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1.

ベジタリアン家庭の幼児の成長が阻害される可能性は低い

 菜食主義(ベジタリアン)の家庭に生まれた子どもに、発育上の問題が現れる可能性は高くないことが報告された。出生体重は非菜食主義(雑食)の家庭の新生児よりも低く有意差が認められるものの、2歳時点での体重の差は有意ではなくなるという。ネゲヴ・ベン・グリオン大学(イスラエル)のKerem Avital氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月5日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「われわれの研究結果は、適切な環境であれば、植物性食品中心の食事は乳児の発育を損なわないことを示している」と述べている。 この研究の背景として著者らは論文の中で、植物性食品を重視する食生活は西側諸国で一般的になりつつあり、心臓病やその他の健康リスクの低下と関連付けられていると指摘。しかし、その一方で、特にビタミンB12、鉄分、ヨウ素、ビタミンD、カルシウム、長鎖オメガ3脂肪酸に関しては、妊娠中や乳幼児期に十分な量を摂取できているのかという懸念が依然として指摘されている。 研究には、イスラエルの子どもの約70%の発育状況が記録されている同国保健省の追跡データのうち、2014~2023年の記録が用いられた。在胎32週以降に出生した単胎児119万8,816人(平均在胎期間39.2±1.5週、男児53.2%)を解析対象とした。なお、重度の先天性疾患を有する子どもや極低出生体重児は対象から除外されている。 全体として98.5%の乳幼児は雑食の家庭で育てられ、1.2%はベジタリアンの家庭、0.3%はビーガン(完全菜食主義)の家庭で育てられていた。解析の結果、食事スタイルにかかわらず、どの家庭の子どもの成長パターンも類似したものだった。 具体的には、出生体重については雑食家庭の新生児が3.3±0.5kgであるのに対して、ベジタリアンやビーガン家庭の新生児はいずれも3.2±0.5kgであり有意に低かった。また生後60日時点で低体重であることの調整オッズ比(aOR)は、雑食家庭を基準としてベジタリアン家庭では1.21(95%信頼区間1.11~1.32)、ビーガン家庭では1.37(同1.15~1.63)だった。 しかし、この差は時間とともに縮小し、2歳時点での発育不全の割合は、雑食3.1%、ベジタリアン3.4%、ビーガン3.9%であり、有意差はなかった。また2歳時点では、低体重や過体重の有意差も認められなかった(低体重のaORはベジタリアンが0.80〔0.55~1.15〕、ビーガンは1.06〔0.50~2.23〕、過体重は同順に1.01〔0.86~1.18〕、0.91〔0.61~1.35〕)。 著者らは、「これらの研究結果はビーガン食であっても乳児の成長を阻害しないことを示唆している。しかし、妊娠中の母親や乳児期の子どもの栄養に関する指導が、子どもたちの発育をどのようにサポートし得るかを明らかにするために、さらなる研究が必要とされる」と結論付けている。

2.

日本の心房細動患者、1年後の死亡・脳卒中・血栓塞栓症の発生率は?

 日本の心房細動患者は、経口抗凝固薬の使用率が81%と高く、1年後の全死亡率は0.1%と低く、脳卒中/血栓塞栓症の発生率も0.1%と低いことが、APHRS-AFレジストリ(Asia-Pacific Heart Rhythm Society Atrial Fibrillation Registry)の日本人における1年時の解析で示された。日本医科大学の淀川 顕司氏らがJournal of Arrhythmia誌2026年2月8日号で発表した。 APHRS-AFレジストリはアジアの大都市圏における前向き研究で、心房細動患者のベースライン特性、治療、臨床アウトカムについて重要な情報を提供する。今回、本レジストリに登録された日本人患者の1年間の追跡調査データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された4,666例のうち、794例が2015~17年に日本の主な循環器センター28施設から登録された。平均年齢は65.7歳、男性が69.0%で、主な併存疾患は高血圧(37.5%)、脂質異常症(29.0%)、心不全(15.9%)、糖尿病(15.0%)であった。平均CHADS2スコアは1.0、CHA2DS2-VAScスコアは2.0、HAS-BLEDスコアは1.1であった。・登録時の経口抗凝固薬の使用率は81%で、そのうち7%がビタミンK拮抗薬、74%が直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を処方されていた。患者の57.8%がカテーテルアブレーション施行予定であった。・1年間の追跡調査を実施した743例において、1年全死亡率は0.1%(1例、心不全)で、脳卒中/血栓塞栓症発生率も0.1%(1例、肺塞栓症)であった。大出血イベントは0.7%(5例[頭蓋内出血3例、下部消化管出血1例、軟部組織出血1例])に認められた。

3.

お酢の摂取が多いと肥満予防につながる可能性/藤田医科大

 「酢」の摂取は一般的に健康に良いとされているが、摂取の効果について年齢や性別などでタンパク質やビタミンとどのように関連するのだろうか。このテーマについて、藤田医科大学医学部臨床栄養学の和田 理紗子氏らの研究グループは、酢酸摂取量と年齢・性別との関連を検証した。その結果、酢酸摂取量が多い人は炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向だったことが示唆された。この研究結果はNutrients誌2026年1月19日号に掲載された。お酢の摂取は男性と高齢者で多い傾向 研究グループは、食事記録アプリ「あすけん」で20~69歳の日本人1万2,074人の食事データを収集・分析した。二要因分散分析により、酢酸摂取量に対する年齢、性別、およびそれらの交互作用の影響を評価した。また、多重線形回帰分析により、酢酸摂取量と栄養素摂取量との関連性を検討した。モデル1では年齢と性別を調整し、モデル2ではさらに総エネルギー摂取量を調整した。 主な結果は以下のとおり。・対象は男性3,038人(47.8±11.9歳)、女性9,036人(42.4±11.8歳)だった。・酢酸摂取量は男性および高齢者層で高値を示した(性別:F=11.0、p<0.001/年齢:F=9.1、p<0.001)。・モデル1では、酢酸摂取量はほとんどの栄養素と正の相関を示した。・モデル2では、炭水化物、糖類、でんぷん質、飽和脂肪酸、酪酸と負の関連が認められた(すべてp<0.05)。 この結果から研究グループは、「酢酸摂取量が多い人は、そうでない人と比べ同等のエネルギー摂取量であっても、炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向にあった。これらの結果は、酢酸を含む食事がでんぷん質と飽和脂肪酸の摂取を減少させ、肥満予防に寄与する可能性を示唆している」と結論付けている。

4.

タケノコが血糖管理などの健康維持に役立つ可能性

 タケノコが血糖コントロールをサポートするように働く可能性のあることが報告された。英アングリア・ラスキン大学のLee Smith氏らの研究によるもので、血糖コントロールのほかにも、タケノコには炎症抑制や消化促進、抗酸化作用などの働きがあるという。この研究結果の詳細は「Advances in Bamboo Science」2025年11月発行号に掲載されるとともに、1月14日に同大学からニュースリリースが発行された。 竹は地球上で最も成長の速い植物と考えられていて、種類によっては1日で3フィート(約90cm)近く成長することもある。その豊富さや軽さなどのため、建築や家具製造などに広く用いられている。さらにアジア諸国では、竹の芽(ごく若い竹の茎)であるタケノコが食されていて、一部の地域では食卓に欠かせない食材となっている。 タケノコは脂肪分が少なく、タンパク質、必須アミノ酸、食物繊維が豊富に含まれていて、カリウムやセレンなどのミネラル、および、チアミンやナイアシン、ビタミンB6、A、Eなどのビタミンの含有量も多い。このような特徴に着目して、タケノコの健康効果を検討した研究結果が既に複数報告されている。ただし、それらの報告を統合した解析はまだ行われていない。これを背景にSmith氏らは、タケノコの健康効果に関する現時点のエビデンスを、システマティックレビューによって総括することを試みた。 Medline/PubMedとWeb of Scienceという二つの文献データベースを用いた検索を行い、16件の研究報告を抽出した。ヒトを対象に行われていた4件の研究では、タケノコは糖尿病の管理(血糖コントロールの改善)や心臓病リスクの抑制(コレステロールの低下)につながる可能性が報告されていた。例えば血糖コントロールについては、糖尿病患者にタケノコを加えた食事を食べてもらったところ、食後の血糖値の上昇が穏やかになったことが報告されていた。ほかにも、実験室レベルの検討からは、タケノコには腸の機能を改善する食物繊維が含まれていること、腸内の有益な細菌を増やすこと、体内の抗酸化作用や抗炎症作用を高めることなども示されていた。 これらの健康に対する潜在的なメリットが見られた一方で、研究者らは、タケノコを正しく調理する必要があることを警告している。竹の種類によってはシアン配糖体という毒性のある物質を含むものがあり、生または加熱が不十分なタケノコを食べると、体内でシアン化物が放出されることもあり得るという。また、タケノコは甲状腺ホルモンの生成に影響を及ぼし、不適切な摂取によって甲状腺腫のリスクが高まる可能性を示唆する研究報告もあった。研究者らは、タケノコを食べる際にはまずゆでておき、それから調理することで、こうしたリスクを回避できると述べている。 論文の上席著者であるSmith氏は、「アジアで広く食べられているタケノコは、世界中の人々の健康的で持続可能な食生活の維持に利用できる可能性を秘めている。ただし、正しく調理する必要がある」としている。また、「今回のレビューでは、ヒトを対象とした研究はわずか4件だった。よって、タケノコ摂取に関する確かな推奨を提示する前に、ヒトを対象とした質の高い研究をさらに行う必要がある」と付け加えている。

5.

PCOS、体外受精前のビタミンD補充で出生率は向上せず/BMJ

 体外受精を予定している多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者において、ビタミンD補充(4,000 IU/日)の最長90日間の継続は、プラセボと比較して血清中25-ヒドロキシ(OH)ビタミンD濃度(25-OHD)を上昇させるものの、初回胚移植後の出生率は改善しなかった。中国・浙江大学のKai-Lun Hu氏らVitD-PCOS trial groupが、同国の不妊治療センター24施設において実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。観察研究では、PCOSの女性におけるビタミンD欠乏と生殖アウトカム不良との関連が一貫して示されており、先行研究でビタミンD補充が体外受精に有益な効果をもたらす可能性があることが小規模な検出力不足の臨床試験において示唆されていた。今回の結果は、体外受精を受けるPCOSの女性における補助療法としてのビタミンD補充の日常的な使用に疑問を投げ掛けるものである。BMJ誌2026年2月17日号掲載の報告。体外受精を予定しているPCOS患者が対象、ビタミンD補充とプラセボに無作為化 研究グループは、ロッテルダム基準に基づきPCOSと診断され、自己卵子での体外受精を予定している20~42歳の患者を、ビタミンD群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。3回以上の体外受精失敗歴がある女性などは除外した。 ビタミンD群では、体外受精開始前からトリガー日まで最大90日間、ビタミンDを 4,000 IU/日(1カプセル当たり800 IU、1日1回5カプセル)投与した。プラセボ群では同期間、プラセボカプセルを1日1回5カプセル投与した。 主要アウトカムは初回胚移植後の生児出生、副次アウトカムはトリガー日および妊娠検査日における血清25-OHDおよび妊娠アウトカムなど、安全性アウトカムは中等度または重症卵巣過剰刺激症候群などであった。生児出生率は52.0%vs.50.2%で有意差なし 2020年10月15日~2022年2月19日に1,272例がスクリーニングされ、876例が無作為化された。このうち、同意撤回などを除く865例が解析対象集団となった(ビタミンD群435例、プラセボ群430例)。 ベースラインの血清25-OHD平均値はビタミンD群16.5±7.2ng/mL、プラセボ群16.1±6.7ng/mLで、トリガー日にはビタミンD群がプラセボ群より有意に高値であった(32.3±11.2ng/mL vs.18.2±7.6ng/mL、補正後平均群間差:13.6、95%信頼区間[CI]:10.9~16.3)。 主要アウトカムである生児出生数は、ビタミンD群で226例(52.0%)、プラセボ群で216例(50.2%)であった(補正後リスク比:1.03、95%CI:0.91~1.18)。 妊娠検査陽性率、臨床妊娠率、妊娠継続率、ならびに無作為化後6ヵ月時および12ヵ月時の累積生児出生率に、両群間で統計学的な有意差は認められなかった。 重症の卵巣過剰刺激症候群は、ビタミンD群で3例、プラセボ群で6例に発生した(補正後リスク群間差:-0.7%、95%CI:-2.0~0.6)。

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多発性硬化症〔MS:multiple sclerosis〕

1 疾患概要■ 定義多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は、脳・脊髄・視神経からなる中枢神経系に炎症性脱髄が生じる慢性疾患である。病変は時間的多発性(再発)と空間的多発性(中枢神経系のさまざまな場所に病変が生じる)であることを特徴とする。自己免疫機序が病態の中心であると考えられているが、近年は神経変性機序の関与も推定されている。■ 疫学MSは若年成人に多く、20~40代で発症することが多い。女性に多く、高緯度地域で発症率が高い(わが国では北海道に多く、沖縄では少ない)。世界中で約300万人の患者が存在すると推定されている。従来は欧米に多い疾患とされてきたが、近年はアジア地域でも患者数が増加しており、わが国でも有病率は上昇している。診断技術の進歩に加え、環境因子の変化が背景にあると考えられている。■ 病因MSは遺伝的要因と環境因子が組み合わさって発症する多因子疾患である。特定の免疫関連遺伝子が発症リスクに関与する一方で、遺伝要因のみで発症が決まるわけではない。環境因子としては、ビタミンD不足、喫煙、肥満などが知られている。近年、Epstein-Barr virus(EBV)感染がMS発症と強く関連することが示され、免疫異常を引き起こす重要な因子と考えられている。■ 症状MSの症状は多彩であり、病変部位によって異なる。代表的な症状には、視力低下や眼痛(視神経炎)、手足のしびれや脱力、歩行障害、ふらつき、排尿障害などがある。また、易疲労感、疼痛、抑うつ、集中力低下など、外見からわかりにくい症状も多く、患者の日常生活や就労に大きな影響を与える。これらは看護師や薬剤師が関わるケアの場面でとくに重要な視点である。■ 分類MSは臨床経過により以下に分類される。1)再発寛解型(RRMS)再発と寛解を繰り返しながら少しずつ後遺症が蓄積する病型で、最も頻度が高い2)2次進行型(SPMS)RRMSの経過の後に、徐々に再発とは無関係の障害進行(progression independent of relapse activities:PIRA)が生じるようになった病型3)1次進行型(PPMS)発症初期からPIRAを認める病型、まれである以上の病型の理解は、治療方針を考えるうえで重要である。■ 予後現在は治療薬の進歩により、MSの長期予後は大きく改善している。しかし、PIRAの治療は開発途上にあるために、早期診断と治療介入が予後改善には重要である。近年は、治療初期から高い有効性を有する薬剤を導入する“early high-efficacy treatment(eHET)”の考え方が広まっている1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)MSの診断は除外診断が基本である。とくに視神経脊髄炎スペクトラム障害やMOG抗体関連疾患は臨床像が類似するため、鑑別が重要である。ほかにも鑑別すべき疾患は多岐にわたり、悪性リンパ腫などの腫瘍性疾患、脳血管障害、膠原病、神経サルコイドーシスや神経ベーチェット病といった炎症性疾患、感染症(梅毒、進行性多巣性白質脳症など)、さらに頸椎症性脊髄症や脊髄空洞症などの脊髄疾患、ミトコンドリア病、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、脊髄小脳変性症などが挙げられる。診断には臨床経過、MRI検査、脳脊髄液検査を総合的に評価するMcDonald診断基準が用いられる。本基準の本質は「炎症性脱髄病変が時間的・空間的に多発していること」を確認する点にある。2024年改訂では早期診断を支援する内容が加えられたが、診断はあくまで臨床判断を補助するものであり、慎重な運用が求められる2)。3 治療MSの治療は、再発時に行う急性期治療と、再発や進行を予防する病態修飾療法に大別される。急性期には副腎皮質ステロイドの大量静注療法(ステロイドパルス療法)が行われる。効果が不十分な場合には血漿交換療法が選択されることもある。再発や障害進行を抑えるため、維持期には病態修飾薬が使用される。近年では有効性の高い薬剤が増えており、早期から治療を開始することの重要性が強調されている。わが国で承認されている主要な病態修飾薬を表にまとめる。服薬管理、副作用モニタリング、多職種による支援が治療継続に不可欠である。表 MSの主要な病態修飾薬画像を拡大する4 今後の展望現在、新しい作用機序をもつ治療薬や、より精度の高い画像診断・血液バイオマーカーの研究が進行している。また、EBVを標的とした治療やワクチン研究も注目されており、将来的には個別化医療の実現が期待される。近年、MSの診療は、再発抑制を主目的とした治療から、PIRAの抑制を含む長期的な機能予後改善を目指す方向へと大きく変化している。この流れの中で、治療および診断の両面で新たなアプローチが研究・開発されている。治療分野では、Bruton型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬が新たな病態修飾療法として注目されている。BTK阻害薬は、B細胞の活性化や抗原提示機能を抑制するだけでなく、中枢神経内のミクログリア活性化を抑制する作用を併せ持つ点が特徴である。現在、RRMSに加え、SPMSやPPMSを対象とした第III相臨床試験が進行中であり、既存治療では十分に抑制できなかった進行性病態への効果が期待されている。とくに、PIRAに対する治療選択肢としての位置付けが注目されている。診断分野においては、疾患特異性や病勢評価を高める新たなバイオマーカーの研究が進展している。MRIでは、central vein sign(CVS)やparamagnetic rim lesion(PRL)といった所見が、MSに特徴的な病態を反映する補助的画像指標として注目されている。これらは鑑別診断や慢性活動性病巣の評価に有用である可能性が示されている。一方、体液バイオマーカーとしては、血清・髄液中の神経フィラメント軽鎖(NfL)やκフリーライトチェーン(κFLC)が、疾患活動性や予後予測の指標として臨床応用に近付いている。今後は、これらの新規治療薬および診断技術を組み合わせることで、疾患活動性・進行リスクに基づく層別化医療や個別化治療がより現実的になると考えられる。MS診療は、再発を抑制する医療から、長期的な障害蓄積を最小限に抑える医療へと進化しており、今後も基礎研究と臨床研究の橋渡しが重要となる。5 主たる診療科主な診療科は脳神経内科であるが、眼科、泌尿器科、リハビリテーション科、精神科などとの連携が重要である。看護師・薬剤師を含めた多職種チーム医療が不可欠である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報難病情報センター 多発性硬化症/視神経脊髄炎  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本神経学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品医療機器総合機構(PMDA)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)MSキャビン(MSCABIN)(多発性硬化症の総合情報サイト:情報共有、患者・支援者向け知識ベース)MS International Federation(国際疫学、研究動向、教育・啓発リソースなど医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本多発性硬化症協会(患者とその家族および支援者の会)1)Rotstein D, et al. Nat Rev Neurol. 2019;15:287-300.2)Montalban X, et al. Lancet Neurol. 2025;24:850-865.公開履歴初回2026年2月20日

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ホールフード食、食べる量は増えても摂取カロリーは減少

 未加工の食品を丸ごと食べる「ホールフード食」は、たくさん食べても体重を減らせる可能性の高いことが、新たな研究で示された。2週間にわたりホールフードのみで構成された食事(以下、ホールフード食)を取った人は、超加工食品を中心とする食事(以下、超加工食品食)のみを食べていた人と比べて食事の摂取量が57%も多かったが、食事からの摂取カロリーは1日当たり平均330kcal少なかったという。英ブリストル大学実験心理学教授のJeff Brunstrom氏らによるこの研究の詳細は、「The American Journal of Clinical Nutrition」に12月29日掲載された。 この研究では、超加工食品食とホールフード食の影響を比較した2019年の画期的な臨床試験のデータが再解析された。この試験の参加者は、2週間にわたって超加工食品食とホールフード食のいずれかを取り、その後、もう片方の食事を2週間にわたって取った。その結果、いずれの食事もカロリーが同じになるよう調整されていたにもかかわらず、超加工食品食を取っていた期間には1日の総カロリー摂取量が平均508kcal多いことが示された。また、同期間には体重が約0.9kg増えていたが、ホールフード食の期間には約0.9kg減少していた。 今回の事後解析でBrunstrom氏らは、ホールフード食の期間に参加者が実際に何を食べていたのかを詳しく調べた。その結果、ホールフード食に割り付けられていた期間には、全ての参加者が大量の果物や野菜を食べることを選び、1食で数百グラム食べることもあったことが分かった。ホールフード食の期間には超加工食品食の期間と比べて、飲料を除く食事の摂取量が1日当たり平均57%(726gに相当)多かった一方で、飲料を除く食事からのカロリー摂取量は平均15.3%(330kcalに相当)少なかった。 Brunstrom氏らによると、参加者が摂取したさまざまな種類の大量の果物や野菜には、より高カロリーのホールフードを選んでいた場合には十分に得られなかった必須ビタミンやミネラルが含まれていたという。共著者の1人であるマギル大学(カナダ)のMark Schatzker氏は、「もし参加者が高カロリー食品だけを食べていたら、いくつかの必須ビタミンやミネラルが不足し、最終的には微量栄養素欠乏に陥っていたかもしれない。その微量栄養素の不足は、低カロリーの果物や野菜によって補われていたのだ」と述べている。 研究グループは、「この結果は、人間には生来、食品の選択に影響する『栄養知能』が備わっている可能性を示唆している」と説明している。Brunstrom氏は、「今回の研究から、未加工の食品の選択肢が与えられると、人々は直感的に食べる喜びと栄養、満腹感のバランスが取れた食品を選び、同時に全体的なエネルギー摂取量は減ることが示された。これは極めて興味深い」と言う。 栄養知能は超加工食品の中から食品を選ぶ場面でも働いていたが、悪い方向に影響していた。研究参加者は、しばしばビタミン強化食品を通じて微量栄養素の必要量を満たす食品を選んでいたが、そのような食品は同時にカロリーも極めて高かった。例えば、ビタミンAを最も豊富に含む超加工食品は、フレンチトースト・スティックやパンケーキといった高カロリー食品だった。一方、ホールフード食の場合には、多くの参加者が低カロリーのニンジンやホウレンソウからビタミンAを摂取していた。 論文の上席著者であるブリストル大学のAnnika Flynn氏は、「このことは、超加工食品から大量のエネルギー(カロリー)と微量栄養素が同時に提供されることで、カロリーと栄養素の間の有益なトレードオフが無効になり、カロリー過多を引き起こす可能性があることを示している。対照的に、ホールフードはこの健康に有益なバランスを保つ働きを促し、パスタや肉といった高エネルギーの食品よりも、果物や野菜のような微量栄養素が豊富な食品を優先して選ぶよう人々を導くのだ」と述べている。(HealthDay News 2026年1月20日)

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食事からの重金属摂取は2型糖尿病の発症因子か/国立環境研

 糖尿病の発症には、遺伝、環境、生活習慣因子などさまざまな原因がある。とくに食生活において海産物を多く摂取する日本人は、魚介類からごく微量の重金属も摂取している可能性がある。こうした重金属の摂取が、2型糖尿病の発症のリスク因子となるのであろうか。このテーマに関し、国立健康危機管理研究機構 臨床研究センター 疫学・予防研究部の伊東 葵氏らの研究グループは、健康診断の血液サンプルを用いて、水銀、鉛などと2型糖尿病発症との関連性を検討した。その結果、血清水銀濃度が高いほど2型糖尿病のオッズ比が高いことが判明した。この結果は、Clinical Nutrition誌2026年2月号に掲載された。水銀が2型糖尿病発症のリスク因子になる可能性 研究グループは、血清中の水銀、鉛、カドミウム、ヒ素と2型糖尿病発症との関連性を明らかにすることを目的に、2008~09年に人間ドックを受けた日本人勤労者4,754例を対象としたネステッドケースコントロール研究を行った。研究では、カドミウム、鉛、水銀、ヒ素濃度を誘導結合プラズマ質量分析法で測定した。2型糖尿病の発症は、5年間の追跡期間中に血漿グルコースやHbA1cが基準を満たした場合、または自己申告により判断した。発生密度法を用い、各症例に対し年齢、性別、ドック受診時期を基準に2例の対照群を無作為にマッチングした結果、2型糖尿病を発症した325例と対照群611例が得られた。その後、条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、各重金属濃度の四分位群ごとに2型糖尿病のオッズ比と95%信頼区間を推定した。 主な結果は以下のとおり。・職業区分、交代勤務、喫煙、飲酒、余暇の身体活動、糖尿病家族歴、BMI、高血圧、および血清中長鎖ω3脂肪酸、ビタミンD、マグネシウム、セレン、鉛、カドミウム、ヒ素濃度を調整後も、血清水銀濃度が高いほど2型糖尿病のオッズ比は高かった。・血清水銀濃度の最低から最高四分位におけるオッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ1(基準値)、1.15(0.70~1.90)、 1.41(0.85~2.36)、1.98(1.13~3.47)だった(P=0.01)。・カドミウム、鉛、ヒ素と2型糖尿病発症との間に関連は認められなかった。 なお、研究グループは、「血中水銀濃度が食事からの摂取量を直接反映するものではなく、水銀曝露あるいは魚摂取と2型糖尿病との関連についてはさらなる研究が必要」と述べている。

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PPI長期使用は本当に胃がんリスクを高めるのか/BMJ

 2023年に発表された3つのメタ解析では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用により胃がんのリスクが約2倍に増加することが示されているが、解析の対象となった文献にはいくつかの方法論的な限界(因果の逆転[プロトパシック バイアス]、症例分類法の違い[方法論的異質性]、Helicobacter pylori[H. pylori]菌感染などの交絡因子の調整不能など)があるため、この結論は不確実とされる。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOnyinyechi Duru氏らは、これらの限界を考慮したうえで、無作為化試験の実施は現実的でないためさまざまなバイアスの防止策を講じた観察研究「NordGETS研究」を行い、PPIの長期使用は胃腺がんのリスク増加とは関連しない可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年1月21日号に掲載された。北欧5ヵ国の人口ベースの症例対照研究 NordGETS研究は、1994~2020年に、北欧5ヵ国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)の各国で前向きに収集されたレジストリデータを用いた人口ベースの症例対照研究(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。 噴門部を除く胃腺がん患者1例に対し、背景因子をマッチさせた対照を10例ずつ5ヵ国の全人口から無作為に抽出した。胃噴門部の腺がんは、PPIの適応症である胃食道逆流症による交絡を回避するために除外した。 曝露は長期(1年超)のPPIの使用とし、診断日(症例)と登録日(対照)の前の12ヵ月間のアウトカムは解析から除外した。PPI使用に関する知見の妥当性と特異性を評価するために、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)の長期(1年超)使用の解析も行った。 主要アウトカムは、胃(非噴門部)腺がんであった。マッチング変数の調整とともに、多変量ロジスティック回帰分析により、国、H. pylori菌治療、消化性潰瘍、喫煙関連疾患、アルコール関連疾患、肥満または2型糖尿病、メトホルミン・非ステロイド性抗炎症薬・スタチンによる薬物療法を調整したオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。H2RAの長期使用も関連がない 胃(非噴門部)腺がん群に1万7,232例(年齢中央値74歳[四分位範囲:65~81]、女性42.4%)および対照群に17万2,297例(74歳[65~81]、42.4%)を登録した。PPIの長期使用は、胃(非噴門部)腺がん群で1,766例(10.2%)、対照群で1万6,312例(9.5%)であった。 最長で26年に及ぶ調査期間中に、PPIの長期使用は胃(非噴門部)腺がんの発症と関連しなかった(補正後OR:1.01、95%CI:0.96~1.07)。粗オッズ比は上昇していたが(1.16、1.10~1.23)、交絡因子(とくにH. pylori菌関連の変量)で調整すると関連性は消失した。 また、H2RAの長期使用も、胃(非噴門部)腺がんのリスク上昇とは関連がなかった(補正後OR:1.03、95%CI:0.86~1.23)。長期使用の利益と不利益を慎重に検討すべき 偽陽性をもたらすエラーの発生源として、(1)胃腺がん診断直前のPPI使用の包含、(2)PPIの短期使用、(3)噴門部腺がん、(4)H. pylori菌関連の変数の調整不足を特定した。 著者は、「本研究の結果は、PPIの長期使用が胃腺がんのリスク増加と関連するとの仮説を支持しない」「バイアスの防止に用いたさまざまな手順のすべてが、潜在的な誤った関連性の発生を防ぐために不可欠であった」「これらの知見は、胃食道逆流症などの適応症の治療でPPIの長期使用を要する患者に安心感をもたらすが、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢や骨粗鬆症、ビタミン・電解質吸収不良などの重篤な病態のリスク増加の可能性が指摘されているため、長期使用の利益と不利益を慎重に検討し、PPI継続の必要性を定期的に再評価する必要があると考えられる」としている。

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納豆が心房細動リスクを下げる?~日本人前向き研究

 大豆食品の摂取量が多いと心血管疾患を予防する可能性があることが報告されているが、心房細動予防においては解明されていない。今回、国立循環器病研究センターのParamita Khairan氏らが、都市部の日本人一般集団を対象とした前向きコホート研究で、大豆食品およびその栄養素(イソフラボン、ビタミンK)における心房細動発症率との関連を調査したところ、女性でのみ、納豆およびビタミンKの摂取量が多いと心房細動リスクが低いことが示された。The Journal of Nutrition誌2026年1月号に掲載。 本研究はベースライン調査時に食物摂取頻度質問票を回答した30~90歳の男女5,278人が対象で、心房細動は12誘導心電図検査、健康診断、医療記録、死亡診断書を用いて診断した。多変量調整Cox回帰分析を用いて、大豆食品(納豆、味噌、豆腐)、大豆、イソフラボン、ビタミンKの残差法によるエネルギー調整摂取量の三分位群における心房細動発症率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・6万6,487人年(平均12.6年)の追跡期間中、心房細動発症が222例であった。・女性では、納豆摂取量が最も少ない群(T1)と比べ、最も多い群(T3)で心房細動リスクが低かった(HR:0.44、95%CI:0.24~0.80)が、男性では関連は認められなかった(T1に対するT3のHR:0.97、95%CI:0.65~1.43)。・味噌については、男性でのみ中程度の摂取量と低い心房細動リスクが関連していた。・ビタミンK摂取量が最も多い三分位群の女性は、最も少ない三分位群と比較して、心房細動リスクが67%減少した(HR:0.33、95%CI:0.15~0.71)。・男女とも、大豆食品全体、豆腐、大豆、イソフラボンの摂取量と心房細動リスクとの関連は認められなかった。

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紅茶は高齢女性の骨の健康に良い可能性

 足の付け根の周辺(大腿骨近位部)の骨折をできる限り防ぎたいという女性が自分で用意できる「処方箋」があるとすれば、それは「コーヒーではなく、紅茶を飲むこと」かもしれない。高齢女性を対象とした10年間にわたる研究で、紅茶を飲む人はコーヒーを飲む人に比べて、わずかながら骨密度(BMD)が高く、骨が強いことが示されたのだ。フリンダース大学(オーストラリア)医学・公衆衛生学部のEnwu Liu氏とRyan Liu氏らによるこの研究の詳細は、「Nutrients」に2025年11月23日掲載された。 この研究では、65歳以上の女性9,704人が10年間追跡され、コーヒーまたは紅茶の摂取とBMDの縦断的な関連が検討された。BMDは、骨がもろくなる病気である骨粗鬆症のリスクを評価するための重要な指標である。コーヒーおよび紅茶の摂取量は、2、4、5、6回目の訪問時に自記式質問票によって繰り返し評価された。また、大腿骨頸部および股関節全体のBMDは、二重エネルギーX線吸収測定法によって繰り返し測定された。 その結果、紅茶を飲む女性では、飲まない女性と比べて股関節全体のBMDがわずかに高いことが明らかになった。一方、紅茶の摂取と大腿骨頸部のBMDとの間に有意な関連は認められなかった。また、コーヒーの摂取と大腿骨頸部および股関節全体のBMDとの間にも有意な関連は認められなかったが、1日5杯を超えるコーヒーの摂取はBMDの低下と関連する可能性が示唆された。さらに、生涯のアルコール摂取量が多い女性はコーヒーの悪影響を受けやすい可能性があることや、紅茶の有益な効果は肥満の女性でより強く現れる可能性があることも示された。 研究グループは、紅茶の摂取と非摂取との間で見られたBMDの差はわずかであったことを認めつつも、統計学的には有意であったと説明。そのため、わずかな差でも、より大きな人口集団の健康を考慮すると重要な意味を持つ可能性があるとの見解を示している。 Enwu Liu氏は、「適量のコーヒーは安全であると考えられるが、摂取量が多過ぎるのは理想的とはいえないかもしれない。特に飲酒の習慣がある女性では注意が必要だ」とニュースリリースの中で述べている。 骨粗鬆症は年間数百万件の骨折を引き起こす原因となる疾患で、50歳以上の女性の3人に1人が罹患していると推定されている。Enwu Liu氏らは、何十億人もの人がコーヒーや紅茶を飲むことを毎日の習慣にしているため、これらの飲み物が骨に与える影響を理解することは重要であると指摘している。なお、同氏らによると、先行研究では相反する結果が示されているという。また、これほど多くの女性を10年という長期間にわたって追跡した研究は、これまでほぼなかったことも同氏らは付け加えている。 Ryan Liu氏は、お茶には骨量の減少の抑制や骨形成の促進に役立つ可能性のあるカテキンと呼ばれる化合物が豊富に含まれていると説明。「一方、コーヒーに含まれるカフェインは、実験室での研究でカルシウムの吸収や骨代謝を妨げることが示されている」とニュースリリースの中で述べている。ただし、その影響はわずかであり、ミルクを加えることで相殺される可能性があるとも付け加えている。 Enwu Liu氏は、今回の研究の結果について、「女性はコーヒーをやめたり、お茶を大量に飲み始めたりする必要があることを意味しているわけではない」と強調している。その上で同氏は、「カルシウムとビタミンDが骨の健康に不可欠なものであることに変わりはないが、普段飲んでいるカップの中身も影響する可能性がある。高齢女性にとって、いつもの1杯のお茶は単なる心安らぐ習慣にとどまらず、骨を強くするための小さな1歩になるかもしれない」と述べている。

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抗菌薬による末梢神経障害【1分間で学べる感染症】第37回

画像を拡大するTake home message一部の抗菌薬・抗真菌薬は末梢神経障害を引き起こす可能性があり、とくに慢性使用時や高用量使用時には、そのリスクを念頭に置いた処方・モニタリングが重要であることを理解しよう。抗菌薬の使用中に、患者から「手足がしびれる」「足裏の感覚が鈍い」といった訴えがあった場合、まず考慮すべきは「薬剤性末梢神経障害(drug-induced peripheral neuropathy)」です。とくに抗菌薬を長期投与する機会の多い免疫不全、結核、真菌感染症の患者では、強く意識しておくことが重要です。今回は、抗菌薬による末梢神経障害の頻度や経過に着目して、代表的な薬剤を整理していきましょう。抗菌薬ごとの特徴と注意点メトロニダゾール抗嫌気性菌治療で広く使われる薬剤であり、高用量での長期使用(4週間で42g以上)では末梢神経障害が比較的高頻度で報告されています。症状は亜急性で、用量調整と早期中止により改善するといわれますが、一部の患者では長期間持続することがあります。イソニアジド結核治療の第1選択薬ですが、ビタミンB6(ピリドキシン)欠乏により末梢神経障害を起こすことがあります。ビタミンB6を併用することで発症頻度は大きく低下しますが、常に可能性を念頭に置いておくことが重要です。リネゾリドグラム陽性球菌に対する治療薬として使用されますが、2週間以上の使用で30%前後の頻度で神経障害が生じると報告されており、比較的頻度が高い抗菌薬として押さえておく必要があります。エタンブトール視神経障害のイメージが強い薬剤ですが、まれに末梢神経障害も報告されており、とくに高齢者や腎機能低下例では注意が必要です。フルオロキノロン系非常にまれながら感覚障害、異常感覚といった末梢神経障害が発現することが知られています。腱障害(腱炎や腱断裂、アキレス腱が多い)と併せて理解しましょう。ジアフェニルスルホン(ダプソン)ハンセン病やニューモシスチス肺炎の予防に使われる薬剤で、亜急性から慢性の経過をとる神経障害が報告されています。トリアゾール系抗真菌薬ボリコナゾールを中心に、慢性使用で神経毒性のリスクが上昇することが示唆されています。ボリコナゾールでは幻覚、高濃度で中枢神経障害も併せて覚えるようにしましょう。クロラムフェニコール現在では使用頻度が低い薬剤ですが、慢性的な神経毒性の報告があるため、投与機会がある場合には注意が必要です。末梢神経障害は、患者のQOLを大きく損なう副作用にもかかわらず、原因が特定されにくく、かつ進行性である可能性がある点で非常に重要です。上記の抗菌薬を継続している患者では、常に末梢神経障害のリスクを念頭に置き、出現した際には中止あるいは変更を検討します。1)Mauermann ML, et al. JAMA. 2025 Nov 17. [Epub ahead of print]

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1月9日 風邪の日【今日は何の日?】

【1月9日 風邪の日】〔由来〕寛政7(1795)年の旧暦の今日、第4代横綱で63連勝の記録を持つ谷風 梶之助が風邪で亡くなったことに由来して制定。インフルエンザや風邪が流行する季節でもあることから、医療機関や教育機関で風邪などへの予防啓発で周知されている。関連コンテンツ今冬のインフルエンザ診療のポイント【診療よろず相談TV】急性呼吸器感染症の5類位置付けに関するQ&A【患者説明用スライド】風邪や咳症状に対する日本での市販薬使用状況は?「風邪のときのスープ」に効果はある?風邪予防にビタミンDは効果なし?~メタ解析

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新生児に対するビタミンK投与を拒否する親が増加傾向

 米国では、1961年に全ての新生児に対するビタミンKの筋肉内投与が開始されて以来、ビタミンK欠乏性出血症がほぼ解消された。ビタミンKは、血液凝固を助ける目的で投与される薬剤であり、ワクチンではない。しかし新たな研究で、近年、新生児へのビタミンK注射を拒否する親が増えていることが明らかにされた。研究グループは、注射の拒否により新生児が深刻な出血リスクにさらされる可能性があると警告している。米フィラデルフィア小児病院の新生児専門医であるKristan Scott氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Association(JAMA)」に12月8日掲載された。 この研究でScott氏らは、2017年から2024年の間に米国50州にある403カ所の病院で、妊娠35〜43週で生まれた509万6,633人の新生児の医療記録を調べた。その結果、全体の3.92%に当たる19万9,571人がビタミンKの注射を受けていないことが明らかになった。注射を受けていない新生児の割合は、2017年の2.92%から2024年の5.18%へと有意に増加しており、特に新型コロナウイルス感染症パンデミック以降に急増していた。この結果についてScott氏は、「増加自体は驚くことではないが、増加の大きさには驚いた」とNBCニュースに語っている。 新生児のビタミンK体内濃度は非常に低い。米疾病対策センター(CDC)によると、ビタミンKの投与を受けない場合、危険な出血を起こす可能性が80倍以上高くなるという。出血は、生後6カ月までの間にあざや内出血などの形で現れる可能性があり、最も重篤な場合には障害や死亡につながる脳出血が生じることもある。 このことを踏まえてScott氏は、「われわれは、出血リスクのある新生児の集団を作り出しているに等しい。本当に心配なのは脳出血、つまり脳卒中だ。脳出血が起こると、最終的には死に至る可能性がある」と話している。 専門家らは、オンライン上の誤情報やビタミンK注射とワクチンの混同が、こうした傾向の根底にあるのではないかと疑っている。この研究には関与していない米テキサス小児病院の新生児科医であるTiffany McKee-Garrett氏は、「親は、ビタミンK注射をワクチン接種と同等に捉えている」とNBCニュースに語っている。 一部の国では、新生児に経口ビタミンKを投与している。しかし医師らは、経口ビタミンKは信頼性が低く、場合によっては複数回投与する必要があるのに対し、ビタミンKの注射は1回の投与で効果があるとしている。 米NYC Health + Hospitalsの新生児科医であるIvan Hand氏は、「ビタミンK欠乏性出血症は予防可能であり、そもそも発生していること自体が問題だ」と話す。医師らは、現状のようなビタミンK投与が拒否される状態が続けば、出血イベントの発生数が増加する可能性が高いとの見方を示している。Hand氏は、「ビタミンK投与は極めて効果的であるが、人々はそのことを十分に理解していない。重度の出血を起こした乳児を見たことがないため、そのようなことは起こらないと思っているのだ。しかし、それが見られないのは、われわれがそうした乳児の治療をしているからだ」と話している。

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多発性硬化症と口腔内細菌の意外な関係、最新研究が示す病態理解の可能性

 多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の神経線維を包むミエリンが自己免疫反応によって障害される希少疾患で、視覚障害や運動麻痺、感覚障害などさまざまな症状を引き起こす。最新の研究で、MS患者の口腔内に存在する特定の歯周病菌、Fusobacterium nucleatum(F. nucleatum)の量が、病気の重症度や進行に関わる可能性が示された。研究は、広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の内藤裕之氏、中森正博氏らによるもので、詳細は11月3日付で「Scientific Reports」に掲載された。 MSの発症には遺伝的素因に加え、ウイルス感染や喫煙、ビタミン欠乏などの環境因子が関与すると考えられ、近年は腸内細菌の異常も病態形成に影響することが示唆されている。また、口腔内細菌、特に歯周病菌も中枢神経疾患に影響することが報告されており、慢性的な炎症や免疫応答を介してMSの進行や重症度に関与する可能性がある。これまでに歯周病とMSの関連や、MS患者における特定菌種の増加が報告されているものの、臨床指標や再発・進行との具体的な関連や菌種ごとの差異は不明である。こうした背景を踏まえ著者らは、MSや視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)の患者の舌苔サンプルから歯周病菌量を定量し、臨床特徴やMRI所見との関連、さらに菌種ごとの影響を探索する横断的研究を実施した。 本研究は2023年5~11月にかけて実施され、広島大学病院脳神経内科を受診した15歳以上のMS、NMOSD、MOGAD患者112人が解析対象となった。患者から採取した舌苔サンプルは4種の歯周病菌種 (F. nucleatum、P. gingivalis、P. intermedia、T. denticola)を標的とした定量的PCRを用いて分析した。先行研究に倣い、細菌の総存在量に対する比率が第3四分位数を超える場合「高相対量」と定義された。患者の重症度は総合障害度評価尺度(EDSS)で評価し、スコア4をカットオフとした。 本研究の最終的な解析対象は98人(平均年齢48.6歳、女性77.6%)となった。これらのうち、56人がMS、31人がNMOSD、11人がMOGADとそれぞれ診断された。MS、NMOSD、MOGADで歯周病菌の高相対量に有意差はなく、口腔衛生習慣もほぼ同等であった。 単変量解析により、MS患者における各歯周病菌とEDSSスコアの関係を調べたところ、F. nucleatumの相対量が高いMS患者は、低い患者に比べてEDSSスコアが有意に高く、EDSS ≥4の割合も多かった(61.5% vs 18.6%、P=0.003)。多重比較補正(Benjamini-Hochberg法)を行った後も、MS患者におけるF. nucleatumの高相対量とEDSS ≥4の関連のみが有意であった(P=0.036)。一方、他の歯周病菌の相対量は、EDSS ≥4との有意な関連は認められなかった。また、NMOSDおよびMOGAD患者においても、EDSSスコアと各菌の高相対量との関連は認められなかった。 単変量解析では、MS患者の重症度(EDSS ≥4)に影響を与える要因として、F. nucleatumの高相対量に加え、年齢、MSのサブタイプ、発作回数、罹病期間も示唆された。しかし、これらの因子を考慮した多変量解析では、F. nucleatumの高相対量のみが独立して有意であった(オッズ比10.0、95%信頼区間1.45~69.4、P=0.020)。 著者らは、「本研究は、MS患者において口腔内のF. nucleatum相対量がEDSSスコアと強く関連することを示した。因果関係は示せないが、将来的な研究課題としては、サイトカイン関連機構などの免疫学的メカニズムの解明や、口腔ケアなどの介入による影響の検討が挙げられる」と述べている。 本研究の限界として、単施設の横断的観察研究であり、MS以外の疾患群やF. nucleatum陽性患者が少なくサンプルサイズが限られていたこと、歯周病の臨床評価や抗菌薬使用歴、口腔行動の影響、免疫指標測定が不十分であり、残存交絡や因果関係の推定は困難であったことを挙げている。

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DES留置後1年以上の心房細動、NOAC単剤vs.NOAC+クロピドグレル併用/NEJM

 1年以上前に薬剤溶出ステント(DES)の留置を受けた心房細動患者において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法はNOAC+クロピドグレルの併用療法と比較し、全臨床的有害事象(NACE)に関して非劣性であることが認められた。韓国・Yonsei University College of MedicineのSeung-Jun Lee氏らが、同国32施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検非劣性試験「Appropriate Duration of Antiplatelet and Thrombotic Strategy after 12 Months in Patients with Atrial Fibrillation Treated with Drug-Eluting Stents trial:ADAPT AF-DES試験」の結果を報告した。ガイドラインの推奨にもかかわらず、DES留置後の心房細動患者におけるNOAC単剤療法の使用に関するエビデンスは依然として限られていた。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。第2または第3世代DES留置後1年以上の高リスク心房細動患者が対象 研究グループは、心房細動と診断され、登録の1年以上前に第2世代または第3世代のDESを留置するPCIを受け、CHA2DS2-VAScスコアが2以上の19~85歳の患者を、NOAC単剤療法群またはNOAC+クロピドグレル併用療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 NOACは担当医師の選択としたが、試験ではアピキサバンまたはリバーロキサバンのみを使用した。 主要エンドポイントは、無作為化後12ヵ月時点における全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、全身性塞栓症または大出血もしくは臨床的に重要な非大出血の複合であるNACEで、非劣性マージンは主要エンドポイント発現率の群間差の片側97.6%信頼区間(CI)の上限が3.0%とし、ITT解析を行った。なお、非劣性が認められた場合、主要エンドポイントにおけるNOAC単剤療法の優越性を第1種過誤率4.8%(両側)として検定することが事前に規定された。12ヵ月時のNACE発現率、単剤群9.6%vs.併用群17.2% 2020年4月~2024年5月に計1,283例がスクリーニングされ、このうち960例が無作為化された(単剤療法群482例、併用療法群478例)。平均年齢は71.1歳、女性が21.4%であった。 主要エンドポイントのイベントは単剤療法群で46例(Kaplan-Meier推定値9.6%)、併用療法群で82例(17.2%)に発現し、絶対群間差は-7.6%(95.2%CI:-11.9~-3.3、非劣性のp<0.001)、ハザード比(HR)は0.54(95.2%CI:-0.37~0.77、優越性のp<0.001)であった。 大出血もしくは臨床的に重要な非大出血は、単剤療法群で25例(5.2%)、併用療法群で63例(13.2%)に発現した(HR:0.38、95%CI:0.24~0.60)。大出血の発現率はそれぞれ2.3%および6.1%(HR:0.37、95%CI:0.18~0.74)、臨床的に重要な非大出血の発現率は2.9%および7.1%(0.40、0.21~0.74)であった。

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ビタミンDの個別化投与で心筋梗塞リスクが半減

 成人の心臓病患者では、血中ビタミンD濃度が最適域に達するように患者ごとに用量を調整して投与すると、そうでない場合に比べて心筋梗塞の発症リスクが5割以上低下することが示された。米インターマウンテン・ヘルスの疫学者Heidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)年次総会(Scientific Sessions 2025、11月7〜10日、米ニューオーリンズ)で発表された。 過去の研究では、血中ビタミンD濃度の低下は心臓の健康状態の悪化につながることが示されている。今回のランダム化比較試験(TARGET-D)では、急性冠症候群の成人患者630人(平均年齢63歳、男性78%)を対象に、血中ビタミンD濃度が最適(40ng/mL超〜80ng/mL以下)になるように、患者ごとに用量を調整してビタミンD投与することで、心筋梗塞の再発、脳卒中、心不全による入院、または死亡を予防できるかどうかを検証した。試験参加者の48%に心筋梗塞の既往歴があった。参加者は、3カ月ごとに血液検査で血中ビタミンD濃度を確認して投与量を調整する治療群か、ビタミンD濃度のモニタリングや用量調整を行わない標準治療群のいずれかにランダムに割り付けられた。 この研究手法についてMay氏は、「ビタミンDに関するこれまでの臨床試験では、参加者全員に同量のビタミンDを投与し、事前に血中濃度を確認せずにその潜在的な影響を検証していた」と指摘する。その上で、「われわれの取ったアプローチはこうした研究とは異なる。登録時と研究期間を通して各参加者の血中ビタミンD濃度を確認し、必要に応じて投与量を調整することで、血中ビタミンD濃度を40~80ng/mLの範囲に維持した」と説明している。なお、参加者全体の85%、治療群の52%は試験開始時のビタミンD濃度が40ng/mL未満であり、治療群が最適な血中ビタミンD濃度を達成するためには、FDAの1日当たりの推奨量である800IU(20μg)を大幅に上回る5,000IU(125μg)が必要であったという。 平均4.2年間の追跡期間中に、心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中、死亡を含む主要心血管イベントが107件発生した(治療群15.7%、標準治療群18.4%)。解析の結果、治療群では標準治療群に比べて、心筋梗塞の発症リスクが52%低いことが示された。一方で、死亡、心不全による入院、脳卒中の発生に関しては、両群間で有意な差は認められなかった。 こうした結果からMay氏は、「心臓病に罹患している人は、自分に必要なビタミンDの量を決めるために、血液検査による血中ビタミンD濃度の測定やその投与量について、医療従事者と相談することを勧める」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、心筋梗塞の既往歴がある人とない人の両方に対するビタミンD補充の有効性を検証するには、さらなる臨床試験が必要だと述べている。  なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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ピロリ菌が重いつわりを長引かせる可能性、妊婦を対象とした研究から示唆

 妊娠中の「つわり」は多くの人が経験する症状であるが、中には吐き気や嘔吐が重く、入院が必要になるケースもある。こうした重いつわり(悪阻)で入院した妊婦164人を解析したところ、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)に対する抗体(IgG)が陽性である人は入院が長引く傾向があることが分かった。妊娠前や妊娠初期にピロリ菌のチェックを行うことで、対応を早められる可能性があるという。研究は、日本医科大学武蔵小杉病院女性診療科・産科の倉品隆平氏、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は10月6日付けで「Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載された。 妊娠悪阻は妊娠の0.3〜2%にみられる重度のつわりで、持続する嘔吐や体重減少により入院を要することも多い。進行すると電解質異常や肝・腎機能障害、ビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症(意識障害やふらつきを伴う急性脳症)などを生じることがある。原因としてヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や胎盤容積の大きさなどが知られるが、近年はピロリ菌感染との関連も指摘されている。しかし、日本人妊婦における感染と重症度や入院期間との関係は十分に検討されていない。本研究では、重度妊娠悪阻で入院した症例を対象に、入院時の各種指標とピロリ菌に対するIgG抗体の有無が入院期間に及ぼす影響を後ろ向きに検討した。 本研究では、2011年1月~2023年6月までに日本医科大学付属病院または日本医科大学武蔵小杉病院で入院治療を要した重度妊娠悪阻患者164人が含まれた。患者はまず、抗H. pylori IgG抗体の有無(陽性群 vs 陰性群)に基づき2群に分けられた。その後、すべての患者を長期入院群(21日以上)と短期入院群(21日未満)に分類して、二次解析が行われた。統計手法には、マン・ホイットニーのU検定、t検定、フィッシャーの正確確率検定、ロジスティック回帰分析が適宜用いられた。 解析対象164人中、抗H. pylori IgG抗体陽性の患者は23人(14.0%)、陰性は141人(86.0%)であった。これら2群の入院期間を比較したところ、抗H. pylori IgG抗体陽性群の入院中央値(範囲)は24日(6〜70日)であり、陰性群の中央値15日(2〜80日)と比べて有意に長かった(P=0.032)。 次に長期入院群と短期入院群を比較したところ、長期入院群では尿ケトン体強陽性(3≦)の割合(P=0.036)や抗H. pylori IgG陽性の割合(P=0.022)が有意に高かった。入院時の検査所見を比較すると、長期入院群では血清遊離サイロキシン(FT4)値が有意に高かったが、その他の検査項目に有意差は認められなかった。 多変量ロジスティック回帰分析の結果、単変量解析で有意だった因子を調整後も、入院長期化の独立したリスク因子として確認されたのは抗H. pylori IgG陽性のみであった(オッズ比〔OR〕 4.665、95%信頼区間〔CI〕 1.613~13.489、P=0.004)。尿ケトン体強陽性は入院期間延長の傾向を示したが、統計的有意差は認められなかった(OR 2.169、95%CI 0.97~4.85、P=0.059)。一方、尿ケトン体強陽性の有無で患者を層別すると、陽性群の入院中央値は19日(4〜80日)、陰性群の12日(2〜55日)であり、有意に入院期間が延長されていた(P=0.001)。 著者らは「今回の研究結果から、抗H. pylori IgG抗体の検査で、重度の悪阻で入院が長引きやすい妊婦を特定できる可能性が示唆された。抗体陽性の妊婦は、入院中により注意深く観察されることで、体調管理の助けになると考えられる。また、妊娠前からの準備(プレコンセプションケア)が、悪阻の予防策として有効かもしれない」と述べている。 また、著者らは、妊娠前のピロリ菌スクリーニングや除菌の有効性については現時点では仮説にすぎず、本研究はその可能性を示すにとどまると説明している。今後は、ガイドラインや保険制度の見直しを含め、前向き研究で有効性や費用対効果を検証することが重要だとしている。

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第38回 食卓を支配する「超加工食品」の正体とは? 世界的権威が警告する健康リスクと、今日からできる見分け方

スーパーマーケットやコンビニに並ぶ、色鮮やかで手軽な食品たち。袋を開ければすぐに食べられ、味も見た目にもおいしく、しかも安価だったりします。私たちの生活に欠かせない存在となったこれらの食品ですが、その多くが「超加工食品」と呼ばれるカテゴリーに属することをご存じでしょうか。近年、この超加工食品が私たちの健康に深刻な悪影響を及ぼしているという科学的証拠が次々と明らかになっています。そして今回、医学誌The Lancet誌が、超加工食品に関する大規模な特集シリーズを組み、その健康リスクについて警鐘を鳴らしました1)。本記事では、この最新の論文に基づき、超加工食品とはいったい何なのか、具体的にどのようなリスクがあるのか、そして私たちはどう向き合えばよいのかを考えていきたいと思います。キッチンにはない「謎の成分」が目印? 超加工食品の定義と見分け方まず、私たちが普段口にしている食品は、加工の度合いによって4つのグループに分けられます。これを「Nova分類」と呼びます。 1.未加工・最小限の加工食品 野菜、果物、肉、卵、牛乳など、素材そのものや、乾燥・粉砕・加熱などの単純な加工しかしていないもの 2.加工食材 料理に使う油、バター、砂糖、塩など 3.加工食品 缶詰の野菜、チーズ、焼きたてのパンなど、素材に塩や油を加えて保存性を高めたりおいしくしたりしたもの 4.超加工食品 ここが今回の主役です超加工食品とは、単に加工された食品というわけではありません。最大の特徴は、「家庭のキッチンには通常置いていないような工業的な成分」が含まれていることです。具体的には、カゼイン、乳糖、乳清などの抽出物や、加水分解タンパク質、異性化糖(高果糖コーンシロップ)、硬化油などが挙げられます。さらに、風味を良くしたり、見た目を整えたりするための「化粧品のような添加物」、たとえば香料、着色料、乳化剤、甘味料、増粘剤などがふんだんに使われています。身近な例で言えば、炭酸飲料、スナック菓子、大量生産された袋入りのパン、チキンナゲットなどの再構成肉製品、インスタントスープ、そして「ヘルシー」をうたうダイエットシェイクや一部の植物性代替肉なども、実は多くがこのカテゴリーに含まれます。「ヘルシー」な「超加工食品」がこの世の中にはたくさん存在するのです。しかし、実際には見分け方はシンプルです。パッケージの表側に騙されてはいけません。見分けるには、パッケージの裏側にある原材料名を見る必要があります。もしそこに、あなたの家のキッチンにない、見慣れない名前(たとえば「○○抽出物」「○○色素」「乳化剤」「スクラロース」など)が並んでいたら、それは超加工食品である可能性が高いと言えます。なぜ「超加工」されると体に悪いのか? 栄養バランスだけではない複合的なリスクそれでも、「カロリーや栄養バランスに気をつければ、加工食品でも問題ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、今回の論文は、問題がそれほど単純ではないことを指摘しています。第一に、栄養の質が劇的に低下します。超加工食品の割合が増える食事は、糖分、脂肪、塩分が高くなりやすく、逆に健康維持に不可欠な食物繊維、タンパク質、ビタミン、ミネラルが不足する傾向があります。第二に、「食べ過ぎ」を引き起こす構造になっています。超加工食品は、企業が利益を最大化するために、消費者が「もっと食べたい」と感じるように設計されています。柔らかくて噛む必要があまりない、心地よい食感、絶妙に調整された味と香りなど、私たちの満腹中枢を麻痺させるのです。実際、米国国立衛生研究所(NIH)が行った実験では、栄養価をそろえた食事であっても、超加工食品中心の食事をしたグループは、そうでない食事をしたグループに比べて、1日当たり約500kcalも多く摂取し、体重が増加したというデータがあります。第三に、食品添加物や汚染物質のリスクです。パッケージから溶け出す化学物質や、加工過程で生成される有害物質、そして乳化剤や人工甘味料などが腸内環境(マイクロバイオーム)を乱し、体に炎症を引き起こす可能性が指摘されています。つまり、超加工食品は、単に栄養が偏っているだけでなく、物理的な構造や化学的な組成そのものが、私たちの体のシステムを狂わせる可能性があるのです。がん、心臓病、うつ病まで… データが示す深刻な健康リスクでは、実際に超加工食品を食べ続けると、どのような病気のリスクが上がるのでしょうか。論文では、世界中の100以上の長期的な追跡調査の結果を統合し、解析しています。その結果、超加工食品の摂取量が多いグループは、少ないグループに比べて、以下のような病気のリスクが統計的に有意に高くなることが明らかになりました。 肥満・過体重:リスクが21%増加 2型糖尿病:リスクが25%増加 心血管疾患(心臓病や脳卒中など)による死亡:リスクが18%増加 うつ病:リスクが23%増加 クローン病:リスクが90%増加 全死亡リスク(あらゆる原因による死亡):リスクが18%増加 とくに注目すべきは、これらのリスク上昇の度合いが、健康に良いとされる「地中海食」がもたらす病気予防効果と、ほぼ同程度のインパクト(ただし逆方向、つまり悪影響として)を持っているという点です。つまり、超加工食品を食べることは、健康的な食事のメリットを相殺し、さらにマイナスに突き落とすほどの力を持っていると言えます。ただし、すべての超加工食品が同じように悪いわけではないでしょう。たとえば、全粒粉を使った大量生産のパンやヨーグルトなどは、清涼飲料水や加工肉に比べればリスクが低い可能性があります。しかし、全体として見れば、加工されていない食品(普通のヨーグルトや手作りの肉料理)の方が、超加工されたバージョン(甘味や香料入りのヨーグルトやソーセージ)よりも健康的であるという大原則は変わりません。私たちはどうすればいいのか?この論文の結論として、超加工食品の蔓延は、世界的な慢性疾患の増加の「主要な推進要因」であると断定されています。イギリスやアメリカでは、すでにカロリー摂取量の半分以上が超加工食品で占められています。日本や韓国などのアジア諸国はまだそこまで高くはありませんが、その消費量は年々増加傾向にあります。私たち消費者ができることは、まず「知ること」です。買い物の際、時々パッケージの裏を見て、なじみのない添加物が入っていないか確認することが第一歩です。そして、無理のない範囲で「素材」に近い食品を選び、自宅で調理する頻度を増やすことが、最善の防衛策といえます。もちろん、忙しい現代社会において、超加工食品を完全にゼロにすることは現実的ではないでしょう。しかし、「便利さ」の裏側に、私たちの健康を蝕むリスクが潜んでいることを理解し、日々の選択を少しずつ変えていくことが、自分や家族の未来を守ることにつながるのではないでしょうか。 参考文献・参考サイト 1) Monteiro CA, et al. Ultra-processed foods and human health: the main thesis and the evidence. The Lancet. 2025 Nov 18. [Epub ahead of print]

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進行性家族性肝内胆汁うっ滞症のそう痒治療薬「ビルベイ顆粒200μg/600μg」【最新!DI情報】第51回

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症のそう痒治療薬「ビルベイ顆粒200μg/600μg」今回は、回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬「オデビキシバット水和物(商品名:ビルベイ顆粒200μg/600μg、製造販売元:IPSEN)」を紹介します。本剤は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒の治療薬であり、そう痒に苦しむ本症患者のQOL改善が期待されています。<効能・効果>進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。なお、ABCB11遺伝子変異を有する患者のうち、胆汁酸塩排出ポンプ蛋白質(BSEP)の機能を完全に喪失する変異を有する患者では本剤の効果は期待できません。<用法・用量>通常、オデビキシバットとして40μg/kgを1日1回朝食時に経口投与します。なお、効果不十分な場合には、120μg/kgを1日1回に増量することができますが、1日最高用量として7,200μgを超えないようにします。体重別の1日投与量は下表を参考にします(40μg/kg/日の場合)。<安全性>副作用として、血中ビリルビン増加、ALT増加、下痢、嘔吐、腹痛、ビタミンD欠乏(いずれも10%以上)、肝腫大、AST増加、ビタミンE欠乏(いずれも1%以上10%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬です。進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒を改善します。2.小腸に作用して、胆汁酸の再取り込みを減少させ、血液中の胆汁酸濃度を低下させます。3.朝食(1日の最初の食事)時に、飲食物とともに飲んでください。4.カプセルは容器なのでカプセルごと飲まず、飲む直前にカプセル型容器を開けて顆粒剤のみを服用してください。<ここがポイント!>進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、胆汁酸の分泌および輸送に関与する遺伝子の変異によって引き起こされる希少疾患であり、一般に乳児期および小児期初期に発症します。胆汁うっ滞により、ビリルビンや胆汁酸などの胆汁成分が肝臓内に蓄積すると、肝障害が進行し、肝硬変や肝不全、さらには肝細胞がんを発症することがあります。PFICと診断された小児では、黄疸に加えて重度のそう痒が認められることが多く、とくに重度のそう痒の緩和はQOL(生活の質)向上の観点からも重要な治療目標となります。PFICは、日本では厚生労働省の指定難病(#338)に指定されています。本剤の有効成分であるオデビキシバットは、腸管に存在する回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)に可逆的に結合し、門脈系への胆汁酸の再取り込みを減少させます。これにより、肝臓への胆汁酸負荷および血清中胆汁酸濃度が低下し、胆汁うっ滞に伴うそう痒の改善が期待されます。本剤はカプセル型容器に封入された顆粒剤です。カプセルは容器であることから、投与はカプセルごとではなく容器内の顆粒剤のみを全量投与します。PFIC-1およびPFIC-2の小児患者(生後6ヵ月以上18歳以下、体重5kg超)を対象としたプラセボ対照二重盲検海外第III相試験(A4250-005試験)において、主要評価項目である「24週時までに空腹時血清中胆汁酸濃度がベースラインから70%以上低下または24週時に70μmol/L以下に達した患者の割合」は、本剤群全体で33.3%であり、本剤40μg/kg/日群および120μg/kg/日群でそれぞれ43.5%および21.1%でした。片側検定によるプラセボ群との比較では、いずれの本剤群でも高く、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(本剤群全体:片側p=0.0015、40μg/kg/日群:片側調整p=0.0015、120μg/kg/日群:片側調整p=0.0174)。

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