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乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet

 乳がんの病理学的完全奏効は、無再発生存率(EFS)や全生存率(OS)との関連はほとんどなく、代替エンドポイントとしては不適であることを、米国FDAのPatricia Cortazar氏らが、12試験を対象としたプール解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2014年2月14日号掲載の報告より。被験者総数約1万2,000例のデータを分析 研究グループは、PubMedやEmbaseなどを基に、術前補助化学療法を行った乳がん患者を対象にした12試験(被験者総数1万1,955例)についてプール解析を行い、病理学的完全奏効と生存率との関連や、同頻度が長期臨床アウトカムの代替エンドポイントとして適切かどうかについて分析を行った。 分析対象とした試験は、200例以上の乳がん患者を対象に術前補助化学療法後に手術を実施し、病理学的完全奏効やEFS、OSについてのデータがあり、追跡期間の中央値が3年以上のものだった。 病理学的完全奏効の定義としては、(1)ypT0 ypN0(原発巣と腋窩リンパ節の浸潤・非浸潤を含めすべてのがん消失)、(2)ypT0/is ypN0(原発巣と腋窩リンパ節の浸潤がん消失)、(3)ypT0/is(原発巣のみ浸潤がん消失)の3種を用い、EFSやOSとの関連を調べた。病理学的完全奏効の頻度の増加と生存率には関連性なし 結果、ypT0 ypN0またはypT0/is ypN0は、EFSとOSの改善に関与しており、ハザード比はEFSがそれぞれ0.44と0.48、OSが0.36と0.36だった。 ypT0 ypN0と長期アウトカムの関連が最も強かったのは、トリプルネガティブ乳がん(EFSハザード比:0.24、OSハザード比:0.16)と、HER2陽性乳がん・ホルモン受容体陰性でトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)投与を受けた人(同0.15、0.08)だった。 試験レベルの分析においては、病理学的完全奏効の頻度の増加とEFS、OSの間には、関連性はほとんど認められなかった(それぞれR2=0.03、R2=0.24)。

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ステージ4乳がんの原発巣切除について

Surgical removal of primary tumor and axillary lymph nodes in women with metastatic breast cancer at first presentation: A randomized controlled trial -- Badwe R, et al. India転移性乳がんにおける原発巣切除の影響インドで行われた臨床試験である。従来より緩和のための外科治療としては潰瘍と出血のコントロールが挙げられる。動物実験では原発巣の切除は有害かもしれないというデータがある(Fisher B, et al. Cancer Res. 1989; 49: 1996-2001.)。一方で、最近の後ろ向きレビューでは、局所領域の治療が有効かもしれないことが示されている。本試験の目的は転移性乳癌において原発巣の切除が与える生存率への影響を評価することである。サンプルサイズはベースラインの中央生存期間が18ヵ月、生存期間の改善が6ヵ月とし、α=0.05、1-β=80%と仮定したとき、N=350が必要であると考えられた。転移性乳癌に対しアンスラサイクリン+/-タキサンを行ってCRまたはPRのとき無作為化割付を行い、局所領域治療を行う群と行わない群に割り付けた。無作為化は転移部位、転移個数、ホルモン受容体の有無で層別化した。350例のうち、手術群は173例で乳房部分切除術または乳房切除術を行い、卵巣切除を40例に行った。さらに放射線治療と内分泌療法を84例に行った。無手術群は177例で内分泌療法は96例に行い、卵巣切除は34例に行った。全生存率(中央観察期間の記載がないが5年は観察しているものと思われる)は、手術群(19.2%)、無手術群(20.5%)であり、有意差はなかった(p=0.79)。閉経状況、転移部位、ホルモン受容体の有無、HER2発現の有無でサブグループ解析を行ったが、いずれも差はみられなかった。遠隔転移の初回進行までの期間は手術群で有意に短かった(p=0.01)。以上から、局所領域治療は生存率への寄与はなく、転移性乳癌においてルーチンに行うことは控えるべきであり、局所コントロールと転移部の進行とのバランスの中で得失を考えながら行うべきと結んでいる。Early follow up of a randomized trial evaluating resection of the primary breast tumor in women presenting with de novo stage 4 breast cancer; Turkish Study (Protocol MF07-01) -- Soran A, et al.新規ステージ4乳がんにおける局所療法の評価(早期観察)トルコの臨床試験である。新規のステージ4乳癌における外科治療に関する試験のメタ分析では、外科治療を行ったほうが生存率は良好であったが、外科治療を行わなかったほうで予後不良因子が多い傾向がみられている(Harris E, et al. Ann Surg Oncol 2013; 20: 2828-2834)。すなわち選択バイアスがあるということである。本試験(MF07-01)の試験デザインとしては、新規のステージ4乳癌を全身治療群と初回局所治療(乳房+/-腋窩)+全身治療群に分け、プライマリーエンドポイントとして全生存期間、セカンダリーエンドポイントとして局所の無増悪生存期間、QOL、局所治療に伴う合併症を評価した。過去の後ろ向き研究から、3年生存率の違いが18%であることが想定され、脱落率は10%、α=0.05、β=0.9と仮定して、サンプルサイズは271例が必要であると考えられた。312例がリクルートされ、293例が適格であり、278例(局所治療群140例、全身治療のみ138例)が評価可能であった。局所治療は患者と医師の好み/癌の広がりによって乳房部分切除か乳房切除が選択され、腋窩リンパ節転移が臨床的/生検/センチネルリンパ節生検のいずれかで確認されたときには腋窩郭清が行われた。断端陰性であることが必要であり、乳房部分切除後は全乳房照射が行われ、乳房切除後は癌の進行度や施設の方針で照射が追加された。化学療法は、局所治療群ではその後に、全身治療群は割付後すぐに開始された。ホルモン受容体陽性のすべての患者は内分泌療法を受けた。C-erb-B2陽性(IHC3+ or FISH+)ではトラスツズマブが投与された。転移巣の局所治療(手術-放射線)は研究者の判断によって決められた。ビスフォスフォネートは治療する臨床医の判断によって使用された。全生存率は中央観察期間(局所治療群46ヵ月、全身治療群42ヵ月)において両群で有意差はなかった(HR=0.76、95%CI: 0.490~1.16、p=0.20)。ホルモン受容体別、HER2発現別、さらにトリプルネガティブに限ってみても差はなかった。年齢別、転移臓器1つのみ、骨転移のみに限っても差はなかったが、骨転移1ヵ所のみに限ると局所治療群のほうが有意に生存期間が長かった(p=0.02)。逆に多発肝転移/多発肺転移では局所治療群のほうが生存期間が短かい可能性がある。結論として、早期経過観察では全生存率に有意差はなく、さらに長期間の観察が必要である。サブグループの検討から、局所療法群は骨転移において生存期間が長い傾向かもしれない。とくに1つの骨転移でその傾向がより強い。55歳以下で生存期間を改善する可能性がある。進行の早いフェノタイプではベネフィットを得にくいようにみえる。多発肝転移/多発肺転移ではむしろ予後を有意に悪化させる可能性がある、ことが示唆された。TBCRC 013: A prospective analysis of the role of surgery in stage IV breast cancer -- King TA, et al.ステージ4乳がんにおける原発巣切除の役割(TBCRC 013)前向きの無作為化比較試験の結果が明らかになるまでの間、私たちはステージ4乳癌におけるマネージメントの前向きデータを集めることが求められた。TBCRC 013は、新規ステージ4乳癌の原発巣切除の役割を評価する多施設前向きレジストリー研究である。新規ステージ4乳癌をコホートA、原発巣術後3ヵ月以内に同定された転移性乳癌をコホートBとした。初回全身治療で効果があった場合には、外科治療について患者と話し合い決定され、無増悪生存期間、局所の緩和治療の必要性、生存期間が評価された。2009年7月から2012年4月までに14の施設から127例の患者がエントリーされた(コホートA:112例、コホートB:15例)。年齢中央値52歳、原発巣の腫瘍径中央値3.2cmであった。観察期間中央値は28ヵ月であった。多変量解析にて全生存期間は外科治療(p=0.01)、エストロゲン受容体陽性(p=0.01)、HER2陽性(p=0.01)で有意に予後良好であった。しかし、全身治療に反応した症例に限ると外科治療はもはや有意差はなかった。この結果は、初回またはセカンドライン以降の全身治療に反応せず、緩和的に外科治療を行った場合に予後改善効果がみられる、という解釈になると思われたのだが、その記載はなかった。いずれにしても症例数が少なく、外科治療の有効性を考えるには至らない研究であると考えられる。転移性乳癌における外科治療の役割については、以前にASCO 2012の報告で一度述べたが、それらはいずれも後ろ向きの研究結果である。今回のRCTの結果をみても、やはりやみくもに局所治療すべきはない。しかし、局所における癌の進行は患者のQOLを低下させるため、外科医と腫瘍内科がよく協議して、手術や放射線治療との組み合わせについて、そのタイミングを逸することなく、適応を考えていくべきであろう。本邦でも岡山大学の枝園忠彦先生が研究代表者として臨床試験(JCOG1017、PRIM-BC)が行われているので、それが完遂され、さらに有意義な結果が加わることを期待したい。

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トラスツズマブ術後治療1年投与と2年投与の比較-ランドマーク解析-(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(129)より-

乳がん治療は、ここ10年間で大きく変革した。それは、乳がんの増殖因子であるHER2に対する抗体治療薬であるトラスツズマブの登場による。従来の抗がん剤治療は、殺細胞薬といって、がん細胞も正常細胞も見境なく殺してしまうものしかなく、患者は副作用に苦しむことを余儀なくされていた。1990年代後半から、がん細胞に特異的に発現しているさまざまな分子に対する分子標的治療薬の開発が行われ、分子標的治療薬は、副作用が少ない治療薬ということで注目を浴びた。血液腫瘍ではグリベックが開発され、固形腫瘍で最初に開発された薬剤が、トラスツズマブである。 トラスツズマブは、HER2陽性転移性乳がんのRCT(ランダム化比較試験)で全生存期間の改善を証明し1)、乳がん治療の歴史を変えた。続いて、術後補助療法のRCTでも無病生存率の改善を示し2), 3)、乳がん治療のスタンダードとなった。本論文は、乳がん術後補助療法のRCTのHERA study3)の追跡結果の報告である。 追跡期間の中央値8年での結果であるが、トラスツズマブ1年間投与群と、2年間投与群の比較をランドマーク法を用いて解析している。ランドマーク法とは、経過観察中のある時点(ランドマーク)までにイベントが発生したかどうかにより対象症例を群分けし、その時点から生存曲線を描く手法である4)。治療開始から1年の時点を起算日(ランドマーク)にして解析を行った結果、1年と2年での無病生存期間には差はなかった(HR 0.99, 95%CI 0.85-1.14, P=0.86)。ランドマーク解析はITT解析ではなく、本来のITT populationから、それぞれの群で、147例、150例除外されて解析されている(Figure 1)ので、バイアスがかかるのではないか?という懸念がある。この試験は、RCTであるので、わざわざランドマーク解析を行わなくてよいと思われる。実際には、最初の1年間は、トラスツズマブを同様に投与されるので、バイアスがかかる余地はほとんどないと思われるが、ITT解析の結果も示して、同様の結果になったといって欲しかったところである。 この試験のもう1つのポイントは、8年のフォローアップ後、トラスツズマブ1年投与群と投与しなかった群と比べて、全生存期間でトラスツズマブ群が優っていたという点である。実は、セカンダリーエンドポイントである全生存期間については、これまでに、追跡期間中央値で1年、2年、4年の時点の3回の報告がある3), 5), 6) 。全生存期間のHR(ハザード比)は、1年、2年、4年、今回の8年のフォローアップ時点で、それぞれ、0.76, 0.66, 0.85, 0.76とかなり変動していて、1年時3)と、4年時6)では、P値がそれぞれP=0.26, P=0.1087と、有意差がない状況になっている。4年時に全生存期間に有意差がなかったことに対する解釈としては、トラスツズマブ投与なし群の患者が、かなりクロスオーバーしてトラスツズマブを受けたことによるのであろうと考察されていた。しかし、8年時の今回の解析では、有意差がついた結果(P=0.0005)となった。 本論文では、クロスオーバーがあったとしてもやはり、トラスツズマブが有効であり、早く治療することが良かったのであろうと考察されている。8年時の今回の解析が行われず、4年時の解析で終わっていたとすれば、トラスツズマブが全生存期間を改善することはできなかったと解釈されていた恐れがある。また、今後さらなる長期フォローアップがなされたら、データが変わってくる可能性も考えられる。 臨床試験のセカンダリーエンドポイントやサブグループ解析の解釈や、生存解析を何度も行っている場合の解釈には慎重でなければならない。臨床試験の解析は、基本的には、プライマリーエンドポイントに対する解析のみ統計学的に正当化される。サブグループ解析を繰り返すと、多重解析となり、偽陽性や偽陰性を引き起こすことが多くなるため、注意が必要である。Japanese Journal of Clinical Oncology投稿に際しての統計解析結果のレポートに関するガイドラインhttp://www.oxfordjournals.org/our_journals/jjco/for_authors/jap.guideline.pdf参考文献1) Slamon DJ et al. N Engl J Med. 2001; 344: 783-792.2) Romond EH et al. N Engl J Med. 2005; 353: 1673-1684.3) Piccart-Gebhart MJ et al. N Engl J Med. 2005; 353: 1659-1672.4) Anderson JR et al. J Clin Oncol. 1983; 1: 710-7195) Smith I et al. Lancet. 2007; 369: 29-36.6) Gianni L et al. Lancet Oncol. 2011; 12: 236-244勝俣 範之先生のブログはこちら

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HER2陽性乳がんのトラスツズマブ至適投与期間は?/Lancet

 HER2陽性乳がんの術後補助療法において、HER2阻害薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の投与期間を標準的な1年投与から2年投与に延長しても有効性は改善されないことが、欧州腫瘍学研究所(イタリア、ミラノ市)のAron Goldhirsch氏らが行ったHERA試験で示された。乳がんの約15~20%にHER2遺伝子の過剰発現や増幅がみられる。トラスツズマブは、これらHER2陽性早期乳がんに対する有効性が確立され、術後補助療法として広く用いられている。現在の標準的な投与期間は1年とされるが、至適な投与期間は確立されていない。Lancet誌オンライン版2013年7月18日号掲載の報告。投与期間延長の有効性を無作為化試験で評価 HERA試験は、HER2陽性乳がんに対するトラスツズマブの至適投与期間の決定を目的とする無作為化第III相試験。対象は、標準的な術前または術後補助化学療法、あるいはその両方を受けたHER2陽性の浸潤性早期乳がんであった。 患者は、標準的な1年投与を行う群、1年延長して2年間投与する群、または非投与の観察群のいずれかに無作為に割り付けられた。初回投与量は8mg/kgとし、その後は6mg/kgを3週ごとに静脈内投与した。 主要評価項目は無病生存期間(DFS)とし、フォローアップ期間中央値8年における1年投与群と2年投与群のランドマーク解析および1年投与群と観察群のintention-to-treat解析を行った。DFSに差なく、有害事象は長期投与で多い 2001年12月7日~2005年6月20日までに5,102例が登録され、1年投与群に1,703例、2年投与群に1,701例、観察群には1,698例が割り付けられた。 ランドマーク解析の対象となったのは3,105例(1年投与群1,552例、2年投与群1,553例)であった。このうち1,588例(51.1%)がホルモン受容体陽性で、1,471例(92.6%)が術後ホルモン療法を受けた。2,772例(89.3%)は術後補助化学療法のみを受け、術前補助化学療法は受けていなかった。 DFSイベントは1年投与群の367例、2年投与群の367例に認められ、両群間に差はなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.85~1.14、p=0.86)。 Grade 3~4の有害事象は1年投与群が16.3%、2年投与群は20.4%、左室駆出率低下はそれぞれ4.1%、7.2%であり、いずれも2年投与群で頻度が高かった。 初回解析結果の報告後に観察群の52%(884例)がトラスツズマブ投与群へクロスオーバーされたにもかかわらず、観察群に対する1年投与群のHRは、DFSが0.76(95%CI:0.67~0.86、p<0.0001)、全生存(OS)も0.76(0.65~0.88、p=0.0005)であり、1年投与群が有意に良好であった。 著者は、「1年よりも短い投与期間と1年投与との同等性はまだ確かめられていないことから、現時点でのトラスツズマブの投与期間は、従来の1年が事実上の標準である」と指摘している。

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Personalizing extent of breast cancer surgery according to molecular subtypes (Monica Morrow, USA)

分子学的サブタイプに基づいた乳がん手術の個別化乳房温存術を選択する基準として考えられるのは、組織型、グレード、リンパ節の状況、ER、HER2、乳房内のがんの拡がり、放射線治療を受けられるか、である。Sorlieら(2001年)は、サブタイプ毎に予後をみており、luminal Aは無再発生存、全生存率ともによいことを示した。Wiechmannら(2009年)による6072例の検討では、HER2陽性とtriple negativeでグレードが高く(60~80%)、HER2陽性で多中心性/多巣性、広範な乳管内進展の頻度が高かった(30%前後)。Millarら(2009年)、Voducら(2010年)、Arvoldら(2011年)の研究から、乳房温存療法後の局所再発はHER2とbasalで高いことが示されている。しかしKyndiら(2008年)、Voducら(2010年)の研究からは、乳房切除術をしてもHER2やbasalでも局所再発率は高く、そのことは必ずしも温存療法を行ったからではないことが示された。一方、Kyndiら(2008年)は、サブタイプ毎に放射線治療の効果を検討した結果、局所再発率はER陽性では効果が非常に高いのに対して、triple negativeでは中程度であり、HER2では優位性が示されなかった。Cancelloら(2011年)は、T1mic、T1a、T1bでみており、局所再発はER陽性では低いものの、HER2やtriple negativeでは高かった。乳房温存療法後の局所領域再発をサブタイプ別にみたLoweryら(2012年)のレビューでも、triple negativeがnon-triple negativeと比べて再発率が高かった。Millarら(2009年)らは、分子学的フェノタイプ毎の検討で、乳房温存療法489例での10年局所再発率は、luminal A 3.6%、luminal B 8.7%、basal 9.6%、HER2 7.7%であった。次に遺伝子学的特性と局所再発の関係をみてみると(未発表データ)、21遺伝子リスクスコアでも70遺伝子特性でも、高リスク群で再発率が明らかに高かった。効果的な全身療法は局所再発に貢献していることが、NSABP B13,B14,B31,N9831でも明確に示されている。Kiessらは(2012年)、HER2陽性の場合にトラスツズマブが局所領域再発に与える影響をみてみると、3年再発率はトラスツズマブなしで7%、ありで1%であった。それでは、高リスクのtriple-negativeサブセットにより大きな手術を行うことが、より良い手術といえるエビデンスはあるのだろうか。Abdulkarimら(2011年)は、triple-negative (T1-2、N0)での5年局所領域無再発率をみており、乳房温存療法で96%、放射線療法なしの乳房切除術で90%であり、多変量解析では乳房切除術がむしろ局所再発の独立した因子であった。またHoら(2012年)の報告では、乳房温存療法と放射線療法なしの乳房切除術で、観察期間73ヵ月での局所再発率も、T1a-bでは3.1%対4.6%、T1-2、N0で4.3%対5.9%と、いずれも乳房切除術で高かった。さらにAdkinsら(2011年)の報告でも、局所領域の無再発生存率はStageI, IIともに乳房温存療法と乳房切除術で差がなかった。次に、より大きな断端を確保することは、triple-negativeにおいてより良いのであろうか。1999年から2009年の535例の検討で、断端が2mm以下であった71例と2mm以上であった464例を比較したとき、60ヵ月での局所再発率はそれぞれ7.3%と5.1%であり、有意差はなかった(p=0.06)。そして、リンパ節再発はERの状況や年齢によって異なるだろうか。Grillら(2003年)は1,500例の温存療法と郭清を行った症例を解析し、リンパ節転移の大きさのみがリンパ節再発の有意な予測因子だった。また、Yates(2012年)らは、リンパ節領域へ照射せず、乳房温存療法または乳房切除術と郭清を行って1~3個のリンパ節転移があった1,065例を検討したところ、グレード、転移リンパ節個数、術後放射線治療のみが有意なリンパ節再発予測因子であった。ACOSOG Z11の結果は、郭清群とセンチネルリンパ節群で、リンパ節再発率はそれぞれ0.5%対0.9%であり、差はなく、無再発生存、全生存においても差がなかった。メモリアルスローンケタリングがんセンター(MSKCC)において、ACOSOG Z11の基準を満たす患者においてセンチネルリンパ節転移陽性であったもののうち、287例について解析を行った。72例が微小転移、215例がマクロ転移であった。そのうち242例(84%)はセンチネルリンパ節生検のみ、45例(16%)は郭清を行った。サブタイプはほぼ同様であり、HR陰性が約10%であった。核グレード3が35%前後を占めていた。MSKCCの非センチネルリンパ節転移予測のためのノモグラムを用いると、センチネルリンパ節生検のみでは、34%と予測されたが、実際の郭清群では72%であった。経過観察期間は13ヵ月と短いが、いずれもリンパ節再発はしていない。以上より、局所再発は分子学的サブタイプによって異なり、より大きな手術は悪い生物学的特徴をカバーしない。有効な全身療法によって改善し、集学的治療は手術による悪影響を減少させる機会を提供する。レポート一覧

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ハーセプチン、乳がん術後補助化学療法への用法・用量追加を公知申請

 中外製薬は7日、「HER2過剰発現が確認された乳癌」「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌」を効能・効果として販売を行っている抗悪性腫瘍剤トラスツズマブ(遺伝子組換え、販売名:ハーセプチン注射用60、同150)について、「HER2過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法としての1週間間隔投与」の用法・用量追加の公知申請を同日付で厚生労働省に行ったことを発表した。 ハーセプチンは、2012年12月26日に開催された「第14回 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、本用法・用量について公知申請に該当と評価された。今回の公知申請は、2013年1月31日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、本用法・用量の追加に対し、公知申請を行って差し支えないと決定されたことに基づくもの。 同社が販売しているハーセプチンは、すでにHER2過剰発現が確認された乳がんに対しては世界100ヵ国以上、HER2過剰発現が確認された胃がんに対しても32ヵ国以上で承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/hc/ss/news/detail/20130207150000.html

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Chemotherapy prolongs survival for isolated local or regional recurrence of breast cancer: The CALOR trial (Chemotherapy as Adjuvant for Locally Recurrent breast cancer; IBCSG 27-02, NSABP B-37, BIG 1-02)

化学療法は局所または領域リンパ節の単独再発に対して予後を延長する:CALOR試験乳癌における局所または領域リンパ節の単独再発(Isolated local or regional recurrence, ILRR)は、予後不良の予測因子である。しかしILRRに対する術後化学療法に関する前向き比較試験は過去30年間行われてこなかった。CALOR試験適格基準は、乳房内、胸壁、乳房切除創または皮膚、腋窩または胸骨傍リンパ節の初回再発であり、再発部位が病理学的に完全に切除され、鎖骨上リンパ節や遠隔再発が認められていないことである。原発性乳癌術後の化学療法の有無、ホルモン受容体、ILRRの部位で層別化し、再発巣切除後に化学療法の有無について無作為化比較試験を行った。化学療法後はホルモン受容体陽性については内分泌療法を行い、HER標的療法は選択可能とした。化学療法剤の種類は責任医師の選択としたが、3~6ヵ月で2剤以上使用することが推奨された。放射線治療は全例に40Gy以上が推奨された。プライマリーエンドポイントはDFS、セカンダリーエンドポイントはOSであり、ITT解析が行われた。最初に設定されたハザード比は0.74で、997例の登録と347例のDFSイベントが予想されたが、患者登録の割合が低く、より有効な化学療法が確立されてきたことから、2008年3月に修正され、ハザード比0.6でサンプルサイズが再設定され、265例に対して124のイベントが起こること(観察群の5年DFS 50%)が予想された。しかし2010年1月に試験がクローズされ、その時点で162例であり、中間解析は行われなかった。分析は少なくとも2.5年以上の経過観察を必要とした。国際的共同試験として行われ、BIG 89例、GEICAM 20例、BOOG 12例、NSABP 73例であった。ベースラインの背景は化学療法群と観察群で、化学療法歴58対68%、LRR時閉経後状態76対82%、年齢中央値56対56歳、再発部位は乳房55対53%、切開創/胸壁32対34%、領域リンパ節13対13%、再発創のエストロゲン受容体陽性66対62%、ILRRに対する治療は、放射線治療44対39%、内分泌療法(エストロゲン受容体陽性例)91対92%、HER2標的療法7対5%、化学療法は単独療法としてタキサン20%、カペシタビン11%、複合療法としてアンスラサイクリンベース48%、アンスラサイクリン+タキサンベース1%、タキサンベース16%であった。5年DFSは化学療法(CT)群69%、観察(no CT)群57%であり、 CT群で有意に予後良好であった(p=0.0455、 HR=0.59、95%CI:0.35~0.99)。エストロゲン受容体別にみると、陽性ではCT群70%、no CT群69%と差がなく(p=0.87、HR=0.94、95%CI:0.47~1.89)、陰性ではCT群67%、no CT群35%と有意差がみられた(p=0.007、HR=0.32、95%CI:0.14~0.73)。多変量解析ではエストロゲン受容体、再発部位、化学療法歴の有無、初回手術からの期間では差がなく、再発後の化学療法の有無でのみ有意差が認められた(p=0.01、HR=0.50)。5年OSでもCT群88%、no CT群76%であり、CT群で有意に予後良好であった(p=0.02、HR=0.41、95%CI:0.19~0.89)。多変量解析ではやはり再発後の化学療法の有無でのみ有意差が認められた(p=0.02、HR=0.37)。結論として、再発後の化学療法はDFSイベントを41%減少させ、死亡を59%減少させる。エストロゲン受容体陰性の再発においてより効果が高く、受容体陽性についてはより長期の経過観察が必要と考えられた。局所再発に対する全身化学療法の意義というクリニカルクエスチョンに対し、複数の国にまたがる臨床試験を施行し、局所再発時の治療について再考すべき話題を提供してくれたことの意義は大きい。従来は局所再発時の全身療法に対するエビデンスがないということで、全く行っていなかった施設もあったかと思う。それにしても、これだけ世界の臨床試験グループが集まっても患者登録が進まなかったのは、患者が試験への参加を望まなかったか、医師が組み入れをかなり選定した可能性があり、選択バイアスがかなり大きいのかもしれない。再発時の受容体の状況が異なっていれば、実際は再発ではなく新規原発かもしれないし、初発時に行われた化学療法のレジメンと再発時に行われたレジメンの違いについて言及されていないため、どのような状況においてどのような化学療法を用いることがよいのか、不明のままである。アンスラサイクリン+タキサンベースがわずか1%であったところをみると、初回化学療法と異なるレジメンが採用されたものと考える。したがって現時点では個人的な治療の選択には変更はない。個々の場面に応じて、有効かもしれない全身治療の選択を考えるのが妥当と考えている。以下に例を挙げてみる。StageIのルミナルタイプ乳癌で術後内分泌療法のみを行っていた、あるいはT1bN0M0のトリプルネガティブ乳癌で術後経過観察のみを行っていたとする。3年後胸壁に2cmの浸潤癌または腋窩リンパ節再発を来したとすれば、内分泌療法抵抗性であり、また局所再発の時点で化学療法の適応になったと考えることができる。初回術後CMF療法を行っていて、浸潤癌の局所再発を来した場合、ルミナルタイプであればCMFとACの治療効果に通常差がないので、化学療法を選択するとすればタキサンベースであろう。しかしHER2陽性やトリプルネガティブ乳癌であれば、そもそもCMFでは効果が不十分であった可能性もあり、アンスラサイクリンとタキサン(+/-トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン))を選択したい。StageIIのHer2陽性乳癌で、乳房部分切除術後にアンスラサイクリンおよびタキサン+トラスツズマブを行っていて、早期に局所再発した場合、術後補助療法として十分な治療を行ったうえでの再発であり、局所再発後にさらに別の化学療法とハーセプチンを上乗せすることは、過剰治療の可能性が高い。まずは局所治療を十分に行って、慎重な経過観察を行うことが妥当であろうと考えられる。ルミナルタイプでアンスラサイクリンとタキサンを行い、その後アロマターゼ阻害剤を服用している最中に局所再発した場合も、局所治療をまずはしっかり行って、経過観察を行っていくのがよいのではないかと思う。反対にタモキシフェン服用中の再発であれば、アロマターゼ阻害剤が予後を改善する可能性があり、局所再発後に内分泌療法の変更を考える余地がありうる。カペシタビンを行う根拠は非常に弱いと考えられ、11%に行われていたのはどのような意志決定があったのか知りたいところである。これらの考え方には異なった意見もあるかと思うが、心配だからなんとなく行うのではなく、前治療と後治療とのバランスや予後を改善しうるパワーを持ちうる治療であるのかを十分考慮して、過小または過剰治療にならないようチームで十分吟味して決めることが大切であろう。レポート一覧

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(41)〕 固形がんに対する新しい治療薬の夜明けとなるか?

乳がんに対する抗体治療であるトラスツズマブの登場は大きな衝撃であった(Slamon DJ et al. N Engl J Med. 2001; 344: 783-792.)。トラスツズマブの開発を最初として、固形がんに対する分子標的薬の開発が加速した。トラスツズマブの第三相試験の発表から10年、T-DM1が登場した。T-DM1は、HER2抗体であるトラスツズマブにemtansineという微小管に採用する化学療法剤をリンカーでくっつけた薬剤である。 抗体薬に抗がん剤(殺細胞薬)を接合した薬剤はAntibody-Drug Conjugate(ADC)と呼ばれる新しい製剤である。従来の抗がん剤は殺細胞効果が強いため、がん細胞も正常細胞も同様に死滅させてしまい、副作用が強いことが問題であった。ADCは、抗体ががん細胞に結合した後で殺細胞効果が発揮されるため、より副作用が軽減され、効果が高まると期待されている。実は20年以上も昔から「ミサイル療法」などと言って開発の期待がされていた製剤であるが、トラスツズマブの成功によりやっと実現されたと言える。血液腫瘍では、既にゲムツズマブオゾガマイシン(商品名:マイロターグ)という薬剤が開発されているが、T-DM1は固形がんで有効性が証明された初めての薬剤ということになる。 この試験は、前治療として、トラスツズマブの既往のある進行乳がん患者に対して、現在の標準治療であるラパチニブ+カペシタビン療法(内服薬)とT-DM1(静注)とを比較したものである。 プライマリーエンドポイントは、当初は、無増悪生存期間(PFS)のみであったのが、途中で全生存期間(OS)も評価できるようにして、サンプルサイズを再計算し、目標症例数を580名から、980名に増やしている。これは、最近の抗がん剤開発で“PFSのみ延長させ、OSには影響を与えない”といった、解釈が困難な第三相試験の結果の発表が相次いでなされたことの影響が少なからずあったものと考えられる。 OSの結果は、2回目の中間解析で、有効中止の基準ラインであるP=0.0037を下回った(P

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進行性乳がん患者に対するTDM-1、無増悪生存期間、全生存期間を有意に延長/NEJM

 トラスツズマブエムタンシン(TDM-1)は、HER2陽性進行性乳がん患者[トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)とタキサン系薬剤による治療歴のある]に対して、ラパチニブ+カペシタビン療法と比較して無増悪生存期間、全生存期間を有意に延長することが示された。毒性も低かった。TDM-1は、抗体医薬品トラスツズマブと化学療法薬のDM1が安定したリンカーにより結合した抗体薬物複合体である。カナダ・Sunnybrook Odette Cancer CentreのSunil Verma氏らEMILIA試験グループによるTDM-1の有効性と安全性を検討した第3相無作為化試験の結果は、NEJM誌2012年11月8日号(オンライン版2012年10月1日号)で発表された。TDM-1群とラパチニブ+カペシタビン群に割り付け有効性と安全性を評価 EMILIA試験は2009年2月~2011年10月に、26ヵ国213施設から被験者を登録し行われた国際多施設共同無作為化オープンラベル試験。トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性進行性乳がん患者991例を対象とし、TDM-1群とラパチニブ+カペシタビン群に無作為に割り付け追跡した。 主要エンドポイントは、独立審査委員会が評価した無増悪生存期間、全生存期間、安全性とした。副次エンドポイントは、試験担当医が評価した無増悪生存期間、客観的な奏効率、症状増悪までの期間などだった。全生存期間中の中間解析は2回行った。TDM-1群の増悪・全死因死亡ハザード比は0.65 結果、主要エンドポイントの無増悪生存期間中央値は、TDM-1群9.6ヵ月に対し、ラパチニブ+カペシタビン群は6.4ヵ月で、TDM-1群の増悪・全死因死亡ハザード比は0.65だった[95%信頼区間(CI):0.55~0.77、p<0.001]。 全生存期間中央値(2回目中間解析時点)は有効性の中止基準を超えるものだった(30.9ヵ月vs. 25.1ヵ月、全死因死亡ハザード比:0.68、95%CI:0.55~0.85、p<0.001)。 客観的奏効率はTDM-1群のほうが有意に高く(43.6%vs. 30.8%、p<0.001)、試験担当医が評価した無増悪生存期間(p<0.001)、症状増悪までの期間(12.6ヵ月vs. 6.5ヵ月)などその他の副次エンドポイントもすべてTDM-1群のほうが良好だった。 安全性については、グレード3または4の有害事象発生率はラパチニブ+カペシタビン群のほうが高かった(57%vs. 41%)。TDM-1群の発生が高率だったのは、血小板減少症、血清アミノトランスフェラーゼ値上昇で、下痢、悪心、嘔吐、手掌・足底発赤知覚不全発生率はラパチニブ+カペシタビン群で高率だった。

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転移性乳がんに対する第一選択治療としてpertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル併用療法

HER2陽性転移性乳がんに対する第一選択治療として、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの併用療法は、トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、心毒性作用の増加を伴うことなく有意に無増悪生存期間を延長したことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのJose Baselga氏らによる第3相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CLEOPATRA」の結果、報告された。pertuzumabは、トラスツズマブと相補的な作用機序を持つ抗HER2ヒト化モノクローナル抗体で、第2相試験で、両剤での併用療法が有望な活性作用と忍容可能な安全性プロファイルを示すことが報告されていた。NEJM誌2012年1月12日号(オンライン版2011年12月7日号)掲載報告より。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル対プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルCLEOPATRA(Clinical Evaluation of Pertuzumab and Trastuzumab)試験は、2008年2月~2010年7月にかけて25ヵ国204施設から登録されたHER2陽性転移性乳がん患者808例を対象に行われた。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル(pertuzumab群、402例)またはプラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル(対照群、406例)のいずれかを第一選択治療となるよう被験者を無作為に割り付け、疾患増悪または有効的に管理できない毒性作用が発現するまで投与を継続した。主要エンドポイントは、独立に評価された無増悪生存期間とした。副次エンドポイントは、全生存期間、研究者が評価した無増悪生存、客観的奏効率、安全性とした。無増悪生存期間、プラセボ群12.4ヵ月に対しpertuzumab群18.5ヵ月に延長結果、無増悪生存期間の中央値は、対照群12.4ヵ月に対して、pertuzumab群は18.5ヵ月だった(増悪または死亡のハザード比:0.62、95%信頼区間:0.51~0.75、P<0.001)。全生存期間の中間解析の結果、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの優越性が強い傾向が示された。安全性プロファイルは全般的に両群で同程度であり、左室収縮期の機能障害の増加は認められなかった。また、グレード3以上の発熱性好中球減少症と下痢の発現率は、対照群よりpertuzumab群で高かった。(朝田哲明:医療ライター)

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HER陽性乳がんへのトラスツズマブ併用について新たなレジメン検討

HER陽性乳がんの補助療法として生存率改善が認められているトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)について、非アントラサイクリンベースレジメンへの併用の有効性と安全性が検討された。これまで、トラスツズマブのアントラサイクリンベースレジメンへの併用では心毒性が認められていた。試験・報告は、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のDennis Slamon氏ら乳がん国際研究グループ(BCIRG)による。NEJM誌2011年10月6日号掲載報告より。AC-T群、AC-T+トラスツズマブ群、TCH群に無作為化し検討研究グループは2001年4月~2004年3月の間に、41ヵ国からHER2陽性で早期乳がん(ステージT1、T2、T3)の女性3,222例を対象に試験を行った。被験者は無作為に、(1)3週ごとに、ドキソルビシンとシクロホスファミド投与後にドセタキセルを投与する(AC-T)群、(2)(1)+トラスツズマブを52週併用投与する(AC-T+トラスツズマブ)群、または(3)ドセタキセルとカルボプラチンに、トラスツズマブを52週併用投与する(TCH)群に割り付けられ、無病生存率を主要エンドポイントに、副次エンドポイントは全生存率と安全性として検討された。無病生存率はAC-T群75%、AC-T+トラスツズマブ群84%、TCH群81%追跡期間中央値は65ヵ月だった。その間、事前特定されていたイベントの発生は656例だった。5年推定無病生存率は、AC-T群75%、AC-T+トラスツズマブ群84%、TCH群81%であった。推定全生存率はそれぞれ、87%、92%、91%であった。有効性(無病生存率と全生存率)について、2つのトラスツズマブ併用療法群の間に有意差は認められなかったが、いずれもAC-T群より優れていた。リスクベネフィットの観点からはTCH療法が優れるうっ血性心不全と心機能不全の発生率は、TCH群よりもAC-T+トラスツズマブ群で有意に高かった(P<0.001)。また急性白血病は8例報告された。そのうち7例はアントラサイクリンベースレジメンでの発生例だった。TCH群での1例の発生は、本試験後にアントラサイクリン投与を受けたことに起因していた。以上を踏まえて研究グループは、「トラスツズマブ併用レジメンの1年間施行は、HER2陽性乳がん患者の無病生存率と全生存率を有意に改善した」と述べた上で、「有効性は同等だが、急性毒性作用が少なく、心毒性や白血病のリスクも低いというリスクベネフィットの観点から、AC-T+トラスツズマブよりも非アントラサイクリンベースレジメンのTCH療法が支持される」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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トラスツズマブ+化学療法が、新たな進行胃がんの標準治療に:ToGA試験

ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2、あるいはERBB2とも呼ばれる)陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療として、分子標的治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をフッ化ピリミジン系薬剤+シスプラチン(同:ブリプラチン、ランダなど)による化学療法と併用する治療法が有用なことが、国立ソウル大学医学部のYung-Jue Bang氏らが行った無作為化第III相試験で示された。トラスツズマブはHER2を標的とするモノクローナル抗体で、すでに早期および転移性乳がんの有効な治療薬として確立されており、胃がんの前臨床試験ではカペシタビン(商品名:ゼローダ)やシスプラチンとの併用により少なくとも相加的な抗腫瘍効果が確認されている。乳がんでは良好な耐用性が示され、また胃がん患者のHER2陽性率は乳がん患者とほぼ同等だという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載の報告。トラスツズマブの化学療法への上乗せ効果を評価ToGA試験の研究グループは、HER2陽性進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療としてのトラスツズマブ+化学療法併用の有用性を評価する国際的なオープンラベル無作為化第III相試験を実施した。24ヵ国122施設から、免疫組織化学検査でHER2蛋白の過剰発現、あるいはFISH(fluorescence in-situ hybridisation)法でHER2遺伝子の増幅が確認された胃および胃・食道接合部がん患者が登録された。これらの患者が、化学療法[カペシタビン+シスプラチンあるいはフルオロウラシル(商品名:5-FU)+シスプラチン]を3週ごとに6サイクル施行する群あるいは同様の化学療法にトラスツズマブ静脈内投与を併用する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、無作為割り付けの対象となり一回以上の治療を受けた全患者の全生存期間(OS)とした。OS中央値が有意に26%延長594例(トラスツズマブ+化学療法群:298例、化学療法単独群:296例)が登録され、主要評価項目の解析の対象となったのは584例(それぞれ294例、290例)であった。フォローアップ期間中央値は、それぞれ18.6ヵ月(四分位範囲:11~25ヵ月)、17.1ヵ月(同:9~25ヵ月)であった。OS中央値は、トラスツズマブ+化学療法群が13.8ヵ月(95%信頼区間:12~16ヵ月)と、化学療法群単独群の11.1ヵ月(同:10~13ヵ月)に比べ有意に延長した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0046)。最も頻度の高い有害事象は、両群ともに悪心[トラスツズマブ+化学療法群:67%(197/294例)、化学療法単独群:63%(184/290例)]、嘔吐[それぞれ50%(147/294例)、46%(134/290例)]、好中球減少[53%(157/294例)、57%(165/290例)]であった。グレード3または4の有害事象の頻度[それぞれ68%(201/294例)、68%(198/290例)]および心毒性の頻度[6%(17/294例)、6%(18/290例)]は両群間に差を認めなかった。著者は、「トラスツズマブと化学療法の併用療法は、HER2陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの新たな標準治療となる可能性がある」と結論している。なお、本試験の参加者の53%が日本人を含むアジア人である。(菅野守:医学ライター)

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「タイケルブ」が米国でホルモン受容体陽性/HER2陽性の転移性乳がん患者の一次治療として迅速承認を取得

英国グラクソ・スミスクラインは米国食品医薬品局(FDA)が「タイケルブ」について、転移性乳がん患者の経口薬による治療のファーストラインとして、タイケルブを使用した新たな併用療法を迅速承認したと発表した。同社の日本法人が5日に報告した。今回承認されたタイケルブの適応症は、ホルモン受容体陽性(HR+)かつHER2陽性の閉経後転移性乳がん患者に対するレトロゾールとの併用療法。タイケルブとアロマターゼ阻害剤との併用療法は転移性乳がんを対象としたトラスツズマブを含む化学療法のレジメンとは比較されていない。タイケルブはすでに、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤、タキサン系抗悪性腫瘍剤、及びトラスツズマブによる治療歴のあるHER2過剰発現を示す手術不能または再発乳癌患者におけるカペシタビン(製品名:ゼローダ)との併用療法として承認を取得している。現在、タイケルブ(欧州ではTYVERB)は、欧州医薬品審査庁(EMEA)によって、同様な適応症で審査中とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2010_01/P1000611.html

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HER2陽性乳がんに対する初の経口分子標的薬「タイケルブ」発売

グラクソ・スミスクライン株式会社は19日、「HER2過剰発現が確認された手術不能又は再発乳癌」を効能・効果とした抗悪性腫瘍剤「タイケルブ 錠250mg」(一般名:ラパチニブトシル酸塩水和物)が薬価収載されたことを受け、同日に販売を開始した。タイケルブの適応症は、がん細胞にHER2が過剰に発現しているHER2陽性の乳がんで、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤、タキサン系抗悪性腫瘍剤及びトラスツズマブ(遺伝子組換え)による化学療法後の増悪もしくは再発の患者に対するカペシタビンとの併用療法。乳がん治療領域で初めての経口分子標的薬となる。タイケルブは、同社で開発された新規のチロシンキナーゼ阻害薬。細胞増殖促進のシグナル伝達を活性化するHER(ErbB受容体)ファミリーのなかのEGFR(ErbB1)とHER2(ErbB2)の2種類の受容体型チロシンキナーゼに対して、細胞内において選択的かつ可逆的な阻害作用を示し、腫瘍細胞の増殖を抑制する。タイケルブは2009年3月時点で、HER2過剰発現を示す進行性又は転移性乳がんの効能・効果にて74の国・地域で承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2009_01/P1000557.html

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新規抗悪性腫瘍剤タイケルブ 承認取得

グラクソ・スミスクライン株式会社は22日、抗悪性腫瘍剤「タイケルブ錠 250mg」(一般名:ラパチニブトシル酸塩水和物)について「HER2過剰発現が確認された手術不能又は再発乳がん」を効能・効果として、厚生労働省より承認を取得したと発表した。タイケルブは、乳がん治療領域で初めて承認された経口の分子標的治療薬。タイケルブの適応症は、がん細胞にHER2が過剰に発現しているHER2陽性の乳がんで、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤、タキサン系抗悪性腫瘍剤およびトラスツズマブ(遺伝子組換え)による化学療法後の増悪もしくは再発の患者に対するカペシタビンとの併用療法。タイケルブは、同社で開発された新規のチロシンキナーゼ阻害薬で、細胞増殖促進のシグナル伝達を活性化するHER(ErbB受容体)ファミリーの中のEGFR(ErbB1)とHER2(ErbB2)の2種類の受容体型チロシンキナーゼに対して、細胞内において選択的かつ可逆的な阻害作用を示し、腫瘍細胞の増殖を抑制する。特にHER2は乳がん患者の予後不良因子として認識されており、同剤は2009年3月時点で、HER2過剰発現を示す進行性又は転移性乳がんの効能・効果にて74の国・地域で承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2009_01/P1000547.html

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