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HER陽性乳がんへのトラスツズマブ併用について新たなレジメン検討

HER陽性乳がんの補助療法として生存率改善が認められているトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)について、非アントラサイクリンベースレジメンへの併用の有効性と安全性が検討された。これまで、トラスツズマブのアントラサイクリンベースレジメンへの併用では心毒性が認められていた。試験・報告は、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のDennis Slamon氏ら乳がん国際研究グループ(BCIRG)による。NEJM誌2011年10月6日号掲載報告より。AC-T群、AC-T+トラスツズマブ群、TCH群に無作為化し検討研究グループは2001年4月~2004年3月の間に、41ヵ国からHER2陽性で早期乳がん(ステージT1、T2、T3)の女性3,222例を対象に試験を行った。被験者は無作為に、(1)3週ごとに、ドキソルビシンとシクロホスファミド投与後にドセタキセルを投与する(AC-T)群、(2)(1)+トラスツズマブを52週併用投与する(AC-T+トラスツズマブ)群、または(3)ドセタキセルとカルボプラチンに、トラスツズマブを52週併用投与する(TCH)群に割り付けられ、無病生存率を主要エンドポイントに、副次エンドポイントは全生存率と安全性として検討された。無病生存率はAC-T群75%、AC-T+トラスツズマブ群84%、TCH群81%追跡期間中央値は65ヵ月だった。その間、事前特定されていたイベントの発生は656例だった。5年推定無病生存率は、AC-T群75%、AC-T+トラスツズマブ群84%、TCH群81%であった。推定全生存率はそれぞれ、87%、92%、91%であった。有効性(無病生存率と全生存率)について、2つのトラスツズマブ併用療法群の間に有意差は認められなかったが、いずれもAC-T群より優れていた。リスクベネフィットの観点からはTCH療法が優れるうっ血性心不全と心機能不全の発生率は、TCH群よりもAC-T+トラスツズマブ群で有意に高かった(P<0.001)。また急性白血病は8例報告された。そのうち7例はアントラサイクリンベースレジメンでの発生例だった。TCH群での1例の発生は、本試験後にアントラサイクリン投与を受けたことに起因していた。以上を踏まえて研究グループは、「トラスツズマブ併用レジメンの1年間施行は、HER2陽性乳がん患者の無病生存率と全生存率を有意に改善した」と述べた上で、「有効性は同等だが、急性毒性作用が少なく、心毒性や白血病のリスクも低いというリスクベネフィットの観点から、AC-T+トラスツズマブよりも非アントラサイクリンベースレジメンのTCH療法が支持される」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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多発性骨髄腫の治療戦略-日欧における現状と展望

 多発性骨髄腫の治療においては、近年、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)、サリドマイド(商品名:サレド)、レナリドミド(商品名:レブラミド)といった新規薬剤が開発・発売され、わが国では、現在、再発・難治性症例に対して承認されている。一方、欧米では、これらの薬剤が、再発・難治性症例だけでなく、他のステージでも使用され、次々と臨床研究結果が報告されている。 ここでは、2011年8月8日に都内で開催された多発性骨髄腫治療に関するセミナー(主催:セルジーン株式会社)における、トリノ大学血液学科骨髄腫ユニットチーフ Antonio Palumbo氏、がん研有明病院化学療法科・血液腫瘍科部長 畠清彦氏の講演から、欧米とわが国における多発性骨髄腫治療の現状と展望についてレポートする。欧米における治療戦略とレナリドミドの成績 Palumbo氏によると、多発性骨髄腫の治療には、まず完全寛解(CR)を達成すること、さらにCR期間を延長させるために治療を継続することが重要である。また、CRのなかでも、より深い寛解である分子生物学的寛解、すなわちDNAレベルでの効果が重要である。 今回の講演で、Palumbo氏は、主にレナリドミドによる維持療法の成績について取り上げ、移植適応の若年者に対する移植後の維持療法については、フランスIFMの試験では無増悪期間(PFS)が、また米国CALGBの試験ではPFS、全生存期間(OS)が、レナリドミド投与群において有意に延長したことを紹介した。 また、移植非適応の65歳以上の高齢者におけるレナリドミド維持療法については、MPR(メルファラン、プロドニゾン、レナリドミド)による寛解導入療法後にレナリドミド(10mg/日、3週間投与)で維持療法を行うMPR-R群を、維持療法を行わないMPR群、MP群と比較した海外多施設臨床試験を紹介した。この試験では、MPR-R群ではMPR群に比べ増悪リスクが約70%減少し、また、年齢、寛解の程度、病期(ISS)にかかわらずPFSが有意に延長したことが示されている。 Palumbo氏は、欧米における多発性骨髄腫患者に対する治療アルゴリズムを、多発性骨髄腫に関する最新のレビューにまとめている(N Engl J Med. 2011;364:1046)。それによると、移植適応症例では、新規薬剤を含む併用レジメン(主に欧州では3剤、米国では2剤併用)で寛解導入後に移植を実施し、サリドマイドもしくはレナリドミドによる維持療法を実施、また、移植非適応例では、新規薬剤を含む併用レジメンを実施し、そのうちレナリドミドを含むレジメンの場合は、増悪もしくは不耐容となるまで継続するとしている。日本における現状と展望 畠氏は、わが国における課題と展望について、レナリドミドの特徴やがん研有明病院における使用状況を交えて紹介した。 レナリドミドの特徴については、経口剤のため外来治療が可能で、頻回通院の必要がなく遠方の患者さんでも通院しやすい、2011年8月から長期投与可能となり使いやすくなった、と畠氏は評価している。その他の特徴として、高リスク例に対して有効である、細胞性免疫の増強作用がある、腎障害例における減量が必要、末梢血幹細胞は早期採取が必要であることを挙げた。また主な副作用として、好中球減少、疲労、筋痙攣などが報告されている。 がん研有明病院においては、7月28日時点のレナリドミド使用経験は14例で、投与症例は、経口剤が適している、遠方から来院、肺障害がある、高齢といった症例という。投与方法は、レナリドミド25mg(21日間投与、7日間休薬)+デキサメタゾン40mg(週1回投与)であり、血栓予防としてアスピリンを、またアスピリンによる消化器障害に対してプロトンポンプ阻害薬を併用しているとのことである。また、がん研有明病院の取り組みとして、レナリドミドの承認前から医師、病棟看護師、外来看護師、病棟薬剤師によってチームを立ち上げ、院内マニュアルの作成や投与すべき症例の選択などの準備を進めていたことを紹介した。 わが国における課題として畠氏は、海外とのドラッグラグはもちろん、臨床現場への普及の遅れを指摘している。多発性骨髄腫においては、日本で長い間標準治療であったMP療法、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法から、新規薬剤による治療に移行しつつあり、現時点ではこれらの薬剤を年齢、病態、合併症に応じて選択し、日本での長期の成績により評価していく必要があると述べた。 最後に、畠氏は、今後はわが国では承認されていない初発例に対する治療や新規薬剤どうしの併用やアルキル化剤との併用、さらに維持療法など、より有効な治療法の確立が望まれると締めくくった。

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リンパ節転移陰性の高リスク乳がんでも、ドセタキセル補助療法が優位

タキサン系抗がん剤のドセタキセル(商品名:タキソテール)を含むTACレジメン(ドセタキセル、ドキソルビシン、シクロホスファミド)の有効性について、これまでリンパ節転移陽性乳がんについては明らかになっていたが、リンパ節転移陰性の高リスク乳がんの治療においても、フルオロウラシル(商品名:5-FUなど)を含む標準療法とされるFACレジメン(フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド)よりも高い奏効率が認められた。欧州で行われた「GEICAM 9805」試験からの報告で、スペイン・Hospital General Universitario Gregorio MaranonのMiguel Martin氏らが、追跡期間中央値77ヵ月時点の無病生存率、全生存率、毒性について解析した。NEJM誌2010年12月2日号掲載より。TACレジメンとFACレジメンに割り付け5年以上追跡第III相オープンラベル無作為化試験として行われたGEICAM 9805試験は1998年に、リンパ節転移陰性の乳がんを有し、再発リスクの高い因子(1998ザンクトガレン基準に準拠)を一つ以上有する女性を対象に、TACレジメンとFACレジメンの効果を比較検討することを目的にスタートした。スペイン、ドイツ、ポーランドからの被験者1,060例が、術後補助療法として3週間ごとに1回×6サイクルの、TACレジメン(ドセタキセル75mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2)もしくはFACレジメン(フルオロウラシル500mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2)を受ける群に割り付けられ追跡された。主要エンドポイントは、5年以上追跡調査後の無病生存率とされ、全生存率と毒性などが副次エンドポイントに含まれた。TAC群の再発リスク32%減少を示す追跡期間中央値77ヵ月時点において、無病生存率は、TAC群(539例)が87.8%と、FAC群(521例)の81.8%よりも高く、TACレジメンによって再発リスクが32%減少していたことが示された(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.49~0.93、log-rank検定によるP=0.01)。TACレジメンの有効性は、ホルモン受容体の状態、閉経の有無、高リスク因子の数にかかわらず一貫していた。生存率は、TAC群95.2%、FAC群93.5%で、両群間の差は有意ではなかったが(ハザード比:0.76、95%信頼区間:0.45~1.26、非階層化ベースでのlog-rank検定によるP=0.29)、イベント数はTAC群が26件と、FAC群34件より少なかった。有害事象グレード3または4の発生率は、TAC群28.2%、FAC群17.0%だった(P<0.001)。なお当初プロトコルにはなかったが、試験開始後、TAC群で発熱性好中球減少症が25%以上にみられたため、登録230例以後の被験者には、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の予防的投与を行うようプロトコルが改定された。TACレジメンの毒性は、それ以後減少していた。(武藤まき:医療ライター)

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ホルモン受容体陽性閉経後乳がん、新たな術後補助療法が確立

ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陽性の閉経後乳がんに対する術後補助療法では、化学療法施行後に逐次的にタモキシフェン(TAM、商品名:ノルバデックスなど)を5年間投与する方法が、TAMのみを投与する治療法よりも良好な予後をもたらすことが、アメリカLoyola大学のKathy S Albain氏らBreast Cancer Intergroup of North Americaの研究グループが実施した第III相試験で明らかとなった。TAMはホルモン受容体陽性閉経後乳がんに対する術後補助療法のgold standardであり、化学療法との併用療法は理論的には有望視されていたもののコンセンサスが得られていなかった。最近のメタ解析において、術後TAM+化学療法は閉経前乳がんでは大きな生存べネフィットが示されたが、閉経後乳がんにおける有用性は境界域にとどまったという。Lancet誌2009年12月19/26日合併号(オンライン版2009年12月10日号)掲載の報告。TAM+化学療法併用はTAM単剤よりも、逐次投与は同時投与よりも優れるか?研究グループは、ホルモン受容体陽性閉経後乳がんに対する術後補助療法としてのTAM単剤とTAM+化学療法の併用療法の有用性を比較し、併用療法のうち逐次投与と同時投与ではどちらが優れるかを検討するオープンラベル無作為化比較第III相試験(SWOG-8814, INT-0100)を実施した。ホルモン受容体陽性でリンパ節転移陽性の閉経後乳がん患者が、術後補助療法としてTAM単剤を投与する群(毎日、5年間)、シクロホスファミド+ドキソルビシン+5-FU(CAF、4週毎、6コース)とTAM(毎日、5年)を逐次投与する群(CAF→T群)、CAFとTAMを同時投与する群(CAFT群)に2:3:3の割合となるよう無作為に割り付けられた。主要評価項目は、TAM単剤群に対するTAM+化学療法併用群(CAF→T群、CAFT群)の無病生存率(DFS)の優位性、および同時投与(CAFT群)に対する逐次投与(CAF→T群)のDFSの優位性とした。副次評価項目は、全生存率(OS)および安全性であった。アンスラサイクリン系薬剤ベースレジメン施行後に、逐次的にTAMを5年間投与する方法が有用1989年6月~1995年7月までに1,558例が登録され、1,477例(95%)が評価可能であった。TAM単剤群に361例、CAF→T群に566例、CAFT群には550例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値8.94年(最長13年)の時点で、DFSイベント数はTAM単剤群が179件、CAF→T群が216件、CAFT群は242件であった。10年DFSは、TAM+化学療法併用群(CAF→T群、CAFT群)が57%と、TAM単剤群の48%よりも有意に優れた(補正Cox回帰分析によるハザード比:0.76、p=0.002)。10年OSは併用群が65%、TAM単剤群が60%であり、ハザード比は0.83、p値は境界域(p=0.057)で有意差は認めなかった。併用群間の比較では、CAF→T群の10年DFSは60%、CAFT群は53%と、逐次投与群でより良好な傾向が見られたものの有意差はなかった(ハザード比:0.84、p=0.061)。10年OSはそれぞれ68%、62%であり、両群で同等であった(ハザード比:0.90、p=0.30)。CAF→T群はTAM単剤群よりも10年DFS(ハザード比:0.70、p=0.0002)、10年OS(同:0.79、p=0.032)がともに有意に優れたが、CAFT群とTAM単剤群間には10年DFS(同:0.83、p=0.062)、10年OS(同:0.87、p=0.22)ともに有意差はなかった。TAM単剤群に比べTAM+化学療法併用群で頻度の高い有害事象として、好中球減少、口内炎、血栓塞栓症、うっ血性心不全、白血病が認められた。著者は、「ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陽性の閉経後乳がんの術後補助療法は、TAMのみを5年間投与する方法よりも、アンスラサイクリン系薬剤をベースとする化学療法を施行後に逐次的にTAMを5年間投与する方法が、リスク/ベネフィット比が優れる。しかし、アンスラサイクリン系薬剤ベースレジメンが無効なサブグループが存在する可能性も示唆される」と結論し、「術後補助療法の有用性を評価するには、長期にわたるフォローアップが不可欠なことを、この試験は示している」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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抗悪性腫瘍剤ドキシルに効能追加承認

ヤンセンファーマ株式会社は、4月22日付で抗悪性腫瘍剤「ドキシル注20mg」(一般名:ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤)の追加効能となる「がん化学療法後に増悪した卵巣がん」の承認を取得したと発表した。現在、ドキシル注20mgは米国を含む約80ヵ国以上で発売され、再発卵巣がんに対する適応は1999年に米国にて初めて承認を取得して以降、約75ヵ国で承認されている。また、同剤は国内において2007年1月にエイズ関連カポジ肉腫に対する適応を取得し、発売中である。詳細はプレスリリースへhttp://www.janssen.co.jp/inforest/public/home/?paf_gear_id=2100029&paf_gm=content&paf_dm=full&vid=v11&cid=cnt57254

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国内における抗悪性腫瘍薬ヨンデリスのライセンス契約が締結

大鵬薬品工業株式会社は31日、スペインのファーママー社と抗悪性腫瘍薬「ヨンデリス」の日本での開発販売に関し、3月29日にライセンス契約を締結したと発表した。ヨンデリス(トラベクテジン)はカリブ海産のホヤ類から発見された海洋産物起源の新規抗悪性腫瘍薬。ヨンデリスはDNAに結合し、細胞分裂、遺伝子転写、DNA修復機構を妨げる。2007年9月に欧州委員会から進行または転移性軟部組織肉腫の治療薬として販売承認を受け、2008年にはペグ化リポソームドキソルビシンとの併用で再発卵巣癌を適応として、EMEA(欧州医薬品審査庁)とFDA(米国食品医薬品局)に承認申請を提出しているという。今回の契約により、大鵬薬品は日本でのヨンデリスの開発・販売のライセンスを受け、ファーママー社に契約一時金、および達成報奨金、日本での売上に応じたロイヤリティを支払う。また同剤の日本での開発販売費用は大鵬薬品が負担するという。http://www.taiho.co.jp/corporation/news/2009/20090331.html

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【医師・薬剤師限定】乳がんにおける術前・術後補助化学療法ではACよりもECを選択?

癌情報のスペシャルサイト「実践!化学療法」において開催中のアンケート「手術可能乳がんにおけるACおよびEC療法の選択ついて」の途中経過によると、AC(ドキソルビシンADM+シクロフォスファミドCPA)よりもEC(エピルビシンEPI+シクロフォスファミドCPA)をメインに使うとの回答が多くなっている。現状の投票状況は、ACが3割弱なのに対して、ECが6割に及んでいる。また、ACとECを選択する場合、もっとも重視する項目としては慣れ(経験の多さ)」「副作用の少なさ」が多く選ばれている。先生のご意見はどうでしょうか?アンケートはこちらhttp://www.carenet.com/oncology/chemo/cngpage/c_bc090319.html

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抗HIV薬インテレンス錠発売

ヤンセンファーマ株式会社は19日、HIV-1感染症に適応を有する抗HIV薬「インテレンス錠100mg」(一般名:エトラビリン、以下インテレンス)の発売を開始すると発表した。同剤は昨年12月25日に承認を取得し、本年1月16日に緊急薬価収載された。インテレンスは、J&Jグループの研究開発会社であるティボテック社が開発をすすめてきた多剤耐性ウイルスにも効果の高い非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)の新しい抗HIV薬。同剤の発売により同社のエイズ関連製品は、抗HIV薬「プリジスタ錠300mg」(一般名:ダルナビル、適応症:HIV感染症)、抗悪性腫瘍剤「ドキシル注20mg」(一般名:ドキソルビシン塩酸塩、適応症:エイズ関連カポジ肉腫)を含め計3剤となった。詳細はプレスリリースへhttp://www.janssen.co.jp/inforest/public/home/?paf_gear_id=2100029&paf_gm=content&paf_dm=full&vid=v11&cid=cnt54720

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近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。主な婦人科腫瘍とそれぞれの進行がん標準治療 婦人科の主な癌種は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんである。これら3種の進行がん標準治療は概ね下記のようになる。・子宮頸がん:プラチナ製剤ベースの化学療法(CDDP)同時放射線療法・子宮体がん:術後放射線療法・卵巣がん:減量手術後化学療法 パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA) 進行度別にみると、子宮頸がん・体がんでは早期例が多く0期からII期が半数以上である。特に頸がんでは0期が40%以上を占める。一方、卵巣がんでは進行例が多くIII期からIV期が半数以上を占める。卵巣がんの予後と治療 卵巣がんは予てから死亡率が高く予後が悪いといわれている。その言葉が示すとおり、卵巣がん(約7000人)罹患数は子宮がん(約18000人)の半分以下であるが、死亡数はほぼ同等である(子宮がん5500人に対し卵巣がん4400人)。その理由は、卵巣がんの進行例の割合が多いため(卵巣がんはIII~IV期が70%、子宮がんでは0期~I期が70%)だと考えられる。 進行卵巣がんはインオペ例とされていたが、1980年のCDDP登場、その後のタキサン系薬剤の登場で生存率は改善し、現在CBDCA+PTXが標準療法となっている。だが、その後は有効率の向上を目指し標準治療への抗がん剤のアドオン試験が行われたが予後改善をもたらすにはいたっていない。卵巣がんの治療の今後 そのような中、有効率の改善を目指すべく幾つかの研究が行われている。投与法も研究され、プラチナ製剤の腹腔内投与の有効性が米国NCI(National Institute of Cancer)が推奨されている。そして、2008年、日本発のエポックメイキングな研究がASCO2008で発表された。これは、医師主導治験JGOG3016で、PTX毎週投与の有効性試験有効性が立証された。今後、保健適応取得に向け行政への働きかけが重要となる。 さらに、分子標的治療薬の有効性も検討されており、医師主導の治験で、ベバシズマブの有効性研究も進行中である(GOG218)。 一方、ドラッグラグの問題も以前残っている。ドキシル(リボゾーマドキソルビシン)は世界80カ国で承認され、標準治療無効例における2ndライン薬剤として期待されておる。しかし、日本では以前未承認であり、現在自費投与1回あたり30~40万/回の金銭的負荷がかかる。子宮頸がんの治療 子宮頸がんは0期が多く、この段階で発見できれば多くの患者さんが助かることになる。 そのためには、まず、検診の普及が非常に重要である。実際、検査の普及率が高い国では子宮頸がんの死亡率は低いが、日本の検診普及率は22%であり後進国並みといえる。そのためか、日本では若年層での罹患数が増加しているという問題もある。 子宮がんの治療は、プラチナ製剤の化学療法(CDDP単独またはCDDP+5FU)と放射線治療同時併用が標準治療である。しかし、本邦での普及は依然高いとはいえない。今後の課題として日本人のCDDP適正ドーズの設定、ガイドラインでの積極的取り上げなど一層の普及が急がれる。子宮頸がんの治療の今後 そして、近年のトピックとして子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)の関与があげられる。HPVは子宮頸がん患者の大部分が感染しており、確率こそ非常に少ないが子宮頸がんの発症因子である。そのため、HPVワクチンがHPVの感染予防および前がん病変への移行を防止するとして多大な効果が期待できる。現在、米国、オーストラリアをはじめ多くの国で承認されており日本でも早期の承認が望まれる。日本の婦人科腫瘍治療 日本の婦人科がんの取り組みは欧米に比べ遅れている。そこに昨今の婦人科医師不足が重なり、婦人科腫瘍の診療は大変な状況である。 婦人科腫瘍の場合、そのような状況下であっても製薬メーカーの協力を仰がず医師主導治験をしている例は多い。医師主導治験に携わる医師は診療後に何ら報酬もない中、ボランティアで協力している。しかしながら、医師主導治験を国に認めさせるシステムがなく、今後は医師主導治験で行政を動かしてゆく手法を検討する必要がある。 また、ドラックラグについても大きな問題である。ドキシルのように海外で実績があるのに日本では未承認という薬剤は多い。副作用発現などのリスクから優先審査への動き鈍ることも一つの要因であるが、一番の被害者は患者さんであることを忘れて欲しくない。この点については、マスメディアの取り上げ方が大きな影響を及ぼすため、正確な情報提供をお願いしたいと考える。

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乳癌補助療法、生存率改善はパクリタキセル週1回投与に軍配

乳癌の標準的化学療法後に用いられる2種類のタキサン系薬剤(ドセタキセルとパクリタキセル)による補助療法は、週1回投与と3週に1度の投与ではどちらの有効性が高いのか? 検証作業に当たっていた米国Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のJoseph A. Sparano氏らによる報告がNEJM誌2008年4月17日号で掲載された。転移性乳癌の女性4,950例を調査研究は、乳癌女性のうち腋窩リンパ節転移が陽性か、リンパ節転移は陰性だがリスクの高い患者4,950例を対象に実施された。患者は無作為化された後、まずドキソルビシン(国内商品名:アドリアシン)とシクロホスファミド(エンドキサン)静脈内投与を3週に1度4サイクル行い、引き続き、パクリタキセルまたはドセタキセルを、3週に1度4サイクル静脈内投与する群と、週1回12サイクル静脈内投与する群に割り付けられた。主要エンドポイントは無病生存率。HER2陰性、エストロゲン受容体陽性でも効果パクリタキセルを3週に1度投与する標準的な用法の群と比べて、無病生存のオッズ比はそれぞれ、パクリタキセル週1回投与群は1.27(P = 0.006)、ドセタキセル3週に1度投与群は1.23(P = 0.02)、ドセタキセル週1回投与群は1.09(P = 0.29)だった。いずれもオッズ比は1以上で、実験的治療群が支持される結果となった。また、標準用法群に比べてパクリタキセル週1回投与のほうが、生存率が改善していた(オッズ比1.32、P = 0.01)。サブグループ(HER2陰性)解析の結果では、エストロゲン受容体が陽性でも、パクリタキセル週1回投与によって無病生存率と全生存率に同様の改善が見られた。パクリタキセル週1回投与群では、同剤の3週に1度投与群に比べてグレード2、3、4の神経障害の発生頻度が高かった(27%対20%)が、研究グループは、「ドキソルビシンとシクロホスファミドによる標準的化学療法の後に補助療法としてパクリタキセルを週1回投与することは、乳癌女性の無病生存と全生存率を改善する」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

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