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新規経口抗凝固薬の眼内出血リスク、従来薬との比較

 新しい経口抗凝固薬(NOAC)は、ほとんどの血栓形成予防において標準療法に対し非劣性であることが認められているが、安全性プロファイルには差があり、とくに眼内出血のリスクについてはほとんどわかっていない。ポルトガル・分子医学研究所のDaniel Caldeira氏らは、NOACに関連した重大な眼内出血のリスクを評価する無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、NOACと他の抗血栓薬とで重大な眼内出血のリスクに差はないことを報告した。ただしイベント数が少ないため、「NOACの安全性プロファイルをよりよく特徴づけるためには、眼科の日常的な臨床診療下で患者をモニターする大規模なデータベースから追加の研究がなされるべきである」とまとめている。JAMA Ophthalmology 2015年7月号の掲載報告。 研究グループは、MEDLINE、Cochrane Library、SciELO collectionおよびWeb of Science databasesを用いて2014年11月までの論文を検索するとともに、他のシステマティックレビューや規制当局の資料も調べた。 対象は、NOACのすべての第III相無作為化比較試験(RCT)で眼内出血イベントについて報告されているものとし、2人の研究者が独立してデータを抽出した。 メタ解析にはランダム効果モデルを用い、試験の異質性はI2統計量で評価するとともに、重大な眼内出血については統合リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・17件のRCTがメタ解析に組み込まれた。・心房細動患者において、NOACはビタミンK拮抗薬と比較し重大な眼内出血のリスクに差はないことが確認され(RR:0.84、95%CI:0.59~1.19、I2=35%、RCT5件)、アセチルサリチル酸と比較してもリスクの増加は認められなかった(RR=14.96、95%CI:0.85~262.00、RCT1件)。・静脈血栓塞栓症患者において、NOACは低分子ヘパリン+ビタミンK拮抗薬と比較し重大な眼内出血のリスクは増加しないことが確認された(RR=0.67、95%CI:0.37~1.20、I2=0%、RCT5件)。・整形外科手術を受けた患者においても、NOACと低分子ヘパリンとで差はなかった(RR=2.13、95%CI:0.22~20.50、I2=0%、RCT5件)。

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ワルファリン延長投与、中止後も効果は持続するか/JAMA

 6ヵ月間の抗凝固治療を受けた特発性肺塞栓症の初発患者に対し、さらに18ヵ月間のワルファリン投与を行うと、とくに静脈血栓塞栓症の再発リスクが大きく改善されるが、治療を中止するとこのベネフィットは消失することが、フランス・ブレスト大学医療センターのFrancis Couturaud氏らが進めるPADIS-PE試験で示された。本症に対する抗凝固療法を3~6ヵ月で中止すると、一時的なリスク因子(手術など)に起因する静脈血栓塞栓症よりも再発リスクが高くなる。これらの高リスク集団に、さらに3~6ヵ月の延長治療を行うと、治療継続中は再発リスクが抑制されるが、治療中止後もこの効果が持続するかは不明だという。JAMA誌2015年7月7日号掲載の報告。治療終了後2年時の転帰も評価 PADIS-PE試験は、特発性肺塞栓症に対するワルファリンの18ヵ月延長投与の有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験(ブレスト大学病院などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、静脈血栓塞栓症のリスク因子がないにもかかわらず症候性の肺塞栓症を発症し、ビタミンK拮抗薬(INR目標値:2.0~3.0)による6ヵ月間の初期治療を受けた患者であった。 被験者は、ワルファリン(INR目標値:2.0~3.0)またはプラセボを18ヵ月間投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は18ヵ月時の静脈血栓塞栓症の再発および大出血の複合エンドポイントであり、副次評価項目は42ヵ月時(治療終了後24ヵ月時)の複合エンドポイントなどであった。 2007年7月~2012年3月の間に、フランスの14施設に371例が登録され、2014年9月までフォローアップが行われた。ワルファリン群に184例(平均年齢:58.7±17.9歳、>65歳:40.2%、女性:57.6%)、プラセボ群には187例(57.3±17.4歳、37.4%、44.9%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は23.4ヵ月だった。相対リスクが78%低減、24ヵ月後は有意差消失 18ヵ月の治療期間中の主要評価項目発現率は、ワルファリン群が3.3%(6/184例、2.3/100人年)であり、プラセボ群の13.5%(25/187例、10.6/100人年)に比べ、相対リスクが78%低減した(ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.09~0.55、p=0.001)。 静脈血栓塞栓症の再発率は、ワルファリン群が1.7%(3例、1.1/100人年)、プラセボ群は13.5%(25例、10.6/100人年)とワルファリン群で良好であった(HR:0.15、95%CI:0.05~0.43、p<0.001)が、大出血はそれぞれ2.2%(4例)、0.5%(1例)であり、両群間に差を認めなかった(3.96、0.44~35.89、p=0.22)。 42ヵ月時の主要評価項目発現率は、ワルファリン群が20.8%(33例)、プラセボ群は24.0%(42例)であり、18ヵ月時に認めた有意な差は消失した(HR:0.75、95%CI:0.47~1.18、p=0.22)。42ヵ月時の静脈血栓塞栓症の再発(17.9 vs.22.1%、p=0.14)および大出血(3.5 vs.3.0%、p=0.85)に差はなかった。 静脈血栓塞栓症の再発および大出血以外の原因による死亡は、18ヵ月時(1.1 vs.1.1%、p=0.78)、42ヵ月時(9.1 vs.3.6%、p=0.45)ともに、両群間に差はみられなかった。 著者は、「本試験に参加した患者などでは、長期的な2次予防治療を要すると考えられるが、ビタミンK拮抗薬や新規抗凝固薬、アスピリンを用いた体系的な治療を行うべきか、あるいはDダイマー値上昇などのリスク因子に従って個別的な治療を行うべきかを決定するには、さらなる検討を要する」と指摘している。

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ダビガトランに対するidarucizumab、患者での中和効果は?/NEJM

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)投与中の患者に対して、idarucizumabは数分以内で抗凝固作用を完全に中和することが、米国・ペンシルベニア病院のCharles V. Pollack, Jr氏らによる検討の結果、報告された。idarucizumabは、経口非ビタミンK拮抗薬に対する特異的な中和薬がない中、ダビガトラン特異的に抗凝固作用を中和するために開発されたヒト化モノクローナル抗体フラグメントである。これまでボランティア被験者(腎機能正常の健常若年者、65~80歳高齢者など)を対象とした試験で、迅速かつ完全な中和作用をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告より。重大出血患者群と要緊急手術患者群で安全性と有効性を検討 今回の報告は、現在も進行中の多施設共同前向きコホート試験RE-VERSE AD(38ヵ国400施設で300例登録を計画)の、早期登録患者90例(2014年6月~2015年2月に35ヵ国184施設で登録)において得られた中間解析の所見である。 RE-VERSE AD試験は、重大出血を呈した患者(A群)または緊急手術を要した患者(B群)におけるidarucizumab 5g静注の安全性を確認すること、およびダビガトラン抗凝固作用の中和能を確認することを目的とした。 主要エンドポイントは、idarucizumab投与後4時間以内のダビガトラン抗凝固作用の最大中和率(%)で、中央ラボにて確認(希釈トロンビン時間とエカリン凝固時間)が行われた。また、止血までの時間を副次エンドポイントのキーとした。88~98%の患者で、数分以内の抗凝固作用の中和を確認 登録患者90例の内訳は、A群51例、B群39例であった。患者の90%超が心房細動後の脳卒中予防のためダビガトラン治療を受けていた。年齢中央値は76.5歳、クレアチニンクリアランス中央値は58mL/分であった。 結果、ベースラインで希釈トロンビン時間の上昇がみられた68例、およびエカリン凝固時間の上昇が認められた81例において、最大中和率が100%であった(95%信頼区間[CI]:100~100)。 idarucizumab投与により、希釈トロンビン時間は、上昇がみられたA群98%の患者、およびB群93%の患者において正常化が認められた。またエカリン凝固時間についてはA群89%、B群88%の患者において正常化が認められた。それぞれの効果は、血液サンプルの結果から、初回投与後、数分以内に発現したことが明らかとなった。 また、24時間時点で、79%の患者において非結合ダビガトラン濃度は20ng/mL以下にとどまっていた。 止血に関する評価については、A群35例(中央ラボではない研究者による)の、止血までの時間中央値は11.4時間であった。手術を受けたB群36例のうち33例で、正常な周術期止血が報告され、軽度止血異常は2例、中等度止血異常は1例の報告であった。 また、抗凝固薬が再投与されていなかった患者1例において、idarucizumab投与後72時間以内の血栓性イベントが報告された。(武藤まき:医療ライター)関連記事 dabigatranの中和薬、リアルワールドな試験で良好な成績

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心房粗動の患者さんへの説明

心房粗動監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・洞結節由来の心房波が消え、複数あるいは単一の興奮波が心房の中を旋回しています。・心房粗動が起こると、1分間に250~350回心房が興奮します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節心房粗動では、心房が速い速度で細かく収縮するため、外から見るとけいれんしているような状態になります。①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?◆通常の心臓は興奮が伝わり規則正しく収縮しますが…トントントントン◆心房粗動では、心房細動よりは低いものの、速い速度で細かく収縮します。しかし、収縮の一部が心室一定に伝わるため、心室の収縮は規則的です。そのため、脈拍は1分間に150回、75回など一定になることが多いです。トントントントントントン脈拍は一定であることが多いです。無症状の方から、動悸、息切れなどの症状を訴える方までさまざまです。心房の収縮心室の収縮(脈)Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動とは?・心房粗動自体が直接命に関わることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こすことで間接的に悪影響を及ぼすため、治療が必要です。血栓が血管を閉塞脳梗塞心房細動や心房粗動では、心房がけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどみ、心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓から動脈に沿って、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍といわれています。この塞栓症を予防することが心房細動や心房粗動治療の最も重要な目的です。血液がよどむ→血栓ができる→血栓が全身に飛ぶ(運ばれる)→脳梗塞、心筋梗塞などの塞栓症Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房粗動の治療は・抗不整脈薬はあまり効果がありませんが、カテーテルアブレーションは高い効果(根治確率90%以上)が認められます。そのため、治療はカテーテルアブレーションが主体となります。・心房粗動が長い間続いているなど脳梗塞を起こす危険がある場合は、血栓が起きないように抗血栓薬を飲みます。高周波通電カテーテルアブレーション電極アブレーションカテーテル高周波発生装置カテーテルアブレーション血管を通して心臓まで細い管(カテーテル)を入れ、不整脈の原因となっている場所を探して、その部位を低温やけどさせ、不整脈の原因を取り除くという治療です。心房粗動のほとんどは右心房が発生部位であることがわかっています。静脈からカテーテルを挿入すると、すぐに右心房に到達し、治療も短時間で終了します。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆カテーテルアブレーションで根治した場合、その後の治療や管理は不要です。◆長期的には心房細動を発生することもありますので、定期的な検査は受けたほうがよいでしょう。【根治しなかった場合は、下記に注意しましょう】◆高血圧、糖尿病、心臓の病気などがあると脳梗塞を起こしやすくなるので、しっかり管理してください。◆睡眠不足、ストレス、アルコールは不整脈を起こしやすくしますので注意してください。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.抗血栓薬による脳梗塞予防◆血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。◆ワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。◆薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診のたびに血液検査を行う必要があります。◆ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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心房細動の患者さんへの説明

心房細動監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動とは?・洞結節由来の心房波が消え、複数あるいは単一の興奮波が心房の中を旋回しています。・肺静脈の開口部にある心筋細胞から生じる心房期外収縮が引き金になります。・心房細動が起こると、1分間に350回以上心房が興奮します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節心房細動では、心房が速い速度で細かく収縮するため、外から見るとけいれんしているような状態になります。①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動とは?◆通常の心臓は興奮が伝わり規則正しく収縮しますが…トントントントン◆心房細動では、心房が速い速度で細かく収縮しますが、収縮の一部は心室に伝わらないので、心室の収縮は不規則です。そのため、脈拍は1分間に50回前後のこともあれば、100回を超えるような方もいます。トントントントントン人によって脈の速さが大きく違うため、まったく無症状の方から、ひどい動悸、息切れ、脈が速くなる・でたらめになる、などの症状を訴える方までさまざまです。持続時間もまちまちで、発作的に数分から数時間起きる方(発作性心房細動)もいれば、慢性的に起きる方(慢性心房細動:1週間上持続するもの=持続性心房細動、1年以上持続しているもの=永続性心房細動)もいます。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房の収縮心室の収縮(脈)心房細動とは?・人口の1%と、比較的ありふれた不整脈ですが、加齢により増加し、80歳以上では5%の方がかかっています。・心房細動自体が直接命に関わることはありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こす原因となるため、脳梗塞へのなりやすさなどを考え治療を決めます。血栓が血管を閉塞脳梗塞心房細動や心房粗動では、心房がけいれんするように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため心房内 の血液の流れがよどみ、心房の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓から動脈に沿って、脳 の中の大きな血管を突然閉塞するのが心原性脳塞栓症です。心房細動がある人は心房細動のない人と比べると、脳梗塞を発症する確率は約5倍といわれています。この塞栓症を予防することが心房細動や心房粗動治療の最も重要な目的です。血液がよどむ→血栓ができる→血栓が全身に飛ぶ(運ばれる)→脳梗塞、心筋梗塞などの塞栓症Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房細動の治療は・脳梗塞を起こす危険がある場合は、血栓が起きないように抗血栓薬を飲みます。・心房細動を止める必要がある場合は、薬(抗不整脈薬など)を服用するか、カテーテルアブレーションを行います。高周波通電カテーテルアブレーション高周波発生装置電極カテーテルアブレーション血管を通して心臓まで細い管(カテーテル)を入れ、不整脈の原因となっている場所を探して、その部位を低温やけどさせ、不整脈の原因を取り除くという治療です。心房細動では左心房にある肺静脈の血管内やその周囲から発生する異常な電気信号をきっかけに起こるため、肺静脈を囲むようにしてアブレーションの治療を行い、肺静脈からの異常電気信号が、心臓全体に伝わらないようにします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆高血圧、糖尿病、心臓の病気などがあると脳梗塞を起こしやすくなるので、しっかり管理してください。◆睡眠不足、ストレス、アルコールは心房細動を起こしやすくしますので注意してください。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。◆脳梗塞の危険性が高い場合は、脳梗塞予防薬を毎日忘れないように服用します。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.抗血栓薬による脳梗塞予防◆血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。◆ワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。◆薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診のたびに血液検査を行う必要があります。◆ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない新しい抗凝固薬も使用できるようになっています。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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心房細動においても多職種が介入する疾病管理の概念が重要(解説:小田倉 弘典 氏)-346

 多職種が介入する慢性心不全の疾病管理プログラムは、国内外のガイドラインにおいても推奨度が高く、Class Iに位置付けられている。疾病管理とは、具体的には多職種(医師・看護師・薬剤師・栄養士など)によるチーム医療、退院時指導、フォローアップ計画(病診連携)、ガイドラインに沿った薬物治療、十分な患者教育・カウンセリング、患者モニタリングによる心不全増悪の早期発見などが挙げられる1)。しかしながら、心房細動においてはいくつかの報告があるものの、レベルの高いエビデンスに乏しかった。 本論文は、オーストラリアの三次医療機関において施行された、心房細動に特異的な疾病管理の有効性を検討したものである。 対象は、オーストラリア3ヵ所の三次医療機関において、新規に慢性心房細動と診断された心不全のない非弁膜症性心房細動335例。無作為割り付けにより、退院後ルーチンのプライマリケアと外来診察によるフォローアップから成る標準管理群(167例)と、心房細動に特異的な管理を行った「SAFETY管理群」(168群)に振り分けた。SAFETY管理の内容は、退院後7~14日間、心臓専門看護師による家庭訪問とホルターモニタリング、訪問時の家庭環境、症状、薬剤処方計画の確認、プライマリケア医、救急病院の連携、必要に応じた運動プログラム、ソーシャルワーカーや地域薬剤師のサポートなどから成る。 最低12~24ヵ月ごとに臨床的評価を施行。主要評価項目は全死亡、予期せぬすべての入院、副次評価項目としてイベントフリー時間、生存および非入院期間の実期間と最大期間の比率が設定された。 結果は、以下のとおりであった。 1)平均追跡905日、2)死亡49例、予期せぬ入院987例(全入院5,530日)、3)死亡+予期せぬ入院:SAFETY管理群76%・平均イベントフリー時間183日 vs. 標準管理群82%・199日;ハザード比0.97、p=0.851、4)生存および非入院時間の最大値に占める実測値の理合:SAFTY管理群99.5% vs. 標準管理群99.2%;p=0.039。心房細動に特化した管理は、標準管理に比べ生存日数や非入院日数の延長に関連し、疾患特異的な管理は慢性心房細動患者の乏しい健康アウトカムの改善戦略として有望と結論付けられている。 それぞれのケアの内容が重要なのでもう少しみてみると、標準管理とは、不具合時の対処や心房細動管理のキーポイントを記載した退院時の教育的ブックレット(「心房細動と共に生きる」)配布や、退院時の医師のサマリーおよび各種トライアルの情報の提供などであった。一方SAFETY管理は、退院後のナースの家庭訪問、GARDENメソッドによる個々の包括的な環境やセルフケアの能力の把握、臨床状況やガイドラインに基づいての管理の記録などである。ナースはこれら包括的なレポートを医療チームに送り、適切な抗凝固薬を選択し、心機能低下の進行を遅らせ、臨床的安定を図るとされている。 心房細動治療の慢性管理の目標は、心原性脳塞栓と心不全の予防である。とくに前者では抗凝固薬服用のアドヒアランスの維持、出血などのトラブルシューティング、後者では心不全症状の早期発見、食事運動といった管理などが主眼と考えられる。こうした管理は、医師だけで完結できるものではない。慢性心不全の管理同様、多職種で多角的に介入することにより管理の精度が向上することは容易に予想される。そのことが無作為割付試験で明確化された点で意義のある研究といえる。 ただし、死亡・入院といったイベント数だけをみると、標準管理と比べ有意差はなく、非入院期間の延長が複合評価項目の改善に寄与していた。本論文では看護師チームの定期的訪問が最大の特徴だが、この訪問により、抗凝固薬の服薬アドヒアランスや出血時の対処能力などの高まりが予測される。一方、大きなイベントを回避するまでのパワーには、いまだに不足している可能性がある。 また、訪問看護によるコストに関しては考慮されていない。現時点では、日本では心不全のない軽症の心房細動患者に対する訪問看護は保険償還されない。 しかしながら、看護師主導の心房細動ケアが心血管イベントを減らすとする別の無作為化試験も報告されており2)、医師だけでなく、多職種が介入することにより包括的に心房細動の慢性期を管理するという考え方は、非ビタミンK阻害経口抗凝固薬が出揃った現在、新たな心房細動治療の概念として重要視されることは間違いないと思われる。

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ワルファリン出血の急速止血に新たな選択肢?(解説:後藤 信哉 氏)-333

 臨床家は50年にわたり、ワルファリンを使用してきた。新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が開発され、使用可能になったとはいっても、真の意味での血栓イベントリスクが高くない非弁膜症性心房細動など、薬剤の必要性が必ずしも高くない症例なので、これらの症例で出血が怖ければ薬剤を使用しないとの選択があった。ワルファリンを使用している症例は、人工弁、血栓性素因など抗凝固薬の必要性が著しく高い症例である。これらの症例でも、ワルファリンコントロールの良否にかかわらず、重篤な出血イベントが起こる場合がある。消化管出血などであれば、開腹、長時間の圧迫止血など、薬剤以外の手段がまったくないわけではない。頭蓋内出血となると、とても困る。時間と共に症状が増悪している頭蓋内出血では、頭蓋内圧増加が止血に寄与しても、ワルファリンの効果が持続している状態では止血は期待し難い。 ワルファリンは、ビタミンK依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する薬剤なので、凝固因子を外部から補えば止血に寄与できるとの発想があった。しかし、新鮮凍結血漿の凝固因子濃度は濃くない。血友病治療に用いる第VII因子濃縮製剤は、うまくいかなかった。血液凝固システムは複雑である。ワルファリンは、血小板上での活性化凝固因子複合体の産生阻害を介して抗凝固効果を発揮するので、単一凝固因子を補うよりも、複数因子からなる活性化凝固因子複合体を投与したほうが、止血効率が高いと想定された。同時に補給して酵素カスケード反応を効率化しようというのが、今回の臨床試験の試みである。複数因子を含む製剤の中でも第VII因子がほぼ正常の製剤と、第VII因子を少量含む製剤がある。本試験では、第VII因子を正常量含むfour factor PCCと新鮮凍結血漿の止血効果とPT-INRに及ぼす効果が検証された。 臨床家にとっては止血効果こそ重要である。試験に参加した医師は、止血効果を実感したと想定される。しかし、止血効果は感覚的なので科学的エンドポイントとしては十分性が乏しい。そこでPT-INRに対する効果も検証された。試験は薬剤開発の後期第II相試験である。 試験はオープンラベルの非劣性試験である。薬剤開発試験であるため、スポンサーバイアスもあるかもしれない。止血効果は活性化凝固因子複合体製剤が優越していた。INRの改善も認めた。「心房細動の脳卒中予防に対する抗凝固薬」の有効性を確認する試験など、薬剤が標的とするイベントの発現率が著しく低く、かつ、薬剤中止という選択により実際に患者さんが困るケースが少ない場合には、オープンラベルの第II相試験の後に、有効性を科学的検証する第III相試験が必要かもしれない。しかし、今回の試験の対象薬は「出血により時事刻々と実際に困っている症例」が対象である。認可承認のハードルを低くしても、実際に医師が臨床現場で使用すれば有効性を実感できる。少なくとも「医は仁術」として、ビジネスを度外視している日本の医師は、認可承認の後に「出血により時事刻々と実際に困っている症例」を救えない薬剤は使用しない。このような薬剤は、試験の科学的価値が低くても、臨床現場に早く届ける価値がある。実際に使用する症例数は多くないと想定されるので、認可承認の後、全数の登録レジストリなどをスポンサーに課して、期限内に科学的根拠を示せなければ、承認取り消しの条件に早期承認を可能とするシステムを考えたらよいと筆者は考える。

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心房細動へのジゴキシン、死亡増大/Lancet

 心房細動(AF)患者へのジゴキシン(商品名:ジゴシンほか)治療は、全死因死亡、血管系による死亡、および突然死の有意な増大と関係していることが、Jeffrey B Washam氏らが行ったROCKET AF被験者データの後ろ向き分析で示された。関連は、他の予後因子とは独立しており、著者は「残余交絡の影響の可能性も示唆されたが、ジゴキシンの影響の可能性が示された。心不全あり・なしのAF患者で、ジゴキシン治療の無作為化試験を行う必要がある」と報告している。ジゴキシンは、無作為化試験のデータが不足しているにもかかわらずAF患者に広く使われている。Lancet誌オンライン版2015年3月5日号掲載の報告。ROCKET AF被験者データを後ろ向きに分析 ROCKET AF試験は、AF患者の脳卒中および血栓塞栓症の予防についてリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)vs. ビタミンK拮抗薬を検討した多施設共同無作為化試験であった。被験者は45ヵ国で登録され、AF歴およびそのリスク因子相当の中等度~重度の脳卒中リスクを有していた。心不全の有無は問わなかった。 研究グループは、ベースラインおよび試験中のジゴキシン使用状況で患者を包含・層別化し、ジゴキシン使用と有害心血管アウトカムの関連を調べた。 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、ベースライン特性、使用薬剤で補正後、ジゴキシンと全死因死亡、血管系による死亡、突然死との関連を調べた。使用患者は全死因死亡、血管系死亡、突然死が有意に増大 無作為化を受けた1万4,171例のうち、ベースラインでジゴキシン使用が認められたのは5,239例(37%)であった。 分析の結果、ジゴキシン使用患者は、女性が多く(42% vs. 38%)、また心不全(73% vs. 56%)、糖尿病(43% vs. 38%)、持続性AF(88% vs. 77%)既往者が多い傾向がみられた(それぞれ比較のp<0.0001)。 補正後、ジゴキシンと、全死因死亡の増大(100患者年当たり発生5.41例vs. 4.30例、ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:1.04~1.32、p=0.0093)、血管系による死亡の増大(同:3.55例vs. 2.69例、1.19、1.03~1.39、p=0.0201)、突然死の増大(同:1.68例vs. 1.12例、1.36、1.08~1.70、p=0.0076)が認められた。

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ビタミンK拮抗薬の急速中和製剤(4F-PCC)の効果は?/Lancet

 緊急の外科的・侵襲的手技においてビタミンK拮抗薬(VKA)投与を必要とする患者について、4因子含有プロトロンビン複合体濃縮製剤(4F-PCC)の血漿製剤に対する、急速VKA中和および止血効果に関する非劣性と優越性が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院のJoshua N Goldstein氏らによる第IIIb相の非盲検非劣性無作為化試験の結果、示された。VKAによる抗凝固療法は、緊急外科的・侵襲的手技を要する患者に関して迅速中和を必要とする頻度が高い。しかしこれまでその至適な手法について、臨床比較試験による確定は行われていなかったという。Lancet誌オンライン版2015年2月26日号掲載の報告より。止血効果と急速INR低下の2つを主要エンドポイントに比較 研究グループは、4F-PCCの有効性と安全性を血漿製剤と比較して検討した。試験は国際多施設共同(33病院;米国18、ベラルーシ2、ブルガリア4、レバノン2、ルーマニア1、ロシア6)にて行われ、緊急外科的・侵襲的手技の前に急速VKA中和を必要とする18歳以上の患者を登録した。 患者を、VKA投与と共に4F-PCC(Beriplex/Kcentra/Confidex;ドイツ・CSLベーリング社製)または血漿製剤を単回投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。投与量は国際標準化比(INR)と体重に基づき調整した。 主要エンドポイントは2つで、止血効果と急速INR低下(投与後0.5時間時点で1.3以下)。 解析は、最初に両エンドポイントについて非劣性(両群差の95%信頼区間[CI]下限値が-10%超と定義)を評価し、次いで非劣性が認められた場合に優越性(同0%超と定義)を評価した。 有害事象と重篤有害事象は、それぞれ10日時点、45日時点まで報告された。いずれのエンドポイントも4F-PCCの非劣性、優越性を確認 181例の患者が無作為に割り付けられた(4F-PCC群90例、血漿製剤群91例)。有効であったintention-to-treat比較集団は168例(それぞれ87例、81例)であった。 止血効果が認められたのは、4F-PCC群78例(90%)に対し血漿製剤群61例(75%)で、4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差14.3%、95%CI:2.8~25.8%)。 また、急速INR低下を達成したのは、4F-PCC群48例(55%)に対し血漿製剤群8例(10%)で、こちらについても4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差45.3%、95%CI:31.9~56.4%)。 4F-PCCと血漿製剤の安全性プロファイルは類似していた。有害事象の発現は4F-PCC群49例(56%)、血漿製剤群53例(60%)であった。とくに注目された有害事象は、血栓塞栓イベント(4F-PCC群6例[7%] vs. 血漿製剤群7例[8%])、輸液過剰または関連心イベント(3例[3%] vs. 11例[13%])、遅発性出血イベント(3例[3%] vs. 4例[5%])であった。

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Vol. 3 No. 2 AF患者の脳卒中にどう対応するか? NOAC服用患者への対応を中心に

矢坂 正弘 氏国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科はじめに非弁膜症性心房細動において新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)の「脳卒中と全身塞栓症予防」効果はワルファリンと同等かそれ以上である1-3)。大出血や頭蓋内出血が少なく、管理が容易であることを合わせて考慮し、ガイドラインではNOACでもワルファリンでも選択できる状況下では、まずNOACを考慮するように勧めている4)。しかし、NOACはワルファリンより脳梗塞や頭蓋内出血の発症頻度が低いとはいえ、その発症をゼロに封じ込める薬剤ではないため、治療中の脳梗塞や頭蓋内出血への対応を考慮しておく必要がある。本稿では、NOACの療法中の脳梗塞や頭蓋内出血時の現実的な対応を検討する。NOAC療法中の急性脳梗塞NOAC療法中の症例が脳梗塞を発症した場合、一般的な脳梗塞の治療に加えてNOAC療法中であるがゆえにさらに2つの点、rt-PA血栓溶解療法施行の可否と急性期抗凝固療法の実際を考慮しなくてはならない。(1) rt-PA血栓溶解療法の可否ワルファリン療法中は適正使用指針にしたがってPTINRが1.7以下であればrt-PA血栓溶解療法を考慮できる5)。しかし、ダビガトラン、リバーロキサバンおよびアピキサバン療法中の効果と安全性は確立しておらず、明確な指針はない。表1にこれまで発表されたダビガトラン療法中のrt-PA血栓溶解療法例を示す6-8)。ダビガトラン療法中の9例のうち中大脳動脈広範囲虚血で190分後にrt-PAが投与された1例を除き、8例で良い結果が得られている。それらに共通するのは、ダビガトラン内服から7時間以後でrt-PAが投与され、投与前APTTが40秒未満であった。ダビガトランの食後内服時のTmaxが4時間であることを考慮すると、rt-PA投与が内服後4時間以降であり、APTTが40秒以下(もしくは前値の1.5倍以下)であることがひとつの目安かもしれない。内服時間が不明な症例では来院時のAPTTと時間を空けてのAPTTを比較し、上昇傾向にあるか、低下傾向にあるかを見極めてTmaxを過ぎているかどうかを判断することも一法であろう。NOAC療法症例でrt-PA血栓溶解療法を考慮する場合は、少なくとも各薬剤のTmax 30分から4時間程度、ダビガトランではAPTTが40秒以下、抗Xa薬ではプロトロンビン時間が1.7以下であることを確認し、論文を含む最新情報に十分に精通した上で施設ごとに判断をせざるを得ないであろう5)。アピキサバンはAPTTやPT-INRと十分に相関しないことに注意する。抗Xa薬では、血中濃度と相関する抗Xa活性を図る方法も今後検討されるかもしれない。表1 ダビガトラン療法中のtPA血栓溶解療法に関する症例報告画像を拡大する(2) 急性期抗凝固療法心原性脳塞栓症急性期は脳塞栓症の再発率が高いため、この時期に抗凝固療法を行えば、再発率を低下させることが期待されるが、一方で栓子溶解による閉塞血管の再開通現象と関連した出血性梗塞もこの時期に高頻度にみられる。したがって、抗凝固療法がかえって病態を悪化させるのではないかという懸念もある。この問題はまだ解決されていないため、現時点では、脳塞栓症急性期の再発助長因子(発症後早期、脱水、利尿薬視床、人工弁、心内血栓、アンチトロンビン活性低下、D-dimer値上昇など)や、抗凝固療法による出血性合併症に関連する因子(高齢者、高血圧、大梗塞、過度の抗凝固療法など)を考慮して、個々の症例ごとに脳塞栓症急性期における抗凝固療法の適応を判断せざるを得ない。われわれの施設では症例ごとに再発の起こりやすさと出血性合併症の可能性を検討して、抗凝固療法の適応を決定している。具体的には感染性心内膜炎、著しい高血圧および出血性素因がないことを確認し、画像上の梗塞巣の大きさや部位で抗凝固療法開始時期を調整している(表2)9)。表2 脳塞栓症急性期の抗凝固療法マニュアル(九州医療センター2013年4月1日版)画像を拡大する(別タブが開きます)出血性梗塞の発現は神経所見とCTでモニタリングする。軽度の出血性梗塞では抗凝固療法を継続し、血腫型や広範囲な出血性梗塞では抗凝固薬投与量を減じたり、数日中止し、増悪がなければ再開する10)。新規経口抗凝固薬、ヘパリン、およびワルファリン(ワーファリン®)の投与量および切り替え方法の詳細も表2に示す。ワルファリンで開始する場合は即効性のヘパリンを必ず併用し、PT-INRが治療域に入ったらヘパリンを中止する。再発と出血のリスクがともに高い場合、心内血栓成長因子である脱水を避けること,低容量ヘパリンや出血性副作用がなく抗凝血作用のあるantithrombin III製剤の使用が考えられる11)。NOAC療法中に脳梗塞を発症した症例で、NOAC投与を考慮する場合、リバーロキサバンとアピキサバンは第III相試験が低用量選択基準を採用した一用量で実施されているので、脳梗塞を発症したからといって用量を増量したり、調節することは適切ではない2,3)。他剤に変更するか、脳梗塞が軽症であれば、あるいは不十分なアドヒアランスで発症したのであれば、継続を考慮することが現実的な対応であろう。一方ダビガトランは第III相試験が2用量で行われ、各々の用量がエビデンスを有しているので、低用量で脳梗塞を発症した場合、通常用量の可否を考慮することは可能である1)。NOAC療法中の頭蓋内出血ここではNOAC療法中の頭蓋内出血の発症頻度や特徴をグローバルやアジアでの解析結果を参照にワルファリン療法中のそれらと対比しながら概説する。(1) グローバルでの比較結果非弁膜症性心房細動を対象に脳梗塞の予防効果をワルファリンと対比したNOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の4つの研究(RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLE、ENGAGE-AF)においてワルファリン群と比較してNOAC群の頭蓋内出血は大幅に減少した(本誌p.24図1を参照)1-3,12)。(2) アジアでの比較結果各第III相試験サブ解析から読み取れるアジアや東アジアの人々の特徴は、小柄であり、それに伴いクレアチニンクリアランス値が低く、脳卒中の既往や脳卒中発症率が高いことである13-16)。またワルファリンコントロールにおけるtime in therapeutic range(TTR)が低く、PT-INRが低めで管理されている症例が多いにもかかわらず、ワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率は極めて高い特徴がある(本誌p.24図2を参照)13-16)。しかし、NOACの頭蓋内出血発症率はワルファリン群より大幅に低く抑えられており、NOACはアジアや東アジアの人々には一層使いやすい抗凝固薬といえよう。(3) NOAC療法中に少ない理由NOACで頭蓋内出血が少ない一番の理由は、脳に組織因子が多いことと関連する16-18)。組織が損傷されると組織因子が血中に含まれる第VII因子と結びつき凝固カスケードが発動する。NOAC療法中の場合は第VII因子が血液中に十分にあるので、この反応は起こりやすい。しかし、ワルファリン療法中は第VII因子濃度が大幅に下がるのでこの反応は起こりにくくなり止血し難い。次にワルファリンと比較して凝固カスケードにおける凝固阻止ポイントが少ないことが挙げられる。ワルファリンは凝固第II、VII、IX、X因子の4つの凝固因子へ作用するが、抗トロンビン薬や抗Xa薬はひとつの凝固因子活性にのみ阻害作用を発揮するため、ワルファリンよりも出血が少ない可能性がある。さらに安全域の差異を考慮できる。ある薬剤が抗凝固作用を示す薬物血中濃度(A)と出血を示す薬剤の血中濃度(B)の比B/Aが大きければ安全域は広く、小さければ安全域は狭い。ワルファリンはこの比が小さく、NOACは大きいことが示されている19)。最後に薬物血中濃度の推移も影響するだろう。ワルファリンはその効果に大きな日内変動はみられないが、ダビガトランは半減期が12時間で血中濃度にピークとトラフがある。ピークではNOAC自身の薬理作用が、トラフでは生理的凝固阻止因子が主となり、2系統で抗凝固作用を発揮し、見事に病的血栓形成を抑制しているものと理解される(Hybrid Anticoagulation)(図)16,17)。トラフ時には生理的止血への抑制作用は強くないため、それが出血を減らすことと関連するものと推測される。図 ハイブリッド抗凝固療法画像を拡大する(4) 特徴NOAC療法中は頭蓋内出血の頻度が低いのみならず、一度出血した際に血腫が大きくなり難い傾向も有するようだ。われわれはダビガトラン療法中の頭蓋内出血8例9回を経験しケースシリーズ解析を行い報告した20)。対象者は高齢で9回中7回は外傷と関連する慢性硬膜下出血や外傷性くも膜下出血などで、脳内出血は2例のみであった。緊急開頭が必要な大出血はなく、入院後血腫が増大した例もなく、多くの転帰は良好であった。もちろん、大血腫の否定はできず、血圧、血糖、多量の飲酒、喫煙といった脳内出血関連因子の徹底的な管理は重要であるが、ダビガトラン療法中の頭蓋内出血が大きくなりにくい機序としては、前述の頻度が低い機序が同様に関連しているものと推定される。(5) 出血への対応1.必ず行うべき4項目基本的な対応として、まず(1)休薬を行うこと、そして外科的な手技を含めて(2)止血操作を行うことである。(3)点滴によるバイタルの安定は基本であるが、NOACでは点滴しバイタルを安定させることで、半日程度で相当量の薬物を代謝できるので極めて重要である。(4)脳内出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血時には十分な降圧を行う。2.場合によって考慮すること急速是正が必要な場合、ワルファリンではビタミンK投与や新鮮凍結血漿投与が行われてきたが、第IX因子複合体500~1,000IU投与(保険適応外)が最も早くPT-INRを是正できる。NOACの場合は、食後のTmaxが最長で4時間程度なので、4時間以内の場合は胃洗浄や活性炭を投与し吸収を抑制する。ダビガトランは透析で除去されるが、リバーロキサバンやアピキサバンは蛋白結合率が高いため困難と予測される。NOAC療法中に第IX因子複合体を投与することで抗凝固作用が是正させる可能性が示されている21)。今後の症例の蓄積とデータ解析に基づく緊急是正方法の開発が急務である。抗体製剤や低分子化合物も緊急リバース方法の1つとして開発が進められている。おわりにNOACは非常に有用な抗凝固薬であるが、実臨床における諸問題も少なくない。登録研究や観察研究を積極的に行い、安全なNOAC療法を確立する必要があろう。文献1)Connolly SJ et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151 and Erratum in. N Engl J Med 2010; 363: 1877.2)Patel MR et al. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011;365: 883-891.3)Granger CB et al. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.4)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf5)日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針改訂部会: rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 http://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf6)矢坂正弘ほか. 新規経口抗凝固薬に関する諸問題.脳卒中2013; 35: 121-127.7)Tabata E et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (rt-PA) therapy in an acute stroke patient taking dabigatran etexilate: A case report and literature review, in press.8)稲石 淳ほか. ダビガトラン内服中に出血合併症なく血栓溶解療法を施行しえた心原性脳塞栓症の1例―症例報告と文献的考察. 臨床神経, 2014; 54:238-240.9)中西泰之ほか. 心房細動と脳梗塞. 臨牀と研究 2013;90: 1215-1220.10)Pessin MS et al. Safety of anticoagulation after hemorrhagic infarction. Neurology 1993; 43:1298-1303.11)Yasaka M et al. Antithrombin III and Low Dose Heparin in Acute Cardioembolic Stroke. Cerebrovasc Dis 1995; 5: 35-42.12)Giugliano RP et al. Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2013;369: 2093-2104.13)Hori M et al. Dabigatran versus warfarin: effects on ischemic and hemorrhagic strokes and bleeding in Asians and non-Asians with atrial fibrillation. Stroke 2013; 44: 1891-1896.14)Goto S et al. Efficacy and safety of apixaban compared with warfarin for stroke prevention in atrial fibrillation in East Asia with atrial fibrillation. Eur Heart J 2013; 34 (abstract supplement):1039.15)Wong KS et al. Rivaroxaban for stroke prevention in East Asian patients from the ROCKET AF trial. Stroke 2014, in press.16)Yasaka M et al. Stroke Prevention in Asian Patients with Atrial Fibrillation. Stroke 2014, in press.17)Yasaka M et al. J-ROCKET AF trial increased expectation of lower-dose rivaroxaban made for Japan. Circ J 2012; 76: 2086-2087.18)Drake TA et al. Selective cellular expression of tissue factor in human tissues. Implications for disorders of hemostasis and thrombosis. Am J Pathol 1989; 134: 1087-1097.19)大村剛史ほか. 抗凝固薬ダビガトランエテキシラートのA-Vシャントモデルにおける抗血栓および出血に対する作用ならびに抗血栓作用に対するビタミンKの影響. Pharma Medica 2011; 29: 137-142.20)Komori M et al. Intracranial hemorrhage during dabigatran treatment: Case series of eight patients. Circ J, in press.21)Kaatz S et al. Guidance on the emergent reversal of oral thrombin and factor Xa inhibitors. Am J Hematol 2012; 87 Suppl 1: S141-S145.

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本当の「新規の抗凝固療法」?従来のワルファリン、ヘパリンでは影響を受けない血液凝固第XI因子機能低下による「出血しない抗凝固療法」への期待(解説:後藤 信哉 氏)-294

 新薬が開発されると「主作用」が「副作用」より効率的に発現することが期待される。抗凝固薬では「主作用」は心筋梗塞、脳梗塞、心血管死亡などの血栓イベントの低減であり、「副作用」は「重篤な出血イベントの増加」である。 古典的な経静脈的抗凝固薬ヘパリンはトロンビンとXaの、古典的な経口抗凝固薬ワルファリンはビタミンK依存性のトロンビン、第VII、IX、X因子の阻害薬であった。今までは「新薬」と呼ばれても、フォンダパリヌクス、ダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバンのすべてが、古典的なヘパリン、ワルファリンも作用するトロンビン、Xaを標的としていた。血液凝固カスケードにおいてトロンビン、Xaが重要な役割を演じていること、ヘパリン、ワルファリンのいずれもモニタリングによる用量調節が必須であったことから、トロンビン、Xaの阻害薬は古典的抗凝固薬よりも「主作用」の発現が「副作用」に比較して効率的であると言われても信じ難かった。 新薬開発メーカーは各種の工夫をこらして、古典的なヘパリン、ワルファリンに対する有効性または安全性の優位性を示そうと全力を尽くしたが、公開された各種ランダム化比較試験の結果は、新規の抗凝固薬使用時の「副作用」(重篤な出血合併症)の発現リスクが無視し得ないレベルであることを示した。 筆者の友人でもあるBuller 博士らは、古典的な抗凝固薬に影響を受けない第XI因子を標的として興味深い臨床研究成果を発表した。基礎研究としては、本邦からも宮崎大学の浅田教授らが第XI因子の機能阻害による動脈、静脈血栓発症予防の可能性を示唆していた1)2)。しかし、動物モデルにおいて設定された仮説は、ヒトを対象とした臨床試験においてしばしば正しくないことが示されるので、Buller らの今回の論文には大きなインパクトがある。 本研究の対象例は300例と少ない。本試験は薬剤の臨床開発としては安全性と用量設定を主眼とする第II相試験である。並行群間オープンラベル試験であり、エンドポイントも静脈造影による深部静脈血栓の発症を含むソフトエンドポイントである。仮説検証試験としての質は試験のデザインの観点から必ずしも高いとは言えないが、抗トロンビン薬、抗Xa薬にて果たせなかった「出血しない抗凝固療法」への期待の大きさを反映してN Engl J Medに採択となった。実際、本研究の筆頭著者であるBuller 博士は、新規経口抗Xa薬エドキサバンの静脈血栓塞栓症予防効果を検証したHOKUSAI試験のprincipal investigatorでもある。抗Xa薬の限界を実感したゆえに第XI因子阻害に期待したのであろう。 本研究にて使用されたのは「抗XI薬」ではない。血液凝固第XI因子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。血液凝固第XI因子の体内合成を阻害する。第II相試験でもあり、Buller 博士らsteering committeeが「投与量」、「投与時期」を試験期間内に変更している。生真面目なヒトが多い日本では「臨床試験のプロトコールは事前に決定されているべき」と定式に考えるヒトが多いが、欧米で施行される臨床試験では現実的に試験中途で「protocol amendment」を行うことが多いこともこの機会に学んでおこう! 「modify」でも「revise」でもない「amendment」で、現実的に合わないprotocolを「修正」しながらベストの結果を目指す欧米人の現時的対応が、本研究でも用いられている。 症例数は少ないが、膝関節置換術後に静脈造影にて検出される血栓の頻度は多い。本研究でも、標準治療のエノキサパリン群で30%に血栓を認めている。用量依存性にエノキサパリンよりも血栓が少なくなる可能性と重篤な出血イベントは、エノキサパリンよりも少なくなる可能性を示唆した本研究は、血栓症専門家の視点から興味深い。 Last Authorが血栓の大家であるWeitz博士なのでアンチセンスXIの作用機序を示した図1はいかにも真実性がある。しかし、筆者の知る限り、ヒトにおいて第XI因子の血栓と出血に関する関係を示した十分な症例を含むランダム化比較試験は、本試験が最初である。Weitz博士が示すような内因性凝固因子の血栓形成における寄与が構成論的に真実であるか否かの検証は、今後の課題である3)。

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急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略―4万5,000症例メタ解析(解説:中澤 達 氏)-267

急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。 比較検討されたのは、LMWH+ビタミンK拮抗薬、UFH+ビタミンK拮抗薬、フォンダパリヌクス+ビタミンK拮抗薬、LMWH+ダビガトラン、LMWH+エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバン、LMWH単独の8つの抗凝固療法であった 2014年2月28日時点でMEDLINE、EMBASEを用いた系統的論文検索とエビデンスベースの論文レビューを実行。VTEの再発率、重大出血を報告していた無作為化試験を試験適格とした。2人のレビュワーがそれぞれ患者数、追跡期間、アウトカムなどの試験データを抽出しネットワークメタ解析にてプールし分析した。 発表論文1,197件が特定され、45試験、4万4,989例のデータが解析に組み込まれた。主要臨床および安全性アウトカムは、VTE再発と重大出血とした。 LMWH+ビタミンK拮抗薬と比較して、UFH+ビタミンK拮抗薬がVTE再発リスクの増大との関連がみられた(ハザード比[HR]:1.42、95%信用区間[CrI]:1.15~1.79)。治療3ヵ月間のVTE再発率は、LMWH+ビタミンK拮抗薬1.30%(95%CrI:1.02~1.62%)、UFH+ビタミンK拮抗薬群が1.84%(同:1.33~2.51%)であった。 一方、重大出血リスクは、LMWH+ビタミンK拮抗薬よりも、リバーロキサバン(HR:0.55、95%CrI:0.35~0.89)、アピキサバン(同:0.31、0.15~0.62)が低かった。治療3ヵ月間の重大出血発生率は、リバーロキサバン0.49%(95%CrI:0.29~0.85%)、アピキサバン0.28%(同:0.14~0.50%)、LMWH+ビタミンK拮抗薬0.89%(同:0.66~1.16%)であった。 これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。メタ解析は、フォローアップ期間や登録患者が均一でないなど解釈には限界があるが、この検討は4万5,000症例という最大規模で、アウトカムはガイドラインに則り有症状の静脈血栓症再発と出血合併症であるので、ある程度は真実であると考えられる。有効性が最も小さいのはUFH+ビタミンK拮抗薬であったが、皮肉なことに臨床では重症肺梗塞には一般的に用いられている。 すでに「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」では、新規抗凝固薬が第一選択となった。とくにCHADS2 1点では推奨がダビガトラン、アピキサバンでワルファリンは考慮可となっている。新規抗凝固薬はワルファリンの約20倍の薬価であるため、今後はcost-effectivenessかつ、採血や食事制限から解放されるという患者満足度の検討も必要であろう。●cost-saving=健康アウトカムが改善されるだけでなく、医療費抑制効果もある医療サービス●cost-effective=お金はかかる(医療費抑制効果はない)が、それと比較して得られる健康メリットが大きい医療サービス●cost-ineffective=お金がかかり、それにより得られる健康メリットが小さい医療サービス

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VTEの8つの治療戦略を比較/JAMA

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。VTE再発と重大出血を主要アウトカムにネットワークメタ解析 比較検討されたのは、LMWH+ビタミンK拮抗薬、UFH+ビタミンK拮抗薬、フォンダパリヌクス+ビタミンK拮抗薬、LMWH+ダビガトラン、LMWH+エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバン、LMWH単独の8つの抗凝固療法であった。 2014年2月28日時点でMEDLINE、EMBASEを用いた系統的論文検索とエビデンスベースの論文レビューを実行。VTEの再発率、重大出血を報告していた無作為化試験を試験適格とした。2人のレビュワーがそれぞれ患者数、追跡期間、アウトカムなどの試験データを抽出しネットワークメタ解析にてプールし分析した。 主要臨床および安全性アウトカムは、VTE再発と重大出血とした。統計的有意差はないが、リバーロキサバン、アピキサバンが低リスク 発表論文1,197件が特定され、45試験、4万4,989例のデータが解析に組み込まれた。 LMWH+ビタミンK拮抗薬と比較して、UFH+ビタミンK拮抗薬がVTE再発リスクの増大との関連がみられた(ハザード比[HR]:1.42、95%信用区間[CrI]:1.15~1.79)。治療3ヵ月間のVTE再発率は、LMWH+ビタミンK拮抗薬1.30%(95%CrI:1.02~1.62%)、UFH+ビタミンK拮抗薬群が1.84%(同:1.33~2.51%)であった。 一方、重大出血リスクは、LMWH+ビタミンK拮抗薬よりも、リバーロキサバン(HR:0.55、95%CrI:0.35~0.89)、アピキサバン(同:0.31、0.15~0.62)が低かった。治療3ヵ月間の重大出血発生率は、リバーロキサバン0.49%(95%CrI:0.29~0.85%)、アピキサバン0.28%(同:0.14~0.50%)、LMWH+ビタミンK拮抗薬0.89%(同:0.66~1.16%)であった。

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新旧抗凝固薬とアスピリンの効果比較:静脈血栓症の二次予防/BMJ

 近年発売された抗凝固薬と抗血小板薬は、プラセボや経過観察と比較して静脈血栓症(VTE)の二次予防効果が認められることが、カナダ・オタワ大学のLana A Castellucci氏らによる、12試験・被験者総数1万例超のシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかになった。同解析において効果が最も高かったのは標準補正用量ビタミンK拮抗薬だったが、一方で重大出血リスクも最も高かった。また、効果が最も低かったのはアセチルサリチル酸であったという。これまで抗凝固薬・抗血小板薬の静脈血栓症二次予防効果については、意見が分かれていた。BMJ誌オンライン版2013年8月30日号掲載の報告より。抗凝固薬4種と抗血小板薬1種の無作為化試験をメタ解析 研究グループはMedline、Embase、Cochrane Register of Controlled Trialsなどをデータソースに、抗凝固薬のダビガトラン(商品名:プラザキサ)、リバーロキサバン(同:イグザレルト)、アピキサバン(同:エリキュース)、ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)と、抗血小板薬のアセチルサリチル酸(アスピリン)の、VTEの二次予防効果に関する試験(プラセボか経過観察で比較検討)を検索した。そのうち、採択基準を満たした12の無作為化比較試験について解析を行った。 主要アウトカムは、VTEの再発と重大出血の発生とした。 試験全体で、有効性の評価に関わる被験者総数は1万1,999例、安全性の評価では1万2,167例のデータが解析に組み込まれた。すべての抗凝固薬群と抗血小板薬群でVTEの再発リスクが減少 解析の結果、プラセボ群または経過観察群と比較して、すべての抗凝固薬群と抗血小板薬群においてVTEの再発リスク減少が認められた。 プラセボ群や経過観察群に比べ、同リスク減少が最大だったのは、標準補正用量(目標国際標準化比[INR]:2.0~3.0)のビタミンK拮抗薬だった(オッズ比[OR]:0.07、95%確信区間[CI]:0.03~0.15)。反対に同減少が最小だったのは、アセチルサリチル酸だった(同:0.65、0.39~1.03)。 また重大出血リスクも、標準補正用量ビタミンK拮抗薬が、プラセボ群・経過観察群に比べ高かった(OR:5.24、95%CI:1.78~18.25)。致死的VTEの再発はいずれもまれだった。 これらの結果を踏まえて著者は、「VTE二次予防について異なる治療戦略の有効性と安全性を評価する際は、VTE再発と重大出血イベントの割合を考慮すべきである。そして抗凝固薬治療を患者に適応する際は、患者個々のリスク因子、死亡症例、コスト、ライフスタイルの修正、検査モニタリングの負担、患者の価値観と選択なども考慮すべきである」とまとめている。

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新規抗凝固薬、ワルファリンに非劣性-静脈血栓塞栓症の再発-/NEJM

 経口第Xa因子阻害薬エドキサバン(商品名:リクシアナ)は、症候性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療において、有効性がワルファリンに非劣性で、安全性は優れていることが、オランダ・アムステルダム大学のHarry R Buller氏らが行ったHokusai-VTE試験で示された。VTEは、心筋梗塞や脳卒中後にみられる心血管疾患として3番目に頻度が高く、北米では年間70万人以上が罹患しているという。従来の標準治療は低分子量ヘパリン+ビタミンK拮抗薬だが、ヘパリンの前投与の有無にかかわらず、新規経口抗凝固薬の有効性が確立されている。本研究は、2013年9月1日、アムステルダム市で開催された欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日付けのNEJM誌オンライン版に掲載された。最大1年投与の有用性を非劣性試験で評価 Hokusai-VTE試験は、ヘパリンを投与された急性VTE患者の治療において、エドキサバンのワルファリンに対する非劣性を評価する二重盲検無作為化試験。対象は、年齢18歳以上で、膝窩静脈、大腿静脈、腸骨静脈の急性症候性深部静脈血栓症(DVT)または急性症候性肺塞栓症(PE)の患者とした。 被験者は、非盲検下にエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを5日以上投与された後、二重盲検、ダブルダミー下にエドキサバンまたはワルファリンを投与する群に無作為に割り付けられた。エドキサバンの投与量は60mg/日とし、腎機能障害(Ccr:30~50mL/分)、低体重(≦60kg)、P糖蛋白阻害薬を併用している患者には30mg/日が投与された。投与期間は3~12ヵ月で、治験担当医が患者の臨床的特徴や意向に応じて決定した。 有効性の主要評価項目は症候性VTEの発症率、安全性の主要評価項目は大出血または臨床的に重大な出血の発症率であり、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.5未満の場合に非劣性と判定することとした。重症PE患者ではVTE発症が48%低減 2010年1月~2012年10月までに日本を含む37ヵ国439施設から8,292例が登録され、エドキサバン群に4,143例、ワルファリン群には4,149例が割り付けられた。治療を受けなかった患者を除く、それぞれ4,118例(DVT 2,468例、PE 1,650例、平均年齢55.7歳、男性57.3%、体重≦60kg 12.7%、Ccr 30~50mL/分 6.5%)、4,122例(2,453例、1,669例、55.9歳、57.2%、12.6%、6.6%)がmodified intention-to-treat集団として解析の対象となった。 12ヵ月間の治療が施行されたのは40%であった。エドキサバン群の服薬遵守率は80%であり、ワルファリン群の治療域(INR:2.0~3.0)達成時間の割合は63.5%だった。 有効性の主要評価項目は、エドキサバン群が3.2%(130例)、ワルファリン群は3.5%(146例)で、HRは0.89、95%CIは0.70~1.13であり、非劣性マージンが満たされた(非劣性のp<0.001)。安全性の主要評価項目は、エドキサバン群が8.5%(349例)、ワルファリン群は10.3%(423例)で、HRは0.81、95%CIは0.71~0.94と、有意な差が認められた(優越性のp=0.004)。他の有害事象の発症率は両群で同等であった。 PE患者のうち938例が右室機能不全(NT-proBNP≧500pg/mL)と判定された。この重症PEのサブグループにおける主要評価項目の発症率はエドキサバン群が3.3%と、ワルファリン群の6.2%に比べ有意に低値であった(HR:0.52、95%CI:0.28~0.98)。 著者は、「重症PEを含むVTE患者に対し、ヘパリン投与後のエドキサバン1日1回経口投与は、有効性が標準治療に劣らず、出血が有意に少なかった」とまとめ、「本試験では、有効性の評価は治療期間の長さにかかわらず12ヵ月時に行われており、実臨床で予測されるアウトカムをよりよく理解できるデザインとなっている」と指摘している。

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募集した質問にエキスパートが答える!骨粗鬆症診療 Q&A (Part.1)

今回、骨粗鬆診療に関連する3つの質問に回答します。「治療薬の使い分け」「薬剤投与は何歳まで?」「ビスホスの休薬期間」。日頃の悩みがこれで解決。治療薬の使い分け法について教えてください。骨粗鬆症治療薬は1)サプリメント的薬剤(活性型ビタミンD3、ビタミンK2など)、2)骨吸収抑制剤(ビスホスホネート製剤、SERM、抗RANKL抗体)、3)骨形成促進剤(テリパラチド)に分類されます。重症な骨粗鬆症にはテリパラチドが使用されますが、その使用期間は約2年という制限があります。骨吸収抑制剤の中でビスホスホネート製剤は大腿骨近位部骨折を抑制するエビデンスがあり、脆弱性骨折の既往があるなど比較的進行した骨粗鬆症患者に使用します。ただし、近年、長期投与患者に顎骨壊死や非定型骨折が発生した事例が報告されているので、長期投与する場合は慎重に使用しなければなりません。SERMは脆弱性骨折の既往のない比較的初期の骨粗鬆症に使いやすい薬剤です。活性型ビタミンD3、ビタミンK2も比較的初期の骨粗鬆症に使用する薬剤となります。また、ビスホスホネート製剤は食道通過遅延障害、SERMは静脈血栓症、ビタミンK2はワルファリン投与中の患者には投与が禁忌であることも忘れずに確認しましょう。薬剤の投与を続けるべき患者さんの年齢について、教えてください。また、80歳以上でも効果はあるのでしょうか?骨粗鬆症で最も重篤な骨折で70歳代後半から多くなる大腿骨近位部骨折患者にも薬物治療をすることで2次骨折(反対側の骨折)を予防できる、生命予後が改善されるという報告があります。骨粗鬆症は高齢になるほど重症化して骨折しやすくなる疾患です。患者さんがお薬を受け入れるならばぜひ、年齢制限なく薬剤の投与を続けていただきたいと思います。最近では、1ヵ月に一度の内服でよいお薬や1ヵ月に一度の点滴剤なども使用できるので、内服が困難な方にも対処できます。ビスホスホネート製剤の休薬期間について教えてください。近年、ビスホスホネート製剤の長期投与で顎骨壊死や非定型骨折が発生した事例が報告され、長期投与に対して否定的なコメントを目にすることがありますが、現時点で長期投与の是非を確定できるエビデンスがないのが現状です。現時点でアレンドロネートの10年継続投与データが最も長期のものですが、それによると5年間で休薬した場合、多くの症例で骨折危険率は上がらなかったが、重症な骨粗鬆症患者では骨折が増加したと報告されています。ビスホスホネート製剤を5年以上継続している患者さんの休薬を考える場合には、顎骨壊死や非定型骨折を危惧するばかりでなく、休薬により骨折が発生するかもしれないという危険性も考え、個々の患者さんの脆弱性骨折の発生状況や骨密度、骨代謝マーカーなどの情報をもとに慎重に判断すべきでしょう。

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ダビガトラン、VTEの延長治療に有効、出血リスクも/NEJM

 直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)による抗凝固療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)の延長治療として有効であり、大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高いことが、カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らの検討で示された。VTE治療はビタミンK拮抗薬が標準とされ、複数の血栓エピソードなど再発のリスク因子を有する場合は長期投与が推奨されるが、大出血のリスクとともに頻回のモニタリングや用量調整を要することが問題となる。ダビガトランは固定用量での投与が可能なうえ、頻回のモニタリングや用量調節が不要で、VTEの治療効果についてワルファリンに対する非劣性が確認されており、初期治療終了後の延長治療に適する可能性がある。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告実薬対照非劣性試験とプラセボ対照優位性試験の統合的解析 RE-MEDY試験は、初期治療終了後のVTE延長治療におけるダビガトラン(150mg、1日2回)のワルファリンに対する非劣性を検証する実薬対照試験であり、RE-SONATE試験はダビガトラン(150mg、1日2回)のプラセボに対する優位性を評価するプラセボ対照試験。 両試験ともに、対象は年齢18歳以上、症候性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)と診断され、標準的抗凝固薬による初期治療を終了した症例とした。 RE-MEDY試験では、有効性のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が2.85を超えない場合、および18ヵ月後のVTE再発のリスク差が2.8ポイント以内の場合に非劣性と判定した。ACSのリスクにも留意すべき RE-MEDY試験には、2006年7月~2010年7月までに33ヵ国265施設から2,856例が登録され、ダビガトラン群に1,430例(平均年齢55.4歳、女性39.1%)、ワルファリン群には1,426例(同:53.9歳、38.9%)が割り付けられた。また、RE-SONATE試験には、2007年11月~2010年9月までに21ヵ国147施設から1,343例が登録され、ダビガトラン群に681例(平均年齢56.1歳、女性44.1%)、プラセボ群には662例(同:55.5歳、45.0%)が割り付けられた。 RE-MEDY試験では、VTE再発率はダビガトラン群が1.8%(26例)と、ワルファリン群の1.3%(18例)に対し非劣性であった(HR:1.44、95%CI:0.78~2.64、非劣性検定:p=0.01、リスク差:0.38ポイント、95%CI:-0.50~1.25、非劣性検定:p<0.001)。 大出血の頻度はダビガトラン群が0.9%(13例)と、ワルファリン群の1.8%(25例)に比べほぼ半減したものの有意な差はなかった(HR:0.52、95%CI:0.27~1.02、p=0.06)。一方、大出血または臨床的に重要な出血の頻度はダビガトラン群で有意に減少した(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。急性冠症候群(ACS)がダビガトラン群の0.9%(13例)にみられ、ワルファリン群の0.2%(3例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.02)。 RE-SONATE試験のVTE再発率はダビガトラン群が0.4%(3例)と、プラセボ群の5.6%(37例)に比べ有意に良好であった(HR:0.08、95%CI:0.02~0.25、p<0.001)。大出血の発生率はそれぞれ0.3%(2例)、0%であったが、大出血または臨床的に重大な出血の発生率は5.3%(36例)、1.8%(12例)とダビガトラン群で有意に高値を示した(HR:2.92、95%CI:1.52~5.60、p=0.001)。ACSは両群に1例ずつ認められた。 著者は、2つの試験の結果を踏まえ、「ダビガトランによる抗凝固療法はVTEの延長治療として有効である。大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高かった」とまとめている。

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静脈血栓塞栓症に対する4つの新規経口抗凝固薬vs.従来薬/BMJ

 ビタミンK拮抗薬と比較して、新規経口抗凝固薬は急性静脈血栓塞栓症の再発リスクは同程度であり、全死因死亡も同程度であるが、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)については出血リスクを減少することが、カナダ・マギル大学のBenjamin D Fox氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。BMJ誌2012年11月24日号(オンライン版2012年11月13日号)掲載より。リバーロキサバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、アピキサバンvs.ビタミンK拮抗薬 研究グループは、新規経口抗凝固薬[リバーロキサバン、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)、キシメラガトラン(開発中止)、アピキサバン(同:エリキュース)]について、急性静脈血栓塞栓症における有効性を批判的にレビューすることを目的とした。 試験選択基準は、ビタミンK拮抗薬との比較による無作為化試験とし、2012年4月時点におけるMedline、Embase、Cochrane Libraryをデータソースとして文献の検索と、関連研究の手動検索および専門家への聞き取りを行った。 解析では、イベント再発、重大出血、全死因死亡をアウトカムとした。有効性と安全性について9試験を組み込みレビューとメタ解析 選択基準を満たした9試験を組み込み、有効性については1万6,701例、安全性については1万6,611例のデータに基づき評価を行った。有効性と安全性のデータは、各経口抗凝固薬で階層化した。 結果、静脈血栓塞栓症の再発率は、すべての新規薬と従来薬(ビタミンK拮抗薬)との間で有意な差はみられなかった。・リバーロキサバン(4試験) 相対リスク(RR):0.85、95%信頼区間(CI):0.55~1.31・ダビガトラン(2試験) RR:1.09、95%CI:0.76~1.57・キシメラガトラン(2試験) RR:1.06、0.62~1.80・アピキサバン(1試験) RR:0.98、0.20~4.79 リバーロキサバンは従来薬よりも重大出血を抑制したが、他の新規抗凝固薬は抑制しなかった。・リバーロキサバン RR:0.57、95%CI:0.39~0.84・ダビガトラン RR:0.76、95%CI:0.49~1.18・キシメラガトラン RR:0.54、0.28~1.03・アピキサバン RR:2.95、0.12~71.82 全死因死亡率は、すべての新規薬と従来薬との間で有意な差はみられなかった。・リバーロキサバン RR:0.96、95%CI:0.72~1.27・ダビガトラン RR:1.00、95%CI:0.67~1.50・キシメラガトラン RR:0.67、0.42~1.08・アピキサバン RR:6.89、0.36~132.06 リバーロキサバンとダビガトランの補正後間接比較の結果は、静脈血栓症(0.78、0.49~1.24)、重大出血(0.75、0.41~1.34)、全死因死亡(0.96、0.59~1.58)いずれのエンドポイントについても、どちらがその他の薬よりも優るのかというエビデンスは得られなかった。 Fox氏は、「大規模な対照無作為化試験の必要性は残されたままである」とまとめている。

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肺塞栓症に対するリバーロキサバン、標準療法に非劣性

肺塞栓症の初期治療および長期治療に対する、経口第Xa因子阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の固定用量レジメンは、標準的な抗凝固療法との比較で非劣性であり、ベネフィット対リスク特性が改善されていることが報告された。EINSTEIN–Pulmonary Embolism(PE)Study研究グループの検討報告で、NEJM誌2012年4月5日号(オンライン版2012年3月26日号)で発表された。リバーロキサバンの固定用量レジメンは、検査室監視が不要で、効果は深部静脈血栓症治療の標準的な抗凝固療法と同程度であることが示されていた。そこで、肺塞栓症の治療をシンプルにする可能性があることから検討が行われた。4,832例をリバーロキサバン対標準療法に無作為化研究グループによる無作為化薬剤名表示イベント主導型非劣性試験は、深部静脈血栓症の有無にかかわらず、急性症候性肺塞栓症を呈した4,832例を、リバーロキサバン投与群(1日2回15mgを3週間、その後は1日1回20mg)と、標準療法群(エノキサパリン投与後、用量調整ビタミンK拮抗薬を投与)に無作為に割り付け、3、6、12ヵ月時点で比較した。主要有効性アウトカムは、症候性静脈血栓塞栓症の再発とし、主要安全性アウトカムは、重大出血または重大ではないが臨床的に意義のある出血とした。イベント発生率、有害事象とも標準療法を上回る結果結果、リバーロキサバン群は、主要な有効性アウトカムにおいて標準療法群に対し非劣性(非劣性マージン2.0、P=0.003)で、イベント発生率はリバーロキサバン群の50件(2.1%)に対し、標準療法群は44件(1.8%)だった(ハザード比:1.12、95%信頼区間:0.75~1.68)。主要安全性アウトカムは、リバーロキサバン群10.3%に対し標準療法群11.4%の患者に認められた(同:0.90、0.76~1.07、P=0.23)。重大出血は、リバーロキサバン群26例(1.1%)、標準療法群52例(2.2%)で観察された(同:0.49、0.31~0.79、P=0.003)。他の有害事象の発生率は両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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イグザレルト 肺塞栓症治療と深部静脈血栓症、PE再発抑制の適応症に関し、欧州連合の製造販売承認を申請

独バイエル ヘルスケア社は12日、経口抗凝固剤イグザレルト(リバーロキサバン)を成人における肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)の治療、ならびに深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)およびPEの再発抑制の適応症で、欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)に製造販売承認申請を行ったと発表した。リバーロキサバンは、静脈・動脈血栓症の主要な領域の大部分で、すでに承認されている。今回の承認申請は、グローバル第III相臨床試験 EINSTEIN-PEのデータに基づき行われた。試験結果は、今年3月に米国心臓病学会(ACC:American College of Cardiology)第61回年次学術集会で発表され、同時にニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(10.156/NEJMoa1113572)に掲載された。EINSTEIN-PE試験は、リバーロキサバン15mg1日2回を3週間投与した後、20mg 1日1回投与する経口単剤療法と、エノキサパリンを皮下注射した上で、その後、ビタミンK拮抗剤を投与する既存の標準治療法を比較したもの。同試験に参加した急性症候性PE患者4,833人は、3、6または12ヵ月の治療を受けたという。リバーロキサバンは、主要評価項目である症候性DVTと非致死性・致死性PEの複合からなる再発性症候性VTEの減少に関し、既存の標準治療法に少なくとも劣らない有効性を示したとのこと。全体的な出血事象発現頻度は治療グループ間で同程度であったが、重要なことは、リバーロキサバンは重大な出血事象の発現頻度が有意に低かったことだ。EINSTEIN-PE試験は、約1万人の静脈血栓症の治療に関し、リバーロキサバンの安全性と有効性を評価したグローバルEINSTEINプログラムの第III相臨床試験3試験のうちの一つ。ほかの2試験(EINSTEIN-DVT試験とEINSTEIN-EXT試験)は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに一緒に掲載された(10.1056/NEJMoa1007903)。イグザレルトは、2011年12月9日に、成人における急性DVT発症後の治療、ならびに再発性DVTおよびPE発症抑制の適応症に関し、欧州委員会から製造販売承認に関する承認を取得している。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp//scripts/pages/jp/press_release/press_detail.php?file_path=2012%2Fnews2012-04-13.html

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