1年PFS率は、Soto群24.8%、DTX群10.1%だった。・ORRはSoto群が28.1%、DTX群が13.2%、p<0.001とSoto群が有意に高かった。腫瘍縮小効果があった割合は、それぞれ80.4%と62.8%であった。・DoR中央値はSoto群8.6ヵ月、DTX群は6.8ヵ月で、奏効までの期間中央値は、それぞれ1.4ヵ月と2.8ヵ月であった。・症例数が大幅に減ったこととクロスオーバー投与が許容されたことで、OSにおける両群間の差は検出されなかった。OS中央値は10.6ヵ月と11.3ヵ月、HRは1.01(95%CI:0.77~1.33)であった。・Grade3以上の有害事象は、Soto群で33.1%、DTX群で40.4%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ10.7%と22.5%であった。・Soto群で多く認められたGrade3以上の有害事象は、下痢、肝機能障害で、DTX群で多く認められたものは、倦怠感、貧血、脱毛、好中球減少(発熱性好中球減少症含む)などであった。・患者報告アウトカムは、Soto群で良好であり、がん関連の身体症状悪化までの期間もSoto群の方がDTX群よりも長かった。

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HER2低発現進行乳がんへのT-DXd、患者報告アウトカム(DESTINY-Breast04)/ESMO2022

 HER2低発現で既治療の進行乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験における、患者報告アウトカムの解析結果が報告された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの上野 直人氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。 DESTINY-Breast04試験では、T-Dxd群でHR+コホートにおけるPFS中央値(10.1ヵ月vs.5.4ヵ月、HR:0.51、p<0.0001)およびOS中央値(23.9ヵ月vs.17.5ヵ月、HR:0.64、p=0.0028)を有意に改善した。安全性については、Grade3以上のTEAEはT-Dxd群53% vs.TPC群67%で発生し、T-Dxd群で多くみられた治療関連TEAEは、吐き気(73% vs.24%)、倦怠感(48% vs.42%)、TPC群では好中球減少症(33% vs.51%)だった。・対象:HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)、1~2ラインの化学療法歴のある切除不能および/または転移を有する乳がん患者(ホルモン受容体陽性[HR+]の場合は内分泌療法抵抗性) 557例 以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか) 184例・評価項目:[主要評価項目]HR+患者における無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全例におけるPFS、HR+患者および全例における全生存期間(OS)、安全性、HR+患者における患者報告アウトカム(PRO)など・PROの測定:EORTC QLQ-C30、EORTC QLQ-BR23およびEQ-5D-5Lの質問票を用いて、3サイクル目までは各サイクルごと、以降は2サイクルごと、治療終了40日後、3ヵ月後に実施。ベースラインからの変化および決定的な悪化までの時間(TDD)が評価された。悪化は10点以上の増加と定義された。 主な結果は以下のとおり。・HR+コホートは、T-Dxd群331例vs.TPC群163例。年齢中央値は56.8歳vs.55.7歳、IHC 1+の患者が両群とも約58%を、前治療はCDK4/6阻害薬が約70%を占めた。・両群とも、ベースラインで92%超、2~27サイクルでは80%超の質問票遵守率だった。・ベースラインでの平均GHSスコアは、T-Dxd群36.3±21.8 vs.TPC群37.8±22.5だった。・QLQ-C30のGHS/QOLの平均変化量は、T-Dxd群では27サイクルまで安定(±10点)しており、TPC群では13サイクルまで安定していた。・倦怠感については、両群ともに治療中全サイクルを通じてQLQ-C30のスコア変化は<10点で安定していた。吐き気については、T-Dxd群で早期サイクルで<10点のスコア上昇がみられたが、7サイクル以降は減少し、安定的なスコアとなっていた。・GHS/QOLのTDD中央値はT-DXd群11.4ヵ月vs.TPC群7.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.52~0.92、p=0.0096)で、吐き気を除くすべての事前に規定したQLQ-C30サブスケールにおいてT-DXdの方がTDDが長く、痛みについてのTDD中央値はT-DXd群16.4ヵ月vs.TPC群6.1ヵ月(HR:0.40、95%CI:0.30~0.54、p<0.0001)だった。 上野氏は、今回の結果はT-DXdによる治療がTPCと比較してGHS/QOLスコアを長く維持し、QOLベネフィットを示したとし、患者視点でのQOLの向上が、DESTINY-Breast04試験の有効性・安全性を裏付けているとコメントした。

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RAS/BRAF野生型大腸がん、FOLFIRI+セツキシマブ後のセツキシマブ単剤維持療法は継続投与に非劣性を示せず(ERMES)/ESMO2022

 RAS/BRAF野生型大腸がんの1次治療において、FOLFIRIと抗EGFR抗体薬セツキシマブを投与し、その後に毒性軽減のためにセツキシマブを単剤投与する維持療法は、継続投与に対して非劣性を示すことができなかったという。この第III相ERMES試験の結果を、イタリア・Fondazione Policlinico UniversitarioのArmando Orlandi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で報告した。・対象:未治療のRAS/BRAF遺伝子野生型の進行大腸がんの成人患者 600例・試験群:FOLFIRI+セツキシマブを8サイクル投与後、PDまたは許容できない毒性が出るまでセツキシマブを単剤投与・対照群:PDまたは許容できない毒性が出るまでFOLFIRI+セツキシマブを継続投与・評価項目:[主要評価項目]8サイクルの治療を終えた患者(=mPP集団)における無増悪生存期間(PFS)の非劣性(単剤群の非劣性を示すハザード比[HR]の上限は1.33)、Grade3以上の有害事象の改善[副次評価項目]少なくとも1回投与を受けた患者(=mITT集団)におけるPFS、mPP集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、QOL 主な結果は以下のとおり。・2015年5月~2020年3月に606例が無作為化され、継続群300例と単剤群306例に無作為に割り振られた。・mITT集団は593例(継続群:296、単剤群:297)、mPP集団は337例(継続群:154、単剤群:183)で、OS中央値は22.3(15~33.8)ヵ月、脱落率は約40%であった。・mPP集団では291のイベントが発生し、PFS中央値は継続群12.2ヵ月、単剤群10ヵ月(HR:1.30、95%CI:1.03~1.64、p=0.43)で、非劣性は示されなかった。・mITT集団におけるPFS中央値は、継続群10.72ヵ月、単剤群9.01ヵ月(HR:1.1、95%CI:0.92~1.31、p=0.305)だった。・mITT集団におけるOS中央値は継続群25.3ヵ月、単剤群31.0ヵ月(HR:0.9、95%CI:0.72~1.12、p=0.327)、mPP集団におけるOS中央値は継続群30.7ヵ月、単剤群36.6ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.6~1.09、p=0.22)であった。・ORRは継続群67.5%(95%CI:59.5~74.9)、単剤群71.6%(64.5~78.0)であった。・Grade3以上の有害事象の発生率は、継続群よりも単剤群で少なかった(44.2 vs.39.9%)。主なものは皮膚障害(20.1 vs.18.0%)、好中球減少症(14.9 vs.9.8%)、下痢(11.0 vs.8.2%)、発熱性好中球減少症(5.2 vs.2.7%)、口腔粘膜炎(5.2 vs.1.6%)、疲労(4.6 vs.0.6%)だった。・サブグループ解析では、腫瘍発生部によってPFSに差があった(HR:左1.16 vs.右2.07)。 著者らは「本試験では、セツキシマブ単剤投与による維持療法の非劣性は証明されなかった。予想以上に高い脱落率とそれに伴う統計学的検出力の低下によって、単剤維持療法の非劣性が示せなかった可能性がある。現在進行中の新たな解析によって、減薬戦略の恩恵を受ける患者を選択できるかもしれない」としている。

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進展型小細胞肺がんの1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法(KEYNOTE-604)/WCLC2022

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療において、ペムブロリズマブと化学療法の併用が良好な成績を示した。試験結果は、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのRudin氏により世界肺癌学会(WCLC2022)で発表された。 ES-SCLCの1次治療におけるエトポシド+カルボプラチン(EP)とペムブロリズマブの併用はプラセボとの併用に比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することがKEYNOTE-604試験の結果で示されている(HR:0.75)。WCLC2022では、35サイクルを完遂した患者における3.5年の追跡結果が、全生存期間(OS)を含め発表された。・対象:未治療のStage IVのSCLC・試験薬群:ペムブロリズマブ+EP 3週ごと4サイクル →ペムブロリズマブ 3週ごと31サイクル(n=228)・対照群:プラセボ+EP 3週ごと4サイクル →プラセボ 3週ごと31サイクル(n=225)・評価項目[複合主要評価項目]盲検化独立中央委員会(BICR)評価のPFSとOS[副次評価項目]全奏効率(ORR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・無作為割付けからデータカットオフまでの期間は43.3ヵ月であった。 ・ITT集団のOS中央値はペムブロリズマブ群10.8ヵ月、プラセボ群9.7ヵ月であった (HR: 0.76、95%CI:0.63〜0.93)・ITT集団のPFSはペムブロリズマブ群4.8ヵ月、プラセボ群4.30ヵ月であった (HR:0.70、95%CI:0.57〜0.85)。 ・ORRはペムブロリズマブ群 70.6%、プラセボ群61.8%であった。・DoRはペムブロリズマブ群 4.2ヵ月、プラセボ群3.7ヵ月であった。・全有害事象(AE)はペムブロリズマブ群の100%、プラセボ群の99%で発現した。・免疫関連有害事象はベムプロ群の27.4%、プラセボ群の12.1%で発現した。 およそ3.5年の追跡の結果、ペムブロリズマブ+EPはES-SCLCに対し、OSとPFSに関して臨床的に意味のある改善を維持した。

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深掘りしてみよう!ベバシズマブ併用化学療法【見落とさない!がんの心毒性】第14回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》63歳男性。1年前に大腸がん(臨床病期III期)を発症し、横行結腸切除術と術後化学療法を受けた。高血圧と下肢深部静脈血栓症(以下VTE)を合併しており、オルメサルタンとエドキサバンを服用している。最近になり、咳・息切れが現れ、精査したところ肺腺がんと診断された。胸水、肝転移および微少な脳転移があり、臨床病期IVB期であった。大血管浸潤や中枢気道への露頭病変は認められなかった。ドライバー遺伝子変異は陰性で、PD-L1 TPS 1%であった。血痰や神経症状はなく、Performance statusは0であった。一次治療として、中心静脈ポートを留置した上で、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+パクリタキセル+カルボプラチン療法(IMpower150レジメン)を行う方針とした。【問題】本症例のベバシズマブ投与に関する以下の記述のうち、正しいものを1つ選んでください。a. 肺腺がんの適応はない。b. 脳転移があり禁忌である。c. 治療中のVTEがあり禁忌である。d. 投与後は高血圧の悪化に注意する。e. 中心静脈ポートの留置は禁忌である。最新の『肺癌診療ガイドライン2021年度版』において、プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを併用した治療を行うよう提案されています(CQ74 推奨の強さ: 2、エビデンスの強さ: A)。メタアナリシスでは、プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを追加することでPFSやOSの延長が認められています12,13)。本症例で紹介したIMpower150レジメンは、化学療法未治療の非小細胞肺がん患者の、とくにEGFR遺伝子変異や肝転移を有する症例において良好な成績をおさめています14)。近年の研究15)において、VEGFには免疫系への関与が示唆されており、抗VEGF薬による免疫活性化と血管正常化による遊走促進といった機序により、免疫チェックポイント阻害薬との併用(複合免疫療法)においても重要な位置付けとなってきました。一方、本稿でも紹介した通り、ベバシズマブには薬理作用に準じた特徴的な副作用が存在するため、リスクベネフィットを十分考慮した上で投与を検討すべきと思われ、投与後については徹底した副作用モニタリングが必要となります。(謝辞)本文の作成に際し、新潟県立がんセンター新潟病院・呼吸器内科 三浦 理氏に監修いただきました。1)Johnson DH, et al. J Clin Oncol. 2004;22:2184-2191.2)Sandler AB, et al. J Clin Oncol. 2009;27:1405-1412.3)Socinski MA, et al. J Clin Oncol. 2009;27:5255-5261.4)Srivastava G, et al. J Thorac Oncol. 2009;4:333-337.5)Hurwitz HI, et al. J Clin Oncol. 2011;29:1757-1764.6)Zaborowska-Szmit M, et al. J Clin Med. 2020;9:1268.7)Nalluri SR, et al. JAMA. 2008;300:2277-2285.8)Yan LZ, et al. J Oncol Pharm Pract. 2018;24:209-217.9)Dahlberg SE, et al. J Clin Oncol. 2010;28:949-954.10)Zawacki WJ, et al. J Vasc Interv Radiol. 2009;20:624-627.11)吉野 真樹ほか.日本病院薬剤師会雑誌. 2012;48:307-311.12)Lima AB, et al .PLoS One. 2011;6:e22681.13)Soria JC, et al. Ann Oncol. 2013;24:20-30.14)Socinski MA, et al. N Engl J Med. 2018;378:2288-2301.15)Manegold C, et al. J Thorac Oncol. 2017;12:194-207.講師紹介

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ニボルマブ+化学療法による肺がん術前後補助療法が生存改善(NADIM II) /WCLC2022

 ニボルマブ+化学療法による非小細胞肺がん(NSCLC)の術前後補助療法の第II相試験NADIM IIの成績が世界肺癌学会(WCLC2022)で発表された。スペイン・University Hospital Puerta de Hierro-MajadahondaのProvencio氏から発表された結果は無病生存期間(PFS)、全生存期間(OS)とも良好であった。・対象:切除可能なStage IIIA~III B (AJCC 第8版) NSCLC(EGFR/ALK変異なし)・試験群:ニボルマブ(360mg)+パクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC5)3週ごと3サイクル→手術→ニボルマブ(480mg)4週ごと6ヵ月・対照群:パクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC5)→手術→観察12週・評価項目:[主要評価項目]ITT集団における病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]主要な病理学的奏効(MPR)、OS、PFS、バイオマーカーなど 主な結果は以下のとおり。・追跡期間の中央値は 26.1ヵ月であった。・根治的手術を受けた患者はニボルマブ+化学療法群は93%、化学療法群は69.0%であった(OR:5.96、95%CI:1.65〜21.56、p=0.00807)。・追跡期間中央値26.1ヵ月のPFS中央値はニボルマブ+化学療法群は未到達、化学療法群は18.3ヵ月であった(HR:0.48、95%CI:0.25〜0.91、p=0.025)。12ヵ月PFSはそれぞれ89.3%と60.7%、24ヵ月PFSはそれぞれ66.6%と42.3%であった。・OS中央値はニボルマブ+化学療法群、化学療法群とも未到達(HR:0.40、95%CI:0.17〜0.93、p=0.034)、12ヵ月OSはそれぞれ98.2%と60.7%、24ヵ月OSはそれぞれ84.7%と63.4%であった。・ニボルマブ+化学療法群の安全性と忍容性は維持されていた。 NADIM II試験は切除可能なStage IIIA~IIIB NCSLCに対する免疫治療薬ベースの術前補助療法によるOS改善を示した最初の臨床試験であるとProvencio氏は結んだ。

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ASCO2022 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介2022 ASCO Annual MeetingCOVID-19の影響で2年続けてバーチャル開催だったASCO Annual Meetingですが、本年は3年ぶりに現地開催(オンラインもあり)となりました。本年のPresidential Themeは“Advancing Equitable Cancer Care Through Innovation”でした。会長のDr. Everett E. Vokesによれば、腫瘍学におけるイノベーションは、新規治療法だけでなく、既存の治療法の改良、遠隔医療によるアクセスの改善、さらには臨床試験の適格基準の見直しなどにも及ぶとのことです。今年の泌尿器がん領域のScientific Programは、大規模臨床試験の長期フォローアップデータやpost-hoc解析の報告が多かったように思います。そのうちいくつかを紹介いたします。ENZAMET 5年フォローアップデータ(Abstract # LBA5004)ENZAMET[試験(NCT02446405)では、転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)患者の1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)にエンザルタミドを上乗せすることで、標準治療(ADT+第1世代抗アンドロゲン薬)と比べてOSを改善すること(HR:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)がすでに報告されています(Davis ID, N Engl J Med. 2019)。今回1,125例の組み入れ患者のうち、470のOSイベントが発生した約5年のフォローアップデータが公表されました。標準治療群の5年OSは57%だったのに対し、エンザルタミド群の5年OSは67%と有意な改善効果が示されました(HR:0.70、95%CI:0.58~0.84、p<0.001)。サブグループ解析でもほぼ一貫してエンザルタミド群のOSに対するベネフィットが示されました。中でも低腫瘍量かつドセタキセル非併用の患者においてエンザルタミド上乗せのベネフィットが顕著であったと報告されています。TheraP 3年フォローアップデータ(Abstract # 5000)TheraP試験(NCT03392428)からは3年フォローアップのデータが報告されました。本試験はドセタキセル治療後の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対する、177Lu-PSMA-617 (LuPSMA)とカバジタキセルの有効性を比較したもので、すでにPSA response rate(66% vs.37%)、RECIST response rate(49% vs.24%)、PFS(HR:0.63)、Grade3~4 の有害事象の発生頻度(33% vs.53%)、そしてPRO(patient-reported outcomes)においてLuPSMAが有意に優れていたことが報告されています(Lancet. 2021)。今回は3年フォローアップに基づくOSのデータが公表されました。36ヵ月時点までのRestricted mean survival time(RMST)で評価されたOSは19.1ヵ月vs.19.6ヵ月で有意差を認めませんでした。ARAMIS post-hoc解析による転移進行パターン(Abstract # 5044)ARAMIS試験(NCT02200614)は高リスク(PSA-DT≦10ヵ月)の非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に対するダロルタミドの有効性を検証したもので、プラセボ群と比較してMFS(metastasis-free survival)を約2年延長することがすでに報告されています(Fizazi F, et al. N Engl J Med. 2019;380:1235-1246.)。今回はPSA上昇を伴う転移進行と臨床的進行(疼痛の出現が先行)についての検討結果が公表されました。データカットオフ時点でダロルタミド群の13.6%、プラセボ群の28.5%が転移進行を来していました。そのうち骨転移のみを示した患者はダロルタミド群で46.2%、プラセボ群で39.2%、リンパ節転移のみを示した患者はダロルタミド群で31.5%、プラセボ群で39.9%でした。転移進行前のPSA値はダロルタミド群で16.7ng/mL、プラセボ群で48.0ng/mLで、ダロルタミド群では、ベースラインよりも低かった(-0.71ng/mL、-3.2%)のに対し、プラセボ群では高い値(+29.5ng/mL、+181%)でした。PSA上昇を伴う転移進行を示した患者の割合は、ダロルタミド群では45.4%と、プラセボ群の63.9%より低い値でした。PSA上昇を伴う転移進行を示した患者においてPSA上昇から転移出現までの期間はダロルタミド群では7.0ヵ月、プラセボ群では5.6ヵ月でした。疼痛の出現による進行を示した患者の割合はダロルタミド群で16.9%、プラセボ群で17.7%といずれの群においても少数でした。結論として、nmCRPCに対するダロルタミド治療においては、とくにPSA上昇を伴わずに転移進行を来す患者の割合が高いため、PSA測定だけでなく、定期的な画像検査も含めてフォローアップを行うことの重要性が強調される結果となりました。REASSURE研究によるRa-223治療を受けたmCRPC患者におけるALP低下とOSとの関連(Abstract # 5041)REASSURE研究は、骨転移性CRPC患者におけるラジウム223(Ra-223)の長期安全性を評価するためのグローバル前向き観察研究で、今回は治療前(ベースライン)の血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値、治療開始後12週時点でのALP値の変化とOSとの関連に関する解析結果が報告されました。ベースラインALPが147U/L以下の患者においては、ALPが低下した場合のOSの中央値は23.0ヵ月だったのに対し、低下しなかった場合のOSの中央値は16.4ヵ月でした。またベースラインALPが147U/L超の患者においては、ALPが低下した場合のOSの中央値は12.9ヵ月だったのに対し、低下しなかった場合のOSの中央値は8.1ヵ月でした。年齢、ヘモグロビン値、前治療の内容はOSに対して直接的な影響は示しませんでした。ベースラインALP値にかかわらず、治療開始後12週時点におけるALP低下は良好なOSを予測する所見となることが示されました。ARCHES post-hoc解析によるDNA損傷修復遺伝子異常(Abstract # 5074)ARCHES試験(NCT02677896)では、転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)患者の1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)にエンザルタミドを上乗せすることで、標準治療(ADT+プラセボ)と比べてOSを改善すること(HR:0.66、95%CI:0.53~0.81、p<0.001)がすでに報告されています(Armstrong AJ, J Clin Oncol. 2022)。今回は、post-hoc解析として、生殖細胞系列のDNA損傷修復(DDR)遺伝子異常の有無と患者背景因子との関連が報告されました。全患者1,150例のうち652例が今回の解析の対象となりました(全体集団と背景因子に大きな差はなし)。652例中34例(5.2%)にCHEK2(n=8)、BRCA1/BRCA2/PALB2(n=5)、ATM(n=4)といったDDR遺伝子異常が検出されました。DDR遺伝子変異の有無と腫瘍量や診断時転移の有無といった背景因子の間には関連は見られませんでした。今回のARCHES集団における生殖細胞系列のDDR遺伝子異常の頻度はmCRPCで報告されている頻度(7~12%)(Lozano et al. Br J Cancer 2021、Pritchard et al. N Engl J Med 2016)と比べて低いものでした。KEYNOTE-426 のPFS2(Abstract # 4513)KEYNOTE-426試験(NCT02853331)は転移性のccRCCに対する1次治療としてペムブロリズマブ+アキシチニブがスニチニブと比較してOS、PFS、ORR等のアウトカムを改善することがすでに報告されています(Rini BI, et al. N Engl J Med. 2019, Powles T, et al. Lancet Oncol. 2020)。今回はいわゆるPFS2(Randomizationから後治療に対する抵抗性獲得までの期間)の解析結果が公表されました。今回の解析におけるフォローアップ期間は42.8ヵ月で、ペムブロリズマブ+アキシチニブ群の47.2%(204/432)およびスニチニブ群の 65.5%(281/429)が少なくとも1ライン以上の後治療を受けていました。後治療の内訳はペムブロリズマブ+アキシチニブ群では82.8%がVEGF/VEGFR阻害薬だったのに対し、スニチニブ群では54.8%がPD-1/PD-L1阻害薬でした。PFS2 はペムブロリズマブ+アキシチニブ群で40.1ヵ月だったのに対し、スニチニブ群では27.7ヵ月と前者で有意に良好でした(HR:0.63、95%CI:0.53~0.75)。本結果はIMDC favorable risk、intermediate/poor risk患者別のサブグループ解析においても一貫していました。CheckMate-274の膀胱がんサブグループ解析(Abstract # 4585)CheckMate-274試験(NCT02632409)では、術後再発高リスクの筋層浸潤性尿路上皮がん(膀胱・腎盂・尿管)の術後無再発生存期間(DFS)がアジュバント・ニボルマブ治療によって改善することがすでに報告されています(Bajorin DF, et al. N Engl J Med. 2021)。今回は筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に絞った解析結果が報告されました。全709例中560例がMIBCを有し、279例がニボルマブ、281例がプラセボによる治療を受けていました。12ヵ月時点でのDFSはニボルマブ群で66%、プラセボ群で45%と前者で有意に良好でした。本結果は、年齢・性別・ECOG PS・リンパ節転移の有無・PD-L1発現別のサブグループ解析でも一貫していました。Grade3~4の有害事象の発生率はニボルマブ群で17%、プラセボ群で6%でした。MIBCでも全体集団と同様あるいはより顕著なDFS延長効果が示されたことになりますが、逆に上部尿路腫瘍における結果が気になるところです。EV-301の24ヵ月フォローアップデータ(Abstract # 4516)EV-301試験(NCT03474107) では、化学療法・チェックポイント阻害薬治療後の切除不能尿路上皮がんのOSをエンフォルツマブ・ベドチン(EV)が改善することがすでに報告されています(Powles T, et al. N Engl J Med. 2021)。今回は24ヵ月の追跡フォローアップデータが公表されました。OSの中央値はEV群で12.91ヵ月、化学療法群で8.94ヵ月と前者が有意に良好でした(HR:0.704、 95%CI:0.581~0.852、1-sided p=0.00015)。EV群のCR率は6.9%、ORRは41.3%でした。治療関連有害事象発生率は全Gradeで93.9% vs.91.8%、重篤な治療関連有害事象発生率は 22.6% vs.23.4%、Grade3以上の治療関連有害事象発生率は両群とも約50%と有意な差を認めませんでした。初回報告とほぼ同様の結果が今回の追跡調査でも確認されたといえます。ATRANTISの最終解析結果(Abstract # LBA4505)ATRANTIS試験(ISRCTN25859465)はプラチナベースの1次化学療法4~8サイクル後に進行を来さなかった転移性尿路上皮がん(mUC)に対するスイッチメンテナンス・カボザンチニブの有効性を検証する無作為割り付け第II相試験で主要評価項目はPFSでした。30例がカボザンチニブ群(40mg/日)、31名がプラセボ群に割り付けられました。PFSはカボザンチニブ群で13.7週、プラセボ群で15.8週とOSともに有意差を認めませんでした。また、有害事象は疲労(56.7% vs.32.2%)、高血圧(43.3% vs.12.9%)、嘔気(30.0% vs.19.4%)、下痢(40.0% vs.6.5%)等が認められました。結論としてこのセッティングにおけるスイッチメンテナンス・カボザンチニブの有効性は証明されませんでした。おわりに総じて、本年のASCO Annual Meetingでは、泌尿器腫瘍領域に関してはすでに初回報告がなされている大規模臨床試験のフォローアップデータやpost-hoc解析の結果がほとんどであり、大きなブレークスルーは乏しかった印象があります。来年はどのような開催形式で、どのような発表がなされるのか楽しみに待ちたいと思います。

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