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転移を有する去勢感受性前立腺がん、放射線療法の追加は有効か/Lancet

 低腫瘍量のde novo転移を有する去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者の治療において、標準治療+アビラテロンと比較して標準治療+アビラテロンに放射線療法を併用すると、画像上の無増悪生存期間(PFS)と去勢抵抗性前立腺がんのない生存期間(無去勢抵抗性生存期間)が有意に延長するが、全生存期間(OS)の改善は得られないことが、フランス・Institut Gustave RoussyのAlberto Bossi氏らが実施した「PEACE-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。欧州7ヵ国の無作為化対照比較第III相試験 PEACE-1試験は、2×2ファクトリアルデザインを用いた非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2013年11月~2018年12月に欧州7ヵ国の77施設で患者を登録した(Janssen-Cilagなどの助成を受けた)。 年齢18歳以上、骨シンチグラフィ、CTまたはMRIで確認されたde novo mCSPCで、全身状態の指標であるECOG PSスコアが0~1(骨痛がある場合は2)の患者を対象とした。 これらの患者を、次の4つの治療群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。(1)標準治療(アンドロゲン除去療法単独、またはドセタキセル75mg/m2の3週間ごと6サイクル静脈内投与を併用)、(2)標準治療+アビラテロン(アビラテロン1,000mgを1日1回経口投与+プレドニゾン5mgを1日2回経口投与)、(3)標準治療+放射線療法(前立腺に対し総線量74Gyを37分割で照射)、(4)標準治療+放射線療法+アビラテロン。 主要評価項目は2つで、画像上のPFSとOSとし、低腫瘍量の転移病変を有する患者および試験集団全体においてITT解析を行った。アビラテロン非投与ではPFSが改善せず 1,172例を無作為化し、標準治療群に296例(25.3%)、標準治療+アビラテロン群に292例(24.9%)、標準治療+放射線療法群に293例(25.0%)、標準治療+放射線療法+アビラテロン群に291例(24.8%)を割り付けた。標準治療の内訳は、アンドロゲン除去療法単独が462例(39.4%)、アンドロゲン除去療法+ドセタキセルが710例(60.6%)であった。1,172例中505例(43.1%)が低腫瘍量の転移病変を有する患者だった。試験集団全体の追跡期間中央値は6.0年。 アビラテロンの投与を受けた低腫瘍量の患者(252例)では、標準治療に放射線療法を加えることで、画像上のPFSが有意に延長した。PFS中央値は、標準治療+アビラテロン群(126例)が4.4年(99.9%信頼区間[CI]:2.5~7.3)、標準治療+放射線療法+アビラテロン群(126例)が7.5年(4.0~未到達)で、補正後ハザード比(HR)は0.65(99.9%CI:0.36~1.19)であった(p=0.019)。 これに対し、アビラテロンの投与を受けなかった低腫瘍量の患者(253例)では、このような効果を認めなかった。PFS中央値は、標準治療群(127例)が3.0年(99.9%CI:2.3~4.8)、標準治療+放射線療法群(126例)が2.6年(1.7~4.6)で、補正後HRは1.08(0.65~1.80)であった(p=0.61)。 また、OSについては、統計学的交互作用のため事前に定義された閾値(p>0.05)に達しなかった(p=0.12)ことから、放射線療法を受けた2つの介入群を統合して解析を行ったところ、低腫瘍量の患者では、放射線療法の併用はOSに影響を及ぼさないことが示された。OS中央値は、標準治療±アビラテロン群(253例)が6.9年(95.1%CI:5.9~7.5)、標準治療+放射線療法±アビラテロン群(252例)が7.5年(6.0~未到達)で、HRは0.98(95.1%CI:0.74~1.28)であった(p=0.86)。試験集団全体でも放射線療法追加の効果 低腫瘍量の患者では、放射線療法を併用することでmCSPCが発生するまでの期間が有意に遅延した。無去勢抵抗性生存期間中央値は、標準治療±アビラテロン群が2.5年(95%CI:2.1~2.9)、標準治療+放射線療法±アビラテロン群が3.4年(2.8~4.5)、HRは0.74(95%CI:0.60~0.92)であった(p=0.0069)。この放射線療法追加の効果は、試験集団全体においても示された(HR:0.79[0.69~0.90]、p=0.0005)。 安全性評価集団では、放射線療法を受けなかった患者(標準治療±アビラテロン群)604例中339例(56.1%)、これを受けた患者(標準治療+放射線療法±アビラテロン群)560例中329例(58.8%)で、少なくとも1つの重度有害事象(Grade3以上)が発現した。最も頻度の高い重度有害事象は、高血圧(標準治療±アビラテロン群110例[18.2%]、標準治療+放射線療法±アビラテロン群127例[22.7%])および好中球減少(40例[6.6%]、29例[5.2%])であった。 著者は、「放射線療法は、転移病変の負荷の程度を問わず、また全体的な毒性を増加させずに、重篤な泌尿生殖器イベントの発生を減少させ、高腫瘍量および低腫瘍量のde novo mCSPC患者の標準治療を構成する治療法となる可能性がある」としている。

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高リスクHR+/HER2-乳がんの1次治療、パルボシクリブ+内分泌療法vs.化学療法単独(PADMA)/SABCS2024

 高リスクHR+/HER2-転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用が国際的ガイドラインで推奨されているが、化学療法単独との比較を前向きに実施した試験は報告されていない。今回、ドイツ・German Breast Groupが実施したPADMA試験で、パルボシクリブ+内分泌療法の併用が化学療法単独に比べて、治療成功期間(TTF)と無増悪生存期間(PFS)の統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことを、Sibylle Loibl氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。 PADMA試験は、化学療法の適応のある高リスク転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬+内分泌療法を化学療法単独(±維持療法としての内分泌療法)と比較した、初の前向き多施設無作為化非盲検第IV相試験である。・対象:化学療法の適応のある未治療のHR+/HER2-転移乳がん・試験群:パルボシクリブ+内分泌療法(アロマターゼ阻害薬/フルベストラント±GnRHアゴニスト)・対照群:医師選択の化学療法(パクリタキセル/カペシタビン/エピルビシン/ビノレルビン)±維持療法として内分泌療法(タモキシフェン/アロマターゼ阻害薬/フルベストラント±GnRHアゴニスト)・評価項目:[主要評価項目]TTF(無作為化から病勢進行/治療毒性/患者希望/死亡による治療中止までの期間と定義)[副次評価項目]PFS、全生存期間(OS)、安全性、忍容性、コンプライアンスなど 主な結果は以下のとおり。・2018年4月~2023年12月にドイツの28施設で130例が登録され、うち120例(パルボシクリブ+内分泌療法群 61例、化学療法群59例)が治療を開始し解析に組み入れられた。年齢中央値は62歳(範囲:31~85歳)であった。化学療法群における医師選択の化学療法はカペシタビンが69.0%、パクリタキセルが29.3%、ビノレルビンが1.7%で、22.4%が維持療法としての内分泌療法を受けた。・TTF中央値は、追跡期間中央値36.8(範囲:0~74.4)ヵ月において、パルボシクリブ+内分泌療法群が17.2ヵ月と、化学療法群の6.1ヵ月より有意に長く(ハザード比[HR]:0.46、95%信頼区間[CI]: 0.31~0.69、p<0.001)、どのサブグループにおいても一貫していた。・PFS中央値も、パルボシクリブ+内分泌療法群が18.7ヵ月と、化学療法群の7.8ヵ月より有意に長かった(HR:0.45、95%CI:0.29~0.70、p<0.001)。・OS中央値は、パルボシクリブ+内分泌療法群が46.1ヵ月、化学療法群が36.8ヵ月と、パルボシクリブ+内分泌療法群で数値的に改善傾向がみられた。・血液毒性の発現割合はパルボシクリブ+内分泌療法群で有意に高く(全Grade:96.8% vs.56.8%、 Grade3/4:54.8% vs.6.9%)、非血液毒性は両群で同程度であった。・治療関連死亡はパルボシクリブ+内分泌療法群で1例(敗血症性ショック)みられた。 Loibl氏は、「この結果は、HR+/HER2-転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬+内分泌療法を標準治療と提唱する既存の国際的ガイドラインを支持する」と述べた。

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高リスクHR+/HER2-早期乳がんの術前療法、HER3-DXd単独vs.内分泌療法併用(SOLTI VALENTINE)/SABCS2024

 高リスクのHR+/HER2-早期乳がん患者の術前療法として、HER3-DXd単独、HER3-DXdとレトロゾール併用、化学療法を比較した第II相SOLTI VALENTINE試験の結果、HER3-DXdによる治療はレトロゾールの有無にかかわらず化学療法と同程度の病理学的完全奏効(pCR)を示し、Grade3以上の有害事象の発現は少なかったことを、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのMafalda Oliveira氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。 高リスクのHR+/HER2-早期乳がんでは、化学療法と内分泌療法の両方が有効であるにもかかわらず、再発リスクが長期にわたって持続するため、転帰を改善するための新たな戦略が必要とされている。HER3-DXdは、HER3を標的とするファーストインクラスの抗体薬物複合体で、複数の乳がんサブタイプに活性を示す可能性がある。そこで研究グループは、術前療法としてのHER3-DXd(±レトロゾール)の有効性と安全性を評価することを目的として研究を実施した。 なお、2022年の欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022)で発表されたSOLTI TOT-HER3試験において、HR+/HER2-早期乳がん患者に対するHER3-DXdの術前単回投与が、pCRの予測スコアとして開発されたCelTILスコアの有意な増加および臨床的奏効と関連していたことが報告されている。<SOLTI VALENTINE試験>・試験デザイン:並行群間非盲検無作為化非比較試験・対象:手術可能なStageII/IIIで高リスク(Ki67≧20%および/または高ゲノムリスク[遺伝子シグネチャーで定義])のHR+/HER2-早期乳がん患者・試験群1(HER3-DXd群):HER3-DXd 5.6mg/kgを21日ごとに6サイクル・試験群2(HER3-DXd+LET群):HER3-DXd(同上)とレトロゾール2.5mgを1日1回(±LH-RHアゴニスト)・比較群(化学療法群):ECまたはAC療法(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を14日または21日ごと)を4サイクル→パクリタキセル80mg/m2の毎週投与を12週間・評価項目:[主要評価項目]手術時のpCR(ypT0/is ypN0)率[副次評価項目]全奏効率(ORR)、CelTILスコアの変化、Ki-67値の変化、PAM50サブタイプの変化、再発リスクスコア(ROR)、安全性、無浸潤疾患生存期間・データカットオフ:2024年4月22日 主な結果は以下のとおり。・2022年11月~2023年9月に122例の患者が2:2:1にHER3-DXd群(50例)、HER3-DXd+LET群(48群)、化学療法群(24群)に無作為に割り付けられた。・全体の年齢中央値は51(29~82)歳、女性が99.2%、閉経前が52.9%であった。cT3/4はHER3-DXd群が42.0%、HER3-DXd+LET群が39.6%、化学療法群が29.2%、リンパ節転移陽性が76.0/77.1/75.0%、StageIIIが36.0/39.6/29.2%、Ki67中央値が35/37/35、HER3-highが80.6/83.8/88.2%、PAM50によるLuminal Bが54.0/60.4/47.8%であった。・主要評価項目である手術時のpCR率は、HER3-DXd群4.0%(95%信頼区間[CI]:0.5~13.7)、HER3-DXd+LET群2.1%(0.1~11.1)、化学療法群4.2%(0.1~21.1)であった。・ORRはHER3-DXd群70.0%(95%CI:55.4~82.1)、HER3-DXd+LET群81.3%(67.4~91.1)、化学療法群70.8%(48.9~87.4)であった。・Ki67中央値の低下は、HER3-DXd+LET群で最も顕著であった。・PAM50によるLuminal BからLuminal A/Normal-likeサブタイプへの変化は3群ともに2サイクル目の1日目に観察され、手術時にはさらに増強した。・CelTILスコアの有意な増加はHER3-DXd群およびHER3-DXd+LET群では認められたが、化学療法群では有意ではなかった。・ROR-high/mediumからROR-lowへの変化は3群ともに認められた。・治療有害事象(TEAEs)はHER3-DXd群96.0%、HER3-DXd+LET群97.9%、化学療法群95.8%に発現し、うちGrade3以上は14.0/14.6/45.8%であった。減量や治療中断・中止に至るTEAEsはHER3-DXd群で少なかった。間質性肺疾患や治療に関連する死亡は報告されなかった。・HER3-DXd群およびHER3-DXd+LET群で多く報告されたTEAEsは、悪心、脱毛、疲労、下痢などであった。 これらの結果より、Oliveira氏は「SOLTI VALENTINE試験は、HER3-DXdの早期乳がんにおける有効性および高リスクのHR+/HER2-乳がんにおける可能性を支持するものである」とまとめた。

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HER2+乳がん術前補助療法のde-escalation、トラスツズマブ+ペルツズマブ+nab-パクリタキセルが有望(HELEN-006)/Lancet Oncol

 HER2+早期乳がんに対する術前補助療法において、トラスツズマブ+ペルツズマブにドセタキセル+カルボプラチンを併用した標準レジメンより、トラスツズマブ+ペルツズマブにnab-パクリタキセルを併用したde-escalation治療のほうが有用な可能性が示唆された。中国・The Affiliated Cancer Hospital of Zhengzhou University and Henan Cancer HospitalのXiu-Chun Chen氏らが、多施設共同無作為化第III相HELEN-006試験において主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)の最終解析結果を報告した。The Lancet Oncology誌オンライン版2024年11月26日号に掲載。・対象: 18~70歳、StageII/IIIの未治療浸潤性HER2+乳がん患者・試験群:nab-パクリタキセル(125mg/m2、1、8、15日目)+トラスツズマブ(負荷量8mg/kg、維持量6mg/kg)+ペルツズマブ(負荷量840mg、維持量420mg)を3週ごと6サイクル投与・対照群:ドセタキセル(75mg/m2、1日目)+カルボプラチン(AUC6、1日目)+トラスツズマブ(負荷量8mg/kg、維持量6mg/kg)+ペルツズマブ(負荷量840mg、維持量420mg)を3週ごと6サイクル投与・主要評価項目:pCR(ypT0/is ypN0)(modified ITT) 主な結果は以下のとおり。・2020年9月20日~2023年3月1日に689例を無作為に割り付けた(nab-パクリタキセル群343例、ドセタキセル+カルボプラチン群346例)。689例全例がアジア人女性で、 669例(nab-パクリタキセル群332例、ドセタキセル+カルボプラチン群337例)が1回以上の試験治療を受けた。年齢中央値は50歳(四分位範囲:43~55)、追跡期間中央値は26ヵ月(同:19~32)だった。・pCR例は、nab-パクリタキセル群が220例(66.3%、95%信頼区間[CI]:61.2~71.4)、ドセタキセル+カルボプラチン群が194例(57.6%、95%CI:52.3~62.9)だった(複合オッズ比:1.54、95%CI:1.10~2.14)。 ・Grade3/4の有害事象は、nab-パクリタキセル群で100例(30%)、ドセタキセル+カルボプラチン群で128例(38%)に認められ、多かったGrade3/4の有害事象は悪心(nab-パクリタキセル群、ドセタキセル+カルボプラチン群の順に22例、76例)、下痢(25例、55例)、神経障害(43例、8例)であった。 ・重篤な薬剤関連有害事象は、nab-パクリタキセル群で3例、ドセタキセル+カルボプラチン群で5例に報告され、両群とも治療関連死亡は報告されなかった。  著者らは、「この結果は、HER2+早期乳がんに対する術前補助療法において、トラスツズマブおよびペルツズマブとnab-パクリタキセルの併用が標準レジメンより利点がある可能性を示唆するものであり、この新しい併用療法がこの患者集団における術前補助療法の新たな標準療法を確立する可能性を示唆する」としている。

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改訂GLに追加のNSCLCへのニボルマブ+化学療法+ベバシズマブ、OS・PFS最終解析結果(TASUKI-52)/日本肺癌学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(Non-Sq NSCLC)の1次治療における、プラチナ製剤を含む化学療法+ベバシズマブへのニボルマブ上乗せの有用性を評価した国際共同第III相試験「TASUKI-52試験」の最終解析の結果が、第65回日本肺癌学会学術集会で中川 和彦氏(近畿大学病院 がんセンター長)により報告された。すでにニボルマブ上乗せにより無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が改善することが報告されており1)、この結果を基に『肺癌診療ガイドライン2024年版』のCQ64~66に本試験のレジメンが追加されていた2)。試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験(日本、韓国、台湾で実施)対象:EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子がいずれも陰性で、StageIIIB/IVの未治療Non-Sq NSCLC患者550例(日本人:371例)試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン(AUC 6)+パクリタキセル(200mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)を3週ごと最大6サイクル→ニボルマブ+ベバシズマブ 275例(日本人:188例)対照群(プラセボ群):プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブを3週ごと最大6サイクル→プラセボ+ベバシズマブ 275例(日本人:183例)評価項目:[主要評価項目]独立画像判定委員会(IRRC)判定によるPFS[副次評価項目]OS、奏効割合(ORR)、治験担当医師評価によるPFS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・両群間の患者背景はバランスがとれており、年齢中央値は66歳、女性の割合は約25%であった。・OS中央値は、ニボルマブ群31.6ヵ月、プラセボ群24.7ヵ月であり、ニボルマブ群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.88、p=0.0013)。4年OS率は、それぞれ34.7%、22.1%であった。・OSのサブグループ解析において、骨転移を有する集団(HR:1.01)以外はニボルマブ群が良好な傾向にあった。・PD-L1発現状況別にみた各群のOS中央値(HR、95%CI)は以下のとおりであった。 -PD-L1<1%:28.5ヵ月vs.23.8ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.58~1.06) -PD-L1 1~49%:31.2ヵ月vs.22.7ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.43~0.91) -PD-L1≧50%:33.4ヵ月vs.26.6ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.48~1.10)・ベースライン時の脳転移の有無別にみた各群のOS中央値(HR、95%CI)は以下のとおりであった。 -脳転移あり:41.8ヵ月vs.25.3ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.42~1.39) -脳転移なし:31.2ヵ月vs.24.7ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.57~0.88)・4年追跡時の治験担当医師評価によるPFS中央値は、ニボルマブ群9.9ヵ月、プラセボ群8.2ヵ月であり、ニボルマブ群が有意に良好であった(HR:0.61、95%CI:0.50~0.74、p<0.0001)。4年PFS率は、それぞれ13.7%、3.3%であった。・4年生存の有無別に背景因子を比較すると、ニボルマブ群における4年生存の因子として、年齢65歳以下、骨転移なしが挙げられた。・ニボルマブ群の4年生存例におけるORRは87.3%、4年奏効持続割合は43.9%であった。・ニボルマブ群の4年生存例では、後治療を受けていない割合が41.8%であった。ニボルマブ群の後治療を受けた患者のうち、放射線療法を受けた割合は39.1%、手術を受けた割合は6.5%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象はニボルマブ群76.2%、プラセボ群74.9%に発現した。安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。

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早期TN乳がん、多遺伝子シグネチャー活用で予後改善/BMJ

 切除可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんの予後は満足のいくものではなく、術後補助化学療法の最適化が必要とされている。中国・復旦大学上海がんセンターのMin He氏らは、開発した多遺伝子シグネチャーを用いてリスク層別化を行い、それに基づく高リスク患者に対してアントラサイクリン/タキサンベースの治療にゲムシタビン+シスプラチンを組み合わせた強化レジメンが、無病生存期間(DFS)を改善し毒性は管理可能であったことを示した。BMJ誌2024年10月23日号掲載の報告。統合mRNA-lncRNAシグネチャーを用いてリスク層別化、DFSを評価 研究グループは2016年1月3日~2023年7月17日に、中国の7つのがんセンターで、切除可能なTN乳がん患者に対して多遺伝子シグネチャーを用いることで、最適な個別化補助療法の提供が実現可能かを評価する多施設共同第III相無作為化試験を行った。 被験者は、早期TN乳がんで根治手術を受けた18~70歳の女性。研究グループが開発した、統合されたmRNA-lncRNAシグネチャー(3つのmRNA[FCGR1A、RSAD2、CHRDL1]、2つのlncRNA[HIF1A-AS2、AK124454])を用いてリスク層別化を行い、高リスク患者を強化補助化学療法(ドセタキセル+エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル後、ゲムシタビン+シスプラチンを4サイクル)を受ける群(A群)、または標準療法(エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル後、ドセタキセルを4サイクル)を受ける群(B群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。低リスクの患者はB群と同様の補助化学療法を受けた(C群)。 主要評価項目は、A群vs.B群についてITT解析で評価したDFS。副次評価項目は、B群vs.C群のDFS、無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)および安全性などであった。強化補助化学療法vs.標準療法、3年DFS率のHRは0.51 504例が登録され(A群166例、B群170例、C群168例)、498例が試験の治療を受けた。追跡期間中央値45.1ヵ月の時点で、3年DFS率はA群90.9%、B群80.6%であった(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.28~0.95、p=0.03)。 3年RFS率は、A群92.6%、B群83.2%(HR:0.50、95%CI:0.25~0.98、p=0.04)。3年OS率は、A群98.2%、B群91.3%(0.58、0.22~1.54、p=0.27)であった。 同様の化学補助療法を受けたB群vs.C群の評価では、C群のほうがDFS率が有意に高率であり(3年DFS率:C群90.1% vs.B群80.6%、HR:0.57[95%CI:0.33~0.98]、p=0.04)、RFS率(3年RFS率:94.5% vs.83.2%、0.42[0.22~0.81]、p=0.007)、OS率(3年OS率:100% vs.91.3%、0.14[0.03~0.61]、p=0.002)もC群が有意に高率であった。 Grade3/4の治療関連有害事象の発現率は、A群で64%(105/163例)、B群で51%(86/169例)、C群で54%(90/166例)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

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再発・転移子宮頸がんへのtisotumab vedotin、日本人でも有望な結果/日本癌治療学会

 再発・転移子宮頸がんに対する新規ADC・tisotumab vedotinは、担当医師の選択による化学療法と比較して全生存率を有意に改善したことが昨年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2023)で報告された。この国際共同第III相ランダム化非盲検試験innovaTV 301の日本人のサブグループの解析結果を、第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)において久留米大学の西尾 真氏が発表した。・対象:再発・転移子宮頸がん患者(化学療法+ベバシズマブ、抗PD-(L)1療法後に病勢進行)・試験群:tisotumab vedotin(2.0mg/kg、3週ごと:TV群)対照群:医師選択の化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド:CT群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・全体集団502例中、日本人は101例(TV群50例、CT群51例)だった。日本人サブグループは年齢中央値50歳、92%が転移、63%がベバシズマブ、9%が抗PD-(L)1療法を受けていた。2023年7月24日のデータカットオフ時点における追跡期間の中央値は13.7ヵ月だった。【OS】(中央値)全体:TV群11.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.8~14.9)、CT群9.5ヵ月(95%CI:7.9~10.7)日本人:TV群15.0ヵ月(95%CI:9.7~NE)、CT群8.5ヵ月(95%CI:6.8~10.6)(ハザード比)全体:0.70(95%CI:0.54~0.89)日本人:0.45(95%CI:0.27~0.77)【PFS】(中央値)全体:TV群4.2ヵ月(95%CI:4.0~4.4)、CT群2.9ヵ月(95%CI:2.6~3.1)日本人:TV群4.0ヵ月(95%CI:3.0~4.4)、CT群2.0ヵ月(95%CI:1.5~3.0)(ハザード比)全体:0.67(95%CI:0.54~0.82)日本人:0.63(95%CI:0.42~0.95)【ORR】全体:TV群17.8%、CT群5.2%日本人:TV群24%、CT群2%・日本人サブグループにおける主な治療関連有害事象は、TV群では結膜炎(47%[Grade3以上0%])、悪心(39%[0%])、末梢感覚神経障害(37%[2%])、CT群では悪心(42%[6%])、貧血(42%[21%])、好中球減少症(24%[20%])、好中球数減少(24%[12%])であった。 西野氏は「innovaTV 301試験の日本人サブグループの解析結果は全体集団と一致しており、TVはCTと比較してすべての評価項目で有意な改善をもたらし、安全性プロファイルも同等だった。TVは再発転移子宮頸がんの日本人患者において、化学療法後の次療法として有望だろう」とまとめた。 この結果を受け、tisotumab vedotinは2次または3次治療の再発または転移を有する子宮頸がんを適応として、日本における承認申請が行われている。

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乳がん薬物療法の最新トピックス/日本癌治療学会

 第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で企画されたシンポジウム「明日からの乳癌診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」において、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が、乳がん薬物療法の最新トピックスとして、KEYNOTE-522レジメンの使いどころ、HER2ゼロ/低発現/超低発現の課題、新たなPI3K阻害薬inavolisibを取り上げ、講演した。高リスク早期TN乳がんへのKEYNOTE-522レジメンの使いどころ 切除可能トリプルネガティブ(TN)乳がんの標準治療としては、術前に化学療法を行い術後にカペシタビンやオラパリブを投与する治療があるが、KEYNOTE-522試験の結果から術前・術後にペムブロリズマブを使えるようになった。 KEYNOTE-522試験は、主にStageII/IIIのTN乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセル → AC/ECの術前・術後にペムブロリズマブを併用し、予後改善を検討した第III相試験である。本試験で、病理学的完全奏効(pCR)割合、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間の改善が認められ、現在、ペムブロリズマブ併用レジメンが標準治療となっている。また、サブグループ解析において、StageやPD-L1の発現、pCR/non-pCRにかかわらず一貫した有効性が示され、StageII/IIIに広く使用できる。一方、免疫チェックポイント阻害薬は免疫関連有害事象(irAE)のリスクがある。術前治療においてGrade3以上のirAEが13%に認められており、5年EFSの9%のベネフィットとのバランスが議論になっているという。 今回、尾崎氏はKEYNOTE-522レジメンの日常診療におけるクリニカルクエスチョン(CQ)のうち4つを取り上げ、自施設(がん研究会有明病院)の方針や考えを紹介した。CQ:T2N0M0 cStageIIAのような比較的リスクの低い症例に対しても使用すべきか?T2N0症例における5年EFSは10%の差があり、TN乳がんは再発すると予後が約2年であることから、使用するようにしている。CQ:ホルモン受容体が弱陽性(ER 1~9%)の症例に使用すべきか?KEYNOTE-522試験にはER 1~9%は含まれていないが、ER 1~9%はTN乳がんとして治療すべきという考えがあり、最近の論文ではThe Lancet Regional Health-Europe誌にもそのように記載されている。ESMO2024でER 1~9%に対するリアルワールドデータが報告され、pCR割合は75%とTN乳がんと同程度だった。がん研究会有明病院ではER 1~9%もTN乳がんと診断して使用している(必ずしも保険が適用されるとは限らないため、各施設での判断が必要)。CQ:アントラサイクリンパートでG-CSF製剤の予防投与をするか?KEYNOTE-522試験での発熱性好中球減少症の発現割合は18%と報告されている。がん研究会有明病院の青山 陽亮氏の発表では22.9%と報告されており(JSMO2024)、多くはアントラサイクリンパートで発現しているため、G-CSF製剤の1次予防投与を推奨している。CQ:術後の最適な治療法は?pCR/non-pCRにかかわらずペムブロリズマブの使用が標準治療になっているが、non-pCRの場合のカペシタビン、生殖細胞系列BRCA病的バリアントを有する場合のオラパリブも世界的に標準治療と位置付けられている。pCRの場合にペムブロリズマブを省略可能かどうかが世界中で議論されており、それを検討するためのOptimICE-pCR試験が2,000例規模で進行中である。また、non-pCRではより有効な治療選択肢が必要とされており、その1つとしてdatopotamab deruxtecan+デュルバルマブが検討されている(TROPION-Breast03試験)。また、周術期ペムブロリズマブ投与後の再発症例は非常に予後不良であることから、再発症例に対してペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブで比較する医師主導治験(WJOG16522B、PRELUDE試験)を開始予定である(治験調整事務局:尾崎氏)。HER2ゼロ/低発現/超低発現の区別は喫緊の課題 次に尾崎氏は、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の適応に関連するHER2ゼロ/低発現/超低発現について取り上げた。 HR+HER2低発現/超低発現乳がんを対象としたDESTINY-Breast06試験において、T-DXdの有効性が示された。HER2超低発現の定義は、IHC0で10%以下の細胞に不完全な染色がある場合とされており、HER2-乳がんのうち20~25%とされている。この超低発現乳がんでも低発現乳がんと一貫した有効性が報告された。ESMO2024では、各施設でIHC0と判断された乳がんのうち、中央では24%がHER2低発現、40%が超低発現と判定されたとの報告があり、約6割がT-DXdのベネフィットが得られる可能性がある。T-DXdは今年8月、FDAからHER2低発現/超低発現の転移再発乳がん治療を対象として「画期的治療薬」として指定されており、日本でもすでに効能・効果追加の一部変更承認申請がなされていることから、尾崎氏は「HR+HER2ゼロとHER2低発現、超低発現の区別が喫緊の課題」と述べた。新規PI3K阻害薬inavolisibがFDA承認、日本における課題 尾崎氏は最後に、昨年末のサンアントニオ乳がんシンポジウム2023で初めて第III相INAVO120試験の主要評価項目である無増悪生存期間が発表され、そのわずか10ヵ月後の今年10月10日にFDAで承認されたPI3K阻害薬のinavolisibについて紹介した。 INAVO120試験は、術後内分泌療法中に再発もしくは終了後12ヵ月以内に再発し、PIK3CA変異があるHR+HER2-乳がんを対象とした試験で、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの3剤併用の有効性が示された。 現在、尾崎氏が考えるHR+HER2-乳がんに対する薬物療法は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬を投与後、PIK3CA/AKT/PTEN変異の有無によって2次治療を選択、その後、ホルモン療法耐性、ホルモン感受性なし、visceral crisisの場合は抗体薬物複合体や化学療法、という流れである。inavolisibは再発診断時からPIK3CA変異を検出する必要があるため、尾崎氏は「米国では、再発1次治療としてinavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの併用がすでに承認され標準治療となるため、将来もしinavolisibが日本でも開発され承認されれば、日本でも同様に再発時点で遺伝子検査にてPIK3CA変異を確認する必要がある」と課題を提示した。

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高リスク網膜芽細胞腫の術後CEV療法、3サイクルvs.6サイクル/JAMA

 片眼性の病理学的高リスク網膜芽細胞腫の術後補助療法において、6サイクルの化学療法(CEV:カルボプラチン+エトポシドビンクリスチン)に対して3サイクルのCEV療法は5年無病生存率が非劣性であり、6サイクルのほうが有害事象の頻度が高く、QOLスコアの低下が大きいことが、中国・中山大学のHuijing Ye氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月21日号に掲載された。中国の非盲検無作為化非劣性試験 本研究は、病理学的高リスク網膜芽細胞腫患者に対する術後CEV療法の有効性に関して、6サイクルに対する3サイクルの非劣性の検証を目的とする非盲検無作為化試験であり、2013年8月~2024年3月に中国の2つの主要な眼治療施設で患者を登録した(Sun Yat-Sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成を受けた)。 高リスクの病理学的特徴(高度な脈絡膜浸潤、視神経後方への進展、強膜浸潤)を有する片眼性の網膜芽細胞腫に対する摘出術を受けた患者187例(年齢中央値25ヵ月[四分位範囲[IQR]:20.0~37.0]、女児83例[44.4%])を対象とした。これらの患児を、術後CEV療法を3サイクル行う群(94例)またはこれを6サイクル行う群(93例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は5年無病生存率とし、非劣性マージンを12%に設定した。無病生存は、無作為化から、局所再発、領域再燃、遠隔転移、対側眼の網膜芽細胞腫、2次原発がん、全死因死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間と定義した。5年全生存率には差がない 全例が試験を完了し、追跡期間中央値は79.0ヵ月(IQR:65.5~102.5)であった。無病生存イベントは19例(3サイクル群9例[9.6%]、6サイクル群10例[10.8%])発生した。局所領域の治療失敗を7例(4例[4.3%]、3例[3.2%])、遠隔転移を15例(7例[7.4%]、8例[8.6%])に認めた。 主要評価項目の推定5年無病生存率は、3サイクル群が90.4%、6サイクル群は89.2%(群間差1.2%、95%信頼区間[CI]:-7.5~9.8)であり、非劣性基準を満たした(非劣性のp=0.003)。ハザード比(HR)は0.89(95%CI:0.36~2.20)だった(p=0.81)。 5年全生存率(3サイクル群91.5% vs.6サイクル群89.3%、HR:0.78[95%CI:0.31~1.98]、p=0.61)は両群間に差はなかった。2歳以上の111例における健康関連QOLの評価では、術後6ヵ月時の身体機能、精神的機能、社会生活機能の低下が、3サイクル群で少ない傾向がみられた。 また、総費用、直接費用、間接費用は、いずれも6サイクル群に比べ3サイクル群で有意に少なかった(それぞれ42.4%、41.2%、43.0%低い、すべてp<0.001)。Grade1/2の有害事象が有意に少ない 有害事象は、3サイクル群で93例中75例(80.6%)に282件、6サイクル群で93例中89例(95.7%)に681件発現した。Grade1/2の有害事象は3サイクル群で有意に少なかった(78.5% vs.95.7%、p<0.001)。治療関連死は両群とも認めなかった。 著者は、「3サイクルのCEV療法は、片眼性の病理学的高リスク網膜芽細胞腫の術後補助化学療法として6サイクルCEVに代わる有効な治療法となる可能性がある」「3サイクルCEVは、治療期間の短縮に伴うQOLの向上や経済的負担の軽減に寄与すると考えられる」「本試験は非盲検デザインであり、非劣性マージンは12%と大きめに設定されているため、慎重な解釈が求められる」としている。

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レトロウイルス感染症-基礎研究・治療ストラテジーの最前線-/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が京都市で開催され、12日のPresidential Symposiumでは、Retrovirus infection and hematological diseasesに関し5つの講演が行われた。本プログラムでは、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発がんメカニズムや、ATLの大規模全ゲノム解析の結果など、ATLの新たな治療ストラテジーにつながる研究や、ATLの病態解明に関して世界に先行し治療開発にも大きく貢献してきた日本における、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連疾患の撲滅といった今後の課題、AIDS関連リンパ腫に対する細胞治療や抗体療法の検討、HIVリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法など、最新の話題が安永 純一朗氏(熊本大学大学院生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学)、片岡 圭亮氏(慶應義塾大学医学部 血液内科)、石塚 賢治氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 人間環境学講座 血液・膠原病内科学分野)、岡田 誠治氏(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血・腫瘍制御学分野)、白川 康太郎氏(京都大学医学部附属病院 血液内科)より報告された。ATLの発がんメカニズムに関与するHTLV-1 bZIP factor(HBZ)およびTax HTLV-1はATLの原因レトロウイルスであり、細胞間感染で感染を起こす。主にCD4陽性Tリンパ球に感染し、感染細胞クローンを増殖させる。HTLV-1がコードするがん遺伝子にはTaxおよびHBZ遺伝子が含まれ、Taxはプラス鎖にコードされ一過性に発現する。一方、HBZはマイナス鎖にコードされ恒常的に発現する。これらの遺伝子の作用により、感染細胞ががん化すると考えられる。HBZはATL細胞を増殖させ、HBZトランスジェニックマウスではT細胞リンパ腫や炎症が惹起される。また、HBZタンパクをコードするだけでなく、RNAとしての機能など多彩な機能を有している。HBZトランスジェニックマウスではHBZが制御性Tリンパ球(Treg)に関連するFoxp3、CCR4、TIGITなどの分子の発現を誘導、TGF-β/Smad経路を活性化してFoxp3発現を誘導し、この経路の活性化を介し、HTLV-1感染細胞をTreg様に変換し、HTLV-1感染細胞、ATL細胞の免疫形質を決定していると考えられる。 ATL症例の検討では、TGF-β活性化により、HBZタンパク質は転写因子Smad3などを介しATL細胞核内に局在し、がん細胞の増殖が促進される。HBZ核内局在はATL発症において重要であり、TGF-β/Smad経路はATL治療ストラテジーの標的になりうると考えられる。Taxはウイルスの複製やさまざまな経路の活性化因子であり、宿主免疫の主な標的であり、ATL細胞ではほぼ検出されない。ATL細胞株のMT-1はHTLV-1抗原を発現するが、MT-1細胞ではTaxの発現は一過性である。また細胞発現解析では、Tax発現が抗アポトーシス遺伝子の発現増加と関連し、細胞増殖の維持に重要であることが示された。ATL症例では約半数にTaxの転写産物が検出され、Taxの発がんへの関与が考えられる。発がんメカニズムに関与するHBZおよびTax遺伝子の多彩な機能の解析がATLの治療ストラテジーの開発につながると考えられる。ATLの全ゲノム解析―遺伝子異常に基づく病態がより明らかに ATLは、HTLV-1感染症に関連する急速進行性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)であり、ATL発症時に重要な役割を果たす遺伝子異常について、全エクソン解析や低深度全ゲノム解析など網羅的解析が行われてきた。しかし、構造異常やタンパク非コード領域における異常など、ATLのゲノム全体における遺伝子異常の解明は十分ではなかった。 今回実施された、ATL150例を対象とした大規模全ゲノム解析は、腫瘍検体における異常の検出力がこれまでの解析より高い高深度全ゲノム解析(WGS)である。タンパクコード領域および非コード領域における変異、構造異常(SV)、コピー数異常(CNA)を解析した結果、56個のドライバー遺伝子が同定され、56個中CICなど11個の新規ドライバー遺伝子があり、このうちCIC遺伝子はATL患者の33%が機能喪失型の異常を認め、CIC遺伝子の長いアイソフォームに特異的な異常(CIC-L異常)であり、ATLにおいて腫瘍抑制遺伝子として機能していた。さらに、CIC遺伝子とATN1遺伝子異常の間には相互排他性が見られ、CIC-ATXN1複合体はATL発症に重要な役割を果たすと考えられた。また、CIC-LノックアウトマウスではFoxp3陽性T細胞数が増加しており、CIC-LがT細胞の分化・増殖を制御するうえで選択的に作用すると考えられた。 また、ATL新規ドライバー遺伝子RELは、遺伝子後半が欠損する異常をATL患者の13%に認め、遺伝子の構造異常はATL同様、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)でも高頻度に認められた。REL遺伝子の構造異常はREL発現上昇やNF-κB経路の活性化と関連し、腫瘍化を促進すると考えられた。 ATLにおけるタンパク非コード領域、とくにスプライス部位の変異の集積が免疫関連遺伝子を中心に繰り返し認められ、ATLのドライバーと考えられた。今回の解析で得られたドライバー遺伝子異常の情報をクラスタリングし、2つのグループに分子分類した結果、両群の臨床病型や予後が異なることが示された。全ゲノム解析研究はATLの新たな診断および治療薬の開発につながると考えられる。ATL治療の今後 ATLは、aggressive ATL(急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型)とindolent ATL(くすぶり型、予後不良因子を有さない慢性型)に分類され、それぞれ異なる治療戦略が取られる。aggressive ATLの標準治療(SOC)は多剤併用化学療法であり、VCAP-AMP-VECP(ビンクリスチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン―ドキソルビシン+ラニムスチン+プレドニゾロン―ビンデシン+エトポシド+カルボプラチン+プレドニゾロン)の導入により、最終的に生存期間中央値(MST)を1年以上に延長することが可能となった。同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)はHTLV-1キャリアの高齢化に伴い、全身状態が良好な70歳未満の患者におけるSOCとして施行される。2012年以降、日本ではモガムリズマブ、レナリドミド、ブレンツキシマブ ベドチン、ツシジノスタット、バレメトスタットの5剤が新規導入され、初発例に対するモガムリズマブおよびブレンツキシマブ ベドチン+抗悪性腫瘍薬の併用や、再発・難治例に対する単剤療法として使用されている。indolent ATLに対しては日本では無治療経過観察であるが、海外では有症候の場合IFN-αとジドブジン(IFN/AZT)の併用が選択される。しかし、いずれもエビデンス不足であり、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は両群の治療効果を確認する第III相試験を進行中であり、結果は2026年に公表予定である。 日本の若年HTLV-1感染者は明らかに減少し、新規に診断されたATL患者は高齢化し、70歳以上と予測される。この動向は2011年から開始された母乳回避を推奨し、母子感染を抑止する全国的なプログラムによりさらに推進されると考えられる。今後は高齢ATL患者に対するより低毒性の治療法の確立と、全国プログラムの推進によるHTLV-1感染、およびATLなどHTLV-1関連疾患の撲滅が課題である。AIDS関連悪性リンパ腫の現状 リンパ腫はAIDSの初期症状であり、AIDS関連悪性リンパ腫はHIV感染により進展し、AIDS指標疾患として中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)および非ホジキンリンパ腫が含まれる。悪性腫瘍は多剤併用療法(cART)導入後もHIV感染者の生命を脅かす合併症であり、リンパ腫はHIV感染者の死因の最たるものである。HIV自体には腫瘍形成性はなく、悪性腫瘍の多くは腫瘍ウイルスの共感染によるものである。 エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)はAIDS関連リンパ腫の最も重要なリスクファクターであり、HIV感染による免疫不全、慢性炎症、加速老化、遺伝的安定性はリンパ腫形成を亢進すると考えられている。AIDS関連リンパ腫ではEBV潜伏感染が一般的に見られ、EBV感染はDLBCL発症と深く関連するが、予後不良な形質芽球性リンパ腫(PBL)、原発性滲出性リンパ腫(PEL)との関連は不明である。バーキットリンパ腫(BL)、およびPBLは最近増加している。BLおよびホジキンリンパ腫(HD)の治療成績と予後はおおむね良好である。 AIDS関連悪性リンパ腫の治療はこれまで抗腫瘍薬と、プロテアーゼインヒビター(PI)のCYP3A4代謝活性阻害による薬物相互作用の問題があった。近年、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)の導入によりCYP3A4阻害が抑えられ、AIDS関連悪性リンパ腫患者の予後は非AIDS患者と同等になっている。 高度免疫不全マウスにヒトPEL細胞を移植したPELマウスモデルでは、PELにアポトーシスが誘導された。AIDS関連リンパ腫に対する細胞療法や抗体療法の効果が期待される。リザーバー細胞を標的としたHIV根治療法 抗レトロウイルス療法(ART)により、HIVは検出不可能なレベルにまで減少できるが、ART中止数週間後に、HIVは潜伏感染細胞(リザーバー)から複製を開始する。HIV根治達成には、HIVリザーバーの体内からの排除が必要である。 HIV根治例は2009年以来、現在まで世界で7例のみである。全例が白血病など悪性腫瘍を発症し、同種造血幹細胞移植(SCT)を受け、数年はARTなしにウイルス血症のない状態を維持した。最初のHIV根治例はCCR5Δ32アレルに関してホモ接合型(homozygous)であるドナーからSCTを受けた症例であり、5例がこのSCTを受けた。 キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法はHIV感染症領域への応用が期待されている。そこで、アルパカを免疫して作製したVHH抗体をもとに、より高効率にHIVに対する中和活性を示す抗HIV-1 Env VHH抗体を開発した。新たなHIV感染症の治療として、CAR-T療法への応用などを試みている。 HIVリザーバー細胞を標的として排除するアプローチとして、latency reversal agents(LRA)によるshock and killが提唱され、HIV根治のためのLRA活性を有するさまざまな薬剤の研究、開発が進められている。HIV潜伏感染細胞モデル(JGL)を用いたCRISPRスクリーニングにより、4つの新規潜伏感染関連遺伝子、PHB2、HSPA9、PAICS、TIMM23が同定され、これら遺伝子のノックアウトによりHIV転写の活性化が誘導され、潜伏感染細胞中にウイルスタンパクの発現が認められた。また、PHB2、HSPA9、TIMM23のノックアウトにより、ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)が誘導された。Mitophagy activatorのウロリチンA(UA)およびその他のマイトファジー関連化学物質は、潜伏細胞実験モデルにおいてHIV転写を再活性することが示され、in vivoにおけるHIV再活性化の誘導についての臨床試験が検討されている。 ウイルス酵素をターゲットとする最近のART療法ではHIV根治は望めず、ウイルス産生が可能なリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法が求められている。 本プログラムでは、ATLやAIDS関連リンパ腫などの病態解明や治療法について最新の話題が報告され、今後の治療ストラテジーの開発につながることが期待される。

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乳がんへのドセタキセルパクリタキセル、眼科有害事象リスクに差/日本癌治療学会

 乳がん周術期療法におけるドセタキセルパクリタキセルの眼科有害事象のリスクを比較した結果、ドセタキセルパクリタキセルと比較して流涙症のリスクが有意に高かった一方で、黄斑浮腫や視神経障害などのリスクは有意差を認めなかったことを、東京大学の祝 千佳子氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。 タキサン系薬剤は好中球減少症や末梢神経障害などさまざまな有害事象を来すことが広く知られているが、眼科有害事象についても報告がある。しかし、ドセタキセルパクリタキセルの間で眼科有害事象を比較した研究は乏しい。そこで研究グループは、早期乳がんの周術期療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した群で、眼科有害事象の発現リスクに差があるかどうかを比較するために研究を実施した。 研究グループはDeSCのレセプトデータベースを用いて、2014年4月~2022年11月に周術期補助療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した18歳以上の乳がん患者6,118例(ドセタキセル群3,950例、パクリタキセル群2,168例)を同定した。主要評価項目は流涙症、黄斑浮腫、視神経障害の発現、副次評価項目は眼科受診であった。主解析では、傾向スコアを用いたoverlap weighting法による生存時間分析を実施した。アウトカムの発生率は1万人年当たりで算出し、bootstrap法で信頼区間(CI)とp値を設定した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。●対象者の年齢中央値は65(四分位範囲:54~70)歳で、観察期間中央値は790(365~1,308)日であった。●Overlap weighting後のドセタキセル群およびパクリタキセル群の流涙症の発現率はそれぞれ127および79/1万人年、黄斑浮腫は92および114/1万人年、視神経障害は53および78/1万人年、眼科受診は428および404/1万人年であった。●ドセタキセル群はパクリタキセル群と比較して流涙症のリスクが有意に高かったが、黄斑浮腫、視神経障害、眼科受診のリスクは有意差を認めなかった。ドセタキセル群vs.パクリタキセル群のHRと95%CIは下記のとおり。 【流涙症】 ・主解析 HR:1.63、95%CI:1.13~2.37、p=0.010 ・65歳未満 HR:1.82、95%CI:0.82~4.02、p=0.14 ・65歳以上 HR:1.58、95%CI:1.04~2.42、p=0.033 【黄斑浮腫】 ・主解析 HR:0.81、95%CI:0.57~1.13、p=0.21 ・65歳未満 HR:0.65、95%CI:0.32~1.33、p=0.24 ・65歳以上 HR:0.86、95%CI:0.59~1.26、p=0.44 【視神経障害】 ・主解析 HR:0.67、95%CI:0.44~1.01、p=0.057 ・65歳未満 HR:0.51、95%CI:0.24~1.09、p=0.082 ・65歳以上 HR:0.73、95%CI:0.43~1.26、p=0.26 【眼科受診】 ・主解析 HR:1.09、95%CI:0.91~1.31、p=0.35 ・65歳未満 HR:1.08、95%CI:0.81~1.45、p=0.60 ・65歳以上 HR:1.09、95%CI:0.84~1.35、p=0.47 これらの結果より、祝氏は「2群間で流涙症リスクに差が生じた理由として、薬剤特性の違いが涙液中の濃度や曝露時間に影響したり、添加物の違いが関係したりしている可能性がある」と示唆したうえで、「実臨床を反映した大規模診療データベースの解析の結果、乳がん患者において周術期療法としてのドセタキセル使用はパクリタキセル使用と比較して流涙症のリスクが有意に高く、とくに65歳以上で顕著であった。ドセタキセルまたはパクリタキセルの治療選択の際は、起こりうる眼科有害事象に留意する必要がある」とまとめた。

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再発・転移子宮頸がん、化学療法+cadonilimabがPFS・OS改善/Lancet

 持続性、再発または転移を有する子宮頸がんの1次治療において、標準治療の化学療法単独と比較して、化学療法にPD-1とCTLA-4のシグナル伝達経路を同時に遮断する二重特異性抗体cadonilimabを追加すると、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・復旦大学上海がんセンターのXiaohua Wu氏らが実施した「COMPASSION-16試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年10月26日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 COMPASSION-16試験は、標準治療の化学療法へのcadonilimab追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年9月~2022年6月に中国の59施設で患者を登録した(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 年齢18~75歳、持続性、再発または転移(StageIVB)を有する子宮頸がんと診断され、根治的手術または同時化学放射線療法の適応がなく、病変に対する全身療法による前治療歴がなく、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)が0または1の患者を対象とした。 被験者を、cadonilimab(10mg/kg)またはプラセボを静脈内投与する群に1対1の割合で無作為化に割り付けた。全例に、ベバシズマブ(15mg/kg)の投与または非投与下に、化学療法(シスプラチン[50mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 4~5]+パクリタキセル[175mg/m2])を3週ごとに6サイクル施行し、引き続き3週ごとに最長2年間の維持療法を行った。 主要評価項目は2つで、最大の解析対象集団(FAS)におけるPFS(盲検下独立中央判定による)とOSとした。2年全生存率は、cadonilimab群62.2% vs.プラセボ群48.4% 445例の女性を登録し、222例をcadonilimab群に、223例をプラセボ群に割り付けた。ベースラインの全体の年齢中央値は56歳(四分位範囲:50~62)で、287例(64%)はECOG PSが1、370例(83%)は扁平上皮がん、215例(48%)は同時化学放射線療法による前治療歴あり、323例(73%)は転移性病変を有していた。ベバシズマブは、265例(60%)が使用していた。 追跡期間中央値17.9ヵ月の時点におけるPFS中央値は、プラセボ群が8.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.7~9.6)であったのに対し、cadonilimab群は12.7ヵ月(11.6~16.1)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.80、p<0.0001)。 追跡期間中央値25.6ヵ月時のOS中央値は、プラセボ群の22.8ヵ月(95%CI:17.6~29.0)に比べ、cadonilimab群は未到達(27.0~評価不能)であり有意に優れた(死亡のHR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.0011)。24ヵ月全生存率は、cadonilimab群62.2%(95%CI:55.2~68.5)、プラセボ群48.4%(41.1~55.4)だった。10%でGrade3以上の免疫関連有害事象 盲検下独立中央判定による客観的奏効(完全奏効+部分奏効)の割合はcadonilimab群で高く(83% vs.69%)、完全奏効の割合もcadonilimab群で高率(36% vs.23%)だったが、病勢コントロール率は両群で同程度であった(94% vs.92%)。また、奏効期間中央値はcadonilimab群で長く(13.2ヵ月 vs.8.2ヵ月)、奏効までの期間中央値は両群で同じ(1.5ヵ月 vs.1.5ヵ月)だった。 Grade3以上の試験治療下での有害事象は、cadonilimab群で85%、プラセボ群で80%に発現し、両群とも好中球数の減少(cadonilimab群41%、プラセボ群46%)、白血球数の減少(28%、36%)、貧血(17%、26%)の頻度が高かった。試験薬の投与中止に至った有害事象は、cadonilimab群28%、プラセボ群11%に、死亡に至った有害事象はそれぞれ5%(12例)および3%(7例)に発現し、このうち治療関連死は4%(9例)および3%(6例)だった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、cadonilimab群で82%、プラセボ群で79%に、Grade3以上の免疫関連有害事象はそれぞれ10%(22例)および<1%(2例)に発現した。 著者は、「これらの知見は、プラチナ製剤ベースの化学療法±ベバシズマブにcadonilimabを追加することで、PD-L1の陽性/陰性を問わず、またベバシズマブの投与が可能か否かにかかわらず、生存ベネフィットがもたらされる可能性を示唆する」「これまでの臨床試験は、参加者のほとんどが白人であるか、高所得地域で実施されたものであったが、本試験の結果はアジア人および中所得国におけるエビデンスを付加するものである」としている。

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局所進行子宮頸がん、導入化学療法+CRTがPFS・OS改善/Lancet

 局所進行子宮頸がん患者において、短期間導入化学療法後に化学放射線療法(CRT)を行うことで、CRTのみの場合と比較して無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に延長したことが、ブラジル、インド、イタリア、メキシコおよび英国の32施設で実施された無作為化第III相試験「INTERLACE試験」で示された。英国・University College Hospital NHS TrustのMary McCormack氏らINTERLACE investigatorsが報告した。局所進行子宮頸がんの標準治療はCRTであるが、再発する患者が依然として多く、転移がんにより死に至る。結果を踏まえて著者は、「この短期間導入化学療法レジメンと7日以内のCRTを現在の標準治療と考えるべきである」とまとめている。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。6週間のカルボプラチン+パクリタキセル導入化学療法後のCRT、PFSとOSを評価 研究グループは、18歳以上で新たに診断された局所進行子宮頸がん(FIGO進行期分類[2008年]のリンパ節転移を伴うIB1期、またはIB2期、IIA期、IIB期、IIIB期、IVA期)患者を、導入化学療法+CRT群(導入化学療法併用群)またはCRT単独群に1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、施設、病期、リンパ節転移の有無、3次元原体照射(3DCRT)vs.強度変調放射線治療(IMRT)、年齢、腫瘍径、組織型(扁平上皮がんvs.非扁平上皮がん)であった。 両群とも、CRTは、シスプラチン40mg/m2を週1回5週間静脈内投与と、外部放射線療法(EBRT)(45.0~50.4Gyを20~28分割)および小線源療法で総線量2Gy相当の78~86Gyを達成することとした。導入化学療法併用群では、カルボプラチンAUC2とパクリタキセル80mg/m2を週1回6週間静脈内投与し、7週目からCRTを行った。 主要評価項目は、ITT集団における治験担当医評価によるPFSならびにOSとし、全体の第1種の過誤確率を5%に制御するため階層的検定(固定順序法:PFS→OS)を行った。PFS、OSともに導入化学療法+CRTで有意に延長 2012年11月8日~2022年11月17日に、適格基準を満たした500例が無作為化された(導入化学療法併用群250例、CRT単独群250例)。患者背景は年齢中央値46歳、354例(71%)がIIB期、56例(11%)がIIIB期で、骨盤リンパ節転移ありが215例(43%)であった。 導入化学療法併用群では、230例(92%)が5サイクルの導入化学療法を完了した。導入化学療法終了からCRT開始までの期間の中央値は7日であった。CRTでシスプラチンの5サイクル投与を完了した患者は、導入化学療法併用群では212例(85%)、CRT単独群で224例(90%)であった。EBRTが実施された患者で小線源療法も受けた患者は、導入化学療法併用群で242例中238例、CRT単独群で231例中224例、計462例(92%)であり、放射線治療期間の中央値は両群とも45日であった。 追跡期間中央値67ヵ月時点で、5年PFS率は導入化学療法併用群で72%、CRT単独群で64%、PFSのハザード比(HR)は0.65(95%信頼区間[CI]:0.46~0.91、p=0.013)であり、導入化学療法併用群でPFSの有意な延長が認められた。また、5年全生存率は、導入化学療法併用群80%、CRT単独群72%、ハザード比は0.60(95%CI:0.40~0.91、p=0.015)で、導入化学療法併用によりCRT単独と比較して死亡のリスクが40%減少することが示された。 Grade3以上の有害事象は、導入化学療法併用群で250例中147例(59%)、CRT単独群で250例中120例(48%)が報告された。

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ESMO2024レポート 乳がん

レポーター紹介2024年9月13日から17日まで5日間にわたり、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)がハイブリッド形式で開催された。COVID-19の流行以降、多くの国際学会がハイブリッド形式を維持しており、日本にいながら最新情報を得られるようになったのは非常に喜ばしい。その一方で、参加費は年々上がる一方で、今回はバーチャル参加のみの会員価格で1,160ユーロ(なんと日本円では18万円超え)。日本から参加された多くの先生方がいらっしゃったが、渡航費含めると相当の金額がかかったと思われる…。それはさておき、今年のESMOは「ガイドラインが書き換わる発表です」と前置きされる発表など、臨床に大きなインパクトを与えるものが多かった。日本からもオーラル、そしてAnnals of Oncology(ESMO/JSMOの機関誌)に同時掲載の演題があるなど、非常に充実していた。本稿では、日本からの演題も含めて5題を概説する。KEYNOTE-522試験本試験は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象とした術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることの効果を見た二重盲検化プラセボ対照第III相試験である。カルボプラチン+パクリタキセル4コースのち、ACまたはEC 4コースが行われ、ペムブロリズマブもしくはプラセボが併用された。病理学的完全奏効(pCR)と無イベント生存(EFS)でペムブロリズマブ群が有意に優れ、すでに標準治療となっている。今回は全生存(OS)の結果が発表された。アップデートされたEFSは、両群ともに中央値には到達せず、ハザード比(HR):0.75、95%信頼区間(CI):0.51~0.83、5年目のEFSがペムブロリズマブ群で81.2%、プラセボ群で72.2%であり、これまでの結果と変わりなかった。OSも中央値には到達せず、HR:0.66(95%CI:0.50~0.87、p=0.00150)、5年OSが86.6% vs.81.7%と、ペムブロリズマブ群で有意に良好であった(有意水準α=0.00503)。また、pCRの有無によるOSもこれまでに発表されたEFSと同様であり、non-pCRであってもペムブロリズマブ群で良好な結果であった。この結果から、StageII以上のTNBCに対してはペムブロリズマブを併用した術前化学療法を行うことが強固たるものとなった。 DESTINY-Breast12試験本試験は脳転移を有する/有さないHER2陽性転移乳がん患者に対するトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)の有効性を確認した第IIIb/IV相試験である。脳転移を有するアームと脳転移を有さないアームが独立して収集され、主に脳転移を有する症例におけるT-DXdの有効性の結果が発表された。脳転移アームには263例の患者が登録され、うち157例が安定した脳転移、106例が活動性の脳転移を有した。活動性の脳転移のうち治療歴のない患者が39例、治療歴があり増悪した患者が67例であった。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、その他の評価項目として脳転移のPFS(CNS PFS)などが含まれた。脳転移を有する症例のPFS中央値は17.3ヵ月(95%CI:13.7~22.1)、12ヵ月PFSは61.6%と非常に良好な成績であり、これまでの臨床試験と遜色なかった。活動性の脳転移を有するサブグループでも同等の成績であったが、治療歴のないグループでは12ヵ月PFSが47.0%とやや劣る可能性が示唆された。12ヵ月時点のCNS PFSは58.9%(95%CI:51.9~65.3)とこちらも良好な結果であった。安定した脳転移/活動性の脳転移の間で差は見られなかった。測定可能病変を有する症例における奏効率は64.1%(95%CI:57.5~70.8)、測定可能な脳転移を有する症例における奏効率は71.7%(95%CI:64.2~79.3)であった。OSは脳転移のある症例とない症例で差を認めなかった。この結果からT-DXdの脳転移に対する有効性は確立したものと言ってよいであろう。これまで(とくに活動性の)脳転移に対する治療は手術/放射線の局所治療が基本であったが、今後はT-DXdによる全身薬物療法が積極的な選択肢になりうる。 CAPItello-290試験カピバセルチブは、すでにPI3K-AKT経路の遺伝子変化を有するホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)転移乳がんに対して、フルベストラントとの併用において有効性が示され、実臨床下で使用されている。本試験は転移TNBCを対象として、1次治療としてパクリタキセルにカピバセルチブを併用することの有効性を検証した二重盲検化プラセボ対照第III相試験である。818例の患者が登録され、主要評価項目は全体集団におけるOSならびにPIK3CA/AKT1/PTEN変異のある集団におけるOSであった。結果はそれぞれ17.7ヵ月(カピバセルチブ群)vs. 18.0ヵ月(プラセボ群)(HR:0.92、95%CI:0.78~1.08、p=0.3239)、20.4ヵ月vs. 20.4ヵ月(HR:1.05、95%CI:0.77~1.43、p=0.7602)であった。PFSはそれぞれ5.6ヵ月vs. 5.1ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.61~0.84)、7.5ヵ月vs. 5.6ヵ月(HR:0.70、95%CI:0.52~0.95)と、カピバセルチブ群で良好な傾向を認めた。奏効率もカピバセルチブ群で10%程度良好であった。しかしながら、主要評価項目を達成できなかったことで、IPATunity130試験(ipatasertibのTNBC1次治療における上乗せ効果を見た試験で、PFSを達成できなかった)と同様の結果となり、TNBCにおけるAKT阻害薬の開発は困難であることが再確認された。ICARUS-BREAST01試験本試験は抗HER3抗体であるpatritumabにderuxtecanを結合した抗体医薬複合体(ADC)であるpatritumab deruxtecan(HER3-ADC)の有効性をHR+/HER2-転移乳がんを対象に検討した第II相試験である。本試験はCDK4/6阻害薬、1ラインの化学療法歴があり、T-DXdによる治療歴のないHR+/HER2-転移乳がんを対象として行われた単アームの試験であり、主治医判定の奏効率が主要評価項目とされた。99例の患者が登録され、HER2ステータスは約40%で0であった。HER3の発現が測定され、約50%の症例で75%以上の染色が認められた。主要評価項目の奏効率は53.5%(95%CI:43.2~63.6)であり、内訳はCR:2%(0.2~7.1)、PR:51.5%(41.3~61.7)、SD:37.4%(27.8~47.7)、PD:7.1%(2.9~14.0)であった。SDを含めた臨床的有用率は62.6%(52.3~72.1)と、高い有効性を認めた。有害事象は倦怠感、悪心、下痢、好中球減少が10%以上でG3となり、それなりの毒性を認めた。探索的な項目でHER3の発現との相関が検討されたが、HER3の発現とHER3-DXdの有効性の間に相関は認められなかった。肺がん、乳がんでの開発が進められており、目の離せない薬剤の1つである。ERICA試験(WJOG14320B)最後に昭和大学先端がん治療研究所の酒井 瞳先生が発表した、T-DXdの悪心に対するオランザピンの有効性を証明した二重盲検化プラセボ対象第II相試験であるERICA試験を紹介する。T-DXdは悪心、嘔吐のコントロールに難渋することのある薬剤である(個人差が非常に大きいとは思うが…)。本試験では、5-HT3拮抗薬、デキサメタゾンをday1に投与し、オランザピン5mgまたはプラセボをday1から6まで投与するデザインとして、166例の患者が登録された。主要評価項目は遅発期(投与後24時間から120時間まで)におけるCR率(悪心・嘔吐ならびに制吐薬のレスキュー使用がない)とされた。両群で80%の症例が5-HT3拮抗薬としてパロノセトロンが使用され、残りはグラニセトロンが使用された。遅発期CR率はオランザピン70.0%、プラセボ56.1%で、その差は13.9%(95%CI:6.9~20.7、p=0.047)と、統計学的有意にオランザピン群で良好であった。有害事象として眠気、高血糖がオランザピン群で多かったが、G3以上は認めずコントロール可能と考えられる。制吐薬としてのオランザピンの使用はT-DXdの制吐療法における標準治療になったと言えるだろう。

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ESMO2024レポート 肺がん

レポーター紹介2024年9月13日から17日にかけて、ESMO2024がスペインのバルセロナで開催された。肺がん領域でも多くの注目される内容が発表されたが、その中でもとくに現在や近未来の日常臨床に影響を与えそうなものについていくつか紹介したい。すでに報告されているpositive試験のアップデート内容がある一方で、期待された第III相試験のnegativeデータも複数報告されていたことも印象的であった。LBA48:CCTG BR.31試験試験概要BR.31試験は、完全切除された非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する補助療法としてのデュルバルマブの有効性と安全性を評価する第III相二重盲検プラセボ対照試験である。試験デザイン患者は完全切除後に原則プラチナベースの化学療法を受けた後、2:1の割合でデュルバルマブ(20mg/kgを4週ごとに1年間)またはプラセボの投与を受けた。PD-L1発現が25%以上の患者で、EGFRおよびALKの遺伝子変異を持たない患者での無病生存期間(DFS)が主要評価項目であり、副次評価項目として全生存期間(OS)、生活の質(QOL)、および安全性が評価された。結果PD-L1発現が25%以上の患者群では、デュルバルマブを投与された群とプラセボ群でDFSに有意な差は認められなかった。DFS中央値はデュルバルマブ群で69.9ヵ月、プラセボ群で60.2ヵ月であり、ハザード比は0.935(p=0.642)であった。また、安全性プロファイルは従来の知見と一致しており、重大な有害事象(Grade3/4)の発生率は23.5%であった。結論完全切除後のNSCLC患者に対して、デュルバルマブはDFSの延長に寄与しないことが示された。治療関連有害事象(TRAE)は発生したものの、全体的な安全性は許容範囲内とされた。コメント本試験は、本邦も西日本がん研究機構(WJOG)を介して参加したグローバル試験であり、その結果も注目されたが、結果はnegativeであり残念であった。NSCLCの術後補助療法では、これまでにアテゾリズマブやペムブロリズマブの良好な結果が示されていたが、それらとの結果の違いの原因については明らかではない。デュルバルマブについては後述の術前・術後にデュルバルマブを使用するAEGEAN試験は良好な結果であったため、やはり免疫療法は術後投与よりも術前投与のほうが有利であることが示唆された。LBA49:AEGEAN試験研究概要AEGEAN試験において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)のクリアランスが術前治療中の病理学的効果および無イベント生存期間(EFS)に与える影響を評価することを目的とした。研究デザインこの研究では、手術可能なNSCLC患者(IIA~IIIB期)が対象となり、デュルバルマブ1,500mgとプラチナベースの化学療法を4サイクル行い、その後、12サイクルのデュルバルマブまたはプラセボを投与した。試験の探索的エンドポイントとして、ctDNAクリアランスと病理学的完全奏効(pCR)、EFSとの関連が評価された。結果ctDNAクリアランスが得られた患者では、pCR率が大幅に改善した。とくに、術前治療4サイクル後にctDNAがクリアされた患者では、EFSが有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.23、p<0.05)。また、ctDNAクリアランスが得られた患者の5年EFS率は73.4%に達し、予後良好な患者群であることが示された。結論手術可能なNSCLC患者において、術前のctDNAクリアランスはpCRおよびEFSの改善と強く関連しており、治療効果の早期予測指標として有望である。コメントAEGEANレジメンは本邦ではまだ承認されていないが、今後承認が期待されている。ctDNAクリアランスを含めた術前治療後の評価により高率にpCRを予測できるようになれば、術前療法のみで治癒し、手術を必要としない患者も将来的には予測できるようになるかもしれない。また、リキッドバイオプシーにより術後療法の必要性も判断できるようになることを期待したい。1208MO:NEJ034試験試験概要この第III相試験は、特発性肺線維症(IPF)を伴う肺がん患者に対する周術期ピルフェニドン療法の有効性と安全性を評価することを目的とした。ピルフェニドンは抗線維化および抗炎症作用を持つ薬剤であり、術後の急性増悪を予防できるかどうかが検証された。試験デザイン患者は、周術期にピルフェニドンを4週間投与された群と投与されなかった群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、術後30日以内に発生した急性増悪の割合であった。結果ピルフェニドン群で急性増悪の発生率は6.1%、対照群では10.3%と報告されたが、この差は統計学的に有意ではなかった(p=0.339)。ピルフェニドンの投与が急性増悪の予防に明確な効果を示すことはできなかった。結論日本人患者を対象としたこの試験では、ピルフェニドンが術後の急性増悪を防ぐ効果は示されなかった。コメント本邦における肺がん手術では手術関連死はほとんどなく、世界的にもきわめて良好であるが、間質性肺炎合併肺がん患者においては術後急性増悪が発生するとその致死率は約50%とされているため、本試験の結果は注目されていた。結果はnegativeであり残念であった。間質性肺炎合併肺がん患者に対する、より安全な治療法の開発が期待される。1243MO:JCOG1914試験試験概要この第III相試験は、切除不能な局所進行NSCLCを有する高齢者(75歳以上)に対する週1回のカルボプラチン(CBDCA)+nab-パクリタキセル(nab-PTX)療法と毎日の低用量CBDCA療法を比較したものである。試験デザイン患者はCBDCA+nab-PTXまたは低用量CBDCAを放射線療法と併用して投与された。化学放射線療法(CRT)後はデュルバルマブによる維持療法が推奨された。主要評価項目はOSであり、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、奏効率、患者報告アウトカム(PROs)、および安全性が評価された。結果PFSの結果では、1年PFS率はCBDCA+nab-PTX群で55.5%、低用量CBDCA群で59.0%と報告され、OSに関してもCBDCA+nab-PTX群で79.6%、低用量CBDCA群で87.3%であり、ともに有意差は確認されなかった。TRAE(Grade3/4)は両群ともに比較的多く報告され、CBDCA+nab-PTX群での治療関連死も観察された。結論高齢の日本人患者において、CBDCA+nab-PTX療法は、低用量CBDCA療法に対して優位性を示さなかった。コメント本試験は中間解析の結果、将来的にもCBDCA+nab-PTX群のOSでの優越性が示される可能性はきわめて低いと判断され、無効中止となった。本邦においては、高齢者に対するcCRTにおいて標準的な化学療法レジメンは引き続き低用量CBDCAということになる。LBA54:MARIPOSA-2試験試験概要この第III相試験は、EGFR遺伝子変異を有する進行NSCLC患者において、オシメルチニブ治療後のアミバンタマブ+化学療法併用に与える影響を評価することを目的としており、今回はアップデートされたOSが発表された。試験デザイン患者は、アミバンタマブ+化学療法、または化学療法単独の群に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPFS、副次評価項目としてOS、治療後の症状進行までの時間(TTSP)、治療中断までの時間(TTD)、および安全性が評価された。結果2回目の中間解析では、アミバンタマブ+化学療法併用群は化学療法単独群と比較してOSの延長傾向が示された(HR:0.73)。また、TTSPやTTDの観点からもアミバンタマブ併用群のほうが優れており、副作用プロファイルは既存のデータと一致していた。結論オシメルチニブ治療後の進行EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者に対して、アミバンタマブ+化学療法は全体的な生存率を改善し、今後の標準治療の1つとなる可能性がある。コメントMARIPOSA-2試験におけるアミバンタマブ+化学療法併用群と化学療法単独群の比較について報告された。2回目の中間解析でOSの延長傾向が報告された。オシメルチニブ治療後増悪時の治療選択は課題であり、本レジメンの本邦での承認が期待される。LBA55:MARIPOSA試験(抵抗性メカニズムの解析)研究概要この試験は、進行NSCLC患者に対する1次治療としてのアミバンタマブ+lazertinibの併用療法と、オシメルチニブ単独療法における獲得抵抗性メカニズムを比較することを目的としている。試験デザインEGFR変異陽性の局所進行または転移のあるNSCLC患者を対象に、アミバンタマブ+lazertinib群(429例)とオシメルチニブ群(429例)で比較した。主要評価項目はPFSであり、副次評価項目としてOS、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、および安全性が評価された。結果ctDNAを用いたGuardant360 CDx がん遺伝子パネルにより、アミバンタマブ+lazertinib群とオシメルチニブ群では抵抗性メカニズムの違いが明らかになった。とくに、MET増幅がオシメルチニブ群では9.3%の患者に認められたのに対し、アミバンタマブ+lazertinib群では1.8%と低かったことが確認された。さらに、EGFRの二次性耐性変異発生率も、アミバンタマブ+lazertinib群のほうが低かったことが報告された。結論EGFR変異を有する進行NSCLC患者において、アミバンタマブ+lazertinibはオシメルチニブと比較して、EGFRおよびMETに関連した耐性メカニズムの発生率を有意に低下させた。コメントアミバンタマブの作用機序として期待通りの結果である。とくに、治療前と治療終了時のctDNAの比較により獲得耐性メカニズムを研究した点は興味深い。アミバンタマブ+lazertinib療法も本邦での承認が期待されている。LLBA81:ADRIATIC試験研究概要ADRIATIC試験は、限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)患者を対象に、デュルバルマブ療法の有効性を評価したものである。とくに、cCRTの使用レジメンおよび予防的頭蓋照射(PCI)の影響に焦点を当てた。試験デザイン限局型SCLC患者において、cCRT後にデュルバルマブを投与した群と標準治療を比較した。PCIの使用も含めて、治療後のOSおよびPFSに与える影響が検討された。結果デュルバルマブ併用療法は、cCRT後の生存率を改善することが示されたが、PCIの有無やcCRTの内容にかかわらず、その効果は持続した。TRAE(Grade3/4)は両群で同様に発生し、安全性において大きな差は認められなかった。結論限局型SCLC患者に対するデュルバルマブ併用療法は、標準治療に比べて統計学的に有意な生存利益をもたらした。とくに、PCIの使用にかかわらず良好な結果が示されており、今後の標準治療として採用される可能性がある。コメント現在、限局型SCLCに対して免疫チェックポイント阻害薬は本邦では承認されていないが、ADRIATIC試験の結果により本邦での承認も期待される。今回の内容は限局型SCLCに対する本レジメンの標準的な使用をサポートすることになると考えられる。

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ESMO2024レポート 消化器がん

レポーター紹介本年、スペインのバルセロナで欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)が、現地時間9月13~17日にハイブリッド開催で行われた。注目の演題が多数報告されていたが、今回は消化器がん(消化管がん)の注目演題について、実臨床に影響してきそうなものを含め、いくつか取り上げていきたい。胃がんと食道胃接合部がん、術前化学放射線療法は有用性を示せず(TOPGEAR試験)LBA58 - A randomized phase III trial of perioperative chemotherapy (periop CT) with or without preoperative chemoradiotherapy (preop CRT) for resectable gastric cancer (AGITG TOPGEAR): Final results from an intergroup trial of AGITG, TROG, EORTC and CCTG.TOPGEAR試験は、切除可能胃がんもしくは食道胃接合部がんに対して、周術期化学療法群(3サイクルのECF療法もしくは4サイクルのFLOT療法を術前・術後に行う)と術前化学療法群(2サイクルのECF療法もしくは3サイクルのFLOT療法を行った後、5-FU静注+45Gy/25照射の術前化学放射線療法を施行し、術後化学療法は術前と同じものを行う)を比較した第III相試験である。術前化学放射線療法の優越性を検証する試験であり、主要評価項目は全生存期間(OS)で、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、病理学的完全奏効率(pCR rate)、毒性と手術合併症およびQOLであった。2009年9月~2021年5月に15ヵ国70施設から574例が登録され、周術期化学療法群に288例、術前化学放射線療法群に286例が登録された。患者背景はT3/4が88%、リンパ節転移ありもしくは不明が61~62%およびECF使用例が67%、FLOT使用例が33%であった。pCR率は16.8% vs.8.0%と術前化学放射線療法群で有意に高かったが(p<0.0001)、R0切除率は92.4% vs.87.7%で有意差を認めなかった(p=0.09)。術後化学療法を受けられた症例は全ランダム化群で比較すると、56% vs.66%と術前化学放射線療法群で有意に低かった(p=0.01)。術前化学放射線療法群と周術期化学療法群で比較すると、OSは46.4ヵ月vs.49.4ヵ月(ハザード比[HR]:1.05、p=0.70)で術前化学放射線療法の優越性は示せず、5年OS率も44.4% vs.45.7%であった。PFSも31.4ヵ月vs.31.8ヵ月(HR:0.98、p=0.86)で優越性は示せなかった。サブグループ解析においても、とくに術前化学放射線療法の有効なグループははっきりしなかった。以上の結果より、切除可能な胃がんもしくは食道胃接合部がんに対して術前化学放射線療法の有効性は証明できなかった。今後は、化学療法+免疫チェックポイント阻害薬の周術期試験の結果が待たれるところである。HER2陽性胃がんに対する化学療法+トラスツズマブ+ペムブロリズマブ、OSを延長(KEYNOTE-811試験)1400O - Final overall survival for the phase III, KEYNOTE-811 study of pembrolizumab plus trastuzumab and chemotherapy for HER2+ advanced, unresectable or metastatic G/GEJ adenocarcinoma.KEYNOTE-811試験はHER2陽性胃がんに対する1次治療として化学療法+トラスツズマブにペムブロリズマブの上乗せ効果を検証するプラセボ使用ランダム化第III相試験で、奏効率などのデータはすでに報告されていた。今回はOSの最終解析結果が報告された。698例がランダム化され、350例がペムブロリズマブ群に、348例がプラセボ群に登録された。OSはペムブロリズマブ群vs.プラセボ群で20.0ヵ月vs.16.8ヵ月と、有意に延長した(HR:0.80、p=0.0040)。PFSも10.0ヵ月vs.8.1ヵ月(HR:0.73)、奏効率も72.6% vs.60.1%と、ペムブロリズマブ群で良好であった。サブグループ解析では、PD-L1発現がCPS1以上の場合にはOSが20.1 vs.15.7ヵ月(HR:0.79)、PFSが10.9 vs.7.3ヵ月(HR:0.72)かつ奏効率が73.2% vs.58.4%とより良好な結果であったのに対し、CPS1未満ではOSが18.2ヵ月vs.20.4ヵ月(HR:1.10)かつPFSが9.5ヵ月vs.9.5ヵ月(HR:0.99)と、ペムブロリズマブの効果が弱まる傾向があった。CPS1未満は本試験では15%に認められており、現在欧米ではHER2陽性かつPD-L1がCPS1以上の症例に対してペムブロリズマブの使用が推奨されているが、本邦でどのような条件で保険承認されるのかが注目される。肛門管がんに新たな治療選択肢の可能性が現れる(POD1UM-303試験)LBA2 - POD1UM-303/InterAACT 2: Phase III study of retifanlimab with carboplatin-paclitaxel (c-p) in patients (Pts) with inoperable locally recurrent or metastatic squamous cell carcinoma of the anal canal (SCAC) not previously treated with systemic chemotherapy (Chemo).肛門管の扁平上皮がんに対しては、局所進行例でマイトマイシン+5-FU+放射線療法が行われることが多かったが、切除不能局所再発例や転移を有する症例に対する標準治療は長らく確立されていなかった。今回、カルボプラチン+パクリタキセルを標準治療とし、抗PD-1抗体薬であるretifanlimabの上乗せ効果を検証する二重盲検プラセボランダム化第III相試験が行われ、その結果が報告された。主要評価項目はPFS、副次評価項目がOSであった。2024年4月までに308例が登録され、retifanlimab群に154例とプラセボ群に154例が登録された。年齢中央値は62歳で女性が72%、HIV感染陽性が4%、36%が肝転移を有していた。主要評価項目であるPFSは9.30ヵ月vs.7.39ヵ月とretifanlimab群で有意に延長を認めた(HR:0.63、p=0.0006)。OSは29.2ヵ月vs.23.0ヵ月、奏効率は55.8% vs.44.2%であった。本試験はPFSの観察期間中央値が約7ヵ月かつOSの観察期間中央値が約14ヵ月程度とまだ短い試験であるが、希少がんである肛門管がんの全身化学療法の標準治療はエビデンスに乏しいのが現状であった。本試験のディスカッサントも触れていたが、カルボプラチン+パクリタキセル+プラセボ群の治療成績は、従来の5-FU+シスプラチンと比較して良好であった。患者や医療者にとって、カルボプラチン+パクリタキセルおよびカルボプラチン+パクリタキセル+retifanlimabは有望な治療になりうると考えられ、本邦でも使用可能になることが待たれる状況である。局所進行直腸がんに対する臓器温存治療の可能性(NO-CUT試験)509O - Total neoadjuvant treatment (TNT) with non-operative management (NOM) for proficient mismatch repair locally advanced rectal cancer (pMMR LARC): First results of NO-CUT trial.現在、局所進行直腸がんに対する化学療法と放射線療法を用いたTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)は、非常に重要な戦略として世界中で研究が進んでいる。TNTを行った後に臨床的完全奏効(cCR)となった症例では、切除を避けて手術なしの経過観察であるNon Operative Monitoring(NOM)に持ち込める可能性も示唆されている。今回、pMMR局所進行直腸がんに対してTNTを行いcCRとなった症例に対して無遠隔再発生存期間(DRFS)を損なわないかを検証し、かつ腫瘍および血液のマルチオミクス解析を行う単群第II相試験であるNO-CUT試験の初回報告が行われた。4つのがんセンターからcT3-4N0/cTxN1-2の下部/中部pMMR局所進行直腸がん症例を対象に、4サイクルのCAPOX療法に続いて5週間にわたる化学放射線療法(カペシタビン+IMRT)を行うTNTが実施された。主要評価項目は30ヵ月の無遠隔再発生存率で、副次評価項目はpCR率、NOM群における臓器温存率であった。TNT終了後、cCRパラメータに基づくプロトコルアルゴリズム(Siena S, et al. ASCO 2023.)に従って、患者は手術群またはNOM群に割り付けられた。2018~24年に、180例がTNTを受け、164例(91%)がプロトコルどおりに治療を完了し、46例(25.5%)がpCRを達成し、NOMに割り当てられた。治療効果がincomplete response(IR)であった群(134例)では手術が行われた。30ヵ月無遠隔再発生存率はNOM群で96.9%と主要評価項目を達成した。IR群も含めた全体集団での30ヵ月無遠隔再発生存率は77%であった。NOM群の臓器温存率は85%で、局所再発は46例中7例発生し、全症例で救済手術が行われた。局所再発はすべて治療後4~18ヵ月で発生した。2024年4月1日時点で、12例の死亡(6.6%)が報告された(有害事象1例、腫瘍関連9例、その他2例)。マルチオミクス相関解析が進行中で、TNT後のctDNAはcCR例では8%で陽性であったがそれ以外では31%で陽性であり、陽性例では有意に遠隔転移再発が多く認められた。またTNTでpCRに至らなかった症例の手術後のctDNA陽性例で有意に遠隔転移再発が多いことも報告された。治療前の検体解析ではRNAシーケンスに基づく白血球スコアはcCRと関連し、Paneth細胞様表現型(CRIS-E)は遠隔転移再発と関連した。本結果より、TNTによるcCRを得られた症例では臓器温存の可能性が示唆された。本試験はまだ初回報告であること、本邦でも局所進行直腸がんに対する複数のTNTの試験が進行していることから、これらの結果が明らかになり、本邦で適切に患者に届けられる時代が来ることが待ち望まれる。MSI-H(dMMR)結腸がんの術前イピリムマブ+ニボルマブ(NICHE-2試験)LBA24 - Neoadjuvant immunotherapy in locally advanced MMR-deficient colon cancer: 3-year disease-free survival from NICHE-2.MSI-High(dMMR)の直腸がんについては、術前治療が非常に奏効することが複数報告されている。結腸がんについては転移のあるdMMR結腸がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬の有用性が報告されており、本邦でも現在切除不能dMMR結腸がんの1次治療の標準治療はペムブロリズマブであり、今後イピリムマブ+ニボルマブの登場が待たれている状況である。NICHE-2試験は局所進行dMMR結腸がんに対する術前治療としてのイピリムマブ+ニボルマブ療法の有効性を探索する単群第II相試験であり、1コース目にイピリムマブ+ニボルマブを行い、2コース目にニボルマブ単剤療法を行った後、手術を行う試験デザインである。主要評価項目は安全性と3年無病生存(DFS)率、副次評価項目はpCR率、translational research・ctDNAの変動であった。すでに高い病理学的奏効率と安全性が報告されていたが、今回3年DFS率とctDNAのデータが報告された。115例が登録され、女性が58%、T4が65%でT4bが29%、リンパ節転移ありが67%かつ33%がLynch症候群といった対象であった。既報のとおりpCR率は68%であり、3年DFS率は100%であった。ctDNAは治療前の段階では92%で陽性であったが、1コース後に45%が陰性となり、2コース後には83%が陰性となった。術前の段階でctDNA陽性であった16例のうち、術後のリンパ節転移が陽性であったのは14例中8例であった。また、術後のctDNAを用いたminimal residual diseaseの探索では、全例がctDNA陰性であった。本試験より局所進行dMMR結腸がんにおいて、イピリムマブ+ニボルマブは非常に魅力的な結果であった。本試験は2コースで術前治療が終わり、手術まで6週と定義されており、短期間で有効性が示されていることも魅力である。ESMO2024では同様の局所進行dMMR結腸がんに対してペムブロリズマブの有効性を探索したIMHOTEP試験や、ニボルマブ+relatlimab(抗LAG-3抗体)の併用療法の有効性を探索したNICHE-3試験も報告があった。局所進行MSI-H結腸がんの術前治療としての免疫チェックポイント阻害薬の有効性はおそらく確実であるが、どの対象にどの薬剤をどの期間使用するのがよいのかは、今後の研究が待たれる状況である。

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切除可能胃・食道胃接合部がん、術前化学放射線療法の追加は有効か/NEJM

 切除可能な胃または食道胃接合部の腺がんの治療において、周術期化学療法単独と比較して、周術期化学療法に術前化学放射線療法を追加しても全生存期間および無増悪生存期間は改善せず、治療関連の毒性作用の発現は同程度であることが、オーストラリア・メルボルン大学のTrevor Leong氏らが実施したTOPGEAR試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年9月14日号で報告された。国際的な無作為化第II/III相試験の第III相の結果 TOPGEAR試験は、10ヵ国(オーストララシア、カナダ、欧州)の70施設で実施した無作為化第II/III相試験であり、2009年9月~2021年5月に参加者を登録した(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。第II相の結果はすでに公表されており、今回は第III相の最終結果が報告された。 執刀医が切除可能と判定したステージT3またはT4の胃・食道胃接合部腺がん患者を対象とした。被験者を、術前化学放射線療法+周術期化学療法を受ける群(術前化学放射線療法群)、または周術期化学療法のみを受ける群(対照群)に無作為化に割り付けた。 対照群は、術前と術後にエピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル(ECF)またはエピルビシン+シスプラチン+カペシタビン(ECX)の投与を3サイクル、あるいはフルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル(FLOT)の投与を4サイクル受けた。 術前化学放射線療法群は、対照群の術前化学療法を1サイクル減らして術前化学放射線療法(放射線照射:45Gy/25回/5週、化学療法:フルオロウラシルまたはカペシタビン)を受け、引き続き対照群と同じ術後化学療法を受けた。 主要評価項目は全生存とし、副次エンドポイントは無増悪生存、病理学的完全奏効(グレード1a:遺残腫瘍0%)、毒性作用などであった。病理学的完全奏効率は良好 574例を登録し、術前化学放射線療法群に286例(平均年齢61歳、女性27%)、対照群に288例(60歳、27%)を割り付けた。全体の35%が食道胃接合部がんで、約61%が臨床的にリンパ節転移陽性であり、67%がECFまたはECXを、33%がFLOTを受けていた。手術を受けた患者における断端陰性(R0)の割合は、術前化学放射線療法群が92%、対照群は88%だった。 病理学的完全奏効率は、対照群が8%(18/225例)であったのに対し、術前化学放射線療法群は17%(36/214例)と良好であった(群間差:9%ポイント、95%信頼区間[CI]:2~15)。また、病理学的ステージT1またはT2へとダウンステージした腫瘍を有する患者の割合も、術前化学放射線療法群で高かった(32% vs.25%)。 追跡期間中央値67ヵ月の時点で、全生存期間中央値は、術前化学放射線療法群が46ヵ月、対照群は49ヵ月であり、両群間に有意な差を認めなかった(死亡のハザード比[HR]:1.05、95%CI:0.83~1.31)。3年全生存率はそれぞれ55%および58%、5年全生存率は44%および46%だった。 無増悪生存期間にも両群間に有意差はなく、術前化学放射線療法群が31ヵ月、対照群は32ヵ月であった(病勢進行または死亡のHR:0.98、95%CI:0.79~1.22)。3年無増悪生存率はそれぞれ47%および48%、5年無増悪生存率は40%および40%だった。術後化学療法を完遂した患者が有意に少なかった 主な毒性作用は、消化器毒性(術前化学放射線療法群28%、対照群25%)と血液毒性(46%、41%)で、両群間で頻度に大きな差はなかった。また、Grade3以上の毒性作用は術前化学放射線療法群で66%、対照群で61%に認めた。 Grade3以上の外科的合併症は、術前化学放射線療法群で18%、対照群で16%にみられた。30日以内の手術関連死は対照群で3例(1%)に、90日以内では術前化学放射線療法群で3例(1%)、対照群で6例(2%)に発生した。 著者は、「術前化学放射線療法の追加により、病理学的完全奏効率と腫瘍のダウンステージの割合が上昇したが、これは全生存期間や無増悪生存期間の改善には結びつかなかった」、また「周術期化学療法単独に比べ術前化学放射線療法+周術期化学療法は術後化学療法を完遂した患者の割合が低く(56% vs.66%、p=0.01)、これが潜在的な生存の改善効果を相殺した可能性がある」と述べ、「現時点では、切除可能な胃・食道胃接合部がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割はほとんどないが、今後、事後解析で術前化学放射線療法が有効な患者サブグループを特定できれば、将来の臨床試験のデザインに役立つと考えられる」としている。

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ESMO2024レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介欧州臨床腫瘍学会(European Society of Medical Oncology:ESMO)は臨床腫瘍学の国際学会では米国臨床腫瘍学会(ASCO)と並ぶ最大規模のイベントで、2024年はスペインのバルセロナにおいて9月13~17日の5日間の日程で開催された。ASCOが毎年シカゴで行われるのに対し、ESMOは欧州の各国で開催されるのが参加者のモチベーションにつながっているのか、年々演題の質が上がってきている印象である。2~4日目に最優秀演題の発表としてPresidential Symposiumが設けられ、12演題中泌尿器からは2演題(尿路上皮がんと前立腺がん)が選出された。口演発表は、Proffered PapersとMini Oralsの発表形式があり、日本からHigh grade pT1筋層非浸潤膀胱がんに対するBCG膀胱内注入療法のランダム化比較第III相試験であるJCOG1019試験も報告された。円安の影響(9月13日時点の1ユーロ=160.88円)で渡航費がかさむ今日この頃、ESMOはオンライン参加で節約をしたが、今年もPractice Changingな話題が豊富だっただけに、「現地参加したかった!」のが本音である。Presidential Symposium#LBA1 Ra223とエンザルタミドの併用療法は骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんのrPFSとOSを延長(PEACE-III試験)A randomized multicenter open label phase III trial comparing enzalutamide vs a combination of Radium-223 (Ra223) and enzalutamide in asymptomatic or mildly symptomatic patients with bone metastatic castration-resistant prostate cancer (mCRPC): First results of EORTC-GUCG 1333/PEACE-3塩化ラジウム223(Ra223)はカルシウム類似物質として骨転移巣を標的とし、崩壊時にα線を放出する放射線内用療法の治療薬で、ALSYMPCA試験において生存期間の延長が示され、日本でも2016年より臨床導入されている。近年は、新規ホルモン薬であるエンザルタミド(ENZ)やアビラテロンなどが転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)治療の主流となり、また非転移去勢抵抗性前立腺がん(m0CRPC)治療においては、アパルタミドやダロルタミドも標準治療となったことから、その使用状況は変化している。PEACE-3試験は、骨転移のあるmCRPC、無症状か軽症状、Performance Status(PS)0~1で臓器転移のない症例を対象とし、Ra223(55kBq/kgの静注、4週ごと、6サイクル)とENZ(160mg経口、連日)の併用と、ENZ単独を比較したランダム化比較第III相試験で、主要評価項目は画像上の無増悪生存(rPFS)であった。骨修飾薬は必須(119例集積後より)としていた。rPFSは片側α=0.025、β=0.10とし、ハザード比[HR]=0.68を検出するのに283イベントを必要とした。主要な副次評価項目として全生存(OS)を設定し、片側α=0.0034(中間解析)、0.0248(最終解析)でHR=0.75を検出するのに299イベントを必要とした。Ra223+ENZ群222例、ENZ群224例が登録され、ドセタキセル既治療は両群約30%、アビラテロン既治療は2~3%、骨以外の病変を有する症例は33~35%であり、バランスがとれていた。観察期間中央値42.2ヵ月時点のrPFS中央値はRa223+ENZ群で19.4ヵ月、ENZ群で16.4ヵ月(HR:0.69、95%信頼区間[CI]:0.54~0.87、p=0.0009)であり、併用群で有意な延長を認めた。OSは80%のイベント数での中間解析であったが、中央値はRa223+ENZ群で42.3ヵ月、ENZ群で35.0ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.52~0.90、p=0.0031)であり、有意な延長を認めた。安全性では、治療関連の重篤な有害事象はRa223+ENZ群で28%、ENZ群で19%とわずかな増加を認めた。とくに注目されていた骨折は5.1%と1.3%、貧血は4.6%と2.2%、好中球減少は4.6%と0%の結果であった。演者のGillessen氏は、この結果によってmCRPCの1次治療の選択肢としてRa223+ENZが新たなオプションとなった、と締めくくった。日本のRa223の適応症は「骨転移のある去勢抵抗性前立腺がん」であり、本試験の対象患者となっている。CRPCでの新規ホルモン薬は標準治療であり、骨折リスクの増加を考慮してRa223との併用は回避すべき、と考えられてきたが、本試験のように骨修飾薬の併用を徹底すれば、ENZとの併用に関しては比較的安全で有効性も期待できることが読み取れる。日本の臨床現場にとっても日常診療を変える重要な報告であった。Presidential Symposium#LBA5 筋層浸潤膀胱がんに対する術前デュルバルマブ+化学療法と根治的膀胱全摘術および術後デュルバルマブはEFS、OSを延長(NIAGARA試験)A randomized phase III trial of neoadjuvant durvalumab plus chemotherapy followed by radical cystectomy and adjuvant durvalumab in muscle-invasive bladder cancer (NIAGARA)筋層浸潤膀胱がんの標準治療は、根治的膀胱全摘術と周術期のプラチナ併用化学療法+/-術後免疫チェックポイント阻害薬であるが、術前から免疫チェックポイント阻害薬を加えることの意義は検証されていなかった。NIAGARA試験は、シスプラチン適格となる筋層浸潤膀胱がん(cT2-T4aN0/1M0)を対象として行われた国際共同ランダム化比較第III相試験で、根治的膀胱全摘術前にゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法4サイクルとGC+デュルバルマブ4サイクルにランダム化し、試験治療群では術後デュルバルマブを8サイクル行う治療が設定された。2つの主要評価項目として無イベント生存(EFS)および病理学的完全奏効(pCR)、主要な副次評価項目にOSが設定された。統計計画として、両側α=0.05が、pCRに0.001、EFSに0.049として割り振られ、いずれかが達成されればPositiveと判断するとされた。EFSが有意の場合、αはリサイクルされOSの検証にあてられる。GC+デュルバルマブ群は533例、GC群は530例の登録となり、手術はそれぞれ470例、446例で実施された。デュルバルマブの術後療法が開始された383例のうち、終了したのは288例であった。患者背景は、両群にアジア人を30%弱含み、腎機能良好(クレアチニンクリアランス60mL/min以上)はいずれも81%、リンパ節転移陽性例は5~6%であり、両群均等であった。追跡期間中央値42.3ヵ月時点のEFS中央値は、GC+デュルバルマブ群で「到達せず」、GC群で46.1ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.56~0.82、p<0.0001)であった。pCR割合は33.8%と25.8%(オッズ比:1.49、95%CI:1.14~1.96、p=0.0038)で統計学的にNegativeと2022年に報告されていたが、再解析により37.3%と27.5%(オッズ:1.60、95%CI:1.23~2.06、p=0.0005)と、有意差ありと判断される数値であった。OS中央値は両群ともに「到達せず」であり、2年OSではGC+デュルバルマブ群で82.2%、GC群で75.2%、HR:0.75(95%CI:0.59~0.93、p=0.0106)であった。有害事象は、重篤なもので69%と68%と両群に差を認めず、膀胱全摘なしに関連したものは両群ともに1%、手術延期に関連したものは2%と1%であり、術前化学療法(NAC)の増強による悪影響は少ないという結果であった。シスプラチン適格の筋層浸潤膀胱がんにおいては、周術期のGC療法に加えてデュルバルマブを用いることが新たな標準治療と考えられる、とPowles氏は報告した。この報告のディスカッサントはワシントン大学のPetros Grivas氏であり、免疫チェックポイント阻害薬の位置付けの解釈の難しさを指摘した。現在の標準治療である術後ニボルマブ療法の対象は、NAC後はpT2以上の残存腫瘍がある症例である。NIAGARA試験では、pCRとなった3分の1の症例にもデュルバルマブの術後療法が行われているため、バイオマーカーによる追加検討を求めた。とはいえ、NIAGARA試験は日本も参加して行われた第III相試験であり、近い将来薬剤承認が認められれば、日常診療が刷新されるだろう。Proffered Paper session#LBA73 免疫療法を含む1~2ライン既治療の転移のある腎細胞がんに対するニボルマブ+tivozanib併用療法はPFS、OS延長を示せず (TiNivo-2試験)Tivozanib-nivolumab vs tivozanib monotherapy in patients with renal cell carcinoma (RCC) following 1 or 2 prior therapies including an immune checkpoint inhibitor (ICI): Results of the phase III TiNivo-2 studytivozanib(Tiv)は経口血管新生阻害薬であり、ニボルマブ(Niv)との併用は第I/II相試験で有効性と安全性が確認されている。TiNivo-2試験は、免疫チェックポイント阻害薬既治療で、転移のある腎細胞がんを対象にTiv+Niv併用療法とTiv単剤とを比較したランダム化比較第III相試験である。併用療法では、Tivは0.89mgを3週間内服1週間休薬としNiv 480mg静注と併用し、単独療法ではTiv 1.34mgを3週間内服1週間休薬で投与するデザインであり、主要評価項目は中央判定のPFSであった。Tiv+Niv群は171例、Tiv群には172例が登録され、患者背景は年齢中央値63~64歳、アジア人は含まれず、IMDCリスク分類はFavorable/Intermediate/Poorが18/66~67/16%、既治療ライン数は1/2Lが61~65/35~39%でありバランスがとれていた。PFS中央値はTiv+Niv群で5.7ヵ月、Tiv群で7.4ヵ月、HR:1.10(95%CI:0.84~1.43)、p=0.49であり、有意差を認めなかった。OS中央値は17.7ヵ月と22.1ヵ月、HR:1.00(95%CI:0.68~1.46)、p=0.9868であった。Tiv+Niv群とTiv群の有害事象(All grade)は、倦怠感で29%と40%、下痢で30%と36%、嘔気で16%と28%、甲状腺機能低下症で9%と15%であり、血管新生阻害薬の用量による有害事象がTiv群に多く発現していた。Tiv+Niv群に多かったのは、貧血(17%と9%)と掻痒症(16%と6%)であった。Choueiri氏は、TiNivo-2試験はアテゾリズマブ+カボザンチニブとカボザンチニブを比較したCONTACT-03試験と同様にNegativeな結果であったことから、2次治療がPD-1抗体であっても免疫チェックポイント阻害薬の継続使用は勧められない、と締めくくった。本試験の対象症例の詳細を確認すると、「1~2ライン以内に免疫チェックポイント阻害薬使用歴があり、前治療から6ヵ月以内の症例」が適格となっていた。日常診療では、再発リスクの高い限局性腎がん術後はペムブロリズマブで1年間術後治療を行うのが標準となっている。再発後の治療選択肢として、「免疫チェックポイント阻害薬を用いるべきかどうか」は重要な臨床疑問であったが、本試験とCONTACT-03試験の結果から、重要なのは免疫チェックポイント阻害薬ではなく血管新生阻害薬の単剤を十分量で用いることである、と結論付けてもよさそうである。Mini Oral Session#LBA68 転移性去勢感受性前立腺がんに対するダロルタミド+ADTはrPFSを延長 (ARANOTE試験)Efficacy and safety of darolutamide plus androgen-deprivation therapy (ADT) in patients with metastatic hormone-sensitive prostate cancer (mHSPC) from the phase III ARANOTE trial転移のある去勢感受性前立腺がん(mHSPC)の1次治療は、ARASENS試験においてドセタキセル(DTX)+アンドロゲン除去療法(ADT)と比較し、ダロルタミド(Daro)+DTX+ADTがOS延長を示したことから、日本でも承認され日常診療で使用されている。ESMO2024で発表されたARANOTE試験は、同じmHSPCを対象として行われた国際共同ランダム化比較第III相試験で、プラセボ+ADTとDaro+ADTを比較するデザインとなっている。主要評価項目は中央判定のrPFSであった。Daro+ADT群とプラセボ+ADT群に2:1にランダム化され、それぞれ446例と223例が登録され、アジア人(日本は含まれず、中国とインドが主体)は両群に約30%含まれていた。腫瘍量はHigh-volumeが約70%、de-novo転移の症例が71~75%であり、バランスのとれた患者背景であった。rPFS中央値は、Daro+ADT群で「到達せず」、プラセボ+ADT群で25.0ヵ月(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.0001)であった。サブグループ解析では、High-volume/Low-volumeでのHRはそれぞれ0.60(95%CI:0.44~0.80)/0.30(95%CI:0.15~0.60)であり、点推定値はLow volumeで小さい結果となった。有害事象は、明らかに併用療法で増強するものは認められなかった。これらの結果から、Saad氏は、DTXを使用しないDaro+ADTもmHSPCの標準治療の1つであると結論付けた。ARANOTE試験は日本が含まれなかった試験ではあるが、日本のダロルタミドの保険適用も変更されることを期待したい。とはいえ、High-volume症例にはDaro+DTX+ADTとすべきかDaro+ADTでよいのか、回答可能な臨床試験は行われておらず、日常診療には解決しない疑問が残っている。

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切除不能大腸がん1次治療、ラムシルマブ併用のFOLFIRI対FOLFOXIRIはOSも同等(WJOG9216G)/ESMO2024

 転移のある未治療の大腸がん患者には、年齢や遺伝子変異の有無などに応じて多様な併用療法が使われており、最適な個別化が課題となっている。WJOG9216G/RECAST試験は同患者を対象に、現在は2次治療以降で使われている分子標的薬ラムシルマブを1次治療として用い、併用療法としてFOLFIRIとFOLFOXIRIを比較した国内ランダム化第II相試験である。すでに奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)が同等だったことが報告されているが、2024年9月13~17日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において、静岡県立静岡がんセンターの山崎 健太郎氏が本試験の全生存期間(OS)のデータを発表した。・試験デザイン:第II相ランダム化比較試験・対象:手術不適、化学療法未治療の局所再発/転移大腸がん、PS 0~1・試験群: アームA:ラムシルマブ+FOLFIRI(イリノテカン、ロイコボリン、5-FU)、PDまたは許容できない毒性が出るまで2週ごと継続 アームB:導入療法としてラムシルマブ+FOLFOXIRI(イリノテカン、ロイコボリン、オキサリプラチン、5-FU)を8サイクル実施後、維持療法としてラムシルマブ+5-FU+ロイコボリン、PDまたは許容できない毒性が出るまで2週ごと継続・評価項目:[主要評価項目]ORR[副次評価項目]OS、PFS、8週時点でのETS(Early Tumor Shrinkage)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2017年6月~2020年9月に、122例が割り付けられた(アームA:59例、アームB:63例)。肝臓限局性病変(32%/19%)を除き、患者特性はバランスが取れていた。・追跡期間中央値はアームAが42.1ヵ月でアームBが40.4ヵ月、OS中央値はアームAが32.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.8~36.5)でアームBが28.2ヵ月(95%CI:21.9~31.2)、ハザード比[HR]1.58(95%CI:1.03~2.41、p=0.003)と、アームBが劣る結果だった。・次治療として、R0切除(A/B群で19/11%)、放射線療法(12/16%)、化学療法(98/91%)が実施された。2次治療として化学療法を受けた患者は、アームAではFOLFOX+ベバシズマブ(45%)が最多、アームBではFOLFIRI+ラムシルマブ(26%)が最多だった。・アームA/Bを合わせたバイオマーカー解析では、治療後のIL-8値が中央値より高い患者は、低い患者と比較してOSが短かった(29.3ヵ月vs.31.6ヵ月、HR:0.60、p=0.049)。また、治療前から2サイクル目にかけてヘパリン結合性上皮成長因子(HB-EGF)レベルが上昇した患者は、低下した患者と比較して全生存期間が長かった(34.3ヵ月vs.28.2ヵ月、HR:1.78、p=0.024)。 山崎氏は「WJOG9216試験では、転移のある大腸がんに対する1次治療として、FOLFOXIRI+ラムシルマブ併用療法は、FOLFIRI+ラムシルマブ併用療法と比較して、OS、ORR、PFSの観点で優位性は示されなかった」と結論付けた。

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新規非複雑病変へのDCB、DESに非劣性示せず/Lancet

 標的血管径を問わず新規の非複雑病変を有する患者において、薬剤コーティングバルーン(DCB)血管形成術とレスキューステント留置を併用する治療戦略は、計画された薬剤溶出性ステント(DES)留置と比較し、2年後のデバイス指向複合エンドポイント(DoCE)に関して非劣性を示さなかった。中国・第四軍医大学のChao Gao氏らREC-CAGEFREE I Investigatorsが、同国43施設で実施した医師主導の無作為化非盲検非劣性試験「REC-CAGEFREE I試験」の結果を報告した。新規冠動脈病変を有する患者に対するDCB血管形成術の長期的な影響はわかっていない。Lancet誌2024年9月14日号掲載の報告。2年時のDoCE(心血管死、標的血管心筋梗塞、標的病変再血行再建術)を比較 研究グループは、急性冠症候群または慢性冠症候群で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を必要とする18歳以上の患者で、標的血管径を問わず新規の非複雑病変を有する患者を登録し、標的病変の前拡張が成功した患者を、パクリタキセルコーティングバルーンを用いたDCB血管形成術(レスキューステントオプション付き)群と第2世代のシロリムス溶出ステントを留置するDES群に、1対1の割合で無作為に割り付け、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月および24ヵ月後に追跡評価した。 割り付けに関しては、患者および治験責任医師は盲検化されなかったが、独立した臨床事象判定委員会(CEC)の委員および解析を行った統計学者は盲検化された。 主要アウトカムは、ITT集団(無作為化されたすべての患者)における24ヵ月時のDoCE(心血管死、標的血管心筋梗塞、臨床的・生理学的に適応とされた標的病変再血行再建術)で、非劣性マージンは絶対群間リスク差の片側95%信頼区間(CI)上限が2.68%未満とした。安全性についても、ITT集団で評価した。DoCE発生率はDCB群6.4%、DES群3.4%、DCBの非劣性は認められず 2021年2月5日~2022年5月1日に2,902例が登録され、前拡張に成功した2,272例が無作為化された(ITT集団:DCB群1,133例[50%]、DES群1,139例[50%])。DCB群の1,133例中106例(9.4%)は、DCBによる血管形成術が不十分でレスキューDESを受けた(ITT集団ではDCB群に含まれる)。 計2,272例の患者背景は、年齢中央値62歳(四分位範囲[IQR]:54~69)、男性1,574例(69.3%)、女性698例(30.7%)であった。 データカットオフ(2024年5月1日)時点で、追跡期間中央値は734日(IQR:731~739)であった。 24ヵ月時のDoCEは、DCB群で72例(6.4%)、DES群で38例(3.4%)に発生し、累積イベント発生率の群間リスク差は3.04%であった(片側95%CI:4.52[非劣性のp=0.65]、両側95%CI:1.27~4.81[p=0.0008])。 インターベンション中の急性血管閉塞は、DCB群では発生しなかったが、DES群では1例(0.1%)に認められた。周術期心筋梗塞はDCB群で10例(0.9%)、DES群で9例(0.8%)発生した。 本試験は、現在、延長追跡試験が進行中である。

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