サイト内検索|page:1

検索結果 合計:607件 表示位置:1 - 20

1.

小児のアトピー性皮膚炎、確実な予防方法はないが治療の選択肢は豊富

 小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防するために親ができることは極めて少ないことが、新たなガイドラインで示された。特別な食事療法、入浴を控えること、母乳育児、プロバイオティクスのサプリメントといった広く知られている対策が小児のアトピー性皮膚炎の予防に有効であることを示すエビデンスは見つからなかったという。一方、既にアトピー性皮膚炎を発症している小児には、皮膚のかゆみを和らげるための効果的な治療法が多くあるとしている。米国皮膚科学会(AAD)が作成したこのガイドラインは、「Journal of the American Academy of Dermatology」に4月7日掲載された。 AADによると、これは同学会が発表した初めての小児のアトピー性皮膚炎に関するガイドラインであるという。AAD会長のMurad Alam氏は、「アトピー性皮膚炎に罹患している小児は極めて多いが、症状の現れ方や経過は必ずしも成人と同じではない。アトピー性皮膚炎は小児や家族の生活の質(QOL)を低下させる可能性があるため、最善の治療が確実に行われるようにするためには、小児に特化したガイドラインが必要である」とニュースリリースで述べている。 ガイドラインを作成した研究グループが既存の医学的エビデンスを検討した結果、小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防できる真に有効な方法はないとの結論に至った。ただし、保湿剤のみは生後6カ月~3歳の小児のアトピー性皮膚炎の発症を減少させるという目的で「条件付き推奨」の治療法として位置付けられた。条件付き推奨は、その治療法のベネフィットとリスクが拮抗している場合に示される。一方、食事療法や入浴を控えること、ビタミンDやプロバイオティクスのサプリメント、離乳食の早期導入、母乳育児、硬水の軟化、ダニなどのアレルゲンへの曝露を減らすといった他の予防法に関しては、十分なエビデンスがないと結論付けられた。 一方で、小児のアトピー性皮膚炎の治療に関しては、多くの治療法が「強い推奨」として位置付けられた。有効性が明らかにされている治療法には以下が含まれる。・皮膚の乾燥やかゆみの軽減を目的とした保湿剤・再燃時の第一選択薬となるステロイド外用薬・再燃の管理を目的としたカルシニューリン阻害外用薬(pimecrolimus〔国内未承認〕またはタクロリムス軟膏)・かゆみ軽減と再燃頻度の抑制を目的としたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬(crisaborole軟膏、roflumilastクリーム〔いずれも国内未承認〕)・軽症~中等症の患者の乾燥やかゆみの重症度の軽減を目的とした外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(ルキソリチニブクリーム〔日本ではアトピー性皮膚炎に対する適応は未承認〕、タピナロフクリーム)・軽症〜重症患者における炎症軽減、皮膚バリア機能の改善、乾燥やかゆみを伴う皮膚症状の軽減を目的とした局所用アリル炭化水素受容体(AhR)アゴニスト(タピナロフクリーム)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、再燃の減少、かゆみの軽減を目的としたモノクローナル抗体(デュピルマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ、ネモリズマブ〔外用薬と併用〕)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、かゆみの軽減を目的としたJAK阻害薬(ウパダシチニブ、アブロシチニブ、バリシチニブ) ガイドラインではまた、入浴、ウェットラップ療法、光線療法についても小児のアトピー性皮膚炎の治療法として条件付きで推奨している。一方で、ステロイドの経口薬や注射薬の使用については急激で重度の再燃が見られた患者に限定すべきであり、長期的には使用しないことを強く推奨するとされている。さらに、外用抗菌薬の使用や薬剤と光線療法を組み合わせたPUVA療法についても実施しないことが条件付きで推奨された。 AADのアトピー性皮膚炎ガイドライン作業部会の共同委員長であるDawn Davis氏は、「このガイドラインは、患者やケア提供者、そして医学会を教育し、彼らを支援することで、アトピー性皮膚炎の小児ができる限り最善の治療を受けられるようにするために作成された。早期からの積極的な介入によって、患者やその家族は症状やQOLの改善が期待できる」と述べている。

2.

心血管リスクが高い女性は骨折リスクも高い

 女性では心臓の健康状態が骨折のリスクと関連していることを示すデータが報告された。米テュレーン大学のRafeka Hossain氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Regional Health-Americas」に3月27日掲載された。心血管イベントリスクが高い女性は、大腿骨近位部骨折のリスクもほぼ2倍に上るという。 論文の筆頭著者であるHossain氏は、「これまでの研究でも心血管疾患と骨折リスクの関連性が示唆されていたが、大腿骨近位部骨折のリスクとの関連の強さに驚いた」と述べている。また、「心血管イベントと骨折はいずれも非常に発生頻度が高く、治療費も高額となる」とし、「両者のリスクを抑制することで高齢者の生活の質(QOL)を向上させられるのではないか」と語っている。 この研究では、現在進行中の閉経後の女性を対象とする大規模観察研究「女性の健康イニシアチブ(WHI)」の参加者2万1,300人を、心血管イベントリスクの高さに基づき4群に分類し、骨折の新規発生との関連を検討した。心血管イベントリスクの評価には、米国心臓協会(AHA)が2023年に発表した、向こう10年間または30年間の心血管イベントリスクの高さを予測するツール「PREVENT」という計算式を用いた。 その結果、心血管イベントのリスクが最も高い(向こう10年で20.0%以上)と予測された群は、最もリスクが低い(同5.0%未満)群と比較して、大腿骨近位部骨折のリスクが93%高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕1.93〔95%信頼区間1.55~2.42〕)。心血管イベントリスクが2番目に高い(向こう10年で7.5~19.9%)群も、大腿骨近位部骨折リスクが33%高かった(HR1.33〔95%信頼区間1.14~1.56〕)。また、大腿骨近位部骨折発生までの期間が、心血管イベントリスクが最も低い群は中央値20.3年であるのに対して、心血管イベントリスクが最も高い群は同15.0年と短かった。 これらの結果に基づきHossain氏は、「心臓のための健康管理と骨のための健康管理は、切り離して考えるべきではない」と述べている。研究者らによると、慢性炎症、カルシウム代謝の変化、動脈硬化による骨の血流低下など、心臓と骨に悪影響を及ぼす可能性のある生物学的プロセスが数多く存在するという。閉経後のエストロゲンレベルの低下も、心血管疾患と骨量減少のリスクの双方を高め得るとのことだ。 一方、心血管イベントや骨折の予防についてHossain氏は、「心血管に対して保護的に働く多くの因子、例えば習慣的な運動、カルシウムとビタミンDを豊富に含む、バランスの取れた食事、禁煙、糖尿病や高血圧などの治療は、骨を守るのにも役立つ」と解説。また、「骨折リスクを抑制する効果的な治療法は多々ある。よって、心血管イベントリスクが中等度以上と判定された場合、特に閉経後の女性では、骨の健康状態に関するスクリーニング検査を受ける必要性について、医師に相談してみる価値があるのではないか」と付け加えている。ただし研究者らは、心血管イベントのリスクスコアを骨折リスク評価の標準的ツールに組み込むには、さらなる研究による検証が必要であることを強調している。

3.

在宅医療・介護の場で見逃してはいけない骨粗鬆症/日本シグマックス

 整形外科領域などで衛生材料や診療機器、サポーターなどの開発・販売を行う日本シグマックスは、2026年3月24日に都内で「在宅医療・介護で見過ごされがちな『骨粗鬆症』リスクと転倒・骨折予防の重要性」をテーマにメディアセミナーを開催した。 骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな疾患であり、転倒・骨折をきっかけに要介護へ移行するケースも多く、医療・介護双方で課題となっている。同社の代表取締役社長の鈴木 洋輔氏は、これらの課題の解決に「超音波医療機器の開発や機械の小型化といった知識の導入により、治療に貢献する製品を研究開発していく」と展望を述べている。 セミナーでは、骨粗鬆症の病態と予防の解説のほか、在宅医療の視点から骨折リスクとしての骨粗鬆症と在宅でできる予防法などが講演された。骨粗鬆症検診率は全国平均でまだ5% 「骨粗鬆症と骨折予防の意義」をテーマに山本 智章氏(新潟リハビリテーション病院 院長)が、骨粗鬆症の病態、高齢者と骨折、骨折予防などについて講演した。 ヒトの最大骨量は20~40代であり、男性は女性に比べてやや多い骨量となっている。とくに女性では閉経後に急激な骨量の減少がみられ、骨粗鬆症の1番の原因は閉経と老化とされる。若いときに最大骨量をいかに高められるかが、将来の骨粗鬆症の予防につながると近年の研究から判明し、生涯にわたり骨の健康を考えることが重要な時代となっている。 わが国は超高齢社会となり、2000年以降、骨折の概念は外傷性ではなく、脆弱性骨折へと変化している。実際、病院で受診する骨折患者のほとんどが脆弱性骨折であり、骨折はけがではなく、慢性疾患の中で起きる1つのイベントという認識が必要となる。 脆弱性骨折は、椎体や上腕骨、大腿骨近位部などさまざまな部位で発生する。とくに高齢者では、脊椎椎体と大腿骨頸部の骨折が多く、大腿骨近位部骨折の患者数は年々増加し、1980年代と比較すると5~6倍となり、2017年には約19万3,000例となっている1)。 大腿骨近位部骨折は、フレイル、骨粗鬆症、低栄養などさまざまな症状が併存した結果起こり、治療では手術が第1選択となる。また、骨折を起こすと医療費の増加、介護の発生、再発のリスクがあるほか、受傷1年後の患者の日常生活動作(ADL)を調査した研究によると1年以内の死亡が20%、永続的な能力障害が30%、歩行不能が40%、限定的な生活動作が80%と大きな生活上のリスクとなることが報告されている2)。そのため海外では、早期治療が有効であり、徹底して予防し、優先的に治療すべきとされている。 最近、社会的認知が広がっている「いつの間にか骨折」の椎体骨折の発生数について、ROAD研究から形態椎体骨折は420万件、臨床的椎体骨折は118万件と報告されている。多発脊椎圧迫骨折が進行すると脊柱後弯症となり、ADLの障害、慢性背部痛、呼吸換気不全などのQOLの低下を来す。また、体型バランスが変わることで転倒リスクが高くなり、さらなる転倒・骨折などを来す原因となる。 骨折について医療経済や介護環境についてみると、医療費の面で2018年の新潟県の後期高齢者入院の医療費では、「脆弱性骨折」が9.25%と1番高く、脳卒中が7.50%、そのほかの心疾患が7.40%の順で高かった。また、介護の主要因について厚生労働省の調査では、認知症が23.6%で1番高く、脳血管疾患が19.0%、骨折・転倒が13.0%と上位の3要因に入っている。骨折で介護が必要となった場合の5年間の自己負担額の試算では1,540万円と試算するデータもあり、これら介護の負担は、患者本人だけでなく、家族を巻き込み、社会的にも医療的にも問題となる。 骨折の原因となる骨粗鬆症治療を受けるべきターゲットは、「(1)(50歳以降に)骨折を起こした人、(2)骨密度の低下した人(若いときの70%以下の骨密度)のどちらかに該当する人は骨粗鬆症の治療を始めたほうがよい」と山本氏は提言する。 その一方で骨粗鬆症検診の現状は、全国平均で約5%と低く、地域によってはゼロというところもある。「健康日本21」では、「骨粗鬆症の検診率を15%まで引き上げる」という目標が設定され、今後積極的な取り組みがなされる。 わが国の高齢者の転倒発生率は80歳以上で11.1%、85歳以上で13.6%であり、その20%が治療適用となり、5~10%が骨折となる。転倒では、筋力の低下、バランス障害、歩行障害などが大きく寄与しており、正常なバランスの指標として「片足立ちができるかどうか」がある。片足でしっかり立てるということは、歩行も安定し、さまざまな場面でバランスも取れるということが転倒予防に重要となる。また、もう1つ重要なことが「環境」である。屋外はもちろん、屋内でも浴室や居間、階段などさまざまな場での転倒リスクをいかに低下させるかということを高齢者に指導していくことが重要となる。 最後に山本氏は「第28回 日本骨粗鬆症学会が新潟で開催される。『女性医学と整形老年病学』という若いときから女性がいかに元気でいられるかというテーマで開催されるので、多くの医療者に参加してもらいたい」と述べ、講演を終えた。病診連携では「再骨折予防手帳」を活用 「在宅だからこそ見逃される骨折リスクと地域連携の重要性」をテーマに山口 正康氏(医療法人社団 山口クリニック 院長)が、オンラインで在宅患者の骨粗鬆症リスクをいかに見つけ、どのように予防し、地域で支えていくかを講演した。 山口氏は、新潟市内で消化器内科を専門に、地域の在宅医療も行っている。往診先には寝たきりの患者、独居の認知症患者など、さまざまな患者が自宅で自分らしい生活を続けている中で、通院できない患者について骨折予防のため定期的に骨粗鬆症の治療も行っているという。 在宅医療患者の特性と骨折リスクとしては、身体的要因として転倒リスクが高い疾患が多いこと、服用薬の影響、加齢による骨・筋肉の脆弱化、通院できないことによる治療の放置がある。また、社会的要因として見守りの目が届きにくい住環境などに転倒誘因が多いほか、身体機能に合わない杖などの補助具の使用、閉じこもりによる身体の廃用性萎縮などがある。さらに在宅特有の診断困難性として、「DXA検査へのアクセス制限」「無症候骨折の看過」「既存骨折の未評価」「検査の遅れ」などもあり、骨折の診断・評価の機会損失が潜在化すると山口氏は警鐘を鳴らす。 骨粗鬆症財団の行った「診療所に通院する骨粗鬆症患者の合併症」の調査では、高血圧(55%)、脂質異常症(27%)、眼病(19%)、糖尿病と循環器疾患(13%)の順で多く、生活習慣病と骨粗鬆症は悪循環を形成し、心血管イベントのリスク因子となることも知られている3)。そのため在宅診療時には動脈硬化の進行度や心肺機能の検査も必要となる。 山口氏のクリニックでは、患者向けの骨粗鬆症の啓発に、疾患の説明や検査の内容を提示するとともに、待ち時間などの間に超音波測定法を用いた骨量測定器で測定なども行っている。そのほか骨粗鬆症の予防について万歩計を活用した1日8,000歩以上の励行や日常動作でのちょっとした運動の勧め、骨に関連するカルシウム、ビタミンD・Kなどの摂取について栄養士による指導も行っている。 高齢者が骨折や寝たきりの状態にならないためには、病診連携、多職種間、医療と介護、市町村と行政、患者(家族)と地域など幅広い連携が必要になる。とくに再骨折の予防のためには病診連携が重要であり、「正確な骨密度検査の結果と治療方針を病院、クリニック、患者と共有することが治療継続のための出発点となる」と山口氏は語る。 病診連携のメリットは専門医の診断により、治療方針が明確になることであり、病院の専門医と地域のかかりつけ医がそれぞれの役割を果たすことで地域全体による骨粗鬆症治療が活発化する。また、山口氏の地域では患者が病院からの紹介で受診される際、必ず「再骨折予防手帳」を持参するという。この手帳により患者の退院後の状態が容易に把握でき、病院の医師とかかりつけ医の情報共有ができ、患者の安心感につながっていく。 最後に山口氏は、「在宅医療における骨粗鬆症対策は、骨折する前に見つけることが最も重要な役割だと考えている。在宅特有の見逃されるリスクに目を向け、地域全体で骨折予防を支える体制作りを目指したい」と思いを述べ、講演を終えた。

4.

マルチビタミン・ミネラルが生物学的老化の進行をわずかに抑制か

 毎日マルチビタミン・ミネラル(MVM)を摂取することで得られる健康への効果は、老化の進み方にも及ぶ可能性があるようだ。新たな研究において、MVMを2年間摂取した高齢者では、生物学的老化における「wear and tear(体や遺伝子に蓄積していく摩耗や損耗)」の進行が遅くなる傾向が認められた。この効果は、研究開始時点ですでに老化が加速していた高齢者において顕著だったという。米マス・ジェネラル・ブリガムで予防医学部門副部長を務めるHoward Sesso氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に3月9日掲載された。 Sesso氏は、「現在、人々の関心は、単に長生きすることだけではなく、より良く生きることにも向けられている。MVMの摂取に生物学的老化の指標と関連する利益があることを示した本研究結果は、非常に興味深い。また、より健康で質の高い老化に寄与する、身近で安全な介入法をさらに探るための扉を開く結果でもある」とニュースリリースで述べた。 生物学的老化の検査では、日常生活による体の「wear and tear」が遺伝子、特にDNAメチル化に及ぼす影響を評価し、それに基づき生物学的年齢を推定する。生物学的年齢は、体の状態が暦年齢より若いか老いているかを示す指標である。 今回の研究では、958人(平均年齢70.2歳、女性50.3%)を対象に、MVMまたはココアから抽出されたフラバノール(500mg/日、以下、フラバノール)の摂取がDNAメチル化に基づく生物学的老化指標へ与える影響を検討した。対象者は、1)フラバノールとMVM、2)フラバノールとMVMプラセボ、3)フラバノールプラセボとMVM、4)フラバノールプラセボとMVMプラセボを摂取する群にランダムに割り付けられた。2年に及ぶ試験期間中に、研究グループは5種類のエピジェネティッククロックを用いて生物学的年齢を繰り返し評価した。 その結果、MVMの摂取は、第2世代のエピジェネティッククロック(PCPhenoAge、PCGrimAge)で、生物学的老化の進行を有意に抑制した。この効果は、試験開始時に生物学的老化が加速していた人で、より大きかった。第1世代の老化指標(PCHorvath、PCHannum)や老化速度を示すDunedinPACEでは、プラセボ群と比べて生物学的老化の進行速度を抑制する傾向は認められたものの、統計学的な有意差は認められなかった。一方、フラバノールの摂取は、いずれの生物学的老化指標にも影響を及ぼさなかった。 論文の共著者である米オーガスタ大学ジョージア医科大学内ジョージア予防研究所所長のYanbin Dong氏は、「今回検討された5種類のエピジェネティッククロックに加え、今後追加される指標を用いても、同様の生物学的老化の遅延が試験終了後も持続するのかを明らかにするため、追跡研究を計画している」と述べている。 また研究グループは、MVMがなぜ老化の進行を遅らせ得るのかについて解明するためにさらなる研究が必要だとしている。Sesso氏は、「多くの人が、必ずしも具体的な利益を理解しないままMVMを摂取している。したがって、その潜在的な健康効果に関する知見は、できるだけ多く得られることが望ましい」と語っている。

5.

入院患者の栄養管理とウェルニッケ脳症【医療訴訟の争点】第20回

症例昨今、入院患者の栄養管理の重要性は広く認識されており、多くの医療機関では栄養サポートチーム(NST)などを中心として体系的な栄養評価が行われている。本稿では、入院時の栄養評価および静脈栄養管理の適否が争われた名古屋高裁令和6年9月5日判決を紹介する。<登場人物>患者(P1)直腸切除術後、幽門狭窄により経口摂取困難となった患者(66歳・男性)原告患者P1およびその妻被告県立病院(地方独立行政法人)事案の概要は以下の通りである(なお、いずれも平成27年)。◆入院前経過(体重減少の進行)4月15日患者P1は、直腸がんの疑いで大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を受けるため、本件病院に入院し、この時の体重は62.3kgであった。8月25日P1は胃痛および嘔吐を主訴として本件病院外科・消化器外科を受診し、幽門狭窄症と診断され入院した。この時の体重は55.4kgであり、4月の受診時から約7kgの体重減少がみられていた。9月28日本件病院外科・消化器外科の受診時、食事は少しずつ時間をかけて取っている旨を述べた。10月26日本件病院外科・消化器外科の受診時、食事はセーブしている旨を述べた。◆入院時の栄養評価10月30日水を飲んでも吐き戻す絶食状態が数日続いたとして受診。幽門狭窄による経口摂取不良疑いの精査のため入院。入院時、病院では栄養状態の評価が行われたが、体重測定は実施されなかった。その結果、患者の栄養状態については「明らかな栄養不良は認められない」と判断された。しかし、その後(入院から6日目の11月4日)の測定で48.1kgであったため、入院当時の体重は約48kg程度であったと推定されている。これは「約6ヵ月で20%以上の体重減少」「約2ヵ月で10%以上の体重減少」に相当する著しい体重減少であった。◆入院後の栄養管理患者は幽門狭窄による嘔吐のため、入院後も十分な経口摂取ができない状態が続いた。そのため病院では静脈栄養による栄養管理が行われたが、その際ビタミンB1の投与は行われなかった。このこともあり「ブドウ糖を含む輸液が継続された」という状況であった。◆ウェルニッケ脳症の発症11月4日頃患者はウェルニッケ脳症を発症した。その後、患者はコルサコフ症候群を発症し、重篤な後遺障害が残存した。 実際の裁判結果名古屋高裁は、病院の栄養管理には過失があったと認定し、患者側の請求を一部認容した。裁判所は、以下の点を指摘し「本件病院は、自ら規定した本件マニュアルに従い、患者P1の体重測定を行い、最近6ヵ月および最近2週間の体重の変化を把握すべきであった」とした。SGA(Subjective Global Assessment)を含む一般に妥当性が承認されている複数の栄養状態評価の方法においては、体重変化が最も重要な指標であるとされていること 本件病院においては、入院患者に対してはSGAに基づく栄養状態評価を行うことを定め、その具体的な内容を本件マニュアルで定めて、これが運用されていたこと患者P1は、本件病院で直腸切除の手術を受け、その後、摂食障害により被控訴病院に幽門狭窄症と診断されて入院し、退院後も通院している中で、時間をかけても十分に食事を摂取することができなくなったことを述べるようになっていたことそして、裁判所は、以下の点を指摘し、「本件病院が患者P1について「明らかに栄養不良がない」との栄養評価をして、体重測定を行うことなく、重大な栄養障害が生じている可能性が高いことを把握しなかったことは、当時の医療水準を逸脱するものであったと言わざるを得ず、不法行為法上の過失があった」とした。栄養障害が存在するときには、とくに体内貯蔵量の少ないビタミンB1などの水溶性ビタミンの欠乏症が起こりやすく、ビタミンB1は18日から20日間で枯渇することビタミンB1が欠乏すると、死亡または重大な後遺障害を遺す蓋然性の高いウェルニッケ脳症を発症することは、いずれも本件入院時において広く知られていたこと平成27年当時、ビタミン欠乏のおそれのない患者に対して、無条件にビタミン剤を投与することは消極的とされていたことから、本件病院が、摂食不良を訴える患者P1の入院時に体重測定をせず、体重変化を把握しないまま、「明らかに栄養不良がない」との栄養評価をすれば、ビタミンB1を投与せずにブドウ糖のみを投与することとなり、ビタミンB1が欠乏し、ウェルニッケ脳症を発症する。このことは、患者P1が直腸切除術後であること、摂食障害により幽門狭窄症と診断されて入通院していること、時間をかけても十分な食事摂取ができなくなり、水を飲んでも吐き戻す絶食状態が数日続き再入院している患者P1の既往、経過および状態にあることを把握していた本件病院において、予見することが十分に可能であったこと患者P1の妻が本件入院で来院の際、本件病院の外来看護師に対して患者P1の摂食状況が2週間前から極端に悪化していることを伝えていたこと患者P1は、本件病院に着くまでは自ら歩いており、本件病院到着後も立位を保持して検査を受けることが可能であり、本件病院が患者P1の体重を測定することは容易であったこと本件当時も、ビタミンB1があらかじめ添加された栄養輸液製剤は広く普及しており、本件病院においてビタミンB1を投与することも容易であったことその上で、裁判所は、以下の点を指摘し、「本件病院が患者P1に本件入院当初からビタミンB1を投与していれば、ウェルニッケ脳症およびコルサコフ症候群を発症しなかったであろう高度の蓋然性がある」として、過失と損害の因果関係を認めた。患者P1の本件入院時の体重は、同年11月4日の測定結果とほぼ同様の48.1kgと考えられるところ、患者P1は同年4月15日には62.3kg、同年8月25日には55.4kgであったのだから、最近約6ヵ月の体重減少率は20%を超える約22.8%、最近約2ヵ月の体重減少率は10%を超える約13.2%であり、病的な体重減少であったこと本件病院の作成している本件マニュアルに照らせば、重大な栄養障害である可能性があるものに当たるだけでなく、その基準をはるかに超えて体重が減少していることから、体重の増減を把握していれば、患者P1に重大な栄養障害が生じている可能性があるものと判断したはずであること重大な栄養障害が生じている患者にビタミンB1を投与することなくブドウ糖を投与すると、急激にビタミンB1が消費されてウェルニッケ脳症を発症することウェルニッケ脳症は高い割合で重篤な後遺障害が残存しまたは死亡するという重大な疾患である一方で、ビタミンB1の投与による特段の副作用はないとされており、ウェルニッケ脳症は症状が出てから対応する疾患ではなく、予防的に対応する疾患であるとされていることウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の欠乏により発症するものであり、コルサコフ症候群はウェルニッケ脳症の慢性期に発症するものであること注意ポイント解説本判決の特徴は、入院患者の栄養管理に関する医療水準を比較的具体的に示した以下の点にある。第1に、栄養評価において体重変化が基本的指標であることを明確にし、体重測定を行わないまま栄養状態を判断したことを問題視した点第2に、摂食不良患者ではビタミンB1欠乏が生じ得るという医学的知見を前提とし、そのような患者に対するビタミンB1投与の必要性を指摘した点第3に、ビタミンB1欠乏状態でのブドウ糖投与がウェルニッケ脳症の発症につながる可能性を踏まえ、予防的なビタミンB1投与を行わないことの不合理性を認めた点また、本判決は、消化管疾患による摂食不良患者や末梢静脈栄養の症例であってもウェルニッケ脳症の発症リスクが生じ得ることを示した点に特徴がある。加えて、本件病院が患者P1の入院時の栄養状態を「明らかな栄養不良がない」としたことにつき、本判決は“本件病院では、「明らかに栄養不良がない」という場合がどのような場合であるのかについては明示されていなかったのであるから、少なくとも、ディティールスクリーニングの項目のいずれかに該当することがうかがわれる場合には、「明らかに栄養不良がない」と判断することは許されない”としており、本件病院に栄養評価に関するマニュアルがあり栄養サポート体制が存在していたにもかかわらず、基本的な栄養評価が十分に行われなかったことが過失認定の背景となっている。この点からすると、本判決は単にビタミンB1投与の問題にとどまらず、入院患者の栄養管理体制そのものの重要性を示したものと評価できる。医療者の視点本判決は、入院契機となった主訴や疾患の治療に注力するだけでなく、栄養状態を含めた「患者全体の全身管理」に目を向けることの重要性を改めて浮き彫りにしました。実際の臨床現場でも、NST(栄養サポートチーム)などを通じて体系的な栄養評価が行われており、体重変化の把握やビタミンB1欠乏への注意喚起は広く認識されているため、裁判所の見解と実臨床の認識は概ね一致しています。一方で、実臨床との相違点や課題もあります。本件では入院時に体重測定を実施しなかったことが過失と認定されました。臨床現場では、患者の全身状態が不良で、立位での体重測定が困難なケースに直面することが多々あります。しかし、本件の患者は自立歩行が可能であり、測定は容易であったと判断されました。状態が悪く測定が困難な場合であっても、ベッドスケールを活用するなど、客観的な指標である体重を可能な限り把握する姿勢が求められます。本件から得られる教訓は、入院契機となった主訴や原疾患の治療にのみ目を奪われるのではなく、患者の栄養状態を含めた全身管理に広く目を向けることの重要性です。実臨床においては、目の前の症状に対処するだけでなく、患者の既往や経過から潜在的なリスクを予測し、予防的な介入を行うという包括的な視点を持つことが、予期せぬ合併症や医療事故を防ぐ上で不可欠といえます。また、実臨床では、短期の末梢静脈栄養においてビタミンB1を含まないブドウ糖輸液を選択する場面も少なくありません。しかし、消化管疾患などで摂食不良の経過がある患者に対しては、ブドウ糖投与がウェルニッケ脳症を誘発するリスクを常に念頭に置き、予防的にビタミンB1を投与することが不可欠です。Take home message栄養評価では体重測定と体重変化の把握が基本である摂食不良患者ではビタミンB1欠乏を想定する必要があるビタミンB1欠乏状態でのブドウ糖投与はウェルニッケ脳症を誘発し得るウェルニッケ脳症は予防可能な医療事故であるキーワード体重変化、摂食不良、ビタミンB1欠乏、ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群

6.

ベジタリアン家庭の幼児の成長が阻害される可能性は低い

 菜食主義(ベジタリアン)の家庭に生まれた子どもに、発育上の問題が現れる可能性は高くないことが報告された。出生体重は非菜食主義(雑食)の家庭の新生児よりも低く有意差が認められるものの、2歳時点での体重の差は有意ではなくなるという。ネゲヴ・ベン・グリオン大学(イスラエル)のKerem Avital氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月5日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「われわれの研究結果は、適切な環境であれば、植物性食品中心の食事は乳児の発育を損なわないことを示している」と述べている。 この研究の背景として著者らは論文の中で、植物性食品を重視する食生活は西側諸国で一般的になりつつあり、心臓病やその他の健康リスクの低下と関連付けられていると指摘。しかし、その一方で、特にビタミンB12、鉄分、ヨウ素、ビタミンD、カルシウム、長鎖オメガ3脂肪酸に関しては、妊娠中や乳幼児期に十分な量を摂取できているのかという懸念が依然として指摘されている。 研究には、イスラエルの子どもの約70%の発育状況が記録されている同国保健省の追跡データのうち、2014~2023年の記録が用いられた。在胎32週以降に出生した単胎児119万8,816人(平均在胎期間39.2±1.5週、男児53.2%)を解析対象とした。なお、重度の先天性疾患を有する子どもや極低出生体重児は対象から除外されている。 全体として98.5%の乳幼児は雑食の家庭で育てられ、1.2%はベジタリアンの家庭、0.3%はビーガン(完全菜食主義)の家庭で育てられていた。解析の結果、食事スタイルにかかわらず、どの家庭の子どもの成長パターンも類似したものだった。 具体的には、出生体重については雑食家庭の新生児が3.3±0.5kgであるのに対して、ベジタリアンやビーガン家庭の新生児はいずれも3.2±0.5kgであり有意に低かった。また生後60日時点で低体重であることの調整オッズ比(aOR)は、雑食家庭を基準としてベジタリアン家庭では1.21(95%信頼区間1.11~1.32)、ビーガン家庭では1.37(同1.15~1.63)だった。 しかし、この差は時間とともに縮小し、2歳時点での発育不全の割合は、雑食3.1%、ベジタリアン3.4%、ビーガン3.9%であり、有意差はなかった。また2歳時点では、低体重や過体重の有意差も認められなかった(低体重のaORはベジタリアンが0.80〔0.55~1.15〕、ビーガンは1.06〔0.50~2.23〕、過体重は同順に1.01〔0.86~1.18〕、0.91〔0.61~1.35〕)。 著者らは、「これらの研究結果はビーガン食であっても乳児の成長を阻害しないことを示唆している。しかし、妊娠中の母親や乳児期の子どもの栄養に関する指導が、子どもたちの発育をどのようにサポートし得るかを明らかにするために、さらなる研究が必要とされる」と結論付けている。

7.

日本の心房細動患者、1年後の死亡・脳卒中・血栓塞栓症の発生率は?

 日本の心房細動患者は、経口抗凝固薬の使用率が81%と高く、1年後の全死亡率は0.1%と低く、脳卒中/血栓塞栓症の発生率も0.1%と低いことが、APHRS-AFレジストリ(Asia-Pacific Heart Rhythm Society Atrial Fibrillation Registry)の日本人における1年時の解析で示された。日本医科大学の淀川 顕司氏らがJournal of Arrhythmia誌2026年2月8日号で発表した。 APHRS-AFレジストリはアジアの大都市圏における前向き研究で、心房細動患者のベースライン特性、治療、臨床アウトカムについて重要な情報を提供する。今回、本レジストリに登録された日本人患者の1年間の追跡調査データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された4,666例のうち、794例が2015~17年に日本の主な循環器センター28施設から登録された。平均年齢は65.7歳、男性が69.0%で、主な併存疾患は高血圧(37.5%)、脂質異常症(29.0%)、心不全(15.9%)、糖尿病(15.0%)であった。平均CHADS2スコアは1.0、CHA2DS2-VAScスコアは2.0、HAS-BLEDスコアは1.1であった。・登録時の経口抗凝固薬の使用率は81%で、そのうち7%がビタミンK拮抗薬、74%が直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を処方されていた。患者の57.8%がカテーテルアブレーション施行予定であった。・1年間の追跡調査を実施した743例において、1年全死亡率は0.1%(1例、心不全)で、脳卒中/血栓塞栓症発生率も0.1%(1例、肺塞栓症)であった。大出血イベントは0.7%(5例[頭蓋内出血3例、下部消化管出血1例、軟部組織出血1例])に認められた。

8.

お酢の摂取が多いと肥満予防につながる可能性/藤田医科大

 「酢」の摂取は一般的に健康に良いとされているが、摂取の効果について年齢や性別などでタンパク質やビタミンとどのように関連するのだろうか。このテーマについて、藤田医科大学医学部臨床栄養学の和田 理紗子氏らの研究グループは、酢酸摂取量と年齢・性別との関連を検証した。その結果、酢酸摂取量が多い人は炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向だったことが示唆された。この研究結果はNutrients誌2026年1月19日号に掲載された。お酢の摂取は男性と高齢者で多い傾向 研究グループは、食事記録アプリ「あすけん」で20~69歳の日本人1万2,074人の食事データを収集・分析した。二要因分散分析により、酢酸摂取量に対する年齢、性別、およびそれらの交互作用の影響を評価した。また、多重線形回帰分析により、酢酸摂取量と栄養素摂取量との関連性を検討した。モデル1では年齢と性別を調整し、モデル2ではさらに総エネルギー摂取量を調整した。 主な結果は以下のとおり。・対象は男性3,038人(47.8±11.9歳)、女性9,036人(42.4±11.8歳)だった。・酢酸摂取量は男性および高齢者層で高値を示した(性別:F=11.0、p<0.001/年齢:F=9.1、p<0.001)。・モデル1では、酢酸摂取量はほとんどの栄養素と正の相関を示した。・モデル2では、炭水化物、糖類、でんぷん質、飽和脂肪酸、酪酸と負の関連が認められた(すべてp<0.05)。 この結果から研究グループは、「酢酸摂取量が多い人は、そうでない人と比べ同等のエネルギー摂取量であっても、炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向にあった。これらの結果は、酢酸を含む食事がでんぷん質と飽和脂肪酸の摂取を減少させ、肥満予防に寄与する可能性を示唆している」と結論付けている。

9.

タケノコが血糖管理などの健康維持に役立つ可能性

 タケノコが血糖コントロールをサポートするように働く可能性のあることが報告された。英アングリア・ラスキン大学のLee Smith氏らの研究によるもので、血糖コントロールのほかにも、タケノコには炎症抑制や消化促進、抗酸化作用などの働きがあるという。この研究結果の詳細は「Advances in Bamboo Science」2025年11月発行号に掲載されるとともに、1月14日に同大学からニュースリリースが発行された。 竹は地球上で最も成長の速い植物と考えられていて、種類によっては1日で3フィート(約90cm)近く成長することもある。その豊富さや軽さなどのため、建築や家具製造などに広く用いられている。さらにアジア諸国では、竹の芽(ごく若い竹の茎)であるタケノコが食されていて、一部の地域では食卓に欠かせない食材となっている。 タケノコは脂肪分が少なく、タンパク質、必須アミノ酸、食物繊維が豊富に含まれていて、カリウムやセレンなどのミネラル、および、チアミンやナイアシン、ビタミンB6、A、Eなどのビタミンの含有量も多い。このような特徴に着目して、タケノコの健康効果を検討した研究結果が既に複数報告されている。ただし、それらの報告を統合した解析はまだ行われていない。これを背景にSmith氏らは、タケノコの健康効果に関する現時点のエビデンスを、システマティックレビューによって総括することを試みた。 Medline/PubMedとWeb of Scienceという二つの文献データベースを用いた検索を行い、16件の研究報告を抽出した。ヒトを対象に行われていた4件の研究では、タケノコは糖尿病の管理(血糖コントロールの改善)や心臓病リスクの抑制(コレステロールの低下)につながる可能性が報告されていた。例えば血糖コントロールについては、糖尿病患者にタケノコを加えた食事を食べてもらったところ、食後の血糖値の上昇が穏やかになったことが報告されていた。ほかにも、実験室レベルの検討からは、タケノコには腸の機能を改善する食物繊維が含まれていること、腸内の有益な細菌を増やすこと、体内の抗酸化作用や抗炎症作用を高めることなども示されていた。 これらの健康に対する潜在的なメリットが見られた一方で、研究者らは、タケノコを正しく調理する必要があることを警告している。竹の種類によってはシアン配糖体という毒性のある物質を含むものがあり、生または加熱が不十分なタケノコを食べると、体内でシアン化物が放出されることもあり得るという。また、タケノコは甲状腺ホルモンの生成に影響を及ぼし、不適切な摂取によって甲状腺腫のリスクが高まる可能性を示唆する研究報告もあった。研究者らは、タケノコを食べる際にはまずゆでておき、それから調理することで、こうしたリスクを回避できると述べている。 論文の上席著者であるSmith氏は、「アジアで広く食べられているタケノコは、世界中の人々の健康的で持続可能な食生活の維持に利用できる可能性を秘めている。ただし、正しく調理する必要がある」としている。また、「今回のレビューでは、ヒトを対象とした研究はわずか4件だった。よって、タケノコ摂取に関する確かな推奨を提示する前に、ヒトを対象とした質の高い研究をさらに行う必要がある」と付け加えている。

10.

PCOS、体外受精前のビタミンD補充で出生率は向上せず/BMJ

 体外受精を予定している多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者において、ビタミンD補充(4,000 IU/日)の最長90日間の継続は、プラセボと比較して血清中25-ヒドロキシ(OH)ビタミンD濃度(25-OHD)を上昇させるものの、初回胚移植後の出生率は改善しなかった。中国・浙江大学のKai-Lun Hu氏らVitD-PCOS trial groupが、同国の不妊治療センター24施設において実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。観察研究では、PCOSの女性におけるビタミンD欠乏と生殖アウトカム不良との関連が一貫して示されており、先行研究でビタミンD補充が体外受精に有益な効果をもたらす可能性があることが小規模な検出力不足の臨床試験において示唆されていた。今回の結果は、体外受精を受けるPCOSの女性における補助療法としてのビタミンD補充の日常的な使用に疑問を投げ掛けるものである。BMJ誌2026年2月17日号掲載の報告。体外受精を予定しているPCOS患者が対象、ビタミンD補充とプラセボに無作為化 研究グループは、ロッテルダム基準に基づきPCOSと診断され、自己卵子での体外受精を予定している20~42歳の患者を、ビタミンD群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。3回以上の体外受精失敗歴がある女性などは除外した。 ビタミンD群では、体外受精開始前からトリガー日まで最大90日間、ビタミンDを 4,000 IU/日(1カプセル当たり800 IU、1日1回5カプセル)投与した。プラセボ群では同期間、プラセボカプセルを1日1回5カプセル投与した。 主要アウトカムは初回胚移植後の生児出生、副次アウトカムはトリガー日および妊娠検査日における血清25-OHDおよび妊娠アウトカムなど、安全性アウトカムは中等度または重症卵巣過剰刺激症候群などであった。生児出生率は52.0%vs.50.2%で有意差なし 2020年10月15日~2022年2月19日に1,272例がスクリーニングされ、876例が無作為化された。このうち、同意撤回などを除く865例が解析対象集団となった(ビタミンD群435例、プラセボ群430例)。 ベースラインの血清25-OHD平均値はビタミンD群16.5±7.2ng/mL、プラセボ群16.1±6.7ng/mLで、トリガー日にはビタミンD群がプラセボ群より有意に高値であった(32.3±11.2ng/mL vs.18.2±7.6ng/mL、補正後平均群間差:13.6、95%信頼区間[CI]:10.9~16.3)。 主要アウトカムである生児出生数は、ビタミンD群で226例(52.0%)、プラセボ群で216例(50.2%)であった(補正後リスク比:1.03、95%CI:0.91~1.18)。 妊娠検査陽性率、臨床妊娠率、妊娠継続率、ならびに無作為化後6ヵ月時および12ヵ月時の累積生児出生率に、両群間で統計学的な有意差は認められなかった。 重症の卵巣過剰刺激症候群は、ビタミンD群で3例、プラセボ群で6例に発生した(補正後リスク群間差:-0.7%、95%CI:-2.0~0.6)。

11.

多発性硬化症〔MS:multiple sclerosis〕

1 疾患概要■ 定義多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は、脳・脊髄・視神経からなる中枢神経系に炎症性脱髄が生じる慢性疾患である。病変は時間的多発性(再発)と空間的多発性(中枢神経系のさまざまな場所に病変が生じる)であることを特徴とする。自己免疫機序が病態の中心であると考えられているが、近年は神経変性機序の関与も推定されている。■ 疫学MSは若年成人に多く、20~40代で発症することが多い。女性に多く、高緯度地域で発症率が高い(わが国では北海道に多く、沖縄では少ない)。世界中で約300万人の患者が存在すると推定されている。従来は欧米に多い疾患とされてきたが、近年はアジア地域でも患者数が増加しており、わが国でも有病率は上昇している。診断技術の進歩に加え、環境因子の変化が背景にあると考えられている。■ 病因MSは遺伝的要因と環境因子が組み合わさって発症する多因子疾患である。特定の免疫関連遺伝子が発症リスクに関与する一方で、遺伝要因のみで発症が決まるわけではない。環境因子としては、ビタミンD不足、喫煙、肥満などが知られている。近年、Epstein-Barr virus(EBV)感染がMS発症と強く関連することが示され、免疫異常を引き起こす重要な因子と考えられている。■ 症状MSの症状は多彩であり、病変部位によって異なる。代表的な症状には、視力低下や眼痛(視神経炎)、手足のしびれや脱力、歩行障害、ふらつき、排尿障害などがある。また、易疲労感、疼痛、抑うつ、集中力低下など、外見からわかりにくい症状も多く、患者の日常生活や就労に大きな影響を与える。これらは看護師や薬剤師が関わるケアの場面でとくに重要な視点である。■ 分類MSは臨床経過により以下に分類される。1)再発寛解型(RRMS)再発と寛解を繰り返しながら少しずつ後遺症が蓄積する病型で、最も頻度が高い2)2次進行型(SPMS)RRMSの経過の後に、徐々に再発とは無関係の障害進行(progression independent of relapse activities:PIRA)が生じるようになった病型3)1次進行型(PPMS)発症初期からPIRAを認める病型、まれである以上の病型の理解は、治療方針を考えるうえで重要である。■ 予後現在は治療薬の進歩により、MSの長期予後は大きく改善している。しかし、PIRAの治療は開発途上にあるために、早期診断と治療介入が予後改善には重要である。近年は、治療初期から高い有効性を有する薬剤を導入する“early high-efficacy treatment(eHET)”の考え方が広まっている1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)MSの診断は除外診断が基本である。とくに視神経脊髄炎スペクトラム障害やMOG抗体関連疾患は臨床像が類似するため、鑑別が重要である。ほかにも鑑別すべき疾患は多岐にわたり、悪性リンパ腫などの腫瘍性疾患、脳血管障害、膠原病、神経サルコイドーシスや神経ベーチェット病といった炎症性疾患、感染症(梅毒、進行性多巣性白質脳症など)、さらに頸椎症性脊髄症や脊髄空洞症などの脊髄疾患、ミトコンドリア病、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、脊髄小脳変性症などが挙げられる。診断には臨床経過、MRI検査、脳脊髄液検査を総合的に評価するMcDonald診断基準が用いられる。本基準の本質は「炎症性脱髄病変が時間的・空間的に多発していること」を確認する点にある。2024年改訂では早期診断を支援する内容が加えられたが、診断はあくまで臨床判断を補助するものであり、慎重な運用が求められる2)。3 治療MSの治療は、再発時に行う急性期治療と、再発や進行を予防する病態修飾療法に大別される。急性期には副腎皮質ステロイドの大量静注療法(ステロイドパルス療法)が行われる。効果が不十分な場合には血漿交換療法が選択されることもある。再発や障害進行を抑えるため、維持期には病態修飾薬が使用される。近年では有効性の高い薬剤が増えており、早期から治療を開始することの重要性が強調されている。わが国で承認されている主要な病態修飾薬を表にまとめる。服薬管理、副作用モニタリング、多職種による支援が治療継続に不可欠である。表 MSの主要な病態修飾薬画像を拡大する4 今後の展望現在、新しい作用機序をもつ治療薬や、より精度の高い画像診断・血液バイオマーカーの研究が進行している。また、EBVを標的とした治療やワクチン研究も注目されており、将来的には個別化医療の実現が期待される。近年、MSの診療は、再発抑制を主目的とした治療から、PIRAの抑制を含む長期的な機能予後改善を目指す方向へと大きく変化している。この流れの中で、治療および診断の両面で新たなアプローチが研究・開発されている。治療分野では、Bruton型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬が新たな病態修飾療法として注目されている。BTK阻害薬は、B細胞の活性化や抗原提示機能を抑制するだけでなく、中枢神経内のミクログリア活性化を抑制する作用を併せ持つ点が特徴である。現在、RRMSに加え、SPMSやPPMSを対象とした第III相臨床試験が進行中であり、既存治療では十分に抑制できなかった進行性病態への効果が期待されている。とくに、PIRAに対する治療選択肢としての位置付けが注目されている。診断分野においては、疾患特異性や病勢評価を高める新たなバイオマーカーの研究が進展している。MRIでは、central vein sign(CVS)やparamagnetic rim lesion(PRL)といった所見が、MSに特徴的な病態を反映する補助的画像指標として注目されている。これらは鑑別診断や慢性活動性病巣の評価に有用である可能性が示されている。一方、体液バイオマーカーとしては、血清・髄液中の神経フィラメント軽鎖(NfL)やκフリーライトチェーン(κFLC)が、疾患活動性や予後予測の指標として臨床応用に近付いている。今後は、これらの新規治療薬および診断技術を組み合わせることで、疾患活動性・進行リスクに基づく層別化医療や個別化治療がより現実的になると考えられる。MS診療は、再発を抑制する医療から、長期的な障害蓄積を最小限に抑える医療へと進化しており、今後も基礎研究と臨床研究の橋渡しが重要となる。5 主たる診療科主な診療科は脳神経内科であるが、眼科、泌尿器科、リハビリテーション科、精神科などとの連携が重要である。看護師・薬剤師を含めた多職種チーム医療が不可欠である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報難病情報センター 多発性硬化症/視神経脊髄炎  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本神経学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品医療機器総合機構(PMDA)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)MSキャビン(MSCABIN)(多発性硬化症の総合情報サイト:情報共有、患者・支援者向け知識ベース)MS International Federation(国際疫学、研究動向、教育・啓発リソースなど医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本多発性硬化症協会(患者とその家族および支援者の会)1)Rotstein D, et al. Nat Rev Neurol. 2019;15:287-300.2)Montalban X, et al. Lancet Neurol. 2025;24:850-865.公開履歴初回2026年2月20日

12.

ホールフード食、食べる量は増えても摂取カロリーは減少

 未加工の食品を丸ごと食べる「ホールフード食」は、たくさん食べても体重を減らせる可能性の高いことが、新たな研究で示された。2週間にわたりホールフードのみで構成された食事(以下、ホールフード食)を取った人は、超加工食品を中心とする食事(以下、超加工食品食)のみを食べていた人と比べて食事の摂取量が57%も多かったが、食事からの摂取カロリーは1日当たり平均330kcal少なかったという。英ブリストル大学実験心理学教授のJeff Brunstrom氏らによるこの研究の詳細は、「The American Journal of Clinical Nutrition」に12月29日掲載された。 この研究では、超加工食品食とホールフード食の影響を比較した2019年の画期的な臨床試験のデータが再解析された。この試験の参加者は、2週間にわたって超加工食品食とホールフード食のいずれかを取り、その後、もう片方の食事を2週間にわたって取った。その結果、いずれの食事もカロリーが同じになるよう調整されていたにもかかわらず、超加工食品食を取っていた期間には1日の総カロリー摂取量が平均508kcal多いことが示された。また、同期間には体重が約0.9kg増えていたが、ホールフード食の期間には約0.9kg減少していた。 今回の事後解析でBrunstrom氏らは、ホールフード食の期間に参加者が実際に何を食べていたのかを詳しく調べた。その結果、ホールフード食に割り付けられていた期間には、全ての参加者が大量の果物や野菜を食べることを選び、1食で数百グラム食べることもあったことが分かった。ホールフード食の期間には超加工食品食の期間と比べて、飲料を除く食事の摂取量が1日当たり平均57%(726gに相当)多かった一方で、飲料を除く食事からのカロリー摂取量は平均15.3%(330kcalに相当)少なかった。 Brunstrom氏らによると、参加者が摂取したさまざまな種類の大量の果物や野菜には、より高カロリーのホールフードを選んでいた場合には十分に得られなかった必須ビタミンやミネラルが含まれていたという。共著者の1人であるマギル大学(カナダ)のMark Schatzker氏は、「もし参加者が高カロリー食品だけを食べていたら、いくつかの必須ビタミンやミネラルが不足し、最終的には微量栄養素欠乏に陥っていたかもしれない。その微量栄養素の不足は、低カロリーの果物や野菜によって補われていたのだ」と述べている。 研究グループは、「この結果は、人間には生来、食品の選択に影響する『栄養知能』が備わっている可能性を示唆している」と説明している。Brunstrom氏は、「今回の研究から、未加工の食品の選択肢が与えられると、人々は直感的に食べる喜びと栄養、満腹感のバランスが取れた食品を選び、同時に全体的なエネルギー摂取量は減ることが示された。これは極めて興味深い」と言う。 栄養知能は超加工食品の中から食品を選ぶ場面でも働いていたが、悪い方向に影響していた。研究参加者は、しばしばビタミン強化食品を通じて微量栄養素の必要量を満たす食品を選んでいたが、そのような食品は同時にカロリーも極めて高かった。例えば、ビタミンAを最も豊富に含む超加工食品は、フレンチトースト・スティックやパンケーキといった高カロリー食品だった。一方、ホールフード食の場合には、多くの参加者が低カロリーのニンジンやホウレンソウからビタミンAを摂取していた。 論文の上席著者であるブリストル大学のAnnika Flynn氏は、「このことは、超加工食品から大量のエネルギー(カロリー)と微量栄養素が同時に提供されることで、カロリーと栄養素の間の有益なトレードオフが無効になり、カロリー過多を引き起こす可能性があることを示している。対照的に、ホールフードはこの健康に有益なバランスを保つ働きを促し、パスタや肉といった高エネルギーの食品よりも、果物や野菜のような微量栄養素が豊富な食品を優先して選ぶよう人々を導くのだ」と述べている。(HealthDay News 2026年1月20日)

13.

食事からの重金属摂取は2型糖尿病の発症因子か/国立環境研

 糖尿病の発症には、遺伝、環境、生活習慣因子などさまざまな原因がある。とくに食生活において海産物を多く摂取する日本人は、魚介類からごく微量の重金属も摂取している可能性がある。こうした重金属の摂取が、2型糖尿病の発症のリスク因子となるのであろうか。このテーマに関し、国立健康危機管理研究機構 臨床研究センター 疫学・予防研究部の伊東 葵氏らの研究グループは、健康診断の血液サンプルを用いて、水銀、鉛などと2型糖尿病発症との関連性を検討した。その結果、血清水銀濃度が高いほど2型糖尿病のオッズ比が高いことが判明した。この結果は、Clinical Nutrition誌2026年2月号に掲載された。水銀が2型糖尿病発症のリスク因子になる可能性 研究グループは、血清中の水銀、鉛、カドミウム、ヒ素と2型糖尿病発症との関連性を明らかにすることを目的に、2008~09年に人間ドックを受けた日本人勤労者4,754例を対象としたネステッドケースコントロール研究を行った。研究では、カドミウム、鉛、水銀、ヒ素濃度を誘導結合プラズマ質量分析法で測定した。2型糖尿病の発症は、5年間の追跡期間中に血漿グルコースやHbA1cが基準を満たした場合、または自己申告により判断した。発生密度法を用い、各症例に対し年齢、性別、ドック受診時期を基準に2例の対照群を無作為にマッチングした結果、2型糖尿病を発症した325例と対照群611例が得られた。その後、条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、各重金属濃度の四分位群ごとに2型糖尿病のオッズ比と95%信頼区間を推定した。 主な結果は以下のとおり。・職業区分、交代勤務、喫煙、飲酒、余暇の身体活動、糖尿病家族歴、BMI、高血圧、および血清中長鎖ω3脂肪酸、ビタミンD、マグネシウム、セレン、鉛、カドミウム、ヒ素濃度を調整後も、血清水銀濃度が高いほど2型糖尿病のオッズ比は高かった。・血清水銀濃度の最低から最高四分位におけるオッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ1(基準値)、1.15(0.70~1.90)、 1.41(0.85~2.36)、1.98(1.13~3.47)だった(P=0.01)。・カドミウム、鉛、ヒ素と2型糖尿病発症との間に関連は認められなかった。 なお、研究グループは、「血中水銀濃度が食事からの摂取量を直接反映するものではなく、水銀曝露あるいは魚摂取と2型糖尿病との関連についてはさらなる研究が必要」と述べている。

14.

PPI長期使用は本当に胃がんリスクを高めるのか/BMJ

 2023年に発表された3つのメタ解析では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用により胃がんのリスクが約2倍に増加することが示されているが、解析の対象となった文献にはいくつかの方法論的な限界(因果の逆転[プロトパシック バイアス]、症例分類法の違い[方法論的異質性]、Helicobacter pylori[H. pylori]菌感染などの交絡因子の調整不能など)があるため、この結論は不確実とされる。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOnyinyechi Duru氏らは、これらの限界を考慮したうえで、無作為化試験の実施は現実的でないためさまざまなバイアスの防止策を講じた観察研究「NordGETS研究」を行い、PPIの長期使用は胃腺がんのリスク増加とは関連しない可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年1月21日号に掲載された。北欧5ヵ国の人口ベースの症例対照研究 NordGETS研究は、1994~2020年に、北欧5ヵ国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)の各国で前向きに収集されたレジストリデータを用いた人口ベースの症例対照研究(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。 噴門部を除く胃腺がん患者1例に対し、背景因子をマッチさせた対照を10例ずつ5ヵ国の全人口から無作為に抽出した。胃噴門部の腺がんは、PPIの適応症である胃食道逆流症による交絡を回避するために除外した。 曝露は長期(1年超)のPPIの使用とし、診断日(症例)と登録日(対照)の前の12ヵ月間のアウトカムは解析から除外した。PPI使用に関する知見の妥当性と特異性を評価するために、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)の長期(1年超)使用の解析も行った。 主要アウトカムは、胃(非噴門部)腺がんであった。マッチング変数の調整とともに、多変量ロジスティック回帰分析により、国、H. pylori菌治療、消化性潰瘍、喫煙関連疾患、アルコール関連疾患、肥満または2型糖尿病、メトホルミン・非ステロイド性抗炎症薬・スタチンによる薬物療法を調整したオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。H2RAの長期使用も関連がない 胃(非噴門部)腺がん群に1万7,232例(年齢中央値74歳[四分位範囲:65~81]、女性42.4%)および対照群に17万2,297例(74歳[65~81]、42.4%)を登録した。PPIの長期使用は、胃(非噴門部)腺がん群で1,766例(10.2%)、対照群で1万6,312例(9.5%)であった。 最長で26年に及ぶ調査期間中に、PPIの長期使用は胃(非噴門部)腺がんの発症と関連しなかった(補正後OR:1.01、95%CI:0.96~1.07)。粗オッズ比は上昇していたが(1.16、1.10~1.23)、交絡因子(とくにH. pylori菌関連の変量)で調整すると関連性は消失した。 また、H2RAの長期使用も、胃(非噴門部)腺がんのリスク上昇とは関連がなかった(補正後OR:1.03、95%CI:0.86~1.23)。長期使用の利益と不利益を慎重に検討すべき 偽陽性をもたらすエラーの発生源として、(1)胃腺がん診断直前のPPI使用の包含、(2)PPIの短期使用、(3)噴門部腺がん、(4)H. pylori菌関連の変数の調整不足を特定した。 著者は、「本研究の結果は、PPIの長期使用が胃腺がんのリスク増加と関連するとの仮説を支持しない」「バイアスの防止に用いたさまざまな手順のすべてが、潜在的な誤った関連性の発生を防ぐために不可欠であった」「これらの知見は、胃食道逆流症などの適応症の治療でPPIの長期使用を要する患者に安心感をもたらすが、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢や骨粗鬆症、ビタミン・電解質吸収不良などの重篤な病態のリスク増加の可能性が指摘されているため、長期使用の利益と不利益を慎重に検討し、PPI継続の必要性を定期的に再評価する必要があると考えられる」としている。

15.

納豆が心房細動リスクを下げる?~日本人前向き研究

 大豆食品の摂取量が多いと心血管疾患を予防する可能性があることが報告されているが、心房細動予防においては解明されていない。今回、国立循環器病研究センターのParamita Khairan氏らが、都市部の日本人一般集団を対象とした前向きコホート研究で、大豆食品およびその栄養素(イソフラボン、ビタミンK)における心房細動発症率との関連を調査したところ、女性でのみ、納豆およびビタミンKの摂取量が多いと心房細動リスクが低いことが示された。The Journal of Nutrition誌2026年1月号に掲載。 本研究はベースライン調査時に食物摂取頻度質問票を回答した30~90歳の男女5,278人が対象で、心房細動は12誘導心電図検査、健康診断、医療記録、死亡診断書を用いて診断した。多変量調整Cox回帰分析を用いて、大豆食品(納豆、味噌、豆腐)、大豆、イソフラボン、ビタミンKの残差法によるエネルギー調整摂取量の三分位群における心房細動発症率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・6万6,487人年(平均12.6年)の追跡期間中、心房細動発症が222例であった。・女性では、納豆摂取量が最も少ない群(T1)と比べ、最も多い群(T3)で心房細動リスクが低かった(HR:0.44、95%CI:0.24~0.80)が、男性では関連は認められなかった(T1に対するT3のHR:0.97、95%CI:0.65~1.43)。・味噌については、男性でのみ中程度の摂取量と低い心房細動リスクが関連していた。・ビタミンK摂取量が最も多い三分位群の女性は、最も少ない三分位群と比較して、心房細動リスクが67%減少した(HR:0.33、95%CI:0.15~0.71)。・男女とも、大豆食品全体、豆腐、大豆、イソフラボンの摂取量と心房細動リスクとの関連は認められなかった。

16.

紅茶は高齢女性の骨の健康に良い可能性

 足の付け根の周辺(大腿骨近位部)の骨折をできる限り防ぎたいという女性が自分で用意できる「処方箋」があるとすれば、それは「コーヒーではなく、紅茶を飲むこと」かもしれない。高齢女性を対象とした10年間にわたる研究で、紅茶を飲む人はコーヒーを飲む人に比べて、わずかながら骨密度(BMD)が高く、骨が強いことが示されたのだ。フリンダース大学(オーストラリア)医学・公衆衛生学部のEnwu Liu氏とRyan Liu氏らによるこの研究の詳細は、「Nutrients」に2025年11月23日掲載された。 この研究では、65歳以上の女性9,704人が10年間追跡され、コーヒーまたは紅茶の摂取とBMDの縦断的な関連が検討された。BMDは、骨がもろくなる病気である骨粗鬆症のリスクを評価するための重要な指標である。コーヒーおよび紅茶の摂取量は、2、4、5、6回目の訪問時に自記式質問票によって繰り返し評価された。また、大腿骨頸部および股関節全体のBMDは、二重エネルギーX線吸収測定法によって繰り返し測定された。 その結果、紅茶を飲む女性では、飲まない女性と比べて股関節全体のBMDがわずかに高いことが明らかになった。一方、紅茶の摂取と大腿骨頸部のBMDとの間に有意な関連は認められなかった。また、コーヒーの摂取と大腿骨頸部および股関節全体のBMDとの間にも有意な関連は認められなかったが、1日5杯を超えるコーヒーの摂取はBMDの低下と関連する可能性が示唆された。さらに、生涯のアルコール摂取量が多い女性はコーヒーの悪影響を受けやすい可能性があることや、紅茶の有益な効果は肥満の女性でより強く現れる可能性があることも示された。 研究グループは、紅茶の摂取と非摂取との間で見られたBMDの差はわずかであったことを認めつつも、統計学的には有意であったと説明。そのため、わずかな差でも、より大きな人口集団の健康を考慮すると重要な意味を持つ可能性があるとの見解を示している。 Enwu Liu氏は、「適量のコーヒーは安全であると考えられるが、摂取量が多過ぎるのは理想的とはいえないかもしれない。特に飲酒の習慣がある女性では注意が必要だ」とニュースリリースの中で述べている。 骨粗鬆症は年間数百万件の骨折を引き起こす原因となる疾患で、50歳以上の女性の3人に1人が罹患していると推定されている。Enwu Liu氏らは、何十億人もの人がコーヒーや紅茶を飲むことを毎日の習慣にしているため、これらの飲み物が骨に与える影響を理解することは重要であると指摘している。なお、同氏らによると、先行研究では相反する結果が示されているという。また、これほど多くの女性を10年という長期間にわたって追跡した研究は、これまでほぼなかったことも同氏らは付け加えている。 Ryan Liu氏は、お茶には骨量の減少の抑制や骨形成の促進に役立つ可能性のあるカテキンと呼ばれる化合物が豊富に含まれていると説明。「一方、コーヒーに含まれるカフェインは、実験室での研究でカルシウムの吸収や骨代謝を妨げることが示されている」とニュースリリースの中で述べている。ただし、その影響はわずかであり、ミルクを加えることで相殺される可能性があるとも付け加えている。 Enwu Liu氏は、今回の研究の結果について、「女性はコーヒーをやめたり、お茶を大量に飲み始めたりする必要があることを意味しているわけではない」と強調している。その上で同氏は、「カルシウムとビタミンDが骨の健康に不可欠なものであることに変わりはないが、普段飲んでいるカップの中身も影響する可能性がある。高齢女性にとって、いつもの1杯のお茶は単なる心安らぐ習慣にとどまらず、骨を強くするための小さな1歩になるかもしれない」と述べている。

17.

抗菌薬による末梢神経障害【1分間で学べる感染症】第37回

画像を拡大するTake home message一部の抗菌薬・抗真菌薬は末梢神経障害を引き起こす可能性があり、とくに慢性使用時や高用量使用時には、そのリスクを念頭に置いた処方・モニタリングが重要であることを理解しよう。抗菌薬の使用中に、患者から「手足がしびれる」「足裏の感覚が鈍い」といった訴えがあった場合、まず考慮すべきは「薬剤性末梢神経障害(drug-induced peripheral neuropathy)」です。とくに抗菌薬を長期投与する機会の多い免疫不全、結核、真菌感染症の患者では、強く意識しておくことが重要です。今回は、抗菌薬による末梢神経障害の頻度や経過に着目して、代表的な薬剤を整理していきましょう。抗菌薬ごとの特徴と注意点メトロニダゾール抗嫌気性菌治療で広く使われる薬剤であり、高用量での長期使用(4週間で42g以上)では末梢神経障害が比較的高頻度で報告されています。症状は亜急性で、用量調整と早期中止により改善するといわれますが、一部の患者では長期間持続することがあります。イソニアジド結核治療の第1選択薬ですが、ビタミンB6(ピリドキシン)欠乏により末梢神経障害を起こすことがあります。ビタミンB6を併用することで発症頻度は大きく低下しますが、常に可能性を念頭に置いておくことが重要です。リネゾリドグラム陽性球菌に対する治療薬として使用されますが、2週間以上の使用で30%前後の頻度で神経障害が生じると報告されており、比較的頻度が高い抗菌薬として押さえておく必要があります。エタンブトール視神経障害のイメージが強い薬剤ですが、まれに末梢神経障害も報告されており、とくに高齢者や腎機能低下例では注意が必要です。フルオロキノロン系非常にまれながら感覚障害、異常感覚といった末梢神経障害が発現することが知られています。腱障害(腱炎や腱断裂、アキレス腱が多い)と併せて理解しましょう。ジアフェニルスルホン(ダプソン)ハンセン病やニューモシスチス肺炎の予防に使われる薬剤で、亜急性から慢性の経過をとる神経障害が報告されています。トリアゾール系抗真菌薬ボリコナゾールを中心に、慢性使用で神経毒性のリスクが上昇することが示唆されています。ボリコナゾールでは幻覚、高濃度で中枢神経障害も併せて覚えるようにしましょう。クロラムフェニコール現在では使用頻度が低い薬剤ですが、慢性的な神経毒性の報告があるため、投与機会がある場合には注意が必要です。末梢神経障害は、患者のQOLを大きく損なう副作用にもかかわらず、原因が特定されにくく、かつ進行性である可能性がある点で非常に重要です。上記の抗菌薬を継続している患者では、常に末梢神経障害のリスクを念頭に置き、出現した際には中止あるいは変更を検討します。1)Mauermann ML, et al. JAMA. 2025 Nov 17. [Epub ahead of print]

18.

1月9日 風邪の日【今日は何の日?】

【1月9日 風邪の日】〔由来〕寛政7(1795)年の旧暦の今日、第4代横綱で63連勝の記録を持つ谷風 梶之助が風邪で亡くなったことに由来して制定。インフルエンザや風邪が流行する季節でもあることから、医療機関や教育機関で風邪などへの予防啓発で周知されている。関連コンテンツ今冬のインフルエンザ診療のポイント【診療よろず相談TV】急性呼吸器感染症の5類位置付けに関するQ&A【患者説明用スライド】風邪や咳症状に対する日本での市販薬使用状況は?「風邪のときのスープ」に効果はある?風邪予防にビタミンDは効果なし?~メタ解析

19.

新生児に対するビタミンK投与を拒否する親が増加傾向

 米国では、1961年に全ての新生児に対するビタミンKの筋肉内投与が開始されて以来、ビタミンK欠乏性出血症がほぼ解消された。ビタミンKは、血液凝固を助ける目的で投与される薬剤であり、ワクチンではない。しかし新たな研究で、近年、新生児へのビタミンK注射を拒否する親が増えていることが明らかにされた。研究グループは、注射の拒否により新生児が深刻な出血リスクにさらされる可能性があると警告している。米フィラデルフィア小児病院の新生児専門医であるKristan Scott氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Association(JAMA)」に12月8日掲載された。 この研究でScott氏らは、2017年から2024年の間に米国50州にある403カ所の病院で、妊娠35〜43週で生まれた509万6,633人の新生児の医療記録を調べた。その結果、全体の3.92%に当たる19万9,571人がビタミンKの注射を受けていないことが明らかになった。注射を受けていない新生児の割合は、2017年の2.92%から2024年の5.18%へと有意に増加しており、特に新型コロナウイルス感染症パンデミック以降に急増していた。この結果についてScott氏は、「増加自体は驚くことではないが、増加の大きさには驚いた」とNBCニュースに語っている。 新生児のビタミンK体内濃度は非常に低い。米疾病対策センター(CDC)によると、ビタミンKの投与を受けない場合、危険な出血を起こす可能性が80倍以上高くなるという。出血は、生後6カ月までの間にあざや内出血などの形で現れる可能性があり、最も重篤な場合には障害や死亡につながる脳出血が生じることもある。 このことを踏まえてScott氏は、「われわれは、出血リスクのある新生児の集団を作り出しているに等しい。本当に心配なのは脳出血、つまり脳卒中だ。脳出血が起こると、最終的には死に至る可能性がある」と話している。 専門家らは、オンライン上の誤情報やビタミンK注射とワクチンの混同が、こうした傾向の根底にあるのではないかと疑っている。この研究には関与していない米テキサス小児病院の新生児科医であるTiffany McKee-Garrett氏は、「親は、ビタミンK注射をワクチン接種と同等に捉えている」とNBCニュースに語っている。 一部の国では、新生児に経口ビタミンKを投与している。しかし医師らは、経口ビタミンKは信頼性が低く、場合によっては複数回投与する必要があるのに対し、ビタミンKの注射は1回の投与で効果があるとしている。 米NYC Health + Hospitalsの新生児科医であるIvan Hand氏は、「ビタミンK欠乏性出血症は予防可能であり、そもそも発生していること自体が問題だ」と話す。医師らは、現状のようなビタミンK投与が拒否される状態が続けば、出血イベントの発生数が増加する可能性が高いとの見方を示している。Hand氏は、「ビタミンK投与は極めて効果的であるが、人々はそのことを十分に理解していない。重度の出血を起こした乳児を見たことがないため、そのようなことは起こらないと思っているのだ。しかし、それが見られないのは、われわれがそうした乳児の治療をしているからだ」と話している。

20.

多発性硬化症と口腔内細菌の意外な関係、最新研究が示す病態理解の可能性

 多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の神経線維を包むミエリンが自己免疫反応によって障害される希少疾患で、視覚障害や運動麻痺、感覚障害などさまざまな症状を引き起こす。最新の研究で、MS患者の口腔内に存在する特定の歯周病菌、Fusobacterium nucleatum(F. nucleatum)の量が、病気の重症度や進行に関わる可能性が示された。研究は、広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の内藤裕之氏、中森正博氏らによるもので、詳細は11月3日付で「Scientific Reports」に掲載された。 MSの発症には遺伝的素因に加え、ウイルス感染や喫煙、ビタミン欠乏などの環境因子が関与すると考えられ、近年は腸内細菌の異常も病態形成に影響することが示唆されている。また、口腔内細菌、特に歯周病菌も中枢神経疾患に影響することが報告されており、慢性的な炎症や免疫応答を介してMSの進行や重症度に関与する可能性がある。これまでに歯周病とMSの関連や、MS患者における特定菌種の増加が報告されているものの、臨床指標や再発・進行との具体的な関連や菌種ごとの差異は不明である。こうした背景を踏まえ著者らは、MSや視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)の患者の舌苔サンプルから歯周病菌量を定量し、臨床特徴やMRI所見との関連、さらに菌種ごとの影響を探索する横断的研究を実施した。 本研究は2023年5~11月にかけて実施され、広島大学病院脳神経内科を受診した15歳以上のMS、NMOSD、MOGAD患者112人が解析対象となった。患者から採取した舌苔サンプルは4種の歯周病菌種 (F. nucleatum、P. gingivalis、P. intermedia、T. denticola)を標的とした定量的PCRを用いて分析した。先行研究に倣い、細菌の総存在量に対する比率が第3四分位数を超える場合「高相対量」と定義された。患者の重症度は総合障害度評価尺度(EDSS)で評価し、スコア4をカットオフとした。 本研究の最終的な解析対象は98人(平均年齢48.6歳、女性77.6%)となった。これらのうち、56人がMS、31人がNMOSD、11人がMOGADとそれぞれ診断された。MS、NMOSD、MOGADで歯周病菌の高相対量に有意差はなく、口腔衛生習慣もほぼ同等であった。 単変量解析により、MS患者における各歯周病菌とEDSSスコアの関係を調べたところ、F. nucleatumの相対量が高いMS患者は、低い患者に比べてEDSSスコアが有意に高く、EDSS ≥4の割合も多かった(61.5% vs 18.6%、P=0.003)。多重比較補正(Benjamini-Hochberg法)を行った後も、MS患者におけるF. nucleatumの高相対量とEDSS ≥4の関連のみが有意であった(P=0.036)。一方、他の歯周病菌の相対量は、EDSS ≥4との有意な関連は認められなかった。また、NMOSDおよびMOGAD患者においても、EDSSスコアと各菌の高相対量との関連は認められなかった。 単変量解析では、MS患者の重症度(EDSS ≥4)に影響を与える要因として、F. nucleatumの高相対量に加え、年齢、MSのサブタイプ、発作回数、罹病期間も示唆された。しかし、これらの因子を考慮した多変量解析では、F. nucleatumの高相対量のみが独立して有意であった(オッズ比10.0、95%信頼区間1.45~69.4、P=0.020)。 著者らは、「本研究は、MS患者において口腔内のF. nucleatum相対量がEDSSスコアと強く関連することを示した。因果関係は示せないが、将来的な研究課題としては、サイトカイン関連機構などの免疫学的メカニズムの解明や、口腔ケアなどの介入による影響の検討が挙げられる」と述べている。 本研究の限界として、単施設の横断的観察研究であり、MS以外の疾患群やF. nucleatum陽性患者が少なくサンプルサイズが限られていたこと、歯周病の臨床評価や抗菌薬使用歴、口腔行動の影響、免疫指標測定が不十分であり、残存交絡や因果関係の推定は困難であったことを挙げている。

検索結果 合計:607件 表示位置:1 - 20