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高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR・ALK遺伝子変異を有する患者は除外)・評価項目:レジメン別にみたOSとPFS、PD-L1発現状況別にみたOSとPFS(傾向スコアマッチングを実施)、安全性 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値78歳(範囲:75~95歳)、男性78%、ECOG PS 0または1が84%、PD-L1陰性(Tumor Proportion Score[TPS]1%未満)/低発現(TPS 1~49%)/高発現(TPS 50%以上)/不明がそれぞれ22%/31%/33%/14%であった。・レジメンの割合は、ICI+化学療法28%、ICI単剤34%、プラチナダブレット25%、単剤化学療法12%であった。・レジメン別にみたOS中央値は、ICI+化学療法群20.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.1~23.6)、ICI単剤群19.8ヵ月(95%CI:16.5~23.8)、プラチナダブレット群12.8ヵ月(95%CI:10.7~15.6)、単剤化学療法群9.5ヵ月(95%CI:7.4~13.4)であった。・レジメン別にみたPFS中央値は、ICI+化学療法群7.7ヵ月(95%CI:6.5~8.7)、ICI単剤群7.7ヵ月(95%CI:6.6~8.8)、プラチナダブレット群5.4ヵ月(95%CI:4.8~5.7)、単剤化学療法群3.4ヵ月(95%CI:2.6~4.0)であった。・傾向スコアマッチング後のPD-L1発現状況別にみたOSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のハザード比[HR]は、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.98(95%CI:0.67~1.42)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.11(95%CI:0.65~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.92(95%CI:0.55~1.56)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・PD-L1発現状況別にみたPFSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のHRは、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.92(95%CI:0.67~1.25)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.22(95%CI:0.71~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.86(95%CI:0.56~1.31)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・Grade3以上のirAEは、ICI+化学療法群24.3%(86例)、ICI単剤群17.9%(76例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.03)。・肺臓炎の発現率(全Grade)は、ICI+化学療法群23.4%(83例)、ICI単剤群15.6%(66例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.006)。・ステロイドを必要としたirAEは、ICI+化学療法群32.5%(115例)、ICI単剤群24.7%(105例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.02)。 植松氏は、「リアルワールドにおいて、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、高齢NSCLC患者の生存成績を改善せず、Grade3以上のirAEの発現率を増加させた。本結果から、PD-L1陽性の高齢NSCLC患者には、ICI単剤での投与が推奨される可能性がある」とまとめた。

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進行NSCLC、腫瘍治療電場療法を標準治療に上乗せでOS改善(LUNAR)/ASCO2023

 腫瘍治療電場(TTフィールド)療法は、さまざまな機序で非侵襲的にがん細胞を死滅させる治療法で、すでに膠芽腫および悪性胸膜中皮腫に対する治療として、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている(本邦では、膠芽腫について薬事承認を取得[保険適用は初発膠芽腫のみ])。非小細胞肺がん(NSCLC)については、前臨床モデルで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やタキサン系抗がん剤の効果を増強することが報告されている1-3)。そこで、転移を有するNSCLC患者を対象に、TTフィールド療法の標準治療への上乗せ効果を検証する海外第III相試験「LUNAR試験」が実施された。その結果、TTフィールド療法の上乗せにより、全生存期間(OS)が有意に改善した。本結果について、米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのTiciana Leal氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。・試験デザイン:海外第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤で治療中または治療後に進行が認められた、転移を有する22歳以上のNSCLC患者276例・試験群(TTフィールド+標準治療群):TTフィールド療法(150kHzを1日18時間以上)+標準治療(ICI[ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブのいずれか]またはドセタキセルを治験担当医師が選択) 137例・対照群(標準治療群):上記と同様の標準治療 139例・評価項目:[主要評価項目]OS(TTフィールド+標準治療群vs.標準治療群)[主要な副次評価項目]OS(TTフィールド+ICI群vs.ICI群、TTフィールド+ドセタキセル群vs.ドセタキセル群)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、組織型別のOS、組織型別のPFS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の患者背景は、年齢中央値64歳(範囲:22~86歳)、男性が65%、ECOG PS 0/1が96%、前治療のライン数1が89%、ICIによる前治療歴ありが31%であった。・ITT集団におけるOS中央値は、標準治療群が9.9ヵ月であったのに対し、TTフィールド+標準治療群は13.2ヵ月であり、TTフィールド+標準治療群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.56~0.98、p=0.035)。1年OS率はそれぞれ42%、53%、3年OS率はそれぞれ7%、18%であった。・ICIによる治療を受けたサブグループにおけるOS中央値は、ICI群が10.8ヵ月であったのに対し、TTフィールド+ICI群は18.5ヵ月であり、TTフィールド+ICI群で有意に改善した(HR:0.63、95%CI:0.41~0.96、p=0.03)。・ドセタキセルによる治療を受けたサブグループにおけるOS中央値は、ドセタキセル群が8.7ヵ月、TTフィールド+ドセタキセル群が11.1ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:0.81、95%CI:0.55~1.19、p=0.28)。・組織型別のOS中央値は、非扁平上皮NSCLCで標準治療群が9.9ヵ月、TTフィールド+標準治療群が12.6ヵ月であった(HR:0.80、95%CI:0.54~1.16、p=0.28)。扁平上皮NSCLCでは、それぞれ10.1ヵ月、13.9ヵ月であった(HR:0.67、95%CI:0.44~1.01、p=0.05)。・ITT集団におけるPFS中央値は、標準治療群が4.1ヵ月、TTフィールド+標準治療群が4.8ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:0.85、95%CI:0.67~1.11、p=0.23)。・ITT集団におけるORRは、標準治療群が17%、TTフィールド+標準治療群が20%であり、有意差は認められなかった(p=0.5)。完全奏効(CR)は標準治療群が1例であったのに対し、TTフィールド+標準治療群が4例であった。・有害事象は、標準治療群の91%、TTフィールド+標準治療群の97%に発現した。皮膚炎がそれぞれ2%、43%に発現し、TTフィールド+標準治療群で多かったが、Grade3以上のものはそれぞれ0%、2%であった。肺臓炎や免疫関連有害事象の発現率は両群に差がみられなかった。TTフィールド療法に関連があると判断された有害事象に、Grade4以上のものはなかった。 本結果についてLeal氏は、「TTフィールド療法は第III相試験(LUNAR試験)において主要評価項目を達成した。TTフィールド療法は、プラチナ製剤で治療中または治療後に進行が認められた転移を有するNSCLCに対する標準治療の選択肢として考慮されるべきである」とまとめた。また、未治療の進行NSCLC患者を対象としたTTフィールド療法の標準治療への上乗せ効果を検討する試験も進行中とのことである。

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HER2+早期乳がん、化学療法なしのde-escalationで3年iDFS良好(PHERGain)/ASCO2023

 HER2+早期乳がん患者を対象とした第II相PHERGain試験において、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(PH)併用療法の3年無浸潤疾患生存(iDFS)率は、ドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(TCHP)併用療法と同等で、とくに18F-FDG PET/CT(以下「PET」)を指標とした反応例かつ病理学的完全奏効(pCR)例(一度も化学療法を行わない群)では98.8%と最も高かったことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が発表した。 本試験の先行解析において、HER2+早期乳がん患者の術前治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ併用のpCR率が37.9%であったことが、2021年のLancet Oncology誌に掲載されている。今回は、手術を受けた患者を対象に、3年iDFS率の結果が発表された(データカットオフ:2023年2月24日)。PET反応例の判断基準はベースラインのSUVmax値から40%以上の減少であった。・対象:腫瘍径が1.5cm以上で、初回治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を受けたStageI~IIIAのHR+早期乳がん患者・試験群(PH群):PHを2サイクル→PET→PET反応例はPHを6サイクル/無反応例はTCHPを6サイクル→手術→pCR例はPHを10サイクル/非pCR例はTCHPを6サイクルとPHを4サイクル/PET無反応例はPHを10サイクル 285例・対照群(TCHP群):TCHPを2サイクル→PET→TCHPを4サイクル→手術→PHを12サイクル 71例・評価項目:[主要評価項目]試験群におけるPET反応例のpCR(ypT0/isN0)、試験群における3年iDFS[副次評価項目]全患者のpCR、対照群における3年iDFS、遠隔無病生存期間(DDFS)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性 など 主な結果は以下のとおり。・2017年6月26日~2019年4月24日に、356例をPH群とTCHP群に4:1の割合で無作為に割り付けた。追跡期間中央値は3.5年(範囲:0~5.3)で、手術を受けたのはTCHP群63例(88.7%)、PH群267例(93.7%)であった。・PH群のPET反応例は79.6%(227例)、PET無反応例は20.4%(58例)であった。pCR率は37.9%であった(95%信頼区間[CI]:31.6~44.5、p<0.001)。・3年iDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が95.4%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。iDFSイベントは、PH群全体で4.5%、PH群のPET反応例かつpCR例で1.2%に生じた。・3年DDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が96.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。・3年EFS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が93.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。・3年OS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が98.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象および重篤な有害事象の発現は、TCHP群が61.8%/27.9%、PH群全体が32.9%/13.8%、PH群のPET反応例かつpCR例が1.2%/0%であった。治療に関連する死亡例はなく、予期しない安全性上の所見は認められなかった。 これらの結果より、Cortes氏は「本試験において、PH群の3年iDFS率は95.4%で、とくにPET反応例かつpCR例では98.8%であった。多くのHER2+早期乳がん患者が、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)で治療できる可能性がある」とまとめた。

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がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?【見落とさない!がんの心毒性】第21回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性主訴右下腿の腫脹・疼痛現病歴とくに既往症はなく、生来健康であった。陰嚢腫大を契機に右精巣腫瘍を指摘された。高位精巣摘除術で非セミノーマの診断となり、術後の血液検査で腫瘍マーカーの上昇(LDH、hCG-β、AFP)と、造影CT検査で領域リンパ節と傍大動脈リンパ節の多発転移(最大径4cm)、多発肺転移(最大径3cm)を指摘された。右精巣腫瘍(胚細胞腫瘍・非セミノーマ)、TNM分類はT2N2M1aS1、ステージIIIA、IGCCC分類の予後良好群と診断された。化学療法は腫瘍内科医が担当することとなった。腫瘍内科医は症例患者のステージ、リスク分類から、標準治療であるBEP療法 (ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン) 3コースを行う方針とした。BEP療法2コース後、腫瘍マーカーは正常範囲内まで改善したが、発熱性好中球減少症(FN:febrile neutropenia)や消化器毒性、倦怠感など化学療法に伴う有害事象があり、入院中も臥床時間が長い傾向にあった。1コース目でFNを発症したため、2コース目は二次予防的にG-CSF製剤を使用した。3コース目開始前日に右下腿の腫脹・疼痛の訴えがあり、血液検査を実施したところD-dimerが9.5μg/mLと高値であった。右下腿の腓腹筋の把握痛を認めたため、腫瘍内科医は深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)を疑い下肢静脈超音波検査を行ったところ、右大腿〜膝窩静脈に比較的新鮮と思われる血栓(中枢型DVT)を認めた。バイタルサインに問題はなく、呼吸困難や胸痛の訴えはなかったが、造影CT画像検査で左右の肺動脈に塞栓がみられ、肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)も合併していることがわかった。多発リンパ節転移、多発肺転移は化学療法導入前より縮小傾向にあり、リンパ節転移はいずれも短径1cm未満、肺転移も長径2cm未満となっており、化学療法は奏効していると思われた。【問題1】本症例の患者がDVT/PEを発症した原因や誘因について、正しいと思われる選択肢を3つ選んでください。a.長期臥床や骨盤リンパ節転移による下肢静脈の圧排による血流停滞が血栓形成の誘因となった。b.シスプラチンは一般的に血栓塞栓症のリスクが高い抗がん剤とされている。c.ブレオマイシンは一般的に血栓塞栓症のリスクが高い抗がん剤とされている。d.固形がんにおける化学療法中のDVTの発症頻度はがん種によって差があり、胚細胞腫瘍は比較的リスクが高いがん種である。e.化学療法による有害事象対策のための支持療法に使用する薬剤は血栓塞栓症のリスクにはならない。腫瘍内科医は本症例の患者におけるDVT/PEの治療について、循環器内科医にコンサルトした。心電図検査、心臓超音波検査で右室負荷所見は認めず、循環動態は保たれていると判断した。腫瘍内科医と循環器医で協議し、治療方針について検討を行った。【問題2】本症例の治療方針について、不適切な選択肢を1つ選んでください。a.腎機能や体重を確認し、経口薬であるDOACs(direct oral anticoagulants)でDVT/PEの治療を開始した。b.抗凝固薬を開始してもDVTが軽快せず、PEが悪化した場合に致死的になるリスクが高いと思われる場合はIVCフィルターを検討する方針とした。c.腫瘍マーカーの値やCTの結果から、胚細胞腫瘍の病勢はコントロールできているため、DVT/PEの治療を優先し、血栓・塞栓が画像上完全に消失したことを確認してから化学療法を再開する方針とした。d.化学療法がDVT/PEの誘因になった可能性は否定できないが、抗凝固薬を開始してDVT/PEの明らかな増悪がなければBEP療法の3コース目は減量せずに実施する方針とした。e.化学療法後に残存腫瘍に対する外科的切除術を行う可能性があるため、DVT/PEの治療状況や心機能の評価は循環器内科医が併診しながら慎重に経過を観察した。<Take home message>血管新生阻害薬やHER2阻害薬などの分子標的薬、または免疫チェックポイント阻害薬における循環器領域の有害事象が腫瘍循環器領域でのトピックになっているが、いわゆる抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)でも腫瘍循環器的プロブレムがみられることがある。それぞれの薬剤における頻度・致死性の高い有害事象を理解することは、腫瘍内科医、循環器内科医の双方にとって重要である。腫瘍内科医は「がんの治療は詳しいが、循環器の治療はよくわからない」。一方で、循環器内科医は「循環器の治療は詳しいが、がんの治療はよくわからない」。腫瘍内科医と循環器内科医が密に連携し、それぞれの専門領域の観点からベストと思われる対応を目指すことが、腫瘍循環器的プロブレムのより良い管理にとって必要である。1)Seng S, et al. J Clin Oncol. 2012;30:4416-4426.2)Oppelt P, et al. Vasc Med. 2015;20:153-161.3)Piketty AC, et al. Br J Cancer. 2005;93:909-914.4)Lauritsen J, et al. J Clin Oncol. 2020;38:584-592.5)Haddad TC, et al. Thromb Res. 2006;118:555-568.6)Khorana AA, et al. Cancer. 2005;104:2822-2829.7)Raskob GE, et al. N Engl J Med. 2018;378:615-624.8)Agnelli G, et al. N Engl J Med. 2020;382:1599-1607.9)Young AM, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2017-2023.10)Empowering urologists to provide the best possible care:Testicular Cancer11)Motzer RJ, et al. Cancer. 1990;66:857-861. 12)Mulder FI, et al. Blood. 2021;137:1959-1969.講師紹介

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HER2低発現進行乳がんへのT-DXd、ER低発現でもPFS・OS延長(DESTINY-Breast04)/ESMO BREAST 2023

 第III相DESTINY-Breast04試験のサブグループ解析の結果、HER2低発現(IHC法でER陽性細胞が1~10%)で、エストロゲン受容体(ER)低発現の切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が医師選択化学療法(TPC)よりも無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、その結果はER陰性(IHC法でER陽性細胞が0%)患者と同様であったことを、英国・エディンバラ大学のDavid A. Cameron氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 ASCO2022のプレナリーセッションで、HER2低発現のMBC患者に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告されており、ホルモン受容体(HR)の発現状況にかかわらずT-DXd群ではPFSおよびOSが有意に延長したことが示されている。今回のサブグループ解析では、ER低発現の患者における有効性と安全性の探索的解析が行われた(データカットオフ:2022年1月11日)。<DESTINY-Breast04試験 サブグループ解析>・対象:1~2ラインの化学療法歴があり、HER2低発現(IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-)のMBC患者110例(ER陰性[0%]58例、ER低発現[1~10%]52例)・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 75例・対照群(TPC群):カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択 35例・評価項目:[主要評価項目]HR陽性患者の盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS[副次評価項目]全患者のBICRによるPFS、HR陽性患者および全患者のOSなど 主な結果は以下のとおり。●サブグループ解析には110例が組み込まれた(括弧内は順に年齢中央値、化学療法歴が1ラインの割合、CDK4/6阻害薬による治療歴ありの割合)。- ER陰性:T-DXd群40例(58.9歳、40.0%、5.0%)、TPC群18例(55.9歳、27.8%、0%)- ER低発現:T-DXd群35例(57.6歳、60.0%、62.9%)、TPC群17例(47.1%、52.9%)●PFS中央値は、T-DXd群がTPC群よりも良好であった。- ER陰性:T-DXd群8.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.3~11.7)vs.TPC群2.9ヵ月(95%CI:1.4~5.1)、ハザード比[HR]:0.46(95%CI:0.24~0.89)- ER低発現:T-DXd群8.4ヵ月(95%CI:5.6~12.2)vs.TPC群2.6ヵ月(95%CI:1.2~4.6)、HR:0.24(95%CI:0.12~0.48)●OS中央値も、T-DXd群ではTPC群よりも良好であった。- ER陰性:T-DXd群18.2ヵ月(95%CI:13.6~NE)vs.TPC群8.3ヵ月(95%CI:5.6~20.6)、HR:0.48(95%CI:0.24~0.95)- ER低発現:T-DXd群20.0ヵ月(95%CI:13.5~NE)vs.TPC群10.2ヵ月(95%CI:7.8~14.5)、HR:0.35(95%CI:0.16~0.75)●確定奏効率も、T-DXd群ではTPC群よりも良好であった。- ER陰性:T-DXd群50.0%(95%CI:33.8~66.2)vs.TPC群16.7%(95%CI:3.6~41.4)- ER低発現:T-DXd群57.1%(95%CI:39.4~73.7)vs.TPC群5.9%(95%CI:0.1~28.7)●T-DXd群においてGradeを問わず多く発現した治療関連有害事象(TRAE)は、悪心(77.3%)、嘔吐(40.0%)、疲労(37.3%)、食欲低下(34.7%)、脱毛(33.3%)、便秘(33.3%)、貧血(30.7%)、下痢(29.3%)、トランスアミナーゼ値上昇(26.7%)などで、これまで得られていた結果と一致していた。Grade3以上のTRAEは、T-DXd群では53.3%(40例)、TPC群では75.0%(24例)に生じた。

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早期TN乳がん、術前後のアテゾリズマブ追加でEFS・DFS・OS改善(IMpassion031)/ESMO BREAST 2023

 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおける術前化学療法へのアテゾリズマブ追加および術後のアテゾリズマブ投与の有用性を検討した第III相IMpassion031試験の最終解析で、副次評価項目である無イベント生存期間(EFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の改善が示された。また探索的解析から、手術時に病理学的完全奏効(pCR)が得られた患者は予後良好なこと、pCRが得られず血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が残存していた患者は予後不良なことが示された。ブラジル・Hospital Sao Lucas da PUCRSのCarlos H. Barrios氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験の主要評価項目であるpCR率については、PD-L1の有無(SP142によるIC:1%未満vs.1%以上)にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群(41.1%)に比べて有意に(p=0.0044)改善したことが報告されている。今回は、副次評価項目であるEFS、DFS、OS、安全性について最後の患者登録から3年後の最終解析と探索的バイオマーカー解析について報告された。・対象:原発巣が2cmを超える未治療のStageII~IIIの早期TN乳がん患者333例・試験群(アテゾリズマブ群、165例):術前にアテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(毎週)12週間投与後、アテゾリズマブ+ドキソルビシン+シクロホスファミド(2週ごと)8週間投与。術後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11サイクル実施・対照群(プラセボ群、168例):術前にプラセボ+nab-パクリタキセル12週間投与後、プラセボ+ドキソルビシン+シクロホスファミド8週間投与し手術を実施(両群ともpCR未達の患者は、術後補助化学療法を許容) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値40ヵ月前後(アテゾリズマブ群40.3ヵ月、プラセボ群39.4ヵ月)における最終解析において、pCRが得られず術後補助化学療法を受けたのは、アテゾリズマブ群70例中14例(20%)、プラセボ群99例中33例(33%)であった。・ITT集団におけるEFSのハザード比(HR)は0.76(95%信頼区間[CI]:0.47~1.21)で、PD-L1陽性(IC 1%以上)の患者では0.56(同:0.26~1.20)であった。・DFSのHRは0.76(95%CI:0.44~1.30)で、PD-L1患者では0.57(同:0.23~1.43)であった。・OSのHRは0.56(95%CI:0.30~1.04)で、PD-L1陽性患者では0.71(同:0.26~1.91)であった。・pCR状況別のEFSの探索的解析では、pCRが得られた患者では両群共に長期のEFSが良好であったが、pCRが得られなかった患者では両群共にEFSが不良で、pCRが長期予後を大きく左右していた。・アテゾリズマブにおける新たな安全性シグナルや治療関連死はみられなかった。・ctDNAにおける探索的解析によると、ctDNA陽性率はベースラインの94%から手術時に12%と減少し、ctDNA消失率はアテゾリズマブ群89%、プラセボ群86%と両群で同様だった。消失しなかった患者はpCRが得られなかった。・手術時にpCRが得られずctDNAが陽性だった患者はDFS、OSが不良だったが、アテゾリズマブ群でOSの数値的な改善がみられた(HR:0.31、95%CI:0.03~2.67)。 Barrios氏は「早期TN乳がんに対して、術前化学療法へのアテゾリズマブ追加で有意なpCRベネフィットが得られ、EFS、DFS、OSの改善につながった」とした。

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間質性肺炎合併肺癌の薬物療法、改訂GLの推奨は?/日本呼吸器学会

 間質性肺炎(IP)には肺癌が合併することが多く、IP合併肺癌に対する治療は急性増悪を引き起こすことが問題になる。近年、肺癌の薬物療法は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が主流となり、IP合併肺癌に対する薬物療法について、さまざまな検討がなされている。2023年4月に改訂された特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)では、これらのエビデンスを基に、合併肺癌に関して新たに3つのCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、合計6つとなった。合併肺癌に関するCQと関連するエビデンスについて、岸 一馬氏(東邦大学医学部内科学講座 呼吸器内科学分野 教授)が第63回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。改訂GLの合併肺癌に関するCQと推奨 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)は、慢性期、急性増悪、合併肺癌、肺高血圧症、進行期の5つのセクションで構成され、今回から肺高血圧症と進行期が追加された。合併肺癌に関するCQは3つ追加された(CQ20-1、20-2、21)1)。 IP合併肺癌のCQとポイントは以下のとおり。CQ17:IPF(特発性肺線維症)を含むIP合併肺癌患者に外科治療は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併例肺癌手術例の予後を調べた研究では、StageIAであっても5年生存率が59%にとどまっていたことが報告されている2)。その理由として、術後急性増悪による死亡の多さがある。IP合併肺癌1,763例を対象とした後ろ向き研究では、急性増悪が9.3%に発現し、死亡率は43.9%であった3)。術後急性増悪のリスク因子からリスク予測モデルが作成され、その有用性を検討した前向きコホート研究REVEAL-IP Studyが実施された。その結果、術後急性増悪は1,094例中71例(6.5%)に発現し、そのうち39.4%が死亡したが、後ろ向き研究時よりも改善傾向にあった。CQ18:IPFを含むIP合併肺癌患者に術後急性増悪の予防投薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、ステロイドなどの術前予防投薬を行っても術後急性増悪の発現率は低下しないことが報告されている3)。その後、少数例の検討ではあるがピルフェニドンが術後急性増悪の発現リスクを低下させることが報告され、現在IPF合併肺癌患者を対象として周術期ピルフェニドン治療の有用性を検討する無作為化比較試験が実施されている4)。CQ19:IPFを含むIP合併肺癌患者に細胞傷害性抗がん薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併非小細胞肺癌(NSCLC)に対する初回化学療法の前向き試験が複数実施されており、急性増悪の頻度は12%以内で、近年は全生存期間中央値(MST)が15ヵ月を超えている。また、2022年12月には、化学療法とBest Supportive Care(BSC)を後ろ向きに比較した研究結果が報告された。傾向スコアマッチングを行っても、化学療法群はBSC群と比較して全生存期間(OS)が有意に延長した5)。CQ20-1:IPFを含むIP合併肺癌患者に血管新生阻害に関与する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) エビデンスは少ないものの、化学療法にベバシズマブを上乗せしても急性増悪の発現は増加せず、無増悪生存期間(PFS)を延長する傾向が報告されている。また、推奨の決定に関するシステマティックレビューには含まれなかったが、世界で初めてIPF合併NSCLCを対象にニンテダニブの化学療法への上乗せ効果を検討した国内第III相無作為化比較試験(J-SONIC試験)の結果が本邦から報告された。主要評価項目の無イベント生存率(EFS)について、化学療法+ニンテダニブ群は化学療法群と比較して有意差は認められなかったが、奏効率(ORR)は化学療法群が56.0%であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は69.0%と有意に高かった(p<0.05)。また、PFSについて、中央値は化学療法群が5.5ヵ月であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は6.2ヵ月であり、有意に延長した(ハザード比:0.68、95%信頼区間[CI]:0.50~0.92)。OSについては、全体では両群間に有意差はなかったが、非扁平上皮NSCLC、GAP StageIのサブグループにおいて、化学療法+ニンテダニブ群が有意に改善した。急性増悪の頻度は、化学療法群1.6%、化学療法+ニンテダニブ群4.1%、全体でも2.9%と低かった6)。CQ20-2:IPFを含むIP合併肺癌患者にドライバー遺伝子変異に対する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案または推奨 推奨の強さ:現段階では結論付けない エビデンスの強さ:D(非常に低) 推奨の強さについて、現段階では結論付けないとされた。これについては、パネル委員の全員が投与しないことを提案または推奨したが、一定の基準に達しなかったため、推奨の強さは決定されなかった。このような推奨となった一因として、日本人の肺癌患者を対象としてゲフィチニブと化学療法を比較した試験において、ゲフィチニブ群で間質性肺疾患(ILD)の頻度が高く(ゲフィチニブ群4.0%、化学療法群2.1%、オッズ比[OR]:3.2)、ILDによる死亡率が30%を超えたことなどが挙げられる7)。CQ21:IPFを含むIP合併肺癌患者に免疫チェックポイント阻害薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) IP合併肺癌に対するICIの効果を検討したメタ解析の結果が報告されている。10試験(ILDのある患者179例)が対象となり、そのうち8試験が本邦の報告であった。ORRについて、ILDのある群(34%)はILDのない群(24%)と比較して有意に良好であった(OR:1.99、95%CI:1.31~3.00)。一方、ILDのある群は免疫関連有害事象(irAE)の発現率が有意に高率であった(OR:3.23、95%CI:2.06~5.06)。ICIによる肺臓炎についても、ILDのある群(全Grade:27%、Grade3以上:15%)はILDのない群(同10%、4%)と比較して有意に高率であった(OR:2.91、95%CI:1.47~5.74)8)。また、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、IP合併肺癌におけるICIの薬剤性肺障害に関する後ろ向き研究を実施した。その結果、200例が対象となり、薬剤性肺障害は30.5%に認められた(Grade3以上:15.5%、Grade5:4.5%)。多変量解析の結果、重篤な薬剤性肺障害の危険因子として、IPFあり、IP診断時のSP-D(肺サーファクタントプロテインD)値高値、ICI投与前のCRP値高値が同定された。また、irAEが発現した患者はPFSとOSが有意に良好であり、IP非合併NSCLCにおける過去の報告と一致していた。IP合併肺癌に関する現状のまとめ 岸氏は、IP合併肺癌に関する現状について、以下のようにまとめた。・日本からIP合併肺癌に関するステートメントと特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)が発刊された。・IP合併肺癌の発生予防、治療による急性増悪に関して抗線維化薬の有用性が報告された。・IP合併進行NSCLCに対してカルボプラチン+タキサン、小細胞肺癌(SCLC)に対してプラチナ製剤+エトポシドは標準治療と考えられる。・IP合併肺癌に対するICIにより約30%に薬剤性肺障害が生じるが、比較的良好な治療成績が報告されている。・IP合併肺癌の治療は、リスクとベネフィットを慎重に検討し、患者の希望も踏まえて決定することが重要である。特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)編集:「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会定価:3,300円(税込)発行年月:2023年4月判型:A4頁数:140頁■参考文献1)「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会編集. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版). 南江堂;20232)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2015;149:64-70.3)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;147:1604-1611.4)Sakairi Y, et al. J Thorac Dis. 2023;15:1489-1493.5)Miyamoto A, et al. Respir Investig. 2023;61:284-295.6)Otsubo K, et al. Eur Respir J. 2022;60:2200380.7)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2008;177:1348-1357.8)Zhang M, et al. Chest. 2022;161:1675-1686.

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進行TN乳がんへのペムブロリズマブ+化療、臨床的有用性が得られ化療中止した例やimAE発現例でも有効(KEYNOTE-355)/ESMO BREAST 2023

 手術不能な局所再発または転移・再発トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療においてペムブロリズマブ+化学療法をプラセボ+化学療法と比較した第III相KEYNOTE-355試験の探索的解析の結果、ペムブロリズマブ+化学療法により臨床的有用性が得られた患者でペムブロリズマブの最終投与前に化学療法を中止した患者、また免疫介在性有害事象(imAE)発現患者において、CPSにかかわらず、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善したことが示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center のHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験では、PD-L1 CPS 10以上の患者において、ペムブロリズマブ+化学療法により統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFSとOSの改善が示されたことが報告されている。今回は、ペムブロリズマブ+化学療法を受け完全奏効(CR)もしくは部分奏効(PR)を達成または病勢安定(SD)を24週以上持続した患者、すなわち臨床的有用性が得られた患者のうちペムブロリズマブ最終投与前21日より前に化学療法を中止した患者におけるPFSとOSを評価した。さらに、ペムブロリズマブ+化学療法を受けた患者でimAEが1件以上発現した患者においても評価した。・対象:PD-L1陽性の手術不能な局所再発もしくは転移・再発TN乳がん(ECOG PS 0/1)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセルパクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンのうちいずれか)・対照群:プラセボ+化学療法 今回の探索的解析における主な結果は以下のとおり。・2021年6月15日のデータカットオフ時点で、ペムブロリズマブ+化学療法の治療を受け臨床的有用性が得られた患者において、ペムブロリズマブ投与中止前に化学療法を中止した患者および全体でのペムブロリズマブ投与期間中央値、化学療法期間中央値、PFS中央値、OS中央値は、順に以下のとおりで、CPSに関係なくPFS、OSとも上回っていた。- 治療を受けた全患者 化学療法中止例(92例):14.1ヵ月 6.0ヵ月 14.5ヵ月 32.9ヵ月 全体(317例)     : 9.4ヵ月 7.9ヵ月 11.6ヵ月 26.4ヵ月- CPS 1以上の患者 化学療法中止例(70例):15.3ヵ月 5.9ヵ月 18.7ヵ月 34.5ヵ月 全体(249例)     : 9.4ヵ月 8.2ヵ月 11.7ヵ月 26.6ヵ月- CPS 10以上の患者 化学療法中止例(46例):20.8ヵ月 6.8ヵ月 36.7ヵ月 未到達 全体(143例)     :11.1ヵ月 8.5ヵ月 14.4ヵ月 34.4ヵ月・imAE発現患者および全体におけるペムブロリズマブ投与期間中央値、化学療法期間中央値、PFS中央値、OS中央値は、順に以下のとおりで、imAE発現患者でPFS、OSとも上回っていた。- 治療を受けた全患者 imAE発現例(149例):8.8ヵ月 7.2ヵ月 9.7ヵ月 23.9ヵ月 全体(562例)    :5.6ヵ月 5.1ヵ月 7.5ヵ月 17.2ヵ月- CPS 1以上の患者 imAE発現例(109例):8.8ヵ月 7.3ヵ月 9.8ヵ月 26.3ヵ月 全体(421例)    :5.9ヵ月 5.1ヵ月 7.6ヵ月 17.6ヵ月- CPS 10以上の患者 imAE発現例(64例):10.4ヵ月 8.4ヵ月 11.8ヵ月 35.6ヵ月 全体(219例)   : 7.6ヵ月 5.8ヵ月  9.7ヵ月 22.8ヵ月 今回の解析から、ペムブロリズマブ+化学療法で臨床的有用性が得られた患者において、PD-L1発現レベルにかかわらず、化学療法中止後もペムブロリズマブは有用であることが示唆された。この結果から、Rugo氏は「臨床的有用性が得られて化学療法を中止した患者において、ペムブロリズマブ継続が適している」とした。

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KMT2A-r ALL乳児、化学療法+ブリナツモマブでDFS改善/NEJM

 新規に診断されたKMT2A再構成陽性急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-r ALL)の乳児において、Interfant-06試験の化学療法へのブリナツモマブ追加投与は、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較し安全で有効性も高いことが確認された。オランダ・Princess Maxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らが、多施設共同前向き単群第II相試験の結果を報告した。乳児のKMT2A-r ALLは、3年無イベント生存率が40%未満の進行性疾患で、多くが治療中に再発する。その再発率は、診断後1年以内で3分の2、2年以内では90%である。化学療法が強化されたにもかかわらず、この20数年、アウトカムは改善されていなかった。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。1歳未満児を対象に、導入療法後ブリナツモマブを4週間投与 研究グループは、2018年7月~2021年7月に9ヵ国12施設にて、新たにKMT2A-r ALLと診断された1歳未満の乳児30例を登録し、Interfant-06試験で用いた導入療法を1ヵ月行った後、1コースのブリナツモマブ(体表面積1m2当たり15μg/日、4週間持続注入)を追加し、その後、Interfant-06プロトコールに従ってプロトコールIB(シクロホスファミド、シタラビン、メルカプトプリン)、MARMA(高用量シタラビン、高用量メトトレキサート、メルカプトプリン、アスパラギナーゼ)、OCTADAD(ビンクリスチン、デキサメタゾン、アスパラギナーゼ、ダウノルビシン、thioguanine、シタラビン、シクロホスファミド)、および維持療法(メルカプトプリン、メトトレキサート)を連続して行った。 主要評価項目は、臨床的に意義のある毒性(ブリナツモマブに起因する可能性のある、または確実に起因する毒性、およびブリナツモマブ投与中止または死亡に至った毒性と定義)、副次評価項目は微小残存病変(MRD)反応を含む抗白血病活性などであった。有害事象について評価し、有害事象のデータはブリナツモマブ注入開始から次のプロトコールIBの開始まで収集した。アウトカムに関するデータは、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較した。ブリナツモマブ投与終了時93%がMRD陰性または低値、2年全生存率は93.3% 追跡調査期間中央値は26.3ヵ月(範囲:3.9~48.2)で、30例全例がブリナツモマブ4週間投与を完了した。 主要評価項目の毒性イベントは発現しなかった。重篤な有害事象は9例に10件報告された(発熱4件、感染症4件、高血圧1件、嘔吐1件)。毒性プロファイルは、より年齢の高い患者で報告されたものと類似していた。 ブリナツモマブ投与終了時、30例中28例(93%)がMRD陰性(16例)またはMRD低値(<5×10-4、正常細胞1万個当たり白血病細胞5個未満)であった。化学療法を継続した全例が、その後の治療期間中にMRD陰性となった。 2年無病生存率は81.6%(95%信頼区間[CI]:60.8~92.0)、2年全生存率は93.3%(95%CI:75.9~98.3)であった。Interfant-06試験のヒストリカルコントロール(本試験の適格基準を満たし、導入療法終了時のMRDに関するデータが得られた214例)における2年無病生存率および2年全生存率は、49.4%(95%CI:42.5~56.0)および65.8%(95%CI:58.9~71.8)であった。

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早期乳がん、アントラサイクリン+タキサン併用が最も有効~メタ解析/Lancet

 乳がんの再発と死亡の減少にはアントラサイクリン系+タキサン系併用療法が最も有効であり、とくにアントラサイクリン系+タキサン系の累積投与量が多いレジメンで最大の効果を得られることが、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏らEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)が行ったメタ解析で明らかにされた。早期乳がんに対するアントラサイクリン系+タキサン系併用療法は、化学療法を行わない場合と比較して生存を著明に改善するが、アントラサイクリン系薬剤の短期および長期の副作用に対する懸念から、アントラサイクリン系薬剤を含まないタキサン系レジメンの使用が増加しており、有効性が損なわれる可能性があった。 著者は、「示された結果は、臨床診療やガイドラインにおける最近のトレンドである非アントラサイクリン系化学療法、とくにドセタキセル+シクロホスファミドの4サイクルなどの短期レジメンに対して挑戦的である」と述べ、「本検討は、関連するほぼすべての臨床試験のデータをまとめており、個々の治療の決定、臨床ガイドライン、および将来の臨床試験のデザインに役立つ確かなエビデンスを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2023年4月15日号掲載の報告。アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価した無作為化試験86件が対象 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、学会抄録を含むデータベースを用いて、アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価したあらゆる言語の無作為化試験86件を特定(最終検索は2022年9月)。タキサン系レジメンとアントラサイクリン系レジメンを比較した無作為化試験の患者個人レベルのメタ解析を行い、本研究グループによる前回のメタ解析を更新するとともに、6つの関連比較に関して解析した。術後または術前補助療法の臨床試験は、2012年1月1日以前に開始されたものであれば対象とした。 主要アウトカムは、浸潤性乳がんの再発(遠隔、局所、対側乳房の新規原発)、乳がん死、再発を伴わない死亡、全死亡とし、log-rank解析により初回イベント率比(RR)と信頼区間(CI)を算出した。アントラサイクリン系+タキサン系同時併用が最も再発率が低い アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンとアントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンを比較した28件の臨床試験を特定し、23件を適格とした。そのうち15件について、計1万8,103例の女性の個人データが提供された。この15件すべてにおいて、アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンは、アントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンより、再発率が平均14%低かった(RR:0.86、95%CI:0.79~0.93、p=0.0004)。非乳がん死は増加しなかったが、治療を受けた女性700例当たり1例に急性骨髄性白血病の発症が認められた。 再発率が最も低かったのは、ドセタキセル+シクロホスファミドにアントラサイクリン系の同時併用と、同量のドセタキセル+シクロホスファミドを比較した場合であった(10年再発リスク:12.3% vs.21.0%、リスク差:8.7%[95%CI:4.5~12.9]、RR:0.58[95%CI:0.47~0.73]、p<0.0001)。このグループにおける10年乳がん死亡率は4.2%減少した(95%CI:0.4~8.1、p=0.0034)。 アントラサイクリン系+タキサン系の順次投与は、ドセタキセル+シクロホスファミドと比較して、再発リスクの有意な低下は認められなかった(RR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.30)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンを比較した臨床試験については、44件の適格試験を特定し、このうち35件について計5万2,976例の女性の個人データが提供された。 アントラサイクリン系レジメンへのタキサン系薬剤の上乗せは、タキサン系薬剤を含まないアントラサイクリン系レジメン(アントラサイクリン系薬剤の累積投与量が同じ)と比較した場合は再発を有意に抑制したが(RR:0.87、95%CI:0.82~0.93、p<0.0001、1万1,167例)、対照群の非タキサン系薬剤の累積投与量をタキサン系薬剤の2倍量にした場合と比較すると再発率の有意な低下は認められなかった(RR:0.96、95%CI:0.90~1.03、p=0.27、1万4,620例)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンの直接比較では、累積投与量が多く、投与強度が高いレジメンがより効果的であることが示された。アントラサイクリン系+タキサン系併用療法の再発抑制効果は、エストロゲン受容体陽性集団とエストロゲン受容体陰性集団で同様であり、年齢、リンパ節転移状態、腫瘍のサイズまたはグレードによって差は認められなかった。

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静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針【見落とさない!がんの心毒性】第20回

※本症例は、患者さんのプライバシーへの配慮と、臨床経過の円滑な理解を進めるため、一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別50代・女性受診までの経過子宮頸がんに対する化学放射線療法後、無再発で経過していたが、5年目のCT検査にて右腸骨静脈の下大静脈合流部から右下腿までの広範囲な静脈血栓症と静脈周囲の炎症所見があり(図1)、深部静脈血栓塞栓症と血栓性静脈炎の合併として、当科に診療依頼があった。血栓性静脈炎が出現するまでは、日常生活になんら支障がない日常生活動作(ADL)であった。(図1)造影CT検査【既往症】子宮頸がん3B期当院にて5年前に全骨盤外照射 50Gy+CDDP 35mg/m2/week× 6回、両側内腸骨リンパ節および傍大動脈リンパ節領域10Gy、その後、エトポシド25mg/day 内服3週間、休薬1週間を合計21cycle追加し、当科初診時までの5年間無再発。当科初診時、右下肢広範囲の発赤腫脹を認め、血液検査ではD-dimer 7.4μg/mL、抗カルジオリピン抗体は陰性であった。下肢全体の腫脹と疼痛は強かったが、CT検査にて肺動脈血栓塞栓症は認めず、抗凝固療法を開始して1ヵ月ほどでD-dimerが0.8μg/mLと正常化し下肢腫脹も改善した。4ヵ月後にD-dimerの再上昇傾向を認め下肢腫脹が再燃したが、CT検査では、明らかな子宮頸がんの再発や転移を認めず、大腿静脈血栓はほぼ消失したものの、腸骨静脈血栓が残存している状態であった。他院循環器病院へ薬剤抵抗性のDVT後遺症として血管内治療も含めてセカンドオピニオンしたところ、現行の治療継続指示であった。6ヵ月後に軽度の貧血、断続的な発熱と炎症反応高値が出現したため、精査目的に当科入院となった。【入院時所見】WBC 5,900/μL、Hb 8.2g/dL、CRP 14mg/dL、BNP 113.8pg/mL、D-dimer 5.5μg/mL、SCC抗原 0.3ng/mL、新CYFRA 1.0ng/mL、CEA < 0.5ng/mL、心電図は洞調律、III・aVF・V2-3誘導にてT波異常。感染性心内膜炎のスクリーニングとして血液培養を提出し、心臓超音波検査を施行したところ、右室心尖部に可動性の乏しい26×42mmの腫瘤像を認めた(図2)。(図2)心臓超音波検査【入院後経過】貧血に対しては上下部内視鏡検査を予定した。入院時の心エコー検査にて、半年前には認めなかった右室内腫瘤を認め、CT検査では明らかな感染源や、明らかな子宮頸がんの局所再発や主要な他臓器転移も認めなかったものの、右室内に腫瘤が疑われた。また、右腸骨静脈と右肺動脈に造影欠損像を認めた。心臓MRI検査では、右室腫瘤像を認めるが、その腫瘤の質的診断は出来なかった。冠動脈カテーテル検査では、右冠動脈からの栄養血管を認めたが、病理学的な検査は行えなかった。PET-CT検査は、当時の当院では撮影困難であった。【問題】右室腫瘤の精査加療方針として、最も適切と判断した選択肢はどれか。a.不明熱と炎症反応高値を認めるため、感染性疣贅として抗生剤治療を4~6週間施行し、その治療反応性をみてから治療方針を再検討する。b.静脈血栓塞栓症の治療中の肺動脈血栓症の出現があるため、抗凝固療法を2ヵ月施行しその治療反応性をみてから治療方針を再検討する。c.原発性心臓腫瘍の中では発生確率が高い良性腫瘍を疑うが、可動性が乏しいため3ヵ月後に再検する。d.原発性心臓腫瘍や転移性心臓腫瘍、感染性疣贅、血栓などの診断がつかないが、何かしらの悪性腫瘍の可能性があるため、がん薬物治療を開始する。e.明らかな他臓器転移がない状態で診断がつかず肺動脈塞栓症を伴う粗大な心腔内腫瘤であり、開胸右室生検、ならびに右室腫瘤摘出術を施行する。悪性の(原発性、転移性)心臓腫瘍は稀な疾患だが、腫瘍が増大傾向を示す場合などは重要な鑑別疾患である。がんの既往歴の問診や心臓超音波、CT、MRIなどの画像検査、血栓塞栓症合併などのアセスメントは診断の補助となるが、組織学的検査による確定診断が最も重要である。本例のように、外科的切除も含めた心臓腫瘍の診断・治療について、循環器内科、心臓外科、腫瘍内科、放射線科による連携が必要である。1)北原 康行ほか. 呼吸と循環. 2016;64:889-903.2)Butany J, et al. Can J Cardiol. 2005;21:675-680.3)Lam KY, et al. Arch Pathol Lab Med. 1993;117:1027-1031.4)Amano J, et al. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2013;61:435-447.5)Silvestri F, et al. G Ital Cardiol. 1997;27:1252-1255.6)Klatt EC, et al. Cancer. 1990;65:1456-1459.【謝辞】本文作成にあたり、丸山 雄二氏(日本医科大学付属病院心臓血管外科准教授)、金政 佑典氏(都立駒込病院腫瘍内科医長)、向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科部長)、大倉 裕二氏(新潟県立がんセンター新潟病院循環器内科部長)、草場 仁志氏(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)、志賀 太郎氏(がん研有明病院腫瘍循環器・循環器内科部長)にご指導とご監修いただきました。ここに深く感謝申し上げます。講師紹介

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術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。 本試験の対象は、StageI~IIIのAC抵抗性(AC 4サイクル後に病勢進行もしくは腫瘍体積の80%未満の減少)のTNBCで、第2の術前療法としてアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)+nab-パクリタキセル(100mg/m2、1週ごと12回)を投与後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)を投与した。 主な結果は以下のとおり。・2016年2月15日~2021年1月29日にAC抵抗性TNBCを37例登録した。・pCR/residual cancer burden(RCB)-I率は46%だった(ヒストリカルコントロール群:5%)。・新たな安全性シグナルは観察されなかった。・7例(19%)がirAEによりアテゾリズマブを中止した。

73.

MMR正常を含む進行・再発子宮体がん、dostarlimab追加でPFS延長(RUBY)/NEJM

 原発性の進行または再発子宮体がんの治療において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬dostarlimabの併用は、標準化学療法単独と比較して、2年後の無増悪生存率が有意に高く、安全性プロファイルは個々の薬剤の既知のものと全般的に一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMansoor R. Mirza氏らが実施した「RUBY試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号で報告された。19ヵ国113施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 RUBY試験は、19ヵ国113施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月18日~2021年2月23日に患者のスクリーニングが行われた(GSKの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、原発性のStageIII/IVまたは初回再発の子宮体がんの患者が、カルボプラチン+パクリタキセルによる標準化学療法に加え、dostarlimab(500mg)またはプラセボを3週ごとに6サイクル静脈内投与した後、dostarlimab(1,000mg)またはプラセボを単独で6週ごとに最長3年間投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、担当医判定(RECIST ver1.1に基づく)による無増悪生存と、全生存であった。全生存率も、dMMR-MSI-H集団、全患者集団の双方で良好 494例が登録され、dostarlimab群に245例(年齢中央値64歳[四分位範囲[IQR]:41~81])、プラセボ群に249例(65歳[28~85])が割り付けられた。118例(23.9%)がミスマッチ修復機能欠損型(dMMR)の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の腫瘍であり、dostarlimab群に53例(61歳[45~81])、プラセボ群に65例(66歳[39~85])が含まれた。 dMMR-MSI-H集団では、24ヵ月の時点における推定無増悪生存率は、dostarlimab群が61.4%(95%信頼区間[CI]:46.3~73.4)と、プラセボ群の15.7%(7.2~27.0)に比べ有意に優れた(ハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.16~0.50、p<0.001)。 全患者集団における24ヵ月時の推定無増悪生存率は、dostarlimab群が36.1%(95%CI:29.3~42.9)であり、プラセボ群の18.1%(13.0~23.9)よりも有意に良好だった(HR:0.64、95%CI:0.51~0.80、p<0.001)。 また、dMMR-MSI-H集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が83.3%(95%CI:66.8~92.0)、プラセボ群は58.7%(43.4~71.2)であり、dostarlimab群で優れた(HR:0.30、95%CI:0.13~0.70)。 全患者集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が71.3%(95%CI:64.5~77.1)、プラセボ群は56.0%(48.9~62.5)と、dostarlimab群で高かった(HR:0.64、95%CI:0.46~0.87、p=0.0021)が、中止基準の有意水準(p=0.00177)は満たさなかった。 試験期間中に発現または悪化した有害事象のうち最も頻度が高かったのは、悪心(dostarlimab群53.9%、プラセボ群45.9%)、脱毛(53.5%、50.0%)、倦怠感(51.9%、54.5%)であった。Grade3以上の有害事象(70.5%、59.8%)、重篤な有害事象(37.8%、27.6%)の頻度は、プラセボ群よりもdostarlimab群で約10ポイント高かった。 著者は、「MMRとMSIの状態の検査は、子宮体がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の使用の可能性について、予後因子と効果予測因子の双方で考慮されるため重要であり、本研究では、dMMR-MSI-H集団においてdostarlimab群で良好な無増悪生存率が得られた」と指摘している。

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進行・再発子宮体がん、ペムブロリズマブ追加でMMRによらずPFS延長(NRG-GY018)/NEJM

 進行または再発子宮体がん患者において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブの併用療法は、標準化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、有害事象の発現状況は両群とも予想どおりであったことが、米国・カリフォルニア大学のRamez N. Eskander氏らが実施した「NRG-GY018試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号に掲載された。dMMRとpMMRで層別化した無作為化プラセボ対照試験 NRG-GY018試験は、4ヵ国(米国、カナダ、日本、韓国)の395施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月~2022年12月に患者の登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、測定可能なStageIII/IVA、または測定可能病変の有無を問わずStageIVBあるいは再発病変を有し、新規に診断された子宮体がん患者が、標準化学療法であるパクリタキセル+カルボプラチンに加え、ペムブロリズマブまたはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。なお、前回化学療法からの期間が12ヵ月以上の場合は組み入れ可能とした。 ペムブロリズマブとプラセボは、化学療法と併用で3週ごとに6サイクルを静脈内投与したのち、維持療法として単剤で6週ごとに最大14サイクルが投与された。被験者は、ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)とミスマッチ修復機能正常(pMMR)の2つのコホートに層別化された。 主要評価項目は、2つのMMRコホートにおけるPFSとされた。中間解析は、dMMRコホートで少なくとも84件の死亡または進行のイベントが発生、およびpMMRコホートで少なくとも196件のイベントが発生した後に行うことが計画された。dMMRコホートでの無増悪生存率:74% vs.38% 816例が登録され、このうち225例がdMMRコホート、591例がpMMRコホートであり、有効性の解析には、それぞれ225例(ペムブロリズマブ群112例、プラセボ群113例)、588例(293例、295例)が含まれた。年齢中央値はdMMRコホートが66歳、pMMRコホートは65.5歳であり、前治療として化学療法を受けた患者がそれぞれ5.8%、25.3%、放射線治療が42.7%、39.6%、手術が90.2%、86.1%であった。 dMMRコホートでは、追跡期間中央値12ヵ月時点でのPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達(95%信頼区間[CI]:30.6~未到達)、プラセボ群は7.6ヵ月(6.4~9.9)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった。Kaplan-Meier法により推定した無増悪生存率は、それぞれ74%、38%であり、病勢進行または死亡のリスクは、ペムブロリズマブ群がプラセボ群より70%低かった(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.19~0.48、p<0.001)。 同様に、pMMRコホートの追跡期間中央値7.9ヵ月時点のPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が13.1ヵ月(95%CI:10.5~18.8)、プラセボ群は8.7ヵ月(8.4~10.7)と、有意な差が認められた(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。 有害事象の発現状況は、ペムブロリズマブ群、プラセボ群とも予想どおりであった。dMMRコホートでは、ペムブロリズマブ群98.2%、プラセボ群99.1%で有害事象が発現し、pMMRコホートではそれぞれ93.5%、93.4%で認められた。Grade3以上の有害事象は、dMMRコホートではペムブロリズマブ群63.3%、プラセボ群47.2%、pMMRコホートではそれぞれ55.1%、45.3%で発現した。 注目すべき有害事象(インフュージョンリアクション、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、大腸炎、肺臓炎など)は、dMMRコホートではペムブロリズマブ群38.5%、プラセボ群26.4%、pMMRコホートではそれぞれ33.3%、19.7%で発現し、Grade3以上はdMMRコホートではペムブロリズマブ群8.3%、プラセボ群5.7%、pMMRコホートではそれぞれ3.6%、2.6%でみられた。 著者は、「これらのデータは、進行・再発子宮体がん患者の1次治療への免疫療法の導入が、MMRの状態や組織学的所見にかかわらず、腫瘍学的アウトカムの改善につながることを示唆するものである」としている。

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初回化学療法反応後の維持療法としてのCDK4/6阻害薬の有用性/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)患者に対する初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が、有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことを、大阪国際がんセンターの藤澤 文絵氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。 MBC乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法として、内分泌療法(+カペシタビンあるいはベバシズマブ併用)の有用性が国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR12141)、BOOSTER試験2))で報告されている。しかし、内分泌療法+CDK4/6阻害薬併用維持療法の有効性と安全性に関するデータは十分ではない。そこで、藤澤氏らはMBC患者における初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法+CDK4/6阻害薬の安全性と有効性を調査した。 本研究はパルボシクリブ(2017年12月)およびアベマシクリブ(2018年11月)が承認されてから2021年10月末までに、初回化学療法反応後の維持療法としてCDK4/6阻害薬が投与された症例を対象として、患者の背景、安全性、CDK4/6阻害薬の有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・CDK4/6阻害薬を投与された179例のうち、初回化学療法の治療効果がSD以上を得られていた26例を対象に解析が行われた。そのうち、初回化学療法でCR/PR/長期SDを得られた状態を維持したまま内分泌療法+CDK4/6阻害薬に変更になったのは12例(安定中切替群)、腫瘍マーカーの上昇または画像検査による若干の病勢進行がみられた後に内分泌療法+CDK4/6阻害薬に変更になったのは14例(増悪傾向切替群)であった。・安定中切替群と増悪傾向切替群の年齢中央値は65歳 vs.61.5歳、閉経後が10例 vs.7例、StageIVがそれぞれ5例、内臓転移あり9例 vs.13例であった。・治療成功期間(TTF)中央値は、全患者で8.6ヵ月(95%信頼区間:3.7~29.9)、安定中切替群で22.1ヵ月(3.6~NA)、増悪傾向切替群で7.2ヵ月(2.5~12.6)であった。・全生存期間(OS)中央値は、全患者で26.7ヵ月(17.8~NA)、安定中切替群で39.3ヵ月(17.8~NA)、増悪傾向切替群で18.3ヵ月(11.8~26.7)であった。・安定傾向切替群と増悪傾向切替群でみられたGrade3/4の有害事象は、好中球減少6例(50.0%) vs.6例(42.9%)、下痢1例(8.3%) vs.0例、AST/ALT上昇1例(8.3%) vs.1例(7.4%)で、安全性プロファイルは以前の報告と同様であった。 これらの結果より、藤澤氏は「MBC患者に対する初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法は有望な効果が示されたが、有用性を検証するにはさらに多くの症例と前向き臨床試験が必要である」とまとめた。

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進行または再発の子宮頸がんに対する単剤療法「リブタヨ」発売/サノフィ

 サノフィは3月30日付のプレスリリースで、「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸癌」を効能または効果として、リブタヨ点滴静注350mg(一般名:セミプリマブ、以下「リブタヨ」)の販売を同日より開始したことを発表した。 子宮頸がんは、世界では女性のがん死因の第4位に当たり、35~44歳での診断が最も多い疾患である。大部分はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を原因とし、約80%を扁平上皮がん(子宮頸部の外部を覆う細胞から発生)、残る患者の多くを腺がん(子宮頸部の内部にある腺細胞から発生)が占めている。進行または再発の子宮頸がんの治療選択肢は限られており、世界で毎年約57万人の女性が子宮頸がんと診断されていることから、新たな治療法の登場が望まれていた。 リブタヨは、T細胞の表面にある免疫チェックポイント受容体PD-1を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体である。本剤は、2次治療の子宮頸がん患者が対象の第III相試験において、全生存期間の改善を単剤投与で初めて立証し、子宮頸がんの2次治療の前向き比較試験においても、全生存期間が改善された初めての薬剤である。 リブタヨの進行性子宮頸がんにおける無作為化試験である国際共同第III相試験(EMPOWER Cervical-1試験)は、再発・転移性の扁平上皮がんまたは腺がんで2次治療の女性患者(年齢中央値:51歳)を対象に実施された。患者は無作為化され、リブタヨ単剤投与群(350mgを3週間ごとに投与)または広く使われている化学療法(イリノテカン、トポテカン、ペメトレキセド、ビノレルビンまたはゲムシタビン※)から治験責任医師が選択する薬剤を投与する群のいずれかに割り付けられた。※ペメトレキセド、ビノレルビン、ゲムシタビンは国内で子宮頸がんの適応はない。 本試験の結果、リブタヨ群(304例)では化学療法群(304例)と比較して、死亡リスクが31%低減し、全生存期間は有意に延長した。全体集団における全生存期間の中央値は、リブタヨ群で12.0ヵ月、化学療法群で8.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p<0.001)。 安全性は、治験薬の投与を1回以上受けた患者を対象に、リブタヨ群300例(投与期間の中央値:15週間、範囲:1~101週間)、化学療法群290例(10週間、1~82週間)で評価した。治験薬との因果関係が否定できない有害事象は、リブタヨ群で56.7%、化学療法群で81.4%に認められた。リブタヨ群における、発現割合5%以上の主な副作用は、疲労(10.7%)、悪心(9.3%)、貧血(7.3%)、無力症(7.3%)、食欲減退(7.3%)、下痢(6.7%)、甲状腺機能低下症(6.0%)、嘔吐(5.7%)、関節痛(5.7%)、発疹(5.0%)およびそう痒症(5.0%)であった。なお、リブタヨの新たな安全性シグナルは認められなかった。 リブタヨは、サノフィとRegeneronとのグローバル提携契約の下で共同開発された製品である。2022年7月1日現在、Regeneronはリブタヨの開発およびマーケティングをグローバルレベルで担っており、日本では、Regeneronに代わってサノフィがリブタヨを販売する。サノフィとRegeneronは、「引き続き子宮頸がんの日本人患者に希望を届けられるよう鋭意努力し、患者とその家族や医療関係者へさらなる貢献をしていく」としている。

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m-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験は未治療の切除不能転移RAS野生型大腸がんの患者を対象に、m-FOLFOXIRI+セツキシマブの有効性と安全性をm-FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較して検証することを目的とした無作為化第II相試験である。すでにセツキシマブ群が主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)を有意に改善したことが報告されている。 2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、本試験における最終登録から3年後の解析結果を、辻 晃仁氏(香川大学 医学部臨床腫瘍学講座)が発表した。 DEEPER試験は2015年7月〜2019年6月に359例の患者が登録され、179例がセツキシマブ群(C群)、180例がベバシズマブ群(B群)に割り付けられた。対象者はmFOLFOXIRI(5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン 200mg/m2+イリノテカン 150mg/m2+オキサリプラチン 85mg/m2)に加え、セツキシマブ:初回400mg/m2で以降は毎週250mg/m2もしくはベバシズマブ:隔週で5mg/kgを投与された。 評価対象患者は321例(年齢中央値65歳、PS0~1:90.5%、原発:左84%/右16%)、C群159例、B群162例であった。主要評価項目のDpRの中央値はC群で57.4%(範囲:-15.0~100%)に対して、B群で46.0%(-0.6〜100%)であり、C群が有意に高かった(p=0.0010)。原発腫瘍の部位別では、左側ではC群60.3% vs.B群46.1%(p=0.0007)、右側では50.0% vs.41.2%(p=0.4663)であり、左側でとくにC群のDpRが高い傾向が示された。しかし、副次評価項目評価項目であるETS(Early Tumor Shrinkage)、ORR、R0切除率においては、両レジメン間で有意差はみられなかった。 今回は新たに生存に関する結果および追加で調査を行ったBRAF変異の結果などについて発表された。 主な結果は以下のとおり。・321例中167例でBRAFに関する情報が得られ、セツキシマブの効果が期待できないとされるBRAF V600E変異は14例で認められた。・RAS/BRAF野生型が判明した症例は153例、内訳はC群72例、B群81例であった。この症例群をRAS野生型、RAS野生型+左側原発、RAS/BRAF野生型、RAS/BRAF野生型+左側原発と対象を絞り込むにつれ、有効性が高くなった。最も効果的であったRAS/BRAF野生型+左側原発131例では、DpRはC群63.6% vs.B群47.8%、p=0.0003、R0切除率は32.8% vs.20.0%、p=0.096であった。・さらに注目される生存に関する解析ではPFS、OSともにC群がB群より統計学的に有意に良好な傾向であった(PFS中央値:15.3ヵ月 vs.11.7ヵ月、ハザード比(HR):0.68、p=0.036、OS中央値:53.6ヵ月 vs.40.2ヵ月、HR:0.54、p=0.02)。・毒性は許容範囲内であり、Grade3以上の特徴的な有害事象としてはC群ではざ瘡(13.1%)、低マグネシウム血症(4%)、B群では高血圧(33.5%)、蛋白尿(3.4%)などであった。 辻氏は「m-FOLFOXIRI+セツキシマブは、RAS/BRAF野生型かつ左側原発の大腸がんにおける薬物療法の魅力的なオプションとなり得る」とした。また、質疑応答中にDpRを主要評価項目とした理由と聞かれ、「当初はOSを検討していたが、早期に結果を得られ、かつ生存期間の代用マーカーとして注目されていたDpRに着目した。本試験の結果も両者の関連を示すものだ」と説明した。

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HER2低発現乳がんへのT-DXd、アジア人集団でも有効性・安全性を確認(DESTINY-Breast04)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)に対して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験のアジア人サブグループ解析において、T-DXd群では全体集団と同様にアジア人集団でも有意に無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が延長し、管理可能な安全性プロファイルであったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。 ASCO2022のプレナリーセッションで、HER2低発現のMBC患者に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告されており、T-DXd群ではTPC群と比較してPFSおよびOSを有意に延長し、安全性プロファイルも管理可能であったことが示された。一方、HER2陽性のMBC患者を対象としたDESTINY-Breast03試験のアジア人サブグループ解析では、アジア人においてもT-Dxdの有用性が示され安全性プロファイルも全体集団と一致していたものの、日本人集団においては全体集団およびアジア人集団と比較して薬剤性肺障害(ILD)の報告が多い傾向がみられていた。[DESTINY-Breast04試験]・対象:1~2ラインの化学療法歴があり、HER2低発現(IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-)のMBC患者557例(うちアジアの国または地域からの登録は213例[38%])。・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例・対照群(TPC群):カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択 184例・評価項目:[主要評価項目]HR+患者の盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS[副次評価項目]全患者のBICRによるPFS、HR+患者および全患者のOSなど 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。・2022年1月11日までに557例が無作為化され、うち213例(38%)がアジアからの参加者であった(日本85例、中国62例、韓国57例、台湾9例)。・アジア人集団における追跡期間中央値は、T-DXd群16.8ヵ月、TPC群15.4ヵ月であった(全体集団はそれぞれ16.1ヵ月、13.5ヵ月)。・アジア人集団のベースライン時の患者特性は両群でバランスがとれていた(括弧内は全体集団)。 -T-DXd群:年齢中央値56.6歳(57.5歳)、IHCスコア1+が61.2%(57.4%)、IHCスコア2+かつISH-が38.8%(42.6%)、HR+が87.1%(89.3%)、HR-が12.9%(10.7%)、中枢神経系転移あり10.2%(6.4%)、肝転移あり68.0%(71.3%)、肺転移あり36.1%(32.2%) -TPC群:年齢中央値55.3歳(55.9歳)、IHCスコア1+が57.6%(58.2%)、IHCスコア2+かつISH-が42.4%(41.8%)、HR+が91.0%(90.2%)、HR-が9.1%(9.8%)、中枢神経系転移あり4.5%(4.3%)、肝転移あり59.1%(66.8%)、肺転移あり36.4%(34.2%)・主要評価項目であるHR+患者のPFS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群10.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.4~14.7) vs.TPC群5.3ヵ月(4.2~6.8)、ハザード比[HR]:0.41(0.28~0.58)であった(全体集団では10.1ヵ月[9.5~11.5] vs.5.4ヵ月[4.4~7.1]、HR:0.51[0.40~0.64]、p<0.0001)。・全患者(HR+およびHR-)のPFS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群10.9ヵ月(95%CI:9.0~13.8) vs.TPC群4.6ヵ月(2.8~6.4)、HR:0.38(0.27~0.53)であった(全体集団では9.9ヵ月(9.0~11.3) vs.5.1ヵ月[4.2~6.8]、HR:0.50[0.40~0.63]、p<0.0001)。・HR+患者のOS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群NE(95%CI:20.8~NE) vs.TPC群19.9ヵ月(16.7~NE)、HR:0.69(0.42~1.11)であった(全体集団では23.9ヵ月[20.8~24.8] vs.17.5ヵ月[15.2~22.4]、HR:0.64[0.48~0.86]、p=0.0028)。・全患者(HR+およびHR-)のOS中央値は、アジア人集団ではT-Dxd群NE(95%CI:21.7~NE) vs.TPC群19.9ヵ月(15.7~NE)、HR:0.61(0.39~0.95)であった(全体集団では23.4ヵ月[20.0~24.8] vs.16.8ヵ月[14.5~20.0]、HR:0.64[0.49~0.84]、p=0.0010)。・T-Dxd群の治療中に発現したGrade3以上の有害事象は、全体集団で52.6%、アジア人集団で59.2%であった。アジア人集団で多かったものは、好中球減少症16.3%、貧血12.9%、白血球減少症11.6%などであった(全体集団ではそれぞれ13.7%、8.1%、6.5%)。・T-Dxd群におけるILDは、全体集団で45例(12.1%)、アジア人集団で21例(14.3%)、日本人集団で15例(26.8%)報告された。アジア人集団においてはGrade4/5の報告はなく、日本人集団においてはGrade3以上の報告はなかった。 これらの結果より、鶴谷氏は「HER2低発現の乳がん患者を対象としたDESTINY-Breast04試験のアジア人サブグループ解析において、全体集団と同様にT-DXd群ではTPC群と比較して臨床的に意義のあるPFSおよびOSの延長が認められた」としたうえで、安全性については「両群の安全性プロファイルも全体集団と一致していた。ILDはアジア人集団ではGrade4/5の報告はなかったものの、日本人集団では頻度が高い傾向にあり、注意深いモニタリングが必要」とまとめた。

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転移性去勢抵抗性前立腺がんでPARP阻害薬rucaparibは有効(解説:宮嶋哲氏)

 rucaparibはポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であり、第II相試験ではBRCA遺伝子変異を伴う転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者で高い活性を示した。本研究は、BRCA1、BRCA2、またはATM変異を伴うmCRPC患者において、第2世代アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)治療後に病勢進行を認めた患者に対して、rucaparib、もしくはドセタキセルまたは第2世代ARPIを2:1で割り付けたランダム化第III相試験(TRITON3試験)である。主要評価項目は画像評価によるPFSである。 スクリーニングを受けた4,855例のうち、270例がrucaparib投与群、135例が対照群に割り付けられた。各群でのBRCA変異症例は201例、101例に認められた。62ヵ月時点でのPFSは、BRCA変異サブグループ解析でrucaparib投与群11.2ヵ月、対照群6.4ヵ月であり(ハザード比[HR]:0.50)、ITTグループ解析では各々10.2ヵ月、6.4ヵ月であり(HR:0.61)いずれの解析でもrucaparibはPFSを延長した。一方、ATM変異患者での探索的サブグループ解析では、両群間に有意差を認めなかった。副作用に関しては、rucaparibは疲労感、嘔気、貧血を呈しやすいが、症状が重篤な場合は投与中断、または投与減量で対処するのが妥当と考えられた。 現在、BRCA変異を伴うmCRPC患者において使用可能なPARP阻害薬はオラパリブのみであるが、加えてrucaparibが有効な治療選択肢になりうる可能性が示唆された。ただし、OSに関する報告は未着であり、本試験の今後の推移に注目したい。また、本試験は単剤療法による解析であり、今後は他薬剤との併用効果に期待したい。

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化学療法、女性は午後に受けると効果が高い

 体内時計機能を勘案し、投薬時間を調節するクロノセラピー(時間治療)の考え方は以前より提唱されており、大腸がんなどにおいて一定の効果が報告されている1)。しかし、その後の試験に一貫性がないため、日常臨床を変えるには至っていない。今回、造血器腫瘍の成人患者におけるクロノセラピーの効果を検討した、韓国科学技術院のDae Wook Kim氏らによる研究結果がJCI Insight誌2022年12月号に掲載された。 研究者らは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者を2つのコホートに分け、午前または午後に化学療法を行った。DLBCLを対象としたのは、1)リツキシマブ+シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン(R-CHOP療法)が唯一の治療選択肢であるために交絡因子が無視でき、治療結果はほとんど免疫化学療法の有効性と毒性に依存する、2)患者の3割が再発しており、より優れた治療戦術が必要、3)ヒトまたは動物実験においてシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンの忍容性および抗腫瘍効果に概日変化があるとの報告がある、などの理由による。 2015年1月~2017年8月の間にソウル大学病院およびソウル大学盆唐病院の化学療法センターでR-CHOP療法を受けた成人337例を対象とし、午前または午後にR-CHOP療法を行った。その後、治療終了時に完全寛解を達成した生存コホート129例を対象に有害事象の解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ECOG performance-status(PS)、R-IPIスコア、診断時年齢中央値(61歳[四分位範囲:27~77])に群間差はなかった。全例がPS<2の比較的良好な状態に分類され、約半数がStageIII~IVで、その構成も各群同様であった。・無増悪生存期間(PFS)は、女性患者において、午前投与群は午後投与群に比べ有意に短かった(ハザード比[HR]:0.357、p=0.033)。女性患者において、午前投与群は午後投与群に比べ病勢進行の頻度が高かった(33.3% vs.13.9%、p=0.040)。・同様に、女性患者において、午前投与群では午後投与群より多くの死亡が認められた(19.6% vs.2.8%、p=0.020)。最も一般的な死因は病勢進行であった。その結果、午前投与群は午後投与群と比較して全生存期間(OS)が短かった(HR:0.141、p=0.032)。・午前群の女性患者では、投与量が減少した(シクロホスファミド10%、p=0.002、ドキソルビシン8%、p=0.002、リツキシマブ7%、p=0.003)。これは主に感染症と好中球減少症に起因するもので、午前群は午後群と比較して、感染症(16.7% vs.2.4%)と発熱性好中球減少症(20.8% vs.9.8%)の発生率が高かった。 研究者らは「クロノセラピーの効果に性差があることは、循環白血球と好中球の日内変動が男性より女性のほうが大きいことで説明できる」としている。

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